取り戻した誇りの行く末は ~ デイドリーム・アゲインⅣ
●土蜘蛛の『檻』にて
檻、あるいは巣。
土蜘蛛が力を満たすその中央でその女王は静かに佇んでいた。その背に駆け寄る土蜘蛛がひとり。
「眞由璃様。……北の楔が破壊されました」
「そうですか……もはや力を蓄える刻は過ぎた、ということですね」
小さな嘆息の後、土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』は檻の天井を見上げる。白い、蜘蛛糸が幾重にも重なってこの地に作られた繭のような、ここは眞由璃の『檻』。そしてオブリビオンとして蘇った土蜘蛛たちの拠点にして、潜伏場所であった。
「座して滅ぶために、いまひとたびの生を得たわけではありません」
振り返る眞由璃。そこにはいつの間にか周囲に集まっていた土蜘蛛たちがいた。彼らは、眞由璃がこの『今』に蘇って後、自身が生んだ土蜘蛛たち。
――いまひとたび、土蜘蛛の使命を。
「打って出ます。いかな来訪者とて我らの使命を、生を邪魔するならば倒すのみ」
眞由璃の檻が彼女の言葉に反応して、蓄えていた力を土蜘蛛たちに与えていく。いまだ十分な勢力とは言えない。しかし、それでも……!
「琴平の地にて檻を作り、戦いの準備を整えます。急ぎなさい」
眞由璃の言葉に、土蜘蛛たちが蜘蛛の子を散らすように駆け出していく。
「メガリス無くとも、私の無限繁栄は無くなっていません」
――今度こそ。無闇に増殖する人類の『捕食者』、その本来の使命を果たす。
「そして、私と『新たな子供達』は生き延びてみせます……!」
決意を胸に、眞由璃もまた出陣するのであった。
●グリモアベースにて
「やっと捉えました。これが一連の事件の元凶です」
文月・悠(緋月・f35458)が絵本型のグリモアを開いて、予知の内容を展開する。もちろん集まってくれた猟兵たちに見せて、告げるためだ。
「最近、四国の周りで事件ばかり起こっていたのは、彼女が四国に『檻』を作っていたから、です」
そこに映し出されていたのはひとりの女性。どこかの高校の制服に身を包みながら、その右手に『赤手』という土蜘蛛独特の武器を携えた、過去より蘇った土蜘蛛の女王だ。
「過去、葛城山の戦争の時に比べたら、勢力はまだまだ全然小さいんですけど」
それでも、もう無視できないレベルまで蘇った土蜘蛛勢力は成長してしまった。
「どうやら予知が邪魔されてたみたいです。四方に『楔』を作って結界張ってたみたいで」
すみません、と悠が申し訳なさそうな顔をする。
どういうことかというと、檻を中心にして四方に『楔』を打ち、龍脈の流れを変えることによって、土蜘蛛にとって有利な特殊空間を作り上げていたようだ。
「ですが、皆さんの活躍で3本の楔が破壊されて、最後の一個もどこか別の勢力に壊されたみたいですね」
それによって土蜘蛛の勢力は世間に顕わにされてしまった。もはや雌伏の時は終わった、と土蜘蛛も打って出るようだ。
「香川の琴平にある金刀比羅宮。この地を中心にして、新たに土蜘蛛の檻を作るようです」
残念ながら今から向かったとしても、檻の形成そのものを阻止することは出来ない。この極めて大規模な土蜘蛛の檻は琴平周辺……香川の西半分ほどを覆い尽くして、その地にいる人々を捕らえている。
「そして中にいる人々を『蜘蛛糸の繭』に捕らえて、精気を奪っていき……最後に『熟せば』眞由璃は人々を喰らます」
それによって、配下たる『土蜘蛛オブリビオン』を生み出すのが目的。彼女によって土蜘蛛は繁栄する。
「見た目、大地を蜘蛛糸が覆っているので問題とか事件とかで話題にあがりそうなものなんですけど……」
だが、土蜘蛛の檻は全く話題にならない。
何故かと言えば、この土蜘蛛の檻にかかわる一般人は完全な記憶操作の下にあるからだ。
さらに土蜘蛛の檻は外部との交流を完全に遮断し、檻の外にいる人々は檻のある地域のことやそこに住む人々のことを完全に忘れている。
檻の中にいる人たちも『檻から決して出られない』にもかかわらず、『違和感なく日常生活を過ごしている』という。とはいっても蜘蛛糸の繭に捕らわれていない間だけだが。
「この土蜘蛛の檻を破壊するには、現地まで殴り込みに行って眞由璃を倒すしかありません」
幸い、能力者や猟兵であれば外から完全記憶操作の影響を受けることなく、土蜘蛛の檻を認識できる。外からの侵入も容易に出来る。
「中では捕らわれた人々が『今まで通り』の生活をしています」
けれども、今までと違うことがある。ここは閉鎖された空間であり、土蜘蛛が闊歩する巣であり、そして土蜘蛛の影響で変化が起きている。
それらをそれとなく認識させて『違和感』を感じさせることが出来れば。
「中にいる人々が現在の環境に『疑問』を持てば、それが檻の崩壊に繋がります」
そして檻が損傷すれば、その損傷個所を眞由璃が確認しに来る。
「皆さんを認識すれば、まずは配下の土蜘蛛オブリビオンをけしかけてくるはずです」
これを退けることが出来れば、眞由璃本人との戦いとなる。
「ここで眞由璃を倒すことが出来れば、土蜘蛛の檻は消えます」
土蜘蛛の檻が消えれば、人々も琴平をはじめとした地域もすべて元に戻る。
ここまで話をして、悠はひと息つく。
「予兆は……皆さん見てますよね?」
それは過日、猟兵たちが見た予兆。眞由璃が復活した時の予兆だ。
「彼女は紛れもなく邪悪なオブリビオンです。ですが、同時に『会話が出来る余地』もあります」
眞由璃自身が交渉を行う程度には知性と余裕を持った存在であるし、何より土蜘蛛の女王は人類の存在を認めている。土蜘蛛の使命が人類を喰らうことならば、人類がいなければ土蜘蛛は使命を果たせない。
バタフライエフェクト、という言葉がある。小さな蝶の羽ばたきとて、その変化が有るのと無いのとでは、その後の結果や状態が大きく異なってしまうという現象だ。
眞由璃との戦いはまさしくその『バタフライエフェクト』にあたる。
「どう出るかは現地の皆さんにお任せします。思うようにやってください」
グリモアは予知するのみ。後を決めるのはいつだって現地にいる戦う者たちだ。
「よろしくお願いします」
そう言って悠はグリモアを輝かせ、猟兵たちを現地へと送り出すのであった。
るちる
まいどです。いつもありがとうございます、るちるです。
そんなわけで、随所でちょーっとずつ匂わせていた土蜘蛛をようやく捉えることができました。土蜘蛛決戦まいります!
ちなみに、楔の4つは、今治、宇和島、室戸、淡路島にありました。デイドリーム・アゲインのシリーズⅠ~Ⅲがそれぞれに該当しています。淡路島は別の勢力が壊しました。
●全体
3章構成の決戦シナリオです。通常の3章シナリオとよく似た感じになっています。
1章では土蜘蛛の檻を損壊させてください。本格的な戦闘は2章以降です。
2章で配下の土蜘蛛オブリビオンとの戦闘、3章で眞由璃との戦いとなります。
●1章
日常『正の残留思念が留まる場所』ということで。
何故か金刀比羅宮のあった場所が遊園地になっちゃいました。本宮とか宝物殿とか建物がある場所が乗り物に置き換わっている感じです。狭いのでひとつの建物=ひとつの乗り物的な。本宮のある場所には観覧車があります。他の人とズレても構わないので乗りたいものをご自由に指定ください。
POW/SPD/WIZの行動は参考程度に。遊園地で出来そうなことなら何でもオッケーです。
遊びながら『ここ神社だったよね』的なムーブをすると、違和感を感じさせることが出来ます。
●2章
集団戦『絡新婦』との戦闘です。
土蜘蛛オブリビオンと化していますが、内容は純戦に近くなります。行動パターンなどはまた章が始まる前に追記します。
●3章
ボス戦『土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』』との戦闘です。
かつて銀誓館学園との戦いに敗れ、滅んだ『土蜘蛛の女王』です。オブリビオンと化した彼女は、生前と同様に土蜘蛛の支配領域を広げんとしています。
基本的には戦って倒す、で問題ありません。……が、場合によっては交渉することも可能でしょう。
章が始まる前に情報を追加します。
●
各章ともプレ受付開始前に冒頭説明or補足説明を追加します。ご参考にしてください。プレの受付についてはタグでお知らせします。毎度ですが、1日の執筆人数が多いと採用できない人が出るかも? プレ受付開始や状況なども含めて、タグでお知らせします。
それでは皆さんの参加をお待ちしていまーす!
第1章 日常
『正の残留思念が留まる場所』
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POW : 体力の続く限り堪能する
SPD : 計画的に楽しみ尽くす
WIZ : フィーリングに従って遊び倒す
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●琴平の地にて
現地に転送されてきた猟兵たちは目の前の光景に絶句する。
『さぬきこんぴらさん』として有名な金刀比羅宮のあった地が……遊園地になっていたからである。え? マジで?
どうやら金刀比羅宮に蓄積されていたプラスの残留思念――楽しかった、面白かったという感情と土蜘蛛の檻の支配能力がうまい具合に混ざり合って、別の施設を作り出してしまったらしい。
そこまではまだいい。檻さえ壊せば元に戻るのだから。
何が問題かというと、人々がここで遊ぶと精気を奪われるということである。精気を奪われた疲労感は『遊んだからかなー?』的な理由でスルーされる。それが続けば、そのうち遊園地の中で倒れる。倒れたら終わりだ、そのまま救急室という名の蜘蛛糸の繭に捕らわれて帰ってこない。
まずは、この遊園地を破壊しなければ。
しかしいきなり破壊行為に及ぶと人々から警戒される。外から来た観光客を装って、遊園地で遊びつつ、一緒にいる人々に違和感を感じさせる行動をしなければならない。
例えば……乗り物に乗る前に『二礼二拍手一礼』してみたり、鈴紐を振って鈴を鳴らす仕草をしてみたり。お土産を買う時に『お守りってどこにあったっけ?』とか言ってみるのもいいかもしれない。
あるいは、蜘蛛糸の繭に捕らわれている人々を無理やり引き剥がして覚醒させることで、強引に現実を見せることも可能だ。
とにかくこの地が『元は神社であった』ことを思い出させるのだ。
●檻の要にて
「この……気配は……」
目を瞑り、体を休めていたソファから身を起こしながら、眞由璃は思わず呟く。
檻の中に入ってきた侵入者。
「銀誓館学園……いえ、猟兵……」
その身に残る因縁、あるいはオブリビオンと化したことで宿った宿命。それによって眞由璃は答えを導き出す。
だが、猟兵たちがどう出てくるか……。
「我らの宿命は、戦いか否か」
そう言ってまずは静観を選ぶ眞由璃。
土蜘蛛の檻の中で様々な思惑が錯綜する。
瀬河・苺子
【心情】
土蜘蛛戦争、既にわたしの入学時期だと過去のお話でしたね
もう土蜘蛛の先輩方もすっかり人間社会に馴染んでいましたし、わたし自身も土蜘蛛始めとした来訪者の方たちに違和感を感じないほどでした
※入学時期はアリストライアングル直前位
しかし、当初の土蜘蛛と同じスタンスで動くオブリビオンというのなら、たしかに脅威です
【行動】
観覧車に乗る前に、水場で禊として手と口をすすぐ
「うう……必要なのはわかっていても微妙に恥ずかしいですね」
ひとまずは観覧車で高台から周囲の様子をうかがいます
「随分と広い範囲に影響が出ていますね。改めてオブリビオン、ユーベルコード、恐ろしい力です」
●
琴平の地を覆い囲む『土蜘蛛の檻』。一般人では認識することすら出来ない、強力な隔絶の檻に対して、猟兵たちは攻略を開始する。
そのひとり、瀬河・苺子(人間のゾンビハンター・f36282)は檻の中を目的地に向かって進みながら、かつての事を思い出す。
(土蜘蛛戦争、既にわたしの入学時期だと過去のお話でしたね)
『銀の雨が降る時代』と謳われた時期はそこそこ長い。様々な事件、あるいは出会いを経て大きくなっていった銀誓館学園であるが、イグニッションカードを持って戦い始めた時期は生徒たち各々によって違う。苺子が銀誓館学園に入学した時期は、既に土蜘蛛という組織との確執は取り除かれた後であった。
(もう土蜘蛛の先輩方もすっかり人間社会に馴染んでいましたし……)
苺子自身も土蜘蛛を始めとした『来訪者』の存在に違和感を感じることはなかった。いやまぁ、銀誓館学園が規格外だったことは除く。
かの頃から土蜘蛛が人を喰らうことは無くなったという。その先が『今』の土蜘蛛たち。人間とともに生きる種族である。
しかし。
「……当初の土蜘蛛と同じスタンスで動くオブリビオンというのなら……たしかに脅威です」
誰にも聞こえないように呟く苺子。
そうであるならば。それを判断するためにも、苺子は件の目的地へと急ぐ。
というわけで。
遊園地である。山の上に遊園地。どっちかっていうと山の斜面に遊園地。どういうことなのか。いや、深く考えてはいけない。
とりあえず、元は金刀比羅宮の本宮があった場所まで山を登っていく。そして観覧車に乗る……前に。
「……あ、ありましたね……」
周囲の一般人の誰もがスルーというか、存在を認識できていないが、観覧車の足元。『危険だから入らないで』と周りをぐるっと囲んでいるフェンスの一角に手水舎がある。列に並ぶ前にそこまで行って。
つまり境内に入る前に、誰もがする行為を行う。
「うう……必要なのはわかっていても微妙に恥ずかしいですね」
手水舎はそのまま残っているわけで。そこで禊として手と口をすすぐのはとても自然なことだ。ここが遊園地で、しかも周りの人が認識できていないということを除けば。
すっごい見られている。小さい子が苺子を指さしているし、お母さんがその手を『ダメです』と掴んで降ろしている。
無邪気な存在ほど完全な記憶操作の影響を逃れられない。されど、そうでないならば。
苺子の行動は奇異としてうつらず、一般人の大人たちにある程度の驚愕と違和感を与えることに成功する。
その様子にほっとしながら、苺子はようやく観覧車に乗ることができた。
ゆっくりと空に向かってあがっていく観覧車。その室内から苺子は琴平の街を眺める。その風景はおそらく以前と変わらないのだろう。しかし、変わらない……ということが異常なのだ。
「随分と広い範囲に影響が出ていますね。改めてオブリビオン、ユーベルコード、恐ろしい力です」
観覧車の中で気を引き締める苺子。
戦いがすぐ近くまで迫っている。
成功
🔵🔵🔴
黒木・摩那
讃岐金比羅山というと、長い階段を登ったさきにあるという霊験あらたかな海の守り神、と聞いていましたが、遊園地もなかなかありですね!
景色が良いのは最高です。
ですが、遊びすぎると帰ってこられないのはいけませんね。
一刻も早く金毘羅様の御威光を復活させないと。
ここは神社。
であれば、ストレートにかっちり巫女装束で乗り込めば問題解決ですね。
ただ遊園地でコスプレイベントとかもあるから、違和感持たれないかもですけど。
あとはジェットコースターに乗りながら対策を考えましょう。
やっほー!
●
国見・眞由璃の『土蜘蛛の檻』は琴平の地――具体的には金刀比羅宮を中心に広がり続けていた。眞由璃の目的が生き延び、増えることならば、この地は戦うための拠点。力を蓄えているのは中に漂う霊気や魔力といったものの濃さで容易にわかる。
まずは一般人の被害を抑えるためにもこの地の要――遊園地を破壊せねば。ナンデ?? とか思ってはいけない。事実、目の前がそうなっているのだから。
そして、遊園地に足を踏み入れた黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)も全然動じてなかった。
「遊園地もなかなかありですね!」
むしろ、オッケー側だった。誤解を与えるといけないので補足すると、摩那はこの状況を肯定しているわけではない。
(讃岐金比羅山というと、長い階段を登ったさきにあるという霊験あらたかな海の守り神、と聞いていましたが)
という意識はもちろんある。あるし、金刀比羅宮が無い方が良いとは思っていない。しかし、それでも。
「景色が良いのは最高です」
山の上の遊園地から見る景色は最高だった。ただでさえ、元の宮の境内には望遠鏡があるくらいなのだ。そこからさらに高さが出る観覧車やジェットコースターときたら。遊ぶには最適であろうことは誰の目にも明らかであった。
これがオブリビオンの影響がない現実であったならば。
「……ですが、遊びすぎると帰ってこられないのはいけませんね」
小さく、残念そうなため息をひとつ。
そう。この地はいかに楽しそうに見えても、オブリビオンによる搾取のための場である。
(一刻も早く金毘羅様の御威光を復活させないと)
観光気分にそっと蓋をして。
摩那は遊園地と化した金刀比羅宮を進むのであった。
●
何度も言うが、ここは元、金刀比羅宮があった地である。あの、なっがい石段をあがっていった先にある本宮や奥の院はもちろん、その参道もまとめて『讃岐の金毘羅さん』である。
「ここは神社」
摩那が呟く。その彼女の衣装は、本来のこの地において『最適』といえるものであろう。すなわち。
「ストレートにかっちり巫女装束で乗り込めば問題解決ですね」
ど真ん中である。真っ白な千早に緋袴。遊園地の中をその姿で歩けば、今回の事件が無くとも誰もが一回は振り返る。
摩那が持つ一抹の不安はここが遊園地であるということ。
(コスプレイベントとかもあるから、違和感持たれないかもですけど)
と思いながら歩いていたのだが、そこは杞憂だったようだ。
正確には摩那の巫女姿があまりにもハマっていたので。誰もが振り返る→巫女さんかぁ→あれ? ここって……といった連鎖反応が起こっていると思われる。摩那さん、黒髪ロングなので巫女服だと最高に巫女さんです。いいですね!
当初の目的は達成できそうだ。
「あとはジェットコースターに乗りながら対策を考えましょう」
そう、せっかくの遊園地なのだから、遊ばない手は無い。
「やっほー!」
ジェットコースターの最高到達点から急降下するそのタイミングで楽しそうに叫ぶ、巫女摩那さんがいたそうな。
成功
🔵🔵🔴
山崎・圭一
◎
おいおい…どうしたもんだよこりゃあ…
いくらなんでも遊園地はねーだろォ。こんなの神様が泣くぜ?
このメリーゴーランドとか、まさか神馬じゃねーだろうな
(ズボンのポケットからレシートを取り出し)
えーっと…これでいっかー
御神籤に見立ててレシートを金網に結びつけてみる
さり気ない違和感。どうよ
偽りの遊園地なんて虚しいねぇ
俺はやっぱり静かな神社で一人散策する方が好きだけどね
一眼レフ手に一人で彷徨くのはおかしい?
そらァ遊園地じゃおかしい光景だけど。神社じゃ普通だし
あ、そだ。観覧車乗るかー。遠くまで見渡せるだろ
(遠景をカメラで撮りつつ)
此処が本物の遊園地だとしてもだ…
一人遊園地なんてこんな淋しいもんがあるかな…
●
土蜘蛛の女王である国見・眞由璃の『土蜘蛛の檻』。元々、土蜘蛛は人を喰らって増える性質があったのは事実だ。今、この時代に在る土蜘蛛たちは銀誓館学園に所属することでそれを逃れ、その後発展してきたわけだが。土蜘蛛の檻は過去を鑑みるに、本来の土蜘蛛の性質を顕したものなのだろう。
なんで金刀比羅宮が遊園地になっているのかは謎だが。
「おいおい……どうしたもんだよこりゃあ……」
元・銀誓館学園の能力者である山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)はその状況を目の当たりにして、呆然というか驚愕というか落胆というか、複雑な感情の入り混じる声をあげていた。
「いくらなんでも遊園地はねーだろォ。こんなの神様が泣くぜ?」
いろんな生命を生み出してきたディアボロスランサー、その中で自由感あふれる能力者たちが作っていたコミュニティでもこんな事態は無かったはずだ。いや、そんな罰当たりそうそういねーよ。
そんな圭一の視界に飛び込んでくる遊園地のメリーゴーランド。白い馬がぐーるぐる回っている、どこにでもあるようなアトラクションであるが。
「……まさか神馬じゃねーだろうな」
まさかそんな……ハハハ。
それ、アリですね?
●
さておき。
眞由璃の思惑を潰すには、まずこの遊園地を破壊――すなわち、一般人の認識を完全記憶の下から救い出さなければならない。そのためには『ここが神社であった』という事実、今の周囲と異なる違和感を与えることが最短距離だ。
「えーっと……これでいっかー」
ズボンのポケットからレシートを取り出す圭一。それを片手で持って、じーっと読むように眺めた後。
てってって、と近くの金網に近づいていった圭一がそのレシートを網に結び付けていく。
「……」
その様子を遠巻きに見つめる周囲の一般人たち。最初は圭一の行動が奇異にうつったのだろう。しかし、見ている内に何やら違和感のようなものを感じているのは確かだ。
(さり気ない違和感。どうよ)
周囲の、密かにざわつく様子をさりげなくチェックしながら、圭一はこれまたさりげなく立ち去るのであった。
違和感ばっちり。
●
「偽りの遊園地なんて虚しいねぇ」
誰に言うでもなく、圭一の呟きは風に乗って消えていく。例え、聞こえていたとしても問題ない。それもまた違和感を与えるには十分な言霊だからだ。
「俺はやっぱり静かな神社で一人散策する方が好きだけどね」
そう言いながら、圭一は使い古された一眼レフカメラを手に、周囲の風景を撮っていく。ディアボロスランサーに乗っていた旅の記録も撮っていた圭一の仕事道具にして相棒は、彼の手の中にあってとても自然である。
だが周りの人にとっては、一眼レフ手に一人で彷徨く圭一の姿はおかしくうつるのかもしれない。
(そらァ遊園地じゃおかしい光景だけど)
そう心の中で呟きながら、それでも一眼レフを構えて圭一はシャッターを切る。
「神社じゃ普通だし。あ、そだ。観覧車乗るかー。遠くまで見渡せるだろ」
せっかくの遊園地。この風景をカメラに収めるべく、圭一は観覧車へと向かうのであった。
そして観覧車の中から琴平の地を、遠くに見える海をカメラで撮りながら。
圭一はぽつりと呟く。
「此処が本物の遊園地だとしてもだ……一人遊園地なんてこんな淋しいもんがあるかな……」
それは言ってはいけない。その気持ちはオブリビオンにぶつけよう。
そんなわけで、当初の目的は果たせた圭一なのでした。
成功
🔵🔵🔴
剣未・エト
人間変身し後頭部女子夏服を着たくーちゃんと大門から昇っていくスカイサイクルを漕ぐ
「空中散歩だなんて素敵だねくーちゃん。下を見たまえ、あれが有名な石段だよ、拝殿までで785段。奥社まではなんと1368段もあるらしい。これのお蔭で参拝が楽だねぇ!」
「~♪」
ニコニコと頷くくーちゃんに向けつつ周りに聞こえるよう、オペラのようによく通る声で、持ち込んだパンフレットに書かれている事を喧伝する
「社からは今度はジェットコースターで降りられる様だ。おみくじをやったらそちらも乗ろうね」
違和感を覚えるフレーズをアピールしつつ、外の世界の初めての遊園地も姉同然のくーちゃんと楽しむ心算
ふとくーちゃんが斜め掛けする鞄に手を突っ込むと視肉を取り出す
「ありがとうくーちゃん」
精気を補いつつ改めて思う
外で暮らして、学園の生命使い達が守ろうとした日常というものが少しだけわかってきた
無理やり覚醒させるのは手っ取り早いけど、多分きっと日常を壊す事にもつながる
彼等は何も知らないまま日常の延長のまま帰してあげなきゃいけないんだ
●
土蜘蛛の女王である国見・眞由璃の『土蜘蛛の檻』は守りの要ではなく、攻めの拠点。ゆえに彼女はより敵に近い、この琴平の地に檻を作り出した。力を蓄え、入ってきたものを喰らう。巣に捕らえた獲物を逃すほど蜘蛛は優しくない。
されど、土蜘蛛には理性がある。可能性だけを見るならば……戦い以外の道もある。そのためにもまずは接触が必要だ。
「空中散歩だなんて素敵だねくーちゃん」
剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)が傍らの相棒に話しかける。隣にいるのは【くーちゃん大変身】によって人間の姿に変身した相棒ミニ視肉のくーちゃんである。銀誓館学園の高校女子夏服を纏ったくーちゃんとエトは絶賛スカイサイクルを堪能中なのだ。くーちゃんのスカートの中が危険で危ないがそれはさておき。
「下を見たまえ、あれが有名な石段だよ、拝殿までで785段。奥社まではなんと1368段もあるらしい。これのお蔭で参拝が楽だねぇ!」
「~♪」
大門のところから空へ伸びるスカイサイクルはそのまま本宮の高さまで続いている。眼下の絶景かあるいは貴重な体験ゆえか。ニコニコと頷くくーちゃんと、オペラのようによく通る声で喧伝するエト。エトが語るのはパンフレットに書かれている事――つまり、元の金刀比羅宮にかかる内容だ。それをくーちゃんに向けて話すと見せかけて、周りに聞かせているのだ。
どれもこれも、この場にいる人々に『違和感』を感じさせるため。
「社からは今度はジェットコースターで降りられる様だ。おみくじをやったらそちらも乗ろうね」
これでもか、と違和感を覚えるフレーズでアピールするエト。こうして違和感をばら撒くことがこの檻を破壊する切欠となる。
とまぁ、お仕事はお仕事としつつ。外の世界――この場合はマヨイガの外ということだろうか、の遊園地を姉同然のくーちゃんと楽しむ心算のエトはちらりと彼女の様子を覗き見る。
「~~♪」
楽しんでもらっているようだ。そんなエトの視線に気づいたくーちゃん、自身が斜め掛けしている鞄に手を突っ込むと視肉を取り出してエトに渡してくる。
「ありがとうくーちゃん」
受け取り、口に運んで。エトは精気を補いつつ改めて思う。
(外で暮らして、学園の生命使い達が守ろうとした日常というものが少しだけわかってきた)
だからこそ、この檻の破壊の仕方も考えざるを得ない。違和感を与えるためにと言っても捕らわれている人々を無理やり覚醒させるのは手っ取り早いけれども。
(多分きっと日常を壊す事にもつながる。彼等は何も知らないまま日常の延長のまま帰してあげなきゃいけないんだ)
ゆえにエトは遠回りであってもゆっくりと違和感を浸透させていく。
この檻を破壊するための楔は……これで十分のはずだ。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『絡新婦』
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POW : 鋼糸使い
【鋼糸】が命中した対象を切断する。
SPD : 蜘蛛の領域
レベルm半径内を【蜘蛛の巣】で覆い、[蜘蛛の巣]に触れた敵から【若さ】を吸収する。
WIZ : さらなる絶望
【蜘蛛の巣】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【部位を持つ蜘蛛の部分は分離し、人間】に変身する。
イラスト:koharia
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ひび割れる『現実(檻の中)』
――それは明確に、殻が壊れる音であった。
ビシリ、とも、バキッ、とも聞こえるような、現実が割れる音。
猟兵たちが遊園地を楽しむ……と見せかけて、元の金刀比羅宮を匂わせる行動を行ったことで、現地の人たちが少なからず違和感を感じてしまった。
違和感とは『普通ではない』ことを察知することだ。今回で言うなら、『この地がおかしい』と感じてしまうこと。それによって人々の『完全』記憶操作が『不完全』と化す。連鎖するように蜘蛛糸の繭から自力で逃れていく一般人たち。
その異変を土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』が察知しないわけがない。異変は『檻』の損傷として顕れる。
「このままでは檻が……くっ」
徐々に広がるひび割れは止まる気配を見せない。ならばこそ女王は、檻の主はその修復のために動き出す。
「ついてきなさい。排除します」
傍らに控えさせておいた戦力――『絡新婦』たちを連れて眞由璃は金刀比羅宮があった象頭山へと急ぎ赴く。
先刻、眞由璃が感じ取った猟兵の気配。それは今も象頭山にある。ならば今も広がっている檻の傷は猟兵たちによって付けられたものだろう。素早く排除する必要がある。
ゆえに眞由璃は告げる。
「私は檻の傷がこれ以上広がらないよう、巣の補強をします。あなたたちはこの山を登り、『この地にいる者』を全て屠りなさい」
それは単純明快な命令であった。この地から違和感が広がっているなら、この地にいる者を全て消す。誰が猟兵だ、などと考える必要はない。視界に入った全てを一般人であろうと猟兵であろうと屠ればいいだけのこと。
「行きなさい」
絡新婦たちを山へ放って、眞由璃はひとり、象頭山のふもとから山を見上げる。
「我らの宿命……いずれにしても力無き者と話すつもりはありません」
どのように転ぶとしても、猟兵たちが『自身と並び立つ者』でなければ眞由璃が出る幕は無いだろう。
「静観は出来なくなりました。ならば見極めねば」
檻に力を込めて蜘蛛糸でひびを補強しながら眞由璃は呟く。
猟兵vs絡新婦――土蜘蛛の檻における戦闘の序幕が開こうとしていた。
※シナリオ補足※
この章は集団戦『絡新婦』との戦いとなります。眞由璃はまだ皆さんの前に姿も見せていません。まずは絡新婦を退治してください。
なお、絡新婦は全て『土蜘蛛化オブリビオン』と化しています。そのため通常のユーベルコードの他に、体の任意の位置に蜘蛛の脚を生やす能力を持ちます。この脚は先がナイフのように鋭く、斬撃や刺突に使える上に驚異的なジャンプ力を保有しています。
これを使って、絡新婦はユーベルコードを放ちつつ、ジャンプによって一気に間合いを詰めて、脚の先で直接攻撃を仕掛けてきますので注意してください。
生やした脚に対する対策を取ることでこちらが有利になる可能性があります(訳:プレイングボーナスが付きます)
戦闘場所は本宮の前にある広い境内。邪魔になる障害物はないです。また一般人は絡新婦の襲撃によって奥の院まで避難していますので特段の対処は不要です(プレイングに書いてもらう分には問題ないです)
瀬河・苺子
【心情】
ここからが本番ですね
護衛から現れてくれる、というのは好都合です
確実に倒していきましょう
【戦闘】
若さを吸収…元の年齢に戻れるのならそれはそれでありがたいですが…
運命の糸症候群はそう単純じゃないんです!
「瞬間思考力」「見切り」で糸は避けながら移動します
足の攻撃は「武器受け」でいなしつつ、「威嚇射撃」で牽制をして防ぎましょう
一般の方は「心配り」と「団体行動」でいないように確認
人を巻き込まないことを確認したらUC発動
まとめて、吹き飛ばしましょう
「…これは『超奥義』位名乗ってもばち当たらない威力に仕上がっちゃいましたね」
これで一通り終わりでしょうか?
オブリビオン国見眞由璃、どう出てくるでしょう
●
国見・眞由璃の土蜘蛛の檻。眞由璃たちの戦略的な拠点にして、眞由璃が新たな土蜘蛛を増やすための檻――あるいは巣ともいうソレは、猟兵たちによって確実にひび割れ始めている。
その『損傷』を直すため、眞由璃が取った手段は2つ。ひとつは檻そのものを修復すること。もうひとつは損傷を与えた原因を『排除』することだ。
その光景は異様というか、恐怖というか。
眞由璃の護衛でも近衛でもある土蜘蛛化オブリビオン『絡新婦』たちが山裾から頂上に向けて大量に押し寄せてきた。下から波のように上がってくる絡新婦を見て、一斉に逃げだす一般人たち。
「ここからが本番ですね。護衛から現れてくれる、というのは好都合です」
しかし、押し寄せてくる波の前に立つ者がいる。瀬河・苺子(人間のゾンビハンター・f36282)だ。その左手には『イグナイトホン』――銀誓館学園のイグニッションカードをアプリにして搭載した携帯端末がある。ならば告げる言葉はひとつ。
「起動(イグニッション)!」
イグナイトホンを掲げて叫ぶ苺子。次の瞬間、苺子は戦闘態勢を整えた姿になっていた。右手にはかつて共に戦った使役ゴーストの力を。右手には『迦楼羅乃灼刀』を構えて絡新婦に相対する。
「確実に倒していきましょう」
苺子目掛けて飛び掛かってくる絡新婦に対して、苺子は右手の刀を一閃した。
『エンドブレイク改』から放たれる弾幕。それは絡新婦の一部を屠りつつも全体としてはやはり牽制にしかならない。しかし後ろの一般人たちが逃げる時間を稼ぐことは十分にできる。
(ちゃんと避難できているみたいですね)
事前に避難誘導をしておいたのが功を奏したようだ。突っ込む苺子とは逆に『おはしも(おさない、はしらない、しゃべらない、もどらない)』でバッチリ避難完了。
絡新婦としては背後から撃たれる可能性からか、あるいは目の前の敵を着実に潰してからか。まずは苺子を仕留めるべく、ぐるりと周囲を囲んで逃げ場のないように蜘蛛の巣で覆う。蜘蛛の領域――事前に聞いた話では触れた者から若さを吸収するという。
(……元の年齢に戻れるのならそれはそれでありがたいですが……っ)
何故か唇を噛む苺子。
「運命の糸症候群はそう単純じゃないんです!」
何かを断ち切るかのように苺子がエンドブレイクをぶっぱする。見た目も制服も中学生だが、苺子さん大学院生なんですよね。運命の糸症候群がもたらす影響よ。
ガトリングの弾丸で蜘蛛の巣が破壊されていく。触れれば吸われるなら触れなければいい。瞬く間に崩壊していく蜘蛛の領域を見て、絡新婦たちは直接攻撃に切り替える。
体の、本来ではない箇所から蜘蛛の脚を生やしてその勢いで跳躍する絡新婦。四方八方あるいは前後左右から。苺子目掛けて爪先を突きつける。
「……っ!」
だがそれは『見えて』いる。瞬間思考力を見切りに全振り、襲い掛かってくる絡新婦の爪先が届く時間差すらも見切って。
右の絡新婦は迦楼羅乃灼刀で爪先を受け止めつつそのまま斬り裂き、距離がある絡新婦はエンドブレイクを斉射してなぎ払っていく。それでも突きつけてきた絡新婦はエンドブレイクで受け止めながら、迦楼羅乃灼刀で斬り捨てる。
軽やかに立ち回る苺子。そんな苺子に対して絡新婦たちがますます集ってくる。物量で圧し潰す……そんな意図が透けて見える。しかし人を、一般人を巻き込まないのなら。
『こういう戦い』こそゾンビハンターの本領発揮。
「これが、ゾンビハンターの戦い方です!」
苺子が叫んだ直後。彼女の周辺がはじけ飛ぶ。ゾンビハンターのアビリティ『粉塵爆発』――どこまでも広範囲にダメージを与えることには定評がありすぎるゾンハン御用達のアビリティ。それをユーベルコードの領域まで高めた苺子の【粉塵爆発】が絡新婦たちをまとめて吹き飛ばしていく。
巻き起こった粉塵の煙が風に流された後、残っていたのは動かなくなった絡新婦。一部、建物が破壊されてる感じがするが、それは仕方のない犠牲としよう。無問題。
そして当の苺子は。
「……これは『超奥義』位名乗ってもばち当たらない威力に仕上がっちゃいましたね」
ユーベルコード化に伴って、ものすごくダメージが跳ね上がったらしい。文字通り絡新婦たちが一掃された。
「これで一通り終わりでしょうか?」
周辺に敵が蠢く気配は何もない。檻が修復される気配も感じられない。ならば……。
「オブリビオン国見眞由璃、どう出てくるでしょう?」
今だ遠くに在る眞由璃の気配を感じつつ、苺子はそう呟くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
巫女衣装の効能があったみたいですね。
結界に影響が出ています。
そして、オブリビオン達も登場して、相手もだいぶ焦っているようです。
ここで蜘蛛たちを撃退して、結界に決定的な一撃を加えましょうか。
予期せず脚が生えてきたり、飛び込んでくる相手ですから、距離を取って戦いたい相手ですね。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーで牽制しつつ、間合いを維持。
その間に絡新婦達の動きをスマートグラスで捕捉します。
目標を定めたところでUC【七星八極】を発動。
ヨーヨーに【電撃】も込めて、連撃で倒していきます。
●
国見・眞由璃の土蜘蛛の檻。今の眞由璃にとって損傷を見逃すことはできない程の重要拠点の中で、眞由璃配下の『絡新婦』と猟兵たちの戦いは始まっている。派手な粉塵爆発によって絡新婦の第一波は一掃された……が、絡新婦たちが駆け上がってくる場所は一箇所ではない。参道は一つなのだが、蜘蛛にそんなことは関係ないからだ。
だが、象頭山に押し寄せてくる絡新婦たちの様子は明らかに余裕を失いつつある。猟兵たちの行動が土蜘蛛勢力に確実なダメージを与えているからだ。
「巫女衣装の効能があったみたいですね。結界に影響が出ています」
黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は巫女さん姿のまま周囲を見渡し、手応えに小さくガッツポする。ここで絡新婦たちを撃退すればより大きな影響を与えることが出来るだろう。
「結界に決定的な一撃を加えましょうか」
押し寄せる波のごとく山を駆け上ってくる絡新婦たちの群れに対して、摩那は愛用のヨーヨー『エクリプス』を構える。直後、摩那の視界内に入ってくる絡新婦。
「いきます!」
間髪を入れずエクリプスを放つ摩那。鋭く射出されたエクリプスがぐしゃっ、と絡新婦を叩き潰す。その攻撃によって摩那を敵と認識した絡新婦たちが一斉に彼女に押し寄せるのであった。
●
「そうはいきませんよ」
取り囲もうとする絡新婦たちに対して、摩那は素早く後退して距離を取る。1対多の戦いには慣れているものの、死角を取らせるのは得策ではない。飛び掛かってくる絡新婦たちに対してエクリプスのワイヤーを伸ばした状態で振り回し、牽制しながら間合いを維持する摩那。
(予期せず脚が生えてきたり、飛び込んでくる相手ですからね)
不意を突かれない距離を保つ。それが摩那の作戦だ。それを察してか、絡新婦たちも物量で摩那を圧し潰そうとするのだが、摩那のエクリプスのガードを突破できない。だが摩那も初撃のような一撃を叩き込めていない。徐々に囲まれていく摩那。
しかし……摩那の目は1ミリも力を失っていない。むしろ、今こそが『導き出した答え』と言わんばかりに、エクリプスを構え直す。
「目標設定、軌道計算完了」
その声は摩那の口から。しかしその言葉をもたらしたのは彼女の眼鏡――スマートグラス『ガリレオ』とそのコプロセッサが導き出した結果だ。その結果をガリレオ越しに捕捉していく摩那。視界いっぱいに広がる絡新婦たちの1匹残らずを摩那の眼が捉える。
「追従モード……開始」
直後放たれる摩那の【七星八極】。それはエクリプスの軌道を、速度を落とさず曲げていく。摩那の念動力にガリレオのサポート合わせた緻密でありながら敵を一網打尽にする超絶技巧で以て、絡新婦たちをなぎ払っていく摩那。
「ついでです」
とワイヤーを伝って電撃を叩き込めば、エクリプスが雷の打撃を絡新婦の群れに叩き込んでいく。その様子はさながら雷の弾丸が跳弾のごとく絡新婦たちの中で跳ねているようにも見える。だがその弾丸は致死の一撃だ。
絡新婦たちがさらなる絶望を見せる暇もなく。
「……ふぅ。終わりましたか」
摩那が吐息をつく頃には彼女の眼前に動く絡新婦は1体もいない。
「相手もだいぶ焦っているようでしたが」
さて、どう出てくるでしょうか。
そう思いながらも油断なく周囲を確認する摩那であった。
大成功
🔵🔵🔵
剣未・エト
「おっと、出てきたようだね」
人々は無事に避難してくれるようだが、それでもなるべく日常を壊したくはないから、まだ気づいていない人々に向かう敵は僕の特殊空間の中にご招待させていただこう
「やれやれ、一体誰が掃除をすると思っているんだい?」
普段は荘厳美麗なオペラ劇場が敵により蜘蛛の巣だらけになっている
軽口を叩きながら飛びかかってくる敵に対しては、鎖を建物に巻き付けて跳ぶ時に自身を巻き上げて大ジャンプして回避
糸に接触し若さを吸われるも、種族的に既に成長を終えてあとは若い姿のままなので見た目は何も変化しない
腰のポーチから詠唱銀の瓶を出してUC発動、壊れても即座に作成させる連続攻撃で脚を全て斬り落とすよ
●
琴平の地に展開された国見・眞由璃の土蜘蛛の檻。一般人を贄として新たな土蜘蛛を生み出すこの仕組みは眞由璃にとって拠点であり、砦だ。
しかしその檻も猟兵たちの行動によって機能不全に追い込まれようとしている。発生した違和感は確実に檻へダメージを与えている。
発生した違和感を排除するためにその起因となっている一般人と猟兵たちを屠る。それが眞由璃が出した結論だ。
その命を実行すべく、象頭山に押し寄せてくる『絡新婦』たち。
「おっと、出てきたようだね」
その様子を剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)は境内の辺りから見下ろす。周辺に人影はなく、避難は無事に完了しているようだ。
それでもこの光景は視界に入れたくない。入れたが最後、日常が壊れてしまう。それを防ぐためにエトは。
「僕の特殊空間の中にご招待させていただこう」
ユーベルコード【独唱曲『生命賛歌(偽)』】――歌声によって導かれた特殊空間の中へ絡新婦たちを放り込むエト。半径100mほどの範囲にいた絡新婦たちを全て送り込んでから、少し遅れてエトも特殊空間へ踏み込む。
「やれやれ、一体誰が掃除をすると思っているんだい?」
敵影が見えなかったためか。絡新婦たちは既に蜘蛛の領域を展開済であった。荘厳美麗なオペラ劇場が見事に蜘蛛の巣だらけになっている。
舞台に降り立ったエト目掛けて、四方八方から絡新婦が飛び掛かってくる。
「……っと」
それに対してエトは自身の地縛霊の鎖を舞台の真上、照明を支える柱に巻き付ける。そして跳躍と同時に巻き上げて大ジャンプ、殺到する絡新婦たちを全てかわす。
上昇しながらエトが腰のポーチから詠唱銀の入った瓶を取り出す。瓶の蓋のコルクを指で弾き飛ばして周辺に詠唱銀を振りまくエト。舞台の上を銀の霧が降り注ぐ。
「さて」
鎖を柱から解き、霧の中を降下するエト。その最中、詠唱銀の霧の中から生成するのは『右手の短剣』と『左手の短刀』の2つの詠唱兵器。そして着地と同時に二刀を絡新婦たちへ振るう。ユーベルコード【我流・流星剣舞】は絶え間ない連続攻撃を放つ術。詠唱銀製の二刀はすぐに壊れて霧散する程度の強度しかないが、霧の中から何度でも生成することが出来る。壊れても即座に作成させる連続攻撃が幾度も絡新婦たちへ叩き込まれ、その脚を斬り落としていく。
「僕が息切れするのが先か、君が受けきれなくなるのが先か、勝負といこうじゃないか」
エトが不敵に微笑み、絡新婦たちへの攻撃を加速させていくのであった。
成功
🔵🔵🔴
山崎・圭一
(命捕網を肩に担ぎ、カメラを白燐蟲に持たせて退避させる)
本業の仕事終わったら、次は副業の害虫駆除だなぁ
蜘蛛がなに?餅は餅屋ってなら、虫は【蟲使い】よ?
で、蜘蛛の巣が厄介だな。これどう払うか
全力集中して巨大な蝶型【呪殺弾】を上空に召喚
羽ばたいて強風起こし、蜘蛛の巣ぶっ壊すぞ
大方巣を払ったらUC発動
グンタイアリ…こいつの群れを見たら蜂も蜘蛛も蛇も
巣を捨ててまで逃げるという
現地のマフィアだってこの蟻を使った私刑があるらしいな
どんなにその脚が鋭かろうが
群れという集団による単体を、斬れるか?刺せられるか?
寧ろ触れたら最後。絡みついて来るぜ?
アントニー!毒針の蟻酸で動けなくさせろ!
後は好きなだけ噛みつけ
●
土蜘蛛勢力の拠点にして増強施設、土蜘蛛の檻。国見・眞由璃によって紡がれた檻は着実に土蜘蛛の戦力を増強していたが、それも猟兵たちの行動によって機能不全に陥りかけている。贄である一般人が檻から解放されつつあり、そして檻そのものも損傷を受けている。
これを修復したい眞由璃は、損傷の元である違和感を抱いた一般人と猟兵たちを排除しようと『絡新婦』たちをけしかけてきた。
これを防ぐ術を一般人は持たない。だが猟兵ならば。
「本業の仕事終わったら、次は副業の害虫駆除だなぁ」
飄々とした雰囲気で山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)は金刀比羅宮の境内から下を見下ろす。境内の端っこ、望遠鏡などがあって琴平の街を見ることができるその場所から真下を見れば山の斜面。そこを絡新婦たちは一斉に駆け上がってくる。
それを視認してから圭一は距離を取ってさがり、改めて崖へ向き直る。いつの間にやら具現化した『命捕網』を肩に担ぎ、先ほどまで手にしていたカメラは自身の白燐蟲に持たせて退避させている。
崖から境内にあがってくる絡新婦たちに対して、その進路を塞ぐように立つ圭一。
「蜘蛛がなに? 餅は餅屋ってなら、虫は【蟲使い】よ?」
蜘蛛であろうと蟲は蟲。ならばこの場で圭一以上に適任がいるだろうか。そんな自信あふれるオーラが絡新婦たちに進軍をためらわせている。まぁ、ぶっちゃけ猛毒の血を持つ人間毒蟲の圭一に策も無く仕掛ければ死ぬのは相手だ。踏みとどまるのは本能かもしれない。
だが絡新婦たちも手(?)をこまねいているわけではない。周辺に糸を吐いて蜘蛛の巣を張り巡らせる絡新婦たち。蜘蛛の領域を展開しようと徐々に距離を詰めながら圭一を囲い込もうとする。
「んー、厄介だな。これどう払うか……」
自分を取り囲もうとしている蜘蛛の巣を見上げて、独り言のように呟く圭一。
「こーすっか」
圭一が空いている手を掲げる。その掌の先、頭上に全力集中して、召喚するのは巨大な蝶型呪殺弾。羽ばたけば蟲の呪いがこの場を斬り裂く強風(かぜ)となって、張り巡らされた蜘蛛の巣を片っ端から壊していく。
そして強風はそのまま絡新婦たちに叩きつけられ、その動きを封じる。飛ばされないように体を固定する絡新婦たちへ圭一が放つのはユーベルコード【軍蟻附羶】。
「群がれ」
圭一の言葉を切欠に、圭一の体から零れるように現れるグンタイアリ型白燐蟲の群れ。掌サイズの大きさのそれが強風で身動きの取れない絡新婦たちへ押し寄せる。
「こいつの群れを見たら蜂も蜘蛛も蛇も巣を捨ててまで逃げる、って言うぜ?」
不敵に笑う圭一の言葉に応えるように、グンタイアリ型の白燐蟲が一斉に絡新婦へ飛び掛かる。噛みつき、その傷から蟻酸を流し込み、酸の融解と顎の力で絡新婦の脚を強引に引きちぎっていく。
絡新婦たちも一方的にやられているわけではない。至近距離までくれば小さな動きでも脚が届く。鋭く、刺突の一撃を放つ絡新婦。その一撃で串刺しにされてグンタイアリが動きを止める……がそれは絡新婦の脚の数だけ。もっと正確に言えば脚による攻撃が当たった数だけだ。
今もなお、圭一の体から放たれるグンタイアリたちはその程度の攻撃では減少することもなく、むしろ数は増え続けている。
「どんなにその脚が鋭かろうが……この『群れ』を、斬れるか? 刺せられるか?」
個体間であればそれは可能であろう。しかし、絡新婦の群れが『1個体の集まり』ならば、圭一のグンタイアリの群れは『群れという集団によって形成される単体』だ。多少の個体が削ぎ落されようとも『グンタイアリの群れ』の勢いは衰えない。
「寧ろ触れたら最後。絡みついて来るぜ?」
と告げながら。圭一が叫ぶ。
「アントニー! 毒針の蟻酸で動けなくさせろ!」
アントニー――グンタイアリ型白燐蟲の名前である、が圭一の指示通り、尻の先にある毒針を突き刺し、蟻酸を流し込む。蟻の毒は痛みと同時に絡新婦の中から体を焼く。動きが止まる絡新婦たち。
「後は好きなだけ噛みつけ。喰らえ」
現地のマフィアがするというグンタイアリを使った私刑。それを絡新婦たち相手に再現しながら、圭一は眞由璃配下の土蜘蛛化オブリビオンたちを一掃するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』』
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POW : 眞由璃紅蓮撃
【右腕に装備した「赤手」】が命中した部位に【凝縮した精気】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : 疑似式「無限繁栄」
自身の【精気】を代償に、1〜12体の【土蜘蛛化オブリビオン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : 土蜘蛛禁縛陣
【指先から放つ強靭な蜘蛛糸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:柊暁生
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
琴平の地を支配している『土蜘蛛の檻』。それは過去より甦った土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』が張った巣である。戦いの拠点でありながら戦力を増強する檻は土蜘蛛勢力の要だ。
その要の楔が打ち込まれる。檻に『違和感』という損傷が与えられたのだ。
それに対して眞由璃が取った行動は修復と排除であった。
自身は檻の損傷を修復する作業に入り、その間に異物――『違和感』を発生させた原因である猟兵たちと影響を受けた一般人を排除しようと配下を差し向けた。
だが、その配下も猟兵たちによって完全に撃退されたのである。
この場所は山にあり、そして相手は蜘蛛。このまま成長していけば空を飛ぶ蜘蛛が現れてもおかしくないが、いまだ敵勢力に空を制するものはいない。ゆえに山に在る猟兵たちが敵襲を防ぐには下だけを気にしていればいい。
一般人を奥の院に残した状態でさらなる安全を確保すべく、猟兵たちは金刀比羅宮の参道を下っていく……その先に。
「私の強化された配下を倒しましたか……」
土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』は待ち受けていた。怒りでもなく諦観でもなく、冷静に猟兵たちに視線を遣る眞由璃。その様子に咄嗟に戦闘態勢を取る猟兵たちであるが、瞬間眞由璃が飛び退る。戦闘する意思は無いというように。
「まずは話を聞いてもらえませんか? 私はあなた方と『交渉』すべきと判断しました」
お互い油断なく、そして戦闘に入らないような間合いを保ちながら相対する。そこはかとない緊張感の中、眞由璃が猟兵たちに向けて、無手の左手を差し出し、告げる。
「『共存』の提案をします。人類と土蜘蛛、『今』は手を取り合って生き延びるべきだと」
眞由璃曰く。
土蜘蛛がオブリビオンとして甦った事例がある以上、他の滅んだ勢力もまたオブリビオンとして甦ってくるだろう。ただの過去の再現ならばまだ手の打ちようはある。しかしオブリビオン化したことで更なる戦いが生み出されるならば。戦力はあればあるほど良いはずだ、と。
「私達『土蜘蛛』の本来の使命は『人類の「捕食者」』……人類が在ってこそ成り立ちます」
人類と土蜘蛛は対なのだ、と眞由璃は告げる。だからこそ土蜘蛛の女王は人類が滅するのを望まない。お互いが『共に存在して』、初めて両者は各々の使命を果たせるのだ、と。
だからこそ。
「他の勢力を撃破、あるいは敵にならないほどに弱体化させるまで。私達は手を取り合うべきだと思うのです」
共に戦い抜き、そして他の脅威がなくなった時点で。土蜘蛛たちは本来の、無闇に増殖する人類の『捕食者』に戻る。世界のために人類を間引くのが土蜘蛛の使命なのだから。
「私達は本来の使命を一時棚上げして、あなた方と戦います。それに……このまま檻を大規模化できれば、土蜘蛛は住民を捕食する必要もなくなります」
眞由璃は告げる。
『檻』を更に大規模化――四国一帯を包み込むほどまで拡大して、内部の住民を増やせば……住民を捕食して命を奪う必要は無くなる、と。
もちろん住民たちから少しばかりの精気をいただくことにはなるが、命に別状はないし、完全記憶操作の支配下に誰も置かなくて済む。檻の存在だけ隠しておけば、万事解決するからだ。
「一考の価値がある、と。私は思うのですがいかがですか?」
そう言って猟兵たちを見つめる眞由璃。眞由璃の問いに正答は無い。どのように考え、どのように答えるかは猟兵たちの各々に託されているのだ、最初にグリモア猟兵が告げたように。
そして猟兵たちは眞由璃の視線に言葉を返す。それは猟兵たち各々が導き出した答えであった。
※シナリオ補足※
『国見・眞由璃』が交渉をしてきました。
眞由璃の主張は『土蜘蛛は人類の管理者』というものです。増えすぎた人類を土蜘蛛が捕食して、人類の数を管理する。減りすぎないようにも管理する。
そのため、人類が他の勢力の被害にあうことをとても嫌っているようです。自身の存在理由のために、人類を守る選択を取っています。
ただ、応じるかどうかは皆さん次第です。
眞由璃の交渉に納得する、応じるという方はプレイングにてその意志をご記載ください。
交渉に応じない場合は戦闘になります。こちらは普通のボス戦と思ってください。
当シナリオの、最終的な成功/失敗は眞由璃の交渉にどれだけの人数が応じたかで決まります。つまり参加者の多数決で決まります。
6/19(日)のお昼12時までに届いたプレイングの中身で票決。参加者ひとりにつき1票。同数の場合は猟兵とオブリビオンの関係から眞由璃を倒す方向に傾きます。
全体的に眞由璃の交渉に応じる=シナリオが失敗に終わり、『眞由璃の檻』が残った場合、るちるが運営するシルバーレインシナリオにおいてのみ、眞由璃とは『同盟関係』となります。
生存を許す代わりに、任意のシルバーレインシナリオで『眞由璃の助力を依頼する』という選択肢が増えます。
なお、同盟関係となった後、何らかの理由によって『同盟を破棄すべき理由』ができた場合には、もう一度眞由璃との戦いが発生しますので、今回の選択が全てを決めるわけではありません。
黒木・摩那
土蜘蛛側から交渉を申し込んできたということは、向こうからすれば、猟兵や銀誓館と戦っても勝ちはない、もしくは負けなくとも被害甚大になるから、手打ちにしたい、ということなのでしょう。
裏切らないか?とか、いつまで同盟するか?とかいろいろ交渉事はありますが、つまるところ、土蜘蛛というオブリビオンを認めるか、ですかね。
銀誓館時代にも組んでた相手なので、もう一度組んでもいいのではないか、と思います。
向こうの言い分も的を得てますし。
ただ、妙な動きをしないように警戒は強めないといけませんね。
裏切ったら、衛星レーザーですよ。
戦闘になったら【功夫】で戦います。
UC【矢印過流】で自らを飛ばして機動します。
※トミーウォーカーより……戦闘と区別をつけるため、眞由璃の交渉に応じた場合は、結果を失敗でカウントしています。シナリオ失敗すると、眞由璃の檻はそのまま残ります。
●
土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』の交渉。それは一方的な提案でありながら、しかし猟兵たちの出方を窺っているものだ。それを体現するように、眞由璃はノーガードの状態で猟兵たちの前に立ったまま。
黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は冷静にこの状況を吟味していた。
(土蜘蛛側から交渉を申し込んできたということは……)
相手に気取られないようにしつつ、摩那は視線と思考を巡らせる。
目の前に立つ眞由璃に敵意は無い。かといって油断をしているわけでも憔悴しているわけでもなく、攻撃を仕掛ければ対応してくる程度の気力はあるだろう。
ゆえに摩那が導き出した答えは。
(向こうからすれば、猟兵や銀誓館と戦っても勝ちはない、もしくは負けなくとも被害甚大になるから、手打ちにしたい、ということなのでしょう)
つまり、『こちら次第』というわけだ。
そしてこちらはグリモアの予知によって眞由璃が交渉を仕掛けてくる可能性を事前に知らされている。交渉に対して『用意が無い』わけではない。
――裏切らないか? とか、いつまで同盟するか? とかいろいろ交渉事はありますが、
――つまるところ、土蜘蛛というオブリビオンを認めるか、ですかね。
摩那の結論はそこに集約される。土蜘蛛という種族ではなく、目の前のオブリビオン勢力を一時的でも許容するか否か。
ふぅ、とひと息ついてから。摩那ははっきりと言葉にして告げる。
「銀誓館時代にも組んでた相手なので、もう一度組んでもいいのではないか、と思います」
皆の視線が自身に集まるのを認めつつ、摩那が続ける。
「向こうの言い分も的を得てますし。ただ」
しかしそれは諸手をあげての歓迎の意味ではない、と。『ただ』という言葉の語気がそれを示す。
「妙な動きをしないように警戒は強めないといけませんね。裏切ったら、衛星レーザーですよ」
不敵な笑みを浮かべつつ、摩那が釘をさす。事実、彼女は衛星軌道上からぶっぱするユーベルコードを所有している。脅しでも何でもなく、事実なのだろう。
その態度に眞由璃は笑みを浮かべる。
「当然です。別に同志になれ、土蜘蛛になれ、と言っているわけではないのですから」
利が無くなれば解消する程度の、お互いを利用する関係だ。ゆえに『共存』、周りに敵がいなくなるまでの共同戦線。
摩那の言い分を認めつつ、眞由璃は摩那が交渉に応じてくれたことを認識するのであった。
失敗
🔴🔴🔴
剣未・エト
「お初にお目にかかる女王殿下。僕は剣未エト、人と魔のあまねく牙無き者の剣とならんと欲する者」
恭しくお辞儀をして挨拶
交渉云々の前に女王の現状認識の確認と僕のスタンスをお伝えしたい
●確認
没後~現在までの世界の歩みはどこまで知っているのか
銀誓館学園が土蜘蛛含む全生命を守りきった上で、ゴーストとも争わぬ共存を目指していた事
その道半ばでオブリビオンの出現により新たな戦いが起きている事
●スタンス
ご覧の通り僕はゴーストだ
そして人と魔問わずに牙無き者を守ると考えている
今まで出会ったオブリビオンはあくまでも害為す者であり、猟兵としての感覚は女王(あなた)もそうであると伝えている
なので『これ以上誰かに害を為す』のであれば戦う心算でいる
●前提
規模拡大までの間にこれ以上捕食等で被害者が出るのは認められない
●提案
また拡大後もなるべく生命への負担は避けたい
かつて銀誓館学園が用いた生命賛歌の劣化模倣の僕の歌
そしてくーちゃんの提供する視肉
それらの代替手段をある程度活用することで前提を守れるなら交渉に応じる
ダメなら戦う
●
土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』の交渉はもしかしたら応じる必要など無いのかもしれない。だが彼女から語り掛けてきたならば。多少でも言葉で応じるのが知性ある者の反応なのかもしれない。
猟兵たちの出方を窺っている眞由璃はただ立ったまま、次の言葉を待っている。
「お初にお目にかかる女王殿下。僕は剣未・エト、人と魔のあまねく牙無き者の剣とならんと欲する者」
そんな眞由璃に対して、剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)がお辞儀をする。その様は燕尾服を着た執事のように恭しく。
「本題に入る前に伺っても?」
「答えられることなら何でも」
眞由璃を許可を得てエトが話しかける。
エトがしたいのは眞由璃の現状認識の確認とエトのスタンスを伝えること。
「あなたは自身の没後から現在までの世界の歩みをどこまで知っているのか?」
エトからの問いかけ。続く言葉は銀誓館学園が歩んできた歴史だ。すなわち、『銀誓館学園が土蜘蛛含む全生命を守りきった上で、ゴーストとも争わぬ共存を目指していた事』と『その道半ばでオブリビオンの出現により新たな戦いが起きている事』の2つ。
エトの言葉を聞いていた眞由璃が小さく眉をひそめる。
「……いまいち何を確認したいのかがよくわかりませんが」
そう告げながらも眞由璃が続ける。
「私がこの世に復活してから半年以上もの時間が過ぎているのです。その間、ただ引き篭もっていたとお思いですか?」
戦いの趨勢を決めるのはいつだって情報だ。ゆえに四国を拠点と定めて後、眞由璃もまた世界の情勢を調査している。調べたら分かることならば既に把握している。
猟兵たちが見た予兆でも言ってたはずだ、『……土蜘蛛が健在である事は知っています』と。過去、来訪者と言われていた種族が人類と共存していたり、銀誓館学園がどのように活動しているかなどは既知の範囲。
そして自身がオブリビオンなのだから。オブリビオンたちが新たな戦いの火種になっていることなどわかりきっている。
そう告げた眞由璃に対して、エトは小さく頷きを返し、言葉を返す。
「ご覧の通り僕はゴーストだ。そして人と魔問わずに牙無き者を守ると考えている」
「……」
エトの言葉に眞由璃は無言で続きを促す。
「今まで出会ったオブリビオンはあくまでも害為す者であり、猟兵としての感覚は女王(あなた)もそうであると伝えている」
「それはそうでしょう。それこそ自然の摂理なのですから」
エトの言葉を特に否定することなく、眞由璃は肯定する。何故ならば、オブリビオンは世界を滅亡させる存在であり、猟兵はそれと戦うために選ばれた者。猟兵とオブリビオンは『不倶戴天の相手』と世界が定めているのだから。
「なので『これ以上誰かに害を為す』のであれば戦う心算でいる」
だからエトのその言葉も特に否定されることなく、眞由璃は認識している。それは口に出すまでも無い大前提。
正直なところ、眞由璃とて猟兵を排除したくて仕方ない。最後に自身の目的の邪魔になることは目に見えている。だがその本能を抑え込んででも。共存を提案しているのだ。
「……前段は終わりでしょうか?」
眞由璃がエトの話の続きを促せば、エトが眞由璃の提案に対する答えを告げる。
「規模拡大までの間にこれ以上捕食等で被害者が出るのは認められない」
「ならば、戦う、ということですね?」
エトの言葉に眞由璃が赤手を構える。
「いや、認められないだけだ。だからこういうのはどうだろう?」
眞由璃の動きを制して、エトが告げるのは新たな提案だ。これ以上の被害者を出さず、かつ生命への負担を避ける、という。
「かつて銀誓館学園が用いた生命賛歌の劣化模倣の僕の歌。そしてくーちゃんの提供する視肉。これらを活用してもらえないだろうか」
それは土蜘蛛が得る糧を代替の手段で得るという作戦だ。これによって『これ以上被害者を出さない』という前提を守れるなら交渉に応じる、とエトが告げる。
【独唱曲『生命賛歌(偽)』】と【視肉大披露】の内容を受けて、眞由璃が考え込む。
しばしの間、沈黙が続き……そして。
「その提案を受け入れることは出来ません」
眞由璃がエトの提案を拒否した。
「何故?」
エトが問いかける。この提案の何がいけないのか、と。
「……何故? 受ければこちらが滅ぶような提案を何故承諾する必要が?」
さも当然と眞由璃が告げる。
「生命賛歌……生命の力を活性化させるメガリス破壊効果。確かにそれが使えれば私達が死ぬことはないでしょう。……ですが」
エトのユーベルコードの力を認めつつ、眞由璃が告げる。それは決定的なポイントだ。
「それは私達に『確実に』効果を及ぼしますか? そしてそれは『いつまで』続くのでしょう?」
生命賛歌は生命を輝かせる。オブリビオンは『生きて』いるが、『生命』を持っているのか? そしてユーベルコードの永続性・再現性は保証されていないものだ。
「何より。貴女が裏切るとは思いませんが、土蜘蛛全体の命運を貴女ひとりに預けるほどの信頼が初対面の貴女にあるとお思いですか?」
たった1本の命綱を初対面の、しかも眞由璃を『敵であろうと感じている』相手に渡せと言う。それがどれだけ無茶な要求かはわかるだろう。
「そして視肉は飢えをしのぐには最適でしょう。ですが我らはまだ『増える』必要があります。『成長』する必要があります」
でなければ、他の勢力を倒すまで共存するなんてことは出来ない。戦い続けなけばいけない、そのためには戦力の増強は必須だ。
「銀誓館学園に所属した、異なる同朋たちが繁栄したのは、銀誓館学園にそれだけの『エネルギー』があったからです」
その事実は銀誓館学園の図書館にも記されている事実だ。だからこそ眞由璃は問う。
「貴女の視肉にそれを作り出すことができますか?」
それが無いのなら。ただ土蜘蛛が生き延びるだけの提案ならば乗る必要など無い。これは土蜘蛛が命乞いをするための交渉ではないのだから。
「貴女がこちらの話に応じようとしてくれたことには感謝します」
静かに話し合いの終わりを告げる眞由璃。
「……」
その様子をエトは無言で見守る。
エトと眞由璃の交渉は一応テーブルにはついたものの、着地点を示すことができず終わってしまったのであった。
失敗
🔴🔴🔴
瀬河・苺子
譲歩できるラインを設定したうえで交渉
【提案】
檻の件がなければ一考の余地はあるのですが…対話したいという気持ちには応じます
ですが、わたし個人は国見さんが体勢を立て直す前に決着をつけたいことはお忘れなく
1.他のオブリビオンについての情報提供
楔が破壊されたそうですが、こちらに心当たりは?
学園や天輪宗とは考えづらいですし
2.檻の大規模化は出来ない
現状の戦力差で要求するには規模の大きすぎる話かと
代替エネルギーの確保や、猟兵など限られた人間の精気提供ならば、受け入れ可能です
3.将来的に四国の人間を人質にとるような真似はしない
※2が却下され、他の猟兵が好意的なら
これが譲歩できるギリギリです
これを文章に残してもらえるのなら、矛を収めます
【戦闘】
他のオブリビオンが共通に敵というのは同意ですが、脅威足りうる国見さんを放置するというのは違う、と考えています
わたしは弱い人間ですから
「それでは、参ります。リベレイション!」
赤手に警戒しつつ「部位破壊」で右手を狙う
「武器受け」で防御しつつ、隙を見て「捨て身の一撃」
●
土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』から持ちかけられた交渉。それは一方的な提案でもある。
しかし、応じる構えを見せたことで眞由璃は交渉のテーブルに乗ってくれた。もちろん土蜘蛛側が納得しなければ交渉の着地点は見えないだろう。
それでも眞由璃は猟兵たちの出方を窺っているし、たとえ眞由璃が示した要求通りにいかなくとも、最低限――土蜘蛛勢力が力を増すことと共闘することを満たすことが出来れば応じてくれる可能性もある。
「他のオブリビオンが共通に敵というのは同意ですが」
瀬河・苺子(人間のゾンビハンター・f36282)が眞由璃と相対する。
「それでは……」
「ですが、脅威足りうる国見さんを放置するというのは違う、と考えています」
眞由璃の言葉を遮って、苺子は強く告げる。
(わたしは弱い人間ですから)
苺子は自身をそう評価する。だからこそ、目の前の脅威を放置することに手放しでは賛成できない。
だが……目の前の相手が対話を望んでいるのも事実だ。その気持ちには応じたい、苺子はそう考えて。次の言葉を紡ぐ。
「……檻の件がなければ一考の余地はある、のですが……」
苺子が告げた言葉に、眞由璃が目を見開く。
「土蜘蛛の檻……いえ、私達が一般人を餌にしなければ良い、と?」
そう問いかける眞由璃。しかし苺子はそれには答えず、さらに問いかける。
「楔が破壊されたそうですが、こちらに心当たりは?」
苺子が言っているのは予知が告げていた『北の楔』のことであろう。これを破壊したのが銀誓館学園や天輪宗とは考えづらい。ゆえに直球で問いかけてみたのだ。
「十中八九、人狼組織でしょう。北の楔は淡路島にありました。奴らが拠点とする神戸からこの地に渡る間にありますから」
眞由璃が答える。その言葉に嘘偽りはなさそうだ。
曰く、4つの楔は土蜘蛛勢力を守る結界にして、四方に備える最前線でもあった。北の楔は対人狼に備えて作ったという意味もあるのだ。
「そもそも、琴平の地に檻を作ったのも人狼組織に対抗する為です。この地ならば攻め込まれたとしても素早く対応できますから」
どうしても秘さなければならないこと以外は包み隠さず答えてくれるつもりらしい。共存するならば、相手の不利になることはしないつもりなのだろう。
もう少し聞き出してみれば、目下、土蜘蛛勢力は人狼組織とやり合っているらしい。瀬戸内海に大橋という天然の要塞を利用しつつ四国で勢力を拡大していた、というわけだ。
眞由璃の提案は本気らしい。そのためには本来の関係性を越えて、猟兵たちの利となる行動を取ってくれるようだ。
この問答でそれを感じ取った苺子は深呼吸をした後に、まっすぐ眞由璃へ告げる。
「檻の大規模化は容認出来ません」
「……どうしてもですか?」
「現状の、こちらとそちらの戦力差で要求するには規模の大きすぎる話かと」
眞由璃の言葉に、苺子が言葉を重ねる。他の猟兵も言っていたではないか、交渉を仕掛けてきたということは『戦っても勝ちはない、もしくは負けなくとも被害甚大になる』からではないか、と。つまり、この交渉は猟兵側が優勢なのだ。
「……」
その言葉に眞由璃が黙り込む。苺子の指摘が的を射ていたからだ。
だから苺子は慎重に、言葉を選んで次の話を提示する。
「ですが、代替エネルギーの確保……例えば猟兵など限られた人間の精気提供ならば」
土蜘蛛の檻を今の場所から移動させ、そこで限られた人間――猟兵や銀誓館学園の関係者あるいは合意を得た者の精気のみを奪う。量より質で土蜘蛛勢力を成長させる。もちろん能力者を含む人への被害は『だるい・ねむい・つかれた』以外は無し。完全な記憶操作も含めてだ。
「これならば、受け入れ可能です」
苺子が眞由璃の目を真っ直ぐに見て告げる。
その視線を受けて……眞由璃は俯き、顎に手を当ててじっと考える、考えている……そして。
「その『限られた人間』の用意、まぁ交渉とかですが。それは貴女方、猟兵がしてくれるのですよね?」
「ええ」
眞由璃の問いかけを二つ返事で答える苺子。ぶっちゃけそういうことはグリモア猟兵の仕事である。聞いたらおめめぐるぐるになりそうだけど。気にせず頼んで欲しい。銀誓館学園OGでもあるし。
「それならば。我ら土蜘蛛にも利があるというもの。その提案お受け」
「もうひとつ」
「……?」
再び苺子が眞由璃の言葉を遮る。
「将来的に四国の人間を人質にとるような真似はしない、と。誰でも読める文字で明文化したものを残してもらえますか?」
それは保険だ。明文化することで抑止力となり、仮に破られたとしても同盟を破棄する理由になる。お互いに書面を残しておけば後で『言った言わない』の争いなど起きない。
「…………」
苺子の言葉を受けて考え込む眞由璃。
「嫌なら……」
「いえ、それには及びません。すみません。別のことを考えていました」
無言を拒否と取ったのだろう苺子の言葉に、眞由璃は慌てて否定する。
「誰でもと言われましたので。私、日本語の他は英語くらいしかわからないので」
「いえ、そこまでは」
まさかそんな返事が返ってくるとは思わなった苺子。
こう見えても眞由璃は学校に通っていたことがある。ぶっちゃけ戦闘服も制服だし。
さておき。これで土蜘蛛側は苺子の提案を全て飲んでくれたことになる。それは土蜘蛛側の考える『譲れない線』を苺子が越えていないことを示す。まぁまだ作戦の段階くらいなので成果が出るのはもう少し後だが。
「それでは……この場は矛を収めます。ですが、わたし個人は国見さんが体勢を立て直す前に決着をつけたいことはお忘れなく」
「それでもなお、応じてくれたことに感謝します」
苺子の言動に眞由璃が頭を下げる。
檻の位置をどうするのか、とか。勢力の維持と増強をどの程度までするのかなど詳細の詰めはまだまだ必要だろう。しかし、お互いの譲歩できるラインが重なるのならば、ひとまずの『共存』は可能である。
眞由璃率いる土蜘蛛勢力は猟兵たちを含めた今のシルバーレイン世界でどうにか生き抜く術を整えていく。
失敗
🔴🔴🔴
山崎・圭一
そーねぇ…アンタの言ってる事は正しい
けどアンタはオブリビオンだ
土蜘蛛とか人間だとかそこは重要じゃない
いずれアンタは“今を生きる同胞”すら喰らう事になるぞ
ンでもう一つ。対と言ったな。その考え、気に入らねぇ
同じ生命使いだ。悪いが交渉には応じねぇ
俺は害虫駆除に来たの
■蜘蛛糸への対処
①後方から巨大蛾型【呪殺弾】で突風を起こす
蜘蛛は糸を飛ばす時、風に乗せて飛ばす
【蟲使い】の俺が知らねェ筈ねぇだろ
絡新婦の戦闘見てねーもんな
たまにゃ部下より前線に出てやんねーと駄目だぜ?
②チョウトンボ白燐蟲に囮になってもらう
トンボの飛行速度に蜘蛛が追いつけるわきゃねぇだけんよォ
10匹程俺の護衛に付いてもらって代わりに蜘蛛糸受けてもらう
ここは一直線の参道。ならこのUCが適してる
影からカモン!蟲ゴースト!呪詛毒まみれで頼むぜ
時間掛ける程、こっちに利点があるからさ
人魔共存の叶っている今、その共存の仕方はもう時代遅れだ
アンタの率いる土蜘蛛勢力は15年前に滅んだ
この事実はもう変えられない
だから緩い頭で先行き考えてらんねーのよ!
●
四国の琴平の地に作られた『土蜘蛛の檻』。その主、土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』は猟兵たちを前に交渉を持ちかけてきた。
それに応じるも一蹴するも猟兵たちの自由だ。そもそも猟兵とオブリビオンが邂逅したのだから。『どちらに転んでもおかしくない』のが正直な話であった。
『この』世界においては、眞由璃の話に応じる者が多かったようだ。眞由璃と猟兵たちの話が進んでいく。
だが――。
「そーねぇ……アンタの言ってる事は正しい」
山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)はその交渉をぶった切るように言葉を放つ。
「けどアンタはオブリビオンだ」
数歩、眞由璃の方へ進み出て。圭一は眞由璃を睨みつける。
そんな圭一の言動を、眞由璃は正面から相対した。
この場における判断と行動は全て、現地に現地に赴いた猟兵たちに任せる、としたのはグリモア猟兵だ。ゆえに周囲に迎合する必要など一切無い。
眞由璃とて猟兵が一枚岩であるとは思っていないし、意見を纏めて提示しろとも言っていない。
お互いの主張をぶつける。これがこの場の『交渉』の本質だ。
だから圭一は言葉を続ける。
「土蜘蛛とか人間だとかそこは重要じゃない。いずれアンタは“今を生きる同胞”すら喰らう事になるぞ」
圭一の考えがマイノリティーである、なんて誰も思っていない。そもそもオブリビオンは『そういう性質』を持つ世界にとっての『イレギュラー』だ。
ゆえに圭一の言葉もまた真実のひとかけら。ただ、『この』場では少数派だったというだけ。
それが解っているからこそ、眞由璃は圭一の言葉をただ静かに受け入れる。いや、オブリビオンであるがゆえにその言葉を無視することも否定することも出来ない。
「ンでもう一つ。対と言ったな。その考え、気に入らねぇ」
圭一のその言葉に眞由璃が眉をあげる。反応を示しつつ、眞由璃は圭一の次の言葉を待つ。その言葉で本意がわかる、と察したからだ。
そして圭一の口から紡がれた言葉は。
「同じ生命使いだ」
『生命使い』――かつてこの世界の根底に眠っていたディアボロスランサーが撒いた種から生まれた生命(いのち)たち。
だけど。
「……ふふ」
「何が可笑しい?」
眞由璃は笑う。思わず、こらえ切れず笑みをこぼしてしまったというように。
その様子に今度は圭一が眉をひそめた。
「いえ。今のは私が失礼をしましたね。申し訳ありません」
圭一の表情を見て、眞由璃が真剣に謝罪を申し入れる。そしてそのまま話を続ける眞由璃。
「生命使い。確かに、私達『土蜘蛛』も生命に連なる者……でしたね」
生まれも姿も違えど、元はその1本の槍から生命が生まれたのがこの世界の成り立ちなのだから……土蜘蛛もまた生命の一角であるのは事実だ。
それでも眞由璃は悲し気な笑みを収めない。
「この身が、滅ぶ前の体なら貴方の言葉に一分の反論もありません。……ですが、この身はオブリビオン」
威嚇でもなく敵意でもなく、ただその場に『在る』ものとして。眞由璃は圭一に視線を遣る。それは純粋な問いだ。
「今に滲み出してきた過去は『生命』と言えるのでしょうか?」
「……」
「生命とは今を駆け抜けるモノ。だから過去の存在である私達にその称号は似合わないでしょう」
決して否定するわけではなく、ただの事実を述べる眞由璃。その様子をただ無言で受け止めて……両者は構える。戦いの緊張感を漂わせながら、確実に対応するために。
「悪いが交渉には応じねぇ。俺は害虫駆除に来たの」
「貴方が私達を対等に扱っている事について感謝します」
言葉を交わすのはここまで。
ここにあるのは猟兵とオブリビオン。不倶戴天の関係である両者は静かに、しかし確実に。相手を倒すために構える。
●
最初に動いたのは眞由璃。握っていた拳が……開く!
「土蜘蛛禁縛陣!」
眞由璃の声と共に放たれれるのは強靭な蜘蛛糸。四方に飛ぶ蜘蛛糸は触れた者を捕縛し、その力を封じる力を持つ。
「どのような姿をしていても我らは蜘蛛。持てる力は出し惜しみしません!」
蜘蛛の生態、必勝パターン。蜘蛛糸で捕らえて、身動きを封じてからゆっくりと喰らう。眞由璃の指が細やかに動き、四方から圭一を捕らえようと蜘蛛糸が迫る。
しかし。
「見え透いてンだよ……!」
圭一は焦ることなく冷静に『突風を起こす』。瞬時に形成したのは巨大蛾型の呪殺弾。呪いの力を吐き出すとともに風を巻き起こしたのだ。発生地点は自身の頭上後方。そこから圭一に向けて吹き下ろすように放たれた風が蜘蛛糸の着弾点をずらしていく。
「蜘蛛は糸を飛ばす時、風に乗せて飛ばす。『蟲使い』の俺が知らねェ筈ねぇだろ」
後、回避に必要なのは蜘蛛糸を飛ばすタイミングだけ。効果が変わっていようとも銀誓館学園時代にも仲間が使っていた技だ。相手の動作からタイミングを計る程度なら容易い。
「くっ……ならば!」
眞由璃もまたすぐに次の行動に移る。蜘蛛糸を束ねて風の影響を受けないようにして、それを無骨に一直線に飛ばす。
が、その蜘蛛糸は圭一の前に集まった数匹の白いチョウトンボが遮った。
「トンボの飛行速度に蜘蛛が追いつけるわきゃねぇだけんよォ」
初動が遅れたとしても蜘蛛の動きよりトンボの方が速い。それにトンボは力もある。それこそ蜘蛛の巣を突き破るくらいに。風の中でも飛べるくらいに。今のこの環境下では最適な虫と言えよう。
蜘蛛糸の直撃を受けたチョウトンボ白燐蟲は身動きを封じられるが、それはその個体だけの話。新たに圭一の体から出てきたチョウトンボ白燐蟲が10匹ほど。それらは圭一の周りで飛びながら蜘蛛糸の盾となる。
土蜘蛛禁縛陣――土蜘蛛の糸がいかに強力であろうとも相手に届かなければ意味がない。対して呪殺弾と白燐蟲の巧緻こそが圭一の本領である。
「絡新婦の戦闘見てねーもんな。たまにゃ部下より前線に出てやんねーと駄目だぜ?」
「先の指示はあれが最適解だったのですが……おっしゃる通りですね」
再び間合いを取ってにらみ合う両者。
さっきと違うのはこの場を支配しつつあるのが圭一であるということだ。呪いの風は徐々に眞由璃の体力を削っていく。しかし、眞由璃の蜘蛛糸は圭一には届かない。長引けば長引くほど圭一が有利になる。
「……っ!」
この状況を破るべく、眞由璃が突撃する。紅蓮撃――土蜘蛛の代名詞とも言える赤き一撃を叩き込めれば戦況は変わる。そう信じて距離を詰める眞由璃。
だが、圭一は眞由璃のその思考の上を行く。
(ここは一直線の参道。ならこのユーベルコードが適してる)
すでに『仕込み』は終わっている。詠唱、あるいは代替となる魔力を編む時間。このユーベルコードはその時間が長ければ長いほど効果を増す。眞由璃の初手に対して踏み込まなかったのはこのためだ。
だが眞由璃が突っ込んできたのなら……その墓穴は彼女の前にこそ示される。
「影からカモン! 蟲ゴースト! 呪詛毒まみれで頼むぜ」
圭一の足元から影が伸びる。影が眞由璃の足元を支配する。そして……影は墓穴。
「……っ?!」
墓穴から掘り起こされるのは呪詛と毒の属性を持つ蟲型ゴーストのオブリビオン。それはすなわち――。
「しまっ……ちぃぃっ!!!」
舌打ちしながら眞由璃が迎撃する。強大な蟲型ゴーストを赤手でなぎ払い、殴り飛ばし。しかし、その攻撃をものともせず、蟲型ゴーストは眞由璃に襲い掛かり、その牙を突き立てる。牙から流し込まれるのはもちろん呪詛と毒。オブリビオンですらその身が爛れるほどに強力な。
「ぐっ……あ……」
ユーベルコード【蟲冥墓穴】は時間掛けるほど、圭一にとって有利に働く。それは今現在も継続してだ。詠唱が続いている限り、無限に威力が上昇するのだから。
「ぎっ……うあぁぁぁっ!!!!」
それでも眞由璃が決死で反撃する。自身への飛び火を厭わず、零距離での紅蓮撃を叩き込む眞由璃。それで一瞬怯んだ蟲型ゴーストを土蜘蛛禁縛陣でどうにか動きを止める。だが今なお、一瞬でも気を抜けば噛み殺される……そんな状況だ。
「はぁっ……はぁっ……」
そして呪詛と毒は留まることなく眞由璃を侵し、その力を奪っていく。その身を削り取られるがごとき痛みが膨れ上がり、直接受けたダメージと合わせれば戦闘不能となるのはそう遠くないと自覚するほどに。
「人魔共存の叶っている今、アンタの共存の仕方はもう時代遅れだ」
圭一はそう告げながら眞由璃に近づいていく。
「アンタの率いる土蜘蛛勢力は15年前に滅んだ。この事実はもう変えられない」
「……っ」
圭一の言葉に眞由璃は何も言わない。いや、言えない。圭一の言葉に反論も否定もできる要素がないからだ。
圭一も足を止めない。【白燐葬甲】で自身を強化しながら身動きの取れない眞由璃へゆっくりと近づいていく。
「だから緩い頭で先行き考えてらんねーのよ!」
そう叫びながら。圭一が虫取り網型の杖『命捕網』を振り下ろす。
「ぐあっ!!」
その一撃が眞由璃の肩を打ち、そのまま赤手を吹き飛ばす。それによって蟲型ゴーストとの均衡が破られ。
「!!!!」
死を覚悟した眞由璃が目を瞑る。……だが次の一撃はいつまで経っても襲い掛かってこない。
ゆっくりと目を開ける眞由璃。そこには限りなく不機嫌そうな顔をした圭一がいた。
「俺としちゃ不本意だけどな……」
その言葉が示すもの。それは『この』場では圭一は少数派であるということだ。
ゆえに仲間の意見を尊重して矛を収めて踵を返す圭一。戦いは終わった、と言わんばかりに。勝者が立ち去るという不思議な構図。
その圭一の背を見送りながら眞由璃があえぐ。
「大丈夫です……よ。先延ばしになっただけ、ですから」
そう言いながら地面に崩れ落ちる眞由璃。
『この』場での判断が未来の全てを決めるわけではない。
現状、オブリビオン化した土蜘蛛とこの世界が相容れる可能性はほぼゼロに近い。雌雄を決する戦いは、『共存の同盟が切れるまでの間』先延ばしになっているだけなのだから。
いずれ決着をつける時が来るだろう。あるいは大転換の何かが起こるかもしれない。
その時にこそ、今日の圭一の言葉が眞由璃たち土蜘蛛へと突き刺さる。
この戦いは無駄ではなく、未来を紡ぐための楔となったのである。
大成功
🔵🔵🔵
●交渉結果
交渉に応じる……2人、交渉に応じない……1人、交渉に応じるも失敗……1人。
結果、『国見・眞由璃』のオブリビオン化土蜘蛛勢力と『共存』する同盟が結ばれます。
ただし、交渉の結果として。
(1)琴平の土蜘蛛の檻は撤去される
(2)猟兵ないしは銀誓館学園からの監視および警戒行動を受け入れる
(3)四国の人を人質に取らない
等、猟兵たちに有利になっている状況です。
詳細は後程記載します。
●経緯
グリモアの予知が察知した四国の『土蜘蛛の檻』。これはオブリビオンとして復活した土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』によるもので、眞由璃たちが琴平の地を人狼組織に対する最前線基地とするためであった。
この地に訪れた猟兵たちは眞由璃と会い、交渉のテーブルに着いた。そして結果として……彼女が言う『共存』の関係を結ぶことになったのである。
とはいえ、これは一時的なもので永続的なものではない。
眞由璃が告げたように、『他の勢力を撃破、あるいは敵にならないほどに弱体化させるまで』の一時的な共闘関係だ。
関係破棄の時が来るまで、『両者間での戦いをやめる』というのがより正しい表現になるだろうか。お互いがお互いを利用し合う程度の関係といえよう。
そして問題の『土蜘蛛が人類を喰らう』という生態を容認するというわけではない。むしろ土蜘蛛の方が制約が多い同盟関係と言える。それでもなお、眞由璃は銀誓館学園および猟兵たちと共闘関係を結ぶことを選んだ、というわけだ。
ここに、シルバーレインの世界を再び覆った脅威に対して、協力して撃破する同盟が結ばれたのである。
●制約
銀誓館学園(以下、猟兵も含む)とオブリビオン化土蜘蛛勢力は以下の関係性を結ぶ。
強大な相手が敵となった場合、両者は共闘してこれに立ち向かう。しかし強制ではない。共闘の要請があった際に、その戦闘を行うことで自陣に不利益があるならこれを拒否することが出来る。
◆銀誓館学園側
銀誓館学園は土蜘蛛に攻撃を仕掛けない。
土蜘蛛の成長および組織維持に対して、代替エネルギーである精気を提供する。
土蜘蛛の檻について容認する。ただし、能力と規模については銀誓館学園から指定する。
◆オブリビオン化土蜘蛛勢力
『人類の捕食』をしない。
銀誓館学園に攻撃を仕掛けない。
土蜘蛛の檻に一般人を巻き込まない。ただし通りすがりなど偶発的なものは除く。
銀誓館学園からの監視および警戒行動を受け入れる。
◆特記
土蜘蛛勢力は『四国の人々を人質ないしは盾に取らない』という誓約を取り交わす。
これは眞由璃と銀誓館学園から来た代表とで交わされた。血判付きである。
◆同盟の終了を定める基準
ここまでの制約および誓約を破った場合。破る側は銀誓館学園、土蜘蛛を問わない。
●土蜘蛛たちの行く末
銀誓館学園と土蜘蛛勢力で様々な約束が取り交わされた後。
土蜘蛛勢力はまず琴平の地にあった土蜘蛛の檻を解除した。
それに伴い、囚われていた一般人たちは解放されて元の生活に戻っている。当然、完全記憶操作も解除されているため、後は世界結界の影響でゆっくりと今回の事件を忘れていくだろう。既に土蜘蛛の糧とされた分は戻ってこないけれども。
琴平の地での悲劇は回避されたと言える。
そして土蜘蛛勢力はそのまま拠点を移動した。新たな土蜘蛛の檻は穴内川ダム湖の湖畔を中心に展開されている。檻の大部分はダム湖とダム湖の北に広がる山。集落もないので一般人を巻き込むこともない。ただ道路があるため、人の通りが完全にないとは言えない。
しかし、土蜘蛛の檻の効果は『範囲内にいる者からほんの少し精気をいただく』程度だ。一般人を檻の中に閉じ込めることもないし、もちろん完全記憶操作も無い。精気を吸われた人も『何か疲れやすいなー』程度の被害しか無い。
そしてこの土蜘蛛の檻付近に、銀誓館学園が合宿所&実習施設を作ることになった。名目上は、だ。ここに能力者が常駐することで、土蜘蛛勢力の監視と警戒行動を行う。ただし、土蜘蛛には精気を吸われる。施設内は檻の効果が強くなるよう調整するようである。ちょっとした高地訓練だと思っていただきたい。まぁ赴く者も『任務』の形で行くので、ある意味了承済というかなんというか。
とりあえずこんな感じで。銀誓館学園と土蜘蛛勢力は戦力維持のための協力体制を整える。
ちなみに敵対行為があれば同盟は破棄されるが、その行為の中に『合意の上の模擬戦』や『意見が異なる等での個人レベルの喧嘩』は含まれない。多少ケガしても問題ないということである。
偶発的に一般人を巻き込んでしまった場合も同様だ。
あくまで土蜘蛛が自身の意志を持って攻撃を仕掛けてきた場合、ないしは一般人を巻き込んだ場合、誓約は破られたと判断する。明文化された誓約はかなり強力な抑止力および保険となるだろう。
さらに『いつまで同盟するか?』という問題がある。
これに関してはぶっちゃけると『必要が無くなったら』だ。同盟の敵がいなくなった時、というのが名目上だが、こちらから同盟を切ることだって可能だ。もちろん向こうも同じだが、土蜘蛛側から同盟を切るメリットはあまり無いだろう。
結局のところ、アドバンテージを持っているのは銀誓館学園側だ。
裏切ったら衛星レーザーとか脅しにも最上級な言葉が交わされているので、まぁそのなんだ。本当に撃たなくて済むようにしてもらいたいものである。
最後に。
眞由璃が定期的に銀誓館学園へショートステイすることになった。これは純粋に情報交換の場を持つだけであり、眞由璃たちオブリビオン化土蜘蛛が銀誓館学園に参入するわけではない。
ついでに女王自らが直接能力者から精気をいただいていくらしい。超高濃度(ただし命に別状はない)レベルでこう、ごきゅっと。戦闘訓練とかもしていくかもしれないが。
そんなこんなで、土蜘蛛の活動源についてはどうにかこうにか交渉通りの形になりそうだ。
クレア・フォースフェンサー
わしから見れば、おぬし達は全て骸の海に還すべき存在じゃ
じゃが、わしはあくまで異邦の者
この世界の者が同盟を結ぶと決めたのであれば、それを尊重しようぞ
ただし、先の者が言うたように自由にすることはできぬ
しばらくは寝食をともにさせてもらうが、良いかの?
わしのような者が精気の提供者足り得るのか、そのテストにもなるであろうしな
特産の菓子などがあると有難いのう
ところで、一つ訊きたいことがあるのじゃ
おぬし達の本来の使命は人類の捕食者とのこと
じゃが、おぬし達は来訪者
この地球の外からやってきた者なのであろう
ならば捕食者とは、この地に来てから定めた新たな使命なのではないのかの?
(或いは捕食を正当化するための――)
赤嶺・愛(サポート)
『世界が平和になりますように』
人間のパラディン×シーフの女の子です。
普段の口調は「平和を愛する(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、怒った時は「憤怒(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は明るく、人と話す事が好きで
平和的な解決を望む優しい性格の女の子ですが
戦う事でしか依頼を成功出来ない時は戦う事も厭わないです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●後日談
琴平は金刀比羅宮を舞台にした『国見・眞由璃』率いるオブリビオン化土蜘蛛勢力と猟兵たちの激突が終わって1週間ほど後のこと。
銀誓館学園が手配したホテルのスウィートルーム。
「結構派手にやられているんですねえ」
「そうじゃなあ」
赤嶺・愛(愛を広める騎士・f08508)が思わず呟く。呟きの相手は隣にいるクレア・フォースフェンサー(旧認識番号・f09175)で、愛の視線の先にいるのはいまだベッドの上から身動きが取れない眞由璃である。
ありていに言えば、クレアと愛は監視役兼護衛といったところだ。
今の現状を言うと、眞由璃の回復待ちであった。猟兵と戦った際のダメージが思ったよりすごいっていうか、紛れもなく死闘だった。そして眞由璃は今、土蜘蛛の檻を解除しているし、溜め込んでいた精気は新たな土蜘蛛を生み出すのに使ってしまった。つまり『回復に回せる力』がゼロなので、自然(?)治癒力に頼った回復となってるのだ。
ちなみにスウィートルームというのも贅沢させる為ではない。単に『軟禁して』『隔離する』のに便利だっただけ。そこをクレアや愛といった猟兵たちが入れ代わり立ち代わりで眞由璃を見張っている。
まぁ眞由璃は逃げる気配すら見せていないのだが。
敵意が見えないためか、愛が軽快に眞由璃に近づいていく。愛は世界の平和を願う少女であるが、決して戦うことを厭うわけではない。必要であれば戦う。
だが平和と平穏な日常を愛する少女はとても純真で、あまり人を疑う事が無くて。だから、彼女は単純な興味で眞由璃の側に歩み寄るのだ。
「調子はいかが?」
「おかげさまで。もう少ししたら動けるようになると思います」
ベッドの上から顔だけを向けて、愛の質問に眞由璃が答える。
重傷なのは事実なので、『もう少し』がいつなのかはちょっとわからないが。あくまで共闘関係という距離感を保ちながら、和やかに雑談を始める愛と眞由璃。
その様子を見守っていたクレアが、頃合いを見て話しかける。
「わしから見れば、おぬし達は全て骸の海に還すべき存在じゃ」
それはクレアの本音であろう。猟兵である以上、その行動は微塵も間違っていない。
「じゃが、この世界の者が同盟を結ぶと決めたのであれば、それを尊重しようぞ」
そういって、愛の横に座るクレア。視線はじっと眞由璃を見たまま、もう一度言葉を紡ぐ。
「ただし、先の者が言うたように自由にすることはできぬ。しばらくは寝食をともにさせてもらうが、良いかの?」
「どうぞ。こちらを害するつもりがなければ断る理由がありません」
クレアの言葉に眞由璃が口を開く。眞由璃の言葉にも嘘偽りは無い。そのようにすることは既に交渉の場でやり取りしたことだから。
(それに……)
クレアは内心で思案を巡らせる。
(わしのような者が精気の提供者足り得るのか、そのテストにもなるであろうしな)
サイボーグ。このシルバーレインの世界では存在しない種族。シルバーレインに生きる者が『生命使い』と呼ばれ、彼ら彼女らから精気を吸うというのなら。クレアのような異世界出身で、しかも機械の身は対象となりえるのか。貴重なサンプルケースとなるのは事実だろう。
試すのはそれこそもう少し先になりそうだが。
「特産の菓子などがあると有難いのう」
「それは銀誓館学園の能力者の方が詳しいのでは?」
クレアの呟きに、眞由璃が首を傾げながら答える。まぁ、眞由璃がこの半年、いかに調査していたとはいえ、ずっと四国に生きてきた者の方が詳しいのは事実である。土蜘蛛名産とかないだろうし。
再び和やかな雰囲気になりかけたそのタイミングで。
クレアの視線が鋭く眞由璃を射抜く。
「ところで、一つ訊きたいことがあるのじゃ」
「……なんでしょう?」
眞由璃もまた視線を返す。
「おぬし達の本来の使命は人類の捕食者とのこと」
視線を承諾をしたクレアが言葉を紡ぐ。
「じゃが、おぬし達は来訪者。この地球の外からやってきた者なのであろう」
「そうですね」
本来の使命も来訪者という点も。なにも否定するところは無い。首肯した眞由璃に対してクレアが言葉を突きつける。
「ならば捕食者とは、この地に来てから定めた新たな使命なのではないのかの?」
そのような使命があったことを知っていた能力者は少ないだろう。眞由璃が死んだあの時はお互いに対する情報が不足していた、ただただ敵として戦ったのだから。知らない情報は伝聞されない。
だがもうひとつの見方もあるのだ。
(或いは捕食を正当化するための――)
言葉には出さずにその可能性にクレアは至る。そう、土蜘蛛たちがそう決めただけかもしれないのだ。
ゆえにクレアはこの言葉を突きつけずにいられない。例え、愛がすぐ横であわあわしていたとしてもだ。
「……」
対して眞由璃は嘆息する。非常に困ったような表情をしている。
「貴女が満足する答えは持っていません。私達は『そのように創られた』としか。生まれ出でた私達には解らないのです」
そう言ってから、一拍置いて。眞由璃がもう一度口を開く。
「知っているのはおそらく『ディアボロスランサー』だけでしょうね」
ディアボロスランサー。このシルバーレイン世界にあらゆる生命の種を撒いた生命の根源とも言える存在。かの槍はすでにこの次元から別の次元に旅立っている。
「私達は『この星』に対しては来訪者ですが、ディアボロスランサーが生み出した『生命』としては同じ根源です」
シルバーレインの世界にも宇宙がある。この星の外にも世界が広がっているのだ。土蜘蛛の使命は本来無かったかもしれないが、この星に集ったことによって生まれた可能性も無くは無い。だが、そこに土蜘蛛の『意志』は介在しない。あくまで『定められた』ものなのだ。
「まぁ、そうは言っても私達はオブリビオンなのですが」
過去、ディアボロスランサーが生み出した『生命』とは根本的に違う。眞由璃に至って言えば、死んだ頃の『生命』が『現在』に複写されているような状態だろう。
「というわけで、私達が持っている情報もこの程度です。申し訳ありませんが」
「……はっ!? お話終わった?」
あまりにもシリアス……というか、シルバーレインの世界に寄った内容だったからだろう。愛さん、うっかり居眠りしていたよ。何の問題も無いけれども。
「ええ。終わりました、たぶん」
「しっかりと終わったからの」
眞由璃とクレアがそう答えて。それを聞いて愛は改めて眞由璃に向かい合う。
「眞由璃さんがもう少し回復したら、銀誓館学園との話し合いが始まるよ。この前にした交渉の内容をしっかりと詰めるって」
「なるほど。場所は……?」
「銀誓館学園の代表が四国にくるみたい。状況も把握しておきたいって言ってたし。あ、猟兵も何人かご一緒するからね」
「それは。当然でしょう」
「猟兵の出番が無いといいなあ」
「いきなりご破算、ということは無いと思いますが……」
愛の言葉に思わず吹き出す眞由璃。
「……」
その様子をクレアが見守る。
こうして話している姿は同年代の女の子が放課後にでも雑談しているようにしか見えない。
されど、片や猟兵で片やオブリビオンである。この共存関係は薄氷の上を進むが如き、センシティブなものだ。
(……積み重ねるしかあるまいて)
情報も事例も話し合いも。
その先にこの同盟がどのような結末を迎えるのかは、また別の話なのだから。
成功
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