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アルカディア争奪戦③〜|幽《かそけ》きをその手に

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦

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●明滅鉱脈ゼルフにて
 それは瞳を開かない。盲目なる少女たちの群れ。
 しかし、聲を音に乗せて鳴くのだ。
「ここは、きれい。みんなで、いたいばしょね」
「きがついたら、ここにいた」
「ずっといたい。ここにいたい」
 ジェード王国に占領された明滅鉱脈ゼルフにおいて、蛾の少女の大量発生は今や|燦然《さんぜん》たるモノと呼べぬ鉱脈を覆う。
 その輝きは、浮遊大陸における存在するべき代物だ。
 今や徐々に失われていく輝きであろうとも。
 多数の天使核が島に眠り続ける限り、自動なる輝きは失われたりしないのだ。
「明滅する輝きを、護るべく動き続けるのだ!」
 |燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》達は恐れない。
 武装精製技術は、その鉱石、ゼルフォニア鉱が"願い"を"叶え"たものだという伝承さえ遥か遠い。
 真実かどうかは定かではない。住民たちは徹底抗戦を続けている。
 現実に今ここで戦い続ける彼らの武装は、鉱脈の輝きに応じて力を増していく――。

●此処は綺麗なところね?
「その浮遊大陸には不思議な力と鉱石があるんだって」
 ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)は笑う。不思議な島だらけなのは今更だけどね、と言葉を付け加えて。
「僕が予知した島では、幻覚作用のある鱗粉を振りまく蛾の少女が大量発生しているようでね、戦う住民が悪戦苦闘してるみたいなんだ」
 眠らされたり、膝を折ったり。人によって様々で、少しして立ち直る者たちも居るようだが討伐はあまり進んでいない。
「|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》と呼ばれる人たちも頑張ってるんだけど、彼らと蛾の少女が争っている間に大陸の天使核は運び出され続けているようで。あまり時間の猶予がないんだ」
 やや困った顔をするソウジ。
「彼らの武装技術は、浮遊大陸特有のゼルフォニア鉱が由来でね。鉱石は、天使核を大本に稼働する――と思って貰っても構わないよ」
 天使核は運び出され続けている。
 つまり、弱体化を強いられて状況が悪くなる事は免れない。
「輝きが失われなければ、彼らはそこそこの戦力として立ち向かえるだろうから。君たちにも戦いに加わって欲しいんだよね」
 結局は戦いなんだ、というソウジは軽く言葉を修正する。
「蛾の少女たちは、鉱脈の輝きに誘われた子たちだよ。決して強くなんて無い――でも数が多く居てさぁ」
 盲目な少女たちにも、誘蛾灯のようにその輝きは誘われる色を灯してみせたのだ。
「君たちも、幻覚を齎されるかもしれないね。魂に刻まれた記憶、その断片を戦場で見てしまうかもだ」
 でもわすれないで。
 きみたちの傍には、膝を屈し続ける事をヨシとしない抗い続ける|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》が居るのだから。


タテガミ
 こんにちはタテガミです。
 この依頼は戦争に属する一章のシナリオ。

 プレイングボーナスは下記になります。
「|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》と共に戦う」。

●簡単な概要
 猟兵が訪れた時点で、幻惑に屈しかけている|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》たちと遭遇し、蛾の幼女達と出会います。猟兵が敵と戦えば、勇士たちは奮い立って猟兵へ加勢できるでしょう。彼らは、心を簡単に折れる人たちではありません。
 武装も合わせてやや屈強装備をしております、女の人もいるようですが男たちのほうが多いようです。

●集団敵
 儚い蛾の少女たちは、輝きに引き寄せられたものたち。
 数がとにかく多く、追い払われたくないので鱗粉をばらまきます。
「魂に刻まれた記憶」に該当する部分は、プレイング内容に依存します。つまり、その攻撃が反映されるのは猟兵、ということです。
 この内容は、プレイングに纏めて頂けると幸いです。暗い内容である必要はありません。なんといってもそれ以外の感情だってあなたの魂には「刻まれて」いることでしょうから。希望の内容でも、大丈夫。
 【POW】あなたの記憶が、少女の代わりに立ち塞がります。
 【SPD】あなたの記憶が、現れて幻惑に囚われます。
 【WIZ】あなたの記憶の中の世界が、環境を無視して広がります。
 大体のおおよそ認識はこのような感じでお願いします。やや異なってフラグメントを無視する形であっても、プレイングにやりたいことの記載を頂ますようお願い申し上げます。

●その他
 公序良俗に反する内容が強い場合は、反映が出来ずお返しする場合があります。なるべく頂いたプレイングは採用できればと思いますが、描写の期待に応えられない場合は内容に関係なく採用を見送らせて頂く場合がありますのでご注意下さい。
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第1章 集団戦 『泡沫のプシュケ』

POW   :    きがついたらここにいた
【魂に刻まれた記憶を呼び覚ます鱗粉】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    なんだかさむくて なんだかさびしい
【醜い眼状紋の翼】から、戦場全体に「敵味方を識別する【魂に刻まれた記憶を呼び覚ます鱗粉】」を放ち、ダメージと【幻覚】の状態異常を与える。
WIZ   :    あゝ あそこへいけばきっと あたたかい
戦場内を【対象の魂に刻まれた記憶の中の】世界に交換する。この世界は「【否定禁止】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シエナ・リーレイ
●アドリブ絡み可
わたし達と一緒に遊びましょ!とシエナは誘います。

元より相手と仲良くなり『お友達』に迎える事が目的なシエナ
シエナの世界に留まる事は大歓迎、少女達と仲良くなる為に遊び始めます

シエナの記憶の世界は一見すると沢山の人形に満ち溢れた可愛い寝室
その真の姿は死者と怨念で埋め尽くされた死の世界です

部屋に満ちた[呪詛]が生者を死を求める程の憂鬱に誘い、一度死に至れば瞬く間に『お友達』の仲間入り
『お友達』は生者と遊び[怪力]による凶行を通じて更なる『お友達』を増やしてゆきます

そのあまりにも悍ましい光景は勇士達の生存本能をこれ以上ない程に奮い立たせてくれる事でしょう



●見えない方が幸せなこと

 鉱脈に縋り付くように、少女たちは囁き集う。
 何者かの気配を感じると、ふるふると、少女たちは鱗粉をばらまく。
『ねえ、そこにだれかいるの?』
『いるよね、みえなくても、わかるもの』
 たくさんの虫の翅が震え、その世界を塗り替える。
「そうです、いますとシエナは語ります。語れます」
 シエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)は笑顔を絶やさない。
「わたし達と一緒に遊びましょう!とシエナは誘います」
『あそぶ、……じゃあ、あなたのせかいを、みせて、みせて』
『ここいじょうに、あかるくてすてきなばしょなら、いいわ』
 たくさんの鱗粉が舞い上がる――すると魂に刻まれたシエナの記憶の世界と現実を入れ替える魔法が掛かるのだ。此処は夢、幻と現実の境界線。
 シエナの視界に広がった世界。
 それは、一見するとたくさんの人形に満ち溢れたよく見慣れた可愛い寝室。
 盲目の少女たち、泡沫のプシュケ達はその真の姿を見て取ることはできないだろう。
 ふわり、ふわりと漂うシエナの"部屋"は呪詛がふわりと色濃く、その手を広げていく。
 死者と怨念で埋め尽くされた死の世界であると――魂が識らねばそこは猟兵の、とある少女の寝室でしかない。
『……あゝ、あたたかいおへやのかんじがするのよ』
「ふふふそうでしょう、さあ遊びましょ?こちらへどうぞ、とシエナは歓迎します」
 プシュケのユーベルコードによって広がったシエナの世界で、元より相手を『お友達』に迎えようとするのが目的のシエナ。
 ――勇士の方々が、立ち上がるまでの時間を保たせるのが仕事と聞きました。
「ここはとっても暖かいですよ、わたしの記憶、わたしがいます。寂しい場所ではないからね?留まることは大歓迎だから!とシエナは『お友達』に語りかけます」
『お友達』作りのおまじないは、優しく微笑んで、迎えること。
『でも、でも……なんだかすこし、こわいわ』
『さむいかんじも、するのよ、どうして。どうして』
 否定禁止のこの世界で、『いやだ』『いきたくない』なんて言葉にすればもう逃げられない。肯定だけが許される世界で、彼女たちの動きは著しく鈍った。
「暖かさは、あなた達が持っているものだからね。わたしも、そう。シエナはこの場所へ踏み込む事を拒絶したりはしないのです」
 シエナ自身も、"世界自体"も、滞在したいというのなら拒絶しない。
 部屋に満ちたシエナに親しみが深い呪詛が、生者の死を求めるのも仕方がない。|死の淵《過去》より此処へたどり着いたオブリビオンであろうとも、この部屋は逃さない。
『わ、わわ!』
 動きの鈍った少女たちは驚いた。
 大きな絡繰り仕掛けの手が、からりと音を立てて魂を捕らえる――。
 死を求める程の重く鬱屈とした気配が魂を撫でれば、死はグンと身近に成る。
「だいじょうぶ、こわくないのよ。とシエナは優しくお伝えします」
 一人のプシュケの頭がぐったりと力なく垂れる――すると『お友達』の一人となって、シエナ側の人形に成り下がる。
 盲目の少女達は、無力だ。
「あなたも、あなたも。それから、あなたも。みんなわたしの『お友達』になって!とシエナは特性のおまじないを『お友達』候補にかけてみせました」
 みんな仲良く『お友達』になったら暖かいし寂しくないよ。
 手繰る指先に操られた『お友達となったプシュケ』は生者と遊び、抱きしめる。
 見えない目の代わりに、シエナがサポートすれば弱気蛾の娘は自分の持てる力以上の怪力を発揮して、泡沫の娘たちを物理的に死の淵に追い込む打撃を。気絶に近い昏睡へ。
『あ、あ……あ…………』
『なかよくなるって、こういうこと?わたしたちも、あなたの、おともだち?』
「はい。たくさん仲良くなりたいです。シエナはその言葉に同意します」
 気絶させた個体を立ち上がらせて、今度は別の個体を繰る。
 シエナの世界は、そんな遊びに溢れていた。
「ねえ、ねえ?あなたもこうなりたいかな?シエナは単純に問いかけます」
 生者と遊びを続けてもいいのよ、と語る小柄のシエナの姿を見ていて、勇士達は奮い立つ。|悍《おぞ》ましい光景に、生者たる彼らは悪寒が勝った。
 此処で抗い立ち上がらなければ、彼女の『お友達』の一人に加えて貰い、戦うことも可能だろうが――。
「……もう大丈夫だ、このまま数を減らしていきたい。協力を頼むぞ!」
「じゃあ、みんなでなかよく遊ぼうね。シエナは一緒に戦います」
 蛾の娘たちを散らすなら。
 満足感を与えてから、終わりを教えてあげるのがいい。
 猟兵の戦う様から、勇士達はそう学び――勇ましく挑み続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グラナト・ラガルティハ
【SPD】
武装が十分に威力を発揮できねば勝てる戦も勝てまい…それでも燦然たる勇士と言われる者達が立ち向かうならば戦の神として力を貸そう

勇士たちの力を取り戻すためにも先ずはオブリビオンを倒すべきだな。
どのような幻覚を見るかは分からぬが戦う者たちの前で膝は折れまい。

(幻覚として現れたのは金の髪を靡かせた美丈夫の姿を持つ青年が優しく笑っている姿)
っ、アンバール
(久しく見ていなかった弟の姿に息を呑み唇を噛めば痛みに目的を思い出し)
ただの幻覚だ…それに今は…
また、お前の司るものが純粋に凄いのだと思えるようになった。
愛は偉大だなアンバール。
今ならそう言える。

(幻覚を打ち消すようにUC発動)
UC【神獣連弾】



●記憶より尚燃え盛る魂

 蹲る勇士の傍に、男は立った。
 複数人が、呻くように現実を見ていない。
 誰かが立ったのだと気がついても、返答は上擦るばかりで言葉にさえならなかった。
「例え武装が整っていようとも、十分に威力を発揮出来なければ勝てる戦も勝てまい」
 鉱脈を照らさんばかりの威光を引き連れたグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は言葉を落とす。
 立ち向かわんとする者たちへ。諦めることをまだ行おうとしない者たちへ。
 勇気ある屈強を魂に刻む者たちへ。
「今は屈していても良い。俺が来た。だが、……」
「それでも|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》と言われる者達が立ち向かうならば戦の神として力を貸そう」
 すぐに立て、とは男は言わない。
 だが戦う意思が折れていないことだけは見て取った。
「……勇士たちの力を取り戻す為にも先ずはオブリビオンを倒すべきだな」
 チ、チ、と炎の音が爆ぜる。
「幻覚を魅せるのが得意だそうだな。どのようなものを見るかは分からぬが、戦う者たちの前で膝は折れまい」
 当然小柄な少女型オブリビオンの前で、たやすく折る膝はないとグラナトは軽く頭を横へ振る。
『あのね、なんだかさむくて、なんだかさみしいの』
『でも、そのおとは、……あたたかいおとね』
 盲目の少女たちは大きな蛾の翅を広げて、揺らす。
 明るい場所がどこなのか。暖かい場所がどこなのか見通すように翅の醜い眼がぎょろりと、グラナトを睥睨する。
『どこ、どこ?』
『もっとちゃんと、かんじなくちゃ……』
 泡沫のプシュケたちが広げていくのは魂に刻まれた記憶を呼び覚ます鱗粉。
 敵対する存在が振りかけられたなら、君はきっと――幻覚の中に"なにか"をみる。
「――」
 現れた幻覚は、一つの像を結び少女たちの間を縫って歩くように顕れた。
 金の神を靡かせた、美丈夫の姿を持つ青年。彼は優しく笑っているではないか。手をゆるりとあげて、グラナトに久しぶり、と合図を送ってくる。
 ――幻覚だ。本物ではない。
 グラナトもそれを理解するが、その姿は当然、グラナトの識る姿――。
「――っ、アンバール」
 豊穣と愛の|神《弟》が、此処に居るはずがない。
 オブリビオンたちの中に囲まれて立つ訳がない。
 如何に対極の性質を持つとはいえ、そのようなことは――。
 ――久しく見ていなかった、とは思う。
 息を呑み、幻覚に推されかけるのを唇を強く噛み占めることで押し留まる。
 ――成程、オブリビオン自体に攻撃の意思がない代わりに……。
 ――内面から崩して、戦意を喪失させているのか。
 噛んだ唇の痛みに、幻覚に取られかけた意識を火炎と戦の神は掴み直すことが出来るだろう。痛みは現実を知らせる最も早い自覚手段だ。
 意識は今、現実に向いている。
「……違う、ただの幻覚だ。…………それに今は……」
 どうかした?と首を傾げるアンバールに対し、グラナトが向けた視線は敵意のそれではない。語る言葉をようやく見つける事ができた安堵を示すもの。
「また、お前の司るものが純粋に凄いのだと思えるようになった」
 理解。そして、納得。
「愛は偉大だなアンバール。今なら、――そう言える」
 彼は笑みを崩さなかった。
 むしろ、グラナトの言葉に頷いて肯定するように満足げであるようにさえ、見えた。
 幻影に向けられた神銃は、火炎の内に放り込むかのように絶え間なく撃ち続ける。
 それは、幻覚を打ち消し進まんとする男の背中を勇士たちへ見せつけた。打ち消した幻影の向こう。ふるふると震える弱気少女たちへ次にその銃は標準を定めていくだろう。

 己が見たものを超えていくのは、己の足と強い意志。
 ただ進め、屈する時間を惜しんで進め、と神が先陣を切って示すのだから――。
 奮い立ち、|勇気《ブレイブ》を胸に誘蛾灯から少女たちを追い払い続けなければ。
 彼らに勇気を与えたのは、紛れもなく――その男の英断であった。
 幻影は、己の意思と行動力で乗り越えていけるのだと神によって示された道を彼らは武器を片手に――ひた、走り続けるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天城・潤
護るべきものを護る為に、往きましょう

転送されたらすぐに味方である事と猟兵である事を告げます

「あなたたちの抵抗は報われました。猟兵が来ましたよ」

僕は余り屈強ではありません。燦然たる勇士たちには
物足りないかも知れませんが
僕にはユーベルコードがありますから
「大丈夫です」

UC黒蒼刃鏖殺を詠唱しただちに戦闘に入ります
「生命の埒外たる猟兵が援護を。さぁ…狩りの時間です」

まずは厄介な幻惑を片づけましょうか

僕の目に映るのは何時かの戦闘と同じ母の姿
ええ、でも
「何度お見えになっても母上…申し訳ないですが」
たおやかな姿を再び一刀両断し幻惑を振り払います

後はただ物理。勇士たちと協力し全ての敵の殲滅を
「勝ちましょう!」


禍神塚・鏡吾
技能:鼓舞、言いくるめ、落ち着き、破魔

「天使核を奪われたなら取り返せばいい、膝を屈したのならまた立ち上がればいい
大丈夫、貴方達は何度でも戦えます
大切な人を、故郷を、燦然たる輝きを守るためなのだから!」
UCで勇士の皆さんを鼓舞し、戦闘力を高めます

私の記憶にある最も暖かい世界は、皆がいるヤドリガミの箱庭です
本来は、敵対する者に戦いを忘れさせ、抵抗を封じるためのUCなのでしょうね?
しかしこの世界は、私にとって否定する必要もなければ戦いを忘れさせる効果もありません
折角なので利用させて頂きましょう
「御覧なさい、私には共に戦う仲間がいる
貴方達も同じです
力を合わせ、オブリビオンに立ち向かいましょう!」



●心に希望を、その手に勇気を

「護るべきものを護る為、戦いとはそうあるものでしょう」
 往きましょう、と天城・潤(未だ御しきれぬ力持て征く・f08073)は転送に応じた。
 送られた場所で見た光景は、膝を降り屈し掛けた者たちの頭ばかり。
 死してはいない、だが戦う意欲を削がれている。彼らが見たものを、潤とて理解の天秤に推し量って感じることは出来ないが……それでも。
 言葉を聞く耳があるのなら――。
「あなたたちの抵抗は報われました。猟兵が来ましたよ」
「ほんとか?お前さんたちが……?」
「ええ。私もまた、真実を持って答えるのみです」
 禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)は"真実"の言葉を告げる鏡となる。
 魔法の鏡(スレイブ・イン・ザ・マジックミラー)――その名を、告げずとも言葉は何よりも心に響くはずだ。
「天使核を奪われたなら取り戻せばいい。全てはまだ、奪われていない」
「膝を屈したのならまた立ち上がればいい」
「大丈夫、貴方達はなんどでも戦えます」
「大切な人を、故郷を、燦然たる輝きを守るためなのだから!」
 |喋る鏡《本体》が語る言葉を聞けるなら、あなた方は立ち上がれる。
 大丈夫だから戦う意志を消し去るな、と鏡吾が語れば、頷く勇士の姿も見えなくない。
 鼓舞し、共感し、立ち上がる力を心に持つべきだ。
 彼らと手わかるのだ、わかっているのだが、勇士達の中で立ち上がれたものは少ない。
 力を振るうために、立ち上がる|勇気《ブレイブ》まだ、少し――。
『がんばらなくていいよ。みんなみんな、げんかくにおぼれていようよ』
『わたしたち、このあかりがすきだもの』
『ぜんぶなくなるのは、いやだけれど、このあかりは……』
 泡沫のプシュケたちにも、戦意はあまり見えない。
 奪われ続ける天使核を横目に、鉱脈の輝きに羽を休めているだけ――のように、潤の眼には映る。
 幻覚とは、こうして理想を妨害する壁と成る。
 誰かの悪事を隠す隠れ蓑にされてしまう。
 だからこそ、強い意志を持つ猟兵が語る必要があったのだ。
「あとはそう。彼らが頑張れるよう、私達がもう少し先導し時間を稼げば……」
「僕はあまり、屈強ではありませんから……|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》たちと比べれば物足りないかもしれませんが」
 ――僕にはユーベルコードがありますから。
「大丈夫です、時間稼ぎ。やってみせましょう」
『いじわるね、あなたたち』
 一斉に蛾の翅を震わせて、鱗粉をばらまいて。
 猟兵たちに敵対して、鎮めようとその翼を震わせ続ける。

『あなたは、ううん……?』
 戦場内に鏡吾の記憶の中の世界と、現実世界を入れ替える。
 一人でも多く、攻撃しようという意思をなくせればいいプシュケたちは、ふわあ、と暖かな風が吹いた気がして。
 気を取られる。
「私の記憶にある最も暖かい場所は、この通りです」
 にぎやかな気配。記憶の再現であり、本物、本人たちは此処には居ないが――"ヤドリガミ"がいる気配がそこら中に現れる。
『え、え……あたたかい、ところ?』
「私もいる場所。皆が居る"ヤドリガミの箱庭"。此処はとても暖かい場所ですよ」
 この世界で否定は禁止。
 ――しかし、否定しようがないほど暖かいでしょう?
『あゝ、あゝどうしてこんなに……』
 盲目のプシュケは手を伸ばす。ここの|暖かさ《ひかり》は好ましいものだと、肯定して。
 鉱脈の輝きに集った個体は、次々に鏡吾の世界に魅了されていく。
 あちらへいきたい、あちらのほうが、あたたかい、と。
「……本来は、敵対する者に戦いを忘れさせ、抵抗を封じるためのUCなのでしょうね?」
 暖かな気配は当然だ。この記憶は普段から触れているもの。
 いつも、どこかしらから声がする。
「しかしこの世界は、私にとって否定する必要もなければ戦いを忘れさせる効果もありません」
 この世界へ集う|ヤドリガミ《仲間》の幻影もまた、猟兵。
 誰もが戦うものだ。そして、穏やかな日常を少なからず望むもの。
 ――折角なので利用させていただきましょう。
「御覧なさい、私には共に戦う仲間がいる。こうして、貴方達と並び立つのを笑って応じてくれる、仲間が」
「……おお?」
「顔を上げて、立ち上がる時は今ですよ。貴方達も同じです。力を合わせ、オブリビオンに立ち向かいましょう!」
 戦力が増えたと錯覚したら。
 此処まで鼓舞してやれば、言葉は力をその身に与えられたのだと気がつけるだろう?
 勇士たちのやる気に応える輝く装備武具は、鉱脈は君たちの抗おうとする働きを支え叶えるのだ。

『ねえ、ねえ?……みえなくても、わかるのよ。さみしいばしょの、さみしいあなた?』
 潤の勇ましい姿に、除去しようという心意気を妨害する。
 鏡吾の世界を否定して、それでも敵を敵だと識別する鱗粉を放つ個体も存在した。
 行動成功率が著しく落ちても、彼女たちはその手にそれ以上の戦う手段を持たない。
 炎に集う、翅蟲も同じ儚さで、潤へも幻覚効果を与えるのだ。
『あなたは、そこで、とまっていて』
「いいえ。留まる時間はありません――この刃に触れるものに、死を」
 詠唱を短く行い、手に携えた黒蒼刃を煌めかせ、即座に誰よりも戦闘体制に入る。
「生命の埒外たる猟兵が、援護を。さあ……狩りの時間です」
 如何なる時も護れと言葉と共に贈られた刃で、繰り出すのは黒蒼刃鏖殺(コクソウジンオウサツ)。
 泡沫のプシュケたちがほとんど無害でも。
 オブリビオンであることには変わらない。追い払うだけではだめだと、その刃は本質を捕らえる。
『しぬのはこわいことよ』
『さみしくて、さむいことなのよ』
 彼女たちの鱗粉から、作り出され潤の記憶から顕れたのは――何時かの戦闘と同じ母の姿。相手側に位置取り、対面する幻影は表情を崩すことはなかった。
『この|幻影《ひと》のことが、だいじなのでしょう?』
『なら、ひざをおって、いっしょのじかんをすごすといいのよ』
『わたしたちは、こうげきしたりなんか、しないわ?』
 盲目の少女たちの優しい声に、潤は一瞬手を止めかけて。
 だが、首を横に振り、浅く息を吐く。
「ええ、でも――何度お見えになっても母上、……申し訳ないですが」
 たおやかな姿を再び両断し幻惑をたやすく切り払う。
「此処で立ち止まる姿を彼らに魅せるのは、何よりもよくないことと思います」
 斬られた幻影が、フ、と笑うようにみせたのは気のせいだろうか。
 潤のすることを、解っていたように彼女は抵抗を見せず消え去った。
「幻影は、かき消せます。さあ、立ち向かうべきは、今ですよ」
 後はただ物理。貴方がたが生きるべるべき場所を、取り戻すために走りましょう。
 すべての敵の撤退を、それから殲滅を行うべきだという潤の言葉に|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》は同意で返すだろう。
 もう迷いはない。抵抗し続けるために、戦うことを此処に誓おう。
「さあ、勝ちましょう!」




 猟兵たちの力添えもあり、|燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》たちは恐れず突き進む。仄かな灯りに初めての恋をしたように身を寄せていた泡沫のプシュケたちは次々に還されていく。
 ここにいてはいけないのだと、蛾の少女たちは理解して、次の|ひかり《暖かさ》を求めて消えていくだろう。
 幻影は消えても、夢は消えない。
 彼女たちの欲する場所にもいつかは届くかもしれないが、それは此度の話ではない。
 |燦然たる勇士《ゼルフォニアブレイブ》の進撃は急激に力を増して進められるだろう。天使核を護る戦いは、これからもこの場所で進められていくのだから。
 猟兵たちによって切り開かれた燦然たる行動力もまた、たやすく失われるものではないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月05日


挿絵イラスト