銀河帝国攻略戦⑮~星羅を駆けろ、破城槌
●精鋭
偉大なる銀河帝国にたてつく愚か者に報いを。
力尽き、再び骸の海へと還っていった同胞への手向けを。
殲滅せよ、蹂躙せよ、勝利せよ。
我らこそは、栄光の白騎士ディアブロ直属部隊。
我らこそが、銀河にただ一つの皇帝を守る白き盾。
我らこそ、雄々しき『白城』艦隊なれば!
●対艦戦
「皆様、お集りいただきありがとうございます。世界コードネーム:スペースシップワールドにて、オブリビオンの出現が確認されました」
シスター服に身を包んだグリモア猟兵が、自分の呼びかけに応じてグリモアベースに集った猟兵達へ語りだす。
「いやまあ、今更にもほどがありますが、お決まりの流れという奴です。お付き合いください」
小さく咳払いをした後、今回猟兵が立ち向かう敵の説明が始まる。
「今回、皆様に戦っていただくのは、銀河帝国「二大巨頭」のひとり、白騎士ディアブロの傘下である『白城』艦隊。ええ、間違いなく強敵ですね」
彼女の持つグリモアから、帝国の制式戦艦の姿が投影される。
この戦艦を落とすことが、今回の猟兵達の任務だ。
「現状、解放軍と帝国軍の戦いは互角の状態。こちら側もこれまでの戦いで経験を積めましたしね、それに数の有利が加われば、ええ、過去の亡霊にも対抗できますとも」
けれど、練度の高さではどうしても帝国軍に劣っていることは否定できない。
加えて、皇帝という明確な旗印の下で戦う士気の高さ。
今は互角であれど長い時間を戦い続ければ、いずれ解放軍が先に疲弊し、その隙を突破されてしまうであろう事は、この場の多くの者が理解していた。
「ゆえに、我々が最精鋭の『白城』艦隊を打倒する必要があるのです。帝国軍には優秀な前線指揮官が多数所属し、それが練度の高さにも直結しているのですが……」
その中の1人が、今回の目標である帝国宇宙戦艦に乗り込んでいることが判明している。
この戦艦を指揮官ごと破壊できれば、精鋭部隊と指揮官を失った帝国軍の士気と連携に乱れが生じるのは間違いない。
「我々には、ヘロドトスの戦いで手に入れた宇宙服もありますしね。ええ、ええ! 内部に転移してチマチマ壊していけなど言いません。この星の海を駆け、外部からユーベルコードを撃ち込み、撃沈してしまいましょう!」
あ、艦砲射撃には気を付けてくださいね、などと言うグリモア猟兵の背後で、転移の準備を終えたグリモアがひときわ強く輝きだす。
「では皆様、ご武運を」
そう締めくくった声と共に周囲がまばゆい光で包まれる。
その光が消えた後には、猟兵達の姿は何処にも残ってはいなかった。
北辰
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
強敵登場ですね、北辰です。
OPでも触れていますが一応の補足をいたしますと、今回のシナリオは対艦戦になります。
いつもなら敵宇宙船内に出るところを、今回は宇宙空間でスタート。
敵戦艦の砲撃を掻い潜って接近し、ユーベルコードを叩き込んで撃沈してしまってください。
一応、ルール上はユーベルコードの使用が義務付けられたシナリオではありませんが、今回の相手は精鋭部隊であり、システム的な難易度も高めです。
ユーベルコードは忘れずに使用することを強くオススメいたします。
それでは皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『帝国宇宙戦艦』
|
POW : フルバースト・コズミック
【全砲一斉射撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : デストロイレーザー
【10秒間のエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【主砲からのレーザー砲撃】で攻撃する。
WIZ : インペリアル・マカブル
【自身の稼働可能時間】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【帝国式鏖殺形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑15
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
【範囲攻撃】【2回攻撃】のスキルを使用したアサルトウェポンの射撃で攻撃しつつ宇宙バイク『スターチェイサー』で接近するぜ!!
【オーラ防御】による防御【見切り】と【残像】と【フェイント】で避けながら、【戦闘知識】で弾幕の薄いところでを見つけ、接近。【怪力】【鎧砕き】【串刺し】のスキルを使ったドラゴンランスで突き刺し、ユーベルコード【ドラゴニック・ブレイザー】で破壊するぜ!!
●スペースフレア
「撃て! 撃て! 当たらなくてもいい、光線幕を切らすな!!」
「バイク部隊を出せ! 追い込んで仕留めるんだ!」
「デストロイレーザーの充填はまだか!?」
怒号が飛び交う戦艦。
『白城』艦隊を構成する内の一つに乗り込んだ指揮官が、司令部のモニターに映る敵影を睨みつけながら、艦内の部下たちへ指示を飛ばす。
「猟兵共を! これ以上近づけるんじゃない!!」
暗い星の海が、いくつもの光の線でまばゆく照らされる。
触れたもの全てを焼き尽くす光線砲の雨をかいくぐりながら、自身の愛機、スターチェイサーに跨ったガイ・レックウ(流浪の剣士・f01997)が、敵戦艦へと向かっていく。
敵は間違いなく精鋭だ。
既に何人ものバイク乗りが現れ、ガイの行く手を阻んできた。
幸いだったのは、ガイの持つアサルトウェポンが突撃銃型であったこと。
左右はもちろん、上下の概念すら無く敵が接近してくる無重力の戦場において、近中距離にも対応しやすい銃器は、迎撃においてその性能をいかんなく発揮していた。
それでも、戦艦からの支援砲撃を受けながらの対処は困難を極める。
バイク乗りのオブリビオンを撃退しながらも、スターチェイサーはゆっくりと敵の射程に誘い込まれていき。
遂には、光線砲に撃ち抜かれ、スペースデブリとなって沈黙する。
「……ふぅ! 大分無茶した、これが終わったらメンテしねぇとな」
当然それは、猟兵であるガイの、超人的な操縦技術が無ければの話だが。
歴戦の『白城』艦隊であっても、仕留めたと一瞬錯覚してしまう程の、紙一重の回避。
スターチェイサーの元々の性能、ガイの剣士としての見切りの技術もさることながら、効果的だったのは彼が纏っていたオーラだ。
バイク乗りからの銃撃の盾とすべく、自身から切り離したオーラは、戦艦のレーダーにも確かに捉えられた。
それが、機械のロックオンシステムすら欺く残像となった瞬間、ガイを見失った戦艦の砲撃にも、僅かなズレが生じていた。
ズレは直ちに修正される。
けれども、そのわずかな間、生まれた弾幕の隙間は、ガイの接近を許してしまうには、十分すぎる時間であった。
「さあ、燃えよ! 灼熱のドラゴン!! 熱く! 雄々しく! 燃え盛れ!!」
銃をしまったガイが、異空間への呼びかけと共に、己が槍を戦艦のバイク甲板へと投げつける。
それが突き刺さった瞬間、呼び出されるのは紅蓮の炎を纏うドラゴン。
始まるのは【ドラゴニック・ブレイザー】による、ガイ流の対艦砲撃だ。
ユーベルコードの力によって、真空下でなお煌々と燃え盛る灼熱の竜が、主の意思に従い、槍の下へと突撃する。
宇宙の冷気に耐える為に作られた甲板が、竜の炎に耐えられるはずもなく。
熱に焼かれ、無残に融け崩れるその様は、バイク乗り達が無力な存在となったことを示していた。
成功
🔵🔵🔴
ウーゴ・ソルデビラ
宇宙服があるったって、体一つで船を沈めて来いっつーのは結構な無茶振りだぜ。猟兵じゃなきゃ死にに行くのと同じって事だもんな。
ま、確かにチマチマやるより派手にやりあう方が、俺も性に合ってるけどよ。レーザーやら砲撃やらを【野生の勘】と【逃げ足】で搔い潜りながら船まで突っ込んでくぞ。出来れば【鉤縄】で船に取り付いて、大砲で狙い難くしてえよな。これも【敵を盾にする】事になりそうだし。わざわざ硬い装甲をぶん殴る事もないし、砲塔とか発射管だとか、位置が解るなら船橋とかを狙うって事で、【腐羅無怒腐汚魔狼】の火球をその辺りにぶち込んで行くぞ。良く燃えそうだからな。後、チャージしてる間に一回攻撃できたらしとくぞ。
ルリア・アルヴァリズ
優秀な指揮官か・・・それを倒せば優位に立てるのも間違いないね
ただ指揮艦を落とせなんて簡単に言ってくれるけどやる方は大変だ
さて、小言はここまでにして仕事に行こうか
【WIZ】
ダンピールだから自力で飛べるし移動には困らないね
ある程度指揮艦が見える位置まで移動
ユーベルコードで炎を纏わせた隕石を降り注がせようか
周りの戦艦に混乱が起これば他の猟兵たちもやりやすくなると思うし
もちろんこれで堕ちてくれてもいいけどね?
アドリブ・連携歓迎
●灼熱のユーベルコード
「優秀な指揮官か……それを倒せば優位に立てるのは間違いない。間違いは無いのだけど……」
「結構な無茶振りだぜ。猟兵じゃなきゃ死にに行くのと同じって事だもんな」
極薄の宇宙服を着こんだ2人の猟兵、ルリア・アルヴァリズ(理想の追求者・f10775)とウーゴ・ソルデビラ(吸血鬼マイラ・f09730)が今回のブリーフィングを振り返りながら、ため息をつく。
まさか、宇宙服だけ着た生身で戦艦を落としてこいとは、グリモアベースは猟兵を万能のスーパーヒーローとでも思っているのだろうか。
とはいえ。
できると思ったからこそ、グリモア猟兵達は予知を伝えてくるのだろうし、自分たちとて、できると思ったからその呼びかけに応じたのだ。
小言はほどほどに、仕事を始めなくてはいけない。
キマイラとダンピール、その背景は違えど、同じように蝙蝠の被膜を広げた2人が、宇宙空間を飛翔する。
2人が着る宇宙服には、望む方向へ身体を運ぶ推進力が備わってはいるが、やはり生身での移動とはどうしても勝手が異なる。
けれど翼を持つウーゴとルリアなら、星間物質を捉え、他の世界と変わらぬ感覚で移動することも容易であった。
野生の勘を働かせながら、先行するのはウーゴ。
戦艦を守るバイク部隊は無力化されたとはいえ、帝国軍のレーザー砲撃はそれだけでも十分驚異的だ。
なにせ、実体弾とは速度が比べ物にならない。
光速で飛来するレーザーを見切り躱すには、撃たれる前に敵の狙う位置を察知する必要があった。
時にはルリアの手を引いて先導しながらも、ウーゴは着実に距離を詰めていく。
もちろん、ルリアに握らせているのは自身の獲物でもある鉤縄だ。
戦士の一族に生まれ、硬派なキマイラである彼に、女性の手を握るなどという真似はできない。
硬派以外の理由などない、純情ヤンキーとか言ってはいけない。
「あ、私はこの辺で大丈夫だよ、ありがとう」
「この辺って……まだ少し距離があるぞ?」
ウーゴの言葉通り、戦艦から少し離れた、大きめのスペースデブリの陰に隠れながら、ルリアが申し出る。
「ああ、この距離が良いんだよ」
なにせ、ルリアのユーベルコードは、少々派手であるのだから。
ウーゴを先行させたルリアが、その青いマフラーを靡かせながら、戦艦をしかと見つめる。
1人で接近を再開したウーゴが、先ほどよりも激しい砲撃を集中させられているけれど、それを気に掛ける余裕はない。
これから使うのは、制御に失敗すれば敵を倒せないどころか、自爆の危険すらある扱いの難しいユーベルコードなのだから。
「理さえ、捻じ曲げて」
右手を敵の方角へ突き出したルリアの言葉に、周囲の温度が上昇し始める。
【エレメンタル・ディザスター】。
特筆すべき破壊力と応用性、そして危険性を兼ね備えたルリアのユーベルコードが発動する。
呼び起こすは火の元素。
金属のデブリが歪み始める熱に包まれてなお、ルリアの紡ぐ詠唱は止まらない。
「今ここに災厄を起こさん!」
その終わりと共に、周囲のデブリ群が灼熱の炎に包まれる。
ユーベルコードの炎を纏う、隕石の完成だ。
素材となる『弾』が周囲に元々あったこと、派手に突き進むウーゴが意図せずして、ルリアから目を逸らす囮になっていたこと。
様々な要因が重なって、ルリア自身にも幾分かの余裕はある。
ゆえに、平時よりも精度を増した隕石が、己が向かうべき目標へと突撃を開始する。
「熱源反応! い、隕石です! 隕石群が出現、此方に向かっています!」
「はぁっ!? お、おのれ、どこまでも出鱈目な力を振るいおって! 回避だ、全速回避ぃぃ!!」
とはいえ、ここまで来れば流石に帝国軍も危機に気づく。
『白城』艦隊の一角を任された指揮官の統率力と、帝国が誇る制式戦艦の出力を持ってすれば、致命的な被弾を避けるのは難しくない。
けれど、『白城』艦隊の練度は、確かな実力を持つ指揮官あってのものであり。
その指揮官が回避に集中してしまえば、当然攻撃は疎かになるのだから。
「ふぅー……ちょっとだけ手こずったな、ちょっとだけ」
その隙を見逃すはずもないウーゴが船体に取りつくのは、避けられないことだった。
こうなってしまえば帝国軍も容易に攻撃は出来ない。
わずかに残ったバイク部隊が背後から撃つこともできなくはないが、警戒を怠らないウーゴに躱されてしまえば、帝国自慢のレーザー銃が穿つのは、同胞の戦艦だ。
その事が分かっているウーゴもゆっくりと拳を掲げ、自身の刻印を起動する。
それに呼応し現れるのは、二十と二つの光球。
その一つ一つが、高温を纏うユーベルコードの炎だ。
そのすべてが、ウーゴの拳を覆い、混ざり、彼の拳を輝く破城槌へと変貌させる。
モニター越しにそれを見る指揮官の顔が、みるみる強張っていく。
猟兵が取りついたのは船の後方、星の海において、望む方向へ自分たちが進むための、舵システムが集中している箇所だ。
「骨まで焼き尽くしてやるぜッ! 【腐羅無!怒!腐汚魔狼!!(フラム・ド・フォマロー)】」
叫びと共に放たれる、灼熱の一撃。
戦艦内に響く轟音と、数瞬遅れてけたたましく鳴り響くアラート音。
すべてが、帝国指揮官に移動手段の殆どを失った現実を突きつけていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セルマ・エンフィールド
敵も主力が出てきている様子、戦争もここからが本番ですね。
主砲は脅威ではありますが、10秒間のエネルギーチャージが必要、避けるための小細工をする時間は十分にありますし回避に成功すれば逆に接近のチャンス、敢えて正面から挑みます。
敵がデストロイレーザーのチャージを始めたら【冬の尖兵】24体を召喚、自分の前面に立たせて一時的に視界から隠れましょう。
そのまま撃たれればおそらく貫通するでしょうし、10秒の間に目立たないよう離脱、離脱する方向は【絶望の福音】の予知じみた第六感に任せます。
主砲を回避すればそのまま接近、この大きさ相手にどこまで通用するかは分かりませんが【凍風一陣】を撃ち込みましょう。
ベール・ヌイ
「星の海に…泳ぐ魚雷って…どう?」(「ただのミサイルじゃないかなー?」と内心思うゴリラである)
護理雷招来でゴリラを召喚し、専用電動バイクにタンデムして突撃します
ベールは予めUCの条件であるセーラー服に着替えておきます
ゴリラの「野生の勘」で敵の攻撃を避けたり、バイクの「武器受け」と電撃バリアで防御しながらベールは「属性攻撃」で宇宙属性を付与させた魚雷を撃ちます
攻撃のスキがあるならゴリラも電撃を飛ばして援護します
アドリブ等歓迎です
三千院・操
戦艦が相手かぁ。流石に今回は慢心するわけにはいかないねー。
普段戦ってる雑魚と同じように対処しようとしたら、逆にこっちが消し炭になりそう!
――最善手は他の仲間との連携、かな?
よっし!ならこれを使おっと!
『妨げる者』を使って魔王に変身!
この姿なら相手の攻撃を軽減できるからね、危なそうな仲間の元へ駆けつけようかな!
そしたら黙示録の獣を盾にして攻撃を凌ぐよ!
そんで武器の『天使の唇』の自動詠唱機能を使って2回攻撃!
艦隊の操舵手を視界に捉えることができたらそいつに向かって呪詛をお見舞いしてあげよっと! 正気度いっぱいもらっちゃお!
危ないし、できるだけ他の猟兵と協力しつつ戦うよ!
※アドリブ、絡み歓迎
●戦略的撤退
「船尾損傷! 航行システム、70%がダウン!」
「離脱だ! この宙域からの離脱を急げ、体勢を立て直すんだ!」
認めねばならない。
今の解放軍は、その中心となっている猟兵は、かつて我々が生きていた頃、銀河帝国がこの世界を支配していた頃に存在していたものではない。
最後には帝国に敗北し、消えていったものと同じではない。
偉大なる皇帝まで、その刃を届かしうる危険な存在だ。
だからこそ、今は無様な敗走に甘んじるのだ。
玉砕の覚悟など初めからできている。
けれど、ディアブロ様から預かった、この戦艦を落とすわけには――!
●ラストラン
「……ねえ、やっぱり進行方向に先回りするの危なくない? 主砲、すっごく光ってるんだけど」
「とはいえ、逃げる宇宙船の速力は見た目以上に早いですよ。後ろや横から仕留めようとすれば、逃がしかねません」
「ヌイたちが……ちゃんと倒さないと……解放軍の人たちが、危ないもんね……」
帝国軍がこの戦場を離脱せんと向かう先に、その3人は居た。
三千院・操(ネクロフォーミュラ・f12510)、セルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)、ベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)が陣取るのは、宇宙戦艦の真正面。
既に猟兵が行く手を阻んでいることに気づいた戦艦は、主砲へのエネルギー充填を始めている。
船尾を破壊され、航行能力に支障が出ている帝国軍に回避の手段は残されていない。
全火力を持って、怨敵を粉砕することのみが、彼らが見出す唯一の活路だ。
「けれど、その先も詰みですよ。ここからは剣の冬、ということで。行きなさい、兵士たち」
まず動くのはセルマ。
そのユーベルコード、【冬の尖兵(ウィンター・ソルジャーズ)】によって呼び出されるのは、24体の氷像兵。
宇宙空間においても変わらぬ連携を見せる彼らが陣形を組めば、それは猟兵達を戦艦の視界から隠す壁となる。
「さて、この隙に我々は別の場所にこっそり逃げちゃいましょう」
そう呟くセルマが、迷うことなく操とベールを誘導する。
どの方向に逃げるべきかは、【絶望の福音】が教えてくれる。
ゆえに、回避に不安はない。
気を引き締めねばならないのは。
「撃たれた後、次弾まで10秒しかありませんからね。準備は良いですか?」
「うん……お供、呼ぶね……」
「こっちも大丈夫だよー。いつでも行ける!」
セルマの確認に、ベールが静かに詠唱を開始し、操は魔導書をポンと叩いて返事をする。
その直後、レーザーに飲まれた氷の兵たちが、セルマの読み通り、一瞬で蒸発し。
「【護理雷招来(ゴリラショウライ)】……!」
「【妨げる者(サタン)】!!」
猟兵達の、最後の進軍が開始される。
「さあ、獣たち! 正気度いっぱい、もらいにいこう!」
後10秒。
まず黙示録の獣を引き連れ宇宙を飛ぶのは、ユーベルコードにより、黒翼を広げる魔王の姿となった操。
先ほどまで仲間に向けていた優しさは消え失せ、狂気に染まった瞳で戦艦を睨みつけ、一気に距離を詰める。
戦艦の砲撃で獣たちが吹き飛ぼうが知ったことか、今考えるべきことは、魔導書から流れ込む呪詛を、一刻も早くオブリビオン共に叩き込むことだけ!
後9秒。
その後ろを追いかけるのは、電動バイクに乗ったベールと、抱きかかえられたセルマ。
当然だが、小さなベールにセルマを抱えることなどできない。
彼女を抱きかかえるのは、ベールが呼び出した紳士。
黒いスーツを着こなし、サングラスで決める金色の獣。
雷獣ゴリラは器用に片手でバイクのハンドルを操り、腕の中のセルマと、背中にしがみつくベールを気遣いながら砲撃の雨を切り抜けていく。
後7秒。
その彼らに対し襲い来るは、自動誘導の帝国軍ミサイル。
鋼糸を飛ばし、爆風の中を更に加速する操の後ろ姿を見ながら、ベールはぼんやりと考える。
「星の海に……泳ぐ魚雷って……どう?」
それはただのミサイルじゃないかな、という返答を、ゴリラは飲み込む。
幼い主の自由な発想を、頭から否定などしたくはない。
ゴリラはゴリラであるが、人ができていた。
「海じゃないけど……星の海。雷撃戦するよ……Урааааа!」
後5秒。
【Доверенный обстрел(ヴェールヌイ・スナリャート)】によりベールが放つ宇宙対応の魚雷が、寸分狂わず敵ミサイルを迎撃していく。
生じる爆風。
それでも、野生の勘を研ぎ澄ませたゴリラの操縦テクニックがあれば、自分たちを加速させる追い風にもなるのだ。
「くそ、くそ! 主砲チャージはまだか、奴らを止めろ!」
後4秒。
「そろそろ獣も減ってきたけど、あと少しで到着だ!」
後3秒。
「……もうちょっと、刀を準備……しないとね」
後2秒。
「ゴリラさん、もう少し右へ……ええ、射線が通りますね」
後1秒。
「デストロイレーザー! 放てぇ!!」
指揮官の号令の、まさに直前。
【凍風一陣(イテカゼイチジン)】。
セルマの放った銃弾が、砲口の最深、エネルギー炉を凍てつかせる。
それと同時に、雷を纏うバイクが、艦橋に突撃した。
●銀河帝国軍 白騎士ディアブロ直属部隊 『白城』艦隊
とうとう猟兵に侵入された帝国軍は、それでも一矢報いんと光線銃を、フォースセイバーを構える。
狂気に晒され、雷撃が襲い、冷気が彼らの意思ごと熱を奪う。
みるみるうちに数を減らし、既に再起は不可能であろう艦の中、それでも艦長たる指揮官は吠える。
「立て! せめて、せめて一人でも道連れにせねば、我らは骸の海で笑い者だと心得よ!!」
彼が戦艦1つを任されるに至ったのは、その指揮能力を評価されての事。
既に白兵の間合いまで踏み込まれた状態で、猟兵相手に勝ち目など、万に一つもありはしない。
「もう諦めたら? 分かってるでしょ、もう勝負はついたって」
とうに魔王の姿から戻った操が、半ば呆れた口調で呼びかける。
矜持といえば聞こえはいいが、もはや立っている敵は指揮官だけ。
この状態で足掻くのは、ただただ見苦しいだけなのに。
「黙れ小僧! 我々が、ディアブロ様の盾となる我々が倒れるなどあってはならん! 盾が砕けるのは、主を守るその時だけだ!!」
指揮官の身体を支えるのは、銀河帝国への、そして、白い騎士への忠誠のみ。
その執念を叫び、彼は操に斬りかかり。
「そんなにその人が好きなら、一緒にいればよかったのに」
あっけなく頭を撃ち抜かれ、崩れ落ちるその姿に、心底分からないという表情で操が別れの言葉をかける。
『白城』艦隊。
銀河帝国が誇る白騎士の盾の一つが、ここに砕け散った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵