やさしい『約束』の破り方
●
ばぎっ、ごぎっ。ぐしゃ。
骨ごと。その身に宿る呪いごと。噛み砕き、粉砕し、呑み込み。自身に取り込むことによってこの地から消滅させる。
喰らうのは蜘蛛。喰らわれるのは小鳥。
されど、この地を侵したのは小鳥であり、蜘蛛は領地を守っただけ。
――どんな存在であっても、この川を越えることは許さない。
それが蜘蛛の『今の』存在意義であり、遠い――もうどれほど前か数えることも不可能なほどに遠い日の約束。
『そうだな……キミがもし僕に報いたいというなら』
『僕が戻るまでこの故郷を守って欲しい』
『ああいや。此処の人が自身の勝手で滅ぶのはいいんだが』
『この地は「悪いモノ」を呼びやすい』
『だから、「そういうモノ」から守って欲しい』
『キミが飽きるまででいい。戯れでいい。「もうやってられるか」と思うまででいい』
『無理なく、キミが死なない範囲でいい』
そう言って、その男性は私に笑いかけてきた。……もう、人々に忘れ去られたことによって、誰にも見えなくなったはずの『私』に向かって。
『こんな山奥の、人と獣が半分半分の里でも、僕の大切な故郷なんだよ』
そう言って、優しい笑顔を浮かべるあの人。
ああ、私はこの笑顔に救われたのだ。だから……恩返しがしたい。
――大丈夫。『貴方』が戻るまでこの地は私が守ってみせる。
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「もう……300年も昔の話なのよ。その約束」
グリモアベース。その一角に集まってくれた猟兵たちに礼を述べた後、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)はグリモアから得た予知の内容を皆に告げて。そして悲しそうに目を伏せながら話を続ける。
「この場所は元々シャーマンの隠れ里といった場所でね」
人々に秘匿された場所。普通の人は近寄らず、されどずっと語り継がれてきた秘密にして大切な場所。
「もう、里そのものは無いの。人も住んでいないし、人が住んでいた建屋もボロボロに朽ちている。どうにか『大昔に人がいたかも』っていうのがわかるくらいね」
人が離れていったことに特別な理由は無い。時代の流れ、あるいは自然の流れ。人が生きていくには厳しい場所で、秘匿すべき能力を継ぐ者が徐々にいなくなっただけ。
残っているのは人がいた痕跡と……『約束』を守り続ける蜘蛛だけ。
約束を守り続けて『悪いモノ』を屠っている蜘蛛の正体は、妖怪だ。
「本来、妖怪たちはUDCアースでは糧を得られなくなって、それでカクリヨファンタズムに逃げ込んだわけなんだけど」
どういうわけかUDCアースに残り続けた妖怪たちがいて、その1体がこの蜘蛛。だが人に忘れられた妖怪は人々の感情という糧を得らえず消えるしかない。
「もう消える……そんな時に自分が『見える人』に会ったのね、彼女は」
そして蜘蛛はかの人から糧を得た。蜘蛛はかの人のおかげで消えることなく生き永らえたのだ。それを恩と言わなければ何と呼べばいい?
その恩に報いるために、蜘蛛は今この時もその地を守り続けている。
それだけなら良くは無いけど問題はなかった。しかしグリモアが蜘蛛を捉えたならば、そこには事件がある。
「蜘蛛はね。約束を守るために、『UDC怪物を喰らって』生き永らえている」
託された地を守るために。襲い来るUDC怪物を倒し、その血肉を喰らって生きる力に変え、そしてまた襲い来るUDC怪物を倒す。ずっとその繰り返し。
それは合理的に見えて、とても歪な生き方だ。本来の糧ではないUDC怪物を無理やり生き永らえる力に変えている。そしてそれは毒のように蜘蛛を蝕んでいる。
「このままUDC怪物を喰らい続ければ……いえ、喰らわずとも遠からず。蜘蛛は妖怪から別のモノに変わってしまうわ」
それはカクリヨファンタズムでいうところの『骸魂に飲み込まれた状態』。UDCアースで言えばUDC怪物とも言える。
約束を守るためにUDC怪物を喰らい続けた蜘蛛は……皮肉にもUDC怪物となる。そうなれば理性を無くし『約束』を忘れて……かの人の故郷を蹂躙するだろう。約束をどこまでも守ろうとした彼女自身が約束を蹂躙してしまうのだ。
「今ならまだ間に合う。彼女を助けてあげて」
今なら。猟兵なら彼女を助けられる。
●
蜘蛛が今も守り続けている場所は、人も近寄らないような鬱蒼とした山奥の谷間にある。
「川に囲まれている盆地みたいな感じね」
かつてはその川を境界――結界として里を守っていた。何から? もちろんUDC怪物からだ。
「シャーマンの隠れ里って言ったでしょ。元々UDC怪物が『出やすい』場所なのね」
隠れ里の人々はその特性を利用して生きていた。今もその特性は変わらない。
そのために、UDC怪物は絶えず、里があった場所へと襲来する。
「また新たに蜘蛛の住処へ近づいているUDC怪物の群れがいるの」
まずはこれを倒す。蜘蛛の元へ行く道すがらに退治してほしい。
理由は2つ。
「ひとつはこの群れが、蜘蛛が発する『UDC怪物を誘う妖気』に引かれて集まってきているってことね」
あまりにもUDC怪物を喰らいすぎた蜘蛛は彼女自身がUDC怪物を引き寄せる存在となっている。だから現れたUDC怪物は蜘蛛を目指して突き進む。
「放っておくと確実に蜘蛛まで辿り着く。辿り着けば彼女はこの群れを喰らうわ」
そうなれば蜘蛛のUDC怪物化がまた進む。もう戻れないところまでいくかもしれない。それだけは阻止しなければならない。
UDC怪物の群れを倒したら、蜘蛛の居る場所まで行ってほしい。
「助け方は骸魂に飲み込まれた妖怪と一緒ね」
真正面から戦って戦って。蜘蛛が持っているUDC怪物の力を消費させる。追加で喰らうことがなければ力は消費していくばかりだ。そのうちに彼女は正気を取り戻す。
「そうなれば話もできるはずよ」
話すことが出来れば彼女の想いも望みも聞くことが出来る。彼女も吐露することで何か変わるかもしれない。
●
蜘蛛が約束を交わした人は既に故人だ。人は何百年も生きられない。
きっと、かの人の言葉に嘘は無い。戻るつもりだったに違いない。だけど……戻れなかった。その事実が約束の終わりをずっとずっと先延ばしにしている。
この約束の終わりは見えないのかもしれない。蜘蛛が諦めるしか終わりはこないのかもしれない。
それでも……蜘蛛自身が約束を壊す事態だけは阻止してあげたい。
「変な依頼でごめんなさいね。でもあなたたちにしか頼めないの」
よろしくね、と冬香は。グリモアの力で猟兵たちを現地へと送り出す。
るちる
まいどです。いつもありがとうございます、るちるです。
久しぶりのUDCアースシナリオは妖怪絡み。見た目ちょっと重い感じかもですが、基本的には戦っていけば解決する仕組みです。お気軽にどうぞー。
●全体
3章構成の通常シナリオです。
1章と2章は戦闘。3章はお見送りになります。
目的は『蜘蛛のUDC怪物化を阻止すること』。そのためには蜘蛛からUDC怪物の力を引き剥がす必要があり、蜘蛛にユーベルコードを使わせる必要があります。
阻止した後は彼女の要望に応じてくれると嬉しいです。
禁止事項は公序良俗に反すること。えっちなのうみそとか戦う気のないプレは不採用率高し、です。
●1章
集団戦『ルリハ』
蜘蛛の元へ向かおうとしているUDC怪物の群れです。見つけたら倒せ。遠慮はいらない。
既に蜘蛛の方向へ移動を開始しているので、皆さんは基本、ルリハを追いかける形ですが、先回り&待ち伏せに行動切替しても問題ないです。
戦闘場所は基本、地対空。森の中から飛んでいるルリハを狙い撃つ感じですが、森の地形は自由にご活用ください。
●2章
ボス戦『水蜘蛛川姫』
蜘蛛とは彼女のこと。元は里を囲む川に住む水蜘蛛でしたが、UDC怪物を喰らい続けて水蜘蛛川姫と化しました。
皆さんと戦うことでUDC怪物部分を消費、あるいは消失していきます。搦め手よりは真っ向勝負で。
戦闘のダメージはUDC怪物部分に蓄積されるようで、蜘蛛が死ぬことにはなりません。
●3章
日常『彼の地には螢の光有り』
戦闘が終わった後の蜘蛛とお話しタイム。そしてお見送りタイムになります。詳細は章開始の際に改めて説明します。
●ポイント
『これをクリアしないとバッドエンドになる』といった仕組みはありません。
オープニングとこのコメント。各章開始時の状況説明とご自身のリプレイを読んでいただければ十分にグッドエンドへ辿り着きますし、隠し地雷とかもありません。
ただ、より幸せなエンドに行こうとするのなら、各章開始時に前章のリプレイを読み直すことをオススメします。
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各章ともプレ受付開始前に冒頭説明or補足説明を追加します。ご参考にしてください。プレの受付開始についてはタグでお知らせします。毎度ですが、1日の執筆人数が多いと採用できない人が出るかも? プレ受付開始や状況なども含めて、タグでお知らせする予定、です。
それでは皆さんの参加をお待ちしていまーす!
第1章 集団戦
『ルリハ』
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POW : セカンダリー・インフェクション
自身に【病源体】をまとい、高速移動と【病源体】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : アウトブレイク
【伝染力の高い病源体】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : スーパー・スプレッダー
【病源体】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【にばら撒くことで】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:龍烏こう
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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時刻は夕刻。黄昏時にはまだ早く、太陽は空にある。
そんな天気の中にあって、件の山奥は鬱蒼としていた。人の手が入ってないからか、どこまでも大きく成長した木々が傘となって日光を遮っている。縦横無尽に広がる枝の下が広いか? といえばそうでもなく。里が無くなって久しいのだろう、もはや整地された道は無く、獣道のみが続いている。
そんな森の中を飛翔する小鳥の群れ……否、呪い、あるいは病原体が小鳥の形を象ったモノ。『ルリハ』の群れが飛んでいる。
日光を嫌うように木の葉の影の中を、しかし迷う様子もなく、ただただ一直線に一点を目指している。
蜘蛛自身にルリハを引き寄せている自覚は無いだろう。だが理性なきUDC怪物は誘われるままに蜘蛛を目指して飛ぶ。
森の中に転送された猟兵たちは、我が身に持つ特性によってルリハたちの位置を捉える。ここからなら間に合うはずだ、と。
各自の得意分野でルリハを狙う、あるいは迎撃する態勢を取る猟兵たち。
ここから先にルリハを通すわけにはいかないのだから。
※シナリオ補足※
ルリハ(小鳥の形をした呪い、あるいは病原菌)の群れと戦闘です。
小鳥の性能は『直線飛翔△、急降下○、旋回&機動力△、上昇×(枝に当たるので)』。直線飛翔は本来◎なのですが、木々が邪魔をしているので真っ直ぐ飛べていません。飛んでいる高さも木の高さが限界なので言うほど高くないです。
下から追いかけても十分手が届くと思います。
鬱蒼とした森ではありますが、戦闘時の障害となるものはありません。多少なら木々ごと斬り倒してもオッケーです。動物は逃げているから安心したまえ。
また、ルリハの位置はなんとなく把握できるので、森の上、空から狙撃しても問題ありません。範囲攻撃もオッケーです。
人のいない山奥ですが、今も動物は生活していますし、蜘蛛が守っている里と地続きです。あまり壊しすぎないようにお願いします。
あと『地雷は無い』と言いましたが撤回します。『常識的な範囲で行動』をお願いします。具体的には『蜘蛛を過剰に刺激する行為』は禁止します。UDC怪物化が進むので。
森に火を放つとか、100m越えてくる巨大兵器を使うとか、大地震を起こすとか、衛星から攻撃するとかが該当します。実際の被害が出るかどうかではなく、その行為や現象を蜘蛛が見える範囲でしないでください、という意味です。
ちなみにこの章ではまだ蜘蛛と接触(通信、合図等々含む)はできませんのでご注意を。
瀬堀・秋沙
恩返し。束縛されたくなる程の、約束。素敵ね、とても素敵。
私のは一方通行だったけど、もし相思であり、『約束』だったら。
壊れてでも守り続けたと思うのよね、私も。
じゃ、【指定UC】を発動して、七面鳥撃ちを始めるにゃ。
そっちが鳥のカタチを取るなら、こっちは散弾銃にゃ、鳥猟にゃ!
なに?霞網使いたい?ボーラ使いたい?各自有効と思うならご自由にどうぞにゃー。
一応、兵隊さんたちも幽霊だけど、防護マスクでしっかり身を守っとくにゃ!あ、私にも防護マスク頂戴にゃー。
私も箒で空中浮遊しながら空中戦、誘導弾を片っ端から撃ちまくって撃墜するにゃ。
貨物幽霊船の船長として。妖怪の同朋への言葉、届けに行くわよ、濱江丸。
●
『ルリハ』の群れが飛んでいる。蜘蛛を目指して飛翔する。森の中を縫うように、しかし迷うことなく飛ぶさまは鳥の行動としては異様かもしれない。だが、コレは呪い、あるいは病原体が小鳥の形を象ったモノ。羽ばたきで災いをばら撒くモノだ。
ゆえに猟兵たちはその進路を阻む。
ルリハたちが飛ぶ進路の先に、ふわりと降り立ったのは魔女姿の化け猫、瀬堀・秋沙(都の果ての化け猫船長・f29290)であった。爪先が地面を捉えたことを確認してから、ゆっくりと立ち上がる秋沙。近づいてくるルリハたちの気配から注意を逸らさず、一瞬だけ意識を後方――蜘蛛がいる方向へ向ける。
「素敵ね、とても素敵」
普段の、化け猫な口調ではない魔女の口調で。秋沙は呟く。
――恩返し。束縛されたくなる程の、約束。
それは秋沙の身にも覚えがある。とはいっても前世、しかも。
(私のは一方通行だったけど)
でも……もし、相思であり、『約束』だったら?
こんな状況を目の当たりにして、ソレを、自身のifを想像しない秋沙ではない。だから答えはするりと出る。
「壊れてでも守り続けたと思うのよね、私も」
だから。だからこそ。
秋沙はルリハの群れに向き直る。蜘蛛の、想いに触れるためにも。
●
だいぶあったルリハとの距離は程よく射程距離に。
いつも通りの、にまっとしたにゃんこの笑みを浮かべて秋沙は宣言する。
「じゃ、七面鳥撃ちを始めるにゃ」
ユーベルコード【その身座礁し朽ち果てようとも】発動。
秋沙の足元からせり上がってくるように召喚されるのは龍江丸級貨物船……の幽霊船。かつては座礁し沈んだ船、されどその魂まではいまだ座礁せず。
『濱江丸』の名を持つこの船は秋沙とは数奇な縁で結ばれた『仲間』である。もちろんその甲板に乗って既にヤル気の兵隊さんの幽霊も。
「そっちが鳥のカタチを取るなら、こっちは散弾銃にゃ、鳥猟にゃ!
甲板に乗っかってびしっとルリハの群れを指さす秋沙に、兵隊さんたちがめっちゃ集ってくる。
「なに? 霞網使いたい? ボーラ使いたい? 各自有効と思うならご自由にどうぞにゃー」
いや、具申のいう名の、やりたい放題だった。
そんなわけで火を噴く散弾銃に、風を切って飛ぶボーラに、逃げたところをばさっと覆う霞網。マジでやりたい放題である。
「めっちゃ楽しそうにゃー」
そんな様子を『ウィンドブルーム』の上に乗っかりながら……いや、立ってるなコレ? 魔女の箒ってこんな感じだっけ? とはさておき。
戦況を確認しながら秋沙もまたワンドを振るって魔力の誘導弾を発射。視界に入ってきたルリハを片っ端から叩き落していく。
ちなみに、兵隊さんたちは防護マスク完備である。
「兵隊さんたちも幽霊だけど、一応しっかり身を守っとくにゃ!」
との船長からのご達しである。
「あ、私にも防護マスク頂戴にゃー」
とのことで、箒の上に立つ魔女(化け猫)も完備である。
程なくして。
辺り一帯のルリハたちを撃ち落とし、一掃したことを確認した秋沙は濱江丸の甲板に降り立つ。
「……」
こつっ、と。秋沙の踵のヒールが甲板を叩くと、濱江丸の舳先がゆっくりと回頭する。目指すは蜘蛛の住む里。
一度目を瞑ってから……秋沙はゆっくりと目を開く。
「貨物幽霊船の船長として。妖怪の同朋への言葉、届けに行くわよ、濱江丸」
告げる言葉は号令にして、秋沙の想い。
甲板に控える兵隊さんたちと一緒に。秋沙は同朋の元へと針路を取る。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ連携歓迎
「300年、か」
多分妖怪の彼女にとっても、長い時間だったのだろう。
ともあれ、先ずは目先の障害の排除から。
調息、脱力、戦場を観据える。
得物は徒手格闘。
下手に突っつきまわして散り散りに逃げられても厄介か。
基本的な立ち回りとしては、前方向に逃げ道を残して集団としてまとめつつサイドから先頭を削り落とすように殲滅。
戦闘開始時よりUC発動し自身を加速させ、機動力と手数を上昇。
敵の進行に並走し、常にUCの効果範囲に捉えた状態を保ち、敵自身とその周囲の気流を鈍化させることで、動きを鈍らせ病原体の拡散を防ぐ。
時折投石による牽制を入れつつ、適宜先頭集団に一撃叩き込んで即離脱を繰り返し殲滅。
●
呪い、あるいは病原体が小鳥の形を象ったモノ――『ルリハ』。それの群れが飛ぶということは、災いを振り撒くことに他ならない。
本来は気ままに飛び回り、病を辺り一面へともたらすのであろう。しかし、今ルリハの群れは一点を向けて飛翔している……すなわち蜘蛛の元へ。
その様子を転送されてきた上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は見据え。そして想う。
「300年、か」
修介の口から零れた言葉。そこに在る想いは簡単ではないだろう。だからこそ修介の視線はルリハではなく、ルリハたちが飛ぶ先――蜘蛛がいるであろう方角へ引き寄せられる。
(多分妖怪の彼女にとっても、長い時間だったのだろう)
その、長い旅路の末がこれならば……。いや、答えを出すのは蜘蛛であって、猟兵たちではない。出来ることと言えば、理性を取り戻した彼女に答えを出させること。
「ともあれ、先ずは目先の障害の排除から」
そう呟いて意識をルリハに戻す修介。相手は飛んでいるがまだ追い付ける。焦りこそ呼吸を乱す。目を閉じて普段の呼吸を意識的に……吸気と呼気を繰り返し、体中に力を巡らせる――調息、そして体から力を抜く。開いた瞳が戦場を『観』据える。捉えるのはルリハの飛び回る気配。
(下手に突っつきまわして散り散りに逃げられても厄介か)
ならば、と修介は『氣』を張り巡らせる。自身の体の中ではなく、外。自身の周囲に留めている『氣』の範囲を拡大して、ルリハの群れをのその中へ捉える。【周天、或いは圏境】――またの名を制空圏。修介が完全に掌握できる領域を超拡大したものが【周天、或いは圏境】なのだ。
ルリハの飛翔速度ががくんと低下し、逆に修介の動きが加速する。その秘奥は圏内の対象の『氣』を阻害、あるいは活性化させること。ゆえに、ルリハたちは自由に飛んでいると見えても、すでに修介の張った網の中。
修介がルリハの群れを捕捉する。
襲撃する角度は群れのサイドから。超速度で左右を押さえ、群れを纏めるように誘う修介。群れが潰れて前後に流れないように、後ろも締めて。左右と後方、三角形を描くように修介が領域を掌握すれば、自然とルリハの群れは前方へと逃げる。
そこを修介の拳が炸裂。
どこまでいっても修介の得物は拳、徒手空拳だ。修介の拳が瞬く間にルリハを数匹叩き落す。加速するのは移動速度だけではない、攻撃の速度もまたその対象だ。機動力と手数、今の修介はどちらもルリハの群れを上回っている。
ルリハの群れに並走して、常に群れを【周天、或いは圏境】の範囲内に収め、ルリハを撃墜しながらも周辺の『氣』の流れを鈍化させることで病原体の拡散を防ぐ。
時折、群れから外れそうになるルリハに対しては投石による牽制で押し戻し。
攻撃を叩き込み、そして即離脱。自身、ルリハ、さらには『氣』、この場に在る全てを掌握した修介がルリハの群れを削り取るのは時間の問題。
(このまま、押し切る)
さらに速度を上げた修介が苛烈な攻撃をルリハの群れに叩き込むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
弓削・柘榴
ふむ……なんというか、似たような話もあるものじゃな。
『約束』に縛られることなく、カクリヨから出られた身としては、
解放してやりたいものじゃの。
ルリハたちには怨みなどないが、
これ以上UDC怪物を喰わせるわけにはいかんし、病原体を撒かれるのも困る。
放置しても良いことにはなさそうじゃし、ここは還ってもらうかの。
四神で吹き飛ばしてもよいのじゃが、それでは森にも影響がでそうじゃし、
とはいえ空中戦は得手ではないし……。
ここは【霊符】を使った【結界術】で行動を制限してから【闇猫】を召喚し、
ルリハたちを喰ろうてもらうことにするかの。
物理法則に縛られとらん式なら、空中戦でもルリハたちにひけをとることはあるまいて。
●
その羽ばたきは災いを招く風。森の中を飛翔する『ルリハ』は本来であれば広範囲に病や呪いをもたらす存在だ。しかし、幸か不幸か今は『誘われて』一点に向かっている。もちろん、蜘蛛の元へ。
これ以上のUDC怪物との接触は蜘蛛にとって何らプラスにならない。ゆえにグリモア猟兵は猟兵たちを盛りの中へと転送する。
そんな中、森の中に音もなく着地する猟兵がひとり。草履にもかかわらず足音が無いのは彼女が猫又ゆえか。弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)は『ふむ』と吐息をこぼしつつ、蜘蛛がいるであろう方角を見遣る。
「なんというか、似たような話もあるものじゃな」
妖怪、大切な人、約束。
柘榴はカクリヨファンタズムに渡った身であるが、それにしても此度の話は何やら『聞いたことがある』話だ。
「『約束』に縛られることなく、カクリヨから出られた身としては、解放してやりたいものじゃの」
そう告げて。告げた言葉は空と森に溶けて蜘蛛にはまだ届かないだろうけど。
柘榴は視線を元へ戻す。こちらに向かって飛んでくる気配……ルリハたちだろう。
「怨みなどないが、これ以上UDC怪物を喰わせるわけにはいかんし」
それに病原体を撒かれても困るし。そうなると……取るべき手段はひとつ。
「放置しても良いことにはなさそうじゃし、ここは還ってもらうかの」
自身の大きな耳をぴこぴこと動かしつつ、ふわりと赤い羽織をなびかせる柘榴。
気配が近づいてくる。仕掛け時は今……というより仕掛けないと通り過ぎられそうだ。
(四神で吹き飛ばしてもよいのじゃが、それでは森にも影響がでそうじゃし、とはいえ空中戦は得手ではないし……)
あまり蜘蛛を刺激するようなことはしたくない。空飛ぶ小鳥を空から追いかけて叩くのは定石だろうけども、柘榴師匠、あんまり得意じゃないらしい。
しかし彼女は妖怪にして陰陽師である。ご主人さまの使い魔だった猫又はかつての主の術を迸らせる。
指の間に挟んだ霊符をルリハの群れに突きつけるように突き出し、柘榴の口が何かを紡ぐ。直後、柘榴を包み込むように展開される霊力の壁……否、結界。
壁にぶつかり、結界に感づいたルリハたちが四方八方へ飛んで逃げようとするが、一手遅い。柘榴の結界術がルリハの群れを包み込んで閉じ込める。
「猫鬼召来」
続けざまに柘榴が言霊を紡ぐ。その言葉に誘われるように現れる式神【闇猫】――目に見えずともその場に在って、柘榴の敵を屠るモノたち。
「物理法則に縛られとらん式なら、空中戦でもルリハたちにひけをとることはあるまいて」
そう言って柘榴が手を掲げれば、瞬時に攻撃に移る【闇猫】たち。
いかにルリハたちが高速移動とともに病源体を放とうとも、それを上回る速度で式神たちが病原体ごとルリハを喰らっていく。
「しっかりルリハたちを喰ろうてもらうことにするかの」
遠慮はいらない、と言外に告げて。
柘榴は結界内に捉えたルリハたちを1匹残らず、【闇猫】たちに喰らわせていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
●幕間の物語1 ~ 奇跡とは起こるものではなく ~
~グリモアが予知を捉える数日前~
「あれ? なんだこれ?」
日本中にあるUDC組織のとある拠点。っていうか俺の家。
UDC職員として登用されて幾年。訓練を終えて、家に代々伝わる儀式を何度も繰り返し、ようやく我が家の血に憑いている『レイ』と通じ合うことが出来たのが先日。
『ご先祖様の再来ね!』と言われたのはこの『レイ』――ご先祖の持ち霊らしい、と意思疎通できるほどの能力をもった人が近年出ていなかったことに由来する。
さておき。
『レイ』が認めた者だけが入れるという拠点の地下にある書庫。その中に入ってすぐに見つけたのが、書庫のど真ん中にある台座に鎮座する小さな木箱である。
触れる。
ぱしっ、と音がして。木箱を縛っていた紐が切れた。
「なんだこれ?」
さっきも言った言葉を繰り返す。木箱の中には厳重に封がされた丸めた手紙と、いかにもな霊力を放つ折りたたんだ手紙が置かれていた。
鈍・小太刀
※アドリブ歓迎
遠い遠い日の約束かぁ
大切に想うからこそ、縛る鎖も重くなる
それが悲しくて、切なくて……
ああもう、放っておけないじゃないのよ!
せめてこいつらが、幸せを運ぶ青い鳥だったら良かったのにね
病を振りまくオブリビオンは、一羽たりとも通さない!
森一帯を見渡せる丘に先回りして待ち伏せる
ルリハの群れを見つけたら、空に放つは黒雨の矢
聖なる属性とか、そういう柄じゃないのは分かってるわよ
それでも今だけは
矢の雨の【浄化の属性攻撃】でルリハ達を貫いて
【破魔】の力で森を覆い、ばら撒かれた病原体を片っ端から消毒する
動物たちもこの森の一部、感染なんてさせないから
この地を護りたい、それが彼女の望みなら
私もまた手伝うよ
●
本来。流行り病や疫病などは目に見えない。知らない間にすぐ側まで『飛んで』きて、そしてその『元』をばらまくのだ。
『ルリハ』はまさにそれを『視認できる』形にしたものだ。形は小鳥だが、すぐ側まで飛んできてその羽ばたきで病を、呪いを振りまく。かの小鳥たちが飛ぶ様は病が広まる様と同義なのだ。
そんなルリハたちが森の中を飛翔する。1点を目指して。そういう意味では今この辺りにいる生物たちは幸いなのかもしれない。本来、指向性を持たない病の化身は蜘蛛だけを狙って飛んでいるのだから。
その進行ルートを見渡せるひと際大きな木の上にふわり、と。
鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)は降り立つ。右手で木の幹に掴まり、視線が眼下、ルリハたちの大まかな位置を捉えてから。
「遠い遠い日の約束かぁ……」
そう呟きながら小太刀の視線はつっ、と蜘蛛がいる方角を見遣る。
――大切に想うからこそ、縛る鎖も重くなる
――それが悲しくて、切なくて……
聞いただけの話だ。決して小太刀の身の上にあった何かと被ったわけではない。無いけれども、それでも。
「ああもう、放っておけないじゃないのよ!」
空いている左手をぶんぶん振る。人前ではクールなツンデレ娘だが、今はひとりだ、やりたい放題(?)
だからこそ。
「病を振りまくオブリビオンは、一羽たりとも通さない!」
視線をルリハに戻して小太刀が叫ぶ。
――せめてこいつらが、幸せを運ぶ青い鳥だったら良かったのにね
●
左手で抜き放つ『片時雨』――古びた日本刀は鈍の名が手にするにはかなり鋭く、その切っ先が照準としてルリハたちを捉える。
本来はこんな目立つ木の上ではなく、丘とかを考えていたのだがちょっと距離がありすぎる。ゆえに最適解はここ。
そして成すことはひとつ。
「戦場に黒き矢の雨を」
そして空に放つは――【黒雨】の矢。赤く染まり始めた空を黒の雨が切り裂いていく。輝くような黒に込められた属性は聖なる属性。
(そういう柄じゃないのは分かってるわよ)
ほんの少し、ツンデレ風味を覗かせながら、それでも今だけは。
雨から逃れる術は無い。人類が月まで行ける時代になっても、どんな道具を使っても雨の下にあって『雨に濡れない』なんて不可能だ。
ゆえに降り注ぐ雨はルリハの群れを貫いていく。森の中をすり抜けて、すり抜けるように飛んでいこうとするルリハを一撃で消滅させて。黒の矢は森の地面に突き刺さる。
雨が染み渡るように。
矢の突き刺さった場所から破魔の力が森を浄化していく。ルリハの羽ばたきでばら撒かれた病原体を片っ端から消毒しているのだ。
「動物たちもこの森の一部、感染なんてさせないから」
――この地を護りたい、それが彼女の望みなら
「私もまた手伝うよ」
空にそう告げて。
小太刀はルリハの群れを殲滅してくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
なるほど、蜘蛛が喰らう『悪いモノ』とはこの様な輩であったか。
異界の病ともなれば腹を壊すのも当然であるな。
その姿はこの星の生き物の様であるがオブリビオンであるならばそうではないのであろう?
鳥に対して霧や蝙蝠に変化
霧に森の密集など無関係、霧に触れる鳥を病で殺す
蝙蝠は超音波による地形把握するため木々の邪魔は軽微、鳥を襲い喰らう
どちらも大元は病の妖であるためどちらかが死ぬのみ
ただし、まだ夕暮れ
吸血鬼には日光がかなり痛い
黄昏時は苦手であるな。大抵、余が殺されるのはこの刻であるが故にな。
余はこの星に産まれ、この星に属する者ぞ。
異界の余所者よ。
見つからず、捕えられず、解体されず、戦いもせず、忘れ去られた病よ。
見つけられ、捕えられ、解体され、撲滅され、標本になった病が相手をしよう。
●
森の中を縫うように飛ぶ『ルリハ』。その青い羽は幸せを運ぶように見えてその逆、災いを振りまく。病原菌、呪い、あるいは死。それが小鳥を象ったモノがルリハなのだから。
その群れが飛翔する様を視認して。転送されてきたブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)は言葉を紡ぐ。
「なるほど、蜘蛛が喰らう『悪いモノ』とはこの様な輩であったか」
彼女がそう呟く様は、傍目から見れば単なる事実の確認のようにも見える。しかし、彼女こそが、『吸血鬼』という伝承に縛られ、名と体を得た『旧(ふる)き致死性伝染病』であるならば。その言葉に込められた意味もまた違うのかもしれない。
だがルリハの群れはブラミエに気付いた様子もなく、一直線に蜘蛛目掛けて飛んでいく。蜘蛛はこのルリハのような存在を喰らって生き永らえていたのだ。
「異界の病ともなれば腹を壊すのも当然であるな」
姿は小鳥でも、その本質はオブリビオン。喰らえば腹に入るのは肉ではなく、呪詛のような何か。
ゆえにこれ以上蜘蛛に喰わせるわけにはいかない。
「鬼の器に封されしは古き災厄。今ひとたびこの夜に零れ落ちよう。恐怖と共に」
紡ぐは言霊。己の在り方。古来、日本において目に見えぬ災いは『鬼』の仕業とされた。科学の光を当てれば病原菌とわかるものですら。
であるならば、ブラミエ・トゥカーズという存在は正しく『鬼』である。ユーベルコード【伝承解放・悪しき風と共に来たるモノ】はその身に宿る『モノ』を解き放つ。
ゆらり、と。ブラミエの体が揺れると同時にその身が霧と化す。
いかに森の構造が複雑であろうとも霧の浸潤を防ぐことは出来ない。隙間を埋めるように、そして森を満たすようにブラミエが広がる。
そして、飲み込む。
霧に包まれたルリハは瞬時にその色を変えていく。青から赤へ。そして病に染め上げられたルリハはそのまま消失する。
ルリハの群れが霧を追い払わんと羽ばたきで病原体を振りまくが、そも霧を侵すことなどできない。霧は薄く、しかし確実にルリハの群れを追い込み、ルリハたちは数を減らしながらも逃げるように飛ぶ速度を上げる。霧が広がる速度よりも早く飛べば霧は追いつけない。
(ならば)
霧が形を作る。それは吸血鬼の眷属たる蝙蝠の姿。これもまたブラミエの病を振りまく形。
蝙蝠の群れがルリハを追いかける。木々が複雑に道を塞いでいようとも関係ない。蝙蝠の超音波の能力はそのような地形を把握するためにある。むしろルリハたちもより軽やかに鮮やかに木々の間をすり抜け、近づき、その牙で直接ルリハを屠る。
「余はこの星に産まれ、この星に属する者ぞ」
その声はどこからともなく、されどルリハの群れを囲い込むように響く。
「異界の余所者よ。見つからず、捕えられず、解体されず、戦いもせず、忘れ去られた病よ」
それはブラミエという、『今』に在る者から『過去』に告げる宣告。
「見つけられ、捕えられ、解体され、撲滅され、標本になった病が相手をしよう」
ブラミエとルリハ。どちらも『病』が象ったモノならば。
より強い『病』が残る。いや、赤死の病が青い鳥の形をした病を駆逐していく。
程なくして。霧と蝙蝠が一点に集まり、女性の形を取る。ブラミエ・トゥカーズという吸血鬼の姿だ。
「……ふぅ」
吐息を零しながらブラミエは日傘を手に日光を遮る。
時刻はまだ夕暮れ、陽の光が世界に残っている。吸血鬼に日光はかなり痛い。ルリハからはダメージを受けていないが、ブラミエの体は少しばかり疲労感に苛まれている。
「黄昏時は苦手であるな。大抵、余が殺されるのはこの刻であるが故にな」
あまり楽しくないことを思い出しながらブラミエは踵を返す。ルリハの群れを駆逐したとて、まだ終わりではないのだ。
そしてブラミエは次の目標……蜘蛛の方へ視線を向けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
●幕間の物語2 ~ 放った言葉は戻らない ~
~遠い、あまりにも遠い昔~
いや、これは参ったな。まさか再起不能とは……。
油断していたわけではないが、やはり人の集まるところは、邪念も悪いモノも強いらしい。
術士としてはまだ動けなくはないが、両の足が無いのでは戦いは厳しいだろう。そして故郷へ戻るのは難しそうだ。何せ徒歩しか帰る手段が無いのだから。
だが諦めるわけにもいくまい。あの蜘蛛は真面目過ぎるから、きっとまだかの地にいる。さっさと帰って直接お役御免にすれば、という算段でああ言ったのだから。
僕は、かの地に必ず帰らなければいけないのだ。
御魂・神治
故人の約束を守り続ける、律義や奴やないの。
天将『そうですね、家賃を払うと言って滞納し、大家を裏切る神治とは大違いです』
病原体が鳥の姿をしたUDCかいな、青い鳥と感染...SNSの炎上やバズみたいな事しよって
病原体が生物的なもんなのか、それとも比喩なのか精神的なモンかは知らんが
妖怪を焚き付けてダメなインフルエンサーにするのは勘弁な!
ルリハの感染による汚染は【浄化】の【結界術】で阻止
『蒼天』を【弾幕】として【一斉発射】し、ルリハを絡め取って動きを封じる
動きが止まったら紫電符の【破魔】の【誘導弾】で【切断】や
●
仮に。『ルリハ』の群れが渡り鳥のように地域から地域へと移動するとするなら、それこそが病原菌の広がり……パンデミックといった現象を引き起こすだろう。その拡散を、転送されてきた猟兵たちが阻止している。ルリハの群れを次々と撃ち落としながら、病原菌ごと消滅させ……残りはわずか。
「故人の約束を守り続ける、律義や奴やないの」
件の森の中に降り立ちながら、御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は誰ともなく呟く。
『そうですね、家賃を払うと言って滞納し、大家を裏切る神治とは大違いです』
そしてそのツッコミは間髪を入れずに降ってきた。神治の左斜め45度くらい上からである。
「今言う必要ある??」
そこに浮いている人工式神『天将』に振り向きながら愕然と神治が告げる。ドスで急所を一突きしてくるかのごときツッコミだが平常運転である。見た目は美しい女性の姿だが、言う事がきっついのだ。まだ物理ツッコミが無かった分だけよかったと思うべきである、たぶんきっとめいびー。
さておき、漫才している間にルリハの群れが接近してきている。
「病原体が鳥の姿をしたUDCかいな、青い鳥と感染……SNSの炎上やバズみたいな事しよって」
目標を視認しながら、言い得て妙な例えを放つ神治。確かに言われて見ればそうだ。違うところは……受け取る側が取捨選択できないところか。
「病原体が生物的なもんなのか、それとも比喩なのか精神的なモンかは知らんが」
懐から愛用の銃を取り出し、ひと撫でしながら照準を合わせる神治。
「妖怪を焚き付けてダメなインフルエンサーにするのは勘弁な!」
ルリハの群れが羽ばたくと同時に、その身に宿る病原体を辺りに振り撒く。それは攻撃であると同時に森を汚染していく。降り注いで着弾した地点から、地面を塗り替えるようにして広がる汚染。
「まぁ、こうするわな」
それを神治の浄化の結界が受け止める。地面から垂直に立つ結界が水流を遮る堰のごとく侵食を押し留める。
そのまま結界を広く展開してルリハの群れをその中に閉じ込める神治。それを嫌って結界に体当たりをかまし続けるルリハたちは、その領域から逃れようとしているのだろう。
「チョロチョロすんな、大人しくしいや」
しかしそれを神治は許さない。神治が神器銃『天地』から青白い軌跡を描く追尾弾を結界の中に叩き込む。流れるように数発。それは結界の異なる位置の空間で着弾し、聖なる光を放つ。
ユーベルコード【陰陽霊弾『蒼天』】の光は触れたものを絡め取る。それが人であろうと霊であろうと、例え病原体であろうともだ。
浄化の結界で進行を阻まれ、そして飛翔すらも【陰陽霊弾『蒼天』】の聖なる光で阻まれた。さながら蜘蛛の巣に囚われた蝶のように空中で動きを止めるルリハの群れ。
「これで終わりや」
神治の手から放たれる『紫電符』。それは風を切って飛ぶと同時にプラズマ刃へと変化する。破魔の力を込められた対象を焼き切る護符はいとも容易くルリハの群れを切り裂いていく。神治の誘導により、一撃ではなく、二撃三撃と叩き込まれた護符がルリハを細切れに切断していく。そして浄化の結界が病原体ごと消滅させていき。
程なくして神治がいる辺り一帯のルリハは殲滅される。
「よっしゃ。次いこか」
『いつになく順調でしたね。いつもこれならいいのですが』
「ひと言多ない?」
天将とそんなやり取りをしながら、神治は蜘蛛がいるであろう方角へと向き直るであった。
大成功
🔵🔵🔵
●幕間の物語3 ~ 優しい『約束』 ~
~遠い、あまりにも遠い昔~
やはりこれが、手紙が最善手だな。
あんな場所でも秘匿された隠れ里だ。関係ない者を多数連れていくわけにもいくまい。そして今の僕を送ってもらうとするなら人数がいる。この問題は解決できない。
かといって、『帰る』ことを諦めるわけにはいかない。それでは蜘蛛との約束を破ってしまう。最悪、『生きている僕』でなくとも、『僕』は帰郷しなければいけないのだ。
だから、いつか、でもいい。
僕の子孫にこれを持って行ってもらうとしよう。レイ、キミには持っていく者を見定めて欲しい。その代わり、この家の血筋に憑りついていいから。霊力搾取しまくればいい。無理を言ってすまないね。
さて。
蜘蛛宛の手紙の封には僕の髪の毛と蜘蛛からもらった糸をねじり合わせた紐を。これは彼女から教えてもらった術だ。逆に言えば『僕から誰にも伝えなければ』、『彼女しか外し方は分からない』
これで蜘蛛宛の手紙は彼女以外に中身を知られることなく存在できる。
だけど一番いいのは……蜘蛛、この手紙がキミの手元に届かないことだ。
キミが幸せに生き延びることだ。その地はキミの墓標では無い。
『無理なく、キミが死なない範囲でいい』
これが一番大切な約束なのだから。
蜘蛛。キミがさっさとその地を捨てて、安らかな生を歩んでくれることを僕は心から願っている。
雪・兼光
……気づいていふりをしているか、見ないふりか
どっちでも良い、その妖怪に会いに行こうか
下手にいつもどおり範囲攻撃乱れ打ちのクイックドロウとかしたら、刺激するだけだろうし
基本は範囲攻撃と2回攻撃と乱れ打ちと浄化のユーベルコードでUDCを狩る
上空にいる敵にはスナイパーと誘導弾を利用したブラスターで攻撃する
相手からの病原体はオーラ防御と浄化で軽減できるか試す
第六感と見切りで避けれればいいけど無理そう、大丈夫そうなら避ける
無理ならしない継戦能力に切り替えて引き続き交戦
向かってくるならギリギリ惹きつけて零距離射撃のブラスターで撃ち抜く
これならいいだろ?
撃ち抜いてよろめいたところをユーベルコードで叩き落とす
●
ゆっくりと。日が沈む。世界が黄昏に近づいていく。逢魔が時を迎える前に、と『ルリハ』の群れは目的地――蜘蛛の元へ飛ぶ。もはや辿り着くことが目的と言わんばかりに、森の間を縫って飛ぶルリハたち。
その数は猟兵たちの攻撃により、最早数えるほどまで減ってしまった。ルリハの最後の群れの前に雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)が立つ。
「……気づいていないふりをしているか、見ないふりか……」
口をついて零れた言葉は今の蜘蛛を指してか。妖怪と人の差、それは蜘蛛にとってどのようなものなのだろうか。
「どっちでも良い、その妖怪に会いに行こうか」
そのためには今、迫りくるルリハの群れを叩き落とす。
いつも通り、手に馴染んだブラスターを手に、しかし視線は状況を確認する。
(下手にいつもどおり範囲攻撃乱れ打ちのクイックドロウとかしたら、刺激するだけだろうし)
そう思いながらも銃口は迷うことなくルリハに向いて。
「……フゥ」
ひと息吐いた後、狙いをつけてブラスターのトリガーを引く。しかしその動きは一度では止まらない。二度三度とトリガーを引きながら、銃口が円を描くように小さく動く。
飛翔してくるルリハの群れの先頭、その行動範囲を潰すような乱れ撃ち。ついでに浄化の力も込めておいた。空間を埋め尽くすように放たれた熱線はルリハの体を貫きながら、そのままその本質である『病、あるいは呪い』を消滅させていく。
兼光の攻撃を受けて、ルリハの群れが散る。高度を取って空から病原体をばら撒く個体もいれば、低空飛行に切り替えて突撃してくる個体もいる。
「……っ」
散らばるルリハの群れの動きを見切りながら、まずは上を。
銃口が上を向くと同時に雑に放たれるブラスター。しかしその熱線は弧を描いて寸分違わず、ルリハを撃ち抜いていく。数条の熱線が上に逃げた個体のことごとくを焼き尽くし、しかし注意が上に向いたことで出来た隙へ、低空飛行していたルリハが病原体を飛ばしてくる。
「くっ……!」
咄嗟に展開したオーラの護り。表面には浄化の力。激突した病原体の塊がばしっ、と派手な音を立てて弾き飛ばされる。
(これでいけそうか)
事前に考えていた『病原体はオーラ防御と浄化で軽減』する作戦は成功のようだ。
第六感で病原体の飛来を確認して、その動きを見切る。回避。その動きの中でブラスターを放つ。カウンター気味に叩き込まれる熱線がルリハの数をさらに減らしていく。
距離を取って、ではどうにもならないとルリハたちの本能が告げたのだろう。残っていた全個体が一斉に突っ込んでくる。
だが兼光も冷静に。
「これならいいだろ?」
ギリギリまで引き付けて零距離射撃のブラスター。その攻撃でルリハたちが撃ち抜かれてよろめく。だがそれでも兼光を喰らわんとルリハたちが突撃してくる。
相対距離はほぼゼロ。
「武器がないと何できないと思ったのか?」
兼光が拳を握る。その拳に纏うは命の迸り――生体エネルギー。それで以て肉薄してきたルリハたちを全力で殴りつける。【■■■式護身術】、たぶん誰かに教えてもらった護身術で以て、ルリハを文字通り叩き落す兼光。
遠近、両方の間合いを潰されて、病原体すら届かず。ルリハの群れは逃げ場を失う。
そして程なくして兼光が残っていたルリハの群れを全て屠るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『水蜘蛛川姫』
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POW : 巻き捕る
レベル×1tまでの対象の【体に妖力を込めた蜘蛛糸を巻き付け、その端】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : 吸い取る
【鋭い牙での噛み付き】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【生命力を奪い自身の戦闘力を強化。敵は苦痛】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 絡め獲る
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【耐刃性の優れた糸で出来た、頑丈な蜘蛛の巣】で包囲攻撃する。
イラスト:愛弥
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「十三星・ミナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●易しい、『約束』の破り方
薄暗い、ただ地面に掘っただけの穴倉の中で蜘蛛は目覚める。
――ああ、また『何か』が近づいてきている。
ゆっくり、と。しかし確実な意志を宿して。蜘蛛の体が起き上がる。そして進み出る。『何か』を排除するために。
『…………』
思えば、この体も随分と変わってしまったように思う。いや、体格や外見が変わったわけではない。体の中に流れる『力』がとても異質なモノに変わったように思う。
いつから、私はこうなったのか?
いや、些細なことだ。
――どんな存在であっても、この川を越えることは許さない。
いつも通り、あの人の生まれ故郷をぐるりと囲む川の前に立つ。何が起ころうと関係ない。何が来ようと問題ない。私は守るだけ、あの人との『約束』を。
私はこの地を守るために『在る』……だから。
――ええ、大丈夫。
――例え『貴方』が戻らなくても、私がこの地で朽ちようとも、この地は必ず守ってみせる。
●蜘蛛と出会う逢魔が時
時刻は黄昏時。誰ぞ彼ぞと問いかけてもその存在が曖昧になってしまう、人と魔が交じり合う逢魔が時。
そんな刻(とき)の中にあって、蜘蛛は静かに佇んでいた。……いや、何が来てもすぐに動けるような態勢で、近づいてくる『何か』を待っていた。
『何か』――猟兵たちは一度、足を止める。
『去りなさい。去れば追わない』
蜘蛛が告げる。だがこちらを見つめてくる瞳は虚ろで、語り掛けてきた言葉は自動再生された音声のようにも聞こえる。伝わってくるのはこの言葉が嘘ではなく。
『そうでなければ、喰い殺す』
その言葉を破れば戦闘は免れないということだ。
それでも一歩踏み出す猟兵たち。途端に膨れ上がる殺気。そして。
『殺すころすコロス!! ココは絶対ニ通サなイ!!』
振り撒かれる狂気。最早その赤い瞳は正気を失って動くモノ全てを獲物として襲い掛からんとする。理性を失いながらもなお、蜘蛛は叫ぶ。
『「約束」ハ! 守ッてミせル!!』
そう叫んで。蜘蛛が襲い掛かってきた。
※シナリオ補足※
蜘蛛こと『水蜘蛛川姫』との戦闘になります。
蜘蛛は理性をほぼ失っており、半ばオブリビオンと化しています。そんな今の彼女は自分の『矛盾』に気付いていません。
基本的には『戦う』で問題ありません。それで問題は解決します。
ただし、長い間UDCアースにとどまり続けた彼女は、実は『極めて強力な妖怪』です。UDC怪物を喰らったことでその力も増しています。
ですが猟兵の皆さんが『約束』に触れる(矛盾点を指摘する、約束を思い出させる等)ことで蜘蛛の理性を呼び起こすことが出来ます。そうすることで動きが鈍り、戦闘が有利になります(プレイングボーナスを得られます)
場所は川辺の平地。周辺の木々はまばらです。戦うに邪魔にはなりませんが、蜘蛛の巣を張る際の支点となります。もちろん立体機動的な動きをするときの足場にもなります(敵味方問わず)
1章を読み返して得られた『情報』は、『何となくそうかも、と思っている』とか『何故か予兆のように見えた』とかで猟兵の皆さんが知っていて問題ないものです。上手く利用できるなら、蜘蛛との相対も違ったものになるでしょう。
もちろん利用せずに真っ向勝負でも。
彼女と真正面から相対することが事態を好転させる勝利の鍵です。
※シナリオ補足の補足※
この章では、蜘蛛との戦闘やそれに付随する行動(蜘蛛への声掛けや事前のトラップ設置など)以外はプレ採用しませんのでご注意ください。
ブラミエ・トゥカーズ
守手よ、人の群れを脅かす悪いモノがやってきたぞ。
と言いたい所であるが人が居らねばそれも無意味であるな。
悪食で腹を壊したのならまともな悪い物を喰らい腹を治すと良かろう。
蝙蝠や狼の姿の病を運ぶ害獣になり喰われる
UDCを排出し真っ当な悪い物を接種させる事でのデトックス治療を目論む
UCとしての攻撃力は抑え、自然に存在する対生物病原体として使用
妖怪にはほぼ無意味
余等は過去から紡がれる物語《お約束》で縛られる。
そして物語は紡がれ続ける。
貴公の新しい物語も届くであろうよ。
地に網で縛られるのも、風に乗って跳ぶのも蜘蛛の生き方であろう?
言い忘れていたが、余は川を渡れぬから安心するとよい。
そういうお約束ゆえにな。
●
悪鬼となりながらも『約束』を守ろうとする蜘蛛――『水蜘蛛川姫』。
本来、その目は穏やかな赤なのだろう。しかし今の蜘蛛の目は全てを燃やし尽くす炎の如き激しさがある。ヒトの女性の形を取る一対の手の先からも鋭い爪が伸びている。
『ギ、ぃィィぃぃッ!!』
『約束』に従って、自分が持てる全てを使って迫りくる『悪いモノ』を滅ぼさんとする蜘蛛に対して。
「守手よ、人の群れを脅かす悪いモノがやってきたぞ」
ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)は、伝承にて『悪鬼』と称される吸血鬼は自身の訪れを告げる。……が。
「と言った所で人が居らねばそれも無意味であるな」
生きとし生けるモノ全てを死に至らしめる『病』が自嘲気味に呟く。目の前の蜘蛛がただの蜘蛛であれば、それこそ餌食になっていたかもしれないが。妖怪、しかも半オブリビオン化している相手では単なる伝染病だけでは太刀打ちできまい。
されどブラミエは形を成した伝承であり、妖怪であり、そして猟兵である。ゆえに『干渉』する程度ならば何ら問題は無い。
ゆえに告げる。
「悪食で腹を壊したのならまともな悪い物を喰らい腹を治すと良かろう」
『ア、ア゛アァァァァァ!!!』
ブラミエの言葉に応じるかのように、蜘蛛が彼女に飛び掛かる。細い腕からは想像もつかないほどに強い力でブラミエの両腕を掴み、その肩口へ鋭い牙を突き立てる!
しかし、その一瞬前に。
ブラミエの姿が蝙蝠へと化す。1体の大きな蝙蝠。だがそれはただの蝙蝠ではなく、【伝承解放・悪しき風と共に来たるモノ】。人の群れであればいとも容易く壊してしまう致死性伝染病を運ぶ害獣である。
その姿で以てブラミエは……動かない。蜘蛛が突き立てる牙をその身に受けて、そのまま蜘蛛に喰われていく。
ばぎっ、ごぎっ。ぐしゃ。……と。
蜘蛛が『悪いモノ』を噛み砕き、嚥下する。
『ア、アア、ァァァァ……』
目の前の排除すべきモノを排除できたことで、蜘蛛の狂気が少し収まる。
だが次の瞬間。
『ぐ、うあ゛アあッ!!』
ぐぼっ、と嘔吐しつつ、嗚咽する蜘蛛。嘔吐が止まらない、まるで人が悪性の伝染病にかかったように。体の中から吐き出されるモノは……蜘蛛がこれまで取り込んできた呪い――UDC怪物の力。
『ナ、なニガっ、起コ……グがぁッ?!』
言葉を紡ぐことすら出来ず、体の中から自身を蝕むモノを吐き出し続ける蜘蛛。
「余等は過去から紡がれる物語《お約束》で縛られる」
その声は蜘蛛の中から響く……もちろんブラミエの声だ。
病は形が崩れたとて滅びない。例え人が完全なる耐性を得たとしても病そのものがこの世から消えることは無いのだ。ゆえに彼女もまた蜘蛛の中でまだ『在る』。
ブラミエの目論見は『中からUDC怪物の力を排出する』こと。自身を、真っ当な悪いモノを接種させることでデトックス治療のごとく、異質な悪いモノを排除しようとしたのだ。
ユーベルコードゆえにその性能も思うがまま。本来の凶悪なまでの攻撃性を抑え込み、自然に存在する対生物病原体として作用させる。生きとし生けるモノであればそれでも死に至ったかもしれないが、妖怪である蜘蛛に対してはほぼ意味がない。
蜘蛛の中から作用しながらブラミエは語り掛け続ける。
「そして物語は紡がれ続ける…………貴公の新しい物語も届くであろうよ」
『ド、こに……』
ブラミエの声に蜘蛛が言葉を返す。いまだ狂気の中にありながら、わずかに『戻って』きたのだろう。もしかしたら悪しきモノの力が少し薄まったのかもしれない。
「地に網で縛られるのも、風に乗って跳ぶのも蜘蛛の生き方であろう?」
そう告げるブラミエは蜘蛛の中から霧となって現れて……吸血鬼の姿を取る。
『……っ』
狂気のままに暴れそうな体を抑え込みながら、蜘蛛が吸血鬼を見上げる。
「言い忘れていたが、余は川を渡れぬから安心するとよい。そういう≪お約束≫ゆえにな」
そう言って、『吸血鬼』は微笑むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
雪・兼光
なるほど、現実が見えなくなるほど暴走している訳だ。
先ずだ。
人間は妖怪より弱い生き物だ
寿命も生命力もアンタが個々を護り始めて何年立つ?
今回のグリモア猟兵の話だと3世紀だと
人間だと何世代か世代がわりしているぜ?
その人間が「寿命を終えた」と、何故考えられなかった?他の人間の死に様を見たことがない訳ではないだろ?
なぁ、種の壁を変えて約束を守るのは美しくて尊いことだ。
俺はアンタと約束をした人間じゃぁねーけどさ。
いま、あんたが守っているのをよく見てくれ
そこはその人間が守ってほしかった場所が?
攻撃はユーベルコードを牙に向かって部位破壊で攻撃
必要なら2回攻撃もつける
攻撃は第六感で避けまくる
苦痛は嫌だね俺は
●
『全て』を賭けて『約束』を守らんとする蜘蛛――『水蜘蛛川姫』。その『全て』を賭けるために、蜘蛛は本来、糧とはならないUDC怪物を喰らい、取り込み、生き永らえてきた。
『ぐ、ギぃぃィィぃぃぃぃぃっ!!』
狂ったような声をあげる蜘蛛。
「なるほど、現実が見えなくなるほど暴走している訳だ」
その様子を雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)はそう判断する。他の猟兵との戦闘で少しずつUDC怪物の力を引き剥がされているようだが、まだまだ蜘蛛の体を蝕み、理性を失わせている。
「先ずだ」
兼光がブラスターの銃口を突きつけながら告げる。
「人間は妖怪より弱い生き物だ。寿命も生命力も。アンタがここを護り始めて何年立つ?」
『がァァぁぁぁぁああッ!!』
兼光の問いには答えず、否、答える理性が戻らず。地を蹴り、兼光目掛けて跳ぶ蜘蛛。
「……っ」
その直情的な突撃を第六感で察知した兼光は、後ろに小さく跳んで回避しつつ、蜘蛛の着地に合わせて【クイックドロウ】――寸分違わず蜘蛛の牙を狙い撃つ。右、左と2本の牙へ直撃する熱線。
『グぎゃァァあああッ!!!』
口元での爆発にのけぞるようにしてたたらを踏む蜘蛛。その蜘蛛に対して牽制と言わんばかりにブラスターから熱線を叩き込む兼光。その猛省に蜘蛛の脚が止まる。
「3世紀だと。人間だと何世代か世代がわりしているぜ?」
銃口で威嚇しつつ、兼光が続ける。
「その人間が『寿命を終えた』と、何故考えられなかった? 他の人間の死に様を見たことがない訳ではないだろ?」
『そンナこト……ワかってル……』
兼光の攻撃でUDC怪物の侵食が少し停まったのだろう。狂いながらも蜘蛛が兼光の言葉に応える。
『死ンデ……どウシて終わりナノ?』
蜘蛛の赤い、わずかに正気を取り戻した瞳が兼光を見る。どうして『あの人』が死んだから『約束』が終わるのか、と。何故なら、『約束』の終わりには条件が2つある。『僕が戻るまで』、そして『蜘蛛がやめるまで』。蜘蛛がやめない以上、終わりは来ない。
蜘蛛の確固たる意志を見て、兼光が言葉を続ける。
「なぁ、種の壁を変えて約束を守るのは美しくて尊いことだ」
ゆっくりと、兼光が言葉を紡ぐ。
「俺はアンタと約束をした人間じゃぁねーけどさ」
そう言って兼光の銃口が蜘蛛から外れ、蜘蛛の後方を指す。
「いま、あんたが守っているのをよく見てくれ。そこはその人間が守ってほしかった場所か?」
『……』
兼光に促されるようにして振り返る蜘蛛。そこに『在る』のはもはやただの荒れ地。草むら。あるいは森だ。およそ人が住む場所ではない。
だが。
『ソウよ?』
視線を戻した蜘蛛は正気の瞳でそう告げる。
そう。里が滅ぼうが人が居なくなろうが、例え今のこの地に住んでいるのが獣だけだろうが、何の問題も無い。蜘蛛はかの人に『人の営みを守れ』と言われたわけではないのだから。グリモアの予知でも言っていたではないか。
『ああいや。此処の人が自身の勝手で滅ぶのはいいんだが』
『この地は「悪いモノ」を呼びやすい』
『だから、「そういうモノ」から守って欲しい』
ルリハのようなUDC怪物を『この地に踏み込ませない』のが彼女の使命なのだから。人がいなくなっても、この『約束』が途切れることは無い。
『だカラっ。私ハ『約束』を守ルッ!!』
そう言って蜘蛛が跳びあがる。まだ完全に理性を取り戻したわけではない。ゆえに猟兵を敵と誤認しているままだ。敵は屠らねば、と蜘蛛が猛るが、『約束』に触れて会話をしたことで、ごく自然にUDC怪物の力は削がれていた。
その分、動きが鈍い。第六感で捉えなくとも狙い撃ちが出来るほどに。
「苦痛は嫌だね俺は」
そう小さく告げて。
兼光の【クイックドロウ】によって放たれた熱線が蜘蛛を貫くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
瀬堀・秋沙
ちょっと言葉届きにくそうにゃ?
なら治療(ぶつり)のお届けにゃー!
そう、悪いもの食べ過ぎの食あたり。
約束した相手の顔も覚えてられなくなる様な猛毒よ?それ。
吐き出しときなさいな。
耐刃性はあっても、鯨の巨体は網では捕らえられない。それに…口を閉じたって歌えるもの、私。
私のうたで内側から揺さぶられなさい。
想いは貴女だけのものだもの、その想いはわからない。
だけど想像なら出来るわ。
ヒトとの想いの籠った『約束』は、私たちにとっては眩いものだから。
守る為に約束した相手の事まで忘れるなんて、本末転倒よ。
だから、話を聞かせて?貴女が貴女である事を思い出せる様に。
貴女が約束を交わしたしたひとを、思い出せる様に。
●
『グ、ぎ、いィィィっ!!!!』
蜘蛛の、『水蜘蛛川姫』の悲鳴が響き渡る。猟兵たちの攻撃によって削げ落とされていくUDC怪物の力。しかしUDC怪物もまた蜘蛛の体をより支配せんと侵食する。それによって蜘蛛は狂気とわずかな理性、正気の間を行ったり来たりしている。
ただ。わずかに理性が戻ってきているとしても、まだ猟兵の存在を『猟兵』――すなわち、生命の埒外あるいは妖怪を『見る』ことができる存在と認識できるほどまで回復はしていない。
――Laaaaaa♪♪
その場に響く歌声。
『……ギィィィっ!!!』
その歌声に向かって蜘蛛が牙を剥く。歌声の主――瀬堀・秋沙(都の果ての化け猫船長・f29290)に跳びかからんと。
そんな蜘蛛に対して。
「ちょっと言葉届きにくそうにゃ? なら治療(ぶつり)のお届けにゃー!」
どっかーんっ!!
森の中から白鯨が突っ込んできましたー! 直・撃!!
『ギぃぁぁああっ!!』
強烈な突撃によって吹っ飛ばされる蜘蛛。その一撃で潰れるようなことはもちろん無いが、川縁りまで地面を滑っていく。
「船は置いてきた、にゃ!」
陽気な化け猫船長が朗らかに告げるのであった。
森の中の平地。空まで遮るものが無い川辺の上に。巨大な白鯨が悠然と空を揺蕩っている。もちろん本来の生物ではなく、ユーベルコード【白鯨のうた】によって変身した秋沙である。猫の身に余る、鯨たちの怨念の残滓を。数多の船乗りに畏怖されし白鯨の伝説として再現したその姿は、生物の姿でありながら伝承を象った存在。
それが蜘蛛を見下ろしている。
『ぎ、シャァァァァ!!!』
立ち上がると同時に、白い頑丈な蜘蛛糸を飛ばす蜘蛛。こちらも生物由来ではなく、ユーベルコードであるがゆえに通常ではありえない大きさの蜘蛛の巣をいとも簡単に形成して。四方から投網のごとく白鯨の秋沙を捕えんとする。
「無駄よ。耐刃性はあっても、鯨の巨体は網では捕らえられない。それに……口を閉じたって歌えるもの、私」
言うが早いか、秋沙の歌声が紡がれる。瞬く間に戦場に広がっていく音が、戦場を、蜘蛛の心を震わせる。
「私のうたで内側から揺さぶられなさい」
『ぐ、ガぁぁァァアああッ!!』
秋沙の歌声が刺激するのは思い出、あるいは『約束』。そこを刺激されれば蜘蛛は胸を押さえるしかない。それこそが蜘蛛の原動力なのだから。
だからそこに『寄生』しているようなUDC怪物は『排出』される。
「そう、悪いもの食べ過ぎの食あたり」
優しく、蜘蛛を見つめながら、しかし秋沙はうたをやめない。
「約束した相手の顔も覚えてられなくなる様な猛毒よ? それ。吐き出しときなさいな」
『アぁぁァァァぁぁ!!!!』
うたを強める秋沙。それによって引き剥がされるUDC怪物の力。その感覚に苦悶の声をあげる蜘蛛。歌声によって剥がされ、剥がされ、剥がされ……。
『はぁっ……はぁっ……』
小さく蹲るようにして蜘蛛が地面に座り込む。顔面蒼白になりながらも、しかし赤い瞳は力を取り戻して秋沙を見る。
秋沙は白鯨の姿からいつもの猫魔女の姿に戻って、蜘蛛の前に立つ。いや、ゆっくりと歩いてきて、蜘蛛の前で屈む。蜘蛛と視線を合わせるように。
「想いは貴女だけのものだもの、その想いはわからない」
『……』
「だけど想像なら出来るわ」
じっ、と見つめ合う秋沙と蜘蛛。視線が絡み合う。
「ヒトとの想いの籠った『約束』は、私たちにとっては眩いものだから」
同じ、ではない。でも同じかもしれない、妖怪同士。ヒトと交わした『約束』が力となる……そんな女性が2人。だから言葉に込められた意味もまた、通じるものがある。
「守る為に約束した相手の事まで忘れるなんて、本末転倒よ」
『…………そウ、ね』
まだ体内に狂気が、UDC怪物が残っている。それでも秋沙の力によって、幾分か理性を取り戻した蜘蛛が、澄んだ赤い瞳で力強く秋沙を見つめ返す。
それを見て、秋沙が微笑む。
「だから、話を聞かせて? 貴女が貴女である事を思い出せる様に。貴女が約束を交わしたしたひとを、思い出せる様に」
そのために。
今は耐えて、と。
『……』
無言で肯定を返す蜘蛛。
秋沙は蜘蛛の想いを響かせるように、再び歌声を紡ぐのであった。
大成功
🔵🔵🔵
●幕間の物語4 ~ 奇跡とは人の想いが紡ぐものである ~
~グリモアが予知を捉える前日~
「いや、どういうことなんだよマジで」
このご時世であっても、人が踏み入る事すらしないような山奥で。歩きながら俺は悪態をついていた。ピクニックとか調査とかいうレベルの話ではない。この山を踏破しなければならない、ひとりで。
何故ならば、この手紙をご先祖様の故郷に届けなければいけないからだ。
調べたらとっくの昔に廃村になってて、人とか住んでない。マジでTHE・山。じゃあ空からとか文明の利器を使って行くかーと思っていたら、徒歩以外の手段を厳重に禁止されていた。正確に言えば、術で空を飛ぶ分にはいいよ、って書いてあったができるかそんなもん。
だがそんな、もう受け取る相手がいない手紙であっても。ご先祖様にとっては死んでからであっても果たしたい願いであったようだ。
なお手紙には『言う事聞かなかったら、一族郎党全員術が使えないようにしてやる』という強烈な呪いが込められていた。子孫を呪うご先祖とかどういうことなのか。いい加減にして欲しい。
だが今の我が家の地位というか立場も、そのご先祖様の類まれなる『力』で以て、興ったものなので。そんなことされたら路頭に迷うどころか、ホームレス一直線である。それはヤバい。
なので、俺が届けることは宿命なのだろう。レイ、なんか言え。黙って付いてくるだけなんてずるいぞ。
御魂・神治
うわ、目的と手段が入れ替わってるヤツやないかい
あー、その...何や、人間は妖怪と違って長く生きられんからその、本人はとっくにおらん――
天将『交渉困難と判断、物理行使を推奨します』
話の最中や、断言すな
せや、本人の子孫とやらはまだ生きとるって聞いたで
そいつの話を聞けば...って聞いてへんみたいやな!
【浄化】と【呪詛耐性】纏わせた【結界術】で近接攻撃を防いで『斎戒』で頭冷やさせるしかあらへんな
それでも抵抗するなら輪廻で【破魔】の力を増幅させた天地もしくは森羅の空砲で一次的にでも感情を「無」にさせるで
●
『約束』を守らんとこの地に迫る存在を排除し続けた蜘蛛――『水蜘蛛川姫』。しかしそれを為すために取り込んできたUDC怪物の力は彼女を毒のように蝕んでいる。蝕み、蜘蛛は変質している。
――例え『貴方』が戻らなくても、私がこの地で朽ちようとも、この地は必ず守ってみせる。
『約束』をそう考えて。
『殺すころすコロス!! ココは絶対ニ通サなイ!!』
狂気を振りまきながら絶叫する蜘蛛。
「うわ、目的と手段が入れ替わってるヤツやないかい」
そんな蜘蛛の前に立った御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は全力でドン引きしていた。さもありなん。ここまで見事に入れ替わっている例なんてそうそう無い。
出来れば関わらない方がいいやつである。だが神治も猟兵だ。意を決して声をかけてみる。
「あー、その……何や、人間は妖怪と違って長く生きられんからその、本人はとっくにおらん――」
『交渉困難と判断、物理行使を推奨します』
サポートAI的存在の人工式神『天将』が神治の言葉を遮って告げる。
「話の最中や、断言すな」
自身の傍らに浮く天将に向けて、ビシッ、とツッコミを入れて(もちろん回避されてる)から、神治は改めて蜘蛛へ向き直る。
「せや、本人の子孫とやらはまだ生きとるって聞いたで。そいつの話を聞けば……」
『ア゛ァぁァ゛ぁぁッ!!!!』
「って聞いてへんみたいやな!」
体に見合わず、俊敏に跳びかかってきた蜘蛛の一撃を後方に跳んで回避しつつ、神治が唸る。どうやら天将のツッコミが正解だったようだ。
跳び退った神治に向けてさらに蜘蛛が跳躍する。接近戦。そこから組み伏して喰らうつもりだろう。
「頭冷やさせるしかあらへんな」
ちょいと真面目に、薄く目を開いて。神治が自身の周辺に結界を展開する。鮮やかに寸分の狂いなく、不可視の立方体が形成され、蜘蛛の一撃を受け止める。
『ぎ、ィィっ!?』
「触ったら痛いでー?」
もちろんただの結界ではない。浄化を織り込み、蜘蛛に干渉しつつ、蜘蛛の攻撃に耐えうるように呪詛への耐性を強化した結界。攻防を同時に行う結界で蜘蛛を押し留めつつ、結界の中から角材型の大きめのハンドガン『森羅』を構える。
「これで大人ししいや」
素早く三連射。放った銃弾が蜘蛛の体に吸い込まれる。
『ガ、あぁッ!!』
直撃の痛み以上に。銃弾に込められた力が蜘蛛を縛る。それぞれの銃弾に込められた『状態異常付加行為を封じる』『ステータス低下行為を封じる』『即死行為を封じる』を束ねた破魔の銃撃【封魔霊弾『斎戒』】が余すところなく効果を発揮し、蜘蛛の動きを完全に押し留める。
「よっしゃ。これで何とか話を聞いてもらえそ……」
『良いですか? ご本人の子孫とやらはまだ生きていると聞き及んでいます』
「なんでお前が言うねん……」
最後の良いところをちゃっかり天将に持っていかれる神治でした。
大成功
🔵🔵🔵
鈍・小太刀
貴女が水蜘蛛川姫ね
言いたい事は山程あるけど
でも言うべきは私じゃないの
だから
包囲する蜘蛛の巣の攻撃を見切り
その奥へと敢えて飛び込む
オーラ防御と氷結の属性攻撃で
絡みつく蜘蛛糸を滑らせて進み
水蜘蛛の居る中心部へと踏み込んで
蜘蛛の身体へと手を伸ばす
指先だけでも届けばいい
蜘蛛の身体に触れて『勿忘草の幻影』のUC使用
蜘蛛の待ち人の霊を召喚して、戦闘への協力を頼む
ずっとずっと、帰りたかったんでしょう?
だったら今こそ、その約束を果たしなさいよ
お願い、彼女を助けて
彼女を蝕む怪物の力を、貴方の力で浄化して
そうすれば彼女は助かるから
貴方との約束を守れるから
この地を守り通した彼女に
貴方自身の口で、ただいまを言うために
●
遠い昔の『約束』を守らんとして蜘蛛――『水蜘蛛川姫』は今もUDCアースに在る。本来は消えゆく存在であった蜘蛛はUDC怪物の力を生き永らえる糧として、暴走のような状態になりながらも、それでも『約束』のために生きている。
猟兵たちの攻撃によって、徐々にUDC怪物の力が削がれた蜘蛛は理性を取り戻す時間が増えてきた。だがいまだその身に取り込んできたUDC怪物の力が強い。狂気に飲み込まれれば、目の前に立つ猟兵たちが妖怪を見ることが出来る存在だとも、悪しきモノであるかどうかも判断できず、ただこの地に近づいてくるモノを迎撃しているのだ。
「貴女が水蜘蛛川姫ね」
そんな蜘蛛の前に鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)が立つ。静かに佇むように、しかし真っ直ぐに蜘蛛と相対して。
「言いたい事は山程あるけど……でも言うべきは私じゃないの。だから」
言い終わると同時に小太刀の体が前に傾ぐ。重心を滑らかに移動しつつ、素早く駆け出す小太刀。
『がアぁぁぁァァッ!!!』
素早く近づいてくる小太刀に対して、蜘蛛が糸を何本も飛ばす。それは空中の一点から四方に広がって蜘蛛の巣となり、小太刀を包囲する。
「……っ」
しかしそれは予想の範囲内。飛んでくる蜘蛛の巣を見切り、回避と同時に指先から冷気を迸らせる小太刀。空中の水分と反応した冷気は瞬く間に氷と化し、触れた蜘蛛糸を凍らせていく。粘着性の無くなった蜘蛛糸をオーラの護りで弾き飛ばせば霧となって消えていく蜘蛛の巣。
そうやって蜘蛛の巣を回避しながら小太刀は蜘蛛の位置まで踏み込む。踏み込んで蜘蛛の身体へと手を伸ばす。
――指先だけでも届けばいい。
その想いが届き、小太刀の指先が蜘蛛に触れる。
「忘られぬ想いよ、ここに」
小太刀が言葉を紡ぐ。その言葉に応じて、ユーベルコード【勿忘草の幻影】は想いを形に呼び起こす。
「お願い、彼女を助けて」
小太刀が告げる相手は、蜘蛛の待ち人の霊。彼に協力を求めたのだ。
『……ふむ?』
呼び出された霊は首を傾げつつ、周囲を見渡して状況を把握しようとする。……が、動かない。いや、動けない。何故なら両足がないからだ。霊だから無いのではない。彼が両足を失った状態で死んだからである。人生の大半をその状態で過ごしたのだから、霊もまたその形になってしまったのだろう。
それでも霊は冷静に状況を把握した。視線を蜘蛛に遣って言葉を紡ぐ。
『なんとまぁ……「こうなって欲しくない」という予想を超えてくるところがとてもキミらしいね。蜘蛛』
『グ、ギ……』
その言葉に蜘蛛は……正気を失いながらも何かを感じ取ったのか、間合いを詰めることすらせず、唸り声をあげている。
そして霊が後ろを振り返る。そこに突っ立っているのは小太刀だ。
「ずっとずっと、帰りたかったんでしょう? だったら今こそ、その『約束』を果たしなさいよ」
ぶっきらぼうに告げられる想いの塊。
『約束』という言葉を受けて霊は目を見開く。どうやら『あの事情』を知っている者らしい、小太刀をそう認識した霊は再び蜘蛛を見て、見つめて……ため息をつく。
『蜘蛛……愚直なキミが僕も嫌いではないけれども……』
身長差のある蜘蛛を見上げて、霊が告げる。
『キミは、このままずっと僕との「約束」を破り続けるつもりかい?』
『!!!!』
「……は?」
霊の言葉に蜘蛛は恐れ戦き、小太刀は呆けた声をあげる。
「ちょっと何言って……」
『ウあァァァァァっ!!!』
小太刀の悲鳴を遮って、蜘蛛が絶叫する。絶叫し、告げられた事実を否定するように、自身の脚を闇雲に振り回す蜘蛛。
『うおっ!?』
その内のひとつが霊に直撃する。吹っ飛ばされる霊。足が無いために着地することもできず、地面を滑っていく霊。そのまま小太刀の横を通り過ぎていく。
『痛たたた……いやはや。約束した本人に矛盾を指摘させるとは……何処の御仁が知らないが、なかなか酷な事をする』
微苦笑しながら身を起こす霊。その霊に対して駆け寄った小太刀は複雑な表情で告げる。
「違う! 私は貴方にこの地を守り通した彼女に『ただいま』って言ってほしくて、そうすれば貴方との約束を守れるからって……」
『いやいや。今、僕が「ただいま」って言ったら彼女が「約束」破り確定じゃないか。ダメだろそれ』
近くの木にもたれかかるようにして浮き上がる霊。
『少し、会うには早かったようだ。まぁまだ機会はあるし、今は彼女を助けることに注力しようか』
そう言って霊が手を振り上げる。それに応じて渦巻く勿忘草の花吹雪。
『貴方の蜘蛛を助けたいという気持ちには報いよう。その力、借り受ける』
手を振り下ろすと同時に花吹雪が蜘蛛を包み込む。包み込むと同時に花びらがUDC怪物の力を削り落としていく。UDC怪物の力が削れるのと相反して、蜘蛛の理性が戻ってくる。
『ゆっくり。「約束」を思い出してごらん、蜘蛛?』
『ギィぁぁぁぁ……』
渾身の力を込めて放たれる勿忘草の花吹雪。それによってまたひとつ、蜘蛛が正気へと戻る切欠を得るのであった。
成功
🔵🔵🔴
上野・修介
※アド連歓迎
「貴女が、その人とどんな約束をしたのかは詳しくは知りません。どのような思いでそれを守ってきたのかも分かりません」
――だがそれでも
「貴女がそのように堕ちることをその人は望んでいないはずだ」
グリモアが予知し、猟兵がここに来た。
それに意味を見出すならば、少なくとも俺はそう信じる。
「……故に――ただ一撃、仕る」
呼吸を整え、無駄な力を抜き、彼女が観据える。
量るは最短距離、相手の視線と挙動より回避動作は最小に留め、持てる最速を以て間合いを殺す。
――その献身に慈しみと祈りを
――そしてこの300年の終わりに、彼女が新たに何かを選べるように
振るう拳の一撃に渾身と共に込めて、堕ちる定めを捉えて砕く。
●
この地を守らんとする蜘蛛――『水蜘蛛川姫』は猟兵たちの攻撃を受けていた。
――どうやら彼ら彼女らはこの地ではなく、私を目的としているらしい。
激しい攻撃によって、その身に取り込んできたUDC怪物の力は無理やりにでも削げ落とされている。削げ落とされる力の量に比例して蜘蛛にもまた理性が戻ってくる。そこまで認識できる状態に戻りながら、しかし一度自身を支配した狂気は目の前の『敵』を排除せんと蜘蛛を何度でも狂わせる。
狂気と正気の間を行ったり来たりしながら、それでもなお『約束』を守らんとする蜘蛛。いや、『約束』が彼女の芯にある。
「…………」
その前に上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が立つ。自然体……修介はいまだ拳を握っていない。『観』る――今の蜘蛛を。
「貴女が、その人とどんな約束をしたのかは詳しくは知りません。どのような思いでそれを守ってきたのかも分かりません」
告げる言葉は語り掛けるようであり、それでいて修介自身が自分の想いを形にした独白のようでもある。
――だがそれでも。
続く言葉は確実に蜘蛛に向けて。蜘蛛の赤い瞳と修介の視線が合う。
「貴女がそのように堕ちることをその人は望んでいないはずだ」
『……ぎ、ィィぁアアアっ!!!』
修介の言葉を受けて、蜘蛛が絶叫する。思い出したのだろう、かの人との『約束』がどのようなものであったか、最後に何と言っていたか。
心の動揺を狂気に囚われて。蜘蛛が修介に攻撃を仕掛ける。修介に向けて飛ばされる蜘蛛糸。
「……!」
それを見切った修介は身を翻して回避する。直情的で直線的な攻撃は回避しやすい。
蜘蛛も動揺しているのだろうか。攻撃が続かない。動かない。両者の間に満ちる緊張感……その中で。
修介は呼吸を整える。息を吐いて、息を吸う。それを繰り返し、徐々に深く深く、体に力を巡らせていく。
――グリモアが予知し、猟兵がここに来た。
――それに意味を見出すならば。
(少なくとも俺はそう信じる)
力を巡らせるのと相反するように体から力を抜いていく……そして蜘蛛を『観』据える。全てが絡み合うようにして、しかし無駄のない自然体へと……呼吸が調う。
小さく息を吐くとともに地を蹴る修介。
既に蜘蛛への最短距離は量ってある。後は素早く踏み込むのみ。修介を迎撃しようと飛んでくる蜘蛛糸は、蜘蛛の視線と挙動から見切って最初の動きで回避。速度を緩めることなく、否、持てる最速を以て間合いを殺す。
修介が拳を握る。【――祈りを拳にて】
蜘蛛の懐に踏み込み、そこを支点に螺旋状に駆け上がる力を拳へ。同時に込めるは慈愛と祈り。
――その献身に慈しみと祈りを
――そしてこの300年の終わりに、彼女が新たに何かを選べるように
「……故に――ただ一撃、仕る」
明鏡止水の一撃が蜘蛛の体に叩き込まれる。
『……ッ?!』
あまりにも早く、それでいて肉体を傷つけない一撃は、蜘蛛の中に巣食うUDC怪物の力のみを破壊する。
修介の想いと渾身とを共に込めた一撃が堕ちる定めを捉えて打ち砕く。
大成功
🔵🔵🔵
十三星・ミナ
アドリブ連携歓迎
何だか不思議な縁を感じて、後れ馳せながら戦場へ。
(冒頭のブリーフィングの情報は持ってる感じでお願いします)
我流陰陽術『冷』で相手の体力を奪います。
「ここを『命懸け』で守れ、と言われましたか?
……命尽きるまで、狂うまで戦うことは、望まれていなかったのではないですか?」
今回は召喚してはいないが、自らと関係があるらしい死霊騎士のことを思う。
死してなお護ってくれることは嬉しいが、
生きて側にいてくれたなら、と考えたこともある。
「貴方と約束した人が、
きっと望んではいない今の貴方を止めさせていただきます!」
手にした霊符から浄化の炎を蜘蛛へと放つ。
多少の苦痛と怪我を受けることは厭いません。
●
『ぐ、ぎぁぁぁあああっ!!』
蜘蛛――『水蜘蛛川姫』が絶叫する。それは猟兵たちの攻撃によってその身から強引にUDC怪物の力を削げ落とされている痛みでもあり、今の『自分』に対する嘆きであったかもしれない。少しずつ、少しずつ理性を取り戻し、自分を取り戻し。狂っていた『約束』の捉え方を見つめ直す蜘蛛。
だがまだ。蜘蛛の中にいるUDC怪物の力が暴れ出す。蜘蛛を狂わせる。一度狂った身は少しの干渉で再び狂気に陥る。
「……」
その様子を見守っていた十三星・ミナ(死霊(カコ)を供に星(カコ)を探す者・f17400)はゆっくりと蜘蛛の前に歩み出た。
何か……誘われるような不思議な縁を感じて、後れ馳せながら駆け付けたミナ。状況はグリモア猟兵から聞いている。持っている情報は先に駆けつけた者らと何ら変わりない。
それでも。まずミナはこの場を見守っていた。あるいは自身が感じた何かを見定めるつもりだったのかもしれない。
そして、ミナもまた蜘蛛へ問いかける。
「ここを『命懸け』で守れ、と言われましたか?」
『……っ!!』
声に反応した蜘蛛が動きを止める。その赤い瞳はミナが知るべくもないが、最初に比べたら随分と落ち着いている。いまだ狂気の揺らぎが見えるがそれさえ祓うことが出来れば。
「……命尽きるまで、狂うまで戦うことは、望まれていなかったのではないですか?」
『やめてダマレ逃げてコロスゥゥ!!』
動揺が駆け巡り、蜘蛛が狂気と理性の間を行き来する。動きが格段に鈍い。ようやく狂気が支配した体がミナを噛み砕かんと牙を剥くが、それでもなお蜘蛛の意志によって動かない。
「こんなところに居ては……冷えてしまいますよ?」
ミナの指が結んだ印は【我流陰陽術『冷』】――直後、ミナの周囲に冷たい霧が満ちていく。それは蜘蛛に纏わりつくように漂い、ミナに向けて跳びかかろうとした蜘蛛から体力を奪う。
『ぐ、ぎィッ……』
脚から崩れ落ちる蜘蛛。牙がミナに届かない。
その様子を油断なく見据えながら。ミナが思い巡らせるのは自身が呼び出す死霊騎士のことだ。今回はこの場に呼び出していないが……自らと関係があるらしい死霊騎士。
(生きて側にいてくれたなら……)
そんなことを考えたこともある。死してなお護ってくれることも嬉しいが、やはり生きて側にいてくれたら、と。
だからミナは蜘蛛を見据える。その瞳には意志がある。【我流陰陽術『冷』】の印を維持しつつ、もう片方の手で手にした霊符。霊力を流し込めば、霊符が浄化の炎を灯す。
「貴方と約束した人が、きっと望んではいない今の貴方を止めさせていただきます!」
手にした浄化の炎を躊躇うことなく、蜘蛛へと放つミナ。
『う、あぁぁぁぁっ!!』
蜘蛛が悲鳴をあげる。それはミナの攻撃によってその身からUDC怪物の力を浄化される小さな反動だ。身を切る痛みは無い。そして蜘蛛の赤い瞳から狂気が薄れていく。
蜘蛛が『約束』に戻れるまで……あと少し。
大成功
🔵🔵🔵
弓削・柘榴
お主にとって約束が大事なものであることは解る。
約束こそしておらなんだが、あちきもそうじゃったしの。
しかしお主、それだけ大事な約束を違えておらぬか?
『見える』者がおらんようになってしまう恐怖は解る。
それを信じたくない気持ちもな。
しかし人はあちきらと違う。何百年も生きられぬ。
それはお主も解っておろう。
『かの人』は言うたはずじゃ「悪いモノ」から守ってほしいと。
そしてこうも言う多ハズじゃ「無理なく」と。
無理をし、お主が悪いモノになってしまってどうするのじゃ。
もしお主がいまだこの約束を守りたくば、喰らわず、捕らえて屠ればよい。
いつかは衰え、眠りにつくことになるだろうが、
自然のままに『かの人』のもとへと逝き、また出会うがよかろう。
ま、それ以外にも、守護獣として信仰を集めて力にしたり、
猟兵に覚醒してしまうなど、このままこの地を守り続ける方法もないわけではないと思うがの。
とりあえず今は、お主の毒を抜かねばいかんな。
【青龍】を召喚し、水の気を持って土の毒気を抜いてしまおう。
東方青竜に願い奉る……!
●
蜘蛛を、『水蜘蛛川姫』を支えるモノが崩れていく。ひとつは無理やり糧としてきたUDC怪物の力。そしてもうひとつはかの人との『約束』。この2つが今の蜘蛛をUDCアースに繋ぎとめている。
しかし、『約束』はいまや蜘蛛自身が破りかねない状態で、UDC怪物の力は蜘蛛を飲み込もうとしている。
猟兵たちの活躍によってそれは間際で食い止められ、そして徐々に事態は好転している。あとひと押し。
『ウ、あ、あぁぁぁ……』
最初に交戦を始めた頃に比べれば、蜘蛛の赤い瞳に宿る狂気は随分と薄くなった。だが、正気に戻るにつれ、蜘蛛は自身の体が思うように動かないことに動揺する。狂っていた時には気にならなかった体を侵食する激痛に身を竦ませる。いまだ狂気が体を支配していることを実感する。
どうにか周りを害しようとする狂気を抑え込みながら、蜘蛛は自身の前に立つ妖怪へと目を向ける。
そう、妖怪だ。自分と同じ、おそらく日本を発祥とする妖怪。
「お主にとって約束が大事なものであることは解る」
弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)が蜘蛛の瞳を見つめながら言葉を紡ぐ。
「約束こそしておらなんだが、あちきもそうじゃったしの」
その声音に含まれるのは同情でも哀れみでもなく、ただ事実を優しく告げる。事実を、過去を受け入れているからこそ、柘榴は告げる。
「しかしお主、それだけ大事な約束を違えておらぬか?」
と。
「『見える』者がおらんようになってしまう恐怖は解る。それを信じたくない気持ちもな」
柘榴がゆっくりと歩み出る。一歩、二歩。
「しかし人はあちきらと違う。何百年も生きられぬ。それはお主も解っておろう」
『……うぅ』
柘榴の言葉に蜘蛛が唸るように答える。それは怯えや恐怖ではない。肯定だ。そして乗り越えた悲しみですら暴れさせようとする狂気を否定する意志だ。
ゆえに柘榴は再び歩み寄る。一歩、二歩と。
「『かの人』は言うたはずじゃ「悪いモノ」から守ってほしいと。そしてこうも言うたハズじゃ……「無理なく」と」
『ウゥ、あ゛ぁ゛ぁぁぁぁッ!!』
近寄ってくる柘榴に蜘蛛が絶叫する。同時に放たれるのは蜘蛛の糸。柘榴を絡め獲り、屠らんとする攻撃は蜘蛛の中にある狂気の最後のあがきであったかもしれない。
「無理をし、お主が悪いモノになってしまってどうするのじゃ」
それを慌てることなく、霊符で迎撃する柘榴。霊符に触れた蜘蛛の巣が燃え上がって消えていく。
『……!!』
蜘蛛が後ずさる。いや、それは『蜘蛛』が許さない。突如として地に伏せるように体を押し付ける蜘蛛。中で『蜘蛛』もまた奮起している。
「もしお主がいまだこの約束を守りたくば、喰らわず、捕らえて屠ればよい」
柘榴の手が蜘蛛の顔に触れる。
「いつかは衰え、眠りにつくことになるだろうが、自然のままに『かの人』のもとへと逝き、また出会うがよかろう」
『……』
蜘蛛の赤い瞳がわずかに揺れる。それは憧憬のようでもあり、逡巡のようでもあった。
(ま、それ以外にも、方法もないわけではないと思うがの)
そんな蜘蛛の様子を見守りながら柘榴は内心で思いを馳せる。
例えば、守護獣として信仰を集めて力にしたり、あるいは猟兵に覚醒してしまうなど。このままこの地を守り続ける術は無くはないだろう。
だが。
「とりあえず今は、お主の毒を抜かねばいかんな」
そう言って柘榴は蜘蛛の顔から手を放して、胸の前で印を結ぶ。直後、蜘蛛を中心にして四方に光が立つ。その中に姿を現わすのは四神の霊――すなわち、青龍、白虎、朱雀、玄武。柘榴の召喚【四神喚起】によって呼ばれた四神たちが優しく蜘蛛を囲い込む。
(水の気を持って土の毒気を抜く)
蜘蛛と四神の様子を見ながら柘榴が印を結び変える。素早く複雑に印を結び、唱えるは言霊。
「東方青竜に願い奉る……!」
そして青龍より放たれる清涼なる水流が蜘蛛を飲み込んでいく。
元は水蜘蛛である『水蜘蛛川姫』にとって水は生きるための力。それに飲み込まれたとて死ぬことはない。ならば死ぬのは何か? 蜘蛛の中にある異常――UDC怪物の力のみ。
青龍から放たれた水流が全て流れ切った後。
「おっと。派手にやりすぎたかの?」
その場に残っていたのは蹲るように地面に張り付いていた蜘蛛が1匹。
だけど、その身に残っているUDC怪物の力は微塵も無くて。
そこには単なる妖怪の『蜘蛛』が1匹、いるだけ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『彼の地には螢の光有り』
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POW : 一か所に留まってなんてもったいない。歩き回って、色んな景色を眺めながら。
SPD : 不意に気づいたよさげな場所。ここからなんて、どう? 手、貸そうか。
WIZ : ここは穴場。静かな場所で、物思いに耽りながらも悪くない。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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3章の状況説明がとても長くなっています。
すみません、2章のリプレイ結果を受けて、ストーリーの穴埋めを全て行った結果です。
最初の方は流し読みでも大丈夫ですが、『●優しい『約束』の、破り方』以降はご一読ください。
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●『あの人』の言葉
『そうだな……キミがもし僕に報いたいというなら』
『僕が戻るまでこの故郷を守って欲しい』
『ああいや。此処の人が自身の勝手で滅ぶのはいいんだが』
『この地は「悪いモノ」を呼びやすい』
『だから、「そういうモノ」から守って欲しい』
『キミが飽きるまででいい。戯れでいい。「もうやってられるか」と思うまででいい』
『無理なく、キミが死なない範囲でいい』
そんな言葉が……あの人の言葉が脳裏によぎる。走馬灯……とはこういう感じなのかも。
ああ、でも……もっと他にも思い出があったはずなのに。
『なるほど。その化け物を倒しに行くんですね。私、頑張りますっ!』
『いや。キミは頑張らなくていいよ』
『なんでですか?!』
『キミが頑張るといつもおかしなことになる。というか、走り出した猪のごとく目的を忘れるのはやめてくれ』
『うっ……』
『キミは怠ける程度で丁度いい。僕とレイだけでは隙を窺えない。囮になって適当に逃げててくれ』
『えー……』
『……どうせ最後は真正面から突っ込むだろうし』
『そそそ、そんなことありませんよっ!』
……最後は真正面から組み合って動きを止めていた気がする……。あれ? なんで? 最初は逃げていたのに……あ、そうか。動きがちょこまかしていたから殴って止めた方が早いって思ったんだ。
得意満面で振り返ったら、全力であきれ返ったあの人がいた。
『妖怪……古より生きるこの世非ざるモノ……どんな化け物かと思えば』
『え、私が見える……?』
『随分と愛らしい蜘蛛じゃないか』
『もしかして私、求婚されてますか?』
『……ただの世間知らずか……』
『あれぇ?』
喜怒哀楽。どんなものでもあの人から私に向けられた感情はとても素敵で豊かでお腹いっぱいになる。
『お願いだから蜘蛛。キミは後ろで待機。前に出るな』
『盾になるならレイより体の大きい私の方が最適だと思うのですがっ!』
『盾が真っ先に敵に突っ込むな』
『大きい盾なら当たると痛いと思うんですよ』
『なら、こちらからの攻撃を遮るな』
『おかしいですね……?』
色んなことを一緒にした。あの人だけじゃなくて使い魔としていたレイや他の子もたくさんいたけれど。皆と一緒に色んなことをたくさんしたのだ。
あの時にもらった気持ちを糧に私はずっと生きていけると信じていて……現に私は『今も』生きている。
ああ。そういえば私……約束守れたこと、ないな。
●覚醒しつつある、朧げな理性の中で
あの人との『約束』には……3つの内容があった。
ひとつは『あの人が戻るまで』
ひとつは『故郷を守って欲しい』
ひとつは『無理なく、私が死なない範囲で』
どれが欠けても……あの人との『約束』は守れない、守れていない。
私はいつも通りに『約束』を守っているようで……全然守れてなかった。いや、言われた通り、故郷は守り通したけども……こんなに『無理しちゃって』……。
そういえば……正気を失っていた時にあの人の幻を見た気がする。『約束』を思い出せって言われた気がする。
ゆっくり、ゆっくり胸の内で復唱する。
ああ……あの人はやっぱり優しい。
この『約束』は……最初から『破っていいよ』って。私に『生きろ』って言っていたんだ。
●蜘蛛との邂逅
「……んっ……」
脚を折りたたむようにして蹲っていた蜘蛛の口から吐息が零れる。それはまるで蕾が花開くように。ゆっくりと蜘蛛の体が起き上がる。その瞳は冷静を取り戻していて、落ち着いた様子で辺りを見渡す。
猟兵たちの攻撃によって蜘蛛の中に巣食っていたUDC怪物の力は全て排除できたようだ。その様子にほっとしながら猟兵たちは蜘蛛の姿を確認する。
逆に蜘蛛は自身をじっと見つめている猟兵たちを見て首を傾げる。
「もしかして……私が見えていますか?」
こくりと頷きを返す猟兵たちに目を見開く蜘蛛。
「きゃー! どうしましょう!? まずはあの人に伝えて……っていないんでした!!」
こう、なんていうか。推しに出会ったファンみたいな反応を示す蜘蛛。お忘れだろうか? 妖怪の姿が見える猟兵は彼ら彼女らに大人気なのだ。
そんなわけで簡単に自己紹介をかわす猟兵たちと蜘蛛。
「こほん。えーと、その猟兵さんたちはこんな山奥まで何用で?」
冷静(?)を取り戻した蜘蛛が襟(?)を正して猟兵の前に座り込む。敵意とか警戒とかは無い。単純に知りたいだけのようだ。
顔を見合わせた猟兵たちは頷きあって……ここに来た理由を、この地に訪れてからの戦いを蜘蛛に告げる。
「……」
その話を聞いて。蜘蛛は申し訳なさそうに一度目を伏せて、しかし再び顔をあげる。
「あなた方のおかげで、私はあの人との『約束』を破らずに済みました。ありがとう、本当にありがとうございます」
その瞳に喜びの涙を湛えて。蜘蛛は猟兵たちに礼を告げる。
●優しい『約束』の、破り方
黄昏時を過ぎて、夜の帳が落ちかけた頃。
正気に戻った蜘蛛に招かれて猟兵たちは蜘蛛の住処……というか、かの人の故郷の地へ足を踏み入れる。川には一応、橋があった。渡れるらしい。
川に囲まれたかつての里は廃墟と化していた。何処を見渡しても辺り一面、茂みに覆われている。下手すると新しく木が生えていた。
どう見ても『THE廃墟』って感じの建屋から何かが飛び出してくる。
思わず身構える猟兵たち……に対して、蜘蛛は微笑みを浮かべていた。距離を取った状態で蜘蛛と向かい合うように立ち止まったのは……ウサギ。
「私のことは見えてないはずなんですけどね」
何かを感じ取っているのか、色んな意味で『戻ってきた』蜘蛛の方をじっと見つめている。その様子は警戒ではなく、何か安堵したようにも見える。ちなみに猟兵たちにもまったく警戒を浮かべていない。
「数少ない、今のこの里の『住民』です」
てってってって、と蜘蛛が歩き出すと、ウサギもまた自分の住処へと戻っていく。
「自然の弱肉強食はもちろんありますけど、悪いモノは近寄らせませんでしたから。彼らには意外と良い住処になってるみたいですよ?」
人の住処だった建屋も上手く使えば絶好の隠れ家になるし、崩れた木材の下などは大きな獣を避ける避難所になる。ここは今、獣たちの楽園となっているのだという。
楽しそうに話しながら蜘蛛は自分の住処へと向かう。
「私の住処は川から引いた用水路の先にありまして」
これでも水蜘蛛である。水があると嬉しい。用水路の水をいったん溜め込む池の側を住処としているようだ。
「はふ。お水が美味しい」
住処に戻ってきたためか、ほっとした表情で蜘蛛が落ち着いて座り込む。体の大きさはあるが、見た目の雰囲気は『ちょこん』と座っている感じだ。
その様子はつい先ほどまでの狂気に囚われて暴れていた存在とは思えないほどに、おとなしくて愛らしい。
そんな蜘蛛の様子を見て、猟兵たちはふと気になった。蜘蛛が『これからどうするのか』と。
それをそのまま、問う。
「幽世に行こうと思います」
猟兵たちの問いに、優しい微笑みを浮かべたまま蜘蛛が答える。
「今回あなた方がいなければ、私が此処を蹂躙していたかもしれない。どんな事情であれ、『約束』を破るのは心苦しいです」
そう言って蜘蛛は目を伏せる。これからもこの地を守るとして……次は上手く行くとは限らないのだ。
「出来れば、あの人が戻ってくるまで頑張りたかったんですけどねー。私が頑張るとおかしなことになるって言われてますから」
何かを思い出したのか、『ふふっ』と笑って蜘蛛が笑顔を取り戻す。
だが蜘蛛の言葉に猟兵たちが反応する。
猟兵の誰かも言っていた、人はそんなに長く生きられない、と。そのことを告げるべきか否か、猟兵たちが顔を見合わせる。
「あ、安心してくださいね。あの人がもうこの世にいないことは知ってますよ?」
言葉を選びあぐねていた猟兵たちに対して、蜘蛛はけろっと告げる。
「っていうか、人って簡単に死んじゃいますし。それくらいは心得てます」
長い時間が経っていることは蜘蛛も認識している。その上で、話を続ける。
「それでも戻ってくる方法なんていくらでもあるじゃないですか。簡単なところで骨だけとか。夢渡りとかしてくるのかなーとか思ってましたけど、全然そんな機会はありませんでした、ちっ」
心底残念そうな舌打ちをする蜘蛛。どうやら期待していたらしい。しかし簡単には蜘蛛が喜ぶようなことはしないのもまたかの人らしくていい、と言う蜘蛛。
「あと、霊魂で戻ってこないのは、たぶんこの地の影響が悪い方向に働くのを恐れてですね」
『悪いモノ』を引き寄せるこの地。それが何か……超自然的な力であるなら。干渉されることで悪霊となる可能性だってある。
「そうなったら、此処を守るために私が殺さないといけないので……」
それを避けるためにその手段は取らなかったのだろう、と蜘蛛は言う。何と言っても彼の故郷なのだ、彼がこの地を一番よく知っている。
「そんなわけで、私の気持ちはあの人が戻ってくるまで何百年でも何千年でも待てるんですけど、残念ながら私の体が持ちそうにありません。此処で生き永らえるには……また『何か』を喰らわないといけないでしょう。それは……本末転倒ですから」
約束を守ろうとして約束を破る。それでは意味が無いのだ、と蜘蛛は今回のことで身をもって思い知った。
だから、少しばかり寂し気でも精一杯微笑む。
「ですから、諦めます。諦めて、生きます。それがあの人の望みだと気付きましたから」
これが、優しい『約束』の、破り(まもり)方だと……気付いたから。
●幽世へ
「出来れば、幽世へ行くための準備を手伝ってほしいんです」
改めて猟兵たちと向かい合った蜘蛛は、申し訳なさそうに猟兵たちへ助けを求める。
どういうことかというと。
この世界――UDCアースとカクリヨファンタズムは隣り合わせという意味では繋がっているが、世界そのものは隔絶されている。
「なので、幽世に向かうには『宴』が必要なんです」
それは世界を渡るための儀式。ある意味、この世からあの世への『お見送り』と言った方がいいかもしれない。
「いえ、死ぬわけではないんですが。それでも『そういう儀式』は『そういう力』を持ちますから」
だからUDCアースからカクリヨファンタズムへ渡るためには、送ってもらう必要があるのだ。
その儀式の送り火は……蛍が担う。よく見ればちらほらと蛍が飛び始めていた。
「もう少ししたら、辺り一面が蛍の光で満たされるんですよ! いっぱいいっぱい集まってくるんです!」
川に囲まれていることが影響しているかもしれない。今のこの地は、獣たちの楽園であると同時に蛍の里でもあった。
その凄さを我が事のように猟兵たちへアピールしまくる蜘蛛。ひと通り話し終えて満足したのか、ふぅ、とひと息ついてから蜘蛛が夜闇の空へと手を伸ばす。
「空まで伸びる絨毯のような蛍の光を送り火として。あの人との『約束』を糧とすれば。私は幽世へ渡れます」
糧と言っても消費するわけではない。そこに込められた想いを元に蜘蛛がこの地を蹴って飛び上がるだけ。
「でもその前に幽世を知っておかないと迷子になりそうって言うか、私だと逆奇跡が起こって辿り着けない可能性があるので」
恥ずかしそうに蜘蛛が笑う。
「教えてくれませんか。幽世のこと」
そう言って蜘蛛が猟兵たちに向き直る。
「皆さんは幽世にいったこともあるんですよね? どんな場所なのか教えて欲しいんです」
思い出を力にこの地を旅立ち、蛍の光を道しるべとして往く。後は目的地……着地する場所を知るだけだ。その3つが揃えば迷うことなど無い。
「私が無事に幽世へ渡るためにも、どうかよろしくお願いします」
これが蜘蛛が求める『宴』なのだ。
※シナリオ補足※
長くて本当にすみません。やっとシナリオ補足に辿り着きました(汗)
(戦闘は2章で完了していますので、各種ユーベルコードの効果は一度切れています)
この章では蜘蛛がカクリヨファンタズムへ渡るための儀式=『宴』を手伝っていただきたいと思います。
やることはシンプル。
蛍を見ながらカクリヨファンタズムのことを教えてあげてください。嘘を言う必要はありません。誰かから聞いた話でもオッケーです。そして主観的な話で問題ありません(例:竜神親分の碎輝がカッコ良すぎて私の人生変わった、とか)
そういった色んなカクリヨファンタズムの情報を聞いて、蜘蛛がカクリヨファンタズムを認識することで、蜘蛛の道行きが安定します。
とはいえ難しく考えずに。カクリヨファンタズムのことをはじめとして、とにかく楽しく蜘蛛とおしゃべりしてくだされば大丈夫です。食べ物飲み物持ち込みオッケー。女子会しても問題なし。時間は無いように見えて、十二分にありますご安心ください。
何はともあれ、プレイングには必ず蜘蛛とお話しする内容をご記入くださいな。
お話が終わって、『蛍が空へと一斉に飛び立つ』と、それを送り火として蜘蛛がカクリヨファンタズムに渡ります。
そこまで見届けてもいいですし、先に帰ってもオッケーです。
ちなみに、ですが。
蜘蛛がUDC怪物化から解放されて(無理をしてない状態になった)、里を蹂躙する可能性が無くなった(里を守り通した)今、『あの人』が帰ってくると『約束』が完璧に守られたことになります。そんな『奇跡』が起こるかどうかは、皆さん次第、といったところでしょうか。
●幕間の物語6 ~ 『約束』までの距離 ~
~猟兵たちと蜘蛛が話している頃~
日が暮れた。
さて、比較的視界の開けた……というか、付近で一番大きな木の上に登って視界を確保した。これで蛍を見落とすことはないだろ。
何の習性なのか、蛍たちは夜が更けてきて特定の時刻になると、空へと一斉に飛び立つらしい。そのタイミングが里の位置と方角を特定するチャンスだ。それさえわかってしまえば、後の移動は明日でも問題ないだろう。
てか、何が悲しゅうて夜の森を踏破せねばならんのだ。そんな自殺行為はしません。
まぁ誰かが案内してくれるとか里までの道が綺麗に開けてるとかならいくけどさ。楽だし安全だし。
でもまぁそんなこと無いだろうし、それならこのまま木の上で寝た方が安全だし。確実にコレを里まで届けないと、俺の一族が大変なことになりかねない。
さて、蛍が飛び立つまで夕飯でも食べますかね。
========
リプレイコントロールのために、大成功も成功で提出しています。ご了承ください。
========
上野・修介
※アド絡み歓迎
「さて、宴の準備か」
取り敢えず飲食物が必要だ。
進捗報告も兼ねて緋薙さんとUDC組織に連絡。
蜘蛛さんや他の猟兵からリクエストを聞き組織に用意を依頼。
「まだこの土地の引き寄せる力が残ってますので私の方から受け取りに行きます。……はい、余り時間がないのでグリモアベース経由で。……ええ、ではお手数ですがよろしくお願いします」
あ、費用は依頼の範疇なので経費処理で。
自身は準備に徹しカクリヨに関する話は、依頼含め訪れた経験が少ないので他の猟兵に任せる。
(正直『戦争時に月と火星と金星の意味のない土地購入金額を計算してJKみたいな親分さんをデコピンした』ぐらいしか印象がない。……うん、混乱するな)
雪・兼光
カクリヨがどんな所か、か
そうだな今一度、振り返ってみるのも悪くねぇなぁ
先ず石抱きの井戸だな
石を抱えて飛び込むとアースに行けるという井戸だ
真実かどうかはわからないらしいがな
他には妖怪団地には「団地闘法」を操る団地武装団が居たり…
夜になると何処からか屋台が出現したり…
駄菓子兵器って言うのがあるから駄菓子屋の場所は把握しておいた方がいいぞ最初驚いたが、有事の武器庫らしい
一年中真夜中で満月のすすき野が幾つもあるぞ、そういう時にお勧め
東方親分の山本五郎左衛門氏に挨拶はした方が良いかもな
後、写真いいかい?
写らなくても蛍を写したくてさ
都市部だと、川は汚れきって住めないし、見れないんだ、蛍
やっぱ例外はなしか
●
蜘蛛がカクリヨファンタズムに渡ることが決まって。猟兵たちと蜘蛛は慌ただしく動き出した。
まず蜘蛛は身の回りの整理を。
「えーと、これはこうして、あれはここに埋めて、っと」
とはいえ、カクリヨファンタズムに持っていける物も少ないし、そもそも自然の中で生きる蜘蛛なので『物』はほぼ無い。小さな風呂敷の上に一応、申し訳程度に此方で使っていたものを並べていっている。
そんな様子を見守りながら、猟兵たちもまた動き出している。
「さて、宴の準備か」
そう言って上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が携帯電話を取り出す。
『はいはーい』
連絡先はグリモア猟兵。森の外辺りで暇……じゃなかった待機しているグリモア猟兵に修介は進捗報告も兼ねて連絡を入れたのだ。
(取り敢えず飲食物が必要だ)
仮にこれが儀式だとしても、形というものも大切だろう。あるのとないのとでは全然違う。
ちなみに取り寄せるにあたって蜘蛛にもリクエストを聞いてみた。
「えっ! ほんとですか!? 甘味! 甘味がいいです!」
聞けば大昔にあの人から分けてもらった甘味が美味しかったらしい。なお、300年前。
「当世の甘味がどんなものなのか、知りたいです!! あ、あと出来たら虫とか蛙とか……あっはい、自分で捕まえてきます」
何か言われる前に引き下がる蜘蛛。そういうタイミングは身に沁みついているらしい。
そんなわけで蜘蛛のためにとびっきりの甘味を、と連絡を入れる修介。後は他の猟兵たちが飲み食いできるものも合わせてリクエスト。これを大至急、UDC組織に準備をしてもらう。
そして。
「まだこの土地の引き寄せる力が残ってますので私の方から受け取りに行きます。……はい、余り時間がないのでグリモアベース経由で。……ええ、ではお手数ですがよろしくお願いします」
グリモアの転送とグリモアベースを使いこなす、出来た猟兵である。その分、(世界を越える制限で)あまり多くのものは持ち込めないが、距離と時間を最小限にするにはこれしかないだろう。
「あ、費用は依頼の範疇なので経費処理で」
『りょーか~い。準備できたら連絡するわね』
通話を切る修介。すぐに連絡があるだろう。それまでは待機と、ひと息つく。視線の先にあるのは、雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)が蜘蛛にカクリヨファンタズムのことを話している、のんびりとした風景であった。
●
宴の準備に修介が走り回っている頃。
兼光は蜘蛛の元へ足を運んだ。もちろん蜘蛛のリクエスト――カクリヨファンタズムがどんなところかを伝えるためである。
兼光の気配に気づいた蜘蛛が振り返る。兼光の姿を認めてちょっと楽し気な蜘蛛。
ちょこんと座った蜘蛛を相手に兼光が話し出す。
「カクリヨがどんな所か、か」
「はい」
「そうだな今一度、振り返ってみるのも悪くねぇなぁ」
「わーい」
犬ならしっぽをぱたぱたさせているだろうテンションである。
そんな様子の蜘蛛にも動揺することなく、兼光はゆっくりと話し出す。眼光鋭い風貌であるが、実は空想好きという兼光、こういう話は得意なのかもしれない。
「先ず石抱きの井戸だな」
カクリヨファンタズムの果て、あるいはUDCアースとの境目にあるともいえる不思議な井戸。
「石を抱えて飛び込むとUDCアースに行けるという井戸だ。真実かどうかはわからないらしいがな」
「おお……やっぱり此方との繋がりは切りたくないんですかね?」
そんな感想を抱く蜘蛛に、兼光はカクリヨファンタズムのことを教えていく。
「他には妖怪団地には『団地闘法』を操る団地武装団が居たり……」
「そもそも『団地闘法』ってなんですか?」
「夜になると何処からか屋台が出現したり……」
「それは単なるお祭りではなく??」
「駄菓子兵器って言うのがあるから駄菓子屋の場所は把握しておいた方がいいぞ。最初驚いたが、有事の武器庫らしい」
「この私がツッコミしか出来ないなんて……幽世恐ろしいところです……」
兼光の言葉に、目を白黒させながら蜘蛛が感想を述べていく。まともに話を聞いていると常識とは……になってしまうが、そこは世間知らずの蜘蛛、聞いた情報を綺麗に並べていくだけでカクリヨファンタズムの理解へと繋がる。
「一年中真夜中で満月のすすき野が幾つもあるぞ、そういう時にお勧め」
「あ、とてもいいですねそこ。ふむふむ」
メモなどはないので心の中に情報を刻んでいく蜘蛛。
「東方親分の山本五郎左衛門氏に挨拶はした方が良いかもな」
「親分さんがいるんですか。なんというか、昔のこの国みたいですね」
ようやく聞き慣れた単語が出てきてほっとしたらしい。はふ、と蜘蛛が満足そうにひと息をつく。
「後、写真いいかい?」
「はい?」
そういう兼光が手元には『USBカメラ』がある。それをジーっと見つつ首を傾げる蜘蛛。そんな蜘蛛を見て説明をする兼光。
「ああ。なんか聞いたことがあります。確か……姿が残るけど魂が吸われる? とか?」
「……」
「あれ、違いましたっけ?」
まぁ蜘蛛のテクノロジー知識、明治時代だからね(その辺まではまだ普通だったのだろう)
さておき。
「写らなくても蛍を写したくてさ」
兼光のお目当ては蛍らしい。
夜の帳が降りて、ちらほらと空を舞う蛍が鮮明に浮かび上がるようになってきた。
「蛍は写るんじゃないでしょうか? あれ、ウサギと一緒で天然ものですし。というか夜ですけど写るんですか?」
ちなみに蜘蛛は写らんです。妖怪だし。
試しにぱしゃりと一枚。撮った写真を蜘蛛に見せれば歓声があがる。
「都市部だと、川は汚れきって住めないし、見れないんだ、蛍」
「そうなんですねー」
そう言いながら蜘蛛は空を見上げる。
「この世でも人が住んでいる里はこんな森の奥とは全然違うんですねー」
それはちょっと名残惜しそうにも聞こえたが。妖怪である蜘蛛はそんな地で生きていくことは出来ない。だから本当にちょっと気になっただけだろう。
そんな蜘蛛から視線を逸らして。兼光が蛍を撮る。
「うーん。ちょっとぼやけてますか? 夜闇に光だとちらつくんですかね?」
光源を絞ったり、夜景モードを試したりと色々と何度か試して。
「お……」
「あ。いい感じですね。まだちょっとだけぼやけてますけど」
夜空に舞う蛍の光景をカメラに収める兼光であった。
●
そんなこんなをしていた兼光と蜘蛛の元に、修介が荷物を抱えて戻ってきた。抱えている荷物はもちろん先ほどグリモア猟兵にお願いした宴用の飲食物。
「甘味!!」
目をキラキラさせながら突撃(寸止めしました)してくる蜘蛛。
「あ、あ、あ……当世の甘味はこんなに色とりどりなんですか!?」
出てきたのはパフェである。どうやって持ち込んだのかとは気にしないで欲しい。その他にも有名どころのスイーツが並んでいる。
どうやって手をつけたらいいのかわからない感じで、手をわきわきしている蜘蛛。
その様子を見つつ、兼光が修介に声をかける。
「おい、アンタも幽世のことを」
「いえ、俺は……やめておきます」
兼光の声に一瞬逡巡しつつも、修介はそれを辞退する。彼自身、依頼を含めて訪れた経験が少なく、あまり話せる内容がないと思ったのだ。
「えー!! 話してもらえないんですか?!」
そんな修介の言葉を耳ざとく聞きつけた蜘蛛がすごい勢いで振り返る。そこにあるのは残念そうな蜘蛛の顔。
「……」
その顔を見て修介が一瞬『うっ』となる。とても悲しそうな顔だったからだ。ゆえに修介は反射的にカクリヨファンタズムのことを思い出す。
脳裏を巡ったのは、先の戦争時。それをどうにかまとめる。
『月と火星と金星の意味のない土地購入金額を計算してJKみたいな親分さんをデコピンした』
「……うん、混乱するな」
「えっ」
「申し訳ないがやはり無しで」
「えーーっ!!」
「それは気になるだろ……」
そんな感じで修介と兼光と蜘蛛の、宴の準備は進んでいくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御魂・神治
おっ、何や、あっちの世界行く気になったんか?
ワイは儀式には疎いけど、実家は神社やから、それっぽい事は。
...あ、儀式ってそういう意味やないんか、話すればええんか。
天将『パソコン前のチャットツールに張り付いて、ネットの大きなお友達と酒と肴でどんちゃん騒ぎの事ですか』
ちゃうわ!それもある意味宴やけど...。
幽世か?
ワイもちょっとだけ顔だした事あるけどな、あそこは毎日が姉さん事件ですみたいな所やで。
まぁ、その事件ってのもしょーもない理由でトンチキ塗れなんやけどな。
古今東西の妖怪や精霊、何なら神さんもおるなんでもありの世界や。
もしかしたら、里が栄えていた頃とそっくりな人里もあったりしてな?
●
夜の帳が降りて辺りを闇が支配する。そんな中を蛍がたくさん飛び交って、辺りを仄かに照らし出す。
そんな天然の照明の下で猟兵たちは『宴』の準備を整えていく。食べ物飲み物が揃って、蜘蛛を囲んで話す場が出来れば、後必要なのはお供え――カクリヨファンタズムの話だけ。
「おっ、何や、あっちの世界行く気になったんか?」
「はい」
『もう一回言うんかーい』って感じの御魂・神治(除霊(物理)・f28925)の言葉にも蜘蛛は朗らかに言葉を返す。
「ワイは儀式には疎いけど、実家は神社やから、それっぽい事は」
「おおー。じゃあいっぱい幽世のこと知ってるんですね?」
「……あ、儀式ってそういう意味やないんか、話すればええんか」
儀式っちゃー儀式なんだが、様式がゆるゆると言いますか。宴なら何でもいいと言いますか。
『パソコン前のチャットツールに張り付いて、ネットの大きなお友達と酒と肴でどんちゃん騒ぎの事ですか』
神治の横に浮いていた(いつでも動ける(?)ようにスタンバってたともいう)天将がさらりと口を挟めば。
「ちゃうわ! それもある意味宴やけど……」
すかさずツッコミを入れる神治。サポートAIっていうか、漫才コンビですよね?
さてさて。
ちょこんと座って神治の話を聞く態勢の蜘蛛の赤い瞳がきらきらと期待に輝いている。
「幽世か?」
「幽世です」
神治と天将の漫才を見ていて楽しそうだったのか、今度は蜘蛛がさくっと乗ってきた。これは早く本題にいかないとまた逸れていきそうでマズイ。
「ワイもちょっとだけ顔だした事あるけどな、あそこは毎日が姉さん事件ですみたいな所やで」
「……姉さん事件です、ってなんですか?」
「なん……やて……」
まさかのボケを説明しないといけないパターン。一番嬉しくないやつである。だが歴戦(?)の神治はその辺をぼかしつつ、軽やかに話題を転換する。
「まぁ、その事件ってのもしょーもない理由でトンチキ塗れなんやけどな」
「あー……妖怪ってしょーもないというかこだわりがすごいっていうかツッコミどころたくさんありますよねー」
『…………』
むしろ『あなたがツッコミどころ満載なのですが』とか『妖怪ってそういう感じしかいないんですか』とか言わないところが天将の出来るところである。なお、神治も流した。気付かない方が幸せなこともあるんですよ。
「古今東西の妖怪や精霊、何なら神さんもおるなんでもありの世界や」
「え? 神様ですか?」
「せや。竜神親分とかおるで」
「へー……妖怪だけじゃないんですねーびっくり」
新たに知れた、昔の仲間たちが住む世界のことに目をくりくりさせながら、蜘蛛はふむふむと頷きを返す。
「ありがとうございます」
話を聞き終えた蜘蛛がシンジとテンショウにお礼を言う。
「もしかしたら、里が栄えていた頃とそっくりな人里もあったりしてな?」
「ふふ。そんな場所があったら嬉しいですね」
神治の冗談のような話に、蜘蛛は思わず微苦笑を返すのであった。
成功
🔵🔵🔴
瀬堀・秋沙
そうねー、なんだかんだで戻って来ないヒトって多いし、カクリヨにいない人も多いのよねー。
ともだちだと思ってたのは私だけかー!…なーんて、ね。
私のトコの船員さんたちや船みたいに、迷うよりかは余程良いのよ。
カクリヨにゃ?そだにゃー、割とみんなフリーダムにゃ?
もの静かな子たちも当然いるけど、騒げ、踊れ、驚かせ!あとトレンド!みたいにゃ?
私個人だと、港によくいるからにゃー、船幽霊たちの知り合いが多いかにゃ?
ヤツら、船に水入れるのがライフワークだから、濱江丸に水かけに来るのよねー。灌仏会かっての!
ああ、そうそう。貴女にお届け物があるみたいよ?
濱江丸!
ええ、本当に…約束の生む輝きは、眩しくて、素敵ね。
●
蛍舞う、今は無き里の跡地で。蜘蛛をカクリヨファンタズムへと送る『宴』はゆっくりと、しかししっかりと進んでいた。
「そうねー、なんだかんだで戻って来ないヒトって多いし、カクリヨにいない人も多いのよねー」
「ほへー、そうなんですかー」
今、宴の中心にいるのは件の蜘蛛と瀬堀・秋沙(都の果ての化け猫船長・f29290)である。二人とも女性の妖怪。そして大切な人がいたという共通点を持つ二人。そんな二人が和気あいあいとおしゃべりしている。
ぶっちゃけ女子会である。いいぞーもっとやれー。
「カクリヨにゃ? そだにゃー、割とみんなフリーダムにゃ?」
そんな秋沙の言葉から始まったおしゃべりは止まるところを知らない。というか、その言葉、秋沙さん本人にクリティカルしてませんかね??
それはしっかりと横に置きながら、秋沙がお話を続ける。
「もの静かな子たちも当然いるけど、騒げ、踊れ、驚かせ!」
「ほうほう」
カクリヨファンタズムの賑やかな様子を伝える秋沙に蜘蛛はこくんこくん頷いていく。
「あとトレンド! みたいにゃ?」
「はい??」
でもやっぱり新し親分のことは通じなかった。色々と新しすぎるねんあの親分。300年の間に発生してない?? もしくは回りすぎて新しすぎない?
そんな一般論も楽し気に、今度は秋沙自身の身の回りへ話が移っていく。
「私個人だと、港によくいるからにゃー、船幽霊たちの知り合いが多いかにゃ?」
秋沙さん、化け猫船長なのでよく船旅してます。配下も水兵さんとか船員さんの幽霊だし。やっぱり寄ってくるんですかね?
「ヤツら、船に水入れるのがライフワークだから、濱江丸に水かけに来るのよねー。灌仏会かっての!」
「楽しそうです! 向こうに行ったら私もやりたいです!!」
「話聞いてた???」
思わず真顔で蜘蛛にツッコむ秋沙。大丈夫、そんなフリーダムさが妖怪にというか、カクリヨファンタズムには必要なのだ。なお、本気で行きたそうなので秋沙さんはしっかり釘を刺しておくといい。
楽し気な笑い声がひと通り響いて……秋沙が伸びをしながら空を見上げてぽつりと呟く。
「ともだちだと思ってたのは私だけかー! ……なーんて、ね」
冗談っぽく告げる秋沙の瞳はしかし真剣で。
何故なら。二人とも約束を胸に秘める妖怪だから。二人は『約束』を糧に成り立っているモノたちだから。
違いは……ほんの少し。約束の行く末。でも。
「私のトコの船員さんたちや船みたいに、迷うよりかは余程良いのよ」
「……いえ。私は貴女のほうが羨ましいですよ?」
秋沙の言葉を静かに聞いていた蜘蛛が、秋沙にそう告げる。びっくりした表情で秋沙が蜘蛛を見れば、蜘蛛の赤い瞳にはすこしばかり寂しげな気配。
「名前。あるでしょう?」
蜘蛛が告げる。貴女はどういう経緯かわからないけれども、大切な人から名前をもらったのでしょう、と。
「名前は……存在を、魂を縛ります。良いか悪いかは判断がつかないけれども……私は欲しいって言ったんですけどね?」
あの人の生態……じゃなかった職業柄、名前を与えるということは使役するということだ。ゆえにかの人は容易に名前を与えることをしなかった。
「蜘蛛は通り名。もちろん私もあの人の『諱』知りませんし」
呼びかけるための通り名でしか呼び合えない。
「それでも私は楽しくて嬉しかったですけど、やっぱりちょっと寂しいなって思うこともありました」
そう言って蜘蛛もまた空を見上げる。そこにはかつて『一緒に』見上げた蛍の舞う夜空がある。
「名前も知らないんじゃ送れませんし。あはは、とっても困ってました」
もしかしたら……あの人が死んだ後は『約束』を守ることしか蜘蛛は弔いができなかったのかもしれない。
「貴女たちが来てくれて本当に感謝です」
蜘蛛が秋沙を真正面から見つめて、そう言う。
そんな蜘蛛の視線を秋沙も正面から受け止めて……照れたように視線を逸らす。
「ああ、そうそう。貴女にお届け物があるみたいよ?」
話を逸らすように、しかしどうしても伝えたかった言葉を秋沙は紡ぎ出す。
そんな秋沙の言葉に反応してか、森の方からゆっくりと一隻の船が……龍江丸級貨物幽霊船が姿を現わす。その姿は透き通るような幽霊だけど、夜空には美しく見えて。
「濱江丸!」
秋沙が愛船の名前を呼べば、少し速度を上げてこちらに向かってくる濱江丸。その甲板に乗っているのは……。
その後。
蜘蛛が『受け取る』一部始終を見届けた秋沙は口元を緩ませながら呟く。
「ええ、本当に……約束の生む輝きは、眩しくて、素敵ね」
その言葉が自分自身にも当てはまっていることには気付いているのか気付いていないのか。そんな様子の魔女にして化け猫船長は蛍舞う夜空を楽し気に見上げるのであった。
成功
🔵🔵🔴
鈍・小太刀
※アドリブ歓迎
お菓子持参で宴会参加
お腹に付くとか言わないの
幽世がどんな所か?
そうねあそこは
いつだって懐かしさに溢れてる
思い出食堂って小さな食堂があってね
そこのケーキか絶品でさ
思い出の味っていうのかな
川姫にはどんな料理が出てくるんだろう
ふふ、ちょっと興味あるかも
で、あの人のどんな所が好きなの?
沢山話して、いよいよ核心へGO!
素敵な思い出は
これからもきっと彼女を支える糧になるから
青年が来ないなら呼びに行く
渡したいものがあるんでしょ?
ならさっさと来なさいよ
宴会はとっくの昔に始まってる
今度こそただいま、言うんでしょ?(笑顔
(必要に応じて勿忘草の幻影で後押しも
最後まで見守るよ
どうか元気で
いってらっしゃい
●
蜘蛛をカクリヨファンタズムへと送る『宴』は滞りなく進んでいく。猟兵たちの話を聞いて蜘蛛の中に『幽世』という場所が形成されていく。それは蜘蛛が自らの居場所を作っていく作業だ。
「幽世がどんな所か? そうね……」
お菓子持参で蜘蛛の前に座り込んだ鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)は人差し指を口元に当てつつ悩みつつ、言葉を選んでいた。ちなみに持ち込んだお菓子は蜘蛛が珍しそうに眺めてから、あむあむ食べていた。甘味大好き蜘蛛である。これで小太刀のお腹に付く心配は少しは減っただろうか。
「あそこは、いつだって懐かしさに溢れてる」
「ふむふむ」
そういう小太刀の瞳が優しく揺れて、蜘蛛は興味深そうにその話を聞いている。
「思い出食堂って小さな食堂があってね。そこのケーキか絶品でさ」
以前そこで食べたキャロットケーキを思い出す小太刀。
「思い出の味っていうのかな」
その時の様子とそれに連なる思い出を思い出して、小太刀はふふっと楽しそうに笑う。
「貴女にはどんな料理が出てくるんだろう。ふふ、ちょっと興味あるかも」
「思い出の食べ物が出てくるのなら……うーん、やっぱりあの甘味でしょうか」
大昔、まだまだ砂糖が貴重と言われていた頃。都ならともかくこんな山奥にそんな甘味が届くことなどほぼなく。ましてや彼女は蜘蛛だ。
「どこかの依頼のお土産にあの人がもらってきてくれたんですよね。砂糖菓子。あれ、とても美味しくて」
詳しく聞けばどうやら落雁っぽい? 本来、肉食の蜘蛛が甘味好きとかさすが妖怪はフリーダムだぜ。
だが小太刀は我が意を得たりと言わんばかりにずずいと踏み込む。そう、『あの人』という言葉が出たからだ。むしろここを狙っていたというべきか。曰く、『いよいよ核心へGO!』って感じである。
「で、あの人のどんな所が好きなの?」
「へ?」
純粋に唐突な話題転換についていけなかったっぽい。何せ蜘蛛の頭の中は最初に知った甘味からさっき食べたパフェまで、これまで経験したあらゆる甘味に占められていたのだから。
「好き、好き……容赦ないところでしょうかね?」
「……ドM?」
「はい?」
思わず出た小太刀のツッコミに再び首を傾げる。でも小太刀はコホンと咳払いしたので、とりあえず横に置いておいて話を進める。
「いや、別に冷たい扱いが好きってことではなくて。私を人と一緒のように扱ってくれたのが嬉しかったというか。その分、言い分も要求も容赦ないんですけどね」
はふ、と微苦笑する蜘蛛。
「ほら、私って妖怪じゃないですか。普通、怖がると思うんですよね」
そんな蜘蛛はこの里の川が生まれた場所であるが、人知れず過ごしていた。姿が見えないのだ、ちょっかいさえかけなければバレることもない。
「そんな私を、他の誰も姿のみえない妖怪を村の至近距離で発見した……とか普通ビックリすると思うんですけど、あの人はこっちがびっくりするくらい冷静でした」
ちなみに蜘蛛の経験上、自身を視認できたのは|ひとり《あの人》だけ。いや、近くに遊びに来た妖怪たちはお互い見えていたけれども。人に見られたのはあの人が初めてなのだ。
「こんな感じの私ですが、一応強いんですよ? たぶんあの頃でも戦えばあの人の半身くらいは食い千切ってたと思うんですが」
妖怪を視認出来て、その強さが見えたなら。普通は恐れるはずだ、この世非ざるモノがいるということと相まって。その恐れこそが妖怪の糧なのはさておき。
「ぜんっぜん、普通でした。おっと珍しい虫がいるぞ的な雰囲気でした」
それで言葉を交わして……速攻であきれ返られた。今思い出しても何が原因かはわからないという。
「そんな感じで容赦ないんですけど、分け隔ても無いんですよ。何に対しても。そういう扱いが心地よかったというか安心したというか」
だから一緒にいられたのだ。妖怪と人が。お互いの名前を知らないままでも友として過ごせたのだ。
「私は……此処に居て、此処が居場所でいいんだなって思いました」
だから……此処を離れるという選択が取れなかった、ともいう。
「そして今に至るっていう感じです」
ふふ、と微苦笑する蜘蛛。
そんな蜘蛛の話を聞き手に回って静かに聞いていた小太刀は微笑み、ゆっくり頷きを返す。
――素敵な思い出はこれからもきっと彼女を支える糧になるから
彼女の中にある思い出は色褪せることは無い。
だから小太刀がやることはあとひとつ。
「あれ? お帰りですか?」
立ち上がった小太刀に蜘蛛が残念そうな声をあげる。
「大丈夫。最後まで見守るよ」
少しそこまで。用事を済ませてくるだけだから。
成功
🔵🔵🔴
●幕間の物語7 ~ それは青天の霹靂のように ~
~猟兵たちと蜘蛛が『宴』をしている最中~
いや、よくわからんのだが??
木の上でのんびり蛍を探していたら、なんか船が来た。
いやおかしいまて。船は空を飛ばない。これは明らかにUDC案件……と思ったら猟兵さんかよ!! あれか、ユーベルコードってやつか。それなら納得できるわ。
さて、さっきから船に乗ってきた猟兵さんに『渡したいものがあるんでしょ?』とか『ならさっさと来なさいよ』とか言われているのだが、はて?
なぁ、レイ? 確かに俺はこのご先祖様の手紙を故郷まで届けに来たけど、ご先祖様の故郷って人いないよな? 受け取る相手っていないと思うんだが。
宴……ってのもよくわからないが、まぁご先祖様が帰りたいのは事実か。
まぁよくわからんけど、猟兵さんの道案内なら安心か。
ならいくか、レイ。お前、本当に何も喋らないし動かないな。
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●幕間の物語8 ~ それはあり得なかった邂逅 ~
~猟兵たちと蜘蛛が『宴』をしている最中~
で、来たわけだが?
確かに蛍がすごい。感覚的な座標位置も間違ってないし、どうにか残っている建物というかオブジェクトというか、それもご先祖様の手紙にあった通りだ。たぶんここがご先祖様の故郷だ。
で。猟兵さんたちがたくさんいるのは(理由はわからんが)いいんだが……何してんだあの人ら? 食べ物飲み物がある以上は宴なんだろうけど……。
なんで、何もない空間を囲んでるんだ?? なんかいるのかそこに? 全然わからんぞ?
なぁレイ……っておおおいっ?! 勝手にご先祖様の手紙持っていくな!!
ちょまて待ていっ! あっ、嘘おおおおおおおお!? 消えたあああああ?! その何もない空間、異次元とかですかもしかして?!
え、これ大丈夫なの? ミッションクリアなの? ここまで来て任務失敗とか目も当てられないんだけど!?
あの、レイさん? レイさぁぁぁぁんっ!! 答えて、ねえ答えて!!
ちょおまっ力強っ?! 俺を抱えて飛べるなら最初からそうしろよおおおおおおおお!!!
無理やりこの場から排除しようとしてんじゃねぇよおおおおお!!
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●やっと言えた言葉 ~ 今を生きる蜘蛛の想い ~
あ、えーと……絶叫しながら飛んでいきましたけど?
レイがいるなら安心ですかね? というかあの子、あの人がいなくなってもあんなに力があるなんて……やっぱり『名前』付きの秘蔵っ子は実力が違いますねー。もしかすると血筋に憑りつきましたか?
はふ。
ちょっとびっくりしました。というか、ここまで近づかないと『気配』に気付かないなんて。私、思ったより力が落ちているんですね。
猟兵さんの力で呼び出された……あれは船の幽霊でしょうか。それに乗ってきたのが妖怪とか幽霊ならまだしも、人間を乗せてくるなんて……それもあの人に似た。
ああ。でもやっぱり私のことは見えてなかったですね。里の人も私が見えたことないですし。血筋の力でないのなら……やっぱりあの人が稀有な存在だったのかも。
それでも……見知った顔がいるって幸せですね。こんなに長い時を越えて、また会えるとは思っていませんでした。
ふふ、相変わらず何考えるかわからない顔をしてましたが元気そうでした……というのは、既に霊体であるレイに対してはおかしいでしょうか?
あの子話せないから雰囲気から察するしか無いんですけど、ようやく肩の荷が下りたって顔してました。そういえばいつも私の尻ぬぐいはあの子がしてましたねー。いや、今回は不可抗力ですよ不可抗力!! そもそもあの人が別の手段を取れば良かったわけで。
あの子が手ずから持ってきた、ということはこれはあの人からの手紙なのでしょう。何せ、封にあの人の髪の毛と私の蜘蛛の糸が使われている。こんなことが出来るのはあの人しかいません。であれば……私に宛てた手紙ですね。
ははーん。手紙の内容を他の人に見られたら恥ずかしいというわけですか。だからってここまで強力な封をするとは……相変わらず全力を尽くすところを間違っていませんかね??
何ですか? 私が此処にいなかったら自然に帰すつもりでした?? 紙だって自然ですものね?? もしくは私が受け取っても中身が見れないようにしましたか???
ふふふ、侮ってもらっては困ります。これでも私は力のある妖怪なのです。この程度の封など一瞬で……あれ? ……あれぇ? どうやって外すんでしたっけこれ? 長いことしてないからやり方忘れましたねうーん。
まぁいいか。中身は後でゆっくり見るとしましょう。
それよりも…………やっと帰ってきましたね。
「おかえりなさい」
やっと……言うことができました。
弓削・柘榴
カクリヨに渡るか。ならばなにも焦ることはないな。
あそこなら、お主が『あの人』のことを忘れん限り生きられるからの。
そこは心配することはないじゃろうしな。
のんびり過ごし力が回復すれば、ここに顔を出せるようになるかもしれんし、
猟兵に覚醒できれば、またこの地を守り、安住することもできよう。
だが、猟兵への覚醒方法まではあちきにもわからんのじゃ。そこ許せよ。
さてそうなると、やはり約束は守りたいところじゃな。
【御霊降ろし】で式に使うヒトガタに『あの人』の霊を降ろしてみようかの。
お主の想いの強さなら、呼べるじゃろう。
約束は守られておるが……なんなら式のままとどまるか?
と『あの人』に笑いながら言ってみるかの。
●
入れ代わり立ち代わり。蜘蛛を囲みながら猟兵たちのお話は続く。それは『宴』が順調に進んでいることを意味する。
輪の中心にいる蜘蛛はいろんな話が聞けてどことなく楽し気だ。
「カクリヨに渡るか。ならばなにも焦ることはないな」
「と言いますと?」
弓削・柘榴(月読さんちの猫又さん・f28110)の言葉に蜘蛛がこてんと首を傾げる。
「あそこなら、お主が『あの人』のことを忘れん限り生きられるからの。そこは心配することはないじゃろうしな」
柘榴にそう言われて蜘蛛は照れ気味に笑う。そう、忘れることは無いだろう、蜘蛛が生きている限り。カクリヨファンタズムとはそういう世界なのだから。
「私たちは……ヒトから見えないくせにヒトがいないと生きていけない生き物ですからね」
えへへ、と微苦笑する蜘蛛に柘榴も応じるようにして笑う。どこまでいっても、妖怪は人がいないと、人の想いが無いと生きていけないのだ。
妖怪同士、わかりあったような笑顔をかわして、柘榴がさらに告げる。
「のんびり過ごし力が回復すれば、ここに顔を出せるようになるかもしれんし」
カクリヨファンタズムは別世界と言ってもUDCアースと隣り合わせの世界。猟兵ほどの力が無くとも世界を渡る手段があるかもしれない……というより大祓骸魂とか渡ってこようとしてましたし。
そしてもし仮に猟兵に覚醒することが出来れば。
「またこの地を守り、安住することもできよう」
もふもふの耳をぴこぴこさせながら、蜘蛛を見上げる柘榴。しかし、楽しそうに動いていた耳が突如ぺたんと寝る。
「だが、猟兵への覚醒方法まではあちきにもわからんのじゃ。そこ許せよ」
「ふふ。その予定はないので大丈夫です、たぶんきっと」
遠い目をする柘榴に蜘蛛が笑いかける。
そんな様子の蜘蛛を見て、柘榴は『さて』とひとりごちる。
「そうなると、やはり約束は守りたいところじゃな」
そう言いながら印を結ぶ指先には式に使うヒトガタ。
「我が呼びかけに応じ給え……」
即座に発動するのは【御霊降ろし】。ヒトガタに『あの人』の霊を降ろすことを試みる柘榴。
「お主の想いの強さなら、呼べ……」
「いただきまーす」
「ちょ」
ヒトガタが完全に変化する前に、蜘蛛が蜘蛛糸でくるくるっとヒトガタを包み込んで懐の中に入れてしまう。思わずツッコミを入れる柘榴。術は発動の途中で遮られ……否、静止させられた状態だろうか。術は成就しているので発動しきる前に強制凍結されたと言えばいいか。
「えへへ、『おかえりなさい』は先ほど言ったので」
そんな蜘蛛の手には『帰ってきた』手紙がある。
「後で一緒に紐解くとしましょう。ええ、解き方忘れましたっ!」
とっても良い笑顔で残念なことを言う蜘蛛。
「そうか。怒られないようにの」
「……それはー無理かとー」
微笑みながら告げる柘榴の言葉に、潰されたようにへちょんと地面にへたる蜘蛛。
そんな蜘蛛と蜘蛛の懐で微かに光るソレを見て。
――なんなら式のままとどまるか?
柘榴は術が顕現したなら聞いていたであろう言葉はそっと胸にしまっておく。それを決めるのはかの人と蜘蛛に任せておけばいいだろう。カクリヨファンタズムに渡れば、もしかしたら術がずっと続くかもしれない。
そんな淡い期待も抱きながら、柘榴は楽しそうに笑うのであった。
成功
🔵🔵🔴
ブラミエ・トゥカーズ
カクリヨの話となると余の領地くらいしか話のネタは無いな。
そんなに珍しい物もないがな。
領地は西洋風の館を中心に洋風家屋が並び住み込みで雇っている下級吸血鬼メイドや人狼などが住んでいる
また近所にすむ子供妖怪が悪戯をしにくる
どうやら見送りの客もいるようであるな。
宴は朝日が昇るまで。
妖怪の宴に人が近寄ったのならば招き楽しむのもお約束であろう?
まぁ、土産の良し悪しは保証しかねるが。
瘤《腫瘍》が増えぬ事は祈っておくが良い。
夜は吸血鬼の時間
兎を捕まえて血を飲もうとしたら怒られた
宴とはいえ好みの物(血液)は提供されないようなので
驚かせついでに道案内をする
貴公等、宴の跡に参加すること程詰まらん事はあるまい。
人と妖の絆には余も思う所はあるのでな、此度は手助けしてやろう。
人と妖は決して相容れぬとは余は言わぬよ。
縁という物はそうたやすく切れる物ではない。
人が想い信じ続ける限り余等、妖はこの世に何時だって来られる。
カクリヨは貴公を受け入れるだろう。
幽世は貴公を護るだろう。
隔離世へようこそ。
アドアレ絡み歓迎
●
蜘蛛をカクリヨファンタズムまで送るための『宴』もそろそろ佳境といえるだろうか。蛍たちもまたその時を待つように、光を溜めるように、この地へ集っている。
そんな中で蜘蛛は猟兵たちからカクリヨファンタズムの話を聞いている。それがかの世界へ渡るための準備だから。
「カクリヨの話となると余の領地くらいしか話のネタは無いな」
「まさかの幽世在住の人が」
ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)のさりげない自己紹介に、蜘蛛は驚愕する。
「そんなに珍しい物もないがな」
蜘蛛の様子に微苦笑しながらブラミエが告げるのは、自身が住んでいるカクリヨファンタズムの様子だ。
曰く。
領地は西洋風の館を中心に洋風家屋が並んでいるとか。
住み込みで雇っている下級吸血鬼メイドや人狼などが住んでいるとか。
時折、近所にすむ子供妖怪が悪戯をしにくるとか。
さすが領主。こういう話題なら尽きることなく逸話が出てくる。
「楽しそうですね」
ブラミエの話を聞いて、ツボに入ったのか楽しそうに笑う蜘蛛。
しかし、次の瞬間。
「「……!!」」
近づいてくる気配に対して、ブラミエと蜘蛛がほぼ同時に視線を遣る。しかし……敵性のものではないようだ。むしろこれは……。
「どうやら見送りの客もいるようであるな」
「あそこから戻ってくるなんて……意外と根性ありますね」
なんと、件の青年が戻ってきたようだ。
「それも一興か。宴は朝日が昇るまで」
「私、その前に行ってしまいますけど」
「まぁそう言うな。妖怪の宴に人が近寄ったのならば招き楽しむのもお約束であろう?」
「それもそうですねー」
青年は蜘蛛のことが見えないだろうが、ブラミエのことは見える。同じ妖怪でも猟兵であるかどうかは非常に大きな要素だから。
「まぁ、土産の良し悪しは保証しかねるが」
「えっ。さすがにそれは勘弁してあげてください」
「ふっ。|瘤《腫瘍》が増えぬ事は祈っておくが良い」
蜘蛛のびっくりした顔に、そんな言葉を残して。
ブラミエは夜の帳の中へと消えていく。
●
「うぉぉぉ! レイのやつめー!!」
青年は叫びながら森の中を全力で走ってきた。使い魔の霊体は再び里に向かうことをボイコットしたようで、森の中を疾走しているのは青年だけだ。
そんな青年の前に……現れるのは吸血鬼。
「夜は吸血鬼の時間」
「うぉあぁぁぁぁぁ?!」
突如現れた(実はユーベルコードで霧になって来ました)ブラミエの姿に絶叫しながら飛び退って尻餅をつく青年。
「人と妖の絆には余も思う所はあるのでな、此度は手助けしてやろう」
「お、お、お……りょ、猟兵さんかよ……マジで死ぬかと思った……」
驚かせついでに道案内を申し出たブラミエ。
ちなみに道案内前に腹ごしらえと、兎を捕まえて血を飲もうとしたら蜘蛛に怒られたブラミエさんである。『さすがに住民を私の目の前で殺るのはいかがなものか』と。
宴とはいえ好みの物(血液)は提供されないようなので自前で入手しようとしただけなのに……この世は理不尽である。
そして理不尽ついでに人を驚かせただけである。さすが妖怪だぜ。
「貴公等、宴の跡に参加すること程詰まらん事はあるまい?」
「貴公等って俺ひとり……ってうおっ!? レイいるならいるって言えよ!」
いつの間にか戻ってきた使い魔と共に青年はブラミエの案内で再び里へと戻っていく。
その道中。ブラミエは青年に語り掛ける。
「人と妖は決して相容れぬとは余は言わぬよ」
「は、はぁ……?」
返ってきた生返事からすると、この青年は蜘蛛ほどの情報を持っていないようだ。ただ、お使いのようにこの地へ手紙を届けに来ただけなのだろう。
だがそれすらも、だ。
「縁という物はそうたやすく切れる物ではない」
男装の麗人が青年に微笑む。それは社交辞令の笑顔であったが、蛍の光に照らされたその笑顔はとても美しく、青年の心を鷲掴みにする。
「人が想い信じ続ける限り余等、妖はこの世に何時だって来られる」
「あ……はい……」
半分くらいは右から左に通り抜けたかもしれない。それくらいにブラミエは(ナチュラルに)青年を魅了してしまった。罪作りな吸血鬼は、里から伸びる蛍の光の帯を見上げる。
『宴』はまだ続く。せっかく青年が来たのだ。本当に朝まで騒ぐに違いない。しかし、主賓は旅立ちの時間となったようだ。
――カクリヨは貴公を受け入れるだろう。
――幽世は貴公を護るだろう。
そんな想いを胸に秘めながらブラミエは微笑を蜘蛛へと送る。告げる言葉はただひとつ。
「隔離世へようこそ」
送りながら。
ブラミエは同朋の到来を祝うのであった。
成功
🔵🔵🔴
十三星・ミナ
アドリブ連携歓迎
【WIZ】
「正気に戻ってくださってよかった」
ほっと安堵の息。
自分に語れるカクリヨのことといえば、かつて戦争の折に見た美しく咲き誇る彼岸花のこと。
(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34983)
文字通り、この世のものとは思えない美しさでした。
燃え盛る炎に似た花の中には、本当に炎のように熱い花なんかもあって
随分驚かされましたよ。
蛍の飛び交う中、ふと思い立って腰に下げた『霊写燈:蛍』に
それこそ蛍の光と違わないような小さな淡い桜色の火を灯す。
この方が守ったからこそ、悪いモノに堕ちなかったであろう人々の営みの残像が
影絵のように写りはしないかと祈りをこめて。
そして、もう一つ。
「この火には、導きの呪(いのり)も込めました。
辿り着くべき場所へ、辿り着くべきひとがきちんと行けますように、と」
(死霊術師の第六感が、その呪を込めるべきだと告げていた)
●
蜘蛛をカクリヨファンタズムへと送る『宴』は最高潮であった。そして刻限もゆっくりと確実に迫っている。
「んー……そろそろ蛍たちが飛び立ちそうですね」
蜘蛛が空を見上げる。どういう習性か、蛍たちは宵が深まった時、一斉に空に向けて飛び立つ。それが何かを送り運ぶ光のように、送り火のように見える。
そんな『力』も借りながら蜘蛛はカクリヨファンタズムへ渡ろうとしている。
「正気に戻ってくださってよかった」
「はい。ご心配をおかけしました」
十三星・ミナ(死霊(カコ)を供に星(カコ)を探す者・f17400)が告げた言葉に、蜘蛛は視線を彼女へ戻す。厳しい過去が作り上げたであろう凛々しい顔にほんの少し、口端に笑みがある。きっと安堵の息をついてくれたのだろう。
改めて向き直った蜘蛛に対して、ミナもまた彼女の要望に応えようとする。
「私に語れるカクリヨのことといえば……」
ミナが話し出すのは、かつて大祓百鬼夜行の折に見た美しく咲き誇る彼岸花のこと。竜神親分のいる百霊鎮守塔の中を駆けのぼる最中に見た彼岸花の花園だ。
「文字通り、この世のものとは思えない美しさでした」
蛍の光と星空を見上げるような仕草で、ミナは記憶の中のかの場所を思い起こす。
「燃え盛る炎に似た花の中には、本当に炎のように熱い花なんかもあって……」
ミナが手にした異端の彼岸花は本当に燃えるように熱くて。
「随分驚かされましたよ」
「そんなことが……」
ミナの話を興味深そうに聞いていた蜘蛛がこくこくふむふむとその話を胸に刻んでいく。ありえないこともありえるのがカクリヨファンタズムの魅力と言えるのかもしれない。なんといっても毎日世界が崩壊しかけている。
そんなカクリヨファンタズムの話をたくさん聞いた蜘蛛は。
「いろいろ皆さんにお話聞きましたけど……幽世ってよくわかりませんね!」
「……はは」
良い笑顔で言い切る蜘蛛にミナは微苦笑を返すしかない。
ただ、よくわからないなりに……蜘蛛は幽世がイメージ出来ているようだ。そのためか……ふわり、と。蜘蛛の姿が一瞬揺らぐ。
(ああ……)
ミナが吐息をこぼす。
蛍の飛び交う中、蜘蛛はゆっくりと、そして確実に幽世へ旅立とうとしているのだ、とミナは感じ取る。
ふいに。
ミナは立ち上がって蜘蛛に歩み寄る。
「?」
そんなミナに首を傾げる蜘蛛。歩み寄ってくるミナの手にはいつも腰に下げているランプ『霊写燈:蛍』がある。そこに灯るのはそれこそ蛍の光と違わないような小さな淡い桜色の火。ミナがふと思い立って灯した火は蜘蛛の前に差し出される。
――この方が守ったからこそ。
ミナは想う。
悪いモノに堕ちなかったであろう人々の営みの残像が影絵のように写りはしないか、と。それはまるで祈りのように灯火にこめられて。
「優しい光ですね」
自分の前で揺らぐ灯火に蜘蛛が微笑む。蜘蛛の赤い瞳がその揺らぎに合わせて濡れたように潤む。炎の揺らぎに蜘蛛は何かを感じ取っているのかもしれない。
蜘蛛の赤い瞳に映る揺らぎをじっと見つめていたミナがさらに言葉を告げる。
「もう一つ。この火には、導きの呪(いのり)も込めました」
――辿り着くべき場所へ、辿り着くべきひとがきちんと行けますように、と。
ミナが言葉を向けた先は蜘蛛……いや、蜘蛛も含めて、か。
それは死霊術師の第六感だ。それが告げる、この灯火にその呪(いのり)を込めるべきだ、と。灯火が一緒に連れていってくれるのではないか、と。
「……」
そっと。蜘蛛が手を伸ばす。その手の内に灯火を包み込む。灯火が蜘蛛を焼くことはなく。蜘蛛が手のひらを開けば、灯火の光は蜘蛛を理不尽から守るように淡く照らす。
「この光が……守ってくれそうです」
そんな蜘蛛の声を合図にしたかのように。
ざぁぁっ。
蛍たちが一斉に空へと飛び上がる。それは星が空へ還るかのごとく、光が空へ駆けのぼっていく……この世とあの世を結ぶ橋のごとく。
「ありがとうございました。それでは……いってきます」
蜘蛛がミナをはじめとした猟兵たちにそう言ってほほ笑んで。
次の瞬間。
蜘蛛の姿が砂のように消えていく。
「お元気で」
ミナの言葉が届いたかどうかはわからない。……それでも。
猟兵たちは蜘蛛が無事にカクリヨファンタズムへ渡ったことを確認するのであった。
成功
🔵🔵🔴
●手紙
蜘蛛へ。
これを受け取ったということは元気にしている…‥はずだよな?
いや、キミは想定の斜め上を行くことが非常に多い……思い返してみると、斜め上を行くことしかしてないな? どういう生き物なんだキミは。
正直、どういう状況でこの手紙を受け取っているかわからん。
そもそもこの手紙が確実に『帰っていく』保証もない。子孫に託すとは聞こえがいいが、あの里は『常人』では気が狂うからな。隠す意味もあるが、行ける者が限られる。ともすればこの手紙はずっと我が子孫の元で眠ったままかもしれない。
そんな色々な条件を越えてキミの元に届いたならば、それは奇跡と言ってもいいかもしれんな。
問題は帰るまでにどれだけ時間がかかるか、というところか。本当はこの手紙を受け取ることなく、キミがどこかで平和に過ごしていてくれることのほうが嬉しいのだが。
さて、お小言はこれくらいにしておこう。
このような手段でしか『帰れない』ことを許してほしい。
僕たちヒトからの想いがキミたち妖怪の生きる糧になるならと交わした約束がキミの負担になってしまいそうな不甲斐ない事態を本当に申し訳ないと思っている。
色々と考えた。この両足が無くなった身でも『会いに行く』ことならどのような手段でも可能だと思う。一時的な幽体離脱、夢渡り、あるいは式神。レイを使いにやってもいい。だが、それでは帰ったことにならない。キミに不安を植え付けるだけだし、キミのことだ。逆に張り切る可能性がある。いや、本気でそれはやめてほしい。
僕が『本当の意味で帰る』には死んだ後でしか不可能ということだ。
そして霊体で戻るにはその地は厳しい。キミも感じているだろうがその地に霊体で踏み入れることに対して予想がつかない。かえってキミに負担をかけるのならそんな手段は取るべきではない。
死後、誰かに呼び出してもらうことも考えた。この場合は『本当に僕である』保証が無いことが問題だな。何かが混ざるかもしれない、僕のような何かであるかもしれない。そして、キミが僕である判断ができないかもしれない。そもそも呼び出せないかもしれない。
となると、だ。確実に『故郷へ帰った』証拠を残すには、形と霊力を遺すしかないわけだ。我ながら不甲斐ない。油断していたわけではないが、未熟だったのは事実だな。
まぁ、前置きが長いのは僕の悪い癖だ。
キミがこの手紙を読んでいるのなら、それはとても嬉しいことだ。キミが生きているということだからね。
……幾度も『共に生きる』と言う選択肢を考えたこともある。だが『こんなの扱いきれるか』という思いとどこか『縛り付けてはいけない』気がして、それはできなかった。
それが正解かどうかはわからない。
もしかしたら間違っていたかもしれないね?
だがそれもまた人生だ、と思う。いや、キミの場合は妖生か。
ひとつ確実に言えるのは、キミといた時間はとても楽しかった。勘違いしないで欲しいが、迷惑をかけられたことは決して許していない。というか人の話を聞け。
だがそれはそれとして。キミといた時間は僕にとってもかけがえのないモノだ。例え奥さんに嫉妬されたとしてもね。そういう関係ではないと何度も言ったのだが全然信じてくれない。困ったものだ。
話が逸れた。
そう、かけがえのないモノだ。僕もずっと持ち続けていくだろう。だからこそ、それを与えてくれたキミは僕に縛られて欲しくない。僕の生に関係なく、キミは生き続けて欲しい。その妖生の中で僕のことを思い出してくれるなら、キミが生き続ける糧となるのなら、それで十分だ。
だから、蜘蛛。この手紙を受け取ったなら。
これを糧にして妖生を楽しんでおくれ。
キミは……僕の何処までも大切な友なのだから。決して僕のために死なないでおくれ。
追伸:誤字がないか読み返してみたが……これは二度と目にしたくないな。何故かと言えばとても恥ずかしい。仮に読み上げでもされたら、羞恥で死ぬ自信がある。
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「と、いうことだそうですが。この言葉はどうですか、言いたいことはありますか、ねぇ今どんな気持ちねぇ、痛ったぁ?!」
いま、彼女を包み込んでいるのが仮初の幻想なのか、追憶の具現なのか、あるいは新たな生なのかはわからない。
それでも、蜘蛛は新たな世界で、自身の妖生を堪能すべく新しい一歩を踏み出したのだ。
最終結果:成功
完成日:2022年07月27日
宿敵
『水蜘蛛川姫』
を撃破!
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