7thKING WAR㉔〜山斬烈槍は雲を貫く
●水脈枯渇平原より
「私の姿が見えているのでしょう?」
『語りかけるな、そのまま戦え!』
優しげな女の声、命令する男の声。どちらも聞こえる。
「時は二度と戻らない。だから時は美しく、残酷に光輝くのです」
『死した者に価値がなくても! こちらには利用価値がある!戦え!』
女は男の声を無視して語る。
「よく聞いて下さい。私のこの仮面、これを破壊すれば私は死にます」
突然、女は最大の弱点を口にする。
そして携えた槍――『天槍』を脇に構える。
『そうだ、そのまま戦え! 六番目の猟兵達を撃て!』
まったくそれを気にしていない屈託の無い声が、からからと明るく笑った。
「私は既に死した身、何も恐れる心配はありません。骸は骸へ、当然の姿に戻るべきなのです。さあ、六番目の猟兵達よ、いざ尋常に――勝負!」
●水神無き戦い
「君は、あの大きな女性の名を知っている?」
ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)は、戦場から視える存在について君たちに問う。キャバリアよりも、もっと大きい。
五メートル? 二5メートル? いいや、もっと巨大だ。
見上げる山のように、彼女はそびえ立つ。
遠くはなれていても、巨大だと分かるはず。
「まさか、ここで彼女を見るなんてなぁ。僕は知っているよ、彼女は"此華咲夜若津姫(このはなさくやわかつひめ)"。うん、山より大きな彼女は、山にように大きな武装を手にする姿がよく似合う……」
目を細めて、雲を纏うような『天槍』を見上げる。
「あれは彼女の標準的な大きささ。君たちは彼女と戦わないといけない」
勿論、その覚悟があるから今ここにいるんだよね。
ソウジはそう言いたげだ。
「多くの詳細は過去のこと。だから殆ど省くけれど、彼女自身は魔王なんかじゃない。昔々"人類という仔を産む魔女"だったひとだよ。それに、戦場からでも見えたでしょう、彼女はね。武器を構えれば見た目通りの武士(もののふ)さ。武器の扱いに長けているから、注意するんだよ」
機敏に動き、先制する攻撃を放つだろう、とソウジは語る。
戦いにおける彼女は、手加減なんてしないだろう、と。
「彼女はね、手持った武器の性能を、自分の巨大さとは釣り合わない、小さな人物たちとの戦闘の距離感誰よりも理解する。きっと、僕の故郷で扱えた槍の技は彼女は必ず扱える。ふふ、彼女を相手にするのは大変だよ?」
多才で、それでいて"厄介"。
彼女の願いは"仮面の破壊"。当然、接近や結構な攻撃力を要求される。
「対して、彼女は半ば操られた立場として君臨しているね。声だけ響く存在、"魔王ゼルデギロス"。相手に寄生して、戦わせて己を高めていくタイプの存在でね……これもまたやっかいなんだ」
此処も詳細を省くけどね、とはソウジ談。
仮面が目に見えて猟兵に何かをしてくることは無いだろう。
ただ喧しく怨嗟を吐きながら、彼女を戦わせようとするだけだ。
「……今回は分裂したりしてないだけまだいいよ。君たちは兎も角、【先制攻撃に対応し、相手の巨体を利用「しない」戦い方で反撃】を狙って?」
簡単には言うが、簡単ではない。
「でも、あんなに巨大な人物と真っ向勝負兼人助け、なんて……そう出来ることでもないでしょ? やりがい、あるんじゃない?」
君たちなら出来る。ソウジは頷いて、それから言葉を添えるだろう。
「ねえ、お願い。どうか若津姫の言う通り、あの仮面のなりそこないをなんとか破壊してくれないかな。君たちなら出来るよ、僕が保証する。……完全な仮面(マスカレイド)なんかじゃ、ないと思うからね」
タテガミ
こんにちはタテガミです。
この依頼は戦争に属する一章のシナリオ。
プレイングボーナスは下記になります。
先制攻撃に対応し、相手の巨体を利用「しない」戦い方で反撃する。
●簡単な概要。
破壊対象は超巨大彼女でも超巨大槍……でもなく、視界を覆っている"仮面"。
このシナリオ上では"仮面"=魔王ゼルデギロスという存在、という認識で構いません。
●"此華咲夜若津姫(このはなさくやわかつひめ)"。
大きな大きな女性の名前。話しかけると相応に言葉は返ってきそうですが、望む答えがちゃんと返ってくるかは不明です。操られている事実はあるため、全力での攻撃を猟兵に行います。槍の達人、と思って対処を行った方が良いかもしれません。
●その他。
OPをよくご確認ください。公序良俗に反する内容が強い場合は、反映が出来ずお返しする場合があります。なるべく頂いたプレイングは採用できればと思いますが、描写の期待に応えられない場合は内容に関係なく採用を見送らせて頂く場合があります。
第1章 ボス戦
『魔王ゼルデギロス・此華咲夜態』
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POW : ジェットランページ
【天槍から噴出する強烈なオーラ】によりレベル×100km/hで飛翔し、【身長】×【武器の大きさ】に比例した激突ダメージを与える。
SPD : 天槍乱舞
【貫通衝撃波「フォーススティンガー」】【螺旋回転突撃「ドリルインパクト」】【神速連続突き「ミラージュランス」】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ : ジャッジメントランス
【天高く天槍を投げ上げるの】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【オーラで構築した天槍の分身】で囲まれた内部に【裁きの雷】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カシム・ディーン
機神搭乗
でけー相手だが経験がないわけじゃねー
それに…なんか気になるな…
「ご主人サマ?」
ああ…人間サイズならエロい事したかったなって思っただけだ
「ご主人サマってば☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
姫の動きと攻撃の癖
その技の性質を他の依頼での動きも統合して分析
対SPD
【属性攻撃・迷彩・念動力・武器受け】
光属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し周囲に立体映像を無数に展開
敵の猛攻は念動障壁で受け衝撃を逃がすように吹き飛ばされ距離を保ちながら猛攻を堪え致命を避
UC発動
【弾幕・二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・空中戦・スナイパー】
超高速で飛び回り仮面に向けて仮面に向けて念動光弾乱射
距離を詰めて鎌剣で切り刻む!!
●夢見たって良いじゃない!
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は最初から、機神『メルクリウス』に搭乗していた。もっとも、はるかな大きさを誇るなだらかな山に目がいってしまうのもまあ、仕方がないといえばその通り。
だって見上げる女ってなんだよ。
「でけー相手だが経験がないわけじゃねー……それにだ、なんか気になるな……」
『ご主人サマ?』
ククク、と喉を鳴らしたくも成る。
ああ、いいじゃないか。実に良い眺めじゃないか。
生唾を飲み込み、しかしこれが映像ではなく現実であると思えば、別の感情もふつふつと込み上げある。
『ふふ、そうですか。あなたは相当不思議な場面に身を置いたことがあるのですね』
ゼルデギロスと呼ばれ君臨する女は、携えた天槍を構える。
それはまるで、戦う心得を識る武士。
敵に対しての最大の例を払う所作であった。
若津姫、彼女が理解して頷いたのは"戦いの経験"の話。
だが、カシムはため息交じりに自分の顔面に手をばしんと当てる。
「ああ……人間サイズならエロい事したかったな、って思っただけだ」
絶望してはいない。だがあの恰好だぞ、と葛藤がなくはないのだ。
『ちょっとぉ、ご主人サマってば☆』
機神メルシー、今すぐにぐらぐらさせちゃうぞ☆と言わんばかりに何故かこの機体、揺れています。
おんなのしっとはこわいんだぞ☆。
「身近な奴はどうしてこうも……」
いいや言葉にするのはやめておこう。メルシーに丸聞こえだ。
――こちらが動くと分かった瞬間に、全力を叩き込んでくるんだろうな。
姫の動きは、すぐ見て取れる情報をカシムに降り注がせる。
一歩でも敵意を持って動こうものなら、まず間違いないだろう、と。
『身近な親しいモノの話ならば、耳を傾け熱心に聞く事をオススメしますよ』
若津姫はそう言いながら、カシムが分析に傾倒していると悟ったのだろう。
ではこちらから参る、と言わんばかりに槍を身近に構えて裂帛の重く載せた突き攻撃を繰り出す。
フォーススティンガーと呼ばれる衝撃波の槍が生まれ、カシムに迫る!
「聞いてはいる!だがなあっ、ってぇ、うるせえ!」
――今すぐに、光属性を!
機体に付与し、光学迷彩で存在感を光の屈折を利用し隠蔽して逃げる。
立体映像として鏡面反射のように、複数存在が同時に現れたように見せたのだ。
姫の初撃は当然外れた。
『どれも全て叩けば同じこと、さあ――そうしますか』
天槍を今度はドリルのように変形させて螺旋の如く回転力を取得させる。
加えて、複数存在目掛けて放たれるのは無数の残像を残す連続突きの突撃。
ドリルインパクトを兼ね備え、殺傷力、破壊力どちらもグンと高められたもの。
受ければ螺旋状の孔が複数できることだろう――。
――念動障壁で少なからず受けて衝撃を逃がすようにしてるが。
こっちを当てるまで時間の問題か?
――いいや、致命傷を避けられればそれで良い。
光が全てかき消される――その前に。
「加速装置起動……メルクリウス……お前の力を見せてみろ……!」
神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)――ブースト、オン。
超高速で飛び回り、顔面を狙う。
狙うべきは仮面だと聞いていた、だからこそ、"標的を定めて"攻撃の隙さえ盗んでやった。念動光弾乱射を浴びせかけ、怯め。わずかでも怯んだ先にあるのは。
距離を詰めて鎌剣が顔面を掠めて"仮面"を斬り刻む感触だ。
成功
🔵🔵🔴
ルイ・エルドレッド
『色っぽいボスだけどナ』
「そんな事言って、足をすくわれるんだぞ」
影の中に潜むジークと喋っている途中に雷が落ちる。直撃したら即死だろうが普通に食らうつもり無し。世界浸食ソフト『OPUS』を使用し、雷が落ちる場所を【ハッキング】して書き換えてしまう。雷は別の方に落ちる。
「好き勝手にさせるつもりも無し、だ」
UCを駆使して敵に[封印、弱体化、不幸]のエフェクトを付与。雷落としを封印し弱体化で強さを下げる。自分には[斬撃強化、高速化、弱点特攻]を付与。一気に間合いを詰める。
「それだよ」
今までの【戦闘知識】で敵の動きを読み、不幸にも悪足搔き攻撃をする相手を避けて仮面を斬り付ける。
「だからガード覚えろって」
●支配の間合いは刹那の距離に
『だけど、ホントに色っぽいボスだけどナ?』
「そんな事言って。……足をすくわれるんだぞ」
ある猟兵が魂の叫びを普通に吐露していたが、ルイ・エルドレッド(隠しボス・f36867)はフラグなんて立てたくはない。
思うのは個人の自由。あちらが山のように大きかろうと、現在はただ"敵"。
"女"であることに油断してはいけないのだと、事前に聞いた事はまだ頭の片隅にちゃんとある。
影の中に潜むジークと喋っている間に、ゼルデギロス――いや、若津姫は天槍に、オーラのような、闘気のようなものを奔流のように溢れさせる。
それは槍の色と同質で眩いもの。
『掬われるだけなら、可愛い方でしょう』
オーラで構築した分身とも呼べるやりをあらぬ方向へ投擲。
彼女が足元を踏みしめれば、当然のように訪れる地響き。
並大抵の大気の異変だけでは済まない動き。
「やってることは可愛いとは思わないな」
ばちばちと、滞留する雷電の爆ぜる音がルイの耳にも届く。
予め放たれた複数の天槍が、空に近いところにあることで尖った槍先に、雷を喚んでいる。
『可愛らしさで勝つつもりはありません。ただ、これが戦いという世界――』
天高く、天槍を投げ上げるのを合図に周囲に雷の音が激しく聞こえだす。
『落つるべき場所は既に示された――さあ、どうしますかジャッジメントランスの裁きに身を焼きますか?』
若津姫は問う。
音だけでも分かるのだ。今はわざと不発させているようだが、違う。
答えを聞き、それから的確に落とすつもりだ。槍で降らす場所をコントロールした、言葉通りの裁きの雷を。
――直撃したら、即死だな、あれは。
「それに、普通に喰らうつもりもない」
『既に策を講じ、動き出しているというのですか……』
「好き勝手にさせて貰おう」
世界浸食ソフト『OPUS』――ルイの意識が届く範囲に対して、世界を自在に書き換えるソフトを起動する。
此処に展開せよ。そして、書き換えろ。
「此処はもう俺がルールだ」
戦場内はルイが様々なエフェクトを自在に付与できる実効支配の間合い(ドミネーションエリア)と交換される。
指先一つで、付与された自称を捻じ曲げることさえ、可能。
『……この世界、この場所に、新たなルール…………良いでしょう。では――!』
気迫。ルイが感じたのは巨体の女から発せられたオーラの支配感。
次の稲光後、必ず墜ちてくる――。
カッ――。
「種が分かれば、こちらのもの」
指先一つで事象を変更(か)える。ハッキングプロセスだって、瞬時解読改変を可能とした。
雷もまた干渉されて、別の方角へ突き刺さり堕ちた。
『お見事』
「必ず穿つ。それだけじゃ芸がない」
ルイが若津姫へ追加プログラムを設置する――弱体化のバッドステータスを並べ、操る力が封印されていく不運な設定を。
そして自分には、斬撃強化、高速化、弱点特攻、今此処で必要な最適解を。
足は驚く速度を齎して、若津姫の顔面を目掛けて。
放り投げた天槍を掴んだ、若津姫が体勢を低く刺突の体勢に入った所でルイは眼前に飛び込む。
「それだよ。その角度から俺一人を突き刺せないよな」
これまで短期間とは言え積み上げてきた戦闘知識で読み取った戦術。
悪足掻きするように体勢を立て直そうとする女の顔は、想像とは違い、晴れやかなものだった。
『これは、一本取られましたね』
相手の反撃する隙を奪い、仮面へと斬撃を繰り出すルイは、女がガードしなかった事にポツリと呟く。
「だからガード。攻撃特化じゃなくてガードしろって」
成功
🔵🔵🔴
シズホ・トヒソズマ
骸は骸に、ですか
確かに
ですが終末を迎えた過去であっても未来を変える事はきっとできる
私はそれをぶつけます!
からくり人形は◆早業で◆操縦
ライダをバイク型に変形し◆騎乗
クロノによる自分への加速効果と敵への遅延効果、クロスリベルによる移動力と反応能力強化も使用
◆フェイントも入れて連続攻撃を回避
回避が難しい攻撃はデザイアキメラの◆オーラ防御で力を受け流す形で防御
できるだけ空中に飛んでからUC発動
相手の巨体を利用してはいけないならこちらが巨体をぶつけます!
帝竜ガルシェンの力を使用
実体化させた巨体を獣の因子で更に3倍に巨大化した体で全力で激突
接近した所で巨爪で仮面を攻撃します
?
何だか懐かしそうでした?
●スーパー巨大戦線
「骸は骸に、ですか」
シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は思わず高笑いをしたくもなる。自分の置かれた状況をこうも正しく正常な心で理解する武士、とは。
『そうです。私は天寿を全うしたのです、なのに動くこの体は骸と言わずになんと言いましょう』
乗っ取ったモノは若津姫の顔面に憑いた仮面がそれなのだろう。
魔王ゼルデギロス、姫は間違いなく仮面へ向けて呟くばかり。
『我に翻弄されている事実は変わらぬぞ!』
『ゼルデギロス、あなたはそうやってすぐに調子に乗ろうとする……』
必ず成功してから誇れ。完全な復活を果たした後に声を上げろ。
何も学ばずに、一つの事柄にとらわれている魔王など世界が狭いのだと。
「確かに」
ぽろっと若津姫に同意を示してしまった事で、ゴゴゴと"魔王"の怒れるオーラの琴線をぶっちぎってしまった予感がする。
天槍は廻る。ドリルが如き勢いで廻る。
衝撃波をまとう回転が、超巨大な槍から生み出されることで突風が!
大きな敵が行う攻撃が、こんあに嵐のような激しさだなんて!
「いいえ――そこから神速の攻撃が私に降り注ぐのだとしても!終焉を迎えた過去であっても!未来を帰ることはきっと出来るんです、終わった路なんてありません。私は――」
それをいまからぶつけましょう。
シズホの指はなめらかに動いた、早業を超えて神業が如し。
騎乗機械変形人形『ライダ』をバイク型に変形させて、騎乗する。
――踏みしめ跳躍した速度に、逃げを行う事をは不可能でしょう。
空気を裂き、激しく残影を残す槍の連撃が雨のように降り注ぐなら。
彼女で空は覆われた。
「さあ、私の時間はこれからですよ!」
なめらかに動く指は時間質量理論搭載竜巻豪腕人形『クロノ』を繰る。
巨腕型強襲人形『クロスリベル』も、この場で同時に作用させよう。それぞれが持ち得る能力を、同時に併発させたなら――個の身長差なんて微々たる問題だ。
『速度への遅延、あなたの加速。一撃一撃が軽いこの攻撃の乱舞では、当たりませんか』
「そうですね、今や移動力と反応速度は私が上を取ります!」
手数の多い槍の雨だろうと、見切れるならば恐るるに足りず!
シズホは胸を張る。
「女は度胸、というでしょう!」
『そうですね。いい言葉だと思います』
防御・移動型人形デザイア・キメラでオーラ防御で力をそれとなく受け流していたシズホに致命的なダメージはない。
超巨大槍の直撃を受けなかった、というギリギリではあったが――当たらなければどうということはないのだ。
早駆けから、空中へ飛び出しシズホはユーベルコードを開放する。
「人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!」
からくり人形の中から、いつか過去に倒してきたオブリビオンの幻影が――。
若津姫の頭上へ放たれた幻影。
それは相手と同等、もしくはそれ以上の終わりなき巨体。
帝竜ガルシェンの落下――巨体へ巨体をぶつけて何が悪い!実体化させた巨体を獣の因子で更に3倍、途方もない巨大化を引き起こさせて全力突撃!
超突撃されたぶん、超突撃でお返しだ。
幻影装身(アームドオブリビオン・ミラージュ)――それは、本当に起こったことだろうか。もし、見ていた悪魔がいたならば。目を疑う超巨大戦闘だったことだろう。巨爪が薙ぐ姿こそ、目が霞んでよおく見て取れなかったが、なにか不思議な心地がシズホの心に届いた。若津姫の視線は仮面に覆われていて、伺えない。
だが、雰囲気がどこか、懐かしむように緩んだように見えたのだ。
「?……なんだか懐かしそうでした?」
大成功
🔵🔵🔵
アウル・トールフォレスト
そうだね。うん、わかったよ
きっとあなたを殺してあげる。大きなあなた。知らないあなた
だからあなたも――手加減なんて、しないでね!
最後まで、楽しみましょう!
【深緑、底知れぬ恐怖を育め】
小さいままじゃ不利だというなら、差が無くなるまで大きくなる
『高き森の怪物』に変身して、彼女と真っ向から対峙する
突撃は避けない。大地に根を張って、きっと突撃を受け止めてみせる
武器の扱いに長けた彼女に勝てる部分があるとすれば、それは多分『怪物』としての頑丈さ。ううん、きっと勝ってみせる
止めて見せれば、あとは反撃の時
逃さない内に、離さない内に、
彼女の顔に手を伸ばして仮面を引き剥がすよ
●聳える森と、剛き山
全力。
彼女は間違いなくそう言った。事実、ゼルデギロスと呼ばれた存在は携えた天槍を構え、本気を出して来るのだろう。
「そうだね。うん、わかったよ」
アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)が小柄に見えるほど、山の如き女は巨体であった。
「きっとあなたを殺してあげる」
大きな、大きなあなた。
誰かは知っていて、わたしは知らない大きなあなた。
『言い切れるのは、可能だという自信があるのですね?』
「どうかな。だからあなたも――決して、手加減なんて、しないでね」
バイオモンスター……彼女は今はまだ小さい方の現在から、ざわめくように気配を揺らす。森は笑う。そして山もまた笑った。
『無邪気で、愛らしい人ですね』
「ありがと!最後まで、楽しみましょう!」
ふふふ、と笑う声に、へらりと楽観的に笑って返す。
若津姫が槍を身体近くに引き寄せて、構える仕草を始める。
ぐぐぐ、と力を溜めているのはすぐ見て分かるが――天槍から強烈なオーラが吹き出している。
ぶわあと吹き出す勢いは段々ジェット機のような音まで高まっていく。
「いきなり全力、いいね。じゃあ、わたしも……」
体高差は不利だろうか。
ふと、アウルは顎に手を当てて考える。
「んー……今のわたしじゃ物足りないかもだねぇ……」
目を一度伏せて、開いた瞳は炎を宿す。
深緑、底知れぬ恐怖を育め(スケアリーロード・フワワ)――高き森の怪物を、恐怖を灯し、恐怖で還そう。
アウルの姿が、ざわめき、森はぐんぐんと成長を始める。山が孤高だというのなら、差がなくなれば人型と人型の勝負に持ち込めるでしょう?
『これは、驚きました……』
「これでいいよね?同じ大きさの誰かが対峙したの、初めて?」
『どうでしょうかね。人型以外ならいざしらず……ああでも、あなたの存在感は私のぼうや達と引けを取らないことでしょう』
身長と武器の大きさに比例したジェット速度が理想へ達した若津姫は、勢いよく地面を蹴った。
『当然、褒め言葉ですよ』
ジェットランページ――オーラの勢いで飛翔し、同時に激突のダメージを与える攻撃スタイル。風を斬り、音を裂きアウルの身体目掛けて突き出された槍を――アウルは避けない。
大地に根を張る高き森の化け物は、突撃の衝撃を地面に逃がす。
「わかっているよ、褒め上手だね」
返答と同時にアウルの身体が、ぐらり、と揺れる。
確かに身体は衝撃を吸って、揺れたのだ。
肩に止まっていたらしい小さな小さな鳥が驚いていくつかデビルキングワールドの空へ逃げ出した。衝撃の強さは、小さきものには耐えられない――。
「くっ……!」
『すべての衝撃を、逃がせますか』
「逃がせるよ」
武器の扱いに長けた彼女の重たく鋭い一撃に勝てる可能性。
現在の自身の――"頑丈さ"に答えを見い出した。
"怪物"ならば出来る。
「ううん、きっと勝ってみせるんだから」
激突した衝撃をアウルは耐えきり、にっ、と笑う。
『勝ち気。強気。清々しいほどです』
素晴らしい、と若津姫は笑っていた。まるで遊ぶように、耐えた上で――がしりと標的目掛けて手を伸ばしてくるなんて。
大胆。それでいて、的確。
「逃さないよ。離さないから」
仮面が引き剥がれるまでどんな抵抗をするの?
でも、わたし耐えてみせちゃうからね。
「じゃあ、剥がしちゃおうか」
ぎぎぎ、と仮面を引き剥がそうとすれば女の声、等ではない――仮面から男の絶叫が響く。耳を覆いたくなるほど、痛みに叫ぶ声だった。
魔王ゼルデギロス、人を操る者の罪深い末路とも思えるような断末魔が――。
大成功
🔵🔵🔵
アルテミシア・アガメムノン
此華咲夜若津姫、そしてゼルデギロスですか。
他者の身体を無理矢理操るなどワルとしても見逃せませんわね!
先制対策
敵WIZUC発動の瞬間、天槍の分身の位置を把握。(瞬間思考力×見切り)
その一本を全力の魔法攻撃により破壊することで囲いをなくし、発動を不完全にします。(全力魔法×属性攻撃)
しかる後に『氷獄の魔帝』を発動。
真の姿となり、仮面の元まで飛翔して『クロノスの大鎌』で仮面を斬り砕きましょう!
ここは貴方が自由にしていい世界ではありません。
とく去りなさい!
葛葉・御前
連携も即興劇も自由にするがよいぞ
妾には問い質したい事はない
戦場でまみえたならば礼を尽くして、全霊を賭けて、打ち倒すのみぞ
妾は高速詠唱と多重詠唱により、攻防一体の隙のない立ち回りを可能とする
己の身を結界術で護りつつ、同時に攻撃を行えるのじゃ
まして天槍を投げ上げて、更には攻撃地点を事前に天槍の分身で囲むなど、言わば二重に攻撃の予兆が存在する技であろう
そのような技、たとえ先手をとられたとしても、避けるのは容易い事じゃ
妾の尾に宿る九曜の神氣を見るが良い
破魔の力を宿す全力魔法を解き放ち、御主を縛る仮面を凍てつかせてくれようぞ
●凍てつく程の粛清を
「此華咲夜若津姫、そしてゼルデギロスですか」
一つの姿、二つの名前。アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)はふむ、と一つ納得の言葉を発する。
「他者の身体を無理やり操るなどワルとしても見過ごせませんわね!」
悪い奴は格好いい。欲望は素晴らしい。
悪魔の道徳を定めたデビルキング法から、逸脱しているとアルテミシアは考える。
他者の自由を冒涜し、死者のあるべき形を捻じ曲げる。
――そちらはワルではありませんわ。
『ワル……そうですね、これは単なる悪意でしょう』
天槍を構え、声は頭上はるか上から降り注がれる。
自分がそのような状態に置かれていても、若津姫と呼ばれる山のような女は落ち着いているようだ。
『これから此処に、渾身の雷が降り注ぐでしょう――その前に、なにか訪ねたい事があれば』
二人の敵。
仮面は若津姫を操り怒気のようなオーラを爆発的に高め、オーラの槍を複製する。
空に向かってひとつ、ふたつと生成しながらも若津姫は猟兵に問う。
「妾には問い質したい事はない。事実として没し、別の存在に繰られている事実はそれだけだろうとも」
九つの尾をそれぞれ揺らす大妖怪、葛葉・御前(千年狐狸精・f36990)が受け止めるものはただ事実。
本来は太刀を扱うものではないか?
太刀が如く天槍を構える姿は、葛葉に微笑ましいモノを見せるようだった。
――それが得意な得物とは言えぬのだろうとも、脅威に代わりなし。
「ただし弱点を口にする武者などおるまい。礼を尽くして、全霊を書けて、打ち倒すのみぞ」
――だろう?皆の者。
――此処に集いしもまた、一騎当千のツワモノよ。
「これはわたくしたちを中心に展開された星型の配置ですのね?五行の並びを識る方なのでしょうか」
アルテミシアは瞬間的に天槍の位置を把握した。
わざわざ囲う様に配置する等、何処に落ちるか誘導しているようなものだ。
『親しみが深いのは神火――いえ、ジャッジメントランスの真髄は、この様に配置すること』
天高く天槍を投げ上げると同時に、ばちばちと雷雲を裂く音が聞こえ始める。
「投げたなぁ、事前に行う業というのは隙が多いように見えるのじゃが……」
その分威力が高められている。
静電気で尾の毛並みが乱されるのも、また不思議な気分となる。
「予兆ありの攻撃ならば、先手を取られようとも」
――避けるのは容易い事じゃ。
「なるほど、誘導までが攻撃なのですわね、では……」
そのうちの一本目掛けアルテミシアは全力で魔法力を叩き込んで霧散させた。
オーラによる分身なら、高威力で潰しきれれば囲いの槍の一角をなくし、発動条件を不完全な状態に持ち込める。
「これで的確な場所に落とすことは叶わないでしょう」
アルテミシアの背後、滑らかに静かに紡がれる言葉は高速の詠唱。
同時に多発する多重詠唱さえ、言葉詰まることはなし。
「千億の昼と夜を超えて、鼓動を鳴らし続ける妾とて天寿を終えたモノは皆等しく童も同じよ」
葛葉は詠唱をやめない。任せよ、とも言葉には載せず己の身を護る結界術を重ねがけ、そして手に構えた霊符に神氣を巡らせる。
「小さきものと侮るならば、それは油断に繋がるもの」
ククク、と喉を鳴らし呪詛と合わせて破魔の力を込めた符を投げつける。
ぺたぺたと若津姫の足元に張り付き、じわじわと蝕む。死者ならばタダではすまないやけどが如き痛みを与えよう。
『油断など……』
「さあ、最大攻撃が外れたからには今度は此方の番。妾の尾に宿る九曜の神氣を見るが良い」
――水曜尾・滴水成氷。
破魔の力を宿す全力の攻撃は、この場全てに影響を及ぼすだろう。
だが、この程度で怯む猟兵などいない。
「御主を縛るその仮面。凍てつかせてくれようぞ」
凍結の異常状態を仮面に直接叩き込む。
凍傷を負った仮面というのはいかように鳴くものか。
『やめろ!我は此処に屈するべきではないのだ!』
「知ったものか。信念強気者へ取り憑いた御主が悪い」
千年狐狸精がクツクツ笑う。
姿を表せぬまま死する終焉を約束された魔王なぞ、駄々をこねる幼子にも等しい。
「さあ、審判の時です」
氷獄の魔帝(サタン)、悪のカリスマはその翼を大きく広げた。
「凍りつき、剥がされる。壊されるばかりがもはや命運とも言えるあなたに、こうして直接お届けに参りましたのよ」
六対十二の翼を持つ熾天使が携えるのは、クロノスの大鎌。
万物を裂くに相応しい刃を持つ――魔王(だてんし)が、振りかぶって斬り掛かる。
「此処は貴方が自由にして良い世界ではありません!とく去りなさい!」
ワルが主張していいのは。
――頑張りに紐付けられた真面目さだけですのよ!
凍てついた仮面に大きな罅が刻まれる――。
大成功
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プフェルトラム・メーベルナッハ
此華咲夜若津姫、そして魔王ゼルデギロス。
よもや、母様の寝物語に聞いたもの達と、斯くの如く相対せし時が来ようとは。
強大なる事この上なき存在でしょうが――なれど、勝たねばならぬ戦。
私の舞を以て、お相手仕ります。
【ダンス】の如き動きを織り交ぜた【ダッシュ】【ジャンプ】、足運びによる【フェイント】や【残像】を駆使し、先制の連続攻撃を躱し凌ぎつつ、若津姫様へ接近致します。
ジャンプにて彼女の身体を駆け上りつつ、途中で一撃のみ攻撃を当て響き合わす円舞曲を発動。
彼女の挙動に合わす形にて跳躍を重ね、跳び上がる速度の向上を企図。
顔まで上り次第、仮面へ魔法剣の斬撃を打ち込みましょう。
エンティ・シェア
でっけぇな
人の身体の上駆け上る経験何て流石に初めて…でもないか?
それにしてもサイズが桁違いだし、武器の威力も半端ねーな
直撃だけは頑張って躱すわ
各種耐性がどこまで仕事してくれるかね
初撃を凌げたら、仮面目指して出来るだけ近づいておく
追撃来るならかえしうたを
返せるかこれ?いや、気合で返すしかねーわ死ぬし
返す先は出来るだけ仮面の方向
外れても姫さんの体勢がちょっとでも崩れれば良し
そうやって各所で攻撃をやり過ごしながら登ってく
…仮面、ね
嫌な気配しかしねーな
そんなもんに纏わりつかれるなんて、冗談じゃねーよな
…まして、死んだはずの身体を、好き勝手されるなんて
剝ぎ取ってやるよ。あんたが安らかに眠れるようにな
●悪意の仮面に終焉を
ぐらりと大きな女はたたらを踏み、そして体勢を戻すように構える。
「此華咲夜若津姫、そして魔王ゼルデギロス……」
プフェルトラム・メーベルナッハ(千夜の踊り手・f00012)は奏でられた言葉の響きに、思わず懐かしさを抱く。
思い出の中の語り手は母。
昔々に寝物語に聞いた者たちが、今目の前に組み合わされた姿でいるというのも不思議な話。
「母様も、これを予想する事も想像する事は出来なかったことでしょう」
――欺くが如く相対せし時が来ようとは。
今度はプフェルトラムが寝物語として語る番だろうか。
いつか聞いた者達の、真新しい情緒溢れる終焉の話として。
『誰も予想出来ないものが未来、とも言いますね』
「そうですね、強大なる事この上なき存在とは存じますが――此度のこれは此方が勝たなければならぬ戦
『手加減等、お考えなきよう。お気になさらず、死した以上私は現世のものではありませんから』
「私の舞を以て、お相手仕ります」
ダンスが如き動きを混ぜたダッシュ&ジャンプ。軽やかでいて、艶やか。
巨大な人体を掛ける足に迷いは無く、足運びは時折残像を生み、虚影を残して進ませる。
「……いや、でっけぇな」
別方向にも人影。
落ち着いて見上げてもそこにいる存在は雲が霞むようなほど高い位置に顔があるらしい。エンティ・シェア(欠片・f00526)が体格差に驚くのも無理はない。
「人の身体の上駆け上る経験なんて流石に初めて……でもないな」
『そんなに大柄な存在相手に戦ったことが?』
「まーな。デカさ様々、色んな場所に行ってるからな」
会話の内容は何気ない平和な世間話そのもの。
「届かせるには、登る、走るのが一番。だが、それにしてもサイズが桁違いだし、あんたの戦闘で起こった事象、わかってるか?」
他の猟兵たちが戦った後はエンティの目にマジマジと見せつけてくる。
踏ん張り全力で蹴り上げた大地はめくれ上がり、地響きや動きに憑いてこれなかった地表は吹き飛んでいる。
水脈枯渇平原だからこそ、乾いた土や地盤ばかりがひっくり返っただけで済んでいるが――他の場所であったなら、破壊の跡地は神々が周囲を気にせず戦った陥没地帯のように荒れ果てた事だろう。
「これ武器じゃなくあんた一人の仕業だろ。武器の風圧、衝撃波だって威力は桁違いだが……」
――直撃だけは絶対ヤだね。
頑張って躱すと心に強く思いながら、投げかけてくる視線の重圧を見返すばかり。
『見たものと、現実に受けるのではまた別の話だとは思いませんか』
螺旋回転を始める天槍が、フォースティンガーと呼ばれる衝撃波を纏い威力の精度をぐんぐんを上げていく。
ガッ、と神速で地面を蹴りエンティとプフェルトラム目掛けてミラージュランスが放たれる!
天槍乱舞、全てを同時に行う器用さ。躱し、飛び退いて進み続けるプフェルトラムの動きは何処までも踊りの輪から抜け出さない。
そこに居てそこに居ない。たしかに進む歩みは停めず。
ジャンプを利用して駆け上がり、途中に一度、踊りの途中に響き合わす円舞曲(レゾナンツ・ヴァルツァー)を放つ。
踊りながら攻撃を。動き続けるその挙動を覚え、大小の違いの輪のなかでもきっと攻撃を届かせよう。
「……チッ」
エンティから漏れ出たのは舌打ち。
連続で行うからこそ、陥没、刳り貫かれる地形が増える。増える。
破壊の行動はおまけ。だがどんどん破壊された場所は増えていく――。
「だが初撃は躱させて貰ったんで、な」
――反撃は俺にも許されてるってんだよ。
「聞けよ、お前の音だ」
どこまでも響け、雲を裂く槍の耳を貫く螺旋の音を。
雲を纏い、白色のオーラで全てを薙ぐその手数は嵐のようだと認めて、音で聞け。
「……これ返せるか?」
バカでかい武器に音で勝つ方法。デビルキングワールドのネット環境で調べたくなるが、今はそれどころではない。
返せるかではない。気合を載せて届かせて、返してやるのだ。
――返せねーと死ぬし。
音の繰り出す向きは若津姫、――ではない。
集音すべき対象は、誰もが狙う仮面一つ。耳まで届けば仮面まで届く。
『聞こえていますよ。見えても居ます。剣や武器ではなく、己の業のみで戦う方はあまり経験を多く詰んでいませんが……』
己の体の上を走る猟兵へ、若津姫が顔を向ける。先制攻撃を外し、己の体の上を走る相手に、攻撃する方法はさほど多く示されない。
『私のぼうや達のように諦めない心が、あるのですね』
「どーかな、あんまりお喋りが多いとバランス崩すぞ」
各所から攻撃をやり過ごし、エンティは走る。走る――。
――悪意の仮面、か。
嫌な予感しかしなかった。
声だけ聞こえていた魔王も、相当の披露を身(かめん)に詰んだのだろう。
今は黙っている。沈黙は終わりが近い証拠だ。
「そんなモンに纏わりつかれるなんて、冗談じゃねーよな……まして、死んだはずの身体を、好き勝手利用されるなんて」
そこそこの自由と、強い信念でカバーしているのだろうが、そういう話ではない。
死んだ後に利用されていることは、事実のだから。
『でも、私で良かったのかもしれません。被害はこの様に最小になったのですから』
「最小……?まあ、お望み通り剥ぎ取ってやるよ」
あんたが安らかに、眠れるように。
挙動に合わす形に合わせ、プフェルトラムは顔面近くまで跳ねる。
跳躍はどこまでも、彼女の動きに合わせたものだった。
届く理想もまた踊りの果に。
仮面へ向けて放つのは、魔法剣により終焉の斬撃。
これまで集めた攻撃の集大成を、此処に滅ぼす力へ換えて、終わらせよう。
ぱきん。
『あ、ああ……此処でも、潰える、のか!何故だ!何故!また!!』
『ゼルデギロス。貴方の企みは必ず阻止されるのでしょう、ぼうや達のような志持つものたちによって』
怨嗟を吐き散らす仮面の声は崩壊の音と一緒に霞んで消える。
若津姫、いいや異世界の魔王ゼルデギロスの超巨大な身体は霧散するように消えていった。どこか嬉しそうな声で笑い、――ありがとうと告げながら。
虚空に残されたものは、消え去った存在感と――巨大なモノが大暴れした荒れた大地ばかりであった。
大成功
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