アルカディア争奪戦⑮〜熾火は赫く昌盛・ブラスター
●屍人帝国艦隊
六大屍人帝国『天帝騎士団』は迅速果断なるオブリビオンの集団である。
雪が積もるよりも速く、雪崩の如き圧倒的な力でもって障害を破壊していく。『アルカディア争奪戦』における要衝空域たる空の道。
その要衝に『天帝騎士団』の擁する浮島が、それごと大挙して集結している。
その浮島は全てが遠距離火力を有しており、要衝を護るのにふさわしい働きを見せていた。
オブリビオン『堕ちた飛空艇技師』たちがこれを為したのである。
彼らは『天帝騎士団』が支配した浮島を浮遊砲台に変え、天使核によって得られる浮力を推進力に変えて迫る『|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》』を迎え撃つ。
「はははッ! どれだけ飛空艇を集めて艦隊を組もうともね! こちらの火力の方が高くて、多いのだから突破なんてできるわけないのよ!」
『堕ちた飛空艇技師』たちが笑う。
彼らが組み上げた浮島砲台は、砲撃して良し、特攻させて良しである。護りは固く、火力も申し分ない。
飛空艇程度でどうにかできるものではないのだ。
だからこそ嘲笑う。
迫る『飛空艇艦隊』のことごとくを撃墜し、雲海に沈める。
「そうなりゃ、あんたたちも私達の仲間入りってわけよ! どれだけ勇気に満ちていたとしても、雲海に沈めば等しく私達とおなじになる! 選ばれたものじゃなくても! 力なき者であっても等しくね!」
彼女たちは浮島砲台と共に『飛空艇艦隊』に迫る。
ただ滅ぼすために。
勇士たる者たちも、戦いに怯える者たちもことごとく滅ぼすために。
だが、その一陣を切り裂くように放たれる光条があった。
「――何事よ!」
「……何、あれ……赤い、鎧の巨人? 持っているのは……!」
「『|遺骸兵器《レリックウェポン》』……!?」
『堕ちた飛空艇技師』たちは驚愕する。
空に浮かぶは、光背持つ赤い鎧の巨人。手にしているのは長大な砲身。その砲身から放たれる砲撃の光条が浮島砲台の一陣を撃ち落とし、雲海に沈めたのだ。
三面たる頭部の瞳が煌めき、その赤い鎧の巨人が『飛空艇艦隊』の飛空艇の甲板上に降り立ち、手にした砲身を置く。
「赤い、『セラフィムV』!『アジール王国』を救ってくれた巨人が俺達に味方してくれるのか!」
「おい! 覚えているか、『エイル』! オレだ、オレたちだ! あの時一緒に戦った!」
『飛空艇艦隊』の勇士たちの中には屍人帝国『オーデュボン』の脅威にさらされていた『アジール王国』の勇士達も存在していた。
共に戦った青い鎧の巨人『セラフィムV』と少年『エイル』のことを彼らは忘れていなかった。あの戦いの日に見た青い熾火が今も彼らの中に篝火として残っているからだ。
だが、赤い鎧の巨人は何も答えない。
手にしていた『遺骸兵器』たる『ブラスター』を甲板上に置くと、そのまま空へと浮かび上がっていく。
「何処に行くっていうんだ! なあ!」
答えない。
何一つ言葉を発することなく赤い鎧の巨人は光背より光の翼を発露し、飛び立つ。
残されたのは『|遺骸兵器《レリックウェポン》』――『ブラスター』。
星と星との間すら穿つと言われた超距離射撃兵器。
まるで、それを使い敵の圧倒的な火力に対抗しろと言わんばかりであった。
「なんで、何も言ってくれないんだ。一言言ってくれても良いじゃないか……」
あの青い熾火を知る勇士たちは、けれど立ち止まっている時間がないことを知っている。この『遺骸兵器』、『ブラスター』が今手元にあるということ。
そして、この『飛空艇艦隊』にはブルーアルカディア中のメカニックたちが集結している。
ならば、やるべきことは唯一つ――!
●アルカディア争奪戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。『アルカディアの玉座』に繋がる空の道、その要衝たる空域に『天帝騎士団』のオブリビオンたちが集結し、道を阻んでいます。これを突破しなければ、この『アルカディア争奪戦』に勝利を収めることはできないでしょう」
ナイアルテは要衝空域に浮かぶ『天帝騎士団』の艦隊とも言うべき浮島砲台を示す。
浮島を砲台に改造したオブリビオンの戦力は凄まじく、遠距離火力もまた厄介だ。だが、勇士たち『飛空艇艦隊』はこれに臆すること無く肉薄していく。
無謀とも取れる行動である。
「ですが、彼らはブルーアルカディア中の人材を結集させています。勇士たちだけではなく、当然飛空艇を整備するメカニックのみなさんも」
そう、イカれたメカニックたちが『遺骸兵器』、『ブラスター』を参考にして飛空艇に搭載する『超距離ユーベルコード砲』を突貫で完成させたのだ。
この砲にユーベルコードを籠めて放つことで、『天帝騎士団』の率いる浮島砲台と五角以上の砲撃戦を行うことができるのだという。
だが、問題がある。
「突貫で完成させたため、砲台の数と耐久性に限界があるのです。確実にユーベルコードを敵の浮島砲台に命中させなければなりません」
勇士たちは、この限りある武装を猟兵たちに託すようである。
彼らは浮島砲台以外の敵を引きつける陽動を行ってくれているため、猟兵たちは自分たちのユーベルコードを活用することに集中できる。
恐らく猟兵たちのユーベルコードに突貫で造られた『超距離ユーベルコード砲』が耐えられるのは、一発のみ。
外すことは、それだけで陽動を請け負った勇士達を危険に晒すことになる。
「簡単ではない戦いであることに変わりはありません。どうか、勇気ある勇士の方々のためにも、皆さんの力を貸してください」
ナイアルテは頭を下げ、猟兵たちを送り出す。
人の叡智は、あらゆるものを生み出す。
ならば、破壊もまた同様であろう。
そのバランスを手にし、如何にして力を振るうかが人の心である。ならば、猟兵たちは如何なるものを世界に示すだろうか――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオとなります。
『アルカディアの玉座』に至るための要衝空域に集結する『天帝騎士団』の浮島砲台。これを打倒し、『アルカディア争奪戦』を制するために『飛空艇艦隊』と協力して戦うシナリオになります。
浮島砲台を操るオブリビオン『堕ちた飛空艇技師』たちは、浮島を飛空艇のように使い、遠距離火力による砲撃を行っています。
時に浮島自体の質量で持って特攻することもあるでしょう。
それを許せば、『飛空艇艦隊』の損害は計り知れないものとなります。
ですが、『飛空艇艦隊』のイカれたメカニックたちが『遺骸兵器』ブラスターを参考に急造した『超距離ユーベルコード砲』が皆さんに託されます。
一発しかユーベルコードに耐えられませんが、皆さんの力が『超距離砲撃』と同じものとなり、『天帝騎士団』の浮島砲台と互角以上の砲撃戦を行うことができます。
飛空艇艦隊の勇士たちは陽動に努めています。
皆さんは、ユーベルコードを砲に籠め、一発勝負を決めなければなりません。
プレイングボーナス……超距離ユーベルコード砲を使い、敵艦隊を砲撃する。
それでは『アルカディア争奪戦』、屍人帝国の野望を打ち砕くべく雲海を進む皆さんの冒険と戦いの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『堕ちた飛空艇技師』
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POW : 飛空艇落としの技術
【装甲剥がしの攻撃】が命中した部位に【侵蝕性オブリビオンオイル】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : 高速改造の技術
自身の【修復技術により味方の飛空艇】を【高速改造し、現状に適した形体】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ : 飛空艇解体計画
【敵の飛空艇を解体する飛空艇技師】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[敵の飛空艇を解体する飛空艇技師]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
イラスト:雑草サキ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎アドリブ連携OKです
ブラスター!良いじゃないこれ!
思いっきり打ち込んで良いの?
ワクワクするなぁ。
ユーベルコヲド、超統合群体機・零號!
総砲門25門、照準捕捉装置追加!
目標浮島砲台!
補足可能目標に照射!!
砲座、銃身の破壊を重点、使い物にならないように壊してやって!
ブラスターを使い終えたらキュウブを陽動中の勇士たちへ、弱体化した特性をついて援護射撃してあげて!
ヨナ、阿穹羅、援護よろしく頼むよ!
ぼくも紅路夢に乗って支援しにいこう。
出来ることはまだある筈だからね!
『|遺骸兵器《レリックウェポン》』――『ブラスター』。
それは20mもの砲身を持つ兵器であり、『アジール王国』と呼ばれた浮遊大陸に存在していたものである。
屍人帝国『オーデュボン』が狙い、猟兵に寄ってオブリビオン化を免れた。
その『ブラスター』を参考に『飛空艇艦隊』のイカれたメカニックたちが生み出したのが簡易型『ブラスター』とでも言うべき、『超距離ユーベルコード砲』である。
「良いじゃないこれ!」
国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女・f23254)はとてもワクワクしていたし、ドキドキしていた。
彼女の天才性は、見るだけで『超距離ユーベルコード砲』の力を見抜く。
ユーベルコードを籠めるだけで超距離砲撃が可能となる砲身に触れる。突貫で作り上げたにしては大したものだと鈴鹿は思っただろう。
「思いっきり打ち込んで良いの?」
「ああ、だけど砲身がユーベルコードに堪えられるのが一つに付き一発までなんだ。俺達が敵を誘導するから、あの浮島砲台の撃破、頼んだぜ」
勇士たちが飛空艇でもって空を駆けていく。
彼らはオブリビオンの注意をひきつけ、『超距離ユーベルコード砲』の存在を悟らせないように陽動を買って出たのだ。
危険は当然ある。
だが、彼らの心に燃える篝火のような熾火が今も燃えているのならば、鈴鹿は彼らの思いに答えようと思ったのだ。
「創造の可能性は無限大さ」
超統合群体機・零號(バリアブル・ジヰニアスキュウブ)。彼女が『超距離ユーベルコード砲』に籠めたユーベルコヲドは、その砲身事態を変えていく。
キューブ状のボデーに数字が刻印された多目的立体機動超機械群が忽ちに、超距離仕様に変わっていくのだ。
『ブラスター』と呼ばれた『遺骸兵器』の本来の姿とは異なるもの。
だが、この状況においてはこれに勝る最適な武装もないだろう。
「砲門が増えた所でさ!」
オブリビオンである『堕ちた飛空艇技師』たちが自らのユーベルコードで持って手繰る浮島砲台を改造し、こちらの狙いに気がついたが故に鈴鹿の操る『超距離ユーベルコード砲』へと迫る。
多少の攻撃ではビクともしない。
それどころか、その浮島自体の質量でもって『超距離ユーベルコード砲』を破壊しようとさえしているのだ。
「総砲門25門、照準補正装置追加! 目標浮遊砲台!」
鈴鹿の声が響き渡ると同時に超機械群が空に飛ぶ。
眼前に展開されるモニターの如きビジョン。そこには浮島砲台を捉えたことを示すファイアリング。
「補足可能目標に照射!!」
その言葉と共に放たれる砲撃。
『超距離ユーベルコード砲』によって放たれる鈴鹿のユーベルコヲドは凄まじい射程と手数でもって迫る浮島砲台を砕いていく。
「――!? 豆鉄砲のはずでしょ! 敵のは! なのに、なんでこの威力……!」
赤銅のボデーが大空に煌めく。
鈴鹿の駆るフロヲトバイが一気に距離を詰めてきているのだ。
さらに随伴するキャバリア、スカイクルーザーが弾幕の如き砲撃から鈴鹿をサポートする。
先程まで浮島砲台へと砲撃をしていた機械群は何処に、と『堕ちた飛空艇技師』たちは思っただろう。
こちらに単身で向かう猟兵のそばにはない。
こちらの銃座を破壊した彼女は大空を飛び、己たちの上を征く。
「自分ではなく、味方の援護にアレを回したっていうの!?」
「そうだよ。キミたちには十分打ち込んだからね。なら、味方の損害を出させないために、勇気ある陽動をしてくれた彼らを護るのが当然」
だから、と鈴鹿は赤銅色のフロヲトバイの上で二丁の機関銃を構える。
敵の浮島砲台は確実に沈める。
けれど、消耗させても恐らく『堕ちた飛空艇技師』がこれを回復させてしまうだろう。なら、その『堕ちた飛空艇技師』たちを叩かねばならない。
「ぼくのレシピは特別製さ!」
天真爛漫にして大胆不敵なるハイカラさん。鈴鹿は引き金を引き、『堕ちた飛空艇技師』を討ち滅ぼしながら、空を飛ぶ。
迫る『天帝騎士団』の浮島砲台は今だ数を有している。
けれど、鈴鹿は陽動を担当する勇士たちを護る。その方がきっと、この作戦のためには良いはずなのだ。
彼女が描いた戦いのレシピ。その絵図は、きっと誰かを守るためにあるのだと、今も続く戦いの中に書き記されている――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェルンド・ラスリス
※アドリブ共闘歓迎
勇士のみならず、一般人にも手を出すと言うのなら、俺が止める。止めてみせる。
長距離砲か。候補は幾つかあるが、一点突破でまとめて薙ぎ払うのが一番だろう。
篭めるUCは『灼砲』。シンプルな火力による攻撃であるUCを、砲によりさらなる強化で、浮島ごと破壊を狙う。貧血のデメリットも艦の上なら問題無しだ。
この大空の世界ブルーアルカディアにおいて浮遊する大陸は、人々にとって生活の基盤そのものである。
雲海に沈めば、あらゆるものが滅びる。
力ある者も、勇気ある者も、またそれらを持たぬ者でさえ滅びる。
あらゆる者淘汰される世界。
その可能性に満ちた世界でもある。
だからこそ『堕ちた飛空艇技師』たちは笑う。
滅びに対する抵抗は愚かしいものだと。
「遅かれ早かれどのみちみんな雲海に沈むっていうのにね! なら、手伝ってやろうじゃないの。それが合理的ってものでしょ!」
浮島砲台から放たれるのはオブリビオンオイルを充填した弾丸。
それが打ち込まれてしまえば、どんな飛空艇だろうと装甲を引き剥がされ、雲海に沈んでしまう。
勇士たちは猟兵達が『超距離ユーベルコード砲』によって砲撃するための時間を稼いでいる。
陽動して少しでも一発しか放てない砲撃の成功率をあげようとしているのだ。
「勇士のみならず、一般人にも手を出すというのなら、俺が止める。止めてみせる」
ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)は長大なる砲身を持つ『超距離ユーベルコード砲』に触れる。
この砲身にユーベルコードを込めれば、そのユーベルコードは『超距離ユーベルコード』となって『天帝騎士団』の浮島砲台を砲撃することができる。
ヴェルンドは考える。
いくつか候補はあるのだ。だが、今まさに要衝たる空気をめぐる戦いは佳境に差し掛かっている。
敵を確実に打倒し、かつ多くの浮島砲台を撃墜する。
そのためのユーベルコードをヴェルンドは選択する。
「一点突破でまとめて薙ぎ払うのが一番だろう!」
ヴェルンドはの瞳がユーベルコードに輝く。
「何をしようといまさら! 陽動だって気がついたんなら、その砲身を壊すのが先決でしょうが!」
『堕ちた飛空艇技師』たちが次々と浮島砲台を手繰り、質量攻撃を仕掛ける。
こちらの火器では浮島砲台を撃ち落とせない。
迫る浮島砲台は火力ともに上であり、さらに巨大な浮島そのものとしての質量もある。体当たりをされては止めようがないのだ。
だが、ヴェルンドは見据える。
シンプルでいいのだ。
この『超距離ユーベルコード砲』はイカれたメカニックたちが作り上げたもの。
ならば、シンプルであるがゆえに火力を底上げしたユーベルコードを選択すべきだったのだ。
「ぶち抜け」
輝くは、灼砲(シャクホウ)。
ヴェルンドの掌から流れ込むユーベルコードを受けて『超距離ユーベルコード砲』が獄炎のレーザーを放つ。
極大威力を放つ一撃は、ヴェルンドの血を大量に消費させる。
だが、これでいいのだ。
デメリットはあれど、ヴェルンドにとってはこの飛空艇艦隊を守るためのメリットの方が大きい。
屍人帝国は確かに強大だ。
だからこそ、猟兵たちの手が回らぬところもある。そこを飛空艇艦隊が補ってくれるのならば、己の血がどれだけ消費されようとも、貧血で目の前が暗くなろうとも構わない。
「こんな、火器……!? 砲身が溶けてなお、放つ出力ってなによ!?」
「駄目っ、まにあわ――」
放たれる獄炎のレーザーは『超距離ユーベルコード砲』によって浮島砲台そのものを飲み込むほどにう膨れ上がる。
「頭がグラグラする……だが、デメリットならアイツラが補ってくれる……!」
ヴェルンドは、ふらつきながら飛空艇の甲板上に腰を下ろす。
放つ一撃は浮島砲台を次々と焼滅し、撃ち落としていく。
その中を陽動の勇士たちの飛空艇が飛ぶ。
敵の機先を制す、さらに撹乱する彼らの勇気ある行動が、後に続く猟兵たちの戦いをより強く支えるだろう。
それで十分だと言うようにヴェルンドは、勇士たちに手を掲げてみせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
ふむ?超距離ユーベルコード砲な?
ならば、わしのUCがよいか。まあわし、機械と相性最悪(何もしてないのに壊れたをやる)じゃが、元々一撃で壊れるのならば問題はなかろう。
で。陰海月と霹靂…姿が見えんと思ったら、前線で陽動しておった。
しかも、陰海月が霹靂に乗っておる…。
※
陰海月「ぷきゅ!」
霹靂「クエ!」
ヒポグリフライダー・ミズクラゲ。当てるために、勇士達と一緒に陽動している。
おじーちゃんは強いんだ!結界はって、見えない壁も作っちゃえ!
「ふむ? 『超距離ユーベルコード砲』とな?」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その一柱である『侵す者』は『飛空艇艦隊』のイカれたメカニックたちが作り上げた『遺骸兵器』、『ブラスター』を参考にした砲を見やり、首をかしげる。
「おうともさ! これにユーベルコードをこめれば、忽ちの内にユーベルコードが超距離ユーベルコードとなって放たれるって寸法よ!」
メカニックたちの説明を受けて入るが、どうにも『侵す者』は要領を得ていないようであった。
なぜなら彼は機械と相性最悪なのだ。
何もしていないのに壊れたをやる。
大体の処、何もしていないは、何かしたと同義である。そこら辺のところが自覚できていないからこそ機械音痴というのだろう。
だがしかし、今回は問題ない。
例え、どれだけ触ったら勝手に壊れた、をやらかす『侵す者』であったとしても安心安全。
「ユーベルコードを籠められるのは一度きりだからな。あんたたちのユーベルコードは強力だが、砲身が保たねーんだよ」
「ふむ、ならば問題はなかろう。さて、わたしのユーベルコードを持ってかのオブリビオン共を駆逐してやろう」
『侵す者』は見やる。
眼前に迫っているのは『天帝騎士団』のオブリビオン『堕ちた飛空艇技師』たちの操る浮島砲台。
遠距離砲撃を行いながら、天使核の浮力に回す出力を推進力に変えて飛び込んでくる。
防御も固く、また同時に質量兵器としても優秀であったのだ。
「このまま飛空艇艦隊と言えど、雲海に全て叩き落としてあげるわ!」
「艦隊っていうだけあって、動きが鈍い! ほらほら! 速く逃げないとさぁ!」
放たれる装甲剥がしの弾丸。
飛空艇艦隊にこれ以上損害が出ては、この要衝空域の維持ができない。そうなれば、空を征く道は閉ざされ『アルカディア争奪戦』における屍人帝国との戦いにも影響がでてしまう。
「急がねばならぬな……と、『陰海月』と『霹靂』は何処だ?」
こんな時、真っ先に出てくるであろう二匹がいない。
どうしたことだと『侵す者』が思っていると、陽動に出た勇士たちと共に前線で奮闘しているのが見える。
「ぷきゅ!」
「クエ!」
二匹はちょっとおかしな事になっていた。その姿はヒポグリフに乗るミズクラゲであった。
正直、ブルーアルカディアにおける魔獣を見慣れていたとしても、ちょっとぎょっとする姿であった。
「ハハハッ! やるじゃあねぇか! お前さんたちの姿で敵はこっちに釘付けだ!」
勇士たちと共に『陰海月』と『霹靂』は共に空を舞う。
浮島砲台のオブリビオン『堕ちた飛空艇技師』たいは、目立つ彼らを追い回しているのだ。
彼らは信じている。
『侵す者』たちの力を。
彼らは強い。だからこそ、自分たちがこうして敵を引きつけていれば、必ず活路を開いてくれると信じているのだ。
「ならば、その期待に応えねばな」
『侵す者』の瞳がユーベルコードに輝く。
それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)輝く力。籠められたユーベルコードは砲身より放たれる。
全てを貫くかのように大空に刻まれる光条の一閃。
浮島砲台であろうとなんであろうと貫く出力の一撃は、『堕ちた飛空艇技師』たちごと熱線でもって焼き滅ぼす。
「この距離で……回避……!」
「間に合わない……何、これ! 見えない壁が邪魔して――」
そう、浮島砲台は『陰海月』たちに夢中で気がついていなかった。
退路を経つ結界。
それを彼ら張り巡らせ、ユーベルコードの射線上におびき寄せ、そしてかわせぬように囲ったのだ。
逃れ得ぬ必殺の一撃。
火線の一閃が空を染め上げ、無数の浮島砲台を破壊し、『侵す者』の使った『超距離ユーベルコード砲』は砲身をただれさせ、崩れ落ちる。
これで無事、何もしていないのに壊れたを実践してみせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「これだけの代物。相当な資材と労力を次ぎ込んだんだろう。
それが一発でお役御免とは、効率的じゃない。」
「それでも今はこれがベスト。
常道を歩むだけで勝てる相手じゃない。
逆に考えれば一発撃つだけで良いなら
いつもより楽かな。」
(その大変な役を押し付けさせて貰うんだ。
やれるだけの事はやるさ。)
砲撃の準備をしつつ戦場の様子を観察して魔力を高める。
最も効率的に砲撃を行えるタイミングを計る。
狙うのは浮島砲台が直線上に並ぶ瞬間。
撃つのは射線上にあるものなら何であれ両断する
ディメンションカリバー。
(陽動の真の役割を分っている彼らなら
注意を自分達に惹きつけるだけじゃなく
砲撃に最適な状態を作り出してくれる筈。)
「くっ……敵があれだけの砲撃兵器を用意していただなんて……!」
オブリビオン『堕ちた飛空艇技師』たちは、猟兵たちの放つ『超距離ユーベルコード砲』の一撃の威力にたじろぐ。
浮島を改造した砲台を操る彼女たちにとって、それは計算違いであった。
浮島一つがどれだけの質量を持っているのかなど言うまでもない。
防御においては質量自体が要となるし、攻撃にあっては特攻させればそれだけで多くの飛空艇を巻き込んで雲海に沈めることができる。
だというのに、その浮島を一撃で沈めるのが『超距離ユーベルコード砲』であった。
「イカれたメカニックたち……! でも発射のインターバルが長い……ということは!」
「砲身自体が一発しか保たないか、冷却期間が必要だってことよね! なら!」
彼女たちは、その時間にこそ勝機を見出す。
次々と浮島砲台は天使核を浮力ではなく推力に変え、突撃する。
浮島の質量を使った特攻。
これならが敵は防ぎようがないと知るからだ。
「これだけの代物。相当な資材と労力を注ぎ込んだだろう。それが一発でお役御免とは効率的じゃない」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は『飛空艇艦隊』の飛空艇の甲板上に備えられた『超距離ユーベルコード砲』の砲身に触れる。
一門作るだけでも相当なものであったはずだ。
けれど、メカニックたちは『アルカディア争奪戦』を勝利するために徹夜で、突貫で作り上げたのだ。
フォルクの言葉も尤もだ。
だが、フォルク自身が己の言葉を否定する。
「それでも今はこれがベスト」
「そのとおり。あんたらが役立ててくれればな。外すようなことがあっては、本当の意味で無駄になっちまう」
メカニックが言う。
そのとおりだ。だからこそ、フォルクは己の魔力を高める。
己に出来ることはなにか。
そう、洗浄の様子を観察し、最も効率的に砲撃を行えるタイミングを計ることだ。敵を効率よく殲滅すること。
そのことに注力することがフォルクに課せられた使命。
「じいさんたちの言うことを真に受けるなよ、猟兵。当たるも八卦当たらぬも八卦っていうじゃあないか。気楽に行こうぜ。俺達が揺動する!」
勇士たちがそう言って飛空艇で飛び立つ。
敵は質量攻撃による特攻で此方を沈めようとしてきている。
外すことは己たちの死に繋がる。
彼らは大変な役をやっているのだ。
フォルクはそれを押し付けたと思っただろう。けれど、彼らの誰一人としてそう思う者はいなかった。
誰もが自分たちに出来ることを手探りでやるだけなのだ。
「常道を歩むだけで勝てる相手じゃない。逆に考えれば一発撃つだけで良いなら、いつもより楽かな」
「肩の力は抜けたようだな。なら、頼んだぞ!」
飛空艇を駆る勇士たちが『堕ちた飛空艇技師』たちの駆る浮島砲台を追い込む。いや、時に追い立てられながら、フォルクの座す『超距離ユーベルコード砲』へと誘導してくるのだ。
フォルクが狙っていたのは敵が一直線に並ぶ瞬間。
その刹那に満たぬ瞬間を彼は狙っていた。
「広大なる大空の力を内包せし魔なる欠片。この手に宿りてその力を示し。聖も魔も、絹も鋼も等しく断ち切れ」
紡ぐ詠唱。
注がれるユーベルコードの輝き。
それは距離を無視し、空間すら断つ斬撃。『超距離ユーベルコード砲』に搭載された魔石が力を増していく。
「来た――」
フォルクはわかっていた。
これを作り上げたメカニックたちが、おのれのユーベルコードに即座に反応できるように調整してくれたことも。
勇士たちが陽動の真の役割を理解していたがゆえに、自分たちに惹きつけるだけでなう、砲撃に最も最適な状況を作り出してくれることも。
全てが一人の力ではない。
だからこそ、フォルクのフードの奥の瞳はユーベルコードに輝く。
それは過去の化身を切り裂き、未来を閉ざす雲海を切り裂く輝き。
『超距離ユーベルコード砲』より放たれたディメンションカリバー。
その斬撃の如き一撃が、一瞬の内に一列に交錯する瞬間を逃さず放たれる。無数の浮島砲台が一刀のもとに両断され、雲海に落ちていく。
「やれるだけのことはやったさ」
そういったフォルクの背中をメカニックがたたき、勇士達が帰還する。誰一人欠けること無く。
フォルクにとって最大の戦果は、今まさに此処に結実するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ノウェム
……あれ、変なコンプレックス拗らせてる奴、です?
墜ちるなら一人で墜ちてればいいです
超遠距離のUC一発で決めろ、っていうのなら、きっとこれ以外ないです
…その自慢の火力ごと、ぶち抜いてやる、です
エンジェリックドライブ全開、魔力溜めしてから、リミッター解除、限界突破……です!
……さあ、行くです。邪魔するなら飛空艇だろうが島だろうが、今度は浮かんでこれないぐらい、底が抜けるまで叩き落してやるです
【G.A.F.C.】……最大出力、です!
(発射後)
……おなかすいた、です……
(天使核に加えヴィクトリア自身も動力源としているエンジェリックドライブに食事分のエネルギーも取られて空腹で動けない)
※アドリブ歓迎です
『遺骸兵器』――レリックウェポンと呼ばれる存在自体が強大な兵器。
それは簡単に真似ることなどできようはずもない。
天使戦争の折に作られたものもあれば、強大な魔獣が変じたものもある。
『ブラスター』と呼ばれた『遺骸兵器』は星と星との間すら穿つ星間砲撃兵器の一部。どうあがいてもブルーアルカディアのメカニックたちでは再現しようがないはずなのだ。
だが、『堕ちた飛空艇技師』たちは見ただろう。
猟兵たちのユーベルコードを受けて『超距離ユーベルコード』を発現させる『飛空艇艦隊』の砲撃を。
「なんでよ! なんであんなものが作り出されている訳!?」
「ありえない……! だって、あんなのもうメカニックの範疇じゃあない!」
「私達にできないで、あいつらにできるっていうの!?」
彼女たちは浮島砲台を持って飛ぶ。
質量兵器としての特攻を敢行するつもりなのだ。このブルーアルカディアにおいて雲海に沈むということはすなわち滅びである。
ならば、彼女たちオブリビオンは今を生きる者たちを道連れにする勝利を得ることができるのだ。
だから、迫る。
鬼気迫る表情で、狂気すら感じさせ浮島砲台でもって『飛空艇艦隊』に迫る。
「……あれ、変なコンプレックス拗らせてる奴、です?」
ヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は、彼女たちの姿を見やり呟く。
だが、どうだっていいことだと切り替える。
彼女がしなければならないのは、超遠距離のユーベルコードを一発で決めろという無理難題であった。
『超距離ユーベルコード砲』は一発限りの限定兵器だ。
『ブラスター』と呼ばれた『遺骸兵器』を再現するためには、こうするしかなかったのだ。
「ああ、そういうもんなんだろうな。自分にできないことがあるのは認められても、それを他人が為すことが認められないんだろう」
メカニックたちがヴィクトリアに説明する。
『超距離ユーベルコード砲』は砲身一つに付き、一発限り。
外したのならば、二射目はない。
ユーベルコードによって、その性質は変わる。力を増幅して放つイメージだとメカニック達が告げる。
「なら、きっとこれ以外ないです」
ヴィクトリアは迫る『堕ちた飛空艇技師』たちによる特攻を見やる。
時間はない。
「エンジェリックドライブ全開……堕ちるなら一人で堕ちてればいいです」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
外装形態となった『エル・セプス』の炉が限界を超えていく。
リミッターは既に解除されている。
出力される魔力を溜め込んでいく。限界を超えてなお、みなぎる力が翼のようにヴィクトリアの周囲にとどまり続けている。
その全てが『超距離ユーベルコード砲』へと吸い込まれていく。
「砲身が保たないぞ! 魔力を溜め込みすぎては……!」
メカニックの悲鳴が聞こえる。
けれど、ヴィクトリアは止まらない。
きっとあの浮島砲台を吹き飛ばすには、まだ足りない。だからこそ、ヴィクトリアは暴れ狂う家のような魔力の奔流を制御する。
「……さあ、行くです。邪魔するなら飛空艇だろうが島だろうが、今度は浮かんで来れないぐらい、底が抜けるまでたたきとしてやるです」
ヴィクトリアの瞳が輝く。
引き金は彼女の心のなかにある。
「G.A.F.C.(ギガ・エンジェリック・フォース・キャノン)――最大出力、です!」
放たれるはあらゆる防護と全障害を貫く魔力光線。
その一撃は空を染め上げるほどであった。
「――光!? これが!」
『堕ちた飛空艇技師』たちが最後に見た光景であった。
輝く光の翼をまとうかのようにヴィクトリアが『超距離ユーベルコード砲』から放つユーベルコードの一射。
それは空と雲海を分かつかのような一閃となって戦場を切り裂き、直線状に合った浮島砲台を吹き飛ばす。
一つ残らず、だ。
「……おなかすいた、です……」
天使核に加え、自身も原動力としてエンジェリックドライブにエネルギーを取られ、ヴィクトリアは空腹のあまり身動きが取れなかった。
崩れるように砲身が焼けただれて落ちた『超距離ユーベルコード砲』のそばにへたりこむヴィクトリアに差し出されたのは硬すぎるパンに塩っ辛いハムが挟まれたサンドイッチ。
お世辞にもごちそうとは言えない。
「これでもよけりゃ」
メカニックたちが差し出すサンドイッチは、ヴィクトリアにとってどんな味がしただろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
あの赤い機体は、何してるのかしらね、まったく。
まあいいわ。攻略の手がかりがあるなら使いましょう。
うーん手札が多いのも悩みものね。火界咒や玉秘宝経を撃ち込んでもいいけど、一瞬だけで終わるのはもったいない。
ここはやっぱり、十絶陣でいきましょう。
「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「結界術」「呪詛」「仙術」「道術」で紅水陣。
これを弾頭の着弾と同時に広域展開するようにセットして、浮島ごと溶かし尽くす。
勇士の人、これどこへ撃てばいい? 出来るだけ広範囲を巻き込みたい。
――あそこが狙い目? 事項了解。
照準作業をしてもらって、それじゃいくわよ。紅水陣、疾っ!
さて、どれだけの威力になってるかしらね?
猟兵達が転移してくる前に『飛空艇艦隊』に表れたという赤い鎧の巨人。
その名を聞いた村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は訝しむことしかできなかった。
彼女の予想が正しければ、あれは『セラフィムV』と呼ばれる鎧の巨人だ。
その場に居合わせた『アジール王国』の勇士達もそう証言している。色が違うけど、あれは『セラフィムV』であると。
だが、その『セラフィムV』と共に居た少年『エイル』の姿はなく、呼びかけに応えることもなかった。
「あの赤い機体は、何してるのかしらね、まったく」
赤い鎧の巨人は『遺骸兵器』、『ブラスター』を『飛空艇艦隊』に齎して何処かに飛び去ったらしい。
その行動はこちらに利することである。
敵の浮島砲台に対抗するための術をもたらしてくれたというのならば、そこには目を瞑ろうと彼女は思った。
「うーん」
だが、彼女の悩みはここからだった。
ユーベルコードを注ぎ込むことによって増幅して放つ『超距離ユーベルコード砲』。
だが、不完全な模倣は、連発することができない。
一発放てば、一つの砲門がもたないのだ。
他の猟兵たちのユーベルコードがそうであったゆに、撃ち放てば砲身が焼けただれておちる。修理しようもないほどに。
だからこそ、一発勝負。
ゆかりは自身のユーベルコードの手札が多いからこそナ編むのだ。
「一瞬だけで終わるのは勿体ない。一発で使えなくなるっていうのなら、尚更よね」
ゆかりは悩むことをやめる。
ならば、やることは唯一つ。
勇士たちが陽動のために飛空艇で飛び立つのを呼び止める。
「なんだ、どうした?」
「ねえ、陽動に出るのよね? なら、この一撃でできるだけ広範囲を巻き込みたいの」
ゆかりは『超距離ユーベルコード砲』の力が希少であり、強大であるからこそ告げる。効果的に、効率的に。
敵に打撃を与えなければならない。
下手に撃ち漏らしてしまえば、『飛空艇艦隊』の脅威となるのは当然であった。
「広範囲か……陽動の俺達も巻き込むのを覚悟ならいくらでもやりようがあるが、俺達だってただ死にたいわけじゃあない。生きたいからな」
「だから戦っている。なら、どうするか考えましょ。私のユーベルコードの範囲は恐らく、強化されて戦場を包み込む」
一つの戦場を包み込むほどの広範囲であれば、『飛空艇艦隊』にも効果が及ぶ可能性がある。
かといって、あからさまに勇士達が『飛空艇艦隊』から敵を引き離そうとすれば看破される。
「じゃあ、効果の範囲を逆に絞るのはどうだ。あんたのユーベルコードの力が、制御できないっていうのならやめておくが」
「誰に物を言ってるのよ。座標、こっちに送って。やってみせるわ」
ゆかりの瞳が輝く。
「そうこなくちゃな!」
勇士達が飛空艇で飛ぶ。
彼らの動きをゆかりは見る。彼らは目視でもって合図を送ると言っている。音ではラグが出来るし、かと言って通信を使えば傍受されて目的を悟られるかもしれない。
ならばこそ、彼らは飛空艇乗りらしいアクロバティックな合図を送るのだ。
空を舞う飛空艇。
小型だからこそ小回りが効くのだ。
その軌跡が描くサイン。それをゆかりが捉えた瞬間、『超距離ユーベルコード砲』が彼女のユーベルコードを解き放つ。
「紅水陣(コウスイジン)――、疾っ!」
放つ一撃が点にように放たれる。
それは一滴の雫のようであった。けれど、強化されたユーベルコードは濃縮された弾丸のように放たれた。
「不発? やはり敵の砲撃兵器は欠陥!」
「ここで押し込む!」
『堕ちた飛空艇技師』たちは、その一滴の紅を見やり浮島砲台を進めさせる。だが、それが誤りである。
彼女たちは判断を誤った。
飛空艇乗りの勇士たちのサインを見落とし、そしてゆかりの放ったユーベルコードを不発だと侮った。
凝縮された赤い血のような点。
それが開放される。
包み込むのは赤い靄。
全てを腐食させる雨は、浮島事態を溶かして落とす。
「――!? これ、は!?」
「強酸性の雨よ。人の勇気を侮りすぎたわね!」
広がっていく。
凝縮されたユーベルコードの雨は、味方を巻き込まぬ範囲に凝縮されたが故に濃度は通常以上に高められ、あらゆるものを一瞬で溶け崩れさせる。
赤い靄が晴れた時、その戦場には唯一つの浮島砲台も残らぬのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
……やべーです。
え? 冗……談?
目と圧がとても……アッハイ。
そ、そうですね。
こちらにいらっしゃることは解りましたし、
今はここを突破することが最優先で……。
なにか文頭、欲望まみれのノイズが混じってませんでしたか?
……やっぱり、やべー(極)です。
って、ステラさん!? 何するんですかー!?
いくら勇者でも、|これ《人間大砲》はさすがに……。
しかもユベコ砲抱えて、飛ぶんですか!?
飛んでいって相手の真ん中で【Tanz des Hagel】ですか!?
わ、わかりました!
やってみますから、絶対回収してくださいね!
わたしは『飛べない、ただの勇者』ですからね!
ああ、ステラさんにもぶっぱ癖が……。
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
セラフィムキタァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
ってえええーーーっ?!またぁぁぁぁぁぁぁ?!
もうっ
|犬みたいに《メイドとして》追いかけちゃうぞ❤️
まあ|冗談《本音》はこれくらいにしまして
赤いセラフィム|V《ヴィー》様
乗っているのはフュンフ様、ですね
セラフィムのお二人がこちらに来ていないというのなら
まだ『教える時』では無いのでしょう
であれば言う事はひとつ
「エイル様は私のモノです!」
「間違えました。エイル様にもお考えがあるのでしょう。戦い続ければ。いずれ邂逅するはずです」
今は目の目の敵を倒す事に注力しましょう
誰がやべーメイドですか
ユーベルコード砲の弾丸にして発射しますよ?
大空、『飛空艇艦隊』に響き渡るは女性の声であった。
メカニックたちは一斉に手を止めてしまうし、陽動に出るはずだった勇士たちの何人かは思わず足元の段差に足を取られそうになっていた。
それほどまでにステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の叫びは魂から出た叫びであった。
「『セラフィム』キタァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
「――」
勇士の一人がこの『飛空艇艦隊』に現れたという赤い鎧の巨人をステラに語ったのが運の尽きであった。運?
だがしかし、再び姿を消したという言葉を聞いてステラは更に叫ぶのだ。
「ってえええ―――っ?! またぁぁぁぁぁぁぁ?!」
がっくりと膝をつくステラ。
正直言って、勇気ある勇士でもちょっと怖いと思った。
情緒が不安定過ぎる。
なんていうか、こう、いらんこと言わんうちに退散しとこって勇士は戦略的撤退を選ぶほどであった。正解である。
「もうっ|犬みたいに《メイドとして》追いかけちゃうぞ」
「……やべーです」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思わずつぶやいていた。
そうつぶやかざるを得ないほどのステラの行動にドン引きしていたのかもしれない。
「まあ|冗談《本音》はこれくらいにしまして」
「え? 冗……談?」
「そうですがなにか」
「目と圧がとても……アッハイ」
ルクスはステラの圧に押された。返事はハイとイエスしかない感じであった。
「そ、そうですね。こちらにいらっしゃることは判りましたし、今は此処を突破することが最優先で」
ルクスは『飛空艇艦隊』に迫る『堕ちた飛空艇技師』たちの操る浮島砲台を見やる。
今まで猟兵達が『超距離ユーベルコード砲』によって退けてきた『天帝騎士団』のオブリビオンたち。
だが、圧倒的な数で浮島を質量兵器にして特攻してくるのだ。
離れていても遠距離砲撃でもってこちらに損害を与えてくる。
ならばこそ、ステラはやらねばならぬことを理解していた。
「赤い『セラフィム|V《ヴィー》』様。乗っているのは『フュンフ』様、ですね」
そうでなければ辻褄が合わないとステラは思っていた。
香りが違うのだ。
彼女が知っている己の主人の香りとは違う。だが、同時に、本当にそうなのだろうかという疑念も湧き上がってくる。
自分たちの前に現れ『教える』ことがないのならば時ではないということかもしれない。
けれど、何故『何も言わない』のか。
自分たちだけではなく、『アジール王国』の勇士たちにすら言葉をかわすことがなかったという。姿を表したこともない。
ただ形の異なる赤い『セラフィムV』だけが現れたという事実。
「ともあれ、私が言うべきことは一つ」
すぅ、と息を吸い込むステラ。
「『エイル』様は私のモノです!」
「……」
ルクスは黙っていた。
我慢である。
ここで何かを言ったら全部がパーである。
「間違えました。『エイル』様にもお考えがあるのでしょう。戦い続ければ。いずれ邂逅するはずです。だから今は目の前の敵を倒すことに注力しましょう」
「欲望まみれのノイズが混じってませんでしたか?」
……やっぱり、やべーの極みに達しているじゃないかとルクスは震える。
だが、ルクスが震えるのはここからである。
彼女の体が何故か『超距離ユーベルコード砲』の砲身に詰められているのだ。いつのまに。
「って、ステラさん!? 何するんですか!? 何してるんですか? いくら勇者でも|これ《人間大砲》は流石に……」
「誰がやべーメイドですか」
聞こえてるじゃん!
ルクスは慌てた。だが、ステラは止まらない。にこり、と微笑んでいる。
「ユーベルコード砲の弾丸にして発射します。なに、大丈夫です。敵の真ん中で勇者のユーベルコードを発現させれば、大抵のことはなんとかなります」
「なんともなりませんけど!?」
「時間がありません」
「……――ッ! わ、わかりました! やってみますから、絶対回収してくださいね! わたしは『飛べない、ただの勇者』ですからね!」
ね! と念押しするルクス。
不安しかない。
しかし、ステラは本気である。人間砲弾のように打ち出されたルクスを追いかける押しかけメイドの本気(マワリトノニンシキノチガイ)はものすごかった。
周囲がドン引きするほどの速さ。
いや、別の意味でドン引きしていたけれど、そんなことはどうでもいいのである。
ルクスは祈った。
だって、人間砲弾になるなんて経験ないのだ。いや大抵の人はない。ほぼない。だが、しかしルクスとて勇者である。
やってやれないことはないのだ。
「ああ、ステラさんにもぶっぱ癖が……」
ルクスは敵の中心でユーベルコードに輝く。
響く歌唱と共に放たれるは氷の礫。放物線を描いて落ちていくルクスを雲海に触れるか触れないかのギリギリでステラの変身した飛空艇が掬うようにキャッチし、空へと再び舞い上がっていく。
間一髪であったが、ルクスの危機はこれからである。
「だれがぶっぱ癖がついたと?」
「ひっ――」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒影・兵庫
(「黒影、緊張しているの?」と頭の中の教導虫が尋ねてくる)
外しちゃダメ、浮島砲台を壊せなきゃダメ、やり直し無し
こんなの誰でも緊張もしますよ…
(「失敗したら仲間に被害が及ぶから臆病になってるわね…しょうがない!黒影!目を閉じる!」)
は、はい!せんせー!
(「絶対できる絶対できる絶対できる…」と教導虫が囁きながら『催眠術』をかける)
うぉぉ!できる気がしてきました!
超距離ユーベルコード砲にUC【蜂蜜色の奔流親】をセット!
さらに{蜂蜜色の靄}を集めて形成した『オーラ防御』をUCに纏わせる!
無敵で強固で完璧なせんせーの一撃をお見舞いしてやるぜ!ファイヤー!
『超距離ユーベルコード砲』は『遺骸兵器』、『ブラスター』を参考に『飛空艇艦隊』のイカれたメカニックたちが作り上げた一発限りの砲撃武装である。
突貫で作り上げたため、強度は足らず連射には程遠い。
そして数を用意することができなかった。
この『飛空艇艦隊』に集まった猟兵達の数ぴったりしか残っていない。
対する敵のオブリビオン『堕ちた飛空艇技師』たちは、その有り余る版図の浮島を砲台に変え、遠距離砲撃と共に浮島事態を質量兵器にして突撃してくるのだ。
あちらはいくらでもやり直しが効く。
そして、その特攻攻撃は必殺の一撃を持っている。
これを防ぐためには『超距離ユーベルコード砲』しかないのだ。
『黒影、緊張しているの?』
黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の頭の中で声が響く。
教導虫が訪ねてきているのだ。それも当然だろう。兵庫の緊張は頭の中にいる彼女にも痛いほど伝わってきている。
「外しちゃダメ、浮島放題を壊せなきゃダメ、やり直しなし。こんなの誰でも緊張しますよ……」
兵庫にとって失敗事態は恐れることではない。
人にとって成功は学ぶところの少ないものである。だが、逆に失敗から学ぶことは多い。
学び、そして致命的な失敗を躱し続けることこそが人の人生である。
だからこそ、兵庫は死を意識してしまう。
自分のではない。
この『飛空艇艦隊』の勇士やメカニックたちの死を意識している。
自分が失敗したのなら、彼らに累が及ぶ。それがどうにも彼の心を縛っているのだ。
失敗したら、と臆病になるのも頷けると教導虫は理解していた。だが、理解して受け入れるだけではダメなのだ。
『黒影! 目を閉じる!!』
「は、はい! せんせー!」
『絶対できる絶対できる絶対できる……」
仕方がないと、教導虫がしたことは催眠術であった。いや、励ましの言葉であった。
その言葉は兵庫の弱った心に生まれた隙間を埋めていく。
どれだけ目の前に困難な道が立ちふさがるのだとしても、兵庫は一人ではない。いつかは独り立ちしないと行けない時が来るのかも知れない。
けれど、その時まで護り育てるのが己の使命であるというのならば、全霊を持ってこれを助ける。
言葉は言葉でしかない。
けれど、それを感じることができたのならば、力となる。
「うぉぉ! できる気がしてきました!」
兵庫は心に湧き上がる力と共に、無敵の力が湧き上がる。
『超距離ユーベルコード砲』に触れる手から注ぎ込まれていく力。
千変変化するオーラの抜け殻。
それは兵庫の想像から創造されるもの。疑念を抱くことのない強烈な想いが今、砲身に籠められる。
謂わばそれは弾丸。
壊れることのない無敵の弾丸。
そして、狙いをつける自身もまた兵庫は信じるのだ。
「当てる……! 俺がせんせーを信じる限り! せんせーは無敵です!」
蜂蜜色の奔流親(イエローハニー・オーラペアレント)は、砲身から解き放たれるようにして大空を飛ぶ。
蜂蜜色の光条が迸り、空を一直線に分かつ。
その一撃は浮島砲台をいくつも貫いていく。止まらない。止められるわけがない。
「当たった!」
『よくやったわ、黒影! ほら、絶対できるって言ったでしょう!』
兵庫は見ただろう。
自分の力だけでもない。自分を支えてくれる人々の力が目の前の光景を生み出した。
落ち行く浮島砲台。
悪意を持って滅びを齎す者たちの道を阻む。
その一射が今希望となって、蜂蜜色を空に駆けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…なるほど。これに力を込めるとユーベルコードを遠くまで飛ばせるのね?
…一発しか保たないなら、その一撃に全霊を賭して敵を撃ち抜けば良い
…幸い、此処には日陰が沢山あるもの。全力を出すのに不足は無いわ
物陰で吸血鬼化を行い増幅した自身の生命力を吸収して血の魔力を溜めたUCを砲に込め、
自身の呪詛を具現化した黒炎鳥を操り空中に展開した血の魔法陣へと切り込み、
魔法陣のオーラが防御ごと暴走させる黒炎鳥に限界を突破した強化を施し、
敵陣へと黒炎鳥を空中機動の早業で突撃させ敵船を沈める闇属性攻撃を行う
…この距離ならば手傷を負うリスクも少ない
…さあ、あれが敵よ。私に歯向かう愚を教育してあげなさい
「……なるほど。これに力を込めるとユーベルコードを遠くまで飛ばせるのね?」
「ああ、だけど一発勝負なんだ。砲身があんたたちのユーベルコードに耐えられない」
メカニックと『超距離ユーベルコード砲』の調整をしていたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は静かに頷く。
迫る『天帝騎士団』の『堕ちた飛空艇技師』たちの操る浮島砲台は砲撃も行うことができる特攻兵器だ。
その浮島の浮力を推進力に変えて突撃してくるのならば『飛空艇艦隊』も損害を免れない。
浮島という質量。
そして、強固な防御。
撃ち落とそうとしても撃ち落とせるものではない。だが、それは通常の砲撃兵器であればの話だ。
今まさにリーヴァルディの目の前にある長大な砲身。『超距離ユーベルコード砲』ならば、これらを迎撃することができる。
「……一発しか保たないなら、その一撃に全霊を賭して敵を撃ち抜けば良い」
「あんまり無理してくれるなよ。あんたたちが俺達にとって一番の戦力なんだから」
「……ええ、幸い、ここには日陰がたくさんあるもの」
全力を出すのには不足はない。
そして、リーヴァルディはダンピールである。
己のユーベルコードは、その陽光届かぬ場所においてこそ力を発露する。
極限まで自身の生命力を吸収して血を魔力へと溜め込んでいく。
それは一射によって戦局を変えるためには必要なことであったのだ。ふらつく足取りを隠し、リーヴァルディは『超距離ユーベルコード砲』に触れる。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「……限定解放」
小さくつぶやいた瞬間『超距離ユーベルコード砲』の砲口が煌めく。
それはリーヴァルディ自身と同じ強さの、自身に刻まれた呪いを具現化する力。
放たれる砲身が跳ね上がり、長大な砲身が焼けただれ落ちていく。それほどまでの力。リーヴァルディが籠めたユーベルコードは、そこまでの力なのだ。
「呪いを纏て翔べ、血の獄鳥……!」
さらにリーヴァルディは溜め込んだ己の血の魔力を魔法陣へと変え、展開する。
血の獄鳥が魔法陣を切り込み、さらに強化されていく。
その速度は圧倒的だった。
「鳥……!? 鳥の魔獣!? 違う、これ……!」
『堕ちた飛空艇技師』たちは見ただろう。
魔法陣を取り込む度に暴走するかのように膨れ上がっていく魔獣の如き巨大な獄鳥の姿を。
羽撃く度に闇色の衝撃波が浮島砲台を傾けさせる。
さらに空を舞う姿は雄々しく。
「……限定解放・血の獄鳥(リミテッド・ブラッドフェネクス)。この距離ならば手傷を追うリスクも少ない」
リーヴァルディは示す。
己たちの敵を。
血の獄鳥が嘶く。
羽ばたきは衝撃波に。満ちる力は暴走寸前まで膨れ上がっていく。
「……さあ、あれが敵よ。私に歯向かう愚を教育してあげなさい」
満ちる力はあらゆる敵を吹き飛ばす。
そして、制御の限界を超えた魔力は暴走するように獄鳥を巨大化させ、弾ける。
それは自爆と言ってもいいほどの反応であった。
『超距離ユーベルコード砲』によって強化された力の奔流が周囲にあった浮島砲台を吹き飛ばす。
どれだけ大質量を持つ浮島であっても、爆発する魔力の衝撃波に耐えられるものではない。
次々と自爆の爆発に寄る余波によって浮島砲台が雲海に沈んでいく。
「……これが私に歯向かう者の末路」
リーヴァルディは吸血鬼化の影響か薄く笑みながら、沈みゆく浮島砲台の最期を見やるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
空の大海戦だね
あのブラスターを元にした砲
存分に使わせて貰うよ
という事で鉑帝竜の背中
二門のレールガンの間に積もう
現地改修版鉑帝竜ってとこかな
飛空艇から飛び立ったら
側面から浮島砲台に向け飛翔
籠めるUCは邪神の涙
有効射程に入ったら横っ面からぶっぱなそう
着弾すれば周辺を極低温で覆うよ
潤滑油が凍り駆動部が霜で詰まれば
有効な砲撃は困難だし
何より搭乗してる技師が凍り付くからね
その後は敵の飛空艇に突撃
運動エネルギーが重要な実体弾に
神気の防御は相性良いから
装甲は簡単に抜かせないよ
敵飛空艇に接近したら
低温で搭乗員ごと凍らせて落とすよ
ちょっとさむいのですー
まあ、人体が凍りつく環境で
寒いで済む僕らがおかしいんだけどね
屍人帝国艦隊は、『飛空艇艦隊』を撃滅せんと迫っていた。
凄まじい数の浮島砲台が『堕ちた飛空艇技師』たちによって作り上げられ、砲撃と特効を繰り返す。
だが、イカれたメカニックたちによって完成した『超距離ユーベルコード砲』がこれを阻み続けている。
「敵に『遺骸兵器』があるだなんて聞いてないわよ!」
「違う、あれはレプリカでしょ。なら、数に限りがあるはず。それを超えれば!」
彼女たちの言葉は真実であった。
確かに『遺骸兵器』、『ブラスター』はある。けれど、それを完全に再現することはできなかったのだ。
だが、それで十分だと佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は空の大海戦に降り立つ。
「あの『ブラスター』を元にした砲。存分に使わせて貰うよ」
晶はメカニックたちに声をかける。
『超距離ユーベルコード砲』は数が限られている。
それに連射はできず、一度使ってしまえば砲身がユーベルコードに耐えられない。
「借りるね」
「どこに……ってそこか!」
飛空艇の甲板上に降り立った鉑帝竜の背中に『超距離ユーベルコード砲』を積み込み、晶はメカニックたちに親指を立てて空に飛び立つ。
「現地改修版鉑帝竜ってとこかな」
飛翔する鉑帝竜が迫る屍人帝国艦隊を側面から強襲する。当然『堕ちた飛空艇技師』たちも気がついている。
敵は寡兵。
ならばこそ、奇をてらった奇襲でくることも。
「今更! こっちは遠距離砲撃と特攻兵器! その程度で止められるものですか!」
絶え間なく降り注ぐ遠距離砲撃。
これをかいくぐり接敵しなければならない。だが、接敵できたとしても、敵は浮島砲台だ。大質量の浮島そのものが防御の装甲となっているのだ。
「でもさ、邪神の涙(ゼロ・ケルビン)の前には意味ないんだよ」
『超距離ユーベルコード砲』が放つ一撃。
それは極低温の物質を凝縮した砲弾。
放つ一撃は浮島砲台を一瞬で凍りつかせ、さらに周囲の大気に存在する水分を伝うようにして他の浮島を氷で繋ぐのだ。
「凍りついて……!」
「その砲撃する砲台も、霜が詰まれば動かせないでしょ。それ以前に乗ってるキミらは凍りつく」
晶は制御を失って、周囲の浮島砲台を巻き込みながら雲海に墜落していく姿を見やる。
「後は……飛空艇!」
「浮島砲台さえ何とかしてくれたら、俺達の出番ってやつだな!」
鉑帝竜と共に『飛空艇艦隊』の勇士たちが飛ぶ。
陽動だけではない、自分たちも手柄を立てるのだと鉑帝竜と戦場を駆け抜ける。
「危なくなったら鉑帝竜の後ろに隠れたっていいんだよ。何せ、こっちの装甲は簡単に抜けないからね」
「危なくなったらな! そうはならねーよ!」
空を自在に飛ぶ勇士達。
「だが、寒いな!」
「まあ、人体が凍りつく環境だからね。無理はしないで」
晶は苦笑いする。
こんな環境下であっても寒いくらいで済む自分たちのほうがおかしいと感じる。けれど、それでも戦いは優位に運ぶ。
敵の数はまだ完全に減らない。
敵は撤退などしない。己の屍人帝国が『アルカディアの玉座』に至れば望みが全てか叶う。
そのためならば、自分たちの生命など惜しくはないと浮島砲台が次々と飛ぶのだ。
「なら、止めなとね!」
晶は鉑帝竜の背面に備えられた『超距離ユーベルコード砲』を捨て、レールガンの弾丸を敵飛空艇に打ち込む。
希望は紡がれ続けている。
なら、それまで凍りつかせることはない。どれだけ『天帝騎士団』に降り積もる絶望が彼の心を凍りつかせたのだとしても。
今を生きる希望までは決して途切れさせるわけにはと、晶は己の心に灯る篝火をもって、勇士たちと大空を駆けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「ほほう、長距離砲とな!
それは肉を焼くのにちょうど良さそうではないか!」
『フィア様!?
あれは屍人帝国の艦隊に対する切り札でございまして――』
ふむ、やはり焼くなら獲れたての魔獣の肉が良いな!
さあ、果たして鉄板の焼き加減に迫れるか――
む?
なんだ、この砲身。
まったく熱くなってないではないか。
これでは肉を焼くことができんな。
「というわけで【竜滅陣】!」
『ああっ、フィア様、そんな無造作に魔術を撃たれて!?』
我の魔術を砲身から放ち、砲身を熱々に熱しようではないか!
「よし、まるで砲身が溶けそうだな。これだけ熱すれば、肉もこんがり焼けるであろう」(じゅるり
『フィア様、ですからそれは肉を焼くためのものではっ!』
いつもどおり、という言葉が頭に思い浮かんだ。
それは使い魔である『フギン』の頭の中であった。
どんな苦境に合っても、どんな逆境にあっても、どんな場違いな状況にあっても、フィア・シュヴァルツ(宿無しの漆黒の魔女・f31665)は何処まで行ってもフィアであったのだ。
変わらぬことは強いこと。
「ほほう、長距離砲とな! それは肉を焼くのにちょうど良さそうではないか!」
『フィア様!? あれは屍人帝国の艦隊に対する切り札でございまして――』
『フギン』は言っても無駄かなと思いつつ、取り合えず説明していた。
けどまあ、無駄と分かっていても説明しないと行けないのが使い魔の辛い処である。
案の定である。
「ふむ、やはり焼くなら獲れたての魔獣の肉が良いな! さあ、果たして鉄板の焼き加減に迫れるか――」
フィアはもう魔獣の肉を焼くことを決定していた。
『飛空艇艦隊』のメカニックたちは、この人何を言ってるんだろうって思っていたし、なんかやる気満々だからいいかとも思っていた。
つまるところ、触らぬ魔女に祟りなしというやつである。
「む? なんだ、この砲身。まったく熱くなっていないではないか」
フィアは『超距離ユーベルコード砲』の砲身をぺちぺち叩く。
それはそうである。
これはユーベルコードを籠めて放つ砲身だ。まだユーベルコードを籠めていない状態であれば、砲身は熱を保たない。
というか、一発しか撃てないのだ。
猟兵達のユーベルコードに砲身が負けてしまう。この問題を『飛空艇艦隊』のイカれたメカニックたちは解消できぬままに戦いに挑まねばならなかった。
「これでは肉を焼くことはできんな」
まったくもう、とばかりにフィアは憤慨していた。
料理の前にフライパンを温めることなど常識であろうがと言わんばかりであった。いや、ここ今戦場なんだけどな、とメカニックたちは思った。
けど、黙っていた。
なんか口を挟んじゃいけない雰囲気があったし、それ以上はいけないことだと思っていたからだ。
「というわけで竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)!」
あ、雑ぅ!
『ああっ、フィア様、そんな無造作に魔術を撃たれて!?』
『フギン』が止める間もなかった。
ぶっぱされる魔力を籠められた『超距離ユーベルコード砲』の一射。
威力は段違いである。
何せ、ドラゴンすら消し飛ばす大規模破壊魔法である。
その砲身は熱せられるというより、もはや焼けただれている。フィアとしては一刻もはやく砲身を熱々にしようって思ってやったことであったが、砲身はそれどころではない。
もう焼け落ちそうである。
「よし、これだけ熱すれば、肉もこんがり焼けるであろう」
じゅるり、と口元を拭うフィア。
ぶっぱしたユーベルコードの行方など気にもしていない。
ちなみにフィアがいきなりぶっぱなした大規模破壊魔法は、特に狙いを付けていなかったにも関わらず、まるではじめからそこに着弾することを狙っていたかのように『堕ちた飛空艇技師』たちが集結していた浮島砲台の群れを消し飛ばした。
その結果を見ることもなくフィアはもうお肉の事で頭がいっぱいであった。
恐るべき食欲の権化。
『フィア様、ですからそれは肉を焼くためのものではっ!』
『フギン』は思った。
それより問題にしなければならないことがある。この『飛空艇艦隊』に貯蔵されているであろう食料。
とりわけお肉。
それが果たしてフィアの食欲に応えられるか。
というか、応えられても応えられなくても、別の意味でフィアは『飛空艇艦隊』の肉という肉を焼けただれた砲身で焼いて堪能するだろう。
『フギン』は未来が見えるようであった――!
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
ふぅん、一発しか保たないスーパー兵器、かぁ。
…逆に言えば、「ユーベルコード一発分なら保つ」のよねぇ?
となると…最大限効率的に使うなら、これかしらぁ?
描くルーンはウル・ユル・ティール――即ち、「穿ち」「悪縁を断つ」「勝利の剣」。●鏖殺・殲舞起動して○乱れ撃ちの弾幕叩き込むわぁ。
あたしのユーベルコードは一発で戦況をひっくり返せるような大火力だの広範囲だのは少ないけれど…「手数」なら、そう引けは取らないわよぉ?
そりゃあたし○スナイパーとしては二流以下だけど…浮島なんて大きな的、外したら射手の名折れだわぁ。片っ端からブチ墜としてきましょ。
『超距離ユーベルコード砲』は『遺骸兵器』を参考にして作られた砲撃兵器である。
ユーベルコードを籠めることによって強化された一撃を超距離へと届かせ、その増幅された力を発露させる凄まじき兵器だ。
かつては星と星の間すら穿つと言われた『ブラスター』。
そのレプリカ、劣化版とでも言うべき砲身は長大そのものであった。
「ふぅん、一発しか保たないスーパー兵器、かぁ」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、その細まった瞳を長大な砲身に向ける。
確かに強力だ。
けれど、一発しか砲身が保たず、また数に限りがある。
この場に集まった猟兵たちの数と同じ数しか用意できなかったのだ。
突貫で作り上げたのだから当然と言えば当然であろう。
ネガティブな情報しかないと思われたかもしれない。けれど、ティオレンシアは微笑んでいた。
ネガティブとは真逆の感情を抱いていたのだ。
「……逆に言えば、『ユーベルコード一発分なら保つ』のよねぇ?」
その特性を最大限に効率的に使うのならば、と彼女が選んだユーベルコードが『超距離ユーベルコード砲』に籠められていく。
描くルーンは『ウル』、『ユル』、『ティール』。
即ち、『穿ち』『悪縁を断つ』『勝利の剣』。
「あたしが一番得意なこと、教えてあげる」
煌めくユーベルコード。
鏖殺・殲舞(アサルト・ファランドール)はティオレンシアの描く魔術文字を持って『超距離ユーベルコード砲』を最大園に補助する。
確かに彼女のユーベルコードは一発で戦況をひっくり返すような大火力はない。
広範囲でもない。
けれど、彼女にはハッタリ、イカサマ、あらゆる小技を修めた手練手管がある。
「あの砲門さえ潰せば!」
迫る『堕ちた飛空艇技師』たちが駆る浮島砲台が『飛空艇艦隊』に殺到する。
彼女たちはこれまで多くの浮島砲台を失ってきた。
猟兵たちの放つ『超距離ユーベルコード砲』の一撃は大質量を誇る浮島すら吹き飛ばす。それだけの砲門がそう何発も連射できないことを理解していたからこそ、彼女たちは確実に潰すために特攻するのだ。
「確かに強固な質量。浮島って天然の防壁だものね。それを質量兵器にして突っ込むなんて、たしかに悪夢……だけど」
ティオレンシアは笑う。
確かに『超距離ユーベルコード砲』は連射できない。
だが、一つのユーベルコードの効果を一発分ならば担保に出来る強度を持っている。即ち。
「あたしの得意技。即ち、雑魚散らし、よぉ?」
輝く魔術文字が付与された弾丸が『超距離ユーベルコード』から百を超える数でもって一瞬で放たれる。
それは連射などと呼ぶにはあまりにも早すぎた。
あまりにも一斉に放たれたため、それは謂わば散弾そのものとなって広範囲に放たれる。
ルーン文字によって強化された弾丸は、まさしく勝利の剣そのもの。
「そりゃあたし、スナイパーとしては二流以下だけど……」
ティオレンシアは笑う。
針の穴を通すような器用なことはできない。
けれど、これだけの弾丸がある。一度に放たれた百を超える遠距離砲撃。
そして――。
「……浮島なんて大きな的、外したら射手の名折れだわぁ」
そうでしょ? とティオレンシアが細められた瞳をユーベルコードに輝かせながら、その瞳で見据える先にあったのは散弾の如き砲弾でもって沈められる浮島砲台の姿。
「片っ端からぶち墜としてきましょ」
その宣言通り、ティオレンシアの眼前にある浮島砲台は姿を雲海に消すしかないのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……浪漫……一発しか撃てない急造の新兵器…これはもう浪漫の塊……
…良いよね…この一発を外したら後が無いぞ…みたいな奴…
…こんなこともあろうかとじゃないところだけが残念だけど…
…え、構想自体はあった…じゃあセーフだね…
…さて…陽動を引き受けてくれる勇士達のためにもさっさと砲台を落とさないとね…
…籠めるUCは【星を墜とす大地の手】…砲弾の炸裂地点から広範囲の浮島砲台達を地面…が無いから雲海へと叩き落すよ…
…ふむ…予想通り…ここまで強化されたUCなら浮島も落とせるか…一度海に帰って出直してきなさい…
…言ったとおりに確かに壊れたか…破損箇所と要員を点検してイカれたメカニック達と改良案を練るとしよう…
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は『飛空艇艦隊』の甲板上にある砲門を見やり、何度もうなずいていた。
あまりにも何度も頷くものだから、一体全体どうしたことだろうかと普段の彼女を知る者ならば思ったかも知れない。
「……浪漫……一発しか撃てない急造の新兵器……これはもう浪漫の塊……」
しきりに彼女はうなずいていた。
『遺骸兵器』『ブラスター』を参考にして『飛空艇艦隊』のイカれたメカニックたちが突貫で作り上げた砲身。
『超距離ユーベルコード砲』。
それは確かにユーベルコードを増幅させ放つ、強力な砲撃兵器。
だが、猟兵たちのユーベルコードに一発までしか砲身が保たないのだ。
「……良いよね……この一発を外したら後がないぞ……みたいな奴……」
「あんたらには負担かけちまうし、プレッシャーにもなるだろうけどさ」
メカニックはこんな状況でも浪漫に心躍らせているであろうメンカルに笑うしかなかった。
こんな状況だからかもしれないと思ったかもしれない。
「……こんなこともあろうかとじゃないところが残念だけど……」
「いやまあ、砲撃するってんなら、こういうことも考えてはいたさ。だけださ、ユーベルコードをっていうのは」
「……あ、構想事態はあったんだ……じゃあセーフだね……」
メンカルのセーフのラインがよくわかんないな、とメカニックは思ったが、調整は万全である。
いつでも行けるぜ、とメカニックの言葉にメンカルは頷き手を触れる。
ユーベルコードを籠めるだけでいい。
後は狙いと敵をどれだけ引きつけるかだ。
「俺達に陽動は任せておけよ。あんたはプレッシャーなんて感じなくたって良いんだからな!」
次々に勇士達が飛空艇で迫る屍人帝国の浮島砲台を引きつけるために飛び立っていく。
陽動は危険を伴う。
だからこそ、さっさと砲台を撃ち落とさなければならないとメンカルは理解している。
敵は浮島そのものを兵器に変えている。
ならば、ブルーアルカディアという世界の理を利用するのだ。
「……砲弾の炸裂地点から広範囲に巻き込む……これなら「」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
『超距離ユーベルコード砲』の砲身が煌めき、その籠められたユーベルコードを砲弾に変えて空を一直線に切り裂くように飛び立つ。
その砲弾は浮島砲台に当たることはなかった。
「はっ! 外したね! これでもうあの飛空艇からは砲撃がない! あそこから潰すよ!」
『堕ちた飛空艇技師』たちは、此方の弱点を理解している。
だからこそ、砲弾が自分たちの駆る浮島砲台に当たらなかった今こそが敵を沈めるチャンスだと殺到するのだ。
勇士たちは彼女たちから逃げるように散開していく。
散開……?
そう、逃げているのではない。あれは陽動の一つ。そして、巻き込まれぬための散開であったのだ。
「……星を墜とす大地の手(スターライト・フォール)は、空にあるものを天から地に引きずり下ろす擬似重力術式……」
予想通りだとメンカルは呟く。
確かに彼女のユーベルコードは擬似重力術式である。
だが、浮島のような大質量を引きずり下ろすには足りない。けれど、『超距離ユーベルコード砲』によって増幅された力は、浮島だろうがなんだろうが失墜させるのだ。
「浮力が……! 推力に回したのが仇になって……!」
「……そう、推力に全ふりした特攻兵器なんていうのは、引きずり降ろされれば……」
後は地面――否、雲海に沈むしかない。
どんなものであれ雲海に沈めば全ては滅ぶ。
オブリビオン出会っても例外ではないのだ。
「……一度海に帰って出直しなさい……」
メンカルの眼前で次々と擬似重力術式に因われた浮島放題が雲海に失墜していく。
砲身は焼けただれ、飛空艇の甲板に落ちる。
「……言ったとおりに確かに壊れたか……破損箇所と要因を点検して……」
メンカルの浪漫はここからだ。
突貫で作り上げたのならば、ここからがお楽しみだ。
何故保たないのか。何故壊れたのか。その要因を徹底的にメカニックたちと洗い、改良案を練り上げる。
この知が集合して問題を乗り越える瞬間にこそ、メンカルは浪漫の結実を見るのだ――。
大成功
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ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
―――意志持つ飛空艇、自称”世界一の運び屋”ミレニアムドラゴン号の感想
「えー大砲かなこれ?ほんとお?積むの?これを?重くない?ええー…」
えー大砲じゃんこれー
くんくん くんくん
でもー火薬臭くはないしー
派手そうだからいいかも!
●ドーーーーーンッ!!
さあ行ってドラゴン号くん!いい感じのポジションを取るんだよ!
ボクの【第六感】によるとっちらへんがいい感じの場所だよー!
ほら避けて避けてー!
アハハハハハハ!今のはギリギリだった!
よしきた!
同じ飛空艇が沈むのはしのびないというドラゴン号くんの想いを籠めて!
とスーパーロニキャノンから光り輝く『腕』が現れUC『神撃』でドーーーーンッ!!
―――これは意志持つ飛空艇、自称”世界一の運び屋”ミレニアムドラゴン号の感想である。
『えー大砲かなこれ? ほんとお? 積むの? これを? 重くない? ええー……』
その困惑した様子もさもありなんというやつである。
長大な砲身。
20mもある長大な砲身はそれだけで飛空艇にとっては過剰に積載してるようなものである。
とりわけ雲海に沈めば滅びるしかないブルーアルカディアにとって浮力を得ることは最も必要なことだ。
だからこそ重さへの制限というのには厳しいのである。
「えー大砲じゃんこれー」
そんな心配を他所にロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は『超距離ユーベルコード砲』を前に鼻を鳴らす。
くんくんと鼻をいくら鳴らした所で火薬臭くはない。
まあ、大砲と言えば火薬である。
でも派手そうだからいいかも、と適当な事を言うのはいつもどおり。『ミレニアムドラゴン号』は嫌な予感しかしなかった。
いや、いつものことすぎて、麻痺していたのかもしれない。
「さあ、行ってドラゴン号くん! いい感じのポジションを取るんだよ!」
「ふざけんなガキぃ!!!」
ロニが示すのは『堕ちた飛空艇技師』たちが操る浮島砲台の火線が集中する激戦空域であった。
そもそも遠距離砲撃を行ってくる浮島砲台の力は凄まじく、また浮力を推力に変えた浮島という大質量の兵器は防御にも特攻にも向く最悪の兵器であった。
「このまま『飛空艇艦隊』を撃滅すれば、猟兵の脚を止められる。足場を失えば雲海に沈んで滅ぶしかないんだからね!」
彼女たちは理解していたのだ。
此方の弱点を。
『飛空艇艦隊』との連携は『アルカディア争奪戦』においては必須。
雲海という足場なくば落ちて滅びるしかない状況において、飛空艇はなくてはならない足場なのだ。
これを失うということは猟兵たちにとってフットワークという名のイニシアチブを失うのに等しい。
「ほらほら、そっちらへんがいい感じの場所だよー! ほら避けて避けてー!」
「今掠めたんだが!?」
「アハハハハ! 今のはギリギリだった!」
ふざけんな! と『ミレニアムドラゴン号』の怒号が響き渡る。
本当にもうやってられんとばかりに彼は叫んでいたが、ロニはまるで意に介した様子はなかった。
「よしきた!」
ロニは漸く到達した己の第六感が告げるポイントにて甲板に設置された『超距離ユーベルコード砲』に手を触れる。
「同じ飛空艇が沈むのは忍びないというドラゴン号くんの思いを籠めて!」
「いや、それ以前に俺が沈むわ!!」
「そんなこんなで、ド――ンッ!!」
輝くユーベルコード。
砲身から放たれるのは、神撃(ゴッドブロー)たる拳の一撃。
まさに神々しさを感じさせる巨大な拳の如き光の塊が火線集中する空域に集まった浮島砲台をまとめて吹き飛ばす。
まるでビリヤードのブレイクショットのように浮島砲台が飛び散り、周囲にあった他の浮島砲台をも巻き込んで激突しては、その特攻兵器たる強さの証明を見せるように連鎖反応のように破壊をもたらしていく。
「ね、ほら、言った通りだよね! これがボクの第六感ってやつ! 神様って崇めたっていいよ!」
「うるせー!! 人使い荒いのをそもそもやめろ!!」
そんな『ミレニアムドラゴン号』の叫びと、浮島砲台が次々とぶつかって空で破壊されていく音を聞きながらロニはまた軽快に笑うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
この超距離ユーベルコード砲。
撃てるのは一発のみ。前線では勇士達が命がけで戦っている。
ならば、この一撃にありったけを込めて、撃ちださねばなりませんね。
人工魔眼の【視力】で浮島砲台群を視認する。
狙うのはあれらだ。あれをこの砲で壊す。その為に、
この【|闘争心《怨念》】を、敵への怒りを、憎悪を、破壊衝動を、全て、
須らく!!
【エネルギー充填】『超距離ユーベルコード砲』に|ユーベルコード《悪霊そのもの》を込めて、【継戦能力】砲口を敵に向ける。
味方を壊してはならない。壊すのはオブリビオンだ!!壊せ!!!壊せ!!!!壊れろ!!!!壊れてしまえ!!!!
『禍戦・劫焔納 甲』|発射《突貫》!!
【結界術】ユーベルコードを撃ち出し、|敵戦域に大炎熱世界を展開させる《熾火を大火へと転じさせる》!
浮島を【焼却】
【|念動力《悪霊の怨念》】が大炎熱世界を動かし、広げ、戦場を侵食し浮島を、そして敵のみを取り込み焼き焦がし、砲火に晒し上げ、壊す。
………。
(|悪霊そのもの《己の大部分》を撃ち出した為、抜け殻みたいにしばし沈黙)
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は理解している。
いつだって前線で戦う者たちは、命がけである。
勇士達が陽動のために飛空艇で空を駆け抜けている。膨大な火力を擁する屍人帝国の艦隊、その浮島砲台から放たれる遠距離砲撃は火線を空に引いている。
あまりにも圧倒的な火力。
そして、浮島を『堕ちた飛空艇技師』によって浮島砲台へと改造され、その大質量による特攻の脅威は、『飛空艇艦隊』に徐々に迫りつつあった。
「この『超距離ユーベルコード砲』。撃てるのは一発のみ」
小枝子は改めて実感する。
この一撃の重みを。己の役割の重さを。
失敗は許されない。
だからこそ、彼女はこの一撃に、この一射にありったけを籠める。
「それが前線で命がけで戦う勇士たちの皆さんに報いるたった一つのこと」
それを撃ち出さねばならぬ。
彼女の人工魔眼が捉えるのは、空に浮かぶ浮島砲台。
他の猟兵達が第二陣、第三陣と多くの浮遊砲台を撃ち落としてきたが、最後の四陣が今まさに迫りつつ合った。
彼女の人工魔眼はハッキリとその影を空に捉えていた。
狙うのはあれらだと認識する。
あれをこの砲で壊す。
そのためにこそ、己の|闘争心《怨念》は燃える。
敵への怒りを、憎悪を、破壊衝動を。
「全て、須らく!!」
燃える人工魔眼。
闘争心は、炎に変わる。炎は熱を生み出し、その熱は『超距離ユーベルコード砲』へと伝播していく。
満ちる破壊衝動は全てがオブリビオンに向けられるもの。
怒りは己の中にあるもの。
憎悪はそれらをくべることに寄って燃え盛るものである。
ならばこそ、己の|ユーベルコード《悪霊そのもの》たるを籠める。
力が吸い上げられていく感覚がする。
体が重い。肩に何かがずっしりとのしかかるような感覚だけがある。けれど、それでも小枝子は重たい頭を上げ、その人工魔眼燃える瞳で敵を見据える。
陽動に出た勇士たちを誰一人として失わせない。
味方を壊してはならない。壊すのはなにか。
そう!
「壊すのはオブリビオンだ!! 壊せ!!! 壊せ!!!! 壊れろ!!!!」
叫ぶ。
怨念そのものを籠めた『超距離ユーベルコード砲』の砲身が煌めく。
いや、燃えたぎるように周囲の空気すら歪ませ、空間すら歪曲するかのような輝きを解き放つ。
「禍戦・劫焔納 甲(デッドオーバー・マグナゲヘナ)――|発射《突貫》!!」
放つ一撃は砲火遅い来る大炎熱世界。
その世界は、悪霊そのもの。
小枝子の燃えたぎる人工魔眼の輝きと同義。
心に宿るは熾火。
小枝子の、悪霊の心にさえ、あの青い熾火は灯る。
ならばこそ、その熾火は大火へと変じる。彼女の憎しみが、敵に対する怒りが、世界の理そのものをテクスチャーとして塗り替える。
「|お前たち《オブリビオン》が生きることを許さない法則……それこそが、この世界。おまえたちは!!!」
――壊れてしまえ。
その言葉と共に展開された炎の世界が浮島砲台の一群をまるごと飲み込んでいく。
焼き焦がし、砲火に晒し上げ、壊す。
言葉にしてしまえば、それまでだ。
小枝子の見てきた地獄の再現。
自分を燃やし、自分を撃つ砲火。
その記憶が人工魔眼の熱を上げていく。焼けただれて落ちる『超距離ユーベルコード砲』の砲身。
それはまるで小枝子の全てを擲った証明のようでも合ったことだろう。
浮島砲台は尽くが燃え尽き、雲海に落ちていく。
『飛空艇艦隊』は、膨大な損害をこうむるはずだった。この空域を突破しなければならず、そして戦いはまだ続く。
敵の質量兵器、その特攻を許してしまえば猟兵たちは足場を失い、戦力を半減されざるを得なかっただろう。
小枝子が見たのは、炎に落ちる勇士たちの姿であった。
けれど、それは幻視に過ぎない。
そんな未来を小枝子は否定する。
己の中にある炎がそれを燃やし尽くす。
超克の先にある未来を彼女は人工魔眼で見据え、そして、それが|悪霊そのもの《己の大部分》を打ち出すユーベルコードによって抜け殻のようになった彼女の記憶から溶けて消えていく。
大空に炎の世界は溶けて消える。
空の青と炎の赤。
交わる色は変わることなく消えていく。
「……」
小枝子は言葉を発することはなかった。
オーバーロードによって、自分の全力以上の限界を超えた力を『超距離ユーベルコード砲』によって撃ち出したのだ。
当然ともいえる。
けれど、それでも小枝子は護ったのだ。
勇士を、そして、彼らの未来を。己がそれを燃える人工魔眼で見ることはないのかもしれない。
悪霊は空っぽの中にこそ残る何かを感じることができるだろうか。
感じることがなくとも、再びその器に敵に対する憎悪を満たす。
戦い続ける理由だけが、その今は抜け殻の中に宿っている――。
大成功
🔵🔵🔵