Plamotion Shooting Actor
●君が思い描き、君が作って、君が戦う
『プラモーション・アクト』――通称『プラクト』。
それがこのホビースポーツの名である。今はまだ公式競技化はされてはいないが、心・技・体を兼ね備えたスポーツであるとされている。
プラスチックホビーを作り上げ、フィールドに投入し自分自身で動かす。
想像を育む心、想像を形にする技術と、想像を動かす体。
そのいずれもが欠けてはならない。どれか一つでも欠けたのならば、きっと勝利は得られないだろうから。
そんな『プラモーション・アクト』、『プラクト』のフィールドは主に模型店や大型量販店に設置され、巨大なスクリーンにおいてフィールド内の戦いを観戦することができる。
縦横無尽に駆け抜ける人型ロボット、美少女プラモデルにカーモデル、クリーチャー、艦船や飛行機。
ありとあらゆるプラスチックホビーが『プラクト』の間口として存在しているのだ。
『プラクト』アスリートたちは、己の造り上げたプラスチックホビーに内蔵された『ユーベルコード発生装置』によって、自在にプラスチックホビーを動かし、時に笑い、時に涙し、時に額に汗を流し、時に友情を育む。
模型店である『五月雨模型店』は今日も多くの『プラクト』アスリートたちで盛況であった。
「ハッハー! いくぜいくぜー!」
元気の良い声を上げているのは『アイン』と呼ばれる少女だ。
人型ロボットのプラスチックホビーをたぐり、フィールドを駆け抜け、対戦チームを蹴散らしている。
その動きは『モーション』タイプと呼ばれる自身の動きをトレースする操作方法。直感的に動かすことができ、またアスリート本人の身体能力を十全に引き出すことができる。
対するチームリーダーであろう『ツヴァイ』と呼ばれる少女のプラスチックホビーが『アイン』の機体と激突する。
「単騎で突撃など! そうやってチーム戦に勝てるとは思わないことです!」
彼女のプラスチックホビーは人型ロボットであったが、その動きは『アイン』のものとは少し違っていた。
『マニューバ』と呼ばれるプラスチックホビーに作り込まれた操縦席を操作するタイプのものである。
これは複雑な操作方法を熟知していなければ、自分の機体を動かすこともままならない。けれど、アスリートの身体能力以上の挙動や、人体では不可能な動きを可能とするのだ。
そんな彼女たちは一度は敵同士として戦っていたが、今はこうして共に遊び合う仲である。
『ツヴァイ』は一度『ダークリーガー』に敗れ、『ダーク化』されてしまっていたが、猟兵達と『五月雨模型店』のメンバーたちによって『ダーク化』から解放されたのだ。
それ以来、こうして何かと遊びに来るようになったのである。
これもまた『プラクト』を通じて育まれた友情であろう。
だが、そんな彼女たちの間に割って入るプラスチックホビーがあった。
ずんぐりとした二頭身のロボット。手足は短く、頭と胴体が大きい。最たる特徴は胴体に瓶に栓をする金属の王冠が備えられているということであろう。
「んだぁ……!?」
「あれは……『王冠シューター』!」
「知っているのか、『ツヴァイ』!」
「そういうやり取りはいいんですよ! しかし、フィールドの中に割り込んでくるとは、無作法な!」
『王冠シューター』。
それはプラスチックホビーの一つである。胴体に備えられた瓶に栓をする金属王冠を放つシューティングホビー。様々な種類があり、今まさに『五月雨模型店』のフィールドに割り込んできたのは、典型的なパワーシュータータイプの『王冠シューター』であった。
「礼儀作法を重んじるのは結構ではあるが! まずは小手調べと行かせてもらう!」
そのプラスチックホビーを操るは年の頃、『アイン』たちと同年代の男児。
『王冠シューター』の腹部より放たれるは、金属の王冠。
凄まじい勢いで放たれる王冠が、フィールドの大地を抉り、凄まじい爆風を巻き起こす。『アイン』と『ツヴァイ』は辛うじて躱すことができたが、その一撃の重さに体勢を整えるので精一杯だった。
「『閃光』、『迅雷』と呼ばれた『プラクト』アスリートもこの程度か。この『轟響』の『ドライ』にとっては、容易いことである」
「まーたかよ……」
『アイン』にとって、これは幾度目かの経験である。
『プラクト』は基本チーム戦。
互いのフィールドを賭けた戦いとなる。前回も『ダーク化』した『ツヴァイ』が勝負を挑んできた。
ちなみに、チーム戦であっても、その人数制限はない。
どれだけ多くてもいいのだ。
「熟れているようではあるが! 話が手短でよろしい! ならば、一週間後! 勝負を挑ませていただく!」
『ドライ』と名乗る男児は凄まじい一撃の痕残るフィールドから、自身のプラスチックホビーを手に取り不敵に笑う。
そう、彼もまた『ダークリーガー』に敗れ、『ダーク化』したアスリートの一人――。
●幸せな夢を見る
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)……であったのだが、彼女はピンセットを使って何やら作業をしている真っ最中であった。
何しているのだろうかと見れば、それは赤いロボットの頭部を補修している真っ最中であるようだった。どうやら折れた角を接着剤で補強しているようだ。
「……ッ! ふぅー……」
細かい作業する時って息止めちゃうよね。
「……ッ!? あ、いえ、えーと……あのっ!」
あ、これはごまかす流れだなと猟兵たちは思っただろう。
「違います! アスリートアースの事件なのです。みなさんは『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』をご存知ですか?」
一度説明を受けている猟兵もいるかもしれないが、『プラクト』とはホビースポーツである。
未だ公式競技化されていないスポーツであるが、自身でプラスチックホビーを作って戦うスポーツなのである。
ユーベルコード発生装置を組み込んだプラスチックホビーと自分自身の体で操作して戦う。
基本チーム戦であり、どちらかが全滅するまで戦い続ける。
ユーベルコード発生装置が壊れれば、それで機体は動かなくなるため、これを如何にして隠し虚を突くかもまた戦略となる。
「今回もまた『五月雨模型店』が標的にされてしまいました。『ダークリーガー』は効率よくアスリートたちを『ダーク化』させるために前回の戦いでメンバーの増えた『五月雨模型店』を狙っているようなのです」
その赤いの名前なんていうの?
「あ、これはですね……って、違います。話を最後まで聞いてください。みなさんは助っ人として『五月雨模型店』に向かい、プラスチックホビーを作成、強化しつつ『プラクト』の練習をしてください」
そうすれば、きっとだいじょうぶだと言うようにナイアルテは強引に押し通す。
「さあ、『レッツ・アクト』です!」
それがお決まりの合言葉。
なんだか勢いでことをすすめることを覚えたようであるナイアルテに背を押されるように猟兵たちは、『プラクト』のチーム戦に参加するためになんとなーく転移させられるのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアスリートアースにある未だ公式競技化されていないスポーツ『プラクト』のチーム『五月雨模型店』を救うシナリオになります。
※『プラクト』は正式には『プラモーション・アクト』と呼ばれるホビースポーツです。
フィールド内に自作したプラスチックホビーを投入し、アスリートの動きをトレースする『モーション』タイプと、操縦席を作り込んで操作する『マニューバ』タイプが存在しています。
主に『モーション』タイプはロボットや美少女プラモデル。『マニューバ』タイプは、カーモデルやミリタリーモデルとなっております。
●第一章
冒険です。
再び『ダークリーガー』のチームが『五月雨模型店』に勝負を挑んできました。
皆さんは『プラクト』に慣れるべく、ルールを学び、自分のプラスチックホビーを作成、練習をしなければなりません。
今回もチーム戦になります。
チームに参加する人数は規定されていません。最低一人。上限なしの数百人単位の戦いも行われることもあるざっくりとしたルールです。
作成し、習熟するプラスチックホビーは基本何でも構いません。プラスチックホビーであり、『ユーベルコード発生装置』を組み込んでいれば、二つの操作系統『モーション』と『マニューバ』のどちらかでプラスチックホビーが実際に動きます。
この章でトレーニングに成功した皆さんは、第二章、第三章と自動的にプレイングボーナスを得られることとなっております。
●第二章
集団戦です。
いよいよ試合当日です。
ダーク化したチームのアスリートは『ドライ』と呼ばれる男児を筆頭に『ダークフィールダー』と呼ばれる金属王冠を放つシューティングホビーでもって襲いかかってきあmす。
金属王冠なので、尋常じゃない威力です。
●第三章
ボス戦です。
チーム戦はクライマックスです。
『五月雨模型店』と皆さんの奮闘によって、敵チームの『ダークリーガー』、『ジェノサイドピッチャー』がフィールドに姿を表します。
彼女のまた『王冠シューター』のプラスチックホビーを使用しますが、その力はこれまでの敵とは別次元です。
試合に勝利すれば、選手たちのダーク化は解除され、ダークリーガーも消滅します。
それでは、新たなるスポーツ競技『プラクト』を巡るダークリーガーと戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『その他スポーツを練習しよう』
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POW : 体当たりで果敢にチャレンジする
SPD : 器用にコツを掴みながら練習する
WIZ : ルールや戦術の理解を深める
イラスト:十姉妹
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「なんか最近ああいう奴増えたよなー」
「それは、その……なんといいますか……」
『アイン』の言葉に『ツヴァイ』はバツが悪そうな顔をする。それもそうである。彼女は先日、『サスナー第一チーム』と呼ばれる『ダークリーガー』のチームに
『ダーク化』され、組み込まれていたアスリートだからである。
しかし、猟兵たちの活躍で解放され、こうして『五月雨模型店』のメンバーの一人として活動しているのだ。
「おそらく、あの『ドライ』という少年もまた私と同じである可能性があります」
「ぶっ飛ばせばいーんだろ? 簡単じゃん!」
「ですが、あの『王冠シューター』、金属王冠の威力を見たでしょう。こちらはプラスチック。あちらは金属。当たればまず無事ではすみませんよ」
「んー……まあ、今回もなんとかなるだろ」
『アイン』はあっけらかんとしているし、楽観的であった。
『ツヴァイ』はどうにも重たく物事を考えるクセがあるようであった。
けれど、『アイン』はこれが一つのプラスチックホビーのスポーツである以上の意味があるとは思えなかったのである。
彼女たちは猟兵ではない。
『ダークリーガー』というオブリビオンの存在も理解できないのだ。
だからこそ、猟兵たちは彼女たちと共に戦う。
そう、彼女たちのホビーを楽しむ笑顔を曇らせてはならない。
幸いに『五月雨模型店』にはプラスチックホビーの商品も、それを作成するツールも、塗装や組み立てるブースも完備されている。
さらには作ったホビーを動かし、練習するフィールドだってある。
「お、ほら、また来てくれたじゃん! いらっしゃい!」
『アイン』は、現れた猟兵たちに手を上げ出迎える。
自分のピンチに現れてくれるヒーロー。
猟兵の姿に笑顔を向けるのだ――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
転移して早々、陰海月が店の中に突入して、ホビー探しに。
あはは、陰海月は元気ですねー。あ、お久しぶりですー。
見つけてきたのは…カツオノエボシ?
まあたしかに、群体と言えますけどねー。
そして、それを再現したかのように…パーツが多いんですよねー。
あの青い特徴的なところに『ユーベルコード発生装置』がついてますねー。
これの操作方法、慣れねばなりませんねー。場所、お借りしますー。
※
陰海月「ぷっきゅ!」
一礼してから、お店の中をがさごそ。今回は、怖い海の仲間で『マニューバ』タイプ!
ほくも作るの、お手伝いするんだ!
はっすはっすと鼻があるのならば意気揚々と速歩きで男児が近づいていくのが模型店や玩具屋である。
何かしらの未知の物質が模型店から発せられているのではと思うほどに馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の影から飛び出した『陰海月』は、たっしたっしと『五月雨模型店』に突入する。
その背中を『疾き者』はなんとも微笑ましい表情で見送る。
男児とは常にこういうものである。
まだ走らないだけ自制が効いていると言っても過言ではないのではないだろうか。
「あはは、『陰海月』は元気ですねー」
『ぷっきゅ!』
巨大な海月である『陰海月』がゆらゆらと店内に一礼してから入る。こういう礼儀作法というのは徹底されているのだろう。
こういうところに育ちが出るというものである。
「お、きたなー! 今回は何を作るんだ? それとも前に作った羽の生えたあれの改良か?」
『アイン』と呼ばれる少女が近づいてくる。
どうやら前回の戦いでのことを覚えているようであった。
「あ、お久しぶりですー。いえね、今回はあの子がつくりたいものをと……」
『疾き者』がそうやって『アイン』と世間話をしている間に『陰海月』は早速生き物シリーズのプラスチックモデルを手にとって持ってくる。
それはクリアパーツの見事な海の生き物。
そう、『カツオノエボシ』である。
綺麗な見た目とは裏腹に、その触手には猛毒が備えられている。
「まあ確かに群体と言えますけどねー……」
「お、このシリーズすごいよな。稼働も結構しっかりしているし」
「ぷっきゅ!」
「パーツが多いんですよねー」
大丈夫! というように『陰海月』の触腕が力こぶを作るような仕草をしてみせる。どうやら自分も作るのを手伝うつもりなのだ。
「じゃあ、早速作ろーぜ! クリアパーツはやっぱり、この透明感を大切にしたいよな!」
『アイン』が取り出したのは、スポンジヤスリ。
さらにコンパウンド。
どうやら合わせめやゲート処理をしっかりしたほうがいいということらしい。
「はぁ……この青い特徴的なところに『ユーベルコード発生装置』をつけたいんですよね。これの操作方法は……」
「『マニューバ』一択だろうな。触腕を動かすっていうのは、なかなか骨がおれそーだぜ!」
『疾き者』がパーツを切り出し、『陰海月』がスポンジヤスリで磨いていく。
見事なクリアパーツを活かすためには、この磨きこそが完成度に大きく影響を及ぼす。
番手を変えて、徐々に傷跡を消していく。
それでもやはり処理を施した場所と、その他の場所とでは透明度が違う。そこでコンパウンドの出番だ。
こちらも番手を上げていく。
クリーム状のコンパウンドを布で塗り込み、刷り込んでいく。磨き、磨き、磨き。
パーツを切り出して組み上げるよりも磨いている方の時間が長いような気がする。
「後は……」
「クリアカラーで塗装ですか。こういうのやはり?」
「そう! やっぱりうすーく重ねて言ったほうがいいぜ! せっかくだからグラデーションもさ、しっかりしたいよな!」
そういって『アイン』に誘導されながら『疾き者』と『陰海月』は塗装ブースに案内され、塗装のレクチャーを受けながら『カツオノエボシ』の完成にどうにかこぎつける。
見事なクリアグラデーション。
本物と見紛うほどの透明感。
それはフィールドにありては、存在感を消す透明度となるだろう。『疾き者』は早速フィールドに投入し、これを練習していく。
なれぬ『マニューバ』は時に『カツオノエボシ』に不可解なアクションを引き起こすだろう。
慣れが必要であることは百も承知。
『疾き者』はゆらゆら揺れる『カツオノエボシ』の見事なクリアカラーを見やりながら、その難解な操作方法にしばらく悩まされるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
狭野・実琴
『王冠シューター』が有り、か。
公式化してない競技のルールは穴が多くていけないね。
でも、そんな黎明期だからこそできる遊び方と楽しみ方がある…さて、『めちゃくちゃ』をやってみようか。
まずはプラスチックホビーの作り方を持ち前の学習力で習得。だいたい覚えた。
そしてUCを発動しながらプラスチックホビー作りに没頭する。完成するまで寝ないし食べない。
作るのは巨大空中要塞と、その要塞に搭載する無数のロボット軍団。
メインホビーはあくまで要塞であって、軍団はその武装に過ぎない。この理屈で押し通すよ。性質上、一応これは『マニューバ』タイプになるのかな。
これだけのホビーを1人で操れるのかって?
ま、多分できるよ。多分。
『王冠シューター』。
それはプラスチックホビーでありながら、金属である瓶の蓋を打ち出すというシューティングホビーである。
プラスチックホビーであればなんで在ってもフィールドに存在し、アスリートの動きをトレースして参加することが出来るのが『プラモーション・アクト』、『プラクト』の良い処ではあるのだが、流石に金属の王冠を打ち出すのは若干、反則めいた強さを持っていた。
誰もが流石に金属の王冠はねぇ……と暗黙の了解で使用していなかったのだが、今回『ダーク化』されたアスリートたちは、そんなことなどお構いなしである。
「『王冠シューター』が有り、か」
狭野・実琴(元天才・f38190)は将来を有望視されていた元天才アスリートである。
バトロワシューターとしての才覚があるのならば、『王冠シューター』の『プラクト』における優位性の高さは瞬時に理解することができただろう。
同時にこれは公式化されていない競技ゆえのルールの穴であるとも癒えた。
「でも……」
そう、でも、なのだ。
実琴はそれ故に出来る遊び方と楽しみ方があると、その器の大きさをもって『プラクト』というプラスチックホビーとアスリートが織りなす競技に足を踏み入れる。
「『めちゃくちゃ』をやってみようか」
彼女は『五月雨模型店』に入店すると、腐っても天才(クサッテモテンサイ)であるが所以を遺憾なく発揮する。
彼女は店主からレクチャーされたプラスチックホビーの作り方を学習し、習得する。
「大まかのことは伝えたが、理解できたか?」
「だいたい覚えた。これってレギュレーション違反?」
「いや、それはない。プラスチックホビーであれば、『プラクト』は間口を広げている。それも『アリ』だ」
店主の言葉に実琴はうなずく。
彼女が手にしたのは大型プラスチックホビー。
大きなボックスであった。
ちょっと尋常じゃないくらいの大きさ。一人で黙々と作っても1年くらいはかかるんじゃないかというほどの大きなホビー。
そう、『青空戦記』シリーズのラスボスが座す『巨大空中要塞』である。それもスケールが統一されているために尋常じゃないくらいの大きさなのだ。
「え、えぇ……」
『五月雨模型店』のメンバーである少女、『ツヴァイ』はそんな実琴のチョイスに思わず声を上げることしかできなかった。
これを、今から?
一週間の時間があるとは言え、いくらなんでもこれは無理なのではと思わざるを得ない。完成できたとしても一週間後の勝負に間に合うとは到底思えないのだ。
だが、それでも実琴は万能の天才性を発揮する。
「その気になれば大抵のことは何でも出来るよ」
「そんなやればできる理論は時間とか、体力とかが持ちませんよ!?」
実琴の瞳はユーベルコードに輝いていた。
彼女の天才性は、あらゆる生命維持を不要とする。圧倒的な集中力。ゲートを切り離し、処理をする手際は素早く、プラスチックホビーの強度を上げるための工作も余念がない。
軸打ちには真鍮線。
時にステンレスの軸すら使って『巨大空中要塞』の強度を上げていくのだ。
「ほ、本当に間に合う……!?」
「これだけじゃない。メインは要塞だけど……その要塞に搭載する無数のロボット軍団だって再現してみせる」
実琴の集中力は半端じゃなかった。
もはや天才とかそんな領域に居なかった。鬼才。鬼気迫る集中力で彼女が造り上げていく『巨大空中要塞』の中に次々と配備されていくロボット軍団。
これってもう機体というよりは、|地形《テレイン》の類のようにしか思えなくなってしまう。
だが、紛れもなくプラスチックホビーである。
「だから、軍団はその武装に過ぎない」
それで通るのか?
通るのである。アスリートアースのスポーツ競技全般に言えることであるが、だいたいルールがガバガバなのである。
しかしながら、実琴の造り上げた『巨大空中要塞』は、『プラクト』のルールには何ら反していない。
『マニューバ』タイプで操作する『巨大空中要塞』は、その巨大さ故に的になるであろうし、また同時にその操作の煩雑さには膨大な集中力を必要とする。
それ以前にだ。
「これって……一人で操作できるものなのですか? ロボット軍団だの制御だって……」
『ツヴァイ』が心配そうに見ている。だが、実琴は問題ないと言うように言うのだ。
「ま、多分出来るよ。多分」
「多分っていいました!?」
「あー、あー、大丈夫。大抵のことはなんでもできるから。安心して」
そんな実琴の言葉に『ツヴァイ』は不安を抱えながら、しかし、この作り上げられた『巨大空中要塞』に頼もしさを感じずには居られないのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
橘・小雪
アインさん、ツヴァイさん、今回もよろしくねっ
敵は金属……プラスチックを重ねても負けちゃうよね
それなら、私は前回使った『タイプ・ヒルド』の「桜風」を
軽量化して、回避タイプに作り変えようと思うの
方法を教えてもらって、分解したり組み立てたり
この作り変える作業も『プラクト』の楽しみだよね
操作方法は『モーション』タイプのまま
軽量化した分、私の動きで補わなくちゃいけない
ブーストくらいは簡単に使えるようになったけど
もっと、動き回れるよう特訓しなくっちゃ
『モーション』タイプならアインさんに教わるべきよね
アイン師匠、回避のノウハウ、叩き込んでください!
また二人と戦えるなら負ける気がしない
頑張るぞー!
橘・小雪(Tea For You・f37680)にとって、『五月雨模型店』は勝手知ったるお店であった。
前回、『サスナー第一チーム』という『ダークリーガー』によって『ダーク化』されたアスリートたちと戦ったフィールドが、この『五月雨模型店』にはあったのだ。
また今回もこのフィールドが『ダークリーガー』に狙われていると知って、駆けつけた猟兵の一人が彼女であった。
「『アイン』さん、『ツヴァイ』さん、今回もよろしくねっ」
「あ、小雪ねーちゃん、よろしくなー!」
「助っ人、とてもありがたく思います。それに心強いです」
『アイン』と『ツヴァイ』、二人の少女は前回の戦いのみならず、強化合宿の殺人プールレジャーでも小雪と一緒だったのだ。
もうチームメイトと言っても過言ではない仲の良さであり、同性同士であるという意味でも気心が知れていた。
「それで今回の対戦チームの使うプラスチックホビーって……」
小雪の言葉に『アイン』がうなずく。
敵チームの使うプラスチックホビーは『王冠シューター』。金属でできた瓶に栓をする王冠を放つシューティングホビーの一種である。
放つ王冠は金属であるため『プラクト』に置いては絶大な威力を誇るようである。
「金属ならプラスチックを重ねても負けちゃうよね」
小雪の懸念は正しい。
如何にプラスチックホビーの精度を高めたとしても、敵の放つ攻撃は金属。容易くへし折られるであろうし、盾など意味を成さないだろう。
「そうなんだよなー」
「ならば、今回は機体を新しくしますか?」
『ツヴァイ』の言葉に小雪は頭を振る。彼女には彼女なりのプランがあるのだ。
「ううん、今回は前回使った『タイプ・ヒルド』……『桜風』を軽量化しようと思うんだ。回避タイプに作り変えたいの。どうすればいい?」
小雪の言葉に『ツヴァイ』はうなずく。
軽量化と一言に言っても様々なやり方がある。
装甲を薄く削り込むだとか、もしくは可動部分である関節を覆うパーツを取り払うだとか、それはアイデアの数だけ用意されている。
どれが正解でどれが間違いであるかということはない。
「小雪さんの『桜風』に合った軽量化を模索していきましょう。私も手伝います」
そういって『ツヴァイ』と小雪の『桜風』軽量化が始まる。
装甲を極力減らしたいが、重要な部分である『ユーベルコード発生装置』を備えた部分まで削ってしまって、些細な攻撃で打撃を受けてしまうことは本末転倒だろう。
ならば、と『ツヴァイ』が提案したのは、不要な装甲の除去である。
「重要箇所の装甲はそのまま。被弾したとしてもダメージを最小限にするためには、やはり肩部や脚部、そうしたパーツを短くする、または省略する必要があるでしょう」
「この肩アーマーは外しちゃってもいいかな?」
「可動範囲が広がりますし、また小雪さんは『モーション』タイプですよね?」
それならば、可動範囲が広がるメリットを十全に受けられるだろう。
そうこうしている間に二人は『桜風』から稼働を妨げる肩部のパーツや股関節を覆うパーツを取り除く。
そこにあったのはより人の骨格に近しいフレームのむき出しになった『桜風』の姿であった。
「よっし、じゃあ次は実践編だよな! 私の出番ってわけだ!」
『アイン』はまってましたとばかりに完成した軽量化版『桜風』と共にフィールドに向かう。
「あ、うん。『アイン』師匠、回避のノウハウ、叩き込んでください!」
「師匠かぁ……いい響きだな! 私の特訓は厳しいぜ!」
小雪は『桜風』をフィールドにダイブさせ、『モーション』で動かす。
前回の戦いでだいぶ慣れたとは言うものの、やはり体の動きを直に動かす『モーション』は体力を削る。
「そらそら! そんなんじゃすぐにやられちまうぞ! ガッ! ってきたら、ギュンって、バーン! そんでもってカウンターで、ゴーンッ!」
残念ながら『アイン』は感覚派のようである。
言うこと為すこと全てが直感的、センスの塊故に他者に教えることは難しいようである。
けれど、小雪は気にしなかった。
だって、二人とまた一緒に戦えるのなら負ける気なんてしないからである。
持ち前の明るさ、ポジティヴさで小雪は『アイン』の猛特訓に食らいつき、軽量化した『桜風』の高速機動戦闘を者にしていく。
「もういっちょいくぜー!」
「うん、頑張るぞー!」
二人は、共に特訓という名の『プラクト』の楽しさをあじわいながら、決戦の日までひたすらに習熟を突き詰めていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鵜飼・章
僕はUCで空気が読める
前回からいたかのような顔で紛れ込もう
久しぶりだねアインさん
僕だよ…ジェノサイダー鵜飼
本業はあやかしメダリストだが
メダル的なものを悪用する輩がいると聞き
助っ人として緊急参戦した…そうだろう
プラモは素人だから
説明書を読んで真面目に組み立てる
禍々しい漆黒の甲冑と角を
塗りムラなくシャープに仕上げられるかが肝だ
UC発生装置兼メダルシューターは口に隠そう
できた
これが僕の相棒
昆虫型ロボ『魔改甲虫ムシボーグ』シリーズで
ダーティーな魅力が人気沸騰
ダークネスファントムヘルカブトだ
虫の動きは流石にできないので
マニューバにしたけど…難しい
口からメダルが…出ないな…
まあ計画通りという顔をしておこう
鵜飼流人間奥義『空気を読む』(エアーリーディング)。
それは鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)のユーベルコードであり、『五月雨模型店』という初めての場所に馴染むために必要不可欠な人言の行動を論理的に推察する術でもあった。
それはさながら前回の戦いから、共に戦い、共に苦楽を味わい、共に勝利に喜んだかのような、そんな空気を彼にまとわせるものであった。
「久しぶりだね『アイン』さん」
そういう章は、大真面目な顔をしている。
え、誰? と思わないでもなかったが、空気を読むのが章であり、そのユーベルコードの力は割と存在しない記憶を『アイン』たち『五月雨模型店』のチームメンバーに植え付けるには十分なものであった。
いや、というかあれである。
いたかもしんないって思わせるには、ちょっと章の名乗りは独特すぎた。
「僕だよ……ジェノサイダー鵜飼」
「本業はあやかしメダリストなんだよな」
「そうなんですか? 私も戦ったような……メダル的なものを悪用する者を赦さないのですよね」
いや、『アイン』も『ツヴァイ』も割としっかり毒されている気がしないでもない。
よくあるホビーアニメに出てくる最初敵だったけど、なんやかんやあって主人公たちを影から支える元ライバルみたいな空気を章は出しているのである。
誰だって、こんな人一人は居たよねって思わないでもなくなるのは不自然なことでもなんでもないのである。
「そうさ。助っ人として緊急参戦したんだ。メダルの力を悪用するのはね、よくないからね。王冠だってそうさ」
キラリと指の間に挟まっているのがあやかしメダルであろうか。
なんかこう、ダークな色合いである。絶対男の子好きなやつである。
とはいえ、こんな雰囲気をまとっていても章はプラモデルに関しては素人である。こんな出来る感じの雰囲気出しているけど素人なのである。
だが、安心してほしい。
此処『五月雨模型店』にはたくさんのプラスチックホビーの在庫が潤沢に用意されているし、購入すれば制作スペースは借りられるし、工具や塗装道具だって貸してもらえるのだ。
「ふむふむ……やっぱり禍々しい漆黒の甲冑と角は必須」
章が選んだのは昆虫型ロボ『魔改甲虫ムシボーグ』シリーズで知られるダーティな魅力が人気沸騰の『ダークネスファントムヘルカブト』である。
男の子って好きだよね。
ダークネスとか。
カブトムシとか。
絶対好きなやつをいっぱいつければ大好きなやつの出来上がりって寸法である。章はしっかりと説明書を読んで真面目に組み立て始める。
そこに几帳面さが出るのかも知れない。
箱からパーツを取り出せば、Aから始まるアルファベット順にパーツランナーを並べ、説明書の順番通りにニッパーでパーツを切り出していく。
接着剤もしっかり使ってはみ出した分を乾燥してから削り、処理していく。
丁寧で実直な仕上げ。
地味に見えるかもしれないが、この地道な作業が機体の性能を底上げするのである。時間をかければ良いものができあがる。
そのセオリーをしっかりと守って章は『ダークネスファントムヘルカブト』を組み上げていくのだ。
「やっぱりこのロボットは、黒色が肝だよな! 塗装ってプランある?」
「いや、ムラなくシャープに仕上げたいんだけど……あと、ユーベルコード発生装置兼メダルシューターを口元に隠したいんだ」
「なるほど。でしたら、シューターと頭部の開口ギミックを連動させましょう」
『アイン』と『ツヴァイ』に手伝ってもらいながら章は自分の機体を組み上げていく。
塗装の下地はシルバー。
そこからクリアーブラックで徐々に色を立ち上げていく。濃い部分と薄い部分をわけて、さらに上からパールカラーを吹き付ければ偏光によって色味が変わる。
そうすれば、処理をしたエッジにシャープな黒色が際立つだろう。
「虫の動きは流石にできないから……」
「『マニューバ』タイプですね。操作ギミックを組み込んでいきましょう。それとマニュアルを覚えておかないと、おかしな動きの連続になってしまうこともあります」
レクチャーを受けながら章はフィールドで『ダークネスファントムヘルカブト』の操作の猛特訓を続ける。
さらに問題は重なっていく。
口から放つメダルシューター。その開口ギミックがどうにもうまく連動してくれないのである。
しかし、そこは章の大人の演技というか、大胆不敵でニヒルなライバル顔の出番である。
大体計画通りって顔をしていれば、『アイン』や『ツヴァイ』と言ったお子様たちは押し通すことができるのである。
でも、それが後で自分の首を締めることになるんだけど、いいのかなぁって、そんなこんなで章は完成させた『ダークネスファントムヘルカブト』を大事に手のひらに収めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(ルールブックを読んでいる)
これがプラクトか……待ってルールが滅茶苦茶大雑把なんだけど…
自由な発想が大事だから…なのかな……
相手は王冠シューターだけどこっちは王冠シューターにこだわる必要はない…
…でもあの大きさの王冠を発射って普通に脅威だね…んん?
(あれ?金属の王冠飛ばすのはありなんだっていう顔)
【歌い働く小人の夜】を発動…小型ガジェットの助けを借りて…
…基本がプラスチックなら何でもいいのかな…なら強化プラスチックを使ってエンジン部にユーベルコード発生装置を仕込んだ本格的な車型のガジェ…こほん、プラクトを作るとしよう…
…ガジェット作成技術の応用で隠しギミックを(趣味で)仕込んでおくとするかな…
「……これが『プラクト』か……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はアスリートアースに転移してから『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』のルールブックを読み込んでいた。
未だ公式競技ではないホビースポーツであったが、ルールを読み込むことに余念はない。
しっかりとルールを頭に叩き込んでおけば、自ずと勝利への方程式は組み上げられるものである。
だからこそ、メンカルは『プラクト』のルールを熟読する。
一つ、使用するのはプラスチックホビーでなければならない。
一つ、チーム戦であり、参加メンバーの上限はない。最低一人。最大はチームメンバーいるだけ全部。
一つ、勝敗はどちらかのチームメンバーの機体が全滅するまで。
一つ、機体のどこかに組み込まれた『ユーベルコード発生装置』が破壊されれば、撃破とする。
まあ、こんなもんである。
「……待ってルールがめちゃくちゃ大雑把なんだけど……」
メンカルの感想も尤もである。
マジでこんなものなのだ。いやしかし、こうした非公式の競技であるからこそ、伸びしろという名のガバガバさも必要なのかも知れない。
自由な発想が大事なのである。
如何に自由な発想があろうとも、その発想を実現できる技術がなければ意味がない。そして、仮に実現出来たとしても、その技術をこなすだけの身体能力がなければ宝の持ち腐れなのだ。
故にメンカルは、ガバガバルールを飲み込んで自分の『プラクト』用のホビーを作り上げようとする。
「……相手は『王冠シューター』だけど、こっちは『王冠シューター』にこだわる必要はない……でもあの大きさの王冠を発射って普通に脅威だね……んん?」
そこでメンカルは気がついた。
気がついてしまう。
そう、『王冠シューター』本体はプラスチックホビーである。問題ない。
だが、射出する王冠は金属である。
これはアリなのか?
アリなのである。フィールドで実際に王冠をぶっ放すことができたのならば、それはオーケーなのである。
「思った以上にガバっている……なら、基本プラスチックなら何でもいい……」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
歌い働く小人の夜(リトル・マイスターズ)によって呼び出されたのは彼女の作り出した小型ガジェットである。その助けを借りて、メンカルは次々と強化プラスチックを使った『ユーベルコード発生装置』を組み込んだ本格的な車型のプラスチックホビーを作り上げていく。
「突進力も必要だし、速度も重要……何より、敵の王冠の威力が脅威なら、その爆風でやられるようだと本末転倒……」
車型のホビーは確かに速度や旋回能力、『マニューバ』タイプの操作タイプと相性がいい。
だからこそ、横転や横からの衝撃に弱かったり、ひっくり返ってしまっては自力で復帰することの難しさなど弱点も浮き彫りになってしまう。
「……ガジェット作成技術の応用……」
メンカルは車型ホビーのカウルの内部に隠しギミックを仕込んでいく。
それは趣味である。
実用性が在るかないかはこの際置いておく。隠しておく必要があるのかと問われたら、あまりないかも知れない。
隠しておくことこそに浪漫があるのかもしれないし、それが趣味ってもんである。
メンカルはついに完成させる。
本格的な車型ガジェ……否、『プラクト』ホビーを!
「……隠しギミックもうまく仕込めた。後はこれの操作性に慣れておくだけだね……」
メンカルは『五月雨模型店』のフィールドでもって、作成したホビーの操作性に慣れていく。
『マニューバ』タイプは、その煩雑な操作によって体力ではなく集中力を削り取られる。一つ操作を誤れば、機体はすぐに制御を失ってしまうだろう。
だが、『マニューバ』はそれだけアスリートの身体能力を考慮しない動きができる。
人ならざる者の動きを再現し、時に自分の身体能力以上の動きだって可能とする。
その可能性をメンカルは突き詰め、さらなる習熟を果たすべく、一週間猛特訓を続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『これは‥あれか?コイツをお目見えする舞台ってことか!!』
無許可で作ったプラモ‥すーぱー☆ないあるて(メイドバージョン)を取り出す!‥‥…無許可である。でも作り込みがやばい…が!無許可である!
『まあ、だめならビルドスターインパルスでいくけどね』
前回よりも【武器改造】スキルで作り込みが上がってます
プラスチックホビーは、謂わば趣味の極地であったのかもしれない。
言ってしまえば、無駄の集積。
だが、だからこそ、光り輝くものがあるのである。
人は、趣味に実益を求めない。実利など対極にあるものであるからだ。
「これは……あれか?」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)はふるふる震えていた。
風邪かな? と『五月雨模型店』のメンバーは思ったけど、なんかそんな感じでもないなと思ったので首を傾げていた。
ガイはついにこの日が来たのだと思ったのかも知れない。
それは先日よりずっと温めていた新作。
強化合宿の時もそうであったのだが、コツコツと猟兵としての戦いの合間合間に積み上げてきたものの集大成。
「コイツをお目見えする舞台ってことか!!」
その手にあったのは無許可で作った美少女プラモデルであった。
褐色の肌。
金色の髪パーツ。
すらりと伸びた手足。
オーバーサイズのジャケットは、プラスチック製であるが、柔らかなプラスチックを使っているおかげで稼働を妨げていない。
そして何より。
「メイドバージョン!!」
もう一度言う。
モデルとなった女性への許可は取っていない。無許可である。しかもメイド服バージョンという存在しないバージョンである。
でも作り込みがやばい。
これがガイの趣味の極地、集大成であるというのならば、誰が否定できるであろうか。
いや、まあ、モデル本人は否定出来るであろうが、せっかく作ったその情熱をないがしろにするつもりはない。
だがしかし!
やっぱりそれはあれである。
本人の意思確認だけはしっかりやったほうがいい!
「まあ、だめなら『ビルドスターインパルス』でいくけどね」
ガイは代案を用意していた。
用意周到と言うべきであろうか。というか、やれるのであろうか。『モーション』で動かすにしたって、女性モデルである。
ガワは女性でも、動きをトレースするのガイ。
骨格や体格の差もあるであろうし、きっと動かすには尋常ならざる特訓が必要であろう。
とは言え、ガイの作り込みは凄まじいものであった。
『五月雨模型店』のメンバーの男児たちが、若干恥ずかしげにしながらも興味津々であることは否定できまい。
美少女プラモデルに密かに興味を持ちつつも、なんとなーく周囲のお友達の雰囲気から興味あるとは言えないお年頃なのである。
思春期ってやつなのである!
「……見るかい?」
ガイはそんな男児たちの気持ちをよく理解しているかもしれない。
無駄に爽やかな笑顔でガイは男児達に自分の作ったメイドバージョンの女性モデルを見せる。
男児たちと秘密の、それこそなんとなく悪いことをしているような気持ちになる思い出の1ページを共にガイは刻む。
「……否定しようとは思いませんが……男の人って……」
「すっげー! あの作り込みすげーな!『ツヴァイ』!」
『アイン』と『ツヴァイ』の反応は別れたが、しかしながらガイと男児たちは、かけがえのない友情のメモリーを得て、一週間後の決戦に臨むのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
今回は何作ろうか…
というか金属王冠アリかー…まあユベコアリだし何でもアリかー…
レトロホビー掘り出すか…
ここに取り出したるは王冠シューターの精神的前世
そうビー玉を射出するやつ
まずはプラスチックの外装から組み立て
ああ…未開封コレクションが…
タイプは勿論上から叩くハンマータイプ
トリガーのバネを二重にしてちょっとパワーアップして…
これを…こうして…こうじゃ!
まあ、ボディは素組でいいや
今回はビー玉を作っていきます
用意するのはビー玉の型、鉛、金属用ヤスリ、安全な作業スペース等
後は鉛を溶かして型に流し込んで…固まるのを待つ
固まった鉛だm…ビー玉を形を整える為にヤスリ掛けしていこう
出来るだけ量産しとかないとね
作ることの喜びは、人の心を豊かにしてくれるものである。
それがホビーというものであり、生存に必要不可欠ではないのだとしても、不可逆たる心の栄養となることはもはや語るまでもないことである。
「今回は何作ろうか……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、『五月雨模型店』の制作スペースで一人悩んでいた。
前回は人型ロボットを作って、その出来栄え故に『プラクト』フィールドに投入するのではなく、展示スペースに飾ってしまった。
結局車型ホビーで色々クラッシュしまくったのである。
今も前回作った人型の入門用ロボットは飾られている。ちょっとクオリティやばいなってなるぐらいの見栄えであり、『五月雨模型店』を訪れた年少の少年たちの憧れの的になっていることを今此処でお伝えしておこう。
そんな彼女が今回の戦いに際して、どんなキワモノ……怪作……えっと、傑作を繰り出してくるのか、『アイン』も『ツヴァイ』も興味津々であった。
「何を作るつもりなのでしょう……」
「あの展示してるやつ使わないのかなー……もったいねーなー」
そんな二人をよそに玲はうんうん唸る。
敵は『王冠シューター』。
金属の瓶に栓をする蓋を打ち出すシューティングホビー。その一撃は金属故に凄まじい威力を誇る。
え、というか金属王冠ってアリなんだ?『プラクト』的にと思わないでもなかったが、それ以前に『ユーベルコード発生装置』を組み込んでいるのだから、今更である。
「レトロホビー掘り出すか……」
玲さんがガサゴソして取り出したるは、古めかしいパッケージの箱である。
「あ、あれは!」
「知っているのですか、『アイン』さん!」
「そういうノリはいいんじゃなかったのか」
「『王冠シューター』の精神的前世。そう、ビー玉を射出するやつ」
玲さんが取り出したのは、そう『王冠シューター』の前世。いやさ、先輩! お腹に球体があり、そこに備えられたビー玉を打ち出すシューティングホビー!
ハチヨン駆と共に一斉を風靡した名作シューティングホビーなのだ!
その名も『ビーシューター』!
「まずはプラスチックの外装からッ組み立てて……」
ああ、未開封コレクションが。この瞬間に価値が下落していくのである。オークションサイトでがっかりしてしまうこと請け合いである。
だがしかし。
ホビーとは遊んでこそである。この姿が本来の姿。そして、ホビーの本懐である。コレクターとしての心情はわからないでもない。だが、この場合、シューティングホビーとして遊ぶことのほうが勝るのである!
玲が組み上げていくのは、背面から打ち出すタイプではなく頭上に備えられたハンマータイプ。
トリガーのバネを二重にしてパワーアップも忘れない。
「これを……こうして……こうじゃ!」
なんやかんやで出来上がる『ビーシューター』! それも最初期のモデル! しかしながらメカニックとしての玲さんの才覚冴え渡る出来栄え。
ボディは素組ながらキラリと光るものがある。
そして、玲さんがなにかガサゴソやり始める。
機体が出来たのだから、もう後は練習だけだと思うのだが……。
「今回はビー玉を作っていきます」
誰に解説しているのかわからない。いや、どこかでカメラが回っているのかも知れない。
玲さんは唐突に始まったビー玉作成講座と共にビー玉の型を取り出す。
ん?
「鉛、金属用のヤスリ。安全な作業スペースなど」
ん?
「鉛を溶かして型に流し込んで……固まるのを待つ」
テレッテッテッテテン。
「固まった鉛だm……ビー玉の形を整えるためにヤスリがけしていこうね。バリとりバリとり」
「……」
「……いいのか、あれ」
次々と鉛だm……ビー玉を量産していく玲さんを他所に『アイン』と『ツヴァイ』は自分たちがやべー援軍を迎え入れたことに味方ながら戦慄するしかないのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【理緒(f06437)さんと】
今日も理緒さんのシャッターが絶好調ですね
ナイアルテさんこーゆーのいっぱい持ってそう
今度一度お宅訪問しなければ(よこしまなかんがえ)
けふんけふん
お呼びとあらば参じましょう!
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!(お約束)
しかしアインにツヴァイ……いつか私の前口上が遮られそうな予感すらありますが
助っ人参上です!
今回もスナイパー出し…あるぇ?無い?
どこに落としてきたんでしょう?スーパーナイアルテ?
ま、いっか家にいっぱいあるし
じゃあ今回も汎用機(ヘビーアームズみたいな)で
見せてもらおうかその赤いプラの実力とやらを
模擬戦では弾幕張って負荷かけてきます
菫宮・理緒
【サージェさん(f24264)と】
息を止めてる真剣な表情、ぷるぷる震えてるピンセット。
こんな萌えもありだよね(激写)
こほん。
勝ったから狙われるとか『五月雨模型店』のみんなも大変だね。
ってことで助っ人に……というのは口実!
プラクト楽しかったから、今回もいっちゃうよー♪
操縦は今回もマニューバでいくよ。
機体はもちろん、ナイアルテさんの作ってた『赤いの』
ナイアルテさんお気に入りの機体で戦えるっていいよね!
操縦はこの間のを踏まえつつ、
サージェさんと模擬戦してレベルアップしていくとして、
今回ユーベルコード発生器は盾に仕込もう。
防御力がいちばんあげられそうだからね。
敵の攻撃力凄そうだけど、負けないよー!
グリモアベースにシャッター音が響き渡っていた。
いや、無音シャッターであった。余念はない。
こういうのは気が付かれてはならないものである。それって盗撮っていうんじゃないのっていうツッコミやモラル的なものは時として無視されるものである。
行き過ぎじゃないかなぁって思わないでもないが、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は息を止めて真剣な表情をファインダーに納めて、ご満悦であった。
誰をって、グリモア猟兵である。
事件のあらましを説明する前に理緒とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は潜入していたのである。
もうやりたい放題である。
このクノイチ、非常に良い笑顔である。
「今日も理緒さんのシャッターが絶好調ですね」
「こんな萌えもありだよね」
二人はがっちりとガッツポーズしつつ手を取り合う。
なんだかなぁって思わないでもないが、こういう友情の形もあるのであろう。友情って言っておけば、大体のことなんとなく綺麗な形に収まるのである。
サージェはサージェで、ああいうプラスチックホビーが好きそうなグリモア猟兵のお宅訪問できるのではないかとよこしまな考えに囚われているが、そんなことはお首にも出さない。
「けふんけふん」
「こほん」
二人は咳払いして、激写していたことをさとられぬままこうしてアスリートアースの『五月雨模型店』に転移していたのである。
そんでもって、ときはちょっと流れる。
「お呼びとあらば参じましょう! 私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
「いや、忍べよ。忍ばないと。そのたゆんたゆんしたのでしのべるわけがない!」
くわっ! と『アイン』が刮目しているし、『ツヴァイ』はこういう大人っているんだなぁって顔をしている。
なんとなくサージェはこのまま時が流れれば、いつのまにか自分の前口上を遮るまでに成長するのではないかという予感を感じずにはいられなかった。
「助っ人に……というのは口実だよね。だって『プラクト』楽しかったから、今回もってねー♪」
理緒はそれ以上にホビースポーツとしての『プラクト』の魅力に惚れ込んでいるようである。
理緒は今回もまた『マニューバ』タイプの操縦方法を選んだようであるが、機体が違う。
「お、これって『憂国学徒兵』シリーズの『F型』じゃん!」
「あ、知ってる?」
「でもこれ、色が違うな。オリジナルカラーってやつ?」
『アイン』の言葉に理緒が手にした新しいプラスチックホビーを示してみせる。肩部アーマーが展開し六本腕になるギミックまで再現されているのだ。
ただし、『アイン』たちの知っているそれとはカラーリングが異なるようで、首をかしげている。
「あ、そうなんだ? お気に入りの人がいてねー」
「今回も私はスナイパー出し……あるぇ? 無い?」
あれ!? とサージェは自分のプラスチックホビーを取り出そうとして、それがないことに今更気がつくのだ。
どこかに落としてきたのかもしれない。
だがまあ、いいのである。家に一杯あるのである。余念はない。保存用、観賞用、改造用、ストック用、布教用。
とめどなく数を持つことがコレクターの第一歩である。いやだな、その第一歩。
「えぇ……!? ではどうするのです?」
「今回も汎用機をカスタマイズしましょう。重火器いっぱい使いたいですよね。理緒さんの練習もしなければなりませんし」
『ツヴァイ』の言葉にサージェはうなずく。
幸いにして此処は『五月雨模型店』である。制作スペースもあれば、塗装ブースだってあるのだ。
機体制作には事欠かぬ環境である。
サージェは一から自分の機体を作り上げ、高火力の機体を作り上げていく。
「サージェさん、模擬戦いけるー?」
理緒はサージェが制作している間に盾を作り上げていた。その盾は重装甲であり、そこに『ユーベルコード発生装置』を組み込んでいる。
奇策と言えば奇策であるが、攻撃を防ぐ盾に急所でもある『ユーベルコード発生装置』を組み込むのはリスキーでもあるように思えたのだ。
「敵の攻撃力すごそうだけど、負けないよー!」
理緒には理緒の作戦があるのかもしれない。
こうしてサージェと理緒は操作習熟のために模擬戦を開始する。
「見せてもらおうかその赤いプラの実力とやらを」
「その台詞いいたいよな!」
「ふふー、前回の戦いを踏まえつつレベルアップしたわたしを見せてあげるよー!」
「まずは2対2でサポートしながら模擬戦を行いましょう」
四人はフィールドに飛び込み、模擬戦を交えて、自分たちの機体の特製を見極めていく。
サージェは主に弾幕を張り巡らせ、敵の猛攻を再現する。
理緒は、その猛攻を如何にして凌ぐか、その糸口、突破口を掴むために朝も昼も夜も絶えず特訓に勤しむのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
(子供にビビられる悪人面の自覚アリ
飴玉で餌付けを試みる)
要領はキャバリアのカスタムとそう変わらねー
こー言う細かい作業が何か好きなんだよな
複数の市販プラモデルから良さげなパーツをピックアップ
不足分は汎用パーツで補う
組み立てるのは高火力高耐久の重量型
結局、使い慣れた型に行き着いた感じだな
時間さえありゃ
フルスクラッチでビッグタイガーを再現したんだが
そいつはいずれ個人的にやるさ
安定性重視の4脚型ロボをベースに
火力の高い武装を片っ端からガン積み
ホバー移動用の動力を仕込んで
それなりの機動力も確保した
装甲厚も細かく弄って低重心化を意識
ぶつけられても体勢を崩しにくい仕様だ
後はもうちょい重量が欲しいんだが
これ、どこまでやって良いんだろーな
ちょいちょいとアインを手招きして
これ持ってみ
……子供が片手で持てる。よしOK
ヒロイックな外観にゃならかったが
その方があたし好みだ
仕上げの塗装は思い切って虎柄に
操作方法は勿論マニューバ
よろしく頼むぜ、ミニタイガー
アスリートアースは他世界を知る猟兵であっても、有数のさわやかな世界であったことだろう。
血や硝煙とは無縁。
額に汗し、スポーツの勝敗でもってオブリビオンとの決着を行うことから、死者が出そうなほどの殺人スポーツであっても、どこか爽やかささえあったのだ。
そんなアスリートアースに転移したチェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)の姿はどこか、凄みがあったのだ。
悪人面であった。
チェスカー本人も自覚している。自分がどうにも子供にビビられる顔立ちをしていることに。
しかし、こればかりは生まれ持った顔つきである。如何ともし難い。
『五月雨模型店』のチームメンバーはプラスチックホビーを使うスポーツであるがゆえに、どうにも低年齢層になりがちだ。
チェスカーにとっては、自分の顔を見ただけで泣き出しそうな年齢の子供らがたくさんいる場所に踏み込まなければならないのは、ある意味ストレスであったかもしれない。
けれど、こんなことでへこたれていては仕方ないのである。
手にしたシガレットケースからタバコを取り出して……いや、違うな。あんなビタミンカラーなシガレットないよな。
少年少女たちは、チェスカーの怖い顔立ち以上に、そのシガレットケースから取り出したキャロットカラー……いや、あれ人参!? え、なんで人参!? と子供らはどよめく。
そうでなくたって人参きらーいっていう子供も多いのである。
人参いらないよ! っていうやつである。
「……飴玉、いるかい?」
ぽりぽりと人参スティックをタバコ感覚でチェスカーはやりながら、集まってきた少年少女たちに飴玉を配る。
餌付けという目論見もあったが、彼等は、あれ、もしかしてこの顔の怖いおねーさんはいい人なのでは? と思わせるには十分な行動であったことだろう。
すぐさま彼等はなついてくる。
チェスカーにとっては驚きのほうが大きかったかも知れない。
「んぐ、なんでも言ってくれよな! わからないことがあったら、私たちが教えるからさ!」
「アメに決してつられたわけではありませんから。ですが、プラスチックホビーの門は誰にでも開かれているべきなのですから、ご遠慮無く」
『アイン』、『ツヴァイ』という少女たちも飴玉にほだされている。ちょろい。
「要領はキャバリアのカスタムとそう変わらねーってことか」
チェスカーは『五月雨模型店』の制作スペースに陣取る。
目の前の机の上にあるのはいくつかの市販プラモデルの箱だ。
「どうするんだ?」
「まあ、見ていな。こーいう細かい作業がなにか好きなんだよな」
チェスカーはいくつかのプラモデルの箱を開け、説明書を眺めて自分の思い描く形に近づけられるようにピックアップしていく。
不足分は汎用のパーツで補い、時にはパーツを合わせ、削り、組み替えていく。
彼女が目指しているのは高火力高耐久の重量型。
「これだと二脚では重量を支えきれないのでは……?」
「だから、四脚型にするんだよ。接地性、安定性、柔軟性。どれを考えても四脚のほうがいいだろう。ま、結局は使い慣れた型に行き着くってことだな」
チェスカーは、普段彼女が戦場で使用している量産型キャバリアの四脚モードをプラスチックホビーで作り上げていく。
「時間さえありゃ、フルスクラッチでビッグタイガーを再現したんだが……そいつはいずれ個人的にやるさ」
さらに基本のフレームの上から装甲をかぶせ、火力武装を積み込んでいく。
だが、それだけでは武装の重量で機動力が不足してしまう。ならばとチェスカーはホバー移動用の動力を仕込み、空気圧で滑走するギミックまで積み込んでいくのだ。
「あとは装甲もいじって……低重心化だな。ぶつかられても体勢をくずし難い仕様にすれば、敵の攻撃にあたったとしても、立て直しやすいだろう。後は……」
もう少し重量がほしいところである。
だが、『プラクト』という競技事態が初めてであるチェスカーにとって、この重さというのは、どこまでやってよいものであるのか判別がつかない。
「……」
ちょいちょいと『アイン』を手招きするチェスカー。彼女から手渡されたプラスチックホビーを手にとって『アイン』は首をかしげる。
子供の手でも片手で持てる重量であることをチェスカーは確認したかったのだ。
「よしOK」
「え、これなんか意味合ったのか?」
「あるんだよ。ありがとな。まあ、ヒロイックな外観にゃならなかったが、その方があたし好みだ」
「塗装はどうするんだ? せっかくなら塗装したくならねー?」
「塗装ブースなら、あちらにありますよ。迷彩柄などどうでしょうか?」
チェスカーは少し考える。
確かに迷彩柄なども戦場のフィールドの効果を考えれば、必要かもしれない。けれど、チェスカーが作り上げたのは自分の愛機に寄ったモデルである。
ならば。
「おー虎柄! かっちょいい!」
「そうだな。名付けるなら……『ミニタイガー』ってところか。よろしく頼むぜ、『ミニタイガー』」
完成した虎柄の四脚重戦車。
その産声と共にチェスカーは『マニューバ』タイプによる操作習熟のためにフィールドを小さき虎と共に疾駆するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
光満・桐江
プラスチックホビーを作ってバトルに挑む…
作る楽しみも一緒なスポーツの未来、潰させるわけにはいきませんね!
魔科学アイテムを作る技術を応用して
プラモデルを作っていきますっ
そして完成させたのは…
『モーション』タイプな
大鎌を振るう少女型プラモデルの
「カオスリーパー・エレイソン」!
ユーベルコード発生装置を通して
混沌魔術な見た目の遠距離攻撃もできますっ!
ほんのりメカ要素も混じった
ダークファンタジー風の漆黒のアーマー(マントつき)を身に着けていますが
どちらかといえばスピードタイプ寄りです
もちろんしっかり練習も!
特にスピードを活かした立ち回りと
複数ある遠距離攻撃を的確に使う事は
できるだけ上手くできるように!
『プラモーション・アクト』とはプラスチックホビーを作って、自分自身で操作して戦うホビースポーツである。
通称『プラクト』と呼ばれるそれは、未だ公式化されていないスポーツ競技であったが、どこか楽しさを感じさせるものであったことだろう。
「作る楽しみも一緒なスポーツの未来、潰させるわけにはいきませんね!」
光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)はバーチャルキャラクターとして生まれ、学園生活とダンジョン攻略型MMORPGのNPCであった過去を持つがゆえに、その責任感の強さでもって、アスリートアースにはびこる『ダークリーガー』の魔の手から、『五月雨模型店』を守るために転移してきた猟兵の一人であった。
穏やかさを感じさせる容貌であったが、やはり真面目さのほうが際立つ。
そして、さらに言うのであれば、自分の趣味に対するテンションの高さは、普段の彼女を知る者からすれば、驚きに値するものであったことだろう。
そう、魔科学。
それが彼女の研究の一つであり、みんなを幸せにするための研究であると彼女は信じているのだ。
「魔科学アイテムを作る技術を応用して、プラモデルを作れば……!」
こんな事もあろうかと(イマコソケンキュウノセイカヲタメストキ)彼女は、魔科学研究データを組み込んだプラスチックホビーを作り上げていく。
操作タイプは『モーション』。
操縦者であるアスリートの動きをトレースする操作方法であり、忠実に再現するがためにアスリート自身の身体能力が高くなければ、機体の性能を引き出せぬという弊害がある。
しかし、直感的に操作できるということは、自分の思い描いた動きを再現できるとうことでもある。
桐江の手にあるのは、美少女型プラモデルであった。
手にしたのは身の丈ほども在る大鎌。どこか禍々しい雰囲気を放つ大鎌の刀身は、怪しくきらめいていた。
「おお~! 大鎌がいいな! かっけー!」
「これは……『ユーベルコード発生装置』からの出力を攻撃にそのまま転用するのですね」
『アイン』と『ツヴァイ』が桐江の津切り上げた少女型プラモデルに感心している。
魔科学の研究によってこれまで培った桐江のアイテム作成技術は、プラモデルにだって応用できることを証明して見せた形だ。
「『カオスリーパー・エレイソン』! それがこのプラモデルの名前ですよ。おっしゃられる通り、『ユーベルコード発生装置』を通して混沌魔術な見た目の遠距離攻撃もできますっ!」
ほんのりとメカ要素の混じった装甲。
その漆黒のアーマーが上品さを醸し出している。さらにアーマーから再現されたマントがたなびく姿は、正しく混沌魔術に長けているという説得力を生み出す。
「どちらかといえばスピードタイプ寄りです」
「じゃあさ、早速練習と行こうぜ!『モーション』タイプの操縦方法だったら、倣うより慣れろってな!」
『アイン』たちに釣れられて桐江はフィールドにホビーをセットし、動かし方の練習を行っていく。
己の体を動かせば、それに連動してフィールドのホビーも動きを変える。
自在に動く、自分が作った『カオスリーパー・エレイソン』の姿は、さながらアニメーションのようであり、モニターに映し出された勇姿は桐江の心にどのような影響を与えただろうか。
「スピードが特性だというのならば、そのスピードを生かした立ち回り方というものがあります。さらに複数ある遠距離攻撃をスイッチして切り替えて戦えば!」
「タイミングがずらせて、敵の機先を制することができますね!」
「そのとおりだぜ!」
『ツヴァイ』の指導の元、桐江は徐々に自分と『カオスリーパー・エレイソン』が一体化していくのを感じるだろう。
できるだけうまく出来るように。
その純粋な願に応えるように『カオスリーパー・エレイソン』はフィールドの中を華麗に舞う。
混沌魔術のような光の弾丸がフィールドを埋め尽くし、桐江の思い描く姿にまた一歩自分自身の足で近づいていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シニストラ・デクストラ
判定:POW
「また『プラクト』競技に参加なの兄様。」
『今回も『プラクト』競技に参加です姉様。』
今回ように新たに作り直します。
前回の戦いに出てきた四輪駆動の車型プラスチックホビーに興味が出たのでそれをチョイス。
「命名…昇舞皇帝なんてどうなの兄様。」
『命名…サリーレモナルカなんてどうです姉様。 』
操作系統はまにゅーらじゃないマニューバを選択します。
さっそく練習します。
どっちが操縦するか過酷で不毛なじゃんけんバトルを勝したシニストラが操縦担当。デクストラが武装担当。
「思いっきり走ってぶつけて駆け抜けて楽しいの兄様。」
『思いっきり撃ってぶつけて撃破して楽しいのです姉様。』
アスリートアースに存在する模型店、『五月雨模型店』の前に今日も二人はやってきていた。
誰がって言われたのならば、シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人である。
二人は双子のラスボス。
アスリートアースにおいては野球選手とサッカー選手である。あれ、魔王と勇者を担当していたのではなかったかなと思ったが、まあ、それはわりと詮無きことである。
こういうのは割とノリが大切なのだ。
「また『プラクト』競技に参加なの兄様」
『今回もプラクト競技に参加です姉様』
二人は前回の戦いの教訓を得て、新たなホビーの選択に余念がない。
棚に並べられたプラスチックホビーは、彼等の瞳にどのように映っただろうか。
如何にラスボスとは言え、年齢を考えれば遊びたい盛であろう。
ならば、こうしたプラスチックホビーは彼等の心を育むにはうってつけであった。そして、二人は前回の戦いで思ったのだ。
あのオブリビオン、『ダークリーガー』が使っていた四輪駆動の車型プラスチックホビー、『ハチヨン駆』。
あれがどうにも気になって仕方ないのだ。
「あれってどこに売っているの兄様」
『聞いてみようか姉様』
二人は『五月雨模型店』の店主の元に向かう。かくかくしかじか。まるかいてさんかく。
そんなふうな説明を受けても店主はうなずく。頼もしいが過ぎる。
「『ハチヨン駆』か。ブームは過ぎ去ったが、未だに熱のあるユーザーの多いホビーだな。こっちだ。改造パーツも必要であれば、そこに並んでいる。わからないことが合った聞いて」
「ありがとうなの。これで私達の『ハチヨン駆』が作れるの兄様」
『ありがとう。そうだね姉様。頑丈なのがいいよね』
二人は並ぶ箱を見やる。
様々な種類の車体や、ガワ……俗にカウルと呼ばれる外見の外装も選ばなければならない。
「操作系統はまにゅーらじゃないマニューバね兄様」
『そう、まにゅーらじゃないマニューバだね姉様』
二人は和気藹々と『ハチヨン駆』を作り上げていく。
とは言え、出来上がったものは二人のものだ。せっかくだし名前をつけたいと思って、二人は双子ならではの息ぴったりにいっせーの、で。
「命名……昇舞皇帝なんてどうなの兄様」
『命名……サリーレモナルカなんてどうです姉様』
あ、揃わないんだ、そこは?
二人は微妙に微妙な空気が漂いながらも早速練習を始めようとする。
だが、命名時に流れた微妙な空気のせいであろうか。どっちが操縦するか過酷で不毛なじゃんけんバトルが始まってしまう。
まあ、わかる。
絶対操縦のほうが楽しい。
「おもいっきり走ってぶつけて駆け抜けて楽しいの兄様」
『おもいっきり撃ってぶつけて撃破して楽しいです姉様』
言わずともわかる。
じゃんけんバトルを制したのはシニストラ。
ひゃっほー! とフィールドを走り抜ける『ハチヨン駆』。
結局、名前はどっちになったのかな!?
『昇舞皇帝』!?
『サリーレモナルカ』!?
どちらにしたって、二人で一人のラスボスは、疾走する『ハチヨン駆』の楽しさに心奪われながら、心ゆくまでフィールド内を駆け抜けまくるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
よう元気してたか。アインの嬢ちゃんに店長、それにツヴァイの嬢ちゃん。
「…お久しぶりです。」
前回作った『アニメ風巫女美少女プラモデル』もこの通りあるしな。とはいえ、新たな強敵に対抗する為に改良する必要があるみたいだな。
前みたいにアドバイスも貰いながら改良開始だぜ。
完成だ。脚部のホルダーから展開する結界霊苻ビットで防御力の向上は据え置きに、巫女服スラスターの増設により機動力の更なる向上。
極めつけは、この妖刀『プラ切丸V2』だ。(ごちゃごちゃ付いた大刀)
こいつは破魔弓モードになるんだ。変形武器は浪漫だぜ。
「…使い勝手が変わってますから練習あるのみですね。」
【『モーション』タイプ】
【アドリブ歓迎】
赤い鬼面と共に一人の巫女服姿の女性が『五月雨模型店』に入店していく。
その後姿を見ていた者たちは、巫女さんが模型店に入店するというある意味ファンタジーな光景に一瞬目を疑った。
しかし、紛れもなく神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)とその相棒である桜は冷やかしでもなんでもなく、この『五月雨模型店』に用事があったのだ。
『よう元気してたか。『アイン』の嬢ちゃんに店長、それに『ツヴァイ』の嬢ちゃん』
赤い鬼面がカタカタと揺れながら言葉を紡ぐ。
ヒーローマスクである凶津の姿は、猟兵であるがために違和感を感じさせない。
彼がもし猟兵でなかったのならば、大騒ぎであるのだが、そんな心配はない。
「ああ、変わりないようで何よりだ」
「久しぶりー!」
「……お久しぶりです」
「その節はお世話になりました……やはり、今回も応援に来てくださったのですか?」
店長は相変わらずであるし、『アイン』は元気だ。前回、『ダーク化』されていた『ツヴァイ』もおおよその事情はわかっているのだろう。二人を迎え入れ、今後の対策を練ることにするのだ。
「前に使ってた巫女型のやつまた使うのか?」
『ああそのつもりだぜ。とは言え、新たな強敵に対抗する為に改良する必要があるな。前みたいにアドバイスをもらいたいんだが』
「それならば私達が」
『ツヴァイ』がかいつまんで説明してくれる。
今回の敵チームが使うのは『王冠シューター』と呼ばれる金属の瓶を栓する王冠を打ち出すシューティングホビーであるというのだ。
プラスチックホビーであれば、なんでも動かせるという間口の広さが、ときとして凶悪な存在として立ちはだかる。
しかし、プラスチックホビーは発想の自由さが売りなのだ。
この程度で対処出来ないようであれば『プラクト』アスリートとしての名折れである。
「敵の王冠の威力は尋常ではありません。受け止める、という選択肢はあまりないかもしれません。なんせ、打ち出すのは金属。受け止めるのはプラスチックなのですから」
「……では、やはり」
桜は改良する方向性を見定める。
敵の攻撃を受け止めるのは、難しい。
ならばやはり鍵となるのは機動力だ。
「脚部ホルダーから展開するように結界霊符ビットを作り込もう。そして、巫女服スラスターを増設して、瞬発力を上げる」
店主の提案に沿って凶津と桜は作業を進めていく。機動力のさらなる向上は急務だ。
『なあなあ、やっぱりこの妖刀『プラ切丸V2』ははずせねぇよな!』
「……ごちゃごちゃ突いてますが?」
桜の疑念も尤もだろう。凶津が作り上げた『プラ切丸V2』は、どう見たって刀と言うには大きすぎた。
何せ変形機構のついた刀なのだ。
『コイツは破魔弓モードになるんだ。変形武器は浪漫だぜ』
ガシッ、と店長と凶津が手を取り合う。いや、手はないけど。
ともかく意気投合した二人の武装改造に桜は、異性としてなんともわからない雰囲気であったが、しかし、武装が変われば立ち回りも変わる。
「……使い勝手が変わってますから、練習あるのみですね」
もともと巫女型プラモデルは、桜の体をトレースして動かす『モーション』タイプだ。
武器が変われば操作感は変わるし、今回は一撃受けてしまえば、それだけで致命傷になりかねない。
ならば、やはり『モーション』タイプとして自分の動きとプラスチックホビーの可動範囲、そして変更された武装に寄る重量などのバランスを知り尽くさなければならないだろう。
凶津は桜の動きをフィードバックして、さらなる微調整を。
桜はフィールドで常に体を動かし続け、少しの差異も見逃さず、体に機体の動きを染み込ませていく。
こうして二人の作り上げた巫女型プラスチックホビーは完成を見せたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
わー、またプラクトだ!
今度は人型のロボット作ろーっと!
そんでえーっと、我がサポートAIのピット君よ、王冠って何?
……あぁ、レトロな瓶の蓋かぁ!
じゃあどこをどんくらい撃ったらあの勢いを殺せるか、計算しといてね☆
その間にこっちはプラモの用意!
何かスナイパー的な子、いるかな?
基本的にはそのままでいいけど、相手の攻撃の威力が高いなら装甲は削っちゃってもいいな。
その分武装を積んどこう!
手持ちのスナイパーライフル、頭にマシンガン、肩に大型砲……胸の装甲が開いていっぱいマイクロミサイル撃つのもロマンだね☆
さて、こんだけあれば対抗出来るかな?
今回はスナイパー技能を活かすモーションタイプ!
後は練習しよーっと☆
「わー、また『プラクト』だ!」
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は、アスリートアースにおけるオブリビオン、『ダークリーガー』の巻き起こす事件を知って、さらに言えば、その事件の中心となるスポーツ競技が『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』であることに喜んだ猟兵の一人であった。
彼女はこうしたプラスチックホビーを使ったものが大好きなのだ。
前回作ったホビーを使ってもいいかもしれない。
けれど、やっぱり今回は……。
「人型のロボット作ろーっと!」
そう、前回から打って変わって人型ロボットへの浪漫に溢れたニィナは『五月雨模型店』で人型ロボットのシリーズを眺める。
一口に人型ロボットと言っても様々なシリーズがあるのだ。
『憂国学徒兵』シリーズは、リアルなロボットものであるし、『青空戦記』はファンタジックなデザインのロボットが多数登場する。
また人型であるからこそ、多くのデザインが存在していて、どれもがニィナの心の琴線を撫でてくるのだ。
だが、それ以上にニィナには気になることがあった。
「我がサポートAIのピット君よ、王冠って何?」
ニィナはずっと気になっていたのだ。
敵が使うホビーの『王冠シューター』。その由来を。シューティングホビーであるということはわかっているのだが、王冠を飛ばす?
王冠と言えば、王様がかぶっているアレであるのだが……。
AIから提示された画像を見て、ニィナは得心が行く。
「ああ、レトロな瓶の蓋かぁ!」
金属の蓋を飛ばすシューティングホビーは、『プラクト』に置いて絶大な威力を持つ。
何せこちらはプラスチックなのに相手は金属を打ち出してくるのだ。盾で防いでも盾ごと破壊されかねないのだ。
サポートAI端末 ピット・パーン(サポートエーアイタンマツ・ピット・パーン)が示した王冠もまたご多分に漏れず。
「うんうん、じゃあどこをどんくらい撃ったらあの勢いを殺せるか、計算しといてね☆」
難しいことはAIに丸投げしておいて、ニィナは早速人型ロボットのプラスチックホビーの作成に勤しむ。
幸いにして『五月雨模型店』には制作スペースがあるのだ。
「うーん、なにかスナイパー的な子、いるかな?」
「それならここと、ここだな」
店主が示す先にあったのはスナイパーライフルをもした武器を手にする人型ロボットのプラモデルの箱があった。
一つは身軽な軽装で軽快に飛びながら射撃するタイプ。
もう一つは足を止めて、多少の攻撃ならば防ぐバインダーをまとったタイプ。
どちらもニィナの興味を引くデザインであったが、『王冠シューター』の攻撃力は尋常ではない。
生半可な防御ではあっさりと盾ごと壊されかねない。
ならば、とニィナが選んだのは、装甲を排して火力を詰め込むスタイルであった。
「改造パーツはこっち。火力を増したいのならば、マウントする場所、バランスを考えた方がいい」
「それもそうだね。基本的にはこのままでもいいかなって思ったけど、敵の攻撃が強いなら、装甲は削っちゃってもいいかな」
ニィナは機体から装甲を剥ぎ取って、そこに武装をマウントしていく。
手持ちのスナイパーライフルはもちろん、頭部にマシンガンを設置する。これは牽制用だろうか。
さらに肩部に大型砲をマウントし、胸部装甲をハッチオープンできるように改造を施していく。
そこにマイクロミサイルの弾丸を仕込んでいくのだ。
「ふふ、これもロマンだね☆」
全弾発射。
これが好きじゃない男の子なんている? いるわけないのである。ニィナは女の子であるが、そのロマンを理解する稀有なる存在であるのだ。
「さて、これだけあれば対抗できるかな?」
『モーションタイプ』を選択しながらニィナは完成した機体をフィールドに投入する。
仮想王冠として用意された標的を前にニィナはAIから提示された情報を元に王冠の勢いを殺す練習に勤しむ。
「後は練習あるのみ☆」
仮想王冠を相手にニィナは次々と己の機体に装備された火器を使用し、感触を確かめていく。
王冠は平べったい。
ならば、真正面からではなく角度をずらせば軌道は変わるかもしれない。相手がパワータイプであれば難しいかもしれないが、連射を主とするタイプならば、一発で軌道をそらすことも可能だろう。
ニィナは、その感触を体に覚え込ませながら、徐々にスナイパーとしての才能を開花させていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
うぇいうぇいうぇーい!
また遊んでるのー?
王冠シューター!そんなのありなんだー
早く言ってよー知ってたら火炎放射器とか爆弾とか酸とか仕込んだのに!
●やめろやめろという顔をするバラバラXくん
●練習
いっけー!バラバラXくん!バラバラ攻撃!
そう彼は命を持っている!
からボクはなんかいい感じで命令…お願いするだけで彼が頑張ってくれるんだ!
友情の勝利だね!
経験値も入る!
王冠シューター対策は…避けてもいいけど敢えて受ける方向で!
彼に使われた|VBA金属分子《宇宙怪獣の殻》を操作し全身を硬化させれば王冠にも耐えられる!ていうかめちゃ硬いこれ!
むしろブレードで切り裂いて!バラバラXくん!
「うぇいうぇいうぇーい!」
それはハッピーなパーティなピーポーの鳴き声であった。
言い方に語弊があるかもしれないが、楽しげな雰囲気は『五月雨模型店』にとっては歓迎すべきことであっただろう。
「また遊んでるのー?」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はぐるぐるまわりながらダイナミック入店を果たし、彼等の一週間に迫った『ダークリーガー』率いる『ダーク化』されたアスリートたちとの決戦を知る。
『五月雨模型店』は狙われているのだ。
『ダークリーガー』にとって、『ダーク化』したアスリートたちを効率よく集めるためには、人数制限のないチーム戦である『プラクト』は格好の標的なのだ。
さらに言えば、前回の戦いによってメンバーを増やしている『五月雨模型店』は、オブリビオンである『ダークリーガー』にとって是が非でも打倒したい標的である。
「ああ、そうなんだよなー。しかも敵が『王冠シューター』使うんだ」
「『王冠シューター』! そんなのありなんだー」
ロニはそれでも楽しげである。
あっけらかんとしているというか、楽観的と言うか。
「あれがアリなら早く言ってよー知ってたら火炎放射器とか爆弾とか酸とか仕込んだのに!」
ロニの言葉にポッケから顔を出す『バラバラX』がとても嫌そうな顔をしている。
下手に知性を宿させたせいで、自分の創造主がろくでもないことばっかりすることに憂いているのかもしれない。
だがしかし、彼の地獄はこれからである。
「いっけー!『バラバラX』くん! バラバラ攻撃!」
ロニのメチャクチャな指示の元、バラバラになった人型ロボットが凄まじい勢いで飛んでいく。
フィールドにあるのは仮想王冠である。
『王冠シューター』の放つ王冠は、金属製であるがゆえに、当たればプラスチックホビーなんて粉々になってしまう。
防御がほぼ意味を成さないなんていうのは、正直言って無理ゲーというか、ガバガバなルールの隙を突いて来られたというべきか。
「それだけ敵も本気ってことだろうさ!」
「でもでも、大丈夫さ。ボクと『バラバラX』くんならね!」
とは言え、ロニはいい感じで命令という名のおねがいをするだけで『バラバラX』はがんばってくれる。
これが友情の勝利。
そんでもって経験値も入る!
なんて素敵な世界なのだろうとロニは感激さえしている。とは言え、その王冠にどう対処するつもりなのだろうか。
「避けてもいいけど、あえて受ける方向で行こうよ!」
「えー!?」
「彼に使わえれた|VBA金属分子《宇宙怪獣の殻》を硬化させれば、王冠にも耐えられる! ていうかめちゃ硬いこれ!」
確かに思念を伝達するために使った外殻は硬い。
何せ、宇宙の未踏領域に存在していた宇宙の怪物のものである。プラスチックと混ぜてあると言っても、すでに本当にプラスチックなんか? と疑わしさもあるものである。
けれど、これがフィールドで動いている以上、『プラクト』的にはオッケーなのである。ガバガバルールが幸いしたともいえるだろう。
「むしろ、ブレードで切り裂いて!『バラバラX』くん!」
そんなはちゃめちゃな無茶振りに答えなければならない『バラバラX』くんの明日はどっちだ。
いや、確実に一週間後苦労して仕方ないことになるのは明白である。
無茶振りも信頼のうちと言えば美しいのだろうが、なまじ知性があるのが悲しい。
無茶をしなければならない。
そう理解できるだけの知性が時として『バラバラX』くんに、逃亡してもいいんじゃないかなって、そんなことを思わせるかもしれない!
偽りの友情とならぬように、ロニは『バラバラX』くんを説き伏せることができるのか――!
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ダークフィールダー』
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POW : 秘打ミラクルハリケーン
【その場での一本足高速回転】で超加速した武器を振るい、近接範囲内の全員を20m吹き飛ばし、しばらく行動不能にする。
SPD : レーザービーム投法
速度マッハ5.0以上の【殺人レーザー】で攻撃する。軌跡にはしばらく【質量を持つ光】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。
WIZ : 球場大乱闘
攻撃が命中した対象に【狂乱の刻印】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【狂乱した周囲の人々の乱闘】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:皿田
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
一週間後。
『五月雨模型店』は物々しい雰囲気に包まれていた。
『プラクト』の試合の様子は、商店街の巨大モニターにも映し出され、フィールド内の激闘を伝えるだろう。
ネットでもしっかり中継されているため、その配信を見た者たちは、きっと『プラクト』というホビースポーツに興味を持ち、さらに競技人口を多くするかもしれない。
ともあれ、猟兵達と『五月雨模型店』の準備は整った。
「ならば、改めて勝負と行こうか!」
『ドライ』率いる『ダークフィールダー』たちが一斉に手にした『王冠シューター』たちをフィールドに投入する。
二頭身のロボットのようなプラスチックホビーがわらわらとフィールドに降り立っていく。
その腹部に備えられた王冠は、言うまでもなく金属。
放たれる一撃はプラスチックホビーである他の攻撃の追随を許さない。
「後で泣きを見たってしらねーからな! こっちだって一週間あったんだ! 対策くれーしてるんだからな!」
「いいですから、ちゃんとやりましょう!」
「ふっ、ならば見せてもらおうか! その実力とやら! いくぞ!」
戦いが始まる。
いつだって、その合図が『プラクト』の試合の始まりを告げる。
皆、高らかに叫ぶのだ。
「レッツ・アクト――!」
狭野・実琴
勝負?違うね。蹂躙だよ。
要塞から搭載機たちをどんどん出撃させて王冠シューターたちに突撃させる。
当然、王冠シューターたちの攻撃で搭載機たちは破壊されるだろうけど、要塞には私が寝食を完全に捨て去って作った腐るだけの量の軍団がいる。次の王冠が装填される前に後続機たちに倒させるよ。
それでも尚、攻撃力の差は圧倒的だろうけど、私には連中以上の攻撃力を出す手段がある―――要塞による敵陣への特攻だよ。
敵が集まっているところに、又は搭載機たちに敵をある一箇所に誘導させて、そこに要塞を落とす。要塞の特攻を防ごうと王冠を撃たれまくるだろうけど、それも搭載機を盾にすればいい。
スケールが小さいんだよ、ダークリーガー。
フィールドに飛び出す数多のプラスチックホビーたち。
『王冠シューター』をたぐる『ダーク化』されたアスリートたちである『ダークフィールダー』たちが一斉に腹部に備わった王冠を放つ体勢を取る。
「一斉射ならば勝負はすぐに着くが! 対策をしてきていると言ったのならば、油断はいるまいよ!」
『ドライ』と呼ばれた男児の声に呼応するように『ダークフィールダー』たちの『王冠シューター』に備わった『ユーベルコード発生装置』が煌めき、王冠が一斉に射出される。
それは殺人的なレーザーの光条のように戦場を席巻する。
そもそも金属王冠の時点で反則じみた威力を持っているのだ。
プラスチックホビーなど掠めただけで破壊されてしまうだろう。
だが、その圧倒的な蹂躙のような王冠の斉射を前にしても、天才は孤高であるのだ。
「勝負? 違うね。蹂躙だよ」
狭野・実琴(元天才・f38190)は、『巨大空中要塞』から次々と搭載機たちを出撃させ、『王冠シューター』をたぐる『ダークフィールダー』たちに突貫させる。
当然、王冠によって搭載機は破壊される。
煌めく光は、搭載機が爆発する光景であったことだろう。
さながらアニメーションのような光景がモニターに広がり、それを見ていた観客や商店街の皆さんの歓声が上がる。
まるで映画かなにかかと思うほどの光景に、実琴は確かに己の言葉を違えなかった。
一方的な蹂躙。
されど、それは実琴側に起きたことであった。
「そのとおりだな! こちらが諸君らにする蹂躙ではあるが!」
『ドライ』の声に実琴は首をかしげる。
だが、実琴は焦ってもいなければ、別段変わらず表情で『巨大空中要塞』を操作する。
これだけの巨大な要塞を一人で操作し、さらには搭載機すらも操っているのだ。尋常ではない操作能力である。
だが、真に驚愕しなければならないのは、そこではない。
才能の奴隷(サイノウノドレイ)とはこのことである。
彼女は寝食を忘れるほどに没頭して作った搭載機を惜しげもなく投入している。その物量は正直に言えば、実琴の『巨大空中要塞』から飛び出す搭載機だけで『ダークフィールダー』たちの数を圧倒しているのだ。
「そして……君たちの『王冠シューター』……連射タイプでなければ、その腹部にセットする王冠は単発式だね。その次弾が装填される前に」
「こちらの隙を着くためだけにあれだけの数の搭載機を囮にしたというのか! 馬鹿げている! どれだけのプラモデルを作ったというのだ!」
「さあ、数は覚えてないけど、問題でもあるかな?」
実琴は首を傾げ、次々と搭載機を発進させていく。
それは謂わば圧倒的な奔流そのもの。
どれだけ攻撃力が高かろうが、物量という名の圧力で持って押し切れば関係など無いのだ。
「数の暴威!」
『ドライ』はしかし、冷静に戦局を見極めていた。
確かに搭載機の数は脅威だ。けれど、それ以上に実琴が優れていたのは王冠を防ぐ手立てとして搭載機を使うだけでなく、『ダークフィールダー』たちを一箇所に誘導するように搭載機でもって追い込んでいることだ。
「こちらを囲って一箇所に集めてすることと言えば!」
「そのとおり……確かに攻撃力はそちらの方が上。圧倒的だよ。でも……私にはそれ以上の攻撃力を出す手段がある――」
そう、すなわち。
単純な質量である。
どれだけ王冠が金属で強度を持っていたとしても、それすらも押しつぶすことのできるものを実琴は持っている。
「――要塞による特攻だよ」
「正気か!? それ作るの大変過ぎるだろうに! それだけの努力を惜しげもなく投入する!?」
「いやー……味方でよかったな」
「本当です……」
『アイン』と『ツヴァイ』が実琴の『巨大空中要塞』が敵陣めがけて特攻ならぬ、質量兵器として落下していく姿を見やる。
敵であったのならば、あのメチャクチャなやり方は確実にこちらの敗北を呼び込むことになっただろう。
けれど、実琴は猟兵で、味方である。
本当に良かったと彼女たちは『巨大空中要塞』に飛ぶ王冠など物ともせず一気に落着し、凄まじい衝撃波をフィールドに荒れ狂わせる実琴の一撃を見送ることしかできなかった。
「スケールが小さいんだよ、ダークリーガー」
実琴の言葉と共に吹き飛ぶ『ダークフィールダー』たち。
天才たる所以。
それは己が可能と思ったことを現実に変えていくことである。可能性を手繰り寄せ、それを確実としていく。
数%の可能性の連続。
その連続こそを実琴は積み重ね、序盤から『ダーク化』したアスリートたちを盛大に蹂躙するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シニストラ・デクストラ
「レッツ・アクトなの。発進、昇舞皇帝なの兄様。」
『レッツアクトです。起動、サリーレモナルカです姉様。』
結論“昇舞皇帝”と書いて[サリーレモナルカ]とルビる。
シニストラの≪操縦≫で時に≪ダッシュ≫で華麗に攻撃を回避し、時に苛烈に機体をぶつけ敵機を≪吹き飛ばし≫ます。
デクストラの≪乱れ撃ち≫で車体に装備させたロボット系作品の銃座から≪誘導弾≫を撃ちだす改造で攻撃します。
シニストラの旧魔王軍を召喚。それぞれ自分の属性をモチーフにしたハチヨン駆(建築車仕様)にのり…フィールドに町を作ってもらいます。
王冠シューター…あれって遊ぶ場所が平行じゃないと真っ直ぐ飛ばないよねの作戦(ぁ)
「レッツ・アクトなの。発進、昇舞皇帝なの兄様」
『レッツアクトです。起動、サリーレモナルカです姉様』
シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人は自由奔放であった。
ラスボスであるのだから、多少の強引さ、奔放さは美徳とされることだろう。特にデビルキングワールドであったのならば尚更である。
彼等がたぐるプラスチックホビーである車型ホビー『ハチヨン駆』はフィールドの中を一気に疾走する。
このスピード感こそが『ハチヨン駆』の醍醐味。
前回、オブリビオンである『ダークリーガー』が使用していた『ハチヨン駆』は凄まじい速度で戦場を駆け抜けることによって炎のようなオーラすら放って猟兵たちを圧倒した。
それにあやかって二人は自分たちの『ハチヨン駆』を作り上げたのだ。
|『昇舞皇帝』《サリーレモナルカ》とルビ打ちすることによって決着した命名戦争。
その名は伊達ではない。
圧倒的な速度で持って『ダークフィールダー』の放つ王冠を苦もなく躱す。
当たれば、どうあっても自分たちのプラスチックホビーは撃破されてしまうだろう。弾丸のように飛び交う王冠は、あまりの威力故に打ち込まれるたびにフィールドを破壊していく。
だが、『ハチヨン駆』を舐めてはいけない。
どんな悪路だって走破してみせる凄まじいモーターの回転エネルギーがシニストラの操縦によって駆け抜けていくのだ。
『今だよ、姉様』
「わかっていますわ、兄様」
前輪がロックした瞬間、その機体が一回転して『王冠シューター』を吹き飛ばす。
さらにデクストラが車体に装備させたロボット系の銃座から誘導弾を打ち出し、彼等を撃破するのだ。
「回転打法が自分たちだけのものと思うなよ!」
『ダークフィールダー』たちも負けては居ない。
自分たちの機体をぐるぐると回転させ、まるで一本足打法のように竜巻を巻き起こしながら連射タイプの『王冠シューター』がパワータイプに劣るとは言え、ものすごい勢いで無差別に王冠を打ち放つのだ。
だが、それらは先行した猟兵の放った搭載機によって阻まれ、シニストラとデクストらは車体を更に走らせ、王冠の雨の中をかいくぐる。
「兄様、そろそろ魔王シニストラ軍(サタナ・エゼルチト)を」
『姉様、そうだね。幸いにして、同じようなことを考えていた人もいたみたいだし』
二人の瞳がユーベルコードに輝く。
瞬間現れるのは、百を超えるシニストラ四天王。
いや、四天王なのに百を超えるとはどういうことなのだろうか。いや、考えては駄目である。
こういう時、思考したほうが負けなのである。
「さあ、いくのですシニストラ四天王。自分たちの属性をモチーフにした『ハチヨン駆』でフィールドを駆け抜けて、街を作るのです、兄様」
『街を作れば、障害ができる。そうなれば、遊ぶ場所が並行じゃないとまっすぐ飛ばないし、王冠の威力も障害物に阻まれて減退するのです、姉様』
二人のユーベルコードは、百を超える四天王たちによって、フィールドに障害物となる街を生み出していく。
そうすれば、障害物に阻まれ、王冠の射撃精度は下がるし、ぶつかれば威力だって減退させられる。
「考えたな! だが、その街を作る前に諸君らの配下を全て破壊すればよかろう!」
『ドライ』の言葉に『ダークフィールダー』たちが一斉に嵐のような一本足打法のごとき王冠の乱打を行う。
だが、それよりも早く、百の四天王たちが一斉に『ハチヨン駆』を駆り、フィールドを駆け抜けていく。
駆け抜けていくたびに街が組み上がり、さらに障害となって『王冠シューター』の一撃を削いでいくのだ。
「このユーベルコードを使った時点で、ね。兄様」
『そうだよ、使わせちゃた時点で、そっちの勝ちは限りなく低なるんだよ。姉様』
二人のユーベルコードがフィールドを書き換えていく。
それは、これから続く猟兵たちの戦いを助け、さらにシニストラは『ハチヨン駆』でもって駆け抜け、激突する。
デクストラは銃座から身を乗り出すようにして誘導弾を打ちまくって、デビルキングワールドならではのような、カオスな戦法で『ダーク化』されたアスリートたちを翻弄し続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『なんか‥さすがに可愛そうだし、やめとくか』
わずかながらの良心と巧く操縦できるか怪しいってことですーぱー☆ないあるてじゃなくてビルドスターインパルスで行くぜ。‥‥ちなみに被弾するとキャストオフするのは内緒だ!
【オーラ防御】を纏わせ、ライフルでの【制圧射撃】、ブレードでの【鎧砕き】で攻撃するぜ!
ユーベルコード【二天一流『蒼月一閃』】で切り捨てるぜ!
人の形をしたプラモデル。
確かに本人ではないし、痛覚があるわけでもない。けれど、人の形をしたそれを戦わせ、また時に壊れる可能性があるのが『プラクト』と呼ばれるホビースポーツである。
とあれば、やはり仰々しい傷がついてしまうのは避けたいと思うのが人の心理であったことだろう。
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は見知ったグリモア猟兵の姿をしたプラスチックホビーを片手に悩んでいた。
「なんか……流石に可愛そうだし、やめとくか」
手にしたプラスチックホビーの出来栄えは誰もが認めるところであったことだろう。
これを見た少年たちとの思い出にも傷が入るような気がして、ガイはどうにも気乗りしなかった。
それに今回の戦いは一撃を受けてしまえば、ほぼ防御不可の『王冠シューター』が相手なのだ。
「それに被弾するとキャストオフする仕様だしな……」
そんなギミックまで組み込んでいるのは、流石に聞いてない。
いや、そもそも無許可で作ってる時点で聞いている聞いていないの話ではないのだけれど。
まあ、ともあれガイは元々『プラクト』用に作っていた『ビルドスターインパルス』で『フィールド』へと突入する。
すでに先行した猟兵たちの戦いで持ってフィールドは混沌としていた。
巨大な空中要塞がフィールドに突撃し、落着した衝撃で一度は更地になったのだが、さらに猟兵のユーベルコードに寄って障害物となる市街地が生み出されている。
王冠の威力は確かに凄まじいものであるが、あくまで地面に平行にしか打ち出せない。それが『王冠シューター』と呼ばれるプラスチックホビーの欠点でもあったのだ。
「味方が残してくれた有利な地形……これは利用しない手はないな!」
「地形を変えるほどの力……! なるほど、これは打倒し甲斐があるというものだな!」
『ドライ』と呼ばれていた『ダーク化』した男児が、なんともまあ漢らしいことを言っているではない。
割と嫌いではない部類である。
そんな彼が放つ王冠の一撃はパワータイプゆえの威力を誇る。
だが、先にも言ったように『王冠シューター』の欠点は王冠を地面と水平にしか放てないという点にある。
『アイン』と『ツヴァイ』はそれを見切っていた。
銃撃で注意を引きつけ、ツーマンセルで行動することに寄って狙いをつけさせる囮を。そして、放たれた王冠を横合いから打撃で持って反らす迎撃役。
これらをコンビで組むことによって尋常ならざる一撃に対応しているのだ。
「2対1、よもは卑怯とは言うまいが!」
「なら、言わんでいーだろうがー!」
「なるほどな……なら行くぜ!」
ガイは、彼等の戦いを目の当たりにして、ライフルでの射撃で王冠の一撃を逸らし、ブレードの一撃で叩き落とす。
「次の王冠を装填するまでが敵を撃破するために可能な時間なら!」
ガイの瞳がユーベルコードに輝く。
蒼い残光を残す超神速の二連斬撃が『ダークフィールダー』たちの『王冠シューター』を一瞬で切り裂き、その機体を爆発させる。
「二天一流『蒼月一閃』(ニテンイチリュウ・ソウゲツイッセン)――月に煌めくわが刃!これぞ超神速の蒼き月なり!!」
蒼く残る斬撃の残像。
それを背に『ビルドスターインパルス』が刀を収める。
その光景は巨大モニターに映し出され、『五月雨模型店』の優勢を知らしめるようにガイは王冠を攻略してみせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
よーし!そんじゃ正々堂々と、レッツ・アクト!
今日もカメラあるの?
いつもの服だから地味だけど、とりあえずポーズとってアピールしとこー☆
まずは距離を取って【スナイパー】を担当しよう。
王冠自体は飛んでくるかもだけど、相手からすれば【迷彩】塗装のこの子は見つけ辛いだろうし、的が遠ければ当てにくいもんね。
先に数を減らせたら後々楽なはず!
それでも相手が多ければ近付かれて攻撃されるかな。
ここで胸のミサイルの出番!
王冠を上から撃って叩き落としつつ相手もやっつけちゃうぞ☆
……モーションで機体の胸部装甲開く時、にぃなちゃんも同じ動きしなきゃかな?
とゆー事でジャケットの前をぱっと開けて……大丈夫、中は水着だよ☆
アスリートアースにおいてスポーツ競技はスポンサーが付いているものである。
チームを運営するには選手がいなければならないし、報酬は一試合ごとに払われる。故にアスリートたちは年俸ではなく、その試合の活躍によって支払われる報酬を競い合うのだ。
新興のスポーツ競技である『プラモーション・アクト』も同様である。
故に、その戦いの様子は競技人口を増やすためにも多くの人々の目に触れなければならない。
『五月雨模型店』と『ダークリーガー』の率いるチームの激闘は、商店街のアーケードにある巨大なスクリーンや、動画配信サービスにおいて流されているのだ。
「今日もカメラあるの?」
ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は前回の戦いを踏まえて、この戦いが多くの人の目に触れることを意識している猟兵ん一人であった。
今日はいつもの服装であるから地味であると彼女は言っているが、とんでもないことである。
いつもの服装からしたって彼女の見事なスタイルは隠しきれるものではなかった。
「よーし! そんじゃあ正々堂々と、レッツ・アクト!」
びしっとポーズをとってアピールする。
こうしていれば、スポンサーに付いているプラスチックホビーを提供している企業からコマーシャルなどの起用の連絡が来てしまうかも知れない。
けれど、ニィナの気持ちとは裏腹に、彼女の戦い方は静かなものであった。
彼女の作った機体はスナイパー仕様。
それも敵である『ダーク化』した『ダークフィールダー』たちのたぐる『王冠シューター』の圧倒的な攻撃力を考慮して、見つかる前に倒してしまうという作戦なのだ。
機体に施された迷彩と、他の猟兵が築き上げた市街地が障害物となって彼女の機体を隠すのだ。
「この……市街地が邪魔だ! 全て吹き飛ばす!」
『ダークフィールダー』たちが一斉に『王冠シューター』より放つ王冠で持って築かれた市街地を破壊しようとする。
だが、それを『ドライ』は制止しようとする。
「よせ、それでは敵の思うつぼだぞ!」
その言葉は届かず、『ダークフィールダー』たちは次々に市街地を王冠で破壊していく。けれど、それはニィナにとって好都合であった。
王冠が放たれたということは、その直線上に敵が存在していることを知らしめるからだ。
「先に数を減らせたら後々楽なはず!」
ニィナの機体にとって先制攻撃は約束された攻撃そのものであった。
確かに『王冠シューター』の攻撃力は尋常ならざるものである。何せ放つのが金属だ。対するこちらの防御はプラスチックに頼らざるを得ない。
受けてしまえば、防御ごとへし折られてしまうだろう。
だからこそ、ニィナは敵に攻撃を誘発させて位置を見つけ、スナイパーライフルで撃ち抜くことに決めたのだ。
「ヒットだね♪ ふふ、でもこっちに気がつくよね」
ニィナのはなった弾丸は『王冠シューター』をいくつも撃ち抜く。けれど、同時にそれは自分の存在を知らしめるようなものであった。
「いたぞ! スナイパーはあそこだ!」
一気に形勢が傾く。
『王冠シューター』の欠点は連射タイプでなければ次に放つ王冠の装填に時間がかかるということだ。
だから十分な時間を与えてはならない。
「だよね! ここで胸部のミサイルの出番!」
ニィナの瞳がユーベルコードに輝き、機体の胸部の装甲を両手で開くような動作をしてみせる。
ハッチをオープンさせるギミックが此処で生きてきたのだ。
「射程範囲全部ろっくおーん!カーニバルだよ、れっつだーんす!!!」
放たれるは無数の高機動マイクロミサイル。
火線を引きながら空中を飛来するミサイル達が『王冠シューター』たちを次々と撃ち抜いて破壊していく。
だが、モニターの前のニィナの戦いを見ていた人々はドギマギしていただろう。
彼女の機体はモーションタイプ。
ならば、機体の動きは彼女の動き。胸部装甲を手で開いたということは……
「じゃーん、大丈夫、中は水着だよ☆」
ニィナはジャケットを開いた動作をしながら、ぱたぱたと叩いてみせる。
けれど、それは別の意味で危険物。
刺激が強すぎる光景に多くのモニター前の少年たちは顔を赤らめてしまうだろう。ニィナはけれど、そんなことに気が付かず無邪気にカメラの前で、大丈夫大丈夫というようにジャケットを開けしめしてみせる。
ちっとも大丈夫ではないけれど! これはこれで――!
大成功
🔵🔵🔵
橘・小雪
よーし、レッツ・アクト!
なるほど、正攻法ばかりじゃないんだね!
次の王冠の装填に時間がかかるとか
高さが同じでないと当たらないとか
やっぱり先輩猟兵さんやアインさんたちはすごいなあ
でも、それならあたしにだってやり方はある!
UC起動して、びゅんびゅん!
バーニア吹かして、高低差から素早く狙っていくよ
一撃誘って、回避したら
相手が再装填してる間に壊しちゃう!
必殺紅茶アターック、なんてね
まあ、一体ずつだから物量の上では負けるけど…
でも、最後まで立っていれば勝ち!
コツコツ相手を潰していくぞー!
体力勝負になると思うので時々紅茶を飲むよ
紅茶飲めば元気になれるから!
「よーし、レッツ・アクト!」
橘・小雪(Tea For You・f37680)は軽量化した自身の機体『桜風』と共にフィールドの中を疾駆する。
軽量化によって得られた加速はこれまでの彼女の機体とは打って変わって軽やかなものにしていた。
けれど、油断はできない。
軽量化したということは装甲を最小限にしているということだ。
普段なら一つのミスでも装甲がカバーしてくれる。けれど、それを取り払っている以上、彼女のミスを守ってくれるものは多くはない。
「敵の斉射は一時的なもんだ! 怖がる前に前に進もうぜ!」
「次弾装填までの時間はおおよそ30秒もありません。慎重を期すのも大切ですが、ここは果敢にせめていきましょう!」
『アイン』と『ツヴァイ』と共に小雪は続く。
彼女は自分より年下の少女たちに頼もしさを覚える。それに先行した猟兵達にも同様であった。
彼女自身が自分が猟兵となって間もないことを自覚している。
それは謙遜のように思えたかも知れないが事実である。
「あっ、やっぱり! 王冠はこっちと高さを合わせないと命中しないんだ! やっぱり先輩猟兵さんやみんなすごいなぁ。でも、それならあたしにだってやり方はある!」
小雪の瞳がユーベルコードに輝き、『桜風』のアイセンサーが煌めく。
機体の装甲の隙間から排出される煙……いや、紅茶の香りだ。『プラクト』というホビースポーツにおいて香りは重要視されるものではない。
けれど、紅茶は小雪にとって大切なものだ。
紅茶をどうぞ?(コウチャヲドウゾ)と誰かの目の前に置く時、それは誰かを思いやる心があればこそである。
そして、それはあらゆることに通じるものであると彼女は思っている。
戦いにだってそうだ。
誰かを思い、誰かのために戦う者にこそ力は宿る。今の彼女が戦おうと決めたのは誰のためだ。
「いくよ! 高低差が命中精度に関係しているんなら!」
スラスターを噴射させながら、軽量化した『桜風』が軽快にフィールドを跳ねるようにして加速していく。
「飛び跳ねるだけで躱せるか!」
『ダークフィールダー』たちから放たれる王冠。
確かにそのとおりである。
けれど、小雪は王冠の一撃を見てから躱す事ができる。ユーベルコードに寄る圧倒的な速度と、それを自身のものとする動体視力。
それを有する彼女は上下に跳ねるようにして飛ぶ『桜風』の挙動と直線的な王冠との彼我の距離を直感的に理解し、躱すのだ。
「王冠を躱しただと!? この距離で!?」
「再装填は時間がかかるって言ってたよね! 必殺――」
小雪と『桜風』が走り抜ける。
斬撃が『王冠シューター』を切り裂く。衝撃波が紅茶の香りをフィールドの外、操縦パーティションの向こう側まで送りこまれる。
「紅茶アターック、なんてね。後は紅茶の香りを楽しんでいてね」
小雪は微笑んで『桜風』と共に戦場に舞い戻る。
敵は物量で押してくる。片時もゆっくりしていられない。体力勝負だ。こういう所はアスリートアースのスポーツ競技だと理解させられるだろう。
「小雪ねーちゃん、疲れてねーか?」
『アイン』の機体がカバーに入ってくれる。敵を一体倒したからといって油断はできない。
更に『ツヴァイ』も小雪をカバーするように戦ってくれている。
「うん、大丈夫。紅茶を飲めば元気になれるから!」
「違いないな! じゃー、もうひと踏ん張り行こうぜ!」
「私達は後で紅茶をいただきますね」
小雪は頼もしいと思った。けれど、同時に彼女たちだって小雪のことを頼もしく思っているのだ。
戦いが終わった後の紅茶。
まだ苦いとしかわからない『アイン』。少し背伸びして香りが好きですと言う『ツヴァイ』。
どちらも大切な友達だ。
そんな友達を『ダーク化』などさせはしないと小雪は紅茶を口に含んで、再び戦場に香りを届けに疾駆するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…じゃあいくよ、セントール(機体の名前)…レッツアクトー…
…うーん、本当に遠慮なしに王冠を飛ばしてくる…
…直撃したらまずいけど衝撃波だけでも影響が出るね…おっと
(車体の側面からサイドアームを伸ばして車体を支えて転倒を免れる)
ただ…難点があるとすれば破壊力に特化しすぎている…というところか
…あと、逃げ道ふさぐためだと思うけど一斉射撃が基本みたいだから…
…一斉射撃の瞬間に【汝、意のままに動くこと能わず】を発動……
…発射の姿勢を90度ほどずらして同士討ちを狙うとしよう…
…まあ残りはフィールドに残った王冠をサイドアームで拾って……
…車体をスピンさせて遠心力を乗せた投球(?)でぶつけてやるとするか…
『ドライ』率いる『ダークフィールダー』たちのたぐる『王冠シューター』たちは確かに一撃の重たいものを殺人的な速度で打ち出す力を持っている。
脅威と呼ぶに相応しい。
まるでレーザービームのように金属の大質量の王冠が打ち込まれ続けるのは、正直に言って数の暴威以上に質の高い砲撃という手のつけられないような攻撃であった。
けれど、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は現状を正しく理解していた。
今やフィールドは巨大空中要塞が落着した衝撃波で破壊され、一度更地になってから再び猟兵のユーベルコードによって市街地が形勢された。
市街地は、『王冠シューター』にとって障害なりえない。
何故なら、王冠の一撃はフィールドさえ容易く破壊せしめるからだ。邪魔になっても破壊してしまえばいい。
けれど、彼等の『王冠シューター』の欠点は連射タイプでもなければ次弾装填に時間がかかるという点にあった。
そして。
「破壊力に特化しすぎているから、逃げ道を塞ぐために……一斉射撃が基本……」
遠慮なしに飛んでくる王冠の脅威にメンカルは己が作り上げた車型ホビーを操縦しながらフィールドを疾駆する。
直撃したまずいことはわかっている。
何せ、躱したとしてもフィールドに直撃した衝撃波だけでも吹き飛ばされかねない。車型ホビーは確かに加速や速度で勝るが横からの衝撃に弱い。
横転でもしようものなら、良い的にしかならないのだ。
「おっと……じゃあいくよ、『セントール』……レッツアクトー……」
そう名付けた車型ホビーのセンサーライトが明滅する。
彼女の言葉に応えるように唸りを上げるモーター。
迫る王冠の一斉射にも怯むこと無く速度を上げていく。
「ただ速度に勝る車型ホビーが!」
「こちらの射撃は当てる必要はない! 横転させられればなぁ!!」
放たれる王冠の衝撃波が『セントール』の横合いを掠め、その衝撃波で車体をひっくり返そうとする。
事実、その衝撃は『セントール』の車体を浮かせ、傾けさせる。
だが、次の瞬間『ダークフィールダー』たちは目を疑っただろう。
『セントール』のセンターカウルが変形し、腕部となって横転しそうになった車体を傾けて元に戻したのだ。
「腕ぇ!?」
「そう、サイドアーム……横転対策なんて、それを忘れる私じゃないよ……そして、一斉射したね……?」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
「まずい、何を……次弾装填急げ! 連射タイプは敵に好きにさせるな!」
『ダークフィールダー』たちもわかっているのだ。
パワータイプの『王冠シューター』は確かに一撃が重く、躱したとしても、その衝撃波ですらも普通のプラスチックホビーにとっては脅威そのものであると。
ならばこそ、その隙を埋めるために連射タイプを控えさせていたのだ。
連射タイプの『王冠シューター』が一斉に『セントール』を狙う。
放たれる王冠が『セントール』を射抜く……ことはなかった。
メンカルのユーベルコードは、連射タイプの『王冠シューター』の動作を一瞬で改ざんしたのだ。
それはどういうことを示すかといえば同士討ちである。
汝、意のままに動く事能わず(モーション・ハッキング)。
彼女のユーベルコードによって、連射タイプの『王冠シューター』の発射姿勢を直角にずらしたのだ。
そうすればどうなるかなどわかるだろう。
味方同士に向けられた射線。放たれる王冠が一斉に『ダークフィールダー』たちの集団の中で乱舞し、多数の味方を巻き添えにして破壊されつくされていくのだ。
「連射タイプを残しているのは十分考えられる……パワータイプでこちらの機先を制してから、連射タイプで仕留める……わかりやすいね」
さらに『セントール』のサイドアームがそこら中に打ち込まれた王冠を広い、車体をスピンさせ、遠心力を乗せた一射を撃ち漏らした『王冠シューター』にぶつけ、その機体を爆発させる。
「プラスチックホビーは自由な発想が勝利の鍵……あくまで鍵だけ……なら、後はそれをどう使うか、だよ」
爆発する『ダークフィールダー』たちの『王冠シューター』たちを背にメンカルは悠々と戦場を『セントール』と共に疾駆するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鵜飼・章
ジェノサイダー鵜飼はホビーを悪用する者を許さない
必ず後悔するぞ――レッツ・アクト
結局選手本人が操作しているのが
プラクトの弱点といえる
読心術と勝負勘で数手先の戦略を読み
早業で予めレーザーが当たらない位置に
ヘルカブトを移動させよう
残念だったね…僕には未来が視えるんだ
謎の落ち着きで圧をかけつつ
鋭く磨き上げた角の突き上げで
敵機体を解体していくよ
しかしこんな地味な勝ち方は良くない
メダルさえ出てくれれば…いや
会場の空気が必ず僕の味方をする
僕は空気(装備品)を動かせるアスリートだ
感じる
思わぬ反撃に遭った所で
満を持してUCが発動する的空気を
後は敵が勝手に自滅するだろう
自分の放った王冠が跳ね返ってきたりしてね…
黒っていいよね、と『アイン』は言っていた。
彼女は少女であるが、どちらかというと男勝りなところのある女児であった。言葉遣いも乱暴であるが、完成が男の子寄りであるがゆえに、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)、あ、いや違う。
ジェノサイダー鵜飼の出で立ちをすんなり受け入れていた。
『ツヴァイ』はなんていうか、そういう男の人っていますよねって顔をしていたが、『アイン』は黒っていい。黒、いいよね、となぜだか通同士の会話を章としていたのである。
はためくは黒いコート。
操縦パーティションの区切られて見えていないかもしれないが、確かにはためいている。
商店街のアーケードに設置された巨大モニターにジェノサイダー鵜飼は降臨していた。
「ジェノサイダー鵜飼はホビーを悪用する者を許さない。かならず後悔するぞ――レッツ・アクト」
「うひょー! かっこいい!!」
「そうですかね……」
ビシッ、と決まった章のポージングがモニターに映し出され、『アイン』のテンションはマックスであった。
モニターを見ていた少年たちも同じだったし、配信を見ていた世界中のプラスチックホビーを愛する同好の士たちも同じだった。
そうそう、こういうの。こういうのでいいんだよ、とばかりの喝采。
しかし、その喝采は章には届かない。
何故なら、彼は昆虫型ロボ『ダークネスファントヘルカブト』と共にフィールドに飛ぶからである。
「空を飛べるからと言ってもな! 射角をいじれば、撃ち落とすことなど造作もないんだよ!」
『ダークフィールダー』たちが一斉にパワータイプの『王冠シューター』を傾け、飛翔する章の『ダークネスファントムヘルカブト』を狙う。
放たれるレーザーの如き鋭い王冠の一撃。
それを章の『ダークネスファントムヘルカブト』は読心術と勝負勘でもって数手先の戦略を読み、圧倒的な早業で飛翔させる。
「残念だったね……僕には未来が視えるんだ」
なんだか言うこと全部がミステリアスめいて見える。黒コートがさらに、それを加速させているような気がしないでもない。
あと、ジェノサイダーっていうのが哀愁ある気がする。
なんかこう、あれである。絶対悲しい過去がジェノサイダー鵜飼を孤独にさせたりなんやかんやさせたのであろうことをモニターを見ている少年たちは空気読んで察してしまうのだ。
謎の圧。
章自身が理解ってやっていることなのかどうかは、真実なのかどうかわからない。けれど、その落ち着き払ったクールな圧は、『ダークフィールダー』たちを動揺させるには十分であった。
王冠の一斉射をこともなげに躱したことも大きな一因となっただろう。
「王冠が当たらない……! あれだけの速度が出ているのに!」
「結局選手本人が操作しているのが『プラクト』の弱点といえる……だから」
章の『ダークネスファントムヘルカブト』の鋭い角が、王冠を放って次弾を装填しようとしている『王冠シューター』を一気に突き上げ、貫き解体していく。
「装填にもまごつく。今まで一撃で勝負を決めてきたから、次の王冠をろくに装填する練習もしてこなかったんだろう」
ジェノサイダー鵜飼の冷静な分析による角の一突きが、次々と『王冠シューター』の軍団を破壊していくのだ。
獅子奮迅な活躍。やっぱり黒着ている人は一味違う! 俺も明日から黒着よう! と少年たちのボルテージが上がっていく最中、なんか章はちょっと違うなぁって思っていた。
だって地味なのである。
角で、ぐっさー! って。
もっとこう、派手に倒す予定だったのだ。けれど、メダルを射出する口のギミックがどうしてもうまくいかなかったのだ。
えー、なんでなんで! なんで出ない!?
メダルでバーン! ドーン! ってやるつもりだったのに! けれど、章はニヒルな笑みを浮かべる。
章は空気読める猟兵である。
会場の空気がかならず彼の味方をする。
「――っ、くっ!」
こういう強キャラは一度ピンチになる。
そういう展開ってよく見るやつである。だからこそ、会場の空気は一気にそちらに傾く。
だが、章にとって、それこそが目的だったのだ。
「ならば二撃目で――!」
『ダークフィールダー』たちの一斉射が始まろうとする。だが、それは、これまでジェノサイダー鵜飼が空気を読み続けてきた結果である。
彼の空気を読む力は、満を持して『ダークネスファントムヘルカブト』のメダル射出機構を開放し、闇の賭博王ブラックレイヴンのメダルを『王冠シューター』たちに貼り付ける。
それはあらゆるギャンブルに負け続ける不運を背負い込ませる。
「後は勝手に自滅してくれ……例えば、自分の放った王冠がはねかえってきたりしてね……」
章の言葉を実現するかのように『王冠シューター』たちは慌てて装填した王冠が故に、角度が正しくセッティングされず、フィールドから跳ね返ってきた王冠で自爆して爆散する。
敵の不運すらも空気読んで捻じ曲げてしまう。
恐るべきジェノサイダー鵜飼の活躍に、一部の少年たちは明日からきっと|闇《ダークネス》を心に宿すのだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
迅瀬・ナクタ
『盛り上がっているみたいだな。……それにしても、幅が広いな『プラクト』は。王冠を飛ばしてくるとは……王冠をいちいち避けるのもめんどくせえ。突っ込むぞ!』
UC【サークルストリームシールド】を使用
モーションタイプのプラクト『ナタク』で自分もプラクトも高速回転を行い攻撃を相殺しながら敵陣に突っ込みます。
アドリブ・他の猟兵との絡み歓迎です。
『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』は間口の広い非公式のスポーツ競技である。
プラスチックホビーであればなんであれ参加可能であり、チーム戦でありながらメンバーの上限は設けられていない。
一人からでもチーム戦に挑むことができ、上限がないゆえに数百同士のアスリートの激突だってありえる。
今回の事件、『ダークリーガー』が率いるチームが『五月雨模型店』に戦いを挑んだのだってそうだ。『ダークリーガー』は効率的にアスリートたちを『ダーク化』させるためにメンバーの多いチームを好んで勝負を挑む。
皮肉にも前回の戦いに勝利した『五月雨模型店』は『ダークリーガー』に目をつけられる結果となったのだ。
「盛り上がっているみたいだな」
迅瀬・ナクタ(闇を抱くトイロボバトラー・f37811)は『トイロボ』のアスリートであるが、『プラクト』の間口の広さ故に彼が持つ『トイロボ』、『ナタク』もまた広義においてはプラスチックホビーであるがゆえに、問題なく参加できるのだ。
「……それにしても、幅が広いな『プラクト』は」
ナタクはフィールドを駆け抜ける人型ロボットや車型ホビーや巨大な要塞やらを見やり、その間口の広さを知る。
そして、何より今回の敵である『ダークフィールダー』たちが使うプラスチックホビー、『王冠シューター』など金属の王冠を飛ばすのだ。
プラスチックで出来たホビーが金属と激突して無事であるわけがない。
「攻撃極振りってわけか……王冠をいちいち避けるのもめんどくせえ。突っ込むぞ!」
『ナタク』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
確かに王冠の一撃は凄まじい。
その衝撃波だけでプラスチックホビーはたまらず破壊されてしまうだろう。
けれど、彼の『ナタク』の発露するユーベルコードが光り輝き、戦場を回転しながら手にした双剣をもって王冠を叩き落とす。
「王冠の一撃に耐えた!? なんだ、あのプラスチックホビーは!?」
『王冠シューター』をたぐる『ダークフィールダー』たちに動揺が走る。
これまで彼等の『王冠シューター』の放つ一撃を防ぐことのできた者はいなかった。大抵、一撃で勝負がついてしまうからだ。
けれど、『ナタク』は違う。
「名付けるならサークルストリームシールド! 感覚を研ぎ澄ませ!」
王冠を叩き落としながら敵陣に突っ込み、双剣の乱舞でもって『王冠シューター』たちを次々と切り裂いていく。
凄まじい勢いのまま敵陣を貫いた『ナタク』がフィールドに着地した瞬間、その背後に爆発が起こる。
尽く『王冠シューター』を打倒した『ナタク』を照らすのは爆発の輝き。
「これが『トイロボ』の『ナタク』の力だ!」
「ますますすごくなってんじゃん! なんだかんだで手伝いに着てくれてありがとうな!」
『アイン』と呼ばれた少女がナタクに呼びかける。
前回の戦いでチームに参加してくれたことを覚えていたのだろう。
「試合の報酬のためだ。勘違いするな」
ぶっきらぼうな態度を思わずとってしまうが、それでも駆けつけてくれた仲間思いな所は変わらない。
『アイン』もそれがわかっているのだろう。
別段気を悪くした様子はない。
「まあ、なんだっていいさ。次が来るぜ! またの技出来るんだよな?」
「オレを誰だと思っている。行くぞ、『ナタク』! お前の本気を見せてみろ!」
その言葉に答えるように『ナタク』のアイセンサーが再び煌めき、双剣による嵐のごとき一撃が戦場を疾駆し『王冠シューター』の放つ王冠から『五月雨模型店』のメンバーを守る。
心に秘めた熱い想い。
母を救うため、友を、仲間を守るためにナタクは今日もバトルに明け暮れるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
動かす実感みてーのは
やっぱキャバリアによく似てる
それを安全なフィールド(だよな?)で競技として体験できる平和、か
それを守れるのが猟兵だってんなら
偶にはこー言う仕事も悪かねぇな
(柄にもなく思いを馳せる)
戦い方はいつも通り
自分にヘイトを集めて味方機を守る
砲口を相手に向けて、上下にクイクイ
シンプルに挑発するぜ
質量攻撃に対応するためのノウハウは
物理耐久特化のビッグタイガーで培ってきた
要は攻撃の重さに打ち負けなけりゃいい
王冠がカッ飛んでくるのに合わせてホバーを起動するが
脚の一本は接地したまま
武術で言う受け流しみてーなモンだ
被弾した衝撃を回転でいなして
遠心力をそのまま移動スピードに変換する
プラスチックだからこそ出来る技
見た目鈍重な重量機が仕掛ける機動戦だぜ
もっかい射線に捉える頃にゃ
ミニタイガーの砲塔が既に狙いをつけてるのさ
四本脚それぞれの操作系統を別個にした関係で
五本指全部を使うコントローラー(自作)が常にフル稼働状態
なに、普段からほぼマニュアル操縦でキャバリア乗ってんだ
これでも大分省略したんだぜ
『プラクト』のフィールドに降り立った四脚の重戦車の如き、虎模様の塗装を施された『ミニタイガー』を操作しながら、チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は、やはりと思っただろう。
「動かす実感みてーのは、やっぱキャバリアによく似てる」
プラスチックホビーのコクピットに再現された操作系統。
それは『マニューバ』タイプでの操作であり、煩雑な操作系統を把握していなければならないため、人型のプラスチックホビー以外のホビーに適応される。
アスリートの身体能力以上の能力を発揮することができ、また人体では不可能な動きが可能となる。
だが、それ以上にチェスカーにとっては慣れ親しんだ操縦方法であったことだろう。
キャバリア。
体高5mの戦術兵器。
その操作とよく似ているが、似ていない部分もある。それは安全なフィールドで競技として体験できる。
謂わば、それは争いを介した平和の実感そのものであった。
これが在る限り、戦争行為は疑似体験にまで落ちる。けれど、戦争など起こらないに越したことはない。
アスリートアースはオブリビオンの事件が頻発すれど、そこに命のやり取りはない。
勝敗で決し、『ダーク化』されてしまうという弊害はあれど、生命に別状はない。
「これが守れるのが猟兵だってんなら、偶にはこーいう仕事も悪かねぇな」
柄にもないことを、と後にチェスカーは思うかも知れない。
けれど、彼女はプロフェッショナルだ。
思いを馳せながらも、迫る『王冠シューター』の凄まじい一撃を前に怯むことはなかった。
いつもどおりの戦い方だというように落ち着きを払っている。
「こいつ、おちょくっているのか!」
くい、くい、と『ミニタイガー』の砲身を上下に動かし、シンプルにチェスカーは『ダークフィールダー』たちを挑発する。
「あ、おい! そんなことしたら!」
『アイン』の声が聞こえる。自分自身にヘイトを集めるやり方。挑発するのはいいが、『王冠シューター』の攻撃力の高さはよくわかっているはずだった。
けれど、それでもチェスカーは挑発し続け、自分に意識を向けさせるのだ。
味方機を守る戦い方。
自分に攻撃が集中すれば、他のチームメンバーが危険に晒される可能性が少しでも減るのだ。
「質量攻撃に対応するノウハウってやつはな」
「ほざけよ! あいつからやる!」
『ダークフィールダー』たちが一斉に陣形を組み、パワータイプ、連射タイプの『王冠シューター』たちの砲口が『ミニタイガー』へと向けられる。
一斉に放たれる王冠。
それはまさに周囲の地形諸共『ミニタイガー』を破壊しようとする暴風であった。
王冠は金属製である。
対する『プラクト』ホビーである『ミニタイガー』はプラスチック製品。強度の違いなど言うまでもない。
だが、チェスカーは冷静であった。
『ミニタイガー』の四脚の一本が大地に杭打ちのように打ち込まれる。
「要は攻撃の重さに打ち負けなけりゃいい」
脚部に備わったホバーが『ミニタイガー』の機体を浮かせる。瞬間、打ち込まれた王冠を受け流す。
いや、風車のように風を受けて機体がくるくると回るのだ。
言う成れば武術で言うところの回し受け、受け流し。
被弾したとしても、装甲表面に傷が付く程度だ。一本足を軸として、王冠の衝撃を受け流し続ける『ミニタイガー』。
「こいつ、一本足打法を応用して、受け流しやがった……!」
「なんてやつ!」
「てめぇらの攻撃力はスピードに変換させてもらう!」
回転していた『ミニタイガー』が一本足を引き抜いて、回転しながら『王冠シューター』たちに迫る。
『王冠シューター』たちはその攻撃力故に、新たに王冠を装填するまで時間がかかる。連射タイプたちだって同様だ。
連射しきってしまえば、さらに装填時間は伸びる。
「その頃にはもうすでに狙いは付いているんでね」
距離を詰めた『ミニタイガー』の砲身が自分を狙っていた『王冠シューター』たちを逆に狙いつける。
放たれる砲塔より放たれる弾丸が『王冠シューター』たちを次々と打ちのめし、爆発させる。
これが、傭兵野郎の底力(サビテツインディストラクティブル)というものである。
「すげぇー!? え、どうやってるんだ、あの動き!?」
「同じ『マニューバ』タイプとは思えません……!」
「なに、普段からほぼマニュアル操縦でキャバリア乗ってんだ。これでもだいぶ省略したんだぜ」
チェスカーは己の操縦パーティションの中に再現された五指全てを使うコントローラーを示してみせる。
自作で作り上げたコントローラーは煩雑で複雑な操作系統を組み込むことによって、チェスカーの能力を最大限に引き出す。
けれど、これでもまだ十全ではないというのだ。
その素晴らしき操縦操作を目の当たりにした『アイン』と『ツヴァイ』は驚嘆するしかない。
チェスカーは精一杯の愛想のよい引きつったような歪んだような悪人笑顔で応え、再びまた彼女たちを戦慄させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
練習の甲斐あって、触腕の動きにはなれましたよー。
※指導者:陰海月
あと、元々、カツオノエボシは風にも漂えるのでー。応用で、天候操作による風の流れ制御でも動いてますー。
それに、ちょっとだけ改造した武器の漆黒風を持たせましてー。
ええ、その金属王冠、今の地形ではうまく飛ばないようですからー。さらに飛ばないように…UC付きで投擲するように操作しますねー。
ええ、当たれば砕ける。それは地形もですからねー。
ふふふ、カツオノエボシは群体
※
陰海月「ぷーきゅ!」
武器持てるように改造したのはぼくだよ!と胸張り。
ポンポンもって、霹靂と一緒に応援!
おじーちゃんは強いんだぞ!
『プラクト』の戦場たるフィールドに走るのは、多くが人型ロボットのプラスチックホビーであった。
操縦系統は二つに大分される。
一つはアスリートの動きをトレースする『モーション』。
もう一つはホビーの中に再現された操縦系統を操る『マニューバ』。
どちらも体力や精神力を浪費するものであり、どちらが優れているということはない。
心技体を兼ね備えなければ勝利を得ることができないのは、いずれのスポーツにおいても同様である。
『プラクト』もまた、心技体を必要とするホビースポーツ。
ならばこそ、『マニューバ』は、様々なホビーの形をフィールドに表現するものであった。
戦場の空に浮かぶはゆらゆらと揺れ、光学迷彩のように姿を認識されづらいクリアーパーツに見事なグラデーションの施された『カツオノエボシ』。
それを手繰るのは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その一柱であ る『疾き者』であった。
彼は練習の甲斐があって、この揺らめく海月の一種たる『カツオノエボシ』の操縦を熟知していた。
ようやく慣れたと言ってもいい。
触腕の動きが、こうも複雑なのかと思い至る。これも『陰海月』の指導の賜であった。
風に揺蕩うように『カツオノエボシ』がフィールドの空にありて、自身が制御する風によって見事な動きを表現している。
だが、地上に在りて『王冠シューター』たちは見上げることしかできなかっただろう。
角度をつけて王冠を放っても、金属ゆえの重量でもって重力に負けて威力が減退させられるのだ。
「くそっ、クリアーパーツで狙いがつけづらい上にふらふらしやがって!」
『ダークフィールダー』たちが口惜しげに自分たちの攻撃が有効的ではないことに苛立つ。
それもそうだろう。
これまでの彼等の戦い方は一方的であった。
数に任せた攻撃力極振りの一斉射。それでこれまで片がついてきたのだ。
けれど、今はそれを活かせていない。
他の猟兵が築き上げ続ける市街地や、巨大な空中要塞による突撃。
さらには次々と撃破されていく味方。
どれもが『ダークフィールダー』たちに劣勢を強いるのだ。
「ええ、その金属王冠、今の地形ではうまく飛ばせないでしょうからー」
瞳がユーベルコードに輝く。
ダメ押しである。
四悪霊・風(シアクリョウガヒトリ・トノムラヨシツナ)は、『カツオノエボシ』の触腕から小さく作成した棒手裏剣が投げ放たれ、『王冠シューター』たちを貫いていく。
こちらを迎撃しようと、無理に角度をつけた体勢はすぐに崩され、棒手裏剣の一撃が『王冠シューター』たちに備えられた『ユーベルコード発生装置』を的確に貫いていくのだ。
「ぷーきゅ!」
『陰海月』がその様子に喜んでいる。
あの触腕に武器が持てるように改造したのは自分なのだと胸を張る。友達である霹靂と操縦パーティションの外からポンポンを持って応援しているのだ。
その様子に『疾き者』は手をふって答える。
まるで孫の関係。
あながち間違ってはないのかもしれない。
『陰海月』と『霹靂』はおじーちゃんは強いんだぞ! というように応援に力が入り、『カツオノエボシ』は悠々と空にありながら『王冠シューター』たちを次々と破壊し、『五月雨模型店』の勝利に大きく貢献していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
さあ、派手に暴れてやるとするか相棒ッ!
「…レッツ・アクト。」
この更なる強化をしたアニメ風巫女美少女プラモデル…長いから巫女プラモって呼ぶか…の力を魅せてやるぜッ!
巫女服スラスターを噴かして戦場を縦横無尽に駆けて、王冠シューターの弾道を見切りながら『プラ切丸V2』で叩き斬っていくぜ。避けきれない王冠は結界霊符ビットを多重展開で受け止めるぜ。
さあ、相棒。『プラ切丸V2』の更なる力を魅せつけてやれッ!
「…プラ切丸V2、破魔弓モード。ユーベルコード起動、【破邪・霊光弓】。」
霊光弓から放たれる矢の威力は最早王冠以上ッ!
弾幕のごとき射撃でブッ飛ばしてやるぜッ!
【技能・結界術、破魔、弾幕】
【アドリブ歓迎】
『さあ、派手に暴れてやるとするか相棒ッ!』
赤い鬼面、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が揺れ、黒髪の巫女たる桜がうなずく。
二人は合わせて一人の猟兵である。
彼等の手繰るアニメ風巫女美少女プラモデル……もはや長いから巫女プラモと凶津は読んでいるが、見事に改良された巫女プラモが『プラクト』のフィールドに華麗に舞い降りる。
「……レッツ・アクト」
桜の言葉と共に煌めくアイセンサー。
そこにあったのは荘厳ささえ感じさせる尋常ならざる雰囲気であった。
巫女服スラスターが噴射し、戦場を縦横無尽に駆け抜ける姿は、迅雷の如く。
「私も負けてはいられませんね」
『迅雷』と呼ばれた『ツヴァイ』もまた巫女プラモに追従するように機体を走らせ、『ダークフィールダー』たちの放つ『王冠シューター』の一撃を躱す。
確かに『王冠シューター』の攻撃力は尋常ならざるものであった。
放たれ、受ければ確実に破壊される。
そうでなくても衝撃波は凄まじく、その余波に煽られれば機体に甚大なダメージを負ってしまうだろう。
だからこそ、これまで『王冠シューター』を手繰る『ダークフィールダー』たちは一方的な戦いをしてきたのだ。
次弾を装填する必要などないほどに圧倒的な戦いを。
「こいつら……やはり、こちらの対策を練り上げてきている!」
「当然のことだろうな。これだから『プラクト』は面白い!」
『ドライ』と呼ばれた男児の操る『王冠シューター』が跳ねるようにして凶津たちが操る巫女プラモに追従する。
王冠が装填されていない。
だが、『王冠シューター』は腹部に大きな砲口を備えているがゆえに、王冠を抱えたままでは高機動が行えない。
あえて王冠を装填しないことに寄って『ドライ』は身軽になって強化されたスラスターを持つ巫女プラモにさえ追従してくるのだ。
『やっぱりこいつは別格ってことかッ! 相棒!』
「速さが自分たちの特権だと思うのならばなッ!」
『ドライ』の『王冠シューター』の放つ一撃を『プラ切丸V2』が受け止める。拳の一撃。『ドライ』の機体は、王冠を放った後の事も考えられて強化されているのだ。
肉弾戦ではあるものの、十分脅威であると言わざるをえないだろう。
「……速い、です」
「防ぐだけではな!」
多重に展開した結界霊符ビットが『ドライ』の一撃を受け止め、弾き飛ばす。
『さあ、相棒。プラ切丸V2のさらなる力を魅せつけてやれッ!』
「モード変更だと!?」
「……『プラ切丸V2』、破魔弓モード。ユーベルコード起動、破邪・霊光弓(ハジャ・レイコウキュウ)」
これこそが退魔師の扇が一つ。
妖刀の形が変貌を遂げ、ゴテゴテとつけていたパーツの意味を知らしめる。
刀が変形し、弓の形なった光景を『ドライ』は不敵に笑って後ずさる。距離を取ろうとしているのだ。
「何故退く! 王冠さえ装填されれば!」
「やめろっ、あれは!」
『ドライ』の制止を振り切って『ダークフィールダー』たちが巫女プラモに殺到する。
放たれる王冠が巫女プラモに迫るも、破魔弓モードとなった『プラ切丸V2』に湛えられたユーベルコードの光が膨れ上がり、その射線上にいた全ての『王冠シューター』を放たれた王冠ごと薙ぎ払う。
『弾幕ごときが、霊光弓を抑えられるかよッ! ぶっ飛ばしてやるぜッ!』
「……これが全力全開の力です」
破魔弓モードから放たれた光条の一撃は、直線上に合った全てを薙ぎ払う。『ドライ』は、正しく凶津たちの力を見定めていた。
それ故に退いたのだ。
それが『ダークフィールダー』たちとの明暗を分けたと言ってもいい。
巫女プラモは装甲の隙間から排熱し、凄まじい一撃の代償を支払う。けれど、桜は知っている。
自分たちは一人で戦っているわけではない。
冷却期間の間に即座に『アイン』と『ツヴァイ』がカバーに入り、敵を寄せ付けない。
戦いは佳境に入っている。
後もう少しで敵の親玉たる『ダークリーガー』を引きずり出せる。
凶津と桜は機体の状況を確認し、再びそのアイセンサーをきらめかせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさん(f24264)と】
今回攻撃はサージェさんにお任せして、
わたしはがっちり防御でいくよ。
そっちは王冠の攻撃力が売りなんだろうけど、
こっちにも作戦はあるんだからね。
なんでわたしがわざわざ盾に発生器をつけたのか教えてあげるよ!
サージェさんのフォローに入りつつ【偽装錬金】で盾を複製!
五月雨チームみんなに盾で防御をするよ!
これなら盾を持ってない機体だって、王冠弾けるからね!
一撃の威力は浪漫だけど、
それしか攻撃手段がないとなると、防がれたらあうとだよ!
さぁ、サージェさん!
まったく忍んでないたゆ……一撃をお見舞いしちゃってー!
こんかいこそおっぱいみさいるでるよね?
え?マキビシ!?胸から!?
サージェ・ライト
【理緒(f06437)さんと】
よーし、このヘビアムさんで理緒さんの援護をあっるぇー!?
私がアタッカーですか!?
まぁ理緒さんがそう言うなら前に出……って前に出るの理緒さんかーい!
ええいこのままではツッコミで攻撃が出来ません
初手から全弾発射……いやいやいやいや(ぺたん魔女が出てきた
ちゃんと狙い撃ちます!
そこです!(ライフル連射
忍んでますから!!
いえ、この胸の厚さは私だけであって機体は普通って言うか
おっぱいミサイルって物理構造おかしいですよね?
機体の厚さとミサイルの全長あってないですよね?
というわけでここに何が仕込んであるかというと
マキビシだー!
マキビシクレイモアいっけー!(なおマキビシは直撃させる
『プラクト』フィールドに二機のホビーが並ぶ。
戦局は『五月雨模型店』の方に傾いている。猟兵たちの戦いぶりが影響していることは言うまでもない。
圧倒的な攻撃力を持つ『王冠シューター』の軍団たる『ダーク化』されたチームにとって、これほどまでに戦いが長引くことは予想外であったことだろう。
何せ、王冠は金属。
放たれれば、余波であってもプラスチックホビーを破壊することができてしまう。
数を揃え、一斉射することによって開幕の初手で戦場を傾けて片をつけてきたのだ。
だからこそ、一撃目を凌がれたことこそが、彼等の誤算だった。
「クソッ、なんだコイツラは……! 俺たちの攻撃に対策を練り上げていやがる! 対策なんて取れるはずがないってのに!」
「次弾装填急げよ! 次で全部破壊してやる!」
『ダークフィールダー』たちは焦っていた。
次々と撃破されていく味方たち。そして、迫る二機のホビー。
そう、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の操る赤いホビーとサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の手繰る『ヘビアム』であった。
「よーし、理緒さんの援護をしますね!」
「サージェさん、攻撃はお任せするね! わたしはがっちり防御でいくよ」
「あっるぇー!? 私がアタッカーですか!?」
サージェにとっては寝耳に水であった。
だって、どう見たってサージェの機体は後方からバカスカ火器で打ち込む係であったからだ。
サージェだってそのつもりだったのだろう。
微妙に噛み合ってない。
でもまあ、理緒がそういうのならばとサージェは前に出ようと機体を走らせる。
だが、其れよりも早く飛び出すのは理緒の手にしていたシールドであった。
「って、前に出るの理緒さんかーい!」
思わず突っ込んでしまっていた。
あまりにも二人の間に報連相が出来ていない。しかし、不思議なことになんとなくうまいこと噛み合うのが二人のコンビの不思議なところであった。
片方が割を食うって意味ではうまく言っているとは言えないのかもしれないが、二人の間柄は不思議とうまく言っているのである。
「そっちは王冠の攻撃力が売りなんだろうけど、こっちにも作戦はあるんだからね!」
「防御よろしくな!」
「頼みました! こちらにもダメージを負っているメンバーがいますから、守ってください!」
『アイン』と『ツヴァイ』はコンビを組んで王冠を叩き落としながら打撃を与えることのできる『五月雨模型店』でも屈指のメンバーだ。
だが、それが出来ないメンバーだっている。
理緒の瞳がユーベルコードに輝き、偽装錬金(ギソウレンキン)で盾を複製し、戦場に飛ばす。
ただのプラスチックホビーの盾ならば意味を成さなかっただろう。
王冠の一撃はそれほどまでに重たい。
だが!
「なんでわたしがわざわざ盾に『ユーベルコード発生装置』をつけたのか教えてあげるよ!」
出力機である『ユーベルコード発生装置』から発露するエネルギーが盾より放たれ、王冠の一撃を受け止めるのだ。
それも複数複製しているおかげで重なり、強度を上げる。
「盾が王冠を防ぐ!?」
「一撃の威力はロマンだけど、それしか攻撃手段がないとなると、防がれたら、あうとだよ!」
理緒の言葉にサージェがうなずき、前に飛び出していく。
「ええい、このままではツッコミで忙しくて攻撃が出来ません」
いや、できるだろと『アイン』は冷静だったが飲み込んだ。少女はちょこっとおとなになった。空気を読むってことを覚えたのである。
しかしながら、そんなことなどつゆ知らずサージェは飛び出す。
「さあ、サージェさん! まったく忍んでないたゆ……一撃をお見舞いしちゃってー!」
「今まったく忍んでないっていいました? 忍んでますから!」
サージェは勢いで初手全弾発射をしようとして、脳裏にぺたん魔女がでてきて頭を振る。
いやいやいやいやいや。
流石にない。それはない。そんなまさか。
自分にもぶっぱ癖が付いているなんてそんなことないないとサージェは青筋を立てながら頭を振る。
自分まであんな感じになるなんてありえないと彼女は頭を振ったのだ。
「忍んでますから!」
その叫びとともに機体の胸部が開かれる!
「こんかいこそおっぱいみさいるでるよね?」
理緒の煩悩ただ漏れな台詞が聞こえた気がしたが気にシアに。
「おっぱいミサイルって物理構造おかしいですよね? 機体の厚さとミサイルの全長あってないですよね?」
「そういうのいいですから」
『ツヴァイ』の冷静な言葉にサージェは、またしても歯噛みする。
ツッコミをしていたと思ったら突っ込まれていた。
「ええい、というわけで此処に何がしこんであるかというと!」
放たれるはマキビシクレイモア!
威風堂々(シノベテナイクノイチ)たる佇まいはクノイチとしていいのか悪いのか。
まあ、敵を倒せればどっちでもいいんじゃねって『アイン』は思っていた。でも黙ってた。あれで敵を倒してくれた方がいいからなって思って飲み込んだ。
「マキビシクレイモアいっけー!」
「え? マキビシ!? 胸から!?」
理緒のツッコミも尤もである。ベアリング弾とかじゃないんだ? って思ったし、マキビシなところがサージェのクノイチアイデンティティの拠り所であったのかもしれない。
放たれたマキビシが大地に撒き散らされることなはなく。
当たり前のようにマキビシを『王冠シューター』に打ち込み、直撃させながらサージェはクノイチとしてのアイデンティティを守る。
いや、守れてるか?
まきびしって、ほら、あれですよね。
逃げるときとかの時間稼ぎであって、直撃させるやつじゃないっていうか。でもまあ、いいのである。
マキビシだって直撃すれば痛い。
痛いということは攻撃力があるってことなのだから――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
プラクトがあるから良いけどさあ…
打ち出し系のホビーってさあ…どう遊ぶのが正解なんだろうね…
こんなの威力を高めて破壊衝動を満足させるしかないじゃないか!
●
操縦は機動力重視で…
動かす…?うご…かす?
足動かなくね?
これ機動性無くね?
まあこの地形なら盾はあるんだ何とでもなるか
連射用マガジンに普通のビー玉と特製鉛玉をセット
金属王冠を全力の『念動力』で叩いたハンマーショットで放ったビー玉で迎撃!
逸らすならこれで十分
後は地形を利用して良い位置を取るだけ
なま…スペシャルビー玉セット
【断章・不死鳥召喚】起動
鉛…ビー玉に不死鳥を宿らせて撃ち出す!
勢いが続く限りは不死鳥で自由に移動させて王冠シューターを砕いていこう
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は以前から常々思っていたことがある。
それは深刻な悩みというか、問題提起というか。
いや、此処はアスリートアースである。非公式スポーツ競技とは言え『プラクト』があるから良いのだ。
けれど、それ以外の世界ではどうだろうか。
なんだか深刻な雰囲気を出しているが、玲が憂いているのは、打ち出し系ホビー、シューティングホビーの未来である。
シューティングホビーの常である。
「……どう遊ぶのが正解なんだろうね……」
玲は思っていた。
人間ってば狩猟民族であったのだから、そりゃあ、何かを遠くに飛ばすことに本能的に充足を得てしまう生き物であると。
それは宇宙に進出してからも変わらぬことであるし、原始的な本能に刻み込まれたものであった。
狩猟本能が刺激されれば、当然思うのである。
「こんなの威力を高めて破壊衝動を満足させるしかないじゃないか!」
フィールドに降り立った玲のプラスチックホビーは、ものすごい地響きを鳴らす。
え、本当にプラスチックホビーか? となるほどの地響き。
『ダークフィールダー』たちも目を丸くしてしまっていた。自分たちだって金属王冠使ってるくせにと玲は思ったかも知れない。
操縦は機動力重視。
『マニューバ』だから、簡単に動かすことができる。いや、ちょっとまってほしい。
「動かす……? うご……かす?」
玲は思った。
いや、思い返した。
自分のホビーの形を。『王冠シューター』の精神的前世。いや、ご先祖様と言ってもいいし、先輩っていいってもいいシューティングホビー。『ビーシューター』。
その機体の形は安定性を高めるために設置する足は固定されている。
動けないのである。
「……なんとでもなる!」
玲さんはこういう所ある。しかし、彼女がなんとかなるといったらなんとかなるのである。
連射用マガジンを携えた『ビーシューター』の顔が煌めく。
問題なし!
「ずんぐりむっくりした機体で!」
『ダークフィールダー』たちの王冠が動けない『ビーシューター』に殺到する。だが、玲さんの念動力がうなりを上げる。
「王冠を反らすなら!」
念動力によって叩き込みでもって打ち出されたビー玉が王冠と激突し砕ける。だが、その一撃は王冠を逸らし、動けぬ『ビーシューター』を守るのだ。
「なま……スペシャルビー玉セット」
今、なまって言った? 鉛玉って言おうとした?
玲さんの瞳がユーベルコードに輝く。決してごまかそうとしたのではない。今はとっても良い位置につけたから、そんな暇ないだけである。きっとそうなのである。
「偽書・焔神起動。断章・不死鳥召喚の閲覧を許可。不死鳥よ、舞い踊れ」
断章・不死鳥召喚(フラグメント・フェニックスドライブ)によって、蒼炎の炎宿した|スペシャルビー玉《なまりだま》が発射される。
「不死鳥!?」
蒼炎の炎を燃やしながらスペシャルビー玉が戦場を席巻する。
スペシャルビー玉っつったらスペシャルビー玉なのである。断じてなまり……いや、違うったら違うから!
「……」
「……」
『アイン』と『ツヴァイ』の二人は、戦場を蹂躙していく蒼炎の不死鳥から目をそらしていた。
互いに黙っているのは、玲さんのやっていることが『ダークフィールダー』たちと同じくらいえげつない戦法であるからだ。
なにか言葉を紡いでしまえば、そこからいろいろな関係各所から突っ込まれそうだからだ。
ビー玉はね、まあ、まだセーフですよ。
でもほら、ね。
なま……は、ね? 完全にホビーアニメで言うところの悪役のやるやつですやんって『アイン』たちは思っていた。
けど、そんなことおくびにも出せない。
「アッハッハッハ! すごい威力! 満たされるよ! 破壊衝動がさあ!」
高笑いする玲は、どっちがどっちかまるでわからない。
ホビーで世界征服目論む側だよなーって『アイン』の呟きが届いたかどうかは、神のみぞ知る――!
大成功
🔵🔵🔵
光満・桐江
いよいよ試合開始、ですね…!
頑張って作って、練習してきましたから、勝てるように頑張らないと!
流石に敵は数も破壊力もすごいですから、基本は回避重視で立ち回り
機動力で翻弄することで、少しでも数的不利を軽くしていきながら
遠距離攻撃で牽制しつつ、堅実に削っていきます
よけたり移動したりする際は
追い詰められたり包囲されたりしないように!
万が一かわしきれなくなりそうな場合は、各種攻撃で迎撃を!
攻め込めそうなスキができたら
大鎌を介してケイアス・ガトリングの掃射や
死角に回り込んでからの大鎌の一撃で
できるだけ敵を倒していきます!
でも無理はしすぎずで、危なそうなときは早めに回避や離脱に移行します
猟兵たちの加わった『五月雨模型店』と『ダークリーガー』の率いるチームの激突は商店街のアーケードに設置された巨大なモニターやインターネットの配信サービスを介して、世界に届けられていた。
フィールドの中を走り抜けるプラスチックホビーたち。
モニターに映る激闘は、さながらアニメーションのようであり、リアルとフィクションが混在となったホビースポーツとしての輝かしさを知らしめる。
光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)は始まった戦いに奮起する。
何せ、彼女の作り上げた『カオスリーパー・エレイソン』は一生懸命作って、がんばって練習してきたのだ。
その成果を発揮し、勝利できるようにがんばらないとと彼女は生来の生真面目さを発揮し、フィールドに飛び込む。
操縦パーティションから見るフィールドは、さながら戦場。
王冠が飛び交い、味方の攻撃が大地をえぐる。
ものすごい攻防である。
「でも、躊躇ってはいられません、から!」
敵である『ダークフィールダー』たちがたぐる『王冠シューター』の攻撃力は凄まじいものである。
一撃を受ければ、それだけで破壊されてしまうほどの力だ。
だからこそ、桐江は凶まで回避重視の立ち回りを体に叩き込み、機動力で翻弄するのだ。
「敵の数は減っても……まだこれだけいるなんて! でも!」
手にした大鎌で『王冠シューター』を切り裂く。
確かに絶大な一撃を放つ王冠であったが、一撃を放てば装填するまでの時間があることを桐江は気づいていた。
連射タイプもいるにはいるが、多くはない。ほとんどがパワータイプである弊害がここに来て敵を追い詰める要因となっていたのだ。
「少しでも数的不利を軽くしないと!」
「こっちはカバーするぜ!」
「あちらが手薄になってます、頼めますか!」
『アイン』と『ツヴァイ』と共に桐江は『カオスリーパー・エレイソン』と共に戦場を舞うように飛び回る。
共にカバーし、共に戦う。
それは桐江が思っていた戦いと同じであった。敵に追い詰められたり、包囲されないようにするためには、味方の援護が必要不可欠なのだ。
誰だって一人では戦いきれない。
「クソッ、数を減らされている……! パワータイプ、装填が終わり次第……!」
「そこです! 混沌をたっぷり大出血サービス、しちゃいます!」
桐江は見逃さなかった。
いや、メンバーたちと共に戦い、その次弾装填までの時間、その決定的な隙を見極め、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
『カオスリーパー・エレイソン』の構えたケイアス・ガトリングが一瞬で混沌属性の魔法の弾丸をばらまく。
秒間数百発の魔法の弾丸がばらまかれ、『王冠シューター』たちを薙ぎ払っていく。
「ガトリングすっげー!」
「無理はしすぎませんよ。今のうちに敵の陣形を突き崩しましょう! 確実に!」
桐江はこちらもまた敵と同じ二の轍を踏まぬようにとガトリングの斉射を止めて、大鎌にスイッチして敵の背後を突く。
『王冠シューター』は腹部に王冠を備えるが故に、背面からの攻勢に弱い。
即座に振り返ることのできないのもまた欠点だ。
何せ、王冠は金属。
装填されている状態では、機体が重たくて旋回性能が大きく落ちるのだ。
「危なげなく、みなさんを守りながら戦いましょう。数の不利が覆るまで!」
桐江の指示は的確に『五月雨模型店』のメンバーたちに伝わり、皆危なげなく、機体を失うことなく数の不利を徐々に覆していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
説明しよう!
バラバラXくんとは全身が8~10個の砲台に分離する人型プラクトである!
それをさらに形状・硬度自在のVBA流体金属混合プラ粘土で覆ってパワーアップしているぞ!
そして彼は…生きている!
ロニの頼もしい相棒だ!
こんな感じでナレーションしてもらおう!
●大事なのはイメージ
イメージして!
カッチカチの鎧で身を守る自分を!そして王冠を弾くんだ!
●痛いのは痛い
え、痛い?そっかー…
じゃあ相手の攻撃とVBAプラ粘土の操作を覚えたところでVBAプラ粘土でブレードを作るんだ!
大丈夫!タイミングはボクが【第六感】で指示してあげる!キミならできる!
――――今だッ!!
然して後は勝つだけさ!
説明しよう!
「『バラバラX』くんとは、全身が八~十個の放題に分離する人型プラクトである!」
唐突に始まった説明ナレーション。
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はいつのまにかお立ち台に立っていたし、世界に配信されるカメラの前で解説しはじめていた。
いや、自由がすぎる。
いくら『プラクト』が自由だからって、流石にこれはアウトでしょって思う者だっていたかもしれない。
けれど、『プラクト』事態が自由の塊であるのならば、スポンサーもまた自由の塊であった。
オッケーなのである。
「それをさらに形状・硬度自在のVBA流体金属混合プラ粘土で覆ってパワーアップしているぞ!」
ロニの解説は続く。
流石に未知の技術すぎないかなって思わないでもない。
なんだ流体金属混合プラ粘土って。
思念を受けて形作ることができる未来にもほどがある素材。現実にあってくれ、頼む! となる素材の解説と共にロニはごくりと生唾を飲み込む音をマイクに紛れさせる。
迫真の演技であった。
「そして彼は……生きている! ロニの頼もしい相棒だ!」
いや、全部セルフでやってしまっているが、ロニの解説に多分モニターの前にいる少年たちは色めき立つことだろう。
そんな夢の商品があるなんて、と心躍ったことだろう。
スポンサーはこれにもニッコリなのである。
そんな感じのナレーションを終えたロニは戦場に舞い戻る。
戦いの趨勢は『五月雨模型店』に傾いているものの、それでも予断を許さない状況であることは疑いようがない。
何せ、『ダーク化』されたアスリート達の親玉である『ダークリーガー』を引きずり出せていない。
『ダークリーガー』を打倒しなければ、この戦いに本当の終わりは来ず、『ダーク化』されたアスリートたちを救えないのだ。
「イメージして! カッチカチの鎧で身を守る自分を! そして王冠を弾くんだ!」
『バラバラX』にロニは思念を送る。
大事なのイメージ。
王冠という金属の弾丸すらも弾く鋼鉄の鎧。
それを身にまとった自分は無敵なのだというイメージ。それを……。
「え、痛いのは痛い? そっかー……」
放たれる王冠を弾き返す『バラバラX』くん。
でもまあ、弾けたとしても衝撃は機体のフレームに響くからそれはそうである。しかし、ロニはじゃあ、って無茶振りを再開する。
無茶振りに余念がない。
「じゃあ、相手の攻撃とVBAプラ粘土の操作を覚えたところで、VBAプラ粘土でブレードを作るんだ!」
いや無理だろって『バラバラX』くんは思った。
「大丈夫! キミならできる!」
無茶振りである。
そんなふうに言われたら、もうやるしかないのである。やらないとやらないとでまた後で面倒臭いことになるのは請け合いであったし。
なんなら、これ以上の無茶振りをされてしまうことは明白であった。
「――今だッ!!」
その言葉と共に『バラバラX』の体がブレードの形へと変わり、王冠の一斉射を躱しながら、空中にひるがえる。
「できたじゃん! 後は勝つだけさ!」
ロニの言葉に『バラバラX』は出来たし、出来てしまったけど、この後が怖すぎると思った。
だが、そんなことお構いなしにロニの思念は『バラバラX』を突き動かし、『王冠シューター』たちをずんばらりんって切り裂いて、戦場に爆発の花を咲かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ジェノサイドピッチャー』
|
POW : 魔球『ジェノサイドアルゴル』
【敵を引き寄せ粉砕する変動超重力】を宿した【魔球】を射出する。[魔球]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
SPD : 魔球『ギガントダークネス』
【自身が投擲した球状の物体】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : 魔球『眠りの森』
【催眠軌道を描く超スローボール】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
イラスト:梅キチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戦いの趨勢は『五月雨模型店』に傾きつつ合った。
未だ『ダーク化』したアスリートたちのたぐる『王冠シューター』たちは残っている。だが、『五月雨模型店』のメンバーたちがこれを抑えているのだ。
「やはり、やるようだ! だが、王冠をうちはなったあとの『王冠シューター』の実力がこの程度であると思わぬことだ!」
「負け惜しみを言ってさ!」
「いえっ、ですが……この操縦技術! 侮れない!」
王冠を排出して身軽になった『ドライ』の『王冠シューター』の動きは、その二頭身の体からは考えられないほどの動きで持って人型ロボットをたぐる『アイン』と『ツヴァイ』を相手取っても互角の戦いを繰り広げていた。
「こいつらは私達が抑えているから!」
「皆さんは敵のリーダーを!」
二人に送り出され、猟兵たちは『ダーク化』されたアスリートたちを蹴散らし、敵チームに中へと切り込んでいく。
だが、その進撃が止まる。
猟兵達が飛び込んだ先に打ち込まれた凄まじい威力の王冠の一撃。
それはこれまで『ダークフィールダー』たちが放っていた王冠の一撃とは一線を画する威力であった。
だたの一撃であっても、あらゆる地形を破壊し、狙いはレーザーのように正確無比。
「……私を引きずり出したことは褒めてあげよう。だがね、ここで終わりだ。私の『王冠シューター』はピッチャー仕様。これまでの外野手程度の力量と同じにしてもらっては困る」
現れたのは『ジェノサイドピッチャー』。
『ダークリーガー』であり、この『ダーク化』されたアスリートたちを率いている首魁に他ならない。
彼女の投球技術は、ホビーである『ジェノサイドピッチャー』に完全に投影され、凄まじい王冠の一撃を見舞う。
これまで王冠は次弾装填されるまでの隙があった。
けれど、彼女のホビーの背面に備えられたピッチングマシンの如きパーツがその隙を完全に殺していた。
王冠がみっちりと装填されているのだ。
連射というより、もはや乱射である。
「私の魔球、それらを恐れぬのならばかかってくるがいい――!」
狭野・実琴
要塞特攻後はやることもなかったからしれっと『ドライ』の近くでドライの操縦技術を見てたよ。王冠シューター使いと戦うには王冠シューター使いの戦い方を知っていた方がいいからね…よし、だいたい覚えた。※【学習力】【瞬間記憶】
ありがとね、ドライ。※【誘惑】【演技】
操縦を再開すると私の要塞を喰い破って王冠シュータータイプの機体が出てくる。全身金色だけど凶悪な様相をしていて、ドライブ回転用のホールドパーツ、スリークロウズが付いてるよ。さあ、行くよ『金鵄』。
UCで敵と同等のプラクト技能を獲得して、ドライの操縦を見て得た知識も元に徐々に上回って叩き潰すよ。
こんな感じでいいのかな?魔球『ギガントダークネス』
戦場たるフィールドに落着した『巨大空中要塞』は沈黙を保っていた。
フィールドを更地にするかの如き一撃は、そのスケールの大きさを示すようでもあったし、またあれだけの巨大なホビーが落着すれば敵の機先はくじかれたも同然だった。
後は『五月雨模型店』のメンバーたちや後続の猟兵達が戦いを優位に進めていけばいい。
狭野・実琴(元天才・f38190)は、その『巨大空中要塞』の特攻の後は、特にやることがないとばかりにずっと操縦パーティションから敵である『ダーク化』アスリートである『ドライ』の動きをずっと見ていた。
おそらく、この『プラクト』というホビースポーツにおいて、敵味方を含めたアスリートの中で最も操縦技術が優れているのが『ドライ』であった。
『アイン』や『ツヴァイ』の操縦技術の高さは言うまでもない。
けれど、それは未だ発展途上のものであるといえるし、何より『王冠シューター』を使った戦い方は、優れていた。
「『王冠シューター』は敵の『ダークリーガー』も使う。なら、『王冠シューター』使いと戦うには、『王冠シューター』使いの戦い方を知っていた方がいいからね……」
彼女の瞳に映る『ドライ』の戦い方は見事なものだった。
確かに二頭身のデフォルメされた機体ではあったが、手足がちゃんとある。そして、王冠の一撃を放った後は次弾を装填するまで攻撃できないと見せかけておいて、腹部のデットウェイトである王冠を放出した後は、その身軽さをもって格闘戦を人型ロボットであるホビーと繰り広げることのできるポテンシャル。
その点において『ドライ』の操縦方法は他の『ダーク化』アスリートとは一線を画するものであった。
「よし、大体覚えた。ありがとね、『ドライ』」
「見ただけでこちらの操縦を知ったところでなんとする! 君の機体はその要塞、搭載機も人型ロボットとお見受けするが!」
だが、実琴は不敵な表情をしていた。
『巨大空中要塞』からなにか音がする。唸り声のような、地響きのような。
そんな音。
いや、咆哮であった。要塞を食い破って飛び出すのは黄金の機体。いや、黄金の『王冠シューター』。
「要塞から機体が――!?」
「さあ、行くよ『金鵄』」
実琴が手繰る『金鵄』が要塞から飛び出し、『ドライ』の『王冠シューター』を横切って『ジェノサイドピッチャー』へと迫る。
「機体を変えたところで、私に敵うべくもないことだ。受けろ、魔球『ギガントダークネス』!」
『ジェノサイドピッチャー』の瞳がユーベルコードに輝き、魔球のごとき王冠が射出される。
それは王冠と呼ぶにはあまりにも巨大過ぎた。
大質量の王冠。その射出は実琴の『金鵄』にとって、躱しきれないものであったはずだ。
だが、彼女は見ていたのだ。
『ドライ』の動きを。放つ金属王冠は迫る巨大な王冠を前にして焼け石に水。反らすこともできない。
けれど、実琴は己のデッドウェイトである王冠を捨てたに過ぎないのだ。
「『ドライ』の動きは……軽やかだった。そして、覚えたよ」
彼女の瞳はユーベルコードに輝いている。
ポジティブフィードバッグ。
彼女は天才である。
元、とついてはいるが、紛れもない天才。才能。天賦。見ただけで覚え、己のものとする異能たる力。
「そろそろ勝つね」
実琴の瞳に輝くユーベルコードは極大に膨れ上がっていく。
凶悪な様相の『金鵄』の機体が黄金に輝き、ドライブ回転用のホールドパーツが煌めく。
ガッチリと王冠を保持するスリークロウズが展開し、其処に納められた王冠が一気に射出される。
「まさか!」
「こんな感じでいいのかな?」
実琴は見て覚える天賦の才能を持つ天才である。
彼女のユーベルコードは『ジェノサイドピッチャー』の放った巨大王冠の一撃を模倣、習得し、さらにそこに『ドライ』の操縦技術を上乗せして放つ!
「魔球『ギガントダークネス』」
放たれる王冠は巨大化した王冠と激突し、相殺される。
いや、上乗せされた才能が『ジェノサイドピッチャー』の機体を吹き飛ばし、実琴の天才性が未だ健在であることを示す。
「ありがとね、『ドライ』」
「礼を言われる筋合いはないが!」
悪びれもせず、さりとて感情の感じられない実琴の言葉は、紛れもない天才としての発露。
『ドライ』は打ちのめされるでも無く、ますます持って闘志を燃やし、実琴の金色の『王冠シューター』に挑み、これに返り討ちにされるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』
おやまあ、連射仕様。はてさてー、漂うだけでは避けられないやつですねー。
ま、相手の範囲内に入らないようにしましてー。UC発動。
呼び出しましたし、カツオノエボシも二つに。
あー…まあ、この速度でも大丈夫ですよ。
※呼び出し※
第四『不動なる者』盾&まとめ役武士
一人称:わし 質実剛健古風
なんぞ、訓練中に「わしにも慣れていてほしい」と言ったのは、こういうことか。
まあたしかに…視認しづらいこれが増えたことにより、さらに視認しづらくなり…。
そして、攻撃範囲は、相手より広いのであるからな。
…嵐で、かなりの速度になってるカツオノエボシなのだが?
※
陰海月と霹靂、応援中!
操縦パーティションの外で『陰海月』と『霹靂』の二匹がポンポンを持って応援している。
その姿事態が愛らしいものであったし、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『疾き者』は微笑ましく思っていた。
しかしながら、敵もさるものである。
これまでとは一線を画する強者『ダークリーガー』である『ジェノサイドピッチャー』の力は、『王冠シューター』の欠点を容易く克服してきているのである。
次弾を装填する間の隙をピッチングマシンのように備えられた連射ケース。
パワータイプであっても比類することを許さないかのような威力の一撃。
さらには魔球『ギガントダークネス』によって巨大化した王冠の一撃は、それこそフィールドの地形という地形を破壊し、変更していくほどであった。
「おやまあ、パワータイプでありながら連射仕様。はてさてー、漂うだけでは避けられないやつですねー」
ふわりふわりと『カツオノエボシ』のプラスチックホビーがクリアカラーの体をフィールドに漂わせ、これまでとは異なる『王冠シューター』の力を脅威に感じたことだろう。
「ま、相手の範囲内に入らないようにとはいいましてもー……あれだけ巨大化されてしまえば影響を受けぬフィールドはないでしょうしょいー」
その瞳がユーベルコードに輝く。
『疾き者』はあくまで馬県・義透という猟兵の一柱である。
悪霊であり、複合存在である彼等は、ユーベルコードによって別人格を召喚する。
「なんぞ訓練中に『わしにも慣れていてほしい』と言ったのは、こういうことか」
「ええ、呼び出して機体も二つになりりましたしねー」
「まあ確かに……視認しづらいこれが増えたことにより、より視認しづらくなり……」
それは嵐のように(ムベヤマカゼヲアラシトイフラム)。
呪詛で出来た雷をまとう嵐が吹き荒れる。
「嵐程度で私の魔球を受け止められるか! 阻めるものか!」
放たれるは王冠。
魔球『ギガントダークネス』によって巨大化した王冠が二体の『カツオノエボシ』へと迫る。
どれだけクリアーパーツを使い、視認性を極度に落としたものであったとしても『ジェノサイドピッチャー』には関係のないことであった。
めぼしい場所に巨大化させた王冠を打ち込むだけで、当たらなくても衝撃波だけで『カツオノエボシ』を打ちのめすことができるからだ。
「……ふ、悪霊は悪霊らしくー」
『疾き者』は笑う。
嵐によって周囲には風が満ちている。呪詛の雷は嵐と共に『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』を打ちのめしながら周囲に風を満たしていく。
確かに敵の放った魔球の如き王冠は巨大化し、躱しきれないかもしれない。
けれど、風によってふわりと浮かぶ『カツオノエボシ』は、さらに加速していくのだ。
「かなるの速度になっている『カツオノエボシ』なのだが?」
「これで逃げ切りましょうー」
二人の悪霊は『カツオノエボシ』を風にのせ、迫る巨大化した王冠から逃れようとする。
だが、それ以上に衝撃波の余波が凄まじい。
嵐はすでに王冠の威力を減退させ、大地に失墜させている。けれど、放たれた衝撃波までは殺しきれていない。
おじーちゃーん!
そんな声がしたような気がした。
いや、気がしたのではない。『陰海月』と『霹靂』たちがポンポンを一生懸命降っている。
ここで負けてはならないと二人は思っただろう。
『陰海月』が一生けん命作った『カツオノエボシ』。『霹靂』が手伝い、自分たちも操縦を覚えた『カツオノエボシ』。
それを失うことがあってはならないと『疾き者』と『不動なる者』は互いの触腕を握りしめ、衝撃波を受け流す。
ふわりと浮かぶ機体だからこそ出来た芸当。
衝撃を受け流しながら、二体の『カツオノエボシ』が空に舞い上がる。フィールドの外に飛び出してはいたけれど、高く高く舞い上がる『カツオノエボシ』の不思議な、それでいて見事な色のグラデーションは、『プラクト』というホビースポーツの可能性を示すには十分なものであり、それを『陰海月』と『霹靂』はキラキラとした瞳で見上げているのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シニストラ・デクストラ
「ついにダークリーガーが出てきたの兄様。」
『ついにダークリーガーが出てきました姉様。』
要塞化したフィールドを最大速度で昇舞皇帝と書いてサリーレモナルカを引き続きシニストラが操縦。
「ピッチャーも外野も同じ選手なの。戦力の違いに例えるなんて三流なの兄様。」
『ピッチャーも捕手も同じ選手です。チームワークが戦力の違いだと気がつかないなんて五流ですよ姉様。』
障害と攻撃を華麗に回避しつつ最大速度に加速したらディアボルスを発動します。
魔王の力を宿した機体のダッシュからの体当たりで敵を吹き飛ばして轢き逃げします。
「受けろ、魔球――」
それは『ジェノサイドピッチャー』のユーベルコードの煌めきであった。
一流のアスリートの放つ輝きは、まさに一挙手一投足全てがユーベルコードに昇華する。彼女の放つ魔球は、全てが魔球と変じる。
そして、シューティングホビーである『王冠シューター』を手繰るのならば、放つ王冠全てが彼女の魔球としての力を宿す。
「『ジェノサイドアルゴル』――!」
放つ王冠が戦場を鋭角な角度で鋭く軌道を変えながら飛ぶ。しかも、その王冠は敵である『五月雨模型店』のメンバーたちの機体を引き寄せていくのだ。
これこそが彼女の魔球『ジェノサイドアルゴル』。
敵をひきつけ、粉砕する変動超重力を持った魔球たる王冠の一射は、ただそれだけで猟兵たちの側に傾いた戦いの趨勢を再びオブリビオンである『ダークリーガー』側に傾けるには十分な一撃。
「機体が、引き寄せられる!」
「こ、このままでは……!」
『アイン』と『ツヴァイ』の機体もまた引寄されれていく。あの王冠にぶつかった瞬間、機体が破壊されてしまうだろう。
だが、その一撃に飛び込むものがあった。
「ついに『ダークリーガー』がでてきたの兄様」
『ついにダークリーガーがでてきました姉様』
シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人が駆る車型ホビー『昇舞皇帝』と描いてルビで『サリーレモナルカ』が疾駆する。
「ふん、私の魔球を前に飛び込むか! 外野手共とは違うと言ったはずだが!」
『ジェノサイドピッチャー』は笑う。
彼女の魔球は防がれるものではない。反らすことすらできぬ変動超重力。そこに飛び込んでいくシニストラとデクストラの車型ホビーは、ずたずたに破壊されてしまうだろう。
けれど、彼女たちの瞳はユーベルコードに輝いていた。
「ピッチャーも外野も同じ選手なの。戦力の違いに例えるなんて三流なの兄様」
『ピッチャーも捕手も同じ選手です。チームワークが戦力の違いだと気が付かないなんて五流ですよ姉様』
二人は知っていた。
『ジェノサイドピッチャー』が例えた、ピッチャーと外野手の違い。
確かにピッチャーは花形だ。
敵の攻撃を抑え込む要。
打たれるも打たせるもピッチャー次第。だが、ただ一人で野球は勝てない。放ったボールを捕ってくれるキャッチャーがいなければならないし、打たれた時にはキャッチしてくれる野手がいなければならない。
他にもベースを守る塁手がいなければ、スティールされ放題である。
だから、彼女の言うことは誤りだ。
オブリビオンと化してしまったがために、大切なことを置き去りにしてきてしまっている。
「だからなんだというのだ! マウンドの上では私が正義だ! 私こそが王であるべきなのだ! 私が投げなければ、バカスカ打たれて終いだ! ならば、私を! 私こそを! 王として! 崇めなければならないだろう!」
「それが過ちなのです。やります、兄様」
『過ちは正せばいいです、やりましょう、姉様』
魔王たる力を開放し、|『昇舞皇帝』《サリーレモナルカ》が飛ぶ。
放たれる変動超重力の源、その王冠へと飛び、魔王の力を宿した一撃が車体に宿る。
それはディアボルス。
正に魔王としての力の発露。確かに『ジェノサイドピッチャー』の力は強大だ。シニストラとデクストラだけでは勝てない。
けれど、それでも彼女たちは一人ではない。
二人で一つである以上に、今の彼女たちには多くの仲間がいる。猟兵もいるし、『五月雨模型店』のみんなだっている。
ならば、負ける道理などない。
変動超重力放つ王冠へと車体が激突し、ユーベルコードの奔流をほろば知らせる。
「吹き飛ばすのです、兄様!」
『このままひき逃げしましょう、姉様!』
凄まじいユーベルコードの激突にあっても、変動超重力を発していた王冠を弾き飛ばしながら『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』へと飛び込む|『昇舞皇帝』《サリーレモナルカ》。
その一撃は、『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』を弾き飛ばし、彼女たち二人はそのままひき逃げのごとく空の彼方へと飛び出していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『いくらすごい魔球で金属の王冠であろうと俺の炎は焼き尽くすぜ!』
【オーラ防御】を纏い、【戦闘知識】で動きを【見切り】、避けるぜ。無論相手は連射できる。なので不規則な軌道に【フェイント】を交えて避け、距離を詰めて、ブレードでの【鎧砕き】を叩き込む!
タイミングを見計らってユーベルコード【獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』】を発動、焼き尽くしてやるぜ。
『こちとら創作意欲がわいてんだ!さっさとぶっ飛ばしてすーぱー☆ないあるて…スペシャルメイドを作りたいんだよ!!』
欲望ダダ漏れですが無許可なので本人にバレたらまずい…って放送されてるけどバレないよな?(フラグ)
魔球『ジェノサイドアルゴル』。
それは一度放たれれば、王冠を中心に敵を誘引して破壊する変動超重力を発生さっせる恐るべき魔球である。
もはや魔球の領域をでているとしか思えないほどの力であるが、ことアスリートアースにおいては、『ジェノサイドピッチャー』のようにユーベルコードにまで昇華させた魔球は、そのような力を発揮することもありえるのだろう。
事実、彼女の投球技術は超人的と言って差し支えのないものであった。
「私こそがマウンドの王! この力を理解しない愚かな者どもを従えなければならない!」
彼女にとってピッチャーとはグランドの王そのもの。
チームの王であり、主である。
彼女がピッチングをしなければチームは勝利を得られない。
だが、ベースボールとはチーム競技だ。
一人の如何に優れたピッチャーがいるのだとしても、打って点をいれなければ勝利などできない。
守りに長けているということは失点をしないということでもある。
だが、失点をしないことが重要なのは、味方が点を入れてくれるからだ。もしも、彼女一人だけであったのならば、それはただの独りよがりな王でしかない。
「いくらすごい魔球で金属の王冠を放つのだとしても、俺の炎は焼き尽くすぜ!」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)はそう言ってのける。
『王冠シューター』の一撃は重たく鋭いものだ。
それに『ダークリーガー』である『ジェノサイドピッチャー』が放つ魔球の如き一射は、防ぎようがない。
たとえ、王冠の一撃を躱したとしても発生する変動超重力によって誘引され、機体を破壊されてしまう。
『五月雨模型店』のメンバーたちも攻略しきれない恐るべきユーベルコードを前にガイは『ビルドスター・インパルス』と共に打ち込まれ続ける王冠を躱し、不規則な軌道でフェイントを加える。
「この私に勝負を挑むか! どうあがいても貴様たちには敗北しかないというのに!」
「お前こそ勝利を得られるものか! こちとら制作意欲がわいてんだ! さっさとぶっ飛ばさせてもらう!」
ガイにとって、それは欲望ただ漏れであった。
本人に無許可で作っているという時点でバレたらまずいというモラルはあるようであるが、この戦いが商店街のモニターや多くのネットワークを通じて放送されているという時点で、その叫びは発信されている。
つまりは、本人にも届いているということだ。
「……スペシャルメイドをつくりたいんだよ!!」
全世界に向かってなんていうことを言うのか。
しかし、ガイは止まらない。
バレないと思っているし、色んな意味で大丈夫だと思っているのだろう。何一つ大丈夫ではない。
気迫だけで押し切るようにガイの瞳がユーベルコードに輝く。
「スペ……? 一体何を言っている!」
放たれる魔球。
その魔球たる王冠からユーベルコードが発露する前に、獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』(ゴク・グレンカイホウ・ヴリトラ・ファンタズム)によって発露した9つの首を持つ竜を模した獄炎が王冠を溶かし尽くす。
「変動超重力だろうがなんだろうが、発動する前に軸たる王冠を壊してしまえばな!」
ガイはそのまま機体のブレードを『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター 』へと叩き込む。
見事な戦いぶりであっただろうが、彼の叫びは全世界に発信されている。
みんな色々台無しだなぁと思うのだが、ガイには今は知る由もないのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
はー、やっぱり自分で動くとあっついね!
思わずこの場で全部服脱いで水着になっちゃった。
夏はプールで水中プラクトとかどう?
きっと流行るぞ☆
さーて、これまたでっかい王冠だ!
これを撃ち落とすには……やっぱりユーベルコードで全弾発射かな☆
ライフルも肩のもミサイルも隠してたのも、一つ以外は全部残さず【乱れ撃ち】だ!
これなら一発目くらいは凌げるでしょ。
それにこれくらい【弾幕】張れば煙とかで【目潰し】にもなるかな?
その中に【迷彩】で紛れながら【ダッシュ】!
近付いて抱きついて、残しておいた頭部マシンガンを全部叩き込んでやるもんね!
プラモとにぃなちゃん、どっちを見ても【パフォーマンス】になるような動きを目指すぞ☆
操縦パーティションに、むわりと熱気が広がる。
『モーション』タイプの操縦方法は、アスリート本人の動きをプラスチックホビーにトレースさせるものである。
当然、激しく動けば体は熱を持ち、空気を熱して汗もかくものである。
「はー、やっぱり自分で動くとあっついね!」
ぱたぱたとしていた上着をニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は、その場で脱ぎ捨てる。
えっ!? とカメラからモニターに映し出されたニィナの素肌に視聴者たちはドギマギしてしまう。
いきなりであった。
暑いからといっていきなり脱ぐだろうか。
いや、ニィナは脱ぐのである。だがしかし、彼女の上着の下は水着なのである。何も心配ないのである。
「夏はプールで水中『プラクト』とかどう? きっと流行るぞ☆」
ニィナがカメラ目線でばちこんとウィンクしてみせる。
きっとモニターの向こう側では、男性陣が胸を射抜かれてしまっていることであろう。
確かに夏は暑い。
水中ステージと銘打って水着でスポーツなんていうのは、ありえる話であろう。むしろ、スポンサーが食いつかぬわけがない。
しかしながら、それもこれも『ダークリーガー』に勝利してこそである。
「ふざけたことを! 魔球!『ギガントダークネス』!」
『王冠シューター』より放たれる『ジェノサイドピッチャー』のユーベルコード。
それは放つ王冠を巨大化させ、圧殺する恐るべき力。
「さーて、これまたでっかい王冠だ!」
撃ち落とすことは難しいだろう。
ニィナの機体に搭載された火器の全てを開放する、ガジェット忍法・弾丸祭の術(ガジェットアーツバレットフェスティバル)によって凄まじい数の弾丸が飛び交う。
ライフルも、肩部に備えられた砲も、隠していたミサイルも、全てを開放して迫る王冠へと向かう。
「無駄だ! 大質量を前にして火力など無意味! 我が魔球の前に押しつぶされるがいい、猟兵!」
圧倒的な王冠。
金属製であることもニィナにとっては脅威だ。
攻撃を加え、それでもなお足りない。けれど、ニィナは一人で戦っているのではない。
『ジェノサイドピッチャー』のように独りよがりで戦うマウンドの王ではないのだ。
『五月雨模型店』のメンバーたちの火器もまたニィナと同じ様に王冠に打ち込まれる。
破壊はできない。
けれど、勢いは殺すことがえきたのだ。
「これなら!」
凄まじい弾幕の中、ニィナは失墜する王冠の上を走る。
これだけの弾幕なのだ。
あたりには爆風と煙で立ち込め『ジェノサイドピッチャー』には、近づくニィナを視認することはできない。
ここまで計算しての弾幕であったのならば、凄まじい戦略であったことだろう。それ以上に彼女の迷彩塗装が生きる。
「くっ……どこにッ!」
「こっちだよ!」
ニィナは『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』に組み付く。だが、彼女の機体にすでもう火器は残っていない。
否。
一つだけ残っているのだ。
頭部に備えられたマシンガン。
組み付いても頭部だけは自由になる。ならば、そのありったけを『王冠シューター』に叩き込むのだ。
打ち込まれるマシンガンの振動でニィナの体も揺れる。
何がとは言わない!
けれど、揺れているのだ! モニターの前の男児諸君はもちろんのこと、男性紳士諸君もまた何がとは言わないが釘付けである。
ニィナは確かに優れた猟兵である。
『プラクト』のプロモーションをしっかりと果たしてくれている。
それにニィナ自身を見ていたとしてもしっかりとパフォーマンスになるように計算されているのだ。
そのすさまじい戦略性の前に『ジェノサイドピッチャー』は膝を突くしか無いだろう。
マシンガンの弾丸を一つ残らず打ち込み、ニィナは勝ち誇ったようにカメラの前でポージングを取って、モニターの向こう側を沸かすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…なん…だと…
…ピッチャーと言えば投球の専門家……確かに外野手仕様と比べその投球エネルギーは数百倍…!(適当)
…ならば…『セントール』変形…バッティングモード…
(車がケンタウロス型になってどこからか巨大バットを担ぎ出す)
…相手がピッチャーならばこちらはバッティングで相手するのが礼儀というもの……へいへい、ピッチャービビってる…
(予告ホームランのポーズを取る)
…眠気を誘う魔球…は無意味…何故なら居眠り運転防止のために居眠りを感知すると座席に電流を走らせて強制覚醒させるギミックがついている…痛いけど…
…魔振…【ソラ跳ね踊る白兎】…打球を魔法陣に反射させて強制的にピッチャー返し…今回は私の勝ちだね…
「おのれ! この私を愚弄する戦いばかりをして!」
猟兵たちの戦いは『プラクト』というホビースポーツを純粋に楽しんでいるものばかりであった。
プラスチックホビーを用いたスポーツ。
それが『プラクト』。
確かに勝利も大切だろう。けれど、これはチーム戦だ。誰もが役割を果たし、そこには上下関係はない。
強い者も弱い者も、等しくフィールドの中で戦える。
時にジャイアントキリングも起こり得るだろう。だからこそ、楽しいのだ。
絶対的な王者など必要ない。
ましてや、己がチームの主であるというように振る舞う必要だってないのだ。
だからこそ、『ジェノサイドピッチャー』は間違えているのだ。
「私こそがマウンドの王! 私の魔球があればこそ! チームの勝利は確実となる! 内野手も外野手も捕手も! 私の前に膝をつく以外に意味はない!」
そう豪語する『ジェノサイドピッチャー』を前にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は愕然とする。
「……なん……だと……」
確かにピッチャーと言えば投球の専門家。
外野手と比べれば、『王冠シューター』のピッチャー仕様は王冠を放つエネルギーも数百倍にも及ぶ。
いや、精確な数字はわかんない。
けれど、メンカルの当社比的にはざっくりとそんな感じなのである。よくあるフレーバーテキスト的なアレ。
しかし、それを裏付けるような圧倒的な力が『ジェノサイドピッチャー』にはある。『王冠シューター』より放たれる魔球の如き王冠の一撃。
それはこれまでのような直線的な投球ではなかった。
まるで放物線を描くようなゆったりとした放物線を描く王冠。
「受けろ、魔球『眠りの森』! 貴様たち全てを眠りに落とし、それから尽く破壊してやる!」
「……ならば……『セントール』変形……バッティングモード……」
メンカルの言葉とともに車型ホビーである『セントール』が変形する。いや、変形するの!? と誰もが突っ込まざるをえなかった。
いや、『ダークフィールダー』たちとの戦いのさなかにフラグはあったのである。
横転を防ぐためのサイドアーム。
あれは元々このためにあったのだ!
「相手がピッチャーならこちらはバッティングで相手をするのが礼儀というもの……へいへい、ピッチャービビってる……」
「誰がビビるものか!」
ケンタウロス型へと変形した『セントール』は何処からともなく巨大バットを担ぎ、ゆらゆら揺らして挑発さえしているのだ。
チェンジアップの如き魔球であったとしても、それが着弾するまで眠りの訪れない。
ならば!
「予告させてもらうよ……」
びしっと決めるケンタウロス型。
放物線を描いて飛ぶ王冠を前に大きく振るわれるバット。
確かにその遅い球筋は眠りを誘発させる。だが、メンカルは用意周到であった。
車型ホビー。
すなわち居眠り運転は絶対に許さないのである。彼女の『マニューバ』タイプの操縦パーティションにいきなり謎の金属棒が現れ、彼女の体に当てられる。
「……無意味……居眠り運転防止のために居眠りを感知すると座席に電流を走らせて強制覚醒させるギミック付き……」
す、すごい!
けれど、それいいのだろうか。ダメージ入らない? 大丈夫?
バリバリバリィってものすごい音がしてメンカルの体に電流が走る。眠気が来ようが何が来ようが、メンカルの作ったギミックは正しく反応するのである。
「痛い……けど……そちらが魔球ならば、こちらは魔振……ソラ跳ね踊る白兎(バウンシング・ムーンラビット)」
振り抜かれたバットが王冠を捉え、展開した魔法陣に打ち込まれる。
それは角度を変えるための薄板状の魔法陣であり、硬さを変化させ、バネのように王冠を弾き飛ばすのだ。
どこに、とはもう明白である。
「ピッチャー返し……!」
「……今回は私の勝ちだね……」
猛烈な勢いで本来のピッチャー返しとは非ぬ方向から王冠が『ジェノサイドピッチャー』を襲う。
正面からくる打球には反応できたかもしれない。
けれど、メンカルはあえて角度を変えて跳ね返したのだ。その不意の一撃を躱すことなどできようはずもない。
見事な打球は『ジェノサイドピッチャー』をマウンドという頂点から引きずり下ろす一打となって、したたかに『王冠シューター』を叩きのめすのであった――。
大成功
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橘・小雪
あたし、ピッチャーも好きだけど
ショートの華麗な守備も好きなんだけどなー…
なんて、趣味は置いておいて
アインさんとツヴァイさん
それに先輩猟兵さんたちの作ってくれた隙を見て
あたしは紅茶を一杯
ああ、落ち着くなー なんてUCを起動
あたしには沢山の仲間がいる
だから、あたし一人で戦わなくても大丈夫
バーニア噴射、王冠の一撃を勝負勘でギリギリ躱して
近距離へ突っ込むよ
『桜風』の刀で、その肩を狙う!(【部位破壊】)
ピッチャーなら肩を壊せば致命傷
壊せなくても、傷さえつけば……!
あとはたぶん、次の王冠でやられるんだろうけど
猟兵先輩方、楽しそうに戦ってるなー
あたしも見習わなくっちゃ!
痛烈なるピッチャー返しの一撃が『ジェノサイドピッチャー』の操る『王冠シューター』を強かに打ちのめす。
非ぬ角度から打ち込まれた打球ならぬ王冠は、彼女の機体を大きく吹き飛ばす。
あまりの衝撃に『ジェノサイドピッチャー』は目を白黒させたことだろう。
「――ッ!? こ、の……!」
彼女はピッチャーだ。
言うまでもなくマウンドで一人戦わなければならぬ存在である。
故に彼女は孤高の王であった。
如何にベースボールがチーム競技であったのだとしても、あのマウンドの上では一人でなければならない。
誰一人として言い訳など出来ない。
己の敗北はすなわちチームの敗北。それ故に彼女は強くあらねばならぬと踏みとどまるのだ。
「私こそが王! ピッチャーとは、チームを統べる王であり、それ以外は私の配下にすぎないのだ!」
「あたし、ピッチャー好きだけど、ショートの華麗な守備も好きなんだけどなー……」
橘・小雪(Tea For You・f37680)は戦いの最中であったが、穏やかな紅茶(オダヤカナコウチャ)を楽しんでいた。
彼女自身が淹れた紅茶を味わう安堵。
その時間がながければ長いほどに彼女の能力は向上していく。
「紅茶のチャージは終わったかよ、小雪ねーちゃん!」
「まだ時間がかかるのならば!」
「チャージなどさせんよ!」
『アイン』と『ツヴァイ』が『ドライ』を抑えている。猟兵に打ちのめされてもなお、『ドライ』は果敢にこちらを倒そうと追いすがっている。
そんな彼を『アイン』と『ツヴァイ』が抑えるのにかかりっきりなのだ。
「ああ、落ち着くなー」
まだぁ!? と『アイン』が苦笑いしている。『ツヴァイ』は仕方のないことだとわかっているのだろう。
けれど、小雪はこんな時だからこそ、と思っていた。
『アイン』と『ツヴァイ』。
そして先輩猟兵達。それに『五月雨模型店』のメンバーたち。彼等が隙を作ってくれている。
いや、自分が穏やかに紅茶を楽しむ時間を作り出してくれている。
その時間がながければ長いほどに彼女の移動力、攻撃力、身体硬度、勝負勘は上昇していくのだ。
「あたしには沢山の仲間がいる」
「眠れ! 魔球――!」
『ジェノサイドピッチャー』の魔球がユーベルコードの輝きとともに『王冠シューター』から放たれようとしている。
その輝きを真っ向から塗りつぶすかのように煌めくのは小雪のユーベルコード。
最高潮に達した彼女のユーベルコードを受けて『桜風』のアイセンサーが煌めく。
「だから、あたし一人で戦わなくても大丈夫」
勝負勘がここだと告げている。
あの魔球が放たれれば、強制的に眠りに落とされてしまう。
だからこそ、その一撃が打ち出された一瞬が勝負なのだ。
『桜風』のバーニアが噴射し、一気に王冠の一撃を掠めながら飛ぶ。
軽量化した機体にかかる負荷は凄まじいものであったが、その刀の剣閃が走る。
「ピッチャーの生命は肩!」
小雪はわかっていた。
魔球を生み出すのに必要なのは腕ではない。その起点となる肩だ。
ならばこそ『王冠シューター』の肩部を破壊すれば、王冠の一撃の威力を減ぜられることができるのだと。
「壊せなくても、傷さえつけば……!」
「こちらの方を狙う……!?」
「あとはみんながなんとかしてくれる! あたしがやられちゃうかもしれないけれど! 次の王冠の一撃でだめになってしまうのかも知れないけれど!」
それでも彼女は飛ぶ。
刀を振りかぶり、振り下ろす。
渾身の力を込めた一撃は、どこか紅茶の香りすら感じさせるものであったことだろう。
『王冠シューター』のデフォルメされた肩を切り裂き、その刀傷は肩から腹部の王冠を装填するパーツにまで及ぶ。
「……ッ! 王冠をホールドするパーツを……!」
「小雪ねーちゃん!」
「こちらです!」
『アイン』と『ツヴァイ』が『ドライ』を振り切って、小雪の機体の手を取る。限界を超えた『桜風』は、そのままであれば次の王冠の一撃でやられてしまうかもしれなかった。
けれど、彼女の一閃は確かに『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』の要である肩部から腹部を切り裂き、スムーズな連射を不全とさせた。
「ああ、でもみんな、先輩方もみんな……楽しそうに戦ってるなー」
見習わなくちゃ、と何処までも楽しそうに小雪は笑い、『アイン』たちと共に戦線を離脱するのであった――。
大成功
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鵜飼・章
この流れ便乗しない訳にはいかない
やはりね…
ジェノサイダー一族のやり方だと思ったよ
真のシューターはどちらか決めようじゃないか
メダル投擲能力は解放された
ヘルカブトを地上で踏ん張らせながら
闇のあやかしメダルを早業で連射
敵の王冠の引力を逆利用し
メダルを集積させ攻撃を相殺
これでフィールドの属性は闇に変わった
漆黒のボディで闇に紛れる能力を持つ
僕らが有利な環境にね…
この為に塗りに拘っていたのさ
そう言われてみればそんな気がしてきただろう
思い出すんだ
純粋にプラクトを楽しんでいた日々を
レッツ・アクト――!
最強のメダルにUCを込め投擲
見えるだろう
ダークネスファントムヘルカブトの魂が
僕らの信念がきみの邪念を打ち砕く!
『プラクト』における猟兵たちの戦いは、どこか楽しげでもあった。
勝敗によって決着し、人の生死がかからぬ戦い。
オブリビオンである『ダークリーガー』はスポーツ競技の勝敗によってアスリートたちを『ダーク化』させる。
殺人的なスポーツ競技ではあるけれど、強靭な肉体を持つアスリートたちにとって、滅多なことでは生命に関わる危険はないだろう。
だからこそ、一つのスポーツにおいても何処か爽やかささえ感じさせるのだ。
「この私のっ! 機体に傷をつけたな……!」
『ジェノサイドピッチャー』の瞳に炎が宿るようであった。
猟兵の一撃を受けて、その機体の王冠をホールドする腹部に亀裂が走っている。
パワータイプである機体であれば、それは痛烈な痛手であったことだろう。
思うように力が込められない。
けれど、それを補って有り余る連射性能が彼女の『王冠シューター』にはあるのだ。
「やはりね……」
なにか意味ありげな雰囲気を醸し出す鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)。
何がやはりなのか。
「ジェノサイダー一族のやり方だと思ったよ。真のシューターはどちらか決めようじゃないか」
キラリと光るメダル。
漆黒のメダルは、章の持つあやかしメダルであった。手繰る『ダークネスファントムヘルカブト』に秘されたメダル投擲機能は解放された。
「ぬかせっ! マウンドの王たる私の前に昆虫程度の王者が何を!」
「この流れ便乗にしないわけにはいかないからね」
今便乗って言った?
そんな空気を一蹴するかのごとく『ダークネスファントムヘルカブト』が大地に降り立ち、その強靭な脚部を大地に食い込ませる。
吹き荒れるダークネスな力の奔流。
確証バイアス(カクショウバイアス)。
決して揺るぐことのない信念が『ダークネスファントムヘルカブト』を無敵のカブトムシへと変える。
章にとって、己の『ダークネスファントムヘルカブト』が最強であることは
変わらない。
ダークネスの名を関し、ジェノサイダーの名を戴く己。
でもいまさっき流れに便乗って言ったよね?
「魔球『ジェノサイドアルゴル』!!」
放たれる魔球の如き王冠。
それは全てを誘引する変動超重力。大地に踏ん張る『ダークネスファントムヘルカブト』の機体が軋む。
だが、章は、いやさジェノサイダー章はいささかもひるまない。
放つメダルが変動超重力を放つ王冠に集約されていく。全てを惹きつけるのならば、それを逆に利用し、メダルを一点に集約させ、その威力でもって王冠を破壊するのだ。
「これでフィールドの属性は闇に変わった」
「何を……!」
章の言葉はわりと屁理屈であった。いやまあ、変動超重力がフィールドに現れたのだから、まあ、フィールド属性というパラメーターがあるのならば、闇色になっているのかもしれない。
新たに映えるたけのこ設定。
「漆黒のボディで闇に紛れる能力を持つ僕らが有利な環境にね……このために塗りにこだわっていたのさ」
そうなの!?
『五月雨模型店』のメンバーはみんなそう思っていた。
あれって単純に黒が好きとかそういう理由じゃなかったんだ……『アイン』も若干、えぇ……って顔をしている。
そんな、あれだけ黒に憧れてくれていたのに。
でもまあ、そう言われてみればそんな気がしてきてしまう。
「闇に紛れたからと言って、私の魔球が敗れたわけでは――!」
「思い出すんだ。純粋に『プラクト』を楽しんでいた日々を」
いや、多分無い。
『ジェノサイドピッチャー』は多分ベースボール楽しんでた。でもなんか、そんな雰囲気でもない。
ジェノサイダー章の陰りを帯びた表情を前にそんなこと言おうものなら、こっちが空気読んでない感じになるからである。
「レッツ・アクト――!」
ユーベルコードに煌めくメダル。
それは己が信じる無敵のすごくかっこいい巨大カブトムシの力を込めたメダルの投擲。
「見えるだろう。『ダークネスファントムヘルカブトの魂が」
それは闇を切り裂く闇より深き闇!
「僕らの信念が君の邪念を打ち砕く!」
なんかいい感じにいいこと言って、便乗を誤魔化しきった章の一撃が『王冠シューター』の放った王冠と激突し、フィールドを染め上げていく。
闇に塗れたものは闇の深さを知ると同時に光のまばゆさも知る。
ならばジェノサイダー章は、その輝きを守るためにあえて闇色を身にまとうのであった――多分!
大成功
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菫宮・理緒
【サージェさん(f24264)と】
なん……だと……?
外野手舐めんな!
イ●ローさんディスってんのか!
レーザービームで風穴空けるぞ、ごるぁ!
……はっ。つい取り乱しちゃった(てへ
たかだかピッチングマシーンが大きな口を叩くね。許さないよ(にこっ
自動供給されるものはジャムったら試合終了なんだよね。
弾でも球でも王冠でも、例外なくね!
【E.C.O.M.S】を突っ込ませて王冠をジャムらせ、配球不可能にしちゃうよ。
サージェさん、わたしこのまま突っ込んでもいいかな?
あいつ、ちょーっと殴りたい♪
シールドを構えて全力突撃したら、
【シールドバッシュ】で胸を殴り飛ばしちゃおう。
レーザービームはサージェさんに任せたー♪
サージェ・ライト
【理緒(f06437)さんと】
落ち着いてください理緒さん!
イ●ローさんもピッチャーやったことありますから!
え?そこじゃない?
しかしピッチャーには決定的な弱点があります
それは……打ち返されるということだー!
というわけで打ち返…ジャムりましたかー
何が理緒さんの琴線に触れたのかわかりませんけど
今日の理緒さんは荒ぶっておられる
私はお見送りします
理緒さーん、相手ボールまだ持ってますよー
ほら、胸のところ!ボール2個!
やっちゃえー
あ、私はハンドボールの大きさなので対象外で
ってねらってきたー!?
ええい、ここは目潰しですね!
かぐや隊しゅーごー!
そしてふらーっしゅ!です!
あ、こちらは対閃光防御してくださいねー
ベースボールとは永く人を熱狂させてきたスポーツ競技の一つである。
白球追いかけたあの日を思い出す者もいるであろう。
日差しも、雨も、雪も、嵐も。
どんな日だって懸命に一つのボールを追いかけ続ける。たとえ、泥にまみれようとも懸命に戦う姿に人は心打たれるのだ。
ならば、そこに花形あれどポジションで劣ることなど何一つないのだ。
「私こそがマウンドの王! 私がいなければ、外野手も内野手も捕手すらも! 烏合の衆だ!」
猟兵たちの攻撃を受けて、『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』の腹部には深い傷が刻まれ、追い込まれている。
けれど、彼女は未だ闘志折れぬ。
ベースボール競技者としての意地があったのかもしれない。いや、これ『プラクト』だけど。しかし、それは些細な問題である。
ベースボールであろうと『プラクト』であろうと、誰もが勝利を目指してあがいているのだ。
「なん……だと……?」
そのつぶやくような言葉は、どこから聞こえただろうか。
あれ、なんか画面暗くない? と誰もが思った。モニターの調子が悪いのかなって思った者もいたし、接続が切れたのかなって思った者もいた。
いや、違う。
これは闇である。
「外野手舐めんな!」
怒号が響き渡る。闇じゃない! これ、ハイライトの消えた菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の目だー!?
普段の彼女からは想像もつかない怒号。
「あの御方ディスってんのか! レーザービームで風穴空けるぞ、ごるぁ!」
やべーぞ! 思った以上にベースボール愛の強い猟兵がいる!
具体的な名前が飛び出ていたが、万が一を考えて自主規制である。ご承知いただきたい。
「落ち着いてください理緒さん! あの御方もピッチャーやったことありますから!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)が慌てて理緒を止める。カメラ! カメラ回ってますから!
おい、カメラ止めろ! と理緒がいきそうになっていた所を既のところでサージェはなだめたのだ。
名前を言ってはいけない感じの人のあれなかんじになりかけていたのはいいのかと思ったが、それよりも理緒を止めることが先決である。
「……はっ。つい取り乱しちゃった」
てへ、って舌をぺろってする理緒。やったーいつもの可愛い理緒さんだー。
「でも、たかだかピッチングマシーンが大きな口叩くね。許さないよ」
にこっ。
その笑顔が凍えるほどのものであることを間近にいたサージェは感じ取っていた。怖い。正直言って理緒がここまで、プッチンプリンレベルにぷっちんしているのは初めてではなかろうか。
「ええ、ピッチャーには決定的な弱点があります。それは……打ち返されるということだー!」
サージェが飛び出す。
『ジェノサイドピッチャー』が再び、魔球を放つのを感知したからだ。けれど、サージェは其れよりも早く理緒がユーベルコードを発現させるのを見ただろう。
「黙れ! 私の魔球にかかれば貴様らなど!」
その王冠たる魔球を放とうとした瞬間、理緒のE.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)が炸裂する。
小型のガジェットたちが一気に『王冠シューター』の腹部に突っ込んでいくのだ。
「自動供給されるものはジャムったら試合終了なんだよね。弾でも球でも王冠でも例外なくね!」
一つ一つのガジェットならば王冠の射出の一撃で砕け散るだろう。
けれど、理緒の放ったガジェットは数百である。
ジャムらなければジャムるまで打ち込むのが大正義である。理緒のユーベルコードによって生み出されたガジェットが無理矢理『王冠シューター』の腹部に詰まって魔球たる王冠を射出させないのだ。
「打ち返し……ジャムりましたかー……何が理緒さんの琴線に触れたのかわかりませんけど、今日の理緒さんは荒ぶっておられる」
サージェはうんうんと頷いて理緒の行動に触らぬ神に祟りなしとばかりに距離を奥。
「サージェさん」
にこって微笑む理緒。あ、怖いやつだこれってサージェは本能で理解した。
「あいつ、ちょーと殴りたい♪」
「いってらっしゃいませ! あいつまだボール持ってますよー! ほら胸のところ! ボール二個! やっちゃえー!」
理緒をお見送りしながらサージェは外野で野次を飛ばす。やんややんや。
サージェ自身はハンドボールの大きさなので対象外である。いや、そんなことはない。十分である。
「やかましい!」
ジャムらせたガジェットたちを『ジェノサイドピッチャー』は『王冠シューター』の手足でかき出しながら、王冠の装填を完了させる。
何事も腕力である。
しかし、その隙に迫る者がある。
そう、理緒だ。赤いプラスチックホビーが盾を構えて突撃してくるのだ。
「そのお腹の傷! そこがウィークポイントだよね! なら!」
理緒の盾が容赦なく『王冠シューター』を叩きのめす。
王冠を打ち出す暇など与えはしないのである。大地に叩きつけられた『王冠シューター』にさらにサージェのユーベルコードが走る。
「ちまっとかぐや隊!(ゲーミングカグヤヒメトアソボウ)、しゅーごー! そしてフラーッシュ!」
「レーザービームじゃないんだ!?」
「ビームは出せません。ですが、目潰しだけならば!」
眩いゲーミングカラーの閃光がフィールドを埋め尽くしていく。うぉ、まぶしっ。
「目潰し……!」
「はーい、それじゃあ、シールドバッシュでボッコボコに!」
理緒の機体が叩きつける盾の猛打。それは、ポジションディスをした『ジェノサイドピッチャー』に対する制裁。
放つ一撃の重さ。
それはショートの分! ライトの分! センターの分! サード分! と一発一発思いを込めた一撃であった。
サージェは理緒のベースボール愛のとんでもない重さに、はわわってなりながら、殴打の凄まじさに目を覆うのであった――。
大成功
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光満・桐江
あの発射速度と威力…!
しかもそれをものすごい連射で…!
でもみんなで力を合わせれば、きっと…!
引き続き回避を重視していきますが
できるだけ相手の狙いをずらせられるように、遠距離攻撃を交えた不規則な移動と回避で撹乱していきます
もっとエレイソンを上手く動かせたら…
もっとシンクロしていけたら…!
そう思っていたら、急に体か軽く…?
それに合わせてエレイソンのパワーとスピードも…!
心なしか声援も大きくなっていますし、その声に応えていきますっ!
変化球に警戒しながら相手の死角に回り込み、大鎌での一撃を狙います!
…よく見たら、私の服装、UCでエレイソンのボディスーツ(そこそこ肌色見えるデザイン)と同じものに!?
叩きつけられた『王冠シューター』。
その腹部には不可逆なる傷跡が刻まれていた。『王冠シューター』を足らしめている王冠を放つ腹部。
肩部から刻まれた亀裂の如き傷跡は、十分な力を伝えられなくさせられていた。
猟兵たちの戦いの結果であった。
しかし、まだあの脅威の連射速度は消えていない。
背に負ったピッチングマシーンの如きタンクには未だ多くの王冠が詰め込まれている。
「王たる私の前に立ちふさがることなど許されるものか! 貴様らのバットなどは! 我が魔球の前に消える定め!」
放たれる王冠の一撃。
さらに乱射するように放たれる王冠は、猟兵たちを寄せ付けないだろう。
「あれだけの攻撃を受けてまだあの発射速度と威力! しかもしれをすごい連射で……!」
光満・桐江(生徒会の魔女・f22316)は『ジェノサイドピッチャー』のあまりの力に慄く。
けれど、彼女は後ずさることをしなかった。
彼女は一人で戦っているわけではない。他の猟兵たちと、そして『五月雨模型店』のメンバーたちと共に戦っているのだ。
「でもみんなで力を合わせれば、きっと……!」
「そのとおりだぜ! まだまだこっちは元気いっぱいってことは、まだまだ戦えるってことだ!」
『アイン』や他のメンバーたちも『ダークフィールダー』たちを下し、集まってきている。
ならば桐江は恐れることなど何一つ無いと『ジェノサイドピッチャー』の放つ王冠を躱しながら一気に距離を詰めようとする。
「雑魚がどれだけ集まろうが! 私の魔球の前では無意味だ! 喰らえ! これこそがチェンジアップ投法の極地!『眠りの森』!」
放たれる王冠が放物線を描く。
これまでの速度とは打って変わっての遅い弾道。
だが、その弾道こそが罠である。眠りを誘うのだ。
それはどれだけ桐江が回避に重きを置いて戦っていたしても抗えない。
「もっと『エレイソン』をうまく動かせたら……もっとシンクロしていけたら……!」
眠気が桐江を襲う。
どうしようもないほどの眠気。
だめだ、眠ってしまうと桐江は絶望に沈む。けれど、彼女の願いはユーベルコードとなって煌めく。
体が軽くなるのだ。彼女は『モーション』タイプの操縦方法を選んでいた。すなわち、彼女自身の身体能力が高まれば、すなわち『カオスリーパー・エレイソン』の性能が上がるということだ。
一気に向上する『カオスリーパー・エレイソン』のパワーとスピード。
「うおおおお!」
「いけー! そこだー!!」
なんか声援が聞こえる。桐江は胸が熱くなる思いであった。それは世界から届けられる桐江への声援。
ユーベルコード煌めく中、『カオスリーパー・エレイソン』の機体が眠気すら吹き飛ばして『ジェノサイドピッチャー』の手繰る『王冠シューター』へと迫る。
「馬鹿な……! 何故、私の魔球を受けてそんな速度が出せる!」
「これが皆さんの声援の力です!」
機体が一気に『王冠シューター』の背後に回り込み、その鋭い大鎌の一線を持ってピッチングマシーンの如き装填ホルダーを切り裂き、その中に満載されていた王冠をばらまく。
これで王冠に限りが出てくる。
脅威の連射も、これで封じられるはずだ。
彼女の一撃にさらに声援が高まってくる。
桐江は嬉しくなって、カメラにはにかみながら手を振る。だが、はたと気がついたのだ。
「……こ、これ!? え、なんで!?」
桐江はカメラの前に晒されている自分の姿に驚愕する。
力を得るには代償を(チカラガホシクバシチョウシャサービスヲスルノデス)。それは彼女が力を願、その代償として得たものであった。
そう、今の桐江の服装は、『カオスリーパー・エレイソン』と同じ非常に肌色の見えるボディースーツとなっていたのだ!
世界中から届いていた声援の数々は、多分これが原因である。
桐江は羞恥でへたり込んでしまうかもしれない! けれど、それもあり! と一層モニターの向こう側は大盛りあがりになってしまうのであった――!
大成功
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月夜・玲
畜生…なんて酷い奴なんだ!
金属王冠の連射だなんて!
やっぱりダークなんて名乗ってる奴は非道だな!
真の姿解放
出力を機体に回して射出威力を増強
まずは通常ビー玉を連射、『念動力』で軌道を操ってこっちも弾幕を張ろう
ビー玉は『オーラ防御』でオーラでコーティングして強度を上げよう
後は球速が落ちるまで、王冠を『吹き飛ばし』ていこう
後は物陰にでも隠れながらチャンスを窺おう
撃ち合いながら、タイミングを計って|切り札《鉛玉》装填
ただ撃つだけじゃあ避けられて終わりになる!
念には念を入れて、数で押す!
【神器複製】起動
ガジェットを…切り札を複製!
128個の複製生成
念動力で本体に対して攻撃態勢を整えさせないように連続して攻撃!
行動を阻害しつつ、此方の射線に追い込む!
そして全力のハンマーショット!
痛い一撃を喰らわせてやろう!
これが正しいアスリートの戦い方!
そもそも勝てば良かろう精神はダークとはいえアスリートとしてどうかと思うよ!
私はアスリートじゃないから、勝てばいいんだよ!!!
『ジェノサイドピッチャー』の手繰る『王冠シューター』は猟兵たちの攻撃に寄って、その背部に追った王冠ホルダーを破壊され連射能力の上限という枷をはめられた。
さらに肩部から副部に走る傷跡がパワータイプの源である締め打ちを封じ、強烈な一撃を減じているのだ。
「だが! 私は以前マウンドの王だ! 金属王冠の魔球! 受けろ、我が魔球『ギガントダークネス』!!」
放たれる王冠にこれまでの威力はない。
けれど、質量を増した巨大な王冠の一撃は、積み重ねてきた猟兵たちの打撃を押し返すほどであった。
これが『ジェノサイドピッチャー』の本領。
追い込まれれば追い込まれるほどに力を発揮する。それがベースボールの花形、ピッチャーの底力というものである。
「畜生……なって酷いやつなんだ! 金属王冠の連射だなんて! やっぱりダークなんて名乗ってるやつは非道だな!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は歯噛みしていた。
くやしい。
あんな卑劣なやつに好き勝手させているなんて! と義憤に燃えていた。
「……でも、なま……」
「『アイン』! それ以上は……ッ」
『アイン』と『ツヴァイ』の二人がそんな玲さんの背後で、自分だってさぁって顔をしていたが玲さんは気にしていなかった。
大人には大人の事情ってやつがあるのである。
「というわけで真の姿解放! 出力を機体に回して!」
漲る力。
オーバーロードの力は、玲の『ビーシューター』の中に流れ込み、ハンマーヘッドの打ち出すスプリングの強度を上げ、射出速度を底上げしていく。
ホルダーに納められたビー玉が連射され、迫る巨大王冠を迎撃する。
さらに念動力でもって軌道を操り、弾幕を張る。
だが、それではビー玉は王冠に激突して砕けてしまう。そこが玲さんの力の見せ所である。ビー玉一つ一つをオーラでコーティングして強度を上げ、しこたま強化ビー玉を打ち込みつづけるのだ。
「王冠の速度が落ちる……!? だが、質量だけはどうにもできまい!」
「そうかもね!」
てっこてっこと『ビーシューター』が動かない足を跳ねさせるようにして物陰に飛び込みつつ、玲はビー玉を隙を見て打ち込み続ける。
「でもさ、こっちにはメンバー沢山まだ残ってるんだよ! 勢いは殺したから、後よろしく!」
「こっちに丸投げかよ!」
「言ってる場合ですか! このままでは全滅してしまいます! 押し返しますよ!」
『アイン』と『ツヴァイ』の機体、そして『五月雨模型店』のメンバーたちの機体が巨大王冠を押し返していく。
勢いが削がれたことにより、残る大質量はメンバー全員でようやく止めることができるほどであった。
けれど、その魔球の如き王冠の一射を防がれた事で『ジェノサイドピッチャー』に動揺が走る。
猟兵でもなんでもないただのアスリートたちの自分の魔球が止められたのだ。
「|切り札《鉛玉》装填!」
いや、それっていいのかな! ってみんな思った。けれど、『プラクト』フィールドに再現されている以上、それはルール的にはオッケーなのである。
うーん、がばがば! けれど、そのガバルールが今は玲の背を押すのだ。
「だた撃つだけじゃあ避けられて終わりになる! 念には念を入れて、数で押す! 神器複製(コード・デュプリケート)!」
彼女のユーベルコードが煌めき、その輝きはビー玉ホルダーに満ちる。
そう、彼女の|切り札《鉛玉》の複製。
実に128個!
もう切り札って言わないよね! ワイルドカード何枚持ってるんだって話である。だが、しかし、その鉛玉、あ、鉛玉って言っちゃった。
まあ、いいや。
その鉛玉も当たらなければ意味がない。玲が言ったように、念には念を入れる。放つ念動力が『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』を妨害する。
放たれる鉛玉を躱しながら、『王冠シューター』は迫るのだ。
「一度で倒せぬのならば、二度撃つまで! 喰らえ、魔球『ギガントダークネス』!!」
「それはさせないってば! 君は躱したんじゃあない。こっちの射線に追い込まれただけ! 全力の――!」
ハンマーショットの一撃が打ち出される。
その鉛玉の一撃は凄まじい勢いにのって打ち出され、一直線に走る。王冠すらも弾き飛ばしながら、痛烈な一撃が『王冠シューター』を強かに打ち据える。
「これが正しいアスリートの戦い方! そもそも勝てばよかろう精神はダークとは言えアスリートとしてどうかと思うよ!」
フィールドにクレーターのような穴を穿つ鉛玉の数々を見下ろしながら玲は念動力で浮かぶ自分の『ビーシューター』から『ジェノサイドピッチャー』を見下ろす。
その理屈だと玲さんもあれなんですがって視線を受けて彼女は、ふっ、と不敵に笑う。
え、と『アイン』たちは思っただろう。
もしかしてあの人。
「私はアスリートじゃないから、勝てばいいんだよ!!!」
言っちゃ駄目なこと言った――!!!
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
親玉のお出ましか。
なら俺達も見せてやるぜ。アインの嬢ちゃん達や店長にすら教えてない妖刀『プラ切丸V2』、第三の姿をな。相棒ッ!
(桜によって巫女プラモに投げられる凶津。すると凶津と妖刀『プラ切丸V2』が合体し、巨大霊剣形態へと姿を変えるッ!)
妖刀憑依ッ!プラ切丸V2、鬼面の大霊剣モードだああッ!
驚きで声も出ないようだな。
プラモと合体しちゃいけねえってルールはない筈だぜ。
これがプラクトの次のステージに進んだ者の姿だぜッ!
「…何適当な事言ってんです。信じる子がいたらどうするんですか。」
最早小細工はいらねぇ。
大霊剣と巨体王冠のぶつかり合いッ!最後に立っていた奴が勝者だッ!
【技能・破魔】
【アドリブ歓迎】
隕石と見紛うばかりの猟兵の攻撃を受けてなお『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』は立ち上がってきていた。
その不撓不屈たる闘志は、ベースボールアスリートとしての矜持であっただろうか。
それともあらゆるスポーツに於いて、闘志とは『ダークリーガー』であったとしても欠けてはならぬものであったのか。
どちらにせよ、オブリビオンである『ダークリーガー』である『ジェノサイドピッチャー』はフィールドに健在であった。
「まだだ。勝つまで戦えば、それはすなわち負けたことにはならない。延長戦だ、猟兵共!」
マウンドの王を気取る『ジェノサイドピッチャー』は、その漲る闘志と共に猟兵たちに向き直る。
その『王冠シューター』の腹部には肩部から繋がる傷跡が残り、パワータイプのショットを放つことができなくなっている。
さらには背面にマウントされたホルダーもまた破壊され、驚異的な連射能力もまた失われているのだ。
『親玉のお出まし……親玉らしいっちゃあらしいが! なら俺達も見せてやるぜ』
その言葉がフィールドにこだまする。
それは神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)。
赤い鬼面がカタカタと鳴りながら、『ジェノサイドピッチャー』に宣言するのだ。
そう、未だ彼等は切り札を持っている。
『アイン』や『五月雨模型店』の店長たちにすら教えていない妖刀『プラ切丸V2』の第三の姿を。
『相棒ッ!』
その言葉によって、相棒である巫女、桜が己がかぶっていた鬼面、すなわち凶津をフィールドに投げ込むのだ。
一体何を、と誰もが思ったことだろう。
言ってしまえば、それはパワーアップパーツの投擲。いや、ありなのかそれは! とモニターの向こう側の男児たちは思った。
でもでも、パワーアップパーツが射出って男の子って感じがするよな! と思っていたし、実現したら絶対にいい! とさえ思っていた。
全ては『プラクト』のフィールドの判定に掛かっている。
凶津の鬼面が巫女プラモの手にした『プラ切丸V2』の鍔に合体し、光り輝く。
『これぞ妖刀憑依ッ!! 後は任せたぜ、相棒ッ!!』
ユーベルコードの輝きが晴れた時、そこにあったのは、鬼面の大霊剣(ソードオブヒーローマスク)であった。
これこそが妖刀『プラ切丸V2』に隠された機能。
切り札たる『鬼面の大霊剣モード』である!
色んな角度から映り込む大霊剣。カットインが豊富である。これもそれも『プラクト』フィールドに設置されたカメラワークの妙技であるといえるだろう。
巨大な刀身を誇るかのように構えたパースの巫女プラモ。
『驚きで声もでないようだな』
プラッスティックホビーと合体してはならぬというルールはない。
ルールはないけど、だいたい駄目だろうなぁって思ってしないのが常である。だが、常にルールをぶち抜いていくのが猟兵である。
ならば、この現実こそが真実でありルールである。
『これがプラクトの次のステージに進んだ者の姿だぜッ!』
凶津のその言葉にモニターの外では、視聴者たちの歓声が巻き起こる。凄まじいまでの熱狂。
これこそがホビースポーツの醍醐味!
ルールがないのなら、新たなルールを作り出せばいい。
そして、そのルールを突破してこそ見えてくるものがあるというのだ。それを示してみせた凶津の侠気に皆魅了されたのだ。
「……何適当なこと言ってんです。信じる子がいたらどうするんですか」
桜の心配は尤もである。
けどもまあ、外の熱狂具合を見るともはや遅きに失するというやつである。はぁ、と桜はため息一つ吐く。
もはや、ここまで来たのならば仕方ない。
『もはや小細工はいらねぇ。大霊剣と巨大王冠のぶつかり合いッ!』
「ぬかせ! たかが合体した程度で……!」
放たれる魔球『ギガントダークネス』。
その一撃と打ち合う大霊剣。その輝かしいまでの力の奔流がフィールドを砕き、あらゆるものを吹き飛ばしていく。
最後の立っていた者が勝者。
それはこの『プラクト』と呼ばれるホビースポーツの最大にして最高のルール。
放たれた大霊剣の一撃は、凶津の侠気とロマン、そして桜の放つ剣技が合わさり、巨大王冠を真っ二つに切り裂き、『ジェノサイドピッチャー』の矜持をこそ切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
いいかいバラバラXくん!
キミにはもうわかったはずだよ
想像力こそが、全てを変える…
そのことがね!キミにはその力がある!
そうつまり…できると思えばけっこうできる!!
●ガーッ!ときたらギャンッ!ってやる!
重要なのはタイミングと切断する角度、力は最低限で振り抜けばいい
タイミングと角度はさっき覚えたよね!
後は実践!
●【第六感】的指示
最短距離でいい感じに突っ込んでー
硬化ブレードで王冠をいい感じに切り裂いてー
いい感じにカウンターをずっばあああん!
そう、キミにとって最も危険な直線こそ相手のとっては警戒が薄い…急所ってことさ!
わ~い勝った!勝った!
『襲来!王冠シューター!編』完!!
「いいかい『バラバラX』くん!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はにっこり自分のプラスチックホビーに語りかけていた。
優しげな声色に聞こえたし、それは自分の大切な相棒に語りかけているように思えたことだろう。
どんなプラスチックホビーでも、彼が作ったのならば生命が吹き込まれる。
知性というものが生命の意味であるというのならば、ロニの作った『バラバラX』にもまた存在しているのである。
「キミにはもうわかったはずだよ。想像力こそが、全てを変える……」
そう、『プラクト』というホビースポーツにおいて想像力とは全ての始まりだ。
自身の心で思い描いたものを作り上げる心。
作り上げたものを実現させる技。
そして、それらを操る体。
どれもが欠けてはならない。
「そのことがね! キミにはその力がある! そうつまり……できると思えばけっこうできる!!」
ガバっている。
『バラバラX』はそう思っただろう。そう思えるだけの知性があるのが、なまじ残念であった。
その知性がなければ、もっと気楽にあれたであろうが、どう考えてもその知性があったがために苦労することが目に見えていたのである。
「こう、ガーッ! ときたらギャンッ! ってやるんだよ!」
ロニの大雑把過ぎる指示。
『バラバラX』は困惑していたし、もう色々考えるのをやめたら楽なんじゃないかなって思ったけれど、それはそれで痛い目に合うだけである。
ならば、必死に生きてやろうっていうのが生命の本質なのだ。
ならばこそ、ブレードと化した己の体を使って、『ジェノサイドピッチャー』の放つ変動超重力に向かう。
「何をボソボソと! 我が魔球の前に砕けて散れ!」
『ジェノサイドピッチャー』の魔球は確かに脅威だ。
これまで多くの猟兵たちの打撃に寄って消耗し、パワータイプのショットや脅威の連射を支えていたホルダーを失っていたとしても、それでもなお不撓不屈の闘志でこちらに迫ってきている。
それは確かにスポーツマンとして褒められたものであったのかもしれない。
けれど、彼女たちは人々を巻き込み『ダーク化』する『ダークリーガー』なのだ。
これを止めなければ、世界の破滅は免れない。
「重要なのはタイミングと切断する角度、力は最小限で振り抜けばいい。タイミングと角度は殺気覚えたよね! 後は実践!」
ブレード化した『バラバラX』が誘引する重力にツッコミ、最短距離で王冠へとたどり着く。
硬化したブレードの一撃が変動超重力を発する源である王冠を切り裂き、空へと舞い上がる。
王冠の破片が大地に落ちる中、さらに『バラバラX』が飛ぶのだ。
「そう、キミにとって最も危険な直線こそ相手にとっては警戒の薄い……急所ってことさ!」
ロニの言葉と共に『バラバラX』は飛ぶ。
もう破れかぶれというか。
自棄というか。
なんともまあ、健気なことである。どのみち、『ジェノサイドピッチャー』を倒さなければ、この戦いから開放されないことがわかっている。
だからこそ、『バラバラX』は最短距離で戦いを終わらせるべく、飛び込むのだ。
硬化したブレードの一撃が『王冠シューター』に叩き込まれ、その頭部を切り裂く。
「わ~い勝った! 勝った!『襲来! 王冠シューター! 編』完!!」
ロニは勝手に締めたが、まだ終わらないのである。
後もう少しだけ続くんじゃ――!
大成功
🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
大破、全損OK
いくら乱射型つったって
全弾撃ち切ったらそれで終いだろ?
それともグローブでブン殴るってのか?
引き続き挑発
今度は砲身を真っ直ぐ向けてホームラン宣言
こー言う手合いは
正面から叩き伏せるに限るってな
UC発動
4脚を大きく広げてグリップ
アウトリガー(作業重機の車体を安定させる装置)の要領で踏ん張らせる
当然動けねー訳だが
これで魔球に打ち負ける心配も無ぇ
あとはどっちが先に根負けするかの勝負だ
なあ、傾斜装甲って知ってっか?
射線に対して角度をつけた装甲は
通常よりも更にブ厚くなって
攻撃の運動エネルギーを分散させ易くなるんだぜ
精々ご自慢の曲がる魔球で
ブチ抜ける角度を探せばいいさ
絶え間なく続く砲撃の中で
冷静に狙いを定める余裕があるんならな
(終了後)
お疲れさん、ミニタイガー
よく頑張ってくれた
頭部を切り裂かれた『王冠シューター』は、その後頭部から繋がるピッチングマシーンの如き王冠ホルダーのパーツから装填される王冠むき出しの状態であった。
さらには副部に刻まれた傷跡。
破裂したようなホルダーは、連射の上限が重ねられ、満身創痍。
もはや勝負は決したと言ってもいいだろう。
けれど、アスリートアースにおいて、戦いとは常に勝者と敗者を決めるもの。
ならば、対する者が未だ己を敗者と認めぬのならば、それは勝負が決したとは言わないのである。
不撓不屈の闘志。
『ダークリーガー』であったとしても、アスリートである以上、その闘志は未だ消えていない。
「まだだ……! まだ私は依然、マウンドの王! 我が魔球は敗れず! 受けろ、『ジェノサイドアルゴル』!!」
放たれる魔球の如き王冠は、変動超重力を放ち誘引した機体全てを破壊する恐るべき魔球。
「いくら乱射型つったって、全弾打ち切ったらそれで終いだろ? それともまだその機体でぶん殴るってのか?」
チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は『ミニタイガー』の砲身を上下に揺らし挑発する。
さらに砲身を地面と平行に向けて、『ジェノサイドピッチャー』へと突きつけるのだ。
それは謂わばホームラン宣言。
ベースボールを起点とする『ダークリーガー』にアスリート全てが持つ不撓不屈の闘志があるというのならば、それはこの上ない挑発行為であったことだろう。
「私が敗北を認めぬ限り、私に敗北は訪れない! 勝利するまで戦えば、それで私は勝者となるのだ!」
放たれる魔球。
変動超重力は未だ猛威を振るっている。
「ああ、そうだな。こー言う手合は」
四脚が大きく開く。大地に打ち込まれるように脚部が全てを誘引する変動超重力に抗うように踏ん張る。
だが、それでは『ミニタイガー』は動けない。
つまり、敵の攻撃の全てを受け止めることになる。放たれる魔球と王冠。
そのいずれもが、プラスチックホビーにとっては致命的な一撃だ。
だが、それでも『ミニタイガー』は、チェスカーは躊躇わなかった。強靭な足腰が驚異的なフルスイングを支えるというのならば、『ミニタイガー』の四脚は、通常のアスリートの二倍。
すなわち!
「負ける道理も無ぇ!」
迫る王冠。それは乱射であり、魔球ではない。けれど、その一撃でも『ミニタイガー』は耐えられないのだ。
耐えられなく成れば、そのまま変動超重力に飲み込まれて砕かれて終いだ。
けれど、チェスカーは不敵に笑う。
もはや悪人面でしかない。モニターの向こう側のみんなが息を呑む気配があった。
「なあ、傾斜装甲って知ってっか?」
それは射線に対して角度をつけた装甲である。
正面から砲弾を受けるためには膨大な装甲の厚さが必要となる。力学的に考えれば、エネルギーを真正面から受け止めるのだから、装甲の厚さ、強度はさらに必要となる。
けれど、傾斜をつければ受け止めるのではなく弾くことができる。
運動エネルギーを分散させ、衝撃を殺し、装甲の厚さは本来必要であった厚さをさらに必要としなくなるのだ。
「こちらの王冠を弾くッ……ならば!」
変動超重力の中で自在に曲がる王冠。これぞ魔球。通常の弾道ではあり得ない曲がり方をする王冠を前に、チェスカーはさらに唇の端を釣り上げた。
「精々ご自慢の曲がる魔球で、ぶち抜ける角度を探すがいいさ……けどな!」
チェスカーの瞳がユーベルコードに輝く。
超接地展開(ロックアンカー・エクスパンド)した『ミニタイガー』は謂わば、迎撃要塞。
小柄ながらも彼女の丁寧な工作とギミック、そして何よりも彼女の闘志がユーベルコードとなって『ミニタイガー』を難攻不落の要塞へと変えたのだ。
「真っ向からの削り合いなら『ミニタイガー』に分がある。絶え間なく続く砲撃の中で、冷静に狙いを定める余裕があるんならな」
その言葉に答えるように『ミニタイガー』の咆哮が響き渡るようにして砲身から砲弾が打ち込まれる。
搭載した火器の全てが火を噴き、火線を引いて『王冠シューター』へと殺到するだろう。
雨のように降り注ぐ弾丸。
ミサイルの爆風が吹きすさび、王冠のコントロールすらままならない。
「これが、これが……チームの力だとでも!」
「てめぇがやってるのはチーム戦の競技だろうが、なら、自分だけの力でと思った時点で勝負は終わってんだよ。さあ、根比べと行こうじゃねーか!」
爆風がフィールドを舐めるようにして荒ぶ。
熱気がフィールドさえも超えて、モニターすらも突き抜けていく。熱き互いの闘志がぶつかり合い、練磨する。
「私が、負ける……! これが、っ、これが……!!」
たとえ、『ダークリーガー』が相手であったとしても、その勝利を渇望する熱意は見る者の心を打つだろう。
いつだってそうだ。
全霊を持って戦う者の姿に人は感動する。
突き詰めていくのならばそういうことだ。チェスカーは壮絶な打ち合いのは手に『ジェノサイドピッチャー』の『王冠シューター』を討ち滅ぼし、最後の敵の破壊を確認し、傷だらけとなり、砲身が歪み果てた『ミニタイガー』をフィールドから拾い上げる。
「お疲れさん、『ミニタイガー』。よく頑張ってくれた」
ひどく優しげな笑みが零れたかも知れない。
カメラがそれを拾っていたかはわからない。けれど、『五月雨模型店』のメンバーたちは、みな一様にチェスカーに駆け寄り、猟兵達と共に勝利の声を上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵