●
いつもの棲家はあっという間に姿を変えて、もう面影は残っていない。
心地よい潮の香りもコウモリ達の歌も、二度と感じ取れない。
洞窟の中に蠢くのは、ただただ穢らわしい白色だけだ。
その最奥で女王はただ泣いて、笑って、怒っている。
空から来た悍ましき者の名前を、ただ叫んでいる。
嗚呼、許せない。
■■■、アナタを絶対に許さない。
●
「お疲れ様です! 何やらアックス&ウィザーズで不穏な動きがあるようでして。所謂グリモアエフェクトが新たな事件を捉えました」
ウィノラ・シュレミール(天蓋花の人形劇・f26014)は明るく笑顔をうかべつつ、猟兵達を出迎える。
「オブリビオンが根城にしている海辺の洞窟があるのですが、そこに一筋の流れ星が落ちたのですよ。それだけならファンタジックなお話のようにも思えますが……その流れ星、とんでもない厄ネタでした」
話を続けつつ、ウィノラはグリモアを起動する。そこに映し出されたのは――白濁した禍々しい触手が蔓延る洞窟の光景だ。
洞窟の中からは触手が蠢く湿った音と、何かの呻き声が響き渡る。どう見てもまともな状況ではないだろう。
「流れ星には寄生生物のようなものが付着していたようです。それらはオブリビオンに取り憑き、不可思議な『刻印』を刻み込みました。その影響で殆どのオブリビオンは爆ぜて死に絶えましたが、生き残りもいるようで……」
更に映像が切り替わり、内容は洞窟内部へ。
そこには白い触手を生やしたコウモリのようなオブリビオンの姿があった。
「刻印を刻まれても生き残ったオブリビオンは発狂し、白い触手の怪物と化しています。このまま自滅してくれればいいんですけど、そう悠長なことは言っていられません。何故ならこの寄生現象はオブリビオンだけに起こるとは限りませんから」
もし触手の寄生がオブリビオン以外のもの、自然や生物にも及ぶとしたら――そう考えれば、触手の怪物となったオブリビオンを放置しておくのは危険だろう。
幸いこの洞窟は人里から離れているようで、今のうちに乗り込めばオブリビオンが外へ逃げ出すことはない。
危機を防ぐためにも、すぐに乗り込んだほうがいいだろう。
「ひとつ注意点がございます。オブリビオンか生えているこの触手、先端が針のようになっておりまして。あまり無防備に攻撃を受けると、刻印を刻まれる可能性があります」
戦闘中はオブリビオンが本来持っている攻撃手段に加え、触手への対策も必要になるだろう。
気を付けなければ、次に寄生されるのは自分達だ。
「それから、洞窟にいるのはこのコウモリだけではございません。一番奥には群れの長がいます。そちらも忘れずに倒してきて下さいね」
長であるオブリビオンは他の者に比べると、まだ微かに正気を保っているようだ。もしかすれば、何かの情報を掴んでいるかもしれない。
「予知で何となく見えた光景では、彼女はとっても怒ってました。それで、何かの名前らしきものを呟いているのですが……すみません、そちらは現地での確認をお願いします」
情報を確認するためにも、未曾有の危機を防ぐためにも。とにかく乗り込んで、戦いに勝つしかないだろう。
「厄介な依頼をお願いすることになりますが、これも世界のためです。皆様の無事を祈っておりますよ」
ウィノラは話を締め括りつつ、グリモアを起動する。
その先からは潮の香りが漂っているが――それ以上に感じるのは、不穏な何か。
「……それではお気をつけて。行ってらっしゃいませ!」
ささかまかまだ
こんにちは、ささかまかまだです。
穢らわしきその名を呼んで。
●一章『エレメンタル・バット』
白い触手に寄生されたオブリビオンの群れです。
通常の攻撃に加え、触手による突き刺しや刻印付与を狙ってきます。
そちらの対策もあるといいでしょう。
●二章『貝塚の女王』
洞窟のオブリビオンの長です。彼女も白い触手に寄生されています。
他の敵に比べると正気をギリギリのところで保っており、寄生した生物の名前を知っているようです。
詳しくは断章にて。
●
どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
締め切りの告知もそちらで行っているので確認していただけると幸いです。
それでは今回もよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『エレメンタル・バット』
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POW : 魔力食い
戦闘中に食べた【仲間のコアや魔法石、魔力】の量と質に応じて【中心のコアが活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 魔力幻影
【コアを持たないが自身とそっくりな蝙蝠】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 魔力音波
【コアにため込んだ魔力を使って両翼】から【強い魔力】を放ち、【魔力酔い】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:つかさ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
洞窟の中は薄暗く、どこからか海水が流れ込んでいる箇所もある。
けれどそれ以上に気になるのは――辺りに散らばる白い触手だ。
その触手に繋がるように現れるのは、魔物から完全な怪物と化したコウモリ達。
彼らは金切り声をあげながら、猟兵達へと襲い掛かる。
コウモリから生えた触手は常に此方を狙い、寄生しようと目論んでいるようだ。
その穢らわしい攻撃からも身を守りつつ、まずは敵を殲滅しよう。
ステラ・カガミ(サポート)
『よろしくね。』
人間のシンフォニア×サウンドソルジャー、18歳の女です。
普段の口調は「年相応の少女口調(あたし、~くん、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
踊り子兼歌姫なので歌ったり踊ったりすることが大好きです。
明るく好奇心旺盛な性格で、自慢の歌と踊りで旅費を稼ぎながら世界を回っています。
戦闘では歌や踊りを使っての援護に回ることが多く、ユーベルコードもそれに準じた使い方をします。
描写NGはありませんので、あらゆる用途で使って頂いて大丈夫です。
リカルド・マスケラス(サポート)
『正義のヒーローの登場っすよ~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
NPCに憑依(ダメージはリカルドが請け負う)して戦わせたりも可能
接近戦で戦う場合は鎖鎌の【薙ぎ払い】と鎖分銅の【ロープワーク】による攻撃がメイン
遠距離戦では宇宙バイク内臓の武装で【薙ぎ払い】や【一斉発射】。キャバリアもあります
その他状況によって魔術的な【属性攻撃】や【破魔】等使用
猟兵や戦闘力のあるNPCには【跳梁白狐】で無敵状態を付与できる
また、無力なNPCが大人数いる場所での戦闘も彼らを【仮面憑きの舞闘会】で強化して戦わせつつ身を守らせることも可能。
●
悍ましい気配漂う洞窟の中に、ふいに響き渡るのは機械の駆動音。
その発生源は宇宙バイク『アルタイル』に乗ったリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)だ。
洞窟内部は元々の地形と触手の影響で悪路と化しているが、アルタイルのパワーを駆使すればなんのその。
それなら注意すべきは、内部に潜んでいるオブリビオンだ。
「相手はコウモリに寄生してるんすよね? どこから出てくるか分かんないから、気を付けていくっすよ~」
「そうね。変な音がしたらすぐに知らせるけど……」
リカルドの後ろに座るステラ・カガミ(踊り子兼歌姫・f14046)が少し不安げな表情を浮かべる。
常に音楽に慣れ親しむステラだからこそ、異常な音にはすぐ気付ける。
けれど洞窟そのものに響く不気味な音や水っぽい音は、常に不安を掻き立ててきて。
その中にひときわ大きく響いたのは、悲鳴のような鳴き声だ。
「……! リカルドさん、何か来る!」
「了解っす。接近されないように気を付けましょう!」
ステラの声を聞き、リカルドはバイクをその場に止める。
そのまま周囲を警戒し、神経を尖らせて。そんな二人の前に現れたのは、悍ましき触手に覆われたコウモリの群れだ。
コウモリ達は自身の幻影を生み出しつつ、猟兵達との距離を詰める。
本来の彼らはコアに蓄えた魔力を使い様々な攻撃をしてくるようだが、今はどちらかといえば触手を振り回して攻撃してくる様子だ。
そこでステラはバイクから降りて、九尾扇をふわりと構える。
「それならこっちだって……!」
たんたん、とリズムを刻んで、悍ましい相手に惑わされないように。彼女の踊る舞は不思議な魔力の流れを生み出し、猟兵達の周りを漂い始めた。
「ステラ、合わせるっす。目くらましなら自分達だって出来るっすよ」
リカルドはバイクに乗ったまま、忍術の構えを取る。
相手が数の幻で押してくるのなら、こちらもそれで対応するまで。
「あたしの踊り、気に入ったかしら?」
ステラの扇がコウモリの身体に触れたなら、そこから生まれるのはまた別の幻コウモリ達。
幻達が敵の動きを阻んだら、次はリカルドの番だ。
「夢か現か幻か、とくとご覧あれっすよ!」
彼が生み出すのは霧で出来た分身だ。
分身達はコウモリを引き付けて、触手の狙いをどんどん逸らす。
本来のコウモリならば何かしらの手段で幻を見極めたかもしれないが、彼らはもう触手に従うだけの存在だ。
そんな彼らは目の前の相手が敵でも本物でも、とにかく触手を振るうだけ。
敵の攻撃を阻害出来たのなら、今度は攻め込む番だ。
「リカルドさん、敵の足止めはあたしに任せて。触手には指一本触れさせないわ!」
ステラは時折聞こえる波の音に合わせて、まだまだステップを踏み続ける。
舞って、踊って、怪物相手でも恐れずに。
ステラが扇を振るえば振るうほど、コウモリの幻は生まれて敵の狙いを逸らさせていく。
時折こちらに飛んでくる触手もあるけれど、それは華麗なステップで回避して。
そしてステラの舞台を照らすのは――後方のリカルドの役割だ。
「ステラさん、合図したらそこを離れて下さいっす」
「分かったわ!」
ステラが敵を引き付けている間に、リカルドはアルタイルの武装を展開していく。
洞窟自体が触手の巣窟と化しているため、壁や天井も破壊しそうなミサイルランチャーはやめておいた方がいいだろう。
その代わり、洞窟を壊さず敵を薙ぎ払える手段を――そこでリカルドが呼び出したのはビーム砲『ミルキーウェイ』だ。
内部にエネルギーを装填させ、狙いを定めて――。
「……今っす!」
リカルドの声を合図に、ステラが大きく飛び上がる。
そのまま後彼女が後退すると同時に、リカルドはミルキーウェイのトリガーを引いた。
次の瞬間、洞窟内部に眩い光が奔れば――コウモリ達は幻影ごと薙ぎ払われて、一斉にその場から消え去った。
コウモリが倒されれば、彼らに寄生していた触手達も消え去るようだ。戦果を確認し、猟兵達は安堵の息を吐く。
「よかった。今集まってきたコウモリは倒せたみたいね」
「作戦成功っすね。この調子で行きましょう~」
リカルドは再びステラをバイクに乗せて、暗い洞窟の中を進んでいく。
危険なコウモリ退治は続くけど、気持ちだけは明るく。
猟兵達は勇ましい笑みを浮かべながら、次の戦いへ向かうのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!
●
目的地である洞窟の周囲では、住まう精霊達も不安げになっているようだ。
彼らの様子に胸を痛めつつ、スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)もまた洞窟を覗き込む。
中から感じるのは圧倒的な邪悪の気配。一刻も早く事態を解決しないと、きっと取り返しのつかないことになるだろう。
「ここは一人では危険でしょうね。それなら……」
スピネルは意識を集中し、精霊達へと声をかける。
私達が必ずここをなんとかするから、皆の力を貸して欲しい。
そんなスピネルの意思に応えるように、少し離れた浜辺から小さな精霊の気配がやってきた。
スピネルは彼らの力をひとつに束ね、自身の矛と盾に変える。
「――スコーピオンテイル!」
組み上げたのは砂塵の結界だ。施された攻撃と防御の魔術は、強敵でなければ対処出来るはず。
準備を整え意を決し、スピネルは洞窟の中へ足を踏み入れる。
その奥――悍ましい触手の待つ空間へ向けて。
触手に寄生されたコウモリ達は、スピネルの気配を感じるや否や集まってきたようだ。
彼らのコアである宝石が怪しく光れば、そこから溢れるのは妨害魔術。
コウモリ達は翼を羽ばたかせ、魔術を飛ばしてくるが――。
「砂の防御よ、お願いします!」
スピネルの周囲に展開される結界が、悪しき魔術をしっかりと弾き飛ばす。
彼女自身の魔力も合わさった結界は並大抵の攻撃では壊せない。スピネルはそのまま前へと進み、敵との距離を一気に縮める。
「……覚悟して下さい!」
今度は結界に施された攻撃魔術が発動し、飛び出た土の槍があっという間にコウモリのコアを砕いた。
しかしまだまだ安心は出来ない。洞窟の中には多くの敵が蔓延っているのだから。
「今度は……こちらですか」
結界の感知機能を頼りにしつつ、スピネルは更に洞窟を進む。
こちらに向かってくる敵は勿論、まだ確認出来ていない敵も。その全てを倒すように心掛けつつの進軍だ、神経と魔力は常にすり減らされるような感覚がある。
それでもスピネルは弱音を吐かず、しっかりと前を見据えて行動を続ける。
それも――この世界に平和を取り戻すためだ。
「オブリビオンフォーミュラ亡き世界でも、事件が起きるなら……食い止めなければなりませんね」
強い思いを覚悟に変えて、ただ真っ直ぐ。
砂の精霊の力を借りながら、スピネルは着実に仕事を果たすのだった。
成功
🔵🔵🔴
リグ・アシュリーズ
厄介な敵、ってのだけはわかったわ。
せっかく平和になった世界、これ以上立ち入らせるわけにはいかないものね!
間合いの外から、触手を寸断するように気流の刃を打ち出すわ。
まずは牽制、その後は取り囲まれないよう注意しながら敵の一部だけを意図的に突破させるの。
一度に相手取る数を絞って着実に剣で斬りつけ、危なくなったら一旦退いて、刻印を刻まれないようにするわ!
敵が共食いしそうならその前にトドメ。
この宝石みたいのがコアかしら?
パキリと割ってコアを食べられないようにするの。
この後も控えてるのよね?
ある程度数を減らしたら深追いはせず、他のどなたかに任せて体力を温存するわ!
世界も大事だけど、私の命だって大事だもの!
●
事前に聞いた説明と、実際目の当たりにした光景。
その双方を頭の中に叩き込みつつ、リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)は静かに呼吸を整える。
洞窟の様子は思っていたよりも悲惨で、漂う気配も禍々しい。ここに潜む化物はそれだけ厄介な相手なのだろう。
「……せっかく平和になった世界、これ以上立ち入らせるわけにはいかないものね!」
この冒険の世界に、不気味な侵略者はいらないから。
リグは意を決し、洞窟の中に足を踏み入れる。手にはくろがねの剣を握りしめ、身体は愛用のコートで守って。
準備が出来たのなら、あとはひたすら進むだけだ。
コウモリ達もとい彼らに巣食う怪物は、新たな来訪者の気配に引き付けられたようだ。
彼らは触手をうねらせつつ、一斉にリグの元へと迫りくる。
だからリグも剣を構え、柄を握る手に力を籠めた。
「お行儀よく待ったりしないわ。さあ、行くわよ!」
そのまま剣を振るえば、巻き起こるのは凄まじい数の気流の刃だ。
刃は次々に怪物達の触手を、翼を、宝石を切り裂きその動きを止めていく。
リグの力なら、周囲の敵を纏めて薙ぎ払うことも可能だろう。けれどリグは気流の嵐に敢えて小さな隙間を残していた。
――予想通り。数体のコウモリが嵐の合間を潜り抜け、不気味な声を上げながら接近してきている。
けれど近づきさえすればどうにかなるなんて、大間違いだ。
「来てくれてありがとう。それじゃあ……遠慮なく!」
接近した敵には容赦のない斬撃を。敵の数が少ない分、狙いは気をつけて正確に。
数体の敵を切り倒せば、リグはすかさず離脱の準備を始める。今回の戦いは敵を一気に殲滅するようなものではない、だから同じ場所に留まるのは危険だろう。
しかし中途半端に敵を倒していくのも危険だろうか。後ろを向こうとしたリグの視界に、ちらりと不穏なものが見えた気がした。
「――ッ! 妙なことはさせないわよ!」
脳が敵の状態を認識するより早く、剣を振るって刃を飛ばして。突風のように突き進む刃は一体のコウモリ――仲間の死体を喰らおうとしていた個体を叩き割った。
ぱりん、と中央のコアが割れればコウモリ達はあっという間に骸の海へ還っていく。危機一髪、というところだっただろうか。
「本当に厄介な敵だわ。でも、だからこそ……深追いも危険よね」
改めて安全を確認し、リグは移動を開始する。
戦うべき相手はコウモリだけではない。ここにはまだボスも控えているのだ。
それに――洞窟の中には、戦う猟兵達の気配も感じている。彼らも一緒なら、世界と自分の生命の両方を大事にしてもいいだろう。
呼吸を整えて、迷わず走って。次なる戦いにも意識を向けつつ、リグの行動は続いていく。
大成功
🔵🔵🔵
ポノ・エトランゼ
なんか異常事態!
この世界に危機が迫っているというのなら行かなきゃね
……うえ、洞窟内の触手の動きや音にちょっと辟易しそう
よいしょ、って盾を背負って乗り込むわ
POW
とてつもなくヤバい気がするから、コタマさんに思いっきり暴れ回ってもらう
UCを使って闘気を纏ったコタマさんに突進で彼我の距離を作ってもらって、私は弓矢で【早業】
素早くコウモリたちを射落としていきましょう
接敵されたら直に叩いたり矢切りで対応
触手が触れてそうなら背負っている騎士の盾で防いでみる
振り返るようにして背を向けてもいいし、盾らしく使えそうなら盾らしく防ぐ
弾いたら「コタマさん啄んじゃって!」って援護を頼むわね
●
中から漂う異様な気配を感じ取りつつ、ポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)は洞窟の前に立つ。
洞窟から微かに伝わるのは奇妙な音や湿った風。思わずぞくりとしそうなそれに耐えつつ、ポノは装備を整える。
「なんか異常事態、よね。この世界に危機が迫っているというのなら行かなくちゃ」
背にはしっかり|騎士の盾《キャヴァリアーズ》を背負って、まずは慎重に洞窟内を数歩。
外からでも聞こえた音はより強く感じられ、視界の端では白い何かが不気味に畝る。
(……うえ、こんなことになっているなんて。とてつもなくヤバい気がするわね……)
背負った盾を更に身体に密着させて、少し呼吸を整えて。
ここは万全を期して仲間を呼ぼう。ポノが援軍に選んだのはバディペットのコタマさんだ。
「コタマさん、思いっきり飛んで暴れちゃって! 一緒に頑張りましょう!」
ポノが魔力を帯びた手でコタマさんを撫でれば、彼女の身体には力強い闘気が宿る。
パワーアップしたコタマさんもやる気十分。二人で頑張れば、きっと大丈夫だろう。
こうして戦う準備を進めるポノ達の元に、ひときわ大きな怪音が近付いてくる。その正体は――触手に寄生されたコウモリだ。
敵が現れるや否や、コタマさんは勢いよく地上を走る。
そのまま大きくジャンプして、ぶちかますのは――全力の突撃だ!
コタマさんの身体は小さくとも纏う闘気は凄まじい。彼女の渾身のタックルはコウモリ達を突き飛ばし、ポノ達との距離を開いた。
「ありがとう! 後は任せて!」
すかさずポノはエルフボウを構え、吹き飛んだ敵へ鋭い矢を浴びせさせる。
中央のコアを割られたコウモリはあっという間に息絶えて、触手ごと消え去ったようだ。けれどまだまだ油断は出来ない。
気付けば後方からも数体のコウモリが迫っているようだ。しかし――回避は間に合わない!
「っ……それなら!」
ポノは咄嗟に後ろへ飛び込み、背負った盾に触手をぶつける。
その衝撃で触手が弾かれれば少しは安心だろうか。そしてポノが振り向くより早く、地上を小さな影――コタマさんが駆け抜けていく。
「コタマさん啄んじゃって!」
その呼びかけに応じるようにコタマさんは大きく鳴いて、再び一気に飛び上がった。
突撃と同時に突き出された嘴は迫る触手を切り裂き、コウモリの元まで辿り着き――その勢いでコアを叩き割る!
そのままコタマさんが着地すると同時に、後方にいたコウモリも消え去ったようだ。これでようやく一件落着だろうか。
「助かったわ、コタマさん。コウモリは……これで全部かしら?」
周囲に敵の気配もなく、ポノは小さく息を吐く。
けれど戦いはまだ終わりではない。ポノはコタマさんと共に、更に暗い道を突き進む。
洞窟の最奥には――きっとボスがいるだろうから。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『貝塚の女王』
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POW : おいしいおいしい、モットチョウダイ
自身からレベルm半径内の無機物を【肉を溶解する水流】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD : 痛いトお腹ガへっちゃうモン
自身の身体部位ひとつを【無数の貝殻でできたドラゴン】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : アナタもトッテモおいしソウ!
対象のユーベルコードに対し【精神力を弱らせる邪光】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:はる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ニキ・エレコール」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
猟兵達はコウモリを殲滅し、更に洞窟を進んでいく。
最奥は開けた空間のようで、地面には少し海水も滲んでいる。
けれどそれ以上に目を引くのは周囲を覆い尽くす不気味な触手だろう。
そしてその中央には、一体の人魚のようなモンスターが佇んでいた。
「あ、ァア……たべもの、たべものダ……アナタを食べれば、身体、もう痛くナイ……?」
人魚、『貝塚の女王』は猟兵達を睨みつけ、呟く。
彼女の身体からは幾つもの触手が飛び出しており、その痛みが女王を苛んでいるようだ。
そして女王の表情には――どうしようもない怒りの色は滲んでいる。
「痛イ、痛イ、許さナイ……悍ましイ、許せナイ」
女王は触手を引きちぎりつつ、少しずつ猟兵との距離を詰めていく。
「許せナイ、許せナイ……」
彼女は僅かに残った正気を、全て怒りに注ぎ込み、叫ぶ。
その穢らわしき、白き者の名を。
「――許さナイ、|巡礼者《ピルグリム》!!!」
その叫びに呼応するように、触手は強くのたうつ。
この女王を倒さなければ、巡礼者《ピルグリム》と呼ばれた触手は更に活性化し行動範囲を広げるだろう。
白き悍ましき侵略者を止めるためにも――この戦いに勝利しなくては。
島津・有紗(サポート)
絡み・アドリブ歓迎
「じゃあ、始めましょうか」
戦闘前にイグニッションカードから装備を展開して装着します。
味方と連携しつつ索敵しながら行動し、相手との距離に合わせてなぎなた、強弓、ガンナイフを使い分けて戦います。
味方と連係する場合は、攻撃より味方の支援を優先します。
UCは状況に合わせた物を選択して使用します。
マロン・ビネガー(サポート)
◎連携・アドリブ歓迎
知的好奇心旺盛で少し不思議+ひんやり系な性質の僕っ子。思考は理系寄り
戦場ルールと他者の意志は尊重する方
現地住民や先輩には「礼儀作法」で丁寧な対応を心掛ける
◆戦闘傾向
エキセントリック+トリックスター
属性魔法や精神攻撃/誘惑、地形の利用等で撹乱するタイプ
主な得物は蓬莱の玉枝orレイピア、弩
技能は主に「天候操作」、
特に雨・雪系を好む
攻撃系UCに合わせて「電撃」+「貫通攻撃」、
回復系UCに「浄化」を載せる等
勝利の為なら代償・取引系UCも躊躇いませんが
保護対象や共闘する方々を攻撃に巻き込む事は極力避けます
必要なら「結界術」等で防御、場所感知等
臨機応変に支援行動も可
後は基本お任せです
●
殺気と食欲を隠すことない女王も異様だが、それ以上に悍ましいのは|巡礼者《ピルグリム》と呼ばれた化物だろう。
嘗ての戦いでも見たことのない異形を前に、島津・有紗(人間の戦巫女・f04210)は思わず息を呑む。
けれどあれを放っておけば、もっと酷いことになるはずだ。有紗は意を決しイグニッションカードを握りしめる。
「――|起動《イグニッション》!」
次の瞬間、有紗の手元に現れたのは愛用の強弓だ。
女王ともなるべく近づきたくはないが、一番距離を置かなければならないのはあの触手。
そこで有紗は目を閉じて、埒外の力も発揮させていく。
「古の武士達よ、ここに出ませい!」
呼びかけに応じ現れるのは悪路武者軍団、頼もしい武者達の霊だ。
彼らならば女王に喰われることも、触手に刻印を刻まれることもない。前衛は彼らに任せつつ、有紗も戦いの準備を進める。
しかし女王も黙って倒されるのを待つ訳ではないだろう。彼女もまた不可思議な力を使い、洞窟の中の状況を変化させ始めたようだ。
「あ、ァ、あああアぁぁアア!!」
女王の身体からは妖しげな光が発せられ、その身体は少しずつ有紗の身体を蝕んでいく。
このままではユーベルコードの力を保てない。それより先に武者達に動いてもらわなくては――。
「くっ……武者軍団、私には構わず前に……」
「その心配はないよ。あの光なら僕が焼き尽くす」
ふいに有紗を庇うように、一人の少女が姿を現す。彼女はマロン・ビネガー(夢幻の恋人・f37213)、有紗と同じく銀誓館出身の猟兵だ。
マロンの身体からは血が流れており、有紗は思わず目を見開く。
「! あなた、もう怪我を……」
「心配してくれてありがとう。でも、これは力の代償だよ。ほら……こんな風に」
マロンが血の流れる腕を振りかざせば、そこから現れたのは紅蓮の魔竜だ。
竜は猟兵達を守るように宙を舞い、煉獄の業火で妖しい光を掻き消していく。
そのお陰で有紗も元気を取り戻したようだ。再び身体に力が入るのを確認すると、有紗も一歩前に出る。
「マロンさん、ありがとうございました。ここからは私も……!」
「僕とあなた、武者達と竜がいれば百人力だね。一緒に頑張ろう」
並び立つ二人の猟兵は、仲間と共に再び敵と相まみえる。
そんな彼女達の様子を、女王は忌々しげに睨んでいた。
「食べル、アナタ達を食べれバ……!」
次に女王が発したのは凄まじい水流だ。
ここは海辺だから、どこかから海水を持ってきたのかと思ったが――微かに漂う異臭が水の正体を感じさせる。
咄嗟にマロンは竜を呼び寄せ、自分達を守るように前へと立たせた。
「っ……あの水に触れるのは危険だね。何かの化学物質に近い匂いがする」
「毒のようなものが含まれているのでしょうか? それなら……」
あの水が肉体を溶かすものならば、対処する方法はある。
有紗は武者軍団と顔を見合わせ頷きあって、そして敵の姿をしっかり見据える。
「古の武士達よ、あなた達ならあの毒水も大丈夫なはずです。今こそ……!」
武者軍団は武器を構えて前へと進み、少しずつ敵との距離を詰めていく。
彼らの元にも水流は押し寄せるが――有紗の言葉通り、その毒が武者達を蝕むことはない。
彼らは霊的な存在で、溶かされる肉がない。だから気を付けばければいけないのは水の勢いだけだ。
武者達は力を合わせて前へと進み、一気に敵に近付いて――それぞれの武器を堂々と振るう!
その攻撃で女王が大きく悲鳴をあげ、触手がのたうつのが見えた。同時に毒水の水流は少しずつ引いていき、猟兵達の進む道も開いていく。
「マロンさん、始めましょうか」
「うん、反撃の時間だね」
有紗とマロン、そして魔竜も呼吸を合わせて敵の元へと駆け寄っていく。
魔竜と武者達の放つ炎や雷は蔓延る触手を引き裂いて、猟兵達の安全を確保して。
そして守るものがなくなった女王には――。
「行きます、覚悟して下さい」
「この絶望を……終わらせるよ」
有紗の破魔の矢、マロンの蓬莱の玉枝を介した魔術、その双方が炸裂すれば、女王は内に寄生する触手ごと浄化されていく!
猟兵達とその仲間、皆の息の合った連携は未知なる怪物を滅ぼす力となったのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
スピネル・クローバルド(サポート)
『お姉ちゃんに任せておいてね♪』
妖狐のクレリック×アーチャーの女の子です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、兄弟姉妹には「優しい(私、~君、ね、よ、なの、なの?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は温厚で人に対して友好的な態度をとります。
滅多に怒る事はなく、穏やかです。
怖そうな敵にも、勇気を持って果敢に挑む一面もあります。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
猟兵との戦いが始まり、女王を蝕む触手の気配も強くなる。
その恐ろしい光景を前にしても、スピネル・クローバルド(家族想いな女の子・f07667)はどうにか勇気を出していた。
(怖い、ですが……)
あの恐ろしい怪物が洞窟の外に出て、罪なき人々を傷付けるのはもっと怖い。
この世界に住む人だけでなく、大切な人達を守るためにも。この場にいる自分が勇気と共に立ち向かわなくては。
スピネルは『フォレストスナイパー』を力強く握りしめ、敵の様子を静かに窺う。そんな彼女に女王が向けるのは――。
「あ、アナタを……食べさせテ!」
次の瞬間放たれのは、妖しげな光だ。
その光を浴びた途端、スピネルの身体からはゆっくりと力が抜けていく。あれは精神に作用する攻撃のようだ。
そして光に呼応するように触手も伸びて、今にも此方へ飛びかかろうとしている様子。
「っ……負けません!」
スピネルは残った気力を振り絞り、弓をしっかりと構えた。
イメージするのは美しい森の光景とそこに住まう精霊達。彼らの力を借り受けて、弓に魔力を籠めたのなら――。
「――この矢で防ぎますよ」
放たれた力絶の森矢は迫る触手を退け、女王が放つ光を切り裂く。
森の魔力は洞窟の中に浄化された気配を漂わせ、スピネルに再び力をくれた。
「おのれ、オノレ……!」
力を打ち消された女王は恨めしそうにスピネルを睨む。
けれどスピネルはその視線に怒りを返さなかった。彼女の眼差しになるのは、優しい色だ。
「あなたも苦しんでいるのは分かります。でも、だからこそ……ここで終わらせましょう」
本当なら争いは好きではない。出来れば平和的に解決したい。それがスピネルの内にある思い。
けれどオブリビオンが、未知の怪物が誰かを苦しめるというのなら、それを止めるのもきっと自分の役割だ。
だからスピネルはもう一度弓を構え、オブリビオンの姿をじっと見る。
未知のものに侵される女王を止めて悪しきものが蔓延るのを防ぐため。
「お姉ちゃん、頑張るからね……!」
スピネルが勇気と共に矢を放てば――それが真っ直ぐに女王の身体を、そしてその内の怪物を射抜く。
そこに籠められた優しさに気付いたのか、女王の表情は微かに和らいでいるようだった。
成功
🔵🔵🔴
ポノ・エトランゼ
リグ(f10093)さんと!
あっれえリグさんだ、やっほぅ!
リグさんに追いついて、軽めに声掛けて合流
――まあ、オブリビオンから目を離すことはないんだけど
ごめんなさい、私たちを食べてもあなたの痛みは治まらないの
骸の海に還すことでよしとして頂戴
貝殻のドラゴンに対しては騎士の盾で防御!
私の攻撃はUCで影を放ちつつ、護符を放っていくわ
巡礼者のことは私たちに任せてくれるかしら?
ねえ、潮騒をまだ覚えてる?
コウモリたちの歌は?
放った影はフェイント兼ねてリグさんの動きを援護しつつ
私は催眠術と騙し討ち
符の与える瞬間的な錯覚が少しは餞となると良いのだけど……
ほら、聴こえる? 海はもうすぐそこよ
リグ・アシュリーズ
ポノさん(f00385)と
ポノさん! 来てたのね……そうよね。大事な故郷の危機だもの。
しゃべる間に迫る敵を、抱えた機関銃の制圧射撃で牽制。
言っとくけど食べない方が身のためよ?
お腹の中から食い破られた狼さんの話、ご存知ないかしら!
得意の間合いで黒剣での戦いに持ち込むわ!
できるだけ注意深く動きを見て、引き付けて。
躱したところで反撃の狼煙、痛い目見るのはどちらかしら!
触手の針と貝殻の竜を高速の剣さばきで解体、次々と無力化するわ。
たとえ躱されたって退くもんですか!
手数でポノさんの攻める隙を作り、ついでに私の剣もねじ込んであげる。
余計なもの削ぎ落とせば、音も聞こえるでしょ。
大好きだった音、届いたかしら?
●
洞窟の最奥に着いてすぐ、ポノ・エトランゼの目に飛び込むのは見知った姿だった。
「あっれえリグさんだ、やっほぅ!」
「ポノさん! 来てたのね……そうよね。大事な故郷の危機だもの」
声をかけられたリグ・アシュリーズも此方に駆け寄る友人の姿を一瞬だけ見遣り、笑顔を浮かべる。
二人は横に立ち並ぶが、視線はずっと前方――白い触手に苛まされる女王へと向けられていた。
「あ、ァア……アナタ達を食べさせテ!!」
女王は常軌を逸した形相を浮かべつつ、猟兵達の元へと迫る。
けれどポノもリグも、その様子を決して恐れはしなかった。
「ごめんなさい、私たちを食べてもあなたの痛みは治まらないの。骸の海に還すことでよしとして頂戴」
「言っとくけど食べない方が身のためよ? お腹の中から食い破られた狼さんの話、ご存知ないかしら!」
先に動いたのはリグだ。彼女の腕には短機関銃WOL-8が抱えられ、その銃口はしっかりと女王へ向けられている。
そして次の瞬間には――無数の弾丸が女王の身体を捉えた。しかし彼女も完全に止まる気配はなく、砕けた身体は貝殻で構成されたドラゴンへと変貌していく。
すると今度はポノが前に出る。騎士の盾をしっかり構え身体に力を籠めれば、ドラゴンから繰り出される強烈な攻撃だって耐えられるのだ。
これで初撃は耐えきれた。今度は此方が攻勢に出る時だろう。
「ポノさん、前衛は任せて! あの不気味な触手ごと叩き切るわ!」
「ええ、お願い。二人で頑張りましょうね!」
リグが装備を黒剣へと持ち替え前へ進んだのを確認し、ポノも数枚の護符を取り出す。
二人の視線は変わらず女王――触手と貝殻に覆われた異形へと向けられていた。
「がァ、ああぁぁぁあッ!!」
化物と化した女王は身体を手当り次第に動かし、ひたすら暴れまわっているようだ。
それは彼女本人の意思だけではなく、宿主の危機を察知した触手の意思でもあるのだろう。
「酷い状態ね……早く止めないと」
危険な状況の中でもポノは変わらず冷静に、しっかりと敵の姿を見据えていた。
手当たり次第暴れるのなら、まず止めるべきは――ポノは狩人としての知識と経験を活かし、的確に護符を投げつける。
狙った箇所は足元だ。放たれた護符は女王の足を幾らか砕き、その動きを阻害していく。
そこへすかさずリグが踏み込み、焦茶色の瞳で様子を窺う。
足は止められた。今いるのは得意な間合い。それでも油断は禁物だ。
「……っ!」
思った通り。女王は大きく腕を振るい、リグを弾き飛ばそうとしたようだ。
けれどその攻撃は黒剣でしっかり阻んで。続いて突きつけられた触手は後退することで躱しきれた。
しかし攻撃はまだまだ苛烈。女王の身体からは更に貝殻が飛び出して、リグを貫こうとするが――。
「そうはさせないわよ。ねえ女王さん、巡礼者のことは私たちに任せてくれるかしら?」
ポノが放った賢者の影が迫る攻撃を弾き飛ばす。同時に投げかけられた質問に、女王が返したのは鋭い視線だけだった。
けれどこの場は乗り切れた。リグは後退すると同時に体勢を立て直し、意識を深く集中させる。
「やられてばっかはね、性に合わないのよ! 今度はこっちの番!」
カウンターとして発動するのは埒外の力。一瞬で真の姿に転じたリグは、再び前に踏み込み黒剣を構える。
「さあ、痛い目見るのはどちらかしら!」
次の瞬間放たれた斬撃は、無数の貝殻も迫る触手も一気に切り裂く。
相手も構わず残る身体や触手を振るうが、リグは一歩も退く様子を見せなかった。
それは彼女自身がそうしたいと願ったからであり、もうひとつは――傍にいる仲間を信じているから。
「ポノさん、お願い!」
「ありがとう、リグさん!」
リグの呼びかけに応じ、ポノも再び影を飛ばす。
その衝撃で女王の身体は元に戻り、そのまま地面へ崩れ倒れた。
女王は連撃と影に圧倒され、力の大部分を失っている。
猟兵達は彼女にじっと視線を向けながら、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「……ねえ、潮騒をまだ覚えてる? コウモリたちの歌は?」
その言葉に女王は小さく、微かに頷く。触手を削り取れた分、少しは落ち着いているのだろうか。
「良かった。余計なものはちゃんと削ぎ落とせたみたいね」
女王の様子を見遣り、リグも小さく安堵の息を零す。
オブリビオン相手に容赦するつもりはないが、友人の意思だって最大限に汲みたい。その願いが果たせたことは喜ばしいことだ。
「だったら、これを聞いて。少しは餞となると良いのだけど……」
ポノが女王へ向けるのは、特殊な魔術を施した護符。
そこから光と音が弾ければ、聞こえてくるのは――遠い遠い、波の音。
「ほら、聴こえる? 海はもうすぐそこよ」
「大好きだった音、届いたかしら?」
ポノとリグの言葉に、女王は何も答えるはなかった。けれど彼女の目からは、一筋の涙が零れていた。
女王は安らかな表情を浮かべると、そのまま骸の海へと還っていく。
それに呼応するように触手達も枯れていき、残ったのは猟兵達と海の音だけだ。
「……お疲れ様、ありがとう。これで良かった、のかしら」
「勿論! ポノさんの故郷も無事に救えたし! こちらこそありがとう!」
猟兵達は笑顔を向け合い、帰り道を行く。
洞窟を出た先に待つのは――本物の海だ。
●
こうして洞窟内での事件は無事に解決した。
しかし『|巡礼者《ピルグリム》』という存在について、名前以外のことは分からないまま。
彼らはどこから来たのか。何者なのか。
流星に乗ってきたのなら、まさか空の上からなんて――そんな可能性もあるかもしれない。
けれど今日は、大きな事件を解決したことを喜ぼう。
それはきっと、大切なことなのだから。
大成功
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