チェリー・ピッキング
広く埃っぽい応接室には、異様な熱気が籠もっていた。
「これが今回の成果ね」
胸元が大きく開いた着物を着た美女が、ソファに座り嫣然と微笑む。その前のテーブルには札束や、たくさんの宝石や貴金属類、あるいは高額そうな物品が乗っている。そしてテーブルの反対側には、数人の少年少女が何かを期待するような表情で並んでいた。
女は、その中から宝石が散りばめられたネックレスを手に取った。
「この首飾りが良いわね。宝石店かしら、盗ってきたのは誰?」
「は、はい! 俺です!」
指名された少年が、顔を赤らめながら一歩前へ出る。
「じゃ、ご褒美をあげる。脱ぎなさい」
少年に見せつけるように、ぺろりと紅の塗られた唇を舐め、微笑みながら女も着物をはだけさせていく。
その白い裸体に蛇のような鱗があることも、着物の内側には無数の白蛇が潜んでいることも気にせず、裸になった少年は美女の身体にむしゃぶりついていく。
そんな盛った少年の姿を冷めた目で見ながら、美女は冷静に思考を巡らす。
――盗みや脅迫の手練手管は十分に覚えさせた。まだどこにもばれていないし、そろそろ次は殺しを覚える段階ね。
「なはは、みんな集まってくれてグラーシアスや♪
今回みんなには、シルバーレインのヨーロッパで、能力者の犯罪組織の壊滅と、そこのボスであるオブリビオン討伐をお願いするで」
グリモアベースに集った猟兵たちを、ルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は元気に出迎える。
「向かってもらう場所は外国でな。場所は|スペイン《エスパニョール》の|セビリア《セビージャ》郊外、……日本だとアンダルシア地方って言った方が分かりやすいかな?」
ウルスラは手書きの地図で、スペイン南部に位置する都市であるセビリアの大体の場所を示す。
「ボスのことはボクの予知に引っかかったんやけど、こいつは単独行動せずに能力者を手下にしとってな。だからヨーロッパの能力者組織である『処刑人』に話を持ち掛けて、共同作戦をすることになったんや」
処刑人とは、銀誓館学園と協調している能力者組織の一つだ。ヨーロッパを拠点としており、能力を悪用して犯罪を行っている能力者を倒すことを主な活動としている。
「まず始めに、ボスについて説明するよ。名前は『白蛇女郎』、かつてのゴーストの分類でいうところのリリス型や。
和服を着た美女で、支配に快楽を覚え、他者を隷属させることを得手とするタイプ。広範囲にその支配の影響を与えるぐらいの力を持っとるけど、一方で狡猾であり慎重さも持ちあわせとる」
今回はその気質のおかげで、最悪の事態は回避することはできたんやけど、とウルスラは独り言のような声で呟く。
「この白蛇女郎が率いてる組織なんやけど……構成員は、十代前半から半ばぐらいの少年少女たちなんや。
彼らはそもそも、偶然能力に覚醒したばかりの子どもたちでな? 新米能力者ってのは分かり次第、各地の能力者組織が能力者の常識とか能力の制御なんかを教育するんやけど。でも、全部の能力者を早い段階で補足できるわけでもあらへん。
今回の場合、それを白蛇女郎がボクらよりも先に見つけて手を出して、支配下に置いてまった」
苦々しげにウルスラは言う。リリスは今までもそうして能力者を害してきたのだが。
「この白蛇女郎はオブリビオンなんで、ゴーストであるリリスとはちょい違っててな。能力者を食料とするんでなく、配下として育てることにしたんや。
別の意味ではしっかり食われとるんやけど」
その、別の意味とは、と問う猟兵に、ウルスラは真顔で答える。
「そらもちろん、性的にって意味や。……こんなん隠したりせえへんよ? リリスってのはそういうもんや」
長年リリスと戦ってきた者たちからすれば、今さら動揺する話でもない、ということだ。
「この年頃の子たちが、性快楽に特化した存在であるリリスに手ぇ出されたら、抵抗なんてできるわけあらへん。完全に手駒になってまっとる」
それに、とウルスラは続ける。
「犯罪行為についてなんやけど、白蛇女郎は慎重やと先に言ったやろ?
こいつは彼らを唆して、能力者の仕業だとバレないように、まずは軽犯罪から経験を積ませることにした。他の組織が手を出しづらくなるまで力をつけてから、犯罪組織として表舞台に出る予定だったらしいわ」
能力を使用して犯罪をすればまず成功はするが、その不可思議な状況から能力者の存在は早期に察知されて潰されるだろう。
それに、突然犯罪をしろと命令されても、誰もがそう易々とできるわけでもない。
「白蛇女郎は、快楽によって誘導し、盗みだとか恐喝だとかを繰り返させて、段々と倫理の枷を外してきた。
……そして最悪の事態、つまり『殺人』の実行にステップアップする直前に、ボクの予知が間に合ったんや」
今回の件は、グリモアエフェクトによる『大いなる危機』の前段階の予知だ。つまり本来であれば、忌避感なく殺人行為を実行できるまで成長した犯罪集団を壊滅させる、という作戦となっていたはず。
「リリスに誑かされたってのは大いに酌量の余地にはなるけど、でも殺人ってのはある意味での最後の一線。これをやらかしたかどうかで、大きく更生事情が違うのは分かるかな? ま、現段階なら決して悪いようにはならへんよ」
ウルスラは、そうフォローを入れた。
「そんじゃ改めて、今回の作戦の流れを説明してくよ。
まずは奴らがアジトにしとる郊外の屋敷に向かうんやけど、その近隣では白蛇女郎の力の影響を受けた動物たちが、凶暴化して暴れとってな。まずはこれを大人しくさせてほしいな」
逃げ出してしまったペットや家畜、野生動物など、その数は多い。とはいえ猟兵たちにとっては怪我をするような相手ではない。
「でも、こちらを獲物だと認識して本気で襲い掛かってくるんで、気圧されんようにな? それとこの子たちも被害者ではあるし、できれば殺さんといてほしいわ」
オブリビオンを倒したら、彼らも正気を取り戻し、元の生活に戻っていくだろう。
「その次に、能力者の少年少女たちも……ボスの『ご褒美』目当てで屋外へ迎撃に出てくるで、これを突破するんや。まあ一緒に行動しとる処刑人たちが主に引きつけてくれるんで、任せて自分たちは先に進んでも問題はあらへん。
手伝うんだったら無力化とか制圧の手段は好きにしてくれたらええけど、これも殺したらあかんから注意してな? 戦意は高いけどマジの戦闘経験は無い子たちやから、力の差を見せつけたりしたらすぐに戦意は喪失するやろな」
そこまで突破して、ようやく屋敷内で白蛇女郎との戦いとなる。
そしてここで、ただし! とウルスラは語気を強めた。
「こいつは狡猾で、己の生存を優先する。逃走を試みるんや。
快楽と引き換えに見逃してほしいだとか持ち掛けてきたり、戦闘中も常に逃走の経路と手段を考えとる。あるいはそこまで無理でも、特定条件下で有利になるユーベルコードを使うために、暗い部屋へと向かおうとする。
言い分なんて聞かんでええ、決して逃がしたらあかんで」
逃がしたら白蛇女郎は必ずまた同じことを繰り返すだろう。ここで討伐しなくてはならない。
「説明は以上や、質問がなければ現地へ転送するで。
みんなの成功を願っとるよ、そんじゃ頑張ってきてな♪」
サッカーボールの形をしたウルスラのグリモアが輝き、猟兵たちは転送されていった。
雨森
OPをご覧頂きありがとうございます、雨森です。
今回の作戦はシルバーレイン。スペインのセビリアで、処刑人と共同して犯罪組織の壊滅を行っていただきます。
とはいえ今回相手をする集団の構成員は、半ばオブリビオンの被害者でもある新米能力者の少年少女です。
以前に、同じくスペインで作戦を行っていますが、直接の繋がりはまったくありません。同じ国を舞台にしているというだけです。前回の依頼に目を通しておく必要はないので、どなたでもご参加をどうぞ。
●第一章
オブリビオンの力の影響で凶暴化した獣たちの群れを突破してください。彼らは見境なくこちらへ襲い掛かってきます。
動物は、犬や猫、家畜の馬や牛などを想定してください。動物園にいるそうな大型動物まではさすがにいません。
制圧方法は不問ですが、できれば殺さないようにお願いします。
●第二章
新米能力者たちによる迎撃での妨害に対応して、先へと進むのが目的となります。行動の自由度は高いです。
彼らは猟兵が戦えばほぼ一蹴できるぐらいの強さで、必ずしも全員をどうにかする必要はありません。
工夫すれば、対応は処刑人たちに任せて戦闘のスルーも可能でしょう。
彼らに何かアプローチするのであれば、殺人は非推奨です。
なお第一章、第二章とも不殺を推奨していますが、殺害行動を選んだからという理由でプレイングを却下することはありません。また戦場は屋外となります。
●第三章
『白蛇女郎』とのボス戦です。
様々な方法で逃走を試みてくるので、逃がさないように注意してください。何もしないと不利な判定というより、対策を取るとプレイングボーナスという形になります。
戦場は屋内ですが、具体的な場所は指定が可能です。
プレイングボーナス:敵ユーベルコードを含めた、誘惑もしくは逃走への、対抗手段を取る。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『凶暴化した獣達』
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POW : パワーで抑え込み、大人しくさせる
SPD : 餌や麻酔弾で大人しくさせる
WIZ : 語りかけを試み、大人しくさせる
イラスト:シロタマゴ
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バッファロー・バイソン
初出陣ということで、ここにやってきたはいいが、動物たちが暴れているのじゃな…
そうならば、落ち着かせる為に【威圧】する。
【動物と話す】
ブモォオオオオオオッ!!『お前ら落ち着け!!』
『収まらないなら、強引にでも止めるんだぜ!!』
相手が角のある牛なら角合わせしておく。闘牛場の牛もいることだろうし。
馬なら軽く体当たりで済ませる。
小動物も軽く角や蹄で軽くいなす。
「おかしくした奴がどこかにいるってことは間違いないようじゃな」
黒木・摩那
やってきました、スペイン!
是非とも帰るまでにはパエリア食べていかないといけませんね。
その前に依頼をこなしていきましよう。
まずは猛獣?狩りですね。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
相手が獣ですから、周囲警戒はいつものスマートグラスより【第六感】を頼りにして対応。
【先制攻撃】してヨーヨーを叩き込み、UC【サイキックブラスト】で大人しくしていきます。
一度に数で押された場合は、ヨーヨーの軌道を【念動力】で操作して【なぎ払い】ます。
スペイン南部、アンダルシア地方。十月の空は青く高く晴れ渡り、日差しは強いが空気は乾燥し、風には涼しさを感じさせる。
どこまでも続く平野と、遠くに見える低い山脈。
観光客が訪れるほど素敵な景観の地域なのが、今はあたかも典型的なイメージでのアフリカの草原のように、オブリビオンによって凶暴化させられた動物たちが徘徊する危険な場所となっていた。
そして、それを解決するために猟兵たちが現れる。
「やってきました、スペイン!」
わくわくした様子の黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が辺りを見回す。故郷であるUDCアースと酷似したシルバーレインであれば、実質的に海外旅行へタダで行かせてもらっているのと同じようなもの。そして是非とも本場の郷土料理パエリアを食べていきたい。
「もっともその前に、まずは猛獣? 狩りですね」
もちろん、ちゃんと代金の代わりに依頼はこなしていくが。
そんな楽観的な摩那とは異なり、動物たちの現状を憂いていたのがバッファロー・バイソン(猛牛・f38640)だ。
「動物たちには動物たちなりの活動ルールがあるのじゃ、見過ごせんよ」
アメリカの草原で生まれた彼の種族はアメリカバイソン。ちょっとした経緯で知性を獲得した賢い動物である。
「おかしくした奴が、どこかにいるってことは間違いないようじゃな」
初出陣という気負いも見せず、暴れている動物たちを抑えようと動き始めた。
二人を発見したことで、動物たちが一目散に駆け寄ってくる。
「あの子たちと話せたりするの?」
ヨーヨー『エクリプス』を構えながら、摩那がバッファローに尋ねる。
「普段であれば、な。今はどこまで通じるかわからんが、できる限りはやってみようかのう。
――スゥッ」
――ブモォオオオオオオッ!!
『お前ら落ち着け!』
思い切り息を吸い込み、気負いを込めて喉奥から威圧を動物たちに向け放つ。
動物たちは、電撃を受けたようにびくんと身を跳ね上げるが……しかし次の瞬間には突進を再開した。
「……駄目だのう、普通これで止まらんはずがないのだが」
「でしょうね。ライオンとか熊とか地上で最強クラスの動物ですら、今のなら尻尾を巻いて逃げ出しちゃうわよ」
バッファローのせいではない。恐るべきは動物の本能すら凌駕するオブリビオンの能力だ。
「仕方あるまい。……ははっ、収まらないなら、強引にでも止めるんだぜ!」
微妙に口調が荒っぽくなり、勢いよくバッファローは駆け出していく。血気盛んな動物たちを前に、いよいよ己の本能も刺激されてきたのだ。
がつん! と、闘技場の牛らしき相手と角合わせ。そのまま首を振るい、バッファローは相手の牛を転がして勇ましく咆哮する。
「小さな動物でも構わずか! 良いぞ、その意気や良し!」
ヒートアップしつつも、バッファローは注意しながら動物たちをいなしていった。
「マタドールって、きっと大変な職業ねぇ」
闘牛が間近で見られてラッキーかもなどと思いながら、摩那はバッファローたちを遠巻きにして足を止めてしまっていた動物たちへと躍りかかる。
第六感を働かせ、襲い掛かる動物たちから身を躱す。お返しとばかりにエクリプスを叩き込み、同時に両掌から電流を周囲に放った。それでもなお動きを止めない相手には、エクリプスの機動を念動力で操作して、薙ぎ払っていく。
「私たちのところには、鳥が襲ってこなかったのは幸いかもね」
上方への警戒が不要となるし、あまり鳥は傷つけたくない。
そうして二人は、順調に動物たちを殺さず制圧していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
並みのリリスよりも随分と知恵をつけやがって
実際、目覚めたての能力者にとって、こうした能力を肯定してくれる場所って心地いいもんな
おまけにご褒美付きなら、従うのは無理もない
だが、そっちは明らかにろくでもない道だ
きっちり止めてやらねえとな
【戦闘】
「気絶攻撃」100レベルのモーラットを「召喚術」で使役
動物たちの制圧に当たってもらう
「俺だと加減効くか分からねえし、頼んだぜ、お前ら」
自身はモーラットの指揮に当たるが、自分の方に来たら同様に「気絶攻撃」で対応
お前たちに一切恨みは無いんだけどな
どちらかって言うと怖いだけだろうし
そんなわけで、大変申し訳ないけど、しばらく眠っていてくれや
天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
今回の仕事も、犯罪者の捕縛とオブリビオンの撃破。
「能力者の保護と教育……なんとかしないと今後も繰り返されそうですね」
最初は力の影響を受けた動物ですね。
とりあえず、UCを使って殺さないように手加減しつつ生命力を少々奪い取るとしましょう。
これで大人しくなれば良し、それでも襲ってくるなら、殺意を乗せて睨みつけながら更に生命力を奪うとしましょう。
「言葉が通じるかは知りませんが、死にたくなければ大人しくしてください」
ただ影響を受けて凶暴化しただけの動物を傷つけるのは、
こちらとしても不本意ですが……なるべく手早く片付けましょう。
「これでも猫とか……動物は好きなんですよ」
酒井森・興和
結構な数が居そうだな…
【サバイバルや狩猟】の要領で動きを【追跡】
飛び掛かってきたら【落ち着】いて【カウンターで受け流し】飛斬帽(刃は仕舞っておこう)を盾の様に当て昏倒させる
そこそこ大きめの連中は猟兵の居ない方面への【逃亡阻止】もしないとね
方向転換狙いの【誘導弾】として逆鱗を進行方向前方へ打ち、
戸惑ったりたたらを踏んだら三砂の柄を足に絡ませ【足払い】効果で転倒狙う
走り抜ける奴は地面に叩き付けたりしないが、捕獲に尻尾や足は掴ませて貰うよ
余り骨折や負傷はさせたくないが勢いによっては止むなし、かな…
【薬品調合と毒使い】を活用して気絶や一時麻痺の毒を逆鱗に仕込んで浅く斬り付けよう
…怪我させて済まないねえ
「まったく、能力者への襲撃どころの話じゃないのかよ。並のリリスよりも随分と知恵をつけやがって……」
事件の経緯を知った暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)の発言は、おそらく銀誓館の関係者であれば誰もが抱いた感想だろう。どのゴーストが厄介という議論などをしてもまったく意味はないが、いかんせんリリスはその振る舞いがセンシティブすぎる。
そんな魎夜のぼやきに、同じく銀誓館OBの酒井森・興和(朱纏・f37018)と天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)も相槌を打つしかない。
「さすがと言うべきか、憎らしいぐらいにうまい手段だよ」
「詐欺師はスーツを着る、なんて格言めいた例えを聞いたことがあります。隙のない身なりで人を信頼させると」
「目覚めたての能力者にとって、こうした能力を肯定してくれる場所って心地いいもんな。おまけにご褒美付き、従うのは無理もないか」
力に目覚めたきっかけや銀誓館に入学した理由は、それこそ一人一人で事情がまったく違っている。それは今ここに偶然集った三人とて同じこと。なので、おそらく他の世界の猟兵よりも今回の被害者である少年少女たちに対する感情は同情に寄るし、根本的な問題まで議論することになっているのは仕方があるまい。
「能力者の保護と教育……なんとかしないと今後も繰り返されそうですね」
「難しい、どうにもできない、で済ませちゃいけない問題だよねえ」
ゴースト――今はオブリビオンだが――に先んじて能力者を保護する仕組みの構築は、シルバーレイン世界の大きな課題のひとつだろう。
まあ、それはともかくとして、だ。
「彼らにとってそっちは明らかにろくでもない道だ。まず、ここはきっちり止めてやらねえとな」
能力者が三人も揃えばゴーストの話題なんて尽きはしないのだが、今は目の前の事件の解決が先だ。
『――|起動《イグニッション》!!!』
襲い掛かる動物たちを前に、声を揃え、三人は武装を身に纏った。
「陣形は、私のワントップで?」
大太刀『闇纏』を鞘から抜きながら、紫苑は魎夜と興和に問う。
「いや、俺はモラを召喚して前に出す。――頼んだぜ、モーラット達!」
もきゅー、と可愛らしく鳴き声を出しながら、9体のモーラットが魎夜のイグニッションカードから現れる。
「僕は飛斬帽で後ろから」
そして興和は、刃は隠した飛斬帽『丹霞』を構えた。
「了解、それではよろしく」
手短に疎通を行うと、全員が動物たちの迎撃と制圧に入る。
「まずは殺さぬよう、手加減をしつつ……」
中型犬の突進を、犬を傷つけぬように器用に闇纏で受けながら紫苑は黒いオーラを纏う。
構わず刃に噛み付いている犬はひゃうんと弱い鳴き声を出すも、戦意は衰えていない。紫苑の周囲の動物たちも同様のようだ。
「まだ大人しくはなりませんか。……言葉が通じるかは知りませんが、死にたくなければ大人しくしてください」
殺意を乗せて睨みつける。と同時に、オーラによる生命力の吸収の度合いを高めた。
「でも、小動物を死なせないようにしないと」
威力の微調整が難しいが、ただ影響を受けて凶暴化しただけの動物を傷つけるのは紫苑としても不本意だ。
「これでも猫とか……動物は好きなんですよ」
なるべく手早く片付けようと、紫苑はオーラを丁寧に操るのだった。
一方で魎夜は、モーラットたちを指揮して動物たちの制圧を行っていた。
「俺だと加減効くか分からねえし、頼んだぜ、お前ら」
可愛らしいモーラットだが、その強さは外見と決して比例していない。もきゅっと鳴きながら馬にタックルすると、体格差が大きいのにぶつかった馬は物凄い勢いで吹き飛ばされ、そのまま動かなくなる。ただし気絶しただけで死んではいない。
そんなモーラットが9体も居て、魎夜の指示に従いながら縦横無尽に跳ね回れば、そこには気を失った動物たちの山ができていく。
「お前たちに一切恨みは無いんだけどな、どちらかって言うと怖いだけだろうし。
そんなわけで、大変申し訳ないけど、しばらく眠っていてくれや」
動物たちに謝りつつ、矢継ぎ早に魎夜はモーラットに指示を出していった。
そして紫苑や魎夜が前線を抑えているうちに、興和は後方から制圧攻撃を行っていた。
「結構な数が居そうだな……」
動物たちの挙動は人間とは異なる。サバイバルや狩猟の要領で動きを把握し、跳びかかってくるものには落ち着いて丹霞でガードして受け流し、盾のようにぶち当てて昏倒させる。
回り込んでくる個体に対しては、進行方向に逆鱗を放って動きを牽制。戸惑ったりたたらを踏んだところへ踏み込み、ツルハシ状の武器『三砂』の柄を足に絡ませて転倒をさせる。
「……怪我させて済まないねぇ」
できるだけ負傷させないように注意はしながら、動物の尻尾や足を掴み確保。逆鱗で浅く切り付け、仕込んだ麻痺毒で無力化していく。
見事な手際と様々な手段で、興和たち三人は次々に動物を制圧していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:四天霊障
わかりやすい『ご褒美』ですよねー、それって。
しかし…最後の一線にはまだ間に合いますからねー。行きましょうか。
傷つけずにですかー。いくつか手はありますがー、今回はこちらでー。
ええ、四天霊障で恐怖を与えましてー。まあこれは『効けばいいな』の範囲ですー。
UC使いまして。その作用のひとつ『生命力を奪う』でバテてさせます。動くにしても、活力いりますからねー。
あとは、四天霊障で軽く気絶させますかねー。
上野・修介
※アドリブ連携歓迎
価値観と善悪の判断が形成され切っていない子供に悪事の英才教育を施し立派な犯罪者に仕立て上げる。
しかもその子供が力を持っているというのだから、やる方としては『銃』を与えるコストを抑えられてお得だろう。
よくある話と言えば、よくある話だ。
「……クソが」
調息、脱力、己(内)と戦場(外)を観据える。
肚のそこから上がってくる反吐が出るような憤りを抑えて――されど消さずに、今はやるべきことに専心する。
相手は操られているだけのただの動物だ。
UCを用いて極力傷付けずに対処。
それでも止められない場合は殺さないように細心の注意を払いながら締め落とす。
多少ダメージを受けようと意地でも殺さない。
動物たちは、恐れを見せずに猟兵たちに襲い掛かかってくる。その姿は、この先に待つであろう少年少女たちの未来と末路を予期させた。
「……クソが」
上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が吐き捨てる。猟兵が説明した今回の事件の経緯は、彼の感情を大いに揺さぶっていた。
「価値観と善悪の判断が形成されきっていない子どもに、悪事の英才教育を施し、ご立派な犯罪者に仕立て上げるのかよ」
「快楽とはまた、わかりやすい『ご褒美』ですからねー」
独り言ちた修介に、悠然とした態度で接するのは馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)だ。あるいは年の功とでも言うべきか、良くも悪くも様々な世界で多くのオブリビオン事件に関わってきた身からすれば、なるほど手口は悪趣味、かつ巧妙であるという感想となる。
「しかもその子供が力を持っているというのだから、やる方としては『銃』を与えるコストを抑えられてお得でしょうね」
「冷たく言ってしまえば、才能が確定している少年兵のようなものですからねー」
そこに愛情、いや愛着などない。己の身が危険と察したら見捨てて逃走する辺り、本当に便利な手駒としか思っていない。修介も色々な悪行を見てきたが、しかし納得ができるかはまた別だと思い知らされる。
「しかし……最後の一線にはまだ間に合いますからねー。行きましょうか」
「ああ。……すみません、一度整えさせてください」
「ええ、落ち着くのは大切ですからねー。私は警戒と、先に迎撃をしておきましょう」
義透は修介へと注意が向かぬようにしながら、先に動物たちの対応を始めた。
「傷つけずにですかー。いくつか手はありますがー、今回はこちらでー」
義透の身体から無形の霊障が染み出る。義透たちの無念が形を成した『四天霊障』は、動物であろうと理性あるものに恐れを抱かせるのだが。
「『効けばいいな』という程度の期待でしたが、やはり効きは悪いようですねー」
動物たちの動きは鈍るも、襲い掛かかってくるのを止めはしないのは、やはりオブリビオンの精神面への干渉のためだろう。
「ならば、解くとしましょうかー」
ぶわりと、四天霊障から呪詛が周囲にあふれ出す。不可視のそれは、動物たちを洪水のように飲み込んでいく。
「生命力を奪って、バテてさせますよー。動くにしても、活力いりますからねー」
悪霊の呪詛など、動物たちに抵抗ができるものではない。まるで寒さで活動が鈍るように、動物たちの動きは悪くなっていった。
そうして義透が先に交戦している間に、修介は己の調子を整えていた。
「――フゥッ」
調息、脱力し、|己《内》と|戦場《外》を観据える。
肚の底から上がってくる、反吐が出るような憤りを抑えて――されど消さずに、今はやるべきことに専心する。
感情を制御し、修介も動物と相対する。
「お前たちは、操られているだけのただの動物だからな。悪いがその偽りの戦意、断たせてもらう」
野生動物との戦いは、このような状況でなければ一人の格闘家としては良い経験となったかもしれない。今はただ苦いだけだが。
「……ブモッ!?」
牛の突進に対して、その頭の正中に正拳突きを入れる。殺気を籠めた拳は寸止めしたが、牛は呆気なく気を失った。
とはいえこれは修介の手足から繰り出す以上、それほど連発できる攻撃でもない。数多くの動物たちは気にせずに突っ込んでくる。
「殺しはしない、意地でもな」
噛み付かれたりしたところで大した負傷とはならない、細心の注意を払いながらも、ことごとく締め落としていく。
次第に、ゆっくりとだが確実に修介を取り巻く動物たちは減っていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レーゲン・シュトゥルム
自身の手を汚さずに事を為す、か
確かに厄介な相手だな
時としてそう言う手を使う事もあるだろう
だが、それが性癖だというのは頂けんな
少なくとも私の趣味ではない
だから、止めさせて貰うぞ
【シルフィード・クローク】で視覚嗅覚での探知を不可能にしつつ進む
如何に凶暴化しているとはいえ、基本的に野生動物は警戒心が強い
得体のしれない物を無差別に襲う程では無い筈だ
とは言え、全ての個体が躊躇うとは限らないし、聴覚や周囲の変化から捕捉される事もあるだろう
油断せず【クイックドロウ】や【零距離射撃】で反撃できる様に警戒は怠らないが…
可能なら【足払い】で動きを止め【踏みつけ】て動きを封じ、【浄化】で力の影響を除去できればと思う
能力を使い、手軽で強い戦力を育て上げ、巨大な組織を作る。
「自身の手を汚さずに事を為す、か」
そういう行為を実行するにも適正というものがある。あるいは才能か。使える者が存分に駆使するというのは、字面だけ見れば悪いことではないのだが。
「確かに厄介な相手だな」
迫る動物たちをグラスの奥から眇め、レーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)は呟く。
「時として、そう言う手を使うこともあるだろう。……だが」
オブリビオンでなかったとしても、レーゲンからすれば好印象を持てる相手ではない。
「それが性癖だというのは頂けんな。少なくとも私の趣味ではない」
風が起こり、レーゲンの周囲に渦巻いた。
動物たちは思わず止まってしまう。
野生動物は視覚よりも嗅覚が発達しているものが多い。その彼らからして知覚の探知から消えたということは、そこには何も無いということ。……そう判断するしかない。
「止めさせて貰うぞ」
足音を立ててしまわないように気を払いつつ、竜巻を纏いながらレーゲンは歩みを進める。
他の猟兵たちが各々に無力化を行っている中を、レーゲンは警戒しながら慎重に歩いていく。
一部の猟兵とは目が合ったが、レーゲンの策を理解して、彼女はそこに居ないものとして立ち回っている。
あるいは、得体の知れない『何か』がそこにいる、というのを感じた動物もいるかもしれないが、基本的に野生動物は警戒心が強い。
「闇雲に不可視の|何か《私》を襲うより、眼に見える他の皆を優先するだろう」
遊撃担当として、愛銃『Sturm』|&《und》『Drang』のクイックドロウで、威力をかなり落とした魔法弾を撃ち込み制圧していく。
シルフィード・クロークは聴覚は隠せない。さすがに周囲の状況の変化から、レーゲンの存在を捕捉するものも出てくるが。
「別に、接近戦で後れを取るわけでもない」
足を払い踏み付ける。そのまま流れるような動作で銃口を向けるが、思いとどまり、発砲はせずにそのまま浄化を行った。
「すまないな」
そうして、レーゲンは次々と厄介そうな個体から無力化をしていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ネフラ・ノーヴァ
共闘、アドリブOK。
支配するとは何とも面白味に欠けるものだな。魅惑しつつもあくまで自由意志に任せるのが伽の楽しみというもの。
まずは獣達か、なれば本能に訴えよう。UCで手指から燃える血を放ち、盛り上がる火を見せる。おとなしくねぐらに帰るがいい。火に対する恐怖で退けば良し、それでも向かってくるものがあれば毛を焦がすくらいすれば十分だろう。猫だと好きが高じてつい可愛がろうとして引っかかれるかもしれない。
セシル・バーナード
白蛇女郎だっけ? いい趣味だなぁ。ぼくが食べちゃおうか。
さてまずは、この動物たちを抑えなきゃね。
砂塵蹂躙を展開。攻撃回数を5倍に、攻撃力を半分に。
これはあくまでも、砂鉄を含んだ竜巻。余程運が悪くなければ、死にはしない。ちょっとヤスリで削られるような思いをして、正気に返ってもらうだけさ。
正気に返ったら、メガリス『ソロモンの指輪』の力で、動物たちと話し合おう。
あの屋敷には、もう近づいちゃダメだよ。怖い怖いモノがいるからね。
さあ、住み処へおかえり。
動物たちはこれで片付いたかな?
解き放つ前に、シンフォニック・キュアで怪我を治しておいてあげよう。
そろそろ次の相手が出てくるかな? 実に楽しみだよ。
首魁であるオブリビオンの手口に憤りを示す者もいれば、あるいは別の感想を抱く者もいる。
「白蛇女郎だっけ? いい趣味だなぁ」
セシル・バーナード(サイレーン・f01207)にとって、オブリビオンのやり口は特に嫌悪感があるものではなかった。むしろ彼にとっては性向の合う同好の士とでも例えるべきか。
「ぼくが食べちゃおうか」
しかし、興味があるからこそ。どちらがより『上』なのかを示したい、彼女を味わいたいと感じるのだ。
一方でネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)にとって、白蛇女郎の『支配』とは、面白みに欠けるという感想となった。
「魅惑しつつも、あくまで自由意志に任せるのが伽の楽しみというものだ」
「なるほど、それも良いね」
その辺りは、支配に対するスタンスの違いというものだろう。従属する者をどのように扱うか。
管理、拘束、奉仕。双方が満足のいく関係であればそれでいいが、そもそもこの件での対立要因は思想だとかの問題ではない。猟兵とオブリビオンという事実のためだ。
「お楽しみは取っておいて、まずはこの動物たちを抑えなきゃね」
「フフ、そうしましょう」
ネフラは乳白色の手の先、人差し指を刺剣で軽く傷つける。
傷口から流れたのは、黒い血だった。それが、ぼっと大きな炎を上げる。指一本を立てているその様は、まるで燭台……いや、松明を持っているかのようだった。
「さあ、おとなしくねぐらに帰るがいい」
笑みを浮かべたまま迫られた動物たちが、怯み気圧される。火に対する恐怖と、それを操る者の一種異様さが、動物の本能を刺激していた。
とはいえ、それだけでは止まらない個体がいるのも確かだが。
「仕方ないわね」
ネフラが指を振ると、跳びかかってきた大きめの犬の顔に炎が着弾する。といっても、毛を焦がすぐらいで一瞬で鎮火させておく。少々情けない悲鳴を上げた犬は、そのまま逃げていった。そうして襲い掛かる個体に対しては炎で牽制を行っていく。
「私の分担はこんなものだな。……これだけやれば、後は私の好きにしてもいいか」
周囲の状況を確認してから、怯えている猫たちを可愛がるためにネフラは手を伸ばした。
なお、引っかかれながらも良い笑顔で猫ちゃんをわしゃわしゃしているのを、周囲は見て見ぬふりをしてあげたらしい。
「よほど運が悪くなければ、死にはしないさ」
セシルの周囲に、濃く黒い霧のようなものが発生する。よく目を凝らせば、それが微細な砂――正確には砂鉄だ――が舞っているのが見えただろう。
砂鉄は渦を巻き、竜巻へと変じ、そして大きく周囲へと拡がっていく。
文字通り、ヤスリで身を削るような痛みを受けて、動物たちは悲鳴を上げる。砂の密度を上げた分、攻撃力は落としてある。
先に痛い目を見せて、主導権を取った。そうしてからセシルはメガリス『ソロモンの指輪』の力を使い、動物たちに話しかけた。
――あの屋敷には、もう近づいちゃダメだよ。怖い怖いモノがいるからね。
「さあ、住み処へお帰り」
優しく告げると、動物たちもメッセージを理解したようだ。戦意を失くし、猟兵たちの前から次々と去っていく。
見送る表情は優しく、しかし次の瞬間には、人を蠱惑するような顔に切り替わる。
「……そろそろ次の相手が出てくるかな? 実に楽しみだよ」
遠くを見据える。
新たに、何かが迫ってくるのを猟兵たちは感じ取っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『犯罪能力者組織潜入』
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POW : 仲間の盾になれるよう、先頭を堂々と進む
SPD : 物陰に身を隠しながら素早く移動する
WIZ : 魔法やアイテムで自分の姿をごまかしながら進む
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
動物たちを退け、古びた屋敷が見えるようになった頃。その前に待ち構えるようにして、多くの少年少女たちが立ち塞がっているのを猟兵たちは視認した。
「彼らは我々が抑えます。良ければ、屋敷へ向かってボスを倒してきて頂きたい」
同行している処刑人たちが猟兵に話しかけてくる。手助けは必要かと問うと、僅かに言葉を濁した。
「……正直に言えば、ある程度はその方が助かります。我々だけでも戦力差でまず負けることはありませんが、こちらの損害も少々覚悟しないといけません。後から回復はしますがね」
威力がそれほど脅威というわけでもないが、なにせ相手はとにかく無遠慮に全力で攻撃してくるだろう。こちらはあくまで殺さずの制圧が目的なので、その分だけ戦法に調整の手間が必要となる。
「まあ、こちらの事情はそこまで考慮して頂かなくても結構、判断は任せます。これが我々処刑人の役割ですから。
それと、戦闘を避けてただ突破しようとしても向こうは追ってくるでしょうから、その点は気をつけてください」
伝達事項を伝え終わると、処刑人たちはそれぞれに詠唱兵器を構えた。
「なあ、誰が一番多く敵を仕留められるか勝負しようぜ」
「いいね! もちろんトップの奴は……」
「ああ、楽しみだな!」
目的も思惑も完全に食い違ったまま、両者は激突する。
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:四天刀鍵
UC使用(状態異常力)しつつ。処刑人の皆様に、改めて名乗っておきましょう。『馬県義透』ですー。
…ええ、これで『認識』は数多に。
相手はこちらを仕留める気満々ですからねー。手札のこれが生かせるかと思いましてー。
『悪霊』ですから、元より死んでますし(あっけらかん)
多少の怪我でもいいんですけどねー、私。
というか、そちらの方がいいですよねー。まだ一線を越えてないんですからー。
というわけで、攻撃はわざと避けずに受けます。
カウンターでの攻撃は、心のみ攻撃できる四天刀鍵にて。これで身体は傷つきませんよー。
ただ、斬ったときに麻痺+睡眠の状態異常与えますよー。
上野・修介
少年少女たちの確保と保護を優先。
この場に立つ猟兵としてその責任がある。
先ずは警告。
「大人しく投降するなら手荒なことはしない。身の安全は保証する」
「だが抵抗、逃走するというなら容赦はしない。その力も、やってきたことも遊びじゃない」
警告しながらUCを起動。併せて周囲の状況、保護対象の人数と味方の数と位置を確認。
警告終了と共に突貫。
UCによる氣の活性で自身を加速させ行動力を上げ、範囲内の対象の氣の阻害で行動を鈍化させ、当身と締め落としで極力傷付けないように行動不能に。
処刑人達と連携を取りつつ、淡々と対処していく。
事ここに至って出来るのは彼ら彼女らの軛を砕くことのみ。
せめて迅速に容赦なくそれを行う。
「先に行けという気遣いはありがたいが、俺にもこの場に立つ猟兵としてその責任がある」
「はい、少しは引き受けますよー」
上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)や馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、少年たちの制圧に手助けをすることに決めた。
「あ、処刑人の皆様に改めて名乗っておきましょう。私は『馬県義透』ですー」
「はい、|よろしく《Encantado》……?」
何故か、改めて義透に挨拶される処刑人たち。
「ありがとうございます、ではー」
首を傾げる処刑人ににこやかに笑いかけ、修介に続いて義透も前線へと向かった。
「……ええ、これで私の『認識』は、より数多に広まりますー」
しかし誰にも見せず隠した微笑には、鬱蒼とした陰が潜んでいる。
少年たちと距離を取ること約二十数メートル。彼らの|アビリティ《能力》による長射程攻撃の射程よりも少し外側に立った修介は、彼らに対してまず大声で警告を発した。
「君たち! 大人しく投降するなら手荒なことはしない。身の安全は保証する!
……だが抵抗、逃走するというなら容赦はしない。その力も、やってきたことも遊びじゃない」
同時に、己の内に留めていた氣――届く範囲は、シルバーレインの能力者のものよりもはるかに広い――を拡げ、圏の内側へと呑み込む。
だが、残念ながら修介の声は彼らには届かない。嘲笑とともに、修介へと射撃が放たれる。
「あははっ! お前なにカッコつけてんだよ!」
「……君たちにとって、俺たちと今戦ったことは良い切っ掛けであったと、後から思い返せるようになるよう願う」
そう呟き、修介は突貫した。
鈍化させた射撃を最低限の動きで躱し、活性化して加速した体捌きで当身と締め落としなどを入れ、次々と制圧していく。少年たちは呆気に取られる暇もない。
「えっ、当たらねえ!?」
己に迫る攻撃にはあまり気を配っていない。より正確には、周囲の状況、保護対象の人数、そして味方の数と位置……氣の圏内に在る様々な情報を、等しく把握し知覚している。敵地ど真ん中だが、むしろ極力傷つけないように注力する方に気を配っているぐらいだ。
「事ここに至って出来るのは、彼ら彼女らの軛を砕くことのみ」
迅速に、容赦なく。嵐のように猟兵の力が吹き荒れる。
修介が少年たちを制圧して周ると同時に、義透も交戦を行っていた。
「ひ、ひいっ!」
「おや、実に嬉しい反応ですー」
……いやそれは当事者にとって、およそ戦いと呼べるものではなかったかもしれない。
義透の身体に突き刺さる剣やナイフ。しかし斬りつけられようが避ける素振りも見せず、義透は飄々とした態度を崩さない。
そして義透にとっては、仕留める気満々で来られるのはありがたいし、むしろその方が良いとまで思っている。
「なっ、なんで死なないんだよ!」
「いえ私、『悪霊』ですから。元より死んでますし」
あっけらかんとして告げるその様が、少年たちの心胆をより寒からしめる。義透の傷はすぐさま癒えてゆくが、その様子はなぜか美しいものではなく、少年たちは恐れを――スペイン人ゆえに、『悪霊』という概念をあまり理解できていなくても――感じていた。
「一線を越えてしまうぐらいなら、私が受けておきますよー」
すっかり足がすくんでいる少年に、打刀『四天刀鍵』を振るう。その攻撃は身体を傷つけず心のみを斬り、一瞬にして少年を眠らせる。
悪霊は、子どもたちを優しく失神させていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
オブリビオンに操られている未成年の新米能力者ですか……。
「自分の意思で向かって来るなら多少の怪我は我慢してもらいましょう」
未成年といえども能力者。
動物とは違い、それなりに頑丈でしょう。
UCを使い、敵能力者の生命力を奪いながら一人ずつ攻撃していきます。
大怪我や死にかねない攻撃はしませんが、主に足を狙って身動きを取れないようにします。
「さて、少し痛い目を見て大人しくなっていただきましょう」
通常攻撃とUCである程度の手傷を追わせて身動きが取れなくなったら、
後は処刑人に任せてオブリビオンの居る屋敷へ向かいます。
「あとは任せて……オブリビオンを倒すとしますか」
酒井森・興和
言葉が通じるのは猟兵の利点だねえ
若い能力者の無力化を手伝うよ
11だった僕の初陣(土蜘蛛戦争)とはわけが違う
無闇に殺戮なぞ覚えて良いはずない
【おびき寄せ、逃亡阻止】三砂を手に
単に君らを狩るなら簡単なのだけどね
いっぱしの悪党も正体はリリスの操り人形
覚えたての肉欲を餌に使われる被害者だからね
出来れば生け捕りにしたいワケだ
(と、若干挑発し言葉を掛ける
常時彼等の動き【追跡】
此方に向かってくる数名纏め【威嚇射撃】としてUCで迎撃
麻痺に重点置きダメージは気絶や腰が抜ける程度に
逃れた子には隠密効果で接近
【怪力】でその武器を破壊
強気な子なら更に牙か三砂を寸止めして威嚇
可能なら屋敷内部等聞き出した後隠密効果で行動
「言葉が通じるのは猟兵の利点だねえ」
酒井森・興和(朱纏・f37018)はしみじみと、そして多少の皮肉を含めて呟く。銀誓館は結構な多国籍、いや他種族の生徒を有する学園だったが、そんなスケールが目じゃないほどの利点だと思う。
「言葉が通じても、意思が通じるわけではないのは悲しいことですけどね」
そして、呆れを含んだ天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)の言葉もまた事実であった。
「自分の意思で向かって来るなら、多少の怪我は我慢してもらいましょう」
「だね、無闇に殺戮なぞ覚えて良いはずない。僕の初陣とはわけが違うよ」
「初陣、……ああ、それは、そうですね」
興和の戦法、装備と見て、紫苑は何かを的確に察したようだ。気にしないでと興和は微笑み、二人は新米能力者たちの無力化の手伝いへと向かっていく。
「なんだお前ら! 正義の味方気取りかぁ?」
気合いだけは充分な少年たちの悪罵など適当に流し、興和は声を掛ける。
「その通りさ。そして僕たちは、単に君らを狩るなら簡単なのだけどね」
「なっ……、なんだとぉっ!?」
「いっぱしの悪党も、正体はリリスのただの操り人形。覚えたての肉欲を餌に使われる被害者だからね。
出来れば、とっとと生け捕りにしたいワケだ」
そう、軽く挑発を込めながらも、気配を察知して彼ら全体の動きを広く把握。こちらに向かってくる者、あるいは逃亡しようとする者など動きに注意をしている。
「こ、このー! ……うわっぷ!?」
特に捻りも連携もない複数人のバラバラの突進へ、威力は最低限に落とした蜘蛛の幻糸を放つ。頭部に絡みついた蜘蛛糸を剥がそうとするも、身体は麻痺してそのままくたりと少年たちは倒れ込んだ。
「え、ええっ?」
「遅いよ」
まだやや遠めの距離に居たために、糸からは逃れていた少年へと一気に接近。その手に持つ銃剣を握り潰す。
「なに、取って食いやしないから。……そうだ、君たちの根城である屋敷の、中の間取りとか情報を教えてほしいな」
怯える少年に、興和は戦闘前と同じ笑みを向けた。
「隠密も奇襲も想定してない、か」
興和が放った奇襲の蜘蛛糸に合わせ、紫苑は闇を纏いながら、少年たちの間へと静かに踏み込む。
場が混乱している間に、闇纏を使い主に足を狙って傷つけていく。もちろん腱を狙うだとか、あるいは大怪我を的確に狙うような攻撃ではない。軽い負傷となる程度のものだ。
「ぎゃっ! い、痛いよお!」
もっとも、それは『能力者として』想定されうる程度、という基準ではあるのだが。
|回復《ヒール》すればすぐに癒えるだろうが、能力者となってから初めての負傷と出血は、少年たちの戦意を折るには十分だった。
「君たちの未熟を咎める気はない、とは言わない。少し痛い目を見て、大人しくなっていただきましょう」
更に生命力を奪い、身動きが取れないようにしておく。
「あとは任せて……オブリビオンを倒すとしますか」
ある程度の人数を制圧すると、興和が彼らに屋敷のことを尋問しているのを認め、紫苑は後を処刑人に任せて屋敷へと向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒木・摩那
ボスに我々を向かわせるために、処刑人の方々が正面の子供たちの相手をしてくださるのはありがたいです。ですが、向こうはやる気十分。結局こっちの邪魔をしてくるならば、手間は変わりません。
ついでに、子供たちのお相手していきましょう。
先程の猛獣相手とは違って、こちらは人ですから、ヨーヨーで殴りつけるのも少し危ないですね。
ここは確実に素手でお相手しましょう。
【功夫】で戦います。
UC【龍顎龍尾龍撃乱舞 】を発動して、手数を増やしつつ、【電撃】と急所を微妙に外した【気絶攻撃】で子供たちを沈めていきます。
あとの更生の方は処刑人の方々にお任せしますね。
戦場の一部では、処刑人は少年たちとの戦闘がすでに始まっていた。
「えい、どうだっ!」
「おら、死ねぇ!」
しかし少年たちはまだ気づいていない。気持ちよく全力で放っている攻撃が、処刑人たちには大した損害を与えていないことを。
そんな偽りの一方的攻勢を見ながら、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は処刑人の加勢へと赴く。
「我々をボスへ向かわせるために、処刑人の方々が正面の子供たちの相手してくださるのはありがたいです」
「やああーっ!」
地元の路線なのだろうか? スペイン語で地名らしき単語が書かれた、そして燃えているバス停を、思いきり、隙だらけのモーションで少女が振り下ろしてくるのを、片脚を引いて半身になり軽く避ける。
「ですが、向こうはやる気十分。結局こっちの邪魔をしてくるならば、手間は変わりません」
そのままの勢いで回し蹴り、顎へと軽く入れる脳を揺らすカウンター。少女には、摩那の動きはきっと見えなかっただろう。声もなくそのまま頽れる。
「ついでに、子どもたちのお相手をしていきましょう」
まるで何もアクションを起こしていなかったかのような様子で、摩那はそのまま乱戦の中へと歩み入る。
ヨーヨーを使用しての制圧は、早々に選択肢から外していた。猛獣相手ならともかく、人というか能力者相手だとヨーヨーは危険な鈍器と変わる。殴りつけるのも少々危ない。
「素手でお相手しますよ?」
「んだとぉ? 手前っ!」
取り出したヨーヨーを、あえて見せつけてから懐に仕舞う。その仕草にあっさり乗せられた少年が、襲い掛かってくるが。
「あなたたちが、もし真っ当に|能力《アビリティ》について教育を受けていたら、『これ』が何であるかは理解できたかもしれませんね」
青龍拳士の|能力《アビリティ》がユーベルコードに変じた技、龍顎龍尾龍撃乱舞。
電撃を帯びた摩那の素早い連続攻撃、正拳突きが、回転蹴りが、身体から放つ衝撃波が、急所……は微妙に外しておくが、次々と子どもたちを沈めていく。
「ふう。あとの更生の方は、処刑人の方々にお任せしますね」
周囲の能力者を一通り気絶させてしまうと、摩那はそのまま先へと進むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
俺達みたいなちょっとはみ出した力を持っちゃった奴に、そんなのどうってことないって教える
学園設立前からの先輩たちの想いだ
望んで選ぶならまだしも、こんな形で道を間違わせるわけにはいかねえよ
【戦闘】
「(処刑人に)そんなわけだ、手伝わせてもらうぜ」
「(新米能力者たちに)遊んでやるぜ、どっからでもかかってきな。一撃当てたら、いや、かすりでもしたら、俺がご褒美をやるぜ?」
UCを発動し攻撃を「見切り」
実力差を理解させたら「気絶攻撃」
処刑人に敵の戦闘スタイルを伝える
ついでに新米能力者たちの攻撃を採点する(一緒にいる処刑人達が100点位の感覚)
後で能力者の基本、しっかり教えてやるから楽しみにしてな
銀誓館学園は能力者の素質がある子どもを育成する組織だが、創立したのはその彼らの親世代の能力者だ。
能力者についてほとんど何も知らなかった人々が、わけも分からないまま非日常の戦いを続け、生き抜き、次世代の能力者のために作り出した学園。
「俺達みたいな、ちょっとはみ出した力を持っちゃった奴に、そんなのどうってことないって教える。
学園設立前からの先輩たちの想いだ」
銀誓館に入学した者のきっかけは様々。決して、恵まれた環境の子どもたちばかりではない。
暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)も、そういう悪しき宿命を背負っていた。今ではもう過去の話だが。
「望んで選ぶならまだしも、こんな形で道を間違わせるわけにはいかねえよ」
悩む理由なんて無い。救いたいのだ、彼らを。自分がかつて救われたように。
「そんなわけだ、手伝わせてもらうぜ。前に出るからフォローは任せた」
処刑人に話しかけると、魎夜は堂々と新米能力者たちへ向けて踏み出した。
「なんだお前は、俺の魔法の餌食になりたいのか!」
「おお、威勢が良いねえ。遊んでやるぜ、どっからでもかかってきな。一撃当てたら……いや、かすりでもしたら、俺がご褒美をやるぜ?」
「何だとおっ! 馬鹿にしてんのか!?」
箒の先をこちらに向ける少年に、魎夜は笑いながら大声で語りかける。
「骨も残さず灰にしてやる!」
箒の先から撃ち出される巨大な炎。凄まじい速度で真っすぐ自分に迫るそれを、魎夜は射出前から動き出して回避していた。
「こんなものか?」
「ちっ、次は当てる! この、このっ!」
連射される炎弾を、魎夜は余裕の態度で軽々と避けていく。少年は完全に頭に血が上ってしまっていた。
――箒を武器にしている時点で、魔弾術士か土蜘蛛の巫女の二択。燃やすと言った時点で、使用|能力《アビリティ》は炎の魔弾と確定。突然、雷の魔弾に切り替えてくる可能性はあるが、新米能力者では恐らく同時に使用するキャパシティは無い。
魎夜は自身の過去の経験から、相手の取る戦法を完全に読み切っていた。
「射撃タイプの能力者は、単独で戦うものじゃない。前衛がいた上で、位置取りに注意をしながら攻撃するもんだぜ。まあ威力は良いから40点ってとこだ」
「あ、えっ?」
攻撃をするために足を止めてしまっている少年へと一気に踏み込み、攻撃を軽く当てて気絶させる。
「分かりづらくなるよう形状を隠蔽もしていない。武器を見れば、それで相手のジョブは読めそうだな」
身体を抱えたまま、処刑人にそう伝えておく。
「後で能力者の基本、しっかり教えてやるから楽しみにしてな」
聞こえていないとは知りつつも魎夜は少年にそう声を掛け、地面へと横たえるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
セシル・バーナード
ふふ、収穫し甲斐のある子供たちだね。オブリビオンに先に手を出されたのが惜しい。
玲瓏の声色を使って彼らに呼びかけるよ。
さあ、皆、武器を収めて。ぼくの言うこと聞いてくれたら、年増のおばさんより気持ちよくしてあげる。オトコノコもオンナノコも分け隔てなくね。
しゅるりとスカーフを緩め、「誘惑」と「催眠術」で新米能力者たちを籠絡していく。
さあ、いい子はこっちへ集まって。いうこと聞いてくれたご褒美は、ぼくの身体だ。どこでもどんな風にしてくれてもいいよ。全部受け入れてあげる。さあ、いっぱい犯して。
ああ、気持ちよかった。精魂使い果てた子たちは、処刑人の皆に任せるからね。きちんと回収しておいて。
残るは一人か……。
意気軒高な新米能力者たちを前にしてセシル・バーナード(サイレーン・f01207)は、心と身体が昂るのを自覚していた。
「ふふ、収穫し甲斐のある子供たちだね」
にこやか笑うセシルの表情が、この場には似つかわしくないものだと気付く者はいない。
「オブリビオンに先に手を出されたのが、実に惜しい」
そして、年若い少年少女を見て小さく呟く声も、誰にも聞こえはしなかった。
「なんだお前、何のつもりだ?」
両手を挙げながらゆっくり近寄ってくるセシルに対し、少年少女たちは武器を構えるだけで他に何もできない。確かに彼らはすっかり抱き込まれて戦意が高くはあるが、無抵抗(に見える)な人間に対して一方的に攻撃を仕掛けられるような精神は、まだ持ち合わせていない。
そして、注目してしまった時点で、彼らはすでにセシルの術中に嵌まっている。
「さあ、皆、武器を収めて。ぼくの言うこと聞いてくれたら、年増のおばさんより気持ちよくしてあげる」
耳障りの良い玲瓏な声色は、少年少女たちの精神をずくりと震わせた。
「もちろん、オトコノコもオンナノコも分け隔てなくね?」
しゅるりとスカーフを緩める仕草から、目が離せない。薄布一枚を取り払っただけなのに、酷く興奮させられる。
肌が見たい、もっと間近で声が聴きたい。あの身体を使わせてもらうのはきっと気持ちいい。もっと、もっと、もっと……!
「さあ、いい子はこっちへ集まって。いうこと聞いてくれたご褒美は、ぼくの身体だ。
どこでもどんな風にしてくれてもいいよ。全部受け入れてあげる。さあ、いっぱい犯して」
……理性が消失する瞬間を、彼らは自覚ができなかった。
「猟兵というのは、……凄まじいものですね」
事が終わり、処刑人がセシルに近寄ってくる。その声に震えが混じっているのは仕方がないだろう。
惨状と呼ぶべきか、ほとんど裸のセシルの周囲に倒れこんでいる少年少女たち。特に怪我をしているわけではない。文字通り精も根も尽き果てた、極度の疲労困憊状態というだけだ。
「だからこそ、力の使いどころはちゃんと選ぶけどね。ああ、気持ちよかった」
からりと元気な様子のセシル。ひとまず満足した彼は、子どもたちの回収を処刑人に任せると、服を着直しながら遠く屋敷を見据えた。
「残るは一人か……」
その声を聞いた時が、この作戦で最も恐怖を感じた瞬間だったと、ある処刑人は後に述懐した。
大成功
🔵🔵🔵
ネフラ・ノーヴァ
共闘、アドリブOK
力の足りぬ者たちが相手だ、そうだな、遊戯に興じるのも良かろう?
見目の良い少年少女を相手に定めて、攻撃の手を見切り踊るように避ける。
間合いに入り武器を持つ手を少々捻って落とさせれば手を取り輪舞(ロンド)に誘う。動揺したところに不意を突いて唇を奪ってみようか。
ここでは正気に戻らないだろうから、UC聖晶血界でしばし眠らせるとしよう。
さあ、甘い夢を見ると良い。
マリスマリナ・ネプテューヌ
説得による投降を目指します
嘆かわしい事です、年若き子供が悪の尖兵に仕立て上げられてしまうなどとは…
どうにか、更生させてあげられないものでしょうか
そんな思いを胸に、臨みます
並大抵の攻撃であれば、近くを浮遊する私の槍が勝手に防いでくれましょう
その間に接近し、手を握り、優しく抱きしめ、語りかけます
命を奪うと言うのは思う以上に怖い事ですよ、と
殺すと言う事はこの暖かさを奪うと言う事ですよ、と
そうして説得を試みるのですが
その実無意識下に寵姫の力を用い「誘惑」し【魅縛】のUCで心を奪ってしまいます
なんだか急に態度が変わった気も致しますけれど…
本当は皆良い子でしたね、安心致しました
アドリブ等何でも歓迎です
マリスマリナ・ネプテューヌ(神槍深姫・f38564)は嘆かわしき事態に心を痛めていた。純粋にして清廉な彼女の魂は、年若き子どもが悪の先兵に仕立て上げられてしまうことを看過できない。
そんな彼女に対して、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)が話し掛ける。
「貴殿は彼らに、言葉で説得を試みるのか?」
「はい、どうにか更生させてあげられないものかと」
その返答にネフラは興味を示す。制圧を選ぶ猟兵がほとんどの中、彼女が子どもたちの改心を心から望み、この場に臨んでいるのが理解できたからだ。
「フフ、であれば私が手伝おうか。説得している間にも向こうは攻撃してくるだろうから、私があしらっておこう」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
深海人のマリスマリナとクリスタリアンのネフラ。来訪者多きシルバーレインで立っても珍しき容姿を持つ二人が、即席でタッグを組む。
ふわりと浮遊したマリスマリナは、まずは近くに寄ってきていた少年へと距離を詰める。
「えっ、魚……人魚!?」
驚きながらも反応して思わず振り回したギターは、マリスマリナの周囲に浮く槍に呆気なく弾き返された。
攻撃されたことなど気にせず、少年の手を握り、優しく深く抱きしめてあげる。
「あっ……」
「いけません。命を奪うと言うのは、思う以上に怖いことですよ。
私の体温を感じますか? 殺すと言うことは、この暖かさを奪うと言うことですよ。……さあ、武器を手放しましょう」
「は、はいっ! もうこんなことはしません!」
吐息の感じられる距離で、少年の目をしっかり見て、真摯に語りかける。劇的に顔を紅潮させた少年は、すぐさま持っていたギターを手放してしまった。
「ありがとうございます」
マリスマリナは説得がうまくいったことを純粋に喜んでいたが、実のところは無意識に|魅縛《テンプテーション》を用い、少年の心を奪ってしまっていた。彼女の寵姫の力は、オブリビオンによる篭絡を塗り替えたのだ。
無力化した少年を処刑人に引き渡し、マリナステラは次の救うべき子どもの元へと向かう。
「なるほど、大したものだな」
そんなマリスマリナの様子を見ながら、ネフラは多数の能力者たちの攻撃を避け続けていた。マリスマリナは説得を一対一で行っている……どうも言葉のみでの説得ではないように見受けられはするけれども。
しかしここは乱戦の中だ。周囲から飛んできている攻撃は宙を舞う槍が防御していて問題なさそうだが、万が一の可能性は低くしておくに限る。
「さあ、私に触れられる者は、一撃を入れられる者は居ないのかな」
……などと理由は付けているが、力の足りない者を相手して遊戯に興じたかった、というのもネフラの本心。見目の良い少年少女に集われるのは楽しいものだ。
「ちっくしょ、なんで当たらないんだよ!」
「さあ、なんでだろうな」
純粋に力量の差だが、一々指摘はしない。見目の良い少年少女を相手することを喜びながら、攻撃の手を見切って踊るように避けていく。
「|輪舞《ロンド》にそんな物は不要だろう」
するりと間合いに入り、手を捻って所持する木刀を落とす。そのまま引き寄せ、くるりくるりとステップを踏む。驚いている少年に、ネフラは不意をついて口づけた。
「ん、むーっ!?」
すっかり動揺してしまっている少年に、神性の結界を放ち眠らせる。正気に戻すのは後回し、今はまず無力化だ。
「さあ、甘い夢を見ると良い。目が覚めた頃にはすべて終わっている」
眠る顔に優しく告げると、ネフラは次のパートナーをダンスへと誘っていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
バッファロー・バイソン
動物たちは沈静化したが、まだ鎮める必要のあるのがいるのか。
人間か。しかも、異能力を持った者共が。
じゃあ、軽く【プロミネンスドライブ】使っていく。
思いっきりやるが、体当たり程度に押し留めて軽くいなしていく。
「んもぉおおおおおおお」(怪我したくなければ、降参するべきだぜ)
他の猟兵のところに軽く誘導すれば大丈夫であるだろうし。
レーゲン・シュトゥルム
多少援護しつつ進むとしよう
|何方にも《・・・・》被害が少ないに越した事は無いからな
此処でも【シルフィード・クローク】で視覚嗅覚での探知を不可能にしつつ進む
シルフィードの本業能力「旅人の外套」なれば能力者に捕捉されるだろう
だが、この力は全く別物だ
魔剣士の闇纏いもそうだが、「能力者を前にして、本業能力の姿隠しは役に立たない」と言う先入観を利用させて貰うぞ
手早く進みつつ【クイックドロウ】や【スナイパー】の腕を駆使して少年達の詠唱兵器を撃ち抜き無力化
処刑人による制圧を容易にしておく
必要なら直接【足払い】で動きを止め【踏みつけ】て動きを封じ様と思う
…まだ染まり切っていないならば引き返せるさ
だから怨むなよ
鏡宮・ノエル
猟兵になれたから、故郷世界に来れたけれど…随分と様変わりしてるなぁ。世界結界が一度なくなりかけてたって本当?
うんでも、それが時の流れってものだよね。
UC使いつつ、大狼たるヴァーイに乗って駆け抜けよう。…スピード出されると、しがみつくになるんだけど。
猟兵として初陣な今の僕だと、遠距離攻撃は向こうの方が射程有利だね。
けど、そこは桜學府制服・和にある認識錯誤術式で距離感、それに僕とヴァーイの位置をずらす。
そういう齟齬で出来た隙は、致命的だよ。能力者同士の戦いだったら、なおさらね。
大丈夫だよ、このUCは相手を清めて眠らせるだけだから。ついでに、怪我も治るしね。
おやすみ。起きたら、歩き直しの始まりだよ。
「んもぉおおおおおおおおお!」
「ゥオーーーーーーンッ!」
「ひゃあぁぁあああ!」
「うわあーーーーっ!」
端的に表現すると、戦場は混乱と混沌を極めていた。
新米能力者たちの身を吹き飛ばさんばかりの強風が吹き荒れる中、燃え盛る炎を身に纏う猛牛と、背に誰かを乗せた大きな犬が走り回っている。
一般人とは隔絶した力を持つ少年少女たちだが、だからといって例えば車のようなサイズの牛――しかも物凄い勢いで鳴いているし燃えている――の突進や、子どもなど易々と食い千切りそうな巨大犬――実際には狼なのだが、それが彼らに分かる筈もない――が駆け回っていたら、防御して耐えるだとか|能力《アビリティ》で迎撃するだとか、そんな適切だろうと考えられる行動が咄嗟に選べるわけがない。
そんな風にパニック映画さながらの様相を呈してはいるが、しかし場を引っ掻き回している側の猟兵たちは、至って冷静に行動をしていた。
時は少し遡る。
「動物たちは沈静化したが、まだ鎮める必要のあるのがいるのか」
散々牛たちと角合わせを行い、興奮した精神を一旦静めているバッファロー・バイソン(猛牛・f38640)。
「次は人間か。しかも、異能力を持った者どもが」
標的が何であろうが、為すべきことは変わらない。恐れる理由もない。軽くいなしてやろうと再び気合を入れるのだが、そんな彼に声が掛かる。
「制圧の方法、多分似たような方法だよね。一緒にどうかな」
大狼たるヴァーイに乗った鏡宮・ノエル(よく圖書館にいる學徒兵・f38658)と、ノエルとの雑談を一旦切り上げたレーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)だ。
ノエルは普段サクラミラージュで桜學府に所属しているのだが、元々の故郷はこのシルバーレインであり種族はクラウソラスだ。猟兵になったことで戻ってきたのだが、様変わりした世界の様子と時の流れに戸惑き驚いている。そんなノエルに、最近のシルバーレイン世界の経緯や現在の動向などを、レーゲンが話していたのだ。
世界結界が一度なくなりかけたこと、二つの三日月……話題は尽きないが、まずは為すべきことを為さねばならない。
「ふむ、手伝ってもらえるなら助かるな」
「私も援護をしよう」
ということで、即席のチームが組まれたのだった。
「ぶもおおーーーぉっ!」
――怪我したくなければ、降参するべきだぜ!
吼えながら走るバッファローの走りは、実はそこまで速くも激しくもない。プロミネンスドライブでの炎纏と鳴き声という演技、演出が、子どもたちに大いに恐怖心を与えている。
「きゃーー!」
なので、実際には本当に軽く体当たりをする程度。それだけで、新米能力者たちは気を失ってしまう。もちろん踏み潰すようなことはしない。
注意しながらもバッファローは突き進む。
「……スピード、出されると、しがみつくので、精一杯、だよ!」
一方、割と必死にヴァーイに掴まりながら、ノエルたちは戦場を駆け回っている。少年少女たちも新米だが、自分も猟兵としては初陣、気を抜く気も侮る気もない。任務は十全に達成させなければならない。
遠距離射程の攻撃を避けるべく、着ている桜學府の制服から認識錯誤術式を発動させ、彼我の距離感や自分たちの位置を錯誤させる。
「ひっ、来るなぁ!」
ただでさえヴァーイの威容に気圧されているのに、術式まで使われたら攻撃など余程当たるわけがない。
「そういう齟齬で出来た隙は、致命的だよ。能力者同士の戦いだったら、なおさらね。」
桜よ……」
駆け抜ける風とともに、白桜の花吹雪が舞い起こる。
戸惑い驚きながら周囲を見回す子どもたちは、抵抗もできずふわりふわりと眠りに就いていった。
「おやすみ。起きたら、歩き直しの始まりだよ」
彼らの前途に、幸多からんことをノエルは願う。
「望ましい状況だ。|何方にも《・・・・》被害が少ないに越したことはないからな」
……そしてレーゲンは、一頻り混乱している場の中を、竜巻を纏いながら手早く進んでいた。
シルフィード・クロークによる隠密能力は、シルフィードの本業能力である『旅人の外套』とよく似ている。旅人の外套は魔剣士の『闇纏い』と同じく、能力者やゴーストから姿は隠せない。しかしこれはユーベルコード、力は全く別物だ。
「『能力者を前にして、本業能力の姿隠しは役に立たない』という先入観、利用させて貰うぞ」
ましてやこの状況下だ。ここで聴覚や触覚による感知が試みれるのなら、新米などと名乗るのは逆に大いに詐欺だ。
レーゲンの冷静なクイックドロウが、少年たちの装備している詠唱兵器をことごとく撃ち抜いていく。彼らはどこから攻撃されたのかも理解はできなかっただろう。もちろん身体に当てるような下手を打ちはしない。
闇雲に武器を振り回したり、乱射するような子どももいたが、むしろそれは同士討ちが危ない。素早く接近して足を払い、踏み付けて動きを封じてしまう。
「畜生、放せよ!」
「……まだ染まり切っていないならば引き返せるさ。だから怨むなよ」
もがく少年の気を失わせると、同じように危ない行動をしている者を見定め、そちらへ歩みを進めるのだった。
新米能力者の制圧は完了した。彼らの身柄は処刑人に任せ、猟兵たちは、オブリビオンの待つ、いや逃走しようとしている屋敷へと向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『白蛇女郎』
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POW : 白蛇群襲
レベルm半径内に【着物の内側に隠れた、毒牙を持つ無数の白蛇】を放ち、命中した敵から【自由】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
SPD : 毒の接吻
【紅の塗られた唇による接吻】が命中した部位に【状況に応じた白蛇の毒】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
WIZ : 隷属篭絡術
【他者を魅了し隷属する色仕掛け】を籠めた【篭絡術】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【自由意志】のみを攻撃する。
イラスト:ちはなえ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「加賀・依」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「! ……ああ、助けてください……!」
猟兵たちの姿を認めるや否や、その女はさめざめと涙を流しながら語りかけてきた。距離はしっかりと保ちながら。
侵入した屋敷の中、広い玄関ホールの奥に白蛇女郎はいた。より正確には大きな窓際だ。
ホールの中の対角線上、彼女の居る場所とは全く反対のところには、一抱えもありそうな札束や高価な品々が床に積み上げてある。今までに様々な手段で収奪してきたものだろう。
肩を震わせて俯く様は、何かしらの苦難に直面しただ戸惑う、一人のか弱い女性のように見える。
「あちらの金品はすべて差し上げます。ですから見逃していただけませんか?」
懇願する白い顔を、仄かに紅潮させる。
「それでも満足できませんか、……ああ、どうしましょう」
顔を上げ、立ち上がる仕草で、ごく自然に僅かに着物をはだけさせる。白い肌を晒し、もっと見たい、そんな風に見る者の情欲を掻き立てる。
「お望みのまま何でもしますから、いかがですか?」
本心を完璧に隠し、怜悧に平然と、白蛇女郎は交渉を持ち掛けてきた。
セシル・バーナード
ふうん、いいよ。そのカラダ、使わせてもらおうか。
手を引いて、窓際から離れたところへ移動。簡単に逃げられる位置取りをさせるわけにはいかないからね。
さて、籠絡するのはぼくか相手か。
「誘惑」と思考を奪う「催眠術」で勝負だ。皆の前で睦み合いだけど、「恥ずかしさ耐性」があるから平気。むしろ一緒にしないか誘っちゃう。
さて、暖まってきたところで、至近から目を合わせ「全力魔法」の黄金魔眼。身動きを封じるよ。
そのまま「暗殺」で急所を貫いて。
んー、やっぱりあの子達の方がよかったよ。年増のおばさんは趣味じゃない。
それじゃ、後は皆に任せるね。いたいけな子供達を悪い道に引きずり込もうとした罪、しっかり刻み込んであげて。
クライド・エント
「噂には聞いていたが流石リリス、色っぽいな」
櫻井・優(f29623)と
取り敢えずUCや【切り込み】でどんどん攻めて、相手の攻撃は【武器受け】で流してく
「力自体は大したこと無さそうだな…そろそろ決めるか」
ただ色仕掛けをされて誘惑されると、ついつい食いついてしまい篭絡されちまう…
(何とか気合い入れて抜け出すことも考えるけど、さらに誘惑されると快楽に負けてそのままでもいいかってなりそう)
櫻井・優
「リリス相手か、やっぱり見た目は美人だなあ…」
クライド・エント(f02121)と
【SPD】
相方を一緒に戦闘に移ります!
【先制攻撃】で牽制、その後はタイミングを合わせて攻撃してく
ただ途中、相手に近づいた相方の様子がおかしい…
「クライドさん?大丈夫ですか!」
(様子が変だしこうなったら自分が!)
一気に勝負を決めようとするが、迂闊に近づいたところを蛇に絡め取られて抱き締められる…
そのまま接吻をされると、魅了の毒によってリリス相手に恋をしているかのような感覚に陥ってしまう
(このままじゃ…けどこんな美しい人なら何でも言うことを聞きたくなる…)
※魅了されたあとについては結果はお任せします
改めて強調するまでもなく、白蛇女郎の誘いは明白な罠だ。
しかしそれでも、猟兵が警戒していたとしても、気を抜けば魅了されてしまう可能性はある。リリス型オブリビオンというのは、徹底的に対人の感情に特化した存在なのだ。
「リリス相手か、やっぱり見た目は美人だなあ……」
「ああ、噂には聞いていたが、さすがリリス。色っぽいな」
つるりと滑らかな白い肌が目に眩しい。櫻井・優(人間のヴィジランテ・f29623)とクライド・エント(だらしない海賊・f02121)は、白蛇女郎に対してつい本音を漏らしてしまう。
「なら、このまま見逃してくれる?」
「それは無理だ」
「ああ、見逃せないよね」
理性で本能を押し止める。優とクライドは、息を合わせて同時に白蛇女郎へと攻撃を仕掛けた。
優が正面からバスタードソードで斬りかかる。白蛇女郎はその斬撃を躱すが、悠の背後から躍り出たクライドが炎の弾丸を撃ち放った。
「くっ!」
大きな火炎が真っすぐ飛んでくるのに対し、白蛇女郎は身を捩り直撃は避けるも倒れ込んでしまう。追撃で優が剣を振り下ろすが、着物の内側から伸びてきた白蛇たちが斬撃を受ける。幾匹かの蛇の身が切断され、宙を舞った。
優はそのまま剣を押し込もうとするも、白蛇女郎は優を蹴り飛ばしてしまう。攻防は一旦仕切り直しとなった。
優が前衛、クライドが後衛から炎弾を撃ち込み、時に前に出て斬り付ける。交戦は続くが、決定打は与えられなくてもクライドと優の連携は、的確に形勢をこちらに優位に傾かせていく。
「力自体は大したことなさそうだな」
白蛇女郎は接近戦、というかそもそも戦闘が得意なタイプではないというのが理解できる。戦う中で、白蛇女郎の着衣は更に乱れていった。
――そろそろ一気に決めようか。
その肌に見惚れながらもふと抱いたクライドの思考は、適切な戦況判断ではない。自分に都合が良いだけの慢心だった。
「あら、口がお留守よ」
「んぐ、……ぷはっ!?」
「クライドさん!?」
白蛇女郎は突如として蛇たちを伸ばし、クライドの頭を捕まえる。そのまま強い力でクライドを引き寄せた白蛇女郎は、激しく優の唇にむしゃぶりつく。
クライドの喉が動き、ごくりと何かを飲み込んだ。
「大丈夫ですか! ……えっ!?」
まずい事態だと判断し優はクライドを助け出そうとする。しかしクライドは、優の声など聞こえていないかのように白蛇女郎とキスを交わし続ける。
――まずい、これは毒だ。なんとかしないと……。
身体中が熱い。この唇をもっと貪りたい。クライドは霞む思考でなんとか抗おうとするが、次第にその抵抗も弱まっていく。
「ほおら、こんなに硬くなってきてる」
細い指先が、クライドの股間をズボン越しに軽く撫で回す。あまりの快感に身体が跳ね、それだけでクライドは軽く達しそうになった。……が、もどかしいタッチは、残酷にもすぐ止められてしまう。
「……私を逃がしてくれるなら、続きをしてやるよ?」
白蛇女郎の、あまりにも甘い提案だった。
「どうしたんですか、様子が変ですよ!?」
そこに、何らかの攻撃を受けたなら早く救助した方が良いと判断した優が斬り込んでくる。しかし迂闊な一撃は、容易に蛇たちに絡め取られてしまった。呆然としたまま身体中を蛇に拘束される優。同じように身体を引き寄せられ、抱き締められて白蛇女郎の接吻を受ける。
「ん、んぐっ」
優の口内に差し込まれる、冷たい白蛇女郎の舌。そのまま口の中を情熱的に丁寧に擦り上げていく。まるで愛撫をされているようだ。口の中に溜まった唾液を飲み込むと、快楽が身体中に染み渡る。まるで、恋人と睦みあっているかのような気分になってくる。
――このままじゃ……けど、こんな美しい人なら何でも言うことを聞きたくなる……。
蛇たちが服の中に潜り込んでくる。鱗が肌を擦る感覚が、奇妙なくらいに心地よい。
ぼやけた理性に、愛しい女性の声が甘く響く。
「二人ともいい子ね。それじゃ私は逃げるけど、お礼にイかせてあげるよ」
二人はかくかくと頷き、白蛇女郎は心の中で侮蔑の笑いを浮かべた。
目の前の窓から逃げ果たすまで、あと少し。
「うん、見事な手際だね」
しかし、そこにあっさりとした横槍が入る。
「なっ!?」
白蛇女郎にいつの間にか接近していたセシル・バーナード(サイレーン・f01207)が、クライドと優を蛇の拘束から引き剥がした。
「でも、彼らにだけするのはもったいない。ぼくがそのカラダ、使わせてもらおうか」
助け出した二人のことは顧みもせず、セシルはにこやかに微笑む。淫らな空気が周囲を覆っているが平然とした様子だ。
「……なるほど、良いわよ? 好きなだけ愉しませてあげる」
白蛇女郎もすぐに察した。この中性的な少年は自分と同種、獲物を快楽で篭絡させる存在だと。
だから、行われるのは、性交を手段とした純粋なる戦闘であった。
全裸で身を絡め合う二人。周囲の目など気にならない、むしろ昂るための良い演出だ。セシルは間近で倒れ込んでいるクライドと優も誘おうかとも思ったが、明らかに利敵行為になりそうなので自重した。
「どう、イイ感じかい?」
真っ白な肌に赤みが差していくのが、実にそそられて良いねとセシルは褒めてやる。
「まあね、でも……こんなもの?」
不敵に笑うが、余裕をなくしつつある白蛇女郎。しかしセシルは快楽に流されておらず、涼しい顔で答える。
「いや、暖まってきたところだよ」
腰を抱えていた手を、白蛇女郎の頭に回す。キスをするのかと、そして淫毒を流し込もうと口を寄せてくる白蛇女郎を、セシルは哂った。
「……!?」
至近で合わせたセシルの眼が、黄金に輝く。全力の魔法が白蛇女郎の身動きを、蛇すらも巻き込んで完全に封じていた。
悲鳴もすら出せなかった。
セシルの指が、白蛇女郎の急所に刺し込まれ、深く貫く。
辛うじて表情を歪めるだけしかできない白蛇女郎に、セシルはあえて、期待外れだったと言わんばかりの冷めた表情を向けた。
「んー、やっぱりあの子たちの方がよかったよ。年増のおばさんは趣味じゃない」
指を抜き去り、白蛇女郎の着物で拭うと、服を着ていく。
「それじゃ、後は皆に任せるね。いたいけな子供たちを悪い道に引きずり込もうとした罪、しっかり刻み込んであげて」
放埓であることは自認しているセシルだが、決して無茶苦茶というわけではない。彼には彼なりの強固なルールがあり、それを逸脱した存在は許し難い。
クライドを優を背負いつつ、セシルは後を他の猟兵たちに任せ、戦場を離脱するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鏡宮・ノエル
あー…オブリビオンになっても、手管はリリスだね、あなた。
関心はするけど、それで逃がすと思う?
僕はヴァーイに乗ったままさ。その蛇は見切ってるし、そもそも神罰結界を張ってある。
弱いけど…時間稼げれば避けられるしね。
さて、あなたは気づいてないと思うんだけど。
地中潜航してるブレックがいてさ。そのブレックが蛸触手でぺちぺちん、とすれば準備完了。
【神の鎖】発動。剥がすも何も、あなたには見えてないからね、この式神。
僕がここにいる限り、あなたは逃げられない。
引き寄せてるから、自然とその窓からも離れていく。
そこへレグンレグナとソーリグクラートで攻撃していこう。
幼子たちを食料にしなかったことだけは、誉めてあげる。
着衣を直し、息を整える白蛇女郎。そこにヴァーイに乗ったままの鏡宮・ノエル(よく圖書館にいる學徒兵・f38658)の感心したような声が掛けられる。可能な限りの呆れの感情を存分に込め、眉を顰め、失笑を浮かべながら。
「あー……オブリビオンになっても、手管はリリスだね、あなた」
いっそ感心してしまうほどに、そのやり口はノエルの記憶の中にあるゴーストと変わっていない。まあ別に変わっていたとしても嬉しくないし、オブリビオンとならずに滅んでしまえば良かったというのが、シルバーレインの能力者の総意であろうが。
「褒めてくれて嬉しいわ。……それで、あなたはどう? 最高の初体験を私のナカでさせてあげるよ?」
「却下だよ」
厳しい表情のままの白蛇女郎が、それでも交渉を持ち掛ける。さすがはリリス、初見でも自分の性別を間違えないことだけは見事だと思うが、当然ノエルは却下する。
「逃がすと思う? 大人しく首を差し出しなよ」
「でしょう……ねっ!」
着物の内側から無数の毒蛇が飛び出し、ノエルたちに絡みつかんと勢いよく迫る。
ヴァーイの首筋を指先で叩くと、意を解したと言わんばかりにヴァーイは蛇たちの動きを見切り避けていった。
「逃がさないと言っておきながら、そっちが無様に逃げ回るだけなの?」
一匹だけなら脅威でも何でもないだろうが、それが無数となると毒蛇は大いに危険な存在となる。
ヴァーイの回避を掻い潜ってくる個体が、あらかじめノエルが張っておいた神罰結界に当たる。それで生まれる動きの阻害は僅かだが、まだ未熟と自覚しているノエルでも対応を取るには十分な時間を生み出していた。
そして攻め立てつつも、白蛇女郎の意識は窓の外へと向いている。均衡が崩れた時に彼女が行うのはノエルへの一点攻勢ではない、窓からの逃走だ。
「いや、あなたが気づいていないだけだよ」
しかしノエルは待っていた。地中に潜行している蛸、ブレックの合図を。
「やはりあなたはリリス、そう戦い慣れてはいないね」
そして、ぺちんぺちんという音と共に、ノエルは|神の鎖《グッドゥ・シェドジァ》を解き放った。
「こんなもの、……えっ、何これは!?」
身体に絡みつく鎖を引き離したり千切ろうとするも、まったくどうにもできない。抵抗虚しくそのままじりじりとノエルの方へと引き寄せらていく。
鎖に触れられた瞬間に、白蛇女郎には理解できた。これは物理的な力で対処できるものではないと。そして、彼女にはこの攻撃の絡繰りが、結局理解できなかった。……そう、ただでさえノエルたち高速で駆け回っているのだ。もちろん自分たちに注意を向けるように、意図的に派手に。
まさか、こっそりと自分の背後の足元から出てきた蛸が、その背に式神刻印を貼り付けたなど。そしてその刻印は、そもそも不可視であるなどというのは、白蛇女郎の想定にはない戦法だった。
「……放せ、放せっ!」
「無駄だよ。僕がここにいる限り、あなたは逃げられない」
じりじりと窓から離れ、近寄ってくる白蛇女郎へと『レグンレグナ』と『ソーリグクラート』の二丁の拳銃の銃口を向ける。
神力で作られた弾丸の連射が、白蛇女郎へと浴びせられた。そこには一切の遠慮はないが。
「幼子たちを食料にしなかったことだけは、誉めてあげる」
ただ、無闇に弄ぶような真似はせず、ノエルは全力で弾丸を撃ち込んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
調息、脱力、敵を観据える。
――為すべきを定め、心を水鏡に
ここに至って敵と言葉を交わす必要性は皆無。
この拳を以て、ただ打ち砕くのみ。
心身から余分なモノを排し、己をただそれだけの機構と化す。
UCを起動し自身の氣を活性化し知覚能力を加速させ、相手の視線、筋肉の動き、呼吸等から逃げ道を読み、アサルトペンを投擲して動きを牽制。
また敵をUCの範囲内に捉えたら『氣』の流れを阻害し行動を鈍化させる。
また自身の周囲に速い『流れ』の層を形成し敵からの攻撃を受け流す、或いは軌道を反らして対抗。
懐に入ったら渾身のラッシュを叩き込む。
(補足:一連の事で内心かなりキレてます。一切敵と会話をさせないようにお願い致します。)
討つべき敵を前にして、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は速やかに気息を整えていた。
その挙動を視界には捉えつつ、深く内観。
調息、脱力、敵を観据える。
「ねえ、……ちょっと聞いてるの?」
甲高い雑音は煩いが、それを無視することが肝心。耳を傾ける意味がない、理由がない。ここに至って敵と言葉を交わす必要性は絶無。
今から行うのは戦いではなく、討伐、いや駆除であり排除だ。この世界に巣食う宿痾を、一つ、取り除くための作業。
――いや、こう気負うこと自体が、すでに冷静ではないか。
一連の経緯を目の当たりにして、修介は己の感情が大いに沸騰していることを自覚する。
――為すべきを定め、心を水鏡に。
握り込む拳に、雑念を交えてはならない。
「おい! お前は……」
「この拳を以て、ただ打ち砕くのみ」
心身から余分なモノを排し、己をただそれだけの機構と化す。
そうして、氣を活性化し拡げ、修介は臨戦態勢へと移行した。
瞬間的に、まず白蛇女郎の視線が向いたのは引き離された窓、次に修介の後方奥の廊下。そして握り込まれた修介の拳を見て、最後に足元へ向かう。
脹脛の筋肉に力が籠められる。どこかの方向に一気に駆ける気だ。
蛇の動きを指示するのだろう、右手の指先すべてが僅かに動く。
――逃走のために今、背を向けるのは危険すぎる。拳の一撃ぐらいは貰っても仕方がない、蛇を放って足止めして、全速で駆けてこの男が追いづらい後方へと逃れる。
……加速させた修介の知覚能力は、白蛇女郎が仕掛けてくる攻撃を、次の行動を、手に取るように把握していた。
白蛇女郎は、息を吸い、呼吸を止め、……今だ!
「……ぎっ!?」
だがその『起こり』は、完全に潰された。
周囲を覆う氣の流れによって鈍化させられ、投擲されたアサルトペンによって手を強く打ち据えられる。
着物の内側から無数の蛇が修介に襲い掛かりはする。だが制御が失われたそれらは、前方に向かって跳び出していくただの蛇の群れ、という状態に過ぎなかった。
自身の周囲に速い『流れ』の層を形成し、修介は無秩序な蛇の大群を受け流し、或いは拳で軌道を逸らして躱していく。
「ひッ」
瞬く間に懐に踏み込んできた修介を見る白蛇女郎の表情は、恐怖に満ちていた。
しかし、だからどうという事はない。
害悪を打ち砕かんと、その身に修介の渾身のラッシュが叩き込まれる。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
桃花琴弓を弾きつつ
集めた宝物類と、この期に及んでの色仕掛け…というやつですねー。
はは、逃がすわけないじゃないですかー。仮にも…忍びとして、似た手管を使っていた私としても、ね。
(使えるものは、自分の身体でさえ使っていた忍者)
本心は、ここから逃げおおせることでしょう?
魅了は効きませんよ。この桃花琴弓…対妲己用に作りし宝貝があるかぎり。彼女に比べて、児戯ですからねー。
そうして、UCを使用。これで、逃げるも何もありませんよ…貴女の行動は、失敗すると思いなさいなー。
桃花琴弓から霊力矢を生成、射ていきましょう。
貴女の野望はここで終わるのです。そう、全てね。
「おや、随分とそそる姿ですねー」
琴宝貝『桃花琴弓』を弓弾きながら、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はのほほんとした態度で白蛇女郎に呼びかけた。
日本からは遠く離れた異国の地で、着物がよく似合う男女が出逢う。中々に奇妙な光景であった。
「あなたはもう枯れてしまっているの?
わたしがもう一度、熱くさせてあげましょうか。それとも女よりも宝が好み?」
齢五十を過ぎた外見の義透にも、媚びるような笑顔を浮かべる白蛇女郎。実際彼女であれば、中年の男であろうがその手管で存分に奮い立たせ、快楽を与えることができるだろう。
座り込んで足を緩く開くと、股の奥がもう少しで見えそうになる。媚びるような表情は、男であれば誰しもが絆されるだろう。
しかし、その『誰しも』には該当しない例外もある。
「はは、逃がすわけないじゃないですかー。仮にも……忍びとして、似た手管を使っていた私としても、ね」
集めた宝物に色仕掛け、己の持つ手札を存分に駆使するその在り方は、義透にとってそう軽蔑するようなものではない。彼も忍者として、使えるものは自分の身体さえ使っていた側だ。
服をはだける様に合わせるように、義透は桃花琴弓の音色を響かせる。
「本心は、ここから逃げおおせることでしょう? さあ、次の手札は何ですかー?」
「そんな、酷い……」
白蛇女郎も徐々に焦りを見せ始める。義透から仕掛けてもこないが、老若男女のすべてを篭絡させる自信があるのに、こうも平然とされてしまうと、不信感が、そして危機感が募ってくる。
実際、義透に白蛇女郎の篭絡は一切効いていなかった。
その手に持つは、桃花琴弓……かの傾城、妲己の魅了術に抗するために作られた宝貝だ。彼女に比べたら、白蛇女郎の力など児戯に過ぎない。
「……あるいは、その志も、でしょうねー」
「何を言っているの?」
「いえ、別に。それより私にかまけてばかりで良いのですかー?」
「……!?」
そうして白蛇女郎は気づく。いつの間にか、周囲は屋敷の中ではなく田園に換わっていることを。どこまでも続くその光景は、しかし酷い悍ましさを感じさせる。
――風に流れてくるこの匂いは何だ? 鉄錆?
身体が動かない。逃げられるビジョンが、まったく思い浮かばない……!
「どこへなりと逃げれば良いですよ……成功はしませんがねー」
白蛇女郎は、座り込むどころかへたり込む体勢になっていた。抵抗する意思が薄まっている彼女に、義透桃花琴弓から霊力矢を生成して、顔色一つ変えずに次々と射かけていく。
「貴女の野望はここで終わるのです。そう、全てね」
大成功
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ネフラ・ノーヴァ
共闘、アドリブOK。
おや、なんとも哀れだな、少年少女をいいように使ってきたものが命乞いとは。堂々と戦い合う方が美しいものだろう。
しかしその艷美と戯れるのも一興。誘いに乗って衣服に手を掛け、しばし柔肌を愉しませてもらおう。
が、戯れはここまで、不意にUCで強化した手で白蛇を掴み、引き千切り握り潰す。可能ならば手刀で胴を貫く。
フフ、白が赤く染まっていくのは情欲より昂ぶるものだ。さあ、血の花を咲かせるが良い。
「ああ……あなたは逃がしてくれるの? 私は女が相手でも全然構わないわ。ねえ、助けてよ……」
度重なる猟兵の攻撃で傷ついた姿もまた、淫猥さを引き立たせる演出として。あくまでも白蛇女郎は最初から交戦を避け、猟兵に交渉を持ち掛けていた。
「おや、なんとも哀れだな」
そんな哀れっぽい姿に、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)は侮蔑の表情を向ける。
「少年少女をいいように使ってきたものが、命乞いとは! 堂々と戦い合う方が美しいものだろう?」
「美しい? 理解できないわね。勝つこと……いえ、負けないことが最も大切でしょう」
それは思わず漏れた白蛇女郎の本音だったのだろう。ネフラにどう言われようと気にもしない。リリスは人間を支配するもの。戦闘になど美学を持ちあわせていない。
「しかし、その艷美と戯れるのも一興だな」
「あっ……」
おもむろに近寄り、ぐいと着物の襟を開く。白肌の中に映える双丘、その薄桃色の突端を見やり薄く微笑むと、ネフラは指先で摘み上げる。もう片方の手では、胸を根元から持ち上げるように揉み解し始めた。
「良い声で啼いてくれ」
白蛇女郎は、嬌声を口の端から漏らした。
暫し柔肌を愉しんだネフラは、しかし冷めた顔で唐突に愛撫を切り上げた。
「まあ、戯れはここまでだ。真に美味しい中身をいただくとしよう」
元より白蛇女郎の喘ぎ声など、半ば演技だと解っている。術中に陥れた、と思っているのは白蛇女郎の方だけだ。
おもむろに着物の内側に手を差し入れるネフラ。強化されたその手は潜む白蛇たちを掴み、引き千切り、そして握り潰す。
「ぎ、……ああっ!?」
驚く白蛇女郎の下腹部へ、手刀が突き込まれる。奇襲を受け、大した抵抗もなくその身は貫かれてしまう。
迸る血を全身に浴び、ネフラは嫣然と笑う。
「フフ、白が赤く染まっていくのは情欲より昂ぶるものだ」
見惚れる程に美しい、血の花が咲いた。
大成功
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暗都・魎夜
【心情】
実の所、降伏する相手をどうこうするのは好きじゃねんだが
こいつに情けを掛ける必要はねえな
「大した演技だが、自分のことだけで、やった悪事に詫びの言葉もねぇって気付いているか?」
【戦闘】
命乞いを受け入れる「演技」を行い、距離を詰める
近くまで来たところでUCを発動
「リミッター解除」した「先制攻撃」を入れる
反撃に対しては、「残像」「見切り」で回避を行っている
「師匠が言ってたぜ、"本当に許せないのは自分のために何も知らない奴を利用する奴だ"ってな」
逃走を行うのに対しては「ダッシュ」「ジャンプ」「足払い」で追跡&阻止
この手の活動はここ数年の仕事だ
終わったらしばらく、子供たちのケアにも付き合うぜ
黒木・摩那
いよいよボスの登場ですね。
いくら同情を引く仕草をしても、手口はお見通しです。
バレてますよ。
ここで成敗させてもらいます。
まずは逃げられないように、ヨーヨー『エクリプス』を使って<白蛇女郎を絡め取ります。そこからUC【獅子剛力】を発動。
床や壁に白蛇女郎をびったんびったんに叩きつけます。
勢い余って、外や遠くに放らないように気をつけます。
白蛇は【念動力】や魔法剣『緋月絢爛』で【受け流し】して回避します。
蛇は嫌いじゃないですが、ここまでたくさんあるとさすがに気持ち悪いですね。
女郎自身を叩きつけて片付けてしまいましょう。
「ぐすっ、皆さん酷い……」
さめざめと涙を流す白蛇女郎。傷ついたその姿は、それ以上の攻撃を加えることを止めさせるだけの強い力があった。もちろん、彼女が引き起こしてきた今までの事件の経緯を知らなければ、なのだが。
「いくら同情を引く仕草をしても、手口はお見通しです」
「だな。実のところ、降伏する相手をどうこうするのは好きじゃねんだが……情けを掛ける必要はねえな」
そんな哀れっぽい演技を続ける白蛇女郎の有り様になど、暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)と黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の心は動かない。第一、顔を覆う手の隙間から窺う視線は、二人の挙動を警戒して明らかに剣呑なのだから。
「そんな、どうしてそんな酷いことを……。それに、あなたたちと積極的に事を構えようなどとは思っていないのに、どうして私を責め追い立てるの?」
「いや、大した演技だが、自分のことだけで、やった悪事に詫びの言葉もねぇって気付いているか?」
「そうそう、逃げる算段をしているのはバレてますよ。ここで成敗させてもらいます」
二人はどこまでも冷めた態度で接する。どうせ大して効いていないとは分かってはいるが、か弱い女性を演じ続けるこの女に、皮肉や罵倒の一つもぶつけたくなるものだ。
「……しかしまあ、俺もそこまで鬼じゃねえ。お前なりの『誠意』ってもんを見せてくれたら、ちょっとは考えるかもな?」
「あらら」
「! ありがとう、精一杯にもてなしてあげる」
そう言って、笑いながら白蛇女郎に近寄る魎夜。魎夜の身体に対して手を伸ばすが。
「違う違う、俺が欲しい誠意ってのは、お前の命だ」
それは太陽の如く燃え盛る炎か、あるいは罪を焼き尽くす裁きの炎か。魎夜の身が劫火を纏い、一瞬にしてリミッターを解除。超攻撃力を秘めた紅拳が、白蛇女郎の身体へと突き刺さる。
「ぐえぇっ!」
吹き飛ばされていく白蛇女郎、その身体がぴたりと空中で止まる。摩那が飛ばしたヨーヨー『エクリプス』のワイヤーが、器用に絡みついたのだ。
「はい、捕まえました」
靴に取り付けられた呪力エンジン『ジュピター』をフル稼働。踵をガツンと床にめり込ませて、自身の身体をその場に強く固定。生み出した超パワーで白蛇女郎を振り回し、そして床や壁に全力で叩きつけていく。
「あ、外や遠くに放らないようにしないと」
それに、屋敷に罪はないのだから過度の破壊は避けよう。考慮するのはそんな点だけだ。
「ぐ……このッ」
堪らず白蛇女郎も毒蛇をばら撒いてくるが、大した脅威とはならない。魔法剣『緋月絢爛』や念動力で受け流して回避する。
「蛇は嫌いじゃないですが、ここまでたくさんあるとさすがに気持ち悪いですね。片付けを手伝ってくださいよ」
床に散らばって身悶えしている蛇たちへ、白蛇女郎を叩きつけて潰していく。
「なあ!」
そんな、ひたすら蹂躙を繰り返す摩那に魎夜が声を掛ける。ワイヤーの拘束から逃れる可能性はあったため、彼は念のため警戒を続けていた。
「何でしょう、……なるほど」
燃える拳を、摩那に向けて突き出す魎夜。それで察した摩那は、降り回していた白蛇女郎を魎夜へと勢いをつけて思いきり投げつける。
「良い球筋だ、サンキュー!」
「――!!」
轟音、爆発。
魎夜の渾身の正拳突きが、白蛇女郎に叩き込まれる。
「お見事ね」
「師匠が言ってたぜ、"本当に許せないのは、自分のために何も知らない奴を利用する奴だ"ってな」
残心を取ったまま、魎夜が呟く。床に転がる白蛇女郎には、咄嗟に立ち上がる余力が無さそうだ。
そして後のことは他の猟兵たちに任せて摩那は撤収し、魎夜も先程無力化した子どもたちのケアに思いを巡らせるのだった。
大成功
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天宮・紫苑
アドリブ・連携:可
最後、元凶を撃破しましょう。
「自分の手を汚さない……賢いのかもしれませんが、好ましくはないですね」
屋敷に入る前からUCを使って視聴嗅覚での感知を不可能にします。
あとは警戒しながら近づいて斬りつけます。
いつもの通りに、隠れ潜んで不意を打つ、相手を倒すまで繰り返しましょう。
原則UCは解除せず、姿を隠したまま戦いますが、まれに姿を見せたりして、
姿を隠している相手が居ることを意識させてみます。
「逃しはしません」
怒りに欲に……人の感情を利用したオブリビオンが続きますね。
今後もこの手の相手は出てきそうですね。
「まぁ、そのときは容赦はしません」
バッファロー・バイソン
…
(おそらく、こいつがオブリビオンのようじゃな。)
俺様はそういうのには釣られないのじゃ。(そもそも野生動物なので持つことすら無い…もっとも、持てればの話だが)
『ま、どのみち、お前、オブリビオンって話じゃん』
まぁ、フェレットさん、あれは、俺様を想定してないんだろうしな。
『ま、おいらにまかせろ。確実に警戒はするじゃん。』
敵が背中を見せてる隙に突進して角突きor頭突きで吹き飛ばす。UC使用。
「んもぉおおおおおおっ!!」
「容赦する理由ないんじゃな。敵だし」
『ま、オブリビオンだしよ』
負傷が積み重なる白蛇女郎。しかし彼女は逃走を諦めない、生存を諦める理由などない。襲い掛かり追い縋る猟兵を、最低でも誰か一人、篭絡して凌ぎ切ればよいのだ。後生大事に抱えておかなくてはならない矜持など持ち合わせてはいない。
「……あら。ふふ、あなたは随分と逞しいのね。見逃してくれるのであれば、私はあなたにもちゃんとお礼はしてあげるわよ?」
だからこそ、白蛇女郎は尚もしたたかに、嫣然と微笑む。それがリリスであるということなのだから。
「……」
その沈黙は、どういう種類のものであったのか。バッファロー・バイソン(猛牛・f38640)は複雑な感情を込めた溜め息をついた。
そもそも彼は性欲を持つことすらないと自認している。あるいは元野生動物の生態としての、本能に基づく繁殖欲求と呼ぶべきものはあるが……率直に言って、完全なる異種族の雌に唐突に誘われても困る。というかアメリカバイソンであろうが魅了できると確信しているのがちょっと怖い。
――俺様はそういうのには釣られないのじゃ。
『ま、どのみち、お前、オブリビオンって話じゃん』
なのでそう意思を返すしかないし、背に乗っている相棒のフェレットさん(ヨーロッパケナガイタチ)にも代弁してもらう。
「……ああ、だろうね! だが牛のお前が相手なら、逃げるのは他の奴より簡単そうだ!」
豹変する白蛇女郎。広間から廊下へと向けて、身軽に跳びながら一気に駆け出す。直線を走る場合の突進力は脅威だが、それ以外の部分では二足歩行の者に機動で劣る。彼女はそんな判断を下した。
「んもぉおおおおおおっ!!」
『おいらにまかせろ、ナビゲートするから全力で突っ込め!』
「させるか!」
その背を追いかけるバッファロー。加速のついていく巨体に向け、逃げる白蛇女郎が毒蛇を大量にけしかける。
――被弾上等、噛まれたところで即死はせん! フェレットさんはオレの体毛の中に隠れて!
覚悟を決め、バッファローは蛇の雨の中を突っ切ろうとした。
……だが次の瞬間、両者の間にあった蛇たちは、突如として発生した闇に包まれる。闇を抜け勢いなくぼとぼとと床に落ちていく蛇の胴体は、ことごとく斬り落とされていた。
「な……!?」
「もぉっ、おおおおぉぉっ!!」
邪魔するものが消えた今、容赦はせんとばかりに、驚愕し隙だらけの白蛇女郎へと渾身の頭突きを入れるバッファロー。
がつんと、冗談のように、白蛇女郎の身体は跳ね飛ばされた。
「う、ぐぅっ、一体何が……?」
呆然自失といった白蛇女郎の前に、どこからか天宮・紫苑(人間の魔剣士・f35977)が姿を現す。
「自分の手を汚さない……賢いのかもしれませんが、好ましくはないですね」
彼女は屋敷に入る前から、ずっと闇のオーラを纏い隠れ潜んでいた。そしてオブリビオンに最も痛手を与えることができると判断したこのタイミングで、こうして援護を行ったのだ。
「今の私を視覚や嗅覚で感知するのは不可能。逃しはしませんが、精々生き延びる努力をしてみてください」
ここで姿を現したのは、姿を隠している相手がこの場に存在するということを意識させるための作戦。白蛇女郎へ淡々と告げ、見せつけるように大太刀『闇纏』を一振りすると、紫苑は再び闇の中へと潜っていく。
紫苑は消える寸前に、ちらりとバッファロー(と、フェレットさん)と視線を交わした。
――援護をするから、存分に追ってください。
軽く頷くバッファロー。そして、白蛇女郎にとっては絶望的な逃亡が始まった。
そこから先は、一方的な――ある意味では動物の狩りのようだとも表現できる――展開だった。バッファローの突進だけではなく、的確に紫苑の妨害が入る。先程は蛇を斬っただけだが、もちろん隙を見せた白蛇女郎に斬りかかりもする。
「怒りに欲に……人の感情を利用したオブリビオンが続きますね」
斬っては身を隠すを繰り返す手際に、迷いはない。卑怯だとも思わない。
今後も、この手の相手は出てきそうだとは思うが、紫苑の為すべきことが変わりはしない。
「まぁ、そのときは容赦はしません」
闇へと潜み、敵を討つ。それを静かに、確実に、続けていけば良いのだ。
大成功
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レーゲン・シュトゥルム
確かに|やり手《・・・》だな
そう言う姿を見せれば普通は戦えないと考える
だが、タネが割れている以上無駄な事だ
それに|女の武器《・・・・》を使う事自体を否定はしない
だが、同姓には不愉快なだけだ
少なくとも私はそう言う行為に惑わされる程初心ではないよ
【浄化】に力を籠めた【ヘヴンリィ・シルバー・ストーム】を使う
何処に逃げようと無駄だ
私が其処を戦場と認識する限り逃げられんぞ
加えてお前の接吻の影響も直ぐに消えてなくなる
更に【クイックドロウ】による【弾幕】と【斬撃波】の【乱れ撃ち】で退路を塞ぎ続ける
【スナイパー】の腕は伊達ではないと言う事だ
接近して来るなら【足払い】で動きを止め、【零距離射撃】を見舞うとしよう
眼前の光景を眺め、レーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)は複雑な感情を顔には出さずに、心中で溜め息をつく。
交戦の意志は無い、見逃してくれるのであれば相応の態度を見せる。そんな遣り取りを交わした挙句、弱々しく足に縋りついてきた白蛇女郎の様には、確かに痛々しさを覚えさせられてしまう。
……脹脛を撫でられるだけでこうも気持ちが良いのかという感想は、掛け値なしに称賛となってしまうのだろう。
「確かに|やり手《・・・》だな。そういう姿を見せれば、普通は戦えないと考える」
「……えっ」
動物が見せる懐きの仕草のように、ズボンへと頬擦りしていた白蛇女郎。彼女がレーゲンの冷えた声に対して顔を上げた時、眼前に見えていたのは銃口だった。
銃撃を頭に受ける直前、辛うじて躱してレーゲンから距離を取る白蛇女郎。
「バカな、なんで!? 間違いなく手足にまで回るぐらいは入れたのに……!」
「タネが割れている以上、無駄なことだ。そもそも対策を講じずに接近するわけがないだろう」
口づけから毒を流し込み、身体を自在に操っている内に逃走する。異常なほどにするりと人の懐の内へと踏み込んでくる、だからこそのリリスであり、上手い作戦なのは確かだ。
しかし少なくとも白蛇女郎は気付いていなかった。屋内であるはずなのに、浄化の力が籠もった|優しい雨《シルバーレイン》が降っていることに。それが毒を払い、引き金を引く指先が普段通りに動くことを確認してから、レーゲンは攻撃を開始していた。
「くッ! ……あぁっ!」
身を翻して白蛇女郎は逃走を図るが、稲妻に打たれ動きを止められたところに、面で制圧する速射の弾丸の雨が全身に浴びせられる。
「何処に逃げようと無駄だ。私が其処を戦場と認識する限り、逃げられんぞ」
歩行も問題ないと見せつけるように、ゆっくり歩み寄りながら告げる。白蛇女郎を追い詰めるためではあるが、避けられぬ現実を思い知らせる、そこに今迄に積み重なった不快への仕返しの念が含まれるのは仕方ないことだろう。
接近戦のできるよりも少し外側。この距離に引き込んだ時点でレーゲンが負ける道理は無い。
「そもそも、|女の武器《・・・・》を使う事自体を否定はしないが、同性には不愉快なだけだ」
疾風怒濤の如き乱れ撃ちが、進むことも戻ることもできない白蛇女郎に襲い掛かる。
「少なくとも私はそういう行為に惑わされる程、初心ではないよ」
後で、触れられたところはしっかり清めておこう。そう考えながらも、レーゲンは的確に退路を塞ぐ弾幕を張り続けるのだった。
大成功
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酒井森・興和
僕はなり損ない故かあまり色に靡く性質じゃ無いが
リリスの魅了で同情や憐れみを乞われたら厄介だ
奴の言葉は聞き流し動きを【追跡】
積んだ荷は上階か階下への逃亡隠し
窓際に居るのは屋外逃亡の手立てと予測し警戒
お望み、ねえ
僕としてはその白い首や太ももを晒してこう…掻き切ってあなたが消えてくれたら有り難いけど
まぁ有り得ないな
話す間にUCの飛斬帽で荷を【吹き飛ばし】同時に【早業】窓と敵の間に割って入り三砂で敵の移動、足潰しを狙い【重量攻撃で足をなぎ払い】UCの飛斬帽で【追跡】し挟み撃ち
敵UCの毒蛇は【カウンターと第六感、咄嗟の一撃】で躱し打ち払う
被弾後も【毒耐性】で抵抗しUCの飛斬帽操作で敵への攻撃は止めない
もし命乞いをされても悪いけど聞けないねえ
兵に生まれついた鋏角衆は敵と定めた相手は狩りきるのが習性
躊躇は無いよ
…融通が利かないだろう?
その辺があなたが育てていた新世代との差かな
或いは僕個人の欠陥かもねえ
蜘蛛が、白蛇を狩る。
「捲土重来を諦めないその姿勢、称賛に値するよ」
適当なことを言いながら、酒井森・興和(朱纏・f37018)の歩みは確実に白蛇女郎を追っていた。視線は、逃げる白蛇女郎を捉え続けている。
その足取りは決してそう速いものではない。蜘蛛の狩りとは追跡するものではなく、待って引っ掛けるものだ。最終的に網に掛かればそれで良い。
「でも、ここらが諦め時だと思うけどねえ」
興和は鋏角衆、自虐かもしれないが土蜘蛛の出来損ないだ。だからあまり色欲に靡くこともない性質だと自覚しているのだが、しかしリリスは淫惑と篭絡の極点のような存在。同情や哀れみを乞われたらどう傾けられるかも分からない。奴の言葉など聞き流すに限るとばかりに、白蛇女郎の言葉は無視していた。
時には飛斬帽『丹霞』や逆鱗『朱纏』を飛ばし、白蛇女郎の逃走経路をさりげなく誘導していく。
「ちっ……くしょ、なんでこんな所に荷物があ!」
己の意志でルートを選び、逃げ回っていると思い込んでいる白蛇女郎が、階段の前に配置されて行く手を妨げる物品類に悪態をつく。
興和は早い段階で屋敷への侵入は果たしていたのだが、他の猟兵たちが交戦している間に、新米能力者たちから聞き取って得た屋敷内の構造を参考にして、逃走経路に様々な細工を仕掛けていた。
例えば、窓にはこれ見よがしに罠らしき蜘蛛糸――実は大部分はフェイクだ――を張り、扉の前に山のように家具を置き。
白蛇女郎がそれらを力業で無理矢理にでも排除するのはそう難しくはない。だが猟兵が設置した物を、逃走中というこの危機的な状況下でどうにかするという決断が選べない。
――直接攻撃ではなく、むしろ罠で潰そうとしている。
そのような狙いだと白蛇女郎に思わせるために、興和は追撃の手数を調整していた。
そして終に、白蛇女郎は興和の想定通りの廊下袋小路に追い込まれる。
「……ねえ、どうにかならないの? お望みがあれば何でも叶えてあげるわよ?」
「お望み、ねえ。僕としては、その白い首や太ももを晒して、こう……」
その言葉に、我が意を得たりとばかりに着物をはだける。
しかし、興和は思案するような口調とは裏腹に、刃を出し炎を宿した丹霞を素早く白蛇女郎に投げ放った。
「掻き切って、あなたが消えてくれたら有り難いけど」
「こ、っのおぉ!」
強襲を仕掛けるのはお互い様。白蛇女郎も肌を見せつける裏側では、毒蛇を解き放つ用意をしていたのだから。
加速しながら、不可視の糸で軌道を曲げて回り込むように飛ぶ丹霞。と同時に興和自身は前に踏み込む。その手に握るは愛用の三砂。
床に這うように身を落とし、迫る毒蛇を咄嗟に直感で躱す。足を潰さんとばかりに三砂で薙ぎ払う。
「終わりだよ」
「――っ!」
両足ともに粉砕せんばかりの勢いで迫る三砂を避けた白蛇女郎は、結果的に、まったく無防備な状態で背中に丹霞を受けるという致命傷を選ばされたのだった。
「……お願い、助けてよ……」
倒れ伏し、虫の息で喘ぐ白蛇女郎。
それに対して無言で近づき、興和は三砂を高く構える。
「ああ、嫌、イヤッ! 死にたくない、消えたくな……」
一切の躊躇なく振り下ろされた頑丈な三砂の突端は、白蛇女郎を永遠の沈黙へと導いた。
「兵に生まれついた鋏角衆は、敵と定めた相手は狩りきるのが習性」
確実に討ったことを確認するため、尚も気を抜かずに興和はまだ武装を構えている。
「……融通が利かないだろう? その辺が、あなたが育てていた新世代との差かな」
じわりと、白蛇女郎の姿が消えていく。周囲の床に落ちた白蛇も、合わせて消滅していった。
――或いは、僕個人の欠陥かもねえ。
泣き喚く姿に心が動かなかったという事実を自覚し、ふとそんなことを考えるが、この後のことを考えてそんな思考もすぐに消えた。仕掛けた罠の解除や自分が動かした家具類は元に戻しておくべきかを処刑人たちに確認しようと、振り返ることもなく興和は現場を離れていく。
とある新米能力者たちが毒牙に掛けられた事件は、完全ではないが未然に防がれた。
彼ら彼女らが真っ当に能力者として成長していくことを、猟兵たちは願うのだった。
大成功
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