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銀河帝国攻略戦㉑~過去を制する過去~

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #黒騎士アンヘル

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「さぁさぁ語ろうか。舞台はスペースシップワールド、時は銀河帝国攻略戦。いよいよフィナーレへと続く戦い、黒騎士との激戦を――」

●過去
「……今回、私が送り出す場所にいる敵は、正直今までの戦いの比じゃあないんだ」
 グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは顔を青冷めさせながら、集まってきた猟兵達を見回して重々しく語り始めた。
「それでも挫けずに挑んでくれるというのなら――私は、私の役目を、全力以上で行うと約束しよう」
 唇を噛みしめ、手帳を開き羽ペン型のグリモアを輝かせると、彼女は映像を映し出した。

「さぁ語ろうか。銀河帝国との戦争も佳境に近づいている中、君達には皇帝の二大側近の一人を打倒して貰いたい」

 黒騎士アンヘル。
 銀河帝国皇帝の二大側近が一人であり、帝国軍最強クラスのスペースノイドの騎士。
 あらゆる過去の事象に干渉する邪法を使いこなすフォースナイトだ。
「知っての通り、解放軍の牙は銀河皇帝に向かいアンヘルには向かっていない。実際皇帝を先に倒す方が早いし戦力を殆ど失っている彼にわざわざ戦力を向ける必要が無い、という理屈もわかる」
 ただし、と長い指を一本立てて。
「だが黒騎士は強力なオブリビオンだ。放置すれば銀河皇帝が滅びた後に、新たな親玉となる可能性もない。そこでそうなる前に君達の手で滅ぼして欲しい」
 一度で滅ぼすことは出来ないだろうが、何度も滅ぼせば復活は不可能になる。
 その大事な一回を行って欲しいと告げた。
 黒騎士が来るであろう戦艦の一つに転送するので、待ち伏せて撃破して欲しいとも。
 だが重要なことがある、それを忘れて挑んではまず勝てないだろうと言葉を続ける。
「君達は普段の戦いにおいて、よほどのことが無い限りはまずユーべルコードを先に叩き込めるだろう。しかし今回の相手に限ってはそうはならない。必ず先んじて君達にユーべルコードを叩き込んで来るだろう」
 これが黒騎士の実力なのか、と驚愕する猟兵達に説明を続ける。
「だから君達にはいく前に相手の攻撃に対処する方法を考えておいて貰いたい」
 そうしなければ敵の攻撃をみすみす喰らいに行く単なる自殺行為だと釘を刺しておく。
 勿論、対策が不十分であったり、何度も何種類も自分の攻撃を叩き込もうとすれば苛烈な反撃を受けてしまうだろう。
 その上で敵の攻撃を凌ぎ、しっかりとした反撃を叩き込むことが出来て、漸くまともに打撃を与えられる相手なのだと語り終えた。
 今までにない強敵との戦いに、震える手で額に滲んだ汗を拭き、一息ついてまた彼女は語り出した。
「正直に言って今回の敵は、本当に強力だ。私はいつも勝利を確信して送り出しているつもりだし、今回も信じてはいるが……それでもだ」
 頭を抱え、壁にもたれかかり翼をへたれさせ。
 唇を噛みしめて、本当に悔しそうに彼女は語った。
「……100%を信じられないほどに、強すぎるんだ。強すぎるのさ」
 目を伏せ、本当にすまないと泣き出しそうな声で。
 零れそうな涙を必死でこらえながら、最後の言葉を告げた。
「それでも。この銀河の安寧の為に。どうか力を振るってあげて欲しい。……頼んだよ」


裏山薬草
●注意!!
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●重要!!
 黒騎士アンヘルは、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 どうも、裏山薬草です。
 OPに目を通して頂きありがとうございます。
 またまた戦争シナリオをお送りさせていただきます。
 黒騎士アンヘルとの決戦です。
 強敵なので相応の判定はさせていただきますのでご了承を。
 連携を試みる方は、どうか連携先と密な打ち合わせをしておくことをお勧めします。

 それではプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
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第1章 ボス戦 『黒騎士アンヘル』

POW   :    消えざる過去の刃
【虚空から現れる『空間に刻まれた斬撃』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    過去喰らいの三呪剣
【過去の鍛錬の経験を封じる白の呪剣】【過去の戦闘の経験を封じる黒の呪剣】【戦うに至った過去を封じる灰の呪剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    記憶されし傷痕
【対象の肉体】から【過去に刻まれた傷跡や病痕】を放ち、【一度に再現され肉体を蝕む出血や疾病】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ベスティア・クローヴェル
側近というくらいなら、皇帝が死んだ後に遺志を継ごうとするはず
であれば、ここで取り逃がすわけにはいかない
何度も復活するのは厄介だけど、必ず噛み殺す

黒騎士が来るであろう戦艦の一つで待ち伏せっていうくらいだから、
転送されてから黒騎士が来るまで猶予があるはず
であれば、予め【無敵城塞】を使用して相手のUCに備えておく

相手の先制攻撃が終われば、こっちの番
【鎧砕き】で防御を崩し、パイルで【串刺し】にして、大剣で【2回攻撃】
防げる攻撃は【武器受け】【盾受け】で受け流し、相手の反撃や緊急時には【無敵城塞】を使用して耐えきる
「お前はあと何回殺せば死ぬ?」なんて聞いても答えるはずはないか



●Memoria
 戦艦内で相対するべき相手を待ち構える猟兵は、とある気配がした瞬間に一斉に身の毛がよだつ感覚に襲われた。
 あれこそが銀河帝国の最高峰――黒騎士アンヘル。
 遠目に見るだけでも飲まれそうな威圧感と、これまでにない圧倒的な戦闘力にベスティア・クローヴェル(諦観の獣・f05323)は耳と尾の毛をざわつかせていた。
(側近というくらいなら、皇帝が死んだ後に遺志を継ごうとするはず。であれば、ここで取り逃がすわけにはいかない)
 誰よりも猟兵達の先陣を切るように、歩みを進めるアンヘルの前に立ち、唸るような声を挙げた。
 ――ここで何が何でも噛み殺す。
 微動だにせず、唸るような声を挙げて戦意を向けるベスティアを目障りだ、と言わんばかりに軽く剣を振るう。
 実際には空振りだが、それだけで実際に胴体がお別れするような――いや。
 虚空から現れた過去の斬撃がベスティアの身体に刻まれんとするが、彼女の周りの空間が一瞬だけ歪んだかと思えば爆ぜるように散る。
「……ほう。怯えて動けぬと思ったが。絶対防御の法と見た」
 動けなくなるリスクはあるが、ほとんどの攻撃を無力化する構えで先制の一撃は見事に防ぎ。
 ならばその好機と言わんばかりに、腹の底から咆哮を挙げるとアンヘルの鎧を打ち砕く勢いで大剣の殴打を放つ。
「お前は後何回殺せば死ぬ!?」
 甲高い音を立ててよろめくアンヘルへ、緩むことのない杭内を突き立てんとするが黒騎士はそれを剣で打ち上げて流し。
 反撃に振るわれる剣を、ベスティアは必死で横に流し返す刀でアンヘルの剣へ打ち付けて後退させる。
 その際もアンヘルの剣が襲うが、再び不動の構えを取ってそれを受け止め。
 後退し脚を着くアンヘルにまたその剣で反撃せんと駈け出そうとするが、
「さぁな。……それよりも、動く間に仕掛ければ良い」
 彼女が一歩踏み出した瞬間、虚空から現れた過去に振るわれた斬撃が蘇り、ベスティアの身を袈裟懸けに切り裂いたのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セルマ・エンフィールド
今までにない強敵であっても、必要であれば撃つだけです。私が、人が生きるために。

●対策
先に剣を放たれても軌道を見切り、こちらに剣が届く前にマスケットの【オートマチック・シューター】の高速連射で呪剣を叩き落します。

全てを落とすことができればそれがベストですが、不可能であれば優先度は黒>灰>>>白。鍛錬する余裕なんてありませんでしたし、私の技術はほぼ全て戦闘経験によるものでしょうから。

必要であれば【絶望の福音】、第六感で回避を。余裕があれば他の人に飛ぶ呪剣も撃ち落とせればいいのですが。

敵の攻撃を凌ぎ切ったら手持ちの中で最大火力の【凍風一陣】を。急所でなくても、当たればそれでよしとします。



●過去喰らい
 黒騎士アンヘルが剣を振り上げ追撃をかけんとしたその時、彼の目の前を銃弾が通り過ぎようとした。
 だがアンヘルはそれを予測していたと言わんばかりに、己の周囲に三本の、白黒灰の剣を生成し銃弾の先へ射出した。
(今までにない強敵であっても、必要であれば撃つだけです)
 セルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)は氷のように冷たい眼でその軌道を見切り、保有するマスケットの自動装填並びに自動発射機構を発動し弾幕の嵐を以て撃ち落とさんとする。
「私が、人が生きるために!!」
 しかしアンヘルの射出した三本の剣の勢いは速く、そして力強い。
 自動発射機構の為す連射が始まった時点で、その剣は既にセルマの銃口まで差し迫る――発射があと僅かに早ければ、あるいはアンヘルの射出が僅かに遅ければ確実に落とせていたであろう。
 だが時は既に遅く、莫大な連射機構の代償に中断を為すことのできない故に。
 青き目を見開き冷や汗を流すセルマに彼女より冷たくアンヘルは告げた。
「なまじ見えるからこそ、未来が見えなくなることもある」
「……ッ」
 撃ち落とせないなら、と覚悟を決めて銃を放り、敢て白い剣の方向へ身を躍らせる。
 万一に備え回避の優先順位と、喰らっても構わないモノへの覚悟が無ければ、一瞬の躊躇いが災いし彼女は為すすべ無く全てを奪われただろう。
 鍛錬の経験を奪われようと己の技は天性のモノ――デリンジャーをすぐさま懐から取り出すと、疾風と破魔と氷を乗せた銃弾を放つ。
 小手に突き刺さり、降りる霜と衝撃にまじまじとセルマを見、
「……成程。急所に当たれば確かに痛い」
 ――彼の鎧に突き立てられる牙の代償に。
 身動きを封じられ身体から血を流す彼女に、また静かにアンヘルは三色の剣を生成して。
「それだけの力を良く振り絞れた。称賛に値する。……だが、後先は考えろ」
 鍛錬と、戦闘の経験と、戦う意志の敬意を奪う魔剣が吸い込まれるように突き立てられた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

鞍馬・景正
……勝機は後の先。
委細承知。無双にして無限の剣、ここで折ってくれましょう。

◆対策
刀と脇差、二刀の構えで迎え撃ちましょう。

【見切り】にて敵の太刀筋を読み、その軌道に刀を十字に交差させ斬撃を受け止めてみせる。

押し切られぬよう腰を落とし、体幹から足腰にまで衝撃を受け流し、どうしても難しければ蹴りを叩き込んで勢いを弱めましょう。

二天一流、十字受け──他流の型なれど拝借させて頂く。

◆攻撃
無事、敵の太刀を防げれば、反撃に繋げさせて貰う。

剣を払い、そのまま間合に押し入って全霊の【怪力】による二刀の【2回攻撃】で、【鎧砕き】の打ちを見舞っていきましょう。

黒騎士、その首級を頂戴する……!



●剣神
 介錯を行おうとしていたアンヘルに掛けられた声があった。
「黒騎士、その首級を頂戴する……!!」
 刀と脇差を構え、瑠璃色の瞳を向けるは鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)であり、その様子にアンヘルは静かに彼に向けて剣を構える。
 互いに練達した剣の使い手同士、技量が分かるのか暫しの沈黙を経て――最初に駆け出したのはアンヘルの方だった。
 大気を揺るがすほどに力強く、そして速い踏み込みから来る、とてつもなく重い振り下ろしを、景正は刀と脇差を交差させ受け止める。
「ほう……」
「ぐっ……」
 こうして剣を交わしてみれば互いの力量はよりはっきりと分かる。
 桁外れのアンヘルの膂力を、圧し負かされないように巧みに衝撃を逃がすような体勢に持っていき、隙あらば蹴りにて牽制を叩き込もうとすらしている。
 実に見事なものだ。
 このまま膠着を続けるのは面倒と互いに繰り出した蹴りが、互いの体に突き刺さり、互いに盛大に後退する。
 無事に太刀を受けきった――そう判断した景正は痺れる脚に無茶を駆けて駈け出すと、二刀をまるでハサミのように構えてアンヘルの下へと距離を詰めていく。
 このまま、首を断つ――目を血走らせる羅刹に黒騎士は静かに告げた。
「悪いが遊びは終わりだ」
 そう告げられた瞬間、景正の背中の空間が歪み、彼の背が切り裂かれ血が翼のように吹き出ていく。
 ――黒騎士アンヘルの強力な斬撃は、「剣そのもの」から来るのではない。
 時に予め置かれたり、時に過去から引っ張りあげたりする斬撃を、「虚空から取り出し」て斬撃を刻む――太刀筋だけを読んだところで効果は薄い。
 それでも剣だけの勝負ならば、勝てなくとも相応の有効打が与えられた可能性は十分にあっただろうが――
「貴様は本当に素晴らしい剣士だった。できれば剣の技のみで相まみえたかったが、これは戦争だ」
 膝から崩れる羅刹の剣豪に、黒騎士は逆袈裟に刃を繰り出し。
 背中に与えられた裂傷と重なるように刻印を与えるのだった。

失敗 🔴​🔴​🔴​

ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎
○他猟兵と連携歓迎

○先制攻撃への対応
いつでもUC発動できる心構えでいくぞ。
どーにか耐えきらんとな…UCでワンチャンス貰えるのを前提で
敵の猛攻を耐えきる【覚悟】を持ち【激痛耐性】【盾受け】で凌ぎきってやるわ。
もしやばそうな連携猟兵が近くにいたら【かばう】【盾受け】でそっちの攻撃も防いでやるとすっかね。
こんだけダメージ貰えばよ、UC発動の準備は整ったじゃろ?

○反撃
どうせこんな化物2発も3発も殴れんじゃろ、この一撃に全てをかけるわ。
わしが倒れたと思って黒騎士が油断するのを願うぞ。
召喚された怨嗟の看守と共に【怪力】を用い【生命力吸収】からの【捨て身の一撃】を【2回攻撃】これを2人分じゃ!


レイチェル・ケイトリン
SPD

三呪剣は「念動力」、「第六感」、「クイックドロウ」、「早業」で発動した「刹那の想い」で「武器落とし」と「吹き飛ばし」を「範囲攻撃」で放って防ぐよ。

そしてさらに「カウンター」で三呪剣そのものを操って敵につきたてるよ。
「目潰し」と「フェイント」も組み合わせてよけにくくしてね。

敵がわたしの過去をねらうならわたしは刹那の今を必死にたたかうよ。
そして過去を傷つける敵の剣で過去そのものである敵の力を封じるよ。

「かばう」もできるから他の猟兵さんも「刹那の想い」で守ってあげるね。
刺さった剣は丁寧に抜いてあげる。

わたしは「今」、みんなと共に未来をまもる「今」だもの。

今を踏みにじるだけの過去には負けないよっ



●死闘
 黒騎士アンヘルとの戦いは死闘を極めていた。
 これまで立ち向かった猟兵達、その全てが未熟に非ず――ただ、相対する相手が、あまりにも強過ぎたのだ。
 並のオブリビオンなら問題なく撃破に至れているだろう攻めを受けて尚、黒騎士は悠然と立つ――まるで、過去という牢獄に捕らわれたように、戦況は一向に好転しなかった。
 黒騎士が更なる追撃に刃を振るおうとする刹那、躍り込む猟兵の影――ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)は両腕を交差させ、その力強い身体を盾にするように黒騎士へと立ち向かった。
「――堪え切れるような攻撃を繰り出すとでも?」
 狙いはすぐに理解されたのか、アンヘルは剣を彼の喉元へ突き付ける。
 その気になれば、今ここで首を落とされそうになりそうなプレッシャーに堪えながら、やってみろと口を動かして。
「では望み通りにしてやろう」
 剣を引き鞘に納めると、それをトリガーとしたかのようにゲンジロウの周辺の空間が一斉に歪み始め、彼の身体が激しく鮮血を噴き上げた。
 一発だけでも手練れの猟兵を追い詰めるに足る一撃を、幾重にも受け意識が朦朧とし始める――覚悟を以て生来併せ持つ耐性と共に当たらねば、間違いなく一瞬で意識を持っていかれていただろう。
 両腕も盾にして受ける力が無ければ、落とされていたかもしれない――命までは奪われることはなかったが、激しい出血の前には、それは秒読み。
 だがアンヘルは感じていた。
 何かを隠し持っていると――ならばその力が発動される前に、過去を奪い現在を奪い未来へつなげなくさせる魔剣を生成し突き立てんとしたが。
「――あぶないものをさわらないでうごかせるのは、わたしのとりえ」
 レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)の放つ膨大な念力によって、それは空中で止められていた。
 ゲンジロウがその身を挺して盾となっていたからこそ、彼女は刹那の想い――体感時間を極限まで原則させ精密極まりない念力を行使できる状態を作り上げていたのだ。
 その切っ先をレイチェルにも向けようとするが、彼女の莫大な念力に思うままに射出できない――だが黒騎士は新たに三本の魔剣を作り上げると、まずはレイチェルを落とさんとそれを放つ。
 だがレイチェルは念力で縛った魔剣を以て迎撃するように射出させると、過去同士が食い荒らされ互いに消滅し合う。
「あなたがわたしの過去をねらうならわたしは刹那の今を必死にたたかうよ」
「刹那の今などすぐに消えるモノ。潰えぬ過去には遠く及ばぬ」
 黒騎士もたかが一撃相殺されただけだと、今度は何本も魔剣を生成しレイチェル目掛けて射出する。
 精密な念力を持とうとそれ以上の弾幕で押し切らんとするが、彼女の念力は必死で剣を拾い上げ相殺に嗾けていく。
 膠着状態がこのまま進むかと思われていたが。
「――過去のあなたが、いちばん過去を忘れてるなんて」
 ふと、アンヘルの背中に突き刺さる三本の魔剣――それは、レイチェルが密かに優しく抜いた、とある猟兵に突き立てられていた剣だった。
 穏やかな微笑みを浮かべ、レイチェルは過去を逆に奪われ膝を着く黒騎士にこういった。
「わたしは、わたしたちは『今』、みんなと共に未来をまもる『今』だもの。……今を踏みにじるだけの過去には負けないよっ!! 今も、あなたを討とうとしている『今』がある!!」
「あぁ……言われんでも、わかっとるわい!!」
「しまっ……!!」
 その声の主こそ、ゲンジロウ――瀕死にまで追い詰められたからこそ、出でる力――全身を紫苑の火炎で作り上げた怨嗟の看守、蓄積された損傷に比例し力を増した存在と。
 この一撃に命をも駆ける覚悟で振り上げられたゲンジロウとの拳が。
 黒騎士の鎧を業炎を噴き上げながら打ち砕いた――!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アーレイラ・モンクスフード
近接して一撃を叩き込む。
ダッシュで一気に距離を詰めて、詠唱を開始しても
距離が稼げれば僥倖、程度でしょうね。

記憶されし傷痕で、足止めされるでしょう。
一番酷い傷が再現されるとして、あの子から受けた陽光の焔による袈裟斬りの痕

「くっ、はっ…熱く、苛烈で、痛くて、懐かしい…ですね!」
止めた脚を激痛耐性で動かし、受けた傷と聖痕からあの子の力を引き出す!

ユーベルコード発動!
祈りと共に紅炎よ立ち昇れ!!

甘えて勝てる相手じゃない、受けた傷すら力に変えて
捨て身の一撃を叩き込む!

突き立てて、終わりじゃない。渾身の攻撃すらフェイントに
武器を銃に変えて、黎明の力込めた銃弾を撃つ二回攻撃

「骸の海に沈め!過去の亡霊よ!!」



●聖痕
 戦闘が始まって初の、アンヘルへの絶対的な有効打が決まった。
 それでも彼が倒れる気配はなく――寧ろ漸くスタートラインに立った、ということだろうか。
 アーレイラ・モンクスフード(真昼の白夜・f02061)は夜霧のごとく現れた戦装束を身に纏いながらアンヘルに追い打ちを掛けんとその足を進めていく。
 仮面越しの目にアーレイラの過去を覗き見たアンヘルは、剣を振るって斬撃を飛ばす――それは虚空を歪め現れる奇襲ではなく、過去の再現。
「最も深き過去の傷にて留まるがいい」
 アーレイラの身体に刻まれる逆袈裟の傷跡――かつての記憶にある、一番深き彼女の傷が再現され膝を着く。
 しかし。
「くっ、はっ……熱く、苛烈で、痛くて、懐かしい……ですね!!」
「……何」
 傷そのものは読み取れても傷に伴う物語まで再現は出来ない――何故ならば、その傷自体が物語の一部。
 だがその物語が、心を抉るものではなく盛り立てるものであるならば。
 予測と覚悟を決めて激痛を和らげる自己調息でその苦痛を物ともせず――否、逆にその痛みをも力に変えるように、刻まれた聖痕が燃え上がる。
「開け!! 天界の門!! 来たれ邪悪なる者を滅ぼす陽光の力よ!! 黎明たる雛菊の名の神よ、汝の正義を執行する熾烈なる焔を我が手に顕せ!!」
 甘えて勝てる相手じゃない。
 生まれた力の全てを炎に変えて、黄昏時の光を纏った鈍器に更に纏わせて一気に振り下ろす。
 その身を捨てる勢いのそれをまともに受けるのは不味いとアンヘルは後方に跳躍して躱すが。
「骸の海に沈め!! 過去の亡霊よ!!」
 寧ろ読んでいたと言わんばかりに、懐から水晶で作られた銃を取り出して、黎明の炎を纏った弾丸を壊れた鎧の穴に叩き込む。
「これだけの攻撃すら囮に使ったというのか……」
 膝を着き、苦痛を力に変え命を捧げる勢いで繰り出された、宇宙船の床にクレーターを刻むほどの殴打を、まさかの囮に使うとは。
 アンヘルは驚愕しながら称えた。
「見事だ。貴様の過去の傷を侮ったこと、心から詫びよう」

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴロス・ヴァルカー
【芋煮艇】で行動を。難敵です。私一人ではどうすることもできないでしょう。ですが…今の私には仲間がいます。移動が成功したら、すぐさま【狩獣】を発動、「ストーム・ウォーカー」を複製。空中機動する複製した触手塊を私を含む仲間全員に追従させ、数宮さんの探知を頼りに敵の呪剣が放たれた場合の盾とします。…私も、空中機動を使い蒸気をまき散らすことで、黒騎士に対する攪乱を試みます。私自身が、呪剣にやられた場合、数宮さんの呼びかけによる復活に期待します。が、もし届かなかったら自立行動する「オーリック・アラクナス」に私を操縦させます。突っ込んで敵を捕縛する…程度の命令しかできないですが、囮ぐらいにはなるでしょう。


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

見るからにヤバい相手だね…
ここは【芋煮艇】の皆と協調して戦う。

アタシはとにもかくにも【超感覚探知】を発動、そして維持!
味方の通信連携役を担うよ。
アンヘルの攻撃衝動の起こりを掴めれば、
ちょっとは回避や防御の役に立つかねぇ?
剣が命中して戦う意思を挫かれた奴がいたら、
即座にテレパスで檄を入れる!

ヴロスさんの触手でのガードの恩恵を受けながら、
タンデムで他の猟兵の機動力を補う。
アタシは今回、バックアップ。
攻撃にも防御にも直接関係しないかもしれないけどね。
しっかりお膳立てしてやろうじゃないのさ!


レン・ランフォード
【芋煮艇】の皆と共に
私は貴方達という理不尽に抗うためにここにいます…お覚悟を。

【SPD】
手裏剣を「投擲」しながら観察(「見切り」「情報収集」)
「第六感」を合わせ必中のタイミングを計り童子切(緑の光刃)で薙ぎ払います。
その時数宮さんのテレパスで皆に屈んでもらいます。
刎ねろ、童子切!

攻撃は「残像」も使って回避に専念。
もし呪剣を食らってしまったら…黒・白、童子切は振るだけでも問題ない筈です。
灰を食らってしまった場合、別人格達の叱責、駄目なら変わる事で
戦う意思を封じられないように頑張ります。
仲間にも伝えてあります、私が戦うのは理不尽に抗うためだからと!
【アドリブ歓迎】


黒城・魅夜
【芋煮艇】で行動します。

「第六感4」「見切り3」「残像3」で、できる限り自力でも回避を行うことでヴロスさんの負担を軽減。

過去ですって?この身を縛る悪夢の鋼鎖こそが私に纏わりつく呪いであり絆。この鎖そのものを消せるものならやってごらんなさい。

【妖剣解放】で高速移動し、優位なポジションを取って、お仲間と連携し、別角度から衝撃波を撃ち放ちます!
「なぎ払い3」「スナイパー」と「傷口を抉る」も使用したこの一撃、とくと味わいなさい。
チーム全員による遠距離からの包囲型総合火力で攻め潰してあげましょう。


明石・真多子
【芋煮艇】の皆がついてるからね、剣が少しくらい多いからって全然怖くないよ!まずは「目立たない」ように仲間の後ろに隠れたらタコの保護色能力で「迷彩」するよ。視認されにくくなったらレンちゃんの手裏剣投擲に合わせて姿勢を低くしながら、「地形利用」した「忍び足」「ダッシュ」で死角へ移動しよう。ヴロス君の触手塊は低くした姿勢の内側に抱えて見えないようにするから大丈夫、もしもの時は盾のように使わせてもらうよ!あとはレンちゃんの童子切の後に二の矢で死角から【タコスミケン】を4本の触手で一気に投擲するよ!いくら剣の達人でも多角方面からの投擲は捌けないだろ!くらえータコスミ四連斬!


才堂・紅葉
【芋煮艇】で行動を。
先制の初撃は【銃声はただ一つ】を用い、数宮さんの感知に合せて詠唱弾6連早撃ちで呪剣の迎撃を試みます。スピードローダーを用い、更に6連のファニングを重ね相手の手数を削ります。出費に泣きそうです。
先制を凌いだら後は気合です。小刻みに動いて呪剣を回避し、思考をクリアにしつつ近接。
必殺の距離に近づいたら回避に専念し、もし灰色の呪剣が正面にくれば敢えて踏み込んで呪いを受け、必殺の距離を得ます。
「…………」
闘うべき“過去”を失い呆けますが、剣を握って殺意を向けて来る“今”があれば体が動きます。
体に叩き込んだ動きが6発の詠唱弾を、黒騎士の体に叩き込もうとするでしょう。
【アドリブ歓迎】



●激戦
 戦いも佳境に差し掛からんとしている中、新たに転移する者達がいた。
「難敵です。私一人ではどうすることもできないでしょう。ですが……今の私には仲間がいます」
 巨体のウォーマシン、ヴロス・ヴァルカー(テック・プリースト・f03932)は共に戦う仲間を信じた。
「見るからにヤバい相手だね……しっかりお膳立てしてやろうじゃないのさ!!」
 軽量級のバイクに乗り数宮・多喜(疾走サイキックライダー・f03004)は仲間を後方から支える決意を示し。
「私は貴方達という理不尽に抗うためにここにいます……お覚悟を」
 多重人格者のレン・ランフォード(近接忍術師・f00762)は帝国軍という理不尽に戦うための戦意を胸に。
「過去ですって? この身を縛る悪夢の鋼鎖こそが私に纏わりつく呪いであり絆。この鎖そのものを消せるものならやってごらんなさい」
 ダンピールの黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)はこの過去すら自分の力そのものであり、命、消すというなら消してみろと。
「芋煮艇の皆がついてるからね、剣が少しくらい多いからって全然怖くないよ!!」
 タコのキマイラである明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)は三本の剣よりは五人の仲間だと語り。
「うう……出費が」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は戦いに備えてのこれからの出費に涙して。
 ここに芋煮艇の六人の勇士達が現れたのだ。
 ――これまでの戦いから、虚空から突如現れる斬撃よりは。
 或いはいきなり己の過去の傷病を再現されるよりは。
 狙いを絞り、ただ剣を飛ばしてくるだけの攻撃に対処する――綿密な打ち合わせの末の作戦だろう。
 ただ、敵の攻撃が何よりも早く先に守りの要に飛んでくるということを除けば。
 黒騎士アンヘルの狙いは誰よりも早かった――ヴロスが転送と同時に身体を構成する触手の一部を大量に複製し使い捨ての盾にするつもりでも。
 飛来する剣は何よりも早く場の誰よりも巨体であるヴロスに突き刺さらんと――するが、寸でのところで虚空より現れた触手が二つ犠牲となって消滅し。
 残りの一本が彼の身体に突き立てられ、その頭脳に刻まれた鍛錬の記憶が最初からなかったかのように消え落ちて置き、生成した触手の三分の一が消滅する。
 幸いに生成された箇所が剣の飛来した先故に一本だけで済んだが、そうでなかったら念力で動かす準備も整わない状況で、全てを喰らい使い捨ての盾を消し去る定めとなっていただろう。
 予定よりも減じた触手塊が蒸気を噴き上げ仲間達に追従し、ヴロス自身も力強く地を蹴り空を翔けながら蒸気を撒き散らすことで黒騎士の視界を少しでも乱しにかかる。
 早くも守りの要を減じられた彼等はまずい、と一斉に動かんとする。
「悪いね、アンタとはちょいと繋がらせてもらったよ!!」
 最初に動こうとしたのは多喜――彼女は強力な念力で己が感覚を張り巡らせ、敵の攻撃の予測を行い仲間に連絡する司令塔の役割を果たさんとしていた。
 その間も彼女はレンをバイクの後方に乗せて動き回り彼女の機動力を補いつつ、まずは敵の射出剣を見切ろうとする。
 そして同乗するレンは手裏剣を投げ放ち視界を封じられつつある黒騎士へ牽制を行っていくが、彼の射出する三本の魔剣はそれよりも早く多喜に――だが、ウォーマシンが最初に受けた攻撃の一瞬の隙が、彼女の力の発動を間に合わせていたが故に。
「――間に合った」
 多喜のテレパス――攻撃の高度な予測と同時に一本を躱すが、避け切れなかった一本が触手腕が犠牲となって受け――そしてそれを擦り抜けた、戦闘の経験を殺す刃が多喜の頬を掠め、その念動力の精度を歪めて落としていく。
 当初の予定とは想定したよりも劣るが万一の盾と司令塔を立てる作戦は無事に成功を果たすのであった。
 そして前線に踏み込み攻撃の要を為すのは三人――魅夜、真多子、紅葉の三人であった。
 まず魅夜は誰よりも速く、自身の悪夢を縛る鎖の怨念を受けて戦場を駆け抜けていった。
 だがアンヘルは微動だにせず、再び三色の過去を喰らい尽くす魔剣を嗾ける。
 追従するのは仲間の作った触手腕、脳に響くのは別の仲間の念話――確かに頼れる仲間からのサポートはあるが、だからといって自分が何も行わないという選択肢はない。
 未来すらも削る怨念に身を蝕まれながらも、研ぎ澄まされた鋭敏な感覚で白き剣の軌道を見切り、感覚と同様に研ぎ澄まされた勘を以て灰色の剣を下から弾き飛ばすように受けて。
 最後に飛来する刃は触手腕が身代わりとなって受け、攻撃を完全にしのぐと――鎖を振るい衝撃の波を放ちアンヘルを後退させて。
 そのアンヘル目掛けて撃鉄を起こしたのは、紅葉だった。
 撃鉄の鳴る音が戦場に響く違和感もアンヘルは見逃さず、ほぼノーモーションで再び生成した三本の魔剣が飛んでくる。
「ったく……こんな古臭い武器は好みじゃないんだけどね」
 だが、それは多喜からの通信で感知した彼女は引き金を押さえつけたまま、掌で幾度も撃鉄を弾きリボルバーに込められた弾を刹那の勢いで射出した。
 だが――機関銃にも比肩する弾丸の嵐で止めることのできなかった魔剣が簡単に止まることはなく、一本を叩き落とし、触手腕がまた一本を受けて消え。
 戦う経緯を抹消する魔剣が突き立てられる――しかし、今の剣を握り向かってくる殺意がある限り身体は動くとその歩みを止めることはなく。
 そしてその間にも真多子は仲間の影に隠れ、タコの身体からくる迷彩で身体を隠し息をひそめていた。
 内側にはヴロスの生成した触手塊を隠し持ち、いざという時には盾にする――尤も、数が十分に確保できなかった以上、全てを防ぐことは出来ないだろう。
 後方からレンが牽制の為に放ち続ける手裏剣に合わせて身を屈め、アンヘルの死角へと回り込もうとするが。
「気付かないと思っていたか」
 一体どこに目が付いているのやら。
 アンヘルの声が響いたかと思うと、途端に三本の剣が真多子に向けて一本、幸いに迷彩が功を為していたのか寸でのところでそれは外れ。
 だが残りの二本の内、一本は彼女の肩に吸い込まれ鍛錬の記憶を消されその戦力を減じさせていった。

 ――戦いはやや劣勢に追い込まれていた。
 最初の守りの要を僅かに潰されてから、そこから徐々にではあるが、作戦は少しずつ崩れていったのだ。
「ちぃっ……見えないねぇ……」
 バイクを駆り念動力の維持を行い、敵の攻撃を予測し続けている多喜だったが、アンヘルの魔剣によって減じられた予知はアンヘルの攻撃の予兆をぼやけさせていて。
 だが仲間への指令・通信は決して衰えていない。
 自身と同じように剣の一本を喰らって戦闘力を減じさせているヴロスに彼女は激を入れた。
「しっかりしな!!」
 それに身体を鈍らせていたヴロスはカッと目を見開くと、蒸気を盛大に噴かせてアンヘルの頭上目掛けて飛ぶ。
 三人の猟兵達の攻撃を凌ぎ剣を突き立てたアンヘルの追撃を阻止せんと、わざとらしく頭上を飛び蒸気を撒き散らし、最後に残った触手塊を用いて使い捨ての盾とする。
 それを鬱陶しく思ったアンヘルの嗾ける剣が迫るが、念話の注意も激も遅く、彼の身体がぐらつき戦う意志がくじかれていく――だが、彼にはその事態に備えての対策があった。
 それは、触手の一つに自身の全てを操縦させるように委ね――遮二無二に突っかかってその身を囮にすることしかできなくなるが、無理矢理に身体を動かすことだった。
 流石にこれにはアンヘルも驚いたのか、今まで最低限の動きしか取らなかった黒騎士が初めて場を跳躍する回避を選んだ。
 そしてその隙こそ、今こそ必中の時だと告げられ――機会を伺っていたレンは三日月の名を冠する刀の軛を解き眩い光の刃を展開し始めた。
「リミッターカット!!」
 だがその攻撃が振るわれる前に、着地したアンヘルは間髪を入れずに過去を喰らい尽くす魔剣を嗾ける。
 一本の刃が擦り抜けたのは、既にタンデムから飛び降りた残像――続き投げつけられた白と灰色、制限解除を行った刃を振るうだけなら経験も鍛錬も関係ない、灰色を躱し白の方へと身を投げる。
 鍛錬の記憶が失われるが、戦いに赴く記憶よりはいい――心の決意、理不尽に抗うためという決意はもう一つの人格にも、仲間に言われなくても分かってる。
「行くよ科学の結晶!! 刎ねろ、童子切!!」
 多喜のテレパスが伏せろという声を発すると同時、一斉に伏せた仲間達の頭上を通り抜け光輝く刃が盛大に黒騎士の身体を薙いだ――!!
 流石の黒騎士もこの一撃だけは防ぐことも耐え切ることもできなかったのか、鎧をことごとく砕き散らし背面から飛ぶ。
 だがその背面に、宙に舞うことも許さないほどの高圧の水流に依る刃が突き刺さっていた。
「いくら剣の達人でも多角方面からの投擲は捌けないだろ!! くらえータコスミ四連斬!! イヤーッ!!」
 触手腕から一斉に放たれる真っ黒の刃がそれよりも黒き騎士の背を何度も、何度も切り裂き続けていて。
 ダメージが蓄積し今も大きく喰らった一撃のショックで身動きの取れない黒の刃が着実に削っていく――黒騎士の魔剣が突き刺さっていなければ、このまま屠りかねない勢いでもあり。
 そして黒騎士に最後の一撃を食らわそうとするのは一人だけじゃない――それこそ、仲間が力を合わせて行うものだ。
 左手からは魅夜の振るう命を削りながら放たれる必殺の衝撃波。
「経験は消せても、過去からの絆は消せない――それがあなたの敗因です!!」
 命を削りながら狙いを研ぎ澄まし、闘いの末に出来た傷口を正確に抉るように。
 彼女の持つ、彼女の悪夢<鎖>、過去を過去を司る者に刻み込み。
「……」
 右手からは紅葉が必殺の間合いにて何度も放つ銃弾。
 過去の想いが消されようと、今の殺意に呼応する身体が止められなければ良い。
 湧き上がる殺意と、そして惜しむことの無き金の暴威を討ち尽くしては弾を変えて放ち続けていた。
 そうして猟兵達の一斉攻撃が見事に決まり、鎧の殆どを砕き散らしながらも、それでもアンヘルは立っていた。
「見事な連携だ。だが……相手が悪かった、な……」
 ……苦戦はしたが、攻撃は正に考え得る最高の一撃だろう。
 もう少しだけ、黒騎士の剣の毒牙が及んでいなければ、彼を倒すこともできたかもしれない――それには、守りの要自身が身を護る術と。
 己で凌ぐ手立てをもう少し、本当に後一歩詰められていれば結果が変わっていたのかもしれない――

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

胡・翠蘭
「過去、過去、過去…なければ今も未来も在り得ないものとはいえ、過去ばかりでは…その先が、何も始まらないのではなくて?」
【SPD】
いやらしい攻撃が多いんですこと
特にこのUCは…ね?
勝手に過去の何某かを封じるなんて、傲慢にも程があるわ
白と黒の呪剣も、避けられるならなるべく回避はしたいけれど、最後の『灰の呪剣』だけは確実に回避できるよう意識して
第六感、野生の勘、見切り、防具改造の技能で敵のUCに対抗しましょう
…さて。
封じられなければ恩返しではないけれど…借りを返す感じで、UCでやり返してさしあげましょう
封じられたなら、武器改造したガジェットや拷問具で、傷口をえぐり鎧破壊攻撃でも

※アドリブお任せ



●存在しえぬ過去
 誰もが決して油断していたわけでも、致命的な下手を打ったわけでも、ましてや未熟であった筈がない――純粋に、この敵が規格外に過ぎたのだ。
「まだやるか……? このまま俺という過去と踊り続けるもまた一興だろう」
「過去、過去、過去……なければ今も未来も在り得ないものとはいえ、過去ばかりでは……その先が、何も始まらないのではなくて?」
 胡・翠蘭(鏡花水月・f00676)は娼妓のような着物を揺らしながら甘く響くように笑いアンヘルの拘りを戒めるように。
 アンヘルはそれを鼻で笑いつつ、それでいてどこか今までの猟兵達を好ましくも思うように肩を竦めた。
「過去に帰して始まる者もある。例えば、貴様らのような強敵なら尚更な」
 遺物になって貰わねば先に進めぬ障害――そう評価して、アンヘルは翠蘭目掛けて三本の魔剣を繰り出した。
「いやらしいこと……勝手に過去の何某かを封じるなんて、傲慢にも程があるわ」
 先んじて攻めて来た魔剣の軌道を正確に見切り、時に優れた勘で跳躍し躱していく。
 事前に機動力を重視した改造を施していた為に十分に回避も可能となっていた――万一の時に備えて、喰らっても構わないモノへの覚悟はできている。
 故に――黒と灰色が、今にも肌を撫でんとする紙一枚のラグに対し、黒の方へ身を危険に晒すように躍らせて躱す――例え経験を奪われても、戦う意志は、奪われないように。
 黒の魔剣が腰の横を掠め経験の一部が奪われていくような感覚に陥りながらも、今こそ借りを返せるという快楽を力に変えて、アンヘルを触手の海へと埋もれさせて。
「ふふ、……甘くて深い泥濘の沼に堕ちてしまいましょう?」
「いやらしいな……勝手に我が過去になき責め苦を与えるとは、色欲にも程がある」
 壊れた鎧の隙間から悍ましくぬめり苦痛ではなく快楽を与え、悶え狂わせられる。
 意趣返しのように過去の言葉を返しつつ。
 彼の過去に恐らく無きであろう耐え難き苦痛に近いほどの快楽に溺れ、過去の蓄積を搾取され――ここに、黒騎士は消え去るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月18日


挿絵イラスト