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アルカディア争奪戦⑭〜惨影のサダルメリク

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●その輝きは月蝕に墜ちて
 かつ、かつ、と杖を床に打ち付けて。
 静かに空を見上げる者がいた。性別など、大して重大なことではない。
 礼儀正しい獣は、厳かに、それから冷徹に自身のすべき事を思考する。
 何時か何処かで"雲と在るもの"と言われ、重宝された召喚獣は風を静かに浴びていた。
「……信託は下されました。私はこの地で|竜言語《ドラゴンロア》に従いましょう」
 |日蝕帝国《イクリプス》を信奉するものとして。
 冷徹な召喚獣は、知識を並べ立てて、目を光らせる。
 必要だと、願われたようなもの。
 そこに在れと、願われたようなもの。
「私は神官などではありませんが、しかし欲された現象こそ齎すべきと考えます」
 魔術師だろうと、騎士として空を翔ける極星の一つと輝こう。
 輝ける色を、たとえ選ぶことが出来ずとも。

●|王の幸運《サダルメリク》として
「なあ、アンタはどんなところでも戦える人?」
 ゴドフレド竜拝帝国。
 すなわち、|日蝕帝国《イクリプス》を信奉する二大屍人帝国「竜拝帝国」の片割れである。
 そこに存在するオブリビオンは、奉仕する帝国より特別な力を与えられたそうだ。
「えー、資料的にはそんなところに行ッて貰うから、宜しく」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は簡単に概要を読み上げる。
 簡素に、それから、重要なのは此処から、と資料を叩く。
「特別な力を与えられた個体は、超強化されている。そいつらは闇竜騎士として君臨しているそうなんだが……」
 騎士は騎士たる証明を持たない。
 一見しただけでは、騎士感がない存在もあるだろう。
「ただ、なかでも身体能力の強化が著しいんだそうだ、跳躍や回避に特化している『超絶ジャンプ能力』と言い換えてもいい」
 まるで飛翔するかのようなレベルで飛び跳ねて、高所からの急降下突撃を得意とする。
 杖による強襲と、殲滅。
 命令通りに遂行するために配置された嫌な敵とも言えるだろう。
「俺が予知した場所で任務遂行を行ッているのは気象操作魔術に長けた召喚獣らしくてな、野放しにしておくには危ないんだ」
 雲を操る術に長ける者。
 雲が起こせる現象は、召喚獣の力で導き出されてもおかしくないのだ。
「暴れ狂う雷や、吹雪が厄介ではない?操る雲の影に入ッた対象を縛る封印魔術も?」
 蓄えられた気象のカードさえ、攻略方法を導き出されたなら恐れるものではないかもしれない。騎士であり、魔術師。しかしそこにも活路は在るだろう。
「相手は翻弄する為に回避行動を優先するし飛翔タイミングを狙ッてくるんで、『敵のジャンプを封じるように動くか、空中戦』に持ち込み強襲を防ぐことが出来るなら厄介さは減るんじャねーかな、と」
 考えられる現象に対処するかしないかは、お前次第だとバス停は、君たちに後を託す。
「戦いを辞めさせるには、悔いなく戦う事が必要なこともあるのさ」


タテガミ
 こんにちはタテガミです。
 この依頼は戦争に属する一章のシナリオ。

 プレイングボーナスは下記になります。
「プレイングボーナス:空中戦で勝負する/敵のジャンプを封じる」。

●簡単な概要
 野外。純粋な戦闘。
 魔術師の召喚獣は、雷撃、吹雪、大雨と風と「雲海の雲」が行えそうな事を気象操作魔術で操り、猟兵たちへ襲わせる存在。
 超強化されているため、一度の跳躍ですごい高さを飛びます。
 落下速度を合わせた急降下攻撃を行い戦績を重ねていますが、この召喚獣の武器は「杖」であり「槍」ではありません。
 氷や雷の属性を穂先に纏わせたら、殆ど槍です。

●ボス戦
 勇士たちは傍に居ないようです。
 いるのは、『雲と在るもの』のみ。
 丁寧口調の、召喚獣。
 冷徹気味な判断を平気で行うため、「闇竜騎士」として戦う姿勢を崩さないでしょう。
 会話が行えないわけではありません。
 どちらかといえば、策士っぽい個性を持ちます。

●その他
 なるべく頂いたプレイングは採用できれば、と思いますが、タイミング次第。描写の期待に応えられない場合は内容に関係なく採用を見送らせて頂く場合がありますのでご注意下さい。
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第1章 ボス戦 『雲と在るもの』

POW   :    母なる雲海と
【自身の魔力で支配下に置いた雲海の雲】と合体し、攻撃力を増加する【電撃魔術】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【封印魔術】が使用可能になる。
SPD   :    湧き出づる気象
自身の【気象操作魔術により操作されたあらゆる気象】をカード化する。【カードを破る】だけで誰でも行動回数を消費せず使えるが、量産すると威力が激減する。
WIZ   :    天候使い
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠クーナ・セラフィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!

滑走靴を履いて、空中戦で勝負デース!
魔術師スタイルの召喚獣でありながら白兵戦もイケるとは、楽しいバトルができそうデース!

電撃を回避し、ファルシオンで杖を受け流し、雲海の雲をチェインハンマーで吹き飛ばし!
急降下攻撃をさせないよう、接近して斬りかかりマース!
HAHAHA! こうもちかづかれれば、気象操作は難しいのでは?
このまま押し通りマース!

という風に鎬を削る戦いの最中、封印魔術を放ってきたところを狙ってカウンターUC!
「カモン、ビッグ・バルタン!」「BARU-!」
召喚先は、ワタシたちの頭上!
雲と在るものに対して急降下攻撃を叩き込むであります!



●もっと!ねえ、もっと!

 ぎょろり、と獣の視線は来訪者たる敵の存在を察知した。
 ぴんと耳を立て、それからぼわ、と尻尾を逆立てる。
『上から、……なんと非常識な』
「HAHAHA!呼ばれずともワタシは死なず、デース!」
 遠くでもよく聞こえる笑い声を空に放ちながら滑空するバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の足に空気を裂く滑走靴。
 落ちるでも、飛翔でもない。
 彼女は、もっと高いところから滑り降りて来たのだ、空を。
「――だってアナタ、白兵戦もお手の物なのでショウ?」
『成程。奇襲のようで、堂々と宣戦布告にやってきたのですね……舐められたものです』
 杖を構え、足に力を込めて大地を蹴る召喚獣は、飛び上がった速度を得てバルタンを早々に狙い出した。
「魔術師スタイルの召喚獣でありながら、白兵戦もイケるとは、楽しいバトルができそうデース!」
 ニィ、と頬を上げて笑うバルタンに、召喚獣も目を細めて応える。
『バトルジャンキーですか?……いいでしょう、では早々に後悔からどうぞ』
 杖を軽く震えば、自身の魔力で支配下に置いた雲海の一部が、鎌首をもたげるように動き出す。
『私は母なる雲海と在るもの、……いわば空の領域は私の手の届く場所です』
 雷撃を放つ雲と合体し、杖の穂先に携えるは、短く詠唱する"雷"の鋭さを。
『穂先だけが、雷とは思わないことですよ!』
 ばりばりと、雷は爆ぜる。
 バルタン目掛けて差し向けられた"雷の槍"は差し向けられれば、稲光とともに拡散する。ただの鋭さだけに在らず、焼き焦がす雷槌としても機能する――これが召喚獣の力でも在る、と。
「避けるのが、得意とも聞きマシタ!でも、ワタシも得意デース!」
 拡散する雷をバルタンはするりと避けて、無骨な刀でするりと杖の軌道を弾く。
 ファルシオン風サムライソードであえて切り捨てず、受け流した。
『チッ……』
「頑丈さは自慢デスからネー!」
 同時に放たれた、雲の断片が、じわじわとバルタンの周囲に迫りだす。
 速攻では避けられると召喚獣は悟ったようだ。
『もっと上を取るべきでしたか、……いいえ、陸に落とせば状況は未だ私のほうが有利でしょう』
「どうですかネー、急降下がお得意と聞きマシタが……そう簡単に再ジャンプさせるとでも?」
 すた、と同時に陸に着地するなり戦闘慣れのあるバルタンが機敏に接近して斬りかかる。そう、今度は斬りかかったのだ。召喚獣は杖で受け止める。
 雷属性で強化された雷が、折る、斬られるを妨害している――ビリビリと、弱い電気圧がバルタンに走り抜けていく。
「器用デスねえ、それからガッツがアリマース。でも、こうも近づかれては、気象操作に意識を向けるのはやや難しいのでは?」
 ――いくら魔術師でも、下準備以外を軌道出来ないデスヨネ?
「このまま押し切りマース!」
『そうは、いきません!!』
 ――挑発的な態度にも、そう簡単に乗らないところが好印象!
 ――この方も、なかなかバトルジャンキーなのでは?
 鎬を削る戦いの最中、召喚獣がニィと笑い、勝ち誇るような顔をしたのをバルタンは見逃さない。
 背後から忍び寄り、影の内に捉えようとする海雲の流れに気がついて、それから反撃の一撃を返してやる。
 やられたら、すぐさまやり返すのが戦いというもの!
『カモン、ビッグ・バルタン!』『BARU-!』
 叫べ、呼べ、機動兵器ビッグ・バルタン(ディサイシブ・ガーディアン)。
 全長三メートルくらいの三頭身バルタンが、――なんと背後ではなく上空に喚び出される。
『……!?あなた、そんな様子なんて全然!?』
「策士が簡単に策に溺れるなんてだめデスヨー、HAHAHA!」
 動きをトレースするビッグ・バルタンは雲と在るものの代わりに急降下攻撃の拳を堂々と叩き込む。
 雷で防御?急いで逃げれば大丈夫?
「――そんな簡単に、逃げられるわけがないでショウ!」
 ドゴォオオオ、と激しい轟音。
 召喚獣の雲海は、吹き飛ぶように霧散する――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

稷沈・リプス
普段は自称:人間な男だが、日蝕帝国関連ならば関係ない『蝕神』

さーて、いくっすか。
日蝕帝国に関わり続けた俺っすけど、嫌いなんすよ。
同一視されたくねぇっすね!

というわけで、空中戦いくっすね!
馬。神馬っすよ!神馬なら空も飛ぶっす。そして…そのまま突撃開始っすよ!
俺だけじゃないっすからね?600はいる神馬もいるっすからね?
集団戦術で分散して一ヶ所に固まらず、それでも勢いは衰えずっす。
ちなみに、俺の属性である蝕も帯びてるっすからね…隠れているやついるっすからね?

(ちょっと神モード)
雷撃も封印も。天空に座する者に届くわけがなかろうが。


ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
跳躍を防ぐのがポイントね。
それならまずは気づかれないように[目立たない]ようにしながら[迷彩]で隠れる。
他の猟兵の動きに敵が気を取られたら、ユーベルコード【クォンタム・ハンド】で足をがっしり捕まえる。[念動力]も足止めに追加しちゃおうかしら。
「動きは封じたわよ」

後は弓で射撃。
足止めされた状態なら回避は難しいと思うけど[スナイパー]+[誘導弾]で着実に当てていくわね。



●|隠匿《みえない》ものが牙を向く

 ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は召喚獣の視界から攻めない。気づかれない秘訣は初めから姿を表さない事。
 先の猟兵の大胆さとは真逆だ。
 迷彩の色を身体に纏い、息を殺す。隠れ、駆けて、絶好のポジションを探る――。

 ――さーて、いくっすか。
 稷沈・リプス(明を食らう者・f27495)は遊びに来た、と言わんばかりのラフさで現れた。いまちょっと散歩のついでに来ました、くらいのラフさだ。
 ――日蝕帝国に関わり続けた俺っすからね。
 ――嫌いなんすよ、そーいうの。
 ――ほんっと、同一視されたくねぇっすね!
 ため息混ざりの人間は、召喚獣の視線が、その瞳孔が細められるを見て、獣の敏感さにため息の一つも出ようものだ。
 ――なにか、感づかれたっすかね。
『人間でも、人間じゃなくても。訪れた他所から来たものは、皆等しく敵と見なします。当然、あなたも』
「どーぞどーぞ、俺はお前さんの敵っすよ、多分」
『読めない男ですね、……いえ、私には関係ないことでしょう』
 杖を携えた召喚獣は、速攻というように大地を蹴って上空の雲海へ突っ込むだろう。
 その跳躍は、単純なジャンプとの比較が難しい。翼を持つものが飛ぶほどの距離をあれは飛んだ。
 雲の中に身を隠した、訳では無い。なにしろ、合体して、雷属性を纏い、今度は破滅の急降下をリプスへと至らせようとしてくるだろうから。
「まあまあ、せっかちなのもどーかと思うっすけどね」
 ――というわけで、空中戦をはじめるっすよ。
 指を一つならし、同時に展開を開始するものは、外つ国よりの騎馬戦術(アースティルティト)。
「気軽に呼び出しちゃあいるっすけど、戦女神の借りものっすよ、これは。いい馬っすよね。これ神馬っすよ!」
 陸に喚び出された神馬が鼻を鳴らしてリプスに頭をぶつけてくる。
 早く乗れ、と催促されているのがわかるため――ひょい、と乗り、それから引き連れる同時召喚された神馬達と共に、空を翔ける。飛ぶように、走るように空を飛ぶ馬たちの数は――総数にして、600は居るかもしれない。
「俺だけじゃないっすからね、これら全部で突撃っすけど、広範囲攻撃で全滅させられるっすかねぇ?」
 空を埋め尽くす騎馬はすべてが神馬。
 これには召喚獣も、大きな目を丸くしてしまう。
『数の暴力ですね、それは……』
「お得意の魔術で討伐出来るならどうぞ、っす。ただ、取りこぼしたらお前さんの負けって事になるっすけどね」
 集団戦術で分散して、突撃攻撃において翻弄する。
 雷撃魔法と、雷の"槍"一つでは対処できまい。
 足止めの雲海経由の封印魔法もまた、この数相手では留めきれまい。
『一箇所に纏まっていれば、まだ……あっ!?』
 硬直したように足が動かない。
 このときに気がついた召喚獣は、陸に佇む一人の猟兵と目があった。
「それ……不可視にして、不可触の手よ」
 見えない量子結合の手をヴィオレッタはクォンタム・ハンドと呼ぶ。
 彼女の術中にハマったのだ。その攻撃は遠距離に優れ、操る事に長けるユーベルコード。"手"は召喚獣の足をがっしりと掴んみ彼女が操作することで、離さない。
「つまり、何より先にあなたが動けなくなった、ってこと」
『……陽動作戦!?』
「そうともいうわね」
 敵を一人だけだと思っていたのなら、その時点で召喚獣は空気を読み違えたのだ。
 敗北フラグを乱立させた。
 勝機の欠片を取りこぼし続ける見落としを、見つけられないままに。
「捕まえる事を優先させて貰ったけど、後押しに私の念動力も重ねるわ?」
 これなら簡単に逃げる事も、飛び退く事も――跳躍することだって出来ないでしょう?
『くっ……!』
「敵が一箇所にどどまり続けるわけないってお前さんは理解してると思ったっすけどねぇ……、自分が一箇所に留まることになるなんて、今混乱中っすか?そおら、隙在り!」
 衰えない勢いで、召喚獣の背後からリプスの騎馬たちが次々に突進攻撃を繰り出していく。翼を持たない獣は、足を囚われた獣は流石に回避を選べず弄ばれる。
「私の両手もがら空き。つまり、どういうことになるか、わかるわよね」
 遥か下方、陸よりヴィオレッタが素早く構え番える矢を支えるのは、複数の材木からなるロングボウ。呪が刻み込まれた弓から放たれる正確な射撃は、獣の身体に着実なダメージを降り注がせる。
 スナイパーの鋭い視線に、臆したなら、召喚獣とて単なる獣と変わらない。
 逃げない獣は狩猟対象に取って代わる。誘導弾としての機能を与えた矢は決して獣を逃がすことはないのだ。
『逃げられない足を見捨てるか、戦いを諦めるか……いいえ、戦いは諦めるものではありません』
 嬲られようが、反撃の糸口を探すのを辞めない意思は強い。
 冷徹に身を置けるものは、自身のことも道具として捉える事が出来る事自体も利点である。突撃と大量の矢を浴びながら、召喚獣は一つ、気が付いた。
 尻尾を逆立てて、気がつくにはおそすぎたと理解したが、なんだ。これは。
 どうして、なぜ?なんでなんでと、困惑が頭の中を駆け巡る。
『しかし、いえ、……!この、力は……』
「あー、そこ?気づいたっすか、流石"闇竜騎士"サマ、ってとこっすかね……」
 その攻撃には、リプスの属性"蝕"の力を帯びている。
 空と在るものが力を得るに至ったどこかの誰かに、近くてと多い、似たような気配だと、その頭は気が付いたかも知れない。

「雷撃も、封印も。甘いと理解をするといい――天空に座する者に届くわけのない戯れでしかなかろうが」

 |リプス《神》の言葉を聞いたのは、おそらく召喚獣のみだった。
 恐れを感じたのか、せめてとヴィオレッタに反撃の雷撃を放たんとするが――彼女もまた攻撃をやめるつもりがなかった。召喚獣の攻撃は弓の雨に妨害されて、かき消されて埋もれるばかりであった。
 逃げの戦術、強襲の戦法を取れない魔術師の策は穴が目立ち始めていく――。
 逃げ|果《おお》せても、大ダメージを貰ったからには、負け意識せざる負えなくなり……敗北の文字さえ脳内に過っているはずだ。
猟兵は強敵であるのだと、どうあがいても知識に、記憶に記されていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
んー、残念だけど戦うしか、ないんだね。ならわたしも思いっきり、いくよ。

空を飛べないこともないし、頑張って空中戦をしてみよう、かな。片手で傘を差して宙に浮いて、もう一方の手で杖を持って、魔法で思いっきり風を起こして、追いかけるよ。
属性と雲の自然現象を自由に操れるのは、すごいね。普通に撃ち合ったら負けちゃう、かも。だからわたしは【魔矢】、無属性で攻撃、だよ。重さのない魔法の矢だから吹き飛ばされにくいと思うし、無属性なら相殺、されにくい。そして、わたしを隠すように矢を並べて放てば向こうの攻撃を防ぐことにもなる、はず。これがわたしの、策。ん、無属性こそ属性魔法の基本にして奥義……なんてね。



●後から輝くべき二番星

 何度も速攻に失敗する姿。
 陸に叩き落される姿や、力なく一度陸に降りてきた姿がある。
 立ち上がる意思がまだある。傷ついても、戦おうとする召喚獣の姿が。
 ぎょろり、と新たな存在に敵意を向ける様など、本当に獣のような機敏さであった。
『あなたも、私の行動をヨシとしないのですね?』
「んー、残念だけど戦うしか、無いんだね……」
 和解の道や、戦闘放棄の道を選ぶことはない相手は戦意を捨てそうにない。
 ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は伏せ目がちに視線をそらしそれから、そっか、と呟いた。
「ううん、わかってるよ。ならわたしも思いっきり、いくよ」
 ――空を飛べないこともないし?
 速攻で上空、空域を支配しようと飛び上がった召喚獣を見て、ミアは丈夫な魔法の白い傘をばっ、と開く。
 とん、と軽く大地を蹴れば、ふわり、と風がミアを運んでくれる。そう――空へ。
 傘を片手に宙を浮いて、もう一方の手でスートロッドを握り、自身の魔法を重ねがけ。
 ――ブルーアルカディアの、この場所の風を信じ過ぎるのはあぶないものね。
 思い切り風を起こして、傘を自在に理想の付近まで飛ばしていく。
『私より上をとれば、強襲攻撃も、回避も出来ないだろうという考えですね。成程、それは正しいでしょう』
 ですが、と雲と在るものもまた杖を振るう。
 天候使いが喚び起こすのは、雲海の雲を元に集める冷気――吹雪の属性と。
 荒れ狂う突風を束ねた竜巻だ。寒く、冷たい風が大きく吹き込んでくる。
「ああ、やっぱり。此処の風はあなたの味方ね」
『ご理解が頂けるのならば、貴方との勝負は風が勝負を分けることでしょう』
 びゅおお、と強く吹き付ける吹雪に凍えそうになるミアだが、ふわ、ふわと傘に風を与えて逃れるようにして。
 それから、素直な言葉を、召喚獣へ。
「属性と雲の自然現象を自由に操れるのは、すごいね。普通に撃ち合えば、強大さにわたし、負けちゃうよきっと」
 ミアの周囲にぽ、ぽ、と魔力を集約。
 その数はかなり多く、細かく一気に膨れ上がり、装填され実体化する。
 召喚獣は、耳をピンと立てて相手の最大攻撃を悟り身構える。
「だから、わたしは魔矢を使うよ。属性は選ばない、――欠点と呼ぶべき相対性を持たない無属性攻撃だよ」
 重さのない魔矢(マッシブ・アロー)は鋭利な魔法矢が、敵の繰る風を破り吹雪を突き抜け飛んでいく。
「其は無にして全……唯々、貫け」
 吹き飛ばされても、他の魔矢が突き抜けていく為、召喚獣は対処に負われる。
 吹雪の竜巻で、狙ったのはミアだ。力の向きを、制御を変えて自身の防衛に努めようとするには時間が足りない!
『制御の孔を、付きましたか……!人間にしては、やりますね…………!』
「無属性なら、相殺は難しいよね。大技で一気にわたしを倒そうとするから、そうなっちゃったんだよ」
 自身をユーベルコードによって隠すように矢を放てば、召喚獣の攻撃は届かない。
 霧散させて、回避一辺倒で離脱しなければ、――いやもう遅い。
「まだ戦うっていうなら、憶えておいて。これがわたしの策。ん、無属性こそ属性魔法の基本にして奥義……なんてね」
『成程、優雅にして最大を叩き出す視野の広い攻撃方法ですね……』
 見事な策です、と悔しげに声を放った召喚獣は称賛代わりに自身の|ユーベルコード《魔術》を解き、無属性の魔法の雨に身をさらして陸よりこぼれ落ち、空から雲海の中へと落ちていくだろう。
『策士が策に溺れる……いいえ、溺れる場所は海の中だけで、十分ですよ』

 魔術師は、敗北を認めて雲海に溶ける。
 ある意味で一番幸せなことではないだろうか。
 賢き召喚獣"雲と在るもの"。
 その身はこの空で、雲海へと消えたことで真実その名を雲海に刻み存在証明へと至ることが出来たのだから。
 闇竜騎士は、もういない。
 その空を制覇する冷徹の騎士たる獣は、もういないのだ。
 穏やかな、無害な雲海がふよふよと平和の空を静かに流れていく様が誰の目にも映ったことだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月11日


挿絵イラスト