熾火は赫く昌盛・トレモロ
●グリモアエフェクト
将来訪れたであろう『大いなる危機』。
その前段階で阻止するための予知。猟兵達が日常を楽しみ、謳歌することによって得られる輝きは、暗闇に等しい未来を照らす篝火のようであったことだろう。
ブルーアルカディアは、空の世界である。
大地は浮遊し、眼下には雲海が広がるばかりである。
雲海に沈めば、全てが過去となり消え失せる。再び雲海に沈んだものが浮上した時、それは過去の異物となって舞い戻る。
凶鳥が雲海を飛んでいる。
自らの縄張りを知らしめるように、一つの大陸を周回しているのだ。
「――……」
その様子を花咲く庭園から見ている者がいる。
艷やかな濡鴉色の長い黒髪は、空に浮かぶ太陽を受けて煌めくようでもあった。女人と見紛うほどの美しい顔立ちに表情はない。
彼の宝石の如き緑色の瞳は、空を見上げるばかりだった。
時折、己の足元に咲く花々を見やり、そしてまた空を見上げる。異形の機械から出る無数のコードやケーブルは、彼を捉えているようでもあり、また同時に生かしてもいるようであった。
此処は屍人帝国『オーデュボン』。
これまで猟兵達が遭遇した屍人帝国の一つであり、ブルーアルカディアに存在する、幾つかの『巨大な屍人帝国』である。
その皇帝たる存在が彼である。
だが、彼は配下であるオブリビオンたちに何かを命ずることはなかった。けれど、配下であるオブリビオンたちは、皇帝の意に沿うように動き始める。
一体何が彼の逆鱗に触れるかわからない。
彼の力は絶大であった。オブリビオンを恐怖で縛るには十分すぎたし、これまで彼に処分されてきたオブリビオンは、その理由からして理不尽極まりないものばかりであった。
故に、彼には誰も近づかない。いや、近づけない。
「……――」
彼は語らない。
ただ空を眺め、花を愛でるばかりである――。
●斥候
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。皆さんが日常を謳歌することによって発露するグリモアエフェクトにより、ブルーアルカディアにおける『大いなる危機』を前段階で予知することができました」
ナイアルテが告げる言葉に猟兵たちは、少しばかりの安堵を得るかもしれない。
猟兵たちの戦いは過酷である。
だからこそ、日常の些細な楽しみであったとしても、それが彼等の糧になるのだ。その発露がグリモアエフェクトである。
「どうやらブルーアルカディアに存在する幾つかの『強大な屍人帝国』が不穏な動きを見せているのです」
ナイアルテの予知に掛かったのは、屍人帝国『オーデュボン』。
これまで対峙したことのなる猟兵もいるだろう。
彼等はこれまで『青い鎧の巨人』と『エイル』と呼ばれる少年を追跡していた。だが、彼等は虚空に消え、『オーデュボン』の目的は立ち消えになったかのように思えた。
「ですが、先日、『アジール王国』に残されていた『遺骸兵器』を巡る戦いで『オーデュボン』がなにか巨大な力を求めているように思えたことでしょう。幸いにして皆さんの活躍により、彼等の手にこれらが渡ることは阻止されています」
本当に幸いなことだとナイアルテは改めて頭を下げる。
そして、今回その『オーデュボン』が不穏な動きを見せているということは、なにかことを起こそうとしていることにほかならない。
ならばどうするのか。
「私は屍人帝国『オーデュボン』の所在を予知しました。これにより密かに帝国周辺や内部に斥候を行うことが可能となったのです」
だが、その転移も『オーデュボン』に直接、とは行かない。
周辺にある浮島の一つに転移することが可能ではあるのだが、周囲には凶鳥が飛び交い、猟兵達野道を阻むようである。
浮き石がいくつも浮かび、浮遊大陸である『オーデュボン』への道は飛空艇を使わずとも侵入する事は可能のようであるが、凶鳥の集団の存在や、密やかに侵入するためには、飛空艇ないし他の策を講じる必要がある。
「敵地への侵入……とてもむずかしいことであるとは承知の上でお伝えしております。凶鳥の群れを突破したとしても、『オーデュボン』の領空の境界線にはオブリビオンの警備隊であろう『天使病・テルクシノエ』 が守りについています」
そもそも秘密裏の斥候であるため、手薄な場所を突き崩すか、もしくは敵の目を掻い潜ったりしなければならない。
もしくは、『天使病・テルクシノエ』に気付かれないように切り抜けなければならない。
「『天使病・テルクシノエ』は歌声で戦うユーベルコードを有しています……やはり突き崩して突破する、というのはあまりにもリスキーすぎるかもしれません。戦いがすぐさま終われば良いですが、もしも長引けば……」
敵の本拠地での戦いとなる。
数の劣勢は否めないし、危険極まりないと言わざるを得ないだろう。
「また、『オーデュボン』内部に潜入しても内部のオブリビオンに気が付かれぬように敵の動きや兵力を調べ上げねばなりません」
どれをとっても隠密行動ないし、それを上回る行動が求められる。
難しい、と一言で言ってしまえば簡単なことだ。
ナイアルテにとって、その説明は苦々しいものであったことだろう。自分が出来ることは転移の維持だけだからだ。
「今後訪れるであろう『大いなる危機』、その脅威を僅かでも減らすためには、このようなことも必要不可欠……どうかお願いいたします」
彼女が深々と頭を下げ、猟兵たちを送り出していく。
青空の世界、ブルーアルカディア。
そこに渦巻く屍人帝国『オーデュボン』の脅威。
その全容を暴くため、猟兵たちは危険な隠密行に踏み出すのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
大空の世界、ブルーアルカディアにおいて屍人帝国『オーデュボン』が見せる不穏な動きを察知するための隠密行動を行い、『オーデュボン』の情報を持ち帰るシナリオとなっております。
●第一章
冒険です。
転移した先は、屍人帝国『オーデュボン』の領空付近の浮島です。
此処から先は飛空艇で行くことも可能ですが、浮き石を伝って境界線まで向かうこともできます。
ですが、縄張りを主張するように『オーデュボン』の周囲には凶鳥が飛び交い、侵入する者たちに襲いかかってきます。
この猛威を退けながら、境界線の領空まで接近しましょう。
●第二章
集団戦です。
屍人帝国『オーデュボン』の境界線の領空を守護するオブリビオン、『天使病・テルクシノエ』たちが群れをなしています。
オブリビオンたちは声を発するユーベルコードを有しているので、真正面から戦えば、援軍を呼ばれ続け、数で押し切られてしまうでしょう。
そもそも斥候ですので、敵を全滅させたり、倒したしなければならないということはありません。
手薄な場所を突き崩すことや、敵の目をかいくぐることなど、なるべく敵の目に触れぬように切り抜けることが肝要です。
それでも戦闘が避けられない場合は想定しておくべきことでしょう。
●第三章
冒険です。
屍人帝国『オーデュボン』内部に潜入し、浮遊大陸にあるオブリビオンの巡回や目を避けながら敵の動きや兵力を調査しましょう。
情報は持ち帰るまでが斥候です。
それでは、ブルーアルカディアにおいて明らかになろうとしている屍人帝国『オーデュボン』。その目論見を打破すべく、潜入して情報を持ち帰る皆さんの物語の一片と慣れますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『凶鳥乱舞』
|
POW : 武器を取り、鳥の群れを追い散らす
SPD : 攻撃を掻い潜りながら全速力で駆け抜ける
WIZ : 餌や道具を使い、鳥の群れを大人しくさせる
イラスト:del
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達が転移したのは、空に浮かぶ小島であった。
人の気配はない。
ある意味当然であろう。ここは屍人帝国『オーデュボン』にほど近い場所だ。かつて人が住んでいたのだとしても、すでに『オーデュボン』によって真っ先に滅ぼされている。
この小島から転々と空に浮かぶ大小様々な浮島や浮石を辿っていけば、屍人帝国『オーデュボン』にたどり着くことができる。
だが、問題は山積している。
この領空にはまるで縄張りを主張するかのように凶鳥たちが目を光らせている。
魔獣である彼等は、猟兵たちを見つければ即座に襲いかかってくるだろう。
これを退けながら浮島や浮き石を伝うのは困難に思える。かといって飛空艇であっても同様であろう。
どちらにせよ、猟兵たちは凶鳥たちとの戦いを避けられない。
だが、派手に戦うこともできない。
猟兵たちの目的は斥候である。密かに『オーデュボン』に潜入し、情報を持ち帰らなければならない。
情報を得ても捕らえられたり、殺されてしまえば意味がないのだ。
難しい冒険となるだろう。
だが、いつだってそうだ。
困難で険しい道こそがいつだって正しい道なのだ。
『大いなる危機』。
それがなんであるかはわからない。けれど、その危機が起こったとしても、この険しく辛い道のりを辿っていけば、被害を抑えることができるかもしれない。
ならば、猟兵たちはその道を往くことをためらいはしないだろう――。
アストラ・テレスコープ
よーし、じゃあ自分のミニロケットを噴射して「空中浮遊」して全速力で飛んでいくよー!
でもロケットの噴射音が結構うるさいから、目的地に着くまでにどうせ見つかっちゃうよね!
というわけで、凶鳥がこっちを見つけたらユーベルコードで分身を作りまくるよ!
相手を混乱させまくってる間に戦わずに目的地までたどり着きたい!
それでも襲われそうになったら矢を「乱れ撃ち」してなんとか切り抜けるよ!
猟兵たちはグリモアエフェクトの力によって屍人帝国『オーデュボン』が不穏な動きを見せていることを知る。
それはすなわち『大いなる危機』に一手先んじて備えることができるということである。
とは言え、屍人帝国『オーデュボン』は未だ謎多き屍人帝国でもあった。
その目的は定かではない。
『青い鎧の巨人』と『少年』を追いかけていたこともあれば、『アジール王国』と呼ばれる浮遊大陸に存在していた『遺骸兵器』を狙うこともあった。
どちらも巨大な力であることは言うまでもない。
だからこそ、知らねばならない。
屍人帝国『オーデュボン』が何を目的とし、どのような陣容であり、不穏な動きを見せるのはなぜなのかを。
故に猟兵たちは危険を承知の上で『オーデュボン』領空に近い浮島へと転移する。すでに人の姿はない。
かつてあった生活の痕は伺えるが、其処から何かを得られることはなかった。
「よーし、じゃあ全速力で飛んでいくよー!」
アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)は腰に備えられたロケットベルトを噴射させ、大空の世界を飛んでいく。
噴射音は速度に見合った音が響く。
それは即座に、この空域を集会している魔獣……凶鳥に知れることとなるだろう。
けれど、アストラとしてはそれはわかりきっていたことだった。
「やっぱりどうせ見つかっちゃうって思っていたけどね!」
アストラの瞳がユーベルコードに輝く。
彼女のPrism/Dall–Kirkham(プリズム・ドール・カーカム)は多くの分身を作り出すユーベルコードだ。
元気いっぱいな分身はアストラと同じ姿であるし、凶鳥たちにとっては突如として同じ存在が増えたようにしか思えなかっただろう。
混乱する凶鳥たちを他所にアストラはますますロケットベルトに備えられたミニロケット4基をさらに勢いよく噴射せて空を一直線に飛ぶ。
この分だとすぐに『オーデュボン』の領空、その境界線まで辿り着けそうだ。
音を立てているのは、後に続く猟兵たちの助けになるかもしれない。
彼女が凶鳥たちの意識を引っ張れば引っ張るほどに後続は浮石を伝っていくことも、密かに領空に近づくことも可能になるからだ。
「みんなよろしくーっ!」
アストラのキラキラした瞳が輝く。
この大空の世界にあって、アストラは空を見る。
あの空の向こうにある星々は彼女の知る空とは違ったかもしれない。
けれど、それでも空だ。
星が浮かび、きらめいている。ならば、天体望遠鏡のヤドリガミである彼女にとっては変わりのないものだ。
見上げ、星を目指す。
ロケット噴射の音に集まってきた凶鳥たちを振り切ろうとするが、それも難しいだろう。
「あー、もう、しつこいなぁ!」
凶鳥たちを混乱させるのはよかったが、惹きつける数が多すぎた。
凶鳥たちのけたたましい鳴き声が響き渡るし、彼女に追いすがってくる。さすがは大空の世界である。
ロケットエンジンにも追いつく凶鳥、魔獣達がいることはアストラにとっては予想外であったかもしれない。
けれど、彼女は宇宙のエネルギーを放つコズミックロングボウを構える。
「宇宙のパワーを感じてもらっちゃおうかな!」
放つエネルギーの矢が乱れ撃たれ、凶鳥たちを追い払う。
どこまでも空を飛ぶことは自由だ。
追いかけられても、それでもなおアストラはそう思ったかも知れない。戦うことより、空を駆け抜けることのほうがきっと楽しい。
「観てるだけじゃつまらない! やっぱり空は駆けてこそだよね!」
アストラは凶鳥たちの猛追を振り切りながら、一気に『オーデュボン』領空、その境界線までたどり着くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーベ・ヴァンパイア
何が目的で、何が起こそうとしているか分からないが、| やるべき 《 必要な事は 》はただ一つ
ーー阻止するのみだ
作戦
神封じの鎖の先端に【武器改造】で血の矢尻を取り付け、それを浮島や浮石に向け、打ち込んで【ジャンプ】でジャングルロープのようにして目的地へと向かう
魔獣である凶鳥に遭遇したら、ガン&ブレードを【早業】で取り出し、構えて【先制攻撃】だ。その際、【武器改造】で弾を普通の魔弾ではなく、命中すると身体にひっつく、粘着弾として、奴等の【体勢を崩す】。そうして奴等の間を掻い潜って移動する
(ブルーアルカディア。初めて来たが、本当に空の世界なのだな。…こんな時でもなければ観光でもしてみたいものだ)
グリモアエフェクトが見せるのは『大いなる危機』の前段階である。
だが、前段階が予知できたとて、オブリビオンの目論見の全容を知ることはできない。ならば、この斥候でもって猟兵達が多く持ち帰らねばならぬことは情報だ。
生きて戻る。
そうしなければ、屍人帝国『オーデュボン』が何を目論むのか、そして、それに対して如何なる方策を用いるのかさえ考えることができない。
「何が目的で、何を起こそうとしているかわからないが、|やるべき《必要な事》は唯一つ――阻止するのみだ」
リーベ・ヴァンパイア( Notwendigkeit ・f37208)は金色の鎖を放ち、浮石へと血の鏃を打ち込む。
まるでジャングルの木々を縫うようにして飛ぶターザンのようにリーベはブルーアルカディアの空に浮かぶ石をもって空域を進む。
魔獣である凶鳥は、この領空を縄張りにしているのだろう。
多くが周回するように飛んでいる。
彼等に見つかることはできれば避けたいところである。それに、先行した猟兵が多くの凶鳥を引き連れて、いや惹きつけるようにして飛んでいったことも幸いしていた。
「多くが引きつけられたか……ありがたい」
fastattack(ハヤキイッパツ)は、リーベの打ち込む鎖を圧倒的な速度で打ち出す。
早業と言ってもいいだろう。
彼は空を飛ぶよりもロープワークじみた鎖の扱いに長けているようであった。
眼下には雲海。
落ちればどんな存在であれ滅ぶのがブルーアルカディアの法則だ。
大陸であっても沈めば、再び浮上するときにはオブリビオンを満載した屍人帝国の領地となる。
人も、飛空艇も、あらゆるものが滅び、オブリビオン化されてしまう。
「厄介なことだな」
リーベにとって浮き石を利用することは容易いことだった。
けれど、凶鳥の数は多い。
どれだけ隠密行動を取っていたとしても、リーベの姿を捉えた凶鳥が飛来する。
巨大な鳥型の魔獣。
その爪とくちばしは鋭く、獲物であるリーベを圧殺せんと迫っている。
「ケェェェッ!!」
鋭い鳴き声と共に爪が迫っている。
けれど、リーベに焦りはなかった。即座に己の血液をブレードに変えて、迫る爪を脚部ごと切り裂く。
一閃であった。
今さら魔獣に遅れを取るリーベではない。
さらに彼の血液から生み出された弾丸が、デイバイスより打ち出され凶鳥を貫く。
「それで終わりじゃないんでな。特別製だ」
リーベの弾丸は凶鳥を貫いただけでは終わらず、その傷口から広がって粘着するように凶鳥の羽ばたきを阻害する。
雲海に沈んで滅ぶのは人やモノだけではない。
オブリビオンもまた雲海に沈めば滅びてしまう。自然の理と言えば聞こえがいいかもしれない。
けれど、この恐るべき理を持ってオブリビオンは如何なる浮遊大陸も雲海に沈め、滅ぼそうとしている。
「それを阻止するために俺達がいる――ああ、本当に……」
リーベは思っただろう。
空中をジャングルロープのように放物線を描きながら浮き石を伝っていく。どこまでも広がる空の世界。
残念なことだと思う。
屍人帝国が不穏な動きを見せていなければ観光でもしてみたいと思っていたのだ。
だが、それは今は叶わない。
リーベが為すべきことは、今も変わらず唯一。
屍人帝国『オーデュボン』が何をなそうとしているのか。
その情報の多くを持ち帰ること。
雲海を眼下にしながら、リーベは颯爽と浮き石をつたい、屍人帝国『オーデュボン』の領空境界線付近の浮島に立つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「屍人帝国の動きを探るか。
成功させなければならない重要な任務だが。」
凶鳥と先の道のりを眺めて
「中々に険しい道。
とはいえ、此処で躓く様では目的を達する事は出来ないだろう。」
と凶鳥と浮石の位置を確認してから
大まかに進む道筋を決め。
ファントムレギオン(死霊)を周囲に展開して囮とし、
的を散らしつつ浮石を蹴って進む。
敵に動きを読まれない様に直線的な動きは避け、
時にフレイムテイルの炎での爆発力や龍翼の翔靴での跳躍で
飛距離を伸ばしたり急カーブを描いて攻撃を回避。
それでも囲まれたら敵の殺意を利用して誘いの魔眼を発動。
敵の五感を狂わせてそのまま空へと落下させる。
「殺意に駆られたものを堕とす術は心得てるんでね。」
ブルーアルカディアにおいて屍人帝国の脅威は浮遊大陸に住まう人々を脅かすもの以外の何者でもない。
雲海に沈めば人であろうと魔獣であろうと大陸であろうとすべからく滅びる。
常に滅びと直面している世界にあって、人々は魔獣の血肉、骨革、心臓たる天使核すらも利用してたくましく生きている。
そんな世界にあって、新たな動きを見せる強大な屍人帝国の存在は看過できるものではなかった。
「屍人帝国の動きを探るか」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は屍人帝国『オーデュボン』にほど近い浮島の一つに降り立つ。
ほど近いと言っても、まだ距離はある。領空の境界線。そこにすらまだ至っていない。
幸いに、この浮島から繋がるように浮かんでいる浮き石を伝っていけば、境界線までは行くことはできるだろう。
飛空艇を持たずとも猟兵としての能力を使えば容易いといえる。
だが、この道行きが危険なものであると知らしめるのは。
「ケェェェッ!!」
凶鳥である。
この領域を己たちの縄張りであると主張するかのようにけたたましく鳴いている。
先行した猟兵が一手に多くを引きつけていてくれるからこそ、フォルクは頷く。
確かに成功させなければならない重要な任務である。
険しい道のりでもある。
「とは言え、此処で躓くようでは目的を達することも出来ないだろう」
道筋はすでにフォルクの頭の中にある。
周囲に死霊を展開する。これは凶鳥たちに見つかったときのことを考えてのことだ。囮にして自分は先に進むためである。
凶鳥たちは自分たちの縄張りに入り込んだものを目ざとく見つける。そして、襲いかかってくるし、執拗に追い回す。
先行した猟兵の姿を見れば、それがわかる。
あのしつこさで領空まで付いてこられれば、それだけで屍人帝国の守備隊に見つかるリスクが高まってしまう。
「直線的な動きはできないとは言え……」
浮き石を伝うようにして移動するのは骨が折れる。炎の力や龍翼の翔靴での跳躍があるとは言え、遅々として進まない。
「ケェェェッ!!!」
「やはり警戒していたとしても、目につくか……」
フォルクを見つけた凶鳥が、その鋭い爪を光らせ頭上より迫る。だが、フォルクの目深にかぶったフードの奥で瞳がユーベルコードに輝く。
誘いの魔眼(イザナイノマガン)。
それは彼の周囲に浮かぶ無数の赤眼であった。
不気味な雰囲気。
それに凶鳥は戸惑うただろう。いや、本能的な恐怖を抱く。
「常世を彷徨う数多の怨霊よ。禍々しき力を宿すものよ、その呪詛を解き放ち。混沌の眼に写る魂を混沌の底へと誘い連れ去れ」
その言葉と共に放たれるのは肉体と精神を蝕み、さらに五感を狂わせる呪詛。
呪詛が凶鳥の五感を奪い、そのまま雲海に落下させる。
雲海に沈めば、たちどころに滅ぶのはどんな存在でも必定である。
「殺意に駆られたものを堕とす術は心得ているんでね」
凶鳥が落下し、雲海に沈む様を見やりフォルクは次なる浮石へと視線を巡らせる。
時間はあまり多くかけられない。
迅速さ、そして隠密。
どれもが欠けては、この作戦は成功しない。
フォルクは領空の境界線に居たり見るだろう。屍人帝国の座す浮遊大陸を。だが、それを守るようにして飛ぶオブリビオンの守備隊を――。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
屍人帝国への潜入…か…
いいだろう…いずれ来る戦いが為に…情報を探るとしよう…
じゃあ行こうか…私は処刑人…!
【|変身譚《メタモルポーセス》】で
黒きケルビムへと変身し空を飛びながら浮島を渡ってゆこう
迫る凶鳥の群れには緋色の天使を抜き振るい[天候操作]で
強風を起こして[吹き飛ばして]やろう
それでも迫る物あらば鉄塊剣を[なぎ払い]、
[鎧無視攻撃と範囲攻撃]で叩き落して凶鳥共に
[恐怖を与えて]追っ払ってしまおう
ある程度追っ払えばそのまま突っ切り目的地へと急ごう…
邪魔をするなよ…忌々しき凶鳥め…!
消え去れよ…さもなくば…邪魔するならば切り捨ててやろうぞ…!
私は…処刑人だッ!!!
黒きケルビムが飛ぶ。
大空の世界、ブルーアルカディアの青空の下、その黒き色は目立つことだろう。眼下にある雲海の白とのコントラストは強く、そして飛翔する仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)を凶鳥たちは、己たちの縄張りを荒らされたと認識し、襲いくる。
ひるがえるは、鉄塊の如き緋色の巨大剣。
それはまさに炎の剣、もしくは燃える蛇のごとく。黒きケルビムたるアンナが揮うが所以い熾天使の雷のように轟く。
「邪魔をするなよ……忌々しき凶鳥め……!」
変身譚(メタモルポーセス)によって飛翔力を増加させた彼女にも追いつくほどの速度を持つ凶鳥達。
「ケェェェッ!!!」
けたたましい鳴き声だとアンナは思っただろう。
彼等の中にあるのは、縄張り意識だけだ。
周回する空に異物として紛れ込んだアンナという黒き存在をただ排除しようと、その爪やくちばしでもって襲いかかるのだ。
だが、鉄塊の如き巨大剣が、これら一切を薙ぎ払う。
一度揮う度に強風が巻き起こる。
それらが翼在る凶鳥たちを吹き飛ばす。
「消え去れよ……さもなくば……邪魔するならば切り捨ててやろうぞ……!」
揮う一撃が迫る凶鳥を一刀のもとにひしゃげさせる。
頭蓋が、骨が砕ける音がして凶鳥が雲海に沈んでいく。
浮島の一つに降り立ちアンナは未だ道が半ばであることを知る。
屍人帝国『オーデュボン』。
その領域にはまだ侵入できていない。
今回はあくまで斥候である。いうれ来る戦いのために幾つかある強大な屍人帝国の一つである『オーデュボン』の情報をできるだけ多く、そして早く持ち帰らなければならない。
自身が処刑人であることを自覚しているアンナにとって、この行動には大きな意味がある。
『大いなる危機』の前段階で予知することができるグリモアエフェクト。
その力は強大だ。
自分たちが日常を謳歌することによって得られる輝き。
その煌めきに寄って照らされるのは、きっとより良い未来だ。ならばアンナは躊躇わないだろう。
黒きケルビムとなったアンナが浮島の大地を蹴って、浮島を足場にしてさらに加速していく。
「私は……処刑人だッ!!」
疾走るようにして空を飛ぶアンナ。
凶鳥など追いすがることも許さぬトップスピードに乗った彼女は、風を切りながら疾駆する。
目の前に迫るのは屍人帝国『オーデュボン』の領空。
境界線には多くのオブリビオンの守備隊がいる。これは想定されていたことだ。時間は欠けられない。
迅速にことを済まさなければならない。
手薄な守備隊の側面を叩くか。
それとも、守備隊の目をかいくぐり、進むか。
アンナがどの道を選ぶのだとしても、困難は今目の前に横たわっている。
けれど、アンナは立ち止まらないだろう。
立ち止まり、逡巡している時間こそが無為なる時間だと知っているからだ。
黒きケルビムは掛けるようにして飛翔する。
より良き未来を阻む存在を断罪するために――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーん、浮き石を伝っていくか素直に飛んでいくか…
難しい所…
具体的には、どっちが楽しい?
あとスニークミッションだから段ボールは…いや、要らないか…
まあ、浮き石伝って行こうかな
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
とりあえずまずはルートを決めて、丁度いい感じの浮き石を探していこう
浮き石から浮き石へ飛び移る時は、『天候操作』で追い風や上昇気流を作って大ジャーンプ
ささっと急いで、目立たないように行こう
凶鳥相手には【剣技・蒼嵐剣】起動
斬撃と風の刃で攻撃
ついでに足場に竜巻を設置して移動に使おう
落ちそうなときも落ち着いて、足元に竜巻を作って勢いを使って上昇
ひょいひょいっと軽やかに行こう
「うーん、浮き石を伝っていくか素直に飛んでいくか……難しい所……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はブルーアルカディアに存在する幾つかの強大な屍人帝国の一つである『オーデュボン』の領空にほど近い浮島の一つに転移していた。
彼女が悩んでいるのも無理なからぬことである。
領空にたどり着くためには、続く浮石を伝っていくか、飛空艇などの飛行する手段でもって進むかしかないのである。
そのどちらにあっても、縄張り意識の強い魔獣である凶鳥の存在がネックになっている。
彼等は己たちの縄張りを侵す存在を許さない。
しつこく追いかけ回し、その爪やくちばしでもって排除しようとする。
「具体的には、どっちが楽しい?」
いや、違った。
凶鳥の存在があろうがなかろうが、玲にとってこれはアトラクションならぬスニーキングミッションである。
ダンボールが必要かなと思ったが、いや要らんなと玲は被りを振る。
そういうのは屍人帝国に潜入してからである。
ともあれ、こうしている時間も無駄にはできない。
「素直に浮石伝っていこうかな」
抜刀された青い刀身の模造神器が煌めく。
すでに彼女の頭の中には伝う浮石のルートが定められている。
彼女の模造神器より振るわれるは天候操作の力。彼女が飛び立つ瞬間に追い風を起こし、通常の身体能力以上の高さを確保した跳躍は容易く浮石と浮石の間をクリアするだろう。
膨大な推力をもって進むことも可能であろう。
だが、この潜入行にとって必要なのは静音性である。
音を立てれば、それだけ凶鳥たちに嗅ぎつけられる元になってしまう。先行した猟兵達が多くの凶鳥を引きつけてくれているからこそ、玲は今のうちに多くの道行きを踏破しなければならないと思っただろう。
「ささっと急いで、目立たないようにってね」
玲にとって、これは容易いことであった。
状況が味方しているし、天候操作の力によって追い風もある。
しかし、凶鳥は目ざとく追い風に寄って流されてきた玲の匂いを嗅ぎ取って、先行していた猟兵を追っていた一群から振り返って玲に正面から迫ってくる。
「わっ、めんどうくさい」
その言葉と裏腹に玲の揮う剣技・蒼嵐剣(プログラム・ストームソード)は、音速を超える。
マッハ5以上の斬撃が風の刃となって正面から迫る凶鳥を一刀両断する。
さらに放った斬撃の軌跡は蒼き竜巻となって残るのだ。
これを足場にして、さらに玲はショートカットを行う。
「ショートカットは基本でしょ。やばそうなところにこそ、良いショートカットコースができるものだしね」
レースゲームでもそうだったというように玲はサブカル知識を総動員する。
それが役立つかと言われたら疑問であったかも知れない。
けれど、現にこのブルーアルカディアの空、その浮かぶ石とを繋ぐ蒼い竜巻は玲の負担を大幅に削るし、領空に至る道筋を大幅に近道にしてしまう。
ひょいひょいと軽い足取りで玲は浮石を軽やかに跳ねるようにして飛んでいく。
「あっちこっちってね。さて、屍人帝国の浮遊大陸ってのはあれかな?」
玲の目の前にあるのは屍人帝国『オーデュボン』の領空。その境界線。
オブリビオンの守備隊が展開していることを見るに、どうやらこれが正しい道のようである。
ショートカットしたおかげで余裕はある。
さて、と玲は再び首をひねる。
薄い側面を叩いて突き進むか。
それとも目につかぬように密やかに進むか。
「どっちが楽しいかな――?」
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ノウェム
むむ、今度は殴り込み……です?え、違う?
でも事件への対応じゃなくてこっちからの「攻め」の話だからそんなに変わらないです?
まあいいです。新しいUCの試し撃ちさせて貰うです
飛空艇状態の方が速いですけど、静かに動くつもりでいるから外装形態です。
それじゃ新しいUC、いくです。
【Dダイバー】で私とエル・セプスを魔法によって空間の歪みで隠してくです
交戦を避けきれないならデビルアヴェンジャーのガム弾をばら撒いて捕縛して落とすか、
単体なら隠蔽状態のケルベロスファングを打ち込んで近くの浮島に叩き付けて仕留めるです
仕留めたらさっさと奥に進むです。気づかれるまでにどこまで入れるかの勝負です
※アドリブ他歓迎……です
屍人帝国はこれまでブルーアルカディアの世界において、魔獣よりも脅威として認識されていたことだろう。
魔獣と違い、生きるための競争を行うのではなく。
ただ滅ぼすためだけに力を振るう存在。
それが屍人帝国である。
だが、ブルーアルカディアにおいて幾つか存在する強大な屍人帝国の一つである『オーデュボン』。
その謎多き屍人帝国にほど近い浮島に転移したヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は意気揚々としていた。
「今度は殴り込み……いえ、違うのでした」
だが、ヴィクトリアにとって、それはあまり変わることのないものであった。
これまで予知された事件へ先手を打って対応することばかりであった。
けれど、今回は『大いなる危機』の前段階で手を打つことが出来る。すなわち、『攻め』ることができる話なのだから、そう変わらないものだと思うのだ。
「まあいいです。新しい武装の試し打ちさせて貰うです」
ヴィクトリアは己の飛空艇を外装状態に変形させて空へと舞い上がる。
飛空艇状態のほうが速度がでるが、静かに、ということを考えるのならば外装状態のほうが良いと判断したのだ。
この領空には、此処を縄張りとしている凶鳥達がひしめいている。
先行した猟兵たちが引きつけてくれている状況はあれど、どこに凶鳥たちの目が光っているかわからない。
とは言え、ヴィクトリアは試し打ちを、と言った。
凶鳥たちの目を躱す、というよりは新たな武装の性能を試すための木人代わりにすることのほうが目的としては勝っていただろう。
「それじゃあ、Dダイバー(ディストーションダイバー)、いくです」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
魔力により生み出された空間の歪みが、彼女と外装を包み込んでいく。
それは魔力に寄って生じた空間の歪でもって視聴嗅覚での感知を不可能とするユーベルコード。
凶鳥達がいかに嗅覚に優れていたとしても、今のヴィクトリアを捉えることはできない。
聴覚も同様だ。
どんな音もヴィクトリアから発せられるものは、彼女より先には響かない。
空間の歪みを魔力に寄って意図的に生み出すユーベルコードの力は絶大であった。
「これなら用意していたガム弾は使う必要ない、ですね」
うんうん、とヴィクトリアは弾を節約できるのならば、それに越したことはないと満足する。
彼女の新たなユーベルコードの隠密性は確立されたも同然である。
「視聴嗅覚で捉えられないのはとても便利、です」
交戦が避けられない場合も考えていたのだが、それは無用の長物となった。
とは言え、これより先にあるのは『オーデュボン』の領空である。
境界線を超えれば、オブリビオンの守備隊が警戒を敷いているだろう。
「これをどう超えるか、です」
敵の動きは様々である。
戦力のばらつきだってあるだろう。薄い側面を突くのか。はたまた、自分のユーベルコードの性能を信じて隠密行動を取るのか。
どちらにしてもヴィクトリアは、これまで苦しめられてきた屍人帝国に一矢報いる好機を得て、『大いなる危機』を阻む潜入行に挑むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(飛行式箒【リントブルム】に搭乗)
ふむ……あの鳥…確か縄張り意識が強いんだよな…
…縄張りに近づく侵入者には容赦なく襲いかかるはず…
…でも確かあの鳥の天敵は…現影投射術式【ファンタズマゴリア】を発動…
…凶鳥の天敵の鳥の幻影を作成…これに【浮かびて消える生命の残滓】で生命と知性を与えて囮になってひき付けるように命令…
…大騒ぎしているうちに心理隠密術式【シュレディンガー】で見つかりづらくして…あとは浮島や浮き石に隠れつつ先に進むとしよう…
…万一凶鳥に見つかったら仲間を呼ばれる前にサイレンサーを付けた術式装填銃【アヌエヌエ】から発射した麻酔弾で眠らせて先に進むとしようか…
ブルーアルカディアにおいて領空とはすなわち領地である。
多くの魔獣が闊歩する世界にあって、空を飛ぶ者たちは独自の生態系でもって縄張りを主張する。
特に空を飛ぶ魔獣たる凶鳥は縄張り意識の強い魔獣の一種であった。
侵入者を見つければ、何処まででも追って排除しようとする。
たとえ、縄張りの外に出たのだとしても、決して許すことなく追撃し、雲海に叩き落とそうとするのだ。
「……確かに縄張り意識が強いんだよな……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は飛行式箒『リンドブルム』に腰掛けながら、面倒だなと思ったかも知れない。
凶鳥達の縄張り意識は強い。
このまま箒に乗って飛んでいるだけで凶鳥たちはメンカルに襲いかかるだろう。
とは言え、メンカルの豊富な知識を考えれば、苦になることではなかったかも知れない。
「……でも確かあの鳥の点滴は……」
現影投射術式『ファンタズマゴリア』が展開され、凶鳥の天敵たるグリフォンの姿を生み出す。
如何に凶鳥の縄張り意識が高かろうが、天敵の存在は群れにパニックを引き起こすことになる。
「さらに……造られし者よ、起きよ、目覚めよ。汝は蜻蛉、汝は仮初。魔女が望むは刹那を彩る泡沫の夢」
現影で生み出したグリフォンに生命を与える。
浮かびて消える生命の残滓(メメント・モリ)とは言え、彼女のユーベルコードは現影に仮初の生命を与え、さらに知性を与えるのだ。
人間以上の知性を有したグリフォンの現影は、メンカルの現影に頷くようにして飛び立つ。
メンカルがグリフォンの現影に与えた命令は一つ。
自身を囮とするように凶鳥たちに襲いかかり、これを乱して惹きつけること。
「ケェェェッ!!?」
凶鳥たちの混乱が空を飛ぶメンカルにまで響いてくる。
それもそうだろう。
これまで彼等の縄張りを荒らしていた先行する猟兵達よりも脅威と感じる天敵グリフォンの影が彼等の頭上を通り抜けたからだ。
縄張り意識と生存本能。
その両者が一気に働けば、彼等は混乱するしかない。追い回す側が、追い回される側になったとき、その混乱は計り知れないものとなる。
「……やっぱり大騒ぎになるよね……今のうちに……」
メンカルは心理隠密術式『シュレディンガー』でもって自身を多い、浮島を経由して『オーデュボン』の領空に近づく。
元々用意していたサイレンサー付きの術式装填銃の出番はなさそうだ。
先行した猟兵達が引きつけた凶鳥。
そして、自身が生み出した現影たるグリフォン。
そのどちらもがメンカルと凶鳥の遭遇戦の機会を奪っていたからだ。
「……この麻酔弾も無駄になったね……」
まあいいか、とメンカルは切り替えて空を飛ぶ。
境界線の空はこれまでの様相とは打って変わったものとなっていた。
凶鳥たちの縄張りとは違う。
組織的に守備されている浮遊大陸の威容。オブリビオンたちの守備隊が空を巡回するように移動し続けている。
ここからが本番であるといえるだろう。
この守備隊を躱さなければ、屍人帝国への潜入は成らない。
側面を叩いて隙を生み出すか。
それとも隠密のままに敵をかわすか。
どちらにせよ、容易い道はないだろう。メンカルは箒に座しながら、空の状況を見やるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
いよいよ敵の本拠にいけるんだね
斥候が目的だから
できるだけ目立たない様に行動するよ
何度かオーデュボンの尖兵と戦ったけど
どういう帝国なのかとか
どんな人物が相手の首魁なのかとか
わからない事が多いから
有用な情報を入手できるといいんだけど
邪神の戯れを使用し
鳥達の知覚を欺きながら
空中歩行やワイヤーガンで
浮石を伝って近付こう
できるだけ戦闘は避けたいからね
見つからずにいけるのが一番だよ
このくらいの権能の行使で石化しなくなってるのは
有難いけど邪神も似た状況だと思うと悩ましいね
浮石もまん丸ってわけじゃないだろうから
必要に応じて陰に隠れてやり過ごしたりしようか
超小型ドローンとゴーグルのデータリンクで
安全を確認するよ
いよいよであると、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はこれまでの戦いを振り返る。
屍人帝国『オーデュボン』との戦いは今に始まったことではない。
ブルーアルカディアという大空の世界を猟兵が確認してから始まった戦いは、ようやくにして此処まで来たのである。
謎多き屍人帝国。
幾つか存在する強大な屍人帝国の一つである『オーデュボン』。
これまで何度も戦ってきた相手であるが、敵の目的はよくわからない、と言った方がよかった。
『青い鎧の巨人』と少年『エイル』。
彼等を追い回していたかと思えば、『アジール王国』に存在していた『遺骸兵器』を奪おうともしたのだ。
目的が散逸している、というよりは強大な力を手に入れようとしている、とも取れただろう。
「でも、どういう帝国なのかと、どんな人物が相手の首魁なのかとか解らないことが多すぎるんだよね……」
だからこそ、今回の屍人帝国に潜入する機会が得られたことが大きい。
晶はその瞳をユーベルコードに輝かせる。
自身と武装を神気で覆う。
停滞と固定の権能もたらす神気は、晶の存在を視聴嗅覚での感知を不可能のものとする。
仮に神気まとう晶に気がついたとしても、その神気に触れたものは、時の流れを奪われ、その場に固定されてしまう。
こうした潜入行にとって、邪神の戯れ(サイレント・クロース)は便利そのものの力であると言えた。
「目立たなく、というのは簡単だけど……」
『オーデュボン』の領空まで至る道のりが晶にとっては問題であった。
ここは地続きではない。
眼下にあるのは雲海。
この雲海に沈めば、どんな存在であっても滅びてしまう。人であっても、魔獣であっても、大陸であってもだ。
恐ろしいほどの理。
だが、それに恐れをなすことなど晶にはない。ワイヤーガンで浮石に打ち込んだ楔を頼りに晶は伝って危険な道行きを進む。
「見つからずに行けるのが一番だよ」
しかし、晶には悩みもある。
これまで身に融合した邪神の権能を使えば使うほどに代償のように石化していた。
だが、今となっては馴染んだのか、慣れたのか、それとも力が増したのか。
いずれにしても、それはすなわち邪神と似た状況に自身がなっているということを示していたのかもしれない。
「悩ましいね、ありがたいけど」
周囲に飛ばした小型ドローンで凶鳥たちの動きを察知する。ゴーグル型のモニターに映し出される情報は、先行した猟兵達が凶鳥を引きつけてくれているおかげで、非常にクリアだ。
今は浮石との間を繋ぐワイヤーの強度やテンションだけを気にしていればいい。
安全を確認し、晶は浮き石を伝っていく。
大空の世界は確かに恐ろしさもある。雲海に沈めば己だって滅びるしかない。
けれど、それ以上に美しさもあるのだ。
どこまでも続く青空。
危険とは背中合わせ。けれど、それでも晶は進む。
「またとない機会だしね。有用な情報を入手できるといいんだけど……」
これより先に待ち受けるのはオブリビオンの守備隊。
これを躱せばいよいよ敵の本丸たる屍人帝国の浮遊大陸。
晶は気を引き締める思いであった。なにせ、危険に満ちた潜入行は、まだ始まったばかりなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ドウジ・ユークレナ
ブルーアルカディアでありますかぁ。
猟兵に覚醒したばかりの異世界めぐりで来た以来でありますなぁ。
ストームエンゼルを手に入れた浮島とはだいぶ様子が違うであります。
さて、猟兵らしく屍人帝国の野望を打ち砕くであります。
ストームエンゼルを『飛空艇操縦』で『運転』してこの大空を駆け抜けるであります。すっかり忘れていたけどパイロットでありました自分(怪盗業ばかりやってた人)
凶鳥…ブラックホールエンジンでも搭載して…(注:いません)
ユーベルコードを発動して加速するであります。
『空中機動』で『残像』を生み出す機動で回避しつつ『誘導弾』仕様の反応弾で凶鳥を爆発による『範囲攻撃』でまとめて吹っ飛ばすのであります。
ドウジ・ユークレナ(風渡り人・f36443)にとってブルーアルカディアという世界は思い入れのある異世界であったことだろう。
蜘蛛童である彼が猟兵に覚醒したてのころ、多くの世界があることを知ったのは僥倖であったのかもしれない。
多くの世界を見た。
この大空の世界、ブルーアルカディアにおいて翼竜に似た形状をした小型飛空艇『ストームエンゼル』と出会ったのも、その時期であった。
だが、今回彼が転移した浮島は、その『ストームエンゼル』を手に入れた場所とは大きく異なる場所であった。
人の生活していた形跡はある。
けれど、人っ子一人いない。
すでに此処は屍人帝国の領空の付近。
ならば、すでに滅ぼされた後であると考えるのは自然だろう。
「さて、猟兵らしく屍人帝国の野望を打ち砕くであります」
一人乗りの小型飛空艇『ストームエンゼル』にまたがったドウジは軽く飛空艇の装甲をさすりながら顔を上げる。
屍人帝国『オーデュボン』。
それはブルーアルカディアに存在するいくつかの強大な屍人帝国の名である。
この『オーデュボン』の目的は未だ定かではない。
多くが謎に包まれているとも言える。さらに言えば、敵の首魁の名すらもまだ明らかになっていないのだ。
「すっかり忘れていたけど、パイロットでありました自分」
ドウジは大空を『ストームエンゼル』と共に駆け抜けながら、思い出したようである。
異世界巡りによって彼は多くのものを得た。
経験もした。
それによって彼は自分自身が如何なるものであるかを定義しただろう。蜘蛛童でもなければ、猟兵でもない自分。
それは怪盗であったりパイロットであったりした。
それが彼の可能性であるというのならばそのとおりであろう。
「むむ、凶鳥とはあれでありますかな?」
ドウジが大空を『ストームエンゼル』と共に駆け抜けていると、さらに頭上より飛来する一匹の凶鳥を捉える。
先行した猟兵たちのおかげで、この領空を縄張りとしている凶鳥たちは引きつけられて数を減らしていた。
だが、一匹であっても魔獣は魔獣である。
「……ブラックホールエンジンでも搭載して……」
いるわけではない。れっきとした魔獣だ。あるとしたら天使核くらいである。
「まあ、そんなことはいいのであります。さあ、行くでありますよ、『ストームエンゼル』! 飛空艇は“心”で動かすんであります。“心”で!!」
同時に煌めく瞳。
ユーベルコードに寄って加速する飛空艇は、一気に迫る凶鳥を振り切って進む。
それでも追いすがる凶鳥を見やれば主翼パイロンに装着していた反応弾を切り離し、その爆発で持って吹き飛ばす。
背に受けた反応弾の爆風を受けてさらに加速する『ストームエンゼル』。
楽しい、と思ったかもしれない。
大空の世界は自由だ。
同時に眼下にある雲海は恐るべき理である。
墜落して沈めば、自分であっても滅びる。その理を水面下に横たえさせながら,あこの世界の人々はたくましく生きている。
魔獣を狩り、その血肉でもって生命とする。骨や革で生活を整え、天使核でもって大陸を浮遊させる。
そのたくましさをドウジは好ましく思うだろう。
屍人帝国はそんな彼等をこそ滅ぼそうとしている。そんなことは許せないとばかりにドウジは『ストームエンゼル』と共に空を疾駆し、屍人帝国の領空、その境界線に至るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
【ルクス(f32689)様】と
エイル様の!!香りがします!!
誰がやべーメイドですか
比喩表現です当り前じゃないですか
次元を超えて匂いを捕捉できるなんて人間やめてます
いえ、私はそもそもガレオノイドですが
さておき
派手にいくなとは酷な話
ですが私なら艇としては小柄ですし
至近距離までは一気に行ってしまいましょう
【ガレオンチェンジ】
さ、ルクス様早く乗ってください
ついでにあまり音の出ない方法で鳥を牽制してもらえると助かります
鳥の群れをくぐり抜けたら【ガレオンチェンジ】解除
鳥の追撃をかわすためにまずは自由落下で振り切りつつ
『アンゲールス・アラース』装着で空中機動に切り替え
ルクス様を抱きかかえて島に復帰します
ルクス・アルブス
【ステラさん(f33899)と】
ステラさん、今日もヤバさ全開マックスですね。
比喩……きっと違う。多分違う。
だってステラさん若干でもなく興奮気味ですし、
目元潤んでますし、頬とか口元とか緩んでますもん。
言えないですけど。
あと、その発言も、
他のガレオノイドさんからクレーム来そうですよね。
っと、そうでした。
ガレオン船になったステラさんに乗らせていただきますが……。
音を出すな、とか音楽家(自称)になんという無茶振りですか!?
華麗な演奏で魅了しようと思っていましたけどしかたありません。
【光の勇者、ここに来臨!】を使うことにしますね
近づくと焼き鳥にしますよ!
それにしても、飛べない勇者は、ただの勇者ですね。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思っていた。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の言動がである。
「『エイル』様の!! 香りがします!!」
やべーメイドである。
距離を取りたくなるほどのヤバである。
厳密に言えば、今日もヤバさ全開マックスである。
ステラは比喩表現ですよ当たり前じゃないですか! と熱弁している。
いやー、なんか比喩とはとても思えない。
きっと違う。多分違う。
「次元を超えて匂いを捕捉できるなんて人間やめてます。いえ、私そもそもガレオノイドですが」
ステラが尤もなことを言う。
だが、正直な所を申し上げれば、今のステラの表情のほうがやべーのである。
若干っていうわけでもなく興奮気味であるし、目元潤んでるし、頬とか口元も例外なく緩んでいる。
セルフツッコミをするステラを前にルクスは黙っていた。
これまでの心の声を漏らすわけにはいかないのである。漏らしたが最期である。色んな意味で最期である。
だから、黙っている。
「さておき、派手にいくなとは酷な話」
ステラは自己完結している。
なんていうか、ルクス的にはステラが大手を振ってガレオノイドですって言いはるのは、なんかちょっと、こう、ねぇ? と思っていた。言えないけど。
絶対他のガレオノイドさんからクレームが来そうである。訴えられても多分負ける。
「ですが私なら艇としては小柄ですし、至近距離までは一気に言ってしまいましょう」
ステラの瞳がユーベルコードに輝き、その躰が飛空艇へと変わる。
変身した彼女の飛空艇としての姿。
これで一気に凶鳥の群れを突っ切ってしまおうというのだ。
幸いにして先行した猟兵が多くの凶鳥たちを引きつけてくれている。この機会を逃すわけにはいかないだろう。
「さ、ルクス様早く乗ってください」
「っと、そうでした。でも派手には行けないんですよね……」
「ええ、ですからあまり音のでない方法で鳥を牽制してもらえると助かります」
「音を出すな、とか音楽家になんという無茶振りですか!?」
ルクスは自慢の華麗な演奏で凶鳥たちを魅了しようと思っていたのだ。
よくあるじゃないですか、見事過ぎる演奏に猛獣たちも心を許して、道を譲ってくれる的な、そんな冒険譚。
それを目指していたのである。
しかし、悲しいかな。
ルクスの演奏は、その、えっと、独創的なのである。獣たちにそれを解せというのは、ちょっと難しい問題であった。
音楽芸術とは、そういうものを超えていくものであると言われたら、そのぉ、困っちゃうんですけどぉ。
「仕方ありません。ならば! 光の勇者ルクスがお相手します!」
びっかー! とルクスのユーベルコードが煌めく。
光の勇者、ここに来臨!(ユウシャトウジョウ)
彼女の眩い光と効果線をまとったかっこいいポーズが炸裂する。
それは凶鳥たちにとっては、よくわからんポーズであった。だが、その光は凶鳥たちの視覚を塗りつぶし、空を飛ぶ感覚を失わせるだろう。
次々と雲海に落ちていく凶鳥たちを尻目にステラはルクスを全速力で飛ばす。
だが、それでも屍人帝国領空に近づけば凶鳥たちの数も多くなる。
大空の世界、ブルーアルカディアにおいて戦場は平面ではない。上下左右。あらゆる場所が戦場になるがゆえに、ステラはあえて飛空艇としての姿を解除させ、自由落下で凶鳥たちを振り切る。
「それにしても、飛べない勇者は、ただの勇者ですね」
「勇者は飛べてなんぼみたいな所、あるんですかね?」
わかんない。
けれど、二人は自由落下しながら微笑み合う。
ステラが天使の翼を展開し、ルクスを抱えて再び上昇する。
彼女たちが見たのは屍人帝国『オーデュボン』の領空。その境界線を守るように展開されたオブリビオンの守備隊であった。
これからどうするべきかを二人は考えなければならない。
密かに潜入しなければならない。
かといって、敵の守備隊を躱す必要がある。彼女たちがまた一歩『オーデュボン』の謎に近づくためには、時として大胆な行動が必要となるかもしれない。
いや、まあ、いつも大胆不敵であると言われたら、否定はできないのではあるが――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
さて、まずは突入であるか。霹靂に騎乗しよう…頼んだぞ。
今は見つかってもよいのであるが…素早さは維持でな。
追い縋ってきた凶鳥には、黒燭炎による薙ぎ払いを。
さらに、UCで強化した結界術+生命力吸収にて接近しづらくもしよう。
さて、幾度か交戦したが…いったい、どんな動きをしておるのやら。
※
限界突破な空中機動をする霹靂。頑張る!
霹靂「クエッ!」
屍人帝国『オーデュボン』に対する一手。
それは猟兵たちにとっては貴重な機会であるといえるだろう。
グリモアエフェクトが照らすのは『大いなる危機』である。
その一歩手前で危機の被害を減ぜられる機会が与えられたことは、猟兵たちにとって幸いであったことだろう。
屍人帝国の存在は未だ謎多きものである。
ブルーアルカディアにおいて幾つか存在する強大な屍人帝国。
その一つである『オーデュボン』についてわかっていることは多くない。
『青い鎧の巨人』と少年『エイル』を追跡していたこと。
『遺骸兵器』を手に入れようとしていたこと。
幾度となく猟兵達が介入した戦いがあっても、ただこれだけしかわかっていない。どのような目的があり、どのような首魁たる皇帝がいるのかも定かではないのだ。
「さて、まずは突入であるが……『霹靂』、頼んだぞ」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は騎乗したヒポグリフたる『霹靂』の首を撫で、頼もしき大空の獣に声をかける。
「クエッ!」
それに応えるように鳴く様も頼りがいがある。
「今は見つかってもよいのであるが……素早さは維持でな」
『侵す者』はしうかに告げ、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
幸いにして多くの先行した猟兵のおかげで道行きに存在する凶鳥たちは引きつけられ、数を減らしている。
とは言え、まだ油断はできない。
凶鳥は縄張り意識の高い魔獣だ。
こちらが領空を侵せば、数や力量差など関係なく突っ込んでくるし、殺到もするだろう。
機敏さと隠密性を必要とされる今回の潜入行にとって、それは煩わしいものであった。
「クエッ!!」
ヒポグリフの翼が羽ばたき、『霹靂』は一気に空を駆ける。
その姿を認めたいくつかの凶鳥の群れが途端にこちらに意識を向けるのは、仕方のないことであった。
「さて……ここは悪霊のあるところ。近づくことができるとは思わぬことだ」
四悪霊・『界』(シアクリョウ・サカイ)が『霹靂』を包み込む。
結界、天候操作、そして生命力吸収。
呪詛たる源から発せられる力が、縄張りを侵す者を噛み殺さんとせまる凶鳥たちを阻む。
荒れ狂う風が速度を殺し、結界がついばむくちばしを阻む。
そして、近づいたことにより、生命力を吸収する呪詛が凶鳥たちの勢いを削いでいくのだ。
「近づきがたいものもあるということを学ぶが良かろう」
『侵す者』は静かに告げながら、『霹靂』と共に大空を疾駆する。
この大空の世界、ブルーアルカディアにおいて、屍人帝国とは脅威以外の何者でもない。
人々の暮らす浮遊大陸を沈め、己の版図とする。
これはどの屍人帝国にも共通することだ。
だが、『オーデュボン』はこれまでの幾度となく戦い、交えた存在。
それであっても未だ見通せぬものがある。
「……不穏な動きとは言ったが、どんな動きをしておるのやら」
『侵す者』は、屍人帝国『オーデュボン』の領空、その境界線に『霹靂』と共に至る。
オブリビオンの守備隊が展開し、巡回する浮遊大陸。
これが本拠。
これまで知られることのなかった場所。
潜入行はこれからが本番であろう。
有益な情報を持ち帰るためには、オブリビオンの守備隊を躱し、この浮遊大陸に潜入しなければならない。
多くの謎をはらむ屍人帝国。
その内情を知る唯一の機会。
それを無駄にせぬために『侵す者』は『霹靂』の気合い充分な鳴き声と共に、これを目指すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『天使病・テルクシノエ』
|
POW : 彩唱
自身と武装を【光彩を放つ翼と大音量の歌声】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[光彩を放つ翼と大音量の歌声]を飛ばして遠距離攻撃も可能。
SPD : 幸唱
【何もかもを魅力する美しい歌声】から、戦場全体に「敵味方を識別する【あらゆる傷から翼を生やす奇病】」を放ち、ダメージと【精神の混濁と混乱】の状態異常を与える。
WIZ : 福唱
【あらゆる存在に祝福あれ】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【体の各部位を破壊しつつ翼が生える奇病】の状態異常を与える。
イラスト:しゃんるー
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
屍人帝国『オーデュボン』の領空。
その境界線を守るのは、オブリビオン『天使病・テルクシノエ』。
天使の翼を持つ彼女たちが守るのは、『オーデュボン』の浮遊大陸である。近づくもの全てを打倒するべく守備隊である彼女たちは空を飛び、巡回している。
不穏な動きを見せている、と予知された屍人帝国。
それを証明するように巡回する守備隊の数は多い。
だが、それだけ多い守備隊を動かしているのならば、必ず何処かに薄い場所があるはずなのだ。
それに広大な浮遊大陸全てをカバーすることなどできない。
何せ、ブルーアルカディアは大空の世界である。
地上のように平面的な状況ではない。
上下左右。
あらゆる場所を網羅しなければならない。そんな守備隊たちの側面を突き、一群を速やかに滅ぼして潜入する方法もあるだろう。
上空から飛び込むことも、強引であり見つかる可能性も高いが可能ではある。
また大陸の下から入り口を探して潜入することもできるかもしれない。
何の道を選ぶにしても困難な道のりである。
言うまでもなくこれは潜入行。
求められるのは迅速さと隠密性。敵のユーベルコードが歌声である以上、交戦が長引けば、それだけ敵を集めることになる。
そして、此処は敵地。
如何に猟兵が優れた力を持っていたとしても、力で押し切られてしまう。
それらのことを考慮して、猟兵たちは、この危険な潜入行を成功させなければならない――。
リーベ・ヴァンパイア
さて、第一関門は何とか突破出来たが、…第二関門も厳しいようだな。……此処まで厳重という事は、余程の何かがあるという事は間違いないようだな。
……何とか通り抜けねばな
作戦
奴等は飛んで巡回している。という事は上からの潜入は厳しいか。…となれば、下から……というのも奴等は対策しているだろうな。……だが、それでも下に雲海に落ちる可能性を考えれば警備の数は少ない筈だ。ゆえに、下から入り口を探すとしよう。
先程と引き続き、神封じの鎖を大陸に突き刺しながら、移動して、入り口を探す。敵と遭遇したら、気付かれるよりも速く、【早業、先制攻撃】を仕掛ける
【instant・Combo】で奴等の歌を阻止して、更に進んでくぞ
目の前に広がるのは屍人帝国『オーデュボン』領空の境界線。
この大空の世界ブルーアルカディアにおいて空とはすなわち、領土である。
目に見えぬ境界線はこの世界ならぬ猟兵たちにとっては境目のわからぬものであったが、巡回するように飛ぶ数多の翼持つオブリビオン『天使病・テルクシノエ』たちの姿を見れば、自ずとその境界線を理解することが出来ただろう。
浮島の一つに潜み、リーベ・ヴァンパイア( Notwendigkeit ・f37208)は見据える。
「さて、第一関門はなんとか突破出来たが……第二関門も厳しいようだな」
リーベが見やる先に巡回するように飛ぶオブリビオンの守備隊。
彼女たちが何を守っているのかは言うまでもない。
屍人帝国『オーデュボン』は翼在るオブリビオンを多く擁する。この大空の世界にあっては当然かも知れない。
だが、同時にこれだけの厳重さであるのならば、重要性がましてきたようにリーベは思えただろう。
「……何とか通り抜けねばな」
一筋縄では行けない。
オブリビオンの守備隊である『天使病・テルクシノエ』たちは飛翔して巡回している。ならば、眼前の浮遊大陸には上から突入するにはあまりにも今回の潜入行とはかけ離れているように思える。
突破できないことはないだろうが、どう考えても敵が自身に殺到してくる未来しか見えない。
ならば、下から、と考える。
「それは敵も対策はしているだろうな……」
浮遊大陸は、その性質から考えて下からの面にも対策を講じなければならない。普通の浮島程度であれば考えるまでもないが、ここは屍人帝国の本拠である。
むしろ、何も方策をしていないと考えるほうが不自然だ。
「とは言え、それでも下は雲海。落ちれば滅び。ならば、警備の数は少ないはずだ」
リーベは黄金の鎖を取り出し、撃ち放つ。
血により生み出された楔が浮遊大陸の下部に突き立てられ、雲海すれすれを弧を描くようにしてリーベは距離を稼いで取り付く。
此処まではいい。
だが、此処からは迅速に行動しなければならない。
下部から入り口を探す。
だが、どうにも見つからない。いや、どう考えても下部からの出入り口のようなものがあるはずなのだ。
巡回する利便性を考えれば、地上からこの下部に至るまでのショートカットはつくりたいはずだ。
ならば、そこから侵入できるはずだとリーベは考えた。
「……ッ! あれかッ!」
リーベは息を軽く飲み込み、鎖の遠心力を利用して一気に大陸下部の一つの岩場の隙間から現れた『天使病・テルクシノエ』たちの群れめがけて飛ぶ。
迅速に。
そして、静かに。
放たれる飛び蹴りの一撃が、『天使病・テルクシノエ』の一体を雲海に叩きつける。
instant・Combo(キホンコンボ)。
さらに放たれる拳の連打が後続の『天使病・テルクシノエ』の喉元に叩きつけられ、声を発する前に絶命させる。
さらに、その個体を蹴り落とすとひるがえるようにしてリーベの体が空中で回転する。
鎖が岩場の隙間に打ち込まれ体を支え、遠心力で威力を増したかかと落としが『天使病・テルクシノエ』の頭部を叩き割る。
「フッ――……数が少ないのが幸いしたか……ここが下部からの巡回する守備隊が出る入り口ならば……」
ここから浮遊大陸へと侵入できるはずだ。
リーベは即座に敵を音もなく打倒し、滑り込む。
入り込んだ場所は未だ多くのオブリビオンたちがひしめいている。だが、ここで諦めるわけにはいかない。
リーベは潜入行の最終段階へと足を踏み出し、一先ずは屍人帝国『オーデュボン』の内部へと入り込むことに成功したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「本当に困難なのは此処から。
先の敵はただの獣だったが、
あれは組織的に動き侵入者を阻む。」
敵の目につかない様に大陸の下から潜入。
敵から死角になる場所を探して
【地形の利用】をし【迷彩】を施したり【闇に紛れる】事で
潜伏しつつ再度ファントムレギオンの死霊を呼び出し
【式神使い】で使役。入口を探す為に【偵察】させる。
「入口があったとしても侵入者に備えるなら
複数作るのは上策じゃない。なら自然と奴らが集まり
交錯する場所がある筈。」
とその場所を【見切り】向かい。
敵が少ない時を狙い潜入
敵に見つかったら輪廻天還を発動。
敵の攻撃を跳ね返しつつ
フリージングエッジで刃を生成。
喉を凍らせ切り裂き仲間を呼べない様にして倒す。
凶鳥の縄張りを進む。
それはブルーアルカディアに生きる人々にとっては自殺行為に他ならなかったことだろう。
魔獣は容易く人の膂力を超える。
翼羽ばたけば、それだけ一足で回り込まれるし、爪は人の肌など紙のように切り裂くだろう。
だが、勇士と呼ばれる者たちがいるように、人々はその魔獣をこそ狩って、この大空の世界で生存している。
たくましいと呼ぶに相応しい人々である。
だからこそ、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は言う。
「本当に困難なのは此処から」
屍人帝国『オーデュボン』の領空、その境界線にある浮島に辿り着いた彼は此処からが本番であると知っている。
これまで相手にしてきたのは凶鳥。
謂わば獣だ。
けれど、目の前にある浮遊大陸を巡回しているオブリビオンの守備隊は、知性ある者であり、組織的に動き侵入者を阻む者たちでもある。
幸いにして、浮遊大陸は平面的な攻略以上に三次元的な攻略をすることができる。
本来なら城壁や崖といった平面的なものを下から上にと向かわねばならぬ所を、空に浮かぶ浮遊大陸は、下面からの攻略も可能なのだ。
「とは言え、敵も莫迦ではあるまい。下からの侵入経路も対策を取っているだろう」
フォルクは死霊を呼び出し、使役する。
彼等を投入し、浮遊大陸の下面を偵察させる。
下面からの偵察は思った以上にうまくいく。
確かに浮遊大陸の弱点は下面と言わず、上下左右と言った他方からの攻勢に備えなければならないという煩雑さにあった。
けれど、その下面は雲海である。
雲海に沈めばどんな存在も滅びるのが、この世界の理だ。
「入り口があったとしても、侵入者に備えるなら複数作るのは上策じゃない。なら自然と奴らが集まり交錯する場所がある筈」
フォルクが睨んだ通りであった。
下面からの侵入できそうな経路、すなわち、内部から飛び立つ『天使病・テルクシノエ』たちが出入りする場所は東西南北の4つ。
死霊たちから伝えられる情報を元にフォルクが見極めた結果であった。
どんなにこの広大な浮遊大陸をカバーできる兵力があるのだとしても、出入りする点、すなわち守らなければならない場所を多くする必要はない。
「となれば、やはり最低限4つ……睨んだ通りだな」
フォルクはその4つのうちの一つに的を絞る。
敵の出入りが少ない場所を、と思ったのだが、どうやら時間的にフォルクが赴いた場所が最も手薄であるようだった。
飛翔する靴から噴射する炎の力を後押しにフォルクは、侵入していく。
『天使病・テルクシノエ』たちの姿が見える。
それをフォルクはやり過ごし、浮遊大陸の岩場の影から先に進む。
だが、やはり『天使病・テルクシノエ』たちが飛び立つのが途切れることはなかった。
観察すればするほどに守備隊の数が多い。
これが不穏な動きを見せていることに関係しているのならば、フォルクは意を決する必要があった。
「やるしかないか……」
フォルクは守備隊の最後尾を見計らって飛び出す。
手にした冷気をまとうサファイアが生み出した氷の刃で最後尾の『天使病・テルクシノエ』の喉を背後からかき切って、口元を抑える。
もがくようにする『天使病・テルクシノエ』に突き立てた氷の刃が赤い色の染まりきった頃、動かなくなった個体を雲海へと投げ出す。
雲海に沈めば滅びる。
こういう時に雲海が証拠を隠滅することに役立つ。
そのことにフォルクは微妙な気持ちになりながら、浮遊大陸に侵入を果たす。
「次は本丸……さて、何が出るかわからないが……」
それでも多くを得るためには、時として大きな一歩を踏み出さねばならない。フォルクは、その一歩を今踏み出したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ノウェム
思った以上にイケるです、このUC
さて。次ですけど。
一人だけが乗れる程度で小さめとはいってもエル・セプスも飛空艇です
ある程度大きめの入口じゃないとは入れないです
でも無視して空から乗り込むのもリスクが、むむむむ
……UCで姿を隠し、周囲を飛行して様子を見つつエル・セプスでも入れる場所を探すです
そういう場所は向こうの飛空艇とか魔獣の出入り口でもあるし、今の段階で場所を押さえておいて損はない筈……です
そういう場所ならそれだけ「今いる分」と「駆けつけてくる分」、どっちも多いだろうから余程敵の数が少なくて即殲滅できるとかでない限りUCで姿を隠したまま手を出さずにやり過ごしていくです
※アドリブ等歓迎、です
Dダイバー(ディストーションダイバー)。
それは魔力に寄って生み出された空間の歪みでもって自身の存在を隠匿するユーベルコードである。
ヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は凶鳥の縄張りを抜ける際に、このユーベルコードを使用したのだが、その力、効果に手応えを感じていた。
「思った以上にいけるです、このユーベルコード」
ヴィクトリアにとって、それは満足できるものであった。
空間の歪みは遠距離攻撃も可能であるし、視聴嗅覚に感知されなくなるというのは、こうした潜入行では絶大な力を発揮する。
とは言え本番はこれからだ。
屍人帝国『オーデュボン』にほど近い境界線の浮島からヴィクトリアは、本拠である浮遊大陸を見やる。
そこにあったのは多くのオブリビオンが守備隊となって浮遊大陸のまわりを巡回している姿であった。
その兵力から見て、不穏な動きを見せているということの証明となるのは明白だった。
「さて、どうしましょう。独りだけが乗れる程度で小さめとは言っても……」
彼女の乗る飛空艇『エル・セプス』も飛空艇である。
ある程度の大きさの入り口がなければ入り込むことはできない。置いていけば、とも思うが『エル・セプス』は彼女の外装、すなわち鎧となる機構も備えているがゆえに、置いていくことは万が一の事があった時、的に抵抗する術がないということになる。
そうなれば、敵地で潜入に失敗したヴィクトリアの行く末など言うに及ばないだろう。
「でも無視して空から乗り込むのもリスクが、むむむむ」
唸ってしまう。
上空から飛び込むには守備隊に見つかってしまうだろうし、かと言って他方からというのも時間がない。
「こういう場所には飛空艇とか魔獣の出入り口もあるはずですし、今の段階で場所を抑えておいて損はない筈……です」
ヴィクトリアは意を決して時間制限との戦いに挑む。
彼女のユーベルコードから生み出された空間の歪み。それによって彼女と飛空艇は視聴嗅覚によって知覚されない物体となって、『オーデュボン』の本拠である浮遊大陸へと近づいていく。
彼女は飛空艇と共に浮遊大陸の外周をぐるりと回る。
空から飛び込むにはあまりにも警戒が強すぎる。視聴嗅覚に完治されないとは言っても接触してしまえば、それまでなのだ。
慎重に、かつ大胆な行動が求められる。
「……こういう場所はやっぱり防備が硬い、です」
ヴィクトリアは魔獣などの出入り口を幾つか見つけたが、やはり『天使病・テルクシノエ』たちの数が多いことに気がつく。
敵の襲来を予見している、とも取れる限界な体勢。
ヴィクトリアはユーベルコードの効果が切れる時間を目安に行動する。残り僅かである、というその時一つの飛空艇が出入りできそうな港口を発見した。
僥倖。
そう言うに値するタイミングだっただろう。
「時間も少ない、です。今はあそこから……!」
滑り込むように飛空艇『エル・セプス』が港口に飛び込む。ちょうど『天使病・テルクシノエ』たちが飛び立つ瞬間であったため、接触の危険はあったが、ヴィクトリアは既の所でこれと接触することを回避する。
目の前に広がるのは軍港と呼んでも差し支えのない光景。
これだけの戦力を有しているブルーアルカディアの中でも屈指の屍人帝国。
『オーデュボン』の強大さを知るには十分であった。
「でも、ここからが本番、です。もっと多くの情報を得て、報酬も弾んでもらう、です」
ヴィクトリアはもう一度姿を隠し、屍人帝国『オーデュボン』の奥深くまで足を踏み出す。
危険は伴う。
けれど、きっと得られるものも多いであろう。彼女は、その今まさに虎穴に足を踏み出したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『侵す者』にて
さて、霹靂。ここからは隠密行ぞ。
出来れば下からであるかの…。いやわし、本来は隠密行向きではないのだがな?(破壊中心)
このUCを使えばいい、と『疾き者』(隠密向きな忍者)から言われて、たしかに…となってなぁ。というわけで、使っていこう。
できれば攻撃をせず、敵の間を縫うようにいこう。第六感も活用してな。
こういう操作じゃと、わしになるから…わしなのよなぁ。
※
霹靂「クエーッ」
隠密行でも張り切る霹靂。見切りからの空中機動で敵を避けていく。『侵す者』の指示も受ける。
友達の陰海月は、影から応援。ぷきゅ!
辿り着いた屍人帝国『オーデュボン』の領空。
その境界線は多くのオブリビオンの守備隊によって巡回され、なかなか隙を見出すことができない。
だが、ここは通常の大陸ではない。
空に浮かぶ浮遊大陸である。であればこそ、平面的な地上とは異なるアプローチの仕方ができるというものである。
少なくとも、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はそう判断した。
「さて、『霹靂』。ここからは隠密行ぞ」
ヒポグリフである『霹靂』の首を軽く撫でて、『侵す者』がつぶやく。
オブリビオンの守備隊は『天使病・テルクシノエ』で構成されている。
かのオブリビオンはユーベルコードに歌声を使う存在である。もしも、こちらを気取られ、交戦することになれば、そのユーベルコード故に次々と援軍を集めることになるだろう。
そうなっては猟兵と言えど、数の暴力に寄って撤退を余儀なくされる。
「できれば下からであるかの……」
『侵す者』は本来隠密行動が得意であるとは言えない一柱である。
戦い、壊すことのほうが得意であるし、これまでもそうしてきた。
四つの悪霊の魂が束ねられて存在しているのが馬県・義透という猟兵だ。それぞれに得意なことがある。
だからこそ、自身が表にでていること事態が異例であるともいえる。
とは言え、オブリビオンと交戦する、ないしは敵地で破壊工作を行うかもしれないという点においては自身が表にでていることもわかるのだ。
「ふむ……」
一つ考える。
自身の内にいる一柱である『疾き者』が告げる。
ならばこそ、このユーベルコードであると。
それは、四悪霊・『海』(シアクリョウ・ウミ)。
自身と『霹靂』を呪力で出来た海水霧で覆う。視聴嗅覚で感知されぬ霧は、常に身にまとうようであり、自身に迫る状態異常の効果を打ち消していく。
「確かに……では、容赦なくいくとしようかの」
もしも、これがオブリビオンを殲滅することが目的であったのならば、他にやりようはいくらでもあっただろう。
けれど、彼が告げたように今回は隠密行である。
必ずしもオブリビオンを倒す必要はないのだ。
「……こういう操作じゃと、わしになるから……わしなのよなぁ」
騎乗しての行動。
それは隠密を旨とする『疾き者』ではうまくできないことであったのだろう。『霹靂』が応えるように感知されぬ姿となったまま、『天使病・テルクシノエ』の合間を縫うようにして飛ぶ。
「クエーッ」
『霹靂』が一つ鳴いても『天使病・テルクシノエ』たちは反応しない。
それがどうにも不思議なようで『霹靂』は首を傾げている。視聴嗅覚で感知されなくても、触覚、すなわち触れれば察知されてしまう。
ここは慎重に行くべきだと『侵す者』は、『霹靂』に指示を出して浮遊大陸の下面から迫る。
「ふむ……やはり下からのほうが侵入しやすいと来たか……それにしても……」
この屍人帝国『オーデュボン』は未だ目的も、その規模も不透明な存在である。
ここで得られた情報はきっと猟兵全体にあっても有益なものとなるだろう。
故にこれは虎穴に入るようなものである。
多くを得るためには、自らの身を切るような思いをしなければならない時もあるだろう。
『侵す者』にとって、それは理解の内だろう。
「ここは軍港か? だがまだ情報と言っていいものはない、か……やはり、これより先にあるのだな」
『霹靂』と共に侵入した屍人帝国。
その先にあるものが何であるのか。未だ見通せぬ屍人帝国『オーデュボン』の知られざる光景を求め、『侵す者』はさらに一歩を踏み出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
参ったな…
ふわふわと天使達が飛んでいる…困ったな…
仕方ない…力尽くで行くしかないか…!
さぁ行くぞ…私は…処刑人…!
地獄の炎を纏いて
【|炎獄の大地《ブレイズ・アース》】で
大空に炎の道を作り[地形を利用し]空を渡り守備隊の隙を付こう
敵放つ歌で体から生える翼を地獄の炎で[焼却]し
[激痛耐性と継戦能力]で耐え抜き駆け抜けよう
鉄塊剣を抜き振るい炎纏う[斬撃波]で敵群を[範囲攻撃]
燃え広がり移る地獄の炎で敵群を焼き払いながら[蹂躙]しつつ
炎の道を作りながら屍人帝国の領域へと目指そう…!
天使達が炭と化し雲海へと落ちてゆく…
まさに堕天使か…ふふふ……
あぁ、いけない……さっさと先へと急がねば……!
「参ったな……」
仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)はほとほとに困り果てていた。
彼女は凶鳥たちの群れ為す領空を抜けて、こうして屍人帝国『オーデュボン』の領空の境界線へと辿り着いていた。
しかし、目の前には浮遊大陸を守備するオブリビオンの群れが飛んでいる。
これを打倒するのではなく、なるべく避けて進まねばならない。
今回の目的はあくまで斥候である。
敵を殲滅することではないのだ。
それに此処はオブリビオンの本拠地でもある。仮に交戦したとして、戦いが長引けば必ず数の不利でもって猟兵たちはすり潰されることだろう。
そうなっては今回の目的を果たすこともできなくなってしまう。
「仕方ない……力づくで行くしか無いか……!」
アンナは決意する。
浮島から観察するに、敵の守備隊も完全に領空を網羅しているわけではない。
ならば、と彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「さぁ行くぞ……私は……処刑人……!」
炎獄の大地(ブレイズ・アース)を生み出すかの如く、アンナより広がる地獄の炎。
それは空を塗りつぶすかのように炎が道を造り上げる。凄まじいまでの熱量が空に広がり、『天使病・テルクシノエ』たちはようやくにしてアンナの存在に気がつくだろう。
祝福あれと謳う声が響き渡る。
だが、その歌声さえもアンナは塗りつぶす。
肉体に生える奇病の如き翼さえも、見の内側から吹き出る地獄の炎が焼却する。
「無駄だ……!」
炎の道をアンナはひた走る。
痛みはあるはずだ。体から翼の生える奇病。
それは激痛と共にアンナの体を蝕むだろう。けれど、それでもアンナは止まらない。己のユーベルコードが生み出した獄炎の道は、己が辿る道である。
ならばこそ、その炎こそが己自身であるとも言える。
たとえ、痛みが疾走るのだとしても、彼女の歩みを止められるものではないのだ。
鉄塊の如き剣を振るい、一閃の内に『天使病・テルクシノエ』を叩き潰して一気に空を駆け抜ける。
「まさに堕天使か……ふふふ……」
炎が『天使病・テルクシノエ』を燃やし尽くす。
雲海に沈めば、例外なく全てが滅ぶ。きっと己もそうだろう。けれど、アンナは己の目的を果たすまでそのつもりはない。
「あぁ、いけない……さっさと先へ急がねば……!」
『天使病・テルクシノエ』が燃え尽きながら雲海に沈む様子を見ているだけではいけないのだ。
これは潜入のための戦い。
アンナは敵の防備の薄い集団を狙って討ち滅ぼし、炎の道をひた走る。
屍人帝国『オーデュボン』はアンナにとっても、そして他の猟兵たちにとっても未だ得体の知れない存在である。
その目的も、全容も。
何よりも首魁の存在すら知られていない。
この潜入行で得られる情報がどれだけのものであるかはわからない。
けれど、アンナの行動が未来に起こり得るであろう『大いなる危機』の脅威を少しでも減らすことができるのならば、危険な領域に踏み込むことには大きな意義が生まれるだろう。
そのためにもアンナは疾走る。
処刑人と己を定義し、オブリビオンの目論見をこそ断ずる。
炎の道は、空に掛かり、今まさに屍人帝国『オーデュボン』に迫らんとしている――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーん、あの天使邪魔だなあ…
無理矢理突破…っていうのも、目的を考えると違うし
まあ、注意を逸らしてその間に入り口でも探そうかな
ちょっと裏口からお邪魔しますよ…と
●
【断章・不死鳥召喚】起動
不死鳥を召喚して、テルクシノエの注意を惹くように飛び回らせよう
発見されたら、体当たりしたり炎の『ブレス攻撃』で攻撃
守備隊にちょっかいをかけて、少しでも隙を作ろう
ちょっかいかけたら、私から距離を取るように不死鳥を飛ばして防衛網に穴を開ける
死角を突きながら、侵入路を『情報収集』
『念動力』でジャンプ力を強化して、足場を駆け必要であれば『クライミング』をしたりして大陸下部辺りの入り口を探して侵入していこう
屍人帝国『オーデュボン』の領空、その境界線にある浮島の一つにまで辿り着いた月夜・玲(頂の探究者・f01605)が見たのはオブリビオンの守備隊であった。
奇妙なオブリビオンであった。
全身から翼が生え、体を包み込んでいる。
ふわふわと漂うにしながら、けれど時として統制された動きを見せる。
明らかに巡回していると取れる行動であった。
「うーん、あの天使邪魔だなぁ……」
『天使病・テルクシノエ』。
かのオブリビオンたちのユーベルコードは歌声を介するものばかりである。
もしも、交戦したのならば歌声を聞きつけた他の守備隊が集結することは言うまでもない。
玲が邪魔だと思うのも無理なからぬことである。
強行突破。
その単語が頭の中に浮かぶ。
けれど、それを頭を振って振り払う。今回の目的を考えると、それは違う。ついつい、そうした考えが浮かんでしまうのはオブリビオンと猟兵が滅ぼし滅ぼされる間柄であるからだろう。
「まあ、注意を逸らしてその間に入り口でも探そうかな」
こういう場所には裏口があるものだと彼女は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
断章・不死鳥召喚(フラグメント・フェニックスドライブ)。
浄化の蒼炎で構成された不死鳥が空を飛ぶ。その姿は本来の目的を考えれば、陽動、囮といったところだろう。
あえて発見されるように飛び立つ不死鳥めがけて『天使病・テルクシノエ』たちが殺到する。
炎で構成された体は歌声によって翼を生えさせられるが、その全てが炎でもって燃やし尽くされていく。
「――ッ!!」
不死鳥が咆哮するようにブレスを放ち、『天使病・テルクシノエ』たちの注意をひきつけている間に玲は『天使病・テルクシノエ』たちの動きを見る。
不死鳥はあえて自分から離れるよに飛ばす。
「これで防衛網は穴が開くでしょ……となれば」
突如として現れた蒼炎の不死鳥に対応する守備隊。
これが通常の存在であったのならば、即座に片がつく。けれど、蒼炎で構成された不死鳥は、その名の通り倒れがたき存在だ。
歌声の力が届けども、致命打には至らない。
「ちょっかいかけている間に……っと、良さそうな裏口発見。お邪魔しまーす」
玲は念動力で浮石を足場にして跳ねるようにして浮遊大陸の下面へと至る。
やはり下面は雲海に面しているために防備が薄い。
雲海に沈めば、どんな存在であっても滅ぶ。ならばこそ、危険をおかしてまで下面からの侵入をなそうと考える者は少ない。
だからこそ、玲たち猟兵たちは下面からの浮遊大陸への侵入を試みる。
「よっと……あのオブリビオンが出てくる場所があるはずだから、っと……ほら、やっぱり」
玲はクライマーさながらのクライミングで『天使病・テルクシノエ』たちが飛び立つ出入り口を見つける。
ここからならば屍人帝国の内部に入り込むにはちょうど良さそうだ。
先行した猟兵たちや、玲が囮につかった不死鳥のおかげで、守備隊たちは俄に騒然としている。
この間に抜けることができるのならば、抜けておきたい。
「それじゃ、何が出るかな」
玲は一歩を踏み出す。
其処は軍港のようでもあり、またこれだけの戦力を擁することが『オーデュボン』の強大さを知らしめるようでもあった。
けれど、恐れては居ない。
今は知的好奇心がそれを上回る。何が目的としているのか。オブリビオンの内情を得る得難き機会。
それを得るために玲は今、虎穴に入るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アストラ・テレスコープ
ふふん、逃げ回りながら進むのもなんか飽きてきたし、ちょっと強引に突破しちゃおうかな!
自慢の「視力」で遠くにいる敵を確認!
わー、敵もたくさん集まってきてるねー!
敵がこっちに気づく前にユーベルコード発動!!!敵の方向に向かって発射!
いえーい!
もう私は止まらないよ!
視力とか聴力とか無くなってもそっちが避ける暇なく勝手にぶつかっていくからね!!
アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)はまっさきに凶鳥の縄張りを駆け抜けた猟兵であった。
彼女が凶鳥の多くを惹きつけるようにして飛んだおかげで、後続の猟兵たちの多くが比較的容易にあの領空を抜けることができた。
こうした一つ一つの積み重ねが猟兵たちの戦いを支えている。
とは言え、アストラは若干飽きていた。
自分の腰にあるミニロケットベルトの噴射は未だ力強い。
けれど、やっぱり逃げ回りながら進むというのは楽しいとは思えないものであった。
「なんか飽きてきちゃった。ちょっと強引に突破しちゃおうかな!」
彼女の視力は、天体望遠鏡のヤドリガミであるがゆえに、とても良いものであったことだろう。
屍人帝国『オーデュボン』の領空。
その境界線から浮かぶ浮遊大陸を見やる。そこにあったのはオブリビオンの守備隊達が巡回する様子であり、また幾人かの猟兵が敵をあえて引きつけたり、撹乱したりしていることが伺える。
『天使病・テルクシノエ』たちは、声でもってユーベルコードを発するオブリビオンだ。
もしも、即座に勝負が決められないのであれば、長引く戦い故に続々と援軍を引きつけてしまう。
その修正を利用している猟兵もいる。
だからこそ、今浮遊大陸を巡回している守備隊の層が薄くなっているのだ。
「わー、たくさん集まってきているねー! それなら……」
アストラは未だ自分に敵が気がついていないことをいいことに、腰のベルトに備えられたミニロケットを触る。
瞳に輝くのはユーベルコード。
そして、彼女が観測し続けた星々の如き煌めきであった。
「3・2・1……発射!!」
小さなロケットであったそれらが、1mの大きさになり、さらに推進力を高めて凄まじい速度で持ってアストラを突き進めさせる。
一気に加速したロケット。
アストラの体では耐えられないほどの加速度Gがかかるだろう。
けれど、彼女のユーベルコードは、アストラの体、その心肺機能と撃たれ強さを強化するものであった。
増加した加速度Gなんてへっちゃらでるというようにアストラはテンション高く笑いながら一気に領空を飛ぶ。
「いえーい! もう私は止まらないよ!」
ロケットブレットハートビート。
止まらぬ鼓動は、高鳴り続ける。
推進力は心の中にある衝動を燃やすかのようであったし、『天使病・テルクシノエ』を轢き飛ばすようにして一直線にアストラは飛ぶ。
声を上げる暇すらない。
圧倒的な加速と体当たりでもってアストラは一直線に屍人帝国『オーデュボン』の浮遊大陸へと降り立つ。
着地だけはそーっと。
アストラが降り立ったのは自然豊かな森の中であった。
屍人帝国という名から、荒廃した場所をイメージしていたがアストラが見た光景は豊かな自然であった。
これが屍人帝国。
けれど、まだアストラは欲する情報を得ていない。
潜入は大詰め。
より多くの情報を得るため、アストラは空を見上げ続けてきた瞳を今、屍人帝国に向けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさん(f33899)と】
でもわたしは音楽家で勇者ですから、隠密系の技とかないんですよね。
そうだ! こういうときこそ【勇者の特権】を使ってみましょう!
なるほどなるほど。
『勇者が「こっそり隠れていく」と言えば、敵には見つからないことになっている』のですか。
勇ルクスちゃん、さすがです。
ではではそれに従って、木とか岩とかそういう感じの遮蔽物の陰に隠れたり、
転がっていたダンボールを被ったりしてこっそり行きましょう!
ステラさん、ついに脳内再生まで。
ヤバさが天元突……いえなんでも。
ここを抜ければ『エイル』さんの匂いが嗅げるかもですから、
いまは見つからないように潜入しましょう。
押さないでくださーい!?
ステラ・タタリクス
【ルクス(f32689)様】と
潜入任務…これほどまで私たちに不利なミッションがあるでしょうか
いえ、音楽家を名乗るのはちょっと、あの、その
と、ともかく
勇者、卑怯じゃないですか?そんなのアリですか?
いえ、私とてエイル様のメイド
そう、あの方の声を思い出せば
私に不可能なことなどありません!
【バトラーズ・ブラック】発動!
ええ、あの方の命令が聞こえました
誰がやべーメイドですか出来るメイドです
というわけで
【闇に紛れ】て【目立たない】ように【地形の利用】もしつつ
【迷彩】を自分に施して【忍び足】でいきましょう
ルクス様何か言いましたか?早く早く
今の状態の私がエイル様の【存在感】を見逃すなんてことはありませんので
今回、グリモアエフェクトが示したのは、屍人帝国『オーデュボン』の不穏な動きであった。
その全容は未だ知れず。
だからこそ、『大いなる危機』の脅威から人々を守るために猟兵たちは屍人帝国の本拠である浮遊大陸に潜入する。
未だ謎多き屍人帝国。
それが『オーデュボン』である。
幾度となく戦ってきたが、その目的は未だ不透明であった。
『青い鎧の巨人』と少年『エイル』を追跡していたかと思えば、『遺骸兵器』を狙うこともあった。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、屍人帝国の浮遊大陸の領空付近の浮島に佇み途方にくれていた。
「潜入任務……これほどまでに私達に不利なミッションがあるでしょうか」
「そうなんですよね。わたしは音楽家で勇者ですから、隠密系の技とかないんですよね」
ステラは困った、という顔をする。
これまでの彼女たちの行動を振り返ってみれば納得である。静音性とは真逆の騒音性パーティであったから。
ステラも否定はできないだろう。
「いえ、音楽家を名乗るはちょっと、あの、その、と、ともかく」
どうにかして潜入を成功させなければならないとステラは頷く。
「そうだ! こういうときこそ勇者の特権(ユウシャノトッケン)です!」
ぽんと現れる二人のルクス。
「どう考えてもみなさんが敵の注意を引きつけてくれている間に、その穴を抜けていくべきです」
常識的な『魔法使いの弟子ルクス』がささやく。
もっともなこと言っているなーってステラは思った。けれど、その反対側で『光の勇者ルクス』が非常識なことをささやくのだ。
「勇者が『こっそり隠れていく』と言えば、的には見つからないことになっているのです」
なんで!?
非常識にもほどがある。そういうことになっている、ってそれはあまりにもあんまりな方策であった。どうみたって見つかる。
だが、ルクスは頷く。
「勇者ルクスちゃん、さすがです」
納得している。いいのか? 本当にそれでいいのか? だが、ルクスは本気である。
「勇者、卑怯じゃないですか? そんなのアリですか?」
「なんでです? きっとだいじょうぶですよ。岩とか木とかそういう感じの遮蔽物の影に隠れたり、転がっていたダンボールをかぶったりしてこっそり行きましょう!」
えぇ……。
この場に他の猟兵がいたのならば、そんなふうに困惑しただろう。
けど悲しいかな。
ここにいるのはステラだけであった。そんでもってステラもやべーメイドである。
「……いえ、私とて『エイル』様のメイド。そう、あの方の声を思い出せば、私に不可能なことなどありません!」
いや、メイドって押しかけメイドだったし。それ以前に不可能もあるでしょって。
きっとこの場に他の……いないから誰も突っ込まない。止めない。
ステラの瞳は輝いていた。
バトラーズ・ブラック。他者からの命令を承諾することに寄って具現化された闇が現れ、その命令を完遂するためにあらゆる技能が高い水準に引き上げられるのだ。
他者とはステラの妄想である。
誰もなーんも命令していないのであるが、ステラは己の中にある御主人様に従うのだ。やべーである。
「ステラさん、ついに脳内再生まで。ヤバさが天元突……」
「なんです?」
「いえ、なんでも」
ステラとルクスは色んな道理や理屈を超越する潜入行でもって浮遊大陸に近づいていく。
浮石や遮蔽物、あらゆるものを利用して、容易く『天使病・テルクシノエ』たちの目をかいくぐる。
そういうのってアリなのかなぁって思わないでもなかったが、ルクスはステラの技能を後追いするようにして進む。
ステラの脳内御主人様がなんて言っているのかわからないが、まあ、これを利用しない手も無いだろう。
「ここを抜ければ『エイル』さんの匂いが嗅げるかもですから、今は見つからないように……」
「『エイル様』! 早く早く」
「押さないでくださーい!?」
遮蔽物から危うく押し出されそうになったルクスが、ステラを振り返って抗議の視線を送る。
けれど、今のステラは止まらない。
今の状態のステラが御主人様の存在感を見逃すことなんてないのである。
いや違う違う。今は潜入してるんですから、失せ物探ししているんじゃないですってばとルクスが小さな声で言う。
なんやかんやでやっぱり、この二人組は騒々しくも、けれどなぜか敵に見つかることなく屍人帝国の浮遊大陸へと至るのであった。
理不尽――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ドウジ・ユークレナ
無事にここまで来れたでありますな。
しかし、無数の守備隊。あれを全滅させるのはさすがに骨が折れるであります。
必要最小限で潜入したいところ…ニンニン。
そして潜入は怪盗の十八番であります。
UC「イクトミ・クローク」を発動であります。
蜘蛛の巣を『飛空艇操作』しているストームエンゼルに覆いかぶせて、視覚張角…じゃない聴覚での感知を不可にするのであります。
ストームエンゼルのエンジンを切って音での発見を防ぐのであります。
『滑空』で風力を利用した『空中機動』で移動しつつ、『索敵』した巡回ルートから安全なルートを逆算してそこから潜入であります。
戦闘は『レーザー射撃』と『誘導弾』で可及的速やかに撃破するであります
怪盗とは、闇に紛れ、時にスポットライトに照らされながらも華麗に逃げおおせる者である。
軽やかに。
そして美しく。
時に大胆に。
それが怪盗という職業であるとドウジ・ユークレナ(風渡り人・f36443)が理解していたのならば、彼にとってこの潜入行は容易いものであったし、怪盗の十八番であると思えたことだろう。
「無事ここまで来れたでありますな。しかし、無数の守備隊……あれを全滅させるのは流石に骨が折れるであります」
それどころか、ここは屍人帝国の本拠だ。
数の暴威ですり潰されるのが落ちであったことだろう。
「必要最小限で潜入したいところ……ニンニン」
それ怪盗じゃなくて忍者だけどいいのかという思いはあった。いや、他に誰もいないからツッコまれる心配はなかったけれど。
ドウジはけれどドキドキしていたのである。
「怪盗の醍醐味の一つはこの潜入の際のドキドキ感であります。一度体験すると病みつきになること間違いなしであります」
ワクワクのほうが勝っているような気がしないでもない。
彼の瞳に輝くは、ユーベルコード。
イクトミ・クロークは自身の体を蜘蛛の巣で多い、視聴嗅覚での感知を不可能とするユーベルコードである。
こういう潜入を旨とする行動においては無類の効果を発揮することだろう。『ストームエンゼル』にも覆い被せて、敵の目を欺くのだ。
「これで視覚張角……じゃない聴覚での感知は不可能であります」
『ストームエンゼル』のエンジンを切って、音での発見を防ぎながら、滑空でもって飛空艇が進んでいく。
敵の巡回している守備隊の多くは先行した猟兵が派手に敵をひきつけながら屍人帝国に突入したりで、どうにも穴が空いているように思えるのだ。
巡回ルートを逆算して、安全なルートはいくつもあった。
これが猟兵の戦い方である。
たとえ一人では太刀打ち出来ない状況でも、他者の行動が後に続く者たちに影響を及ぼす。
ドウジの行動一つとってもそうだろう。
意味のない行動に見えても、それは波紋のように広がっていくのだ。
「これならが戦闘は木にしなくてよいでありますな」
ドウジは用意していたレーザ射撃や誘導弾を使用しなくて済みそうであると理解しながら、巡回ルートの穴を進む。
岩場に取り付けば浮遊大陸の光景が広がっているだろう。
屍人帝国という言葉から荒廃した大地が広がっているかも知れないと思ったが、なかなかどうして自然豊かである。
ドウジが着陸した場所は湖が広がる場所であり、その清涼さは言うまでもない。
風光明媚と言われたのならば、たしかにとうなずける場所であった。
「結構自然がしっかりと残っているのでありますな」
意外であると思えたかも知れない。
けれど、ドウジたち猟兵が求める情報はまだ得られていない。
すでに潜入行の山場に入っている。
ここから屍人帝国の全容ないし、戦力やその目的、首魁などの情報を持ち帰らなければならない。
ここからが本腰を入れなければならないとドウジは怪盗魂を燃やしながら、ゆっくりと歩みをすすめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(飛行式箒【リントブルム】に搭乗)
…さて……ここからは本格的な守備隊が相手だな……
…【不思議な追跡者】を発動……烏の使い魔を出してひとまず偵察に向かわせよう…
…ふむ……見張りの大体の配置はこんな物か……
…入り口は…あそこを狙うか…じゃあルートは…身を隠せる場所も考えるとこうか…
…事前に決めたルートに沿って進んでいくよ…
…入り口で見張っているテルクシノエは操音作寂術式【メレテー】により一時的に周辺の音を消失…
…音が消えている事に気がついて戸惑っているうちに
…黎明剣【アウローラ】から魔力の刃を飛ばして素早く倒してしまおう…
…さて…ここからはダンジョンアタックかな……
不思議な追跡者(リドル・チェイサー)が空を羽ばたきながら、屍人帝国の領空を進む。
小鳥のような姿をしたそれは、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)のユーベルコードによって生み出された使い魔である。
メンカルは箒に座りながら、屍人帝国『オーデュボン』の領空の境界線まで辿り着いていた。
「……ここからは本格的な守備隊が相手だな……」
自身と五感を共有した使い魔が見る光景。
それを見たメンカルは静かに頷く。
オブリビオンの守備隊である『天使病・テルクシノエ』たちは、先行した猟兵たちの放つ陽動や、行動に寄って騒然としているようであった。
メンカルにとって、それは好都合であったと言えるだろう。
精確な巡回ルートを陽動に寄って取れなくなっている。組織的な行動が仇となった形であった。
不測の事態に備えての規範もあるのだろうが、それ以上に先行した猟兵たちの行動は、オブリビオンたちを混乱させている。
「……ふむ……巡回だけじゃなくて見張りの配置もこんな物か……」
メンカルは守備隊の巡回だけではなくて、見張りの配置も見つける。
殆どが翼ある者たちで構成された屍人帝国『オーデュボン』。
大空の世界にあっては当然のことであるが、空を飛ぶ事ができるがゆえに広い索敵範囲を持つことが見張りの重要性を薄めているように思えたのだ。
「……なら、この混乱に乗じて……あそこを狙うか」
小鳥の使い魔から得られた情報を元にメンカルはルートを算出していく。
とっさの状況に合わせて身を隠せる場所を考え、事前に決めていく。これだけの備えがあれば、不測の事態があっても大丈夫だろう。
「……さ、準備は整った。行こう」
飛行式箒『リンドブルム』にまたがったメンカルが空を飛ぶ。小鳥の使い魔が示したルートを通り抜け、浮石の影を利用しながら浮遊大陸に近づいていく。
見れば見るほどに広大な浮遊大陸である。
それに遠目に見た印象では、荒廃した場所ではないように思える。徐々に近づいていく入り口。
そこにあったのは、やはりオブリビオン。
『天使病・テルクシノエ』が防備についているが、この混乱にあって手薄になっている。
「……『メレテー』」
「――……ッ、―――ッ!?!?」
「……悪いね、その歌声は響かないんだ……」
メンカルの術式が『天使病・テルクシノエ』の周囲の音を消失させる。何も聞こえない。
音ひとつない状況に『天使病・テルクシノエ』は動揺するだろう。自身の声すら響かぬ状況。
だからこそ、メンカルが近づいていることに気が付けない。
振るった黎明剣『アウローラ』の魔力を伴った斬撃がオブリビオンを切り裂き、霧消させる。
「……さて……ここからはダンジョンアタックかな……」
メンカルが入り込んだ入り口は軍港のようであった。
大型の飛空艇が、というよりは魔獣を外に出すための場所であるように思えただろう。
未だ目的に不透明な所が多い『オーデュボン』。
その情報を一片でも多く持ち帰ることが今回の潜入行の目的だ。メンカルは、迅速さを求められることを理解し、即座に行動に移すだろう。
得られる情報は多ければ多いほうがいい。
そして、無事に戻る事ができる者もまた同様だ。メンカルは意を決し、屍人帝国の奥へと更に足を踏み出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
できるならこのまま
邪神の戯れで隠れて進みたいとこだけど
まずはドローンを利用して
守備隊の動きを探ろうか
規則的に巡回してるのか
穴ができそうな場所はないか見てみよう
こちらに気づく可能性のある敵が
少ない場所とタイミングを図って進むよ
彩唱は眩しすぎたり煩すぎたりして
場所を特定できないだけで
存在に気づけないタイプじゃないだよね、たぶん
そのまま通り抜けられば重畳だけど
万が一見つかった場合にも備えるよ
ガトリングガンは目立つから
邪神の権能を使うしかないか
戦闘になったら静寂領域を使用
空気が停滞すれば
声は届かないし広がらないからね
石にして落としてしまおう
分霊が良い笑顔してる姿が目に浮かぶけど
今は我慢しよう
必要な事だ
屍人帝国『オーデュボン』の領空の境界線。
そこは今や混乱の只中にあっただろう。
先行した猟兵の幾人かが陽動を引き受けるように行動した結果、守備隊であるオブリビオン『天使病・テルクシノエ』たちの防備、その層は薄くなり、穴が出来るようになっていた。
空に飛ぶドローンが、その光景をつぶさに観察していたことにも『天使病・テルクシノエ』たちは気がつくことができないでいた。
「規則的に巡回しているけど、やっぱり不測の事態が起これば巡回の線が間延びしてしまって……穴が生まれているね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はドローンからの映像を見やり頷く。
できることならこのまま邪神の穢れで隠れて進みたいところであったが、やはり多くの情報得るためには多くの猟兵たちの力が必要になる。
晶の力が他の猟兵たちの行動に良い影響を与えるかもしれないことを考えれば、その選択肢は大いに意味のあることであっただろう。
「こちらに気がつく可能性のある敵……うん、やっぱり『天使病・テルクシノエ』のユベルコードはこっちに存在を気づかせないためのユーベルコードだ」
それに、と晶は混乱に満ちている守備隊を見る。
猟兵たちの行動に寄って境界線は動揺している。姿を隠している理由はあまりない。
「なら、このまま行くしか無いね!」
このまま通り抜けられるのならば重畳。
けれど、交戦しなければならないのならば、晶は躊躇わないだろう。とは言え、晶の獲物であるガトリングガンは目立つから、やはりそうなれば邪神の権能を使うしかないのである。
浮遊大陸に取り付くために晶はワイヤーガンを駆使しながら進む。
浮石に打ち込まれた楔を起点にして弧を描くようにして晶は近づいていく。敵の巡回ルートは頭に叩き込まれている。
けれど、やはりこの混乱の状況にあっては不足の事態も起こる。
猟兵の陽動によって緊急に飛び出す『天使病・テルクシノエ』たちの一群と遭遇してしまうのだ。
「――……こういうことがあるから!」
晶の瞳がユーベルコードに輝く。
静寂領域(サイレント・スフィア)が広がり、神域に似た環境に変えていく。虚空から放たれるは森羅万象に停滞をもたらす神気。
それはあらゆるものを固定する。
すなわち音の響きさえも固定して響かせない。『天使病・テルクシノエ』のユーベルコードはどれもが歌声を介して発露するものだ。
音が響かないのであれば、それは効果を発揮しないのと同じなのだ。
さらに放たれた神気に触れた者は石像化し雲海に落ちていくしかない。
「優しいまどろみにご招待してさしあげたのですね」
そんなふうに邪神の分霊が良い笑顔をしているのが目に浮かぶようであった。その笑顔がどんな意味を持っているのかを晶は理解しながら今は我慢する時であると自分に言い聞かせる。
だって、これは必要なことだ。
晶は浮遊大陸に取り付くと息を吐き出す。
不足の事態はあれど、概ね状況は良好であった。ここからが佳境。
多くの情報を持ち帰らなければならない。
一つでも多くの情報を持ち帰れば、いずれ訪れる『大いなる危機』に対処することもできるだろう。
そうすれば、救える生命も多くなる。
屍人帝国の多くが人々の暮らす浮遊大陸を雲海に沈めようとしているのならば、この潜入が実を結ぶこともあるだろう。
晶は、今まさに虎穴に足を踏み出している――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 冒険
『難所を突破せよ!』
|
POW : 気合いと度胸で多少の衝突は気にせず突破!
SPD : 速度と技術で何にも触れさせずに突破!
WIZ : 知識とパターン構築で計算された飛行ルートで突破!
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
屍人帝国『オーデュボン』の本拠地である浮遊大陸に降り立った猟兵達は、一先ず息を吐き出すことだろう。
これまで魔獣の縄張りを抜け、領空の境界線を守る守備隊のオブリビオンを躱してきたのだ。
緊張の糸を緩めるには今しかない。
これから進む先にあるのは、まさに虎穴。
オブリビオンの存在が感じられ、至るところに巡回する者たちがいることに気がつくだろう。
領空の境界線よりも厳重な警備。
だが、猟兵たちはすでに踏み出している。ここから得られる情報は、領空から伺う以上のものばかりのはずだ。
ならばこそ、恐れてはならない。
手を伸ばした先にある情報。それを持ち帰ることこそが、今回猟兵たちに求められることだ――。
リーベ・ヴァンパイア
ーーさて、此処からが| 本番 《 クライマックス 》だな。お前達が何を企んでいるか、教えて貰うぞ。そして、何れ、阻止させてしてやろう。
方針
俺は敵の戦力を確認する。あれだけ厳重な警備を敷いていたんだ。何かしら大きな作戦を決行しようとしているのかもやしれん。
まずは高い所から【視力】で大陸の全体を把握して、一番広い広場や建物、奴等が集まってそうな場所を見つけ、その辺りを巡回している警備隊の動きを確認し、確認を終えたら【swordparty】を発動する
警備の連中がルートから外れるように召喚した剣で物音を立て、【陽動】する。そして奴等がルートから外れたその隙に【ダッシュ】で侵入する
では、確認させて貰うぞ
「――さて、此処からが|本番《クライマックス》だな」
リーベ・ヴァンパイア( Notwendigkeit ・f37208)は屍人帝国『オーデュボン』の本拠地である浮遊大陸へと潜入を果たしていた。
広大な浮遊大陸は、自然が豊かであるように思えたことだろう。
侵入する際に見たオブリビオンの守備隊が出入りする下面の入り口からは想像ができない。
彼はswordparty(ツルギヨマエ)によって下面から地上に上がる際、囮にして駆け抜けていた。
敵はこちらの侵入に気がついているはずだが、どうしてか地上に出ようとはしていなかった。
しかし、警備事態は厳重であったのだ。
「では、確認させてもらうぞ」
あれだけ厳重な警備隊がいたのだ、何かしらの大きな作戦を決行しようとしているのかもしれないとリーベは浮遊大陸の高所を目指す。
敵の動向を知るためにはやはり俯瞰して見なければならない。リーベが選んだのは一つの巨木の上であった。
枝に足をかけ、幹に手を添えながら彼は大陸全土を把握するように見回す。
何処を見ても木々が豊かだ。
草花も見事に色づいて、鮮やかである。
ともすれば、ここが天上、天使の庭であると言われたのならばそう信じるかもしれない。
「お前たちが何を企んでいるか、教えて貰うぞ。そして、何れ、阻止してやろう」
リーベは見据える。
この浮遊大陸、屍人帝国『オーデュボン』にあるのは自然ばかりである。
建造物のたぐいはなく、あるのは朽ち果てた嘗ての住居の痕ばかりだ。
どれもが自然に飲み込まれていく過程であるように思えるし、人の痕跡はあれど、人がいるという確証はない。
リーベが浮遊大陸の下面から潜入したのもあったせいもあるのだろうが、地上より浮遊大陸の地下のほうこそがオブリビオンが多く存在しているように思える。
「……まるで何かの目を恐れているようにも思えるな。軍港らしき場所も、そう思えば下面か地面よりも下がった場所にあった……」
リーベは巨木の枝から遠くを見通す。
彼の目を引いたのは、浮遊大陸の中心にある一つの庭園であった。
そこに人影が見えたのだ。
いや、違う。
人影のように見えただけで、それは人とは違うサイズであることに気がつくだろう。
奇妙な形をしていた。
天使の翼が無数に存在する機械。
辛うじて人型のように思えるのは、そこに冠の如き装飾があるからだろう。
巨大な機械。
その中心に座すように見えるのは――。
「人、か……?」
リーベは見ただろう。庭園の主とでも言うべき存在を。
そして、リーベの背筋に怖気が疾走る。
理解しただろう。
一瞥しただけでわかる。あれはオブリビオンだと。己が滅ぼさなければならない存在であり、相争い滅ぼし合う関係でしかない存在。
濡鴉色の黒髪。
翡翠のごとき緑色の瞳。
女人と見紛うかのごとき美しき顔。
それらを取り巻く異形の機械。あれが、あれこそが。
「あれが、この『オーデュボン』の主……! 間違いない……!」
『オーデュボン』の皇帝。
そして、こちらが認識できたということは、あちらにもこちらを認識できたということである。
翡翠の瞳が見ている。
こちらを見ている。圧倒的な力の差を感じながら、しかし、リーベはおかしいとも思っただろう。
「こちらに気がついていながら、なぜ攻撃してこない……?」
取るに足らぬ相手と思っているのか。
いや、違う。
距離が離れているからだろう。僅かに異形の機械の腕をもたげたが、その腕を下ろす。
まるで何かを厭うかのようであった。
「……まさか、『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』、のか……?」
確証はない。けれど、これ以上リーベはあの皇帝の視線の先にいたいとは思わなかった。こちらを攻撃しようとしなかったのは単なる偶然であったかもしれない。
これ以上の接近は危険と考え、リーベはその場を離脱するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アストラ・テレスコープ
森の中だとこっちも見付かりにくいけど敵も見付けにくいよね。
派手に飛ぶのはやめて、慎重めに行動するよ!
やっぱり「視力」が頼り!洞窟とか暗いところも「暗視」で調査して見つけたものを瞳に焼き付けていこう!
持って帰れそうな遺物とかあったら持って帰る!
敵に見付かったときは追星彗撃(コメティックストライク)を放って、色んな方向に動かして敵を引き付けてるその隙に緊急脱出するよ!
アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)が浮遊大陸、屍人帝国『オーデュボン』の本拠地に舞い降りた時、彼女は森の中にあった。
視線を巡らせる。
屍人帝国の本拠地と聞いていたから、自然は荒廃しているようなイメージあったかもしれない。
けれど、意外にも『オーデュボン』の本拠地である浮遊大陸は自然豊かな場所であった。
木々は生い茂り、草花が鮮やかに咲き乱れている。
小さな虫が飛び交い、流れる水は清らかであった。
言う成れば天上の花園のように思えただろう。
まるで天使が住まう場所。
そんなふうな印象をアストラは受けた。
「森の中だとこっちも見つかりにくいけど、敵も見つけにくいよね」
派手に飛ぶのをやめてアストラは徒歩で慎重に行動する。
だが、不思議に思ったのだ。
この浮遊大陸に降り立ったのは、敵の追撃を振り切るためだ。けれど、アストラがこの大陸に降り立った瞬間、守備隊のオブリビオンたちは後退していった。
まるでこの浮遊大陸の地上部分には近づかぬという不文律があるかのようであったことだろう。
アストラはなぜだろうと思いながら進んでいく。
洞窟もあるにはあったが、それは地下部分にある軍港や、下面からオブリビオンたちが飛び立つ入り口に通じているようであった。
敵の規模は帝国と呼ぶに相応しいものであったが、それでもアストラはなぜ地上にオブリビオンの姿がないのかと訝しむ。
いや、自分が降り立った場所だけなのかもしれない。
中心以外、それこそ浮遊大陸と空の境目にはオブリビオンの存在を感じられるのだ。
「私が中心近くに飛び降りた、から……?」
アストラにとって見ることは、本質そのものだ。
天体望遠鏡のヤドリガミである彼女にとって、それは常なるものであったからだ。何かこの屍人帝国に関連した遺物を持ち帰れないだろうかと目を凝らしていると、ここがどうやら遺跡のようであるように思えた。
「違う、ここ……人が住んでいた場所なんだ……」
オブリビオンに滅ぼされたのか、すでに朽ちて自然に飲み込まれようとしている。
そんなアストラは、その朽ちて自然に飲み込まれようとしている遺跡の先にある一つの庭園を見た瞬間、これが原因なのだと理解する。
知識ではなく本能で理解する。
花咲く庭園の中心に座す異形の機械。
天使の翼を持つ巨大な機械。
其処に座すのは女人の如き美しき顔をした一体のオブリビオン。
「――ッ」
絶句する。
間違いないと思うだろう。相対するだけで理解できる。あれがこの屍人帝国の皇帝であると。
その宝石の如き緑色の瞳がアストラとかち合う。
息を呑むほどの重圧。
こちらが、オブリビオンだと認識したようにアストラもまた猟兵であると認識されちえるはずだ。
滅ぼし、滅ぼされるだけの間柄。
それがオブリビオンと猟兵である。
だが、以外にも皇帝であろうオブリビオンはアストラを一瞥しただけで動こうとしなかった。
見つかったのならばユーベルコードを放って緊急脱出しようと思っていた。
いや、そうでなくても今はこの場を離れなければならないとアストラの本能が告げていた。
「――……攻撃、してこない……? なんで?」
アストラは理解に苦しむ。
自分はユーベルコードに寄って矢を放って弾幕のようにして逃げようとしていた。けれどそれでも、皇帝らしきオブリビオンは一瞥だけして動かない。
「……私を見ていたわけじゃない? もしかして」
そう、アストラを見ているようで、あの緑色の瞳はアストラではないものを見ていた。
ここにあったのは、草木や花々だけだ。
「もしかして、『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』……ってこと?」
理解できない。
もし、今の自分を生かす要因があったのだとすれば、それしかない。
こちらに攻撃してこなかった理由。
それは彼女の背に草木があったからだ。だが、それでは確証に程遠いかもしれない。
再び合間見えることが合った時、アストラはどうするだろうか。
今はまだわからない。
けれど、アストラはミニロケットの噴射と共に屍人帝国の浮遊大陸から緊急脱出するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『侵す者』にて
よし、霹靂。影に潜むがよい。ここから先は、身一つの方がよいな。
わしでやりきる!が、『疾き者』、助言求む…。
疾「仕方ありませんねー。ま、UCはこれでしょうかね」
うむ。というわけで、UC使って姿を消す。そして、そのままの隠密行よな。
…さて、情報を得ねばな。兵力や今、考えておる作戦の断片とかな。
…むー…むむー…むむむー。あーっ!やっぱりわしには向かん!!
疾「でも、やりきるって言ったのはあなたですよー?」
ヴっ。それ言われると弱い。
なのでまあ…頑張って第六感で避け、掻い潜りていくか…。
姿が見えておらぬとはいえ、慎重にな…。
※
霹靂「クエー…」
影に潜む霹靂。陰海月と一緒に応援。
ヒポグリフを降りた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その一柱である『侵す者』は『霹靂』に告げる。
「よし、『霹靂』。影に潜むがよい。ここから先は、身一つのほうがよいな。わしでやりきる!」
彼は屍人帝国『オーデュボン』の内部に潜入していた。
下面から入り込んだ浮遊大陸は地下内部では多くのオブリビオンの存在が確認できる。
翼あるオブリビオンや魔獣。
それらが整然としている。これだけの戦力であれば、確かに多方面に手をのばすこともできるかもしれない。
けれど『侵す者』は彼等を盗み見しながら思った。
「……『疾き者』よ、助言頼む……やはり奴ら、此処に密集しているように思える」
『仕方ありませんねー。ま、四悪霊・『海』(シアクリョウ・ウミ)。これですかね』
『侵す者』を包み込むのは呪力でできた海水霧。
視聴嗅覚での感知を不可能とする霧をまとった『侵す者』が、オブリビオンひしめく内部を走り抜ける。
「なぜ地上にはでないのだ……?」
思えば、大陸下面からオブリビオンは飛び立っていた。
軍港らしきものもあったが、そこは地上よりも一段下がった地形にあるものであり、地上部分におおっぴらに存在はしていなかった。
「……むー……むむー……むむむー」
唸る。
首をひねる。
天を仰ぎ見る。
けれど、どう考えた所で考えがまとまるものではなかった。
敵の戦力は十分。
このブルーアルカディアに存在する浮遊大陸、人類の暮らす大陸を滅ぼすには十分な戦力ばかりであるといえるだろう。
「あーっ! やっぱりわしには向かん!!」
『でも、やりきるって言ったのはあなたですよー?』
内部の『疾き者』の言葉に詰まる。
とても弱い。
考えても考えてもわからない。ともかく地上にでてみなければ、と『侵す者』は思うしか無かった。
地上部分は自然豊かそのものであった。
木々が生い茂り、草花が見事に咲き誇っている。
花の蜜に寄せられる虫や鳥といった小さな動植物は、屍人帝国にあるとは思えないほどに活き活きとしていたことだろう。
「……どういうことだ」
そこは屍人帝国とは思えない光景であった。
庭園さえある。
見事な草木と花々、そして動植物が調和した空間。
だが、遠く放たれた場所を見やり、『侵す者』はギクリとしただろう。
見た瞬間に理解する。
あれは、ダメだと。
「――ッ!」
慎重にと行動していたとしても、それは不意打ちのようであった。
庭園の中心に座す巨大な異形の機械。天使の翼を数多持ち、異形の人型であることしかわからない。
そこに繋がれるように、座すのようにして存在している女人の如き美しき存在。
オブリビオン。
「あれが――。あれが、皇帝、であるな……!」
認識した瞬間、『侵す者』は後退する。
かのオブリビオンが手を上げたからだ。けれど、その手が何かをすることはなかった。
どうやら先行していた猟兵に気がついて、攻撃しようとしたのだろう。
だが、その攻撃が放たれることはなかった。
しばらくして手をおろし、何事もなかったかのように皇帝なるオブリビオンは、ゆっくりと瞳を花々に向ける。
薄く笑んでいる。
「花を、見ている……?」
理解できなかった。いや、違う。
あのオブリビオンは猟兵を攻撃しようとはしていた。だが、やめた。猟兵が逃げたからではない。
『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』、としか思えなかった。
そうでなければ辻褄が合わない。
如何なる理由でそのような理屈にたどり着くのか。
けれど、この場に長くはいられないと『侵す者』は早々に退散する。
収穫があったと言われれば、ただ一つ。
この目で屍人帝国『オーデュボン』の皇帝、その存在を目の当たりにしたことである――。
大成功
🔵🔵🔵
ドウジ・ユークレナ
ここまでやってきたらミスは許されないでありますな。
緊張の糸も蜘蛛の糸も切らさない。まさに繊細な怪盗ムーブを魅せるのであります。
引き続き、ユーベルコード『イクトミ・クローク』を使用であります。
蜘蛛の巣まみれのストームエンゼルで領空をひっそりこっそり進むのであります。
風に乗った『滑空』の『飛空艇操作』で浮遊大陸の地表に近づいた低空飛行で守備隊の操作から隠れつつ、屍人帝国『オーデュボン』の調査を行うであります。
時にストームエンゼルから降りて、こっそり『変装』してオブビリオンにちかづいて話を盗み聞きしたり、浮遊大陸に建築物がないか『索敵』したりして調査を続行であります。
「ここまでやってきたらミスは許されないでありますな」
緊張の糸も蜘蛛の糸も切らさない。
まさに繊細な怪盗ムーヴそのものであった。
ドウジ・ユークレナ(風渡り人・f36443)は張り切っていた。自身を蜘蛛の巣でもって多い、視聴嗅覚にて感知させないユーベルコード、イクトミ・クロークでもってドウジは屍人帝国『オーデュボン』の本拠地である浮遊大陸に降り立っていた。
蜘蛛の巣まみれとなった飛空艇『ストームエンゼル』はこっそりと空を飛んでいる。
風にのった滑空と飛空艇操作技術に寄って、彼の飛空艇はエンジンを切っていながらも浮遊大陸の空を悠々と飛んでいる。
「ふむふむ。なんともまあ、自然が豊かでありますな!」
ドウジにとって、それは意外であったかもしれない。
屍人帝国という字面を聞けば、きっと荒廃した大地が広がっているように思えたからだ。
けれど、そこは自然が満ちている。
あちこちに見える崩れた廃墟、遺跡のようなものは嘗て人が住んでいた名残であろう。
その残滓もまた草木や木々に侵食され、埋もれていこうとしている。
「石造りの遺跡みたいでありますが、形は残っていても、木々の侵食で隠されてしまえば、そこにあった文明の痕もわからなくなるでありますな」
ドウジはぴょい、と『ストームエンゼル』から飛び降りて、周囲を見やる。
浮遊大陸の外縁部分などにはオブリビオンの存在も感じられるが、内部にはオブリビオンの存在は希薄だった。
ふむ、とドウジは蜘蛛童としての体躯を生かしてあちこちを見て回る。
これだけオブリビオンの存在が感知されないのならば、大胆に行動してもいいだろうと思ったのだ。
「……こっそり盗み聞きしようと思っていたでありますが、どうにもこれだけオブリビオンがいないとなると……」
ドウジは蜘蛛童の姿のまま侵食されつつある遺跡の頂きに登る。
その高さから見下ろす先にあったのは一つの庭園であった。
いや、庭園と呼べたのは、そこが整理されていたからではない。僅かに残った文明の残滓が、そのように見せていただけであった。
そして、ドウジは怖気が疾走るのを感じただろう。
庭園の中心。
其処に座す異形の機械。
天使の翼を数多持ち、人の形らしき存在であると思える。だが、その中心に繋がれているようでもあり、座しているようでもある存在を見てしまった。
「――っ、あれ、が」
オブリビオン。
即座に理解できる。
本能で理解できてしまう。
多くのオブリビオンと猟兵がそうであるように。
知識なくとも、オブリビオンと猟兵は互いがそうであると認識することができる。
すなわち、敵であると。
「……」
女人と見紛うほどの美しき顔が、こちらを見ている。
オブリビオンは敵であるとドウジを認識しているはずだ。けれど、彼は攻撃しようとしてこない。
ただ佇み、こちらを見ている。
「違うであります、こいつ……自分を見ているのではないであります!」
ドウジは後ずさりながら理解する。
遠目に見てもわかる。
あの宝石のような緑色の瞳は自分ではないものを見ている。すなわち、草木や花々。そうしたものを見ている。自分が、この庭園の外側、木々に侵食されようとしている遺跡に立っているから攻撃してこようとしないだけであると。
すなわち、『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』のだと。
「でも、なんで、であります……!?」
理解できないかもしれない。
倫理観も何もかもが異なる存在。同じオブリビオンであっても、彼の存在のことを理解できない。
理不尽に相対するかのような感触を得ながら、ドウジは『ストームエンゼル』で飛び立つ。
感知されていないはずだ。
でも、あの緑色の瞳はこちらを見ていた。確実に。
今自分が五体満足でいられるのは、攻撃されなかったのは偶然であるかもしれない。けれど、その偶然で得たものをドウジは持ち帰るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
本格的な潜入調査に入る前に
「既に潜入について勘付かれているいる可能性も高い。
あまりゆっくりはできないけど。準備はしていこうか。」
周辺の敵に発見されにくそうな場所を見つけてから
術士の書斎を発動。
戦術書や軍略書、ブルーアルカディアの浮島の地形図鑑等
を参考にして準備を行い。潜入調査の成功率を上げる。
その最中にも出来るだけ敵陣に気を配って動きが無いか注意。
必要な知識を得たら
敵の接近に注意して物陰に身を隠しつつ
敵陣に接近。
敵軍の全貌を正確に把握するのは不可能と割り切り
敵陣の地形や建物の外観を把握し。
敵の数や種類、巡回頻度から重要施設の目星を付け
敵の強さも可能な限り記録。
ある程度調査出来たら離脱する。
浮遊大陸に取り付き、潜入すること事態はうまく行った。
状況が自分たち猟兵に優位に推移していることをフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は理解していたが、それでも万全を期すのが彼のやり方だ。
「すでに潜入について感づかれている可能性が高い。あまりゆっくりはできないけど」
準備はしなければならない。
彼の瞳がフードの奥で煌めく。
それはユーベルコード。
空間を超えて現れる術士の書斎(ジュツシノショサイ)は、彼の本棚が満載された場所であった。
そこから本を一冊手に取る。
戦術書や軍略書も続けて手に取るが、やはり一冊目の書物が重要であろう。
フォルクが手にしたのはブルーアルカディアにおける浮島の地形図鑑である。
ぱらりとページをめくれば、そこにあったのはこれまで確認されてきたブルーアルカディアの浮遊する大陸の地形。
潜入調査を行うのならば、地形を把握することも大事である。
「この浮遊大陸は……軍港になりそうな場所はあるが、大抵は入り組んだ場所にある。地形を利用しているともいえるが、地上よりも1段低い場所に備えられているのは、どうしてだ……?」
フォルクは理解に苦しむ。
もしも、飛空艇などを停泊させるのならば、すぐさま硬度を取れるように地面と水平かそれより上にあるべきだ。
だというのに『オーデュボン』の軍港は1段下がっている。
まるで何かに見られることを恐れているように思えたのだ。
「それに、この陣容……大陸の外縁部分にばかりオブリビオンが集中している」
フォルクは地上に出て思った一番最初の印象だった。
敵から侵略されることよりも、侵略することを第一に考えている屍人帝国ならではと言われればそれまでである。
けれど、多くのオブリビオンたちは地上ではなく、1段下がる場所か地下にひしめき合っていた。
大陸の下部から飛び立つオブリビオンの守備隊が多かったのもそのためだと言われたそうなのかもしれないが、あまりにも不釣り合いだ。
空の戦いは高度の差で決まる。
ならば、他者よりも先に高さを得なければならない。なのに、いちいち下面から飛び立つ理由がわからない。
「……全容を正確に把握しようというのは不可能であると思ったが……」
フォルクは地上の外縁部分から離れて中央に向かう。
中心に向かえば向かうほどにオブリビオンの数は減っていく。いや、ほぼ、いないと言っていいだろう。
「……どういうことだ……?」
周囲に在るのは文明の残滓ばかり。
豊かな自然が、かつて人がいたであろう住居や、施設の名残を侵食していっている。もう少し訪れるタイミングが十数年単位で遅れていたのならば、この残滓すら覆い隠していたのかも知れない。
フォルクは可能な限り調査をと踏み込んだ瞬間、ぎくりと体を固くする。
いる。
フォルクのフードに隠れた顔がこわばる。
「――……あれが」
彼の視線の先にあったのは草花咲き乱れる庭園。
その中心に座す異形の機械。天使の翼を数多持ち、人型のようであるが、人型ではない異形の機械。
そこに座すようでもあり、繋がれているようでもある女人と見紛うほどの顔を持つオブリビオンが静かに佇んでいた。
こちらに気がついている。
そして、理解している。互いに敵であると。
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないと。
だが、かのオブリビオンはこちらに気が付きながらも攻撃しようとしない。
なぜだ、とフォルクは頭を回転させる。
自分のいる場所。
ここがオブリビオンにとって重要なのか。廃墟となった場所に戦略的な意味合いはないはずだ。
感傷のようなものを感じることもない。
ならば、なぜ。
じり、とフォルクが足を動かした瞬間足元に触れるのは草花。
小さな花だった。
可憐と言えば可憐。けれど、道端にあっては目に留まることはあっても、直視することのない花。
かのオブリビオン――『オーデュボン』の皇帝は、その花を見ていた。
「まさか――猟兵ではなく、この道端に咲く花を、気にかけているのか」
フォルクは飛び退る。
自分の背には雄大な自然が在る。『オーデュボン』の皇帝は自分を見ていない。
まさかとは思うが、『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』のか。
事実を確認することも、検証する暇もなくフォルクはその場から離脱する。これ以上は危険だと理解しているからだ。
自分に求められているのは多くの情報を得ることではない。それを持ち帰ることだ。
だから、フォルクは後退する。
唯一。『オーデュボン』の皇帝。その存在を認知したという事実を抱えて――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ノウェム
ふぅ、何とか潜り込めたです
とりあえずは三度【Dダイバー】していくです。もちろんエル・セプス(外装)状態で。
……
今更ですけど、これ私、侵入しか上手くできない感じじゃないです?
……まあここまで来たら入れるところだけでも見ておくです
基本的に推力は最低限に抑えて、でもいざというときには即全開にできるように。
必要なら空間の歪みを飛ばすか、隠蔽状態のケルベロスファングで掴んで投げ飛ばして気を逸らすです
危なくなったら推力全開、Dアヴェンジャーでガム・ゴム・ボム弾をばら撒いて足止めし障害物はA.F.C.や空間の歪み、推力(【ブルズアイ・マニューバー(演出)】)で押し通るつもりで飛ぶです
※アドリブとか歓迎、です
「私にだって、隠密行動ぐらいできる、です……三度目のDダイバー(ディストーションダイバー)、です」
ヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は自身の飛空艇である『エル・セプス』を外装状態に変形させて、ユーベルコードに瞳を輝かせる。
魔力に寄って生み出された空間の歪みで己を覆い隠し、視聴嗅覚で感知されない状態になって、浮遊大陸の軍港から地上を目指す。
屍人帝国『オーデュボン』の本拠地である浮遊大陸にある軍港は、地上より1段低い場所にある。
普通の浮遊大陸であれば考えられないことであったかもしれない。
空を往く者にとって、高度とは大切なものだ。
何せ、高度を維持できなくなれば雲海に沈む。
雲海に沈めば、当然滅びるしかない。どんな存在も例外ではないのだ。
「でも、ここのオブリビオンは……なにかに隠れるみたいに、軍港を1段低くしてる、です?」
ヴィクトリアが気になったのは、そこだった。
潜入しか出来ない状態であるが、なるべく多くの『オーデュボン』の現状を見ておこうと推力を最小限に押さえて、オブリビオンたちと接触しないように飛ぶ。
いざという時は即全開で飛び立つことができるように、炉心を落とすことはない。
「……軍港、低く作る意味がわからない、です」
軍港を抜けていけば、浮遊大陸の外縁部分が終わる。
オブリビオンは外縁部分こそ数多居るようであったが、浮遊大陸の中心にはほとんど存在していない。
むしろ、気配がなさすぎて訝しむほどであった。
屍人帝国は侵略を旨とする。
ならば、外縁に集まっているのもわからないでもない。
けれど、中心部にまったく存在していないというのも気がかりだ。ヴィクトリアは推力を上げて中心部に進む。
「呆れるくらい自然豊か、です。魔獣らしい魔獣もいない、です……」
周囲にあるのは人の文明の残滓。
住居や施設の痕、残骸が木々に覆われ飲み込まれていく真っ最中だった。徐々に。それこそ、人の目には判別できないほどにゆっくりと植物が瓦礫や残骸を飲み込んでいっている。
「人はいたのかもしれない、ですね。でも……」
その瞬間、ヴィクトリアは『エル・セプス』の炉に灯った魔力の出力を上げる。
浮遊大陸の中心。
庭園らしき部分に人影を見たからだ。
人の居るはずのない場所に人がいる。それが警戒を引き起こしたのも当然在るが、それ以上にヴィクトリアは理解した。
あれは、人ではないと。
異形の機械。
天使の羽を数多持つ、王冠を頂く異形の機械。
その異形の機械に繋がれるようにして女人と見紛うほどのオブリビオンの存在が座すようにも、因われているようにも存在していた。
「……ッ」
息を呑むほどの重圧。
それが目の前の存在がただのオブリビオンではないことの証左。
ヴィクトリアは理解した。
「皇帝……です?」
異形の機械に繋がれた皇帝たるオブリビオンは答えない。
ただ、ヴィクトリアを見ている。否、ヴィクトリアではない。今、彼女は視聴嗅覚で感知されない状態である。
だから、皇帝たるオブリビオンが見ているのは、彼女ではない。
草花を見ているのだ。
花の可憐さ。草木の鮮やかさ。
そうしたものを見て、薄く笑むのだ。だが、それでもヴィクトリアは冷や汗が止まらない。
これ以上進めば、己の生命が危ういと理解できてしまったからだ。
推力を全開にしてヴィクトリアは飛び立つ。
「……あれが、皇帝。あんなオブリビオン、が」
微笑んでいた。
草花を見て。その異質さ。そのいびつさ。そして何より、ヴィクトリアは理解しただろう。
かの存在は、『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』。
もし、あの場で不意撃ちをするのだとしても、きっとあの皇帝は反撃しない。他の猟兵たちも見たように、あのオブリビオンは他者に関心がない。
ただ、そこにあるだけで滅びをもたらす存在であることをヴィクトリアは理解し、その事実を抱いて、浮遊大陸を後にするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…さてと…ここからが本番だな…まずはここの軍港らしき施設から…
基本は心理隠密術式【シュレディンガー】で発見されづらくして…
必要に応じて現影投射術式【ファンタズマゴリア】の幻影で地形に溶け込んだり操音作寂術式【メレテー】で音を消したりで身を隠しながら探索していこう…
…電子型解析眼鏡【アルゴスの眼】を通じて視聴覚情報を記録しておくよ…
…狙うは警備が厳重そうな部屋…魔獣が出入りする施設だとしても管理者が必要だろうし…
…セキュリティを【言の葉を以て岩戸は開く】でクリアしつつ
…管理室や資料室を見つけて…【メレテー】で集めた音で内部の様子を確認…
…内部に忍び込んで重要そうな情報を集めていくとしよう…
屍人帝国『オーデュボン』に潜入した猟兵たちの道のりは苦難そのものであった。
険しく厳しい道であった。
だが、その険しい道のりこそが正しさにたどり着くために必要なことであることをメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は理解していた。
そして、ここからが本番であることも。
屍人帝国『オーデュボン』は謎多き存在である。
彼等が何を求め、何を目的としているのか。
今回はそれを知るための絶好の機会であったのだ。メンカルは軍港らしき施設に入り込み、その全容を探る。
心理隠密術式『シュレディンガー』によって発見されないように注意を払いながら進んでいく。
ここは軍港であるが、それゆえに浮遊大陸の外縁部である。
まだ末端に辿り着いただけに過ぎない。
「……でも、おかしいな」
ブルーアルカディアは大空の世界である。
当然、軍港にあるのは飛空艇や、空を飛ぶ魔獣である。ならば、普通は高度を稼ぐために地上ないし、高台にあるものであろう。
けれど、『オーデュボン』の軍港はどちらかと言えば地上よりも1段低い場所に在る。それも谷間のような場所、まるで通常の世界の海に面した港のような場所に備えていた。
今にして思えば、浮遊大陸の下面からオブリビオンの守備隊たちが飛び立っていたのもおかしい。
如何に守備隊とは言え、あんな場所からわざわざ高度を上げていくのは効率を考えてもありえないし、またいくら下面から攻撃に備えているとは言っても限度がある。
「……他に意味があるのかな」
メンカルは施錠された緊急用の地上への出入り口の扉を見つける。
どうやら幹部クラスのオブリビオンが利用する通路のようであるが、メンカルはこともなくこれを突破する。
「言の葉を以て岩戸は開く(オープン・セサミ)ってね……」
ユーベルコードによって作成された鍵を複製し、なんなく幹部クラスのオブリビオンが利用する通路を進む。
傾斜が付いていることを考えると、ここから地上に出るようである。
ここが魔獣などが飛び立つ軍港であったのならば、やはり管理者を考えれば当然なのかもしれない。
だが、メンカルにも誤算はあったのだろう。
この先にあるのは管理者の特別な施設や資料を集められたたぐいの場所であると思っていたのだ。
地上にある管理者のもつ特別な区画。
そう考えるのが妥当であった。
けれど、違ったのだ。
「……外……?」
あてが外れたな、とメンカルは思ったかも知れない。あの軍港から繋がる通路の先にあったのは、自然豊かな浮遊大陸の光景であった。
遠くに見えるのは文明の残滓であろう。
木々に侵食されて、あと数年経てば飲み込まれて消えていく。
「……荒廃してない。それどころか、自然が繁栄している……あそこにあれだけオブリビオンがいたのならば、あそこまですし詰めになっていなくても良いはず……」
メンカルの電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』が周囲をくまなく探る。
別段変わったものがあるわけではない。
そこかしこにあるのは草花だ。
特別な花でもなければ、此処にしか群生していないようなものでもない。路傍の花としょうするに相応しい花々ばかりだ。
「……変わったことはない」
メンカルは浮遊大陸の中心にある庭園を見やる。
瞬間、理解するだろう。
あれが、原因だと。
オブリビオンの多くが外縁部に存在し、また浮遊大陸の地下にひしめき、飛び立つ理由。
庭園の中心に座す異形の機械。
数多の天使の翼を持ち、王冠を頂くかのような威容。
その異形なる機械に繋がれるように座す存在。女人と見紛うほどの美貌を持つオブリビオンが、猟兵を感知して腕を上げていた。
攻撃するつもりだとわったのは、『アルゴスの眼』が捉えたエネルギーの跳ね上がり方が異常であったからだ。
「――ッ!」
だが、かのオブリビオンは攻撃をしない。
上げた腕を下げ、また静かに佇むのみであった。
「なんで、攻撃しない……?」
メンカルは訝しむだろう。あの出力なら確実に一帯を吹き飛ばして猟兵を殺すことができたかもしれない。
なのに、それをしなかった。
しなかったのではない。できなかったのかもしれない。
「……『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』……のかな?」
到れる結論は、それしかない。
メンカルは踵を返す。
この場に留まってはいられないからだ。脱出を急がなければならない。他のオブリビオンの存在などどうでもいい。
あのオブリビオン。
「あれが『オーデュボン』の皇帝……」
メンカルが至る結論。
その情報を持ち帰るために、彼女はもと来た道を素早く駆け抜け、飛行する箒にまたがり、『オーデュボン』を後にするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさん(f33899)と】
なんとかここまでは来られましたね。
ここはわたしの演奏で、大陸のみなさまの警戒を解いて、
ステラさんのコミュ力で情報を引き出すのがいいでしょうか?
はっ。でもこれでは集まる情報が、
『オーデュポン』でなく『エイル』さまのものになってしまいます!
って、えええええ!?
ステラさんが、ステラさんが『オーデュポン』の情報を集めてます!?
これも脳内ご主人さまの命令なのでしょうか。
そうだとしたら、その忠誠心と能力……なんてできるメイドさん!
って、あ。エイルさん情報のついででしたか。
よかった、ステラさん今日も|通常運行《やべー》ですね!
ステラさん、エイルさんに罠仕掛けそうで怖いのですが
ステラ・タタリクス
【ルクス(f32689)様】と
ふむ……『セラフィム』が現れない?
これは思った以上に深刻な事態なのかもしれません
ええ、私の|エイル《あるじ》様成分不足は深刻
いえ、そこは自家発電で問題なくて
誰がやべーメイドですか
会いたいのは事実ですが
世界の危機を招くのでは本末転倒
オーデュボンの情報を集めなければ
情報は人が集まるところに寄ってきます
ルクス様ここはルクス様の演奏で耳目を集めましょう
この国が戦おうとしている先に必ず『セラフィム』のお二人は現れるはず
そこに罠を仕掛けて確実に仕留めます
いや違う
いえ、罠は本当ですが
『セラフィム』の出番が無いように戦争を止めます
この世界の今を生きているのは私たちなのですから
なんとか此処までこられた、とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は胸をなでおろしていた。
彼女の演奏家としての腕前はさておき、ルクスはこの浮遊大陸の外縁に存在するオブリビオンたちを見やる。
敵ではあるが、どうしたものかと彼女は考えるのだ。
なぜなら、これは戦い滅ぼすためのものではない。
多くの情報を持ち帰り、来たるべき『大いなる危機』に猟兵に優位に進めるための行動であるからだ。
「ここはわたしの演奏で、大陸のみなさまの警戒を溶いて……」
ルクスは、ちらっとステラ・タタリクス(紫苑・f33899)を見やる。
ステラはヤベーメイドである。
すっかりルクスの中ではそう定着しているのである。二言目には『エイル』様である。
正直、ルクス的に、それはどうなのかなーって思わないでもない。
だって、それだと集まる情報は『オーデュボン』ではなく、『エイル』のものになってしまうからである。
それはちょっと頂けない。
目的がすり替わっているし、それ得られた所で得するのはルクスだけである。
猟兵全体のことを考えれば、ルクスがステラを説得するしかないと思っていたのだ。
「ふむ……『セラフィム』が現れない? これは思った以上に深刻な事態なのかもしれません」
ステラがキリっとしている。
どうせ、私の|『エイル』《あるじ》様成分不足が深刻だとかそういう事言うつもりでしょって思ったし、実際にそうでもあった。
まあ、自家発電でも問題なのであるが。
いや、自家発電とは一体。
ステラの様子にルクスはいつもどおりだなーって思っていた。まあ、想定内である。ステラはぐっと我慢していた。
会いたい。
自分の御主人様に会いたいと。
いや、いつのまにかそうなっていただけで、元からそうだったわけではない。完全に押しかけメイドであった。なんだ押しかけメイドって。
だが、ステラもう分別ってもんがある。
「世界の危機を招くのは本末転倒。『オーデュボン』の情報を集めなければ」
その言葉にルクスはですよねーって、頷く。
「って、えええええ!? ステラさんが、ステラさんが『オーデュボン』の情報を集めるって!?」
「何がいいたいのです。情報は人が集まる所によってきます。ルクス様、ここはルクスさまの演奏で耳目を集めましょう」
ルクスは、まだえぇ……って顔をしていた。
正直困惑していた。
ってきり、ご主人様を探し求める献身的なメイド(ホンニンハソウオモッテイル)という名の本能で行動すると思っていたから、割と真面目なことを言っているからである。
これも全部普段の言動と行動のせいである。
「これも脳内御主人様の命令なのでしょうか。そうだとしたら、その忠誠心と能力……なんてできるメイドさん!」
いや、『やべーなこのメイド』ってルクスは思ったし、周囲に集まってきたオブリビオンたちも同様であった。
言葉を解する者であれば、皆ステラの主人に対する愛は強烈であった。
「この国が戦おうとしている先に必ず『セラフィム』のお二人は現れるはず。そこに罠を仕掛けて確実に仕留めます」
今罠っていった?
今仕留めるっていった?
ルクスはまあ、平常運転だけど、いつもどおりステラのことを『やべーなこのメイド』って思っていた。
彼女が奏でるクラリネット狂詩曲(クラリネットキョウシキョク)は、まあまあの不協和音となって響き渡る。
けれど、二人の元に集まるのはオブリビオンばっかりである。
「って、まずいですよ、ステラさん! オブリビオンいっぱい!」
「わかっておりますよ。これだけ集まれば……って本当にいっぱいですね!?」
バタバタと二人は集まってきたオブリビオンから逃げるように浮遊大陸を疾走る。外縁部から中心に向かっていくにつれて、オブリビオンたちはぱたりと追ってこなくなる。
なぜ、とルクスたちは思っただろう。
自分たちを見逃す理由なんてない。けれど、オブリビオンは中心部には近づこうとしていなかった。
自分たちの本拠地だから袋のネズミだとおもっているのだろうか。いや、しかし、ここは大空の世界。
ここが地上であるのならばいざしらず。
「……あのステラさん」
「ええ……」
ステラは頷く。なぜオブリビオンが追ってこなかったのか。そして、その理由二彼女たちも気がつく。
猟兵としての本能か。
それとも勇者としての資質か。それともメイドとしての勘か。
「『セラフィム』の出番がないように戦争を止める、と。この世界の今を生きているのは私達……これが」
ステラとルクスは見ただろう。
遠巻きであってもわかる。
一瞬でわかるのだ。大陸の中心にある庭園。草花が咲き誇り、鮮やかさと自然の豊かさを、その繁栄を見せる場所にある異形の機械。
数多の天使の翼を持つ異形の人型。
頭部らしく部分に頂かれた王冠。そして、その異形の人型の機械に繋がれ、座す女人の如き美しき顔を持つオブリビオンの存在。
濡鴉色の髪は美しく、その宝石の如き瞳がこちらを見ている。理解されている。
こちらが猟兵であると。
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないと。
ステラは即座に飛空艇へと変じた。ルクスは即座に退却することを考えただろう。
「――」
異形の機械に座すオブリビオンは何もしない。
風によって巻き起こる草花の花弁を見つめ続けている。かのオブリビオンの瞳にあるのはそれだけであった。
ステラもルクスも、見ていない。
ただ花弁が舞い散り、青空の下にあることを見ていた。
二人は理解した。
あのオブリビオンが皇帝であると。
そして、その不可解な行動。自分たちを攻撃しない理由。それは自分たちが取るに足らぬ相手であるからではない。
舞い散る花弁の美しさ故に、その光景を壊すことのないように攻撃しないだけなのだと。
まるで、『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』。
その理由ならぬ理由。
相対する者に理不尽を突きつける『オーデュボン』の皇帝を尻目に二人は、一気に大空を駆け、『オーデュボン』より離れるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
…やっと着いた
地に足を着けられる…
だが…ここは敵地…じっとしている訳にはいくまい…
じゃあ行こう…私は処刑人…!
光学迷彩布を被り[迷彩]で透明になりつつ
[目立たぬよう闇に紛れつ]帝国内を探索し
[情報収集]しよう
【|凄惨解体人間《セイサンバラバラニンゲン》】で
己が肉体をドロドロに溶かして
人が通れそうにない場所や隙間に忍びつつ探索してゆこう…
いよいよ敵が邪魔な場合は背後より忍び寄り妖刀振るい
[暗殺]、イグニッションカードで死体や[物を隠し]
敵の情報を持ち帰るとしよう…
さて…もうそろそろ時間か…
ここでの情報がいずれ来る大いなる戦いの役に立てば
いいのだけれど…
仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)は炎の道を駆け抜け、息を吐き出す。
ブルーアルカディアは大空の世界である。
あらゆるものが空に浮かび、一歩間違えば、雲海に沈み滅びる理を持つ。
地上に生まれ、それが当然として生きてきたアンナにとって、この大空の世界はどうにも落ち着かぬ場所であったのかもしれない。
「……やっと着いた。地に足をつけられる……」
此処までの道のりは険しいものばかりであった。
凶鳥の群れ、オブリビオンの守備隊。
それらを躱して、アンナはようやくにして屍人帝国『オーデュボン』の浮遊大陸へと辿り着いたのだ。
息を吐き出すのも無理はない。
「だが……此処は敵地……じっとしている訳にはいくまい……」
そう、ここは浮遊大陸とは言え、外縁部。未だ多くのオブリビオンが巡回している。
気を抜くのは後だというようにアンナは再び呼吸を整え、踏み出す。
「じゃあ行こう……私は処刑人……!」
光学迷彩布を身にまとい、自身の体を周囲と同化させるように透明になりながら浮遊大陸外縁を進む。
確かにオブリビオンの数は多い。
けれど、内陸に進めば進むほどにオブリビオンの存在が感じられない。
確かにオブリビオン、屍人帝国は侵略を旨とする。
防衛を考える理由もない。だから、中心部にはオブリビオンがいないのかもしれない。けれど、それでもおかしい。
ここまでオブリビオンがいないものなのか。
「……どういうことだ……?」
アンナは訝しむ。
中心部はかつて人の文明があったことを感じさせる残滓が豊かな自然、木々に寄って侵食されつつ合った。
何処を見て草花が咲き誇り、その鮮やかさをアンナの黒い瞳に見せつける。
こんな時でなければ、その鮮やかさ、可憐さを愛でてもよかったのかもしれないが、あいにくとアンナは時間がない。
その瞳をユーベルコードに輝かせ、アンナは赤黒色の血液と細かい肉片と髪の毛の束に変異し、木々の侵食を受ける新緑の中へと入り込む。
凄惨解体人間(セイサンバラバラニンゲン)となった彼女は、念には念を入れて探索を開始する。
どうにもおかしい。
違和感が拭えない。
オブリビオンの影がないことはよいことだ。だが、この文明の残滓を覆い隠すほどの自然はどういうことなのだろうか。
「何があった……いや、進行中なのか?」
わからないことばかりだ。だが、そのわからないことを審らかにするために彼女は行動しているのだ。
アンナは進む。
だが、その体がぴたりと止まる。
危機を感じたわけではない。ただ、脅威を感じたのだ。浮遊大陸の中心部。
そこは庭園であった。
いや、正確に言うのならば、庭園のように見えている見事な花々の咲き乱れる場所。
そこに座す異形の機械の姿を認識した瞬間、アンナは理解する。
あれが、皇帝だと。
皇帝たるオブリビオンであると。僅かに上げた腕は攻撃の所作であった。けれど、その所作はついぞ、攻撃行動を取ることはなかった。
その攻撃の所作の矛先が向けられたのは自分ではない。
他の猟兵であった。満ちる重圧。おぞましきほどの強大な力。結局、それが発露することはなかった。
「……――なんだ、一体どういうことだ?」
アンナは訝しむ。
何をしようとしたのだ、あのオブリビオンは。いや、なぜ攻撃しなかったのか。
異形の機械、それは数多の天使の翼を持つ人型の機械。
されど、その異形の機械に繋がれるようにして座す美しき女人の如き顔を持つかの皇帝たるオブリビオンは微笑んでいた。
何に、とアンナは最初理解できなかった。
「……花を見て、笑っている……?」
そう、皇帝たるオブリビオン。
彼は宝石の如き緑色の瞳を花々に向け、その表情を和らげている。
そして、アンナは理解しただろう。あの攻撃をやめたのがなぜなのか。
「『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』――のか?」
そうなのだろうか。
確証が持てない。けれど、そうとしか思えない。もっと近づけば、もっと回数を、検証を重ねれば確実になったのかも知れない。
けれど、アンナは時間であることに気がつく。
今回の行動は確実に情報を持ち変えることが目的である。
いずれ来るであろう『大いなる危機』。その戦いに役に立つことがあればいい。そう願うようにアンナは、大陸の中心、異形の機械に繋がれた皇帝たるオブリビオンから離れ、一路帰途につくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
これまで戦った敵を鑑みると
人間に近い存在か魔獣が多く
機械的なのは少なかった気がする
遺骸兵器を求めた事からして
超火力の兵器や飛空艇がある可能性は低いのかな?
Vの増幅の力を求めた理由と用途
屍人帝国の浮遊大陸にも天使核があるならその位置
魔獣含むオブビリオンの生産設備の有無
物流やエネルギー等の何かの準備の兆候
あたりの情報あれば収集
雲海から再浮上してるとはいえ
元は人間やそれに類する存在が作ったはず
重要な人物や建物等の位置は動線や警備の位置
他の猟兵による騒ぎでの配置の変化等から推測できないかな
UCやドローンを活用して見つからない様に行動
万が一の場合は神気で動きを止めて
催眠術で誤魔化したり情報を得たりするよ
思い返す。
屍人帝国『オーデュボン』とはどんな敵であったのかを。
幾度かの戦いがあった。
それを踏まえて言うのならば、人に近い存在か魔獣が多い。
それも翼を持つ者が圧倒的に多かった。
逆に言えば、機会敵な存在は少なかったように思われる。先日の『アジール王国』にて『遺骸兵器』を求めたことからして、超火力の兵器や飛空艇がある可能性は低いと佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はそう判断していた。
「『青い鎧の巨人』……少年『エイル』……あの力を求めた理由と用途」
晶にとって、屍人帝国『オーデュボン』に潜入するのならば、自分が求める情報はあるだけ集めることによって、これより訪れるであろう『大いなる危機』に役立てると革新していた。
それと、晶は魔獣やオブリビオンが生産されるかもしれない設備があるのか、もしくは物流やエネルギーなどの何かの準備の兆候など、様々な可能性を頭に巡らせる。
とは言え、やはり実際に浮遊大陸を調査しなければ、それらもわからないだろう。
取り付いた浮遊大陸の外縁部には多くのオブリビオンがいる。
いや、多いというよりはひしめいている。だというのに中心部に向かうにつれてオブリビオンの数は減っていっている。
いや、外縁部だけにしかオブリビオンは存在していないように見えるのだ。
「……どういうこと?」
邪神の戯れ(サイレント・クロース)によって接触しなければ自身を感知させぬユーベルコードによって晶は知覚されぬままに外縁部を抜けていく。
オブリビオンは確かに多かった。
外縁部の戦力だけ見ても相当だ。けれど、彼等は決して内陸部に踏み出そうとしていない。
それはまるで不文律のようでもあった。
「建物は……内部に行くにつれてなくなってる……いや、自然に飲み込まれている?」
屍人帝国という言葉からして荒廃した光景を思い浮かべていた晶は、反映する新緑の光景に息を呑む。
太陽光に草花は活き活きと咲き乱れ、その花弁を風に舞わせていた。
見事というほかない。
雲海から再浮上しているのだから、確かに人の文明の残滓らしきものもあるのだが、それら全てが草木に侵食されているのだ。
他の猟兵たちの痕跡はどこか、と晶は見回す。
「みんなも結構着ていると思うんだけれど……」
ドローンを飛ばして様子を見ていた晶は、他の猟兵が退却していく様子を発見する。
何が、と思った瞬間晶はドローンに映ったそれを見て驚愕するだろう。
そこにあったは庭園。
見事な花々が咲いて、彩り豊かな美しい庭園。だが、そこに座す存在が問題だったのだ。
そこにあったのは異形の機械。
数多の天使の翼を持ち、王冠を戴く異形の人型の機械。
その異形の機械に座すのは、女人と見紛うほどの美しい顔立ちのオブリビオンの存在。
宝石のような美しい瞳。
そして、異形の機械の腕が持ち上がり、攻撃の所作をしたのを晶は見たのだ。
だが、その所作は攻撃に転じることはなかった。
持ち上げた腕が再び降ろされる。
なぜ、と思っただろう。猟兵が退却したからか。あえて追わないのかと。だが、次の瞬間晶は理解する。
「――……!!」
ドローンを飛ばし、中継していたカメラ越しにかのオブリビオンの緑色の瞳と視線がかち合う。
見られている。
いると理解されている。カメラ越しにも怖気が疾走る。
瞬間、ドローンが地面に落下する。バッテリー切れを示す表示がゴーグルの中に示される。
「……なんで? 十分にまだあったはずなのに」
晶は見るだろう。
あの異形の機械に座すオブリビオンこそが皇帝。屍人帝国『オーデュボン』の皇帝たる存在であると理解する。
そして、あの攻撃の所作。
あれは自分にも同様に向けられている。だが、攻撃されることはなかった。あの皇帝たるオブリビオンは自分を見ていない。
ただ、周囲に在る草花の、草木の色鮮やかさに目を奪われているだけである。
「……じゃあ、あの行動は」
そう、『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』のである。
ただ、その理由だけで自分たちは見逃されている。
攻撃すれば、周囲の草花が、木が傷つく。
ただその理由で攻撃されなかったのだと理解し、晶は浮遊大陸からの退却を決める。
多くのことは判明しなかった。
全容全てを解することはできないだろうとは思っていただろう。けれど、あの異形の機械に座す皇帝たるオブリビオン。
その存在を目の当たりにし、晶は、ただその一片こそが『大いなる危機』において意味を持つことに確信を得るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
さて、侵入は出来たけど何処を探したもんかな
見つからないよう慎重に行かないといけないし…
うーん、何事も楽は出来ないか…
●
『忍び足』で足音を殺しながら移動
慎重に行動し、見回りとかの気配を感じながら気を付けながら移動しよう
情報…ねえ
どっかにコンピュータでもあれば、ささっと漁れば済むんだろうけどそういうのも無さそうだし…
紙媒体の資料か…それか戦力関係が無難かな…?
直近で大規模な作戦を展開予定なら、何かしら準備をしているだろうし
その辺りを探ってみようか
なるべく身を隠しながら移動して…角では鏡でしっかり確認
敵戦力について確認出来たら、【Code:Interstellar】起動
空間跳躍して外に出て退散しよう
さて、と月夜・玲(頂の探究者・f01605)は息を吐き出す。
浮遊大陸の壁面をロッククライミングしてきた彼女にとって、これからが潜入行の本番である。
手の握力を取り戻し、首をひねる。
こうして浮遊大陸に潜入できたのはいいのだが、何処から何を探したものだろうかと思うのだ。
「見つからないように慎重に行かないといけないし……うーん、何事も楽は出来ないか……」
仕方ない、と玲は嘆息する。
こうした潜入において大切なのは敵に見つからないこと。
すなわちスニーキングとは忍び足である。
どんな強力な、便利な装備があったのだとしても物音を立てればそれだけで敵地の敵に見つかってしまう。
そうなってしまって、諸々が水の泡になってしまうだろう。
慎重に、慎重に、と玲は自分に言い聞かせるように大陸の外縁部からオブリビオンはひしめく地帯を抜けようと移動していく。
この外縁部にはオブリビオンの巡回が多く存在している。
だが、あくまで外縁部だけだということに玲は気がつく。ここを巡回しているオブリビオンたちはまるで不文律があるかのように頑なに内陸の方へと足を踏み出さない。
何があるのか、もしくは、そのように定められているのか。
どちらにせよ、玲にとってそれは好都合だった。
「なら内陸に進むでしょってね……どっかにコンピューターでもあれば、ささっと漁れば済むんだろうけど、そういうのなさそうだし……」
なら紙媒体とかどうだろう、と玲は内陸に進む。
後ろを振り返ってみても、オブリビオンがこちらに気がついている様子はない。たとえ、気がついていたとしても、彼等の行動を見ていた玲はこれより先にオブリビオンは存在しないことを理解していた。
「直近で大規模な作戦を展開予定とかなら、何かしら準備をしているだろうし……」
お、と玲は息をまた吐き出す。
彼女の目の前にあったのは豊かな自然だった。
清流の流れは清らかであったし、屍人帝国の名とは裏腹な光景が目の前に広がっている。
自然が豊かである。
言葉にすればそれだけであった。けれど、玲は気がつく。
たしかに此処には人の文明の残滓があったのだと。その残滓は全て木々によって侵食され、飲み込まれようとしているのだ。
「えぇ……これじゃあ紙媒体なんかとっくの昔に分解されてるよね……アテが外れたかな」
オブリビオンの巡回が内陸にはないとわかっていても、玲はしっかりと木々に侵食された文明の残滓の中を往く。
進めば進むほどに木々の侵食はひどくなっている。
「此処まで来たら一気に進んじゃおう。Code:Interstellar(コード・インターステラー)。さ、蟲龍ビヤーキー、空間跳躍よろしく」
ね、と玲はユーベルコードによって模造神器から呼び出した悪魔である『蟲龍ビヤーキー』に告げる。
だが、『蟲龍ビヤーキー』は被りを振る。
え、と玲は思っただろう。
このユーベルコードは悪魔を召喚し、命令するものである。その命令に従わせるには、やはり『蟲龍ビヤーキー』の強さに応じた交渉が必要なのである。
その悪魔が頭を振っている。
拒否しているのだ。
これ以上近づくのを拒んでいる。
「いやいや、ちょいちょいってさ。中心部にひょーいってだけなんだってば」
だが、頭を振る。
なんでさーって玲は困り果てていると風が草花の花弁を舞い上げ、玲の背後から浮遊大陸の外へと運んでいく。
それは他の猟兵達がこの浮遊大陸から退散する光景であった。
そして、玲がなんとなしに視線を向けた先、大陸の中心部……美しい庭園に在るものを認識した瞬間、なぜ『蟲龍ビヤーキー』が中心部への空間跳躍を拒否したのかを理解する。
「――……」
其処に在ったのは言葉無く、ただ花々を見て微笑む異形の機械に繋がれるようにして座す女人と見紛うほどの美貌を持つオブリビオンの姿があった。
その腕は僅かに持ち上げられ、それが攻撃の所作であると理解できただろう。
だが、攻撃しない。
異形の機械は数多の天使の翼を持ち、王冠を戴く異形の人型。
其処に座すオブリビオンこそが『オーデュボン』の皇帝であると玲は直感的に理解しただろう。
あれが、そうだと。
「……ッ! あれ、あれが! でも、なんで……攻撃しない」
いや、わかってしまった。
あの草花を見て微笑むオブリビオンは、『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』。
そして、あの緑色の瞳が玲に向けられる。
見られている。
理解されている。
自分が何者であるのか。そして、攻撃されないのは、自分の足元に木々があるからだと。僅かに木々を傷つけぬ可能性があるのならば、即座に自分は攻撃されると玲は理解する。
「ビヤーキー。その力を以て星辰の加護を齎せ!」
玲の言葉に頷く悪魔。
空間跳躍の力は大陸内部ではなく外部に向けられる。
一瞬で玲の姿は浮遊大陸から消えていた。
悪魔『蟲龍ビヤーキー』による空間跳躍。それによって玲は『オーデュボン』の領空の境界線の浮島に立っていた。
怖気が走るほどの重圧。
自分が無事であったのは、他の猟兵が何事もなく退散できたのは。
ただ、あの場で皇帝たるオブリビオンが『草花、木に当たるような攻撃をしようとしない』というたった一つによるためであると理解する。
その理解がいずれ訪れる『大いなる危機』に猟兵たちの優位をもたらすのかはわからない。
けれど、得られた情報は確かにあったのだ。
「……あの異形の機械。あの男……あれが『オーデュボン』の皇帝」
玲は自身の瞳で見た皇帝の姿を知る。
この邂逅がもたらすのはなにか。
未だ分からぬ。されど、隣り合わぬ音たるオブリビオンと猟兵。その狭間にあるブルーアルカディアという世界。
満ちる音は、いずれ大いなるひずみとなるか――。
大成功
🔵🔵🔵