#UDCアース
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
「あー……何だ、これ……?」
出張帰りの青年は、ネクタイを緩める手をそのままの形で止めていた。
飛行機のタラップから降りて誘導路をバスで移動。時間は昼間だが、仕事明けには違いなく、あとは食事でもして帰路につくだけ。
だけに様々な店の立ち並ぶターミナルは、正しく憩いの象徴であるべきだった。
なのに青年は呆然としている。
──そこにこの世のものとは思えない景色が広がっていた。
硬質な床に飛び散る血潮。
体の一部、または全てが損壊した状態で転がっている死体。
響く衝撃音に銃声、劈く悲鳴。
どこか遠くに聞こえる風の音。
「一体、これは……」
自分と同じ飛行機から降り立った人々、そしてスタッフも皆が立ち尽くしている。
これは地獄か?
違う、そんな筈はない、今の今まで自分が日常を過ごしていた世界だ……。
言い聞かせても目の前の光景が消え去るわけじゃない。
それは正に、今始まった殺戮劇だった。
人が人を殺している。けれど、それがただの“人”じゃないという直感はあった。ただの人間があんなに安々と、人を手にかけられるものか。
勿論それが判っても、青年は逃げることが出来なかった。気づけば自分の傍にまで、それが迫っていたのだから。
本能的に、自分はなにかの為の犠牲になるのだろうと直感した。
それはきっととても恐ろしく、おぞましい存在に違いない──けれどそれを意識する前に、青年の意識は途切れた。
「緊急事態です。本日、UDCアースの世界にある空港にて、オブリビオンが出現することが判りました」
グリモアベースにて、千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)は皆へ息せき切って話しかけていた。
オブリビオンは集団で空港内に現れ、殺戮を始めるのだという。
人間の姿に偽装できる個体らしく、既に敵は施設の各所にいる状態。凶行は殆ど無差別と言えるが、何かの儀式を完遂させる目的の可能性もあると言った。
「もしそうなら、おそらくは邪神の類の降臨儀式──」
その儀式も、召喚されるものも、放置しておけば死者の数は相応のものとなるだろう。
「この凶行を止めるために、皆様には空港に向かって頂きたく思います」
レオンは移動の準備を始めながら、素早く説明する。
「空港のターミナルは複数の施設からなる広い空間です」
飛行場の滑走路に沿う形で造られた横長の建造物だ。
最下層は地下鉄からの入り口。地上階は出発や到着のロビー。
上階は土産物店や飲食店が並ぶ造りになっており、最上階付近は展望デッキに繋がるようになっている。
これらの各所において敵は人々を襲おうとしていると言った。
「敵の数自体も相応のものです。こちらも人数が多いに越したことはありませんが──階段やメインの通路を塞ぐように応戦することで、少人数での対応も可能なはずです」
もし仲間内で連携を取ることができる場合は是非ご検討を、と言う。
それから、とレオンは付け加えた。
「儀式が敵を召喚するものである場合、特定の位置や目的地があるかも知れません。敵と戦いつつ、その場所を探すことも片隅に留めておいて頂ければと思います」
敵の大半を占めるのが『歩兵』。
人の姿を取ることができるオブリビオンであり、武装も至近から遠距離まで対応したものを身につけている。
「猟兵を含め、目についた命を狙おうとするでしょう。どうぞ、お気をつけて」
そして全力での討伐を、とレオンは言った。
グリモアが耀く。
「猶予はありません。参りましょう、戦場へ──!」
崎田航輝
ご覧頂きありがとうございます。
UDCアースの世界での事件となります。
●現場状況
空港。敵の出現位置はターミナル施設の各所で、地下階から上階まで分布しています。飛行場側の屋外にも少数います。
こちらは空港内のある程度好きな位置に降り立つことが出来ます。
●リプレイ
一章は集団戦となります。
猟兵が空港内に降り立った時点で死傷者はいません。おおよそ敵とこちらは同時に動き始めることになるでしょう。
二章はボス戦、詳細は不明です。
三章は空港内のお店などで過ごす時間となる予定です。
二章や三章からでもご参加頂ければ幸いです。
第1章 集団戦
『歩兵』
|
POW : 武器使用
【装備している武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 制圧射撃
【合図をして】から【機関銃による連続射撃】を放ち、【弾幕】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 援軍要請
自身が戦闘で瀕死になると【追加の兵士】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:すずしろめざと
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
星鏡・べりる
いや~予知って便利だねぇ!
おかげさまで後手に回る事が減って感謝感謝。
そんじゃ、お仕事始めよっか~!
うーん、挟撃されたら嫌だし、地下から制圧していこうかな。
私は基本的に【雲蒸竜変】で戦っていくよ。
機械鏡で弾を跳弾させて歩兵を始末していく感じだね。
関係ない人が居て、まっすぐ撃てない時とか通路の曲がり角とかで跳弾させるよ。
一気に始末する時は、機械鏡を分裂させて跳弾乱れ撃ちしていこ。
コード・ツクヨミってのを使うと、少しの間だけ質量のある鏡がたくさん出せるんだよ。
あっ、援軍要請しないように確実に殺してから次に行くのは心掛けるね。
現地で協力できそうな人が居たら、協力歓迎です。
弾も節約したいしね~
鹿忍・由紀
ひらけた場所での集団戦かぁ。
あんまり好ましくない条件だけど場所によっては足止めくらい出来るかな。
敵が大きく動き始めてからの対応じゃ一般人に被害が出てしまうかもしれないからどうにか早めに見抜けないかな。
「第六感」あたりで敵の違和感を感じ取れたら警戒しやすいよね。
他の猟兵達と立ち位置の確認して同じフロアに固まりすぎないようにする。
俺は出来れば階段で地の利を使って戦いたいな。
矢尻に麻痺毒を塗布したもので応戦しようかな。
一撃でしとめられなくても足止めにはなるでしょ。
近くに来た敵にはダガーで応戦するよ。
一般の人たちは死にたくなかったら騒いだりしないでね。
灯りを映す程磨かれた床を、無数の雑踏が隠す。
メトロが乗り付けるホーム。ターミナルへの改札。
星鏡・べりる(Astrograph・f12817)はくるりと廻転して、地下に降り立っていた。
「いや~予知って便利だねぇ! おかげさまで後手に回る事が減って感謝感謝」
エメラルドの瞳が捉えるのは日常の景色。
未だ未来を知らぬ人々。
けれどべりるは、それが写真のように刹那の光景であることを知っている。
観察すれば、丁度──人々の中に銃器を取り出している者の姿があった。
人に紛れたオブリビオン。
だからべりるもまた、その手に二丁拳銃を携えていた。
「そんじゃ、お仕事始めよっか~!」
閃光が弾けて、弾音の連鎖が響き渡る。
取り回し辛い機宝銃を悠々と制御して、狙ったのは一直線上の歩兵だった。
地下鉄の走る空間は奥に長い。だがその距離は、弾速が駆け抜けるには短すぎるほど。首元に飛んできた衝撃を見定める暇もなく、その一体は連続の弾丸で絶命した。
斃れて霧散する、人の紛い物。
一拍遅れて人々が悲鳴を上げる。
が、それが波及する前に抑揚の薄い声が通っている。
「必要な仕事してるだけだから。死にたくなかったら騒いだりしないでね」
僅かに灰がかった金髪、人目を惹く長身。
鹿忍・由紀(余計者・f05760)。至って感情の薄い──気怠げですらある表情で弓矢を手にしていた。
ぎり、と弦に番えるそれは、麻痺毒を塗布した一矢。
微かな曲線を描いて飛んだそれが三体を掠めると、致命傷にはならずとも──その全身を脱力させて無力化していた。
そこへ、べりるがマズルフラッシュを明滅。援軍を呼ばせぬよう一体一体を確実に処理していく。
由紀はちらと目を向けた。
「悪いね」
「ううん。こっちも、ありがとう」
跳ねっ毛を揺らして笑みを返すべりる。由紀も頷くと移動を開始していた。
「俺は階段の方で迎え撃っておくよ」
「それじゃあ私は、このまま中の敵を片付けるね」
いちフロア内でも敵の数は相当に多い。互いに協力し合えるなら、べりるにとっても何よりのことだった。
短時間の経過によって、人波に紛れようとする敵や、物陰に隠れる敵も出始めている。
だが、べりるの狙いは愚直ではない。
浮遊する丸鏡──機械鏡《ヤタ》を分霊機による操作で複製。跳弾の為の壁となるように前方に展開していた。
同時、全弾を発射する。
雲蒸竜変。折れ線を描く弾丸の奔流が、まるで竜を描くように。隠れるものも逃げるものも、狙い違わず撃ち貫いていた。
階段に近い敵は、人を襲いながら上階を目指そうとしているようだ。
しかしそのどちらも由紀が許さない。
「悪いけど、ここで止まってもらうよ」
矢を引いて、射放つ。
階段の上からならば、向かってくる敵は良い的だ。下方への射撃は速度も増して、次々に敵を沈めていく。
至近に寄ってきた敵がいれば──ベルトから素早くナイフを抜いていた。
何でもない仕草のように、撫でるように刃を振るって歩兵を切り捨てる。直前まで武装を隠して人に紛れる個体も居たが、第六感がその違和を感じ取っていた。
瞳はどこまでも淡々と。由紀は迫りくる敵を撃退し、道を譲らなかった。
「敵はまだまだ多そうだけどね」
ただ、上の階に目を向ければ他の猟兵の姿も見える。
彼らと軽く合図を取り合い、由紀はまた応戦に戻った。
「敵の目指すところはいまいち、分かんないけどね……ま、今は人命と目の前の敵だ」
そう、にわかに呟きながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
赫・絲
どこに紛れてるかわかんないっていうのは厄介だなー。
とりあえず、見つけたのから手当たり次第千斬り飛ばす!
手元の糸を広く展開しても一般人を巻き込まないように、ある程度天井が高くて開けた場所で戦う
歩兵達の遠距離攻撃は柱や壁、遮蔽を上手く使いながら【見切り】、こちらも遠距離攻撃で応戦
一般の人に被害が出ないように、見つけた歩兵に瞬時に鋼糸を伸ばして【先制攻撃】を仕掛ける
目に付いたやつからどんどんいくよ!
糸には【全力魔法】で増幅させた、雷を纏わせて【属性攻撃】を
雷撃を乗せた糸の斬撃と縛術で出来る限り敵を一撃で落としにかかる
敵の進行方向や行動はよく確認
儀式に通じそうな怪しい動きがあれば、周囲の仲間に知らせる
駆爛・由貴
コイツはまたえげつねぇ奴らが現れやがったな
とにかくこんなふざけた儀式は終わらせて、とっとと親玉をふん縛ってやるぜ!
まずは俺の【ハッピー・フレンド】で歩兵の奴らをハッキングする
動きを止めるだけじゃなくてど真ん中で同士討ちさせて一気に混乱させてやるぜ
その後は俺の武器である【オンモラキ】と【バサン】を遠隔操作して奴らに砲弾をプレゼントだ!
援軍要請されないように、念入りに死にかけの奴を狙って攻撃するぜ
もし援軍が来たらハッキングしてる歩兵を使っての時間稼ぎもやるか
使えるモンは何でも…だ
一緒に行動する猟兵とも連携を取り合って、一般の奴らがやられないように気を付けねぇとな
さぁ!楽しい楽しいお仕事の時間だ!
上野・修介
【POW】敵の殲滅
「まるでアクション映画だな」
散会し敵を探索。
事前に他の猟兵への連絡手段を確保しておき(携帯の番号、ラインアドレスなど)戦闘前に味方全員に敵の位置を連絡。
自分は素手格闘「グラップル」
相手は銃火器持ち。
元より得物の不利は承知の上。
気合で負けたらそれこそアウトだ。
決死の「覚悟」を決め「ダッシュ」で飛び込み、「捨て身」で相手をぶっ潰す。
足を止めれば間合いと数の差でやられるので、狙いを付けられないように常に動き回る。
もしくは相手の懐に飛び込んで肉薄し、盾にすることで同士討ちを誘う。
UCは動き回ってる間は命中重視、肉薄している間は攻撃力重視で。
曲面を描いた天井に広々とした空間。
人が行き交い列をなす。
地上階、ロビーはごった返していた。人が外から入り、同時に留まる──ここもまた贄の調達には絶好の場であったことだろう。
だから人の皮を被ったオブリビオンは、短銃を取り、長銃を取り、刃を取り。
今正に、一斉に狩りを始めようとしていた。
──けれど。
その中心にいた個体の動きが全て、止まる。
「さぁ、楽しい楽しいお仕事の時間だ──頼むぜ、俺のフレンド!」
響いたのはあどけなさも残る少年の声。
武器を持つ歩兵の前で、怖じけることもなく視線を巡らせる、駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)。
赤い電脳ゴーグルから電子空間を広域に展開。神経細胞をもハックする信号を送ることで、敵の動きを完全に静止させていた。
ハッピー・フレンド(ミンナノトモダチ)。その能力は止めるだけに留まらず、更に脳に不正な波形を伝達。互いに銃を向けさせ、敵に同士討ちをさせていた。
銃弾によって、倒れたのは歩兵のみ。
騒ぐ人々と同等に、或いはそれ以上に敵自身が驚愕を覚えていたことだろう。
無論、周囲の歩兵達はすぐに敵が現れたと判断し、銃口を構え始める。
が、目立つ動きをすれば標的になるだけだ。
「自分達から姿を現してくれるなら、好都合だね」
まるで人形のような可憐な少女が手をのばしていた。
赫・絲(赤い糸・f00433)。
すらりと腕を掲げる仕草は、一枚の絵画のよう。しかしそれは──容赦のない死へと誘う、鮮やかながら鋭い戦舞。
絲はグローブから放った鋼糸を宙に奔らせていた。
濃密な魔力を含んだそれは耀く雷を纏っている。瞬間、一挙に絡みついた糸は、ばちりと刺激的な音を鳴らして彼らの躰に食い込んだ。
熱線の如きそれは、抵抗なく肉体を裁断する。
縁断・雷縫(エニシダチ・ナルカミヌイ)の名に違いなく。糸は僅か一瞬の内に数体の命を断ち切っていた。
遠方の歩兵がこちらを狙い発砲してくる。けれど絲は警戒も怠っていない。
「甘いよ!」
くるっと華麗に側転して回避。そのまま柱を盾にしてやり過ごすと、一瞬の隙を見て逆に糸を放ち、その一体を討っていた。
由貴は斃れた歩兵を見て眉をひそめている。
「しっかし、空港で無差別の殺戮とはな。またえげつねぇ奴らが現れやがったもんだ」
「ええ、それに銃で武装して集団の襲撃とは──」
まるでアクション映画だな、と。
上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)は消えゆく死体を見て呟いていた。
尤も、それを討伐しに来た自分達も同じこと。
ならば“主役側”らしく敵を撃退するだけだ。
「俺はあちらを見ておきます」
二人へ言って、修介はカバーしきれていないところへ走っていく。
到着時から修介は、敵の位置を確認して仲間に連絡を続けていた。それは作戦を間違いなくスムーズに運ばせていることだろう。
その上で自分自身も戦闘に全力を賭す。
「残らず、殲滅してやる」
拳を打ち鳴らす。
修介にとっては自らの肉体が何よりの武器だ。敵は銃火器持ちだが──得物の不利は承知の上。
「気合で負けたら、それこそアウトなんだよ」
見据えたのは、短機関銃を向けてきている一体の敵だった。
全弾を受ければこちらは蜂の巣。
それでも修介は、退かない。
決死の覚悟を決めて全力で疾駆。一呼吸の内に距離を詰めて、捨て身の突撃を放った。
まばらな銃声が一瞬遅れて響くが、その銃口は既に修介の体当たりによって明後日の方へ向いている。
その僅かな時間で修介は拳を握り込み、一撃。裂帛の打突で歩兵を吹っ飛ばしてその生命を絶った。
そのまま足を止めず、真横に跳躍。床を穿つ弾丸をすんでの所で避けると──着地と同時にごろりと回転して立ち上がり、再び疾走する。
「止まったらやられる、なら……止まらないさ」
左右から狙われれば、片方の懐に飛び込んでゼロ距離へ。その一体を盾にするように回り込み、敵の射撃で敵を穿った。
背後側から、後続の個体が現れるが──不意にその歩兵の首が、千斬れ飛ぶ。
「隙だらけってやつだね」
倒れ込んだ体の向こうにいたのは、糸を飛ばしていた絲の姿であった。背中を向けた敵を見逃さず、対処していたのだ。
由貴も一度合流して見回す。
「少しずつ、敵も減ってきたかな」
「みたいだね」
絲もその実感に頷く。
地下の仲間が善戦しているからでもあろう、新たな敵の流入はない。
その上でこのフロアの面々が獅子奮迅の働きをしているため、その気配が確実に減り始めているのだ。
絲は同時に敵の動きをずっと観察してもいた。
「やっぱり、敵は上の階を目指してる感じだね。あとは、外にも」
というのは、搭乗口側へと移動しようとする敵も少数ながらいたからだ。
怪しいのは上階と、外。
絲は連絡できるものには状況を連絡して、万全を期することにした。
そしてやるべきは、残る敵の掃討。
由貴は自律ポッド“オンモラキ”、“バサン”を展開している。
「こんなふざけた儀式は終わらせて、とっとと親玉をふん縛ってやるぜ!」
人々が退避を始めようとしている現在、敵の識別は容易い。
由貴は二機を遠隔操作し、新たに発見した個体へと飛ばしていた。
その歩兵は二つのポッドの間で一瞬、銃口を彷徨わせる──それが命取り。ビームランチャーとライフル弾を撃ち込まれ、跡形もなく消し飛んでいく。
絲も戦いながら、疾駆していった。
上階は仲間がカバーしている筈。だから自分はまず、地上での敵の動きを辿る。
外に向かうに連れ、敵数も減る。だが敵の殺意が変わらないなら、絲の手も止まりはしない。
銃弾を掠めるに留め、入れ違いのように放った糸で──足元を掬う。
脳天を地に打ち付けさせて命を奪うと、続く敵も薙ぎ、払い、裂き。立ち止まることなく掃討を続けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ワズラ・ウルスラグナ
ふうむ。儀式か。生憎俺には策も知識も無いな。
ならば下手に奇を衒わず、俺なりに解決を目指そう。
虐殺が儀式の一部ならそいつを止める。人助けに儀式の邪魔も出来る。一先ずはそれで十分だ。
守る事こそ俺の戦いと定めたなら、向かうは最も人通りの多い場所だ。
飛行して敵を探す。歩兵などと浮いた格好をしていれば見落とす事も少なかろう。
問題は一般人を巻き込まぬ事。その為に戦獄龍逆鱗を使う。
かばうを筆頭に技能の限りを尽くし、周囲や人々、居るなら付近の仲間を守り、返す刃で叩っ斬る。
鉄塊剣に獄焔、爪に尾に拳に翼。五体全てを用いてあらゆるレンジに対応する。
代わりに攻撃を一身に浴びるわけだが、望む所だ。笑って挑ませて貰おう。
到着ロビー側通路。
屋外からターミナルの中に続くこの道は、地上階の中では広い面積ではない。
だが飛行機が着いた直後の現在──局所的には人口密度の高い場所の一つだった。
スタッフや旅行帰りの家族、仕事明けのサラリーマン。連なる人間を標的に、人を象った過去の具現が銃器を構える。
ほんの一瞬、僅かの間隙を置いてしまえばそこは地獄となったことだろう。
だが、銃弾が捉えたのは人の体ではなく──黒い龍鱗。
「悪いが手出しはさせん」
怯むでもなく、痛みに咽ぶでもない。
ただ言葉通りの意志を伝える声音が響く。
オブリビオンの眼前に飛来して銃弾を庇い受けて見せた、ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)。
穿たれた傷から獄炎を零しながら、後退することなく。威力を増大して返すように、鉄塊剣で強烈な斬撃を叩き込んでいた。
衝撃波で周囲の三体ほどが散っていく。
ワズラは静止せず、宙を翔けて高速の移動。前方からの銃弾を体で弾きながら、速度のままに暴風の如き剣撃を見舞っていた。
人々が退避を始めると、ワズラはそれを背に護るように立つ。
攻撃を一身に受けることに迷いなどなかった。
此処では何かの儀式があるという。
水面下で何かの狙いも働いているらしい。
だが生憎、策も知識も持ち合わせはなく。元よりそれを弄する心算もない。
ならば奇を衒わず、自分の出来ることに邁進するのみ。
虐殺が儀式の一部だというのなら、それを止めればいいのだ。
だから守ることが今のワズラの戦い。
「さあ、かかってこい」
歩兵達は無論、ワズラを排除しにかからざるを得ない。自分達の命が危ういからだ。
銃弾を一斉に浴びせてくる。その威力は間違っても弱くはなかった。
だがワズラにはそれもまた望む所。
「その力、返させてもらおう」
弾丸が体に火の粉を上げさせる、それにすら好戦的な声音で応えるように。ワズラは笑って衝撃の嵐を受け入れていた。
そしてその威力を一層高めて返す。
戦獄龍逆燐(インペリアル・ラース)──それは守りとカウンターという、求められる戦法の具現だった。
受けた弾速以上の勢いで獄炎を返し二体を灼く。近場の一体は剣で殴り伏せ、ミドルレンジの敵には翼で肉迫、旋転して尾で薙ぎ払った。
そのまま通路を逆流するように飛行し、屋外へ続く経路上の敵を全滅させていく。
こうして通路内の百以上の人間の命が守られた。
人々にとっての眩い希望は──過去から這い出た者達にとっては寧ろ、恐ろしき怪生のように映ったことだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【POW】
……ひどい、有様だわ……。
あまりこう、血の匂いがまとわりつくと、「疼いて」しまう……、知らないわよ。
――あなたたちが、【ヘイゼル】を起こしたんだわ!!
――がはははっっ!!あァ?雑魚がこの俺様に銃口を向けてンじゃねェ!
ロックブレイクでまず突っ込んで、相手を1人くらいぶっ刺してやンよ。
その後ァ、【ワトソン】を素手に手甲の様に纏って【劇場型犯罪】だ。
単純に、砕いて、斬って、折って、……。
なァ、素手だよ。相手が死ぬのは素手じゃないとよォ、感覚がわっかンねェんだよなァ。
銃なんざ使ってンじゃねェよ!「つまんねェ」だろうがッッ!あ゛ァ!?
きひ、きひひ!!ぎひははは!!ビビってんじゃねェぞ三下ァ!!
店が軒を連ねる、上階低層部。
モールとなっているそこには冷えた空気に、血の匂いが満ちていた。
猟兵達の奮闘は確かに凄まじい戦果を生む筈だ。だが敵数の方が圧倒的に多い状態で、無傷で終わることもまた難しい。
降り立った黒衣の佳人──ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)もその現実を目の当たりにしていた。
悲鳴に銃声。
呻き声に衝撃音。
死人は未だ出ていない。しかし同じ猟兵のものか、一般人のものか。血潮が床を、硝子を、赤く穢していた。
「……ひどい、有様だわ……」
ヘンリエッタは応戦をしながら周囲を見渡す。
ここにも複数の猟兵がいるが、敵を圧倒できているかは疑問だった。押されてしまえばそれだけ血が流れることになるだろう。
意識して、瞳に紅色を映す。
どくん、と胸の奥の拍が速まった。
ヘンリエッタは不安げな表情になる。
それは決して自分の身を心配しているわけではなかった。
確かに、自分にこの状況が打破できるかどうか判らないけれど──それ故に自分の中の“自分以外”が出てきてしまいそうになるから。
「困ったわね──あまりこう、血の匂いがまとわりつくと、「疼いて」しまう……」
胸を押さえて、意識の水面があやふやになるのを自覚する。
背中合わせになっている幾つもの自分が、裏返り、廻転するように入れ替わるのを感じる。
一瞬だけ明滅する視界。
その目で捉えた前方には、こちらに銃を向ける歩兵の姿があった。
だから“ヘンリエッタ”が最後に零した言葉は、呪いでも命乞いでもなく。
「知らないわよ。──あなたたちが、【ヘイゼル】を起こしたんだわ!!」
ふっ、と感情の色が消えた。
直後、眉が釣り上がり、瞳には爛々とした戦意が宿る。表情には淑やかさと嫋やかさの代わりに乱雑さと乱暴さが滲み出ていた。
──がはははっっ!!
響き渡るのは、死戦を眼前にして込み上げた哄笑。そして敵へ吐き捨てる言葉。
「あァ? 雑魚がこの俺様に銃口を向けてンじゃねェ!」
真ん前に踏み込むと黒剣ロックブレイクを突き出し一撃。躊躇なく心臓を貫き破ってその一体を絶命させる。
くずおれる歩兵から粗雑に刃を引き抜くと、ヘイゼルはそこでモールを睥睨していた。
閃光が瞬き、弾丸が飛び交う戦場。
はッ、と軽く息を吐く。
刃を下げるとワトソン──UDCを素手に手甲の如く纏った。
刹那、疾駆。銃弾の雨を掠めながら口の端を持ち上げて。一息に歩兵の面前に迫ると、その銃口をへし折っていた。
逆の手で胸ぐらをつかみ引き寄せる。
「──なァ、素手だよ。相手が死ぬのは素手じゃないとよォ、感覚がわっかンねェんだよなァ」
破片を地面に叩きつけ、拳をぎりと握りしめる。次には敵の顔面を殴りつけて頭蓋を粉砕していた。
「銃なんざ使ってンじゃねェよ! 「つまんねェ」だろうがッッ! あ゛ァ!?」
応えるまでもなく、歩兵の命は消えていた。だがヘイゼルは止まることなく周囲の個体を砕き、引き裂き、沈めていく。
「きひ、きひひ!! ぎひははは!! ビビってんじゃねェぞ三下ァ!!」
劇場型犯罪(ジャック・ザ・リッパー)。
箍が外れた暴乱は、無論射撃にも刃にも怯むことはない。自身の血にすら尚昂ぶるように、敵を壁に打ち付け、臓物を潰し、命を霧散させていった。
恐怖に逃げる敵すらいたことだろう。
だが、それも一切許さずに。ヘイゼルはモールの敵をその手で全て絶っていた。
大成功
🔵🔵🔵
榛・琴莉
「今時、生贄信仰なんて流行らないでしょうに…!」
邪神絡みはいつもこうです。
ホイホイと一般人を巻き込んで…贄でも供物でも、自分一人でやってほしいものですね。
そんなものに手を出さないのが一番なんですけど。
展望デッキ、またはその付近に転移を。
まずは周囲の敵を一掃し、避難場所を確保。
それから一般人に避難を促しつつ、上階の敵を一掃します。
敵の攻撃は可能な限り【見切り】回避、避けられないなら【オーラ防御】で対応。
【スナイパー】で1人ずつ的確に狙い、氷の【属性攻撃】で片っ端から凍らせてやります。
密集しているなら【範囲攻撃】でまとめて。
一筋縄でいかなそうな相手には【全力魔法】の【CODE:ブライニクル】
ヴォルガーレ・マリノ
降臨儀式を行うのであれば
やっぱり屋外…展望デッキか飛行場付近ではないでしょうか
上階に降り立ちつつ、外の様子も気にしておきましょう
降り立ったら敵の眼前に立ち一般の方々へ避難を促します
出撃時点ではお知り合いの方はいませんが
近くに降り立った方々と協力出来たらと思いますっ
…アラ…本当にたくさんいらっしゃるんデスね…
これは時間がかかりソウ
…嬉シイ…なんて思っちゃ…いけまセンね
威力重視の攻撃は【見切り】で回避シ【カウンター】で攻撃しマス
命中精度が高イ攻撃は【武器受け】で防御デス
攻撃回数が多イ攻撃は【激痛耐性】で耐えまショウ
【ダッシュ】で相手の懐に入っテ身体を掴ミ【怪力】で
その対象を敵の方まで投げ飛ばしマス
風が吹いている。
柵の向こうは雄大な空と灰色だった。
屋上、展望デッキ。そこは飛行場を見渡せる高台だ。
飛行機が加速する始点は遠くにあるが、搭乗者を回収する場所は比較的近くにあり、停まっている機と離着陸する機がよく見える位置と言えるだろう。
だから外を見ている人々は気づかない。
自分達の背中に無数の銃口が向けられていたことに。
「させません……!」
と、氷片を靡かせてそこへ飛来してくる影があった。
風に揺れる黒髪と、白い肌。美しさと同等の冷たさをそこに宿す、榛・琴莉(ブライニクル・f01205)。
かちりと構えるのはMikhail──アサルトライフル。
氷色のマズルフラッシュを焚いて弾丸を連射。放射状にばら撒くように射撃し、人々を狙おうとしている歩兵を纏めて穿っていた。
弾頭に触れた敵は急速に凍結する。深い魔力がもたらした冷気の呪縛だ。
その隙に人々を誘導するのは、麗しい令嬢だった。
「皆さんっ、私達が守りますから。どうか落ち着いて逃げて下さい……!」
真摯な声音で懸命に。さりとて上品さも損なわない、ヴォルガーレ・マリノ(天真なるパッツォ・f03135)。
一般人をターミナル内へと導きながら、自身は敵の壁になっていた。
人々は混乱しながらも屋内へ急ぐ。階下にも敵はいるはずだから、安全なところに留まることを忘れぬようにという忠告もしっかりと聞き入れて。
歩兵達は当然、それを逃すまいとして銃を向ける。
が、その手元が凍りつく。
琴莉が違わぬ狙いで冷気を浴びせていたのだ。
ヴォルガーレはぺこりと頭を下げる。
「ありがとうございますっ」
「いいえ。こちらも避難を手伝っていただけて助かりました」
琴莉が応えると、ヴォルガーレもそれにまた、丁寧に頷きを返した。
そして敵に向き直る。
「本当にたくさんいらっしゃるんデスね……。これは時間がかかりソウ──」
呟く声音が少しずつ変化していた。
軍勢を目の前にして、自身を縛る心の枷が落ちていくのを感じる。その相貌に浮かぶのは、不安よりも恍惚だった。
「……嬉シイ……なんて思っちゃ……いけまセンね」
言葉とは裏腹に、その“悪癖”は確かに精神の奥から顔を覗かせる。
──アァ……。
今直ぐに、闘争を。
それを求める心が弾けたように、ヴォルガーレは敵の中枢に飛び込んだ。
ランチャーが飛んでくれば紙一重で避け、横に旋転。リベラツィオーネ・イスティント──戦斧で殴りつけて一体を吹っ飛ばす。
マシンガンを連射されれば、痛痒に耐えながらそこへ疾走。懐へ入って腕を引き寄せ、そのまま体を投げ飛ばして敵の銃撃に晒していた。
自身の血が流れれば、そこに滾る心を乗せてやり返す──深紅の返礼。死の舞踏を踊るように、ヴォルガーレが舞うほどに敵の死体が積み上がっていた。
この間、歩兵達は必死に何かを守っていた。
床に描かれた単純な図形と、小さな神像──儀式の為の装置だ。
何かを降臨させるための邪教の魔法陣。
今は変化はない。本来は、無数の命を贄にしてそれを実行する予定だったのだろう。
「今時、生贄信仰なんて流行らないでしょうに……!」
琴莉は思わず声を零す。
あんなものを動かす為に数百、数千の命が危機にさらされたかと思うと、握りしめる手に力が籠もる。
「邪神絡みはいつもこうです──ホイホイと一般人を巻き込んで……贄でも供物でも、自分一人でやってくれればいいものを……」
否、本当ならそんなものには誰も手を出さないのが一番に決まっている。
だから琴莉は氷晶の如きオーラを展開し、弾丸を防ぎながら射撃。魔法陣を守っている歩兵達を貫いていく。
敵も捨て身でかかってくるが、そうなれば琴莉も一層手加減をしなかった。
「これで、斃します」
銃口から凄まじいほどの魔力が漂う。弾丸が命中して弾けると、空気中に巨大な氷槍が出現。歩兵に突き刺さっていた。
CODE:ブライニクル。
絶対零度の塊となったそれは面前の歩兵を跡形もなく四散させていく。
敵の思惑は禍々しいものだったろう。が、猟兵達は殺戮を確かに防いでいるのだ。
実に死者はゼロ。
敵の贄になったものはおらず、儀式は完全に失敗だった。
残る数体の歩兵達は、どこか口惜しそうに街の方向を見つめている。
それは本来、空港を蹂躙したあとで街に攻め入るつもりだったからだろう。
たった一人でも、無辜の人間が死んでいれば。
しかしそれは上手く行かなかった。
だから、歩兵は神像を飛行場へ“投げ落とした”。
ヴォルガーレははっとして下方の地面へ視線をやる。外にも気を張っていたが故に、それにすぐに気づいた。
「歩兵達……逃げようとしているみたいです。儀式の道具を持って」
二人は展望デッキの敵を掃討後、地上に降りた。
ヴォルガーレは掴まらせてもらっていた琴莉から離れつつ──逃げる敵を見やる。
飛行場に少数の歩兵がいることにはずっと気づいていた。ただ、その近辺には一般人の姿がなかったために向かう必要性が低かっただけで。
どうやら、彼らは退避の準備を整える為の個体だったらしい。
儀式に使う神像を持って、真っ直ぐに何処かを目指していた。
琴莉はその背を追うように翔ける。
「目的地は──?」
「多分……」
と、ヴォルガーレは呟いた。
直感していることはある。
敵が空港を選んだのは人の数が多いからだけではなく──丁度いい“退避”と“運搬”の為の手段があるからなのだろう、と。
敵の動きを追っていた他の猟兵とも、すぐに合流した。
その面々は既に、歩兵が飛行機内へ入ったことを目撃している。
ついさっき、乗客を降ろしたばかりの大型旅客機。未だタラップが掛かったままになっているそこを、歩兵達は上っていっていた。
ばき、ばき、と轟音が鳴る。
飛行機は無理矢理に発進するように、タラップを引き倒そうとしていた。
猟兵達は頷き合い、足場が鉄くずになる前に登攀。全員で飛行機の内部へと飛び込んでいく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『禍罪・擬狐』
|
POW : 恐レヨ。
【燃え盛る前肢】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 惧レヨ。
【長い尾】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 畏レヨ。
【炎の尾から青い狐火】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:高山
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「榛・琴莉」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●蒼天
猟兵達を襲ったのは凄まじいほどの慣性力だった。
飛行機が無理な加速をしているために、体があべこべの重力に持っていかれるのだ。
「きゃっ……!」
壁に叩きつけられそうになりながら、ヴォルガーレは何とか体勢を保つ。
由貴は這うような姿勢をとって、見回していた。
「どうなってんだ。オブリビオンが操縦してるのか?」
「んー、どうかな? そんな器用そうには見えなかったけど──」
呟くのは絲だ。危機にあっても取り乱す様子はなかったが……同時に思案顔でもある。
狭い入り口を通り、何とか座席のある空間に出て修介は四方を見る。
「人はいないか……、やはり歩兵が操縦席に?」
「もしかしたら、パイロットは飛行機にまだ残っていたのかも知れないわ」
席に掴まりながら、ヘンリエッタは口を開いた。
となれば、オブリビオンに脅されて操縦しているのだとは推測できる。
そしてパイロットがいれば飛行機は飛ぶ。
大きな震動が奔って、がたがたという音が響いた。気分の悪くなるような気圧の変化を伴って──窓の外の地面が眼下へ消え始めていた。
べりるはわぁと驚く。
「飛んじゃった──!」
「止めないと……!」
琴莉は歩兵を探して前進する。
数体はすぐに見つかった。退避の動きまで察知されていると予想していなかったのだろう。驚いた様子のままに倒されて散っていった。
だが操縦席にもうすぐにたどり着くという、丁度その時。
猟兵達の前に一人の歩兵が現れた。
その顔は狂信者そのもの。おそらくは、放っておけば自分達は死ぬだけだと確信したのだろうか。
床に素早く引いた図形に像を置いて──自分を刺して零した血を浴びせた。
それは、数千の命の比べれば微々たるものだったろう。だがその信心は確かに形を成して、そこに不完全な邪神を召喚していた。
それは嘗て農耕を司った神だった。
信者達は誤った信仰で変化を加えて、それを強大な邪神として蘇らせようとしたのだ。
しかし儀式もままならず喚び出されたそれは、もはや神の残滓に過ぎない。殺意と暴力性の塊となって、目につく全てを破壊するばかりの力の権化となっていた。
獣のような瞳をワズラは見つめる。
「自分の命を使って召喚した、か」
「厄介なことに変わりはなさそうだね」
由紀も刃を握りしめ、それに相対した。
上野・修介
※絡み、連携OK
【POW】
「アクション映画の次は妖怪退治か」
乗り込んだ直後に機内の案内板などで座席の位置などを大まかに確認しておく。
またUDC組織と連絡を取り、戦闘状況によっては万が一に備えて空港と周辺の地域への避難誘導をしてもらう。
得物は素手格闘「グラップル」
大型とは云え旅客機内部の密閉空間。
敵の動きは制限されるがそれはこちらも同じ。
味方の邪魔にならないように基本的にはヒット&ウェイ。
座席を遮蔽物として利用、前足と尻尾に警戒しつつ「覚悟」を決め「ダッシュ」で懐に飛び込む。
下手に時間をかけて飛行機墜落なんてことになってはめもあてらないので、UCは短期決戦「捨て身」の攻撃重視。
駆爛・由貴
オイオイ!この中でドンパチかよ!?
たしかこういう飛行機は銃弾の1、2発で穴が開いてもどうこうなるもんじゃねぇって話は聞いたことあるけどよ
少し考えて攻撃しねぇとな
よし!オンモラキ!バサン!アイツに取り付け!
ただし砲撃は無しだ!
ランチャーだのライフルだのはあぶねぇ
アイツが動きまわらねぇように邪魔したり体当たりをさせるぜ
オイ壊すなよ!そいつら高いんだからな!
その隙に奴を俺のホムラⅣでスキャンしてスィート・スポットを発動!
見つけ出した弱点や脆弱な箇所をベロボーグで連続攻撃だ!
尻尾攻撃には見切りを使うぜ
こっちにゃお前と違って本物の幸運の神様が味方にいるんだ!負けるかよ!
他の猟兵とも連携を取って敵を叩くぜ
ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
馬鹿なことを!……本当に、タイミングが悪いんだから!――ああ、もう、あああ!血を、見せないでってば……!
【疑似餌】を自分のUDC――ワトソンに与えて、こちらも召喚するわ。【魔犬の襲撃】!!
ただしここは機内だわ、大きさも調整しないといけない……集中して、ヘンリエッタ……。あの邪神を抑えられるサイズで、バスカヴィルを呼び出すわ!
黒く燃え滾るような眼をしたこの魔犬は、とても私に忠実な邪神よ。
バスカヴィル!!あの邪神をあなたが動きを封じなさい。喉笛に噛みついて、押さえつけるのよ。
【ロープワーク】でバスカヴィルの背に乗って、私は【ワトソン】で顎を殴って砕く!
――悪いけど、餌になってもらうわよ!
榛・琴莉
確かに、一人でやれとは思いましたけど。
まさか本当にやるとは。
「邪神などに、死ぬ程の価値があるとでも?」
それともまさか、本当に神の復活が叶うと思っていたんでしょうか。
念の為、コックピットを確認しに行きたいんですが…
邪神が邪魔ですし、何より。
「相性、悪いですよね」
炎使い、味方なら頼もしいんですけど。
敵となると、実に厄介です。
敵の足元を狙い、【全力魔法】の【CODE:ジャック・フロスト】
【串刺し】で一瞬でも隙が出来たら、そこを狙ってコックピットへ。
攻撃されたら、【見切り】回避するか【オーラ防御】で対処します。
コックピットに一般人がいたら守るよう行動。
歩兵など狂信者がいたら、さっさと片付けて戻ります。
ヴォルガーレ・マリノ
操縦士さんは今もなお、怖い思いをされている
一刻も早く操縦席へ向かわなくちゃ…っ!
…その為には、まずアナタに退いてもらわナイと
神様がお相手だなンテ…フフ…チョット緊張しちゃいマス
【ダッシュ】【ジャンプ】を使イ、相手に接近しまショウ
狙われ易くナルかもしれまセンが後衛の猟兵サン達の
好機を生み出せレバ、そう愚策でも無イですヨネ?
【見切り】【野生の勘】で回避シ
避けられなけレバ【武器受け】で防グか【激痛耐性】で耐えマス
大威力の一撃は痛そうデスがアナタがソレを使う時
ワタシもUCを使う時デス
アナタの血はどんな味がスルのかしら
アナタのお肉は固イの?柔らかイの?
アア…待ちきれまセン…!
はしたナイなんて言わナイデ
鹿忍・由紀
飛行機の中は狭いからデカい図体してたら戦いにくいでしょ。
こんな暴力的になっちゃって、農耕の神様が見る影もないね。
ああ、戦う際はパイロットの人を巻き込まないように敵の攻撃の動線にも気をつけないとね。
ちゃんと着地してくれないと俺たちも困るからさ。
狭いと罠を作りやすくて助かるな。鋼糸で「罠使い」によりバリケードを作る。
壁と罠を兼ねての鋼糸のバリケード後方から攻撃をしかけていく。
近づくと厄介そうだから出来るだけ距離をとってユーベルコード「影雨」で攻撃するよ。
鋼糸のバリケードで一部の攻撃をある程度和らげてくれること、運が良ければ罠としてひっかかってくれることを期待。
星鏡・べりる
あちゃ~、早く片付けなくちゃ。
これは、隠蔽とか被害総額とか考えたくないなぁ……
というか、邪神そのものより、状況が不味いよコレ!
飛行機が街にでも突っ込んだら大変な事になっちゃう!
よし、今日は出し惜しみは無し!
弾丸は宝石弾を使おう、コスト凄いけど選んでられないよね。
えーっと、これにしよ!アクアマリン!
海と水の加護、燃えてるし効く?
分かんないけど、効け!!
さっきと同じく【雲蒸竜変】で戦ってるみんなの合間を縫って跳弾を当てていくよ。
距離取ってるから尾以外は大丈夫だと思うけど、機械鏡を増やして、宝石弾撃つのに魔力回して、跳弾の計算もするから注意力散漫かも。
うう、ダメージ覚悟だけど、できたら誰か助けて~!
赫・絲
すごいトコで儀式を実行してくれたもんだね……。
一般人に被害が出にくそうなことだけが救いかな。
倒して無事に帰ろー。さすがに墜落死はごめんだよー!
戦闘場所が狭いし飛行機の運行に支障も出そうだから、素早く【先制攻撃】を仕掛けて鋼糸を射出
【2回攻撃】も使って一気に全ての糸を敵へと向け、捕らえたなら引き絞り
身動きができないようにしっかり固定
味方の攻撃のチャンスを作り出すよ!
チャンスを潰さないように、敵の攻撃はしっかり【見切り】避ける
もし押さえ込みきれないようなら、
一瞬だけ【全力魔法】で増幅した【属性攻撃】で糸から雷を這わせてショック打撃を
あまり使うと飛行機に影響がでそうだから、使うタイミングは慎重に
ワズラ・ウルスラグナ
邪神とて恐るるに足らず。
只昂ぶるのみよ。
とは言え、一般人が犠牲になる恐れはまだあるな。
パイロットが居るかも知れんとなると飛行機は墜とせん。
なるべく飛行機を守る様に立ち回る。
最悪パイロットを救出出来れば良いが。
戦闘では引き続き戦獄龍逆燐にて守りながら戦う。
警戒すべきは尾と炎だ。
尾は切り落としてしまいたい所だが、無差別攻撃の炎が一番拙い。
とは言え無差別だからこそ俺を避ける事は難しかろう。我が戦獄で喰らい、獄焔で返してやる。
いざとなれば戦獄龍終極を用いる。
俺も僅かながら命を燃やそう。
飛行機の墜落防止、あるいはパイロットや仲間を救出しての脱出にも使うぞ。
摂理を覆し、奇跡を起こしてこそユーベルコードだ。
蒼空へ巨大な翼が昇っていく。
ジェットエンジンの唸りを響かせて、機体は空港から高速で離れ始めていた。
管制空域で混雑する通信など虫の羽音。空飛ぶ金属の塊は、悪意とレバーと幾ばくかのスイッチだけで死への方舟に変貌していく。
高速で過ぎ去っていく景色を遥か下方にしながら──飛行機内部では神の残滓がその力を露わにし始めていた。
ゆらりと揺れる炎の尾。
牙の間から零れる吼え声。
殺意に澱んだ瞳。
禍罪・擬狐──歪められ、穢された神の成れの果ては、猟兵達を一人残らず喰らおうとばかりに床を爪で咬み、戦いの気勢を見せ始めていた。
絲は膝をわずかに落として臨戦態勢を取りつつ、ちらと床を見やる。
そこには血を流して斃れた歩兵の姿があった。
「すごいトコで儀式を実行してくれたもんだね……」
「そうですね──確かに一人でやれとは思いましたけど。まさか本当にやるとは」
琴莉は瞑目しながら、それでも声音は静かだ。
邪神などに死ぬほどの価値があるとでもいうのだろうか?
或いは本当に、神の復活が叶うと思っていたのだろうか?
敵の考えるなど知る由はない──だが、どちらにしても。
「……愚かな行いですね」
「ええ、本当に──馬鹿なことを!」
ヘンリエッタは形の良い眉根を寄せて、胸元を押さえていた。
そこにあるのは怒りでも呆れでもない。ただ、一度は飽きたように鎮まった人格が、己の中から再び顔を出すのを感じていた。
「……タイミングが悪いんだから! ――ああ、もう、あああ! 血を、見せないでってば……!」
どくん、と自身の内奥が脈動している。
それでも、ここでヘイゼルが暴れればどうなるかは不安でもあった。彼ならこの強敵にも喜んで打って出るだろうが、今はその覇気が少しだけ怖い。
(「だから、私自身で何とかしないと」)
そうと決めれば、ヘンリエッタは衝動を抑え込み、カプセルを手に取っていた。それは自身の血肉を入れたもの。強い“味方”を召喚するための餌。
ただしその制御だって簡単なものじゃない。ともすればその存在は分厚い金属だって突き破り、噛み切ってしまうようなものなのだから。
(「集中して、ヘンリエッタ……」)
必要なのは被害を及ぼさず、強大な敵を抑えられるほどの大きさ。一度だけ深く呼吸をすると、餌をワトソンに与えて流動させていた。
「──来なさい、バスカヴィル!」
空間が闇色に光って、形を取る。獰猛な啼き声と共に顕れたのは、人間を一回り超える大きさの魔犬だった。
黒く燃え滾るような眼をしたそれは、ヘンリエッタに忠実な邪神。
「さあ、動きを封じなさい。喉笛に噛みついて押さえつけるのよ!」
その背に乗ってヘンリエッタは命じた。豪速で駆け出した魔犬は言葉通りに、一息で擬狐に肉迫する。
「悪いけど、餌になってもらうわよ!」
言葉と同時、鋭利な牙が違わずその首元に突き刺さっていた。
ヘンリエッタ自身はワトソンを纏い直して硬質な拳を形作っている。ゼロ距離から思い切り腕を振るって、敵が止まっている間に顎を殴り上げた。
獣のような声を上げて、擬狐はのけぞる。歯を数本飛ばしながら、確かなダメージが刻まれていたことだろう。
故に一層の敵意を浮かべて視線を戻す。焼き切ってやるとばかりに持ち上げたのは、蒼き狐火を湛える尾だった。
が、それが振るわれるよりも先に動く影がある。
「遅いよ」
とん、と軽く床を蹴って跳ぶ絲。射線がヘンリエッタの背中にぶつからないように素早く斜めに移動していた。
刹那、両手を突き出してリールを高速回転。全ての糸を射出している。
縁断・心狩縫(エニシダチ・トジヌイ)。
雨のように、否、風のように。一斉に降り掛かった糸は尾を縛りつけて自由を奪う。同時に脚と胴体にも一瞬の内に巻き付いて全身を拘束していた。
「捕らえたよ!」
擬狐は藻掻くように身じろぐ、だが鋼の糸は簡単には切れず、解けず。大きな隙を作り出すことに成功していた。
「後は、派手にやっちゃって!」
「ええ」
頷いて駆けるのは修介。躊躇わず、擬狐へと肉迫していく。
こうしているうちにも飛行機の危機は進行しつつあったが──修介は先刻素早くUDC組織に連絡を取り、状況を知らせていた。
この飛行機がどうなるかは即断できないが、人々の避難については対策される筈だ。
故に今は、戦いに邁進するだけ。
残滓とはいえ神格も残る存在だが、修介はあくまでステゴロ。自らの拳だけを握り込んで、一足飛びに距離を詰めた。
「――シッ!」
疾風の如き音を上げて拳の一撃。
頬に命中した強烈な衝撃は、敵の体躯をして吹っ飛ばす程の威力。体の端々を糸で切り裂かれながら、擬狐は奥の方向へと倒れ込んだ。
すぐに起きて反撃を狙う、が、修介はヒット&アウェイの要領で飛び退いている。敵は絲へ標的を変えて焔を撃ったが──絲もまた上方に跳んで回避。宙を舞いながら糸を撃って敵を捕まえていた。
再度行動を封じられ、擬狐は喉の奥で呻きを轟かす。
すると、糸が解けないのならば焼き切ろうと目論んだのだろう。狐火を伝わせて、自身を縛る楔を熱し始めていた。
「そんなに簡単じゃないよ?」
絲は無論、惑わない。
それは魔法に蝕まれるよりも、寧ろ魔法で蝕むためのものでもあるのだから。
炎が雷光に押し戻されていく。絲は糸の全てに属性に力を注入。眩い雷を這わせることで逆に擬狐の全身にショックを与えていた。
ばちりと弾ける衝撃に擬狐が脱力すれば、修介が疾駆。裂帛の拳で再度後退させる。
よろめきながら、擬狐も防戦一方ではなく。修介に追いすがって前肢での打撃を加えようとしていた。
が、修介は横っ飛びに座席の陰へ移動。遮蔽を盾にするように衝撃を軽減すると、隙が出来た瞬間に敵の懐へと飛び込んでいく。
ゆらゆらと超常の焔を灯す体。
「アクション映画の次は妖怪退治、か」
望むところだ、と。
怯みは見せない。何より拳闘に必要なのは膂力と技能と──覚悟なのだから。
「全力の一撃を喰らってみろ」
振りかぶった拳に、全ての力を注いで。真正面から打ち放った拳で敵の腹を貫き、転倒させていく。
床が壁が僅かに震動しているのは、加速しているからだろうか。
横向きの緩やかな重力を感じさせながら、機体は未だ高空を飛んでいた。
目的地があるかどうかは判らない。
少なくとも、この敵にはそんな思考は働いていないだろう。擬狐は獣の如く吼えると──憤怒の顕れのように狐火を暴れさせていた。
それは避けるには苦労しない。が、座席や壁の一部は容赦なく被害にさらされる。
由貴はオイオイ、と声を零していた。
「こういう飛行機は銃弾の1、2発で穴が開いてもどうこうなるもんじゃねぇって話は聞いたことあるけどよ──それでもドンパチ続けてるとやばそうだな!」
「戦いに巻き込まれる人がいないことだけが、救いといえば救いだけど……」
絲は呟くが、それでも予断を許さぬ状況だとは判っている。
べりるも頷いた。
「状況が不味いよコレ! 街にでも突っ込んだら大変な事になっちゃう!」
「少なくともパイロットが居る以上、飛行機は墜とせんだろうな」
ワズラが敵の奥側に視線を遣ると、ヴォルガーレも微かに眉尻を下げていた。
「そう、ですね。操縦士さんは今もなお、怖い思いをされているんですよね」
その先は長い通路と分厚い扉によって、様子は窺えない。
だが飛行機が飛んでいるということは、今もパイロットはオブリビオンの恐怖にされされていることに他ならない。
琴莉は黒い瞳を細める。
「コックピット、確認しに行きたいところですね」
「ええ。……その為には、まずアナタに退いてもらわナイと」
ヴォルガーレの意識が粟立って、表情に喜悦が入り交じる。その心は既に、目の前の敵との戦いへの期待感に恍惚とし始めていた。
「神様がお相手だなンテ……フフ……チョット緊張しちゃいマス──!」
だからこそ、どんな喰い合いが出来るのかと冷静でいられない。瞬間、真っ直ぐに疾走し跳躍。敵の面前へと迫っていた。
擬狐は威嚇の声と共に焔を飛ばしてくるが、ヴォルガーレは躊躇をしない。戦斧で火の粉を払うように退けると、勢いのままに痛烈な斬打を叩き込んでいた。
腹部を裂かれ、擬狐は苦悶と共に殺意を漲らす。
と、その注意がヴォルガーレに向いている間に、琴莉は銃を構えていた。
籠めたのは冷気の魔力を封じた弾丸。この距離で外すとは思っていない──が、それでも琴多少の気がかりもあった。
「……相性、悪いですよね」
敵の体には永続的に焔が宿っている。
歩兵に対しては絶大な力を誇った氷の力も、あの敵にどれだけ効くかは判らなかった。
(「炎使い、味方なら頼もしいんですけど──」)
敵となると実に厄介なものだ、と思う。
それでも、必要ならばやらねばならなかった。引き金を引いて、氷片を散らしながら穿ったのは敵の足元だ。
瞬間、弾けた魔力が氷の槍を生み出して串刺しにする。
擬狐は甲高い啼き声を上げた。焔を降ろして氷を溶解させようとはするものの、そこには確かに間隙が生まれている。
今がその時。
琴莉は好機を逃さず翼で空気を掃き捨てると、その横を通り抜けるように高速で飛翔。一気に通路を駆け抜けていった。
操縦室には短時間でたどり着いた。
平素は厳重に閉ざされている扉だが、歩兵達の仕業だろう、ロックされている部分が完全に破壊されている。
故に、琴莉でもその内部へ侵入することは容易だった。
「さて、と──」
踏み入った琴莉は、素早く視線を奔らせる。
そこに三つの人影があった。
一人は拘束されている副パイロット、もう一人は操縦をしている機長。そして最後は、そこへ銃口を突きつけている歩兵だ。
直後、一瞬。琴莉は歩兵に気づかれる前に氷結の弾丸を発砲。躊躇わずに脳天を撃ち抜いて操縦室の脅威を取り除いていた。
副パイロットの拘束も解くと、驚いている彼らの無事を確認して言う。
「細かい説明は後で。今は、無事に着陸出来る態勢を整えて下さい」
彼らは未だ冷静とはいかなかったが、少なくとも優先すべきことだけは理解していた。琴莉に礼を述べると、操縦に戻り始めている。
それだけ確認して琴莉は戦場へ帰ることにした。
擬狐が、吼えていた。
或いは眼前から獲物を一人逃したことに憤慨したのだろうか。
だが、動物的な本能は何より近場の敵を重要と判断する。近距離に居るヴォルガーレを前肢で捕まえ、もう片方の前肢を振り上げていた。
肢の力は強く、簡単には逃げられない。
だがゼロ距離に迫ったことは、ヴォルガーレにとって僥倖だった。
丁度、確かめてみたいと思っていたからだ──神の残滓、その感触を、その味を。
ヴォルガーレは口に鋭い牙を覗かせる。
「アナタの血はどんな味がスルのかしら──アナタのお肉は固イの? 柔らかイの?」
──アア……待ちきれまセン……!
「はしたナイなんて──言わナイデ」
敵が肢を振り下ろすよりも先に喰らいつくと、勁烈な力で表皮と肉を食い千切る。
濁った血が滴り、牙の間から溢れる。音を立てて肉片を噛み切ると、ヴォルガーレは陶酔した表情を浮かべていた。
一方の擬狐は苦悶の声を上げ、ヴォルガーレを振り払う。結果として猟兵が誰一人傷つく間もなく、琴莉が操縦室から戻ってきたのだった。
「パイロットの方々は無事です」
「それなら、良かった」
頷きを返した由紀は、一度奥の方に視線をやると、擬狐へと向き直る。
「あとは彼らを巻き込まないようにすることだけ注意して、やろうか」
ちゃんと着地してくれないと俺たちも困るからさ、と。
激しい戦いの中にあって、由紀は表情も声音も崩さずどこか微睡むような夜の色。無論切れ長の瞳はつぶさに敵を観察して、油断をしていない。
つい、と手元から伸ばしていたのはほぼ透明の細い線──鋼糸だ。
大きな動きの取りにくい機内だが、長所もある。それは大した手間を取らず“罠”を設置できること。
由紀は戦闘の間の短時間にそれを創り終えていた。
丁度、擬狐は近距離に猟兵がいなくなった為に、自身から接近してこようとする。それが由紀の狙いに合致した。
擬狐の前進が止まり、線を引くように血が零れる。
そこにあるのがバリケード──張り巡らされた鋼糸による、防壁の役割も果たす罠だ。
擬狐が対処しかねている内に、由紀はゆるりと手を翳し、宙に払うような動作を取る。
瞬間、雫の落ちる様が逆再生されるかのように、空間に無数の影が立ち昇った。
それは由紀のダガーを複写するように鋭利な形を取り、刃の雨となる。
「──貫け」
声と共に、黒色の短刀が一斉に擬狐へ飛びかかった。
影雨(シャドウレイン)。絶え間のない刃の奔流は、敵の尾を裂き、肢を刺し、胴部を貫いていく。
擬狐がバリケードを飛び越えて来ようとすれば、由紀は後退。もう一つ後方に巡らせておいた鋼糸に引っ掛けて再びその動きを封じていた。
「うまいこと、かかってくれたね」
とん、と床を踏んだ由紀は横に回転。弧状に複製したダガーを飛ばして、偽神の全身を穿っていった。
パイロットの無事が確保されたためだろう、飛行機の制動は安定してきていた。
足元は揺らがず無理な慣性も発生しない。無事に着陸することも出来るだろう──目の前の敵を退けることができれば。
擬狐は僅かな平静さも捨てたように、焔を暴れさせながら一歩一歩と歩んできていた。
席や備品は焼け落ち、壁や床にも飛び火する。内部が原形を留めなくなるまでに、おそらく時間はかからないであろう。
由紀は鋼糸を伸ばしながらも、静かな呆れ声を零す。
「こんな暴力的になっちゃって、農耕の神様が見る影もないね」
「本当に早く、片付けなくちゃね。隠蔽とかも大変そうだし──仮に飛行機が壊れちゃったり落ちちゃったりしたら……被害総額とか考えたくないから」
べりるが言えば、由貴もああと頷いていた。
「これ以上、被害を及ばせない。──つーわけで、オンモラキ! バサン!」
そして手を伸ばし高らかに呼び掛ける。
飛行するのは自律ポッド。狐火を右に左にかいくぐり、高速で接近していた。
「よし、そのまま取り付け! ただし砲撃は無しだぞ!」
由貴の言葉に忠実に、二機は備えている火器は行使せずに擬狐に接触。まずは速度のままに体当たりを加えていた。
銃撃はせずとも、金属の塊でもあるそれは強烈な打力を生むに足りる。まるで巨大な弾丸にでも打ち当たったかのように、擬狐は真後ろの方向によろけていた。
無論、敵はそれを本能的に殴り壊そうとする。
が、同時にポッドは左右方向に飛んで打撃を回避。機敏な軌道を見せていた。
「オイ壊すなよ! そいつら高いんだからな!」
由貴の言葉は聞き入れず、擬狐は次に尾でそれを叩き落とそうとする。しかしその頃には二機が再度接触。機巧を駆動させて組み付き、動きを阻害しにかかっていた。
擬狐が惑うその間隙に、由貴はホムラⅣ──ゴーグルの機能を奔らせている。
それは素早く対象をスキャンする能力──スィート・スポット。電子が動く疾さで敵の弱っている点を弾き出し表示させていた。
それは幾度も攻撃を与えている腹部、そして足元だ。
瞬間、由貴は自身でそこへ肉迫していく。
手に携えるのは美しき両刃の短剣“ベロボーグ”。艷やかな剣閃を踊らせるように斬撃を見舞い、後肢を斬り裂いていた。
敵の動きが鈍る間に由貴は声を投げる。
「今のうちに畳み掛けてくれ!」
「うん!」
べりるは機宝銃を携えながら、素早く弾倉を選んでいた。
「急がないといけないし、今日は出し惜しみは無し! えーっと、これにしよ! アクアマリン!」
くるっと手に取り二丁に挿したのは、蒼の美しい弾丸が籠められたもの。銃口を向けたべりるは、同時に機械鏡も宙へと浮遊させていた。
角度を付けて敵を取り囲ませるそれは跳弾の壁だ。瞬間、連続で発砲して弾丸を鏡に反射させていた。
空間を奔る蒼い煌めき。
一発一発に宝石が使われる宝石弾は、そのコストこそ通常の弾丸の比ではない。だが、それぞれに宿された特異な力と加護は、時に物理的な能力以上の効果を生む。
アクアマリンの弾丸が持つのは──海と水の加護。
「効くか分かんないけど……効け!」
言葉こそ希望観測的。だが敵の体を穿ったそれは、飛沫のような衝撃を広げると確かに焔の一部を消滅させていた。
擬狐はすぐに妖力を強めて炎を発現し、飛沫を蒸発させる。だがその頃にはべりるの二射目三射目が飛来して、自由を与えなかった。
尤も、べりるも射撃を持続するのは楽ではない。
身動きを取り続ける敵に対し、リアルタイムで鏡の角度を変えて弾道を計算し──鏡の制御と宝石弾の行使にも魔力を使うからだ。
継続的にダメージを与えてはいるが、その分注意力は多少散漫。擬狐が焔を体に再生するのではなく、こちらに撃ち出すことで対抗してくるのにもとっさに反応できなかった、が。
その焔が途中で飲み込まれるように消滅する。
前面に出たワズラが、その獄炎をもって狐火を受け止めていたのだった。
無論、痛みも衝撃も帳消しにしたわけではない。強力な炎は龍鱗を灼く程であったし、その威力は生半可なものではなかった。
しかし、だからこそ自分が護る意義がある。
こうして、真正面から相対する意味がある。
「邪神とて恐るるに足らず。只昂ぶるのみよ」
そこにあるものまた、愛すべき闘争の一つ。ワズラは受け止めた焔の熱量を自身の戦獄に渦巻かせて、熾烈なる炎弾として撃ち返していた。
赤黒く滾る炎となったそれは、擬狐の青き狐火を侵食するように灼いてその体に深い負傷を与えていく。
吼える擬狐はワズラに直接距離を詰め、重い尾撃を加えた。それも後退してしまいそうになるくらいには苛烈な一撃。
だが、ワズラはそれすらも自らの糧にして止まない。攻撃されたその力を溜めるように大剣に獄炎を奔らせ、一閃。斬撃によって尾を斬り落としていた。
啼き声を零して、擬狐は慟哭を顕にする。
肢を振り回して暴れるが、近接攻撃を続ける由貴はそれで退いたりはしない。しかと刃を握り、振りかぶっていた。
「こっちにゃお前と違って本物の幸運の神様が味方にいるんだ! 負けるかよ!」
言葉と共に振り下ろした一刀が、肢を斬り飛ばす。体勢も保てなくなった擬狐は、派手に倒れ込んでいた。
それでも暴力を行使するためだけに顕現した神の残滓は、逃げることをしない。
持てる限りの力で狐火を燃え盛らせて、生み出すのは無数の炎。乱射するように撃ち出して殺戮の限りを尽くそうとしたのだ。
その炎が全て飛散すれば、飛行機の壁とて耐えきれなかったことだろう。だが、ワズラの体躯と戦獄龍逆燐の力はそれもまた受けきってしまう。
「いいだろう、我が戦獄で喰らい、獄焔で返してやる」
飛び交う青色が紅蓮の中に消えゆき、その獄炎を煌々と輝かせる。今やワズラの身を纏う地獄は眩いほどになっていた。
ワズラは構えた剣にその全てを集中させると、刺突。炎の龍を奔らせるような一撃で、その神の成れの果てを塵一つ残さず灼き払った。
猟兵達は改めてパイロットの無事を確認した。
絲はその後で客席に戻り、窓の外を見下ろす。
そこには近づいてくる空港の姿があった。
「墜落を避けることが出来たね」
「ええ。良かった」
ヘンリエッタもほっとしたように息をつく。全くもって、忙しい戦いだった。
修介は組織と連絡を続けていた。
「組織の皆さんは、少しばかり忙しそうですが──ここは任せておきましょうか」
言うと、皆も頷く。
飛行機は蒼天から地面に降り立つ。出発と違って、静かで安らかな着陸だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『エンジョイ・タイム』
|
POW : ラーメン、カツ丼、がっつりご飯でごっつぁんです! 娯楽も全力、勝負も楽しもうぜ!
SPD : ファッション、雑貨、お土産選びは忙しい! 娯楽はほどほど、テクニックで魅せるぜ
WIZ : 書籍、パーツにソフトウェア。ちょっとマニアなお店にゴー。 娯楽はのんびり、エンジョイプレイ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●空港にて
事件は収束しつつあった。
飛行機については誤通信や機器類の故障という方便が使われ、空港内でのことも上手く理由付けされてパニックが抑えられたという。
実際に襲撃に遭った者についてはしかと情報統制を敷くため、その点に付いても心配はいらないのだと組織のメンバーは猟兵達に伝えた。
だからだろう、猟兵達が空港に戻ると、そこは段々と日常に帰りつつある。
一応猟兵達はその後、空港の中を一箇所一箇所見て回った。けれど争いの形跡はきちんと清掃され、敵の残党も無い。
大規模な争いでもあったために、UDC組織をして簡単な仕事ではなかったという。が、そうは言っても専門家ということだろう。こちらが戦いを終える間に、彼らは彼らで必要なことを終えていたのだ。
というわけで、猟兵達が自由になる頃には、空港の中は少しずつ賑わい始めていた。
猟兵達も歩み出す。折角だから──何処か見ていこうか?
駆爛・由貴
SPD
いやー、何とか無事に終わったなー!
被害ゼロだし、俺の武器もぶっ壊れずに済んだしよかったぜ
修理費とか維持費も高いんだよな、コイツらは
ま、なにはともあれだ
好きに買い物して良いって事だし、せっかくだから故郷で待ってるチビ共に土産でも買っていってやるか!
うーんやっぱりお菓子か?
チョコレートにクッキーに…とにかく数が多いからなー
オモチャもいいけど、取り合いになるのは目に見えてるし皆で遊べるようなのがいいけど…迷うなこりゃ
あっちこっちの店を覗いて土産を物色するか
レオンとか他の猟兵にも色々聞いてみるのもいいかもしんねーな
今回の稼ぎを使いすぎないように気をつけて楽しむか!
【他参加者との絡み大歓迎です】
行き交う人々の靴音。
笑い声や忙しない声。
大きな窓からはまだまだ青空の覗く時分──空港にはすっかり平和が戻ったと言ってよかった。
慌ただしい戦闘から一転、一息つける時間が訪れて、由貴はベンチに腰掛けている。
「いやー、何とか無事に終わったなー!」
軽く伸びをして見回した。
ロビーにはもうカウンターに並ぶ人が列を成して、次の飛行機を待ち始めている。ターミナルの建物に崩れた箇所は無く、多くの人々はここで死戦があったことを知る由もあるまい。
「被害ゼロだし、俺の武器もぶっ壊れずに済んだしよかったぜ」
ぽん、と軽く撫でるのは戦いで活躍したポッドだ。
無茶させたのも作戦の内ではあったけれど、精密機器であるだけに修理費も維持費も中々高い。だから、大した傷がなかったことが今回の大事な戦果でもあるのだった。
「ま、なにはともあれだ」
と、立ち上がる。
折角、普段は中々足を伸ばさないところまで来たのだ。
「故郷で待ってるチビ共に土産でも買っていってやるか!」
決めると、ロビー周辺にある店から始めて上階の一軒一軒も見ていく。
実に多様な店があって迷ってしまうが──やっぱりまずはお菓子だろう、と土産物店へ寄った。
「とにかく数が多いからなー……これと、これと」
手にとっていくのは缶入りのクッキーやチョコレート。バリエーションもあった方が良いだろうと、クッキーはバターの多めのものや紅茶の風味のついたものなどを揃え、チョコレートも幾つかのフレーバーを選んで買った。
「後は何かオモチャでも、と思うけどなぁ──」
それから子供用の品や雑貨の揃う場所を見て回り、呟く。
「一つ二つ買った所で、取り合いになりそうだしな……」
ふむ、と悩むその表情には、どことなく父性のようなものも垣間見えたろうか。
暫し悩んでいると、そこに丁度レオンが通りかかった。
丁寧にお辞儀してきた彼に、由貴はちょっと聞いてみる。
「……ってわけで、何かいい土産になりそうなものを探してるんだけど」
「成る程、駆爛様はとてもお優しい方なのですね」
微笑んだレオンは、幾つか提案した。
「玩具ならば、やはりシンプルなものがいいのではないでしょうか。長く遊べるほうが宜しいでしょうし」
と言って示したのは、トランプや定番とも言えるボードゲーム。それから体を動かせるようにサッカーなどのボールも勧めた。
「シンプルか。確かにそういうやつなら、何人でも遊べるな。ありがとな!」
それらの品々ならば値も張らない。ということでその中から幾つか購入した。
「こんなとこかな」
一通り買い物を終えると、早くこれを持って帰ってあげたいという気分になった。
だから由貴は歩み出し──現代日本の賑わいを後にしていく。
大成功
🔵🔵🔵
ワズラ・ウルスラグナ
想定より数段平和的に解決したな。
流石猟兵、流石組織よ。
惜しむらくは味方なので挑むに挑めんという事だな。心強い半面、残念だ。
まあ今回は十分に暴れさせて貰った。
身体を張る事も多かったし、次の戦いの事を考えるより先に英気を養うとしよう。
見て回れば猟兵や組織の者達同様、日常に早くも戻りつつある人々の逞しさも見られるだろう。
一般人と言えども強い。強かだ。善哉。
さて、人の営みを眺めた後は、減った血肉を蓄えさせて貰う。
即ち喰い歩きだ。
目につく物、美味そうな物、勧められた物、端から可能な限り食っていくぞ。
多少の散財は気にせん。此処でケチれば死闘の際にケチがつく。
そう、此れもまた、戦いだ。
思い切り翼を伸ばすぞ。
組織のメンバーが挨拶して去っていくのを、ワズラは見送っていた。
その頃には既に、喧騒と呼べるものも空港に帰ってきている。それを改めて眺め、ワズラは一つ頷いていた。
「うむ──想定より数段平和的に解決したな」
流石猟兵、流石組織、と。
味方ながらに、事態収束の手並みが予想以上だったことには感心を抱かざるを得ない。
敵は確かに強かった。が、今回はそれに加え、味方側の能力を実感した戦いだと言えたかも知れない。
「惜しむらくは味方なので挑むに挑めんという事だな。心強い半面、残念だ」
とは言え、ワズラ自身も十分に暴れさせてもらったという自覚はある。
身体を張る事も多かったし──今は次の戦いの事を考えるより英気を養おうと思った。
一先ずロビーから見て回ることにする。
人々は土産を手に歩み、笑みを浮かべ、闊達に話し声を交わしていた。歩むほどに賑やかさが肌に感じられるほどだ。
早くも日常を取り戻した景色。
それをを見ていると人々の逞しさもまた感じられる気がする。
「一般人と言えども強い。強かだ。善哉」
その心、その営み。そこにあるのは膂力とは別の力強さとも言えるだろうか。ふとした憩いにそれを意識すると、それがまた自分の中で何かの糧になる気がした。
その後はというと──。
「減った血肉を蓄えさせて貰うか」
即ち喰い歩き。眺めるだけでも食べ物の店は無数に目につく。それを端から巡っていこうと決めていた。
まずはうどん屋を見つけたので、暖簾をくぐって人気の肉うどんを頂くことにする。
「ほう」
と、眺めてしまうのはどんぶりに艷やかな麺に澄んだ出汁、そしてたっぷりの牛肉が盛られ、中々に食欲をそそる見目をしていたからだ。
頼んだ大盛りはかなりのボリュームだが、それでもワズラにはまだ序の口。つるりと止める事無く啜ってしまった。出汁はあっさりめだが、よく煮込まれた牛肉と丁度バランスがよかった。
隣にあった丼物の店では海鮮丼を頂く。
海に面した立地の強みか、これでもかという程乗せられた鮪や鮭、いくら、イカはどれも新鮮で、酢飯と海苔の風味によく合っていた。
それからファストフードのフライドチキンを齧りつつ、気まぐれにふわふわかき氷の店でフルーツメガ盛りの一品を完食したりする。
空港だけに少しばかり値の張るものも無いではなかったが、ここに至って多少の散財は気にしなかった。
此処でケチれば死闘の際にケチがつく。
そう、此れもまた、戦いなのだ。
「さて次は──ふむ、串揚げか。いいだろう」
未だ腹十分目には遠く、黒龍は闊歩する。行先にまだ見ぬ食べ物を求めて。
大成功
🔵🔵🔵
星鏡・べりる
あー、おわったおわった!
飛行機飛んだ辺りから、すっごい怖かったけど、特に被害でなくてよかった~!
働いたらお腹空いちゃったから、何か食べてから帰ろ~っと。
んん~、何か甘い物でも食べたいな。
何のお店があるのかな?
できれば、ホットケーキとかベーグルとか~
カフェ系で探そ~
やっぱり疲れた時は甘い物と紅茶だよね。
歴史の教科書にも、そう書いてあったよ。多分。
カフェで少しゆっくりできたと思ったら、急に電話がかかってきた!
ええ、やだよ!別の人に……現場が近く?
うう、はい……
うへぇ、次の事件へ呼び出されちゃったよ。
も~~この紅茶飲み終わったらダッシュで行きます!
「あー、おわったおわった!」
ぐぐっと軽く腕を上げて、朗らかに息つく少女が一人。
べりるは食事処やスイーツ店、カフェが並ぶ一角へやってきたところだった。
窓を見ると青空に飛び立つ飛行機が見える。それを見ると改めて安堵するような気持ちだ。
「飛行機飛んだ辺りから、すっごい怖かったけど──特に被害でなくてよかった~!」
そう実感すると……視線は店々へ。
勿論、何か食べてから帰るつもりだった。
「働いたらお腹空いちゃったからね。んん~、何か甘い物でも食べたいな」
とはいえ、中々店の数もあるから──眺めつつ歩き、決めていくことにする。
すたすたと歩を進めると色々な食べ物の匂いが漂ってくる。そんな景色の中で、べりるが足を止めたのはカフェ。小奇麗な店構えが特徴的で、朝食やランチ、そして甘い物のメニューが豊富な店だった。
中に入ってメニューを開くと、美味しそうな写真が目に飛び込んでくる。
「う~ん、どれも良さそう」
尤も、食べたいものはある程度決まっていた。
メープルシロップと生クリーム、それにフルーツがたっぷりのホットケーキに、こんがりと焼かれたベーグルにチョコがかけられたもの。それに加えてオリジナルブレンドの紅茶にも目をつけている。
「やっぱり疲れた時は甘い物と紅茶だよね。歴史の教科書にも、そう書いてあったよ。多分」
呟きつつ、早速注文。
品がやってくると、宝石のような瞳をきらと輝かせた。
「わぁ、美味しそ~」
見た目に綺麗なそれは、味も逸品だ。
生クリームはしつこくなくて、メープルと合わせて丁度いい甘さになる。それをホットケーキと一緒に口に運ぶと、温度で蕩けて得も言われぬ美味さを生む。
ベーグルはかりっと音が鳴るくらいに香ばしい焼き具合で、カカオの風味の強めのチョコレートもその味わいに色を添えていた。
そこで紅茶を一口飲めば、香り高さが甘味と相性抜群だ。
ふ~、とべりるはようやくリラックスできたように目を細める。何だかんだで、ここまで慌ただしかったのだから。
と、思ったら急にぶぅんと振動。携帯に電話がかかってきたのだ。
それに出たべりるは、少しだけ相手方の話を聞いて……眉尻を下げた。
「ええ、仕事? やだよ! 別の人に……現場が近く?」
少しずつ表情が曇って、最終的にほんのちょっとだけうなだれる。
つまりは次の事件への呼び出しだった。
「うう、はい……」
通話を終えると少々ため息をつきながら、それでも紅茶を飲み終える。
「も~~……しょうがないか!」
これもまた、組織の人間であるがゆえ。それきり席を立ったべりるは、ダッシュで新たな事件へと奔走していく。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルガーレ・マリノ
見た事のない物がいっぱいで…どこから見て回ろうか迷っちゃいますね
あっ(ふわりと鼻孔をくすぐる香りに反応し)
美味しそうな匂い…食べ物のお店がたくさん並んでます
…行ってみましょうっ!
これが「らぁめん」という料理なんですね
麺が細いのにコシがあって美味しいですっ
スープもゴクゴクいけちゃいますっ
次のお店は「かつどん」屋さんですか
わぁっ、分厚いお肉がご飯の上に乗ってますっ!
外の衣がサクサクでお肉がとってもジューシーですっ
ご飯と一緒に食べるとまた絶品ですねっ
デザートのお店もありますっ
ソフトクリームを頂きましょう!
甘くて冷たくて美味しいですっ
…ハッ!
た、食べ過ぎですかね…?
(※でもまだ全然余裕らしい)
「とても楽しそうなところです……!」
くるりと視線を巡らすと、スカートの裾がふわっと円を描く。
ヴォルガーレは空港内の景色に声音を華やがせていた。
戦いの中では眺めることも出来なかったので、こうして見回すだけでも新鮮な心持ちになる。
そして沢山の店があって、どこも興味を引くのだ。
「見た事のない物がいっぱいで……どこから見て回ろうか迷っちゃいますね」
とりあえず、近場の土産物店や雑貨店などを見つつ歩いてみたりした。こつ、こつ、と並ぶ品を目に留めていくだけでも心楽しく、浮き立つ気分になる。
何か買っていっても良いかも知れない──そんな事を思っていると、ふとヴォルガーレは何かに気付いた。
「あっ──」
それはふわりと鼻孔をくすぐる香り。
少しだけ視線を動かすと、そこが食べ物の店の並ぶ一角だと判る。
「美味しそうな匂い……行ってみましょうっ!」
芳香に誘われるまま、赴くままに歩を進めてたどり着いたのはラーメン店。それなりの人気店で客も入っているようだが、空港自体が賑わい始めたばかりでもあるからか時間を待たずに入ることが出来た。
木椅子に上品に座って注文したのは、一番人気の醤油ラーメン。
味玉にチャーシュー、メンマに海苔とシンプルながら拘った一品で、仄かに香る煮干しの出汁が食欲を刺激する。
ヴォルガーレは嬉しそうにぽんと手を合わせた。
「これが「らぁめん」という料理なんですねっ。温かくて、とても良い香り……!」
艷やかな麺を箸で持ち上げて、つるりと啜ってみる。スープと脂をほどよく纏って、何とも美味な食体験だ。
「細いのにコシがあって美味しいですっ」
スープ自体もゴクゴクといける。塩味を抑えめにしたそれは、出汁の味が強めで非常に旨味が強く、幾らでもレンゲが動くのだった。
満足の気持ちで店を出たヴォルガーレは、次に丼物のゾーンに目を惹かれる。
「このお店は……「かつどん」屋さんですか」
店構えを見上げて本能的に魅力を感じ──迷わず入店を決めた。
早速看板メニューのカツ丼を頼むと、盆に載った大振りの丼がやってくる。湯気を上げるそれを見つめて、ヴォルガーレは表情を煌めかせた。
「わぁっ、分厚いお肉がご飯の上に乗ってますっ!」
カツは粗めのパン粉で仕上げられていて、そっと噛んでもサクサクと音が鳴るほど。同時に肉の火加減も絶妙で、肉汁がじゅわりと溢れるようなジューシーさだった。
「とっても美味しい……ご飯と一緒に食べるとまた絶品ですねっ」
カツ単体でも美味には違いない。だがタレのかかったご飯と合わせるとやはり無二の味と言えて、ヴォルガーレはそれも早めに完食していた。
「あ、デザートのお店もありますっ」
その後で見つけたのは幾つかのスイーツが並ぶ一角。その中からソフトクリームを選ぶと、すぐに購入してはむっと口に運んだ。
「ん、甘くて冷たくて美味しいですっ」
それから次は何を食べようか……と思案したところで、ヴォルガーレはハッとする。
「た、食べ過ぎですかね……?」
少々口元を押さえて、ふと思った。
どこに行っても美味しい食べ物ばかりなので仕方ないのだが、それでも令嬢としてはどうなのだろう──と。
けれど口に入れるものが美味なのは紛うこと無い事実だし……何よりヴォルガーレのお腹はまだ全然余裕があった。
だから一人頷くとヴォルガーレは歩み出す。とりあえず、次のお店を目指して。
大成功
🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
アンバー/f8886と
今日は俺様にご褒美っつー事で、アンバーと来たァ!!
あ!?飯喰うか!!ヨシ……いっぱい飯喰わせてやっかンなァ。
ガキって喰ったら成長すンだってな?俺様、ヘンリーにそう聞いたから知ってんぜェ。
好きなもンねぇ。
辛いのが好きなンだが……ガキにはちと早ェ。
ンー、そうだな……お、……アンバー、お前オムライス好きか?
そぉか、じゃーパパがご馳走してやろうな!
うン、喜んでて何よりだ。たらふく食って強くなってもらわねェと。また家でも作ってやるよ。
アー?今どきパパだって料理するもんだぜ、なんだっけ、イクメンっつーのかこういうの。
まァいいや!ヘンリーの金だし、おかわり!!
な、俺様いいパパだろ?
アンバー・ホワイト
ヘンリエッタ/f07026と
わあ、大きな空港…すごいな!人がたくさん!みんな飛べるのかなぁ…広いなあ大きいなあ!
くるくる喜び表しながら、止まった視線の先には食べ物エリア
なあヘイゼル、ごはん食べよう!ごはん!
今にも走り出しそうな勢いで手を取って、ぴょんぴょん
見たことない食べ物がいっぱいあるぞ!ヘイゼル!好きなのあるか?
ふむ、辛いものかあ…
オムライス?食べたことないぞ!でもきっと美味しいんだろう?行こう行こう!
スプーン握りしめて一口食べれば、頭の上に!マーク。モグモグ食べるのが止まらない
これは、すごく、いいものだ!
家でも!?つくれるのか!?それは楽しみだ!ああ、たくさん食べるぞ!
おかわりください!
ととと、と踊るような足音を響かせて竜の少女はやってくる。
「わあ、大きな空港──」
高い天井、眩しい灯り、窓に覗く青空、そしてわいわいと聞こえる賑わい。
アンバー・ホワイト(星の竜・f08886)はそんな景色が楽しくて、磨かれた床の上でくるくると喜びを表していた。
「すごいな! 人がたくさん! みんな飛べるのかなぁ……広いなあ大きいなあ!」
「あァ、気に入ったンなら何よりだ!」
後ろからついてくるのはヘンリエッタ──否、今はヘイゼル。
戦いにおいては一時眠っていたが、今はご褒美ということもあって表に出ている。
ヘイゼルとしてはあの程度、暴れ足りないくらいでもあったが──だからこそ暴れ過ぎなかったことへの意味も少しは含まれているのかも知れない。
ともあれこうして“パパ”として歩くのに悪い気はしない。心模様を隠しもせず、犬歯を見せて笑みを一つ浮かべるとアンバーの傍へ歩み寄った。
「で、どうする?」
向けるのは、何でも言ってみろというような鷹揚な声音だ。
アンバーは──くるんと廻りながら、琥珀の瞳に色んな景色を過ぎらせていた。と、その内の一つに視線を止める。
それが食べ物エリアだ。
こつんと足を止めるとヘイゼルの手を取る。そうして次には走り出しそうな勢いでぴょんぴょんとしていた。
「なあヘイゼル、ごはん食べよう! ごはん!」
「飯か!」
ヘイゼルも視線の先を追って頷き、歩み出す。
「ヨシ、いっぱい喰わせてやっかンなァ。ガキって喰ったら成長すンだってな? 俺様、ヘンリーにそう聞いたから知ってんぜェ」
果たしてヘンリエッタが額面通りの意味で伝えたかは疑問──だが、ヘイゼルにとって細かな違いであることに変わりはない。すたすた歩んで、レストランが並ぶ一角にたどり着いていた。
ラーメンに中華、パスタにカフェ。アンバーはおぉ……! と瞳に煌めきを内在させて左右を見やっている。
期待を含んだ表情で振り返った。
「見たことない食べ物がいっぱいあるぞ! ヘイゼル! 好きなのあるか?」
「好きなもンねぇ。辛いのが好きなンだが……」
ちらと見る遠くの看板には『激辛』の文字が見える。
アンバーも、辛いものかあ、と興味を惹かれてはいるようだが──ヘイゼルは再考するように顎をさする。
「ガキにはちと早ェか」
何となく、アンバーが舌をひりひりさせながら驚く顔が浮かんでしまって……それをわざわざ味わわせることもないだろうと思ったのだ。
「ンー、そうだな……お」
と、そこで前方の店を見つける。
そこはどこか懐かしいような、安心するような、そんな店構えの洋食屋だ。
「アンバー、お前オムライス好きか?」
「オムライス? 食べたことないぞ! でもきっと美味しいんだろう?」
娘は繋いだ手を振り振り。何が待っているのかと楽しみな顔を見せた。
「行こう行こう!」
「お、そぉか、じゃーパパがご馳走してやろうな!」
ヘイゼルも決まれば迷う理由もなく、入店。いい匂いの漂う中を席に着いて、早速注文してあげた。
こと、とテーブルに置かれた皿を、アンバーは真ん丸の瞳で見つめる。
「これがオムライスか?」
「あァ。定番って感じの見た目だなァ」
それはいわゆるラグビーボール型のオムライス。
ふっくらとした艷やかな卵は、触らなくてもぷるぷると柔らかな事がわかる。トマトの香りが立ち昇るケチャップはたっぷりめで、香草がほんの少し散らされている。
そして傍らには付け合わせの野菜が二、三。正にこれぞという一品だ。
スプーンを握りしめるアンバーは……興味深げな面持ちで一口分掬う。すると中で半熟気味になっていた卵が、スプーンの上でチキンライスを纏って湯気を昇らせた。
おぉ、と感心を浮かべるアンバーはそのまま口に運んでみる、と。
『!』
頭の上にエクスクラメーションが浮かぶ。
もう一口食べるとまたぱちりと目を見開いて……三口、四口とモグモグ食べるのが止まらなかった。
「どうだァ?」
「これは、すごく、いいものだ!」
ヘイゼルに返しつつ、アンバーははむはむと食を進めていく。未知だが親しみやすく、温かくて家庭的な風合いもある、そんな味。
喜んでいるなら何よりだと、ヘイゼルは一つ頷いた。
「たらふく食って強くなってもらわねェとな。また家でも作ってやるよ」
「家でも!?」
アンバーは食べつつも、驚くように顔を上げる。
「つくれるのか!?」
「アー? 今どきパパだって料理するもんだぜ。なんだっけ、イクメンっつーのかこういうの」
「すごいな! それは楽しみだ!」
アンバーが朗らかな声音を向ければ、ヘイゼルも満足げな様相だ。
「さて、好きなだけ喰っとけよ。ヘンリーの金だしなぁ」
「ああ、たくさん食べるぞ! おかわりください!」
そうして心行くまで食事をすると、店を出る。
楽しげなアンバーを見てヘイゼルは誇らしげだ。
「な、俺様いいパパだろ?」
「ああ! もっと、色々見ていこう!」
アンバーはくいと引っ張るようにして、歩み出した。ヘイゼルも先ずは導かれるままにそれについていく。
二人の時間は、まだ始まったばかりだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榛・琴莉
POWで判定。
アクション映画のような体験でした…もう二度と、あんな状況にはならないでほしいものです。
「空腹って、落ち着いた途端にきますね」
疲労感もかなりのものですが、まずは腹の虫を黙らせないと。
「ご飯…あとは、あー…帰ってお風呂はいって…それでお布団」
今日はもうオフです、オフ。
どうせ食べるなら美味しい方が良いですよね。
空港の職員さんに、【コミュ力】を活かしてオススメの店を聞いてみます。
「メニューに、温かいお蕎麦とかおうどんがあるお店だと嬉しいんですが」
魔力的に、冷える体質…いえ、体質とは違う気もしますが。
何にしても、冷えたままは辛いので。
お財布に余裕はありますし、ガッツリ食べて暖まりたいです。
空に飛行機が昇っていく。
本来の機能を取り戻した空港は、運行も平常通りになっている。
それをロビーの窓から見上げて、琴莉はふぅと息をついていた。
つい先刻まで、自分達もあの中にいたのだ。それも半ば暴走した状態の機内に。
「アクション映画のような体験でしたね……もう二度と、あんな状況にはならないでほしいものです」
ほんの微かにだけ首を振る。何はなくともこうして平和になったことが一番だ。
改めてそれを意識すると、少しお腹が鳴った。
琴莉は自身を見下ろす。
「空腹って、落ち着いた途端にきますね」
激しい戦いで疲労感もあるが、体は栄養補給もしたがっているようだ。
「まずは腹の虫を黙らせるためにご飯ですね……。──あとは、あー……帰ってお風呂はいって……それでお布団」
呟くと、心身が欲しているものが次々出てくる。
何にせよ今日はもうオフだ。それらを好きなだけ堪能しようと思った。
「ご飯も、どうせ食べるなら美味しい方が良いですよね」
というわけで移動し、近場の職員にオススメの店を聞いてみる。
「メニューに、温かいお蕎麦とかおうどんがあるお店だと嬉しいんですが──」
「それなら、天ぷら蕎麦はどうです?」
と、そのスタッフが教えてくれたのは食事処がならぶ一角にある店だ。人気だが混み過ぎているというわけでもなく、穴場的な雰囲気もある。
入ると落ち着いた和の色の内装で、ゆったりとした時間を過ごせる空気だ。
早速勧められた天ぷら蕎麦を頼むと、ゆらりと湯気の漂う器がやってきた。
「成る程、これは……」
先ず鼻先に感じられるのがつゆのいい香りだ。そして大きな二尾のエビ天ぷらが載っていて──口に運ぶとさくりと小気味いい食感を生む。
何より、琴莉にはその温かさが身に沁みる。魔力的な体質から、体に宿った“冷え”がずっと続いていて──こうして暖まる機会があるのは嬉しくもあった。
蕎麦は喉越しがよく、啜るたびに芳ばしさを感じられる。無論美味でもあったので、一杯を中々に早めに完食していた。
「お財布に余裕はありますし──もう少し何か食べるとしますか」
よく暖まり、そして休もう。
また別の戦いに備えるためにも、と。琴莉は店を出て、また少し進み出した。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
戦いは終わった。ならばやることは一つ。
「とりま、飯だな」
今日はカレーな気分なのでいい店を探す。
出来れば安くて量があるところ。
カレー食いながら先の戦闘を思い返す。
今回はこの状況でこうなった。なら、また違う状況なら?
一つの戦いは終わった。
なら次の戦いがある。
――行住坐臥造次顛沛
思考は途切れず、次を、先を見据える。
「すっかり元通りだな」
ロビーを行き交う人の流れを、修介は見ていた。
人々はもう自分達の生活を、自分達の時間を送っている。それが猟兵の齎すことの出来た最大限の成果だと思えた。
さて、と修介は軽く息をついて見回す。
戦いが終わったとなれば──やることは一つ。
「とりま、飯だな」
歩を進めてレストランの並ぶ区画へと入っていく。
様々な店の看板や食品サンプル、漂う香りがこちらをいざなってくるようだが、修介は余り迷わなかった。今日はカレーな気分であったからだ。
「お、丁度ここが良さそうだ」
足を止めたのはカレーのチェーン店。安くて量がある所、という修介の目的にも丁度合致するような場所だった。
中に入って看板メニューのスパイスカレーを頼み、食べ始める。
「うん。美味い」
並でも大盛りサイズなのは庶民の味方。だけでなく味も良かった。コリアンダーの爽やかさとクミンの香りが強く、ペッパーの辛味が舌に心地よい。
味わいながら、修介はただリラックスしているわけでもなかった。
心では先の戦闘を思い返している。
今回は複数相手にも、強者相手にも、優勢に戦いを進められたと言えるだろう。四方を囲まれた状態でも、武装で敵に利がある場合でも、環境を活かすことでうまく立ち回れた筈だ。
だがまた違う状況になれば、同じ戦法では通じぬだろう。
今より不利になったらどうか。敵数や環境が全く変わればどうだろうか、と。
修介が思うのは自賛ではなく、反省と次への道筋。
一つの戦いは終わった。
なら次の戦いがあるのだから。
──行住坐臥造次顛沛。常に思考は途切れず、次を、先を見据える。こうして修介は腕一つで戦場を駆け抜けてきたのだ。
だから、休みはすれど気は弛ませず。食事を終えた修介は歩み出す。
飛行機の飛ぶ音が聞こえる。この日常が崩れそうになったら、また守ることができればいいと、そう思った。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年02月25日
宿敵
『禍罪・擬狐』
を撃破!
|