●霧の中で
一年中幻朧桜が咲き誇るサクラミラージュに置いて、不思議なことはよく起こる。
神秘の桜が要因で、摩訶不思議な空間に迷い込む人間もまた、少なくない。
影朧が集まりすぎれば、そうして"隙間"が出来るのだ。
隙間の異空間にも幻朧桜の神秘性が干渉するとどうなるか――。
「移動手段を用いぬままに桜と霧の街|倫敦《ロンドン》に迷い込むことになるだろうな!」
何故、という声は当然だろう。
しかし、とある劇場の扉を開けたスタア数名が、数日間神隠しされていた話さえ、帝都ではまた真新しい。
「スタアは言ッたそうだ、霧の街に迷い込んでいた、と」
調査を開始した帝都桜學府だったが、同じ光景を見るに叶わず、なんらかの要因を経て、その場所に迷い込むのだろうという結論のまま現状は維持されている。
「つまりだ、条件を満たすと誰でも不思議な空間へ迷い込むことが出来るッてワケ。本物の國へ赴くわけではないからイマジナリー、ッて奴だ」
サクラミラージュに実在する國なのに、空間のそれは本物ではない。
だが隙間に発生した神秘は決して、偽物でもない。
「影朧たちが原因さ。何らかの要因でたどり着く事が叶わなかッた影朧たちが、摩訶不思議な空間を発生させてるんだと思ッてもいいさ」
ひっそりと集まって、望郷を夢見るように行きたかった國の夢を見る。
これはそんな、些細で小さく問題としては限りなく小さな異常事態。
「俺様、|倫敦《ロンドン》には詳しくねェけど……でも、この空間の幻朧桜は全て"青い"らしい。この不思議な場所へ迷い込み戻ッてきた程度の人間曰く、霧を生み出しているのは青い幻朧桜ともいわれているようだな、|倫敦《ロンドン》からは出られないように、さまよう魂が遠くに行くのを遮ッている。現世に縋り続ける魂に少しだけそうやッて世界の目から隠して、癒やしでも与えているんだろう」
青い青い桜吹雪。
それは見事な涼感を視覚的に届けてくれる。
桜の花びらは、燃えるように消えるもの。青白い炎を僅かに散らして空間から消えた誰か分の容量と比例して時折消えていくのだろう。
「あー、条件ね。スタアが消えたとき、皆一様に"水着"だッたらしいぞ。公演内容が、涼やかな演目だッたらしいからな!」
向かうのに必要なのは、水着であること。きっとそれだけ。
「霧の街で散歩する。有名な建物を見学する……なんでもできるだろうけど…………」
猟兵自身が、霧の街で何かを願う側にもなれるだろう。
その空間限りの、願い事の昇華なども。とても大きなものは、叶わないけれど、小さなものなら、幻朧桜が叶えてくれる、かもしれない。
「霧の街に訪れたキッカケ――始まりに潜ッた扉まで戻ッてくれば現実にきちんと戻ッて来られるぜ。俺様が保証する!」
フィッダは霧の街で、広い街中を舞台に水鉄砲を持って模擬戦をする気でいるようなので、猟兵がそれにノるのなら水鉄砲を貸し、怪我をしない程度の魔弾などの使用を許可することだろう。
「怪我はダメだ、楽しくないからな!」
夏休みだから、不思議な空間で遊ぶのも良いんだ、と楽しげに。
ただ、視線を何処かに逃してポツリと呟く。
「桜の精が影朧たちに癒やしを与えたなら、この空間は夢のように消えるだろう」
だから、これは期間限定の隙間。
「影朧たちがどこに居るかは俺様たちにも見えないかもだが、楽しい雰囲気くらいはそいつらにだッて理解出来て、次の生を願うキッカケになッたらそれはそれで」
騒ぎがいがあるとは、思わないか。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
今回は、夏休みなシナリオ(一章)です。
●簡単な概要
サクラミラージュ、逢魔が時の隙間にイマジナリー|倫敦《ロンドン》が発生しています。青い幻朧桜と霧の街。居るとしたら人畜無害な影朧のみ。
人間は存在しません。誰もいない、霧の街。
そこでなにかして、夏を楽しむように遊びましょう。
シナリオの傾向は、プレイング次第で変わります。
ギャグ寄りシリアス、なんにでも。
1.霧の街で水鉄砲を手にした模擬戦(複数人限定)。
2.フラグメントから考えられることする(ただし貴方は水着です)。
●水鉄砲を手にした模擬戦の補足
武装は水鉄砲か、魔法や魔術で出来る遠距離攻撃限定。
水鉄砲に指定がアレば、プレイングにご記載ください。
魔術や、自前を使う場合も記載頂けると嬉しいです。
近接武器でも相手が大丈夫だと思うからーーー!!の場合は規制したりしません。相手のプレイングから判断します(対グリアモア猟兵の場合はこちらで判断します)。
模擬戦のように街中大乱闘、問題ありません。ただし怪我をさせる(重症)ような感じなプレイングを採用することは難しいかも知れません。
●水着
実は、シナリオ上ではプレイングボーナス扱い。
水着のある人は今年の去年の一昨年の(こんなのとか)一言でいいので教えて下さい。私服の人にボーナスがつかないわけではないですが、私服の人は記載なくても大丈夫!
●その他
やりたいことは、なるべくプレイング記載お願いします。アドリブ歓迎すると、シリアスは成立しなくなる可能性が高いです。なお、タテガミの想像を越えた事をすると採用できないことがありますので、破天荒を突き抜けてるかもって方はオバロのご検討をお願いします。このシナリオでは、賑やかしとしてタテガミの配下として活動する5名の影朧の使者としてグリモア猟兵が暗躍・協賛しています。
誰かが呼ばれた時のみ、描写に反映し、ご一緒致します。
第1章 日常
『桜と霧の都『倫敦』』
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POW : 霧深い都を迷いながらも観光する
SPD : 倫敦の名所を巡ってみる
WIZ : ミステリーの匂いに誘われて観光する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
灰神楽・綾
【不死蝶】黒のサーフパンツ
霧の街、青い幻朧桜……と来れば、水鉄砲対決だよね
ほら、霧って水で出来ているじゃない?
それに水って青色のイメージがあるじゃない?
つまり、そういうことだよ
頭に付けたティッシュが濡れたら負けという即席ルール
俺は一人で戦うけど、梓は仔竜たちと協力してもいいよ
梓だけだと不利だろうから、これくらいのハンデはあげないとね
俺のは連射性能に優れた小型水鉄砲
梓を挑発するようにあちこち撃ちまくる
ふと水の放たれる音が聞こえる
梓が攻撃を仕掛けたか?
梓の水鉄砲は一発撃ったあとの隙が大きい
つまり今がチャンス
だがそこに梓は居なくて……後ろから殺気
おっと、あぶなっ(間一髪回避
※結果お任せ・アドリブ歓迎
乱獅子・梓
【不死蝶】黒のサーフパンツ
なんで???<水鉄砲対決
いやいやいや、つまりどういうことだよ!
いまいち納得出来ないまま綾と水鉄砲模擬戦する羽目に
ぐぬぬぬぬ、開始前から思いっきり煽ってきやがって…!!
しかも、綾の言う通りだから尚更悔しい
こうなったら俺と焔と零で力を合わせて絶対に勝ってみせる…!
俺が選んだのは威力と飛距離に優れた大きめの水鉄砲
連射は難しいから、闇雲に撃たずに
建物の影に隠れつつ発射する機会を伺う
ここで仔竜との連携プレー
俺とは別の場所から、水のブレスを放つよう零に指示
それを見た綾が、俺が放った水だと勘違いしてくれれば作戦成功
のこのこ現れた綾に向かって発射だ!
※結果お任せ・アドリブ歓迎
●夏といえばズブ濡れだろ!
ひゅう、と妙に冷たい風が頬を撫でた。
どうも夏らしさはどこかへ消えた。
でも、その風にはどこか熱量をわずかに感じなくもなかった。
「ホントに雰囲気が違うね。霧の街、青い幻朧桜……と来れば」
灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は長い髪を払う。
黒のサーフパンツと揃いのサンダル。
その手はカチャカチャと弄られる銃型武装の姿が。
連射性能に優れた押し心地の良さそうな小型水鉄砲である。
「水鉄砲対決だよね」
「なんで????」
やや食い気味に、男は自然な動作で首を傾げた。
乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は悪くない。
なにしろ、関連性が見出だせなかった。
現在の姿が綾と同じく黒のサーフパンツである以上、水に関わる事を行うことはまあ、微量だが理解できるのだが。
霧の街に水気がある様子は見て取れないのだ。あるのは大量に舞い踊る青の桜と、立ち込める霧ばかり。
「わかんないって顔してるね。ほら、考えてみてよ」
綾は語る。朗々と。
「此処に溢れる霧は決して偽物なんかじゃない、体感でもちょっと涼しすぎるくらいだけど……霧といえば水で出来てるものじゃない?」
「う、うむ」
「それってつまり、水って青色のイメージがあるからじゃない?つまりさ、そういうことだよ」
「……いやいやいやぁ!なにが"つまり"だどういうことだよ!」
満足気に説明できたという顔をする綾に対して、梓は困惑を極めるばかり。
――霧があるから水鉄砲対決にピッタリ!
――いやどんな理屈だそれ!霧がなくても遊べる場所はあるだろ!
内心に広がるイマイチ納得できない気持ち、プライスレス。
「ルールはうん、わかり易さを重視して……頭に付けたティッシュが濡れたら負け」
すっ、と取り出すポケットティッシュは誰かさんが忘れず持たせてるものだ。
種も仕掛けもありません。ハンカチより耐久が脆く、それ故に水という物質に極端に負けやすい。
――どうせこの姿を他の誰かが目撃してるわけがないよ。
「俺は一人で戦うけど、梓は仔竜たちと協力してもいいよ?」
「ぐぬぬぬ、開始前から思いっきり煽って来やがって……!!」
今この状態への理解が追いつかない梓に分かる事は。
|これは対決《遊び》であるということだ。だが、|遊び《勝負》でもある。
「でもちょっと待て、焔と零にティッシュの位置を平等に頼もう」
そこは公平を期して、自分たちではなく彼らの手に委ねよう。
不正がないように。正々堂々やろうじゃないかの意趣返し。
「いいか、準備完了からキッチリ三十秒後にスタートだ」
「うんそれでいいよ~」
ティッシュの位置の確認を終えて、ふらりその場からやや距離を取る綾はポツリとこぼしながら背中で語る。
「梓だけだと不利だろうから、これくらいのハンデはあげないとね~」
「……こうなったら俺と焔と零で力を合わせて絶対勝ってみせる!」
数秒と進む時間の中で、梓は背中へ宣告して返した。
自由に選んでいいと、確かに水鉄砲を一つ選んでいたが。
まさか此処ですぐに使うことになろうとは。
――俺が選んだのは、威力と飛距離に優れた大きめの水鉄砲だ。
ライフル銃の型だからこそ、これは連射には不向きである。
しかも綾は選んだ水鉄砲の形状を見て、それで仔竜たちの援護もありだと言ってのけたのだ。
……二十八、二十九――|三十《戦闘開始》!
先に銃の撃ち合いを開始したのはやはり綾だった。
ばしゅっ、と挑発するようにひたすら打ち込むのだ。水鉄砲としての内蔵量などお構いなし。
グリモア猟兵が魔改造を施したという銃は、本当に霧から水分をチャージして無限に撃てる。
「……おぉ」
思わずく小声で感心を示してしまったほどだ。
リチャージの必要がなく、ガンガン撃てる。なにこれ楽しい。
「梓、隠れてるだけじゃ俺が簡単に追い詰めちゃうよ?反撃大歓迎なんだけどな?」
激しい挑発が始まる頃、梓は開始と同時に建物の影へ向けて素早く転がり身を隠していた。
息を潜めて、挑発の声を聞く。
「……お、攻撃を仕掛けたか」
視界の隅に、仔竜たちが躍り出てきて思い切り水のブレスが撒き散らされる。
これは梓が指示し、零が遂行した結果だ。
――これは水鉄砲の銃撃ではない。
あそこに梓は居ないハズ。自由に動ける伏兵を霧に紛れ込ませてあちらへ行かせたんだろう?
「梓、勿論俺は気がついてるんだよ。その水鉄砲は一撃撃ったあとの隙が大きい奴だってね」
つまりさあ。
「今がチャンスってこと」
撃たないなら、こちらは正々堂々騙されたフリをして追い込もう。
覗き込み、頭へ直接向けた銃――のつもりだった。
そこに梓の姿が見当たらない。
確かにこの場へ逃げ込んだハズなのに。
「おっと、あぶなっ」
背後に感じた瞬間的殺気から身を逸して躱し、綾の目は標的頭上へ向けて水弾を的確に放つ!
「俺の作戦は失敗だったが、|ティッシュ《目印》が濡れたら負けだって話だったよな」
一撃を撃ち、梓はすぐにその場を離脱する。
体にそのまま水弾が着弾しようと、これは|セーフ《問題ない》。
「でもすぐには撃てない。撃ち続ければ俺の勝ち」
ざばぁーー。
降り注ぐは水のブレス。
にやりと笑う梓は、そのまま腹を抱えて笑い出した。
「そうとも。すぐには俺は撃てない。作戦失敗した時点で|攻守交代《零がメイン》だったんだよ」
伏兵は尖兵へ。
嬉しそうに鳴いた仔竜にしてやられた綾はぐっしょり濡れた頭を振って、へにゃりと笑う。
「ああ、勝てると思ったのになぁ――もう一回しようよ」
満足する間で打ち合おうと誘い、それからまたすぐに彼らの戦いは再開された。
青い桜の樹の上空で彼らの銃撃を、|誰か《影朧》が覗いていようだが、霧の街での暴動は。これくらい静かで、やや過激なものだろう。そんな、なんだか納得の気配を残し、青の炎をなって気配は霧へ溶け込むように散るように消えていったようである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!
フッ……霧が涼しいデスネ!
避暑地に最適でありますな!
青い幻朧桜もまた風情を感じマース!
今年の水着、虎柄ビキニを着用して、サブマシンガン型水鉄砲にビッグサイズの貯水タンクを背負って参戦!
いざ勝負デース、フィッダ殿!
幻想的な空間を楽しみながら、霧を利用して索敵アンド攻撃!
射程圏内に入ったら《フルバースト・マキシマム(水鉄砲)》でド派手にヒャッハーデース!
遊びであっても全力で勝ちを狙って参りマース!
エンジョイした後は、影朧殿たちを見送りマスカナ?
どこに居るのかはわかりマセンガ、模擬戦を楽しんで観ていただけたのなら幸いであります!
無事転生を果たしたら、また一緒に遊びマショー!
●そこに雨が降るでしょう
「フッ……霧が涼しいデスネ」
ひやりとした風は、夏と言うには心地よい。
前髪を軽く払うバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、不敵な笑みを浮かべた。
「これは確かに避暑地に最適でありますな!」
ただし、それは彼女がバルタンであるからこそ浮かべられた笑顔。
背にはビックサイズの貯水タンクを背負、その手にはサブマシンガン型の水鉄砲がキランと輝くばかり。
これは虎柄ビキニに虎尻尾、合わせて虎耳まで装着している彼女が歴戦兵であるかさこそ為せる所業だ。
その武装は殆どない。だが、確かに持つは明確な武装。
「だろ?」
フィッダ・ヨクセムは普段よりも小柄な姿で。
しかし、楽しげに笑い返してくる。
黒い犬のパーカーを、ひらりと翻して、手に持つ小さな水鉄砲を構えてみせた。
「青い幻朧桜もまた風情を感じマース!」
普段桃色の世界は、青い色に染まって別の場所のようにも思える。
裸足でも全く気にならない!戦場としても最適じゃないですか!
「さあさあいざ勝負デース、フィッダ殿!」
じゃきん。
勢いよく銃口を向けて笑うバルタンは猛虎――そう形容できただろう。
「おう!楽しんだモン勝ちだ!」
霧に紛れる餓狼の仔。
バルタンよりも小柄なフィッダが、霧に紛れて駆け出した。
すぐに行方を見失ってしまったが、パタパタと駆ける音はサンダルの音。
姿は隠れても音は隠せていない。
「幻想的な空間デスよ?楽しまないと大損デース」
顔を上げて、しっかりと咲き誇る|桜《青》を見ればいい。
ハラハラと、桜の花を揺らして落とす幻朧桜の姿を。
広大な街一つを、こうして再現して広げる不思議な力。
どこを見ても青を散らし、刻一刻とちら、ちら燃えるように花びらが消えていく。
青白く燃える桜が消えるは誰かの|想い遺しの昇華《ゆめのおわり》。
何処にも居ない、誰もいない。
だからこそ、駆ける足音は、駆け続ける限り何処に居るかを理解するに容易――。
「おぉ?此処は"博物館"デスかねー?」
世界三大ミュージアムに加えられる一つの姿。
歩いて、駆けて、追いかけて追いかけられて。
たどり着いたのは、大英博物館の見える正面口。
「……でも、幻想の有名所に人が居ないのはやはり変な感じデスネ」
「バルタン!隙を見せたな、喰らえー!」
小柄な対戦相手は、自身のユーベルコードを利用して――装備武器から、勢いよく水弾と豪雨を思わせる銀と青の炎をぶちまける。
当たれば水だ。当たらなければ、それは花びらとなって燃えて消える。
「その芸当、この空間とも似て……」
――となれば、対策は一つ。
「霧を利用しての攻撃お見事デース!ただ、小さな銃から届かせる為にはフィッダ殿は圏内にいるという証!」
|フルバースト・マキシマム《全部撃てば当たる》!
一斉発射の水鉄砲は、狙ったものを逃しません!
「……ちョッと待てバルタン!それ全方一斉ぶち撒け攻撃じャん!!ずりィ!!」
ど派手にぶち撒けて、楽しくばらまく水流は対象へとばしゃあと見事に掛かる。
全身ぐっしょり水だらけ。バス停の少年は、バルタンの水流から逃れきる事はできなかった。
濡れて重たくなった鬣付きの犬耳フードをぷるぷると振って。
それから、ニカッ、と笑ッて言うのである。
「でも、迷子観光も楽しかッたんで、負けても悔しくねー!」
「おお潔い!」
「悔しくはないけど濡らされた分の仕返しはシマス!!」
ナイスファイトの握手にと、手を伸ばしたバルタンはフィッダの罠にハマった。
すまないバルタン・ノーヴェ。子供相手だと許して欲しい。
顔面に思い切り水を掛けられたバルタンは、それこそ楽しく笑い出した。
お互いズブ濡れ、勝負はバルタンの勝ち。
エンジョイした後は、ひゅう、と強めの風を浴びた。
「おや、何処に居るのかはワカリマセンガ、もう行くのデス?」
きら、きらと。花びらが燃えて、霧の深い空を花火のように明るくしていた。
――楽しんで貰えました?
「虎の犬狩りを結構な数が観ていたッぽいなー」
「無事転生を果たしたら、また一緒に遊びマショウ!」
影朧の影も形も見えなかったけれど。
それでも。誰かが、くすくすと笑うような気配が複数感じられる。
気配が感じられた数、二人の周囲を風が踊るように吹き抜けていった。
『虎柄素敵なあなた?ふふふ、ちょっとビキニがずれていますよ……フフ』
「!?」
慌てて胸を抑えたバルタンを、先程より多い数の笑い声が包んで――やがて、消え入るように溶け消えていったような気がした。おいあいつら(みえない)、見るだけ見て言ったぞなんてやつだ。怒るにも怒れない現象を傍目に、バス停は言っていた。
勝利者に送られたよく観ていた観客からの賛美だろ、と若干ずれた楽しそうな言霊を。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
※今年の水着着用
実在するどこかじゃなくて、異世界っていうのは初めてかもな…
でもそういうの大好き
青い世界
僕とは真逆の色達
冷たさの象徴とも言える色だけど
同時に心を静めてくれる色
青の世界をただ歩くだけもいいよね
ロンドンって、確か凄く街並みの綺麗な国だったから
それになにより、青い幻朧桜も沢山見てみたいし
桜並木道があるならその下も通ってみたい
どのくらい広いんだろう…橋や水もあるのかな?
その辺りも青くなってるなら、是非橋の上から水面も見てみたい
きっと水面に反射して映る青の世界も綺麗だと思うから
でもやっぱり、見慣れちゃうと元の世界の色彩が一番、かな
影朧さん達にもいつか見てほしいね
次の生で、もう一度
●青い花びらと幻想の街
逢魔が時の世界。
しかもこれは、現世と幻想の隙間。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はパチパチと普段よりも多めの瞬きを繰り出す。
「青い世界だね、本当に」
サクラミラージュの桃色世界とは全く真逆の色たち。
そして、澪とも真逆の色たちの創り、編み込まれた世界。
霧の国、幻想の|倫敦《ロンドン》に於ける在らねばならぬ青。
|静寂《冷たさ》の象徴。しかし同時に心を鎮める色だとも、考えられる。
「……だから、この世界は青いんだよね」
明るく華やかなとは真逆の世界は、同時に閉塞的で、――しかしだから、幻想に手を添えている。
白いウェディングドレス風の水着姿の澪と、青の色はよく映えた。
ひらひらと、静かにやってきた桜の花びらが、白色に色を載せて行く度に、何度もくすりと微笑みそうになる。
――ただ、歩くだけでもいいよね。
音もなく、誰もいない。
広い広い街の中、あるのは幻朧桜と立ち込めた霧。
翼を広げて、ふわりと体を浮かせてみても、やはり霧は外へ飛び出そうとすれば行く手を阻む。
しかし外を目指さなければ――その霧は、そこまで視界を塞ぐものではなかった。
「ロンドンって、確か凄く街並みの綺麗な国だものね」
沢山の観光名所を抱える場所だ。
古く聳えるものが多く、誰からも愛され、親しまれている。
観光客で賑わう広場。宮殿、大聖堂。|倫敦《ロンドン》自然博物館。
この|倫敦《ロンドン》が、本来のサクラミラージュに存在するものかは、わからない。
他の世界のロンドンの概念もあるかもしれない。しかし、それは――些末なものだ。
「ほんとうに、所構わず這えてるね……幻朧桜」
建物を無視して栄える木々をいくつも見た。
幻想的な様子はそのままで、しかし薄い青から濃い青まで様々な色が見て取れた。
桜並木の通りもまた、枝垂れ桜の様相を得た青の幻朧桜で埋め尽くされている。
どこもかしこもあおい。|蒼《あお》い。|碧《あお》い。
「空を覆い隠すのにも。見なくていいものを隠すのにも慣れているんだね」
傷ついた弱い魂、影朧に寄り添う隙間の世界だからだろう。
「あ、……橋!」
さらさらと水の流れる音を聞いた。
誰もいないタワーブリッジ。寂しく見える建造物から、澪は水面を覗き込む。
青の水に映り込むのは、白の水着を着用した自分と、自分の翼。
それから、反射して映った|この世界《青の世界》である。
空は青味がかった灰色で、一つとして同じ色のない青が視界いっぱいに広がった。
「綺麗だね、でもやっぱり……」
此処には会話が聞こえない。此処には囀る声がない。
涼やかに過ごせても、誰もない。
「見慣れちゃうと、元の世界の色彩が一番に思える、ね」
青の桜は綺麗だけれど。
でも、幻朧桜と寄り添う世界は未来を見つめて、華やかだから。
「影朧さん達にもいつか見てほしいね」
叶わなかった|願望《夢》を叶えるために。
「だから、ね?――次の生で、もう一度」
願わせて。そして、歌うように語って聞かせて?
いつか転生したあなたの言葉で。
――ありがとう、優しい|あなた《きみ》。
楽しんで霧の街を巡る、夏の装い姿の|あなた《きみ》を見て、思い出したよ。
とあるだれか、の声が聞こえた気がした。
――新婚旅行に、向かうつもりだったんだ、私は。
幸せを胸に、夢見た旅行。しかしその願いは叶わぬものとなり――終わりのない夢を見続ける。
決心したよ。そうだね、見れなかったと悔やんでいたけれど。
再びの生を手に、ホンモノを見に行くのも悪くはないね。
ありがとう。私も、――生と死の間で別れてしまわないように、翼を持って転生したいものだねえ。
その声は、ふっ、と燃え上がるように澪へ語った後、明るい|生き様《希望》を炎のように一瞬だけ可視化して儚く青に溶けて、姿を消した。
「きっと、出来るよ」
――転生が願うようできますように。
どうなるかは幻朧桜次第だろうが、きっと――良い方向へ聞き届けてくれるだろう。傷ついた魂が、癒されるよう身体を亡くしてもずっと寄り添い続ける不思議の桜であるのだから、いつかは――きっと。
大成功
🔵🔵🔵