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かみさまの造りかた

#アポカリプスヘル #戦後 #ドクター・オロチ #デミウルゴス #風魔小太郎 #魔軍転生 #執筆中

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●かみさまの造りかた
 漆黒の城内に居たのは、赤い熊のパーカーを身に纏う脳髄の姿ではなかった。

「しょうがない。これはとっておきの時に使うべきなんだけど、戦略的撤退って奴だ」

 此処には己の“本体”が在る。それを喪う訳にはいかなかった。
 ああ、それにしたってなんだこの煩さは。

『たすけてください』
『どうか私をお裁きください』
『オレを、赦して』

「ああもう最悪! お前達の信じる神様なんぞになった覚えはないんだよ! ボクのすべてを尽くしたところでお前達を救うことなんて」

 あれ。
 ボクはダレに、ナニをしてやろうとした?

「ァアアアアアアア!!!」

「ふむ……彼の力を制しきること、かなわぬか」
 叫び声をあげるドクター・オロチの姿を横目に、奥義によって化けた風魔小太郎はほんのわずかに思いにふける。
 やたらこの面が己の身に馴染むのは、忍びの術を操るからか。
 毒という名の獣を従え、影の城の前にしなやかに降り立つ。

●にせものの殺りなおし
「アポカリプスヘルで、ドクター・オロチとの決着をつけに行ってくれませんか」
 無間・わだち(泥犂・f24410)が告げた言葉に、猟兵達の何人かは足を止めただろうか。
「俺もよくは知らない相手なんですけど、彼は残る三体のフィールド・オブ・ナインを探し出すために、アポカリプスヘルに侵略して来たんです。でもオロチはそれを諦めて、軍勢ごと何処かに撤退しようとしています」
 それを今回、居場所ごとグリモア猟兵達が突き止めたのだという。
「彼が居るのは、メンフィス灼熱草原の中心部。漆黒の『影の城』と呼ばれる場所です。今から乗り込めば、撤退の前にオロチを殺せます」

「まず、影の城を護る風魔小太郎に勝つ必要があります。少し厄介なのが、風魔はデミウルゴス・セルの能力を宿したオブリビオンに化けていて、あらゆる攻撃と状態異常に耐性を持っています。偽神細胞を持つストームブレイドの猟兵なら、問題なく戦えるでしょう。それ以外の皆さんは、偽神細胞液を体内に注射して、一時的に『偽神化』する必要があります」
 これ、前にも言いましたね。いつかの戦争を思い出すように、ふたいろが穏やかに笑む。
 細胞液を接種すれば、激しい拒絶反応に襲われる。それは外見の変化、激痛、幻聴などの様々な苦痛をもたらすだろう。
「痛くてつらいです。だから俺も、無理に打たなくていいと思います」
 継ぎ接ぎのストームブレイドは、その全てを知っている。知っている上で、この場に留まった猟兵達に選択肢を提示していた。

「風魔を倒したあとは、オロチとの戦いです。彼は魔軍転生という術で、フィールド・オブ・ナインのデミウルゴスを憑依させた状態で、影の城であなた達を待ち構えています。ただ、憑依した相手の影響を強く受けたんでしょうね。デミウルゴスみたいに、知らない誰かの救いを求める声に魘されて、狂いかけている」
 それはきっと、あのほんもののにせものよりも殺しやすい。
「お願いします。彼をこれ以上、自由にはさせられない」

 かちり、グリモアの歯車が噛み合って、まわる。
 猟兵達は、轟々と黒炎唸る灼熱の草原へゆく。


遅咲
 こんにちは、遅咲です。
 オープニングをご覧頂きありがとうございます。

●注意事項
 このシナリオは、「ドクター・オロチ最終決戦シナリオ」です。

 この最終決戦シナリオが、成功本数が20本に達した日(達成日)で結果が変わります。
 5月1日午前中まで:ドクター・オロチを完全撃破し、影の城からオロチが何度でも蘇っていた原因とみられる「コンクリ塊」を回収、猟兵達で保存します。
 5月15日午前中まで:ドクター・オロチを撃退し、何も持ち帰らせません。
 それ以降:ドクター・オロチは、すんでのところで残る3体のフィールド・オブ・ナインを発見します!そのうち2体を連れ帰り、1体をアポカリプスヘルに残していきます。

 ※1日までの素早い完結を目指しますが、15日までの完結の可能性が高いです。ご了承下さい。

 プレイングボーナス……「偽神化」し、オブリビオンを攻撃する。

 拒絶反応に関する苦痛の表現に指定があれば、ご指定ください。
 外見の変化、流血、痛み、幻聴など、なるべくご希望に沿えるよう努めます。

 少人数受付の予定です。人数次第で、恐らく再送のお手間をおかけします。
 皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『🌗探究者『パープルドクター』』

POW   :    猛毒忍法・含み毒針
【顔】を向けた対象に、【猛毒付きの含み針】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    猛毒忍法・口寄せ猛毒忍獣
自身の【持つ毒薬】を代償に、1〜12体の【猛毒忍獣】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    猛毒忍法・毒波
自身が装備する【毒薬瓶】から【大量の毒液】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【猛毒】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシフカ・ヴェルランドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルドラ・ヴォルテクス
●アドリブ連携OKです

ストームブレイドの使命だ。
オブリビオンストームを滅ぼし、未来を拓く救世の力、それが俺に祈りを託した者の切なる願いだ。

『強力な毒の反応、警戒を』

了解した、毒を制するならば、蛇となるまで。

【マハーカーラー】
リミッター解除、限界突破。
このオブリビオンを滅ぼすには、毒の耐性を……目眩しか?貴様が相対しているのはナーガ、蛇の化身……貴様が持つ熱、蛇の感覚から逃げられると思うな。

毒に耐性を持ち、接近してチャンドラー・エクリプスの斬撃を見舞い、タービュランスの暴風で、毒液や毒霧を払い、こちらの領域で戦う。

毒薬を使わせず、破壊し、相手の手をつぶしていき、トドメを刺す。


朱鷺透・小枝子
偽神化に付きあちこちから出血。
「この感覚は、久しぶりだ…!」「ごふっ…!!」

【闘争心】で激痛を無視。
現れた小太郎へ雷降拳銃【クイックドロウ】、【追撃】騎兵刀で斬り掛る。

『魔改造能力者』【魔眼の動体視力・瞬間思考力】で顔を、含み針を視認。
【霊障武器受け】【念動力】で含み針を掴み、崩壊霊物質が【呪詛解体】。

「デミウルゴス……眠れた者をまた、呼びもどしてェ!!」

崩壊霊物質を小太郎へ【乱れ撃ち】放つ。
【残像】転移能力で回避直後の小太郎へ高速移動能力【早業切断攻撃】
手に持つ騎兵刀で、髪を変形させた刃で、念動力制御の複数本の騎兵刀で、

「お前もオロチもぶち殺してやるぅうううう!!!!」

滅多切り敢行。



 その平原は、今もなお黒焔がもうもうと煙っている。紫髪のくのいちに化けた風魔小太郎の前に、二人の猟兵が転移された。
 硬質的な防具に身を包むルドラ・ヴォルテクスは、ひそりと自分の耳に囁かれ続ける救いの声に頷く。
 だってそれは、ストームブレイドの使命であるから。
 この地に蔓延る禍嵐を滅ぼすことのできる力は、未来を拓く救世の力。祈りを託してくれた、多くの誰かの切なる願いのかたち。例の脳髄も、同じ声を聴いているのだろうか。だとしても、眠るフィールド・オブ・ナインを掘り起こそうとしているオブリビオンが、その声に耳を傾けるとは思えないが。
 その隣、青年よりも随分小柄な少女は震える脚で大地を踏みしめる。体内に流れ込んだ偽神細胞が巡るたびに、朱鷺透・小枝子は徐々に大きくなる激痛に苛まれていた。
「この感覚は、久しぶりだ……!」
 赤く染まる白目、膚を裂いて噴きだす血。それらを受け入れながらも、ただひどく燃え滾る闘争心のみで痛みに気付かぬふりをする。
 ルドラには、その選択をした少女にかける言葉はない。共に戦う、それだけが今の二人にできることであって。戦闘衣から脳裏に直接語られる音声が、情報収集の結果を伝えてくる。
『強力な毒の反応、警戒を』
「――了解した。毒を制するならば、蛇となるまで」
 最初に動いたのは小枝子。少女の手によく馴染む鈍色の拳銃から、雷雨を宿した銃弾が秒の間に撃ちだされ、風魔はそれを難なく回避。小枝子は素早く地を蹴って、一気に距離を詰めて騎兵刀で斬りかかる。
「娘、憎悪と憤怒にまみれているな。よくそれで生きていられる――否、もう現世の者ではないな」
 淡々と告げる忍びに応じることなく、ぎり、と歯を食いしばる。今の小枝子にあるのは、かつて眠らせたはずの哀れな敵の姿。あの時、低コストなぽんこつがにせものの神様にできたことは、たったひとつ。
「デミウルゴス……眠れた者をまた、呼びもどしてェ!!」
 どこかつめたい印象の、眼鏡を掛けた貌が小枝子を視ている。ぷ、と一気に吐き出された無数の毒針の行方は、怒りに燃える少女。けれど埋め込まれた人工魔眼が、すぐに彼女の思考に針の速度を教える。
 ぱし、と見えぬなにかが毒針の群れを掴んで、その場でほろほろと砕いていく。塵のようにかき消えたそれらを惜しむことなく、風魔はすぐさまルドラへと端正な面を向ける。
「目眩しか?」
 ――ひゅうひゅうと、嵐喰らいの蛇が目覚める。
 荘厳な鎧は鋭さを増して、長くうつくしい尾を生やす。此方へと噴きかけられる毒針の群れを、機械に似た蛇尾が地面に叩きつけた。
 瞬時に駆けるルドラの姿は、まるで宙を舞うのにも似ていて。接近した彼の手にした刃は鋭利な大剣のかたちを成して、凄まじい斬撃を飛ばす。
「やはり猟兵、貴様らも面妖よな」
 風魔が斬撃を躱すよりも速く、青年の刃は瞬く間に槍へと形を変える。突風のように奔った刺突が、忍びの脚を掠めた。
「貴様が相対しているのはナーガ、蛇の化身……貴様が持つ熱、蛇の感覚から逃げられると思うな」
 もう片方の手で操る機構剣が、オブリビオンストームに匹敵する暴風域を生みだす。その中を突っ切るように、小柄な影がまっすぐに忍びへと跳んだ。
「アァアアアアア!!」
 少女らしからぬ雄叫びをあげながら、口からはごぼごぼと血を垂れ流す。置いてけぼりにした痛みが舞い戻ってこないように、小枝子はエクトプラズムを撒き散らす。それら全てを躱しきった風魔の背後には、いつの間にか転移した悪霊の姿が在った。
「お前もオロチも、ぶち殺してやるぅううう!!!」
 手にした刀が、手入れされていない黒髪が変形した刃が、念動力で動かされる複数の刀が、一斉に忍びの肉体をずたずたに引き裂く。
 背中全てを抉られる前に、風魔が前方へ跳ねる。けれどそこには、ナーガを冠したルドラが待っていた。
 振るわれるのは鋼鉄の巨爪。先程掠めた片脚を、確実に抉るために。
「俺の領域で、自由に動けると思わないことだ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐藤・和鏡子
偽神化の副作用は手持ちの医薬品を使用して対応します。
(激痛なら鎮痛剤の注射、出血なら包帯を巻く、など)
私は看護用ミレナリィドール。
市販されない様な強力な薬剤も私の救急箱の中には入っていますから。
猛毒忍法・毒波は救急箱を変形させてシールド型にして直撃を防いだり、救急箱の医薬品を使って解毒するなどして対抗します。
機医のユーベルコードで医療用ロボットを召喚して攻撃させます。
他の猟兵に負傷者がいた場合は治療など、積極的に援護します。
それが、看護用モデル・ミレナリィドールの本来の使命ですから。


咎大蛇・さつき
うふふ、問題ありません。
ありったけ私に注入してください。
【戦闘】アドリブOK
ああああっ…!ううっ…!!
(体中から出血し、激痛とともに吐血する。)
…あっう…わかります…
このような苦しみが今、あなたにもあふれているのですね…
この痛みもまた愛です。痛みを共有し、理解することもまた…!
(自身の痛みを受け入れ、相手を理解しようと思うことで持ち直す)

さぁさぁさあ!ともに愛し合いましょう!
(偽神細胞の痛みに耐えながら斬撃を容赦なく仕掛けていく)



 黒焔の熱さなど無関係のように、すずしげな眼差しで猟兵達を見据えるくのいちの見目をした風魔。彼の前に現れた赤毛の少女は、にっこりと微笑む。
 その隣に佇む淡菫の少女が、注射器を手にしたまま穏やかな調子で尋ねる。
「それでは、いいですか」
「うふふ、問題ありません。ありったけ私に注入してください」
 ナース姿の佐藤・和鏡子は偽神細胞がとぷりと入った針を、咎大蛇・さつきの膚に刺す。一気に女の中に巡る細胞は、すぐに副作用をもたらした。
「ぁあああっ……!」
 ごぷりと口から吐き出す赤色は、さつきの身体のあちこちに滲んでいる。ゆびさきまで赤く染まったさつきを、和鏡子はもうひとつの注射器を取り出す。
「今すぐ鎮痛剤を、」
「いいえ! それは必要、ありません……っ」
 呪符があかく染まるのも構わずに、さつきは鎮痛剤の接種を断る。どこか恍惚とした表情で風魔を見つめ――否。
「……あっう……わかります……」
 その視線は、城内に居るドクター・オロチに向けられているのか。
「このような苦しみが今、あなたにもあふれているのですね……」
 自身を苛むこの痛みもまた愛。痛みを共有することも、それを理解することも、彼女にとって愛と呼ぶべき感情だった。
「わかりました、でも、止血はさせて下さいね」
 和鏡子は手にした包帯やガーゼで、さつきの全身のあちこちを素早く止血していく。慣れた手つきに感心しながら、さつきは軽く礼を返した。
「感謝します、ちいさなナースさん」
「私は、看護用ミレナリィドールですから」
 ふわりと野に咲く花のように控えめな笑みを浮かべて、和鏡子は自分の細腕に針を打つ。少女の身にも容赦なく、偽神細胞の影響は及ぶ。
 凄まじい激痛と共に、視界が片方あかく染まる。左から出血したんですね、と冷静な思考で、すぐさま鎮痛剤を流し込み、左眼にガーゼを当てて薬品をぶっかける。
 市販されない強力な薬品類も、彼女のちいさな救急箱に詰め込まれていた。
「医者の言うことを聞かぬ患者と、それを受け入れる医者か。愚かな」
 呆れた物言いと共に、忍びはその場で手にした毒薬をぶち撒ける。紫色の煙と共に現れたのは、四体の細身の獣。いずれも唸り声をもらして、今か今かと主の合図を待っている。
「――ゆけ、忍獣共よ」
「さぁさぁさあ! ともに愛し合いましょう!」
 さつきの携える、鋸状の狂刀から異様なオーラが立ち昇る。それは彼女の想いをたらふく喰らった愛の結晶。一気に駆けだしたさつきめがけて、獣の群れが地を蹴る。
「邪魔はさせません」
 和鏡子の掛け声に合わせるように、無数の小型医療用ロボットが飛び立つ。縦横無尽に宙を飛び回るロボット達のアームに装備された手術用メスが獣を裂き、注射針が硬質化した膚の奥深くを穿つ。
 群がるロボットに子犬じみた悲鳴をあげる獣は、さつきがすぐに刀で首を、脚を落とす。そうして出来た忍びへの道筋を、再び残った獣達が塞ぐ。
「さつきさん、残りは全て私に任せてください。あなたは彼を」
 くのいちの姿といえど、少女は風魔を彼と呼んで。同時に消毒用のエタノールで、どぱどぱとさつきの全身を濡らしていく。
「少々しみるでしょうか」
「これもあなたの愛なのでしょう? ならどんな痛みだって、私は全て受け止めたいんです」
 うっとりとした表情でわらう患者に、看護師はにこ、と微笑む。負傷者を癒すこと、それが看護用モデルのミレナリィドールの、本来の使命なのだから。
 和鏡子は襲いかかる獣の群れに、ロボット達に号令をかける。
「皆さん、突撃です」
 ぶわ、と百を超えるロボットは、各々の武器を手に獣を蹂躙する。殺すために切り刻み、殺すために穿つ。それが仲間を助けることに繋がると知っているから、本来の用途とは真逆だとしても和鏡子は迷わない。
 獣の血肉がぶちまけられて真っ赤に咲きこぼれる中で、さつきが忍びへと奔る。狂刀は十分な射程範囲で無数の斬撃を放つ。
 避けきれぬそれが忍びの全身に、無数の傷をつけた。
「ああ、私の愛! 受け取ってくれますよね!!」
 ――いいえ、受け取って。
 憎悪にも似た仄暗い愛が、まごうことなく献身によってぶつけられる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

唐桃・リコ
アドリブ、マスタリング大歓迎だ

あの時の痛みと同じだろ
大丈夫だ、慣れてる
オレは、戦う力が欲しい
…何にも負けねえ、あきを守れる力が欲しい

まただ
人狼はオレの中で楽しそうに吠えてやがるし、あきの、あきの声がする
「リコ、助けて」って「おれを殺して」って言ってる

……違え
こんなのあきじゃねえ、オレの1番じゃねえ
頭ガツンと殴りたけりゃ分かる
流れる血が、頭を白くしてくれる

【Howling】!!
なあ、こっち向けよ
オレとやろうぜ
力比べだ、オレと楽しもうぜ
かみさまみてえな力、オレ欲しいんだ
オレとやり合って力をよこせ!!!



 もうもうと煙る黒の炎原で、唐桃・リコはいつかの戦争を思い出していた。
「あの時の痛みと同じだろ」
 少年はもう、十二分に慣れている。戦う力が欲しいと願って、再び自分の膚に注射針を思いっきり突き刺す。何者にも負けない、だいすきな人を守れる力が欲しいから。
 あっという間に体内を巡る異物の影響は、いつかとおんなじ激痛を届ける。ぐわんぐわんと頭を揺らしながら、楽しげに獣はひと吠えしてリコを嗤った。
 ――まぁたやってんのかよ、てめぇも相当の浮気性だなぁ。
「うるっせぇ」
 嫌になるほど馴染んだ獣性の嘲笑に一喝したのち。ほんの少し遅れて、かぼそい誰かの声がする。どこか泣き出しそうな、震える怯えたこどもの声が、少年の名を呼んだ。
 ――リコ、
 ああ、まただ。またアイツの声がする。ひとりぼっちで蹲るこどものような、さみしくてたまらないといった様子の、たいせつな彼の声。
 ――リコ、殺して。
「あき、」
 ――頼むから、おれを、殺して。
 朦朧とした意識のなかで、手を伸ばせばすぐに触れられそうな距離に菊彩の姿が視えた。けれど少年は、彼に自らの手を伸ばそうとは思わなかった。
「……違ぇ」
 こんなのあきじゃねぇ、オレの一番じゃねえ。
 ナイフの柄で頭を思いっきり殴打する。どくどくと真っ赤な血が流れて、その激痛と赤色が頭を白くさせた。
「随分と無理をする方法で醒めたか。面白い」
 忍びは淡々とその様子を眺め、くのいちのまなこが細くなる。ばら撒かれた毒薬が、紫の煙を纏った獣の姿へと変わる。ゆけ、とけしかけられた獣の数は三体。ましろを赤に染めた少年へと疾駆する。
 同時、リコは大きく吸いこんだ息を、音としてあらん限りに吐き出す。
 狼の咆哮はばりばりと鼓膜を破き、獣の全身を固まらせてその場に留まらせる。素早く駆けて、手にしたナイフで獣の喉笛を裂いていく。
「なぁ、こっち向けよ。オレとやろうぜ」
 息を切らして笑う顔は、それでも濃いピンクの瞳孔が開ききっていた。
「力比べだ、オレと楽しもうぜ。かみさまみてえな力、オレ欲しいんだ」
「――ふむ、既に狂っていたか」
 忍びは再び毒薬をばら撒いて、少年は再び轟々と咆える。自分で居られる時間を、またひとかけら削って。それでも、
「オレとやり合って力をよこせ!!!」

成功 🔵​🔵​🔴​

月白・雪音
…神の力無き如何な干渉も受け付けぬ偽神。その力を得たとあらば、こちらも土俵を同じくする他ありません。
命を削る戦となりましょう。されど千載一遇のこの機会。どうして逃すことが出来ましょうか。


偽神の細胞をその身に宿せば、苛まれるは獣の本能。
武の至りにて律すそれは膨れ上がり確かな殺意の声を以て精神を蝕み、
それでも抑えれば肉体の苦痛となって跳ね返り、握った拳は鋭く伸びる獣の爪が肉を貫く

されどUC発動、落ち着き技能の限界突破、無想の至りを以て殺戮の衝動、身の苦痛を抑え込み業を練り、
野生の勘、見切りにて相手の攻撃を察知、回避しつつ
怪力、グラップル、残像での高速格闘戦にて毒の回らない最低限の接触で仕留める


ゼノン・サイネスト
奴等を逃すまいという他の猟兵の熱意が伝わってくる
故に、勝率上昇の為の偽神細胞接種を躊躇わない
強化実験は慣れている

幻聴と痛覚は生体部分の脳が錯覚しているのだろうか?
義体センサー感度アップ
幻覚と現実音を聞き分け
全身の痛みは幻だと脳に実感させる
…まだ、自分は人という事か

毒獣は赤光で攻撃しつつ、被毒を避ける為UC発動し回避
複数に囲まれたならビームウィップを振るい牽制しながら離脱
アクセラレッグのダッシュ移動を交えて敵を翻弄したい
また、風魔に追加召喚の挙動があれば
即座にクナイを投擲して召喚阻止
隙あらば一気に間合いを詰めて赤光で攻撃

信義を貫こうとする姿勢、シノビとして共感はする
相入れない立場である事が残念だ



 膚を舐めるような熱を知らぬ貌で、月白・雪音はましろの髪を揺らす。
「……神の力無き如何な干渉も受け付けぬ偽神。その力を得たとあらば、こちらも土俵を同じくする他ありません」
 命を削る戦となる、されど千載一遇のこの機会。
「どうして逃すことが出来ましょうか」
 淡々と言葉を紡ぐ彼女の姿に、ゼノン・サイネストはその熱意を確かに感じていた。奴等を逃すまいという、猟兵達の想いが義体をわずかに震わせる。
 ならば自分が為すべきこともひとつだけ。勝率上昇の為ならば、と、幼さの残る青年の駆体は注射針を義体に打ち込む。強化実験は、慣れているから。
 何も感じないはずのゼノンの全身を、痛みと呼ぶべき感覚が巡っていく。人の声に似た無数の音声がひっきりなしに脳を揺らすのは、まだ生体部分のそれが錯覚しているからかもしれない。
 頭の中で鳴り響く幻聴と現実に存在する音声を明確に判断すれば、全身の痛みはあくまで幻だと脳へ実感させていく。そんなちぐはぐな意志だけで、脳髄はうまく丸め込まれて。
「……まだ、自分は人という事か」
 青年は感慨もなく呟く一方。つ、と迷いなく突き刺す針が、しろの娘の体内に細胞を送り込む。途端、それまで無視できていた熱が、身体の内から溢れだす。異物は獣の本能をつよく刺激し、じくじくと燃え滾る衝動が雪音を襲う。
「……は、ぁ」
 極めた武によって理性がただしく律し続けていたそれは、痺れにも似た感覚で膨れあがっていく。覚えのないような、何処かで聞いたことのある声色がそうっと囁く。
 ――殺せ、ころせ、コロセ、コロセコロセコロセ!!
 すこしでも意識を傾けてしまえば、目に映る全てを喰らい尽くしかねない。そんな殺意の声は娘の精神を冒していく。
 衝動を抑えつけたとて、ならばと異物はその身に激痛をもたらす。ぎり、と握った拳からは、娘を獣たらしめる異様な鋭さをもった爪が肉を貫く。それでも、
「私は、見境なく全てを屠る獣などではありません」
 娘はヒトで在るために、深雪降り積む心を想う。それはヒトが至らんとする無想の果て。己を苛む殺戮衝動も全身の苦痛も、雪のいろが抑え込む。
「ふむ、次は獣と絡繰か――ちょうどいい」
 くのいちの見目をした風魔は、肉体のあちこちを赤く染めつつも焦燥の色を見せない。手にした毒薬をばら撒けば、紫煙を纏った獣の群れが二人を睨む。
「こやつらと遊んでくれるか、人ならざる者共よ」
 主の言葉を合図に疾駆する忍獣の一体を、ゼノンが深紅にかがやく光刃で斬り結ぶ。次に襲いくる一体は、くぱりと大きく口を開ける。
 その途端、青年のまなこの裏、眼球の奥。キュル、とわずかな駆動音がして、脳と駆体に組み込まれた戦闘知識が起動する。獣の牙は毒を孕み、噛みつくことで此方に猛毒を注入することが把握できた。
 獣が喰らいつく寸前に、光刃を逆手に持ち直す。獣の下顎をまっすぐ刃を突き立てて、どぷりと赤色を咲かせる。
 続けざまにぞろりと青年を囲む忍獣の一匹が、小柄な娘の拳によって吹き飛ばされる。横っ面を殴られた獣が体勢を整える前に、雪音は獣の後ろ脚を真逆にへし折る。
「すまない」
 ゼノンがゆびさきに仕込まれた鞭状の電流を振るってその場を離脱すれば、雪音はいいえ、と短く応える。
 再び毒薬を構える風魔へと、青年は即座にクナイを投げつける。落ちた毒薬の瓶はその場で粉々に砕けると、不気味な彩と悪臭を残す。
「自分が道を拓く」
「承知」
 ただ、短いやり取り。幾多の戦いをこなした猟兵達は、それだけで見知らぬ相手との連携を取る。
 毒薬に気を取られた瞬間を狙って、ゼノンが一気に間合いを詰める。脚部に組み込まれた加速装置が風を切って、深紅の刃が風魔へと斬りこむ。
 ――信義を貫こうとする姿勢、シノビとして共感はする。
「相入れない立場である事が残念だ」
 青年の影から飛びかかる雪音の姿を捉えて、風魔は毒薬瓶を放る。しかしそこには既に娘の姿はなく、残像だと気付いた時には、ましろの殺意は背後に在った。
 鋭利な爪が、ぐっと忍びの肩を抉る。軽やかな動きで、一気に向こう側へと貫く。
「私は、ヒトで在ろうとしているのです」
 赫い三つの瞳は凪いだまま、忍びを視ている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神坂・露
レーちゃん(f14377)
久し振りに『偽神化』したけど、今回もなんともないみたい♪
…あ!レーちゃんは…あ~。今回も身体の調子悪いみたいね。
「大丈夫? …無理はしないでね? レーちゃん」
ぎゅってしながら言うとレーちゃんは真っ青な顔で頷くだけで。
相当キツイみたいね。身体…熱あるみたいだし…レーちゃん?
…あ。レーちゃん転びそうになったわ…。珍しい。

レーちゃんも不調だしなるべく一気に倒そうと思ってるわ。
上着とか脱いで加速した【銀の舞】でヒットアンドアウェイ?する。
両手持ちで斬ってから必ずレーちゃんの元に戻ってこようと思うわ。
レーちゃんも援護してくれてるけど…何時ものキレがないわね。
少し…いいえかなり心配だけど今は相手に集中しないとっ!
懐に飛び込んで斬っちゃうわ!
【早業】に【2回攻撃】と【重量攻撃】を【限界突破】で!

あ。毒使うんだったわよね?【激痛耐性】と【オーラ防御】を纏うわ。
一応纏うけどそんなの使わせないくらいの速度で斬っちゃうわ!
今のレーちゃんには毒も辛いはずだから…絶対に毒を吸わせないッ!


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
ん。やはり『偽神化』は私の躰には合わないようだな…。
やれやれ。久々だからか一度目よりもしんどい…気がする。
露に心配をかけさせないよう平常を装ってみるが…難しいな。
「…私は…問題ない。相手に集中しろ…露」

パフォーマンスで身体機能を上昇させてから封印を解こう。
次に属性攻撃と範囲攻撃を付与し全力魔法の高速詠唱で行使。
唱える魔術は【凍てつく波動】だな。
散布する毒もこの魔術で多少は広がる速度が落ちるはずだ。
露や他の者への影響を遅らせることもできるはず…だが。
…やれやれ。躰がキツイな。パフォーマンスを上げたからか?

躰の反応速度がかなり落ちているが少しずつでも移動しよう。
私が狙われたら露の攻撃が鈍るだろうからな。…あの子は優しい。
一々私のところへ戻るようにヒットアンドアウェイをするのだから。



 つ、と注入された異物が巡るのを、シビラ・レーヴェンスの身体は拒絶する。ひどい眩暈と息切れは、いつも冷静沈着な魔女の思考と動作を鈍らせる。
「大丈夫?」
 二度目の偽神細胞の接種にも、神坂・露の身体は不思議と異変を覚えない。けれど親友には明確な異変があって、それがすこしばかり不安だった。
「……無理はしないでね? レーちゃん」
 そうっと手を握って気遣うように声をかけるものの、シビラは青い顔で頷くのみ。その手はじくりと熱を持っていて、少女のつめたい膚はいつもよりもぬくい。
「私は……問題ない。……相手に集中しろ、露」
 平静を装いはするものの、露には全てお見通しだろう。友人の横顔をちらと見て、シビラは全身を赤く染める忍びを見据える。
 その脚が少しだけよろけたのを見て、珍しい、とこの場には相応しくない感情を覚える。ふるりと首を横に振って、露はまっすぐに駆け出した。
 淡とした表情のくのいちへと身を低く屈めてゆく少女は、上着を脱いでしろい膚を荒野に晒す。既に幾度の傷を負った風魔がばら撒く毒薬が、紫煙を纏う獣の群れを喚びだす。
「幼子といえど猟兵、加減は出来ん」
「そんなの必要ないわ!」
 唸り声をあげ牙を剥く獣達の肉を、二振りの刃が鋭く抉り刺していく。戦場を舞い踊る少女は一撃ごとに親友の元へと戻り、敵との一定の距離を保つように意識していた。
 なにより本調子ではないシビラのことが気がかりで、近接に持ち込まれた時の彼女を守りきることを優先している。それをわかっているからこそ、シビラも自身の裡に秘めた力を解放し、身体機能を出来うる限り向上させていた。
 獣の群れと共に忍びが投げつける薬瓶が、地面を毒々しい色に染めあげる。少しでもその色に触れれば、あるいは気化したそれを吸いこめば――長く生きる魔女には嫌でも結果は理解できた。
 腰のベルトに備えつけた魔導書に触れて、唇がまじないを謳うように唱える。
「Dormi liniștit……」
 尋常ならざる速さで編まれた呪文は、青白い魔法陣を地面に浮かびあがらせた。ある種の化学式を応用したそれは、あくまで魔術として組み込まれている。急低下する気温のなかで、分子と原子運動が停止へと追い込まれる。
 散布された猛毒は凍りつき、獣達の動きが徐々に鈍くなっていく。その隙を突くように、露が一気に獣達の喉を裂き、脚を断ち、忍びへと肉薄する。
「……ほう。そこの幼子は興味深い術だな。魔術か? あるいは科学か」
 いずれにしろ、己の身が危ういと察知した忍びは急接近した露の前から素早く跳びあがる。動きの鈍った獣を足場に駆けあがり、上空から叩きつけるように魔女へと毒薬を落とす。
「レーちゃんに毒なんて吸わせない!」
 月白のオーラを纏ったまま、露は忍びの背後に斬撃を放つ。風魔が斬撃に気を取られているうちに、ぱ、とその場から飛び退いたシビラは、口元を即座に押さえる。
「よほどその娘が大事と見える。――さて、どちらから仕留めるのが温情となるか」
「そんなこと、させないんだから!」
 多少の耐性はあれど、オーラによって露が毒のすべてを完全に防ぎきれるかは怪しい。自分を気遣う友人の気持ちは、ほんのりと理解できるようになったから。
 ――これ以上、露の集中を欠くわけにはいかない。
「露、私は平気だ。君は君のやるべきことを果たすべきだろう」
 大きく、それでいていつもと同じ声色で言葉を紡ぐ。ぱちりと乳白色の双眸が魔女を見て、きゅ、と唇を噛む。
(そうだ、あたしったら。今は敵に集中しないとっ!)
 少女は冷静さを取り戻す。少しでも斬りこみ、確実に多くの敵を屠ることが親友の余裕にもつながる。それを思い出した露は、大きく声をあげた。
「レーちゃん、もう一回お願いできる!?」
「当然だ」
 先程よりも範囲を大幅に拡大した青白い魔法陣が、忍びごと獣の群れを飲みこむ勢いで冷気を放つ。細胞への拒絶反応か、パフォーマンスを上げ過ぎているせいか、魔女の肉体への負担は重なる。
 それでも、此処で妥協しては友人の期待を裏切ることになる。シビラにとって、いまやそれは自分に許せるものではなくって。
 吹きすさぶ絶対零度の世界で、忍びの吐息はしろく凍てつく。やがて動きを止めた獣の群れを突っ切って、露は再びくのいちの元へ奔る。
 刃のひと振りが冷気を纏って切り裂かんとするのを、すんでのところで風魔が躱す。途端、獣の死体を足蹴に上空へ舞う娘は、一気にもうひと振りで忍びの肩をざっくりと墜とした。
「あたし、あなたに怒ってるんだから!」
 軽い音で地面に着地した露は、己の鮮血に染まる忍びへ、少しだけ頬を膨らませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーノ・ディエール
ドクター・オロチ! 今度こそ引導を渡します!
偽神細胞液を注入し、いざ戦場へ
確かに、凄い拒絶反応です……それでも
銀河帝国攻略戦でオロチウイルスに苦しんだ時に比べれば
私だって、強くなっている筈です!
医術的に痛みの原因を探り
自らに念動力でマヒ攻撃をかけ痛みを堪えます

敵も医術者……いいえ、ニンジャが化けたオブリビオンと聞きました
ならば容赦はいりません! クルセイダー、最大戦速!
騎乗したマシンを加速させターゲットを捉えつつ
相手の背後を狙って空中戦を敢行します
顔が向かなければ狙いをつけられないでしょう!
こちらはクルセイダーの予測機能で情報収集しつつ
クリスタライドブースターの一斉発射で敵を寄せ付けません!

敵の攻撃を退けたら止めを刺す為、距離を取ります
念動力全開放――真正面から敵を消し飛ばす七色の光を解き放つ
あなたに恨みはありません。ですがオロチの仲間ならば話は別
この痛みは世界の痛み、そして世界の嘆きと怒り!
如何に取り繕おうと、言い訳を述べようと
私の宇宙で喧嘩を売った事、死んでも後悔させてあげましょう!



 膚に刺した針の痛みはなんてことはない。けれど、ユーノ・ディエールの肉体は体内に巡る偽神細胞を良しとはしなかった。
「確かに、凄い拒絶反応です……! それでも、」
 故郷を襲撃し今もなお生き延びようとするドクター・オロチに、今度こそ引導を渡すために娘は黒焔の腹に降り立った。こんな痛みは、銀河帝国との戦争でウイルスに苦しんだ時に比べれば。
「私だって、強くなっている筈です!」
 額からじわりと浮かぶ汗を拭うことなく、医術の心得で痛みの原因を冷静に探っていく。
(……此処ですね)
 いっとう激痛が響く腹部に手を翳し、目に見えない念を操り麻痺を仕掛ける。さながらそれは麻酔のように、ユーノを苛む痛みを少しばかりやわらげていく。
「自らの感覚を殺すことで痛みを耐えるか……猟兵というものは、多種多様な術を操る」
 感心したように吐息をもらす忍びの白衣と黒装束は、幾多の攻撃を受け赤黒く変色している。それでもまだ勝機はあると見ているのか、あくまでオロチに付き従うのか、レンズ越しの眼に戦意が失われることはない。
 それまでの猟兵の戦いから、それは薬学に精通する医術者と判断できた――けれど、くのいちの姿はニンジャが化けただけのオブリビオン。容赦なんてひとかけらも要らないのだから。
「クルセイダー、最大加速!」
 身を低くしてハンドルを握った愛用の単車は、今日も主人の命令を喜ぶように一気に加速。光の軌跡を遺して駈けるのは、宙。
 忍びもバイクに跨るユーノを追うように高く跳ぶものの、その速度に追いつくことは不可能。ましてや、口に含んだ毒針を彼女めがけて吹き飛ばすなど。
「顔が向かなければ狙いをつけられないでしょう!」
 ぴぴ、と電子音がして、愛車は電子頭脳で忍びの動きを予測する。それらを逐一主人に伝えれば、風魔の背後から、娘の両肩に装備された鎧装がエネルギーを溜める。
「いい調子ですよ、クルセイダー!」
「しまっ、」
 ブースターが完全に充填されて、鎧装兵器の一斉発射をお見舞いする。はっと忍びが振り返るよりも先に、誘導レーザーが忍びを穿つ。同時に放たれた追尾システムを完備するミサイルが突っ込めば、連装キャノン砲が弾幕の流星を煌かせる。
 悲鳴をあげることなく全ての攻撃を喰らった風魔に、娘はあえて距離を取る。すぅ、と息を整えるのは、真正面から敵を消し飛ばすための準備。
「あなたに恨みはありません。ですがオロチの仲間ならば話は別」
 ――念動力、全開放。
 宝石の身はほんわずかに、人肌に偽装したスキンを通して透けて。生体結晶エネルギーを、静かに一点に集中させる。
「この痛みは世界の痛み、そして世界の嘆きと怒り!」
 こころは熱く、けれど思考は冷静そのもの。己のちからが満ち満ちたのを感じて、ユーノははっきりと口にする。
「如何に取り繕おうと、言い訳を述べようと! 私の宇宙で喧嘩を売った事、死んでも後悔させてあげましょう!」
 それを合図に、七色の猛烈なひかりが草原をかがやかせる。虹星瞬く一撃は、一瞬黒焔の勢いすらも弱らせた。
 あとに残ったのは、全身を焼き尽くされた忍びのみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
ふぅううううウウウ!!
るぅアアああああああアア!!!!!

出血に加え偽神化拒絶反応増加、赤黒い皮膚の異形へ変貌。
【闘争心】による【継戦能力】戦闘継続。
ハルバードを【念動力】で振るい【吹き飛ばし】毒攻撃や猛毒忍獣等をなぎ倒して出来た道筋を【推力移動】駆け抜けて、騎兵刀を小太郎へ【串刺し】突き立て捩る!

殺す、殺す、壊す、喰い壊せぇえええ!!!
『戦塵・偽神虐殺』発動、騎兵刀を突き立てた小太郎の顔面へ、
自分の頭当りから偽神細胞剣を生やし刃が口を開けて含み針ごと【捕食】攻撃。
【エネルギー充填】喰らい壊し、力を増して【ダッシュ】

AaaああAAAAあああ!!!!!

いくつもの細胞剣を全身から生やしたてながら、
攻撃を全身の細胞剣で【なぎ払い、受け流して】、【切断】。
ぶつかって、或いはすれ違うように細胞剣を小太郎へ叩きつけ、

壊れろ!!!!!

細胞剣を手に生やした1本に減らし威力増加、
偽神細胞を集中させ刀身を伸ばしながら小太郎へ
異形の、異常発達した剛腕の【怪力】で振り落とし【範囲攻撃】
さながらに、断罪の剣が如く。



 黒の炎原で、風魔は自分のいのちの終わりが近いことなどとっくに気付いていた。それでも、受けた役目は最期まで務めてこその己が名であると自負している。
 眼前に再び現れたのは、先程憤怒と憎悪にまみれていると称した少女だった。ふぅふぅと荒げる息は歯を食いしばる隙間から漏れでているようで、同時にどくどくと流れる赤が目立つ。
 ぼんやりと血の色の滲む眼球が向ける殺意は、忍びを殲滅することしか考えていないのだと思えた。
「ふぅううううウウウ!! るぅアアああああああアア!!!」
 朱鷺透・小枝子を襲う拒絶反応は更に悪化している。しろい膚は硬く赤黒い表皮へと変化していく。少女の身が異形に成ろうと、ぷつりと血管の切れる音がしても構わない。溢れだして止まらぬ闘争心ばかりが、彼女を突き動かしていた。
「哀れな娘よ――ならば己も、全てをかけてお前を滅せねばな」
 ばら撒かれた薬品が、紫の煙をくゆらせて忍獣の姿として現れる。毒薬のとぷりと詰まった瓶を投げつけて、小枝子と自らの周辺を毒々しい彩に染めあげた。
 これでもう、互いに逃げ場はない。忍びは自分が死ぬ時は、敵の一人でも道連れにすることを考えていた。この狂った少女が逃げることなどありえないと、理解した上で。
 小柄な身には大きすぎるハルバードが宙に浮く。念力に想いを籠めるほど、また身体のどこかがぶちりと弾けた感覚がした。一斉に襲いかかる獣の群れめがけて自由に舞う槍斧が振るわれれば、赤黒い臓物が周囲に撒き散らされる。
 がら空きの道筋をまっすぐに駆け抜けていく。獣の死骸を踏みつけて、高く跳びこむ。その瞬間を狙ったように、小枝子の顔面へと忍びが含み針を放った。
「な、に、」
 全身に毒針を刺されたまま、赤黒い異形の娘は止まらない。思わずたじろぐように呟いたのは風魔のほうで。
 片手で掴んだままの騎兵刀が、忍びの腹部をぐさりと貫く。刀で串刺しにしたまま、ぐちゃりと体内で刃を捻じりこむ。
「殺す、殺す、壊す――喰い壊せぇえええ!!!」
 異様な絶叫と共に、娘の額から禍々しい棘の生えた剣が備わる。刃はくぱりと口を開けて、顔面諸共喰らい尽くす。
 ――ただ、それだけで。忍びのいのちは潰えたはずなのに。
 まだ、まだ娘の怒りは収まらない。その殺意と衝動はどこまでも一途に続いている。
「AaaああAAAAあああ!!!」
 暴走状態の身体は、全身から偽物のかみさまとそっくりな細胞剣を生やしていた。脚を、腕を、ありとあらゆる四肢を切断すれば、忍びであったモノは肉塊に変わっていく。
 全ての刃を左腕の一本へと集中させて、ヒトならざるナニカに変わり果てた剛腕が剣を振るう。いつか見た彼の、断罪の剣のようなそれ。
 心の臓ごと真っ二つにされた身体は、もう風魔小太郎としてのテイを成してはいない。だのに、
「――お主はもはや、人としては戻れぬよ」
 空耳のようにかすかに聞こえた憐憫にも似た怨嗟のささやきを、少女は気付かなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ドクター・オロチwithデミウルゴス』

POW   :    偽神水晶剣
任意の部位から最大レベル枚の【偽神水晶剣(偽神細胞と融合した水晶剣)】を生やして攻撃する。枚数を増やすと攻撃対象数、減らすと威力が増加。
SPD   :    クルーエル・セイント
状態異常や行動制限を受けると自動的に【聖なる光のオーラ】が発動し、その効果を反射する。
WIZ   :    デミウルゴス・ポリューション
【指先】で触れた敵に、【強毒化した偽神細胞の侵食】による内部破壊ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 闇彩の城は、ゆらゆらと影法師のように揺れている。城内に飛び込んだ猟兵達が見たものは、気を狂わせたドクター・オロチだった。

「ァァアアアうるさいうるさいうるさい!! 誰も救えやしないんだ! 俺にはそんな力は、チガウ、ボクはボクハボクハ!!!」

 ふいに、ぴたりと動きを止めて此方を視る。脳髄にないはずの金の眼が、ゆらゆらと猟兵達を見つめているようで。

「ああ、そう、そうだった。殺しに来てくれたんだ、はは、ハハハ」

「いいよ、殺してあげる! だからさぁ、ボクのことも殺してくれよ!? なぁ、頼むよ!!」

 こんな偽物の神様になるくらいなら、

「キミ達全員殺して、ボクも死んだほうがマシ!!!」
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
殺されるのは勘弁して欲しいものだが望みは叶えよう。
…少々苦しむことになるが…。
パフォーマンスで身体機能上昇させ封印を解き準備を。
全力魔法を限界突破の高速詠唱で【禍の魔杖】行使。
『剣』に貫通攻撃と鎧無視攻撃と破魔も付与しておく。
今回は露が攻撃の主体になる。やれやれ…。
連携はできるだけ試みるがタイミングが合わないかもな。
…いや。必ず露に合わせる。何時もしていることだ。

むぅ。思ったていたよりも身体が動かないな。
これは事前に予測して攻撃回避をしないとマズイな…。
見切りと野生の勘でオロチの行動を先読みしつつ回避。
第六感はオロチの攻撃を避けることに使用する。
「私のことはいい。オロチに集中しろ! 露!」

「…身体が動かないのは細胞の影響だ。問題ない」
今の調子だとオロチを追い返すのが精いっぱいだったな。
やれやれ。躰が熱い。熱はかなりあるな…今回は。
「…私に怪我はないからそんなにしがみつくな…」
安心させようと声を出すが途切れ途切れになってしまう。
これでは余計に心配させてしまうな。やれやれ。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
オロチの言葉が何だかとっても矛盾してるわ?
これって細胞の影響なのかしら?かしら?
ッ!ってゆーことはレーちゃんもあーなるの?!
「…レーちゃん。オロチにならない…でッ!」
レーちゃんの手でセリフの途中で顔抑えられたわ。
『なるか…』って。むぅ…。心配してるのに…。

リミッター解除してから限界突破で剣に破魔を。
剣は二本を使って【銀の舞】よ!
レーちゃんには絶対に近寄らせないんだから!
あたしが集中できてないってバレちゃったわ。
「…! うん。ごめん、レーちゃん!!」
オロチの動きだけを見てしっかり攻めるわ。
レーちゃんの負担を減らせるのはこれが一番!
何時もみたいにしっかり合わせてくれるもの♪

「レーちゃん。レーちゃん、大丈夫?」
何とか追い返してからレーちゃんにぎゅぅーっと。
何時もよりも抵抗がないのは…やっぱり身体が…。
すっごく身体が熱いのも細胞の所為なのよね?
「大丈夫大丈夫? 何かすることない?」
…身体冷やせるといいんだけど…むぅー。
レーちゃんを撫でることしかできないわ。



 ドクター・オロチの言葉を聞いた神坂・露は、不思議そうに瞬きをする。
 彼は今も隙あらば猟兵達から逃げようとしていて、殺してくれと願う言動はひどくおかしい。矛盾する彼の叫びに、これもグリモア猟兵の言う偽神細胞の影響なのかしら、と考える。ふいに、さぁっと全身に寒気がして。
 共に細胞を接種した調子の悪い親友だって、同じくらい苦しんでいるということは、彼女もああなってしまうのかもしれない。
「レーちゃん、オロチにならない……でッ!」
 むに。思わず口走った途中で、ぐっとしろい掌が顔を抑えつける。
「なるわけないだろう」
「むぅ……心配してるのにぃ……」
 はぁ、とため息をついて、シビラ・レーヴェンスは友人の早とちりに少しだけ呆れる。それが心配から来ていることなのは、重々承知しているけれど。
「なあに、ボクを差し置いて内緒話!? それとも今から殺されるための準備でもしてんの!?」
 幻聴によって気の触れた脳髄が、二人への理不尽な怒りを口にしている。
「殺されるのは勘弁して欲しいものだが、望みは叶えよう」
 少々、苦しむことになるが。長くちいさく息を吐いて、ちいさな魔女は再び己の身体機能を向上させていく。細胞の巡る肉体は、今もなお異物に対して過剰に反応していた。
 唇からなめらかに紡がれ展開される、巨大な魔法陣の赤いひかりは爛々と、血の色よりも深い紅。千を超える深紅の細剣の群れは、二人の少女の周囲でずらりと宙を踊る。
「露、今回は君が攻撃の主体だ」
「わかったわ!」
 借りるわね、と二振りの深紅の刃を手にして、露は地を蹴る。オロチが動いたのは彼女と同時、両腕からは無数の水晶の剣を生やしている。どこか脈動するそれは、美しさとはかけ離れた見目をしていた。
「まずはキミからだね! すぐに二人ともズタズタに引き裂いてあげる!」
「レーちゃんには絶対に近寄らせないんだから!」
 シビラの魔力で先行する深紅の刃の群れを、水晶の刃が真っ二つに叩き斬る。露は上着を脱いだまま、薄い衣で素早く深紅の剣の剣舞を踊って脳髄へと斬りこんだ。
「ねぇ、本気でやってよ! そんなんでボクを殺せると思ってんの!?」
 ふっと真っ赤なパーカーの姿が消えて、背後からの斬撃の気配を感じる。迷わず前方へと走ってそれを躱すも、また宙を踊る支援の刃が折れていった。露が自分との戦闘に集中できていないことが、オロチには完全にわかっていたように、露も自覚している。
 いつもならどんぴしゃのタイミングで親友からのサポートが入るタイミングが、妙に遅い。それが露の気がかりで、同時にシビラも唇を噛んでいた。
「……むぅ」
 思っていたよりも、身体が動かない。発狂しているとはいえ、相手は猟兵達に幾度も辛酸を舐めさせたオロチ。こちらの不調に気付けば、露よりもシビラを狙ってくるのは明らかだった。
 そうすれば、攻め手である心のやさしい友人との連携は一気に崩れてしまうから。彼女とオロチの戦いを見据えて、もう一段階、思考能力を向上させる。
 びくりと全身が震える。痛みが走り、冷や汗が流れる。それを見逃さなかったオロチが、露との剣戟を中断して此方へと一気に肉薄する。
「キミ、すっごく苦しそうだね? あは、ボクとおそろい!!」
 いつの間に、と思う間もなく。指先がシビラの胸元へと止まろうとする。レーちゃん、と叫ぶ友人の声を耳にして、思考が速やかに冴えわたる。
 魔女は迷わず小柄な身体を横転させた。深紅の刃達は、ずどどど、と防壁代わりにオロチとシビラの間に一斉に突き刺さる。
「なにそれ、ムカつく!」
「露! 私のことはいい、オロチに集中しろ!」
 オロチとシビラが叫んだのはほぼ同じタイミングで、うん、と頷いて露は疾駆。その眼には戸惑いよりも、決意が滲んでいる。敵の動きだけを見て、とにかく攻め続けること。レーちゃんの負担を減らせるのはこれが一番――!
(何時もみたいに、しっかり合わせてくれるもの♪)
 魔女は自分へのガードの刃を絶やさぬまま、吹っ切れた様子の友人の刃に貫通のまじないと破魔の彩をのせる。オロチの興味がこちらへ向いているなら好都合。
「いい加減諦めて殺されてよ! ああ駄目だ、ボクを殺してくれなきゃさぁ!」
「――言っただろう、望みは叶えると」
 ふいにこぼれたシビラの呟きは、お返しと言わんばかりの背後からの斬撃で脳髄には聞き取れない。パーカーを深い赤に染め直したオロチは、ひどく甲高い悲鳴をあげた。
「くそ、たった二人相手にこんな……!」
 少女達を相手にはせず、影の城のさらに奥へと逃げることを選んだオロチを、露は追うことができなかった。
「レーちゃん、レーちゃん、大丈夫?」
 ぎゅう、と親友をいつものように抱きしめても、普段の抵抗は感じられない。
「……身体が動かないのは細胞の影響だ。問題ない」
 やれやれ、と自分の情けなさに呆れつつも、シビラはなるべく淡々といつも通りの声色で。それでも、途切れ途切れの声は隠しきれない。
「オロチの始末は……他の猟兵達が、つけてくれるはずだ」
「……うん、そうよね」
 露が触れても、明確にわかるほどの熱をもった身体は、普段のひんやりした体温とは大違いだった。
「大丈夫大丈夫? 何かすることない?」
「……私に怪我はないから、そんなにしがみつくな……」
 この瞬間に身体を冷やすことは難しい。グリモア猟兵による転移を待ちながら、露はただシビラの膚を撫でてやることしかできなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐藤・和鏡子
相手を取り込んだつもりでいたら、逆に相手に取り込まれる、物語でもよくある結末ですが、実際そうなった人を見ると、相手がオブリビオンでも気の毒ですね。
私が本来作られた役目とは真逆の行為ですが、ご本人の意思通りに楽にしてあげようと思います。
救いがたい苦痛からの解放も私の使命だと思いますから。
斬刑のユーベルコードの飛行能力を駆使して攻撃を回避しながら消防斧で斬りかかります。
もし攻撃を受けたら内部破壊のダメージには鎮痛剤の大量注射で対処します。



 影の城の奥へと逃げ込んだドクター・オロチを追って、猟兵達は次々に転移を始める。佐藤・和鏡子はその姿を見つけて、ほんのすこしだけ無口になる。
 相手を取り込んだつもりが、逆に相手に取り込まれる。寓話や小説、物語ではよくある結末ではあるけれど、実際にそんな目に遭う者を見れば、オブリビオンといえども気の毒に思えた。
 それが彼女の優しさで、慈しみゆえの行動へと突き動かす。看護用ミレナリィドールは、本来造られた役目とは真逆の行為を開始しようとしている。
「……あは、なあに、その恰好。ボクを救ってくれるわけ、看護婦さん?」
 ふらつく足取りのまま、オロチは和鏡子と対峙する。時々ぶつぶつと何かを唱えるようにこぼれる独り言が、いっそう彼の狂気を感じられる。
「ええ、あなたの意思通りに。楽にしてあげます」
 ふわり、赤と白の彼岸花の花弁が少女の身を包むように舞い散る。古風な看護装束の和鏡子の手には血のような赤に染まった大型の斧が握られている。白衣の天使にしては異様なそれが、オロチのいのちを断つためにあることは明らかだった。
「じゃあやってみせてよ、今すぐに!!」
 とん、と一度足音を鳴らしたパーカー姿が、勢いよく跳躍。少女へと素早く接近すれば、その指先が和鏡子の肩に触れようと動く。途端、リトルナースの身体は宙に浮いて、彼岸花の花弁が彼女の行方を後押しする。
「そうやって逃げてばっかりじゃ、ボクを救うなんてできないじゃん!?」
「確かに、その通りですね」
「は? なんで認めちゃってんの? って、え、」
 続きの言いかけたところでオロチの言葉は途切れて、眼前をぶわりと花嵐が舞う。あるかもわからない視界を封じられて、オロチの足が止まる。上空から振るわれる斧の勢いは、少女の細腕からは想像もつかない威力だった。
 いのちを救えないことは、何度だって体験してきた。救いがたい苦痛からの解放も、和鏡子の使命。たとえそれが、人々を苦しめてきたオブリビオンだとしても。
「――私の前では、誰だって平等です」
 白装束と看護帽が真っ赤に染まる。肉の一部が、ほんのすこしだけ頬にかかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
未だ偽神の細胞は身を蝕み視界は赤く、肉体の激痛を以て跳ね返る精神の抑制は僅かでも気を緩めれば正気を失う。

…ただ力のみを見、その魂の在り様に目を向けることなく己自身をも見失おうとは、
なんと哀れな末路であることか。


UC発動、怪力、グラップル、残像を用いた高速格闘戦にて状況展開
身を蝕む毒も動きを縛る異能も無し、用いるはただ己が積み上げた武の業のみ
爪が肉を貫く痛みを抑えただ拳を握る

野生の勘、見切りで相手の動きと急所を見極めカウンター
無想の至りはそのままに極限まで業を練り、最大威力、最大威力を以て打ち抜く


…かの世界において、貴方は多くの未来ある命を弄び己が欲を満たさんが為に使い潰し続けたと聞き及んでおります。
その業の行く末に、『死を欲した時に死ねる』など笑止千万。

されど、ここで貴方を逃さば今の世全てを巻き込む大きな禍根を残す事となりましょう。
故にその望み通り、貴方をここで討たせて頂きます。

力とは『振るう』ものでなく『使う』もの。
力の在り様を学ばずして呑まれれば、待つのはただ滅びのみと知りなさい。



 充血か、流血か。赤い視界がちかちかと、闇の城で瞬いている。体内に巣食う異物を拒絶するため、月白・雪音の全身は激痛によって異常を報せていた。
 ほんの少しでも気を緩めてしまえば、正気を喪うほどの痛みを、少女は精神集中によって抑えつけている。力に溺れただけの脳髄の有様は、彼女には愚者として映る。
「……ただ力のみを見、その魂の在り様に目を向けることなく己自身をも見失おうとは、なんと哀れな末路であることか」
「は、はは、キミもボクを可哀想だとか思ってるんだ? いいよ、その通りだもんね! なぁんて可哀想なボク――だからさぁ、」
 はやくボクを殺してよ。言葉に殺意を織りまぜて、雪音とさほど変わらぬ小柄な身体が跳ねるように駆ける。両腕に生やした水晶の剣を振るわれるのを素早く躱し、斬り裂いたはずの娘の残像だけがかき消える。
 肉を貫いて鋭利な爪が生える拳が、目にも止まらぬ速さでオロチへと飛びかかれば、彼も両腕の刃でそれをいなす。傍目には風を切る音だけが辛うじて聞こえるような、そんな次元の格闘戦が続いていく。
 透明に脈動する不気味な水晶の剣が、ふっと雪音のしろい頬を掠める。赤い彩がわずかに散るのも構わず、ましろの娘は更に拳と脚の速度をあげる。爪が、脳髄の一部を削った。
 ――身を蝕む毒も、動きを縛る異能も不要。彼女が用いるのは、ただ一途に積み上げた武の業のみ。
 指と指の合間から裂ける痛みをこらえて、娘は拳を握る。
「……かの世界において、貴方は多くの未来ある命を弄び、己が欲を満たさんが為に使い潰し続けたと聞き及んでおります」
「へぇ? やっぱ猟兵の間では有名なんだね、ボクって!」
 たん、と一度互いに距離を置いて、二人は相手を睨みつけたまま荒げた呼吸を抑える。もっとも、オロチの顔面に、両眼と呼吸器官は見受けられない。
「その業の行く末に、『死を欲した時に死ねる』など笑止千万――されど、ここで貴方を逃さば今の世全てを巻き込む大きな禍根を残す事となりましょう」
「あは、ボクってはおかしなこと言ってる? もうわかんなくなっちゃった!」
 同時に戦場を疾駆する脚の速度は、雪音が上。それを理解したオロチは、両腕の水晶刃の数をさらに長く伸ばして増やす。娘は疾る、間合いを優先した彼に、抉るような一撃を浴びせるために。
「これ以上、貴方が今世を再び動乱へと導くことなど許しません。故にその望み通り――貴方をここで討たせて頂きます」
 拳と刃がぶつかりあう。途端、水晶の刃は娘の右手に細かな傷をつけながら、あっけなく粉々に砕け散っていく。うそ、と言いかけた脳髄の横っ面がへしゃげた。
 右の拳一点に業を集中させた、極限までに威力を高められたストレート。肉のかけらを飛び散らせて、オロチは悲鳴をあげる間もなく吹っ飛んでいく。
 小柄なパーカー姿は、壁にぶつかった瞬間に轟音と共に瓦礫の中に消えた。
「力とは、『振るう』ものではなく『使う』もの」
 ふ、と息を整えて。いまだ赤い視界の中で、雪音は言葉を続ける。
「力の在り様を学ばずして呑まれれば、待つのはただ滅びのみと知りなさい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーノ・ディエール
そんな形で哀れだと思いますか?
冗談じゃありません、ドクター・オロチ
如何なる事が起ころうと私はあなたは許さない
三年前の誓いは未だ変わらず。今度こそ決着をつけましょう

偽神化したままオーバーロード――真の姿、宝石の身体へ
身体のダメージはあえて受けます
相手も偽神化でパワーを上げているからこそ
少しのエネルギーも無駄には出来ません!

狙いは偽神水晶剣を徹底的に分裂させ威力を減らす事
クルセイダー最大戦速、騎乗して地形を利用し相手を攪乱
クリスタライドブースター、一斉発射!
レーザー、ミサイル、実弾を絶え間なく撃ち反転突撃!
2回攻撃――デトネイターでランスチャージを狙います

任意の部位から偽神水晶剣を生やすのでしょう
きっと私の槍にそれを重ねてくる筈
それこそが真の狙い――念動力最大、輝身秘晶!
触れたものを結晶化し操るこの力、刃を逆さに
全ての偽神水晶剣であなたを串刺しにしてやるッ!

銀誓館の方から聞きましたよ。不死身らしいですね
ならば永遠にこの苦しみを味わうがいいッ!
終わりです、銀河帝国最後の巨悪!

※アドリブ連携歓迎



 瓦礫に埋もれた小柄なパーカー姿が、呻き声をあげてよろよろと起きあがる。欠けた脳髄や全身の傷に触れながら、うぅ、と唸る。
「なんだよ、なんなんだよ、なんでボクがこんな目に遭わなくちゃいけないんだ! ……ああもううるさいってば! 助けてほしいのはこっちなんだよ!!」
「――そんな形で、誰もがあなたを哀れだと思いますか? 冗談じゃありません」
 かつん。影色の床でヒールの音を鳴らして、ユーノ・ディエールは静かに言葉を続ける。幻聴に魘される姿を見ても、どんな出来事が彼に降りかかろうと、娘はドクター・オロチを許すことはない。三年前、まだ少女であったころの誓いは今も変わらない。
「今度こそ決着をつけましょう」
 人肌に偽装されたスキンをすべて破くように、七色に輝く宝石の膚が解放される。偽神化の影響は抜けきれず、全身を巡る激痛は熱と共に否応なしに高まっていく。偽神化による能力向上の条件は同じ――否、実力は未だ彼のほうが上かもしれない。ならば少しのエネルギーも、無駄には出来ない。
「あぁ、キミ、クリスタリアンかぁ。じゃああの戦争で、ボクにめちゃくちゃにされたりした? 覚えてないからわかんないけど」
 ざらり、先ほど砕かれた水晶の刃が、再びオロチの両腕に生えそろう。両腕は勿論のこと、全身に分裂して咲きこぼれていく剣の群れは、その透明感とは裏腹に、びくびくと脈動している。
「じゃあさぁ、その綺麗な身体を粉々にしたら、キミは本当にめちゃくちゃになっちゃうんじゃない? ボクの頭の中みたいにさぁ!」
「行きますよ、クルセイダー! 最大戦速です!」
 た、とユーノめがけて走りだす脳髄と同時、愛すべき単車に騎乗した宝石の娘は戦場のあちこちを疾駆。逃げ回るようなそぶりはなく、いつでもオロチを轢き殺せると爆音と光の軌跡を描いて縦横無尽に奔る。
「クリスタライドブースター、一斉発射!!」
 とっくに充填完了済みの鎧装兵器は、誘導レーザーの輝きが乱舞して、追尾システムのミサイルと実弾の弾雨が情け容赦なく降りしきる。
 故郷の夜空にも似た輝きと共に、一気に機体を反転、二度の突撃と共に突撃槍の威力を上昇させる。
 ユーノの槍に合わせるように、オロチは右の拳に新たな水晶剣をめきめきと生やす。歪なそれが槍を払おうと触れあった瞬間、ユーノの七色の膚がさらにひかりを増していく。
 それまでの攻撃は、全てこのための前座。念動力を最大限に解放した時、脳髄の全身に生えたすべての水晶剣は、完全に娘のモノと成る。
「キミ、今何をして、ア、ァアアア!?」
 刃は逆さに、オロチの膚を食い破り、肉を抉って串刺しにしていく。言いようのない激痛に絶叫する彼を澄んだ宙色の眼差しで見据えたまま、ユーノは言葉を紡ぐ。
「銀誓館の方から聞きましたよ。不死身らしいですね。ならば永遠にこの苦しみを味わうがいいッ!」
 鋭い刃の群れは、更にめり込みパーカー姿をめちゃくちゃに貫く。たとえ、この力の代償がユーノの存在維持だとしても。今度こそ、いのちを終わらせるべき相手だから。
「終わりです、銀河帝国最後の巨悪!」
 また少しずつ、ユーノ・ディエールというひとりのクリスタリアンの証が欠けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルドラ・ヴォルテクス
『警告、オーバーロード発動。
左腕インドラ、右腕スカンダ展開、闘神形態に移行』

【アストラ】
リミッター解除、限界突破、コアシステム、ストームブリンガーオンライン、祈りを救世の誓いに。

力を解放し、デミウルゴスを憑依させたオロチに向き合う。
戦いは解放された力、アストラを祈りの力で増幅、闘神の領域まで解放。
力は全身を覆い、完全な攻防一体のアストラを形成する。
水晶の剣を蹂躙するアストラの闘気の剣、純粋な力の塊をぶつけオーラを発動する隙を与えず、触れる指先を灼滅するアストラの焔気、尽く攻め手を潰す。

「デミウルゴスの魂を弄ぶな」

俺にとって奴との戦いは救世の覚悟を問う戦いだった。
それが今、紛い物のガワとして消費されようとしている。
これは俺にとって矜持を問われる戦いだ。

人にも、神にもなれず、苦しみの枷をかけられ、道を違えてしまった、造られた命を救う戦い。

あの時に感じた使命を、目の前のオロチには感じられない。
自ら呷った毒にもがく道化のそれだ。

「もう一度やり直したい?生を嘲笑してきたお前に赦されると思うのか?」



「くそ、くそ、くそくそくそくそ!! どうしてボクがこんな目に遭わなくちゃいけないんだ、それもこれも、こんな偽物の神様なんかを選んじゃったせいだ」
 全身から流血し続けるドクター・オロチの赤い装束は、どす黒く染まりきっている。激痛と共に肉の破片をぼとぼとと落としては、逆さに突き刺さった硝子の刃を元の容へと戻していく。
『警告、オーバーロード発動。左腕インドラ、右腕スカンダ展開、闘神形態に移行』
 硬質的なマシンスーツに身を包んだ青年をサポートするため、人工音声が無機質に稼働する。リミッターを解除したルドラ・ヴォルテクスの姿は、脳髄にはどのように見えているのだろうか。
「まだ居るのかよ、ねぇキミ達ってばしつこくない!? ちゃんと殺すなら一思いに一気に殺してよ! ああでもダメダメ、ボクが先にキミ達を殺さないといけないんだった!!」
 錯乱状態で口走る無意味な台詞の羅列を、ルドラは肯定しない。返事の代わりに解放したのはつくりものの鼓動《コアシステム》、戦士としてのネットワーク接続機能――それに、祈りのすべて。
 救世の誓いは、仇敵を打倒する意思として青年を闘神の領域へと誘う。全身を覆う力は煌々と、まばゆい神様の彩をしている。ひくりとわらうように、オロチはルドラを見た。
「なにその姿……自分のことを救済者か何かだと思ってる?」
 頷くこともなければ、首を横に振ることもない。それを肯定と受け取ったのか、オロチは甲高い笑い声をあげる。
「じゃあ早くボクを助けてよ! キミが終わってボクも終わる、それが一番ハッピーかもしれないね!?」
 新たに生え変わったような水晶の剣が、脳髄の右腕に集中している。刃を一本に集中することでその鋭利さは威力を増幅させていた。ぱ、とまだ動く身体で飛びかかれば、青年の扱う闘気の剣とぶつかり合う。ぐ、と力をこめて剣を払おうとした水晶の刃が、突然なんの前触れもなく砕け散る。
「ハァ!?」
 それは、意志の刃のつよさが上回っていただけのこと。ならばとルドラの外装に触れようとした左手の指先が、ボゥ、と突然神々しい焔に包まれる。ぎゃ、と醜い悲鳴をあげて手を引っ込めるも、灼滅の焔気が燃え尽きる気配はない。自然に発動するはずの光のオーラも、ルドラの拳が勢いよく脳髄を揺らしたせいでその隙すら与えられない。
 ――ことごとく、こちらの攻め手を潰されている。
 ぞ、と寒気のする圧倒的な死の気配に、オロチは恐怖した。彼の心の裡を読み取るように、ルドラは淡々と告げる。
「デミウルゴスの魂を弄ぶな」
 青年にとって、デミウルゴスとの戦いは救世の覚悟を問うものだった。それが今や、紛い物のガワとして消費されかけている。そんなことを、苦しむにせもののかみさまと対峙した彼が許せるわけがなかった。
 ――これは、ルドラにとって矜持を問われる戦い。
 人にも神にもなれずに、苦しみの枷をかけられて。とうとう道を違えてしまった、つくりもののいのちを救う戦いに、負けるわけがない。
 デミウルゴスとの戦いで感じた、烈しくも悲しいほどに感じた使命を、目の前の脳髄からはひとかけらも感じられない。
「今のお前は、自ら呷った毒にもがく道化のそれだ」
 ルドラの想いに影響されたように、意思《アストラ》の焔気がオロチの全身を瞬く間に覆う。
「もう一度やり直したい? 生を嘲笑してきたお前に赦されると思うのか?」
 コンティニューなど、お前にだけはさせるものか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
「ああああああああ」
壊せ壊せ助けて壊せ壊せ赦して
壊せ壊せ壊せ裁いて壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ眠らせろ!!」
拒絶反応、出血外見変化に幻聴を増加
偽神霊物質でできた剣を携えて、【闘争心】に突き動かされるままにオロチへ襲い掛る。

「壊れろ、壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ――」
異形化した腕の【怪力】で剣を振るい【第六感】で切り結ぶ。
剣を弾かれれば即座に騎兵刀を出現させて【切断】攻撃――
そして偽神細胞の侵食で内部損傷および拒絶反応痛み増加。

「ァ…お前」
思考が鈍り、偽神水晶剣で貫かれて、沈黙……から、

「まだ、戦え!」
【継戦能力】『ディスポーザブル』オーバーロード発動。
黄泉返り、二つの人工魔眼を宿して戦闘続行!!
【早業】 貫かれたままオロチの腕を掴んで固定し、
偽神霊物質の剣を【念動力】で飛翔させ、自分ごとオロチを【串刺し】にする。

「もう一度、眠れ…!」
オロチを、そして体内に取り込んだ偽神霊物質で強毒偽神細胞を【捕食】
再異形化、オロチを掴み直して

「デミウルゴス」
【呪詛】 霊物質を崩壊霊物質に変換。オロチを【解体】



 全身を灼熱に焼かれたドクター・オロチの姿は、既に悍ましくも惨たらしい風貌へと変わっていた。痛みと幻聴の海に身体の芯まで浸かった彼は、ふらついたままか細い息を洩らしている。
「なんで? なんでこうなっちゃったんだ? ボクは何度だってやり直せる、何度だって生き返って、なのになんでなんでなんでアアアアアうるさいうるさいうるさい助けてよ!? ねえ、そこのキミ!!」
 爛れ震える指先が指し示したのは、ぼたぼたと血を流しながら、異形の膚を見せる少女だった。
「ああああああ……」
 壊せ壊せ助けて壊せ壊せ赦して壊せ壊せ壊せ裁いて壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ眠らせろ――!!
 拒絶反応は更に未熟な身体を冒涜して、朱鷺透・小枝子の思考に幻聴を滑り込ませる。ごうごうと闘争心が燃え盛って、少女は何かに突き動かされるかのようにぐちゃぐちゃに焼け爛れる脳髄へと異様な速さで接近。
「壊れろ、壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ――」
 偽神細胞を融かし込んだ霊物質は、剣の形で赤黒い異形の腕に収まっている。大振りの攻撃を躱しながら、オロチは引きつるように笑った。
「あは、なんなの……? 壊れてんのはキミじゃん?」
 避けられた剣を放って、瞬時にその場に出現した騎兵刀で短い片脚を斬る。なんの予備動作もなく行われた切断に、すぱっと骨肉が飛んだ。
「ぁ? ボクの、脚、あ、アアアアア!? 痛い痛い痛い!!」
「あ、う、ああ? ア、」
 その場で転げまわる脳髄をよそに、小枝子の手もはたと止まる。異物の浸食は凄まじく、内蔵を抉られる感触と拒絶反応は、苦痛となって彼女を侵す。ふぅふぅと息を荒げ、再び刀をオロチへと下ろそうとした時、
「……なんちゃって」
 静かに伸ばされた指先から、まっすぐに生えた水晶の剣。たった一本の刃に威力を一点集中させた鋭利なそれが、小枝子の心臓を貫いた。
「ァ……おま、え」
「もうさぁこんなの痛くもなんともないの! だってそれより頭の中がうるさいんだもん!! 死んじゃえ、死んじゃえよお前なんか!! とっくにぶっ壊れてるんだからいいでしょ!?」
 ぶちまけられる罵倒を聞き取る途中で、小枝子の意識がぶつりと途切れる。噴き出した鮮血を浴びながら、オロチは狂った笑い声をあげていた。
「一人でいい、もうお前だけでも殺せばそれでいいよ! ボクは絶対生き延びてみせる、何度だってやり直して生き直して世界をめちゃくちゃにして、ああああうるさいうるさいこれどうしたらいいんだよ!?」
 救済の言葉が、脳髄を襲う頃。魂もろとも貫かれたはずの手足が、ぴくりと動く。
「――せ」
 少女の遺骸の髪はましろに染まっていく。灰の瞳は勝手に発動したふたつの魔眼によってまっかに滲む。
「――わ、せ」
 壊せ。壊し続けろ。たとえ死んでしまっても。誰でもない自分の心に眠る呼び声が、ポンコツな肉体を再稼働させる。
「まだ、戦え……!!」
 え、とオロチが口にするよりも速く、貫通したままの身体はその腕を掴む。放り投げられていた霊物質の剣はこちらへと飛び込んで、小枝子ごとオロチの肉体を串刺しにする。
「ぎゃ、あ、ぎぃ、」
 無茶苦茶な方法で霊物質を自分の体内に取り込めば、偽神細胞の毒性を捕食。少女の背中からは、歪な外殻の翼が嫌な音を立てながら生えた。
 オロチを掴み直した腕は異様に膨張し、小柄な少女が不気味な人外に取り込まれた様子すらある。けれど、小枝子は自分よりも、オロチよりも、たった一人の名前を呟く。
「もう一度、眠れ……!」
 ――デミウルゴス。
 あらん限りの呪詛をこめて、脳髄の身体を粉砕する。飛び散った肉塊はばしゃばしゃと血の滝を降らせて、オロチに最期の言葉すら喋らせなかった。


 さようなら、と誰が誰に告げたのか。
 もう、わからない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月16日


挿絵イラスト