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銀河帝国攻略戦⑯~天国への階段

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #一人称リレー形式 #フォー・シンボルズ号

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●スペースシップワールドにて
 帝国旗艦インペリウムへと向かう解放軍の艦隊のうちの一隻――高速戦艦『フォー・シンボルズ号』。
 艦長を始め、すべての乗組員が闘志を燃やし、死をも恐れぬ覚悟で戦いに臨んでいた。
 艦内のそこかしこから奇妙な音楽が流れ出すまでは。
 いや、それを『音楽』などと言っては世の音楽家たちが黙っていないだろう。ガラスをひっかく音と猫の唸り声でテルミンの調べを強引に再現したかのような不愉快極まりないノイズ。
「死にたくなってきた……」
 耳を塞ぎもせずに(そんな気力は一瞬にして奪われていた)ノイズを聴いていた艦長がぽつりと呟いた。自らの死を望んでいるらしいが、目は既に死者のそれだ。
 他のブリッジ要員も生ける死者と化していた。ある者はコンソールに突っ伏し、ある者は天井のスクリーンを無表情に眺め、ある者は前方をただじっと見つめている。
「俺も……もう生きていたくない……」
「なにもかもイヤになったわ」
「どだい無理だったのよ。あたしたちごときが帝国に挑むなんて……」
「どうでもいい……どうでもいいよ……なにがあろうと知ったこっちゃない」
 こうして、高速戦艦『フォー・シンボルズ号』は無力化され、死者も同然の乗組員を乗せて宇宙をさまようゴーストシップとなった。

●グリモアベースにて
「スペースシップワールドの非常用レーションってのも意外と美味いな。味も素っ気もないもんだと思ってたけどよ」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前でブロック型の携帯食品(サラミ味)を齧っていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトだ。
 サラミ味を食べ終えたJJは新たにチーズ味のパッケージを取り出しながら、本題に入った。
「さて、くそったれな銀河帝国を相手にした大喧嘩も佳境に入ってきたわけだが……敵が厄介な兵器を使ってきやがったんで、おまえさんたちの手でなんとかしてほしいんだわ。それは『洗脳音楽通信』とでも呼ぶべき兵器でな。その名の通り、聴いた者を洗脳しちまうんだよ」
 洗脳音楽通信を仕掛けているのは黒騎士アンヘル配下のクライングシェル艦隊であるらしい。音楽の効果は様々。耳にした者は無気力になったり、眠ったまま起きなくなったり、自殺しようとしたり、突然暴れだしたりするという。
「おまえさんたちに救ってほしいのは解放軍の『フォー・シンボルズ号』って戦艦だ。洗脳音楽通信の標的にされて、乗組員たちが洒落にならないレベルの鬱状態になってんだよ。救う方法はいたってシンプル。『フォー・シンボルズ号』の艦内放送室におまえさんたちを転送するから、そこで音楽を演奏してくれ。そう、音楽には音楽をぶつけるってわけだ」
 猟兵たちが全身全霊をかけて音楽を奏でれば、敵の洗脳音楽は無効化され、乗組員たちは生きる気力を取り戻すだろう。
「音楽のジャンルは問わないぜ。ソロでもいいし、バンドを組んでもいい。なんらかの形で演奏者をサポートする形で参加してもいい。とにかく、熱く、かっこよく、美しく演ってくれ! そして、本当の音楽の力を銀河帝国の連中に見せつけて……いや、聴かせてやろうぜぇーっ!」
 JJは力強い声で叫んだ。
 チーズ味のブロック食を持った手を突き上げて。


土師三良
 土師三郎(はじ・さぶろう)です。
 本件は、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 宇宙船内でライブをするという内容ですが――、

 現実に存在する楽曲の曲名や歌詞、替え歌等が記載されているプレイングは採用できません!

 ――という点に注意してください。
 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

 ※章の冒頭にあるPOW/SPD/WIZのプレイングはあくまでも一例です。それ以外の行動が禁止というわけではありません、念のため。

 ※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
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第1章 冒険 『洗脳音楽通信を撃ち破れ!』

POW   :    激しいビートで、魂を揺さぶり、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

SPD   :    超絶的な技巧で、聴く者を圧倒して、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

WIZ   :    心に響く歌声で、感情を揺り動かして、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルベル・ノウフィル
wiz
おおぉ、ぼ、僕の歌をお聞きなさーいっ(何

歌はそんなに巧みではないがとにかく一生懸命なのが伝わり温かみのある感じ
明るく楽しく

いけいけゴーゴー!フォー・シンボルズ
戦え!僕らのフォー・シンボルズ

「キャプテン!前方から敵が!」「よかろう全て薙ぎ払え!」(台詞)

僕らの船に敵はない
隣を見れば戦友(とも)がいるぜ
僕らの船は最強さ
熱い魂(ソウル)でぶっ飛ぶぜ

広い宇宙もなんのその
僕らの宇宙だ自由の宇宙(ソラ)だ
いとしいかーちゃん可愛い我が子の明日を護るフォー・シンボルズ
最強無敵だ!フォー・シンボルズ!

「ほら!一緒に歌うのですよ!(何
皆様ご一緒にー!」

いけいけフォー・シンボルズ!
僕らが宇宙を救うんだ!


ウィルマ・シャーオゥ
はーい諸君、随分陰気なのど自慢大会だネ!
そういうときは歌って声出すと結構スッキリするよー。反骨精神すなわちロックソウル!

とはいえ、吾輩が囓ってるのはもっぱら声楽だからネ。UDCアースのクラシック・オペラなどいかがでしょう?
鼓舞するなら喜劇か冒険を題材にした曲目が良いかなー。どんな女性にも恋してしまう少年の歌とか、夫を助けるために男装して監獄に潜入する麗人の歌とか。ズボン役が務まる程度のメゾ・ソプラノをお聴きあれ!

他にも歌う人がいたら、即興でコーラス入れてみようかな?
輪唱の感覚ならそれほど難しくないし、曲調を邪魔しそうなときはしゃしゃり出ない。このへん気をつければだいたいなんとかなるよーたぶん!


鏡島・嵐
判定:【WIZ】
へ? 歌? おれらが歌うって?
まあ、戦うよりは幾らか気楽だし、それで助けられるんなら。

で……えーと、正直に告白すると。
おれ、持ち歌の七割方くらいが演歌デス。
……しょうがねえだろ! 故郷で歌ってくれってよく言われたんだ! なんでかわかんねーけど!
(無自覚だが歌声は物凄い美声)

こういう目的に向いてるとは思えねぇけど、半ばヤケで歌ってやる! こぶしもビブラートもバリバリに利かせて、情感たっぷりにな! 〈歌唱〉技能も持ってるし!
どうでもいいけど、召喚した道化師のギターソロ巧ぇな! しかもノリノリだし!


コルチェ・ウーパニャン
WIZ
ロップちゃん(f00697)と参戦!
オペラの二重唱を、ロップちゃんと両手で手をつないで、小さな輪を作って
見えなくてもウキウキ楽しく踊りながら、ソプラノで一生懸命歌い上げるよ
難しいところはちょっと機械っぽくなっちゃうかも
その時はロップちゃんが支えてくれると思うから
コルチェはのびのび、歌い上げるのを目標にしまーす!

歌うのは、あったかい砂浜と椰子の木陰
首飾りと約束の物語

スペースシップの皆は見たことがあるかなあ?
見せてあげたいなあ 連れて行ってあげたい
ここで頑張ってくれたら、見せてあげられるんだけどなあ

楽しい気持ち、元気づける気持ち
ステキなものをステキだって思う気持ち
真心にのせて、お届けするよ!


轟・五臓六腑
WIZ コルちゃん(f00698)と二人で明るいオペラの一幕をアカペラで歌います。わたしがテノール。あの子すごく高い声を綺麗に出せるのよ、わたしもがんばらないとね。声量だけなら少しは自信があるんだけど。スペースシップではもうなくなっちゃった風景かもしれない、南国を思わせる歌。男が恋をしちゃって、もう最高だ!って浮かれるの。そりゃあもう朗々と歌い上げますとも。歌の中じゃあ男は彼女を見つめて想いを馳せているだけだけど、私はコルちゃんと両手をつないで踊っちゃったりします。それは乗組員からは見えないかもしれないけど、あまり重要じゃないわ。心が楽しくなきゃ良い歌は歌えない。だから、私は楽しんで歌います。


ヘルガ・リープフラウ
歌は人の心を豊かにするもの
決して人を傷つけるためのものではありません……!
わたくしの歌と、聖者としての力が、皆様のお役に立てるのなら……
皆様の心に、勇気と希望を取り戻してみせましょう。

【シンフォニック・キュア】
「祈り」を込めた聖歌を、優しく、穏やかに、人々を癒し勇気付けるように心をこめて歌います。

夜空に瞬く 数多の星よ
闇夜を彩る さやけき光よ
愛しき子らを 見守りたまえ
迷える者を 導きたまえ

私は謡う 声の限りに
命の輝き 絶やさぬように
この地に生きる 人々のため
希望の星に ならんと願う


テュティエティス・イルニスティア
音楽、つまり音とは波、波動です。
ならばより強い波、音で以て、洗脳音楽など吹き飛ばしてしまいましょう。

――というわけでPOW的にギターをかき鳴らしてHeavy Metal Jaeger!って感じでいくわ!
上手くはないけれど適当にコード押さえてぎゅいーん!ってやるわよ!
そしたら音楽だ、って誰かが言ってたからね!
あとはシャウトしてみたり、鬱屈とした気分を吹っ飛ばせるように煽ってみたり。
もし演奏で誰かのサポートが出来そうならやってみせるわ。
盛り上がってくれたら最後にはギターぶん投げてもいいわね!
大丈夫、ストラトは投げても壊れないって!

(アドリブ歓迎。お好きなように扱ってください)



●ウィルマ・シャーオゥ(古書のヤドリガミ・f00154)
 今、我輩たちがいる場所は反乱軍の高速戦艦フォー・シンボルズ号の放送施設だよ。
 施設といっても部屋は二つだけだし、構造もすごくシンプルなんだ。コンソールがごちゃごちゃ並んだサブ・コントロール・ルーム(メインらしき部屋がないのに、どうして頭に『サブ』が付くんだろうね? ふっしぎー!)と殺風景なスタジオがガラスで仕切られて並んでるだけ。UDCアースのラジオ局とかと同じような感じ。
 スペースシップワールドの戦艦内の施設と聞いたら、もっとメカメカしいSF的なビジュアルを想像しちゃうよねー。だけど、戦艦だからこそ、シンプルな構造をしているんだってさ。ほら、戦闘中ってのはなにが起きるか判らないでしょ? たとえば、電気系統とかがイカれちゃって、声が外に届かなくなったり、扉が開かなくなって閉じこめられたりするかもしれない。そういう時でもガラス越しにサブコンと意思疎通ができるし、いざとなれば備え付けの斧でガラスを叩き割って外に出れるってわけ。
 さて、今回の任務に志願し、ここに転送された猟兵は我輩を含めて七人。そのうちの四人がサブコンにいて、残りの三人――我輩とルベルくんとテュティエティスちゃんはスタジオで待機中だよ。ルベルくんは人狼のオトコの子で、テュティエティスちゃんはUDCアース出身と思わしきお姉さん。カンケーないけど、テュティエティスって名前、すごく言い難い。いつかきっと噛む。
「音楽……つまり、音とは、波。波動です」
 ん? 噛みそうなテュティエティスちゃんがなにか語りだした。
「ならば、より強い波を以て、洗脳音楽など吹き飛ばしてしまいましょう」
「うん! 吹き飛ばそう!」
 テュッティちゃん(噛みそうだから略すよ)の言葉に我輩が答えた直後、中性的な顔立ちの男の人がガラスの向こうで指を振った。あれはダンピールの五臓六腑ちゃん(念のために言っとくけど、『五臓六腑』ってのは名前だからね。ダンピールが贓物を曝け出してるスプラッタな光景が繰り広げられてるわけじゃないよ)。どうやら、こっちにキューを送ってるみたい。放送準備が整ったんだね。
 では、いきますか。
 我輩は大きく息を吸い込み、マイクに向かって叫んだ。
「グゥ~~~ッモ~ニンッ! フォウシンボォ~ッズゥ!」

●コルチェ・ウーパニャン(ミレナリィドールのブラスターガンナー・f00698)
「やっほー、諸君! 随分とダウナーだね! そういう時は歌って声を出すと結構スッキリするよー!」
 ウィルマちゃんがハイテンションで艦内の人たちに語りかけてる。
 この部屋は遮断できているけれど、船の中では敵の洗脳音楽が流れてるんだよね。テュティエティスちゃん(噛みそう)が言ってたように皆の音楽でそれを吹き飛ばせればいいんだけど……。
「反骨精神――それすなわちロック・ソウォール!」
 と、ウィルマちゃんがトークを締めたところで放送を一時休止。その間にルベルくんがスタンドマイクの前に立って、テュティエちゃん(噛みそうだから略すよ)がギターをギターを構えた。
 ちなみにルベルくんのスタンドマイクもウィルマちゃんが使っていたマイクも演者の気分を盛り上げるためのダミーだよ。実際はAI制御の集音センサーが室内のそこかしこに仕込まれていて、それらが歌声を効率的かつ効果的に拾っているんだって。
「こほん」
 ルベルくんが可愛らしく咳払い。緊張してるのかな? リラクッス、リラーックス。
「正直、ギターはそんなに上手くないのですが、気にしません」
 弦を軽く鳴らすテュティエちゃん。
「誰かが言ってましたから。適当にコードを押さえて、ぎゅいーんってやれば、それが音楽だ、と……」
 その『誰か』って、誰のこと? あれ? いつの間にか、テュティエちゃんの首に下がっていたドックダクが南京錠に変わってる!? なんだか判らない。いろいろと判らない。でも、いいの。コルチェ、気にしない。
 二人の準備が整ったところでロップちゃん(五臓六腑ちゃんのことだよ)がコンソールを操作して、放送が再開された。
 そして、テュティエちゃんが――
「YEAHHHHH!」
 ――ノリノリでギターの演奏を始めた。
 本人が言ってた通り、あまり上手くない。でも、とっても楽しそう。
 それに聞いてるほうも楽しい。うん、楽しい!
『誰か』とやらの言葉は正しいのかも。適当にコードを押さえて、ぎゅいーんってやれば、それだけでもう音楽なんだね。
 ぎゅいーん!

●テュティエティス・イルニスティア(人間の探索者・f05353)
 心も体もギターも温まってきたところでイントロ終了。
 いよいよ、ルベルさんの歌が始まりました。
「いけ、いけ、ゴーゴー、フォー・シンボルズ♪
 いけ、いけ、ゴーゴー、フォー・シンボルズ♪」
 このフォー・シンボルズ号をテーマにしたオリジナル・ソングですね。人のことは言えませんけど、そんなに上手くありません。でも、歌声に温かみがあるし、一生懸命なのも伝わってきます。それになにより楽しそう。私のギターも聴き手に同じような印象を与えていると嬉しいのですが……。
「戦え、僕らのフォー・シンボルズ♪
 隣を見れば、戦友(とも)がいるぜ♪
 僕らの船は最強さ♪」
 間奏に入りました。ここでギターソロを……と、思ったのですが、ルベルさんがダミーのスタンドマイクを更に顔に近付けましたよ。なにをするつもりでしょうか?
「キャプテン! 前方から敵が!」
 まさかの台詞つき!?
「よかろう。すべて薙ぎ払え!」
 しかも、一人二役!?
 熱いですねぇ。私も負けていられません。ギターソロで盛り上げてみせましょう。適当にコードを押さえて、ぎゅいーん! ぎゅいーん! ぎゅいーん! 適当だけど、魂はしっかり込められてますよ!
 この想いが伝わったのか、ルベルさんは後半部も全力で歌い上げ――
「熱い魂(ソウル)でぶっ飛ぶぜ♪
 広い宇宙もなんのその♪
 僕らの宇宙だ、自由の宇宙(そら)だ♪
 いとしいかーちゃん可愛い我が子の明日を護るフォー・シンボルズ♪
 最強無敵だ、フォー・シンボルズ♪」
 ――『さあ! 皆様、ご一緒に!』とばかりにスタンドマイクをサブコンに向けました。
『最強無敵だ! フォー・シンボルズ!』
 サブコンにいる皆さんの歌声が厚いガラス越しに聞こえてきました……あなたたち、サイコー!

●ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)
「あなたたち、サイコー!」
 集音センサーが壊れかねないほどの大音声を張り上げて、ギターを今まで以上に激しくかき鳴らすテュティエティス殿(噛みそうです)。キャラが変わってませんか?
 そして、三分以上もの長いアウトロを披露した後、感極まってギターを放り投げました。ちなみにそのギターは音楽船団『ディフェンダー』の工場船で製造された『スターライトキャスター』なる物だそうです。略称はスタラト。
「そんなに乱暴に扱うと壊れてしまいますよ」
「大丈夫! 誰かが言ってたわ! スタラトはブン投げても壊れないってね!」
 その『誰か』とは誰のことでしょう? あれ? いつの間にか、テュティエティス殿(あえて略しません)がテンガロンをかぶってる!? なんだか判らない。いろいろと判らない。まあ、いいか。気にしないでおきましょう。
 なにはともあれ、僕のパフォーマンスはこれにて終了。放送を中断し、ウィルマ殿とテュティエティス殿とともにサブコンに移ります。
「次はわたしたちの出番よ! 準備はいい、コルちゃん?」
「うん!」
 入れ替わりにスタジオに移ったのはダンピールの五臓六腑殿とミレナリィドールのコルチェ殿。なぜか前者は所謂『オネエ口調』です。
「あー、あー、あー」
「あ~~~」
 スタジオで軽く発声練習するお二人。
 それが終わると、ウィルマ殿がコンソールのスイッチの一つを押し、キューを送りました。
 放送再開と同時にお二人が美声で紡ぎ始めたのは、台詞めいた歌曲。おそらく、これはUDCアースで『オペラ』と呼ばれているジャンルですね。伴奏はありませんが、物足りなくはないです。すぐ傍で聴いているせいか、歌声だけで圧倒されます。ソプラノのコルチェ殿はミレナリィドールである故に歌声が人工的に聞こえることもありますが、それもあまり気になりません。テノールの五臓六腑殿がしっかりとフォローされていますし、ご本人も楽しそうに歌っておられますから。いえ、フォロー役を信頼しているからこそ、楽しく歌えるのかもしれませんね。
 歌の中で描かれているのは、南洋の島を舞台にした物語。男(五臓六腑殿)が素敵な娘(コルチェ殿)に出会い、心躍らせる一幕。
 おや? お二人が手を繋いで踊り出しましたよ。どちらも満面の笑み。もちろん、歌も歌い続けています。
 ここから艦内に流せるのは音声だけですから、お二人の踊りや笑顔は乗組員の皆さんには見えないでしょうが……でも、楽しい気持ちや愛しい想いはきっと伝わるはずです。
 僕の心の目にも見えていますからね。
 歌の中で描かれている南国の光景が。

●轟・五臓六腑(ダンピールの戦場傭兵・f00697)
 ふぅー。さすがに疲れたわー。
 わたしはサブコンに戻り、心地よい疲れに身を任せて椅子に座り込んだ。
 隣の椅子ではコルちゃんがやりきった顔をしてる。この娘の声って、本当に綺麗なのよねー。聴いてる人たち(たぶん、コルちゃん自身も)はわたしがコルちゃんをフォローしてると思ったかもしれないけど、実際はわたしのほうが助けられてたのよ。他の娘が相手だったら、あんなに上手くは歌えなかったんじゃないかしら。
「ねえねえ、ロップちゃん」
「なーに、コルちゃん」
「あったかい砂浜や椰子の木陰がある南国の島の光景をスペースシップワールドの皆は見たことがあるのかなあ?」
「映像を見たことはあるだろうし、作り物の環境で楽しんだこともあるかもしれないけど、本物の島に行ったことはないでしょうね。何世代も前から宇宙船の中で暮らしてるんだから」
「見せてあげたいなあ。つれて行ってあげたいなあ」
 きっと見せてあげることもできたし、つれて行くこともできたわ。わたしとコルちゃんの歌で。心の中の島に。
 そして、ウザったらしい銀河皇帝とかいう奴を倒せたら、いつの日かどこかの星の本当の島に自分の足で立つこともできるかもしれない。
 そのためにも、ここの人たちには早く気力を取り戻してもらわないと……あら?
「歌は人の心を豊かにするもの。決して人を傷つけるためのものではありません」
 スタジオから声が聞こえてきた。おセンチ(死語かしら?)なモードになってる間に次の歌い手の出番が始まってたのね。
 声の主はオラトリオのヘルガ。ウィルマもなぜかサブコンに戻ってるわ。
「わたくしの歌と聖者としての力で皆様の心に勇気と希望を取り戻してみせましょう」
 そう宣言して、ヘルガは歌い始めた。それにウィルマも。バックコーラスとして参加するためにスタジオに戻ったのね。
「夜空に瞬く、数多の星よ♪
 闇夜を彩る、さやけき光よ♪
 愛しき子らを 見守りたまえ♪
 迷える者を 導きたまえ♪」
 ヘルガったら、普通に歌うんじゃなくて、シンフォニック・キュアを使ってるわ。癒されるぅ。てゆーか、シンフォニック・キュアじゃなくても癒されるんじゃないの、これ?
「私は謡う 声の限りに♪
 命の輝き 絶やさぬように♪
 この地に生きる 人々のため♪
 希望の星に ならんと願う♪」
 ……ダ、ダメ……もう、ダメ! 目から海洋深層水が溢れ出しそう!

●鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)
 うわー。ゴゾーロップのオッチャン、目をうるうるさせてるよ。まあ、無理もないか。ヘルガの歌は感動的だもんな。こないだ、俺もこのシンフォニック・キュアで怪我を治してもらったんだ。
 ウィルマのコーラスも悪くない。見た目は小学校の低学年くらいだけど、ヤドリガミだから、もっと長い年月を過ごしてきたんだろうな。その時間が声に深みを持たせているのかな? だったら、十七年しか生きてない俺は絶対に敵わないよ。
 やがて、ヘルガは歌い終えた。外の様子は判らないけど、乗組員の連中もゴゾーロップのオッチャンみたいに目をうるうるさせてんのかな? まあ、うるうる状態だったとしても、すぐに涙は乾いちゃうだろうけどな。だって、さして間を置かずに陽気な音楽が流れ始めたんだから。
 そして、その音楽に合わせて、ウィルマが歌声を響かせた。よく判らないけど、これもオペラみたいだな。バックの音楽と同様、陽気な歌だ。どんな女性にも恋してしまう少年の歌。ウィルマの声もなんとなく少年っぽい。
「可愛らしい声ですね」
「うん! ズボン役が似合いそう!」
 テュティエティス(噛みそう)とコルチェが言葉を交わしてるけど……ズボン役って、なんだろう? 衣装係みたいなものかな?
 それについて訊こうかどうか迷ってるうちにウィルマの一人オペラは終わった。
 あー、次は俺の番だ。こんな凄い連中の後で歌わなくちゃいけないのか。プレッシャーが半端ないよ。まあ、戦闘よりも気が楽だけどな。
「がんばってね!」
 と、コルチェがエールを送ってくれた。
「がんばるけど、あんまり期待しないでくれよな」
「どうして? 嵐くん、歌が苦手なの?」
「苦手っていうか、レパートリーが偏ってるんだ」
「どんな風に偏っているのですか?」
 テューティ(噛みそうだから略す)がそう尋ねてきたので、俺は溜息まじりに答えた。
「実は俺の持ち歌の七割くらいは……」

●ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)
 わたくしとウィルマ様がサブ・コントロール・ルームに戻ると、今度は嵐様がスタジオに入りました。
 アックス&ウィザーズで嵐様の歌声を聴く機会があったのですが……それはもう美しい声でしたわ。ご本人は自覚されてないようですけど。
 さあ、今日はどのような歌を聴かせていただけるのでしょう?
 ウィルマ様がガラスの向こうに合図を送ると、嵐様はユーベルコードを発動しました。
 それに応じて現れ出たのは、ギターを手にした道化師。
 その道化師が曲の前奏を奏で始めましたが……あら? えーっと……なんというか、その……思っていたのと違いますわ。
 かなり違いますわ。
 なんでしょう、この聞き慣れない音楽は? いえ、決して耳に不快というわけではありません。むしろ、魅力的です。奇妙な力強さに胸を揺さぶられると同時に哀愁も感じられて……。
「板子一枚ィ、下は地獄のォ♪
 明日をも知れぬゥ、不帰航路ォ♪」
 嵐様が歌い始めました。歌詞のテーマは『海の男』といったところでしょうか。宇宙の海を征く乗組員の皆様を鼓舞するにはぴったりですね。
「荒れる波間にィ、未練を捨ててもォォォ~イ♪
 俺の港はぁ、あっ、おまえだけェェェェェ♪」
 歌い方も思っていたのと違いますね。どこかメリスマに似た奇妙な技法に加え、巻き舌になったり、大袈裟なまでにビブラートをかけたり。
 わたくしの顔に出ているであろう当惑の色に気付いたのか――
「こういうのは『こぶしを利かせてる』って言うんだよ」
 ――と、ウィルマ様が教えてくださいました。
「コブシ?」
「うん。これはUDCアースの演歌という音楽なんだ。嵐も若いくせに渋い趣味してるねー」
「さっき、嵐が言ってたんだけどぉ」
 と、五臓六腑様が話に加わってきました。
「故郷にいる時、演歌を歌ってくれとよくせがまれたんだって」
「そうですか」
 エンカ……奥が深そうですね。
 あら? いつの間にかテュティエティスがスタジオに入って、道化師の横でギターを演奏しています。興が乗って、自分を抑えられなくなったんでしょう。
「でも、あのギターは放り投げたはずでは? よく壊れませんでしたね」
 わたくしが思わず声に出して呟くと、ルベル様もまた声を出しました。
 感動に震える声を。
「『誰か』とやらの言葉は正しかったんですよ! スタラトは壊れないんです! そう、壊れないんです!」
 ……すいません。よく判りません。

 嵐様のエンカが終わったところで五臓六腑様がコンソールを操作しました。艦内に設置されたすべてのマイクを作動させ、この部屋に繋げるために。
 次の瞬間、わたくしたちは大音響に包まれました。
 乗組員の皆さんが歓声をあげているのです。
 敵の洗脳音楽は聞こえてきません。わたくしたちの歌によって完全に吹き飛ばされたのか。あるいは歓声にかき消されているのか。どちらであれ、同じことです。このフォー・シンボルズ号の人々にもう洗脳音楽は通じません。
 やがて、スピーカーから溢れ出る歓声が一つにまとまり始め――
『……コール! アンコール! アンコール! アンコール! アンコール! アンコール!』
 ――意味のある言葉に変わりました。
「やれやれ。休ませてくれないわねぇ」
 五臓六腑様がニヤリと笑い、椅子から立ち上がりました。それに他の方々も。
 そして、わたくしたちはまたスタジオに入りました。
 アンコールに応えるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト