アルカディア争奪戦⑭〜ゴドフレドの雷霆
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崩落した柱や壁面、床などが無数に浮かぶ”浮遊遺跡群”。ゴドフレド竜拝帝国の一部であり、竜信仰の神殿でもある。
それは永き年月が風化を許し、その外観こそは吹きさらしの遺跡でしかない。しかし、竜信仰において、特にこの神殿においては外観の見た目など些事でしかない。信仰心があるか否かのみが重視される。
そして、浮遊した有象無象の中心に立つは、一人の”竜騎士”。
雷を纏い、黒の鎧に深淵の竜気を滾らせながら、鎮座する石像に祈りを捧げている。石像は竜の形を模しており、それのみは一切の風化を許していない。
彼女は要所であるこの地を護るため、これから起こるであろう戦いに備え、ただただ、真摯に祈り続ける――。
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「――これどうやって浮いてるンですかね? すごいドラゴンパワーとかなんスかね」
毒島・林檎は気の抜けるような声色で首をかしげ、その頭にキノコがぴょこんと生える。
「まあともかく、皆様方には、重要ポイントであるこの場所を攻略してほしいッス」
しかし、それにあたり敵も大人しくしているわけはない。
「その為に、ここを守っている『十字皇シュラウディア』っていうオブリビオンを倒して欲しいんスよ」
聞けば、このオブリビオンは通常個体とは異なり、”闇竜騎士化”しているようだ。
「太陽を喰らうもの、とかいうド偉いドラゴンさんからパワーを授かって強くなってるみたいなんでスよね」
埒外の跳躍力を得ており、それを利用した急襲や空中機動などには注意が必要だと毒島は語る。
「地形も、浮遊した瓦礫や遺跡が折り重なる場所なんで、尚のこと、ぴょんぴょん跳ね回ってきそうッス」
かの跳躍力に対抗する手段は必至。それを告げながら、ゆっくりとグリモアを掲げる。
「厄介な相手ッスけと、皆さんならきっと打破できると信じているッスよ!」
こてぽん
こてぽんです。宜しくお願いいたします。
竜騎士といえば、やはり『ジャンプ』ですよね。
なお、こちらは戦争シナリオとなりますので、1章で完結となります。
プレイングボーナス:空中戦で勝負する/敵のジャンプを封じる。
それでは、皆様のアツいプレイングを心よりお待ちしております!
第1章 ボス戦
『十字皇シュラウディア』
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POW : 緋燕十字斬
【魔槍クングニル】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【防御と回避の癖、習性】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : 逆十字の光矢
【残像すら残さぬ高速飛行】で敵の間合いに踏み込み、【レベル×半径mに凡ゆる防御を無視する雷霆】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ : 双刃一閃
【天空】から、戦場全体に「敵味方を識別する【聖槍ロンギヌス】」を放ち、ダメージと【五感の喪失】の状態異常を与える。
イラスト:モメ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠白石・明日香」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鬼門・掃
(全て思考の内側にとどめ、呪言以外では喋りません)
どれほど疾くとも、どれほど鋭くとも
近接攻撃という物は、必ず相手に接近する
逆に言えば、向こうからこちらに来てくれるという事
どれだけ跳び回ろうと問題は無い
槍で来るのだろう
防御も回避もしない、ただ致命傷だけ避けよう
体に刺されば、そのまま槍を掴んで固定
槍ごと、鎧ごと、その身を切断する
ダメージも大事だが、出来れば翼か足を落としたいな
次の猟兵のために
逃げられる前に、呪言一声『止まれ』
一瞬の硬直を逃さず、自在棍を鞭状に変形して足を絡め取る
ジャンプ封じだ
この時に先ほど仕留められなかった部位を奪いたいな
●不言不語
「どちら様でしょうか」
静寂たる祈祷を切り裂いたのは、ひとつの気配であった。
『十字皇シュラウディア』は、閉じていた瞼をゆっくりと開き、手元に身の丈ほどの大槍を出現させる。背後に現れた存在を視認せんと、後ろを見遣った。
「……」
そこには、一人の男が立っていた。
かの者の名は、鬼門・掃(狩人・f36273)――しかし、その当人からは一切の言葉が帰ってこない。腕を組みながら、仏頂面のまま、シュラウディアを無言で見つめている。
「……お名前くらいは仰って頂けると思っていたのですが」
シュラウディアは目の前に立つ男の態度に対して眉を僅かに顰めながら、おもむろに槍の柄で床面を叩いた。
闇竜騎士が抱く感情は二つ。不遜な態度に対する不快感と、感情が読み取れない寡黙さに対する警戒心。
「まあ良いでしょう。貴殿が何であれ、この神殿に土足で踏み入れた時点で排除すべき敵でございます」
姿勢はそのままに、シュラウディアの全身から金色の雷電が溢れ出す。ごうごうと吹き荒れる風が、それがただの威嚇行動ではないことを表している。
物々しい気配へと変化した彼女に呼応して、掃はその目を僅かに鋭くし、組んでいた腕をするりと解いた。その右手を、携えた得物の柄に添える。
――どれほど疾くとも、どれほど鋭くとも。
――近接攻撃という物は、必ず相手に接近する。
それは思考の内側。掃が抱く心の内。|静寂《しじま》を愛する外見とは異なり、様々なことを細かに思考し続けている。
彼は決して”無我”でも”虚無”でもない。自らの意思で不言不語を貫いているだけなのだ。
さて、言葉を発さない掃の思考など知る由もなく、先程の彼の動きを見て先制攻撃を警戒してか、シュラウディアは飛び退いた後に膝を曲げ、跳躍。
音の壁を容易く破壊し、鳴り響く轟音や突風を置き去りにし、彼女は跳ぶ。最早瞬間移動と差し支えない速度で掃の真上をとり、勢いよく落下を開始する。
およそ人型生物から繰り出される跳躍力ではない。いくら猟兵とて、無策で某の跳躍を攻略することは困難であろう。しかし、闇をはらみながら槍を振り下ろしてくるシュラウディアを見ても尚、掃の瞳に揺らぎは無い。
――問題は無い。
|予定通り《・・・・》、向こうから来てくれた。
掃は迫りくる致死の軌跡から僅かに身を捩るのみ。当然、その程度では避けきれるわけもなく、掃の肩口が『炸裂』した。
しかし、それでも尚、何も問題は無い。
シュラウディアの握る魔槍が掃の右肩を貫通しており、そのまま床面に穂先が突き刺さっている。
彼女が手応えを感じるのも束の間。突如として、ひとつの剣閃と共に、景色が|ずれ落ちた《・・・・・》。
「な、に……!?」
袈裟に|ずれた《・・・》シュラウディアが、血潮を撒き散らしながらたたらを踏む。断絶した肉体が二分されずに留まっているのは、彼女が曲がりなりにもオブリビオンだからだろう。断裂が裂傷へと変わり、彼女の鎧にあかあかと刻まれるのみに留まった。
しかし、その損傷は嘘偽りない事実であり、その証拠と言わんばかりに、背中に生える翼――某の右翼が根元から|切断《カット》されてしまっている。
一方の掃は、削れ落ちた右肩など一瞥すらせず、振り下ろした太刀を無造作に放り投げた。
|得物《それ》は、柄が潰れており、怪力に耐えかねてか太刀筋もボロボロだ。しかし、迷わず捨てたあたりからして、いくらでも替えがあるのだろう。眼前の敵を見据える掃の表情は、少しだけ鋭くなった目元以外は微動だにしていない。
シュラウディアは表情を強ばらせながら、一歩、二歩と後退していく。
「……なんという、切れ味――」
半ばからへし折れた魔槍を一瞥し、苦々しい顔を浮かべながら下界へ捨てる。其れは彼女の権能そのものであるため、時間をかければ復活する代物である。だが、こと戦闘中においては、その時間はあまりにも悠長。
勿論、それを理解しているシュラウディアは、仕切り直しを兼ねて――『跳躍』を繰り出さんと足元に力を込めた。
しかし、
『止まれ』
鳴る言霊は、おもむろに、静謐に、しかし強かに。
不言を貫いていた存在から、音が紡がれた。
鬼門・掃が放つ|言《ことば》は、聞き届けてしまった者を”支配”してしまう。
人はそれを”呪い”と呼び、自身もまた”呪言”と定義した。
超常たる存在であるオブリビオンでさえも、其れは例外ではなく。
「な、足が、動かな――」
シュラウディアが動揺するのも束の間、その足に『自在棍』が巻き付いた。絡めとられるように足を掬われ、その身体を無防備に晒してしまう。
「しまっ――」
眼前に迫るは、”替え”の太刀を振りかぶる掃の姿。
シュラウディアは回避しようと身体を動かすも、もう遅い。
千切れた片足が、くるくると空を舞った。
成功
🔵🔵🔴
ヴェルンド・ラスリス
※アドリブ共闘歓迎
何を信仰するかは手前の自由だろうが、そのために今を生きる奴が悲しむというのなら、俺が道を切り開こう。
ピョンピョン跳ね回るなよ、鬱陶しい。
まぁ、それくらいの挙動なら追いついてみせる。
UC『炎操』を発動。相手の空中戦に食らいつくための、足場としよう。
そのまま、加速した勢いで、大剣を振るい、相手を地面へと叩き落とそう
ラウラ・クラリモンド
「そろそろ、戦争も中盤辺りでしょうか。私もお手伝いを始めないといけませんなね。」「相手は闇竜騎士化した存在ですか。気を引き締めてかかりましょう。」
相手の跳躍に対抗してこちらも【空中機動】と【空中戦】で対応します。
【POW】で攻撃します。
攻撃は、【フェイント】や【カウンター】を織り交ぜながら、【貫通攻撃】と【鎧無視攻撃】の【悪夢の聖夜】で、『十字皇シュラウディア』を攻撃します。相手の攻撃に関しては【野生の勘】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「私の役目は、少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
「……なるほど。休ませる暇は与えない、と」
シュラウディアは、先の戦闘で片翼と片足が奪われてしまっていた。故に、片足を優先して修復していたわけだが、翼を修復する前に猟兵たちが姿を現す。
竜鱗の生えた『継いだ片足』を一瞥しつつ、挟撃するように現れた二人を見回した。
「何を信仰するかは手前の自由だろう」
眼前の男――漆黒の大剣を背中に携えるヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)は、得物の柄に手をやりながら瞑目。
「だが」
続く言葉を両断するように、その剣を正面に振り下ろし、構える。彼としては特に力を込めてないものだが、刃先に振れた床面が大きく陥没し、その一部が崩れ落ちた。
「そのために今を生きる奴が悲しむというのなら、俺が道を切り開こう」
シュラウディアに突きつける刃が発火。蒼の劫火は周囲の視界を歪ませるほどの熱量をはらんでいる。
「お前の信仰する竜も、お前自身も、その信仰も、一切合切を”焼却”する」
黒一色の衣装に身を纏いながら、羽織る外套は蒼の獄炎。凄まじい炎熱によってか、彼が立つ周囲の遺跡が赤みを帯びはじめ、溶け始めている。
シュラウディアはそれに怯むことはなく、目を鋭く細めた。
「……”英雄”にでもなるおつもりでしょうか? 些か、それは蛮勇というものです」
彼女の左右に、『魔槍』と『聖槍』が出現した。それらは独りでに浮遊しており、黒と白のコントラストを彩っている。
「いいえ。蛮勇などではございません」
突如、シュラウディアの背後で、鈴が鳴るような声が響き渡った。背後に出現したもう一人の猟兵、ラウラ・クラリモンド(ダンピールのマジックナイト・f06253)の放った言葉である。
「ええ。ええ。仰りたいことは分かります。あなたが信仰する竜神に逆らうことなど愚かである、とでも言いたいのでしょう」
シュラウディアが言葉を発する前に、遮るようにしてラウラは話し続けた。
「しかし、それはあまりにも浅慮――」
|火刀《デイジー》と|氷剣《ヴァイオレット》を両の手に顕現。ラウラはそのまま、流麗なカーテシーを披露して。
「わたしたち猟兵は、あなたが思っているほど弱くはありません」
つめたき言葉が、場の空気を急冷させる。
敵の眼前でお辞儀をしているというのに、彼女の纏う雰囲気に一切の隙はない。事実、その内ではまったく別のことを考えていて。
(それにしても――相手は闇竜騎士化した存在ですか。気を引き締めてかかりましょう)
ゆっくりと顔を上げて、あらためてシュラウディアを見遣る。先程までの余裕たっぷりな笑顔は、もうそこにはない。これから戦に臨む戦士のような、真剣な表情であった。
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シュラウディアは溜息をつきながら、両の槍を手に持つ。
「貴殿らを”御身”に捧げれば、あの御方も少しはご満足いただけるでしょう」
その足を踏みしめ、勢いよく跳躍。
それに呼応するように、二人の猟兵も即座に動き出す。
「生贄だなんてまっぴら御免だ」
ヴェルンドが悪態をつきながら、追随するようにして跳躍する。
「ピョンピョン跳ね回るなよ、鬱陶しい」
ヴェルンドの纏う|蒼炎《ごくえん》が、跳躍する彼を導くように”足場”になった。浮遊する瓦礫を蹴りつけながら跳躍し続けるシュラウディアに対して、最短距離を移動するように炎を生成し、疾走と跳躍を続ける。
(まぁ、それくらいの挙動なら追いついてみせる)
単純な速力ではシュラウディアには勝てないが、大量の足場を一瞬で生成して駆け巡ることのできるヴェルンドのほうが、効率よく移動することができる。故に、お互いに機動力は拮抗していると言えるだろう。
「――堕ちなさい」
シュラウディアが自身の背を追いかけてくるヴェルンドに対して唐突に振り返り、左手に持った『聖槍』を振りかぶる。
そして、それを力強く投擲。『聖槍』は道半ばで無数に分裂し、遺跡全体に無数の軌跡が描かれていく。
「チッ……当たりはしないが、面倒だな」
ヴェルンドは大剣を荒々しく振り回し、飛来する槍を次々に”溶断”。莫大な熱をはらむ某の得物は、『聖槍』といえど耐えきれるものではない。しかし、如何せん手数が多いためか、彼自身も攻めあぐねていた。
しかし、唐突に、シュラウディアの身体を掠めるようにして氷柱が飛来する。見遣れば、こちらに追いすがる勢いで飛翔するラウラが、冷気を纏う氷剣を構えていた。
シュラウディアの攻勢が、僅かに緩んだ。
「――感謝する」
ヴェルンドの双眸はそれを見逃さない。足場にしていた炎を、一層大きく踏みしめた。
蒼き炎がヴェルンドの足元で爆発。単純な跳躍力に爆風の衝撃が重なり合えば、今までのそれらとは一線を画す速度を生み出す。視界から掻き消えて残像と化したヴェルンドが、次の瞬間にはシュラウディアの懐へ。
「堕ちるのはお前の方だ」
シュラウディアが咄嗟に聖槍を構えるも、そこに獄炎を抱く大剣が思い切り叩きつけられた。
加速の勢いに身を任せた一撃は、いくら『ロンギヌス』を冠する槍といえど耐えられない。ごうごうと燃え盛る蒼炎が槍に着火し、歪ませ、溶断。そのまま竜騎士の身を引き裂きながら、叩き落とす。
「ぐ……っ!?」
全身に纏わりつく埒外の熱量、叩き斬られた衝撃、それらを一身に受けたシュラウディアは苦悶の表情を浮かべながら落下していく。逸脱した膂力に目を白黒させ、視界に火花が散った。
(たった一撃でこれほどの威力……まさか受けきれないだなんて)
ぐらぐらと意識が揺らぎ、その心も動揺をはらむ。
シュラウディアは体勢を整えようと片翼をはためかせた。
しかし、背後に感じるはおぞましい殺気。
「永劫の悪夢に落ちよ!」
落下地点に回り込んでいたラウラである。シュラウディアの背を刺し貫くように、持っていた氷剣を突き出す。
「させません――!」
シュラウディアは身体を捻りながら、残された『魔槍』を思い切り振り払う。黒の軌跡はラウラの脇腹を確かに捉えた――はずだったのだが。
「な……!?」
ラウラの姿が、微笑みと共に霧散する。手応えのない感触に呆気にとられたシュラウディアは、突如として腹部に衝撃が迸る。
「ご、は」
肺から血が零れ、声が漏れる。熱を帯びた刀身が自らに刺し込まれていく感触、そして、それが背中を突き抜けた感触。
おそるおそる下を見遣れば、懐に潜り込み、火刀を両の手で握りしめ、シュラウディアの腹部を刺し貫いているラウラの姿がそこにあった。
――私の役目は、少しでもダメージを与えて次の方に。
凡庸なる生命体であれば今の一撃で死んでいてもおかしくないが、相手は|逸脱した存在《オブリビオン》。
ラウラは油断することなく、握る柄を捻りながらシュラウディアを思い切り蹴飛ばす。
火達磨となったシュラウディアの身体が血潮を散らし、浮遊する石壁に叩きつけられた。
次の瞬間、赤の業火と蒼の獄炎が混ざり合い――爆裂。
混沌の色彩を抱く爆炎が石壁を消滅させ、シュラウディアの身をも焼き焦がしていく――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
茜崎・トヲル
【不易】アドリブ歓迎!
あははふ、ふふはは。祈っていたね。祈っていたよ。それって宗教!
かみさまかみさまー。あれって異教の徒だね?
ふふく。おれはねえ、派手にやりたい!
だってあいつの祈る相手は命を羽虫って言ったよ見苦しい浅ましい醜いって何様だよクソが殺してやる絶対許さない
わあわあ!ありがとねえかみさま!
馬に乗るのはひさしぶり!馬になったのは少し前!
聖なる槍をお前が使うなよ
ハンマーでどかーん!弾き飛ばしてあげる!
手首切り落として、流れた血を鞭に変えて足を巻き取ろう
そんで引っ張って頭握りしめて、近くの浮いてる足場に叩きつけよう
それが砕けたら、別の足場に!
遺跡のアートにしてあげるね
よかったね
朱酉・逢真
【不易】アド歓
心情)おお、強そな狂信者だねェ。ン? マ・そォだな。おやマア、お怒りだね白いのよ。そンなら堅実に戦るか、ド派手に戦るか。どっちがイイね? ひ、ひ! いいよォ、かみさまが手伝ってやらァ。
行動)来い、来ォい、俺の仔ら! 竜と神での宗教戦争だ、ひ、ひひっ。遊ぼう滅ぼう終わらせよう。馬に乗れよ、白いの。足を貸してやる。聖槍が降ってこようと知らンねェ。俺の宿は病毒のカタマリ、密度を緩めりゃア槍なンて素通りだ。傷みきって腐らせてやるさァ。病毒結界を糸のように張り巡らせ、イナゴどもと共に敵サンを誘導しよう。引っかかればくさるぜ。あとは任せるぜ、白いの。ひ、ひ…怒り狂ういのちも愛らしいねェ。
●某の真理は不易なりや?
「あははふ、ふふはは。祈っていたね。祈っていたよ。それって宗教!」
荘厳な雰囲気に、似つかわしくない声色。
焼け焦げた身体を修復させながら立ち上がるシュラウディアの耳奥に、先の言葉が厭に響き渡った。
声の方向を辿れば、茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)が瓦礫の上からこちらを見下ろしていた。隣に立つ朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)に対して笑顔を撒きながらまくし立てるように話している。
「かみさまかみさまー。あれって異教の徒だね?」
かみさま――? 脆弱な人の身で神を名乗るのか、と、シュラウディアが考えるも、会話は続いていく。
「ン? マ・そォだな」
その相槌には、飄々とした音色が込められている。
強そうな狂信者だねェ――逢真は目を僅かに細めながら腕を組み、シュラウディアを見つめていた。
「そンなら堅実に戦るか、ド派手に戦るか。どっちがイイね?」
優し気な顔、柔らかな声。一見すれば何でもないようなやりとりだ。が、逢真のそれらは白紙に垂らされた墨汁のように、どこか酷く歪に見える。少なくとも、シュラウディアには”そのように見える”。
「ふふく。おれはねえ、派手にやりたい!」
トヲルは両手を大きく広げ、きゃっきゃとはしゃいでいる。まるでそれは新しい玩具を見つけた子供のよう。
「だってあいつの祈る相手は命を羽虫って言ったよ見苦しい浅ましい醜いって何様だよクソが殺してやる絶対許さない」
満面な笑顔が、突如として真顔に変貌。陽だまりのような声色も、一瞬で絶対零度のそれへと変化する。目を見開き、絞られた瞳孔でシュラウディアを見つめ続けている。
「おやマア、お怒りだね白いのよ」
逢真の柔和な笑顔はそのままに、その肩が竦められる。トヲルの放つ殺気は、常人であれば卒倒するレベルだ。それを証拠付けるように周囲一帯の空気がびりびりと帯電し、震えている。しかし、”かみさま”にとっては怒りの感情くらいにしか感じられず、その微笑みは絶えない。
「かみさま。ブチ殺していいよね? いいよねいいよね?」
目の前のオブリビオンなど、トヲルからすれば|殺戮対象《おもちゃ》にしか見えない。もう我慢ならないと、殺意が瀑布となって一帯の雰囲気を飲み込んでいく。
「ひ、ひ! いいよォ、かみさまが手伝ってやらァ」
逢真の糸目が――本人基準ではあるが――大きく見開かれ、紅の双眸が怪しく光る。袖を整え、指をぱきぱきと鳴らしながら、柔和な雰囲気に刃が如き鋭利さが入り混じっていく。
「異教徒、いえ、邪教の類でしょうか――貴殿らは、狂っております」
シュラウディアは『聖槍』を手元に出現させ、二人を見上げた。
「貴殿らを”御身”のもとへ向かわせるわけにはいきません。あまりにも、貴殿らは危険すぎます」
おそろしき漆黒と、おぞましき純白。
放つ雰囲気、言葉遣い、その総てがシュラウディアにとっては警戒するに値するものである。
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「来い、来ォい、俺の仔ら!」
シュラウディアの跳躍と同時に、逢真の両手が天へと伸ばされた。朱の霧が巻き起こり、それらが羽根へと変化。吹き荒ぶ風と共に、それらが天へ召し上げられていく。
「さァ、竜と神での宗教戦争だ」
ジジ、と、耳を擽るような音が一つ、二つ、四つ、八つ――。
「ひ、ひひっ。遊ぼう滅ぼう終わらせよう」
いつだって、その声は甘美で平等だ。この世に生を受けた赤子の耳にも、これから死を迎える老婆の耳にも。そして、敵である闇竜騎士の耳にも。
それがどこか不気味で恐ろしい。名状し難く、理解ができない。
そして、それは彼が宿す権能にもよく現れていた。
高空を駆けるシュラウディアが周囲を見渡せば、飛び回る|羽虫《イナゴ》たち。シュラウディアにとって、虫の大群ごとき、意にすら介さないものだ。しかし、その虫たちに宿る”業”を瞳の奥で見抜き、怪訝そうに表情を歪めた。
「穢れの病毒――」
イナゴたちに宿る毒性が、総てにおいて等しく――オブリビオンたる闇竜騎士にとっても危険であるものだと理解したのだ。それは此方がどれだけ自助努力を重ねようと、変えられぬ真理。
不易たる、神の権能。
「厄介な」
これだけで、動きが相当制限されてしまう。まずはイナゴを遠距離から処理して――と、シュラウディアが考えるのも束の間。
「馬に乗れよ、白いの。足を貸してやる」
かみさまが嗤う。
その瞬間、イナゴの塊から飛び出るように、馬が嘶いた。穢れた害虫たちを従える、異形の天馬――それが、烈風が如き速度でトヲルのもとへ着地。
「わあわあ! ありがとねえかみさま!」
トヲルが喜びの感情を全身で表現しながら、颯爽と天馬の背に乗る。
「馬に乗るのはひさしぶり! 馬になったのは少し前!」
純粋さとは、時に支離滅裂で、根源的な歪曲を抱えている。
「どうどう! れっつらごー!」
トヲルの掛け声と共に、馬が嘶く。蠍の尾が揺れ、その蹄が勢いよく踏みしめられれば、穢れの軌跡を残しながらシュラウディアめがけて飛翔する。
「ならば、纏めて”浄化”して差し上げましょう」
シュラウディアは『聖槍』を一瞥し、それを自身の真上へ投げ飛ばす。清浄な光が天で爆発し、槍の雨が一帯に降り注ぐ。某の密度は凄まじい。只の跳躍能力、空中機動力程度では避けきれぬ代物である。
しかし、かみさまは嗤った。
「知らンねェ」
浄化? 洗礼? そういう宗教臭いおべんちゃらは綺麗ごとの塊。人間たちの一方的な都合。吐き気を催すほど|甘すぎる《・・・・》。
「てめェは俺ンことを”人身に宿った神”程度にしか考えていねェようだ」
己の宿は病毒のカタマリ『そのもの』。それは人の身を宿す己が身体もまた例外ではない。病毒を射止める特殊な攻撃や、それらを封じる能力があるのならば話は別だ。しかし、その『聖槍』にはない。つまり、
「ン、こんなもんさねェ」
槍の雨をすり抜けるように、”朱き霧”が揺れる。それは『密度を緩めた逢真』そのもの。実体の薄い存在にどれだけ物理攻撃を繰り出そうが、きわめて無意味だ。
それに加えて、
「こんなくだらねェオモチャは、傷みきって腐らせてやるさァ」
霧に触れた槍たちが、たちどころに変色。その大半が、霧の先端に触れた瞬間に黒ずみ、攻勢を無くし、腐れた粘液となって遺跡の染みになっていく。
「そォら、逃げ惑え」
攻撃が鳴り止んだ瞬間に、霧の姿から逢真の姿が再構築される。片手を振るえばイナゴがさざめき、諸手を叩けば張り巡らされた”病毒結界”が波打ち、シュラウディアに迫る。
「いつの間に、包囲されて――!?」
『聖槍』によって幾ばくかのイナゴを堕としたが――それだけでしかない。倒しても倒してもイナゴの群れは留まりを知らない。そもそも、点攻撃である槍では数の多い虫たち相手と相性が悪い。
しかも、それが分かっているからこそ、術者である逢真を狙ったというのに。
何だ、|あれ《・・》は。
暖簾に腕押し。まるでこちらの攻撃が当たらない。
シュラウディアは瓦礫や浮遊岩石を足場に、迫りくるイナゴたちを躱していく。だが、跳ねた先に回り込むように、てらてらと爛れた”結界”が壁が迫りくる。
それをも器用に躱しつつ、彼女は一考する。
(範囲は滅茶苦茶ですが、イナゴたちを含めて動きは緩慢。これなら――ッ!?)
シュラウディアの脳内に安堵の念が零れんとするも、ふわりと揺れる白髪が己の眼前で揺れた。
「|聖なる槍《あれ》をお前が使うなよ」
極寒の表情を携えて、天馬に乗ったトヲルが|巨大な金槌《ウォーハンマー》を振りかぶる。
握る両の手に一層の力が籠められ、捻られた身体が開放。身の丈ほどもある”質量の塊”が、風を薙ぎながらシュラウディアへ迫る――!
「ぐ、ああっ!」
『聖槍』で防御しようとするも、そもそもの武器性質として槍は防御には向かない。それを証明付けるように、槍の防御など関係ないと言わんばかりに、打ち付けられた鎚頭から放たれた衝撃波がシュラウディアの胴体に直撃し、その身が『く』の字に折れ曲がる。超重量の一撃を一身に浴びてしまった聖槍は、闇竜騎士の手から虚しく離れ、彼方まで弾き飛ばされてしまう。
「どかーん!」
トヲルの攻勢は留まるところを知らない。振り抜いた金槌を一回転させるようにして、二撃目を打ち放つ。シュラウディアの身体がボールのように跳ね飛び、近場の岩壁に叩きつけられた。
間髪を入れず、トヲルが自身の手首を暗器で斬り落とす。一連の流れに一切の躊躇はなく、痛みで怯むどころか『無反応』で、ぶしゅうと噴き出す血飛沫が空中で鞭のようにしなり――。
「こーいうの、一本釣りって言うんだっけ?」
”血の鞭”をおもむろに振るえば、岩にめり込んだシュラウディアへ某が向かう。引っ張り上げれば、足を絡めとられた闇竜騎士の姿が空中でぶらぶらと揺れる。
「まあどうでもいいや」
シュラウディアが抵抗しようとするも束の間、その頭に純白を彩る手が伸ばされ、無造作に掴まれる。
「こーいう”武器”もたのしそう!」
刹那、シュラウディアの全身に骨が砕けんばかりの衝撃が迸った。何が起きたのか理解する前に、再度の衝撃。
彼女は理解した。今、おのれの身体が”鈍器”として振り回されていることに。戦慄する。恐怖する。オブリビオンにあるまじき『弱者の感情』が、脳裏を染めていく。
「うーん、ちょっと掴みづらくて使いづらいや」
こてりと、トヲルの首が傾いた。
めきめきと軋む、シュラウディアの頭。藻掻き、その手がトヲルの腕に伸ばされようとするも、状況は露ほども変わらない。
無慈悲に、無様に、無防備に、有象無象に叩きつけられていく。
粉砕。
粉砕。
粉砕。
「じゃあ、遺跡のアートにしてあげるね」
今までよりも大振りな姿勢をとるトヲル。なすすべもなく、振りかぶられるシュラウディアの身体。
目標地点は、先刻のイナゴたちが通り過ぎ、様々な病毒が折り重なった『爛れた巨岩』。
嗚呼、純粋さとは、時に残酷である。どれだけ惨いことをしようと、どれだけ冒涜的なことをしようと、トヲルがそれを是と思うならば、それらは一切の躊躇なく実行されてしまう。
それこそが茜崎・トヲルの強さであり、不易たる真理であり、恐ろしさなのかもしれない。
「よかったね」
冷水のような言霊と共に、シュラウディアの身体が紙切れのように投げ飛ばされ、”腐れ”に埋没。
響き渡る|悲鳴、粉砕音、腐敗臭《ハーモニー》。喜色を浮かべてはしゃぎ回る|奏者《トヲル》。
それらの一連のやり取りを見下ろす|観測者《かみさま》は、その口角を大きく吊り上げ、満足気に頷く。
「ひ、ひ…怒り狂ういのちも愛らしいねェ」
やはり、子供はこうでなくっちゃなァ。
逢真にとっては、眼前で繰り広げられた出来事など、愛しき子の可愛らしい遊戯なのだろう。
喜色を滲ませる双眸は、愛おしげに、トヲルへと向けられていた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
環境に適合した敵、程度は
猟兵ならば単に状況の誤差でしかあるまい
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
自身を物理法則から断絶、無限加速して目標に近接し白打で一撃
それを以て天印起動
そのまま封殺を図る
行動と能力発露を封じればただの的
存在原理から消し去るゆえ、後腐れもあるまい
芸が足りん
骸の海から出直せ
※アドリブ歓迎
猟兵とオブリビオンの戦いは、時に『概念をぶつけ合う』ことすらある。それほどまでとはいかずとも、往々にして常識から逸脱したものになりがちだ。
さて、一般的な戦争において”環境の適合”というものは、それだけで大きなアドバンテージを得ることができる。極北に住まう国に戦争を仕掛けて、寒さ対策を疎かにして環境に敗北してしまう――などが最たる例だろう。
そして、ここで問題なのは、猟兵もオブリビオンもそれらの枠から外れている存在であること。
それ故に。
(環境に適合した敵、程度は――猟兵ならば単に状況の誤差でしかあるまい)
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は静謐を抱いたまま、蒼の残滓と共に出現した。浮き石のひとつに足を付け、シュラウディアを見下ろす。
いつからそこに居たのだろう。彼女はアルトリウスの存在に気が付くのに一瞬の時間を要した。普段ならば現れる寸前に察知できるというのに、かの存在は一切の音も気配も、予兆すらもなかった。
「――何時からそこにいらっしゃったのでしょうか?」
シュラウディアは即座に『聖槍』を出現させ、アルトリウスから距離をとる。その眼差しは極めて鋭く、眼前の存在が只ならぬ者であることを悟っているようであった。
「答える義理はない」
何時だって居るし、どこにだって居る。しかし、どこにもいなくなることだって出来るだろうし、時間の壁だって乗り越えられるだろう。彼を正しく捉えられることの出来る存在は、猟兵か、格式の高いオブリビオンのみだろう。
「少なくとも、其れを聞いている時点でお前の理解できるところには存在しない」
蒼穹に揺蕩い、縦横無尽にアルトリウスの姿が”明滅”する。そして、一拍置いた後にシュラウディアと同じ場所に出現した。
(幻影? いや違うこれは――)
シュラウディアは力任せに床面を踏み抜き、その勢いで全力の跳躍を繰り出す。彼女の脳裏で、けたたましく警鐘が鳴り響いている。
こいつは、やばい。
手数でどうにかできる存在ではない、と。
ならばどうするのかと考えた結果、得られたのはたった一つのシンプルな答え。
一撃で仕留める。
天高く昇ったシュラウディアは先制の一撃を見舞うべく、アルトリウスがいた場所に槍を投げようとするも――。
「……いない」
半ば予想していたことでもあるが、そこに彼の姿はない。先程の瞬間移動か、高速移動の類か。
目を動かして周囲を確認するも、どこにも姿が見えない。先程からずっとそうなのだが、彼の気配が一抹も感じられないため、その手の感知能力で確認することができないのだ。故に、五感の全てで対応する必要があるのだが。
(どこにもいない……? いや、そんなはずはない)
シュラウディアは、弾かれたかのように後ろを振り向く。
いた。
眼前に。
己の目の前に。
不気味な男が。
揺らめく淡光を携えながら、佇んでいる。
「――私相手に油断したことが、運の尽きでしたねッ!」
即座に、聖槍を投擲。全力全開。一切の驕りなし。
肩が外れかけるほどの勢いで某の得物を投げつければ、それらが幾多にも分裂。それぞれが音を超えた超速を抱きながら、アルトリウスへ”殺到”する。
その何れかが掠りでもすれば、負傷はもちろんのこと『聖槍』による五感の消失が発生する。殺せはせずとも、一定時間の拘束は可能だろうと、シュラウディアは高をくくっていた。
しかし、その淡い希望は、彼の一言で打ち砕かれることとなる。
「下せ」
それはシュラウディアに発せられたという言葉というよりは、発動の”トリガー”。呪文詠唱に近いといえばいいだろうか。
しかし、それが何なのかを理解する間もなく、彼女の腹部に掌底が打ち込まれて|いた《・・》。
「は……――」
懐に潜り込んでいたはずのアルトリウスは、既にそこには存在しない。蒼の泡沫と、刻まれた”天印”が残るのみで。
肺から息を押し出され、声が出ない。音もなく繰り出された一撃は、シュラウディアを怯ませるに十分な威力を誇っていた。だがそれ以上に不可解なのは。
「と、飛べない、馬鹿な……!?」
跳躍も、飛翔も、あらゆる運動行動が、言う事を聞かない。まるで自分の身体が別の存在にすげ変わってしまったかのような、名状し難い違和感――それが彼女を混乱の渦に陥れる。
「お前の信仰する蜥蜴が、生命体のことを”羽虫”と謂っていたが」
紺碧を抱いた無数の軌跡が、シュラウディアの全身を打ち貫いていく。視認することはおろか、認識することすらできない”無限加速”の連撃だ。
「今のお前は飛ぶことができない。つまり、羽虫にすら劣る存在ということだな」
増え続ける軌跡が景色を塗り潰し、シュラウディアを中心に、青々とした色彩が球体を模る。
「そういえば、先程、お前は俺のことを”油断している”などと|宣《のたま》っていたが」
アルトリウスがおもむろに出現し、空中で停止。片手を球体に翳せば、その表面に亀裂が迸る。
「その浅はかな考えこそが、お前の油断」
手のひらを握りこめば、球体が収縮し、爆散。
目を焼くほどの閃光が、一帯の風景を蒼穹と純白に染め上げた。
「骸の海から出直せ」
成功
🔵🔵🔴
黒鋼・ひらり
空中戦…いいわ、生憎飛べないけど跳ぶのはお手の物
地の利も…私にあるようだし、ね
敵の空中機動に対しこちらも磁力…ギミックシューズを利用した反発による跳躍や加速、壁走り、更に鎖によるロープワークにより瓦礫や折り重なった遺跡を三次元機動で駆けまわって対抗
更に加えてUC『磁界領域』…周囲の無機物…瓦礫や遺跡を磁化・操作させて貰いましょうか
敵UC…その大層な聖槍とやらに対しても例外じゃない…敵味方を区別できるらしいけど、周囲一帯が磁化してる状況でもまともに機能するか試してみる? そもそもその槍だって無機物よね?
周囲一帯私の『領域』…そう、四方八方全部、あんたの敵よ(指を鳴らすと磁化した全てが殺到する)
黒鋼・ひらり(鐵の彗星・f18062)は、一帯に広がる浮遊遺跡群のさまを見渡していた。当然、その中で片膝をつき、負傷し佇むシュラウディアをも捉えている。
(空中戦…いいわ)
その脳裏に、恐怖も怯えもない。ひらりは、淡々と、表情を変えぬまま、眼前の敵と相対する。シュラウディアもこちらに気が付いているようで、幾多にも刻まれた傷を庇うようにして起き上がった。
(飛べはしないけど、|こういった場所《・・・・・・・》はお手の物よ)
跳ぶことも得意だし、地の利もこちらにある。負ける道理はない。
無論、ひらりはそれを語りはしない。只々堂々と、敵の目の前まで歩んでみせる。さあ、跳んでみせよと、能力を発現させてみよ、と謂わんばかりに。
「私も、随分となめられたものですね」
シュラウディアは、嘗て【幹部】と称えられるに相応しいほどの実力を持っていた。無数に存在するであろう『別のシュラウディア』ならばもっと上手くやれたのかもしれないが、少なくとも、今の彼女に絶対強者の面影はない。
「ですが、私は”偉大なる御身”に使えし存在。我が信仰心を以て、貴殿だけでも撃滅してみせましょう」
己を鼓舞するかのように”雷霆”を起動。雷電の錬気を一帯に撒き散らしながら、掻き消えるような速度で跳躍した。
「いいわ。やってみせなさい」
ひらりの双眸に、揺らぎはない。たん、と、足を床面めがけて振り下ろせば、電磁エネルギーが足元で炸裂し、彼女の身体が弾き飛ばされるように上昇した。刹那、彼女からみて右方向から槍が飛来。しかし、ひらり自身はそれに慌てることはなく、小柄な身体が空中で急減速して回避に至る。
「私のほうがあんたより”器用”だってこと、教えてあげる」
稲妻を迸らせながら飛び交うシュラウディアを一瞥し、ひらりは双眸を鋭く細めた。跳び乗った岩石を再び蹴りつければ、電磁纏う身が残滓を残し、金色の雷電と交錯。
「どうしたの? 私はここにいるわよ」
黒の軌跡を揺蕩わせるひらりから、そんな言葉が零れていく。
磁力を抱く少女は、壁を軽々と疾走し、鎖で身を引っ張り上げ、加速と減速を不規則的に駆使して自在に戦場を駆け巡る。それは闇竜騎士の機動力に追いすがり、追い抜くほどの絶技であった。
何度も何度も、お互いの残像が交差する。しかし、互いに変化はない。未だ戦況は拮抗したままだ。
(槍が、逸れていく……?)
シュラウディアは、己が振るう槍がひらりに届かないことに違和感を覚えていた。最初は彼女の身体性能によるものかと思っていたが、明らかに芯を捉えた一撃であっても何故か届かない。
ひらりに命中する前に、槍が|逸れている《・・・・・》ような――。
抱いた困惑が、闇竜騎士の身体を止める。
「あら? ようやく気付いたの?」
シュラウディアの攻撃が鳴り止んだことを悟ってか、瓦礫の裏側に”立つ”ひらりが、逆さのまま言葉を続ける。
「今更も今更ね。遅すぎて欠伸が出るわ」
もう、ここはあんたの大好きな|神殿《りょういき》なんかじゃない。
「お生憎様、ここいら一帯……既に私の『領域』」
庭に入り込んだ野良犬は、あんたの方よ。
ひらりが足を付ける瓦礫、其れから跳び離れるついでに、彼女はそれをおもむろに蹴りつける。本来であれば動くはずのない浮遊岩が、ただの蹴撃の一発で弾丸のように吹き飛ぶ。無論、それが向かう先はシュラウディアだ。
「小癪な……!」
シュラウディアは『聖槍』を迫る岩に投擲し、粉砕する。投げつけた槍が無数に分身し、別の足場に飛び乗ったひらりへと向かわせるも。
「もう遅いって言ったでしょ」
|聖槍《それ》だって、無機物よね?
空中に迸る磁力の奔流が槍たちに触れれば、それらが空中で静止し、物言わぬ浮遊物となって鳴りを潜めていく。
「…そう、四方八方全部、あんたの敵よ」
大層な『聖槍』含めてね――それを言外に、ひらりが指を鳴らした。刹那、周囲一帯に見える”結界内のあらゆる無機物”が、次々にシュラウディアへ殺到。
「何球続けてみる?」
一発、二発、三発――嗚呼、受けきれていないわ。ひらりはそんなことを思いながら、瓦礫の塊となって埋没していくシュラウディアを油断なく観察していた。
「みすぼらしいオブジェね」
巨大な”かたまり”。
槍の”針山”。
それらが合わさったような、歪な塊が空中で浮遊する――。
大成功
🔵🔵🔵
ココ・クラウン
わぁ…初めて来た世界の、その中でもすごい所に来ちゃった
レイヴン、僕たちには竜の加護も翼も無いから
落ちないように気を付けようね
ここが彼女に有利な戦場なら僕の戦場に変えよう
僕の森の力(UC)が発動したら木の根で敵を足止めしつつ、
浮遊物の間に根を張り巡らせて足場を作ってもらう
皆いい子だね
五感を失っているかもしれないけれど、
構わず暴風雨の【全力魔法】で戦場全体を攻撃して跳躍を阻止
レイヴンは僕の体を支えておいてね
僕は暴風の維持と指示に集中
五感が戻ったら【植物と話す】で根を操り敵に接近
僕たちにもこの世界にも、闇竜の力や加護は必要ない
レイヴンの魔導蒸気エンジン【リミッター解除】
全力の一撃で戦いを終わらせて!
氷宮・咲夜
あなた、驚異の跳躍力ね。翼まであるし
地の利まである。それなら
ウィザードブルームによる空中戦と空中機動
空中にも空の利がある。ご存じかしら
召喚術と天候操作でUCを使用、触媒の精晶石を惜しまず使い
水の魔導書から濃霧の魔法を選び、魔法の濃霧で広範囲を包み込む
それで敵の視界と跳躍を妨げながら
私は敵が纏う雷を目印に
風の魔導書に持ち替え、多重詠唱による風刃の乱れ撃ちによる攻撃
敵が霧から逃れる手を使わないのは、きっと
霧に身を隠せば安全である、と私に思わせておくため
すると敵の狙いは広範囲攻撃かしら
それなら。その濃霧内にいるという思い込み、利用させてもらうわね
濃霧の外に出て様子見、焦らすことでUCを無駄撃ちさせる
「――すごい所に来ちゃった」
ココ・クラウン(C・f36038)は目をぱちくりさせながら、辺り一面の浮遊した遺跡たちを見回す。初めてきた世界で最初の邂逅がこの場所では、圧倒されてしまっても仕方のないことだろう。
「レイヴン、僕たちには竜の加護も翼も無いから、落ちないように気を付けようね」
ココの隣に立つ黒の騎士――その”魔導人形”が主の命令を聞き届け、静かに頷いた。
彼は、命じられたことに疑問を抱かない。感情はもしかしたらあるのかもしれないが――あくまでも主君の命令に従う『人形』だ。だがしかし、王子さまにとっては大切で大事な忠臣であり、おのれの身を守ってくれる護衛でもある。
――少しだけ、怖い。でも、大丈夫。
レイブンが、傍にいてくれるから。
そんな心情を抱くのも束の間、辺りを確認するべく一帯を見回していたココの双眸が、ある一点でぴたりと止まった。
「……のんびりしている暇はないみたい。僕たちも、準備をしよう」
脳裏にくすぶる緊張、恐怖、それらをひとまず飲み込むことにして。
ココたちが遺跡を見下ろせば、合流している猟兵が既に、オブリビオン――十字皇シュラウディアと対峙していた。
「あなた、驚異的な跳躍力を持っているそうね。翼もあるし」
氷宮・咲夜(精晶石の魔術師・f37939)、そのひとであった。彼女は理知的な眼差しをシュラウディアに向けて、冷静に観察を続ける。
(おまけに地の利まである。でも、それなら)
咲夜は、文字通りの”魔術師”である。
しかもUDCの魔術の名門、氷宮家の令嬢。
つまるところ、その頭脳に蓄えられた知識や情報は常人の其れとは訳が違う。故に、こと『知識を凝らす』ことにおいては埒外のものを抱いていると言えるだろう。
いまこの瞬間にも、咲夜は知を練り、最適な魔術を判断する。
(――最適解は、出たわね)
迷いを払った双眸が、槍をゆっくりと構えるシュラウディアに向けられた。視線を向けられた竜騎士当人は、その口角を吊り上げる。
「私と正面で相対する魔術師は初めて見ました」
護衛の方はいらっしゃらないのかしら――挑発の言葉を紡ぐ闇竜騎士は、その軽口に反して既に満身創痍。度重なる猟兵たちの襲来により、その身体は回復しきれていない。数多の手傷が、鎧をみすぼらしいものへと変貌させている。
「あら、私に挑発だなんて無駄よ。慣れないことはやめなさい」
その見た目に反して、竜騎士の内に秘める力は未だ健在。それを既に見抜いている咲夜は、一切の油断をしていない。
「さあ。お話はこのくらいにして――」
咲夜の手が虚空に翳される。蒼の光芒と共に、その手に魔導書が収まった。
「はじめましょう」
最後の戦いを。
●
「空中にも空の利がある。ご存じかしら」
咲夜はウィザードブルーム、いわゆる『空飛ぶ箒』に乗り、跳ね駆ける|稲妻《シュラウディア》の攻勢をいなしていく。
ひらり、ひらり、速度自体はシュラウディアが勝っているのにも関わらず、小回りの効いた咲夜の飛翔が槍の直撃を許さない。
(とはいえ、魔術を発動させるには少々リスクがあるわね)
決して余力のある回避とは言えない。敵も決死の覚悟で向かってきているためか、所作ひとつひとつに凄まじい力が込められている。
(高速詠唱なら誰にも負けない自信があるけど、ひとまずは様子を見て――)
某の最高速が分からない以上、ひとまずは回避に徹するべき。
そう判断した咲夜だが、不意におのれの眼下に気配を感じる。
一瞥すれば、そこには目を見張るような光景が広がっていた。
木の根の大群が遺跡を継ぎ合わせるように押し寄せ始めている。岩も瓦礫も、遺跡の柱も、はたまた岩壁に至るまで、浮遊する無機物総てを飲み込んでいく。その根は上へ上へと昇っていき、軋むような音を響き渡らせながら咲夜の周囲の地形をも繋ぎ合わせていった。
――ここが彼女に有利な戦場なら、僕の戦場に変えよう。
広がり渡る木の根、その中心にはココとレイブンが立っていた。ココの足元から、無限と思わしき莫大な奔流を感じ取れる。少なくとも、咲夜の目にはそう映っていた。
「皆いい子だね」
ココは、成長していく大自然たちを労わるように、優しく声をかけていく。咲き誇る花弁が主の言葉に喜色を零し、波打つ根が一層のはりきりを見せる。
皆、王子さまのことが大好きなのだ。
森を愛し、自然を愛する少年のことが。何よりも、誰よりも。
「くっ……なんですかこれはッ……!?」
シュラウディアは四方八方から伸びてくる木の根を槍で切り払いながら苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。もはや咲夜を狙う余裕などない。その場に釘付けにされるように、|森罰《オーダー》が次々に襲い来る。
「|森司祭《ドルイド》の類か――忌々しい……!」
もはや苛立ちが抑えきれぬのか、口調も粗野なものに変貌していく。シュラウディアは遠方に佇むココを睨みつけると、即座に『聖槍』を投げ飛ばした。
無数に散らばる槍の雨。
空中を自在に飛翔できる上に魔術に長けた咲夜はそれらを難なくいなしている。 だが、それらを持ち得ていないココはそうもいかない。
「う、ぐ……っ」
殆どは木の根とレイブンが防いでくれたが、一本の槍が少年の肩口を引き裂く。
目の前が真っ暗になり、何も聞こえず、何も識別できない――五感が失われた世界へ迷い込んでしまう。当然、立っていることなどできず、力なく倒れ込むのだが。
――ありがとう。レイブン。
手筈通りに、レイブンが主君の身体を優しく受け止めた。五感を失えど、ココには分かる。彼が、近くにいてくれていることを。
「ちっ……鬱陶しい護衛です。ならば諸共――」
「させないわよ」
シュラウディアが二の矢を放とうとするのも束の間。咲夜の一声と共に、景色に靄がかかる。
「これは、幻……? いや、違う」
靄は濃霧となり、一寸先すら視えぬ世界へと変貌する。光すら通さぬ”霧の牢獄”がシュラウディアの五感を狂わせ、その場に留まらざるを得なくなる。
(ふんだんに精晶石を使っただけあって、効果は覿面ね)
一方の咲夜は、シュラウディアから少し離れた場所――木の根によって新しく作られた足場で、蒼く光る魔導書を広げていた。その文字列が不規則的に明滅し、魔力を帯び、それが”発現”へと至って”奇跡”を呼び起こす。
本来、霧程度でオブリビオンの足は止められない。だが、咲夜の発動させた濃霧は、あらゆる事象を理想的な形で発現させる|精晶石《チート》によって開放されたもの。普通の霧とは訳が違う。
(さて、概ね計画通りね。むしろ期待以上と言ってもいいかしら)
咲夜は、緑光を帯びた――『風の魔導書』を出現させ、持ち替える。手を過らせれば、最速最短で最適な頁が開かれる。流れるような一連の動作は、何回、何十回、何百回と繰り返してきた魔導の叡智。その賜物だ。
「多重詠唱。”風刃”」
同系統の魔術とはいえ、それの連続詠唱。いわゆる『絶技』と呼ばれる類の上級詠唱術だ。しかし、それを淀みなく発動させており、咲夜の顔は、依然として涼しいままである。
三日月を描いた風の刃が無数に霧中へ撃ち放たれ、奥で轟く雷鳴へと殺到する。
幾らかは命中しただろうか。咲夜はそんなことを思いながら、悟られぬように霧の外へ移動。
――敵が霧から逃れる手を使わないのは、きっと、霧に身を隠せば安全である、と私に思わせておくため。
濃霧の塊を見つめる咲夜の瞳は、まるで何かを待っているようでもあった。
――すると敵の狙いは広範囲攻撃かしら。
まるでその考えが予言であるかのように、的中。霧の中で、雷霆の波動が何度も荒れ狂う。
(その濃霧内にいるという思い込み、利用させてもらうわね)
ただひたすらに待つ。観察する。じっくりと、落ち着いて、待つ。
咲夜は轟々と鳴り響く濃霧を見つめながら、ふと、ココたちがいた方角を見遣って。
「……無事のようね」
レイブンの手元に抱かれるココを見て、咲夜は安堵したかのように目を僅かに細めた。
●
「はぁ……はぁ……はぁ……」
シュラウディアは、焦っていた。払っても消えぬ濃霧。何も視えぬ世界。どれだけ雷霆を放とうが手応えを感じない。加えて、時折飛来する風刃の牽制。
これらを一身に受けた彼女の精神は、既に摩耗していた。
「卑怯者め、一体、どこに――」
さすれば、上か。
シュラウディアは濃霧に覆われた天空を見上げて、一か八か――跳躍せんと足に力を込めた。
だが、その瞬間。全身を圧し折らんとする風圧が彼女の身体に叩きつけられる。出鼻を挫かれ、姿勢を崩し、その片膝を折ってしまう。
「これは、天候操作の魔術……!」
暴風と豪雨。それらが一気呵成にシュラウディアの身に殺到し、各々の圧力で地面に縫いつけられていく。
「お、お、お――ッ!!」
このままだと、潰れてしまうかもしれない。闇竜騎士は半狂乱になりながら、上から押さえつけるように降り注ぐ雨風に抵抗せんと、立ち上がろうとする。
しかし、立ち上がりかけた片足が、霧を引き裂くようにして飛来した風刃によって”切断”された。
「おのれ、魔術師――!」
切り口から血飛沫が噴き上がり、シュラウディアは霧の外を射殺すような眼差しで睨みつける。
そして再度身体を傾けた竜騎士のもとに、ふたつの影がゆっくりと近付いてきた。
木の根に乗せられた、ココとレイブンだ。
「ありがとうね」
少年は柔和な笑顔を浮かべながら乗り物になってくれた根を撫でて、レイブンと共に床面へ着地。
「せめて、せめて貴殿だけでも……!」
シュラウディアは地面に這いつくばりながらも、その身を僅かに起き上がらせ――手に召喚した『聖槍』を再度投擲する。
無茶な姿勢から放たれた一撃であるにも関わらず、それは視認すら困難なほどの絶技。ココは思わずたたらを踏んでしまう。
しかし、割り込むようにして前へ出たレイブンが、手にした剣で飛翔する槍を弾き飛ばした。
そしてその姿勢から流れるように、レイブンの腰が僅かに沈み、剣の切っ先をシュラウディアに向けて――”構える”。
「僕たちにもこの世界にも、闇竜の力や加護は必要ない」
ココは、まっすぐにシュラウディアを見て、告げる。血戦の終焉を。信仰の終焉を。
ふたたび、ちいさな口を開けば。
「――」
鈴のように鳴る、不可思議な言葉が紡がれた。それはココにしか認識できない言霊であり、レイブンという魔導人形の”鍵”でもある。
ココはそれを、廻した。
突如として、レイブンの全身から莫大な魔力が噴出し、鎧が圧力に耐えかねて震えだす。随所から噴き上がる蒸気が、人形では発せない殺気の代わりのようであって。
「この戦いを終わらせて!」
主の命令に従い、人形は動き出す。否、それは動いたというよりは――。
残像と共に掻き消えた、といったほうが正しいだろうか。
音も、衝撃も、それらが伝わる頃には。
ひとつの|斬撃痕《クレーター》と、剣を振り抜いた姿勢のまま静止するレイブンの姿。
そして、虚しく散乱した二振りの槍が残るのみであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵