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銀河帝国攻略戦⑮~宇宙に浮かぶ白き城

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●グリモアベースにて
「おう、諸君。貴様らのための、楽しい戦争の時間だ。準備はいいか?」
 ブリーフィングルームにて、グリモア猟兵のひとり、ベモリゼ・テモワン(アイアン・アーミー・f00062)は、作戦に参加する猟兵たちに、その概要を配布する。作戦宙域が、目の前の3Dマップに表示される。

「今回、お前たちに相手してもらうのは、『白城』艦隊となる」
 その名を聞いて、ニヤリと笑う猟兵もいた。
 それはもちろん、武者震いに近い。
 なにしろ敵の艦隊は、かつてその精強さを謳われた大艦隊なのだ。『白城』艦隊は、その士気と練度の高さで知られ、今まさに『解放軍』艦隊を苦しめている。間違いなく、強敵なのだ。すでに戦闘が開始していくらかの時間が経過している。『解放軍』艦隊は、幾たびかの戦闘を経て、その練度は格段の向上が見られるものの相手が悪い。練度の差は歴然だった。戦いが長引けば、先に崩れるのは『解放軍』艦隊となるのは間違いない。

「だが、俺たちに打つ手がないわけではない。もちろん、俺たち猟兵の力のことだ」
 ベモリゼはニヤリと笑う。常識外の強力な艦隊に対抗できるのは、同じく常識外の力のみ。すなわち、猟兵の投入によって、この戦局を打破しようとしていることは、目の前のグリモア猟兵の顔からも明らかだ。
「今回、貴様らには一隻の宇宙戦艦を目標としてもらう」
 戦艦『ウェスパシアヌス』、その艦影がホログラムとなって示された。彼女に座乗するのは、帝国軍の優秀な前線指揮官であるティトゥス提督であるという。この『帝国宇宙戦艦』の撃破を行うことで、その戦線を打ち破ることができるというのだ。もちろんこの艦を一隻倒せばそれで終わりということにはならない。しかし、その一助となることは間違いなかった。

「お前たちには、宇宙空間を敵の艦砲射撃を掻い潜って接近し、ユーベルコードを叩きこみ、この『ウェスパシアヌス』を撃沈してほしい。『白城』艦隊は『戦艦しかいない』艦隊だ。精鋭揃いとはいえ、まともな軍隊の組み方じゃない。なにしろデカブツしかいないんだからな。つけ入る隙は大いにあるだろう。ああもちろん、具体的なやり方は任せる」

 重要な点は二つ。
 『接近すること』
 『接近したあとで、撃沈すること』
 それらを工夫することが、重要になるだろう。舞台となるのは宇宙空間だ。相応の工夫が必要となることに疑いはない。戦艦の一撃は、戦闘機や巡洋戦艦など及ばない強烈なものだ。十分な作戦が必要となる。

「なに、相手が誰だろうとお前たちならできる。そう信じているよ」
 ベモリゼの、似合わない眼鏡が光る。
 彼は目の前の猟兵たちの勝利を疑ってはいなかった。


隰桑
 はじめまして、あるいはいつもお世話になっております。
 隰桑(しゅうそう)です。
 宇宙戦争、そろそろ山場でしょうか。
 SF大好きな隰桑による、戦争シナリオの第三弾です。

 今回は宇宙戦艦です。結局宇宙戦、空中戦。
 皆さんの、創意工夫あるプレイングをお待ちしております。

 アドリブが多く、猟兵同士を連携させることがあります。
 NGあれば、御記載くださいませ。
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦 『帝国宇宙戦艦』

POW   :    フルバースト・コズミック
【全砲一斉射撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    デストロイレーザー
【10秒間のエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【主砲からのレーザー砲撃】で攻撃する。
WIZ   :    インペリアル・マカブル
【自身の稼働可能時間】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【帝国式鏖殺形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑15
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●戦艦『ウェスパシアヌス』艦橋
「白メッキから連絡はあったか」
「いえ、後の――分艦隊の指揮は、提督に任せるとのことで」
「そりゃ、結構なことだ」
 戦術ホログラムに浮かび上がった戦域図を眺めながら、禿頭のヒューマンが至極どうでもよさそうに頭を掻いた。ただし、戦意に不足はないようで、被りなおした帽子の奥の瞳には獰猛さだけが残っている。彼の名はティトゥス提督。『白騎士ディアブロ』から『白城艦隊』の分艦隊のひとつを任された男。『ウェスパシアヌス』に座乗し、そこに指揮所を構えて一帯の宙域の防衛を任務としている。スペースシップワールド出身である彼をスペースノイドと呼ぶべきかは定義上悩ましい問題が残る。スペースノイドとは、狭義に「宇宙船の中で生まれ育った人類」を指すのだ。ティトゥス提督は、宇宙船生まれではなかった。ちなみに、白メッキとは彼らにとって愛しい上官である『白騎士ディアブロ』へ贈られた愛称である。もちろん本人非公認。そう呼ばれてることすら知らないかもしれない。
「しかし、いいんですか、このまま防衛にあたって。『解放軍』に、縦深防御の要領で、より深く進攻させて戦線を広げさせ、浸透突破するなり、その後背を突くなり、やりようはいくらでもあるはずです」
 一人の参謀が尋ねる。『白城艦隊』の強みは、艦種の統一による高速戦闘であるとされている。本来このような身動きの取れない狭い地点の防衛戦闘に投入されるべき部隊ではないのだ。それを暗に言っていた。
「上申したさ、とっくにな。だが却下された。そして、命令された。なら、俺たちは俺たちにできることをやるしかない」
 ティトゥス提督は、ゆっくりと首を振る。命令とはそういうものだった。
「それで、ただじっと待つんです?」
「貴様、俺を莫迦だと言いたいのか。命令には従うが、策を練る。要は、『この宙域で』『防衛戦闘』をすればいいわけだ」
 睨むように提督は質問した参謀に目線を向ける。
「機動防御ですか、それとも敵の要所を叩ききますか」
 間に割り込むように、元気の良い別の参謀が尋ねる。
「勘所を抑えるには、猟兵の存在が問題となる。奴ら、的が小さく散開している。散開してるやつらを、一人二人を叩いたからはい終わりとはならない。なら、『解放軍』の相手をしつつ奴らがまとまって出てくるのを叩くしかない」
 提督が鼻をかく。参謀団は、その言葉からたちまちに作戦をたて出す。
「とすれば、猟兵の攻勢正面を確認次第、艦隊を向かわせると」
「捜索艦隊がいればなぁ!」
「ないものねだりをしても仕方あるまい」
「俺たちには直掩部隊すらおらんのだぞ」
「それがないものねだりだと言っとるんだ」
「戦艦で叩くしかあるまいよ」
「猟兵ども、スターライダーや鎧装騎兵のような空中戦を得意とする連中の数が少ない。今までも何隻もやられた、おそらくデブリをかいくぐってくるはずだ」
「とすれば、外からやってくるよりは――解放軍艦隊の間から湧き出てくると考えられる、か。狙いがつけやすくなったな」
「なら、偵察任務を『解放軍』の相手する連中に任せればいい。やつらに見つけさせるのが確実だし、捜索任務よりはだいぶ楽だろうよ。ええ?」
「――まとめると、我ら分艦隊は、猟兵登場まで戦力を温存。猟兵が現れたらただちに急行し、その侵攻をくじく――作戦としては、そんなところでどうでしょうか」
 禿頭の提督は、参謀団の言葉に頷いてみせる。それは、承認と同義。提督の命令で、彼らはただちに散らばって、僚艦へとその任務を伝えにいった。

 そのしばらく後に、艦隊戦が始まった。
シャルロット・クリスティア
まったく……大艦巨砲主義、ここに極まれり、ですね……!
確かに、あの火力と装甲は脅威に違いありません。
生半可な遮蔽では、それごと撃ち抜かれて終わりですね……。

ですが、つけ入る隙はあります。
あの巨体ですから、遠くからでもよく見えますね。私の『視力』ならなおの事。主砲の射角を避けるのは容易です。
それに、宇宙では空気抵抗も重力も無い。質量弾ならば『射線さえ正しければ射程無限』と言うことです。
あとは、極力デブリ等の『地形を利用』し『目立たない』よう、ギリギリ狙える位置まで接近。
迅雷弾にて超長距離の『スナイピング』を敢行。
アウトレンジからの『早業』にて機銃座を破壊、接近する仲間への『援護射撃』とします!


パル・オールドシェル
白城艦隊、戦艦ウェスパシアヌス。目標を確認しました。
戦術は簡単です。
常に僕を狙う射線の先に敵艦を置くように。
迂回しても、時間が掛かっても構わない。
味方撃ちを厭わないというなら、それも解放軍戦友諸君の攻撃の一助となるでしょう。
それを嫌がるならば、攻撃の密度は下げざるを得ないはず。
機動力で戦艦が機動兵器に勝る道理はありません。
肉薄し、大型対艦誘導弾および巡航ミサイルの斉射で打撃します。
艦橋構造物を叩き、司令系統を破壊できれば最良ですが、
困難ならば次点で推進機。
それも難しいならば、可能な限り多くの砲を狙って攻撃します。
大艦巨砲の時代は終わります。これからは長距離誘導弾の時代が来ると教育してあげます。


レッグ・ワート
旗艦指揮下の白城との交戦から解放軍を逃がす。ウェスパシアヌスに喧嘩売る機会とか正直返したいけどな。

先ずは宇宙バイクの操縦や逃げ足活かして回避と接近。とはいえ手数優先なんで危ない仲間がいたら立直し手伝うけども。各艦砲撃の間隔や相手がしてくる軌道予測縫う宙域フル活用の若干奇天烈な動きになっても平気なら、希望の位置まで誰か送ろうか。大丈夫そうなら最悪無敵城塞もあるし近づいて囮やる。

特に攻撃手段無いと思われて手抜かれたら多少腹立つ訳で。仲間狙ってたりチャージ中の手近な砲身内を複製出す座標にして、空洞に合わせて鉄骨なり外殻なり修理用小道具なり選んで奥へみっちり詰め込む。整備士には悪いが不具合といこうぜ。


セリオス・アリス
アドリブ歓迎

獲物がでかけりゃ狙いやすくていいってな
とはいえ近づかなきゃいけねえわけだろ
先手必勝
ビームを撃つ前に潰してやるよ
水の魔力の温度を下げでかめの氷の塊を飛ばす
まああれっぽっちじゃ効かねえだろうが…
【望みを叶える呪い歌】を歌って斬撃を氷にぶつけ
風で宙を駆けるだけじゃねえ
砕けた氷を足場に勢いをつけて先制攻撃
跳ねる弾丸のように宙を跳びまわり一撃二撃と勢いをのせた攻撃を叩きつけ手数で勝負
主砲の死角を狙い

くるっと上空で回転し
ここまで近寄ってきた敵にでかい図体でどう対処するつもりか、楽しみではあるが
待ってやるほど優しくもないんでな!
さあさっさとカタをつけようぜ!
勢いを殺さずとどめの一撃を叩き込む!


ゼルド・シュバイツァー
……ここで止まっては彼らの苦しみは終わらないのです。参ります!!

素顔を晒し、光刃を太陽の如き輝きに変え【戒解:烈日の型】で参ります。
光学迷彩マントの【迷彩】で視認対象から外れながら
宙域にあるであろうデブリを利用しつつ
『陽炎の疾駆』に【騎乗】して駆け抜けます。
音は気づかれるでしょうが、10秒の充填が必要ならば寸前で回避できるかと。
緊急時の防御は直撃を回避しつつ【オーラ防御】にて。

戦艦に肉迫出来ましたら焔放つ光刃でなるべく砲台などを削ぎ落とそうかと……。
無理ならば素直に装甲を斬ります。

「貴殿達の忠義は百も承知です!ですが此方も……」
「ただでは退けないのですよ!!!!」


アレキサンドラ・ミルキーウェイ
※アドリブ連携歓迎

機動力と破壊力にはそれなりに自信がある方です
ここは一つ、実力を見せるとしましょう

まずは敵戦艦を観察し、脆い部位や破壊する事で有利になれる部位の【情報収集】
多分レーダーとかその辺を壊せばいいですかね

そして、本格戦闘の前に【災厄を招く欲望】を発動
邪封鎖と封印錠による喰命剣の【封印を解き】、魔改印で自分の情報を書き換える事で戦闘特化の状態へ移行するのです
敵への接近はテレポートで行いましょう
一度で辿りつけない場合は周りの小惑星などを盾にするように移動して被弾を抑える感じで
敵へ辿り着いた後は【生命力吸収】と超怪力を乗せた【捨て身の一撃】を、目星を付けた部位へひたすらに打ちこんでやるです


ヴォルフガング・ディーツェ
【アドリブ歓迎】
【SPD】
エル(f01792)と
ふふ、確かに。すこーしばかり固そうなパフェだけど、崩してやった時の爽快感は同じくらい得られそうだ

【ブラックドッグ】を召喚、エルと共に【騎乗】し接近するとしよう
可能な限り敵の攻撃は鞭の【武器受け】で軌道を逸らしたり相殺を試みよう
ありがと、頼りにしているよ可愛い騎士様!

接近したら雷の【属性攻撃】を纏わせた爪の【2回攻撃】で【傷口を抉る】
持参品の「トート」「ヘルメス」を使用、破損した構造体から【ハッキング】を仕掛け分子構造を弄っての崩壊、制御権の奪取も併行
完全成功には難しくとも、エルの花道になれば上等、ってね?

折角だから開けた穴は綺麗に整えておこっか!


エレアリーゼ・ローエンシュタイン
【アドリブ歓迎】
ヴォルフ(f09192)と

やっぱり大きなものほど、崩す瞬間が一番楽しいと思うの
パフェとおんなじ! そう思わない?

ヴォルフのわんこにエルも一緒に乗せて貰って接近
【ランブル・キャンディ】で召喚したケーンで周囲を守って
躱し切れない砲撃は迎撃を
大丈夫、エルが邪魔させないんだから!

可能な限りの至近距離から【捨て身の一撃】
ヴォルフみたいな機械の効率的な壊し方は分からないけど
だから、エルに出来るのは単純な破壊
刻印の解放と【花開くマリス】で魔力をブースト
足りなければ【属性攻撃】も合わせて
再召喚したケーン、100本。一点集中で叩き付けるわ
ふふっ…あははっ! さぁ、どれだけ大きな穴が開くかしら!


ネヴィス・マキヤーベイ
アドリブ等歓迎

死して神になった奴だ
死人の介入はよくないな?

操縦ダッシュ空中戦を駆使して砲火を掻い潜る
機械に置き換えたこの体
生身が音を上げる程度のGで負けてあげない

自分が片弦の砲火を釘付けにします!
後の無茶は押し付けますよ!

集中砲火で火力を高めてランチャーからミサイルを降らし砲座を潰す

もっと来い!もっと見ろ!倒すべき敵は此処だぞ!
加速で振り切る
機銃で落とす
全身の推進機と全身を振る動きで踊るように回避を
西風ではなく暴風となり陽動を続ける

重要区画へUC
芝居は終わりだ。こりゃアンタとは別の奴の言葉だったか
コクピットが赤く点滅しながら砲身を向け
巨大な柱にみえる荷電粒子束を

死んだこと、忘れちゃいけないよ


ミハエラ・ジェシンスカ
城攻めか
いくら我が剣が邪道といえど、剣で相手取るには些か荷が重い……等とも言ってられんな
ウォーマシン、ミハエラ・ジェシンスカ。勇気ある戦友たちに続く

念動力で周辺のデブリを引き寄せつつ(地形の利用)可能な限り接敵
その後は……ああ。近頃の連戦で随分と機能も復旧した
今の私ならば「アレ」が使えよう
邪道とすら言えぬ馬鹿げた剣だが、披露させて貰おう

フォースセイバー、全段直結。超過駆動(オーバードライブ)!
目標、『白城』艦隊戦艦ウェスパシアヌス!
対艦魔剣を使う! 友軍機は下がれ!
フォースレーダーで友軍の味方を把握しつつ、巻き込まぬ軌跡を描いて対艦魔剣と化した長大なフォースセイバーを振るう!


マルコ・トリガー
フーン、宇宙戦艦が相手か。
さすがに1人でどうこう出来る相手じゃないし、正面からやり合うのも分が悪い。他の猟兵と協力したいね。

宇宙空間で【忍び足】は変な話だけど【目立たない】ように接近する必要があるね。この身ひとつを隠せるデブリがあるならそれに隠れて近付こう。
射線に入らないように適宜移動して気をつけたいね。

ボク、戦艦とかあんまり詳しくないんだよね。
接近して張り付いたら弱い部分を狙って雷の精霊の力を借りて【属性攻撃】【破壊工作】からの【クイックドロウ】で【零距離射撃】を撃ち込みたいんだけど、何処を狙ったものか。
状況を見極めながら、たまには【第六感】にでも頼ってみようかな。

アドリブ連携歓迎



●残骸が浮かぶ宙域、潜む黒鳥
「うし、そろそろ作戦の時間だ」
 端麗な顔だちが、歪む。ともすれば野卑とすら受け取られそうなそれは、獲物を前にした猛獣の顔である。セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)は吊り上がった青い瞳で、眼下に浮かぶ艦隊を見つめた。すでに『白城艦隊』と『解放軍』の戦闘が始まって幾らか時間が経っていた。あたりは両艦隊の残骸で満ちていた。そんな鋼鉄の板のひとつの上に乗って、黒い鳥は傍らの猟兵に目線を向ける。
「戦場はデブリで満ちていて、それらを遮蔽をして利用、接近すればいい」
 そういう話だったねと青髪の猟兵が応じる。マルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)の金の瞳は、相変わらず素っ気ない。しかし、その無表情がすぐに驚きで満ちる。もちろん、悪い意味で。
「――あ?」
 セリオスの目の前には、デブリの塊。それを今まさに、斬り付けようとしていた。
 余談だが、宇宙空間とは真空空間である。液体はエントロピーを増大させる形で宇宙空間に散逸し、ボイル・シャルルの法則に従って一気に蒸発してしまう。蒸発したのちに、それが宇宙空間の極低温たるマイナス270.3℃で凝結(凍り付く)して、結晶の雲となる。それは殴るには全く不向きであった。液体を凍らせて殴るというアイデアは、宇宙空間においては通用しない。なにせセリオスが実際に試して雲のような氷を作ったのだから、間違いない! しかし、それで終わらない。むしろそんな理屈なんて知るかと言いそうなのが猟兵、セリオス・アリスだろう。ダメだったなら別の案で代替するだけだ。氷である必要はないんだからな。彼の良い意味での大雑把さの表れと言えようか。とりあえず余談終わり。
「――それ、どうするの」
 いやいや待て待てと言いたげな、抗議の顔でマルコはセリオスに尋ねる。嫌な予感がする。足に力が入る。言うまでもない、逃げる準備だ。
「先手必勝ってやつだ。ビームを撃つ前に潰してやる――よっ!」
 マルコの耳に響きだした魔力を含んだ美麗な歌声が遠ざかっていく。急に動いたので、赤い紐がちぎれんばかりに、黒猫の根付が激しく揺れる。R103――艦籍番号だろうか?――と書かれた鉄板を踏んだ。身動きひとつしない白いクローン兵の死体を左手で乱暴にどけて、右手に短銃を握ったまま、和装の青年は飛び跳ねた。
「あの――脳筋馬鹿!」
 ヤドリガミの少年の声は、彼が稼いだ真空に遮られて歌声の許には届かなかった。
 セリオスの斬り付けたデブリが、ばらばらとなって戦艦のひとつへと足場を作る。
 ――が。

「提督、出てきました」
「分艦隊、砲門開け。射撃は統制射撃。戦闘運動。撃ち方はじめ」
「提督より、各艦。戦闘運動。撃ち方はじめ」
「許可が出たぞ。撃ち方はじめ!」
 『白城艦隊』は精鋭、そこに所属する帝国戦艦は無力で無抵抗な逃げ惑う獣ではない。デブリで道を作れば、それは良い的。狙い撃ちにしようというもの。僅かなデブリは残るものの、とても足場としてそのまま利用できるものではない。艦隊の火力とは、それほどのものだった。氷であったとしても結果は同じだっただろう。
 しかし、これはセリオスの失策とは言えない。相手は精鋭艦隊であり、その統制された砲火は苛烈である。猟兵が先んじて身をさらしていた場合、その命が失われていてもおかしくはなかった。むしろ、幸運な結果だったといえるかもしれない。

「先制攻撃――は、無理だな、こりゃ」
 たちまち慌てて周囲のデブリに隠れるセリオス。見当もつけず撃ちつける砲弾の雨に、身動きがとれない。黒い長髪をくしゃくしゃと掻く。隣のデブリが吹き飛ばされて、デブリに含まれていたのだろう電子部品がぱらぱらと顔にあたった。だが、あきらめなければ勝機はあるはず。猟犬が草むらに伏せて獲物を待つように、黒い猟兵はじっとその機会を窺っている。必ず来るはずだった。

●可憐なる鷹の瞳/戦を支える一兵卒
「まったく……大艦巨砲主義、ここに極まれり、ですね……!」
 一斉砲火を見て、愚痴るのは可憐な少女であった。シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)のきっぱりと開かれた青い瞳が、くりくりと動く。その視線の先には、雨のように降り注ぐレーザー・ビーム。巨砲を集めて火力を集中すれば勝てる、単純明快な理論。だが、この場では唯一無二の正解のように見えた。遮蔽に使おうとしていたデブリが敵艦隊のレーザー砲で焼き払われていく。高熱で、手に持つデブリが歪むのが見えた。拳銃型装置からアンカーを射出し、隣のデブリに移る。ルーンの刻まれたライフルの銃身の金属部が、レーザーの光を反射してきらきらと光る。
「とにかく、一度射点を変えないと――」
「――なら、俺の出番だな」
 宇宙バイクから、フランクな機械声が聞こえた。
「レグさんじゃないですか。あ、運んでくれるんです?」
 自分の予知下で戦ったこともある、見覚えのある兵器を、正義感が強く真面目な彼女は忘れていなかった。そして、彼の得意分野も。レッグ・ワート(其は脚・f02517)は自分を忘れていない戦友に、頷いてみせた。もしレグこと奪還支援型3LGに表情ユニットが搭載されていたなら、きっと笑顔が見れただろう。
「お嬢様を運ぶリムジンにしては、いささか乱暴になるけどな」
「問題ありませんよ。戦闘中の乱暴な運転には、慣れてます」
 無骨な兵器は、その理由までは聞かなかった。そこまでプログラミングされていないのか、彼にそういう趣味がないのかは、シャルに判別つかなかった。質問の替わりに青い服の狙撃兵を後ろに乗せて、レグの頭部マシン・アイが光り、マニピュレータがギギと音を立てて宇宙バイクのハンドルを握る力を籠める。宇宙バイクが走り出す。
「主砲がこっちに向いたら、合図します。それまではあたりかまわず目標まで飛ばしてください!」
「頼もしい目だな。いいぜ、任せな」
 進路上のデブリの一つを、装甲に備えた外鎧の刃が切り裂いて、艦隊の上方へバイクが飛んでいく。戦局が変わるまで、もうしばらく。

●騎士の剣は箒星に乗って
「――なるほど、城攻めか」
 目の前の砲火は、圧巻であった。整然と艦首を並んだ戦列は、堅牢な城壁を思わせる。それを見て、いささか威圧的に呟くのは、銀の髪、色黒の肌をした少女。しかし、見る者が見れば、違和感に首をかしげたかもしれない。なるほど、彼女の姿は人間的であったが、機械を隠しきれてはいなかった。ウォーマシンの基礎フレームに、無理やり女性の外殻を被せたような。歪だと誰かが感じたとしても、どこまで否定できるだろうか。ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)の凶相は、まさしく戦場に立つにふさわしい顔だった。
「それも死人の城ね。甦ってまで、現世に介入するのはいただけない」
 それに応えるのは、青い瞳の少女。ミハエラ以上に女性的な丸みを帯びた身体は、男の視線を釘付けにするものに違いない。ただし、その身体はミハエラに近い。彼女は機械混じりのサイボーグであった。J-SAA-601――通称、ゼファーと呼ばれる8mもある装甲服を纏い――いや、搭乗して、その操縦系を軽快に指で操作する。ネヴィス・マキヤーベイ(刃金の箒星・f12565)は、傍らのミハエラにウィンクしてみせる。コクピットごしのウィンクなど見えるはずもなく、ウォーマシンの少女は、ぱちりと瞬きをひとつした。彼女の堅い反応は、目の前の戦況へ向けられる。
「これでは、接近できん。どうしたものか――」
「――接近さえできたら、なんとかなる?」
「なんとかする」
「じゃあ、私が連れていってあげる。生身の人なら耐えられないけど、あなたなら大丈夫でしょ」
「――感謝する。となれば、いくら我が剣が邪道といえど、剣で相手取るには些か荷が重い……等とも言ってられんな」
 ビームが近傍を撫でて、デブリを溶かしていくのを、赤い瞳が見送った。純粋無垢なフォースナイトなら持ちえないだろう、暗赤色の光を放つフォールンセイバーを握る力が強まる。ミハエラはそのままネヴィスに抱えられる形で身を預ける。
「ネヴィス・マキヤーベイ、先陣を切ります!」
 デブリ群から飛び出し、16箇所の推進器のうち、適した方向のものだけを選んで吹かせる。噴炎を大推力となし距離を詰める。その出現を見て、戦艦の火砲が向けられる。ぐいと左足を伸ばし、その推進器を吹かせて急速回避。足を戻し、再び加速。加速しながらも、回転運動を続ければ、正確な狙いなどつけられようはずがない。もちろん、乗り心地は最悪だったろう事も間違いない。帰りのことなど考えない、勇敢なる挙動。なるほど、如何なる外見をしていようと、彼女たちは騎士たるに相応しい心を持っていた。

 とんとん、とネヴィスの腕をミハエラが叩く。
「このあたりで良いの? 迎え、いる?」
「手持ちでなんとかする。ここまで連れてきてもらった上厚かましいが、飛び出す足場にさせてくれ」
「その代わり、ちゃんと成功させてね」
「任せろ。ありがとう、ネヴィス」
 仏頂面の悪人面だと思っていたミハエラの顔が、少しだけ和らいだように見えた。それはきっと、ネヴィスにとって悪いものではなかった。腕につま先を載せ、踵が胸を蹴るような形で、ミハエラが跳躍する。ネヴィスは一瞬だけ、その雄姿を見守る贅沢を自分に許した。鎧装騎兵は推進器を吹かせ、飛び上がる。この戦況で、味方を支援するために行うべきことは? 決まっていた。陽動であります。
「もっと来い! もっと見ろ! 倒すべき敵は此処だぞ!」
 好戦的に笑って、多目的ランチャーを構え、ミサイルを眼下の戦艦に放つ。砲塔を狙ったが、僅かに逸れた。反撃の対宙砲が飛ぶ。隣の艦からも銃弾が飛んでくる。
「サザンカの狙いがまだ甘い――それと、これを回避するのは大変!」
 それはまるで吹きすさぶ暴風のようであった。生身の人間であれば、その機動に耐えられないだろうほどの戦闘機動で、敵艦を翻弄する。まるで踊るような華麗さで、銃弾を銃弾で落とし、ネヴィスは飛び続けていた。
「さあ、そろそろ芝居は十分だろう」
 眼下遠くに、銀の髪が見えた。十分に接近できているように見えた。だから、芝居は終わりだと。コクピットが赤く点滅する。それは、機体からパイロットへ、エネルギーの充填を知らせる合図。
「――あんたらさ、死んだこと、忘れちゃいけないよ」
 ユーベルコード【荷電粒子砲超過駆動】が脈打つ。荷電粒子の流れが、戦艦の足を止めんと放たれる。命中率は、およそ5割といったところ。当たれば重畳。あたらなくても、問題はない。すんでのところで回避されてなお、金髪の少女は余裕の笑みを浮かべていた。目的は果たしている。ネヴィスは単身、十分な時間を稼いだのだ。

「フォースセイバー、全段直結。超過駆動(オーバードライブ)!」

 電波の形で音が飛ぶ。あたりの戦友たちに響くように、警告するように。
「目標、『白城艦隊』――本当なら、旗艦に撃ちたかったが、仕方あるまい!」
 駆動音が鳴る。赤い光が戦場を照らす。デブリのかけら、氷のかけら、戦場のあまねくものを照らす。ミハエラの悪態は、その邪悪な輝きの中に飲み込まれて消える。
「対艦魔剣を使う! 友軍機は下がれ!」
 それは、ユーベルコード【対艦魔剣】の輝き。隠密性を代償に放つ必殺技。その輝きは実に300mを有する。デブリ地帯からでは届かなかった。しかし、今戦艦の眼前にまで迫れば、十分届く。十分に届くのだ。

「おい、なんの光だ。あれ、騎士の方々のセイバーの輝きじゃないか!?」
「馬鹿な! なんで俺たちに向いてるんだ!?」
「艦長、光が襲いかかってきます!」
「見えている! 無駄口叩く暇があるか! 回避、回避! 取り舵全開で回せ!」
 先頭を航行していて、そして最初の犠牲者となったのは、ティトゥス提督麾下分艦隊の戦艦の一隻『オト』であった。ネヴィスの荷電粒子を躱したのも彼女である。艦長は豪放磊落で知られる有能な軍人であり、本物の帝国戦艦と軍人だった頃の武名と来歴は歴史家の格好の研究材料であるが――今はその話を脇に置こう。なにせ、これから骸の海に帰るのだから。

「悪いが、そこは既にこちらの間合いだ。馬鹿げた話である事は認めよう」

 『オト』は哀れであった。戦艦の戦列は急激な回避運動に向かず、荷電粒子砲を回避したこと今、僅かにあった回避行動に用いうる空間が残っていなかったのだ。そしてその船体は、暗がりから現れた高出力の光芒を耐えきれない。砲塔が焼き斬られて、爆炎が上がる。弾薬庫―――いや、主砲エネルギー弾格納庫へそれが及ぶ。一瞬の出来事であった。『オト』の艦体がまっぷたつに割れる。割れた船体が無数のデブリとなって、爆炎を背にあたりへ飛び散り始める。それを構わず攻撃し続けられるほど、帝国戦艦は頑丈ではない。各艦がめいめいに回避運動を始める。それはすなわち、攻撃に集中できなくなったということ。

 それは、猟兵たちの反撃を意味していた。

●不吉な黒が宇宙を跳ねる
「……いいね。道ができた」
 『オト』なる戦艦が壊れたことで、敵旗艦『ウェスパシアヌス』まで、燃え盛るデブリの道ができていた。そのデブリの炎のひとつが、黒い犬に踏みしめられて消える。獣の跳躍にあわせて、黒い服がひらりと舞う。その背には、ピンクの髪をした幼げな少女がしがみついていた。黒い犬の正体は、ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)のユーベルコード【ブラックドッグ】。ヴォルフの鞭が、飛来するデブリを払う。さすがに戦艦のビームを鞭で払うことは困難であったので、近づくときはこっそりと音をたてずに。それは闇の色をした狼にとって容易なことに違いない。
「ふふ、まるでマカロンの道ね。小さくて、色とりどりで、美味しそう!」
 無邪気な声が背中から聞こえた。背中越しでは、エレアリーゼ・ローエンシュタイン(花芽・f01792)の表情は見えなかったが、きっと笑顔に違いない。砂糖菓子を思わせる甘い声だった。
「マカロンはさすがにどうかと思うけど……確かにちょっと綺麗かも」
 燃える戦艦のかけらは、金属と反応して色とりどりの様相を見せていた。戦場であることを考えなければ、綺麗といえるかもしれない。もっとも、その色とりどりの炎はことごとくブラックドッグに踏みつけられて、消えていっているのだが、二人ともそれは気にしていないようだった。黒い犬が暗い宇宙を駆けて、そのままこっそり戦艦に近づいて――というわけには、いかなかった。

「――わ。たいそうな出迎え、だね」
 彼らと『ウェスパシアヌス』の間に割り込むように、帝国の戦艦が現れる。二人を認めたわけではないだろう。見つけていたら、主砲のビーム砲が飛んでくる。彼らの接近が感づかれたわけではない。だが、戦況から敵も行動を予測する。到来しうる危険を考えれば、穴を埋めようとするのは至極基本の動作だ。そして、この戦艦を乗り越えなければ、敵の旗艦にたどり着けない。かつて戦った巡洋戦艦とはわけが違う、絶対的な質量を持つ巨大な過去と、戦うしかなかった。熟練の猟兵であるヴォルフは、その戦力差を正確に測ることができた。ゆえに、策を練ろうと一瞬思案のため立ち止まる。だが、それを遮るように声がした。

「やっぱり大きなものほど、崩す瞬間が一番楽しいと思うの。パフェとおんなじ!」
 敵の巨体を見ても、陰らないのはエルの声。楽しそうに、笑うのだ。
「ねぇ、ヴォルフ。そう思わない?」
 そして、それを目の前の友に問う。それが自覚してのことかは、本人にしかわからない。
「ふふ、確かに。すこーしばかり固そうなパフェだけど、崩してやった時の爽快感は同じくらい得られそうだ」
 その声を聞けば、恐れる気持ちなど湧きようはずがない。そもそも老獪に策を練ろうとした一瞬の間である。見た目こそ年若い少年に見えるが、彼は誇り高き狼なのだ。なにより、少女に怖じ気づいたと思われたくはなかった。
「大丈夫、行きましょう。エルが邪魔させないんだから!」
 彼女たち乗せた黒犬を守るように、キャンディケーンが現れる。
「ありがと、頼りにしているよ可愛い騎士様!」
 それを見て、心からそう思っているとわかる人懐っこい笑みを浮かべると、黒犬の腹を足で蹴る。艦腹へと跳躍し、乗りあがる。上部甲板の機銃座が、一斉にヴォルフの方へ向けられて、質量を持った銃弾が放たれる。鞭で弾く。ケーンが弾く。からんからんと音が鳴る。そのまま凌ぎ続けるのは、戦いなれた猟兵といえど困難と言えよう。だが、彼は冷静だった。黒犬が跳ねる。
「……このあたりかな」
 そして、降り立った。銃座からの銃撃が止んだ。戦艦には、通常互いの銃座を撃たないようにするために旋回角の限界が存在する。そして、この戦艦もまた例外ではなかった。甲板のまんなかは、安全なのである。
「主砲の充填音が聞こえる。急がなきゃ」
 ヴォルフが指を鳴らせば、手から爪が伸びるように現れる。それはまさしく枷狼の爪。魔導力で編まれた紫電を纏ったそれは、戦艦の終焉を穿つ力を帯びる。鍵と鋼鉄で封鎖されていようと、甲板のコントロール・ルームへの扉は薄紙も同然である。熱で溶け切り裂かれた中にガジェットを持って滑り込む。

●甘い甘いケーンの一撃
「ここが戦艦の中。なんだかつまんないね」
 無機質なセラミックスの白で覆われた艦内は、華やかさや可愛げとは無縁であった。エルはつまらなさそうに口を尖らせる。迎撃にやってきた陸戦隊クローン兵の頭が、ぐしゃりと割れる。エルが飛び跳ねるのにあわせて、艦内の無機質な電光に照らされた乳白色のピアスが揺れる。
「そんなものだよ。だから、壊しちゃおう」
 ヴォルフのとっておきのひとつ。『トートの叡帯』を用いても、戦艦の操縦権の奪取は困難であった。電脳魔術士のような、より機械制御に長けたジョブであれば、話は変わったかもしれない。しかし、その動きを止めるには十分であった。誰かを狙っていた戦艦の砲が止まる。戦艦構造の解析が終わる。
「この戦艦――名前は『ペルティナクス』っていうらしい。で、……ほら、折角だから開けた穴は綺麗に整えておこっか!」
 ちょいちょいと通路の真下を指で指し示す。それは、ハッキングで把握した、エンジン・ルームへの道。正確には、まだ道ではないのだが。
「ここ、壊せばいいの?」
 無垢な声で、赤い瞳の少女が尋ねる。内容はもちろん、物騒だ。
「うん、ただ、脱出の準備を整えてからね」
 指を立てて、指示を付け加える。戦艦の機関室が爆発したとき、至近距離にいては助からない。だから、黒い犬にまたがって、いつでも脱出できる準備をして。
「ふふっ……あははっ! さぁ、どれだけ大きな穴が開くかしら! ええと……ぺるてぃなくすさん?」
 自信なさげに、思い出しては。
「――甘ーい舞台で踊りましょう、壊れて砕けてなくなるまで!」
 凄絶な笑みを浮かべ、魔力が満ちる。呼びだされるのは、100本のキャンディケーン。それを一斉に撃ち込むと同時に黒い犬が飛び上がる。その背を追うように、十秒と少し遅れて爆炎が広がる。黒い犬は、デブリを足場にして、楽し気な笑顔を乗せて、悠々と飛び去っていった。

●仇為す刃
 敵艦隊は、決して無能の集まりではなかった。
 先頭艦『オト』の爆発に乗じて猟兵が接近してくるのを機敏に察知し、旗艦を中心に据え防衛目的の輪形陣を組み始めていた。ティトゥス提督の乗る『ウェスパシアヌス』を守るように、ぐるりと。それは、己が身を挺してでも勝利を掴もうとする忠義ゆえか。その砲撃は、宇宙全方向へと向けられて、猟兵の接近を阻んでいる。

「……ここで止まっては彼らの苦しみは終わらないのです。参ります!!」
 迷彩マントで身を隠し、先頭艦『オト』の破片を掻い潜り、『陽炎の疾駆』に騎乗して、ゼルド・シュバイツァー(陽炎の仇刃・f12297)の刃が迫る。敵戦艦の砲撃は、彼に気づかずともとびかかる『解放軍』に向けて、全方位に放たれている。橙色をした車体が、ビーム光の反射できらきらと輝く。それは、まるで曙の頃の太陽の光に似ていた。闇が祓われようとしているのだ。偶然の至近弾を、卓越した騎乗能力で躱し、戦艦の艦腹に肉薄する。

「その程度の銃撃で、私を止めることなどできません!」
 その白い騎士に向けて、機銃座から銃弾が放たれた。手をかざせば、フォース・オーラで空間が歪み、力場に踏み入った銃弾が次々と捻じ曲がる。それを当然のように受け取って、片手で仮面を外す。ゼルドの太陽を思わせる赤い髪が、剣の動きにあわせて揺れる。しかし、止まる。
「――っ! ……まずいですね」
 一隻の戦艦が、ゼルドに主砲を向けていた。今から急発進しても、間に合わない。緑の瞳が、曇る。私は、ここで終わってしまうのか。だが、覚悟した一撃は放たれず、やがてその戦艦が爆炎をあげる。それがヴォルフのハッキングによって砲撃能を奪われ、エルのケーンで爆散した、戦艦『ペルティナクス』であることなど、今の彼は知る由もなかったが、――仲間の力であることだけは疑っていなかった。

「貴殿達の忠義は百も承知です! ですが此方も……」
 かちゃりと『陽焔の灯火』と名付けられた光剣が構えられる。

「――――ただでは退けないのですよ!!!!」
 『陽剣の守護者』の放つ陽光の刃が、大きく振われれば、戦艦の砲塔を切り裂く。
 その一撃は、燃えるように。護衛戦艦はその攻撃力を喪った。

●突破した先
「『白城』艦隊所属、戦艦『ウェスパシアヌス』。目標を確認しました」
 淡々とした声が、黒い機体から放たれる。それは全身をすべて機械鎧で覆いながらも、どこか女性的なフォルムをしていた。軍艦の艦砲を思わせるほど巨大な、ギムレット76mmSBRを肩に担ぎ、バイザーごしに眼前の白い戦艦を見る。それは、彼女が言ったとおり、戦艦『ウェスパシアヌス』であった。

「提督、敵が来ました」
「わかった。艦の戦闘は、君に任せる。好きにやれ」
 禿頭のティトゥス提督は、それだけを言って、他の艦への指揮に戻る。先頭艦の爆破は、まだ良い。起きうることだ。それに乗じての浸透突破、戦果の拡張、見事なまでの機動戦。猟兵の侵攻は迅速であり、ティトゥス提督に立て直す暇を与えなかった。一方的なように見えたとしたら、それは間違いである。彼らに隙を与えていたら、何人もの死人が出ていたはずなのだ。それだけに、提督は歯噛みする。もはや艦隊指揮にどれだけの意味があるかはわからなかった。それでも彼は、責務を果たさんとしていた。
 『ウェスパシアヌス』艦長は床を蹴り、艦長席にふわりと座って、声をはりあげる。
「対宙戦闘用意! あのこざかしい黒い機体を撃ち落とせ!」
「報告! 敵機は、僚艦を射線の先において回避運動を行っている模様!」
「対宙砲指揮所に命令。弾種をビームに変更。出力を下げて、減衰させろ」
「はい、閣下。ただちに!」
 艦長の指令を受けて、通信兵がマイク越しに指示を伝える。『ウェスパシアヌス』は決死の抵抗を行わんとしていた。それが根本的な解決にならないとしても。それが、栄光ある帝国艦隊の務めなのだから。『ウェスパシアヌス』、『ティトゥス分艦隊』、彼らはすべて白騎士麾下の忠実なる帝国軍人だった。

(「完全に、計算通りですね」)
 パルは、心の内でほくそ笑む。笑うという機能が、備わっているかは別にして。
 ひらりと、ビームを躱す。敵艦は、同士討ちなどできない。この戦況で味方の数を減らすなど、自分の首を絞めるに等しい。それを敢行する蛮勇を、彼らは持ち合わせていなかった。苦肉の策として、対宙砲をビームに置き換え、それを敢えて減衰させて、僚艦まで届かないようにしたのだ。しかし、それは同時に威力が減ることを意味していた。焼き切る力だけではない、範囲も、速度も。すなわち、回避は容易だということ。脚部スラスタがガスを噴く。パルの機体が、宇宙のまんなかでぴたりと止まる。それは、発射の合図。
「敵艦橋を視認。SSM-84及びLSSM-109対艦誘導弾、撃ちます」
 機械的な声で、宣言した。誘導レーダー波が、続けてレーザーが、敵艦橋を捉える。両の腕でミサイル・ユニットを構え、安定させる。間髪を入れず、対艦誘導弾が放たれる。バックブラストが宇宙空間に霧散し、同時にスラスタが肩部スラスタが姿勢を制御する。遅れるように、対宙ビーム砲の一撃がパルに迫るも、それを装甲板で作った盾でいなす。威力が減っていなければ、貫けたかもしれないものを。青色のビーム光が砕けて、宇宙空間にちりちりと消え失せた。
 ミサイルが飛来し、環境を貫く―――かに見えたが、そうはいかない。艦橋は、弱点である。迎撃の手もそれだけ割かれていて、彼らはパルを狙っているわけではない。質量弾によるガトリング・対宙砲火がミサイルを砕き、届く前に爆散させるのが見えた。緑色のバイザーが光る。
「――ならば、脚を止めます」
 脚部のブースタを吹かせ、戦艦の後部へと回る。そこは敵艦のいない領域。対宙砲撃が激しくなる。まるで羽ばたくように、踝部の光翼が揺れ動く。そして、繰り返す。ミサイルを構え、発射する動き。プログラミングされた、正確な動作。今度は、外さない。
「戦果は上々。あなたたちは知らないかもしれませんが、大艦巨砲の時代は終わります。これからは長距離誘導弾の時代なんですよ」
 爆煙をあげる敵戦艦後部のブースタを無慈悲に眺めて、呟く。その教育は、目に見えてわかりやすいものだった。もっとも、彼らにはそれを持ち帰ることなどできないのだが。
「――こちらパル、補給のために一時帰投します」
 満足そうに、光の尾を引いて、パル・オールドシェルは帰投していく。弾は撃ち尽くしていた。ミサイルは有力な兵器であるが、一度に持ち歩ける数に限りがある。
 とはいえその一撃で、もはや戦局は終盤を迎えようとしていた。

●接近する短銃兵
 戦艦『ウェスパシアヌス』の甲板に、こっそり乗り込む影は、青い髪をしていた。マルコ・トリガーは様子をうかがうように、あたりを見回す。デブリを踏んで、隠密に近づき、爆発に乗じて、乗り込んだのだった。
「……さて、さっきの彼らが乗り込んでいた場所は」
 ヴォルフガング・ディーツェたちが、旗艦『ウェスパシアヌス』を護衛していた戦艦『ペルティナクス』に潜入していたとき、マルコはその近くにいた。戦艦にはさほど詳しくないと自認する彼であったが、目の前で起きたことを理解していた。たどり着くべき場所がどこかわかれば、簡単だ。ゆえに、ひらりと甲板の中央部を目指す。目指すは、敵艦の心臓への道。しかし、彼の道は平たんではない。機銃が、少年へと向けられる。何かに囁かれたように、ひらりと甲板に身を滑らせれば、先ほどまでいた位置に機銃弾が放たれる。銃を撃つ乾いた音がなる。ユーベルコード【クイックドロウ】の早撃ちで、機銃座を破壊して、マルコは走る。だが、帝国戦艦の防備は堅牢である。そして、マルコはあくまで生身であった。
(「――これはちょっと、一人でどうこう出来る相手じゃないね」)
 艦橋構造物の間を縫って進み、破壊した対宙砲を盾にして、一息ついて状況を把握する。同士撃ちができない構造の対宙砲の陰にいるかぎり安全だが、出れば蜂の巣にされるだろう。なんとか近づければ、打破できようものを。機銃が破壊さえされてくれれば。
 彼を助ける一撃は、遠く離れた場所からやってきた。
 直上から降りそそぐ雷のごとき一撃が、機銃の一基を破壊した。続けざまに、二機目。その数秒後に、爆発音が鳴る。足元の甲板を通じて、悲鳴が上がるのをマルコは聞いた。その狙撃が味方の仕業であることなど、明らかだった。マルコはそれらに視線を向けることなく、中央へと走りこむ。そして、たどり着いた。

「ここを開ければ――」
 電子ロックされた甲板扉を、零距離射撃で短銃が打ち破る。開いた。ひらりと猟兵が舞い降りる。艦制御のエレクトリック・コンソール・パネルが見える。
「――助けてくれるかい」
 雷の精霊の力を、銃弾に込めて、迷わず放つ。コンソール・パネルのガラスが割れて、意味をなさない画面表示がちかちかと点滅する。
「これで、制御不能……と。さて、どうしたものかな」

●黒鳥の作った道
「――なら、俺に任せな!」
 威勢の良い声、聞き覚えのある声が、真上から降ってきた。
 黒い髪が宇宙空間に舞うのが見えた。すいと身を躱す。青い髪が揺れる。
 黒い髪越しに、緑色の機械兵が見えた。
「歌声に応えろ、力を貸せ。俺の望みのままに!」
 その歌には、一層聞き覚えがあった。
「――殴るのは、その床がいいよ」
 だから、敵の弱点を伝えた。
「それからなぁ、マルコ! 俺の武器が、剣だけだと思うなよッ!」
 レグの荒っぽいバイクで稼いだ速度、それを蹴ってつけた加速、それらをすべて拳に乗せる。ユーベルコード【星球撃】の一撃が、指示された通りの場所に撃ち込まれれば、大きな穴が開く。鋼でできた艦体など関係ない。大きな穴を開ければ、機関室へと通じる穴が開く。
「よし、準備完了。マルコ、逃げるぞ」
「――は?」
 拳についた床の破片を払って、マルコの身体をお姫様抱っこの要領で抱きかかえ、一挙に跳躍。入ってきたハッチから甲板へと飛び上がる。
「おい、レグ。終わったぞ!」
「――オーケイ、セリオス。マルコだったな。早く乗れ」
 機銃座のひとつが、その砲身のつけ根で爆発する。
 何か詰まっていたらしい。整備不良だろうか。
 宇宙バイクを二人のもとへ寄せて、レグの宇宙バイクに二人が乗り込む。
「――別に自分で上がれたんだけど」
「――ま、そう言うなって。さっきの詫びだよ、詫び」
「――二人とも準備はいいな?」
 三人の猟兵を乗せたバイクが、戦艦『ウェスパシアヌス』から急速に離脱していく。彼らは知っていたのだ。これから彼女が沈むことを。

●術式刻印弾・迅雷
「――見えるならば、届きます」
 戦艦『ウェスパシアヌス』の遥か上。遠く離れた場所で、撃破された帝国軍巡洋戦艦のかけらに身を隠し、シャルロット・クリスティアは機関室を確かにとらえていた。狙撃兵の命たる目はマルコとセリオスが開けた穴を、確かに見ていた。そして、三人が離脱する様も。時は満ちた。
「――届くならば、当たります……!」
 女性的な曲線を描く大腿部に装備したホルダーから、一発の銃弾を抜く。ぎゅっと握りしめて、それを雷の魔力で満たす。かちゃり、と装填する。それは、質量弾の最たる強みを生かした必殺の一撃だった。
 彼女は、連れてきてくれたレグにこう言ったのだ。

『宇宙では空気抵抗も重力もありません。質量弾ならば『射線さえ正しければ射程無限』と言うことです。だから、ここからでも敵のバイタル・パートだって、敵の指揮官だって、見えさえすれば撃ち抜けるんです』

 レグはそれを確かに理解していた。ゆえに、デブリからセリオスを連れ出すときにこう頼んだのだ。道を作ってくれ、と。そして猟兵たちは、注文に応えた。細かな作戦を立てずとも、彼女はそれを正確に理解していた。ゆえに、臨機応変に対応する。

 何十キロと離れた地点にいるシャルが、敵の機関室を見据えた。
 引き金が動く。撃鉄が落ちる。
 電気の妖精が、その銃身内で暴れて、銃弾にエネルギーを与えていく。
 放たれた音はしない。
 ただし、結果の音と光は、なにより雄弁だった。

「あなたたちが存在することで、どこかの誰かが私と同じ思いをするのだから――」
 『ウェスパシアヌス』が炎を上げる。沈みゆく戦艦を見て、彼女は呟いた。
「――私は、逃げません」
 柔らかな色をした金の髪のおさげが揺れる。
 狙撃兵は、次の過去へと目を向ける。未だ、彼女の戦いは終わらない。

●沈みゆく戦艦
「――過去は所詮、過去でしかないということか」
 ティトゥス提督は、燃え盛る艦橋で、呟いた。
「――あなたが、ティトゥス提督なのです?」
 少女の声が、炎の中から響く。
「いかにも。どうして入ってきたのかなどと、野暮なことは聞かんよ」
 腰に巻き付けた鎖がじゃらりと鳴る。手にするロヴァリスの巨大な剣身に不釣り合いなほど、痩せこけた白い狼の少女が、艦橋に立っていた。アレキサンドラ・ミルキーウェイ(強欲の貧者・f13015)は、ユーベルコード【災厄を招く欲望】の転移能力で、ここまでたどり着いた。彼女は、眼前に立つオブリビオンを気だるげに見つめる。赤い目と、金の目が、きらきらと光る。
「結局、戦艦で一番脆い部位は、そこに乗っている人間なのです」
 だから、倒しに来ましたと牙を剥く。
「そのちっぽけな体でかね?」
 オブリビオンの提督は、見かけと能力が比例しないことを知っていた。しかし、彼は誇ある軍人だった。そして、ここまで徹底的にやられてきた。それだけに、強がりを見せたかった。
「試して、みるのです?」
「『白騎士ディアブロ』様の部下として、見苦しい戦いはできんよ」
 提督が、腰の軍刀を抜く。
 白き狼が、跳ねる。

 勝負は、一瞬でついた。
 大剣が、命を奪い、喰らう。
 提督の身体が、燃え盛る戦術地図台の上に落ちる。
 艦隊指揮に特化したオブリビオンが、直接戦闘に長ける猟兵に敵うはずがなかった。

「……ようやく、生命が食べられました。ごちそうさま」
 いくら軍艦を屠っても、生命力は得られなかった。
 ゆえに、危険を推してでも潜入した。
 最後に食べたこれは、そこまで悪くない味がした。

 こうして、『白城艦隊』の分艦隊のひとつが、壊滅した。
 だが、これも一局面に過ぎない。
 『白城艦隊』と『白騎士ディアブロ』は生きているし、何より『銀河皇帝』が健在だ。
 戦いは終わらない。しかしまた一つ、猟兵たちは勝ちを積み上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日


挿絵イラスト