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恋雨のララバイ

#シルバーレイン

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#シルバーレイン


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 しとしと、しとしと。今日も雨が降っていて、それは俺の気持ちに似ていた。
 閉店後のレストランにて、今日もペンを片手にうんうん唸る。
 そろそろ秋に備えて、旬の食材で新作メニューを――けど、なかなか良い考えが纏まらない。
 今年は何が手頃だろうか。流行はどうだろう。それから……。
 考え込んでいる内に、気付けば俺は机の上に突っ伏していた。
 そうだな、ちょっと仮眠でも――。

「……見つけました! 運命の人!」

 眠りに落ちる瞬間、聞こえたのは朗らかな女の子の声。
 そして次に目を開いた瞬間、飛び込んできたのは奇妙なレストランの光景だ。
 周囲には血まみれ兎の給仕達。その中央で微笑むのは、同じく血まみれの兎少女。
「さあ、特製シチューをどうぞ!」
 少女はにっこりと微笑んで、湯気を立てるシチューを差し出す。
 一体何だこの状況は。夢か?
 それにシチューから妙な匂いも漂ってるし……何がなんだか分からない。

 けれど後から考えると、混乱してる内はまだ幸せだったかもしれない。
 だってこれが、俺の悪夢の始まりだったから。


「集まってくれてありがとう。今回はシルバーレインで起きた事件を解決して欲しいの」
 猟兵達の姿を確認し、チェルシー・キャタモール(うつつ夢・f36420)は笑顔を向ける。彼女の腕の中には、妖精像を模したメガリスが抱きかかえられていた。
「目的地はとある男性の夢の中よ。そこでこのメガリス『ティンカーベル』を借りてきたの。これで皆を夢の中まで送り出すから、出現したオブリビオンを退治して欲しいって訳ね」
 メガリスの力を借りれば、夢の中でも戦うことが出来る。その力を使い、一般人を助け出すのが今回の主旨だ。

「それじゃあより少し詳しく説明していくわね。夢の主は『荒川・サトジ』という男性よ。彼はレストランのシェフで、新作メニュー作りに悩んでいて……ストレスに思い詰めていた時に、オブリビオンがやってきたみたいだわ」
 元々悩んでいたところにオブリビオンの侵略が重なって、サトジの精神は相当参っている様子。その心が折れてしまえば、彼はオブリビオンの傀儡となってしまうだろう。
「それで夢の中に入ったらなんだけど……まずは夢の世界を探索して、オブリビオンを見つけて欲しいの。サトジも同じ場所に捕らわれているわ」
 夢の世界は広大で、すぐさまオブリビオンの元に辿り着ける訳ではないようだ。舞台は悪夢、簡単には進めないだろう。
「夢の中はとっても広いレストランになっていて、先へ進むためには提供される料理を食さないといけないの。でも……その料理、とっても危険なのよね」
 オブリビオンが用意した料理は見た目こそ綺麗で美味しそうだが、中には強烈な毒が含まれている。
 そのため毒の対処をするか、食べたふりをするか、或いは別の手段を考えるか。
 どうにか工夫して進まなくてはならないだろう。

「問題のオブリビオンは所謂ヤンデレ、みたいなもので。皆に振る舞う料理も善意なんでしょうけど……厄介よね」
 チェルシーは話を続けつつ、グリモアで件のオブリビオンを映し出す。
 そこにあったのは、血塗れ腕塗れの兎の少女だ。
「彼女がそのオブリビオン『宇佐美・藍沙』よ。彼女はサトジに恋しているんだけど、すごく惚れっぽいから皆にもアプローチしてくるでしょうね」
 恋した藍沙は一直線。手段を問わずに猟兵も手に入れようとしてくるだろう。
 彼女に散々追い立てられたサトジは、疲弊して気絶している。戦いに彼が巻き込まれることはないだろう。
「そうそう、この夢の中では『強い思いが力に変わる』という法則があるみたいなの。う上手く活用してね」
 戦いに何かしらのモチベーションが抱ければ、それはそのまま力に変わる。
 夢の中なら何でもアリだ。気持ちで負けないのが大切だろう。

「残念なことに戦いが終わっても、サトジは目を覚まさないわ。彼の心は壊れる寸前、けれど夢の中なら不思議なヒーロー達が現れたっていいでしょう? 皆でサトジを励まして助けてあげて欲しいの」
 戦いが終われば夢の景色は一変し、雨降るサトジのレストランへと移り変わる。
 そこでサトジと言葉を交わしたり、悩みを解決する手助けをすれば――きっと彼の心は救われるはず。
「悪夢の終わりまで、皆の力で導いてあげてね。それじゃあ、よろしくお願いするわ」
 チェルシーはそう話を締めくくり、『ティンカーベル』を掲げるのだった。


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 夢の中は毒ときどき恋、のちに雨。

●一章『注文の危ない料理店』
 夢のレストランで振る舞われる食事を食べれば、先へ進む道が開かれます。
 けれど料理は毒がたっぷり。頑張って食べるか、或いは誤魔化すか。
 料理の内容は注文してオッケーです。

●二章『宇佐美・藍沙』
 恋する兎のオブリビオンです。
 彼女を倒せば夢の主は救出出来ます。
 気持ちで負けないように頑張りましょう。

●三章『雨と唄えば』
 舞台は移り変わり、夢の主のレストランへ。
 窓の外は雨模様。どうにかサトジの心を癒やしましょう。

●荒川・サトジ
 日本のとある洋食のレストランで働く30代の男性です。
 新作メニューについて悩んでいる時にオブリビオンに目をつけられました。
 アドバイスは素直に受け取るタイプですが、少し優柔不断な面があります。


 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
 締め切りの告知もそちらで行っているので確認していただけると幸いです。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『注文の危ない料理店』

POW   :    無理矢理にでも食べてなんとかする

SPD   :    食べたふりをして上手くごまかす

WIZ   :    食べる以外の方法を探す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 夢の中に飛び込んだ猟兵達を出迎えるのは、広大なレストランの光景。
 立派な調度品は丁寧に手入れされており、何も知らずに訪れたのなら高級レストランのように思えるだろう。
 その合間で優雅に働くのは、ふわふわ兎の給仕達だ。

「いらっしゃいませ、お客様」
「お嬢様が特製の料理を用意しております。まずはそちらをお召し上がり下さい」
 兎達に案内されるまま席に腰掛ければ、すぐに望み通りの食事が運ばれてくるだろう。
 けれど猟兵ならば、料理の違和感にはすぐ気付けるはずだ。
 少し香りがおかしい。色合いが気になる。嫌な予感がする――。
 その全ては正解だ。
 提供される料理には強烈な痺れ毒が含まれているのだから。

 毒入り料理をそのまま食べれば、身体は動きを止めてしまうし最悪の場合は死に至る。
 けれどオブリビオンからすれば、痺れてようが死んでようが問題はないようだ。
 とにかく彼女は自分の好意を受け取って欲しいと、そう望んでいるのだから。

 さてさて、この危険な料理店。どうやって乗り越えていこうか。
黒城・魅夜
「悪夢の滴」たる私の前で夢を弄ぶ愚か者
真なる悪夢がどのようなものか
いずれその身にたっぷりとお教えしましょう
夢の中は我が故郷
ふふ、懐かしい感覚です

毒のお料理ですか…
我がアイテムは毒を無効化しますし
私自身も毒耐性のスキルを有してはいます

…けれど、夢の中で逃げたとあっては
私の沽券に関わりますね
甘い毒入りケーキをいただいてまともに口にしますよ
ダンピールの証たるこの牙でね

毒料理にとっての幸運は「相手に毒が効くこと」
その幸運を吸い取った以上、「なぜか」毒が弱められ効果を失っています
驚いている暇はありませんよ、兎さん
不運なことにあなたたちにその毒が付着していますから

毒を除外すれば美味しいケーキでしたね、ふふ




 豪華なレストランの中で、兎の給仕が佇む。
 まるでお伽噺のような荒唐無稽な景色も、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)にとっては不思議と懐かしさを感じさせるものだ。
 夢の中は我が故郷。この場にいること自体に不満はない。
 気に障るものがあるとすれば、問題を起こしたオブリビオンだ。
(『悪夢の滴』たる私の前で夢を弄ぶ愚か者。真なる悪夢がどのようなものか、いずれその身にたっぷりとお教えしましょう)
 その為にもまずは目の前の状況を乗り越えなければ。
 魅夜は静かに椅子に腰掛け、料理が出される時を待っていた。
「お待たせしました。ビターチョコとフルーツのケーキでございます」
 兎給仕が目の前に置いたのは、上品な飾り付けのされたケーキだ。
 見た目だけなら立派なもので、微かに漂うチョコレートの香りも悪くない。けれどそこから感じるのは――不吉な悪夢の気配。
 魅夜は暫しケーキを見つけて考え込む。『血浴みの女王』を用いれば毒は簡単に消せるし、魅夜本人も毒への耐性は有している。
 けれどただ単に「毒を無効化して食べました」では意味がない。
 だってそれは、逃げたことになってしまうから。
 だから魅夜はフォークを握り、ケーキを切り分けてゆっくりと口元に運ぶ。
 漆黒の瞳でケーキを見つめ、背中からは悍ましさすら感じさせる翼を生やして。
 ダンピールの証たるこの牙で、しっかりとまともに口にしましょう。

 魅夜は何事もなかったかのようにケーキを完食し、小さく息を吐く。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
 そう呟き微笑む魅夜を前にして、驚いたのは兎の給仕達だ。
 なんで。どうして。どうしてこの女は平然と笑っている?
 そんな彼らの感情を見透かしたように、魅夜は堂々と言葉を紡ぐ。
「幸運は常に主を裏切る機会を狙うもの。私の力を用いれば、この料理から……いいえ、毒から幸運を奪うことすらできるのです」
 ただ毒を無効化するだけではない。その力を奪い踏み越えていくことで、魅夜は悪夢に打ち勝とうとしているのだ。
 そして踏み越えるべきは――料理だけではない。
「驚いている暇はありませんよ、兎さん。不運なことにあなたたちにその毒が付着していますから」
 ふわり、魅夜が翼を羽ばたかせれば、毒が齎すはずだったものは凶運の風として周囲に広がっていく。
 それをまともに浴びた兎達は倒れ伏し、すぐに動かなくなった。
 静かになったレストランの中を、魅夜は優雅に歩いていく。
「毒を除外すれば美味しいケーキでしたね、ふふ」
 その満足げな笑顔は恐ろしく、そして何より美しかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アマネセル・エルドラート
「夢の世界とは言っても。毒自体はかなり危なそうね。」
自身も夢を扱う力があると言っても。
自身が作り出した夢ではない以上、まともにこの料理を食べてしまえば毒の影響からは逃れられないだろう。
この料理を食べるだけで終わるのであれば普通に食べてしまい何とか耐える、という選択も出来るが、オブリビオンとの戦闘も控えている以上、その選択はリスクが高い。

「いっそのこと、こっちも夢で対抗してみようかしら。」
UCドリームベール、普段なら自身を隠すが、今回は料理を食べたふりをして料理を隠すために使ってみよう。
目視で確認されなければ何とか誤魔化せるはず。
急に料理だけ一気に消えると不自然なので、そこは上手く調整しよう。




「っと、ここが例の夢の世界ね」
 長い髪と兎耳を揺らしつつ、アマネセル・エルドラート(時計ウサギのアリスナイト・f34731)も夢の世界へと舞い降りる。
 広がるレストランの光景は綺麗だし、給仕達からも強い悪意は感じない。むしろこのくらいの光景なら、アリスラビリンスでもよく見られるものだろう。
(でも油断は禁物よ。ここは私が作り出した夢じゃないのだから)
 アマネセルは内心ではしっかりと警戒を続けつつ、しっかりとした作りの椅子に腰掛ける。
 暫く待てば給仕が野菜のソテーを運んできてくれた。漂う香りはハーブの類がきいているのか、とても美味しそうで。
 けれどアマネセルはその良い香りの奥から漂う、危険な気配を見逃したりしない。
(夢の世界とは言っても。毒自体はかなり危なそうね)
 ここは他者の夢の中で、オブリビオンが悪意を振りまいている。
 それに素直に乗ってしまえば、夢使いのアマネセルでも悪影響は逃れられないだろう。
 ただ料理を完食すればいいのなら強行突破も考えたけれど、まだこの夢の中には倒すべき敵と救うべき人がいる。
 それなら――。
「……いっそのこと、こっちも夢で対抗してみようかしら」

 上品な仕草で野菜のソテーを切り分けつつ、アマネセルは少しずつ意識を集中させていく。
 給仕達の様子は落ち着いているが、こちらをずっと観察してきたりはしないらしい。
 他の客の対応をしたり、夢自体の点検をしたり。彼らはオブリビオンが用意した小間使いのようなものだろうか。
 それなら隙だって見せるはずだ。アマネセルは給仕達の視線が別の方へ向いた瞬間を見計らい、自身の能力を発揮していく。
 次の瞬間アマネセルの胸元から生まれたのは、幻のような夢の塊だ。
 それらは切り分けられた料理の一部を包み込み、ふわりと姿を消す。厳密には消滅した訳ではなく、見えなくなっただけなのだけれど。
 隠した料理はすかさず回収し、アマネセルは再び周囲の様子を窺う。
 ちょうど一体の給仕がこちらの方を見たが、彼は何事もなかったかのように移動していった。
(よかった。上手く誤魔化せそうね)
 アマネセルの前に置かれた皿を見れば、少しずつ料理が食べ進められているようにしか見えないだろう。
 だったら後はチャンスを窺って、少しずつ料理を隠していくだけ。
 夢の中で夢を展開するというのも奇妙な話だが、その荒唐無稽さだってある意味夢らしいだろう。

「ありがとう、ごちそうさまでした」
 アマネセルは夢で料理全てを包み込むと、笑顔で給仕の元から去っていく。
 さようなら、夢の兎さん達。きっともう二度と会うことはないだろうけど。

成功 🔵​🔵​🔴​

暗都・魎夜
spd
【心情】
夢の中、昔何度かお世話になったっけ
ナイトメアがいなくなってから、少なくとも戦闘目的で行くことはもうないって思ってたんだけどな
これまでのパターンだとナイトメア型オブリビオンって所か?

こうなった以上は仕方ねえ
夢の中での戦いは10年選手って所見せてやるぜ

【行動】
個人的には食事は無駄にしたくないところだが……夢の中だからセーフってことにしておくか

「カツレツとか焼いた肉が食べたい気分だな。そういうのはあるかい?」
「漫画に出てきそうな分かりやすい毒料理だぜ、こいつは」

食べるふりをしてイグニッションカードの中に仕舞う

この件が終わったら、ちゃんとしたもの食いに行くとするか




 リアルだけれど、決して現実ではない夢の光景。
 それは暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)にとっては不可思議な場所ではなく、懐かしさを感じさせる場所だった。
「懐かしいな、昔何度かお世話になったっけ」
 ナイトメアがいなくなってからは、戦う為に夢の中へ行くことはなくなっていた。
 だから再び自分がこうして敵を倒し人を救う為、夢の世界へ立ち入るのは不思議な感覚で。
 それならここに巣食うオブリビオンもナイトメア型オブリビオンというところだろうか?
 ゴーストとはまた違う新たな敵に、自分自身に宿った新たな力。そして今も続く戦いの状況。
 気になる点は多々あるが、やるべきことは昔から変わらない。こうなった以上は仕方ねえ。俺は俺らしく、目的に向かって進むだけだ。
 魎夜は用意されたレストランの席へと腰掛けて、近づく兎給仕へと視線を向けた。

「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
「カツレツとか焼いた肉が食べたい気分だな。そういうのはあるかい?」
「かしこまりました。暫くお待ち下さい」
 兎の給仕は丁寧に礼をして、奥の方へ向かっていく。相手の姿は奇妙だが、やり取りなどに不自然な点はない。
 けれど世界全体から感じる違和感が、魎夜の身体を包み込んでいた。けれど心配はいらない、夢の中での戦いは10年選手だ。どんと構えていればいい。
 しっかりと覚悟を決める魎夜の元に運ばれたのは――注文通りの骨付き肉やカツレツといった豪華な肉料理だ。
「おお、美味そうだな。ありがとう」
 仕事を終えた給仕が奥へと歩いて行ったのを確認し、魎夜は料理をしっかりと観察していく。
 どの料理もしっかりついた焼け目やスパイスの香りで誤魔化してはいるが、よく見れば違和感には十分気付ける。
 所々のおかしな色、香りといった要素は漫画に出てくるような毒料理を思わせた。
「……食事は無駄にしたくないところだが、夢の中だからセーフってことにしておくか」
 魎夜は懐からイグニッションカードを取り出して、静かに肉料理へと近づけていく。
 すると――料理はあっという間のカードの中に収納されて、完全に姿を消した。
 夢の料理なら現実に戻れば消えるだろうか。それなら食べ物を粗末にしなくても済むのだが。
 そして料理を持ち帰ることはなくても、疲労はきっと持ち帰ってしまうだろう。
「……帰ったらちゃんとしたのを食いに行くか」
 こっそりとそう呟いて、魎夜は席を離れていく。
 目指すは夢の奥――自分のやるべきことがある場所だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

遠野・路子
夢の中……ティンカーベルの出番ということはナイトメア勢力絡み?
かのジャック・マキシマムも復活したと聞いた
強敵かもしれない
気を引き締めていこう、ミコ

注文……してないけど料理は来る
食べないと進めない
ならば仕方ない食べよう美味しそう(食欲に負ける)
ふっ、ヒト向けの毒など我らゴーストに効くわけが……ごふっ
み、ミコ……私は頑張ったと父と母に伝えて……(がくっ)

死んだら普通に怒られそう
『蒼銀の宝石』の非常時エネルギーを解放
取り込んで無理やり回復しよう
ゴーストの体は詠唱銀で出来ている
血潮は残留思念で、心はタピオカ(私的見解です)
ならば問題ないはず……はず、たぶん

ともあれ突破の算段はついた
遠野・路子、押し通る




 夢の世界へ入る前、遠野・路子(悪路王の娘・f37031)は懐かしい存在を目にして感慨を抱いていた。
 メガリス『ティンカーベル』。銀誓館学園ならばきちんと保管しているだろうと思っていたが、再びその力を使うことになるとは。
「ティンカーベルの出番ということはナイトメア勢力絡み? かのジャック・マキシマムも復活したと聞いたし……」
 それならば、今回の敵は強敵かもしれない。好物のタピオカミルクティーをぐっと飲み干し、路子は傍らの相棒へと声をかける。
「気を引き締めていこう、ミコ」
 視肉のミコが頷いたのを確認すれば、いざ一緒に夢の中へ。
 瞬きの間に路子はレストランへと導かれ――立派な席へと腰掛けていた。

 さて、これからどうしようか。路子が思案を巡らそうとした瞬間、皿を持った兎給仕がこちらへ迫る。
「お待たせしました。特製シチューでございます」
「あ、ありがとう」
 注文していないのに料理が来るとは。給仕が下がったのを確認し、路子はシチュー皿を覗き込む。
 微妙な違和感は確かに分かる。それでも提供されたシチューからは優しい香りが漂い、なんとも美味しそうだ。
「食べないと進めない……ならば仕方ない食べよう美味しそう」
 食欲に従い、素直にいただきます。そのまま一口食べてみれば、予想通りの味が予想以上の美味しさで口の中へと広がった。
 それに身体もなんともない。よしよし、もう一口。更に一口。
 甘く見られたものだ、ヒト向けの毒など我らゴーストに効くわけが――。
「ま、待って。ごふっ」
 ふいに身体が痺れ、路子は椅子から転げ落ちる。シチューをひっくり返さなかったのは不幸中の幸いだろうか。
 心配そうにすり寄るミコに向け、路子はどうにか言葉を紡ぐ。
「み、ミコ……私は頑張ったと父と母に伝えて……」
 このままがくり、と行きたい所ではあるのだけど。実際死んでしまったら、きっと両親も普通に怒るだろう。
 だから路子は自らのブローチを指差し、ミコに手元まで運んでもらう。
 ぎゅっと|ブローチ《蒼銀の宝石》を握りしめれば、そこから溢れる詠唱銀の力が路子の身体を癒やしてくれた。
 ゴーストの体は詠唱銀で出来ている。血潮は残留思念で、心はタピオカ。
 これは路子の私的見解だけども、実際起き上がれたのだから問題ない。

 路子はしっかりと立ち上がり、再び堂々と椅子に腰掛ける。
 大丈夫、傍らにはミコだっていてくれる。宝石に宿るエネルギーの貯蔵も十分だ。
「……突破の算段はついた。遠野・路子、押し通る」
 帰ったら美味しいタピオカでリフレッシュしよう。
 そんなことを考えつつ、路子は気合を入れてシチューを食べ進めていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

山立・亨次
【銀華】

お前(ディル)もそんな経験あったのか
俺か? ねえな
寧ろアイデア湧きすぎる方が困りモンだ
何気俺よりでかいからなお前
お花(思わず復唱)

塩釜焼きか
シンプルに塩釜と魚だけみてえだな
毒は……こりゃ塩釜作る時に混ぜてるな

どんな意図があれ食い物を粗末にするなと言いてえがまずは安全確保だな
ん?
食うに決まってるだろ
料理である以上、捨てたら罰が当たる

だがあんた(壽春)は少し待て
毒抜きしてやる

ディルが注意を逸らしてる間にユーベルコード
全員の塩釜を森人の叡智(包丁)で叩き割る
塩は無機物だからな
檸檬に変えて、そのままかけて食えるようにしてやる

とは言え、塩釜の材料は塩だけじゃねえからな
万一の時のことは壽春に任せた


ディル・ウェッジウイッター
【銀華】
メニューで悩む…似たような経験あります
寝られない夜が何日続いたか…何、|紅茶《カフェイン》の取りすぎだろって?違いますよ…多分
そういう亨次はそういうのは…無いのですか。心持、羨ましいです
あと多少寝れなくてもここまで身長伸びましたから。問題ないです

魚の塩釜焼。見た目こそ良いのですが毒入りとは
彼女たちが目を逸らした隙に処理というのが一番簡単でしょうが
亨次には何か策がある様子、手伝いましょう
という事で杜環子さん。お召し上がりはもう少しお待ちください

ユーベルコードを使い給仕たちを迷宮に閉じ込めた上で幻覚を魅せます
どんな幻を見ているかは分かりませんが、これで彼女たちの目はありません
後は任せますよ


壽春・杜環子
【銀華】
たいへんわたくしそういう悩みがびっくりするほどゼロ
んもう、ディルくんはちゃんと睡眠はお取りなさい、っておのれ成長期め……
あら、亨次くんは無いの?元気でよろしい
ので後でお花の飴をあげましょう
いい子いい子


わあ、塩釜!わたくし、崩れる前を見たのは初めてやも
……食べちゃダメ?耐性あるけど、だめ?ええ一口……。
いいじゃないですかー!わたくし人間じゃないもん毒効かないかもしれないじゃないですかー!
……むう。仕方ありませんかわいー後輩の言葉を先輩なので聞きます

偉い偉い
大事ですよ、勿体ないの心は
はいはい任されましたとも
きっと亨次くんなら上手に処理なさっているでしょうけれど
わたくしのUCはあくまで保険




 用意された席に、三人並んで腰掛けて。
 夢の中へと突入した猟兵達は、料理を待ちつつ言葉を交わしていた。
「メニューで悩む……似たような経験あります」
 ディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)が思い浮かべるのは夢の主のこと。
 紅茶はとても奥が深い。ティーソムリエであるディルにとってサトジの悩みは親近感を覚えるものだった。
 そんな彼の隣で目をぱちくりさせるのは壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)だ。
「たいへんわたくしそういう悩みがびっくりするほどゼロ。亨次くんは大丈夫?」
「俺か? ねえな。寧ろアイデア湧きすぎる方が困りモンだ。というかディル、お前もそんな経験あったのか」
 ぱちくりした目が見つめるのは、更に隣の山立・亨次(人間の猟理師・f37635)。
 猟理師である亨次にとって料理はむしろライフワーク。悩むより先に身体が動くのだろう。
 対照的な二人の言葉を聞きつつ杜環子はにこにこ笑う。可愛い後輩達の言い分はどちらも面白い。
 そんな友人達の様子、特に亨次の言葉を受けてディルが浮かべたのもどこか緩い微笑みだ。
「心持、羨ましいです。ええ、私の方は寝られない夜が何日続いたか……いえ、決して|紅茶《カフェイン》のせいではなくてですね」
「んもう、ディルくんはちゃんと睡眠はお取りなさい。まだ学生さんなんですから」
 さっきまでにこにこだった杜環子さん、先輩モード。けれどディルは緩い笑みを絶やさない。
「多少寝れなくてもここまで身長伸びましたから。問題ないです」
「何気俺よりでかいからなお前」
 ディル(182.1cm)の言葉にこくこく頷く亨次(181.7cm)。そんな彼らに向けて小柄な杜環子が向けるのは羨望の眼差しだ。
「おのれ成長期め……でも亨次くんの方はきちんと眠れているんですよね。元気でよろしい、ので後でお花の飴をあげましょう」
「お花」
「いい子いい子」
 眠って大きくなったのなら、それは真っ当な成長だ。それでもお花の飴とは。今度は亨次がぱちぱち瞬き。
 そんな彼のリアクションも微笑ましくて、杜環子はほっこりしている様子。
 こうやって三人で楽しい雑談を続けていてもいいけれど――そうも言っていられなくなったようだ。
「……っと、私もお花の飴は気になりますが。そろそろ給仕が現れるようです」
 ディルの言葉を受け、杜環子と亨次も周囲を見遣る。
 一行の視線の先に立つのは、大きな皿を運ぶ兎給仕だ。

「お待たせしました。こちらが皆様への料理でございます」
 給仕達は猟兵の元へと大皿を置き、後方へと控えていく。
 大皿の内容は――大きく立派な魚料理だ。
「わあ、塩釜! わたくし、崩れる前を見たのは初めてやも。お魚はなんでしょうか……?」
 真っ先に反応したのは杜環子だ。彼女にとって魚の塩釜焼きは縁の遠いものではなく、好ましいものの一つ。
 ここがオブリビオンの潜む夢の中でなければ、このまま頂きたいくらいだ。けれどそれより先に、亨次の低い声が響く。
「シンプルに塩釜と魚だけみてえだな。毒は……こりゃ塩釜作る時に混ぜてるな」
 亨次の観察眼は微妙な違和感を見逃さない。この料理は間違いなく危険だと、ほとんど直感的に理解出来ていた。
「見た目こそ良いのですが毒入りとは。さて、どうしましょう?」
「……食べちゃダメ?」
 首を傾げるディルに、杜環子がじぃっと目を向ける。そのまま亨次の顔も、じぃっと。
「耐性あるけど、だめ? ええ一口……」
 返ってくるのは、男子二人の視線。亨次は鋭く、ディルはやんわり。
 じーっと、じーっと。三人が互いに見つめ合えば、とうとう我慢できずに杜環子が口を開いた。
「いいじゃないですかー! わたくし人間じゃないもん毒効かないかもしれないじゃないですかー!」
「少し待て。大丈夫だ、食うのを止めろなんて言わない。俺が毒抜きしてやるから」
「おっと、こっそり処分するのではなく?」
 ディルも思わず口を開く。てっきりどうにか料理を捨てるものだと思っていたから、亨次の提案は予想外だ。
「料理である以上、捨てたら罰が当たる。それに策自体は既に纏まっているからな」
「それなら私も手伝いましょう。給仕達の気を逸します。という事で杜環子さん。お召し上がりはもう少しお待ちください」
 友人がここまでしっかりと挟持と自信を持っているなら、応えるのもまた友情。
 ディルがゆっくりと、杜環子も納得した様子。
「……むう。仕方ありません。かわいー後輩の言葉ですからね。わたくしもお手伝いしますわ」
 なんだかんだで後輩達が頑張るのなら、先輩だってしっかりせねば。
「よし、方向性は決まったな。ディル、壽春、頼めるか?」
「勿論です。こちらはお任せを」
「皆で一緒に塩釜、頂きましょうね」
 ディルの手にはティーセット、杜環子の手には大きな鏡、そして亨次の手には愛用の調理器具。
 それぞれの象徴のような道具片手に、作戦の始まりだ。

 兎の給仕は猟兵達の後方に控えたり、仕事に勤しんでいる様子。
 けれど彼ら彼女らには監視の役割も与えられているはずだ。そう判断したディルは笑顔を浮かべつつ、給仕の元へと歩み寄る。
「皆様も働き詰めでお疲れでしょう。さあ、紅茶をどうぞ」
 丁寧に手入れされたティーセットへ向けて注ぐのは、とっておきの魔法の紅茶。
 広がる湯気は優しく給仕達を包み込んで――彼らを夢の中の夢へと誘った。
 作り出したのはフレグランス・ラビリンス。給仕達は迷宮の中で素敵な幻覚を眺め、足を止められるだろう。
「これで彼女たちの目はありません。後は任せますよ」
「ああ、任された」
 ディルの声に亨次が応じれば、彼の手に宿る森人の叡智がきらりと光る。
 馴染んだ包丁をしっかり握り、狙いを定めるのは――。
「……塩は無機物だからな。変えるならこの辺りか」
 ダン、と音が響き渡り、包丁は塩釜を叩き割る。
 その瞬間、毒入りだった塩は瑞々しい檸檬へ変化し、皿の上に転がった。
 不思議だけれど素敵な光景を前にして、杜環子は目をきらきらと輝かせる。
「まあ、美味しそう」
「これで俺に出来ることはやった。とは言え、塩釜の材料は塩だけじゃねえからな……万一の時のことは壽春に任せた」
「はいはい任されましたとも。きっと亨次くんなら上手に処理なさっているでしょうけれど……」
 杜環子が手にした鏡をそっと撫でれば、綺羅びやかな文様が力を帯びる。
 そこから広がるのは仲間を守る優しい力。これで万が一魚にも毒が宿っていても、きっと大丈夫だ。
「亨次くんの勿体ないの心、しっかりと受け止めました。さあ、皆で頂きましょう」
「む、そうか……」
 偉い偉い、いいこいいこ。後輩の挟持が好ましく、杜環子は亨次の頭を優しく撫でる。
 なんとも言えない表情を浮かべる亨次の視線が捉えたのは、にこにこ笑顔で戻ってくるディルの姿だ。
「余計な目もありませんからね。落ち着いていただきましょう」
「ディルくんもお疲れ様です」
 杜環子、ディルの頭もいいこいいこ。それに返ってくるのはやっぱり穏やかな笑みで、なんというかいつも通りだ。
 それならやっぱりいつもの友人同士で――なかよくたのしくいただきます!

 魚に檸檬の汁をかけて、一口食べれば笑顔も花咲く。真っ先に華やいだのは、先程と同じく杜環子だ。
「お魚と檸檬の組み合わせ……とても美味しいです! ふふ、しあわせ」
「無事に食べられそうなら一安心だ。夢とはいえ、やはり出された食事はきちんと食べたいからな」
 毒の悪影響がないのを確認し、亨次もほっと一息。その隣ではディルが小さく唸っていた。
「紅茶ともよく合いそうですね……」
「……ディルは何でも紅茶と合わせられるんじゃないか?」
「お魚と合わせるのですか? わたくしも紅茶を頂いても?」
「勿論です。夢の中でも紅茶や食事は大切ですからね」
 三人で美味しいものを食べられるのなら、それは何より楽しく嬉しい。
 きらきらの文様の光を浴びながら、一口、また一口。
 楽しい思い出を胸に「ごちそうさま」まで済ませたのなら、目指すは夢の奥地だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『宇佐美・藍沙』

POW   :    どうしよう、好きになっちゃいました!
自身の【恋心に素直】になり、【恋の告白をし続ける】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD   :    きっとあなたも私の運命の人!
【自身や恋人たちの手での引っ掻き】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【声や容姿といった魅力的なところ】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    恋人になってくれなきゃ離れない!
【恋心】を向けた対象に、【全身全霊全腕でのハグ】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:飴屋

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は夏目・晴夜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達は無事に給仕のレストランを攻略し、夢の奥へと進んでいく。
 そこにいたのは――兎のような姿をした怪物の娘。そして拘束された男性の姿も見える。
 その男性こそが救出対象である荒川・サトジだろう。
 サトジは若干顔色こそ悪いものの、ただ気を失っている様子。少なくとも今すぐ命に別状などはないだろう。

「……あ、素敵な人たち! 私の料理は楽しんでくれました?」
 怪物こと『宇佐美・藍沙』はぱっと笑みを浮かべ、猟兵達を出迎える。
「うふふ、サトジさんも素敵なんですけど……皆さんもとーっても素敵で。だからきっと、あなた達も私の運命の人なんですよね」
 藍沙の笑顔は熱を帯びたものへと変わり、そのまま彼女の足はこちらへ向かって進み出す。
 その度に彼女の身体から生えた幾つもの足が、ゆらゆら揺れて。
 その様子は――明らかに常軌を逸しているだろう。

「さあ、皆でサトジさんの夢の中で暮らしましょう。そしてみんなみんな、私の恋人になるんです!」
 藍沙はそう叫ぶと、明確な殺意と共に猟兵達へと襲いかかる。
 説得は不可能だ。この状況を脱するには、藍沙を倒すしか方法はない。
 そしてここは夢の世界。強い思いや意思がそのまま力になる世界だ。
 相応の決意を胸に、悪夢を終わらせに向かおう。
暗都・魎夜
【心情】
察するに元はリビングデッドの出身って所か
全方位に運命の人って言える心の強さはすごいな

愛の告白は嬉しいが、こっちは帰らなきゃいけない大事な場所があるんでね

【戦闘】
大事な嫁の元へ帰る、という固い決意のもとに戦闘
あるいは、嫁とどこかの店に食べに行くのも悪くねえな

「天候操作」で雨を降らせ、雨水からUCを展開
「コミュ力」で誉める
「その行動力は魅力的だし、服装のセンスも可愛らしくていいと思うぜ」
「ちょっと手足の数が好みより多すぎるんだけど、どうにかならねえか?」

「見切り」でひっかきを回避しつつ、「斬撃波」で攻撃
「悪いが他を当たってくれ。この世界の骸の海なら、きっと選り取り見取りだろうからさ」




 宇佐美・藍沙は焦点の合っていない目で笑顔を作り、幾つもの腕を揺らしながら此方へ迫る。
 そんな恐ろしい光景も、歴戦の戦士である暗都・魎夜にとっては恐れるに足らず。
 彼の瞳は冷静に、そしてしっかりと藍沙を睨む。
「察するに元はリビングデッドの出身って所か。それよりも……」
 先程の藍沙の言動を思い返し、魎夜は小さく唸った。
 サトジを運命の相手と見定め捕らえる。それはまだ理解出来る。
 けれど――まさか自分達まで運命の相手扱いされるとは。
「愛の告白は嬉しいが、こっちは帰らなきゃいけない大事な場所があるんでね」
「そんな訳ありません。だってあなたは私の運命の人なんですから!」
 魎夜の言葉を受け入れず、藍沙は腕を振り回し此方へ走る。
 相手がそのつもりなら仕方ない。魎夜の心には既に|運命の人《大事な嫁》がいるのだから。
 彼女の元へと帰るまでが自分の仕事。その後のことを考えるのだって気分が晴れて嬉しくなる。
 そうだな、今度こそは一緒に美味しいものを。そんな何気ない、けれど大切な決意を胸に魎夜は拳を構えた。

「雨よ、嵐の王のために道を作りな!」
 魎夜が展開するのは雨で作った水鏡。これを後方に控えさせておけば、移動で不便することはないだろう。
 次に対処すべきは、馬鹿正直に向かってくる敵だろうか。
「いや、俺はお前だって悪くないと思ってるんだぜ。だから話を聞いてくれよ」
「……え? 聞きたい! 聞きたいです!」
 藍沙から敵意が緩む。それより恋する乙女モードな視線で見られるのはちょっと気まずいが、これもまた勝利のためだ。
「その行動力は魅力的だし、服装のセンスも可愛らしくていいと思うぜ。でもな、ちょっと手足の数が好みより多すぎるんだけど、どうにかならねえか?」
「うう、それはちょっと難しいです。だって運命の人を全力で抱きしめるには、腕がいっぱいあった方がいいですから!」
 藍沙はしおらしい表情を浮かべつつも、再び敵意を湧き上がらせる。そのまま彼女は走り出し、大きく腕を振るおうとしている様子。
 分かってる、初めから話の通じる相手じゃない。ただ――時間は十分に稼げたはずだ。
「そうかい、じゃあ仕方ないな」
 魎夜は後方の水鏡へと飛び込んで、迫る藍沙の前から姿を消した。
 もう一枚の水鏡は――藍沙の後方!
「悪いが他を当たってくれ。この世界の骸の海なら、きっと選り取り見取りだろうからさ」
 それに、俺にはもう大切な人がいるからな。
 そんな思いを乗せて、水鏡から飛び出す魎夜が放ったのは渾身の衝撃波だ。
 重い一撃は藍沙の背中を強かに打ち付けて、彼女の力を大きく削いでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アマネセル・エルドラート
「話に聞いていた通り、随分と惚れっぽいのね。」
ある意味、とても素直。
逆に言えば真っ直ぐ突っ込んで来てくれそうだ。
それならば、此方も素直に受け止める形で迎撃を狙うのも良いだろう。
幸いにもこの様子なら人質同然の状態になっているサトジに危害を加えるとも思えない。

「それなら受け止めてあげるわよ。思いっきり来れば良いわ。」
UCスリーフォールド・レピティションを発動。
UCの効果により長時間飛翔能力を得続けることは難しくなるはず。
そのままランスチャージ、思いを受け止めるつもりで至近距離まで引き付けた上で
アリスランスでの攻撃を狙う。
リスクは高いが、倒しきるイメージをしっかりと持った上で一撃に賭けてみよう。




「うう、諦めません。だって皆さん運命の人なんですから……」
 背中をさすりながら立ち上がる宇佐美・藍沙を前に、アマネセル・エルドラートは思わず目を丸めていた。
「話に聞いていた通り、随分と惚れっぽいのね」
 なんというか、ある意味とても素直というか。
 誰かと関わるのは好きだけど、一方的で暴力的な愛情を送られるのは困ってしまう。
 でも藍沙の性質は戦う分にはやりやすい。彼女はきっと真っ直ぐに飛び込んでくるだろうから。
(それなら、此方も素直に受け止める形でいこうかな)
 イメージしやすい戦いはアリスナイトの得意分野。強く強く勝てるイメージを意識して、それをそのままぶつけにいこう。
 それに藍沙が向かってくるなら、サトジのことは気にしなくても大丈夫だろう。
 彼を人質にすればいいのに、それすらしないのはやっぱり素直だな、なんて思ったりして。

「あなたの気持ちは分かったわ」
 アマネセルは赤い瞳で藍沙の姿をしっかり見据え、力強く言葉を紡ぐ。
「それなら受け止めてあげるわよ。思いっきり来れば良いわ」
「っ! 嬉しい! 愛してます!」
 藍沙は愛の言葉を囁きながら、凄まじいスピードで飛翔しながら此方へ迫る。
 真っ直ぐにぶつかったら正面衝突は必至。だったら――ルールを此方で決めてしまえばいい!
「それ以上は続けさせないわよ。手を変えてもらうわ。来るなら本気で来てちょうだい」
 アマネセルが強く足を踏み込めば、そこから広がるのは夢の力。
 夢に夢を上書きすれば、ルールはアマネセルの思いのままだ。
「……あっ」
 突如藍沙が足を縺れさせ、その場へと倒れ伏す。再び起き上がって進もうとしても、一歩、ニ歩――三歩目で彼女の身体は必ず止まった。
 定めたルールは『同一行動を3回以上繰り返してはならない』。藍沙がどれだけ凄まじいスピードを出しても、三手目には必ず夢が阻んでくるのだ。
 それでも藍沙は進むことを諦めず、試行錯誤しつつアマネセルの元へと向かってくる。
「……やっぱり素直な人なのね。分かったわ、それなら私も素直に応じるわ」
 アマネセルはアリスランスを構え、静かに目を閉じる。
 思い浮かべるのは先程の藍沙の姿。先程よりも動きはゆっくりだが、彼女は確実に此方へと飛び込んでくるだろう。
 ならばイメージするのは――必ず彼女を迎撃出来る自分!
「――行くよ!」
 アマネセルが目を開きアリスランスを突き出せば、見えたのはイメージ通りの光景。
 ランスの穂先は飛び込む藍沙を捉え、深々と突き刺していた。
 夢の世界で、より強い夢を描く。夢見る兎のぶつかり合い、制したのはアマネセルだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
運命に溺れる愚か者よ
運命とは自らの手でねじ伏せ従わせるものであって
つまらぬ欲望の言い訳に使うものではありません
まして夢を弄ぶとは言語道断
我が二つ名「悪夢の滴」の名において断罪します

オーラの結界を展開
その攻撃は命中しなければ茶番
あなたの手がひっかいたものは
オーラの中に揺らめくただの残像にすぎません
無数の幻影に誘惑し陽動
どれが本当の私が見切ることかできますか

相手が戸惑っている隙に闇に紛れサトジさんに鎖を伸ばし
その身を確保しましょう

夢を操れるのがあなただけだと思わぬこと
味わいなさい、夢の世界そのものがあなたを捉え牙を剝き噛み砕く様を
あらゆる法則を無視しあなたを破壊する
悪夢とはこういうものです、ふふ




 強力な一撃を受け、宇佐美・藍沙の身体は床の上へと叩きつけられた。
 けれど彼女は猟兵達への恋慕を止める様子は見せず、狂気的な笑みを浮かべながら立ち上がる。
 その様子は黒城・魅夜から見れば――。
「運命に溺れる愚か者よ」
 凛とした言葉と共に、魅夜は藍沙を見据える。視線が合えば、更に言葉を紡ぎ続けて。
「運命とは自らの手でねじ伏せ従わせるものであって、つまらぬ欲望の言い訳に使うものではありません」
「あなたは素直になれない人なのね? こんな素敵な夢の舞台まで用意したのに」
「ええ、それこそが愚かなのです。夢を弄ぶとは言語道断、我が二つ名『悪夢の滴』の名において断罪します」
 言葉で言っても聞かないのなら、実力で示すだけ。
 藍沙は此方を捕まえるべく、幾つもの腕を振り回しながら迫っている様子。
 だから魅夜はオーラの盾を展開しつつ、黒い鎖をしっかりと握りしめた。

「あなたが素直になれるまで、ずーっと抱きしめてあげる!」
 藍沙は魅夜の元まで迫ると、嬉々とした表情を浮かべ腕を振るう。
 けれどその白い手は、何故か魅夜に触れられない。気づくと魅夜は別の場所へと移動しており、鎖を構えていたのだ。
 それじゃあこっち、と再び藍沙が腕を振るうが、やはりその手は何も握れない。それこそ――夢まぼろしのように。
「ええ、これではただの茶番ですね」
 揺らめく陽炎のような雰囲気を纏いつつ、魅夜は兎の鬼から逃げ続ける。
 ゆらり、ゆらり。次々現れる魅夜の幻に藍沙は戸惑っているようだ。
 だからその隙に、魅夜は勢いよく鎖を操り――捕らわれていたサトジをしっかりと確保した。
「ああ!」
「多くの人に目移りするからですよ」
 更に表情を焦りの色へと変える藍沙に対し、魅夜の表情は落ち着いたもので。
 サトジを安全な場所まで退避させればもう大丈夫。
 ならば広げるべきは、より強力な夢だ。

「森羅万象我が意のままにひれ伏さん、悪夢の名のもとに滅びゆけ」
 魅夜のはっきりとした声と共に、全ての幻は彼女の元へ収束していく。
 その中から現れたのは――真の姿に転じた魅夜だ。
「夢を操れるのがあなただけだと思わぬこと。味わいなさい、夢の世界そのものがあなたを捉え牙を剝き噛み砕く様を」
「ひゃ、なにこれ……!」
 得体のしれないものを感じたのか、藍沙は腕を振るって魅夜から距離を置こうとする。
 けれどもう遅い。魅夜の展開した悪夢はあっという間に哀れな兎を包み込み、圧倒的な破壊を与えていくのだから。
「悪夢とはこういうものです、ふふ」
 惨劇の傍らで、夢の真の主が優雅に微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

壽春・杜環子
【銀華】
んもーあれは悪い子の類でしょうまったくもう
食べ物を粗末にする子は亨次くんに怒らr…―ひえ

はわ
た、たいへんですわ…!
ディルくん、貴方お友達でしょう!どうしたら…!
ああ、そうですねあの子は静かなこですものね
でも……でも、次わたくしの番かもしれないじゃないですか!


うぐぐ冷静ー!
わあいお茶ですか、いただ―けないでしょうこの状況!
くっティーソムリエ恐ろし…あ、お茶美味しい。食後の一杯も中々良いものです

ああ、わたくし生き残りた―
え?亨次くん怒ってませ…ゆ、ゆるされました!

ああどうしたら収拾が…
こら匙を投げ―たくもなりますか

さてここで先輩お仕事(UC)です
ごめんなさい亨次くん、鏡を割ってくださいなー


山立・亨次
【銀華】

(暫く無言、ふと徐ろに顔上げ)

食い物を、

――粗末にするんじゃねええええええ!!!!!!

(史上稀に見るガチギレ
滅多切りにせん勢いで振るわれる|森人の叡智《包丁》
恋人になるならないは最早頭にすらない
ただ――お前を兎肉にしてやる、その一心
※レストランそのものを傷つけたり破壊したりはしない)

あと壽春は関係ねえから安心しろ!!(聞こえてた)

(一頻り暴れた後、毒を入れた理由がそうと知らなかった等なら油断しない程度に怒りを収める
ヤンデレ的な理由なら再度|狂戦士《バーサーカー》化
なお何故かクロスは的確に回避、但し直後意を汲んで止まる)

……後でカモミールティーくれ

(いずれにしても、鏡を割って締めとする)


ディル・ウェッジウイッター
【銀華】
この度は丁重なおもてなし誠に…どうしました亨次。黙りこくっ…

ビックリしました…亨次、怒りに任せて喋っては伝わる物も伝わらない…亨次ー?
駄目ですね、止まりそうにない

対処と言われましても彼があそこまで怒っているのを見た事無いので…
とりあえず彼が落ち着くまで|お茶会をしましょう《ユーベルコード使用》。ふふっ、こういう時こそお茶ですよ
楽しめない妨害者はテーブルクロスに包みます

あっ、思いつきました
亨次の怒りが収まらないようならレストランで暴れるものじゃありませんよと、彼もクロスに…っておや、避けられてしまった
うーん、それではお手上げです☆

あらリクエスト。では終わったら飲めるように支度しましょう




「まだまだ……皆さんが恋人になるまでは諦めません!」
 着実にダメージを蓄積してはいるが、宇佐美・藍沙はまだ戦意を保っている様子。
 そんな彼女の鬼気迫る様子を恐れずに、ディル・ウェッジウイッターは丁寧な礼を返した。
「これはこれは。この度は丁重なおもてなし誠に……」
「んもー、ディルくん。あれは悪い子の類でしょうまったくもう」
 くいくい。腕を引かれたのを感じディルが視線を向ければ、そこには困り顔な壽春・杜環子の姿があった。
「そんなに丁寧に対応しなくてもいいのですよ。ほら、食べ物を粗末にする子は亨次くんに怒ら……」
 言葉に傍ら杜環子が視線を向けたのは、もう一人の仲間、山立・亨次の方。そういえば彼、ずっと俯いているような。
「食い物を、」
 低く唸るような声と共に、亨次が面を上げる。そこにあったのは――。
「――粗末にするんじゃねええええええ!!!!!!」
 怒れる猟理師の様相だ。
 そのまま亨次は愛用の|森人の叡智《包丁》を握りしめ、一気に前へと駆け出す。狙いは勿論憎き兎。
「絶対に逃しやしない。必ずお前を、兎肉にしてやる」
「きゃあ! 情熱的!」
 亨次と藍沙はぶつかり合い、始まるのは真剣な戦い。
 亨次の放つ斬撃は凄まじい勢いだが、それでも周囲を傷付けないようにしているのは彼の誇り故だろう。
 藍沙の方は亨次の姿しか見えていない。ぶつぶつ何か呟きつつ、肉弾戦で応じている様子。
 双方激しいぶつかり合い。きっと簡単には止められないだろう。

 勃発した惨状を前にして、杜環子はディルの背中に隠れていた。だって亨次くん、すごいことになってるし。
「はわ」
「ビックリしました……」
 二人共、亨次がこれだけ怒り狂うこと自体は理解出来る。
 猟理師として狩人として。例え夢の中だろうと、彼が食べ物を無碍にすることを許さないだろうから。
 けれどまさか、ここまで怒るとは。
「亨次、怒りに任せて喋っては伝わる物も伝わらない……亨次ー?」
 ディルがどうにか言葉を投げかけても、荒れ狂う亨次は止まらない。
 そんな彼に対し惚れ惚れした表情を浮かべている藍沙もどうなんだろうか。
「そんな姿も……好き!」
「煩い、喋るな! 絶対に許さねぇ!!」
 亨次にとって藍沙の言葉は全てノイズ。それでも構わず藍沙がアタックするものだから、平行線だ。
 しかしこのまま戦い続けるのも放っておけない。杜環子はディルの腕を引きつつ、必死で言葉を紡ぐ。
「た、たいへんですわ……! ディルくん、貴方お友達でしょう! どうしたら……」
「駄目ですね、止まりそうにない。というかあんなに怒ってるの、初めて見ましたね」
 二人の知る亨次の姿はいつも落ち着いていて、優しくて。
 そんな彼が自分達の言葉すら届かないくらい怒っているのだ。焦ってしまうのも当然だろう。
「そうですね、あの子は静かなこですものね。今も器用に戦っていますし……でも、次わたくしの番かもしれないじゃないですか!」
 がしっ。杜環子がディルの腕を強く掴む。
 亨次はレストランを傷付けないように立ち回っているけれど、それは食事に関わるものだから。
 あの|狂戦士《バーサーカー》っぷりだと――巻き添えを恐れてしまうのも仕方のないことだ。
 しかしディルは気にせず笑う。むしろティーセットを取り出しつつ笑う。
「あっはっは」
「うぐぐ冷静ー!」
 杜環子の大焦りな様子と裏腹に、ディルのお茶の準備はどんどん進んでいく。
 そしてあっという間に漂うのは、落ち着く美味しい紅茶の香りだ。

「とりあえず彼が落ち着くまでお茶会をしましょう。こういう時こそお茶ですよ」
「わあいお茶ですか、いただ――けないでしょうこの状況!」
「待て、逃がすか!!」
「キャー素敵!」
 混沌とした状況の中で、ディルは微笑みと共にカップを差し出す。
 その瞬間にお茶の香りは周囲を包み込み――埒外の力が広がりだした。
「さあ、杜環子さん」
「ううぅ、ディルくんめ……でもありがとうございます頂きます」
 せっかくのお茶を受け取らない訳にもいかない。杜環子はカップを受け取ると、そのままの勢いで紅茶を一口。
「……あ、美味しい。食後の一杯も中々良いものです」
「そうでしょうそうでしょう」
 提供されたお茶はすっきりとしていて、お魚の余韻を綺麗に整えてくれる。
 お茶のおかげか杜環子も少し落ち着いたようで、穏やかな時間を楽しむ余裕が出てきた様子。
 けれど戦場は――。

「――ッ!」
「睨む顔も素敵っ」
 怒りが一周回って静かになった亨次と、騒ぐ藍沙がぶつかり合っている。
 いくら心に余裕が出ても、周りが煩ければ台無しだ。
 お茶会を邪魔する者には相応の対処を。ディルがぱちんと指を鳴らせば、周囲のテーブルクロスがふわりと浮かび上がった。
「――失礼」
 クロスは藍沙の行く手を阻み、彼女の回避を一手遅らせる。
 その瞬間に叩き込まれるのは――亨次の見事な斬撃だ!
 藍沙の身体は壁へと叩きつけられ、へたり込む。けれど致命傷には至っていない、またすぐに襲いかかってくるだろう。
 状況としては有利なはずなのだが、杜環子の顔色は悪い。だって亨次くん、まだまだ怒っているから。
「ああ、きっと次は此方の番でしょう。わたくし生き残りた――」
「壽春は関係ねえから安心しろ!!」
 ぴしゃり。先輩の言葉を遮ったのはある意味冷静な後輩の言葉。
 大声に驚きはしたけれど、亨次は大丈夫。そう理解した瞬間、杜環子は大きく息を吐いた。
「ゆ、ゆるされました! 亨次くんはやっぱりいいこです」
「ははは」
 仲間の様子をお茶片手に見守っていたディルだが、彼の視線の隅で何かが動く。
 その正体は再び立ち上がった藍沙だ。
 猟兵達の視線も当然藍沙へ注がれて、暫し沈黙。
 その静寂を打ち破るのは意外にも亨次の声だった。

「……そもそもお前。なんで料理に毒を仕込んだ」
 例えば給仕達が勝手にやったとか、毒のつもりじゃなかったとか。
 弁解の余地はいくらでもある。それなら此方も冷静になれるのだが――。
「えっ? だって皆が痺れてくれたら捕まえやすくなるし、死んでも永遠に私のものになってくれるじゃないですか!」
 藍沙、あっけらかんと答える。
 杜環子、これから起こることを察知し再びディルの背中に隠れる。
 ディル、もはやアルカイックスマイルに近い笑みを浮かべる。
 そして亨次は――。
「……やっぱりお前は兎肉だ!!!」
 完全に鬼のような形相で、ただひたすら攻撃を繰り出す!
 再び巻き起こる肉弾戦! きっともう誰も止められない!
「ああどうしたら収拾が……こら匙を投げ――たくもなりますか」
 杜環子も怯えてはいるが、決して諦めている訳ではない。
 この戦いを終わらせたいし、何よりも――後輩がこれ以上怒る姿を見たくない。彼を助けたい。そんな思いが胸に強く渦巻いているのだ。
「ふむ、それなら亨次にも一度静かになってもらいましょうか」
 ディルは再びクロスを操作し、今度は亨次目掛けて投げ込む。
 けれど亨次はクロスをひらりと回避して、一瞬その場に立ち尽くした。彼の視線はディルと杜環子の方へ。その視線は――いつも通りの穏やかさを宿している。
「……後でカモミールティーくれ」
「あらリクエスト。では終わったら飲めるように支度しましょう」
「それならお茶会も仕切り直さないといけません。だったらここは……先輩お仕事しましょう」
 三人とも向かう気持ちは同じ。オブリビオンを成敗し、サトジを救い、そしてまた穏やかに過ごす。
 それが自分達の役割ならば、先導するのは先輩のお仕事だ。
 杜環子はディルの背中から離れ、前へ堂々と歩き出す。そのまま腕を掲げ、発動するのは深淵へ誘う鏡の術。
 一瞬のうちに幾つもの鏡が藍沙を取り囲み、万華鏡のように彼女の姿を映し出した。
 慌てて逃げようとする藍沙だが、彼女の行く手はテーブルクロスがふわりと防ぐ。
「ごめんなさい亨次くん、鏡を割ってくださいなー」
「ああ、分かった――今からお前の命を『頂く』」
 先輩の言葉を受け、亨次は包丁を振りかぶり――渾身の一撃で一気に鏡を叩き割る!
 鏡を通じて展開された術は見事に藍沙に届き、その身体に無数の傷を叩き込んだ。
 けれど血腥い匂いはしない。漂う紅茶の香りが不思議とそれをかき消していた。
 そしてそれに包まれながら立つのは――いつも通りの笑顔を向け合う先輩と後輩達の姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

遠野・路子
とりあえずお誘いは全力でお断りする

ゴーストの恋人は最近
他の依頼でお付き合いした浮気は良くない
というか私の好みじゃないあなたの性格

来るな
【偽・オロチの地裂】で衝撃波を放つ
とりあえず津波状に放てば近寄れないはず
上が空いている?
誘ってると言って
『蒼銀の光芒』で迎撃しつつ『蒼弓』で狙い撃つ

不本意ながらハグされたら仕方ない
動けないのはこっちも向こうも一緒
ミコと『翠銀霊障』に手伝ってもらって
無防備な背中を全力で攻撃してもらおう
というか力強いこの宇佐美
あの、ちょっと、痛い
仮にも恋人候補に怪我をさせるのはどういうことなのか
関係ない?
なら私も至近距離から【偽・オロチの地裂】を
お見舞いしてあげる

※アドリブ連携OK




 宇佐美・藍沙は最後の力を振り絞り、立ち向かってくる様子。
「諦めません……だって私、あなたと恋人になりたいんですから!」
 熱っぽい瞳が捉えたのは、静かに佇む遠野・路子の姿。
 視線が合ったのを確認すれば、路子は淡々と言葉を紡ぎ出した。
「ごめん。あなたのお誘いはお断りさせてもらう」
「なんで!」
「ゴーストの恋人は最近お付き合いさせてもらったから。浮気よくない」
 厳密には依頼のためにこう、デートっぽいことしたりとかそんな感じだ。
 でも路子にとってそれは真剣な行動で、暖かな記憶で。だから自分で踏みにじる訳にはいかない。
「というか私の好みじゃないあなたの性格」
「ひどい」
「という訳で来るな」
 挨拶代わりに放つのは、激しい土の衝撃波。
 それは一気に周囲を薙ぎ払い、路子の心を示すかのように藍沙の道行きを阻む。
「いえいえ負けません!」
 藍沙は負けじと飛び上がり、壁や天井を蹴って此方へ向かっているようだ。
 けれどそれ自体は予想通り。路子は敢えてそうなるように、地面だけをひたすら抉っているのだから。
 跳ねる兎を狩るならば、手慣れた武器が一番だ。蒼銀の光芒で相手の動きを更に制限しつつ、構えるのは頼もしい蒼弓。
 路子はしっかりと狙いを定め、藍沙を撃ち抜こうとするが――。

「――捕まえました!」
 先に手が届いたのは藍沙の方だ。彼女は凄まじい勢いで壁を蹴り、一気に路子を抱きしめる。
 全身全霊のハグは凄まじい。視界に一瞬星が見えたほどだ。
「あの、ちょっと、痛い……仮にも恋人候補に怪我をさせるのはどういうことなのか……」
「えー? これだけ強く愛してるってことですよ? そういうの関係なくないですか?」
「待って、酷い話だ……」
 ぎゅっと、ぎゅっと。強い力が路子の身体を苛み、全身の骨が悲鳴をあげる。
 でも、負けない。本当の暖かいハグを知っているから。これは絶対に違うって分かるから。
 それに路子は――ひとりじゃない。
「ミコ、翠銀霊障、お願い」
 次の瞬間、呼びかけられた者達は一斉に藍沙の背中目掛けて飛び出した。
 彼らの攻撃で致命傷を与えることは難しくても、藍沙の力を緩めるには十分だ。
 その瞬間を見定め、路子は藍沙の腕を振りほどく。
「さっき関係ないって言ったよね。それはこっち同じ。だからお見舞いしてあげる。そして――私は力を示す」
 止めの一撃に放つのは、両親が手にした力を模したもの。
 路子が生み出した土の衝撃は一気に藍沙を飲み込んで、そしてかき消した。

 土埃を払い、路子は仲間達を側へと寄せる。彼らの身体を撫でれば、本当のやさしさが暖めてくれた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『雨と唄えば』

POW   :    どこかの軒先で雨宿り。

SPD   :    傘持ってるよ、気にせず歩こう♪

WIZ   :    喫茶店などの店で雨宿り。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 オブリビオンが倒された瞬間、周囲の景色は一変する。
 豪華なレストランはかき消えて、代わりに現れたのは落ち着いた雰囲気の洋食屋だ。
 壁にかけられたメニューにはオムライスやハンバーグといった、一般的な洋食がラインナップされている。
 その片隅で、荒川・サトジが目を覚ましたようだ。しかし顔色はまだ暗いまま。
「君たちがあの女の子から助けてくれたのかな? ありがとう、何かお礼を……」
 サトジは厨房に立つと、何か料理を作ろうとするが――すぐにその手は止まってしまう。
「何か美味しいものを、と思ったんだけどね。ごめん、ちょっと待っててね」
 サトジは苦笑いを浮かべているが、やはり手は動かない。
 彼の心はまだまだ疲弊しており、悪夢を終わらせることは出来ないようだ。
 それはオブリビオンから受けた恐怖のせいでもあるし、現実世界での悩みのせいでもある。

 サトジの心を示すかのように、窓の外ではざあざあ雨が降り出した。
 この雨が止んだ時が、本当の悪夢の終わりだろう。
 そしてこの雨を止めるのは――不思議な夢のヒーローのお仕事だ。
アマネセル・エルドラート
「とりあえずオブリビオンの危機は去ったけれど。まだ悩みはあるみたいね。」
材料はあるのに手は動かない、と言うことは何か精神的な問題だろう。
さて、どう言った方向で悩みにアプローチすることにしようか。

「献立に悩んでいるのかしら。そうね、自分なら何を食べたいかって方向で考えると気が楽になるかもしれないわよ。今までだって、自分で食べたいと思わないような料理ならお客さんに出してないと思うし、まず自分が食べたいと思えるって事が重要じゃないかしら。」
自分の舌に自信がなければレストランの料理人は務まらないはず。
それなら今まで通りの方向で考えるのが良いのではないか、と言う方向でアドバイスをしてみよう。




 オブリビオンは無事に倒せたが、悪夢はまだ終わらない。
 苦笑いを浮かべつつキッチンに立つサトジの様子を見守りつつ、アマネセル・エルドラートは思案を巡らせていた。
「まだ悩みはあるみたいね。どういった方向からアプローチしようかしら……?」
 サトジの身体に傷はないし、立っている様子もしっかりはしている。
 このレストランには材料だってしっかり揃っているようだから、やはり心の問題が一番大きいのだろうか。
 自分が彼の立場なら。料理人という職業なら。
 どんな風に背中を押してもらえたら嬉しいだろうか。アマネセルは一通りの考えをまとめると、兎耳を揺らしつつキッチンへ向かう。
 その表情は、いつも通りの彼女らしい人懐っこい笑顔だった。

「ねえサトジさん、ちょっといいかしら?」
「ん? ああ、ごめんね待たせちゃって。どうかした?」
 柔らかな雰囲気のアマネセルと違い、サトジの表情はどこか強張っているようで。
 そんな状況では落ち着いて料理も出来ないだろう。だからアマネセルは、先に彼へとアドバイスを投げかけることにした。
「献立に悩んでいるのかしら。だったらそうね。自分なら何を食べたいかって方向で考えると気が楽になるかもしれないわよ」
「自分の……?」
「そう。今までだって、自分で食べたいと思わないような料理ならお客さんに出してないと思うし、まず自分が食べたいと思えるって事が重要じゃないかしら」
 サトジはもしかすると、客のことを意識しすぎて立ち止まってしまったのかもしれない。
 それならまずは自分を基準に考えてみては、アマネセルはそう考えたのだ。
 それにきちんとしたレストランの料理人ならば、自分の舌にだって自信があるはずだろう。
「サトジさんが美味しいって思うものを、いつも通りにお客さんに出すの。それだけできっと十分なはずよ」
「……そうだね。確かに自分が美味しいって思う料理を、俺はいつも出してたはずだ」
 自然に、サトジの腕が動く。手頃な野菜を手にとって、包丁でリズムよく切っていって。

 この様子ならサトジも無事に調理が出来るだろう。アマネセルは再び笑顔を浮かべ、用意された席へと戻っていく。
「調子が出てきたみたいね。それじゃあ、あっちで待ってるわね」
「ありがとう、すぐに完成させるよ」
 席に戻れば美味しそうな香りが漂ってきていた。卵料理か何かだろうか。
 その香りを堪能しつつ、アマネセルはのんびりと寛ぐ。
 きっと美味しい食事――サトジが元気を取り戻し出した証拠は、すぐにやって来るだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
御心遣いには深い感謝を
ですがダンピールの私にとってのご馳走は新鮮な血
ふふ、さすがにそれは無理でしょうね

でも
血のように鮮やかに赤い……
そして私の纏う闇のように深く黒い……
そんな、濃厚で甘いストロベリームースを掛けた
少しビターなチョコレートケーキなどは
きっと美味しいでしょうね
「|吸血鬼《ヴァンパイア》の誘い」──
そんな名前はいかがです? 

(雨を眺め)
私は流水が苦手な吸血種、雨は嫌いです
ですが、ただ眺めているだけなら穏やかな景色ですね
夢というのも同じ
見方次第で万華鏡のように意味を変えます
あの恐ろしい夢も
乗り越えた今のあなたには
他の人には味わえない経験と勇気という
美味しいスパイスになっているでしょう




 サトジは再び厨房に戻り、試行錯誤を始めた様子。
 そんな彼の姿を見遣り、黒城・魅夜は柔らかく微笑む。
「御心遣いには深い感謝を。ですがダンピールの私にとってのご馳走は……ふふ、さすがにそれは無理でしょうね」
「っと、夢の中だから不思議なお客さんもいるのかな。うん、そうだね。血は無理だなぁ……」
 サトジはここを夢の世界だと認識しているだろうから、魅夜の言葉も当然のように受け止める。
 だからこそ魅夜も自分の思いや考えを隠すことなく更に言葉を紡ぎ続けた。
「でも、血のように鮮やかに赤い、そして私の纏う闇のように深く黒い……そんな料理は如何かしら?」
「ふむ? お嬢さん、何かアイデアがあるのかな」
 サトジの反応を確認しつつ、魅夜は彼の元へと歩み寄る。そのまま手に取るのは周囲に置かれた様々な食材だ。
「ええ、とっても素敵なデザートです。濃厚で甘いストロベリームースを掛けた少しビターなチョコレートケーキなどは、きっと美味しいでしょうね」
 そう囁いて、魅夜はつやつやとした苺を手に取る。
 洋食屋ならデザートに拘るのも一つの手段だろう。サトジは魅夜の言葉を反芻しつつ、彼女の手の中の苺をじっと見つめている様子。
「『|吸血鬼《ヴァンパイア》の誘い』――そんな名前はいかがです?」
 そう語りつつ苺をそっと手渡してやれば、サトジの顔に浮かぶのは嬉しそうな笑みだ。
「ああ、それなら確かに魅力的だ。そろそろハロウィンのことも考えたいし……素敵な提案だよ、ありがとう!」
「こちらこそ。私もそんなケーキ、是非食べてみたいです」
 サトジが早速調理を始めたのを確認し、魅夜は優雅な足取りで席へと戻る。
 窓の外から見えるのは、しとしと降る雨模様。けれどそれは、悲しいだけの景色ではなかった。

 サトジが調理をする傍ら、魅夜は再び言葉を紡ぐ。
「吸血種は流水が苦手、というのはご存知でしょうか。私も雨は嫌いですが……ただ眺めているだけなら穏やかな景色ですね。夢というのも同じです。見方次第で万華鏡のように意味を変えます」
「……ふむ?」
 チョコレートが溶ける甘い香りを感じつつ、二人の会話はゆるりと続く。
「あの恐ろしい夢も乗り越えた今のあなたには、他の人には味わえない経験と勇気という美味しいスパイスになっているでしょう」
「……そうだね。怖い夢を乗り越えたから、優しい吸血種さんからレシピも提案してもらえたしね」
「そう言ってもらえるなら幸いです。ケーキも楽しみにしていますね」
 サトジはかなり調子を取り戻しているようで、調理も順調に進んでいるようだ。
 その様子と優しい雨を眺めつつ、魅夜は静かに悪夢の終わりを待つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠野・路子
とりあえず悪夢は終わった
夢から覚めるのは大変な事だけどお手伝いする

といっても私ができる事といえば食べる事だけ
なのでお礼にご飯を作ってもらおう
「あなたが今一番食べたいものを作って欲しい」
私が、じゃない、あなたが
そして一緒に食べて欲しい

美味しいってどういうことだろう?
哲学とか成分とかじゃなくて
あなたの考える美味しいって何?

私はあなたと一緒にお食事出来て楽しいって思っている
とっても美味しい
誰かと笑顔になれる事は素敵なこと
あなたの料理がその仲介をするなら
それは素敵な事だと私は思う
理想や夢物語ばかりで何の役にも立たないかもだけど
そんなことを思う少女がここにいることは覚えておいてほしい、かな?




 雨はしとしと降っているけれど、その光景は穏やかで。
 悪夢が終わったことを実感し、遠野・路子はほっと胸を撫で下ろした。
 でもサトジはまだ現実へと帰れていない。夢から覚めるのは大変だけれど、どうにかお手伝いしなければ。
 そう考えたところで路子はこてんと首を傾げる。自分が出来ることといえば、食べることくらいだろうか。
 それならその仕事をきちんと果たそう。路子が席に腰掛ければ、サトジが此方へ笑顔を向けた。
「お嬢さん、何か食べたいものとか……あるかな」
 彼の表情は笑顔だけれど不安げだ。悪夢の影響もあるだろうが、一番大きな理由は現実の悩みだろう。
 だから路子はサトジの顔を見据え、しっかりと言葉を紡ぐ。
「あなたが今一番食べたいものを作って欲しい」
「……俺が?」
「そう。私が、じゃない、あなたが。そして一緒に食べて欲しい」
 予想外の言葉に、サトジが数回瞬きをする。けどこの反応だって予想済みだ、気持ちは全部伝えよう。路子は更に言葉を続けた。
「美味しいってどういうことだろう? 哲学とか成分とかじゃなくて、あなたの考える美味しいって何? それを知りたいんだ」
「俺の思う美味しい、か。それだったら……何か出来るかも」
 路子の言葉を受けて、サトジの表情が和らぐ。彼はそのまま厨房へと向かい、料理を進めているようだ。
 響く調理の音を聞きながら、路子もゆるりと完成の時を待つ。
 外の雨の音も、不思議と優しく聞こえた。

「はい、出来たよ」
 サトジが用意したのはシンプルな豚肉のカレー。素朴だけれど食欲を誘う香りは、路子にとっても喜ばしいものだ。
「美味しそう……それじゃあ、一緒に」
 二人で向かい合って座って、いただきます。
 早速カレーを口に運べば、安心出来る味わいが口の中に広がって。
「……とっても美味しい。それに一緒にお食事出来て楽しいな」
 カレーをどんどん食べ進めながら、路子は小さく微笑む。それに対して返ってくるのはサトジの安心したような笑みだ。
「こうやって誰かと笑顔になれる事は素敵なことだと思うよ。そしてあなたの料理がその仲介をするなら、それは素敵な事だと私は思う」
「……そうだね。色々悩みすぎて、そういう当たり前のことを見落としていたかもしれない」
「ううん。沢山悩んでたのも、あなたが一生懸命だったからだと思う。理想や夢物語ばかりで何の役にも立たないかもだけど……」
 でも、これが路子の心が指す路だから。それを伝えることで、サトジの心が少しでも軽くなるなら。
「……そんなことを思う少女がここにいることは覚えておいてほしい、かな?」
「うん、きっと忘れない。大事なことを思い出させてくれて、ありがとう」
 美味しくカレーを完食したら、一緒にごちそうさま。
 この時向けあった笑顔も気持ちも、きっとお互い忘れない。そして路子が示した優しさは――悪夢から帰る道標になったはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

壽春・杜環子
【銀華】
あら、まあ
お悩み、わたくし達が聞いてもよろしい?(後輩二人に目配せ
んー…“人”はいつでも元気ではないでしょう?
ごめんなさいね、年寄りのようなことを…
サトジ様はー“味わうこと”をお忘れではなくって?
勿論食べる意味でも、食べさせる意味でも―

身構えないでくださいな
だってお店のメニューは“貴方が美味しいと思う物”を連ねた――それを続けるのは駄目かしら?
“いつもの”ほど何度手放そうと人は手を伸ばすのです

ふふふ!ところでですね、可愛い可愛い後輩はね、お料理上手さんですの!
―偶には持て成される日も良いのではなくって?

あ、はい!亨次くん、わたくしたんぽぽなオムライスがいいです!中々自分じゃできなくて…


ディル・ウェッジウイッター
【銀華】

杜環子さんがサトジさんとお話されている間に少し離れた所で亨次と相談

亨次、先ほどアイデアは湧きすぎると言っていたじゃないですか
その溢れんばかりのアイデア、彼にも少しお見せすることは可能で?

リクエスト…うーん、グラタンですかね
もちろんお二人、特にサトジさんの食べたい物を優先ですが

亨次が料理を作っている間に場所のセッティングとお茶の準備
準備ができたらお待ちいただいているお二人にお声がけを
食の道を志すとは言えわた…僕らはまだまだ世界を知らない未熟者
最前線で腕を振るうサトジさんの忌憚なきご意見、ぜひお聞かせください

夢の中とはいえ美味しいご飯と食べ、何よりお茶が飲めて幸せです
今夜はよく眠れそうだ


山立・亨次
【銀華】

(ディルに頷き)
ああ、俺も考えてた
(杜環子の呼びかけに)
……じゃあ、行くか

なあ、その前にひとついいか
俺も料理人の端くれ(猟理師とは言わない)なんだが
本職料理人のアドバイスが欲しくてな
何か作るから感想貰えねえか
(サトジさんからの注文は勿論、同行の二人にもリクエストを聞き)

(感想やアドバイスは都度メモ取りつつ頃合いを見計らって)
あんたの飯も食わせてくれねえか
色々参考にしたい
(基本サトジさんにお任せ
まだ何を出すか悩むなら看板メニューor得意料理オーダー)

(いいところは褒め改善点も伝え)
ご馳走様でした
(無表情ながらちゃんと礼も)

食ったり飲んだり暴れたりしたが
あんたの実入りになれたんなら何よりだ




 しとしと降り注ぐ雨音を聞きながら、猟兵達とサトジの交流は続く。
 そのお陰でサトジは少しずつ元気を取り戻しているようだが――まだ悪夢が終わらない以上、サトジの悩みは尽きないのだろう。
 そんな彼の前に姿を現したのは三人の猟兵達。
 真っ先にサトジの元へと歩み寄り、優しげに笑みを湛えるのは壽春・杜環子だ。
「荒川様。よろしければお悩み、わたくし達が聞いてもよろしい?」
 そう言いつつちらりと目配せするのは後方に控えるディル・ウェッジウイッターと山立・亨次の方。
 二人も小さく頭を下げれば、返ってきたのはサトジの頷きだ。
「そうだね。学生さん達にお話するのは、ちょっと恥ずかしいかもしれないけれど」
「んー……。“人”はいつでも元気ではないでしょう? 大丈夫です。誰かが悩んでいれば、共に支え合うのは当然のことですから」
 杜環子の言葉にサトジが少し驚いたような様子を浮かべる。その反応の意味を考え、杜環子は両手を頬へと添えた。
「ごめんなさいね、年寄りのようなことを……」
「いえ、こちらこそ。学生さんだから、とか先に言ってしまったのは俺の方だし。ごめんね、少し話をさせてもらってもいいかな」
「ええ、勿論です」
 そこからぽつりぽつりと溢れるのは、サトジの小さくも大きな悩み。
 杜環子はそれをしっかりと受け止めて、時折相槌や頷きを返す。
 そのやり取りは静かで穏やかだけれど、決して雨にかき消されることはなかった。

 二人が言葉を交わし始めたのを確認し、ディルと亨次は少し後ろへと下がる。
「亨次、先ほどアイデアは湧きすぎると言っていたじゃないですか。その溢れんばかりのアイデア、彼にも少しお見せすることは可能で?」
「ああ、俺も考えてた」
 友人の提案に亨次が返したのはしっかりとした頷き。
 ここはレストランで、料理を好む者達がいる。それを活かさない手はないだろう。
 そうやって後輩達が方向性を固めているのを確認しつつ、杜環子はサトジの話を聞き続けていた。
「……という訳なんだ」
「なるほど、レストランのメニューですか……そうですね。荒川様のお話を聞いて、一つ思うことがありましたの」
 一通り話が聞ければ解決の糸口だって見える。杜環子はしっかりとサトジを見据え、言葉を紡いだ。
「サトジ様は――“味わうこと”をお忘れではなくって? 勿論食べる意味でも、食べさせる意味でも」
「……味わうこと、か」
「ええ。素敵なメニューを用意することも大切です。けれど料理や食事には、味わうことが大切だと思うのです」
 その言葉を受けて、サトジの顔が少し強張る。けれど更にそれを解きほぐすよう、優しい笑みと共に杜環子の言葉は続く。
「身構えないでくださいな。だってお店のメニューは“貴方が美味しいと思う物”を連ねた――それを続けるのは駄目かしら?」
 聞こえてきたのは、息を呑む音。合わせてサトジがはっとした表情を浮かべたのを見遣り、杜環子は小さく頷いた。
「“いつもの”ほど何度手放そうと人は手を伸ばすのです。荒川様ならきっとお分かりになるはずですわ」
「そうだ、焦ってばかりで足元が見えなくなってた……のかもしれないね」
「それでしたら、今日は味わうことを思い出す日にしませんか?」
 ふふふ、と笑みを溢して、杜環子が視線を向けるのは後輩達の方だ。
「可愛い可愛い後輩はね、お料理上手さんですの! 偶には持て成される日も良いのではなくって?」
 その言葉を受け、亨次とディルもサトジの元へと歩み寄る。
「……ああ。料理ならいくらでも振る舞おう」
「僕はお茶を用意しましょう。少しリラックスしてみませんか?」
 猟兵達の言葉を受ければ、サトジの表情は安堵したようなものに変わる。
 こうやって新しい刺激に、美味しく楽しい思いに触れられるなら――きっと何か見つかるはずだから。
「それじゃあお願いしようかな。人に料理を作ってもらうなんて、久しぶりだ」
「ああ、それならひとついいか?」
 サトジに対してそう声をかけたのは亨次だ。彼の表情は真剣そのもので、何か考えがある様子。
「俺も料理人の端くれなんだが、本職料理人のアドバイスが欲しくてな。出来れば感想をお願いしたい。内容もあんたと……壽春とディルも。好きなものを頼んでくれ」
「うーん、グラタンですかね。合わせるならさっぱりした紅茶が良いでしょうか」
「亨次くん、わたくしたんぽぽなオムライスがいいです! 中々自分じゃできなくて……」
「それなら俺もグラタンやオムライス、一緒に食べたいな。よろしくお願いするよ」
 元気にやり取りする猟兵達の様子を、サトジは楽しげに眺めている様子。
 四人の様子はすっかり和気藹藹。雨の中でも、楽しいやり取りは出来るのだ。

 それから暫く、亨次は厨房で作業へ没頭し続けた。
 ディルも厨房と座席を行き交いつつ、丁寧に場のセッティングを続けていく。
 お茶を楽しむにはまず環境から。ティーソムリエであるディルにとっては、落ち着く場を提供するのも得意な仕事の一つだ。
 杜環子はサトジと談笑しつつ、ゆるりと楽しい時間を過ごす。
 そしてレストランの中が美味しそうな香りで満たされれば――。
「……出来ました。それでは皆様、座席へどうぞ」
 ディルの案内を受け、皆がそれぞれの席へ着く。店にあるものを最大限に使い、上品に整えられた場にサトジの表情も和らいでいる様子。
 そこに料理を運ぶ亨次が現れれば、楽しい食事会の始まりだ。
 並べられたきらきらの料理を前にして、杜環子の表情もきらきらと輝く。
「わぁ、亨次くんのオムライス、とってもふわふわです……! 今度作り方を教えて頂きたいですね……」
「グラタンにオムライス、どちらもレシピはシンプルなものにしてみた。感想もよろしく頼む」
 真剣な表情を浮かべる亨次の側では、料理に合わせた紅茶を振る舞うディルの姿も。
 用意したのは特製ブレンド。味の濃い洋食に合うような、飲みやすくも香りの良い紅茶だ。
「食の道を志すとは言えわた……僕らはまだまだ世界を知らない未熟者。最前線で腕を振るうサトジさんの忌憚なきご意見、ぜひお聞かせください」
「そう言って貰えるとは。俺の責任も重大だね。それじゃあ……」
 四人で手を合わせて、いただきます。
 最初の数口は皆が純粋に料理や紅茶を楽しみ、その美味しさを分かち合って。
 それから暫くすれば、始まるのは真剣な意見の交わし合いだ。
「この味付けなら、玉ねぎはもうちょっと荒く切ってみるのもいいかもね」
「ふむ……風味を活かす方向か。参考になる」
 亨次はサトジの言葉を受けて、懸命にメモを取っている様子。そんな彼の姿をディルと杜環子は微笑ましく見守っていた。
「いやはや、先程の戦いはどうなるかと思いましたが。無事に一段落出来ましたね」
「ええ、本当に。サトジさんも元気になられたようですし……」
「……そうだな。だから一つ頼みたいんだが、いいか?」
 ふいに亨次がサトジへ声をかける。ここまで言葉を交わしたからこそ、その内容は真剣で。
「あんたの飯も食わせてくれねえか。色々参考にしたい」
「ああ、それならさっき作ったカレーがあるんだ。よかったら食べてみてくれないかい?」
「まぁ、カレーもあるのですね。是非食べてみたいです!」
「カレーにも意外と紅茶が合うんですよね……お願いします」
 料理を作る者、好む者が集まっているのだ。ここは皆で味を共有しあい、その感想を言い合うのも貴重な経験。
 忌憚のない改善点の提案だって、誰も嫌がったりはしない。それは互いの腕を信頼しあっている証拠で、皆が打ち解け合っている証拠。
 そうやって言葉を交わし、料理を堪能すれば――大満足の後に、ごちそうさまの時間もやってくる。

 食事会が終われば、後片付けも皆の力を合わせて。
 その作業の最中、四人が交わすのはやはり楽しい言葉だ。
「夢の中とはいえ美味しいご飯と食べ、何よりお茶が飲めて幸せでした。今夜はよく眠れそうだ」
「そうだな……食ったり飲んだり暴れたりしたが、あんたの実入りになれたんなら何よりだ」
 満足げなディルの傍ら、亨次が笑顔を向けるのはサトジの方で。彼も安心したように笑みを浮かべている様子。
「ふふ、荒川様が何かを掴めたのなら幸いですね。とっても美味しい食事とお茶もいただけましたし……」
 杜環子が語った『味わうこと』も、きっとサトジの悩みを打破するきっかけになったのだろう。
 此度の事件や食事会は夢の中の出来事だけれど――残った思い出は本物で。
 だから雨が上がるまでは、きっとあと少しだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
ま、夢の中とは言え、かなりの恐怖だよな、これ
いずれは忘れるんだろうが、解決しなきゃいけないことも多そうだぜ

【行動】
食事に関しては頼りになる後輩も多そうだし、そのほかの所をやるか
俺は結局、殴って解決することしかできないし

というわけで、持ち前の「コミュ力」で話しながら、安心させることに努める

「随分と災難だったな。でも、もう大丈夫だ。安心して眠ってくれ」
「何かあっても、俺らみたいのが必ず助けに行くさ」
「その内、話のタネにしてみたら良いんじゃないか? 中々出来る体験じゃないしさ」

雨はいつか止むもんさ

夢から醒めたのなら、そのままバイクで立ち去るとするか
次に来るときには上手い飯が食えるだろうからな




 サトジは一通りの作業を終え、一段落している様子。
 けれど雨はまだ止まず、悪夢は終わらない。それはサトジの心に刻まれた傷の深さ故だろうと、暗都・魎夜は小さく唸る。
「ま、夢の中とは言え、かなりの恐怖だよな、これ」
 夢が終わった時、サトジがどのくらい記憶を保持しているかは分からない。
 けれどここで起きること全てが泡と帰す訳でもないだろう。解決すべきこと、やれることは幾つもある。
 料理方面のアドバイスなら頼もしい後輩達に任せた方がいいだろうか。自分は結局、殴って解決することしかできないし。
 それでも――言葉を交わすことなら出来るはず。
 サトジの心に不安が巣食うのなら、それを取り除く手伝いくらいは出来るはずだろうと。
 だから魎夜は屈託のない笑みを浮かべ、サトジの元へと近付いていった。

「随分と災難だったな。でも、もう大丈夫だ。安心して眠ってくれ」
「……そうだな、ここは夢の中だもんな。でもまだちょっと怖くてさ。料理は楽しいけど……色々あった訳だし」
 サトジにとって猟兵達と言葉を交わせたこと、彼らと料理について楽しめたこと、それはきっと良いことだっただろう。
 けれどやっぱり――ここは悪夢の世界で。オブリビオンが齎した不安は、きっと簡単には消えないだろう。
「また明日眠ったら、恐ろしいお化けが出てくるんじゃないかって」
「大丈夫だ」
 不安げなサトジの肩を、魎夜はしっかりと掴む。視線も合わせて、言葉が出来るだけはっきりと。
「何かあっても、俺らみたいのが必ず助けに行くさ。化け物が現れても、サトジが困ってたとしても」
 力強い魎夜の言動は、ゆっくりと、けれど確かにサトジの不安を取り除く。
 それに魎夜の思いは心からのものだ。困ってる人がいるならいつだって駆けつける、それは今も昔も変わらない気持ちなのだから。
「その内、話のタネにしてみたら良いんじゃないか? 中々出来る体験じゃないしさ」
「あはは、それは確かに。怖い夢を見た後、沢山のヒーローが駆けつけてくれた夢、絶対忘れないよ」
 サトジが緩く笑うと同時に、雨は少しずつ上がりゆく。
 銀の雨降る世界でも、誰かの雨はいつか止むもの。そしてそれは、悪夢の終わりのサインだろう。

 雨が止むと同時に、サトジの姿はこの世界からふわりと消える。
 それを追いかけるように、猟兵達も少しずつ現実へと戻っていくようだ。
「……次に来るときには上手い飯が食えるだろうからな。また会おう」
 このまま目が覚めたら、バイクに乗ってしっかり帰ろう。そうしたら、嫁さんと美味しいものでも食べに行こうか。
 そしていつかは、一緒にサトジのレストランに行ってみようか。
 これからの未来を思い、魎夜は小さく微笑んだ。


 夢の主が無事に覚醒すれば、悪夢は終わりを告げるだろう。
 今日の出来事は全て夢まぼろしの出来事だ。
 けれど一人の男性の心は確かに救われることとなる。

 次にサトジのレストランを訪れる者がいるならば、すっかり元気になった彼が美味しい料理を振る舞うだろう。
 その時彼が語るのは――夢の中に現れた、何人ものヒーローの話だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年08月27日


挿絵イラスト