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#九龍城砦
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――租界、九龍城砦。
寂れた高層建築群が幾つも連なり、城塞の如き様相を形成しているこの区画は、文明の発展に反して陰鬱な空気を孕んでいる。侵略者達の散蒔く暴力と欲望の種が根を張り、頽廃の一途を辿るばかり。
一人の男が、店の引き戸を静かに開ける。燻る煙の薫りが、街へと解き放たれる。
流れ者の如く黒の外套を纏い、その容貌と身体を隠してはいたが、その所作からは品の良さが覗える。着いたばかりなのだろう、九龍に染まり切ってはいない、未だ真っ新な気の持ち主だった。
この城塞では、軽犯罪など日常茶飯事だ。
高貴な人、そうでなくともこの地の闇を知らずに訪れた世間知らずの若者だろう。そう判断した年若き盗人の一人が、退店を装って男に近付く。
声を掛けようとした――刹那。
その左胸に、刃が深々と、突き立てられた。
悲鳴。圧倒的な強者の気が、外套の男から放たれた。
仇討ちにと群がった無謀な若者たちは、突如として何処かより現れた、見慣れぬ屍兵の軍勢に次々と屠られた。
逃げ惑う住民たち。蜘蛛の子を散らすように。男は、追わない。――『まだ』。
「韓進殿に従わぬ同胞のみを仕留めるのですよ。尤も、そうでなくとも道を阻むのであれば……致し方ありませんが」
すらりと伸びて剥き出しになった、男にしては細く滑らかな掌の上――赫々と、炎が燃えた。
●
「……私と、彼のオブリビオンとの間に、因縁はありません。しかし、何故か他人事ではないような……何とも言えない感情が、去来するのを感じます」
陸・慧(今はまだ燃え上がらぬ陸家の炎・f37779)は何やら、思索に耽るように呟いている。
しかし集まった猟兵達の気配を感じ取ると、即座に正面へと向き直り、淡々と予見を語り始めた。
「『九龍の霊気』を得て、より強大な力を我が物にせんと目論むオブリビオンが現れました。適切な手順を踏み、然る後に討伐をお願いいたします」
討つべき敵の名は、極焔神君・陸遜。
この封神武侠界に限らず、地球と言う星がベースになっている世界でもそこそこ名の知れた武将であるから、聞いたことのある者もいるだろう。
兵法軍略に優れるが、特に火の扱いに長けるイメージが根強いのは、火計により一国の主が率いる軍勢を大いに打ち破ったと言う記録が残る故だろうか。
「……奴、……は、韓進大将軍の配下として動いています。此度の狙いは、九龍城砦の民が纏う『九龍の霊気』です」
彼の地の霊気を溜め込めば、それは強大な力と成ると言う。
その為に敵が取った手段は手っ取り早く『殺して奪う』。元より住民が日々を過ごす内に自ずと身に着けているそれを、強硬に我が物とする心算らしい。
「不幸中の幸いと言うべきでしょうか、敵は『基本的に』一般人に手を出しません。此の地で狙うのは、本来であれば同じ穴の狢である筈のオブリビオンのみです。但し、歯向かう者には容赦はしません。仲間の仇討ち、無関係に邪な意図を持って近づく者、そういった振る舞いを見せる相手に向ける慈悲はないと」
人仙のみならず、オブリビオンさえ無秩序に巣食う場所であるが故の僥倖。とは言え、屠り纏う霊気を剥がれれば、変わらず敵の力を増す結果となってしまう。
故に、今回ばかりは阻まねばならない。
「皆様には、此れを討ち取っていただきます。しかし、敵は韓信大将軍の配下として認められるほどの英傑。加えて、彼の軍門に降った事により、強大な力を持つ神器を与えられています。皆様の力を以てしても、苦戦は必至」
では、何か策はあるのか。
強敵だと断言する、その敵を打ち破るだけの、策が。
「九龍の霊気。此れを、皆様にも会得していただきます」
敢然と、言い放つ。
敵が民から、殺して奪うと告げたその口で。
だが彼は、躊躇わず続ける。その表情は虚ろではあったが、決して無慈悲ではなかった。
「方法はあります。皆様自身が、九龍城塞の日常として溶け込むのです。彼の地の民と同様に振る舞う事で、限定的にではありますが、此の霊気を得る事が叶うでしょう」
短期決戦になってしまうが故にどうしたって長くは保たないが、少なくとも陸遜と戦う間なら力を発揮してくれるだろうと慧は言う。
しかし、九龍城塞の日常の中に溶け込むと言ってもどうすればよいのか。
「そうですね……それらしい衣装であれば、希望があれば私の方で用意いたしましょう。後は、奴が襲撃開始直前に訪れようとしていた店がありますから、待ち伏せがてら食事を取っていただければよろしいかと」
足を運んだのは、炎に惹かれた故か。
その店は、日本で言うところの炉端焼き風の店。
肉や魚介の串焼きに、焼き魚や野菜炒めなど、焼く、炒めるが売りの店。他にも、刺身や炒飯、ラーメンなどもメニューに並ぶ。
デザートなら焼きプリンは兎も角、アイスは熱気で溶けてしまうから、頼むなら食後で、運ばれたらすぐに口に運ぶべし、だ。
今から行けば、丁度猟兵たちが食事を済ませたところで陸遜は店の暖簾を潜るだろうと。
「九龍の霊気を纏った皆様であれば、対等に渡り合う事も――その霊気で敵へと付け入る隙を生む事すら叶うやも知れません。しかし、お気を付けください。奴は強力な炎と、統率に優れた精鋭兵を召集する能力を持つ他、韓進大将軍から与えられた、異世界オブリビオン兵団を従え、目的の達成に全力で当たるでしょう。上手く霊気を己の物としたとて、油断は禁物で御座います」
どう転んでも、激しい戦いになる。
それでも、行かねばならないのだ。陸遜の――引いては、韓進の目論見を阻止するためにも。
「――御武運を」
慧の掌で煌めくグリモアもまた、炎と成って揺らめいていた。
絵琥れあ
『いや、明らかに某ゲームの影響だと思う』と言うツッコミはなしの方向でお願いいたします。
何がとは申し上げませんが。
お世話になっております、絵琥れあと申します。
流れと詳細は以下の通りになります。
第1章:日常『九龍城砦の日常』
第2章:ボス戦『🌗極焔神君・陸遜』
第1章では、敵が訪れる予定のお店で九龍の霊気をものにすべく、待ち伏せしつつも食事を楽しんでいただきます。
店の雰囲気や更に詳細なメニューは断章にて補足させていただきますので、より雰囲気に馴染むよう振る舞っていただけると霊気の質は増すようです。
衣装を変えていただける方はどんな衣装か記載いただければ描写させていただきます。お任せも……余りお勧めはしませんが可能です(書き手の美的センスの問題)。
能力値別の行動例は気にせずに、プレイングを掛けていただければと思います。
第2章では、食事を終えた頃に現れるであろう極焔神君・陸遜との決戦を行います!
彼は自身のユーベルコードの他、韓進大将軍から託された神器の力でシルバーレインより『キラーゾンビ』の群れを軍勢として引き連れ、九龍城塞のオブリビオンや、自身に仇なす住民を葬り去ろうとしています!
大変ですが、こちらの対処も並行して行わなければ苦戦は免れないでしょう。逆に上手く対処できれば有利な流れを作り出せるでしょう。
また、第1章同様、より九龍城塞の住民らしい装いや言動を心がければ、会得した霊気の力が強まるようです(第1章が成功していれば、第2章からの参加者も霊気を得られます)。
第1章開始前に、断章を執筆予定です。
戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
※キラーゾンビのデータはこちら(参照:拙作第2章)
『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=41655』
※異世界オブリビオン兵団について(参照:韓進大将軍の侵略概要)
『https://tw6.jp/html/world/441_worldxx_ogre16.htm』
第1章 日常
『九龍城砦の日常』
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POW : 怪しげな酒場や劇場で退廃的な享楽に耽る。
SPD : 盗品や偽造品の溢れる闇市場の取引に参加する。
WIZ : 労働者や不良少年のたまり場を訪れ、交流する。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
店は、この荒廃の街に在って比較的小綺麗で、象牙色の石壁と木組みの引き戸は逆に少々異質ですらあった。
引き戸を開ければ、煙の匂いに混じった美食の芳香が、猟兵たちを出迎える。暖簾を潜ればその濃厚な薫りと、じゅうと肉の、魚の、野菜の強く焼ける音がより鮮烈に五感を刺激した。
中央の、正方形のカウンターの中で、初老の男――瑞獣、獬豸だろうか、額に角が生えていた――が串焼きを赤々とした火に掛けている。この店の主人だろうか、時折伝う汗を手拭いで拭ってはいるが、白い割烹からは使い古された痕跡がありありと見て取れるが、それでも清潔にと心掛けているのだろうと感じる。
それを囲むように、しかし出入口を避けるように、左右から奥にかけてコの字に個室も準備があるようだ。
店内も比較的清潔に保たれていて、客の入りは盛況――の、一歩手前と言ったところか。カウンターにも個室にも、集まった猟兵が腰を下ろせるだけの余裕はありそうだ。
席に着けば、店員がメニュー表を運んできてくれる。壁にはその日限りのお勧めメニューの書かれた板も並んでいた。
この店の定番かつ、一番人気は串焼きなのだそうだ。特に王道の焼き鳥と、分厚く切り分けられた牛串が一押しとのこと。他にも豚、羊、鹿、猪まで揃っている。店主は厳選された塩で味わって貰いたいようだが、自家製のタレは甘さと塩気のバランスが絶妙で、焼物特有の香ばしさを引き立てると、タレ派も太鼓判を押す旨さだとか。
また、塩レモンで味わう牛タンや、青梗菜と茸、韮と卵の二種の中華風野菜炒め、その日入った魚の塩焼きも是非ご一緒にと店員は勧める。今日の魚は脂の乗った鯛と鯖だそうだ。
刺身もあり、こちらは先の二種の他に鮪とサーモンが入っていると言う。赤身もトロもどちらも用意があるとのこと。
ラーメンは塩、醤油、味噌の定番から、豚骨、担々麺、海老トマトまで幅広く提供している。どれも追加で厚切り自家製叉焼を大盛りにできる。
炒飯も葱と卵のオーソドックスなものから、叉焼入り、牛とキャベツのオイスターソース、天津飯風からナポリタン風なんて、店主は和風アレンジの異国料理に造詣が深いのかとまで疑いたくなる一品まである。
デザートは一押し、一番人気共に焼きプリン。堅焼きのしっかり卵の味が楽しめるプリンに、甘くもほろ苦い絶妙な塩梅の焦がしカラメルが堪らない。アイスはシャーベットに近いようで、バニラ、ライチ、そして大人用にラムレーズンの三種類。
そして本日の限定メニューは、具沢山の贅沢蟹飯と、お高いけれど肉厚なフカヒレのステーキ!
後に戦いが控えていることは解っているけれど、食事を楽しみ九龍の霊気を身に着けることも大事だと、グリモア猟兵も言っていたことだし。
ここは遠慮なく席に着いて、堪能しよう!
鳴上・冬季
「韓進、ですか。それは行かねばなりませんね」
嗤う
「仙にとって食は娯楽で只の趣味ですが、霊気を纏うためなら一通り満遍なく食しましょう」
嗤う
仙服(全身有)で出向きカウンターに着席
「白酒と串焼きをタレで一通り」
白酒を飲みながら焼き上がりを待つ
まず牛、それから鳥
「…ふむ」
後は白酒飲みつつ端から順に
「店主、白酒おかわり。あと野菜炒めと鯖の塩焼き」
全く酔う様子なく白酒飲み野菜炒めつまむ
塩焼きは食べ始めだけ一瞬顔をしかめる
「店主、贅沢蟹飯。あと持ち帰りで焼きプリン10個」
プリンはすぐ壺中天の時のない部屋へ
蟹飯は豪快に掻き込む
「〆にプリンとアイス3種」
顔を綻ばせ食し酒で〆嗤う
「…間に合ったようですね」
●
「韓進、ですか」
鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)はくつりと嗤う。
「それは行かねばなりませんね」
嘗て英雄と謳われようと、今や封神武侠界を脅かす|侵略者《オブリビオン》――韓進。
その配下の企みなれば、妖の身なれど仙たる彼にとって、確実に粉砕せねばならぬもの。
妖仙としての側面を今は全面に押し出した彼の出で立ちは、道士のそれより格式高い仙服。夜の黒と藍を纏い、ひらり棚引く雲間に霹靂蒼く。妖仙にして雷使いの号に相応しい、浮世離れの空空漠々。
しかしこの時、その胃の腑に収めるものは、霞ではなく俗世の糧食。彼に忌避はなく。また嗤って。
「仙にとって食は娯楽で只の趣味ですが、霊気を纏うためなら一通り満遍なく食しましょう」
カウンター席へと腰を下ろせば隣の男がちらと一瞥くれる。だが、それだけだ。この風体が珍しいか、けれどここは煩雑の坩堝、思い直せば興味は失せたか。
冬季も特別感慨はない。ただ腹を満たすだけ。霊気と共に。
「白酒と串焼きをタレで一通り」
店主は冬季をちらと見遣ると無言で頷き、じゅうと一際大きな音を立て、炎は煙と共に赤く立ち昇った。
程なくして注がれた白酒を呷りつつ、焼き上がりを待つ。手始めに牛を。後に控える琥珀色の鳥を横目に齧りつく。
「……ふむ」
咀嚼し、吟味し、呑み込む。時折酒を挟みつつ、端から順に手を着ける。
酒が空になれば、再び声を掛け。
「店主、白酒おかわり。あと野菜炒めと鯖の塩焼き」
寄った素振りは毛ほどもなく、満腹と言う様子もなく。
酒の進みも衰えず、野菜炒めを摘む。塩焼きにも箸を伸ばして、その食べ始めだけその柳眉が顰められた。けれどそれも、刹那の内のこと。
「店主、贅沢蟹飯。あと持ち帰りで焼きプリン10個」
運ばれてきた碗から米は見えなかった。鮮やかな赤と雪の如き白のコントラストが眩しい。豪快に掻き込めば、本当に碗の上半分近くは蟹だった。
その間に仕上がった焼きプリンは、受け取ると共に式神へと預け。
「導け、壺中天」
その先は時のない部屋。保存にはこの上ない。
戦闘中の土産の安全を確保して、それから。
「〆にプリンとアイス3種」
甘味ばかりは話が別だ。口に含めば顔も綻ぶ。
そうして〆はやはり、酒。最後の一滴まで、呑み干せば。
「……間に合ったようですね」
霊気が、漲る。
一層深く、嗤った。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
ここも初めての世界だけど、いいな!
景色は変わっているけど、何となくしっくり落ち着くぜ。
まずはこの世界の霊気を取り込むって話だから、飯を食わないと。
炉端焼き風?ってことだから、それも楽しみだ。
今日は1日ご飯抜いてきたんだぜ。
串焼き、豚、羊、鹿、猪、どれもうまそう。
味変にも対応とか、ここは神か!?
売りという焼きプリンも楽しみだなー。
さぁ、この世界の食をたんと味あわせてもらおうか。
あ、衣装はまかせた!
●
「ここも初めての世界だけど、いいな!」
チャイナドレスで華やかな出で立ちのシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は、見慣れぬ頽廃の世界にあっても双眸の輝きを失わない。
(「景色は変わっているけど、何となくしっくり落ち着くぜ」)
傭兵として、多くの兵士や戦士に混ざって仕事を遂行する生活を続けている身として、雑然とした空気は馴染むものなのかも知れない。
衣装も選んで貰った。瞳の色彩に合わせられた、青地に黒のレースで花と柳の刺繍が施されたチャイナドレス。胸元のレースとシースルー素材、そして脚を魅せるハイスリットがメリハリの効いた彼女の肢体を引き立てる。
そして、何より重要なのが――、
「まずはこの世界の霊気を取り込むって話だから、飯を食わないと」
そう、今回の任務は戦闘だけではない。この土地に馴染むために振る舞う――その一環として、食事を取ることも含まれている。
このチャイナドレス、一見ボディラインにしっかりフィットしているように見えるが、実は見た目ほど腹部を締めつけない作りなのだ。
(「炉端焼き風? ってことだから、それも楽しみだ。今日は1日ご飯抜いてきたんだぜ」)
シモーヌの気合の入りようを見て、この服は選ばれたのだろう。
で、あれば遠慮なく堪能できると言うもの!
(「串焼き、豚、羊、鹿、猪、どれもうまそう。それに味変にも対応とか、ここは神か!?」)
カウンターに腰掛け、改めてメニューを確認し、ごくりと生唾を呑み込むシモーヌ。既に腹具合は彼女に臨戦態勢を訴えている。
「まず、一通り塩だな。勿論、食べ終わる頃にタレも頼む!」
期待を込めてオーダー。じゅわっと焼ける肉と脂、煙の匂い。それだけで食欲がそそられる。
もう待ち切れない――辛抱が限界に達した頃、第一陣の塩串焼きたちが現れた。早速、手を合わせていただきます。そして串を片手に、豪快にがぶり!
「うまい! 肉と脂の旨味を塩が十二分に引き立ててる……!」
これは想像以上だ。思わず頬を押さえてしまう。
この後のタレ軍団にも期待が持てそうだ。
(「売りという焼きプリンも楽しみだなー。忘れないようにタレ来たら頼んでおこうっと」)
心に決めつつ、今は目の前の肉たちを攻略せねば!
(「さぁ、この世界の食をたんと味わわせてもらおうか」)
シモーヌの美食との戦いは、これからだ!
大成功
🔵🔵🔵
ガーネット・グレイローズ
香港租界、九龍城。いつ来ても怪しげな場所だ。だが…
この街に居ると、否応なく好奇心を刺激される。
なぜだろうな…。
それにしても、なかなか立派な構えの店じゃないか。うん、いい雰囲気。
服装はいつもの黒いスーツ上下。女の一人飯。
職業不詳だが、チップははずむぞ。
テーブルに案内してもらい、早速料理を注文しよう。
看板メニューの串焼き肉(牛)に焼き魚、貝のつぼ焼きを。
それらを老酒でいただきながら、野菜の豆鼓炒めと蒸し鶏を追加注文だ。
そうだ、蟹。蟹はあるかな…?蟹飯!限定メニューなら頼むしかない。
うん、どの料理も素晴らしく美味い。
本当はもっと楽しみたいところだけど、この後で
一仕事しないといけないんだな…。
●
(「香港租界、九龍城。いつ来ても怪しげな場所だ」)
ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は高貴の出だ。
今日も、仕立ての良い黒のゴシックスーツを上下ぴしりと決めて、毅然と引き締まるような空気を纏っている。一見すると、こういった頽廃の世界を好む性質とは思い難い。
(「だが……この街に居ると、否応なく好奇心を刺激される。なぜだろうな……」)
今も、煙の匂いが染みた暖簾を前に、何とも抗い難い感覚に囚われつつある。
(「それにしても、なかなか立派な構えの店じゃないか。うん、いい雰囲気」)
寂れたビル群で構成されるこの街で、小綺麗な店構えは異質で目を引く。けれど、錯雑しているが故にある種大らかなこの地の気質か、問題なく受け入れられている。
ともあれ、中に入れば一層強くなる煙と、肉や魚、野菜の焼ける匂い。食材ひとつ取っても質の良いものを仕入れているなと、ガーネットには感じられた。
女の一人飯だが、その姿は、職業不詳だが羽振りの良い上客として映りそうなもの。チップを弾むことだって、吝かでない。
案内された席に腰掛け、メニューを吟味して。
「牛串焼き肉に焼き魚、貝のつぼ焼きを」
看板メニューは外せない。老酒に合いそうな海鮮も。
身体が少し温まってくる頃、薫煙と共に肉が運ばれてくる。噛めば濃厚な牛の味と、芳醇な火香が舌の上で蕩ける。
酒が減り、肉が減り、磯の香りを伴い魚と貝が運ばれてくると同時。
「追加で野菜の豆鼓炒めと蒸し鶏を」
後は〆はどうするかなんて考えて。
ふと、その存在を思い出す。
「そうだ、蟹。蟹はあるかな……? 蟹飯!」
限定とあれば頼まない手はない。
コクのある豆鼓炒め、さっぱりした蒸し鶏――食べ進める間にも、注文の品は次々並び。
それらを酒と共に堪能しきった直後、目の前に現れた蟹飯は、本当に米が見えないほど。食べ進めても、なかなか米に辿り着かないほどの具沢山。そして、蟹の味もしっかりと効いていた。
(「うん、どの料理も素晴らしく美味い。本当はもっと楽しみたいところだけど」)
だが、そうも言っていられない事情。
(「この後で一仕事しないといけないんだな……」)
早く終わらせられたら、飲み直す時間くらいはあるだろうか。しかし相手は韓進直属の配下だしな……と。
残念な気持ちはどうしても拭えないのだった。
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と
超大物だ…倒せたらすごい誉だよね
「頑張ろうね」
服借りたいな。陸にお任せだよ
入店したら雰囲気慣れしてる陸井の
弟風を装いつつ注文
「串焼き塩でお任せ!」
俺はこういう肉は塩で食べるのが好き
店内の良い肉の脂が焼けるいい匂いが
絶対肉を塩で楽しめる店って証明してるし
美味しい!どうこう抜きで名店だよ
陸井と味とか話しつつリラックスし
霊気を取り込めるよう努める
あ、でもプリンは最後に食べる絶対
「プリン注文していいかな…?」
いやアイスも食べたいけど!でもどっちかならプリン
あ。言わなかったのにアイスも頼んでくれた
素で満面の笑みで食べて時を待つよ
う。会計は弟のフリしたからやだって言えないなぁ…
凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加
陸遜とはまた大物だな
こう考えたらいけないんだろうけど
相対するのも少し楽しみになる
「あぁ、頼むな。相棒」
服は借り出しを希望
余りこういう衣服の知識はないし
陸くんにお任せする感じかな
兄弟のようにって事だから堂々と行こう
時人の注文に合わせつつ飲み物も
「それから酒と…弟にはお茶で」
この後の事を考えたら腹ごしらえも大事だな
匂いだけでも酒が飲めそうだ
実際時人の言う通りだな
お世辞抜きで本当にしみじみと美味い
相棒の様子に笑みが零れながら
「店員さん、アイス三種とプリン一個頼む」
酒と料理で火照った体にしみこむ良い甘味だ
「あぁ、それから…支払いは俺がするからな。安心して食べろ」
●
――陸遜。
それはこの封神武侠界だけでなく、地球を基礎とするアース系世界でも名の知れた古の英雄。
彼ら――葛城・時人(光望護花・f35294)と凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)の|故郷《シルバーレイン》も、例外ではない。
「陸遜とはまた大物だな」
呟かれた陸井のその言葉に、時人も頷きを返す。
倒せたら凄い誉だ、なんて考えて。不謹慎だろうかと頭を過りつつも、相対するのも楽しみだと、武者震い染みた高揚感を覚えてしまうのは、二人共同じ。
「頑張ろうね」
「あぁ、頼むな。相棒」
彼らは、能力者時代からの、相棒だ。
陸遜伯言、何するものぞ。二人在れば、如何な強敵も恐るるに足らず。
だが、今はその関係も、纏う狭衣も、少し装って。
時人には黒地に、肩口の銀糸が羽龍を象った細身の長袍を。
陸井には龍舞う山水画の描かれた白の羽織と、ツーピース風の黒の漢服を。
どちらもグリモア猟兵の見立てに任せた形。そして、その出で立ちで連れ立って店の暖簾を潜る様は、まるで兄弟のよう。
雰囲気慣れしている陸井は堂々と、その後を時人が興味津々、といった振る舞いで、揃って席へ。
「串焼き塩でお任せ!」
「それから酒と……弟にはお茶で」
元気よく声を上げる時人に、穏やかな微笑みを向けて陸井も注文を。
まずは軽く乾杯して、談笑する。本来の目的も勿論忘れていないけれど、そのためにはこの空気を堪能することも重要だから。
「この後の事を考えたら腹ごしらえも大事だな」
「だね。あ、塩で頼んじゃったけど大丈夫?」
「ああ、問題ないぞ」
「よかった。俺はこういう肉は塩で食べるのが好きなんだ」
店内の良い肉の脂が焼けるいい匂いが、絶対に肉を塩で楽しめる店だと証明している、と。
今から楽しみだと言わんばかりの時人に、陸井もゆるりと周囲を見渡してから、頷き。
「そうだな。匂いだけでも酒が飲めそうだ」
●
「美味しい!」
噛んで咀嚼。それと同時にぱぁと時人の顔が輝く。
程よい塩味が舌を快く刺激する。それでいて肉本来の味は損なわれていない。どころか、しっかりと引き立てられている。素材そのものも、上質のものだろう。
いや、最早余計な言葉は要らない。
「どうこう抜きで名店だよ」
時人の太鼓判。
陸井も、その言葉には同感だった。
「実際時人の言う通りだな」
しみじみと、本当に美味いと心から感じられる。世辞などなく、美味いものを純粋に美味いと思う、それだけのこと。シンプル、故に明快な事実だ。
などと、陸井が考えていると。
「あ」
時人が、何やら思い出したように短く声を上げた。
首を傾げる陸井を余所にその胸中は。
(「でもプリンは最後に食べる、絶対」)
誰が呼んだか甘党魔神。
いや、本来の目的は忘れていない。忘れていないけれど。楽しんだ方が霊気の溜まりがいいのであれば、寧ろこれは必要なことではないだろうか!
ともあれ、そんな時人としては、食後のデザート。それだけは譲ることができなかった。少し遠慮がちに、おずおずと切り出す。
「プリン注文していいかな……?」
いや、更に本音を言えばアイスも食べたいのだが。食べたいのだが!
でもどっちかならプリン、と。苦渋の決断。
そんな時人の葛藤を見抜いてか、陸井は微笑ましげに笑みを零して、それと同時。
「店員さん、アイス三種とプリン一個頼む」
当然のことのように注文する陸井に、けれど時人はちゃんと気付いた。
(「あ。言わなかったのにアイスも頼んでくれた」)
その陸井と視線が合う。ふふ、と笑っていた。
「俺も食べたかったしな」
なんて、冗談めかして。
こういう時に、やはり自分たちは相棒なのだなと、強く感じるのだ。戦いの時だけではない、日常でも違いを深く理解している、その絆が自分たちにはある。
それは誇れること、誇らしいことだと思うのだ。
程なくして目の前に並ぶデザートを舌の上に滑らせつつ、来たるべき時を待ちながら。
(「酒と料理で火照った体にしみこむ良い甘味だ」)
仄かにふわり心地よい酩酊へと誘う酒精を、アイスの甘さと冷たさが明瞭に立ち戻らせてくれる。それが、微かな違和感を陸井に齎した。
けれどその違和感が不快ではない。寧ろ、先程の高揚感が舞い戻ってくるようだ。成程これが件の霊気かと、陸井は実感する。
時人も、スプーン片手に本心からと解る満面の笑みを浮かべていた。彼が得た充足感はそのまま、霊気と成って彼を満たしているのだろう。
が、直後。
「あぁ、それから……支払いは俺がするからな。安心して食べろ」
「う」
その言葉に、ここに来て初めて、時人の表情が強張った。
けれど、兄弟を――弟を装うと決めた手前。
(「やだって言えないなぁ……」)
本来なら見た目ほど年の差は然程ないのに、全面的に頼らざるを得ない状況に複雑な気持ちになりながらも。
笑顔から一転、もやもやと眉を顰めれば、陸井は可笑しそうに笑っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
荒珠・檬果
ひっさびさのー!大好きな世界にやってきましたよ!
そういえば、炎の印象が強いですよね、彼って。
さて、それらしい服は借りました。
では…醤油ラーメンと、オーソドックスな炒飯いただきます!
いやー、中華っていいですよね。とても美味しい。
そして二つを食べ終えたら…デザートです。腹にはいるかわからなかったので、食べ終えたら…にしてたんですよ。残すのは申し訳ないですし、もったいないので。
ここは一番人気のプリンいただきましょう。食べなきゃ損ですよ。
あと、ライチのアイスもくださいな!ふふ、ライチのアイスって食べたことないので、とても楽しみですよ!
で…あー、来ましたかねぇ?
●
「ひっさびさのー! 大好きな世界にやってきましたよ!」
ウッキウキで暖簾を潜る、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)。
何を隠そう、彼女はゲーマーであり、三国志マニアでもある。オブリビオンではあるものの、その英雄たちが集う世界とあっては足が向かないわけもなく。
正史三国志、三国志演義、そしてそれらを題材にしたゲーム含めた創作にも精通している彼女は。
(「そういえば、炎の印象が強いですよね、彼って」)
ふと、冷静に思う。
彼は呉の国で大都督にまで任ぜられた男であり、当然例の火計以外にも様々な功績を挙げているのだが、それでもなお、炎のイメージが強いのはやはり……いや、深く考えるのはよそう。
それらしい服――華美になりすぎない、青緑基調の女性漢服を借りて身に纏い、席に腰を下ろして注文するのは。
「では……醤油ラーメンと、オーソドックスな炒飯いただきます!」
果たして、運ばれてきたのは葱と卵の定番炒飯。そして、芳醇なスープの香りが鼻腔を擽る醤油ラーメン。
早速ラーメンを啜れば、豚骨や鶏ガラだけでなく、魚介類でとった贅沢で旨味のあるあっさり醤油スープが、繊細な細麺と絡む絶品。炒飯もまた、パラパラしつつもしっとりとした食感と、これぞ中華と言わんばかりの独特の旨味が堪らない。
(「いやー、中華っていいですよね。とても美味しい」)
歴史や文化のみならず、食も魅力的な中華。もとい、封神武侠界。
だが、これで終わりではない。食べ終えたら、デザートが檬果を待っているのだ。
「ここは一番人気のプリンいただきましょう。食べなきゃ損ですよ。あと、ライチのアイスもくださいな!」
残すのは申し訳ないし、勿体ないからと、待つことは承知で完食してから、腹具合と相談しての注文。
一番人気は勿論外せない。そして、アイスにライチをチョイスしたのは。
(「ふふ、ライチのアイスって食べたことないので、とても楽しみですよ!」)
ややあって並べられた焼きプリンとアイス。プリンは濃厚でありながらしつこくない、卵と焦がしカラメルの絶妙な甘さ。ライチアイスはオリエンタルな独特の甘みと控えめな酸味、そして清涼感のある香りがつんと爽やかに口の中を抜ける、新鮮な味わい。
それらを美味しくいただき、ご馳走様でしたの手を合わせる頃。
(「……あー」)
夷陵の天をも焦がす、炎の気配。
(「来ましたかねぇ?」)
――近い。
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
【衣装は露出度の高いチャイナドレス。黒地にネオンピンクの装飾】
【鹿人絵師さんの全身イラスト参照】
何度も訪れてもう慣れた、と思っていたけれど
こんな|清潔《キレイ》なお店もあったのね。びっくり
このお城にもまだまだ知らない顔が……あら?
知らない|顔《トコ》で、知ってる|顔《ヒト》を見かけるだなんて!
こういうの、奇遇って言うのかしら
ねぇ? と声を掛けながら隣の席にお尻を降ろす
【九龍巧遇】既に顔馴染みの住人は
|いったいどんな人物だったかしら?《詳細はおまかせで》
悪さしているところをとっちめたか
巻き込まれているところを助けたか
そのどちらかだと思うけれど
どちらにせよ食事ぐらい奢ってくれるでしょう?
メニューはおまかせで
だってメアリは字が読めないんだもの。仕方ないでしょう?
そうね、おいしいお肉が食べたいわ
あ、辛いのはダメよ?
最後はもちろんあま~いアイス!
ライチのヤツをお願いね!
それにしてもなんて運がいいのかしら
メアリの事じゃないわ。あなたの方よ
(お陰でこの後、殺されずに済むんだから……とは言わないけれど)
●
この日最後――となるべき来客の姿は、否が応でも店内の目を惹いた。
メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)の装いは、極めて過激、かつ扇情的。
花と房飾りがふんだんにあしらわれた帽子は兎の耳を思わせる飾りをふわり揺らし、赤い瞳はハートのグラスの向こう側。
そして、帽子と同じ黒地に、ネオンピンクの草花咲かせるボレロとドレス。
ボレロは鎖骨より上の位置から大胆にカットされ、胸元を惜しげもなく曝している。その薄いながらも美しく滑らかな胸も、隠されるべき秘密に辛うじて貼りついている、薄絹のような衣の防壁を纏っているだけ。
際の際まで短く、女性として守るべき砦すら風の一吹きで露わにしてしまいそうな裾も含めて、一枚の布が背中に回る紐で縫い留められている。
豊満で蠱惑的な曲線を描く臀部を覆うのも、裏地が赤の黒一枚。太腿から爪先まではストッキングと靴で柔肌を隠しているが、そのコントラストこそが淫靡だ。
だが彼女は、周囲の目など何のその。物珍しげに、きょろりと店内を見渡していた。
(「何度も訪れてもう慣れた、と思っていたけれど
こんな|清潔《キレイ》なお店もあったのね。びっくり」)
この地で荒廃と堕落を幾度となく目の当たりにしてきたメアリにとって、それはただ純粋な驚きだった。既に九龍に馴染みつつある、と言ってもいい。
(「このお城にもまだまだ知らない顔が……あら?」)
だが、決して未知の領域ではないということも、また事実。
「あなた……」
「げ」
ぎょっとした顔。
目元まで隠れる前髪と、無精髭。服も相当に草臥れた、ぱっとしない男。
(「知らない|顔《トコ》で、知ってる|顔《ヒト》を見かけるだなんて!」)
傍から見れば、メアリとは到底縁のなさそうな男。
男は人買いだった。メアリもとある依頼でこの地を訪れた時、報告書に上がらぬところで売り飛ばされそうになったのだ。
メアリは一度は騙され、捕らえられた――フリをした上で、とっちめた。そんな縁。
「こういうの、奇遇って言うのかしら。ねぇ?」
しかしメアリは意にも介さず、その隣の席に腰を下ろした。男はやや仰け反りつつも、むにと形を変えたメアリの曲線に視線を遣っていた。どうしようもない男の|性《サガ》だろうか。
「何でコッチ来るんだよ。危機感がねえのか」
小声でそう問われるも、メアリはからりと。
「食事ぐらい奢ってくれるでしょう?」
「お前な……強かにも程があんだろ」
と言いつつ、負い目からか支払いは持ってくれるらしい。
メニューが読めないからと、オーダーは男に任せることにしたのだが。
「そうね、おいしいお肉が食べたいわ。あ、辛いのはダメよ? 最後はもちろんあま~いアイス!」
「そこそこ注文多いな!?」
「ライチのヤツをお願いね!」
「聞いてねえ!!」
素なのか確信犯なのか、九龍の住人をも振り回すメアリ。
最終的に決まったのは、タレ牛串焼きと塩焼き鳥。牛タンに鹿の炭火焼き。そして食後にライチアイス。
食欲をそそる香りと共に口に含めば肉の旨味が広がった、と思えば直後に蕩ける。濃厚でありながらしつこくない、上質な肉と豪快に見えて緻密な調理から生まれる滋味に舌鼓を打ちつつ、ぽつり。
「それにしてもなんて運がいいのかしら」
「あ?」
「メアリの事じゃないわ。あなたの方よ」
意味が解らない、と言いたげな表情の男。
だが、メアリは知っている。
(「お陰でこの後、殺されずに済むんだから……とは言わないけれど」)
真実は少女の小さな胸の中に。
甘くて冷たい、アイスの最後の一口を、舌の上で弄んだら。
――がらりと、招かれざる客がその姿を現した。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『🌗極焔神君・陸遜』
|
POW : 精鋭部隊へ伝令!布陣展開、戦闘を開始します!
【レベル×5の呉の精鋭兵 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD : これこそが、我が最高の計略です!
戦場全体に【灼熱の炎での火計 】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【淡い炎のオーラ】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : 私の話、聞いていただけますか?
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【意識を奪い傀儡とし 】、否定したら【剣と炎による攻撃で徐々に体力を奪い】、理解不能なら【火計で覆い尽くし移動力と生命力】を奪う。
イラスト:tora
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「推葉・リア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
九龍の澱んだ風と共に現れたのは、黒い外套。
その姿に一人の若者が悪意を持って立ち上がれば、猟兵たちも静かに動き出す。
若者――盗人が取り入ろうと声を掛けた、その腕を猟兵の一人が後ろに引いて、止める。
虚空を、白い光が貫いた。
店内がざわめく。同時に、猟兵たちが各々の獲物を該当の男へと向ける。
男は一瞬、その影の奥の瞳を丸くしていたようだが、狼狽の気配はなく。寧ろ。
「来ましたか」
想定外ではなかった、と言うことか。
店内で事を荒立てるのが本意ではないのか、外套の男はじりじりと後退した。猟兵たちもその分、店を出て距離を詰める。
往来の中央まで下がったところで、男は足を止めた。
――いつの間にか、その背後には、ずらりと異界の屍兵たちが、不気味なまでに統率の取れた隊列を組んで並んでいる!
「私が直々にお相手致しましょう。その為に、貴方方は此処まで来たのでしょうから」
外套を脱ぎ捨てた、その姿が露わになる。
燃えるような赤毛に紅蓮の瞳。思慮深さを感じさせる美貌に、しかし非力ではないと主張する簡便たる武装。
最早、この男が敵将――今や韓信大将軍が配下、陸遜その人であることは、火を見るよりも明らかだ!
改めて臨戦態勢を取り直す猟兵たちから視線は逸らさず、しかし口元に薄い微笑を湛えたまま、陸遜は剣を持たぬ腕をゆるりと空で薙いだ。
すると――本来、知性なく敵味方の別なく生命を襲う存在である筈の屍兵らが、まるで『主の命じた獲物を探すように』街へと進軍せんとしているではないか。猟兵たちの足止めを標的であろう自らが行う間、この屍兵らに九龍のオブリビオンを掃討させる算段か!
陸遜だけでなくこの兵団も何とか押し留めねば、戦う最中にも陸遜は力をつけてしまうだろう。だが、そうなればただでさえ強敵相手に付け入る隙を与えることになる。
九龍の霊気と言うハンデを、これで補う心算なのだろう。如何にしてその目論見を打ち砕くか。侵攻を防ぎつつ戦うか、守りを棄てて電光石火の如き早期決着を狙うか――或いは。
迷い悩む猶予は僅かばかり。
それでも選び取れ、|猟兵《イェーガー》。そしてこの九龍城塞の戦いを、制するのだ!
鳴上・冬季
「この地を守るための私達です。虐殺などさせませんよ…来い、黄巾力士金行軍」
・オーラ防御で庇う2
・砲頭から榴弾で鎧無視・無差別攻撃2
・人命救助1
の5体25組と4体1組
計129体召喚
25組をゾンビ殲滅と九龍住民救助に向かわせ
普段から連れ歩く1体と残り4体で陸遜対応
「我はこの地の守護に集いし妖仙が一、迅雷公。九龍を貴様の好きにはさせぬ…さあ封神を始めよう」
4体のうち2体に砲頭から制圧射撃させ陸遜の行動阻害
2体はオーラ防御で庇わせる
いつもの1体は金磚と砲頭から鎧無視攻撃
黄巾力士達の攻撃の隙間を塗って突貫
仙術+功夫で縮地して攻撃を避けたり雷属性纏った拳で掌底や膝蹴りからの前蹴り回し蹴りと連撃したりする
●
――遂に、来たか。
鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、剣呑な嗤いを崩さない。
それでも、故郷の大事を食い止める。その意志は、確かに、胸の奥に。
「この地を守る為の私達です。虐殺などさせませんよ……来い、黄巾力士金行軍」
ずらり、音もなく並ぶ。
多勢には、多勢をぶつけるまで。
5体25組と4体1組、計129体の黄巾力士。
防衛、救助、敵軍殲滅、それぞれの役割を与えられた力士達が、屍兵の軍勢、その行軍を阻むように動き出す。
「我はこの地の守護に集いし妖仙が一、迅雷公。九龍を貴様の好きにはさせぬ」
「私も、私の使命の為に。我が名は陸遜、神君にして大都督。いざ――」
雷霆纏う掌。紅蓮帯びる剣。
戦いの運命は、決定づけられた。
「――さあ、封神を始めよう」
「尋常に、勝負――!」
砲頭が、咆える。
留まり控える黄巾力士2体の砲撃が、陸遜を捉えんと、九龍の空気を震撼させた。
陸遜が、砲撃の合間を縫って駆け出す。同時に広がる炎。だが、無抵抗に逃げ惑う人々を、巧みに避けている。
(「非情に徹し切れていない、か。ならば、やりようは幾らでもある」)
防衛用の黄巾力士のオーラを炎にぶつけて掻き消す。屍兵の攻撃対象である住民の退避と、榴弾による反撃も忘れない。
陸遜は、黄巾力士の砲撃を掻い潜りつつ、その主である冬季本人を狙っているようだ。だが、如何に回避しようと――否、回避し続けているからこそ、直線的に向かってくることが出来ない。
利は己にあり。黄巾力士の動きは冬季の思いのままなのだから。それに、逃げるつもりも毛頭ない!
「指揮を執るのみ、脆弱なだけの司令塔ではないでしょう。貴方も、私も」
嗤って見せる。
常に傍に控える黄巾力士に搭載された、金磚が一条の光線を放つ。その疾きこと音に迫り――けれど、俄に燃え上がった炎の壁に溶けて消えた。
だが、その為に足を止める――それこそが、狙い目!
「――疾ッ!」
「!!」
掌底、膝蹴り、流れるように回し蹴り。
横合いから飛び出し奇襲。連撃を、叩き込む!
「覚悟」
「――生憎と」
留めの前蹴り。それだけは、剣背に阻まれる。
赤が揺らめく。大きく吹き飛びながらも受け身を取って立ち上がる。
「この勝負、何としてでも負けるわけにはいかないのですよ」
「此方とて同じ事。其の企み、必ずや打ち砕いてくれよう」
静かに猛る、雷と炎。
その信念が、交差する。
成功
🔵🔵🔴
ガーネット・グレイローズ
ご馳走様。料理も酒も素晴らしいものだった…。
本当はもっと楽しみたいけれど、
迷惑なのがやって来たようだな…。
「火計か」
九龍の霊気を帯びたとはいえ、ダラダラと戦っていては
体力を消耗してしまう。一度のチャンスで強力な一撃を与えるか。
吹き付けられる猛火を、ブレイドウイングによる
《ジャストガード》で払い、外套からヴァンパイアバットを放つ
《目潰し》。無駄な足掻き?違うな、これはフェイントだ。
お前に近づく時間を稼ぐためのな。
《空中機動》で飛翔して一気に距離を詰め、頭上から
急降下して跳び蹴り、着地後は連続技に繋げる。
《功夫》と《仙術》を応用した【赤气封神撃】で
エーテル波動の打撃を叩き込むぞ。
●
「ご馳走様。料理も酒も素晴らしいものだった……」
店を出る。代金と店主への礼も忘れない。
ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は名残惜しく、それでも切り替え、扉一枚隔てた戦場へ。
(「本当はもっと楽しみたいけれど、迷惑なのがやって来たようだな……」)
この地の日常を乱す輩が在る限り、美酒も美食もおちおち楽しんでもいられない。
相対するは屍兵の軍勢。そしてそれを率いる、炎を思わせる美丈夫――陸遜。
既に九龍の街は赤く染まりつつある。幸い、建物や無抵抗の人々に被害は出ていない。それでも、恐らくはこの地に根付くオブリビオンを炎は未だ追尾し続けている。
「火計か」
九龍の霊気は獲得した。それでも、持久戦に持ち込まれればこちらの消耗が激しくなるのは目に見えている。
(「一度のチャンスで強力な一撃を与えるか。その為には――」)
今も尚、巻き上がる炎。
それがガーネットをも呑み込まんとする、その瞬間。
「――ここだ!」
漆黒の外套に潜ませた、液体金属の翼で風を喚ぶ。掻き消す――と同時に飛び出す蝙蝠の群れは、闇夜の金属たち。主のものではない、紅蓮の目を眩ませんと飛びかかる。
「無駄な足掻きと嗤うか、|極焔神君《オブリビオン》?」
纏う炎に、阻まれる。蝙蝠たちが一斉に散る。
その表情から、確かに微笑みは損なわれていないが。
「いいえ。これが真の狙いではないのでしょう?」
「流石に智将と名高い――その通りだ。これは、フェイントだ」
――お前に近づく為のな。
理解していようと、身体がついてくるかは別の話だ!
交わす言葉の間にも、距離を詰める――空中から。
即座に繋ぐ、頭上からの急降下。全体重を乗せた蹴りは、後方に飛び退かれたことで不発に終わる。だが、想定の範囲内。
咄嗟に勢いを殺して着地。体勢を整える隙を与えず再び肉迫。
「ブラッドエーテル、フルブースト――」
仙術の応用で四肢に宿したエーテルを、絶え間ない連撃で叩き込む!
至近距離での掌破、反動で開いた間合いからの宙返り蹴り、舞うように追撃ひとつ、ふたつ。そして――渾身の、後方回転蹴り!
「――砕け散れ!」
裂帛の気合と共に放たれた一撃は――陸遜の側頭部を、強かに打ち据える!
「……ぐ……ッ!!」
初めて、その身体が大きくよろめいた。
その柳眉が苦痛に歪む。手応えが、確かにある。
勝てる。――勝たねば、ならない!
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と共に
来たな!ああ、一目で分かる強敵
でもね
こういう時幾度だって思う
俺は一人じゃない
「陸井、奴は任せたよ」
聞こえないよう小声で囁いてから
陸遜に向け大喝
「汚いな!此処はどんな奴でも平等のはずだろ!?」
此処には本来オブリビオンでさえ黙認される
ルールがある
指摘し正しい『場の理』を此方に引き寄せ
絶対的な強さ持つが故の二兎を追う傲慢を打ち消す
そこに俺達の勝機がある!
UC白燐大拡散砲詠唱
「ククルカン往け!屍兵を逃すな!」
今だけは城塞側の存在として防衛を
誰であれ目の前で攻撃されたら割り入り助ける
万一オブリビオンならまた来てやればいいだけだ
「消火は相棒の得意技だ。残念だったな、陸遜!」
凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加
「あぁ、来たみたいだ」
俺一人では対処しようがなかっただろう
でも今は傍らに相棒の存在を感じる
信頼してくれる相棒の期待に応えないとな
「そっちは任せたぞ、相棒」
屍兵の対処は相棒に任せ
火計と火に【水遁「水獄檻」】で対処
相棒や城塞や人々が燃えないようにする
「そっちが炎で来るなら俺はこれで行くぞ」
九龍城塞の住民らしい言動であれば
隙を縫って陸遜へ接敵し
心からこう言い切らせて貰おう
「単純な話だ。仁をもって義をなす。義によって仁を尽くす」
近接ではナイフ、距離を取ったら銃撃し
火計は常に水獄檻で消火して対処し続ける
「…あれだけ美味い飯を作って貰ったんだ。我が義は其処に在り、ってな」
●
「――来たな!」
「あぁ、来たみたいだ」
葛城・時人(光望護花・f35294)と凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)。
断金の交わりも斯くや、共に敵へと立ち掛かる。
大将は、既に他の猟兵たちの猛攻に曝されて尚、余力を残したままに剣と炎を振るう智勇兼備の大都督。
一目で感じ取る、鷹揚に見えて隙のない立ち振る舞い。紛うことなき強敵であると、歴戦の能力者でもある時人の全身が震撼する。
陸井もまた、その間近でじりじりと身を焦がさんと迫るような、圧倒的な力を目の当たりにする心地で。己一人の力では、対処は不可能だと確信してしまう程の。
――だが、二人が臆することはない。
傍らに、日々共に戦い駆け抜けてきた、最も信を置く相棒の存在を感じるから。
自分は、決して一人ではない。轡を並べて困難に立ち向かう、確かな絆の力がここにあるから。
高く聳え立つ壁に突き当たった時、幾度だってそうして乗り越えてきたのだから!
「陸井、奴は任せたよ」
「ああ。そっちは任せたぞ、相棒」
交わす言葉は短く。だが、それでいい。
小さく頷き、それぞれに駆け出す――その寸前。
「汚いな! 此処はどんな奴でも平等のはずだろ!?」
「成程。では、私に『全て』を平等に屠れと仰いますか?」
時人の一喝。対して陸遜は、事もなげにそう言いのける。
だが、その言葉の裏側に、時人はほぼ確信に近い予感を得た。
良くも悪くも、オブリビオンとてこの地では、無辜の民に過ぎない。目的を果たす為とは言え、無抵抗の者に害を成すことを良しとしないこの男は、その胸中に少なからず葛藤を抱えている筈だ。
――何より。
(「此処には本来、オブリビオンでさえ黙認される
ルールがある」)
それがこの地の|理《ルール》。
九龍そのものを味方につけ、強者の傲慢を打ち砕く。
二兎を追う者は一兎をも――否。
追うことすら、させはしない!
「ククルカン、往け! 屍兵を逃すな!」
光すら阻む暗がりの街に広がる銀河。
屍兵の足取りを阻み、護るべきこの地の人々への壁となる。
(「今だけは城塞側の存在として防衛を――」)
この地のオブリビオンが事件を起こすなら、その度に何度でもこの地に赴き、止めて見せる。
だが、今はこの地を蹂躙せんと迫り来る巨悪を迎え撃つ、危急存亡の秋!
(「頼んだよ、陸井!」)
●
(「信頼してくれる相棒の期待に応えないとな」)
敵軍を対軍に長ける相棒に任せ、陸井は大将――陸遜と相対する。
「そっちが炎で来るなら、俺はこれで行くぞ」
清浄なる水が、九龍の空気をも清める如く、陸井を軸として乱舞する。
それは水練忍者の術がひとつ。膨大な数の水の苦無は、生命脅かす監獄の如く。
だが、今は悪しき炎から人々を護り、相棒を護り、城塞を護る――その為の水刃。
陸井自身も幾重にも重ねた水を薄衣のように纏えば、炎など恐るるに足らず。一気呵成に、その首級を挙げんと果敢に攻めかかる!
眼前で振るわれる剣が、更なる炎の攻めを陸井へと差し向ける。蒸発によって水をも打ち消す心算か。かと言って街に回した水を陸井の元へ戻すわけにもいかない。
陸井は狙われた部位に水を集中させることで対処する。そうでない部位の護りは薄くなり、時折ちりと肌を焼かれかけるも一瞬であれば。
自身に向けられる弾丸をも灼く陸遜の表情は、未だ笑みの形を崩さない。
「随分と自信がおありですね」
「単純な話だ。仁をもって義をなす。義によって仁を尽くす」
善も悪も秩序も混沌も、全て内包するこの城塞であればこそ。
理由など、己の信念。ただ、それだけのこと。そうして、ここの人々は生き続けている。
ならば今、陸井も、それに倣うだけ。
「……あれだけ美味い飯を作って貰ったんだ。我が義は其処に在り、ってな」
小難しい御託は要らない。
それだけで――この地では、充分だ!
炎と水が、ぶつかり合う度に音を立てて互いに消えゆく。
隙間を縫って交わされる刃。剣が一筋閃けば、銃に備わった短刃が二度三度の金属音を立てて弾き返す。
一瞬。ただの一瞬でいい。その隙を探る――陸井の鼓膜に。
「――こっちの住民は避難させた!」
確かに、相棒の声が、響いた。
まだ油断はできないけれど――そう続くも、朗報だ。
「消火は相棒の得意技だ。残念だったな、陸遜!」
炎が、揺らぐ。
動揺か、それとも誘っているのか――だが今、逃せば好機は再び訪れるかすら解らない!
(「飛び込むしかない――!」)
切っ先に、源流を生む。陸井の身体を護っていた流れを全て集中して――左胸の心臓を狙う!
「!」
剣での防御は間に合わない。
咄嗟に陸遜が身を捻って差し出したのは、己の左腕だった。
「く……っ」
肩口から、炎ではない赤が吹き出す。
ぼたりと、九龍の地に染みて、黒へと変じる。
彼は陸遜。嘗ての神君。大都督。
だが今は、過去より来たる簒奪者。その手に何も、奪わせてなるものか!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
いやー食った食った。
これだけ食べれば九龍の霊気もばっちりだな。
あとは食べた分だけ動いて、腹ごなしといこうか。
しかし、敵さんもたくさん兵隊を連れてきたな。
まずはあの兵隊たちを減らさないことには陸遜の元まで辿り着けそうもない。
ここは定番通りに前線を切り崩すのがよさそうだな。
黒槍【新月極光】で戦おう。
UC【山紫水明】を発動。槍に【水の魔力】と【風の魔力】を付与。
風に水の刃を乗せることで槍の届く範囲を広げよう。
準備ができたら、甲冑『アリアージュ』のロケットで一気に戦場を駆けて、すれ違いざまに【なぎ払い】【吹き飛ばし】で蹴散らしてやろうじゃないか。
●
――陸遜。
その名は封神武侠界の出身ならずとも、広く人の知るところ。一国の主率いる軍勢を、火計によって壊滅せしめた孫呉の大都督。
そんな強敵を前に、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は――、
「いやー食った食った」
ご満悦だった。
その充足感は傍目にもありありと見て取れる。
だが、そんな彼女も傭兵にして猟兵なのだ。当初の目的を忘れたわけでは決してなく。
(「これだけ食べれば九龍の霊気もばっちりだな。あとは食べた分だけ動いて、腹ごなしといこうか――」)
ぐるり、戦場を見渡す。
既に屍兵の多くは先に交戦を始めた猟兵たちによりその数を減らしつつある。それを受けてか、陸遜の周囲には新たな手勢が控えていた。
異世界の屍兵とは違う、恐らくは嘗ても彼が率いていた孫呉の精鋭、その亡霊。
(「しかし、敵さんもたくさん兵隊を連れてきたな。
まずはあの兵隊たちを減らさないことには陸遜の元まで辿り着けそうもない」)
ここは定番通り、前線を切り崩すのがよさそうだ――そう判断してから、動くのはすぐだった。
「母なる大地よ。我に力を――」
美しく清らかなる山水の気を、黒檀の槍へと纏わせて。|新月極光《オーロラ》の穂先が水と風の気を受けて、煌めく。
振るえば水の刃が風に乗り、炎も敵も蹴散らしてゆく。これで、突撃の準備は整った。
(「兵隊も大将もこれで、纏めて一網打尽だ」)
|強化動力甲冑《アリアージュ》に内包された、天使核が震える。やがてそれはシモーヌへと爆発的な推進力を齎す|動力《エンジン》となる!
「さあ、行くとするか――!」
限界まで引き絞り、放たれる矢の如く、シモーヌの身体が弾かれるようにして、前へ、前へ!
立ちはだかる亡霊の壁も、行く手を阻む炎の柵も、全て荒れ狂う暴風雨の勢いで、吹き飛ばして!
そして見える、迫る――大将首!
「貰っ、た――!!」
だが、防がれる。
金属音が、キンと短く甲高い音を立てる。
ならば、それすら弾き飛ばすまで!
「!」
剣が、主の手を離れて宙を舞う。
すかさず、がら空きになった胴を、薙ぐ!
「ぐ、う……っ」
仰け反る。踏み留まる。
だが、確かにシモーヌたちが与えた傷は、着実に、この難敵へと、蓄積している!
大成功
🔵🔵🔵
荒珠・檬果
陸遜!(゚∀゚*)
…こほん、失礼。三国志マニアな面が出てしまいました。
こういうところで散開されて、さらに炎だされると厄介なので。『七色竜珠』を『白日珠(ビーム竹簡形態)』へと合成。先制攻撃にてUCを使用しますね!
敵としたのは、陸遜とその配下ですから。実は九龍の人々は霧の影響受けないんですよ。
五里霧中にて惑うは敵のみ…ええ、私はビーム竹簡で曲がる水属性ビーム撃ちまくりますけどね!
そう、炎が驚異ならば。それを封じてしまえばいいのです。燃やさせはしませんよ。
しかも、赤兎馬も突っ込んでいってますね…。(負けない。ヒヒーン!)
私を守ってもくれてるようです。
なお、『戒慎将』の号は、契約の際に私がつけました
●
(「――陸遜!」)
三国時代に名を馳せた英雄、その一人。
今は猟兵の――世界の敵であると、解ってはいても。
荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)の表情は今、ぱぁと晴れ渡る空のように輝いていた。
韓進大将軍によって、三国時代の英雄たちが広く集められているとは聞いていたが、いざ本物と見えるとなると興奮を抑え切れず。
と、思わず毒気を抜かれたようなきょとんとした視線をその陸遜本人に向けられれば。
「……こほん、失礼」
三国志マニアな面が出てしまいました――と、咳払い。
(「さて。こういうところで散開されて、更に炎だされると厄介なので――」)
虹の色を宿した七つの珠――七色竜珠の彩を、今は何者にも染まらぬ白日珠に乗せて、|光線《ビーム》放つ書簡へと変じれば。
その操り手として、檬果の身に宿るのは。
(「彼の者に失策はなく。だからこそ、その献策を万全活かすには難しい――けれど今は」)
檬果は呼ぶ。深謀遠慮、故に慎ましく。その在り方を戒慎将と。
実力主義の曹魏が誇る、頭脳の精鋭が一角――戒慎将『賈詡』!
『名乗るも烏滸がましき身なれど――姓は賈、名は詡、字は今は噤まなければなりますまい。我が次代の賢者と相見える機会を与えられようとは、身に余る光栄の極み――!』
その手腕を振るう。乾いた空気を潤す水を。
炎は消し止め、無辜の民を隠し守る水を――そう、霧を。
「これは……!」
陸遜自身を護る炎すらも、消し去る。
檬果が『敵』と断じた者――陸遜とその配下の受けるユーベルコードの恩恵を、取り上げたなら。
「五里霧中にて惑うは敵のみ……ええ、私はビーム竹簡で曲がる水属性ビーム撃ちまくりますけどね!」
霧の中から荒ぶる水流の如き光線が、押し流す如く『敵』へと殺到するのだ。
(「そう、炎が驚異ならば。それを封じてしまえばいいのです。燃やさせはしませんよ」)
そして、極めつけは。
「|ヒヒーン《負けない》!」
「あれは! 赤兎馬?」
オブリビオンへと転じても三国時代の智者。その名前は知っていたか。
嘗て彼の武聖・関羽を乗せて戦場を駆り、今は檬果を主と定め千里を往く稀代の名馬!
嘶きを上げて駆け回り、主を護れと軍勢をかき乱す!
「兵団の被害は甚大……曹魏屈指の策士の献策、これほどまでとは……!」
敵軍は壊滅寸前、陸遜自身の疲弊も色濃い。
大将首の落ちる時が、すぐそこまで来ている!
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
ごちそう様、と食事を終えて
ほら、死にたくないなら逃げた方がいいわ
近くで見学したいのなら止めないけれど
傍らの男をそうあしらって
お店の外で敵に向き合うの
オブリビオンを「平らげよう」だなんて
なんて大喰らいなのかしら
なにを要求されようと|否定《ノー》と返してやって
剣と炎の攻撃を【野生の勘】で避けながら
体力を奪われても【継戦能力】食らいつく
ねぇ、あなた
美味しいお肉の料理の仕方ってご存じかしら?
塩加減? それとも焼き加減?
えぇ、どちらもとっても大事!
だけれど忘れちゃいけないのは
刺激的な|胡椒《スパイス》の利かせ方!
隙を見つけて【胡椒挽きの短銃】を撃ち込んで
あなたに胡椒を利かせてあげるから!
ほら、食欲そそる刺激的な香りに……
オブリビオンを襲う筈の兵団も思わず牙を剥く!
そうして食欲に支配された兵団は
何を要求されてももう理解|不能《できない》でしょうね
メアリにはそれがちょうどいい!
火計に足止めされた兵団を【ジャンプ】【踏みつけ】跳び越えて
陸遜のところへと跳び込んで
頭上から肉切り包丁【重量攻撃】振り下ろす!
●
生命の埒外たちが、敵味方共に戦いを始める頃。
その一員である筈の、メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)は未だに店の中にいて。
「――ごちそう様」
まるで自身も唯の客ですと。
そう言わんばかりの平静さで、手を合わせる。
「ほら、死にたくないなら逃げた方がいいわ」
「は?」
「見たでしょう、さっきの。まあ、近くで見学したいのなら止めないけれど」
呆気に取られる人買いの男を軽くあしらい、今度こそ彼女も炎と血肉の|戦場《ワンダーランド》へ。
すると戦いはもう佳境を迎えていて、同胞たちが優勢だと解る。けれど決定打がやって来ない、そんな舞台。
そこに遅れて現れた、メアリは|主演女優《ヒロイン》か、それとも。
ともあれ向き合う敵はその見目のみなら優男だが。
「オブリビオンを『平らげよう』だなんて、なんて大喰らいなのかしら」
ここは夥しい混沌の坩堝。
巣食う全ての|過去《オブリビオン》を食らい尽くすと言うなら、とんだ暴食。
「貴女方の機先を制し、我らの計画を進める為には、手段を選んでいられませんのでね。……ところで、私の目的は|同胞《オブリビオン》のみです。数が減るのはそちらにも悪い話ではない筈。どうか矛を収めてはいただけませんか?」
「お生憎様、メアリの心は決まっているの」
|否《ノー》の他に、くれてやる返事はない。
「残念です」
言葉の割にはさして残念と思っていなさそうな|容貌《かお》で、向けられた掌からうねる炎が龍にも似てメアリを襲う。
少女ひとり、丸呑みにせんと迫る|顎《あぎと》を心閃くままに躱して退けて、怪物食らいの|加害者《ケモノ》は敵の喉笛を食い千切らんと走る。
――だが、その前に。
「ねぇ、あなた。美味しいお肉の料理の仕方ってご存じかしら?」
「先程の食事が恋しいですか?」
「いいえ、もっと大きな話よ」
交わす言葉の間に、懐にソレを忍ばせる。
料理の準備が整ったなら、始めよう。
「塩加減? それとも焼き加減? えぇ、どちらもとっても大事! だけれど忘れちゃいけないのは、」
――刺激的な|胡椒《スパイス》の利かせ方!
とびっきりの笑顔と共に、胡椒挽きの短銃をプレゼントフォーユー!
隙を突いて加えたその一撃そのものに、威力はない。だが、陸遜は己に齎された違和感に、即座に気づいた。
すん、と一度鼻を鳴らし、その正体を解き明かす。
「……胡椒?」
その名の通りの胡椒の香り。人間だって、元を辿れば血と肉と骨。食欲をそそる香りをばっちり効かせたら、誰だって抗える筈がない。
それは、『|人ならざる者《オブリビオン》』の|配下《兵団》だって例外じゃない!
――がぶり!
「! ……まさか」
未だ不自由なその左の細腕に、統率をかき乱された屍兵が牙を剥く!
「食欲に支配された兵団は、何を要求されてももう理解|不能《できない》でしょうね」
元より知性理性のない者を、神器で無理矢理支配統率していたのが現状。少し本能に働きかけてやれば、この通り。
続々群がる元配下に溜息ひとつ。陸遜が剣を虚空に振るえば腐りかけの兵団は瞬く間に灰燼と帰す。
(「メアリにはそれがちょうどいい!」)
さして心乱されないのも想定の内。寧ろそれこそがメアリの狙い。
辛うじて形を保った燃え残りを踏み台にして、兎の皮を被った人狼が宙へと躍り出る。
見栄え重視の丸焼きだって悪くはないけれど、やっぱり上等なお肉は捌いて皆に振る舞わなくっちゃ!
懐へと飛び込む――そこにメアリの全てを乗せて、振り下ろすのは肉を断つ為の|包丁《やいば》!
ぞぶり、深々と肉を裂く音と共に、その身体が縦一線に両断される――!
●
驚きに見開かれる紅蓮の双眸。
しかしそれも一瞬――死にゆく間際に神君は笑った。
「――お見事!」
その口から血と共に溢れたのは、意外にも心からの称賛の言葉で。
ぱくりと開いた傷口から噴き出た炎がその身体を巻く。それでもその表情は、変わらない。
「貴方方を、侮っていたつもりはありません。けれども改めて認めましょう。貴方方は――猟兵は、確かに我らにとって、強敵であると!」
徐々にその身体も、声帯ごと灰になっていく。
それでも猟兵たちは、確かに聞いた。
「この敗北に学び、次の私は、貴方方を超えて見せましょう。尤も、次に会うのも貴方方とは限りませんが――」
そう、言い残すのを。
――やがて、炎は消えた。
大成功
🔵🔵🔵