7thKING WAR⑬〜I My Mimicry(作者 犬塚ひなこ
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#デビルキングワールド  #7thKING_WAR 


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●曖昧アリスフィールド
 今も崩壊を続ける地域、カオスの混沌領域。
 名前通りの混沌が満ちる此の場所には、何とも不思議な力が巡っている。
 此処では、訪れる者の心に宿る恐怖や畏怖、敗北感や後悔をはじめとした感情が読まれて形を成してしまう。
 そして、それは悪魔にとっての憑装の力となる。
 つまり『内心の脅威』が手に取るように分かり、それを纏う力が悪魔に宿るのだ。
 この力に目をつけた者が今、混沌領域で暴れまわっていた。

「すごい、すごいじゃない!」
 わくわくした様子で瞳を輝かせているのは、悪魔アリス。
 カオス領域に訪れ、此の場に広がる力の意味を知った悪魔は悟っていた。この混沌こそ、自分が扱うに相応しいものだと。
「この力があればどんな強いものにだってなれるっ! 近頃、この辺を仕切ろうとしてる猟兵ってやつ! あいつらが強敵だと認めた相手になれるんだもの!」
 モノマネやなりきり、なりすましや背乗りの悪事を得意としていたアリスは感動に打ち震えていた。猟兵達の内心の脅威、即ち、かつての強敵のオーラを憑装して戦えば負けることなどないはずだ。
 そのように解釈したアリスは悪魔の尾を楽しげに揺らしていた。
「ふふふ、ようやく私の時代が来たわね。これからはどんな相手だって、この私の前に平伏すことになるんだから!」
 アリスは胸を張り、猟兵の到着を今かと待ち侘びる。
 彼らが現れた時にはアリスの姿は少女として認識されなくなっているだろう。猟兵が戦いたくない相手や、強敵そのものとして見えるはずで――。
「すっごく楽しみだわ!」
 有頂天状態のアリスは楽しげに笑い、大きく胸を張った。

●ワンダーミミックワールド
 強者と対峙したとき、緊張感や畏怖を抱くことは当然。
 この相手には勝てそうにない。或いは、戦いたくはないと思った対象。
「君には、そんな風に感じたひとはいる?」
 花嶌・禰々子(正義の導き手・f28231)は猟兵達に問いかけた。
 たとえば、これまでの戦で闘ってきた強敵達。結果的に勝利してきたが、はじめて対象を見たときの思いはどうだっただろうか。
 どのように対峙して、どう戦えばいいのか。考えたことくらいはあるはずだ。
「その気持ちは心の中に残っているらしいの。たとえ君達が勝ってきたとしても、初対面や向き合ったときに抱いた感情は嘘じゃないでしょ?」
 今回、混沌領域ではその気持ちが形を成して襲い掛かってくる。
 そんな厄介な場所で悪魔が暴れまわっているのだと語り、禰々子は皆に協力を願った。

「君達が混沌領域に入ると、アリスという名の悪魔が現れるわ。だけど君達には、アリスの姿が『かつての強敵』だと感じた相手として見えるの」
 姿は勿論、声や言動まで強敵そのもの。
 敵の姿が今までの戦争の有力敵に見える者もいるだろう。
 或いは自分の手で決着を付けた宿敵か。または武道の師匠や、在りし日の父やきょうだいの姿に見える者もいるかもしれない。
「誰を強敵だと思ったかは人それぞれよね。あたしの場合だと、竜神親分の碎輝か、新し親分のバズリトレンディ。どちらかの姿が見えるのかしら。だって親分達に初めて会ったとき、絶対に勝てないと思ったもの」
 そして、その姿で現れた敵は対象の能力そのままに攻撃を仕掛けてくるという。
 実に奇妙な戦場だが、考え方を変えれば熱い戦いでもある。
「言動も能力も強敵そのものだとしても、正体は悪魔のアリスちゃんだもの。遠慮することはないわ。今回はどーんと胸を借りるつもりで能力を利用させてもらって、かつての強敵と思いっきり戦っちゃいましょ!」
 云わば、此度はドリームマッチのようなもの。
 以前は真正面からぶつかれなかった相手。周囲の状況が複雑だったりギミックがあったりして、まともに戦えなかった相手とも正々堂々と戦えるわけだ。
 考えようによっては大切な強敵、宿敵を勝手に名乗られていることにもなるが――。
「どう考えるかは君次第! だけど、結局は悪魔ちゃんを倒さないといけないんだもの。全力で挑んだもの勝ちってことにならないかしら?」
 悪魔への怒りのままに挑んでもよし。
 強敵本人と全く同じ能力の相手と腕試しを出来ると考えるもよし。雪辱を果たす心算でも、手合わせ感覚で挑むのもいいだろう。
「打ち勝つべきは己の心! カオスの混沌になんて負けない、君の強さを示して!」
 禰々子は明るく告げ、猟兵達に呼び掛けた。
 あの日、あの時。
 嘗ての忘れられない邂逅と戦いを――いま此処で、再び紡ごう。


犬塚ひなこ
 こちらはデビルキングワールド『7thKING WAR』のシナリオです。
 魔界の混沌領域に、かつての強敵の力を憑装した悪魔が現れました。放っておくと更なる混沌が広がります。
 いざ、あのときの勝負をもう一度!

●プレイングボーナス
『かつての強敵に対する恐怖心や敗北感などの感情を描写し、乗り越える』

 あなたが『強敵』だと思った相手が戦場に現れます。
 つまりそれは、己の心に今も残り続けている相手です。存在自体は偽物ではありますが、見た目も能力も口調も全く同じです。
 つまり強敵・ライバルともう一度、真正面から戦えます。
 皆様の思うままに戦ってください。まだ実力的に敵う力を持っていなかったとしても、自分に打ち克つ強い心があれば勝利できます。

 悪魔アリスは皆様が強敵に打ち勝つと弱っていき、最終的に倒れます。
 とくにお書き添えがない場合はリプレイにアリスとしての敵は登場せず、最後にまとめて倒れるシーンを描写する流れとなります。どうしても一言物申したいなど、登場させたい場合はプレイングにアリスのことをお書き添えください。

●強敵について
 戦う相手の『正式名称』
 または、それと判断できる『名前』を必ずプレイングにお書き添えください。

▶️トミーウォーカの公式有力敵(戦争エネミーなど)
▶️あなたが決着を付けた宿敵(個人で登録した宿縁敵)

 上記の場合、戦争イベントや宿敵登場シナリオからデータを参照します。設定されている能力をそのまま使う相手があなたの戦う敵となります。
 個人宿敵さんを指定する場合はご自身の宿敵か、感情を結び合っているお相手の宿敵のみとさせていただきます。大変申し訳ありませんが、トラブルを避けるためご協力お願い致します。

⏩あなたの設定の中の強敵NPC

 師匠や先生、きょうだい。または名もなきモンスター、設定上だけのライバルなど、オブリビオンや宿敵ではない強敵を登場させたい場合。相手の名前や呼び名、あなたとの関係性、どういった戦法を取るか。(拳法家、魔法使い、暗殺者など)
 できれば性別や口調などもプレイングにお書き添えください。

 いずれもデータが参照できない場合や、プレイングに詳しいことが明記されていない場合、採用できないことがございます。どうかご了承頂けると幸いです。
 ぜひぜひ、皆様にとって良い勝負を!
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第1章 ボス戦 『モノマネの悪魔アリス』

POW ●ワンダーミミック
【モノマネ対象の姿】に変身する。変身の度に自身の【モノマネした対象の能力】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD ●クレイジーミミック
【モノマネのレパートリー】を解放し、戦場の敵全員の【エナジー】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ ●マッドネスミミック
自身が【モノマネして】いる間、レベルm半径内の対象全てに【モノマネ対象の能力】によるダメージか【モノマネ対象の能力】による治癒を与え続ける。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アリス・セカンドカラーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


フリル・インレアン
【大天使ブラキエル】
ふええ、ですからあなたは服を着てください。
それにしても、何で私のかつての強敵がブラキエルさん何ですか?
ふえ?私が弱すぎるから実力基準だと多すぎて選べなかったって、そうなんですかアヒルさん?
それじゃあ、ブラキエルさんは何基準で選ばれたんですか?
今、まさに負けてるって、こんな攻撃に勝てる女の子はいませんって。
ふええ、アヒルさん勝てなくていいのかって、これは勝てなくてもいいですよ。
ふえ?私が負けたらこの世界はどうなってもいいのかって、それはよくないですけど。
せめて、内職の魔法でブラキエルさんの花を増やしますから、それで少しは隠してください。


●思春期少女の成長
 デビルキングワールド内、カオスの混沌領域。
 その名の通り、カオスフィールドと呼ぶに相応良い力が此処には巡っている。
 オウガ・フォーミュラ『大天使ブラキエル』。
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)の前に現れたのは、一糸まとわぬ姿の青年だった。
「ふええ、ブラキエルさんですか?」
「我ら猟書家、求むるは「識」なれど、武と殺戮を躊躇いはせぬ」
 フリルが思わず問いかけると、聞き覚えのある声が響く。
 猟書家として現れた彼は既に撃破された者だ。しかし、フリルが彼へ抱いていた感情によって過去の幻影とも呼べる者が再現されていった。
「我が友、書架の王の為。今一度、戦おう」
「ですからあなたは服を着てください」
 先程から視線をそらしているフリルは両手で顔を覆っている。とはいっても、周囲の様子が見えやすいようにある程度は指の隙間から見ているのだが――。
 行くぞ、と言葉にしたブラキエルが力を紡ぐ。
 大天使の光輪から破壊の光が放たれたことで、フリルは急いで駆けた。光が当たらない方向に走ったフリルの頭の上にはアヒルさんが乗っている。
「それにしても、何で私のかつての強敵がブラキエルさんなんですか?」
 フリルは疑問を覚えていた。
 確かに相手は強敵だが、因縁の相手かと言われると少し違う。
 すると、アヒルさんがグワっと鳴いて説明する。
「ふえ? 私が何にでも弱すぎるから実力基準だと多すぎて選べなかったって……」
 アヒルさん曰く、フリルにとっては誰であっても強敵。
 もしかすればザンギャバス大帝や、アルダワ魔王戦争で戦った魔王などが現れていた可能性もある。されど今回はブラキエルだった。
「それじゃあ、ブラキエルさんは何の基準で選ばれたんですか?」
 光を避けていくフリルはまだ首を傾げている。
 その際にちらりとブラキエルを見遣ったフリルだったが、やはり直視できない。
 絶対物質ブラキオンや大天使の光輪も厄介ではあるのだが、年頃の少女にとっては青年の裸体を見つめることの方が難しいだろう。
「今、まさに負けてるって……こんな攻撃に勝てる女の子はいませんって――」
 確かにそうだ。
 フリルは納得してしまったことを少し悔やむ。
 そうしているとアヒルさんがフリルを焚き付けてきた。アヒルさんにとってこれは少女への声援代わりでもある。
「ふええ……。勝てなくていいのかって、これは勝てなくてもいいですよ」
 フリルは悩んでいた。
 しかし、アヒルさんはこちらが負ければ世界が揺らぐのだと語る。
「ふえ? この世界はどうなってもいいのかって、それはよくないですけど……」
 暫し考え、意を決したフリルユーベルコードを巡らせた、
 ――発動、地道にコツコツと作る内職の魔法。
 解き放ったのは魔法で作った造花の数々。フリルにとっての勝利とはブラキエルの精悍な肢体を直視しなくて済むようにすること。
「ブラキエルさん、この花を受け取ってください。それで少しは隠してください」
 空を舞う花は瞬く間にブラキエルを包み込む。その間、何処かから知らない少女の声が響いてきた。
「よかった……! ちょっとこれじゃ戦い辛かったのよね」
「ふえ?」
 それがモノマネ悪魔のアリスの声だった。そのことにフリルが気付いたとき、花がふわりと舞って散った。既に其処にブラキエルの姿はなく――。
「ふぇ……これで勝利なのでしょうか?」
 アリス自身が逃げたのだということをフリルが知るのはもう暫し後になる。
 こうして、或る意味でまたひとつフリルが成長した。帽子の上で得意気に胸を張っているアヒルさんは、それを面白がりつつも喜んでいた。
 
大成功 🔵🔵🔵

パティ・チャン
■WIZ
かつての強敵=(バトルオブフラワーズの)ウインドゼファー
前は速さに対応し、身を守る事のみ考えすぎて、痛み分け(というよりも、何とか見逃してもらった格好に)

今度は負けるワケにはいきません!([迷彩、オーラ防御]発動させて、守りを固める)

身を守るのは最小限に、速さには速さで対抗です!(UC発動)
[2回攻撃、なぎ払い、カウンター]をフォースセイバーに乗せて、UCによる速さで対抗します!

(敵の竜巻が来る!と感じ、思わず身構えて風に対抗すべく身構える)
……おかしいですね。まるで速さが足りていない??

いくつもの世界を乗り越えた今なら!
(トドメを刺すべく剣を振るう)

※アドリブ、連携共に歓迎


●革命の西風
 バトルオブフラワーズ。
 それは猟兵として挑んだ大きな戦いのひとつ。キマイラフューチャーでの出来事を思い返していたパティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)の眼前に立っているのは、あの戦で刃を交えた相手。
 スピード怪人と呼ばれし者、『ウインドゼファー』。
「――私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!」
 止める訳には、いかないから。
 懐かしいとも感じる声を紡いだ相手を見据え、パティはフォースセイバーを構えた。
「こちらも、今度は負けるワケにはいきません!」
 パティが抱く、過去への後悔めいた思いがウインドゼファーを此処に呼んだ。今回はそのように語っても過言ではないだろう。
 何故なら、以前の戦いは勝利ではなく痛み分けだったからだ。
 速さに対応して身を守ることのみを考えすぎた。パティにとって、あの戦いは何とか見逃してもらったという印象だ。
 車輪剣を構え、素早く駆けたウインドゼファーはまさに疾風。
 パティはとっさに周囲に身を紛らせ、己の周囲にオーラを巡らせた。守りを固めると同時に、身を守るのは最小限に留めるつもりだ。
 ソード・オブ・ダイアモード。
 あの日にも間近で見た攻撃がパティを穿とうと迫る。
 一瞬にも満たない時間の最中。
 パティの胸裏には、ウインドゼファーと交わした時間が蘇っていた。
 過去の記憶、崇高な理想。
 革命に殉じた或る少女の話に彼女を重ねた。誰よりも速くなりたい。風のように、と願った怪人はいつかの何処かの世界で散った思いを受け継いでいるのだろうか。
 その答えは今もわからない。
 だが、真実がどうあろうともパティの意思は揺らがなかった。
 あの日の強敵と戦い、勝利する。
 今のパティの心を満たしているのはあくなき未来への挑戦だ。過去を乗り越え、更なる先を目指すためにはゼファーを超えなくてはいけない。
「速さには速さで対抗です!」
 ――written in the stars……。
 真っ直ぐな眼差しをゼファーに向けながら、発動したのは星のさだめ。
 騎士としての完全武装姿に変身したパティは翅を広げた。身体が小さくとも、心に抱く思いの大きさでは負けていない。
 眩い光を纏った剣を振り上げ、パティはウインドゼファーに向かう。
 透き通った妖精の翅が薄く煌めいた。
「吹き飛びなさい……!」
 対するウインドゼファーはあの日と同じ言葉を発する。飛ばされはしまいとしてパティは力を込めた。
 全力の思いと自分の力をフォースセイバーに乗せて、風よりも疾く翔ける。車輪剣と光の刃が交えられ、鋭い連撃が互いに叩き込まれていった。
 その間、嗤う竜巻は激しく迸っていく。
(――来る!)
 風に対抗すべくパティは思わず身構えたが、ふとした違和感を覚える。あのときに感じた畏怖めいた感覚がなかった。
「……おかしいですね。まるで速さが足りていない??」
「私達の――いえ、私の理想のためにッ!」
 ウインドゼファーは尚も竜巻を起こし、高速回転モードとしたタイヤを駆動させる。しかし今のパティにはその動きが手にとるようにわかった。
 一度、戦った相手であるからだろうか。否、このように感じる理由はひとつ。
 銀河帝国攻略戦を経て、バトルオブフラワーズへ。
 エンパイアウォーにアースクライシス2019にアルダワ魔王戦争。大祓百鬼夜行にアポカリプス・ランページ、殲神封神大戦。此度の7thKING WAR。
 これまでに幾つもの戦や、世界の危機に挑んできたパティは確実に強くなっていた。
「いくつもの世界を乗り越えた今なら!」
 パティはトドメを刺すべく、翅を大きく広げる。
 そして、次の瞬間。
 振るわれた刃はウインドゼファーを鋭く貫き、光を散らしていく。パティが刃を腰に収めたとき、彼女の姿は跡形もなく消えていた。
「やっと、乗り越えられました」
 嘗ての強さを宿した敵を見送ったパティは、そっと瞼を閉じる。
 小さく笑んだその表情は、とても晴れやかなものだった。
 
大成功 🔵🔵🔵

鈴乃宮・影華


強敵:フェンリル(シルバーレイン世界のボス敵)

かつて銀誓館にいた頃、50メートルの巨躯に生身で挑んだ恐怖を覚えています
あの頃は30人がかりでギリギリようやくだったのを……今回は私一人ときたもんだ

あぁいえ、頼もしい助っ人がいるんでした
「『レガリア・ベルクス』起動――E.N.M.A、よろしく」
『オッケー、ぶっ飛ばしちゃいましょう♪』
キャバリアとそのAI、新たな力で魔狼を討つ!

『蓑蟲』に自動で撃ちまくってもらいつつ『フルメン』投擲で攻撃
デカい爪牙等は『影光』を纏い飛翔して回避
後は『影蘭』引き抜いて指定UC起動です
「大丈夫――この程度の絶望なんて、もう飛び越えて行きますから」


●魔狼と祈光
 ――フェンリル。
 その存在は神話でも語られている巨大な狼の名。
 かつての銀誓館学園でも戦い続けていた鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)にとって、その名は恐怖そのものでもあった。
 全長五十メートルに至る巨躯。
 その爪や牙、体躯から繰り出される恐ろしい攻撃。
 当時、少女だった影華はフェンリルに畏怖を抱いた。あの日に生身でフェンリルに挑んだときの恐怖は今もよく覚えている。
 最終的に勝利を収めたとしても、あのときに感じた思いは変わらなかった。
 しかし、今はあの日から十年以上の歳月が過ぎている。
 人工島の戦いやヨーロッパ人狼戦線でも召喚されていたフェンリル。彼らは今も魔狼儀式によって、オブリビオンとして現代に出現することもあるが――。
 少女は大人になり、様々なことが変化した。
「あの頃は三十人がかりでギリギリようやくだったのを、今回は私一人ときたもんだ」
 まだ幼さを宿していた当時の自分だったら、この状況をどう思ったのだろう。たった一人で挑むことを拒んだだろうか。それとも、静かに自分を奮い立たせるのか。
 青春時代を思い返した影華は、不思議と気分が高揚していくことを感じていた。何故なら、過去の戦いに今の自分が挑めるからだ。
 それに、と口にした影華は首を横に振った。
「あぁ、いえ……一人ではありませんね。頼もしい助っ人がいるんでした」
 影華の傍らに控えているのは異界の白い機神、祈光風神機。
 特殊な魔法金属で造られた亡国の皇専用機である。
 その名は――。
「『レガリア・ベルクス』起動――E.N.M.A、よろしく」
『オッケー、ぶっ飛ばしちゃいましょう♪』
 影華が呼び掛けた直後、キャバリアに宿るAIが返答した。
 一人と一機が見据えるのは巨大な影。たとえどれほどの巨躯を誇ろうとも、今の彼女達の的ではないはずだ。フェンリルの能力が当時そのままであったとしても、影華はそれを凌ぐほどの力を手に入れている。
 影光の超過駆動による亜光速推進によって、一気にフェンリルの間合いまで飛び込めば、鋭い視線が影華に向けられた。
 されど、その程度で怯むわけにはいかない。
「私は、新たな力で魔狼を討つ!」
 影華が宣言すると同時に、フェンリルが鋭く吠えた。
 どうやら口腔内でエネルギーを巡らせ、魔炎光線を放つ狙いらしい。影華は衝撃に備えながら、蓑蟲に自動で銃弾を撃ちまくってもらっていく。異形の浮遊自走砲が敵を迎え撃つ中、彼女はフルメンの名を冠する雷属性の斧を投擲した。
 その間にもフェンリルの爪が迫る。
 影光を纏い、即座に飛翔した影華は攻撃を一気に回避していった。
「後は全力で打ち込むだけです」
 影蘭を引き抜いた影華はレガリア・ベルクスと共に重力波を解き放つ。一撃目はフェンリルの胸を穿ち、二撃目は体勢を崩させる為の足払いとして繰り出された。
 よろめいたフェンリルも何とか躱そうとするが、影華が狙うのは四撃分の連撃だ。
「――大丈夫」
 高く飛んだ影華の元から黒燐蟲が飛び立つ。
 其処から繰り出される三撃目の重力波がフェンリルを捉えたかと思うと、即座に四撃目が鋭く解き放たれた。
 敵を強く見据えた影華の中には、もう恐怖など宿っていない。
「この程度の絶望なんて、もう飛び越えて行きますから」
 そして――。
 フェンリルの赫眼から光が消え、魔狼の咆哮は虚しく消えていった。
 影光やレガリア・ベルクスに視線を巡らせた影華は双眸を細める。かつての強敵を乗り越えた影華の瞳には、巡りゆく未来の景色が映っていた。
 混沌を打ち砕き、更なる先へ。
 さぁ、今一度。死と隣り合わせの青春は、此処からも続いていく。
 
大成功 🔵🔵🔵

鹿村・トーゴ

郷の指令を差し置いてもオレが狙うのはエンパイアの猟書家『今川義元』
羅刹根絶─
その執念に心底戦くし
弓矢の威も恐いが
退ける為なら何度でも斃す

でも幾度か殺し合うと
羅刹のサガかね?
因縁無しで遣り合えたら
…イヤそれは無理か
1対1では差し違えるどころか一矢報いるのがせいぜいだもんなァ

敢えて力を抜いて敵の瞬発に備え【野生の勘/視力/聞き耳】身体能力をフルに活用
当たれば即死とギリギリでも躱し
手裏剣を地面スレスレに数枚連続で【投擲】相手に避けさせた隙に至近距離へ
膝か両足裏で蹴り倒し
UCの威力を手にしたクナイに乗せ突き出し畳み掛ける【串刺し/暗殺】
弓で撲たれ蹴りを喰らうのは【激痛耐性】で凌ぎ倒れるまで離れず攻激


●羅刹の矜持
 クルセイダーの名の元に、超・魔軍転生を執行する者。
 サムライエンパイアに現れた猟書家、その名は『今川義元』。
 未だ彼の世界で侵略を続ける彼を思い、強い闘志を燃やしているのは鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)だ。
 郷の指令を差し置いても、トーゴが狙うべき相手。それこそが――。
「……今川義元」
 トーゴは目の前に現れた敵を見据え、名前を呟いた。デビルキングワールドである此処に現れた者は本物ではなく、憑装された紛い物だと解っている。
 憑装軍を扱う相手が憑装されているというのも、何かの皮肉だろうか。
 しかし、トーゴは相手が悪魔であることを受け入れていた。悪魔達は頑丈で強い。その事実が彼の内に宿る戦いへの欲を強めている。
「やってやろうじゃねーか」
 本物の今川義元が掲げるのは羅刹の里の根絶。
 その執念を初めて感じ取ったときは、心底戦いた。それでもトーゴはこれまで幾度も今川義元と戦い、勝利を収めてきている。
 されど、当初に感じた思いは今も胸の奥に残り続けていた。
「死して蘇りし我は、名実共に最強の弓取りとなった! さぁ、くらうがよい!」
 羅刹よ、と呼び掛けてきた今川義元の眼差しは鋭い。
 だが、それゆえにトーゴは己を奮い立たせた。この戦いに挑むということは、己の心とも戦うことと同義。仕留めの矢に鷹の目、飛鳥墜とし。様々な弓矢の威も恐いが、トーゴは決して怯まないと決めた。
「簡単にくらうと思ったら大間違いだ」
 退ける為なら何度でも斃す。
 相手のユーベルコードが未来より放たれ、過去に着弾するものだとしても幾度でも跳ね除けてやればいい。刹那に矢が放たれ、トーゴの角を掠めた。
 折られたかと思ったぜ、と以前と同じ言葉を告げ返したトーゴは反撃に入る。
 猟書家として、猟兵として。幾度か殺し合うと解ってくることもあった。そして、戦いを望む者として湧き上がってくる思いもある。
「羅刹のサガかね? 因縁無しで遣り合えたら、って……イヤそれは無理か」
 途中まで言葉を紡ぎ、トーゴは頭を振った。
 一対一では差し違えるどころか一矢報いるのがせいぜい。そのことは自分でも理解しているが、考えるだけならば許されることだ。
「間違いなく強敵だもんなァ」
 気を引き締めたトーゴは、敢えて力を抜いていく。そうすることによって敵の瞬発に備えるためだ。持てる限りの力を尽くし、身体能力を最大限に活用すれば勝機も見えるはず。
 おそらく今川義元の弓に当たれば即死級の痛みを負う。
 ギリギリでも躱して反撃の機を窺うことが重要だ。トーゴは聡く立ち回り、手裏剣を地面スレスレに投擲した。
「その程度で勝てると思っているのか」
 連続で投げた手裏剣が相手に避けられることは予想済みだ。トーゴの狙いは別にある。今川義元が足元から顔を上げたとき、トーゴは既に至近距離に迫っていた。
「隙あり!」
 狙うは膝。全力で相手を蹴り倒しに向かった彼は、ユーベルコードを発動する。
 ――視ずの鳥其の嘴は此の指す先に。
 穿て、大鉄嘴。
 ツルハシ状の空圧による一撃が今川義元を貫く。それと同時に地形が破壊され、細かな石や砂が周囲に舞い上がった。手にしたクナイに更なる力を乗せたトーゴは一気に畳み掛ける。弓で強く撲たれ、蹴りを喰らってもなお止まらなかった。
 いつかまた、本物と戦うためにも。
「貴様ら羅刹の骸を積み上げ、引導を渡してやるわ!」
「オレは斃されない。――必ず、勝つ」
 痛みを堪えたトーゴは今川義元に食らいつく勢いで連撃を重ねた。土埃が舞い、激しい攻防の音が辺りに響き渡る。
 そうして、暫し後。
 其処に立っていたのはトーゴだけだった。今川義元を憑装したアリスが逃走したことで猟書家の姿が消えたのだ。
 拳を握り締めたトーゴは小さく笑む。憑装の敵とはいえど、此処までたったひとりで渡り合うことが出来た。
 これもまた、ひとつの勝利なのだから。
 
大成功 🔵🔵🔵

ロリーナ・シャティ
強敵:プリンセス・エメラルド
該当シナリオID:27610
真の姿:ダイヤモンドのクリスタリアン。ストレートヘア、髪も瞳も無色透明に

イーナの中から怖いのが出ると大体気を失って、よく思い出せなくなる
覚えててもあべこべだったりもする
でも今、重くて熱くて痛くて物凄い衝撃を、体が思い出してる
「エメラル、ド…」
また、強かったって思ったこの人と戦う…
「…そう、だね」
ラパンスをぎゅっと握る
あの日持ってなかったもの、持ってきたよ
「イーナ、確かに宝石だったよ。でも、貴女のお友達にはならない」
どんなイーナでも友達って言ってくれた真っ白なあの子の為
イーナはもっと強くなる
「もう、怖くない!」(体の震えが消えてUC発動)


●エメラルドとダイヤモンド
 ――猟書家『プリンセス・エメラルド』。
 クリスタリアンの最長老たる彼女は、その名が表すように翠玉の身体を持つ。
 美しき輝きの中に秘められていた野望は、スペースシップワールドの帝国継承規約を使って皇位を継ぐこと。今もプリンセス・エメラルドと猟書家達の侵略はまだ続いている。
 そして、ロリーナ・シャティ(偽りのエルシー・f21339)の中にも、彼女と戦ったことで抱いた恐怖と疑問が渦巻いていた。
「わかん、ない……わかりたくなかった、けど……」
 ロリーナはアリスラビリンスでの邂逅と戦闘を思い返し、掌を強く握り締める。
 あの日、本物のプリンセス・エメラルドはこう言っていた。

『その覚悟、同じクリスタリアンとして、そしてクリスタリアンの最長老である、このプリンセス・エメラルドが――』

『貴方も懐かしき故郷の気配を残す、その下には宝石の――』

 その後の言葉はロリーナの叫びで掻き消された。
 それからはよく思い出せない。
「イーナの中から怖いのが出ると、大体気を失って……それで……」
「あら、そんなに怯えてどうしましたか?」
 すると目の前のプリンセス・エメラルドが語りかけてくる。この領域に訪れていた悪魔が憑装したものだと分かっているが、どうしても心が揺らいでしまう。
 強い恐怖を感じた後は記憶がばらばらになって、たとえ覚えていてもあべこべになってしまっている。しかし、今のロリーナはあのときの出来事をはっきりと思い出していた。
 重くて熱くて、痛くて。
 何よりも物凄い衝撃を、身体が記憶していたからだ。
「エメラル、ド……」
「私達の計画を邪魔するというのならば、消し去ってさしあげましょう」
 また、強かったと感じた相手と戦うことになる。
 相手がサイキックエナジーを巡らせ始めたことに気付き、ロリーナは覚悟を決めた。消し去られたりはしない。思いを強く持ったロリーナはこくりと頷く。
「……そう、だね」
 ロリーナはラパンスと名付けられた宝石製の兎耳槍をぎゅっと握った。目の前には宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号が出現している。
 されどロリーナは怯まず、敵を真っ直ぐに見つめた。身体は震え続けているが、心の奥にはひとつの強い思いがある。
 ――あの日は持っていなかったものを、持ってきたから。
「イーナ、確かに宝石だったよ。でも、貴女のお友達にはならない」
 あの頃と比べて、ロリーナは心身共に成長している。怯えるだけで真実を見つめられなかった過去から全てを認める未来に進んだ。
 戦うのは、そして先に進もうと思えるのは、どんな自分でも友達だと言ってくれた真っ白なあの子のため。ずっと怖がったままではいられない。
 そのために、もっと強くなる。
「もう、怖くない!」
 ロリーナが宣言した瞬間、それまでの身体の震えが消えた。
 思いは光へと変わり、ロリーナの身を包み込む。宝石めいた輝きが静かに消えていった刹那、其処からダイヤモンドのクリスタリアンが現れた。
 透き通った髪は真っ直ぐに風に流れ、瞳も無色透明に変わっている。
「イーナが……イーナがやるんだ!」
 絶対に友達を守る。友達の力になりたい。
 ロリーナが抱く正義の思いはラパンスに宿り、鋭い一閃がプリンセス・エメラルド号ごと敵の身を貫いた。その瞬間、悪魔に憑装されていた翠玉の力が剥がれ落ちる。
 たった一撃。されど、その一撃はロリーナが過去を打ち破った証だ。
 プリンセス・エメラルドの姿は消えてしまったが、ダイヤモンドの輝きは此処で煌めき続けている。何よりも固く、どんな宝石よりも美しい。
 金剛の意志は、確かに其処に在った。
 
大成功 🔵🔵🔵

蘭・七結


戦いたくない相手、なんて
浮かべようと思えば幾らでも湧き上がる
中でも、一番に対峙を厭うのは

――嗚呼、そう
やはり『あなた』が御座すのね

浮かび上がる情景が彼の場所で無くとも
軽やかな鈴音も
溢される微笑も
猩々緋の双眸も
すべて、その総てが“あの時”と同じ

数多の縁を結び、時には解いて
あの日から今までを歩んできた
憂いも嘆きも、後悔も、無いわ
けれど――無意識の内に、望んでいたのね

冷たい雪片が誘うのは望夢の奥底
愛おしいものを蒐集した、わたしの匣庭
しあわせだけに鎖された場所

眞白い羽衣に捕らわれてしまえば
帰りたいと云う感情が剥奪される
わたしは、このまま


……、あかい耀きが視える
この光を齎すのは、ラン……?


対峙する人物
『あなた』を模した、眸
わたしの“あか”を宿していたと云うのに
その彩には、あの時のぬくもりが無い
その手には、あの想いのかたちが無い

――あなたは、ちがう
逝かないでと乞うた『あなた』では無い

ありがとう、ラン
確と目が覚めたわ
この夢も、眞白を纏う偽のかたちにも
総てにお別れをしましょう

あなたは此処に在るのだから


●眞白き祝愛
 ――願いを。希いを。そして、望みを。

 声が聞こえる。
 忘れもしない。忘れたくはない、あの声が。

 ――ひとの願望を。果てなき夢を、叶えよう。

 凛と鈴を鳴らすような幽かな笑い声。
 はやくおいでと誘うような言の葉は絶えず、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)の耳に届き続けている。
 戦いたくない相手。もう二度と手にかけたくはない対象。
 そんなもの、浮かべようと思えば幾らでも湧き上がってくる。そのなかでも一番、いっとうに対峙を厭う者の声が響き続けていた。
 俯いていた七結は顔をあげ、目の前に現れた人影を瞳に映す。
「――嗚呼、そう。やはり『あなた』が御座すのね」
 僅かに声が震えていた。
 乗り越え、共に歩んでいるはずの神性の姿が其処にあった。眞白の髪に猩々緋の瞳。違和を感じさせる色彩もまた、あのときのままだ。
 水母めいた羽衣が揺らめき、彼の神の双眸が薄く細められる。
 此処は崩壊を続ける混沌領域。
 浮かび上がる情景が彼の場所ではなくとも、七結の意識はあの日に引き戻されている。彼の存在を知ったとき、ひとの願いを叶える為に動いているのだと分かったとき。感じた思いがありありと蘇ってくる。
 軽やかな鈴音が近付いてきていた。
「――おいで」
 あの声色で呼ばれたことで、七結は一歩を踏み出しそうになる。
 溢される微笑も、猩々緋の双眸も、すべて。その総てが、あの時と同じ。
 彼の神は相手が無意識下で望む世界を視せてくれる。食らった望夢を報いとして巡らせることも出来る。そのことは七結もよく知っており、心が軋んだ。
 数多の縁を結び、時には解いた。
 別れを経て、更なる別離を重ね、あの日から今までを歩んできた。
「憂いも嘆きも、後悔も、無いわ」
 はっきりと宣言できるが、七結は此処で本当の自分を識る。どれほど拒もうとも、どんなに大丈夫だと言い聞かせようとも、本心では様々なことを願っているのだと。
 此処に現れたのは、その願望の中のひとつ。
「望んでいたのね。……願って、いたのね」
 この邂逅を、再び。
 あなたといられる世界を。あなたを斃さずに、その腕に抱かれる未来を。
 七結と眞白の神の間に、冷たい雪片がひらりと舞う。
 誘うのは望夢の奥底。
 彼の神だけではなく、これまでに辿ってきた道で手にした愛おしいものすべて。それだけを蒐集して飾った、七結の匣庭が此処にある。
 館で過ごす日々。
 繋いだ縁の数だけ増えていく思い出の品。
 ちいさな奇跡を夢見た、ささやかな時間。
 誰も自分を厭わない平穏な世界。
 社であなたと逢う、何よりも大切なひととき。
 其れは、しあわせだけに鎖された場所。七結が憂うことのない完璧な場所だ。
 ひとたび眞白い羽衣に捕らわれてしまえば、これまでの感情が覆われてゆく。帰りたいと云う感情が完全に剥奪されれば、もう二度と戻れなくなる。
 陶酔が齎され、考えが回らなくなってきた。
 彼の神性が宿していた力は、いたずらにひとを苦しめるものではない。真綿で首を絞めるような、否、真綿でそうと包み込んでいくだけの力だ。
 帰らなくては。
 帰れなくなる前に。
 でも、どうして帰らなくてはならないの?
 七結の意識が緩やかにとかされていく。このあたたかさと心地よさ、幸福に包まれていられるならばどうなったっていい。
 何より、傍には眞白の世界が広がっているから。
「わたしは、このまま――……」
 七結が目を閉じようとしたとき、薄い視界に何かが横切った。はたとした七結は閉じかけていた瞼をひらいていく。
 揺らめく色彩。散るのは幽かなひかりの欠片。
(……、あかい耀き)
 視えたものを追うように視線を巡らせる。再び七結の前に訪れた耀きは幾度も翅を揺らして呼び掛けているように見えた。
 この光を齎すのは。幽かに聞こえている、この声は。
『――なゆ』
「ラン……?」
 幽世蝶から響いた声を聞き、七結はその名を呼んだ。その言の葉は対峙する眞白の影から紡がれたのではない。すぐ傍で羽撃く蝶々から響いたものだ。
「どうかした?」
 眞白の幻影が此方を見つめてくる。
 しかし、七結はもう解っていた。この相手は『あなた』を模しただけのもの。
 その眸の色がすべてを物語っている。最初に感じた違和が正解だったというのに、模倣された神の力が七結を惑わせた。しかしそのことは、あのときの神が七結をやさしい嘘の世界に誘う力を持っていたということ。
 されど、そうはならなかった。
「わたしの“あか”を宿していたと云うのに。その彩には――」
 あの時のぬくもりが無い。
 その手には、あの想いのかたちが無い。
「あなたは、ちがう」
 七結は静かに宣言した。頬に寄り添い、肩に止まった幽世蝶が一度だけ翅を揺らす。
 此の影は、逝かないでと乞うた『あなた』では無い。
 悪魔が模する眞白の君を別物だと断じた七結は、指さきで蝶にそっと触れた。
「ありがとう、ラン。確と目が覚めたわ」
 一番傍にいてくれるのが、あなただから。迷いも惑いも乗り越えて、もう一度真っ直ぐに歩んでいけると解っている。
「この夢も、眞白を纏う偽のかたちにも――総てにお別れをしましょう」
 あなたは此処に在るのだから。

『きみをあいする それが全て』

 あの日に聞き届けた想いを、これからも抱き続ける。
 金糸雀の眸を向けた七結は黒鍵の刃を振り上げた。眞白の双翼が揺れ、夢幻に揺蕩う羽衣が緩やかに広がっていく。
 そして、少女と蝶は共に紡ぐ。
 果てなき未来を希う、眞白の望夢を――。
 
大成功 🔵🔵🔵

朱赫七・カムイ
⛩迎櫻


……サヨは私のところにおいで
甘えるなら私に甘えて私と手合わせすればいい。
そうだろう!
神斬はイザナとしててくれ
私がサヨとするんだ!神斬ばかり狡い!
ほら、リルも言ってやっておくれ

む…そうだね
もう二度と戦いたくは無い相手と云えば──【桜獄大蛇・愛呪】だろう
サヨへの愛で踏ん張っていた
もう必死だ
義母上はさすが、手強く…サヨを愛し守る神として絶対に認められたいと思った
彼女らに認められなければ私は決して神にはなれない、と
ホムラも頑張ってくれたんだ

再びこうしてこの巨体を見上げることとなろうとは
此処に彼女らの御魂はない
これは私達の畏怖の証だ
サヨの手に触れて、言い聞かせる

あの時は皆がいた
今ここには私ときみと、君達と
もう一度立ち向かおう
廻り咲いた私達の心を咲かせて

──祝縁ノ廻

リルの歌に踊るよう
サヨの桜と重ねるように刀振り上げ薙ぎ払う
離さない
どんな苦しみも呪いも厄災も全部を受け止めて超えていこう
私は禍津神なのだから

呪は祝へ
絶望は希望へ
哀を愛へ咲かせていこう
望む路はこの手で切り拓く

桜は連なり咲く華だからね


リル・ルリ
🐟迎櫻


ヨル、櫻ってあんなに師匠に甘えんぼだったんだね
何だかんだ甘えてもらえて嬉しそうな神斬とヤキモチ妬くカムイとイザナ……一体何をするというんだ、カムイ
ふふー!平和!
でもここまで来るのも色々あったんだ
観察しているのはとても楽しいけれど
そろそろ僕らの怖い心と向き合わなきゃ

もう二度とというなら……僕も桜獄大蛇・愛呪かな
僕自身は首の中にいたけれど……人の想いとは、愛憎とはこんなに大きく育つのだと、強いものなんだと感じた
動けなくて溺れそうに苦しい憎悪の海
思い出すと尾鰭が震える
まだ全部の首が顕現してなかったなんて

ホムラがヨルの前で、カムイを助けた時の再現をしているのが微笑ましい
こうして今話せるのも超えてきたからこそだ

櫻のかあさん達はもう愛呪の中にはいない
この呪の元はきっと僕らの中に潜んでいるものなんだ

僕もちゃんと伝えなきゃな

歌うのは「望春の歌」

これからもずっと
悲しんで苦しんで悩んで愛され愛して生きていく
畏怖と共に
あらゆるifから、今を選んだんだ

満開に咲かせよう

えたーなる、らぶ、とりにてぃだね!


誘名・櫻宵
🌸迎櫻


強敵……私はもう師匠とは戦いたくないわ
手合わせは懐かしくて楽しかったし万全な時にまたして欲しいけれど
すかさず甘えにいけばイザナがサッと割り込んでくる
むぅーおじいちゃんったらいつも邪魔するんだから!
カムに慰めてもらうもん

カムイは兎も角としてリルにとっての強敵も母上── 桜獄大蛇・愛呪なの?
嬉しいようなどこか複雑な気持ちね
あの時のぼろぼろのカムイの姿を思うと胸が痛むわね…

桜焔と共に暴れるのは八首の大蛇
こうして、外から姿をみやれば…私が育ててしまった過ちと、呪と母が重ねた罪と、諸々が伸し掛るようだけど
大丈夫よ、カムイ
母上達は師……おじい様達が黄泉に送ってくださったのだもの
だから今此処に現れているのは、畏怖の姿そのもの──ちゃんと、私達はどんな呪も痛みも苦しみだって乗り越えていけるんだって、今一度示してみせましょう!

私はひとりではない
愛し、愛されている──今もこうしてこれからも生きていく
愛を咲かせて哀を喰らって
決意を示すように術と力を放つ

喰華

哀しい呪はもう無いわ
祝いの桜を咲かせましょ!


●絢爛の櫻
 悪魔王遊戯を越え、進むのは更なる先。
 カオスの混沌領域と呼ばれる場所に訪れた一行は、其々の思いを巡らせていた。
「強敵……私はもう師匠とは戦いたくないわ」
 誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)は今回の敵について考えている。此処では嘗ての強敵が憑装されて立ち塞がるという。
 手合わせは懐かしくて楽しかった。万全な時にまた稽古はして欲しいけれど、抱いた感情が恐怖なのかと問われると違う。
「師匠はもう呪縛から解き放たれているものね」
「噫、サヨの敵として立ちはだかることは絶対にないよ」
「うふふ。師匠はずーっと私の味方ね」
「いいや、私の味方だ」
「あら、イザナ。ヤキモチを焼いているの?」
「……別に」
 櫻宵はすかさず神斬に甘えにいく。するとイザナが間に割り込んできたので、櫻宵はその顔を覗き込もうとした。表情を見られまいと神斬の後ろに隠れるイザナを櫻宵が追う。
「サヨ、イザナ、危ないよ」
 二人が周りをくるくると回るものだから、神斬は少し慌てていた。
 そんな様子を眺めていたのはリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)だ。
「ヨル、櫻ってあんなに師匠に甘えんぼだったんだね」
「きゅきゅい」
 リルが語りかけると、ヨルがこくこくと頷く。名実共に孫と祖父らしくなった二人の様子は微笑ましかった。
 その間、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)は静かな思いを燃やしていた。
「……サヨは私のところにおいで」
「カムイったら、どうしたの?」
 櫻宵の腕を優しく引き寄せたカムイの表情は複雑そうだ。仲睦まじい姿を見られるのは嬉しいが、伴侶が神斬に甘えていたことが受け入れられないらしい。
「甘えるなら私に甘えて私と手合わせすればいい」
「そうだ」
「そうだろう、イザナ!」
 カムイの心情を察したイザナは、櫻宵から神斬を奪い返すように間に挟まった。
「むぅーおじいちゃんったらいつも邪魔するんだから! カムに慰めてもらうもん」
「……サヨ」
「神斬はイザナとしていてくれ。私がサヨとするんだ!」
「カムイ、なかなかに我儘になったじゃないか」
 神斬はイザナの方を抱きながら、カムイの方に向かった櫻宵を見遣る。カムイからの対抗心のような感情を受け止めた神斬は優しい目をしていた。
 対するカムイは少しばかり憤っている様子。
「仕方がないだろう。神斬ばかり狡い! ほら、リルも言ってやっておくれ」
「カムイとイザナ……一体何をするというんだ」
「きゅ?」
 リルに話が振られたが、この事態を収めるのは難しそうだ。ヨルも首を傾げている。
 何だかんだ甘えてもらえて嬉しそうな神斬とヤキモチを妬くイザナ。櫻宵を甘えさせたくないカムイ。巡りを経て此処まで至った四人を見ていると、リルの心も和む。
「ふふー! 平和!」
 ここまで来るまでにも色々とあった結果が今の状況。
 いつまでも皆を見ていたいが、混沌領域は動き出している。リルは気を引き締め、愛しい者達をそっと呼んだ。
「そろそろ僕らの怖い心と向き合わなきゃね」
「む……そうだね」
 リルの声を受け、カムイも気持ちを切り替える。
 崩壊を続ける混沌領域に一歩を踏み出せば、怪しい雰囲気を感じた。カムイは刀の柄に手を添えながら強敵と呼べる相手を思う。
「もう二度と戦いたくは無い相手と云えば――かの桜獄大蛇だろう」
「僕も愛呪かな」
「カムイは兎も角としてリルにとっての強敵も母上なの?」
 三人が共通して思い浮かべたのは、桜獄大蛇・愛呪。
 幼い頃から櫻宵に宿らされていた呪であり、母の愛の証でもあったものが儀式を経て呪神へと成った存在だ。
「あのときはサヨへの愛で踏ん張っていたからね。もう必死だったよ」
「僕自身は首の中にいたけれど……人の想いとは、愛憎とはこんなに大きく育つのだと、強いものなんだと感じたからだよ」
「……そう。嬉しいようなどこか複雑な気持ちね」
 二人の返答を聞き、櫻宵は胸を押さえる。
 ぼろぼろのカムイの姿を思うと胸が痛み、懸命に歌ったリルの姿には心を打たれた。
 しかし、乗り越えたからこそ今がある。
「義母上はさすが、手強く……サヨを愛し守る神として絶対に認められたいと思った。彼女らに認められなければ私は決して神にはなれない、と」
「ちゅん!」
「そうだね、ホムラも頑張ってくれたんだ」
 カムイの肩に乗っている雛がすっくと立った。翼をぱたぱた動かしているのは、あの日に真の姿になったことを示しているからだろう。
 ホムラがヨルの前で、カムイを助けた時の再現をしている姿は微笑ましい。
 こうして今、話せているのも皆で超えてきたからこそ。リルもヨルが活躍してくれたことを思い返し、静かに笑む。
「でも、僕達が勝てたのは完全な愛呪じゃなかった」
「そうね……」
 神妙に呟いたリルに頷き、櫻宵は瞼を閉じた。愛呪の首は全部で八つ。あの日に顕現したのは七つだった。そっと目を伏せたリルは運命の巡りを感じている。
 動けなくて溺れそうに苦しい憎悪の海。
 思い出すと今も尾鰭が震えてしまう。ヨルを抱きしめたリルは気を強く持つ。
「まだ全部の首が顕現してなかったなんて……」
「噫、そして――此度は其れが顕現するんだね」
「ええ、その通り」
 リルが顔を上げ、カムイと櫻宵も頭上に視線を向けた。其処には桜色の焔が舞い始めており、その奥には八首を持つ巨大な蛇神が出現している。
 カムイはゆっくりと喰桜を抜いた。
「再びこうしてこの巨体を見上げることとなろうとは――」
 されど、此処に彼女らの御魂はない。
 儀式に組み込まれ、囚われていた魂は神斬とイザナが黄泉へと導いた。それゆえにこれは自分達の畏怖が作り出したものだ。
 リルも相手の様子を確かめ、身構え直す。
「やっぱり櫻のかあさん達はもう愛呪の中にはいないんだね」
「こうして、外から姿をみやれば……私が育ててしまった過ちと、呪と母が重ねた罪と、諸々が伸し掛るようだわ」
 桜焔と共に暴れはじめた八首の大蛇は牙を剥いていた。
 櫻宵の表情が一瞬だけ曇ったことに気付き、カムイは手を伸ばす。櫻宵の手に触れたカムイは穏やかに語りかけていた。
「あの時は皆がいた。今ここには私ときみと、君達がいる」
 もう一度、立ち向かおう。
 廻り咲いた心を咲かせていけば、恐怖も畏怖も受け入れて進めるはず。
「大丈夫よ、カムイ」
 櫻宵は伴侶の優しさと思いを感じ取り、双眸を緩めた。昔のままの櫻宵であったならば再び現れた呪に恐怖したままだったかもしれない。
 だが、今の櫻宵には全く別の思いが宿っている。
「母上達は師……おじい様達が黄泉に送ってくださったのだもの。だから今此処に現れているのは、畏怖の姿そのもの」
「櫻……ふふ、本当に強くなったね!」
「リルやカムイ達のおかげよ。ちゃんと、私達はどんな呪も痛みも苦しみだって乗り越えていけるんだって、今一度示してみせましょう!」
 櫻宵が語る思いを聞いたリルは本当に嬉しそうに笑った。過去に畏怖を抱いたことは変わらないが、今の自分達は変わっていける。
 静かに傍に佇む神斬とイザナは敢えて何も言わず、首肯していた。
 櫻宵は愛しい者達を見つめてから、八首の桜獄大蛇を振り仰ぐ。
「私はひとりではない」
 愛し、愛されていることを知っている。今もこうして、これからも生きていく。
 愛を咲かせて、哀を喰らって、共に歩むと決めたから。
「やろうか、サヨ」
「いくよ、櫻! 僕もちゃんと伝えるよ」
「ええ! どんな相手にだって負けないわ」
 決意を示すように、カムイと櫻宵とリルが其々の術と力を放つ。
 ――喰華。
 ――祝縁ノ廻。
 ――望春の歌。
 廻り、巡らせるのは想いの証。
 荒れ狂う桜焔を宥めるように響くリルの歌。柔く優しく暖かく、抱くような蕩ける声を向けられた愛呪に泡と桜の花吹雪が舞っていく。
 花の波に乗るかの如く、先んじて駆けたのはカムイだ。
 神の慈悲によって約されるのは、あらゆる厄を解く美しい祝桜。泡と桜の花嵐が混沌領域に広がっていく中、櫻宵が真っ直ぐな眼差しを愛呪に向けた。
「……想愛絢爛に戀ひ綴る」
 それは蠱惑の龍眼に映し込んだものを桜獄へと導く力。
 桜花として咲かせる呪を扱えるのは櫻宵も同じ。ずっと共に育ってきた呪は今、言祝ぎとなって櫻宵の裡に在る。
 激しく巡る桜焔を受け止め、時には躱す。
 その最中で空の愛呪は、嘗ての言葉を紡ぎはじめた。
「――しにたいの?」
 問いかけに対して、首を横に振ったリルが唇をひらく。
「ううん、僕はいきるよ」
 これからもずっと。悲しんで苦しんで悩んで愛されて、愛して生きていく。
 畏怖と共に。
 あらゆるifから、今を選んだ。
 リルの宣言が凛と響き渡った後、愛呪は次にカムイへと視線を向けた。
「――おなかがすいたの。食べていい?」
「幾らでも喰らわれよう。但し、私が其れを許すのはサヨ本人だけだ」
 カムイはリルの歌に乗って踊るように、櫻宵の桜と重ねるが如く刀を振り上げ、桜焔を鋭く薙ぎ払っていく。
 離さない。
 どんな苦しみも呪いも、厄災も。全部を受け止めて超えていくと決めた。
 何故なら、己は禍津神なのだから。
 カムイの一太刀は大蛇の首を狙って振り下ろされた。此の空っぽな愛呪は、もしもの世界に現れていたかもしれない存在だ。
 櫻宵が苦しみに負け、意思のない呪として永遠の生を手に入れたもの。
 華蛇すらも呪に取り込まれてしまったもの。
 それが八首の桜獄大蛇なのだろう。されど、この未来は訪れなかった。ひとつずつの出来事が大きく絡み合い、これまでの路を作ったからこそ今がある。
 櫻宵が屠桜を構え、踏み込もうとしたとき。
「――いきていたいの?」
 愛呪から櫻宵へ、問いが投げ掛けられた。それはこれまでの質問とは若干温度が違っているような気がする。あなたはどうしたいの、と問いかけられている気がした。
「そうよ、生きていくの」
 櫻宵は真正面から答え、背の桜翼を大きく広げる。
 桜が満開に咲き、浄華の花片がひらりと舞い上がった。ただ願うだけではなく、叶えていくために刃を振るい、未来を目指す。
 この姿こそが今の自分そのものだと示し、櫻宵は強く言い放った。
「哀しい呪はもう無いわ。祝いの桜を咲かせましょ!」
「呪は祝へ。絶望は希望へ。哀を愛へ咲かせていこう」
「そうさ、満開に咲かせよう」
 導かれた縁。紡いだ絆。重ねた想い。
 すべてが繋がり、軌跡となり――奇跡とも呼べる今がある。
 望む路は、この手で切り拓く。
 櫻宵に続いてカムイが刃を振り翳し、リルが詩を紡いでいった。其処へイザナと神斬が放つ光の桜が巡り、ホムラとヨルの声が響き渡る。
「よくぞ言い切った」
「私達の可愛い子は、立派に成長しているんだね」
「ちゅちゅん!」
「きゅ!」
(――兄様)
 最後にふわりと小さな声が聞こえた気がした。美珠の意思だと感じた櫻宵は桜獄大蛇の幻影へと刃を振り下ろした。そして、決着の時が訪れる。
「さぁ、美しき桜にお成りなさい」
「桜は連なり咲く華だからね」
「えたーなる、らぶ、とりにてぃだ!」
 剣閃と歌。桜と泡沫。
 美しい軌跡を描きながら迸った力は桜獄大蛇の影を貫き、優しく包み込んでいった。

 櫻を迎え、桜をおくる。
 花舞う景色の中で彼らは微笑みあった。
 苦難と試練を乗り越えた先にあるのは、きっと――幸福な巡りだから。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

テラ・ウィンディア
…例えこれが偽りだとしても
再び戦う事が出来るのか

純粋に嬉しい

強敵
黒騎士アンヘル(公式有力敵
使うUCは「消えざる過去の刃」

…初めましてだな
おれはテラ・ウィンディア
あんたに挑む者だ
【属性攻撃・オーラ防御】
炎のオーラを展開
【戦闘知識】
己の過去の記憶
他の依頼での戦闘記録
それらから攻撃の癖と空間に残した斬撃の把握
対POW
【見切り・第六感・残像・空中機動】
超高速で飛び回り捕捉をさせない
また発生する過去の刃を己の心に刻む!

…此処からは純粋な勝負だ
そう…今のおれはあんたに「これ」で挑みたい!

消えざる過去の痛み発動!
【二回攻撃・切断・早業・串刺し・重量攻撃】
三呪剣展開
太刀と剣による連続斬撃

アンヘルの過去の刃にも過去の痛みをぶつけ
即ち
今ある空間全てを使った斬撃戦闘!

自分に打ち勝つ強い心?
不要だ!
アンヘルは強い
このおれを唯一完膚なきまで打ち倒した騎士だ
精神論に頼る気はない!

そんなのおれ自身が許せない!

だからこそ
おれは全ての技を尽くし挑む!


体当たりでぶつかり
斬撃濃度の高い空間へ巻き込み
己ごと巻き込み!

斬斬斬斬!


●悔恨から繋がる未来
「――我らの天敵たる、猟兵よ」
 鋭い声音が響き、強い眼差しが向けられている。
 その言葉を紡いだ相手は銀河帝国の二大巨頭が片翼、『黒騎士アンヘル』。
 テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は目の前に現れた者を見据え返し、漆黒の瞳を細める。その双眸に映っているのは、似た色を宿す漆黒の鎧。
 赤黒いオーラを纏うその姿は何処から見ても嘗ての強敵に間違いない。されど、テラは相手が憑装されたものだと解っている。
「……たとえこれが偽りだとしても――」
 再び、黒騎士アンヘルと戦うことが出来る。それもただの偽物ではなく、あの日、あの時と同じ力を宿した相手だ。
 敵に対しての過去の畏怖はあるが、テラにとっては純粋に嬉しいことでもある。
 過去喰らいの三呪剣、記憶されし傷痕。
 そして、消えざる過去の刃。
 アンヘルが使った力はどれも強力であり、嘗ては苦戦を強いられた。
「初めましてだな」
「初めまして? どうした、掛かってこないのか」
 身構えながら挨拶をしたテラに対し、アンヘルは片目を眇める。するとテラは礼儀を忘れたくはないのだと語り、己の名を告げた。
「おれはテラ・ウィンディア。あんたに挑む者だ」
「そうか。覚えておくことだけはしてやる。この戦いが終わるまではな」
 アンヘルは紅の瞳を一度だけ瞬かせ、たったそれだけの言葉を紡ぐ。刹那、テラに向けて鋭い風圧が襲い掛かった。
 それは、虚空から現れた空間に刻まれた斬撃が形を成したものだ。
 あの日と同じだ。
 そのように感じたテラは即座に炎のオーラを展開させた。横一線の斬撃を急降下で掻い潜るだけではなく、オーラを巡らせることで周囲の斬撃を弾き返す。
 思い返すのは己の過去の記憶。
 そして、あの後に調べた他の戦闘での記録の数々だ。
 あのときは回避しきったと錯覚した。無限に迫りくるとまで感じた斬撃が次々と襲い掛かってきたが、テラは素早く上に飛ぶ。
 あのように誘導される気はない。
 攻撃の癖と空間に残した斬撃の把握を行ったテラは、超高速で飛び回っていく。
 出来る限りを見切り、第六感で何かを察したならばすぐに横に回り込む。残像を纏い、空中機動の力を限界まで発動させたテラは真剣だ。
 絶対に自分を捕捉させない。
 もう負けない。必ず勝機を掴み、黒騎士に反撃を叩き込むと決めていた。
(まだ、まだだ……。再び発生する過去の刃を己の心に刻む!)
 何度、幾度も斬撃が巡る。
 それでもテラの意思は折れなかった。やがて幾つかの刃が身体を刻み、痛みが駆け巡っていた。だが、それでもテラは動き続ける。
「此処からは純粋な勝負だ」
「どういう意味だ?」
「そう……今のおれはあんたに『これ』で挑みたい!」
 テラはずっと悔恨を抱いていた。
 それはユーベルコードへと至るほどの思いであり、このために磨いてきた牙と言っても過言ではないほどのもの。
 発動――消えざる過去の痛み。
「この力は……」
 アンヘルは僅かに身動いだ。
 忘れるものか。あの出来事を忘れ去ることなど決して出来ない。過去の刃はテラが抱く志に大きな変化を与えていた。
 常に自分自身を超えていかねばならないことは、あの頃から承知していた。
 そうでなければ姉を超えられないからだ。
 されど、あの日からテラの心にはそれ以上の思いが積み重なっていった。
 素早い二回攻撃は斬撃すら切断していき、テラの持ち前の早業によって重量を込めた串刺し攻撃が放たれていく。
 三呪剣、展開。
 太刀と剣による連続撃を放ったテラは、飛び交う斬撃だけではなくアンヘルにも刃を差し向けていった。過去の刃にも過去の痛みをぶつけていけば、いつかは相殺できる。
 即ち、今ある空間全てを使った斬撃戦闘がこれだ。
 たとえ相手の実力に至っていなくとも、心で打ち勝てば此度の敵は倒せる。
 しかし、テラには或る思いがあった。
(自分に打ち勝つ強い心? そんなもの……)
 ――不要だ!
 テラはよくよく知っている。黒騎士アンヘルは強い。何故なら、テラを唯一完膚なきまで打ち倒した騎士だからだ。
 それゆえに心で勝つという精神論に頼る気はなかった。それはテラの決意の形と在り方であり、自分自身に課した制約のようなものでもある。
「真正面から勝つ方法を取らないなんて、そんなのおれ自身が許せない!」
 だからこそテラは死力を尽くした。
 アンヘルとテラの視線が交錯する。その間にも斬撃同士がぶつかりあっては消滅していき、また新たな斬撃が生み出されていく。
「おれは全ての技を尽くして挑む!」
「くっ……!」
 一瞬の隙を突いたテラはアンヘルに体当たりでぶつかり、斬撃濃度の高い空間へ巻き込もうとしていく。己ごと傷付いたって構わない。
 それほどの思いがテラを強くしており、何にも負けない意思となっている。
 斬斬斬斬! 斬斬斬斬斬斬斬斬、斬!
 弾ける衝撃、響き続ける痛み。
 目の前が暗くなっても、テラは攻撃の手を止めず――。
 それから暫し後。
 今も崩壊を続ける混沌領域に立っていたのは、テラだけだった。
「勝った、のか……?」
 黒騎士アンヘルのオーラや斬撃、悪魔の気配すら辺りにはない。
 過去の幻影は猛攻によって斬り払われたのだろう。傷だらけになったテラはその場に座り込み、生きていることを確かめるように深呼吸をする。
 そこに浮かんでいた表情は、不思議と晴れやかな笑顔だった。


●悪魔の呟き
 混沌領域の片隅にはボロボロになって倒れている悪魔がいた。
 モノマネの悪魔としてアリスは自信を持っており、最初こそ勝利を確信していたのだが、今はもう息も絶え絶えだ。
「最期まで……こうやって逃げるのが、せいいっぱいだった……」
 アリスは自分の身体が消滅していくことを感じていた。
 しかし、どうしてかアリスは猟兵達に称賛の思いを抱いているようだ。
「でも、負けて当たり前よね。あいつら、あんなに物凄い強敵と戦って生き残ってきた、ヒトたちなんだもの……」
 せめて、褒めてあげてから逃げればよかった。
 呟いたアリスは目を閉じ、そして――少女悪魔の姿は跡形もなく消えた。
 
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2022年05月15日
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