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銀河帝国攻略戦㉒~死を繰り返すもの

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #ドクター・オロチ

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「みんな、ついに実験戦艦ガルベリオンへの道が開かれたよ!」
 バンッと勢いよく扉を開き、会議室へと飛び込んできたのは、グリモア猟兵のミーナ・ペンドルトン(小学生妖狐・f00297)だった。
 はしたなさに気付き、恥ずかしげに佇まいを正した彼女は猟兵達に説明を始めるのだった。

「さて、先の戦いによって実験戦艦ガルベリオンが発見されて、解放軍の砲撃によって航行不能に陥れることが出来たんだ」
 だけど、と苦々しい口調でミーナは続ける。
 その損傷はすぐに修復を開始した。 つまりはドクター・オロチは健在だと言う証左であった。
 数々の非人道的な兵器を開発し、悪辣な策略を巡らせるドクター・オロチは、生かしておけば将来の禍根になる可能性が高い。
 だが一般人がドクター・オロチに近付くのは危険性が高いため、解放軍は銀河皇帝直属軍との決戦に集中することになった。
「そしてドクター・オロチとの決戦は、猟兵が担うことになったんだ」
 ドクター・オロチは特殊な存在で、一度骸の海に放逐したとしても、完全に力尽きるまでは何度でも別の場所で復活してくるという。
 そして今回この場に集まった猟兵達は、出現予測地点の一つに向かい、待ち伏せして戦うこととなる。
「で、ここからが一番重要なところだから、心して聞いてね」
 ドクター・オロチは必ず先制攻撃をしてくる。 だから、まずどうやって攻撃を防いで反撃するかをよく考えないといけない。
 何の対策もせずに、むやみに突っ込んでいくと、何も成せないまま終わる可能性がある。
 今回戦う的は、それほどまでに強大な相手なのだから。

「アレは不気味な存在だけど、私たちグリモア猟兵の予知によると、ここで撃破することが出来れば"スペースシップワールドで再び蘇ることはない"ことが判明してる。 お願い、なんとしても倒して」
 懇願するようにミーナはそういうと、猟兵達を送り出すのだった。


神坂あずり
 ※重要!
 ドクター・オロチは先制攻撃を行います。
 どうやって防ぎ、反撃に繋げるかをかならず記載してください。
 記載がない場合は、先制攻撃で撃破される可能性が極めて高くなります。
 また、対抗策を用意した場合であっても、不十分であれば苦戦する危険性があるのでご注意ください。


 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦 『ドクター・オロチ』

POW   :    ジャイアントカルシウム
自身の身長の2倍の【恨みの叫びをあげる骸骨巨人】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    カリスティックボディ
自身の肉体を【あらゆる生命体を溶解し取り込む緑の粘液】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    ビャウォヴィエジャの森のフェンリル
【水晶剣が変形した門から『フェンリル』】の霊を召喚する。これは【炎の体を持つ巨大狼で、爆発を呼ぶ咆哮】や【瞳から放たれる魔炎光線】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ハル・パイアー
「先手を取られる前提の待ち伏せか。易々とはいかんようだ。ならば、待ち伏せの権利を行使させてもらおうか。」

小官はDr.オロチの襲撃任務に志願いたします。
まずは出現前に地形の把握。広範囲の攻撃に備えた回避ルートの策定を行うものであります。
その後、出現と同時に敵の行動を[見切り]、[早業]《ゴッドスピードライド》で[騎乗]。
高速移動での回避[操縦]、時には熱切断とバイク[ダッシュ]で突破し、攻撃限界距離への退避。
そして、隙を作る為に[クイックドロウ]で敵ボディへ連続熱線照射。
不意の反撃に備えつつ、急速な後退でも追撃を緩めず、[誘導弾]で確実な命中を維持した継続ダメージを与え続けるものであります。


銅・加々美
何か分からないけど、こいつは放置したら駄目な気がするよ。
ここで倒して置かないとってね。

しかし、こいつは、本当にこの世界の者なのかね?
何か毛色が違うと言うのかな?

先制を取られるなら、
その被害は最小限に、抑えないとだね。
左腕にオーラ防御を集中させ、
盾(カウンター気味)にして打ち払う。
この体は仮初の物、腕一つで済むなら安いものさ。
多少の無理無茶はしないとね。

初撃を凌げたら、足技を中心に格闘戦に持込もう。
動きを見切り、直感に従い、
相手の攻撃は回避を優先。

また、錬成カミヤドリで銅鏡の複製を飛ばし、
同時に投擲して連携させたり、
自分の足場にして空中戦をして、
虚を突いたりして攻めようか。


三千院・操
『スペースシップワールドで再び蘇ることはない』か。
……なら、他の世界でまた会うことができるかもしれないってわけ?
じゃ、念の為データ集めといたほうがいいかもね。
その水晶剣は厄介そうだし、相手させてもらうよ。

先制攻撃は高速詠唱で呪詛を重ねた防壁で防御するよ! 悪辣な計画と実験をしてたなら、その過程で死んだやつも多いはず………。そいつら全員の負の感情を骸の海から引っ張ってきて固めて盾にする!
その後は攻撃を『サヴァンの叡智』で演算して複写する。こっちが召喚するフェンリルには自爆の呪詛を高速詠唱でたくさん練り込もうかな。どうせ一度しか使えないし、消えるときは元の持ち主ごと巻き込んで派手に消えちゃってよ。


ネグル・ギュネス
チーム【アサルト】

速い?
いいや、遅いぐらいさ。
───私が一番乗りのようだな。

【SPD】
貴様の動きは確かに速い、強い。
だが、其れを読まれていれば話は別だろう?
挑発し、攻撃を引き寄せにかかる

ユーベルコード:【勝利導く黄金の眼】
我が眼で敵の攻撃の先を読みながら、【残像】【迷彩】で位置を撹乱しながら、回避!
1秒足りとも逃さない!
限界を超えても、みる!

敵の粘液攻撃の着弾点を仲間に伝える

さらに攻撃体勢を取れば、【ソリッドブラスターα】で銃撃
液体には氷の【属性攻撃】で固めて、一瞬でも動きを止めれば、刀を抜いて【衝撃波】で動きを止めてやるさ!

私一人ならば勝てぬだろう。
だが、私には仲間がいる。

残念だったな!


鳴宮・匡
【アサルト】

転送直後から【確定予測】を発動
会敵と同時に相手挙動を確認
態勢や此方の位置取り、周囲地形から初撃の軌道を予測し回避を試みる
ネグルの近未来予測と合わせれば、それなりの精度で予測ができるだろ

以後は出来るだけ遮蔽を隔てた位置取りを心掛け
周囲地形状況を把握して死角からの攻撃にも留意
相手からは決して目を切らず
常に次の動きを予測しながら戦闘を運ぶ

逃げ回ってばかりなわけじゃない
読み取った敵の癖、行動予測は全員に共有してある
隙を見せるタイミングも、だ

……これだけ情報があれば、いけるだろ?
頼むぜ、名端役

僅かでも動きが鈍れば、その瞬間を狙って斉射
相手がこちらに対応するまでに、少しでもダメージを与えようか


ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】

ハッハー!ぶちかましてやろうぜチューマ!散々ッぱら人のこと弄びやがって。テメエだけはどうあっても地獄に堕としてやらぁ!!

ネグルと匡の予測から共有された情報を元に、奴の攻撃の予備動作や癖をインプットし、【見切り】【早業】【ダッシュ】を用いて高速機動で攻撃をいなそう。
向こうの情報が集まり出せば、隙だって見つけられる。
俺のユーベルコードでその隙を突いて、脳機能掌握ツールで奴にウイルスを送り込む。全身麻痺、速度鈍化、思考低下の順番で打ち込んで追い込みをかけていく。
弱体化すれば仲間が攻撃できる【時間稼ぎ】ができるはずだ。
まあ、何はともあれ初動はネグルと匡が要だ。頼むぜチューマ!


チトセ・シロガネ
【WIZ】
あの犬、ちょっと躾がなってないネ
ボクがキツく教育してやるヨ

【念動力】でオブジェや瓦礫を飛ばしたり、【残像】で動き回りながらオロチとフェンリルを撹乱
光線は【見切り・地形の利用】で回避ネ

仕掛けるチャンスはフェンリルが咆哮した時ッ!
【地形の利用・念動力】でそこら編の瓦礫やオブジェを盾に
さらに【オーラ防御】を張って爆発に耐えるヨ
爆発時の混乱に紛れて【地形の利用・迷彩】で隠れるヨ

その間【見切り】でフェンリルとオロチを補足、
ヤツラが直線上になるよう【勇気】を持って【早業・ダッシュ】で踏み込み【2回攻撃】
フェンリルは【破邪光芒】の上段で斬り伏せ
さらに【鎧無視攻撃】の返し刃でオロチをスラッシュするヨ


ヘスティア・イクテュス
放っておけば、どんな兵器がこの世界に放たれるか
えぇ、倒せるなら今、ここで倒すわ!
この世界のために!!

自身に光学【迷彩】を、そしてホログラムの分身【残像】を設置!
そちらに意識を向けて回避…
もしダメそうならガーディアンによるバリア【オーラ防御】で防ぐわ

気づかれなかったら
こっそり行動
粘液の体でもビームセイバーの熱なら焼き切れるはず!
背後から斬りつけるわ!

姿を消した敵…
音とかで判別はできるでしょうけど
わたしに意識を傾ければ他の猟兵への行動が疎かになるはず

悪辣な策略には悪辣な技よ
卑怯とは言わないわよね?

さぁ、一緒に舞い踊りましょ?


マリン・ラピス
なんとしてもここで倒さなければいけませんね…。
まずは【咎力封じ】で相手の先制攻撃の手を止めます。
まあ強そうな相手ですから完全に止めることは期待してません。動きを鈍らせて回避、間に合わないなら【武器受け】で受け流すまでです。
ただ私1人だと火力不足で決め手に欠けるでしょうから他の方を【かばう】ことで皆さんに攻撃のチャンスを作ります。
無論、私も隙があれば瑠璃月やダガーで攻撃します。
ですが他の猟兵の方々のサポートを優先的に行います。
皆さんは私がサポートします。
全力で行ってください!


マリン・ルベライト
すごく強そうな相手だね…。
先制攻撃が来るなら【トリニティ・エンハンス】で攻撃力を上げて【属性攻撃】で炎を付与してうまく相手の攻撃を【見切り】ながら攻撃して相殺するよ。
相殺しきれなかったら【盾受け】で受け流して、もし間に合いそうなら受ける時は防御力重視に切り替えるよ。
相手の動きに合わせて武器を切り替えながら【援護射撃】や【2回攻撃】を入れていくよ。
私達は絶対に負けられないんだ!


ミーユイ・ロッソカステル
【wiz判定】
あまりにも、気味が悪い見た目をしているわね……
予知されている能力も悪辣なものばかり。放置するわけには、いかないか

先制攻撃を仕掛けてくるというのなら、その対策をしなければ
敵の攻撃を詳細に知るほど、それを抑え込むことができる
……この身を危険に晒してでも、少しは抑えてみせましょう

今回歌うのは「聖なる勇者の行軍 第3番」
特徴を詳細にとらえるほど、その攻撃を抑え込む力が上がる歌


氷獄の門より来たりし魔狼
燃ゆる体毛は怒りゆえか
灼熱の視線は敵意ゆえか
燃やせ 燃やせ 憎悪に身を焦がし
空の塵と化すまで燃え果てろ

……それだけの爆炎ならば、身体を保つのも長く持たないのではなくて?
……後は、頼んだわ




 実験戦艦ガルベリオンの内部には、いくつもの実験室が存在した。
 広大な空間の中に立ち並ぶ無数の培養槽と併設された計器類、作りかけの機械兵器。 ここもまた、そんな実験室の一つだった。
 立ち並ぶ培養槽の中に、時折こぽりと気泡が生まれては消えていく。
 静寂が満ちる広大な空間に、どぽりと音を立て緑の液体が零れ落ちた。

「いや~本当にしつこい人たちだよ。 どこかの誰かを思い出しちゃうね」

 人のいない空間に愛らしい少女のような声と共に緑の液体が浮き上がり、徐に形を取り始めた。
 まずは中空に剥き出しの脳髄が現れ、クマを模したパーカー、ズボンと衣服が形作られる。
 頭上の空間を切り裂き水晶のような剣が現れると同時に、全身に青紫の光が走り瞬時に武装が完了した。
 ――ふわり。 天井付近で極彩色の光の帯が揺れる。
 彼の名はドクター・オロチ。 銀河帝国の執政官にして科学技術総監だ。

「もういるんでしょ? キミたちはいつも的確に表れるからね。 まるで、これから起こる運命を予報している人でもいるみたいだよ」

 全てを見透かすようなドクター・オロチの陽気な声に、物陰に潜み仕掛ける機を窺っていた猟兵達の背筋を汗が伝う。
 かの異形は、オブリビオンとしては秀でた強さを持つわけではない。 だがその何度でも蘇る特性故に、経験だけは豊富であった。
 ここに出現した瞬間から油断などしていなかったのだ。 機などあろうはずもなかった。
 猟兵達が飛び出そうとしたその時!

「来ないならこっちから行くよ~。 そ~れ、『水晶剣』~♪」

 頭上に揺らめく極彩色の光の帯から落とされた異彩を放つ二条の雷が、実験設備の一角を吹き飛ばした。
 いや、問題はそんなことではなかった。
 雷の落ちたその場所には、水晶の剣を持つ巨大な骸骨と、蒼い炎を纏った異貌の巨狼――この科学で満たされた世界にいようはずもない明らかなる怪物――が出現していた。


 フェンリルの放つ咆哮が周囲に轟き、骨で形作られた巨人が足を踏み出す。
 咆哮によって生み出された衝撃波が周囲の実験設備を吹き飛ばし、後を追うように連続した爆発が遍く物を蹂躙していく。
 身を低くして衝撃波をやり過ごす間もなく、吹き散らされる機械の残骸が糸に引かれるように集まる。
 念動力と地形を利用した簡易的なバリケードだ。
 時を同じくして、黒く不気味な障壁が展開される。
 それはこの実験室で生み出された数々の負の感情を纏め上げ、強固に塗り固められた呪詛の防壁だ。

「ワオ、いきなりハードな展開ネ。 これだけ固めてもギシギシいってるヨ!」
「わ、笑ってる場合じゃないよ!?」

 各々が作り出した壁の後ろに隠れてやり過ごすチトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)と三千院・操(ネクロフォーミュラ・f12510)が、叫ぶように言葉を投げかけ合う。
 彼らは不運にもフェンリルの起こした爆炎の直撃を受けていたが、強固な防壁を作ったことにより何とか耐えていた。
 圧倒的な暴力の権化に、身に纏ったオーラまでもが悲鳴を上げている。
 今はまだ耐え忍ぶ時だった。



 降りしきる瓦礫の中で、四人の男女がステップを刻む。
 右へ、左へ、半歩前に出てくるっとターン。

「……って、貴方たち余裕ね!?」
「まあ、軌道は見えているからな。 君と違って細かい物も避けないといけないから、反撃するほどの余裕はないが」
「当たれば即致命傷だから、気が気じゃないけどな。 左13度速度30、正面速度100」
「お、さんきゅーチューマ(相棒)。 そっちのAIをハックしていいなら、もっと簡単に避けさせてやれるけどなー……二秒後に一瞬サイドスラスター」
「それは嫌よ! きゃっ」

 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)の指示に従い、猛スピードで転がり込んできた巨大な実験装置を回避したヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長(自称)・f04572)だったが、避けそこなった破片が体表のオーラに弾かれ床に突き刺さる。
 彼らは攻撃を上手く捌いてはいたが、ネグル・ギュネス(ロスト・オブ・パストデイズ・f00099)の言う通り、避けるのにかかりきりになっていた。
 ネグルと鳴宮・匡(凪の海・f01612)。 二人の主催の予知にも等しい瓦礫の軌道予測によって、このダンスパーティは成り立っている。
 誰かを切り捨てれば反撃の目もあったかもしれないが、そんな格好悪い真似はできやしないし、避けそこなえば戦力の大幅な低下は免れない。
 ならば、例え他力本願であろうとも、他の誰かが敵の隙を生み出すのを待つのが最善だ。
 もう暫くは、この騒々しい音楽は終わりそうになかった。



 雨のように瓦礫が降り炎の吹き荒れるさなかを、一機の駆動機関が走り抜ける。
 ブレーキをかけて滑らせた後部のすぐそばを、床を抉りながら機械の残骸が通り抜けていく。
 フルスロットルで体躯を浮き上がらせた流線形の機体を巧みに操るハル・パイアー(スペースノイドのブラスターガンナー・f00443)は、瓦礫の落下位置を見切りながら、フェンリルへと機首を向け。
 放たれた何発もの熱線が、僅かにフェンリルを怯ませる。

「この程度ではさほどの痛苦にもならんか。 易々とはいかんようだ」

 素早い動きで残骸をやり過ごし、遮蔽を利用して魔炎光線を避けながら、ハルはフェンリルへと迫るのだった。



 視界が紅蓮に染まる。
 ――氷獄の門より来たりし魔狼
 迫る熱波が頬をちりちりと焼き、呼吸一つで肺を蝕む。
 ――燃ゆる体毛は怒りゆえか、灼熱の視線は敵意ゆえか
 それは、この矮小なる身には十分すぎるほどの脅威足りえるものだろう。
 ――燃やせ 燃やせ 憎悪に身を焦がし
 けれど、そんなことは今は関係がない。 何故ならば……。
 ――空の塵と化すまで燃え果てろ
 ここは舞台であり、そして彼女は歌い手なのだから。

 歌い終えたミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)に、圧倒的な熱量を持った魔炎が迫る。
 炎の奔流は止まることなく、儚き少女の姿は掻き消され……炎が無数の帯のように裂けた。
 歌姫を守るように、前に踏み出した銅・加々美(典外魔鏡・f12883)が突き出した左腕に膨大な圧力がかかる。
 指先に纏ったオーラに引き裂かれた奔流が、幾本もの帯となり後方へと流れてゆく。
 念動力で補強していてなお、その仮初の身体は軋みを上げ、嫌な音が響く。
 いや、本来であれば炎の奔流は、受け止められるどころか彼女たちの身体は瞬時に蒸発させていたであろう。
 今こうして押し留められているのはひとえに、ミーユイの歌うパリペイティアによってその力を大幅に失ったからこそであった。
 加々美の左手が引かれ、瞬時に魔炎に叩きこまれる!

「っっ!!」

 相殺された衝撃に暴風が吹き荒れ、炭化した左腕が崩れ落ち、疲労で力の抜けた膝が床を叩く。
 所詮は仮初の身体だ。 腕の一本など惜しくはないし、今は気にしている余裕などない。
 何故なら、今まさに振り上げられた巨大な水晶の剣が迫っているのだから。

「……後は、頼んだわ」
「ここは私たち姉妹に任せてください。 行くよ、ルベ」
「安心して後ろで少し休んでてね。 行こう、お姉ちゃん!」

 加々美を引きずりながらミーユイが下がるのと入れ替わりに、クリスタリアンの姉妹が飛び出す。
 風を切りながら迫りくる巨大な剣を前に、引き絞られたマリン・ルベライト(禁忌に生み出されし姉妹・f08954)の弓から炎と属性の二重付与を施された矢が射たれる。
 しかし圧し潰さんとする圧倒的な質量の前には、草原に吹く風の如くやんわりと僅かに減速させるに留まる。
 だがそれでいいとばかりに続けてマリン・ラピス(禁忌に生み出されし姉妹・f08555)が咎人封じの力によって生み出した拘束ロープを放が、それもまた勢いの前に敢え無く千切り飛ばされる。
 何も問題はない。 相手が強いことなんて先刻承知しているのだから、完全に止めることなど期待していないのだ。
 これは次への布石……二人は揃って頭上に武器を掲げ……姉妹の武器と巨人の刃が打ち合わせられる!
 圧し潰さんとする重圧に膝を折って衝撃を流し、息の合った一糸乱れぬ動きで傾けられた武器の上を水晶の刃が滑り落ちていく。
 受け流された巨人の刃が床を穿ち、周囲を激しく揺らした。
 ――轟音の中に、微かに透き通った歌声が響いてくる。
 床にめり込んだ巨大な水晶剣を引き抜こうと苦心する骸骨巨人に、流星雨の如く放たれたルベライトの矢が、視界を覆い尽くすほどの矢雨となり降り注ぐ。
 咄嗟に手で顔を庇い矢を防ぐ骸骨巨人に影が差す。
 ――それは、戦う者を鼓舞する力強い英雄譚。
 矢雨に隠れ水晶剣の峰を踏みつけ駆けあがったラピスの影が中空で翻る。
 高く高く飛び上がった影は頂点へと至り、重力に惹かれた小さな刃がその巨大な頭蓋に突き立てられた。
 ――ピシッ。
 声なき咆哮が轟き、大気を揺らす。
 微かな罅は加速度的にその勢力を増し、その頭蓋を覆い尽く……骨だけでできた巨体がぐらりと傾ぎ、崩れ落ちていくのだった。



 瓦解する巨大な骸骨を背に、二体の巨大な狼が死闘を繰り広げていた。
 一方はドクター・オロチに召喚されたフェンリル。 もう一方は操が<サヴァンの叡智>によりエミュレートして生み出したフェンリルモドキだった。
 フェンリルモドキの首に喰らいついたフェンリルの腹部に、何発もの熱線が照射され肉が焼け爛れる。
 ハルのクイックドロウによって意識を散らされたフェンリルの背中に、フェンリルモドキの爪が突き立てられ、くぐもった唸り声が漏れ出した。
 そろそろ潮時かな? 小首を傾げた操の指示がフェンリルモドキに飛ばされる。 それは最後の命令を遂行するための合図だ。
 敵を逃がさぬようにと、深く爪を食い込ませながらその身体が膨張し……肉体の炸裂と共に無量数の呪詛に塗れた熱的破壊が巻き起こる!
 爆炎の中、ごっそりとはらわたを失った魔狼の影がゆらりと揺れ動き。
 ――ぼとり、とその首が落とされた。

「躾がなってない犬には、キツいお仕置きが必要だからネ」
「お仕置きというより、殺処分ではないだろうか?」

 ハルの冷静な物言いに、立ち昇る炎を背に光刃を納めたチトセが肩を竦めた。



「そ~れそれ~♪ 逃げてばっかりじゃ駄目だよ~?」

 数多の針のように伸びた緑色の粘液が、次々と床を溶かし穴をあけていく。
 だが猟兵たちもただ黙ってやられているわけではなかった。
 ドクター・オロチを囲むように、三人の男女が姿を消しては現して、入れ替わり立ち代わり次々と攻撃を加えていた、
 だが今はまだ決め手が足りない。
 伸ばされた粘液が、ヘスティアの振るうビームセイバーの熱量に中てられ不快な臭いを残して蒸発する。
 何発もの銃弾がその脳髄に叩きこまれるが、一切堪えたようすもなく吸収されていく。

「もう終わりかな? こんなものかー」
「あぁ、これで終わりだぜ。 ワックドドレッキー」

 それまで止まることなく動き続けていたヴィクティムの手が、キーボードを叩き止まる。
 脳にすら作用するウイルス<ブレイン・クラック>が、ドクター・オロチの脳機能を食い荒らし始めていた
 動こうとするドクター・オロチの身体が、びしりと麻痺して固まり始める。

「あ、あれ、確か前にもこんなことが……」

 焦って動こうとするドクター・オロチの身体に次々と弾丸が撃ち込まれる。
 いや、それはただの弾丸ではなかった。 精霊の力の篭った石を媒体とした、属性攻撃。
 氷の魔力が宿ったその攻撃は、液体の四肢を徐々に凍結させ、その動きを止まらせていく。

「……あれ、もしかしてピンチ?」

 動きを封じされたドクター・オロチに抵抗する間を与えず、ビームセイバーが突き立てられる。
 圧倒的な熱量によってその四肢を瞬時に沸騰させられ、それはまるで水風船の如く破裂した!
 びしゃり、と周囲に飛び散った液体は、息つく間もなく空気中へと霧散し一時的にとはいえこの世から消え去った。
 こうしてまた一体のドクター・オロチが討伐さることとなった。
 これは小さな一歩かもしれない。
 だが長く激しい戦争が、また少しだけ終わり向けて針を進めたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月20日


挿絵イラスト