7thKING WAR㉕〜デデデデストローイ!
●デェェェストロォォォォイ!!
「デェェェストロォォォォイ!!」
それは怒号だった。
シンプルに「デストロイ」と叫ぶ巨漢。身長50メートルという巨躯の持ち主である彼は、我慢ならず声を荒げていた。
ガチデビルが特級契約書で呼び寄せた"異世界の魔王"。それが彼、『デストロイキングボス』である。
「足りぬ、デストロイがまるで足りぬぞ!」
力とはパワー。そしてパワーがあればデストロイできる。
つまり、デストロイということだ。
だが今の彼にはデストロイが欠乏していた。理由は単純、
「デストロイが足りぬ……だから猟兵!お前達を我が標的とする!」
すなわち、デストロイだ。
●デストロイってなんだよ。
「デストロイだ……」
デストロイのバーゲンセールに、ついに頭もデストロイと化したヘクター・ラファーガ(風斬りの剣・f10966)は、集まった猟兵に「デストロイ……」と呟いた。
「だから、デストロイだってんだよ。デストロイキングボスがアンタらにデストロイをしようって話なんだ。デストロイを求めて止まない奴だったんだ。」
閑話休題(いいから概要を話せ)。
「……悪ふざけはここらで置いといて、デストロイキングボスが猟兵との戦いをご所望らしい。理由は、さっき言った通りだ」
彼は猟兵たちが目指している、『ガチデビル』の結界守備者として配備されたラスボスの一角だ。
しかし、彼は我慢できなかった。
やろうと思えば簡単に戦場を制すことができる能力を持つ、デストロイキングボス。だが彼が求めるデストロイとは、そんなものではない。
己の肉体で、己がパワーで、
真 っ 向 勝 負 を し て こ そ デ ス ト ロ イ ! !
すなわち、デストロイを欲しているがために顔を出したのだ。
「んで、その能力なんだが、アイツは配下に『ビューティスパイダー』ってのがいるんだ」
それは美少年の顔をした人面蜘蛛で、彼はそれを座標としてテレポートができるらしい。ビューティースパイダーは常に戦場を駆けまわっており、すばしっこく、さらに「イエス、ビューティスパイダー」としか喋らないらしい。コイツもデストロイと同列じゃねぇか。
本来であればそれを『悪魔契約書』なるもので戦場に送りまくり、全ての世界を蹂躙する──というのが筋書きであったらしい。
だが、それよりも彼はデストロイを求めた。
「ま、ヤベェ手段で世界を蹂躙されずに済んだだけマシだな。
んで、デストロイキングボスの話に戻すけど、奴はビューティスパイダーを使って瞬間移動する。だから、先手は必ず奴に取られちまう」
恐ろしいことに、デストロイキングボスはテレポートによって一瞬で間合いを詰め、魔王相応のパワーで技を放つ。そのため、先手は必ずデストロイキングボスに譲られる。ビューティスパイダーが素早く猟兵の元へ接近、そして攻撃する前にあちらが攻撃を仕掛ける。といった具合で、どうやってもデストロイキングボスからの攻撃からは逃れられない。
何故ならば、彼の技は全てデストロイに特化している。
「けど裏を返せば、ビューティスパイダーさえどうにかできちまえば、アイツのデストロイをどうにかいなせるかもしれねぇって寸法さ」
彼の配下であるビューティスパイダー。先制攻撃こそ譲るが、これを排除すれば多少は楽になるだろう。
要するに、こいつらをデストロイすれば、相手をデストロイすることができる。
「つーわけで、どうにかして頑張ってくれ。デストロイされんじゃねぇぞー」
ひらひらと手を振りながら、ヘクターはグリモアを開いた。
向かう先は──デストロイ。
天味
どうもデストロイ……ではなく天味です。
今回は戦争シナリオ、『㉕召喚魔王『デストロイキングボス』〜一撃必殺』の内容となっております。
難易度はやや難。相手は先制攻撃を仕掛けるタイプのボスなので、何かしら有効的な対策を取らなければ失敗、もしくは大失敗と厳しい内容となっております。
強いデストロイに対して、賢くデストロイする必要があります。
すなわちデストロイだ。
今シナリオでは以下のプレイングボーナスが付与されています。
『敵の先制攻撃に対処する/ビューティスパイダーを排除する。』
相手は必ず先制攻撃をします。それに対処しつつ、彼の能力であるテレポートの座標元、ビューティスパイダーを倒せば、デストロイへの道筋は見えてくるかもしれません。
それでは、皆様のデストロイなプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『デストロイキングボス・一撃必殺』
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POW : デストロイフィンガー
【ビューティスパイダーへ瞬間転移し、指先】で触れた敵に、【デストロイエネルギー】による内部破壊ダメージを与える。
SPD : デストロイタイフーン
【多くの敵を捕捉できる地点に転移して】から、戦場全体に「敵味方を識別する【破壊の大嵐】」を放ち、ダメージと【装備破壊】の状態異常を与える。
WIZ : インビジブルスパイダー
【転移先となる透明ビューティスパイダー】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エリック・ガルベルト
人の顔をしているとやりづらいですね…
とはいえ多数の相手を同時に対処するには…
転移完了と同時に【指定UC】を発動、[吸血蛭]を
ばら撒き蜘蛛に着弾後、[三叉血槍]に変形させます。
第六感でビューティースパイダーの位置にあたりをつけ
早業でUC発動のスピードをあげればテレポートしてくる前に何とか対処できるでしょうか
あなたのデストロイ、デストロイさせて頂きます!
敵の攻撃は第六感・見切り・オーラ防御・受け流しを組み合わせて
対処を試みます。
後はダッシュ・ジャンプ・軽業で敵の周囲を飛び回り拳撃、蹴撃の
ヒットアンドアウェイを繰り返してダメージ蓄積を狙っていきます。
私も肉体とパワーには自信があるんですよ!
人の顔をしているとはいえ、相手はオブリビオンの配下。そしてその数は多く、戦場に蔓延っているという。
まさに至難の敵だ。ダンピールの男性にしてクレリックであるエリック・ガルベルト(聖拳・f35891)には、若干『ビューティスパイダー』が殴りがたい存在であった。
しかしやることは変わらない。
彼は転移したその瞬間に、ユーベルコードを展開する。
それは神の御業とはかけ離れた、血の所業。
「神よ、この残虐な行いの報いは必ず受けます──ッ!?」
「デストロイ」
──しかし、それを展開するよりも速く、エリックの真横から彗星が直撃した。
否、デストロイキングボスの、"指"である。
「ごぶォ゛ッ!!」
トラック、いや新幹線に撥ねられた──意識があるのが不思議と思えるほどの衝撃と、おびただしい吐き気。三秒経っても空中を飛翔していることに気づいた時、エリックは自ら土煙を上げながら大地を転がる。
アレが、デストロイ?
先制を取られるとはこのことであった。殲滅。その名にふさわしき一撃を浴びた彼は、デストロイの定義について考え直す。
咄嗟に第六感が働き、自身の経験から絞り出された受け身の体勢を取らなければ、きっと一撃で終わっていた。
「……なる、ほど。これが神罰です、かッッ!!」
「デストロォォォォオオイッ!!」
「『串刺し公(ツェペシュ)』!!」
今度は間違えない。
真横にビューティスパイダーが駆け寄るのを感知したエリックは、今度こそユーベルコードを展開する。せまる拳──ではなく、デコピンの構えであろう指先。そこへ、拳の一撃を放った。
ズッパァァァンッ!!
拳と巨躯の指。それぞれがぶつかり合った瞬間、空気が割れた。爆発でもしたかのような音が響き、余波だけで辺りのビューティスパイダーが吹き飛んでゆく。
デストロイキングボスは、手ごたえのある一撃にほくそ笑む。これぞ求めていたデストロイ。
しかし、その笑みは苦悶に変わる。
「ムッ!?貴様ッ、拳に!」
「……えぇ、少し、あなたに罰を与えました」
デストロイキングボスの指。エリックが拳を当てた箇所に、ぐちゃりと赤く蠢くものがあった。
血を含んだ蛭だ。百を超えるその蛭は指の表皮に食いつき、凄まじい勢いで血を啜って肥大化してゆく。
「チィッ!」
巨躯が一瞬にして消える。しかし、食いついた蛭は指先から離れない。
姿を消した相手に対し、エリックは追いかけようとし──足から崩れる。
「罰は、必ず……執行されます」
殴られた衝撃。そして先ほどの鍔迫り合いの時点で、体力を使い果たしてしまった。しかし、それでいい。
何故ならば、ユーベルコードを当てれた時点で、こちらに分があったからだ。
猟兵もまた無数。次に繋げることも、猟兵だからこそできること。
「だから、蝕まれなさい」
──彼が倒れる寸前、怒号が響き渡った。
それは指先からの痛み。巨躯には蚊ほどしかないはずのそれは、いつの間にかノコギリで指を斬り落とされたような痛みへと、変貌した。
成功
🔵🔵🔴
ネフラ・ノーヴァ
アドリブ、共闘OK
デストロイ結構、それもまた美しさだ。では私の破壊も披露しようじゃないか。
瞬間転移を逆に利用させてもらう。
ビューティースパイダーに接近し抱き締め転移を待ち受ける。美少年の顔とあればキスの一つでもしようか。
近くとしてもよもや密着しているとは思うまい。蜘蛛を盾に魔王の初撃を受け刺剣を蜘蛛に貫通させカウンターを狙う。
致命の一撃、腕を腹の口に突っ込み舌根っこをUCフェイタルグラップルで掴み引き千切る。
魔王の血花、さぞ見事であることを期待しよう。
デストロイとは殲滅、あるいは破壊だ。
それもまた美しさだろう。クリスタリアンの女性、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)はそう考える。
「では、私の破壊も披露しようじゃないか」
「イエス、ビューティスパイダー」
「……本当にそうとしか喋らないのだな」
しかし、ちょうど利用しようとしていたものが現れた。
彼女はすぐさま、美少年の顔が張り付いたような蜘蛛──全長が五メートルはあろうソレに体を寄せ、キスをした。
「イエス!?」
「──デスト、んん???」
瞬間、風が吹き荒れる。
ちょうどネフラがキスをしたビューティスパイダー。その真上に転移したデストロイキングボスは、その巨躯故に見逃した。
灯台下暗し。ネフラは瞬間転移の原理を逆利用したのだ。
「そこかッ!」
「おっと」
「イェッ」
ぶちゅっ。
ようやく気が付いたデストロイキングボスは、左手の指でデコピンの一撃を放たんとする。
しかし事前に攻撃を見切っていた彼女は、抱きしめたビューティスパイダーの顔を掴み、持ち上げた。クリスタリアンとは思えない腕力で持ち上げられたソレは、デコピンの生贄にされ、惨めな音を鳴らして潰された。
「さあ征くとしよう!」
さらに、ビューティスパイダーだったものへ一撃が入る。板挟みにするように、ネフラはビューティスパイダーだったものへ刺剣を放つ。
既に潰れていた肉体を貫通し、大穴を開く。そこへ潜り込み、ネフラは残像を残すほどの速さで巨躯を駆けた。
「何ッ、居ない──否、これは!」
デストロイキングボスは彼女の姿を見失うが、同時に腕を何かが這いまわっている感触に、危機感を抱く。
デストロイされる。そう察知した彼は、即座に転移を実行。突き放すべく遠くのビューティスパイダーを座標に、瞬間転移を行った。
だが、
「付いてきている、だとォッ!?」
「突き刺さっていれば、抜けやしないだろう?」
ネフラはデストロイキングボスの腕に刺剣を突き立て、引っ付いていた。
「えぇいッ!これではデストロイできんッ!」
「元よりそのつもりだが──あぁ、そんなに口を開けるな」
殺気。
デストロイキングボスがそれを感じた時には、既にネフラは彼の腹部、第二の口元へと刺剣を突き立てていた。
開かれた口を、"血棘の刺剣”が射貫く。
それはまさに致命の一撃。巨大な舌に針が通り、それは釣り針の如き逆刃となって引き抜かれた。
「喰いつきたくなる」
『フェイタルグラップル』。
「がッ!!ア゛ア゛ァァァ゛ァッ!!」
両方の口から放たれる咆哮。耐えがたい激痛にたじろぐ姿に、ネフラは魔王の鮮血を浴びながら舌なめずりをした。
魔王の血花。それは彼女の期待通りの産物であった。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
デストロイとはつまり破壊。
つまり壊せ!
ディスポーザブル01を【操縦】
パルスアトラクターの電磁音波で麻痺、から【ロープワーク】フォースウィップでスパイダーを絡め取って遠心力乗せて遠くへ【投擲】【瞬間思考力】で転移攻撃認識
そして、お前が速い事は知ってる!
01で【武器受け】指先を胸部で受け止め、自身はサイキックシールドでデストロイエネルギーを【オーラ防御】そして『煉獄倍眼』発動!
がぁああああ!!!
悪霊故の【継戦能力】01戦闘続行!
即座に反撃に転じRX騎兵刀で指を【なぎ払い】スラスター【推力移動】で飛び【追撃】千里眼【第六感】と転移【残像】の超能力でテレポートに喰らいつき【切断】叩き斬る
ぶっ壊れろ!!
「起動」
アンサーヒューマンの少女、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、"【量産型キャバリア】重装甲ディスポーザブル01"に搭乗し、戦場に現れた。
ゴツゴツとした四角い胴体と、ボール状の肩が目立つキャバリア。それはズゥゥゥン!と音を立てて着地した──瞬間、胸部の水晶体、"BS-Bパルスアトラクター"を輝かせる。
「イエッ!?」
「イエ、エエ、エエエエエ」
「喧しい。が、効果を確認。飛んでいけ!!」
パルスアトラクターから発せられた、電磁音波。それは周囲のビューティスパイダーらの動きを止めた。
痺れ、鳴き声すらもまともに発せられなくなった彼らに対し、小枝子は次の武装を展開。腕部にある"RBXS-Aフォースウィップ内臓ブラストナックル"からフォースウィップを発生させる。
エネルギーで生成されたウィップはビューティスパイダーらを絡めとり、虫取り網で掬い取るように複数体をその中に収める。そのまま遠心力に任せて回転し、知覚する。
小枝子の思考力が囁いたのだ。来る、と。
「そらァッ!!」
ブンッ!!と、それは同時に音を鳴らした。
遠心力によって投げ捨てられたビューティースパイダーの塊。そして、それを座標に飛んできたデストロイキングボス。
彼我の距離は一メートル以内。
「お前も、デストロイか!!」
「あぁ、そうだ」
問いは一瞬で終わる。デストロイキングボスは、巨躯の肉体を大きく動かし、小枝子に対しフルスイングを放った。
キャバリア故に、小手先ではデストロイできないだろう。それが彼の判断であり、デストロイにふさわしいと彼は、彼女の答えに呼応した。
故に、右腕の一撃。
「ふゥッッッ!!!!」
指先ではないことに驚愕したが、それも一瞬。即座に胸部からサイキックシールドを出力最大で展開し、一撃を受け止める。
ゴゥゥウンッ!!と響き渡る異音。機体内部は大きく揺れ、あまりのパワー故に立った場所から数メートルほど地面にミミズ跡ができる。
それでも立っていられたのは、意地か。それとも、
「壊してやる──デストロイだああァァあああ゛ア゛ア゛ァ゛ァァぁああああああアアアアアアッッッッ!!!!!!!!」
『煉獄倍眼(パーガトリー)』稼働。
左眼に備わった義眼が発熱し、溶岩の如き光を放つ。実際に溶けており、その熱を彼女は頭蓋の中で味わっている。しかしそれを代償に、パワーを得る。
デストロイするにふさわしき力を。
「ッッッ!!」
「ッッらア゛ぁぁ゛あ゛あああァ゛ァ゛ァッッッ!!!!!!」
デストロイキングボスの右腕が、押し返された。
そして、そこからの01の動きは、デストロイキングボスの目にも止まらぬほど速い。
右腕の一撃を弾いた彼女は、01を回転させながらデストロイキングボスの懐へ潜り込む。スラスターは『煉獄倍眼』により最大出力の倍を叩きだすほどの炎を噴かし、格納していた"RX騎兵刀"を抜刀して斬りかからんとする。
しかし、デストロイキングボスもただでは斬られまいと、彼女が投げ捨てたビューティスパイダーを座標に転移する。
スラスターの速度と、転移の速度。その差は一目瞭然だ。
──通常の状態であったのならば。
「逃げ」
「何ッ!!」
「んじゃねェ゛え゛えェェ゛ッッ!!!!」
今の彼女は、火砕流の如し。
翼を生やさん勢いでスラスターが炎を噴き、それは迫りくる。転移の速度さを埋めるほどの速さで迫り、そして放たれる。
「ぶっ壊れろッッ!!!!」
──デストロイたりえる一撃を。
大成功
🔵🔵🔵
キーヴィット・フィールヘクセ
ガチデビル、人選……というか魔王選を間違えていないかい……?
(デストロイキングボスの性格からして、大人しく結界の要などしている訳がない事に気付いても良さそうなものだが……)
予め「アセイミーブルーム」に乗って機動力を確保。
先制の透明なビューティスパイダーは敢えてそのままにして、UCを発動すると同時に「アセイミーブルーム」を最大速力で駆り(空中機動)、【第六感】で攻撃を察知し回避しながら、デストロイキングボスをUCで召喚した鏡まで引っ張る。
後は、鏡から現れた写し身をぶつければ僕の仕事はお終いだ。
――さぁ、己自身と存分にやり合うと良い。
人選を間違えていないだろうか。
クリスタリアンの青年、キーヴィット・フィールヘクセ(修行中の身・f36065)はそう思いながら、箒の一つ、"アセイミーブルーム”に乗って空を飛ぶ。
自身がこの戦場に来たことではない。デストロイキングボス。彼の有り様を考えると、ガチデビルの魔王選に疑問が浮かぶ。
(あのラスボスの性格からして、大人しく結界の要などしている訳がない事に気付いても良さそうなものだが……)
しかし、選ばれている以上、ガチデビルの魔王選に狂いがないことは確かだろう。その結果が、今の戦場だ。
相手は手負い。しかし油断は一切できない。
「……来るか」
先ほどから報告されていた『ビューティスパイダー』が見えない。
否、気配はある。
「術式──」
「デストロオォォォオオイイッ!!」
「──展開ィッ!!」
ブンッ!!と風音が響くのと同時に、巨大な青色の手がキーヴィットを掴まんと伸びる。
彼はユーベルコードの展開を進めながら、アセイミーブルームに火をつけ、逃げに徹する。手は当然こちらへと伸び、広げられた指に絡めとられれば、潰されるのがオチだろう。緊張の中、キーヴィットはアセイミーブルームの速度を最大まで上げる。
(思ったより速い!だが!)
速力が最大に達したその瞬間に、彼は思い切りアクロバットを決める。指と指の間をくぐり抜け、腕から肩へと軌道を描く。デストロイキングボスの肌を擦るギリギリを滑りながら、今度は地面スレスレを駆けた。
「小癪ッ!だが貴様を逃がしはせん!!」
「それはどうも!」
足元から逃げてゆくキーヴィットに、デストロイキングボスは叫ぶ。
わかっている。彼は先ほど、透明な『ビューティスパイダー』を辺りに撒き、こちらを追跡していたことを。そして、次も同じように転移して捕まえにくるだろう。
しかし、それこそがキーヴィットの策略。
「さあ来るんだ──!」
其は己を弑する裁きの鏡像、『応報術式・浄玻璃(フェアレータ・シュピーゲル)』。
「ッ!また奇術か──否、これは」
『あぁ、貴様は我、そして我こそはデストロイ!!』
それは巨大な、デストロイキングボスの全身を写す鏡であった。
キーヴィットが創り出した鏡。そこに写るデストロイキングボスと、デストロイキングボス。鏡に映るデストロイキングボスは、表面から手を伸ばし、巨躯の肉体を曝け出した。
今、二つのデストロイが交じり合う。
「そうか、そのようなデストロイもあるのか」
『然り。では始めようじゃないか』
「いいだろう、デストロイだ!」
『あぁ、デストロイだ!』
ボゴォッ!!
拳と拳が響き合う。空間が裂け、大地がひび割れる。それは天変地異を、自ら体現するかの如く。同じデストロイ同士。破壊と破壊がぶつかり合い、新たなる神話を生み出そうとしていた。
「……さて、ボクの仕事はお終いだ」
やるべきことはやった。後は勝手にやってろ。
と、キーヴィットはそそくさと戦場を去ってゆく。お望みのデストロイが叶ったのであれば、それはそれで行幸だろう。彼は水を差すことなく、神話の観客にもならなかった。
──後に語られる。
その勝負は数時間、あるいは数十時間にも及ぶ、大激闘であった。
同じ姿、同じ技、同じデストロイを繰り広げる彼らに、近寄るものは誰一人としていなかった。
お互いが滅ぶまで。
そして戦いが終わった時、残された大地には何も残らなかった。
全て、デストロイされたのだ。
終わる瞬間さえも。
大成功
🔵🔵🔵