7thKING WAR⑤〜ワルワル・ローンキャンセラー
●魔界議事堂
デビルキングワールドにはデビルキング法が存在している。
しかしながら、法が存在しているのならば、当然のことながら律も存在する。
魔界議会とは即ち、様々な法律を定める多数決の議会であった。
しかし、多数決では在るものの、その実態は議員の買収のみならず撃破もまた合法という或る意味でデビルキングワールドらしいものであった。
まあ、簡単に言えば魔界議会を開催する議事堂である『魔界議事堂』に議員がたどり着けなければ、多数決で法律が決定してしまうのだ。
例え、敵対議員がいたとしても買収と撃破が合法であるのならば、これをやらない理由なんてそもそもないのだ。
いや、それにしたって買収と撃破が成り立つってどんな世界なのだろうか。
「徳政令はんたーい!」
「我々の称号『債務者』を不当に簒奪せんとする徳政令に断固として反対する!」
「これは聖戦だ! 我々『D多重債務者』は負けない!」
あ、『D(デビル)』というのは、デビルキングワールドのお金のことである。
債務者と言っていることから分かる通り、今、『魔界議事堂』を占拠しているのは、召喚魔王派閥に所属する『ビューティースパイダー党』の魔界議員達であり、いろんな支払いを滞らせて借金を重ねまくっている悪魔たちである。
この悪徳こそが美徳の世界にあって『多重債務者』は、素晴らしい称号である。
通常の世界であれば、不名誉この上ない蔑称。
言ってしまえばクズである。言いたい放題であるが、他世界の常識と照らし合わせれば、そう言うしか無い。
しかし、デビルキングワールドでは違う。借金を踏み倒すという極上のワル。それをやってのける彼らを悪魔たちは畏怖と共に『D多重債務者』と呼ぶのだ。
そんな彼らの持つ称号を無きものにしようとしている法律が今や可決されようとしているのだ。いいじゃん。
「ゆえに我々は実力行使に移るのだ!」
「かの悪法を許しておいてはならない!」
「何が徳政令だー!」
やんややんや。
『D多重債務者』たちは、徳政令を発布しようとしている対立議員たちを次々と待ち伏せ、撃破しつつ捕らえ、議事堂を召喚魔王派閥の議員で占拠してしまった。
……。
通常の世界を知る者であれば、首をかしげるというか困惑するところである。
えっ、債務を無効化する徳政令を拒む理由ってある? と。
むしろ、徳政令でたほうがよくない?
だが、何度でも言う。
この世界において『多重債務者』はマジで勇者レベルの栄誉ある称号なのである。それを失うことなど考えられないほどに!
「俺達はー! 絶対に借金を手放さないー!」
「これは誇りを守る戦いだー!」
「我々を排除できるのならば、やってみろやー!」
そんなこんなで『D多重債務者』たちは、己たちの栄誉を守るために議事堂を占領し続ける。
徳政令発布を阻止するべく戦う彼らは、ワルの中のワル!
今日も今日とて借金を踏み倒すべく、24時間戦う借金戦士なのであった――。
●7thKING WAR
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はデビルキングワールドの『魔界議事堂』です。しかし、ちょっと困ったことになっているのです」
ナイアルテは、困った顔をしている。
本当に困っているのだろう。むしろ、困惑していると言った方が正しい。
どうやらデビルキングワールドは法律を決める時に『魔界議事堂』で多数決を持って可否を決定するようである。
しかし、今回召喚魔王の派閥である『ビューティースパイダー党』の魔界銀たちが議事堂内で徳政令発布を承認してもらおうとしている議員たちを集団で待ち伏せて次々と捉えて占拠してしまったようなのである。
「その……確かに買収や撃破は合法なのです。けれど、今回、議事堂内を占拠している悪魔議員の方々は『D多重債務者』という称号にこだわっておいでで……ええと……」
いちいち、他世界の常識が頭にちらついて、困惑してしまうのだろう。
わからんでもない。
ナイアルテはなんとか、頭の中の善悪観を逆転させて言葉を紡ぐ。
「その、徳政令が発布されると、借金がなくなってしまって『D多重債務者』という称号がなくなってしまうのを恐れているのです。栄誉ある称号がなくなるのは確かに惜しいことでしょう。けれど、それを召喚魔王に利用されているのであれば、私達には議事堂を開放する必要があるのです」
なんとも心苦しそうにナイアルテは言う。
確かに善悪が逆転しているからこそであろう。複雑な気持ちにもなろう。けれど、今回は悪魔王遊戯の真っ只中。
そんな中、召喚魔王がデビルキングに至ってしまえば、悪魔たちの輸出が始まってしまう。他世界を危険に晒すわけにはいかない。
「みなさんも心苦し……え、そうでもないですか?」
ナイアルテは悪魔たちの立場に立って考えているようであるが、連中は『D多重債務者』である。
通常の世界の常識で考えればクズ。
別に良心傷まないだろう。
ここは容赦無く彼らをぶっ飛ばし、議事堂を開放するのだ――!
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『7thKING WAR』の戦争シナリオとなります。
ついに始まってしまいました『悪魔王遊戯』。ざわ……ざわ……と効果音が常に何処かしこに流れているかもしれませんが、そんなこたあ関係ねーとばかりに『魔界議事堂』を占拠している召喚魔王派閥の『ビューティースパイダー党』の悪魔議員たちをぶっ飛ばすシナリオになります。
デビルキングワールド準拠の価値観で考えれば、彼らのやっていることのほうが正当化されそうですが、召喚魔王がデビルキングになることは阻止せねばなりません。
痛む良心がありましょうが、此処は心を鬼にしてぶっ飛ばしましょう! 大丈夫、悪魔議員なので頑丈なので死にません。
また占拠された『魔界議事堂』には、すでに捕らえられた議員たちがいます。
彼らを開放して味方につければ、さらにスピーディーに『魔界議事堂』を開放することができるでしょう。
プレイングボーナス……囚われた議員を解放して味方につける。
それでは、マジでどういうことなのっていう状況の中、『7thKING WAR』を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『D多重債務者』
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POW : 猿猴捉月(えんこうそくげつ)・・・!
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【負のオーラ】を与える。
SPD : 阿鼻叫喚(あびきょうかん)・・・!
【泣き喚きながら羽交い絞めしたり】【泣き叫びながら足に組み付いたりして】【自分達の為に倒されてくれと懇願する姿】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 雲散霧消(うんさんむしょう)・・・!
自身の【背負う借金の額が10倍】になり、【自暴自棄になる】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
イラスト:くずもちルー
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
月夜・玲
うわークズ!
とんでもないクズ!
変な称号に拘るクズ!
気持ちよく吹き飛ばせそうでラッキー!
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【断章・不死鳥召喚〈超越進化〉】起動
不死鳥たちを突撃させて議員達を解放させよう
私も『斬撃波』で援護
そもそもさー、今持ってる称号にしがみ付くなんてワルじゃないじゃん斬り!
徳政令が出るんだよ?つまり施行されるまでに借りまくれるし
施行されたら、債務無しって事でまた借りまくれるって事じゃん斬撃波!
何で今ある称号に胡坐かいてるんだよ?
一度失った称号を再度手に入れる…それこそ本物のワルってやつじゃないのか『なぎ払い』!
他の債務者を出し抜けるチャンスを逃すのかい??
ざわ……ざわ……
『魔界議事堂』はなんかよくわからんサウンドエフェクトと陰気な雰囲気に満ちていた。
それは悪魔議員たちである『D多重債務者』たちの放つ陰気であり、ついでにいうと青筋が常に彼らの顔を覆っていた。
けれど勘違いしないで欲しい。
この悪徳こそが美徳の世界デビルキングワールドにおいて『D多重債務者』というのは、誉れ高き称号である。
ワルの中のワル。
他世界であればクズオブクズの名を恣にしているであろう債務者たち。それが今回、『魔界議事堂』で可決されそうに成っている徳政令発布を防がんと敵対議員たちをとっ捕まえて、議事堂を占拠しているのだ。
うーん迷惑!
「うわークズ! とんでもないクズ! 変な称号にこだわるクズ!」
ものすごい罵詈雑言である。
クズのオンパレード。これ以上無いくらいのディスり。けれど、それは他世界に限った話である。
さっきも言ったけど、クズってデビルキングワールドの善悪が逆転した世界にあっては褒め言葉なのだ。つまり月夜・玲(頂の探究者・f01605)の言葉はご褒美であった。
あざす! 罵詈雑言助かります!!
そんな具合であったし、クズ呼ばわりされても『D多重債務者』たちは照れ笑いを浮かべている始末である。
「てへへ、それほどでも」
「あるけどなー! ワハハ!」
明るい。とにかく明るいクズ。これほどまでに救いようのないクズもまた久しからず。
そんな彼らを見やり玲は模造神器を抜刀する。
「気持ちよく吹きとばせそうでラッキー!」
そう、世界基準で見ても相当のクズ! それが『D多重債務者』である。そんでもって誉れ高き称号にこだわる者たちでもあるのだ。
「というわけで、断章・不死鳥召喚〈超越進化〉(フラグメント・フェニックスドライブ・エクステンド)!」
うわー雑。
とても雑に召喚された蒼炎で構成された不死鳥たちが一気に『魔界議事堂』へと突撃していく。
その全てを切り裂く蒼炎の翼は、敵対議員たちを捕らえている部屋をぶった切って彼らを開放する。
「うわー! スゴイ雑にやられてるー!?」
「だが、我等誉れ高き『D多重債務者』たちはなぁ! 我等の抱えた借金が膨れ上がれば上がるほどに!」
「強くなるのであーる!」
『D多重債務者』たちは悪魔である。悪魔っていえば、ものすごい頑強な種族。どの世界を見てもぶっちぎりでやべー種族なのである。
そんな彼らの力が膨れ上がっていく重圧は、冗談みたいな状況にありながら凄まじいものであった。
「そもそもさー、今持ってる称号にしがみつくなんてワルじゃないじゃん斬り!」
ものすごい雑な技。
玲の斬撃は膨れ上がった戦闘力を誇示する『D多重債務者』に吸い込まれていく。
けれど、斬撃よりも口撃の方が『D多重債務者』に効く!
「徳政令が出るんだよ? つまり施行されるまでに借りまくれるし、施行されたら、債務なしってことでまた借りまくれるって事じゃん斬撃波!」
吹き荒れる斬撃と蒼炎の翼。
ものすごいカッコイイシーンのハズなのに、玲の言葉で全部台無しな気がしないでもない。そう、彼女の言っていることは筋が通っている。そうかな? ただのクズの上塗りを推奨しているだけにしか聞こえない気がするんだけれど。
しかしながら、『D多重債務者』たちの心には響くものがあったし、開放された悪魔議員たちは感心した目で玲を見ている。
「たしかに」
「一理あり。いや千理ある」
ねーよ。
けれど、玲は畳み掛ける。彼らの心が揺れ動いた今こそが畳み掛ける瞬間なのだ。ラッシュラッシュラーシュッ!
「なんで今在る称号に胡座かいてるんだよ? 一度失った称号を手に入れる……それこそ本物のワルってやつじゃないのか薙ぎ払い!!」
どっせい。
その斬撃は悪魔議員も巻き込んでいるような気がしないでもないが、まあいいのである。
だって悪魔はこの程度では死なない。ぶっ飛ばされるだけである。
それに彼らは今、玲の口撃にこそよろめいているのだ。
「そ、それは……!」
「ぐらつく……新たなワルの称号が欲しい……!」
「そうだろうともそうだろうとも……今こそ他の債務者を出し抜けるチャンス。それを逃すのかい??」
玲の言葉が響く。
そう、今こそ言うときである。
いつ出し抜くの?
「「「今でしょ――!!!」」」
こすられまくったセリフであるが、こういうときにこそ古典的な言葉が決定的に成ることを知らしめるように玲はクズたちに、さらなるワルへの道を示すのであった。
それでいいのかな――!?
大成功
🔵🔵🔵
フカヒレ・フォルネウス
(このフカヒレ、両親の夜逃げに置いてかれ、多額の借金を背負った過去を持つ。
自分で行ったワルじゃなくて押し付けられたワルなので、心理的負担がマッハ。
ワルだと持て囃す住民たちとは裏腹に、Dを返さなければならないプレッシャーと責任感に喘いだ十年の恨みつらみは忘れていないのである。)
つまり詐欺とか借金とかは僕の地雷な訳です。
無関係? 知るか死ねぇ!
オーバーロード! 真の姿を開放!!
鮫の悪魔の父の血である鮫頭と、詐欺の悪魔の母の血である白鷺の翼を生やして。
多重債務者共を蹂躙する!!
金(D)は!ちゃんと!返せぇぇぇ!!!
踏み倒してんじゃねぇ!
四の五の言わずワルして働いてしっかり債権者にDを返せっ!
(殴る噛みつく斬りかかるの傍若無人を体現する鮫、もとい様)
おぅおぅ、泣け!喚け!叫べ!
この姿の僕は、契約している鮫の力をこの身に宿す!
《受刃鮫》の反射能力でお前たちにバステを返してやらぁ!!
這いつくばっているところを、立てやぁ! と蹴ります。
議員共、てめぇらも徳政令なんて発布してんじゃねぇぶっとばすぞっ!!
人に歴史ありである。
過去があるからこそ、その人の人となりが形成されるのだ。
時に暗い過去であったとしても、轍こそが人の背中を押すことになる。それをフカヒレ・フォルネウス(鮫の悪魔の四天王・f31596)は胸に秘するのである。
彼の一族はとある魔王に仕える由緒正しい四天王の跡取りであった。しかしながら時代の流れというか、仕えた主君が突如として『勇者に成る』宣言をして国家を解体したせいで、彼の人生は突如として暗転したのである。
あとに残されたのはなんであったか。
そう借金である。国家が解体されれば、露頭に迷うのは末端の者たちである。彼らは退職金を求めていたが、フカヒレの良心はこれを踏み倒した。
そう、踏み倒したのである。
他世界であれば許されざる暴挙!
けれども、ここデビルキングワールドではワルの寵児そのものであるフカヒレは、一家離散の後に天涯孤独の身となって放浪の旅にである。
いわゆる自分探しの旅。
職歴のないワル。
履歴書は全部真っ白である。しらねー! わからねー! うるせー! ってやつである。
しかも、両親のワルは全部フカヒレに押し付けられた。
そう、彼の両親は掛け値なしのワルであった。フカヒレさんはとってもストレスフルであったのだ。
その恨みはもう海よりも深い。マジで深い。グリードオーシャンの深海よりも多分深い。多分。
そんなこんなでフカヒレは叫ぶのだ。
「無関係? 知るか死ねぇ!」
ものすごい剣幕である。
確かにフカヒレはワルの所業を両親に押し付けられた。ワルだと住民たちはもてはやしたが、その裏腹にDを返さねばならないプレッシャーと責任感にあえいだ十年の恨み辛みはしっかりと彼の中に蓄積していたのである。
まるで澱のようであったし、忘れることのできないものである。
そんなわけで『D多重債務者』たちの言葉はフカヒレにとっては、地雷なのである。踏み抜いたようなものなのである。
「金(D)は! ちゃんと! 返せぇぇぇ!!!」
魂の叫びであった。
魂の叫びついでにオーバーロードしているところが凄まじい。彼の心の闇を垣間見たようなものであった。
超克とは即ち己を超えることである。
真なる姿。その姿は鮫の悪魔の父の血。鮫頭の歯がガチガチと打ち鳴らされ、詐欺の悪魔の母の血である白鷺の翼をはばたかせる。
まさにワルのハイブリット!
しかし、フカヒレにとってはストレスフルな姿でもあろう。
超克程度では積年の恨み辛みはハラせないのである。
「踏み倒してんじゃねぇ!」
いつもの言葉遣いなんて、とっくに忘れている。荒ぶる鮫歯。
「こわっ! 顔が怖い!」
「だが、我等とて『D多重債務者』の称号を持つもの! やつを止めるぞ!」
「誰が返すものか! ビタ一文!!」
うーん、クズ。
だが、クズにはクズの矜持があるのである。借金は踏み倒すもの! そう教えられるのがデビルキングワールドである。
ならばこそ、彼らは誇ることこそあれ、謗られるいわれなどないというようにフカヒレに迫るのだ。
そんな彼らをフカヒレは怒りと恨みと悲しみの受刃鮫(リフレクテッド・シャークブレード)でもって受け止めるのだ。
「四の五の言わずワルして働いてしっかり債権者にDを返せっ!」
もうそこからは凄まじい戦いぶりであった。
殴る噛み付く斬りかかるの傍若無人たる振る舞い。
その姿はワルの中のワル。
どれだけ『D多重債務者』の称号が素晴らしいものであったとしても、フカヒレの戦い方は、極ワルであった。
「ひぇー!? なんだコイツ!? なんでこんなに強いんだ!?」
「我等もブーストされているはず! 借金カウンターは……!」
「なにぃ!? 借金スカウターが爆発した!?」
そう、フカヒレさんの嘗ての借金スカウターは国家予算レベル。即ち、ちょっとやそっとの多重債務程度では凌駕出来ようはずがないのである。
フカヒレさんに体にしがみつく『D多重債務者』たち。
けれど、そんなもんでフカヒレさんが止められると思うなよ!!
「おぅおぅ、泣け! 喚け! 叫べ!」
すでにオーバーロードで持って真の姿を晒している鮫ことフカヒレさんには、ユーベルコードの輝きによってあらゆる障害を反射する。
即ち、『D多重債務者』たちのユーベルコードは尽くが反射され、彼らを戒める枷となるのだ。
「ぐへー!?」
「圧倒的……! 理外……!」
「立てやぁ!」
ぶっ倒れている所に蹴り込む外道ぶり。そのフカヒレさんのワルの所業は凄まじいレベルに達していた。
相手が倒れていようが何であろうが関係ない。
そんでもって、彼の怒りはとどまるところを知らないのだ。彼は『D多重債務者』を蹴り飛ばしながら、捕らえられた悪魔議員たちをにらみつける。
「議員共、てめぇらも徳政令なんて発布してんじゃねぇぶっとばすぞっ!!」
もう狂犬である。
誰彼構わず噛み付く。うあー、あの鮫歯で噛みつかれたらたまらなく痛そうだなぁって思うほどにフカヒレの迫力は凄まじい。
彼は己の過去より積もった怒りを発露させるように『魔界議事堂』に咆哮を轟かせ、その怒りと恨みと辛みでもってデビルキングワールドを震撼させるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
アルテミシア・アガメムノン
D多重債務者! ワルですわねえ。
お金を借りているだけでワルの栄誉を担えるのですから徳政令に反対するのも分かります。
ですが、召喚魔王さんのデビルキング就任阻止の為には仕方ありません。
ぶっ飛ばしてあげますわ!
『黄金の暴嵐』が戦場(魔界議事堂)全体に吹き荒れる!
召喚魔王派閥の者だけを吹き飛ばし、囚われている議員達を解放しましょう。
さあ、皆さん、やられたらやり返す。十倍返しです!
(解放された議員達に)
それにしても『徳政令』も適用範囲によってはワルの所業なのですよね。
貸主の債権債務を保障なく無に帰するのですから。
まあどっちに転んでもワルということです。
「『D多重債務者! ワルですわねえ」
『魔界議事堂』を占拠した悪魔議員たちこと『D多重債務者』たちは、猟兵たちの吶喊によってタジタジである。
彼らは確かに善悪の逆転した世界であるデビルキングワールドにおいて、凄まじいワルを為した称号を持っている。
そう、それこそが『D多重債務者』である。
誉れ高き称号。
クズ・オブ・クズ!
借りて、借りて、借りまくって! 最後の一人になるまで借りまくって膨れ上がった借金の数字でもって彼らは『D多重債務者』という称号を燦然と輝かせるのだ。
アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)は、その様子にうんうんと頷く。
黄金の女帝もまたデビルキングワールドを制覇するというワルの花道を歩む者。
借金をする、踏み倒すなんていうのはやらないわけがないのである。
「お金を借りているだけでワルの栄誉を担えるのですから、徳政令に反対するのもわかります」
ワルこそ最高。
クール。
借金を踏み倒すなんて最高にイカした行いなのである。
「ですが」
そう、アルテミシアは世界征服を目指す女帝である。ならば、『魔王ガチデビル』や召喚魔王がデビルキングなることは阻止せねばならない。
「ぶっ飛ばしてあげますわ!」
ここまできたのならば、話は端的である。
彼女の波動を阻むものは全てぶっ飛ばす。そう、ぶっ飛ばすのみである。彼女の瞳が『魔界議事堂』に黄金の暴嵐(ルドラ)を巻き起こす。
掌から放たれた黄金の神雷と滅びの暴風が、一気に『D多重債務者』たちを飲み込んでいく。
「こ、この程度の嵐で我々が屈すると思うなよ!」
「我等こそが『D多重債務者』! 誉れ高き借金戦士なのだ!」
「クズ・オブ・クズの名! 伊達と思うな!!」
『D多重債務者』達が飛び出す。
言ってることは、本当にうーんこのクズーって感じであるが、デビルキングワールドという悪徳こそが美徳の世界に在りては、なんかものすごくかっこいい感じに見えてしまうのが悔しいところである。
「ふ……どれだけ粋がろうとも、皆さんは待ち伏せというワルによって敵対議員を捉えただけに過ぎないのです。真のワルだというのならば、議事堂に閉じ込めておくのではなく、遥か遠くまでぶっ飛ばしておくべきであったのです」
アルテミシアは微笑む。
そう、彼女の神雷と暴風は、敵味方を識別する。
今敵対している『D多重債務者』たちの敵は即ち悪魔議員たち。そんでもって、敵の敵は味方っていう言葉がある。
「さあ、皆さん、やられたらやり返す。十倍返しです!」
アルテミシアの言葉が開放された敵対議員達へと告げられる。
彼らは同じく悪魔である。一人ひとりが猟兵並の強さを誇る種族であり、彼らもまた不意打ち待ち伏せでなければ、相当の強者。
ゆえに彼らは気炎を上げるのだ。
「そのとおりじゃー!」
「何が『D多重債務者』じゃ! そんなカッコイイ称号独占させてたまるかい!」
「徳政令で全部水の泡にしてくれる!」
こっちもこっちでなんというか、妬み嫉みである。まあ、それもまたこの世界であれば美徳であるけれど。
そんな骨肉の醜い争いの様相を呈してきた悪魔議員たちの取っ組み合い。
アルテミシアはそれらを見下ろし言うのだ。
「『徳政令』も適用はにによってはワルの所業なのですよね。貸主の債権債務を保証無く無に帰するのですから」
そのとおりである。
借金をチャラにする徳政令発布は確かに債務者たちにとっては善いことづくめ。されど、債権を持つ者たちにとっては、何の保証もなく当てにしていた金が入ってこないことに成る。
片一方を立てれば片一方が立たず。
世の理とは、常に弱者と強者の入れ替わりであるのだ。
ゆえに……って此処まで語っておきながら、結構敵対議員もあくどいことやってんな!
「まあ、どっちに転んでもワルということです」
アルテミシアはそんな彼らを暴風と神雷でもって押し流していく。
だって、どっちもワルである。
そういうワルたちを飲み込んで黄金の女帝は己の国を拡大していく。ワルな企てには常にDが絡むものである。
ゆえに彼女は、どちらの議員をも取り込んでさらなる領土拡大を狙う。
「そう、わたくしこそが、黄金の女帝なのですわ!『魔王ガチデビル』も召喚魔王も何するものぞ!」
すべてを飲み込む黄金の嵐は、凄まじい激流となってデビルキングワールドを席巻していくのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
この世界には馴染んだ方だったが。この人も祖父気分あり。
えーと、徳政令反対…独特ですねー(戦国時代出身者の総括した意見)
陰海月が目立ってくれてますので、その隙に潜入しましてー。
影から霹靂呼び出して、捉えられた方々を救出。
それでー、相手には漆黒風投擲してお灸をすえていきますねー。
※
陰海月、光りながら目立って『疾き者』の補助。ぼくが目立てば、友だちとおじーちゃんは動きやすい!ぷきゅ!
霹靂、『疾き者』手伝って救助作業。友だちは元気に光ってる。クエ。
二匹は友だち!
『魔界議事堂』を巡る戦いは未だ決着が付いていない。
このデビルキングワールドにおいて、可否の決定は多数決。
即ち、議事堂に議員たちが到達できなければ無効票となり、その場にいる悪魔議員たちだけの票でもって議決がなされてしまう。
「この世界には馴染んだ方だったのですがー」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』はどうにも、このデビルキングワールドの世俗というか、ノリというか、そういうものにまた困惑の色を強めてしまう。
幾度か訪れた世界。
悪徳こそが美徳。
善悪の逆転した世界。
言葉にしてみれば、これほど端的なものもあるまい。けれど、見るのと聞くのととでは違うように、今まさに『魔界議事堂』を占拠している『D多重債務者』たちと相対すれば、己の価値基準がよくわからなくなってしまうのである。
「徳政令発布は悪法なり!」
「我等の方にこそ大義あり!
「ん? 悪法の方がよいのでは? いやいや、違う違う!」
『D多重債務者』たちは、その名の通り、あらゆる金融機関からDを借りまくって踏み倒している者たちだ。
まあ、有り体に言えばクズ。
どこか希望という名の船に乗せられて、なんかこう、悪魔的ゲームに興じなければならないとかそんな感じのことになりそうな雰囲気。
しかしながら、此処デビルキングワールドでは違う。
彼らの名は栄誉在る称号なのだ。
借金の踏み倒しというワル。
それを多重に重ねているという偉業!
「えーと、徳政令反対……独特ですねー」
当たり障りのない言葉である。いやまあ、そう言うしかないのであるが。しかし、囚われている悪魔議員たちを開放しなければならないのであればこそ、『疾き者』は、それは虹のように(ゲーミングカゲクラゲ)、ゲーミングカラーに輝く『陰海月』を囮にして『魔界議事堂』へと潜入する。
『D多重債務者』たちが失策したのであるとすれば、敵対議員たちをぶっ飛ばすのではなく、監禁したことである。
彼らがもし、あちこちでぶっ飛ばされ、『魔界議事堂』より遠くに飛ばされていたのであれば、猟兵たちも為す術はなかっただろう。
けれど、彼らは敵対議員たちを態々『魔界議事堂』に監禁して占拠したのだ。
「それが抜けているというのであればそうなのでしょうがー」
『陰海月』がものすごく目立つゆらゆらダンスを披露している間に『霹靂』と共に『疾き者』は潜入し、捕らえられた敵対議員たちを開放していくのだ。
「ぷっきゅ!」
『陰海月』はゆらゆらとダンスを披露し続ける。
彼のダンスを楽しんでいないものは、全て行動速度が5分の1にされてしまう。ゆえに、時間稼ぎにもってこいなのだ。
それに彼が目立てば目立つほどに『霹靂』と『疾き者』が動きやすく成る。
「クエッ!」
『霹靂』が一度鳴けば、それが合図となって『陰海月』に伝わるであろう。二人は友達であるがゆえに、タイミングはバッチリなのだ。
「それではー少々お灸を据えていきましょうかー」
『疾き者』は開放した悪魔議員たちと共に『D多重債務者』たちへと襲いかかる。
不意打ちとは卑怯なりとは言うまい。
何故ならば、ここはデビルキングワールド。不意打ちこそが大正義なのである。
「なんで奴らが開放されている!?」
「警備は万全だったはずだ! 誰か怠けていたのか、いや、褒めることろではあるが!」
「……思った以上にグダグダですねー」
『疾き者』は半分呆れながら開放した悪魔議員たちと『D多重債務者』たちが取っ組み合いの騒動へと発展していく光景を見やる。
『魔界議事堂』が開廷されるまでまだ時間はある。
それまでに『D多重債務者』たちの多くをぶっ飛ばし、徳政令を発布することに賛成の議員たちを保護すれば、猟兵たちの勝利だ。
「召喚魔王のデビルキング到達を妨げるためとはいえー……」
これはちょっとな、と思わないでもない。
かたや借金の踏み倒し。かたや借金の帳消し。
どっちにしたって、言い分はあるだろう。けれど、『疾き者』はどちらに転んでもろくでもないことになることを知るからこそ、呆れながらも棒手裏剣で持って『D多重債務者』たちをぶちのめすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
「…えっと、意味が分かりません。」
なあに相棒、話は簡単だぜ。ろくでなし共をしばき倒すッ!以上ッ!
考えても疲れるだけだから、さっさと倒して帰るとしようぜ。
式神【ヤタ】に偵察させて囚われた議員を見つけ次第解放していくぜ。
D多重債務者に出会ったら
「…破邪・鬼心斬り。」
鬼心斬りで借金を手放さないという歪んだ心を斬り捨てていくぜ。
心を入れ替えさせりゃ徳政令発布反対の為の演説や説得をする気もなくなり、敵のユーベルコードを封じ込められるって寸法よ。
…デビルキングワールドにおいてそれは大分尊厳破壊じゃないかって?
クズ共のロクでもない尊厳なんて破壊しても良心は痛まねえよ。
【技能・式神使い、偵察】
【アドリブ歓迎】
「徳政令反対ー! 断固反対ー!」
「我々の称号を剥奪する法案などあってはならないー!」
「『D多重債務者』としての誇りを持って我々は戦うー!」
『D多重債務者』たちは喧々囂々とまくし立て、『魔界議事堂』に立てこもっている。すでに猟兵たちが彼らの多くをぶっ飛ばしてはいるが、まだまだ数は多い。
なにせ、このデビルキングワールドにおいてD、つまりお金を踏み倒すことは善行の一つであるし、同時にワルな行為であった。
ワルこそがカッコイイこと。クールなこと。
それが善悪の逆転した世界における不文律。そうすることで絶滅を回避したのだから、まあ仕方のないことであったのかも知れない。
けれど、他世界からやってきた猟兵たちにとっては理解に苦しむものであったことだろう。
「……えっと、意味がわかりません」
ヒーローマスク、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と共に戦う巫女こと桜は首を傾げていた。
その気持はわかる。
とてもよくわかる。
けれど、このデビルキングワールドにおいては、これが普通のことなのだ。借金は踏み倒すもの。家賃もまた然り。
踏み倒してなんぼである。
そんでもって債務を多重に抱えているワルこそ最高にカッコイイことなのである。
他世界でやったら、クズ・オブ・クズになってしまうが、ここデビルキングワールドでは違うのだ!
彼らの主張を1ミリたりとて理解できない桜に凶津は笑っていうのだ。
『なあに相棒、話は簡単だぜ。ろくでなし共をしばき倒すッ! 以上ッ!』
思った以上に簡潔であった。
というか、これ以上真剣に『D多重債務者』たちのことを考えても疲れるだけである。理解しきれないのならば、仕方のないことである。
そんでもって、彼らをぶっ飛ばして占拠している『魔界議事堂』を開放することが『魔王ガチデビル』によって召喚された魔王がデビルキングに到達することを防ぐことができるというのならば、最早何の遠慮もいらんのである。
『さっさと倒して帰るとしようぜ』
凶津の言葉に頷いた桜が式神『ヤタ』を飛ばし、『魔界議事堂』の内部の様子を偵察する。
中には未だ『D多重債務者』たちと敵対していた議員たちが囚われている。
彼らを開放することが、この戦いを制することへの近道でも在るのだ。『ヤタ』の案内にしたがって、凶津と桜は『魔界議事堂』の通路を走る。
「むむっ! なんだ貴様ら! まさか徳政令派の仲間か!」
「……破邪・鬼心斬り(ハジャ・キシンギリ)」
桜の手にした刀が霊力を込めた妖刀の一撃をユーベルコードの輝きと共に放つ。その斬撃は、『D多重債務者』の邪心を一閃する。
肉体を傷つけることの無い斬撃は、『D多重債務者』の心にある借金を手放さないという歪んだ心を切り捨てるのだ。
いや、まあ、このデビルキングワールドにおいては、これこそモラルというものであるのだが、関係ない。
そんなことより彼らをぶっ飛ばすことこそ大事なのである。
『心を入れ替えさせりゃ徳政令発布反対のための演説や説得する気もなくなり、敵のユーベルコードも封じられるって寸法よ』
呵呵として笑う凶津。
普段ならば桜がうるさいと一喝するところであるが、今回はそうではなかった。そうなのかな? 本当に? と桜は思わないでもない。
確かに邪心を切り裂く斬撃は彼女の霊力なしで為し得ぬ技である。
しかしながら、このデビルキングワールドにおいては、その邪心こそが正しいものであるという。
ならば、今切った『D多重債務者』の邪心は……。
「……もしかしてそれは尊厳破壊じゃないでしょうか……?」
『あ……』
確かにそうである。
現に目の前の『D多重債務者』は放心状態である。『D多重債務者』という称号だけが彼らの心の支えであったのだ。
それをぶった切ってしまえばどうなるか。
性根が善良であるがゆえに、これまで培ってきた借金という名の誇りがなくなってしまったのだ。
「……どうします?」
放心して抜け殻状態の『D多重債務者』……いやさ、悪魔。
そんな彼らを桜は放ってはおけない。けれど、凶津は違うのだ。
『なあに、クズどものロクでもない尊厳なんて破壊しても良心は痛まねえよ。それにな、まっとうになって、そんでもったまたワルの道をどうせ邁進するんだ。たまには躓くことも必要だろうさ』
そんなふうに凶津は笑い、桜と共に再び『魔界議事堂』の中を走る。
捕らえられている悪魔議員たちを開放し、さらに戦いを有利に進めていく。『魔界議事堂』の開放まで戦い続ける。
それこそが凶津と桜の……猟兵の戦いだからだ! とまあ、こんな具合にきれいに纏めてみたが、桜は放心状態の悪魔たちを見やり、本当にいいのかな、と思うのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
わぁ…多重債務者さんって実在するんですね!
返済期限を超えても返さなかった時の罪悪感をどう乗り越えたのか
是非ともお伺いしたいところですがまた今度ですね!
まずは囚われた議員さんを『斬撃波』と『衝撃波』で開放して
『念動力』で議事堂の外へ避難させましょう!
避難完了後に私も外に出てUC【姦悪!穢憎憐恋火】で議事堂ごと
多重債務者さんを燃やし
さらに『怪力』で議事堂の出入り口を封鎖し逃げられないようにします!
借金の罪悪感に耐えられる皆さんだと
焼かれたぐらいじゃ何ともないかもしれません!
出てきたところをパンチです!
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
ばーん!
ダーティの前口上が『魔界議事堂』に鳴り響く。
その注目度たるやすさまじいものであった。この『魔界議事堂』では今、『D多重債務者』たちと猟兵、そして開放された徳政令発布賛成派の悪魔議員たちでごった返す戦場となっていたからだ。
視線誘導の悪魔であるダーティにとっては、注目を集めることこそ肝要。
彼女に向けられる視線にうんうんと頷いてダーティは『D多重債務者』たちと向かう。
「わぁ……多重債務者さんって実在するんですね!」
そう、デビルキングワールドにおいて多重債務者というのは在る種の誉れ。言ってしまえば、サーとかそんな感じの称号であるのだ。
誰にも出来ることじゃないよ。
そういうことである。
そんな感じでダーティもまた悪魔であるから、多重債務者に対する憧れはあったのだ。
「そのとおり! 我等こそが『D多重債務者』よ!」
「見給え、この督促状の数々を!」
「見事なものだろう! これは百年ものだよ!」
そんなダーティのあこがれの視線に敏感な『D多重債務者』たちはテレテレしている。完全に褒められていい気分に成っているおじさんたちである。
正直な所、返済期限を超えても返さなかった時の罪悪感とかそういうのってマジでどうしているのだろうか。
ダーティはそこんところも詳しく聞いてみたいと思ったが、残念なことに今は戦いの真っ最中である。
のんびりとお茶をしながらお話を伺わせてくださいっていう状況ではないのだ。
「というわけで、早速ですが!」
「えええー!?」
ダーティの放つ斬撃波と衝撃波が開放され、念動力と共に『魔界議事堂』に捕らえられていた悪魔議員たちを開放させる。
というか、それはぶっぱである。ダーティの開放した衝撃は凄まじく、次々と盗られられていた悪魔議員たちがぶっ飛ばされていくのだ。
しかも念動力によって議事堂の外にエスコート付き。
「憎しみの膿を垂れる穢れた恋の臓よ!今ひとたびの鼓動を鳴らし憐憫なる炎を揺らめかせ!」
さらに輝くユーベルコードの向こうに陽炎が立ち上り、そこにダーティの姿を映し出す赤紫の炎が放たれる。
これぞ、姦悪!穢憎憐恋火(アイゾウレンレンカ)である。
それは議事堂ごと『D多重債務者』を燃やす炎であった。
「アチチチッ!?」
「炎!? 鎮火だ消火だ! 急げ急げ!」
だが、そんな彼らを襲うのはダーティの非情である。彼女は当たり前のように議事堂の出入り口を封鎖し、『D多重債務者』を蒸し焼きにしようとしているのだ。
なんたるワル!
しかし、『D多重債務者』たちも百戦錬磨の悪魔たちである。
当然のように封鎖した扉をぶち破ってダーティに襲いかかるのだ!
「借金の罪悪感に耐えられるみなさんだと、焼かれたぐらいじゃなんとも無いのですね! 素晴らしいですわ!」
だが、炎から逃れてきた『D多重債務者』たちを襲うのはダーティの怪力パンチである。
その一撃は見事に『D多重債務者』をぶっ飛ばし、さらなる阿鼻叫喚の地獄絵図へと変えていくのだ。
「もっと! もっと! 皆さんの借金根性を見せてください!」
ダーティのやっていることは、穴が一つしかないもぐら叩きであった。
そう、炎に包まれる議事堂の出入り口から飛び出す『D多重債務者』たちをぶっ叩くだけの簡単なお仕事。
やっていることが極悪すぎて開放された悪魔議員たちは恐れおののくだろう。マジでワルすぎる。
自分で凶悪極悪劣悪魔王と名乗るだけはある―――!
大成功
🔵🔵🔵
ソニア・シルヴァーヌ
重ねた借金の額がワルの証…なるほど、そういう発想もありましたね。
ですが、これもガチデビルの野望を阻止する為です。そのワル、挫かせて頂きます。
…というか、積み上げたモノを台無しにするっていうのも、相当なワルですしね♪
というわけで議員さん達を救出して回ります。
債務者さん達は触手の【なぎ払い】でしばいたり波動砲の【砲撃】で吹っ飛ばしたりして排除していきましょう。
数が多い場合は亡びの神曲を発動、【弾幕】の技能を付与した天使さん達を呼び寄せます。
彼らの弾幕で敵を掃討、或いは回避を制限していき、身動き取れなくなったところを波動砲で【スナイパー】してしまいましょう。
では、また1から頑張ってくださいな♪
借金とは返さなければならないものである。
借りたものは返す。
当たり前のことである。けれど、善悪の逆転した世界であればどうであろうか? そう、デビルキングワールドにおいてはマンションなどの賃貸物件の家賃を踏み倒すことさえも善行として捉えられる。
ゆえに、『D多重債務者』たちは、その名の通りクズであるがゆえに最高の栄誉を与えられた者達なのだ!
本当にそうなのか?
疑問に思う猟兵達はまともである。郷に入りては郷に従えという言葉がある。デビルキングワールドがそうであるというのならば、それもまた道理。
ゆえに『D多重債務者』たちの言葉は『魔界議事堂』に響き渡るのだ。
「徳政令など悪法あっていいはずがなーい!」
「我等の称号を妬んだものたちの策略だー!」
「こんな横暴許されなーい!」
めちゃくちゃ言ってるなぁって思わないでもなかったが、ソニア・シルヴァーヌ(玻璃の白百合ラスボス仕立て・f31357)は、なるほどと関心していた。
「重ねた借金の額がワルの証……なるほど、そういう発想もありましたね」
彼女はデビルキングワールドに存在していた者である。隠遁していたとはいえ、彼女もまたデビルキングワールドの住人だ。『D多重債務者』たちの言うこともまあ、わからんでもないのだ。
しかしながら、今回だけは違う。
彼らの行いが『魔王ガチデビル』や召喚魔王のデビルキング到達を助けるものであるというのならば、これを防がねばならない。
「そのワル、挫かせて頂きます」
ふわりと微笑む姿は天使そのもの。
けれど、それは上半身だけの話である。なにせ彼女、ラスボスである。優美にして精緻なるのは上半身だけ。
下半身は不定形の怪物そのものである。
その体躯は恐ろしさを醸し出すものであったが、『D多重債務者』たちにとっては関係なかった。
「なにおー! 我等の積み重ねを潰えさせてたまるものかー!」
「コツコツ毎日Dを借りまくってきた日々! 無きものにさせない!」
「……というか、積み上げたモノを台無しにするっていうのも、相当なワルですしね♪」
ソニアの笑みがぞわりとしたものを彼らに感じさせるものであったことだろう。
瞬間、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
下半身の肉塊から天使が召喚される。その数9体。されど、彼らは弾幕の天使である。放たれる魔力の弾丸は雨のように『魔界議事堂』に降り注ぐ。
『D多重債務者』たちは、これはたまらないと躱そうとするが、それを許さないのがソニアである。
亡びの神曲(インカネーション・オブ・デビル)の合間に放たれる砲撃は『D多重債務者』をぶっ飛ばし、その体を盛大に打ち上げる。
そこに天使たちの放つ弾幕が打ち込まれれば、それはもう盛大な花火となろう。
「畏怖する心を知らぬ方々に、裁きを」
いやもうだいぶ恐れ入っていると思うのであるが、ソニアは容赦しない。
弾幕は張れば張っただけ善いものとされる。
何処かのスペースシップワールドとかそこらへんの宇宙船を指揮する艦長だって言ってる。
弾幕薄いのはダメなことなのである。
ゆえにソニアの砲撃と天使たちの弾幕はとても分厚い。
尋常ならざる弾幕でもって『D多重債務者』たちは泣き叫びながら逃げ惑う。
「ひえっ! おたすけー!」
ダメである。
そんなこと言っても止まらない。こんな所で止まるのはワルではないのである。ゆえにソニアはたおやかな笑みを浮かべながら破壊エネルギーを放出して、弾幕に身動きが取れなくなっている『D多重債務者』を打ちのめすのだ。
舞う『D多重債務者』の体。
阿鼻叫喚。
どれだけ泣いても、すがっても、誤っても許してくれない。
これまで積み上げたものを全て粉々にするかのようなソニアの純粋な破壊エネルギーの奔流。
「逃がしません……貴方だけは………なんちゃって」
たまにでるおちゃめー!
けれど、彼女のそういうお茶目っていうか、茶目っ気は完全に敵対する者達には逆効果である。
開放された悪魔議員たちは、彼女が味方でよかったと後方で縮み上がるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
ドウジ・ユークレナ
D多重債務者・・・
なあ。正直な話でありますが…。これってワルじゃなくてただのクズなだけではないのでありましょうか?
しかも徳政令一つで消える称号…ダセェ。
ワルい称号っていうより………うん…クズい称号でありますな。
はッ!!閃いたであります。
徳政令が発令して債務権が消滅した後に返済したら…義務のない行為を行う徳政令違反で『D多重返済者』という前代未聞のワルを行えるでありますよ(注:意味不明)
蜘蛛糸を射出して『捕縛』
動きを封じている隙に、エイリアス・ヤウシケプの分身と一緒に議員を救助であります。
今のうちに徳政令を可決するのであります。
「『D多重債務者』……」
ドウジ・ユークレナ(風渡り人・f36443)はなんとなーく察していた。
『D多重債務者』は多くの金融機関からD(デビル)即ち、お金を借りまくって踏み倒している悪魔たちである。
まあ、それはわかる。
生きるのにお金はいつだって必要だし、あればあっただけ良いものであるし、困ることはそんなにないのだ。
わかっている。
お金大事。とても。
けれど、思うのである。
「なあ。正直な話でありますが……これってワルじゃなくてただのクズなだけではないのでありましょうか?」
おっ、そうだな。そうだよ。
ドウジはやっぱりなーと思ったのと同時に、ダセェ! と思ったのである。徳政令発布で消える称号。
それを守らんとしているのが『D多重債務者』たちである。
「ワルい称号っていうより……うん……クズい称号でありますな」
「なにおー! 日々の積み重ねが大事なんだぞ、多重債務は!」
「そのとおりだ! 借金取りから逃げて逃げて逃げまくって、それでもDを借りまくるのがどれだけ大変か!」
「君にはわからんのですよ!」
とまあ、そんな具合にドウジに叫ぶ『D多重債務者』たち。
その元気は一体どこから来るのだろうか。これまで多くの猟兵達によってシバかれまくっている彼ら。
けれど、追い込まれてますます血気盛んになるというのであろうか、『魔界議事堂』を占拠したまま明け渡そうとは決してしないのである。
「はッ!! ひらめいたであります」
ドウジは気がついたのだ。
徳政令が発布されて債務権が消滅した後に返済されたのならば、義務のない行為を行う徳政令違反で『D多重返済者』という前代未聞のワルを行えるのではないかと。
どういうこと?
「つまりは、『D多重債務者』という称号の代わりに、さらなるワルな行い――『多重返済者』としての称号を与えればいいのでありますよ!」
うーん、よくわからん!
けれど、言わんとしていることはわかる。兎にも角にも違反していればいいのだ。それがワルであるのだから。
ならば、これまで返済をすることは善いことであり、イコールダサいことである。けれど、今度は違う。徳政令が発布されているから、Dを返済する義務がないのに返済してしまうという違反を犯した者となれるのだ。
ちょっと面倒くさいことになっている。
多重債務と多重返済。
字面が似ているから余計に混乱してしまうのだろう。『D多重債務者』たちは首を傾げている。
「え、つまりどういう……?」
「返済する必要がないのに返済して無理やり押し付けるってことか……?」
「んんん?」
考えれば考えるほどにとツボにはまっていく『D多重債務者』たち。
そんな彼らは隙だらけであった。
瞬時にドウジが放つは蜘蛛糸。
「というわけでソォイ! であります!!」
ドウジの放った蜘蛛糸は『D多重債務者』たちを捉え、動きを封じる。その隙にドウジはユーベルコード、エイリアス・ヤウシケプでもって分身を召喚士、一気に囚われている悪魔議員たちを救助に走るのだ。
戦うよりもこちらのほうが得意かもしれない。
何かを奪還するのも怪盗の役目である。多分。
「さあ、悪魔議員の皆さん、今のうちに徳政令を可決するであります」
救出した悪魔議員たちは徐々に増えている。この分であれば、反対勢力を抑え込めるかもしれない。
ドウジはしかし、と思うのだ。
「やっぱり『D多重債務者』はクズい称号であるのであります。やっぱり『D多重返済者』の方がよいのでありますよ――」
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
悪魔達は生きていくのにどの程度お金が必要なんだろう
なんかそんなに必要なさそうな気がするんだよね、この世界
本気で困ってたら助けてくれそうだし
そういや貸してる人は何か悪事をしてるのかな
極悪金利とか?
そうだとしたらWIN-WINになりそうのが頭痛い話だね
常識自体が違うから物理的に排除する方向で考えよう
分霊が首を突っ込みたがる相手でもないし
使い魔を呼び出して人海戦術で対処するよ
まかされたのですよー
希少金属の盾を持って多重債務者を押し留める隊と
囚われた議員を解放する隊に分けよう
僕はワイヤーガンを駆使して攪乱しつつ
ガトリングガンで範囲攻撃していこう
これ程度じゃ死ななそうだし
良心の呵責なく撃てるのは救いかな
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は思う。
そもそもだ。生きるためにお金が必要なのは、道理である。お金は大体のものと交換できる便利なものだ。
それに価値を齎すものであり、決定づける数字でもある。
「悪魔たちは生きていくのにどの程度お金が必要なんだろう」
尤もな疑問である。
悪魔とは他世界を見ても類を見ないほどに強者の種族である。そんな彼らにとってお金、即ち『D(デビル)』が必要であるとは思えないのである。
というか、性根が善良である種族、悪魔たちは、もし本当に困っていたのならば助けてくれるだろう。
だからこそ、よくわからないのだ。
「あの人達にお金を貸している人は何か悪事をしているのかな?」
あの人達とは、『魔界議事堂』に立てこもっている『D多重債務者』たちである。彼らが徳政令を発布しようとしている悪魔議員たちを待ち伏せして、議事堂に閉じ込めているのだ。
基本、魔界の法律を決めるのは多数決である。
だから、敵対議員たちが議事堂で行われる議会に参加できなければ、圧倒的多数決で勝利することができるのだ。
「悪魔的金利で貸してくれるから、債務金額はうなぎのぼりだ!」
「グレーゾーンだからね!」
「毎日どころか、毎時間、毎分、毎秒ごとに金利がかさむのだ! やったぜ!」
『D多重債務者』たちの声が聞こえる。
いや、なにもやった! ってならない。むしろ、どうしてその金利で借りようと思ったのか。
マジで疑問しかない。
晶はこれが悪魔って種族かーと改めて思うのだ。彼らにとって、極悪金利でお金を貸し借りするのはWin-Winなことであるのだ。
マジで頭痛くなる話である。
「そもそも常識自体が違うんだからそれもそうか……仕方ない。みんな、よろしく頼むよ」
『まかされましたのー!』
晶のユーベルコードが輝く。
次の瞬間、百を超える使い魔たちが一斉に飛び出す。式神白金竜複製模造群体(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ・レギオン)である使い魔達は、希少金属の盾を持ち出して『D多重債務者』たちの突撃を押し止める。
その隙に別働隊の使い魔たちが議事堂に捕らえられている悪魔議員たちを開放するという手はずになっていた。
「とはいえ、悪魔ってみんな頑丈なんだよね……」
晶はというとワイヤーガンを駆使しつつ、議事堂内に突撃して撹乱するのだ。晶が動き回れば動き回るほどに議事堂に捕らえられた悪魔議員たちを開放する手助けになるであろう。
次々とワイヤーガンを天井や壁面に打ち込み、立体的に飛び回りながら手にした携行式ガトリングガンの銃口を『D多重債務者』へと向ける。
放たれる弾丸は広範囲にばらまかれ、次々と彼らを打ち据えるのだ。
「いったー!?」
「節分の時期の鬼のアルバイトのときより痛い!?」
「福はー外! 鬼はー内! のあれ!?」
晶は『D多重債務者』たちがアルバイトしていたことにも驚いたが、それ以上に彼らの頑強さに目を剥く。
わかっていたことであるが、ここまで頑丈なのか。
「本当にこれ程度じゃ死なないんだね」
ちょっと彼らに弾丸を撃ち込むのに気が引けていたのだ。けれど、豆を投げつけられるアルバイトをしていたのならば遠慮はいらない。
これで良心の呵責はなくなった。
むしろ、それが救いであったのだ。
「じゃあ、遠慮なくやるよ!」
晶は浅間通りガトリングガンをぶっ放す。その勢いは凄まじく、膨大な数の弾丸でもって『D多重債務者』たちを追い詰めていく。
悪魔たちは遠慮なくガトリングガンをぶっ放す晶に戦々恐々としながら、その容赦のないワルさにしびれ上がるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
なんとも戦い辛い相手でありますが…
これもオブリビオンの野望を壊す戦い。
手に持つハルバードへ【念動力】で重量軽減。
精一杯、悪をがんばりましょうとも!
「確かに借金は悪!しかし!!」
【怪力】で思い切りハルバードを振るい斧の腹で【なぎ払い】
「圧政を阻止せんと抗うその姿勢は善の行いであります!!!」
振るう武器に『森羅牙道砲』の衝撃波も乗せて吹き飛ばし。
約1㎞分の飛翔を味わうと良いであります!
「圧政者は自分達だ!抗い方はとかくやってる事は善なる行為!!!それを叩き潰さんとする自分達!」
「つまり、巨悪は自分達です!!!!」
ハルバードを振り回しながらに宣言。
容赦なくかっ飛ばします。圧政をくらえー!!!??
『魔界議事堂』を占拠し立てこもる『D多重債務者』たち。
彼らはワルこそがクールの世界、デビルキングワールドにおいて類まれなる借金踏み倒し技術によって多くの負債を抱える者たちである。
聞いただけでろくでもないなってなるのは早計であろう。
何故ならば、悪徳こそが美徳の世界であるからだ。
善悪が逆転しているのならば、彼らの行いは素晴らしきことである。
「そう! 我等の方にこそ大義があるのだ! 徳政令など発布させるわけにはいかんのだよ!」
「我等は全ての借金踏み倒し者たちの代弁者!」
「借金踏み倒して幾星霜! この積み重ねを無きものにしてたまるものか!」
彼らの言葉はあまりにも身勝手そのものであった。
けれど、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は理解していた。彼らの叫びは、彼らの中にある善悪に殉じるものであると。
そのために彼らは戦っているのだ。
ならばこそ、小枝子はとても戦いづらいと感じていたことだろう。
「これもオブリビオンの野望を壊す戦い」
手にしたハルバードへ彼女の念動力がまとわれる。重さを軽減する力。この戦いの意義を問うのだとすれば、それは『魔王ガチデビル』がデビルキングになることを阻止するためである。
悪魔たちが他世界に輸出されたとあれば、最強の種族である悪魔たちは瞬く間に世界に危機を引き起こすだろう。
それほどに彼らは危険な存在なのだ。
「確かに借金は悪! しかし!!」
そう、小枝子はもう決めたのだ。
精一杯、悪をがんばるのだと。若干ずれている気がしないでもない。けれど、デビルキングワールドではそれが正解なのだ。
「ワルを語るとは笑止! 我等の負債額を見ておったまげるがいい!」
「喰らえ、これが我等の明細書!」
とまあ、なんていうか小枝子の決意とは裏腹に『D多重債務者』たちの戦い方はなんとも締まらないものであった。
だが、そんなことは関係ねーとばかりに小枝子の振るったハルバードの斧部分の腹が『D多重債務者』たちの体を吹き飛ばす。
「ぐわー!?」
「圧政を阻止せんと抗うその姿勢は善の行いであります!!!」
歴史は常に繰り返す。
圧政はとは即ち悪。
そしてその圧政に抗うのは善であるといえるであろう。小枝子の瞳がユーベルコードに輝き、その力を発露する。
ハルバードより発せられる見えない衝撃波が『D多重債務者』たちをぶっ飛ばしながら、一直線に彼らを空の彼方にキラリと星に変えるのだ。
『D多重債務者』たちは、その光景に目を剥く。
とんでもない敵が目の間に現れてしまったと。しかし、彼らは退かない。退けない理由の方が多いのだ。
ならばこそ、小枝子は声を大にして言うのだ。
「圧制者は自分たちだ! 抗い方はとかくやってる事は善なる行為!!! それを叩き潰さんとする自分たち!」
息を吸い込む。
その声は裂帛の気合のように『魔界議事堂』に響き渡る。
そう、此処は善悪の逆転した世界。
ならば、善とは善きことではない。クソダセーことであるのだ。悪魔たちがワルをするのはクールでカッコイイからだ。
その根底を覆す一声。
「つまり、巨悪は自分たちです!!!!」
『D多重債務者』たちに電流奔る。
小枝子の言っていることは、詭弁であったことだろう。だって『D多重債務者』たちもまた借金踏み倒しというワルを行っている。
けれど、彼らの立場という盤面を小枝子は言葉でもってひっくり返したのだ。
そう、善悪に分かたれるというのならば、それをひっくり返すのはいつだって簡単なことであるのだ。
「え、えええー!?」
「そんな、まさか! 我々が善……!?」
どよめきが『D多重債務者』たちの中に広がっていく。動揺が彼らに走った瞬間を小枝子は見逃さなかった。
一気に距離を詰める。
「圧政をくらえー!!!??」
ハルバードを振り回しながら小枝子は、まさに狂乱の兵となって『D多重債務者』たちを容赦無くかっ飛ばす。
フルスイングである。
時代が時代であれば、世界が世界であれば、小枝子は世界有数の打者となったことだろう。それを予感させるほどのフルスイング。
悪魔のみんなー野球やろうぜ!
ボールは君だ!
そんなノリである。小枝子の振り抜いたハルバードが風を切る轟音を立て、『D多重債務者』たちは空の彼方に星となって煌めくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
UDCアースの『テンプル騎士団』をご存知でしょうか
現在でいう国際銀行の役割も果たしていたと言われております
そんな騎士団終焉の原因は諸国の王や商人による借金の踏み倒し…
つまり騎士にとって、多重債務者も徳政令も等しく良からぬモノなのです
(誰ともなく呟くウォーマシン
この世界に安寧齎すという大義名…いえ、目的の為に“主に”多重債務者を攻撃しましょう
ミサイル、バズーカ、ガトリング
装着した重火器の一斉掃射
阿鼻叫喚? 私のセンサーは爆音しか拾えませんね(大嘘
徳政令派を捕える牢も攻撃し解放
仮にも悪魔議員、余波程度なら無事に法案を成立させるでしょう
…修理費用に頭悩ませる身にとって、金銭問題はデリケートなのです!
人の営みにとって金とは切っても切り離せぬものである。
ともすれば、文明というのは金というものの屋台骨在りきであったのかもしれない。それをトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は余談ですが、と続ける。
「UDCアースの『テンプル騎士団』をご存知でしょうか。現在で言う国際銀行の役割もはたしていたと言われております」
とつとつと語りだすトリテレイアに『D多重債務者』も、ついでに囚われの悪魔議員たちも神妙になって耳を傾ける。
いや、なんで?
そう思われるかもしれないが、基本的に悪魔というのは善良なる種族である。デビルキング法によってワルこそカッコイイこと! と刷り込まれているものの、性根が善良であるがゆえに彼らはトリテレイアの演説が始まった瞬間、かしこまって聞いてしまうのだ。
「そんな騎士団終焉の原因は諸国の王や商人による借金の踏み倒し……つまり騎士にとって、多重債務者も徳政令も等しく良からぬものなのです」
憂いを帯びたアイセンサーが揺らめいている。
騎士を標榜し、一つの騎士団の起こりと終焉を語るトリテレイアは確かに憂いを帯びているように悪魔たちには思えたことだろう。
誰ともなく呟く様がまさにそれを物語ってリウ用でも在った。
「……えっと、その……」
「なんといっていいか……」
『D多重債務者』も悪魔議員たちも、間違っても王や商人かっけー! とは言えなかった。悪徳こそが美徳。ワルこそかっこいー! それが悪魔たちの価値基準であったけれど。
なんとなく、今トリテレイアを前にしてそれを言ってしまったのならば、どうなるのかはわかる。それくらい空気を察することが彼らにも出来るのだ。
「ええ、ですからこの世界に安寧齎すという大義名……」
あ、今大義名分って言おうとした?
悪魔たちはちょっとピクっとした。もしかして、色々語ってはくれたものの、こちらを攻撃する理由を探している?
そんな分に気を察した『D多重債務者』たちは一斉にトリテレイアに言うのだ。
「ならば、我々の方にこそ大義がある! 奴らは借金をなくそうとしているのだ!」
「そうそう! 借金がなくなれば泣く悪魔もいるんですよ!」
「だから――」
「ええ、ですから」
トリテレイアのアイセンサーがユーベルコードに輝く。
強襲・殲滅戦用武装強化ユニット(エクステンションパーツ・コンボウェポンユニット)が展開される。
大型ミサイルポッド、ガトリング、レーザー砲。
まるでハリネズミだなーって悪魔たちは思ったことだろう。それってもしかしてー、火器ってやつです? となる『D多重債務者』たち。
なんかー確実にー僕らの方に銃口向けられてるのは気の所為ですかーって彼らは目で訴える。
けれど、トリテレイアは構うことはなかった。
すでにトリガーは引かれている。ミサイルが火線を引いて飛び出し、ガトリングのバレルは赤熱する。バズーカからは噴射煙がたなびき、レーザーは戦場を一掃する。
有り体に言えば阿鼻叫喚地獄である。
「私のセンサーは爆音しか拾えませんね」
大嘘である。
ウォーマシンであるトリテレイアのセンサーは戦場に泣く赤子の声すら拾う高性能。『D多重債務者』たちの、うわーやられたー! とか、ひどいー! とか、そういうの叫びをしっかり拾っているのだ。
けれど、トリテレイアは徳政令を発布する側の悪魔議員たちが捕らえられている議事堂の壁すらもぶち壊しながら、彼らを開放する。
「仮にも彼らも悪魔議員、余波程度なら無事でありましょう」
悪魔という種族の頑強さを頼みした横暴極まるトリテレイアの極悪火器。
その斉射は尽くを破壊せしめ、『魔界議事堂』を今期最大の混乱に叩き落とすのだ。徳政令発布も、それを妨害しようとしている『D多重債務者』たちも巻き込んだトリテレイアの火力。
それは後から修理費用やら補充費用やらに頭を悩ませる結果となってトリテレイアに返ってくるのである。
「それは毎度のことですから」
トリテレイアは毎回頭を悩ませている。
そう、彼にとって金銭問題はデリケートでありながら、最大の悩み事でもあるのだ。
ならばこそ、此処デビルキングワールドであっても変わりなく。
そして、彼もまたこの世界に安寧という名のカオスを体現するように『魔界議事堂』を硝煙の匂いに包み込むのであった――。
大成功
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