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氷のごとき怒り

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ホワイトアルバム #アリス適合者

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●徐々に奇妙な暴言
 怒りとは人間にとっては原初の感情のひとつである。
 それはいわば火のようなもので、時として生命を活性化させて物事を前進させるエネルギーとなる。が、時として過剰にそれがもたらされることによって、他者を害し傷つけ、果てには自らすら傷つける危険な側面も間違いなく存在する。

 それがどのように彼女……ハルナにもたらされたのかはわからない。ただ言える事は、ハルナは物心ついた時には激しい炎の性質を持っていた。何かにつけて怒り狂い暴れ、ナイフみたいに尖っては触る者皆傷つけていた。ああわかってくれとは言わないがそんなに彼女が悪いのか。いつしか彼女の周囲には誰もいなくなっていた。
 周囲に焼き焦がす物がなくなり、自らを燃やすしかなくなったハルナが、やがて燃え尽きた挙句にアリスラビリンスに迷い込むのは必然の流れだったかもしれない。そしてハルナはアリスとしての本能に従い、オウガから逃げつつ扉を探す旅を続けていた。アリスラビリンスは間違いなく危険な場所であり、命がけの旅であったが、それでもひとつだけハルナにとって幸運な事があった。それはハルナがアリスラビリンスに来るまでの記憶を完全に失った事だった。少なくともアリスラビリンスにいる間は、ハルナは自らを焼き焦がすような怒り、そしてそれによってもたらされた悔恨、罪の意識、そういったものから自由になれたのである。
 だが、それも【ホワイトアルバム】と名乗る少女によって終わりを告げる事になった……。

 その日、不思議の国は炎に包まれた。ハルナのもたらした怒りの炎に。

●黄金の風
「『トラウマ』……ってよォ~~~~」
 その日、大豪傑・麗刃(24歳児・f01156)はなぜかメガネをかけ、いつもとはまた異なった意味で妙に個性的な髪形をしていた。
「『トラ』ってのは わかる……スゲーよくわかる トラは怖いからな……」
 そしてナナメに立ち、手足を上下にする奇妙なポーズをとり、妙に静かな口調でしゃべっていた、が。
「だが『ウマ』って部分はどういう事だああ~~~~っ!?」
 突然トーンが変わった。いきなり怒り出したのだ。
「ウマでトラウマになるかっつーのよーー----ッ!ナメやがって この言葉ァ 超イラつくぜぇ~~~~~ッ!あんな大人しい草食動物じゃあねーか!トラウマになるもんならなってみやがれってんだ!チクショーッ」
 テーブルを思い切り叩きながらよくわからない事でブチ切れまくる麗刃。
「どういう事だ!どういう事だよッ!クソッ!ウマってどういう事だッ!ナメやがって クソッ!クソッ!」
 ちなみに外傷、転じて心的外傷を意味する|トラウマ《trauma》は別に虎にも馬にも関係ない。念のため。また馬がトラウマになる人だっていないとは限らないだろう。競馬でスッたとか。

「ともあれ」
 先刻までの怒りが嘘のように落ち着いて麗刃は語り始めた。
「猟書家『ホワイトアルバム』の事件なのだ」
 アリスラビリンスに来るアリスたちは大なり小なりトラウマを抱えているが、それは一旦封印される。そして元の世界に戻るための『扉』を見つけた時点で、トラウマは再度開放される。おそらくはアリスたちが『扉』を探す旅自体がそのトラウマを克服するために必要な過程なのかもしれないと麗刃は考えてみたが、実際のところはわからない。
 猟書家『ホワイトアルバム』は『扉』を発見する前のアリスを見つけ、そのトラウマを復活させてしまうのだ。そうなったアリスはトラウマによって精神をさいなまれ、荒廃の挙句にオウガと化してしまう。
「なので、まずはオウガとなったアリス……えっとハルナって女の子に接触して、トラウマ克服を手伝ってやらないといけないのだ」
 アリス適合者のハルナは怒りが強すぎて様々な方面に迷惑をかけて見放されてしまい、その罪の意識と自らへの怒りが暴走した状態にある。なので説得する手段としては、例えば怒りそのものが悪いのではないとか、怒りを抑える方法を説くとかでも良いだろう。他には……。
「世の中には彼女よりももっと怒り関連でひどい人もいる、でもいいと思うのだ。それはそれで彼女の自制心を促したり、気楽にしたりする効果もあるかもなのだ」
 例えば怒りで大失敗した体験談を語るとかである。あるいは、ものすごくわけわからない理由で怒ってみせるというのもありかもしれない……冒頭の麗刃のように。
 そして彼女を開放した後は、猟書家『ホワイトアルバム』との戦いとなるだろう。

「いろいろ思う所はあるだろうけど、猟書家の野望は打ち砕かなきゃならないし、何より困ってる人は助けたいとも思うのだ。どうかよろしく頼むのだ」
 麗刃の一礼を受け、猟兵たちはアリスラビリンスに向かうのだった。


らあめそまそ
 思いついてしまったからには仕方ありません。
 らあめそまそです。アリスラビリンスの猟書家シナリオをお送りいたします。このシナリオにはプレイングボーナスがあり、これをプレイングに取り入れる事で判定が有利になります。
 余談ですが氷はイタリア語で『|ghiaccio《ギアッチョ》』と呼ぶそうですね。いえ本編の内容とは全く関係はないのですが。ええ全く。

 プレイングボーナス(全章共通)……アリス適合者と語る、あるいは共に戦う。

 オープニングで提示された方法はあくまで一例ですので、皆様がやりやすい様にプレイングをかけるのが一番と考えます。『元ネタ』ぽい方法でやっていただければ筆者は喜びますがさらにボーナス加算等はございません。
 それでは改めまして皆様の御参加お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『七罪』憤怒のアリス』

POW   :    憤怒に染まる真実の剣/ヴォーパルソード
【無敵の鎧と真実の剣を持つ最強の騎士姫 】に変身し、武器「【あらゆる防御を無効化するヴォーパルソード】」の威力増強と、【憤怒の魔焔と魔力を操り、想像の天翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD   :    憤怒を宿す勇者
全身を【全てを焼き尽くす憤怒の焔と真実の剣の力 】で覆い、自身の【世界への怒りと他のアリス達を守る強い意思】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    真なるアリス
無敵の【困難に打ち勝ち希望に満ちた無垢な自分 】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。

イラスト:おきな

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は雛菊・璃奈です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●「明るい未来が見えません」「見つけろテメエで」
 全てが許せなかった。
 思い通りにいかない境遇。状況。気に入らない人、嫌な人たち。その全てが。
 しかし何よりも許せなかったのが、そのあれほど嫌いな人達が自分の事をどんなに気を配ってくれていたか、それに全く気付く事のできない自分自身の事だった。気付いた時には、全てが手遅れだった。
 だから燃やし尽くす。そして最後には自ら燃え尽きる。自分にできる事は、他にないのだから。

「これはあくまでわたし個人の考えなのだが」
 猟兵たちを送り出す直前、麗刃は言った。
「たぶんだが、トラウマってやつを治す手段はないのだ。少なくとも私には思いつかない」
 いつになくまじめな顔であった。
「ただ、過去は消す事はできなくても、塗りつぶす事はできると思う。そして、そのために一番いい方法は、感情の奔流。わたしにはこれくらいしか思いつかないのだ」
 わかりやすく言えば、大笑いさせろということ。これであった。むろん、ちゃんとした手段があるなら、それに越したことはない……と付け加えつつ。
 まあ麗刃のやり方ではたぶん大爆笑は起きないとは思うが、そこはそれというやつだ。
禍神塚・鏡吾
トラウマとは虎の如き縞模様の馬、即ちシマウマの事です
野生のシマウマは大変に気性が荒いため、大人しい草食動物と思って近づくと痛い目に合う事も多いのですよ
目に見えない心の傷を指す言葉の語源になったのはその為です

さておき
説得を試みます

「皆が離れて行って初めてその有難みに気づいたのなら、素直に謝ればいいんですよ
謝罪は聞いて貰えないかも知れないし、その事でまた怒ってしまうかも知れませんが、予めわかっていればそれは「思い通りにいかないこと」ではありません
思い通りなら腹を立てる理由もない」

わからない?
ではその心に聞いてみましょう
「自分を含めた全てを殺すことは、貴女の本意ですか?」
決してそうではない事を信じて



●蹄の音が聞こえたらシマウマではなく馬を探せ
『GAAAAAAAAAA』
 周囲を灼熱地獄と化しながら暴れ回るオウガを前に、禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)はいつもの笑顔ではなかった。鏡吾の顔は仮面で覆われていたのである。そして敵を前に考えてた事はというと、この難敵に対しいかに戦うか、あるいはどのような言葉をかけて説得するか、という事ではなかった。
(トラウマというのは虎のような馬)
 実際に考えていたのは、ブリーフィングにてグリモア猟兵が語っていた事へのアンサーだった。
(すなわち虎の如き縞模様の馬、要するにシマウマの事なんです)
 シマウマ。
 英語でいうところのzebra。外見は文字通り黒地の白の縞模様であり、分類もウマ目ウマ科ウマ属ではあるが、枝分かれの関係上ではウマよりもむしろロバに近いらしい。
(野生のシマウマは大変に気性が荒いため、大人しい草食動物と思って近づくと痛い目に合う事も多いんですよね)
 かつて馬のようにシマウマもまた家畜化をしようという試みがなされた事があったが、シマウマの希少の荒さが故、その試みのほとんどは失敗したとされている。ただし、その荒い気性がどこに由来するかは正確にはわかっていないらしい。アフリカに多く存在する天敵たる肉食獣に対抗するためか、アフリカに住む人々に狩りの対象にされていたためか……いずれにせよ、だ。
(目に見えない心の傷を指す言葉の語源になったのはその為です……なんちゃって)
 過去の経緯から、鏡吾は笑顔以外の表情を作る事ができない。そのため、笑顔が相応しくない状況……例えば今のような、同情すべき敵に相対したような状況だ……に陥った時は、仮面を被る事にしているのである。それは怒っているような悲しんでいるような、いずれにせよ見る者には負の感情を与えるものであった。まさしく笑顔に相応しくない状況には実に合致したものといえた。
 にも関わらず、冒頭のようなどこか緊張感のない事を考えてしまったのは、あまりに悲惨な眼前の相手を直視する事が憚られたのか、あるいはこのような状況を作り出したホワイトアルバムを脅威に思う心、もしくは怒りの産物のためか、さすがの鏡吾といえど緊張が過ぎて精神が萎縮の域に陥りかけ、それを多少なりとも弛緩させて前向きな平常心に近づける必要があったのかもしれない。
(……と、さて、やりますか)
 改めて、仮面の下の笑顔のさらに下で多少は楽になったかもしれない精神を引き締め、鏡吾は当面の『敵』へと相対した。グリモア猟兵が暗にすすめたように、緊張きわまる状況に逆に弛緩しきって挑む手もあったかもしれない。が、少なくともそれは鏡吾のやり方ではなかった。

「今の状況は本当にあなたの本意ですか?」
『GAAAAAAAAA!』
 鏡吾の呼びかけに、炎の様に燃え上がるハルナは激しい怒気を込めた咆哮で応えた。会話する事それ自体を激しく拒否しているような様子に、可能であるなら鏡吾の表情も今被っている仮面と似たようなものになったかもしれない。今のハルナが抱いている怒り。ここに至るまでに経てきた世の中全てへの怒り。そしてそれに影のようにつきまとってきて、そして今やはっきりと表に現れている絶望。初見の鏡吾もはっきりとそれがわかるほどに、あまりに荒れ狂っている。
 それでもなお。
「もう一度伺います」
 先ほどのような初見の相手に対する穏やかな口調に似て、だが今度は口調ははっきりと、そして明確な意思を込めて、鏡吾は改めてハルナに呼びかけた。
『GAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
 鏡吾が言葉を続けるよりも早く、ハルナは手にした燃える剣の炎をさらに燃え滾らせ、切っ先を鏡吾に向けて全力で突進をかけた。自らの怒りそのものを速度と力に変えたかのような、あまりに荒っぽい、だがそれでいてあまりに力強すぎる一撃である。むろんハルナには鏡吾が何者かなどはまったくわかっていないだろう。だが少なくとも、目の前に立ちはだかるものはこの世界の構成成分であることは確かであり、それならばハルナにとっては憎むべき、燃やし破壊しつくす対象であった。それに対し、鏡吾は逃げる事をしなかった。代わりに。
「自分を含めた全てを殺すことは、貴女の本意ですか?」
 鏡吾は一枚の大きな鏡を出現させた。照魔鏡……妖怪や悪魔を照らし、その正体を暴くとされる伝説の名を冠するその鏡から光が放たれ、ハルナの強烈極まりない一撃と真正面からぶつかったのである。
『GAAAAAAAAA』
「……辛かったの、でしょうね」
 内心冷や汗をかきはしたが、ともあれユーベルコードで敵の攻撃を受け止める事ができた。これで鏡吾に貴重な時間が与えられたのである。ゆっくりと、鏡吾はハルナに語り始めた。
「皆が離れてしまい、初めてその有難みに気づいたんですよね。ただ、貴女はそれに気づく事ができた。それは間違いない事です」
 戦場にありながら、鏡吾の口調はあくまで穏やかで、丁寧なものだった。
「それはとても幸運な事だと思います。やるべき事を見いだせたという事ですから。素直に謝ればいいんですよ」
 悪い事をしたと思ったら、まず謝る。何を差し置いても、だ。全てはそこから始まるのだ。相手が許してくれないかもしれない。そんな事を自分から言い出すなんてできない。そんな事は二の次三の次だ。謝らなければ、何も始まらないだろう。
「謝罪は聞いて貰えないかも知れないし、その事でまた怒ってしまうかも知れませんが、予めわかっていればそれは『思い通りにいかないこと』ではありません。思い通りなら腹を立てる理由もないでしょう」
『GAAAAAAAAAA!!』
「……わかっていただけませんか?ではもう一度伺います」
 だが怒りに支配されるハルナはさらに剣に力を込める事で鏡吾の言葉に応えた。ため息をひとつつくと、鏡吾もまた、言葉に力を込める。その耳が言葉を受け入れないのなら、心に直接問いかけるだけだ。
「自分を含めた全てを殺すことは、貴女の本意ですか?」
 照魔鏡がさらに輝きを増し、ハルナの炎を圧するほどにその力が高まっていった。
「鏡が照らし出すは真実のみ……貴女の本心を、教えてください」
『GAAAAAAAAAAAAAA!!??』
 光に照らされたハルナが苦しみだした。照魔鏡の光は、問いかけに対して真実を答えれば開放し、逆に偽りを答えればその者を責めさいなむ。すなわち、鏡吾の問いかけに対してハルナは暴力という行動をもってそれに回答した。そしてその回答は、ハルナの本心とは異なっており、それがハルナにダメージを与えている。そういう事だろう。
「……いささか、時間はかかりそうですね」
 ハルナの本心の一端を垣間見た事で、鏡吾はひとまず安堵した……が。いまだに猛り狂っているハルナの様子から、その怒り、そしてトラウマが鎮まるのは、もう少しだけ先の事のようにも思えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドラ・バジル
麗刃はギアッチョ好きなの? 私はリゾット。
まあ、いいや。アリスちゃんは自分が許せない感じかぁ~
うんうん、人間そーいう時もあるよね。
でも、過去は変えられないからなあ。
今までの自分が嫌ならやり直すしかないよね?
って、言っても今は無駄だろうから思う存分暴れると良いよ。
付き合ってあげよう。
限界まで暴れて激しく燃えて……灰になって、そこからやり直せばいいよ。
賢者タイムってやつだね。
『天翔』発動。戦闘力マシマシでバトル。
ヴォーパルソードは闘気貫通しそうだから回避あるいは刀による受け流し。
飛翔能力は基本性能が違うから負けることはないでしょう。
とにかく全力を出させて疲れ果てさせる方向で戦おう。



●火にぶつけるべきは
「麗刃はギアッチョ好きなの?」
 ブリーフィングの時に、アレクサンドラ・バジル(バジル神陰流・f36886)は説明していたグリモア猟兵にそんな事を聞いたものだ。それに対し、グリモア猟兵はなんとも言えぬひきつったような笑顔を見せて、曖昧な返事を返していた。実際の所、あの有名なシーン、根掘り葉掘りやベニスについて言及して激怒するシーンは知ってるけど、それ以外、主人公側コンビとの戦いはかなりの激戦だったらしいが、実際いかにして戦い、そしていかなる結末を迎えたかについては、正直まったく知らなかったりする。にも関わらずこんなネタを使用したのは、やはりあのシーン単独で考えてもインパクトがむちゃくちゃ強かったから……っていうのはまあここで語るべき話ではないのでここまでにしておこう。あ、好きなのは悪役から選ぶならアレッシーかねえ。ほぼゲームの知識だけど。
「ちなみに私が好きなのはリゾット」
 ああ、その人も相当強かったらしいねえ。ただ相手があまりに悪すぎた、ってのは知ってる。

 ……なんて話は決して無駄話ではない。
 先刻もそうだが、あまりにシリアスすぎる場面に直面した時、緊張しすぎた精神をある程度弛緩させないと、精神が筋肉神経にも作用して動くに動けない人種というのは確かに存在するのだ。まあアレクサンドラがそういう人種なのかというと、とりあえずそれをうかがわせる情報は現時点で存在しなさそうではあるが。どちらかというと筆者の筆を叩く速度が……すいません本編に入ります。

『GAAAAAAAA!!』
 自らの内から来る怒りに突き動かされているのか、あるいは先刻与えられた痛みにいまださいなまれているのか。ハルナはいまだに激しく咆哮を上げて自らを燃やしながら周囲を燃やしている。そんなハルナの前に立ったアレクサンドラは、普段通りの表情を変えていない。どこか余裕気な笑顔は性根から来る心底の物なのか、それとも相手を威圧しないように、それでいて相手を諭すための説得力を持たせるために、精神的に余裕がないにも関わらずあえて作っているものなのか。
「アリスちゃんは自分が許せない感じかぁ~」
 アレクサンドラの第一声は、その表情と同じく、いつもと変わらない感じだった。どこか余裕のあるような、鷹揚で、穏やかではあるが大雑把で、でも確かに一本芯の通った、そんな感じの声。
『GAAAAAAAAAAAA!!!』
 しかし今のハルナにとって、そんな猟兵の態度などはどうでも良かったようだ。それ以前に、目の前の相手が猟兵だろうとアリスだろうと、あるいはオウガであろうと全く関係なかったのかもしれない。それほど今彼女を支配しているものは、重く、暗く、そして熱い。そして怒りによって発生した炎がハルナの周囲に集まると、それはひとつの形をとった。騎士のような鎧と、燃える剣。かの『鏡の国のアリス』にて語られた『ジャパウォックの詩』の中で、魔獣ジャパウォックを倒した時に使われたとされるヴォーパルの剣であった。そしてその背中には炎の翼。
「うんうん、人間そーいう時もあるよね。でも、過去は変えられないからなあ」
 いつ襲い掛かってくるかわからない、それこそ今この瞬間にもこちらに飛び掛かってきてもおかしくない相手を前にしても、アレクサンドラの調子はまったく変わりない。火にぶつけるのは火ではない。水なのだ。常に形を変えるがその本質が変わる事のない、水。剣術によって研ぎ澄まされたアレクサンドラの心は水面のごとしか。
「今までの自分が嫌ならやり直すしかないよね?」
 それはおそらく、アレクサンドラが目の前の怒れる少女に提示できる、唯一にしてもっとも強力なカードだっただろう。結局、それしかないのだ。もう起きてしまった事はどうしようもない。問題はそれを元にどう前に進んでいくか。これなのだ。賢者は歴史上の失敗を学ぶ事で、自ら失敗しないように動くことができる。一方で愚者は自らの経験……というより失敗を元に、今後同じ失敗しないようにふるまう。そう言った者がいた。賢者のようにふるまう事は誰にもできることではないが、せめて失敗を糧に前進できるようにはしたい。それでもなお自らの失敗から立ち直る事ができない者がいる。そういう者が立ち直るためにアリスラビリンスは存在するのではないか……これはあくまでグリモア猟兵の推測ではあるが。しかし今やホワイトアルバムの策略で、アリスラビリンスはその本来の役割を果たせなくなっている。ならば、彼女の再起を助けるのは、猟兵しかいないのだ。
「って、言っても今は無駄だろうからね」
 語るべき事は語った。あとは行動だけだ。アレクサンドラは刀を抜いた。
「付き合ってあげよう。思う存分暴れると良いよ」
『GAAAAAAAAAA!!』
 その言葉を合図としたかのように、剣を携えたハルナがアレクサンドラ目掛けて突っ込んできた。技術もなにもない力任せの斬撃だが、怒りをそのまま載せたようなその力は小手先の技術差を覆して余りあるだろう。
 ハルナの突進に合わせてアレクサンドラもその身を闘気で覆う。戦闘能力を爆発的に増大させ、無銘の刀を構えてハルナを迎え撃つと、振るわれたヴォーパルソードを刀で受けた。ハルナの持つ真実の剣はあらゆる防御を無効化するとされるが、アレクサンドラが行ったのは防御ではない。思い切り振るわれた剣を斬った。いわば剣を攻撃したのだ。それでもなお構わずに突っ込んでくるハルナに対し、アレクサンドラは今度は一旦間合いを離した。ハルナの飛行速度が『レベル×5km/h』なのに対し、アレクサンドラは『レベル×100km/h』だ。余程のレベル差でない限り、勝負にもならない。アレクサンドラは敵を倒すつもりはない。要は全力を出させて疲れ果てさせさえすれば、それでよかった。
「限界まで暴れて激しく燃えて……灰になって、そこからやり直せばいいよ」
 怒りが静まるのはいつの事か。それでもアレクサンドラは、全て受け止める覚悟であった。再び刀を構えると、次の突撃に備える……

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・キルクルス
私が好きなのはミスタ!本命は花京院!
というわけで遠距離戦だ!
『残像』で攻撃を避けつつ、『情熱』と『気合い』で説得。
「私は悪くないと思うけどな怒るの。なんでも無駄無駄って諦めるよりはよくない?
今だって自分をそういう人間だって諦めてないから怒ってんだろ?
でも怒るのってエネルギー使うじゃん?ちょっとゆっくりしてみるのもアリなんじゃない?」
彼女の怒りを肯定しつつクールダウンを促してみようか。
それでもダメなら
「えーい!!まどろっこしいから暴力で動きを止めるか!!」
遠距離戦終わり!UC【リネーア・レクタ】発動!
ごめんな、私もどっちかっていうと沸点低いんだわ。
自分よりキレてる人間見て冷静になったら儲けだぜ。



●『てめーはおれを怒らせた』
 また例によって本編がちょっとシリアスすぎるので軽い話題で導入とさせていただくことをご容赦願いたい。ルクス・キルクルス(36の世界の果てまで・f38588)が好きなのはミスタで本命は花京院らしい。いかなるニュアンスで好きと本命を分けているのかはなかなか解釈が難しいが、ただまあどちらも良いキャラではある。しかし両者を比べるに、なかなか対照的な印象がある。初期メンバーと途中加入(初期と言えなくもないが)。どちらかといえば脳筋寄りと知性派。そして両者を待ち受ける結末。ただひとつ言える事として、両者とも間違いなく頼れる仲間ではあった。そしてもうひとつ共通点が。
「ここは遠距離戦だ!」
 そう。ふたりとも飛び道具を使うのだ。の割になんか近接戦が多い気がしなくもないのだが。ともあれ、ふたりに影響されたためかどうかはわからないが、ルクスはアウトレンジ戦法を取る事に決めたのだった。『流星雨』と名付けたアサルトライフルのモデルガンを構えると、いまだに周囲と自らを燃やしながら荒れ狂うアリスに対峙するのだった。
『GAAAAAAAA!』
 ルクスの姿を認めたアリスは炎に燃える剣を握ると真っ向から突っ込んでくる。それに対し、今回は遠距離戦と決めているルクスはとにかく間合いを離す。モデルガンとて馬鹿にはならない。圧力を上げれば当たり所によっては人間ぐらい気絶させるぐらいの力はあるのだ。ましてや猟兵が扱うモデルガンなれば。
「銃は剣より強し!名言だな!」
 とはいえ時速レベル×5km/hで飛んでくるアリスから逃げるのは至難の技だ。直線軌道で飛んでくるアリスを右へ左へとどうにか回避しつつルクスはフルオート連射を続ける。自らの軌道を残像として残し、それをデコイとしてアリスを誘導してかわしやすくする算段だった。ただ、いつまでもそればかり続けているわけにはいかないし、何より今回のミッションは暴走したアリスの討伐ではない。苛烈極まる敵の攻撃をいなしつつ、ルクスは荒れ狂うアリスに語り始めた。
「私は悪くないと思うけどな、怒るの」
 まずは怒りに対する肯定から入った。ルクスの一言一句に気合と情熱がこもる。思えば怒りとは気合と情熱の際たるものだ。それは間違いなく、人間を前進させる原動力であり、ひいては社会を、世界を動かす力となりうるものだ。
「なんでも無駄無駄って諦めるよりはよくない?」
 強大な力を持った悪がいた。その悪を倒そうとした者が怒りを込めてオラオラオラと迫った時、悪人はそれを無駄だと嘲笑した。無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァァァWRYYYYYYYYYと。だが最後は怒りを極限までに昂らせた者の前に倒れる事になった。まさにそれこそがたったひとつの敗因だったのだ。
「今だって自分をそういう人間だって諦めてないから怒ってんだろ?」
 そう。アリスとなった少女、ハルナの怒りはまさしく自身に対するものだった。かつて怒りは方向を定める事ができず、周囲を焼き焦がしていた。その事の罪深さを、取返しもつかない事態になった事でようやっと認識したハルナは、その怒りを自身に向け、自分自身を傷つける炎となった。だがそれは裏を返せば、自分が今のままでいいはずがないという認識の表れである。ただそれが具体的な形を得て、いかに進めばいいかを見出す事ができないがために、炎という姿を取るしかないのだ。
「でも怒るのってエネルギー使うじゃん?ちょっとゆっくりしてみるのもアリなんじゃない?」
 それもまた然り。怒りは確かに原動力であるが、それに突き動かされてばかりでは周囲が見えなくなってしまう。見えないままで動いても道に迷うだけだ。道に迷った時の対処法はいくつかある。地図があれば一番いいし、それがなければ周囲を見渡して目印になるものを探す。大自然の中ならとにかく高いところを目指し、そこからあたりを見渡すのが鉄則だ。いずれにせよ、一度は立ち止まって物を考える事になるだろう。進み続けるにせよ、どこかで休む事は必要になるのだ……が。
「……聞いてる?」
 怒りを肯定しつつ、静まる事を促す。ルクスの方向性はまあ問題はないだろう。ただ、それを聞き入れるまでにはもう少し時間がかかるというだけであった。ただし、その『もう少し』がルクスにとっては問題だった。もう少しとはどのくらいか。本当にいますぐなのか、それとも果てしない時間がかかるのか。なかなか到着しない出前の「今出ました」ほど信用ならない言葉はあるまい。
「……聞いてるか?」
 荒れ狂うハルナにいま一度問う。返事はない。
「……えーい!!まどろっこしい!!」
 ルクスもまた、相当に沸点が低かった。牽制の射撃を放っていたモデルガンを改めて構えなおすと、足を止めた。もはや相手の攻撃を回避するつもりはない。
「言ってきかないなら暴力で止めるだけだぜ!銃は剣より強しだ!!」
 リネーア・レクタ……|一直線《linea recta》の名が示す通りの直情的な攻撃は、まさにルクスの性質そのものであった。向かってくるハルナに対し、アサルトライフルを構えつつこちらから突っ込んでいく。互いにむき出しのままの感情を真っ向からぶつけ合う。
「文字通りの“直撃”だ!!喰らいな!!」
 至近距離からの一撃と、ハルナの剣がぶつかり合う。それは燃え盛るこの場において、もっともはげしい爆発となり、周囲に閃光と大轟音が響き渡った。
「……さて、これで少しは冷静になってくれたならいいんだけどな」
 感情を思い切り叩きつけてクールダウンしたルクスは願った。全力を出した事と、自分と同じくらい、いや、ある意味それ以上にぶち切れた(ルクス主観)人間を見た事で、ハルナの怒りが落ち着いてくれればいい、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クレア・フォースフェンサー
わしにどのような言葉を掛けることができるのか
麗刃殿よりおぬしのことを聞いたとき随分と悩んだものじゃ

何かヒントは得られぬかと先程から見ておったのじゃが――
はっきり言って、おぬし、人の話を聞いておらぬな?

逆に考えて良かったようじゃ
説得などせずとも良い、とな
幸い、この身体はそうそう疲れたりはせぬ
おぬしが、怒ることに疲れ果てるまで、斬り結ぶのをやめたりはせぬぞ

おぬしはまだ十代
いくらでもやり直しがきく年齢じゃ
全てが手遅れかどうかは
これからの生で全てを試してから判断すればよい

おぬしは怒りを自身に向けられるようになった
自責は人の成長に欠かせぬものじゃ

まずはおぬしの帰りを待つ者達に今のおぬしを見せるべきじゃな



●春遠からじ
 ネタ抜きでいきなり本題に入ろう。
「わしにどのような言葉を掛けることができるのか、麗刃殿よりおぬしのことを聞いたとき随分と悩んだものじゃ」
 クレア・フォースフェンサー(光剣使い・f09175)はいまだ炎とともに荒れ狂うアリスを真正面から見据えた。見た目よりはるかに人生経験を経ているクレアではあるが、こういう状況は常に頭を悩ませるものだ。そしてまず考えた事は。
「何かヒントは得られぬかと先程から見ておったのじゃが――」
 状況を把握する事。ハルナという名のアリス。過去からここに至るまでの経緯、そして現状。それらをつぶさに観察する。これまで猟兵たちがいかにハルナに呼びかけ、そしてハルナがどのような反応を返したか。そして出た、ひとつの結論がこれであった。
「はっきり言って、おぬし、人の話を聞いておらぬな?」

 ……
 きわめて難しい所だ。正直、筆者にも判断が付きづらいと言わざるを得ない。
 実際、今のハルナは耳は聞こえているだろうが、その内容が頭にまで届いているかといえば、少なくとも現時点においては猟兵たちの説得にも関わらず暴れ回っている。それが本当に届いていないのか、届いてはいるけれどいまだ彼女の心を動かすに足りていないのか。まあ、いずれにせよ彼女がいまだに暴れているという一点をもって、話など聞いていないとするのはひとつの結論でもいいのかもしれない。聞いていようがいまいが、結局は一緒ということなのかも。
 いずれにせよ、クレアの方針は決まった。光り輝く剣を構え、ハルナに相対する。
「逆に考えて良かったようじゃ、説得などせずとも良い、とな」
 話を聞く気がない相手なら、無理して話をする必要はない。合理的な考えではある。ただ、それは力をもって敵を制圧する事を意味するわけではなかった。
『GAAAAAAA!!』
 やはり話を聞く気がないのか。それとも声が足りないだけなのか。全身を炎と燃やし、加えて片手剣まで炎と燃やして真正面からクレアに突っ込んでくるアリス。その剣は真実を示し、相手のあらゆる防御に対してその解法を知るかのように無力化して貫き通すという。その鎧は文字通りの無敵であり、あらゆる攻撃を無効化するという。そしてその剣が鎧を突く事はなく、真実の剣が無敵の鎧の真実を暴き貫くか、それとも無敵の鎧は真実すらも無効化するのか。その疑問が明らかになる事はおそらくあるまい。
「ふむ、怒りに任せた剣、あしらうは容易し、と言いたいところじゃが、なかなかどうして」
 クレアからすれば、それは剣技ではなかった。怒りに、勢いに、若さに任せたエネルギーの奔流でしかない。だが時としてエネルギーの奔流は全てを押し流す純粋な暴力となる。常人がいかに鍛えたところで野生の熊や虎にはひとたまりもないのだ。それはまさに柔よく剛を制すの逆。剛よく柔を断つ。
 それでもなお、クレアは退かない。
「だが幸い、この身体はそうそう疲れたりはせぬ」
 人は熊や虎には勝てない。それは並大抵の者の話だ。クレアが長年にわたり鍛え上げた剣術は、真実の剣だろうが無敵の鎧だろうがまったく引けを取る気がしない。それに加えて偶然の産物とはいえ全盛期の肉体をも手に入れたのだ。どうでもいいが猟兵の外見年齢と実年齢が異なる場合、実年齢を採用する方が多いようには見える。統計取ったわけではないが。ただクレアは外見年齢に合わせる事にしたらしいと。
「おぬしが、怒ることに疲れ果てるまで、斬り結ぶのをやめたりはせぬぞ」
 苛烈極まる攻撃を流しながら、それでもクレアは語り掛ける。話を聞く気がないなら、そしてそれが怒りによってもたらされるものであるならば、聞くようになるまで粘り強く戦う。これがクレアの結論だった。

 激しい剣劇の最中、クレアは語り掛ける。
「おぬしはまだ十代、いくらでもやり直しがきく年齢じゃ」
 それはあまりに実感の込められた言葉だった。実際に人よりも多少長く生きてきたクレアだからこそ言えるセリフといえたかもしれない。
「全てが手遅れかどうかはこれからの生で全てを試してから判断すればよい」
 そしてその長い人生において、果たしてクレアがいかなる事をどれくらい試してきたのか。それを推測するのはきわめて困難な作業ではあるが、ユーベルコードの領域にまで至った剣技で、今こうして圧倒的なエネルギーの奔流を柳のごとく流しているその様子から、少なくともその質量の膨大さについては推し量る事ができるような気はしていた。
「おぬしは怒りを自身に向けられるようになった。自責は人の成長に欠かせぬものじゃ」
 年長者としての言葉。そして、それは未来に向けられる。この先彼女がどのような人生を送るかなど、見通せるはずもない。だが、少なくともそう遠くない先に行った方がいい事は、クレアにとっては明白だった。
「まずはおぬしの帰りを待つ者達に今のおぬしを見せるべきじゃな」

 そして永遠に続くかと思われた戦いの果てに。
「……」
 アリスを覆う炎が、晴れた。猟兵たちの必死の呼びかけが、ついに怒りの炎を貫き通し、ハルナの心に届いたのだ。怒りがおさまった次に来るのは大いなる悲嘆。ハルナは地にうずくまり、嗚咽し、ただただ泣きじゃくる。
「やれやれ」
 ようやっと声が届いた事に安堵するクレア。ハルナが立ち直るにはさほどの時間は必要ないだろう。そしてそれを待つ間に、クレアには、猟兵たちには、やるべき事があった。
「なんとも、せわしないことじゃ」

 その視線の先には……。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ホワイトアルバム』

POW   :    デリシャス・アリス
戦闘中に食べた【少女の肉】の量と質に応じて【自身の侵略蔵書の記述が増え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    イマジナリィ・アリス
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【虚像のアリス】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    イミテイション・アリス
戦闘力が増加する【「アリス」】、飛翔力が増加する【「アリス」】、驚かせ力が増加する【「アリス」】のいずれかに変身する。

イラスト:ち4

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ライカ・リコリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●結果論ではあるけど
『なかなか思った通りにはいかないものね』
 アリス適合者・ハルナを狂わせた元凶たる猟書家【ホワイトアルバム】は呟いた。彼女の視線は猟兵にでもハルナにでもなく、どこか虚空に向けられていた。
『わたしも、そして、あなたもね』

 ……だからこそおもしろいんじゃないか、とは半分本音、半分強がりですが。

『まあ、いいわ』
 ホワイトアルバムは改めて猟兵に視線を向けた。
『みんな、食べちゃえばいいんだから』

 ホワイトアルバムの能力は以下の3つだ。
【デリシャス・アリス】は戦闘中に少女の肉を食べる事によって自らを強化するものだ。当然、ハルナを狙ってくるだろう。現在ハルナは戦える状態にない。どうにか守りながら戦わねばなるまい。また、もし猟兵が少女と呼べる年齢なら直接攻撃を狙ってくるだろう。
【イマジナリィ・アリス】は受けたユーベルコードを無効化した上、そのまま相手に返すものだ。いかな強力な攻撃であっても効果を発揮せず、さらにそれが自分を攻撃するとあってはたまったものではない。どうにかして対策を練らねばなるまい。
【イミテイション・アリス】は戦闘力、飛翔力、驚かせ力のどれかを強化するものだ。どれを強化するかを『予測』して対処するのが良いと思われるが、強化された力を猟兵の力で上回るのはきわめて困難だ。驚かせ力は意味がないと思うかもしれないが、驚愕した所を攻撃されるのはやはり脅威だろう。
 きわめて強力な相手であるが、猟兵の総力を結集すれば勝てない相手など存在しない。その、なんだ。なんとかしてください。

 なおプレイングボーナスは『アリス適合者と語る、あるいは共に戦う』(再掲)ですが、現在アリス適合者のハルナは完全に脱力状態にあり、共に戦うのは難しいと思われます。なのでなるべく被害にあわないような工夫をする事でプレイングボーナスとさせていただきます。
禍神塚・鏡吾
「どうか涙を拭いて。話はここからです」
ハルナさんにハンカチを渡しつつ、立ち直らせようとします
「色々言いましたが、怒ってもいい時もあると思います
怒らないとわかってくれない相手というのは、どこの世界にもいるものですから」
一泊置いて、ホワイトアルバムを示します
「例えばああいう人ですね」

真なるアリスを魔法の鏡で強化し、猟書家にぶつけます
「ですが、ここは敢えて怒らずにあの不快なオウガと戦ってみませんか?」
「怒りを乗り越えた貴女
何が嫌なのか冷静に伝えられる貴方
自分自身の主となった貴女をイメージしてください
その力で戦い抜くのです
それは貴女にとって一つの自信となるでしょう
大丈夫、今のハルナさんならできますよ」



●おとなはウソつきではないのです
 地に突っ伏したまま、ただただ泣きじゃくるアリス適合者の少女、ハルナ。正直筆者はこの状況では到底戦えまいと思っていた、が。
「どうか涙を拭いて。話はここからです」
 それでも禍神塚・鏡吾は考えたのだろう。この物語のきっかけを生み出したのはホワイトアルバムであり、そしてさらにその大本を作り出したのはハルナ本人だと。ならば物語を完結させるのは、ハルナ自身であるべきだろう、と。
「……え……」
 鏡吾から手渡されたハンカチに、ハルナの涙が行き場を失う。ただただ外部に対して奔流するだけの感情に、一定の方向性が与えられた、とでも言えばいいのだろうか。どうやらハルナは話を聞いてくれるようだ。判断した鏡吾は続けた。その顔は先刻のような仮面ではない。いつもの素顔、すなわち笑顔だった……ただし、その表情がそのまま今の感情を示しているかは、難しいところではあるが。
「色々言いましたが、怒ってもいい時もあると思います。怒らないとわかってくれない相手というのは、どこの世界にもいるものですから」
 つい先刻、鏡吾が説いたのは怒りによる被害に対するフォロー、そして怒りをコントロールする方法論だった。今回はあえて、怒るべき時を説いたのである。そう、怒り自体は決して悪ではないのだ。とりわけ、今のような状況では。わずか置いて鏡吾は一点を指さした。その先にいたのは。
「例えばああいう人ですね」
 その先にいたのはむろん、ホワイトアルバム。
「……うん」
 今やハルナの感情は完全に行先を定めた。怒りの奔流は消え去ったが、いまだその力は残っている。

『……話が違うね』
 ホワイトアルバムの視線は鏡吾やハルナの方を向いていなかった。
『あなたさっき、なんて言ったんだった?』

 ……
 確かに先刻こう書きました。
「なおプレイングボーナスは『アリス適合者と語る、あるいは共に戦う』ですが、現在アリス適合者のハルナは完全に脱力状態にあり、共に戦うのは難しいと思われます。なのでなるべく被害にあわないような工夫をする事でプレイングボーナスとさせていただきます」と。
 ハルナは戦わないとキッパリ言ったばかりなのに……スマンありゃウソだった。でもまあ物語的に美しいんだから良しとするって事でさ……こらえてくれ。

『……あなたのことは後でいいか』
 ホワイトアルバムの表情はあくまで笑顔だ。偶然にも鏡吾と同じ表情であるが、おそらくその意味合いはおおいに異なることは容易に想像できた。
『今は、こっち』
 虚空に向けられていた視線が、今度ははっきりと、眼前の相手に合わせられる。
 目が合った。

「それはおさめてください」
 怒りを具現化したような炎の剣を構えようとしたハルナを、だが鏡吾は押しとどめた。
「ここはここは敢えて怒らずにあの不快なオウガと戦ってみませんか?」
「……怒らずに?」
「ええ」
 確かについ先刻、鏡吾は必要な時には怒りをぶつけるべきだと説いた。しかし、あえてそれをするなと言う。そんな事が果たして可能なのか?困惑するハルナに、だが鏡吾は笑顔を向けた。
「イメージしてください」
「?」
「怒りを乗り越えた貴女、何が嫌なのか冷静に伝えられる貴方、自分自身の主となった貴女を」
「……」
「その力で戦い抜ければ、それは貴女にとって一つの自信となるでしょう」
 怒りのあまりオウガとなりかけたアリスには3つの能力があった。そのうち先刻の戦いで示されたのは2つのみ。鏡吾が示唆したのは出されることのなかった残りひとつだった。それは想像力により無敵の自分を生み出すもの。困難に打ち勝ち希望に満ちた無垢な自分の姿……それはまさしく、たった今鏡吾に示された自分の姿。
『真っ向から来るのね』
 それを見て、ホワイトアルバムは自らの姿を変え、戦闘力を大幅に増強させた。相手が無敵の存在だろうと、猟書家が本気を出せばそれを上回る事ぐらいは容易なことなのだ。無敵なはずの現身が不利に陥れば、ハルナは自身の力に疑念を持つに違いあるまい。そうなれば力は弱体化し、あとは一気に押し込めるだろう。
『やってみてちょうだい』
「……」
「大丈夫、今のハルナさんならできますよ」
 現身を完成させながらも、不安をのぞかせようとしたハルナを、鏡吾は激励する。
「私はウソは言いません、真実を言っただけのことです」
「……うん!」
 ハルナが気付いているかどうかはわからないが、鏡吾は鏡のヤドリガミだ。魔法の鏡は問われた事に常に知るところの真実をもって答えるのみ……少なくとも今回は。多少願望込みかもしれないが。それでもこの瞬間、ハルナにとって鏡吾の言葉は真実となったのだ。
『それじゃ、食べてあげるね』
「させないっ!」
 ホワイトアルバムと理想のハルナが真っ向からぶつかり合い……

『……ねえ』
 ホワイトアルバムの視線は再び虚空へと向けられた。
『あなたさっき何って言ったんだった?』

 ええ、確かに言いましたね。「強化された力を猟兵の力で上回るのはきわめて困難だ」って。
『……なのに、なんで戦闘力を強化したわたしが、真っ向勝負で猟兵に後れを取ったの?』
 まあ無敵の力を持ったハルナの現身が、鏡吾の【魔法の鏡】で強化されれば、無敵が強化されたんだったらそりゃ超強いでしょ、で終わらせてもいいんですけど。それじゃ納得しないなら、別の回答を。
『どうぞ?』
「マスターはウソつきだ」と思ったホワイトアルバムさん、どうもすみませんでした。マスターはウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです……
『……このビチクソが』

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・キルクルス
アドリブ連携◎

【POW】
ホワイトアルバムっていうから氷属性UC使ってくると思ったけど、そんなことないみたいだね……まあ、あの能力そのまんまだったらちょっとキツそうだったからいいけど。
なら近接戦闘あるのみ!あの子に近づけさせなければ食われる心配もないしな。
そうと決まれば【ディールプティオー】を発動して刀で攻撃を加えていくんだぜ。
スタンドでいうところのアヌビス神だな。おっとこれは3部か。
まあ良いや、とにかく来な小娘!
寄らば斬る! 寄らずとも斬る! 斬れぬものなどあんまりない!



●普通はこんな題材をネタシナリオにしたりはしない
 問題のホワイトアルバムを眼前にして、ルクス・キルクルスはつぶやいた。
「ホワイトアルバムっていうから氷属性UC使ってくると思ったけど、そんなことないみたいだね……」
 このあたりはジャパニーズマンガに造詣のあるルクスらしい感慨と言おうか。とりあえず、その名からとあるものを連想するのは決して少数派ではない。そう信じたくはある。だが、これまで猟書家ホワイトアルバムが出没したのは計27回。そのいずれも、あのネタは使用されていないのだ。今回28回目の出撃にして、ついに使用されたのである。そんなわけで残念ながらホワイトアルバムが氷関係のユーベルコードを使用することも当然ありえない。まあユーベルコードは固定なので変更しようがないから仕方なくはあるのだが。
「まあ、あの能力そのまんまだったらちょっとキツそうだったからいいけど」
 たしかに実際きつい。氷を使って攻防一体どころか機動力すら上昇させるのだ。おそらく猟兵が似たようなものを使用するのは可能だろうとは思えるが、ただでさえ強い猟書家がこんなものを使ってしまった日には、単純に強い、強すぎる。おそらく猟兵が力押しで勝つのは不可能であろう……
『……あなた、さっきの展開もう忘れたの?』
 氷結能力は使えないはずなのに、絶対零度の視線で虚空に向けつぶやくホワイトアルバム。まあ不可能なんて言葉を猟兵がくつがえす事などは珍しくはないですからねえ。ネバーセイネバー。
『……他のマスターの判定下でこんな事起きると思わない方がいいね』
 いやまあ、筆者だってそうそう頻繁にやるわけではないですが……っと、本筋に戻ろう。

 ハルナは再度地に伏せていた。
 先刻ハルナが使った力はアリス適合者としての本来の力ではない。暴走状態にあり、半分オウガと化したがゆえの力だった。猟兵の助力を借りたとはいえ、オウガとしての力が失われつつある中でそれを無理やり使用したのだ。消耗も仕方のないことだろう。
 そしてそんなハルナにホワイトアルバムが目を付けるのは当然の事だった。可愛らしい少女の姿をとってはいるが、ホワイトアルバムの本性はまぎれもないオウガである。人肉を好み喰らう悪鬼。そもアリスラビリンスに迷い込んだ者は、みなオウガの食糧となるために連れてこられたのだ。弱肉強食の掟。弱った野生動物が捕食者に喰われるのは野生の理だ。
 その事に気が付いたルクスは【月光静】の銘が刻まれたサムライブレイドを手に取った。野生の掟もアリスラビリンスの法則も知った事ではない。ましてや今やはじまりのオウガたるオウガ・オリジンは先の戦争で猟兵たちに倒され、もはや存在しない。残されたオウガなど所詮は残党。そんな者たちに人の運命を好き勝手されるわけにはいかないのだ。
「なら近接戦闘あるのみ!」
 ルクスはハルナとホワイトアルバムの間に立ちふさがる。とにかくホワイトアルバムをハルナに近づけない事こそが肝要なのだ。ここでハルナを喰わせてやるわけにはいかない。それはハルナの未来を守る事のみならず、ホワイトアルバムの強化を防ぎ、自らの敗北を遠ざけるためでもあるのだ。
『ふうん』
 ホワイトアルバムはルクスを品定めするように眺めた。
『ちょっと固そうな肉かな、でも、ぜいたくは言ってられないし』
「ほう」
 その視線と言葉に、ルクスの顔に緊張が走る。
「私を喰おうってかい、高くつくぜ」
 だがそれはある意味ではむしろ好都合といえた。少なくとも今この瞬間において、ホワイトアルバムの視線はハルナから外れたのだ。ならば余計な心配などせず、思いっきり戦えるというものだ。
「来な小娘!寄らば斬る! 寄らずとも斬る! 斬れぬものなどあんまりない!」
 何かに取りつかれた剣士のように叫ぶルクス。それは自らの半身か、あるいは刀に取りつかれた亡霊か。いずれにせよホワイトアルバムとは章が違ったり作品が違ったりするのだが。ともあれ、相手を|爆散《diruptio》させるべく、ルクスは駆けた。
『まずはオードブルからおいしく食べてあげる』
 同時にホワイトアルバムもまた、ルクスを自らの腹に収めんとして飛び掛かる。どうでもいいけど剣を持ったルクスがアヌビス神ならホワイトアルバムはさしずめイエローテンペランスといったところであろうか。
『……あれはちょっとやだな』

 勝敗を分けたのは、ホワイトアルバムが肉を喰らえず強化されなかった事。そしてイエロー何とかと違い、ホワイトアルバムが完全攻撃特化で防御面を考慮していなかった事であろうか。
 ルクスはホワイトアルバムの猛攻を耐え抜き、逆に刀による強烈な一撃を加えた。ハルナと自らの肉体を辛くも守り切ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドラ・バジル
ふーん、お前が元凶か。思い通りにいかない?
そりゃ私達がいるからな。いろいろと諦めた方が良いぞ。

『天翔』を発動。
戦闘力マシマシにして『オドⅠ』『オドⅡ』を活性化させた戦闘モードに。
『無銘の刀』を神陰流の技をもって振るって戦いましょう。
虚脱状態のハルナを守る様な立ち回り。
猛攻で彼女の距離を離したり、必ず彼女との間に入る様に動いたり。
自身は少女と言える年齢ではないので敵POWUCでハルナを狙う場合は逆に敵の行動を読みやすくなるでしょう。超音速の飛翔能力を持つので後手に回っても対応可能でしょう。

戦闘中に食事をする時間はあげられないな。



●そういや逃亡阻止って技能あったよね
「ふーん、お前が元凶か」
 アレクサンドラ・バジルは獰猛な獣のような視線でホワイトアルバムを見た。
「思い通りにいかない?そりゃ私達がいるからな。いろいろと諦めた方が良いぞ」
『……ふーん』
 例によって、ホワイトアルバムの視線はなぜかバジルからはずれ、虚空に向けられていた。自身が呼びかけられたにも関わらず、である。そして口を開いた相手は……
『……だって』

 ……
 こっち見んな。
 いやだから先刻も言ったかもしれませんが、たしかに当初の思惑とは多少違う方向に流れた感はありますよ。それは認めますよ。でもねえ。いいんですよそれで。やっぱり参加してくれた猟兵の皆様がやりたいように動くなら、それを可能な限り認めるのが、やっぱり正しい事だと思いますし。ええ。
『……ウソばっかり』
 いや嘘じゃないですって。マスターはウソつきではないのです。まちがいを
『それはもういいから』

 ……本題に戻る。
『あきらめるって、なにを?』
 相も変わらず笑顔を作ったまま応対するホワイトアルバム。
『まだ何もあきらめることなんてないじゃない』
 そう。多少道は変わったかもしれないが、いまだホワイトアルバム自体の目的が失われたわけではないのだ。アリス適合者の暴走も結局はそのための手段に他ならない。最終的な目的は、目標の捕食。そして今ホワイトアルバムが食べるべきアリス、ハルナはいまだ倒れ伏したままだ。東京から大阪に行くために、飛行機、車、新幹線、船などいろんなのり物や道すじがある。だけど、どれを選んでも、方角さえ正しければ大阪へつけるんだ。
「ま、どれを選んでも、途中下車する事になるんだけどな」
 無銘刀を握りしめ、アレクサンドラは不敵な笑みを浮かべた。ホワイトアルバムの笑顔とはまた違った部類の笑顔ではあるが、おそらくその意味するところにさほどの差はないだろう。そこにあるのはただひとつ。敵対者の排除のみ。そしてホワイトアルバムとハルナに割り込む位置をとった。とにかくハルナの捕食は最低限防がなくてはならない。
『うーん』
 対するホワイトアルバムはすぐにアレクサンドラを値踏みするようにじっと見つめた。上から下まで。そして。
『さっきの子と同じくらいには固そうな肉だね』
 アレクサンドラは20歳。つい先刻ホワイトアルバムと戦っていた猟兵と同じ年齢だ。そしてこのホワイトアルバムが放った言葉の意味を、アレクサンドラは正確に捉えていた。
「ほう」
 自分は少女と呼べる年齢ではないので、ホワイトアルバムはハルナのみを捕食対象とする。アレクサンドラはそう読んでいた。だが、どうやらそうではないらしい。場合によっては自分が喰われる事も念頭に置かなければならないようだ。
『ぜいたくばっかり言ってられなさそうだからね』
「やってみな、やれるもんならな」
 アレクサンドラは自身が持つオドの力を開放した。それは北欧の主神オーディンにその名が由来する、ドイツの物理学者が提唱した万物が持っているとされる力の事である。現在では万物がそれを持っている事はさすがに否定されてはいるものの、神であるアレクサンドラはそれを持っているのだ。そしてオドの開放により極限まで増大した魔力をそのまま自らの戦闘力増強に注ぎ込む。あふれ出た魔力がアレクサンドラの周りにオーラを形成し、それもまた闘気と化してアレクサンドラを守る。神陰流真伝・|天翔《あまかけ》。攻防のみならず機動力すら増大されるその力は……
「たぶん|静かに泣く《ジェントリー・ウィープス》事はしないと思うぞ」
 ……いや、まあ。そういうつもりでは、まあなくはなかったけど。
『……』
「!?おっとぉ!」
 とか言っている間に気が付いたらホワイトアルバムはアレクサンドラの至近距離にまで接近していた。必殺の一撃を危うく回避するアレクサンドラ。少しでも気を抜いていたら利き腕が持っていかれていたかもしれない。
『……まずは|手羽《ウィング》からと思ったんだけど』
「剣士の腕を持ってこうてか、高くつくぜ」
『いいじゃない、刀なんか口でくわえて使えば』
「ありゃ3本目使う時の話だ!」
 その後戦況は徐々にアレクサンドラに傾いていった。アレクサンドラが油断することなくホワイトアルバムに相対している事、連戦であるにも関わらず、本来見た目に反してオウガ特有の健啖家であるホワイトアルバムがいまだにアリスの肉を食する機会がない事等が作用しているだろうか。さすがのホワイトアルバムもアルカイックスマイルの目の奥に焦りがあった。
(……このままだと……)
 ならば、とホワイトアルバムは駆けた。アレクサンドラが自身の防御に気を向けている今が好機と判断したのだ。今ならいける。いまだ動かないハルナの所に到達し、肉をひと噛みさえできれば、傷を、疲れを癒し、自らを強化し、そして猟兵の力を上回る事もできる。アリスの所へ!アリスの所へ!行きさえすればッ
「ここは満員だ……逃げることは……できねーぜ」
『!!』
 だがそれはアレクサンドラの読み筋だった。超音速でホワイトアルバムの前へと回り込むと、肉の代わりに強烈無比な斬撃を食らわせたのだった。
「あきらめるんだな、戦闘中に食事をする時間はあげられないな」
『……ま、まだよ……まだなんだから……』
 明らかにホワイトアルバムには余裕を失っていた。決着の時はそう遠くないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クレア・フォースフェンサー
みんな食べてしまえば良い、か
おぬしのその姿はかつて喰らったアリスのものと聞く
喰い殺すのみならず、死後もその姿を貶めるとは全く醜悪な輩じゃ
タクシー代はわしが払ってやる
疾く、骸の海に還してやろうぞ

――先程来、あやつは何者かと話をしておる
しかし、この目をもってもその姿を捉えられぬ
そやつが顕現する前に片を付けねばなるまいな

あやつに見せておらぬのは3つ

一つ目、騎士姿の完全戦闘形態へと移行
一気に攻撃を仕掛ける

ハルナへと向かうなら、二つ目
刀身を伸ばし、それまでの間合いの外から攻撃

三つ目
ユニットの機能を解放
敵の身体を分解、吸収する

骸の海に還すと言ったが、あれは嘘じゃ
人に喰われる感覚
おぬしもを篤と味わうが良い



●|再起不能《リタイア》
「みんな食べてしまえば良い、か」
 ホワイトアルバムの先刻の言葉を反芻しつつ、光輝くフォースセイバーを握りしめたクレア・フォースフェンサーがその眼前に立った。
「おぬしのその姿はかつて喰らったアリスのものと聞く」
『……そうだったかな』
 真顔で問うクレアに、ホワイトアルバムは相も変わらずの微笑で応じた。猟兵の猛攻で追い詰められているにも関わらず、その笑顔にはいっぺんの曇りもない。そしてその内に秘めた邪悪さも。実際、この段階においてなお自身の敗北を考えていないのかもしれない。最後には必ず自分が勝つ。そう信じるからこその笑顔であるのかもしれなかった。
「喰い殺すのみならず、死後もその姿を貶めるとは全く醜悪な輩じゃ」
『おとしめる?そんなことしてるつもりはないんだけどな』
 クレアの心底の軽蔑もまったく気にしない様子のホワイトアルバム。自身の本当の姿も、自身の過去も全く覚えていないというホワイトアルバムだから、この言葉が本心なのかはわからない。今自身がその姿をかたどっている元のアリスの事も、どんなアリスで、どんな風に出会ってどんな風に食べるに至ったのかすら、おそらく本当に覚えていないのだろう。そして当然、なぜホワイトアルバムがそのアリスの姿をとっているのか、も。
「タクシー代はわしが払ってやる。疾く、骸の海に還してやろうぞ」
 もはや語る言葉もない。斬りかかろうとしたクレアに、だが。
『……あなたも、その姿は本当のあなたなのかしら?』
 今度はホワイトアルバムの方が問いかけた。
「何が言いたい」
『あなたはいびつな肉』
 表情を全く変える事なく語るホワイトアルバムだが、その目が多少細くなったようにも見えた。
『さっきのふたりと同じくらいに固そうな肉だけど、でも、なーんか違うのよ、本当はもっともーっと、カチンコチンの肉のように見えるの』
「……」
 偶然にも、クレアの外見年齢は先刻の猟兵ふたりと同じ20歳だが、実はもっと長い年月を生きている。その長年にわたる鍛錬と、偶然にも得た全盛期の肉体が合わさった事で、その戦技はユーベルコード同様の超絶的なものとなったのである。外見年齢と精神年齢の乖離をホワイトアルバムは見抜いたのかもしれない。だが、それでも言わねばならない。
「これはまぎれもない、わし自身の体じゃよ」
 たしかに、ある意味ではもともとの自分の体とはかけ離れたものであるかもしれない。だがそれでも、この体が自分のものに他ならない事は、自分自身がよーく知っている事だ。別に眼前の邪悪なる輩に否定されても構わない。自分自身がそう認めるなら何も問題はないのだ。
『ふーん』
 大した感慨もなさそうにホワイトアルバムは応じた。その言葉に意味を捉える必要はない。その姿と同じで、もとより空虚なものだ。クレアはそう判断した。ならば先刻より気になっていた、あれについてはどうだろうか?

(――先程来、あやつは何者かと話をしておる。しかし、この目をもってもその姿を捉えられぬ)

 ……えーっと。

(それについても、気が狂った者の独り言と判断しても良いのかもしれぬが、もしもあのホワイトアルバムの仲間だとしたら厄介な事になるやもしれぬ、そやつが顕現する前に片を付けねばなるまいな)

 ……まあなんというか。純粋な人と汚れ切ってしまった人とその他多少の例外の人にしか聞こえない声ですゆえ。顕現とかしたらいろんな方面から怒られちゃうのでそれはないから安心してくださいええ本当に。

『……まずそうな上に毒入りかもしれないけど、おなかぺこぺこだから』
 ホワイトアルバムはわずかに前傾姿勢をとった。
『まずはあなたから』
 どうやら謎の声(?)の事を気にしている暇はなさそうだ。今は眼前の邪悪な相手を倒すべく全力を出すのみ。クレアがやる事はいつもと同じ。自らの長年の経験と、それによって培われた卓越した技術をもって敵を倒すのみであった。たしかに自分の外見年齢と実年齢は違うかもしれない。だが自分はただ無為に年を重ねたわけではないのだ。実際先刻だって……
(なにクレア?相手が話を聞いてくれない?クレア それは無理矢理話を聞かせようとするからだよ 逆に考えるんだ「説得しなくていいさ」って考えるんだ)
 かつてこんなやりとりがあったからハルナに対してあの方針がとれた……ってなんで今さらこれを思い出したんだろう?拾い損ねたから今回収とかいう声が聞こえた気もしたけど、聞こえなかった事にした。
「わしを喰らおうてか」
 クレアは笑った。それはホワイトアルバムの微笑とは異なる、実に攻撃的な笑顔だった。
「やれるものならやってみるがよい」
 自分はホワイトアルバムの動きを見ている。一方でホワイトアルバムはクレアの動きを全てみたわけではない。ハルナとの戦いは見ていたかもしれないが、それが全てではない。伏せていたカードを今、開く時だ。超古代文明の遺産たるユニットアルターの力によりクレアの全身が一瞬光り輝くと、そのコスチュームが騎士めいたものに変わり、同時に戦闘力も爆発的に増大する。そして見た目からは想像もできない速度で音もたてずに急接近してきたホワイトアルバムをフォースセイバーで迎え撃つ。
『……やっぱり、いらない』
 だが振りかざされたフォースセイバーがホワイトアルバムの体を両断するかに思われた瞬間、ホワイトアルバムは急停止して必殺の斬撃が宙を切る。そしてホワイトアルバムはそのまま進行方向を変える。その先にいたのは……いまだ起き上がれないハルナ。
「残念じゃが読み筋じゃ」
 高速で動くホワイトアルバム。だがフォースセイバーは封神武侠界に伝わる武器のひとつ如意棒のごとくに自在に伸ばす事もできるのだ。肉に向けて一直線に向かうホワイトアルバムの背中に向け、クレアは弾丸のような速度で剣の切っ先を飛ばす。
『……!!』
 それは狙い違わずホワイトアルバムの背中に命中すると、そのまま貫通した。度重なる猟兵たちとの戦いで消耗していたホワイトアルバムにはもはや耐える力は残ってなかったのだ。
「さて骸の海に還すと言ったが……スマンあれは嘘じゃった」
 倒れ伏すホワイトアルバムに近寄ったクレアは冷たく言った。その手に握られたデバイスはオブリビオンを分解・吸収する力を生み出す装置だ。
『……え?』
「人に喰われる感覚、おぬしもを篤と味わうが良い」
『……い、嫌……』
 それは今回、ホワイトアルバムが初めて見せた、笑顔以外の表情だった。だがその体は徐々に分解され、やがてその表情も見えなくなる。

 ここに、ホワイトアルバムが起こした事件のひとつは幕を閉じたのだ。

「……さて、これでもう出てこなくなれば良いのじゃが……」
 デバイス:アブソープションを眺めつつクレアは呟いた。これでホワイトアルバムがまた出てきたならば、一部が吸収しきれず骸の海に戻ったということなのか、それとも戻れていないけど別のホワイトアルバムが出てきたということなのか。
 いずれにせよ、今はただひとりのアリスが救われた事を素直に喜ぶべきだろう。クレアはそう結論づけることにした。

 そしてアリス適合者の少女ハルナは自分の扉を探すべく、再びアリスラビリンスを旅する事だろう。それは間違いなく苦難に満ちたものにはなるだろうが、それでも今回の事でハルナは確実に成長したはずだ。ならばいつの日か扉までたどり着いてほしい。彼女にはそれができるはずだ。猟兵たちはそう信じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月20日


挿絵イラスト