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弔いの号砲をここに

#サイバーザナドゥ #桜花繊維重化学工業 #復讐 #工場襲撃

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●ある『テロリスト』達の無謀な挑戦
 サイバーザナドゥ。世界全体が『骸の海』という有害物質に汚染され、人々が体の一部のどこかを必ず義体化しなければ生きていく事すら難しい世界。
 その世界を牛耳る、|巨大企業群《メガコーポ》、その一つ。『桜花繊維重化学工業』。
 かつては繊維業から始まったこの重化学工業が、時折下層に工場を建てる際や、物資を『補給』する際に、どういう訳か一定の条件を満たしたらしい下層の人間を浚っていくのは、一部で有名な話だった。
 そして、骸の雨の降りしきるある日――。
『ここだな?』
 そこに集まった男達は皆、『恋人を桜花繊維重化学工業に連れ去れた者達』であった。 失意の中過ごしていた彼らは、在る時偶々出会い、出会いが増えるにつれ、積極的に自分たちと同じ境遇の者を集め、組織として曲がりなりにも形を作り、そしてついに、その日を迎えた。
 彼らは、突き止めたのだ。『自分たちの恋人達が連れ去られた場所』を。
 そこは、桜花繊維重化学工業の下層に建造された巨大な義体生産工場であった。主に上層でも比較的庶民に近い階層の者や、中層向けの、オーダーメイドではない既製品の義体を大量生産する工場。
 そこに、確かに彼らの恋人達も、囚われ、運ばれていったのだ。
「……いくぞ」
 リーダー格の男が告げる。コクリと、皆が頷く。誰もかれも、瞳の中に悲壮な決意を宿していた。誰も、己の恋人たちが無事であるなんて、思ってはいない。ただそれでも、知りたいだけなのだ。自分たちの恋人は、何故攫われたのか。そして、どうなったのか……。
 そもそも下層暮らしである男達に満足な装備など存在しない。さらには『戦術』などという高等な知識も持ち合わせいなかった。
 だからできたのは鬨の声を上げての突貫くらいで、それも結局は工場の前に広がる高濃度汚染地帯を前に一人、また一人と倒れていく。
 そうして工場の前にたどり着けたのは僅か2、3人。
 彼らも門に備わった機銃掃射を受けて、あっさりと倒れ伏した。
 その日の門衛の業務日誌には、『下層民のテロリスト若干名を処理』とだけ、記されている。
 彼らの弔いの号砲は、響き渡りはしなかった。

●高らかに響かせろ
「という事が、あるんじゃね」
 そう言って猟兵を前に、アイリ・ガング―ルはココココと笑った。
「まぁ纏めると、よ。『桜花繊維重化学工業の工場に無謀にも襲撃を駆けようとする男達がおる。そ奴らの無謀な行動を阻止して、ついでに工場を攻略してしまおう』という話やね」
 そう言ってアイリは少し顔色を暗くして、
「そこを破壊すれば企業の力をそぐことにもつながるじゃろうし、何より先日の孤児院の件からして、連れ去られた理由は恐らく、のう……」
 と悲し気に呟いた。
「さておき、男達が普段集まる場所は抑えておる。まずはお主ら、そこへ向かって男達を説得するがよい。襲撃そのものを取りやめさせるもよし、お主らが襲撃に参加するのを認めさせるもよし。そこは任せよう。ただし、前者については難しいじゃろうな。何せ彼ら自身は死兵と化しておる。余程の事がない限り、止まりはしないじゃろう」
「逆に後者は後者でしっかり認めさせるのじゃぞ?何せ彼らは失った者じゃ。同じ境遇の仲間以外に対して警戒心が強い。しっかり説得力を持った何かを提示するがよい」
「そして説得が済んだら、工場への襲撃じゃ。ここは工場前には高濃度汚染地帯が広がっている。お主ら猟兵でも長時間留まるのは難しいじゃろう。早く駆け抜けるか、防毒装備を整えるかした方がよいでな。ついでに、恐らく襲撃に参加する男達の装備もや高濃度汚染地帯対策を用意できるのなら、その分有利に働くじゃろうて」
「そして最後、工場の門番として頭脳戦車とその随伴機が工場で待ち構えておる。こいつらを撃破すれば、工場内に侵入できる」
 ただし、と一呼吸おいてアイリは言葉を続けた。
「工場を占拠したままにすることはできんぞ?男達もそのように選挙できるほどの練度があるわけでもなし。なので、侵入したら何らかの情報を得る事はできるじゃろうが、くれぐれも工場自体の破壊を忘れるでないぞ?」
 そう言う訳で、とアイリは締める。
「恋人を失った男達の弔いの号砲、みども達で派手に鳴らしてやろうじゃないさ!」


みども
 はいこんにちはみどもです。という訳で桜花繊維工業第三弾です。成功出来れば、孤児院での情報を踏まえた色々と新たな情報が得られるんじゃないでしょうか。
 まず1章ですが、無謀な襲撃を駆けようとする男達のアジトに向かって、彼らを説得してください。そもそも襲撃を辞めさせるもよし、襲撃に加えてもらうよう説得するもよし。前者は非常に難易度高いです。
 次に2章では、襲撃する工場にたどり着くまでに高濃度汚染地帯を通らなければなりません。何らかの対策を講じてみてください。この時、1章で襲撃を諦めさせなければ、男達も付いてきますが、何の対策も講じなければ、オープニングのようにバタバタ倒れていきます。ご注意ください。
 そして3章、工場の門番を倒して工場内へと侵入します。頭脳戦車と戦います。この時男達が沢山生存していればプレイングボーナス入れる予定なのでよろしくお願いします。
 門番を撃破すれば、何らかの情報が手に入るようです。頑張ってください。なお工場内はほぼ全自動化されており、人間自体は非常に少ないようです。
 そんな感じでよろしくお願いします。
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第1章 日常 『対価はなんだ?』

POW   :    お前には拳と鉛玉がお似合いだ

SPD   :    手練手管で承諾させてみせよう

WIZ   :    欲しいものをチラつかせれば楽勝よ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月白・雪音
…如何なる手を用いたとて、此度の襲撃は止めるべきものです。

されど無謀であると、生きては帰れぬと。全ては承知の上なのでしょう。
自らの想い人がそれを望まぬであろう事も含めて。
それが他ならぬ貴方がた自身が強く定めた、己が命斯くあるべしと選んだ道であり、また自らの殉じた想いの形であるが故に。

なれば私はそれを止める為の言の葉を、まして異能など持ちません。
そして貴方がたに寄り添える、何かを喪った経験もまた。
故に、上辺の言の葉で貴方がたの信を求める事は致しません。

私の事は使い潰しの駒とでも。戦線の末席に加わる事をお許し願いたく。
勘は働く方ですゆえ、私への信はただ戦場での働きにて。定めて頂きたく御座います。


ナターシャ・フォーサイス
襲撃を止めろ…等と言うのは、無理な話ですか。
使徒として死地に追いやるようなことは、したくはないのですが。
一方で、知ることが貴方がたの幸せとなるのなら。
使徒としてそれを認め、手を貸しましょう。
歩みを止めぬこと。進み続けること。
それが、生ける者が楽園へ至る方法なのですから。
それに。人手は多い方が、色々とやりやすい。そうでしょう?

先ずは、彼らに加護を授けましょう。
彼等もまた同胞。
救わねばならぬもの。
此処での救いは、知ること。
反射の加護と天使達を授け、道半ばで倒れぬようにするのです。

…私情を挟むのならば。
私もあの企業には、思うところがありますので。
失う痛みも、知る者ですので。
そうでしょう、エリー?



「あー……えっと、君達は?」
 『桜花繊維重化学工業への襲撃』の日時が決定して、気炎を上げる、『かつて親しい人々を桜花繊維重化学工業に攫われた人々』で結成された名も無い組織。
 その組織の下層に位置するアジト、とすら言えない集会場に来た二人の少女を見て、さしもの門番役の男も困惑を隠せなかった。
 
 ともすれば少女とも見まがうような女性が二人。銀の髪に藍色の瞳の比較的小柄な女性と、白の髪に赤い瞳とそれよりもなお背の低い女性。
 一方はまるで司祭のような装い。一方は和装に高下駄。いずれにせよ、このような下層では見る事が上等な装いに身を包んだ二人は、あまりにもこの場所に不釣り合いで、それでいて害意の無い雰囲気は男に警戒よりも困惑を抱かせた。
「こちらの方で、集まりがあると聞いて参りました」
 静かに背の低い方の女性、月白・雪音がそうやって語り掛けるまでの間だったが。

「な!?」
 どうして!?という思いが男の胸に去来する。こんな特徴的な二人が自分たちの組織の中にいたなら、話題にならない筈がない。ならばこの二人は恐らく外部の人間。どこから情報が漏れた!?思わず手に持った小銃を右前に構える。
「お待ちください!」
 緊張感を高める男に対して、制止の言葉をかけたのは、銀髪の女性。ナターシャ・フォーサイスだ。
「私達は、話をしにきただけです……襲撃を止めろ、というのは無理な話ですか?」
 ナターシャとしての心からの言葉だった。罪も無き人々が、己の大切なものの為に命を仇花と散らしてゆく予知。
 それを知った以上は、使徒として生ける者を無理やり死地に追いやる事など出来ようはずもなかった。

「お、お前達、何者だ!?なぜそれを知っている!?」 
 ナターシャの言葉を受けて、相手を敵と認定した男の、粗雑な作りのサイバネアイが、二人を精査した。一方のナターシャはどうやら全身義体。とはいえ一目にそれと分からない美しさは、きっと高級なものなのだろう。
 少なくとも男に手の届くものではなかった。かつて攫われた恋人にだってプレゼントする事なんて叶わないであろうそれであった。
 そして何より、
「ん!?」
 目を惹くのが雪音の方であった。体から何ら機械の反応がしない。つまり義体ではないという事。
 そんな事などあり得ない。
 そのあり得なさで出来た空白を、雪音は見逃さなかった。

「失礼」
 静かな言葉と共に、スと左足を前に出して、男の右前に一歩進みつつ左半身に。そうすれば男に前面を見せる形となり、背面が隠れる。そのまま腰をクイ、と振るった。体で隠された雪音の尻尾が、下から完全な奇襲の形となって、未だ生身である男の右ひじ、そのファニーボーンを打ち据える。
「うぐッ!?」
 うめき声と共に、グリップを強く握っていた右手の力が緩んだ。
「通らせて頂きます」
 ヒュ……ぺシン!軽い音からは想像もできない力で雪音が銃口を下にはたき落とせば、未だにグリップにかかっていた右手を軸に、てこの原理で跳ね上げられた銃床が男の顎を打ち据える。
「がっ!」
 顎から脳を揺らされた男がそのまま、白目をむいて倒れ込んだ。

「わ……わぁ」
 今まで数度、ナターシャは雪音と共闘した事がある。バリケードを生身で蹴り飛ばす強さを見た。空を飛び回る優雅さを見た。岩盤を割り砕く決意を見た。
 今見せたそれは、今まで見てきたものとはまた違う、しかし根底に通じるものは共通するもの。即ち武。
 理性を以てして振るわれる、『最小限かつ最適の力』は、ナターシャの心に感動を与えた。
「行きましょうか」
 そんな事は露知らず、振り返った雪音がナターシャへ僅かにほほ笑みながら声をかけた。
「きっと、説得するにはナターシャ様のお力が必要でしょうから」




「お……お前達の要求は、なんだ」
 しばしの時間の後。アジトの一番奥で、雪音とナターシャは座り込んだ男と対峙していた。このアジトにおけるリーダー格の男だ。周囲には倒れてうめき声をあげる男達。皆、雪音に最小限の力で無力化されている者達だ。
(弱すぎる……)
 それが、雪音の正直な感想であった。
(斯様な力で挑めば、無為に命を散らすのも必定)
 所詮は、下層の男達が自分たちの感情の為に集まっただけの組織。どうにかジャンクから武器を作り出し、曲がりなりにも組織を作り出しただけで十分賞賛されるべきことなのだ。
(されど、無謀は承知の上。貴方がたの大切な人がそれを望まぬとしても、他ならぬ貴方がた自身が強く定めた、己が命斯くあるべしと選んだ道であり、また自らの殉じた想いの形であるが故に)

 だからこそ、失った事のない雪音には、それを止める言葉などなかった。
「もはや、貴方たちに幸せはないのでしょうか」
 故に、言葉をかけるのはナターシャの役目だ。
「あ?」
「きっと、ここで貴方たちに『復讐をやめろ』『襲撃を止めろ』と言えばどうなるでしょうか?」
 そう静かに声をかければ、座り込んだ男の眼が血走った。
「……ふ、ふざけるな!例えそう言われようとも、俺は!俺達は!!!」
 必ず工場を襲撃してやる!そう続く筈の言葉は、ナターシャの深い頷きに遮られた。
「ええ、そうなるでしょう。なぜなら、きっと、もはやあなたたちの幸いとは、せめて知る事にあるのでしょうから」

 ならば、祈ろう。
――まだ見ぬ楽園、その一端――
「生ける者が楽園へ至るにはどうすればよいか?」
 ナターシャの言葉と詠唱が、二重に響く。
 |人の心を持つ獣《月白・雪音》が個の極致を目指すのなら、|人造聖女《ナターシャ・フォーサイス》が顕すのは数のもたらす奇跡だ。

――我らが同胞を救い誘うため――
「それは、とどまらぬこと。前へと進む事。歩みを止めねば、いつか楽園へと至るのですから。ならば此度は、救われるべき同胞達へ、前へと進むための力を。知るための”資格”を、此処に与えましょう」
――光を以て導きましょう――

 そして祝詞が結ばれる。|召喚:楽園の祝福《サモン・グレイス》はたしかに、今この時反射の加護を男達に与えた。
 男達も解析できない何らかの力場が、自分たちを覆っている事に気付いたのだろう。それぞれに困惑の声をあげつつも、敵意を感じないそれを受け入れた。いや、少なくとも雪音にノされている現状、受け容れる他、なかった。
「高濃度汚染地帯への備え、出来てないのでしょう?」
 ナターシャが静かに聞けば、このアジトのリーダーたる男は、気まずそうに肩をすくませた。
「今あなたたちを祝福するその力が、汚染地帯から貴方たちを守ってくれるでしょう」
 つまりは、
「私達は味方という事です」
 聖女はそう言って微笑む。
「私の事は使い潰しの駒とでも。戦線の末席に加わる事をお許し願いたく」
 そこに雪音が言葉を重ねた。

「勘は働く方ですゆえ、私への信はただ戦場での働きにて。定めて頂きたく御座います」
 そしてジッと見据えてくるその瞳に、折れたのは男の方であった。
「……いや、いい。いい。実力は分かった。というかそもそもこれだけの事をされたんだ。アンタ達ができるなら俺達を殺せたことくらいは分かる。とりあえずノビてるやつらを治療してほしいがな。ただ一つだけ分からん」
 アンタ達は、何でおれたちに協力するんだ?
 その言葉に、ナターシャと雪音は顔を見合わせた。二人の瞳に映るものはそう、あの孤児院での光景。
「私情、です。私達も、あの企業には思う所がありますので」
(それに失う痛みを知る者でもありますので。そうでしょう、エリー?)
 その言葉だけは、聖女の胸の奥にしまわれる事となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
ふぅん?
メアリは「これまでのおはなし」なんて知らないけれど
あなた達、復讐がしたいのね
だったら、手伝ってあげる!

開口一番そう告げれば
彼らは驚愕? 警戒? 怪訝な顔?
そういう顔をされてしまうかしら!
だったらどうするの?
子供は邪魔だと追い払う?
みんなでメアリを|口封じ《わからせる》?

けど残念! |力尽く《わからせるの》はメアリの方よ
言葉で今さら止まらない
だったらこうした方が早いでしょう?
大怪我はしない程度に、叩きのめしてあげるから!
そうやって尻尾を巻いて逃げ帰れと言ってあげれば
彼らも死なずに済むかも知れない……

なんて、そんなのナンセンス!
言ったでしょう? 「手伝ってあげる」って
理由なんてどうでもいいじゃない
今は利用できるものはなんでも利用しなきゃ
そうでしょ?

……ええ、もちろん
メアリが好む復讐と、彼らが望む復讐は
まるでぜんぜん違うもの
メアリは甘美な復讐を味わう為だけれど
彼らはもういない誰かを想って復讐するんだもの
だけれど今は、そんな違いも呑み込んで
【おかしな復讐劇】に身を任せるしかないじゃない?


ミヤビクロン・シフウミヤ
※アドリブ歓迎
僕は僕なりのやり方で説得する。
心情は察するが暴走してるのでまずは現実を知ってもらいます。
僕如きに恐怖して痛みで屈するなら最初から来られてもあまりにも無謀すぎるのです。
錬成・ミヤビシオンの詠唱を唱えてから、愛刀の紫桜 夜雅を103本複製して全ての刀の切っ先を男性達に向けて前横上後ろからとバラバラに峰打ちによる全方位攻撃を仕掛けます。全て本物ですから本気なら全身が骨折するので、速度を落とすなどしてある程度威力は落とします。
恐怖と痛み目的の峰打ちですが、かなり集中しないと誤って斬ってしまうかもしれないので男性達には悪いですがただ黙って抵抗せず突き進んできてもらいます。下手に抵抗されるといくら手加減してるとはいえザクザク斬られると忠告もします。
僕のミヤビシオンを受けてなお突破してくるならそれだけ気概があるので合格ラインです。
実験体であり道具でしかなく戦闘しか知らない僕には男性達のフォローは出来ません。経験ないですし、年下の女子からフォローされたら、余計プライドを傷つけてしまうので。


エルネスト・ポラリス
アドリブ連携◎

無謀な行いではありますがね
怒りにはケリを付けなくてはいけない、ええ、止めやしませんとも

とはいえ部外者に彼らの信用を得るための材料がある筈もなく
正義の為、メガコーポの闇を暴きたいのです……! うわぁ、嘘くさい
という訳で、私が提示するのはもっと分かりやすい……『戦力』です

UC発動、巨大な狼の姿に変じます
彼らも圧倒的戦力不足は分かっているでしょう、大きさという分かりやすい力を売り込むのです
まあ、私がメガコーポの手先でない証拠はありません
しかしですよ

メガコーポが事前に対処するならだまし討ちとかいらないでしょ
そういう敵に挑むんです、掴める藁は掴んでほしいと思うのですよ、藁の側としても


シズル・ゴッズフォート
男達には個人的な共感から幾分か好意的に接触
言葉で止まる段階に無い程の強い意志なら、せめて手助けしたい

単刀直入に言いましょう。無謀な突撃は、何も為す事なく骸を生むだけです
ですが、もはや理性や理屈だけで止まるものではない……そういう激情に突き動かされる気持ちは良く分かりますとも

ですので。私を雇用するつもりはありませんか?

・「多数の人間を強化する」ユーベルコードを使える為、戦う意志のある人間が多い程効果があること
・報酬は男達が工場の襲撃を補助してくれることで、金銭を要求するつもりは無いこと

これらを伝え、参加させて貰えるよう交渉します
……無為に命が散るのを、見過ごすつもりはございませんから



「よし、お前達、装備は揃えたな!?!?!?」
「ああ!」
「なら、目をつぶれ。そして思い出せ、俺達が奪われたものを……!」
「そして、奴らに俺達の痛みを味合わせてやるんだ!」
「「「おおー--!!!」」」
 
 夜半。
 とある最下層のスラムの奥の奥、たまたま広間になっているそこに、気炎を上げる男達の姿があった。桜花繊維重化学工業、その工場への襲撃を計画していた男達の指揮は、高かった。
 例えその先に破滅しかないとしても、もはや組織自体が限界だったという事も、ある。
 最下層民である男達がいくら集まろうとも組織として運営していく資金など無く、あるのは中途半端に聞きかじったばかりの知識や、どうにかジャンクから作り出した貧弱な武装ばかり。

 それでも、『同じ被害者同士である』『恨みがある』という共通項でまとまってはいたが、そういった『復讐の感情』というのは冷めやすいものでもある。
 何より男達は凡夫であり、だからこそ男達を纏めるようなカリスマを持った指導者というのもなかった。そのために、組織自体は下層の各セクションでそれぞれ勝手に緩い集まりとして形成され、その緩さと『実体のなさ』が企業に補足される事を防いでいたが、だとしても、もはや限界であった。
 数日前、別のセクションのリーダーたちと会合をした際に、とあるリーダーが『心強い仲間を得た』という情報をもたらした。
 ならば、今この時が攻め時であり、そしてこれ以上は構成員たちの熱意を維持するのも難しいだろうという判断を各セクションのリーダーが満場一致で支持し、今がある。
 あの会合から数日。今は2日後に迫った工場襲撃の前の最後の集まりを男達が行っていたときであった。

「……ん?」
 そして、会合の結果を持ち帰って来たこのセクションのリーダーだけが、檀上に上り男達を扇動していたからこそ、それに気づいた。
 スラムの奥の奥、袋小路になったこの広場へと、入り口から二つの影が歩いてくる。
 どちらも小柄だ。
「んん!?」
 
「こんにちは」
「こんばんは」
 男の、リーダーの視線に気づいたのだろうか、二つの影がそれぞれに挨拶をする。
 丁度背丈は同じほどの二人。小柄なその姿は、二人とも少女であった。

「ふぅ~ん?」
 ピタリと、入り口をふさぐように立つ影の内の一つ。幼さすら残す体を煽情的なバニースーツに包み、獣耳を象ったフードを付けた少女がまるで獲物を選定するかのように、睥睨する。
「メアリは、『これまでのおなはなし』なんて知らないけれど」
 ニマァっと半月のように、口が笑みを作る。そのあまりに蠱惑的なメアリー・べスレムの姿に、壇上の男は、『妻を亡くし、丁度べスレム位の娘を浚われた』男としては、
(そんな恰好お父さんが許しませんよ!?!?)
 少し情緒が崩れた。
 さておき、少女の言葉は続く。それは丁度、壇上の男が広間への入り口を一点に注視している事に気付いた男達も何事かと静まり返ったタイミングであった。

「あなた達、復讐がしたいのね」
 《肉切り包丁》を片手に、メアリーがにこやかに問いかける。
 組織の特性として、女子供には特に甘い男達は、その言葉に一瞬答える事ができなかった。
「あらあらそうそう怪訝な顔?そういう顔をされてしまうかしら!」

「だったらどうするの?」
「現実を知ってもらいます」
 言葉と共に、蒼い貫頭衣のような装いのミヤビクロン・シフウミヤが妖刀、《紫桜 夜雅》を 宙に放り投げた。
「我が信ずる妖刀よ、その呪われし刀身を、水底のように深々と、鏡面に写るが如く増やして終えては、我が意に従い敵を切り裂け」
 |錬成・ミヤビシオン《レンセイ・ミヤビシオン》によってミヤビクロンの愛刀が一気に複製される。そしてそのまま、
「気概を、見せてください。」
 刃が、男達へと襲い掛かる。

「「「「「うおおおおおおお!?!?!?!?!?!?」」」」」
「あははははは!!!!こんな所に!こんな夜に、こんな事をしてくる子供を、貴方たちはどうするのかしら?追い払う?それともみんながみんなでメアリを|口封じ《わからせる》?」
 まるで嵐のように、ミヤビクロンによって操作された無数の刃が男達へと襲い掛かる。いきなり行われた暴力に、それぞれがそれぞれなりに鍛えたとはいえあくまで一般人の域を出ない男達は、それに対して必死に抵抗していた。
 さらには、その雨の中を縫うように、メアリーがまるで踊るかのように男達へと襲い掛かる。手に持つ肉切り包丁が振るわれるたび、男達が倒れていった。
 
 まさに惨劇。そうではあるが、血は流れていない。何せ、
「|力尽く《わからせる》のはメアリの方よ」
 肉切り包丁は、その刃を逆さにして、峰で男達を打ち据えていた。ミヤビクロンの複製された妖刀もまた同様で、つまりは

「黙って、突き進んでください。覚悟と決意を、見せてください」
「あらあら!黙ってなんて楽しくないわ!さぁ!歌いましょう!|怒りましょう《謡いましょう》!|決意しましょう《謳いましょう》!ここで叩きのめせば、尻尾を巻いて逃げ帰るなら、きっと彼らも死なずにすむ……なぁんて、そんなのナンセンス!|おかしな復讐劇《リベンジャーズインセイン》に、身を任せるしか、ないんじゃない?」
 静かに言葉をかけるミヤビクロンと楽し気に笑うメアリー。言葉は違えど企図するところは似通っていた。つまりは、本来戦いそのものなんてほとんど知らない男達へ、戦場に立つ資格があるのかと問いかけること。
 一方は不器用な優しさで、一方はある種の共感によって、今この場に立っていた。

「な……んなんだお前達は」
 当然、ユーベルコードを使っている猟兵達とただの男達の間では歴然とした差がある。だからこそ、ばたばたと倒れていくのは当然で、どうにかそれでも這いつくばりながら、顔を上げた男達が少女を睨むようにして問いを投げかける。
「僕達が何者か、は重要ではありません。ただ、心情は察するけれども暴走している貴方達に現実を知ってもらいたいだけです。僕如きに恐怖して痛みで屈するなら、最初から襲撃を行おうとしたことがあまりにも無謀すぎるのです」
 そしてその言葉は倒れ伏した男達、今なおどうにか妖刀と少女の襲撃をしのごうとしている男達の、どちらの瞳にも炎を宿らせた。
「「「だけど、それでも!」」」 
 その瞳に怒りが宿る。知っている。無謀である事なんて。彼らは皆、企業がどれだけ恐ろしい存在であるかなど理解している。それでもなお、失った者の為に立ち上がった者達なのだ。
 それを、どういう理由であれ、目の前の二人は遮ろうとしているらしい。子供のような見た目に、かつて彼らが失ったものを思い出させる見た目に動揺していた男達の意志が固まる。
 
 決意を固めた男達の瞳の色に、
(……ええ、もちろん。メアリが好む復讐と、彼らが望む復讐は、まるでぜんぜん違うもの)
 一方の少女は僅か口元に寂しげな笑みを浮かべ。
「では、僕のミヤビシオンを受けてなお突破してくるなら、それだけの気概あるので合格ラインです」
 倒れ伏した男達すら再び気合いを入れて立ち上がってくる姿に、此処からが本番だと、無表情のまま強く頷いた。

「それでは」
 ミヤビクロンの言葉と共に、仕切り直しと言わんばかりに、妖刀群がミヤビクロンの背後へとまわる。それと同時に、メアリーもまた大きく後ずさって、男達と対峙した。
 わずかな静寂。
「いきます」
 静かな宣言と共に、再び瀑布のように妖刀が襲い掛かろうとして、男達もその瀑布を破らんと飛び出したその瞬間、


「そこまで!」
「はーい!終わり!終わりですよ!!!!一旦終了!!!」
 女性の鋭い制止の声と、どこか慌てたような男の言葉が響いた。

 瞬間、ズドドドドドドドと轟音を立てて、|来たれ我が楯、我が証。万難を排す陣を此処に《インスタントイミテイト・ゴッズフォート》によって複製された無数のカイトシールドが男と少女たちを分かつように、両者の中心に突き立った。
「あら!とんだサプライズね!」
「む」
 妖刀は盾に弾かれ、メアリもまたとびかかる瞬間目の前に現れた盾を蹴って再びミヤビクロンと並ぶ。

「「「うおおおお!?!?!?!?!?」」」
 戦闘巧者たる二人とは違い、三度困惑の声をあげる男達。飛び出した彼らの方は急には止まれない。このままでは、盾の裏側に激突して大けが必至だ。
 ゆえに、彼らが衝突する前、盾のさらに前に、まるで彼らを受け止めるかの如く、赤銅色の大狼が横腹を見せて降り立った。
 そしてそのまま、男達、狼に直撃。


―――もっっっっっっっっふ―――


「ぐえっ」
 横腹に男達の直撃を喰らった大狼が、先ほど慌てたような声をあげた男とまったく同じ声で、うめき声をあげた。
 
 先ほどとはまた毛色の違う静寂が辺りを包む。争いに水をさされたような、どこか弛緩した空気。
「もう、十分でしょう」
 それを切り裂くように、広間に続く入り口の奥から女性の声が響いた。そのままカツカツと靴音を鳴らし、シズル・ゴッズフリートが姿を現す。
「さてさて、少しどいてもらえますかね」
 そうやって言葉を発したのは、盾に激突しようとした男達をその脇腹で受け止めた大狼だ。明らかに人でないそれが人の言葉を発した事に対してどことなく動揺した男達はそれでもその脇腹から離れるように一歩後ずさった。

「それでは、よいしょっと」
 軽い言葉と共に、|狼さんは何故大きい《ウルヴズクエスト》が解除される。一瞬の後、巨大な赤銅色の狼が居た筈のそこには、ひょろりとした背格好の、優し気な雰囲気の青年が立っていた。エルネスト・ポラリスだ。

 人の姿へと戻った人狼の青年は、今しがた自分が受け止めた男達を見渡す。今しがたメアリーとミヤビクロンによって覚悟のほどを試されていた男達は、皆が皆それぞれボロボロだった。
 それでもなお、流血していたりせず、一番重傷であったとしても骨折程度で済んでいるのは恐らく先に男達を貯めそうとした二人としても出来る限り手加減しようとしたからなのだろう。
 だから、
「皆さん!私どもの力、ご覧になっていただけたでしょうか!?」
(うわぁ、胡散臭い……!)
 青年は、当初の予定を少し変更する事にした。

 メアリーとミヤビクロンを手で制しつつ、エルネストの元へと歩みを進めながら言葉を継ぐのは、シズルだった。
「我々は、所謂レジスタンス、と思って頂いて構いません。ユーベルコードを使うメガコーポに対抗する者達。ご存じありませんか?」
 そう声をかければ、男達もどこか思い当る節があるようだった。彼らとて、企業に反抗しようとする者達だ。ユーベルコードという古代の叡智を使って、企業に対するレジスタンス活動をする者達が居る、という噂は知っていた。
 ただ、悲しいかな彼らの中にはそのような術を使える者はおらず、なおかつ組織として数は多いものの弱小すぎて、そういった力ある者へとアクセスするコネクションなど在りはしなかった訳だが。

「つまりは私達も正義の為、メガコーポの闇を暴きたい者達であり、貴方たちの力になりたいのです!」
(うわぁ、嘘くさい)
 内心自分自身にツッコミを入れて微妙に心が折れかけたエルネストは、それでもなお少し眉を下げた笑みを浮かべて続ける。
「と、言っても部外者である私達が『そう』であると言葉で語っても信じてもらえるための材料など無いわけで。荒っぽい手段にはなりましたが、力を示させて頂きました」
 その言葉に、男達はどこか納得したような、納得いかないような雰囲気。
(いける……!)
「そもそも!」 
 ここが押しどころだと悟ったエルネストが、鋭く言葉を投げかけた。懐疑と納得の狭間に居た男達の意識が、青年へとより一層集まる。
「もし仮に私達がメガコーポの手先であったとしたなら、だまし討ちのような真似なんてせず、今ここであなた達を殲滅するのが一番です。そうしない事こそが一番の証拠!」
 だからこそ信じて欲しい、とエルネストは男達へと鋭く視線を向けた。

「何より、今の『手合わせ』であなた達も感じたでしょう?私達が強大であるようにメガコーポもまた強大です。単刀直入に言いましょう。無謀な突撃は何も為すことなく、骸を生むだけです。勿論、もはや理性や理屈だけで止まるものではない……そういう激情に突き動かされる気持ちはよくわかりますとも」
 シズルが再びエルネストから言葉を継げば、男達はどうやら納得したらしく押し黙った。沈黙の中には自分たちの力不足を嘆くような雰囲気もある。
「だからこそ、無為に命が散るのを、見過ごすつもりはありません。何より私には、『戦う意思のある者が多ければ多い程、戦う意思ある者を強化できる』ユーベルコードがあります。つまりは、貴方達にまた本懐を遂げさせるための力を与えることができるのです」
 その言葉に、男達が色めきだった。


「決意や心意気は合格ラインでした。」
 そうやってフォローしつつも静かな表情のまましれっとミヤビクロンは少し視線を横にした。
「……こちらも、少しやり過ぎた感はありましたが、それでもなお立ち向かってきたあなた達は、気概だけなら合格でしょう」
 不器用な少女としても、少しバツが悪かったのだ。
「あーあ。|人狼《ご同輩》に|獣《ご同輩》がやってきて、|リベンジャーズインセイン《おかしな復讐劇》は一旦お開きかしら!けれどけれども、もういないだれかの為の|復讐《パーティー》の日はすぐにやってくるわね。楽しみだわ!」
 ミヤビクロンとは対照的に、楽しそうな笑いをあげたメアリーが笑いを上げた。

「ともかく、私たちはあなた達の怒りにケリを付ける事を止めやしませんとも。むしろ掴むべき藁です」
 だからどうか、掴んでみませんか?それを藁の側としても望んでいます。そうと言わんばかりに、場を締めくくるが如く、エルネストが男達の方へと手を差し伸べた。
 事ここに至って、その手は男達によって強く握り返された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『高濃度汚染地帯』

POW   :    体力に任せて汚染環境に耐える

SPD   :    ガスマスクやゴーグルで汚染物質への曝露を避ける

WIZ   :    薬物や魔法で生命力を回復しながら進む

イラスト:九印

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メアリー・ベスレム
さてどうしたものかしら
メアリ、自分が耐えるのは得意だけれど
癒しや護りは向いてない
メアリにできるのは復讐する事させる事
ただそれだけなんだもの

だから必然、対策は他の猟兵にお任せで
メアリ自身は必要以上に呼吸をしてしまわないよう【息止め】て
【ジャンプ】【軽業】で地を蹴りながら
【野生の勘】で汚染の強い場所を避けながら
周囲の警戒も兼ねて、素早く先へと進んでく

だけれど、もし……
対策を施されてなお、力尽きてしまう者が
復讐を遂げずして、膝を着いてしまう者が
そんな者がいたのなら、【挑発】の言葉とともに駆け寄って

あら、なぁに? あなたそこまでなの?
ええ、本当にそのつもりなら
これ以上苦しまないよう、|お終いに《ころ》してあげても良いけれど……
復讐も遂げずにお終い、だなんて
ああ、なんて情けないのかしら!

……それでもなお、復讐を遂げたいという意志が残っているのなら
|人狼《メアリ》の穢れた血を分けて、あなたを|罹患者《ケモノ》にしてあげる
この感染が一時的なものか
その後の寿命がどれほどか
それはメアリにもわからないけれど


エルネスト・ポラリス
アドリブ連携◎

……理屈じゃないというのは分かるんですが
猟兵でも長時間留まれない汚染地域に突っ込もうとするとは最早命知らずも越えてる……いえ、うるさく言うのはやめましょうか

さて、同道することになったのならこのエルネスト容赦せん。男たちにも協力してもらって廃材を集めましょう
無論、こき使うからには相応の手段を提供する用意があります、ちょっと待ってね
(UC使用で犬ぞり作成)
『空飛ぶ魔法の犬そり』を作るこのユーベルコード。コイツで作ったそりに皆さんを乗せて、空中を一気に走って汚染地区を駆け抜ける算段です

じゃ、狼に変身して……振り落とされぬよう、気を付けてくださいね!



「あら。あら。あらあらあら。|ご同輩《人狼》のお兄さま。いったいぜんたい、そんな|廃材《おもちゃ》を寄せ集めさせて、何を作るつもりなのかしら?もしかしてもしかして、みんながみんな、この|汚染地帯《魔女の毒沼》を渡り切れるような、そんな都合のいい|魔法の乗り物《かぼちゃの馬車》でも作るつもりかしら?」

 作戦決行のその日、全ての人員が同じ方向から一斉に工場へと向かえば当然それだけ大所帯になり、相手から捕捉もされやすい。
 また、集まった男達の数も今回参加している猟兵達よりも当然多く、だからこそ猟兵達もまたそれぞれの班に分かれて、それぞれがカバーできるだけの人数の男達と共に汚染地帯を渡る事になった。
 そんな中で班分けされた二人、住まう世界は違えど、同じ『人狼病』という病に侵された青年と少女、エルネスト・ポラリスとメアリー・べスレムは今、出発する直前、エルネストの指示で持ってこさせた廃材を、何やら男達が不格好な形にくみ上げるのを見守っていた。
 挑発するようなメアリーの言葉に苦笑しながら、エルネストは答える。
「そこまで便利なものは流石に作れませんけどね」
「あらぁ残念。それじゃあ本当に|役立たず《ハリボテ》じゃない!」
 そういってクスクスと笑う少女の言葉に、エルネストの苦笑にさらなる苦みが加わった。
「……理屈じゃないというのは分かるんですが、猟兵でも長時間留まれない汚染地域に突っ込もうとするとは最早命知らずも越えてる……」 
 ぼそりと呟いた言葉に、本心が混ざる。本当であれば、彼らにはこんな無茶をしてもらいたい訳ではない。

「そうね。そうよねそうだわそうよ!みんなみんな!|未来《りせい》なんてうっちゃって!ここにいるのは憐れにも|愛しいモノ《こころ》を失った|復讐者《マッド・ハッター》ばっかりよ!……それはお兄さんも、わかってるでしょ?」
 静かに占められた言葉に、青年もまた頷きで応える。そう、彼らはすべからく愛する者達。己の子供や恋人を失った者達なのだ。もし己が同じ境遇におかれたとするならば、と思えば、否定する事など出来はしない。 
 だからこそ、
「うるさく言うつもりはありませんよ。覚悟を決めている以上、このエルネスト、容赦はせん、といった所です」
 けれどそれでも。男達が廃材をくみ上げていく様を見て、拳を握る手に力が籠る。たしかに男達だけで汚染地帯を突破するよりも自分たちが協力する方がたしかに生存確率も上がるだろう。そうはいえど、男達の全てが助かるわけではない。
 エルネストの心に走った苦みに対して、
「大丈夫だわぁ、お兄さん」
 甘い甘い、少女の声が染みわたる。
「|復讐者《マッド・ハッター》はね、現実なんて見れないの。|死《現実》なんて、どうでもいいの。だって見てるのは|愛する人《過去》だけよ。だからそこを見ている限り、絶対絶対どうにかなるわ。メアリが|どうにかする《・・・・・・》わ」
 ニヤァっと少女の口元が弧を描き、爛々と瞳が輝く。少女が言っているのはつまり、『エルネストが取りこぼす男達は自分がどうにかする』という事で、ぱっと聞くだけならそれはまるで苦々しい現実を癒す甘い言葉のようで、それでも同じ人狼の嗅覚だろうか。エルネストはその甘さの中に混じる毒リンゴのような何かを見過ごす事ができなかった。

「……無茶はやめてくださいね」
「それを決めるのはアリスじゃないの」
「ごもっともで」
「お二人とも!!出来ました!!!」
 そんなやり取りが丁度ひと段落ついたところで、男達の一人に呼ばれる。見ればそこには丁度3,4人は乗れるだろう不格好ながら廃材を組み合わせたにしてはしっかりとした作りの犬ぞりが存在していた。
「ありがとうございます。さて、やりますよ!」
 そう言ってエルネストは|めあて星へと手を伸ばし《トレノ―・ド・ボヌール》を発動した。

「「「「お、おおおおお!!!!!!」」」」
 男達が思わず喝采を上げる。そこには今作られた犬ぞりを精巧に巨大化させたものが鎮座している。これならば、ここにいる男達皆を輸送できるだろうといった大きさ。
 狼に変じたエルネストが、犬そりを引くロープを取り付けてもらいながら、徐に男達にそりへと乗る用指示を出す。 
 しばしの後、男達とメアリーが搭乗した事を確認してから、
「振り落とされないよう、気を付けてくださいよ!!」
 言葉と共に、ソリは走り出した。


(グッ……!流石にキツイ……!)
 高濃度汚染地帯の中を人狼がソリを引いて駆け抜けていく。腐臭などはしない。ただ、サイケデリックな刺激臭が鼻をつき、パチパチと眼にも痛みを感じる。
 猟兵ですら長くは存在できない場所というのはフカしではなかった。
「「「「ぐ……ぐおおおおお……!!!!!」」」」
 男達もまたその汚染された空気に晒されている。当然、ダメージは猟兵達より多い。それどころか、スピードを上げる事でより叩きつけられるそれは強くなっていた。
 それでもなお、この長大な汚染地帯を徒歩で進むより総合的には安全だが、それでもダメージを受けない訳ではない。
 そうすれば当然、
「おい!大丈夫か!?」
「ぐっ……くぅ……ぅ、ッ!?ぐっ!!!」
 男が一人、二人と血を吐いた。そして、ソリの中で倒れ込む。息があらい。
「おい!おい!?」
 周りの男達が揺するが、何も答える事はない。ただ息が荒くなり、弱弱しくなるばかりだ。
「あら。もう駄目ね」
 倒れ込む男達をどこか冷たい目で睥睨しながらメアリーが吐き捨てる。
「メアリーさん!」
 その言葉は流石にとエルネストが鋭く声をかければ、
「ウフフフ!!!そう駄目よ!けれど駄目なら治せばいいの!」
 そう言いながら、徐にひょいと人狼由来の怪力で、倒れ込んだ男達を抱え上げる。そしていきなりそりから飛び降りた。
「メアリー!?!?!」
 その行いにさしものエルネストも驚きの声をあげる。
「大丈夫よ!!大丈夫!絶対絶対、治していくから!!!」
 一心不乱に進む犬そりとメアリー達の距離がドンドン開いていく。わざわざメアリーが降りたのは、きっと何かよからぬことをするつもりなのかもしれない。
 けれどここで急停止する訳にはいかない。
「クソッ!待ってますからね!」
 そう言って、ソリは瞬く間に先へと進んでゆき、メアリーの視界から消えていった。


「……それじゃあ」
 抱えていた男達を地面に降ろす。他の男達より耐性が無かったのだろう。それぞれが瀕死の状態だ。その男達を前にして、メアリがナイフで己の左の掌を引き裂いた。
 
 滴る血。


「|復讐したい《生きたい》のかしら?|楽になりたい《死にたい》のかしら?もし死にたいのなら、今ここで、この場でメアリが|お終いに《こわ》してあげてもいいけれど……」
 ああ、それじゃあなんて、情けないのかしら!!手のひらをクルリと上に向け、まるで毒リンゴのように血が溢れ出る。
「復讐も遂げずにさようならより、復讐を遂げてさようならしたいなら、今ここで、メアリが|復讐者《ケモノ》にしてあげる。いつ死ぬか。いつまで生きるか、どうなるか。そんな先の事なんて全く分からない、ただ今を貪る|罹患者《けもの》にしてあげる!」
 まさしくそれは毒リンゴ。一度齧ればきっと甘美な甘さが全身に広がり、一時的にせよ彼らは目的を遂げるための生を得るだろう。その代償に|人狼病《とこしえの眠り》に苦しむ事になろうとも。
 弱弱しく、男達が少女の方へと手を伸ばす。
 もとより|愛しいモノ《未来》を失った男達にとって、選択肢などないのだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

プロトコレンス・ワクチンゲール
出遅れましたが進んで参りましょう。衛生兵たるもの一歩後ろから、画面を俯瞰しつつ、時にはポーズしてでも視座を確保せねば。
倒れたものにはこの手で応急処置を。味方の猟兵もそうですが、一番は皆さんがここで死なないこと。そう、滔々と淡々と命を説きましょう。倒れても《死ぬこと以外は擦り傷》、ステータス管理はお任せください。無理はさせられませんがここは根性値の見せ所。


シズル・ゴッズフォート
常人ならば死に至るような高濃度汚染地域ですか……
私だけなら兎も角、彼らはそうはいきません

UCを騎士刀に付与。異空間への入り口をこれに定め、彼らに触れさせて内部にて待機を要請。輸送します
見慣れぬ業で困惑させてしまうでしょうが、そこは信頼していただくしか無いでしょう
何より、御先祖様は仲間の輸送や一般人を安全に護送する為にこの業を編み出したとも聞いています。ならば今使わずに何時使うのか

全員の収容が終わりましたら、バイクに乗車
鎧の耐毒機能に加え、肉体の抵抗力を高めるために獣性因子も励起させましょう
幾分手荒い運転になりますが、異空間内部の彼らには影響はありません。そのまま汚染地域を突破します



 高濃度に汚染された地域を、バイクが並走して爆走する。二人の猟兵だ。どういう訳か、彼女達は本来共に工場へと向かうべき男達と連れ立ってはいない。
 完全に二人である。様々な廃材やがらくたが地面に存在するオフロードの道を、ただひたすらに走ってゆく。
「グッ!?やはり、厳しいですね……!」
 そんな中、唐突に黒で構成された車体に青のラインが入ったそれ。ミネルヴァ重工製宇宙バイク《PC:MN-009》に跨る、所々に本来であれば存在しない筈の獣相を体の所に顕した女性、シズル・ゴッズフォートがいきなり吐血してバランスを崩しかけた。
 どうにか傾きかけた車体を起こし、前を見据える。正面を睨みつける視界は、僅かに霞んでいた。
(なるほど。これほどとは……!)
 先ほどから刺激臭が凄い。目が痛い。ケミカルな刺激は、出身世界が世界であったシズルとしては、今までに感じた事のない不快感であった。
 肺に入り込む空気すらパチパチと内側から体を焼くかのようだった。
(耐毒耐性を持つ鎧を着込んで、獣因子を励起させてなおこのダメージ)
 口の端から血を流しながらしかし、シズルは獰猛な笑みを浮かべた。
「これは、彼らを外に出さなくて正解でしたね」
 そう言いながら、己の左腰に佩いている騎士刀へとわずかに視線を向ける。|神塞流陸殲術・灯の型 祭霊光域《ライトヴェール・サンクチュアリ》にて己の持つ騎士刀の内側へと空間を作り出し、現在男達をそちらの方へと収容しているのだ。
 ゴッズフォート家が安全に仲間達を輸送するのに編み出した業。今使わずにいつ使うのかという事で、困惑する男達を説得し、今彼らは異空間の中で安全に運ばれている。

 とはいえ、
「これは、中々……!」 
 じりじりと焼かれる肺。思わず意識が落ちそうになったその瞬間、
「お気を付けください」
 シズルの隣を並走するバイクの搭乗者から銀閃が閃き、|死ぬこと以外は擦り傷《フリーオペ》が発動する。そうすればたちどころにシズルの苦しみが癒された。
「大丈夫ですか?」
 シズルの横から静かな声が聞こえる。そう、シズルのバイクと並走するのは、《救急バイク》に乗ったプロトコレンス・ワクチンゲールだ。
「ありがとうございます。ワクチンゲールど……のぉ!?」
 安心したかのように横へとわずかに視線を向ければ、そこには口の端からダラダラと血を流し続ける、前髪で目を隠した褐色の美女がフラフラとバイクにまたがっていた。
「大丈夫なのですか!?」
 思わず焦って声をかける。状況を鑑みて、明らかにシズルよりも重症であった。

「ああ、お構いなく。走行には問題ありません」
「いえ、明らかに体がふらついていますが!?」
 そう言いながらも、シズル自身違和感を感じていた。たしかに体がふらついている。それでも不思議と、そのハンドルを握る手は力強かった。
「そもそも、です」
 ゴプッ!と再び口から血を吹き出す。肺に重篤なダメージを受けている証拠。
「こういった汚染区域におけるダメージとは、純粋な病とはまた別種の害。だからこそどういった薬を処方すればよいか。どういった治療を行えばよいか。あらかじめ決まっているものではありません。ならば、体当たりでまずどういった病例が発生しうるか、確認する必要があり、この体はそう言った事の確認に長けています」
「いやその前にワクチンゲール殿の命の方が危険では!?……ゴフッ!?」
 ゴッズフォートもまた、血を吹き出した。先ほどワクチンゲールのUCにて一時的に回復したが、それもあくまで一時的なものだ。この高濃度汚染区域に存在している以上、継続的なダメージは免れない。
 しかし、
「問題ありません。アップデートはもう済ませました」
 言葉と共に、|自律弾幕《アトラクトデモ》が発動する。ワクチンゲールの受けたダメージと今しがたシズルを治療した時に得られたデータを複合して、召喚した|医療戦闘機《ドローン》が二人に治療行為を自動的に行う。
「継続的にダメージを受けるなら、継続的に回復すればいいのです」 
 こうすれば問題ない。ハンドルを握る力を再び強めた二人は、騎士刀に待機している男達と共に、高濃度汚染区域を駆け抜けるのだった。

 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
さて……決起の時、ですか。
先にも加護を授けはしましたが、それだけで汚染区域を抜けるのも困難というもの。
生けるものが道半ばで倒れぬよう、今一度道示しましょう。

【召喚術】で天使達を呼び、【結界術】【オーラ防御】で防御結界を張ります。
天使達の盾と、防御結界。
機銃掃射に対しての二重の防御とするのです。
結界には【浄化】の力も付与し、汚染を無力化します。
続けて光翼を展開し、浄化の力だけでは取り除けない汚染を無力化します。
あとは……機銃掃射の発射点が特定できるなら。
天使達と共に【高速詠唱】【範囲攻撃】【全力魔法】の聖なる光で、機銃を無力化していきましょう。

さぁ、門はそこです。
往きましょう、生ける人々よ…!!


月白・雪音
…話には聞き及んでおりましたが、想像以上の汚染の進行です。
かの企業からの廃棄物によるものとあらば、果たして『何で』汚染されているものか…、今は考えるも詮無き事ですね。

辿るべきは最短距離、されど最短の道筋は敵の側も把握し備えておりましょう。
…尤も、それは民の襲撃では無く他の競合企業への備えでありましょうが。

故に選ぶは『最適経路の最短走破』。負担をお掛けしますが、立ち止まる暇は御座いませんね。

UC発動、残像、悪路走破にて見失われない程度に先行しつつ野生の勘で汚染の比較的少ない経路などを感じ取り
進行の妨げとなる障害物は怪力、グラップルにて即座に破壊しつつ道を開く
動きの鈍る人員が出れば担ぐなど補助を



「詠唱以下略!|召喚:楽園の光翼《サモン・ピュリフィケーション》!!!!」
 少女の言葉と共に、その頭上に大きく光輪が召喚される。そしてその内側を守るかのように、清浄な空気が満たしていった。
「「「「お、おお。すげぇ!!!」」」」
 高濃度汚染区域、それに対抗するためにナターシャ・フォーサイスが取ったのは至極単純な方法だった。
 すなわち、広範囲を浄化するUCを使ってしまえばよい。決死隊として誰かがたどり着けばよい。それくらいに思っていた男達にとっては、望外な支援だ。
 実際、廃材やスクラップから作り出したぼろ一歩手前のプロテクターや、暴発の危険すら存在する粗悪な銃を装備した男達では、この汚染を越えてゆく事など出来はしなかっただろう。
「これは、想像以上の汚染の進行、ですね」
 月白・雪音がカランと己の履いている下駄をナターシャの作り出した加護の範囲から突き出して、汚染された廃材を蹴る。
 それだけで下駄の底がジュ!と僅かに煙を出した。
「ッ!」
 常に平静であれと心を落ち着けている彼女とはいえ、その劇的な反応には思わずぶるりと身震いさせて足をひっこめた。
 ともかく、

「準備は、整いましたか?ナターシャ様」
 静かに雪音が問いかけた。
「ええ。行きましょう。雪音さん」
 ナターシャもコクリとそれに頷く。
「それ、では」
 ナターシャの言葉を以て雪音はおもむろに眼前、汚染された廃材の山に向き合う。一歩、踏み出した。
 それに合わせて、ナターシャもまた一歩踏み出す。光輪の範囲が、一歩進んだ。
 数歩、お互い前に進む。すると、雪音の眼前に廃材の山が現れた。
 ピタリ。その右手手を当てる。本来であれば、汚染されたそれに手を当てれば皮膚が灼け、痛みが走ったであろう。
 けれど、光輪の祝福は、廃材にすら届いていた。今は単なるガラクタでしかないそれはもはや、
「相手も万が一の侵入の可能性は把握しておりましょう」
 スゥー---、っと息を吸い込む。
 ならば、

「目指すは、最適経路の最短走破……!」
 
―――――――――ドガァ!!!!!!!

 キュッと左脚を後ろに下げて、零距離での発頸。廃材が、吹き飛んだ。
「「「「「うおおおおお!?!?!?!?!?」」」」」
 たまらないのは後方に控えていた男達だ。いきなり自分たちの進路の前をふさいでいた汚染された廃材の山が爆発して、しかもそれが自分たちの上空から降り注ぐのだ。
 あわや、下敷きになるかと身構える男達の予想に反して、それらが降り注ぐことはなかった。
 |聖祓天「マグ・メル」《ナターシャの召喚した天使達》が、それら廃材を上空で受け止めて、払っているのだ。
「さぁ、往きましょう。いける人々よ……!」
 そう言って、|機械仕掛けの聖人《CyberAngel》は微笑みかける。

「「「「い、いくぞ!!!うおおおおお!!!!!!」」」」
 その笑みに気圧されたのか、はたまた力をもらったのか、男達もまた、雄たけびを上げて進みゆく。
「負担をおかけしますが、立ち止まる暇はございませんよ!!!」 
 それを先導するように、雪音が声をかけた。


―――ドガァ!!!ズガァ!!!!!

 このチームが、一番派手であった。雪音がガラクタを壊し、そこを男達が通り抜け、ナターシャが後ろからついてゆく。
 他のチームとはまったく別の方法論で進むからこそ、最も早く門に近づき、しかも他のチームとの囮ともなり得る。
 門は、もうすぐそこだった。
「ッ…‥!」
 そうして最後のガラクタを雪音が蹴り破った瞬間、挨拶とばかりに機銃が掃射される。
 狙いを定めさせないように後退してもなお、動態検知を行うそれの追撃は正確だ。だからこそ、
「今です!」
 ナターシャの張った天使の防壁が雪音を守り、男達の粗悪な銃から放たれた無数の弾が、機銃を破壊する。
 その瞬間、アラートが鳴った。

――緊急事態!緊急事態!!!!現在、あなた達は桜花繊維重化学工業の敷地内に立ち入ろうとしています!――

――これ以上の侵入が確認された場合、命の安全は保障しかねます。速やかに、退去してください――
 
 応える二人に、男達ではなかった。一歩、進み出る。
 

――さらなる侵入を感知。実力行使を行います――
 言葉と共に、侵入者を排除するための機構が降り立つ。この障害をはねのけて、工場へと入り込み、『真実』を得よう!!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・レジスタンスが生存しました!次のリプレイにボーナスが入ります!また、次のプレイングにて、【レジスタンスの男達を指揮する事で戦闘を行うといったプレイングも可能です!】

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『重装型頭脳戦車『タヂカラオ』』

POW   :    絶対防御形態『イワト・ディフェンス』
全身を【絶対防御形態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    三兵器『サンゴッド・ウェポン』
【超電磁砲『ムラクモ』】【ガトリング砲『ヤサカニ』】【エネルギーシールド『フツカガミ』】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    小型頭脳戦車『スクナビコ』
レベル×5体の、小型の戦闘用【頭脳戦車『スクナビコ』】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:V-7

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は仇死原・アンナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

プロトコレンス・ワクチンゲール
全身不随と見受けられます。大切なのは初動、本格的な施術の前に麻酔を施し、お味方の行動に繋げましょう。では右手をあげてください。ホールドアップとも。
ちなみにこれは行動を強制させる旨ゆえ、攻撃の意志はありません。あくまでこれは医療的処置と心得てくだされば、目一杯の麻酔でごゆるりとお眠りください。ウイルスのように浸透し、抵抗力を削ぎますゆえ。
ではお大事に。情報があれば診料代わりにいただいて参りましょう。


エルネスト・ポラリス
アドリブ連携◎

あれが門番の頭脳戦車……随伴機も居るというのが地味に厄介ですね。
とはいえ、此処まで来てレジスタンスに危ないから下がってくれと言うつもりもありません……彼らが戦う為の舞台は用意しますよ。

真の姿を開放、大きな機械狼の姿に変じます。
そして、更にユーベルコード。骨の装甲を纏いより強く、大きな身体になり、背中に生やした骨の腕で『足場』と『防壁』を作ります。
この骨の腕での【武器受け】で、レジスタンスたちを【かばう】のです。

古代で戦に使われた戦象の気分ですね。
私は象より大きく強いし、乗ってる兵が扱うのは弓ではなく銃ですけれども。
相手の防御は堅そうですが、使用中は機動力が殺される諸刃の刃。
レジスタンスたちに継続して撃ち込んでもらって足を止めてもらいつつ、私は巨大化した身体で随伴機をなぎ払い、戦場の有利を得ていきましょう。

工場に侵入した時は一応生きた人間が居ないか探しましょうか。
私の人狼としての嗅覚(【野生の勘】)が働いてくれればいいのですが……ある程度探したら、工場を壊して脱出ですね!


桐原・剛将
セリフ創作歓迎
基本エセ関西弁
一人称は俺

「はっ、頭脳戦車もキャバリアと似たようなもんやんけ」
半分強気半分は自己暗示。
生身でキャバリアと戦闘する騎甲猟兵にとって一戦は常に死と隣り合わせである。なんせ掠っただけでこちらは肉片になるのだ。
だからこそ【折れぬ心】が発動する。

「っしゃ、いこか!」
かといって真正面からはいかぬ。ステルスマントで姿をくらまし、グレランからの電磁チャフ、閃光弾で小型戦車を躱し、狙うは機構脳髄ただ一点。
●ロープワークで機体に取り付き、●零距離射撃●捨て身の一撃●怪力●重量攻撃でミームレスランスのパイルを叩きつける。
「しつこい男は嫌われるんやでぇ!」


メアリー・ベスレム
オーバーロードで真の姿
半獣半人の人狼に変身する

欲を抱かない嘲笑わない
血を流さない痛がらない
ああ、なんてつまらない!
だけれど、それも仕方ない
だって、アレはただの障害物
誰の復讐相手でもないんだもの

|血《やまい》を受け入れて【肉体改造】されたみんな
大なり小なり獣と化して【野生の勘】で戦うけれど
元は素人、それにも限度があるでしょう?

だったら、メアリはどうするべきかしら?
彼らを庇いながら戦ってあげるべき?
拙い爪牙が届くのを見守ってあげるべき?

いいえ、それじゃ|お茶会《ふくしゅう》に遅刻しちゃう!
だからね、メアリは敢えて彼らを囮に使う
きっと、優しい他の|猟兵《だれか》が守ってくれるでしょうから

【目立たない】よう小さくなって
敵が他のみんなに気を取られて(って機械相手でも言うのかしら? おかしいったら!)いる間に
敵に取り付いて、その装甲の内側へと潜り込み
【鎧無視攻撃】引っ掻き回してあげるから!

……さあ、戦い終われば本番はここからね?
いったいどんな悪趣味な|犠牲者《アリス》と不思議の国が待っているのかしら


シズル・ゴッズフォート
なんとか、無事に辿り着けましたか
ワクチンゲール殿の治療には感謝せねばなりませんね……

契約通り、レジスタンスの皆様にはUCで手助けを
……『真実』を知るために立ち上がった貴方達ならば、この魔技も力を貸してくれるでしょう
しかし、過信は厳禁。嘗て教練を施した事のあった若者達と違い、彼らに戦場の心得はありません
前衛は此方が対応し、彼らには遮蔽物への退避とその場からの銃撃や投擲等、遠隔攻撃を担当して貰うのが安全とは思いますが……さて。従って頂けるかどうか次第でしょうか

どちらであれ、私のやることは変わりません
彼らに砲火が向かわぬように我が身で敵の目を引きつけ、武装を優先して叩く
それだけです


ナターシャ・フォーサイス
貴方が此処の門番なのですね。
されど、貴方もまた過去から蘇りし哀れな魂ならば……使徒として、すべきことは変わりません。
その責を此処で終わらせ、楽園へと導きましょう。

数で押すならば、こちらもまた数で当たるのみ。
【召喚術】にて天使達を召喚し、スクナビコへの備えとします。
同時に【結界術】【オーラ防御】による防御結界を展開し、人々を護りましょう。
準備が整ったら…今こそ真の姿、機械の大天使となります。
UCを発動して皆様へ吸収の加護を授け、天使達をさらに増やして共闘させます。
天使達には【範囲攻撃】の聖なる光で攻撃、あるいは盾として動くよう命じましょう。
個が弱くとも、それは個であるならば。
反射の加護に吸収の加護。
天使達に防御結界。
数を重ね、天秤を傾けるのです。

最後は、天使達と共に【高速詠唱】【多重詠唱】で紡いだ【全力魔法】の聖なる光を束ね、【レーザー射撃】のようにして放ちましょう。

……そう言えば。
貴方がたはこの後、行く宛はあるのでしょうか。
もし、無いのならば。
我らと共に来るのも、ひとつやもしれませんね。


月白・雪音
…恐らくはこの工場とて組織の中では末梢、数ある枝葉の一つに過ぎぬのでしょう。
されど、此処に居る彼らは自らの縁者の行く末を、決して吉とはなり得ぬと知りながらそれでも突き止めんと覚悟を以て、我らを信じ此処まで共に進んで下さりました。

故に力を尽くさぬ理由は無し。
その想いに、決意に。此度はこちらが応えねばなりません。


UC発動、怪力、グラップルによる無手格闘にて戦闘展開
残像にて肉薄しつつ見切り、野生の勘で敵の行動の起こりを見極め攻撃を感知
アイテム『薄氷帯』の効果にて身体を霊力保護、障壁への物理干渉手段とすると共に避け切れぬ銃弾は正面から受ける事は避け弾く或いは逸らす
電磁砲は砲塔に攻撃を加える事で逸らすと共に部位破壊にて最優先で破壊を
可能であれば機甲の構造知識に明るい男に助言を求めつつ戦車内の情報データを極力破損させる事なく撃破を狙う


…自動化された工場内に残る僅かな人間、何らかの権限とそれに伴う情報を有している可能性も在ります。
施設破壊前に捕虜として捕え…、その後の対応は彼らに任せると致しましょう。



 降り立った頭脳戦車、重装型『タヂカラオ』、軍ぐから払い下げられたその機体は、桜花繊維重化学工業の所属であると分かるように、ある程度変更が加わっていた。外装は白く塗装され、桜花繊維重化学工業の桜色の社章がプリントされてる。
 下層の、更に重篤な汚染区域の奥に存在する工場だ。本来であればこの場所に侵入し、わざわざ襲撃をかけるような存在など存在しなかったため、払い下げられた『彼』にとっても桜花繊維重化学工業に所属してから初の実戦であると言えた。
 己の存在意義を証明できる機会に恵まれたが故だろうか、機体下部に備え付けられたレドームが、勇ましく赤く回転し、光を放つ。

―――これから行われる行為については、完全に合法です―――
 
 丸まった機体が、四肢を広げて立ち上がる。全高3メートルはあるだろう巨体が立ち上がれば、さしもの、復讐心に動かされているとは単なる下層労働者等であった男達も気圧される。

「参ります」
「お気をつけて」
 対照的なのは、彼らを率いた少女と女性だった。
 月白・雪音が一歩、二歩と前に出て、ナターシャ・フォーサイスがレジスタンスを、男達を守るように一歩前へ出た。



―――対象を、『優良健康個体』と認定―――

 一歩前に出たからこそだろう。少女の体を、本人が認識できない方法で無遠慮にスキャンした頭脳戦車が、アナウンスを行う。
 その音声に、少女はまたか、とわずかな苦笑を得た。
「…恐らくはこの工場とて組織の中では末梢、数ある枝葉の一つに過ぎぬのでしょう」
 右半身になり、グッと体に力を入れる。これはあくまで対処療法に過ぎないのだろう。

―――|捕獲プロトコロル《・・・・・・・・》を開始します……現在一番弊社防衛兵器に近づいている個体は、当社基準で保護すべき優良健康個体です。投降し、個体の身柄を弊社に提供した場合のみ、侵入者の|皆様方《・・・》の安全は保障し、また金品の提供も可能です。
繰り返します―――
 機械の繰り出す無機質な言葉に、雪音は感じ入るように瞳を閉じた。ああ、すぐ後ろで、今しがた頭脳戦車に気圧されていた筈の男達の圧が高まってゆくのを感じる。
「されど、此処に居る彼らは自らの縁者の行く末を、決して吉とはなり得ぬと知りながらそれでも突き止めんと覚悟を以て、我らを信じ此処まで共に進んで下さりました」
 その男達の覚悟を冒涜するような言動、少女とて見過ごせぬ。
 故に、
「……!」
 体は、矢のように放たれた。

「まずは一手」
 縮地。獣の左足が、しなやかな脚にみっちりと蓄えられたそれが、収縮し、それを余すところなく使った推進力が、埒外の速さで雪音をかっ飛ばし、戦車の前方右側の脚へと、破壊の力として叩きつけられる。
 それが開戦の合図だった。

(……!?硬、いや?柔らか、い?)
 その感触雪音は一瞬戸惑った。己はたしかに鋼鉄の装甲を殴りつけた筈なのに、帰ってくる感触は柔らかく、なにかを砕いたような手ごたえも無い。
 眼前を見れば、なにやら青く薄い膜に己の拳が止められているのが見て取れる。
「これ、は?」
「雪音さん!エネルギーシールドが張られてます!一旦下がって!」
 焦ったようなナターシャの声。さらには隙アリと言わんばかりに、オプション装備らしいテーザー銃の弾頭部分が発射され、雪音を捉えた。幸いそれ自体は《薄氷帯》にて弾かれ、雪音の意識に生まれた一瞬の空白も埋まる。
 弾かれたように後ろに下がると、あくまで捕獲したいのだろう。
 【| 三兵器《サンゴッド・ウェポン》 】の内の一つ、極限まで出力を落とした超電磁砲、ムラクモが雪音を追う。
 
「まずは、あの透明な壁を破らねばなりませんか」
 翻弄するように戦車の周囲を回りながら、雪音はそう独り言ちた。
「でもどうやって……」
 状況は、目まぐるしく変わる。超電磁砲でとらえられなければ、次の手段だと言わんばかりに、閉ざされた工場の門の上空から、まるで蜂のように無数のドローンが射出された。
 そしてドローンが、小さな『タヂカラヲ』を投下してゆく。【|小型頭脳戦車《スクナビコ》】だ。
 わらわらと襲い掛かってくるそれに、応戦するのは何も雪音ばかりではない。

「お前ら!!!あの子を助けるんだ!!」
「「「おおおおー--!!!!」」」
 鬨の声をあげて、レジスタンスの男達も戦闘に加わる。

「撃て撃て!!!」
 どうにか雪音への注意を逸らさせようと、男達が小型の頭脳戦車へと向かって射撃を行う。当然、所詮はジャンクから作った粗悪な銃。それなのにどういう訳か、
「よし、効いてるぞ……!」
 降り立った無数の小型戦車に着弾した銃弾は、たしかに敵を穿ち、小型戦車を撃破してゆく。
 一歩前に出て射撃を行う男達の中央に立つのは、祈りの形に手を組んでいるナターシャだ。上空に召喚した|天使達《聖祓天「マグ・メル」》が、男達へと加護を与え、それが粗悪な銃にも一定の効果を付与していたのだ。
 小型戦車の砲撃が男達を襲い、天使の加護による障壁が、それをはじき返し、代わりと言わんばかりに銃撃が小型戦車たちへと遅いかかる。
 たしかにレジスタンスたちの攻撃は小型戦車を破壊していたが、それでもここは敵地。さらには生産拠点たる工場のすぐ目の前、無尽蔵に降り注ぐ小型戦車の前に、数を減らせどすぐに補充される現状、押し返しているとはいいがたかった。
 
 それでも、低出力の電撃だけを放つタヂカラヲのレールガンを避けている雪音にとって、小型戦車を相手してくれている以上、それに注力できるのはありがたかった。
 しかし、
「助かります……が、この不可視の壁を破らない事には」
 エネルギーシールドを破る手は、まだ見えない。
「ナターシャ様!」
 そういう事に詳しいであろうナターシャに雪音が話を振れば、
「流石に現状、守りながらでは……!」
 マグ・メルが直接取りついてエネルギーシールド越しにクラックすれば話は別だろうが、流石に天使達をレジスタンスの守りに就かせている以上、そこまでの余裕がある訳でもなかった。
「くっ……どなたか、絡繰りに詳しい方は……!」
 ならばと、レジスタンス達にも声をかける。機甲の構造知識に詳しいものが誰かしらいないかとの思いであった。
「おるで!!!」
 一人、年若い男が鋭く声をあげる。そのまま、固まって射撃していた男の集団から、一歩、いや二歩。三歩踏み出した。
 そこは既に天使の加護の外だ。

「危ない!」
 思わず、ナターシャが声をあげる。たしかにレジスタンスの男達の心意気は買うものではあるが、それはそれとして、彼らが猟兵達の力なしに戦えないのもまた厳然たる事実だ。
 ナターシャの天使たちの貼る障壁の外に出てしまえば、そこはもはや、死地である。
「ッ!」
 己に照準を合わせるタヂカラヲすら無視して、無謀にも一歩前へと出た男を救おうと、無理やり後方へと体を伸ばそうと雪音が体を捻った瞬間、
「へへ!!心配ご無用やで!!!」
 小型戦車の群れが己へと照準を合わせたヒリつくようなヒリつく死の感覚を笑い飛ばして、男は、少年は、桐原・剛将は、<ステルスマント>を起動させた。

「「!?」」
 雪音とナターシャの二人とも、いきなり消えた青年に驚きの感情を覚える。小型戦車と観測機能を共有するタヂカラヲも、戦闘能力のないレジスタンスがいきなり己の感覚器官から消失した事実に、戦力評価を改めたのだろう。雪音への攻撃が一瞬止んだ。その隙に雪音が照準を回避。改めてタヂカラヲに向き直れば、
「ほんま図体ばっかりデカいノロマやな我ぇ!!!」
 叫びと共に、小型戦車の一部が何かに引っ張られるように態勢を崩してゆく。
 それがどんどんタヂカラヲに近づき、ついには、
「っしゃ、いこか!」
 少年の声が、エネルギーシールドの手前から聞こえた。ステルスマントとエネルギーシールドがバチバチと干渉して、再び少年の姿が露わになる。
 そこには、本来人の身では操るには不相応に巨大な対キャバリアライフル、<KWA-LS800PD ミームレス・ランス>を抱えて、エネルギーシールドに宛がう剛将の姿があった。
 事ここに至って、雪音とナターシャも悟る。
「「猟兵(なの)ですか!?」」

「そうやで!木を隠すには森の中ってなぁ!!別嬪さんら、俺の名前は桐原・剛将や!覚えとき!」
 驚きの声をあげる美女二人の反応に、少年もご満悦だ。
(そうや。別嬪さんが二人も見とるねんで。失敗は、許されん)
 <TDOL製B式強化服スパルタクス>はたしかに力を発揮して、対キャバリアライフルを支えている。後は引き金を引くだけだ。
 零距離射撃ならば、確実にこの戦車のエネルギーシールドを貫けるだろう。しかしそれは相手もまたこちらを狙っているという事で。
(ハハッ!勝負やデカブツ!)
 レールガンは、懐に入られて使えない。だから小回りの効く重機関砲が剛将に狙いを定める。
 電子的なトリガーと、物理的なトリガー。当然早いのは前者で。
(そんなん解っとるわ。バーカ)
 |折れぬ心《ドーントレス》が奮い立つ。デンジマントとシールドが干渉して姿が露わになる一瞬前、既にピンを開けて地面に放っていた電磁チャフが爆発した。
 電子トリガーが『消失』し、この一瞬だけ、物理トリガーが勝つ。


―――BANG!!!!!!!!―――

 トリガーが引かれ、雷管を叩き、炸薬が破裂し、バンカーがシールドにぶち込まれる。一瞬でシールドが破られた。
「うおっ!」
 反動で、思わず剛将も蹈鞴を踏む。
「踏ん張ってください」
「合点!」
 そこに、静かな声が響いた。その声に、男の矜持を見せて剛将が地面に踏みとどまった。
「ぐえっ!?」
 剛将の体に移動式のワイヤーアンカー、<氷柱芯>が巻き付く。振り子の要領で、剛将を中心点にして、雪音が大きく弧を描いてタヂカラヲに接敵する。アンカーから手を離して、頭脳戦車の真下に五点設地。
 両手両足を地につけて低い姿勢。まさに獣の如く。
「どこを、壊せばよいですか?」
「光ってるやつや!蹴り壊してこっちに渡してくれ!」
 返答は、行動で行われた。

 まず一撃目。

―――腰を右に捻っての変則後ろ右足蹴り。鎌のように鋭いそれは、たしかに機体下部に存在したレドームを蹴り壊して、その本体を剛将の方へと吹っ飛ばした。

 そして、二撃目。

―――伸びあがった右足が、蹴り上げた以上の力強さとスピードを以て、うつぶせになった体の前面へと収納される。その勢いを利用して、ブレイクダンスの要領で左回転で体を仰向けにさせて、両手を使って倒立に移行。両足をたわめ、一瞬の静寂。手が、腹筋が、腿の筋肉がググっと力を蓄え、次の瞬間、

―――ドガァ!!!!!!!!!ベキベキベキベキ!!!!!!!!

 倒立の要領で蓄えた力が解放された。両足が伸びあがり、重装型頭脳戦車の底面装甲に突き刺さる。本来であれば、彼我の重量差を考えればあり得ない事ではあるが、UCの力か、その瞬間、たしかにタヂカラヲは、『浮いた』。

 すぐさま、戦車の下から再び両手の力を使い離脱。たしかに重篤なダメージを追った戦車は、四肢の力を失い、地面に落ちた。
 あのまま下にいたままでは、雪音も潰されていただろう。
「やりましたか」
「それは言うたらあかんやつやろ!?」
 静かな雪音の声にすかさず剛将がツッコミを入れれば、なるほどたしかにその通りだったらしい。タヂカラヲがアラートからアラートが流れた。


―――重篤なダメージを感知。当機はこれより侵入者排除モードから、拠点防衛モードに移行します―――

―――……【|絶対防御形態《イワト・ディフェンス》】、起動。合わせて、|桜花繊維重化学工業本社への支援要請を行います《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》……―――


「まずいッ!」
 不利を悟ったタヂカラヲがまさしく岩戸に籠るが如く、その四肢を丸めて絶対防御態勢を取る様子を見て、ナターシャが焦った声をあげる。
「もし本社からの増援が来てしまえば、私達は兎も角、レジスタンスの方々は……」
 増援が到着した時点で、工場の襲撃は失敗だろう。いくら何でもこの数で|巨大企業群《メガコーポ》が本腰を入れてきた物量を捌ききるのは困難だ。それでも猟兵達なら逃げる事は出来るだろうが、レジスタンス達は壊滅必至。
「どうすればいいですか?」
 静かに雪音が問いかける。
「……一刻も早く戦車を撃破して、工場を占拠。支援要請を撤回させればあるいは……」
 さしもの聖女の頬にも汗が伝う。
 
 何せ、
―――スクナビコ、重点生産開始―――

 タヂカラヲからアナウンスが流れる。これまで製品を生産していたレーンすら小型戦車を作り出すラインへと一時的に変更して、工場がその全てをかけてスクナビコを生産する。
 ただでさえ多かった小型戦車の群れが、更に倍。いや三倍にもなって猟兵達の前に現れた。まるでタヂカラヲを守るかのように表れたそれら。
「おうおう数ばっかり増やしよってからに……!」
 今までの数でやっとレジスタンス達も使って拮抗してたのだ。それがこんなに数を増やされては。さしもの剛将の方にも汗が伝った。

「おい……この数」
「流石にやばくないか……」
 猟兵達の焦りが男達にも伝わる。こちらが先ほどまで有利だったからこそ、動揺は広がり、数瞬後の破滅を予感させた。

 降り立ったスクナビコと、レジスタンスと猟兵達の間に、わずかな静寂が訪れる。動きはない。
 キュインと甲高い音がして、スクナビコ達から照準のレーザー光が発されて、それぞれ、レジスタンス達を照準する。

「ヒッ……」
 その光を浴びて、誰かが怯懦の叫び声をあげようとしたその瞬間……



「お待たせしました!!!!!!!」
 巨大な狼がやってきて、戦場のスクナビコ達を蹴散らした!!!




「これは、どういう状況でしょう!?」
 狼のまま、エルネスト・ポラリスは鋭い声をあげた。ソリには、汚染地帯を駆け抜けてきて、グロッキーになっているレジスタンス達。
「あっ……わっ!?……『生けるものが道半ばで倒れぬよう、導くこともまた使徒の責。ならば、彼らが倒れぬよう加護を与えましょう』!【|召喚:楽園の奇跡《サモン・グロリア》】!!ともかく、一刻も早くタヂカラヲを撃破する必要があります!」
 突然の乱入者に一瞬気を取られたナターシャが、すぐさま気を取り直して、エルネストの連れてきた男達を治癒の力を使い回復させ、最低限の説明をする。
「どうやら、戦うための舞台はあるようですね。皆さん!」
 巨狼が声をあげる。そして、遠吠え。
 瞬間、

――――メキ、メキメキ、バキ!!!―――
 
 雄々しく、ふさふさとした毛並みを持った狼が、真の姿を顕した。

「「「「「う!?おお!?なんだぁ!」」」」
 その変身には、さしもの今までそりで運ばれていた男達も驚きの声をあげた。
 これが、エルネスト・ポラリスの、人狼病患者としての真の姿。【|髑髏狼《スクレット》】。赤銅色の奇械狼は、ガチャガチャ、ギチギチと、飛び出した圧縮狼骨を身に纏い、ただでさえ大きかったその体を、より一層巨大化させる。
 さらには丁度背骨の上部。もしも彼が馬であったとするなら、丁度鞍を乗せる事ができるだろう辺りに不格好なら骨で作られた櫓が出来上て、
「皆さん、乗ってください!!!」
 狼が伏せれば、丁度櫓の床が、ソリの床と同じになる。
 男達が少しの躊躇の後、乗り込めば、
「行きますよ!気を逸らさせてください!」
 遠吠え一つ、戦場を狼が蹂躙し始めた。


「ハハッ!えろうかっこがええなぁ!!!」
「ええ、そうですね」
 少年は楽しそうに、女性は獣の暴れるその姿に思う所があるのか、ナターシャの加護を受けた自分たちのレジスタンスの援助を受けて、こちらもスクナビコを撃破してゆく。
 工場の全ての生産能力を注ぎ込んで大量生産されたスクナビコの軍勢は、それでもまだまだ健在で、現状はなんとか拮抗しているという状況であった。
 先日手。
 しかし、
(間に合わなければ、この波に押し敗けていた……)
 なればこそ、己と彼らがこの戦場に間に合った意味もあるだろうと、エルネストは奇械の雄たけびをあげてその鋭い爪を駆使してスクナビコを薙ぎ払ってゆく。
 ともすればタヂカラヲよりも巨大な体は、よく目立つ。薙ぎ払ってなお、その巨体を攻略せんとわらわら、わらわらとスクナビコがエルネストの脚に集まって、よじ登ろうとしてくる。
 それを抑えるのは不格好な櫓に上った男達だ。
「「「う、うおおおおおお!!!!!撃ち落とせ!!!!」」」
 パンッパンッ!パンッパンッ!と乾いた音が響く。エルネストの機動力ゆえにナターシャの加護を受けられない男達の攻撃は、スクナビコすら撃破する事は出来ない。
 それでもエルネストの体に上ってくる不快な『蟲』をはたき落とす事は可能で、エルネストにとってはそれこそが重要だった。
(まるで、戦象のようですね)
 実際、男達の握っている武器が銃ではなく弓であれば、まさしくその通りといった風情だ。
(実際の所、私は象より大きく強いですが)
 奇械狼が、そうと知れずに笑みを浮かべる。
(とはいえ、このままでは先日手なのは事実)
 どういった事情かは分からないが、雪音に剛将、ナターシャと言った先に到着していた猟兵達は、一刻もはやくタヂカラヲを撃破せんと必死の形相だ。
(ならば、ここはリスクを取るべきかもしれませんね)
「皆さん!しっかり捕まっていてください!」
 インターバル。状況は拮抗しておりながらも、相手にも小型戦車を生産するローテーションの関係上、わずかに圧力が下がる場面がある。
 どうやら防御態勢を取っている本体は先ほどからずっと攻撃してこない。ならば今この瞬間、一番機動力を持つ自分こそが、大きく踏み込むべきだ。
 赤銅色の巨狼が、一瞬攻勢が弱まるその瞬間、一気に飛び上がった。
 右前腕を大きく振りかぶりながら宙を舞う。
 その瞬間、


―――<超電磁砲『ムラクモ』> オーバーロード―――
「まさか!?」
 その瞬間を待っていたのは、何もエルネストだけではなかった。瞬間、タヂカラヲが先ほどまであくまで雪音を捕えるために最低出力でしか放っていなかった超電磁砲、それを壊れんばかりの出力でエルネストへと放った。
(まずい……!)
 どうにか体を捻って回避せんとするも、電磁パルスによって灼熱した砲門はエルネストをしかと捉えていた。
(私だけなら、どうにかなる)
 すでに態勢が崩れてしまった以上、相手にダメージは小さなものとなるだろう。
 それでも、このまま振りぬけば、エルネストも相応にダメージを喰らいながらも相手にダメージを与えられる。
 しかしそれによってもたらされる結果は、
(レジスタンスの方々の死……!)
 レールガンによる熱量は、男達を溶かしすらするだろう。
 ならば、もっと体を捻るか?しかしそうしてもレジスタンスは……
 エルネストの内心を、冷たくも熱い汗と逡巡が伝う。
 わずか一瞬。
 その迷いを破ったのは、

「そのまま、振りぬいてください!!!!『さぁ!!!真実を知るために立ち上がった者達よ!その真なる心を以て、立ち上がり、金剛不壊の決意を示すのです!!!!』」
 

―――【|神塞流陸殲術・灯の型 星輝昂祐《ライク・ア・スターゲイザー》】ァァァァ!!!!!!―――
そして、
―――【|来たれ我が楯、我が証。万難を排す陣を此処に《インスタントイミテイト・ゴッズフォート》―――
 
 後方から響いた騎士の声であった。

「ぐッ……!!!おおおおおお!!!!!!」
 電磁投射砲より、加重加速によりもはや熱戦とすら表現できる弾体が放たれた。エルネストへの直撃コース。
 それが、エルネストの眼前に顕現した『半透明でその表面に蝶と彼岸花が刻印された巨大なカイトシールド』によって逸らさせた。
 ならば、恐れる事は何もない。
 裂帛の気合いを叫び、不自由な態勢のまま、

―――ズガン!!!!―――
 
 奇械狼が爪を振るい、絶対防御の態勢を取っていた、頭脳戦車の、四脚の内の一つを切り飛ばした!

 そのまますれ違うように門の近くに、奇械狼が倒れ込む。たしかにダメージを受けたとはいえ、まだ完全破壊されていない。
 容赦なくスクナビコ達がエルネストへと襲い掛かる。まるで復讐のように襲い掛かるそれらをどうにか櫓から脱落しなかったレジスタンスの男達が銃撃で牽制しているが、門に近づいたからこそスクナビコの群れはより勢いを増して、だからこそエルネストはその対処にかかりきりになる。
 つまり膠着状態が崩れた。
 エルネストの分、穴が空いて、その穴を埋めるように、
「行きますよ!!!皆さん!!!!!」
 シズル・ゴッズフォートを先頭として、燐光を放つレジスタンスの男達が切り込んでいった!!!

 シズルのUCによって強化された男達の銃撃は、たしかにナターシャの加護を受けた男達どうよう、スクナビコを打ち倒すことができた。
(しかし、それでも彼らは素人)
 ゆえにあくまで彼らができるのは銃を撃つことだけ。さらにはできるなら隠れる事の出来る遮蔽物があるならより望ましい。
 そしてをシズルは用意する事ができた。
(まず自分が戦闘に立つことで注意を集め……)
 その後ろを男達についてこさせる。当然、遮蔽物を作ってだ。そう、シズルの連れてきた男達一人一人に、【|来たれ我が楯、我が証。万難を排す陣を此処に《インスタントイミテイト・ゴッズフォート》】による大盾を付ける事で、対処する。
(これなら、彼らでも戦う事は可能……!)
 とはいえ、念動を駆使して動かす盾なのだ。それぞれの男達の遮蔽になるように個々の盾を念動で動かし、進軍するのはいくらシズルとて難しかった。
 今はとりあえず、態勢を整えて門の前で迫り来るスクナビコを撃破しながら再びタヂカラヲへと襲い掛からんとするエルネストの空いた穴を埋める代わりとして、男達と共に迫り来る小型頭脳戦車の瀑布を捌いていた。
 何より、
(頼みましたよ。ワクチンゲール殿……!)
 シズルは、1人で来たのではないのだ。



「ははは!こりゃ凄いで!!!いけるんとちゃうか!?」
 新たに加勢してきた猟兵達の心強さに、剛将がスクナビコを撃破しつつ、楽しそうに笑い声をあげた。
「ええ、たしかに現状は安定しいますが、これでは……!」
 剛将の隣でこちらもまたスクナビコを撃破して前へと進む雪音がわずかに表情を曇らせる。たしかに状況は先ほどより好転している。先ほどの千日手の状態ではなく、偶然にも門の近くに居座る事で敵を減らしてくれるエルネストと、新たに加わったシズルのお陰で、じりじり、じりじりと、スクナビコの攻勢を押しのけて自分たちはタヂカラヲの方に近づいていっている。
 それでもたしかな事実として、自分たちは未だタヂカラヲの撃破には至っていない。時間は、自分たちに味方しないのだ。
 桜花繊維重化学工業の援軍が到着するまで、あとどれほどの時間がかかるだろうか。
 雪音の額に、焦りがにじみ出た。


「心拍数が平常とはいいがたいですね。もちろん、戦闘状態であれば心拍数はあがるものですが、それとは別に何か焦りが見られる。どうされましたか?」
 いきなり、雪音の隣に褐色肌で前髪で目を隠したナース服の女性が現れた。プロトコレンス・ワクチンゲールだ。
「おわぁ!?またいきなり出てきよったなアンタ!?」
「ッ!」
 まるで今この瞬間横に現れたかのような不自然な登場に、さしもの剛将は驚きの声をあげ、雪音の尻尾が逆立った。
「そう驚かないでください。上から来ました」
 どうやら医療戦闘機に乗って、タヂカラヲへと向かって言っている二人の隣に降りたらしい。状況診断であった。
 迫り来る無数のスクナビコを撃破してゆく二人に、自身も医療ノコギリを駆使して加勢しながら、状況を確認してゆく。
「つまりは、出来るだけ早いタヂカラヲの撃破が望ましい、と」
「はい」
 ならば、と眼前を見やる。雪音とエルネストの攻撃で、半壊状態のそれ。けれども未だ絶対防御態勢を取ったそれは堅牢のようで、ならばまずはその守りを崩す必要があるようだった。

「麻酔を投与しましょう」
 唐突にワクチンゲールはそう提案した。
「とはいえ、この距離から投与するにも……お二人とも、何か無線でも有線でもいいですが、あの|戦車《患者》に接続できそうなものはありますか?まず近寄れていない現状がありますから、無線が望ましいですが」
 医療ノコギリでスクナビコを真っ二つにしながら、ナースが二人に聞いた。
「ほら、コイツどうぞ。機体下部にあったレドームの残骸やで」
 それを聞くなり、剛将が先ほど手に入れた残骸を差し出す。
「……準備がいいですね」
 普段から冷静なナースとて、その手際のよさには思わず驚きの声をあげた。
「へへへっ!手癖悪いんは生まれつきですまんけどな?」
 ニヤリ、少年が笑って返す。その横で、ワクチンゲールが手に持ったそれに意識を向ける。なるほど、毀れているとはいえ、I/Oはまだ生きている。ならば、この残骸から、『情報』を流す事は可能で、
「では、治療を開始します……『はい。痛かったら左手上げてください』」
 ワクチンゲールが、クールでしかし、どこか気の抜けたような言葉を発した瞬間。


―――ドガ!―――

 タヂカラヲが、『左前腕部をあげて、バランスを崩し地面に突っ伏した』。
「『施術完了。絶対安静です』」
 ワクチンゲールの、【|処理落ち《アジリティロック》】だ。あくまで攻撃ではなく、医療行為という事で相手の絶対防御のロジックを崩したそれが、タヂカラヲの処理能力を奪ってゆく。
 当然、攻撃ではないので撃破する事はできないが、それでもタヂカラヲの処理能力が下がってゆくという事はつまり、

―――ギ、ギギギギ―――

 重装頭脳戦車から、異音が上がる。スクナヒコを生産しているのは工場の方だが、そのスクナヒコに指令をだしているのはタヂカラヲである。
 その瞬間、小型頭脳戦車の群れの動きが、鈍った。





――――「「「「「「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」」」」――――
 そして戦いは、最終局面に移行する。戦車の群れが鈍ったそこに、目を血走らせて、獣臭い息を吐きながら、半人半狼の群れが戦場に襲来する。
 そう、メアリー・べスレムによって命を永らえさせるために人狼病にあえて冒される事を選んだレジスタンスの男達だった。
「……治療すべき病が、そこにも」
 その様を、不快に見やるワクチンゲールの視線ともう一つ、
(やりやがった……!)
 明らかに理性を失いながらも最低限敵味方の区別はついているらしい血走った瞳の半狼を横目でみながら、内心でエルネストは忸怩たる叫びをあげた。
 苛立ちが、爪の鋭さに反映される。ワクチンゲールの力でスクナビコの攻勢が弱まった事で、エルネストもじりじりとタヂカラヲへと進む余裕ができた。
 たしかに命を救うためには彼らを人狼にするしかなかったのかもしれない。それは許容しよう。
 それにしたって、
(度し難い……!)
 きっと躊躇いなくその行いに及んだ少女の狂気と、自分の中に湧き上がった歓喜に対してだ。
 今現在、獣の体で良かったと思う。もしそうでなければ、笑みの形に歪んだ口元を隠さなければならなかっただろうから。
(どうやって感染させた?ああ、くそ。分からない。それはつまり、|新たな症例《・・・・・》って事じゃないか……!)
 エルネスト・ポラリスは、人狼病の治療の為なら、|なんだってやる《・・・・・・・》のだ。
 愛するものたちのため、狂気に一歩踏み込んだ思いが、男の中で湧き上がる。
(どこだ。どこだメアリー・べスレム)
 暴れまわる人狼達の中に、可愛いらしい少女の姿はない。今この戦場のどこかに、たしかに少女はいる筈なのだ。
 タヂカラヲへと向かいつつ、エルネストの奇械の瞳にもまた、赤錆が浮いていた。



「クスクス……クスクス。ああ、ああ。可愛い可愛い|復讐者《ご同輩》!生まれたばかりの|人狼患者《ご同輩》!優しい|猟兵《だれか》に守って貰えているかしら!それとも!それとも?その|血《やまい》は!|復讐心《やまい》は、ずっとずっと。メアリが思うよりもずぅっと|度し難い《強い》のかしら!」
 まるで胎児のように、少女は、メアリー・べスレムは体を丸めて、なにやら熱く、狭く、苦しい場所で独り言ちた。
 バチバチと電流が走り、機械油の臭いで満たされたそこは、少女が常人であれば一瞬たりともそこにいることなど出来はしない場所。
 けれど猟兵たる彼女はそこに存在する事ができ、狂人たる彼女はそこに存在する意義を見出していた。
「あーあ、つまらない。|欲を抱かない《鳴かない》!|嘲笑わない《啼かない》!|血を流さない《哭かない》!|痛がらない《泣かない》なんて、つまらない!」
 とはいえど、あきれたように呟かれたその言葉もまた少女にとって事実であった。どうせ|復讐《お茶会》なら、|復讐相手《ホスト》はできるだけ、|復讐者《ゲスト》を|満たさねば《楽しませねば》ならない。
 それができないなんて|獲物《ホスト》失格である。
 でもまぁ、
「仕方ないわよね。コレはただの|障害物《物》。誰の復讐相手はないんだもの!」
 なればむしろい、時間をかけるべきではない。さぁ揺籃の時は過ぎ去った、なーんてこんな単純な物語に大仰な言葉も馬鹿らしい。
 少女が大きく伸びを一つ。
「大きなあなた、【|私を飲んで《ドリンクミー》】?なんて聞かないわ。だってあなたの|装甲《ドア》は、勝手に|雪音《誰か》に|破壊された《開けられっぱなし》!|隙がある《フリーパス》なのが悪いのよ!」
「ここに月はないけれど、|心《ここ》に|復讐心《月》なら|存在する《輝いている》わ!!それはメアリのモノではないけれど、見上げて目が真っ赤になるのなら、なんだって、どこだってきっと一緒!」


―――さぁ、|殺戮劇《Tea Party》を、始めましょう?―――



―――Hoooooooooooooooooooooooowl♥♥♥♥♥!!!!!!!!!―――

 艶を含んだ狼少女の遠吠えが、タヂカラヲの中から響いた。そう、メアリは己のUCを以て体を小さくして、自身が連れてきた人狼病患者と化した男達を囮に、雪音の作り出した亀裂部分からタヂカラヲの中に入り込んだのだ。
 叫びと共に、|ヴォーパルの獣《ヴォーパルビースト》が顕現する。
 蒼銀の髪に獣の耳が顕れて、四肢もまた獣のそれへと変じる。そうしたならば蹂躙劇だ。あたりかまわず、配線装甲をひっつかみ、

―――Gau!♥♥―――

 力のままに引っ張る。外側からの攻撃に強い耐性を持つ絶対防御形態とはいえ、中からの衝撃には弱い。少女のされるがままに、装甲が剥がされ、破壊されていった。
 そうしてそのまま『掘り進め』れば、ついには、
「あらぁ!これはこれは、皆さまそろいもそろってこんにちはぁ」
 ついに表面装甲を弾き飛ばし、タヂカラヲの上部から少女の上半身が這い出てくる事になった。まさしく血の雨といったようにオイルの雨も降り注ぐ。 
 丁度赤い色合いのそれは、たしかに少女の体を穢し、まさしく血濡れといった風情を見せていた。
 魂を抜かれたかのように、タヂカラヲの四肢の内、未だ力を持っていた後部の二本からも力が抜けて、タヂカラヲが崩れ落ちる。
 致命的なエラーが発生したらしい。動きが鈍くなっていたスクナビコが、タヂカラヲの統制を失いてんでバラバラの動きを始めた。
「あはぁ♥」
 その様をみて楽しそうに、少女が濃い吐息を吐けば、
「満足しているところ悪いですが離脱しますよ!」
 ひょい、と服の一部を噛み上げられ、すっぽりと体全体がエルネストによってタヂカラヲから引き抜かれた。
「あらあらあら?」
 まるで母犬が子犬を咥えて連れて行くような雑な対応にプラプラと揺らされながら、大人しくメアリはエルネストに従った。
「あらぁ」
 自分を見るその瞳に、今までになかった確かな|獣性《感情》を見出したからだ。欲ではない。もっと冷厳で、それでいてその芯に狂気とすら言える熱いものをもった、|感情《何か》。それがあまりにも好青年ぶっているエルネストに似合わなくて、
「大人は『嘘』が『上手い』のねぇ」
 メアリは嗤った。そんな嘲笑に、
「違いますよ。大人は『真実』の『使い方』が上手いんです」
 エルネストもどこ吹く風だった。



「さぁ、皆さん今一度加護を失礼します!」
 当然、エルネストがメアリーを咥えて離脱したのには訳がある。メアリーがタヂカラヲの内部で暴れてすぐ、不規則な動きになったスクナビコを見て、ナターシャが指示を出したのだ。
(今なら……!)
 一刻も早タヂカラヲを完全に撃破しなければならない。そのために、


―――天秤を、傾けましょう?――

 聖女が、祈りをささげる。彼女の天使たちがレジスタンスの男達を守護するために与えていた加護を、剥奪してゆく。
 それでも大丈夫だ。雪音が引きつけ、剛将が眼をくらまし、ワクチンゲールが癒し、メアリーを咥えたエルネストが蹴散らし、シズルが守る。
 レジスタンスの男達が害される事はない。
 故に、
(全力です……!)
 先ほど、ワクチンゲールが『医療行為』を行った際、工場の地図もタヂカラヲからぶっこぬいたらしい。そこには、この工場のコントロールセンターの位置も記載されていた。
 どうやらタヂカラヲの支援要請はそこを経由して出されたらしい。つまりそこを抑えれば、ひとまず支援要請は解除できるという事だ。さらに工場全体のコントロールも握れる。
 この騒ぎだ、恐らく工場に存在していた少数の人員は既に退避を始めているだろう。彼らが桜花繊維重化学工業と連絡を取れば、結局は工場の状態に気付くだろうが、それまでは擬装信号を送って、少なくとも猟兵達が工場を調べ、また男達が『真実』を知るまでの時間を稼ぐことはできるだろう。
 そのために、
(一撃、一撃でそこまで、穿つ……!)

「パラメーター、設定……」
 |機械聖人《CyberAngel》が、夢想の境地に至る。加熱する演算機関が、魂を0と1の楽園に誘う。忘我の境地の中、宙に浮かぶ天使たちの演算回路も併用しながら、巨大な天使の羽が『仮想』されてゆく。

「諸元、入力」
 ナターシャが仮想顕現した巨大な機械天使の羽を、開く。まるで受け入れるかのように展開したそれへと、

『『『……!』』』
 聖女の使徒たる天使達が最大出力でレーザーを放った。瞬間、天使の羽が赤熱する。まるで血に濡れた羽根のよう。

「共に、参りましょう?」
 赤熱した羽根から、その血の穢れに耐えきれないとばかりに甲高い音がして、機械天使の羽から無数の細かいレーザーがナターシャの眼前に照射され、巨大な太陽を作り出した。
 論理回路が回転する。聖女の瞳の中に、ロックオンマーカーが現れた。
「さぁ、救われるべき生ある者達よ……」
 眼前の敵を見据え、遠くを視る。
「ここに、『楽園への路を啓きましょう』」
 <聖祓器「エリュシオン」>が構えられた。

――【|限定解放:大天使の翼《アンロック・エンジェルウイング》】――

 引き金が、ひかれる。

 音すら存在しない極大の|熱線《レーザー》が、タヂカラヲを貫き、その先、門を円形に溶解させ、さらにその先の工場内すら横切って、コントロールルームへの道を作り出した。

「捕まっていてください!!!」
「任せます」
 
 一瞬の隙も逃さない。あらかじめ作戦を聞かされていたシズルが、ワクチンゲールをバイクに乗せて最速で工場内を駆け抜ける。
 そして、

―――Game Clear!―――
 コントロールルームに付くなりワクチンゲールがコンソールへと触れ、スクナビコを完全停止させ、支援要請を解除した。
 この瞬間をもって、工場は完全制圧されたのだ……!






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 結局のところ、職員たちは逃げた後だった。時間は少ない。それでも、男達にも、猟兵達にもやる事はある。コントロールルームを掌握した以上、その区画を見つけることは、あまりにも容易かった。男達は、ごくりと唾を飲み込み、その扉が開くのをまった。
「……〇〇」
 思わず、男の一人が恋人の名前を呟く。蓮の花のような女だった。肥溜めのような下層にあって、常に笑顔を絶やさず、それどころかいつも元気で、他の誰よりも『健康』だった彼女。
 連れ去られてから、1年は経つ。もはやきっと存在しないであろうことは確実で、それでもの望図には居られなかった。
 だって、工場の記録を見る限りは、彼女はここに連れてこられたのだから。
 そうして扉が開ききる。
 そしてそこには、
「なっ!?」
 
 なにも、なかった。

 いや、|なにもかも、なくなっていた《・・・・・・・・・・・・・》。たしかに何かを培養していたのだろうか、それとも保存していたのだろうか、生体保存用のポットはそこかしこにあって、何やら冷凍して出荷するための箱と、設備もあった。
 けれどどういう訳か、肝心の中身がない。まるで夢のようで……一瞬男達は惚けた。
「お。おい!おい!!おお!!おおおお!!!!!!!」
 けれどそれも、男の一人が部屋の中にあったコンソールを弄って、自分の妻の、眠っているらしい顔写真が載っているデータを見つけて泣き崩れるまでだった。


―――資材ナンバー:O-〇〇××△△ 採取日時:〇〇〇〇年××月△△日。健常部位、左腕―――
―――寄贈者:◇◇鉄鋼 資材調達部部長―――
―――使用する用途:配偶者の方の左手が加齢によりむくんで結婚指輪が入り辛くなったため、どうにかしたい。義体化も考慮したが、汚染対策の義体化は最低限で出来れば生身のままでどうにかしたいとの事―――
―――部長様より資材調達業務における危険活動対策用の義体採用において、来期は弊社義体を採用頂ける旨を確約。来季弊社製品採用の契約書締結済み―――
―――上記契約を理由とした無償提供の稟議を起案。稟議ナンバー:◇◆。●月×日営業部部長権限にて承認―――
―――納品日、〇〇〇〇年◎◎月×△日。免疫抵抗なし。術後経過良好―――
―――なお、資材以外の部位については、資材採取後|廃棄済み《・・・・》―――


「うぐおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
 それを見た途端、男は泣き崩れた。そう、つまりはそう言う事だ。男だけではない。皆が皆、そうなのだ。
 彼らの恋人は、妻は、こういう風に、『消費』されていた。
 そう、【桜花繊維重化学工業が、彼らの理由で健常者と判定した者達を攫って行ったのは、臓器売買|ですらない《・・・・・》、|臓器提供《・・・・》の為だったのだ】……!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ん……?」
 桜花繊維重化学工業、|統括技術開発部情報技術警備対策課《‥‥…………》にて、自身のかわいらしさを|楽しんでいた《……》少女が、情報技術警備対策課課長、アリシア・北条はピクリと眉根をあげた。
 安楽椅子のような、それでいて各部に機械の備わったメカニカルな代物に横たわる少女。
 実の所巨大なワークステーションであるそれとうなじのジャックで接続された電脳のエキスパートたる少女は、下層に存在する生産工場から、データベースのアクセスを認識した。微かな違和感。
(……ああ、凄い)
 桜花繊維重化学工業にて電脳のエキスパートとして情報関係のセキュリティーを任されている少女が何とはなしにそちらに意識を向ければ、何やら、誰かが情報を抜き出そうとしているのが認識できた。
 その手際の見事さと言ったら。その場所が|桜花繊維重化学工業データベース内《こちらのホーム》でなければ、自分ですら気付くことができなかっただろう。
 何よりも興味を引くのが、日々各企業間で電子戦の鎬を削っている自分ですら、|全く見当がつかない《………》方法が使われているらしい事だった。
(あれかな?先日見つけた、面白い連中)
 その情報は、アリシア自身も知る所であった。先日の資源回収業務を妨害した連中の事は、『シスターズ』の中でも話題になっていた。
(『姫のドレス』が見つけっていう、やけに強い連中)
 アリシアは、興味を惹かれるとついつい構いたくなる『北条』だった。
(何より)
 本来ならば、攻性防壁で脳髄を焼いてやる所だが、これほどの|ワクチンゲールとプロトコレンス《手練れ》には、そのような過激な真似をしようとしたら、恐らくこちらが隙をつかれかねない。
 ならばせめて、
(えい♪)
 時間稼ぎだ。マスター権限で
【・工場のコントロールルームで得られる筈だった情報をロックした】
(まぁ、お遊びみたいなものだけれども)
 これで、相手に自分が興味を持っている事に気付いてくれたら嬉しい。
 何より、
(【時間をかければ解除できるだろうね。その時は僕もお相手したいけど】)
 ひとまず【工場が襲撃されたのは、警備部の演習という事にしって一旦本社の救援計画を白紙】にして、少女は微睡に沈みこみ始めた。
(さぁて、どんな人たちがあのロックを解除するんだろ。楽しみだなぁ)


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【Result!!】
・レジスタンスが生き残りました!今後大規模襲撃を行う場合に役立ってくれるでしょう。
・レジスタンスが戦闘を経験しました!どうにか装備の質さえ向上させるか練度をあげることができれば、巨大企業群の私兵とも渡り合う事ができるでしょう。
・レジスタンスが『真実』を知りました。彼らの悲しみは深いですが、だからこそ非常に指揮は高いです。またあなた達に非常に恩を感じています。あなた達の為なら命を投げ捨てる事も厭いません。当MSが行う桜花繊維重化学工業系の依頼において、彼らが参加する必要がある場合、成功度の判定にボーナスをつけます!
・工場を占拠しました!どういう訳か【桜花繊維重化学工業が奪還に来ません!】。【しばしの間だけ、レジスタンスの拠点に使えるかもしれません】
・【工場のコントロルルームで得られる筈の情報がロック】されました!【今後、情報のロックを解除する依頼を出す予定】です!待て次回……!
・【提供する情報はある程度考えてますが、『こんな情報が欲しい』というのがあればしれっと得られる情報、依頼が映えてくるかもしれません!】
・【シスターズが|あなた達《猟兵》に興味を持ちました!】

……お疲れさまでした!ひとまず今回は終了です!
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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月02日


挿絵イラスト