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7thKING WAR㉔〜ワルワル・マスカレイド

#デビルキングワールド #7thKING_WAR #召喚魔王『ゼルデギロス』

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#召喚魔王『ゼルデギロス』


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●水脈枯渇平原
 それは山よりも遥かに巨大な体を持つ女性であった。
 都市一つはあろうあかという超巨大槍を携えた姿は、『7thKING WAR』の戦場の何処からでも見ることが出来たであろう。
「成程。つまり私は天寿を全うした後、あなたに乗っ取られたのですね」
 巨大な体を持つ女性の口から語られる言葉は静かなものであったが、恐るべき事実であった。
 召喚魔王『ゼルデギロス』。
 それがかの巨体の名であり、また正しくないことを示していた。
『ククク、悔しかろう……生前のみならず、死後なお我に翻弄されるとはな!』
 その声は『不気味な仮面』から響く。
 恐らく、その仮面こそが召喚魔王『ゼルデギロス』であり、本体なのだろう。そう、ここに猟兵たちがいたのならば、似たような事例にうめいたことだろう。
 かつての『帝竜戦役』においても過去となった存在を覆う仮面がいた。
 この『不気味な仮面』もまたそうであったのならば、巨体の女性は『不気味な仮面』によって本意ならざる行いをしていることになる。

 しかし、そんな召喚魔王『ゼルデギロス』の言葉に巨体の女性は頭を振る。
「少し安心しました。『ゼルデギロス』、あなたはまだ、何も学んでいないのですね」
 嘲りでもなければ、嘆きでもなかった。
 その言葉にあるのは端的な事実のみ。
『な……何だと!?』
 対する『不気味な仮面』の狼狽ぶりはひどいものであった。巨体の主導権を握っているというのに、乗っ取ることは止められないというのに、それでもこの巨体の女性は言うのだ。
「時は二度と戻らない。だから時は美しく、残酷に光り輝くのです」
『ど……どういう意味だ!?』
 召喚魔王『ゼルデギロス』は知らない。
 時は逆巻くことをしない。覆ることをしない。過去は排出されて『今』は前に進んでいく。どれだけ過去がにじみ出るのだとしても、決して過去は変わらないのである。

 不変を求めるからこそ、変わることが出来ないということこそ、巨体の彼女を乗っ取ったことが意味のないことであることを『ゼルデギロス』は理解できていなかった。
「つまり、既に死んでいる私など何の価値もないということ! 乗り移る相手を見誤りましたね、ゼルデギロス」
 静かな言葉に『ゼルデギロス』は焦燥を感じる。
 なぜならば。
『ぐっ……仮面を放出できぬ! 貴様、何をした!』
「あなたの仮面は、本当に恐るべき能力です。私達の世界は、あなたの為に深く傷つけられました。しかしあなた自身は……何度でもやりなおせる気楽さに甘え、愚にもつかぬ失態を繰り返す痴れ者。私が決死の覚悟でいる事も分かっている筈なのに、見ないふりをしていたのです」
『やめろ、言う事を聞いて戦え……六番目の猟兵に殺されてしまうぞ!』

 焦燥は召喚魔王『ゼルデギロス』の喉元まで競り上がるような不快感と共に彼の胸中を埋め尽くしていく。
 そう、己を殺す存在の到来。
 その転移の輝きが世界に満ちていく。
「ふふふ、流石にあなたの支配を全て退ける事はできません。しかし、この程度の支配度なら、あの方達は容易く私を殺すでしょう。あの方達は、私のぼうや達に勝るとも劣らない、素晴らしき武士でしょうから」
 その光をみやり、巨体の女性は己を殺す者達に微笑むのであった――。

●7thKING WAR
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。この戦いが始まって以来、ずっと私達の視界にあった巨体の女性……即ち召喚魔王『ゼルデギロス』と戦う戦場が開かれました」
 ナイアルテが示すのは、この戦いの何処からでもその姿を見ることが出来るほどの巨体の女性。手にした超巨大な槍は都市一つほどの大きさを持つものである。
 それこそが召喚魔王『ゼルデギロス』である。
 しかし、ナイアルテは頭を振る。

「本体であるのは、あの『不気味な仮面』です。それこそが『ゼルデギロス』。巨体の女性はどうやら、あの仮面によって肉体を乗っ取られているのでしょう」
 だが、かつて在りし白竜のように彼女も過去の存在。
 彼女を打倒しなければ『魔王ガチデビル』の目論見は阻止できない。
 けれど、あれだけの巨体である。
 山よりも巨大であり、都市一つはあろうかという巨大な槍を振るう力は尋常なものではない。

 それに、とナイアルテが告げる。
「……かの召喚魔王『ゼルデギロス』の巨体に近づくと、皆さんの体に『不気味な仮面』が現れ、精神と肉体を侵食しようとするのです。それは身の毛もよだつような感覚でしょう。みなさんは、強制的に『真の姿』を引きずり出されてしまうのです」
 彼女の見た予知は、猟兵たちの体に浮かぶ『不気味な仮面』。
 その『不気味な仮面』は精神と肉体を乗っ取り、猟兵すらも『オブリビオン化』しようとするのだ。

「『真の姿』を引きずり出されることは確かに不測の事態ですが、同時に皆さんの強力な力を振るうこともできる好機でもあります。ですが……皆さんの精神を汚染しようとする『ゼルデギロス』に対する対抗策を講じなければなりません」
 強力な力も、乗っ取られては意味がない。
『真の姿』を晒し、なおかつ『不気味な仮面』による精神汚染を防ぎながら、山より高い超巨体を駆け上がり、巨体の女性に浮かぶ仮面を破壊しなければ、打倒することが敵わないのだ。

「言うまでもなく、此度の戦いにおける最初の難敵。ですが、私は信じています」
 ナイアルテは瞳を伏せる。
 例え、『真の姿』を引きずり出されるのだとしても、猟兵達は決して負けることがないと――。

●天槍
『おのれ若津姫め……言うことを聞いて戦え!』
 それは超巨体の女性の顔に浮かぶ『不気味な仮面』から聞こえる言葉であった。それこそが『ゼルデギロス』本体であり、この状況に焦燥感を募らせていることがありありと分かるだろう。
「『ゼルデギロス』が『仮面(マスカレイド)』を使います……心を強くお持ちください!」
 巨体の女性の言葉はこのような状況にありても慈しむような優しさが在った。
 だが、振るう巨大な槍『天槍』を携えた姿に一部の隙など見出すことはできなかっただろう。
 それこそが彼女の肉体を乗っ取った『ゼルデギロス』の力。
 抗う女性は高らかに言う。肉体を乗っ取られても、それでもなお冒せぬ誇りがあることを示すのだ。

「顔の仮面を破壊すれば私は死にます。『六番目の猟兵』達よ、いざ尋常に勝負!」
 高らかに宣言し、巨体の女性がやりを構える。
 猟兵達は理解しただろう。あの巨体に近づいた瞬間、己たちの体を蝕むように浮かぶ『不気味な仮面』。
 これが『ゼルデギロス』の力。
 強制的に引きずり出される『真の姿』。

 力だけでは覆えぬ未来がある。
 どれだけ絶望の終焉が見えるのだとしても、意志でもって、それを破壊することができることはすでに示されている。
 ならば、猟兵達は終焉齎す者さえも砕く意志をの輝きを見せるのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『7thKING WAR』の戦争シナリオとなります。

 ついに現れた召喚魔王『ゼルデギロス』。
 その超巨体は戦場の何処からでも見えるほどの巨体です。どうやら巨体の女性ではなく、その顔に浮かんだ『不気味な仮面』こそが本体『ゼルデギロス』であるようです。
 巨体の女性の言葉通り、『不気味な仮面』を破壊すれば彼女共々『ゼルデギロス』は掃滅するようです。

 戦場に降り立った皆さんが『ゼルデギロス』に近づくと否応なく体に『不気味な仮面』が現れ、皆さんの精神と肉体を侵食しようとします。
 皆さんは強制的に『真の姿』を晒すことになりますが、同時にプレイングボーナスも得ることが出来ます。

 ですが、この精神汚染に対する対抗策を講じなければ、最悪『オブリビオン化』の危険があります。

 プレイングボーナス……マスカレイドの精神抵抗に抗う方法を考え実行する。

 それでは、召喚魔王の一人との邂逅し、『7thKING WAR』を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『魔王ゼルデギロス・マスカレイド態』

POW   :    マスカレイド・バインド
【呪力でできたトゲ 】が命中した部位に【魔王ゼルデギロスの悪しき呪い】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD   :    マスカレイド・ポゼッション
対象の【肉体のどこか 】に【不気味な仮面】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[肉体のどこか ]を自在に操作できる。
WIZ   :    ワールドエンド・マスカレイド
戦場内に【無数の『不気味な仮面』 】を放ち、命中した対象全員の行動を自在に操れる。ただし、13秒ごとに自身の寿命を削る。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

外邨・蛍嘉
人格:クルワ(男/鬼)
真の姿:人だった者『六出・愁雨』(20/10/2)
武器:妖影刀『甚雨』

何故でしょうね。私も、蛍嘉も。あなた達のことを知っている気がするのです。
ですから…覚悟には相応に報いねば。

仮面…負の感情。かつて私(愁雨)を、家系から抹殺した家族…!
ああ、でも。過ぎ去ったそれは、壊してはいけないもの。…今は別の家族がいますからね!
ええ、なれば負けられませんよ!と気合いを入れ直し。

仮面を別に生やされど、抵抗するは私の他に蛍嘉もいるのです。負けません。
そして、その身体を登りいき…今なら、三回攻撃していいでしょう。思いっきり!
…?はい?彼女の決意を無駄にせぬための全力ですよ?加減なしです。



『忌々しい若津姫め……! 何が時は戻らないだ……! 無限にやり直すことができるのならば、それこそが最たるものだろう。最良を為し、最高の結果を引きずり出す。それこそが……!』
 巨体の女性の仮面から声が聞こえる。
『不気味な仮面』こと召喚魔王『ゼルデギロス』は言う。
 何度もやり直すことが出来るのならば、それを取らぬ理由はないはずだと。
 されど、巨体の女性は否と告げるのだ。

「時は逆巻くことはなく。だからこそ今を生きる光は美しく輝くのです」
 巨体の女性は己の弱点を告げる。
 仮面こそが『ゼルデギロス』の本体。そして、それさえ砕くことができたのならば、己は消滅するであろうと。
 山よりも巨大な体。
 その手から振り下ろされる『天槍』の一撃は大地を穿つ。

 それだけではない。
 猟兵たちが彼女に近づいた瞬間、その体に浮かぶは『不気味な仮面』。
 彼女の顔に浮かぶ仮面と同じなのだ。
「何故でしょうね。私も、蛍嘉も。あなた達のことを知っている気がするのです」
 外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)は引きずり出された真の姿を晒す。
 その言葉は静かなものであったし、かつて人であった者の姿であった。手にした妖影刀を握りしめ、寂寞か、それとも寂寥かの感情を浮かべる。
 知っている気がする。
 ただ、それだけのこと。
 されど、足を止める理由にはならないのだ。巨体の女性には覚悟がある。それは召喚魔王『ゼルデギロス』にはないものだ。

「ですから……覚悟には相応に報いねば」
 己の体に浮かび上がる『不気味な仮面』。
 それが負の感情を呼び起こす。
 本当にこれが己の感情なのか、それとも嘗て在りし日の感情7日。
 己を家系から抹殺した家族。
 そこに感情が湧き立つマグマのように湧き上がってくる。負の感情を抑える術はない。それもまた自身の感情であるからだ。
 とめどなく生まれるもの。

 それを否定はできない。
「ああ、でも」
 息を吐き出す。
 吐息は冷たくも熱くも感じなかったことだろう。過去は変わらない。過去は決して逆巻くことがない。
 ゆえに、その瞳にあるのはユーベルコードの輝きであった。
「過ぎ去ったそれは、壊してはいけないもの」
 そう、如何に過去が目を背けたいものであったとしても。それをなかったことにしてはならない。過去を否定するということは『今』を否定すること。

 己の胸に去来するのは、新たに得た家族の顔であった。
 ならば、高らかに言うのだ。例え、己の姿が昏き過去よりの来訪者たるものであったとしても、決して否定はできない。
「ええ、なれば負けられませんよ!」
 体に浮かぶ『不気味な仮面』を振りほどくように、巨体の女性へと駆け上がっていく。

「それでいいのです。決して歩みを止めない。どれだけ失敗を繰り返そうとも、人は負けるようにはできていない。成功から学ぶことは多くはないけれど、失敗からこそ人は多くを学ぶ。だからこそ、同じことを繰り返さない。何度も何度も、その足で歩むことが出来るのです」
 自身を滅ぼす刃を見てもなお、巨体の女性の言葉には慈しみが在った。優しさがあった。我が子を見守るかのごとき慈愛があったのだ。

 ならば、己が仮面に取り込まれることはない。
 雨剣鬼の記憶:間合絶無(マアイイトワズ)は此処に三度剣閃を走らせる。
 その刃の鋭さは言うまでもない。
 此処にあるのは敵味方ではない。ただ己が討つべき敵がいる。目の前の巨体の女性は慈愛に満ちた視線を己に向けている。
『やめろ……! この女は……若津姫は、お前たちの……!』
『ゼルデギロス』の声が響く。
 だが、剣閃は止まらない。振り抜かれた刃の斬撃は巨体の女性の肌を切り裂き血潮を噴出させる。

「……? はい?」
 止まる理由などない。
 雨のように鮮血が降り注ぎながら、見据える先にあったのは『不気味な仮面』。
 如何に言葉を弄するのだとしても止まらない。何故ならば、その背中を押したのは、巨体の女性の覚悟であった。
「その決意を無駄にせぬために全力ですよ? 加減なしです」
 躊躇いなどない。
 討つべきを討つ。その一念においてのみ、その剣閃は昏き過去を照らす輝きとなるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
いや、デカいなあ…
デカ女ブームキテル…?
まあいいや、色々知ってそうでインタビューとかしてみたいけど…
精査するのは戦いが終わった後…かな

真の姿を強制的に晒されるなら…その前に真の姿になっておけば良い!
近付く前にお先に失礼!
超克…オーバーロード!
外装展開、出力最大
模造神器全抜刀!
精神汚染がなんぼのもんじゃい
こちとらオーバーロードだぞオーバーロード!
それでも此方の精神を汚染してくるっていうんなら…剣を一本太腿にでも突き立てて気付けをしよう
流れる血は力の証…ってね
そして【断章・焔ノ杖】起動
呪力でできたトゲを『斬撃波』で『吹き飛ばし』ながら接近
移動している間も血は流れ、私の中から血液が失われていく…
それこそが蒼炎の威力を上げる!

雇われ魔王のくせにやけに偉そうにして!
滅び去った過去が今を生きる私たちに勝てると思わない事だね

一気に巨体を駆け上がって本体を目指す
まさか人の体を駆け上がる事になるとは思わなかったけど…足蹴にしてごめんね!
仮面が射程に入ったら、蒼炎を纏わせた剣で『薙ぎ払い』『串刺し』で攻撃!



 山を超えるほどの巨体。
 その女性は、都市ほどの大きさをもつ巨大な槍を振るう。叩きつけられる一撃はデビルキングワールドの大地を割るほどであった。
『やめろ……若津姫! 支配を受け入れろ。滅びてしまう。『六番目の猟兵』に殺されてしまう! このままでは……!』
『不気味な仮面』が喚くように叫ぶ。
 召喚魔王『ゼルデギロス』は焦燥にかられていた。
 彼が乗り移った巨体の女性は掛け値なしの力を持つ存在であったことだろう。そして、『ゼルデギロス』の力、『不気味な仮面』は猟兵すらも『オブリビオン化』せしめる力を持っていたのだ。

 だというのに、巨体の女性は支配に抗う。
 そして、滅びを是とるのだ。この誤算を前に『ゼルデギロス』は焦りを募らせる。このままでは確実の滅ぼされてしまう。
「いや、デカいなあ……デカ女ブームきてる……?」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は山を超える巨体の女性を見上げてい言う。
 彼女の言葉を信じるのならば、様々な事柄を知る者であろう。ゆえに、色々とインタビューをしてみたいものであるけれど、と思うのもまた道理であった。
 しかし、今はこの戦いを生き延びなければならない。

 振るわれた槍の一撃が凄まじく、近づくだけで体に『不気味な仮面』が浮かぶ。その仮面は己の精神を汚染し、『オブリビオン化』させようとしてくる。
 引きずり出される『真の姿』。
 けれど、玲の瞳は超克に輝く。生命の埒外たる存在。それが猟兵である。ゆえに『真の姿』は不定形。
 猟兵という存在は、規則性がない。
 ゆえに、その『真の姿』を晒すことは、言うまでもなく彼ら自身が脅威に晒されているということ。
「なら、その前に『真の姿』になっておけば良い!」
 玲は転送されてきた外装副腕と共に四振りの模造神器を抜刀する。

「超克……オーバーロード! 外装展開、出力最大。模造神器全抜刀!」
 煌めく超克の輝き。
 蒼き刀身が二つの十字を生み出し、振るわれる『天槍』の一撃を受け止める。凄まじい衝撃波が周囲に吹きすさび、破壊の渦となって満ちる。
 しかし、その中を玲は一直線に奔る。
「生死の栓がなんぼのもんじゃい。こちとらオーバーロードだぞオーバーロード!」
『超克の力……! おのれ『六番目の猟兵』! 我が『仮面』の力を拒むか!』
『ゼルデギロス』が叫ぶ。

 その轟きの中、玲はそれでもなお己の精神を侵食してくる『仮面』の力を知る。
 心の闇を突く力。
 人の心であれば、全てが陽になることがないように。また陰となることもないだろう。だからこそ、不安定なのだ。バランスを崩しやすいのだ。
 あの『不気味な仮面』のちからは、そのバランスを陰に傾け、己の意のままに操ろうという意志を感じる。

 模造神器の蒼き刀身が奔る。
 その一撃は玲の太ももに突き立てられる。
「――っ!!」
 痛みが走る。熱と痛み。それが己の心のバランスを突き崩そうとする仮面の力を振り払う。
「坊や達にも劣らぬ、武士……その覚悟、やはり見事と言わざるを得ないでしょう」
 ゆえに正々堂々と打ち合うべしと、振るわれる『天槍』の一撃を副腕の抜き払った模造神器が受け止める。
 火花が散り、力の奔流が周囲を破壊していく。

 その光の中で玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 流れる血は力の証。
「偽書・焔神起動。断章・焔ノ杖閲覧。システム起動――断章・焔ノ杖(フラグメント・レーヴァテイン)!」
 流れる血液を代償に、全てを浄化する蒼炎が立ち上る。
『――ッ! 自傷行為がなんになる! その体で……!』
「雇われ魔王のくせにやけに偉そうにして! 滅び去った過去が今を生きる私達に勝てるとは思わないことだね」
 その瞳は『今』を見据えている。
 対する『ゼルデギロス』は過去しか見ていない。何度もやり直せるからこそ、最善を手に取ろうとする。

 それを停滞と呼ばずになんと呼ぶであろうか。
『今』を見据えることのできるものは、いつだって失敗を糧に前に進む。失敗を失敗のままにはしない。
 ゆえに、変わっていく可能性を掴むことができるのだ。
『過去だと! 過去と言ったか! 無限の如き時間すらない、やり直すこともできぬ力無き者が、ほざいたか!』
 呪いの棘がは玲へと迫る。
 その棘を模造神器の刀身が切り裂き、巨体の女性を駆け上がっていく。

「まさか人の体を駆け上がることになるとは思わなかったけど……足蹴にしてごめんね!」
 失われていく血潮。
 体から力が抜けていく。けれど、玲は知っている。己のユーベルコードは血液を失えば失うほどに力を増していく。
 代償を選ばぬ者には決して届かぬ力。
『ゼルデギロス』は損失を恐れる。けれど、人は、玲は損失を恐れない。最良最善を望みながらも、やり直すことを選ばない。失ったものもまた得たものの一つであると知るのならばこそ、技術は発展していくのだ。

「いいえ、誉れ高き武士であればこそ。構わずに」
 巨体の女性の慈愛に満ちた声が響く。
 その声を受けて玲は眼前に迫った『不気味な仮面』を見据える。叩きつけられるは『天槍』を超える極大の蒼き炎の刀身。

 それは全てを浄化する一撃。
 打ち込まれた斬撃は『不気味な仮面』に亀裂を走らせる。
「滅びることを止められるとは思わないことだね」
 変わっていくことこそが進化にして発展。
 ゆえに玲はその極大なる蒼炎の一撃を持って山を超える巨体を傾がせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!

いきなり自殺幇助をお願いされちゃいました!
兎に角あの仮面を壊せばいいんですね…
ってうわ!私にも仮面が!
(赤紫色のオーラが火柱のようになり周囲に自分を指す矢印の看板が出現する)
すごい…これが真の姿…あっ!
わ、私の体を奪おうとしているのですか!?
そんなの…絶対に嫌です!
み、見られる覚悟もない人に私を渡したくありません!
(UC【元悪!纏絡堕落醜穢終】発動)
これです!魂さえ覗かれる無数の視線!私が欲するもの!
私になるなら耐えてみてください!
できないなら…私の邪魔をするなぁ!
(『斬撃波』を仮面に向けて放つ)



 極大なる蒼炎が巨体の女性を打つ。
 亀裂の走った『不気味な仮面』。それは巨体の女性に乗り移った召喚魔王『ゼルデギロス』の本体であった。
『このままでは……! 殺されてしまう……! こんな所で殺されてたまるものか!』
 力の奔流が巨躯より迸る。
 掲げた『天槍』の一撃は凄まじいものであった。
 大地を割るほどの一撃。さらには接近すると猟兵たちの体を蝕む『不気味な仮面』。確かに恐るべき力であった。

 けれど、それを恐れぬ者がいる。
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
 堂々と名乗りを上げるダーティ。
 その姿は確かに武士と呼ぶに相応しき威容であったことだろう。魔王を自称する彼女の言葉は山よりも巨大な体を持つ女性にも届いたことだろう。
「恐れをかなぐり捨て、その一身に視線を受けてもなお、怯むことのない見事な丹力……ゆえに私も正々堂々と戦いましょう。そして、どうか私を殺してください。この『仮面』さえ破壊できれば……!」
「いきなり自殺幇助をお願いされちゃいました!」
 ダーティにとっては驚愕のお願いであったことだろう。
 彼女もまた悪魔である。性根が善良であることは言うまでもない。殺してくれと言われて、はいわかりましたとはいかないのである。

 けれど、ダーティは巨体の女性の言葉から感じる覚悟に頷く。
「兎に角、あの仮面を壊せばいいんですね……ってうわ! 私にも仮面が!」
『不気味な仮面』は近づくだけで猟兵たちの体に浮かび上がり、その体と精神を乗っ取ろとうしてくるだろう。
 その影響がダーティにも現れたのだ。
 瞬間、彼女の体の周囲には赤紫色のオーラが火柱のように立ち上り、周囲には自身を指し示す矢印の看板が出現している。
 今までで最も視線を感じる。
 痛いを覚えるほどの多くの視線。

 それを前にダーティは悟るだろう。
 彼女は視線誘導の悪魔。視線を集め、視線によって力を得る者である。ならばこそ、それこそが『真の姿』といえる。
「すごい……これが『真の姿』……あっ!」
 ダーティは己の中にささやく声を聞くだろう。それは紛うこと無き『ゼルデギロス』の声であった。
『もっと視線がほしいのだろう。あらゆる世界の、あらゆる者達の眼を奪い取るほどに。ならば、委ねればいい! お前がオブリビオン化したのならば、お前の望むものはすべて手に入るだろう』

 それは甘言と言っていいものであった。
 けれど、ダーティは頭を振る。そんなのは絶対に嫌だと思ったのだ。体を奪われる事以上に、彼女が『ゼルデギロス』を忌避したのは、『見られる覚悟』がないことだった。
「み、見られる覚悟もない人に私を渡したくありません!」
『真の姿』を晒したダーティは強烈な存在感でもって己の精神を蝕む無数の『不気味な仮面』の視線を振り払う。

 ユーベルコードの輝きが彼女の身に宿る赤紫の炎の如きオーラを増幅させる。
 元悪!纏絡堕落醜穢終(テンラクダラクシュウワイシマイ)。
 己の精神を蝕むのは、『仮面』ではない。
 己の魂すら覗くかのような無数の視線。 彼女が欲するもの。
「これです!」
 これこそが彼女が真に望むものである。『不気味な仮面』によって齎される偽りの視線など彼女はほしくないのだ。

「見事……! 魂をさらけ出してもなお、欲するものがあるのならば、歩みなさい、武士よ。あなたは、その道を邁進するのです」
 巨体の女性からの声は慈愛に満ちたものであった。
 慈しみ、守り育てる時は過ぎ去り。人は己の手を放たれた。ならばこそ、巨体の女性は、その子らの道行きをこそ微笑みで持って見送る。
 膨れ上がるダーティを指し示す矢印。
 そのオーラは『不気味な仮面』すらも吹き飛ばす。
「私になるなら耐えてみてください!」
『なんだ……!? なんだこの視線は!! 見るな!! 魂の奥底さえ見透かすような目で見るな!!』
 焦燥さえ感じさせる『ゼルデギロス』の咆哮。

 そう、ダーティ以外に耐えられるものではないのだ。
 彼女は視線誘導の悪魔。
 求めるは視線。それ以外など不要なのだ。ゆえに彼女は拳を握りしめる。
「できないなら……私の邪魔をするなぁ!」
 人に見られるということ。
 人の注目を集めるということ。
 ただそれだけのために邁進するダーティを止められるものなどいない。放たれた拳が斬撃波となって放たれ、その一撃が巨体の女性の顔を覆う亀裂走った『不気味な仮面』へと叩き込まれ、さらに亀裂を深く刻むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリア・ルート
その仮面を破壊すれば良いのだな。
わかった、ではその仮面を処刑しよう。

っ…そうか、私が強制的に呼び出された理由。この仮面か。心が蝕まれそう…ならば。
来い、私の友にして最高の臣下、■■■よ!(紅黒共闘発動)
現れたらルートライフルをそいつに渡す。私の体の仮面をそいつで撃ちぬけ!

一緒に巨体を駆け上がりながらプルガトリウムを構える。
現れる仮面は■■■に任せ、精神汚染は■■■が仮面を撃ちぬいてくれるまで狂気耐性と演技で我慢。肉体操作は恐ろしいが逆に仮面の場所をわかりやすくしてくれるだろう。

仮面に肉薄出来たらプルガトリウムでトドメだ。
覚悟しろ。その存在を骸へと返してやる!



 召喚魔王『ゼルデギロス』の体は山を超えるほどの大きさである。ゆえに、この戦いが始まって以来、猟兵達はその姿を垣間見ることが出来たであろう。
 女性の姿をした巨体は、都市一つはあろうかという巨大な槍を振るう。
 その一撃一撃が生み出す力の凄まじさは最早語るに及ばない。
 衝撃波が吹き荒れ、近づくもの全てを吹き飛ばすだろう。けれど、猟兵たちのユーベルコードは、それらを超えて『不気味な仮面』へと届くのだ。

 亀裂走る『不気味な仮面』から声が響く。
『いい加減にしろ、『若津姫』! このままでは……!』
「私に構うことはありません。このまま、この仮面を砕けば消滅します」
 ぐらつく巨体の女性。
 それは言ってしまえば、彼女自身の生命を奪う行為であったことだろう。されど、彼女は己の生命を投げ捨てる覚悟を決めていた。
 同時に猟兵たちに対する敬意もまた感じられるものであったことだろう。

「その仮面を破壊すれば良いのだな。わかった、ではその仮面を処刑しよう」
 マリア・ルート(紅の姫・f15057)は戦場にありて一歩を踏み出す。振るわれる超巨大な『天槍』の一撃が荒れ狂うような突風を生み出す中、真紅のドレスをはためかせながら優雅にして壮麗なる姿を晒す。
 それこそが『真の姿』であろう。
 憂いを帯びたような瞳が見据えるのは、己の体に浮かぶ『不気味な仮面』である。『ゼルデギロス』の力による作用であることが見て取れる。

「近づけば、『ゼルデギロス』の放出する『仮面』によって貴方達の心と体を蝕むことでしょう。ですが、見事な武士ぶりであれば何も案ずることはないでしょう」
 そのとおりである。
 マリアは己の姿が『真の姿』に変じたことの理由を『仮面』にこそ見出す。心が蝕まれそうである。
 けれど、それでも彼女は瞳をユーベルコードに輝かせる。
 心が蝕まれるのならば、心を鎧えばいい。
 心を支える者がいればいい。

 ゆえに、そのユーベルコードが輝くのだ。
「来い、私の友にして最高の臣下、■■■よ!」
 マリアは手にした銃剣の備えられたルートライフルを黒髪長髪の男の娘へと手渡す。
 受け取った黒髪長髪の彼は膝をついてうやうやしく受け取るであろう。一種の儀式めいた行い。
 紅黒共闘(ダブルアーツ)。
 即座にマリアの体に浮かぶ『不気味な仮面』を撃ち抜く弾丸。仮面が砕け散り、マリアと彼は共に巨体の女性へと書けかがっていく。

「さあ、行こう、マリア。僕に合わせて」
「わかっている。仮面の処理は任せた」
 二人はもう視線を交わすことも、言葉を告げることも必要とはしていなかった。二人の間柄を示す言葉を探すことさえ無粋であったことだろう。
 迫りくる仮面。
『ゼルデギロス』は焦燥感に駆られていた。彼が乗っ取った巨大な女性は本来の力が振るえるのであれば、猟兵たちも打ち払えるはずであったのだ。

 けれど、巨体の女性は己の生命をなげうつ覚悟を決めていたのだ。
「時は二度と戻らない。逆巻くことがない。だからこそ美しく輝く。彼女らを見なさい、『ゼルデギロス』」
 その言葉の先にあるのはマリアと彼。
 二人は迫る仮面を見事に砕いている。どれだけの狂気と絶望が襲い来るのだとしても、マリアの瞳に燦然と輝くのユーベルコードであり、『ゼルデギロス』の仮面だけを光が捕らえている。

 確かに『ゼルデギロス』のちからは凄まじい。
 肉体を、心を蝕むユーベルコード。ただ一人の力では乗り越える事も難しかったかも知れない。
 けれど、マリアは一人ではない。
 例え、それがユーベルコードによって生み出された記憶の見せる残影であったのだとしても。
「■■■がいてくれるのなら、いくらでも戦える」
 砕けた仮面の破片とともにマリアは巨体の女性の頭上に飛ぶ。

 振りかぶるは、煉獄の炎を纏う刀身。
 銘を『プルガトリウム』。
「覚悟しろ。その存在を骸へと還してやる!」
 振るえば生み出されるは炎の雨。過去よりにじみ出た『ゼルデギロス』を滅する炎が、戦場の空に降り注ぐのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
真の姿:三面六臂の阿修羅風。六本の手に多様な武器を持つ。

異界の魔王ね。どこから引き寄せたんだか。
でも、情勢をしっかり理解してくれていて助かるわ。
これより、あなたに討滅の安らぎを。

仮面から棘が飛んでくる? 「結界術」「オーラ防御」でひとまず対処。
防御を破って身体に刺さった棘から正体を知る。
悪性の厄介な呪い!
「呪詛耐性」「狂気耐性」を発現させて、飛鉢法で回避運動をしながら彼女の頭を目指す。

ごきげんよう、ヒーローマスクの出来損ない。お姉様からは、覚悟しかと受け取りました。必ずや討滅してご覧に入れましょう。

「全力魔法」炎の「属性攻撃」「破魔」で不動明王火界咒。
呪われし仮面よ、疾く骸の海へ還りなさい!



 炎の雨が召喚魔王『ゼルデギロス』の仮面に降り注ぐ。
 すでに亀裂走る仮面は不気味に輝いている。そこに打ち込まれた炎が巨体の女性へと燃え移るだろう。
 尋常ならざる痛みが彼女の体に走っているはずだ。
 けれど、彼女は言う。
「構うことはありません。このまま仮面を砕いて私を殺してください」
『馬鹿な……! 自ら滅びを選ぶなど! このままでは! 貴様の体をよこせ! 言うとおりにすれば滅びないのだぞ!』
『ゼルデギロス』に生まれたのは焦燥感ばかりである。
 彼は本来であれば、強大な力を持つ者。
 それに加えて、巨体の女性の体をも乗っ取っている。完全に支配出来ていないとは言え、その彼女が振るう都市一つはあろうかという巨大な槍を振るえば、立ちどころに敵は吹き飛ばされるだろう。

 荒ぶ衝撃波を前にしながら、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はためらうこと無く、『真の姿』を晒す。
 三面六臂の阿修羅。
 そう言葉で表現することが正しい姿へとへんじた彼女は、迫りくる呪いの棘を前に結界術でもって阻む。
 しかし、呪いの棘はオーラ防御さえも突き抜けてくる。
 さらに『不気味な仮面』が己の体の上に出現する。それはゆかりの心と体を侵食する呪いそのものであった。

 それが悪性の呪いであることを理解したゆかりは、肉体に宿る呪詛と狂気に対する耐性を高め鉄鉢に乗って巨体の女性へと迫る。
「厄介な呪いね」
 異界の魔王。
 それが『魔王ガチデビル』の呼び寄せた召喚魔王『ゼルデギロス』である。何処の世界から招き寄せたのかはわからない。
 けれど、巨体の女性の言葉は猟兵たちに利するものであったことだろう。
「情勢をしっかり理解してくれていて助かるわ。これより、あなたに討滅の安らぎを」
『滅びるものか!『六番目の猟兵』! お前たちに殺されてなど……!』

 振るわれる槍の一撃は凄まじい。
 ただの一撃で大地は穿たれ、衝撃波が暴風のようにゆかりを襲うだろう。
 けれど、その風を躱しながらゆかりは飛ぶ。揺れる木の葉がそうするように風に乗り、風とともに巨体の女性の頭上へと迫るのだ。
「ごきげんよう、ヒーローマスクの出来損ない。お姉様からは、覚悟しかと受け取りました。必ずや討滅してご覧にいれましょう」
「見事な武士ぶり。ならばこそ、正々堂々と参りましょう」
 振りかぶられる『天槍』。
 その一撃を受ければ『真の姿』を晒したゆかりですら叩き伏せられてしまうだろう。

 だからこそ、狙うは一点。
 そう、『ゼルデギロス』の仮面である。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
 投げつけるは白紙のトランプ。
 ばらまかれたトランプから吹き出す炎が束となって、不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)へと姿を変える。
 絡みつき不浄を灼く炎は、『ゼルデギロス』の仮面へとまとわりつき、ひび割れた本体をさらなる炎でもって浄化する。

「呪われし仮面よ」
『やめろ……! お前たちは何をしているのかわかっているのか! この『ゼルデギロス』を……!』
 滅ぼす。
 かつて在りし世界に在りて、かの魔王がどれほどの傷跡を残したのかをゆかりたち猟兵は知らないかもしれない。
 けれど、たった一つだけわかっていることがある。

 目の前の『ゼルデギロス』は過去の存在だ。
 オブリビオンである。世界に停滞をもたらし、滅びを呼ぶ存在。ならばこそ、ゆかりは己の輝くユーベルコードと共にこれを討ち滅ぼすのだ。
「疾く骸の海へ還りなさい!」
 ゆかりの瞳が一層強く輝き、その炎をもって『ゼルデギロス』の仮面を焼くだろう。
 絡みつき、不浄そのものを滅ぼすのが炎の役目であるのならば、その巨体の女性を忌まわしき魔王から解き放つように煌々と燃え盛るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
身体を操られながらも誇りを失わぬ覚悟、お見事ですの
是非永遠としたいところですけれど
美しくないものがこびりついていますし
今回は諦めますの

私を支配しようとは不遜もよいところですけれど
封印を潜って侵食するのはやめた方が良いですの
仮面とやらが石になるだけですの
もっとも、それを超えたところで
私の権能は停滞ですから
永遠に辿り着く事はありませんの

さて、使い魔の皆様
よろしくお願いしますの

まかされたのですよー
いくらつよくても、すべてをおとすことはできないのです
かめんにとりついてはかいするのです

私は神気で相手の攻撃を防いだり
反撃を妨害したりしていますの

今回は邪神もあまり放置したくない手合いのようだし
任せておこうか



 炎はあらゆるものを浄化するのならば、それは滅びに寄る浄化であったことだろう。
 超巨体の女性の顔を覆う『不気味な仮面』こそが召喚魔王『ゼルデギロス』の本体であった。その仮面が砕けた時、『ゼルデギロス』は滅び、同時に巨体の女性もまた消滅する。
 それが巨体の彼女の覚悟であった。
「既に死している私に価値はない。この体が『ゼルデギロス』、あなたの棺となるのです。『六番目の猟兵』よ、構うことはありません。その武士たる力を示し、私を滅ぼすのです」
 彼女は言う。
 名も知らぬ彼女の言葉に多くの猟兵達は頷くだろう。
 過去の化身。オブリビオンは存在するだけで世界を滅ぼす。ゆえに巨体の彼女は己の肉体が滅びることをいとわない。

「体を操られながらも誇りを失わぬ覚悟、お見事ですの。是非永遠としたいところですけれど」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の内なる邪神は告げる。
 この戦場にありて放出される仮面は『ゼルデギロス』による肉体と心を侵食する力そのものである。
 引きずり出されるように『真の姿』を晒した晶の内側にある邪神は続ける。
「美しくないものがこびりついてますし、今回は諦めますの」
『ほざけ、『六番目の猟兵』! お前たちが滅ぼそうなどと……!』
 放出される呪いの棘が晶へと迫る。

 その棘が突き立てられれば、如何に『真の姿』を晒した猟兵であろうとも最悪『オブリビオン化』されてしまう。
「私を支配しようとは不遜もよいところですけれど、封印を潜って侵食するのはやめた方が良いのですの」
 邪神の権能は固定と停滞。
 ならばこそ、その深奥に触れるということは、その身を石へと変えられることへの同意に過ぎないのだ。

『――停滞の権能……永遠を司る神性!』
「私の権能は停滞。永遠に辿り着くことはありませんの」
 漲るユーベルコードの輝き。
『鉑帝竜』と呼ばれる巨竜形態へと変貌し、その身にまとった神気の防護膜は呪いを寄せ付けないだろう。
 さらに圧倒的な物量ともいえる使い魔たちが生み出されていく。
「さて、使い魔の皆様。よろしくおねがいしますの」
 その言葉とともに帝竜の軍勢(エアリアル・アーセナル)は生まれ出る。宙を走る姿は鈍色の飛蝗ともいえるであろう。

「まかされたのですよーいくらつよくても、すべてをおとすことはできないのです。かめんにとりついてはかいするのです」
 神気が満ちていく。
 放出される仮面は、確かに猟兵の体を侵食するであろう。ゆえに晶の身の内にある邪神は停滞でもってそれらを押し止める。
「今回は邪神もあまり放置したくない手合いのようだね……任せたよ」
 晶の言葉に使い魔たちが頷く。
「まかされたのですよー」
 次々と巨体の女性へと取り付いていく使い魔達。彼女たちは振り払う掌に負けじと、その頭部を覆っている『不気味な仮面』へと至る。

『この……! 鬱陶しい!』
 迸る呪いの棘。
 けれど、使い魔たちがそれを防ぎ、撃ち落とされてもなお、圧倒的な物量で持ってすりつぶしていくのだ。
「永遠の如き軍勢を相手にするのは骨が折れるでしょう。例え、どれだけやり直そうとも、あなた如きの心であれば、すぐさま擦り潰れるというもの」
 ならばこそ、邪神は告げるのだ。
 美しくないと断じた者へと送るものは唯一。

 そう、滅びである。
「失敗を否定するからこそ、時が逆巻くことを望む。『ゼルデギロス』、お前では彼らに敵うものではありませんよ」
 巨体の女性の言葉が響いた瞬間、鈍色の鋼を纏う巨竜の一撃が『不気味な仮面』を強かに打ち据え、その体をデビルキングワールドの大地に沈ませるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
むむむ……分かった。その望み、我が叶えてやろう

(真の姿:ちょっと堕天使、つまり元々の姿要素が増してる)
UCで109体のちびワルルーナに分裂するぞ!
今の我は群体、一体一体はその一部にすぎぬ。
なら仮面が出たりトゲが当たった“部位”を切り捨てれば問題はない!
「ちびAがトゲに当たった!」「すぐにかいしゃくだー!」「いやあたったじてんでしんでた」「きょじゃくー!」

ふん、貴様と違って我には叶えてやるべき願望を抱えた誰かも、養うべき部下もたくさんおるのでな!変な仮面被って時間を無駄にしてる暇はないのだ!

数が減れば再変身で補充し、その度に増えて数と勢いで群がり、
一体でも辿り着ければ仮面にブレスを吹き付けるぞ!



 鋼鉄の巨竜の一撃が巨体の女性、その頭部を覆う『不気味な仮面』たる召喚魔王『ゼルデギロス』を打ち据える。
 亀裂が走り、炎によって蓄積されたダメージがついには山を超えるほどの巨体を大地に沈める。
 しかし、それでもなお立ち上がる巨体の女性。
 未だ滅びず。
 その願いは、ただ一つである。頭部に覆われた『不気味な仮面』を砕き、己もろとも『ゼルデギロス』を滅ぼすこと。
「何も案ずることはありません。私は天寿を全うしています。ならば、何一つ損なわれるものはないのです。ですから」

 その言葉は慈愛に満ちていた。
 失敗も不足も、何もかも肯定するものであった。人の可能性を信じるからこそ、巨体の女性は愛おしきものに告げるように言葉を紡ぐ。
 失敗とは経験である。
 その経験があればこそ、次なる進化を為すことができることを彼女は知っていた。ゆえにすでに滅びた存在である己が、歪むこと無く滅びることこそが望み。

 ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は『他者の欲望を満たす事』こそが己の欲望であると知る。
「むむむ……分かった。その望み、我が叶えてやろう」
 周囲に渦巻く呪いは、ワルルーナの『真の姿』を引きずり出すようであった。彼女のラスボスの魔王たる姿は、威風堂々たるものであり、上半身の堕天使の要素が普段の姿より増している用に思えたことだろう。
 しかし、そんな彼女にも『ゼルデギロス』の放つ『仮面』は取り付き、心と体を侵食していくのだ。

「我が体を乗っ取らんとするか! だがな!」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 無尽の堕天竜魔王・改(ワルルーナレギオンプラス)は、その体を群体へと変貌せしめるユーベルコードである。
 百にも及ぶ分裂によって、その体はダウンサイジングされる。
 言ってしまえば、ちびワルルーナである。彼女たちは一斉に巨体の女性へと立ち向かっていく。

 だが、分割された時点で彼女の力もまた分割されているのだ。
 呪いの棘が放出され、仮面が浮かび上がるだけで彼女たちは即座に苛まれてしまうだろう。
「ちびAがトゲにあたった!」
「すぐにかいしゃくだー!」
「いやあたったじてんでしんでた」
「きょじゃくー!」
 そう、呪いのトゲも、仮面が体を蝕むことも、全てが一瞬で終わってしまう。あまりにも弱かったのだ。

 だが、倒れる度に変身を重ねていく。
 それは群体を構成するちびワルルーナたちの数と身長が二倍になっていくことへの布石である。
 たった一体でもちびワルルーナが残っているのならば、そこから再起が可能なのだ。
『この……! 鬱陶しい小蝿が……!』
「ふん、貴様と違って我には叶えてやるべき願望を抱えた誰かも、養うべき部下もたくさんおるのでな! 変な仮面をかぶって無駄にしている暇はないのだ!」
 ワルルーナは告げる。

 例え、その肉体と魂が呪いの如き『仮面』によって侵食されようとも、彼女には揺るぎない唯一つの望みがある。
 それが『他者の望みを叶える事』であることは『ゼルデギロス』には理解などできなかったであろう。己の欲望のままに振る舞うのがオブリビオンである。
 ならばこそ、ワルルーナの他者を起点とした考え方は理解できないのだ。
『他者のための欲望だと……!? そんなものが、この『ゼルデギロス』を滅ぼすというのか!』
 焦燥が『ゼルデギロス』を飲み込んでいく。
 どれだけ打ち払ってもちびワルルーナたちは消えない。それどころか、振り払う度に数をましていくのだ。

 勢いが止まらない。
 次々と巨体を這うようにしてちびワルルーナたちが駆け上がっていく。もうただふるい落とすだけでは倒すことができなくなっている。
『ゼルデギロス』は、その光景に羽虫が己の体を駆け上がってくるかのような嫌悪感を覚えたことだろう。
『若津姫……! 言うことを聞け! このような羽虫どもに滅ぼされるのだぞ!』
「いいえ、羽虫ではありません。彼女たちこそ武士。坊や達にも勝るとも劣らない、素晴らしき者達。それゆえにお前は滅びるのです」

「たどり着いたぞ! その仮面、我の息吹で潰えるがいい!」
 ついにちびワルルーナの一人が巨体の女性の頭部まで辿り着く。その吸い込んだ息は猛烈なる衝撃波となって巨体の女性の顔面を覆う『不気味な仮面』に叩きつけられ、亀裂をさらに深いものへと変えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

プフェルトラム・メーベルナッハ
【ダンス】の動きを以て、かの敵の身体を【ジャンプ】し跳び上がり、その肩を目指していきます。

私は自由なる者。私は何者にも縛られることなく、己の思うまま、願うままに在る者。
私は、地に在りても空に在りても舞い踊る者。
なれど、貴方の掌の上で踊ることは無いと知るが良いでしょう…!

その信念を以て、精神汚染に対抗。踊るが如き上昇と回避の機動は、信念を己の肉体で以て表現する意を込めます。

彼女の肩まで到達しましたら、改めて舞を披露すると共に疾り渦巻く旋風舞を発動。
仮面へ向けて真空の渦をぶつけて削り、更に魔法剣による追撃を撃ち込みましょう。
「訪れるは貴方の望んだ終焉でなく、貴女の望んだ終焉であると知りなさい」



 亀裂走る『不気味な仮面』は、まるで痛みにあえぐように音を立てる。
 それは召喚魔王『ゼルデギロス』の本体であるが故だ。
『馬鹿な……! 自ら滅びを望むなどと! 若津姫、わかっているのか! 目の前にいるのは『六番目の猟兵』だ! 殺されてしまうのだぞ!!』
 焦燥がこみ上げてくるように『ゼルデギロス』は叫ぶ。
 しかし、その言葉を意に介さないのは巨体の女性である。彼女は完全に支配されてはいなかった。
 肉体の主導権は奪われていても、その意思を冒せるものではなかったのだ。

「すでに天寿を全うした身。すでに一度死した生命。ならば、私自身に価値はありません。何を嘆くというのです、『ゼルデギロス』。失敗を否定し、繰り返し、学ばぬあなたが彼らに敵う術などないのです」
 彼女の言葉を示すように、その巨体を踊るように駆け上がってくる者の姿がある。
 軽やかに、舞うように。
 それはまさに舞踊と呼ぶに相応しいものであったことだろうう。

『不気味な仮面』と呪いのトゲが乱舞する最中にあってさえ、美しさを見出すことのできるほどの見事な舞踏。
 プフェルトラム・メーベルナッハ(千夜の踊り手・f00012)は歌うように告げるのだ。
「私は自由なる者。私は何者にも縛らえっることなく、己の思うまま、願うままに在る者」
 心に去来するのは確かに呪いであった。
『ゼルデギロス』の放つ仮面は、その心にあるであろう陰と陽のバランスを突き崩す。それによって肉体を奪い、心を縛るものであった。

 しかし、プフェルトラムは違う。
 その心は此処に在りてもなお、自由なるものである。
 誰にも捉えることはできない。
 束縛することなど出来ない。それほどまでに彼女の舞は美しきものであったことだろう。
 誰もが、それを望んでしまうほどに。
「私は、地に在りても空に在りても舞い踊るもの。なれど、貴方の掌の上で踊る事はないと汁が良いでしょう……!」
 信念と呼ばれるものがあるのならば、きっとそれこそが『不気味な仮面』の呪いの対抗できるものであったことだろう。
 呪いのトゲが迫るとて、プフェルトラムは見事な踊るが如き足さばきで持って巨体の女性の肌の上で躱すのだ。
 信念こそが肉体でもって表現すること。

 舞踏とはそのようなものである。
 信念宿るものが何者にも冒せぬように。プフェルトラムは、疾り渦巻く旋風舞(ヴィルベルヴィント・シュトラヴェル)によって突風と共に巨体の女性を駆け上がっていく。
「この風に乗って――!」
「見事な武士ぶりです。坊や達と同じく『ゼルデギロス』に屈することのない魂の持ち主たち。貴方達が滅ぼす。この仮面を砕くのです」
 吹き荒れる衝撃波は巨体の彼女が『天槍』を振るうからであろう。その凄まじさは確かに驚異的であった。

 けれど、プフェルトラムは微笑みながら舞う。
 暴風と突風の最中を縫うようにして。肩まで駆け上がった彼女は、うやうやしく舞を披露するように、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「訪れるは貴方の望んだ終焉ではなく」
『終焉など認めぬ! この『ゼルデギロス』は滅びなど許容しない!』
 もうプフェルトラムは、『ゼルデギロス』を見ていなかった。
 彼女が見据えるのは、巨体の女性の本来の瞳。仮面に覆われた顔の先にある瞳であった。

 彼女が舞を捧げるのは、巨体の女性のため。
「貴女の望んだ終焉であると知りなさい」
 真空の渦が『ゼルデギロス』の仮面と巨体の女性を包み込んでいく。吹き荒れる風も、何もかもがプフェルトラムのユーベルコードによってたぐられる。
 風に捧げる舞は、まるで刃のように『ゼルデギロス』の仮面へと打ち込まれ、亀裂から砕いていく。
 さらにプフェルトラムの放った魔法剣が疾走り、さらに巨大な仮面を砕く楔と成るだろう。
「『ゼルデギロス』、私の手を取る必要などありません。風の赴くままに砕かれるがよいでしょう――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

グラディス・プロトワン
※アドリブ歓迎

機械は誰かに使われてこそ真価を発揮する
その使い手が優秀であれば尚更だ
お前に俺が使いこなせるか、試してやろう

なるほど、確かに肉体を操る能力に長けているようだ
俺の身体や能力をなかなかに上手く使いこなしているじゃないか

真の姿は確かに強力ではあるが、その分消耗も激しい
ただでさえ試作型で燃費が悪い俺の身体だ
じきにエネルギー不足で猛烈な飢餓感に襲われるだろう
お前は耐えられるか?

俺は長年この身体と付き合っているからな
もう十分覚悟ができている
お前にはそういった覚悟が足りていないのだろうな

……彼女の覚悟は本物、だな
ならば、こちらもそれに応えねばなるまい!
浪費したエネルギーはお前から回収させて貰おう



「諦めなさい、『ゼルデギロス』。あなたに道はない。私とともに滅びるしかないのです」
 巨体の女性から発せられる言葉は、己もまた滅びることに些かの恐怖も感じていないようであった。
 顔面を覆う『不気味な仮面』は亀裂が走り、砕け始めている。
 それこそが召喚魔王『ゼルデギロス』の本体である。
 焦燥に駆られるように『ゼルデギロス』は巨体の女性の体を操り、都市の一つはあろうかというほどの巨大な槍を振るう。
 その衝撃波たるやすさまじいの一言に尽きる。

『誰がお前と共に滅びるものか!『六番目の猟兵』に殺されてなぞやるものか! いいから言うことを聞け!!』
『ゼルデギロス』の咆哮とともに放たれる無数の仮面。
 それこそが巨体の女性が危惧した『オブリビオン化』すら齎す力である。
 この仮面の力が巨体の女性を操っている事は明白である。だからこそ、油断などならない。確かに猟兵たちが戦いの趨勢を傾けさせている。

 けれど、猟兵達は知る。
 この戦場に降り立った瞬間から己たちが『真の姿』をさらけ出していることに。己の意志ではなく、引きずり出されるようにして晒してしまっているのだ。
「この仮面の力か……」
 グラディス・プロトワン(黒の機甲騎士・f16655)は呻くようにして呟く。
 しかし、その言葉は裏腹に余裕のあるものであったことだろう。
 彼は古代帝国で製造された人型ウォーマシンである。
 有機物、無機物問わずに仮面は侵食してくる。その力は凄まじいものであったし、魔王の名を冠するに値するものであった。

「機械は誰かにつかわれてこそ真価を発揮する。その使い手が優秀であればなおさらだ」
 グラディスにとって、それは宿命のようなものであったことだろう。
 己自身に意志あれど、その意志こそ使い手足り得るものである。己以外の者が己の躯体を手繰るというのならば。
「お前に俺が使いこなせるか、試してやろう」
『ほざけ、『六番目の猟兵』! 意志宿す鋼鉄など!』
 仮面がグラディスの躯体に寄生するように付着する。躯体のコントロールが奪われていく。グラディスの電脳がエラーを吐き出しているだろう。
 明滅するアイセンサーが、その侵食の速さを物語っている。

 確かに躯体を操る能力は脅威そのもの。
 あの巨体の女性もこうして肉体の主導権を奪われていしまったのだろう。荒れ狂うように吹き荒れる戦場の風を受け流すしながら、仮面によって躯体のコントロールを奪われたグラディスは冷静に分析する。
「俺の身体や能力をなかなかにうまく使いこなしているじゃないか」
 本来、グラディスの躯体は補給困難な僻地でも活動できるようにエネルギー吸収機構を備えている。
 実験的な機構出逢ったがゆえに、燃費が悪いという欠点があれど、この荒れ狂う戦場にあっては補給に値するエネルギーは溢れている。

『他者の力を奪う機構でもって躯体を突き動かすか。これならば――!』
『ゼルデギロス』はグラディスの支配権を奪いながら笑う。
 確かに巨体の女性の体は尋常ならざるものであった。けれど、グラディスの体ならば、もっと効率的に猟兵たちを叩ける。
 戦いながら他者の力を奪う。
 それは合理的に思えたからだ。

 けれど、グラディスは告げる。
 幾ばくか残った電脳から躯体に告げるのだ。
「確かに強力だ。だがな、その分消耗も激しい。ただでさえ試作型で燃費が悪い俺の体だ。もうわかっているのではないか?」
『な、なにがだ……!? 何をいって――……ッ!? な、なんだ、急激なパワーダウンする!? 何がどうなって――!!』
 狼狽する『仮面』からの言葉にグラディスは冷静であった。
 彼の真の姿は確かに強力無比。されど、その力はアクセルをベタ踏みでは何れ枯渇するのだ。

「今感じているだろう。急激な飢餓感を。俺は長年この体と付き合っているからな。もう十分に覚悟が出来ている」
 そう、巨体の女性と同じように。
 飢餓感はウォーマシンと言えど耐えられるものではない。エネルギーが枯渇すれば、止まる。躯体を維持するためのエネルギーさえなくなれば、朽ちるだけだ。
 それは即ち死と呼ばれるものだ。
『覚悟……!? 覚悟だと!?』
「ああ、お前にはそういった覚悟が足りていないのだろうな。だから、お前は耐えられない」
 グラディスが告げた瞬間、そのアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 支配権を奪い取る電脳が走り、奔るは電流石火。

「鋼鉄の武士よ」
「ああ、わかっているとも。お前の覚悟は本物、だな」
 そう、巨体の女性の覚悟は本物である。ならば、応えねばならない。そのアイセンサーが煌き、枯渇したエネルギーを補うようにグラディスは頭部を覆う仮面まで跳躍する。
 開放されるエネルギー吸収機構。
 その暴威が今、ユーベルコードともに振るわれる。
 スタティック・サクション――それこそがグラディスの本領である。活力を根こそぎ奪うかのようなシステムは、グラディスを襲う飢餓感に比例するように仮面から、渇きを満たすように吸い上げ続け、亀裂をさらに深く刻み込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
…あんまりこの姿は見せたくないんだけど。
嫌な記憶思い出しちゃうし…仮面の作用だよねコレ。
邪悪な仮面、大魔王のとは別系統っぽいけど壊さないと。
一刻も早く。

陽だまりのオーラに破魔の魔力全力で込めて侵蝕を鈍らせる。
足りなければ符にも破魔の力籠めてブースト。
同時に嫌悪感に抗わなきゃ。
槍を見る。これは人を守らねばならない騎士の証。
志半ばで犠牲にされたあの子の願いを果たす為に私は旅を続けてるんだから。
私自身のつまらない憎しみを、騎士猫クーナなら抱きはしない。
侵食突破したら全力ダッシュでゼルデギロス登って仮面へと近づきUCで槍の連撃喰らわせる!

※アドリブ絡み等お任せ
真の姿は服装のみ変化、令嬢のような黒ドレス



 戦場にありてクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は言いようのない不快感に襲われていたことだろう。
『真の姿』を引きずり出されるようにして晒したこともそうであるが、同時にクーナの脳裏に好ましくない記憶を黒き令嬢の如きドレスは想起させるものであったからだ。
 体に浮かぶ『不気味な仮面』。
 それがこの現況であることをクーナは知る。

 男装のケットシーの羽つき帽子が吹き荒れる戦いの風に揺れる。
 灰色のなめらかな毛並みを今包み込んでいるのは、陽だまりの如き暖かなオーラ。彼女は思い出す。
 その暖かさにこそ、思い出すのだ。
 なにゆえ己が戦うのか。握りしめた魔術府が破魔の力を発露する。
 あの邪悪をこそ討ち滅ぼさなければならない。見上げる先にあるのは山よりも巨大な女性の姿。
 その頭部を覆う『不気味な仮面』は猟兵たちの力によって亀裂を深めている。
「小さき武士よ。恐れることはありません。貴女の中にある嫌悪は貴女が自身が踏み越えることのできるもの。貴女の中より生まれたのならば」
 できるはずだと巨体の女性が言う。
 慈愛に満ちている。己が滅びることをも覚悟した彼女の言葉にクーナは顔を上げる。

「一刻も早く……!」
 壊さなければならない。あの仮面はすべての人を傷つける原因だ。だからこそ、胸に湧き上がる嫌悪感に抗う。手にした槍を見れば、クーナは決意を新たにするだろう。
 白雪と白百合の銀槍。
「これは人を守らねばならない騎士の証」
 歯を食いしばる。仮面の侵食は心と体を蝕むものだ。

『志半ばで犠牲にされた者の願いを果たすためなのだろう? ならば永遠が居るはずだ。か弱き人の生命では、志あれど断たれてしまう。お前はそれを見てきたはずだろう』
 召喚魔王『ゼルデギロス』の声が仮面から反響するようにクーナの体を蝕んでいく。
 痛みが奔る。
 それは肉体と心両方いっぺんに襲うものであった。こうやって『ゼルデギロス』は人を傷つけてきたのだ。己の欲望のままに。
 ならばこそ、クーナは告げねばならない。己が何のために旅を続けているのか。
 そして、己が相対する者の憎しみを断じなければならない。

「私自身のつまらない憎しみを、騎士猫クーナなら抱きはしない」
 そう、己の銀槍が告げている。
 振るわれる都市の一つほどあろうかという巨大な槍の一撃に立ち向かう。騎士猫クーナならばどうするか。
 答えはたった一つだ。
 あの仮面を破壊するために、己の胸にいだいた陽だまりを持って走らねばならない。
『わからないのか。お前の憎しみは、ただ一人のものではないはずだ。誰もが抱くものだ。誰もがぶつけどころを探しているものだ。お前は、それすら捨てるというのか!』
 その言葉に応えるようにクーナは疾走る。

 巨体の女性を駆け上がっていく。
 敵が山脈の如き威容を誇るというのならば、この小さき一歩であったとしても踏破せしめる。それが騎士猫クーナであると示すのだ。
「それでいいのです。小さき武士よ」
 慈愛に満ちた声が振ってくるようであった。クーナは駆け上がったままに跳躍し、その銀槍の一撃を放つ。
 それを躱すことなど出来はしない。

「さあ――クーナの槍さばき、とくと味わうといい」
 騎士猫は旋風のように(エレジー)駆け抜ける。
 山脈も、敵の威容も、憎しみも。
 陽だまりを抱えて駆け抜けていく。ただそれだけでいいのだ。守らねばならぬ騎士の証を汚すことなど『仮面』には出来はしない。
 揺れる天秤の心あれど、抱くは陽だまり。
 人の心の冷たさも、憎悪も陽だまりが溶かしていく。クーナの振り抜く銀槍の閃光が『ゼルデギロス』の仮面を、さらに砕くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
体に生えた仮面を強引に引き剥がそうとする。

冗談、じゃない…。敵に成るぐらいなら……
かの者の如くッ!死を選ぶ!!

敵への【闘争心】、巨体の女性に倣い、精神侵食を抑え、
偽神霊物質を解放、仮面ごと侵食を【捕食】肉体異形変形。
赤黒い皮膚と【怪力】獲得…!

アアアアアッ!!!

『戦塵突撃』発動、両目の人工魔眼を最大稼働させ飛翔
攻撃を回避し、ハルバードをゼルデギロスの仮面目掛けて【投擲】
【念動力】で軌道をねじ曲げ、仮面に突き立てる!

壊れろ、壊れろ!!ゼルデギロス!!!

【瞬間思考力】最高速で飛翔し【空中機動】
ハルバードへカーレッジホイールを叩きつけて更に押し込み
車輪高速回転、震動【衝撃波】で仮面を更に粉砕する!!



 猟兵達は見る。
 その『不気味な仮面』を。己の体に生えた仮面が『真の姿』を引きずり出す様を。
 悍ましきものであった。
 人の心を暴き立てるものであった。到底許されざる行いであったし、他者を傷つけるだけの力であったことだろう。
 召喚魔王『ゼルデギロス』の力とはそういうものである。
『不気味な仮面』によって巨体の女性の肉体を乗っ取ったように、猟兵たちの肉体と心さえも侵食し『オブリビオン化』させようとしているのだ。

 だが、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は己の体に浮かび上がった『不気味な仮面』を無理矢理に引き剥がす。
『何を、している!? 自らが傷つことも厭わないというのか! それは精神にも根を張っているのだぞ……肉体のみならず魂までも傷つける行為だ! 何を馬鹿なことを……!』
『ゼルデギロス』が狼狽する。
 彼にとって、小枝子の行為は理解できぬものであった。
「あなたにはわからぬことです、『ゼルデギロス』。『六番目の猟兵』が何故そうするのか」
 巨体の女性の声は静かなものであった。その瞳は慈愛あれど、小枝子を止めるものではなかったのだ。

 血潮が溢れながら仮面を引き剥がした小枝子が咆哮する。
「冗談、じゃない……敵に成るぐらいなら……かの者の如くッ! 死を選ぶ!!」
『馬鹿な……! 生命あるのならば、何故死に急ぐ!!』
『ゼルデギロス』は知らない。
 確かに人は弱いものである。死んでしまうかも知れない。けれど、負けるようには出来ていないのだ。
 それを小枝子は示してみせた。
 オブリビオンに対する闘争心。
 眼前にそびえる巨山の如き女性に習うかのように、己の心を侵食する仮面を抑え込み、偽神霊物質を開放し、引き剥がした仮面ごと侵食を捕食する。

 肉体の変異が始まる。
 赤黒い皮膚に染まる小枝子の姿。それこそが『真の姿』である。引きずり出されるのでなく、己が獲得した力であるというように彼女は咆哮する。
「アアアアアッ!!」
 煌めくはユーベルコード。
 全身を覆う超能力が攻性障壁となって、煌めくユーベルコードを湛える魔眼から血の涙が溢れる。
 負荷が異常な領域にまで達している。
 両目が燃えるように輝いている。人工魔眼は、彼女の魂に負荷を与えるものであった。けれど、同時に彼女の魂に存在する闘争心に火を付けたのだ。

『進め』
 ただ、その声だけが聞こえる。
『進め!』
 そうせよと命じられたからではない。心の奥底から湧き上がるものがあるからこそ、小枝子はハルバードを構える。
 目の前にあるのはなんだ。問いかける言葉に返す言葉はたった1つである。
 あれこそが敵である。
 己が滅ぼすべき敵。
 ならば。
「突き進めぇッ!!」
 咆哮とともに戦場を疾走る小枝子。閃光のように放つはハルバードの投擲。巨躯を誇る仮面へと投げ込まれたハルバードは念動力でもって軌道を捻じ曲げ、如何にしてでも突き立てんと宙を疾走る。

「壊れろ、壊れろ!!『ゼルデギロス』!!!」
 飛翔する小枝子が肉薄している。
『ゼルデギロス』は理解しただろう。これが『六番目の猟兵』である。交渉の余地などない。己がオブリビオンである限り、必ず滅ぼし、滅ぼされるだけの間柄にしかならぬ生命の埒外にある者たち。

 放つ仮面など物ともせず、血潮を撒き散らしながら迫る小枝子の鬼気迫る形相に『ゼルデギロス』はたじろぐ。
 その一瞬が分かつ。
「粉砕するのみッ!!!」
 ハルバードが巨大な『不気味な仮面』に突き刺さり、そこに叩き込まれるは車輪型のメイスの一撃。
 車輪が高速回転し、震動によって衝撃波が仮面に疾走る。
『ゼルデギロス』は怨嗟を上げるしか出来ない。それしかできないのだ。

 恐怖も何もかも塗りつぶす破壊の力。
 小枝子の叩きつける破壊衝動は、まさにそれである。破壊の力の衝動に任せる者に言葉は届かない。
 なれば、『ゼルデギロス』は己の力が及ばぬ者をこそ遠ざけんとするだろう。
 けれど、小枝子は猟兵である。
 彼女の偽神霊物質がまるで逃さぬというように仮面をつかみ、小枝子は砕けたメイスごと、己の拳を叩きつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
機神搭乗

…でけーお姫さんだがそうそうビビってたまりますか!
「メルシーがいるから大丈夫だぞ☆」
おめー精神浸食されんじゃねーぞ!

対精神
【属性攻撃・念動力・浄化】
闇属性を己に付与して精神抵抗強化
念動力による仮面の封じ込めと浄化でも抵抗
更に
存分にナイアルテのナイスバディを思い浮かべる!
「ひゃっはー☆」
こうして頑張ればきっと労ってくれるはずです!
「ナイアルテちゃん可愛いもんねー☆」
助平根性で支配に抗うあほあほコンビ!

こんな仮面に僕の欲望を支配されてたまるか!

【空中戦・弾幕・二回攻撃・切断・スナイパー】
UC発動
超高速で飛び仮面に念動光弾を叩き込みつつ鎌剣で切り刻む!
仮面は帝竜眼で間に合ってるわばっきゃろー



 その女性の巨躯は山よりも巨大であった。
 振るう槍は都市の1つはあろうかと言うほど巨大であり、振るわれるだけで凄まじい衝撃波が猟兵たちを襲う。
『このままでは殺されてしまう! 若津姫、わかっているのか! お前もまた滅びることになるのだぞ!』
 召喚魔王『ゼルデギロス』の声が響く。
 そこにあったのは焦燥であった。巨体の女性の力は凄まじいものであった。それは疑いようがない。けれど、彼女は『ゼルデギロス』の支配に抗っていた。
 支配の全てをはねのけることができないまでも、その意志は『不気味な仮面』に支配されることがなかったのだ。

「いいえ、私とともにあなたは滅びるのです、『ゼルデギロス』。あなたは愚かな侭」
 巨体の女性の顔面を覆う『不気味な仮面』には亀裂が走っている。
 すでに多くの猟兵たちが、『ゼルデギロス』の本体である仮面にユーベルコードを叩き込んでいる。打倒への道筋はすでに刻まれているのだ。
「……でけーお姫さんだが、そうそうビビってたまりますか!」
『メルシーがいるから大丈夫だぞ☆』
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は界導神機『メルクリウス』と共に戦場を駆け抜ける。
 だが、その機体の中にあっても『ゼルデギロス』の放つ『不気味な仮面』は侵食してくる。
 これが心と肉体を蝕む呪いであることを彼は知るだろう。
「おめー精神侵食されんじゃねーぞ!」

 カシムは己の肉体と心に浮かび上がる『不気味な仮面』に在らがう。
 念動力に寄る仮面の封じ込めと浄化。
 それだけでは足らない。引きずり出されるものがあるのを彼は感じたことだろう。けれど、彼には秘策があった。
 いつだって彼を突き動かす衝動。
「これでも足りねーってんなら!」
 思い浮かべるのはナイスバディ。見事な曲線。目の前の巨体の女性だって見事なものだ。男であるのならば、女体に思いを馳せることに何の恥じらいがあろうか。いやない。

 いや、あるだろと誰かがツッコミを入れればよかったのだが、本来その役目を持つであろう『メルシー』は逆であった。
『可愛いもんねー☆』
 完全に同意というように主人とシンクロする思い。
 かなり、その、なんというか、この場にそぐわぬ下心満載な思念であったが、意志の強さに上品も下品もあったものではないのである。
 その力の強弱こそが『ゼルデギロス』の侵食を跳ね飛ばすというのなら、それもまた真理であったことだろう。

「こんな仮面に僕の欲望を支配されてたまるか!」
『冗談ではないぞ……! こんな所でこの『ゼルデギロス』が!』
「加速装置起動…メルクリウス…お前の力を見せてみろ…!」
 神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)が発動する。機体より放たれるユーベルコードの残光だけが巨体の女性の体にまとわりつくように残るのみ。
 それほどまでに『メルクリウス』の速度は上昇している。
 凄まじい速度に達した『メルクリウス』を捉えることはできなかった。
 乱舞するように放たれる光弾が己の道を阻む仮面や呪いのトゲを打ち据えて、道を開く。
 ただ一直線に走り抜けるユーベルコードの残光が山よりも巨大な女性の眼前に疾走る。

「仮面は帝竜眼で間に合ってるわ、ばっきゃろー!」
 カシムは己の瞳を開く。
 今まで強く念じていた意志の発露とでも言うべきであろうか。『メルクリウス』が手にした鎌剣が『ゼルデギロス』の仮面へと振り下ろされる。
 一閃は亀裂を縫うようにして放たれ、砕く。
『生命の埒外……!『六番目の猟兵』……! おのれ! おのれ! おのれ!!』
『ゼルデギロス』の怨嗟が響き渡る。
 傾ぐ巨体。
 カシムは煩悩もまた人の意志の1つであると示すように、振るった鎌剣を収め神速のままに飛ぶのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
真の姿:モノクロになって目が赤くなる。何か行動する度に周囲にノイズが走る。

はー、あの仮面がゼルデギロス…賢竜オアニーヴを操った仮面の同類かな…よし潰そう…
…この手の輩は憑依先をどうにも舐める傾向にあるよね…それで痛い目にあうのに…

…精神汚染は狂気への耐性と復元浄化術式【ハラエド】で防ぎつつ…
…【尽きる事なき暴食の大火】を発動…向ってくる『不気味な仮面』を白い炎で迎撃…
…それを燃料として炎の勢いを増すよ…燃料供給…お疲れ様…
…そして…この白い炎をまとめて仮面へとぶつけるとしよう…
…本当…彼女を操れると思った時点で負けだよね…そのツケを払うと良いよ…



 召喚魔王『ゼルデギロス』の放つ『不気味な仮面』は戦場に降り立った猟兵達の『真の姿』を引きずり出す。
 それは言うまでもなく『ゼルデギロス』が今日的であることを示しているし、この戦場が窮地そのものであることを示す。
 山を超える巨体の女性。
 都市を超える『天槍』。そのどれもが強大な力の発露であったことだろう。
「構うことはありません。すでに私は天寿を全うした身。一度死した私に価値などありません。『六番目の猟兵』、あなたたちならば、私を超えていける」
 巨体の女性の亀裂疾走る『不気味な仮面』から覗く瞳は美しさと気高さを湛えるものであったことだろう。

 彼女は己と共に『ゼルデギロス』を滅ぼすことを望んでいる。肉体の支配を奪われながらも、覚悟を猟兵たちに示しているのだ。
「はー、あの仮面が『ゼルデギロス』……賢竜『オアニーヴ』を操った仮面の同類かな……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が一歩を踏み出す度に周囲にノイズが疾走る。
 彼女の姿はモノクロ。
 瞳が赤く輝くのは『真の姿』を引きずり出されたが故である。
 かつて『帝竜戦役』の頃にも魔王の仮面は嘗て在りし存在の肉体を支配し、猛威を奮った。
 その経験があるからこそメンカルは目の前の山を超えるほどの巨体を持つ女性もまた同じであると知るのだ。

「……よし潰そう……」
 みなぎるユーベルコード。
 迫りくる『不気味な仮面』をメンカルは復元浄化術式『ハラエド』で防ぎながら、一瞬でユーベルコードを発動させる。
『真の姿』を晒したメンカルにとって、それは造作もないことであった。
 精神を蝕む仮面。
 それが人の心の中に存在する陰陽を崩すものであるのならば、メンカルの精神は強固であった。天秤を揺らされることもなかった。
 周囲に満ちるノイズ。
 それらはユーベルコードの輝きを受けて、目の前の巨体の女性に奔るのだ。

「尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)」
 短く告げた言葉より放たれる如何なる存在も燃料に白色の炎。
 それは『不気味な仮面』すらも燃やす。
 そして、燃やされた仮面はさらなる白色の炎となって立ち上るだろう。敵の攻撃は全てが燃料と成る。この白色の炎には燃やせぬものなどないのならば、メンカルを襲う仮面は、尽くがエサでしかない。
『仮面が燃える……!? 物質であれば全て燃やすとでもいうのか……!』
「そのとおりだよ……お前のやっていることは、ただの燃料供給……お疲れ様……」
 煌めくユーベルコードがノイズに走っていく。
 彼女の白黒の姿を照らす輝き。

 それら全てを受けてなお、そのメンカルは揺らがない。
 どれだけ人の心の弱さを突くのが『ゼルデギロス』の力であったとしても、確固たる精神を持つ彼女を揺らすことは叶わない。
「諦めなさい、『ゼルデギロス』。彼女らは武士。私の坊や達と同じく、お前に膝をつくことなどないのです」
『黙れ! 黙れ! 『ゼルデギロス』が滅びるものか!』
 そう告げた亀裂奔る仮面、『ゼルデギロス』の眼前に燃え盛るは白色の炎。

「……本当……彼女を操れると思った時点で負けだよね……」
 メンカルは極大の炎へと変貌した白色の炎を掴む。
 白黒の姿であったとしても、煌めくユーベルコードの輝きは万色。ゆえにメンカルは告げるのだ。
 覚悟を持つ者の力の強さを。
 人を生み出した母為る者が何故、失敗を是としたのかを。
 失敗を犯さぬためにやりなおすのではなく、失敗を受け入れてなお、踏み越えて手をのばすことこそが、人の強さ。

「……そのツケを払うと良いよ……」
 メンカルの白色の炎が『ゼルデギロス』の仮面へと叩きつけられる。
 これは今まで『ゼルデギロス』が翻弄し、傷つけてきた世界の痛みと同義。仮面すら燃やす白色の炎が『ゼルデギロス』の視界を埋め尽くしていく。
 それは紛れもなく滅びへの標であったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
アルダワのはそれなりに魔王だったが
お前はどうなのだろうな

状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら自身を無限加速し回避
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給

破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

原理を廻し高速詠唱を無限に加速、循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、敵勢へ向け斉射
更に射出の瞬間を無限循環し戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

形の有無を問わず、最古の理は逃すことはない
放つ仮面は創世の向こうへ溶け、蝕む仮面も塵と消えるのみ

これで仕舞いか、自称魔王
大言の割に微温いのだな
他者の身体を借りるようなことしかできん輩はこの程度が関の山か

※真の姿は僅か裂けた空間の向こう、無限に広がる透明な「全なる空虚」
アドリブ歓迎



 白色の炎が召喚魔王『ゼルデギロス』へとぶつけられる。
 猟兵たちの攻撃によって亀裂奔る仮面は、その大部分を砕かれながらも、なおも健在であった。
 これが魔王を冠する者の力であるというのならば驚異的なものであったことだろう。
 猟兵は知る。
 かつてアルダワ魔法学園に在りし魔王。
「アルダワのはそれなりに魔王だったが、お前はどうなのだろうな」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は青い淡光と共に戦場に踏み出す。

 ただそれだけで己の『真の姿』がさらけ出される。
 いや、それを認識することは難しかっただろう。
 僅かに裂けた空間。
 その向こうに無限に広がる透明な『全なる空虚』であった。透明であるがゆえに見ることはできない。
 アルトリウスの力の原理だけが煌めいている。
『評するか、我を! 生命の埒外程度の『六番目の猟兵』が! 貴様ら自身が不定形であるがゆえに、規則性すらなく……! ゆえに生命の埒外と呼ばれる世界の悲鳴を聞き届ける者!』
『ゼルデギロス』に今あるのは焦燥感だけである。

 彼が乗っ取った巨体の女性のちからは凄まじいものであった。
 山を超えるほどの巨体。
 都市一つ程はあろうかという『天槍』。
 その全てが圧倒的であった。如何に『真の姿』を晒した猟兵達であっても容易に打倒することはできなかったはずだ。
 それに『ゼルデギロス』には『不気味な仮面』を放つ力がある。
 有機物であろうが無機物であろうが『不気味な仮面』を浮かべ、それを意のままに操ることができる。
『この力で世界を意のままに操ることができたのだ! この力さえあれば……!』
 だが、それは過ちであった。

「だから負けるはずがないと言うのだな。形の有無を問わず、最古の理は逃すことはない」
 放たれる『不気味な仮面』は創世の向こうに溶けていくばかりである。
 蝕む仮面も塵と消えていくのみ。
 迫る脅威は全てが無限加速の彼方に消えていくしか無い。それこそが十一の原理。害あるものすべてを破壊し、断絶し、否定するもの。
 ゆえに『ゼルデギロス』のちからは及ぶものではないことを示していた。
 その空虚よりユーベルコードの輝きが満ちる。

「これで仕舞いか、自称魔王。大言の割に微温いのだな」
『ぬかせ……! 空虚がお前の本質であろうと! 何度でもやり直せばいいだけの話! お前が無限を語るのならば!』
 だが『ゼルデギロス』は理解していなかったのだろう。
 彼が乗り移った巨体の女性。
 それこそがやり直しを否定する牢獄そのものであったことを。そして、その術は示されている。
「構うことはありません。武士よ。この仮面を砕きなさい。私と共に『ゼルデギロス』は滅びる。消滅する。あなた方が『六番目の猟兵』であるのならば、過去の存在を滅ぼすことこそが使命であるはず」
 巨体の女性の言葉は苛烈なる覚悟を滲ませながらも、どこか慈愛に満ちたものであった。

「他者の体を借りるようなことしかできん輩は、この程度が関の山か。お前は知るべきだったな。お前が乗っ取った者の覚悟の強さを。お前は何も学ばない。失敗したとしても、やり直したとしても、何故という疑問すら抱かない。だから――」
 行き止まりだとアルトリウスは空虚より告げる。
 満ちるユーベルコードの輝きが示すのは破界(ハカイ)。
 障害全てを無視し、万象を根源から消去する創世の権能が顕す蒼光の魔弾。

 その雨のように降り注ぐ一撃が巨体の女性の眼前に迫る。
『ゼルデギロス』は理解できなかっただろう。
 学ばない。
 やり直しが効くがゆえの怠慢。
 一度の失敗を惜しまぬ者に何がつかめるだろうか。懸命に手を伸ばし、なお届かぬものがある。
 それを知るからこそ、人は重ねるのだ。
 時を重ねる。
 世代を重ねる。
 経験を重ねる。
 そうすることによって、失敗を糧として生きていく。やり直すことができないことを知り、そして失敗からこそ得ていく。

 成功はただの結果でしかない。
 だが失敗は経験と為る。あらゆる物に波及する力となる。何度くじけても、何度折れても、決して違えぬ覚悟があるからこそ、暗闇の如き未来を照らす篝火にすることがえきるのだ。
 それを知らぬ、学ばぬ者こそが『ゼルデギロス』。

「だからお前は、其処止まりなのだ」
 降り注ぐ魔弾が『不気味な仮面』を穿つ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

ぐわああああ~~~!!
ダッサイコレ!ナニコレダッサイ!
死ぬダサすぎて死んじゃう!

●忘れよう
あーあー存在しないこんなもの存在しないダサイ仮面なんてかっこかわいいボクには着いてないったらない
対抗UCで拡張した能力で自己【催眠術】をかけてかつ【精神攻撃】をかけよう
んもーキミあれでしょ?
周りからはやられても「くっくっくっ奴は四天王の中でも最弱…」「四天王の面汚しよ…」とか言われちゃう小者タイプ!
そんなことないって?気付いてないんだかわいそ!

大事なのは大きさじゃない
ハートさ!
でもどうせならおっきくて派手なのもいいよね!
超級サイズの[球体]くんを天から落としてドーーーーーンッ!!



 魔弾が召喚魔王『ゼルデギロス』の仮面を穿つ。
 その一撃は巨体の女性を傾がせるには十分であった。突き立てられた『天槍』によってようやく立っていられる状態。
 けれど、巨体の女性の体は未だ霧消しない。
 それこそが『ゼルデギロス』が彼女の体を乗っ取ろうとした要因である。強大な力。『不気味な仮面』の支配にすら抗う力。
『だからこそ、お前を選んだのだ、若津姫! お前のちからがあれば、『六番目の猟兵』など一掃できる! 黙って言うことを聞いていれば! このようなことになならなかったのだ!!』
『ゼルデギロス』を支配する焦燥はいよいよもって、彼の滅びを加速させる。

 すでに迫る猟兵たちの力は、彼の喉元に迫っているのだ。
「いいえ、このまま滅びてもらいます。『ゼルデギロス』、失敗を学ばぬ愚か者よ。あなたは怠慢ゆえに滅びるのです」
 巨体の女性の声が響く。
 彼女にとって、己が滅びることは覚悟の上であった。彼女はすでに己が死した存在であると知るからこそ、今の己に価値などないと言い切るのだ。
 その凄絶な覚悟こそ、世界を照らす輝きそのものであったことだろう。

 だからこそ、猟兵達は己の体に浮かぶ『不気味な仮面』に肉体と心を侵食されながらも踏み出すのだ。
「ぐわああああ~~~!! ダッサイコレ! ナニコレダッサイ! 死ぬダサすぎて死んじゃう!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思わず喚いていた。
 体に浮かび上がった『不気味な仮面』のデザインが気に入らないのだろう。忘れたい。そう思うほどにロニの心には拒否感だけが残っていた。

「あーあー存在しないこんなもの存在しないダサイ仮面なんてかっこかわいいボクには着いてないったらない」
 ロニは自己催眠によって、この心と肉体を侵食する『ゼルデギロス』の力をはねのける。
 神知(ゴッドノウズ)によってあらゆるものを退ける。
 その方策は自己暗示という一手によって覆す。
 心を強く保つことが『不気味な仮面』を取り除くというのならば、ロニの心は今や強固に鎧われているのだ。

「ふー……」
 ロニは息を吐き出し、眼前の巨体の女性を見やる。
 その砕けかかった仮面に指差す。
「んもーキミあれでしょ? 周りからはやられても『くっくっく、奴は四天王の中で最弱……』『四天王の面汚しよ……』とか言われちゃう小者タイプ!」
 その言葉は挑発であった。
 けれど、同時に図星を突くものであった。確かに『ゼルデギロス』は強大な存在である。しかし、彼と同じく列せられる者達から見れば見劣りする存在でもあったのだ。
 ゆえに焦燥は激高に変わる。
 真理を突かれたものが示す反応はいつだって同じだ。わかりやすい。

『貴様……! 言うにことかいて……!』
「そんなことないって? 気づいてないんだかわいそ!」
 ロニに振るわれる天槍の一撃が衝撃波を生み出す。大地に亀裂走り、破片が飛び散る中、ロニは巨体の女性を駆け上がっていく。
 すでに多くの猟兵が楔を打ち込んだ。
 ならば、できるはずだ。不可能など無い。
「大事なのは大きさじゃない。ハートさ!」
 でもね、とロニは笑う。亀裂奔る仮面を見やる。砕く。ただその一点においてならば、己の拳でもよかっただろう。

 けれど、どうせならばと彼は笑うのだ。
「でもどうせならおっきくて派手なのもいいよね!」
 かざした手の先にあるのは空より飛来する超巨大なサイズの球体。
 組み合わせ、つなぎ合わせ、巨大化させた球体。それが天より落ちる。その一撃は『ゼルデギロス』の仮面を砕く。
 そうして彼女の望んだ滅びが訪れる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月09日


挿絵イラスト