アルカディア争奪戦⑨~雲海の先に望む
●壮行会
「頑張ってくるんだぞ」
「うん。あたし、いってくるね」
たくさんの人々に見送られ、『アワユキ』は満面の笑みを見せた。
アワユキもアワユキの父も母も、祖父や祖母だって、皆『スーパーよいこ』だった。
よいことして『マグナ聖帝国』の侵攻に抗う戦いに出立する決意を、皆の背中を見て育ったアワユキも固めた。必ずマグナ聖帝国を倒し、この浮遊大陸や他の大陸にも平和を齎さねばならない。何故ならアワユキは猟兵に匹敵する強さとユーベルコードを持つ、よいこの中のよいこ、スーパーよいこなのだから!
そんなアワユキの暮らす町での旅立ちの儀は、雲海を望む浜辺で行われる。
雲海を眺めながらこれまでの話を家族としたり、先達たちから教授を受け、沢山の美味しいものを食べ――そうして空に星が瞬く頃、スーパーよいこは小型飛空艇で雲海に泳ぎ出て、そのまま生まれ故郷を後にする。必ず役目を果たすと約束し、人々のためにスーパーよいことして戦いに参じるのだ。
それが皆してきたこと。だからアワユキも頑張れる。
……少しだけ不安もある。けれど、よいこのアワユキは家族を不安にさせたくないから、その不安を家族に口にすることはできずにいた。
(でも、あたしは大丈夫!)
だって、つよーいスーパーよいこだから!
楽しく飲んで食べて過ごせば、きっと不安もどこかへ吹き飛んじゃうはず!
●尾鰭のいざない
「壮行会があるみたいなのだけれど、お前たちも来る?」
双子人形の手に掴まったびいどろ金魚――雅楽代・真珠(水中花・f12752)が、これから向かうところなのだけれどと柔らかに尾びれを揺らした。
行き先は、よいこの中のよいこであるスーパーよいこたちが育つスーパーよいこランド。
スーパーよいこたちはマグナ聖帝国の侵攻を退けるために出立するのだが、その際彼等の背を押すためにも盛大な壮行会が執り行われるのだと真珠が告げた。
「すぅぱぁよいこらんどの端にある町でね、雲海が望めるんだ」
雲海が望める砂浜で壮行会は行われ、たくさんの料理が振る舞われる。砂浜で出来る遊びをして盛り上げてもらえると町の人達も楽しいし、今回送り出される『アワユキ』も嬉しいことだろう。勿論、アワユキに声を掛けずにのんびりと雲海を眺めながら散歩をしたっていい。壮行会に参加すること自体が、アワユキにとっての応援になるのだから。
「僕は舟遊びをするよ。雲海での舟遊びはまだしたことがないからね」
だからお前たちも楽しんでくるといい。
いとけなくも柔らかく微笑んだ人魚は手のひらの上に蓮の花を咲かせ、グリモアの金魚を泳がせた。
壱花
|壱花《いちか》です。
スーパーよいこという響きが好きです。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで終了します。
●受付期間
【5日(月)22:00】から、物理的にフォームが閉じるまで受け付けています。
確実に【7日(日)23:59】までは開いています。
採用は9日までに書ける分、となります。
オーバーロードはいつでもどうぞ。同行者間で有無は揃えて下さい。
●シナリオについて
グループでのご参加は【3名まで】。
●プレイングボーナス
『よいこが勇士になれるよう応援する』ことです。
●スーパーよいこ『アワユキ』
白いおさげ髪に空色の瞳の10歳の少女。
本が大好きながんばり屋さん。いつかこの雲海の向こうへ……と頑張っていました。
外の武勇伝や、珍しい生き物の話に興味があります。
親や島の人には言えないけれど……ちゃんと勇士になれるかなぁともほんの少しの不安も抱えていたりします。
●できること
この町は浮遊大陸の端にあり、町から少し歩くと砂浜となっています。砂浜が大陸の端で、その向こうに雲海が広がっています。砂浜の端に行き過ぎる(雲の中へと進んでいく)と浮遊島から落ちてしまうので気をつけましょう。
雲海を眺めながらの砂浜の散歩や砂浜で出来る遊び、小型飛空艇での舟遊びが可能です。
また、壮行会のため、南国のリゾート地にあるような料理を楽しめます。砂浜と草原の間に屋台形式で食べ物別に用意してくれています。壮行会なのでお金は必要ありません。
●グリモア猟兵
真珠がいますので、お声掛け頂ければ反応いたします。
基本的には双子人形と舟遊びをしています。
●迷子防止とお一人様希望の方
同行者が居る場合は冒頭に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。
お一人での描写を希望される場合は【同行NG】等の記載をお願いします。
また、文字数軽減用のマークをMSページに用意してありますので、そちらを参照ください。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『アルカディアビーチ』
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POW : 日差しに負けず楽しむ
SPD : 小型飛空艇で雲海飛行
WIZ : 水平線ならぬ雲平線の風景を楽しむ
イラスト:すずや
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ベルト・ラムバルド
♢♡
迷える少女の勇士が一人か…
いいだろう!このベルト・ラムバルドが彼女を応援しよう!
キャバリアに乗ってカッコよく参上
コックピットから飛び降り…ぐぉあ!?足首…挫いた…!
…大丈夫…平気だ!私は騎士だから!
君がアワユキだね?
私は世界を流離う異世界の暗黒騎士ベルト・ラムバルドだ
で、この巨人はキャバリア…どうだい、乗ってみるかい?
彼女をキャバリアの掌に載せ雲海の上を飛び回り
冒険譚…クロムキャバリア、スペースシップワールド、デビルキングワールド、サクラミラージュ…様々な世界の話をしてあげよう
この目で色んな世界を見てきたんだ…凄いだろう?
君もいつか見れるとも…!
なぜならスーパー…否ハイパーよいこだからね!
●
「なんだ、あれは……」
「よもや、敵襲か? こんな時にっ……」
突然砂浜にざわめきが広がった。
それもそのはず。雲海を下から突っ切って、一騎の紫の巨大な騎士が現れたのだから。
会場に集う人々は徐に武器を手にして隙き無く構えたところで、巨大な騎士の胸元が開かれた。
「――とう!」
逆光で姿の見えない――人であることは解る――影が飛び降りてくるのに合わせ、警戒態勢は最高潮。一斉に得物の切っ先をその人物へと向け、着地した瞬間を狙おうとジリ……と砂浜に足が沈んだ。
しかし――。
「……ぐぉあ!?」
何とも情けない声が響いたものだから、町人たちは顔を見合わせる。……思ってた感じと違うぞ、と。
飛び降りた人物――ベルト・ラムバルド(自称、光明纏う暗黒騎士・f36452)は足首を押さえて砂浜を大いに転がった。全身砂まみれである。
町人たちの視線を一身に集めていることに気付くと涙を浮かべながら頑張って立ち上がり、|騎士《猟兵》であると高らかに告げたのだった。
「なぁんだ、敵襲かと思っちゃったよ」
「足は大丈夫? これを貼っておくといいよ」
よいこな町人たちはホッと胸を撫で下ろすとベルトに湿布を手渡し、また壮行会の賑わいへと戻っていった。
「君がアワユキだね? 私は世界を流離う異世界の暗黒騎士だ」
そうだよと頷いた少女キャバリアの掌に載せるとベルトは雲海の上へと連れて行き、今までの冒険譚を少女に聞かせた。
「あたしも色んな世界を見れるかな?」
「見れるとも……!」
力強い声がコックピットから響く。
何故なら君はスーパー……否、ハイパーよいこだからね!
大成功
🔵🔵🔵
オルト・クロフォード
澪(f03165)とははじめましてだナ!
よろしくだゾ!
コレが雲海というやつカ……! こんなに沢山の雲があるのを見るのは初めてダ!(初めて見るものにテンション上がってる人形の図
あそこにいるのがアワユキ、カ?
私も本が好きなんダ! 色んな世界の風景や、知らない事が載っているからナ!
そうダ、私の旅の話を聞かせようカ。ノートに色々書き溜めてあるんダ。外に憧れる鳥を助けた時の話しヤ、陸を泳ぐ臭い魚のモンスターと戦った事時の等話してみようカ。
澪の話も是非聞かせてくレ!
他の猟兵の話も気になル!
……その天使……(澪のジェスチャーに察して笑む
外の世界は大変な事もあるガ、見た事のないものにも出会えて楽しいゾ!
栗花落・澪
オルトさん(f01477)と
こちらこそよろしくね
雲海綺麗だよねぇ
夜になったら一面に星空が広がって
とっても凄いんだよ、きっと
僕は…そうだな
とある兄妹の冒険譚でも
丁度、アワユキさんぐらいの年の子達
病気のお母さんのため
薬になる花を探しに霧深い危険な森に入ったんだ
魔獣もいるって言われてる場所
道中色んな出会いをした
祈りをくれた天使様
道案内してくれる動物達
最後は綺麗な歌声に導かれて
無事に花を手に入れた
何の力も無い子供達
凄く怖かったと思う
彼らの勇気が、色んな奇跡を生んだ
君も同じだよ
その勇気に世界は必ず答えてくれる
守ってくれる
天使は僕の事だけど
オルトさんが気づいたら
シィッというジェスチャーとウインクを
●
砂浜に掛かる、ふわふわな白。
それは波ではなく雲だと言うのだから、少し不思議だ。
グリモアベースで初めて顔を合わせたオルト・クロフォード(クロックワーク・オートマトン・f01477)と栗花落・澪(泡沫の花・f03165)のふたりは初めましての挨拶を交わし、こうして此処に一緒に立っていた。
「こんなに沢山の雲があるのを見るのは初めてダ!」
ずっと『本に囲まれた出口のない部屋』に閉じ込められていたオルトには、視界いっぱいに、しかも頭上ではない位置に雲を望むのは初めてのことである。
目をキラキラと輝かせるオルトの側で澪が「夜になったら一面に星空が広がってとっても凄いんだよ、きっと」と微笑めば、「夜も見たいなナ!」と大いにはしゃいだ。
ふたりで暫く雲海を望みながら砂浜散策を楽しんだら、ひときわ人の集まっている地点へと視線を向ける。賑わいの中心にはきっと『|本日の主役《アワユキ》』がいるはずだ。
「君がアワユキさん?」
ふたりの猟兵がお話したいなと申し出れば、よいこな町民たちは譲ってくれる。
これもおいしいよ、あれもおいしいよと食べ物や飲み物の入った器を手渡され、三人は浜辺に座って話をすることにした。
「本が好きなんダ? 私も本が好きなんダ! 色んな世界の風景や、知らない事が載っているからナ!」
うんうんとアワユキも頷き、同意を示す。
「これハ、私の旅の話ダ」
ノートに色々書き込んでいるのだと、オルトはノートを広げて見せた。
そして、アワユキが「これは?」と指を差したところの話をしていく。
外に憧れる鳥を助けた時の話、陸を泳ぐ臭い魚のモンスターと戦った時の話。
ひとつひとつの話を楽しそうに聞いたアワユキは「わあ」と瞳を輝かせていた。
「僕も物語を話そうかな」
そう口にした澪が語るのは、病気の母のため魔獣も住まう霧深い危険な森に薬となる花を探しに入っていくとある兄妹の話。
兄妹は、道中色んな出会いをした。
「魔物以外もいたんだ?」
祈りをくれた天使、道案内してくれる動物、そして最後は導くような綺麗な歌声。
アワユキと同じ年頃の兄妹は、アワユキと違って戦う術を持たない。
けれど勇気が様々な奇跡を呼び、無事に花を手にすることが叶った。
「君も同じだよ。その勇気に世界は必ず答えてくれる」
「そっか、勇気……」
「なア、その天使……」
もしかして澪のこと?
気付いたオルトが口を開きかけるが、澪は人差し指を立ててウインクだけを残した。
そんなふたりに気付かずに、アワユキは自身の掌をジッと見つめていた。
「勇気かぁ」
そうして、大事なものを包み込むようにギュッと拳を握った。
平和になったら自由に冒険をして、様々な出会いをしてみたいな。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
♢♡
壮行会に賑わう街をヘルガや精霊の子らと散策
フランムは肉の串焼きがお気に入りのようだ
君がアワユキか
白い髪に蒼い瞳、利発そうな表情
まるでヘルガによく似ている
家族と離れる寂しさか……俺にも分かるさ
だからこそ、旅先で出会う人々や戦友との絆を大切にするんだ
寂しい時も支え合える人が傍にいる、それは君の心の支えになる
孤児の俺に家族はなく、ヘルガは家族を失った
それでも、互いに相手を大切に思うからこそ、俺たちは新たな家族になれた
精霊のたまごから生まれたルミナとフランム
海の泡から生まれたアジュアも
今は俺たちの大切な家族だ
故郷の家族を守る、その意志も君の勇気を奮い立たせる
君ならきっと良き勇士になれるだろう
ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
♢♡
🍄猟兵化希望
ヴォルフと一緒に屋台を巡り、現地の美味しい料理を堪能しましょう
精霊のルミナにフランム、アジュアも一緒に
南国フルーツのパルフェやジェラートがおいしいわ
あなたがアワユキさんね?
おめでとう。あなたの門出を祝福するわ
あら、この子ぐらい頃のわたくしは、こんなにしっかりしてなかったわ。
癒しの奇跡を扱えこそすれ、自ら外の世界へ飛び出す勇気はなかった……
でも、こんなわたくしでも、今では世界を救うために飛び立てる
それもこれも、ヴォルフ、あなたがいてくれたから……
この子たちとも、旅をする中で出会ったの
あなたも旅の途中、色んな人と出会うでしょう
その絆は、きっとあなたに勇気を与えてくれるわ
●
「フランム、肉が美味いか?」
「ルミナとアジェアはパルフェとジェラートがお気に入り?」
美味しいものねと微笑むヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)と頷く精霊たちの姿を見て、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は食べ終えたらまた貰ってこようと優しく目元を和ませた。
聖霊のたまごから産まれたルミナとフランム、海の泡から産まれたアジュア、それからヴォルフガングとヘルガは、生まれも生き方も違ったけれど今ではすっかり家族だ。周囲の人々からもそう思われているらしく、よいこな町人たちからも甘味や肉をあれやこれやと勧められていた。
アワユキの居場所を尋ねれば、彼女のいる場所を教えてくれた。
料理を美味しく口にする者。
幸せそうに歌う者。
そうやって明るく送り出そうとしてくれる人々を眩しいものでも見るかのように、アワユキは座って立てた膝に両肘をついて両頬を支え、目を細めて見ていた。
もしかしたらずっと、あの輪の中に居たいのかも知れない。
「あなたがアワユキさんね?」
ヘルガの声に、雪のように真白の髪の少女が顔を上げた。
「おめでとう。あなたの門出を祝福するわ」
「わあ。お祝いありがとう!」
パッと瞳を輝かせたアワユキは立ち上がり、ふたりにお礼を言い頭を下げた。
(明るく、利発そうな娘だ)
「……ヘルガによく似ている」
「あら、この子ぐらい頃のわたくしは、こんなにしっかりしてなかったわ」
思った言葉がヴォルフガングの口から飛び出て、すぐにふるりとヘルガが否定する。あの頃のヘルガは癒やしの奇跡を扱えこそすれ、外の世界へ飛び出す勇気はなかった。それに引き換え、目の前の少女はこの世界を守るために旅立とうとしている。とても立派なことだ。
(わたくしが世界を救うために飛び立てているのは、ヴォルフ、あなたがいてくれたから……)
愛しい人の逞しい腕にそっと手を預ければ、気持ちが伝わったのだろう。ヴォルフガングが反対側の手をヘルガの手に重ねてくれた。まるで、離してくれるなとでも言うように。
「家族と離れるのが寂しいのか?」
「……うん」
寂しい。けれどアワユキは己の役目を解っている。
「その寂しさは俺にも分かるさ」
「おじさんも?」
「ああ。だからこそ、旅先で出会う人々や戦友との絆を大切にするんだ」
「この子たちとも、旅をする中で出会ったの」
きっと支え合える人たちに会えるし、その出会いや人々は必ずアワユキの心の支えとなることだろう。
「孤児だった俺にも、今は家族がいる」
寄り添い合うヴォルフガングとヘルガに、ぴたりとくっつく精霊たち。
アワユキの瞳から見ても、その姿は家族だと思えるものだった。
人と人との間に絆が生まれ、種族を越えた家族のかたち。
「あたしも、ちゃんと築いていけるのかな」
もちろんよと優しく口にするヘルガが眩しくて、良き勇士になれると頼もしく口にするヴォルフガングが心強くて、アワユキは空色の瞳を笑みの形に歪め「あたし、たくさんたくさーん頑張るね」と笑った。
* * *
希望があったため、ヘルガさんに「このスーパーよいこを猟兵にする権利」をお渡しします。
名前は「アワユキ」、10歳の白髪空色目の頑張り屋の少女。一人称は「あたし」なスーパーよいこです。口調や性格はオープニングや各リプレイを参照ください。
その他、苗字や種族・職業等は好きに決めて大丈夫です。
権利があるだけで作成は義務ではないため、作成しなくても大丈夫です。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
◇♡
…遥かな蒼穹、白い雲海、そして砂浜。素敵な風景ね、ずっと眺めていたいぐらい
…だけど、先達として新たな勇士に此処に来た目的を先に伝えないとね
…貴女は勇士に必要な心構えは何だと思う?
正義の心?仲間との絆?冷静な判断力?
…どれも間違ってはいない。でも、今から話すのはそれらと同じぐらい大切よ
…それはね、"逃げる"よ
逃走の為の術や道具は常に複数、用意しておきなさい
…事前に敵の能力が分かっている戦場なんて(本来は)稀だもの
…想定外の状況や強敵に出会った時、その備えが生死を分ける…かもしれないわ
霧や光の「精霊結晶」、「写し身の呪詛」の残像等の逃走手段を披露した後、
分身の米神にピストルの形をした指を当ててUCを発動し分身とアワユキの位置を入れ替える
…後は、その逃走手段を攻撃に転用できるようになれば一人前。例えば、こんな風にね
…驚かせてごめんなさい。だけど、貴女独りでは進退極まる時が必ず来る
…そんな時、助けてくれる誰かを見つけなさい
別に貴女1人だけの力で勇士にならなければいけない理由なんて無いのだから
城野・いばら
♢♡
わぁ、これが雲海…しょっぱいのかしら?
お舟を眺め乍らさらさらな砂浜を楽しんで
アワユキを探すの
見つけたらご挨拶して
お喋りしようとお誘いを
アワユキは今、どんな気持ち?
わくわく?どきどき?そわそわ?
だいじょうぶ
その気持ちは間違いじゃないのよ
皆ね、其々の想いや願いを抱えて旅するのだから
これからね沢山の不思議と出会うのよ
例えば…ふふ、トロッコに詰った七色羊さんとか
仲良しになるコだって
旅立つ貴女に贈りたい物があるの
七色の糸で編んだミサンガ
貴女の願いが叶うよう、
幸運と白薔薇の花弁を籠めたお守り
お役目も大事だけど
貴女の好き、を目一杯楽しむのも
どうか忘れないでね
それがきっと
未来への元気の源になってくれるから
冴島・類
♢♡
未知の旅路を踏み出す時は
いくつになっても不安はある
戦いが初めてなら、尚
力になれたら
飛空艇の船遊び…をする前に彼女に声を
こんにちは、あわゆきさん
機会の運転は不慣れでね…変な方向にいってはことだ
少し教えてくれないかい?
教えてくれたら、ありがとう
流石、空に馴染んでる
これならきっと冒険でも
迷わず駆けれるさ
お礼に他の世の冒険譚でも話せたら
不安なことを聞くでも構わないし
浜に戻ったら、壮行会の食べ物で果物でもあれば頂戴し
遊んでる真珠さんの乗る船へ手を振ったら見えるかな
ご挨拶しに行こう
ご機嫌よう
あ、いただいてきたの
おひとついかがです?
雲の海、風で変わる景色も面白いですね
よいこの旅路にも、追い風が吹くと良い
●
砂浜にかかるふわふわとした靄は、雲海。
雲海の先には空が――この町で生まれ育った者たちの未知が広がっている。スーパーよいこたちは代々、未知の広がる外へと出て戦い、役目を終え――または長い冒険を終えて戻ってきていたのだという。
誰にでも等しくやってくる、旅たちの刻。
踏み出す時はきっと誰だって不安。
それを知っているからこそ、町の人たちは明るく接して背中を押してくれるのだろう。戻ってこれる場所があるよと示して、いってらっしゃい大丈夫だよと笑って。
(……遥かな蒼穹、白い雲海、そして砂浜。素敵な風景ね、ずっと眺めていたいぐらい)
髪を押さえ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)を望む。サラサラの砂浜は足に柔らかさを伝え、空と雲海の色合いは目に優しい。こんな素敵な景色を見て育った『よいこ』たちはどんな人たちなのだろうと想いを馳せ、暫し砂浜を歩いた。
視界の果てまでもこもこと雲が連なっている様を視界に収めた冴島・類(公孫樹・f13398)は、そこに浮かぶ飛空艇のひとつに「あ」っと声を上げた。
「真珠さんかな。おーい」
雲海での舟遊び用の小型飛空艇は遠くへ行くためのものではないから上部がオープンで、見た目は他世界のボートに近い。類が大きく手を振ったボートからの|応《いら》えは無かったけれど、類の知るその人は手を大きく振るようなタイプでもない。見えていたら良いなと思うに留め、類は件の少女を探しに行った。
「こんにちは、あわゆきさん」
よかったら教えてくれないかいと告げるのは、飛空艇の運転方法。
「僕は機械の運転は不慣れでね」
「猟兵さんでも出来ないこと、あるんだね」
「そりゃあそうだよ。例えば他の世界でもね……」
類の失敗を交えた冒険譚に笑うアワユキの運転技術は立派なものだ。
これならきっとどんな空の冒険だって迷わず駆けられることだろう。
帰りは類の運転で浜へと戻り、壮行会場へ。
勧められた果実を手に砂浜へと戻れば、一隻の飛空艇が砂浜へと乗り上げて止まっていた。
「ごきげんよう、類」
「御機嫌よう、真珠さん。見えました?」
返事は無かったけれど、浜へと戻り待っていた様子を見ればそれが答えだと解る。
「果物を頂いてきたのですが」
「それなら僕の舟遊びに付き合わせてあげないとだね」
双子人形の運転で、雲海の中へと漕ぎ出した。
「わぁ、これが雲海……しょっぱいのかしら?」
他の世界は、さらさらの砂浜に面しているのは海だ。首を傾げた城野・いばら(白夜の魔女・f20406)の望む先の雲海には、飛空艇がいくつもぷかぷか浮かぶように飛んでいる。
「あ、類。人魚のアリスもいっしょね」
大きく見せようとぴょんと跳ねて大きく手を振れば、気付いた様子の浅黒い肌の青年が手を振ってくれた。舟が揺れると怒られでもしたのだろう。傍らの少年に頭を下げる姿まで見えて、いばらはくすくす笑いながらその場を後にした。
彼等とはまた後で会えばいいとして、まずは『|本日の主役《アワユキ》』にご挨拶。
「アワユキは今、どんな気持ち?」
わくわく? どきどき? そわそわ?
柔らかな新緑の瞳に、アワユキは「全部」と答えた。
けれどその気持ちは間違いではない。きっと誰もが旅立ちの日に抱いた気持ち。
「あなたも?」
「いばらも、そうね」
世界には|不思議《しらない》がいっぱいある。先日見た七色の羊はメッてしなくちゃいけない相手だったけれど、フェアリーランドに招いてくれた妖精のように仲良しになるコとの出会いだって。
「贈り物をしてもいいかしら?」
頷きが返ればその腕を取って、いばらは七色の糸で編んだミサンガをその細い手首に巻いた。
(あなたの願いが叶いますように)
幸運と白薔薇の花弁を籠めたお守りは、きっと彼女の願いを叶えることだろう。
「お役目も大事だけど、あなたの好きを目一杯楽しむのもどうか忘れないでね」
「私も助言を届けに来たわ」
いばらの話を途中から聞いていたリーヴァルディが声を掛ければ、手首のミサンガを撫でていたアワユキが姿勢を正した。
「……貴女は勇士に必要な心構えは何だと思う? 正義の心? 仲間との絆? 冷静な判断力?」
「えっと……全部?」
首を傾げたアワユキに、リーヴァルディは浅く顎を引く。
「……けどね、それは"逃げる"よ」
「えっ」
正解だとホッとしかけたアワユキは息を飲んだ。
「逃走の為の術や道具は常に複数、用意しておきなさい」
猟兵たちはグリモア猟兵の予知で知ることもあるが、事前に敵の能力が分かっている戦場は通常ならば稀である。想定外の状況、強敵の遭遇……緊急時に起こせる手段を用意しておくことは生死を別ける。
「例えば……そうね」
少し考えたリーヴァルディは素早く動いて――
「わあ――あれ?」
残像が見えるほどの動きにアワユキは口を丸く開けて驚き、それと同時にふたりの立ち位置が変わっていることに瞳までも丸くした。
驚いている間に、リーヴァルディがアワユキの眼前に現れる。彼女が武器を手にしていたら、きっとそのまま攻撃できたはずだ。
「……驚かせてごめんなさい。だけど、貴女独りでは進退極まる時が必ず来る」
その時に助けてくれる人や手段を見つけなさいと、リーヴァルディは静かに助言をくれた。
「いばらたちもいつでも力になるのよ」
「ええ。私達もそのひとりよ」
アワユキは一人で旅立つけれど、きっと独りではない。
広い空の世界には先に外へ行った先達も、猟兵たちも居る。
この雲海の先でも頑張ろう、とアワユキは真っ直ぐに顔を上げるのだった。
――さあ、空へ飛び立とう。
雲海の先の、その先までも。
大成功
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