7thKING WAR㉔~姫は子らの成長を実感したい!
●予兆の一片
その光景は、まるでひとりの女性が独り言を呟いているかのように見えた。しかし、その場に響く声は2つ。
『ぐっ……仮面(マスカレイド)を放出できぬ! 貴様、何をした!』
「あなたの仮面は、本当に恐るべき能力です。私達の世界は、あなたの為に深く傷つけられました。しかしあなた自身は……何度でもやりなおせる気楽さに甘え、愚にもつかぬ失態を繰り返す痴れ者。私が決死の覚悟でいる事も分かっている筈なのに、見ないふりをしていたのです」
『やめろ、言う事を聞いて戦え……六番目の猟兵に殺されてしまうぞ!』
「ふふふ、流石にあなたの支配を全て退ける事はできません。しかし、この程度の支配度なら、あの方達は容易く私を殺すでしょう。あの方達は、私のぼうや達に勝るとも劣らない、素晴らしき武士もののふでしょうから」
焦る魔王と不敵に笑う女性。
山よりも遥かに巨大な身体を持ち、都市ひとつはあろうかという超巨大槍を携えたその女性は、来たる戦いに胸を躍らせているのであった。
●戦場の片隅にて
「ということで。皆さん既に目視できてるかと思いますけど」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)が猟兵に告げる。
「あのおっきな女性と戦って倒さないといけません」
『7thKING WAR』の戦場の端っこ。猟兵たちが一時的な休憩所としている場所でサージェが猟兵たちにグリモアを見せる。
「さっきあった予兆は皆さんも見ているかと思いますけど、あの女性はどうやら『肉体』の持ち主とそれを乗っ取っている『魔王』の2つの側面があるみたいでして」
1stKing『魔王ガチデビル』が特級契約書で呼び寄せた『異世界の魔王』とは、乗っ取った存在である『ゼルデギロス』のようだ。ゼルデギロスの存在に引っ張られて、かの女性はデビルキングワールドに召喚されたと見るべきだろう。
「しかし、それが幸いでした。どうもあの女性がゼルデギロスの力を抑え込んでいるみたいなんです」
それゆえにゼルデギロスの恐るべき仮面の力は使われることがない。
「その反面、問題があるといえば……まぁ何と言いますか、あの女性がめっちゃヤル気になっているところでしょうか」
どれくらいヤル気かっていうと、殺る気とかいてヤル気と読むくらい。
「まぁグリモアの予知によれば、彼女が消えればゼルデギロスもまとめて消滅するので」
だから戦うことには変わりないんですねこれが。
●相対した地にて
サージェによればいきなり襲い掛かってくることはないそうだ。
なので女性に向けて徒歩で歩み寄る猟兵たち。
「ようこそ。六番目の猟兵達よ」
その声はもちろん頭上から。山よりも遥かに巨大な身体……ということは顔の位置もとても高いわけで、声は空から降ってくる。
その手に山よりも巨大な槍――『天槍』を握っているも、今はまだ戦闘態勢ではなく、仮面の下の顔は笑みを浮かべて猟兵たちを歓迎している。
「すでに予兆は……ええ、見えていたようですね?」
猟兵たちの表情を見て、口元を緩める女性はそのまま話を続ける。
「今の私は『魔王ゼルデギロス』という存在に他なりません。そしてこの世界にとって招かれざる存在です」
そう言って女性は天槍を引き抜く。殺気はまだ無い、単に戦闘の意志を示しただけのようだ。
そして女性は自分の顔にある仮面を指し示す。
「この顔の仮面を破壊すれば私は死にます。ええ、私は操られていますが……お気になさらず!」
待って? それって屈託の無い声で言うこと? いや、むしろ嬉々としているのはどういうことなの?
「安心してください。私のかつての力は封じられ、今はこの槍で戦うことしかできません」
とか言いながら、天槍をぶんぶん振り回して準備体操している山よりおっきな女性。いえ、あの、本当に力、制限されてます?? 全力出そうとしていません?
「ええ、私は既に死した身……しかし捨て身の戦いによって、みなさんに教えられる事もあるはず!」
あ、聞いてないなこの人。その証拠にくるくるくるっと天槍を回転させて。
「ですから六番目の猟兵達よ、いざ尋常に勝負!」
びしっと構える女性。
「そして私に見せてください。私のぼうや達にも劣らぬであろう輝きを」
その声はどこか懐かしむような、慈愛に満ちた声で告げられて。
だが猟兵たちは唐突な展開に困惑するばかり。
その様子を女性は『躊躇している』と取ったようだ。
「それでは……こう言ったほうがいいですか?」
少し口調が固くなって……女性は告げる。
「『ゼルデギロス』『マスカレイド』……異世界の謎を知りたくば私に勝つがいい、と」
猟兵たちの中に緊張が走る。予兆の中で飛び交っていたその単語は、いまだ猟兵たちに馴染みのないものであったからだ。
「知りたければ『ぼうや達』についても教えてあげましょう。後は……そうですね」
『んー……』と頬に人差し指を当てて小さく首を傾げる女性。そして思いついたように口を開く。
「ええ、あれがありました」
女性の口から告げられる内容。それは猟兵たちが『予兆として見ておきながら、いまだ遭遇も解決もしていない不思議な予兆』のこと。
「あの正体についても、私が知っていることを教えてあげますよ?」
ですから、戦いましょう?
女性はにこやかに猟兵たちに笑いかけてくるのであった。
るちる
まいどです。いつもありがとうございます、るちるです。
『7thKING WAR』の依頼……と思ったら姫出てきたよ。下半身が相変わらず……えっち。
そんなわけで召喚魔王『ゼルデギロス』との戦いをお届けします!
●全体
1章構成の戦争シナリオです。
山より大きいビッグな姫との戦いになります。あまりの体格差から、顔の仮面に近接攻撃を叩き込むには彼女の体を駆け上るより他ありません。
ということはうまく体格差を利用……すればいいと思うじゃん?
指定されたプレイングボーナスがこちらになります。
(=============================)
プレイングボーナス……先制攻撃に対応し、相手の巨体を利用「しない」戦い方で反撃する。
(=============================)
これに基づく行動をすると有利になります。鬼か。
先制攻撃については、姫から放たれる攻撃を回避、防御、受け流し等々皆さんが得意とする手段で対応ください。しのぎ切れなくても『対応できていれば』オッケーです。先制攻撃は指定UCと同じ属性のユーベルコードが放たれます。
巨体を利用しない戦い方……ということですが、彼女の体を駆け上りながら攻撃を仕掛けるのは標準戦法とします(プレボが入るかは別の要素が必要)
まぁ、真っ向勝負が彼女も喜ぶんじゃないでしょうか?
●1章
ボス戦『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』との戦闘です。
この形態は『此華咲夜態』となっているのすが、当シナリオでは姫と呼称します。私(るちる)の好みです。
姫の山より高い身体を駆け上り、弱点である仮面を破壊すれば、仮面の怨嗟、女性の感謝と共に、ゼルデギロスの超巨体が消滅します。
なお、戦闘の最中において、彼女に質問すれば『ぼうや達』『ゼルデギロス』『マスカレイド』『正月に見た不思議な予兆の正体』については返答してくれるようです。
ご褒美もらっちゃいましょう。
●
オープニング公開後、姫に対する説明を入れます。その後プレの受付開始です。
戦争シナリオのため、プレは全採用というよりは程よくチョイスしていく感じになると思います。タグでの案内はないかもですが、空いている間は受付中と思ってください(流れる可能性はあります)
それでは皆さんの参加をお待ちしていまーす!
第1章 ボス戦
『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』
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POW : ジェットランページ
【天槍から噴出する強烈なオーラ】によりレベル×100km/hで飛翔し、【身長】×【武器の大きさ】に比例した激突ダメージを与える。
SPD : 天槍乱舞
【貫通衝撃波「フォーススティンガー」】【螺旋回転突撃「ドリルインパクト」】【神速連続突き「ミラージュランス」】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ : ジャッジメントランス
【天高く天槍を投げ上げるの】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【オーラで構築した天槍の分身】で囲まれた内部に【裁きの雷】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ゼルデギロス・此華咲夜態
その名は恐らく『肉体』側の女性の名より。
彼女は『自分より小さな者との戦闘』に長けている。それは彼女が自分より小さな者たちと共に在ったから。
自身の肌の上を猟兵たちが攻め上れば、巧みに、そして時には自身への負傷をいとわず、的確に攻撃を放ってくる。
何よりも。猟兵たちがその肌に取り付くよりも早く、自身のユーベルコードを放つ。体格差もあって必ず先制攻撃となるその攻撃を『どのようにしのぐか』かがまずの関門となろう。
嬉々として、槍を振るう姿は戦いを悦ぶ戦闘狂、というか実際、彼女の思考は相当な戦闘寄りなのだが。
その実、彼女はとある世界では慈愛に満ちた母のような存在。『ぼうや達』という言葉がその事実を補強する。
戦いを悦ぶは、その中で自慢のぼうや達を感じられるから。
彼女は既に死した身。もはや自身の世界へ戻ることは叶わず、子らと触れ合う機会を喪失している。
『私のぼうや達に勝るとも劣らない、素晴らしき武士(もののふ)達』
それが彼女の猟兵たちに対する評価ならば。
猟兵が力を示すことは、すなわち、自分のぼうや達の成長を示すことに他ならない。それを彼女は何よりも喜ぶ。
『戦い勝ち取ることを忘れた生物は、いずれ誰かの醜い奴隷となってしまう』
それを危惧し、愛し子らを『庇護する』ことを望まなかった彼女だからこそ。
戦い、理不尽を砕き、己が道を勝ち取る術を得た子らの成長を見ることは、感じることは、自身の死など路傍の石に等しいというほどに望外の喜びとなるのだ。
……すっごい親ばかですな、姫。
※シナリオ補足※
いろいろ書きましたが、純戦です。ばっちりがっつり戦ってくださいな。
一応、とある世界はかの世界という仮定でおりますが、実際その世界からから来ているかは謎。よく似た別世界かもしれませんし。
憶測で情報を精査するよりは、素直に彼女に問いかける方が精度の高い情報が得られるでしょう。
レン・ランフォード
とんでもない存在がとんでもないこと言ってきますよ?
でもやるしかありませんね
忍が見せるは刃の輝き
それは貴女の知る人達に劣るものではないと
とはいえ生身で避けるのは辛いので
戦闘機「光世」に素早く乗り込み【空中戦】です
衝撃波を含めた攻撃を【第六感】も合わせて【見切り】
【リミッター解除】した加速や【空中機動】で
下を潜ったり落下したり急旋回等【操縦】テクを駆使して回避
小蠅の気分ですね!
攻撃の嵐を抜けたら反撃
顔が見える位置に移動したら
操縦を実現符で実体化した別人格・れんに任せて光世の上に立ち
質問、ぼうや達とは?
答えを聞きつつUC発動
女性の顔を傷つける事をお許しくださいと謝り
光剣の【なぎ払い】をぶち込みます
●
山と見紛う大きさの『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』――此華咲夜が槍を振るう。それは単純に、軽く、素振りをしただけ。
されどその風圧は嵐のごとく、目の前に立つ猟兵たちに襲い掛かる。殺意があればそれだけで斬り刻まれそうな風圧はしかし遊ぶかのように無邪気に飛び乱れているだけで。
「さぁ、やりあいましょうか」
声の主はまるでデートに誘うかのように屈託の無い声で告げてくる。
「とんでもない存在がとんでもないこと言ってきますよ?」
レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)が呟くように、自分『たち』へ話しかける。黒髪碧眼の少女の中にある『あと2つ』の人格はどう思ったやら。
「でもやるしかありませんね」
温厚な主人格の『蓮』が構える。
「忍が見せるは刃の輝き……それは貴女の知る人達に劣るものではないと」
「それは……とても楽しみです」
蓮の言葉を受けて、一瞬微笑んだ後。此華咲夜が天槍を繰り出す。
いまだ間合いは200mほど。しかしその間合いを貫くがごとく、衝撃波が迸る。
「……!」
神速の突きから放たれる衝撃波は予測無しでは回避不能であったろう。しかし、猟兵たちにはグリモアの予知がある。
蓮は小さく息は飲んだものの、それは躊躇いではなく、予備動作。衝撃波が突き抜けるよりも早く、空水宙対応高速戦闘機『光世』に飛び乗りつつ、急上昇をかける。
「まだまだ!」
「知って……ますっ!」
此華咲夜から繰り出される攻撃は『一撃では終わらない』。速攻で間合いを詰める踏み込みから放たれる神速連続突き。
「くっ……!」
それらの発動を第六感で捉えつつ、此華咲夜の動きを見切り、軌道を予測。それに合わせてリミッター解除した光世の超加速で此華咲夜の攻撃を振り切る蓮。
急降下しながら近づこうにも刺突の弾幕が分厚過ぎて近づけない。槍を使った螺旋回転突撃の下に潜り込み、しかし近づこうとすれば再度神速連続突きが放たれ。
「小蠅の気分ですね!」
Gに耐えながら叫ぶ蓮。光世は彼女の意志に従って刺突の弾幕を振り切る。
「そこです!」
一連の最後と言わんばかりに放たれた貫通衝撃波。だが、強烈ながら一条の衝撃波は……回避しやすい。
(チャンス!)
その一瞬を逃さず、天槍乱舞をかわしきった蓮が光世を加速させる……今度は此華咲夜へ向けて。衝撃波を潜り込むように回避しつつ、ぐんっと此華咲夜に接近する蓮。
「……っ!」
此華咲夜とて残心――次の動作に移るべく、油断することなく槍を構え直している。だが、その残心よりも蓮は速い。『知っている』というのはそれだけでアドバンテージとなるのだ。
蓮が此華咲夜の顔の位置――仮面の高さまで肉薄する。
「任せてもいい?」
「……ん」
実現符――別人格を実体化させる霊札によって、蓮と入れ替わるように操縦席に現れたのは『れん』。言葉少なに蓮から操縦を受け取り、そして蓮は外へと素早く飛び出し、光世の上に立つ。
「迂闊ですよ」
その蓮に向けて横薙ぎの一閃を放つ此華咲夜。蓮の言葉を借りるなら、此華咲夜は小蝿を叩き落すだけでいい。そんな動作で放たれる素早い槍の旋回を。
「知ってます、とお伝えしませんでしたか?」
とんっ、と。光世を足場に跳び、さらに槍の攻撃を足場にして。高く、さらに上へと跳び上がる蓮。全ては読み通り。
跳び上がりつつ、両手に接続した武器ユニット『オーガスラッシャー』の制限を解除。黒い柄の光線式斬撃兵装から翠の光刃がどこまでも鋭く強く伸びていく。
「質問、ぼうや達とは?」
「お答えしましょう」
蓮の質問に対して、此華咲夜が告げる。
「女性の顔を傷つける事をお許しください」
「何を。今の私にとってこれ以上の誉れはありません」
蓮の【光線式斬撃兵装・童子切】の一撃がぶち込まれ。此華咲夜は楽しそうに笑うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
ええ。堂々と戦いましょうか!
帝竜やクエーサービースト等
巨体相手の経験値はあります
培った戦闘知識の全てを生かし勝負っ!
先制されるジェットランページを
自慢のオーラ防御を全開に武器受けです!
吹き飛ばされたとしても
自分から飛び受け身を取って致命を防ぐ
攻撃の合間にダッシュで彼女の巨躯を駆け上ります
相手の攻撃をなぎ払いと衝撃波で打ち払い、
時に弾かれるとしても怪力で彼女の体にしがみつき、
落ちません!
去年の正月に見た『不思議な予兆』
女性は「界渡る肉体」を持っているとのことです
彼女は、そして創世の力を持つ語りの方は何者ですか?
仮面の前にたどり着いたなら、
最大まで力溜めた《トランスクラッシュ》で
仮面を砕きますよ!
●
山と見紛う大きさの『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』――此華咲夜との戦い。それは余波にうっかり巻き込まれただけで戦闘不能になりかねない。仲間が突っ込んでいくその様を見届け、そして一撃を叩き込んだその好機へ。
「ええ。堂々と戦いましょうか!」
ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)が此華咲夜へ向けて地を疾走する。小柄な体格が此華咲夜と比べればさらに小さく見える。しかし気迫では負けていない。何よりこの身は、かの帝竜やクエーサービーストといった『巨体相手の経験値』もある。
「培った戦闘知識の全てを生かし勝負っ!」
「ふふ、そんなことを言われたら滾ってしまいます」
痛烈な一撃から体勢を立て直した此華咲夜がユーフィに向けて微笑み。次の瞬間、天槍から強烈なオーラを噴出させながら突撃してくる。此華咲夜の身長と武器の大きさを最大利用した突撃攻撃ジェットランぺージ。直撃すれば確実に戦闘不能は不可避。
「ですがっ……!」
ユーフィの両足が大地をしっかりと掴む。交差した腕に纏われるオーラの護り。それは分厚くはないけれども、ユーフィの鍛錬によっていかなる攻撃にも耐えられる輝き。
「……!?」
槍の先端が確実にユーフィを捉えたその瞬間、此華咲夜が目を見開く。両手に伝わってきた感触は想定していたものと違う。貫くか弾き飛ばすか、いずれにしてもユーフィの体躯は翻弄され、しかし不屈の闘志で向かってくるのが『猟兵』だと此華咲夜は思っていたのだが。
「……これを受け止めますか!」
強烈な衝撃に地を抉りながら後退はしているものの、ユーフィは健在。自慢のオーラ防御が槍の先端を受け止めている。
此華咲夜が叫んだその一瞬。ユーフィが槍の先端を払い流しながら踏み込み。地を蹴って跳び上がる。そのまま槍の上に飛び乗ったユーフィが此華咲夜の手元へ手繰るように駆けていく。
「……!」
一瞬、歓喜で気が抜けていたのを自覚したのであろう。此華咲夜が槍を振るってユーフィを振り落とす……否、叩き落そうとする。
「くぅっ!」
激しく地面に叩きつけられる槍からの衝撃を、ユーフィはしがみつき、必死で耐える。
「ならば!」
此華咲夜が槍を投擲する態勢になる。
「……!」
それはマズイ。物理的に引き離されれば、また接近しなければならない。ユーフィが槍から此華咲夜の胸元へ飛び移る。
「……あなたならばそうすると思いました」
ユーフィが飛び移ってくるその軌道へ。此華咲夜が掌を勢いよく振り抜く。同じ体格であればビンタで済む仕草だが、この体格差では槍に劣らぬ攻撃にしかならない。
だが。
「私もそう思ってましたからっ!」
此華咲夜が容赦なく攻撃を叩き込んでくることをユーフィもまた予測済。ならば、その対策も。
空中に在ってユーフィは跳び上がった勢いを利用して身を翻す。タイミングよく此華咲夜の掌にかかとを引っかけるようにして、此華咲夜の掌底の軌道をわずかに逸らし、衝撃波を叩き込んで。その反動を利用してユーフィが此華咲夜の眼前へ跳びあがる。
「あの『不思議な予兆』……彼女は、そして創世の力を持つ語りの方は何者ですか?」
そう告げながら力を溜めるユーフィ。あの予兆の光景はいまだ遭遇していない猟兵たちの間の謎。そして女性は『界渡る肉体』を持っていると告げていた。
ユーフィの体を纏う鋼の如き闘気。それは硬さだけではない、ユーフィの気迫と鍛え上げられた柔らかく力強い肢体が合わさり、強烈な威力を生み出す。
「ええ。あの方たちは……」
ユーフィの攻撃の一連を見届けながら、此華咲夜が微笑み、言葉を紡ぐ。ユーフィの耳に此華咲夜の答えが届いた瞬間、ユーフィの【トランスクラッシュ】が此華咲夜の仮面に炸裂するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
プフェルトラム・メーベルナッハ
予兆…去年のお正月に見たアレのコトですかしら。
確かに、色々気にはなりますが…『あの予兆に現れた女性とその内にある人格は何者ですか?』
明らかに肉体と精神が別人なのですが。
ですが、先ずは貴女を打ち倒さねばなりません。
一つ、お相手願いますわね?
【ダッシュ】で姫に近づきつつ、周辺状況を注視。
オーラの槍が落ちてきたら、それらに囲まれないよう、どう槍を追加してもうまく囲えそうにない位置へ移動し、雷の直撃を回避しやすくします。
接近次第、姫の身体を【ジャンプ】を駆使して一気に駆け登り顔の方へ。
…この豊満なお胸が気にはなりますがさておき。
顔まで近づき次第、一つに纏めたフォックスファイアを仮面に叩き込みましょう。
●
有り得ぬ大きさの『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』――此華咲夜は山のようにそびえながら、しかし女性特有のしなやかな躍動を見せる。それは槍を振るうという動作においても変わらず、しかし彼女の武器は彼女の手にあってその力を猟兵に見せつける。
それでも。猟兵たちの攻撃は此華咲夜の仮面に届いている。少しずつひび割れていく仮面。そして此華咲夜の口から語られる問いの答え。
「予兆……去年のお正月に見たアレのコトですかしら」
此華咲夜とはまた違った方向で。女性のしなやかさを武器とするプフェルトラム・メーベルナッハ(千夜の踊り手・f00012)は此華咲夜に接近しながら首を傾げる。
確かに色々と気になる予兆であった。ゆえにプフェルトラムの口をついて、疑問が飛び出る。
「あの予兆に現れた女性とその内にある人格は何者ですか?」
「それがあなたの知りたいことなのですね」
猟兵たちの強烈な攻撃を受けつつも、再び体勢を立て直して。槍を構え直した此華咲夜がぐっ、と投擲の態勢をとる。同時に展開される、複数のオーラで構築した天槍の分身。
「明らかに肉体と精神が別人なのですが。……っとと」
此華咲夜の闘志をその肌にビリビリっと感じたプフェルトラムが足を止める。問いの答えを得るには、まず……此華咲夜を打ち倒さなければならない。
「一つ、お相手願いますわね?」
「参ります」
プフェルトラムの言葉に応えるように、此華咲夜が天槍を空へと投擲する。一瞬で頂点へと辿り着いた天槍の先端から迸る裁きの雷。それが戦場を覆い尽くす。
「……っ!」
オーラの槍が落ちてきたその瞬間からプフェルトラムは対策を打っていた。槍に囲まれないよう、どう槍を追加してもうまく囲えそうにない位置へ。しかし、此華咲夜が『自分ごと』、槍の領域を展開しているのだから、その策は最適手とはいえない。
(ですが……!)
プフェルトラムの想定ミス。しかし想定と違うこともある。槍の先端から迸る捌きの雷は極大の一条。それは槍の領域を埋め尽くすほどの大きさではない。
(これなら、かわせます)
肉感的な肢体から迸る躍動感。地を蹴ったプフェルトラムの体が極大の一撃を避け、そこから余波としてばら撒かれるそれでも致命の雷を回避していく。プフェルトラムの視界はそれらの全てを捉えている。
「……!」
槍が手に戻るまでは迂闊に身動きが取れない此華咲夜。その隙を利用してプフェルトラムは此華咲夜に肉薄。そのままジャンプを駆使して此華咲夜の体を疾走していく。
「……」
胸の前を通過した時、何故かガン見するプフェルトラム。
(……この豊満なお胸が気にはなりますがさておき)
自身の肢体に自信があるためか、その部位が超気になるらしい。なんで隠したんだろうね胸元。
「この一撃で教えていただけますか?」
「いいでしょう」
プフェルトラムの手に生まれる【フォックスファイア】。八十八の狐火をひとつに纏めた強烈な炎の一撃を仮面に叩き込みながら、プフェルトラムは此華咲夜から答えを聞くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
大きいわね~ロボやドラゴンとか人型でないのを除いた生身っていうとヒーローズアースの巨大化の時以来だったかしら?
ゼルデギロス?だったかしら抑えてくれるのは感謝し
相手が望むなら、えぇ、全力で!
海賊に謎ってお宝を報酬にしたからにはそれに応えなきゃね!
ティターニア、フルブースト【空中戦・機動】!
槍の軌道は払いと突きなら攻撃方向は絞れる
スモークミサイルと偽装用風船端末パックプーカ
煙幕とダミーのホログラムでそちらに攻撃を向けさせ回避【目潰し・残像・フェイント】
M・A・Bで一気に肉薄し、ミスティルテインとマイクロミサイルの【一斉発射】
ぼうや達って何?猟兵と違う存在なのかしら?…そもそも六番目って…?
●
山と見紛う大きさの『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』――此華咲夜は猟兵たちとの戦いを……喜んでいた。楽しんでいた。
享楽ではない。猟兵たちを通じて子らの成長を感じて……母は喜びを隠さない。
ゆえに、槍の鋭さもぐんぐんとあがっていく。いえ、あの、ナンデ? なんでそこまで戦闘民族ですか姫??
強烈な攻撃を叩き込まれつつも、此華咲夜はいまだ健在。
「さぁ、次はどなたですか?」
天槍を構えて、此華咲夜は戦闘態勢を維持する。
「大きいわね~ロボやドラゴンとか人型でないのを除いた生身っていうとヒーローズアースの巨大化の時以来だったかしら?」
そんな此華咲夜の前に立つのはヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)であった。いつも通りの宇宙海賊は臆せず、話しかける。
「ゼルデギロス? だったかしら。抑えてくれるのは感謝するわ」
「いえ。こちらにも利あってのこと。それに……」
ヘスティアの言葉に、つっ、と槍の先端がヘスティアに向く。その動作の意味を感じてヘスティアも不敵に笑う。
「えぇ、全力で!」
くんっ、と風を切って。
ヘスティアが背負う上下2対の白いジェットパック『ティターニア』が斬り裂く空気の軌道を捉える。
「海賊に謎ってお宝を報酬にしたからにはそれに応えなきゃね!」
ティターニア、フルバースト!
ヘスティアが空を縦横無尽に翔る!
●
「高速機動ですか……させません!」
空を高速に、しかし縦横無尽に自在に飛翔するヘスティアをピンポイントで捉えるのは至難を極めるであろう。しかし面なら。
天槍乱舞。神速の連続突きが弾幕のように此華咲夜の前に展開される。
「……っ?!」
さすがにこれは厳しい。くん、と軌道を上に修正。壁の前を急上昇するように突きを回避するヘスティア。
(槍の軌道は払いと突きなら攻撃方向は絞れる……!)
ならばチャンスはその一瞬。だが相手も甘くない。
仕掛けられずとも。
「……こうね!」
『サポートAI端末 ティンク・アベル』と短い会話の中で得た最適解――即座に『スモークミサイル』と『偽装用風船端末パックプーカ』を放つヘスティア。それによってヘスティアと此華咲夜の間に大量の煙幕とダミー――ホログラムでヘスティアを投影しながら煙幕の中を動くデコイを作り出す。
「それならば!」
しかし此華咲夜は煙幕にもダミーにも惑わされず、それら全てを『吹き飛ばす』方向に攻撃を転換する。貫通衝撃波を放ち、その風圧で煙幕を吹き飛ばしながら、螺旋回転突撃で目に見える全てを粉砕せんと突撃してくる此華咲夜。
「無茶苦茶すぎるでしょう!」
目潰しを放った煙幕とデコイを一瞬で潰され、しかし『その動作の分』だけ隙を作り出すことに成功するヘスティア。その一瞬があれば、十分。
「リミッター解除! コード、M・A・B!」
ティターニアのリミッターが外される。直後、音速を超えて飛翔しながら此華咲夜に突撃するヘスティア。
「……っ!」
その動きに目は反応しながらも、さすがの此華咲夜も天槍乱舞を放った後では動きが追い付かない。
「ぼうや達って何? 猟兵と違う存在なのかしら? ……そもそも六番目って……?」
「……お答えできる分だけですが」
ヘスティアが告げた言葉に、此華咲夜は知っていることだけを告げる。
「そう。お宝、いただいたわ」
そう言って。ヘスティアはビームライフル『ミスティルテイン・改』とマイクロミサイルの一斉発射を放つ。続けて放たれる全武装からの一斉射撃――【M・A・B】が此華咲夜の仮面に叩き込まれるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
機神搭乗
「大丈夫?ご主人サマ?」
…妙に心がざわつくな
あー…貴方のいた世界ってどんな世界でぼうや達って何者だ?
【情報収集・視力・戦闘知識】
姫の戦い方と動き
他の依頼と己の経験も含め現状での違いも把握
【属性攻撃・迷彩・空中戦・念動力・武器受け】
光水を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し同時に無数の立体映像を展開
飛び回りながら怒涛の連続攻撃を念動障壁で受け流し吹き飛ばされつつ射程から離れたりと回避しきれないのは武器でうけ受け止め耐える
UC発動
【弾幕・スナイパー・二回攻撃・切断】
超高速で飛び回り姫の体は利用せず正面から挑む
念動光弾を乱射して仮面を狙いつつ動きを少しでも止めれば距離を詰め
鎌剣で連続斬撃!!
●
ぐらり、と山が揺らぐ。否、山と見間違うほどの『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』の巨体が。されど、その足は再びしっかりと大地を掴み、天槍を大地に突き刺して耐える。
「ふふ、遠慮のない一撃……さすがですね」
仮面に攻撃が集中している関係で、此華咲夜の顔もまた傷だらけになっている。しかしそこに浮かんでいるのは笑み。
『ぐぅ……! 貴様、死ぬぞ! 早く我を解放しろ!!』
「あら、小蝿……は彼女に失礼になってしまいますね。ダニがいたようです」
『ぐあっ?!』
一瞬、抑え込む力が緩んだのか、仮面に浮き上がってきた『力』を噛み殺すようにして再度封殺する此華咲夜。
「雑魚は黙っていてください。まだ……戦いは終わっていないのですから」
そう言って此華咲夜が視線を向ける先には……1体のキャバリア――界導神機『メルクリウス』。
「大丈夫? ご主人サマ?」
意志を持つメルクリウスが心配そうに問いかける相手は、自身の主にして搭乗者であるカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)。その問いかけにカシムは顔をあげる。
「……妙に心がざわつくな」
そう答えて、息を整えて。視線を前に、此華咲夜に合わせてカシムが戦闘態勢に入る。
「あー……貴方のいた世界ってどんな世界でぼうや達って何者だ?」
その質問に答えは返ってこない……今は。だが、此華咲夜の笑みによって質問が届いたことは確認できた。
ならば。
次の瞬間放たれる此華咲夜の天槍乱舞。その初動をこれまでの戦闘と己の経験から見極めたカシムの手が素早く動く。その動作に合わせてメリクリウスが飛び上がる。ブースト噴射によって乱舞の初手、貫通衝撃波を回避したカシム&メリクリウスが此華咲夜向けて飛翔するのであった。
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(次は……)
これまで何度か此華咲夜とは刃を交えている。その時の知識を引っ張り出しつつ、目の前の此華咲夜の動きから天槍乱舞の一連の流れを予測するカシム。
接近する相手には壁を展開する。
此華咲夜はその巨体とパワーに似合わず、その時の効率的な戦法を取ってくる。近づいてくるなら近づけさせない。天槍の動きが神速連続突きに変わる。
「そうくるなら、だ!」
叫びながら機体に光と水の魔力を展開するカシム。水の魔力が周囲の温度を複雑に変化させて、光の魔力が周囲の光の屈折率を変化させる。機体そのものは光学迷彩のように風景に溶け込み、水を起点とした場所には蜃気楼のように機体の姿を浮かび上がらせる。
「……!」
視界を惑わすカシムの策に、此華咲夜は仮面の内で一瞬目を見開くも躊躇わず、槍の刺突による弾幕を叩きつける。
「ぐっ……!」
メリクリウスの機体をかすめていく神速突き。どうやら此華咲夜は狙い撃っているというより、自身の体の前面全てに突きを繰り出しているようだ。『目に見えているものもかすかな気配も全て貫けばいい』と。
(しのげるか……?!)
飛び回りながら怒涛の連続攻撃を念動障壁で受け流し、多少削られながらもどうにか此華咲夜の射程範囲から離脱する。光学迷彩を維持しながら大きく後退するカシム&メリクリウスが取っているのは逃げの一手ではなく、攻めるための前準備。
天槍乱舞には必ず途切れる瞬間がある。
(そこを……狙う!)
刺突の弾幕が途切れる。その瞬間。
「加速装置起動……メルクリウス……お前の力を見せてみろ……!」
カシムがユーベルコードを発動する。【神速戦闘機構『速足で駆ける者』】――神速で以て接近し、なおも速度をあげながらカシムとメリクリウスが此華咲夜に肉薄する。
一瞬で、仮面に手が届く距離まで踏み込むメリクリウス。
その位置に仮面があるならば。
メリクリウスの機体から放たれる念動光弾の連射。超高速機動に攻撃を乗せて放たれれば此華咲夜の防御が間に合わない。崩れる態勢。そこへさらにメリクリウスが距離を詰める。
「これで、教えてもらうぞ!」
メリクリウスのBX鎌剣『ハルペー』で連続斬撃を叩き込むカシム。
その斬撃が終わる頃に、カシムは此華咲夜の言葉を聞いたのである。
成功
🔵🔵🔴
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
アンタ別の世界から連れてこられたのかよ!?
一体どんな世界だったのさ、そこは!
まあ真正面から聞いても答えてくれないだろうし、
一発ぶちかまさせてもらおうかね!
……とは言ったものの、なぁ。
巨体相手だとアタシは逃げ回るしかできないからね、
カブに『騎乗』してまずはとにかく攻撃を躱すのに専念するよ。
貫通衝撃波はサイキックの『衝撃波』で相殺し、
突撃と連続突きは『気合い』と『根性』と『操縦』テクで躱し続ける!
身体を登るなんてことはしないさ、
なんせアタシがやろうとしてるのは離れてないとヤバいんでね。
連続攻撃の合間で動きが少しでも止まった時が攻め時、
仮面を目標座標に【宙穿つ穴】を放つ!
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山と見紛う大きさの『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』――此華咲夜との戦いは激しく、しかし彼女は戦場を楽し気に駆け抜ける。
此華咲夜の攻撃は強烈の一言に尽きるが、それでも猟兵たちは自身の、最高の一撃を此華咲夜の仮面に叩きつけていく。それによってひび割れていく仮面。
その様子を見守っていた数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は、次は自分の番と『宇宙カブJD-1725』に跨った。
次の瞬間、此華咲夜の天槍、その先端から迸る貫通衝撃波。大地を抉りながら迫ってくる衝撃波を、多喜はカブのスロットルを全開にして発進、間一髪で回避する。
そして衝撃波が突き抜けたソニックブームで無茶苦茶になっている大地を、しかしカブのタイヤが必死に喰らい付きながら、此華咲夜に向けて疾走する多喜。
「っていうか、アンタ別の世界から連れてこられたのかよ!?」
聞こえるかどうかもわからない中、しかしそう叫ばずにいられない多喜。
「たぶん。召喚された、ということはそうだと思うのですが」
対して、天槍での攻撃を止めないまま、特に気にしてない感で上から答えてくれる此華咲夜。
「一体どんな世界だったのさ、そこは!」
「知りたいですか?」
多喜の叫びに、すっごく和やかでにっこりした声で応えながら……此華咲夜の槍が神速連続突きで刺突の弾幕を作る。防御ではなく攻撃、すなわちこの弾幕を多喜に叩きつけるために。笑顔でやることがエグいんよ姫。
答えを得るために必要なことは最初から提示されている。
だから、多喜は不敵に笑う。
「一発ぶちかまさせてもらおうかね!」
上から降る文字通りの槍の雨を、巧みな操縦で回避しながら。多喜はそう宣言するのであった。
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楽しそうに笑いながら、此華咲夜は天槍の攻撃を止めることは無い。
(……とは言ったものの、なぁ)
不敵な笑みはすぐに苦笑に変わった。現実問題、この天槍乱舞をどうするのかっていうと、対策は……有って無い。
(巨体相手だとアタシは逃げ回るしかできないからね)
雨の間を駆け抜けるように、気合と根性で疾走していく多喜。今はとにかく攻撃をかわすことに専念する。
(突撃も動きが見えたら回避できる。衝撃波は……なんとか相殺できるか!)
攻撃をかわしながら、それでいて決して此華咲夜の動きから目を離さず。
ぐんっ、と踏み込んできた此華咲夜の螺旋回転突撃を、車体を滑り込ませるようにして回避する多喜。此華咲夜にそのまま肉薄……は出来ない。天槍の軌道が巧みに多喜の進路を妨害したからだ。旋回して此華咲夜から離れるように移動する多喜へ、再び天槍の刺突の雨が降る。
このままでは近づけない……しかし、多喜の口端に浮かぶのは笑み。
(身体を登るなんてことはしないさ)
全力で攻撃を回避しながら、少しずつ距離を取っていく多喜。これは……作戦だ。
――なんせアタシがやろうとしてるのは離れてないとヤバいんでね。
天槍乱舞は此華咲夜から放たれる超連続攻撃である。巧みな槍術を組み合わせたその連撃は完璧……だが、人の身から放たれる連続攻撃がゆえに、たったの一瞬かもしれないが、途切れるタイミングが……ある。
「……っ!」
最後に貫通衝撃波を放って多喜を捉えようとする此華咲夜。
「くぅ……っ!!」
その着弾に合わせて、サイキックの衝撃波を放ち、自身の周りだけでも相殺していく多喜。だが衝撃波が強すぎて、そのまま押し流されていく。
「仕留め……切れませんでしたか」
息をつきながら此華咲夜が呟く。多喜は大きく距離が離れつつも健在。カブに跨った状態でどうにか立っている。
「ですが……、っ!?」
此華咲夜が息を飲む。それは自身の周囲の空間が歪み始めたからだ。転移といった現象ではなく、これは一点……自身の仮面を狙った一撃だと気づく此華咲夜。
「動きが少しでも止まった時が攻め時、ってな!」
多喜が叫ぶ。同時に空間の歪みが激しくなる。
「座標ロック、そこだっ!!」
此華咲夜の仮面を狙って放たれる多喜の【宙穿つ穴】――JD-1725に搭載されていた対星獣シークエンス。それは指定座標周辺に生み出した亜空間を連続崩壊させることで現象に巻き込み、そのまま対象を崩壊させる……およそ人に放ってはいけないような攻撃だが。
「……これは」
此華咲夜の言葉には歓喜の響きが含まれている。何故かと言えば、これが『人の辿り着いた可能性』『人が作り出した未来』であるからだ。その力の奔流に巻き込まれながら、それでも此華咲夜は楽しそうに笑う。
「あなた方は……ここまで辿り着いたのですね」
そう言って。
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直後、ひび割れていた仮面が完全に砕け散る。
『此華咲夜、貴様っ! 貴様らぁぁぁぁぁ!!!』
召喚されながらも何もできずに散っていく魔王ゼルデギロス。
「言ったではありませんか。この方達は容易く私を殺すでしょう、と」
仮面の下から現れた切れ長の瞳を優しく緩ませて、美しい貌で微笑む此華咲夜。
そしてその巨体が霞のように揺らぐ。
「感謝を申し上げます、六番目の猟兵達」
それは仮面を砕いてくれたこと、そして正々堂々と戦ってくれたことに対して。
「残された時間で私はあなた方に応えましょう。先のあなたの問いにももちろん」
天槍を置き、語り掛ける此華咲夜がその場に座り込む。交わされる言葉と想い。猟兵たちは問い、此華咲夜は自分が知り得ていることを告げていく。
そして。
「……ここまでのようです。良き戦いでした。それでは……ご武運を」
優しい笑みを浮かべながら、『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』はデビルキングワールドから消滅した。
猟兵たちの、勝利である。
大成功
🔵🔵🔵