ヤルダバオトの死の行進-最終楽章-
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「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
ドクター・オロチは苦しみ悶える。
脳内に延々と反響し続ける救いを求める声、許しを乞う声、断罪を求める声。
憑装にて偽神を取り込んだ代償は、かつてデミウルゴスと呼ばれた男が苛まされていた永遠とも錯覚する苦痛であった。
「やめて、やだ、やめろ、やめろやめろやめろやめろ!!ボクに俺に救いを乞うんじゃない!!!ああああああああ煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い!!!!!!!!」
頭が痛い、割れそうだとのたうち回るその姿は、芸を滑らせた道化以上にひどく滑稽な様だった。
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「……とまあ、自分で自分の首を絞めている状態です。ドクター・オロチを仕留めるなら今が一番好機と言えましょう」
自らのグリモアが入った電子端末からモニタに詳細を移しつつ、終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)は淡々と説明する。
絶えず調査を行い続けた結果が実を結び、消えない黒き炎に包まれたメンフィス灼熱草原、その中心にて、猟兵たちはついにドクター・オロチの拠点である『影の城』を発見した。
当然、ドクター・オロチ側もそれに気づいている。故に猟兵たちの進撃に対抗すべく魔軍転生を用いてフィールド・オブ・ナインが一柱、『偽神』デミウルゴスを憑装し迎え撃つ姿勢を取った。
だが、憑装はかつての織田信長程完全に扱いきれているワケではないドクター・オロチは、憑依対象としたデミウルゴスに引きずられてしまい、結果、彼を狂気と苦痛に苛んだ信者たちの声に同じ用に発狂寸前まで追い詰められる結果となったのである。
「とはいえ、当然油断は禁物です。ドクター・オロチは最早会話もロクにできぬ状態でしょうが……その前に風魔小太郎がまず立ちはだかることでしょう。
奴は『百面鬼の術』を用い、【デミウルゴス・セル】のオブリビオンと同等の能力を供えて我々を迎え撃つようです。そしてドクター・オロチもまた、デミウルゴスを憑依させたことにより彼の特性を供えています」
日明は再びアンプルを取り出す。
それはかつてアポカリプス・ランページにてデミウルゴスと戦う時に用いられた偽神細胞液。
【デミウルゴス・セル】の能力を得た風魔小太郎と、デミウルゴスを憑依させたドクター・オロチに対抗するには、再びこの死に至る可能性のある、激しい拒絶反応を齎す細胞を投与する必要があるのだ。
「本家本元のフィールド・オブ・ナインであったデミウルゴスと比べると確かに劣るところはありましょう――ですが、我々が戦うに辺り課せられるハンデには違いはありません。
決して気を抜かないよう……万一これ以上は無理だと判断したら、すぐにグリモアベースに帰投し治療に専念してください。これは戦争ですが、倒すことによる戦果だけでは誰も報われません。
――必ず、全員生きて帰ってください」
兵士は敬礼を以て、決戦の地へ赴く猟兵たちを見送った。
御巫咲絢
アポカリプスヘル・最終決戦!!
色々な意味で次の戦争までの前哨戦というか何というか、な感じがしますね。これの後に戦争かあ~~頑張らないとなあ~~!!
というワケでMSの御巫咲絢です。当シナリオの閲覧誠にありがとうございます。
御巫のシナリオが初めてだよって方はお手数ですがMSページもご一読くださいますと幸いです。
皆さんの努力が結実した結果、ついにドクター・オロチを倒せるところまでたどり着きました。
しかもななーんと!ドクター・オロチの本体である「コンクリ塊」が!
これは行くしかあるめえよ!!という方は是非ご参加頂けますと幸いです。
御巫は死ぬほど筆が遅いのですが、今週来週はGWの恩恵を受けられるのでいつもよりなるはやでお届けできるよう頑張ります。
●シナリオについて
第一章は【デミウルゴス・セル】のボス敵に变化した風魔小太郎、第二章はデミウルゴスを憑依させたドクター・オロチとの戦闘となります。
また、この最終決戦シナリオは「完結数が20本に到達した日によって結果が変わる」特殊なシナリオとなっております。
結果は全部で3ルートございます。下記に記載致しますのでご参照ください。
5月1日午前中まで:ドクター・オロチを完全撃破し、影の城からオロチが何度でも蘇っていた原因とみられる「コンクリ塊」を回収、猟兵達で保存します。
5月15日午前中まで:ドクター・オロチを撃退し、何も持ち帰らせません。
それ以降:ドクター・オロチは、すんでのところで残る3体のフィールド・オブ・ナインを発見します!そのうち2体を連れ帰り、1体をアポカリプスヘルに残していきます。
●プレイング受付について
4/20(水)中に断章を投下、それからプレイング受付予定となります。
受付開始前にご投函頂いた方は一度失効を以てお返し致しますので、受付開始後にまたご投函くださいますようお願い致します。
最低でも4名様はご案内予定です。
オーバーロードは帰還前でもOKですが、失効日の有無の関係上執筆の優先度が後ろになります。予めご了承ください。
それでは、皆様のプレイングをお待ち致しております!
第1章 ボス戦
『🌗厄災の偽神フェンリル』
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POW : 神が恐れた忌み狼(コール・オブ・フェンリル)
【怨念から生み出された黒狼】と合体し、攻撃力を増加する【巨大化能力】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【瞬間移動からの噛み付き攻撃】が使用可能になる。
SPD : この怨念は終焉まで続く(ラグナロク・カーズ)
【戦場全体に怨念の黒狼を敵人数×100匹】を放ち、命中した敵を【あらゆる守護を無効化する消えない魔炎】に包み継続ダメージを与える。自身が【負傷】していると威力アップ。
WIZ : 最も趣味の悪い手段(グレイプニル・プロトコル)
【血液で創造した絶対拘束の紐型寄生獣】【電脳魔術で生み出した空間ハッキング網】【敵を押し潰す2つの平らな巨岩】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
イラスト:すずや
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠蛇塚・レモン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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「――来たか」
風魔小太郎はこれより戦場となる影の城、その中央に位置する大広間のど真ん中に座して待っていた。
禍々しい怨念のようなどす黒いオーラを放つ面を手に、猟兵たちが訪れるとゆっくりと立ち上がる。
「嘗ての戦争ではぬし等に遅れを取り、信長様をお護りすること叶わず散ったが――此度も同じように遅れを取ると思うてくれるなよ」
禍々しい面に猟兵たちが自らに投与した偽神細胞液が著しく反応を示す。
あの面は"偽神"の面であると、細胞がまるで語りかけてくるかのように、激しい痛みが襲いかかる。
デミウルゴスに匹敵する程かどうかはわからないが、間違いなく放っておけばとてつもない数の犠牲を生み出す恐ろしい力を、風魔小太郎は面にしたのだろう。
「如何な理由あれど、己はドクター・オロチの信義に応えるのみ。
……そして、その上で、嘗ての雪辱を果たさせてもらおう」
面がかぶられ、禍々しい力の奔流が小太郎を包み込む。
それはまさしく怨念の集合体という表現が相応しい、黒い狼をその身に宿した厄災の偽神が今ここに顕現した。
猟兵たちよ、決して過去に倒した敵だからとて侮るなかれ。
君たちに課せられし拒絶反応というハンデは大きい。
厄災の偽神の面を被った風魔小太郎は本人が言い切っている通り一筋縄ではいかないだろう――!
黒木・摩那
デミウルゴスが相手ですか。
勝手にドクター・オロチがのたうち回るぶんには全然よいのですけど、こちらも例のワクチン打たなければいけないのが嫌ですね。
なにより注射がイヤ。しかも副作用きついですし。
熱出るし、寒いし、吐き気するし。もう動く気力なんて出ないのですけど。
それに比べると風魔の小太郎は元気ですね。
では手早く片付けましょう。
増えた黒狼はスマートグラスでロックオン。
覚えたてのUC【龍顎龍尾襲撃乱舞】でお相手します。
狼の間は【ダッシュ】と【ジャンプ】で移動。
一撃に【電撃】を込めて、黒狼を減らしていきます。
守りは【呪詛耐性】と【第六感】で対応します。
狼百本組手は副作用の身には応えますね。
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「(デミウルゴスが相手ですか……勝手にドクター・オロチがのたうち回る分には全然良いのですけどねえ」」
はあ、とため息をつく黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)。
デミウルゴスに対抗するには偽神細胞液の投与が必要なのだが、それが彼女の気分を憂鬱にさせている原因だ。
それもそうだろう、下手すれば死ぬかもしれない程の激しい拒絶反応を齎すものを好きと言える者がいたらそれは剛の者にも程がある。
何より注射が嫌だし、注射で痛い思いをして投与して出てくる副作用がこうもしんどいとなると憂鬱になるのは至極当然なのだ。
「(熱出るし、寒いし、吐き気するし……はあ。もう動く気力も出ないのですけど)」
正直今は口を開いて喋るのすら非常に億劫な程の拒絶反応に、「早く帰りたい」の6文字が脳内を駆け巡る。
それに比べて風魔小太郎の元気なこと。百面鬼の術でオブリビオンの仮面を被っているからなのか、そもそも【デミウルゴス・セル】のオブリビオンはデミウルゴスのように声を聞くこともないからなのか。
どっちにせよやることは一つしかないのだが。
「(手早く片付けましょう)」
拒絶反応により立つのすら正直辛い身体に鞭打って構える摩那。
厄災の偽神と化した風魔小太郎、その身に宿す狼が唸り――
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン―――!!!』
ただ咆哮するだけで身の毛もよだつ程の禍々しさが戦場に満ち、とこからともなく黒い狼が現れた。
その数は1000匹を余裕で超え、その全てが怨みに満ちた紅の眼を摩那に向け、その口には黒い炎を燻ぶらせている。
「――行け」
風魔小太郎の身体を借りた厄災の偽神が号令を出せば、黒狼たちが一度に摩那へと襲いかかる。
偽神細胞の拒絶反応がある以上、一発でも受けたら致命傷のきっかけになりかねない。
幸い呪詛耐性に優れる為呪詛の侵蝕は防げるとしても、当たらないに越したことはない。
確実に仕留める為、摩那はスマートグラス『ガリレオ』で狼を一匹ずつターゲッティング。
そして襲いかかる狼の群れ、その合間を縫うように駆け抜けて踵を返す代わりに回転蹴りを放った。
ギャウン――と狼が苦痛に呻きながら飛ばされ、他の黒狼たちを巻き込んで叩きつけられ霧散する。
「!」
直感的に何かを捉えた摩那。
飛び上がると、足元から狼が噛みつこうと飛び出した。
優れた直感――第六感が気配を察知していなければ間違いなくて傷を負わされていただろう。
飛び上がると同時に放った電撃で牙を向けた狼を撃ち落とし、次に真正面から飛びかかる黒狼を正拳突きで真正面から吹き飛ばし、再び黒狼を巻き込んでいく。
それからも摩那は力強い動きで黒狼を次々吹き飛ばし、殴り飛ばし、蹴っ飛ばす。
敢えて力を振り絞って踏み込むことで軽い一撃を相応の重い一撃に変え、余波で数匹巻き込んでいくことで手っ取り早く数を減らしては位置を変えた。
次々吹き飛ばされていく黒狼の群れ、その厚がだんだんと薄くなっていく。
一撃一撃に電撃も絡んだそれで吹き飛ばされた黒狼は、全て群れにぶつかるように『ガリレオ』と索敵ドローンである『マリオネット』を飛ばして完璧に角度、距離、力を計算した上で打ち込むことで、効率良く黒狼を倒してみせたのだ。
「全く、狼百本組み手は副作用の身には堪えますね……ですが!」
あと一発分は動ける――!
だん、と自らの力を振り絞るように踏み込み、抜けていく力を念動力でカバーし、ロケットのように突撃し……風魔小太郎に電撃を纏った渾身の拳が炸裂!
「ぐ……ッ!」
流石に百面鬼の面にて力を強化しているとはいえ、同じ偽神細胞を投与した者が相手では順当にダメージに支障はない。
「……はぁッ!!」
「ぬ、まだ力を持って……ぐ、おおッ!!」
念動力を混ぜた電撃が炸裂し、風魔小太郎の身は広間奥の階段に叩きつけられる。
そして同時に身体の限界を覚えた摩那は、次なる猟兵に後を託してグリモアベースに帰投するのだった。
成功
🔵🔵🔴
岩倉・鈴音
なんだか気合いの入ってる敵だネ。(事情などまるで知らんが)
だがどんな怨念でむかってきても猟兵の成長の糧にしかならぬと思いしれンッフッフ♪
数が多いな。回避可能なら見切って避け、無理なら盾受けやオーラ防御で防ぐ。
魔炎は状態異常かな。ならば【フリーダムブレイズ】ではねかえそう。
怨みには怨みが返ってくるもんだ!
浄化が使えるんなら浄化していくよ。
範囲攻撃で黒狼蹴散らしながらフェンリルに攻撃していく。
鎧無視、貫通切り込みっ。偽神細胞が痛いのはきっとコイツのせいだっ
激痛耐性でがまん!
痛いぶんマシマシで攻撃していく。
痛いの痛いの飛んでけ〜(吹き飛ばし)
フェンリルをボコボコにするまで剣で攻撃をやめない!
●
「……流石猟兵、明らかにその身に過ぎた代償を背負っても尚動くか」
崩れ落ちた瓦礫を押しのけ、風魔小太郎は再び立ち上がる。
【デミウルゴス・セル】の能力を得た恩恵というものは想像以上に強いようで、ふらつきすらまだ見せない。
偽神細胞液の力による猟兵の一撃も大きいハズだが、やはり偽神の力を得ているだけあるようだ。
そして先程数を減らされたハズの怨念の黒狼はまるで細胞が絶えず分裂するかのようにまだまだ数を増やしていく。
仮面の元となった『災厄の偽神フェンリル』が元来秘めた怨念はそれ程にまでどす黒いのだろう――その身に宿す黒狼は、立った一人の身には明らかに異常なレベルで過剰な程の怨念に満ちている。
そう、まるで人為的に、蠱毒として作り上げたかのような、数え切れない程の――
「だが!どんな怨念で向かってきても猟兵の成長の糧にしかならぬと思い知れ!」
ンッフッフ♪と、その圧倒的などす黒い怨念を前にしても微塵も怯む様子を見せないのが岩倉・鈴音(【機械天使12番】JKハングマン・f09514)だ。
風魔小太郎がどのような理由でやたら気合を入れて挑んでいるか等彼女は当然知る由もない。
そして例え知っていようといるまいと、やることは決して変わらない。
『オブリビオンを倒し、世界の安寧を取り戻す』――猟兵の行動の行き着く果ては恒にこうなのだから。
「(とはいえ……数が多いな)」
流石に怨念に一切怯まぬ鈴音とはいえ、その圧倒的な数には少し目を丸くする。
そして相手は獣、しかも狼。狩る為の手段を何よりも心得ている獣であるが故に少しでも隙を見せたらこちらの首が飛んでもおかしくない。
そしてもとより激痛に対する耐性は心得ているとはいえ、偽神細胞の拒絶反応はそれなりに痛い。決して油断はしてはいけないと気を引き締めてかかる。
『ウオォオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!』
鬨の声を上げ、黒狼たちが一斉に牙を向ける。
まずはそのうちの一匹が真横から牙を向ける。
「(速い――けど、見切れない程じゃないね)」
明るいノリとは一転した冷静な思考で鈴音は黒狼たちの攻撃を躱し、防いで迎え撃つ。
しかし迎え撃つ度に黒狼たちの動きはより俊敏に、そして力強くなっていく。
どうやら傷つけば傷つく程比例して能力があがるユーベルコードのようだ。
とはいえ全く対処ができないワケではない……が、躱し損じた黒狼の牙が鈴音の肌を掠めた刹那、禍々しい炎がそこから噴き上がった。
まるで自らの防御を全て剥がしにかかるように、その炎は消えることなく鈴音を蝕もうとする。
「(これは……一種の状態異常かな。ならば)」
鈴音もまた対抗すべくユーベルコード【フリーダムブレイズ】を発動。
瞬間、鈴音の肌を覆い尽くそうとしていた炎が消えたかと思いきや、黒狼の身体が炎に包まれた。
あらゆる護りを突き破る炎の熱に悶え苦しむ黒狼。
「怨みには怨みが返ってくるもんだ!」
人を呪わば穴二つ……その言葉をそれを体現したユーベルコードでの反撃は厄災を齎す偽神に対してある種の意趣返しかのように。
いくら負傷に比例して能力が強化されようと、あらゆる護りを貫通してしまう異常を付与されては無意味に等しく、そこから鈴音の猛反撃が始まる。
宇宙タコの『スキュラ』を呼び、飛び乗ったら墨で場を濡らさせ、ぬめって滑るのを良いことに突貫、浄化の力を込めて片っ端から剣で薙ぎ払う!
千匹は余裕で越えているであろう黒狼たちがあっという間にギャウンギャウンと鳴いては霧散していく。
怨念から生まれたことから浄化の力は非常に効果覿面なようで、あらゆる護りを貫いて切り込んでいく。
「偽神細胞が痛いのはきっとコイツのせいだっ!痛いの痛いの飛んでけ~~~~!!!」
「それは流石に八つ当たりというものではないか!」
風魔小太郎は思わずツッコんだ。
偽神細胞液の拒絶反応に関しては完全に【デミウルゴス・セル】どころか生きていた頃のデミウルゴスもとばっちりにも程がある。
「だから!ボコボコにするまで!攻撃を!やめないッ!!!」
「そんな破茶滅茶な理論でやられるのは流石に忍の名折れよ……ッ!!」
流石に風魔小太郎も反撃に出ようとその身に宿した厄災の偽神と共に迎え撃つが――
「ぬ!?」
そこにスキュラがすかさず墨を顔面目掛けて噴射!
不意打ちのように放たれ、視界も塞がれたとなれば流石に風魔小太郎とはいえ、最低でも一秒は怯んでしまう。
そしてその一秒の隙さえあれば鈴音には十分である。
つまりどういうことかというと、この後めちゃくちゃボコボコにされたということだ。
成功
🔵🔵🔴
吹春・志華
アンタは何?
そのドクターオロチなんてご大層な名前使ってるあいつに用があるのよ、どいてくれない?
全く……悪態つきながら偽神細胞を接種。
っ……う、っぐ……耐えきれずに膝をつくけど短刀の刃を握って意識を痛みで保つわ……こんなもの先輩方に比べたら……!
浄化で侵食を抑え結界術で体内の重要器官を保護……ちょっとはマシ、そう長くいけるもんじゃないわね……!
そっちが仲間込みならこっちも喚ばせてもらうわ、おいでペペ!
UCで召喚したペペに寄生獣を押さえてもらう。私が3つ受けなきゃいいんでしょう?
私は後方からガンナイフの弾丸を誘導して本体を狙い撃ちよ。
ハッキング網は厳しいけど巨岩はペペの炎で炙って衝撃波で弾くわ。
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「ぬぅ……」
宇宙タコの墨が中々取れず風魔小太郎は苦戦している。
「……この状況何???」
吹春・志華(観測者・f35442)は目の前の状況に思わず困惑した。
何故かってそりゃあどこもかしこも墨まみれで立ちはだかった敵も墨まみれで墨を取るのに必死になっていたら困惑もするでしょうよ。ええ。
一方風魔小太郎、やっと目の墨を拭い去ることに成功し再び構える。
「ぬ、次なる猟兵か……」
「アンタは何?私はドクター・オロチなんてご大層な名前使ってるあいつに用があるのよ、どいてくれない?」
「それはできぬ相談だ。己の今の主はドクター・オロチであり、相応の理由があって己を選んだとあれば、信義に応えぬは忍が恥晒しよ」
「あんな奴の信義に応えたところでなんだけど?全く……」
志華は大きくため息をついた。
彼女はシルバーレインの銀誓館学園の第5期卒業生――つまり、ドクター・オロチの所業を目の当たりにしている一人。
故に奴がどういう悪意の塊であるかを嫌という程理解しており、例えどのような理由があれど奴に信義を以て応えたところで返ってくるものは何もない。
されど忍は主に仕えるものである以上、その信念は曲げられないのだろうとも同時に理解しており、それ以上は言わない選択をした。
故に戦闘に入るべく、偽神細胞液を自らに投与する――
「っ……!う、っぐ……ぅ……!!」
身体が焼けるように熱い。同時に凍えたように寒い。
体中が沸騰しては凍りつくかのような感覚に加えて身体の中のあらゆるものが逆流するかのような激しい吐き気……
流石に耐えきれずに膝をつくが、今にも飛びそうな意識は何としてでもと短刀の刃を握り、痛みで繋ぎ止める。
血が滴り、真っ黒に染まった床を赤で少しだけ染めていく。
「……こんなもの、先輩方に、比べ、たら……ッ!!」
浄化の術にて偽神細胞の侵食を抑制し、体内の重要器官には結界術で保護処置を施し、やっと立ち上がれるまでになった。
だが、これでようやっと"ちょっとはマシ”という程度。そう長くいけるものではない。
「既に満身創痍か。その状態で己と戦うつもりか?」
一方【デミウルゴス・セル】の能力を供えた風魔小太郎はそんな副作用など存在するハズもなく、自らの指を切りその血にて寄生獣を口寄せた。
血液で形作られた、紐の形をした異形の存在は咆哮などと表現するのすら躊躇われる程の身の毛のよだつような声を上げる。
それと同時に地面を突き破るかのように平らな巨岩が、空間を侵食するように電脳魔術の網が。
3種三方向から志華を仕留めんと襲いかかってくる。
「そっちが仲間込みなら、こっちも呼ばせてもらうわ……!おいで、ペペ!」
志華の呼び声に応じ、姿を現し元気に声を上げるのはペンギン――の、ように動くシャーマンズゴースト、ペペ。
学生時代から共に在るかけがえのない絆で結ばれた友は志華の何よりもの強い力だ。
「ペペ、寄生獣を抑えて!」
任せて!と言うかのように鳴いてペペはその紐の姿をした寄生獣を抑え込みにかかる。
ペンギンが水中を泳ぐかのように空間を華麗に舞い、寄生獣の視線を自らに釘づけて誘導する。
その間に志華は長年の愛器であるガンナイフを発砲、風魔小太郎を狙い撃つ。
「なる程――誘導術式か。だがそれだけではこの身を捉えることは敵わぬ!」
忍という存在は非常に身軽であり、誘導術式すら撒いてみせる程の速度を出すことなど造作もない。
ガンナイフの狙撃を躱しながら電脳魔術の網と平巨岩を絡繰りてけしかける。
志華はそれに対し、敢えて避ける選択肢を取らず迎え撃つ。
電脳魔術によるハッキングの網は、電脳魔術に心得のない志華には対処が厳しい――故に避ける選択肢を最初から捨てたのだ。
電脳魔術でハッキングされると言っても、自らの情報を多少見られるぐらいだろう。もとより霊媒士であるが故に電脳魔術に頼らねばならない武装も然程存在しないが故に。
「(3つ受けなきゃいいんでしょう?なら多少はゴリ押してやるわ!)」
網をその身に受けても怯むことなくガンナイフを撃っては躱されを繰り返す。
そうしている間にも平巨岩が志華に迫る。
「3つ当てられずとも、今の汝の状態なればこれで十二分なとどめとなろう――覚悟!」
「覚悟するのはアンタの方よ!ペペ!」
志華が叫べば、ペペはすぐさま駆けつけその口から灼熱の火炎を放射し、平巨岩を押し留めてみせた!
そして志華は炎で炙られた巨岩に衝撃波をぶつけ、弾くように風魔小太郎へと押し返す!
「見事なり。だが―――ッ!?」
躱そうとするが、身体が縫い付けられたように動かない。
じゃらりと鳴る鎖の音――ガンナイフの弾丸に白い鎖が結び付けられているではないか。
そしてそれは今まで躱し続けた全てに括り付けられている……つまり、最初から動きを封じる為に狙撃していたのだと察した時にはもう遅く。
「自分のユーベルコードに押し潰されなさい!!」
弾かれた平巨岩が、厄災の偽神の身を勢いよく挟み込んだ――!!
成功
🔵🔵🔴
水玄・湧水之獣神
【農園】
アドリブ◎
■心情
突破口を見出す!
もう僕は皆についていける程強くなったんだ!
お前がいくら強化されても農園のみんなと一緒なら怖くないぞ!
■行動
狼を何匹出そうが無駄だ!
僕は指定UC【流涛水神螺】で水禍を纏って「霊瀧雲」にのって「水麗之太刀」を構えて先陣を切って敵に向かっていく
視聴嗅覚を感じさせなくして狼の集団をUCで作った水禍を飛ばして一網打尽。あらゆる守護が効かないなら纏ったままだと意味をなさなくなる。なら飛ばしてしまって先に狼を倒せば問題ないよね
そして僕は本体に対して通りすがりで「水麗之太刀」で「なぎ払う」!
あとの攻撃はみんなに任せるよ!
蛇塚・ライム
【農園】
技能・アイテム適宜活用
アドリブ◎
姉さんは後から来るわ
今は私達だけで戦うわよ
このアンプルも2度目ね……
さあ、覚悟はよろしくて、百面鬼?
偽神化の苦しみ程度で私は止まらないわよ
私はね、一度死んだことがありますの
そのときの苦しみに比べれば、この程度なんてむず痒いくらいだわ
スーパーロボ『カマドG』に搭乗してユーベルコード発動よ
装備した巨大拳『スカーレット・スコーピオン』を回転させて地中へ潜るわ
当然、敵は瞬間移動してくるけど、地中では私の後ろしか空間がないのよね
しかも掻き出す土砂が目鼻口に入って咳き込むはずよ
そこで振り向き、敵へドリルパンチ!
燃える指先に爆炎を宿して、一気に地上まで突貫するわ!
ルリララ・ウェイバース
【農園】の皆と参加
アドリブ◎
互いを姉妹と認識する4重人格
末妹のルリララ以外序列なし
『アンプル、やっぱりうたなきゃダメ?』(ルリ)
『じゃなきゃ倒せないんだから、腹くくれよ』(リラ)
『じゃ、いってみよ~♪』(ララ)
【全力魔法】のエレメンタル・ファンタジアで作った重力の渦(担当ルリララ)で攻撃、行動阻害を主に戦うぞ
味方の攻撃時は、【高速詠唱】で湧水には、属性を水(担当ルリ)に変えたり、レティシアの時は雷(担当ララ)に変えたりしてサポートするぞ
敵の攻撃は【オーラ防御】しつつ、寄生獣と網は重力の渦に絡め取り、巨石は大地の壁で相殺だ
暴走したら、下手に抑えずそのまま暴れさせるぞ
すまん。制御できなくなった
ルクル・クルルク
【農園】
※アドリブ、連携歓迎
狼は……苦手です。
だって、童話に出てくるか弱いウサギ達は、
残虐な狼にぺろりと食べられてしまいますから。
今回もそうやって、卑怯で趣味の悪い手段で拘束して、押し潰して、ルクル達を食べてしまうつもりなのでしょう?
嗚呼、なんて酷い……!わたしは、あなたを、ゼッタイニユルサナイ!
震える唇で【呪詛】と狂気の言葉を紡いで駆け出して。
紐型寄生獣は【眠り速度】マシマシの【呪殺弾】で動きを鈍らせ無力化を狙い、
網と巨岩は【聞き耳】で飛んでくる方角等を察知して【逃げ足】と【ダッシュ】で回避!
相手の懐に飛び込んで、渾身の一撃をお見舞いします。
ウサギだって、狼にかぷっと噛み付けるんですよ!
アイン・ヴァールハイト
【農園】
アドリブ歓迎
アンプル注射と聞いて、ぴくりと指が震える
…幼少時の実験台にされていた頃の記憶が脳裏をかける
コレは危険性はあるが、あの脳ミソ野郎をぶちのめすのに必要な措置だ
苦痛だけしかない実験ではない
「…問題ない、続けてくれ」
白い闇を纏って敵の目と耳と鼻から隠れる
基本行動は位置を特定されない様になるべく移動しながら
白い闇の吹雪を飛ばしてスナイパーと暗殺を使って死角から攻撃する
他者に向いた攻撃は援護射撃で逸らすなり邪魔なりする
拒否反応でたまに目がかすむ
嫌な記憶がちらつく
あぁ、人生の半分近くろくでもない記憶ばかりだ
忌々しいが実験台だった頃と比べたら大分マシだ
己の意思で理解して選んだ道だ後悔等ない
レティシア・スヴァン
【農園】
怪しいアンプル程度どうということはありません。
こちとら正真正銘の神ですので。
敵はさしずめ神殺しの狼というところでしょうか。
しかし天は言っております、所詮はドーピングの産物と。
【戦闘】
絶技『天の雷』を使用し自己強化。
時速9400km/hでもって飛び回り【怪力】でもって
強化した脚力、更に【電撃】を纏わせた蹴りを
その脳天に叩き込んであげまする。
「即興天誅技、天上天下流星脚
(ヘブンリィフォーリングストライク)!!」
瞬間移動してくる手合いには、常時結界術で
自身の周りを防護することで対応。
スピードには自信がありますので、
狼が仲間の所へ向かえば【レーザー射撃】で牽制しましょう。
テラ・ウィンディア
【農園】
ヘカテと一緒に注射受けるぞ
「うにゃぁ…痛いですね…!」(子猫の予防接種の如き惨状
機神搭乗
巨大狼ならヘカテの出番だな!
【属性攻撃】
炎を機体に付与
UC発動
【戦闘知識】
敵の動きと攻撃の性質
仲間の能力と効率的な連携の把握
【見切り・第六感・残像・空中機動・武器受け・オーラ防御】
超高速で飛び回りながら敵の猛攻回避
避けきれないのは剣で受け止めオーラでダメージ軽減し致命避
【弾幕・重量攻撃・貫通攻撃】
ガンドライド
ドリルビット展開
重力弾の乱射で動きを止めドリル攻撃
【二回攻撃・切断・早業・串刺し】
三呪剣による自動斬撃
剣での連続斬撃から槍に切り替えて串刺しにして動きを止めて
仲間達の猛攻へと繋げる!!
●
「く、よもやこれ程とは……」
岩を突き破って姿を表す風魔小太郎。
着実にダメージを与えてきたことにより、大分満身創痍に近づきつつあった。
だがそれでもその身に宿す怨念の権化たる災厄の偽神、その憎悪は決して揺るぎなく、ぐるると唸り猟兵たちに憎しみの目線を向ける。
「……っ!」
その視線に恐怖が体中を駆け巡り、かたかたと震えるのはルクル・クルルク(時計ウサギの死霊術士・f31003)。
「ルクルさん、大丈夫……?」
「狼は……苦手です……」
だって、と口を開く。
童話に出てくるウサギたちは皆か弱い存在で、みんなして残虐な狼に食べられてしまうのだと。
親ウサギであろうが子ウサギであろうが、弱肉強食のピラミッドにおいて、狼はウサギより遥かに高い位置にいる。
故にウサギという種に刻みつけられた本能的な忌避感が反応し、時計ウサギであるルクルもそれには抗えないのだ。
かたかたと震え、気遣うように顔を覗き込んだ水玄・湧水之獣神(おちゃめボーイの獣毛竜・f33795)のもふもふな毛並みの腕をきゅ、と握りながらもその恐怖を押し留めることはせずに吐き出していく。
「今回もそうやって、卑怯で趣味の悪い手段で拘束して……ルクル達を食べてしまうつもりなのでしょう?嗚呼、なんて酷い……!」
その瞳は最早焦点が合わなくなりつつあるが、死霊術士であるルクルにとって狂気と見紛う程の恐怖は逆に力と成り得る。
皆心配こそすれど、彼女には彼女の策あってのことだと理解はしている為、最低限の言葉だけかけるのだ。
戦後のケアは全て戦いが終わってから故に。
「敵はさしずめ神殺しの狼と言ったところでしょうけれど……天はこう言っておりますからね。『所詮はドーピングの産物』と」
レティシア・スヴァン(天に剛腕・f30842)の言葉はあながち間違いではない。
百面鬼の術で異なるオブリビオンの力を得て戦うのも確かにドーピングである。
ただ、猟兵たちもそれ故に死ぬほどしんどいドーピングをせねばならないのだが……
「姉さんは後からくる……今は私たちだけで戦うわよ」
今はこの場にいない姉の代わりに音頭を取るのは妹の蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)。
その手に握るは偽神細胞液のアンプル。
「このアンプルもこれで二度目ね……」
これを射てば偽神の力に対抗しうる能力を得られるが、同時に拒絶反応に襲われる――故に、彼女たち『蛇塚わくわく武闘派ファーム』一同の中でも反応は分かれた。
『アンプル、やっぱり射たなきゃダメ……?』
『じゃなきゃ倒せないんだから腹くくれよ』
「ああ。少なくとも注射の痛みはすぐ終わると思うぞ」
『ルリララのいう通り!じゃ、いってみよ~♪』
『ううう……』
うなだれているるルリララ・ウェイバース(スパイラルホーン・f01510)の人格の一人にして四姉妹の一人であるルリ。
悲観的な彼女はきっとアンプルによってもたらされる拒絶反応を怖がっているのだろうが、それをリラに諌められながら、ララとルリララによってさくっとアンプルを討たれた。
一方でアイン・ヴァールハイト(コキュートス・f36049)はアンプルを注射するという行為に幼少期のトラウマが刺激され、苦々しい表情をする。
かつて実験台にされていた時はただただ苦痛のみであった。この偽神細胞液も同じ苦痛を齎すが……
「(危険性はあるが、あの脳みそ野郎をぶちのめすのに必要な措置だ)」
「アインさん、大丈夫?無理は……」
「……問題ない、続けてくれ」
「わかったわ」
銀誓館学園の四期卒業生として、ドクター・オロチがいかに邪悪かを理解している故にこれぐらいで止まるワケにはいかないと、自らに言い聞かせて落ち着かせてアンプルを受け入れる。
ただ、トラウマから自らで投与しようとしても指がこれっぽっちも動かずライムに投与してもらうことになった。
「ヘカテ、じっとしてるんだぞ」
「うにゃあ……痛いですね……!」
アンプルをぷすりとされて声を上げるのはテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が駆るヘカテこと三界神機『ヘカテイア』。
まるで子猫の予防接種の如き惨状が繰り広げられているが、これもやらねばならぬことの為致し方ないというもの。
そうして各々自分で、あるいはライムに手伝ってもらって偽神細胞液を投与し終えて。
此方7人(と1機)、彼方1人。数だけでは有利に見えるであろうが、【デミウルゴス・セル】の力を得た風魔小太郎はそれでも一筋縄では行かぬ相手だ。
油断と慢心のない相手程手強いものはいないのである。
「そちらが数で向かうならば、こちらも数を以て迎え撃つまでよ」
再び現れる怨念の黒狼たち。
その数は最早影の城全てを埋め尽くさんばかりに現れ、ライムたちを取り囲む。
これがたった一人であったならば正しく四面楚歌という絵面であっただろう。
だがライムたちは一人ではない。故に、恐れることは何もない……皆の力を信じ、突き進むのみ。
「やはり数で攻めてくるわね……みんな、準備はいい?」
「ああ、手筈通りにやるぞ。ルリララがまず牽制する――!」
ユーベルコード【エレメンタル・ファンタジア】を用い、ルリララが重力の渦を敵陣の中央に生み出す。
小さな小さなブラックホールは蟻地獄のように周りの狼たちを引き寄せる。
いくら怨念で生まれた狼とて世界の重力という存在には抗えず、動きを著しく阻害され始めた。
「よし、突破口を見出すよ!」
重力の渦を開戦の狼煙とし、水玄が狼の群れへと飛び出す!
「狼を何匹出そうが無駄だ!もう僕はみんなについていける程強くなったんだ!いくら強化されてもみんなと一緒なら怖くない、巻き込まれたい奴からかかってこい!!」
まるで海の渦潮が如く巨大で激しい水渦を生み出しながら水玄がまず戦陣を切る。
ユーベルコード【流涛水神螺】にて生み出されたその大きな渦は敵側の五感を用いた一切の探知を遮断し、狼たちは攻撃しようと果敢に飛び込んでは呑まれていく。
狼はイヌ科であり、主な探知手段に用いるのは嗅覚である――例え厄災の偽神が怨念で生み出した特殊な狼だとしても効果は非常に覿面なようだ。
そこにルリララからルリへと主導権を変えた【エレメンタル・ファンタジア】で生み出した水流による追撃が入り、狼の群れの一角を確実に薙ぎ払い道を切り開く。
「召喚しても水渦に呑まれるだけか――ならばこれはどうだ!」
風魔小太郎が再び自らの血を媒介とし寄生獣を口寄せ、さらに同時にハッキング効果のある電子網と平巨岩を同時に出現させ、さらに狼もけしかけて四方向から攻めに入る。
「わたしは、あなたを、許しません……許さない、許さない許さない赦さない赦さない、ゼッタイニユルサナイ!!」
「遅いですね。丸見えですよ!」
ルクルが紡いだ呪詛が寄生獣を縛り付けて眠りへ誘い、ハッキング網はユーベルコードにより自らを強化したレティシアの雷の一撃で相殺、ついでにそのまま怪力を込めて平巨岩も打ち砕き、その瓦礫に黒狼たちを圧し潰す!
「く……やはり一筋縄では……っぐ!」
そしてその不意を突いて、風魔小太郎の肩を吹雪の刃が切り裂いた!
アインの愛器である『結晶輪』に、ユーベルコードで生み出した光を乱反射する吹雪が纏われたことにより相手の死角を突いての一撃を容易にしたのだ。
命中を確認したアインはそのまま自らも吹雪に身を隠し移動を図る。
逃がすかと言いたげに黒狼が集まってくるが五感で探知できぬ相手を貪り食おうとしたところで見当外れも良いところになるのだが、運悪くそれを拒絶反応が許さなかった。
「……ちっ!!」
脳裏にちらつく嫌な記憶。人生の半分近くがろくでもない記憶ばかりで、運命の糸症候群で無駄に時間を消費してしまったという事実が刻まれ。
忌々しい記憶ばかりだが、それでも実験台だった頃と比べたら大分マシなのだ。
「(己の意思で選んだ道だ、後悔等ない……!)」
振り払った頃には残った狼の多くが近づいていたが、ユーベルコードにより五感での感知を無効にしているのが功を奏し回避に成功。
その後レティシアの放つレーザー射撃と、彼女を援護するララの雷による【エレメンタル・ファンタジア】が狼たちを焼き払う。
アインはそのまま再び風魔小太郎の死角から結晶輪を乱反射の吹雪と共に投擲し、その反対方向から水玄が渦を纏いながら忍ばせた水麗之太刀を薙ぎ、確実なダメージを与えて。
じわりじわりと追い詰められてく風魔小太郎……戦況は猟兵側に完全に傾きつつあった。
◆
「ぐ、ぅ……!かくなる上は――!」
風魔小太郎が指笛を吹く。
生き残った黒狼たちが先程まで敵を追いかけていたのをぴたりと止め、主に集い、身体を溶かしていく。
どぷん、どぷんと液体のようになった怨念が風魔小太郎を核として形作られ。
まるで溶け合うかのようにどす黒い怨念が、まさに巨人とすら見紛う程の巨大な黒い狼と化したのだ。
「ここで倒れるワケには行かぬ……よしんば勝ちを得られずとも、一矢報いてくれる……!!」
禍々しい咆哮を上げ、瞬時に猟兵たちの眼前にまで迫る風魔小太郎。
確かにその大きさは圧倒的で、普通の人間サイズではあっという間に潰されてしまいかねない程だが――
「そうはさせないわ!」
「ヘカテ、みんなを護るぞ!!」
キャバリアに乗っていれば話は別である。
カマドGに乗り込んだライムと、本来の姿に戻ったヘカテイアに搭乗したテラがその獰猛な牙と爪が襲いかかる前に武器で押し留めた!
二人の膂力は元より仲間たちより特に優れている上、そこにキャバリアの力が加わればどれだけ大きな図体であろうが攻撃を受け止めるなど造作もない。
そしてそのまま捕まえてしまえば無防備になるも同然。一斉攻撃を試みようとしたが――
「――すまん、制御できなくなった」
何とここでルリララの展開していた【エレメンタル・ファンタジア】がついに暴走。
重力の渦が敵味方無差別に吸い込もうと巨大化し始めたのである。
さすがにそれはまずいと攻撃を断念し一度ライムたちが押し留めている戦線に集う蛇塚わくわく武闘派ファーム一同。
「ぐ……な、何だこの力は……!!」
暴走した重力渦は巨大な巨大な黒狼と化した風魔小太郎の行動を阻害するには十分で、瞬間移動を用いてもすぐに引っ張られてを繰り返す。
体力は削れてはいるのだろうが、重力に引っ張られるだけで沈みはしないのは確実だ。
とはいえ、暴走したユーベルコードの射程圏内に入るのはあまりにも危険すぎる。
無理に抑え込むよりも暴走させてしまうべきだと判断したルリララは仲間の被害を防ぐべく一声を上げた状況だ。
「ルリララの魔力が切れたら自動的に解除されるとは思うが……このままだと膠着状態になってしまうな」
「重力に巨大狼となればヘカテの出番だ、おれたちがなんとかする!」
テラがヘカテイアに搭乗したまま重力の渦漂う敵陣へと迷わず突貫する。
普通に暴走している重力渦の中に飛び込めばただでは済まないが、幸いにもヘカテは重力を操る神機であり、その影響を払うことなど造作もない。
ある意味ではこの状況においては一番の適任者と言えるだろう。
「"グランディアよ……全ての存在が持つ原初の力よ、我が身に宿り力と成せ"……!」
星の力宿る刃の魔力を解き放ち、超重力フィールドを展開するテラとヘカテイア。
その後ヘカテイアに搭載されている自走砲台『ガンドライド』と自らの意思に応じて動くドリルビット『エンプーサ&プルモー』を構え、12300kmものとてつもないスピードで飛び回る!
「ぐ、おおおおお……ッ!!」
勘の優れた風魔小太郎とはいえ、重力に吸い込まれかけている状況では対応はできないだろう。
そこに砲撃を集中的に仕掛ければ、重力の渦が弾幕を吸い込んでいくとなれば、モロに全弾命中するハメになる。
「お、のれ……ッ!!」
だがただではやられまいという執念が、風魔小太郎にヘカテイアの背後に瞬間移動で回り込める程の火事場の馬鹿力を齎す。
重力すら無理やりに突破し、物理的な速度概念をも覆して接近した黒狼の牙がヘカテイアに飛ぶ――
と、いったところでライムのカマドGが割り込み、巨大拳『スカーレット・スコーピオン』で風魔小太郎ごと地面を抉って潜り込んだ!
「な……ッ!!」
「さあ覚悟はよろしくて、百面鬼!!」
『スカーレット・スコーピオン』は凄まじい勢いで回転し、それにより発生する土砂を風魔小太郎に片っ端から浴びせていく。
やられてなるものかと瞬間移動能力で何とかライムの後ろに周り込むことで回避しようと試みるが――地中においてそれは悪手と言うより他にないだろう。
「うぶっ!?」
……抉れ掻き出される土砂をモロに浴び、動きが止まる。
窮地に追いやられたことにより完全に冷静さを失い、相手のチャンスを逆に作ってしまったことに気づいた時にはもう遅い。
「く……何故その激しい苦痛の中でも戦える!?」
「私はね、一度死んだことがありますの……そのときの苦しみに比べればこの程度なんてむず痒いぐらいだわ!!」
カマドGのドリルパンチが災厄の巨狼の腹を打ち据え、指先に爆炎紅蓮の覇気が宿る――!
「闇を穿つ流星が如く……突貫するわ!喰らいなさい、【蛇炎神拳・漆式『文月』】!!」
高速回転する爆炎を宿したドリルが狼のその怨念を塗り固めたかのような身体に地面ごと風穴をこじ開けた。
そのままアッパーカットするように地上にライムは地上に飛び出し、バトンタッチするかのようにテラ駆るヘカテイアの『エンプーサ&プルモー』が三対の剣型宝具『三呪剣』の斬撃と共に圧倒!
そして槍に持ち替え、その身体を空間に縫い付けるかのように串刺しに仕立て上げる。
それと同時にルリララの魔力が底を尽きたことにより、暴走していたユーベルコードの重力渦の影響も消え去った。
「ぐ……動けぬ……おのれ、猟兵ッ!!」
「今だルクル!!」
「はいっ!!」
そこに追い打ちをかけたのは何とルクル。
吐き出した狂気と呪詛を自らの武器に込めた彼女の視線は先程とは違って正気を取り戻してこそいるものの、その目は狼を絶対に許さないという強い意思に満ち溢れ、とどめにつなげる追撃を見舞う!
「ウサギだって――狼に!かぷっと噛みつけるんですよ!!」
【小ウサギの呪牙】が狼に刺さり、現在の風魔小太郎を形作る巨大な黒い狼の皮が黒い靄が霧散するかのように剥がれ落ちる。
黒い狼と化していたことを強化と定義づけたことにより、ユーベルコードを封印する効果を付与し本体を露わに――とはいっても百面鬼の術だけは被っているが――させたのだ。
だが。
これで終わるかと言われると、否である。
ここで完膚なきまでに倒しておかなければ、また復活してしまう可能性がある以上、「もういずれ死んで骸の海に還るだろう」とう甘い考えになることは決して無い。
「さあ、"覚悟せよ。汝らが許されることはもうない"」
遥か上空から響き渡るレティシアの声。
時速9400km/hものスピードで遥か空へ舞い上がり、その類まれなる怪力に強化された脚力と電撃、そして圧倒的な重力加速補正を以て、光よりも速いスピードで――
「受けよ――即興天誅技、天上天下流星脚(ヘブンリィフォーリングストライク)ッ!!」
――顔面の百面鬼と大地ごと派手に叩き割る。
それは最早地面を抉るなんて表現が生温く感じる程の、巨大な地割れをその場に齎す。
この戦いが終わった後も影の城がそのまま存在していたら、それは奇跡と言っても差し支えないと断言できそうな程の派手な裂け目ができあがった。
当然、風魔小太郎はその裂け目の奥の奥に追いやられた。
マントルまで行って溶かされていなかったら、それこそ奇跡だろうと断言できる程の奥に、だ。
これぞ、完全なオーバーキルという奴である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フカヒレ・フォルネウス
WIZ アドリブ連携歓迎
……うーん。
やはりめちゃくちゃ強そうですね。いえ、強いですねこいつ。
まともにぶつかったら負けそうです。ならば、ワルらしく対処しましょう。
いただいた偽神細胞液を、せっかくなのでガブガブ飲ませましょう。
召喚した鮫にね!
自分はノーリスクという、実にワル!
(鮫からの好感度をリリースして風魔小太郎への特攻を付与)
フェンリル、たしか鎖で束縛されてたとかいう狼ですね?
ならば縛って差し上げなさい、鎖鮫!
アンプルの効果で奴の身体に傷をつけられるようになっているはず。
縛り付け、噛みつき、思う存分ワルを見せつけて差し上げましょう!
僕ですか?
鎖鮫に任せて回避と防御魔法に専念します。まさにワル!
●
かくして、風魔小太郎は厄災の偽神の面ごと割れた地面の底の底まで追いやられた。
どうあがいても骸の海に還るという運命が覆ることはない。
――ないのだが。
よしんば勝てずとも一矢報いる――その執念が最早怨念と化したことにより面にされていた災厄の偽神と共鳴する。
地面から禍々しい獣の手が伸び、真なる災厄の権化たるフェンリルが姿を現した。
『グルルルル……』
最早人の言葉すら発することもない怨みの権化とかした風魔小太郎だったフェンリルが、猟兵たちに一矢報いようと意地でも地上から這い上がろうとする。
「うーん……めちゃくちゃ強そう――いえ、強いですねこいつ」
だが幸いにも新たな猟兵が駆けつけたことにより、先に進んだ猟兵たちの後を追うということにならなかったのは僥倖と言うべきか。
フカヒレ・フォルネウス(鮫の悪魔の四天王・f31596)はその怨念の権化を目の当たりにして、その力量の差を冷静に測り、思考する。
「(まともにぶつかったら負けそうです)」
ただでさえ災厄と呼ばれる偽神、その面が最早暴走したような状態に近いような奴に真っ向から勝負を挑むなど愚の骨頂である。
ならばここはデビルキングワールド流の戦法にて迎え撃とうではないかと思い立ったフカヒレは、魔術を用いて鮫を召喚。
「よくきてくれました、ささ、これをお飲みなさい」
何と、召喚した鮫の口にに渡された偽神細胞液を流し込んだ!
しかもなんかもうがぶがぶ飲んでる。どんだけ分けてもらったんだってレベルでがぶがぶ飲む。
自分が投与するのではなく鮫にそんな貴重な細胞液をがっぶがぶと投与させる姿は正しくワルの姿と行っても過言ではないだろう。
部下にリスクを全て押し付け自分はノーリスク、そんな最高にワルの極みをさらりと実行してのけるフカヒレの姿は、まさに模範的なデビルキングワールドの住人のあるべきワルの姿だった――!!
もちろん相応の代償はあるのだが。主に鮫からの好感度をリリースすることになるという。
『グルル……ウォオオオオオオオオオオオン!!!』
獰猛な牙をむき出しにして、最早人だった頃の理性を無くした怨念の黒狼は瞬間移動でフカヒレの背後に回り込み噛みつこうと襲いかかるが、ドーム状に展開された防御壁に阻まれる。
だがフカヒレは偽神細胞液を投与していないが故に、偽神の攻撃に完全に耐えられる障壁を展開できる程の力は今この場では得ていなかった。
しかし、その障壁が割れるまでの瞬間を利用し、鮫を召喚してさっくり退避。
最早完全な怨念に飲み込まれたフェンリルはそんなギリギリのところで抜けられるのを繰り返し、怒りの咆哮を上げては何度も攻撃しようと襲いかかってはさっくりと躱され防がれを繰り返す。
そんな感じのギリギリの応酬を"敢えて”続けて敵を焦らさせるのもワルの一手というものだ。
「フェンリル、確か鎖で束縛されていたとかいう狼ですね?……ならば縛って差し上げなさい、鎖鮫!」
再び放たれる鮫魔術にて虚空より鎖でできた鮫が一直線に飛び、その自慢の鎖でがんじがらめに縛り付ける!
「アンプルの効果は問題なく出ていますね。さあ鎖鮫、思う存分ワルを見せつけて差し上げましょう!」
フカヒレの命令に「よくもこんなクソ苦しいモン飲ませやがって」というオーラを出しながらも主にしぶしぶ従い鮫は全力でフェンリルに噛みつき、縛り上げ、ヒレで叩きつけ。
フェンリルがその刃を鮫につき立てたところでひょいっと身体を伸ばして鎖を猿轡代わりにするかのように口の中に突っ込み、そのまま口と喉両方から器官を圧迫!
元々すでにオーバーキルなダメージを喰らっていたところを、猟兵に一矢報いるという怨念のみで再び立ち上がったフェンリルは満身創痍どころか虫の息。
その状況で怒りに煽られて無駄に体力を消費したところで集中攻撃されれば、倒れるのは必然としか言いようがないのだ。
「ふふ、最早虫の息同然の敵を完膚なきまでにフルボッコしリスポーン権利を与えないのはまさにワル!猟兵を始めてから一番に覚えた猟兵流のワル行為、素晴らしいですねえ!!」
そんなことを言いながら、回避と防御魔術で自らの身を護ることに専念し、フカヒレはワルっぽさに満足しながら可愛い自分の鮫たちが災厄の偽神たる怨念の黒狼を今度こそ地割れの底に叩き込む姿を眺めていたのであった。
うーん、これは実にワル。
死んでも道連れにするという風魔小太郎の怨念とも違わぬ執念は、こうしてオーバーキルと鮫のフルボッコにより潰えたのだ。
残るはドクター・オロチ、ただ一人。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ドクター・オロチwithデミウルゴス』
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POW : 偽神水晶剣
任意の部位から最大レベル枚の【偽神水晶剣(偽神細胞と融合した水晶剣)】を生やして攻撃する。枚数を増やすと攻撃対象数、減らすと威力が増加。
SPD : クルーエル・セイント
状態異常や行動制限を受けると自動的に【聖なる光のオーラ】が発動し、その効果を反射する。
WIZ : デミウルゴス・ポリューション
【指先】で触れた敵に、【強毒化した偽神細胞の侵食】による内部破壊ダメージを与える。
イラスト:みやこなぎ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――神よ。
――神よ。
――神よ。
――お許しください。
――罰をお与えください。
――お救いください。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い!!!!!!!!!!!」
風魔小太郎を退け、影の城の最奥へとたどり着いた猟兵諸君が目にしたのは脳内に反響する声に悶え転がるドクター・オロチの姿であった。
「うるさすぎるんだよいい加減黙ってくれよボクに救いを求めるとかバカなんじゃないの君らのことなんかどうでもいいんだよああああああああもう煩い煩い煩い黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇええええええええええええええええッッ!!!!!」
脳内に響く声は猟兵が眼前にまで迫ったことにすら気づかない程の苦痛なようだ。
まるであの時のデミウルゴスと戦った時のような――いや、デミウルゴスより酷いかもしれない。
思えば、彼でさえ長年の苦しみに発狂寸前だったのが、魔軍転生で能力を借りようと思っただけのドクター・オロチに耐えられるワケがないだろう。
その姿を最早滑稽通り越して哀れだと思う者もいるかもしれない。
今までのツケが回ってきているかのような姿にざまあみろ、とほくそ笑みたくなる者もいるかもしれない。
「あああああああああもう!!!脳に直接語りかけても意味ないからって乗り込むとか正気じゃないよバカじゃないの!!!!ボクにそんな余裕はないんだよさっさと帰ってっつーか死んで!!!!!!!!!」
ついには猟兵たちを猟兵とすら認識できない様である。
苦痛から解放されたいという感情が齎すエネルギーは甚大だ。何故ならそれは存在の防衛本能に基づく故に。
決して油断することなかれ。
諸君らの眼前にいるは、借り物とはいえフィールド・オブ・ナインの一柱と同等の力を得た存在だ。
黒木・摩那
注射2回目……あー頭痛い、気持ち悪い、寒気がするー
おおっと、思っていた以上にひどい有様ですね。
正直、むしろそのままにしておいてあげたいぐらいですが、そうも言ってられません。
惜しいですが、ドクター・オロチに安らぎを与えてあげます。
UC【飛天流星】を発動します。
こちらから一気に間合いを詰めて、正拳突き、足払いからのアッパーカット。
高圧電流も交えたしびれる一撃をお見舞いします。
電撃を跳ね返す手段もあるようですが、こちらは【電撃耐性】で対策バッチリです。
止めの一撃は脳天唐竹割りチョップ!
オロチの頭ならどこでも脳天ですね。
フカヒレ・フォルネウス
WIZ アドリブ連携歓迎
おお、なんと哀れな。
苦しんでいるオロチを見過ごすなど、僕にはとてもできません。
すぐに楽にして差し上げなければ。
マスター、偽神細胞液のおかわりを!
戦兵鮫の親鮫にたらふく飲ませることで、500機を超える子鮫にも浸透させるというワルな発想です。
さあ、ドクター……貴方を救って差し上げましょう。
薄く香ばしい鮫をどうぞ、たっぷりと味わってください。
口の中で爆発しますが。
そちらの指先が触れたところでも爆発しますが。
はは、安心してください、おかわりはありますよ!
僕自身は(装備アイテムの)黄駆鮫に乗って逃げ回るとしましょう。
油断なく、自己保身はしっかりと。何せ、僕はワルい悪魔ですので。
●
「注射2回目……あー頭痛い、気持ち悪い、寒気がする~……」
すでにグロッキー状態の黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)。
とはいえ、やることはやらなければならない。
これが終わったら今日一日はベッドでゆっくり休んで翌日おいしいものを食べようと決意して決戦の地に赴けば、予想以上に酷い有様のドクター・オロチがごろんごろんとのたうち回っているではないか。
「おおっと」
流石に声に出る程の酷い有様である。
死に至るかもしれない程の強力な拒絶反応がまだマシなのではないかと思える程に酷い有様というのもなかなかないだろう。
「おお、何と哀れな……」
時を同じくして駆けつけたフカヒレ・フォルネウス(鮫の悪魔の四天王・f31596)もまた、若干仰々しい言い回しを用いながらも哀れみの顔を向けた。
ドクター・オロチはこれまでの所業やシルバーレインの銀誓館学園卒業生たちの話を鑑みるなれば哀れむ価値なんかない、と言うだろうが、ここで言う哀れみというのは色々な意味でただの憐憫と言えるかと言われると否だろう。多分ね。
「正直むしろそのままにしておいてあげたいぐらいですが、そうも言ってられませんね」
「ええ、苦しんでいるのを見過ごすなど僕にはとてもできません。すぐに楽にして差し上げなければ」
同じ戦線に並び立つ二人の猟兵は意気投合する。
「(しかしこの方、偽神細胞液を投与してるだろうのにぴんぴんしてますね……どれだけ強靭な体力を持っているんでしょう)」
つい偽神細胞液を投与して駆けつけている前提で考えてしまい、フカヒレに対して凄いなあという視線を向ける摩那。
いや、まだ投与してないどころかこの人投与する気全くないんだけどね。
「マスター、偽神細胞液のおかわりを!」
「えっ!?」
どこからともなくマスターが本当に現れてまるでカクテルを出すかのような流れで偽神細胞液をフカヒレに渡して行った。何その固有結界。
摩那でさえ念のため偽神細胞液の効果が一度抜けた上で再投与したというのに今この場で追加投与をするのか、と驚きを隠せない様子だがすぐに勘違いだったと全てを理解することになる。
「さあ強くなれるお薬ですよ。たらふくお飲みなさい」
「(うわあ酷い)」
自分が召喚した戦兵鮫に偽神細胞液をぐいぐいっと半ば押し込む勢いで飲ませていくフカヒレ。
何だ自分じゃなくて自分の召喚した鮫に飲ませてたからか……と気づくと同時に部下に容赦なく苦痛を押し付ける光景、流石に引いた様子を見せる摩那。
「親鮫にたらふく飲ませておけば、500機を超える子鮫にも浸透することでしょう。我ながら中々ワルな発想ですね」
「中々どころか相当ワルでは?」
「お褒め頂き恐縮ですね」
デビルキングワールドの悪魔たちにとってはこの上ない称賛をもらってフカヒレは嬉しそうだ。
褒めてはないんだけどデビキン出身みたいだからなあ、と摩那は割り切ることにした。何だかんだで猟兵同士で仲間ということだしと。
その間にもドクター・オロチは未だ放置されながらもんどり打っているワケであるが、それを放置しているというのも苦しむ時間を少しでも長くするという意味ではかなりワルだろう。
「そちらは偽神細胞液を自ら投与されておられる様子。なるべく長引かぬよう支援させて頂きますよ」
「ありがたいです。正直本当に動くのも嫌なぐらいにしんどいので」
幸いドクター・オロチは未だこちらに気づく気配がない、というか気づく余裕もないのだろう。
それを良いことに先手必勝とばかりに摩那はユーベルコードを発動。
「"セーフティ解除、励起。帯電を確認……加速開始”!」
【飛天流星(メテオール)】の名が示す通り、天を飛ぶ流星が如き勢いで七色の花嵐が駆け抜ける。
「ぎゃああああああああ!?!?」
不意打ちを脳天に喰らっただけで早くも断末魔とも見紛う絶叫が響く。
同時にドクター・オロチの身体から眩しい光が放たれ、摩那が与えた電撃を纏ってしっぺ返すように襲いかかるが、フカヒレが防御魔法を展開して割り込んだことで直撃は免れる。
「ありがとうございます、助かりました」
「いえいえ、これぐらい朝飯前です。お互いの保身はしっかりと、その上で敵を追い詰める。それがワルの美学というものです」
「りょ、猟兵いつの間に……や、やだボクまだ死にたくない!!くるなくるなこっちくるな!!!!」
そこでやっと二人の存在を認識したドクター・オロチ。
武器をぶぉんぶぉんと振り回してとにかく近づくな、というムーブを繰り返し、最早冷静に対処する余裕もないようだ。
「おお、最早まともに戦うこともできないとは何と可哀想に。さあ、ドクター……貴方を救って差し上げましょう。はい、薄く香ばしい鮫をどうぞ」
「何?????」
フカヒレはそっと小さな小さな戦兵鮫をドクター・オロチへ向かわせる。
どっかで見たような見た目をしたこの小さい小さい戦兵鮫はとても香ばしくおいしそうな香りを出している。
そう、まるで食べても食べても留まらなくて病みつきになる煎餅のような香ばしさ。
「え、何?ボクに食べろと?」
「ええ、とても香ばしくて美味しいですよ。焼き加減はバッチリです。まあ食べないと言っても口の中に飛び込んでいきますが」
「えっ何そrモゴゴゴゴゴ!!!」
ドクター・オロチの口の中になだれ込む子戦兵鮫。
この子戦兵鮫たちはフカヒレのユーベルコード【戦兵鮫(ライスクラッカー・ソルジャーシャクス)】で召喚された親戦兵鮫が一瞬だけしんなりしにゃしにゃになる程にたらふく偽神細胞液を飲まされた結果、目論見通り同じ偽神に対抗しうる能力を手に入れている。
そして、この戦兵鮫の最大の特徴は。
「まあそれ、口の中で爆発しますが」
「オゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!?!?!?」
ドクター・オロチの口の中で子戦兵鮫が連鎖爆発!!
口の中が軽く焼け野原どころではないだろう。というか常人なら絶対に死んでいる。
偽神の力を宿したドクター・オロチとはいえたまったものではない。
「お、おが、あが、あがが……」
口の中を完全粉砕されて最早喋ることもままならないが、とりあえずこちらに怨みの視線を向けながらまず手元にいる子戦兵鮫を握りつぶそうとする。
「そちらの手が触れたところでも爆発します」
「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
手が吹き飛ぶような衝撃に痛み悶えるドクター・オロチ。
最早さっさと死ねる方が楽なまである程の激痛とそれでも病まない脳内の声に完全に発狂しかけている。
そして当のフカヒレは摩那の支援もしつつ自己保身の為に黄駆鮫に乗って悠々と空間を泳いで逃げ回る。なんというワル。
「はは、安心してください。おかわりはありますよ!」
「うーん、これはワルですね。圧倒的ワルです。
このままにしておいてもいい気はしますが、そうもいきませんのでそろそろ楽にしてあげましょう――!」
戦兵鮫にもてあそばれる中、摩那は再び高圧電流を纏ってドクターオロチに突貫!
「4発当てれば貴方でも死んでしまいますが――敢えて最後の一発は撃たずにいましょう。
貴方に怨みを持っている方々がいらっしゃいますからね」
そう言って懐に飛び込み、まずは思い切り顎を蹴り上げる!
「オガッ――」
最早血反吐を吐く口すらないようなものだろう。小さな悲鳴を上げながらドクター・オロチの身体が宙に舞い――またたく間に落とされる。
脳を震わせる脳天唐竹割りチョップが炸裂し、地面に大きく穴を開けるかのようにドクター・オロチの身体は地面に埋まった。
後は次にくる奴に怨み骨髄な猟兵たちや色々な猟兵たちにフルボッコにされるべきと思い、敢えてとどめは刺すまいという考えのようだ。
まあ、正直そろそろ動くのが本気でしんどくなってきたのも否定できないが。
「これでよし、と。……うー、気持ち悪い~……」
「その身体で一人帰るのは大変でしょう。お乗りになってください」
「すみません……助かります……」
部下の鮫に拒絶反応でダウンする摩那を乗せてあげるフカヒレであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
――この予知に置いて、2つの終わりが観測された。
各ルートとして記しておく為、各位はどちらの終わりを迎えたかを自由に解釈して欲しい――
(メタいこと言うと地続きにするには厳しいので、ここから描写されるリプレイはED分岐のような解釈でご覧ください)
▼
▼
ルリララ・ウェイバース
【農園】の皆と参加
アドリブ◎
互いを姉妹と認識する4重人格
末妹のルリララ以外序列なし
前哨戦で魔力が尽きたので、サイキックキャバリアのアルアニマ(愛称アル)を召喚
とは言え、アルもルリララが仲介しないと動けないが、生身よりはマシだろう
(演出でルリララが主機関直結、オルタナティブ・ダブルの姉の一人が操縦)
オロチに接近されないように距離を取りつつ、エレメンタル・ミサイルで皆の援護だ
属性は水、重力、雷、炎、霧、氷を適当に充填
皆の攻撃に対応した[属性攻撃]の援護
霧での目隠しや氷での足止めをしていくぞ
攻撃は[オーラ防御]でアルに耐えてもらう
ルクル・クルルク
【農園】
魔軍転生とは違いますが、ルクルの魔法も、死者の力をお借りするので……
死者の力に耐えきれなくなったら、ルクルも、あんな風になってしまうのでしょうか。
怖い気持ちは今はポケットの中に隠して。
最初に、使い魔兎にお願いして、皆を【かばう】ように【オーラ防御】、【呪詛耐性】、【毒耐性】、【狂気耐性】盛り盛りの【結界術】を展開。
皆を守って下さいね、ニクス。
【呪殺弾】で遠くから相手を狙撃して、接近されないように牽制しつつ。
指揮棒のように杖を振り、歌うように呪文を紡いで。
ルクルと楽団員さん達で、皆を【鼓舞】する勇気の曲を。
そして、あなたとデミウルゴスさんへの、最期の曲を奏でましょう。
……おやすみなさい。
レティシア・スヴァン
【農園】
我々に仇名す敵とはいえ痛ましい姿でございますね。
しかし手心は微塵も加えません、むしろ闘争心マシマシでいきましょう。
戦闘は【結界術】で自身と味方を守りつつ、
【電撃】でもって牽制を行い、心の内でカウントダウンを開始します。
「レモン殿も合流したのは心強い限り。皆様、もう一押しでございます」
【威厳】をもって味方を鼓舞し、【念動力】で相手を
抑え込むようにして自身の準備も進めます。
3…2…1……。
「この技は隙が大きいゆえ……皆と共に戦う、
仲間がいるからこそ顕現できる絆の技をいまここに」
端的に言えば隕石を超える惑星落とし96連発。
最大級の【神罰】でもって終焉を与えましょう。
水玄・湧水之獣神
【農園】
アドリブ◎
■心情
いよいよドクターオロチと決戦だ、レモンさんと合流したしね
足を引っ張らないようにしなくちゃ…やつの無数に出てくる剣をどうにかしよう!
■行動
指定UCを発動させる条件は水を使った量!ならばUC【流涛水神螺】で水禍を作って相手に飛ばす!
効かなくても目眩しになるし、味方の行動もしやすくなるはず
そして僕は指定UCを発動させる!
水を纏って相手に接近して「水竜の刃尾」で「なぎ払い」「咄嗟の一撃」で攻撃だー!
激流のような攻撃をお見舞してあげる!
アイン・ヴァールハイト
【農園】
アドリブ歓迎
敵攻撃は受け流し見切りでなるべく大けがにならない様に鉄扇で逸らし
功夫と軽業でなるべく回避
畳んだ鉄扇で重量攻撃をし、体勢を崩してさよならの指先で部位破壊を試みる
部位破壊にならずとも指先が当たるだけでいい、何かは凍って崩れるだろう
こちらの態勢が悪いときは白燐揚羽に光量最大で光らすか
多少の目潰しにはなるだろう…表面上に目らしきはないが
……そういえば表面脳髄でのっぺらぼうだが、どっから声出てるんだ?
まぁどうでもいいが
偽神細胞の拒否反応は毒耐性と激痛耐性で無理矢理でも抑えて耐える
何を言ってる
命は誰一人例外なく、一つしか持っていない
無制限に生き返ったりしてたのがおかしいんだ
さっさと死ね
テラ・ウィンディア
【農園】
アドリブ可
機神搭乗
色々な声が聞こえるって地獄なんだな…
UC準備開始
【戦闘知識】
敵の動きと攻撃の癖や射程範囲の把握
仲間と周辺状況も改めて分析
【属性攻撃】
闇属性を機体に付与
自分と同じ形の闇を無数に展開して偽神水晶剣の枚数を増やし威力減少を狙
【見切り・第六感・残像・空中機動・武器受け・オーラ防御】
高速で飛び回りながら可能な限り回避
避けきれないのは剣と槍とオーラでダメージ軽減し致命を避ける
【弾幕・重量攻撃・貫通攻撃】
ガンドライド
ドリルビット展開
重力弾の乱射で動きを止めてドリル攻撃
接近されたら
【二回攻撃・早業・串刺し】
斬撃から槍に切り替えて串刺し
…UC発動
…その苦しみを終わらせてやるよ
蛇塚・レモン
【農園】
技能適宜活用
アドリブ◎
お待たせっ!
装いも新たに、あたいが参上だよっ!
(猟兵コレクションの衣装で駆け付けた)
早速、偽神細胞のアンプルを注射
うぅ……気持ち悪い……
ライムはこんなの、よく平気でいられるね……?
あたいの持てる抵抗力全てで副作用に抗うよ
全力の自動回復魔法(光属性)と継戦能力で意識を保ち続けて歯を食い縛る
ライムが出来て、あたいが出来ないなんてことはないはずっ!
蛇神様も力を貸して……っ!
でも動くのがつらいから、必勝パターンで手早く終わらせるねっ?
敵の指先があたいや仲間に触れる前に蛇神様を顕現っ!
蛇神様っ!
あいつ、悪い奴だから懲らしめちゃってっ!
トドメは蛇腹剣に神罰の雷を宿して大斬撃!
蛇塚・ライム
【農園】
……その衣装からして、姉さんの本気度が伺えるわ
さあ、姉さん!
このアンプルを打って一気にドクターオロチへ攻撃を!
……って、今にも死にそうじゃない?
私はほら……(UCで邪神化・姿はレモンの宿敵絵参照)
これがあるから、ね……
カマドGを自律駆動モードにして、コアの勾玉から1億℃の熱線で援護射撃
私は無敵状態を保ったまま、ひたすらドクターオロチを攻撃よ
私の髪を蛇に変えて首を締め上げ、他の仲間への攻撃を阻止
背中の蛇から炎を吐き出して焼いたり、
燃え盛るジャマダハルで刺突し、
それに連動して浮遊拳が殴り掛かる
水晶剣をいくら出そうが関係ないわ
どんなに刻まれても、今の私は死ねないの
さあ、血の雨が降るわよ……!
●
「ルリララさん、大丈夫ですか?」
「ああ。とはいえ、魔力が回復するのは間に合わなさそうだから……」
先程の風魔小太郎との戦いにてルリララ・ウェイバース(スパイラルホーン・f01510)の魔力は完全に尽きていた。
【エレメンタル・ファンタジア】を敢えて暴走させてでも行使したことにより、魔力が尽きなければ仲間たちが危うかったのであるが。
魔力と共に体力も削られて気だるそうな表情に見えたのか、ルクル・クルルク(時計ウサギの死霊術士・f31003)が心配そうに声をかけたので、
安心させようと愛機たるサイキックキャバリアの『アルアニマ』を呼び出した。
「ルリララが仲介する必要はあるが、生身で戦うよりはマシだろう。これでみんなを支援するさ」
【オルタナティブ・ダブル】で姉に操縦を任せ、ルリララ本人はアルアニマの主機関に自らを直結させる。
アルアニマの原動力は魔力ではなく精霊力であり、精霊との親和性が強く高い精霊力を持つルリララが機関に繋がることで動けるようになるのである。
「姉さんは……まだみたいね」
蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)は自分たちがきた道を振り返るが、未だに姉がくる様子はない。
戦う為の準備として『禊』を終えてくると言っていたが、それが時間がかかっているのだろう。
「まだなら仕方ないぞ、おれたちだけで先にドクター・オロチと戦おう」
「ああ……無理やりにでも抑え込んで戦うつもりだが、全員が全員拒絶反応を凌ぎ切れるとも限らないからな」
テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)の意見に同意するアイン・ヴァールハイト(コキュートス・f36049)。
ただでさえルリララが先程の戦いで大分消耗している現状である上に、拒絶反応にどこまで耐えられるかは当然個人差がある。
一人を待つ為に戦いを長引かせればそれこそ逆効果であり、彼女が望むことではないだろう。
「レモン殿がくるまで、奴を逃さぬようにこの場に留めておくのも役目と言えましょう」
「そうだね、僕たちでできることはやっておいた方がいいと思う」
レティシア・スヴァン(天に剛腕・f30842)と水玄・湧水之獣神(おちゃめボーイの獣毛竜・f33795)も同意を示して頷き、ルリララとルクルも異論はないようだ。
姉がいない以上、全員の音頭を取るのはライムの役目……全員がそれで問題ないのならやるべきことは一つだ。
「ええ、行きましょう」
◆
「あああ煩い煩い煩い煩い、ボクは救世主なんかじゃない!!!!黙れ!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れえええええええええええッ!!!」
ドクター・オロチの悲鳴が響く最奥。
かなり手痛いダメージを受けた痕跡はあるが、それでも尚立ち上がっているということはまだ致命傷には至っていないのだろう。
そして信者の声が脳内で反響し続けるのも変わらず。
「何とまあ……我々に仇なす敵とはいえ、痛ましい姿でございますね」
「色々な声が聞こえるって、地獄なんだな……」
その姿にレティシアとテラは流石にいたたまれない気持ちになる――が、それはそれでこれはこれ。
手心は微塵も加えるつもりはなく、むしろ闘争心をより増幅させて臨む。
哀れに思う気持ちがあるが故に、全力で斃すことも慈悲といえるだろう。
「(死者の力に耐えきれなくなったら、ルクルも、あんな風になってしまうのでしょうか……)」
ルクルは魔軍転生とは違うが、死者の魂を力とする死霊術士である。
グリモア猟兵から話を聞いた時からそういった漠然とした恐怖は感じていたが、実際に転げ回っているドクター・オロチを目の当たりにしたことでその恐怖がより強くなった。
死霊術というものは極めて繊細な術だ……その時に扱う術のランクにもよるが、死霊に隙を見せてしまえばあっという間に身体を乗っ取られるなんてことも決して珍しくはない。
その死霊の支配すらも払い除けてしまえる程の強い力が死霊術士には求められる。故にルクルはその恐怖を今はぐっと堪え、ポケットの中に閉じ込めた。
「これがかつて俺たちの学園を好き勝手してくれようとした奴とは、な」
一方情け容赦を見せる様子がないのがシルバーレイン出身にして銀誓館学園の卒業生であるアインだ。
ドクター・オロチ――かつてシルバーレインに現れた時は無血宰相トビアスと名乗っていた――がした所業を銀誓館学園の卒業生たちは決して忘れない。
二度と現世に還ることができぬよう石化した上でその肉体をバラバラにし、その上でコンクリートに封じ込めたというのにそれをコアにしてまで戻ってきたからには、以前以上に情け容赦なしに処断するしかない。
故にこうして農園の皆と共に引導を渡しにきたのだから。
「……ああ何か別にうるさい声が聞こえるなあと思ったら猟兵たちか……!!もう何だってボクがこんな状態の時に!
あーもう煩い煩い煩ーい!!みんなまとめて吹き飛ばしてさっさと魔軍転生解除してやる!!」
命の危険をより感じたからか、声が聞こえながらも抵抗する為、四肢や背中から偽神細胞と融合した水晶剣をべきべきと生やすドクター・オロチ。
合計八本に及ぶその水晶の剣を構え、ドクター・オロチは先程まで蹲り悶えていた状態からは想像もつかないスピードで肉薄する!
「ニクス!みんなを護ってください!」
「きゅう!」
ルクルが咄嗟に使い魔兎の『ニクス』を前に出す。
可愛らしい鳴き声が響き渡ればあらゆる呪詛や異常を弾く強靭な結界術が展開され、ドクター・オロチの先手を防ぐ。
次にテラ駆るヘカテイアが自らに闇属性の力を混ぜ込み、分身体として無数に生み出すことで視界を塞ぎ、農園の皆に各々自らの得意とする間合いを取る時間を与えた。
「ああもう鬱陶しいなあ!」
ドクター・オロチの指がヘカテイアの分神体に触れれば、強毒化された偽神細胞が闇という概念そのものすら飲み込み腐食させる。
「属性エネルギーで作った分身体も簡単に……!?みんな気をつけろ!あの指先に触れちゃダメだ!」
「それにあの無限に出てくる剣が鬱陶しいね、僕がどうにかしよう!」
「援護します、水玄殿」
「アル!合わせて行くぞ!」
水玄がユーベルコード【流涛水神螺】で再び水渦を発生させ、ドクター・オロチ目掛けて放ち、そこにレティシアの雷とルリララ駆るアルアニマの放つ氷の精霊力を込めた【エレメンタル・ミサイル】が加わる。
当たれば水に呑まれ感電し、そのまま凍りつくとてつもない威力の攻撃――少なくともただの幹部級オブリビオンであるならばこれだけで瞬殺可能だろう。
だが、相手は魔軍転生により偽神を宿したドクター・オロチ。本家本元にこそ劣るもののフィールド・オブ・ナインの力を宿しただけあって多少痺れ凍りはするものの生やしたものを一本にまとめた水晶剣でその水渦を真っ二つに叩き割ってみせる。
「さっさと……倒れろ!」
その背後からアインが鉄扇を横から薙ぐように一撃!
骨がひしゃげるような音と共にドクター・オロチは遠くへと跳ね飛ばされ、そこに自律駆動モードになっているライムのカマドGと、残った闇属性の分身たちと自らの高速機動で生み出した残像も含めたヘカテイアの重力弾が集中砲火をしかける。
それを咄嗟にドクター・オロチは全身から水晶剣を発射することで威力を削ぎ、重力による重圧を聖なるオーラで全員に跳ね返そうとする、が――
「そうはさせないよっ!!」
新たな介入により、重圧がまるで壁に遮られたかのように弾かれた。
「この結界術式……!」
ライムはすぐにわかった。
この術式の組み方は間違いなく彼女のものだ。
「姉さん!遅かったじゃない!」
「待たせちゃってごめん!ここからはあたいも加わるよっ!」
そう、ついに農園のリーダーたるライムの姉、蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)の参戦が間に合ったのである。
先日の猟兵コレクションにて初披露となった戦装束を纏い、これまでとは比べ物にならない程の霊力に溢れた状態だ。
その霊力の強さにルクルが真っ先に耳をぴくん!と反応させる。
「レモンさん……凄い霊力です……!」
「ええ……衣装からして姉さんの本気度が伺えるわ。アレは高位のシャーマンでなければ身に纏うこともできない決戦衣装とも言うべきものだもの」
「なる程、それは尚の事心強い限りですね」
ライムも思わず唾を呑み、レティシアも感心する様子を見せる。
曰く、その衣装に使われている布は霊山の河川を流れる聖水に何度も浸すことで強い霊力を蓄えるモノであり、並大抵のシャーマンではオーバードーズに近い程のものだという。
それ程までに強力な装束を纏ってでも戦場に出たということ、すなわち"ここで何が何でも倒す"という決意の表れとも言えよう。
「さあ、姉さん!このアンプルを打って一気にドクターオロチへ攻撃を!」
「ありがとうライム!よーし、全力でいくよっ!」
ぷすり――自らに偽神細胞液を投与するレモン。
しかし、その拒絶反応は彼女の想像以上だったのか、投与して偽神細胞が適合していくと同時にその場にばたん!!とぶっ倒れた!!
「姉さん!?」
「うう……気持ち悪い……」
「だ、大丈夫レモンさん……?手貸すよ?」
「うう、水玄くんのもふもふでちょっと楽になったありがと……」
何とか歯を食いしばり、自動回復魔法で何とか立ち上がるレモンであるが拒絶反応に耐えるのがやっと、といった状態である。
「今にも死にそうじゃない……」
「ライムはこんなの、よく平気でいられるね……?」
「私はまあ……【これ】があるから、ね……」
そう言ってライムが纏うのはかつて邪神だった頃の自らの姿。
過去の記憶に封じ込めた八岐大蛇、その骸魂を再び憑依させているのである。
一度邪神化した上、死すらも経験したライムにとっては偽神細胞液の拒絶反応はまさしくむず痒いレベルでしかないのだ。
とはいえ、レモンが何とか身体を慣らすまで待ってくれる相手では当然、ない。
「もらったァァァッ!!」
近づけさせまいと仲間たちが阻止するのをすり抜けて、ひと塊にした水晶剣をドクター・オロチが振り被ろうと迫る!
「しまっ――」
「そうはさせないわよ!!」
自らの髪を蛇化させ、ライムがドクター・オロチの首を締め付けることでターゲットを自らに引き寄せた!
そこにアインが自らに宿る白燐揚羽の輝きを利用しての閃光弾が入り、ドクター・オロチは水晶剣を思わず手放す。
そこに追撃で再びテラとヘカテイアの重力弾とレティシアの雷による射撃が入り、再びドクター・オロチは間合いを取られることとなった。
「大丈夫だ、レモンが偽神細胞に慣れるまでおれたちで時間を稼ぐぞ!」
「ルクルも、レモンさんが立ち上がれるようにお手伝いします!」
「レモン、アルの手に乗ってくれ。ルリララたちは距離を取って戦うから、襲われにくくなるハズだ」
「テラちゃん、ルクルちゃん、ルリララちゃん……!」
拒絶反応への抵抗力が高まるまで、レモンを死守しながら戦う決意を固める農園メンバーたち。
「……ライムにできて、あたいができないなんて、ことは、ないはず……っ!遅れた分頑張らなきゃだもん、蛇神様も力を貸して……っ!!」
だが、このまま頼り切りになってしまうなんてレモンが自分自身を許せなくなる。
意地でも歯を食い縛って耐える為、自らにかけた自動回復魔法をより強め、蛇神様の協力も得て何とか立ち上がる。
そして、農園メンバーたちによる怒涛の猛反撃が始まるのだ――!
◆
「あああああああもう煩い煩い煩い!!ただでさえ頭の中にガンガン響くのに甲高い声ばっか出さないでよ!みんなぶっ殺してやる!!」
頭をかきむしりながら再びドクター・オロチは再び身体から水晶剣を再び発生させ、大きく振り被る。
「これ以上好きにはさせないわ、ドクター・オロチ!」
それを阻止するかのように、邪神化したライムが突貫!
真正面から燃え盛るジャマダハルで水晶剣を受け止め、背の蛇から放たれる火炎を真正面からぶつける!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!いい加減にしてよッ!!!」
ドクター・オロチの手がライムの胸ぐらを掴み、5本の指先全てから強毒化した偽神細胞を流し込むが、ユーベルコードの力により無敵になったライムはその影響すらも弾く!
「いくら剣を出そうがいくら毒を流そうが関係ないわ。どんなに刻まれても今の私は死ねないの……!!」
再び萌え栄えるジャマダハルを真正面から突き刺し、浮遊拳で殴りつけて距離を取る。
燃え盛る炎による火傷を状態異常として跳ね返されても、今のライムは決してびくともしない状態だ。
そんな中、皆の猛攻を支えるべくルクルがユーベルコードを発動する――!
「わたしと、楽団員さんたちで……みんなを鼓舞する勇気の曲を……」
【仔ウサギの軍艦交響楽団】がルクルの指揮で勇猛なクラシックメロディを奏で、皆のボルテージと共に戦闘能力を向上させる。
「そして、あなたとデミウルゴスさんへの、最期の曲を奏でましょう……!」
それは同時に鎮魂歌として、ドクター・オロチの力を著しく削いでいく。
脳内に反響する声とはまた別の音が脳裏に響き始め、ドクター・オロチは再び悶え苦しみ始める。
『精霊力再装填完了。ルリララ、何時でも撃てます』
「よし……アルアニマ、エレメンタル・ミサイル全弾発射!!」
すかさず追撃せんとルリララにより放たれるアル・アニマの【エレメンタル・ミサイル】。
水属性にて放たれたミサイルはこの空間一つを簡単に洪水に飲み込む程の水をもたらし、その水を利用して水玄がさらに大きな水渦を発生させて身に纏う!
さらに同時にユーベルコードを励起させ、水量に比例した力を得てドクター・オロチに切り込む!
「力が湧いてきた!覚悟しろドクター・オロチ、激流のような攻撃をお見舞いしてあげる!!」
水竜の刃尾が舞うように、同時に荒れ狂う津波のように押し寄せてドクター・オロチを切り刻むと同時に水をこれでもかと浴びせまくる。
「がぼごぼっ、ふっざけんな!!こんなとこで死んでたまるか!!いや、死んでも最悪また蘇生する為に――」
「何を言ってる」
「――?!」
ぴき、ぱきと。ドクター・オロチの身体が凍り始める。
仲間が猛攻を仕掛けている間に再びアインが回り込み、【さよならの指先】でその身に触れたのだ。
「命は誰一人例外なく、一つしか持っていない。無制限に生き返ったりしてたのがおかしいんだ」
「くっ、そ……ここにきても銀誓館の奴が邪魔するワケ……!!」
「さっさと死ね。そして二度と……姿を成すな!」
「死んで、たま、る、かァッ!!」
再び放たれる聖なるオーラが凍結の影響をそっくりそのまま返そうとするが、雪女を凍らせようなんて発想が大分チープであるという思考にすら最早至らない愚かな反撃はアインに届かず、そのまま蝕まれ続けるドクター・オロチ。
「く、っそ……この……!!」
ならばと凍りつく中からも水晶剣を放ち、せめてアインだけでも仕留めようとするが――
「蛇神様っ!!」
レモンが呼び出した蛇神の霊体が、ドクター・オロチの脳髄に偽神細胞による声よりも強烈な呪縛を刻み込む。
それはあらゆるユーベルコードを禁ずる呪詛の一声。
文字通り蛇に睨まれたかのような氷よりも凍る寒気が駆け巡り、こうしてドクター・オロチの抵抗手段は完全に奪われた。
「今だ!レティシアさんお願いっ!」
「ええ、レモン殿!あと一押しでございます!」
レモンの神通力とレティシアの神力が蛇腹剣に宿り、雷を纏ってドクター・オロチの肉体をまさに光が駆け抜けるが如く貫く!
「ぐ、がァッ!!」
神罰の雷剣に貫かれ、ドクター・オロチはその場に倒れ伏す。
肉体を真っ二つとはいかなかったが、アインの指先による凍結はその両腕を衝撃だけで確実に砕き切る程には侵蝕していたのか、両腕はぼろぼろと血を出すことなく崩れ落ちる。
だが、まだだ。まだ終わらない。
何せ相手はかつて石化させた上身体を砕いた上で封印を施さなければ逃げ出された可能性のあるオブリビオンだ。
ここで完全に消失させなくては終わらない――!
「準備は整いました!テラ殿、参りましょう!」
「ああ!!」
レティシアの合図と共に上空の次元が変化する――それは彼女の神としての権能が完全に発動されたことの示唆。
遥か次元の先に見えるは隕石……否。惑星だ。
「相転移出力……限界凌駕……縮退圧、極大……重力崩壊臨界点――突破……!!」
同時にテラの魔力とヘカテイアの重力操作能力により生み出される123子の超次元障壁とブラックホール。
これらは全て仲間や世界へもたらす被害を防ぐ為のモノであり、これを介することで対象の空間だけを隔離し、跡形もなく消し去ることができるのだ。
そう、同時にレティシアの呼び寄せた流れ星のように落ちる惑星、その数96個も共に隔離することで畳み掛けることも当然、造作もない。
「な、何だ……このユーベルコードは!!使った痕跡なんて……!!」
「戦いが始まった時からすでに標的を定めていたに決まっているでしょう」
レティシアもテラも、仲間を援護しドクター・オロチを牽制しながらカウントダウンを密かに行っていた。
もちろん心の内で、である。
敢えて普段通りの振る舞いを見せることに徹し、気づかれぬうちにユーベルコードの発動条件を満たすことでこの一撃を見舞うことができるのだ。
「この技は隙が大きい故……皆と共に戦う、仲間がいるからこそ顕現できる絆の技を今ここに」
「……その苦しみを終わらせてやる」
「さあ、天誅の時だ!【天より来たるは我が権能(ヘヴンリィスターフォールダウン)】!!」
「これでお別れだ……眠り、消えろ!【真・滅界虚空全終焉(スーパーノヴァ・エンディング)】ッ!!」
またたく間に落ちる惑星をブラックホールが飲み込み、ドクター・オロチごと別次元へと転移。
「ひ、や、やめろ……やめろォォォォォッ!!!!」
その悲鳴を聞き届ける者はその次元には存在せず。
96個の惑星が落ちる衝撃と、全てを消し去る超新星爆発にたった一人、孤独に呑まれていった――。
◆
その後、ドクター・オロチの肉体がどうなったかは言わずもがなだろう。
拒絶反応に身体が裂けそうだが、撃破した後回収するものはせねばならない。
「あったあった!これがコンクリ塊だねっ」
影の城内を捜索し、発見したドクター・オロチの本体『コンクリ塊』は確かにコンクリートでがっちがちに固めたような形をしていた。
それもまあ丹念に何重にも重ねたのが見て取れるし、それから抵抗しようとドクター・オロチがあがいていた痕跡もある。
「今度こそ厳重に封印しないとな……二度と蘇生できないレベルで」
「とはいえ、保管先をどうするかはグリモア猟兵の皆様に話し合って頂くのが良いでしょう」
「だねっ。拒絶反応が取れたら、あたいがグリモアベースに言ってみんなに意見を聞いてくるよ……うう、気持ち悪い」
「姉さん、大丈夫?ほら、肩貸すわ」
「ありがとライム……あたいももうちょっと身体鍛えなきゃダメかも」
「しんどかったら僕の背中に乗っていいからね!」
「ルクルも、ウサギさんたちにお願いして、運んでもらえるようにしますからね」
「ルリララはアルに乗って帰るよ。流石に歩きで帰るのはしんどい」
「おれもこのままヘカテに乗って……帰りたいけど大丈夫か?」
『大丈夫よ、テラは休んでなさい』
各々疲れの色を見せながらも、一つのことをやりきったという達成感を胸にグリモアベースに帰投する蛇塚わくわく武闘派ファーム一同であった。
きっと翌日にはまたいつものように農園を楽しく耕していることだろう――。
大成功
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アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
ふむ、デミウルゴス×のうみそくまさんか……アリね♪
リミッター解除、限界突破、オーバロード♪真の姿デモニックワンダーラビリンス解放☆このUC自体が真の姿なのでいわば迷宮内は私の胎内よ♪よってこの迷宮の攻略は“胎内めぐり”と“定義”するわ。見事出口に辿り着けば新しい“生命”として産み直すことになるわね。
まぁ、生命流転、輪廻転生なんて大技には莫大な時間が必要だからそこはさくっと結界術で時間質量を操作して加速して、と。その間に化術肉体改造でデミウルゴスとのうみそくまさんの肉体を新しいのに作り直して、と。
魂も多重詠唱エネルギー充填で洗って偽神化の影響を取り除いてー、コレでデミたんの悩みは消えるでしょう。ああ、高らかに謳おう生命賛歌!新しい“生命”に祝福を❤
さて、異形トビアス。忌み嫌う“生命”になっちゃって異形としてもオブリビオンとしてもアイデンティティ失って今どんな気持ち?ねぇどんな気持ち?
あの悪趣味な装置の件許すつもりはないから弄ばれる覚悟はよろしくて?
吹春・志華
……昔は消そうとしていた生命に縋られて狂う寸前なんて、哀れすぎて何も言えないわねトビアス。
折角あんたの嫌いな能力者がプレゼントを持ってきてあげたんだからしっかり受け取ってもらうわ。
ごふっ……血反吐が出るなんて、ちょっと拒絶反応強すぎじゃないの?
浄化と結界は継続してるのに……これ本当は義娘用だけど鎮痛薬を太股に注射しておくわ。
貴重品なのに……おまけに高い服がグチャグチャだしもう本当に!
気合いで動くためにリミッター解除して、手袋からの衝撃波とガンナイフの誘導弾で奴の水晶剣に対処しながら接近するわ。
歩くので精一杯なんだけど……これでも支援団体の代表やってた威厳と意地があるの、倒れてなんていられないわ……!
十分近づいたらガンナイフをトビアスに刺して零距離射撃でUC使用。
込める怨念は……言うまでもないわよね?
あんた達異形と戦って死んだ能力者達の断末魔よ!
代表なんてやってた仕事柄触れる機会が多くてね、当時の資料読むだけで泣きたくなるくらい詳細は理解してるの……あんたも一緒に苦しみなさい!
●
ドクター・オロチ、かつての名を無血宰相トビアス。
その悪行の数々は今も銀誓館学園の戦闘記録に残されており、それらの記述からもいかに吐き気を催す卑劣な行動を繰り返していたか、例え当時の戦いを経ておらずともよくわかる程だ。
自らが当事者でなくとも、親しい者や知り合いがやつに翻弄され苦しめられているのを目の当たりにした者たちも多く、数え切れない程のかつての能力者たちの怒りと憎しみが向けられる存在である。
そして、再びの引導を渡すべく、嘗ての諸行を知る者たちはアポカリプスヘルへと赴いたのである。
「……昔は消そうとしていた生命に縋られて狂う寸前なんて、哀れすぎて何も言えないわね。トビアス?」
苦しみ悶えるドクター・オロチを目の当たりにして、見下げ果てる視線でそう吐き捨てる吹春・志華(観測者・f35442)。
「ああもう煩い!今度は誰なのさ!!」
「あんたの大嫌いな大嫌いな能力者が、せっかくプレゼントを持ってきてあげたんだから。しっかり受け取ってもらうわ」
「はあ!?能力者……くっそ、どこまでボクの邪魔したら気が済むのさ!」
「決まってるじゃない。あんたが今度こそ姿を現さなくなるまでよ!」
志華は再び偽神細胞液のアンプルを取り出し、自らに投与。
先程と同じく浄化と結界を施し、主要器官が損傷することは避けている。先程で拒絶反応が如何程のものかは理解した、耐えられる――そう、思っていたが。
「ご、ふ……ッ!?」
喉の奥から鉄の味が瞬く間に逆流し、喀血。
血反吐をぶちまけてその場に膝をつく。
「(ちょ、っと……拒絶反応強すぎじゃないの……!?)」
志華自身が元より拒絶反応等を著しく受ける体質であったのか、はたまた最初の投与時のダメージを引きずっているのか。
ともあれ、先程以上の激痛で最早立ち上がることもままならない。
「はははははっ!何だ、偉そうなのは口だけじゃん!さっきから煩くてイライラしてるんだよねえ……せっかくだからストレス発散させてもらおうかなァ!」
「くっ、そ……!」
ドクター・オロチが志華を見下して笑う。
同時に、当時の彼女の同級たちが、先輩たちが受けた屈辱の記録を思い出す。
あの惨たらしい諸行の数々の資料を読むだけで今でも泣きたくなる程だ。
――負けられない。何が何でも。
「(本当は義娘用だけど……ごめんね、一本使わせてもらうわ……!)」
鎮痛薬を取り出し、太股に注射する。
ある程度の即効性があるのか、立ち上がるのに問題ない程にまで身体を苛む苦痛は抑えられ、志華は再び立ち上がった。
「ったくこれ貴重品なのに……おまけに高い服がぐちゃぐちゃだし……もう、本っ当に……!!」
「知らないよこんなとこにそんな服着てやってくる方が悪いんじゃん!あーまた声が騒がしくなってきたもう煩い煩い煩い!
お前を倒せばちょっとは収まると信じて残酷に殺してあげる!!」
「こっちだって、これでも支援団体の代表やってた威厳と意地があるのよッ!!」
封じていた力の全てを解き放ち、ドクター・オロチの水晶剣と激しい剣戟を繰り返す志華。
刀身を衝撃波で弾き、ガンナイフの誘導弾で死角から攻めて叩き折る。
しかしドクター・オロチはまたいくらでも水晶剣を生やして責め立てた。
異形なだけあって、自らの四肢全てから水晶剣を生み出し体術と混ぜて攻撃することで手数で攻める手に志華たった一人、腕二つのみで対処している状態では段々と押されてしまい、
鎮痛薬で誤魔化している拒絶反応の代償もそろそろ誤魔化し切れなくなってきた。
だが、それでも決して意地でも隙は見せまいと志華は剣戟を繰り返し続け、何としてでも近づこうとする。
しかし、ドクター・オロチは志華の予測を上回るスピードで攻め立て、有利には絶対に持って行かせまいとする。
これがあらゆるプライドも人を残虐に貶める趣味も捨て去ったかつての異形のトップが一体の実力か。生きる為にもはやなりふり構わない様子だ。
「(ちっ……全然近づかせてくれないじゃない。どうする……?)」
「あら、お困りのようね。タイミングよく駆けつけたみたい♪」
「誰!?」
後ろから声がかかり振り返れば、そこにはピンクのロリータ服を纏う小さな少女が一人。
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト艶魔少女・f05202)は現在の戦況を眺めてこう一言。
「ふむ、デミウルゴス×のうみそくまさんか……アリね♪」
「いきなりやってきて何言ってんのアンタ???????」
何か聞こえた言葉に思わずツッコミを入れてしまう。入れない方が正解なんだけど、どうしても入れずにはいられなかった。
「まあそれはさておき、私もあいつには因縁の一つ二つあるの。加勢させてくれるかしら?」
「何、アンタも銀誓館の関係者?いいわ、私一人だと悔しいけどここまでみたい。とっておきの一発を見舞いたいから力を貸してくれる?」
「利害一致、同盟成立ね♪じゃあちょっとまずはあいつの"器"を作り変えてやりましょうか。
――リミッター解除。限界突破、オーバーロード!!」
刹那、影の城を『夜』が包んだ。
「"我が身は不可説。不可説転もの、数多の真なる『夜(デモン)』に変じる。『夜』が生み出すは我が精神を具象化せし欲望の迷宮なり"――!」
アリスの声が影の城中に響き、空間を迷宮へと仕立て上げる。
それは『夜』が定義した"理"の支配する領域――すなわち固有結界そのもの。
アリスの真の姿そのものの具現でもあるその迷宮は、ちょっとやそっとの空間操作型ユーベルコードでは太刀打ちなど不可能だ。
「な!?空間操作系のユーベルコード……!ああもうめんどくさいことしてくれるなあ!!」
「はあいトビアス。この迷宮を攻略してみせてごらんなさい。かつては無血宰相と言われ賢しい知恵に長けた貴方ならこの程度の迷宮抜け出せるハズでしょう?」
「生命体如きがバカにしてくれるじゃないか……!!」
この迷宮が一体何の力を持っているのかはわからないが、このまま抜け出せなかったら抜け出せなかったで待っているのはどのみち地獄だ。
苛立ちを見せながらもドクター・オロチはたったひとつの出口を探して歩き始めた。
◆
「……あんた、これでどうするつもりなの?」
迷宮の外で待たされている志華の言葉は奴には届かない。
アリスは彼女の疑問に出し惜しむことなく回答する。
「このユーベルコード自体が私の真の姿、つまり私の胎内よ♪よって、この迷宮の攻略は"胎内巡り"と"定義"するわ」
「胎内巡り、って……それ、生命を生み出すってこと!?」
「ご名答♪無事出口にたどり着けば、新しい"生命"として産み直すことになるわね」
「そんなことして何にな……いや、待って。そういうこと?」
「そういうこと♪」
異形は全ての生命の死滅を謳いシルバーレインを襲った人外の理にいる存在であり、生命を尽く忌み嫌うように"できている”。
そんな異形が"生命"に"仕立て上げられる"なんてことになれば、それはどういう意味になるだろうか。
答えは言わずもがな、最大級の屈辱を与えることと同義に等しいのだ。
今まで銀誓館の能力者たちが奴らに与えられてきた屈辱に等しい屈辱を奴に味あわせてやる、謂わば意趣返しの一種である。
「生命流転や輪廻転生なんて大技には莫大な時間が必要、でも迷宮(ここ)は私の胎内にして『夜』だから、時間質量もさくっと操作して加速させちゃえば問題ないわ」
「とんでもないことを涼しい顔でさらっとしてのけるわねアンタ……猟兵ってみんなそうなの?」
「ピンキリかしら?さてさて、デミウルゴスとのうみそくまさんの肉体を新しいのに作り直して……」
死は救いたり得ない、それがアリスの持論である。
死を以てしか解放されない偽神には別の道を用意すると元より決意していた。
故に今回のドクター・オロチの魔軍転生にてデミウルゴスが憑依されたのは、アリスにとっても非常に都合が良かったのだ。
「アポカリプス・ランページの記録には目を通したけど、このデミウルゴスって奴はただただ悲しい奴だったようね……」
「ええ、彼もまた犠牲者の一人と言えるわ。でも死んで救われることなんて何もない。そう思わない?」
「そこはなんとも言えないわ。ノーコメントでよろしく」
「ま、霊媒士みたいだしそうなるかしらね。よいしょっと。これで魂を洗浄して偽神化の影響を取り除いてー、これでデミたんの悩みは消えるでしょう♪」
ああ、高らかに歌おう生命賛歌!
わざとらしく仰々しい言い回しで"生まれ変わった"存在、その片方にアリスは心からの祝福を贈る。
願わくばもう一度生を謳歌し良い結末を得られますように。
そして、もう片方は……
「はあ、はあ……やっと出られた……!!くっそあの猟兵たちめ……絶対ぶっ殺して逃げてやる……!」
「どうやって?」
「もちろん……って、あ、あれ?おかしいな、水晶の剣が出ない……?」
ドクター・オロチは自らの異変に戸惑いを見せるが、一番の変化に気づいていない。
アリスの口元がにたりと緩む。ああ、見事なまでに思うツボだ、ざまあみろ。
そう言いたくなる気持ちを抑え、鏡を出現させてドクター・オロチにつきつける。
「……え、何、これ……ぼ、ボクの顔が……か、顔が……」
そこにいたのはドクター・オロチという"異形"ではなく、ただの人間の少女の顔をした何かだった。
脳みそをむき出しにしたような顔が人の顔になったというだけで、奴のプライドを粉々に砕くには十二分だ。
何故なら。
「さて、異形トビアス。忌み嫌う"生命"になっちゃったわねえ」
それは奴のアイデンティティを、完全に奪われたことと同義なのだから。
「う、嘘だ……ぼ、ボクが、このボクがこんな脆弱な生命体なんかになったなんて嘘だ……ッ!!」
「うふふ、今どんな気持ち?ねえどんな気持ち??感想として是非聞かせてもらいたいんだけど♪」
「き、っ、さ、まァァァッッ!!!!」
存在意義を奪われた異形だった少女が激昂し、アリスの首を掴もうと手を伸ばす。
だがアリスの身体は『夜』に溶け、掴むことはままならない。
「ゆ、許さない……許さないぞ人間如きが!!こんなこと……絶対に絶対に許さないッ!!!」
「それはこちらの台詞よ♪
――あの悪趣味な装置の件、許すつもりはないから」
先程まで小悪魔な少女だったトーンが途端に冷たい魔女のそれへと変化する。
アイデンティティを失った異形だった少女はかつて感じ得なかったハズの"恐怖"を寒気となって感じ取る。
異形でもオブリビオンでもなくなったことにより、その身体の感覚も完全に人間のそれへと書き換えられたのだ。
「さ、後はあなたのお仕事よ」
「ええ、言われなくても」
その少女のこめかみに、志華がゆっくりとガンナイフを突きつける。
「ひっ……!」
「これから撃つこの弾丸にはね、死者の怨念が詰まってる。それが何かは……言うまでもないわよね?」
「ひ、や、やめろ……やめ、やめてください、お願いしま……」
「あんたに殺された連中の中には今のあんたと同じことを言って死んでいった奴もいるでしょう?わかってないから教えてあげるわ。
この弾丸に込められた怨念は……
――あんたたち異形と戦って死んだ能力者たち、あんたに無惨に弄ばれて殺された人たちの断末魔よ!!」
能力者支援団体の代表として、過去の資料を嫌という程目にしてきた。
こいつが引き起こした無惨な事件によって心の傷を負った人にもたくさん出会った。
「当時の資料読むだけで泣きたくなるぐらい詳細は理解してるの……あんたが今まであたしたちに、能力者たちにしてきた悪行の数々をあたしたちは絶対許さない。
あんたも……あんたも一緒に苦しみなさい!!苦しんで苦しんで、悲鳴を上げて許しを請いながら死んだってあたしたちはあんたを許さないから!!」
「や、やだやだやだ、嫌だ、まだ、まだ死にたくない!!やだ、嫌だァァァァァァ――――――――………ッ!!!」
断末魔と共に引鉄が弾かれ――この戦いの幕が下ろされた。
◆
かくして、ドクター・オロチの侵略は阻止された。
奴の本体である『コンクリ塊』はグリモアベースのグリモア猟兵たちと銀誓館の当事者たちによる慎重な会議による検討の下、アポカリプスヘルのある場所に保管されることとなった。
厳重に厳重な警備体制を敷いている故、盗み出されることはよほどのことがない限りあり得ないだろう。
この戦いが終わったことで、奴の犠牲者となったこれまでのアポカリプスヘルの住人たち、そしてかつて銀誓館に籍を置いた能力者たちが安心して眠れることを祈って、当報告書を締めくくることとする。
大成功
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