ゴーストタウン「旧姉ヶ淵村集落」
●特に陰惨な歴史も怪しい因習も何もない村、だった
「連日暑い日が続きますが、皆様お加減は如何でしょうか?」
それとも皆様がた、夏休みと洒落こんで各世界の避暑地漫遊をなさってらっしゃいます?
仮面吸血軍曹・エフ(謎の吸血軍曹F・f35467)は黒の重い軍用コートを羽織った暑苦しい姿で、己の呼びかけに答えた猟兵たちに向かって礼を述べるや否やそう切り出した。
「シルバーレインにて銀誓館学園の学園祭に参加された方もいらっしゃるでしょうか?ふふふ、アルティメット黙示録は粉塵爆発の数少ない出番でございました……と、思い出話はこのへんにしておきましょうか。はい、本題はそのシルバーレインでの話なのでございますが」
|避暑地《ゴーストタウン》が見つかったので、涼むついでにオブリビオン退治と参りませんか?
仮面の少年は猟兵たちににっこりと微笑みかけた。
――ゴーストタウン。それは「人が住まなくなったことにより、常識が失われたことでゴーストの巣窟と化した場所」を指す言葉である。銀誓館学園の能力者たちは、しばしばこうした場所の浄化活動にもあたっているのだが。
「かつて「|姉ヶ淵《あねがふち》村」と呼ばれていた廃村がございます。廃村化した理由は実に一般的な、若者が都会へ出て過疎化の後に住んでいた老人たちが死んだり都会の家族と同居することになったり都会の老人ホームに入ったりして住む人間が一人もいなくなったからなのでございますが、さて、この場所に一体のオブリビオンが引き寄せられた結果、この村が遠からず「巨大なゴーストタウン化現象」を引き起こすことが予知されました」
ゴーストタウン現象とは、ゴーストタウンの中で地縛霊型オブリビオンが時空の歪みを発生させ、迷宮化させることから呼ばれる現象の事である。
「申し上げました通り、姉ヶ淵村は陰惨な歴史や因習なども特にないただただ人がいなくなっただけの廃村なのですが……棲み着いたのは「人斬り」のオブリビオンなのでございます」
人斬り与吉、と呼ばれるそのオブリビオンは、村の最奥にある村長の家に陣取り、村にゴーストタウン化現象を起こしている。
「人斬り与吉は「人を斬りたい」という昏い欲望が形を成した存在。実在した人物がモデルとも言われておりますが、少なくとも姉ヶ淵村とは調べうる限り因縁はございませんでした。しかし、与吉が村に陣取ってしまったことが原因なのか、村のあちらこちらに殺人鬼のオブリビオン化ゴーストたちが大量に呼び寄せられてしまっております」
大量殺人鬼たちが集ったせいか、そんな歴史など微塵もない筈の村のあちらこちらに|人間臓物《ヒトモツ》やら血だまり、バラバラになった四肢などが散乱している状態のようだ。
「まずは皆様には歴史とは関係なく陰惨な感じになった村の探索をしていただきたく存じます。陰惨な感じになったのもゴーストタウン現象の一端と言ってしまえばそういうことなのですが……和製ホラーの様式美に則ってか、ある程度村の探索をしないとオブリビオンたちは姿を現さないのです。困ったことに」
何の暗い歴史も怪しい因習もなかった旧姉ヶ淵村集落は、因習めいた廃村へと姿を変えてしまった。村を探索すれば怪しい文書なども色々と見つかる。それは姉ヶ淵村にもともと存在するものではないのだが、オブリビオンを倒すにはこの和製ホラー風怪しい廃村化した村を探索して怪しいものを色々と目にしなければならない。
「ある程度の探索が終われば、まず大量殺人鬼たちの集団……「キラーゾンビ」と呼ばれているリビングデッド型オブリビオンなのでございますが、彼らとの戦いとなるでしょう。殺意に満ちた彼らは、猟銃や日本刀などで武装しそれを振るってきます。皆様であれば、十分に太刀打ちできる相手でございましょう」
そうしてキラーゾンビたちを打ち倒せば、ようやく村の最深奥にある村長の家に陣取ったオブリビオン「人斬り与吉」と対面できるという寸法だ。
「和製ホラーに則ったゴーストタウン化した村の中では、探索、そしてキラーゾンビの討伐が終わらない限り、与吉のいる村長の家は隠されてしまって探し出すことができません。先に与吉を倒すことができないのは非常にまだるっこしいですが、どうか手順に沿って討伐をお願いいたします」
それでは、と。仮面の少年は夏だというのに涼しい顔で転移の門を開きながら言った。
「現地への転送は僕が承ります。準備が出来た方から、どうぞ、インスタント因習に塗れた廃村巡りへ行ってらっしゃいませ」
遊津
旧宙見村集落は★の都合で開けられていません。のでそれっぽい村を用意いたしました、遊津でございます。
シルバーレインのゴーストタウン浄化作戦シナリオをお届けいたします。
当シナリオは三章構成、一章冒険・二章集団戦・三章ボス戦の流れとなっております。
「一章・冒険について」
和製ホラーによくある因習めいた廃村的ゴーストタウン化した村の探索をしていただきます。
日本の田舎の村にありそうな場所ならなんでもあります。そしてそこには必ず和製ホラーっぽい出来事が起こります。そういうゴーストタウン現象です。
POW、SPD、WIZの内容にはあまりこだわりなく、よろしければ「こんなところを調べる(例:民家に上がりこんでタンスの中を調べる、神社っぽい場所を調べる、など)」と記述していただければその通りに致します。記述がなければこちらで適当な場所を用意いたします。
判定の為、使用する能力値だけプレイングに記入してくださると助かります。
※文字数が足りないという場合はユーベルコードを指定していただければその能力値で判定を行います。プレイング内にユーベルコードの使用についての記述がなければ、そのユーベルコードは使用しないかいい感じになんかします。
夏の廃村風お化け屋敷に来たと思って冒険してください。
「舞台・旧姉ヶ淵村集落について」
住民が全員年老いて死んだか都会に出ていなくなったので廃村になっただけの、なんの怪しい言い伝えも歴史も因習もなかった村ですが、ゴーストタウン化現象により和製ホラーで起こる事ならなんでも起こる怪しい廃村へと変貌してしまいました。
ボス戦敵を倒せば元の特に怪しい所は何もない廃村に戻ります。
「集団敵について」
大量殺人鬼・キラーゾンビの集団です。
詳細は二章の追記をお待ちください。
「ボス戦について」
人斬り与吉。人斬りのオブリビオンです。
村の最深奥にある村長の家に陣取っていますが、ゴーストタウン化現象により第二章までは村長の家に近づくことができません。
詳細は第三章の追記をお待ちください。
当シナリオの受付開始日時は8/3(水)朝8:31~となります。
シナリオ公開の時間によっては上記タグ・マスターページにプレイング受付中の文字が出ていないことがありますが、その状態でもプレイングを送ってくださってかまいません。
マスターページの諸注意を更新いたしました。オーバーロードなどについて、新規の記載がございます。必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『心霊スポットの謎を追え』
|
POW : 身体を張って調べる
SPD : 文明の利器を駆使して調べる
WIZ : 魔力を活用して調べる
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
木々水・サライ
【灰色】 POW
な"ん"で"俺"ら"が"行"か"な"き"ゃ"い"け"な"い"の"!!
オカルト嫌いにこういうホラー系列行かせるのってマジ最悪なんですけど!!
親父絶対許さねえ、絶っっ対許さねぇからな!!
(UC【精霊猫ライダー・チビサライ軍団参上!】発動)
\さららーい/\ふぐるにょわー/
うんもう行ってきて!! 好きなところで遊んでおいで!!
俺と砕牙ちょっとここでお前らの報告待ってるから!! ねっ!?
\しゃらーい/\にょー/(そうして古民家へ遊びに行くチビと猫)
(砕牙の声で呼ばれる)
えっ、砕牙今俺のこと呼んだ?
……えっ。
…………えっ??
いや、俺は今お前が呼んだから……えっ??
……勘弁してくれェ!!!
霧水・砕牙
【灰色】 POW
な"ん"で"俺"ら"が"行"か"な"き"ゃ"い"け"な"い"の"!!
絶対俺らオカルト嫌いっていう理由で選ばれてるよねぇ!?
やだもおおぉーーー!! 俺ホント嫌なのーーー!!
っていうかサライのチビちゃん達胆力あるね!?
普通お前の複製義体ならお前と同じでオカルト嫌いじゃない!?
あっ、はい、チビちゃんのほうが優秀ッスね!!
お前のほうが雑魚とか微塵にも思ってないです!!
いや思ってるけど!!
(サライの声で呼ばれる)
んえ? サライ今……えっ?
俺別に呼んでないぞ。逆だろ、お前が俺を呼んだろ?
…………えっ??
いや、俺もお前が呼んだから振り向いて……え??
……やだああぁぁーーー!!!
●きこえる、聲
「「な゛ん゛で゛俺゛ら゛が゛!!行゛か゛な゛き"ゃ゛い゛け゛な゛い゛の゛!!」
木々水・サライ(|白黒猫使い人形《モノクローム・ドール》・f28416)と霧水・砕牙(|黒の風《プレート・ヴェント》・f28721)は揃って大絶叫した。
「オカルト嫌いだって言ったじゃん!!俺らにこういうホラー系列行かせるのってマジ最悪なんですけど!!」
とサライが叫べば、砕牙も負けじと声を張り上げる。
「絶対俺らオカルト嫌いっていう理由で選ばれてるよねぇ!?」
「親父絶対許さねえ、絶っっ対許さねぇからな!!」
「やだもおおぉーーー!! 俺ホント嫌なのーーー!!」
渾身の叫びが誰もいない田舎の廃村にこだましていった。そう、この二人、いやだいやだ怖い怖いと言いながらなぜかもう村に来ているのだ。だが待って欲しい。グリモア猟兵はお願いしただけで門を開いただけで別に強制はしていない。ちゃんと準備をしてから来いとも言っている。実際に話を聞いた猟兵が転移先に来るかどうかは任意の筈である。筈であるのだが。
どうやらサライの言う「親父」たる人物が一枚噛んでいるのだろう。怖がりにホラー案件に無理矢理行かせるなんてなんてひどいやつなんだ。とんでもないろくでなしにちがいないね!
さて、叫べど呼べど罵れどここは廃村。インスタント因習に塗れた和製ホラー要素てんこもりな村である。とっととオブリビオンを倒して帰ろうにも、親玉は村をひとしきり探索しないと出てこないという仕様である。そう、ホラーゲームにも探索度が深まらないと出てこないボスなんてよくあるある。これは仕様なのである。
ひとしきり叫んで真っ白になると、サライと砕牙はのろのろと行動を始めた。そう。もう来てしまったとて怖いものは怖い。嫌なものは嫌だ。となれば、もうのろのろ動くしかできない。
「来い、チビ共……いえ、今回ばかりは今すぐ来てくださいマジでお願いします!!」
サライが自身の【|精霊猫ライダー・チビサライ軍団参上!《ガイスト・カッツェ・シュヴァルツヴァイス》】を発動させる。発動させた、のだ、が――……
「あ、あれ……ちびどもー?ちび様たちー!?」
「ねえちょっと待ってサライ!? 何で出てこないの!?」
「知らねえよ、俺確かに呼んだもん!!」
半泣きになるサライと砕牙。そんな二人の上に、彼らは降ってきた。
「「「さーららららーい!!」」」
「「「ふぐるにょわー」」」
サライのちまこい複製義体・チビサライ&変な声で鳴く精霊猫たちの混成軍団である。
「さっらー、しゃらららー、らいらーい」
「え? うん、俺がレベル110もあるから悪い?」
そう。【|精霊猫ライダー・チビサライ軍団参上!《ガイスト・カッツェ・シュヴァルツヴァイス》】はレベル依存のユーベルコードである。サライのレベルとかっちり同じだけの秒数が経過しなければチビサライ&精霊猫軍団は来たくても来られないのだ。サライのレベルは110。サライと砕牙が半泣きになっていた時間、それは短くも長い110秒間だった。
「ばかぁ!!ばかばかばかぁ!!」
「うるせーな!!いいじゃん来たんだからー!!」
「しゃらー。しゃららららーい」
「にょわーん」
しょうがない|奴ら《オリジナル及び召喚主とそのお友達》ですねー、とめいめいに顔を見合わせるチビサライたちと精霊猫たち。どちゃっと増えたのでその場の怖さはだいぶ軽減された。
「|さっらー、らいらい?《ねーねーもういい? 探索始めるよ?》」
「にょああ」
「うん、もう行ってきて!好きなところで遊んでおいで!!俺と砕牙、ちょっとここでお前らの報告待ってるから!!ねっ!?」
サライは来てくれてありがとうチビ様たちと反射的に深々とお辞儀する。だって怖い中に現れた地獄に仏みたいな存在だし。
「「「|しゃらーい《いってきまーす》!!」」」
「「「にょー」」」
精霊猫に乗ったチビサライたちはあっという間に散っていった。
「あ゛っ待って!? 何体か残って!? 俺たちをここに二人っきりにしないでぇ~~~~!?」
サライの声は届かない。チビサライたちは全員残らず精霊猫に乗っていなくなってしまったのだった。
「あああ……」
「あのさぁ……サライのチビちゃんたち、胆力あるね? お前の複製義体なんでしょ?」
「そうだけど、なんだよ?」
「いやー……だったら普通お前と同じでオカルト嫌いにならない? なんであの子らあんなに勇気あるの?」
「俺が勇気ないみたいな言い方するなよ」
「別にチビちゃんの方が優秀ッスねとかお前の方が雑魚じゃんとか別に微塵にも思ってないけどさぁ?」
「いや思ってんなら思ってるって言えよォ!?」
「思ってますけどー!?」
「コンチクショー!!返す言葉もねえよ!!その通りだよクソが!!お前だって怖いだろ
!」
「怖いよ!」
「「おばけこわい!!」」
再び二人っきりにされたサライと砕牙は叫んだのであった。
そうしてチビサライたちを待つことどれぐらい経ったか。
「おい」
「あ? なんだよ」
耳元で聞こえた声に、サライは振り向いた。
「……えっ?」
砕牙は思ったより遠い所にいた。ちょっとこう、とても耳元では喋れない程度の場所だ。
砕牙は砕牙で恐怖を紛らわすために聞こえるセミの鳴き声にインスピレーションを得てセミとカブトムシでカップリング妄想していた。互いに同じ地中にいた幼馴染への恋とかそういう感じの。
そんな砕牙の耳元で、
「――おい」
突然囁かれ、砕牙もまた振り向く。
「んえ? ちょっと邪魔しないで……あれ?」
砕牙が思ったより遠くで、サライは振り返って砕牙の事を困惑した顔で見ていた。
「えっ、砕牙今俺のこと呼んだ?」
「俺別に呼んでないぞ、いま七日目のセミが遺していくカブトムシへの想いに思いを馳せてたから……逆だろ、お前が俺を呼んだんだろ?」
「なにしてんだおまえ、いや……えっ?」
「…………えっ? いや、俺はお前が呼んだから……えっ?」
「…………えっ? いや、俺もお前が呼んだから振り向いて……え??」
互いに自分は相手を呼んでいない、と主張する二人。だが彼らは確かに聞いているのだ、自分を耳元で呼ぶ「おい」と言う声を。
きっかり110秒間固まって、サライと砕牙は同時に叫び声をあげた。
「……勘弁してくれェ!!!」
「……やだああぁぁーーー!!!」
なお、その後チビサライたちが古民家などで見つけてきた怪しい文書などの方はまあぶっちゃけると突然発生したインスタント因習でありこの村の歴史に何か関係あるわけでもないので割愛させていただくことにする。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
暗都・魎夜
pow
【心情】
最近、とみにゴーストタウンの数も増えてきたよな
オブリビオンが乗っ取ってるケースも多いし、『オブリビオンタウン』に名前が変えられないことを切に祈るぜ
【行動】
「情報収集」「失せ物探し」で祠等を探す
時折、何かがみている気配を感じて振り向く
スポドリをイグカに収納しておく
「いかにも田舎って感じで、落ち着いた所だぜ。戦いが終わったら、こういう場所で悠々自適ってのも悪くないのかもな」
「? 今、誰かが見ていたような……気のせいか」
見つけた祠で近くにあったお地蔵様の像を数える
「あれ? さっきと数、ちがわないか?」
この祠に人斬り与吉に関わる伝承とかあるのかね
「与吉の祟りを恐れて祠を立てた」みたいな
●ころがる、目
「最近、とみにゴーストタウンの数も増えてきたよなあ」
暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は手にしたスポーツドリンクをぐいと一口飲んで、キャップを閉める。
魎夜には別に虫の種類に詳しいわけではないが、多分なんかのセミの音だと思えるみんみんという声が静まりかえった村中に響いていた。
「オブリビオンが乗っ取ってるってケースも多いし、『オブリビオンタウン』に改名されないことを切に祈るぜ」
魎夜が現役の銀誓館学園生として前線を突っ走っていた頃と比べ、ゴーストタウンの数は格段に増えたと言えよう。それは平成の頃に比べて廃墟が増えた場合、新しい廃墟が古くなってゴーストを呼び寄せてしまった場合などもあるだろうが、ゴーストがオブリビオンとなった場所では能力者である後輩たちには手が付けられなくなったということも多い。こうして、浄化の依頼が魎夜たち猟兵に回ってくるのだ。
「あー、まずはどこに行くか……」
飲みかけのスポーツドリンクをイグニッションカードに収納して、魎夜は廃村の道をぶらぶらと歩く。
「いかにも田舎って感じがして、落ち着いた所だぜ。戦いが終わったら、こういう場所で悠々自適ってのも悪くないのかもな」
確かに自然に包まれた良い村であっただろう。人が一切いなくなったことで生い茂りっぱなしの雑草や、人の手が入らなくなって自然に帰りつつある、消えかけの田んぼなどに目をつぶれば、の話だが。
誰もいないのに言葉が声に出てしまうのは、自分が今たった一人であることに由来するのかもしれない。黙ってしまえば、そこは否応なしに無音になる。かと言って、自分以外のいる筈のないナニモノかの音が聞こえてくるのも嫌なものだ。
「……ん?」
――今、誰かに見られていたような。
「気のせいか……?」
能力者として第一線を突っ走っていた魎夜は、異質な感覚には敏感だ。けれど、この村がすでに廃村で人がいないということは既に知っている。それでも、村の奥へと歩みを進めていくごとに、一歩ごとに、視線を感じる回数は多くなっていく。何度も振り返っては、その度に人がいないことを確認した。
「ああ、なんだ……気持ち悪いな、見てるんならこっちにもツラぐらい見せろよ、ったく」
そう呟くと、足元にゴロゴロとゴルフボール大の何かが転がってきた。よく見なくてもわかる。眼球だった。おそらく人間の。ミミズめいた視神経も繋がっている。
眼球は「悪かったな、見せたくてもツラがねぇんだよ」と言いたげな視線を魎夜に送ってきた。魎夜は思わず「お、おう……悪かったな……?」と謝罪する。
ころり、ころころ。ごろり、ごろごろ。ころん、ごろん、ごろごろ。
その後も眼球であろうと思しき球体の転がる音が視線と同時に魎夜の後ろを|尾行《つ》けてくる。その間に長い戦った日々の中で培った情報収集能力でもっていくつかの民家を漁り、『どうやらこの村の外れには何かを祀った祠があるらしい』という情報を得た。
「……まあ、これもゴーストタウン化現象で作られたインスタントの因習なんだろうが……おお、あったあった、祠」
一、二、三、四、五、六。向かい合わせに立てられた地蔵の視線を浴びて、祠を開く。そこにあったのは。
「こいつぁ……スクラップブック、か? ……古文書とかじゃあねーのか?」
手にしたスクラップブックは殆どのページが赤黒い粘着質の何かによってくっついていて開かない。それが何かは想像に難くなかった。敢えて無視して開ける場所を開けてみれば、そこには戦前のものと思しき新聞記事の切り抜きが一枚だけ貼ってあった。
――|姉ヶ淵《あねがふち》村下流■■■川にて臟■發見さるる
腹を捌き■五臟を川に流し■と思わるる かくも無■な所業 鬼の■業か
被害者は■■に縫ひ付け■■ていた■■より與吉■■人物と思わ■る
村人は沈■を■き■■■■■■■■――
そこから先は、赤黒くねばついたモノで汚されて読み取ることができない。
「與吉……与吉、だよな? この村で殺された被害者とでもいう気かよ? 臓物を川に流された、か? その祟りを恐れて祠を建てた……みてーな筋書きかねぇ」
もはやそのスクラップブックからはそれ以上読み取れるものはない。丁寧に元あった場所に戻し、場所を変えようと振り向いた魎夜の目に入ったのは――
「あれ……? こんなところに、なかったよな?」
一、二、三、四、五、六……七体目の地蔵が視線を魎夜へと向けていた。魎夜は地蔵へと足を向ける。他の六体よりも黒ずんだそれに触れようと手を伸ばすと……
ザァァッ!!
「う、わ……!?」
地蔵が崩れた。地蔵を象っていたのは、蟻、蜂、飛蝗、蝶、百足……様々な虫の死骸であった。
いつの間にか着いてきていた眼球たちも消えている。魎夜は頭を掻くと、立ち上がり、次の場所を探索しようと歩き出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ絡み歓迎
曰くの無いモノに曰くがツき、枯れ尾花が幽霊にナるのも怪談だろう。
ともあれ、オブリビオンが絡むなら放置するわけにはいかない。
「先ずはどうするかな」
・行動【POW】
『興味本位で曰く付きの場所を写真で撮っていたら怪異が写っていた』というのもホラーの定番だろう。
あまり屋内には入らず、村の通りをブラブラと歩きながら携帯電話のカメラで適当に廃村の風景や家屋を撮っていく。
ブラブラと散策する体を装いつつ、意識はいつでも戦闘できるよう警戒は緩めず、家屋の位置や周囲の地形状況、死角、戦い易い場所等確認しておく。
ある程度散策したら、日陰で一息付きながら画像を確認。
(……さて、何が写っているかな)
●うつりこむ、影
(曰くの無いモノに曰くがツき、枯れ尾花が幽霊にナるのも怪談だろう)
上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)はうだるような暑さの中、崩れかけた田んぼ脇の畦道を歩きながらそう思った。
かんかん照りの雲一つない炎天下、修介は流れる汗でTシャツを湿らせながら歩いていく。
(……ともあれ、オブリビオンが絡むなら放置するわけにはいかない)
「――先ずは、どうするかな」
げこげこげこ、とカエルが鳴いた。この暑いのに元気なものだ、と振り返った先には、綺麗な湧水がある。名も知らぬ夏の花が寄り添って咲いていて、ここがインスタント因習に塗れた廃村だと思わなければ綺麗なものだ。つい写真を撮ろうとスマートフォンに手を伸ばして、ふと気づく。
(そういえば、『興味本位で曰く付きの場所を写真で撮っていたら怪異が写っていた』というのもホラーの定番だな)
それに思い至った修介は村の中を歩き回りながら、スマートフォンのカメラで適当に村の風景や家屋を撮影していくことにした。暗がりからの襲撃を警戒して、出来る限り屋内には入らない。直射日光にくらりと眩暈がしたが、根性で耐える。
――パシャ、パシャリ。
ぶらぶらと散策するていを装いながら、その実修介の身体と意識はいつでも戦闘に入れるように警戒を緩めてはいなかった。そうして鋭敏に感覚を研ぎ澄ませながら、家屋の位置、周囲の地形、状況、死角――戦い易い場所を確認しておく。
何せ、村の探索が終わればオブリビオンが出てくると言う。ならばこの散策は、事前に戦場を制しておくに十分な事前行動でもあった。
――パシャ、パシャ、パシャリ。
(それにしても……暑いな)
もう一度くらりと眩暈に襲われたところで、これはそろそろ危ないと日陰へと移動する。村についてからのフォトメモリは十分に溜まっていた。
(……さて、何が写っているか――)
アルバムを起動させた修介は息を呑んだ。思わず外の光景と見比べる。そこにはカンカン照りの太陽に照らされた廃村が変わらず存在しているばかりだ。
そう。直射日光に照らされた村の中をずっと撮影してきたのだ。だというのに、修介の持つスマートフォンに写された村の光景は今にも大粒の雨が降ってきそうな曇り空で、雲の影になって被写体がまともに写っていない状態だった。
「はは、これは……」
やってくれる、と修介は思わず乾いた笑いを零す。さらに画面をスライドさせて行けば、また奇妙な写真が写っていた。
修介は自撮りなど一度もしていない。けれど写り込んでいるのは明らかに修介の肩、顔の一部分、どれもはっきりとはしないが、鏡の中に何度も見た頬の傷が写っているのを見れば、修介自身を写したものであることは明白だ。これは修介の意思で写したものではない。スマートフォンの中に悪意が籠もっているようで、厭な気分になるが、それでも写真を一枚一枚確認していく。修介の一部が写り込んだ写真の背景はどんどんと変わる。そのうちに、奇妙な影が写真の中に移りこんでいた。
(これ……は、女か? 白い着物を着た、長い髪の……)
はじめ、女は地面に伏していた。そしてそのまま、修介の後を着いてきていた――白い着物を泥でドロドロに汚し、地面を這いずりながら。
画面をスライドさせる。修介の後ろで、女が這いずる。
画面をスライドさせる。修介の後ろで、女が立ち上がろうとする。ああ、足がないのか。膝から下がぶった切られた女は、立ち上がれずに修介へ手を伸ばす。写真の中の修介は、既に日陰の中に入っている。動いていない。けれど写真の中の女は一枚ごとに動いて、上半身だけで這いずり腕を引っ掻けて上へとのぼり、修介の背後から、その首に手を回して――
「…………!!」
修介は思わず後ろを振り返った。そこには朽ちかけた鍬と鋤とが立てかけられているだけで、誰もいなかった。
――耳元で、女の笑い声が聞こえた気がした。
大成功
🔵🔵🔵
ディル・ウェッジウイッター
夏の廃村探索ですか
楽しそう…ではなく少々緊張しますが誠心誠意尽くして参りましょう
荒れ果てた廃村。夏ですねぇ
既に誰かの叫び声が聞こえる気がしますがそれはそれ
家屋の探索を行います
こちらのお宅は舶来品が揃ったお宅ですね
(ポルターガイストで飛んできた物を器用にキャッチ)
あら、珍しい。たん茶じゃないですか。流石にもう飲めなそうですが
そう言えば廃村でお茶を飲んだことは無いですね。ここは一杯…
背後から人の気配が…
お客様ですか?只今お茶をしようと思っていたのですがご一緒にいかがです?本日の茶葉は…!(目をきらきらに輝かせ)
…いなくなってしまった、残念
やはり押し付けては駄目ですね、ええ
※アレンジ、連携可
●のびる、手
「ふぅ。……暑いですね」
ディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)はかんかん照りの太陽の下、流れ落ちる汗をハンカチで拭った。
夏の廃村探索、少しばかり楽しそうという気分で転移の門を潜ったはいいが、今は八月。遮るもののないド田舎の廃村は、暑くて仕方ない。
「この、うだるような暑さも夏のホラーにはつきもの……と考えれば、少し緊張しますね。誠心誠意、尽くして参りましょう……あら、これは|人間臓物《ヒトモツ》」
ディルの足元に、生あたたかい風と共に転がってきたのは、砂と血に塗れた大腸と小腸だった。それがタンブルウィードのように道の端まで転がって崩れかけた田んぼに転がり落ちるのをを確認すると、ディルはふぅ、と溜息を吐いて空を見上げる。
「いやあ、夏ですねぇ」
転がる臓物に夏を感じるディル。臓物も今はまだ夏の季語ではないがもしかしたらいつか歳時記に載るかもしれない。
ぎゃああああ、遠くの方で悲鳴が聞こえる。まるで絞め殺される雌鶏のような声だった。
「まあ、これもこれでホラーらしいでしょうか」
悲鳴を割と華麗にスルーして歩き出すディル。実はディルにはどうせ廃村に来たならば行ってみたい場所があったのである。
「……着きました」
何の変哲もない二階建ての一軒家。埃と何かの汚れが溜まっている為靴のまま玄関を上がり、居間を通って台所へと上がる。そう、ディルはティーソムリエであった。ティーソムリエならばやはり、知らない場所に来たならばその地のお茶を探し出し味わってみたいものである。それが例え廃村の廃屋であったとしてもである。
「ああ……こちらのお宅は結構調理用具もそのままにしてありますね。舶来品が揃っていて……グリモア猟兵さんのお話では、ただ人がいなくなっただけという話でしたが。お家によっては片づけられなかった事情もあったのでしょうか」
ひゅん、ぱしっ。ポルターガイストで飛んできた箱をノールックでキャッチするディル。
そうして手にした箱を見て、ディルの顔は喜色に染められた。
「あら、珍しい。|磚茶《たんちゃ》じゃないですか」
|磚茶《たんちゃ》とは、 紅茶や緑茶などを蒸して型に入れ、煉瓦状に圧縮して干し固めた、固形のお茶の事である。中国やモンゴル、チベットなどで飲まれているものだ。
「一杯いただきたいですが……さすがにこれはもう飲めなさそうですね。残念です。が……こちらの茶葉はまだ大丈夫なようで」
戸棚からまだ飲めそうな茶葉を見つける。さすがのディルであっても廃村でお茶を飲んだことはない。ないとなれば経験したくなるのが人の性だ。
ディルの持つ魔法瓶には紅茶にちょうど良い95度を保った軟水のお湯が入っている。紅茶を嗜むためのティーセットも勿論ある。お湯でポットを温め一度お湯を捨てると、ポットに茶葉を入れて一気にお湯を注ぐ。気泡と一緒に茶葉がぶわりと浮いてくる。ふたを閉め蒸らしている間に、気配を感じてふと振り返ると、台所から見える居間のテーブルの前に、半透明の老女がティーカップを持ってにこにこと座っていた。
「この家の方ですか? 只今お茶をしようとしていたのですがご一緒しても? 本日の茶葉は……」
半透明の老女はにこにこと柔和な笑みを浮かべたままだ。時計が蒸らし時間を終えた合図を告げる。カップにお茶を注ぎ終えると、ディルは老女と向かい合うように椅子に座る。
「……美味しいですねえ」
そうでしょう、そうでしょうと言いたげに微笑む老女。その微笑みを見て、くらり、ディルの視界が揺れる。眩暈の後、ディルは――
(ここは……先ほどのお家の二階、ですよね……?)
階段を上がった上、廊下に立っていた。目の前には、今まさに階段を降りようとする先ほどの老女がいる。
ディルの体は動かない。そのディルをすり抜けるように、静かに音を殺して女が老女の背後に立った。真正面から顔を見たわけではないのに、女の顔がわかった。どことなく老女に似ているところを見ると、娘か、孫娘か。
女の心も、手に取るようにわかった。女は疲れ切っていた。不便な田舎で老女の介護をし続けることにだった。ごめんねお婆ちゃん、でも私は限界なの、そう何度も女は考えていた。
そして、女の両手が老女の背中に伸びて――
動けないディルには、それを止めることも出来ずに、老女の身体は階段を転げ落ちて――
「……!」
気づけば、ディルの身体はテーブルに座っていた。半透明の老女の姿はもうなかった。まだカップの中の紅茶は冷めていない。
「今のも、ゴーストタウン化現象が生み出した幻影……実際には存在しない物語だったのでしょうか……? それとも……」
紅茶の水面に映る自分の顔を見つめ、そしてディルはそれを飲み干した。
「いいえ。こんなことは起こらなかった。今のは幻。実際には存在しなかった幻影です。私はそう望みます」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『キラーゾンビ』
|
POW : サーティスリーデス
【殺戮への欲望を解放した姿】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 猟銃乱射事件
レベル分の1秒で【なぜか弾の尽きない猟銃】を発射できる。
WIZ : 殺戮衝動
【殺戮への欲望】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちはめいめいに、廃村の中の様々な場所でこの村のインスタント因習、ホラー現象を体験した。
彼らがその場所を離れようとした時だ。
猟兵たちそれぞれの前に現れたのは詰襟の学生服に身を包み、猟銃と日本刀を手にしたリビングデッド型オブリビオン……「キラーゾンビ」であった。
詰襟のリビングデッドは猟銃を構え、あるいは日本刀を抜き、じりじりと猟兵に迫ってくる。
どうやら、じめじめとした夏の和製ホラーの時間は終わりのようだ。
ここから先は、血飛沫飛び交うスプラッタホラーの時間である――!!
========================================
第二章 「キラーゾンビ」 が 現れました。
おめでとうございます。猟兵たちの探索の結果、村の探索は終了し、この村に呼び寄せられた大量の大量殺人鬼「キラーゾンビ」たちが猟兵の前に現れました。
以下に詳細を記します。
「戦場について」
猟兵のみなさまが第一章で探索した場所、そこが戦場となります。
共通して時刻は真昼であり、暗闇ではありません。太陽は充分に出ています。
廃村の為、どこで戦っていても一般人などは存在しません。全力で戦って問題ありません。
基本的には廃村内は開けており空中戦も可能な場所ですが、第一章にて屋内にいた方は屋内で、狭い場所にいた方は狭い場所で戦うこととなります。
(プレイングに屋外に出ると記入いただければ屋外に出ることも可能ですが、戦闘を行いながら、あるいは攻撃を許しながら全力移動する形になります)
基本的にそれぞれ第一章で探索していた場所によって戦闘に利用できるものが歩かないかは変わってくると思います。何かを使用したい場合は「使えるものは何でも使う」といった曖昧な表現ではなく、「何を」「どうやって」使うか明記してください。
また、既に戦闘が開始された状態でリプレイが開始されるため、事前になにか行動しておくといったことはできません。(「体の「パフォーマンス」を良くしておく、など」)そう言ったことを行う場合は、戦闘と並行して行う形になります。
この戦いでは別の場所にいた他の猟兵との連携は基本的には取れません。
(プレイヤー様同士で連絡を取り合ったうえでチームとして活動するプレイングを書かれた場合は、合流できたことに致します)
また、この章から参加された猟兵の方は、転移された最初の場所に一番近いかんかん照りの遮るものの何もない村の中心部での戦闘になります。
「キラーゾンビについて」
猟兵の皆様一人一人の前に、一人につき三~四名が現れています。
(チームを組んでいた場合は一人につきその分増えます)
リビングデッド型オブリビオンですが、通常の人間並みの俊敏さです。
猟兵がPOW・SPD・WIZのユーベルコードを使わずに攻撃した場合でも、猟銃、日本刀によって攻撃してきます。やられっぱなし・棒立ちにはなりません。
第二章のプレイングは8/10(水)朝8:31から受付開始となります。
時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
マスターページを確認したうえでプレイングを送信してください。
それでは、廃村に棲みついた親玉を引きずり出すためにも、リビングデッド型オブリビオンの集団を討伐してください。
ディル・ウェッジウイッター
アドリブ歓迎
二杯目をと思っていたところでしたが、皆様もいかがでしょう?
おや、いらない。それは残念
私あまり荒事は得意ではないのですが…
お茶の邪魔をするのならばそれ相応の対処はさせていただきます
とはいえですね、そんな積極的に戦えるタイプではございませんので、ええ
UCを使い今のお宅を迷宮化
あとは相手が幻覚に囚われている間に家具などの後ろや別の部屋に退避
攻撃や流れ弾が当たらないように気をつけながら彼らが大人しくなるのを待ちます
彼らが昏睡に陥ったらトドメを刺さねばですが…ゾンビの急所とは一体どこなのか
ひとまず頭首胸にカトラリーを投擲
それでも倒れないようでしたら急所がどちらかお伺いするとしましょう
●終わらない宴をどうぞ
『――ギギギギギィ!!』
「あら、いらっしゃいませ」
真昼の一軒家に――廃屋であるのだが――土足で上がり込んできたキラーゾンビたちに、ディルは――彼自身もまあ土足で上がったのだが――優雅に会釈をした。
「二杯目をと思っていたところですが、皆様もいかがでしょう?」
『ギ。ギィ……ギ!コロス!コロスゥゥ!』
「おや、いらない。それは残念」
『コロス、コロス、ギヒヒヒヒィ!!』
猟銃をぶっ放してくるキラーゾンビに、ディルはテーブルを盾にする。
「むぅ。私、あまり荒事は得意ではないのですが……お茶の邪魔をするのであれば、それ相応の対処はさせていただきます」
――とはいえ。ディルは自身がそれほど積極的に戦えるタイプではないことを十二分に自覚している。ゆえに、先ず彼が行ったのは――……
屋内に漂う強く濃い紅茶の香り。香水のように強いそれは、先ほどまでカップで湯気を上げていたもののそれではない。キラーゾンビたちがそれに気付けたのか、彼らは紅茶の香気漂う迷宮と化した一軒家の中にいた。ディルのユーベルコード、【フレグランス・ラビリンス】によるものである。
しばしキラーゾンビたちは迷宮を彷徨う。香気で出来た迷路であるがゆえに、壁などというものはなく、見た目は普通の一軒家だ。しかし、襖を開けどドアを開けれど、似たような廊下と畳敷きの部屋が続くばかり。ちょっと暑さで脳味噌が腐敗したキラーゾンビたちにはとうてい耐えられるものではない。しかしこの迷宮は非常に頑丈になっており、猟銃を撃とうと刀で斬りつけようと壊れるものではない。
――しかし、されど彼らは見つけた。ドアを開いたその先に、こちらに背を向けたままの色男の姿を。
『ギヒッ……ギィヒヒヒヒヒヒィ!!コロス、コロスゥゥ!!』
キラーゾンビたちは喜色を浮かべてその根源に根差した殺戮への欲望を増強させる。速度、筋力、そのほかあらゆる能力を六倍に膨れ上がらせて、キラーゾンビの日本刀は色男の左胸を背中から貫いた。
「ご、ぽっ……」
色男、ディルの口から血の塊が吐き出される。心臓を裏側から刺せば、普通の人間ならば肋骨に邪魔されることなく確実に殺せる。しかしディルが猟兵であるからか、彼は微笑みを浮かべたまま強引に振り返る。当然、心臓に突き刺さったままの日本刀は彼の肉をずぷずぷと斬り裂いていく。
「あら……今、何かしましたか?」
にこりと色男は微笑んだ。別のキラーゾンビがその脳天にライフル弾を浴びせかける。西瓜割りのように色男の頭がぱぁんと弾けた。それでも、彼は立っている。
『ギィッ、ギィィィ!!ナゼダ、シナナイ、コロス、シネ、ナゼシナナイィ!!』
キラーゾンビ全員で男の体を四方から突き刺し、斬り裂き、ズタズタに引き裂いても――男はその容色を損なうことなく、血に塗れながら嫣然と微笑んでいた。
「ふふふ、もっと、もっと、どうぞ。ご存分に、堪能下さい……?」
――そして、最初のキラーゾンビが衝動を解放してディルの心臓に刃を突き立ててからたっぷり99秒後。
「ふぅ。やっと時間切れですか」
ディルは食器棚の影から顔を出した。勿論、その体には傷一つない。彼の視線の先には、ユーベルコードの効果時間が切れて昏睡状態に陥ったキラーゾンビたちが転がっていた。
「さて、どのような夢を御覧になっていたものやら知りませんが、昏睡の時間は一分間だったはずです。早めにとどめを刺してしまいませんと」
そう、キラーゾンビに殺されていた、いや、どれほど傷つけても殺されなかったディルは【フレグランス・ラビリンス】によってキラーゾンビたちが見ていた彼らの見たい幻覚である。大量殺人鬼の|ゴースト《オブリビオン》であるが故、人を殺し続ける事が彼らの原初の欲望だ。そこに一人しかいないのならば、殺せど殺せど殺し尽くされない幻像の出来上がりである。
さて、ディルは自身のカトラリーからナイフとフォークを取り出し、折れ重なるキラーゾンビたちの前に立つ時間は一分間。彼らが目を覚ましたら、また最初からやり直しだ。
「ゾンビの急所とはいったいどこなのか……ひとまずここ、ここ、このあたりでいかがでしょう」
心臓に、首に、頭部にナイフとフォークが突き刺さる。ゾンビの急所はどこなのか、そもそも急所があるのかどうかは各作品の作家及び監督に左右されるところだが、キラーゾンビは割と一般的なタイプ―ー脳髄をぶち抜くことで死ぬタイプのゾンビだったようだ。バタリアンタイプだったら危なかった。頭にフォークが突き刺さったゾンビがどろどろの血の塊になって溶けてゆき、そして畳のシミにもならずに消えていった。
「なるほど。起こしてお伺いする手間が省けました」
ディルは手にしたナイフとフォークを、残るキラーゾンビの脳髄に投げつけ突き立てていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ連携歓迎
この後に本命がある。
前座で大きく消耗するのは避けたいが……。
「……さて」
調息、脱力、戦場を観据える。
敵の数と配置確認。
UCは基本防御重視で、攻撃時のみ攻撃重視に切り替える。
先ずジグザグに走って銃弾を回避しながら近くの家屋まで誘引。
室内に飛び込んで姿を隠しつつ、家屋を遮蔽物、屋根伝いに頭上からの奇襲、周囲の散乱物を投擲して意識誘導等に利用して被弾、包囲を極力回避しつつ各個に撃破していく。
敵がUCによる暴走状態に入ったら一旦攻撃は控え、他の敵の前に誘引して同士討ちを狙う。
倒し切れないようならダメージ覚悟で懐に飛び込んでラッシュを掛けて一気に仕留める。
●殺戮の刃、必殺の拳
修介の前で、現れたキラーゾンビたちの先頭にいた一体が日本刀を抜いた。そのまま汚らしい笑い声をあげながら修介の脳天目掛けて振り下ろす。
『ギヒッ、ギヒヒヒヒィ――コロス、コロスコロス、コロスゥ!!』
修介は咄嗟に手にした鍬の柄で刃を受け止めるが、長らく放置されていた農具は木の部分が傷んでいたのであろう、不気味に青白く磨き抜かれた刃によって両断されてしまった。
「く……っ!」
(この後に本命がある、前座で大きく消耗するのは避けたいが……!)
鍬を投げ捨て、息を調える。体から力を抜いて、戦場を観据える。現れたキラーゾンビたちの数は三体。先頭の一体がリーダー格で、残りの二体は補佐役のようだ、と瞬時に判断する。
「何にせよ、此処では分が悪い。場所を変えさせてもらうぞ」
キラーゾンビが振り抜いた日本刀を頭を低くして躱し、修介は走り出す。獲物が離れたと見るや、後ろ二体のキラーゾンビが交互に猟銃から弾丸を放ってくる。それをジグザグに突っ走ることで避けながらも、完全に引き離すことはせず――修介は三体のキラーゾンビを、近くにあった家屋まで誘導することに成功する。開け放たれた縁側からどこかの家の居間に上がり込み、食器棚を引き寄せてライフル弾の盾にする。棚は傾き、まだ残っていた食器が床に落ちてがしゃんがしゃんと割れ砕けていった。
修介を追って屋内に上がってくるキラーゾンビたち。修介は食器棚から数枚の皿を引き抜くと、キラーゾンビたちに向かって投げつける。無論、何の変哲もない皿が一枚二枚ぶつかったところで倒せるなどとは思っていない。だが、意識を誘導し、被弾を極力控え、包囲されないよう、敵に有利な陣形を取らせないようにするには十分に効果的だった。
(どうする、このまま二階まで引きつけるか……否、この間取りならば、この家は廊下が長すぎる。広めの場所で決着をつける!)
修介は立ち止まり、脱力する。そして防御力重視の構えを取ると、敢えて敵陣の真ん前へと飛び出した。
『ギヒィ、ヒヒヒヒヒャァ!!シネ、コロス、シネェ!!』
腐敗した顔面に喜色を浮かべてキラーゾンビたちが得物を貪り喰らわんと、殺戮への欲望を解放した姿へと変化する。それを認識した瞬間、修介はその場でぴたりと息を殺し、動きを止める。血に塗れた白刃が振りかざされて――。
『ギィィ!?』
『ガァァァ!!』
キラーゾンビの日本刀が、後ろにいた別のキラーゾンビの首を刎ねていた。頭部を失いながら、倒れ込むキラーゾンビが放った猟銃からのライフル弾がまた別のキラーゾンビの脳天に腐った血の花を咲かせる。
――キラーゾンビの変化はユーベルコードによるものだ。それは超攻撃力と超耐久力を得る代償に、理性を失わせるもの。元より腐敗した脳髄に理性などあるかどうかは分からないが、「速く動くモノを無差別攻撃し続ける」代償があることを、修介は知っている。故に修介は彼らに敢えてユーベルコードを使わせるために身を晒し、その場で静止することで誰よりも遅く動かない存在となることで同士討ちを行わせた。
二体のキラーゾンビが倒れ伏し、どろりとした赤黒い腐敗した血の塊となって、絨毯のシミにもならずに消えていく。
さすがに仲間が全員死んでしまえば、暴走状態であっても刃は修介へと向けられる。修介は攻撃力重視の構えを取ると、キラーゾンビの懐に飛び込み――拳打のラッシュを食らわせる。ぶちゅりという腐肉を潰す感触が拳へと伝わってくる。
磨き抜かれた一撃一撃が、キラーゾンビの腹を突き破って背中へと貫いた。そのまま背骨を叩き折ると、残されたキラーゾンビは体を二つに折り曲げて倒れ込み、先に自ら殺した仲間同様に血の固まりになって消えていった。
「……さて。これで、親玉が見つかるといいんだがな……」
血と腐汁、腐肉に塗れた拳を民家にあったタオルで拭いながら、修介はぽつりと呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
ガキの頃はこの手のホラー映画は大の苦手だったが、こういう展開になればこっちのもんだ
ここからはアクション映画のノリでやらせてもらうぜ!
【行動】
殺人鬼のゾンビって話だが、たしかに並みのゾンビ相手より手こずりそうだな
元の殺人鬼の経験値を反映したうえでオブリビオンになっているって印象だ
もっとも、俺は並みの被害者じゃねえけどよ
UCで作ったエネルギーの足場を利用して、弾丸を【ジャンプ】と【見切り】で回避
UCのエネルギーで【フェイント】をかけながら空中を【ダッシュ】して攻撃
炎の拳で確実に倒していく
「こいつが引導だ、とっときな!」
この状況で不意を打たれるとキツそうだな
背後取られない場所でも探しておくか
●百戦錬磨
祠への小道の出口に待っていたのは、猟銃と日本刀を携えた三体の|リビングデッド《オブリビオン》――キラーゾンビであった。それを認めて、魎夜はニヤリと笑う。
「ははっ、ガキの頃はこの手のホラー映画は大の苦手だったんだが……こういう展開になれば、こっちのもんだ」
――|起動《イグニッション》!!
イグニッションカードを掲げて叫べば、カードに収納されていた装備が装着される。
紅蓮の籠手に包まれた拳に炎を纏わせ、魎夜はキラーゾンビたちに向かって見栄を切った。
「ここからは、アクション映画のノリでやらせてもらうぜ!」
『ギィィィィ、ギヒヒャヒャヒャ!!コロス、コロスゥ!!』
猟銃が火を噴き、ライフル弾が魎夜へと放たれる。その弾丸の軌道を見て次々と躱し、次弾が発射される前に魎夜は駆ける。一気に距離を詰め、マッハ5.0以上の速度で炎の拳を振るい、先頭にいたキラーゾンビの頭を吹き飛ばした。頭部を失ったキラーゾンビはそのまま後ろにひっくり返り、腐った血の塊となって地面を汚すこともなく消えていく。これぞ魎夜のユーベルコード、|【太陽のエアライド】《サンシャイン・ドライブ》!拳に載っているのは炎だけではない、長く戦い続けてきた魎夜の信念、燃え盛る熱き魂が宿っているのだ。
残された二体のキラーゾンビたちはそれぞれに猟銃を手にして、超高速での発射とリロードを繰り返す。まるでマシンガンの弾のようにばらまかれるライフル弾を、魎夜は未だ燃え盛る太陽のごときエネルギーの軌跡を足場として空中を駆けて避ける。
(グリモア猟兵の話じゃあ、殺人鬼のゾンビって話だったが……確かに並のゾンビ相手より手こずりそうだな。元の殺人鬼の経験値を反映したうえでオブリビオンになってるって印象だ)
「……もっとも、俺は並の被害者じゃねえし、そうなってやる義理もねえんだけど、よ!!」
炎の拳を連打し、階段のように足場を作って空中に駆けあがると、魎夜は上空からキラーゾンビに向かって炎の拳を放った。高速無限無尽蔵に放たれるライフル弾は太陽の如き高熱の炎で融けていく。死してなお起き上がるゾンビを殺すにはどこを破壊すればよいか? 既に魎夜は答えを得ている。脳髄を破壊すれば、二度と彼らが起き上がることはないと!
空中で一回転してフェイントを挟むと、二体目のキラーゾンビの頭に炎の拳を叩きこむ。燃え盛る太陽のエネルギーをそのままぶち込まれたキラーゾンビの頭部は一瞬にして蒸発し、燃える暇もなく倒れて先の同胞と同じく腐った血の塊となって消えた。
「さあ、残るはお前だけだぜ……!」
『ギィィィィ、シネェ、コロス、シネ、コロスゥゥ!!』
「はっ、腐った頭じゃあそれくらいしか言えねえのか!」
なおも高速で放たれ降り注ぐライフル弾の雨の中を、魎夜は弾丸を見切り、空中に作った足場を利用して躱していく。拳に宿った熱き魂、炎をぶち込めば、最後のキラーゾンビも倒れ、ぐずぐずに腐敗した血塊となって地面にしみこむように消えていった。
「はぁ……とりあえず倒したが、この状況で不意を打たれるときつそうだな……二回目からはどうなるかわからねぇ。背後取られない場所でも探しておくか……」
そう言うと、魎夜は汗をぬぐい、第二第三の襲撃に備えて装備をそのままに、小道の外へと歩き出したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鳥羽・白夜(サポート)
貴種ヴァンパイアの魔剣士×ブロッケンのアラサー。
元銀誓館の能力者。一度は能力者を引退、超常の日々を忘れ平凡に暮らしていたが猟兵に覚醒。過去の戦いの記憶も取り戻す。
口調は男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)
普段は工場の夜勤勤務(非正規)。基本夜型。
一見面倒臭がりでアンニュイ。トマトかトマトジュースが絡む時のみテンションが上がる。
本人は普通に暮らしたいと願っており戦いには消極的だが実の所お人好し。困ってる人を放っておけず結局『イグニッション!』(昔の癖)してブラッディサイズを手に戦う。
そして「また戦っちまったよ…」とがっくりする。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用、18禁NG。
●Crescent Deathscythe
『ギィィィ……ギヒヒヒヒィ、シネ、シネ、コロスゥゥ!!』
他の猟兵に遅れて、|姉ヶ淵《あねがふち》村跡へやってきた鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は、自らに迫るキラーゾンビたちを目前にして肩を落とした。
「はぁ、やっぱりこうなっちまうんだよなぁ……」
世界を救うとかガラじゃない。なんなら能力者からは一度引退した身だ。つい最近まで非日常の事なんて、自分が銀誓館学園の生徒だったことすらも何もかも忘れて一般人やっていたのだ。それでも自分は猟兵に覚醒してしまった。生命の埒外って何なんだよ一体。
こんな村にだって別に来るつもりは無かったのだ。だって廃村だし。今生きている人に被害を出しているワケじゃあないし。廃村になったのだってごくごく平凡で平穏な理由で人がいなくなっただけだってグリモア猟兵は言っていた。白夜がここに来る理由なんて一ミリたりともなかった。なかったはずなのだ、けれども。
別にグリモア猟兵が言った「避暑地」なんて言葉を真に受けたわけじゃあない。だけど気づいたら開かれた転移の門を潜って雲一つない炎天下の廃村の真ん中にやってきてしまったし、どこに移動とかもする前に|ゴースト《オブリビオン》は出てきてしまった。
「あーあ。しょうがねえよなあ。お前らが悪いんだぜ、俺の前に姿を現しちまうんだからさぁ……」
半ばやけっぱちで白夜はそう言うと、カードを掲げて叫ぶ。
「――|起動《イグニッション》!!」
白夜の手の中に赤く染まった三日月の大鎌「ブラッディサイズ-Red moon-」が現れる。
『ギヒヒヒヒィ!!コロス、コロス、シネシネシネェ!!』
三体の|ゴースト《オブリビオン》、キラーゾンビたちはその顔に喜色を浮かべて日本刀を振りかざす。赤黒い血に塗れた刃をブラッディサイズの刃で受け止めて、白夜はユーベルコードを発動させる。闇のオーラが白夜とブラッディサイズとをキラーゾンビたちの感知能力から遮断させる。
得物が目の前から消えたとみるや否や、キラーゾンビは汚らしい笑い声をあげながら、猟銃を四方八方に発射してくる。それを避けつつも、白夜は一体のキラーゾンビの背後に回り、その首を大鎌で斬り落とした。ぶしゃあと腐った血を噴き出しながら首が飛び、けれども体の方は日本刀を振り回す。とはいえ、頭がなくなったからかその攻撃は単調で大振りで、わざわざ避けるまでもない。
(くっそが、首落としても死なねえのかよこのゾンビ……!じゃあ、ゾンビものの王道に従って、頭の方をぶっ壊させてもらうとするか!?)
ぐしゃりと転がったキラーゾンビの頭部を踏み潰す白夜。脳髄が破壊された瞬間、日本刀を振り回していた首無しゾンビが仰向けに倒れ、どろりとした血の固まりになって地面のシミにもならずに消えていく。頭を破壊すれば殺せる、という判断は正解だったようだ。
(よぉっし……そんじゃあこのまま、全員ぶっ倒させてもらうとしますかぁ!!)
三日月の大鎌がキラーゾンビの頭部に次々と振り下ろされる。脳を両断されたゾンビは、ほどなくして仲間の後を追うように腐敗した血の塊となって消えていったのだった――。
成功
🔵🔵🔴
木々水・サライ
【灰色】
あー死ぬかと思った……。
って、クソ親父!! 何優雅にこっち来てんだよォ!!
テメェのせいで!! テメェのせいで!!!
あーもう!! この恨み、全部コイツら(ゾンビ)で晴らす!!!
UC【統率力のある白黒人形】!
「しゃーららーい(また酷使するぅ)」
「ふぐるにょわー(少し休ませろー)」
これと次が終わったらおやつとおやつとおやつあげるから!!
俺自身は12本の刀を使って傷口をえぐるを併用してどんどん倒すから!!
バカ親父ィ!! やっと終わったと思ったのに追撃すんなバカァ!!
弟たちのほうがアンタより可愛いけどさァ!!
いやうちのチビ達のほうが可愛いんだけどさァ!!
なんで二度もこんな目に!!
霧水・砕牙
【灰色】
あーマジで怖かった……。
燦斗マンさあ、なんで俺らをこんなところに突き落としたん??
あっ、はい。知ってた。もう答えは大体わかってたよちくしょう。
鬱憤は全部サライにお願いしようっと。
ゾンビは俺嫌い。だってカップリング出来ねえし、むしろ襲う側だから邪魔だし。
ってことでUC【穿て、朱色の弾丸】でどんどんぶち抜いていくぞ~。
無機物ならその辺に転がってるし、適当にバンバン撃ってきゃそのうち当たる。
近づいてきたやつはチビちゃん達になんとかしてもらおうっと。
っつーか、燦斗マン頼むからさ。あのさ。
追撃で幽霊呼ぶのやめてくれない!!??
いや弟たちだから可愛いでしょじゃないんだが!!??
勘弁してくれェ!!
金宮・燦斗
【灰色】
いやぁ、見てて楽しかった。あっはっはっ。
こういう依頼があると後ろで見てるのがすごく楽しいんですよねぇあっはっはっ。
え? そりゃもちろんあなた達が慌ててるのを見たいからです☆
それ以外の答えが返ってくるわけないでしょう?
まあ、ここからはちゃんと私も参加しますよ。
ただし……UC【癒やし系弟達は超かわいい】で呼ぶ死んだ弟たちと共に戦いますがね!
弟たちを褒めに褒めまくって、たっぷり、三輪車で轢殺していってあげましょう!
え? 弟たち可愛いじゃないですか。
生きてる方はちょっとまだ褒められるほど可愛くないですけど。
ほらほら~、サライも砕牙も弟たちを褒めてあげましょうよ~。
あなた達を脅かすの上手でしょ?
●プライベートエネミー(ゾンビのことではない)
「あーマジで怖かったぁ……」
「死ぬかと思ったぁ……」
脱力しているサライと砕牙の耳に、ぱち、ぱち、ぱち、と拍手の音が聞こえてくる。
「いやぁ、見てて楽しかった。あっはっはっ」
金宮・燦斗(|夕焼けの殺人鬼《MörderAbendrot》・f29268)。サライの呼ぶ「親父」にして砕牙とサライをこの村にやってこさせたろくでなしの三十七歳児である。待って、どこから見てたの? いつから?
「こういう依頼があると後ろで見てるのがすごく楽しいんですよねぇあっはっはっ」
「てめぇ、クソ親父……!!何優雅にこっち来てんだよォ!!」
「燦斗マン!!燦斗マンさぁ、なんで俺らをこんなところに突き落としたん??」
えっ? 突き落とした? 転移の門から? なに? 覗いてるところを? ホラー嫌いを? 非道か? ホラー嫌いたちもなんで覗き込んだん?
「え? そりゃもちろんあなた達が慌ててるのを見たいからです☆」
悪逆の徒か? 悪逆だったわ。
「あっ、はい。知ってた。もう答えは大体わかってたよちくしょう」
「テメェのせいで!! テメェのせいで!!!」
遠い目をする砕牙、半泣きでキレるサライ。
「それ以外の答えが返ってくるわけないでしょう?」
厚顔無恥にそう言ってのける燦斗。
このお決まりのコントを見ているキラーゾンビさんたち。獲物が三人もいるので張り切って十体ぐらい控えていた。言ったじゃないか、すぐ戦闘が始まるって。敵はもう現れていたんだよ!!空気読んで黙ってたんだよ!
『|ギィ……ギヒ、ギギ《あの、もうそろそろ戦闘パート入って良いですかね》?』
「「「アッハイ」」」
『|ギィ、ガガガ、ギィ《では改めて》。――ギヒヒヒヒィ、シネェ、コロスコロスコロスゥ!!』
「ああー気遣われたー!!ちくしょう!!」
「あーもう!! この恨み、全部|コイツら《ゾンビ》で晴らす!!!」
――来い、チビ共!!
「|しゃーららーい《また酷使するぅ》」
「|ふぐるにょわー《少し休ませろー》」
精霊猫に乗ったチビサライたちが現れた。さっき割と活躍したシーンをすっぱりカットされたのでかなり不満たらたらである。
「ごめんな!これと次の戦闘が終わったらおやつとおやつとおやつあげるから!!」
十二振りの刃を空中に投げ上げ、キャッチしてはキラーゾンビを斬りつけながら自らの複製義体と精霊猫たちを宥めるサライ。大丈夫この雇用形態?
「んんん、オカルトほどじゃあないけど……ゾンビは俺嫌ーい。だってカップリング出来ねぇし」
おっと腐ってても腐ってるもんはダメですか。
「むしろ襲う側だから邪魔だし」
そう言った砕牙の耳に、「甘いですねフフン私はゾンビ同士でもカップリングできますですよ」と言う声が聞こえた。何故か聞こえた。ちょっと前の依頼で護衛対象になった腐女子の声だった。
「えっマジで?」
「なにやってんだ砕牙!サボってんなよ!!」
そんな砕牙を現実に戻すかのようにサライが叫ぶ。
「わかったって!ぶち抜くぜ、【|穿て、朱色の弾丸《ヴェルメリオ・バラ》】!!」
ちなみに――サライと砕牙は最初にこの村に降り立った地点から動いていない。故に、炎天下の村の真ん中である。村道は舗装されたりなどしているわけがなく、砂利でいっぱいだ。そんな砂利が朱色に染まり、槍型の銃弾となってキラーゾンビたちに向かっていく。
『ギィィィ、ガアァアァ!!』
「ナイス砕牙!」
砕牙が放った弾丸の傷口を抉るように十二振りの刃でキラーゾンビを斬り捌いていくサライ。そして後衛の砕牙を護るように精霊猫とチビサライたちが陣取る。
「しゃっら、らい!らいらいらー!」
「にゅやーん」
「おっマジ?砕牙ぁ!!こいつら脳髄ぶっ飛ばすと死ぬっぽいぞ!!」
「よっしゃ、どんどんぶち抜いてこー!!」
その後も砕牙とサライの奮闘は続いた。
「ああ、立派になって。師匠からサライを預けられた身としては成長を近くで見られて感無量ですねえ」
涙を拭うふりをする燦斗。勿論、涙なんぞ0.000001ナノリットルも流れちゃあいない。眼球を潤すぶんさえもない。大丈夫? ドライアイになってない?
「何突っ立ってんだクソ親父!てめーも戦うんだよ!!」
「ええ勿論、ここからは私も参戦しますよぉ。ただし……【|癒やし系弟達は超かわいい《リローデッド・アーベントロート》】で、ですがね!!」
【|癒やし系弟達は超かわいい《リローデッド・アーベントロート》】。それは燦斗のユーベルコード。ざっと軽く525体の燦斗の弟たちの幽霊を呼び出すユーベルコードである。繰り返す、幽霊を呼び出すユーベルコードである。525体ほど。
「バカ親父ィ!!追撃すんなバカぁ!!」
「あー可愛いですねー、三輪車に乗るの上手いですねー、生きてるときは乗れませんでしたからねー、どんどん轢殺していきましょうねー」
「燦斗マァン!!頼むからさあ!!あのさあ!!追撃で幽霊呼ぶのやめてくんない!?」
「え? 弟たち可愛いじゃないですか。生きてる方はちょっとまだ褒められるほど可愛くないですけど」
生きてる方の弟は可愛くないって言った。可哀想に。
「いや弟たちだから可愛いでしょじゃないんだが!!??」
「そりゃ弟たちのほうがアンタより可愛いけどさァ!!いやうちのチビ達のほうが可愛いんだけどさァ!!」
「しゃっらー?」
「にょあーん?」
「はい!お前らの方が断然可愛いですねー!!」
「ほらほら~、サライも砕牙も弟たちを褒めてあげましょうよ~。あなた達を脅かすの上手でしょ?」
「勘弁してくれェ!!」
「なんで二度もこんな目に!!」
サライと砕牙は絶叫した。彼らがめちゃくちゃ言いながら戦っているうちに、キラーゾンビたちはいつの間にか全滅していたという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『人斬り与吉』
|
POW : 斬らせい
自身と武装を【触れた存在を切断する剣気】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[触れた存在を切断する剣気]に触れた敵からは【剣に対する防御力】を奪う。
SPD : 斬らせい
レベルm半径内に【範囲内を埋め尽くす不可視の斬撃】を放ち、命中した敵から【移動力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 斬らせい
【止まることなく放たれ続ける斬撃】が命中した対象を切断する。
イラスト:Re;9
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ベリル・モルガナイト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
========================================
現れたキラーゾンビをめいめいに倒した猟兵たち。
彼らは襲ってきたオブリビオンを退けたのち、安全な場所を探すため、あるいは探索を続けるためにその場所を離れた。
しかしそうして移動した彼らの前に現れたのは、大きな邸宅――これまでどこを探しても見当たらなかった、木造の建築物。
そこは廃村の他の邸宅と違って、まるで誰かが住んでいるのかのように――建物が、生きている。
猟兵たちは直感で理解する。これが、隠されていた村長の家。
ここに、この村に棲みついたオブリビオンの親玉である「人斬り与吉」がいると。
木造住宅の扉は開け放たれていた。
中に雪崩れ込んだ猟兵たちを迎えたのは、やはり間違いなく「人斬り与吉」であった。
『――斬らせい』
血飛沫で赤黒く染まった広間で、オブリビオンは刃を抜く。
この村に巣喰った恐怖の全ての源が、猟兵たちに牙を剥いた――!
========================================
第三章 「人斬り与吉」 が現れました
おめでとうございます。猟兵たちの奮戦によりこの村に呼び寄せられた大量殺人鬼「キラーゾンビ」は全て討伐され、隠されていた「村長の家」が現れました。
村長の家に踏み入ったことにより、ボス敵「人斬り与吉」が出現しました。
以下に詳細を記します。
「戦場について」
村長の家、その大広間です。血飛沫に塗れていますが、問題なく戦えます。
屋内であるため日光は遮られており、障子なども血に塗れている為薄暗いですが、完全な暗闇ではありません。
一般人その他戦いを邪魔するものは存在しませんが、大広間には戦闘に利用できそうなものも基本的にはありません。ほとんどのものは撤去されてしまっています。
基本的には畳敷きの十畳ほどの和室です。何かを利用することを思いついた場合は使用可能ですが、何かを使用したい場合は「使えるものは何でも使う」といった曖昧な表現ではなく、「何を」「どうやって」使うか明記してください。
また、既に戦闘が開始された状態でリプレイが開始されるため、事前になにか行動しておくといったことはできません。(「体の「パフォーマンス」を良くしておく、など」)そういったことを行う場合は、戦闘と並行して行う形になります。
村長の家が突き止められたため、転移の門の出口が移動しました。この章から参戦する方も屋内・大広間で戦闘が始まった状態からのスタートとなります。
ボス「人斬り与吉」について
人斬りのオブリビオンで、何の因習もなかった村をインスタント和製ホラーとキラーゾンビの巣窟にした親玉です。
第一章で与吉に対する文献を見つけた猟兵もいるでしょうが、全てインスタントに捏造されたものであり、猟兵と相対している与吉とは少なくとも無関係です。
猟兵がPOW・SPD・WIZのユーベルコードを使わずに攻撃した場合でも、日本刀及びその斬撃によって攻撃してきます。やられっぱなし・棒立ちにはなりません。
第三章のプレイングは8/24(水)朝8:31から受付開始となります。
一週間の期間が空きますので、ご了承及びご注意ください。
時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
マスターページを確認したうえでプレイングを送信してください。
それでは、何の因習もなかった廃村を普通の廃村に戻し、ゴーストタウンを浄化するため、現れた親玉を討伐してください。
上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
調息、脱力、戦場を観据える。
可能なら相手が姿を消す前に、体格と得物の長さから間合いを予測。
姿形を消す能力は厄介ではあるが、そういう手合いとの戦闘経験はある。
見えなくなろうと、そこに存在する以上、動けば痕跡が出来る。
なにより雑に撒き散らされた殺気がある。
――為すべきを定め、心を水鏡に
「推して参る」
お誂え向きに、精神集中も先の戦闘で済ませている。
殺気と痕跡を捉えることに専心すれば、不可視の相手を捉えることも難しくはない。
UC:攻撃重視
狙うはカウンター
殺気が強くなったタイミングで地面を打撃し、周囲の埃や塵等を巻き上げ、その動きから敵の位置を割り出し、攻撃軌道を読んで拳を叩き込む。
●正拳、魔剣を砕かんや
『――斬らせい』
この村に巣食った血と殺戮とインスタント因習の源たるオブリビオン――人斬り与吉が立ち上がり、腰の刀に手を伸ばす。
その一瞬の間に、修介は広間の高さと与吉の体格、刀の鞘の長さを読み取り、間合いを計測していた。
息を調え、余計な力を抜き、薄暗い血に塗れた大広間――戦場を観据える。瞬きの内に、与吉の姿は纏った剣気によって覆われ、姿を消す。修介は拳を握りこんだ。
与吉のユーベルコード、姿かたちを消す能力は確かに厄介だ。纏った剣気に触れてしまえば、剣に対する防御力を奪われてしまうというなら、尚更に。
――だが、修介にとって、見えない相手、姿を消す相手と戦うのはこれが初めてではない。そういった不可視の能力を持つ手合いとの戦闘経験がある。経験があれば、それを活かすことができることを修介は理解している。
(見えなくなろうと、そこに「存在する」以上、動けば痕跡が出来る……なにより、雑に撒き散らされた殺気がある)
為すべきを定める。そして心を水鏡の境地に置いて、修介は見えぬ与吉に向かって告げた。
「推して参る」
『……――斬、ら、せい……!!』
修介の言の葉に応えたのは与吉の圧倒的な殺気であった。ぶわりと膨れ上がるそれの中から、中心地を割り出す。お誂え向きなことに、精神集中は先のキラーゾンビとの戦闘で済ませたばかりで、未だ集中状態は続いている。ちりちりとした殺意が肌を炙るのを感じながら、|殺意《それ》に満たされた大広間の中でじりじりと修介は与吉の居場所を探っていく。
(――来たか、ッ!!)
背中がぞわりと総毛立つ。与吉の姿も剣も見えなかったけれど、その刃が己の首を刈り取るビジョンが研ぎ澄まされた脳裏に映し出される。間違いなく、与吉の剣は今、ここにある。修介は大きく身を低くした。ひゅん、と何もないはずの場所を何かが通っていく風切りの音が聞こえた。
(剣が此処に有るならば、奴は今ここにいるということだ……!!)
強く畳を打撃する。ボンと音を立てて古畳は拳に耐えきれずに爆ぜた、その巻き上がる塵芥と埃の流れが、差し込むわずかな光に照らされて修介の目にはよく見える。空気中の塵芥の流れ、それは不可視なるもの、すなわち与吉が動いた証左に他ならない。
(……其処、だっ!!)
軽く体を捻り、攻撃力重視の構えを取りながら拳を突き出す。その肩口スレスレの所を冷たい何か――恐らくは刃が高速で通っていく感覚があって、そして拳には確かに固い何かを殴った感触があった。殴ったとしたなら顔面を強打したはずだ。それがあるべき場所を計算したうえで拳を突き出したのだから。修介は地面に伏せて転がり、頭の上で薙ぎ払われていく刃の軌道を避けきる。ぼたり、と何もない筈の場所から古畳の上に血が滴った。それは、修介の拳によって鼻っ柱をへし折られた与吉の垂らした血に違いなかった。
「さぁ、続けていくぞ……!」
修介は立ち上がると、もう一度拳を固めなおすのであった。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
普通の村をゴーストタウンに変えちまう辺り、オブリビオンってのは本気でとんでもねえな
だけど、こうなった以上は運の尽きだぜ
【戦闘】
剣に特化したオブリビオンって所か
本当に斬ることに関しては隙ねぇでやんの
まあ、生憎と俺は剣士じゃなくてね
「村人への復讐心で蘇ったか、妖刀に魅入られて暴れるのか、どういう設定なんだい?」
「失せ物探し」で室内に非常用の懐中電灯がないか探し、使えるようなら明かりを作る
「師匠が言ってたぜ、"知恵と勇気があれば負けはしない"ってな」
不可視の斬撃をUCと「見切り」で回避して接近
「リミッター解除」した「切断」を放つ
帰りに地蔵を見て
「今度は数、変わっていないよな?」
●嵐の如く
(こいつが……すべての元凶、諸悪の根源。普通の村をゴーストタウンに変えちまうあたり、オブリビオンってのは本気でとんでもねぇな……!)
――だけど、
「|こうなった《俺たちが来た》以上は、運の尽きだぜ、人斬り与吉……!」
『……斬……ら……せい……!!』
いつの間にか刀を抜いたものか。与吉は素早い斬撃を繰り出してくる。それをバックステップで間合い外へと避け、魎夜は血で濡れた古畳を踏みしめた。
(剣に特化したオブリビオン、ってところか……本当に斬ることに関しては隙ねぇでやんの)
――ま、生憎と俺は剣士じゃあなくってね。
「村人への復讐心で蘇ったか、それとも妖刀に魅入られて暴れてるのか、アンタはどういう“設定”なんだい?」
ゴーストタウン化したこの村で捏造されたインスタント因習を目にしてきた魎夜は、与吉に向かって軽い調子で問いかける。もともとこの村に怪しい因習も陰惨な歴史の一つもない。魎夜が目にした眼球たちも、村人の誰かだったわけでもない。魎夜はこの村に来て数々のモノを見た。けれどもそこに、魎夜がかつて何度も訪れていたゴーストタウンで幾度も目にした「残留思念」はひとつもありはしなかった。この村には、負の残留思念が残ることすらもなかったのだ。全て全てが捏造された闇。この大広間を、天井まで赤黒く染め上げる血飛沫の跡さえも、与吉というオブリビオンが作り出したものだ。
『斬らせい――!!』
魎夜の挑発に返ってきたのは不可視の刃。狭くはないが、決して開放されてはいない大広間の中だ、この斬撃で埋め尽くされればいかに魎夜であっても膾切りにされてしまうこと必至である。例え防いでも、移動力を奪われてしまえば次の防御のための行動が出来なくなってしまう。ゆえに魎夜は、回避に徹する。
「“雨よ、嵐の王のために道を作りな”!!」
【|鏡雨転身《ミラーロード》】。室内に雨が降る。雨は水溜まりとなり、水溜まりは異空間に繋がる水鏡になって、魎夜はその中に飛び込んだ。とはいえこれは与吉を放って逃げるためのものではない、斬撃を回避するためのもの。何度も水鏡の中に飛び込んでは別の場所から現れ、魎夜は居場所をこまめに変えた。不可視の斬撃は与吉を中心に大広間にあった家財道具すら斬り刻んでいく。木製の箪笥が木端微塵に砕け、中にあったものが散乱する。その中に|あるもの《・・・・》を見つけた魎夜は、そこから一番遠い場所に一度現れ、与吉の注意を引く。斬撃が襲い来る直前で、魎夜は水鏡の中に飛び込み、そして散乱した箪笥だったものから転がり出た非常用の懐中電灯を拾うと、スイッチを入れる。幸い電池はまだ残っていたようで、白い光が薄暗い大広間の中を照らした。
「師匠が言ってたぜ、“知恵と勇気があれば負けはしない”ってな――!!」
強い光に目を焼かれて怯んだ与吉の下に、魎夜は飛び込んだ。全身のリミッターを外す。末端の血管がぶちぶちと千切れる音が頭の奥で聞こえる。限界を超えた代償に、視界に赤い血の影が見える。それでも全力を越えた力を出すべき場所はここだった。
「さあ、ぶった斬るぜ……!!」
魎夜の手に現れたのは、夜空の輝きを持つ蒼玄の刀「震鎧刀・月魎斬式」。その刀を手にして、魎夜は与吉の肉体を斬り裂く。真っ赤な血飛沫が、魎夜の肌と赤い髪の毛を濡らした。
『……斬、ら、せい……』!!
その斬撃は与吉の肉体に大きなダメージを与えている、が。それでも与吉はまだ動き続ける。オブリビオンであるが故か、そう簡単には滅びない。滅べない。
――この村を後にするのは、もう少し先のことになりそうだ、と。そう考えながら、魎夜は蒼玄の刀を手にする手に力を込めた。
大成功
🔵🔵🔵
ディル・ウェッジウイッター
アドリブ・連携可
先輩たちに遅れを取るわけにはいきませんね
とはいえ、どうしましょうねぇ。畳を盾にし隙を見てカトラリー投擲して攻撃もあっさり跳ね返されますし、先の技もこの方に使っても意味が無いでしょうし
ひとまずお茶でも飲んで考え…(後ろに現れた大弓を背負う武士のゴーストにお茶を取られる)
おや、お久しぶりですね
ここでお会いしたのも何かの縁。お茶でもいかがですか?そのお茶ではなく、それ相応のお茶をご用意させていただきます
……でしたらばお茶ができあがる間の2分と少し。あちらの方とのご歓談をお楽しみください
弓と刀、どちらがお強いのでしょうね
●美味しいお茶が出来上がるまでに
「さて、先輩たちに後れを取るわけにはいきませんね」
そう言って前に出たディルは、現在絶賛古畳を盾にして防衛戦の最中であった。
「むぅ。ここからどうしましょうねぇ」
『――斬、らせェェェい……!』
「嫌ですよぅ、痛いんですもの」
与吉の刃からは上手く、こう、当たり判定的なものの外に陣取れたので今のところは避けられている。けれど悲しいかなディルの方に有効打、与吉にダメージを与える決定打がなかった。隙を見てカトラリーを投擲してみるもナイフやフォークたちはあっさりと刃によって跳ね返される。ならば先のキラーゾンビ戦で使った幻影の迷宮を使おうにも、あれはキラーゾンビの方に一分間の昏睡タイムという弱点があったからこそ有効打となったユーベルコード。人斬りというからにはやはり与吉も幻覚のディルを斬って斬って斬りまくることに酔いしれてくれるのだろうが、万が一にも迷宮を抜けられてしまったらそこで詰みである。
「ひとまず、お茶でも飲んで考えましょうか」
ここでお茶を淹れ始められるのがディルのティーソムリエたるゆえんであった、肝が太い。そうして入ったお茶を手にしたところで、背後からお茶のカップをひったくられた。
「おや、お久しぶりですね」
にっこりと微笑むディル。現れたのはディルの淹れた紅茶を飲みたがる、お茶好きで友好的なゴーストであった。大弓を背負った巨躯は武士の装いをしている。
「ここでお会いしたのも何かの縁。お茶でもいかがですか? そちらのお茶ではなく、それ相応のお茶をご用意させていただきます」
こてりと首を傾げたディルに、ゴーストは頷いた。それで手を打ってやろう、お前はお茶を淹れるのだ。そんな感じで。
「……でしたらば、お茶が出来上がる間の二分と少し。あちらの方とのご歓談をお楽しみください」
ゴーストは背負った弓を構え、矢をつがえる。
「弓と刀、どちらがお強いのでしょうね」
そんなことをディルは言った。言ってしまった。言ってしまったらもう始まってしまう。
片や殺人剣を限界まで高め上げ……ているかどうかは知らないが、人を斬りたいという昏い欲望が形を成したる存在たる人斬り与吉。片やゴーストになっても紅茶好きな強弓を操る武士。どちらの得物が強いかなどと第三者に言われてしまえばもう、「俺の方が強い!!」と示したくなるのが強者というものだ。ディルだってきっとそうだろう、可愛らしいお嬢様に「あなたとこちらのティーソムリエ、どちらの淹れた紅茶が美味しいのかしら?」なんて言われたら自分の淹れた方が美味しいと示したくなるはずだ。きっと多分メイビー。違ったらごめん。
そんなわけで人斬り与吉と大弓のゴーストとは死闘を繰り広げ始める。
『斬らせぇぇい……!!』
与吉の不可視の斬撃が唸れば、ゴーストの放った矢が三連で与吉を射止めんと狙う。放った次の瞬間には、ゴーストの弓には矢が装填されている。それは与吉の刃も同じ。弓に腕を射抜かれながらも、ゴーストを斬り裂かんと斬撃を放つ。だが移動力の減衰などゴーストにとっては恐るるに足らず、もとより弓兵とは三日動かずして敵を射止めることもあるものである!
きぃん、がきぃん、だん、だん、だん、がきぃっ!!与吉とゴーストとの闘いの音が大広間に響き渡る。
「……ああ、もうすぐ蒸らし時間も終わりますね」
そんな死闘を見ることもなく、ディルはお茶が出来上がる時間を計るのだった。だってティーソムリエだもの。
大成功
🔵🔵🔵
鳥羽・白夜
元凶のお出ましか!こいつさえ倒せば…しかしあいつの技、俺の技(UC)となんか似てる気がするんだが。似た技使う相手は厄介だぜ…
不可視の斬撃は畳を盾代わりにしたり、【第六感】で頑張って避けつつ、指定UC発動。
完全な暗闇じゃないから威力3倍とはいかないけどそれはあっちも同じこと、存分に血を吸ってこい!
吸血コウモリの群れで相手の目くらましも期待しつつ隙を見て【斬撃波】で攻撃、【部位破壊】【切断】で相手の利き腕を切り落とし【武器落とし】を狙う。
斬ることに執着してるみてーだけど、肝心の刀がなきゃなんもできないだろうからな。
…しかし残留思念がなくても出てくる、ってほんと性質悪いなオブリビオンってやつは…
●紅の刃、奔る
「はっ、元凶のお出ましか!!」
『斬らせい……!!』
人斬り与吉の持つ刃がしなれば、大広間中に不可視の斬撃が飛び交う。血のじっとりとしみ込んだ古畳の縁を踵で叩いて起き上がらせ、それを即席の盾代わりにして、白夜は斬撃から辛くも逃れた。
(しっかし、残留思念がなくても出てくんのかよ、本ッ当に性質悪いな、オブリビオンってやつは……!!)
胸中で舌打ちをしながら白夜は与吉の技を観察する。能力者として戦っていた日々は遠くとも、猟兵となってからだって白夜は誰かの為に戦ってきた。取り戻しつつある戦場の感覚、戦闘の勘。それが告げる、『あの技は自分の使うそれに似ている――』と。
白夜の持つユーベルコードの中に自身と武装を不可視とさせるものはあるが、不可視の斬撃を放つような物はない。似ているのはユーベルコードの根幹。もしもすべてのユーベルコードに原型となったものが一つずつとするのならば、与吉が今使っているそれと自分が今から使おうとするそれは同じ原型を持っているような感覚がするのだ。
(ちっ、似た技使うやつは厄介だぜ……だが!!)
古畳の盾を倒れぬように固定したまま、銃弾の如き速度で放たれる不可視の斬撃を培った勘でもって躱して与吉の前に出る。既にイグニッションは済ませてある、矢継ぎ早に放たれた斬撃を紅の大鎌で弾いて、白夜はその腕の中から吸血コウモリたちの群れを放つ。
(完全な暗闇じゃないから威力三倍とはいかねーだろうけど……そりぇはあっちも同じこと!)
「存分に血を吸ってこい!!」
キィキィと鳴く黒い塊がぶわりと広がり、吸血コウモリたちが与吉に群がる。コウモリたちは与吉に噛みつき、その血を啜る。与吉にとってはそれは血を奪われるダメージよりも、刀を振る腕に纏わりつかれることで斬撃の初動を邪魔されることによる煩わしさ、そして目の前を黒い塊がバサバサと飛び交うことによって起きる目くらましの効果が痛手になっているようだった。無造作に振るわれる刃を吸血蝙蝠たちも空を飛んで回避していくが、時折刃に斬り裂かれた小さな個体が畳の上に落ちる。
そうして与吉の刃が鈍り、意識がコウモリたちに向かった隙に、白夜は愛用の大鎌を振り抜き、斬撃の波を作り出す。紅の刃が血の様な三日月の軌道を描いて、与吉の身体をざっくりと斬り裂いた。
「さあ、続けていくぜ!!」
吸血蝙蝠たちの妨害工作によって広間中に広がっていた不可視の斬撃は、今では軌道を簡単に読める程に弱体化している。だ、だん、っと距離を詰めると、白夜はその大鎌を大きく振りかざし、与吉の腕を狙って振り下ろした。ごろりと刀を握ったままの右腕が古畳の上に転がり、びしゃりと飛び散る真っ赤な血が、白夜の肌と髪の毛とを赤く染める。
「斬ることに執着してるみてーだけど、肝心の刀が無けりゃなんもできねぇだろ……!!」
『――斬ィィィィ、ら、せぇぇぇぇいィィィィィ!!』
絶叫するオブリビオン、人斬り与吉、大鎌を構えたまま、白夜はにやりと口角を上げた。
この怪物を倒しきるまで――あと、一押しだと、白夜の勘が告げていた。
大成功
🔵🔵🔵
木々水・サライ
【灰色】
人斬りがなんだってんだ。
こちとらなァ、この悪夢に突き落とした殺人鬼がいるんだぞ!
そこの金宮燦斗とかいう殺人鬼がなァ!!
しらばっくれんなクソ親父ィ!!
UC【社畜確定の白黒人形】発動、今回は15体!!
それぞれ俺、親父、砕牙に5体ずつ配備!
俺自身とチビ共は2回攻撃・部位破壊をメインに戦う!
人斬りってんなら腕をぶっ壊しゃ人斬れねぇだろ!
まあただ問題があってな。
これ使うとチビ共のダメージが俺に向かうんだよ! クソ痛ェ!!
でもチビたちが無事ならヨシ!!
っつーか親父、後からやってきて美味しいとこ取ってんじゃねぇ!!
俺と砕牙に言うことあんだろーが!!
帰ったらピーマン大盛りの青椒肉絲食わせるからな!!
霧水・砕牙
【灰色】
そーだそーだ! 人斬りがなんだってんだ!
こちとら極悪殺人鬼の金宮燦斗がいるんだぞー!!
あっ、燦斗マンしらばっくれてんじゃないぞー!
俺の背中についた足跡を調べればわかることだぞー!!
UC【反乱せよ、緑の助言者】発動!
素早くキャンバスを取り出して銀の指輪で緑の絵の具を適当に塗りたくり、相手のUCを受け止めるぜ!
多少俺やキャンバスに傷はつくだろうが、まあそこは仕方ない。
チビちゃん達を支援する形でコピーしたUCを使っていくぞ!
移動力を奪うってなら使わねぇ手はないぜ!
あっ、燦斗マンずるいぞ!!
俺らを突き落としておいて最後を取ってくなんて!
こうなりゃピーマンマシマシの野菜炒めも追加するからなー!!
金宮・燦斗
【灰色】
なんか散々な言われっぷりですねー。
別に私は悪意があって落としたわけじゃないですしー。
しらばっくれてませーん。本心でーす。
人斬り……ねぇ。
やっぱりここは殺人鬼になったほうがいい感じですか。
ということでUC【影をも超える狂気の黒】。
優しさなんて捨てないと、ねぇ。
2つの黒鉄刀をそれぞれに、チビちゃん達と砕牙の支援を受けつつ。
部位破壊を丁寧にやって、ついでに生命力吸収も使っときましょ。
こちとら人を殺す鬼だから、殺人鬼なんだよ。
さっさと死ね、斬るだけの能無し野郎。
えー、なんですかぁ。殺人鬼VS人斬りなんだからいいでしょー。
言うことなんて無いですね、善意なので!
あっ酷い! 夕食権限があるからって!
●そして、インスタント因習村の終わり
ぼたぼたとオブリビオン人斬り与吉の腕から血が滴る。他の猟兵の活躍により、与吉は利き腕を斬り落とされ、その得物である刀も血のじっとりとしみ込んだ古畳の上に転がっていた。
『斬らせいィ……斬ィ、らァ、せェェいィ……!』
「うるっせーなてめーはそれしか言えねーのか。人斬りがなんだってんだ、こちとらなァ、この悪夢に突き落とした殺人鬼がいるんだぞ!!そこの!金宮燦斗とかいう殺人鬼がなァ!!」
サライの言葉に、えっ私? みたいな顔をする燦斗。お前だけはそんな顔はしてはいけない。
「そーだそーだ!人斬りがなんだってんだ!こちとら極悪殺人鬼の金宮燦斗がいるんだぞー!!」
砕牙もサライの言葉に乗っかりはじめる。
「うぅん、なんか散々な言われっぷりですねー。別に私は悪意があって落としたわけじゃないですしー」
「しらばっくれんなクソ親父ィ!!」
「あっ、燦斗マンしらばっくれてんじゃないぞー!俺の背中についた足跡を調べればわかることだぞー!!」
えっ突き落としたんじゃなくて蹴り落としたの? なお砕牙のベストの背面にべったりとついている靴跡と燦斗の靴裏に付着している成分を分析すれば訴えれば勝てると思うよ。
まあ燦斗は砕牙を蹴り落としてからこの廃村をちょこっとだけ歩いているので捜査はちょっと手間取るかもしれないがそこはそれ。文明レベルが現代地球以上の世界でなら科学捜査は燦斗のやらかしを白日の下に曝してくれることでしょう。訴えれば勝てるよ。
「しらばっくれてませーん。本心でーす」
――訴えれば勝てるよ!?
さて、彼らがそんなコントめいたやり取りをしている間に一体何秒何分が立ったのだろうか。その間に人斬り与吉は――残った腕で畳の上に落ちた刀を拾っていた。ついで斬り落とされた利き腕の止血もしていた。妄念から生まれたオブリビオンに止血とかいるのかはわからないが、とりあえずそれだけの時間をサライたちはコントに使っていた。言ったよね戦いは始まってるって。
『斬ィィィィらァァァせぇぇぇい!!!』
ちょっと半ギレになった声で不可視の斬撃を放ってくる与吉。
「ああ畜生!とりあえず、来いチビ共!」
サライは【|社畜確定の白黒人形《カンパニースレイヴ・モノクローム》】を発動させる。きっかり十五体、精霊猫に乗ったサライのちまこい複製義体ことチビサライが現れる。
「「「|しゃらーい《今回何度目だー》!!」」」
「「「ふぐるにょわーん」」」
「毎回毎回すまんな!これが終わったらおやつとかおやつあげるから!とりあえず俺に五体、親父に五体、砕牙に五体!分かれろ!」
「「「さっらいらーい!!」」」
『斬、ら、せ……い!!』
与吉の放つ不可視の斬撃から燦斗と砕牙を守るチビサライたち。しかし【|社畜確定の白黒人形《カンパニースレイヴ・モノクローム》】にはサライも承知の問題がある。それは、チビサライたちとサライ自身は同じ能力を持つものの生命力を共有しているという点、そして呼び出した数の倍数だけサライがダメージを受けるという点にある。
「くっそ痛ェ!!でもチビたちが無事ならヨシ!!」
「|らいらーい《何見てヨシって言ったんですか》?」
ちょっとチビサライたちをばらけさせただけでも既にサライは満身創痍であった。黒鉄と白銀の刃を両の手にするも、不可視の斬撃に対する防御行動は全てチビサライが賄っている。そしてそのダメージは十五倍サライにフィードバックしているのだ。それを「痛ぇ」の一言で済ませられるだけ、サライも豪胆だという事であろうか。
「ったく、無理すんなよサライ!」
砕牙は自身のユーベルコード【|反乱せよ、緑の助言者《ヴェルデ・メントル》】を発動させ、素早くキャンバスを取り出した。イーゼルを立てている時間はない。銀の指輪から緑色の絵の具を出すと、乱雑にキャンバスへと絵の具をぶちまけて塗りたくる。その緑色に塗られたキャンバスこそが【|反乱せよ、緑の助言者《ヴェルデ・メントル》】の要。大広間中に広がる不可視の斬撃を受け止めた緑色のキャンバスはユーベルコードの効果により切断されることはなく、きっかり103秒間の間与吉に向けて不可視の斬撃を発動させ続ける。斬撃が命中した相手からは移動力が奪われる。現に与吉の斬撃を受け止めたチビサライたちは移動力を奪いつくされてへんにょりしている。へんにょりした状態でも命じられたとおりに砕牙と燦斗を守り続けるチビサライと精霊猫の姿たるや、もはや健気である。あとで社畜手帳の一ページが埋まる事間違いなしであった。
「人斬りってんなら、もう片方の腕もぶっ壊しゃ人斬れねえだろ!!」
動きを止めた与吉に、サライが二刀でもって与吉に斬りかかる、しかしサライはダメージを受けすぎていた。このユーベルコードを使うのであれば、そして味方がいるのならば、サライはダメージを肩代わりし続けるに徹した方が良策であっただろう。チビサライと共有するのはダメージだけではあるが、それでもすぐに与吉の不可視の斬撃によってたちまち移動力を奪い去られて膝をつき――そこに、与吉の刃が襲い掛かる――
「ぐッ、くっそがァ……!!」
「大丈夫ですよ、サライ。よく頑張りました。ここからは――“俺”に任せなさい」
ぐらりと傾いだサライの横を、真っ黒な影が高速ですり抜けていった。チビサライに守られることで自身の移動力を温存し、そして今ここに【|影をも超える狂気の黒《ロゥクーラ・プレート》】を発動させた燦斗である。
サライのそれと似て非なる黒鉄の刃を手に、殺人鬼へと変貌した燦斗は与吉へと斬りかかる。
「人斬り、人斬りねぇ!ならばやっぱりここは殺人鬼の私の出番でしょうに!」
――優しさなんて捨てないと、ねぇ!
「|しゃらー《ここまでの話で優しさどこかにありましたかねー》?」
「はいチビちゃん、ビークワイエット」
「らーい……」
軽い口調でチビサライを黙らせて、燦斗は与吉の懐に潜り込む。斬撃を繰り出さんとする前にその残った腕が手首から黒鉄の刃に叩き斬られ、再び与吉の刃は古畳の上に転がる。
「にょあーん」
転がった刀をちょいちょいと前足で回収する精霊猫。その猫も移動力を奪われているものの、ふしゃーっと毛を逆立たせて刃を奪還されぬように精一杯威嚇している。
「よくやりました。それではトドメ、頂きましょうか」
『――――――――!!』
大広間に与吉の絶叫が響く。両腕と刃を失った与吉には、もはや吠える事しか残されてはいなかった。
「こちとら人を殺す鬼だから、殺人鬼なんだよ。さっさと死ね、斬るだけの能無し野郎」
燦斗の黒鉄刀が、与吉の首を刎ね、返す刀でその心臓を貫く。血が飛び散り、ざわりと与吉の身体が崩れて消えた。
「はい、おしまいです」
ユーベルコードを解除した燦斗がぱんぱんと手を叩く。
「くっそ……親父てめえ、後からやってきて美味しいとこ取ってんじゃねぇ!!俺と砕牙に言うことあんだろーが!!」
「ずるいぞ燦斗マン!!俺らを蹴り落としておいて最後を持ってくなんて!」
勝利に肩の力を抜くや否や、ぶーぶーとブーイングを始めるサライと砕牙。
「えー、なんですかぁ。殺人鬼VS人斬りなんだからいいでしょー。言うことなんて無いですね、善意なので!」
「くそが、帰ったらピーマン大盛りの青椒肉絲食わせるからな!!」
「こうなりゃピーマンマシマシの野菜炒めも追加するからなー!!」
金宮燦斗はピーマンが嫌い。ろくでなし殺人鬼の意外な弱点であった。
「あっ酷い! 夕食権限があるからって!」
ぎゃーわーと言い合う三人を横目に、与吉が倒されたことで移動力を取り戻した精霊猫とチビサライは障子を開く。血に濡れていた障子はいつの間にかただ他の家屋のように朽ちかけた障子へと変わっていて、そこから入り込む光は血の跡の一つもないただの古畳を照らしていた。
与吉が消え失せたことによって、この村からは怪異が取り払われる。
斯くして、インスタントの因習と血に塗れた廃村は消え、ただ何の怪しい因習も陰惨な歴史もない、ただただ人がいなくなっただけの廃村「旧姉ヶ淵村集落」が戻ってきたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵