●かつての契り
るるら、るるりら。
だぁれも居ない雪の中、ただひとり歌っていたの。
るるら、るるりら。
蒼い月光が落ちる中で。
るるら、るるりら。
「だれかいるの?」
幼い声が聞こえた。
「きれいなうた! ねぇ、どこにいるの?」
防寒具でまぁるく着ぶくれた男の子が頬を赤く染めてきょろきょろしながら歩いてくる。
わたしは少しだけ躊躇ったけれど、座っていた岩から降りて、彼の元まで泳いで行ったわ。
「……わたしよ、わたしが歌ってたの」
人ならざるわたしを見て、怖がるかしら。どきどきしながら声をかけたの。
彼は大きな目をさらにまんまるく大きくして。それからにっこり笑ったわ。
「わぁぁ! すっごいすっごーい! こんなにきれいなあおいろ、はじめてみた!」
興奮したように目をきらきらさせて、わたしをみつめる彼から恐怖心なんて微塵も感じられなくて。わたしも嬉しくなっちゃったわ。
「ありがとう、嬉しいわ。あなたは青色が好きなのかしら?」
「うん、あおいろがいっとうすき! そらのあおも、うみのあおも、おはなのあおも!」
「……おはな?」
空と海は知っているわ。でも、お花はわからない。
「お花の、あお。見てみたいわ……」
ぽつり、漏れたわたしの声に彼はにっこり笑って手を取ったの。
「じゃあ、ゆきがとけて、はるになったらむかえにくるよ! とっておきのばしょがあるんだ!」
彼は小指を差し出したわ。人間は約束をするときにこうやって誓うのですって。
「じゃあ、またはるになったらくるね!」
「ええ、待ってるわ」
離れた小指は、もう繋がることはなかった。
●ヤドリガミ、かく語りき
「やっほー。みんなは大切な約束ってあったりする?」
小指を立てて、戴・凜風(浄化を祈る・f23661)はキミ達に問いかける。
「UDCアースに、もう来ない少年を待ち続ける妖怪がいます。どうか、その妖怪を救ってあげてほしいんだ」
ひとの命は儚く短い。それは妖怪とは全く違う。妖怪のひととせは、人間にとっての何十年にも匹敵することもある。
「孤独な妖怪と、無邪気な少年のちいさな約束だよ。冬が終わって、春になったら一緒に青いお花を見ようねって。少年は約束を破るつもりなんて全くなかった。……でも、人間のいのちって儚いんだ。
……少年は、はやり病に罹ってしまってね。ちいさな命の火はすぐに消えてしまった。
でも、妖怪はそれを知らずに待ち続けている。何年も、何十年も、何百年も。彼女にとって待つことは苦痛ではなかったんだ。まだ見ぬあおに心を躍らせて、そして心を通わせた事実がうれしかったから」
ま、そもそも時間の感覚が人間の感覚と全く違うっていうのもあるんだけどね、とおどける凜風。
耳に提げたペンデュラムを揺らし、言葉を続ける。
「妖怪はカクリヨファンタズムに行かず、UDCアースにとどまり続けている。約束を守るためにね。UDC怪物を喰らうことでUDCアースにとどまることができてるんだって。……その、UDC怪物を喰らってることで、妖怪の力がすっごく強くなってるの。そして、理性を失いつつあるんだ。まともにやりあったら、ちょっと難しいかもしれない。
でもね、約束のことをうまく伝えられたら理性を取り戻してくれると思うんだ。そしたら、きっと彼女も納得してカクリヨファンタズムへ向かうことができるよ」
「まず、妖怪……凍れるローレライの妖気に誘われ、これから食われるであろうUDC怪物をさきに倒して欲しい。これ以上食われるともう手が付けられなくなってしまうかもしれないからね。
そしたら凍れるローレライを無力化し、理性を取り戻させてあげて。みんなの言葉が届いたら、きっと納得してカクリヨファンタズムへ行ってくれるだろうからさ。
少年のかわりに素敵なあおいおはなを見せてあげたら、きっと気持ちよく旅立てると思うよ! ふふん、場所の手配は任せてね!」
にぃっと笑って、凛風はキミ達に願う。
「さぁ諸君! 見せられなかった景色を見せられるように、がんばって、いーってらーっしゃーい!」
八卦盤の形をしたグリモアを広げ、一人ひとり転送していく。
●千切れた約束
約束。約束をしたの。あの子と。
見ると、見せてくれると。
……あら? 何を見せてくれるのだったかしら?
えぇと、待っていればいいのよね。そう、そうだわ。待っているって、約束したんだわ。
わたしはここにいるわ。ずっと、ずっと待ってるわ。
涼村
こんにちは、お久しぶりです涼村と申します、よろしくお願いします。
今回は、集団戦、ボス戦、日常の3章構成となっております。1部参加でも、通し参加でも、奮ってご参加ください。
OPが公開された時点でプレイングを送っていただいて大丈夫です、ぜひご参加ください。
3章の日常シーンでは、ネモフィラが一面に咲き乱れる流星群の夜へ赴きます。凍れるローレライが理性を取り戻し、穏やかに過ごしています。凍れるローレライへのお声がけはしていただいても、おひとりで、お友達さんとお過ごしいただいても大丈夫です。
みなさまのプレイングをお待ちしています。どうぞよろしくおねがいします。
第1章 集団戦
『ひよこさん』
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POW : 誰かさんとあなたと
いま戦っている対象に有効な【誰かの魂】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD : どこかのあなた
小さな【鈴】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【幻影を見せる異空間】で、いつでも外に出られる。
WIZ : あなたの言葉
妖怪【ひよこさん】の描かれたメダルを対象に貼り付けている間、対象に【普段なら言わないような事を言いたくなる】効果を与え続ける。
イラスト:猫柳ひま
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●誰かと、あお
ぴぃぴぃ、ちりん。
可愛らしい声で鳴きながら、黄色いまんまるは惹かれて行く。
ちりちりん、ぴぃ。
ぴょこぴょこ飛び跳ねながら、ただひたすらに、惹かれるままに。
これ以上凍れるローレライの力を強めてはいけない。
ぴぃぴぃ、ちりん。
きみ達に気づいたひよこさんが、邪魔をするなとばかりに寄ってきた。
御園・桜花
「あら可愛い」
至高のお猫様(越えられない断絶)の次に同着で犬と鳥が好きな猫痴女、呟いた
「お腹がすいて食べられないのは辛いでしょう。転生して、もう1度いろんな物を食べる幸せを味わってみませんか?食べて育って変わり行く貴方は、今迄得られなかった経験をして、ずっと幸せになれると思います」
UC「侵食・サクラミラージュ」使用
どこまで説得が通じるか不明だが転生を願うよう勧める
「きっと貴方も、鳥らしく青空を飛ぶようになるでしょう。今迄食べたことの無い美味しい物を、自分でもっと取りに行けるようになるでしょう。変わり行くのは、成長するのは素敵なことです。転生して、成りたい貴方になっていらっしゃい」
鎮魂歌歌い送る
●桜色鎮魂歌
「あら可愛い」
ぴぃぴぃ、ちりん。まんまるボディをぴょこぴょこさせながら威嚇をするひよこさんを見て、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はそう呟く。
至高のお猫様には遠く及ばない、そもそも超えることなど出来ない断絶があるけれど、その次くらいに好きな鳥を見てつい漏れ出た言葉だ。隣に犬が居ても同じことを言ったかもしれない。
そんな言葉を聞いてもなお、ひよこさんはぴぃぴぃと鳴きながら小さな羽をぱたぱたさせて桜花へと突進してくる。
「お腹がすいて食べられないのは辛いでしょう。転生して、もう1度いろんな物を食べる幸せを味わってみませんか? 食べて育って変わり行く貴方は、今迄得られなかった経験をして、ずっと幸せになれると思います」
とても遅くゆるかやで可愛らしい突進を、桜色の髪をふわりとさせながら避けてひよこさんへ言葉を紡ぐ。
文字通りの鳥頭であるオブリビオンにどこまで説得が通じるか不明だがいつもしているように転生を願うよう勧め、UDCアースの世界をサクラミラージュの世界へと塗り替えた。ひらひらと幻朧桜が舞い散る戦場を、ゆったりと進み、ひよこさんの前で目線を合わせるようにしゃがむ桜花。
「きっと貴方も、鳥らしく青空を飛ぶようになるでしょう。今迄食べたことの無い美味しい物を、自分でもっと取りに行けるようになるでしょう」
だから、どうぞ転生を願ってください。そう語りかけるも、ひよこさんは妖怪ひよこさんの描かれたメダルを桜花に貼り付けようとくちばしに咥える。
しかし、ひよこさんが転生を願っていないのだろう。咥えては落とし、落としては咥えの繰り返しだ。ふむぅ、とその様子を眺めていた桜花は衿元から桜鋼扇を取り出し、
「えいっ」
そのもふもふした頭にぺちっと落とす。雷の属性が乗っていたのだろうか、パチッと軽い音と共にひよこさんはころんと転がっていった。
「転生を望まないのであれば、仕方ありませんね……」
もふもふ転がるオブリビオンのために、桜花は幻朧桜の桜吹雪を纏いながら鎮魂歌歌い、骸の海へと返していった。
大成功
🔵🔵🔵
天水・息吹
UDCアースに留まっている妖怪が居たとはね
UDC怪物を喰らうのは感心しないけど約束を守るためなら仕方がない
少年が彼女を見ることができたってことは、約束が為されたのはきっと妖怪が人の目に映らなくなるより前のこと
そんな長きにわたり待つなんて…健気なことだね
現地に向かう前にアヤメを花束にして持っていく
少年が見せたかった花とは違うだろうけど、目に留まりやすい大きめの花を選んだ
さて、そんなボクの前に立ちふさがる幼い鳥さん
おや、彼女を守る気かい?
可哀想だけどボクは進まなくてはいけない
霊に頼んで彼らを焼いてしまおう
※アドリブ・連携歓迎
口調:発言は子供っぽい、内心はプレイングのような口調
普段言わないこと:暴言
●優しき竜神
大ぶりのアヤメを花束にして、天水・息吹(元・空の竜神さま・f28064)は妖怪を想う。妖怪が人の目に映らなくなるより前に為した約束を守るためにUDC怪物を喰らってまで生きながらえる優しき妖怪を。
「こんなにながーい間待つだなんて、健気なことだね」
かさりと花束を抱えなおすと、息吹の目の前にひよこさんたちがぴぃぴぃ集まってくる。
「えぇと、いち、にぃ、さん……。わ、結構居るなぁ」
息吹のひざ下よりも小さなふわもこが、ぴぃぴぃぱたぱたと襲い掛かる。
「んっ、彼女を守るつもりなのかな? 困ったな~」
もこもこ集まるひよこさんたちに、息吹は顎に手を添えて考え込む。目の前の幼い鳥さんも、その向こうに控える凍れるローレライだって、息吹にとっては憐れみ同情する存在だ。むーん、と唸るも、ここは可哀想だけど進まなくてはいけない。
「みんな、出てこーいっ! 彼らを焼いちゃって!」
息吹が片手を挙げると虚空から古代の戦士たちが現れる。急な登場に驚いたひよこさんたちがぴぃぴぃ言いながら息吹へ妖怪ひよこさんの描かれたメダルを貼り付けた。
ぴぃぴぃちりんと喚くひよこさんたちは、その恐ろしい姿に威嚇しているようで、自分が倒される恐怖とは別のものを訴えているように見える。
「あっ! もしかして彼らのこと怨霊だって言ってるの?! そんなこと言われたらボクだって怒っちゃうからね!」
息吹も気づかぬうちに貼り付けられていたメダルの効力によって、普段は口にしないような言葉が溢れ、ひよこさんたちへぶつけられる。
「キミたちだってよく見たらまんまるボディが行き過ぎてちょっとおデブに見えるし、3歩歩いたらぜーんぶ忘れちゃうようなお馬鹿さんだって知ってるんだよ! えーとえーと、つまり……ばーーか!!」
ぷりぷりしながら思いつく暴言を放つ。あんまりたくさんは言えなかったけど。
もういい! とばかりに顔をそむけると、召喚された古代の戦士たちがショックを受けているひよこさんたちを骸の海へと返すために炎を放つところだった。
「じゃーねっ! もうしーらないっ!」
大成功
🔵🔵🔵
津崎・要明
こんな可愛い子達をやっつけるのは気が引けるけど、世の為人の為ローレライさんの為だ許してくれよな。
あ、君たちローレライさんと一緒にカクリヨで暮らせばいいんじゃないか?丁度寂しそうなんだし。
よしそうと決まれば、「Falster」のビームを武器改造で麻痺属性に変えてひよこさんシューティングしよう。順調に足止めできれば「Otters」に載せておいてローレライさんの説得が済むまで保護するよ。
回収の際には鈴に気を付けておく。
カクリヨまで持ってっちまえばおっきいひよこ多分妖怪で通用するだろ。
ただ「凍れるローレライ」さん冷たそうだからな・・・ひよこはあったかくしてやらないといけなさそうなのがちょい心配だ。
●捕獲作業開始
黄色いふわもこが津崎・要明(ブラックタールのUDCメカニック・f32793)の目の前でもこもこしている。そのもこもこ具合に、やっつけてしまおうという気持ちがちょっぴり無くなりかけたけれど、これも世の為人の為ローレライさんの為だ許してほしい。あっ、今いいこと思いついた気がするぞ。
「君たちローレライさんと一緒にカクリヨで暮らせばいいんじゃないか? 丁度寂しそうなんだし」
うん、名案だなぁとひとり頷いて要明は熱線銃を持ち替える。このまま撃ってしまえばひよこさんはきっとカクリヨへ行く前に骸の海へ旅立つことになるのだ。エネルギービームを麻痺属性に変えて、Falsterを構えた。
「Capture work start! なーんてな」
慣れた手つきでFalsterを操り、次々とひよこさんたちを無力化していく。しびしび、ころりと転がるさまはとても愛らしい。やはりこのまま骸の海へ送るよりも、カクリヨでおっきいひよこ(多分)妖怪として再活用する方がずっと良い冴えたやり方だ。
しびれて上手く動けないひよこさんたちを、要明はOttersへ積み込んでいく。しっぽの鈴に触れないように、けれど手早く。
どんどんタグボートに積み込まれるふわもこは、きっと寒さにはあまり強くないだろう。凍れるローレライとカクリヨへ渡ったあとの寒さ対策を考えながら、要明は捕獲作戦を無事に終了させたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
厳・範(サポート)
長年の修行で誘惑に強いお爺です。
食べ物に制限はありません。
話し方は古風です。
亡き親友との約束(世界を守る)で、封神武侠界のみで活動していましたが、『仁獣』性質と親友の幻影の後押しで決意し、他世界でも活動し始めました。
「放っておけぬのよ」
動きとしては、主にサポートに回ります。
【使令法:~】では、麻雀牌を利用して、対象生物を呼び出します。
【豹貓】は睡魔を呼ぶ、【胡蜂】は恨みの毒(理由は秘密の設定にて)という感じです。
また、半人半獣もしくは本性の麒麟形態だと、背に人を乗せることがあります。
なお、武侠の血が騒ぐと足技が出ます。
依頼達成のためとはいえ公序良俗に反する行為はしません。
あとはお任せします。
隠神・華蘭(サポート)
※えっちなのはよろしくないと思いますぅ。それ以外でしたら割となんでも。
化け狸の華蘭と申しますぅ。
一人称はわたくし、お名前呼びは〇〇様で口調は丁寧語、カタカナ表記の単語は人名以外はひらがなで喋りますよぉ。
化術や逃げ足を駆使して駆け回りながら攻撃は鉈での切断と小判ばらまきや狸火での範囲攻撃をめいんに使っていきますよぉ。
UCは何でもいけますが『怨絵巻』系が多数攻撃できてよいかもですぅ。
あとは『偽の汽車』で吹っ飛ばしたり狸召喚系などもありかと。
他の妖怪さんをはじめ、人間以外は優先的にお優しく接しますよぉ。
普通に接するだけで別に人間にきつく当るというわけではないですのでご安心を。
●幻獣と妖怪とひよこさんと
ぴぃぴぃ、ちりん。まんまるボディを揺らしながらひよこさんは、厳・範(老當益壮・f32809)と隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)を威嚇する。
「……ふむ、これはなかなか」
「相手どるのが難しいおぶりびおん、ですねぇ」
威嚇してくる姿さえも可愛らしく、このまま倒してしまうのは躊躇われてしまう。
「しかし、安らかに送ることが救いにもなるであろう。このままだと凍れるローレライとやらに喰われてしまうだけだ。なるべく苦しまず送ってやるのが役目というものよ」
「言われてみれば、その通りですねぇ、一気にやっつけてしまうのがわたくしたちの役割なのでしょうねぇ」
こくこくと華蘭がうなずくと、範もゆっくりとうなずき、顎のひげをなでる。
「苦しまず、となれば眠っているうちに攻撃するのが良いであろう。どれ、リュウファで行こうか」
範が發の麻雀パイを宙に放ると、ベンガルヤマネコたちがしなやかに飛び出す。シュタっと音もなく着地するベンガルヤマネコに、ほんの少しだけ双眸をゆるめた範は、ひよこさんたちを眠らせるようベンガルヤマネコに命じた。
「あらぁ、可愛い猫ちゃんたちですねぇ。眠らせていただけるのであれば好都合ですぅ、範様、あまりこちらを見ないでくださいねぇ」
なにかの昔話のようにお爺さんへ見ないようお願いすると、華蘭はお世辞にも可愛らしいとは言えない茶釜を被り、大きな声でゆーえふおーを召喚する。
「う~ん、やっぱり恥ずかしいですねぇ……早くかたをつけちゃいましょう~」
ベンガルヤマネコがひよこさんにじゃれつくと、すぴよすぴよと寝息を立て始める。眠りに落ちたひよこさんを襲うのは、怪光線を連射する未確認飛行物体・茶釜型虚舟である。その凄まじい攻撃力の怪光線は、ひよこさんに痛みを感じさせる間もなく骸の海へと送っていった。
「終わりましたかぁ?」
茶釜から顔をのぞかせて、華蘭が周りを窺う。
「うむ、これであの者たちも救われたであろう」
頷きながら範が華蘭を見遣る。可愛いとは言い難い茶釜を被った華蘭が居た。
「……み、みないでくださぁい!!」
顔を真っ赤にしながら、華蘭はまた茶釜の中へ引っ込んでしまったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『凍れるローレライ』
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POW : 凍れる吐息
【対象を凍結させる吐息】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 纏う氷
自身に【凍結の吐息により発生した氷】をまとい、高速移動と【氷塊でできた矢】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 誘う歌声
【自身の口】から【心惹かれる美しい歌声】を放ち、【歌声の持つ催眠効果】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:ミツ葉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠レティシャ・プリエール」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●千切れた
るるら、るるりら。
歌が聞こえる。
るるら、るるりら。
もう冬はとうに過ぎ去ったのに、凍えるような寒さだ。
ぎゅ、と心が握りしめられるような、切ない歌声が響く。
るるら、るるりら。
蒼い月光が落ちる中、凍れるローレライは月に向かって歌い続けていた。
「あなたたちがひよこさんをどこかへやってしまったの? 嗚呼、どうしましょう。これだと約束が、約束が守れないわ! わたしは待っていなくてはいけないのに!!」
歌声は途切れ、怒りの矛先が君たちへ向かう。
そして、うっそりと笑って青白い手を差し伸べる。
「嗚呼、そうね。あなたたちを食べてしまえばいいんだわ。そしたら、そうしたらまだまだずっと、いつまでだって待っていられるんだもの!!」
待つということに執着しすぎてしまった凍れるローレライ。彼女に本来の約束を思い出させてあげられたら、きっとカクリヨへ渡ってくれるだろう。
彼女に、ちいさくたいせつな約束を。
八坂・詩織
元能力者、『イグニッション!』で武装を解放して対峙。
瞳は青く変化し白い着物姿に。
綺麗な歌声ですけどごめんなさい、私の話も聞いてもらえませんか?
催眠効果は【呪詛耐性】で耐え強制共生弾で【麻痺】させつつお話を。
『手荒なことをしてごめんなさい。私も雪女、雪と氷を操る妖怪です。あなたとお話したくて来ました』
『あなたはとても綺麗な「青」色の人魚ですね。「青い花」が似合いそうです』
「青」「花」という言葉を織り交ぜ反応を見る。
とても大切な約束があるんですよね、「誰と」「何を」約束したんでしょう?
大丈夫、生き延びてでも果たしたかった約束ですから、覚えてるはずですよ。ちょっと思い出すのに時間かかってるだけです。
●氷と雪と
るるら、るるりら。声が響く。聞くものの思考を溶かしてしまうような歌声が。
それを遮るように、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)はイグニッションカードを取り出し、大きな声で叫ぶ。
「イグニッション!」
能力を開放すると、詩織の茶色い瞳が青く変化し、カードに閉じ込めていた詠唱兵器を身にまとう。すらりとした体に白い着物、赤い帯を飾って凍れるローレライへ言う。
「綺麗な歌声ですけどごめんなさい、私の話も聞いてもらえませんか?」
呪詛耐性でなんとか体を動かし、対抗するように麻痺させるキノコをぽこんと生やす。強制的に心をつないで、詩織は凍れるローレライに語り掛けた。
「手荒なことをしてごめんなさい。私も雪女、雪と氷を操る妖怪です。あなたとお話したくて来ました」
「嫌よ、話すことなんか何もない! わたしに食べられて、それで一緒に待ちましょう!」
ざぁ、と氷のつぶてが浮かび上がり、詩織を狙うように揺らめく。しかし、詩織は語り掛けるのをやめない。
「あなたはとても綺麗な『青』色の人魚ですね。『青い花』が似合いそうです」
グリモア猟兵が話していた、彼女たちの過去にまつわるキーワードを小出しにしていく。
「あなたは春に咲く『青い花』を知っていますか? とても綺麗な『花』を」
『青』や『花』の単語が出るたびに、躊躇うように氷のつぶてがぽとりと地に落ちる。
「とても大切な約束があるんですよね?」
「ええ、そうよ。待つって約束を、したの! だから邪魔をしないで!」
張り裂けそうな心が、キノコを通じて詩織へと届く。
「『誰と』『何を』約束したんでしょう? きっと待つだけではありませんよね」
痛いくらいに届くその心に、優しく気持ちを重ねていく。
大丈夫、生き延びてでも果たしたかった約束ですから、覚えてるはずですよ。ちょっと思い出すのに時間かかってるだけです。
戸惑う凍れるローレライの心に、詩織はそっと寄り添った。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
制圧射撃で相手の出鼻を挫いたらUC「魂の歌劇」
約束を歌で聞かせ相手の心に約束の内容を刻む
ローレライは歌っていた
歌い続けて男の子に会った
空の青海の碧花の蒼
青が好きな2人は約束をした
春になったら青い花を見に行こう
指切りして別れて早幾年
ローレライは待っている
約束の相手が現れるのを
花を花を青い花を
一緒に見る約束を
男の子は冬を越えられなかった
願いだけが残された
花を花を青い花を
一緒に見る約束が
花を花を青い花を
一緒に青い花を見に行こう
男の子は現れなかった
約束だけが残された
それでも強い願いは必ず叶う
花を花を青い花を
約束は青い花を見に行くこと
ほら手を取って
足を踏み出して
花を花を青い花を
一緒に青い花を見に行こう
●重なる歌
薄いヴェールの向こうに隠れていた青い瞳が桜花の姿を射抜く。
るるら、るるりら。
凍れるローレライが桜花の動きを封じるべく歌おうと息を吸った、その刹那の瞬間。凍れるローレライの足鰭を掠めるようにライトマシンガンから鉛玉が飛び出した。
ヒュ、と小さな息が漏れたのを、桜花は聞き逃さない。桜花が紡ぐ魂の歌劇の幕が上がる。
――ローレライは歌っていた
桜花の澄んだ声が響く。
――るるら、るるりら
凍れるローレライの冷たい声も、混じるように響いていく。
――歌い続けて男の子に会った
――るるら、るるりら
――空の青海の碧花の蒼 青が好きな2人は約束をした
――るる、ら……
――春になったら青い花を見に行こう 指切りして別れて早幾年
ローレライは待っている 約束の相手が現れるのを
花を花を青い花を
一緒に見る約束を
桜花が紡ぐ、過去のふたり。ユーベルコードに思いを乗せ、遠い昔のふたりを描く。
――男の子は冬を越えられなかった 願いだけが残された
花を花を青い花を
一緒に見る約束が
花を花を青い花を
一緒に青い花を見に行こう
澄んだ声を響かせて、桜花は少しだけ目を伏せる。今から歌う事実を、凍れるローレライはどう受け止めるのだろうか。
――男の子は冬を越えられなかった
凍れるローレライの瞳が、戸惑いに揺れる。されど、歌は止められない。すべてを伝え、前に進むことを教えなければならないのだから。
――願いだけが残された
花を花を青い花を
一緒に見る約束が
――花を花を青い花を
一緒に青い花を見に行こう
凍れるローレライがよろめくように後ろへ泳いだ。なにかを思い出すかのように眉根を寄せ、こめかみを抑える。
――男の子は現れなかった 約束だけが残された
それでも強い願いは必ず叶う
花を花を青い花を
約束は青い花を見に行くこと
――ほら手を取って 足を踏み出して
花を花を青い花を
一緒に青い花を見に行こう
ひぃらり、幻朧桜の花を揺らしながら手を伸べる桜花だったが、凍れるローレライは信じたくないようで耳をふさいで嫌だと首を振るだけだった。
桜花の歌だけが響いていく。
大成功
🔵🔵🔵
天水・息吹
それは叶えてあげられないなー
ボクが食べられてキミの約束が守れるならそれもいいかなってチョット思ったんだけど
うーん、まだ残酷な事実は言わないであげたほうがいいかな
約束を代わりに果たしに来たよとアヤメの花束を差し出す
たぶんね、キミは満足しない
約束した子に見せてもらいたいんじゃない?
ちょっと困った顔をして笑う
彼女がボクを拒絶したり
さっき言ってたみたいに食べようとして動く前に
竜神飛翔を発動して竜の姿に転じよう
わあ、冷たいや
このおっきなボクも凍らせちゃうの?
ころころ笑いながら体をうねらせて雷を放つ
彼女に慈愛に満ちた視線を向けながら
彼女の言葉を黙って受け止め続けよう
だって彼女はがんばった
独りって寂しいのに
●寄り添う竜神
何も信じたくない、と子供のようにいやいやする凍れるローレライを見て、息吹は残酷な事実は言わないであげたほうがいいかなと思案する。様子を見るに、どうやら受け止め切れていないようだ。
ボクが食べられてキミの約束が守れるならそれもいいかなってチョット思ったんだけど、と零しながら大ぶりのアヤメの花束を凍れるローレライへと差し出した。
「約束を代わりに果たしに来たよ」
そう微笑みながら声をかけるが、凍れるローレライはそれを受け取らない。
「違う、ちがうの。これじゃないもの」
漏れる吐息が、息吹の持つ花束をパリパリと凍らせる。
「そうだね、キミは満足しない。ボクじゃなくて約束した子に見せてもらいたいんじゃない?」
『約束』という言葉を使い、息吹は困った顔をして笑った。ボクは彼に成りえない。ボクでは約束は果たせないから。
その単語に反応したのか、凍れるローレライの瞳に昏い光が宿る。おっと、このままだと花束ごと凍らせられるかもしれない。
息吹は白銀煌めく竜へと姿を変え、身をよじる。つめたい吐息が身を掠めるが、凍えるほどではない。
「わあ、冷たいや! このおっきなボクも凍らせちゃうの?」
見上げるほど大きな黒と白が入り混じった竜神はころころ笑ってその氷と言葉を受け止める。
「わたし、わたしは、待って……たの! 約束したのよ!」
ぎゅうと拳を握って言葉と冷気を飛ばす凍れるローレライを、慈愛に満ちた顔で見て、言葉を、冷気を甘んじて受け入れる。
「ずっと、ずっと待って。おなかがすいたから……みんなを……」
「うん」
ずっと孤独であれば、孤独だったことに気づかなかったかもしれない。しかし、一度心を通わせた相手が居て、その温かさを知ってしまったから。それを長い間待っていたから。
段々とぶつけられる言葉が小さくなり、凍れるローレライの白い頬に氷の粒が伝った。
――キミはがんばった。独りって寂しいのに。
大成功
🔵🔵🔵
津崎・要明
UCで氷を砕きながら説得するよ。
誰かを、大切な人を独りでずっと待ち続けるのは辛いよな。期待して、楽しみで、やっぱり来なくて少しがっかりして。不安になったり、心配したり、寂しかったり。
悲しくなったりするよな。
それでも君はその子を信じて待ったんだ、そして今も待ってる。偉いな。
でも、もう待たなくていいんだ。ほら、これ預かってきた。
矢車菊を見せて、止まるようなら渡そう。
春に咲く青い花だよ
君の色と似てる。
(俺の記憶の|惑星《ほし》にも)
来たかったけど、来れなくなったから君に渡して欲しいって。そして約束の場所へ君を案内してって言ってた。
どうだろう、今でもまだあの子の好きな青を見てみたいと思うかい?
●青い花、青い|惑星《ほし》
凍れるローレライの握った拳が振り降ろされて、それに押されるように氷の矢が要明へ飛んでいく。
「わたし、待ってた……。ずっと、長い間。……なのに、なのに」
「誰かを、大切な人を独りでずっと待ち続けるのは辛いよな。
期待して、楽しみで、やっぱり来なくて少しがっかりして。不安になったり、心配したり、寂しかったり。悲しくなったりするよな」
優しく微笑みながら、要明は氷の矢を砕く。凍れるローレライの心に寄り添い、その気持ちを受け止めて。
「いけないことを、したわ。わたしがわたしで居るために、みんなを……」
「うん、そこまでして君はその子を信じて待ったんだ、そして今も待ってる。偉いな」
交わした約束が歪んでしまうほど、凍れるローレライは約束を守り続けていた。けれど。
「でも、もう待たなくていいんだ」
ピタリと、氷の矢が止まる。凍れるローレライの瞳に戸惑いが浮かんだ。
「ほら、これ預かってきた」
要明の手に、氷の矢を集めたような青い花が握られている。
「春に咲く青い花だよ。君の色と似てる」
そして俺の記憶の|惑星《ほし》にも。
伸べられた白い手に、要明は矢車菊を握らせた。凍れるローレライが纏う氷が、音を立てて落ちていく。すっかり理性を取り戻した彼女に、少年の言葉を伝える。
「来たかったけど、来れなくなったから君に渡して欲しいって。そして約束の場所へ君を案内してって言ってた」
氷の涙をぽろぽろ零す姿を見て、言葉を重ねる。
「どうだろう、今でもまだあの子の好きな青を見てみたいと思うかい?」
優しく諭すように問いかけると、凍れるローレライは小さく頷いた。
――それじゃあ、みんなで行こうか。もちろん、ひよこさんたちも一緒に。
大成功
🔵🔵🔵
●
桜花の歌う声が響く世界。ちょっと思い出すのに時間かかっていたが、きちんと本来の約束を思い出せた凍れるローレライの姿に、詩織は安堵の笑みを浮かべる。
竜の姿のまま凍れるローレライの言葉を受けていた息吹も、もう大丈夫だと感じて地に降りた。
タグボートに積まれたひよこさんたちを引き連れた要明を筆頭に青い世界へと旅立っていった。
第3章 日常
『『瑠璃と濃藍と、満月と――』』
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POW : 藍の世界を逍遥する
SPD : ネモフィラを愛でる
WIZ : 流星に願いを乗せる
イラスト:オオミズアオ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●青に溺るる
青い月光が射す中、星が降っている。
世界中の青い花々を集めたこの青い世界へ、青い妖怪が泳いで行く。
ざぁ、と風に乗って青い花弁が世界を埋める。
きみたちがこの世界を楽しんでくれれば、凍れるローレライもきっと気持ちよくカクリヨファンタズムへ旅立てるだろう。
さぁ、青い世界へ溺れよう。
御園・桜花
「瑠璃唐草の花畑…本当に一面の蒼ですね」
主に食料と本を突っ込んでいる古木の宿から本来は包帯を固定する為のサージカルテープ取り出す
摘んだ瑠璃唐草を無理矢理テープで巻き止め花冠を作りローレライの頭に乗せる
「クローバーのように茎が丈夫で長ければ花だけで花冠を編めたんですけど…瑠璃唐草だと一寸狡してテープで留めないと作れなくて…ごめんなさい」
目を逸らす
「心の籠った約束で命が失われる事は、きっと大事な人である程望まないから。約束を守る事も大事ですけれど、折に触れ約束をしたという事を思い出せる方が、お互いにとって大事で、充分な事なんじゃないかと思います」
「彼方に行っても、想い出が貴女の心を温めますように」
●紡がれる歌
「瑠璃唐草の花畑……本当に一面の蒼ですね」
月光に照らされた世界を見渡して、桜花は感嘆の息を吐く。その蒼い世界を泳ぐ凍れるローレライを見つけた桜花は古木の宿から、サージカルテープを取り出して瑠璃唐草を摘んだ。本来の使い方とは異なるが、花冠を作るために無理矢理テープで巻き止めて器用にまとめ上げた。
「クローバーのように茎が丈夫で長ければ花だけで花冠を編めたんですけど……瑠璃唐草だと一寸狡してテープで留めないと作れなくて……ごめんなさい」
桜花を見つけて泳いで来た凍れるローレライの頭に作った花冠をそっと乗せ、目を逸らした。
「いいえ、いいの。嬉しいわ、ありがとう」
ヴェールの上に乗せられた花冠を嬉しそうに触って、凍れるローレライは笑う。先ほどまでの氷の涙はすっかりと溶けて、表情も晴れやかだ。
「心の籠った約束で命が失われる事は、きっと大事な人である程望まないから。約束を守る事も大事ですけれど、折に触れ約束をしたという事を思い出せる方が、お互いにとって大事で、充分な事なんじゃないかと思います」
少しずれてしまった花冠を直しながら、桜花は約束に執着しすぎてしまった彼女にそう告げる。
「……そうね。あの子もその方が喜んでくれそう。
――ありがとう、貴女がくれた花冠も、素敵な歌も、すべて覚えて向こうへ行くわ」
未来へ泳ぎ出す凍れるローレライを見送った桜花は歌うように祈りを込める。
「彼方に行っても、想い出が貴女の心を温めますように」
大成功
🔵🔵🔵
八坂・詩織
イグニッションを解き、普段の姿に。
すごい…
一面の青の世界、空を流れる星々に思わず感嘆のため息。
約束、思い出せてよかったですね。やっぱり青い花が似合いますね。
きっと相手の男の子も安心したと思います。
よかったら、これ持っていきますか?
即席で作ったネモフィラの押花の栞を手渡す。
私、八坂・詩織といいます。
栞、と漢字は違いますが音は同じ。
さっきは無理やり心を繋いでしまいましたが…同じ雪と氷を操る者同士、今度はちゃんと心を通わせられればと。
どうかこの景色も忘れないでくださいね。
私にも会いたい人がいるんです。かつての天文部の仲間達…もしかしたら猟兵に覚醒した人もいるかも。いつか再会できたら、と流星に願いを。
●こころに挟んで
詩織がイグニッションを解くと、青い瞳が茶色に戻る。その瞳に、青の世界が映り込んだ。
「すごい……」
一面の青の世界、空を流れる星々を見て感嘆のため息が漏れ出る。その視界の端に、凍れるローレライのあおが見えた。咲き誇る花々を嬉しそうに眺める凍れるローレライの元へ詩織は歩み寄り、声をかける。
「約束、思い出せてよかったですね。やっぱり青い花が似合いますね」
「ええ、みなさんのお陰だわ。思い出させてくれて、ここへ連れてきてくれて、本当にありがとう」
「ふふ、どういたしまして。きっと相手の男の子も安心したと思います」
言いながら、即席で作ったネモフィラの押花の栞を差し出した。
「よかったら、これ持っていきますか?」
「……? これは?」
「先ほど作ってみたんです。……私、八坂・詩織といいます。うたを織り込む、と書いて詩織です。栞、と漢字は違いますが音は同じです」
冷たく細いゆびさきに触れながら、しっかりと押花の栞を握らせる。
「さっきは無理やり心を繋いでしまいましたが……同じ雪と氷を操る者同士、今度はちゃんと心を通わせられればと」
「いいのよ、さっきはわたしも周りが見えなくなってしまっていて」
さぁ、と緩く風が吹いて花びらを舞わせていく。まるで雪花が舞い散るようなその景色を心に刻み込むようにふたりはしばし黙って眺めていた。
「どうかこの景色も忘れないでくださいね」
「ええ、きっと忘れないわ。いま、ここに栞を挟んだの。いつだってこの景色を思い出せるように」
その言葉に詩織はじんわりと心が温かくなるのを感じ、笑みを深める。
「私にも会いたい人がいるんです。かつての天文部の仲間達……もしかしたら猟兵に覚醒した人もいるかも」
かつての死と隣り合わせの青春を送った日々を想い空を見上げると、きらり、星が流れていった。
「貴女の、詩織さんの願い事が叶いますように」
ありがとうございます、と笑みを交わして詩織も星に願いをかける。
――いつか再会できたら。
大成功
🔵🔵🔵
津崎・要明
はは、凄い!月光に照らされて風にそよぐ花がまるで波みたいに見えるや、星と舞い散る花弁は海底に降るというマリンスノーを思わせる。
そうか、だからあの子はこの場所を見せたいと言ったんだ、きっとローレライさんに似合うと思ったんだな。
うん、やっぱ綺麗だ!
(こんな美しい景色を、俺達の世界は失ってしまったんだな。なんだか少し胸が痛む)
どう足掻いても諦められないものはきっと誰にもあるはずだから、俺も最後まで足掻いてみせるさ、と遠くにローレライさんの姿を捉えて
ひよこさんはもう眠い子もいるみたいだね(よしよし)、後で戴さんのとこまで送るから寝ちゃってていいぞ。
でも今はもう少しだけ、この景色を眺めていたいな。
●美しい|惑星《ほし》
「はは、凄い!」
月光に照らされて風にそよぐ花がまるで波みたいに見えるや、と笑い、要明は海底に降るというマリンスノーを思った。ああそうか、あの子に凍れるローレライさんは『空と海の青は知っている』って伝えてたもんな。
「そうか、だからあの子はこの場所を見せたいと言ったんだ、きっとローレライさんに似合うと思ったんだな」
瞬く星を、満ちる月を見上げてしみじみと息を吐く。すぅ、とその美しさを肺に満たすように息を吸い、うーん、と伸びる。
「うん、やっぱ綺麗だ!」
見渡す限りのあおに、その美しさに少しだけ胸がちくりとした。
「(こんな美しい景色を、俺達の世界は失ってしまったんだな)」
失ってしまって気付く美しさのなんと儚いことか。失くしてしまってからでは遅い。でも。
「(どう足掻いても諦められないものはきっと誰にもあるはずだから、俺も最後まで足掻いてみせるさ)」
遠くで嬉しそうに花を眺める凍れるローレライを視界に入れ、強く決意する。忘れ去られ、交わした約束が歪んでしまうほどに足掻いた彼女のように。最終的にはこんな景色を手に入れられたように。
不意に、タグボートからぴよぉ……と鳴き声が聞こえてきた。
「おっと、ひよこさんはもう眠い子もいるみたいだね、後で戴さんのとこまで送るから寝ちゃってていいぞ」
ぴぃぴぃ眠そうなひよこさんを優しく撫で、またあおい世界へ沈んでいく。
――でも今はもう少しだけ、この景色を眺めていたいな。
大成功
🔵🔵🔵
●契った約束、重なる心
花冠をヴェールに乗せ、胸に押花の栞を抱いて、凍れるローレライはカクリヨへ泳いで行く。
「ありがとう、猟兵さんたち。きっと、ずっと忘れないわ。……そのひよこさんたちも、お願いするわね」
さようなら、ありがとう。そう何度も振り返りながらカクリヨへ旅立っていった。
千切れた心は、もう通じ合ったことだろう。