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銀河帝国攻略戦⑯~ソラで紡げ、旋律の波

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #シリアス #歌や演奏

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●洗脳音楽
 戦場に似つかわしくない流麗な旋律が、人々の耳へと届く。
 これが真にただの流麗な旋律であれば、軽い疑問と軽い不審を呼び起こすだけですんだだろう。
 だがこの旋律を隠れ蓑にして、混ざり合い、重なり合うようにして、別の目的を持った旋律が流されていることに気がつく前に、普通の人間であれば精神に異常が現れる。
 突如暴れだし、破壊行為や暴力的行為に走るもの、ひいては自分自身を『壊そう』とする者まで現れる。
 激しい高低差や不安を煽る音階のそれは、巧妙に身を隠し、人々を苛んでゆく――。


「スペースシップワールドのっ、戦争の、予知だよっ……!」
 グリモアベースにて、わたわたしながら猟兵達に声をかけているのは、グリモア猟兵のコルネリア・メーヴィス(闇に咲いた光・f08982)だ。基本的に声の小さな彼女だが、事態が事態だけに今回も頑張って声を張り上げているようだ。
「みんなの頑張りのおかげで、戦場の攻略が進んでいるよ。そのおかげで見えた予知なんだけど……黒騎士アンヘル配下の『クライングジェル』艦隊が、『洗脳音楽』を流しているの……」
 コルネリアによれば、『洗脳音楽』を聞いた解放軍の人々が、行動不能に陥ろうとしているらしい。
「洗脳音楽に対抗するために、芸能船の放送設備が増強されたから、みんなにも音楽放送で対抗してほしいんだよ」
 敵による洗脳音楽通信を打破するためには、こちら側も音楽で対応しなくてはならない。だが、猟兵以外の人々はすぐに洗脳音楽の影響を受けてしまう。
「だから、猟兵以外が音楽を奏でることはできないのっ……みんなにしかできないんだよっ」
 音楽で戦う――得意不得意はあるだろう。だが、それでも、なんとかしなくてはならない局面なのだ。
「……みんなを信じてるからね」
 コルネリアはそう告げて、小さく手を振った。


篁みゆ
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 現実に存在する楽曲の曲名や歌詞、替え歌等が記載されているプレイングは採用できません。
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 こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
 はじめましての方も、すでにお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオの目的は、「洗脳音楽通信を、音楽で打ち破ること」です。
 どのような音楽で対抗するかはもちろんのこと、どのような気持ちで奏でるかも重要です。
 音楽船で演奏し、音楽を敵へと届ける形になります。

 上記にも記してありますが、現実に存在する楽曲の曲名や歌詞、替え歌等が記載されているプレイングは採用できませんのでご注意くださいませ。

●お願い
 単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
 また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。

 皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 冒険 『洗脳音楽通信を撃ち破れ!』

POW   :    激しいビートで、魂を揺さぶり、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

SPD   :    超絶的な技巧で、聴く者を圧倒して、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

WIZ   :    心に響く歌声で、感情を揺り動かして、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

キケ・トレグローサ
キケ)「音楽を・・・兵器に使うなんて…許せない」
 自身を流浪の楽団と名乗る旅芸人の三兄弟の人格を宿すキケ。その兄エドと妹ルナも同じ気持ちだ。UCを使い、三兄弟が具現化し現れる。
ルナ)「私だって竪琴を引けるのよ!…音楽は自由でなきゃ。そうでなきゃ楽しめない!」
エド)「生き物には笑ったり泣いたり、自分の感情を表し伝える自由がある。それを、あろうことかその表現の一つ、音楽で押さえつけようというのか!」
キケ)「いいよ、教えてあげる…人の気持ちは、誰かの言いなりになんてできやしないってこと!」
 キケがリュートをルナが竪琴を弾き、エドが歌う。それは自由の詩。星空を駆ける流星群を歌った、人間たちの輝きの曲。



●星空を駆ける流星群の歌
 芸能船の中にも洗脳音楽は響き、猟兵ではない解放軍の人々がその影響に苦しんでいる。
 キケ・トレグローサ(たった一人の流浪の楽団・f00665)は強化された放送設備の前に立ち、その茶色の瞳で見えぬ旋律を捉えるようにして。
「音楽を……兵器に使うなんて……許せない」
 内気な少年であるキケの心に宿るのは、音楽を愛する心。それと比例するように、音楽を利用した敵の戦法に対して嫌悪や怒りに似た感情がじわじわと降り積もっていく。
 それはキケに宿る他の人格も同じ。流浪の楽団と名乗る旅芸人の三兄弟――兄のエド、妹のルナもキケと同じく音楽を愛しているから。

「僕が奏で、俺が歌い、私が舞う!」

 発動させた『流浪の楽団』により、キケの横に背の高いエドと、可愛らしいルナの姿が具現化される。キケと同じ緑色の髪が、ひと目で彼らの繋がりを表しているようだった。
「私だって竪琴を弾けるのよ!」
 ルナの手には竪琴。彼女が最も得手とするのは踊りであるが、竪琴の腕も確かだ。
「……音楽は自由でなきゃ。そうでなきゃ楽しめない!」
「そうだな。生き物には笑ったり泣いたり、自分の感情を表し伝える自由がある」
 憤慨するルナの頭をそっと撫で同意を示すエドは、流麗さに隠れた人々の心を狂わせる旋律を見据えるようにして。
「それを、あろうことかその表現の一つ、音楽で押さえつけようというのか!」
 その怒りは旋律の向こう、音楽を卑劣な事に利用している敵へ向けられている。
「いいよ、教えてあげる……人の気持ちは、誰かの言いなりになんてできやしないってこと!」
 キッ、と強い視線で宣戦布告のように告げる今のキケには、内気さや気の弱さは感じ取れない。音楽への愛と敵への怒り、そしてそばに『かたち』をもって存在する兄妹たちが、彼を強くしているのだろう。
 三人は視線を合わせて頷き合う。
 キケがリュートを爪弾くのを合図に、ルナが竪琴の弦を弾く。何小節かの前奏ののち、エドが大きく息を吸い込んで。
「――! ――!!」
 その歌声からは強い意志を感じる。伸びやかな声、声量も十分だ。だが鋭さや暴力的な強さは感じられない。
 リュートと竪琴の絡み合う旋律は、決して軍歌のような勇ましいものではない。むしろ穏やかで、けれどもその中に強い意志を孕んだもの。
 エドが紡ぐのは自由の詩(うた)。何物にも囚われず、星空を駆ける流星群を歌うその詩(ことば)に、人間たちの生き様が重なって聞こえる。
 自由に、自由に。星のように輝いて生きる――人間たちの輝きの曲。
 ふと、キケが視線を動かせば、それまで放送設備の傍で苦しんでいた男が一人、演奏に聞き入るようにしてキケ達を見ていた。

 その後、徐々に乗組員たちの表情が変わっていくのがわかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウレリア・ウィスタリア
愛を歌いましょう
これはボクの……私の魂に刻まれた歌
私は知らないけれど、私の心が知っていた歌

恋にすべてを救われたものの歌

アナタを愛そう
暖かな想いと共に、暖かな恋心と共に
アナタに救われた、アナタとの恋に救われた
その恋を広めよう
恋を宇宙の彼方に届けよう
恋する想いですべてを救おう
愛し恋する心ですべてを赦そう

私は両親に愛され、そして捨てられた
でも私の中にそうじゃない
暖かなどこか懐かしい光が
記憶にないのに恋は素敵と語る誰かの影が光がある
それを無意識に追いかけてしまう

仮面は捨て去り
私は私として歌い奏でましょう

玉咲姫花忍で音を奏で
そして天花を掲げ、誰かが恋で救われたように
恋が愛が平和に繋がるように

アドリブ歓迎



●魂に刻まれし愛の歌
 仮面を、取り去った。色白の肌に琥珀色の瞳が佇む。左右色の違う翼を開いた彼女は、アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)。
 芸能船の放送設備の前。今もなお、清廉な音楽を隠れ蓑にした洗脳音楽が流れる中、彼女は薄い青紫色をしたショルダーキーボードの『玉咲姫花忍』をさげて。片方の手に持った、柊の樹製の指揮棒『天花』を掲げる。
(「私は私として、歌い、奏でましょう」)
 片手で鍵盤に指を走らせて、大きく息を吸って。けれども始まりは囁くように。

 アナタを愛そう。
 暖かな想いと共に、暖かな恋心と共に。

(「これはボクの……私の魂に刻まれた歌」)
 長い余韻、伸びやかな声。こんなにも声が続くものだろうか、そう思うほどの長音。

 アナタに救われた、アナタとの恋に救われた。
 その恋を広めよう。

(「私は知らないけれど、私の心が知っていた歌」)
 繊細な音なのに敵の洗脳音楽に負けぬ強い芯を持った歌は、不思議と洗脳音楽の『継ぎ目』に入り込み、そしてほどくように乗り越えていく。

 恋を宇宙の彼方に届けよう。
 恋する想いですべてを救おう。
 愛し恋する心ですべてを赦そう。

(「私は両親に愛され、そして捨てられた」)
 徐々に盛り上がる曲調。優しいのに強く、たくさんのものを――すべてのものを包み込むように響く声。
(「でも私の中にそうじゃない、暖かなどこか懐かしい光が、記憶にないのに恋は素敵と語る誰かの影が光がある」)
 それが誰の記憶で、誰の気持ちで、何のために自分の中に在るのか、アウレリアにはわからないけれど。
(「それを無意識に追いかけてしまう」)
 誰かが恋で救われたように、恋が、愛が平和に繋がるようにと祈る。
 ――それは、恋にすべてを救われたものの歌。

 響く、響く。祈りが、想いが。
 癒やす、癒やす。歌声が、悪しき旋律を乱す。
 まだまばらではあるが、パチ、パチと乗組員たちから拍手が上がり始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
……【祈り】

(CD的サムシングを音響設備に接続
録音されている曲は主音源ピアノ、たまにコーラスが混ざる

極力透き通るような伸びるソプラノボイスで【歌唱】
後半にかけて声量が上がる【パフォーマンス】)

明日もきっと
輝きますように

宇宙に煌めく星々は
一体何色の舟だろう
一つ瞬いて
また一つ輝いて
翔ていく
飛んで行く流れ星

僕の隣を通りすぎて行った
あの舟は綺麗な線を描いて
光のアーチ 照らす宇宙
あっという間に見えなくなった

かけて行く小さな星は
皆を照らして行くんだろう
そのあたたかな光で
きっと燃え続けて輝いて

祈りを乗せた宇宙の舟は
今日も宇宙を翔ていく
暗闇を照らすように
一筋の光を残して
命という名の舟



●強き祈りの歌
 芸能船の音響設備に音源の入ったメモリを接続し、深呼吸をひとつ。流麗な旋律に巧妙に隠された悪意ある旋律は、鈴木・志乃(ブラック・f12101)には容易に判別できた。同じ猟兵達が、敵の奏でるその歪んだ音に抗おうと頑張っていることも。
「……」
 音楽データを再生させる。流れ出したのはピアノの音。
 どこから歌いだせばいいのか、そんなこと、考えなくても体の細胞すべてが知っている――ごく自然に息を吸い込み、そして紡ぎ始める。

 明日もきっと
 輝きますように

 透き通るようなソプラノボイス。硝子よりも更に薄く、軽く触れただけで割れてしまう薄氷のような繊細な歌声。けれどもピアノの音、そして敵の洗脳音楽に決して負けてはいない。
 
 宇宙に煌めく星々は
 一体何色の舟だろう
 一つ瞬いて
 また一つ輝いて
 翔ていく
 飛んで行く流れ星

 時折交ざるコーラスに、そして主音源たるピアノの旋律と絡み合い、かつ支えられた伸びやかな歌声。それは洗脳音楽の美しさが表面上のみであることを浮かび上がらせる。
 素人にもわかるだろう、見せかけの美しさと、真なる歌声の違いが。

 僕の隣を通りすぎて行った
 あの舟は綺麗な線を描いて
 光のアーチ 照らす宇宙
 あっという間に見えなくなった

 強く、強く籠められた祈りと技工が、その格の差を顕にして。
 見せつけるように――否、押し返すように徐々に声量を上げていく志乃。

 かけて行く小さな星は
 皆を照らして行くんだろう
 そのあたたかな光で
 きっと燃え続けて輝いて

 スペースシップワールドの人々のための祈り。オレンジの瞳で見据えるは『向こう側』。今も洗脳音楽を奏で続けている敵。
 クライマックスへ向けて盛り上がる旋律、上がりゆく志乃の声量。

 祈りを乗せた宇宙の舟は
 今日も宇宙を翔ていく
 暗闇を照らすように
 一筋の光を残して
 命という名の舟

 長く長く長く。全てを圧倒するかのような声量で、祈りの思いを解き放つ。

 敵の洗脳音楽が乱れかけたのを、志乃は聞き逃さない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミニョン・エルシェ
【史跡散歩部】SPD
本職のリルアさんに負けない様に。
精神一到何事か成らざらん。最高の舞台に仕上げましょう。

私たちが提供するのは歌。アカペラです。
【我城普請・相横矢】で防御陣地…という名の「ステージ」を作り、
足軽さんたちにはテナーやバスのハミングで合わせて頂きましょう。
「ここは私たちの城、私たちのステージ。最高の想いをお届けします。」

私はリルアさんの高音に合わせて、即興でメゾの音を合わせていきます。
乗せる想いは「家族や、愛する者を守るために。貴方たちの戦う理由を思い出して。不安に負けないで。」
リルアさん。あなたとなら、届くと思うのです。
…まさか、宇宙で初舞台になるとは思いませんでしたが。


リルア・ルリア
【散歩部】ミニョンさん(f03471)と出撃よ
【三人寄れば聖歌隊】で、9M(男の子)と1F(女の子)を呼び出して皆で歌うわ

【WIZ】
雑多で煩いだけの音なんか、私の神秘的で神々しい歌声で掻き消ちてみせるわ!(噛んだ
自慢の【歌唱】に【祈り】を乗せて、【手を繋いで】輪になって歌うわ
【シンフォニック・キュア】も使って、傷も癒してあげないと

私と女の子はソプラノ、男の子はボーイソプラノ。スキャットをアカペラで、絶妙に綺麗なハーモニーを重ねて歌うわ
スキャット、意味のない音(ラー、アー、ルララ、等)で歌う

「Lalala... Ahhh... Lulila...♪」

後光の刺すその人形の旋律こそは聖歌にして讃美歌



●戦地に響く聖歌
 音響設備の前でいそいそと準備を整えているのは、ふたりの少女。
 丸い眼鏡のミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)が『我城普請・相横矢』を応用して発動させる。作り上げたのは防衛陣地という名の『ステージ』だ。同時に喚び出した足軽達はミニョンの指示を待ち、待機している。
 非常に精巧なアンティークドール並の精巧さを持つリルア・ルリア(天使の歌う小夜曲・f05670)は、歌に特化したミレナリィドールだ。ステージリ上に立ち、『三人寄れば聖歌隊』を発動させて。現れたのは彼女そっくりの男の子と女の子。9Mと1Fと呼ばれる彼らは聖歌隊のコスチュームを纏っている。
「擬態していても気分の悪い音はわかるのよ。私の神秘的で神々しい歌声でかき消ちてみせるわ!」
 宣戦布告的な意気込み。けれども最後の方を噛んでしまったことに気づき、あっ、と小さく声を上げたリルア。締まらないと言えば締まらない。でも。
「精神一到何事か成らざらん。最高の舞台に仕上げましょう」
 ステージに上ってきたミニョンが、微笑ましげな視線を向けながら告げるものだから。
「ええ」
 リルアは頷き、ミニョンの手を取った。9Mと1Fとも手を繋いで輪になって。ステージ後方には足軽達が整列して控えている。
「ここは私たちの城、私たちのステージ。最高の想いをお届けします」
 放送設備の中にも外にも、この芸能船の中にも外にも、まだ洗脳音楽に苛まれている人々がいる。その人々に向けて、そして洗脳音楽を流している敵へも向けてミニョンは挨拶の言葉を述べた。

 特別な合図は、いらない。
「La――」
 始まりは、リルアの高音。囁きのようなそれが、旋律となって流れていく。
 伴奏はいらない。彼女たちが披露するのはアカペラ。
 1Mがリルアの旋律に自身のソプラノを重ね、9Mはボーイソプラノを乗せる。三人の声は絶妙で、それだけで完璧なハーモニーを作り出している。けれども今日は、三人だけの聖歌隊ではない。
「Ahhhh――」
 ミニョンが三人の歌声に重ねるのは、メゾソプラノの歌声。即興ではあるが十分に上手く重なり合い、既に完璧な三人のハーモニーを一段階上に引き上げてゆくようだ。
(「本職のリルアさんに負けないように」)
 その思いと同時に、足を引っ張ってはいけないという思いもあったかもしれない。けれども蓋を開けてみれば、その重なり合いは不思議な感覚をふたりにもたらした。
 それもそのはず。ふたりが歌に乗せる思いは、祈りは同じなのだから。

 ――家族や、愛する者を守るために。貴方たちの戦う理由を思い出して。不安に負けないで。

 足軽達がテノールとバスの音域でハミングを添えてくれる。重なり合う歌声と思いが化学変化を起こす。緩やかで、決して強く勇ましい音階や歌声ではない。けれども層を増したその旋律は、確かに『強さ』を宿しているのだ。
「Lalala……Ahhh…… Lulila……♪」
 スキャットで紡がれるその歌は、『ことば』としての希求力は持たぬけれど、その歌声とハーモニーだけで十二分に人の心を揺さぶるものだ。
(「リルアさん。あなたとなら、届くと思うのです」)
 歌いながら、ミニョンはリルアに視線を向ける。
(「……まさか、宇宙で初舞台になるとは思いませんでしたが」)
 練習を重ねたわけではない即興の初舞台だけれども。
 神聖な旋律が、彼女たちの背に後光を見出させる。
 彼女たちが紡ぐのは、聖歌にして讃美歌。

 洗脳音楽が、ときどき途切れるようになった。何とかまだ演奏を続けているようだが、猟兵達が押しているのは事実だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎮杜・アリア
「ヴァイスローゼ、一緒に頑張ろうね」
演奏する曲は、初めは子供の頃にお母さんが歌ってくれた子守歌をイメージした穏やかな旋律、大人すら混乱する状況の中にいる幼い赤ちゃんのために演奏します。
しばらくしてから、演奏を小気味よいテンポに変えていって、子供達が踊り出したくなるような陽気で楽しい演奏に変えていきます。
最後に、大人の人を奮い立たせるような勇ましい演奏で大人の人たちを勇気付けて、幼い子から大人まで多くの人を洗脳音楽から解き放てるように頑張って演奏します。
この戦争に勝って明るい未来を勝ち取ろうとしてるスペースシップワールドの方々の思いを信じて、彼らの勝利のための祈りを旋律にのせて響かせます。


明智・珠稀
洗脳音楽…
正直、とても嫌な響きですね。
音楽によってその人の気分を左右することは勿論あります。
ですが、聴いた人の心に寄り添うことのない音楽など
音楽とは呼びません…!!

微力ながら、私も音を奏でさせていただきましょう…!
(サウンドウェポン【三味線】を持ち)
宇宙に和の調べを響かせてみせましょう…!

■演奏
三味線で激しいロックを思わせるリズムで
熱く激しい音を奏で

♪本当の俺を見て
 アイツらの噂話 真に受けるの?
 甘い言葉囁くけど そこに心があるか 君ならばわかるでしょ
 ねぇ、俺の瞳を見つめて 愛を感じて

激しくも艶やかな声で歌い、解放軍の仲間を目覚めさせる気持ちで
演奏&熱唱する

※アドリブ、絡み大歓迎です!



●弦と弦の共演
「ヴァイスローゼ、一緒に頑張ろうね」
 白いケースから取り出した純白の電子ヴァイオリンに、鎮杜・アリア(光の旋律・f09759)は優しく語りかけた。共に演奏を重ねてきた、大切なパートナーだから。
 弦と弓の調子を確かめ、ヴァイオリンを構える。既に他の猟兵達が、同じように音楽で対抗しているのが耳に入ってくる。洗脳音楽の不快さもまた、同時に耳に入ってくるが、幸いアリアにはそれに対抗するすべがある。
 弦にあてた弓を引いて紡ぎ始めるそれは、穏やかな旋律。緩やかに流れるそれは、自身が子どもの頃に母に歌ってもらった子守唄をイメージしている。ヴァイオリンは人の声に似せて作られたのでは――そんな説もある。弾き手の腕次第で弦楽器はどれも人の声を表現できるなんて話もあるが、高音域を紡ぐヴァイオリンは、まさにソプラノの歌声のようだ。
(「大人すら混乱する状況の中で、子どもはどれだけ不安だろう……」)
 赤子や幼子がこの洗脳音楽でどのような影響を受けているか、目の前で見ることはできていないが、洗脳音楽のみならず戦争という不安定な非日常に置かれている状況は、十分に想像できる。だからこそ、アリアは幼子達への旋律を紡いでいく。
 程なくして、ゆったりとした旋律が小気味よいテンポの旋律へと変化していった。ピチカートも利用したその演奏は、陽気で楽しいものへ。思わず子どもたちが踊りたくなるような旋律だ。
(「子どもたちの心にも、灯りをともせれば……」)
 そんな思いでアリアは演奏を続ける。

(「洗脳音楽……正直、とても嫌な響きですね」)
 放送設備に着いた明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)は、ここに来るまでにも十分耳にしてきたその旋律や『洗脳音楽』という言葉自体にひどい嫌悪感をいだいていた。
(「音楽によってその人の気分を左右することは勿論あります。ですが、聴いた人の心に寄り添うことのない音楽など……音楽とは呼びません……!!」)
 強い思いで『サウンドウェポン【三味線】』を手にする。さあ演奏を始めようか、そう思ったその時、近くでヴァイオリンを弾いている少女――アリアの紡ぐ旋律が変わった。
 子どもたちの気持ちを晴れやかにさせるような、小気味よいテンポの曲からがらっと雰囲気を変えて。弓を操るその動きも激しくなる。
 勇ましい――そう称するのがふさわしいだろうか。その旋律は大人たちを勇気づけて、奮い立たせようとしている。
「なるほど。微力ながら、私も音を奏でさせていただきましょう……!」
 珠稀は何か思うところがあるのだろう。三味線を手に演奏中のアリアへと近づいて、それを見せて身振りで意思を伝える。アリアもまた、珠稀の意図を汲み取り、頷いてみせた。
「宇宙に和の調べを響かせてみせましょう……!」
 引き出しは激しくかき鳴らして。ロックを思わせるリズムで熱く、激しい音を。アリアのヴァイオリンが即興で高音域をカバーし、アレンジするその掛け合いは、まるでエレキギターと協奏しているようだ。
 互いの弦が、曲調が十分に乗り、方向性が定まるのにそう時間はかからなかった。それを確認し、三味線を奏でながら珠稀は息を吸う。

 本当の俺を見て
 アイツらの噂話 真に受けるの?

 豊かな声量は激しいだけでなく、艷やかでもあって。テンポの早い曲の中、妖艶さをも匂わせる。

 甘い言葉囁くけど そこに心があるか 君ならばわかるでしょ
 ねぇ、俺の瞳を見つめて 愛を感じて

 解放軍の仲間たちを目覚めさせる気持ちで、珠稀は演奏と熱唱を続ける。
 アリアもまた、これまでの鍛錬や生まれ持ったものであろう素質をフル動員させて、即興で協奏を成り立たせるべく紡ぐ。
(「スペースシップワールドの方々は、この戦争に勝って、明るい未来を勝ち取ろうとしているんだからっ」)
 そのために自分ができることは、彼らの思いを信じて、彼らの勝利のための祈りを旋律に乗せて響かせること。
 ふたりはこの世界の人々のためを思い、懸命に、懸命に。彼らを目覚めさせるべく激しい演奏を続ける。
 必死に、夢中に――和と洋の弦と弦を共鳴させて。だから――。

 ドォォォォンッ!!

「!?」
「きゃっ!?」
 敵側の放送から聞こえた爆発音のようなもので、ようやく現実に引き戻された。敵の洗脳音楽に耳を傾ける余裕も、他の猟兵たちの演奏に耳を傾ける余裕も、乗組員たちの様子を気にかける余裕すらなく、それほどに、心身ともに没頭していた。
「終わったようですね」
 敵の洗脳音楽はもう聞こえない。
「はい……」
 珠稀の言葉に、アリアはへなへなと床に座り込んだ。


 そして聞こえてくるのは、敵を打ち破るために音を紡いだ全ての猟兵達への称賛と感謝の拍手。それは芸能船内の人々が次々と正気に戻り、放送設備のある区画へと押し寄せることで、大きなものへと変化していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト