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ピース・イン・ユアハート

#ダークセイヴァー #禿鷹の眼の紋章 #闇の救済者

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#闇の救済者


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●人間というもの
 暗闇はいつだって人の心に様々なものを運んでくる。
 時に平穏を、時に眠りを、時に朝日を。
 ダークセイヴァー、常闇の世界在って暗闇は支配と恐怖を運んでくることを知るのならば、暗闇とはやはり恐怖の象徴であったのだ。
「相互理解というものから程遠い。私にとって世界とは煌めくものだ。輝かしいものだ。いつだってこの世界には暗闇の中にあるからこそ、煌めくものを見つけ出すことができる」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは薄く笑む。
 その視線の先にあるのは『闇の救済者』――すなわち、このヴァンパイア支配盤石たる世界にあって抵抗する者達である。

 今までは一瞥する価値すらなかった者たちである。
 けれど、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンはそれが過ちであることを認める。
 そう、今までの彼は盲たる者であった。
 暗闇の中にありて星の輝が瞬くように、その輝きを見上げることすらしてこなかった。
「ああ、私は愚かであった。支配や好意、恭順など私には何も齎さない。それらが私に齎すのは虚無だけだ。私に歯向かう者、私を憎悪する者をこそ私は好む。彼らにはそれがないと思っていたのだ」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは、今やダークセイヴァー世界における地方の小領主の座に居座るヴァンパイアを圧倒する『闇の救済者』たちの戦いぶりを見ていた。

 彼らは今まで隷属と支配を受け入れるばかりの塵芥であった。
 けれど、今は違う。
 あの六等星の如きか細き輝きこそが『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの求めるものであった。
「星の輝きが、目に見える大きさだけで測れるものではないことを私は知った。それ以上に、私は感動さえ覚えているのだ。彼らが此処まで育ってくれたことに、落涙すらしてもいいとさえ思っている。星は篝火にまで成長しているではないか! 熾火は私の目を惹きつけてやまない!!」
 両手を広げ、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは歓迎するように声を発する。あの美しい輝きを放つ者たちを手に入れたいと思うのだ。
 彼が求めるのは反逆と抵抗。
 故に、彼は己がそれを手にした瞬間に握りつぶすだろう。手に入れた端から己が思うものとは異なってしまうから。

「――して、如何しますか」
「決まっている」
 彼の背後に膝を付き、控える『怨魂術士』たちが顔も挙げずに主に問いかける。『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは二の句を告げない。
 ただそれだけで十分であったからだ。
 彼らは一斉に駆け出すことはなかった。ただ、今、地方の小領主のヴァンパイアを打倒した『闇の救済者』たちの姿を追うだけである。
 本来であれば、勝利を得て、消耗までも得た彼らを強襲するのが当たり前の行いであったことだろう。
 けれど、それは『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの望むところではない。彼が望むことを『怨魂術士』たちは心得ていた。

 言葉は不要。
 そう、己たちの主が求めるのは憎悪と叛逆。
 すなわち、万全の状態での『闇の救済者』達との戦い。故に、彼らの本拠地までじわりじわりと忍び寄る影のように追跡を開始するのであった――。

●死が救いでないというのなら
『闇の救済者』たちは連戦に連戦を重ねていた。
 そして、勝利も確実に積み上げていた。慢心はない。どれもが薄氷の上の勝利であることを彼らは理解していた。
 砦は今も厳重に警備を重ね、バリケードや要塞としての役割を強化し続けている。
 生きるのに必死だからだ。
 一つの驕りが全てを台無しにする。ひとかけらの小石すらも生命を奪うきっかけになり、一つのほつれが強固な要塞すら瓦解させる。
「俺達は弱い。わかっている。ヴァンパイアに思い知らされてきたからだ」
『闇の救済者』の一人が己の胸に宿る思いを吐露するように呟く。

 彼は多くを失ってきた。
 いや、彼だけではない。『闇の救済者』の砦に集う者たちは皆、同じであった。自由のために戦う。戦うという発想すらなかった隷属の日々に決別したあの日から、彼らは徐々に力を手にし始めていた。
 ユーベルコードの輝きが彼らの瞳にあったのだ。
「勝っても、勝っても果てが見えない。いつ戦いが終わるのかもわからない。多くを救うために多くを奪わなければならなかったというのなら」
「ああ、ためらわずに奪わなければならない。今まで奪われてきたのだから」
「尊厳も何もかもがなくなったとしても、私達の胸には一つの熾火がある。篝火のような言葉がある」

「戦いに際しては心に平和を」

 それは魔法の言葉であった。
 人の心は脆く柔らかいものだ。いつ傷ついても仕方のないものである。折れるかもしれない、砕けるかも知れない。
 滅びてなお残るものがある。
 だから、心に平和を持たねばならない。
「あの人が言っていたように。俺たちも戦えるはずだ。戦ってみせるんだ。心に平和を宿すのなら」
 そのユーベルコードの輝きは熾火のように広がっていく。
 この常闇の世界に在りて、煌々と輝く太陽の代わりのように――。

●ユーベルコード
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。みなさんがこれまで戦ってきた結果、『闇の救済者』の皆さんの中に、極わずかでありますがユーベルコードに覚醒しつつある方々が現れ始めました」
 ナイアルテの言葉は猟兵たちにとっては驚くべきことであっただろう。
 これまで隷属と支配を受け入れてきた人々。彼らの中に戦う力に才能を開花させる者たちが現れたのだ。
 ヴァンパイア支配盤石たるダークセイヴァーにおいて、これは楔のようなものであった。

「はい、ですが、ヴァンパイア側を『闇の救済者』の皆さんを危険視し始めているのです。彼らの拠点がヴァンパイアたちによって暴き出され、襲撃をかけようとしています」
 その者の名は『戦争卿』ブラッド・ウォーデン。
 通常のヴァンパイアと違い、『闇の救済者』たちを真っ向から打ち破ることにこだわっている。
『闇の救済者』たちはヴァンパイアとの連戦に次ぐ連戦で疲弊しているが、勢いには乗っている。そこに休息と準備が加われば彼らとて攻めあぐねるだろう。
 だというのに『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは奇襲を仕掛けず、真っ向から『闇の救済者』たちと戦いたがっているようなのだ。

「不可解なヴァンパイアではありますが、この機を逃すわけには参りません。皆さんはまず、『闇の救済者』の皆さんの拠点に赴き、拠点である砦の強化につとめてヴァンパイアの襲撃に備えていただきたいのです」
『闇の救済者』たちとの交流を測るのもいいだろう。
 そして、迫る『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの率いるヴァンパイアの大軍を『闇の救済者』たちと連携し応戦しなければならない。

「彼らはユーベルコードに覚醒しつつある、か細い希望の光。これを絶やすことは即ち、ダークセイヴァー世界の希望を摘むということ。どうかお願いいたします」
 ナイアルテは頭を下げ、猟兵たちを見送る。
 見果てぬ夢は、すでに醒めている。
 自由という光を見つめる瞳の輝きは、もう絵空事ではないのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はダークセイヴァーにおける『闇の救済者』たちの砦に迫る『戦争卿』ブラッド・ウォーデンとその軍勢を退けるシナリオになります。

●第一章
 日常です。
『闇の救済者』の拠点の一つを訪れ、彼らの砦の防衛力の強化を測りましょう。
 また彼らと交流することで連携や戦い方に幅をもたせることも可能かもしれません。
 時間は多くはありませんが、それでも出来うる限りの準備をしなければ、迫るヴァンパイアの大軍の前に拠点は陥落してしまうでしょう。

●第二章
 集団戦です。
『闇の救済者』たちの拠点である砦を叩き潰そうと『怨魂術士』の軍勢が迫ります。
 彼らの力は容赦のないものであり、砦の強化を行っていなければ苦戦は必至でしょう。
 ユーベルコードに目覚めかけている『闇の救済者』たちと協力し、これに応戦しましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 敵軍の中から『禿鷹の眼の紋章』を装備した強力なヴァンパイア、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンが現れます。
 彼は反逆と憎悪にこそ興味を示し、恭順と同胞を嫌うヴァンパイアです。
 彼の目的は一つ。
 猟兵とユーベルコードに覚醒しつつある『闇の救済者』たちとの戦いを『大好きな英雄物語を読む子供』のように楽しむこと。

 彼は『世界が燃え尽きるのが見たい』と望み、自軍の損害や周囲の被害を顧みない苛烈な戦いぶりを示します。

 また『禿鷹の眼の紋章』は通常の攻撃に加え、『禿鷹の眼の紋章から自動的に放たれる、対象の肉体ごとユーベルコードを捕食する攻撃』で『闇の救済者』や皆さんを攻撃します。
 これに対処する必要もあるでしょう。

 それでは、ついに常闇に宿った希望の光を守るため、守られるだけではなくなった人々と共にヴァンパイアと戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『生き続けるために』

POW   :    拠点近くにある木々や石材を片っ端から確保する。

SPD   :    食糧や水など、生存に必要不可欠な物資を片っ端から確保する。

WIZ   :    ユーベルコードや知識によって効率的に資材や物資を確保する。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 強くあらねばならないと『闇の救済者』たちは願う。
 願うばかりで力が得られるのならば、ヴァンパイア支配などありはしない。
 彼らは知っている。
 これまでの隷属の日々は己たちの中に戦うという意志が欠如していたからこそ得られたものであると。戦う意志のないものに力は宿らない。力は、ただ力単一のものでしかない。
 力を如何にして扱うか。
 それを知るのならば『闇の救済者』たちは、また一つ階段をのぼる。
「打ちのめされた。散々に。心も体も。けれど、今もこうして生きているのならば、俺達はやはり戦わなければならない」
「ああ、そのためには。守らなければならない。奪われないためには」
「それが最も難しいことだって解っているけれど、それでも『戦いに際しては心に平和を』。私達が忘れてはならない言葉」
 ヴァンパイアと比べて人は弱く未熟な生命であろう。

 けれど、今もなお一歩と成長を続ける。
 彼らの心に宿るのはユーベルコード。戦うための力。そして、彼らの砦は幾度の戦いを経て傷ついていた。
 修復も必要だし、強化も必要だ。
 多くの命が散っていった。今日という日が明日もまた訪れるとは限らない。当たり前など何一つない。
「やるぞ。一足飛びには何もできはしないのだから」
『闇の救済者』たちは動き始める。

 やらなければならないことは多い。
 多すぎるほどだ。
 それでもこの砦たる拠点には戦えぬ者たちだって多く存在している。戦える者よりも何倍も多いのだ。守るための戦いとは常に苦しいものだ。それを知るからこそ、彼らは懸命になる。
 誰かを守ることは生命を懸けるに値するものであるからだ。

 鈍い重さを背に、肩に彼らは感じる。力を強く願うからこそ、些細な失敗すら許されない。殺されてしまうかも知れない。けれど、人は決して弱いだけの存在ではないことを彼らは知らしめる。
 その思いは重石を背に負っているようなものだろう。
 いや、重石ではない。彼らの背中を押すものだ。それを物語るように、彼らの瞳には今も希望が篝火のように輝いているのだから――。
村崎・ゆかり
はいはい、お邪魔するわよ。あたしは猟兵、あなたたちの味方。
ここを突き止めたヴァンパイアの一党が攻め込んでくるわ。もっと防御を固めなきゃ。

笑鬼召喚。あなたたち、高い城壁や物見櫓を作って。矢狭間を忘れずに。弓矢はいいわ。高いところから放てば、一方的に攻撃出来る。
羅睺、笑鬼達の指揮は任せた。しっかり縄張りして、この砦を難攻不落に仕立ててちょうだい。

砦の強化は式たちがやってくれるから、あたしは皆との模擬戦で軽く実力を確かめさせてもらうわ。
あたしは薙刀代わりの白杖で。
ユーベルコード使いさん、よろしくね。

殺さない程度の本気っていうのも難しい。この後の戦いもあるし。
長所を褒めて伸ばす訓練がいいかしら。



『闇の救済者』たちの砦は、これまでの戦いから大きく傷ついていた。
 城壁を積み上げる余裕すらない。
 バリケードに毛が生えた程度の壁未満のもの。それらがぐるりと集落を取り囲むように築きあげられている。
 要塞と呼ぶにはあまりにも拙いもの。
 だが、それでも彼らは『闇の救済者』たちを今までのヒトと同じように侮ったヴァンパイアの小領主の軍勢を打ち破った。それは快挙であったし、ヴァンパイアにとっては捨て置けぬものであった。

 自分たちの力で勝ち取った勝利は数千の救いを凌駕するものであったことだろう。
 彼らは己たちの力を自覚する。
「急げ、いつまたヴァンパイアたちが来るとも限らない! 女子供は中央に。男たちは資材を集められるだけ集めろ!」
『闇の救済者』たちは、守られるだけの存在から戦う存在へと変貌を遂げる。
 猟兵たちにとって、それは未だ拙いものであったが、彼らに出来ることはこれだけであった。

「はいはい、お邪魔するわよ。あたしは猟兵、あなたたちの味方」
 そう矢継ぎ早に告げるのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)であった。
 彼女は小さな子鬼の式神たちを引き連れて『闇の救済者』たちの砦へとやってきていた。
 馬鹿笑いする式神たちの姿は、『闇の救済者』たちにとって異様なものであったが、それがユーベルコードに準ずるものであることを知る。
 これまでは気がつくこともできなかった。
 けれど、今は違う。ゆかりが式神をユーベルコードによって召喚し、こちらの拠点を固めようとしてくれていることがわかるのだ。

「これが……」
「そ、笑鬼召喚(ショウキショウカン)。ぼやぼやしている暇はないわ。此処を突き止めたヴァンパイアの一党が攻め込んでくるわ」
「もっと防御を固めなきゃ、ですね」
 ゆかりは頷く。
『闇の救済者』たちはもう、自分たちに救われるだけの存在ではないことを肌で実感する。
 ならば、と、ゆかりは笑鬼の式神たちに拠点の防壁を築き上げることを命ずる。
 彼らは時間をかければ拠点防御に秀でた式神だ。自身の式神に陣頭指揮を取らせることによって、さらに時間は短縮されるだろう。

「物見台も必要よ。矢狭間も忘れずに」
「でも、弓が……」
「じゃあ、笑鬼の半分を弓矢を作る方に回しましょう。後は、女子供でも出来る作業を……」
 難攻不落の砦。
 言葉にすれば、それは容易いことであった。誰もが想像するだろう。けれど、ダークセイヴァーにおける人々は違う。
 彼らは虐げられてきた。
 自分たちがヴァンパイア支配に抵抗するという気概すらなかった。けれど、それはもう過去のことだ。彼らはやり方を知らずとも、それを知ろうとする、解決しようとする気持ちを持っている。

「じゃあ、あたしはみんなと模擬戦をしましょう。この中で特に戦える者は?」
 ゆかりが尋ねると『闇の救済者』たちの中から三人の男女が前に出てくる。
 彼らは何れも年若い男女であった。彼らの瞳を見ればわかる。彼らこそがユーベルコードに覚醒しかけている者たちなのだと。
「いいわ、軽く実力を試させてもらうわ」
「お願いします……!」
 若人たちはゆかりに胸を借りるつもりで模擬戦へと立ち向かう。

 ゆかりが手にした白杖と打ち合う木刀や穂先の付いていな槍。
 身のこなしはまだまだであるが、その動きがユーベルコードに昇華しかけていることをゆかりは知るだろう。
「殺さない程度の本気っていうのも難しい……」
 ゆかりは加減を覚えようとしているがうまくいかない。
 気合十分にユーベルコードに覚醒しかけている『闇の救済者』の横っ面を思いっきり叩くことになってしまう。けれど、それでも彼らはめげずにゆかりに立ち向かってくる。

「負けん気は結構! いいわね。不屈の闘志というものは、誰にも宿るものではないから」
 ゆかりはなおも食い下がる『闇の救済者』の動きに褒めて伸ばす手法に転換する。彼らの実力と己との間には隔てりがある。
 当然のことだ。
 資質もそうであるし、経験も圧倒的に違う。
 ならば、自分と彼らに共通するものはなにか。
 それは闘志だ。

 彼女が告げる言葉に彼らは頷く。瞳を見ればわかる。あれこそが戦う者の瞳。ゆかりは、彼らの奮闘を称えると共に、さらなる練兵を行うために白杖を振るうのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神樹・鐵火
吸血鬼どもの圧政時代も黄昏時が近いという事か。
今後は賞金首として追われる身になる事を震えて待つがいい。

神使来襲、狂戦士共を呼び付ける。
貴公ら、砦の周辺を取り囲め。
尖兵はいつ来てもおかしくはない、見張りを強化しろ。
奴らの偵察部隊が居たら斬り捨てて構わん、これ以上此方の情報は渡すな。
どうせ始末するなら次に来るであろう雑魚連中と大将の情報を洗い晒し吐かせてからにしろ。

あぁ、救済者の君達は私の聖拳と鋭拳を使え、これをお前たちが持つ武器に這わせるといい。
吸血鬼は光を嫌う、焼き斬って物言わぬ灰にしてしまうがいいさ。



「吸血鬼共の圧政時代も黄昏時が近いということか」
 それはダークセイヴァーに生きる人々の中からユーベルコードに覚醒する者が現れたからである。
『闇の救済者』は、真に救済者足り得るのか。
 ここが分水嶺であることは言うまでもない。同時にそれはヴァンパイアたちにとって
同様であった。

 猟兵とオブリビオンが滅ぼし合う関係であるように、ヴァンパイアとヒトもまた同様である。隷属と支配。自由と開放。その二つがせめぎあい、時に逆転する。
 それはともすれば、流転するのと同じであった。
「今後は賞金首として追われる身になることを震えて待つがいい」
 神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)は常闇の世界に降り立ち、告げる。
 これまでとは逆転する状況。
 だが、未だ『闇の救済者』たちの拠点は脆弱極まりない。これまで幾度かの戦いを制してきているとは言え、消耗が激しいのもまた事実。

 防壁となるバリケードは所々が破壊されている。
 力で優るヴァンパイアを前にして『闇の救済者』たちにとってバリケードは命綱と同じであった。
「神使来襲(シンシライシュウ)」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝き、紅炎の刀と火の粉散る赤黒い強化外骨格を身にまとった神界の狂戦士を乗せた獰猛なる炎龍が召喚される。
「貴公ら、砦の周辺を取り囲め。尖兵はいつ来てもおかしくはない、見張りを強化しろ」
 そう告げられた炎龍と狂戦士たちが頷く、煌々たる輝きとともに常闇の大地へと飛び立つ。
 その姿は目立つことだろう。

 同時に暗闇の世界であるからこそヴァンパイアの偵察は闇に紛れる。それを照らす炎の龍の光は即座にヴァンパイアの姿を見つけ出す。
「こちらの情報は一切与えるな。そして、引き出せる情報があるのなら、根こそぎ奪え」
 その命令の半分は叶うだろう。
 敵に情報を与えないこと。それは炎の龍と狂戦士達によってなされる。だが、敵の情報は得られない。
 どれだけの軍容であるのか。規模が、装備が、ユーベルコードが、それらを漏らす偵察のヴァンパイアはいなかった。どれもが炎に立ち消えるまで一切口を開くことはなかったのだ。

「オブリビオンと言えど、信義があるというわけか」
 面白いと思うこともない。
 彼らは欲望の化身。そう在るべきと歪んだのならば、それくらいのことはするだろう。生前の性質が色濃く継がれていたとしても、過去に歪んでいたとしても彼らの狂信は変わることはない。
 変わらないことこそがオブリビオンの本質であるというのならば、皮肉であった。
「あぁ、『闇の救済者』の諸君。君たちには私の聖拳と鋭拳を伝えよう」
 戦う力を持つ者ばかりではない。
 けれど、戦う力を持つ者は貴重だ。ユーベルコードに覚醒しかけている者は、三人。何れも年若い男女だ。

 彼らの武器に纏うオーラ。
 それが魔法であることを彼らは理解できただろうか。
「これが……武器が光っている?」
「防御の力と攻撃の力。これは、僕らでも使えるようになりますか?」
「いいや、一時的なものだ。力が失われれば、元に戻る。持久戦になるであろうが、再度重ねがけしている暇はないだろうな」
 言ってしまえば、これはお守りのようなものである。

 彼らが戦うと決めた時にこそ力は意味を為す。
 力だけでは意味は持たない。故に、伝えるのだ。
「吸血鬼は光を嫌う。焼き切って物言わぬ灰にしてしまうがいいさ」
 それでこの世界に光が満ちることはない。
 何故なら、この世界は積層世界。ここが地底の中であることを知るのは猟兵だけである。
 故に、日の光を求めるのなら戦い続けなければならない。
『闇の救済者』の瞳に宿る輝きに鐵火は、その意志を見出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

左護・結姫
【はるさご】
春乃ちゃんが大好きだって言う、この世界の人達
折角だから色々お話してみたい
春乃ちゃんが好きなものは、私も好きになりたいから
 
戦いから帰ってきたばかりなら、傷を負っている人もいるはず
医療所みたいな場所があればそこに行ってみよう
春乃ちゃん、ちょっと行ってくるね~
 
お邪魔します。少しお手伝いしてもいいですか?
傷の深い人を対象にUCを使用
大丈夫、寝てるだけだよ。頑張ったんだろうから、少しおやすみさせてあげましょ~
…どうしてこんなになってまで戦うの?あなた達が強くいられるのは何か理由があるの?
あなた達が紡いだ物語、聞かせて欲しいな
 
ただいま~。何してるの?
…ふふ。楽しそう。私も仲間に入れて~


春乃・結希
【はるさご】
出来ること、何があるかな、と考えてる間に
左護さんはふら~っと消えてしまった…
えっ、あっ、いってらっしゃい…?
 
そして私は遊んでいる子供達に目を付けます
…決して働きたくない訳ではない。決して
あのぅ、暇してるんやけど、仲間に入れて貰っていいですか?
えっ、怪しくないよっ?お菓子あげますからどうか…!
食べ物を賄賂に仲間に入れて貰います
 
こんな世界でも、子供たちは純粋で、未来へ希望を結ぶ大切な存在で
近くにいるだけで元気を貰える
あなた達も大きくなったら、戦いに出るのかな?
その時は呼んで欲しいな。あなたたちと一緒なら安心して戦えそうです
 
あ、おかえり左護さん!
未来の英雄達に遊んで貰ってるんよっ



 他世界を知る猟兵にとって、世界は一つではない。
 この常闇の世界ダークセイヴァーはオブリビオンであるヴァンパイア支配盤石たる世界だ。
 人々にあるのは隷属と支配という二つだけ。
 けれど、『闇の救済者』たちが立ち上がり、自由と開放のために戦う。そんな彼らの意志をこそ春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は立ち止まらぬ己と重ね、好ましいと思うのだ。
 そして、それを聞いた左護・結姫(は幸せです。・f35408)は思ったのだ。結希が大好きだと言ったこの世界の人々と話がしてみたいと。

「春乃ちゃんが好きなものは、私も好きになりたいから」
 理由だけで言えば、それだけであったのだ。それで十分であると彼女は思えた。戦いだけが全てであったとは思わない。
 けれど、彼女の青春は死と隣り合わせであった。戦わなければならなかったのと、今戦うと決めた人々は相通ずるものがあるはずだった。
 結姫は共に常闇の世界に降り立ち、すぐに行動していた。
「春乃ちゃん、ちょっと行ってくるね~」
 彼女の行動は速かった。思いついたら即座に動く。時間は有限だ。時間を懸けることは善いことでもあるが、同時に懸けた時間が報いてくれるとは限らない。

 そんな彼女とは対象的に結希は未だ悩んでいるようであった。
「出来ること、何があるかな……えっ、あっ、いってらっしゃい……?」
 結希は悩む。
 この常闇の世界に懸命に生きる人々に自分は何が出来るだろうかと。何をもたらすことができるだろうか。
 この拠点の人々は忙しない。
 大人であれば、誰であれ、老若男女問わず動き回っている。精力的なことは善いことであるが、生き急いでいるようにも思えたことだろう。

 そして、取り残されるのはいつだって幼く力の弱い者たちである。
 突然現れた風貌の変わった……とは言え、猟兵であるがゆえに結希が奇異の目で見られることはない。そんな彼女を見つめる幼子たちの視線は、こんな世界にあっても煌めいているように思えたのだ。
「何しているの?」
「働かないの?」
 子供ゆえのぐさりと来る言葉。決して働きたくない訳ではないのだ。決して。けれど、結果としてそう見えてしまっていたのならば、挽回しなければならない。
「あやしー」
「えっ、怪しくないよっ?」
 仲間に入れてもらおうと思ったのに、先制パンチが舞い込む。ぐらりと揺れる。お姉さんとしての威厳が損なわれていく気がした。

 そんな結希とは裏腹に結姫は、こうすると決めていたように拠点の中にあるテントの中に入っていく。
 感じるのだ。痛みに喘ぐ小さな声も、薄っすらと漂う血の匂いも。
 ここが戦う者たちの拠点であるというのならば、必ず負傷者がいるはずだ。
「お邪魔します。少しお手伝いしてもいいですか?」
「あんたは……? あっ、おい……!」
 こんな世界にあっては医療も発達していないだろう。手の施しようのない負傷者たちもいるだろうし、同時にそれを診る者もまたどうしようもないと無為に流れていく時間に歯噛みしていたはずだ。

 そんな彼らに舞い降りるのはユーベルコードの輝き。
 穏やかな眠りに誘う粉雪のような輝きは、痛みに、苦しみに喘ぐ者達に眠りという名のベールをかぶせていく。
「大丈夫、寝ているだけだよ。頑張ったんだろうから、少しお休みさせてあげましょ~」
 結姫は微笑む。
 負傷者たちの傷が眠りと共にふさがっていく。それは奇跡のような力の発露であるように彼らには映っただろう。
 眠りに落ちた負傷者たちの額に浮かぶ汗を拭ってやりながら結姫は、彼らを看病していた一人の『闇の救済者』と向きなおる。

 彼らは戦い続けている。
「……どうしてこんなになってまで戦うの? あなた達が強くいられるのはなにか理由があるの?」
 聞かせて欲しいと結希は告げる。それが物語と呼ぶに相応しいものであることを知っているからだ。
「もうこれ以上奪われないためだ。支配されるのも、隷属するのも、当たり前だと思いたくないからだ。生きるということは、誰かに支配されることじゃないと俺達はもう知ってしまったからだ」
 それが戦う理由。
 そして、他者にも手を差し伸べるに値する理由であると語る。『闇の救済者』の瞳に輝きを見出した結希は頷く。

 それが聞ければよかったのだと。
「ただいま~。何してるの?」
 テントから出た結姫神たのは結希と幼子たちが戯れる姿であった。もうすっかり慣れ親しんだように結希の手を引いて引っ張り回している。
 他愛のない遊びだ。
 彼らの顔が明るいのは、結希が持ち込んだ甘いお菓子を食べたからだろう。仲間に入れてもらう賄賂であったけれど。
 それでも幼子たちには関係ない。
 初めて口にする甘い甘いお菓子。それを堕落と呼ぶ者はいないだろう。得られなかった者たち、与えられなかった者達。それがこのダークセイヴァーに生きる人々である。

 けれど、こんな世界でも子どもたちは純粋だと結希は思うのだ。
 未来へ希望を結ぶ大切な存在。近くにいるだけで元気をもらえる。それは『闇の救済者』たちも同様である。
 彼らの存在が戦う力を与えてくれる。
「あなた達も大きくなったら、戦いに出るのかな?」
「あったりまえじゃん!」
「みんな守るってきめているんだからー!」
 子供らの言葉は無邪気そのものであった。けれど、そこには確かな意志がある。どれだけ長い月日が必要になるのかもわからない。
 果ての見えない明日がさえも手に入れられるかどうかもわからない。けれど、結希は微笑んで言うのだ。

「その時は呼んで欲しいな。あなた達と一緒なら安心して戦えそうです」
「僕らがお姉さんを守るから、大丈夫だよ!」
 ああ、と結希も結姫も思うのだ。微笑ましいと思うと同時に、之こそ守らねばならぬ希望であると。
「……ふふ。楽しそう。私も仲間に入れて~」
「未来の英雄達だね!」
 二人は幼い希望を見る。これを潰えさえてはならぬという意志こそが、戦う理由。ただそれだけで十分。

 痛みを知るのは自分たちだけでいいと二人は決意を新たにするのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
やれやれ、厄介なのに目ェつけられたもんだな。ホント生きるってだけで大変な場所だ、ダークセイヴァーはさ。
ともあれ、なんとか助けねえと……。

自分が猟兵であること、近々ここに吸血鬼の軍勢が襲撃をかけることを明かして、協力を申し出る。

差し当たっては、砦をどうやって守るか考えねえとな。
周囲の地形を確認して、防衛戦をやるのに向いた場所の選定、いざという時の逃げ道の確保あたりはやっときてえ。

あとは臆病なおれなりに、強ぇ相手と戦う時の心構えを。

いきなり吸血鬼と一対一で勝とうなんて思う必要は無え。負けてもいいから生き延びることを第一にするんだ。
おれら“ただの人間”の最強の武器、それがしぶとさってヤツだからな。



『闇の救済者』たちの最初の一歩は小さく頼りないものであった。
 猟兵たちの介入がなければ、そこで潰えていた小さな火。けれど、今やそれはダークセイヴァーに生きる人々の希望の篝火へと成長を遂げていた。
 これまで為し得ることのできなかったヴァンパイアへの勝利。それを成し遂げたのは、紛れもなく『闇の救済者』たちの力であった。

 だが、力を得たのならば、同時に危険を得るのと同義である。
 強い力はより強い力を呼び寄せる。『闇の救済者』たちのヴァンパイアへの勝利は、支配への楔である。打ち込まれ続ければ、支配盤石たる世界をヴァンパイア達は失う。それは彼らにとって由々しき事態である。
 座して静観する理由などない。
「やれやれ、厄介なのに目ェつけられたもんだな。ホント生きるってだけで大変な場所だ、ダークセイヴァーはさ」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は呟く。
 戦いは恐ろしいものだ。怖くてたまらないものだ。けれど、逃げてばかりではいられない。

 この常闇の世界に生きる彼らを見ていたら、自分も負けてはいられないと彼は思うのだ。
 なんとかして助けたいという思いが沸々と湧き上がってくる。
 転移した『闇の救済者』の砦は砦と呼ぶにはあまりにも粗末な拠点であった。バリケードだけが彼らと敵対者を分かつものであり、幾度の襲撃によってぼろぼろになっている。
 猟兵たちの手助けもあって修復と強化が重ねられていく。
 そんな『闇の救済者』たちの拠点に嵐は降り立ち、己が猟兵であることを告げ協力を申し出る。
 すでに多くの猟兵たちが集っていることで『闇の救済者』たちとのやりとりはスムーズにことが運んでいく。

「差し当たっては、砦をどうやって守るかだよな……」
「そうなんです。敵はヴァンパイアですから。どうやっても俺たちより力が強い。今までは『闇の救済者』の主力の前まで敵を引き込んで一気に……ってやっていたんですけど」
 弱いヴァンパイアなどであれば、それも有効であろう。
 この砦はそうやって敵を引き込むには利用できる地形をしていた。けれど、それでは敵の軍勢を止めきれなかったときが危うい。脆いと言える。そして、あのバリケードも今は強化されているとは言え、まだ心もとない。

「周辺の地図とかはあるか? 今まで引き込んでいた場所もいいかもしれないけど、他の場所も見ておいた方がいい」
 嵐はそれともう一つ、と告げる。
「万が一にも突破された時、負けた時のことも考えろ。戦って死ぬ、なんて一番下策だ。生きて、生きて、生き抜くことがお前たちの戦いだろう」
 嵐は生きてこそだという。
 戦って死ぬこともあるだろう。けれど、生命を後につなぐことも必要だ。逃げ道の確保は、それに必要なことなのだ。

「……わかりました。子供らや老人や負傷者たちを逃すルートを構築しましょう」
 今日という日に己の生命が終えたとしても、明日を生きる者たちの為になるようにとつなぐこと。それもまた戦うことだと『闇の救済者』たちは理解している。
「今更おれが言うことはなかったな」
 臆病な己を自嘲する嵐。
 けれど、『闇の救済者』たちは頭を振る。戦いは恐ろしいのは彼らもまた同じなのだ。
「教えてほしいんです。多くを。どんな些細なことでも」
「俺達の生命は、ヴァンパイアたちにとって塵屑のようなものだ。俺たちが弱いなんてことは、俺たちが最も知っていることだ」
「だから、足掻こうと思うんだ。抵抗しようと思う。あんたの言う通りだ。誰かの生命のために戦うことはこんなにも誇らしい」

 その言葉に嵐は頷く。
 彼らの決意は無駄には出来ない。そして、無為に生命を散らす必要もない。
「いきなり吸血鬼と一対一で勝とうなんて思う必要は無え。負けてもいいから生き延びることを第一にするんだ」
 嵐の言葉はただの人間の言葉だ。猟兵としての言葉ではない。
 そして、それは同時に人間にとって最強の武器でもある。
「何が何でも生きてやるっていう、その覚悟、しぶとさがお前たちにはあるんだぜ」
 だから、それを手放すなと嵐は告げる。

 彼らの瞳に在る生存への希望。
 その篝火のような輝きを損なわせないと、嵐は臆病だと自嘲した己の瞳にもまた彼らと同じ輝きが宿ることを、知っているだろうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
「戦いに際しては心に平和を」…か。良い言葉、善い誓いね

"…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…"

…それが、大切な人達から託された私の誓い
…言葉は違うけれど、心に掲げる救世の意志は同じはずよ

…だからこそ、こんな道半ばで倒れる事は赦されない
誰一人欠ける事無く明日を迎えられるよう、及ばずながら支援するわ

UCを発動し全ての魔刃に光の精霊を降霊して浄化の魔力を溜め武器改造を施し、
空中機動を行う魔刃による集団戦術で砦を光のオーラで防御する魔術儀式を行う

…刃に満ちよ、光の理。我に仇なす諸霊の悉くを速やかに浄化せしめん

…貴方達もユーベルコードの扱いに慣れれば、
これぐらいすぐに出来るようになるはずよ



「戦いに際しては心に平和を」
 それはただの言葉であった。
 けれど、感じ取る者がいたのならば、それはやはり力であった。言葉が人に何かをすることはない。
 人は言葉から己の心に湧き上がるものを組み上げて歩んでいく。
 そういう生き物である。
 ならば、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそれが良い言葉であると思うのだ。
「善い誓いね」
 誰かのために戦うのが『闇の救済者』たちである。

 故にユーベルコードに覚醒する兆しがあったのかもしれない。誰がために力をふるうのかを定めた者は強いとリーヴァルディは知っている。
 故に彼女の心に去来するのは託された言葉である。
 己の大切な人たちから託された誓い。
 言葉は違えど、共通するものがある。シンパシーと言ってもいい。リーヴァルディは『闇の救済者』たちの拠点、砦の降り立ち彼らを見回す。
「……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を……」
 その言葉に呼応するように『闇の救済者』たちの瞳にはユーベルコードの兆しが輝く。

 希望の篝火は消してはならない。
 この常闇の世界にあって、あの輝きは人の心を救うものであると同時に、ヴァンパイアたちを引きつける輝きでもあったのだ。
「心に掲げる救世の意志は同じはず……だからこそ、こんな道半ばで倒れることは赦されない。誰一人欠けることなく明日を迎えられるよう、及ばずながら支援させてもらうわ……」
 リーヴァルディの瞳が彼らと同じユーベルコードに輝く。

 顕現するのは魔力の結晶刃。
 飛来する百を超える刃が魔力を増幅していき、砦の全周を覆っていく。浄化の力を込められ結晶刃はユーベルコードの輝きを受けて光の精霊を宿す。
「……この刀身に力を与えよ」
 吸血鬼狩りの業・魔刃の型(カーライル)は戦う力。されど、守るための力でもある。
『闇の救済者』たちを倒れさせない。
 それがリーヴァルディの心の中にある、託された誓いを成就させるために必要な回り道であった。

 己単身だけでは為し得ぬこと。
 人の手は二本しかない。あまねく全てを救うことは敵わない。ならば、どうすればあまねく全てを救うことができるのか。
「……手を増やせばいい……」
『闇の救済者』たちにユーベルコードの兆しがあるように。
「……刃に満ちよ、光の理。我に仇為す諸霊の悉くを速やかに浄化せしめん」
 光の結晶刃が飛翔し、魔術儀式を形成する。
 これが一時しのぎでしかないことをリーヴァルディは理解している。だが、この儀式をユーベルコードに目覚めかけている『闇の救済者』達が見れば、いつか必ず己と同じようにできるかもしれない。

 それを可能性と呼ぶにはあまりにもか細い希望であったかもしれない。
「こんなことが可能なのか……」
「途方もない力を感じる……数多の刃で結界を張るような、もの……?」
「……貴方達もユーベルコードの扱いに慣れれば、これくらいすぐに出来るようになるはずよ」
 リーヴァルディは『闇の救済者』たちの様子を見やる。
 彼らは未だ到達できずとも、到達すべき点を知る。
 ならば、後は歩むだけだ。
 生きてさえいれば、必ず人はそこにたどり着く事ができる。意志の力だけで、あらゆる劣勢を、環境を屈服させてきた人類であればこそ可能であるとリーヴァルディは信じることができる。

 あまねく全てを救うには、多くの手がいる。
『闇の救済者』たちは、リーヴァルディにとっての数多の手だ。取りこぼさず、多くを救うための手。人を救うのが手ならば、人と人をつなぐのもまた手であるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
拠点の強化かー……水源はあるかな。無ければ探そう。水があれば土地も人も潤うし、傷口を洗い流せる事もできる
場所が遠ければ水路と井戸の生成を、そうだなー……材料は最小限に抑えたいから、おれの槍みたいに魔力で生成した氷石を交えよう
何れは溶けるかもしれないが、徐々に取り換えていけば機能はし続ける

後は模擬戦かな。おれをヴァンパイアと見立てて相手して貰いたい。おれはよく相手の行動を観察しつつ、隙が無いか耐え忍ぶけどきみたちはどうだ? 今は数の利を活かすべきだ!
心に平和をって、いい言葉だよな。剣呑とした空気に触れていると心の波は荒立ってしまう。だが、恐怖しても絶望する事なかれ。かなー
恐怖を失ったらいけないよ



『闇の救済者』たちの拠点は、砦と呼ぶにはあまりにも粗末なものであった。
 かろうじて地形の利を得ているが故に、これまで薄氷の上の勝利を掴み取ってきたに過ぎない。
 迫るヴァンパイアの軍勢はこれまで以上の数であり、質もまた跳ね上がっている。それを彼らは知らない。
 けれど、知らないからと言って怠惰になっているわけでもなければ、慢心しているわけでもない。
 彼らは目の前の現実に対処することで手一杯なのだ。
 戦うだけではない。オブリビオンであるヴァンパイアと違って、彼らは生活を営まなければならない。生きるために戦うのではなく、戦うために生きているようなものであった。

 ギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)は小さく頷く。
 拠点の強化と一言に言っても多くのことができるだろう。ある猟兵は城壁を汲み上げるようにバリケードを強化したし、あるものは砦事態を覆う結界を用意していた。
 そして、ギヨームが着目したのは水源であった。
 この拠点には極端に水場が少ない。
 何故ならば、敵の侵攻を少しでも送らせるために周囲を丘といった地形を利用しているがために、水源である川が隣接していないのだ。
「……なければ探そう」
 水がれば土地も人も潤う。
 そして、戦うために生きているのならば、生傷絶えぬはずであった。その傷口を洗い流すために水は必須であるし、流水は清らかだ。
 傷口から雑菌といった害あるものが入り込むことがなければ、いずれ負傷した者たちも復帰できる。

 そうなれば、継続的に戦いを続けることができる。
「水源から見れば……水路を引くのは難しいか。そうだなー……」
 ギヨームは困ったように首の骨を鳴らす。
 少し難しいかもしれないが、と魔力によって生成された氷石を掌に集めていく。彼が感じる水への嗅覚。それを利用した時、この拠点で井戸を掘ることも可能であった。
「何をするんです?」
「井戸を掘るんだ。今のままでは、危険な場所を通って水を確保しなければならなかっただろう? 水は地下を流れている。脈々とね」
 ヴァンパイアは水を必要としない。
 生命維持の必要がないからだ。停滞した存在、オブリビオンであればこそだ。兵糧も何も必要ない。
 けれど、人は違う。生きるためにも戦うためにも水は必要不可欠であった。

 放たれた氷石が地面を抉り、亀裂を走らせる。
 音が聞こえる。そう、ギヨームはよく知っている。彼が愛する水はすぐそこだ。
 噴水のようにギヨームが穿つ穴から吹き出す清涼なる水。その雨を肌に受けてギヨームは笑う。
「水が……!」
「ああ、これで水源は確保できる。後はおれの氷石を呼び水にしていけばいい。溶けるが徐々に機能はし続ける」
 ギヨームは水源を生み出し、『闇の救済者』たちに向き直る。
 後は何をしないといけないか。

 戦うために生きる彼らを鍛えなければならない。
 己をヴァンパイアに見立てて模擬戦を行い、戦うための術を授けるのだ。敵を退けるだけでは足りない。
 彼らがこれからも己の足と誇りで立って生きるためには必要なことだ。
「おれはよく相手の行動を観察しつつ、隙がないか耐え忍ぶけど、きみたちはどうだ?」
「そんな余裕なんて……!」
「動きを見る……隙……」
『闇の救済者』たちの練度はそれぞれ違うものであった。経験があるもの、センスの光るもの、そもそも戦うのに向いていないもの。

「今は数の利を活かすべきだ! 一人で戦う必要なんて無い」
 きみらは群だ、とギヨームは告げる。
 心に平和を。
 その言葉を胸に戦う者たちを彼は見やる。良い言葉だ。この常闇の世界という剣呑たる世界にあって、心は必ずささくれる。荒立ってしまう。当然のことだ。
 けれど、ギヨームは見た。
 彼らの瞳に宿るものを。

「だが、恐怖しても絶望することなかれ、かなー。恐怖を失ったらいけないよ」
 己の生命を思わぬ者に生存はない。 
 故に、ギヨームは彼らの心に新たなる言葉を送るのだ。
 心に平和を。そして恐怖と向き合うことを忘れるなと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
良い目だ。数多の死線を潜り抜けてきた戦士の目だ。
それでいて、人の心を忘れぬよう己を律していると見える。
なれば、心構えに於いて余の語るべき事は最早無い。

この上にて必要なものといえば、戦術の心得であろう。
砦を落とすべく想定されるヴァンパイアの手筋、幾つかを実地にて教示すると共に対策を伝授する。

ヴァンパイアの兵役は黄昏大隊・突撃部隊で召喚した兵達。
幅広く展開し防壁を乗り越えての浸透、或いは一点突撃からの門の突破。数か所に意識を惹きつけた上で別方向からの奇襲。
それらの動きを【集団戦術】にて示してみせ、相手の狙いをどう判断するか、各々の戦術にどう対処すれば良いか。それらを伝えてゆこう。



「急げ、敵がいつ来るかわからないぞ!」
「こっちの資材はもうない、何処からか調達してこなければならないんだよ!」
「負傷者の治療は終わった。食事の用意を!」
『闇の救済者』たちは片時も立ち止まることをしていなかった。
 疲労も蓄積して来ている頃合いであろう。けれど、そのひとみに宿る光は、彼らを突き動かす。

 生きるために戦うことも、戦うために生きることも、今を生きる彼らだけのものである。
「良い目だ」
 ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は彼らをそう評価した。
 数多の死線をくぐり抜けてきた戦士の目であると彼女は思ったのだ。そして、それでいて人の心を忘れぬように己を律しているとも思えた。
 良き戦士たちである。
 彼らが『闇の救済者』を名乗り、誰かの為に戦うことは絶望だけがひろがる常闇の世界にあっては篝火そのものであった。
「ならば、心構えに於いて余の語るべきことは最早無い」
 ギージスレーヴは頷く。

 この上で必要なものが何かを問われた時、彼女が応えるのは戦術唯一だ。
「人がヴァンパイアに優るのは、群であるということだ。ヴァンパイアとは結局個としての力に頼っている。群に見えて、あれはただ個の集まりだ」
 彼女の言葉に『闇の救済者』たちは頷く。
 確かにヴァンパイアは強大だ。一体だけでもヒトでは紙くずのように殺されてしまう。それだけの力の差がある。
 ユーベルコードの有無ではない。絶対的な生物としての性能差が根底にある。それが恐怖となって人々の心を縛り上げるし、彼らを立ち止まらせる諦観の源でもあったのだ。

「では、どうすれば……」
「わかるだろう。数多の死線をくぐり抜けてきた戦士たちよ。貴様たちであれば、いずれ自ずと導き出すことであろうが」
 そう、人の優れたるは群であること。か弱い生命であっても、何故歴史を紡いでこられたのか。文明という名の武器を手に入れることができたのかを知る。
「教えることだ。伝えることだ。紡ぐことだ。貴様らにはそれが出来る。余が貴様たちに戦術を授けるのと同じように」
 ギージスレーヴは伝える。ヴァンパイアたちが、どのようにしてこの砦を圧殺しようとしているのかを。

 黄昏大隊・突撃部隊(アーベントロート・トルッペン)がギージスレーヴの背後に居並ぶ。
 その姿は壮観であったし、敵を威圧する恐ろしさに満ちていた。
『闇の救済者』たちはひるまなかった。
 これが己たちが立ち向かわなければならない敵の姿であると知っていたからである。亡霊兵たちを前にしても彼らの瞳に怯えの色はなかった。
「この砦に用意された防壁……これを敵が攻略しようとする時、必ず幅広く展開し、防壁に取り付こうとするだろう。或いは、一点突撃からの門の破壊。数カ所に意識を惹きつけた上で別方向からの奇襲。ありとあらゆる戦法を奴らは取ってくるかもしれない」
 亡霊兵たちの動きが変わる。
 その様子を『闇の救済者』たちは観察する。経験が足りないのならば、知識で補えばいい。知識は現実に干渉しない。
 戦場は常に混沌だ。何が起こるかわからない。

 けれど、それは敵にとっても同様のことだ。
「敵の動きを知り、己の知識の中で如何に組み立てるか。同判断するか。各々の戦術にどう対処すればよいか。考えろ。伝えられることは人の利点ではあるが、得たものを如何にして活かすかは貴様たちだ」
 ギージスレーヴは示すだけだ。
 伝えるべきことは伝えた。人は弱い。ヴァンパイアに劣る。されど、優るを得るよりも、補うことができる生き物だ。

 その集大成を見せる時が近づいている。
「いつだって人は殺されてしまうかもしれない。けれど、負けるようにはできていない。それを奴らに知らしめる。その機会が巡ってきた。そう思うべきだ」
『闇の救済者』たちは未だ成熟していない。
 それは未熟と呼ぶものであったかもしれないが、同時に可能性と呼ぶべきものでもあった。
 ならば、勝利の目は舞い込んでくる。
 戦うことだけを目的とした者には、人は決して負けはしない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……今更と言えば今更だけどユーベルコードと言うのも謎だね……
…オブリビオンと猟兵だけならともかくも現地の一般人も覚醒しうる物…本当に何なのだろう…
…その解明のためにもここで彼らに倒れて貰っては困るね…

…【歌い働く小人の夜】を発動…出現したガジェットの半数には城壁の材料探しと加工を…
……もう半分には周辺に出来る限り城壁を積み上げて貰うとしよう
…ガジェットが働いている間に私は医療施設を訪問…
…医療製薬術式【ノーデンス】を併用して今までの戦いで出た怪我人を治療するよ…
…ついでにこれからの怪我人のために薬師と相談して薬を用意しておくとしようか…



 ユーベルコードとは如何なるものか。
 力であると応える者もいるであろうし、オブリビオンと戦うために必要なものであると応える者いただろう。
 今更ではあるけれど、とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は呟く。
 そう、ユーベルコードに覚醒しかけている『闇の救済者』たちがいる。
 彼らはこれまで隷属と支配によって虐げられてきた者たちだ。猟兵とは異なる者達。世界に選ばれた戦士である猟兵がユーベルコードを使うことは理解できる。
 けれど、そうではない者達が何故ユーベルコードに覚醒数するのか。
「本当になんなのだろう……」
 メンカルは未だ己の知らぬ真理があることを知る。未知なるものがあることを自覚するものこそが賢者であるというのならば、メンカルはまさしく賢者であったことだろう。

「……その解明のためにも此処で彼らに倒れて貰っては困るね……」
『闇の救済者』たちの拠点は徐々に強化されている。
 そして、彼ら自身も猟兵達によって練兵されている。ユーベルコードに覚醒しかけている者たちが未だ三人ほどの若い男女であることを覗いたとしても、ヴァンパイアの軍勢と戦うには足りない。
「匠の小人達よ、縫え、繕え、汝は改修、汝は技巧。魔女が望むは集い仕上げる錬磨の技」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
 歌い働く小人の夜(リトル・マイスターズ)。それは小型の修理・改造用のガジェットの召喚であった。
 それは即座に築き上げられている城壁へと取り付き、加工していく。だが、材料となるものが圧倒的に不足している。
「半数は材料探しに……もう半分は周辺に出来る限り城壁を積み上げて……」
 バリケードが城壁に変わりゆく姿を見やりながら、メンカルは負傷者達がいるテントへと訪問する。

 すでに他の猟兵によって負傷者の傷は癒えている。
 けれど、メンカルはそれだけでは一時しのぎにしかならないことを理解する。
「……薬は、ないか……」
「不足してるのもありますが、その知識を持っている者がいません……」
『闇の救済者』たちにとって、それは致命的であった。
 傷が癒えたとしても、また戦いに際して傷を追った者たちを的確に処置を下せるものがいない。
 いたとしても数が少なすぎる。
 これからもヴァンパイアとの戦いは続くだろう。そうした時、『闇の救済者』たちはヴァンパイアたちにジリジリと削られて摩耗していくしかない。

 それを防ぐためにメンカルは医療製薬術式『ノーデンス』を展開する。
「……薬師もいないんだね……?」
「はい。知識ある者はヴァンパイアに殺されてしまいましたから……」
「……なら、今日から君が薬師だ。これからがあるのだから……」
 メンカルは『闇の救済者』の一人に知識を伝えていく。時間が足りないのはわかっている。
 けれど、消毒や傷口の処置、そうした知識を僅かでも伝えることが彼らの生存率を上げる。
 正しい処置ができれば助かった生命をこれ迄多く取りこぼしてきたはずだ。その取りこぼしてきた生命に報いるためにはこれしかない。

「……薬も用意していく。ここで調達できる材料ばかりではないかもしれないけれど、他のものでも代用ができるかもしれない。そうした時、君の知識が役立つ。きっとね……」
 伝えられた『闇の救済者』は力強く頷く。
 できることをやったとしても、成果は得られないかもしれない。
 どれだけやっても足りないことばかりなのが、この常闇の世界の現実だ。だからこそ、彼女は全てが徒労に終わるのだとしても、諦めないだろう。

 メンカルは、その意志宿る瞳を見やるからこそ『闇の救済者』に知識を伝えていく。これが人の営みだ。伝え、紡ぎ、繋いでいく。己達猟兵の戦いにも似ている。いつだって、人は立ち止まることをしない。
 立ち止まることは諦めること。
 ならば、此処に生きる『闇の救済者』たちは誰ひとりとして立ち止まらない。その意志の輝きが今も篝火として暗闇を切り裂くように瞬いている――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
うっわ、あいつかぁ…
手段と目的が逆転どころかハナから同一の類だからホント厄介なのよねぇ…

幸い多少の時間はあるようだし、準備はできそうねぇ。
●必殺を起動、描くのは神聖文字(ヒエログリフ)。ヒエログリフは表音文字であると同時に象形文字、その分種類がすごく多いのよねぇ。こういう状況で数は最大の力、どんどん人員召喚してガンガン建設しちゃいましょ。

あとは色々と仕込みしましょうか。地雷に逆茂木、殺し間構築。これでも多少〇拠点防御と罠使いには心得あるのよぉ?
兵は詭道也…わざわざ真っ向戦争吹っ掛けに来てくれるんだもの、こっちも正々堂々真正面から不意討たなきゃ失礼ってものよねぇ?



「うっわ、あいつかぁ……」
『戦争卿』という名を聞いた時、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は思わずげんなりとした顔をしたことだろう。
 そのオブリビオン、ヴァンパイアの名を彼女は知っていた。
 支配や隷属、恭順と言ったものには何一つ感情を動かされることのないヴァンパイア。そして、彼が求めるのは常に叛逆と反抗といったものであった。
 そのために戦う。
 いや、戦争を引き起こす。
 被害など度外視。あるのは破滅願望のみ。
 それに突き動かされ、そして己の欲望のみに於いて破壊を撒き散らす。それが『戦争卿』という存在であったのだ。

「手段と目的が逆転どころか、ハナから同一の類だからホント厄介なのよねぇ……」
 そこには打算も妥協もない。
 あるのは純粋な欲求を叶えるためのシンプルな行動原理のみ。
 故に、彼に狙われたのならばどちらかが滅びるまで戦い続けなければならない。
「幸い多少の時間はあるようだし、準備はできそうねぇ」
 とは言え、『闇の救済者』たちの砦、拠点はそう頑強ではない。これまで多くの戦いを経験してきたのだろう。
 防壁はあちこち崩れているし、今も猟兵達によって修復と強化が施されている。

 ティオレンシアの瞳がユーベルコードに輝く。
「古人に曰く、勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求むる。事前準備は大事よねぇ?」
 描くのは神聖文字。
 それは表音文字であると同時に象形文字でもある。
 彼女のユーベルコードは、その魔術文字が象徴する物品、動物、人間を召喚する力である。彼女が描く文字は雑多を極めた。
 極めて数が多いということもあって、ティオレンシアが手繰る魔術文字が象徴する存在は、戦う力に乏しくとも、その生来の力を活かし、十分な時間があれば城や街を築き上げることさえ可能なのだ。

 事前の下準備こそが全て。
 ならば、彼女のユーベルコードは、ヴァンパイアに対する必殺(コンストラクション)となり得るだろう。
「こういう状況では数は最大の力」
 どんどん人員とした召喚されていく者たち。ティオレンシアは彼らが築き上げていく高い城壁を見上げる。
 他の猟兵たちも城壁こそがヴァンパイアから『闇の救済者』たちを守り、この戦いの後にも残るものであることを知る。だからこそ、こうして城壁の構築に腐心しているのだろう。

「あとは色々仕込みましょうか」
 地雷に逆茂木。さらに地形を生かした十字砲火の出来る殺し間の構築。
 拠点の防御という点に於いてはティオレンシアは『闇の救済者』たちよりも一日の長があった。
 罠を扱うのもお手の物である。地雷に関しては再現性が難しいが、落とし穴のようなトラップであれば『闇の救済者』たちも事前に準備することができるだろう。
「敵は確かにヴァンパイアという人よりも強靭な生き物でしょうよ。けれど、こうした単純な罠であっても効果がある」
「それで、この進路に誘い込めばいいんですね?」
「そうそう。兵は詭道也。敵が自身の身体能力故に備えていないところを攻めるべしってね」
 ティオレンシアは『闇の救済者』たちとと言葉をかわしながら、罠を設置していく。

 敵はわざわざ真っ向から戦いを挑んでくる。
 それは己たちの力に自負があるからであろう。それを裏付けるだけの支配と隷属をこれまで行ってきたヴァンパイアたちだ。それも当然であるだろう。
 けれど、ティオレンシアは人の戦いはそうではないと告げる。
「こっちも正々堂々真正面から不意討たなきゃ失礼ってものよねぇ?」
 人はヴァンパイアに劣る。
 これは変えようのない事実だ。どうしようもないことだけれど、その力の差を埋めることができるものをティオレンシアは知っているし、『闇の救済者』たちもまた持っている。

 恐怖と支配に抗うために必要なのは、いつだって勇気だ。智慧が、それを支え、意志が歩みの背中を押す。
 そうして彼らが積み上げてきた勝利という名の礎が、いつの日にか燦然と輝くのだとティオレンシアは確信しているのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『怨魂術士』

POW   :    永遠に続く怨嗟の螺旋
自身が戦闘不能となる事で、【仲間を殺した】敵1体に大ダメージを与える。【怨魂がもたらす恐怖】を語ると更にダメージ増。
SPD   :    浄化されぬ怨みの魂
【死して怨魂と化した仲間達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[死して怨魂と化した仲間達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
WIZ   :    救われなかった魂達の嘆き
自身の【使役怨魂】から【呪縛慟哭】を放出し、戦場内全ての【敵の機動力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。

イラスト:nii-otto

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『闇の救済者』たちの拠点は、猟兵たちの協力を得て、強靭な城壁と光の刃による結界を構築するまでに至った。
 光の刃は一時しのぎでしかない。
 けれど、その防壁は迫るヴァンパイアの軍勢『怨魂術士』たちの力を大きく削ぎ落とし、戦いを優勢に進めるだろう。

 そして、『戦争卿』が率いる彼らは策を弄することはない。
 ただ真っ向から強大な力で持って『闇の救済者』たちをすり潰そうとしている。一見すると破滅的な行軍であった。けれど、それこそが『戦争卿』の求めるものであったのだ。
「進め」
 たった一言。それだけであった。彼の言葉に『怨魂術士』たちは行軍する。進む先にどれだけの罠が仕掛けられていたとしても関係ない。
 罠すらも押しつぶし、すりつぶすように彼らは『闇の救済者』たちの砦へと突き進む。

 仕掛けられた地雷が炸裂し、逆茂木などによって侵攻は遅滞すれど、それでも城壁に取り付き破壊せんと迫っている。
「敵の勢いがこれまでより弱い……!」
「ああ、これなら引き込んで戦うことができる。奴らの数を利とさせない戦いが!」
『闇の救済者』たちが動く。
 彼らは猟兵達による練兵によって短時間であれど、地力も手伝って底上げされている。決して一対一にならぬように連携し、ヴァンパイアの軍勢に多くが持ちこたえている。

 誰も失わせない。
 その一念において、彼らは戦っている。
「戦いに際しては心に平和を」
 そして、彼らの心には恐怖もまた介在する。忘れてはならないこと。戦う時に高揚に身を任せてはならぬこと。
 彼らは一人ひとりが精鋭に成長しようとしていた。

 猟兵達は飛び出す。この戦いを率いる『戦争卿』を仕留めるために、まずはこの『怨魂術士』たちを蹴散らさなければならないのだ――。
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

この世界の人と直接関わるわけにはいかないから、手は貸せなかったけど……
ただ戦うだけなら、僕がでしゃばっても許されるでしょう
協力して動けないのは、僕の性だけど

フードを目深に被って顔とか身体は、現地の人に見られないようにしておかはいと、怖がらせちゃうかもしれないからそれだけ気を付けて、と

始めようか
真っ向勝負なんてどうでもいいけれど、この経験は彼等の成長に繋がるだろうしね
死んでもまだ執着するその心は羨ましくあるけれど、全部焦がし尽くしてしまおう
広い範囲を焼却して、一ヶ所に集まるなら武器を斧に変えて叩き潰すよ
寿命なんて必要ないし、仲間を攻撃することはしないよ



 戦いの傷はいつだって刻まれる。
 光を失くした瞳が見つめるのは、常闇の世界だけであった。炭化した右腕をふるう痛ましさは、見る者にとってはそうであっても、ふるう者にとっては関係のないことであった。
 誰も巻き込まぬようにと周りとの関係を自ら立った少女が常闇の戦場に降り立つ。

 できるだけ早く戦いを終わらせる。
 それはともすれば、その心の叫びであったのかもしれない。
 ただ終わることだけを望む心が、肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)を『闇の救済者』たちと関わらせることを拒んでいた。
 拠点の強化は必須。
 けれど、自身が人と関わることを良しとしないがゆえに手を貸す事はできなかった。

「――でも」
 そう、『闇の救済者』たちの砦に迫るヴァンパイアの軍勢を前にすれば話は別だ。
 ただ戦うだけならば。
「僕がでしゃばっても赦されるでしょう。協力して動けないのは僕の性だけど」
 目深に被ったフードの裾が風にはためく。
 目の前に迫るのは『怨魂術士』。
 彼らは猟兵と『闇の救済者』たちが張り巡らせた防壁と罠によって失った仲間たちの力を持って、その肉体を強化している。
 恐るべき力だ。
 この軍勢にあるのは、破滅的な願望。滅びることを前提とした戦い方は、彼らに強化をもたらし、『闇の救済者』たちを蹴散らすだろう。

「それは許さない」
 ミサキは己の姿に『闇の救済者』たちが怖がらせてしまうかもしれないと思いながら、手にした大鎌を一閃させる。
「始めようか」
「我らの滅びを齎すのはお前か。それとも別の誰かか。だが、そんなことなど関係ない。我らは終わるだけだ。『戦争卿』に従い、求めるものを捧げる。それだけが我らの怨恨を晴らす唯一の術なれば」
 倒されてもなお大波のように迫る『怨魂術士』達。
 彼らは途切れることなくミサキへと迫りくる。倒されても、その倒された事実さえも彼らの強化となって、さらなる脅威となる。

 その強靭な一撃は『闇の救済者』たちでは耐えられない。
 真っ向勝負などどうでもいい。けれど、この戦いの経験が『闇の救済者』たちの成長につながるのならば、それでいい。
「その怨恨、晴らすためだけに死んでも尚執着する心は羨ましくあるけれど……」
 同じ終わりを求める者であっても、こうも違うものであろうか。
 ミサキの瞳がユーベルコードに輝く。
 両岸の煌きは、焦げ付いた陽光(ブラックサン)を生み出す。
 漆黒の高熱球体となったユーベルコードの輝きは、発生する光線でもって『怨魂術士』たちを薙ぎ払っていく。

 凄まじい光線の数。
 まるで燦然と輝く太陽のように常闇の世界を切り裂く光。異端の神の血を受け継ぐ彼女ならではの力の発露であったことだろう。
 手にした大鎌が斧に変わり、尚も迫る『怨魂術士』の強化された肉体を叩き潰す。
 己の生命が、寿命が削れる。
「あのユーベルコードは、生命を削る……! 駄目だ、それ以上は貴方が!」
 ユーベルコードに覚醒しかけている『闇の救済者』だからこそ気がつけた。ミサキのユーベルコードは他者を攻撃しなければ寿命が削れる力。
 けれど、ミサキは構わなかった。

 自分に寿命が必要であるとは思えなかったからだ。
 制止の声をミサキは聞かないふりをした。その優しさは自分に向けられていいものではないし、自身もそれを望んでいない。
「滅びを受け入れているか、猟兵! 我らを滅ぼし、他者のために終わらせようというのか!」
「消えなよ、君」
 ミサキは仲間を攻撃することはなかった。
 寿命が削れる。痛みが魂に走る。けれど、それでいいのだ。その痛みこそがミサキを今に駆り立てる証。

 故にミサキはフードを目深に被ったまま、その奥で煌めく両眼のままに迫りくる大軍を光線で押し留め続け、その生命を使う。
 終わりはまだ来ない。
 まだ戦わなければならない。
 けれど、それが誰かのために生命を懸けることであるというのならば、ミサキは他の誰かもまた戦わなくて済むように、己の生命を懸けて戦い続けるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
いよいよオブリビオンのお出ましね。砦に手こずってくれたなら、改築した甲斐があるわ。

弓用意! 斉射!
彼らには鍛錬だけじゃ得られない実戦経験を、少しでも積んでもらわないとね。

後は引き受けるわ。
「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「仙術」「道術」で紅水陣。
敵のなるべく密集してるところに展開しましょう。

反撃は、機動力を奪うユーベルコードか。砦に籠もる籠城戦に、それは無意味。安全な場所から弓矢の雨が飛んでくるだけよ。
城攻めには向かないオブリビオンだこと。

闇の救済者の皆は、実戦に慣れてきたかしら?
この程度の相手なら、不意を突かれない限りどうにかなりそうね。
とどめは任せて。溶かし尽くすから。



『戦争卿』の率いる『怨魂術士』の軍勢は、猟兵たちの思う以上の大軍であった。
 けれど、猟兵たちも何も無策で戦いに及んだわけではない。
 城壁を築き、さらには手数の少ないこちらからでも敵を仕留めることのできる引き込んでからの十字砲火による敵戦力の減退、そして罠による敵の侵攻を遅らせることに成功していた。
「弓用意! 斉射!」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)の掛け声と共に弓矢が降り注ぐ。
 だが、これで『怨魂術士』たちが倒れてくれるわけではない。消耗させる程度の効果しかなくとも、ユーベルコードを手繰る者がいれば、その負担は大きく減るだろう。

 実際に『闇の救済者』のユーベルコードに覚醒しかけている男女たちの働きによって打ち倒される『怨魂術士』は少なくはなかった。
「いける……! これなら!」
「無駄だ。たとえ、一人二人倒した所で、滅びは必ず来る。我らが救われなかったように――!」
『怨魂術士』たちの咆哮が轟く。
 それは怨嗟による咆哮。自分たちが救われなかったという悲哀。彼らもまたオブリビオンにしてヴァンパイアの眷属。
 かつては、この世界に生きた者であったのかもしれない。
 救われた者と救われなかった者。

 分かたれたのは何故か。
 運命であったというのならば、これほどまでに残酷なことはなかっただろう。
「でも、砦に手こずってくれたのなら、改築した甲斐があるわ。後は引き受ける」
 ゆかりが飛び出す。
 城壁から飛び降り、咆哮によって動けなくなっている『闇の救済者』たちを救い、後退させる。
 この戦いにおいて退くことは即ち敗走ではない。
 引き込み、敵を撃滅する術策と同じようにゆかりのユーベルコードに彼らを巻き込まぬためでもあった。

「少しでも多く経験を積んでもらいたいけれど、死んだら元も子もないから!」
 ゆかりの瞳がユーベルコドに輝く。
 紅水陣(コウスイジン)は、真っ赤な血のような全てを蝕む強酸性の雨を降らすユーベルコードである。
 戦場全体があらゆるものを腐食させる紅い靄の中に沈む。
 それは敵味方の区別ない力。

 だからこそ、『闇の救済者』たちを巻き込むわけにはいかない。彼らは城壁の安全な場所から矢を放てばいい。
 そして、ゆかりを中心に展開された強酸性の雨は、紅い靄と共に『怨魂術士』たちを飲み込んでいく。
「敵の機動力を奪うユーベルコードか。砦にこもる籠城戦に意味のないことであったわね。寧ろ、滅びることを前提としたような……」
 ゆかりは考える。
 敵の特性を考えた時、『怨魂術士』たちの本領は勢いに乗っているときではなく、むしろ、劣勢に立たされた時だ。

 ならば、この戦いの真意はそこにある。
「滅びれば滅びるほどに単一の力が増していく……破滅思想に染まりきっているから、そんな戦法が取れる!」
 ゆかりのユーベルコードが煌めく。
 この『怨魂術士』たちを砦に近づけさせてはならない。取り憑かれれば、それだけで城壁が破壊されてしまう。
 破壊された一箇所から敵がなだれ込めば、それだけで拠点は終わる。

「みんなは実践に慣れてきたころかしら……弓矢を使うの初めてみたいだったけれど……」
 降り注ぐ弓矢をゆかりは見やる。
 強酸性の雨を逃れても、消耗しきった『怨魂術士』たちには弓矢がとどめを刺す。不意をつかれない限り、彼らが崩れることはないだろう。
 できるだけ多くを残すための戦い。
 奪われ、消耗することだけは避けたい。ゆかりは、戦いの推移を見やる。敵の軍勢は単調に、いや、愚直に真正面からぶつかっている。

 これが『戦争卿』のやり口であるというのならば、戦いが長引けば長引くほどにヴァンパイアたちに傾いていく。
 自滅的な戦いに見えて、最終的に勝つことは変わりない。
 結果が見えているからこそ、真っ向勝負。
 それがオブリビオンの、ヴァンパイアとしての驕りであることをゆかりは知らしめんと、紅い靄の中を突切り、『戦争卿』の姿を探すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
彼らはよく持ち堪えているようだ。
なれば後は余らの仕事だな。その奮戦、結果に繋げてみせようとも。

砦に拠って戦うとする。
黄昏大隊・歩兵部隊発動、闇の救済者達の戦線を補強する形で兵達を配置。其々にライフル射撃で攻撃を行わせる。
敵が広く展開し浸透を狙うならば手分けして足止めしつつ頭数を減らしにかかり、一点突破を狙うならば火線を集中して食い止め、また索敵の目を皆で補う事により奇襲狙いの動きを察知できるよう努める。
先程教示した戦術の実践であるな。

余は義眼を介して敵の動きを【情報収集】。
ユーベルコードで此方の動きを封じんとする敵が居れば、魔導小銃で【スナイパー】し仕留めてくれよう。



 かつて救われなかった者たちの残滓の如き咆哮が戦場に木霊する。
 それはともすれば、哀切を帯びた声であり、同時にこの常闇の世界において人の生命が数多失われたことを示すことだろう。
 だが、『今』を生きる『闇の救済者』たちではヴァンパイアの軍勢である『怨魂術士』は救えない。
 たとえ、ユーベルコードであっても彼らの叫びに応える術は持っていない。猟兵もそうだ。
 救いがたき者というのはいつだって存在している。
「でも、だからって誰かの生命を奪っていい理由にはなっていない!」
『闇の救済者』の若人のユーベルコードが走る。
 その一撃を受けて猟兵のユーベルコードによって消耗した『怨魂術士』が崩れ去る。戦える、戦えている。ヴァンパイアを相手にしても、彼らは戦えているのだ。

「彼らはよく持ち堪えているようだ」
 ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は『闇の救済者』たちの戦いぶりを見やり、己の戦術講義が無駄ではなかったことを悟る。
 彼らは砂地に水が染み込むようにみずみずしく戦いの経験を積んでいる。このまま彼らが成長するのならば、いずれ将として目覚ましい活躍をするであろうことも機体できる。
「ならば、後は余らの仕事だな。その奮戦、結果に繋げてみせようとも」
 ギージスレーヴは駆け出す。
 この拠点での戦いは概ね『闇の救済者』に趨勢が傾いている。それは猟兵たちと彼らで築き上げた拠点の強化があればこそだ。

 だが、それでも数で勝る『怨魂術士』たちの勢いは止められないだろう。
「歩兵部隊、前へ!目標の完全沈黙まで全力にて攻撃せよ!」
 黄昏大隊・歩兵部隊(アーベントロート・ゾルダート)がその言葉を受けて前に飛び出す。
 アサルトライフルを構えた姿は、『闇の救済者』たちにとっては不可解な光景であったことだろう。
 黒光りする鉄の筒を持つ兵士たちが、殺し間……即ち、十字砲火を戦術に組み込まれた砦の要所に配置され、一斉にその引き金を引く。
 射線が交差するように廃された兵士たちが放つ弾丸は、一斉に迫る『怨魂術士』たちを貫き、その姿を霧散させていく。

「――……! 我らを撃滅するつもりか。その前に城壁に取り付く」
『怨魂術士』たちの動きは素早かった。
 十字砲火で一気にこちらの戦力が削られると見るやいなや、一点突破で城壁に取り付こうとするのだ。
 けれど、ギージスレーヴはそれを見越していた。
 広く展開していた『怨魂術士』たちの戦線。それをやめ、一点を突破しようとしている。十字砲火をかいくぐるのは恐らく無理だ。
 だからこそ、彼らはその十字砲火の及ばぬ点を選び、『闇の救済者』たちを蹴散らしながら突き進もうとする。

「やはり一点突破を狙うか」
 ギージスレーヴはその義眼を介して敵の動きを察知する。あの一点突破は、味方が倒れれば倒れるほどに強化される『怨魂術士』たちのユーベルコードを使ってのものであろう。
 そうなれば、『闇の救済者』たちでは止められない。
 だが、それをさせぬのが『闇の救済者』たちのユーベルコードに覚醒しかけている若人たちである。
 彼らのユーベルコードが煌き、一点突破の勢いに呪うとする敵の侵攻を遅らせる。叩きのめすことはできなくても、ギージスレーヴが次なる一手を打つための時間を稼ぐのだ。

「敵の機先を削ぐか。先程教示した戦術の実践であるな。見事だ!」
「教えて頂きましたから……! でも!」
「僕たちでは、これくらいしかできません!」
「上出来だ。ならば次の一手をなんと考える」
 ギージスレーヴの言葉に『闇の救済者』の若人が告げる。そう、敵の機先を潰した。そして、こちらが一点突破を潰そうとすると同時に、敵もまたこちらの柔軟な対応を潰そうとするだろう。

「こちらの機動力を奪うこと……!」
「正解だ――」
 義眼が見据えるは『怨魂術士』の先駆け。それを捉えた瞬間、ギージスレーヴは己の魔導小銃を構える。
 引き金を引いた瞬間、その弾丸は『怨魂術士』の眉間を貫き、霧消させる。
「敵の奇襲は常に、その初動を潰してしまえば意味のない行動に変わる。知識は知識でしか無い。それを実践し、実感してこそ初めて己の血肉になり得るのだと知れ」
 ギージスレーヴは『闇の救済者』たちと共に戦場を駆ける。
 未だ戦いは終わらず、そして、続く。

 敵の首魁を討ち果たすまで戦いが続くというのならば、刻一刻と変わっていく戦場を見定め、これを討たねばならない。
「続け、余達が血路を開く」
 ギージスレーヴの声が響き渡り、戦場に戦意高揚した『闇の救済者』たちの雄叫びが救われなかった者たちの悲哀たる咆哮を塗りつぶすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神樹・鐵火
死ぬ時は負け惜しみを吐いて道連れか?下らんな

【覇気】を纏わせ、広範囲に『紅炎断罪』の剣を【投擲】する
そいつが刺されば、お前達が呪詛を吐けば吐く程、お前達は燃やし尽くされる
死にたくなければ永遠に黙れ、あぁ、貴公らはとっくに死んでいたな...
なら好きなだけ喚き散らすがいいさ
ダメージはエネルギー体状態の龍拳の【全力魔法】で受け止め、その呪詛をそっくりそのまま【カウンター】で返してやるさ
態勢が崩れた所に聖拳の【衝撃波】で【焼却】する追撃を加える



 争いが起こる時、其処には確実に負の感情が渦巻くものである。
 止めようのない感情。激情とも言っていいだろう。それは人の力を膨れ上がらせる。時に本人が意図せぬ力を引き出すこともあるだろう。
 だが、激情にかられて戦う時、必ずと言っていいほど人は違える。
 だからこそ『闇の救済者』たちの心にある言葉が活きるのだろう。
「戦いに際しては心に平和を。平和を思え。そうすれば、その激情は力に変わるだろう」
『闇の救済者』達は拠点に攻め入る『怨魂術士』たちを迎え撃つ。
 障壁と城壁によって、彼らの力は減ぜられている。
 今こそ、彼らを打倒しヴァンパイア支配を覆さなければならない。

「我らを滅ぼすか。人風情が。我らを、この怨恨を、救われなかった者たちの哀れなる咆哮をなかったことにするのか」
 咆哮にも似た糾弾するかのような声。
 恨み節と捉えられるかも知れない。
 神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)にとって、それはそのとおりのものでしかなかった。
「死ぬ時は負け惜しみを吐いて道連れか?」
『怨魂術士』のユーベルコードが炸裂する。怨恨が齎す恐怖を語る言葉は、末代まで祟らんとするかのようであり、それが筋の通らない恨みであったとしても、対峙

する者たちに恐怖を抱かせるには十分であった。

 だからこそ、鐵火は吐き捨てる。
「くだらんな」
 覇気をまとわせた紅炎断罪(コウエンダンザイ)の一撃が、怨恨の咆哮を断ち切る。『闇の救済者』には届かせない。
 その怨恨は過去よりの咆哮でしかない。『今』を生きる者たちに届けていいものではないのだ。
 だからこそ、鐵火は己の一撃で持って『怨魂術士』たちへと炎の手向けとするのだ。
 突き立てられた箇所から膨れ上がる炎。

 それは『怨魂術士』たちが抱く負の感情に比例するかのように、そしてその業を燃やし尽くすかのように膨れ上がって刃となる。
「我らの怨恨が断ち切られる。燃やし尽くされる。こんなことがあっていいわけがない。我らの怨恨こそ『今』を蝕むに値するはず。何故我らは救ってくれず、あれ

らだけが救われるのか」
 怨恨満ちている。
 戦場に溢れるのは、救われなかった嘗ての生命たちの残滓。

 鐵火は頭を振る。
「お前たちが呪詛を吐けば吐くほどに、お前たちは燃やし尽くされる」
 死にたくなければ永遠に黙るしかない。
 けれど、鐵火は再び頭を振るのだ。目の前のヴァンパイアたちはオブリビオン。すでに過去になり停滞する者達。
 変わることなどできない。
 死という終焉すら彼らには訪れない。故に己達の怨嗟を撒き散らすことでしか、その存在を証明できない哀れなる者たちなのだ。

「なら好きなだけ喚き散らすがいいさ」
 迫る咆哮。
『怨魂術士』たちが倒れる度に、力が収束していく。鐵火は見ただろう。倒れていく『怨魂術死』の中でたった一体立ち、その力を得て鐵火を見るユーベルコードの

宿る瞳を。
 あれこそが恨みの発露。
 何故、自分たちが救われなかったのかと世界を蝕む呪詛そのものに成り果てた過去の化身が放つ絶大なる一撃。

 それを鐵火は受け止める。
「世界を滅ぼすほどの嘆きか……だが、それもまたくだらん。到底及ばない。激情は身を滅ぼす。いつだって、それは変わらぬことだ。お前たちの力は確かに強大だ

ろうさ」
 受け止めた膨大なエネルギーの如き怨嗟の咆哮。
 それを受け止めた鐵火の掌が流水のごとく揺らめくようにして、咆哮のエネルギーを受け流し、そっくりそのまま『怨魂術士』へと跳ね返す。
 大地が砕けるほどの一撃。
「だが、最後に残るは怨嗟だけだ。心に平和を宿さぬ者には、それだけしかなくなってしまう。だから敗れるのだ」
 鐵火が飛ぶ。

 その手に握られたるは聖拳。
 振るわれる一撃は『怨魂術士』の体を捉え、一撃のもとに下す。
 戦場に立ち上る火柱。
 それは彼らの呪詛を焼き浄化する拳の一撃故。鐵火は揺らめく炎の中で振り返る。業火は消えることなく、この場に集まる呪詛を焼き滅ぼすのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…始まったみたいね。私は暫くこの光の護りの維持に努める

…外の軍勢は貴方達に任せるわ。闇の救済者達の援護をしてあげて

…相手は死霊術を使う吸血鬼の軍勢だけど、この結界で弱体化している
…今なら貴方達だけでもどうとでもなるはずよ

自身は前章で展開した光刃のオーラによる防御結界の維持を行いつつUCを発動
吸血鬼狩りの戦闘知識を持つ25人の狩人達を召喚して闇に紛れて戦場に向かわせて、
残像のように存在感を消して敵の索敵を逃れながら死角から死角へと切り込み、
浄化を施した武器で敵を乱れ撃つ光属性攻撃の集団戦術で闇の救済者達の軍勢を援護する

…さあ、彼らに教授してあげなさい。貴方達が身に付けた吸血鬼狩りの業をね



『闇の救済者』たちの拠点をめぐるヴァンパイアとの戦いの火蓋は切って落とされた。
 一気呵成に真正面から突破しようとする『怨魂術士』たちの大軍。
 それは拠点を強化していなければ、容易に突破されてしまうほどの勢いであった。『戦争卿』と呼ばれるヴァンパイアが率いる軍は強大にして練り上げられていた


 だが、正面から突き進む動きは『闇の救済者』たちにとっては想定通りであった。

 魔力刃の結界が突撃してきた『怨魂術士』の勢いを削ぎ落とす。さらに射掛けられる弓矢が更に消耗を強いる。
「この程度で我らが止まるものか。我らの怨恨は、嘆きは、悲哀は、ここで終わるものではない。お前たちもまた闇に染まるべきなのだ」
『怨魂術士』たちは、これまで倒された同胞たちの力を得て、精錬されるかのように力を巨大なものへと変えていく。
 真正面からぶつかってきた理由はこれだ。
 彼らは倒されれば倒されるほどに、強化されていく。そのための罠すら顧みない突撃。自滅的とも言える戦い方を押し付けている。

「……始まったみたいね」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は戦いの序盤が終わり、『闇の救済者』に傾きかけた趨勢を覆すヴァンパイアたちの軍勢を見やり呟

く。此処が正念場の始まりだと知る。
「私は暫くこの光の護りの維持に務める……外の軍勢は貴方たちに任せるわ」
 そう呟き、リーヴァルディが見つめるのは己のユーベルコードによって召喚された、吸血鬼狩人たちであった。
 かれらはリーヴァルディより完全に離れることはできないが、戦いに挑む『闇の救済者』たちを援護することはできる。

「……相手は死霊術を使う吸血鬼の軍勢だけど、この結界で弱体化している……今なら貴方達だけでもどうとでもなるはずよ」
「でも、貴方が護られなくなる。この結界は貴方が要のはずだ」
「……心配は無用。貴方達が戦ってくれるのならば、この結界は必ず維持してみせる」
 そう告げるリーヴァルディに『闇の救済者』たちは覚悟を決める。
 召喚された吸血鬼狩人たちは25人。
 戦わなければ生きることさえできないというのならば、此処は死地そのものだ。そして、そのために生命を懸ける、懸けてくれている人がいるのならば『闇の救済

者』たちは戦わずにはいられない。

 託されたように、これから託す。
 リーヴァルディは彼らの背中を見送る。維持する光の護りは確実に『怨魂術士』たちを弱体化している。
 どれだけ強化されていったとしても、その力が及ばぬことはないのだ。
「……さあ、彼らに教授してあげなさい」
 リーヴァルディは誰に言うでもなく呟く。
『闇の救済者』たちの背中がいつの日にか人々を率いる将へと成長することを幻視する。彼らこそがこの世界に生きる者であるのならば、彼らこそが戦わなければな

らない。勝ち取らなければならない。

 光弾が乱れ撃たれ、吸血鬼狩人たちが『闇の救済者』たちの至らぬをカバーする。いや、カバーするというのは最早必要なかったのかも知れない。
 闇に紛れる狩人たちの援護を受けずとも『闇の救済者』たちは立派に戦っている。経験を得て、その横顔はいつしか戦士へと変わっている。
 奪われ、隷属するしかなかった日々はもう彼方に置き去りにされている。
「……貴方達が身につけたのは吸血鬼狩りの業……」
 吸血鬼狩りの業・血盟の型(カーライル)。
 それこそが彼女のユーベルコードにして、業である。人は負けはしない。どれだけ怨恨に満ち、呪詛の塗れた咆哮が轟こうとも、決して負けはしない。

 屈すること無く紡がれてきた抵抗の意志の煌きは美しさすら感じさせるだろう。
 リーヴァルディが託された誓いは、今此処に一つの分水嶺を迎える。
 今一度人類に繁栄を。
 そう願い、願われ、託され紡いできた誓い。
 それは数珠つなぎのように『闇の救済者』たちにも連なっていく。太く、大きくなっていく。
 誰にも冒せぬ意志の輝き。
「……我ら、夜と闇を終わらせる者なり……征きなさい……」
 その言葉に後押しされるように『闇の救済者』と狩人たちが戦場を切り裂くように突き進んでいく。

 もう二度と篝火は見失うことはない。
 その輝きに希望を見る者だけが、彼らに追従する。もはや、ヴァンパイアの支配は盤石とは言えないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
さあて、こっからが本番だな。
正直すげえ怖いけど、ここで踏ん張らないとあの人たちが安心できねえよな。

防衛は『闇の救済者』の人らに任せて、こっちは打って出る。
《我が涅槃に到れ獣》でクゥを呼んで騎乗。機動力を活かして射程・射線を確保しながら、〈破魔〉の力で怨魂を浄化したり、〈マヒ攻撃〉を撃ち込んで攻撃を妨害したりして、味方のダメージを抑えるように戦う。
適宜砦の状況も確認しつつ、砦からの攻撃に合わせて〈援護射撃〉を撃って支援したり、逆に向こうに支援してもらったり。
おれらは一人で戦うんじゃねえ。力を合わせるんだ。

もし他の味方が近くにいるんなら、そっちにも状況を見て〈援護射撃〉を飛ばして支援する。



「さあて、こっからが本番だな……力を貸してくれ、クゥ!」
 ユーベルコードが瞳に煌めく。
 心に恐怖は在る。
 当たり前だ。戦いとは恐ろしさを伴うものである。生命が失われてしまうかも知れない。
 生命にとって最も大切なことは生存することである。
 争いとは、その生存を守ることから対極にあるものだ。生命を奪い、奪われる。そこに恐ろしさを見いだせぬ者は、ただ無為に生命を散らすだけだ。

 生命の価値を知るからこそ、震えるのだ。
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はそれでも、我が涅槃に到れ獣(ア・バオ・ア・クゥ)とささやく。
 そのユーベルコードに導かれるように焔をまとった黄金のライオンが現れ、咆哮する。
 その咆哮は『怨魂術士』たちの怨嗟すらもかき消すほどであり、同時に『闇の救済者』たちにとっては、背中を押す心強きものであった。
「行くぞ……! 共に戦ってくれる人がいる!」
「ああ、頼りっきりではいけないのだ! 俺たちも行くぞ!」
『闇の救済者』たちが戦場に切り込んでいく。多くの猟兵たちの助けを受けて、彼らの拠点は強固になった。

 けれど、それだけでは『戦争卿』の率いるヴァンパイアたちを押し止めることはできなかったはずだ。
 戦う意志がなければ、忽ちのうちに滅ぼされてしまっていただろう。
 恐怖を踏み越え、心に平和を持つからこそ、彼らは震えを抑えるのだ。
「正直すげえ怖いけど、ここで踏ん張らないとあの人達が安心できねえよな」
 嵐は黄金のライオンに騎乗し、一気に戦場に駆け込んでいく。
 大地を蹴る度に、景色が目まぐるしく変わっていく。吹き荒れる呪詛。敵が倒れる度に、敵の力が強化していく。

『怨魂術士』のちからは、味方が倒れるほどに強化されることこそが本領である。即ち、戦いが長引くほどに彼らにとって強大な個体が生まれることになる。
「なら、最後の一人になるまで討ち滅ぼすまでだよ!」
 黄金のライオン『クゥ』の機動力があれば、どれだけ強化された攻撃であろうと当たることはない。
 構えたスリングショットから放たれる弾丸が『怨魂術士』を討ち貫く。
「我らの呪詛は払えぬよ。我らがそれを望んでいないからだ。我らが望むのは破滅のみ。我らを救わなかった世界を滅ぼすのに何の躊躇いがいる。何の後ろめたさが

ある。全ては」
 己たちを救わなかった世界が悪いのだと、怨嗟が満ちていく。

 それを貫くように嵐のスリングショットが弾丸を解き放つ。
「恨み節ばかりで世界が壊せるものかよ。あの人らを見ろよ! そんなものの為に戦っているか! 自分のためだけに戦っているか! あの人達はな!」
 嵐は叫ぶ。
 嘆きと悲哀だけを叫ぶ『怨魂術士』にはわからぬだろう。
『闇の救済者』達が何のために、誰のために戦うのかを。誰かのためにだ。自分のたためにではない。だから尊いと思うのだ。そんな彼らのためにこそ嵐は力を振る

いたいと思うのだ。

「嵐さん、避けろ!」
『闇の救済者』たちが砦から俯瞰して戦場を見渡し、嵐に叫ぶ。
 その言葉を聞き入れた嵐が『クゥ』と共に跳躍する。その背後から飛ぶ弓矢が『怨魂術士』を貫く。
 砦との連携も密になっている。嵐は語っただろう。己の心のなかにある恐怖を。そして、『闇の救済者』たちが抱く心の中の平和も。
 そうして得た対話は、決して無駄ではなかったのだ。
 人と人とは分かり合うことができる。
 どれだけ対話しても決して触れ得ぬ他人の心の奥底があることを知るだろう。それこそがわかり合うということだ。

 けれど、その奥底まで知れぬ他人のために生命を懸けることができるのが人だ。
 己の欲望のためだけに力をふるうヴァンパイアにはないものである。故に嵐は跳躍した『クゥ』の背からスリングショットを撃ち放つ。
「おれらは一人で戦うんじゃねえ――」
 炸裂する弾丸が『怨魂術士』を貫く。霧散する彼らの耳にはもう届くことのない言葉であることはわかっている。
 けれど、言わねばならない。
 人は決して一人きりでは生きられない生物だ。だからこそ、嵐は胸に恐怖を抱きつつも、決して恐怖に染まらぬ心を持つ。

 それこそが『戦いに際しては心に平和を』という言葉の真意であろう。
 染まらぬ、砕けて尚残るもの。
 それを多くの人々と共有するからこそ生まれる力。
「力を合わせるんだ。そうして生きていくんだよ、人はな」
 嵐の言葉が常闇の世界に溶けて消えていく。
 けれど、心の中に残るものが篝火のように嵐の恐怖を照らし、振り払うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

左護・結姫
【はるさご】
もう行くの~?まだ遊び足りないんだけど…
わわっ。ばいば~い、また遊んでね~
抱えられたまま春乃ちゃんの顔を見てみれば
…春乃ちゃん嬉しそう。良い子達だったね

春乃ちゃんに従い前へ
大振りな彼女の隙を埋めるように動く
消耗してる人がいれば、『黄昏』『東雲』で捉えて後ろに下げて貰おう
ごめんね。でも勇敢と無謀は違うと思うの。欠けていい人なんて、ここにはいないんだから
春乃ちゃんのUCに合わせて、私もUC発動
奪われないため。自由のため。
あの言葉には、驕りも疑いも無かった
きっと、みんな同じ想いなんだね
強い意志があれば、目覚めたばかりの力でも、十二分に戦えるはず
…頑張り過ぎてしまわないか、少し心配だけど


春乃・結希
【はるさご】
…始まったみたい。もう行かないと
うんそうやね私も遊んでたいけどね!敵来てるから!
左護さんを強引に抱えてダッシュ
英雄さん、また未来でー!
…うへへ。「お姉さんを守る」やって。ちょっとドキッとしちゃった

前線へ。けれど吶喊はせず、周囲の救済者たちと連携を取れるよう足並みを揃える
左護さんは何も言わなくても合わせてくれる。だから敵を倒すことだけ考える
みんなは間違いなく強いけど、数の違いは大きいから…押し返されそうになったら、UCを使用
でもこれは、みんなを支えるためで無く、私が勇気を貰うため
もう、このヒト達は猟兵に守られてるだけの存在やない
自分たちの力と意思で、未来へ進むことが出来るんだから



 常闇の世界に戦いの音が響き渡る。
 それは恐ろしさを感じさせるものであったし、恐ろしさは不安を呼び込む。幼子たちであれば、周囲の大人たちの様子に敏感にそれを察することができたであろう


 けれど、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)と左護・結姫(は幸せです。・f35408)と共にいた幼子たちは、そんな不安から程遠いものであった。
 彼女たちが意識してそうしたわけではないのかもしれないけれど、彼女たちの存在は幼子たちには心を預けるに値する存在となっていたのかもしれない。

 彼女たちの微笑みは、明日すらも掴めないかも知れない世界にあって、彼らの心を解きほぐすものであったからだ。
「……始まったみたい。もう行かないと」
 どこに行くの? と子供らが結希を見上げている。
 戦いは其処まで迫っている。大人たちは皆、戦いに駆り出された。生きるために戦うということはこういうことだ。
 日常がいつでも崩れ去る。
 その音を知るからこそ、結希は彼らに微笑む。
「もう行くの~? まだ遊びたりなんだけど……わわっ」
 結姫の言葉に結希は彼女の体を抱えて飛び出す。
「うんそうやね私も遊んでいたけどね! 敵来てるから!」
 彼女の耳元にいいながら、結希は子供らに振り返る。これから向かうのは戦場。何が起こるかわからない。不測の事態だってあるだろう。

 けれど、そんなこととは幼子たちが無縁であったらいい。いや、己たちがそうするのだといつものように、これまで毎日続けたようなきやすさで手をふるのだ。
「ばいば~い、また遊んでね~」
「英雄さん、また未来でー!」
 明日があるなんて誰も約束できない。けれど、今此処にかわされた約束はいつの日にか実を結ぶだろう。
 それを信じるからこそ、二人は駆け出すのだ。
 未来はわからない。けれど、明日を保証するために、あの幼子達が築く未来を守るためにこそ駆け抜ける。

「……うへへ。『お姉さんを守る』やって。ちょっとドキッとしちゃった」
「……春乃ちゃん嬉しそう。良い子たちだったね」
 結希が結姫をおろして、彼女の嬉しそうな顔に微笑む。誰かの微笑みはいつだって幸せを運んでくれる。
 だからこそ、護らねばならない。
 戦いに際しては心に平和を。
 その言葉は今も戦う『闇の救済者』たちに息づいている。彼らと足並みを揃えるように迫る『怨魂術士』たちと退治する。
 いつもならば、結希は吶喊したことだろう。けれど、今は『闇の救済者』たちと共に戦うことを優先しなければならない。
 彼らと共に戦い、敵を打ち倒すことこそが、あの幼子たちを守るために必要なことなのだ。

「ケガをしているひとは無理をしないで~」
 結姫の影が伸び、負傷している『闇の救済者』を後退させる。抱えるようにして彼らを保護するものだから、彼らはまだ戦えると影の中でもぞもぞしている。
 そんな彼らに結姫は告げる。
「ごめんね。でも勇敢と無謀は違うと思うの。欠けていい人なんて、ここにはいなんだから」
「だが……!」
「誰かがあの子達の親しい人だったのなら、あの子達の悲しむ顔なんて誰も見たくないと思うの」
 だから、今は退いて、と結姫は微笑む。
 奪われないため。自由のため。結姫が彼らから得た言葉には、驕りも疑いもなかった。
 みんな同じ想いであるからこそ、戦ってこれたのだ。けれど、彼女の言葉通りだ。

 無謀と勇敢を履き違えてはならない。
 それはともすれば、生命を失うことになるからだ。
「みんなは間違いなく強いけど、数の違いは大きいから……だから」
 結希の瞳が輝く。
 絶望に抗い、希望を結ぶ為に戦う者が己のそばにいる。それはどんなに心強いことだろう。
 此処に集った『闇の救済者』たちは皆そうだ。
 誰もが明日の希望を求めている。誰もが戦いたいと思わない。平和な明日が来ることを望んでいる。だから、今日という絶望に立ち向かっていけるのだ。

 それこそが、ネバーディスペア。
 絶望に抗う者たちの力を底上げするユーベルコードの輝く。
「これは、みんなを支えるためでなく、私が勇気をもらうため」
 心に集う輝きがある。
 篝火のような光。明日という希望。ならばこそ、明かる夜(アカルヨル)が来る。桜の花弁が闇をほのかに照らす。
 結姫のユベールコードが煌めく。
「強い意志があれば、目覚めたばかりの力でも、十二分に戦えるはず」
 本当はがんばりすぎてほしくはないのだけれど、と結姫は呟く。
 無理をすれば、多くを得られるだろう。けれど、無理をした時、壊れるのは体であり心だ。
 そんなことを『闇の救済者』たちにしてほしくない。

 けれど、結希は言うのだ。
「もう、このヒト達は猟兵に護られてるだけの存在やない。自分たちの力と意志で、未来に進む事ができるんだから」
 だから、邪魔をするなと結希はユーベルコード満ちる力と共に『怨魂術士』たちの群れを切り裂くように突き進む。

 たとえ、先の見通せぬ闇が目の前に広がっているのだとしても。
 それでも人は歩むことをやめられない。
 明日を願い、自由を思い、平和を心に宿すのならば。怨恨も哀切も悲哀も。
 何もかも切り開いて進むのがヒトであるとユーベルコードの輝きが、戦場に明日を照らすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01【操縦】
城壁外、結界の外に出現し、パワークローを【なぎ払い】怨魂術士を殴打。
レーザー砲台展開【レーザー射撃】

「…死者が、戦場の怨念が、生者を蝕もうとしている。
………させるモノか。あの光は、あの眩しいそれを…!」

『戦場の怪談』自覚なく発動。
【呪詛念動力】戦場内にある怨恨の魂を、奪い取る。
【エネルギー充填】戦塵霊物質として、ディスポーザブルに吸収して行く。
浄化でなく、救いを齎すのでもなく、ただ矛先を変える。
今を生きる者達を呪うのでなく、今を壊そうとするモノ共へと。

壊せ。
壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ――

無言の咆哮をあげて、敵を殲滅せんと、
ディスポーザブルを進撃させる。



 猟兵と『闇の救済者』たちが築き上げた拠点。
 砦と呼ぶに相応しい城壁と光の結界の外に、鋼鉄の巨人が降り立つ。
「……死者が、戦場の怨念が、生者を蝕もうとしている」
 鋼鉄の巨人『ディスポーザブル01』を駆る朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は睥睨する。
 戦場に満ちる怨恨。
 その源とも言うべきヴァンパイアの軍勢。
『怨魂術士』たちは救われなかった己たちの悲哀だけで世界を壊す。明日を望む者達の未来を奪おうとしている。
 それは過去という泥濘より伸ばされる手であった。

 己達だけが救われなかった。
「だから、我らが等しく滅びをもたらそうというのだ。我らだけが救われぬ世界などあってはならない。我らと共に滅びることこそが正しいのだ」
 その咆哮を聞いたものは、足を止めるだろう。
 小枝子もまた同様であった。
 鋼鉄の巨人『ディスポーザブル01』が降り立ったのは結界の外。満ちる軍勢の真っ只中であった。
『怨魂術士』たちの咆哮が巨人の足を掴むようでもあった。

「……させるモノか。あの光は、あの眩しいそれを……!」
 放出されるはサイキックエナジーと霊物質。
 戦場満ちるそれは、己の敵を無力化する。自覚なき咆哮。声無き咆哮。それは小枝子の心の中に吹き荒れるものであった。
 戦場の怪談(ホラーテネシティ)は此処に到れり。
 彼女の存在そのものが、戦場における怪異そのもの。
 鋼鉄の巨人より放たれる光線が『怨魂術士』を打ち据え、パワークローの一撃が彼らを薙ぎ払い、吹き飛ばしていく。
 呪詛を念動力に変える小枝子の力が『怨魂術士』の魂すら奪い取る。戦場に満ちる戦塵霊物質を吸収し、鋼鉄の巨人が吠える。

 浄化ではなく、救いを齎すでもなく、ただ矛先を変える。
『怨魂術士』は『今』を生きる者たちを呪う。
 それは救われなかったという思いが恨みに、呪詛に変わるがゆえである。だが、救われなかった者たちは、決して変わらない。
 過去になり、停滞し、オブリビオンとなったのならば、それは変えようのないことであった。
 故に、あの熾火の如き輝きを小枝子は失わせてはならないと本能で理解している。
「壊せ」
 誰かが言う。
 いや、小枝子自身が言うのだ。

 言葉に発し無くても、その言葉は戦場に満ちていく。
 壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ――。
 その思いだけが膨れ上がっていく。敵を殲滅せんと、鋼鉄の巨人が一歩を踏み出す。
 絶望の咆哮も、救われなかった者たちの悲哀も小枝子を止めることはできない。
 振るわれる光線と鋼鉄の腕の一撃を止められる者などいない。
 戦いとは常に壊し、奪うもの。
 故に小枝子は立ち止まらない。己の敵全てを叩き潰す。
「我らの怨恨をただ破壊するか。理解することもなく、意に解することもなく。ただ破壊だけを持って我らを――!」
 怒りが戦場に満ちている。
 けれど、小枝子は取り合わないだろう。彼らの怒りは、悲哀は、何もかもが独り善がりのものであるからだ。

 死せる者は変わらない。
 変わることができるのは生者の特権である。ならば、彼らの足かせとなることだけはさせてはならない。
「そこを退け、死者が生者の道を遮るな。世界は前に進んでいるんだ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
おれたち猟兵が前線にいる限り、拠点への侵攻はさせはしない。大丈夫だよ、前は任せてくれ。背中は頼んだ!
けども、負傷したら直ぐに下がって。激情に身を任せて特攻するのは果敢だが、自らが築いた砦を捨てても、お互いの命は拾う合うんだ。そうすればまた戦える

……トドメを刺したら発動かな。なら、瀕死の者から対処していこう。喉笛が鳴らなければ語る事もできないと推測して、首元目掛けてレイピアで刺突を狙いたい。それでも語るなら耳を傾けてやるよ
きみが語る恐怖より、彼らの方が強い恐怖を持っている。それは弱さじゃない。恐怖は語るものじゃない事を彼らはよく知っている
待っていたんだ。彼らは追ってきたきみたちを。前に進む為に!



『闇の救済者』たちの砦に侵攻する『怨魂術士』たちの勢いは削がれている。
 けれど、今も尚後退する気配はない。
「我らの怨恨に限りはない。我らが求めるのは生者の破滅のみ。救われなかった我らと救われたお前たちに如何程の差があるというのだ」
 何故生きている。
 何故生まれてきたのだと、『怨魂術士』たちは己の中にある悲哀を呪いに変えて解き放つ。
 倒れる度に、『怨魂術士』たちの力は増していく。
 彼らはそういう敵だ。そして、倒れたのならば己の敵に対して致命の一撃を放つ。何もかもが『戦争卿』の破滅的な願望のために存在しているかのような軍勢であ

った。

 勢いが削がれても、まるで道連れにするかのような戦いぶりに『闇の救済者』たちもまた傷ついていく。
「おれたち猟兵が前線にいる限り、拠点への侵攻はさせはしない」
「でも、それではあんたたちが……!」
「大丈夫だよ、前は任せてくれ。背中は頼んだ!」
 ギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)は笑いながら戦場に飛び出していく。
 不安も恐怖も吹き飛ばすように朗らかに笑いながら、駆け出していく。背中は任せたと背後を振り返ることなく突き進む彼をなんとしても生かさねばならぬと『闇

の救済者』たちは死力を尽くして戦うだろう。

 それはギヨームの望むところではなかったかもしれない。
 無理をしてほしくない。生きて、生きて、生き抜くことにこそ生命の意義があるのならば、劇場に任せて特攻することはしてほしくはなかった。
 勇敢であることは誉れであるだろう。
 けれど、生命以上に大切なものなどない。生きているからこそ掴み取ることができる。砦は失っても、生命は失ってはならない。
「お互いの生命は拾い合うんだ。そうすればまた戦える」
 ギヨームは負傷した『闇の救済者』を抱える。
 まだ温かい。生命があるということだ。これだけの呪詛、怨恨が満ちる戦場にあって、懸命に生きようとしている生命の煌きがある。

 ならばこそ、ギヨームは戦場を駆け抜ける。
 後退していく負傷した『闇の救済者』たちを見送ることもしない。彼らは生きるだろう。懸命に生きるということは、それだけで戦いだ。
「何故滅びに抗う。我らと同じように滅びればいい。死せればいい。なのに何故、抗う」
 その言葉を吐き続ける『怨魂術士』の喉元に打ち込まれる細剣の一撃。
「悪いが、きみが語る恐怖より、彼らの方が強い恐怖を持っている」
 生者を呪う咆哮は、絶大なる一撃となって襲いかかるだろう。
 けれど、その一撃を解き放たせはしない。ギヨームの細剣は、決して連鎖の如き連なる呪詛をまきちらせはしないのだ。

「それは弱さじゃない。恐怖は語るものじゃないことを彼らはよく知っている」
 ギヨームは見てきた。
『闇の救済者』たちは、恐怖を抱えている。
 けれど、それを手放すことはしなかった。手放せるものでもなかっただろう。支配と隷属の続く日々。
 それは彼らの心に拭いようのない恐怖を植え付けるものであった。
 それ以上に彼らの心には平和への思いがある。戦いにあって激情にかられることはしない。
 何故ならば、彼らが戦うのは恐怖がためではないからだ。

「待っていたんだ。彼らは負ってきたきみたちを」
 追い込まれたのではない。
 そして、迎え撃つものでもない。過去よりすがりつく悲哀の如き怨嗟すらも、彼らは振り切っていくだろう。
 望んだ明日を手に入れるために。
 それはギヨームにとって好ましいものであったことだろう。諦めず、立ち止まらず、決して振り返らず。

「何処に行こうというのだ。これ以上の先はない。未来など無い。暗闇しか無いというのに」
「それを勇気と呼ぶんだよ。暗闇の如き未来を切り裂くこと」
 ギヨームの瞳がユーベルコードに煌めく。
 水の精霊、氷の魔力、火の魔術で強化されたギヨームが照らすのは、未来だ。
 un tournesol(アントゥルヌソル)。
 時は太陽と共にまわる。
 この地底の世界であっても『闇の救済者』という燦然と輝く篝火が在ることを示すようにギヨームは『怨魂術士』を打ち倒す。

 何のために?
「前に進む為に――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……策を弄する事が無いというのは救いだけど…あの数の平押しはそれだけで驚異だね…
…敵が怨嗟や呪いを武器とするなら……まずはそれを減衰させてしまおう……
…【神話終わる幕引きの舞台】を発動……上空から鍵剣を振らせて攻撃…そして戦場内の呪詛と加護を減衰させるよ…
…今のうちに怪我してる人は交代要員と交代して…援護はするから…
…重奏強化術式【エコー】を重ね掛けして効果範囲を広げた復元浄化術式【ハラエド】を発動…ダメ押しとばかりに周囲の怨念を浄化してしまうよ…
…敵の最大の武器を奪ってしまえば戦いは有利に運ぶだろうね…『戦争卿』が前に出てくるまでは…だけど…



『闇の救済者』と『戦争卿』の率いるヴァンパイアの軍勢との戦いの推移は、もはや決したと言ってもよかっただろう。
 けれど、ヴァンパイアの軍勢を構成する『怨魂術士』たちの力は未だ侮れない。
 何故ならば、彼らの力は損耗すればするほどに残った者たちが強化されていく。倒された味方がいたとしても、それさえも己の力に変えて戦場を蹂躙していくのだ。
『戦争卿』が戦下手なのではない。
 その性質を知るからこそ、敢えて消耗するように正面切っての戦いを『闇の救済者』に挑んでいるのだ。

「……策を弄する事がないというのは救いだけど……あの数の平押しはそれだけで脅威だね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は恐怖無く、そしてためらうこと無く己の生命を投げ打つかのような戦いに身を投じる『怨魂術士』たちの力の源が、生者を呪う怨嗟であることを知る。
 それは言ってしまえば呪いそのものであった。
 存在するだけで生きる者たちを呪う力。ヴァンパイアと成り果ててもなお、他者を呪わずには居られない、救われなかった嘗ての者達。

「人知及ばぬ演目よ、締まれ、閉じよ。汝は静謐、汝は静寂。魔女が望むは神魔の去りし只人の地」
 同情はあるのかもしれない。
 怨嗟と哀切に塗れた咆哮は『闇の救済者』たちの足を止める。
 どうしようもないことだ。彼らは今を生きている者であり、そうした怨嗟に足を止めてしまう。もしかしたのならば、自分たちもまた明日には『怨魂術士』たちのように怨嗟を齎すだけの存在に堕するかもしれないからだ。

 けれど、メンカルの瞳はユーベルコードに輝く。
 世界法則を改変する数多の鍵剣が雨のように戦場に降り注ぐ。
 あらゆる加護と呪詛が極度に減衰される結界が戦場に満ちて、『怨魂術士』たちの力の源そのものを減ずるのだ。
「……今のうちに怪我している人は交代要員と後退して……援護はするから……」
 メンカルの言葉に『闇の救済者』たちが砦から飛び出し、戦場にある負傷した者たちを担ぎ上げて交代していく。
 重奏強化術式『エコー』が重ねがけされて効果範囲を広げた復元浄化術式『ハラエド』が戦場に満ちる怨念そのものを浄化していく。

「我らの怨恨を払うか。ただこれしきのことで。我らは、終わることのない、救われなかったという事実のみを抱く。我らは必ず――」
 その怨嗟は続かない。
 メンカルは神話終わる幕引きの舞台(ゼロ・キャスト)にて立つ。
 彼女の手にある鍵剣の一閃が世界を変えていく。呪詛を撒き散らすのが『怨魂術士』であるというのならば、その源を断ち切る。

 明日という未来に過去よりの呪詛は必要ない。
 敵の最大の武器は、満ちる呪詛そのものだ。だが、『闇の救済者』たちの心には恐怖もあれば不安もある。
 これまで縛られ続けてきた隷属と支配という恐怖は今も尚心にこびりついている。
「けれど、『戦いに際しては心に平和を』。どれだけお前たちの言葉が、怨嗟が、彼らを縛ろうとしても無駄だよ……」
 メンカルは知っている。
 恐怖と不安に縛られて尚、彼らの心には平和がある。平和を思う心がある。それさえあったのならば、呪詛に負けることはない。

 戦いの趨勢は決する。
 だが、最後まで気を抜くことは出来ない。何故ならば、メンカル達猟兵は知っている。
 この後に控える戦いには『戦争卿』が在ることを。
 彼が前に出てきた時、たった一人でこの戦場を覆す力を齎すことを。
 だからこそ、メンカルは予断を許さない。
 誰一人として失わないことは理想でしかないのかもしれない。けれど、理想すら抱けぬのであれば、それは他の何ものにも手を伸ばさぬということだ。

 ならばこそ、メンカルは最善に手を伸ばし続ける。
「『戦争卿』……もうお前が出てくるしか無い……」
 ヴァンパイア支配という絶対神話は幕を引く。その幕引きを担うのは、やはり猟兵なのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『戦争卿』ブラッド・ウォーデン』

POW   :    開戦祝え銃砲連打の凱旋歌
【異形の狙撃砲から放つ血色の砲弾の大量乱射】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を敵対者を自動攻撃する射撃兵器群に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    “血塗れ傀儡”聖堂騎士団
自身の【領地内の人間・動植物全ての生命力と精神力】を代償に、【百年前の戦死者を素材とした千人の重装騎士】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【生命力吸収能力を付与された斧槍と散弾銃】で戦う。
WIZ   :    己を見よ、汝の名は『獣』なり
【戦意、敵意、害意、殺意、哀れみ、憎悪】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【対象本人と寸分違わぬ分身と武装】から、高命中力の【対象本人の最も殺傷力が高いユーベルコード】を飛ばす。

イラスト:灰色月夜

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレナ・ヴァレンタインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 すでに戦いの趨勢の決した戦場に『禿鷹の眼の紋章』が煌めく。
 それは剣呑なる輝きを放ち、獲物を見定めるかのように睥睨する。常闇の世界にあってヴァンパイアとは絶対の象徴であった。
 同時に恐怖と支配の象徴でもあったことだろう。
 その絶対がゆらぎ始めている。
 未だ恐怖と支配としての力はあれど、絶対的な存在としての形が『闇の救済者』によって揺らがされている。

 猟兵とオブリビオンは対等なる存在である。
 滅ぼし、滅ぼされる間柄であればこそ、そこに絶対を脅かすものはない。されど、ヒトは圧倒的にヴァンパイアよりも劣る存在である。それが今やヴァンパイアの言う所の絶対を揺らがしている。
「ああ、私は感動すら覚えている!『世界が燃え尽きるのが見たい』と願いながらも、それは容易いことであるからと投げ捨てていた。けれど、諸君らを見てわかったのだ。この世界は滅ぼすに値すると!」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは告げる。
 落涙すら禁じ得ぬ彼は頬を伝う冷たい涙と共に『闇の救済者』たちの中にあるユーベルコードの兆しを見やる。

「この『禿鷹の眼の紋章』が告げている。諸君らこそ、私が捕食するに値するものであると」
 煌めくユーベルコードの輝きから『禿鷹の眼の紋章』が膨れ上がり、『闇の救済者』の中にあるユーベルコードに覚醒仕掛けている三人を捕食せんと迫る。
「誇るがいい。諸君らは私に抗った。抵抗した。叛逆した、反逆したのだ! さあ、見せてくれ!」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは笑う。
 楽しい。
 楽しい。
 楽しい。
 心が躍る! 胸の内側から溢れてやまぬ高揚。それを抑えきれず、彼は戦場をかき分けるようにしてユーベルコードの兆しへと走り込む。

 強靭なる肉体とユーベルコードに裏付けされ、『禿鷹の眼の紋章』によって強化された恐るべき力と共に、己の求める所――即ち、反逆と憎悪こそを喰らわんと、屈託無き無邪気さの如き笑顔を浮かべ迫るのだった――。
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

気持ち悪いな君
なんでそんな変態衝動に彼等が付き合わなきゃいけないんだよ、鬱陶しい
独りで勝手に、迷惑にならないところで、静かに死ね

紋章からの攻撃がどういう形式で放たれるのかよくわからないけど、それは喰らうわけにはいかないな
とはいえ、戦闘センスは壊滅的な僕だし、この眼鏡で見えるだけ見るしかないかな

無様でもなんでも、当たらなければそれでいい

敵の乱射もそんな感じで、まあこっちは最悪動けるなら当たってもいいや、死ななければそれで

僕はただ、お前にありったけの一撃をぶちこめれば
みんなの助けになるなら、それでいい



 異形の狙撃銃が『戦争卿』ブラッド・ウォーデンによって首をもたげるようにして大地を狙う。
 放たれた血色の砲弾は大地を抉り、自動射撃兵器へと変貌せしめる。ふわりと軽やかな音を立てて『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは『闇の救済者』と猟兵達に恭しく一礼する。
 その姿はまるで幼子が憧れの英雄に出逢ったかのような、そんな仕草さえも感じさせるものであった。
「素晴らしい。今の一撃に反応する。そして、生み出された兵器群を前にしても怯むことはない。驚きこそすれ、そこには怯えがない。ああ、私は感動している!」
 彼は己に反逆する者たちをこそ愛する。
 滅ぼしてほしいと願いながら、世界を滅ぼそうとする妄執に囚われている。

 彼にとって支配や恭順、そして同胞などは何の価値のないものであった。
 己に反抗する敵をこそ彼は愛するのだ。
「気持ち悪いな君」
 だが、そんな『戦争卿』ブラッド・ウォーデンを前にして肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)はためらうことなく己の手にした戦斧の一撃を見舞う。
 その一撃は血色の砲弾が変貌した自動射撃兵器を打ち砕き、破片を撒き散らす。その破片の狭間から見た『戦争卿』のえみをミサキは切って捨てる。
「なんでそんな変態衝動に彼等が付き合わなきゃいけないんだよ、鬱陶しい」
「いいぞ、素晴らしい! その侮蔑の視線こそ私の求めるものだ! 美しいとさえ思えるのだよ! その瞳が!」
 次々と放たれる血色の砲弾。
 ミサキはそれを受けるわけにはいかなかったが、しかし、その砲弾を躱せば、己の背後にある『闇の救済者』たちに直撃することを知れば、戦斧でもって弾き、さらには己の身でもって受け止める。

 痛みが走る。
 けれど、ミサキにとって、それはどうでもいいことであった。
 己の生命を使うことに躊躇いなど無い。
 死ななければそれでいい。動けるのならば、それでいい。『闇の救済者』たちの存在がミサキにとって足かせでしかないのだとしても、彼女はそれでいいと思ったのだ。
「弱者を守るか、猟兵! どうして其処までして守る? 何故私を見ない。君は私ではなく彼等ばかりを気にしている!」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは怒るでもなく侮るでもなく、ミサキにそう告げる。
 けれどミサキは答えない。応える義理がない。
 鬱陶しいと言った言葉に偽りはない。目の前のヴァンパイアは本当に鬱陶しいのだ。見るに堪えない。

 あのような存在は許してはならない。
 己の欲望のために、己の享楽のために他者を利用することしか考えていない存在など唾棄すべきものである。
「独りで勝手に、迷惑にならない所で、静かに死ね」
 告げる言葉は攻撃的なものであった。『禿鷹の眼の紋章』から放たれる光が、巨大な顎のようにミサキを襲う。
 彼女の持つユーベルコードを肉体ごと捕食するためだ。これを避けては『闇の救済者』たちにも攻撃が及ぶだろう。
 だから、手にした戦斧で薙ぎ払いながら、ミサキは己の瞳で取捨選択をする。

 即ち、取るのは『闇の救済者』たちの生命。
 そして、捨てるのは己の生命。投げ打つ生命に価値があるのかと問われるのならば、それは価値在るものである。
 誰かのために戦う者にこそ、力が宿る。
 ただの力ではない。かけがえのない尊いものだ。だからこそ、ミサキは己が無様であってもなんであっても構わないと思ったのだ。
『禿鷹の眼の紋章』から放たれる顎がミサキの肩に食い込む。血潮が吹き出す。けれど、その紋章から放たれた顎を叩き伏せるのが『闇の救済者』たちのユーベルコードであった。
「あなたが何処の誰かは存じない。けれど!」
「あなたが戦ってくれているのを俺たちは見た。知っている! だから!」

 だから、と思うのだろう。
 なけなしの生命をなげうつようにミサキを救う。ああ、と思うのだ。この人達の助けになりたいとミサキは思う。
 彼女の瞳がユーベルコードに輝き、己の生命力が手にした戦斧に吸われて行くのを感じる。
 構わない。
 そう、何一つ構わないのだ。
 手にした戦斧が大鎌へと変わっていく。
「何故、お前を見ないのかと問いかけたな」
 ミサキに満ちるのは生命の輝き。
「僕はただ、お前にありったけの一撃をぶち込めれば」
 みなぎる力。

 それは彼女の生命の輝き。生命が枯渇したって構わない。降り注ぐ血色の砲弾の雨からミサキは『闇の救済者』たちを突き飛ばし、助け、前に踏み出す。
 砲弾が大地をえぐり、射撃兵器を生み出し、さらに銃弾が彼女を狙う。
 肉をえぐり、骨を断ち切るような痛みが前身に走る。
「けれど、それでいい。みんなの助けになるなら、それでいい」
「私を見ろ! 私を見てくれ!」
 その言葉を一閃が塗りつぶす。

「ありったけを、お見舞いしてあげる」
 大鎌の一撃はミサキの渾身を込めた一撃。迫る砲弾すらも悉く切り裂き、ミサキの一閃は、生命の発露となって『戦争卿』の妄執を紋章の輝き、そしてユーベルコードすら断ち切り、その身に袈裟懸けの一撃を刻み込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
“戦争卿”ね。むしろ戦争狂じゃないかしら。
でも、その戦争の末に、自らの滅びさえ見据えてる。そこが他のヴァンパイアと違うところ。
いいでしょ、あなたの闘争心、満たしてあげる。

「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「貫通攻撃」「串刺し」「仙術」「道術」で寒氷陣。
戦場全域に氷の牙を生やして、召喚した騎士団を全て串刺しにするわ。“戦争卿”も貫ければいいんだけど。

紋章の攻撃は、氷の氷柱を遮蔽壁代わりに並べて弾く。
この戦場であたしがやることは一つ。氷柱を操っての攻撃と防御。足下からの攻撃、いつまでかわし続けられるかしら?

世界が燃え落ちるところをみせられなくて悪いわね。代わりに、凍てついた世界で果てなさい。



 一閃が刻む血潮の噴出すらも『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは笑みを浮かべて受け入れる。
 叛逆の戦いの中で得た傷は彼にとって最高の栄誉であった。
 己が倒されるべき敵であることをこそ彼は誇りに思う。英雄物語に憧れる子供のように、その瞳に在るのは苦悶ではなく無邪気さであった。
「たまらないな! これが戦いだ。一方的な虐殺など何の楽しみも見出すことはできない。君たちは素晴らしい! 私に存在している喜びを与えてくれる。君たちこそ、私の求めたものだ!」
 彼の言葉は何処までも偽りのないものであった。

 己の破滅すら受け入れている。
 そう在るべきと願い、それが成就されるのならば、破滅すらも甘美なるものであるからだ。到底常人に受け入れられるものではない。
「“戦争卿”ね。むしろ、戦争狂じゃないかしら」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は戦場に溢れる斧槍を手にした重装騎士たちの姿を見やり呟く。
 これまでのヴァンパイアたちと違って、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは己の破滅すら欲望としている。
 破滅することが望みでるヴァンパイアなど、歪み狂った末路であるとしかいいようがない。
 それを支える闘争心こそが『闇の救済者』たちに襲いかかる災厄であったことだろう。
「いいでしょ、あなたの闘争心、満たしてあげる」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝いた瞬間、放たれるのは散弾銃の弾丸である。召喚した『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの騎士たちが手にした銃より放たれる弾丸は、『禿鷹の眼の紋章』を受けて、光の顎となってゆかりに迫るだろう。

 だが、ゆかりの足元から飛び出すようにして生み出された氷の柱がそれを阻む。
『禿鷹の眼の紋章』からユーベルコードと共に放たれる光の顎は、ユーベルコードすら飲み込む。
 ならば、光の柱でもってこれを阻むのだ。
 さらに大地を走るように氷の柱が重装騎士たちの足元から突き出し、一気に彼等の鎧を貫く。
「面白いな。こちらを自在に操るユーベルコードとは。足止めと、壁。両面からこちらを囲うユーベルコード。賢しいと言わざるを得ないが!」
「世界が燃え落ちるところを魅せられなくて悪いわね」
 ゆかりは寒氷陣(カンピョウジン)によって『戦争卿』ブラッド・ウォーデンを追い込む。

 彼の強みは類稀なる蹂躙するようなユーベルコードの力だ。そこに紋章の力が加われば、『闇の救済者』たちの身が危うい。
 少しでも彼等を前に出せば、一気に食い破られ兼ねない。
 ならばこそ、紋章の標的を自分に絞らせなければならないのだ。
「防戦一方ではつまらないのだよ。私を追い詰めてくれ! 私に抗ってくれ! 英雄たちの戦いとはそういうものだろう!」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンが笑う。
 楽しげに笑っている。
 どこまでも己の欲望に忠実であるがゆえに、彼は今の状況を楽しんでいる。己が倒されるべき敵であることに酔いしれているのだ。

 倒錯していると言わざるを得ないだろう。
 滅びを得るために、己の欲望を使う。オブリビオンとして存在しながら、その戦争に狂った思考は他者を巻き込むものだ。
「なら、代わりに凍てついた世界でもくれてやるわ。そこで果てなさい」
 ゆかりのユーベルコードが煌めく。
 迫る『禿鷹の眼の紋章』の力を遮る氷の柱より、ゆかりは飛び出し手にした薙刀をふるう。

 放たれた斬撃は『戦争卿』ブラッド・ウォーデン』によって阻まれる。けれど、それでいいのだ。
 彼女の役目は、彼の足を止めること。
「――……こそばゆいな、レディ」
 取り囲む氷の柱が『戦争卿』ブラッド・ウォーデンを包み込む。あるのは天のみ。周囲を取り囲む氷柱の牢獄に唯一存在する逃げ道。
 だが、そこは逃げ道ではない。
 氷の柱を蹴って飛んでいたのは『闇の救済者』たちであった。彼等の瞳がユーベルコードに輝く。
 あの三人の若人たちが目覚めた力を放ち、その唯一存在する逃げ道を、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンに勝利するための筋道と変えるのだ。

 ゆかりは立ち上がる光の柱を見るだろう。
 戦いの後にこそ、彼等はユーベルコードに完全に覚醒するだろう。勝利が彼等を成長させるのではない。
 彼等の心に宿る平和への思いこそが、彼等を将にするのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神樹・鐵火
戯言は聞き飽きた

銃撃は聖拳の【覇気】で弾き返し、形成される射撃兵器群は魔拳を纏わせた【重量攻撃】と【地形破壊】で、発生した瞬間即踏み潰す

【見切り】で一気に距離を詰め、重火器を【怪力】任せの【部位破壊】で捩じ切り、轟拳の【衝撃波】を纏わせた『美崩八勁』を、その嘗め腐った面にねじり込む様に叩く
一発目の明勁は禿鷹の眼の紋章へ、二発目の暗勁は貴様の顔面だ

暗勁を紋章に当てなかっただけでも感謝するんだな
美貌が台無しになっても私は謝らんぞ、朽ちるのはお前だけにしろ



『闇の救済者』たちの放つユーベルコードの光が『戦争卿』ブラッド・ウォーデンを打つ。
 その光は今はか細いものであったかもしれない。
 覚醒しかけている彼等のユーベルコードでは束ねても『戦争卿』ブラッド・ウォーデンを打倒するには足りなかったかも知れない。
 けれど、それでも構わない。
「良いぞ! ああ、たまらなくいいな! 強者に立ち向かう弱者など私の知る物語にあるそのままだ! だが、現実と虚構を分かつのは、いつだって残酷さだ! おとぎのようには何もかもめでたしめでたしとはならないのだ! だから見せてくれ! 私を超えて見せてくれ!」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは己の破滅を願うヴァンパイアである。
 己に示される恭順も支配も、同胞も何もかもどうでもいい。

 己が憧れる英雄譚の如き物語で締めることができれば、それが破滅であってもいいのだと笑うのだ。
「戯言は聞き飽きた」
 そう呟き、『闇の救済者』たちのユーベルコードの向こう側から神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)が飛び込んでくる。
 異形の狙撃銃から血の砲弾が放たれる。至近距離より放たれた砲弾の一撃を鐵火は拳で持って弾く。
 砲弾が大地を抉り、自動射撃兵器へと変貌し、さらなる弾丸が鐵火を襲う。
 だが、その地形が変貌した瞬間、鐵火は己の脚部に乗せた重量で持って、それらを悉く踏み潰し破壊する。

 兵器の破片が舞い散る。
「ハハハッ! 良いな! 良い! 諸君らは私の想像以上だ!」
 たまらなく楽しいと『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは笑う。
 楽しげに。
 強者との戦いが楽しいのではなく、己を討ち滅ぼそうとする意志を持った瞳をこそ彼は歓迎している。
 血の砲弾を乗り越え、大地を変える射撃兵器すらも踏み潰し、己に迫る鐵火の瞳を見た。
 そこにあったのはユーベルコードの輝き。

 その輝きをめがけて『禿鷹の眼の紋章』が煌めく。
 光の顎のように迫る紋章の力。
 それを鐵火は一気に距離を詰め、己のオーラ纏う拳で叩き上げる。跳ね上がる紋章の力の発露たる光の顎が空中に弾き飛ばされる。
「貴様の言葉は何もかもが真実なのだろう。けれど、なにかもが薄っぺらいな。己の破滅を望みながら、足掻こうともしない。まるで他人事だ。目の前に映る全てが絵物語のようにでも思えたか」
「ああ、そのとおりだ。私は今、物語を目の当たりにしている。反逆の、本逆の、反抗の物語を、私だけのために魅せてくれるのが諸君らだろう!」
 叩き込まれる血の砲弾。

 それを鐵火の拳は吹き飛ばす。
 衝撃波をまとわせた美崩八勁(ビホウハッケイ)の一撃が『禿鷹の眼の紋章』に叩き込まれる。
 吹き荒れる明頸が紋章の力を散らす。
「その嘗め腐った面にねじり込む」
 一の拳は紋章に。
 そして、その二の拳は『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの顔面に叩き込まれる。
 それは暗頸。
 身の内側から発露する凄まじき力の奔流が彼の体内に駆け巡り、膨れ上がっていく。

 力が外に発露するのが明頸であるというのならば、暗頸は内部にて増幅する力。
 顔面に叩き込まれた一撃は体内を巡って倍々になって鐵火の打ち込んだ拳へと帰ってくる。
「美貌が台無しになっても私は謝らんぞ」
「男の傷は誉れであるよ! 美醜など関係あるものか!」
「ならば、朽ちるのはお前だけにしろ」
 ユーベルコードの力が『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの顔面から噴出し、その頬を引き裂きながら血潮を撒き散らす。

 鐵火は己の拳より放たれた一撃が確かに『戦争卿』ブラッド・ウォーデンに届いた感触を得て、吹き飛ぶ彼に背を向けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

左護・結姫
【はるさご】
この世界も、救済者の事もよく知らない私でもわかるのに。気付くのが遅いよ。あなたが食べるにはもう、この光は強すぎる
春乃ちゃん、プランBだよっ。ここはお願いするね~

『黄昏』『東雲』を自身に纏って後ろへ下がり、救済者たちの影に紛れる
過去を寄せ集めた騎士なんて射る価値もない。狙うのは戦争卿への必殺の一矢
私の命、みんなの想いと、未来の英雄のために。蒼天、解放。
紋章を狙い一矢。止められたら昊天解放し一矢。止められたら旻天、そして上天
場所を読まれないよう、一つの場所に留まらないように
焦りなんてない。必中の機会はある…ううん、みんなが絶対作ってくれる

…最高だよ。これで貫く


春乃・結希
【はるさご】
術師との戦いでかなり消耗してるはずなのに、心が全然折れてない。ほんとに大好き
みんなが強くなったことが嬉しいのは私も同じ。気持ちわかります

えっ、プランBってなん…ってまたおらんし!言いたかっただけやろ…
直接戦いたいけど、邪魔が多いな…
とりあえず目の前の敵を倒していこう
戦争卿にばかり気を取られて後ろを取られてもいけんし
砲弾は焔で防いで届かせない
戦いつつ周囲の救済者に声をかけて
吸血鬼、一瞬で良いから動きを止めたいです。お願いできますか?

やっと来てくれましたね。でもごめんなさい。まともに戦うつもりなんてないんです
怪力で掴み離さない
みんなの想いで掴んだ好機。あのヒトが逃すはずないから



 頬の傷口より滴り落ちる血潮は『戦争卿』ブラッド・ウォーデンにとって不名誉なことではなかった。
 自身の美しさなどどうでもいいことであったのだ。
 彼にとって必要なのは破滅のみ。
 そのために世界を滅ぼすことなど、些細なこと。今目の前に迫る数多の煌きこそが彼にとって最も必要なものであった。
『闇の救済者』たちは己に抗う。
 力足りずと知りながらも、明日を望むためにユーベルコードにさえ覚醒する兆しを見せている。

 侮っていたわけではない。
 ただ賞賛していただけなのだ。己と戦うに値する者たち。己の視界に入れるべき者達であると。
「だからこそだ。私は諸君らを我が手で摘まねばならない。喰らわねばならない。私のモノになった以上、それは最早私にとっては輝きが曇った石ころと同じ。悲しいが、それでも私が求める破滅のためには、諸君らを殺さねばならないのだ」
 楽しげに笑っている。
 これこそが己の求めたるものであると『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは笑うのだ。

「この世界も、共済者の事もよく知らない私でもわかるのに」
 左護・結姫(は幸せです。・f35408)に告げる。
 彼女は確かにダークセイヴァーの世界を知らない。けれど、もう知っていることがある。
 彼等は、『闇の救済者』たちの持つ光は、既に大きく膨れ上がっている。
「気付くのが遅いよ。あなたが食べるにはもう、この光は強すぎる。春乃ちゃん、プランBだよっ。ここはお願いするね~」
 そんなふうに告げる結姫に春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は僅かに戸惑う。
「えっ、プランBってなん……ってまたおらんし! いいたかっただけやろ……」
 結希が眼を離した隙に結姫はそばから消えていた。
 彼女は己が手繰る影をまとって後方へと下がっていた。『闇の救済者』たちの影に紛れるようにしてその姿を消す。

 結希は仕方ないなと呟きながら『闇の救済者』たちと共に戦場を駆ける。
 彼等はすでに『怨魂術士』たちとの戦いで疲弊しきっているはずだ。けれど、それでも彼等は戦い続けている。
 それを支えるのは、ひとえに心の強さであろう。
 誰もが心おられていない。吹きすさぶかのように血色の砲弾が大地をえぐり、射撃兵器を生み出して戦場を蹂躙する。
 さらには重装の騎士たちが跋扈し、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンへの道を阻むのだ。
「邪魔が多いな……けど」
 そう、結希の背後には守るべき者ではなく、ともに戦うものたちがいる。そんな彼等のことが本当に好きになってしまっていた。

 彼等が強くなったことが嬉しい。
 その気持は結姫も同じだろう。とても気持ちがわかる。だからこそ、あの『戦争卿』は仕留めなければならない。
 己の破滅と欲望を同一にしている存在を許しておけば、彼女の大好きな人々が殺されてしまう。
「そんなこと……させない――!」
 膨れ上がる焔が血色の砲弾を蒸発させ、射撃兵器群を吹き飛ばす。
「吸血鬼、一瞬で良いから動きを止めたいです。お願いできますか?」
 絶望を拒絶する焔(キョゼツスルホノオ)は緋色をしていた。あらゆる絶望が『闇の救済者』たちに襲いかかるのだとしても、結希が在る限り、彼等にそれは届かない。

「やってみます……!」
 一人の若人が前に進み出る。彼はユーベルコードに覚醒しかけていた若人の一人だ。彼の剣が光を放つ。
 それは闇を切り裂く光。 
 そして、同時に『闇の救済者』たちの心の代弁でもあった。『戦いに際しては心に平和を』。
 その言葉を胸に放たれる一撃は『戦争卿』へと叩き込まれる。
「未だ弱々しい光だが! だが、この光こそ私は求めたのだ! 私に破滅を齎してくれる光!」
 叩きつけられる光の剣の一撃を『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは受け止める。くもなく受け止めていた。

 けれど、それでよかったのだ。
「ありがとう、みんな。おかげで!」
 結希が『戦争卿』ブラッド・ウォーデンに掴みかかる。それは動きを止めるための行動であった。
 人々の明日を望む心がこの状況を引きずり出した。猟兵達によって消耗させられた彼に結希の拘束を振りほどく力はない。

「私の生命、みんなの想いと、未来の英雄のために。蒼天、開放」
 ユーベルコードに煌めく結姫の瞳。
 それを結希望は見ただろう。彼女は狙いを外さない。放たれた矢が光となって暗闇の世界を照らす。
 一条の光は、空を駆ける星のように一瞬で『禿鷹の眼の紋章』へと打ち込まれる。だが、止まる。
 紋章の力の発露である光の顎に矢が食いちぎられるのだ。

「四天解放(シテンカイホウ)――昊天」
 更に打ち込まれる矢。
 解放される力。だが、それは同時に彼女の生命を削るものであった。けれど、構わない。
 結姫はためらわない。
 己の生命が削れる音が聞こえたとしても焦ることなどない。光の顎を貫く矢が再び放たれる。
 紋章の力は凄まじい。
 けれど、それでも彼女は止まらない。この必中の機会。この絶好の好機は皆が作り上げたものだ。

「諦めるな――!」
 その言葉は『闇の救済者』たちから上がっている。抗うこと、反逆すること、そして、戦うこと。そのどれもを投げ捨てることのなかった彼等からの言葉を受けて、結希望の緋色の焔が噴出し、放たれた結姫の矢へと移る。
 膨れ上がったユーベルコードの輝きを受け、さらに『闇の救済者』のユーベルコードが矢を押し出す。

「みんなの想いで掴んだんだよ。あのヒトがそれを逃すはずないから、だから!」
 想いが力になるのならば、戦いは容易いものだろう。
 現実は残酷で、どうしようもないことばかりである。だからこそ、結姫は微笑むのだ。
「……最高だよ」
 これで貫く。
 覚悟を決めた一射が放たれ、ユーベルコードの光を湛えた矢が戦場を一直線に駆け抜ける。
 その一撃は『戦争卿』を貫き、明日を指し示すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
国の為でもなく
仲間の為でもなく、家族の為でも平和の為でもなく
お前の戦争は!己の為のものか!!

UC発動ディスポーザブル01【操縦】
【武器受け】機体で敵の砲撃を受け止め味方をかばい
【オーラ防御】シールドで覆ったRX騎兵刀で紋章の攻撃を切り散らす。

自分は!ただ敵を壊すのみ!それしか残ってない!!
自分もお前もいない方が良い!!!

【継戦能力】弾丸を受けながら射撃兵器群をなぎ払いながら戦争卿へ攻撃。
負傷を省みない。【闘争心】をもって前だけを見て――

自分は『闇の救済者』殿の手本にはなれない。否定されたほうが良い存在。
だから、でしゃばったらいけない

沈み掛けた状態で、パルスアトラクター指向性電磁音波【マヒ攻撃】



『戦いに際しては心に平和を』
 それが『闇の救済者』たちの心に宿る言葉であった。
 戦いに対する気構え。
 ならば、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンはその対極にある。彼が求めるのは破滅。他者の破滅ではなく自身の破滅と世界の破滅を同列に語るものである。
 矢の一射が『禿鷹の眼の紋章』を貫く。
 亀裂の走った紋章ながら、それでも力の発露は止まらない。
「素晴らしいな! 私の求めるものが此処には多く在る。喜ばしいことだ! これこそが戦争だ! 私の求めた!」
 彼は笑っていた。

 ここまで追い詰められていながら、彼は笑っていたのだ。
 その姿に朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は理解を示さない。理解しようという気すら起こらない。
「国のためでもなく、仲間の為でもなく、家族のためでも平和のためでもなく、お前の戦争は! 己の為のものか!!」
 小枝子の瞳がユーベルコードに煌き、鋼鉄の巨人と共に戦場を疾駆する。
 その鋼鉄の巨人の名は、ディスポーザブル(タタカッテタタカッテタタカッテ)。

 今の小枝子はまさに悪霊そのものであった。
 目の前のヴァンパイアを許してはおけない。目の前にある敵は、世界を滅ぼすだけではない。
 あらゆる者の尊厳を踏みにじる行いをする者であると彼女は認識した。
 放たれ続ける血色の砲弾から『闇の救済者』たちを護るように鋼鉄の巨人自身を盾にする。
 装甲が砕ける。
 そして、地に落ちた砲弾は即座に射撃兵器群へと変貌し、さらに戦禍を拡大させていくだろう。
「防いでばかりではな! 猟兵! 何もかも失うばかりだぞ!」
 笑っている。
 敵が笑っている。
 この状況を楽しんでいるのだ。何もかもが自分自身のために、自身を中心に世界が回っていると思っている顔で笑っている。

 それがどうしようもなく小枝子には許せなかった。
 怒りが体の奥底から湧き上がってくる。力の源はいつだってオブリビオンに対する怒りであった。
 ならば、己の肉体への過負荷など関係ない。
 ユーベルコードの力が己の体を通して『ディスポーザブル01』へとつながっていく。
「自分は! ただ敵を壊すのみ! それしか残っていない!!」
「悲しいな! そんな在り方で私をどうこうしようなどとは! 君自身が災禍そのものだと何故気が付かない! 破壊だけを齎すものがたどるのは、結局の所私と同じだと言うのに!」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは笑いながら迫る『ディスポーザブル01』に砲撃を見舞う。

『禿鷹の眼の紋章』より放たれる光の顎が鋼鉄の腕を食いちぎる。
 負傷を省みないのが小枝子の戦い方だ。己の傷などどうでもいいことであったからだ。己ではない誰かが傷つくことを良しとしない彼女だからこそ、その身に宿した闘争心が彼女の眼を前に向かわせる。
「自分もお前も居ないほうが良い!!! そこに悲しさも憐憫も必要ない!!!」
 砲撃が機体を傾がせる。
 だが止まらない。
 止まれるわけがない。

 なぜなら、この道の続く先にあるのはいつだって破滅だからだ。
 けれど、己が破滅するからといって他者もまた同じになるとは限らない。己の戦い方は『闇の救済者』たちの手本にはならない。させてはならない。否定して欲しい。
 だからこそ、小枝子は『闇の救済者』たちとの交流を断った。
 彼等は彼等の道を歩んでほしいと思うのだ。
 自覚せぬ悪霊が望むのはそれだけだった。でしゃばってはならないと思いながら、そして、同時に彼女は彼等のためにこそ力を使うことに決めたのだ。

「いつまでそうしているつもりだい? 君は君の生命を謳歌したまえよ! 私のように!」
「黙れ」
 小枝子の機体がその重量を逆手に取って『戦争卿』ブラッド・ウォーデンに掴みかかる。
 鋼鉄の腕は隻腕。されど、この機体の重量を乗せれば止められる。
 機体の胸部が展開し、キューブ型の機械が露出する。それは音響兵器。名を『パルスアトラクター』。
 あらゆるものを音で破壊する力。
 そして、目の前には討つべき敵。
「いつまでだと? それは、この生命が壊れ失せるまでだ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
ッ……こういうの、ホントダメなんだよな、おれ……!
戦いを愉しむなんて奴の気が知れねえし、何考えてんのか想像もつかねえ! まあ想像したいわけじゃねーけど……!
でも、守りたいモンを守れなかった時の方がずっと怖ぇ。きっとすげえデカい後悔を引きずっちまうから。

《二十五番目の錫の兵隊》を召喚して、タッグを組んで挑む。
錫の兵隊が攻撃するタイミングに合わせて〈援護射撃〉を飛ばしたり、逆に援護を貰ったらこっちから仕掛けたり、相互に支援しつつ攻撃。
勿論「闇の救済者」さんたちとも互いに協力し合う。

敵意も憐憫もおれには無え。ただ恐怖があるのみ。
でも怖ぇけど、怖ぇからこそ、おれは、おれらはテメェを否定する……!



 音響兵器が炸裂し、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの体は散々に打ちのめされた。体から迸る血潮は、その体を真赤に染め上げ凄まじいまでの消耗を齎していることを示す。
 けれど、彼は笑っていた。
 たまらなく楽しいのだというように。
 そして、同時に己を破滅に導く猟兵たちの姿に恨みや憎悪ではなく、憧憬の瞳を持って迎える。
「素晴らしい! やはり素晴らしいな、諸君らは! ここまで私を追い詰めてくれる。生まれながらの強者たる私に、ここまで血を失わせるとは! まったくもって驚嘆しきりだ! 感動するよ!」
 どこまでも、どこまでも狂うように笑う『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの姿に『闇の救済者』たちは恐怖しただろう。

 目の前の的に憎悪をすら抱かせぬ狂気。
 それが『戦争卿』ブラッド・ウォーデンというヴァンパイアの本質であった。
「ッ……こういうの、ホントダメなんだよな、俺……!」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は『闇の救済者』たちと同じように、その狂気に恐怖した。
 どう踏ん張ってみても、心の中に染み出す恐怖。
 止めようがない恐怖であったことだろう。嵐は戦いを愉しむことを理解することができなかった。
 するつもりもない。

 何を考えているのだと吐き気を催す。
 それほどまでの『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの在り方は嵐にとって異質であり、いびつであった。
「私を恐れるかい、猟兵。それは私の求めるものではない。英雄とは私を憎み、私を嫌悪し、私を殺すものだ。君はそうではないのかい? そんなに恐れてばかりでは、私を殺すことなどできやしまいよ!」
 迫る『禿鷹の眼の紋章』より発露する力。
 光の顎の如き力の奔流が嵐に迫る。

「ああ、怖いよ。でも、守りたいモンを守れなかった時の方がずっと怖ぇ。きっとすげえデカい後悔を引きずっちまうから」
 嵐を前に歩ませるのは恐怖だ。
 戦いに際して恐れを抱いてしまう。どうしようもなく怖いからこそ、彼は前を向く。瞳を伏せるのではなく、見開き恐怖と対峙するのだ。
 その時、瞳はいつだってユーベルコードに輝いている。

「胸に燃ゆるは熱き想い、腕に宿るは猛き力。その想いを盾に、その力を刃に。……頼んだ!」
 それは二十五番目の錫の兵隊(フェモテューヴェ)。
 片足が義足の兵士。
 それが嵐と共に立つ。手にしたスリングが汗でぬめるのを嵐は感じただろう。戦いは怖い。何度経験しても、何度乗り越えても、何度勝利しても。
 拭えぬ恐怖だけが嵐を支配している。

 けれど、それは過ちだ。
 彼が恐怖に支配されていることは一度だって無い。
 なぜなら。
「あなたはいつだって前を向いている。俺たちのように支配と隷属を一度は受け入れた者じゃない。立ち向かっているその姿にこそ、俺達は!」
『闇の救済者』たちが駆ける。
 彼等のユーベルコードが煌き、嵐の背を押す。
 そうだ、いつだって嵐は自分の眼と足で前を向いていた。義足の兵士が『禿鷹の眼の紋章』より放たれた光の顎を受け止めている。

 そう、自分は一人ではない。
 嵐は言ったのだ。自分たちは一人で戦っているわけではないと。
「そうだ、おれらは戦っているんだ。なら――!」
 兵士の放つ電撃が迸る。光の顎を貫いて、『戦争卿』へと迸るのだ。
「敵意も憐憫もおれには無え。ただ恐怖があるのみ」
「つまらないな、それは! 私が求めているのはそんなものではない!」
 迫る『戦争卿』の手が嵐に迫る時、横合いから激突するのは『闇の救済者』のユーベルコードの光。
 吹き飛ばされる『闇の救済者』をさらに義足の兵士が銃剣で貫く。

「でも怖ぇけど、怖ぇからこそ、おれは、おれらは、テメェを否定する……!」
 スリングショットから放たれる弾丸が『戦争卿』の眼を射抜く。
 それは完全なる否定であった。
 自身の破滅を求め、世界の破滅と己を同義とするどうしようもない恐怖の象徴をこそ、嵐は今踏み越えたのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
※敵UCで召喚された自身の分身が発動するUCは【限定解放・血の教義】

…随分と楽しそうなところ申し訳ないけど、お前の望みが叶う事は決して無い

…お前の目の前にいるのは、お前達のような存在を狩る天敵よ?

…彼らに目移りしている時点で結果は分かりきっているわ

肉体改造術式により強化した第六感で気合いや殺気を残像として暗視して見切り、
先読みした敵や紋章の攻撃を大鎌で受け流す早業で闇の救済者達を護り、
自身の分身のUCには吸血鬼化を行い血の魔力を溜めている隙に超克を行いUCを発動

…気にしないで。私達も紋章付きと闘えるようになったのは最近だもの

…いずれ闘えるようになる時が来る。その為に、今は私達の闘いを良く観ていなさい

大鎌から吸血鬼だけを灼く太陽光のオーラで防御を無視して戦場全体の敵を浄化し、
敵が体勢を崩した隙に限界突破して太陽光を収束した大斬撃波なぎ払う光属性攻撃を行う

…その術は確かに私の手札の中で一番強力だけど、それは悪手よ?

…"溜め"に十秒、無防備になるもの。その隙を見逃すほど、私は優しく無い



 放たれた弾丸によって片目を撃ち抜かれた『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは、なおも笑っていた。
 恐怖を乗り越える様こそ美しいと笑っていた。
 彼が求めるのは己の破滅のみ。
 そして、それを為すのは同胞でもなく、己よりも強大なものでもなく、ただの弱者であった。
 弱者には興味はない。けれど、弱者が強者を乗り越える時に発露する勇気にこそ彼は喜びを見出す。
 倒錯していると言ってもいいだろう。
「喜ばしいことだ! この傷の痛みこそが私の求めたる真価だ! 諸君らは素晴らしい! ああ、何度でも! 何度でも私に立ち向かってくれ! それが私の喜びだからだ!」

 膨れ上がるユーベルコードの輝き。
 それこそが『戦争卿』の胸に輝く『禿鷹の眼の紋章』の力であった。ユーベルコードを持つ者を光の顎でもって捕食する力。
 それを前にリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は立ち塞がる。あの光の顎に『闇の救済者』たちを捕食させるわけにはいかないからだ。
「……随分と楽しそうなところ申し訳ないけど、お前の望みが叶うことは決してない」
「いいや、叶っているよ。君は私の敵だ。愛おしき仇敵だ! わかるだろう。君と私とでは滅ぼし合うしかないのだと!」
「……いいえ。お前の目の前にいるのは、お前たちのような存在を狩る天敵よ?」
 リーヴァルディは告げる。
 彼女と『戦争卿』は対等ではない。ましてや格上でも格下でもない。
 ただの狩るか狩られるかの間柄でしか無いことを告げる。

「……彼等に目移りしている時点で結果はわりきっているわ」
 光の顎を手にした大鎌で受け流し、大地に叩きつける。
 あの紋章の力は自動的だ。ユーベルコードを持つ者をくらわんとするばかりの悪辣なる力。
 ならばこそ、リーヴァルディは見切ることができる。
 攻撃の意志が宿っていない自動的な攻撃など、問題にすらならない。
「そうかな? 私には今からどんでん返しがあると思っているよ。物語はいつだって起承転結があるものだろう! 結末がまだなのならば、今は転ずるが如く目まぐるしく戦場をかき回す時だろう!」
 煌めくユーベルコードより現れるのは、リーヴァルディ自身であった。
 これが彼のユーベルコード。
 己に憎悪の感情を抱かせた者の姿を似せた分身によって敵の最大出力をもって迎撃させる力。

「――ッ!」
 怖気を走らせるほどの魔力の奔流に『闇の救済者』たちの体がこわばる。
 無理もないことだ。そこに光の顎が迫るも、リーヴァルディは大鎌の一撃で、それを薙ぎ払う。
「すません……!」
「……気にしないで。私達も紋章付きと戦えるようになったのは最近だもの」
 そして、リーヴァルディは彼等を背に魔力を貯める。
 己の最大威力のユーベルコードを放とうとして似姿。確かに放たれれば、『闇の救済者』達もろともひとたまりもないだろう。

 けれど、その力は己自身であっても制御の難しい力。
 溜めなければならないのだ。
 それが僅かな十に満たぬ時であったとしても、それは完全なる隙である。
「……私達の戦いを良く見ていなさい」
 これがヴァンパイアと戦うことだとリーヴァルディの瞳がユーベルコードに輝く。

 敵が己の力を扱う。
 ならば、こそ彼女は天地を照らすユーベルコードの輝きをもって常闇の世界を切り裂く。
 ここが地底の世界であったとしても、それでも人は陽光を求める。
 どうしようもない性であったとしても、それが人というものだ。ならばこそ、彼女の手にした大鎌が力を発露する。
「……その術は確かに私の手札の中で一番強力だけど、それは悪手よ?」
 そう、その十秒に満たぬ時間さえもリーヴァルディにとっては致命的。
 そして、それを見逃すほど彼女は優しくないとうそぶくのだ。

「……天地を照らす日輪よ、我が手に光を宿すがいい」
 吸血鬼狩りの業・曙光の型(カーライル)。
 それは陽光を生み出す力。
 吸血鬼のみを焼却する疑似なる態様の輝き。
「これが、太陽の輝き! 私の知らぬ輝き! ああ、美しいな!」
「……ええ、けれど、この美しき陽光の輝きの元にお前たちは存在できない。してはならない」
 放たれる大鎌の一閃。
 それは太陽光を収束した一撃。

 大地を抉り、光の顎すらも切り裂きながら『戦争卿』へと迫る斬撃波。
 それは常闇の世界を塗りつぶし、切り裂く。
 支配と隷属を強いるヴァンパイアたち。その時代が終わりの始まりを告げる。これより先にあるのは希望という篝火のみ。
「……お前達は、いつの日にか彼等に屈する時が来る。この戦いの後に、それは訪れる」
 ならば、その道行きの先を征くのが己達であるとリーヴァルディは渾身の一撃を持って『戦争卿』の妄執ごと押しつぶすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
…この手の手合いって、「自分がやられる姿」でも興奮できるからホントにタチ悪いのよねぇ…

ラド(車輪)と韋駄天印(迅速)で機動力を底上げ、ラグ(幻影)・摩利支天印(陽炎)・エオロー(結界)で○オーラ防御の光学○迷彩傾斜装甲を展開。間合い誤魔化しつつ●轢殺を起動してUFO機動で○騎乗突撃、一気に○切り込みかけて流鏑馬叩き込むわよぉ。
銀の弾丸に刻むルーンはダエグ・シゲル・ユル。
「黎明」の「陽光」をもって「訣別」の証とするわぁ。
破暁の先駆としてはまあ上等でしょ。

「抵抗と反逆の末に打ち倒される」なんて、文字通り絶頂モノでしょうねぇ、きっと。
結局どうあがいてもご褒美なんだもの。ホント、相手するだけ損よねぇ…



 巨大な光の斬撃が『戦争卿』ブラッド・ウォーデンを切り裂く。
 すでに全身から血の気が退いたように真っ青になっている彼の姿が、どれほどまでに強大な存在であったとしても猟兵たちの攻勢によって追い詰められていることを証明している。
「なんとも美しいことだ! 私の破滅を齎す者たちよ。英雄と呼ばれるに値するものたちよ! 諸君らの生き方は美しい! 私はどうしようもなく感激しているのだよ! 賞賛を送りたい。私の破滅よ!」
『戦争卿』は笑っていた。
 傷だらけになりながら、今にも消耗し、消滅しそうになりながらも、なおのこと笑っていたのだ。
 そこに苦悶も苦痛もない。

 あるのは悦びだけであった。
「……この手の手合って『自分がやられる姿』でも興奮できるからホントにタチが悪いのよねぇ……」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は息を吐き出す。
 ため息を吐いたと言った方が正しいだろう。
 彼女の瞳に映る『戦争卿』は狂気という本質によって破滅への道をひた走る存在である。己の破滅と世界の破滅を同義に語るからこそ、彼は己が倒されることをこそ望む狂乱の徒。
 どんなに追い詰めたとしても、ティオレンシアには彼を喜ばせることにしかならぬことを知る。

 迫る血色の砲弾の雨。
 降り注ぐような攻撃であった。追い詰められて尚、これだけの攻勢を仕掛ける力がある。
「もっとだ、もっと私に美しいものを見せてくれ! 猟兵、君等ならばそれができるはずだ! この煌めくような美しい物語はきっともう終盤なのだろう? 私はそれが、その結末が、私の破滅が見たいのだ!」
 溢れかえる射撃兵器群。
 打ち込まれる弾丸はあまりにも苛烈であった。
 けれど、ティオレンシアは様々な刻印呪紋でもって弾丸を防ぎながら、轢殺(ガンパレード)の道をゆく。

 バイク型UFO『ミッドナイトレース』はそのための力だ。
 ユーベルコードを感知して、一気に『禿鷹の眼の紋章』が光の顎となって襲いかかる。
 それらを圧倒的な速度でもって躱す。
「逃げるのか、逃げるわけがないよな、猟兵! 私の破滅!」
「それはそうねぇ……ダエグ・シゲル・ユル」
 ティオレンシアの手に握られるシングルアクションのリボルバーに装填された銀の銃弾にルーンが刻まれる。
『黎明』『陽光』『訣別』。
 その言葉の意味することを『戦争卿』は理解できなかっただろう。

 そう、これは破暁の先駆けたる力。
「もったいないほどに上等でしょ」
 放たれる弾丸は三発。
 己に迫る光の顎を貫き、『禿鷹の眼の紋章』をも貫く二発目の弾丸。
 そして、最後の一発は『戦争卿』の胸を穿つ。
「がっ、く……!!!」
「『抵抗と反逆の末に打ち倒される』なんて、文字通り絶頂モノでしょうねぇ、きっと」
 ティオレンシアは『ミッドナイトレース』と共に常闇の世界を切り裂くように飛ぶ。
 見下ろす先にあったのは『戦争卿』の喜悦満ち足りたかのような表情であった。

 己の破滅を願い、己に立ち向かうものを縊り殺さずにはいられない狂気と倒錯の徒。
 その末路は哀れなる破滅でしかないのだとしても、それこそが彼の望んだものであるというのならば。
「結局どうあがいてもご褒美なんだもの」
 ティオレンシアは困ったようにまた息を吐き出す。
 自作自演も極まったような、三文芝居のほうがまだマシだと思えるほどであった。
 きっとこれは『戦争卿』による演出の劇中劇。
 彼の自慰そのものな戦い。

 ゆえに、ティオレンシアは吐き捨てるように言うのだ。
「ホント、相手するだけ損よねぇ……――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…テンションが高い……歯ごたえのある敵を求めて居たのだろうな…
…それなら同士討ちでもして欲しい所だね…

…私の分身から最も殺傷力の高いUC…ね…防ぐことが困難な【尽きる事なき暴食の大火】辺りか…
…通常の防御では燃やされてしまうから…【その符号、我が書中にあり】を発動して大火と分身体を封魔の書に吸収してしまおう…
…同時に、禿鷹の眼の紋章の攻撃は多重に障壁を張って防ぐよ…
…そんなに戦争がしたいなら…自分とやればいい…
…頁を破って戦争卿の分身を呼び出して本物とぶつけよう…
…分身と本物がぶつかっている間に闇の救済者達と連携して術式装填銃【アヌエヌエ】から炸裂弾を放って戦争狂に攻撃を加えるとしよう…



 隻眼となりはて、体中に傷跡を残し、さらには胸を銀の弾丸が撃ち抜く。
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは満身創痍であった。
 血潮は悉く大地に流れていく。
 けれど、彼の表情は喜悦そのものであった。
「くっ、ぐっ、フフフフフ、ハハハハハッ!! たまらないな! 素晴らしい、素晴らしいと思っていたが、これほどとは! 諸君らの戦いは、私にとって最も見たかったものだ! 私の求めていた物語そのものだ!」
 彼にとって破滅とは己の求めるものであった。
 破滅こそが世界の破滅と同じ。
 燃え盛る世界の破滅。どうしようもなく焦がれた破滅である。強者も同胞も誰も齎してくれなかった物語の結末だ。

 その様子にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は異様なる雰囲気を感じたことだろう。
「……テンションが高い……歯ごたえある敵を求めて居たのだろうな……それなら」
 同士討ちでもしていてくれたらよかったのにと思わずには居られなかった。
 支配も隷属も是としないのならば、どうしてそうしなかったのかとメンカルは思っただろう。
 けれど、『戦争卿』が求めていたのは同族ではない英雄たちとの戦いだ。
 弱者たる『闇の救済者』たちは己たちの手で力を得て立ち向かってくる。叛逆、即ち、己に対峙する資格を持つ者たちだ。
 そして、猟兵は彼の憧れそのものであった。英雄そのものであった。

 だからこそ、『戦争卿』は求める。
「美しい。これこそ白色の焔。あの星をも飲み込む焔だ」
 メンカルの似姿が『戦争卿』のユーベルコードによって現れる。その手にあるのは白色の大火。
 あらゆるものを燃料して燃え続ける尽きることのない暴食の火である。
 その白い炎がメンカルへと放たれる。同時に『禿鷹の眼の紋章』からも光の顎が飛ぶ。
 波状攻撃だ。
 ここに来て配下を失っても尚、『戦争卿』はただ一人で軍となる力を持っている。

「……私の力だけれど、厄介だね。よりによって、防ぐことが困難な、それか……」
 通常の防御では燃やされてしまう。
 あらゆるものを食らう炎。それは結界であろうと、防護の加護であろうと何もかも延焼して喰らい尽くすのだ。
「でも、防げないとは言っていない……」
「どうするというのだ。この美しき炎を前に君はどうするというのだ。教えてくれ、見せてくれ! その術を、その力を! 私の破滅よ!」
「魔を掴む書よ、集め、封じよ、汝は封印、収奪。魔女が望むは写して記す封魔の書」
 メンカルの手に現れるのは封魔の書。
 その書に白色の炎が触れた瞬間、瞬時に頁の中に飲み込まれていく。さらに迫りくる光の顎を多重の障壁によって阻まれる。

 ユーベルコードごと肉体を食らう力。
 メンカルにとって脅威であったのは、己の力であったことは皮肉でしかない。そして、己の力であるからこそ、メンカルはそれに対処できる。
 制御できぬ力に溺れるほど彼女の知識の海は浅くはないのだ。
「……そんなに戦争がしたいなら……自分とやればいい……」
 メンカルはその手にした封魔の書から頁を引き裂き、『戦争卿』のユーベルコードを開放する。

『戦争卿』の分身が血色の砲弾を放つ。
 それは殺戮の力。
「私自身だと……? そんなものを私は求めてはいない! 私が求めているのは英雄との戦いだ。私を滅ぼす存在との戦いだ! 私自身など!」
 血色の砲弾が飛び交う。
 大地を射撃兵器群が埋め尽くし、砲弾は嵐のように二体の『戦争卿』を包み込んでいく。

「……さあ、今だよ」
 メンカルは『闇の救済者』たちに告げる。
 彼等の覚醒仕掛けているユーベルコードであっても、今ならば届く。分身と本物が激突し、こちらに意識を裂けぬ今こそが好機。
 術式装填銃『アヌエヌエ』と『闇の救済者』たちの放つユーベルコードが『戦争卿』へと打ち込まれる。
 嵐の中に『戦争卿』は消えるしかない。

 彼の求めた破滅は、決して訪れない。
 何故ならば、彼は飽き足りぬモノだからだ。世界を滅ぼすことと己の破滅が同義であるからこそ、彼だけが滅びる結末をたどることは、敗北以外の何者でもない。
 敗北と破滅がつながらぬように、彼には永遠に手に入れられないものを求め、そして滅びるしかない。
「……これがお前の滅び。望むものではなく、与えられる破滅だよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
よもや敵の指揮官が余の同類とはな。
彼奴は常人の手に負える敵ではない、余が相手をしよう!

ヤークト・ドラッヘに【騎乗】し打って出る。
闇の救済者達を食わすわけにはいかぬ故、此方から攻勢をかけ意識を引き付けよう。

黄昏大隊・制空部隊発動。
現れる騎士団を、ヘリの武装とヤークト・ドラッヘの搭載火器(【砲撃】【誘導弾】)にて殲滅しつつ、戦争卿にも火砲を叩き込んでやろう。
騎士の射撃武装は散弾銃、なれば一定距離を保てば有効打は与え得まい。
紋章からの攻撃はヤークト・ドラッヘの機動で躱すが、避けきれぬなら此を盾とする。

紋章の攻撃と義眼の【情報収集】で戦争卿の位置を捕捉次第、魔導小銃を【スナイパー】で撃ち込んでやろう。



 重機甲戦闘車『ヤークト・ドラッヘ』が反重力推進機構でもって戦場を疾駆する。
 弾丸の嵐、災禍の如き戦場にありて未だ『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは健在である。
 健在と言っても、その肉体は満身創痍。 
 隻眼成り果て、銃創が刻まれている。失った血潮は大河の如く大地に染み込んでいるだろう。
 それでもなお。
「ハハハッ! たまらないな! 私の破滅! 私に破滅を齎してくれる英雄たち! 私という物語は、英雄譚の結末として語られる! 素晴らしい! なんとも素晴らしいことだ!」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは笑っていた。

 ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は『ヤークト・ドラッヘ』を駆り、戦争に対する狂気めいたものを抱くモノ同士としてシンパシーを感じずには居られなかった。
「よもや敵の指揮官が余の同類とはな」
 あれはもう常人の手に負えるものではない。自分が退治しなければならない。
『禿鷹の眼の紋章』は光の顎となってユーベルコードを持つものを襲う。その肉体ごと喰らおうというのだ。
『闇の救済者』たちもまたユーベルコードに覚醒しかけている者たちだ。
 あの光の顎を防ぐので手一杯であった。

「制空部隊出撃!敵群の頭を抑え火砲を馳走してやるが良い!」
 ギージスレーヴの瞳がユーベルコードに輝き、召喚されるのは戦闘用ヘリコプターの群れ――黄昏大隊・制空部隊(アーベントロート・フブシュラウバー)であった。
 機関砲とミサイルで武装された戦闘用ヘリコプター。
 その機動力は圧倒的であった。
 だが、それ以上に迫る重装の騎士たちの進撃が早い。重装であるがゆえに動きが鈍いということもなく、光の顎と共に『闇の救済者』たちへと襲いかかる。
「させはせんよ!」
 放たれるミサイルと機関砲。

 それらが重装の騎士たちを貫き、光の顎を討ち滅ぼす。
「楽しいな、楽しいだろう、こんなにも血と硝煙が満ちている! 戦乱の災禍に酔いしれよう!」
『戦争卿』ブラッド・ウォーデンはなおも笑う。
 ギージスレーヴの手繰る戦闘用ヘリコプターが己の騎士たちを蹂躙していてもなお、笑っていたのだ。
 悍ましき狂気。
 滅びても、滅びても、それが望むのならば、彼にとっての美酒は敗北であっても構わないのだ。

「こちらに意識を向けているな、『戦争卿』よ。貴様の滅びは、貴様の敵はここだ」
 ギージスレーヴは展開した戦闘ヘリコプターでもって騎士たちを蹂躙し、己の存在を顕にする。
『ヤークト・ドラッヘ』を駆るの彼女の姿は『戦争卿』にとっては恋い焦がれた相手と同じであった。
 求める破滅。
 己に齎される甘美なる世界の破滅の光景。
 自身と世界を同義にするからこそ得られる喜悦。それに塗れた視線をギージスレーヴは受け止め、同時にそれを滅ぼす義眼が煌めく。

「そこだな、余を見る視線。喜悦に塗れているぞ、『戦争卿』――」
 構えた魔導小銃の引き金を引く。
 その弾丸は吸い込まれるようにして『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの頭蓋を貫く。
 血潮が噴出し、脳漿をぶちまけながら彼はなおも高く笑う。
 これこそが己の物語に相応しき結末であると。
 破滅こそが己の最期を飾るに相応しいと、狂気のままに滅びを甘受しようとしていた。
 だが、それは訪れない。

 彼に甘き結末はない。
 滅びという望むものが目前に迫ろうとも、彼の望む破滅は決して訪れない。ギージスレーヴは『戦争卿』と同類でありながら、その根底にある哲学とが異なることを知るだろう。
 滅びるべくして滅びるのと、すでに滅びているが故に望む滅びとは相容れぬ。
 停滞した時間の中で滲み出た過去の化身は、敗北と破滅から生み出される輪廻より逸脱しているが故に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギヨーム・エペー
ははっわからなくもないと思ってしまうのは、血のせいなのかな。楽しんでいるようだなー、人生を
おれは世界が燃え盛って欲しいよ。平和とは程遠いきみは滅ぼしてこそだろうが、おれたちは抗ってこそだからどうやってもこの話は平行線だ!
闇の救済者だけじゃあなく、おれとの戦いにも夢中になってくれねえか? 楽しませてやるからさ

戦争卿だけじゃなく、仲間にも火を焚べる。闇の救済者たちへの炎は盾だ。彼らの前方に置いて何かが比の中に飛び込んで来たら温度を上げて一瞬でも隙を作る。その間を活かすのは闇の救済者たち自身だ。自身の熾火を忘れるなよ! 火種がある限り、おれが延焼を止める通りはないからな!!
して、戦争卿。きみを邪魔した者はおれだ。おれは此処にいるぞ。炎海を泳いで此方に来い。今もなお尽きず燃ゆる心を滾らせているその姿をおれに見せろ。楽しもうぜ、対等だからこそ得られる満足感をよ



 頭部に打ち込まれた弾丸によって血潮と脳漿をぶちまけながらも『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは立っていた。
 ゆらりと揺れる体。
 霧消しない体。
 それを支えるのは、彼の求める破滅故。
「ああ、世界が赤く染まっている。美しい。私が求めていたのは、この結末だ。この終末だ。世界よ、君等は美しい。この煌きの中に私は溶けて消えるのだ」
 だが、彼の求める破滅など猟兵達は与えない。
 与えてはならない。何故ならば、彼の求める破滅は世界の破滅。己自身が世界と同義と捉え、己が中心であるという利己によって生み出される欲望によって走るものであるがゆえに。

「ははっ、わからなくもないと思ってしまうのは、血のせいなのかな」
 楽しんでいるようなだ、人生を、とギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)は告げる。
 彼の血は半分は吸血鬼のものだ。
 ダンピールである己であるからこそ、『戦争卿』の求めるところを理解できなくはないと思ってしまうのかもしれなかった。
 人生とギヨームは『戦争卿』の生き方を評した。
 けれど、目の前にいるのはオブリビオンである。過去の化身。それゆえに停滞している。これ以上はない。発展はない。進展はない。進歩はない。

 破滅から生み出されるものもない。
 輪廻の如き輪より逸脱した、なにものにもならないものである。
「おれは世界が燃え盛ってほしいよ。平和とは程遠いきみは滅ぼしてこそだろうが、おれたちは抗ってこそだから、どうやってもこの話は平行線だ!」
 そう、『闇の救済者』たちは『今』を生きている。
 破滅という先を見ていない。
 在るのは未来という先でしかない。過去より今を侵食するオブリビオンには理解のしようもないことであった。
「滅びは変わらない。だからこそ美しいとは思わないか。私の破滅も定められたことだ。だから美しい。不変はそのままに、変化すら私を侵すことができない。そして、そんな私を打ち倒す光こそが、諸君らだ!」

 ユーベルコードが激突する。
 それはギヨームの持つ力。分身から生み出された一万度にまで温度が上昇する魔術の炎。
 それはギヨームごと『闇の救済者』たちを滅ぼす炎であった。
「『闇の救済者』だけじゃあなく、おれとの戦いにも夢中になってくれねえか? 楽しませてやるからさ」
 炎が焼べられる。
 戦場に炎が満ちている。それはこの常闇の世界にあってあらゆるものを照らし出す光であったことだろう。

 篝火というにはあまりにも強烈な炎。
「楽しませてくれる。私の破滅を炎で彩ろうというのか、ならば、私はな!」
 全てを滅ぼすのだと『戦争卿』は笑って迫る。
 異形の狙撃銃から血の砲弾が放たれ、脳漿を撒き散らしながら迫る姿はおぞましさしかない。
 己の破滅に執着する化け物。
 けれど、その姿に恐れを為す者はもういなかった。『闇の救済者』たちは己を護る炎と共に駆け出していた。
「そうだ、『戦いに際しては心に平和を』。恐怖が心を砕いても、勇気が打ち消されても、それでも残るのは平和への想いだ」
「俺達は手をのばすしかないんだ。どんなに苦しくても、戦いの先に平和があるから!」
「戦いの後に破滅は来ない。俺たちが心に平和を持っている限り!」

 その言葉にギヨームは微笑むのだ。
 それこそが彼等の強みだ。弱い者たちであることは言うまでもない。ヴァンパイアとくらべてヒトの肉体は脆弱そのもの。
 少し小突けば傷が出来て血潮が流れ、そして死に至る。
 弱く、悲しい生き物だ。
「自身の熾火を忘れるなよ!」
 そう、それは熾火だ。彼等の心に灯った火だ。それが繋がり、大きな篝火となって常闇すら吹き飛ばす光と為る。

 いつだって人は殺されてしまうほどに弱い。
 けれど、その火種が在る限り決して負けはしない。それをギヨームは知るからこそ、己に迫る『禿鷹の眼の紋章』より放たれる光の顎すら炎で持って吹き飛ばす。
「して、『戦争卿』。きみを邪魔した者はおれだ。おれは此処に居るぞ」
 戦場は炎の海となっている。
 互いに放たれた炎は激突し、大地を燃やす。
 煌々と立ち上る炎の中をかき分けて、『戦争卿』ブラッド・ウォーデンは存在してることさえも不可解なほどの凄惨たる姿を晒す。
 燃え尽き、消えようとしていてもなお、その心に滾るものが彼を存在させ続けている。
「不快だ。諸君らの光は確かに美しいが、私がどうしても手が届かぬものだ。それに憧れ、心を湧き上がらせたものであるが。それでもなお、私には今、不快に感じられる。何故だ」

 その光は人の心が見せるものであったからだ。
 ユーベルコードではない輝き。人の意志を増幅するのがユーベルコードであるというのならば、人の心をつなぐのは、人が他者に差し伸べる手だ。
 オブリビオンには、ヴァンパイアには決して持ち得ぬものだ。
 此処にあるのはヒトとヴァンパイアの狭間に在る者。
「楽しもうぜ、対等だからこそ得られる満足感をよ」
 ギヨームの言葉は『戦争卿』には理解できないものであった。程遠いものだった。これが己の求めた破滅の形であるのか。

 彼の炎の背後に在る『闇の救済者』たちがつなぐ心の光は、己が求めたものではなかった。
 ユーベルコードでも、力を得て成長した英雄の姿でもない。
 あるのは只人のままに心をつなぐたった一つの言葉。
「あってはならない。私が求めた破滅は『これ』ではない! 弱者が、私に抵抗し、叛逆し、反逆の果に私に齎してくれる破滅ではない! 何故だ、何故、私には私の望んだ破滅が訪れないのだ!」
 その咆哮をギヨームは聞いただろう。

「簡単な事だよ『戦争卿』。彼等の心に在ったのはきみに対する憎しみや恨みではなかったというだけの話だ」
『戦いに際しては心に平和を』。
 憎悪でも、怨恨でもない。
 たった一つの『平和』という見果てぬものにこそ、破滅は敗れる。敗れたのだ。

 ゆえにギヨームは滾るものではなく、その手にした炎でもって『戦争卿』に最期の破滅を齎す。
 火種は彼等の中に。
『闇の救済者』の心に宿った熾火にこそ後押しされるように、その炎は望まれた破滅ごと焼き切れ、望まぬ破滅の中に沈むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月27日


挿絵イラスト