シェモースは語り継がれるか
●次なるもの
クロムキャバリアにおいて小国家とは人々の集合の最大単位である。
戦乱ばかり続く世界にあって、それ以上に大きくなれば内乱が起こり、それ以下になれば霧散霧消するものだ。
その繰り返し。
連綿と紡がれてきた歴史が証明している。
人はどうしようもなく愚かで、どれだけ過去が警鐘を鳴らしたとしても、同じ轍を進む。
即ち滅びである。
しかし、その轍を前にして人々はより良きを求める。
過去、『エース』と呼ばれた傑物たちがいた。
多くの小国家にありて、それは希望であったことだろう。戦いばかりのさなかにあって、『エース』とは生まれるべくして生まれるのである。
「このままじゃあ、振り切られる!」
簡易型レーギャルンが荒野を走る。
その機体は『ズィーベン・ラーズグリーズ』の駆る機体であり、何かを追っているようでもあった。
そのアイセンサーの先にあるのは、一騎のキャバリア。
名を『キュロープス』。
かつて『名機』と呼ばれ、キャバリア平気を無力化する特殊兵器を積んだ機体である。その緑色のカラーリングに彩られた機体、その右腕にあるペンチアームに挟まれているのは、一つのポッドであった。
彼女はそのポッドを奪還しようとしている。
ならば、あれは小国家『グリプ5』から奪われたということだ。
「応えて! 行かないで!」
彼女の言葉はポッドの中にいるであろう人物には届かない。彼女が今追っているのは、小国家『グリプ5』において重要な人物たちである。
「勝手なことを言う。貴様らが運命を仕組んだ側であるというのに、この子らの行く末を定めるか」
『キュロープス』のパイロットが告げる。
彼の言葉は揺らぐことがなかった。追いすがる簡易型『レーギャルン』に向けられた頭部の荷電粒子砲が光を湛える。
放たれた光条を簡易型『レーギャルン』は躱す。
その周囲から飛び出すようにして『ズィーベン・ラーズグリーズ』の機体を襲うのは、四足の獣の如きキャバリア『バスターレオ』。
機動力に寄る強襲を目的とした機体は、その内部にあるエネルギーインゴットを燃やしながら圧倒的な速度で持って簡易型『レーギャルン』の足を止める。
「違う! その子は! その子たちは、そうしたものから開放されるはずだったのに! あなた達が!」
「くどい。我らは『憂国学徒兵』は、時を待っていたのだ。お前たちの為す偽りを、平穏という名の偽りを我らは正す。彼らこそが、その証左よ!」
「勝手なことを!『プロメテウス・バーン』、起動!」
簡易型『レーギャルン』の胸部砲口が展開し、威力を絞った光条の一撃が放たれようとする。
だが、『キュロープス』の右腕にありしペンチアームに挟まれたポッドが突き出される。
「――ッ!!」
「その逡巡こそが、お前たちの後ろ暗さを示しているとしれ! 受けろよ、『ステロペース』!」
『キュロープス』より放たれた荷電粒子ビームの一撃と光条の一撃が激突し、エネルギーの奔流が荒野に迸る。
『ズィーベン・ラーズグリーズ』は爆風荒ぶ中、機体の足を止めざるを得なかった。
「……返してよ、あの子たちを!」
完全に『キュロープス』を見失ってしまった彼女は立ちすくむ。
「……いいえ、まだ。まだ希望は捨てられない――!」
●奪還
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。クロムキャバリアにおいて、小国家の重要人物が誘拐されるという事件が起こってしまいました」
ナイアルテが示すのは、小国家『グリプ5』。
一つの大きな戦いが集結し、そして、新たなる大戦の足音が近づいているのだ。
今回、『グリプ5』より誘拐されたのは、『フュンフ・エイル』のクローン。未だ幼い少年である彼と数人の子供らである。
先の戦いで『フュンフ・ラーズグリーズ』はキャバリアと共に|光の渦《サイキックロード》へと消えた。
彼自身は他の『ラーズグリーズ』計画のクローンと違う。
『フュンフ・エイル』と『ヌル・ラーズグリーズ』の実子であり、百年前に冷凍睡眠によって時を経て、今の時代に『ラーズグリーズ』の子供らと兄弟として育った。
ならば、『ラーズグリーズ』計画のクローンに一つ空席が出来ることになる。存在しているはずなのに、存在していない子。
そう、『フュンフ・エイル』のクローン。
彼の存在は隠匿されていたが、一連の事件から開放された彼は『フュンフ・エイル』としてでもなく、ただの『フュンフ』として生きることを許された。
「……幸い、と言ってもよかったのかもしれません。ですが、彼の存在はこれまで『グリプ5』の周辺国家に潜伏していた嘗ての『憂国学徒兵』にまつわる組織にとって、新たなる小国家を生み出すための旗印として目を付けられたのです」
未だ幼い少年の『フュンフ』を誘拐し、洗脳する。
かつて『フィアレーゲン』がそうであったように、類まれなる能力を持つ存在をトップに据えようというのだ。
「これだけならば私達が介入することはありません。問題なのは」
そう、オブリビオンマシンの存在である。
『憂国学徒兵』にまつわる彼らが駆る機体がオブリビオンマシン。本来ならば、そのまま歴史に埋没していく存在であったのかもしれない。
けれど、オブリビオンマシンは戦乱の火種をまき散らす。漸く戦いが終わり、まとまりかけていた『グリプ5』を内側から再び分裂させようとしているのだ。
そんな彼らが『フュンフ』と子供らを誘拐してどこに向かおうとしているのか。それは方角からみて『フォン・リィゥ共和国』であるようである。
「この小国家に彼らが逃げ込めば、私達が介入したとしても『グリプ5』と『フォン・リィゥ共和国』との火種を取り除くことはできないでしょう。一刻も早く、彼らを止め、オブリビオンマシンを破壊して融解された子供らを救出しなければなりません」
現場には簡易型『レーギャルン』を駆る『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』が急行している。
彼らと連携して、これを止めることもできる。
だが、すでに『憂国学徒兵』が逃走経路に選んだ荒野は、彼らの領域だ。多くの四足型キャバリア『バスターレオ』が存在し、強襲してくる。
「この用意周到さから見て、これが突発的なものではないことは言うまでもないでしょう。計画を練られたものです。そして、彼らを攫った黒幕の機体もまた容易ならざる相手……どうかご注意頂けたらと思います」
ナイアルテが頭を下げて、猟兵たちを送り出す。
今まさに摘まれようとしている未来がある。
戦いが終わっても、また新たな戦いの火種がくすぶる世界。平穏には程遠く。戦乱だけが渦巻く。
それでも猟兵たちは知っている。
弛みなく、諦めることなく、ただひたすらにより良き明日を、皆の幸いを求める者たちが、あの世界にはいることを――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、小国家『グリプ5』において起こってしまった新たな戦乱の火種。
それを摘み取るためのシナリオとなっております。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
集団戦です。
誘拐犯たちは『憂国学徒兵』を名乗っており、彼らが逃走経路に選んだ荒野のあちこちには強襲用の四足キャバリア『バスターレオ』が配備されています。
かなりの数を用意してあり、このキャバリアがすべてオブリビオンマシンであることからも、今回のことは計画されていたことなのでしょう。
彼らは無論、オブリビオンマシンに乗っているため、正気を失っています。
●第二章
ボス戦です。
今回の誘拐事件を起こした主犯が駆る機体である『キュロープス』との決戦です。
彼がなぜ『フュンフ・エイル』のクローンである『フュンフ』の存在を知っていたのか、また彼を使って新たなる小国家をなぜ生み出そうとしているのか。
なんにせよ、彼を止めなければ平穏に近づいていた『グリプ5』は再び戦乱の渦中へと進むことでしょう。
●第三章
日常です。
救出した子供らを小国家に送り届けなければなりません。
その間、猟兵の皆さんは彼らと交流することができます。
多くのことができるでしょう。この後みなさんがどうするのか、それは皆さんの自由です。
それでは、物語は次のように語られ、戦乱の火種となるか、それとも平穏への架け橋となるか、分岐点に差し掛かった皆さんの戦い、その物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『バスターレオ』
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POW : ストレートタックル
【ブースターによる直線的突進攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : インセンディアリー
レベル×1個の【焼夷弾】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ : ブーステッドブレイズ
自身に【インゴットを燃焼させて生み出した炎】をまとい、高速移動と【高熱の炎】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:イツクシ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「『ズィーベン』、まだ間に合う。このまま行かせては駄目だ! あの戦いの意味がなくなってしまう」
「わかってるってば! でも、敵が……!」
二機の簡易型『レーギャルン』が荒野に差し掛かった瞬間、強襲してくる四足の獣の如きオブリビオンマシン『バスターレオ』。
エネルギーインゴットを燃やすことによって得られる膨大な出力全てを速度に振り切った機体であり、活動時間が短いにも関わらず、その速度だけで彼らの足を止めているのだ。
自身たちの身を顧みない特攻のごとき戦い方に『ズィーベン』も『ゼクス』も手を焼いていた。
こうしている間にも『フュンフ・エイル』のクローンと数人の子供らを載せたポッド、それを掴み逃走する『キュロープス』は小国家『フォン・リィゥ共和国』へと近づいていく。
そのまま逃げ込まれてしまえば、もはや取り戻す術はない。
仮に強行したとしても、彼ら自身が小国家間の火種になることは言うまでもない。
「俺達はずっと待っていたのだ。百年の間、この時を! 自分たちに受け継がれてきた使命の意味を。『憂国学徒兵』は今ここに復活したのだ! 偽りの平穏などいらない。真に得るべき平穏のためには!」
『バスターレオ』が疾駆する。
燃えるような出力を発露させながら、荒野を疾駆する。
あまりにも用意周到。
機体の特性も、このためだけに用意されたかのようなスペックだ。
「勝手なことを……! お前たちはあの子らを利用するつもりだろう。ただそのためだけに、屁理屈を述べているに過ぎない!」
「偽りの走狗が言うことか!」
『バスターレオ』が次々に荒野から駆けつけ、二機を包囲していく。
その数は圧倒的であった。
どれだけ彼らが『エース』であるのだとしても、その数を相手にするにはあまりにも分が悪い。
そんな戦場に降り立つ猟兵たちは、あらたなる戦乱の火種こそを排除せんと、その力を再び振るうのだった――。
播州・クロリア
({舞狂人形}のコクピットで話しかけるように呟く)
舞狂人形、どう思いますか?今回の事件について
(探る様に触覚を動かす)
どうでもいい
そんなところでしょうか?
入れ込み過ぎは良くないですが
心を冷め過ぎるとステップが鈍りますよ?
({舞狂人形}が急に立ち止まると救いを求めるように天を仰ぎ手を伸ばした後{晩秋の旋律}で『ダンス』を始める)
なるほど
幾度となく過ちを見聞し体験したにも関わらず
過去の呪縛から逃れることができない彼らへの憐憫を舞に込めたのですね
まぁ貴方としては彼らだけを憐れんだわけじゃないかもしれませんが…
(ダンス中に『衝撃波』で一気に敵機に接近するとUC【蠱の足】で{舞狂人形}が蹴りを叩きこむ)
流線型のシルエットを持つジャイアントキャバリアは、ゆるりと足を止めた。
戦場にあって足を止めることは死を意味する。
生き残るためには動き続けなければならない。
けれど、そのジャイアントキャバリアは確かに足を止めたのだ。
「この期に及んで足を止めるだと……?」
「馬鹿め、こちらの機動力を前にカウンターを狙うなど!」
オブリビオンマシン『バスターレオ』を駆る『憂国学徒兵』のパイロットたちが、次々とその高速戦闘性能にかまけるように、そのジャイアントキャバリアの周囲を取り囲む。
「『舞狂人形』、どう思いますか? 今回の事件について」
播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は自身が駆るジャイアントキャバリアのコクピットの中で、脳無き存在に語りかける。
反響する言葉は、共鳴するように音を変える。
彼女の触覚が探るように動かされ、けれど反響した音は『舞狂人形』の無関心の色を見せるだろう。
言葉にするならば、『どうでもいい』。そんなところだろうか。
クロリアにとって、入れ込みすぎることは良くないことだと理解できるものである。だが、心まで冷めきってしまえば、己のステップが鈍る。
『バスターレオ』たちから放たれる焼夷弾が周囲に炎を撒き散らす。
立ち止まった『舞狂人形』が救いを求めるように天を仰ぎ、手をのばす。
それは炎の中に沈みゆくモノの悲哀であるように思えたかも知れない。
けれど、それは過ちである。
紡がれるは寂寥感。喪失感。
あるのは退廃的な死。
故に、語られるのは、幾度となく過ちを見聞し体験したにも関わらず、過去の呪縛から逃れることのできない『憂国学徒兵』たちへの憐憫。
「なるほど。それがあなたの答え」
「何をごちゃごちゃと! 打ち込み続けろ! 包囲して炎を躱せないようにすれば、ジャイアントキャバリアとて!」
放たれ続ける焼夷弾。
どれもが直撃ではなかったが、周囲の炎がジリジリと軽量型の装甲を灼く。
「まぁ、あなたとしては彼らだけを哀れんだわけじゃないかもしれませんが」
流線型の機体が、その襲撃を放つ。
鞭のようにしならせた脚部が放つ衝撃波が、焼夷弾によって生み出された炎を切り裂き吹き飛ばす。
まさに蠱の足(コノアシ)。
風をまとった衝撃波は、再び燃え盛るだろう。けれど、その僅かな瞬間を『舞狂人形』は見逃さない。
踏み込み、一瞬で『バスターレオ』に距離を詰めると、その襲撃でもって蹴り上げる。
さらにダンスを刻むかのようなステップでクロリアは機体のリズムを感じる。
晩秋の戦慄。
物悲しさもある。
失い続けることへの忌避がある。
どうしようもない戦いへの悲しみがある。
けれど、人はそれを経験しながら生きていく。避けられぬ悲しみが、立ちふさがる苦しみが、痛みを連れてくるというのならば、それを内包していくのが人生である。
「ならば、その呪縛を解き放ちます」
流線型の機体が炎の中、舞い踊る。
振るわれる蹴撃のことごとくが熱暴走するかのように燃え盛るエネルギーインゴットに寄って得られた力で動く『バスターレオ』を砕いていく。
『舞狂人形』が見ていたのは、人だけではない。
オブリビオンマシン。
滅びを待ちながら、滅びを齎さんとするモノたち。
そこに『舞狂人形』は脳なき頭蓋に音を響かせ続ける。憐憫の音をクロリアは聞きながら、舞うままに戦場に満ちる炎を切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『あの闘いを想いを無に帰すつもりか……悪逆非道の馬鹿どもが!全員まとめて叩き潰す!』
コスモスター・インパルスをかり、叫ぶ。
【オーラ防御】を纏い、【戦闘知識】で動きを【見切り】回避。すれ違いざまにブレードでの【鎧砕き】と電磁機関砲での【制圧射撃】を叩き込む!そしてユーベルコード【獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』】の炎で焼き付くすぜ
炎は戦いの象徴であっただろうか。
オブリビオンマシン『バスターレオ』は己のエネルギーインゴットを燃やしながら、それ故に膨大な出力を速度に変える強襲用キャバリアであった。
四足の獣の如き機体は荒野という遮蔽物の少ない戦場にあっては無類の強さを誇る。
ブースターが噴射し、得られる推力は圧倒的な速度を見せる。
「『憂国学徒兵』は三度立つ。俺達が真に国を憂いているからこそ、民は俺達の行いをしれば、納得するはずだ」
オブリビオンマシン『バスターレオ』を手繰る彼らにとって、『ラーズグリーズ』計画。かつての『憂国学徒兵』のクローンは、国家に対する背信そのものであった。
『ハイランダーナイン』と呼ばれた不出生の『エース』たちの力を後世にまで残す。
それによって得られる軍事力。
戦いによって得られるものは多く、そして魅力的だ。
プラントが手に入れば生活は豊かになる。
けれど、多くの力を手に入れたことによって他者との軋轢が生まれることもまた事実だ。
故に彼らは認めない。
今は確かに平穏に見えるだろう。
けれど、必ず滅ぶ平穏など真であろうわけがない。
「故に偽りの平穏を維持しようというものたちを俺達は許さない。一時の平穏のために、人ならざることをしようというのが!」
『バスターレオ』のパイロットたちの言葉は事実であろう。
けれど、ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)はそれを否定する。
「あの戦いを、想いを無に帰すつもりか……悪逆非道の馬鹿どもが!」
『コスモスター・インパルス』を駆り、『バスターレオ』の直線的な機動を躱す。
人型の戦術兵器であることが多いキャバリア。
四足の獣の如き機動を見せる『バスターレオ』に通常のパイロットであれば戸惑い、対処が送れるだろう。
けれど、ガイは猟兵である。
人外なるモノたちと戦ってきた経験があるのならば、キャバリアであろうと対処出来ぬ理由はない。
逆に獣の如き動きを見せるからこそ、戦いは容易であったのかもしれない。
「全員まとめて叩き潰す!」
叫ぶガイ。
放たれる電磁機関砲から弾丸がばらまかれ、『バスターレオ』たちの直線的な動きを止める。
確かに加速は驚異的なスピードを生み出す。
さらに四足であるがゆえに方向転換は容易。これが二脚の人型であったのならば、速度を制動出来ず機体のバランスを崩しただろう。
「獣のような動きをするなら!」
ブレードの一撃が『バスターレオ』を吹き飛ばし、その走行を切り裂く。
「コイツ……『バスターレオ』の機動に対応するだと!?」
「ありえん! 囲んでしまえば!」
「――と思ったか、馬鹿共が!」
ガイの瞳がユーベルコードに輝き、その力を発露する。
獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』(ゴク・グレンカイホウ・ヴリトラ・ファンタズム)。
それは9つの首を持つ竜を模した獄炎。
膨れ上がる炎は、刀身より開放され、『コスモスター・インパルス』を四方から狙う『バスターレオ』を一瞬で炎龍の顎でもって掴み上げ、大地に叩きつける。
「グハッ!? 炎が、実体化している……!?」
「全てを灰燼と帰す。それがヴリトラの炎、獄炎竜の魂よ! 荒ぶる紅蓮の炎で、その機体は焼き尽くす!」
満ちるユーベルコードの炎が、『バスターレオ』を捉えたまま、その装甲を溶解させていく。
凄まじい熱量にコクピットブロックが脱出機構を作動させ、排出させる。
「平穏に真と偽りを求めるからそうなる。世界は二面性ではなく多面性で見ることだな」
ガイはブレードを振りかぶり、さらに迫る『バスターレオ』たちと向きなおる。
戦いはいつだってあらゆるものを破壊していく。
けれど、破壊の後にこそ再生があるのならば、偽りと呼ばれた平穏すらも真の平和へと変わっていくだろう。
いや、そうしなければならない。
人の手に世界があるのではない。人が世界の輪郭を作っていく。ならばこそ、ガイは生命の埒外たる猟兵として、彼らの道行きに過去の化身たるオブリビオンマシンの存在を許さないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
ああもう。
そうだった。前回黒幕黒幕なんて言ってたけど、あの事件はこのクロムキャバリアという世界の片隅で起きた小さな…小さな事件の一つに過ぎなかったのよね。
全然エンディングなんかじゃない。ほんと…やんなる…。
はあ、あの事件…フュンフくんたちの想いを無にしないためにも…
頑張らないと…。行くよレスヴァント!
ARICAを搭載したパールバーティの『援護射撃』を受けつつ、ボクの『操縦』するレスヴァントで特攻。
敵陣にUCで加速しつつ接近したら、敵機の動きを『瞬間思考力』で『見切り』敵の攻撃を回避しつつ接近。
近距離からのアストルティア『制圧射撃』を叩き込む。
ホント。何でこうなるのかしら…ねえシビリアンジョー…
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は思い出す。
呻くように吐き出した息は、クロムキャバリアが戦乱渦巻く世界であることを思い出したからだ。
「ああもう。そうだった」
そうだったのだと、彼女は『レスヴァント』のコクピットの中でコンソールボックスに拳を叩きつける。
小国家『グリプ5』を取り巻く事件は収束を見せた。
いくつかの戦いがあった。
忘れ得ぬ戦いばかりであったことだろう。
得たもの、失ったもの。
それらを天秤に掛けた時、釣り合いが取りているとは彼女は思わなかったはずだ。
あの事件は、クロムキャバリアという世界の片隅で起きた小さな……小さな事件の一つに過ぎなかったのだ。
「全然エンディングなんかじゃない。ほんと……やんなる……」
戦いは世界中で起きている。
今日も知れず、明日もわからず。
見通す先は闇ばかりである。どこかしこでも戦乱の火種がくすぶっている。
オブリビオンマシン『バスターレオ』が放つ焼夷弾を躱し、ユーリーは改めて息を吐き出す。
「はあ、あの事件……『フュンフ』くんたちの想いを無にしないためにも……頑張らないと……」
『フュンフ・ラーズグリーズ』は『熾盛・改』と共に|光の渦《サイキックロード》へと消えた。
すでにもう此処には居ない。
だからこそ、その想いは平和のために紡がれていくべきだったのだ。
だが、『ラーズグリーズ』計画という名の『ハイランダーナイン』のクローン。唯一空席であった『フュンフ・エイル』のクローン。その幼子たる少年が今まさに戦乱の火種として利用されようとしている。
「『憂国学徒兵』の道を阻むものは、浄化の炎に消えろ!」
「偽りの平穏の影で、奴らは未だ過去の英雄を使い潰そうとしている。そのどこに正義がある。戦いがないのが平穏だというのに、まだ戦乱の火種を隠し続けているのだ!」
『バスターレオ』のパイロットたちが口々に叫ぶ。
その姿を、その言葉をユーリーは完全に否定できない。
「わかっているけれど、わかっていたはずだけれど……! ボク自身がよぉく、わかっていたことなんだけれど! 行くよ!『レスヴァント』!」
煌めくユーベルコードの輝き。
ユーリーの瞳と『レスヴァント』のアイセンサーが輝きに満ちる。機体に搭載された『殲禍炎剣』に感知されなくなる特殊粒子が解き放たれ、一気に飛翔する白いキャバリア。
焼夷弾は地上にありて効果を発揮する。
だが、ユーリーの駆る『レスヴァント』は空すらも戦場に変える。
「空を、飛ぶキャバリアだと!?」
「遅い!」
『パールバーティ』の援護射撃を受けながら、ユーリの駆る『レスヴァント』の手にしたキャバリアソードが『バスターレオ』の四肢を切り裂き、無力化する。
彼女の冴え渡る瞬間思考は、四脚のオブリビオンマシンを無力化するルートを一瞬で見極め、駆け抜ける。
キャバリアソードで切り裂き、V字のように鋭く再び空へと飛び立つ『レスヴァント』のアサルトライフルからの射撃が次々と『バスターレオ』を行動不能にしていく。
「ぐおっ! 機体の……エネルギーインゴットを的確に狙っているのか!? 馬鹿な……!」
「脱出しなよ! 無駄に死ぬことなんてない!」
ユーリーは行動不能になった『バスターレオ』のコクピットハッチを引きちぎるようにして剥がし、さらに次なる敵を打ち倒す。
平和は遠く。
けれど、確かに見えていたのだ。
その道筋が。人の心を絆ぐのが、あの熾火。そして、『フュンフ・ラーズグリーズ』が繋いだのが人の平和への想い。
多くに打ちのめされ、他者より多く膝を折って来たからこそ彼は平和を求めた。
ならばこそ、ユーリーはその想いを絶やしてはならぬと戦場を駆け抜ける。
「ホント。なんでこうなるのかしら……」
銃火の音が耳を撃つ。
どうしようもないことなのか。
戦いは終わらず、戦乱だけが人の心を荒ませていく。
ユーリーは喪ったモノに語るかける。
それが詮無きことであると知りながらも、言葉にせずにはいられなかったのだ。
かつての愛機……。
「ねえ『シビリアンジョー』……――」
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
戦いはずっと続く。
故国が亡んだ後も、あの戦いの後も、ずっと、ずっとずっと!
ディスポーザブル02【操縦】
メクサラブースターで【推力移動】
突っ込んでくるバスターレオに内蔵グラビティガンの重力球で【重量攻撃】
敵を押し止め【瞬間思考力】バスターレオと高速ですれ違いながらメクサラを操り、【早業】で【切断】
…戦え、もっと戦え、ディスポーザブル!!
【召喚術】『戦従亡霊』02群を率い【集団戦術】
重力球で焼夷弾を、炎を【なぎ払い】突進を押し留め、
ファウダーの【弾幕】で、メクサラの灼熱で、壊し壊されながら進撃する
いつ終わりが来るかなんて知らない。分からない!
だから、自分は壊し続ける!いつまでも、いつまでだって!!
どれだけ戦禍を振り払うのだとしても、戦いは続く。
どうしようもないことだと言えば、それまでだ。滅びても、国が興るのだとしても、人の営みが在る限り、戦いは起こり続ける。
それが人の歴史の積み重ねであるというのならば、あまりにも愚かしいものであったことだろう。
けれど、人は求めている。
争いのない明日を。
平和という名の幻想の如き何かを。
ならば、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は正しく理解している。
「戦いはずっと続く」
悲しいとも思わなかったことだろう。
彼女にとって、戦いとは存在している意義でもあった。戦いがあるからこそ、彼女はいる。戦い続けることだけを宿命づけられた破壊の申し子。
「故国が亡んだ後も、あの戦いの後も、ずっと、ずっとずっと!」
六本腕の異形たるキャバリアが荒野の戦場をひた走る。
メガスラスターの推力は、オブリビオンマシン『バスターレオ』の放つ焼夷弾を振り切るようにして機体を推し進める。
「この『バスターレオ』を超える速度だとでもいうのか!」
「だが、囲めば!」
『憂国学徒兵』と呼ばれたオブリビオンマシン『バスターレオ』に乗るパイロットたちは高速機動戦闘でもって『ディスポーザブル02』を囲む。
赤い灼熱光剣が閃き、囲う『バスターレオ』を切り裂く。
さらに放たれる重力球が彼らの機体を大地に押し付ける。高機動ゆえに、『バスターレオ』は膨大な出力を赤熱するエネルギーインゴットに頼り切りなのだ。
重力に因われた瞬間、その機体は負荷を受けてその場にかく座するしかないのだ。
「……戦え、もっと戦え、『ディスポーザブル』!!」
小枝子の瞳がユーベルコードに輝き、周囲に不可視の『ディスポーザブル02』の大群が現れる。
見えぬ存在。
けれど、『バスターレオ』を駆るパイロットはセンサーモニターに点在する敵の数に混乱するだろう。
「俺達以外にここまで用意周到に数を用意していた!? そんなバカな、俺達の動きは気取られていなかったはずだ!」
「うろたえるな! 偽りの平穏でもって真実をひた隠す者たちに惑わされるな!」
だが、紛れもなく実体をもつ戦従亡霊(マシン・ゴースト)たちは、一斉に『バスターレオ』たちに襲いかかる。
呪詛の如きパルスマシンガンが弾丸を打ち出し、『バスターレオ』の突進を止め、さらに灼熱光剣の一閃が機体をバラバラにしていく。
「見えない敵が……どこだ、どこにいやがる!」
「こんな、こんなところで終わるなんて……!」
彼らの動揺を他所に小枝子は叫ぶ。
「いつ終わりが来るかなんて知らない。分からない!」
それは真の心より出た叫びであった。
戦いは続く。終わりは見えない。
一つの戦いが終わっても、また新たなる戦いの火種が襲いくる。それが当然である。なぜならば、此処は戦乱の世界、クロムキャバリアだ。
終わりは始まり。
始まりは終わり。
その輪廻の如き争乱の環に己は因われているのだと小枝子は叫び続ける。
故に。
「だから、自分は壊し続ける! いつまえも、いつまでだって!!」
立ち止まることは許されない。
偽りの平穏だというのならば、それさえも破壊していくだろう。その平穏を壊すものさえも小枝子は破壊する。
理由がたった一つだけ、一つだけあるのだとすれば、オブリビオンマシンのもたらす破滅の未来だけだ。
小枝子は戦場にありて破壊を齎す。
その破壊が再生に繋がると信じられずとも、己の出来る唯一をこそ遂行し続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
今度は憂国学徒兵がおやらかしになられましたの?
事情はどうあれ人攫いはいけませんのよ〜!
痛い思いをなされる前にお返しになって?
本日のヴリちゃんは卸したてのクロムジェノサイダーですわ〜!
初めてのお相手は…なんだか物凄くヴリちゃんのおライバルっぽい雰囲気ですわね!
相手にとって不足無しですわ〜!
向かってくるならそれで良しですわ
正面から受け止めますのよ
その為のラージシールドですわ
一撃目を甘んじて防御して再度繰り出される二撃目で反撃に転じるのですわ
突進をギリギリまで引き付けて…カウンターエッジ!
ギロチンシザーで引っ捕えて真っ二つにして差し上げますわ〜!
おほほ!近寄るものは皆ギロチンでお処刑でしてよ〜!
オブリビオンマシン『バスターレオ』が咆哮する。
赤熱するエネルギーインゴットから排熱される炎は、まるで一つの弾丸のようになって圧倒的な加速と共に荒野を進み、『キュロープス』を追う猟兵たちの道を阻む。
「高速機動戦闘において『バスターレオ』に挑むなど!」
四脚の獣の如きキャバリア。
それが『バスターレオ』である。
遮蔽物の少ない荒野にあって、彼らの速度を妨げるものは皆無だった。
だからこそ、逃走のルートを此処に絞ったのだろう。
ここならば追手を強襲するのに『バスターレオ』という機体の特性は見事に嵌っていたからだ。
「本日のヴリちゃんは卸したての『クロムジェノサイダー』ですわ~! 初めてのお相手は……なんだかものすごくヴリちゃんのおライバルっぽい雰囲気ですわね!」
あら~とメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は大型の格闘戦特化仕様となった『ヴリトラ』のコクピットの中で首を傾げる。
『メタルジェノサイダー』。
それは背面に装備された盾と鋏が一体となった副腕でもって保持された武装である。
攻防共に優れているからこそ、迫る『バスターレオ』たちの突進をなんなく受け止める。
「『憂国学徒兵』の俺達を止めるか!」
「事情はどうあれ人攫いはいけませんのよ~! 痛い思いをされる前にお返しになって?」
言葉面は優しくともメサイアは『バスターレオ』に加減をすることを知らなかった。
ラージシールドが突進を正面から受け止める。
凄まじい加速に寄ってられた突進はあらゆるものを弾き飛ばす――はずだった。けれど、『ヴリトラ』は一歩も退くことはなかった。
大地に根ざしたかのような二脚は、四脚で押す『バスターレオ』の推力を完全に殺していたのだ。
「――ッ、止めた!?『バスターレオ』の突進を!?」
「そのためのラージシールドですわ」
ぐるりと『バスターレオ』が背面跳びのように宙を舞い、体勢を整える。その間にさらに別の『バスターレオ』が『ヴリトラ』を囲うようにして突進してくる。
その一撃をメサイアの瞳は見ていた。
浅い。
そう、浅いと感じる。
突進力を活かしきれていないと言わざるをえない。
「お踏み込みが足りねぇんですのよ!」
ラージシールドの直下から現れる反撃の刃(カウンターエッジ)たるギロチンシザー。その一撃が迫る『バスターレオ』の首を一瞬で刈り取る。
「なんだ、あの武装は……!」
「ギロチンシザーでしてよ~! これでよらば斬る! 真っ二つにして差し上げますわ~! ほらほら、おいでなさいな!」
『ヴリトラ』のアイセンサーが煌めく。
寄って来ぬというのならばとアンカークローが放たれ、『バスターレオ』を引きつけ、ギロチンシザーの一撃で噛み切るかのように両断する。
「おほほ! 近寄るものは皆、ギロチンでお処刑でしてよ~! 近寄らなくても道を阻むのならば、お処すのですわ~!」
『ヴリトラ』の通った道には『バスターレオ』の首が転がり、首と分かたれた胴体がかく座していく。
その光景は狂気に侵されたパイロットたちをして震撼させるものであった。
如何に『憂国学徒兵』と名乗っていたとしても、それは嘗ての百年戦争のおりに活躍した者たちではない。
『グリプ5』で嘗て『第二次憂国学徒兵』と呼ばれた彼らでもない。
名を騙り、オブリビオンマシンによって思想を歪められた者たちでしかない。
「どちらにしたってお構いなしなのですわ~! 怯えになって、お竦みになって。わたくしの道を阻むものはどんな思想があろうとお処させていただきますわ~――!」
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【理緒(f06437)さん】と
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくてアッハイいつも一緒ですみません!!
もっと『|精進《クノイチ》』します!
さておき理緒さんの言う通り!
子供の未来だけは汚してはいけないのです!
かもんっ!『ファントムシリカ』!!
……あの、理緒さん?シリカさん?キャラ違うとかなんで言うんです??
理緒さんが空からなので
私は地上で応戦しましょう
んーレオは急に止まれない?
それならこうです
【VR忍術】おっとお腹の真下から串刺しにしてくる土の槍が!の術!!
簡単に言うと百舌鳥の早贄状態ですねー
これなら仲間も守りつつ理緒さんも狙いやすいでしょ
さぁズィーベンさんゼクスさん今のうちに!
菫宮・理緒
【サージェさんと】
『フュンフ』さんのクローンか。
潜在能力とかすごそうだけど、結局は育て方次第だよね。
それにわたしとしては、『フュンフ』さんの兄弟達を、コマみたいされるのは、ね。
え?子供が汚染されそうなくらいには忍べてないのに……ってそれはいいか。
【セレステ】を飛行モードにして、『殲禍炎剣』に捉えられるぎりぎりまで高度をあげたら、
【Density Radar】で『キュロープス』を捜索・捕捉。
サージェさんや『ゼクス』さん、『ズィーベン』さんと情報共有したら、
そちらをめがけて『バスターレオ』を蹴散らしていこう。
地上のサージェさんと連携しつつ、
わたしは空からUCと【M.P.M.S】を対地でいくよー!
一つの戦いが終わり、一つの平穏が訪れる。
けれど、その平穏が偽りであると、またくすぶる火種が戦火を燈さんとしている。
『フュンフ・エイル』。
小国家『グリプ5』の国父にして、過去最強の『エース』として名を悪魔とも救世主とも形容された存在である。
『ラーズグリーズ』計画は、本来『憂国学徒兵』、最初に9人である『ハイランダーナイン』のクローンによる国力の維持を目的とした計画だった。
だが、その『フュンフ・エイル』のクローンと思われていた『フュンフ・ラーズグリーズ』は冷凍睡眠によって時を経た実子であり、先の戦いの最中、|光の渦《サイキックロード》へと消えた。
そう、本来の計画では存在していた『フュンフ・エイル』のクローン。
隠匿されていた幼子を持って『憂国学徒兵』を語る者たちは戦乱の火種としようとしている。
「『フュンフ』さんのクローンか。潜在能力とかすごそうだけど、結局は育て方次第だよね」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、小国家『グリプ5』にまつわる事件に多く関与してきた猟兵の一人である。
そんな彼女は『リオ・セレステ』と共に暴走衛生『殲禍炎剣』に感知されぬ高度を飛びながら、荒野を闘争する『キュロープス』を補足する。
「『ゼクス』さん、『『ズィーベン』さん、そっちに敵の位置を捕捉した情報を送るからね!」
「ありがとうございます!」
「敵はまだ逃亡を許す限界点に至っていないのなら!」
「サージェさん!」
「及びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくてアッハイいつも一緒ですみません!! もっと『|精進《クノイチ》』します!」
いつもどおりの前口上。
いや、ちょっと違う。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、転移後に指を鳴らす。
「かもんっ!『ファントムシリカ』!!」
虚空より出現する白と紫を基調とした機体にサージェは座し、迫る『バスターレオ』の突進を前に、そのアイセンサーをきらめかせる。
「んーレオは急には止まれない? それならこうです! VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)、おっとお腹の真下から串刺しにしてくる土の槍が! の術!!」
「サージェさん、長いしわかりにくい」
「アッハイ。えっと、百舌鳥の早贄の術なんてどうでしょう!」
理緒から送られてきた位置情報を元にサージェのユーベルコードに寄って生み出された大地を隆起させることによって生み出された土の槍が『バスターレオ』の装甲の薄い腹部を貫き、その突進を止める。
「機体を止めた所で、エネルギーインゴットの暴走エネルギーがあれば!」
吹き荒れる炎がサージェたちを襲う。
だが、それらを振り切るようにして簡易型『レーギャルン』の二機がビームブレイドで赤熱するエネルギーインゴットを切り裂く。
理緒から伝えられる情報を正しく認識した『ゼクス』と『ズィーベン』が『エース』ならではの技量で持ってこれを撃破するのだ。
「蹴散らしていこう、時間があんまりないよー」
「さぁ、『ズィーベン』さん『ゼクス』さん、今のうちに!」
『ファントムシリカ』の放つ土槍の一撃が次々と『バスターレオ』を縫い止めていく。
敵の行動を予測し、これを足止めする。
『バスターレオ』の持ち味である機動力を殺せば、後は容易いというものだ。
だが、未だ首魁たる『キュロープス』の背中を捉えられていない。
「『フュンフ』さんの兄弟たちをコマみたいにされるのは、ね。どうしても嫌だよねー」
「理緒さんの言う通り! 子供の未来だけは汚してはいけないのです!」
「……なんだかサージェさんキャラが違うね」
理緒の言葉にサージェは驚く。キャラが違う? いつもどおりですけど、とという顔をしているが、『ゼクス』がそのとおりだよなぁって口には出さないが頷いている。
あれ!? とサージェは自分のキャラクターが、いや、クノイチとしての矜持がなんとなく伝わっていないことを理解する。
白猫又の『シリカ』ですら頷いている現状。
「いいからいいから。今はいいから。サージェさん、前方の敵を足止めして。速度で勝る敵は機先を制することが肝要なんだからー」
「え、えー……わかりましたけど!」
なんとも理不尽な気持ちになりつつ、サージェは『ファントムシリカ』で駆け抜ける。理緒の援護を受け、簡易型『レーギャルン』の攻撃を助けながら『バスターレオ』の群れを蹴散らす。
荒野を征く四機は、その視線の先に『キュロープス』を捉えるだろう。
手にしたポッドを後続の部隊に預け、迫る猟兵たちを殲滅せんとする『傑作』機。
その尋常ならざる威容。
パイロットの技量ではなく、オブリビオンマシンの性能の高さを感じ取り、予断を許さぬ状況に突入していくのだ――。
大成功
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第2章 ボス戦
『キュロープス』
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POW : 高周波振動斧“アルゲース”
【刃部をプラズマ化、超高温で溶かし斬る斧】が命中した対象を切断する。
SPD : 荷電粒子砲“ステロペース”
【頭部分に搭載された高出力荷電粒子砲】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【エネルギー充填120%の出力】で攻撃する。
WIZ : 電磁場発生装置“ブロンテース”
自身の【ペンチアーム】から【高出力の電磁波】を放出し、戦場内全ての【電子回路にダメージを与えキャバリア兵器】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
イラスト:エンシロウ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ユーリー・ザルティア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
緑色の装甲が荒野に見える。
異形の片腕を持ち、頭部に備えられた荷電粒子砲は、過去の機体ながら『傑作』機と呼び称されるに値する性能を持っていた。
「偽りの平和を守ろうとする走狗共。おまえたちは何もわかっていない。愚物そのもの。俺達が求めているのは、真の平和だ。何者にも脅かされるのとのない、悠久たる平和。真の平和だ」
パイロットの言葉はオブリビオンマシンに思想を歪められている。
だが、その言葉の根底にあるのは平和を求めてやまぬ心であろう。
『憂国学徒兵』を名乗るのもまた、過去に引きずられているからだ。『第二次憂国学徒兵』のような熱情はない。
あるのは、狂気そのもの。
今ある平穏を偽りと侮蔑し、それを壊そうとする。壊した後に再生はあるだろう。けれど、壊さなくて良いものまで巻き込んでしまう。
「『フュンフ・エイル』、ならびに『ハイランダーナイン』のクローンを作り出し、戦力を拡充しようとしていた国家、『グリプ5』には最早、平穏など必要なし。偽りによって我らを欺こうとしていた意志しか感じられぬ」
故に、と『キュロープス』のパイロットは叫ぶ。
「真の平和とは! あらゆる他者を、困難を、脅威を排除した先にあるのだ。他者が存在するから争いが発する。国家という枠組みがあるからこそ、区別が生まれ差別が蔓延る。ならば!」
『キュロープス』の最センサーが煌めく。
妖しく、そして力強く。
歪めたパイロットの思想に呼応するように、その炉の出力を上げていく。
『傑作』機と呼ばれた性能。
それを発露するかのようにジェネレーターが唸りを上げた。
「偽りを掲げる者すべてを滅ぼし、真しかない世界を生み出すのみ。そのために必要なのは『エース』よ!」
圧倒的な力が要る。
かつて悪魔とも救世主とも呼ばれた不出生の『エース』。
そのクローンが必要なのだ。故に『キュロープス』は、剣呑なる重圧を発揮する――。
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『何が真の平和だ。てめえらのはただの破壊…てめえらは…平和の敵!ただの悪人よ!!人々が手をとる‥それが大事なのをわかっちゃいねぇ!』
相手が反論したなら
『やかましいぞ!ド悪党が!!』
と叫ぶぜ
【オーラ防御】を展開し、電磁機関砲での【制圧射撃】で牽制しながら【戦闘知識】で動きを見極め、【見切り】で避けるぜ
間合いをつめ、ブレードでの【鎧砕き】とユーベルコード【二天一流『蒼月一閃』】で斬り裂くぜ!
『貴様らに『憂国学徒兵』を名乗る資格はない!ただのテロリスト‥ド悪党よ!』
猟兵たちの前に立ちふさがるのは過去の『傑作』機。
機体事態は通常のキャバリアを踏襲しているが、そのスペックは過去にありても遠近の攻防に秀でたものであると理解できるだろう。
緑の装甲、そしてアイセンサーが煌めき『憂国学徒兵』を騙る『キュロープス』のパイロットが、機体性能ゆえの力の発露を見せる。
「何が真の平和だ。てめえらはただの破壊……てめえらは……平和の敵! ただの悪人よ!!」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は『コスモスター・インパルス』を駆り、叫ぶ。
彼らの騙る偽りの平穏。
それは確かにそのとおりであったのかもしれない。
戦乱が渦巻く世界。クロムキャバリアにおいて、平和とは仮初のものでしかなく、平穏とは打ち破られるものであったからだ。
誰もが求めてやまないものであっても、得られない。
「我らが悪人かそうでないかは後の歴史家が語ることであろうよ! 圧倒的な力の前には、貴様の語る言葉すら届かぬ!」
電磁機関砲の射撃を躱しながら『キュロープス』が迫る。
手にした高周波振動斧は一撃受けてしまえば、どんな装甲だろうと切り裂かれてしまうだろう。
「人々が手を取る……それが大事なのをわかっちゃいねぇ!」
「人の手を取った所で、その手で裏切られることを知らぬから、そのようなことをいえる」
振るわれた斧の一撃をオーラのシールドが受け止める。
切り裂かれることは予見できていた。だからこそ、シールドは敵の一撃を反らすことに使う。
『コスモスター・インパルス』が反応し、切り裂かれるオーラから迫る斧の一撃をブレードで受け流す。
大地を溶断せしめる斧の一撃は苛烈そのもの。
だが、本当に恐ろしいのは頭部に備えられた荷電粒子砲であった。
これまでの攻勢はエネルギーを充填するための余白でしかなかったのだ。煌めく頭部の砲口に湛えられたエネルギーの本流をガイは見ただろう。
「やかましいぞ! ド悪党が!!」
「どれだけさえずろうともな! 受けろよ、『ステロペース』!!」
放たれる荷電粒子ビームの一撃。
至近距離。
躱しようのないタイミングでの頭部の砲口より放たれる一撃は、オーラの防御すら間に合わない。
「月に煌めくわが刃!これぞ超神速の蒼き月なり!!」
煌めくユーベルコードに寄って放たれるは剣速にしてマッハ5.0を超える蒼い残光を残す超神速の斬撃。
振り下ろしたブレードの斬撃が荷電粒子ビームを切り裂く。
だが、それだけでは攻撃を防いだことにはならないだろう。迫る斧の一撃。
「力なき者の言葉など誰が重んずるものか。力無き者は、力在る者に利用されるだけだ。ただ搾取され、ただ奪われ、ただ無為に消費される生命! そのための偽りの平穏だとなぜ気が付かない!」
振るわれる。
不可避の一撃。
されど、煌めくユーベルコードは、二天一流『蒼月一閃』(ニテンイチリュウ・ソウゲツイッセン)。
一撃目に放った斬撃の衝撃波を足場に飛ぶ。
『コスモスター・インパルス』の手にしたブレード。その斬撃は超神速にして二連撃。
一撃目で荷電粒子ビームを切り裂いた斬撃は、さらなる二連撃目を解き放つ。
「貴様らに『憂国学徒兵』を名乗る視覚はない! ただのテロリスト……ド悪党よ!」
振り下ろされた斬撃の一撃が蒼い残光を残す。
ブレードの一閃は『キュロープス』の肩部装甲を切り裂き、袈裟懸けに胴を薙ぎ払う。
その一撃は、偽りを語る言葉をこそ切り裂く――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
生まれる前の命に役割を与えようとする者というのは
感受性、共感性が欠如しています。
他者(クローン)の気持ちが分からないから命を道具扱いできるのです。
わかりますか?舞狂人形
({舞狂人形}が肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こした後{紅焔の旋律}で『ダンス』を始める)
なるほど…執念ごと欲望と情熱で燃やし尽くそうというわけですね
痛快です。ぜひやってください
({蜂蜜色の陽炎}が生み出した『残像』で攻撃をかわすとUC【蠱の力】による不可視の攻撃と『斬撃波』を纏った回し蹴りを同時に行う)
ダンスは言語です。理解しようと努力すれば不可視が可視になるでしょう。
努力すれば、ですが。
切り裂かれた装甲が赤熱する。
肩部アーマーを切り裂かれながらも『キュロープス』は機体を制動させ、迫る猟兵達へと向かい合う。
「生まれた者には役割がある。何かを成さねばならぬという意味が、意義が。世界とはそういうものだろう。与えられたものを使わないで無為に過ごすことこそ罪である」
『憂国学徒兵』の名を語る『キュロープス』のパイロットが言う。
彼は現状を偽りの平穏であるとする。
確かにそうなのかもしれない。
クロムキャバリアは戦乱の世界。
闘争ばかりがうずまき、片時も平和となることのない世界である。しかし、それはオブリビオンマシンが火種を蒔くからである。
「生まれる前の生命に役割を与えようとする者というのは感受性、共感性が欠如しています」
播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は流線型のキャバリア『舞狂人形』に語りかける。
「他者の気持ちがわからないから生命を道具扱いできるのです」
目的と言った。
生まれた目的、意味。意義。
だが、それは他者の言葉でしかない。自らに適応される言葉ではないのだ。故に、他者をコマ扱いにできてしまう。
人間の愚かさだ。
自分以外の生命を自分のモノのように扱えると信じてしまっている。
「わかりますか?『舞狂人形』」
クロリアが静かに告げた。
ゆっくりと肩幅に開いた脚部。
腕部が大腿部をなぞりながらゆっくりと状態を起こす。その動きに意味はない。いや、少なくとも『キュロープス』には意味がなかった。
意味を見出すことができなかった。
当然であろう。
他者の生命をモノ扱いするモノにとって、もっとも縁遠きものであったからだ。
紅焔の戦慄は、鎮まることなく燃え広がる焔を表現した情熱と欲望のリズム。
情熱なき欲望は虚無である。
欲望なき情熱は虚偽である。
「なるほど……執念ごと欲望と情熱で燃やしつくそうというわけですね」
アイセンサーがユーベルコードに輝く。
「ほざくか! 偽りの平穏の走狗! 貴様たちのような者がいるから、のさばる者がいると知れ!」
振るわれる高周波振動斧。
その一撃は容易く装甲を切り裂くだろう。けれど、『舞狂人形』は蜂蜜色の陽炎と共に舞い踊る。
残像。
その斬撃は虚しく残像を切り裂くだけだった。
「残像……! 揺らめいている!」
「痛快です。『舞狂人形』、あなたのダンス、それでもってしめしてください。燃やし尽くしてください」
クロリアの言葉に応えるは、蠱の力(コノチカラ)。
ダンスによって蓄積された旋律のエナジーが不可視の力となって放たれ、『キュロープス』の機体を捉える。
「見えぬ力……振りほどけぬとでも思ったか!」
『傑作』機と呼ばれた『キュロープス』のペンチアームが不可視のエナジーを引き剥がす。
だが、それは一手送れることを示す。
あまりにも致命的な隙。
引き剥がされたエナジー。そこに飛び込むのは、舞う『舞狂人形』。
くるり、くるりと遠心力を蓄えた蹴撃の一撃が『キュロープス』の胴を薙ぎ払うかのように放たれる。
「ダンスは言語です。理解しようとすれば不可視が可視となるでしょう」
だが、クロリアにはわかっている。
他者を理解することを拒む者に、言葉なきコミュニケーションたるダンスの旋律は見えない。
故に『キュロープス』のパイロットは『舞狂人形』の襲撃を躱すことができなかったのだ。
吹き飛ばされる機体を尻目にクロリアは告げる。
努力すれば、と。
けれど、それが成されぬことを残念に思うことはない。
オブリビオンマシンによって歪められた思想などなければ、自ずと理解できる。人とは、元来そういう生き物なのだから。
言葉無くとも、体で表現する文化を持つ生命だとクロリアはこれまでも見てきたのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
見つけたぞ人攫い!!!
ディスポーザブル02【操縦】
メクサラーブースターから重力制御による【推力移動】に変更
更に|透明化《ステルス迷彩》と、【空中機動】高速曲芸飛行で視界から消え【不意打ち】背後からBXフォースサーベルで斬り掛る。
電磁波はサイキックシールドで【オーラ防御】
お前の戯言に興味はない!お前に滅ぼせるもの等ない!!
【早業】『迅壊砲』サーベルを持っていない4腕で、
敵の反撃より先に【追撃】の超高速掌打を放ち頭部【部位破壊】
誰よりも何よりも!偽りでしかないお前が壊せる物なんかない!!!
そのマシンからさっさと降りろォオオ!!!
至近距離からの掌打【弾幕】を叩き込む!
壊れろッ!オブリビオンマシン!!
吹き飛ばされる『キュロープス』。
その緑色の装甲はひしゃげながらも未だ五体は無事であった。肩部からの装甲は切り裂かれているが、それでもなお武装は十全。
右腕のペンチアーム。
左腕の高周波振動斧。
そして、頭部の荷電粒子砲。その砲口が光を湛える。充填された粒子の輝きが解き放たれる。
「小賢しい真似を! 受けろよ、『ステロペース』!!」
放たれる粒子ビーム。
けれど、そのビームの一撃を朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、『ディスポーザブル02』の軽量であるがゆえの機動性でもって躱す。
背を押すように灼熱光剣が形を変え、推力となって機体を走らせる。
「見つけたぞ人攫い!!!」
「言葉に気をつけろ、走狗! 貴様たちのような現状に慮るだけの存在がなどが!」
振るい上げられる斧。
だが、次の瞬間『ディスポーザブル02』の姿が消える。
「ステルス迷彩! だがな!」
振り返る『キュロープス』の脚部が背後から迫る『ディスポーザブル02』を蹴り飛ばす。
だが、その一撃を小枝子はサイキックシールドで受け止める。
上々たる反応速度。
『傑作』機と呼ばれた所以。
過去にこれだけの反応速度を叩き出す機体があったとは思えないほどの性能である。
砕けるサイキックシールドから小枝子は飛び出すようにして機体を走らせる。距離を詰める。
離されれば、頭部から放たれる荷電粒子ビームの餌食にしかならない。
「お前の戯言に興味はない! お前に滅ぼせるものなどない!!」
「そのつもりなどはないよ! 我らの目的は真の平和。偽りの平穏を打破してこそ得られるものだ!」
振るわれるサーベルを切り払う斧。
空を舞うサーベルに小枝子は一瞥もくれることはなかった。
徒手。
武装はない。ならば攻撃より先に武装を回収しようとする。
それが定石であり、決定的な隙となることを『キュロープス』のパイロットは理解していた。
だが、それは定石であれば。
通常であれば。
しかし、彼は知らない。目の前にいるのが生命の埒外たる存在、猟兵の手繰るキャバリアであることを。
「騎兵体術!!」
煌めくユーベルコードの輝き。
無手たる腕部より放たれるは、迅壊砲(ジンカホウ)。
近く不能たる超高速掌打。
その拳の一撃は触れたものをすべて破壊するオーラの衝撃波となって『キュロープス』の装甲を砕く。
「誰よりも何よりも! 偽りでしかないお前が壊せるものなんかない!!!」
「構いものか! 己が偽りであったとしても、いつわりの中で生きることなど!!」
頭部の荷電粒子砲が輝く。
この至近距離でも放つことができるのだ。
故に頭部に装備されている。長大な砲身を必要としない『キュロープス』の荷電粒子砲の真価がここにある。
「滅びろ、偽り!」
放たれる。
いや、其れより早く『ディスポーザブル02』の掌打の一撃が『キュロープス』の頭部をかちあげる。
放たれたビームが天を貫く。
そこ踏み込む『ディスポーザブル02』
「そのマシンからさっさと降りろォオオ!!! 壊れろッ! オブリビオンマシン!!」
超高速の連打が機体の装甲を砕いていく。
肩部が、腰部が、あらゆる装甲を砕き、亀裂を走らせながら痛烈なる打撃が『キュロープス』を吹き飛ばす――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
引き続き【セレステ】に搭乗。
真の平和、ねー……。
きっと本気でそう思っているんだろうね。
まぁ理想としては悪くないけど、
それだけにつけ込まれる隙も大きかった感じかな。
あなたの言う『真しかない世界』は、
あなた以外何もない、虚無の世界ってことだから、
その子をエースにしようって思ってる時点で破綻してるんだけど、
きっと今言っても解らないよね。
となると問題は……。
メカニックとして、どうやって『傑作機』を壊さず捕獲するか、だね!
【E.C.M】で操縦系統にエラー起こさせて、サージェさんに捕まえて貰うのがいいかな。
ということでサージェさんよろしく!
ぜったい壊しちゃダメだからね! 壊したら揉むよ!
サージェ・ライト
【理緒(f06437)さん】と
※引き続きファントムシリカに乗ったまま
……すやあ
あ、終わりました? あーよく寝たー
シリカがもふもふで気持ちよかったです(なおシリカも寝てた模様
えー、人を『|走狗《イヌ》』呼ばわりして
話聞いてもらえると思ってる方がおかしくないです?
飼い犬だって気に入らなきゃ噛むんですよ?
真の平和なんて知らん!!
子供たちが笑って過ごせる世界が正義だ!
というわけでその機体、破壊……アッハイ鹵獲しまーす(理緒さんの圧に負けた
えーこーゆーの苦手なんですけどー
仕方ありませんねー
えーと動きが止まりましたら
【VR忍術】影縛りの術!
クノイチっぽいですよね!
力加減を間違えなければ鹵獲できる……はず?
緑色の装甲の破片を飛び散らせながら『キュロープス』は未だフレームへのダメージを軽微なものとしていた。
ここまで打撃を受けてなお戦える継戦能力。
それこそが『傑作』機と呼ばれるが所以であったのかも知れない。
「真の平和を手に入れるまでは、いつわりの平穏を暴くまでは止まらぬよ!」
右腕のペンチアームから放たれるは、高出力の電磁波。
その武装は、周囲のキャバリアの動きを止める強烈なる電磁波によって戦場を支配するものであった。
だが、その電磁波は、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)によって阻まれる。
電磁波がキャバリアを停止させるのならば、E.C.M(イー・シー・エム)から放たれるジャミングとディセプションでもって相殺すればいい。
さらに機体の操作系統にエラーを吐き出させれば。
「捕獲も出来るはずだよ、というわけでサージェさんよろしく! 絶対壊しちゃダメだからね! 壊したら揉むよ!」
何を!? とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は思わず振り返ってしまっていた。
「いやぁ、すっかりよく寝たーって思っていたのですが、なんですか、揉むって!?」
サージェはすっかりお休みモードであった。
よく働いたからというのもあったのかもしれない。
白猫又の『シリカ』のもふもふが気持ちよかったというのもある。一緒にお休み嬉しいね、となるのである。
しかしながら、いつのまにか理緒から宣言された言葉に驚愕している暇はない。せっかく理緒が『キュロープス』の放つキャバリアを強制停止させる電磁波を相殺してくれたというのに、サージェはおやすみモードで聞いていなかったのである。
「……サージェさん」
「アッハイ! 鹵獲しまーす!」
圧がすごい!
理緒の視線を受けて『ファントムシリカ』が『キュロープス』を鹵獲せんと迫る。しかし、『キュロープス』が『傑作』機と呼ばれているのならば、妨害によって生み出されるエラーをも越えてくる。
機体が動き出し、迫る『ファントムシリカ』に放たれる高周波振動斧の一閃がそれをさせない。
「真の平和のためには!」
「真の平和、ねー……きっと本気でそう思っているんだろうね」
理緒にとって、それは理想としては悪くはないと思えるものであった。
けれど、オブリビオンマシンに付け込まれる隙もまた大きいものである。大きすぎる理想は、常に旗手たる者に重くのしかかるものである。
重さは歪みを生み出すものである。
「あなたの言う『真しかない世界』は、あなた以外何もない虚無の世界ってことだから。その子を『エース』にしようって思ってる時点で破綻してるんだけど」
「己の言う真さえあれば構うものか。示そうというのだ『憂国学徒兵』が再び、世界に! 争いのない世界が如何なるものかを! 力によって示される平和こそが! 普遍であると!」
「今言ってもわからないよね」
理緒にとって、それはわかりきっていたことだ。
けれど、それでもと思う。
『エース』とは確かに力である。けれど、それは他者が称する言葉でしかないのだ。それを聞き、感じる者がいてこそはじめて発揮される力でも在るのだ。
「それはそうですよー。完全にオブリビオンマシンに思想歪められてるんですから」
振るわれる一閃を『ファントムシリカ』は躱す。
高周波振動斧は、触れなければ意味がない。
ビームブレイドのように掠めただけで装甲が溶解することはないのだ。ならばこそ、サージェは既の所で躱し続ける。
距離は為せば、頭部の荷電粒子砲が放たれる体。
少し苦手だと思った。
壊さず鹵獲する。理緒のオーダーはそれだ。しかし、サージェはそれが無理筋であるとわかっていた。
けれど、やらない理由もない。
「貴様たちの言葉など! いつわりの平穏の走狗どもには理解できぬか!」
「えー、人を『|走狗《イヌ》』呼ばわりして、話聞いてもらえると思ってる方がおかしくないです? 飼い犬だって気に入らなきゃ噛むんですよ?」
ユーベルコードが『ファントムシリカ』のアイセンサーを輝かせる。
VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)によって放たれる影が『キュロープス』の機体を足元から拘束していく。
「真の平和なんて知らん!! 子供たちが笑って過ごせる世界が正義だ! というわけでその機体、破壊……」
「鹵獲!」
「アッハイ」
サージェは理緒の言葉に背筋を伸ばす。
オブリビオンマシンは破壊しなければならない。
サージェにとって、望む未来は子供たちの笑顔だ。だからこそ、オブリビオンマシンはあってはならない。
けれど、理緒が揉むって言ってるからなぁっておとなしく従っている。影縛りの術は、本当にクノイチっぽいなぁって思いながら、ご満悦である。
しかし、みしり、とフレームがきしむ音が響く。
あっやべ、とサージェは青ざめる。
理緒も気がついていないはずだと、そろりと見やる。だが、気が付かれている。
「サージェさん」
わかっているよね、と圧がサージェの肩……ならぬ胸部にのしかかる――!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
そう!お平和のためにはおパワーが必要不可欠なのですわ!
おパワーアンドピース!
わたくしのお平和のために貴方を張り倒させていただきますわよ〜!
お物騒な斧をお持ちですわねぇ
ではラージシールドで防いで…と見せかけてサイドブースターでささっと躱すのですわ
おほほのほ!どこを狙ってらっしゃるのかしら?
わたくしはこちらですわよ〜!
何度も躱していればその内動きにお目々が慣れてくるのですわ
斧を振り下ろす直前にアンカークローを発射して腕を捕らえるのですわ
ヴリちゃん!今ですわ!
ラースオブザパワー!
捕まえたまま振り回してどったんばったん叩き付けますのよ
わたくしのお平和の礎となるのですわ〜!
嫌なら降参なさって?
機体を縛り付けていた影を振りほどきながら高周波振動斧が、切り裂く。
『キュロープス』は猟兵のユーベルコードに寄る拘束を躱しながら、きしむフレームの状況を正しく理解するだろう。
これまでの打撃を受けてなお、フレームは健在であった。
装甲が砕かれようとも、フレームさえ頑強であるのならば、継戦能力に支障はない。けれど、ついにフレームの一部に負荷が掛かりすぎて、歪みはじめている。
「くそっ、フレームがイカれてきたか……だが、まだだ!『キュロープス』はまだ戦える。力による真の平和! それを齎すためには!」
緑のオブリビオンマシンに灯る輝き。
アイセンサーが戦場に残光を残すように凄まじい勢いで駆け抜ける。
「そう! お平和のためにはおパワーが必要不可欠なのですわ!」
刮目するは、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)であった。彼女の駆る『ヴリトラ』がラージシールドを全面に押し出しながら『キュロープス』に迫る。
突進めいた推力移動。
その速度は凄まじいものであった。
だが、『キュロープス』もまた『傑作』機と呼ばれたオブリビオンマシンである。手にした高周波振動斧の斬撃は如何なる装甲もバターのように切り裂いてしまう。
如何にラージシールドであっても、切り裂かれる運命は変えようがない。
「おパワーアンドおピース!」
そう叫ぶメサイア。
吶喊、突撃、突進。
それが彼女の信条であるように思えただろう。けれど違う。彼女は脳筋姫とか、パワー系お嬢様とか、そんな感じではないのである。
鍛えられた脳は、時として戦術という名の知性を宿す。いや、野生ともいえるかもしれない。
彼女の反応速度は群を抜く。
振るわれる斧の軌跡。
『ヴリトラ』の速度から考えればそのまま突進するしかない。けれど、それ以上にメサイアはクレバーであったのだ。
「わたくしのお平和のために貴方を張り倒させていただきますわよ~!」
サイドブースターが噴射し、振るわれた斧の一撃を直角に躱す『ヴリトラ』。急制動によってコクピットのメサイアの体が衝撃にしたたかに打ちのめされるだろう。
内臓が揺れる。潰れる。
そんな感触を受けながらも、メサイアは笑う。
「おほほのほ! どこを狙ってらっしゃるのかしら? わたくしはこちらですわよ~!」
急旋回する『ヴリトラ』の加速度Gなどなんのその。メサイアは一気にアンカークローを放ち、『キュロープス』の腕部を捉える。
「機体性能は負けていないはずだ! だと言うのに、なぜ躱せる! それ以前にっ、その機動でなぜ、パイロットが無事なのだ!」
驚愕する『キュロープス』のパイロット。
明らかに『ヴリトラ』の動きには無茶が在った。パイロットがいるのならば、加速度Gによって失神していてもおかしくない。
だというのにメサイアは笑うのだ。
「ヴリちゃん! 今ですわ! 全力全開ですわ~!」
アンカークローによって捉えた『キュロープス』をワイヤーを巻きつけ惹きつける。
あのシザークローで両断されると理解した『キュロープス』のパイロットが斧を盾にしようとする。
「なーに、守ろうとしてるんですの? わたくしに宿るは憤怒の剛力(ラースオブザパワー)ですわ!」
引きつけられた瞬間、『キュロープス』の機体が振り上げられる。
宙に舞う機体。
そして、次に起こるのは衝撃である。大地に叩きつけられる『キュロープス』。力任せともいえる圧倒的な暴力。
「わたくしのお平和の礎となるのですわ~!」
左右に振り回すように『キュロープス』が叩きつけられる。
ぎったんぎったんに、という言葉しっくりするほど叩きつけられ、『ヴリトラ』の咆哮と共に『キュロープス』は放り投げられる。
パイロットは無事ではすまないだろう。
それでもメサイアは、にこりと微笑む。
「嫌なら降参なさって?」
あくまでも、降伏勧告。
慈愛に満ちたかのような笑みと共にメサイアは、パワーに酔いしれるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
自分勝手極まりないとはこの事かッ
単に自分以外信じられないから自分だけの都合のいい場所が欲しいだけではないか。人はそれを臆病者という!!
引き続き、レスヴァントを『操縦』する
しかし、あれは…まさかキュロープス!!
噂の傑作機までオブビリオンマシンと化したか…
あの機体の荷電粒子砲の威力は聞いている
だが、当たらなければどうということは無い
キュロープスについて『情報収集』し歴戦のボクの『戦闘知識』と合わせて、『瞬間思考力』で発射の瞬間を『見切り』回避
高機動攻撃を発動させる
瞬間加速マッハ5.0の踏み込みで懐へ潜り込み、イニティウムで敵機を『切断』しアストルティアの『零距離射撃』『制圧射撃』を叩き込む
叩きつけられた緑のオブリビオンマシン。
『キュロープス』の機体状況は悪化の一途を辿っていた。装甲は砕け、ボロボロになり、フレームは歪む。
けれど、それでも『傑作』機と呼ばれたが所以を発露する。
これだけ猟兵たちの攻撃を受けてなお、武装は何一つ喪っていない。装甲を犠牲にし、フレームの保持に努めていたが故に、ここまで戦えたのかも知れない。
「これこそが力だ……! 圧倒的な力の前には如何なるものも屈服するしかない。すべてを屈服させて得られる平和にこそ、真が宿るのだ。そのためには!」
機体だけでは無意味である。
どれだけ高性能の機体であっても、それを手繰る者がいなければ、無用の長物である。
たとえ、扱う者がいたとしても『エース』でなければ、機体性能を十全に活かすことができようはずもない。
だからこそ、『キュロープス』のパイロットは『フュンフ・エイル』のクローンたる幼子を求めたのだ。
「自分勝って極まりないとはこのことかッ」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は白いキャバリア『レスヴァント』と共に疾駆する。
ユーリーはあの『キュロープス』を知っている。
『傑作』機と呼ばれた過去に在りし機体。
過去の遺物であれど、その機体性能は現代にも通用するものであり、最新鋭機に勝るとも劣らない性能を有している。
だが、ユーリーは狼狽えることはなかった。
例え、『傑作』機がオブリビオンマシン化していたとしても、彼女にはこれまで培われてきた戦闘経験がある。
そして、一瞬の判断を掴み取る瞬間思考があるのだ。
「人が一人では生きて行けぬ生き物であるというのならば、一個の圧倒的な力を持った人間が導かねばならぬだろうよ! あらゆるものを屈服させる力を持った圧倒的な存在が必要なのだよ! それが『エース』というものだ!」
『キュロープス』のパイロットの言葉は、側面として正しいものである。
クロムキャバリアの現状を見れば、そう考えてしまうのも無理なからぬことであっただろう。
争いは終わらず。
平和には程遠い。
得られた平穏も瞬く間に流れ去っていくように消えていく。
ならばこそ、力によって他と己を分かつしかないのだ。
「単に自分以外信じられないから自分だけの都合のいい場所がほしいだけではないか」
「知ったような口を!」
振るわれる高周波振動斧の一撃を『レスヴァント』は躱し、電磁波を放とうとするペンチアームをキャバリアソードが切り裂く。
「貴様の言葉は、届くものか! 縛られることも、踏みとどまることもしなかった者の言葉など! いつわりの平穏、自由という名の横着、それを!」
『キュロープス』の脚部が『レスヴァント』に放たれる。
キャバリアソードの刀身で受け止めた機体が吹き飛ばされる。だが、ユーリーは止まらなかった。
敵は接近戦を嫌っている。
機体の状況が消耗を告げているからだ。だからこそ、距離を取ってからの荷電粒子砲『ステロペース』の一撃で勝負を決めようとしている。
だからこそ、ユーリーは吹き飛ばされる機体のコクピットの中で判断する。
『レスヴァント』のアイセンサーが煌めく。
「砕けて、消えろ! 走狗!!」
放たれる荷電粒子ビーム。
吹き飛ばされ空中に在る『レスヴァント』は、それを躱せない。
否である。
ユーリーは『エース』。
空中での機動を変えることは、クロムキャバリアにおいてはほぼないことである。なぜなら、空中機動は暴走衛生の存在に寄って封じられているからだ。
けれど、機体より放出される『アンチ殲禍炎剣特殊粒子』が、空中機動を可能とする。
「高機動攻撃(コンバットアサルト)……!」
荷電粒子ビームの光条を空中で挙動する『レスヴァント』が躱す。
見切っている。
完全に発射のタイミングも、攻撃の瞬間も。見てから躱されていると『キュロープス』のパイロットは理解しただろう。
「『エース』が……! ことごとく、無才たる者を嘲笑う……!」
「違うね、君は無才じゃあない!」
ユーリーは粒子を撒き散らしながら、それらを足場とするように跳ねるようにして『キュロープス』へと迫る。
アサルトライフルから放たれる弾丸が『キュロープス』の左腕を撃ち抜き、高周波振動斧を取り落とさせる。
だが、それすらも一瞬。
瞬間加速にしてマッハ5.0。
その速度に至った『レスヴァント』は『キュロープス』の懐に飛び込む。
それでもなお『キュロープス』の頭部に備えられた荷電粒子砲が煌めく。長大な砲身を必要としないからこそ、その荷電粒子ビームは恐ろしいのだ。
「ならば、なんとする! この無才たる身にも維持というものがあるのだ!」
「君の行動、君の思想! 人はそれを臆病者という!!」
自身と他者が分かたれるものであることは当然である。
どれだけ言葉を尽くしたとて、解り合えぬ者もいることを識る。故に、人は言葉を、手を、あらゆるものを持って解り合おうとする。
それを避けるかのような『憂国学徒兵』を語る者たちの言葉は、ユーリーにとって立ち向かうことをやめた臆病者でしかないのだ。
「そんなマシンになんか乗っているから、臆病風に吹かれる! 自分より強い者を前にして恭順か無抵抗かしか選べない! 戦うことを忘れたのなら!」
キャバリアソードの一撃が頭部を跳ね飛ばし、アサルトライフルのゼロ距離射撃の一撃が『キュロープス』のエネルギーインゴットを貫く。
機体が傾ぐ。
ここに過去に『傑作』機は、過去のまま朽ちることになる。
ユーリーは崩れ落ちる機体を見下ろし、告げる。
「思い出せばいいんだよ。現状に抗って……そして、戦い抜くことこそが、このクロムキャバリアで道を誰かに示すことができるんだって――」
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『戦士の休息』
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POW : 何はともあれ仮眠を取るにかぎる!少しだけ寝よう!ちょっくらお休み!
SPD : 苦いコーヒーを飲みつつ他愛のない会話をしよう。俺、この戦いで生き延びれたら…
WIZ : 懐に入れてた本でも読もう…。物語の結末を見るまで死ぬ訳にはいかない…
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『憂国学徒兵』を騙る者たちの目論見は猟兵達によって打破された。
ポッドに納められていた子供らは皆無事であるようだが、誘拐されたという恐怖からか、怯えているようにも思える。
ある意味当然であろう。
簡易型『レーギャルン』から降りた『ズィーベン・ラーズグリーズ』は、駆け寄って思わず『フュンフ』を抱きしめていた。
「ごめんね! 怖かったよね……!!」
「……そうでもないよ。みんなと一緒だったし」
「『ズィーベン』、此処じゃ通信できない。このまま『グリプ5』に帰るしかない。あの人達にも護衛を頼もう。まだ残敵がいるかもしれない」
『ゼクス・ラーズグリーズ』は、そんな二人のやり取りをみて安堵の息を漏らす。
心配していたのは彼も同様なのだ。
けれど、『ズィーベン』の動揺ぶりに彼はそっとしておくことしかできなかった。
過去『アハト・ラーズグリーズ』を喪った時、彼女は何もできなかった。だから、今回の事件において彼女が最も取り乱していた。
また失うのかもしれないと恐れたのだ。
それも無理なからぬことである。
「でもどうするの。あの人達って……誰?」
『フュンフ』は幼子であるからか、状況をあまり理解していないようであった。他の子供らは怯えているようであったが、『フュンフ』だけはキョトンとした様子であった。
「肝が据わってるっていうか……みんなを助けてくれた人たちだよ。あの人達に強力を頼んで見る。帰るんだ、『グリプ5』に」
『ゼクス・ラーズグリーズ』がうなずき、猟兵たちに向き直る。
「ご協力、ありがとうございました。でも、もう一つ頼まれてくれませんか。『グリプ5』まで彼らを護衛して戻るのに協力してほしいんです。僕らだけでは、残敵が居た時、守りきれないかもしれない」
その言葉に猟兵たちはどうするだろうか。
そのまま護送を買って出るのもいいだろう。
またそれ以外の何かがあるかもしれない。
どちらにせよ、此処からは猟兵達は己の自由によって決めることができる。
未だ戦乱から抜け出す兆しなど無く。
されど、大戦の如き暗雲は立ち込める。
そんな世界にあって、猟兵たちは何が出来るであろうか――。
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『まずは落ち着け!天龍を回した。護送も引き受けたぜ』
機動戦艦『天龍』で護衛するぜ。
『暗雲があろうと手を取り合う…それが大事なんだよな』
『…それに…いろんな想いがみんなに託されてる…と感じてるんだよな』
なんとなく今は旅立ったやつらを思い出しながらつぶやくぜ。
『世界の平穏のためには俺とコスモスターインパルス…そして猟兵のみんなで道を切り拓くしかないな…』
「大きな船。飛行船より大きいね」
空を見上げてつぶやいたのは、幼子である『フュンフ』であった。
彼は未だ幼い。
クローンであるからと言って、その|大元《オリジナル》とすべてが同じであるとは限らない。
生まれ育った環境。
勝ち得た経験。
あらゆるものが同じになるとは限らない。
だが、彼の瞳に映る機動戦艦『天龍』は畏怖の対象ではなかったようである。
クロムキャバリアは暴走衛生『殲禍炎剣』によって空に蓋をされた世界である。それゆえに、高度は上げられず、また速度も飛行船程度にしか出すことができない。
簡易型『レーギャルン』や移送トレーラーと同じような速度しか出せないが、それでも彼と同じ様に融解された子供らを無事に『グリプ5』へと運ぶのには申し分ないものであった。
「まずは落ち着け!『天龍』を回した。護送も引き受けたぜ」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)に『ゼクス・ラーズグリーズ』は謝意を告げる。
彼らだけが『グリプ5』から逃走する誘拐犯であり、『憂国学徒兵』を騙る者たちを追うことができた。
現状において融解された子供らを二機の簡易型『レーギャルン』で護送するのは無理があったのだ。
「ありがとうございます。地上を行きますが……」
「ああ、空から敵の機影がないか調べておく」
ガイはそう告げて機動戦艦をもって周囲を警戒する。
一つの戦いが終わっても、新たな戦いの始まりにしか過ぎない。
それがクロムキャバリアという世界の理であるというのならば、目の前に立ち込めるのは暗雲そのものであったことだろう。
「暗雲があろうと手を取り合う……それが大事なんだよな」
同じ小国家に住まう者であっても考えが違う。
取り違えてしまえば、致命的な掛け違いになってしまうのが人である。
社会というものを形勢した時に生み出されたバグのようなものだ。一つ一つ人の手によって是正していかなければならない。
それには膨大な手間がかかるだろう。
時に人はそれを厭う。
厭うからこそ軽んじる。そして生み出されたほつれは歪みに変わり、社会という一つのまとまりを壊していくのだ。
だが、ガイはなんとなく思い出す。
旅立った者たちがいる。
彼らはどんな思いであっただろうか。
今の己にはいろいろな想いが託されている。自分だけではない。他の者たちにだって託されたものがある。
「そんなふうに感じてるんだよな」
空はどこまでも広がっている。
けれど、頭上に在る暴走衛生がその思索を断ち切るだろう。
蓋をして国家間の通信すら許さない。
距離が離れれば誤解が生まれやすい。誤解が深まれば、それはいつしか憎悪に変わっていく。
すれ違いという摩擦が痛みを生み出すからこそ、人は争うのだ。
「世界の平穏のためには俺と『コスモスター・インパルス』……そして猟兵のみんなで道を切り拓くしかないな……」
ガイが見やるは道なき道。
誰もが思い描く平和があるだろう。同じものではないかもしれない。
けれど、誰もがそれに手を伸ばせる未来を作り出すことこそが、今のガイに求められることであるというのなら、ガイはそのさきをこそ己の力で切り開かなければならないと、暗雲立ち込める暗澹たる道行きを照らす輝きをこそ、子供らに見るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
悪者は成敗致しましたからもう安心ですのよ
なので皆様お笑いになって?
このメサイアが!百万点の笑顔と共に皆様をグリプ5にお届け致しますわ〜!
ついてきてきて下さいまし〜!
まだバスターレオの撃ち漏らしがいらっしゃるかも知れませんのでちゃんとお警戒するのですわ
前ヨシ!後ろヨシ!右ヨシ!左ヨシ!わたくしヨシ!
もし突然突っ込んできてもシールドでお守りしますので安心してくださいまし
残骸が転がっておりますわねぇ
これは…わたくし知っておりますわ!
通り過ぎた後に動き出すおパターンですわ!
映画で見たので間違いありませんわ
ギロチンシザーでちょきちょきして機能停止ヨシ!ですわ!
だんだん楽しくなってまいりましたわ〜!
「悪者は成敗いたしましたからもう安心ですのよ。なので皆様お笑いになって?」
怯える子供らを前にしてメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は『ヴリトラ』から降りて告げる。
黒き暴竜の如きキャバリア。
その姿は確かに恐ろしさを齎すものであったかもしれないが、『フュンフ』だけには違ったようである。
誇らしくも雄々しい姿。
「大きくて黒くてでっかいの」
笑っている。
そんな彼の笑顔に釣られるようにして攫われていた子供らがほころんでいく。
悪意が伝播するほどの速さではないにせよ、笑顔もまた他者に移っていくものである。
ならばこそ、彼の笑顔は守るに値するものであった。
「このメサイアが! 百万天の笑顔と共に皆様を『グリプ5』にお届けいたしますわ~!」
それレッツゴーとばかりにメサイアが先導する。
『ヴリトラ』に乗り込み、ゆっくりとした歩みではあったが、『グリプ5』へと移動を開始する。
この荒野にまだ誘拐を画策した『憂国学徒兵』を騙る者たちの機体が残存しているかもしれない。
「前ヨシ! 後ろヨシ! 右ヨシ! 左ヨシ! わたくしヨシ!」
メサイアは『ヴリトラ』の中で指差し確認する。
目視と指差し確認は必須。
労災なんて下りるわけない世界であるからこそ、ヒヤリハットする事例は頭に叩き込んでいる。
どんな脅威があるかわからない。
メサイアはどんなルートから『バスターレオ』やその他の脅威が突っ込んできたとしても、シールドで守る所存であった。
「残骸が転がっておりますわねぇ」
ふと、メサイアはこれまで戦いで破壊されたオブリビオンマシンである『バスターレオ』を見やる。
彼女と『ヴリトラ』によって破壊されたものもあれば、他の猟兵に寄って破壊された機体もある。
「これは……わたくし知っておりますわ! 」
「何を?」
「通り過ぎた後に動き出すおパターンですわ!」
「そんなことってあるの?」
『フュンフ』が幼子ながらに疑わしい視線をメサイアに向けている。いやいや、わからないものであるとメサイアは首を振る。
「お映画で見たので間違いありませんわ」
至極真面目な顔をしてメサイアはとんでもないことをいう。
通り過ぎる度にギロチンシザーでもって『バスターレオ』の残骸を切り刻んでいく。念には念を入れる。
流石にちょっと神経質すぎやしないかと『ゼクス・ラーズグリーズ』は思ったが、口には出さない。
猟兵であるメサイアのやることを疑うわけではないのだ。
「そんなことある?」
「ありますわ。それに、こうだんだん楽しくなってまいりましたわ~!」
メサイアはギロチンシザーでチョキチョキ『バスターレオ』の残骸を切断しながら進む。
それが楽しいと思える感性は、『フュンフ』にはないようである。
しかし、彼はどちらでもいいと言うように笑っている。
この戦乱の世界にあって笑顔を絶やさずに居られるということがどれだけ尊いことかをメサイアは知っているだろう。
争いがあらゆるものを吹き飛ばす。
どんな笑顔も。
どんな人々も。
どんな暮らしも。
あらゆるものを吹き飛ばして壊すのが戦乱だ。だからこそ、彼の笑顔こそ、最もこの世界で強いものであるかもしれない。
メサイアは確かにその笑顔を百万点のと、称し『グリプ5』への道行きを守るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
判定:SPD
エースか…
そんなの結局はただの称号に過ぎないというのに…。
ある人は称号にすがり…
ある人は称号に嫉妬し…
ある人は称号に殺される…。
一体何が正しいのかな…。
ん、ボク?ボクは…多分すがってるんだろうなぁ。
エースを自称して…エースだから負けないって…。明日も生き続けるって…。
さて、虚しい自嘲は終了
護送対象の子供たちと交流しようかな
エースのクローンなんて関係ない。種族も関係ない。子供は子供
未来は無限大…なんて
お姉さんとお茶しない?
紅茶もコーヒーもオレンジジュースもスポーツ飲料も用意してるさ
炭酸はない。あれは人の飲み物じゃないし
ボク?お姉さんは大人だからコーヒーをブラックさ
(こっそり)にがぁ…
『エース』。
それは時として希望と語られるものである。
また時として絶望として語られるものである。
過去『エース』と呼ばれた者たちには等しく物語がある。だが、それは語弊のある言い方であろう。
名もなき兵士一人ひとりにも物語はあるのだ。
「『エース』か……」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)にとって、それは結局の所ただの称号に過ぎないものであった。
ある者は称号にすがり。
ある者は称号に嫉妬し。
ある者は称号に殺される。
「一体何が正しいのかな」
『レスヴァント』のコクピットの中でユーリーはひとりごちる。
答えは出るのか。
それとも出ないのか。
彼女は被りを振る。自分のことだ。考えれば答えは自ずとでる。自分がなぜ『エース』を自称しているのか。
それは縋っているからだ。
戦いの中に身を置く不安。恐れ。そういったものを内在して生きなければならないのがユーリーだ。
ならばこそ、自分は『エース』だといいはるのだ。
「『エース』だから負けないって……明日も生き続けるって」
ただそれだけのことだ。
自嘲を終えたユーリーは『憂国学徒兵』を騙る者たちに攫われた子供らと合流する。
他の猟兵たちに守られながら荒野を征く彼らはすっかり笑顔を取り戻したようであった。
時折休憩をはさみながら進む。
本来なら一気に進みたいところであるが、そうも行かない。
迎えの飛行船だって速度に制限があるのだ。ならばこそ、ユーリーは休憩している子供らの環に入る。
「お姉さんとお茶しない?」
なんて、と冗談めかして言ってみる。少し大人な雰囲気を出したいと思ったのだ。
「紅茶もコーヒーもオレンジジュスもスポーツ飲料も用意してるさ」
「あのシュワシュワのがいい」
「炭酸? 炭酸はない。あれは人の飲み物じゃないし」
「えー! ぶどうの炭酸のやつ美味しいのに」
そんなふうに初めて会うユーリーにも物怖じしていないのが『フュンフ』である。
彼はどこか人懐っこい雰囲気を持っているようであった。
「お姉さんは何を飲む?」
「ボク? お姉さんは大人だから……」
「ほんとー?」
「本当だってば。大人だからコーヒーをブラックさ」
なんて余裕な雰囲気を醸し出しながらユーリーは湯気立つコーヒーをブラックで口に運ぶ。
ぶるって肩が一瞬震えている。
「今、我慢しなかった?」
鋭いなとユーリーは思ったかも知れない。苦い。こっそりにがぁってなっているつもりであったが、『フュンフ』にはしっかり見られていたようである。
めざとい。
よく見ているともいえるのかも知れない。
彼の特筆すべき所は目の良さにあるのかもしれない。そして、他者の感情を読み解く力。洞察力と合わされば、それは時として人の心を読み取るような能力にさえ昇華するかもしれない。
そんな『フュンフ』を見やりユーリーは考える。
確かに彼らの未来の可能性は無限大だ。
『エース』にクローンなど関係ない。種族も関係ない。子供は子供。
ああやって子供らしく笑っていられる時間をこそ、ユーリーは守る。明日を生き続けるとうことはそういうことだと、苦み走った表情を噛み殺して、ユーリーは笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
({舞狂人形}のコクピットで護衛対象の子供たちを眺めながら舞狂人形に話しかける)
あの子たちはこの先どのような人生を歩むのでしょう?
私や貴女のように全てを捧げても構わないと思えるものと出会えるのでしょうか?
それとも銃やキャバリアを手に取り戦いに身を投じるのでしょうか?
…戦争が当たり前に存在するこの世界では後者の確率が高そうですね…
({舞狂人形}がすっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)
…そうでした。あの子たちの未来を輝くものにするのが私たちの使命でしたね
ありがとうございます。舞狂人形。
言葉よりも強くあなたの想いが伝わりました。
成し遂げましょう。必ず。絶対に。
流線型のキャバリア『舞狂人形』のコクピットの中で播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は、護送する誘拐された子供らを見やる。
彼らは恐ろしい目にあったというのに、今は笑顔が戻っている。
笑顔の中心にあったのは『フュンフ』という事の発端。
誰隔てることなく笑顔を振りまく彼自身こそが最も恐ろしい思いをしたはずだろう。けれど、彼は自身の恐怖を噛み殺して、他者を不安にさせないことを選んでいるようであった。
「あの子たちはこの先どのような人生を歩むのでしょう?」
クロリアは語りがける。
流線型のキャバリアは沈黙している。
問いかけ事態に意味を見出していないのかもしれない。もしかすれば、クロリアの言葉を待っているのかもしれない。
「私や貴女のようにすべてを捧げても構わないと思えるものと出会えるのでしょうか?」
己がダンスに出会ったように。
かけがえのないものを手にした自身のように。
それは幸福なことだろう。己を己たらしめるもの。それを見つけることのできる生は稀であるから。
「それとも銃やキャバリアを手に取り戦いに身を投じるのでしょうか?」
この世界、クロムキャバリアにおいては、それが自然であったのかもしれない。戦争が日常となっているのならば、その方が確率が高いともいえる。
詮無き問いかけであったのかもしれない。
だから『舞狂人形』も答えなかったのだろう。そんなふうにクロリアは思う。
けれど、ゆっくりと『舞狂人形』が腕部を水平に伸ばす。
ぴんと伸ばした姿を見上げていた『フュンフ』が、あ、と『舞狂人形』を指差す。
紡がれるのは絢爛の旋律。
蒼天に輝く太陽と陽光に照らさる大地。
それらを表現したリズムが刻むのは栄華。約束された繁栄などどこにもない。
「……そうでした」
クロリアは静かに頷く。
踊るように跳ねる流線型の機体。『舞狂人形』が己に伝えんとしていることがわかる。
そう、どれだけ目の前に暗澹たる暗雲の未来があるのだとしても。
それでも人は切り開いていく。
暗闇見通せぬ瞳であったとしても、篝火があれば進む事ができる。一歩を踏み出すことを躊躇ってはならない。
時は止まらず、時は逆巻くことなく。
弛みなく流れていくからこそ、その時の決断が人生を決定づけるのである。
けれど、世界を破滅させようとするオブリビオンマシンは彼らには止めようがない。
「あの子達の未来を輝くものにするのが私達の使命でしたね」
クロリアは刻まれる旋律から、それを思い出すのだ。
決して忘れてはならないこと。
自分がなぜ戦うのか。
その理由。
「ありがとうございます。『舞狂人形』。言葉より強く貴女の想いが伝わりました。成し遂げましょう」
自分が戦う理由は、それでいい。
すべてを捧げても構わないと思えるものと出会ったのならば、その出会いによって得られるものをクロリアは世界に返さなければならない。
必ず。絶対に。
もしも、子供らが暗闇の如き未来に恐怖するのならば、その未来を照らす。
迫るものがあるのなら切り裂く。
時として躓くこともあるだろう。
どうしようもないことだ。
けれど、その時に自分たちが手を差し伸べることができる。オブリビオンマシンが介在する運命こそが時を止めるものであるのならば、クロリアは『舞踊人形』と共に、これを切り拓くためにこそ踊るのだ。
子供という可能性を潰えさせぬためにこそ、使命を新たにし、クロリアは荒野を進むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
ふう。子供達と合流する前でよかったよ!
(やりきったつやつや感)
傑作機は残念だったけど、護衛はもちろんおっけー!
【ネルトリンゲン】で、しっかり守っちゃうよ。
よかったら、中でのんびりしてもいいし、
お風呂やご飯も用意できるから、いつでも言ってね。
『グリプ5』まで、快適な旅をご提供しちゃうよ!
って。
サージェさん、いくら味方がいないからって、
ちまかぐやさんのちかちかで、催眠にかけるのはちょっと……。
あとその忍べてないの、みんなの教育に悪いから、しまってしまって。
それわたしのになったんだし、あんまり出しちゃダメだからね。
『フュンフ』さん、みんな、こういういのは大きさじゃないから、ねー!
サージェ・ライト
【理緒(f06437)さん】と
もうお嫁に行けない……(しくしくぐったり)
もう私が生きる道はこれしかありません
ネルトリンゲンの中で護衛しながら
子供たちのアイドルになります
はーい、みんなー
健全可愛いクノイチ13歳ですよー
一緒に遊びながら戻りましょうねー
忍べてますから!!教育にも悪くないから!
いつの間にか所有されてる?!
助けて天の声!
っとと遊び相手が足りませんね
【ちまっとかぐや隊!】でちまかぐや呼びましょう
いや、ちかちかで洗脳とか考えませんから
でもショック起こすと大変なのでちょっと明度落としますかねー
カラー数も減らせば可愛い遊び相手の出来上がり
さぁネルトリンゲンの中をいっぱい走り回りましょう!
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はなぞのつやつや感を出していた。
なんで? って誰もが思ったけれどあえて口にしなかった。
「ふう。子供たちと合流する前でよかったよ!」
なんで?
野暮である。聞いてはならないと『ゼクス・ラーズグリーズ』は思ったし、『ズィーベン・ラーズグリーズ』はこれくらい『ツェーン』と『クリノ・クロア』も進めばいいのにと思った。
けれど口にしなかった。
口にしたらこう、なんていうか。
「もうお嫁にいけない……」
しくしくぐったりしているサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)に悪い気がしたからだ。
何言っても彼女への追い打ちにしかならない。
だから黙っていた。
「『傑作』機は残念だったけど、護衛はもちろんおっけー!『ネルトリンゲン』でしっかり守っちゃうよ。荒野とは言え、まだ危険がいっぱいだからね。よかったら、中で休憩したっていいよ」
お風呂やご飯も用意できるから、いつでも言ってね、と理緒は『グリプ5』までの快適な旅の提供を約束してくれた。
「飛行船よりでっかーい」
『フュンフ』は二人の間に流れる不思議な間を物ともせずに『ネルトリンゲン』の中を興味深げに見て回っている。
「うぅ、もう私が生きる道はこれしかありません」
サージェはもはや、こうなったのならばと腹をくくる。そう、お嫁にいけないのならば、アイドルになればいいのである。なんで?
「はーい、みんなー健全可愛いクノイチ13歳ですよー一緒に遊びながら戻りまそうねー」
そんなふうにサージェは切り替えた。
いや、自分で健全可愛いというのはなんともこう、あれである。キャッチフレーズとしてもなんだかこうあれである。
しかしながら、サージェの天真爛漫さは子供らの誘拐されたという恐怖の記憶を和らげるには十分であったかもしれない。
最初は戸惑っていた子供らも『フュンフ』の明るさに釣られるようにしてサージェと戯れるのだ。
でもまあ、なんていうか。
「その忍べてないの、みんなの教育に悪いから、しまってしまって」
理緒がサージェに後方私のモノ面して言う。いやまあ、実際に自分のものになったのだから、当たり前であると理緒は思っていたし、あんまり出しちゃダメだからとおもうのも無理なからぬことである。
わかる。そういうのって独占欲っていうんでしょって『フュンフ』はしたり顔をしている。
「おませさん」
「なにそれー」
理緒と『フュンフ』が笑っているのをサージェは見て、なんだか、えぇって気持ちなるのである。
「忍べてますから!! 教育に悪くないから! いつの間にか所有されている!?」
へるぷ! とサージェはちまっとかぐや隊!(ゲーミングカグヤヒメトアソボウ)を呼び出して子供らの相手をしながら驚愕する。
だっていつのまにか理緒のモノになっている自分。
助けてって思うのも無理なからぬこと。
しかしながら、これは当人たちの問題である。関与すべきものなど二人以外に誰もいないのである。
こういう時はそっとしておくのが一番だと思いましたまる。
「サージェさん、いくら味方がいないからって、ちまかぐやさんのチカチカで催眠にかけるのはちょっと……」
「いえ!? 洗脳とか考えませんから!?」
でもちょっと目にチカチカする。
「1680万色ー」
「ちょっと明度落としますからねー。カラー数も減らせば可愛い遊び相手なんですよ。さあ、みなさん、『ネルトリンゲン』の中をいっぱい走り回りましょう!」
そりゃ競争だー! とサージェと子供らは駆け出していく。
これぞ子供を出汁にして逃走を図るの術。
そんな術などない。
「『フュンフ』さん、みんな、こういうのは大きさじゃないから、ねー!」
「なんの大きさ?」
理緒の言葉に『フュンフ』はいまいち理解指定ない様子である。
純粋な子供の純粋な眼。
そのまばゆい視線に理緒は、うっ! と邪念を焼き払われたような気持ちになったかもしれないし、なってないかもしれない。
まあ、どちらにしたって二人が齎すのは、空の楽しい旅だ。
怖い思いをしたのならば、楽しい思い出で塗りつぶす。
心のケアをもって彼女たちは未来ある子供らの道行きを守る。
きっとそうなのだ。
ただ、なんとなくイチャついていただけではないのだ。
きっとそうなのだ。
誰がなんと言おうと、そうなのである。
そう信じるしかない『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』は、なんとなく理緒とサージェの道行きが今日以上に無茶に無茶苦茶なものとなるのを予感せずにはいられなかったのである――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
奪還は国に帰り切ってこそでしょうとも。
護衛承りました!先行し警戒を行うであります!
……子供達が過去に喰い潰されずに済んで良かったであります!
透明化状態でディスポーザブル02群を先行させ、
ズィーベン・ゼクスと逐一連絡を挟みつつグリプ5へ帰還
ゼクス殿、ズィーベン殿の様子から見て、
過去に何かがあったのですね?
少しだけ、不安にもなりましょう。その動揺や不安が、
彼女が|過去と狂気《オブリビオンマシン》に囚われるのではないかと。
それは嫌です
……貴方方も、子供達も、皆未来ある者達です。
過去に囚われれば、唯戦塵となるだけ。
ですが、過去を忘れず、想えばこそ、その願いは、きっと絆げられる。
そう自分は愚考いたします
誘拐された子供らの奪還は、小国家『グリプ5』に戻るまでが任務のうちであると朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は頷く。
日常を生きる彼らと戦うことしかできぬ小枝子は隔絶したものがあるように思えた。
小枝子自身はきっとそう思っていただろうし、戦いを介在しない彼らとの交流というものは、彼女にとって不得手そのものであった。
だからこそ、護衛という任務に張り切ってしまう。
「護衛承りました! 先行し警戒を行うであります!」
小枝子の駆る『ディスポーザブル02』が荒野を走る。
透明化させた『ディスポーザブル02』群がさらに先行を走り、荒野に内在するであろう『憂国学徒兵』を騙る者たちの戦力を探る。
オブリビオンマシンである以上、小枝子にとっては破壊する以上のことは存在しない。
けれど、此処に守る者たちがいるのならば話は別だ。
「……子供達が過去に喰い潰されずに済んで良かったであります!」
小枝子は後方に見える猟兵たちと護送される子供らをコクピットのモニターでズームアップして思う。
確保した子供らとの『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』の様子を小枝子は見た。
取り乱したように泣きながら『フュンフ』を抱きしめる『ズィーベン』。
過去に何かあったのだろうなと類推はできる。
彼女にとって二度も兄弟を失うのは堪えるものであっただろう。
戦う力ある者が戦いの中で生命を落とすことは必定であろう。けれど、戦う力のないものが戦いの火によって生命を失うことは、残された者には大きな傷となって残る。
彼女たちの弟である『アハト・ラーズグリーズ』は『バンブーク第二帝国』の襲来のおり、有毒装甲から発せられる毒素によって生命を落とした。
その心に刻まれた傷は、今回のことで深くえぐられるようなものであっただろう。
「……」
小枝子は少しだけ不安になった。
彼女が|過去と狂気《オブリビオンマシン》にとらわれるのではないかと。
傷は痛む。
痛みは心を疲弊させるものである。
ならばこそ、その心の隙をこそオブリビオンマシンは狙うのだ。
これまでがそうであったように。きっとこれからもそうであるように。
「それは嫌です」
小枝子は思わず『ズィーベン・ラーズグリーズ』に連絡を入れる。
それは先行して敵の影を探る偵察をしていた彼女から入った定時連絡ではなかった。プライベードなものである。
「どうしました? 何か問題でも……」
「……貴方方も、子供たちも、皆未来ある者達です」
「え?」
唐突な言葉であるように思えただろう。
通信の向こう側の『ズィーベン』が狼狽えるような気配があった。
「過去に囚われれば、唯戦塵となるだけ」
小枝子は構わず言葉を紡ぐ。
言わなければならないという思いがあった。今を置いてはこの先機会はないかもしれないと彼女は思った。
だから、言葉を紡ぐ。
壊すことしか出来ない『破壊の申し子』。
そう呼ばれば彼女が不器用ながら言葉を紡ぐ。たどたどしい言葉であったことだろう。
けれど、それでも懸命に言葉を紡ぐ。
「ですが、過去を忘れず、想えばこそ、その願いは、きっと絆げられる。そう自分は愚考いたします」
その言葉が救いになるかはわからない。
言わずにはいられなかったのだ。
こうすることしかできない。いや、こうすることも小枝子には出来るのだ。戦い、戦って、戦い続ける。
ただそれしかできないと思っていた小枝子でさえも、言葉を紡ぐことができる。
言葉によって継るものもあるのだ。
ならばこそ、小枝子は悔恨の中にある心に触れて、言葉を紡ぐ。
きっとそうすべきだと己の魂が告げるからこその行動。
たとえ、それが愚かしい考えであると言われるのだとしても、小枝子はやめない。
抗うことが戦うことだというのならば、死の必定に立ち向かいながらも進むことをこそ、小枝子は得る。
故に嫌だと言う思いは、誰かを慮る言葉となって発露する。
名の意味は語り継がれる。
されど、真に継がれるものは、人の心の中にこそあるのだと、小枝子は理解するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2022年08月31日
宿敵
『キュロープス』
を撃破!
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