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銀河帝国攻略戦㉒~あくらつなるそんざい

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #ドクター・オロチ

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●ゆるされざるもの
「皆、連日の戦闘本当にお疲れ様だ。先日ドクター・オロチに繋がる予知をしたからだろうか、此度も奴に関わる……いや、直接奴に手を下す好機が巡ってきた事を、此処にお知らせしよう」

 ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)が告げたのは、これまでの戦果により、今まで数々の悪辣な策略で『解放軍』や猟兵たちを苦しめてきた『ドクター・オロチ』の乗艦であり研究施設でもある『実験戦艦ガルベリオン』に、遂に砲撃を喰らわせるまでに至ったということと。
「……砲撃により、ガルベリオンを航行不能にする所までは追いやった。だが、損傷が即座に修復されてしまってな。ほぼ間違い無く、奴の仕業だろう」
 珍しく忌々しげな顔を隠さないニコ。余程先日猟兵たちを送り出した悪趣味な装置のことが気に入らなかったのか。

「今なら俺の転送が、ガルベリオンの内部にまで届く。恐らくまた陰湿な実験施設なのだろうが、ドクター・オロチは其処で皆を待ち構えている。其処で一つ、皆に心して貰いたい事がある」
 ニコはピシリと人差し指を立てると、噛んで含めるように丁寧に話す。
「ドクター・オロチは、必ず先制攻撃をしてくる。故に、皆には予め対処法を含めた行動を取って貰いたいのだ。皆もご存知の通り『POWのユーベルコードにはPOWで、SPDにはSPDで、WIZにはWIZで』、相手は此方のユーベルコードに対応する攻撃手段を取ってくる。幸い内容は予知出来たのでお伝えしておくので、良く備えて欲しい」

 ドクター・オロチは元々銀河帝国の行く末には微塵も興味を持っていないため、捨て置いても極論構わないのだろうが。そう言いながらもニコは敢えてグリモアをかざして猟兵たちにこうべを垂れる。
「……此奴は、存在自体が危険だ。機会が巡ってきたならば、倒してしまいたい。そして皆にならば其れが可能だと信じる所のものである故に」

 虹色の星型のグリモアが、転送の準備のために光り出す。相手は強敵、しかしそれでも送り出す猟兵たちは必ず成し遂げてくれると信じて。


かやぬま
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 初めまして、こんにちは。かやぬまです。
 ドクター・オロチは強敵です、判定も常より厳しめに行なわせて頂く予定です(場合によってはシナリオ自体が失敗に終わる可能性もございます)
 ご了承下さいました上でのご参加を、心よりお待ち申し上げておりますね。
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第1章 ボス戦 『ドクター・オロチ』

POW   :    ジャイアントカルシウム
自身の身長の2倍の【恨みの叫びをあげる骸骨巨人】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    カリスティックボディ
自身の肉体を【あらゆる生命体を溶解し取り込む緑の粘液】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    ビャウォヴィエジャの森のフェンリル
【水晶剣が変形した門から『フェンリル』】の霊を召喚する。これは【炎の体を持つ巨大狼で、爆発を呼ぶ咆哮】や【瞳から放たれる魔炎光線】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

甲斐・ツカサ
デカい相手と戦うなら、まずは足元から!
脚の骨にフックを引っ掛けて、バイクで思いっきり引っ張ろう!
幾らデカくても星の海を翔けるバイクの推進力で引っ張れば、バランスを崩すだろうからね!
そうやって隙を作れば今度はワイヤーを巻き上げて一気に近付く!
脚を蹴りあがって首を跳ね飛ばせば、流石に動けなくなるよね?

残るはドクター・オロチ!
再召喚の時間を与えない為にも、巨人を倒したら着地を待たずに行動!
空中に空気の足場を複数作って、それを利用して攻撃をかいくぐりって近付きながらワイヤー射出!
圧縮空気で軌道調整しながらオロチに引っ掛かったら、接敵スピードが更に増すね!
懐に入ったその一瞬に全てを賭けて、渾身の一太刀!



●あまかけるもの
 グリモアベースから転送されてきた甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)の視界に飛び込んできた景色は、まさに狂気の科学者の根城にふさわしいものであった。
 人の脳。臓器。あるいは身体の一部。それらがひとつひとつ培養槽のようなものに入れられて浮かんでいる光景に、ツカサは思わず歯を食いしばる。

『ムシュシュシュ、今日は本当にお客様の多い日だね! 人気者はつらいよ、なんちゃって!』
「ドクター・オロチか!」
 突如悪趣味な部屋中に響き渡るどこか耳障りな声と特徴的な笑い声に、ツカサは即座に反応すると、声の主の姿を探して周囲を見渡す。
『無駄だよ、キミが来ることも、どんな攻撃をしようとしているかも、ボクには全部お見通しなんだからね!』

 奇妙な哄笑を響かせながら、姿見せぬドクター・オロチはおよそ常人の背丈の二倍はあろうかという骸骨の巨人を召喚し、ツカサに向けてけしかける。
 しかしツカサも動じない、何故なら『先手を取られることは予測済み』だからだ。

「デカい相手と戦うなら、まずは足元から!」
 ニヤリ笑うとツカサは宇宙バイクにまたがり巨人目がけて急発進、運転しながら器用にフック付きワイヤー「未知標」を取り出すと、召喚者であるドクター・オロチの武器である水晶剣がそのまま巨大化したものを振り回す巨人から逃れつつ、タイミングを見計らって巨人の脚の骨にガッチリとフックを引っ掛ける。
『ああっ、キミ、まさか!?』
「そのまさかさ! 図体がデカいと小回りがきかなくて大変だな!」
 ツカサは笑顔で、しかし鋭く巨人の弱点を指摘すると、ワイヤーをしっかりと握ったまま宇宙バイクをフルスロットルで加速させ、ワイヤーの先のフックが引っ掛かった巨人の脚を思いっきり引っ張った!

 ズズーーーーー………ン!!

 前でも後ろでもない、外側に向けて引っ張られては踏ん張りようがない。哀れ骸骨巨人は横倒しに引き倒されてしまう。しかし、これで終わりではなかった。
「まだまだっ!!」
 ツカサは手にしたワイヤーを今度は巻き上げると、その身は宇宙バイクから一気に離れて巨人の脚までひとっ飛びである。脚に到達するやツカサは自身の脚を思い切りバネのように蹴り上げて、狙うは巨人の首であった。

『そ、そこまでやることないじゃないか! ひどいヤツだなキミは!』
「お前に言われたくないっつーの!」
 ドクター・オロチは顔(と呼べるかは定かではないが)を覆いながら嘆く。ツカサが骸骨の巨人の首まで一気に到達するや、それを勢い良く跳ね飛ばしたからだ。

 戦場と化した実験室に並び立っていた培養槽はいくつもが破損し、中のモノが床に散乱する有様であった。巨人の首を跳ね飛ばした直後でいまだ宙にとどまっていたツカサは俯瞰風景としてソレを見る。
(――コイツは、絶対に倒さなきゃ!)
 決意を新たに、ツカサは着地を待たずに行動した。巨人の脚に引っかけたフックは一旦回収する。
 「Syl-Field(シルフィールド)」の名を冠する籠手はサイキックで強化圧縮された空気を放つことが可能にして、今まさにツカサは空中に空気の足場をポンポンと生み出していく。

『ちょこまかと元気なことだね、活きのいい実験材料になりそうで嫌いじゃないよ!』
「うわ、ちっとも嬉しくない!」
 ツカサは器用に生み出した足場を渡り、ジグザグの軌道で徐々にドクター・オロチとの距離を詰めていく。そして一瞬相手の死角に入ったのを見計らって先程のワイヤー付きフックを射出、ドクター・オロチのフードの背中に深々と引っ掛ける!

『ムシュッ!? 背中はダメだよ、取れないじゃないか!』
 しかし今度はドクター・オロチの言葉には返さず、ツカサはすかさずワイヤーを全力で巻き取る。ギュン! と音がする程の勢いでドクター・オロチとツカサとの距離が詰まる。

「【暗刻斬り拓く蒼穹ノ光刃(スカイセイバー・クロノブレイク)】!!」
『しまっ……!!』
 至近距離からの想像を絶する威力を誇る、渾身の一太刀。

『ムシュシュシュ……惜しかったね、斬りつけたのが背中でなかったら、もしかしていたかも知れないよ。キミ、大したモノだよ……ムシュシュ』
 顔面が脳なのだ、表情は当然分からぬ。声音で悟るしかないのだが、ツカサは素直に受け取ることにした。

「それはどうも、って所かな? オレも全力で行ったからね」
 激しい動きで若干ズレたゴーグルの位置を直すツカサは、凛とした表情で言い放つ。
「お前を狙う猟兵はまだまだいる、覚悟するんだな!」

 それを聞いたドクター・オロチが、ついてもいない口の端を、歪めて笑った気がした。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
WIS
随分と好き勝手なさっていたようですが、とうとう叛逆の牙が喉元へ差し迫りましたよ
何度蘇ろうと、完膚なきまでに焼き尽くします

強化された【視力】で魔炎光線の軌道を【見切り】、【聖槍で受け】て防御する
【オーラ防御】【火炎耐性】【呪詛耐性】の重ね掛けで可能な限りダメージを削減する
炎熱ならば私も得手とするところ、光線ならば尚更です

【属性攻撃】【全力魔法】で火力を最大限強化し、【破魔】により霊体への特効効果を持たせた【紅炎灼滅砲】を放つ
この灼滅砲、いつもは周囲への被害を考慮しなくてはなりませんが……今はむしろ、この艦ごと粉砕するくらいの勢いで
さぁ、主砲の撃ち合いと参りましょう



●せいなるほろび
「――随分と好き勝手なさっていたようですが、とうとう叛逆の牙が喉元へ差し迫りましたよ」
 パリン、と声の主の足元で何かが割れる音がした。砕け散った培養槽の破片を踏んだのだろうか、それを一瞥したオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、あくまで柔和な笑みを崩さずドクター・オロチの方を見やった。

『ムシュシュシュ、おお怖い! うちの『狼』とどっちが怖いかな?』
 ドクター・オロチの声と同時に手にした水晶剣が突如「門」の形を取り、そこから巨大な狼――フェンリルが姿を現す。
 フェンリルは一度身震いするとオリヴィアを視界に入れる。「獲物」を認識した獰猛なる巨大狼は、オリヴィアを見つめたまま低く唸り始めた。

(……来ますね)
 幸いオリヴィアはフェンリルが瞳から魔炎光線を放ってくることを事前に知らされていた。故に、対策も立ててくることができた。

『グルルゥゥゥォォォォ……!!!』

 巨大狼の唸り声が高まり、オリヴィアを見据える瞳が禍々しく燃え上がる。それが臨界点に達した時、フェンリルの両の瞳から全てを焼き尽くす魔炎光線がオリヴィア目がけ発射された!

「炎熱ならば私も得手とするところ……光線ならば尚更です」
 冷静に告げるオリヴィアは、フェンリルの目線から逃れようともせず、むしろ見据え返すばかり。愛用の破邪の聖槍を構えると己目がけて迫りくる光線を「じっと見る」。――光線は寸分違わず自身を狙っている。ならば。

「受けて、立ちます!!」
 凛々しく言い放つと同時、オリヴィアは光線に向けた聖槍の穂先をまばゆい金色に輝かせると、魔法陣を思わせる円状の防御障壁を展開させた。
(火炎に呪詛、ふたつの耐性を持ったオーラの障壁です。容易くは破れませんよ)
 防御障壁に炎熱光線が着弾する瞬間、キュッと唇を結んだオリヴィア。直後、凄まじい音が室内に響き渡った!

 ゴオオオオォォォォォォ……!!!

(……そ、想像以上に……激しい……っ!)
 物理的な存在ではないはずなのに、防御障壁が飴細工のように溶かされていく感覚を覚えるオリヴィア。策自体は問題はなかった――ただ相手が純粋に強すぎた。そして遂に障壁は圧倒的な力でもって打ち破られ、オリヴィアはあっという間に炎熱光線の白熱した景色の中に呑まれていく。

『ムシュシュシュ、まさかこれで終わりじゃないよね?』
 光線の照射を終え、「門」の中にフェンリルを戻したドクター・オロチがむしろ愉しげにオリヴィアが立っていた場所へと声をかける。
「……当然、です……」
 そこには、猛烈な炎に身を焼かれ身体中ボロボロになったオリヴィアが、それでも変わらず毅然とした声音で、聖槍を杖代わりにして立っていた。
「……何度蘇ろうと、完膚なきまでに焼き尽くします」
『キミ、面白いね! 焼かれかけてまだそんなことが言えるなんて!』

 しかしオリヴィアはそんな安い挑発には乗らぬとばかりに、反撃の構えを取る。聖槍の支えを敢えて手放すと両の脚で地をしっかり踏みしめ、両の手を天にかざす。すると、オリヴィアの周囲に無数の――具体的には合計125本の――光の塊が顕現し始めた。
「この……灼滅砲、いつもは周囲への被害を考慮しなくてはなりませんが……」
 今はむしろ、この艦ごと粉砕するくらいの勢いで放たねば勝利はない。そう思った。
(さあ、主砲の撃ち合いと参りましょう)
 その身を焼かれど邪悪を討たんとする意志は潰えず、その姿はまさに戦により破邪を示す聖なるものの在り様であった。

「猛き炎よ、我が掌中に集い、万象を灰燼と化す破壊の奔流となれ――!」

 【紅炎灼滅砲(プロミネンス・キャノン)】。極大の破壊光線が敵対するものを焼き尽くす、オリヴィア全力の炎の意趣返しであった。

『いいね、言うだけはあるじゃないか。その心意気に免じて、ちょっと受けてあげよっか!』
 そう言うとドクター・オロチは敢えて己を狙う無数の光線を一身に受ける。受ける。受けて――オリヴィア同様火傷でボロボロになった姿で、しかし平然と返した。

『ムシュシュ、確かに熱いね。これなら確かにフェンリルにも負けないかも知れない。改造すればフェンリル超えも――」
「黙れっ……!」
 なおも忌々しい口を利くドクター・オロチを一喝しようとして、声が思うように出なくなりつつあることに気付くオリヴィア。自分の想像以上に傷が深いのかも知れない。
 無念さを噛みしめつつも、少なからず傷は与えたことを良しとして、オリヴィアは最前線を退いていった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

レクシア・ノーレッド
【リミティアちゃん(f08099)と共闘】

【私の記憶】で分身を呼び出して、ドクター・オロチの攻撃を誘う囮になってもらおうかな!
その間私はリミティアちゃんのUCによる要塞に隠れて、先制攻撃の切れ間を狙って飛び出すよ!

飛び出す時に【接続/解放】を発動、液体化してるなら電流はよく通るんじゃないかな?
装備『ふしぎなスパナ』にも属性攻撃で高圧電流を流しながら、捨て身覚悟で近寄るよ!
―もし溶かされそうになったら、スパナを起爆させて私は引くよ!【緊急射出】で分裂して、1個体でも残るようにね!

さぁ、いくよ!ぶっ倒してあげる!

※アドリブ歓迎


リミティア・スカイクラッド
レクシアさん(f01101)と連携

先制攻撃に合わせてUCを発動
宝石剣の「封印を解き」魔力溢れる刃を足元に突き立て、構築した夢幻城塞の内部に自身とレクシアさんの本体を匿い、攻撃を防ぎます

初撃を凌いだ後は城砦を維持して後方から砲撃でレクシアさんの援護を
主目標は狼に定め、連続した砲撃で注意をこちらに引き付けましょう
レクシアさんの邪魔はさせません

一部の砲台はオロチに向けて発砲
当てるのが目的ではなく威嚇、レクシアさんが戦いやすいよう敵の行動を制限し誘導する狙い
見せかけの豆鉄砲では脅威を感じさせられないため、十分に魔力を込めた「全力魔法」の砲撃です

この宇宙にあなたの居場所はありません
骸の海にお帰り願います



●てっぺきのじょおうとふていけいのそんざい
 背中を思い切り斬りつけてやった。炎の光線で思うさま焼いてやった。
 それでもなおドクター・オロチなる存在は健在であった。
「……ますますもって不気味な輩です。必ず倒してみせましょう、レクシアさん」
「だね、リミティアちゃん! ふたりで力を合わせればきっと勝てるよ!」
 そんなドクター・オロチの姿を見つつ、リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)とレクシア・ノーレッド(アーティファクト クリーチャー - ドレッドノート・f01101)の二人が戦場に舞い降りた。

『ムシュ、今度はキミたちが遊んでくれるのかな? それじゃあね~』
(先制攻撃が来ます、打ち合わせどおりに)
(オッケー!)
 リミティアとレクシアは密かに言葉を交わすと行動に移る。まずはレクシアからだ。
「……来て、「Ⅻ(エックスツー)」。今だけ、貴女を「私」と認めるから」
 【私の記憶/消し去りたい『名前』(コードネーム・エックスツー)】と名付けられたユーベルコードは、かつてレクシアが『研究所』にいた頃の自分を召喚して協力を得られるものである。レクシアのこの行動の意図は、後に明らかになるものである。
 一方のリミティアは「宝石剣エリクシル」に施された封印を解くと、魔力が溢れ出る刃を足元に突き立てる。するとどうだろう、リミティアの背後に突如巨大な魔術城塞が現れたではないか! リミティア自身の姿も、城塞に君臨する女王たる凛としたものに変わっている。

「レクシアさん、今です!」
「おっじゃましまーす!」
 ドクター・オロチがその姿を変えた緑色の粘液が、ものすごい勢いでレクシアと「Ⅻ」目がけて「伸びてきた」ところを、すかさずリミティアの夢幻城塞の中に逃げ込んで間一髪難を逃れるレクシア。残された「Ⅻ」は囮だったのだ。哀れ「Ⅻ」は緑色の粘液にひと呑みにされあっという間に溶かされていくが、務めは果たしたと言ってよい。
 緑の粘液から元の脳みそパーカー姿に戻ったドクター・オロチは、次いで狙いをリミティアに定めて水晶剣を「門」に変え、フェンリルを召喚する。

『なぁにその城塞、ズルくない? これじゃフェンリルの爆発も光線も通用しないじゃーん』
 まるで子供のように拗ねた声を上げるドクター・オロチに、自らも夢幻城塞の中に隠れおおせたリミティアがなんのと言い返す。
「こちらは命懸けなんです、あなたのように戯れに命をもてあそぶ輩になど、決して負けません!」
 命懸け。この言葉の意味は深い。一見鉄壁に見えるこの夢幻城塞は、召喚者であるリミティアの文字通り寿命を削って維持されているのだから。

「今度はこっちから行くよ! ぶっ倒してあげる!」
 夢幻城塞からレクシアが【接続/解放(コネクト・バースト)】を発動させながら勢い良く飛び出す。レクシアの身体が高圧電流を纏った身体となり、明らかに戦闘能力が高まったことを示していた。
『使ったね! ユーベルコード!』
 しかしそれに即座に反応したドクター・オロチが、嬉々として喚び出したのは骸骨の巨人。リミティアの夢幻城塞は主目標をフェンリルに定め、更に一部をオロチへの牽制目的で使用している。そしてレクシアはジャイアントカルシウムに対抗する術を持たない。
 もはやこれまでか、そう思われた時。

「――レクシアさんの邪魔はさせません!」
 夢幻城塞から響くようなリミティアの声と共に、砲撃がジャイアントカルシウムの巨体を撃つ。
『ちょっとぉ、キミそれホントにズルくなぁい!?』
 ことごとく思惑を潰されるドクター・オロチがまたしても不満を口にするが、元より敵にかける情け容赦など持たぬのが猟兵である。
『あいたっ、痛っ、自分は城に引きこもって豆鉄砲投げてくるなんてさ~』
「豆鉄砲?」

 それがいけなかった。

「……そうですか、リムの夢幻城塞の砲撃が『豆鉄砲』とおっしゃいますか」
 そこからは苛烈の一言であった。元々接近戦を挑むレクシアが戦いやすいようにと、ドクター・オロチの行動を制限するために狙いをつけていたのだが、その砲撃に全力の魔力を上乗せして、ただの牽制の域を超えた容赦のない砲撃が始まったのだ。
「この宇宙にあなたの居場所はありません、骸の海にお帰り願います」
 淡々と告げるリミティアの目は据わっていた。目撃者が居なかったのが救いか。

「あ、あはは、リミティアちゃんも張り切ってるね! 私もがんばらないと!」
 手にした「ふしぎなスパナ」にも高圧電流を流しながら、思うように回避行動が取れずにいるドクター・オロチに接近することに成功したレクシアは、脳みそパーカーの後頭部目がけて思い切りスパナを振り下ろす――!

『いったーーーーーーーーーーーーい!』
「やったーーーーーーーーーーーー!!」

 化け物でも後頭部をしこたま殴られれば痛いらしい。それをレクシアは証明してみせた。そしてそんな状態の敵にも容赦なく降り注ぐ魔術の砲撃。これ以上変なことをされぬうちに退こうとばかりにそそくさとリミティアの元に戻るレクシアと、一定の成果を挙げられたことを確認して満足気に夢幻城塞の顕現を解くリミティア。

「じゃ、じゃあ私たちはこれで!」
「止めを刺せずに残念ですが、いずれ誰かがあなたに引導を渡すでしょう。その時を楽しみにしています」
『ううっ……勝ち逃げってヤツかい……卑怯だぞ、猟兵めえ……』
 心なしかぐすんぐすんと鼻をすする音さえ聞こえそうな声音のドクター・オロチを置いて、戦略的撤退をする二人であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
……お会いできて光栄だわ、ドクター!!
ドクターの攻撃は先手だわ、なら……召喚されるフェンリルには、「狗」で対抗する!
魔犬バスカヴィルを召喚し、相手をさせる!私は彼の上に乗って魔炎光線を回避するわ。咆哮を出せないように喉を狙わせる。
いい子ねバスカヴィル、そのまま……獣を食い破れ!!
――そして、あなたに任せる。

これだけで押し切らないわ。「黒の上着」を翻しバスカヴィルの背から離脱、「ワトソン」で「ロープワーク」し、ドクターに接近できたなら……。
「怪力」で渾身の――「頭突き」を食らわせてやる!!
額が割れようが構わないわ、戦争に作法は無用よね、ドクター!!

――脳漿ぶちまけろッッッ!!!!



●いまのあなたはだあれ
 いまだ後頭部をおさえてイタタタと声を上げるドクター・オロチの前に、次なる刺客が立ちはだかったのはその時だった。
「……お会いできて光栄だわ、ドクター!!」
 全身黒のコーディネートに、跳ねた黒髪が印象的な女性だ。心なしか気分が高揚しているかのように見える彼女の名はヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)。

『おおっ、今度の猟兵はチートとか使わなさそうでイイね! よ~し……』
 自分の戦法が通用しなかったことをチート呼ばわりとは。それはさておき。
『今日はキミの出番が多いね、フェンリル!』
 水晶剣が「門」と化し、獰猛なる炎の狼が顕現する。フェンリルは今度の獲物は何だとばかりにジロリとヘンリエッタを目線で捉えると、その瞳から魔炎の光線を放ち眼前の獲物を灰燼に帰すべく低く唸り始める。

(ドクターの攻撃は先手だわ、なら……)
「餌の時間よ、我が魔犬――【魔犬の襲撃(ハウンド・オブ・バスカヴィル)】!」
 バッと右手を高々と掲げると、ヘンリエッタが強く詠唱の言葉を放つ。すると、ヘンリエッタが体内に宿すUDCから「魔犬バスカヴィル」なる存在がさらに喚び出された。
(――召喚されるフェンリルには、『狗』で対抗する!)

 フェンリルの唸り声が一層高まり、ヘンリエッタを捉え続ける両の瞳が輝き出すと同時、ヘンリエッタはひらりとバスカヴィルの背にまたがり、逆にフェンリル目がけて駆け出した!
『ムシュシュシュ、自分から突っ込んでくるなんて! どうしちゃったのさ?』
 ドクター・オロチが愉快げに声を上げた時、それは起こった。フェンリルの瞳から放たれた恐るべき魔炎光線を、バスカヴィルがヘンリエッタを乗せたまま華麗な脚さばきで間一髪かわしてみせたのだ。

 バスカヴィルは速度を落とすことなく疾走する。フェンリル目がけてひた走る。
「いい子ねバスカヴィル、そのまま……獣を食い破れ!!」
 ヘンリエッタの声に応えるように一度大きくジャンプしたバスカヴィルは、着地地点をフェンリルの喉元に定めた。再度魔炎光線を放つには狙いが定まらない、ならばと爆発を呼ぶ咆哮でと口を開けたその時。

『グ……アァ……!!!』

 そもそも咆哮を出せないように喉を狙わせたのだ。さもありなん。
 フェンリルの喉元に深く食らいついたバスカヴィルに後を任せ、その背から降りるヘンリエッタ。金色の刺繍が細かく施された黒の上着をひるがえしドクター・オロチに対峙する。
「さあ『ワトソン』、私を、ドクターの元に」
『わあ、キミはUDC持ちなのかい!? 弄り甲斐がありそうだなあ、楽しみだなあ!』
 ヘンリエッタの背中からぶわっと現れた『ワトソン』の名を持つクランケヴァッフェを見たドクター・オロチは、戦闘中にも関わらず嬉々とした声音で偽らざる本音を吐く。
 ヘンリエッタが『ワトソン』をロープのように伸ばしてドクター・オロチの腕をつかみ、グイと引き寄せてもなお、ドクター・オロチは愉快げに言うのだ。
『ねえ、キミが『そうなる』までにどんなコトがあったのかにも興味あるな~。悪いようにはしないからさ、』
「……戦争に作法は無用よね、ドクター!!」
 それ以上は言わせないとばかりに、ヘンリエッタが思い切り頭を後ろに振りかぶり――。
「――脳漿、ぶちまけろッッッ!!!!」
 渾身の『頭突き』をドクター・オロチに食らわせたのだった。

 後頭部を殴られ、今度は正面きっての頭突き。流石の饒舌なドクター・オロチも、これにはしばらく言葉が出なかったようである。心なしか顔面の脳の形状が歪んだようにも見える。
 そんなドクター・オロチを無造作に放り出したヘンリエッタの額は割れて流血が見られたが、きっと彼女にとっては些細な傷なのであろう。

 そう、ドクター・オロチが悪趣味にもえぐり出そうとしたモノの話と比べれば。

成功 🔵​🔵​🔴​

鵜飼・章
僕より頭がよさそうな人が相手だけど
僭越ながら屁理屈を言わせて貰うね
要は生物でなければ
その技は通用しない、でいい?

僕自身は取り込まれないよう
最大限の21m敵から離れる
UC使用に備え仲間からも距離を取る
敵の攻撃動作を【見切り】で読み
【早業/二回攻撃】を駆使して
なる早で【裏・三千世界】をカウンター発動

本物を呼ぶ事もあるけど
今日は魔導書【自然数の集合】を使うよ
際限なく出した鴉を
粘液化した敵に正面から高速でぶつけ
鴉の肉壁を作る事で
防御と攻撃を同時に行う

この子たちは僕の魔力でできた幻
つまり生命体に見えて
生命体でない存在だ
さて
取りこむことができるか興味深いな

上手くいったら
逆にきみを食べてあげる
悪食でごめんね



●ひととけものとばけものと
 流石というべきか、ここまで猟兵たちの猛攻に晒されながらも、なおもドクター・オロチはよいしょっと声を上げ起き上がってくる。
しかし、ならば完膚なきまでに叩きのめすまでのこと。少なくとも『この場にいる』ドクター・オロチは、ここで骸の海に返してやらねばならないのだから。

「僕より頭がよさそうな人が相手だけど、僭越ながら屁理屈を言わせて貰うね」
 淡々とした声が、今はもはや無残な有様となった部屋の中に響く。床に散らばる培養槽の中身を無造作に踏みつけ蹴散らしやってきた鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は、ドクター・オロチに対しある程度の距離を取ると、言葉を続けた。
「要は『生物でなければ、その技は通用しない』でいい?」
『ムシュシュ、どうだろうね! 試してみようか!』

 言い終わるやいなや、ドクター・オロチのただでさえ奇妙な姿が、さらに変貌した。
 ドロリとした粘性のある緑色の液体の塊となったドクター・オロチは、身体全体を驚くべき伸縮性で章に向けて伸ばすと、内部に取り込まんと迫り来る。
(――来たね)
 章はその一挙一動を見逃さず、自身を狙う緑の粘液が眼前に迫るのを見計らっていた。距離は充分に取った、変身したドクター・オロチがその身を伸ばせるのにも限度がある。それを見越して、ギリギリ届かない距離を保ち、反撃を叩き込んでやる――。

 そんな、算段だった。

「……なっ!!?」
『「21m」か、なるほどね! でも、ボクはキミより――強いんだから!』

 ギリギリだった。緑の粘液が、章が安全圏と見越した「21m」の距離を越えてその身を伸ばし、章を頭から呑み込もうとしたのを、その攻撃を辛うじて見切った章が身をよじってかわし、肩口を掠める程度の被害におさめたのは、ほんの一瞬の出来事のこと。

(なるほどね、ユーベルコードの使用者自身の力量に応じて伸縮性が上がるのなら、確かに僕の力量を基準にして距離を取っても上回られるという訳か)
 少なからず肉体を溶かされその痛みに耐えながらも、表向きは努めて冷静に章は緑の粘液を見据える。その気になれば一撃離脱で元の姿に戻ることもできようものを、ドクター・オロチはいまだ緑の粘液の姿のまま、次はどこを狙ってくれようとばかりに己の周囲を漂っている。だがそれは、章にとっては絶好の好機であった。

「来たれ、来たれ。幾千万の鴉たち。――【裏・三千世界(サンゼンセカイリバース)】」
 痛む肩口を押さえるのは諦め、章は驚くべき速度で魔導書「自然数の集合」の頁を繰りお目当ての頁を開くと、自身の魔力で構成された無数の鴉を召喚して反撃に出た!
 喚び出された鴉たちは開かれた魔導書からあふれるように際限なく現れては、緑の粘液に正面から高速でぶつかっていく。一部はまるで肉癖のごとく、一部は突破して粘液に突き刺さっていく。

「この子たちは僕の魔力でできた幻。つまり生命体に見えて生命体でない存在だ。――さて、取りこむことができるか、興味深いな」
 冷徹なる観察者の眼で、章が鴉を操りながら言う。
『このっ…! 数の暴力じゃないか、ひどいなあ! もう!』
 粘液となっても音声を発することはできるらしい。ほう、という風に興味深く緑の粘液――がいると思われる鴉の塊――の方を見やる章。

 肩は痛む。正直、激痛と言っても良い。こんなもので全身呑まれていたらと思うと内心ゾッとなるが、今は反撃の機会である、全力で行くだけだ。
 鴉の肉癖のおかげで、二度目はなさそうである。あとは攻撃に回っている鴉の首尾はどうか。
「その子たちは悪食でね、上手くいきそうなら逆にきみを食べてあげる。悪く思わないでね」
『ムシュシュシュ、よくもやり返してくれたね! ボクを食べてもおいしくなんてないよ!』
 瞬間、鴉の群れが一斉に散った。機を見て一気に元の姿に戻ったドクター・オロチが、章の鴉の群れを手にした水晶剣で薙ぎ払ったのだ。

「……でも、少しは痛かったかな?」
『ムシュシュ、興味深い経験だったよ。生きたままアレコレされるっていうのは、こういうことなんだなって!』
 それでこの邪悪の権化が果たして懲りたかと問われれば、答えはきっと否だ。
 多少なりとも成果はあったことを胸に、章はいよいよ痛みが増してきた肩口の傷を治療すべく、戦線を離脱するのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アトシュ・スカーレット
【Fly High 】で参加

【方針】
開戦直後にユーイちゃんの背後に移動
彼女のUCで防ぎきったらつかさちゃんと連携して攻撃を叩き込む

【行動】
ユーイちゃんが防いでる間、【付与術・天災式】を発動
両手のJoyeuse・剣形態と村雨・刀形態に業火と氷雪、腐敗の【呪詛】を付与、【属性攻撃】が可能な状態にする
自身に雷の魔力を付与し、反射速度を無理矢理引き上げる
【残像】が見える速度で行動し、【2回攻撃】を行う
熱して冷やして、腐らせることで【鎧砕き】を狙う

ドクター・オロチが認識できない速度で行動すれば隙を突くくらいは出来そう?

アドリブ大歓迎


荒谷・つかさ
【Fly High】で参加
先行したユーイが先制攻撃を受けた隙を見計らい、アトシュと連携して本体へ攻撃を仕掛ける

右手に「風迅刀」左手に「零式・改二」装備
「残像」を残す程の速度で骸骨巨人の脇を抜き、一気に本体へ肉薄
その際「属性攻撃」で発生させた風の刃で牽制し、敵の動きを制限
剣の間合い一歩手前辺りで風迅刀を振りかぶり斬撃、と見せかけて投擲攻撃し、更に距離を詰める
更に追撃の大剣を振るうように見せかけて大剣を盾にしつつ(武器受け)本命の【螺旋鬼神拳】を発動
「鎧砕き」「衝撃波」技能を乗せた一撃を急所に叩き込む

万一ユーイが失敗した場合は以上の連携を骸骨巨人へ向け使用
人型を逸脱した動きはしないと推測し対処する


ユーイ・コスモナッツ
【Fly High】で参加

・作戦概要
ドクター・オロチの先制攻撃から
アトシュさんとつかささんを守り、
攻撃直後にうまれる隙を狙って、
二人に攻撃してもらう作戦です

・ユーベルコード
転送されたらすぐに二人の前に出て、
「天球の虚数変換」を使います
外部からの運動エネルギーを虚数化するバリアです
ジャイアントカルシウムの質量がどれだけあろうと、
どれほどの速度で武器を振ろうと、無駄なことです

今ですっ、アトシュさん、つかささん!

その後はいったんバリアを解除して、
反重力シールドに乗ります
仲間に危険が及ぶようであれば、
急加速して間に割ってはいり、
再び「天球の虚数変換」で受け止めます
「かばう」技能をいかしたい

アドリブ歓迎



●みんなでちからをあわせれば
 【Fly High】の三人は、ある必勝の策を携えてこの戦場にやってきた。揃って転送されるやいなや、即座に一歩前に出たのはユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)。
「では、手はず通りに! がんばりましょうね!」
『おやおや~? 今度は三人で来たのかい! まっ、一人も大勢も、大して変わんないんだけどねっ』
 余裕綽々のドクター・オロチは、三人の姿を順繰りに眺めると――ジャイアントカルシウムを召喚した。しかも――三体同時に!

「ユーイ、あんなデカブツ三体、本当に大丈夫か!? 無理するなよ!?」
 圧倒的な光景を前に、思わずユーイの身を案ずるアトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)を、荒谷・つかさ(焼き肉担当・f02032)がそっと制する。
「大丈夫よ、ユーイを信じましょう。私たちは、私たちの為すべきことを」
「……そ、それもそうだな。じゃあ、頼んだぜ!」
「はいっ!!」
 ユーイはとびきり元気良く返事をすると、果敢にもジャイアントカルシウムたちの前に立ちはだかる。そして力強く宣言する。

「バリア展開っ!!」
 その声と共に、ユーイの全身を球状のバリアが包み込む。【天球の虚数変換(セレスティアルスフィアシールド)】だ。球内は絶対的安全地帯と化し、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵となる。これでもって、ユーイはジャイアントカルシウムたちの攻撃をしのぎ切ろうと狙いをつけたのだ。
『ふ~ん、なるほどね~!』
 愉快げに笑うドクター・オロチは、まず一体目の骸骨巨人に巨大な武器を振るわせる。思い切り振り下ろされる巨大な水晶剣はしかし、絶対の天球の防御によりことごとく弾き返される。ガキン! ガキン! と数度激しい音と衝撃を発した後、諦めるように一体目の巨人は霧散するかのごとく消えていった。

「やった……! 成功です、この調子で残りも」
『残りのコはねえ、キミの相手じゃないからね~』
「えっ……!?」
 喜びもつかの間、ドクター・オロチの不穏な言葉に思わず息を呑むユーイ。残り二体の巨人は――天球のバリアを展開するユーイの横をすり抜けて、後方に控えるアトシュとつかさの方へズシン、ズシンと歩を進めていくではないか!

 予定が狂った。アトシュとつかさはそれぞれ対応を迫られることとなる。

 まずはアトシュだ、ユーイが最初の巨人を相手取っている隙に【付与術・天災式(エンチャント・カタストローフェ)】を発動して自己強化を図ったところまでは良かった。しかし、それはあくまでドクター・オロチに対しての布石であり、ジャイアントカルシウムに対しての策をアトシュは持たなかった。
「アトシュさん……!!」
 とっさに天球の防御を解除し反重力シールドに飛び乗ると、全速力で骸骨の巨人とアトシュとの間に割って入り、再度防御を展開しようとするユーイだったが。
「くそ……ッ! あくまで一人ひとりに狙いをつけてくるってことか……!」
 ユーイの眼前で、アトシュが巨大な水晶剣に文字通り「圧壊」された。
「……っ!!」
 思わず顔を覆うユーイ。これで良かろうと消えていく巨人。後に残されたのは――。
「……いたた、強化してなかったらマジで死んでたわ、コレ」
「アトシュさんっ!?」
 部屋の床にヒビが入り、半ばめり込みながらも、アトシュは存命であった。あちこち流血は見られるし見えないところでの負傷もあるだろう、しかしそれでも、彼は笑った。
「猟兵がこの程度でホイホイ死んでたまるかってね、心配かけて済まなかった」
 今にも泣きそうなユーイの顔を見て、安心させるように声をかけるアトシュ。さあ、ここからどう反撃を見せるのか――?

 一方のつかさは『万が一ユーイが失敗した場合』を頭の片隅に置いてこの場に臨んでいた。故に、巨人が自分目がけて歩を進めてきても、動じることなく身構えることができた。
(相手は骨とはいえども人型、それを逸脱した動きはしないでしょう)
 骸骨の巨人はまっすぐに自分目がけて歩んでくる。その脇を抜き無視をしてドクター・オロチを狙うことも考えたが、そう容易くは行きそうになかった。

「……本来はドクター・オロチに叩き込んでやる予定だったのだけれど。仕方がないわね」

 右手に特殊な力で刀身が不可視な「風迅刀」、左手に愛用の「零式・改二」を携え、一気に骸骨の巨人に肉薄するつかさ。その際「風迅刀」から放った風の刃は骸骨の巨人に二の足を踏ませ、動きを制限する。
(本当は、アトシュと連携したかった所だけれど)
 剣の間合い一歩手前あたりで「風迅刀」を振りかぶり斬撃を――と見せかけ、何とつかさは刀をぶん投げた! 巨人が刀を防いでいる間にさらに距離を詰めるつかさ。いよいよ追撃の大剣を振るい――巨人が思わず腕でそれを払いのけようとしたところに、つかさ自身も振るった「零式・改二」をすかさず盾のように構え直し受け止める。
 そして、間合いに入ったところで繰り出したのは【螺旋鬼神拳(スパイラル・オウガナックル)】!
「抉り込むように……そこよ!」
 渾身の力を込めた正拳突きが、恐るべき威力で骸骨の巨人を一撃で粉砕する。
 これをドクター・オロチに叩き込めなかったのが返す返す惜しい、そう思いながらつかさは骸骨の残骸に背を向け、味方のもとへ駆け寄っていった。

「……ど、どうしましょう」
「作戦通りに行かないことも良くあることよ、気にしないで。アトシュは大丈夫?」
「ああ、まだ少しなら動けるかな……っ」
 狼狽するユーイにフォローの言葉をかけつつ、アトシュの様子を気づかうつかさ。このまま三人でドクター・オロチを仕留めることはかなわずとも、後に続けることはできそうだ。
「オレが行くよ、このままじゃ終われない」
「わっ、分かりました! 私もフォローします!」

『決まった~? こっちもまだ遊び足りないんだよね~』
 余裕の声を投げかけてくるドクター・オロチに向き直るのはアトシュだ。「Joyeuse・剣形態」と「村雨・刀形態」を両手に、先程強化を施した「業火」「氷雪」そして「腐敗」の呪詛の属性を付与して準備を整える。アトシュ自身には「雷の魔力」を付与して反射速度を限界まで引き上げ、ドクター・オロチ目がけて斬りかかる。
(熱して冷やして、腐らせてやる。そうすれば多少は防御力も落ちるだろう!)
 アトシュが狙うは「ドクター・オロチが認識できない速度での行動」。だが、残念ながら全ての動きはドクター・オロチの認識の範囲内であった。あるいはつかさとの連携があれば、思惑通りことが運んだかも知れないのは本当に悔やまれることであった。

しかしそれでもアトシュは奮戦した。水晶剣で何度も切り結ばれながらも、手負いの身でありながらも、ドクター・オロチに数度斬撃を浴びせたのだから。
「これで……っ!!」
『おおっと、頑張るね!』
「アトシュさん、もう下がりましょう!」
「ユーイの言う通りよ、良くやったわ!」
 幾度とない切り結びの末に勢い任せで飛び退ったアトシュはユーイとつかさに迎えられ、ようやくその満身創痍の身を休めることが出来た。

「また……リベンジ、できるといいな……」
 緊張の糸が切れたのか急激に襲い来る全身の痛みに顔をしかめながらも、アトシュは言う。
「もちろんです! その時こそやっつけちゃいましょう!」
「そうね、次は……必ず」

『ムシュシュシュ、なかなか楽しかったよ~。また遊ぼうね!』

 忌々しい声を背に、三人は後に続く猟兵たちに命運を託すのであった。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アンバー・ホワイト
ドクター・オロチ…先制攻撃とは手強い相手…油断は禁物、気をつけていくぞ
わたしはWizで勝負に出る
古竜の息吹を使い、古竜の上から一気にそちらに向かうぞ!
フェンリルからの攻撃は主に古竜の聖なる光を向かわせることで逸らし
背に乗る自身への攻撃は【フェイント】と【見切り】を使って古竜と共に素早く動くことで捌いてみせる
避けきれない場合はお互いの翼に貼った【オーラ防御】でダメージの軽減を試みる

ドクター・オロチ、ここで終わりにさせてもらおう
接敵したら古竜から飛び降りて、槍で【鎧砕き】ながら【串刺し】にする
躱されるようなら【怪力】に任せた【槍投げ】による追撃を
お前はまた、逃げるのか?
わたしが全力で、穿いてやる!



●ものくろーむ・ほわいと
 ドクター・オロチは一見平然としているが、ここまで幾多の猟兵たちと刃を交わしてきた影響は確実に出ていた。
 そして、その邪悪に――たとえ幾度となく蘇るとしても、少なくともこの場において――終止符を打たんとすべく、アンバー・ホワイト(星の竜・f08886)は血と臓物と身体の部位と、それらを収納していた水槽の破片が飛び散る研究室の床に足を下ろした。

(ドクター・オロチ……先制攻撃とは手強い相手……)
 油断は禁物、気をつけていくぞ。そう己に言い聞かせて眼前で愉しげに水晶剣をかざすドクター・オロチを見据える。
『ムシュシュシュ、キミたちも本当に懲りないね! 何度来ても同じだよ、っと!』
 その言葉と共に水晶剣は「門」と化し、開戦してから幾度となく召喚された炎の巨大狼・フェンリルがのそりと姿を現した。

「古の竜のちからを――【古竜の息吹(ツガレシチカラ)】」
 対するドラゴニアンの少女は謡うようにユーベルコードを口ずさむ。すると、アンバーの眼前に神話に記された白い竜の霊が召喚され、ばさりと舞い降りた。
「……行こう。いっしょに、あいつをやっつけよう」
 アンバーの言葉に応えるように、白き古竜は首から背中を地に近づける。背に乗りやすい姿勢を取ってくれたのだ、アンバーはよいせと古竜の背に乗ると、背中をひと撫でした。

 フェンリルの視線が文字通りアンバーと古竜を貫かんと二者に向けられ、炎熱光線が放たれる。対する古竜は「聖なる光」を放ち相殺を狙う、が――。
「……強い……!」
 炎熱光線の威力は圧倒的で、いかな古竜の力でも抑えきることは出来なかった。かき消された光の先には無防備なアンバーと古竜。あわやと思われたその時、
「……でも、ただでは落ちない」
 古竜の俊敏な機動力と、炎熱光線の軌道を見極めたアンバーの的確な指示により、紙一重での回避に成功する。ただ避けただけにはとどまらず、もう一度聖なる光を放つとフェンリルの視界を真っ白に包み込む。

『グ、グルアアァァァァァァァ!!!』
 視界を一瞬奪われたフェンリルが反射的に咆哮する。古竜とアンバーの周囲で次々と起こる爆発を、二者はそれぞれが持つ翼にオーラで出来た防御障壁を展開させつつジグザグ飛行でいなしていく。
 そうしてドクター・オロチを射程範囲内にとらえたアンバーは、己のたったひとつの牙でもある白銀の槍を構えると古竜から飛び降り、上空から一気に攻める!

(ドクター・オロチ、ここで終わりにさせてもらおう)

 アンバーは化け物目がけ、防御ごと串刺しにせんと槍を突き立てるべく急降下。
 化け物はしかし、頭に目でもついているのかと思わせる動きでそれを回避。
 床の惨状にも構わず着地したアンバーは、ならばと即座に身をよじり、その体躯からは想像もつかぬほどの膂力でもって白銀の槍をドクター・オロチ目がけて投擲した。

「お前は『また』逃げるのか? わたしが全力で――穿いてやる!」
『ムシュシュシュ、何のことか――なっ……!』

 白銀の槍は、不完全な姿勢からの投擲であったにも関わらず、ドクター・オロチの左肩に深々と突き刺さっていた。アンバーの執念の勝利といえよう。徹頭徹尾油断なく行動したことが功を奏したか。

『キミ、ちょっと調子に乗りすぎたかな? 色々したくなってきちゃったかも』
 ドクター・オロチの声音が、明らかに変わる。しかしアンバーはそれには乗らず、一歩退く。
「……残念、わたしの役目はここまで。そして、次こそお前は倒される」

 自分の務めは果たしたと、アンバーは豪奢な衣装と、ドラゴニアンの証である翼と尾とをひるがえしてドクター・オロチに背を向ける。己と入れ替わりに進み出る猟兵たちの影とすれ違う際、少しだけ微笑んで。

成功 🔵​🔵​🔴​

オブシダン・ソード
マティス(f05853)と連携して戦闘

ああいう性悪はね、斬れる内に斬っておいた方が良いと思うんだよ、僕は
僕が君の剣になる。ということで、剣としてマティスの手の内に

それじゃ、相棒にはどうにか相手の攻撃をしのいでもらおう
大丈夫、君ならやれるよ。
それに――僕を振るう前に倒れるなんて、つまらないでしょ?

応援ついでに加護の魔法(鼓舞)もあげる
警告のための声かけ、魔炎光線やらも切り裂けるなら手を貸すなど助力を

隙を作ってくれたら、攻撃の機会だ
鬱憤を晴らす時が来たね。敵は全部、僕のユーベルコードでぶった斬る
動きの止まったフェンリルを、水晶剣をもつドクターオロチを、順に斬り裂けるように導くよ
さあ行こうか、相棒


マティス・ジュブワ
相棒(オブシダン・ソード(f00250))と一緒に連携して攻撃

ドクターっつったか? お前が一体なんなのかはわからんが……せめてその顔に当たる部分に見えてるのーみそ隠せ、な?
しかしその門て……なるほど、召喚って訳かい
そう簡単にやらせっかよ、準備しとけよ、相棒!

相手のフェンリル召喚に対してクー・ドゥ・ヴァン・ジェーヌで対抗
召喚されたフェンリルを風の戒めにて縫い付けて、ソレ以上の行動を許さない
グレイプニールとまでは行かないだろうが、ほんのひと時あればそれでいいさ
全力で相手を縫い付けた後は、片付けるだけだ

あぁ、そんじゃ行くとするかね、相棒
あの顔面脳みそ野郎に、吠え面かかせてやろうぜ



●こくようけんともりのけんじゃ
「――ああいう性悪はね、斬れるうちに斬っておいた方が良いと思うんだよ、僕は」
 フード付きマントを身にまとい、フードを目深に被った人物が言う、背丈と声音から察するに、男性だろうか。もう一人、隣に立つ一見中性的にも思える緑の長髪の青年も、肩口に深手を負っているドクター・オロチを眺めながら言う。
「ドクターっつったか? お前が一体なんなのかはわからんが……」
 片手を軽く額に当てる仕草で青年――マティス・ジュブワ(マッドエレメンタラー・f05853)は続けた。
「せめてその顔にあたる部分に見えてるのーみそは隠せ、な?」
 そこか。そこなのか。フードの下で思わずそんな顔をしながら、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)はマティスの方を見てしまった。
『ムシュッ、人の顔にケチをつけるなんて失礼な!』
 人……? 今度は二人が同時に顔を見合わせる。いよいよもって、この減らず口を完膚なきまでに叩きのめして封じなくてはならないらしい。

「しかしその「門」て……なるほど、召喚って訳かい。そう簡単にやらせっかよ、準備しとけよ、相棒!」
 そう言って構えるマティスに対して、ユーベルコード【僕が君の剣になる(ハンドシェイク)】の行使で己の身をヤドリガミとしての本体である黒曜石の剣に変えて、互いを『相棒』と呼び合う信頼すべき戦友のマティスの手の内に収まったオブシダンが応える。
「それじゃ、君にはどうにか相手の攻撃をしのいでもらおう。――大丈夫、君ならやれるよ」
 それに――僕を振るう前に倒れるなんて、つまらないでしょ?
 その一言は念話のようなもので、オブシダンを手にしたマティスにしか聞こえぬものであった。口の端をつり上げ笑いそれに返すマティス。

『へええ、ヤドリガミ! 何度か弄ったことはあるけど、不思議だよね~。キミもあとでじっくりと調べさせてもらおっかな~!』
 自分が何かしらに興味を抱くと、それに夢中になるのは研究者故の性質か。不穏な台詞をオブシダンに向けるドクター・オロチはしかし自身の仕事を忘れることなく、水晶剣を「門」と化し、フェンリルを喚び出す。このフェンリル、そろそろ過労で倒れやしないかが心配である。

 此度幾度目か分からぬほどに研究室を飛び交ったフェンリルの魔炎光線が二人目がけて放たれるたび、オブシダンが警告を発しては右に左にかわしてみせる。当初は魔炎光線を切り裂くことも検討していたのだが、あまりの威力を目の当たりにした二人は流石にそれは止めておこうという結論に至った。

「……風よ、叡智を秘めた我が守護精霊よ」
 そしてオブシダンを構えたまま、マティスが詠唱を開始する。するとその身にまとった風の精霊がおもむろにざわめき出す。いよいよ反撃の時だ。
「【クー・ドゥ・ヴァン・シェーヌ】――その身を虚空へ縫い付けん事をここに願う」
 マティスの声に応えるように、風の精霊から風で編まれた縛鎖が放たれ、フェンリルの身体をぎちりと束縛した。その様はまるで神話の枷・グレイプニルを思わせるものであった。
「グレイプニールとまでは行かないだろうが、ほんのひと時あればそれでいいさ」
 マティス本人にも意識はあったのか、確かな手応えにも油断せずそう言うと、手にした黒曜石の剣――オブシダンも今が好機と身を煌めかせて訴える。
「――鬱憤を晴らす時が来たね。敵は全部、僕の力でぶった斬る」
 命中さえすれば、一刀両断してみせる。
 それこそが本体を露わにして相棒にその身を委ねたオブシダンの必殺の力。
 まずは一撃。身動きを取ることはもちろん、咆哮すら上げられぬようにきつく拘束されたフェンリルが、マティスが振るうオブシダンによって両断される。ならば後は返す刀でドクター・オロチを――。

 片付けるだけ、そのはずだった。

 がつん。鈍い音と激しい衝撃がマティスの後頭部を襲った。
「……っ、な……!?」
 かろうじて大事な相棒を取り落とさぬように踏ん張ったマティスが振り返り――いや、振り仰ぎ見たものは、水晶剣を手にした巨大な骸骨。マティスに対しての先制攻撃であるフェンリルの召喚への対処はほぼ完璧であった。しかし、オブシダンに対しての先制攻撃であるジャイアントカルシウムへの対処は、どうだったか?

「……そうか、しまったね。済まなかった相棒、こいつも何とかしないとだね」
「ああ……一撃喰らった程度どうってこたない。心配すんな」
 恐らく水晶剣の柄でしこたま殴られたのだろう、本音を言えばすごく痛い。しかし自分がしっかりしなければ、相棒の力を十全に引き出すことはできないのだ。マティスはここが正念場と狙いをよく定め、ジャイアントカルシウムが二撃目を自分に打ち据えようとして腕を振り上げたまさにその瞬間を狙い、黒曜石の剣を逆袈裟に斬り上げた。
『ええっ!? キミ、まだ動けたの~!?』
 ガラガラと崩れ落ちるジャイアントカルシウムのパーツを巧みに避けながら声を上げるドクター・オロチに、今度こそ肉薄すべく地を蹴るマティスとオブシダン。

「さあ行こうか、相棒。今度こそ僕が君を導こう」
「あぁ、そんじゃ行くとするかね、相棒」
 ――あの顔面脳みそ野郎に、吠え面かかせてやろうぜ。
 二人にその自覚があったかは定かではないが、それは、全ての猟兵たちの想いであったろう。
『ちょ、ちょっと待って! 斬れば絶対死ぬ剣とかズルいから! ちょっと前のチートの子並にズルいから!』
 そう言いながらも、何とか剣の軌道から逃れようとするドクター・オロチ。しかし、肩口の傷が傷んだのか、一瞬だけ姿勢を崩す。そして、その隙を二人が見逃すことはなかった。
 ドクター・オロチの頭から、床に切っ先が叩きつけられるまで、黒曜石の剣が文字通り一刀両断していく。
 ここまでされてはさしものドクター・オロチもままならない。身体が真っ二つになる先からサラサラと消滅を始める。

『ムシュシュシュ……また、会えたら、いいね……たのし、み……』

 最後まで不気味な言葉を残し、遂にこの現場のドクター・オロチは完全に消滅した。
 人のカタチに戻ったオブシダンは、真っ先にマティスの怪我の心配をする。
「大丈夫かい? この指は何本に見える?」
「いやいや本当に大丈夫だから、気持ちだけもらっとくよ」
 そんなオブシダンに苦笑いで応えるマティス。何しろ困難とも言われていたドクター・オロチの退治に成功したのだから、気分も良い。そしてそれは、他ならぬ相棒であるオブシダンの力あってのことだ。

 ――とりあえず、帰ったら二人で軽く呑み交わそうか。
 戦争はいよいよ最終局面、まだ気を抜くことはできないが、それくらいはしても良いだろう。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月19日


挿絵イラスト