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精霊の森の侵略者

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「困ったなぁ」
「ああ……どうしたもんか」
 村人たちは、困っていた。
 彼らの多くは畜産を生業にして生活している。
 牛に豚、鶏。馬や羊……様々な家畜を皆で協力して育てているのだが、ここ一か月ほどあちこちで家畜の出産が続き村人全員がてんやわんや。
「まさかあんなにいっぺんに生まれるとは……」
「いくら手があっても足りん」
 さらに頭の痛いことに、近くの森ではちょっとした事件が発生していた。
 山菜取りや狩猟に出かけた村人たちが、悉く『酷い目』にあって帰ってくるのだ。
 「花に襲われた」と言って全身傷だらけになって戻ってくる、とか。
 通い慣れた場所であるのに道に迷い、森の入り口でボロボロの姿で発見される、とか。
 森から帰ってきて数日間幻覚にうなされ続ける、とか。
 村の長老曰く、森で人々が災難に遭うのは「森の精霊さまが怒っていらっしゃる」せいらしい。
 今はまだ怪我程度で済んでいるが、放っておけばどうなるか。
「精霊さまに、なんとか静まっていただかねば……」
「しかしどうやって? 精霊さまは森の奥深くにいらっしゃるのだろう、そこまでたどり着ける者がこの村にいるか?」
「仮にいたとしても、今は森の奥に行っている暇など……」
「このあたりには冒険者もあまり来ないしなぁ」
 村人たちは顔を見合わせ、はあ、と大きなため息をつく。
「「「困ったなぁ」」」


「アックス&ウィザーズの村の人たちが困ってるんだ」
 集まった猟兵たちを前に、レコ・ジェヒ(ケットシーのビーストマスター・f00191)が切り出した。
 その村では主に畜産を生業とした人々が暮らしているらしい。様々な家畜を皆で協力して飼育しているのだとか。
「少し前から家畜の出産ラッシュが続いてて、村の人たちは手一杯。なのに近くの森で変なことが起こり始めて」
 森に入った人々が悉く災難に遭う、というのだ。
「村人たちは『森の精霊のせいだ』って思ってる」
 精霊を鎮めに行きたいが、人手がない。さてどうしたものか、と困り果てているんだとか。
「森の異変の原因は『花と星の妖精』っていうオブリビオンなんだ。本来は森の奥深くに暮らしてて、外敵以外には手を出さないらしいんだけど」
 『森に精霊がいる』と信じる村人たちはそもそも森の奥深くまで立ち入ることはなく、今まで彼らに攻撃されたことはなかったようだ。ところが最近は森に足を踏み入れただけで『花と星の妖精』から攻撃されるようになってしまった。
「ようは『花と星の妖精』たちが何かの原因で過剰反応してるみたいなんだよね。みんなには彼らを鎮めると同時に何故そんなに過剰反応してるのか、その原因を探ってほしいんだ」
 幸い『花と星の妖精』は人語を理解し話すことができる。やりようによっては彼らから情報を得ることも可能だろう。
「原因がわかったらそれへの対処もお願い。……多分、村の人たちじゃ対応できないようなことが起こってるんだと思うから」

「森の異変への対処が終わったら、村の人たちを手伝ってあげてくれないかな?」
 家畜の出産ラッシュで村人たちは猫の手も借りたいほど忙しく働いている。
「村の人たちは喜ぶだろうし、手伝いの傍ら家畜の赤ちゃんたちと触れ合ったりもできると思うよ」
 そう言うと、レコは猟兵たちの転送を開始すべくグリモアを差し出すのだった。


乾ねこ
 乾ねこです。
 アックス&ウィザーズのとある村の住人が困っています。
 困りごとは「森の異変」と「家畜をお世話する人手が足りない」ことの二つです。
 森の異変の原因を究明・排除し、その後に家畜のお世話のお手伝いをしてあげてください。

 第一章は森の中での『花と星の妖精』への対処。
 第二章は『花と星の妖精』が過剰反応した原因の排除。
 第三章は『家畜のお世話のお手伝い』となります。

==注意事項==
 ご友人等、同行者がいらっしゃる場合はその旨をプレイングにご記入ください。お相手のIDやグループ名等が書かれていると確実です。
 また、プレイングの投稿時期が大きくズレますと同行の描写が叶わずプレイングをお返しする可能性があります。
 完全なる「単独行動」をご希望の場合にもプレイング内にてその旨をご指定ください。
 記入がない場合、単独参加でも他の参加者の方と行動を共にしていただくことがあります(特に探索、戦闘ではその傾向が強いです)。
========

 第三章のみ、プレイングにてご要望があった場合に限りレコ・ジェヒ(ケットシーのビーストマスター・f00191)が参加します。

 それでは、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『花と星の妖精』

POW   :    花を操る
自身が装備する【色とりどりの花】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    森の恵み
【食べると幻覚が見えるキノコ】【硬く巨大なきのみ】【どっしりと実った果実】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    星詠み
【占い】が命中した対象に対し、高威力高命中の【様々な結果】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

小宮・あき
まあ、なんて可愛い妖精さんだこと。
しかし、オブリビオンとなれば話は別です。しっかり、対応させていただきます!
(共闘、アドリブ歓迎です)

WIZ●星詠み

占いですか。
私、これでも商人なので、占いって信じていないのですよ。
他人の言葉で左右される弱い意志は、持っていませんもの。

占い結果が何であれ、攻撃が飛んでくるなら注意は必要。
【呪詛耐性】【オーラ防御】で身を固め、【視力】【聞き耳】で
周囲の状況をしっかり把握し【第六感】【野生の勘】を信じ
【ジャンプ】【ダッシュ】【逃げ足】で回避します。

UC【ジャッジメント・クルセイド】で攻撃を。
指先を向けるだけで、高命中の技を繰り出せる。
「絶対に逃がしません!」


アルト・カントリック
ふむふむ、森の精霊であり花と星の妖精でもある彼らを鎮めればいいんだね。手荒な真似は避けたいなぁ……。

ユーベルコード【消えた土曜日】を使用。精霊のメリュジーヌを召喚して、僕と精霊の間に入って冷静になるように代わりに説得して貰うよ。姿はほぼ見えないけど、声は聞こえるから大丈夫かな?

「メリュジーヌ、頼んだよ」

まずは、彼らに話の切り口として色とりどりの花について話題を出すようにメリュジーヌにお願いするよ。後はお任せかな。彼らは花が好きだと思うからね、上手く説得できるといいなぁ……。

■メリュジーヌ
●見えないけど、上半身が中世の服を着た美女、下半身が蛇。
●私/~かしら。~なのよね。~だわ。


ソラスティベル・グラスラン
村の内外両方で問題発生とは、ふむ、それは大変ですねえ…
いえ、任せてください!困っていればお助けするには十分ですっ
勇者の基本、人助け!いざ気合入れていきましょうっ、おー!(【鼓舞】)

勇気を漲らせ森の中に踏み出せば…
あいたっ、いたたっ、お花がぺちぺち、地味にいたいです!
【オーラ防御・盾受け】で盾を構え、
【勇気】と【怪力】でお花の嵐を正面からずんずん強硬突破していきます!
人の営み護るため!ここに誓うは、不退転の意思!
これがわたしの【勇者理論】!!(防御重視)

最後は妖精さんの動きを【見切り】、
【捨て身】で妖精さんをキャッチ!
傷つけはしませんっ、お話したいだけです!
だからお花をとめてくださーい!?ひー!


ナイツ・ディン
「……まあ少し話を聞こうじゃないか。」
同種と言うか、近縁種というか。暴れるようなら殴って止めよう。(脳筋)

ひとまずは様子を伺いつつ、敵対するかどうか見定めよう。まあ、オブリビオンだし確実に攻撃されるだろうが。そこは敵を盾にする、盾受け、第六感で回避していこう。
「敵対するんだな?なら殴るのみだ。」
竜槍『ディロ』を巨竜(※1m未満の小さな竜)にし、空中戦で翻弄しよう。余裕があれば近づいてなぎ払い。
……木の実や果実は当たると痛そうだな。まあ、上方向に飛ばしてくれれば落ちたのが他の妖精に当たるかもしれん。
キノコは喰わなきゃいいんだろうが……ディロ、喰うなよ?
『我は肉の方が好きだ!』

アドリブ歓迎


シュシュ・シュエット
妖精さんたちが神経質になってしまうような何かが、森の奥深くにあるのかもしれませんね。
ことばを解釈されるのなら、ぜひおはなししてみたいですっ。

【ライオンライド】のライオンさんのお背中に乗り、死角から不意打ちを受けないよう*野生の勘をはたらかせつつ、他の猟兵さんたちと協力して森を探索します。

妖精さんとお会いしたら『森の恵み』のキノコさんやきのみさんによる攻撃を*見切り、ライオンさんと一緒に回避しながら会話をこころみますっ。
妖精さんがぴりぴりされると、森のほかの生き物さんたちにもよくないと思いますっ。思うところがあるなら、些細なことでもいいのでおはなししてください……と優しくお声かけしてみましょう。


アイン・ローレンス
【SPD】
森や自然は人々の暮らしを豊かにしてくれる素敵な場所です
そんな森が何もしてない人々に危害を加えるだなんて…ほっとく訳にはいきません!
微力ながらお手伝いしますよ

「友の絆」でメロにも手伝ってもらいます
精霊たちとお話してみますのでメロは回避に専念して下さい
【第六感、聞き耳】で攻撃の方向を察知し【見切り】

攻撃はせずに精霊たちから【情報収集】
「生命の杖」のスイにも精霊の姿で手伝ってもらいましょう
少しでも敵ではないと伝われば良いのですが…

私はあなた達に危害を加えるつもりはありません!
村の人達だってそうです
今までも酷いことをする人はいなかったはずですよ?
教えてください、あなた達の敵は何ですか?


サラ・スオラハティ
なになに、どしたんー?
え?困ってる?そっかあ…じゃあちょっと様子見がてら行ってみよっか

わあ、随分とやんちゃさんしよるなあ!
どうどう、落ち着いて

木陰から気分が落ち着く曲を【歌唱】して【催眠】状態で大人しくしてもらえるやろか?
もしお話しできそうやったら【情報収集】
おねーさんに理由教えてくれへん?

え?あかん?
そん時はちょっとごめんやけどこの槍…ちゃう、クロスミラージュでゴツン
【気絶攻撃】でおねんねな

妖精さんの攻撃には基本的に【見切り】つつ躱しきれないのは【オーラ防御】
他の猟兵さんのフォローに回れる立ち回りを意識しよか
なるべくなら平和的にお話聞きたいなあ

アドリブ・絡み歓迎


冴島・類
争わずに済むなら、越した事はない
村の方の心配をはらえるようにですね

森に入る際は妖精を刺激せぬよう武器はしまい、見せないよう徹底

こんにちは
君達の住む森を荒らしに来た訳じゃない
話がしたいんです
お邪魔しますね

森の動物がいたなら彼らにも
動物会話で話しかけ
妖精達や森に危害を与える気はない
何かに恐れているなら力になりたいと伝え

もし、入り次第反応して攻撃されても
反撃せず、見切りと第六感を用い避けながら声をかけを

君達は、今まで無差別に人を傷つけたりはしなかったんだよね?
どうしたのか、よければ教えてくれないかな

森からも、君達からも
何かを奪う気はないんだ
声を聞かせて
共に、あれるなら、その道を

連携、アドリブ等歓迎




「村の内外両方で問題発生とは、ふむ、それは大変ですねえ……」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が同情するように呟いた。
 ここは森の入り口。猟兵たちを縋るような眼で見つめるのは、件の村の住人。
「助けてもらえますでしょうか?」
「なになに、どしたんー?」
 ひょい、と顔を覗かせサラ・スオラハティ(満天星・f03708)が問いかける。
「え? こまってる? そっかぁ……じゃあちょっと様子見がてら行ってみよっか」
「ええ、任せてください! 困っていればお助けするには十分ですっ」
 割と軽い感じで請け負うサラと、気合十分といった様子でどん! と胸を叩いて見せるソラスティベル。
 村人が、何度も何度も「お願いします」と頭を下げる。
「森や自然は人々の暮らしを豊かにしてくれる素敵な場所です」
 必死な様子の村人に、アイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)が語り掛けた。
「そんな森が何もしていない人々に危害を加えるなんて……ほっとくわけにはいきません。私も微力ながらお手伝いします」
「よろしくお願いします。どうか森の精霊さまを鎮めてください」


「こんにちは。お邪魔しますね」
 『花と星の妖精』を必要以上に刺激せぬよう武器をしまい、冴島・類(公孫樹・f13398)は森に向かって挨拶した。
 こちらから妖精たちの姿は見えないものの『森に入った人間を攻撃する』のならば、何体かの妖精はどこかに隠れて侵入者を監視しているのかもしれない。
「勇者の基本、人助け! いざ気合を入れていきましょうっ、おー!」
 元気よく片腕を突き上げるソラスティベルを先頭に、猟兵たちは森の中へ。
 すると早速、どこからともなく飛来した幾種類もの可愛らしい花々が猟兵たちに襲い掛かった。
「あいたっ、いたたっ!」
 花々の猛攻を受け、ほんのちょっぴり涙目になるソラスティベル。
(「お花がぺちぺち、地味にいたいです!」)
 しかし、こんなところで挫けてはいられない。
 しっかりと盾を構え、花の嵐の中その元凶へ辿り着くべく一歩一歩足を進める。
「人の営み護るため! ここに誓うは不退転の意思! これが私の『勇者理論』!!」
 ソラスティベルは勇気と気合と根性で目一杯防御を固めて進む。
(「やっぱり妖精さんたちが神経質になってしまうような何かがあるのかもしれませんね」)
 黄金のライオンに跨り花の群れを器用に躱しつつ、シュシュ・シュエット(ガラスの靴・f02357)は考える。
(「ことばを解釈されるのなら、ぜひおはなししてみたいですっ」)
 花々を懸命に避けながら、類は声を張り上げる。
「君たちの住む森を荒らしに来たわけじゃない。話がしたいんです」
 けれど、妖精たちは姿を見せず……行く手を阻まんと襲い来る花々が増すばかり。
 花々に襲われつつも、猟兵たちが目指すのは森の奥――『花と星の妖精』が住まう場所。

『出てけー!』
 どれくらい進んだのだろうか、不意に声が聞こえた。
『そうだそうだ、この森から出ていけ!』
『ここは僕たちの森だぞ!』
 子供のような声で抗議するのは、たくさんの『花と星の妖精』たち。
「まあ、なんて可愛らしい妖精さんだこと」
 『花と星の妖精』の可愛らしい容姿に、小宮・あき(人間の聖者・f03848)がクスっと笑う。
「でも、オブリビオンとなれば話は別です。しっかり、対応させていただきます!」
 宣言するあきの隣、妖精の翅をパタパタと動かし宙に浮いたナイツ・ディン(竜呼びの針・f00509)が口を開く。
「……まあ少し話を聞こうじゃないか」
 相手は同種……というわけではないが、自分たちフェアリーに近い存在な気がする。その縁もあるのだから、話くらいは聞いてやっても……。
『お前たちがアイツ連れてきたんだろ! 許さないからな!!』

 ――アイツ?

 猟兵たちが一斉に首を傾げる……が、それが何なのかを問い返す暇はなかった。
『『出てけーーーー!!!』』
 癇癪を起こしたかのような叫びと共に、妖精たちが問答無用で攻撃を開始したのである。
「メロ、行きますよ!」
 アインの呼び声に応え、灰色狼が現れる。狼はアインを背中に乗せると、飛ばされてきた硬そうなきのみをひらりと躱した。
「メロは回避に専念してください」
 騎乗する灰色狼に攻撃の回避を任せ、アインは妖精たちに訴える。
「私はあなたたちに危害を加えるつもりはありません! 村の人たちだってそうです!」
 今までだって、妖精たちに酷いことをする人間はいなかったはずだ。
 黄金のライオンに跨ったシュシュも懸命に訴える。
「妖精さんがぴりぴりされると、森の他の生き物さんたちにもよくないと思いますっ」
「教えてください、あなたたちの敵は何ですか?」
『うるさーい!』
 アインの問いかけに返ってきたのは、拒絶だった。
 見るからに重そうな果実がシュシュ目掛けて落下し、アインには怪しげなキノコが飛んでいく。
「話を聞いてください!」
 何度も訴えるも、聞く耳持たずの妖精たち。吹っ飛んできた巨大なきのみを咄嗟に避け、ナイツは紅い竜『ディロ』を召喚した。
「敵対するんだな? なら殴るのみだ」
 ディロの背に乗り、ナイツはそう宣言する。
(「暴れるなら殴って止める。それが一番だ、うん」)
 とりあえず近場にいる妖精目掛け、ディロと共に空中を駆ける。途中、ディロの頭の脇を大きなキノコが掠めていった。
「……喰うなよ?」
『我は肉のほうが好きだ!』
 ディロが咆哮を上げる。そのまま一体の妖精に肉薄し、ナイツが手にした槍でその妖精の体を薙ぎ払う。
『いたーい!!』

 キノコやら木の実やらが飛び交い、妖精の『星詠み』によるよくわからない攻撃が降り注ぐ中、ソラスティベルは盾と自身のオーラを頼りに突き進む。
 ふわふわと空中を動き回る妖精にじりじりと近づき、その動きを見極め、構えた盾を放り出し――両手を伸ばし、飛び込むようにして妖精を捕まえる。
「傷つけはしませんっ、お話したいだけです! だから攻撃をとめ……」
『いやーーーー!』
『キャーー! 仲間が捕まっちゃった』
『仲間を放せーー!』
『放せーーー!』
 ソラスティベル目掛けて一斉に攻撃が飛ぶ。
「ひぃ!?!」
 もしかして、妖精を捕まえたままでいるのは逆効果だろうか? 激しさを増した攻撃に、ソラスティベルはやむなく妖精を解放する。
「随分とやんちゃさんしよるなぁ」
 苦笑交じりに呟いて、サラはプンプンと怒っている妖精に声をかけた。
「どうどう、落ち着いて。怒っとる理由、おねーさんに教えてくれへん?」
 それに対する妖精の答えは……妖精の『星詠み』。サラの頭上に、突然太い木の枝が落下する。その数は、一枝だけではなかった。
 折れてギザギザになった枝がサラに襲い掛かる。避けきれない――判断し、サラは自らのオーラを頭上に構えた腕に集中し、降り注ぐ枝をやり過ごす。
「……あかんか。じゃあ仕方ないなあ」
 手にした槍、もとい『クロスミラージュ』で逃げ出そうとする妖精の頭部をゴツンと一撃。
『きゅうぅうう……』
 地面に落ちて目を回す妖精。懸命に妖精たちの攻撃に耐え続けるソラスティベルと顔を見合わせ、サラははあ、とため息を吐く。
「なるべく平和的にお話聞きたいんやけどなぁ……」

「私、これでも商人なので、売らないって信じていないのですよ」
 ぷう、と頬を大きく膨らませ『星詠み』を繰り出してくる妖精に語り掛けるあき。
「他人の言葉で左右される弱い意志は、持っていませんもの」
『僕たちの星詠みにそんなの関係ないもん! ――ハチに襲われる!!』
 ピシッとあきを指さす妖精。
「え?」
 ――ブーン。
 大きな羽音を立てて秋に襲い掛かるのは……スズメバチの群れ。
「ちょっ!」
 どんな占いであれ攻撃が飛んでくること自体は覚悟していたが、しかし。
(「流石にこれは想定外!」)
 第六感とか野生の勘とか、とにかく持てる技能を総動員。自分を信じ、横っ飛び。
 ――ブーン……。
 初撃を外したスズメバチの群れは、そのままあきの脇を通り過ぎていく。
「やってくれましたね……お返しです!」
 あきの指先が妖精を指し示す。突如天から降ってきた光が妖精を直撃し、妖精が悲鳴を上げる。
『きゃあああ?!』
「絶対に逃がしません!」


 猟兵たちと『花と星の妖精』との戦いはしばらく続き、猟兵たちの勝利で終わった。
 といっても、妖精が全滅したとかそういうわけではない。人の話を欠片も聞かないやんちゃな妖精たちに猟兵たちがキツイお灸をすえた結果、妖精側が攻撃をやめた……猟兵たちを森から追い出すのを諦めたのである。
「君たちは、今まで無差別に人を傷つけたりはしなかったんだよね?」
 猟兵たちに取り囲まれた『花と星の妖精』に、改めて類が問いかける。しかし、妖精たちは拗ねたようにプイ、とそっぽを向くばかり。
 やれやれ、と軽く肩を竦め、サラが妖精たちに話しかける。
「そう頑なにならんでも……そや、ちょっと歌でも歌ったろか」
 そう言うと、サラは歌を歌い始めた。妖精たちの気分が落ち着くようにという配慮だろうか、穏やかな優しい曲調の歌が綺麗な声で紡がれる。
 妖精たちの顔つきが少し変化したのを見計らい、アルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)は半人半蛇の泉の精霊『メリュジーヌ』を呼び出した。
「メリュジーヌ、頼んだよ」
『あなたがたは花が好きなのね』
『誰?!』
 メリュジーヌに話しかけられ、妖精たちがキョロキョロとあたりを見回した。ユーベルコードによって召喚されたメリュジーヌの姿は誰にも視認できない。けれど、確かに『そこ』にいる。
『私はメリュジーヌ。精霊よ』
『……せいれい?』
『そうよ。きっと、あなたたちとも近い……』
 むぅ、と難しい顔をする妖精たちに、メリュジーヌが更に言葉を重ねる。
『ここにいる人たちは、あなたがたに危害を加えたいわけじゃない。あなたがたが話を聞かず攻撃を仕掛けるから、やむなく応戦しただけ』
 メリュジーヌの言葉に、うんうんど何度も頷くアルト。自分たちだって好き好んで手荒な真似をしたわけじゃない。それが避けられるなら、それに越したことはないと……今だって思っているのだから。
 メリュジーヌと妖精とのやり取りは、他の猟兵たちにもちゃんと聞こえていた。
「そうだそうだ。『話を聞こう』って言ってんのにお前らが一方的に攻撃してくるから……」
 妖精たちに抗議するナイツ。まだ完全に納得したわけではないのか、妖精たちは唇を尖らせたり頬を膨らませたりしている。
「スイ、あなたも手伝ってください」
 アインに請われ、蝶の羽を持つ精霊が妖精たちの前に立つ。
『私も精霊です。この人たちは、あなたたちの敵ではない……』
 ヒソヒソ、ヒソヒソ。どう判断していいか迷っているのだろうか、仲間たちとこそこそと話始めた妖精に向けて、シュシュが改めて語り掛ける。
「思うところがあるなら、些細なことでもいいのでおはなししてください」
 話してくれなければ何もわからない。妖精たちが何に怒っているのか……あるいは何を怖がっているのか。
 理由を話してくれれば、きっと解決策があるはず。そしてそれは、妖精さんにとっても、村の人にとっても、森そのものにとっても、『いいこと』であるはずだ。
「なんでもいいんです。教えてくれませんか?」
 何故人々が森に足を踏み入れだけで、危害を加えるようになったのか。
「何があったのか、よければ教えてくれないかな?」
 地面にしゃがみ込み、妖精たちに目線を合わせて類が尋ねる。
「森からも、君たちからも、何かを奪う気はないんだ。だから――」
 猟兵たちの根気強い説得に、妖精たちは顔を見合わせ……やがてポツリポツリと語り始めた。

『白くて大きいのが森に入ってきたの』
『ソイツが森をめちゃくちゃにしちゃったの』
「滅茶苦茶に? そんなことはありませんでしたよね?」
「ですよね? そんなにになっているならわたしたちも気付くと思いますけど……」
 あきとシュシュが首を傾げる。妖精たちの攻撃を受けながら移動したとはいえ、周囲の観察を怠ったりはしていない。森が滅茶苦茶になったというのなら、誰かが気付いているはずだ。
『お前たちが来たほうじゃない。……あっち』
 妖精が指さすのは、猟兵たちが来たのとは真逆の方角。
「その『白くて大きいの』が、さっき言ってた『アイツ』なのかな?」
 類の問いに、妖精たちが頷く。
「ふむふむ。じゃあ、その『白くて大きいの』は今どこにいるかわかるかな?」
 類と同じようにしゃがみ込んだアルトが尋ねれば、妖精たちは先ほどと同じ方角に指先を向けた。
『あっちの、滝のとこ』
『すごくきれいな、僕たちのおうちだったのに』
『アイツに、取られちゃった』
 どうやらこの妖精たち、ここよりもっと森の奥深くが本来の住処であるらしい。『白くて大きいの』に住処を追われ、仕方なしにこの辺りに集まっていたようだ。
『……僕たちの、おうち……』
 話すにつれ、しょんぼりし始める妖精たち。彼らの幼い見た目も相まって、まるでいじめでもしているような気分に……。
「あーもう! 俺たちがソイツを退治すればいいんだろ?!」
 黙って話を聞いていたナイツが、耐えきれないとばかりに声を上げた。
「確かにそうですね。元凶の排除もお願いされてますし」
 ナイツの言葉に同意して、あきは少しだけ考えるような素振りをする。
「ねえ妖精さん。私たちがその『白くて大きいの』退治したら、もう人を襲ったりしませんか?」
「そうやね。せっかくウチらがその白いの倒しても、森の被害がなくならんと意味ないしなあ」
 あきの提案に、サラが相槌を打つ。
 彼らが言う『白くて大きいの』を排除してなお、彼らが森への人の侵入を拒むというのなら……残念だが別の解決法を選ばなければならない。
『アイツを退治してくれるの?』
 半信半疑な妖精に、ソラスティベルが胸を張って答える。
「任せてください! 人助け……人助け? は勇者の基本ですから!」
 妖精たちは再び顔を見合わせ、何やら話し合いを始める。

 ――やや間があって。

『アイツを退治してくれるなら、いいよ。今まで通り、あの人たちには手を出さないって約束する』
 『花と星の妖精』は、猟兵たちの提案を受け入れた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『だいおーいかたん』

POW   :    子分行くイカ!
レベル×5体の、小型の戦闘用【こぶんいかたん】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
SPD   :    お弁当食べるイカー
戦闘中に食べた【おにぎりや焼き…イカ…?】の量と質に応じて【よくも子分をイカ!と何故か猟兵に逆ギレし】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    イカスミぶはー
【いかたん得意のイカスミすぷらーっしゅ】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を真っ黒に塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポク・ョゥョゥです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 妖精の案内で猟兵たちが辿り着いたのは、森の奥のさらに奥深く……妖精たちが暮らしていたという滝の泉。
 二十メートルほどある岩肌を、まるで白い糸を引くかのように幾筋にも分かれて流れ落ちる水。
 滝の飛沫を浴びる周囲の岩を覆う苔やシダの鮮やかな緑と、日の光を浴びて輝く木々の葉。
 さほど深さのない滝つぼの泉は薄っすらと青味を帯び、そのほとりに茂る草が可愛らしい小さな花を揺らしている。
『アイツだよ! アイツが僕たちを追い出したんだ!』
 妖精が指さす先には、明らかに場違いな白い巨大イカ『だいおーいかたん』の姿があった。
『うーん、お腹すいたイカ』
 猟兵たちに見られているとも知らず、『だいおーいかたん』は呟く。
『ここは綺麗だけど、ご飯がないイカ!』
 ばんばん、と水面に腕……腕? を叩きつける『だいおーいかたん』。
『……ご飯を探しに、出かけるイカ?』
 その呟きに、猟兵たちが顔を見合わせる。もしかしなくてもこの巨大イカ、放っておいたらご飯を求めて近隣の村まで襲いかねないのでは……?
 そうであるなら、妖精たちとの約束云々抜きにしてもきっちり対処すべき事案である。

 案内役の妖精にこの場を離れるように指示し、猟兵たちは『だいおーいかたん』との戦いに挑む。
 この森の平穏と、近隣に暮らす人々の安全を確保するために――。
小宮・あき
●アドリブ・連携歓迎
●敵のPOW行動に対して、UC(SPD)で対抗。

UC【愛雨霰】で攻撃。
愛用のマスケット銃をレベル25本を宙に浮かせ【一斉発射】の【援護射撃】。
高さ・距離をバラバラにし【フェイント】【だまし打ち】をしたり【零距離射撃】も。
こぶんいかたんは相当数になると予測。
手間取っている時間はない。撃って刺して、仕留めていきます。

自身は両手杖を握り【全力魔法】のUC【神罰】を。
聖職者の私の【祈り】は、広範囲の光の柱で現れます。
(UC1つの場合は愛雨霰優先)

【視力】で敵を見て【聞き耳】で音を逃さない。
【第六感】【野生の勘】を重視し【ダッシュ】【ジャンプ】
【スライディング】【逃げ足】で回避!


サラ・スオラハティ
キミがご飯になるんだよ!


冗談はさておき、お家を奪われるのはつらいもんや
帰る場所、とても大切なもの
自分勝手な悪い子にはご退去願おっか

基本は他の猟兵さんのフォロー

子分イカさんはゴンゴン殴ろ!
消えてまうからゲソ焼きにはできんなあ…残念

お弁当を食べようとしたらクロスミラージュで【気絶攻撃】
一瞬でも意識飛ばせれば、皆にとっては大きなチャンスにもなるはず
距離があるなら【槍投げ】の要領で投げよっか

イカスミはあかん
パスタにかけたら美味しいけど服はあかん
ウチの服は真っ白なんや堪忍して
全力で【見切り】ます

使いたないけど一応【シンフォニック・キュア】をセット
元気な姿で村に戻らな、村の人も嬉しないしな

アドリブ連携歓迎


アルト・カントリック
「ええっ、イカ!?イカ……だよね?」
とりあえず、倒さないと!

ユーベルコード【戦場の霧】で霧状のドラゴンを召喚して、『だいおーいかたん』の行く手を塞ぐよ。出来る限り霧を濃く、大きくしてもらって、足止めするよ。時間稼ぎしているその間に、皆に攻撃して欲しいな。

ご飯を欲しがっているみたいだけど、村を狙うなら見逃すわけにはいかないな。ここで足止めしないとね……。


アイン・ローレンス
【POW】
まあなんと美しい光景でしょうか!
この中にイカはいらないです。
妖精たちのお話では森を滅茶苦茶にしたみたいですし…覚悟は良いですよね?
ふふふ、森を傷付けた罪しっかりと償って貰います

「友の現身」でメープル(ツキノワグマ)に手伝って貰います
メープルは私の真後ろについてください、行きますよー
【2回攻撃、属性攻撃、範囲攻撃】
風を纏った「生命の鞭」で子分イカを【吹き飛ばし】つつ巨大イカへ一直線
【マヒ攻撃】隠し持っていた「護りの短剣」にマヒ属性を纏い一突き

体の中からじわじわと浸食していきますよ
森を傷付けたこと後悔しながら大人しくしてて下さいね


ナイツ・ディン
『喰うとするか。』
喰うのかよ。まあいい、ディロがやる気出す分には問題なかろう。

最初はディロに騎乗し、空中戦で対抗する。第六感で攻撃をかわしつつ串刺し。
ただ大きさ的にキツイか?ならば奥の手だ。
「ディロ、俺を喰え。そうすればヤツを食い放題だ。」
『魂を消化されるなよ小童!』
UC:竜化の騎士を使い巨竜化する。でかくなればでかいイカもただのイカだろう。激痛耐性でゴリ押しして爪で切り裂き牙を食い込ませる。ついでに炎のブレスもお見舞いしてやろうか。焼きイカに思わず食欲が増すかもしれない。理性は薄れているけども。




「ええっ、イカ!?」
 泉のほぼ中央に陣取る白い物体を二度見するアルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)。
「イカ……だよね?」
「イカやな」
「イカですね」
 アルトの呟きに、サラ・スオラハティ(満天星・f03708)と小宮・あき(人間の聖者・f03848)が返す。
 森の奥の滝の泉に鎮座する、巨大イカ。
(「せっかく美しい光景ですのに!」)
 美観を損ねまくっている『だいおーいかたん』に、アイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)は怒っていた。
「この景色の中にイカはいらないです」
 きっぱりと言い切るアインの隣、ナイツ・ディン(竜呼びの針・f00509)をその背に乗せた紅竜『ディロ』がボソッと呟く。
『よし、喰うとするか』
「喰うのかよ」
 間髪入れずに突っ込むナイツ。しかしまあ、ディロがやる気を出してくれるなら問題ない……のか?
 ともあれ、『だいおーいかたん』はまだこちらに気付いてない。奇襲を仕掛けるなら絶好のチャンスである。
「僕が足止めをするから、攻撃はよろしくね」
「任せてください!」
「おう!」
 『だいおーいかたん』の足止めを買って出たアルトに、森を傷つけた巨大イカに怒り心頭のアインと巨大イカを食べる気満々のディロに乗ったナイツが答える。
「ちっこいイカが出てきてもウチらに任せとき」
「どんどん撃ち落としちゃいますから!」
 愛用の十字架? 『クロスミラージュ』を手にサムズアップするサラに、やはり愛用のマスケット銃を手にニコニコ笑顔で頷くあき。
 すでに皆準備万端。アルトが頷き、『だいおーいかたん』に向き直る。
「じゃあ、いくよ。――『見えざる者よ、姿を映せ』」

 アルトの召喚に応え現れたのは、霧状のドラゴン。ドラゴンが大きく翼を広げ、巨大イカに襲い掛かる。
『な、何事イカ?! よく見えないイカ!』
 慌てる巨大イカ目掛け、猟兵たちが飛び出した。
『なんか来たイカ?!』
 びったんびったんと闇雲に振るわれる触腕を掻い潜り、ナイツは巨大イカの白い身体目掛けてドラゴンランスを突き出す。
 槍の穂先から伝わるぐにょん、とした感覚。続けてプチ、と硬いビニールか何かを突き破ったような感触がして、槍の穂がイカに突き刺さる。
「うわぁ」
 槍がイカの皮膚に触れてから突き刺さるまでの何とも言えない触感に、ナイツが僅かに顔を顰める。
『痛いイカ! 何するイカ!!』
 触腕をブンブン振り回す巨大イカ。振り回された触腕が、アルトの霧のドラゴンの身体を裂いた。
「あっ」
 アルトが声を上げる。身体を裂かれたドラゴンは、そのまま霧散……したりはしなかった。
 切り裂かれた霧は集結し、再びドラゴンの姿をなす。
「ごめん、このイカ倒すまで頑張って!」
 アルトの願いに応え、霧のドラゴンはまたしても巨大イカへと纏わりつく。
『しつこいイカ!』
 何度切り裂かれても、霧のドラゴンはめげることなく巨大イカの眼前へと立ちはだかりその視界を奪う。
(「ご飯を欲しがってるみたいだけど、村を狙うなら見逃すわけにはいかないな」)
 アルトは時には励ましの言葉を口にしながら、霧のドラゴンに指示を送る。

 ――『だいおーいかたん』の視界を奪い、猟兵たちが攻撃をしやすいようできる限りの足止めを。

『あーもう! 子分行くイカ! 僕を助けるイカ!!』
 ぷんぷんと怒る巨大イカ。飛来する『こぶんいかたん』。
「来ましたね……けれど無駄です。『私、愛されていますから』」
 霧を抜け猟兵たちに襲い掛かろうとする沢山の子分イカの前に、周囲に25本のマスケット銃を侍らせたあきが立ちはだかる。
「いきます! マスケット銃、一斉斉射!」
 あきの号令と共にマスケット銃から一斉に銃弾が放たれる。
「撃ち漏らしはウチに任せとき!」
 銃弾の雨の中をすり抜けた子分イカも、サラのクロスミラージュの餌食に。
(「消えてまうからゲソ焼きにはできんなあ……残念」)
 クロスミラージュから伝わるいかにも「イカっぽい」弾力に、サラはしみじみそう思う。消滅せず取っておけるなら、さぞかし食べ甲斐があっただろうに。
 次々と飛来する子分イカへの対応を二人に任せ、アインは巨大イカに向けて一直線に走り出す。
「メープル、行きますよ!」
 アインの真後ろを疾駆するのは、3mほどはあろうかという大きなツキノワグマ。精霊の宿る杖に風を纏わせ、次々現れる邪魔な子分イカは吹き飛ばし――アインが巨大イカに肉薄する。
 アインが大きく杖を振り上げた。その動作を完璧に真似て、メープルも杖を振り上げる。
『な、何す……』
 霧に捕らわれていても、3m級のツキノワグマの姿は流石に認識できたらしい。咄嗟に触腕で頭……頭? いやイカ的にはお腹? を庇った『だいおーいかたん』だったが……。
「残念、それは囮です」
 腰の後ろに隠し持っていた護身用のナイフを引き抜き、巨大イカに思い切り突き立てるアイン。アインが手にしたナイフは巨大イカの体の表面を傷つけただけだったが、アインと全く同じ動作で巨大イカに突き立てられた「メープルが構えたナイフ」は巨大イカの分厚い皮膚を突き破り、深々とその身体に突き刺さる。
『うわああぁ! 痛い! 痛いイカーーー!!』
 またしても触腕をばったんばったんと大暴れさせようとした『だいおーいかたん』が、その小さな目を丸くする。
『う、腕が動かないイカ?!』
 正確に言うと動いてはいる。ただ、先程までと比べて明らかに動きが鈍っているのだ。
「森を滅茶苦茶にしたんですから、覚悟はできていますよね?」
 アインがニッコリを笑いかけると、巨大イカの顔が微妙に引き攣った……様な気がした。
「それがただの傷だと思わないでくださいね? 森を傷つけたことを後悔しながら大人しくしてて下さい」
 目だけが笑っていない笑顔でそう告げるアイン。
『ふ、ふん! そんなの関係ないイカ! 喰らえ、『イカスミすぷらーっしゅ』!!」
 巨大イカが真っ黒なイカスミを噴射する。
「きゃあ!」
 慌ててその場から飛びのくアイン。勢いよく噴き出されたイカスミが泉の水を黒く染め、そのしぶきがあたり一面に飛び散る。
「スミはあかん!」
 飛沫の散る範囲から全力で後退するサラ。
「ウチの服は真っ白なんや堪忍して」
 パスタなら歓迎だが、イカスミが服にかかるのはたとえ飛沫でもアウトだ。処置を誤ればシミとして残ってしまう……それが白い服なら猶更。
「なあディロ、やっぱ大きいほうが良さそうだよな」
 アインのメープルがつけた傷の大きさをちらりと見遣り、ナイツが呟く。
「うし。ディロ、俺を喰え。そうすればヤツを喰い放題だ」
『魂を消化されるなよ小童!』
 『ドラゴンランス:ディロ』の封印が解かれ、ディロがナイツを取り込む。瞬く間に巨大化するディロ……いや、ディロと融合したナイツ本人か。
 紅い巨竜が咆哮する。振り回される触腕も纏わりつく子分イカもお構いなしに『だいおーいかたん』に突進し、その鋭い爪で掴みかかる。
『いた、いたたたたたた!!! 離れるイカ!』
 プシュー! と音を立ててイカスミが巨竜を直撃する。しかし、巨竜はイカを放さない。半ば理性を失った巨竜は痛みなど無視してイカの皮膚に爪を立て、そのまま引き裂くように腕を振り下ろす。
『ぎゃーーーー!』
 巨大イカは悲鳴を上げたが、そんなものは知ったことではない。イカの耳の根本あたりに噛みつき牙を喰い込ませ……そのまま食い千切る。
『うわあああ! 僕の、僕のみみーー!』
 痛みのあまり地面をゴロゴロと転がる巨大イカ目掛けて、追い打ちをかけるかのように巨竜が炎のブレスを吐きかけた。
『熱っ! アツアツ熱っ!?!』
 森の泉に場違いな、香ばしい海を思わせる香りが漂う。
『わあ、食欲をそそるいい匂い……って、僕が焦げてるじゃなイカ?!』
「セルフボケツッコミする程度の元気はまだあるんですね」
 マスケット銃を操りひたすら子分イカを撃ち落とすことに専念していたあきが呟いた。
「でしたらこれもおまけで受けちゃってください。さあ……『神罰を与えましょう』」
 あきの言葉と共に、巨大イカを中心に太い光の柱が現れる。
『イヤアアア!!』
 なんだか女の子みたいな悲鳴を上げて、巨大イカは地面に蹲った。
『酷いイカ……僕が何したっていうイカ……』
 ブツブツと呟きながら、さりげなーく片手におにぎり、片手に焼きイカを……。
「させへんよ」
 ひゅん! と風を切って飛来した十字架が、巨大イカのお弁当を二つとも叩き落とす。
『な、何するイカ――!?』
「人のお家を取ったやろ? そういう自分勝手な悪い子にはご退去願おうと思ってな」
 サラがクスっと笑う。
「そういえば、お腹空いてたんやっけ? でも残念、キミがご飯になるんだよ!」
 その言葉に反応するかのように、紅い巨竜がひと際大きな咆哮を上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

冴島・類
泉に…いか…
なんだかものすごい図ですし、力が抜けるというか
いや、大っきいなあ!

けど、村の皆と森の平穏を守る為
妖精の彼らとの約束もあるし
ご飯さがしには、行かせませんよ

他の方々との連携重視
いかさんの脚や子分の攻撃を引きつける囮役をと

見切りによる攻撃動作を注視
フェイントを交えて引きつけ、避け
味方への攻撃はかばう
皆さんを真っ黒になんか、させません

さあ、いかさんこちらへどうぞ

避けきれぬものはコードの舞で直撃を軽減し
反撃放てそうなら、刀で切り返す

怖くないのは何故だろう…
なんか…見てたらお腹空きますが

ごめんよ
君達は過去の影
ここに生きて、生まれゆくもの達を食べさせるわけにはいかないんだ

少しだけ、祈り
斬ります


クラウン・メリー
【檸檬】

精霊さんが暴れていた元凶は
イカさんだったんだね!
力を合わせて一気に倒すぞ!

確かにここの滝、絶景だね!

あれ?
クールナイフなんかいつもと違って
口調かっこいい!
いつもかっこいいけどね!
俺も真似できるかな?いや……無理だね!

まずは火の輪で【属性攻撃】をするよ!
これで、拘束すれば攻撃もしやすいはず!

イカさんも真っ黒焦げだね!
ちょっと良い匂い……。
クールナイフあれ食べれないかな?

このまま、俺の芸見てもらうよ!
指パッチンすると、あら不思議!
俺の頭についてるフリチラリアの花が
沢山舞ってるね!

これで、イカの目を遮るよ!
攻撃し放題だ!

その中から巨大の【鎧も砕く】大玉を
出して、自由自在に操って
体当たりだ!


クールナイフ・ギルクルス
【檸檬】
アドリブ、絡み◎
依頼中は敬語で話す

誰かと共に依頼をこなすのはいつぶりか
勘を取り戻すには良い獲物じゃねえか


見事な滝ですね
こんな場所は好きですよ
ふふ
口調が違うのはお気になさらず
おまじないの様なものですので


これは戒め
過去を繰り返さない為に

さてさて
綺麗な泉を荒らさないで貰えます?
妖精たちも困ってるじゃないですか

本当に食べてしまいそうな彼に微苦笑しつつ
匂いは良いですがお腹壊しそうじゃありません?

クラウンに合わせ外套を脱いで身軽になれば
*シーブズ・ギャンビットで攻撃
素早さには少し自信があるんですよ

減ったのは自分達で食べたからでしょう
逆ギレしないで貰えます?

最後だけは声音低く
そろそろ消えて下さいね


シュシュ・シュエット
えっと……イカさんさえ視界に入れなければ、とってもきれいな場所ですよね……!
妖精さんのおうちや村の皆さんを守るため、がんばりましょうっ。

わたしは【シンフォニック・キュア】を*歌唱、他の猟兵の皆さんの回復や*鼓舞につとめますっ。
『お弁当食べるイカー』さんや『イカスミぶはー』さんでご自身の戦闘力を高められるのなら、
そのダメージ分を帳消しにできるよう貢献したいですっ。

もしわたしを狙うようなら*野生の勘や*見切りでイカスミさんの回避をこころみましょう。
回復も不要なほど優勢なら【時は物語る】によるサポートへ切り替えます。

それにしても、イカさんはどうやって泉へいらしたのでしょう。
まさかお空を飛んで……っ?


ソラスティベル・グラスラン
だいおーいかたんさん……貴方にとっても、ここは折角見つけた居場所なのでしょう
しかしっ!他者を追い出し迷惑を掛けるとは何事ですか!
あまつさえご飯が無いなどと…近隣に村があれば、貴方は襲うのでしょう?
少々、気合入れて『お話』しましょうかー!!

現れたこぶんいかさんたちを、わたしの勇気ある怒りで一掃します!
これぞ竜族の一発芸!
【範囲攻撃】でさらに拡大し、【勇気】と【怪力】で威力増加
これは妖精さんたちの分、そしてわたしのプンプンです!
骸の海で、反省してくださいっ!てやぁ―――っ!!

可哀想ですが、これもまた人々と妖精さんたちを護る為…
でも共食いは、やっぱりやめた方が良い気もしますよ!

アドリブ歓迎




 その歌声で猟兵たちを鼓舞し、傷を癒すシュシュ・シュエット(ガラスの靴・f02357)。
(「えっと……イカさんさえ視界に入れなければ、とってもきれいな場所ですよね……!」)
 シュシュの目に映るのは、綺麗な森の泉と……猟兵相手に大暴れする巨大イカ。
「なんだかものすごい図ですね」
 シュシュに襲い掛かる『こぶんいかたん』を組紐飾りがついた短刀で切り払った冴島・類(公孫樹・f13398)が呟く。
 類もまた、シュシュと似た様な感想を抱いたのだろう。
「ありがとうございますっ。でも無理しないでくださいね、わたしは大丈夫ですから他の皆さんを助けてあげてくださいっ」
 律儀にお礼を言うシュシュに頷きながら、類は巨大イカに向き直る。
(「なんかこう、力が抜けるというか。あまり怖く感じないのは何故だろう……?」)
 そのシュールな見た目故だろうか。それとも、ほんのり漂う美味しそうな香りのせいだろうか。
 それに、見ていたらだんだんお腹が空いてきたような……?
(「いやいや」)
 類がプルプルと頭を振った。相手は巨大イカ……もとい、オブリビオンである。
(「妖精の彼らとの約束もあるし」)
 村の人々と森の平穏を守る為――子分イカを蹴散らして、類は敢えて目立つように立ち回る。
「さあ、いかさんこちらへどうぞ。残念ですが、ご飯さがしには行かせませんよ?」

「精霊さんが暴れていた元凶はイカさんだったんだね!」
 よし、みんなと力を合わせて一気に倒すぞ! 張り切るクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)にクールナイフ・ギルクルス(手癖の悪い盗賊・f02662)が返す。
「そうみだいですね。それにしても見事な滝です」
「確かにここの滝絶景だね! って、あれ?」
 クラウンが微かに首を傾げる。
「クールナイフなんかいつもと違って口調かっこいい! ううん、いつもかっこいいけど!」
 ぱっと瞳を輝かせるクラウンに、クールナイフがほんの少しだけ苦笑する。
「口調が違うのはお気になさらず。おまじないのようなものですので」
「僕も真似できるかな?」
 口調を真似ようと試みるクラウンを微笑ましく思いながらも、クールナイフはほんの数秒だけ目を伏せる。
 クラウンには「おまじない」だと言ったが、この口調には別の理由がある。
(「これは戒め。……過去を繰り返さない為に」)
 クールナイフが顔を上げ、真似っこを諦めたクラウンに声をかける。
「さあ、私たちも行きましょう」
「うん! よーし、まずはこれだ!」
 クラウンが取り出したのはサーカスでよく見かける『火の輪』……普通の火の輪と違うのは、それが猟兵専用の拷問具であるということ。
「これで拘束すれば攻撃もしやすいはず!」
『あっ! 熱っ! ああああ!』
 他の猟兵の攻撃でもともとほんのり香ばしい色合いになっていた巨大イカが、更にいい感じの色に焼きあがっていく。
「良い匂い……クールナイフ、あれ食べれないかな?」
「お腹壊しそうじゃありません?」
『僕は食べ物じゃないイカ!!!』
 なんとなく漂うほのぼのとした雰囲気に水を差すように、巨大イカがイカスミを二人に吹きかける。
「わっ!」
「させません!」
 驚く二人の前に類が飛び出す。イカスミをまともに受け、真っ黒になる類。すかさずシュシュの歌声が響き類のダメージを軽減するが、黒く染まった服や身体は戻らない。
「うわ、大変! 大丈夫?」
「僕なら大丈夫。それより……」
 慌てるクラウンにそう答え、類が巨大イカに視線を送る。
「――クラウン」
 その意味を察したクールナイフが促すように名前を呼ぶ。
「あ、うん! そうだね、このまま僕の芸を見てもらうよ!」
 その場でくるりと一回転。クラウンが指をパチンと鳴らすと、宙に沢山のフリチラリアの花が舞う。
 無数のフリチラリアが一斉に巨大イカに襲い掛かり、その視界を遮る。
「ほら、これで攻撃し放題だ!」
 それに合わせて外套を脱ぎ捨てたクールナイフがダガーを手に巨大イカの懐に飛び込んだ。
「綺麗な泉を荒らさないで貰えます?」
 囁きと共にダガーを一閃。一拍の間の後、巨大イカの片方の触腕がバシャン! と大きな音を立てて水面に落下する。
『ぎゃああ! 僕の腕ーー!』
 泣き叫ぶ巨大イカに追い打ちをかけるように、クラウンの大玉がその身体に直撃。
『ひいぃ?!』
 ボロボロになった巨大イカに向けて、クールナイフがニヤリと笑う。
「ご飯がなくなったのは自分たちで食べたからでしょう? 逆切れしないで貰えます?」
 そう告げた直後、クールナイフの顔から笑みが消えた。冷たい視線が巨大イカに突き刺さり、一段低くなった声が言葉を紡ぐ。
「――そろそろ消えてください」
『うるさーい!!』
 今度こそ本当に闇雲に暴れだした巨大イカ。しかし、いずこからか聞こえた鐘の音がその動きを封じる。
『?!』
 今日何度目だろう、『だいおーいかたん』が驚きにその小さな目を大きく見張った。
「どうやってここまでいらしたのか知りませんけれど、もうこの場所を傷つけるのはやめていただけませんか?」
 声の主は、ガラスの靴をその胸に抱えたシュシュだった。
「だいおーいかたんさん……貴方にとっても、ここは折角見つけた居場所なのでしょう」
 身動きの取れなくなった巨大イカに、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)がつかつかと歩み寄っていく。
「しかし! 他者を追い出し迷惑を掛けるとは何事ですか! あまつさえご飯がないなどと……近隣に村があれば、貴方は襲うのでしょう?!」
『こ、子分イカ僕を助けるイカ!!』
 ずんずんと近づいてくるソラスティベルに何かを感じたのか、慌てて『こぶんいかたん』を召喚する『だいおーいかたん』。
「まだわかりませんか! 少々気合入れて『お話』しましょうか!!』
 ソラスティベルが地面に自らの拳を叩きつける。
「これは妖精さんたちの分!」
 鈍い音と主に地割れが走り、子分イカを一気に飲み込んでいく。
「そしてこれがわたしのプンプンです! 躯の海で、反省してくださいっ!」
 ソラスティベルがもう片方の拳を振り上げる。
「てやぁーーーっ!!」
 気合と共に振り下ろされる怒りの拳。先程とは比べ物にならない大きな地割れが発生し、巨大イカに襲い掛かった。
 ガクン、と態勢を大きく崩した巨大イカに、トドメとばかりに猟兵たちの攻撃が殺到する。

『うわあああん!! ごめんイカーーー!』

 改心したのか、ただ単に散々に痛めつけられて辛かっただけなのか。どちらとも取れそうな叫びを残して『だいおーいかたん』が消滅していく。
「ごめんよ」
 消えゆく『だいおーいかたん』に、類が呟く。
「君たちは過去の影。ここに生きて、生まれ行くものたちを食べさせるわけにはいかないんだ」
 胸元でギュッと拳を握り締め、『だいおーいかたん』を思い目を伏せるソラスティベル。
(「可哀想ですが、これもまた人々と妖精さんたちを護る為……でも」)

 ――共食いは、やっぱりやめたほうが良い気もしますよ!

 完全に消滅した『だいおーいかたん』に、心の中だけで突っ込むソラスティベルだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『アニマル・ベビーラッシュ!』

POW   :    掃除をしたり餌をあげたりする。

SPD   :    新しい小屋を作ったり古くなっている所を修繕する。

WIZ   :    母子の体調を良くしてあげる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ありがとう、本当にありがとう!」
 森の異変を解決した猟兵たちに、何度も何度も礼を言う村人たち。
「おかげで森に入れるようになる」
「ああ、家畜が増えて家畜小屋も建て増ししなければならん。備蓄の木材も減ってしまうだろうからな、森に行って少し木を分けてもらわなければ」
「その分、苗木を植えてお返しもしなければならないしな」
「これで薬草を取りに行けるわ。どうやって補充するか悩んでいたの」
 村人たちが嬉しそうに言葉を交わす。
「まあ待て」
 村のまとめ役らしい男性が、喜ぶ村人たちを落ち着かせるかのように声をかける。
「今は家畜の世話が優先だ。小屋を建てるのもそうだが、生まれた子が無事育つように母子ともどもしっかり面倒を見てやらないと」
「そうね、まずはそっちが優先ね」
「俺たちの生活を支えてくれる大事な家畜だからな」
 顔を見合わせうんうんと頷く村人たち。まとめ役の男性が、猟兵たちに向き直り申し訳なさげに頭を下げる。
「この村は今家畜の世話で手一杯なんだ。満足に相手もできなくて申し訳ない」
 改めて礼を言いながら、村人たちは家畜の世話に戻っていく。
「何ももてなしはできないが、ゆっくりしていってくれ。そうそう、うちの家畜はかわいいぞ! よかったら見て行ってくれ」

 忙しそうに働く村人たち。
 せっかくだから、家畜と触れ合うついでにお世話を手伝ってみよう。
 村人たちもきっと、喜んでくれるに違いない――。

==========
 村では様々な家畜を飼育しています。
 思いつく大抵の家畜は飼育されていると思われますので、プレイングにてお世話をしたい家畜をお気軽にご指定下さい。
 ただし、ご指定の家畜があまりに奇抜な動物だった場合、ご要望にお答えできない可能性がありますのでご了承ください。
==========
アルト・カントリック
【WIZ】

出産後の母親は気がたっていたり、疲れていたりするだろうし、子供も衰弱している可能性もあるよね。

せっかく生まれてきた命なんだから、僕達と村の人々で守りたいな。

僕は獣医ではないけれど、【サイバーアイ】で健康チェックをして、元気かどうかすみずみまで眼で調べるよ。

体に不調を見つけたら、村の人に報告しようかな。精神的な不調で元気が無さそうに見えたら、【仔竜の角笛】を吹いて元気付けるよ。僕ができる事はあんまり無いけど、元気になってくれたら嬉しいな!


ソラスティベル・グラスラン
森の問題は解決しましたが、村人さんたちはまだまだ大変そう…
ならば勇者として更なる活動ですっ!勇者の基本、無料奉仕!

わたしに遠慮はいりませんよっ、これもまた勇者として当然の行いです!
体力なら有り余ってますし、それに…うふふー!
可愛い動物さんたちとの触れ合いは立派なお楽しみなのです♪
牛さんは可愛いですねえ、お掃除も苦になりませんっ
餌もどんどん食べてくださいね!
大きく大きく、力強く!立派にそだつのですよー!

村人さんたちの代わりに力いっぱい働いて、それでも心は満たされて
心地よい疲れと充実感……ふふふ、これだから勇者は止められません
妖精さん達と、これからも仲良く付き合っていってくださいねっ


クラウン・メリー
【檸檬】

村人さん達のお手伝いするぞ!
え、クールそういうの得意なの?凄い!

何か欲しかったら言って!
俺、持ってくるよ!

俺は修繕出来ないから
お掃除してるね!箒でサッサっと
ん?このでっかいフォークも
掃除道具なのかな?

クールの笛、良い音色!
つい踊りたくなっちゃう!
動物さん達がクールの音色で
癒されてる!

この間に餌やりやろう!
わぁ、か、可愛いよ!
ひよこだ!ちっちゃい!

牛さんも羊さんもみーんな
子供だとやっぱり小さい!
よしよし、撫でると気持ち良さそうにしてる!

あー、もふもふしたい!
と言う冗談は置いといて。

わ、わわ
なんで子供のお馬さん達
追いかけてくるの?
く、くーる助けて!凄い顔舐められる!
(クールの居る所に走る)


クールナイフ・ギルクルス
【檸檬】
アドリブ、絡み◎

気張るクラウンへ
ヘマすんなよと軽口を叩き
近場の修復や小屋を作る手伝いへ
物を作る方が性に合うんでな
高い場所は軽々飛び上がり
釘がなくなれば声をかける

修繕作業に飽きたら獣奏器の笛を奏でようか
気が立つ親を落ち着けるため
生まれた子を鼓舞するため
忙しく動き回る村人を楽しませるため
時には緩やかに、時には跳ねるように
笛の音は言の葉よりも雄弁に語る

一段落したクラウンに目をやると
もふもふと戯れたそうにしやがって
ふっと悪戯心が湧いてくる
雛や子どもにエサがあるぞと笛の音でクラウンの元へ導いて
楽しんでるところに最後の仕上げと仔馬を煽ってやる
クラウンの様子に笑っていると
ちょっ!待て、こっちくんな!


シュシュ・シュエット
おはなしは伺っていましたが、とってもお忙しそうですね……っ。
村の皆さんのお役にたてるかどうかわかりませんが、
わたしも家畜さんのお世話のお手伝いをしましょう。

わたしは羊さんたちの様子を見に行きますっ。
小屋の*お掃除をする傍ら*動物さんたちとおはなし……めぇーめぇーとお声がけして、
何かしてほしいことはないか、羊さんたちにもお聞きしてみましょうっ。

お加減が悪い羊さんがいたら【シンフォニック・キュア】を*歌唱。
これからの夏に向けて、少しでもお体を労わってあげたいですっ。

村の皆さんも忙しさで目が回るなか、体調を崩されたら大変ですっ。
ひとつずつ、あせらずに問題をお片付けしていきましょう。


冴島・類
ふふ、持て成しなんか要りませんよ
折角の赤ちゃんラッシュ
皆さんのお手伝いさせて下さい!

人手は多い方がいい、そうだ
レコ君も良ければ来ませんか?
赤ちゃんは可愛いですよー

にこにこ人手確保の魂胆と
どうせなら、送り出してくれた彼も触れ合えたらと

【WIZ】
牛舎や厩舎で
牛や馬の飼い葉の補充や掃除しながら

産気づいたお母さんや
体調悪かったりマッサージが必要なこがいないか見回り
いれば、状況を動物会話で把握し村の詳しい方に報告
声かけ励ましをしながら対処を

大丈夫?どこが痛いか教えて
すぐに、楽にするからね…

赤ちゃんに触れ合えたなら
元気良い姿に感激してしまいそうだな
見てくださいよ、命はすごいなあ…

※ご一緒した皆様と絡み歓迎




「おはなしは伺っていましたが、とってもお忙しそうですね……っ」
 家畜の餌やり、放牧に小屋の掃除、出産後の母子のお世話。少しでも手が空けば牧草を刈りに行ったり家畜たちの小屋を修繕したり。
 休む間もなく働く村人たちに、シュシュ・シュエット(ガラスの靴・f02357)が少し驚いたように声を上げる。
「村人さんたちはまだまだ大変そうですね……」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が同意するように呟いて、両手でぐ、と握り拳をつくった。
「ならば勇者として更なる活動ですっ! 勇者の基本、無料奉仕!」
 そう言うと、ソラスティベルは早速重そうな木製のバケツを持った女性に突撃していく。
「重そうですねっ! お手伝いさせてください!」
 声を掛けられた女性は一瞬驚いたような顔をしたものの、嬉しそうに微笑んで礼を言った。
「ありがとう。でもこれ、とても重いの。村の恩人に持たせるわけにはいかないわ」
「大丈夫です、わたしに遠慮はいりませんっ。体力ならありあまってますし」
 ぐ、と力こぶを作るようなポーズをして見せるソラスティベル。
「そう……? じゃあ、そこの牛舎までお願いしてもいいかしら」
「もちろんです!」
 元気よく答え、女性からバケツを受け取る。ちなみにバケツの中には並々と水が入っていた。
「このお水、どうするんですかー?」
「牛たちにあげるの。あの子たち、水をたくさん飲むのよ」
 ソラスティベルは女性と雑談しながら牛舎へと歩いていく。


(「ソラスティベルさん、すごいのです……わたしもお手伝いを頑張らなければ!」)
 うん、と力強く頷いてシュシュが向かったのは、羊たちの厩舎。
『メエェエェ』
『メエエエエエエ』
「よしよし、いいこだね」
 羊の厩舎には先客がいた。
「羊のお世話をしに来たの?」
 シュシュに気付いて、アルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)がニコッと笑う。
「はい、小屋のお掃除のお手伝いでもと思って。アルトさんは何をしているんですか?」
「僕? 僕は動物たちの健康状態をちょっとね」
 アルトが特に気にしているのは出産後の母子の状態。母親が疲労していたり、子が衰弱したりしていないかチェックしていたのだ。
「凄いですね! 獣医さんみたいです」
「獣医じゃないけどね。見た目から分析してるんだ」
 羊の頭を撫でながら言うアルトに、シュシュは目を丸くして感心してみせる。
「よし、私も頑張ります!」
 羊たちのいる柵の中へ入ると、大きな箒で床を掃き始めるシュシュ。草臥れた寝藁を集めていると、羊たちが抗議するかのような鳴き声を上げた。
『メェエエエエ』
「ちょっと我慢しててくださいね? お掃除が終わったら新しい藁を敷きますから」
『メェェ』
「めぇー」
『メエエエエェ』
「めぇええ。めぇー」
 何やら羊と会話しながら作業を進めるシュシュ。
「お嬢ちゃん、ずいぶん手際がいいなぁ。羊に邪魔されないかい?」
 掃除用具を持った村人がやってきて、シュシュに話しかける。
「羊さんたちにお願いして掃除の邪魔にならないようにしてもらってるんです」
「ほお、そりゃすごい」
 村人とシュシュのやり取りに目を細めながら、アルトは引き続き羊たちの健康状態をチェックしていく。
(「せっかく生まれた命なんだから、僕たちと村の人とで守りたいな」)
 村人とシュシュの働きで羊小屋が片付き綺麗になり始めたころ、アルトは気になる羊の母子を見つけていた。
 どことなく疲れた様子の母羊。その影響もあるのだろうか、子羊もどことなく元気がない。サイバーアイの分析でもその母羊は少し他の羊たちと違うようだ。
「すみません、あの母子は? 少し元気がないみたいですけど」
 アルトの問いかけに、新しい寝藁を敷く手を止めて村人が答える。
「ん? どの羊だ? ……ああ、あいつらか。何とか無事生まれてくれたがかなりの難産でな。病気じゃないんだが、それだけに体力が戻るのを待つしかなくてなぁ」
 早く元気になってくれればいいんだが、と続ける村人。一応母羊は餌もしっかり食べ、母乳も問題なく出ているらしい。
 その話を聞いたシュシュが、少しだけ考える素振りをする。
(「『シンフォニック・キュア』で回復できたらいいんですが」)
 問題は羊の共感を呼べるかどうか――羊の共感とは一体……。
 しかしながら、試してみてもいいはずだ。それで事態が悪化するわけではないのだから。
 そう判断したシュシュはうんと一つ頷いて、すぅ、と息を大きく吸い込んだ。
 目を閉じ胸に片手を当て、優しい声で歌い始めるシュシュ。
 シュシュの意図を察したアルトが、仔竜の角からできた角笛を口に当てた。そのままシュシュの歌声に合わせ、即興で笛を奏でる。

 ――動物たちの疲れが癒えるように。
 ――村の人たちが、忙しさで体調を崩したりしないように。

 願いを込めた歌声と笛の音が、動物たちと村人の疲れを癒していく……。


 一方、女性と共にバケツを抱えて牛舎を訪れたソラスティベル。
「さあ、どんどん飲んでどんどん食べてくださいね! 大きく大きく、力強く! 立派に育つのですよー!」
 牛の水桶に汲んできた水を入れ、餌桶に飼葉を補充し。更には汚れた床の掃除にブラッシングと、牛の世話に余念がない。
「ごめんなさいね、こんな汚れ仕事まで」
「いいえ、こんな可愛い牛さんのためですもの、お掃除も苦になりませんっ」
 人間よりも温かい大きな体をブラッシングしてやれば、牛が心地よさげに目を細める。
(「うふふー! 本当にかわいいですねぇ」)
 牛のブラッシングを続けるソラスティベル。何やら違和感を覚えて自分の服の裾へと視線を送れば、そこには服の裾をもぐもぐとしゃぶる子牛が……。
「あ! これはダメです、ご飯じゃないですよっ」

 ちょっとしたトラブルがありながらも、ソラスティベルは牛の世話を完遂した。
「本当にありがとう。助かったわ」
 村人から送られる、心の底からの感謝の言葉。心地よい疲れと、やりきった充実感。
(「ふふふ、これだから勇者は止められません」)
 満たされた心を胸に、ソラスティベルは礼を言う村人に返事をする。
「いえいえとんでもない。こちらこそ楽しかったのです。そうそう、妖精さんたちとも、これからも仲良く付き合っていってくださいねっ」


「よーし、村人さんたちのお手伝いするぞ!」
「ヘマすんなよ」
 張り切るクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)に軽口一つ。クールナイフ・ギルクルス(手癖の悪い盗賊・f02662)は家畜小屋を建設中の村人に声をかけ、手伝いを申し出る。
「手伝ってくれるのか? そりゃ助かる! これから屋根を張るところなんだ」
「任せてくれ。そういうのは得意だからな」
「え、クールそういうの得意なの? 凄い!」
 とん、と軽々と屋根の足場に飛び乗るクールナイフに羨望の眼差しを向けるクラウン。
「何か欲しかったら行って! 俺、持ってくるよ!」
「おう」
 短く答えるクールナイフ。
(「俺はああいうのできないから……」)
 クラウンはきょろきょろとあたりを見回し、すぐ近くの柵の中で掃き掃除をする初老の女性の下へ。
「あらあら、手伝ってくれるの? ありがとう。じゃあ……掃き掃除をお願いしていいかしら?」
 手伝いを申し出たクラウンに、女性は目を細めて礼を言い箒を手渡す。
 大きな箒を器用に使い、サクサクと掃き掃除を進めるクラウン。しかし、柵に立てかけられた巨大なフォークを発見し、思わずその手を止める。
「このでっかいフォークも掃除道具なのかな?」
 口に出た疑問に答えてくれたのは、先程の女性だった。
「それは干し草を運んだりする時に使うのよ。寝藁を集めたり、掃除に使ったりもするわね」
「ふーん、いろいろな道具があるんだね!」
 女性と会話を交わすクラウンの耳に、クールナイフの声が届く。
「おーい、釘持ってきてくれ!」
「あ。ごめんなさい、ちょっと行ってくる!」
「はいはい、行ってらっしゃい。もうすぐ終わるからこっちは気にしなくて大丈夫よ」

 屋根葺きの作業に少しだけ飽きたクールナイフが大きく伸びをする。
「お疲れさん。もう十分手伝ってもらったから適当なところで切り上げな」
 一緒に作業する男性の言葉に甘え一休みすることにして、身軽に屋根から飛び降りるクールナイフ。
 小屋の脇にある柵に腰かけ改めて周囲に視線を向ければ、忙しく働く村人たちの姿がある。
 改めて思い切り伸びをした後、クールナイフは獣奏器の笛を取り出した。
 笛に息を吹き込んで、即興で曲を奏で始めるクールナイフ。時には元気よく、時には穏やかに……奏でられる笛の音に、働く手を止めひと時聞き入る村人たち。
(「クールの笛、良い音色! つい踊りたくなっちゃう!」)
 瞳をキラキラと輝かせるクラウン。クールナイフが奏でる音色で村人だけではなく、動物たちもリラックスしているよう。
 そして、何故かクラウンの周りに集まってくる家畜の子供たち。
「え? なんで??」
 首を傾げるクラウンの様子を見て、忍び笑いするクールナイフ。クールナイフが仕掛けた悪戯だと気づかず、クラウンは小さな家畜に大はしゃぎ。
「よし、この間に餌やりやろう!」
 小さなふかふかのひよこ。つぶらな瞳の子牛。もこもこのぬいぐるみのような子羊。村人たちに可愛がられているせいだろう、みな人懐っこく、撫でると心地よさそうに目を細める。
(「あー、もふもふしたい!」)
 クラウンが全力で家畜たちと戯れているのを確認すると、クールナイフは悪戯の最後の仕上げに掛かった。
 笛の音の曲調が変わり、今度は子馬が数頭クラウンのもとへ駆け寄ってくる。クラウンのそばに到着するなりクラウンをその長い舌でベロベロと舐めだす子馬たち。
「わ、わわ」
 クラウンが驚いて逃げ出しても、子馬たちは追っかけてくる。
「くっ……あははは!」
 慌てるクラウンの様子に我慢できず声を出して笑いだしたクールナイフだったが……。
「く、くーる助けて! 凄い顔舐められる!」
「ちょっ! 待て、こっちくんな!」
 クラウンと共に子馬に追いかけられることに。

 教訓――悪戯は、ほどほどにしておこう。


「すまないねぇ。手伝いまでしてもらって……」
「いえいえお気になさらず。是非お手伝いさせてください!」
 村の女性と話しながら、手押し車にたくさんの飼葉を乗せて運ぶ冴島・類(公孫樹・f13398)。
 その隣には、大きなフォークを抱えて歩くレコ・ジェヒ(ケットシーのビーストマスター・f00191)の姿もある。
 彼らは牛舎や厩舎を回り、飼葉を補充して回っているのだ。
「動物の赤ちゃんは可愛いですよねー」
 類ににこにこ笑顔で話しかけられ、レコは少しだけ考えて返事をする。
「赤ちゃんは可愛いけど……僕、手伝いの足引っ張ってない?」
 家畜の世話に使う道具はごく普通の人間サイズ、当然ながらケットシーには少々扱い辛い。必然的に、作業効率が落ちているような……?
「そんなことはありませんよ。少なくともレコ君の作業分ははかどりますから」
 そんなことを言い合っている間に、次の牛舎へ。
『モー』
『モオオオオ』
 床を軽く掃除しながら、牛たちの様子をチェック。
「ん? どうかしたの、大丈夫?」
 気になる牛がいれば声をかけてみる。
「どこか痛いの? うん、うん……そっか」
 牛と対話していた類が、レコに声をかける。
「レコ君、この子のとこ飼葉追加してあげてくれないかな?」
 ……お腹が空いていたようです。
「ずっと一緒にいるわけじゃないのによくわかるわね」
 女性に感心されて、はにかむ様に笑う類。
「そういう特技みたいなものです。大したことないですよー」

 牛舎の掃除を終えると、女性は類とレコを別の小さな小屋に案内した。
「ここは?」
「昨日出産したばかりの牛とその赤ちゃんがいるの」
 言いながら、引き戸になった扉を開ける。
 柵の向こうには、大きな母牛と……小さな小さな子牛がいた。まだまだ細くひょろりとした印象の子牛だが、流石は草食動物というかなんというか、早くも母牛の周りを歩き回っている。
「わあ……」
 類が感嘆の声を上げると、飼葉を食べていた母牛が顔を上げた。それにつられてか、子牛が興味津々といった様子で類に近づいてくる。
「触ってもいいですか?」
「母牛も落ち着いているし、構いませんよ。あ、でも気をつけないと……」
「わ!!」
 女性が何か言いかけた時、類が小さな声を上げた。
 子牛に触れようとした類の指を、子牛が思いっきりしゃぶり始めたのである。
「ごめんなさい、遅かったみたいね」
 困ったように謝る女性。しかし、類は女性が思っていたのとはまったく逆の感想を述べだした。
「元気な子なんですね! 見てくださいよ、こんなに力強く吸い付いて……こうやってお母さんからお乳をもらうんですね」
 生まれたばかりの小さな命。生きようとするその意思の、なんと力強い事か。
「命はすごいなぁ……」
 指を吸う子牛の首筋をもう片方の手で撫でながら、類はしみじみと呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイン・ローレンス
【WIZ】

妖精たちも約束してくれましたし
美しい景色も取り戻せましたし
これで心置きなく動物たちをもふもふ…じゃなくてお手伝いが出来ますね!
森や動物と支え合いながら生活する素敵な村の為に頑張りますよー!

「友の証」でぽんず(たぬき)とみりん(きつね)にも手伝って貰い、馬の母子をお世話しますよ
少しでもリラックスして貰えるよう愛情持ってブラッシングやマッサージを
ぽんずとみりんは子どもたちを
傷つかないように柔らかい布で優しく拭いてあげて下さいね

まあ美しいたてがみに綺麗な瞳ですね
この子たちも同じように成長すると思うととても楽しみです
なんだかお世話するはずの私が癒されてしまいました
…馬のお友達も素敵ですね…


サラ・スオラハティ
【星海工房】で参加
*アドリブ可


わーいお馬さんおる!!
……リーアとリズ君もおるー!?
うわあめっちゃ久しぶりこんな所で会えるとは…あはは
えっと、積もる話は後にして、ひとまず一緒にお馬さんのお世話しよ!

この親子を洗い場に連れてってブラッシングしたらええの?りょーかい!
おおぅ…馬ってこんな肌触りなんや…そしてめっちゃ抜ける…
え!リーアの方の仔馬さんそんなふわふわなん!?おねーちゃんもさーわーるー!

あ、そうだ
UDC不思議アイテムスマートフォン!
これでこの子達の姿を残しとこ
あとでリーアとリズ君にも送ってあげるね
え?持ってない?じゃあ今度UDCに買いに行こ!


リズ・ヨルズ
【星海工房】で参加
*アドリブ可

この村は幼馴染がお世話になってたみたいだ
何だか大変だったみたいだし、俺もちょいと家畜の世話の手伝いに行くとするか

一般的な鹿毛の馬を蹄洗場に繋ぎブラッシング。
機嫌を損ねないように注意しないとな。
そろそろ換毛期だからか。面白いくらい毛が取れる…。

おいおい、サラ。そんなにはしゃいで、吃驚した馬に窘められないようにな?
…え?写真撮るからピースしろって?すまーとほん?なんだそりゃ…。
また可笑しなもんを…と思ってたけどそれは面白そうだな。


リーア・スオラハティ
【星海工房】で参加
*アドリブ可


この親子のお馬さんのブラッシングですね
こんなに近い距離で触れる機会なんてないから、嬉しいです
――こんなに近い距離に迷子の姉がいるなんて聞いてないんだけど…?
まあ、うん、そうだね、先にお手伝いしないとね

大丈夫、お母さんは横にいるよ、安心して
うん、いい子いい子
すごい、ふわふわなんだね

今は冬毛が生え変わる季節だから大人の馬はブラッシングしがいがあるんじゃないかな?
はいはい、お姉ちゃんチェンジね
しょうがないなあ

すま…?その板何――え、わ、なにこれすごい!
仔馬さんがいる…!!すごいすごい!
時間をそのまま閉じ込めたみたい…UDCすごい…
お姉ちゃんとリズが一緒なら、行きたいかも




 森の美しい景色を取り戻し、妖精たちも村人に手を出さないと約束してくれた。
(「これで心置きなく動物をもふもふ……じゃない」)
 ついつい可愛いものに向いてしまう自分の思考を振り払うように、アイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)はプルプルと頭を振った。
「森や動物と支え合いながら生活する素敵な村のために、お手伝い頑張りますよー!」
 張り切るアインが向かったのは、村に幾つかある馬房の一つ。
「何かお手伝いできることはありませんか?」
「いいのかい? じゃあ、こいつらをブラッシングしてやってくれねーか?」
 声を掛けられた村人が指さすのは、尾花栗毛の馬の母子。
 ニコニコ笑顔で了承し、アインは早速ぽっちゃりたぬきの『ぽんず』とすらっときつねの『みりん』を召喚した。
「あなたたちは子馬を傷つかないように、優しく拭いてあげて下さいね」
 ぽんずとみりんに柔らかな布を手渡すアイン。
 布を受け取ったぽんずとみりんは母馬にぴったり寄り添う子馬のそばへ。見慣れぬ動物に驚いたのか、子馬が興奮するような素振りを見せる。
「あ」
 いけない――咄嗟に声を上げかけたアインだったが。それより早く母馬が首を曲げ、子馬の鼻先に自分の鼻先をくっつけた。
 大丈夫だから落ち着きなさい、とでも伝えたのだろうか。実際のところはわからないが、その動作一つで子馬はあっという間に落ち着きを取り戻す。
「さすがお母さんですね」
 アインは栗毛の大きな体にブラシを当てながら、母馬に語り掛けた。
 子馬はぽんずとみりんに大人しく体を拭かれている。母馬が子馬を落ち着かせてくれなかったら、お世話はもっと大変だったに違いない。
 アインの言葉がわかっているのかいないのか、母馬はアインの体に顔をすりすりとこすりつけた。
 その動きに金色のたてがみがサラサラと揺れ、柔らかに光を反射する。
「美しいたてがみですね」
 アインを見つめる澄んだ優しげな瞳もまた、たてがみに負けず劣らず綺麗で美しい。
 大分慣れてきたのか、自分の体を拭くぽんずとみりんを甘噛みしようとちょっかいをかける子馬に視線を送り、アインはふふ、と小さく微笑んだ。
(「この子も同じように成長すると思うととても楽しみです」)
 綺麗な母馬と可愛い子馬。知らず知らずのうちに自分の心が和んでいることに気付き、アインはまたしても口元を綻ばせる。
(「色々な動物のお友達がいますけれど、馬のお友達も素敵ですね……」)
 金色のたてがみを撫でながら、そう思うアインだった。


 別の馬房では、サラ・スオラハティ(満天星・f03708)が大きな馬の姿に瞳を輝かせていた。
「わーいお馬さんおる!!」
 ととと、と馬に駆け寄ったところで、別の人影に気付くサラ。
「……リーアとリズ君もおるー!?」
「こんな近い距離に迷子の姉がいるなんてきいてないんだけど……?」
 ジト目で呟くのはサラの妹リーア・スオラハティ(宵染桜・f03671)。リーアの隣で肩を竦めているのは幼馴染のリズ・ヨルズ(月来香・f03670)。
「うわあめっちゃ久しぶりこんな所で会えるとは……」
「――お姉ちゃん?」
 少々ドスの効いたリーアの声が、サラを呼ぶ。
「あはは……えっと、積もる話は後にして、ひとまず一緒にお馬さんのお世話しよ!」
 そう言ってみるものの、リーアはサラをじぃーっと見据えたまま。
 なにせふらっと出かけたっきり戻ってこなかった姉と、置いていかれた妹の再会である。妹にしてみれば、言いたいことは山ほどあるに違いない。
(「これはアカン……でもどうすれば……??」)
 焦るサラに助け船を出してくれたのはリズだった。
「まあ落ち着け。サラもなんか色々大変だったみたいだし。とりあえず俺たちも家畜の世話をしにいこうぜ」
「まあ、うん……そうだね、先にお手伝いをしないとね」
 宥めるような口調でリズに諭され、しぶしぶといった様子で納得するリーア。考えてみれば馬の母子と触れ合える機会など滅多にない。その機会を得たのだと思えば、リーアの心も自然に弾む。
 馬房の中にいた村人に声をかけ、リズが馬房から連れてきたのは鹿毛の母馬。その後ろから、同じ毛色の子馬を連れた村人が出てくる。
「そこに繋いでおくから、ブラッシングをお願いね?」
 サラとリズは母馬を、リーアは子馬を。それぞれに担当し、ブラシをかける。
「おおぅ……馬ってこんな肌触りなんや……」
 初めての馬との触れ合いに、サラが呟く。大きな体は温かく、その被毛は柔らかく……とにかくとても触り心地がいい。
「そしてめっちゃ毛が抜ける……」
 ブラシをかける度に、柔らかそうな毛がごっそり抜けてくる。
「面白いくらい毛が取れるな。そろそろ換毛期だからか」
 馬の機嫌を損ねないよう慎重に、けれどきちんとブラッシングできるようしっかりと。細かく気を配りながらブラシをかけるリズ。
「大丈夫、お母さんは横にいるよ、安心して」
 子馬に優しく話しかけるリーア。ブラッシングが心地いいのだろうか、子馬は甘えるようにリーアに頭を寄せる。
「うん、いい子いい子。……すごい、ふわふわなんだね」
「え!」
 バッと顔を上げ子馬を見つめるサラ。
「リーアの方の子馬さんそんなふわふわなん!? おねーちゃんもさーわーるー!」
「おいおい、サラ。そんなにはしゃいで吃驚した馬に窘められないようにな?」
 一気にテンションの上がったサラに、リズが冷静に突っ込む。
 馬に窘められるとは……具体的に言うと興奮した馬に後ろ足で蹴飛ばされたりだとか、踏みつけられるだとかだろうか。そう考えると痛そうだし本気でシャレにならない。
「はいはい。お姉ちゃんチェンジね。しょうがないなぁ」
 はあ、とため息をつきつつサラと交代するリーア。
「おお、本当にふわふわやん!」
 ご機嫌なサラの様子に、リズとリーアが顔を見合わせ苦笑する。
「あ、そうだ。これでこの子たちの姿を残しとこ」
 サラが思い出したように取り出すのはスマートフォン。
「写真撮るから二人ともこっち向いてー」
「え? 写真? すまーとほん? なんだそりゃ……」
「すま……? 何、その板」
 言われるままにポーズを取ったものの、疑問符を飛ばしまくりのリズとリーア。
 そんな二人にサラはスマートフォンの画面を見せる。そこには馬の母子と共にポーズを取ったリズとリーアの姿が写っていた。
「え、わ、なにこれすごい! 子馬さんがいる……!! すごいすごい!」
 目を丸くして「すごい」を連発するリーア。リズも興味深げにスマホの画面をのぞき込む。
「へぇ、これは面白そうだな」
「これUDCアースに売ってるの? UDCアースすごい……時間をそのまま閉じ込めたみたい」
 二人の反応に、今度はサラが不思議そうな顔をした。
「え、二人とも持ってない?」
 サラの問いに、リーアとリズが同時に頷く。
「そっか。じゃあ今度UDCアースに買いに行こ!」
 どこまでも奔放な姉の言葉に、リーアはちょっと困ったような顔をして……ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「お姉ちゃんとリズが一緒なら、行きたいかも」

 出来ることならば、これからはみんなで一緒にどこまでも――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月15日


挿絵イラスト