7thKING WAR㉔〜Another Mother
荒野の只中、聳え立つは和装の女性。
山よりも尚巨大な身体、携えた槍もまた都市一つ分はあろうかという長大極まりなき代物。
その貌は目元を黒き仮面に覆われ、瞳に浮かぶ感情の程を窺い知ることは叶わないが。露な口元の形は、小さな笑み。悪辣な企みも、殺戮の狂気も感じさせない、穏やかなる内心を感じさせる笑み。
その心中にては、真に悪しきものが破壊を、殺戮を喚きたてる。かつて、彼女達の世界を荒らし回り、数多の理不尽な終焉を強いたもの。そして今や彼女自身の心身を簒奪せんとする、忌まわしき存在。
だが、それでも彼女の心が乱れることは無い。彼女には、確信めいた予感があるのだ。
己を斃し、己をこの世界へ呼び寄せたガチデビルを斃し、以て理不尽なる未来を叩き潰す勇士達──彼女の『ぼうや』達に匹敵する強き者達が、必ずや此処に来ることを。
ならば、彼らに対し、与えられるものがきっとある筈。そう信じて、彼女は只々、その時を待つのである──。
●
「皆さん、あの山より大きな女性の正体が判明しました」
グリモア猟兵、ソニア・シルヴァーヌ(玻璃の白百合ラスボス仕立て・f31357)が告げるは、7thKING WARが始まって以来、その全ての戦場から姿が見られる程の巨体を有する存在の正体。
「彼女の名は『魔王ゼルデギロス』、魔王ガチデビルが己の計画を成就させる為の手駒として異世界から召喚した魔王の一体です」
彼ら召喚魔王は全部で三体。そのうち最低二体を討伐せねば、ガチデビルのもとへ攻め込むことは叶わない。
「此度皆さんにお願いするのは、勿論この魔王ゼルデギロスの討伐――なのですが」
そこまで言って、ソニアは困惑げに眉根を寄せる。何事かと猟兵が問えば。
「如何やら、彼女は猟兵に討たれることを望んでいるようなのです」
ソニア曰く。
魔王ゼルデギロスというのは、正確にはあの巨大な女性の名前ではない。彼女の目元を覆う仮面、それこそがゼルデギロスであり、女性はゼルデギロスに操られている存在なのだという。
「如何やら、異世界で天寿を全うしたかの女性の肉体をゼルデギロスが乗っ取り操っている、ということみたいなのですが……女性は肉体の主導権こそ奪われているものの、精神や思考は元通りに保っているようなのです」
肉体は操られているため、ゼルデギロスの意志に従い戦闘は全力で行うが、猟兵に対し何かを教えようという女性自身の意志も、また確かにあるようなのだ。
「ですが、ご注意ください。彼女はあの巨体に違わぬ、圧倒的な強者です」
山よりも尚巨大な肉体に相応のパワーと、其に似合わぬスピードと技量を兼ね備える。都市一つ分ほどはあろうかという巨大な騎槍を軽々と振り回して繰り出すユーベルコードは、猟兵のそれより確実に先に発動する。
「更に、人間大の存在との交戦経験も豊富なのか、巨体故の弱点を突くような動きにも完璧に対処できます。そうした動きは、逆に此方が不利となる可能性が高いです」
死角に回り込む、足元に集中攻撃を繰り出すといった立ち回りは効果が薄い、ということだろう。
斯くの如き紛い無い強敵だが、弱点も一つ存在するとソニアは言う。
「彼女の被っている仮面――ゼルデギロスの本体を破壊することで、かの女性もゼルデギロスも諸共に消滅します。かの仮面こそが、明確な彼女の弱点と言えるでしょう」
即ち、彼女の身体を駆け登るなり、空を飛ぶなりして、顔の仮面に攻撃を仕掛ける。それが有効な攻撃となるだろう、とソニアは見立てる。
「強敵ではありますが、他ならぬ彼女自身の望みを叶える為――どうか、宜しくお願い致します」
祈るようなソニアの声に見送られ、猟兵達は征く。『彼女』の下へと。
五条新一郎
三度目の衝撃。
五条です。
7thKING WAR、序盤にしていきなりの山場。
あの世界から召喚されたのでしょうか、見覚えある超存在との対面でございます。
●このシナリオについて
このシナリオの難易度は「やや難」です。
●目的
『魔王ゼルデギロス』の撃破。
●戦場
デビルキングワールド、水脈枯渇平原。
地面には枯れた水路があるばかりでほぼ平坦。
●プレイングについて
OP公開と同時にプレイング受付開始、ある程度集まったところで〆切予定。
「ゼルデギロスの先制攻撃に対応し、相手の巨体を利用『しない』戦い方で反撃する」ことでプレイングボーナスがつきます。
ゼルデギロスは己の巨体の弱点を突く戦法に完璧な対処が可能なので、巨体を利用する戦法は非推奨です。
●リプレイについて
随時執筆予定でおります。5/10(火)辺りで完結の予定。
●余談
ゼルデギロスは「ぼうや達」「ゼルデギロス」「マスカレイド」「正月に見た不思議な予兆の正体」に関する質問に対しては答えてくれます。但しリプレイ中においては『返答した』としか描写しません。詳しい返答内容は、戦争終了後に公開されるとのことです。
それでは、皆さんの理不尽を叩き潰すプレイングお待ちしております。
第1章 ボス戦
『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』
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POW : ジェットランページ
【天槍から噴出する強烈なオーラ】によりレベル×100km/hで飛翔し、【身長】×【武器の大きさ】に比例した激突ダメージを与える。
SPD : 天槍乱舞
【貫通衝撃波「フォーススティンガー」】【螺旋回転突撃「ドリルインパクト」】【神速連続突き「ミラージュランス」】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ : ジャッジメントランス
【天高く天槍を投げ上げるの】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【オーラで構築した天槍の分身】で囲まれた内部に【裁きの雷】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
グリモアベースより転送を果たした猟兵達は、直後に前方へ聳え立つ『それ』を認める。
その造形は、鮮やかな真紅の着物を纏う妙齢の女性。なれど見上げれば何処までも高き身の丈、頭部は雲の中まで届かんばかり。これが『魔王ゼルデギロス』――正しくは、其に肉体奪われし、何らかの超越存在たる女性の姿。感じられる存在感は、肉体の大きさ以上に強く、猟兵達を圧倒せんばかり。
『――来ましたね、六番目の猟兵達よ』
其処に降る声。猟兵達の遥か頭上、女性の顔が彼らを見下ろしていた。その貌には赤糸を飾った黒き仮面が纏われ、目元を覆い隠しているが、彼女は何らかの手段を以て猟兵達を『見て』いるらしい。
『私は魔王ゼルデギロス。魔王ガチデビルの用いた特級契約書を以て、彼の野望成就を助く為、この世界に招かれし者』
朗々と響く声音で以て、名乗りを上げるゼルデギロス。なれど、其が彼女自身の名でないことは猟兵達も既に知る。其は、彼女の被る仮面、其処に宿る悪意宿す者の名と。
『私は既に死したる身を、この仮面で以て現世に繋ぎ留められたる者。故に、この仮面を破壊することで以て、私は今再びの死を迎えることでしょう』
そんな猟兵達の認識を知ってか知らずか、ゼルデギロスは自ら己の弱点を明かしてみせる。無論『彼女』の意志であろう。やはり『彼女』自身は、世界に破滅を齎さんという意志など持たぬと見える。
『お気になさらず。私は最早、現世に在るべきではない存在。それに、私を倒さねば、皆さんもガチデビルのもとへ至ることは叶いません』
慮る猟兵達の在るを感じたのか、ゼルデギロスは続けて語る。彼女達召喚魔王は、ガチデビルの本拠を守る結界の要。かの魔王のもとへ至るには、眼前のこの存在をも打倒せねばならないのだ。
身構える猟兵達。其を認めた女性の口元が、微笑んだように見えた。
『それで良いのです。この身は既に死してはおれど、捨て身の戦いを以てこそ、皆さんに教えられることもある筈』
そしてゼルデギロスもまた構える。その得物は、彼女の圧倒的な巨躯に相応しい太く長大な、天を突かんばかりの騎槍。其を礎として都市一つが築けそうな程の大きさだ。
『――くそっ! 我に肉体を奪われておきながら好き勝手ほざきおって!』
と、その時。これまでの女性の声音とは全く別の声が響いた。苛立たしげな悪意に満ち満ちた声。
『我は未だ滅びる気など無い! 貴様らを皆殺しとし、この世界に我が仮面(マスカレイド)をバラ撒き、理不尽なる終焉で支配してくれる!』
喚くように叫ぶ声。どうやらこの声の主こそが、魔王ゼルデギロス本来の人格のようだ。成程、全き邪悪と称するに相応しい存在である。
『いいえ、ゼルデギロス。貴方の目論見は、今ここで潰えるのです。此処に集った武士(もののふ)達の手によって』
『否、否だ! 貴様がこれより見るは、この矮小なる者共が惨たらしく死ぬ終焉のみよ!』
再び聞こえた女性の声と、其に抗うゼルデギロスの声。言い争いながらも、ゼルデギロスの身構える姿は変わらず。肉体の主導権がゼルデギロス本人にある事もまた、事実のようだ。
『さあ、いざ尋常に勝負です、六番目の猟兵達よ!』
『死ね! 猟兵共、死ねぇぇぇ!!』
片や子を促す母の如く、片や純粋なる悪意のままに。魔王ゼルデギロス、其を形作る二つの人格が、開戦を告げる声を上げた。
天御鏡・百々
あの仮面からは邪悪な意志を感じるな
あの女性のためにも、滅する必要があるようだ
巨体であろうとも、それを苦にせぬ戦闘技術には恐れ入ったな
となれば、正面から戦うしかあるまいか
どこまで効果があるか解らぬが、本体の神鏡より放つ閃光で牽制し(目潰し)、天之浄魔弓より『清浄の矢』を放つぞ
穢れし魂のみを浄化する矢に防御は無意味、誘導する矢で仮面を貫いてやろう(誘導弾、鎧無視攻撃、スナイパー)
敵の攻撃は神通力の障壁で防御(オーラ防御)
戦闘の合間に質問だ
「貴殿らは何処の世界から召喚されたのだ?」
「ぼうや達とは、その世界の者なのか?」
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【POW】
※アドリブ他歓迎
※愛機搭乗
覚悟完了済なら話は早い
医者が再び看取ってあげる
折角のグラマラスボディは活かせないけど
「超デカい攻撃範囲」と思えば大丈夫さ
◆先制
《瞬間思考力》でギリ回避軌道を見出し
【アーク・ファランクス】高速推進形態と
【セレス】短距離転移連発で突撃回避
衝撃波も甚大な可能性に注意
◆反撃
オペ125番【クリムゾン・キグナス】開始
【リゲル・T】のランス形態でマッハ10の槍試合
《瞬間思考力》で精密制御しつつ狙うは仮面中央
【オウガ・M】の膂力で穂先バンカーを叩き込み
【8】の預言で強化した『終焉が終わる終極の業炎』注入
◆質問
『ぼうや達』の来訪が本格化する可能性は?
特に「猟兵の力を得た子」ね
戦闘態勢に入ったゼルデギロス、其と最初に交戦するは二人の少女猟兵。尤も、共に見目は幼くとも経たる時は長く。
「成程、あの仮面から邪悪な意志を感じるとは思ったが見立て通りか」
喚き散らした悪意の声を思い返し、得心いったように天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は頷く。
「なれば尚更、あの女性の為にも滅する必要があるな」
『だね、彼女の方も覚悟完了済のようだし』
百々の意志に同意を示す声は、背後に聳える蒼きキャバリア『ナインス・ライン』から。その搭乗者たるリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)は、愛機のアイカメラ越しの視線を、キャバリアに比しても尚巨大に過ぎる姫神へと向ける。
『アタシも闇とはいえ医者なんでね。再び看取ってあげるとするよ』
『有難いことです。では――』
リーゼロッテの告げるに応えた直後、身構えたるゼルデギロスの巨躯が超速度で迫ってくる。構えた天槍から噴出するオーラの炎が、爆発的な加速力を齎し、その巨体を砲弾じみた速度で以て飛翔させたのだ。
『この一撃、どうぞ耐えてご覧なさい!』
「この巨体にしてこの速度か……! だが!」
迫る速度に思わず舌を巻く百々、なれど対処の術は備えている。背後に浮かび上がった神鏡が眩く輝き、光を放ってゼルデギロスの顔へと浴びせる。
『グアア!? き、貴様……ッ!!』
仮面から響く憎々しげな呻き。其に宿るゼルデギロス本人も視覚を有しているのか、清浄なるその輝きに目を眩ませ、切先が僅かに惑う。
迫る槍の速度は衰えぬが、直撃は躱し得るか。百々は己に宿る神通力で以て障壁を形成しつつ横へ跳躍。背後のリーゼロッテは既に機体ごと姿を消している。機体に仕込んだ超短距離跳躍システムの力だ。
『グラマラスボディは活かせなくても、流石に攻撃範囲が超デカいね……!』
なれど、転移を繰り返しても尚、槍の穂先は逃れたが未だ槍身への衝突可能性が逃れられない。圧倒的に過ぎるその質量、ぶつかればナインス・ラインといえど耐えきれない。
ならば、と双肩の防盾に仕込んだブースタを起動。急加速で以て突撃軌道の外へ、外へ――
「っぐぅぅっ!」
『くぁ……っ!』
そして上がる二人の苦悶の声。ゼルデギロスの圧倒的な体躯、それが超高速飛翔することで生じる大気の乱れ。あまりにも巨大な攻撃範囲は、二人の防御行動を以てしても完全には逃れ得なかった。
百々は神通力の障壁を駆使して自ら吹き飛ばされることで衝撃を逃がしたが、至近で浴びた乱気流に全身を裂かれる。
リーゼロッテは質量に加え気流の乱れにも警戒していたが、それでもナインス・ラインのAIは受けた衝撃に伴う無数のエラーメッセージを吐き出す。だがリカバー可能な範囲だ。コンソールを叩き応急処置――そして反撃を構える。
『バランサー再設定、センサーは必要なの以外一旦オフ――オペ125番『クリムゾン・キグナス』起動。よし、反撃とイこうか』
「承知した。彼女が旋回して戻ってきた処に仕掛けるぞ」
ナインス・ラインの構えた大剣が変形し、騎槍の如き形態へと形を変える。百々が和弓を構え、弦を引けば、宿す神力が光の矢となって番えられる。
『今一度、参りますよ……!』
遥か彼方で旋回起動を描いた巨躯が、再度猛烈なる速度で以て迫り来る。その貌に光矢の鏃を向け、百々は狙いを定める。放つ矢には追尾の力もあるが、狙うものは確と見定めるべきと考える故に。
「来るが良い! その身を苛む穢れし存在、我が祓ってみせようぞ!」
瞬時に迫り来る姫神の巨躯、狙うはその貌――を覆う仮面。彼女の弱点と称されたる部位より立ち昇る悍ましき悪意。其をこそ、百々は狙い撃たんとする。而して、狙いは定まった。
弦が弾け、矢が放たれる。空を裂く光の矢は、彼我の速度によって瞬く間に巨戦姫の貌へと迫り――追尾の加護を以て狙いを補正、違えることなく仮面へと突き刺さる。
『ぐわあぁぁぁぁぁ!!?』
直後に上がる苦悶の声。更に追撃として放たれた矢が次々と着弾、浄化の神力が宿りし悪意を苛む。
深々と刺さった矢は女性の肉体にまで到達しているとも見えるが、この矢が穿つは穢れし魂のみ。かの仮面は悪意に凝り固まった不浄そのものであるのか、効果は尚の事覿面であったようだ。
「時に、巨いなる姫君よ」
尚も矢を番え放ちながら、百々は巨姫に問う。かの存在は猟兵達に教えたいことがあると言っていた。であるならば。
「貴殿らは何処の世界から召喚されたのだ? 貴殿の言う『ぼうや』とはその世界の者なのか?」
その問いに、姫神は答えると共に――百々の頭上を飛び越えてゆく。彼女を狙っていた穂先を上向け、次なる標的へと定め直す。荒れ狂う暴風に、百々は神通力を障壁と成して耐える。
『そんじゃ、アタシからも質問いいかな?』
其は無論のことリーゼロッテ。騎槍の推進機構を以て飛び立ったナインス・ラインは空を駆け、その速度を最大限――マッハ10を超える速度にまで高め、標的たる巨戦姫の、その貌を覆う仮面へと狙いを定めつつ問う。
『その『ぼうや』達の来訪が本格化する可能性は? 特に『猟兵の力を得た子』ね』
リーゼロッテの問いに、姫神が答えたその直後。リーゼロッテは見る。ナインス・ラインのメインモニタを埋め尽くす、巨大な騎槍の切っ先を。
だがリーゼロッテの瞬間思考力は、回避限界ギリギリのタイミングを違えることなく見極める。刹那の瞬間転移で以て直撃を躱せば、長大な其をコンマ秒も無い速さで以て翔け上がり。
『コイツで――エンド・ブレイクとイこうじゃないか!』
そして。背部シリンダーを以て強化した腕部出力を槍へと注ぎ。速度を上乗せして突き出した槍は――狙い違わず仮面を捉える。
更にそれのみでは終わらぬ。槍先に開いた射出口から吐き出されるは炎。只の炎ではない、預言書メガリスを以て『終極』の概念を付与された炎は、理不尽なる終焉にこそ更なる苛烈さを以て燃え上がり。
『ギャアアアアア!!? 何だ、何だこの炎は!? これは、まさかぁぁぁぁぁ!?』
仮面を燃え上げる炎に、ゼルデギロスの絶叫が響く。苛む熱は、よもやかつて散々に己へ煮え湯を飲ませ続けた、あの――
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルテミシア・アガメムノン
オブリビオンになってなお協力的なのは珍しいですわね。
それ故にゼルデギロスの悪辣さが際立ちますが。
ほほほ、ワルはワルでもそういう系統のワルはわたくし、許さないことにしておりますの!
先制対策
戦場の見晴らしは良いようです。WIZUCの発動直前、周囲を囲む天槍の一本を極大斬撃魔法(斬撃波×全力魔法)で破壊。
内部をなくすことで不発あるいは弱体化させましょう。
その上で『氷獄の魔帝』を発動。
真の姿となり、増大化した戦闘能力で仮面まで飛翔して渾身のクロノスの大鎌の一撃をいれます。
質問は召喚魔王という事ですが未知の世界の方の様です。
どんな世界から来たのかしら? 的なことを。
佐伯・晶
色々事情はあるみたいだけど
まずはあの仮面をなんとかする必要がありそうだね
避雷針代りにカーボン製の釣竿を立てつつ接近
槍の分身で囲まれた内部から脱出を目指すよ
予め見えてて避けて近づけるなら
それに越した事はないけど
外部に近づいたらワイヤーガンで一気に移動
近ければ相手に引っ掛けて巻き込みを狙うよ
攻撃を受けたなら神気で防御しよう
初撃を凌いだらUCを使用し
仮面にミサイルを攻撃
足りないならワイヤーガンと空中浮遊を使って
ガトリングガンで攻撃しようか
質問する時間があればぼうや達というのが
どんな世界の存在で女性とどういう関係か聞いてみよう
あと、不思議な予兆で見た女性や場所について
知っている事がないか聞いてみようか
レテイシャ・マグナカルタ
翼で空へ、全速力で一端領域を離脱
雷が落ちたらUC発動、時速570kmで再突入
空を飛び続けながら戦える奴とは、あんまりやり合ってねぇんじゃねぇか?
バカでかいが獲物の長さは有限だ
届かない距離から突っ込み、突いて来る槍に対してその周囲を螺旋を描く様に飛ぶ
勿論突きだけじゃ無く振り回すのも高い技量があるんだろうが、それでも槍の周りをぐるぐるする動きに対しては力の入れる向きを定め辛いはずだ
手首の回転で槍を回されたら、それに対応して螺旋の回転方向を変更だ
顔に近づけたらそのまま仮面に突撃する!
本気で向かってくる激しい戦意、だけどどこか優しさと慈しみを感じる
厳しい世界で傷ついても立ちあがって生きていく事を願い信じる愛がある
…オレは何処とも知れない場所から流されてお養父じに拾われて、義弟妹(家族)も出来て愛されてきた…でもこれはそれとは別の
これが、母親って奴なのか、何故か強くそう感じる
そんなアンタに愛されたぼうや達に、アンタは死して尚偉大な母だった事を伝えなきゃ、何故かそう思うんだ
どこにいきゃ会えるんだ?
アルトリウス・セレスタイト
人型にしては巨大だな
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら自身を無限加速し回避
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
絢爛を起動
目の前の空気を起点に戦域の空間を支配
因果の原理を以て対象をオブリビオンとその行動のみに指定
破壊の原理を空間自体に付与し、触れた対象を残らず破壊する
万象一切に終わりを刻む破壊の原理に例外はない
槍もオーラも雷も、無論本体とて等しく砕け塵と消える
仮面の主。理不尽な終わりを齎してきたのだろう
偶には受ける側になってみるが良い
※アドリブ歓迎
『おのれ、猟兵共……! 我に対してこのような……!』
『やはり、私の見立ては確かだったようですね』
魔王ゼルデギロス、その巨大と称するにも余りある巨躯の頭部から、二つの声が響く。一つはゼルデギロスの本体たる仮面の苛立たしげ声、一つは肉体の主たる女性の何処か嬉しそうな声。
「人型としては随分と巨大だな。それに――」
「ええ、あの女性の方。オブリビオンになって尚協力的な様子で」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の見解に、アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)が言を継ぐ。予兆においてもグリモア猟兵の予知にも見られた、かの女性の猟兵に対する意思。まるで猟兵達に、何かを遺そうとしているかのような。
「――尤も、それ故にゼルデギロスの悪辣さが目立ちますが」
巨姫の目元を覆う仮面を、アルテミシアは厳しく睨み据える。ワルを尊ぶデビルキングワールドの制覇を目指すアルテミシア、それ故にこそ他者の尊厳を踏み躙る類のワルは許さぬ。
「色々と事情はあるみたいだけど、まずはあの仮面を何とかする必要がありそうだね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)もまた、アルテミシアに同意を示し並び立つ。あの仮面こそが、かの姫神を操る元凶なれば。
『――次の猟兵達ですね。参りますよ……!』
と、そこでゼルデギロスが猟兵達に気付いた。決然たる姫神の声と共に、上空から風を切る重い音。戦場へと、長大なる何かが降り落ちてくる音。
「……! こいつは……!」
レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)の驚愕する間もあればこそ。降り落ちてきたのは、オーラで形作られし何本もの長大なる騎槍。ゼルデギロスの携えるそれと同一の意匠を持つそれらが、猟兵達を包囲するように大地へと轟音伴い突き刺さる!
『猟兵達よ、この雷を乗り越え、私に迫るのです!』
そしてゼルデギロスは、自らの携える槍を上空目掛けて投げ上げる。呼応するかの如く、地上のオーラ槍群もまた電荷を帯びる。槍群に囲まれた中心へと、強烈無比なる雷を落とすユーベルコードだ。
「ちぃ! 当たるかよ!」
レテイシャは即座に跳躍、翼を広げて飛翔し一気に加速。槍群包囲の中から飛び抜け戦域外へ。
「アルテミシアさん、あっちだ!」
「承知致しましたわ!」
晶はワイヤーガンを抜き、手近なオーラ槍へと射出。先端のフックはオーラの槍にも確と引っ掛かり、巻き上げ機能を以てその身を素早くオーラ槍へと引き寄せる。
アルテミシアも飛翔し晶と共に範囲外を目指すが、既に天にては稲妻が迸る。このままでは間に合わない。そこでアルテミシアは動く。
「囲った中に効果が及ぶならば……これで如何かしら!」
自らの魔力を腕へと集中し、大きく振り抜く。その動きが形成するは三日月型の巨大な魔力刃。晶のワイヤーが引っかかる先の槍へと射出すれば、直径軽く数百mはあるだろうオーラ槍を中途にて切断。絶妙なる角度計算によって、槍は二人の在る方向へと倒れ込んでくる。
槍の左右へと其々飛翔、或いは跳躍し逃れる二人。その直後。
『避けない、のですか……!?』
「……………」
上空から降り落ちてくるは、裁きの鉄鎚という形容こそが相応しかろうか、それ程までに太く巨大な雷。今まさに己の在る位置へと降り落ちんとするそれを、アルトリウスは一歩も動くことなく見据え。驚愕する姫神の声が響いた、その直後――
戦場が、白き閃光に満たされる。
『――三人は、避けましたか。ですが、残るお一人は――』
落下してきた槍を再び手に掴み、ゼルデギロスは戦域を見渡す。
土壇場でオーラ槍の一本が折れた為に落雷の範囲は僅かに減少、その範囲内に逃げ込んでいたアルテミシアと晶、そしてもっと早いタイミングで逃れていたレテイシャには雷は当たらず。なれど、最後まで範囲中心に居たアルトリウスは――
「――残念だが。いや、安心しろ、と言うべきか」
涼しげな青年の声が響く。光の退いたオーラ槍群の中心に、一つの人影が在る。その正体は言うまでもなく。
『……あの雷の中心に居て、無傷……!?』
「無限のその先まで届く程の業でなくば、俺を傷つけることは叶わん」
アルトリウスである。彼の身に纏う淡青の光、顕理輝光――世界創生の力たる『原理』の力は、彼へ迫る害ある存在のその全てを無限に破壊し断絶し否定する。ユーベルコードとて例外ではない。
『成程、そのような力の……それでこそ、です』
驚愕していた巨戦姫は、安堵するような、或いは何処か信頼の滲む声音を漏らす。なれど操られる肉体は、寄生せし悪意の命じるままに再度槍を構え。
『ならばもう一度。如何なる手段にて凌ぎますか』
試すような姫神の言葉と共に、槍を再び投げ上げんとするが。
「煌け」
アルトリウスがその一言を告げると同時。戦場に突き立ったオーラ槍、その全てが一瞬にして砕け散る。まるで砂か何かで出来た柱の如く、呆気なく。
それこそはユーベルコードとして現出する、原理の力の攻撃的作用。己の在る空間を掌握下に置き、意のままに操作する業。敵するものは、彼の前では何を為すも許されぬ。
『何と……このような事が……!』
『ぐ、ぬぬ……っ、おのれ……!!』
驚愕する姫神の声に、歯噛みするゼルデギロスの声が混じる。ゼルデギロスと其が携えたる天槍は存在格の差ゆえか、直ちに崩壊はしないが。それでもその存在の損なわれゆくは感じているようで。
「今度はこっちの番だ、ってな!」
遠くから響く声。見れば、戦域の外から超高速にて飛来する青と金の影。レテイシャだ。雷の落ちたるを確かめ、ユーベルコードを伴い戻ってきたのだ。
『速い、ですね。ならばこの突きは躱せますか!』
ゼルデギロスは彼女目掛けて槍を突き出す。なれどレテイシャは飛翔の勢いのまま斜め前方へ飛翔。突き出される槍を躱し、そのまま槍の周囲を廻りながら巨戦姫の身体へと接近。それは螺旋を描く起動に似る。
『成程、そのような戦術もあるのですね』
感心げに呟く姫神。払い退けようにも、槍をどちらへ振るえば良いのか見極め得ぬ。
集中すれば、レテイシャの機動を読んで叩き落とすことも叶ったのだろうが、それだけの集中を猟兵達は許さない。
「さあ、ゼルデギロス! 審判の時が来たりましてよ!」
その顔へと飛翔し迫るはアルテミシア。背に負う翼は、先程までの黄金の六枚光翼ではない。六対十二枚、実体を有する漆黒の翼である。
「援護するよ。さあ、派手にいってみようか」
アルテミシアの後には、総計1000発以上の小型ミサイルが飛翔する。地上の晶が呼び寄せた、上空を飛翔する火力支援無人航空機から放たれたものだ。
『これは……! 何という数!』
レテイシャの迎撃を諦めたゼルデギロスは、騎槍をアルテミシア目掛けて振り上げる。軌道上のミサイルが数百発単位で叩き落とされるが、アルテミシアは更なる上昇と共に回避。残ったミサイルが、巨姫の貌を覆う仮面へと次々に着弾する。
『……っ、異世界にはこのような武器もあるのですね……』
苦悶しつつも感心げな声を漏らすは姫神。その貌を包むミサイルの炎と煙を斬り裂くように、上空からアルテミシアが降下し仮面を目指す。両の手に、黄金で形作られし大鎌を振り上げて。
「――一つ、お聞かせ願えますかしら」
その最中、アルテミシアが問いかける。ゼルデギロスは異世界から召喚された魔王との事だが、彼女が存在し得た世界というものをアルテミシアは、猟兵は知らぬ。
「貴女は、どんな世界から呼ばれて来られたのでしょうか?」
巨神姫がその問いに答えた直後。アルテミシアの振り下ろした大鎌、その黄金の刃が仮面目掛けて真っ直ぐに振り下ろされ、深い斬痕を刻み込んだ。
『……っ、見事な斬撃です……!』
痛みに呻く声音ながらも、アルテミシアのその一撃を讃える戦姫。同時、振り上げられた騎槍が顔の周辺を薙げば、十二翼を羽ばたかせアルテミシアは距離を取る。
「今度はこっちを受けてもらおうか!」
その間に、ゼルデギロスの肩まで登ってきた晶がガトリングガンを構え。その身に宿る邪神の力で以てパーツが補われ、弾が装填されれば、其を一気に撃ち放つ。無数の弾丸が仮面を捉え、憎々しげな呻きが仮面から漏れる。
「僕からも質問良いかな」
ガトリングガンの引鉄を引き続けたまま、晶が問う。
「以前に見た不思議な予兆。あれで見た女性や場所について、何か知らないかな」
それは21年の正月、猟兵達が見た予兆。不可思議な世界と、その世界に閉じ込められた様子の女性。あれは何なのか、と。
巨姫が答えた直後、その肩が強く片手で払われる。肩から落ちる晶だが、ワイヤーガンを射出しゼルデギロスの着衣に引っ掛け、落下は最小限に留める。
「今度はオレの番だぜ!」
入れ替わるかのように、接近を果たしたレテイシャの突撃。その身を包む蒼い球形障壁ごと仮面へと衝突すれば、仮面から呻き声。効いている。だが直後に突き上げられる槍。咄嗟に躱す。
(この攻勢、間違いなく本気だろうな。激しい戦意だ。だけど――)
更に攻撃を重ねる猟兵達、槍を、腕を振るい反撃するゼルデギロス。彼女の攻勢には苛烈なまでの闘志が宿るが、それと同時に優しさや慈しみも感じられるものだ。
厳しい世界で幾度理不尽に見舞われ傷ついても、尚諦めず立ち上がり生きていく事を願い、信じる。深く、強い愛。
(――これが、母親って奴なんだろうか)
物心ついた時にはアポカリプスヘルの荒野に在り、義父に拾われた彼女。孤児院の弟妹達という家族もでき、愛されて育ったとは思う。だが其処に『母親』はいない。故にレテイシャは母の愛を知らない。
それでも、否、それ故に、だろうか。眼前の巨神姫の振る舞いから感じられる、その暖かな感情こそが、それではないかと。そう思わずにはいられないのだ。
(なら、この人の言う『ぼうや』も、さぞや愛されたんだろうな)
そして思い至る。であるならば、為すべきことがあると。
「アンタに愛された『ぼうや』達に伝えたい。アンタは死して尚、偉大な母だった――ってな!」
仮面へと蹴りつけながらレテイシャが叫ぶ。理由などは分からない。だが、そうしたいと思うのだ。その為に知るべきことは、即ち。
「アンタの言う『ぼうや』達に、何処へ行けば会えるんだ?」
「それは僕も聞きたいな。『ぼうや』達はどの世界の存在で、あなたとどういう関係なのか」
晶もまた、レテイシャと類似の疑問を持っていた。故に問う。仮面に対して再度ガトリングガンの銃弾を撃ち込みつつ。
姫神が其に答える間に、アルテミシアは再度接近。翼からの魔力弾を撃ち込みながら肉薄し。
「母子を引き裂くような無粋なワルは、疾く退くが良いでしょう!」
再度、大鎌を振り抜く全力の一閃。裂かれる痛みに、其処へ宿るゼルデギロスが苦悶の叫びを上げる。
「仮面の主。お前はこれまで、幾つもの理不尽な終わりを齎してきたのだろう」
晶の在るのとは逆の肩。いつの間にか登ってきていたアルトリウスが冷たく言い放つ。偶には受ける側になってみるが良い、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フカヒレ・フォルネウス
アドリブ連携歓迎
くっ。自己犠牲の挺身とは……なんと善良な……!
そんなあなたに憑依して暴れようとは、ゼルデギロス、何というワルッ!
いいでしょう、巨大な方。
鮫の悪魔の四天王フカヒレ、攻め入らせていただく!
ふむ。巨体を利用しない方法、ですか。
ならば堂々と意表を突くしかありますまい。
アイテム召喚した黄駆鮫に乗り、先制攻撃で繰り出される槍を奪取で回避。
連続攻撃が途切れた隙を狙って、真正面からだまし討ち!
そう、貴女の頭上に遠隔召喚! 《鮫喰場》!
貴女という巨大な環境に対応したビッグサイズの鮫を呼び出し、その顔面に噛みつかせます!
ところで、ぼうやたちとはいったい……?
貴女、悪魔の御先祖だったりするのですか?
菫宮・理緒
生を全うした女性騎士を引っ張り出して操るとか、
さすがガチデビル、『素直ないい子』ではなさそうだね。
それに『ゼルデギロス』も同じようなものかな。
操ること自体は悪いと言わないけど、するなら生きている人にしてほしいよね。
安らかに眠っている人をたたき起こして、っていうのはちょっと……ね。
と思いつつ【セレステ】に乗って、向かっていくよ。
相手の先制攻撃には【空中機動】と【見切り】を使ってなんとか対応したいな。
先制を凌げたら【不可測演算】を使って躱していくよ。
こちらからの攻撃は【M.P.M.S】を誘導弾モードで発射して、確実に当てていくことを目指そう。
質問ができるなら『ぼうや達』について聞いてみようかな。
メナオン・グレイダスト
・SPD
異界の強者、そしてその威を借る『悪』か。
凄まじいな。故にこそ、我らが制さねばなるまい。
機先を制する猛攻は灰色砂塵の生成・変化により装備を作り出し盾としつつ回避行動、さらには身体の損傷の修復にも充てる事で耐え凌ぐ。
“灰色の魔王”を易々と削り切れると思うな。【グレイダスト・オーバーロード】……!
灰色砂塵を最大限に活性化、常に生成と変質――多数の剣戟・銃砲の展開や自身の修復・強化を行いながら。
外套を翼状の推進器に変形させ、飛翔しながら戦闘を行う。
立体的な機動を取りつつ、銃砲による弾幕・剣戟による無数の刺突や斬撃……その全てを仮面に集中させる。
勝負だ。我輩と「お前」、どちらが先に潰えるか……!
カシム・ディーン
機神搭乗
でっかいお姫さんですねー
「キャバリアでも中々見ないねー☆」
対SPD
【情報収集・視力・戦闘知識】
今迄の己の戦闘経験と他の依頼の戦闘記録
目の前の姫の立ち回りから攻撃の癖や間隙の捕捉
【属性攻撃・迷彩・念動力・武器受け】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し更に無数の立体映像による分身で攪乱
それでも避けられないのは念動障壁と鎌剣で受け流し致命だけは避ける
UC発動
【二回攻撃・切断・弾幕・スナイパー・空中戦】
巨体は利用せず超高速で飛び回りながら正面から念動光弾と閃光団の弾幕乱射
一気に距離を詰めて仮面を切り刻む!
マスレイドってなんだ?妙に心がざわつきますね…棘<ソーン>…?
後あの黒い子誰です?
その戦場には、鋼鉄の嵐が吹き荒れていた。
空を引き裂く衝撃波。大地を穿つ螺旋回転。驟雨が如き槍の残像。
其の全てを為すは、一体の超巨大存在。即ち魔王ゼルデギロス。かの者の振るう、都市一つを支え得るだろう程に長大な騎槍は、まるで棒切れであるかのように軽々と振り回され、然し人の手になる如何なる武器でも為し得ぬ程の破壊をその戦場へと巻き起こしていた。
『わ、わ、わわ……! あたる、あたるー!!』
槍身の嵐の中、荒れ狂う風に飲まれた木の葉の如く一機の戦闘艦が舞い飛び回る。操縦者たる菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は必死にハンドルを右へ左へ、スラスターも駆使して愛機たる『セレステ』を操縦。飛び来る槍の暴風を躱し続ける。既に数発が掠ったことでアラートが鳴り止まないが、辛うじて直撃は避けている。
『ちぃぃ! これだけ撹乱してもこっちを狙えますか……!』
『あんなでっかいのにすっごい速いー!』
暴風の只中の空間からカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と相棒メルシーの叫びが響く。其処に在るのは光学迷彩を施したメルシーの本体たる機神『メルクリウス』。其に加えて無数の立体映像を展開しての撹乱を試みた彼らだが、圧倒的な手数はそれら撹乱策を真正面から捩じ伏せてきた。今や念動障壁での受け流しでどうにかダメージを抑えている状況だ。
「ぐっ、おぉぉぉ……! 流石に、凄まじいな……!」
一方の地上では、真っ向吹きつける剛槍の驟雨を前に、メナオン・グレイダスト(流離う灰色の魔王・f31514)が必死の歩みを続ける。繰り出される切先は幾度も彼の腕を、脚を、時には腹を削り取り、彼はその都度己の操る灰色砂塵で以て傷口を塞ぎ、尚も歩む。被弾の程で言えばこの場の猟兵達の中で最も激しい。常人どころか一般悪魔でも数度は死んでいるだろう程。
「なんとも恐ろしい暴れぶりです……!」
地を駆ける四足歩行の鮫に跨り螺旋の鋼鉄竜巻を潜り抜けるはフカヒレ・フォルネウス(鮫の悪魔の四天王・f31596)。その轟然たる穂先は、余波だけでもフカヒレの背中を削り軽くない傷を齎す。
「ですが、自己犠牲の挺身、其に報いる為にも……!」
なれどフカヒレは破壊の嵐齎す主を、決然たる視線で以て見上げる。その尊ぶべき善良さを、無為になどできよう筈が無し。
「その通りだ……! それ故にこそ、我らが制さねばならない……!」
メナオンも応え、鋼の驟雨に抗うかの如く灰砂を展開。既に幾度も砕かれてきた防盾を、未だ諦めぬ意志を示すが如く再度生成してみせる。
「鮫の悪魔の四天王フカヒレ、攻め入らせていただく!」
「余は『灰色の魔王』……この身、易々と削り切れると思うな……!」
各々に名乗りを上げ、以て戦意を示すと共に。轟雷狂舞が如き戦域へと駆けてゆく。
『その意気です、六番目の猟兵達よ。この『超連続攻撃(ダブルトリガー)』を乗り越え、以て我が身へ斬り込むのです!』
嵐の向こうから響き渡るは、破壊の主たる魔王ゼルデギロス――その肉体の本来の主たる巨神姫の声。悪意に奪われたる肉体は破壊を齎す槍捌きを緩めること無かれども、響く声には期待が色濃く滲む。猟兵ならば、其を確実にやり遂げてみせると。
『むう、それにしても』
そんな声音を耳にした理緒、唸る竜巻を紙一重で躱しつつふと思う。
『生を全うした女性騎士を引っ張り出して操るとか。さすがガチデビル、『素直ないい子』ではなさそうだね』
かの魔王は、善良な悪魔ばかりのデビルキングワールドにあって、生まれながらの邪悪なる者。その評も納得のいく所業である。彼女を直接操るゼルデギロスも、また然り。
『悪事のレベルがワルで済みませんからね。人権蹂躙に死者の冒涜……』
近くの空間から、横殴りの鋼鉄時雨を念動衝撃で受け流す音に混じってカシムの同意の声が聞こえる。彼も彼なりに、かの存在の所業に憤っているのだろうか。
『操ること自体は悪いと思わないけど、するなら生きている人にして欲しいよね』
『――はい?』
『ちょ、ご主人サマ前、前~!』
だが、そこで飛び出した理緒の一言に、思わず呆けた声を漏らしてしまうカシム。メルシーの悲鳴めいた声で何とか我に返り、暴突風めいた衝撃波を辛うじて受け流す。
『安らかに眠っている人を叩き起こして、っていうのはちょっと……ね』
『まあ、そりゃあそうですけど……っと!』
続けての言葉にはカシムも素直に同意できるが、前半を聞いていると素直に同意しづらい。そんな突っ込みは、再び正面より襲い掛かった竜巻の回避で入れ損ねた。
『そんなわけで――』
モニタを睨む理緒の黒瞳に、緑の光が迸る。ここまでに収集した全てのデータは既に解析済み。前方から迫る数十もの破壊の切っ先、描く軌道から到達タイミング、それら全てを予測演算。最適回避ルートを策定。演算終了。
『不測演算、開始――もう、当たらないよー!』
後は実証するのみだ。演算結果を基に、自ら鋼鉄の豪雨へと突入してゆくセレステ。一つ一つが致命的威力を有する巨大な切先は、だがしかし、まるで自ら避けているかのようにセレステへの狙いを外してゆく。上昇気流めいて噴き上がる衝撃波も、回避機動を助けるだけだ。
『僕達も負けていられませんね……! メルクリウス、お前の本気を出す時だぞ!』
『らじゃったー☆』
カシムもまた、メルクリウスの出力を全開とし飛翔開始。迫る暴風を、致命の穂先を見切り躱し更に上昇。先よりも広く立体映像群を展開、以て撹乱を試みる。
「攻勢が緩んできた……空のお二人に敵が意識を割かれているようです!」
降り注ぐ鋼鉄の雷を凌いでいたフカヒレが、その勢いの衰えを感じ空を見上げる。空色の戦闘艦と、一瞬光学迷彩の解けた白銀の機神が、嵐を乗り越えその源へと迫りゆく姿が、其処にはあった。
「よし、ならば余も加勢するとしよう。フカヒレよ、地上からの攻勢を頼むぞ」
メナオンもまた空を見上げ、其を認めれば。彼の周囲に舞い散る灰色の砂塵が、渦巻きながらその量を増やす。其は灰色砂塵の魔王たる彼の権能、その最大解放。
「灰色の魔王を阻むこと、何人にも能わず――!」
そして魔王の身へと纏わる灰砂は、翼めいた推進器の形を生じせしめる。先までの出力では叶わぬ業であったが、今の状態ならば為し得るものだ。
以て、魔王は灰の翼より魔炎を噴き上げ飛翔する。空を進撃する二人の戦列に加わり、以て嵐を共に引き受ける。
「――分かりました、今こそ好機!」
其は、フカヒレへと降り注ぐ雷の衰えたるを意味する。メナオンの意志に応えるべく、四足鮫を駆って地上を馳せて――そして。
「――魔王、ゼルデギロスッ!」
力強く、堂々と呼ばわる。空中の三人へ向いていた視線が、一時、地上の彼へと注がれる。不意打ちの好機を捨ててまで何を――姫神の困惑する視線と、魔王の嘲る視線が、同時に注がれただろうか。
だが、それこそがフカヒレの策略。彼の考えるワルを成し遂げる為の下準備。而して、策は成った。
「私は、貴方を正面から騙し討ってみせましょう! 即ち――!」
フカヒレが手を掲げる。其処には何の力の発露も感じられない。只の虚仮脅しか、それとも未だ成らぬ秘策か――
「鮫に、食われよ!!」
直後、頭上からかぶりつきの音。戦姫の貌に、頭上から、鮫が食いついたのだ。鋭い牙は仮面の丁度半ばへと食い込み、巨戦姫のものとは全く異なる絶叫が響き渡った。これがゼルデギロス本来の人格か。
其を為さしめたるは無論、フカヒレのユーベルコード。周辺地域に全環境対応の鮫を生み出すその業、此度はゼルデギロスという超巨大存在がいるという環境に基づき、彼女の頭に喰らいつける程の超巨大鮫を創造したのだ。あまりにも出鱈目なスケール感である。
『こ、これは……!?』
あまりにも見事な騙し討ち、そして予想外の攻撃手段に、姫神も思わず困惑の声を上げる。
「これぞ鮫の悪魔の業です。ところで、巨大な方」
その業を誇るように応えるフカヒレ、ふと思い至り問う。
「貴女の仰る『ぼうや』たち、とは一体……? もしや貴女、悪魔の御先祖だったりするのですか?」
頭部に喰らいつく鮫を外すのに悪戦苦闘しつつも、ゼルデギロスは回答する。そしてその一連の流れは、空中より迫る者達に好機を齎していた。即ち、鋼鉄の嵐が止み、凪が訪れたのだ。
『よーっし、チャンス! 一気にいくよー!』
理緒はコンソールを叩き、搭載されたるミサイルランチャーのハッチをフルオープン。エンターキー押下と共に、夥しい数のミサイルが白煙を棚引かせ、露となっている仮面の下方へと次々に着弾。炎に黒き仮面を押し包んでゆく。
『でっかいお姉さん、このような形で出会ったことは残念ですが……!』
ミサイルの後を追い、念動光弾と閃光弾を乱れ撃ちながらメルクリウスが正面から巨姫の貌を目指す。苦し紛れに振るわれる手もまた指先だけでキャバリアを軽く上回る圧倒的サイズだが、回避難度はここまでの鋼鉄暴嵐に遠く及ばぬ。機体を一瞬上昇させて容易く回避。
『そのお顔、是非拝ませて頂きたく思いますので!』
軽口が漏れつつも攻勢に容赦は無い。展開したる鎌剣を凄まじい速度で以て振るい、漆黒の仮面へ幾筋もの斬痕を刻み込んでゆく。
『ところで、マスカレイドとは何ですか? 妙に心がざわつくんですが……』
攻勢の中、カシムは胸中の疑問を吐き出す。此処までは回避機動に必死だったので忘れていたが、己の知らぬ筈の言葉が心に引っかかる。まるで『棘』が刺さったかのように――
『後――あの黒い子は、誰です?』
もう一つの疑問。昨年の正月に見た不思議な予兆に現れた、漆黒の衣を纏った女性。巨戦姫が其に答えると共に、ついにその頭部が鮫から解放される。
『があああああ!! おのれ貴様ら! これ以上思い通りにいかせはせんぞ……!』
仮面から苛立ちと憤怒に満ち満ちた声音――ゼルデギロス本人の声が轟く。構え直した天槍を振るい、猟兵達へ襲い掛かるが。
「それは此方の台詞です! 斯様に善良なる方を乗っ取り暴れようとは、何たるワルを超えたワルか!」
足元のフカヒレが厳しい声音で断ずる。同時、ゼルデギロスからは引き剥がされたものの未だ健在な巨大鮫が、再び仮面を齧り取らんと迫る。
「然様。異界の強者、其の威を借りて尚斯様な有様。全く以て度し難い」
其を退けた後、眼前に現れたるその姿は――総身に灰銀を纏う若き魔王。そう、メナオンである。
外套の下から現れるは無数の銃砲、背より飛び立つは無数の剣戟。灰色砂塵の魔王、最大殲滅の構え。
「――勝負だ。吾輩と『お前』。どちらが先に潰えるか……!!」
『舐めるなアアアアアアア!!!』
そして始まる砲撃、飛翔する剣戟。砲弾と刀剣とが仮面に突き刺さり、仮面の魔王が絶叫を上げる。
反撃と振るわれる巨槍は灰色の魔王を捉え、その身を穿ち、斬り裂き、なれど灰銀の砂塵が千切れかける四肢を繋ぎ直す。
異界の魔王と、新しき魔王の壮絶な殴り合いが、始まった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩波・いちご
【マイエさんと】
人間サイズと戦い慣れているのなら…逆に巨体相手だとどうでしょう?
そのためにも、マイエさん、私を上まで運んでください
マイエさんのバイクにタンデムし
念動力で張ったオーラ防御で攻撃を防ぎつつ
魔王の体を走り駆け上っていきます
…さすがにタンデムはバランスが…
落ちないようにマイエさんにぎゅっとしがみつくのですが…胸を鷲掴みにしてしまい…でも何故かそれで安心されて?
いえ、私も余計な邪念は捨て置き、(胸を)しっかりつかんだまま
魔王の頭のあたりまでバイクで駆けあがったら
【異界の巨神】を魔王上空に召喚
私も飛び上がって巨神とフュージョンし乗り込むと
自由落下の勢いのまま仮面に巨神の拳をぶち当てます!
マイエ・ヴァナディース
【SPD】【いちごさんと】
※アドリブ絡み連携歓迎
※愛車は双環形態
…輸送の間、暖かい掌でわたくしの不安を拭って下さいな
万一にも父母は『坊や達』かもしれませんの、だから今は…
※揉まれても安堵&慕情の赤面笑顔
◆先制
いちごさんとタンデムで荒々しく回避しつつ登坂
普段の巨人相手と違い逃げ隠れはしませんわ
愛車といちごさんの護りを信じて…!
◆反撃
「ヴァナディース家が第一息女・マイエ、いざ参ります!」
敢えて眼前に飛び出し勇猛果敢に宣言したら
【アクエリオ・ノヴァ】で仮面を削りますわよ
いちごさん、最接近した時に一撃を…!
◆質問
貴方様が此方へお出で為された様に、
猟兵が『坊や達の国』へ向かえる日は
訪れ得るのでしょうか?
仮面を夥しく引き裂かれ、唸りを上げる魔王ゼルデギロス。其を目掛けて疾走する、一台の魔導バイク。土煙を上げ、一気にかの巨神姫へと肉薄する。
「いちごさん、しっかり掴まっていてくださいまし……!」
「はい……! あの一番上まで、お願いします……!」
そのバイク――『シルフェリオン二世』のハンドルを握るマイエ・ヴァナディース(メテオールフロイライン・f24821)が呼びかけるに、彼女とタンデムする彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)も応える。その手はマイエの腰を確と抱き締める。二人の作戦を完遂する為には、この天を衝かんばかりに巨大な戦姫の身体を駆け上がっていかねばならないのだ。
「参ります……!」
荒野の出っ張りをジャンプ台代わりに、シルフェリオン二世は華麗に跳躍。そのままゼルデギロスの足の甲へと張り付き、くるぶしから脚へと駆け上がってゆく。
『私の身体を駆け登るというのですね……! それに、そのバイクは……』
マイエ達のその行動に、驚きと、僅かな歓喜を滲ませてゼルデギロス――その肉体の主たる姫神が声を上げる。シルフェリオン二世のその佇まいに、何か思う処がある様子であったが。
『ですが、容易くこの貌までは辿り着けません。天槍を以て為す超連続攻撃、避けきってみせて下さい……!』
なれど、奪われたる肉体は彼らの作戦の果たされることを赦さぬ。姫神の叫ぶと共に、二人へ迫るは暴風が如き衝撃波、竜巻が如き螺旋衝撃、そして驟雨が如き連続刺突。間断なく繰り出される其が齎す切先の嵐――!
「いちごさん、少々荒っぽく参りますわよ……!」
「分かりまし……わわわわっ!?」
いちごが返事をするより早く、マイエは愛車のハンドルを右へ思いきり切り返す。コンマ一秒前まで二人の在った処を、猛り狂う螺旋竜巻が貫いてゆく。直撃すれば最早肉体は原型を留め得ないだろう、そう確信できる程の衝撃力。いちごの背筋を冷たい汗が流れ落ちる。
「――と、マイエさん!」
叫ぶが早く、シルフェリオン二世を其に搭乗する二人ごと念動力の障壁が包む、前方より降り注ぐ切先の豪雨を、障壁を以て受け流し、致命的なダメージを躱してゆく。障壁を貫く穂先も決して少なくはなく、車両や二人の肉体を傷つけてゆくが、戦闘と走行に支障は無し。
「これで、半分……!」
マイエは荒々しくハンドルを右へ左へと切り返し、いちごの障壁と併せて迫る嵐を躱し続ける。巨人というべき存在には怯懦を覚えるマイエ、まして今まさに彼女達が登りゆくこの存在は、彼女の知る如何なる巨人をも圧倒する巨体だ。常ならば確実に背を向け逃げる存在だが、彼女は今、逃げることなく挑み続ける。其は、きっと――
「――んぁっ!?」
と、そこでマイエが艶めかしき声を上げる。その原因に、いちごは即座に気付く。己の手が、いつの間にか彼女の形よく豊かな胸の膨らみを鷲掴みとしていたのだ。どうやら、荒々しいタンデム装甲を続けるうち、いつの間にか腰にあった手が移動してしまったらしい。
「ご、ごめんなさ――」
尤も、この二人にとっては最早日常茶飯事、任務に赴いた際のお約束とすら言える事態。平謝りと共に、いちごは手の位置を腰に戻そうとする――が。
「――そのままで、お願いします」
「……え?」
マイエからの反応は、いつもの抗議ではなかった。それどころか、そのまま胸を掴んでいて欲しいという、信じられない言葉。戸惑ういちごだが。
「――いちごさんの暖かい掌で、わたくしの不安を拭って下さいな」
続けてのマイエの声音は、震えていた。そして、一瞬だけ振り返ったその表情は、真っ赤に染まりながらも安堵と慕情の色に満ちた笑顔。
マイエは、不安だった。彼女には、今現在己が駆け登っているこの超巨大存在に見覚えがある気がしていた。気付けばアポカリプスヘルの荒野に落ち、元の世界の記憶も朧気な中、故郷たる『永遠の森』へ帰る為、猟兵として活動してきた彼女。この超存在は、その故郷に繋がるかもしれぬ存在――マイエの両親は、この存在の語る処の『ぼうや』かもしれないのだ。だが、もし違ったら――?
「――分かりました」
ならば、と。いちごは彼女の胸を優しく鷲掴む。普段のような下心など介在し得ぬ。いちごもまた、捨て子の過去を持つが故に、故郷を知らぬ身の上。多くの少女達に囲まれる暮らしは寂しくなどないが、マイエの不安もまた、理解できる。
「んっ……お願い、致しますわね」
応えた声音は、震え無き安堵に満ちたもの。不安拭われたるマイエは、再び思い切ったドリフトで以て、巨いなる戦姫の脇腹を走り抜ける。暴風じみて駆け抜けた衝撃波を、いちごの障壁と併せて防ぎきりながら。
『――来ましたね!』
己の首筋に感じる、何かが走り抜ける感触。期待と歓喜の色の滲む声で、ゼルデギロスは『彼ら』の訪れを待つ。そして、数瞬の後。
「ええ、ヴァナディース家が第一息女、マイエ! 貴女様をお救い申し上げるべく、此処に罷り越してございます!」
ゼルデギロスの仮面の真正面へと飛び出したシルフェリオン二世。そしてマイエは堂々なる名乗りを上げてみせる。
「浄らな風光、その徴たる精霊よ。父の名に於いて、魔王を鎮めし聖なる星を――今ここに!」
続けて高らかに詠唱を叫べば、シルフェリオン二世の機首へと渦巻くは螺旋の光翼。浄化の風と光、そして水を纏う螺旋の名は――
『――貴様、貴様ァァァァァァ!! 貴様のせいで、我は、我はァァァァァ!!』
其を認めた瞬間、仮面から迸る怨嗟に満ち満ちた声。其は魔王ゼルデギロス、正しくその名を有するものの叫び。あたかも、かつてこの清浄なる力の前に滅び去ったかのような――
『その力、もしや……! ……ええ、其を以て、この存在に、そして私に、今一度の滅びを――!』
肉体の主たる姫神もまた、渦巻く螺旋光翼に覚えがあると見え。促すは、かの力を以てしての引導――!
「承知致しましたわ……! ――はああああああああ!!!」
そして機体背部より迸る光の魔力を以て、マイエとシルフェリオン二世は飛翔。眼前の禍々しき黒の仮面へ、光の粒子を棚引かせ突撃――螺旋の光翼を以て、仮面を、穿つ!!
『グアアアアアアアアアアアアア!!!』
ゼルデギロスの絶叫が、荒野に轟く。螺旋の衝撃と、光翼が齎す浄化の魔力は、かの存在に格別の苦痛を齎すかのようで。
「――ですが、未だ、足りない……!」
呻くマイエ。その一撃は、確かにゼルデギロスへと甚大なダメージを与えた。だが、未だ止めとは至らない。凌ぎ切り、嘲る笑いと共にマイエをはたき落とさんとするゼルデギロス――だが、その時。訝しむ。
『――影……!?』
巨戦姫の顔にかかる影。雲かとも思ったがそうではない。ならば何だ。この存在の貌に、影を被せ得る存在など、あの大空を覆う――
「いちごさん……後は、お願い致します!」
降下するシルフェリオン二世。その向こうに、ゼルデギロスは見た。己の頭上、拳を振りかぶる、生物と機械の中間が如き冒涜的な姿をした、天を覆わんばかり巨大なる存在を。
『分かりました、マイエさん。 この拳を以て、決めてみせます……!』
その存在から響く声音は、紛い無きいちごのもの。彼はマイエが突撃を敢行する間に、更なる上空へと跳び上がりユーベルコードを行使。星海の彼方より顕現する神の器、と称されし巨大機械兵器――時にそれはキャバリアの如き姿を取るが、今は明らかに其の枠に収まらぬ、規格外にも程のある超絶巨大兵器――!
『これで――終わりです!!』
そして異形の巨機神は、降下の勢いを利して、ゼルデギロスの貌を覆う仮面を殴り抜く。全体重の乗った強力無比なる拳の一撃、かの魔王の巨体を傾がせ、地へと転倒せしめるに十二分の威力であった。
「――貴女様」
崩れ落ちゆくゼルデギロスの胸元より、マイエの声。呼びかけに答えるは肉体の主たる姫神。
「貴女様が此方へお出で為された様に――わたくし達猟兵が、『ぼうや』達の国へ向かえる日は、訪れるのでしょうか……?」
其は、マイエにとって切実なる問い。故郷への帰還を果たす為の希望の縁。ゼルデギロスより返った答えが、彼女の望むものであるか否かは――未だ、語るべき時ではない。
大成功
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夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
一戦、御指南願いますぅ(礼)。
『FAS』で飛行しますが、『ランページ』は受けるにも普通に躱すにも巨大過ぎますねぇ。
『突進技』故に『FIS』による瞬間移動で『彼女と入れ替わる位置』に退避し回避を狙いますぅ。
『衝撃波』等は『FMS』のバリアで防御、損害ゼロは難しくても継戦可能な程度に軽減出来れば。
可能になり次第【噇醒】を発動、『捕食弾』を放ちますねぇ。
微傷でも与えられれば『欠片』を『弾頭』経由で吸収、彼女と同等の体格に巨大化出来ますぅ。
追加の『祭器』は『F●S各種のサイズ連動』と『バリアへの刺突&激突耐性付与』を行う腕輪、後は全てを使い『仮面』の[部位破壊]を狙いますねぇ。
オリヴィア・ローゼンタール
立体映像や幻術の類いではなかったのですね……
それにしても「マスカレイド」……帝竜戦役において、帝竜『オアニーヴ』が受けたという仮面の呪いと似たようなものでしょうか?
白き翼の姿に変身
地上戦ではアリとゾウ以上のスケール差、【空中戦】に持ち込む
――そのサイズで飛行まで可能とは、本当に規格外ですね……!
普段ならば懐に潜り込んで撹乱するところ
しかしそういう手合いの処理に長け、巨躯の利点のみを押し付けてくるとは……まさしく容易ならざる難敵
飛行速度を【限界突破】して突撃を躱す
振るわれる天槍を聖槍で【受け流し】、敢えて【吹き飛ばされる】ことでダメージを抑える
再突撃の方向転換しようとした瞬間、天槍の穂先へ横合いから【オーラ防御】を纏って【ランスチャージ】
飛翔用オーラ噴出の方向を狂わせる
スケールが違おうとも槍は槍! その扱いには私も心得がある!
再々突撃までの隙に、聖槍に破壊の魔力を纏う(属性攻撃・全力魔法)
【怪力】を以って聖槍を【投擲】、仮面へ【終焉を呼ぶ聖槍】を叩き込む
吼えろ聖槍! 邪悪を砕けッ!!
ジル・クリスティ
なんでだろう
あの魔王の姿…何か知っている様な気がする…
私がスペースシップワールドに現れる前の…失われた記憶の中で…
…ねぇ、貴方の『ぼうや』と、私たちが会えることは、あるのかな…?
あれば、このもやもやもはっきりしそう…
っと、それはともかく戦わないとね
人間サイズと戦い慣れてると言ったね
なら、それよりもはるかに小さい私ならどうかな?
残像を残すほど高速で飛び回り、巨大なランスの突撃を見切って、残像を貫かせることで避けつつ、上空へと飛んでいくよ
そして魔王よりも高い位置でライフルを大きく振りかぶる
銃口から伸びる無限の光…【Gigantic Sword】を一閃
魔王の仮面を真っ向唐竹割りで断ち切ってあげる!
水脈枯渇せし荒野に、慟哭とも怨嗟とも呼べる叫びが轟く。魔王ゼルデギロス、魔王ガチデビルの行使せし特級契約書に応え、デビルキングワールドに理不尽なる悲劇の終焉(エンディング)を齎すべく顕現せる者。天寿全うせし巨いなる姫神の肉体を乗っ取り、忌々しき勇士達の無き世界へ至った彼、その企みを叩き潰せようものなど存在しない――その筈、だった。
だが、現実はどうだ。肉体奪い取った筈の戦姫は、理不尽なる終焉の源泉たる力を封じ、更に己が既に生き終わりし者たるからとて、命惜しまぬ捨て身の戦いを展開。そして、何より、最大の誤算は。
『――やはり、私の見込んだ通りでした。私の『ぼうや』達にも匹敵する強き方々は、この世界にも存在していたのです』
魔王ゼルデギロス――その肉体の主たる姫神が、安堵と歓喜の滲む声音で告げる。見下ろす目線は仮面に遮られ見えないが、語る声音は何処か、立派に育った我が子を思い返す母のようで。
「……立体映像や幻術の類ではなかったのですね……」
一方、彼女と向き合い遥か上空の貌を見上げるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、只々圧倒されていた。これ程までの巨大な存在が、紛いなき実体として存在し得る世界があるとは。三十と六の世界には、未だ己の想像を絶する神秘が存在するものである。
(……なんでだろう……あの魔王の姿……何か、知っている様な気がする……)
そのオリヴィアの傍らにて浮遊するジル・クリスティ(宇宙駆ける白銀の閃光・f26740)は、戸惑っていた。初めて対面する筈のかの魔王の圧倒的な巨躯に、見覚えがあるような感覚を覚えたが故に。
かつて、スペースシップワールドのとある航宙艦に現れ、そこに属する鎧装騎兵として活動していたジル。だが、それ以前の記憶は彼女の中から失われている。今や朧気にしか思い出せない、遠い世界の記憶、其の中に、あの巨神姫の姿があったような――
「……ねぇ」
ぽつりと、問う声を発するジル。ゼルデギロスの促しを受け、告げる問いは。
「貴女の『ぼうや』と、私が会えることは……あるのかな……?」
其は在る種の願望にも似る。その問いの答えが是であるならば、今、その胸中にて渦巻くもやもやした感覚も、きっと晴れるに違いない、と。
「――では、私からも一つ質問を。良いでしょうか」
其処で、オリヴィアもまた問いをかけるべく手を挙げる。
「『マスカレイド』……帝竜戦役において、帝竜オアニーヴが受けたという仮面の呪いも、似たようなものなのでしょうか?」
帝竜戦役において交戦した、本来はアルダワ世界を守っていた竜の一体。大魔王の仮面によって自由を奪われ、異世界たるアックス&ウィザーズにて帝竜の一翼と列せられたもの。現状のゼルデギロスの在り方と、何処か符号する。
其に対するゼルデギロスの答えが、彼女達にとって得心のいくものであったか、否か――其は、この場にて語る事には非ず。語るべきは、只。
「――質問は、もうありませんね?」
確認と共に、かの魔王は巨槍を構える。都市一つ分にも匹敵する途方も無き長さと太さの騎兵槍。地に在れば、其を礎に多くの人々の暮らす都市を築き得よう程の長大さだ。
「はいー。一戦、御指南願いますぅ」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が一礼し、その背へオーラの翼を広げると共に。オリヴィアは愛用せし聖槍を、ジルはフェアリーサイズの荷電粒子砲を。其々の信を置きたる得物を構える。
『良い構えです。それでは――』
ゼルデギロスの頷くと共に、その身が上空高く飛び上がる。騎槍の柄元より噴出するオーラの炎で以て飛翔を開始したのだ。その速度、体躯のあまりにも巨大たるを感じさせぬ圧倒的な躍動感を以て、空中にて弧を描く。
『さあ、決着をつけましょう! 六番目の猟兵達よ!!』
高らかに宣言するゼルデギロス。以て、決戦の幕が開いた。
「流石に受けるにも避けるにも巨大過ぎますねぇ……!」
轟然たる速度で以て迫り来るゼルデギロスと、其の構えし天の槍。圧倒的な体積と伴う質量、激突の衝撃は如何ばかりか。
「ですが、突進技であるならば。この手が有効となるでしょうかぁ」
なれど、それ故の弱点を突く術を、るこるは保有している。迫るゼルデギロス、迫る天槍の切っ先。見据えるるこるの姿が――消えた!
「っきゃあぁぁぁぁ!?」
なれど直後に響く悲鳴はるこるのもの。ゼルデギロスの背後、展開したる結界ごと吹き飛んでゆくるこるの姿が其処にあった。
携えたる祭器の力を以て、ゼルデギロスの背後へと瞬間移動し、突撃を回避したるこる。なれど、超大質量の物体の超高速突撃に伴って巻き起こる衝撃波は、容赦なくるこるを巻き込んだ。咄嗟に展開した結界もそのまま吹き飛び、るこる自身への質量武器と化したる程。なれど、備えが奏功し戦闘不能へ至る程の傷は負わず。
「人間サイズの敵と戦い慣れてると言ったけど……!」
唸るジル、己へ向けて迫り来るゼルデギロスと携えたる槍を見据えて身構える。その身は上下左右様々に機動し、凄まじい速度によって幾つもの残像が形成される。以て、狙いを狂わせようというのだ。
人間よりも更に小さなフェアリーである、人間大の敵と戦い慣れているとはいえ、己のような更に小さな敵ならばどうか、と、逆の意味でのサイズ戦を挑んだのだ。
そして、その結果は。
「――わきゃー!?」
分身は狙いを逸らすという本来の役割を果たし、ジルは突撃を見事に回避。だが、突進によって巻き起こった乱気流の衝撃波は、小さなジルの身体を容赦なく吹き飛ばしていく。そのサイズ差、最早人間もフェアリーも誤差の範囲ということとすら思える程だ。
あのサイズでここまでの速度を発揮するとは。真の姿に至ったことで生じた翼を以て飛び上がったオリヴィア、驚嘆しつつも迫り来る切先を静かに見据える。
(普段ならば懐に潜り込んで撹乱する処、しかしそういう手合いの処理に長け、巨躯の利点のみを押し付けてくるとは)
迫る敵の性質を思い返し、内心にて唸る。数多の強敵と戦ってきたオリヴィアをして、容易ならざる難敵と評するより他無き存在。迫る突撃、果たして如何に躱すか。空中にて切先を見据えること暫し。
「――ここだ!」
見出した機。真っ直ぐに敵の突撃経路から90度の方向へ飛翔。限界を超えた飛翔速度に対し、迫る騎槍は突撃経路を補正しつつ彼女を追う。
そして、両者の間合いが最大限に縮んだその時。真っ直ぐに突き出されていた騎槍が、不意にオリヴィア目掛け振るわれた。
「――ぐぅぅっ!」
聖槍を以て防ぎ止めるも、衝撃を殺すことは叶わず。弾丸じみた速度でもって吹き飛ばされてゆくオリヴィア。なれど、其も想定のうち。無理に踏ん張るより吹き飛ばされた方が、ダメージは小さいという判断だ。そして、それだけではない。
『成程、やりますね。ですが、次は如何ですか』
ゼルデギロスの声。初撃を凌いだ猟兵達に、すぐさま第二撃を繰り出すべく、空中にて旋回。再び猟兵達へと狙いを定め――
「――そこだ!!」
だが、そこでオリヴィアが吼える。吹き飛ばされた勢いを飛翔速度と変えて、弾丸じみた速度でもって旋回する巨戦姫へと突撃。オーラを纏い、聖槍を構えた彼女の、狙う先は。
「スケールが違おうとも槍は槍、その扱いには私も心得がある……!」
そして衝突するは、ゼルデギロスの構えたる天槍の、穂先の側面。噴出を開始したオーラの炎の推進力を、猟兵達目掛けた直線方向でなく――地面を目掛けた咆哮へと無理矢理曲げる!
『な……っぐぅぅぅ!?』
驚愕するゼルデギロス。オーラ噴出の瞬間を狙ったそのタイミングで当てられれば、軌道修正は最早叶わない。為す術なく、オーラの推進力は地面へ向けて解放され――そのまま、天槍は荒れ果てた大地へと深々突き刺さった。
「お見事ですぅ! ここが好機、ですねぇ……!」
その好機を逃すことなく捉えてみせたオリヴィアの業前を賛じながら、るこるがゼルデギロスのもとへと向かう。今こそ反撃の時だ。
「大いなる女神の象徴せし欠片、その輪環の理をここに――!」
祈りを以てユーベルコードを行使すれば、その手の内に生じるは小さなミサイルじみた弾頭。ゼルデギロスへと狙いを定めると共に、噴炎を上げて放たれたそれは、ゼルデギロスの仮面へと真っ直ぐに飛翔し――命中。そのまま自壊する。与えた傷はごく僅か。なれど、るこるにはそれで充分だった。
直後、彼女の肉体が凄まじい速度で巨大化を開始。かの弾頭の役割は、捕食と変身。敵の肉体の一部を喰らった弾丸を通し、その性質を把握。以て、弱点を突き得る力と――そして、同等の体格を手に入れる。即ち。
『――さあ、攻撃開始ですよぉ!』
叫ぶるこるの肉体は、今や天を衝かんばかりの超巨体。ゼルデギロスに並び立たんばかりの巨躯と化した。圧倒的サイズ差というビハインドを、真正面から埋めてみせた形だ。
そして、背部に展開した浮遊兵器群も、彼女の肉体に比例して巨大化。その砲口、ゼルデギロスの携える天槍の直径にも匹敵する。
そんな浮遊兵器群を、るこるは一斉に撃ち放つ。サイズに比して威力を増したその砲撃と爆撃、斬撃が、ゼルデギロスの仮面を目掛けて次々浴びせられる。
『ぐわぁぁぁぁぁ!? こんな、こんなことがぁぁぁぁ!?』
半ばパニックに陥ったかのような叫びを上げるは、ゼルデギロス本来の人格。かの姫神の肉体を乗っ取ったことで、体格において互角の敵との戦いなど完全に想定から外していたのだろう。現在のその状況が信じられない様子で。
「情けないねゼルデギロス! ちょっと想定外の状況になっただけでそんなに取り乱してさ!」
そんな彼を指弾する声が、巨体の魔王の更に上から響く。見上げれば、其処にあるのは小さな影。なれど構えたるは、肉体の数百――否、数千倍はあろうかという、超大なるビームの刃。
そう、ジルである。かの魔王の更に頭上まで飛翔した彼女は、其処で己の切り札を展開したのだ。即ち、大地を割り銀河をも斬り裂かんばかりの荷電粒子の剣を。
「例え絶望的なまでの体躯差があろうと! 我等は負けん! 其処に滅ぼすべき邪悪があるなら!」
更に下方からはオリヴィアが飛翔し迫る。聖槍を逆手に握り投擲の構え。穂先には破壊的な魔力が急速に充填され、柄を握る手には渾身の膂力が籠められる。己の理性と善性を破壊力と替える、まさにオリヴィアの全てを懸けた一撃。
『お……おのれ、おのれぇぇぇぇ! 貴様ら如きに、この我が、ゼルデギロスが……!?』
反撃を試みるゼルデギロスだが、頼みの天槍は地面深くに突き刺さり、抜けそうにない。そして繰り出される一撃は、天槍なくして捌き得るものにはなく――
「吼えろ聖槍! 邪悪を砕けぇぇッ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
オリヴィアとジルの雄叫びと共に。全身の発条と膂力を込めて投擲された聖槍と、振り下ろされた電光石火の一撃が、瞬く間に仮面へと到達し。
両断、そして着弾。猟兵達の渾身の攻撃が、漆黒の仮面を、砕け散らせしめた。
●
『お……おのれ……おのれ猟兵共……。あの勇士共ならいざ知らず……貴様ら如きに、この我が……』
砕け散り、巨戦姫の顔より剥がれ落ちてゆく仮面から声がする。怨嗟に満ち満ちた、ゼルデギロスの声が。
『我は……我は滅びぬ……いつの日か必ず、再び蘇り……世界に、終焉……を……』
半ば負け惜しみというべき恨み言は、仮面の完全に砕け落ちると共に薄れ、消えてゆく。後に残るは、仮面より解放された巨いなる姫神の姿。
『――感謝致します。六番目の猟兵達よ。貴方達のおかげで、私も再び眠りにつくことができそうです』
露となった美貌に、穏やかな笑みを浮かべ。猟兵達に謝意を述べる巨姫。その肉体が、既に崩壊を始めている。仮面が失われたことで、彼女もまた存在を維持できなくなっているのだろう。
『申し上げた通り、私は既に死したる身。あるべき処へ還るだけのこと。故に、どうかお気になさらず』
崩壊は既に全身へと及び、巨大なる肉体は半ばまで失われつつある。彼女は、そのことに安堵さえ覚えているようで。
『貴方達の為に、可能な限りで多くのものを遺したつもりですが――どうか、其がこれからの貴方達の戦いの助けに、僅かでもなってくれれば』
戦いの中で交わした言葉と、戦の経験。猟兵達にとって、如何なる益を齎すものであろうか。
『――良い目です。私の『ぼうや』達を思い出します。貴方達なら、きっと……いえ、必ず。どんな困難をも、乗り越えて――』
猟兵達を見渡し、浮かべた微笑も、ついには崩壊して。魔王ゼルデギロスに操られし巨いなる母もまた、在るべき処へと還っていった。
後に残るは、斯くの如き巨大なる存在が在ったとは思えぬ程に殺風景な荒野のみ。なれど猟兵達は知る。彼らに多くを遺していった巨いなるものの、此処に在ったことを。
●
以て、猟兵達は魔王ゼルデギロスを打倒。魔王ガチデビルを守る結界の楔、その一つを破壊した。
残る召喚魔王は二体、いずれも一切の正体は未だ不明。果たして、如何なる存在が待ち構えているのであろうか。
大成功
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