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銀河帝国攻略戦⑭~無機質な瞳

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●グリモアベースにて
 スペースシップワールドで始まった戦争はまだ続いている。
 陸刀・秋水(Algenib・f03122)が猟兵達に声をかけてファイルを開いたのも、その戦いの渦中に身を投じる為のものだった。
「皆さん、お集まりいただき有難うございます。では、早速ですが今回の作戦について説明させていただきます」

 猟兵達の活躍もあり『解放軍』は快進撃を続けている。
 だが、スペースシップの艦隊に向けて帝国は特攻戦力『白魔』艦隊での強襲をしかけてきたという。

「『白魔』艦隊には謂れがあり、遥か昔『伝説の解放軍』を翻弄し、苦しめたと伝えられている、高速艦のみで編成された白騎士ディアブロ直属艦とされています……が、その正体は全滅覚悟の特攻艦隊です」
 その戦法は、強力な自爆能力を持つ高速輸送艦に、強襲用の兵力を満載して敵艦隊に特攻。敵艦内部で輸送艦を自爆させ、敵を混乱させた所で強襲兵での蹂躙を行うとされている。
 輸送艦を自爆させた時点で強襲兵の帰還手段は失われるので、全滅覚悟の特攻と言われるのはこの辺りが理由だろう。
「本来でしたらこのような兵力の無駄遣いは考えられませんが、帝国は現在劣勢にある為、反攻作戦の一つとして行われているのでしょう。帝国兵も銀河帝国皇帝に絶対の忠誠を誓っている為に行える捨て身の作戦とも言えますね」
 非効率かつ命の無駄遣いだと仄かに眉を顰めながらも、秋水は猟兵達が行うべき作戦についての説明を始める。

「我々の作戦は簡単です。敵の高速輸送艦に直接転移、進路を妨害する敵兵を撃破しながらコアルームに向かい、コアマシンと直結された自爆装置を起動して、味方艦隊に特攻される前に自爆させます」
 さらりと口にするが、問題点はあると補足が入る。
「敵艦の中には非常に多くの敵が存在していますが、優先されるのは敵を全滅させる事ではなく、味方艦隊に届かせる前に自爆させる事です。可能な限り素早くコアルームに到着、制圧の後に自爆装置を起動させて下さい」
 つまり、コアルームに如何にして素早く到達するかがこの作戦の重要な点となってくる。もたもたしていれば敵が大挙して押し寄せてしまうので、敵を倒す行動と同時に、その点についての工夫も必要となってくる。

「なお、コアルームへの直接の転移は不可能となっております。転移した直後から敵地にいる事となりますので……皆さん、どうかお気を付け下さい」
 表情を引き締めて猟兵達へと頭を下げると、転移の準備を促して行く。


山崎おさむ
 【重要】
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。


 戦争お疲れ様です。
 この度はOPをご覧くださり有難うございます。
 敵艦の中にぽーんと転移して、コアルームまでまっしぐらに向かって行くシナリオです。
 敵は薙ぎ倒してもいいですし、隠れて行く感じでも良いです。プレイングによって遭遇する敵数が変動する可能性があります。
 でも、戦闘は基本避けられないものとお考えください。
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第1章 集団戦 『タイプ・メデューサ』

POW   :    触手の一撃
単純で重い【液状触手】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    強化増殖
自身が戦闘で瀕死になると【(強化版)タイプ・メデューサ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    石化粘液
【液状の触手】から【石化粘液】を放ち、【石化】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユーイ・コスモナッツ
『可能な限り素早くコアルームに到達せよ』
了解しました
そういう作戦でしたら、
私の特技を存分に活かせそうです
どうぞお任せください

タイムロスが惜しいので、
最初からユーベルコード「流星の運動方程式」を起動!
狭い通路での滑走・滑空も慣れたもの
最高速度を維持したまま、
床を壁を天井を、
そして空中を滑るように飛んでいきます

秋水さんのアドバイスどおり、
敵を撃破することにはこだわらず、
かわす・どかす・転倒させるなどして、
とにかく突破することを最優先します

役立ちそうな技能は
騎乗、ダッシュ、スライディング、
空中戦に吹き飛ばし、
……そして、気合と勇気!

目指すは自爆装置ただひとつ
弾丸になったつもりで突っ走ります!


真白・白夜
敵の目をどれだけ掻い潜れるかが鍵ですね。

迷彩を利用し、極力敵との遭遇を避けます。物陰なども利用して、ダッシュで進んで行きます。

敵との戦闘が避けられなくなれば、僕の人格から残酷なもう一人の人格に交代します。
「潜入はここで限界だ。戦いは任せる!」
『待ってたぜ!ようやく出番だ!』

残像とだまし討ちで敵に【サイキックブラスト】。
範囲攻撃と衝撃波を伴わせ、敵を一掃します。
『どきやがれ!俺の前にいる奴はぶっ潰してやるぜ!』

敵の粘液攻撃は、ジャンプで回避かオーラ防御で防ぎます。

攻撃しつつも、ダッシュして少しでも前に進みます。



 転移を終えたユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)と真白・白夜(多重人格者のサイキッカー・f10864)は、自分達が見知らぬ艦内の無人の通路にいるのに気付く。床に立っていられるからには重力はあるようだ。
「ここが『白魔』の高速輸送艦の中……。コアルームはどこでしょう?」
 周囲を見回す白夜の疑問に、同じ様に艦内のここがどの辺りになるのか首を巡らせていたユーイが壁に『下甲板F-13』と書かれているのに気付いて答えを返す。
「私は解るかもしれないです。艦で重要となる箇所の位置は大体似てますからね」
 スペースシップワールド出身のユーイにとって宇宙船は馴染み深いものだ。だから基本的な構造は生活の一部として理解していたし、帝国の艦の設計については先日エンペラーズマインドのコアルームに侵入したばかりで知識として新しい。
 そういえばそうでしたね、と白夜も呟く。巨大隔壁を破壊しに潜入した時を思い出せば、理解の出来る話だった。
 二人は簡単に見当を付けた現在位置を確認し合うと、目的地に繋がる方向へと足を向けた。
「それでは、真っ直ぐコアルームに向かいましょう」
「はい、勿論です! 私は反重力シールドに乗って先行しますね」
 反重力シールドとは何だろうと疑問に思う白夜の前で、ユーイが大盾が騎乗出来る形へと変形していく。どうやら、それが彼女の宇宙バイクらしい。
「今回の作戦は私の特技を存分に活かせそうです」
 にこりと嬉しそうに笑ったユーイが反重力シールドに乗り、動力を駆動させていく。突撃する気らしいと軽く目を瞠った白夜だったが、すぐに薄らと微笑を返した。
「気を付けてください」
「どうぞお任せ下さい。――ブースト・オン!」
 その声も一瞬で遠くなる。流星のように疾駆していく彼女を見送り、白夜も走り出していく。

 白いマフラーが彗星の尾のように靡く。
「今はあなたの相手をしている場合じゃないんです!」
 流星の運動方程式で高速の移動力を得たユーイは、十字路から通りかかっただけとの様子で出て来た黒いクラゲ状のタイプ・メデューサを躱す為に壁へと進路を取った。反重力のお陰で接地せず走る反重力シールドとユーイは、ふわっとした動きで壁へ、そして天井へ。螺旋を描きながらも速度を衰えさせずに走り抜けて行く。
 狭い通路だろうと、敵が正面から来ようとユーイには関係無い。重力の軛など関係無い滑走はどんな場所でも進路として、自分が通れる隙間さえあればひゅっと通り抜けて行く。回避した敵に影すら踏ませない勢いは、矢張りユーイの卓越した騎乗技術のお陰としか言いようがないだろう。
「邪魔っ、です!」
 ベンチとウォーターサーバーのある広い通路に差し掛かる。斜め前方から飛んで来る触手を手で弾きながら潜り抜けたユーイは、姿勢を低くして反重力シールドを斜めに傾けると、その触手の主の足元へとスライディングを仕掛けて触手の大部分を削り取って転倒させていく。
「タイムロスは惜しいんです――ッ!?」
 ユーイの前方に突然、新たなタイプ・メデューサが現れた。瀕死との条件を満たして召喚された強化型タイプ・メデューサは召喚元の個体より一回りは大きく、少しの隙間も無く通路を塞いでいる。更に一斉に伸ばされた触手が黒い津波となって一直線にユーイへと襲い掛かってきた。
「どいて――!」
 追いかけて来る触手を躱しながら叫ぶユーイが反重力シールドと共に空を舞う。そして頭が天井に触れるような高さに位置取ると、塞がれた通路をこじ開けるように自ら弾丸と化して敵の身体を貫きに行く。
「――ください!!」
 強化型タイプ・メデゥーサの頭が音を立てて弾け飛んだ。その最中にあるユーイも黒い粘度のある液体に塗れるようになったが、それらは一瞬で黒い霧として蒸発して消えて行く。
「味方艦を巻き込んで自爆なんて、絶対にさせませんよ!」
 だから倒した敵も振り返ってはいられないと、ユーイはコアルームへの道を直走る。

 極力、敵との遭遇を避ける為に敵の気配の少ないルートを選んでいた白夜は、べちゃ、と連続する独特な足音を聞いて、すっと角の影に張り付き、壁の色に溶け込むようにしながら息を潜めた。
 急いだ様子のタイプ・メデューサは感情の感じられない無機質的な瞳を前に向けたまま、白夜の存在に気付く事無く通路を通り抜けて行く。
 その背を見送り、敵がいないかを見回した白夜は、矢張りとの調子で頷いた。
「どうやら敵の目はまだユーイさんに向いているみたいです」
 彼女はかなり派手に突っ込んでくれたようだ。お陰で敵は彼女を追うように移動しているらしく、白夜はそれに追い付かないように、出くわさないように、気を付けて行くだけで良いとの状態になっている。
「でもこれも今の内だけです、きっと」
 もう少しすれば敵も気付く筈だ。侵入者がたった一人な筈は無い、と。
 すぐに船内は警戒態勢に移行して侵入者である猟兵達を捜索し始めるだろう。だからその前に可能な限り距離を稼ごうと、白夜は再び駆け出したのだが――。
「……これは見付からずには抜けられませんね」
 視線の先、突き当たった丁字路にはタイプ・メデューサ達が何か打ち合わせをするように立っている。更に背後からは足音も聞こえ、白夜は戦って通り抜けようと覚悟を決めた。
「潜入はここで限界だ。戦いは任せる!」
 白夜が内在する別の人格に語り掛けると、待ってましたとばかりに頭の中から返事が聞こえる。
 ――待ってたぜ! ようやく出番だ!
 歓喜の響きが白夜の身体に満ちて行く。戦闘の為にと交代したのは、凶暴で残忍さを好むもう一人の人格。温厚だった表情すら好戦的な笑みに変えた白夜が、両掌から白くスパークを放ちながらタイプ・メデューサ達へと突っ込んで行く。
「どきやがれ! 俺の前にいる奴はぶっ潰してやるぜ!」
 白夜に気付いたタイプ・メデューサ達は一瞬驚いたように動きを止めた。残像によって一人以上の姿に見えたのだろう。その隙に接近した白夜は躊躇う事無く手から高圧電流を放って敵を感電させていく。痙攣して動きを止めたタイプ・メデューサ達の傍、白夜はすかさず振り返った。他の敵が背後から来ている筈との理解は正しく、戦闘を見付けて駆け付けようとしているものから粘液が飛ばされた。だが、それらは全て白夜の纏うオーラによって遮られ、無力な攻撃として床に染みを広げるだけだった。
「甘いんだよ! ――っと」
 戦闘に昂る好む思考がこの場に留まり戦いを続けようとしたが、目的はそうではなかったと身を翻して通路を走り出す。
「相手にして欲しけりゃ追ってきな!」
 敵を鼻で笑いながら、白夜は警報が鳴り始めた船内でコアルーム目指して進んで行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山梨・玄信
特攻や玉砕を行った国の末路を知らんのか!
意地でも止めてやるのじゃ。

【SPDを使用】
先ずは艦の見取り図が無いか情報収集でコンピューターで調べてみるぞい。見つかれば、敵の警戒が薄い経路の最短コースを探すのじゃ。
無理なら見切りと聞き耳で敵の少ない方に進みつつ、第六感で自爆装置の方に進むぞい。
どちらにしろ、軽装+シーブズギャンビットのスピードで迅速な行動を心がけるのじゃ。

戦闘はUCに範囲攻撃を付け加えて、短時間で終わらせるようにするぞい。もちろん、やり過ごせる敵はやり過ごす。忍び足、追跡、暗視もあるのでな。

自爆装置を押す時は「リア充爆発しろ!」と叫ぶぞい。
お呪いのようなものじゃ。

アドリブ、絡み歓迎じゃ


ウーゴ・ソルデビラ
本命が無理なら、侵入者っつーか俺達だけでも道連れにしてやる、なんて事になってもヤバいんでさっさとコアルームまで行かねえとな。
見つからない様に【野生の勘】と【忍び足】で船の中を進むぜ。とっさに敵から身を隠すって事で【逃げ足】と【物を隠す】も試してみるぞ。情報は機械の中だろうし、尋問は無駄だろうな。だからコアルームの見張りっぽい奴を【追跡】するのも手だな。少なくとも俺達が来た方向には行かない奴とか、ぐるぐる巡回してるのとも違う奴を探すぜ。途中で他の猟兵と会えたら、情報交換をしたい所だな。行き先が解ってるならそのまま合流してコアルームまで突撃して【腐羅無怒腐汚魔狼】を全部合体させてぶち込んで燃やす。


リューイン・ランサード
敵艦への単身侵入なんて正気の沙汰じゃない!
だけど、誰かがやらなきゃ多くの犠牲が出てしまう。
とても怖いけど、自分がやれる事から逃げしまって、
泣く人が出てくるのは嫌だ。
だから精一杯頑張る!

今回の要点は敵艦のコアマシンの自爆。
敵艦内に転移した後は、敵のいない通路や、倉庫で敵兵をやり過ごしたり
と、戦闘を避けて進む。
どうしても敵の目をごまかせない時は、ユーベルコード:存在希薄化
を使用し、透明になって静かに乗り越える。
(疲弊するので、機を見て使用し、一気に静かに突破する。)

そしてコアマシンの自爆装置を起動する。

尚、戦闘にならざるを得なくなれば、スターランサーで大量の
光線を敵に浴びせて一気に倒して前進する。



 ――敵艦への単身侵入なんて正気の沙汰じゃない!

 武人の名門の出でありながら、アルダワ魔法学園での最初の戦闘で憧れるような物語と現実との差に心を折ったリューイン・ランサード(今はまだ何者でもない・f13950)は、この作戦を聞いた時に胸中でそう悲鳴をあげていた。
 それを正しい責任感で押し込めてはいるが、いざ敵艦を一人で進めと言われたら心細さから動けなくなっていたかもしれないと、警報の音に焦りを煽られながら前方を進む二人の少年達の背を見る。

 一人はウーゴ・ソルデビラ(吸血鬼マイラ・f09730)。
 蝙蝠と鳥類、鼠の特徴が合わさったキマイラで、威圧的な顔と態度が怖い。好戦的な言動も怖い。リューインよりは一つ上の15歳で、彼からの合流の提案に乗ったお陰で単身進まないで済む今がある訳で、いざという時に頼りになる予感はあるけれど、ヤンキー的性質から年功序列を重視している点が――怖い。
 総括すると、怖いから苦手なタイプ。

 もう一人は山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)。
 がっしりした体格に際立って低い身長、髭との特徴の通りにドワーフだ。
 老成した口調で話すからてっきり自分より年上だと思っていたら実は12歳だと聞いて、自分よりも確りした雰囲気と、弟妹達に実家の部屋を奪われた記憶を刺激されたリューインはひどく複雑な気分になった。
 総括すると――思わず頼ってしまいそうになるが、歳下に頼って良いのか。そんな気分に浸れる相手だ。

「あ、あのっ。どこへ向かって――」
「あ?」
「ッ――!」
 二人がどこへ向かっているのか聞こうとしたら、ウーゴから険のある目が向けられてリューインがびくっと肩を震わせた。
「……んだよ、言いたい事があるならさっさと言えや」
 これでもウーゴは普通に接しているつもりなのでが、ヘタレのリューインにはそれが通じていない。す、すみませんと口の中で呟きながら俯くリューインに、普通に話せないのかとウーゴが小さな苛立ちを覚えていく。
 修羅場慣れして荒っぽいのが地であるウーゴと、物語と現実の差に心を折るほどの文人気質なリューイン。そんな相性の悪い二人の間に、のんびりとした玄信の声が入りこむ。
「すまんのう。進路は薄ら解るんじゃが、一応詳細な見取り図を知る為にコンピューターが無いかちょいと捜しておるんじゃ」
 リューインは納得と安堵を、ウーゴはそれを聞きたかったのかと理解をし、二人の間にあったちょっとした緊張感が緩和する。
 一番年下でありながら年下ならぬ包容力を発揮する玄信が上手く緩衝材になってやっと纏まる凸凹少年トリオだの完成だ。
「それでコンピューターのある場所は解ってるんですか?」
「解らん。が、勘じゃな」
 勘、とリューインが思わず繰り返した。だが、猟兵達の戦いにおいて勘は重要なものと知っているし、ここに来るまで敵に遭遇していないのは玄信の第六感とウーゴの野生の勘のお陰だとは解っている。
「機械に尋問は無駄だと思うけどな。とっとと行くぜ。俺達だけでもって自爆されちゃあヤバいからな」
「は、はい」
 油断無く周囲を警戒してくれていたウーゴに促されて、リューインも気合を入れ直すと二人の後をついていく。
 玄信とウーゴは忍び足と音も立てず、リューインは極力頑張って足音を立てないように。勘を頼りに倉庫らしき部屋へと入りこむと作業用らしきコンソールが一台置いてあった。玄信が情報操作の手腕で見取り図を探そうとし始めたのだが――。
 
「……駄目じゃ、パスワードが解らん」
 使用するには何らかの認証をさせるかパスワードを入力するかの、どちらかをクリアしなければいけないようだ。敵から認証に必要なものを奪うか、ハッキングするかのどちらかになるが――玄信は首を振った。
「最初から駄目元じゃったからのう。寄り道はこれで終いじゃ、二人とも付き合わせて済まんのう」
 見取り図に拘って時間を取ったり、敵と戦闘するつもりはない。特攻や玉砕を行った国の末路を思えば、意地でも止めてやる為に自爆コアルームに向かうが最優先だ。
「情報交換の為に付いて来てんだ、気にすんじゃねぇよ」
「えっ? あっ、僕も気にしてませんから!」
 謝る玄信にウーゴが真っ先にフォローを入れた。無駄だっただろうとウーゴが怒らなかった事にリューインは驚きの目を向けたが、睨み付けられたので慌てて眼を逸らして自分も気にしていないと手を振ってみせる。
 そんな遣り取りをしていると、玄信が扉をじっと見詰め始めた。耳を澄ませる表情を目を瞠るものへと変える。
「いかん、これは誰か来るのう」
 近付いて来る足音に三人が隠れ場所を求めて部屋を見回す。
「てめぇはこれでも被ってろ! 余裕で入れるだろ!」
「おおっ?」
 小声で叫ぶウーゴがロッカー隅にあった空の箱を小さな玄信に被せて追い遣った。自分はどうするかと慌てていると、リューインが手を握って来る。
「あ゛ぁ? 何すんだ――」
「喋らないでください」
 きっぱりとウーゴの異論を遮ったリューインが、ぎゅっと目を瞑る。
「今、一時、世界から消える」
 ふっと全身に落ちる感覚で、リューインの力が発動したのが解った。そのままウーゴが壁際まで引っ張られていく。
 扉が開いた。入って来たタイプ・メデューサ達は玄信の傍に置いてある箱を持って行くと、足早に部屋を後にして行く。
 どうやら無事にやり過ごせたらしい。
「……んだ、今の」
「あっ、えっと、手を繋いでる相手と僕とを透明化するユーベルコードで」
「そういうのがあるなら先に言えや」
「す、すみません」
 真っ先に振り払われて不機嫌そうに言われ、疲弊を感じながらもリューインが思わず謝ると、笑顔で箱から出て来た玄信が褒めるようにリューインの肩――は、届かないので腕を叩いてくる。
「ウーゴにも助けられたが、いやいや、凄いのう。潜入にはぴったりじゃ」
「あ、ありがとうございます――痛いっ!」
 肩に走った痛みにそちらを見れば、ウーゴが拳で叩いてきたらしい。
「まぁ、助かったぜ。ありがとよ」
「い、いえ。どういたしまして……?」
 何で殴られたのだろうか解らぬ顔をしているリューインと、怖い顔ながらも笑うウーゴを見て、フォローする回数が減りそうだなと玄信も笑った。

 部屋から出て、再び三人はコアルームへと向けて歩き出した。
 敵が先行の仲間を追う流れもあって、それを追いながら敵のいない方向をとの勘はなかなか頼りになるものだった。そして今は、ウーゴが見付けた他とは違うルートを取るタイプ・メデューサを追跡しているのだが――。
「うぅむ……。どうやら、あそこから動かんつもりらしいのう」
 とある扉を前に、その敵は別の一体と合流して並び立っている。門番、或いは歩哨と考えるべきだろう。――少し、いちゃついているようにも見えたが。
「んじゃ、やるか」
「おう、行こうかのう」
「そ、そうなりますよねー……」
 あっさりと戦闘開始を決定する二人にリューインが泣きそうになりながらも後に続く。「骨まで焼き尽くしてやるぜッ!」
「リア充爆発しろ!」
 一気に駆け出したウーゴが腐羅無怒腐汚魔狼――フラム・ド・フォマローと名付けた、刻印で捕食・融合した光の小球型UDCの炎を二十以上と撃ち放つ。
 二度重ねられる炎の後ろからは、身に纏う衣服を減らす事で素早さを上げた玄信が、通路を埋める炎を切り裂くようにシーブズ・ギャンビットのダガーを放った。
 謎の台詞を叫んでいたが、深く追求すれば多くの非モテが抱く闇に辿り着くだけだろうから、聞かなかった事にするのが穏当だ。きっと玄信はこの後、反動で自滅する事すら楽しむ気でいるのだろうから。ドMか。いや違う、最終的には自分がリア充になるとの心情がある筈だ。
「て、天空の光よ、我が元に来りて敵を貫く槍と成れ!」
 炎の合間、見えてしまった感情の無い瞳に震えながら、応戦として飛んで来る粘液に悲鳴をあげそうになるのを飲み込んで、リューインも掻き集めた光線をスターランサーとして発動し、闇色のタイプ・メデューサを穿つ。
 そもそも敵数の少ない状態での戦闘は、本人達がそれを意識した成果として手早く終わりを見せた。黒い粘った水たまりのような敵の残骸も、三人の見る前で静かに消えて行く。
「ほいじゃあ、次行くかのう」
 さっくり終わったからと、玄信が二人に促して歩き出す。
 コアルームまでもう少し。リア充を爆発――ではなく、この艦を自爆させる為に、猟兵達は急がねばならないのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

クルル・ハンドゥーレ
作戦、了解や
…こんな胸悪なる戦いする部隊、さっさと『過去』へお還り願お

隔壁の陰などの物陰も利用し
迷彩、忍び足、フェイントを駆使
またセンサーや哨戒兵の視線を見切り
可能な限りあらゆる警戒を掻い潜り
敵接触を避ける

戦闘が避けられない場合はWIZ
ただし撃破よりも追跡困難状態にし
コアルームへと進むことを最優先とする
フェイントと迷彩で幻惑し
鎧無視攻撃、マヒ攻撃と毒使い、範囲攻撃のせたUC幻月夜行の炎で敵視界と機動を潰す
石化液は見切りと武器受けで対処

ああ、青い空の果ての星の海で、
こんな地獄絵図描こうとする輩なんて、大嫌いや!
必ず止める!


サリー・オーガスティン
速度重視、なんだね?
よし、それなら、「スピードに取り憑かれている」ボクの出番だな。
(ヘルメット被り)

「さぁ行くよ!ジェイク!(宇宙バイク)最高の咆哮と、最高の速度、見せて(魅せて)やろう!」

(特大のエンジン音を響かせ)
【ゴッドスピードライド】発動

「さぁ目指すは、コアルーム!タイプ・メデューサ?それはボクとジェイクにとっては、言っちゃ悪いけど単なる「黒くて動くパイロン」。」
 基本は速度重視で追い越して、あとは騎乗、メカニック、操縦、盾受け、勇気、ダッシュ、だまし討ち、でコーナリング決めながら、一気にコアルームへ到達を目指します。

 追い付けられるものなら、追いついてみない?
(爆音を響かせ疾走)



 狭い間隔で二枚の隔壁に区切られた暗い空間――クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は、壁の色に溶け込むように隠れながら、エルフらしい端正な顔に苦り切った表情を浮かべていた。
「かなんな、敵が増えてきたわ」
 コアルームまでもう少しという所まで来ている筈なのだが、目的地が近付く程に敵の数は加速度的に増えている。
 同じルートを巡回するような動きを続ける敵の背後に付き、忍び足で追い掛けては振り返られる前に目的の通路へ飛び込む。そんな曲芸的な進行も、相手の動きを見切るクルルからすれば容易い芸当ではあったのだが、敵の目やセンサーが多すぎては難易度が高くなり、今いる区画から身動きが取れなくなってきている。――極度の方向音痴が迷子にならなっただけ、ましであるとは言えたが。
「……こんな胸悪なる戦いする部隊、さっさと『過去』へお帰り願いたいしなぁ」
 こうなれば戦うしかない。クルルは覚悟を決めると、追跡を躱せそうな場所はと周囲を眺める。
「左――は、あかんね、どんつきやし。そやから右行くしかないなぁ」
 左側に続く道は、そっと窺ってみれば奥の方で行き止まりになっている。右は奥にある隔壁を開ければ、何処かに繋がっていくだろう。その何処かはコアルームに違いない。つまり選べる進路は一つしかないという事だ。
 行動としては、今隠れている場所から飛び出して右へ走る。当然発見されるだろうから、攻撃しながら通路を駆け抜ける。戦闘をしながらの追跡劇は――駆け付ける敵の援軍が少数で済む事を祈るしかない。そんな所だろうか。
 咲き乱れる薄紅と白の花が柄を飾る薙刀――Kalmia latifoliaを握って、クルルは機を計り始めた。
 クルルの隠れる空間の傍を敵が歩いていく。姿は愛らしいが酷薄な害意を纏うとのアンバランスさは不気味といえ、粘着質な足音が右から左へと遠ざかったのを確認してから、クルルは隔壁の陰から飛び出した。
 装束の袖や帽子がはためく。全力で走るクルルの前方では躱し切れなかった視線の主が、触手を持ち上げクルルに向けている。その動きはあくまでも機械的で、これなら見切れるとクルルは惑わすようにフェイントをかけながら薙刀を振った。直線で発射される粘液は彼女の動きについていけず、あえなく薙刀に弾かれて壁に付着した。
「――詠え、惑え、舞い踊れ――虚ろ月炎に呑まれかし」
 詠唱に誘われ、幻月夜行の歪なぎんいろの炎がクルルの周囲に浮びんで彼女を照らす。ぎんを映り込ませる琥珀の瞳は一瞬、金の彩りを得た。
 巫女舞に似た流麗な手の振りで一斉に放たれた炎は踊るように眼前の敵を燃やし尽くし、その先にいた別の敵へも飛んで行く。それに近付き薙刀で斬り伏せたクルルが、通路の奥の隔壁が開いたのを見て薄らと柳眉を顰めた。
 開いた隔壁の奥から続々と新手の敵がやって来て、クルルへ向かって走って来ようとしているのだ。
 ――これはまずい。
 顔の筋肉が引き攣りかけたクルルの後ろから――バイクの特大なエンジン音が響いてきた。
「乗って――!」
 クルルが振り返った瞬間、レーシングスーツに身を包んだ青年が宇宙バイクに乗ったまま、こちらに手を伸ばしているのが見える。反射的に伸ばしたクルルの手を青年が掴み、引き上げる形でクルルをバイクシートの後ろに乗せた。
「大丈夫かい!?」
「なんや知らんけど助かるわ!」
「それなら良かった、確り捕まって! ――さぁ行くよ! ジェイク! 最高の咆哮と、最高の速度、魅せてやろう!」
 エンジン音に掻き消されぬよう声を張って短い会話を終えた青年――サリー・オーガスティン(鉄馬の半身・f02199)は、クルルを拾う為に一旦落とした速度を取り戻す為に愛機である宇宙バイク、ジェイクのアクセルを全力で回す。
 頼もしい駆動の震えに心を浮き立たせ、サリーは瞳を悪戯っぽく輝かせながらハンドルを華麗に捌いて、敵や触手を躱しながらジェイクを疾駆させていた。
 スピードに取り憑かれている。サリーを表現するならば、そんな言葉が選ばれるだろう。
 風圧で吹き飛ばされそうになる帽子を押さえながら、一瞬で景色が変わる世界の中でよくこんな器用にと感心していたクルルは、隔壁を下ろそうとしている敵に気付くと幻月夜行の月炎で呑み込ませ過去へと還す。
「どうも有難う!」
「ええよ! 私が進路を開けるから、あなたは……えぇと」
「サリー! サリー・オーガスティン!」
「私はクルルや! サリーさんはこのままよろしゅうに!」
 勿論と笑い声を含んだ快諾の声が聞こえてきた。
「さぁ目指すは、コアルーム! タイプ・メデューサ? それはボクとジェイクにとっては、言っちゃ悪いけど単なる『黒くて動くパイロン』」
 挑発的な言葉通りに迫るタイプ・メデューサ達を華麗に躱す動きは、まるでレース場を走るレーサーだ。
 まるで障害にならないとばかりに通路を抜けて広い空間に出る。そして唯一の進路である場所へ向けて決めるコーナリングは、何の淀みも無い滑らかなもので、クルルも思わず、頼もしいなぁ、呟いてしまうほどだった。
 それでもと追い縋るような触手はひどく多く、執念めいている。命を潰し、未来を潰し、闇の中に引き摺りこもうとする手に絡め取られては、何が起こるか想像に難くない。
 それらを拒絶するようにクルルは休む事無く炎で祓い続ける。
 二人の協力によって生まれた炎を伴う疾駆は、最早敵の手には負えないものと化していた。追い付けられるものなら追いついてみない、とサリーが笑う程のものだ。当然、誰も追い付けていない。
「――見えた! コアルームだよ! 準備は良い!?」
 応ずる声が後ろから聞こえてきたので、サリーはそれが本能かのようにスピードの限界へ挑んでジェイクを更に更にと追いこんで行く。メカニックとしての側面からも、ジェイクはまだ行けると強い首肯を返してくる。
 常人なら踏み込めない速度の領域に入ったまま、一気にコアルームへと突入した。
「ああ、青い空の果ての星の海で、こんな地獄絵図描こうとする輩なんて、大嫌いや! 必ず止める!」
 ジェイクから飛び降りたクルルが自爆装置へと駆け付ける。起動自体は呆気無い程に簡単になっている辺り、どんな状況でも容易に自爆し――『解放軍』を殺すつもりだったからだろう。
 ぎゅっと唇を噛み締めたクルルが起動すると、振り返ってサリーを見た。サリーも、これで終わったと頷き返す、その直後に転移が始まった。艦内にいた全ての猟兵達の姿が消えていく。

 一瞬の閃光が起きた。
 爆発の中にあったもの全てが宇宙へと還って行く。
 それは広大な宇宙の海では塵にも等しい現象だったが、それを引き起こした猟兵達にとって、そしてこの戦争においては大きな意味を持つものだっただろう。
 『白魔』艦隊撃破。これでまた宇宙は平和へと近付いて行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月19日


挿絵イラスト