――眼下には町が広がる。
豊かな自然と調和した、美しい町だ。
それが今、濁りつつも爛々と輝く、鈍い金にも似た色宿した双眸に映っている。
悠々と見下ろすのは、威厳と風格、そして――狂気に満ちた佇まいの、ひとりの老人。
「オブリビオンと成り、この身が煩わしき世界結界の干渉を外れた今、あの街に固執する理由は失われた」
そう、ここはかつての陰陽都市計画の拠点、もみじヶ丘ではない。
再起の地を遠く北へと定め彼は再び、否、何度でも繰り返すのだ。
「今の我は、ユーベルコードの恩恵によりこの身ひとつで陰陽都市計画の再現すら可能となった。ならば粛々と、続けるのみよ」
舞台を変えてでも、計画が完遂する、その日まで。
「我が宿願を」
表情を一切変えず、しかし色濃く増した狂気を孕んだその手をゆるりと町へとかざし、一撫ですれば――そこに住まう全ての生命の輝きが、急速に失われてゆく。
人々の営みが、汚染されてゆく。
苦悶の声が、地に満ちた。
●銀の雨をのぞむ
「……あの場に、いたのか。俺たちが来ていたまさにその時、とは限らないけれど」
珍しく眉間に皺を寄せて、南天庵・琥珀(ナイトタイムドリーマー・f36445)が呟く。
つい先日、この少年が猟兵たちにとあるゴーストタウンの攻略を依頼していたことを、記憶している猟兵もいるだろう。
「ああ、急に呼び出してすまなかった。急ぎの件でな、ちょっと一緒に北海道まで来てほしいんだ」
この時、またプラネタリウムか、と思った者もいたかもしれないが。
「いや、そっちは今回は一切関係ない。関係があるのは東洋新世界ビルディングの方だ。……皆は、劉・叔成の名前は知っているか?」
それはかつて、東洋新世界ビルディングの――否、それを含めた街ひとつの建築を推し進めた男の名前だ。
「あの時は説明を省いたけれど。東洋新世界ビルディングのあるあのもみじヶ丘の街は、ゴーストを産み出すべく、除霊建築学の悪用によって意図的に建築された街なんだ。その目的は、世界結界の破壊」
世界結界が破壊されれば、シルバーレインの世界は再び生命を根絶せんとするゴーストで溢れ返り、過去と同様の、奇怪で理不尽な悲劇が――否、それ以上の惨劇が引き起こされることは、想像に難くない。
「奴には奴なりの大義があったらしいが、狂気に侵され踏み外してはいけない一線を踏み外した。そしてその狂気は過去に刻まれ、再び奴を蘇らせた。今の劉・叔成は、狂気そのものと言っていい」
そして再現された狂気は、何度だって悪夢を生むのだ。
「メガリス『殺生石』。かつて奴はそれを用いて、建築した都市ひとつに苦痛をばら撒いた。そうして死んだ人々は、その残留思念から地縛霊を生じさせる。そうして、都市に住む大勢の人の命と引き換えに、ゴーストの軍勢を作り上げるんだ」
ただ、今回は当時とは少し事情が違うと琥珀は言う。
「オブリビオンとしての劉・叔成は、ジェネラル級の力を手に入れている。その手に殺生石がなくとも、一から年月をかけて都市を建築しなくとも、ユーベルコードの力のみでかつての企みを――陰陽都市計画を、再現できてしまうんだ」
しかも今回は、犠牲者は死して地縛霊へと変じ、それで終わり、ではない。寧ろ生きたまま苦痛を与えられ続け、延々と続く生き地獄の中、人々はオブリビオンを産み出す装置とされてしまっているのだ。
「当然、放っておくわけにはいかない。罪のない人々を苦しみから解放するためにも、強力なオブリビオンをこれ以上野に放たないためにも」
どうか、力を貸してほしいと、結ぶ。
「面倒ごとは嫌いなんだが、この世界は好きだし……家族のいる世界だからな。今回は真面目にやろうか」
誰に聞かせるつもりもないような、かすかな声でそんなことを呟くと。
琥珀の掌の上、雪兎型のグリモアが踊り、煌めいた。
絵琥れあ
お世話になっております、絵琥れあと申します。
一旦ネタで終わるつもりの話がこんなに早くフラグ回収する事態に。
前振りはネタでしたが、今回の事態は深刻です。お力添えいただければ幸いです。
流れと詳細は以下の通りになります。
第1章:集団戦『誘蛾少女』
第2章:冒険『奇門遁甲陣を破れ』
第3章:ボス戦『劉・叔成』
第1章では、穢れを運び疫病と凶兆をもたらすとされる『誘蛾少女』の一群と戦っていただきます。
その額には一本の角が生え、通常の個体より大幅に強化されています。ボスでないからと油断は禁物です。
彼女たちを撃退できれば力の供給源とされていた町の人々を救い、敵の本陣に繋がる情報を得ることができるでしょう。
第2章では、敵の本陣への到着を阻害する『奇門遁甲陣』の儀式場を制圧、突破を目指します。
現在、陣容の詳細は判明しておりませんが、第1章が成功すれば情報が得られるでしょう(断章にて公開になります)。
得られた情報から儀式を妨害、制圧することにより本陣への道が開かれるでしょう。
第3章では、狂気の陰陽都市計画の再現を目論む『劉・叔成』との決戦になります!
今の彼はまさにかつての彼が侵された『狂気』そのものです。対話は可能ですが、説得により計画を止める余地はありません。
彼の計画を打ち破り、町を狂気から解放するべく、全力を以て戦っていただければ幸いです。
第1章開始前に、断章を執筆予定です。
戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『誘蛾少女』
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POW : 汚泥弾
【汚泥の如き呪詛塊】を放ち、命中した敵を【呪詛】に包み継続ダメージを与える。自身が【汚れた姿を】していると威力アップ。
SPD : 凶兆の化身
自身に【凶兆のオーラ】をまとい、高速移動と【疫病】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 穢れの気配
【ケガレ】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【疫病】を誘発する効果」を付与する。
イラスト:七夕
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●穢れの泥、広がる
――酷いな、と。
思わず静かに、そう零したのは誰だったか。
そこには、濃密な死の臭いが充満していた。
大気には瘴気めいた呪詛の気配が満ち、少女の貌をした、翅ある鬼が番人のように、沈黙の町を闊歩する。
倒れ伏した人々は、しかし死んでいるのではなかった。未だ辛うじて心の臓は弱々しく脈を打ち、浅い呼吸を繰り返している。
鬼は、人々を襲うことはない。理解しているのだ。彼らは餌であると。それも、自ら貪り食らう必要などない、生かしてさえおけば、勝手に幾らでも、自らに力を与えてくれる存在なのだと。
だから、彼女らがその毒牙を向けるのは、この地獄を、彼女らの楽園を、破壊しようとする者たち。そう、劉・叔成の企みを阻まんとする、猟兵たちだ。
這いずりながら徘徊していた無数の首が、首が、首が首が首が首が、ぐるり、一斉に、猟兵たちへと向けられる。
自然と調和し、広々とした印象の石造りの町すら今は、淀んだ空気とひしめく鬼に埋め尽くされて狭く、息苦しい。
元凶を真っ先に叩けないことは、歯痒くあるが――今はまずこの町を、解放しなければ。
サンディ・ノックス
トラゾウ(f02812)と共闘
劉叔成には大義があったと聞いた
その大義が失われ
狂気のままに過去に起こした事件をなぞっているだけなら
かつて人生を歩んでいた彼のためにもオブリビオンは潰さなきゃ
大義が穢されるの、嫌いなんだ
前に出て近くの敵からUC解放・宵で屠っていく
攻撃力を重視して大ダメージをプレゼント
手負いになれば俺を狙ってくれるでしょ
トラゾウのアシストも受けながら一匹ずつ片付ける
敵が何か放ってきたら暗夜の剣で斬り払う
トラゾウには届かせない
捌ききれないものは体で受け止めよう
…呪詛かな
囚われているヒト達の苦しみに比べたらこんなの大したことないよ
(虎蔵の礼に対し)どういたしまして
お寿司でもいい?と微笑む
永倉・虎蔵
サンディ(f03274)と共闘
随分と猟兵の仕事をサボってたからなぁ。そろそろ何かやらねーと、戦い方忘れちまったら困るし。
それにあの劉なんとかって奴、生きたまま苦痛与え続けるとか悪趣味すぎんだろ。
一発ぶん殴ってやんねえとな!
(こんな時のために普段だらけてないでもっと鍛えとけばよかった、という顔で)
サンディから離れず戦う。
サモニング・ガイストで攻撃。
狙いは近い奴優先。
サンディから離れずに攻撃可能な距離に弱った奴がいたらそれを狙う。
戦い方を思い出していかないとな。
危ないと思ったら今回はサンディに頼る。
(庇われたら)わりぃなサンディ。
後で何か食いにいこーぜ。
お礼に奢るわ。
え?寿司?
…回るやつでもいい?
●黒、ニ陣、突き抜けて
「随分と猟兵の仕事をサボってたからなぁ。そろそろ何かやらねーと、戦い方忘れちまったら困るし」
肩を回しながら、永倉・虎蔵(花鳥風月・f02812)は邪魔者を排除せんと這い寄る鬼らと向き合っていた。
最後にオブリビオンと交戦したのはいつだったか。ブランクがあるのは否めないが、それでもこの惨状を見て見ぬ振りで済ませると言う選択肢は、虎蔵にはなかった。
「それにあの劉なんとかって奴、生きたまま苦痛与え続けるとか悪趣味すぎんだろ。一発ぶん殴ってやんねえとな!」
こんな時のために普段だらけてないでもっと鍛えとけばよかった、と思いつつも、自分の気持ちに嘘は吐けなかった。
「劉・叔成には大義があったと聞いた」
頷きつつ、ぽつりと零したのは虎蔵の隣で剣の柄に手を掛けた、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)だった。その優しげで中性的な形貌には、静かな憤りの色が宿っている。
「その大義が失われ、狂気のままに過去に起こした事件をなぞっているだけなら、かつて人生を歩んでいた彼のためにもオブリビオンは潰さなきゃ」
蹂躙される弱者のため、だけではない。
かつて劉・叔成が掲げていたのであろう志が、これ以上泥に塗れることがないように。
「――大義が穢されるの、嫌いなんだ」
弱きを助け強きを挫く、今のサンディの姿はまさに清廉潔白たる若き騎士。
「さ、行こうかトラゾウ」
「おう。まずはこいつら、蹴散らして行かねえとな」
すらり、抜き放たれる黒剣。
ゆらり、顕れる古の英霊。
互いの背を、護るように立って。
毒蛾の鬼が、怨嗟の声を上げて迫り来る。その数、まさに無窮にも思える有様だが――友と在れば、恐れるものは何もない!
「始めようか――宴を」
ほんの、刹那。サンディの口元が弧を描く。悪意を孕んだ三日月のように。
同時、黒剣による渾身の一閃が、突出していた鬼の脇腹に深々と食い込んだ。
噴き出した血は黒く、憎悪の気配が咽せ返るほどに強くなる。他の鬼も、同調するようにサンディへと殺気を向けた。
目論見通りだった。ユーベルコードの恩恵で威力を極限まで高めた一撃は決して軽くない。怨恨と警戒でサンディに敵視を集めれば、それだけ虎蔵が動きやすくなる。
「サンキュ、援護は任せとけ!」
短く告げる虎蔵の脇をすり抜けて、前進した英霊は槍の切っ先から炎を生み出すと、横合いからサンディへと迫る一体を阻みその身を灼いた。
そのまま、サンディは前衛で敵を引きつけつつ、攻撃の手も緩めず敵群を斬り払い、幾つもの黒き軌跡を重ねてゆく。虎蔵もその後を離れず続き、控えさせた英霊たちへと指示を出し、討ち漏らしのないよう確実にとどめを刺してゆく。
――が、全ての敵視が常にサンディに向き続けたままではなく。
「! トラゾウ下がって!」
「サンディ!」
実戦の感覚が戻り切っていない虎蔵へと、忍び寄った鬼らが呪詛の泥を吐き出して。咄嗟に飛び退いた虎蔵との間に、サンディが割って入る。
二方向からの攻撃に、片方はその主ごと、僅かな赤の煌めきと共に暗夜の剣が両断した。しかし、もう片方は防ぎ切れない!
「……っ」
だが、咄嗟の機転でサンディは着弾予測箇所にオーラを集中。泥がその身を穢さぬよう、弾き飛ばす。
「っこの!」
すかさず、虎蔵が反撃。彼の意思に応えて英霊は槍の一突きで、友を穢さんとした鬼の胸に風穴を空けた。
結果として、サンディは負傷を免れた。だが、泥を弾いたはずの腕に、黒く禍々しい淀みが纏わりついている。
「それは……!?」
「……呪詛かな。囚われているヒト達の苦しみに比べたら、こんなの大したことないよ」
この程度は物の数ではないと、サンディは静かに頭を振った。
安堵に胸を撫で下ろす虎蔵。自分を庇って友が負傷したとあっては、寝覚めが悪すぎる。
「こっから取り返すぜ」
「勿論」
更に攻め寄せる敵を、再び炎が包んだ。動きを止めたその鬼らに、引導の刃が叩き込まれる。
大立ち回りは続き――ようやく、二人を取り囲んでいた最後の一体が、翅の先まで燃え尽きた。
遠くの区画にまだ敵の姿は見えるが、一先ずは一息吐ける。
「さっきはわりぃなサンディ」
「どういたしまして」
サンディは気にしていない様子だったが、虎蔵はやはりブランクのある身で、それでもこうして肩を並べて戦ってくれる友に、何かしたかった。
「後で何か食いにいこーぜ。お礼に奢るわ」
虎蔵がからり、笑えば。そう? とサンディは首を傾げてから、一言。
「お寿司でもいい?」
「え? 寿司?」
天使のようなサンディの微笑みとは裏腹の悪魔的な提案に、虎蔵は一瞬固まり。
少し考えてから、震えそうになる声を叱責して呟くように、問う。
「……回るやつでもいい?」
「ふふっ」
「何その曖昧な微笑み……!?」
少々後が怖いが――それより今は、目の前の大事だ。
二人とも、すぐにその表情を引き締めると武器を手に取り、次の一群を目指して駆け出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シン・コーエン
【シン眞】
己が目的の為に一つの町を汚染して人々を苦しめるとは外道だな。
許せん!
とはいえ、まずは手下からか。
呪詛やら疫病やら振り撒く輩相手なら、これかな。
眞白さんをかばえるように前に出て、結界術・破魔・高速詠唱で対呪詛・疫病向けの結界を形成。
眞白さんには援護をお願いする。
敵の攻撃は第六感・瞬間思考力で読んで、見切りで躱す。
念の為、オーラ防御も展開。
炎の属性攻撃・破魔を上乗せしてUC:灼星炎渦を使用。
戦場全体に誘蛾少女と疫病と呪詛塊のみを焼き尽くす炎を放ち、対象を焼き尽くす。
炎に耐えて来た敵は右手の灼星剣と左手の村正による2回攻撃・斬撃波・鎧無視攻撃で次々と斬り、眞白さんの行動と連携して殲滅する。
神元・眞白
【WIZ/割と自由に/シン眞】
町1つをまるまるというのは見立てが大きいですね。
場を広く見ていますし、先のための装置も準備している、と。関心します。
とはいえ観察していてはいけませんね。必要ではない終わりを止めるとしましょう。
さて、まずは辺りの淀んだ雰囲気の換気をしないと。
皆、先陣をお願い。数には数。それに私達人形は作られた存在。こういった呪詛や毒の耐性があるから。
ではシンさん、場を拮抗させるので各個撃破の流れでお願いします。
一撃離脱。打ち漏らした相手は残った皆でカバーを。
私は……そうそう、倒れている人たちを今のうちに助けましょう。
戦線を押し上げてもらえれば安全な場所も作れるはず。
●黄金と白銀、重なり合って
町の空気は、変わらず重く淀んでいる。
今にも降り出しそうな暗雲の影に黒ずんだその空間に、煌めく金と銀は清らかで異質だった。
「己が目的の為に一つの町を汚染して人々を苦しめるとは外道だな。許せん!」
シン・コーエン(灼閃・f13886)は純粋な正義感から、密かにその拳をぎりりと握り締めた。
対して、寄り添うように隣に並ぶ神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)は冷静に、町を視線だけで見渡し、眺める。
「町一つをまるまるというのは見立てが大きいですね。場を広く見ていますし、先のための装置も準備している、と。関心します」
その行いは決して許されることではないが、周到さは敵ながら天晴と言うべきか。
「とはいえ観察していてはいけませんね。必要ではない終わりを止めるとしましょう」
「ああ。まずは手下からか」
言葉を交わすも、顔は見合せなかった。
確認せずとも伝わる、確かな二人の絆がそこにある。
敵も、町も、穢れで満ちている。必要なのは浄化と換気だ。そう考えた二人は、それぞれが己にできること、成すべきことを成すために、動く。
まずはシンが、眞白を庇うように前へと進み出る。同時に詠唱に入り、ほぼ瞬時に穢れに対抗し清めるための破魔の結界を展開。
眞白はその間、彼女に付き従う人形たちに指示を出し、配置に就かせる。夥しい数の軍勢を押し留めるべく、彼女たちを先行させる。
「眞白さん、援護を頼む」
「ええ。……皆、先陣をお願い」
ずらりと整列し、歩を進める人形たちの軍勢。
隊列を乱すことなく動くその姿は、繊細な作りとは裏腹に、まさに軍の一個中隊と見紛うほど。
(「数には数。それに私達人形は作られた存在。こういった呪詛や毒の耐性があるから」)
恐れはない。人形としてのその身で愛する人を守れるのならば、何を恐れることがあろうか。
「ではシンさん、場を拮抗させるので各個撃破の流れでお願いします」
「ああ、任せてくれ。眞白さんのことは、必ず守るよ」
今度はちらりと、視線だけ絡めて。
すぐに解く――それが、合図。
人形たちの軍勢が、二人に気づいて押し寄せる敵群の進撃を阻み、一撃離脱を繰り返す。
シンは邪魔されることなく灼星剣を赤々と輝かせ――戦場の黒をも染め上げる!
「我が剣よ、フォースによりて生み出せし星炎――プロミネンス――の渦でこの地を満たし、我が敵を殲滅せよ!」
町に広がる紅蓮の渦は、しかしシンや眞白、人形たちは勿論のこと、地に伏したままの町の人々や、家々や街路樹なども町並みすらも呑み込みはしない。
裁きの炎は、誘蛾少女とそのもたらす穢れだけを灼き清める。
翅を焼き尽くし、灰となって風に攫われる無数の影を、二人は見た。しかし、耐え切りなお魔手を伸ばさんとする残党もおり。
「皆、急いでカバーを」
「確実に殲滅する……!」
左手に村正を構え、両手に刃を携えたシンが、流れるような連続攻撃で敵陣を突き崩してゆく。人形たちもその動きに合わせるように即座に対応し、追撃を逃れた敵を逃さない。そんな中、眞白は別方向に動いた。
(「そうそう、倒れている人たちを今のうちに助けましょう」)
眞白は周囲の安全を確認し、シンにでも、敵にでもなく、倒れたままの町の人々に近づく。
戦線が押し上がったことにより、安全地帯が増えた。今なら、救助も可能なはずだ。
「眞白さんの元へは、絶対に行かせない!」
裂帛の気合で敵を次々斬り伏せるシンの姿に、眞白は何も心配いらないと確信すら持って。
「必ず、助けます」
一部の人形たちを喚び戻して、町の人々の避難を進める。
彼らの顔には少しだが、精気が戻ってきていた。確かに敵を倒す度に、人々は回復するようだ。その事実を自身の目で改めて確認し、眞白は一息吐く。
「シンさん、町の人たちも目を覚ましそうです。あと、もう少し……」
「そうか、なら……ますます奮戦しなければな……!」
まだ、気を抜くわけには行かない。
敵を可能な限りこの町から排除し、食い物にされている人々も、一人でも多く救い出すと決めたのだから。
飛び交う疫病の気を瞬時に見切って躱すシン。その主を眞白の人形――飛威が仕留め、シン自身は背後に回ろうとする一体を村正の返す刃で一閃する。
眞白はその間にも、手早く救助活動に勤しむ。
互いに、互いを信じて。それぞれに決めた己の役割を、果たす。
ついに絆の前に、道は拓かれた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
布施・命
この計画も遂に再現されたか。しかも厄介さが増しているときた。
まったく冗談ではない。こう何度も平和を脅かされてたまるものか。徹底的に叩き潰してくれる。
相手が強化の術を持つなら好都合。
さあ、式鬼達よ。共に奴らを蹴散らすぞ!
わしは武器の式鬼(おタヌキ様、おキツネ様)に命じて敵を攻撃。式鬼に隙を作りだして貰いながら、強化された相手を狙って接近。
退魔呪言突きで攻撃し石へと変えていく。
突きにはわしの破魔の力と、人々の苦しみも凝縮して敵へのお返しとしてくれる。貴様らもこの苦しみを喰らえっ!
石にした敵は砕いて完全撃破。敵の攻撃は羽織を翻しての目隠しや、詠唱定規様の愛刀で受け流しながら次々と撃破を狙っていくぞ。
●平穏破りて、人を呪わば
「この計画も遂に再現されたか」
布施・命(銀誓館の元符術士・f35378)の脳裏に思い出されるのは、かつて劉・叔成とその一派が引き起こした事件と、戦争の記憶。
そして再び、眼前に広がる光景に意識を向けて。
(「しかも厄介さが増しているときた」)
劉・叔成の企ては、時間も準備も要するものだったはずだ。だが今はどうだ。奴はその身ひとつで、何度でもこの惨劇を繰り返せると言うではないか。人々を苦痛で抑えつけ、飼い殺しにして。
「まったく冗談ではない。こう何度も平和を脅かされてたまるものか。徹底的に叩き潰してくれる」
溜息ひとつ。常軌を逸した執念への呆れと、憤りを込めて。
生命の輝きに満ちた気配――即ち、敵である新たな猟兵の存在を察知した鬼らが、目敏く命の姿を認めて嬲り殺しにせんと迫るが。
「相手が強化の術を持つなら好都合。さあ、式鬼達よ。共に奴らを蹴散らすぞ!」
自らの能力を向上させ戦う相手に対し、その力を呪いによって反転させ破壊する呪言士の能力をも会得した命にとって、敵のケガレによる自己強化戦法は、まさに恰好の餌食になる。
式鬼のおタヌキ様とおキツネ様も飛び出して、軍勢を翻弄、撹乱して。おタヌキ様が投げ、おキツネ様が引っ掻いて、の大乱闘!
そうして生まれた隙を突いて、命が動く。赤く明滅する退魔文字の刻まれた、漆黒の剣――にも似た長定規を、一息に敵の身体へと突き立てる!
「集えや集え、恨みの念。買い手はわしらの目の前ぞ――貴様らもこの苦しみを喰らえっ!」
それは身勝手な理想の押しつけで、苦痛を与えられ平穏を奪われた、町の人々の嘆きも乗せて。
破魔と報復の一撃を見舞われた鬼の一体が、見る見る内に物言わぬ石へと変じた。間髪入れず、命はこれを破壊。二度と呪いが解け、蘇ることのないように。
仲間の仇と言わんばかりに繰り出される敵の猛攻も、羽織を翻すことで視界を遮り、長定規もといセンヒキ様・破で受け流すことで完封し。
おタヌキ様とおキツネ様も勇ましく奮戦し、隙を見て石化させた敵を打ち砕くことを何度も、何度でも繰り返し。
「これで、終いよ!」
命を取り巻く最後の鬼を、叩きのめしたその時。
敵の姿は、最初からなかったかのように消え失せ――代わりに散らばっていた、黒ずんだ大量の石の破片が、次々に塵と化していった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
北海道というからいつぞやのプラネタリウムかと思いきや
「確か、『狂鬼戦争』というんでしたか」
私の銀誓館入学前なので、資料でしか知らなかった戦いです
今、こうして町を見て――
二度とあってはならない類の計画だった、と痛感しました
兎にも角にもまずは鬼退治しないとですね
指定UC起動
敵は誘蛾少女の群れ
味方は私と他の猟兵、そしてあちこちで倒れ伏した人々に設定
これで鬼どもからの疫病の放射を相殺できます
後は背中に装備した『轟蘭華』に搭載してある『ラドン』『パラベルム』で攻撃です
強化されているとはいえ腐食を癒す手段を持たない以上、彼女らに勝ちの目はありません
●黒、黒で呑み込んで
鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は以前にも同じグリモア猟兵から、同じく北海道へ向かい事件を解決して欲しいと依頼を受けたことがある。
(「北海道というからいつぞやのプラネタリウムかと思いきや」)
影華を出迎えたのは星々の幻ではなく、現実に顕現した地獄だった。
「確か、『狂鬼戦争』というんでしたか」
戦争にまで発展した忌まわしき事件。
影華は当時まだ、銀誓館学園に籍を置いていなかった。資料を読み、知識として内容は知っていたが。
そして今、こうして町を見て――。
(「二度とあってはならない類の計画だった」)
広がる惨状に、痛感する。
けれど今なら、この手で止められる。
(「兎にも角にもまずは鬼退治しないとですね」)
改めて、町を見やれば。
丁度、鬼の少女らも影華の存在に顔を上げ、排斥せんと動き出したところ。
彼女らを、敵と見做す。そして自身と、町の人々と、そして届くのであれば、他の区画で戦っているであろう仲間の猟兵たちを、守るべき味方と定め。
「彼の力を以て世界は答える――私の敵となる選択をした結末を、ここに!」
――ぶわり、と。
燐光を纏った黒の奔流が、戦場に広がる。
それは無数の蟲の群れ。ユーベルコードの力を宿して再び世界の敵と戦う力を得た、影華に添う永遠の友。
彼らは友の敵を許さず、友の守るべき者たちを慈しむ。
これだけの大群を、一切接触せずに乗り切ることなど誰ができるだろうか。僅かでもその黒に触れた敵の身体は瞬く間に腐り落ち、味方の身体からは蓄積された病毒が死滅し、受けた傷をも癒やしてゆく。
(「これで鬼どもからの疫病の放射を相殺することができましたね。あとは、」)
影華が『それ』に意識を向ける、と同時に重い駆動音と共に動き出す、その背に負った武装プラットフォーム。
拡張型の黒燐大具足『轟蘭華』。そこに内蔵された多弾頭誘導弾発射装置『ラドン』と全自動超大型弩『パラベルム』によって、主と世界の敵を完璧に殲滅せんと、矢と弾丸が雨霰と敵陣に降り注ぐ――!
自衛にケガレを纏っていようと、この掃射の前では徒労でしかなく、腐食する身体を補う手段も持たぬ鬼らは、成す術なくその原型を失い物言わぬ肉塊に、そして塵となる。
「喧嘩を売る相手を間違えましたね」
毒蛾の鬼も――そして、劉・叔成も。
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
狂鬼の前哨戦に出たのはもう十四年も前
あの後も東洋新世界ビルに焼き付いたのを
殲滅し続けた
彼らが見えざる狂気に呑まれてしまった事自体は
今でも痛ましいと思うけど
今更同じ事繰り返そうだなんて言語道断
駆逐する
そう思いつつ来た先の惨状に顔が強張る
こういうモノを退治する為にずっと戦って来たし
今は猟兵にもなった
これは、猟兵の、役目だ
UC白燐大拡散砲詠唱
ククルカンには俺や猟兵だけでなく倒れている人たちも
癒すよう頼む
その上で、後一撃二撃で倒せそうな敵には
全技能も励起し全力で攻撃を
「こんな事絶対許せないのは昔から同じでね!」
必要なら【高速詠唱】【多重詠唱】も用い畳みかけ
「待ってろ劉叔成…!今回も必ず阻止してやる!」
●轍、白く引いて
陰陽都市計画、そして狂鬼戦争。
葛城・時人(光望護花・f35294)は十四年前、その前哨戦に打って出た日のことを思い返していた。
一連の戦いが終わった後、東洋新世界ビルディングに焼き付いた狂気の産物を殲滅し続けたことも。劉・叔成とその一派が遺した爪痕は、余りに深かった。
(「彼らが見えざる狂気に呑まれてしまった事自体は、今でも痛ましいと思うけど」)
望んで狂気に染まったはずなどないことは、充分に理解している。
だが、正気でなかったから、なんて免罪符にはならない。あれだけの事件を引き起こし、数多の人々を苦しめたその行いは、何があろうと許すわけには行かなかった。
(「今更同じ事繰り返そうだなんて、言語道断」)
駆逐する。蔓延る鬼ごと、全て。
決意は固い――からこそ、改めて目にした町の惨状に、思わず時人の顔が強張る。
死んだように動かない人々。その上を我が物顔で闊歩する、人類の敵。地獄絵図が、嘲笑うように視界の中で横たわる。
己の胸に、手を当てる。
こういうモノを退治する為に、ずっと戦って来たのだ。
能力者として――そして、今は猟兵として。
だから。
(「これは、猟兵の、役目だ」)
世界の守護者であり続けることを、決めたのは自分自身だ。
歩みは、止めない。進む道の先に、護れるものがあるのなら。
幾つもの鬼の顔が、時人を捉えた。黒の淀みに包まれ、人々を踏みつけて、向かってくる。その光景が、時人には耐え難かった。
「――ククルカン」
喚ぶ。短くその名を。
掌に白く光が収束する。それが答え。
命の冒涜を許せぬ気高き心は、同じだ。
「敵を討て! そして光を以て皆に癒しを!」
『きゅい!』
高らかに、応える声。
掲げる掌の光が、一際強く輝き弾けた。
星の如き白燐の河が、町一帯に広がった。仲間に、町の人々に届けと。痛みと穢れから、彼らを護り癒せと。
そして命を、世界を踏み躙る敵には、清き光による裁きを与えよと!
「こんな事、絶対許せないのは昔から同じでね!」
白蛇の如く敵を食らう、ククルカン。その献身に応えるべく、時人自身も詠唱を重ね、世界を照らす始原の光で倒れぬ鬼も確実に消し去り。
光を纏った一人と一群が、敵陣を貫いてゆく。
「待ってろ劉・叔成……! 今回も必ず阻止してやる!」
そのための道を、拓く!
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『奇門遁甲陣を破れ』
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POW : 儀式場を守る敵を蹴散らす
SPD : 儀式の陣を形成している物品を破壊する
WIZ : 儀式の陣を守護する魔力や結界に干渉する
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●鬼の門をひらく
――そも、奇門遁甲とは。
古代中国から伝わる兵法であり、方位の吉凶から戦略戦術的に布陣や築城、行軍などの時期や方位を計るための術である。
その上で、専門家でこそないものの趣味の範疇として、個人的にこの術の研究――一般人が知り得る範囲内でだが――をしているという男性がおり、回復した彼から話を聞くことができた。
他、目撃情報などを統合して得た結論は、以下の通りだ。
まず、劉・叔成は恐らく町の象徴的存在である、役場に隣接する30メートルほどの高さの塔の最上階にいる。平素は住人や観光客が訪れ、町を一望して楽しむことから、そこからなら常に町の全容を把握することができるだろうとのこと。
そして、肝心の本陣到達を阻む、儀式についてだが。
奇門遁甲にはかの有名な八門、そして陰陽五行思想が含まれる。
通常なら吉象とされる方位を起点に攻守を行うのだが、劉・叔成は今回、凶象も凶象である死門――つまり塔の周囲、南西の方角に儀式場を置いているのではないかと言うことだ。
これは先の男性の話からの推察になるが、死門は凶兆、つまり鬼を生み、生者を阻む呪いを行うのに最適な環境、と言うだけではない。
この死門は陰陽五行思想で言うと定位は坤宮、つまり土行を司っているのだ。大地を汚染し穢れを撒く鬼に力を供給するのにも、最適な方位と言うわけだ。
死門に儀式場が存在している――そう踏んで猟兵たちが塔の南西方面へ向かうと、当たりだった。
そこには、町中の一区画よりも多くの誘蛾少女が徘徊しており、守りを固めていた。逆に言えば、明らかにここには何かがある、そう思わせるほどの過剰な守りだった。
とは言え、各区画で小隊の撃破に当たっていた猟兵たちが今は集合しているのだ。数で遅れを取ることはないだろう。
問題は、肝心の儀式の要である物品が見当たらないことだ。
察するに、ここにいる誘蛾少女が隠し持っているのだろうが、どの個体が持っているのか、判別する方法は何かないだろうか。よく見ると、彼女らはその身にひとつ、宝石を身に着けているようだ。それぞれ翡翠、瑪瑙、琥珀の三種類あるようだが、これは何を意味するのだろうか。
猟兵たちはその謎を解き、儀式場を制圧すべく、行動を開始する!
布施・命
【儚(f35472)】もいれば、共に陣を攻略
翡翠が木、瑪瑙は火、琥珀が土
この三行だけなら、最後には木剋土
木が土から永遠に養分を吸い続ける状況を作ったと仮定すれば、人の苦しみを吸い上げオブリビオンを産み続ける状況とはまさにこれ
木を滅すれば、この空間が弱体化しないものか?
陰陽八卦を応用し、探ってみようか
除霊建築学・陰陽八卦!
気の流れを作り出すとは、その空間の気の流れを読み、己の有利な形に作り替えるとも
そうして陣を形成する重要な部分、つまり弱点を感じ取る
上手く流れを掴めるか否か……再び気合を入れよ、わし!
弱点を感じ取り、そいつを八卦路結界に囚え、破魔の霊符で砕く!
何にせよ、解が出たなら皆で共有しよう
御門・儚
神主(f35378)に加勢しにきたよ!
お任せあれ♪
【POW】
瞬成くんのかわりに…じゃなくて
糸目代表として一言。
おじいちゃん、もういい歳なんだからいい加減蘇るとか恥ずかしいからやめて差しあげて欲しいんだよ。
こういうのなんて言うんだっけ、(閃き)年寄りの冷水?…自分にもダメージ来たけど気にしない。
【罠使い】と【龍脈使い】と【仙術】【道術】技能を使って神主のサポートするよ。
除霊建築士には及ばなくても気の流れがどう変かは俺にも解ると思うんだよ。
翡翠ね、翡翠…オッケー!
神主か討ち漏らした指定敵はお任せあれ。UCの【百舌鳥の早贄作り】を使って各個体確実に撃破するよ。
ちょっとエグい?
気にしたら負けだよぅ♪
鈴乃宮・影華
※実際の行動は
推理正解者に従いアドリブでお願いします
翡翠、瑪瑙、琥珀に何か見立てとかあるんだろうというのはわかりますけど
それ以上となると私はもとよりE.N.M.Aもチンプンカンプンときた
E『仕方ないじゃない、キャバリア用AIに異世界のオカルト知識まで求めないで頂戴な』
ごもっとも……
E.N.M.Aの知識にそれぞれの石の組成情報とかはあるはずなので
それをさっき聞いた陰陽五行思想云々に当てはめてみまして……
翡翠=水
瑪瑙=火
琥珀=木
と見立てて「水生木、木生火、火生土」?
で、この区画が土行だから、土を生む火担当の瑪瑙を持ってる個体を倒せばいい……?
とりあえず指定UCの敵設定をそれにしてやってみます
永倉・虎蔵
サンディ(f03274)と同行。
あーー…。またなんか趣味の悪い所に来たねぇ。
とっとと計画潰してやりてぇけど、大事なもんが見つからねぇと来たか。
あいつらが持ってるとして…翡翠と琥珀、瑪瑙?
なんか関係あんのかね。
(本業が陰陽師なので少し知ってた知識を引っ張り出して)琥珀は陰陽五行で土を表すわけだが…ストレートに一番怪しいのは琥珀の奴か?
でも翡翠の奴も引っかかるんだよな。
古代の儀式で魂の再生や不老不死なんかを願って使われたとか聞いたことあるし…それってこの世とあの世の理を弄るんだろ?
なんか不穏じゃね?勘だけど。
なぁ、サンディ何か感じねぇ?
俺は主に勘で生きてるから、魔力とかそーゆーのさっぱりでさ…
サンディ・ノックス
トラゾウ(f02812)と一緒に
儀式の要を見つけなきゃいけないらしいけど
俺、オンミョウドウとかさっぱりわからないんだ
トラゾウはオンミョウジだよね
何かわかる?
――なるほど
琥珀が土を表すものなら怪しいけど
そんなわかりやすくするかって思うよね
翡翠の石言葉もそれっぽい
確かに俺は魔力を扱って戦うけど、探知とかはあまりやらないんだよな
だけど…よし、やってみるよ
3種類の宝石を持つ誘蛾少女の複数に対し解放・夜陰を放って黒水晶に【捕食】させる
この黒水晶は俺の一部だから黒水晶の得た情報がわかるんだ
他にも誘蛾少女が減った時に周辺で異変が起きていないか観察したり【聞き耳】を立てて【情報収集】しよう
葛城・時人
奇門遁甲か…正直に言うと詳しくない
術式系はからきしだ
でも途方に暮れて何もせず棒立ちする訳にはいかない
うん
分からないなら調べれば良い
技能【情報検索】を使って携帯端末で調べる…と
五行対応石が出て来た
…土は琥珀!
松脂が時を経て変化した琥珀が木じゃなくて土なの
なんか納得いかないけどヒントはこれしかない
画面に琥珀の画像も出してククルカンを呼び、見せる
「この石を持つのを選んで攻撃してね」
何処から声出してるかわかんないけど
鳴く返事を確認してから白燐大拡散砲詠唱
大規模戦闘に適したこれで琥珀持ちだけを狙う
正しい事を祈りつつ
「行け!」
もし違うなら仕方ない
そしたら残りも順番に全部やるだけだ
剣の通常攻撃でも畳みかける
神元・眞白
【シン眞】
戦いは数ともいいますが、これだけ多いとお相手するのも大変ですね。
身に着けているものがそれぞれ違うようですが……どれも同じみたい。
私は宝石を扱わないので雰囲気でしか分かりません。
琥珀は化石の一種だったような。方向で土行を司るならあるいは?
……とはいえ、答えは直接聞いてみるのが一番早いでしょう。
仮定で読み取れるものがあれば、そこから紐解いていく形に。
でも、単純に倒してしまうのは違うように感じます。
杞憂ならいいのですが何かしらの条件になっていても不思議ではないですね。
シンさん、難しいですが宝石だけ取り落とす方針で行きましょう。
守りを固めているなら、攻めながらでも情報収集できるはず。
シン・コーエン
【シン眞】
(考察)
陰陽五行思想に基づく儀式の要の品か。
宝石で言うなら白黒が入り混じった瑪瑙が候補になりそうだ。
例えば太極図や魔術的な文様に酷似した瑪瑙を、ある誘蛾少女が持っている、とか。
眞白さんはどう思う?
…成程、了解した。
(戦闘)
前に立って対峙。
右手に灼星剣、左手に村正を持って構え、UC:刹那の閃きを使用。
相手の攻撃はUC+見切りで躱したり、見切り・武器受けで止めたりして対応。
眞白さんの方には行かせん。
宝石を傷つけないよう注意して、灼星剣と村正による2回攻撃・見切り・鎧無視攻撃で誘蛾少女達を綺麗に斬って倒していく。
誘蛾少女達を倒せば、太極図や魔術的な文様に酷似した瑪瑙が無いか探してみよう。
●知恵、絡まる糸を解いて
「奇門遁甲か……」
難しい顔をして、短く溜息を吐いたのは葛城・時人(光望護花・f35294)だった。
彼は陰陽師でも、除霊建築士でもなければ、それらの知識にも明るくはない。尤も、それらを生業としているわけではないのだから、致し方のないことではある。
(「正直に言うと詳しくない。術式系はからきしだ。でも……」)
だからと言って、途方に暮れ立ち尽くすばかりではいけないと、時人は自身にできることを考える。
そしてそれは、同じくそちらの方面の知識を仕入れる機会がほとんどなかった、鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)も同様だった。
(「翡翠、瑪瑙、琥珀に何か見立てとかあるんだろうと言うのは解りますけど、それ以上となると……」)
影華は手元の端末に目を落とす。ただの端末ではない。各世界の戦法戦術に対応可能な戦闘支援用の疑似人格を有したAI『E.N.M.A』が搭載されている。
だが、彼女も元はクロムキャバリアの生まれなので。
「私は元よりE.N.M.Aもチンプンカンプンときた」
『仕方ないじゃない、キャバリア用AIに異世界のオカルト知識まで求めないで頂戴な』
「ごもっとも……」
平素はやけに陽気なE.N.M.Aの対応も珍しく素っ気ない。影華は内心で肩を落とした。
そんな二人から少し離れて並び、考えを巡らせるのはシン・コーエン(灼閃・f13886)と神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)の二人。
「戦いは数とも言いますが、これだけ多いとお相手するのも大変ですね」
「そうだな。その上、大本を叩く上で避けては通れない儀式か……」
「身に着けているものがそれぞれ違うようですが……どれも同じみたい」
「儀式の要になる品があると聞いていなかったら、気にも留めなかったかも知れないな」
この中から、正解を探り当てなければならない。
少々厄介だが……幸いなことにこの場には、その道の専門家たちもいる。
「俺、オンミョウドウとかさっぱり解らないんだ。トラゾウは陰陽師だよね、何か解る?」
「あー……またなんか趣味の悪いところだねぇ。とっとと計画潰してやりてぇけど、大事なもんが見つからねぇと来たか……となると、」
サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)が永倉・虎蔵(花鳥風月・f02812)を見る。虎蔵は本業が陰陽師であるゆえに、知識の引き出しがあったのだ。
「あいつらが持ってるとして……翡翠と琥珀、瑪瑙? 何か関係あんのかね」
確か、五行に対応する宝石なんてもんがあったような、と記憶の中を漁ってみる虎蔵。サンディはその邪魔にならないよう、静かにその様子を見守るに留めた。
そして、もう一人の専門家。
同じく陰陽師であり、除霊建築学も嗜む布施・命(銀誓館の元符術士・f35378)だ。助太刀に馳せ参じた御門・儚(銀雪の梟(もりのふくろうちゃん)・f35472)が彼の答えを待つ中、陰陽五行思想と石の関係を結びつけ、考え得る全てのパターンを思案する。
「神主、何か解った〜?」
「うむ……」
答えには、幾つかあてがある。だが、単純に考えていいものか、それともあの老獪な劉・叔成のこと、より深く掘り下げて行かねばならないか、そこが悩みどころであるらしい。
(「単純に考えれば、五行に対応するのは――、」)
「……あった!」
敵に聞かれない程度に声を上げたのは、時人だった。
解らないなら調べればいい。自分たちにはそれができるのだから。
彼の手には、携帯端末が握られていた。表示されたページに記されているのは、五行対応石。
「……土は琥珀!」
時人の言う通り、琥珀は五行で土に対応している。
同意を示したのは、眞白だった。
「私は宝石を扱わないので、雰囲気でしか解りませんが。琥珀は化石の一種だったような。方向で土行を司るなら或いは?」
「うん、俺も琥珀は松脂が時を経て変化したものだって知ってるから、木じゃなくて土なのなんか納得いかないけど……」
それでも昔の人間は、琥珀に土性を見出したらしいと解る。そしてそれは命や虎蔵も思い至ってはいたことだった。
(「そう、翡翠が木、瑪瑙は火、琥珀が土」)
琥珀だけではなく、残り二つの宝石もそれぞれ別の五行に対応している。しかし命には、それが逆に引っかかっていたのだ。
そしてそれは、虎蔵の方も同じだったようで。
「そうなんだよな、琥珀は陰陽五行で土を表すわけで、ストレートに一番怪しいのは琥珀の奴なんだが……でも翡翠の奴も引っかかるんだよな」
「そうなの?」
サンディが首を傾げる。
「古代の儀式で魂の再生や不老不死なんかを願って使われたとか聞いたことあるし……それってこの世とあの世の理を司るんだろ? なんか不穏じゃね?」
勘だけど、と虎蔵は苦笑するが、サンディも一理あると感じていた。
「――成程。琥珀が土を表すものなら怪しいけど、そんな解りやすくするかって思うよね」
命や時人の話によると、劉・叔成は非常に狡猾な男で、当時の能力者たちもかなり手を焼いた相手のようだし。
「それに翡翠の宝石言葉もそれっぽいし」
「ん、神主も同意見かな?」
儚は暫く皆の話に耳を傾けていたが、一度だけ命が短く頷いたのを見て、再び彼に視線を向ける。
「木、火、土、この三行だけなら、最後には木剋土……」
「あ、それ聞いたことある〜。相剋って奴だっけ?」
儚が言うそれは、陰陽五行思想において、相互抑制ないし相互制約の関係だ。五行に偏りが出ないよう、それぞれの行が抑制し合う関係のこと。
「木が土から永遠に養分を吸い続ける状況を作ったと仮定すれば、人の苦しみを吸い上げオブリビオンを生み続ける状況とはまさにこれ。木を、即ち翡翠を持つ敵を滅すれば、この空間が弱体化しないものか、とな」
「それで翡翠ね、翡翠……と」
しかし、この時点で意見が割れてしまった。
また、別の方向から答えを導き出したのは、影華とシンだ。
「E.N.M.Aの知識にそれぞれの石の組成情報とかはあるはずなので、それをさっき聞いた陰陽五行思想云々に当てはめてみまして……」
翡翠は川、即ち水に近しい。
瑪瑙は火打ち石となり、火に近しい。
琥珀は先程も話題に上った通り、松脂から生じ、木に近しい。
「と見立てて『水生木、木生火、火生土』? で、この区画が土行だから、土を生む火担当の瑪瑙を持ってる個体を倒せばいい……?」
影華の言うそれは、相克と同時に語られる相互助長、相互産生の関係。五行が互いにそれぞれを育み促進する関係のこと。
けれど皆の話を聞いていたら違うような気も……と零しかけた影華に、いや、と続けるのはシンだった。
「宝石で言うなら陰陽、つまり白黒が入り混じった瑪瑙は候補になるのではないだろうか。例えば太極図や魔術的な文様に酷似した瑪瑙を、ある誘蛾少女が持っている、とか」
翡翠、瑪瑙、琥珀……どれも考えられる。
場に思考の沈黙が訪れる。何とはなしに、シンが眞白を見ると、見上げてくる彼女と視線が絡む。
「……とはいえ、答えは直接聞いてみるのが一番早いでしょう」
「うん。やってみて、もし違うなら仕方ない。そしたら残りも順番に全部やるだけだ」
時人も頷く。が、直後に虎蔵から声がかかった。
「ちょっと待ってくれ。なぁ、サンディ何か感じねぇ? 俺は主に勘で生きてるから、魔力とかそーゆーのさっぱりでさ……」
考えて答えが出ないのなら、気の巡りや土地そのものに干渉して調べられないかと、陰陽師の観点から虎蔵が言う。
「確かに俺は魔力を扱って戦うけど、探知とかはあまりやらないんだよな。だけど……よし、やってみるよ」
「わしも手伝おう。陰陽八卦を応用し、探ってみようか」
「お、やっちゃえ神主♪ サポートするよ」
儚の声援を受けた命とサンディがそれぞれ目を瞑り、集中する。
「除霊建築学・陰陽八卦!」
「気付かず染まれ、『俺』に――」
命の詠唱に応じて、陰陽の気が不可視の細い糸のように流れ出す。
サンディの呼び掛けに応えて、同化を望む黒水晶が孤立した三色の石持つ少女らを密かに食らう。
(「気の流れを作り出すとは、その空間の気の流れを読み、己の有利な形に作り替えるとも。そうして陣を形成する重要な部分、つまり弱点を感じ取る。上手く流れを掴めるか否か……再び気合を入れよ、わし!」)
(「この水晶は俺の一部。食らって、染め上げて――得た情報は俺にも解る。使えるものは何でも使って、答えを見つけようか……!」)
千切れそうな糸でも手繰り寄せる、強い意志で。
少しでもその助けになればと、儚も龍脈を探り、少しでも掴み取りやすくできればと、気に色を着けるように、術を発動する。
(「除霊建築士には及ばなくても気の流れがどう変かは俺にも解ると思うんだよ。これで少しは……」)
命の、そして皆の助けになればいい。
そして――!
「……む?」
「あれ?」
命、サンディの二人共が、思わず目を見開く。その瞳を戸惑いが色濃く占める。
「神主、何か解った?」
「どうした、サンディ?」
儚と虎蔵が、それぞれ二人に駆け寄る。
その口から出た答えは。
「……琥珀を提げた敵に、より多くの淀んだ気が集まっている……のだが、翡翠や瑪瑙にも、量は少ないが気が溜まっているように見受けられるな」
「うん。琥珀に集まっている気に、嫌な淀みがより多く含まれているのは俺も感じたんだけど。他の石にも何か、仕込まれてるような感じが……」
「となると、琥珀が正解……なのでしょうか。けれど他の石にも気が集まっている、とは……?」
結果を受けて、影華も思案する。が、これが何を意味するのか、解らない。それは、他の面々も同じようだった。
「結局、やってみるしかないと言うことか」
真っ先に武器を構え、臨戦態勢に入ったのはシンだった。しかし、眞白が一度それを制する。
「でも、単純に倒してしまうのは違うように感じます。シンさん、難しいですが宝石だけ取り落とす方針で行きましょう」
何かしらの条件、例えば敵ごと倒してしまえば穢れが広がるなどの条件があっても不思議ではないと、眞白は言う。
一先ず、各人それぞれ、最初に己が正解ではないかと見た宝石を持つ敵を狙う。その上で、極力宝石だけを落とすように立ち回る、と言うことになり。
――いよいよ、戦いが始まる。
●毒蛾、土を穢す
「儚、頼むぞ」
「オッケー! お任せあれ♪」
命と儚が、翡翠を提げた一群へと向かう。
徘徊を続けるだけだった鬼の、その無数の貌が、陣への侵入者たちの気配に向けられるが。
「囚えよ、八卦炉結界!」
命が張った結界は、敵の動きを阻害するためのものでもある。
突如動きの鈍った自身の身体に、戸惑いを見せる鬼の少女らへと、破魔の霊符を真っ直ぐに放る。狙うは無論――首に下がる宝石を繋ぎ止める、その鎖!
「割れた!」
霊符に触れた幾つかの鎖は瞬く間に黒く変色し、翡翠が地に落ちる。
「だがやはり、儀式の気が薄れる気配は……」
「いや、あっち!」
儚の指す方、この儀式が継続している間も、生み出され町へと進軍していた、新たな鬼。その供給される数が、僅かながら減っている、ように見える。
ただの目晦ましでは、なかった。全ての宝石に、意味はあったのだ。そして翡翠は恐らく、敵を生み出すための動力。
「ならば放置する手はあるまい!」
「だね! 俺たちはこっちを何とかしよう!」
そして翡翠を持つ敵は、そのまま倒してしまっても問題なさそうだ。
儚はまだ霊符の効果が及んでいなかった鬼の尾を掴むと、武器代わりに周囲の敵を薙ぎ払う!
「そ〜れっ!」
最後は地にその身体を叩きつけ、衝撃波で追撃。当然、武器にされた鬼は最早原型を留めていない。
「……絵面がえげつないな」
「気にしたら負けだよぅ♪」
一方で、瑪瑙を掲げた敵へと向かうのは、シンと眞白、そして影華だ。
眞白は琥珀を第一候補と見ていたが、シンと連携を取る方が戦いやすいだろうとこちらの班へ。そうなると琥珀班が時人独りになってしまうため、そちらには虎蔵とサンディが回る形だ。
「さあ、答え合わせと行きましょうか。彼の力を以て世界よ、結末を――!」
影華の問に答えをもたらすべく、黒燐蟲が儀式の場へと広がる。鬼の動きを阻みつつ、けれど的確に影華の『敵』のみに狙いを定めて。
鎖を食らい、炎の色を取り落とす。
そのひとつひとつの模様などを確認しつつも、シンも眞白を守るよう前に進み出て、鎖を切り落とす。
右手に灼星剣、左手に村正を掲げ、悪しき存在から護るべき人を護り、その企みを打ち砕くべく。
「貴様らの動きは読み切った。眞白さんの方には行かせん」
彼の守護を受け、眞白も召喚符を展開。白金に淡く輝くそれは、彼女の写し身を作り出し、鬼の少女らに問いかける。
「教えてください、答えを。この儀式の要を――」
鬼は答えない。だが、その代償は彼女らの守るもの。口を閉ざす彼女らに戦術器たちが群がり、宝石を切り離して確保する。
だが、場に変化は見られない。
これは外れか――そう三人が思った時、影華の耳に呻き声のようなものが聞こえた。近くではない、少し離れたところから。
「琥珀班の方から――もしかして」
彼女は言った。相生において、土を生むのは火であると。
その火を奪ったことにより、土が――琥珀を持つ少女らが、弱体化していたとしたら。
「攻撃を続けましょう。琥珀の方はまだ解りませんが、この分なら少なくとも、瑪瑙の持ち主は攻撃しても問題なさそうです」
「解った。なら、宝石は傷付けず、敵だけを捌いて見せよう――!」
眞白を背に護りつつ、侵入者を返り討ちにせんと迫る鬼の群れを、シンの二刀流による流れるような連撃で、首を残して両断してゆく。
「私も負けていられませんね。それでは、手加減無用と言うことで――」
今度こそ、影華は黒の燐光纏って飛ぶ友に、鬼の殲滅を願う!
「……敵の抵抗が鈍った? それに何か呻いてる……」
「お、じゃあこれチャンスじゃね?」
琥珀を提げる鬼の群れに向かった虎蔵、サンディ、時人は思わぬ抵抗に遭っていた。
苦戦する程ではないし、翡翠、瑪瑙の持ち主らに比べ数は少なかったのだが、先程まで戦っていた鬼らと比べて明らかに防御が固く、宝石だけを狙う方針なものだから相手も首元を攻撃に晒すまいと動いていた。
三人が長期戦を覚悟した、まさにその時、鬼らが苦しみ――否、脱力するような動きを見せたのだ。
「もしかして、何らかの強化がかかっていたのかも」
「成程な! で、あっちの敵が減ったから、強化が剥がれたってワケだな」
儀式の要は琥珀だった。けれど、他の石にも意味があり、儀式の支えになっていたのだ。改めて劉・叔成の、計画完遂への執念を覚える。
そんな中、戦場に白燐蟲の光をもたらしながら、時人は思案する。
(「話を聞いて、確かに翡翠や瑪瑙の説も納得できたんだ。結果的に琥珀で正しかったけど、その理由は……」)
彼には確かに陰陽道や除霊建築学の知識はほぼない。
だが、ゴーストの知識は嫌でも蓄積していった身だ。
誘蛾少女は穢れを纏い、美しいものを憎み汚染することに快感を覚える存在だった。ならば他でもない彼女らが、琥珀を――土の気を汚染していた、と考えれば。
「うっ……おい、あれ……!」
それを証明するように、虎蔵が声を上げた。
「あれは……」
サンディも見れば、少女らが最後の力を振り絞ってと言わんばかりに、文字通りその口から泥にも似た毒を吐き、琥珀へと掛け流している。
「どうやら遠慮はいらないみたいだ――行け、ククルカン!」
短く鳴いた白の輝きが、鎖からその持ち主らへと矛先を変える。
虎蔵とサンディも、遅れは取るまいと武器を構え直し、儀式の守護者らへと向ける――!
●汚泥の主は天に近く
「片付いたな。しかし……」
シンは思わず、その足元を見た。
穢された土地でもきらきらと、弱々しくも輝く石たちが、彼らの爪先で転がっている。
猟兵たちは、琥珀だけをひとつひとつ割っていった。宝石に罪はないが、せめて世界を滅ぼしかねない企みの一助から解放してやらなければ。
野衾の爪の先で琥珀を砕きながらも、儚はふと、劉・叔成が待ち受けているのであろう、塔を仰ぐ。
ここよりは遥かに天に近いその場所に、奴はいるのだ。
(「瞬成くんのかわりに……じゃなくて」)
糸目代表として、と言うことにでもしておこうか。届かないと解っている。それでも言わずにいられなかった。ここにはいない、『彼』のためにも。
「おじいちゃん、もういい歳なんだからいい加減蘇るとか恥ずかしいからやめて差しあげて欲しいんだよ。
こういうのなんて言うんだっけ……」
確か、的確にこの状況を言い表す言葉があったはずだ。儚は考え込み、そしてひとつの閃きを得る。
「年寄りの冷水? そう、それだ」
猟兵になるよりも以前から、能力者として長いこと活動している儚の身にも刺さるものはあったが、気にしないことにして。
「兎も角さ……終わりにできないかなあ、こういうの」
その言葉は風に攫われ、天へと巻かれて消える。
「儚、そろそろ行くぞ」
「は〜い」
命に促され、砕け散った琥珀の破片を越えて、歩き出す。
これは狂気の悲願。決して叶えさせるべきではない計画。
天へと登る、その理由は、ただひとつ。
――止めるために。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『劉・叔成』
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POW : 八卦風水呪
自身と装備を【風水の導き】で覆い、攻撃・防御をX倍、命中・回避・移動をX分の1にする。
SPD : 不浄奪命陣
戦場全体に【生命と地脈を侵す「不浄の気」】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【武装化した「不浄の気」を纏うこと】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : 石兵点穴波
自身が装備する【宝剣】から【「気」の力を強制的に断絶する波動】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【石化】の状態異常を与える。
イラスト:高峰 名鳥
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●古の幕をおろす
この町で、一番天に近い場所。
広がる大地を睥睨するその背を、猟兵たちは遂に捉えた。
「我が元に至るか猟兵どもよ。貴様らも銀誓館の青二才どもと何ら変わらぬ、真実より目を逸らし、己が感情のみで未来を語る……凡愚どもよ」
劉・叔成は猟兵たちに背を向けたまま、厳かに弁ずる。
やはり、彼は狂気の中で視た理想に囚われ続け、抜け出す手立ても意思も、最早ないらしい。
過去の模倣となり、妄執を手放すことも叶わぬその姿は、いっそ哀れですらある。
「如何に儂が真実を告げようとも、貴様らは聞く耳持たぬ……否、理解すらできぬであろうなァ。ならばせめて、儂自らその哀れなる生に引導を渡してやることこそ、貴様らの救いであろうなァ!!」
狂気が、その背を顧みる。
乾いた唇が、ニィと邪悪に弧を描いて。
空気が重く、冷たく、淀んだ。
常軌を逸した狂信は、無自覚の悪意となって、猟兵たちへと伸しかかる。
気を強く持て、呑まれてはならぬ。
パノラマを背負い傲慢に嗤う、狂気の権化を取り囲め。既に両者の間を隔てるものは何もない。
――世界は既に、カーテンコールを望まない!
サンディ・ノックス
トラゾウ(f02812)と共闘
最初から会話を放棄するなんて勿体ないよ
ただ俺は何が真実かなんて誰にもわからないって考えだから
時間の無駄って考えも間違いじゃないかな
それに俺達みたいなのは真実より人命を優先したりするから
貴方みたいな思考の組み立てかたのヒトには意味不明かも
相手が狂気の中って知ってるけど俺の考えを伝える
いつも通りでいることが相手に呑まれない俺の対処法だから
話が通じなくても気にしない
トラゾウにこの姿を見せるのは…
いいな、そろそろ本当を明かしても
指定UC発動
脚を竜に変え、強靭な脚でダッシュしてから蹴りを入れる
トラゾウの様子に息をのんで
ありがとう
よし、一緒にとっておきの蹴りを魅せてあげようか
永倉・虎蔵
サンディ(f03274)と共闘。
やっと辿り着いたか。劉…(やっぱりまだ名前が覚えられない)の爺さん!
散々趣味の悪いことしてくれてたけど、趣味悪いどころか…狂ってんな。
もう、終わりにしようぜ。
・戦闘
使用するのは紫電一閃。
爺さんよ。これを初めて使う相手はてめぇだ。
特別っぽくて嬉しいか?
サンディと離れずに戦う。
なかなか嫌らしい攻撃してくるな、あいつ。
ま、そんなのどうってことねぇけどよ。
全力でぶっ倒すだけだ。
ーーーーサンディ?
その姿……(一瞬驚いた顔をする)
なんだよそれ、めちゃくちゃカッコいいじゃん?
よーし、俺も負けてらんねぇ!
行くぜ!!(サンディと並んで駆け出していく)
●竜と虎、翔けて
掲げた理想。蝕む狂気。
劉・叔成は、阻むもの全て拒絶する。
「やっと辿り着いたか。劉……の爺さん!」
気を緩めれば、呑まれる。そんな空気の中でも永倉・虎蔵(花鳥風月・f02812)は臆せず狂気の化身から目を離さない。
――余談だが、彼は劉・叔成の下の名前を未だに覚えられていなかった。
「散々趣味の悪いことしてくれてたけど、趣味悪いどころか……狂ってんな。もう、終わりにしようぜ」
「抜かしよる! 我が崇高なる陰陽都市計画の、理念と真意を解せぬ、貴様ら如き浅学菲才の有象無象めが正邪を語るか、片腹痛いわ!!」
毒念滲ませ呵呵と嗤う、敵意の壁は未だここに。
それでも――と。
「最初から会話を放棄するなんて勿体ないよ」
サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は今なお放たれる不浄の気にも屈することなく、涼しげに立つ。
相手はこのシルバーレインと言う、サンディにとって未知の世界で、戦い続けてきた能力者たちすら手を焼いたと言う曲者だ。だが、それも過去の話だと、言わんばかりに凪いだ笑みを返して見せる。
「ただ俺は何が真実かなんて誰にもわからないって考えだから、時間の無駄って考えも間違いじゃないかな。それに……」
この問答に、意味はないのだろう。少なくとも、劉・叔成にとっては。
だが、サンディはそれでも構わなかった。これは己のための言葉だ。『いつも通りの彼』でいることが、彼自身を狂気から守るから。
続ける。己の考えを、伝え続ける。
虎蔵も、それを解っていて、今は見守るに留めてくれる。
「俺達みたいなのは真実より人命を優先したりするから、貴方みたいな思考の組み立てかたのヒトには意味不明かも」
「ふん、とことん相容れぬと言う結論だけは互いに一致しておるようだなァ!」
肌がひりつく。痛みさえ錯覚するほどの狂気が、その色濃さを増す。
けれど相対する二人は、脅威こそ覚えれど恐怖を抱くことはない。強大な存在を相手取る覚悟など、奴と戦うずっと以前から、とうに決めてきた。
「爺さんよ。これを初めて使う相手はてめぇだ」
言うが早いか、虎蔵の姿が掻き消える。
超音速を極めた蹴りが刺さるのを、劉・叔成は止められない!
「むう……!」
「特別っぽくて嬉しいか?」
「戯言を……!」
反射によって、その黒く穢れた剣で受け止められたものの、劉・叔成の手に確かな痺れが見える。
「小賢しい、小僧がァッ!!」
「……っと、なかなか嫌らしい攻撃してくるな、あいつ」
一喝と共に放たれた、不浄を敏感に察知した虎蔵が呟く。
あれは虎蔵たち猟兵を蝕むだけでなく、土地をも苦しめ、自らは更に力を増す、そう言った類の攻防一体の陣だと悟る。
「ま、そんなのどうってことねぇけどよ。全力でぶっ倒すだけだ」
「そうだね。それに……」
サンディは、虎蔵の顔をちらと盗み見た。
(「トラゾウにこの姿を見せるのは……」)
今の虎蔵の表情に、負の揺らぎはない。それは絶対にこの企みを止めると言う強い意志と――肩を並べて戦う自分、サンディへの疑うべくもない信頼があるからだろう。
「いいな、そろそろ本当を明かしても」
「――サンディ?」
ぽつり、微かに溢れた言葉を、虎蔵は聞き逃さなかった。
「少しだけ俺の本当を見せてあげる」
――サンディの足元から、異様な気配が漂う。
昏く彼の魂に燻る、劉・叔成とは別種の邪悪が具現化されて行くようだ。サンディ自身にとってもそれは苦い心地のするものだ。
だが、悪意には悪意を以て、打ち砕く!
「今度は防がせない」
「くゥ……ッ!!」
フロアを深く深く踏み締めて、蹴って。
――赤銅の鱗に覆われた、龍の如き姿に変化したサンディの脚が、今度は劉・叔成の肩口に到達する!
不浄のオーラが致命傷を阻む。しかし、確かな手応えがあった。問題は――、
「その姿……」
虎蔵が、その紫紺の双眸を狭め、露わにしている。
驚くのも無理はない、とサンディは思った。彼にこの姿を見せたことはないのだから。進んで見せたいようなものでも、なかったので。
覚悟はしていた。それでも、息を呑む。
案の定、虎蔵は驚愕に目を見開き、そして、
「なんだよそれ、めちゃくちゃカッコいいじゃん?」
――その瞳を、まるで子供のように輝かせた。
思わず一瞬、サンディの方が面食らう。
だが、同時に少し安堵した。
「……ありがとう」
「よーし、俺も負けてらんねぇ! 行くぜ!!」
「よし、一緒にとっておきの蹴りを魅せてあげようか」
並んで、駆け出す。今度は一緒に。
二人でなら――きっと上手く行く!
「本気で行くぜ!」
「貴方にも、覚悟して貰うよ」
「――おおぉぉォォッ!!」
虎蔵は、先に描いた稲妻の軌跡を駆け上がって。
サンディは、その身を屈めてフロアを滑走し。
上下からの、刃の一薙ぎにも等しい蹴撃は、劉・叔成への最期の餞だ!
「痴れ者どもがァアッ!!」
剣で防ぐか、気を集中させるか。上下どちらか。
その判断が、一瞬遅れた。二人にはそれで十分だった。
今度こそ、渾身の一撃が、劉・叔成の身体を打ち崩す!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神元・眞白
【POW/割と自由に/シン眞】
戦術師としての意見を交わしたかったのですが、状況が状況ですね。
道は違えど戦いの技術は一級品。吸収できるものは今の内に。
では、必要ではない幕は引かず、必要な幕を引きましょう。
シンさん。お相手がお相手です。今は私でなく前を見ていてください。
大丈夫。私はちゃんといますから。集中が一番な場面ですよ。
さて飛威、私達が見えない内にこの思念糸を戦場に回しましょう。
少しずつ、少しずつ。戦い方には直接相対する方法、違う方法。
力には力、それも1つの手ですが私のやり方でここはお相手を。
……直接手を?それなら、相手にばれない程度にお願いね。
シン・コーエン
【シン眞】
住民を贄にして良い真実など無い!
相手の八卦風水呪を見て、「ならば思いっきり斬り合おう!」と灼星剣を両手で構えて前に出る。
攻撃を受けたら終わりそうだ。
故に当てられないよう第六感・瞬間思考力を駆使して攻撃を読み、念動力で攻撃を逸らし、見切りで躱す。
周囲に満ちてダメージを与えそうな不浄な気は破魔・光の属性攻撃を籠めた衝撃波を身体から発して吹き飛ばす。
好機を捉えたら足裏からの衝撃波とダッシュで加速。
残像を多数生み出して幻惑しつつ、2回攻撃の1回目・光の属性攻撃・斬撃波・鎧無視攻撃による斬り降ろしで劉・叔成の防御を突破し、2回目でUC:万物両断を使用。
同じ軌道を逆になぞる斬り上げで本体を斬る!
●金銀の橋、混沌へと迫って
「温い、温いわァ!! これしきの烏合の衆がッ、我が天命を阻もうなどと、言ッ語道断!!」
狂える過去。今ある生を踏み躙り、破壊によって救いをもたらさんとする混沌の徒。
オブリビオンと成り果てた劉・叔成は、まさにそれであった。
「戦術師としての意見を交わしたかったのですが、状況が状況ですね」
「ああ、住民を贄にして良い真実など無い!」
神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)は表情は変えず溜息を吐き、そんな彼女より前に進み出て、シン・コーエン(灼閃・f13886)は明確な猟兵の、世界の敵を鋭い眼差しで射抜く。
今は平行線を辿ってはいるものの、対話は可能な状態だ。だがこの分だと、追い込めば追い込むほど、まともな受け答えができるかどうかも怪しい。
かつて人であった頃の劉・叔成は、どこで変わり果ててしまったのだろうか。知る術はもうない。
(「道は違えど戦いの技術は一級品。吸収できるものは今の内に」)
できることは打ち倒し、得るものがあれば持ち帰ることだけ。
傍目には人と変わらぬ戦術器『飛威』を控えさせ、眞白はシンの背中越しに、改めて敵を見据える。
その脚が、爪先で簡素な陣を描くように動く。浮かび上がる風水の加護が、老いてなお威厳を増すその身体と禍々しい剣を覆い、力を与える。
「ならば思いっきり斬り合おう!」
灼星剣の柄を、シンは両手でしっかりと握り込む。剣と剣のぶつかり合いになる、そう確信して、真っ向からぶつかる覚悟を決めて。
大切な人と、力なく苦しむ人々を、この手で守るために。
「シンさん。お相手がお相手です。今は私でなく前を見ていてください」
「――ああ、解っているよ眞白さん」
と、言いつつ未だに少し自分の様子を気にしているらしいシンに、眞白は思わず微苦笑ひとつ浮かべて。
何があっても護る、その想いはちゃんと解っている。解っているから、こそ。
「大丈夫。私はちゃんといますから。集中が一番な場面ですよ」
「心得ているさ。これ以上、誰も苦しめないために――俺は、この灼光の刃を振るう!」
一歩進み出、猟兵たちを薙ぎ払わんとその剣を天へと翳した劉・叔成。
シンは咄嗟に念動力をフル稼働させ、その凶刃を押し留める。背後で眞白の気配が薄れるのを感じた。
大丈夫、敵の攻撃は不発に終わった。今は彼女を信じて、機を窺い反撃の時を待つだけだ。
(「では、必要ではない幕は引かず、必要な幕を引きましょう」)
シンが敵の攻撃を防ぎつつ戦う間、眞白は自身と飛威の身を不可視の思念糸で覆い、彼女たちもまた不可視の存在となる。
空間を観察する。シンは攻撃を躱し、時に弾きながらも、その身から光の波を放ち、場に蔓延る不浄を祓っている。
敵の注意は、完全にシンたち前衛で戦う猟兵に向いている。眞白は密かに行動を開始した。
網を張り巡らせるように、少しずつ、少しずつ、糸を戦場全体に広げてゆく。
劉・叔成により汚染された気の中では、異物たる眞白の思念の存在は感知されていたかも知れない。けれどシンによってそれが清められ、あるべき姿に正されている今、そのリスクは最小限にまで下がっていた。
気取られぬよう、慎重に。しかしシンたちが徒に疲弊しないよう、迅速に。
(「力には力、それも一つの手ですが私のやり方でここはお相手を」)
それは劉・叔成とも、シンとも違う彼女なりの力の使い方。
尤も、今の劉・叔成では、糸の海に溺れるまでもなく理解することはできなかっただろうが。
「……むお……ッ!?」
かかった。
一瞬、劉・叔成が不自然に剣を繰る手を止めた。
それは自分が何をしていたのか、何をしようとしていたのか、僅かの間忘却してしまったかのような。
老いによる判断力の低下――ではない。思念の糸に絡め取られた世界の敵は、記憶が抜け落ちるかのように、その思考力を放棄することになるのだ。
そしてそれはたとえ一瞬でも、戦場においては命取りとなる!
「! 今が好機だ!」
眞白が作ってくれた、反攻の時。今しかない。
シンは脚に気を集中させ――弾けるようにフロアを蹴って、流星の如く敵へと肉薄する!
「何を……儂は! この宿願を! 邪魔はさせぬ!!」
無闇矢鱈と剣を振り回すその姿に、この機に自分も打って出ると飛威は主へ進言すれば。
相手にばれない程度にお願いね――と、静かに許しを受け。
邪悪の刃へ触れぬよう背後へ回ると、奇襲に長けた一対の短剣を、その枯れ木のような首の裏へと閃かせ。
「ぐあ……ッ」
その体勢が、崩れる!
「打ち砕く!」
シンの身体が、ぶれるように劉・叔成の目を惑わす。
立ち直らぬ内に、振り下ろされた紅蓮に輝く刃は鎧をも砕く光の衝撃波を放ち、黒く濁る護りを突破した。
そのまま、返す刃で同じ軌道を下から、つまり逆からなぞり、脚から肩へと昇り行き――!
「――全てを、両断せよ!」
裂帛の気合と共に、煌めく赤がその胴を斜め一文字に、捌く!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
布施・命
【儚(f35472)】と共闘
奴から放たれた波動は……っ、危ない!意識を手放してしまいそうに
この感覚は石兵点穴!しかも範囲型とは無茶苦茶な
儚も大丈夫か!?しっかり!
致命打なぞ、これまでいくらでも乗り越えてきた。魂で耐えろ。立ち上がれ、わし!引導なぞ……貴様にそのまま返してくれる!
波動を宝剣から放つなら、その攻撃の手を妨害しよう
符術「火蜂」で、火球をマシンガンの如く撃ち込み続けて奴の動きを止めてくれる!
当然これだけで止まるとは思わぬ。式鬼も、結晶輪も、霊符も、ありったけ使って攻撃だ!
狙いはやがて宝剣へ。奴の手から弾き飛ばさんが如く集中攻撃してバランスを崩したら……
重い一発は任せた、儚!やってやれ!
御門・儚
神主(f35378)と参加
おじいちゃんの真実が俺達の真実と同じって思いこんでる時点で間違ってるしー
有名な人が言ってたよ「真実は人の数だけ存在する」って。
だから他人の行動や意見に敬意を払って接するべきなんだよね。
おじいちゃんのそれ、違うよね。
だから俺もおじいちゃんの話に敬意は払わないんだよ。
【行動】攻撃を軽業、早業、幸運を使って回避しつつ一定の距離を保って暗器を投げて戦うよ。
おっと危ない。油断禁物だよね。
神主こそ気をつけて!
隙をみて金鵄発動!
猛禽類の一撃、侮らないでよね。
陰陽都市計画ね…
救った大地に誰も居ないなんて、それは救世って言えるものなのかな?
俺にはよくわかんないや。
●守人、崩壊を拒んで
「ふん、やはり青臭い夢物語に囚われおるわ。崩壊の先に或る弥勒の降臨こそ唯一の救世であると、未だ理解できぬようではなァ!!」
「おじいちゃんの真実が俺達の真実と同じって思いこんでる時点で間違ってるしー」
手負いの身となってもなお、底冷えのする声色で己の理想を語る劉・叔成。
だが、御門・儚(銀雪の梟(もりのふくろうちゃん)・f35472)は恐れることなく、真っ向からそれを拒絶した。
「有名な人が言ってたよ。『真実は人の数だけ存在する』って。だから他人の行動や意見に敬意を払って接するべきなんだよね」
ただの意見の相違であるなら、目指すべきものが違うだけの話だと呑み込むこともできた。だが、劉・叔成は端から自身の追い求めるものこそが絶対であると疑わず、儚たちだけではない、同調しない者たちの言葉など、耳に入れようとしてこなかった。
今も、変わらず。その上、何の罪もない人々を犠牲にして成就する願いに、何の疑問も抱いていないのであれば。
「おじいちゃんのそれ、違うよね。だから俺も、おじいちゃんの話に敬意は払わないんだよ」
「その通りだ」
険しい顔で、布施・命(銀誓館の元符術士・f35378)も頷く。
平穏を勝ち取ったはずのこの世界には、いつしか再び銀の雨が降り注ぎ、日常が脅かされ始めた。
一度は憧れていた平凡な日々に、その尊さを改めて知った。だからこそ、猟兵として戦場に舞い戻った今、それを蝕むオブリビオンを捨て置くわけには行かない。
かつても全ての生命を絶やし、世界を崩壊に導こうとした男の再来となっては、尚更だ!
「この世界に何度でも混乱を巻き起こそうとするなら、わしらは何度でもその企み、阻んでくれる!」
「やってみろ青二才どもがァアァッ!!」
「……っ、危ない!」
老いたはずの男の口から、咆哮が放たれる。
揺らいだ空気は、死を想起させるほどに冷たくて。
咄嗟に叫んだ命自身も、意識を手放しそうになるほどの。
(「この感覚は石兵点穴! しかも範囲型とは無茶苦茶な……!」)
血色の宝石を宿した黒剣から、この禍々しい気は解き放たれていると命は悟る。
それは除霊建築士たちが用いる、対象の気の力を断絶させることにより物言わぬ石へと変じる術だ。しかし、その力が及ぶのは手練の能力者と言えど、一人が限界だったはず。
改めて、目の前の老人がオブリビオンとしても能力者としても、規格外の存在なのだと思い知る。
だが、ここで動きを止めるわけには行かない!
(「致命打なぞ、これまでいくらでも乗り越えてきた。魂で耐えろ。立ち上がれ、わし!」)
魂が肉体を凌駕する、その感覚を思い出せ!
「引導なぞ……貴様にそのまま返してくれる!」
折れぬ心で、命も咆える。
全身から破魔の力を放出し、悪しき気を全て弾き返す!
「儚も大丈夫か!? しっかり!」
「おっと危ない。油断禁物だよね」
儚は命が注意を促したのを受けて、気の波が自身に到達する直前に得意の軽業で回避していた。タイミングが見事に噛み合ったのは持ち前の幸運もあっただろう。
「神主こそ気をつけて!」
「解っておる」
だが、次が来れば危ない。
厄介なのは宝剣から放たれる気だ。ならばそれを阻めば、石兵点穴の攻略は見えてくるはず。
ずらりと命の手の内に並ぶのは、発火の符だ。それを機関銃の如く、絶えず射出し続ければ――!
「さあ燃えよ。それ燃えよ。怒れる群蜂の如き炎、逃れられるものなら逃れてみよ!」
「小癪な……!!」
符は刃にて防がれる。だが守りの手を止めれば、たちどころに劉・叔成の身体は炎に包まれるだろう。
それでいい。剣をユーベルコードの媒介に使わせないことこそが、命の狙い。
これだけでは終わらない。おタヌキ様とおキツネ様も喚び出して、淡い緑青の六花も戦場に舞う。ありったけの霊符も出し惜しみなく放てば、敵は防戦一方だ。
今なら――あらゆる攻撃で撹乱し、敵の注意を散漫にさせたその隙に、手元にある符に気を集めて。
「――そこだ!」
放てば、その全て弾丸にも似て鋭く飛んだ。狙いは――剣の束握る枯れ果てた手!
「おおおおぉぉぉぉっ!!」
体勢を整えることも許さぬ連撃に、遂に剣が弾け飛ぶ!
訪れた、千載一遇の好機!
「儚! やってやれ!」
「待ってました! 我が身よ、今一度彼の姿に!」
息を潜めて機を窺っていた儚が、一息に飛び出す!
その身体は見る見る内に、金色の梟へと変じてゆく。
その輝きはただの光に非ず、一度放たれれば邪悪を穿つ、稲妻の光だ!
ばさり、羽ばたいて。一条の雷光が、たたらを踏んだ劉・叔成の、傷を抱えた胴を、槍の如く貫く!
「クハ……ッ」
「猛禽類の一撃、侮らないでよね」
遂に、悠然と立ちはだかっていたその巨躯が、膝を着く。
まだ、肩で息をしているが――蓄積し続けた傷は、決して浅くないはずだ。
「陰陽都市計画ね……」
その背を、今は上から見下ろす。
儚の眼差しには、どこか哀れみの色すら込められて。
「救った大地に誰も居ないなんて、それは救世って言えるものなのかな?」
――俺にはよくわかんないや。
なおも向けられる敵意に、儚はひとつ嘆息した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
葛城・時人
沢山猟兵が集っているだろ?
お前に二度目をさせない為にだ
今更妄執を撒き散らすなんて許さない
お前が自由に出来るものなんかもう何も無いんだから
言い捨てアークヘリオン詠唱
遠く近く刻印を紡がれたら見るしかない
目を閉じても俺の剣や蟲の的になるだけ
蟲笛からククルカンも呼び攻撃指示
回避されても空中機動で回り込み射線は外さない
多重詠唱・高速詠唱も用い着弾後即刻印を紡ぐ
石化等は結界術で防御
能力者由来の力さ
お前が敗北した時にはまだ無かったけどね
だから味わえて丁度良いだろ?
一つ教えてやるよ
お前が負けた後お前より強い敵が幾らでも来た
それの全てに勝ったんだ
その上今は、埒外に立つ猟兵だ
「負ける訳なんかないんだよ、ってね!」
●白光、闇を祓って
一度膝を着いても、狂気の化身はゆらりと立ち上がる。さながら、幽鬼のように。
「どうあっても……邪魔をするか……ッ!!」
「全ての命と引き換えにしか得られない救いなんて、俺たちは認めないからね。今も、昔も」
葛城・時人(光望護花・f35294)は握る剣を構え直した。目の前に立つのは苦しげな老人、しかしその実態は、世界を破滅に導こうとする男だ。
情けは無用。寧ろここで確実に、討たねばならない。そのために、時人はここまで来たのだから。そして、仲間たちも。
「沢山猟兵が集っているだろ? お前に二度目をさせない為にだ」
世界の垣根も、関係なく。
ここまでその全員が、この男の野望を阻止せんと全力を尽くした。劉・叔成は、確実に追い詰められつつある。
「今更妄執を撒き散らすなんて許さない。お前が自由に出来るものなんかもう何も無いんだから」
生命も、世界も、未来も、何も奪わせはしない!
敵が術を発動するのに先んじて、始まりの光の刻印を喚ぶ言葉を紡ぐ。確実に、劉・叔成の目に留まるように。
「――始まりの刻印よ、創世の光もて敵を討て!」
輝ける原初の白が、なおも留まり続ける悪意の黒を灼く。
「貴様……ッ!!」
反撃に放たれる悪意の気も、即座に結界を張り拒絶する。
その動きに合わせ、常に現れる刻印が敵の視界に触れ続けるよう、壁や虚空をも足場として時人は翔る。繰り返し紡がれる詩の如き一篇は、何度でも闇を灼き祓う。
「猪口才な!」
「能力者由来の力さ。お前が敗北した時にはまだ無かったけどね」
だから味わえて丁度良いだろ? ――と、直後に唇は笛の音を生み、燐光纏って邪悪を食らう友――ククルカンが応える。
「一つ教えてやるよ」
ククルカンに巻かれ、続く手を打てずにいる劉・叔成へと、時人は静かに告げる。
「お前が負けた後、お前より強い敵が幾らでも来た。それの全てに勝ったんだ」
劉・叔成は時を経て再びオブリビオンとして蘇り、ジェネラル級の力を得た。
だがその間、能力者たちもまた、数多の戦いに身を投じ、その度に成長を続けてきた。
――力を得たのは、劉・叔成だけではない!
「その上今は、埒外に立つ猟兵だ」
「ぐおおぉぉぉぉ!!」
「負ける訳なんかないんだよ、ってね!」
白き友と弾ける光が、重なり合って蘇りし幽鬼を、深く深く、穿つ――!
大成功
🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
この間のドクター・オロチもそうでしたが
銀誓館に敵対する者は大体同じ事を言うんですよ
お前達は生きていてはいけないんだー、って
「それが世界の真実だというならそうなんでしょうね、貴方の中では」
泥酔した酔っ払いが管を巻くのとさして変わらない、いい加減聞き飽きましたよ
人型相手ですが遠慮無く
背中に装備した『轟蘭華』に搭載してある『R.I.P』『ウルカヌスⅡ』で攻撃
向こうの剣撃は『赫左』で受け止め、黒の葬華で反撃
風水の導きで防御を強化するのでしょうが
それが命取り――指定UC起動です
何倍に強化したか知りませんが、この町に撒き散らした地獄の何分の一かでも味わってください
●黒霧、地獄より来る
「……世界結界の先に……弥勒の、降臨を……」
最早、譫言のように繰り返すばかりの劉・叔成。
満身創痍となってなお狂気に突き動かされ、生命を蔑ろにする。
「……犠牲は已む無きことと……何故解らぬ……!!」
「はあ。この間のドクター・オロチもそうでしたが、銀誓館に敵対する者は大体同じ事を言うんですよ」
お前達は生きていてはいけないんだー、って。
肩を竦めて、鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は嘆息する。
「それが世界の真実だというならそうなんでしょうね、貴方の中では」
泥酔した酔っ払いが管を巻くのとさして変わらない、迷惑千万。
「いい加減聞き飽きましたよ」
狂っているとは言えその所業はまさに外道。今更、何を遠慮することがある。
その背に負った轟蘭華から、超大型光線砲『R.I.P』と強化詠唱機関砲『ウルカヌスⅡ』がその砲口、銃口を覗かせる。
狙うは劉・叔成、一点に定め――斉射する!
「傲岸不遜な、小娘めがァ!!」
「貴方にだけは言われたくないですね」
自らこそ正義の体現だと信じて疑わぬ、その姿勢に影華も思わずその柳眉を顰める。
闇雲に振り下ろされた刃を左腕に宿す赫で受け止め、かつて共に死と隣り合わせの青春を駆け抜けた、友の振るった剣の写しで斬り返す。
「我が正道を阻むなぞォ……ッ!?」
「迂闊でしたね。既に見せた手の内を繰り返したのが貴方の命取り――」
斬りかかりつつも、抜かりなく風水の導きを授かる陣を描いていた劉・叔成だが、見抜けぬ影華ではない。
黒き燐光を運ぶ蟲たちを散開させ――地の底、地獄から響くような絶叫と共に塔全体を揺るがす!
「彼の力を以て世界を騙す――それでは、束の間ご静聴願います」
毒々しく淀んだ黒靄が、その巨躯へと纏わりつき、存在そのものを蝕んで。
自らを高めただけ苦しみが続くそれは、この町の人々が、汚染された気に生き地獄を味わった、その報い。
「ぁが……あ、ァ……」
「何倍に強化したか知りませんが、この町に撒き散らした地獄の何分の一かでも味わってください」
オブリビオンは、因縁を断ち切られない限り、何度でも蘇る可能性を秘めている。だが、こうして与えられた苦痛は刻まれたまま、骸の海へと還るはずだ。
地獄を覚えて帰れ――その身体が崩れ落ち、動かなくなるまで、影華は見守っていた。
大成功
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