【サポート優先】もう届かない
※ これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
●かつての最先端技術の街
アポカリプスヘル、ヒューストン。
オブリビオン・ストームにより最先端医療や宇宙開発の最前線であった街も、今や他と変わらず荒廃し廃墟と化している。
けれどまだ、ひとは居る。
そしてそのひとが『ゾンビ化』する事象も、続いている。
「ッゾンビだ! 早く! 立て籠もれ!」
「ちくしょう、こいつでも喰らえ!」
「待って! リンダ! あの子! リンダよ!」
「諦めろ! もう戻らない!」
拠点から無数に突き出したアサルトライフルの銃口が跳ね上がった。音速で放たれる弾丸はかつての隣人たちを射ち抜いていく。
硝煙にかすむ戦場に悲鳴と呻きが満ちていく。
「ああ! リンダ!!」
「死にたくなけりゃ凌ぐしかねぇ……! 救世主さまでも現れない限りな!!」
人々は涙を流し、心を殺しながら、──それでも生きる。
あんなに近かった星には、もう、届かない。
●グリモアベース
青い靄に首の根元を覆われた頭部の無い男、フィアクラ・ディアミッド(いつか聞いた足音・f34123)は胸に掌を添え、恭しく猟兵たちへと腰を折って礼をした。
彼が書く流麗なアイルランドの言語も、猟兵たちならば特に問題もなく読めることだろう。
そうしてその西洋妖怪、デュラハンの男が伝えることは、途方もなくシンプルだ。
敵を倒す。
ただそれだけだ。
最初の敵は、元々はヒューストンの拠点に棲んでいた人々がゾンビ化した存在。もう戻ることはなく、知性もない。咬み付かれれば、猟兵であろうとも理性を失いそうになるほどの強力な伝染性を持っている。
拠点に残る人々のためにも、放っておくことはできない。
倒すことだけが、唯一の救済だ。
そのゾンビたちを倒せば、今回のゾンビ化の発生源となった『最初の一体』たるオブリビオンを炙り出すことができるだろう。『それ』も当然、意思の疎通などはできない。情報を引き出すことも不可能だ。
だから倒すだけ。
なにひとつ、前進はしない。
なにひとつ、改善はしない。
それでも、放っておくことは、できない。
『ゾンビ化した人々』、そして『発生源のオブリビオン』。それだけを書いた紙をとんとひと差し指で示し、フィアクラはそれを白銀の鋏で断ち切った。
そしてもう一度、恭しく無い頭を垂れて見せるのだった。
朱凪
目に留めていただき、ありがとうございます。
サポートさん書くの好き。朱凪です。
※サポート優先ですが『おまかせプレイング』も歓迎です。
※『通常参加』も問題ありません。マスターページをご一読ください。
※進行はかなりのんびりペース予定です。
では、自由なプレイング、お待ちしてます。
第1章 集団戦
『走るゾンビの群れ』
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POW : ブルゾンビ
自身が戦闘で瀕死になると【屈強な走るゾンビ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD : 群がるゾンビ
自身が【食欲や飢餓感】を感じると、レベル×1体の【走るゾンビ】が召喚される。走るゾンビは食欲や飢餓感を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ : 獰猛なゾンビ
【噛みつき】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
厳・範(サポート)
長年の修行で誘惑に強いお爺です。
食べ物に制限はありません。
話し方は古風です。
亡き親友との約束(世界を守る)で、封神武侠界のみで活動していましたが、『仁獣』性質と親友の幻影の後押しで決意し、他世界でも活動し始めました。
「放っておけぬのよ」
動きとしては、主にサポートに回ります。
【使令法:~】では、麻雀牌を利用して、対象生物を呼び出します。
【豹貓】は睡魔を呼ぶ、【胡蜂】は恨みの毒(理由は秘密の設定にて)という感じです。
また、半人半獣もしくは本性の麒麟形態だと、背に人を乗せることがあります。
なお、武侠の血が騒ぐと足技が出ます。
依頼達成のためとはいえ公序良俗に反する行為はしません。
あとはお任せします。
ローズ・ベルシュタイン(サポート)
『さぁ、楽しませて下さいますわよね。』
人間のマジックナイト×電脳魔術士、女の子です。
普段の口調は「高飛車なお嬢様(私、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」、宿敵には「薔薇の棘(私、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は高飛車なお嬢様風の偉そうな感じです
花が好きで、特に薔薇が大好き
武器は、主にルーンソードや精霊銃で戦う。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
「この世界には幾度か訪れておるが」
ここも酷いものだな。渇き切った砂とアスファルトの欠片を蹄で踏み、半人半獣形態の黒麒麟、厳・範(老當益壮・f32809)は小さく零した。
アポカリプスヘルはヒューストン。最先端技術の中心であったこの街の過去など、彼も、そして彼女も知らない。
「とにかくあの方たちを倒せばよろしいのですわね」
鮮やかな橙の長い髪を靡かせ、ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)はまっすぐに視線を向けた。土煙を上げて駆けて来るのは、知性の宿らぬ瞳で腐りかけた身体が欠けようとも向かい来るゾンビたちの群れ。
拠点から絶え間なく放たれる銃声の隙間、上がる悲鳴からすると、拠点の顔見知りたちも含まれているのだろう。
もう救うことはできない。だが。
「あまり拠点に寄せたくはありませんわね」
「そうだな。貫くか?」
自らの背を示す老爺の金の瞳の中に、小さく灯った闘争心。ローズはドレスを両手で持ち上げて軽く膝を折って礼をした。「ご厚意に甘えますわ」。
「──敵のさ中まで」
土煙を上げるゾンビたちの群れを回り込むように、夕焼け色の娘を乗せた半人半獣の麒麟は駆けた。寄らねばならぬと言うわけではなかったが、ローズのユーベルコードはまず命中させることが前提条件だ。
そしてより多くを一撃で屠るために、範としても即席で交わした策略は悪いものではなかった。
密集した集団の“縁”。“端”のゾンビたち。
その存在に向けて、ローズは白薔薇を放った。投げ矢の如き速度でゾンビの目に突き立ったそれは、可憐な花弁を白から赤へと染めあげていく。|血染めの薔薇《ブラッディ・ローズ》。
「その行進、少々止めさせていただきますわ」
ひと度刺されば二度と抜けぬそれを、ローズは次々と“端”へと放っていく。目、足、機動の起点になりそうな場所へ。
ゾンビたちの動きは止まり、当然、拠点へ向かうのではなく回り込んだが故にゾンビたちの“側面”に立つふたりへと敵の意識が向く。それこそが狙いだ。
ローズへ噛み付かんと大きく顎を開けたゾンビを、範は一度の跳躍で軽くいなし、着地先に居たゾンビを踏み、更に高く、空中へ。彼自身は勿論、その背に乗ったローズも空中機動は嗜んでいる。それにローズは騎乗にも親しんでいるがゆえに、ふたりの猟兵の連携は揺らがない。
振り上げる、多節鞭──雷公鞭。迸る、雷光と轟音。雷公天絶陣。半径百|米《メートル》以上にも渡る稲妻が走り、彼を中心としたその範囲内に居るゾンビたちが遍く感電により動きを止めた。
「あ……」「が、がぁ……」舌すら動かぬゾンビたちを中空から見下ろし、範は小さく息を吐く。
「……惨いことよ」
死者を死者たらしめず、その骸を利用するだけの悪行。
もしも、友が。
我知らず拳を握り締める彼の強張りは、その背に掛けるローズにも伝わったけれど。彼女はなにも言わない。なにせ彼女は、淑女だから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月夜・玲(サポート)
『さてと、I.S.T起動。お仕事お仕事。』
口調 元気(私、~君、だね、だよ、だよね、なのかな? )
お仕事ついでに研究も出来るんだから、この仕事良いよねぇ
さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ
模造神器という独自の兵器開発を生き甲斐とする研究者
誰にでも気さくに砕けた口調で話しかける
戦いは全て研究の為、楽しみながら戦闘を行う
全ては研究の為、研究と戦闘を楽しめる猟兵生活は結構気に入っている
戦闘スタイルは4本の模造神器から2本を選び、二刀流で敵と戦う形です
UCで遠距離戦闘にも対応したSF剣士
日常ではのんびりと景色を楽しんだり風情を楽しんだり
冒険では考察しながらじっくり進む
あとはお任せ!
エリー・マイヤー(サポート)
ごきげんよう、グリモア猟兵さん。
掃除が必要と聞いて手伝いに来ましたエリーです。
【念動力】で掃除できる相手なら任せてください。
とりあえず、念動力で敵の攻撃を防ぎつつ反撃する感じですかね。
単純に念動力で押したり曲げたり捻ったり千切ったりとか、
集めて一塊にして纏めてぶん投げたりとか、
あるいは重い物を掴んで振り回すのもありでしょうか。
尖った力で貫いたり、鋭い力で切り裂いたりとかもできますよ。
重力を相殺して浮かべて動きを封じたりとか、
逆に地面に押し付けて潰したりもいいかもですね。
まぁ、状況次第でそれっぽく戦えますので、適当にこき使ってください。
精神攻撃なんかは対処が苦手ですが…
やれるだけやってみます。
●
荒廃した世界を軽く見渡し、エリー・マイヤー(被造物・f29376)はふぅと煙を吐く。見慣れた光景だ。
「……どこも変わりませんね、この世界は」
それがヒューストンと呼ばれるかつての最先端技術を誇る街であったとしても。辿る路は等しく平らかだ。
「そう? 確かにこれくらい荒れた星はたくさんあったけど、いろいろ叡智の欠片は見て取れるよ」
興味深い。月夜・玲(頂の探究者・f01605)は足許に転がるコンクリートやそこから伸びる太い針金、そして離れた場所の拠点の壁から幾多と突き出したままのアサルトライフルを見遣って口角を上げた。
「そうですか」
特に感慨もなくエリーは応じる。特別素っ気ないわけではなく、これが彼女の|標準《スタンダード》だ。
既に他の猟兵によって拠点への進行を留められたゾンビたちの大群が、荒野に広がっている。なかなか身動きも取れない状況のまま彼らはそれでも屈強なゾンビを召喚し続け、増殖に増殖を重ねて、動けないゾンビたちを乗り越え掻き分け、猟兵たちに向かって走り出した。
その眼に、表情に、知性はない。ならばそこに情けも容赦も不要であることは、エリーも玲も言葉など交わさずとて理解ができた。
──更に推し留めることは可能、ではありますが。
エリーはちらと足許に視線を遣る。ただそれだけで、小石が揺れてふわと浮き上がった。けれど。彼女は前を向く。
「倒す方が早そうです」
敵を抑えるよりも。そのサイキックエナジーを代償として、エリーは軽く右手を挙げた。音もなく、姿もなく、敵が斬り裂かれてばたばたと倒れていく。|念動《サイ》ブレード。それは見えない念動力の刃だ。
「わあ、なにそれいいなー!」
「っ?」
玲は思わず赤い瞳を輝かせ、エリーは思い掛けぬ科白に珍しく青い瞳を軽く見開いた。
エリーはもちろん知る由もないが、玲は各世界の技術に猛烈な感心がある。それはもう、 “マニア”と呼び表せるほどに。
「それどんな機構? なにがスイッチ?」
「……これは、私自身の力です。それに今は、それどころではないと思いますが」
なにせ、ゾンビたちが群れを成して襲い掛からんとしている。エリーの言葉を受けて玲もそちらを見、「そうね」と軽く請け負い、片手を高く差し上げた。
「偽書・焔神継続起動。|断章《フラグメント》・|機神召喚《マキナアーム》の章、深層領域閲覧。システム起動」
三mを越える剣と、それを握る機械の腕が彼女の頭上に現れる。
「これだけ集めてくれてたら、外すこともなくて助かるよ。──〈|極限熱量《インフェルノ》〉!」
振り下ろされた大剣は多くのゾンビたちを巻き込み粉砕し、それだけではなく蒼い炎が荒野にごぅと燃え広がった。元より言葉らしい言葉を発することもできないゾンビたちの呻き声のような悲鳴が響き渡る。けれど。
「さあ、更にいくよ」
「ええ。掃除のし甲斐がありますね」
ふたりは、表情を変えずに更に意識を集中させた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クロム・ハクト
※おまかせ/サポート
「助けが必要なんだろ、手伝おう」
「なら、すべて終わらせるまでだ」
・非戦闘時は、追跡や野生の勘での調査行動。
(交渉やケアといった事は不向き)
・戦闘時は熊猫のからくり人形か糸状の処刑道具で攻撃。
淡々と任務遂行しますが、一般人を戦闘や攻撃射程に巻き込まぬよう行動します。
・UC(台詞例等)
咎力封じ等:
「勝手はそれまでだ」「そろそろ黙るんだな」
人狼咆哮等:
「まとめて相手をしてやる」
無差別系は極力巻き込みを避けますが、
やむを得ない時は猟兵なら耐えられると判断し使用。
他UCは状況に応じ適宜。
後の戦いに有効そうだった場合:
「(手の内を明かさないために)取っておきたかったが、やむを得ないか」
勝守・利司郎(サポート)
神将の四天王×花蝶神術拳伝承者、勝守・利司郎だ。
花蝶神術が何かって?オレが言い張ってるだけだが、練った気を花や蝶のごとく扱うやつ。
しっかし、『トーシロー』が達人っていう設定なぁ。あ、オレ、神隠し先で神将になる前はバーチャルキャラクターな。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動する。そうだな、主に拳に練った気を集めてグローブ代わりにして、殴ることが多いか?
他の猟兵に迷惑をかける行為はしない。オレの美学(味方ならば邪魔をしない)に反するからな。作戦なら別だが。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしないからな。
あとはおまかせ。好きによろしく!
轟木・黒夢(サポート)
『私の出番?それじゃ全力で行くわよ。』
強化人間のヴィジランテ×バトルゲーマー、19歳の女です。
普段の口調は「素っ気ない(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、偉い人には「それなりに丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格はクールで、あまり感情の起伏は無いです。
戦闘では、格闘技メインで戦い、籠手状の武器を使う事が多いです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
戦場に辿り着いた彼らの背後の拠点から迫り来るゾンビへ向けて撃ち放たれ続けていたアサルトライフルによる弾幕は、猟兵たちの奮闘によって完全に沈黙している。
「……あの中には大切な存在も、居たのだろうな」
それでも、嘆く声は僅かながら風に乗って聴こえて来た。勝守・利司郎(元側近NPC・f36279)はちらと拠点を見遣り、そして召喚し合い増え続けるゾンビたちへと改めて視線を遣った。
蠢くひとつの塊にしか見えないような群れに、轟木・黒夢(モノクローム・f18038)も見据える。戦場の中でも目を惹く鮮やかな橙色の髪が泳ぐのを彼女は見ていた。信頼している、古城の主。元より戦いを恐れる性質ではないが、黒夢はどこか心強さを覚えながら、群れへと向けて駆け出した。
「……なら尚更、早く終わらせよう」
駆けながら、彼女は黒いシルクハットをくるりと返した。暫時瞼を伏せ、ハットの中に入れた手を出すとその手には凶悪な牙の並ぶトラバサミがある。レプリカクラフト。実に元始的な罠ではあるが、知性もないゾンビ相手ならば充分威力を発揮するだろう。
ぐるるる、とあたかも獣が如き唸り声を放つゾンビたちの伸ばされる手を掻い潜り、進み往く黒夢。熟練の動きで罠を仕掛け、手放すと同時にシルクハットから新たな罠が転がり落ちる。
群衆の中を進むその背に迫った鋭い爪の手首を、飛んだ手枷が縛め捕らえた。
ちらと視線を振り返った黒夢の青い瞳が捉えたのは、クロム・ハクト(黒と白・f16294)だ。
もみ合うゾンビたちの群れの中だ。悠長に会話を交わすことはできない。彼の|黄金《こがね》の双眸に向けて黒夢は一礼して、更に群衆の隙間を縫い進んだ。
クロムも首肯を返しつつ、更に進む彼女の支援を続けていく。
がしん、ばちん、とハサミが噛む音が響いて、集団の動きは大きく鈍っていった。
「一理ある──、いや。……それがすべてだな」
普段どおりの柔らかい笑みを浮かべ、彼は大きくふかふかの尾を揺らしてゾンビの群れへとひと足で踏み込んだ。
ひゅッ、と短く息を吐く。繰り出す拳。腹に一撃、屈めた身を回して裏拳でゾンビの顎を捉えると同時に籠めた竜脈の力を借りて衝撃波として打ち飛ばし、開いた空間へ飛び込み長い脚で首を捕らえて薙ぎ倒す。
百を越える手数も途切れることのないそれは花蝶神術:乱舞撃。一撃一撃はさほど重くはないが、さほど強くもない多数を相手取るならばこれほど有効な技はない。
だが。
「……きりはないな」
なにせ、相手は食欲や飢餓感を覚えるだけで増え、かつ瀕死になっても増えるのだ。
鎖付きの手枷で敵の動きを一時的に封じていたクロムは利司郎のぼやきを大きな耳に捕らえてぴくりと揺らした。
「そうか。判った。……請け負おう」
彼自身の鋭い牙で、親指の皮を噛み切る。滴る血が弾けた途端、それは真紅の帳となって彼を覆った。それはユーhベルコード、紅き月の昏き夜を裂くもの。帳に包まれた彼の質量が、べき、ごきと音を立てながら巨大化し──真紅がぼろぼろと崩れ落ち現れたのは身の丈が五mを越える漆黒の狼だ。
「行くぞ」
短く告げたひと言は、敵のさ中に居た黒夢と利司郎に対して。「「!」」巨狼の狙うところを瞬時に察したふたりは、敵へ拳や罠を繰り出し続けながらも“中心”から即座に退いた。
跳躍。
そして轟音と共に、鋭い爪を持つ獣の脚が、まるでおもちゃを弾き飛ばすが如く薙ぎ払い、打ち飛ばす。できるだけ拠点とは逆の方向へ。
世界ごとにオブリビオンの死体はそれぞれ違う。跡形もなく消える場合もあれば、そのまま残り資源を得られることもある。クロムにとって、アポカリプスヘルでの戦いは初であり、どうなるか判らなかった。残る可能性もある以上、拠点の傍に遺骸を寄せることはしたくなかった。
腐り、崩れ、知性を失った表情の遺骸が残るくらいならば消えてくれと願いながら、クロムは更に低く身を這わせ、爪を繰る。
大振りな彼の攻撃から逃れたゾンビたちを、黒夢の罠がことごとく噛んで捕らえ、それを一体一体、丁寧に利司郎の拳舞が屠っていくがゆえに、明らかに潮が引くように迅速にゾンビの数は減っていく。
「お疲れさま、もうゆるりとお眠りよ」
最後の一体の顎を利司郎の掌底が捉え、膝を折った死体は、砂のように崩れて消えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『『破滅の因子』ヒルコ』
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POW : 蹂躙する無形
【自在に変形する肉体】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 並行多重思考演算
【敵対者の思考パターンを模倣することで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 生命という邪悪
【自身に関する情報】を披露した指定の全対象に【対象自身を含む全ての生命を殺したいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アポリオン・アビス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写戴けると嬉しいです。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的に「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。
よく使う武器は「大天狗正宗・千子村正権現・鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせです!
メイリン・コスモロード(サポート)
『一緒に頑張りましょうね。』
人間の竜騎士×黒騎士の女の子です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「対人恐怖症(ワタシ、アナタ、デス、マス、デショウ、デスカ?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
人と話すのに慣れていなくて
「えっと……」とか「あの……」とか多様します。
戦闘ではドラゴンランスを使う事が多い。
その他、キャラの台詞はアドリブ等も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
すれ違いざま、視線が合った。
薔薇咲く古城で時折顔を合わせる、比較的好意を懐いている相手だ。軽く会釈した彼女に、メイリン・コスモロード(飛竜の鉾・f13235)は薄紅梅色のツインテールを跳ねさせ慌てて礼を返して──戦場へと向き直った。
世界はアポカリプスヘル、都市はヒューストン。
かつて最先端技術を誇った街は既に荒廃し切り、現在は潰れたビルの残骸たちに人々が寄り集まり拠点と呼んでいる場所があるばかり。その拠点は今、メイリンたちの背後にある。
そして前には、一体のオブリビオン。
「あれが、今回の人々のゾンビ化を引き起こした『発生源』ですか」
「あっ、えっと……は、ハイ、きっと……」
メイリン『たち』。突如萎縮したメイリンに徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は軽く首を傾げるが、気にするものでもない。たくさんいる彼の嫁たちの中にも、近しい気質の者が居るのかもしれない。
敵へと視線を戻せば、重力に逆らう粘液が逆巻く容貌。よくよく見れば基礎に人型があるように見えなくもない。
ずるりと赤く肉のようなものが覗き、まるで目のように見えるその場所が蠢いた。途端、家光の脳内に強烈な情報が流れ込んで来た。
「っ……『破滅の因子』、ヒルコ……? うぅッ……!」
それは生命という邪悪。ヒルコが自身に関する情報を開示した相手に、対象自身を含む全ての生命を殺したいという感情を与えるユーベルコードだ。湧き上がる感情と衝動に、家光は黒曜石の角の生える頭を押さえる。
「えッ……だっ、大丈夫デスカ……っ?」
うろたえるメイリンの声にも応じず、顔を伏せた家光はそのまま低い声音で呟いた。
「──……|神州因幡白兎殺《シンシュウイナバノシロウサギゴロシ》……」
紅の髪の隙間から、瞳が光る。周囲に百を優に超えるサメが周囲に召喚され、メイリンは瞬時身を竦ませた。
「削ぎ剥がせ、神話の獣!」
家光が吼えると同時、赤く弾けたオーラ。その胴に凶悪な皮剥ぎ刃を備えたサメたちはもみ合うように殺到した。
「gルRu Gi gア ア!!」
──当然、ヒルコに対して。
短く息を吐いた家光は、鋼色の粘液を散らし呻くオブリビオンを見据えながら、苦々しくも口角を上げる。
「将軍たる僕がすべての生命を殺したいと願うなんて、有り得ない。僕の覚悟を甘く見ないで欲しいですね」
彼の額から伝う汗に、けれどむしろ安堵して。メイリンもずたずたに裂かれ、赤い肉らしき部分が剥き出しになったヒルコへと駆け出した。高く右手を差し上げる。
「竜の力よ、私に宿りなさい!」
飛竜の顎──ドラゴニック・ファング。彼女の腕を強靭な鱗が包み、鋭利な牙を持つ飛竜の頭部へと変容した。咢を開いた竜の軌道を、ヒルコとてむざむざ待ちはしない。並行多重思考演算によってメイリンの思考を模倣し、躱す。
だが、メイリンも無策ではない。
敵の粘液が動く、それを見ると同時に思考した。「っ、」踏み込み、跳ぶ。身を捻り、繰り出す。「g uU ル」ヒルコが躱す──ことすら、既に学習済。
「ええ。ひとを毀すのは、ここまでです」
相手が人間でなければ、恐れるものはない。メイリンの腕が、飛竜の牙が、深々とヒルコの肉に突き刺さり、迸る罅割れた悲鳴が荒野へと抜けていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エリー・マイヤー
朱凪マスターにおまかせします。かっこいいエリー・マイヤーをお願いします!
戦力が必要と聞いて手伝いに来ましたエリーです。
【念動力】で戦いをサポートいたしますね。
敵の攻撃を妨害したりとか、武器を折ったり目潰ししたりとか、
そういうセコイ工作は任せてください。
敵を締め付けて動きを封じたりもできますし、
念動力で鎧とか壁とか作って、
敵の攻撃を逸らしたり弾いたりして味方を守ることもできますよ。
防ぎきれないやばめの攻撃は、念動力で移動させて緊急回避ですかね。
一応、念動力で遠隔攻撃もできます。
斬ったり突いたり殴ったり締めたり爆破したり、
敵の物性に合わせてそれっぽく。
まぁ、適当にこき使ってやってください。
ローズ・ベルシュタイン(サポート)
『さぁ、楽しませて下さいますわよね。』
人間のマジックナイト×電脳魔術士、女の子です。
普段の口調は「高飛車なお嬢様(私、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」、宿敵には「薔薇の棘(私、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は高飛車なお嬢様風の偉そうな感じです
花が好きで、特に薔薇が大好き
武器は、主にルーンソードや精霊銃で戦う。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
クロム・ハクト
※おまかせ/サポート
「助けが必要なんだろ、手伝おう」
「なら、すべて終わらせるまでだ」
・非戦闘時は、追跡や野生の勘での調査行動。
(交渉やケアといった事は不向き)
・戦闘時は熊猫のからくり人形か糸状の処刑道具で攻撃。
淡々と任務遂行しますが、一般人を戦闘や攻撃射程に巻き込まぬよう行動します。
・UC(台詞例等)
咎力封じ等:
「勝手はそれまでだ」「そろそろ黙るんだな」
人狼咆哮等:
「まとめて相手をしてやる」
無差別系は極力巻き込みを避けますが、
やむを得ない時は猟兵なら耐えられると判断し使用。
他UCは状況に応じ適宜。
後の戦いに有効そうだった場合:
「(手の内を明かさないために)取っておきたかったが、やむを得ないか」
●
『破滅の因子』ヒルコ。
他の猟兵が得たその名で呼び表されているオブリビオン──此度のヒューストンの人々のゾンビ化の『発生源』は、ずるりと粘液を乾いた地面に零しながら、再び一歩を踏み出す。
ユーベルコード、紅き月の昏き夜を裂くものによって黒い毛並の巨狼に変じたままのクロム・ハクトは低く喉を鳴らした。あれだけの数の人々を“破滅”させた存在。
それは巨狼の視線から見下ろすとあまりにもちっぽけで、それが故に禍々しかった。
ただこれだけの存在が、簡単に人々の暮らしを毀してしまうという事実が。
「gU rrル……Ge、g……!」
べしゃりと音を立て肉のような赤を覗かせ、人型が基礎と思えばあまりにも奇異で嫌悪感を懐かせる類の動きで以て跳ねたそれは、クロムへ向けて糸の如く粘液を放った。
「、」
動きを妨げ、命中率を上げるための行動だと咄嗟にクロムは理解する。けれど、彼は慌てない。
「グ、giiィi……?!」
巨大な狼に向けて広がった鋼色の粘糸は、中空でそのまま固まっていた。
否。僅かに動こうとする意志は見える。だが、動きはほぼ|止められて《ヽヽヽヽヽ》いる。
|念動《サイ》ハンド。百二十を越える念動力の手が、クロムを襲わんとする粘液を掴み留めていた。掌をそちらに差し向け、全霊の意識を向けるエリー・マイヤーは顔色ひとつ変えない。
「させませんよ。……特にこの都市に思い入れがあるわけではありませんが、やはりこの世界が蹂躙されるのは──気の良いものではないようです」
他人事のように己の感情を吐き出す彼女は、アポカリプスヘルで造られたフラスコチャイルドだ。特段、郷愁の念が強いとは思っていないし、そしてそれは事実でもあるのだろう。彼女の言葉におそらく偽りはない。
クロムは彼女を見下ろす。いくつかの戦場を共にして、彼は彼女の支援の力を信頼していた。
そんな彼にとっての故郷は常夜の世界だ。ただし記憶を失っているがために、どこまでが本物なのかも判らないのが実情だ。
だからこそ、不確かながらも芯を感じるエリーの視線が、クロムには眩しい。
ふふ、と。ローズ・ベルシュタインも口角を綻ばせてしゃんと夕焼け色の刀身の剣を抜いた。
「ええ。ここが私の故郷でなくとも当然、見捨てることなど出来ませんわ。さぁ、力を貸して下さいませ、聖なる薔薇の銀竜よ!」
大都会で富豪の家に育ったローズにとって、この荒廃した世界は馴染みがあるとは言えない。だが、そんなことは彼女にとってひと欠片も関係ないのだ。
聖なる薔薇の銀竜──ミネルバ・アレキサンドリア。彼女の喚び声に応じて、空を割って名の通り銀に煌めく鱗の竜の羽ばたきが響き渡り、
ゴ、ォっ──!
火炎のブレスがヒルコを呑み込んだ。
ヒルコには並行多重思考演算が備わっている。ローズの思考パターンを模倣し、回避を可能とする力だが、ローズは滅殺を狙っているのではない。そして生命力を共有する銀竜も、彼女の意図を過たず汲み取った。──避けなければ、炎がヒルコの身を灼く。
しかし避けた先に襲い来るのは、
「──あんたに意志があるようには見えないが。放置することもできない」
狼の姿であるためにややくぐもったクロムの声が告げる。鋭い爪が、ローズの誘導を受けて目の前に飛び出してきたヒルコへと薙ぎ払われる。
「Gi ルgG……!」
もちろん避けようとする、それをエリーの念動の手がオブリビオンの不定形の身体を鷲掴みにして抑え込む。
|黄金《こがね》の瞳には、怒りはない。ただ強い使命と、悼みがあった。
「……ここで消えてくれ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アイクル・エフジェイコペン(サポート)
猫っぽい舌足らず口調にゃ。こんにゃ感じで、可能なら末尾だけじゃにゃくて途中にも入れてほしいにゃ。めんどいならいいけど。
ちなみに機嫌悪い時は「に゛ゃ」って濁点入る感じにゃ。
正直状況とかよくわかってにゃいけどなんとなく気に入らない顔してるからぶっ殺すに゛ゃ。
パワーイズジャスティス。真正面から行っておもいっきり攻撃するのみにゃ。ユーベルコードは何使ってもいいにゃ。
基本はむちゃくちゃ猫かぶってかわいい子演じてるものだから、なるべくスマートに『せーとーはなれでぃー』的な感じで戦おうとするけど、むちゃくちゃ怒ったら地が出てむちゃくちゃ口が悪くなる。
「ぶっ殺おおおおおおす!●ぁぁぁぁぁぁっく!!」
向・存(サポート)
もし手助けが必要でしたらお手伝いするのですよぉ~。
ユーベルコードの出し惜しみをするつもりはありませんけどぉ、だからと言って乱発すればいいってものでもないですよねぇ~。
使いどころに迷ったときはぁ、ご同輩に相談すればいいでしょうかぁ~?
けどぉ、非道なことをなされる方には手加減無用、全力で参らせていただきますねぇ~。
あとは最後まで油断大敵、【咄嗟の一撃】も放てるように【逃亡阻止】は意識しておきましょう~。
大丈夫ですよぉ~、手足の二・三本くらいもげてもなんとかなりますのでぇ~。
荒事以外の御用ならめいっぱい楽しんじゃいますよぉ~。
特に読み物なんかは好きですねぇ~。
※アドリブ・連携歓迎
小宮・あき(サポート)
お困りの方がいる、と聞いて参りました。
スポット参戦のような形でフラリと。
◆性格・人柄
敬虔な聖職者として猟兵に目覚めた、人間の聖者。
です・ます口調の礼儀正しい少女。
ピンクの髪に、透き通る水色の瞳が特徴的。
ふふ、と微笑み愛らしい見た目で佇んでいますが、
本業は商人。ホテル経営者。冷静で非情な心も持ち合わせています。
既婚者。
神と夫に報告できない行動は、絶対に取りません。
◆戦闘
UC「神罰」
半径レベルmの【範囲攻撃】です。
強力なスポットライトのような光の【属性攻撃】で物質を透過します。
媒体は【祈り】。敬虔な聖職者の祈りは【早業】【高速詠唱】で発動。
最後衛で距離を取り戦います。
◆冒険
基本『お任せ』です。
●
眼前に広がるのは、灰色と砂色の荒野。振り返れば、灰色の瓦礫に寄り添う人々。
「こんなことに……」
ヒューストン。だが、小宮・あき(人間の聖者・f03848)が知る光景はどこにもない。ここはアポカリプスヘル。オブリビオンストームによって蹂躙された世界だ。蒼穹の色の双眸を瞬き彼女が拠点へと視線を走らせる横で、向・存(葭萌の幽鬼・f34837)は黒い符の下で夕焼け色の瞳を敵へと据えた。
「あのどろどろしたのがぁ、今回の標的ですねぇ~」
『破滅の因子』ヒルコ。人型の肉のようなものに鋼色の粘液を纏わせた異形が、荒野の中でずるりと歩む。これまでの猟兵たちの攻撃により、その“過去”は既に満身創痍ではあるものの、未だ意思なき害意だけが撒き散らされている。
あきもそれを認め肯くと、ニィと口角を上げたアイクル・エフジェイコペン(クロスオーバー三代目・f36327)が敵へと恐れなく一歩を強く踏み込み、跳んだ。小柄な身体で、巨大な斧を悠然と振り上げて。
「判りやすくていいにゃ! あいつを倒してそれで終わりにゃ、そぉおおれぇえええ!!」
そして振り下ろす、あまりにも単純な一撃。
だが、ヒルコの自在に変形する身体は防御力を上げることはできないが故に、十二分に効果を発揮した。
斧で叩き付けるだけの攻撃に、空気の膜を張り詰めて叩き込むような強大な圧と音が加わり、荒野の地形はすり鉢状に抉り取られる。
びりびりと全身を叩く波動と飛んで来る砂利に構わず「まぁ、確かにぃ~」存もそれに倣い、封魂符を剥がした。彼女は僵尸。死してなおオブリビオン化せずに生きる者だが、ユーベルコード屍身超越により、半ばオブリビオンと化してその力を増幅する。
低く唸り、すり鉢の底で蠢くヒルコの元へと駆けた。
敵も素直に追撃を許しはしない。鋼色の粘液を縒り集め槍と化した。鋭い突きは──存の肩をあっけなく貫いた。けれど彼女はその槍を掴んでにっこりと口角を上げた。彼女の身を覆っていた包帯がしゅるりと解け、刃と化した。
「効きませんねぇ~。相対した兵は、きちんと行動不能にしないといけませんよぉ~」
こぉんな風にぃ。
しゃん、と刃と化した包帯が一閃する。異形の身体がふたつの物体と化し、存は難なく肩口を貫いた鋼色の槍を引き抜いた。大きく穿たれた穴が、瞬く間に癒えていく。
「! こいつ、まだ動くにゃ!」
「あらあらぁ~、もっと細かくしないといけないのでしょうかぁ~?」
「任せてください」
すり鉢の縁から、あきがふたりへ声を掛ける。彼女の笑みに意図を察し、アイクルと存はそのすり鉢から瞬時に跳び退いた。
「gイ RuUu ga……!」
並行多重思考演算。『破滅の因子』ヒルコは敵対者の思考パターンを模倣することで対象の攻撃を予想し、回避する力を所持している。
だが、──関係ないのだ。
アイクルにより機動力は叩き潰され、存により更に胴体をふたつに割られ、ヒルコはもはやすり鉢の底で蠢くことしかできない。
両の指を組み、彼女は祈る。
風もないのにスカートが泳ぎ、あきの身体を光の粒子が包んだ。それが空へと舞い上がると同時、すり鉢を覆い尽くて有り余るほどの光の柱が天空から一閃した。神罰──ジャッジメント。
「────!」
光が筋となって消えたのち。すり鉢の底には敵の姿は一片の残滓すらなく消え失せていた。
あきは振り返る。瓦礫の拠点に寄り添う人々。どれだけのものを手離してきたのか、推し量ることもできないと彼女は思う。それでも。
「……喪ったものは戻りませんが。立て直すことは、きっとできるはずです」
微力ながらお手伝いしますね、と告げた言葉が直接届かなくても。
猟兵たちの貢献は確かに、ヒューストンの更なる崩壊を推し留めた。
成功
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