●幻想金魚と海の庭
蒼海に浮かぶ小さな島は、ピスケスの庭と呼ばれていた。
薄青の魔術結界が巡らされた島の中には、空中をふわふわと泳ぐさかな達がいる。
幻想金魚、マジカルテトラ、魔法の海星と呼ばれる魚や海洋生物は、水がない場所でも島内ならば自由に動けるらしい。
淡水に棲むもの、海水に棲んでいたものの区別もなく、池や浜辺、浅瀬などの水中にも自由に行き来できる島のさかな達は悠々と泳いでいる。
なかでも数が多いのは幻想金魚。
赤や白、黒などの美しい模様や色を持つ金魚達は水を浄化する力を持っていた。幻想金魚達が泳げば、水は更に透明度を増す。どうやらこの島は元は穢れが溜まりやすい場所だったらしいが、魔法の金魚や熱帯魚が棲み始めたことで美しい島に変化したらしい。
此処はさかな達の楽園。
夏を迎えた海と、ふしぎなふしぎな海庭で過ごすひとときはきっと、涼やかで綺麗な思い出を形作ってくれるはずで――。
●空飛ぶ魚と薄青の世界
ピスケスの庭と呼ばれる孤島。
水の中や空中を泳ぐさかな達の島に行ってみないかと誘ったのは、鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)だ。
「かわいい金魚をはじめとしや、愛らしい星を思わせるヒトデ、色鮮やかな熱帯魚達。かれらは薄青の結界の中で、自由に暮らしておるのじゃ!」
友好的なさかな達は島に訪れた人を歓迎してくれる。
ぜひ触れ合ってみたいと語ったエチカは、わくわくした表情を見せた。
この島に魔術結界を張った者や金魚達を招いた人間はいたらしいが、それも随分と昔のこと。今は無人島だが、さかな達が持つ浄化作用で島内は美しく保たれている。
「プールのような涼しげな池で過ごすもよし、きらきらと輝く砂浜や島周辺の海の中に潜ってみるのもいいのう。空中にも水中にもおさかながいるゆえ、戯れながら自由に過ごしてみるといいのじゃ」
エチカは楽しげに微笑み、島に生息している海洋生物達を指折り数える。
まずは幻想金魚。
赤と白が織り混じった綺麗な模様の和金や朱文金めいた金魚をはじめとして、印象的な形の出目金や琉金、蝶尾と呼ばれる尾鰭がふんわりとしている子もいる。
「島には金魚が多いが、他の生き物も目白押しじゃ!」
たとえば熱帯魚。エンゼルフィッシュやテトラフィッシュ、レインボーフィッシュのような小魚が群をなして空中を進んでいたり、海星が浅瀬辺りにたくさん浮遊していたり、ちいさなエビのチェリーシュリンプもたくさんいる。
「あとは海月もたまに訪れるらしいぞ。海星がいるところに出没しやすいらしいゆえ、探してみると良いかもしれぬ」
淡水や海水の区分けはなく、多くのさかなと出会えるのがこの島の特徴だ。
彼らは言葉を喋ることはないが、人懐っこく近付いてくる子が多い。指先を伸ばすと集まってくるので楽しく戯れられる。
また、島内に巡っている薄青の結界内は涼しくひんやりとした心地を齎してくれる。避暑にも最適なうえ、何となく水中にいるような気分にもさせてくれるだろう。
「涼しくて幻想的な海庭といった雰囲気かの。ふふ、どんなおさかなに会えるかもとても楽しみじゃのう!」
エチカは明るく笑いながら、夏を存分に楽しんで欲しいと願った。
そして――此処から、猟兵の夏休みがはじまっていく。
犬塚ひなこ
今回の世界は『グリードオーシャン』!
空飛ぶ不思議な幻想金魚や魔法の海洋生物達と一緒に遊びましょう。
こちらはグリモアエフェクトの関係で早めに進行していく可能性が高いです。どうかご了承ください。受付状況はタグやマスターページをご覧くださると幸いです。
●概要
舞台は『ピスケスの庭』と呼ばれる海の孤島です。
薄青の魔術結界が張られており、ひんやりした水中のような心地が味わえます。
島の中には広い池や泉が多くあり、空中や水中に熱帯魚や金魚、海の生物などが泳いでいます。地上だけではなく水中、または周辺の海中にもたくさんの生き物がいるようで、どの子も友好的です。
空飛ぶおさかなは勿論、浮遊するエビやヒトデ、クラゲなどもたまに見かけるのでお好きなおさかなを探してみてください。OPにない生物も出てくるかもしれません。
どの水場も幻想金魚達の浄化力によって、とても透き通っていて綺麗なので潜ってみるのもいい感じです。
その他、浜辺で遊んだり、島を探検してみたりと自由にお過ごしください。
第1章 日常
『海の動物園』
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POW : 一緒に遊んでみよう
SPD : 餌をあげてみよう
WIZ : 観察しよう
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
灰神楽・綾
【不死蝶】◎
指先を伸ばせば近寄ってきてくれる魚達
本当に人懐っこくて可愛いねぇ
こんな機会滅多に無いし、写真撮っておこうっと
スマホ取り出してカシャリ
ねぇねぇ、クラゲを探しに行こうよ
空中を泳ぐクラゲなんて絶対綺麗だろうし
会えたら何となくいいことありそう
…と意気込んだものの
うーん、いないねぇ
しょんぼりしていたら、焔が見事発見
えらいぞー、焔(なでなで
クラゲと一緒に皆で記念撮影
その後はのんびりと散歩
ふと思ったんだけどさ、ここの魚達ってどんな味がするのかな?
あそこのエビなんてエビチリにしたら美味しそうじゃない?
え~、それじゃあ、梓が魚達をモチーフにした
美味しくて映えなスイーツを作ってよ
ふふーん、楽しみだな
乱獅子・梓
【不死蝶】◎
興味ありげに自分達に寄ってくる魚を見て
あまりの警戒心の無さに何だか心配にもなってくる…
天敵のいないこの島で穏やかに過ごしてきたからこそなんだろうな
綾に言われるがままクラゲ探しへ
たまに訪れると言うだけあってなかなか見つからない
今日は来てないのかもなと思っていたら
一緒に探していた仔竜の焔が突然何かにぽよんとぶつかる
あ、こんなところに居たのか
半透明だから気付かなかったんだな
お手柄だぞ、焔(なでなで
おい、なに物騒なこと言ってんだお前は!
間違っても捕まえて帰ろうとか言うんじゃないぞ?
ここの魚達を料理しろと言われるよりは、まぁそれくらいなら…
あれ?もしかして俺、綾に上手いこと乗せられた?
●海庭散策
透き通った青が広がる海の孤島。
此処には不思議な魔力に包まれた領域がある。島に足を踏み入れれば、綾と梓の周囲に色とりどりの金魚が泳いできた。
梓は興味ありげに自分達に寄ってくる魚を見遣り、綾は其方に指先を伸ばす。
近寄ってきてくれる魚達にそっと触れた綾は口許を緩めた。
「本当に人懐っこくて可愛いねぇ」
「あまりの警戒心の無さに何だか心配にもなってくるな……」
「そう? こんな機会滅多に無いし、撮っておこうっと」
梓が金魚達に乾燥を零す中、綾はスマートフォンを取り出した。カシャリと音が鳴った後、写真に収められたのは愛らしい金魚達の姿。
「まぁいいか。天敵のいないこの島で穏やかに過ごしてきたからこそなんだろうな」
梓は気を取り直し、それは幸せなことだと感じた。
暫し綾は金魚のベストショットを探して撮影会を行っていく。魚達も悪い気はしていないらしく、ふわふわと彼の周りを泳ぎ続けていた。
そうしていると、写真に満足した綾が梓を呼んだ。
「ねぇねぇ、クラゲを探しに行こうよ」
「クラゲ? 島のどこかにいるんだっけか」
「そうそう、空中を泳ぐクラゲなんて絶対綺麗だろうし、会いたいと思わない?」
もし海月を見ることが出来たならば、いいことがありそうだ。何となくそう思うのだと語った綾は梓を連れ、島を巡ることにした。
言われるがままについていった梓は、周囲をのんびりと見渡してみる。
「いたか?」
「うーん、いないねぇ」
意気込んでみたはいいものの、簡単には見つからないようだ。事前に聞いていた通り、偶にしか訪れないという海月を発見するには運も必要らしい。
「しかし、なかなか見つからないからこそ面白いんじゃないか」
「キュー!」
「ガウガウ!」
しょんぼりする綾に対し、梓と焔、零がそれぞれに声を掛けた。そうかもね、と答えた綾はもう暫し海月探しを実行することにする。
(しかし……もしかしたら、今日は来てないのかもな)
梓がそんなことを思っていたら、前を歩いていた仔竜が突然に跳ねた。焔が何かにぶつかってぽよんと揺れたのだと気付いた梓は顔を上げる。
「あ、こんなところに居たのか」
「キュー?」
「焔が見事に発見してくれたね。えらいぞー」
肩を落としていた綾も海月の出現に喜び、焔を優しく撫でてやった。
「半透明だから気付かなかったんだな。お手柄だぞ、焔」
「ガウ!」
「零もいいこだな、よしよし」
梓も仔竜達を撫で、海月にも目を向ける。
それから再びスマートフォンを取り出した綾は、海月と一緒の記念写真を撮ろうと提案した。海月もふわふわと漂って、細く長い触手を揺らめかせている。
そして、海月に手を振って別れた一行は新たな散策に向かっていった。
ゆっくりと島内を歩いて行く綾と梓は、道中に様々な熱帯魚や金魚達と出逢った。どれもが清浄な空気を作ってくれているものたちであり、見るだけでも癒やされる。
そんな中、綾がふと語り出した。
「思ったんだけどさ、ここの魚達ってどんな味がするのかな?」
「おい、なに物騒なこと言ってんだお前は!」
「あそこのエビなんてエビチリにしたら美味しそうじゃない?」
「間違っても捕まえて帰ろうとか言うんじゃないぞ?」
綾が指差したのは辺りに浮遊していたチェリーシュリンプ達だ。あんなに小さなエビを調理するなど言語道断だと感じた梓は全力で否定した。
すると、綾は薄く円で見せる。
「え~、それじゃあ、梓が魚達をモチーフにした美味しくて映えなスイーツを作ってよ」
その提案は此処にいる魚やエビを手にかけるよりはマシなものだった。それにスイーツならばある程度はこの島の魚のかたちも模れる。
「ここの魚達を料理しろと言われるよりは、まぁそれくらいなら……」
「ふふーん、楽しみだな」
綾は上機嫌に梓を見つめていた。
しかし、はっとした梓は彼の作戦に引っ掛かってしまっていることに気付く。
「あれ? もしかして俺、綾に上手いこと乗せられた?」
「キューキュー!」
「ガウー!」
「ほら、焔と零も楽しみだって言ってるよ?」
「……まぁ、いいか」
無邪気な仔竜達を示した綾は良い笑顔のまま。
肩を竦めた梓は半ば諦めがちに、それでいて何処か楽しげに笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラナ・スピラエア
◎蒼汰さん(f16730)
不思議なお魚さんですね
実は泳ぎはあんまり得意じゃないので
陸でも海っぽい世界を楽しめるのは嬉しいです
蒼汰さんの手元で一緒に遊ぶお魚さんの様子に和んでいれば
あ、蒼汰さん
揺れる姿に惹かれたのか
蒼汰さんの尾に集まる色々なお魚さんに思わず笑みが
どの子も可愛いですね
何より、お魚さんと戯れる蒼汰さんが見れたことが嬉しい
お気に入りの場所には期待を胸に
海月さんは珍しいんでしたっけ?
海星さんが集まっているところに行きましょう!
ふふ、確かに宝探しみたいでワクワクします
きっと素敵な思い出になるけど
…もしも見れなくても
私はこの景色を蒼汰さんと見れただけで幸せです
しっかり聞こえるよう距離を詰めて
月居・蒼汰
◎ラナさん(f06644)と
さかなの力で綺麗な姿が保たれてるんですね…
当たり前のように空中を泳ぐ彼らに心が弾む
近づいてくる子がいれば指先を伸ばし
くるくる回してみたりもして
呼ぶ声に振り向けば無意識に揺れてた尻尾にたくさんのさかなが
…水草みたいに思われたのかな?(ゆらゆら揺らし)
あ、ラナさん
この金魚さんが
お気に入りの場所に案内してくれるみたいですよ
金魚さんについていったら…
どんな景色に出会えるんだろう?
ラナさん、後で海月も探してみませんか?
何だか宝探しみたいでわくわくしますね…!
…でも
一番の宝物はラナさんの楽しそうな笑顔だなんて
ちょっと照れくさくて言えないけど
告げられた言葉には
俺もです、と微笑んで
●星と戯れる月
かつて、この島は穢れが溜まりやすい荒れた地だったという。
しかし現在、この地は過去の姿とは全く違うものになっている。ゆるりと泳ぐさかな達の力が海の孤島を美しい場所に変えてくれていた。
ラナと蒼汰は薄青の結界が巡っている島を見渡し、穏やかな心地を抱く。
「ここはこのさかな達の力で綺麗な姿が保たれてるんですね……」
蒼汰は心が弾む感覚を抱き、静かに笑む。
此処では極普通に、当たり前のように空中にさかなが泳いでいる。二人の周囲には色鮮やかな金魚が悠々と通り過ぎていっていた。
「不思議なお魚さんですね」
指先をそっと伸ばしてみると、じゃれつくような動きで金魚がラナに寄ってくる。
ラナとしては泳ぎが得意ではないゆえ、こうして陸の上で海や水中らしさを感じられることが嬉しかった。
「おいで」
蒼汰も近付いてきた金魚に呼び掛け、手を差し伸べてみる。
彼が指をくるくると回せば、さかなも一緒にくるりと揺らいだ。ラナは蒼汰が楽しげに遊んでいる姿を暫し見つめ、和みを感じていく。
「あ、蒼汰さん」
「はい?」
ラナが呼ぶ声に蒼汰が振り向けば、無意識に揺れていた尻尾にもたくさんのさかながじゃれついていた。
「……水草みたいに思われたのかな?」
「ふふ、そうみたいです。どの子も可愛いですね」
蒼汰が尾を更にゆらゆら揺らしてみると、金魚達もそれに合わせて踊るように泳いでいった。その様子は不思議な雰囲気だったが、ラナは楽しい思いを感じている。
可愛い金魚達が、大好きな彼の尻尾で遊んでいるという光景。
集まるさかなは勿論、嬉しげに戯れる蒼汰が見れたことが何よりも嬉しい。暫しゆったりした時間を過ごしていると、次は蒼汰がラナに声を掛けた。
見れば、彼の影に隠れていた場所に一匹の真っ黒な出目金がふわふわと浮いている。他の子達よりも強い意思を持っているらしい出目金は、どうやらラナの方にも意識を向けてくれているようだ。
「ラナさん、この金魚さんがお気に入りの場所に案内してくれるみたいですよ」
「案内してくださるんですか?」
お気に入りの場所と聞けば期待で胸がいっぱいになる。
答えるようにふわりと高く浮いた金魚は蒼汰とラナを導くように泳いでいった。
「楽しみですね」
「はい、どんな場所でしょうか」
金魚についていったら、どんな景色に出会えるのだろうか。蒼汰は出目金の後をついていきながら、ふとした思いを告げる。
「ラナさん、後で海月も探してみませんか?」
「海月さんは珍しいんでしたっけ? でしたら、海星さんが集まっているところに行きましょう!」
「何だか宝探しみたいでわくわくしますね……!」
「ふふ、確かに宝探しみたいでワクワクします」
同じ気持ちだと確かめあった二人は、金魚に案内されるままに進む。
薄青のヴェールに包まれた島の探検は次第にもっと楽しいものになっていく。そして――辿り着いたところには浮遊する海星がたくさんいる場所だった。
「ここは……あ、海星に――海月もいる」
「もしかして、海月さんがいるところがお気に入りの場所?」
蒼汰とラナは金魚が連れてきてくれたところが自分達の目的と一致していると知る。ふわり、ふわりと揺らめく海月は愛らしい。
まるですぐ近くに夜空が創造されたようで、ラナと蒼汰は心地よさを抱いた。
「綺麗ですね、ラナさん」
「もしも何も見れなくても、景色を蒼汰さんと見れただけで幸せだと思っていましたが……ふふ、もっともっと幸せになれました」
「俺もです」
ラナは自分の思いがしっかり聞こえるように彼と距離を詰める。触れ合った手と手は自然に繋がれ、快い熱が伝わってきた。
「……でも」
「どうかしましたか?」
「いいえ、とても楽しいと思っただけです」
ラナに問われた蒼汰は心の裡に浮かんだ言葉をそっと仕舞い込んだ。
宝物を探していたけれど――本当に一番の宝物は、彼女の楽しそうな笑顔。
そんなことは少しばかり照れくさくて言えなかった。けれども、そう思う気持ちに嘘や偽りはない。
微笑んだ蒼汰はラナと共に頭上を振り仰ぐ。
宙を舞うように泳ぐのは海の月と星。寄り添いながら美しい景色を瞳に映す二人の姿を、可愛らしい金魚がそっと見守っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽向・理玖
【月風】
今年の水着で手繋ぎ散策
お、ちょっと涼しい
瑠碧ほら、そこに金魚飛んでる!
赤い奴…何て言うんだろ?
手を伸ばして
人懐っこくて可愛いな
瑠碧の青い水着と並ぶとすげぇ映える
えー?
俺的には金魚が背景だけど
あっちは熱帯魚!
近く行っていい?
こんな涼しいのにっつーか
色んな魚がその辺に居てすっげぇ不思議だな
あっエビ…は駄目だったな
避けて
瑠碧、俺海月探してもいい?
あそこの湖広くて色々いそう
海星…海星だよな…
潜って
イソギンチャクの影に海星見つけて
あっいた!
きょろきょろと今度は海月探して海上見上げて
んっ…浮いて行って水の上に行った!
瑠碧上がろうぜ
手を取り
すっげぇ!
空に海月浮いてるし
青空に透けてる
めっちゃ綺麗じゃん
泉宮・瑠碧
【月風】
今年の水着で手を繋ぎ散策
島を覆う薄青が心地良く
理玖の声に一緒に手を伸ばしてみれば
寄ってくる子達、可愛いです
蝶尾の子とは、水着の感じが少し似ているかも知れません
金魚達の傍だと、私は背景の青い水かも?
熱帯魚の方へ行き
名前が熱帯でも寒くは無いですか…此処に慣れたとか?
エビにはどうしても少し距離を取り
すみません…おが屑から飛び出す恐怖から、どうにも
海月、ですか?
はい、海星の居る所を探すと良さそうですね
理玖を追って水中へ
水中は、地上とはまた違いますね
此処の魚達に挨拶をしていたら
理玖の声に海上を見上げ
魚達にありがとうと告げてから
手に引かれて地上へ
あ、海月…
透明な部分が、空と溶け合っていて綺麗ですね
●透明な月
其々に水着を身に纏い、共に歩くのは孤島の最中。
理玖と瑠碧は手を繋ぎながら、薄青のヴェールに包まれたような景色の中を行く。島を覆う結界はまるで此処が海中であるかのような心地を与えてくれていた。
「お、ちょっと涼しい」
「本当、ですね……」
理玖が楽しげに先を行き、瑠碧の手を引く。進んでいく方向には小さな何かの気配があり、理玖は空いている方の手で前方を指差した。
「瑠碧。ほら、そこに金魚飛んでる!」
「わ……いっぱい」
「あの赤いやつ、何て言うんだろ?」
興味を持った理玖が手を伸ばしてみると赤い金魚がふわりと寄ってきた。瑠碧の方にも様々な金魚が泳ぎ寄ってきたので、周囲が一気に鮮やかな色彩に包まれる。
和金や朱文金のような子達、琉金や蝶尾めいた子まで色々だ。
「この子達、可愛いです」
「みんな人懐っこくて可愛いな。それに瑠碧の青い水着と並ぶとすげぇ映える」
理玖が褒めてくれたことで、瑠碧はそっと笑む。思えば一番近くに来てくれた蝶尾の子とは水着の感じが少し似ているかもしれない。
「……この金魚達の傍だと、私は背景の青い水かも?」
「えー? 俺的には金魚が背景だけど」
さらりと瑠碧至上主義な台詞を紡いだ理玖は口許を緩めた。そんな彼の言葉にもすっかり慣れた瑠碧は、可笑しそうに微笑んでみせる。
二人でいることは当たり前で特別。そんな思いが互いの間に満ちている。
そして、理玖と瑠碧は島の探検を再開していく。
「お、あっちは熱帯魚!」
「綺麗な子達……たくさんいるみたい、ですね」
「近く行っていい?」
「はい、進んでみましょう」
二人は熱帯魚が多く集まる区域に足を踏み入れていった。テトラフィッシュにレインボーフィッシュ。よく似たさかなが楽しげに泳いでいる景色は賑やかだ。
「こんな涼しいのにっつーか、色んな魚がその辺に居てすっげぇ不思議だな」
「名前が熱帯でも、寒くは無いですから……此処に慣れたとか?」
「あ、エビ」
「ぴゃっ」
二人で話していると、影からチェリーシュリンプがひょこりと出てきた。理玖は普通に迎え入れたが、瑠碧は思わず飛び退いてしまう。
「大丈夫か、瑠碧。エビ……は駄目だったな」
「すみません……おが屑から飛び出す恐怖から、どうにも」
理玖はエビがいる場所は避けて進み、瑠碧を庇うように歩く。まるで彼女が飛び出す小海老みたいで可愛いと感じたが、理玖は何も言わないでおいた。
「そうだ瑠碧、海月探してもいい?」
「海月、ですか?」
もちろんいいと答えた瑠碧に笑みを返し、理玖は行く先にある湖に目をつける。
「あそこの湖、広くて色々いそう。確か海星……海星だよな……」
「海星の居る所を探すと、良さそうですね」
行きましょう、という言葉と共に瑠碧と理玖は湖の中に潜っていく。不思議な島であるからか湖の中にはイソギンチャクがいた。理玖はその影に海星を見つけた。
「あっ、いた!」
「水中は、地上とはまた違いますね……。海星がいたなら――」
理玖はきょろきょろと周囲を見渡し、瑠碧も海月を探すために天を仰ぐ。暫し頭上を泳いでいく魚達に挨拶していた瑠碧の隣で、理玖が再び声をあげた。
「んっ……浮いて行って水の上に行った! 瑠碧、上がろうぜ」
「はい。では……ありがとうございました」
理玖が手を取ったことで瑠碧は魚達に別れの挨拶と礼を告げ、地上に向かう。すかさず追っていったことで海月はすぐに見つかり、二人は楽しげに視線を重ねた。
「すっげぇ!」
「透明な部分が、空と溶け合っていて、綺麗です……」
「空に海月が浮いてるし、青空に透けてる。めっちゃ綺麗じゃん」
理玖と瑠碧は、透明な空と美しい海の青を映し込んだ海月を暫し見つめる。何か良いことがありそうな予感がして、理玖は満面の笑みを浮かべた。
無邪気な彼の様子に和んだ瑠碧も嬉しさを抱き、海月の姿をゆっくりと楽しむ。
二人で一緒に特別な時間を過ごせること。
きっとこれこそが、かけがえのない幸せというものに違いない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルデルク・イドルド
ディル(f27280)と
グリードオーシャンに住んでるがまだまだ知らない島は多いな。空を魚が飛んでるのは流石に初めてだ。
ん、あぁ、あれは金魚ってやつだ。この島のは幻想金魚だったか。金魚は確かにグリードオーシャンでは珍しいな。
(楽しそうにうろうろする様子に苦笑して)
ディルほら、手繋ぐぞ。
その調子じゃはぐれちまいそうだからな。
(はしゃぐディルクに手を引かれながらいろんな魚を眺めて)
おっ、海月も居るのか…すごいな。
ディルどうした?…腹が減ったのか…。
流石に泳いでるのを獲るわけにはいかないしな。
船に戻って俺の作った菓子でも食うか?
ん、じゃあ戻るぞ。
(今度は自分が手を引いて)
ディルク・ドライツェーン
アルデルク・イドルド(f26179)
おおっ、なんか赤くて布みたいなひらひらした魚がいっぱいいる!
アル、あれなんて魚だ?
きんぎょ…?へぇ~、金魚っていうのかなんか派手でキレイだな♪
(興味深そうに寄ってきた金魚をツンツンして)
あっ、あっちにもなんかいるぞ!
(走り出そうとしてアルに声をかけられ)
ん、じゃあアルも一緒に行こうぜっ
なんかいま透明なふわふわしたのが見えた!
(アルと手を繋ぐと見えた方向に引っ張っていて)
ほらっ、あそこにいるの海月だろ
海星もいっぱい浮いてて星空みたいだな~♪
うーん、でもこんなにいっぱい魚が近くに浮いてると…
アル、オレ腹減ってきた
(お菓子と聞いて)うんっ、戻ったらたくさん食べる!
●探検からお茶会へ
此処は広大な海に点在する島のうちのひとつ。
グリードオーシャンに住んでいる者ではあっても、無数に存在する島のすべてを知ることは出来ない。この海には異世界から島が落ちてくるのが常。それゆえに今日もきっと、何処かで新たな島が出現しているのだろう。
しかし、だからこそ海をまたにかける冒険心も高まるというもの。
「まだまだ知らない島は多いな。空を魚が飛んでるのは流石に初めてだ」
島に上陸したアルデルクは辺りを見渡し、関心を抱いた。その隣にはディルクが立っており、瞳を輝かせている。
「おおっ、なんか赤くて布みたいなひらひらした魚がいっぱいいる!」
「あれがこの島に住んでる魚達だな」
「アル、あれなんて魚だ?」
ディルクから問われたことで、アルデルクは目を凝らす。少し遠くにいた魚達も此方に気付いたらしく、ひらひらと尾を揺らしながら近付いてきた。
「ん、あぁ、あれは金魚ってやつだ」
「きんぎょ……?」
「この島のは少し違っていて幻想金魚というのだったか。もともとの金魚は淡水魚だから、確かにグリードオーシャンでは珍しいな」
きょとんとして首を傾げるディルクに対し、アルデルクは丁寧に説明していく。ぱっと表情を輝かせたディルクは興味津々に聞いていた。
「へぇ~、金魚っていうのか。なんか派手でキレイだな♪」
寄ってきた金魚達に指先を伸ばしたディルクは、そっと突く仕草をする。それに驚きつつもすぐに楽しげな仕草をした金魚達は愛らしい。
魚と戯れていくディルクは無邪気で、楽しそうにうろうろしていく。その様子に苦笑していたアルデルクはすぐに彼が迷子になりそうだと感じていた。
「あっ、あっちにもなんかいるぞ!」
「ディル」
彼が駆け出そうとしたことを悟り、アルデルクはその名を呼ぶ。振り向いたディルクは一旦立ち止まった。すると、アルデルクが手を差し伸べてきた。
「ん?」
「ほら、手繋ぐぞ。その調子じゃはぐれちまいそうだからな」
「じゃあアルも一緒に行こうぜっ」
「それでいい」
二人は手と手を重ね、一緒に歩き出す。そうしていると不意にディルクが驚いたような声をあげ、前方をじっと見つめた。
「あっ!」
「どうした?」
「なんかいま透明なふわふわしたのが見えた!」
アルデルクと手を繋いだまま、ディルクは元気よく駆け出していく。楽しそうにはしゃいでいるディルクに手を引っ張られたアルデルクもまた、この島の様子を堪能しているようだ。
手を引かれながら眺める景色の中には、様々な魚が泳いでいた。
「ほらっ、あれ! あそこにいるの海月だろ」
「おっ、海月も居るのか……すごいな」
「海星もいっぱい浮いてて星空みたいだな~♪」
辺りに広がる幻想的な光景に目を細め、ディルクは上機嫌に笑っている。しかし、暫しの時間が経った頃に彼の様子が少し変わっていった。
「うーん、でも……」
「ディル、どうした?」
アルデルクは急にしゅんとしたディルクの様子を見遣る。どうやら彼は魚達を見てはしゃいだことで色々と感化されたようだった。
「こんなにいっぱい魚が近くに浮いてると……アル、オレ腹減ってきた」
「……腹が減ったのか」
ふ、と笑ったアルデルクはもっと大事かと思っていたのだが、理由を知って安堵した。それなら、と答えた彼はディルクに海の方を示してみせる。
「流石にこの島に泳いでるのを獲るわけにはいかないしな。そろそろ船に戻って俺の作った菓子でも食うか?」
「うんっ、戻ったらたくさん食べる!」
菓子という単語が聞こえたことでディルクは途端に元気になった。現金なものだがそれもまたディルクらしさを感じさせる反応だ。
「ん、じゃあ戻るぞ」
次はアルデルクがディルクの手を引き、元来た道を引き返していく。
こうして、ひとときの島探索は終わりを迎え――少し後には、アルデルク特製の菓子とお茶が並ぶティータイムが始まる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳥栖・エンデ
友人のイチカ君(f14515)と
今年の水着は赤い上着で、ボクの去年白パーカーと並べたら
金魚みたいな色合いと思ったんだけど
よく見たら蓮華模様?とかで
お高い鑑賞魚のようだねぇ
此処のさかな達に仲間と思って貰えそうかも〜なんてね
さてさて空中を泳ぐさかな達とも遊んでもらおうか
幻想金魚が和風な感じで目の保養になるけども、
熱帯魚たちも沢山いるねぇ
小さなチェリーシュリンプは
ちょっとだけ美味しそうに見え……
おっと、危ない危ない…冗談だよぅと誤魔化して
珍しい海月探しで競走でもする?
海星がたくさん浮遊してる浅瀬辺りが狙い目かなぁ
海の月とか星とか言うけど
雲みたいにふわふわしてる気もする
また来年の夏休みも楽しみたいね
椚・一叶
友のトリス(f27131)と
確かに儂ら金魚みたいな色合い
あんな風にふわふわ泳げたら、きっと最高
ふふん、威厳に満ちた儂、高いの合う
噛まれない?とそっと指出し、魚が寄って来るの待ってみる
友好的でも、どう構ってやったらいいか
繊細な美しさ、壊しそうで怖いから眺めるだけにする
ふーん、と半眼でトリスを見る
儂もチェリーシュリンプ、美味そうと思ったのは内緒
珍しい海月は是非、お目にかかりたい
どちらが先に見付けられるか、いざ勝負
先ずは海星を探した方が良いか
…海星どこ、と駄目元で熱帯魚に訊いてみる
見付けたら共にのんびり海月を眺めよう
ごろごろしながら眺めるのも良い
今年も良い夏になりそう
来年もまた、楽しいもの見付けよう
●幸運の月探し
今年の水着は赤い上着。
去年にエンデが着ていた白のパーカーと並べるならば、この島に浮遊しているような鮮やかな魚達のような色合いのように思える。
「ほら、金魚みたいだよね」
「確かに儂ら金魚みたいな色合い」
一叶はエンデの語る言葉を聞き、その通りだと頷いた。
水着姿で歩く海の孤島は何だか不思議で楽しげだ。周囲を覆う薄青の結界は涼しげであり、その力で地上を泳ぐ魚達も愛らしい。
「あれ、よく見たら蓮華模様とかでお高い鑑賞魚のようだねぇ」
「ふふん、威厳に満ちた儂、高いの合う」
「此処のさかな達に仲間と思って貰えそうかも~なんてね」
「あんな風にふわふわ泳げたら、きっと最高」
二人は会話を交わしながら、島を巡る散策路めいた道を進んでいく。ふわふわと浮いて泳ぐ金魚は色とりどりで見ていて飽きない。
エンデと一叶はゆったりと歩き、島の様子を眺めていた。そうして、エンデは空中にそっと手を伸ばしてみる。
「さてさて、さかな達とも遊んでもらおうか」
そうすることで人懐こい幻想金魚が尾を揺らしながら近付いてきた。金魚はなんとも和風な装いで、エンデとしては目の保養になる。
指先で金魚と戯れるエンデの様子を見ていた一叶は、少し心配そうに問いかけた。
「噛まれない?」
「大丈夫」
「それなら――」
一叶は意を決し、指先を差し出してみる。魚が寄ってくるのを待っているとひらひらとした尾鰭が美しい蝶尾金魚がすり寄ってきた。
とても友好的だが、一叶はどう構ってやればいいのかが分からない。すぐに指先を引っ込めれば、蝶尾の金魚も静かに離れていった。きっと一叶の気持ちを察したのだろう。
あれ以上触れていたら、その繊細な美しさを壊してしまいそうだ。それゆえに眺めるだけに留めた一叶は、見るだけでも十分だと感じていた。
「熱帯魚たちも沢山いるねぇ」
「本当だ」
「あの小さなチェリーシュリンプは……ちょっとだけ美味しそうに見え……」
「ふーん」
「おっと、危ない危ない……冗談だよぅ」
エンデがそんなことを呟いたので、一叶は半眼で彼を見遣った。エンデはその雰囲気に気付いて慌てて誤魔化す。
しかし、一叶も実は同じことを考えていた。
(儂もチェリーシュリンプ、美味そうと思ったのは内緒)
一叶は胸中に思いを秘め、ばれなくて良かったと息をつく。そんなこんなでエンデ達は孤島で過ごす時間を満喫していった。
「次は珍しい海月探しで競走でもする?」
「珍しい海月は是非、お目にかかりたい。そうしようか」
二人はどちらが先に見つけられるかの勝負に入ることに決めた。いざ、と意気込んだ一叶は右の方向へ。エンデは反対側の左方向へ進んでいく。
「ええと、海星がたくさんいる浅瀬辺りが狙い目かなぁ」
エンデはきょろきょろと辺りを見回す。
ヒトデとクラゲ。
かれらは海の星や月と呼ばれているが、エンデにとっては少しイメージが違う。
「雲みたいにふわふわしてる気もするんだよね」
そんなことをふんわりと考えながら、エンデは海月探索に勤しんでいった。
一方、一叶はというと。
「先ずは海星を探した方が良いか」
エンデと同じ考えで周囲を巡っていた一叶だが、海星そのものを見つけられていないようだ。困ったように眉尻を下げた彼は肩を竦める。
「……海星どこ」
一叶は駄目元で熱帯魚に訊いてみる。すると、さかなはふわふわと違う方向に泳いでいった。一叶がその後についていくと、其処には――。
「見付けた」
ふわりと浮かぶ海の星と月が交わる光景を発見した一叶は、すぐにエンデを呼んだ。ということで勝負は一叶の勝ち。
後はのんびりと海月を眺めて過ごすだけでいい。
適当な場所に腰を下ろし、ごろごろしながら透き通った月を見つめる時間はとても穏やかだった。二人の間には快い気持ちが宿っている。
「今年も良い夏になりそう」
「また来年の夏休みも楽しみたいね」
「ああ。来年もまた、楽しいもの見付けよう」
一叶とエンデは視線を重ね、同じ思いを抱く。頷きあった彼らを見守り、その心を慈しむかのように――ふわり、ふわりと海月が揺れていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メゥ・ダイアー
海はね、いっぱいふしぎな生き物がいるよってきいたからメゥ探検しに来たの。
すごいね、すごいね!
カタチがおもしろいのも色がきれいなのもたくさんいるね!
メゥなんでも忘れちゃうみたいだから、日記をつけてみたらって言われたの。
だから、見つけたお魚も絵を描いておぼえようと思う!
あ、メゥのびゃくりんちゅう(白燐蟲)は食べない方がいいと思うな?
でも、お魚もメゥたちのことふしぎだなーって思ってるみたいだね。
メゥも忘れちゃったみたいだから、分からないことたくさんあるよ。
でも分からなくても……分からないから?
「はじめまして」ってして。いろんなものを見て。
おいしいものももらって。びっくりして。すごく楽しいよ!
●描いて刻む記憶
母なる海。命が生まれた始まりの場所。
海にはいっぱい生き物がいて、たくさんの不思議なことに満ちている。
そう聞いてから、ずっと海のことを思っていたメゥは今、魚達の楽園にいた。周囲にはふわふわと浮かんでいるさかな達がいる。
それから、島を覆うように広がっている薄青のヴェールめいた結界。
「すごいね、すごいね!」
両手を広げたメゥは近くを泳いでいく金魚達に目を向けた。ふんわりとした尾鰭を持つ赤白の金魚や、目の部分がまんまるで可愛い黒金魚。美しい流線型を思わせるシルエットの真っ赤な金魚まで、色々なさかなが見える。
「あっちの子はカタチがおもしろくて、こっちの子は色がきれい! いっぱいいっぱい、たくさんいるね!」
メゥは日記帳を取り出し、今しがた見てきた金魚を絵に描いていく。
なんでも忘れてしまう――もとい、魂人として幸福を不幸にして、失ってしまうメゥだからこそ、日記をつけるのが大切なこと。記憶を描いて、或いは書いてみたらどうかと教えてもらったときから、少女は記録を大事にしている。
さらさらと思うままに描く金魚達は色とりどり。日記に描いたさかなと、自分の周囲を泳いでいるさかなを見比べたメゥはこくりと頷いた。
そうして、暫しのんびりしていると、一匹の熱帯魚がメゥの白燐蟲に興味を示した。
「あ、メゥのびゃくりんちゅうは食べない方がいいと思うな?」
さかなが軽く口先でつつくような仕草をしたので、メゥは首を横に振る。どうやら元から食べるつもりではなかったらしく、熱帯魚もすぐに離れてくれた。
「お魚さん、メゥたちのことふしぎだなーって思ってるのかな」
メゥがさかなを不思議だと思うのと同じように、かれらもまた人間をはじめとした見たことのないものに興味津々のようだ。
きらきら光るレンボーフィッシュに指先を差し伸べてみると、じゃれつくように触れてくれた。くすぐったさを感じたメゥは片目をぱちりと瞬かせる。
「メゥもいろいろ忘れちゃったみたいだから、分からないことたくさんあるよ」
少女はそっと語っていく。
知っていたことが、知らないことになる。幸せだと感じていたかもしれないことも、みんなみんな遠い過去になっていく。
それでも――。
「分からなくても……分からないから? いつもぜんぶ、きらきらに見えるの」
だから、はじめましてがたくさんある。
知らないからこそいろんなものを見ていける。分からないから識るために探してみたいと思える。それに、おいしいものをもらったりして、びっくりして。
「すごく楽しいよ! お魚さんも、たのしい?」
メゥが問いかけると、その場で金魚達が円を描きながら游ぐ。
たのしいよ。君とあえたから。
そんな風に語ってくれていると感じたメゥは嬉しさを感じた。もしかすれば、いつかこの記憶も忘れてしまうかもしれないけれど。
日記に描いたさかな達の絵だけは、ずっと消えずに残っていくはず。
微笑むメゥの傍らには、たくさんの金魚や熱帯魚が楽しげにくるりと舞っていた。
大成功
🔵🔵🔵
誘名・櫻宵
🌸神櫻
◎
綺麗な島ね!
不思議、水の中にいるようなのに怖くない
快適だわ!空にも魚が泳いでて風流ね
カムイと手を繋いで散策しましょ
師匠達も楽しそうで私も嬉しくなる
過去も未来も関係なく私達は幸せだと
カムイ!なにか綺麗なのがいる…
こっちに来る
金魚?
かぁいいわ!
私、金魚は好きよ
愛される為に生まれた魚
角の桜を啄まれるのは少し擽ったく
けどカムイみたいな赫い金魚とリルみたいに白い金魚だったから許せる
尾鰭がひらり綺麗ね
けれど一番は私の人魚だわ
きっとそうだわ
イザナが?
じゃあ競争しましょ
私とカムイ
イザナと神斬
どちらが先に海月を見つけられるか
行くわよ、カムイ!
不思議な池に浜辺に駆けて
海月は何方に舞い降りてくれるのかしら
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
◎
ピスケスの庭というそうだ
此処なら溺れずにすむよ
水中に居るような涼しさであれ沈むことは無いよ
巫女の手をとり島を歩こう
イザナ達も後ろで同じように楽しんでいるようだ
ほら見てご覧
とりどりの金魚たちが来た
幻想金魚を指先で遊ばせて笑む
サヨの角の桜が気になるようだね
美しい金魚と巫女が戯れる姿は実に愛らしい
美しい尾鰭を揺らす金魚をつつく
そうだね
私達には月光ヴェールの尾鰭を揺らす、いっとう美しい人魚がいる
彼の美しさには金魚達も拗ねてしまうやも
え?海月?
サヨ、イザナが海月を探さないかと─其れはいい
どちらの組が先に海月を見つけられるか競争だ
島をあちこち歩けば観光になる
数多の魚達と戯れて
海月に辿り着いたのは─
●海の月を探して
此の美しき孤島を護るもの。
それは遥か過去に誰かによって巡らされたという薄青の結界。さかな達が自由に宙を泳ぐ楽園は穏やかな心地が満ちていた。
「綺麗な島ね!」
「ピスケスの庭というそうだ」
櫻宵とカムイが訪れたのは、透き通ったヴェール状の結界が巡る場所。まるで人魚がつくる泡沫のように揺らぐ空気は二人にとっても馴染み深い感覚だ。
水中に居るような涼しさであれ、此処で沈むことはない。
「とっても不思議。水の中にいるようなのに怖くない。それに快適だわ!」
「此処なら溺れずにすむね、サヨ」
「ええ! 空にも魚が泳いでいて風流ね」
咲う巫女の手を取り、カムイは優しく先導していく。どうやらイザナと神斬も少し後ろで同じように楽しんでいるらしく、微笑ましい気持ちが満ちた。
過去も未来も関係なく、私達は幸せだ。
そんな風に感じる今が何より愛おしいものに思える。そんな中、櫻宵がはたとして木々の影を見遣った。櫻宵の視線の先にはきらきらと光る何かがあった。
「カムイ! なにか綺麗なのがいる……こっちに来るわ」
「噫、あれは――ほら見てご覧」
「金魚? かぁいい子達だわ!」
色とりどりの金魚たちが此方に訪れたと語り、カムイが指先を伸ばす。神斬達の方には熱帯魚が来たらしく、彼らも楽しげだ。嬉しくなった櫻宵は目を細め、カムイに倣って手のひらを差し伸べてみた。
「可愛らしいね」
「私、金魚は好きよ。愛される為に生まれた魚だから、可愛がってあげなきゃ」
カムイと櫻宵は幻想金魚を指先で遊ばせてゆく。すると、金魚達は徐々が櫻宵の枝角に集まっていった。
「サヨの角の桜が気になるようだね」
「本当ね。やだ、擽ったいわ」
美しい金魚と巫女が戯れる姿は実に愛らしく、カムイの頬が自然に緩む。
角の桜を啄まれたことで櫻宵はちいさな声をあげ、我慢できずにくすりと笑った。カムイも美しい尾鰭を揺らしている蝶尾の金魚をつつき、戯れのひとときを楽しむ。
「もう、この子達ったら」
「大丈夫だったかい?」
「ふふ、平気よ。それにカムイみたいな赫い金魚と、リルみたいに白い金魚だったから許せるわ。かぁいさも満点だったもの」
「私に似ているから、か」
「ええ。どの子も尾鰭がひらりと揺れて綺麗ね。けれど一番は私の人魚だわ」
「そうだね。私達には月光ヴェールの尾鰭を揺らす、いっとう美しい人魚がいる。彼の美しさには金魚達も拗ねてしまうやも」
「きっとそうだわ」
カムイがそっと語ると、櫻宵もその通りだと首肯してみせた。
そして、二人はゆるりと散策を続けていく。そうしていると不意にイザナがカムイの袖を引いた。何事かと思ってよくよく聞いてみれば――。
「え? 海月?」
「カムイ、急に立ち止まってどうしたの?」
隣にカムイがついてきていないと気付いた櫻宵は、振り返って首を傾げた。
「サヨ、イザナが海月を探さないかといっているよ」
「イザナが?」
「じゃあ競争しましょ」
櫻宵とカムイ。イザナと神斬。
この組み合わせで、どちらが先に海月を見つけられるかの勝負が提案された。
「其れはいい。どちらの組が先に海月を見つけられるか競争だ」
カムイのやる気も充分。
櫻宵は彼の手を引き、おじいちゃん達には負けないと意気込んでいく。
「行くわよ、カムイ!」
「噫。何処までだって、何時だって一緒だよ、サヨ」
まずは不思議な池へ、次は浜辺へ。
共に駆けゆく二人の手が解かれることはない。すぐには見つからなくとも、あちこちを巡れば約束の旅の一幕にもなるだろう。
きっと、神斬とイザナも彼等らしい方法で島を巡っているはずだ。
海月は何方に舞い降りてくれるのか。
数多の魚達と戯れて、海月に辿り着いた此度の終着点。それが何処になったのかは、一緒に過ごした彼らだけが刻んでいくこと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティル・レーヴェ
【花結】
薄青に抱かれ空も海もと泳ぐ魚
人懐こい様は愛らしく
ね、ね、可愛いっ!
指を揺らして動かしてみれば
追うよに連なる小さな子達
ふぅわり鰭を翻し
無邪気にあなたの前へと誘って
ほんとう?
でもそれはあなたこそ
素敵な人魚の王子様が傍に居るから
泡ともならず共に泳げるの
そうでしょう?と
あなたの鰭を指遊び眸交わして
ええ、勿論
触れる指にあなたに応え
恋うそれが嬉しい、と
重なるあなたに溺れる儘
――ん?
零れる声に離れる熱に
視線を追えば小さく笑い
愛らしい子に見られても
妾は構わないけれど
でも、そうね
甘く恋う儘、我が儘に
伸ばす腕はあなたを求め
ふたりきり、ふたりだけ
あなたの欲が溢れ零れて
妾に溺れ浸れるところまで
――ね、攫って?
ライラック・エアルオウルズ
【花結】
空を揺蕩う魚たち
まるで陸も海のようと
踊る胸にあわせて
装う鰭がはためいて
燥ぐ君が可愛いと思いつ
指の誘う魚にころり笑い
海と見紛うのは今更かな
人魚が傍に居るのだもの
魚と戯れる君は
ほんとうの人魚姫みたい
そう、だけど
交わす眸が面映ゆいほど
人魚の君が綺麗で
見つめていたら
己も人魚であることも
息の仕方も忘れてしまいそう
だから、思い出させて?
呼吸を恋うよに、唇触れて
重ねるなら、より溺れそうと
薄ら明かす眸にとらう、金魚
あっ――と零れる気拙い声
陸では見物客が多すぎるね
海の底に隠れてしまおうか
求める腕と声で息をのみ
青の冷たさに、熱が滲む
攫うのは僕であるはずなのに
宛ら人魚に海と誘われるよう
ああ、――君が望むなら
●重ねて、絆げて
海に浮かぶ静かな孤島。
其処に広がるやさしい結界は世界をきれいな色彩に染めている。この島に巡る心地を譬えるならば――薄青のヴェールめいた波の中のよう。
青の心地に抱かれて、空と海の両方を泳ぐ金魚達は人懐こい。
ティルとライラックは愛らしく揺らめくさかなを見つめ、嬉しさを抱く。どの子もふたりを見付けた途端に寄ってきてくれた。
「ね、ね、可愛いっ!」
ティルが指を揺らして動かしてみれば、追うように連なる小さな子達。
ふぅわりと鰭を翻したティルはそのまま、無邪気な笑顔を向けてライラックの前へと誘っていった。空を揺蕩うさかな達を見ていれば、まるで陸も海のよう。
期待と楽しさに躍る胸にあわせて装う鰭がはためいていく。
燥ぐ君が可愛い。
そんなことを思いつつライラックは指で誘った魚にころりと笑い駆けた。この場所を海と見紛うのは今更かもしれない。なぜなら、人魚が傍に居るのだから。
「魚と戯れる君はほんとうの人魚姫みたいだ」
「ほんとう?」
ライラックの優しい声音を聴いたティルはくすぐったそうに咲う。でもそれはあなたこそだと答えたティルは手を伸ばした。
「素敵な人魚の王子様が傍に居るから、泡ともならず共に泳げるの」
彼の鰭を指で遊べば眸が交わされる。
解けてまざりあうような眼差しを重ねる中、ティルは淡く問いかけた。
「そうでしょう?」
「そう、だけど」
交わす眸が面映ゆいほどに人魚の君が綺麗だと感じた。ライラックがそのまま彼女を見つめていると、更なる微笑みが重なる。
己も人魚であることも、息の仕方も忘れてしまいそうな程に今が心地好い。
けれども忘却したままでもいけない気がして。
「だから、思い出させて?」
「ええ、勿論」
ライラックが問いかければ、ティルがそぅっと頷きを返す。そして――。
頬に触れる指、呼吸を恋うように重なる唇。
彼に応えるように、こうそれが嬉しいと示すティル。
重ねるなら、より溺れそう。薄ら明かす眸にとらうのは、美しき色彩を宿す金魚。
重なるあなたに溺れる儘に。
ふたりきりで、とライラックが思った瞬間。ふとしたことに気が付いた。
「あっ」
「――ん?」
零れる声に続いて離れる熱。気拙い声が零れ落ちた理由は、ライラックが巡らせた視線の先にあった。その視線を追ったティルは小さく笑う。
其処には先程から周囲を泳いでいる、色とりどりのさかな達がいたからだ。
「陸では見物客が多すぎるね」
「愛らしい子に見られても、妾は構わないけれど」
少し慌てた様子のライラックに対し、ティルはふわふわと微笑んだ。そうして、彼を見つめたティルは考えを巡らせる。
「でも、そうね」
「海の底に隠れてしまおうか」
同時にライラックも同じことを思っていたらしく、ふたりの視線が交差した。
求める腕と声。
甘く恋う儘、我が儘に――。伸ばす腕はあなたを、きみを求めて。心まで沈みゆく。
ふたりきり、ふたりだけ。
あなたの欲が溢れ零れて。どうか、溺れて浸れるところまで。
息を呑んだライラックは青の冷たさを感じた。熱が滲む様も、触れ合ったまま水底に向かう感覚も良い心地だ。
「――ね、攫って?」
ティルが語る言の葉は甘い。
攫うのは自分であるはずなのに、宛ら人魚に海と誘われるようで。
「ああ、君が望むなら」
それから、ふたりは青の世界に存分に浸った。色鮮やかで美しいひとときを楽しみ、ふたりだけの思い出に刻むために。
綻ぶ彩花は、誰よりも大切な最愛なる君へ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティーシャ・アノーヴン
七々澤・麒麟(f09772)さんに誘われて。
また水着ですか、今年は新しいものが用意出来ませんでしたので、去年からのものになりますけれども。
・・・なんだかちょっとサイズがきつくなっているような。
ともあれ、景色を楽しみましょう。
空に飛ぶ・・・泳ぐ?お魚は新鮮ですわね。
私も一緒に泳いでみたいです。ちょっと泳いでみませんか?
大鰐霊様は皆さん驚いてしまうでしょうから、残念ながらお留守番ですね。
あら、麒麟さんは休憩ですか?
ふふ、綺麗と言われて嬉しいですが、景色と私はまた別でしょう?
・・・え?
きゃ、ちょ、ちょっと麒麟さん!?
女、って、つまり・・・。
いえ、あの、ええっと、すぐには答えられない、です・・・ッ。
七々澤・麒麟
◎
【ティーシャ(f02332)】と参加
水着でバカンスデートと洒落込むぜ
「そういや今年は水着での外出ばっかだなオレら!」
けらけらと笑いつつ、空中の魚達を眺めながら散策
なんつーか幻想的だよな~…不思議結界は偉大だな
流石に鰐はいなさそうだけどな★
いずれ並んで座り込み、海月が漂う光景を穏やかに眺めて
「ホント綺麗な景色だなー…でもティーシャのがもっと綺麗だけどな!」
半分勢いで言ったものの、視線が合うと急に真顔になる
いや…
冗談じゃなくてマジで思ってっけどな
真面目な口調になれば、彼女を抱き寄せて頬に口付ける
マジで思ってっから…オレの女になれ、ティーシャ
他の恋人も沢山いっけど…ぜってぇ大事にするからよ
●幻想の島にて
今日は水着姿でバカンス。
不思議な海の孤島に訪れた麒麟とティーシャは、辺りの景色を眺めている。
「楽しいデートと洒落込むぜ」
「はい、今日はたくさん遊びましょう。
「そういや今年は水着での外出ばっかだなオレら!」
麒麟がけらけらと明るく笑うと、ティーシャもそういえばそうだと思い立った。
「確かにまた水着ですか」
ティーシャは今年、新しい水着が用意できなかった。それゆえに去年と同じのものになってしまったのだが――。
「……なんだかちょっとサイズがきつくなっているような」
「ん? どうしたんだ?」
「何でもありません。大丈夫……なはずです。ともあれ景色を楽しみましょう」
ティーシャが自分んの着ている水着を気にしていると麒麟が首を傾げる。少し恥ずかしくなったティーシャは首を振って誤魔化した。
そして、麒麟は空中に泳いでいる魚達に目を向けた。きらきらと陽の光を反射するレインボーフィッシュのような魚や、ちいさなビーシュリンプなどが自由に行き交っている光景は可愛らしい。魚を眺めながら散策する二人の雰囲気はいい感じだ。
「なんつーか幻想的だよな~……」
「景色も綺麗で素敵ですね」
デートにぴったりな光景を二人で歩んでいけば、人懐っこい金魚達が傍を擦り抜けていった。こういったことが普通に見られるのは、この島に張り巡らされている薄青のヴェールのような結界のおかげらしい。
「不思議結界は偉大だな」
「空に飛ぶ……泳ぐ? お魚は新鮮ですわね」
「流石に鰐はいなさそうだけどな」
「私の大鰐霊様は皆さん驚いてしまうでしょうから、残念ながらお留守番ですね」
麒麟とティーシャはそれぞれの思いを言葉にしながら、楽しげに笑いあう。そんな中、一匹の魚がすいすいと先を泳いでいった。
その魚が水中に飛び込んでいく姿を見たティーシャは、其方を指差す。
「私も一緒に泳いでみたいです。ちょっと泳いでみませんか?」
「いいな、疲れてもその辺りで休憩ができそうだし」
「それでは行きましょう」
彼女の提案に麒麟は快く頷き、透き通った水場に踏み出していった。そうして暫し、水中で魚達と揺蕩い、戯れる時間が流れた。
それから少し後、麒麟は水場の傍に腰を下ろす。
「あら、麒麟さんは休憩ですか?」
そうだと答えた彼はティーシャに頭上を示してみせた。いつのまにかふわふわと海月が漂ってきていたらしく、二人は目を細める。
「ホント綺麗な景色だなー……でもティーシャのがもっと綺麗だけどな!」
「ふふ、綺麗と言われて嬉しいですが、景色と私はまた別でしょう?」
ティーシャは冗談だと思っておかしそうに笑む。
すると、海月が漂う光景を穏やかに眺めていた麒麟が不意に真面目な顔になった。半分は勢いで言ったものの、視線が重なったことでそうならざるをえなかったようだ。
「いや……冗談じゃなくてマジで思ってっけどな」
「……え?」
ティーシャが驚いていると、麒麟が顔を近付けてきた。
反射的に目を瞑った彼女を抱き寄せた麒麟はその頬にそっと口付ける。
「きゃ、ちょ、ちょっと麒麟さん!?」
驚くティーシャが慌てていると、麒麟は真っ直ぐに告げていく。瞼をあけたティーシャは彼の顔がすぐ近くにあることで赤面してしまう。
「マジで思ってっから……オレの女になれ、ティーシャ」
「女、って、つまり……」
次の言葉が告げられた瞬間、ティーシャの頭が真っ白になった。予想していなかったことばかりで、周囲の音もよく聞こえなくなっている。確かにざわめく木々の音や清らかな水の音がしているというのに。
「――けど……ぜってぇ大事にするからよ」
麒麟も何か言っているらしいのだが、ティーシャの頭には殆ど届いていない。
ただ、高鳴る鼓動の音だけが彼女の内に響いていた。
しかし、何とか声を振り絞ったティーシャは麒麟に向けて首を振る。嬉しい気持ちがないといえば嘘になるが驚きの方が大きい。それに心の準備も、伝え返せる言葉も今は持ち合わせておらず――。
「いえ、あの、ええっと、すぐには答えられない、です……ッ」
「……そっか」
ティーシャの懸命な返事を聞き、麒麟はそっと頷いた。
これから二人の関係がどうなっていくのかは、今はまだ未知のまま。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木常野・都月
【狐兎】◎
※今年の水着
うわぁ!魚がいっぱい!
人懐っこいんだな。
ふふふ…くすぐったい。
お前達、可愛いなぁ。
仲良くされると食べる気もなくなるなぁ。
こう見てると、色んな毛色の魚がいるんですね。
先輩、今年の水着、お嫁さんですか?
確か、人が番になる儀式の服ですよね?
先輩が結婚か…凄い!
おめでとうございます!
俺ですか?
沢山水泳出来るようになりました。
もう4回目の夏ですからね!
クロールと、蛙の泳ぎも覚えました!
先輩の人魚姿、やっぱり綺麗で可愛いです。
絵本の人魚姫って感じだよなぁ。
人魚姫のお嫁さんですね!
俺も、水中は風の精霊様に空気の補助を、水の精霊様には泳ぎの補助をして貰おう。
これでどちらも問題ないはずだ。
栗花落・澪
【狐兎】◎
※今年の水着着用
お魚さん達と泳ぐのって気持ちいいよね
しかも空飛ぶ魚なんて幻想的!
ふふ、ほんとに食べるの好きだね
ふぇっ、あ、うん…そう、花嫁…
つっつが…まぁ間違ってはいない…か
本番はもうちょっと先だけど…ありがとね
その時にはちゃんと、報告するから
木常野さんは…そういえばどのくらい泳げるようになった?
折角だし一緒にお魚さん達と遊んでみようよ
水中に潜る時は【指定UC】を使い人魚として
宙へは翼を使い魚達と泳いだりじゃれ合ったり
指先で気を引いてからくるりと優雅に回って踊って
木常野さんの前で人魚姿になるのは久しぶりかな
空中でも冷たく感じるのは不思議だよね
あ、あんまり褒められると照れちゃうけど…!
●結婚水着は嫋やかに
此処は不思議な不思議な海の孤島。
淡水や海水の中でしか生きられない魚達が陸地を泳ぎ、自由に宙を飛び回ることが出来る魔法が掛かっている島だ。
「うわぁ! 魚がいっぱい!」
人懐っこい幻想金魚達に触れた都月は楽しげに双眸を緩めた。すいすいと泳いできた魚達は澪の方にも近付いてきており、無邪気に尾鰭を揺らしている。
「お魚さん達と泳ぐのって気持ちいいよね」
澪は都月の方に視線を向け、金魚と戯れる様子を優しく見守っていた。
「ふふふ……くすぐったい。お前達、可愛いなぁ」
「しかも空飛ぶ魚なんて幻想的!」
都月が伸ばした指先を赤い金魚達がつんつんと突いている。澪の傍にもふんわりとした円を描くように泳ぐ出目金がいる。
「こうやって仲良くされると食べる気もなくなるなぁ」
「ふふ、ほんとに食べるの好きだね」
金魚の他に熱帯魚のような子達を見つけ、都月は楽しげに笑う。くすくすと笑った澪は都月らしさを感じながら、都月と一緒に辺りの魚達と遊んでいく。
「見てると、色んな種類や色の魚がいるんですね。あっちは赤と白、こっちの真っ黒なのは出目金の子?」
「どの子も可愛いよね」
都月と澪はそれぞれに形や色が違う金魚を眺めていった。幻想的な光景の最中で遊べることは嬉しく、二人の笑みも深まっていく。
「そういえば先輩、気になっていたんですが……」
「どうしたの?」
そんな中、都月がふと澪に興味交じりの言葉をかけてきた。二人とも水着で訪れているので眼差しは自然と今日の装いに向けられている。
「今年の水着、お嫁さんですか?」
「ふぇっ、あ、うん……そう、花嫁……」
突然に水着のコンセプトに注目されたことで澪は慌ててしまった。にこにこ笑っている都月は合っていてよかったと感じながら、更に問いかける。
「確か、人が番になる儀式の服ですよね?」
「つっつが……」
「あれ、違ってました?」
彼の言葉に驚いた澪だったが、純粋な気持ちで聞いてきていることもわかった。澪はふるふると首を横に振ってから、そうだよ、と頷く。
「まぁ間違ってはいない……か」
「先輩が結婚か……凄い! すごく綺麗な水着だと思ってたんです!」
都月が真っ直ぐな思いを向けてくれるので、澪にも笑顔が生まれていく。こうやって素直に告げてくれる彼の言葉が心地よく、澪も素直に答えたくなった。
「本番はもうちょっと先だけど……ありがとね」
「おめでとうございます!」
「うん……その時にはちゃんと、報告するから」
照れながらも微笑む澪の様子はとても幸せそうで、都月も満面の笑みを浮かべた。そして、会話は別の流れになっていく。
「木常野さんは……そういえばどのくらい泳げるようになった?」
「俺ですか? たくさん水泳出来るようになりました」
「へー、すごいね!」
「もう四回目の夏ですからね! クロールと、蛙の泳ぎも覚えました!」
澪が問うと、都月は元気よく答える。じゃあ、と言葉にした澪は提案を投げ掛けた。彼が指差したのは水中だ。
「折角だし一緒にお魚さん達と遊んでみようよ」
――マジカルつゆりん☆アクアフォーム!
そして、澪はユーベルコードを使って人魚に変身した。その場でくるりと回った澪は翼を使って魚達と泳ぎ、じゃれあいながら水中を目指す。
その様子を見ている都月も楽しい気持ちになっていった。
「先輩の人魚姿、やっぱり綺麗で可愛いです」
「木常野さんの前で人魚姿になるのは久しぶりかな」
「絵本の人魚姫って感じだよなぁ。人魚姫のお嫁さんですね!」
「あ、あんまり褒められると照れちゃうけど……!」
澪は指先で気を引いてから、水中に入り優雅に回って踊ってみせる。都月も水中で風の精霊に空気を送って貰い、水の精霊にも泳ぎの補助を願った。
「よし、これでどちらも問題ないはずだ。俺もいきます!」
二人は透き通った水の中で遊びはじめる。その周囲に泳いでいる魚達も楽しげで、心地よさがめいっぱいに巡っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
城野・いばら
◎
皓湛(f28072)と
去年の水着で
いざ、お宝さん探しよ
わぁ、お魚さんがお空を泳いでいるわ
不思議で…ええ、素敵な力ね
皓湛の水着もふわひら尾鰭みたいに素敵だから
こうして、みんなで砂浜を歩いたら
ふふっ、仲良しさん
結界のおかげで砂浜も心地良いね
皓湛の求めるお宝さんはどんなコかしら?
いばらは、一目惹いたコを
もしかしたら波さんが運んできているかも
引いた波の下も探そうと近寄って
見つけたのは、可愛い桃色の巻貝さん
みてみて皓じゃ…んひゃ!
帰った波にぶつかって、眼をパチパチ
一緒に流れ着いたお星さんには思わず咲って
ご機嫌よう海星さん
まあ、これが波乗りなのね…!
本来は海中でしか知れない
不思議な泳ぎにわくわくしちゃう
汪・皓湛
◎
いばら殿(f20406)と
去年の水着で宝探し
島の空気を清め、空も泳ぐ
此方の金魚殿は素敵な才をお持ちですね
…おや
これを羽織ってきて正解でした
じゃれる彼らに頬緩め
砂浜の素晴らしい触り心地には宝への期待が膨らむ
私は波で磨かれた石か硝子片…シーグラスを見付けたいのです
選ぶ基準はいばら殿と同じ
第一印象を大切に
波打ち際の方が見付けやすいでしょうか?
同じ様に近付き
見付けた白藍の硝子片を如何です?と金魚殿に見せ
楽しげに呼ぶ声へ私も笑顔で――わ、
波に驚き硝子片を両手でぎゅっ
いばら殿、大丈…おや、海星殿
波に乗り、いばら殿へ会いに来てくれたのかもしれませんね
咲って眺む、泳ぐ姿
此処でしか見られぬ様もまた、宝のよう
●海の贈り物
涼しげな色をした薄青のヴェールが島を包み込んでいる。
結界の不思議な力を感じながら、いばらと皓湛は心地好さを抱いた。島の空気を清めて、空を泳ぐさかな達からはとても優しい雰囲気がする。
「わぁ、お魚さんがお空を泳いでいるわ」
「此方の金魚殿は素敵な才をお持ちですね」
「不思議で……ええ、素敵な力ね」
いばらが微笑み、皓湛も穏やかに双眸を細めた。暫しのんびりと島を歩いていた最中、いばらはふと皓湛が身に纏っている装いに目を向ける。
「皓湛の水着もふわひら尾鰭みたいに素敵だから、こうして、みんなで砂浜を歩いたら……ふふっ、仲良しさんみたい」
いばら達の傍には、先程から後ろをついてきている幻想金魚達もいた。振り返った皓湛は揺らめく羽織りにじゃれつく彼らに頬を緩める。
「……おや、これを羽織ってきて正解でした」
皓湛達の間に微笑みが咲き、幻想金魚達もふわふわと揺れていた。共に歩く砂浜の触り心地は素晴らしく、これからへの期待が膨らむ。
浜辺の途中で立ち止まったいばらは皓湛の方に笑い掛けた。
「この辺りがよさそうね。皓湛の求めるお宝さんはどんなコかしら?」
「はい、私は波で磨かれた石か硝子片を見付けたいのです」
此度の皓湛の目的はシーグラス探し。人工物の硝子に自然の力が加わって作り出されたものに興味があった。
いばらも意気込み、周囲の砂浜を大きく見渡す。
結界のおかげで砂浜に満ちる空気もひんやりとしていて涼しかった。
「いざ、お宝さん探しよ」
さらさらとした砂の感覚を楽しみながら、いばらはそっと屈み込んだ。見ればあちこちに貝殻があり、その中にきらりと光るものもあるようだ。
いばらはその中から一番、目惹いたものに手を伸ばしてみる。半透明になった硝子の欠片は陽射しを受けて鈍く光った。
やはりこういったものは第一印象が大切。
皓湛も目に留まったものを拾いあげ、いばらが見つけたものとの色の違いを楽しむ。そうしているといばらが皓湛に少し離れた場所を示した。
「こっちもいいけれど、あっちは?」
「波打ち際の方が見付けやすいでしょうか?」
しかしそれだけではなく、もしかしたら波が運んできているかもしれないと考えたいばら達は、引いた波の下にも探索範囲を広げていった。
皓湛も波が揺らめく元へ進み、手を伸ばしてみる。其処で見つけた白藍の硝子片を掌に乗せれば、幻想金魚が興味津々に覗き込んできた。
「如何です?」
金魚に問いかければ、ひらひらと尾鰭を揺らして喜んでくれたようだ。同じ頃、波間にそっと近寄ったいばらが見つけたのは――可愛い桃色の巻貝。
「みてみて皓じゃ……んひゃ!」
「――わ、」
いばらが楽しげに皓湛を呼ぼうとして、彼も笑顔で振り返ろうとした瞬間。二人の言葉は途切れ、代わりに大きな波が一気に引いていった。
波にぶつかったいばらは眼をパチパチと瞬かせ、驚いた皓湛は硝子片を両手でぎゅっと握りしめる。すると、其処には可愛らしい子が新たに登場していた。
「いばら殿、大丈……おや、海星殿」
「ご機嫌よう海星さん」
微笑ましい気持ちになった二人は波で運ばれてきた海星に挨拶をする。流れ着いたお星さんに思わず咲ったいばらに向け、皓湛も口許をほころばせた。
「あの波に乗り、いばら殿へ会いに来てくれたのかもしれませんね」
「まあ、これが波乗りなのね……!」
瞳を輝かせたいばらはふわふわと浮遊しはじめた海星に指先を伸ばした。本来は海中でしか知れない不思議な泳ぎは愛らしく、わくわくした気持ちが巡る。
それから暫し、二人の傍には海星が游いでいた。
シーグラスに貝殻、金魚ときどき海星。咲って眺む、泳ぐ姿もまた快いものだ。
此処でしか見られぬ様もまた、宝のようで――。
皓湛といばらは互いに視線を交わし、涼やかな夏のひとときを楽しんでゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朧・ユェー
【月光】◎
おや、本当ですねぇ
お空が海の様で、海の中に居るみたいですね
不思議な感覚ですね
泉のお魚ですか?
えぇ、一緒に見つけましょう
ルーシーちゃん、泳ぎお上手になりましたよね
ではまた今度は泳げる海に行きましょうか
でも波があって攫われてはいけないので僕の傍でね
金魚が沢山居ますね
屋台以外の金魚をみるのは初めてですねぇ
ポイじゃなくても手に乗ってくれそうです
また金魚掬いしましょうね
おや?僕に?
ふふっ、では隣で泳ぐ黄色の小さなお魚はルーシーちゃんですね
仲良しですね
海月は透明でふよふよ泳いで可愛らしいですよね
会った事ないのですか?
海星さん、よく見つけられましたね
僕は海月を見つけました
まん丸海月
星の近くに月
僕達みたいですねぇ
えぇ、永遠に探せますね
ルーシー・ブルーベル
【月光】◎
ゆぇパパ!お空にお魚が泳いでる!
ここが海の中か陸の上なのか、分からなくなってしまいそう
ね、フシギな感じ!
海の中も良いけれど
折角だから泉の中のお魚さんを見てみない?パパ
海以外で海の生き物を見つけるの!
最初は泳げなくて水が怖かったけれど、少しだけ慣れてきた
えへへー
海にたくさんパパがお出かけしてくれたおかげね
はあい、ちゃんと傍にいるわ
海の他にも色々…というのはワガママかしら
泉はひんやり、とってもいい気持ちね
赤い金魚さんがココもたくさん居る!
ふふー、パパは金魚すくいの名人だったわね
本当?わ、本当に手に乗ってきてくれた
ほら、見てパパ
この白黒のお魚、目の周りが金色よ
少しパパに似てるかも
本当、小さな黄色いお魚さん!
くっついていて仲良しね
海月って海のお月さまって書くのよね?
会ってみたいな
ちゃんとは見たことないかも
あっ、海星さんみっけ!
黄色い星がぷかり夜空みたい
なら海月さんはその近くにいるハズ…
パパからはどう?
どれ?わ、まん丸
ええ、ソックリ!
…ふふ!
何処にいても
二人に因んだものをつい探しちゃうね
●仲良し親子と星と月
此処は魚達の楽園。
ふわふわと宙を進んでいく様々な魚は、実に楽しそうな雰囲気だ。
「ゆぇパパ! お空にお魚が泳いでる!」
瞳を輝かせたルーシーが指差した方向にユェーも視線を向ける。其処には色とりどりの金魚達が浮遊しており、とても可愛らしい光景が広がっていた。
「おや、本当ですねぇ」
「ここが海の中か陸の上なのか、分からなくなってしまいそうだけど……」
にこやかに答えたユェーの隣でルーシーが燥ぎはじめる。此処は陸地だけれど、まるで海の中に潜っているかのよう。楽しげな少女を優しく見つめたユェーもまた、同じような心地を抱いていた。
「お空が海のようで、海の中に居るみたいですね」
「ね、フシギな感じ!」
「えぇ、不思議な感覚です」
二人は頷きを交わし、島の散策を行っていく。
海辺に森、泉。
真っ青な空の下で過ごす時間はきっと何処であっても楽しい。そんな中でルーシーが行きたいと語ったのは――。
「海の中も良いけれど、折角だから泉の中のお魚さんを見てみない? パパ」
「泉のお魚ですか?」
「海以外で海の生き物を見つけるの!」
「えぇ、一緒に見つけましょう」
ルーシーの呼び掛けに快く応えたユェーは双眸を細めた。泉の浅瀬に素足を浸したルーシーはぱしゃぱしゃと水を蹴ってみる。
冷たくて心地良い感覚のままに踏み出せば、とぷん、と小さな音が響いた。
ルーシーも最初は泳げなくて水が怖かった。けれども、少しだけ慣れてきたので怖がるようなことはない。
「ルーシーちゃん、泳ぎがお上手になりましたよね」
「えへへー」
ユェーに褒められたルーシーは嬉しそうに頬を染めた。そのままちょっとだけ泳いでみながら、少女はユェーの方に振り返る。
「海にたくさんパパがお出かけしてくれたおかげね」
「では、また今度も泳げる海に行きましょうか。でも……波があって攫われてはいけないので僕の傍でね」
ルーシーにいつかのお出掛けを約束したユェー。
だが、彼は少女の安全を一番に思っている。その心遣いと優しさを感じ取ったルーシーは更に嬉しい気持ちを抱いた。
「はあい、ちゃんと傍にいるわ」
真っ直ぐに返事をしたルーシーは心があたたかくなっていくことを感じている。
海だけではなく、他の場所にも色々。もっとたくさん出掛けたい。そう思うのは我儘かもしれないが、ユェーならば叶えてくれる。
ルーシーは少し先の未来に思いを馳せながら、水の心地を楽しんだ。
「泉はひんやり、とってもいい気持ちね」
「おや、金魚がたくさん居ますね」
そんなとき、二人の周囲に金魚達が集まってきた。赤い金魚や白と赤が混じった模様の金魚、黒い出目金など種類も様々だ。
「見て、パパ。赤い金魚さんがココもたくさん居る!」
「屋台以外の金魚をみるのは初めてですねぇ。屋台のときのようなポイじゃなくても手に乗ってくれそうです」
わくわくした様子のルーシーの隣で、ユェーは以前のことを思い返す。
「ふふー、パパは金魚すくいの名人だったわね」
「また金魚掬いしましょうね」
ルーシー達が思い出話に花を咲かせていると、一匹の金魚がすぐ近くまで寄ってきた。手を差し伸べたユェーの指先に金魚がすり寄ってくる。
「おや? 僕に?」
「わ、本当に手に乗ってきてくれた」
ルーシーの方にも別の金魚が近付いてきた。はたとしたルーシーも指先を近付け、ふわりと微笑んだ。
「ほら、パパ。この白黒のお魚、目の周りが金色よ」
少しパパに似てるかも、とルーシーが笑ったのでユェーも嬉しくなる。そして、彼は自分の傍にいる金魚にも視線を向けた。
「ふふっ、では隣で泳ぐ黄色の小さなお魚はルーシーちゃんですね」
「本当、小さな黄色いお魚さん! くっついていて仲良しね」
「仲良しですね」
ユェーとルーシーは快い気持ちを抱き、金魚と戯れる時間を過ごした。そうして、次はこの島に訪れるという別の生き物探しが始まっていく。
「クラゲって海のお月さまって書くのよね?」
「えぇ、そうです。海月は透明でふよふよ泳いで可愛らしいですよね」
「会ってみたいな……」
未だ見ぬ海月に思いを馳せるルーシーは辺りをきょろきょろと見回していた。少しきょとんとしたユェーは、まだ彼女が本物を見たことがないのだと気付く。
「会った事ないのですか?」
「ちゃんとは見たことないかも……あっ、海星さんみっけ!」
すると、ルーシーがふわりと浮遊している海星を発見した。噂によると海星と海月は近い場所にいる可能性が高いという。
「海星さん、よく見つけられましたね」
「黄色い星がぷかぷかしていて、夜空みたい……。海月さんも探しましょう、パパ」
きっと海月は星の近くにいるはず。
さらなる探索を開始したルーシーの後に続き、ユェーも進んでいく。おや、と声がしたことでルーシーが振り返ると、彼の隣に半透明な何かがあった。
「パパはどう……え!?」
「僕は海月を見つけました。まん丸な海月ですよ」
「わ、まん丸」
これが海月なのね、と感心したルーシーは興味津々だ。じっと海月を見つめる少女と自分を見比べたユェーはふとした思いを言葉にした。
「星の近くに月ですか。なんだか僕達みたいですねぇ」
「ええ、ソックリ!」
ルーシーも頷きながら答え、胸の内に浮かんだ思いをそっと噛み締める。其処に自然と零れたのは楽しげな笑み。
「……ふふ! 何処にいても、二人に因んだものをつい探しちゃうね」
「えぇ、永遠に探せますね」
二人はとてもしあわせな気持ちを感じながら、いつものように笑いあう。
ふわふわ、ぷかぷか。優雅に浮かんで游ぐ星と月。
自分達のように仲がいい子達を眺めながら、二人は島でのひとときを楽しんでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーファス・グレンヴィル
◎マコ(f13813)と
へえ、すげえな!
本当に魚が空泳いでるじゃねえか
口開いてる黒竜に、喰うなよ、と注意ひとつ
冗談だよ、とでも言うように
肩に乗ってる悪友の尻尾がゆらり揺れた
水族館の時よりも魚との距離が近くて
じゃれるような彼らの、
楽しむ様子を眺めていれば
途端、赤くなったマコを見て
思わず噴き出して笑う
お前、ホント可愛いヤツだよな
やがてやってきた小さな魚
迷子の面倒見るさまには
やっぱり世話焼きだよな、と
妙に感心しながらも
(正直、頬にすり寄ったのには妬いたけど)
そこに好感を覚えてるオレも居る
──まあ、惚れた弱みっつーことで
二人で、街を練り歩きながら
時に小さな魚と、じゃれあって
家族と合流したソイツを見送った
その背が見えなくなった頃
聞こえてきた言葉に、ぴくり眉動き
あー? そんな落ち込むなよ
家族と離れてする大冒険
偶には良いじゃねえか
アイツも楽しんでたかもしれねえぞ
っつか、折角、遊びに来てるんだから
ぐいっと強引に手を握って歩き出す
オレと楽しむこと忘れんなよ、バーカ
明日知・理
ルーファス(f06629)と
◎
_
「綺麗な魚だな…」
肩に乗っている黒猫のガウェインを落とさないよう気を配りつつ
近寄ってきた魚に瞳細め
時に見たことのない魚たちを見ればはしゃいでしまい、隣のルーファスにハッとして気恥ずかしくなる
もっと確りしねえとと赤くなりつつも「可愛い」なんて言われてしまえばまた更に赤くなってしまって
そんな中不意に寄ってきたのは小さな魚
くるくると周りを泳ぎ何かを訴えている様
「…遊びたい…わけではなさそうだな」
どうしたと声を掛けるも当然ながら言葉は返ってこない
悩みつつふと
「迷子か?」
すると肯定する様に頬にすり寄ってくる
そして共に島を練り歩き
やがて家族と会えたらしい子魚に安堵しつつ
「俺にも彼らの言葉がわかったら、もっと早く見つけられたよな…」
自分の力不足を内心少し責めて
けれど彼の言葉に瞳を瞬く
そういう考え方もあるのかと視界が拓けたようで
心が軽くなる
「…ああ」
ふふと晴れやかに笑って手を握り返し
貴方と二人、歩き出す
●二人で行く道
色鮮やかな金魚や熱帯魚が空中を泳いでいる。
薄青のヴェールめいた結界に包まれた、海の孤島は魚の楽園だ。ルーファスと理は周囲の景色を見渡し、それぞれに関心を抱く。
「へえ、すげえな!」
「綺麗な魚だな……」
「本当に魚が空泳いでるじゃねえか」
そんな二人の肩には黒竜と黒猫がいた。口を開けているナイトに、喰うなよ、と注意をしたルーファス。すると、冗談だよ、とでも言うように黒竜の尻尾がゆらりと揺れた。
理もガウェインを落とさないよう気を配りながら、魚の方に目を向ける。
人懐っこい魚達には警戒心などない。
理は近寄ってきた魚に瞳を細め、指先を差し出してみた。するとふんわりとした尾びれを揺らした魚が何匹か、二人と二匹の周囲を泳ぎはじめる。
「おー、綺麗なもんだな」
「すごいな……!」
ルーファスは薄く笑み、楽しげな視線を向けた。水族館で魚達を眺めるときよりも近い距離であることが新鮮で面白い。ナイトも興味津々らしく、鼻先まで寄ってきた魚をずっと見つめている。
理はというと、魚達に囲まれていた。
やめろ、とくすぐったそうにしている理は彼なりにはしゃいでいる。じゃれるような彼らの楽しむ様子を眺めたルーファスも快い気持ちを覚えていた。
そのとき、理がハッとする。
「……いや、その――」
「お前、ホント可愛いヤツだよな」
途端に赤くなった理を見て、ルーファスは思わず噴き出して笑った。気恥ずかしさでいっぱいの理は、真正面から可愛いと言われて更に赤くなる。
それもまた愛らしいと感じたルーファスは笑いを堪えられなくなっていた。
そうして、二人は暫し熱帯魚達と戯れていく。
彼らが随分と遊んでくれたので、魚達は満足して帰っていった。自由な気質もまた良いところだと感じていると、不意に見たことのない小魚が泳いできた。
「ん?」
「どうした」
たった一匹で周囲をふよふよと漂っている小魚に対して、ルーファスと理は不思議そうな顔をした。これまで見てきたどの魚も数匹で群れを成していたのだが、この魚はひとりきりで不安そうだ。
くるくると周りを泳いで何かを訴えているようでもある。
「……遊びたい……わけではなさそうだな」
「そうみたいだな。ナイト、どう思う?」
理が首を傾げる中、ルーファスが黒竜に問いかけてみる。しかしナイトもわからないといった様子だった。
どうした、と先程に声を掛けるも相手は魚。人懐っこい部分は他の子とは変わらないようだが、当然ながら言葉などは返ってこない。
理は悩み、ふと顔を上げた。
「迷子か?」
すると小魚はちいさな尾びれをふりふりと振る。どうやらそのようだと感じたルーファスが頷くと、小魚は理の頬にすり寄ってきた。おそらく肯定を示したらしい。
迷子の面倒を見る理の様子を見遣り、ルーファスは感心する。
「やっぱり世話焼きだよな。けど――」
正直なことを言えば、彼の頬にすり寄った魚に妬いてしまった。しかし、こうしてどんな相手でも別け隔てなく面倒を見る理に好感を覚えている自分もいた。
(――まあ、惚れた弱みっつーことで)
ルーファスは思いを胸に秘めながら、小魚と共に歩いて行く理の背を追っていく。
そして、二人と二匹、更に一匹が加わった一行は島を進む。
「コイツも人懐っこいな」
ルーファスは自分の方にも寄ってきた小魚に指先で触れ、楽しく戯れていた。理もその様子を優しく見守り、ルーファスの明るい表情をじっと見つめている。
それから暫し後。
「あれは……模様が同じだから、家族か?」
「間違いないみたいだな」
小魚の仲間は暫し進んだ先にあった泉の傍にいた。小魚は一目散に家族のもとに泳いでいき、上手く合流できたようだ。
理達が家族と会えたらしい子魚に安堵していると、群れがふわふわと泳いできた。
どうやらお礼を言っているらしく、魚達は二人の周囲を何度も回った後に仲良く一緒に去っていく。
そうして、その背が見えなくなった頃。
「俺にも彼らの言葉がわかったら、もっと早く見つけられたよな……」
理は自分の力不足を責めるような言葉を落とした。その声を聞きつけたルーファスの眉がぴくりと動く。
「あー? そんな落ち込むなよ」
「でも……」
「家族と離れてする大冒険、偶には良いじゃねえか」
「そうだったら、いいんだが――」
ルーファスは落ち込みそうな理にフォローを入れ、思い詰めるなと告げた。しかし理は首を縦に振ろうとはしなかった。
仕方のないヤツ、と少しだけ肩を竦めたルーファスは更に語る。
「アイツも楽しんでたかもしれねえぞ」
そのまま理の肩をぽんと叩いたルーファスは明るく笑ってみせた。小魚は最初こそ不安そうだったが、道中ではとても楽しそうにしていた。それが証拠だ。
「っつか、折角、遊びに来てるんだから」
「……ああ」
ルーファスの言葉を聞いた理は頷いた。瞳を瞬いて、そういう考え方もあるのかと考えたら視界が拓けたように思えた。
心が軽くなったと告げようとしたとき、ルーファスが理の手を引く。ぐいっと強引に。強く手を握った彼は理を引っ張って歩き出した。
「オレと楽しむこと忘れんなよ、バーカ」
「そうだな、それが一番大事だ」
「だろ?」
理は晴れやかに笑い、ルーファスの手を握り返す。島で過ごす時間はまだたっぷりと残っている。それゆえに、これからは二人で。
貴方と二人、歩き出す道。
その先にはきっと、たくさんの楽しいことが待っている。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵