血脈は正統足り得るか、エースの証明
●血統
人は正統為るを求める。
真贋を問うものではない。名分さえあればいい。戦うに値する意味を欲しているのだ。
「愚か、だとは言わないよ。それは仕方のないことであったのだから。僕は否定はしない。その愚かさもまた人の可能性だ」
甘やかな声は言う。
何処にでも居る声の主は、微笑むようにしながら亡国たる『八咫神国』をまとめ上げた、嘗ての『帝』――『ヒトエ』を見やる。
彼の持つ亜麻色の髪、黒い瞳を甘やかな声の主は、それがかつて救世主とも悪魔とも呼ばれた不出世のエース『フュンフ・エイル』と同じでありながらも揺れることのない心で見る。
怯えも、恐れも、ない。
あるのは愚かしいまでの直向きさに対する嘲笑だけであった。
「けれど、その可能性に縋るからこそ、人は容易に最も大切なものを投げ出すことができる。間違っていると思いながらも、周りの圧力に負けて、己もそうだと拳を天に突き上げる」
甘やかな声の主は言う。
それこそが愚かだと。一国の元首でありながら、その愚かしさを認めず、耳障りの良い言葉を弄して、人々を扇動する亡国の子たる『ヒトエ』を見下す。
「『フュンフ・エイル』の血統だけを頼みにして、安寧という惰眠を貪ってきた小国家が今更何が出来る。出来まいよ。君等の抵抗も、抵抗ですらない。僕が作り上げた小国家『シーヴァスリー』は『サスナー第一帝国』も『バンブーク第二帝国』も超えている。無論、『フィアレーゲン』もね」
これまで声の主が裏に在りし小国家の名。
滅び、過去になった国の名に意味はない。いわば、それはこの状況を生み出すための布石でしかない。目的ですら無い。通過点でもないのだ。
「『フュンフ・エイル』の才能の一つも受け継がなかった君には何も出来ない。凡夫そのものたる君にはね――」
●才能
小国家『八咫神国』は滅びた。
これまで国が周辺の小国家とくらべ、比較的平和に近い歴史を積み上げることができたのは、偏に『フュンフ・エイル』の血統という担保があったからであることを『帝』として統治していた『ヒトエ』は滅亡の際にありて知ったのだ。
「わかっている。私が何の才能もないことは」
己自身がよくわかっていることだ。
どれだけ血統だと、なんだと佞言によって彼は己を過信していた。わかっている。愚かであったということも、何も知らぬ凡夫であったことも。
だからこそ、立たなければならない。
ここで膝を折り、骸を晒すことは本当の意味での敗北であった。
「『帝』……準備が整いましてございます」
「よせ、その名はもう意味がない。諸君らが私に付いてきて来てくれているのが、その名のためであることを知っていたとしてもだ」
『ヒトエ』はもう『帝』ではない。
すでに『シーヴァスリー』によって滅ぼされた国の統治者たる名に執着していた頃の己ではない。国が亡くなり、潰えた。ならば、己が為すべきことは唯一つ。
居並ぶキャバリアたちを見やり、『ヒトエ』は告げる。
「私が願うのは、諸君らの『祖国の奪還と復活』だ。諸君らが今も尚私に忠義を尽くしてくれていること、誇りに思う。だが、私を護る必要はない。諸君らは、諸君らの誇りを護るために戦えばいい。我らの大地を簒奪されたままで良いはずがない。誇りはそこに置いてきたのだろう」
告げる言葉は、かつて『帝』直近の近衛部隊に届くだろう。
本来であれば、彼等が駆るキャバリアも近衛専用機であったが、その悉くが消失している。
残ったのはSk-29『グローザ』と呼ばれる量産機のみであった。
しかし、彼等の瞳には未だ誇りと活力が漲っていた。何故ならば、彼等が奉じるは『帝』ではなく『ヒトエ』という一人の主のみであったからだ。
「そして、私は諸君らのために戦おう。諸君らの誇りのために」
咆哮のような声が立ち上る。
『ヒトエ』の背後にあるキャバリア『アルシェドール』。
かつて、『フュンフ・エイル』が駆ったキャバリア『熾盛』の機能を分割した機体。『フルーⅦ』が所有しているキャバリア『レーギャルン』と謂わば兄弟機である。
『レーギャルン』が戦闘データのコア『ファフニール』とエネルギー出力機『ヴァルキリー』を分割したものであるのならば、『アルシェドール』は本来『熾盛』に必要なかった複数師団規模の指揮統制を有するキャバリアである。
「……取り戻してみせる。私の誇りではない。私のためにと生命を投げ打つかれらの誇りのために」
『シーヴァスリー』との戦力差は歴然。
されど、このキャバリアの機能を使えば、数の不利は覆せる。そのはずだった――。
●直下
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア――小国家『シーヴァスリー』と亡国となった『八咫神国』の残存軍との戦いにおいて、オブリビオンマシンの存在が確認されました」
ナイアルテは、新興小国家である『シーヴァスリー』によって滅ぼされた『八咫神国』のかつての元首である『帝』が率いる残存軍の存在を示す。
国は滅びても、人は残る。
それがこの戦乱が続く世界、クロムキャバリアである。
『八咫神国』の人々の多くは『シーヴァスリー』に恭順を示したが、支配に抵抗する者たちもまた存在しているのだ。
「『帝』と呼ばれていた残存軍の盟主『ヒトエ』さんは、小規模ながらも軍を再編し、『八咫神国』を取り戻そうとしています」
それ自体は猟兵たちの介入することではない。
けれど、オブリビオンマシンが関わってくるというのならば話は別である。
そのとおりだとナイアルテはうなずく。
「彼等が『シーヴァスリー』との戦場に赴いたまさにその時、残存軍のキャバリアが何故か一斉にオブリビオンマシン化してしまうのです」
これは残存軍にとって大きな痛手だ。
軍としての体裁まで取ることが出来なくなれば、『八咫神国』は完全に潰えてしまう。しかし、オブリビオンマシンを放置しておくことはできない。
「どうしてオブリビオンマシンと化したのかは、未だわかりません。ですが、これらを破壊しないことには、どのみち残存軍の皆さんは心を狂わされ、本来の戦いすら忘れて破壊を撒き散らすことでしょう」
そして、オブリビオンマシン化は、残存軍だけではなく、その盟主たる『帝』――『ヒトエ』の駆る『アルシェドール』にも及ぶ。
そうなってしまえば、彼の祖国の民のための戦いも、全て無謀では破滅的な思想に塗り替えられてしまう。
「……そうなる前にオブリビオンマシンを破壊し、彼等の暴走を止めなければなりません。どうやら、『シーヴァスリー』との戦場には小国家『グリプ5』のキャバリア部隊も現れるようです」
オブリビオンマシンを打倒した後は、彼等と連携することも必要になるかもしれない。
為すべきことは多い。
けれど、多くの生命を救うためには、この戦乱をこそ切り抜けなければならないことを猟兵達は知るだろう。
ナイアルテが頭を下げ、猟兵たちを見送る。
その先にあるの昏き戦乱の影が、今も尚背後に張り付くようであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリアにおいて亡国たる『八咫神国』の残存軍のキャバリアがオブリビオンマシン化してしまいます。
彼等の心意気や、祖国を取り戻したいという願いを踏みにじるオブリビオンマシンの目論見を打倒し、彼等を救うシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
集団戦です。
皆さんが駆けつけたまさにその瞬間、残存軍のキャバリアがオブリビオンマシン化してしまいます。
戦場は混乱していますが、皆さんと残存軍のオブリビオンマシンが戦うのを『シーヴァスリー』は静観しています。
狙いが何であるのかは不明ですが、まずはこれらを破壊しなければなりません。
●第二章
ボス戦です。
残存軍を率いる『八咫神国』の『帝』こと『ヒトエ』の率いるキャバリア『アルシェドール』もまたオブリビオンマシン化してします。
このままでは、彼の心は再び破滅的な思想に塗り替えられてしまうでしょう。
オブリビオンマシンを破壊し、残存軍の暴走を阻止しましょう。
●第三章
日常です。
残存軍のオブリビオンマシンを一掃すれば、小国家『グリプ5』の部隊が救援に訪れます。
それを見て『シーヴァスリー』の部隊は撤退するようです。
残存軍を収容した『グリプ5』の部隊は、試験部隊の様子であり、皆さんに試作キャバリアのデータ収集に協力を願い出てきます。
これに協力してもいいですし、そうした事情に関わりを持たずに小国家『グリプ5』での休息を楽しんでも構いません。
それでは、戦乱続く世界、クロムキャバリアにおいて誇りすらも嘲笑う存在の暗躍を阻止する皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『Sk-29『グローザ』』
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POW : 物量作戦
敵より【数的優位性を保っている】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
SPD : 包囲殲滅
【敵陣突破】から【後方へ展開する戦術的機動】を放ち、【包囲攻撃】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 反応装甲
対象のユーベルコードに対し【爆発反応装甲を起爆し、生じた破片と衝撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:御崎ゆずるは
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「――……なんだ、何が起きている……! 伝えろ『アルシェドール』!」
『ヒトエ』は目の前の戦場が混乱に陥ったのを悟った瞬間、己のキャバリア『アルシェドール』を起動する。
それは指揮統制用キャバリアであり、高度な情報処理能力と魔導・電子戦能力こそが破格の性能を引き出す力であった。
かつては『熾盛』に搭載されていたシステムであったが、単騎で軍すら退ける悪魔の如き力を持つ『フュンフ・エイル』には不要な機能。
膨大な戦闘データと出力機を分割した『レーギャルン』と同じく、そう簡単に扱えるものではなかった。
けれど、『フュンフ・エイル』の血脈たる『ヒトエ』は、それを手繰る。
『八咫神国』の残存軍の殆どは、Sk-29『グローザ』と呼ばれる量産機。
量産機ながら堅牢なフレームによって頑強さを誇る機体であった。
その機体が悉く暴走するかのように『シーヴァスリー』との戦端を開く前に、同士討ちを始めたのだ。
「破壊しなければならない……! 現状を!『今』を! この歪んだ戦乱の世界を、破壊しなければならない!」
「そうだ、そうだとも! 俺たちが破壊する! 何もかも! 俺たちを取り巻く全てを!」
「やめろ! 何故、味方を――!」
次々と伝わってくる情報。
まるで大波のように『アルシェドール』に流れてくる『八咫神国』の残存軍の混乱。
そう、彼等にはわからない。
彼等の駆るキャバリアがオブリビオンマシン化したことなどわかるはずもないのだ。
この混乱が引き起こされているのは、彼等のキャバリアがオブリビオンマシンへと変貌したがため。一見すれば、ただの乱心。
「だが、君にはわからないだろう。『フュンフ・エイル』の血脈。そう、わからないからこそ、君はどうしようもない。その機体すらもすでに僕の手中にあるということもね」
甘やかな声が聞こえる。
それは嘲笑うような声色であり、どうしようもない喜悦に満ちた声であった。
己の掌の上で全てが踊る。
楽しいと甘やかな声の主は言うだろう。
これこそが己の求めた超弩級の戦争。
「混乱こそが、技術を発達させる。人の意識が戦いに向き、そして、己の生存を掛けて生き残るための術を磨く。僕は、それが欲しいんだ」
『グローザ』のセンサーが妖しく煌き、残存軍は混乱に叩き落される。
それを『シーヴァスリー』の部隊は静観し続ける。
まるで、彼等の同士討ちをはじめから知っていたかのように、ただ沈黙したまま混乱を見届けているのだった――。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『全く、黒幕は阿呆なのか?どれだけ策を巡らせようとどれだけ手を回そうとその尽くを猟兵が塗り替え、超えていくとおもわないとはな』
戦場に新たなキャバリア、コスモスター・インパルスで降り立つぜ。
『さあ、新型だ。ひとっ走り付き合えよ!!』
【オーラ防御】のオーラをまとい、電磁機関砲での【制圧射撃】で牽制しながら、突撃しブレードでの【なぎ払い】と【鎧砕き】で攻撃。ユーベルコード【炎龍一閃】の斬撃で斬り捨てるぜ
超弩級の戦争。
それが黒幕の思い描くものであり、同時に望むものであったのならば、その戦乱の先にあるものは一体なんであっただろうか。
有史以来、人は争いの中でこそ様々な術を練磨し、高めてきた。
これは逃れようのない事実であり、戦いの歴史こそが人の歴史の本質であるといえることだろう。
どれだけ言い繕った所で、人は殺戮の禍から逃れることなどできないのだ。
「全く、黒幕は阿呆なのか?」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)はエネルギーウイングを備えた特空機1型・改『コスモ・スターインパルス』を駆り、戦場に降り立つ。
目の前にあるのは『シーヴァスリー』のキャバリア軍勢と小国家『八咫神国』に残されたキャバリアの軍勢。
かたや『シーヴァスリー』は微動だにしない。
まさに今、『八咫神国』の残存軍で起こっている混乱を予め知っていたかのように静観を決め込んでいる。
混乱の只中にある残存軍のキャバリア部隊は混乱し続ける。
『グローザ』と呼ばれたキャバリアは堅牢なフレームに支えられたキャバリアである。彼等の強みはやはり数だ。
堅実な戦い方をすることをこそ望まれた機体。
「どれだけ策を巡らせようと、どれだけ手を回そうと、その悉くを猟兵が塗り替え、超えていくとも思わないとはな」
ガイにとって、この戦乱の絵図を描いた黒幕のやり方は意味のないことであった。
しかし、黒幕の思惑がなんであれ、叶えるわけにはいかない。
戦乱を呼ぶのがオブリビオンマシンであるというのならば、これを必ず阻止するのが猟兵であるからだ。
新たなるガイのキャバリアの武装が炎を纏う。
ユーベルコードに煌めくアイセンサーと共に『コスモ・スターインパルス』が戦場を駆け抜ける。
「さあ、新型だ。ひとっ走り付き合えよ!!」
気合と共にオブリビオンマシンへと変貌した『グローザ』へとガイは迫る。
敵の数は確かに利するところであったことだろう。
こちらの攻撃は躱し、数でもってカバーする。そして、こちらへ攻撃は数でもって圧倒する。
そういう戦いを『グローザ』はするオブリビオンマシンであった。
「壊す。壊す! 何もかも壊すんだ! この現状も、俺たちを取り巻く環境も何もかも!」
破壊的な、それでいて破滅的な思想に狂わされた『グローザ』のパイロットたちの咆哮が戦場に響く。
彼等には本来そのような思想はない。
在ったのは己の故郷である亡国たる『八咫神国』の大地を取り戻す戦いという誇りだけであった。
けれど、それらを歪められた彼等にガイの言葉は届かない。
「だろうな……それがオブリビオンマシンのやり方ってんなら……一手、仕掛けるか!!」
炎龍一閃(エンリュウイッセン)の一撃が『グローザ』の一機を捉える。
放たれたブレードの一撃が『グローザ』の装甲を切り裂き、機体をかく座させる。電磁機関砲が『グローザ』の進撃を押し留め、オブリビオンマシンに塗れた戦場を切り裂く。
この残存軍は全てがオブリビオンマシンへと変貌する。
これはもう止めようのないことである。
しかし、パイロットたちは違う。失われていい人材ではない。
争いを肯定するわけではない。
失ったものを取り戻そうとする戦いさえ、あらゆる生命を危機にさらすものである。
けれど、彼等の誇りは決して損なわれてはいない。
いつだって誰かのために戦う者には力が宿る。それを知るからこそ、ガイは迫る『グローザ』全てを叩き伏せ、パイロットたちをオブリビオンマシンから救い出す。
「この戦いで残存軍が消耗することまで黒幕の算段通りなんだろうがな……だが、何一つ生命は失わせはしねぇ!」
迫る悪意を振り払うのが正義であるというのならば、彼等の誇りは悪意に食い物にされていいものではない。
ガイの瞳がユーベルコードに煌めく限り、過去の化身が目論む未来には決して届かせはしないと戦場に炎を立ち上らせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
八咫神国か。まだ生き残りがいたとはね。それにしてもいきなり全機がオブリビオンマシンになるなんて、作為を感じるわ。
とにかく、放ってはおけない。
「全力魔法」衝撃の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「竜脈使い」「仙術」「道術」で地烈陣。
戦場全域の地表を破壊する。その衝撃で、オブリビオンマシンの脚部くらいは壊させてもらうわ。
これ以上先へは進ませない。
必要とあらば、二度三度と、絶陣を使いましょう。
戦場に出てきた以上、死の可能性は分かってるはずよね。ましてや少数での侵略者への反抗。生きて返るつもりはない覚悟とみたわ。
だけど、あなたたちのような戦える人を喪うのは惜しいのよ。
出来る限り搭乗者は確保したいわ。
小国家『八咫神国』はかつて、同じく『グリプ5』や『フルーⅦ』と同盟関係にあった小国家であった。
それは百年前の戦争の折に『サスナー第一帝国』と共に戦ったという盟があったからである。
同時に不出世のエース、『フュンフ・エイル』の血脈が残るという他国に対する圧倒的な伝説と言う名の正統があればこそ、これまで周辺国家にくらべて平穏に満ちた日々を送ってこられたのである。
しかし、その平穏も戦乱渦巻くクロムキャバリアにおいては、永遠に続くものではなかった。
平和ボケ、と称されたかの国は、瞬く間に新興国家である『シーヴァスリー』によって滅ぼされた。
その要因の1つがオブリビオンマシンをめぐる猟兵の戦いであったことは皮肉でしかない。
戦乱の火種を蒔くオブリビオンマシンと、それをさせぬとする猟兵。
結果として猟兵の戦いが『八咫神国』の滅びの引き金を引いたことになる。
「まだ生き残りがいたとはね」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は滅びた小国家の残存軍が未だ戦う意志を見せることに驚いたのかもしれない。
多くの人々は『シーヴァスリー』に恭順を示した。
けれど、滅びた国家を憂い、そして取り戻そうという気概在る者たちが今も尚、抵抗している。
それを知ってゆかりは、捨て置くことなどできようはずもなかった。
「それにしてもいきなり全機がオブリビオンマシンになるなんて、作為を感じるわ……とにかく、放ってはおけない」
残存軍の全てがオブリビオンマシンと化する。
指揮を取っていたキャバリアさえもオブリビオンマシンになってしまったのだ。
これが作為的でなくてなんであるといえるだろう。
残存軍の抵抗すらも、この戦乱の絵図を描いた黒幕の思い通りであるというのならば、戦乱の渦に人々を叩き込むことこそが目的のようにも思えただろう。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。竜脈宿せし大地よ。永劫の微睡みから目覚め、汝を忘れ去った者共に相応の報いを与えよ。疾!」
ゆかりの瞳がユーベルコードに煌めく。
それは地烈陣(チレツジン)。
戦場の大地を揺らし、地表を砕くユーベルコード。
その大地の崩壊に『グローザ』たちは忽ちの内に巻き込まれていく。アンダーフレームが砕け、かく座し機動力を奪われたオブリビオンマシンは砲台にしかならない。
ゆかりが用いたユーベルコードは敵の混乱を沈めるものではない。ただ、敵の動きを止めるものであった。
動ければ、動くほどに彼等は己達で同士討ちを始めてしまうだろう。いや、目に映る全てが敵に見えているのかも知れない。
「破壊する、『今』を! この現状を破壊する! 俺たちの平穏を壊したものすべてを! 平和全てを壊す!」
支離滅裂である。
壊すことしか考えていない。
これが己たちの誇りを取り戻さんとした者たちを歪めるオブリビオンマシンの破滅思想の奔りであるというのならば、黒幕たるものの悪意が見え隠れするようでもあった。
「これ以上先へは進ませない」
確かにこの戦場に出てきた以上、死する可能性を『グローザ』のパイロットたちは覚悟していなかったわけではないだろう。
圧倒的な戦力差。
敵は新興国家ながら強大な力を有する『シーヴァスリー』である。次々と周辺小国家を滅ぼし、プラントというクロムキャバリアにおける力の象徴を取り込んでいる。
物量で叶うはずがない。
生きて還るつもりなどなかったのだろう。
それを愚かと呼ぶには、あまりにも人々は懸命すぎたのだ。誇りというものを取り戻し、己たちの生まれた大地を取り戻す。
ただ、それだけのことに生命を懸ける。
その愚かしさは、時に覚悟として受け止められたことだろう。
「だけど、あなたたちのような戦える人を喪うのは惜しいのよ」
ゆかりは告げる。
オブリビオンマシンを破壊するまで思想を歪められたパイロットたちは、彼女の言葉の意味を知ることもないだろう。
戦乱の世界クロムキャバリアにおいて、全ての人間が戦える力を持つわけではない。
だからこそ、ゆかりは『八咫神国』の残存軍たちを救わねばならないと思うのだ。誰も彼もが生命を失わないで済むように。そして、それを愚かとあざ笑い、己の欲望のためだけに生命を使って絵図を描く者に対抗するためには、力の強大さは関係ない。
その世界に生きる人々の無名なる力こそが決定だになるがゆえに、ゆかりは『グローザ』を地表の崩壊に巻き込ませ、その機動力を奪い続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
超電脳鮫魔術潜水艦・サメマリン
ククク……シャーッシャッシャッシャークッ!(笑い声)
戦いに意味を求める事、それこそ正に"無意味"!!
生きている以上、人は必ず闘争を求めるものサメ!シャー(自分)はサメボーグだけどなサメ!やはり人間は愚か!サメこそが世界を支配すべき全能存在サメ!
オブリビオンサメマシンに乗り電脳ゴーグル起動!世界侵食魔術「W.H.S」でこの場をキャバリアサイズの超電脳鮫がウヨウヨ泳ぐ電脳空間に書き換えてオマケでUC砲でドーンとするサメ!
ところで、鮫魔術士のあらゆる環境での飛行能力を与えるUC「シャーク・トルネード」って発祥地のグリードオーシャンなら飛べるサメが、ここクロムキャバリアだとどうなんサメ?グリモア猟兵?
戦乱が渦巻く世界クロムキャバリアにおいて、それは当然のものであった。
人が争うのに理由が要るだろうか。
否。
理由は必要ない。
個と個が出会えば、それは必然、他となる。己の生存の最上の命題とするのならば、己とは異なる個とは即ち敵である。
己の生存を高めるために人は群れる。
群れは膨れ上がり、国となる。国と国とは争う。己の肥大した肉体とも言うべき人間を活かすために、このクロムキャバリアにおいてはプラントという名の果実を求めて相争う。
如何に人が言葉を弄し、互いに理解し合うのだとしても、それはやはり無意味なことであったのだ。
「ククク……シャーッシャッシャッシャークッ!」
それは高らかに上がる笑い声であった。
猟兵のユーベルコードに寄ってオブリビオンマシンと化した『八咫神国』の残存軍の機体は、多くが砕けた大地によって機動力を殺されていた。
『グローザ』に配された反応装甲によって、機体は無事であったとしてもアンダーフレームを破壊された機体であっては十分に動くことはできない。
しかし、なんであろうか。
この高らかな笑い声。本当に笑い声なのだろうかと思うほどに意図して造られた笑い声のように感じる。
「戦いに意味を求める事、それこそまさに“無意味”!!」
それは超電脳鮫魔術潜水艦・サメマリン(超電脳鮫魔術戦士《S.H.A.R.K》・f37143)の高らかな笑い声であった。
頭脳戦者の鮫魔術師にして電脳魔術師でもある機械鮫。
それが超電脳鮫魔術潜水艦・サメマリンである!
「生きている以上、人は必ず闘争を求めるものサメ! シャーはサメボーグだけどなサメ!」
ああ、サメってもしかして語尾。
ぽこん、と何処かでサメのポップアップアイコンが反応したような気がしないでもないが気のせいである。
サメマリンの経っていた地面から鮫歯がぐるりと彼女を取り囲み、口腔へと飲み込む。
それは彼女のオブリビオンマシンである飛空潜水艦キャバリアである。
「やはり人間は愚か! サメこそが世界を支配すべき全能存在サメ!」
高らかに宣言するサメマリン。
言っていることはめちゃくちゃである。それ以前に飛空潜水艦キャバリアに飲み込まれたのは大丈夫か。
いや、サメマリンは電脳ゴーグルを装着し、口腔より飛空潜水艦キャバリアの艦橋に座す。
これより行うは、超電脳鮫魔術式サーバーマシンによる世界侵食魔術。
そう、世界はサメを求めている。
「ところで、鮫魔術であらゆる環境での飛行能力を与える『シャーク・トルネード』って、発祥地のグリードオーシャンなら飛べる鮫が、ここクロムキャバリアではどうなんサメ?」
無論、空を飛んでいる以上、暴走衛生『殲禍炎剣』によって狙撃される。空よりの砲撃に寄って、地表には大ダメージが入るであろうし、市街地で行えばその被害は甚大なものとなる。
このクロムキャバリアの通信網が小国家単位で断絶している原因もある。
「ならば電脳空間で現実を書き換えて、オマケで……」
サメマリンの瞳が……アイセンサーが煌めく。
ユーベルコードの煌きを受けて、飛空潜水艦の砲塔が『グローザ』へと向けられる。周囲には、キャバリアサイズの超電脳鮫がうようよしている。見るものに根源的な恐怖を与える鮫の威容、此処に極まれりというやつであろう。
『グローザ』のパイロットたちは、オブリビオンマシンによって歪められた破滅的な思想以前に迫る鮫の威容に動きを止める。
となれば、後の仕事は簡単なものである。
「インテリジェントキャノンでドーンとするサメ!」
砲塔より放たれた砲弾が立ち往生する『グローザ』へと打ち込まれる。その一撃は、何処に逃げようとも追いすがる鮫の歯と同じであった。
この電脳魔術に寄って書き換えられた空間。
そこは深海と同じであったことだろう。
サメマリンは、その空間において唯一絶対たる覇者そのもの。
放つ砲弾より『グローザ』が逃げることは赦されない。
「サメの偉大さをオブリビオンマシンより開放されて、とくと伝えるサメ!」
サメマリンは、シャーッシャッシャッサークッ! とトレードマークになりそうな笑い声と共に小国家『八咫神国』のオブリビオンマシン『グローザ』のアンダーフレームを反応装甲を物ともせず打ち抜き、その戦闘力を次々と奪っていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
もうすっちゃかめっちゃかですわね
参りますわよヴリちゃん!
本日はガンフューラーですわ!
オブリビオンマシンはデストロイですわ〜!
シーヴァスリーの方々は見てるだけですの?
おセコいですわねぇ
かまいませんわ!わたくしとヴリちゃんがいれば万事解決ですもの
敵ながら良いチームワークですわ
このままでは囲まれてしまいますわ
イライラしますわ!むきー!
ヴリちゃん!ベルセルクシャウトで吹っ飛ばしてさしあげるのですわ!
わたくしも吠えますわ!ばうばうばう!
連携を崩してしまえば個々は大した事ございませんわ
すっ転ばせたところを二連装で狙い撃ちですわ
命だけは見逃してさしあげるので勝手に逃げるのですわ
もう戻ってくんじゃねぇぞですわ
猟兵の降り立った戦場は、いうなれば混沌そのものであったことだろう。
戦場のセオリーはまったく通じない。
いや、例えメソッドが成り立つのだとしても、猟兵には関係ない。生命の埒外たる存在であるがゆえに。
とは言え、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)の目の前に広がる戦場は、それ以上であったのかも知れない。
地表は砕かれ、オブリビオンマシンと化した『グローザ』の機動力は損なわれている。さらに世界を侵食する電脳魔術に寄って周囲は深海の如きサメが揺蕩う光景へと変わっている。
時間と共にこの混乱は鎮まるだろうが、それでもメサイアは、この状況を的確に示す言葉を吐き出すしかなかった。
「もうすっちゃかめっちゃかですわね」
それは、『すっかりしっちゃかめっちゃか』という略語であっただろうか。
しかしながら、それが戦場を評する正しい言葉であったことだろう。メサイアの駆る暴竜たる『ヴリトラ』は射撃戦能力強化仕様……即ち、『ヴリトラ・ガンフューラー』となって戦場を踏みしめる。
「オブリビオンマシンはデストロイですわ~!」
メサイアの言葉に応えるように『ヴリトラ』のアイセンサーが煌めく。
そのモニターの視界に移るは小国家『シーヴァスリー』のキャバリア部隊。
彼等は沈黙し、動かない。
オブリビオンマシンと化した『グローザ』たちの動きを見つめるばかりで行動しようとしていない。
それは猟兵たちにとっては助かるものであったことだろう。
「おセコいですわねぇ」
メサイアにとってはそうではなかったのかもしれない。
彼等の行動は漁夫の利を狙うものであるように思えたからであろう。それもまた事実であろう。
暴走するように混乱に陥った『グローザ』の挙動は味方であっても構わないように混沌に満ちている。
「破壊する! 破壊だ! 破壊だけが、俺たちを開放してくれる!」
『八咫神国』の残存軍。
彼等はオブリビオンマシンによって思想を歪められ、破滅的な思考にかられて『ヴリトラ』を標的とみなし迫る。
「かいませんわ! わたくしとヴリちゃんがいれば万事解決ですもの」
迫る『グローザ』は堅牢なるフレームのキャバリアである。
その堅牢さは機動力を奪われても尚、健在であることで証明されているであろう。見事な連携によって『グローザ』から放たれる砲火は『ヴリトラ』へと迫る。
「敵ながら良いチームワークですわ。こちらを包囲する動きはお見事ですわ~!」
砲火が『ヴリトラ』の機動を制限するように打ち込まれ続けている。
『ヴリトラ』が立ち止まると、即座に弾丸が打ち込まれてくる。これが機動力を削がれても尚、戦うことをやめない『グローザ』のパイロットたちの破滅的に歪められた技量であるのだろう。
「イライラしますわ! むきー!」
思うように動けないメサイアは、思わずお姫様らしからぬ言動をしてしまう。
しかし、イライラした所で自体が好転するわけではないことを『ヴリトラ』は言うだろう。
そう、このような包囲を突破するためには、やはり物理。
『ヴリトラ』の顎がもたげるようにひろがる。煌めくはユーベルコードの煌き。
「わたくしも吠えますわ! ばうばうばう!」
メサイアの言葉と共に『ヴリトラ』の口腔より放たれるは、狂竜咆哮(ベルセルクシャウト)。
敵味方を識別する物理的衝撃はを伴う恐ろしき咆哮が戦場に轟く。
轟々たる音。
それは弾丸よりも早く、そして弾丸すらも吹き飛ばす衝撃波となって『グローザ』たちに放たれる。
堅牢たるフレームを持つ『グローザ』には致命打にはならないだろう。
けれど、連携は崩れる。
『ヴリトラ』を取り囲んでいた砲火が緩んだ隙に一気に『ヴリトラ』の二連装ロングレンジビームキャノンから火線が放たれる。
その火線は『グローザ』のアンダーフレームを打ち抜き、オーバーフレームを吹き飛ばす。
コクピットブロックを外しているのはメサイアの手腕であるのか、それとも『ヴリトラ』の命中精度が上がっているせいか。
どちらにせよ、『グローザ』のパイロットたちの生命を奪うつもりはないのだ。
「生命だけは見逃してさしあげるので勝手に逃げるのですわ」
メサイアは告げる。
それは皇女とのして慈悲であっただろう。
「もう戻ってくんじゃねぇぞですわ」
しかし、お口が悪いのがだいぶ台無しであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
ヤレヤレだね。
このタイミングで一斉にオブビリオンマシン化…か。
こうも黒幕の目的がわからないと、モヤモヤするね。
目には目を…。
オブビリオンマシンにはオブマシンってね。
行くよシビリアンジョー!!
ARICAはいつも通りパールバーティで『援護射撃』をお願いね。
さて、悪いけど…一気に殲滅する。
数的優位なんて、一気に削れば意味のないものさ。
フルインパクト・ギガドライブ点火!!
ダークマンティスを『エネルギー充填』開始。充填率を『限界突破』を確認。アマテラスを射出し戦場を『索敵』し『情報収集』うん敵機の位置を補足
目標群に『レーザー射撃』を『範囲攻撃』でまとめて吹っ飛ばすよ。
オブリビオンマシンの策動は常に人の世に戦乱の火種を齎すものである。
そのタイミングが最も効果的に、効率的に戦乱へとつながるようにオブリビオンマシンは暗躍する。
今もまたその一つであることがわかるだろう。
己の大地である『八咫神国』を取り戻さんとする亡国の残存軍。
彼等のキャバリアは突如としてオブリビオンマシンへと変貌した。
いかなる理由かはわからない。けれど、それを望んだのは他ならぬオブリビオンマシンであることは明白である。
「破壊する。破壊、破壊、破壊! この現状を『破壊』しなければ!!」
『グローザ』はオブリビオンマシンへと成り果てた。
堅牢なるフレームを有するキャバリアがオブリビオンマシンへと変わったことで、戦場は混乱に満ち溢れた。
しかし、敵対していた小国家『シーヴァスリー』のキャバリア部隊は、事態を利用するでもなくただ静観し続け、沈黙している。
その不気味さをもってしてもユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は被りを振るのみであった。
「ヤレヤレだね。このタイミングで一斉にオブリビオンマシン化……か」
どうにもモヤモヤするとユーリーは己の心の中をかきむしる思いであった。
そう、今の今までキャバリアであって『グローザ』が突如としてオブリビオンマシンへと変貌する。
巧妙に仕掛けられた罠か、それともそれ以外か。
それ以上にユーリーの心をざわめかせるのは、この絵図を描いた黒幕の思惑である。
わからないのだ。
何故混乱を齎すのか。何故戦禍を拡大させようとするのか。
ただいたずらに戦争状態に持ち込むのならば、国を滅ぼす必要はない。これまで恐らく黒幕が座すであろう小国家『シーヴァスリー』は二つの小国家を滅ぼしている。
「目には目を……」
しかし、ユーリーはその思考を振り切って戦場に飛び出す。
「オブリビオンマシンにはオブリビオンマシンってね。行くよ『シビリアンジョー』!!」
AIによって制御された無人キャバリアからの砲撃を背にオブリビオンマシン『シビリアンジョー』がユーリーと共に戦場を駆け抜ける。
迫る『グローザ』の数的優位に立った時の連携は厄介である。
だが、ユーリーにとって、それは対処可能なのものであった。
「さて、悪いけど……一気に殲滅する」
数的優位に相手が立っているからといって、その戦法に従ってやる必要はないのだ。一気に削る。
それが数的優位を誇る『グローザ』に対抗するユーリーの出した答えであった。
「フルインパクト・ギガドライブ点火!!」
頂戴な荷電粒子砲の砲身がゆっくりと『シビリアンジョー』の肩から地面に水平に向けられる。
その砲口の先にあるのは無論、オブリビオンマシンである。
煌めくアイセンサーは、妖しく、そして己が同類であろうオブリビオンマシンに向けられている。狂気すらはらむであろう煌きは、その搭乗者であるユーリーにも伝わるものであった。
これがオブリビオンマシンである。
猟兵でなくば扱うことのできない機体。ゆえに破壊するのだ。
「充填率100%を突破! ……『アマテラス』!」
ユーリーの言葉に応えるようにモニターから伝わる情報。
それは戦場の情報を伝えるドローンの名。戦場に配された『ドローザ』たちの位置を把握し、充填されたエネルギーを長大なる砲身より放たれるレーザーでもって一気に殲滅するのだ。
放たれるレーザーは雨のように『ドローザ』の機体を撃ち抜くだろう。
オーバーフレームを、そしてアンダーフレームを。
その尽くが『アマテラス』から伝えられる情報でユーリーは理解することができる。
情報の波がユーリーの脳を焼くだろう。
けれど、それでもユーリーは『グローザ』を貫く光を見やる。コクピットブロックを外す。
それは戦場にあっては一歩間違えば、己の死に直結するものであった。
「それでも、敵はオブリビオンマシンのみでしょう!」
パイロットは傷つけない。
ドローンを使って戦場の情報を集めたのはこのためだ。戦場は殺すか殺されるかだ。けれど、オブリビオンマシンが齎す戦場にあって猟兵として戦うのならば、やはり彼等を殺してはならない。
いびつな戦場にあって失われる生命などあってはならないとユーリーは目まぐるしく放たれる火線に煌めくオブリビオンマシンの破壊を見つめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!!(お約束
人の世に争いあり
それは仕方がないことですがオブリビオンマシンが暗躍しているというなら
それを止めるのは私たちの役目ですね
かもんっ!『ファントムシリカ』!!
…あれ?もしかして私目立ってます??
よーしシリカ突っ込みまぎにゃぁぁぁぁぁぁ!?
距離!距離詰めないとファントムシリカ戦えないから!
ほんとにそろそろ遠距離武器をですね!!
ともあれ『当たらなければどうということはない』精神で!
セラフィナイトスピアで斥力フィールドを展開
敵の攻撃を跳ね返しながら
【疾風怒濤】で全力突きまくりです!
「手数こそ正義!参ります!」
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!!」
お約束の前口上と共にサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はクロムキャバリアの戦場に降り立つ。
空気読めてないとかそんなことは最早どうでもいいことである。
この戦場に置いて彼女がなさねばならぬことは唯一つ。
たった一つのためにこそ彼女は戦場にを駆け抜ける。オブリビオンマシンの咆哮が響き渡り、パイロットたちの歪められた思想による叫びが木霊する。
「破壊だ、『今』を破壊しなければ! 意にそぐわぬ現状、失ったという過去も何もかも!」
彼等を突き動かすのは、歪んだ誇りだ。
小国家『八咫神国』は戦乱の世界にありて、比較的安寧を享受していた小国家である。しかし、それも戦乱の炎の中に消えた。
かつて在りし誇りは、オブリビオンマシンによって歪められ、己達が強いられている現状をこそ破壊しなければならないと叫ぶのだ。
「人の世に争いあり。それは仕方のないことですが、オブリビオンマシンが暗躍しているというなら、それを止めるのは私達の役目ですね」
オブリビオンマシンは猟兵以外に知覚できない。
己の思想が歪められているということも理解できない。ただ突如として発狂したとしか見えないがゆえに、戦乱は拡大していくしかないのだ。
ゆえに、サージェは天に指を打ち鳴らす。
「かもんっ!『ファントムシリカ』!!」
虚空より現れるサイキックキャバリア『ファントムシリカ』。
その白と紫を基調としたキャバリアの姿は、戦場にありて咲く花のようでもあったことだろう。
「……あれ? もしかして私目立ってます??」
サージェは一斉にオブリビオンマシン『ドローザ』のアイセンサーがこちらを向いていることに首を傾げる。
おかしい。
自分はクノイチ。忍びのはずである。目立つことなんてあるわけないのにって思うのだが、AIである『シリカ』はお姉ちゃんのそういうところなんだけどなと口には出さない。
だって、もう何度も口にしたって改まらないのだから。
「よーし『シリカ』突っ込みまぎにゃぁぁぁぁぁ!?」
ほら、こんな感じである。すぐにこれである。吶喊突撃突進。そうすれば解決できるとサージェはもう頭に刷り込まれているのだ。
だから、サージェの褐色のお肌に縦線がきざまれるのだ。
「距離! 距離詰めないと『ファントムシリカ』戦えないから! ほんとにそろそろ遠距離武器をですね!!」
言い訳はいいからと、『シリカ』が爪をにゅっと伸ばす。
「ハイ! がんばります!!」
サージェはぴしっと背筋を伸ばす思いで迫る『ドローザ』たちを見やる。数的優位に立っている彼等にとってサージェ、もとい『ファントムシリカ』は単騎。
見たところ、遠距離武装を持っていないところから、囲い込んで十字砲火を浴びせようとしているのだろう。
それは正しい。
けれど、それは『ファントムシリカ』に装備されたセラフィナイトスピアの斥力フィールドの力を知らないからである。
「ともあれ『当たらなければどうということはない』精神で!」
展開される斥力フィールド。
その力は放たれた弾丸を弾き、跳ね返す。硝煙が立ち上る中、『ファントムシリカ』の機体が飛び出す。
「手数こそ正義! 参ります!」
サージェの瞳がユーベルコードに煌めく。
そう、疾風怒濤(クリティカルアサシン)たる連撃。それは手にしたセラフィナイトスピアによる超高速連続攻撃。
速度を生かして飛び込み、敵との間合いを詰める。
何も考えなしに突撃しているわけではない。己を狙う十字砲火を逆手にとって、敵の同士討ちをためらわせ、さらに斥力フィールドでもって弾丸を弾き飛ばしながら、『ドローザ』の四肢を一瞬にして切り裂くのだ。
「接近戦仕様であっても、戦い方一つでどうとでもなるものです!」
だから突撃でオッケーなのである。
そんなサージェの思考を読み取ったかのように『シリカ』の爪がまたにゅっと伸びる。
サージェは、また己の柔肌に縦線をきざまれてはたまらないと、砲火荒ぶ戦場にあって、己の機体を傷つけぬよう、縦横無尽に駆け回るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル02操縦。
何が、破壊する、だ!
これは彼等の物じゃない、マシンの、オブリビオンの物だ!
キャバリア、起動だ!戦え!!こんなモノ壊してしまえ!!!
『灯火の戦塊』で自律キャバリア・グローザを呼び出し数の不利を補い、
【継戦能力】不壊属性で敵の攻撃を、破壊衝動を受け止めさせる。
こんな戦いで死なせるものか!こんな死に方はあんまりだ!!
殺すな!壊せ!こんなものはいらない!!戦塵はマシンだけで十分だ!!!
透明化【迷彩】状態で【不意打ち】
不意に現れては【呪詛弾幕】で敵機の機能を破壊。
自律キャバリアに注意している敵機を、灼熱光剣で関節部を【切断】。
【早業】で離脱と介入を繰り返し無力化していく!
「破壊する。『今』を破壊する。虐げられている我々の現状を!」
「破壊、破壊、破壊、破壊!!!」
その声はオブリビオンマシンと化した『ドローザ』のパイロットたちの怨嗟の如き咆哮であった。
彼等は誇りを持って亡国たる己の国を取り戻そうと立ち上がった残存軍である。
かつて『八咫神国』と呼ばれた小国家の兵であり、今は誇りを持って取り戻さんとしていた戦士でもある。
けれど、彼等の思想は全てが歪められる。
オブリビオンマシンと化した『ドローザ』によって、破滅的な思想へと代わり果て、己の歪んだ誇りのためにこそ全てを破壊しようと戦場に混乱を齎すのだ。
それがオブリビオンマシンの背後にあるであろう黒幕の望んだ絵図であることは言うまでもない。
けれど、それをさせぬのが猟兵である。
オブリビオンマシンの影が在る限り、猟兵は世界の悲鳴に応えてやってくる。
「何が、破壊する、だ!」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は異形なる六本腕のオブリビオンマシン『ディスポーザブル02』と共に戦場を疾駆する。
灯火の戦塊(ライトネスト)が戦場に灯る。
無数の自律キャバリア『グローザ』を呼び出す。それは戦場の亡霊のようなものであった。
「これは彼等の物じゃない、マシンの、オブリビオンの物だ!」
きらめくユーベルコード。
小枝子の瞳に宿る炎の如き煌きは嫌悪と怒りに満ちていたことだろう。破壊するという言葉が此処まで己の心をかきむしるものであると小枝子は知らなかったのかも知れない。
数的優位は崩れる。
小枝子の駆る『ディスポーザブル02』の周囲にある『グローザ』は、どれもがユーベルコードで生み出された不壊たるキャバリア。
例え、『八咫神国』の残存軍のパイロットたちが叫ぶ破壊への意志があろうとも、壊れることのないキャバリアである。
「戦え!! こんなモノ壊してしまえ!!!」
小枝子の咆哮が轟く。
それは目の前の思想を狂わされた『八咫神国』のパイロットたちへの悲哀であったのかもしれない。
迫る『グローザ』と組み合う小枝子の生み出した自律キャバリアである『グローザ』。
堅牢なるフレームがきしむ音が響き渡る。
「こんな戦いで死なせるものか! こんな死に方はあんまりだ!! 殺すな! 壊せ!」
小枝子の命じるままに『グローザ』は組み合ったオブリビオンマシンをねじ伏せていく。
そう、こんな戦いは戦いではない。
彼等が望んだ誇り在る戦いですらない。ならば、小枝子は叫ぶのだ。
「こんなものはいらない!!」
命の遣り取りをするところが戦場であることは承知している。
けれど、オブリビオンマシンの齎す戦場は、あらゆるものを歪めていく。誇りも、生命も、心も、何もかもだ。
それがどうにも小枝子には許せない。
透明化した『ディスポーザブル02』より放たれる呪詛の弾幕が残存軍のオブリビオンマシン『グローザ』を貫き、かく座させていく。
手にした灼熱光剣が次々と四肢を切り裂き、無力化させるのだ。
「戦塵はマシンだけで十分だ!!!」
生命を奪わぬ戦い。
ただ破壊するだけの戦い。それが小枝子に課せられたものであるというのならば、小枝子はそれをなさなければならない。
理由などない。
あるのは破壊を叫ぶ彼等が、それをこそ望んでいないことを知るからだ。
「オブリビオンマシン、お前達が何を企もうとも、戦乱を拡大させようとも! 必ずお前達を破壊する!!」
小枝子の咆哮は戦場に満ちる。
今あるのは怒りだ。
人は己の生き死にすら決めることができない。戦乱の中にありては、特にそうであろう。
だからこそ、許せないのだ。
戦いを歪め、戦いのために人を歪めるマシンの存在を。小枝子は、その元凶たるものをこそ破壊するために、灯るユーベルコードの煌きと共に戦場を縦断するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
誇り、かぁ。
気持ちはわからなくないから、オブリビオンマシンが関わってなかったら、
止めるものでもないと思うんだけど、ね。
みんないろんなものを背負ってるだろうから、そのために戦うのはいいんだけど、
それを利用しようとするのはちょーっと気分が悪いかな。
できればオブリビオン化する前に助けたかったけど、
今回はちょっと間に合わないみたいだから、パイロットの命だけでも救わせてもらうよ。
【ネルトリンゲン】で出撃して、空母の大きさを利用して敵を引きつけたら、
【E.C.M】を全力稼働させて、電子制御系を破壊して相手の動きを止めよう。
オブリビオンマシンの動きが止まったら、乗っていたパイロットたちの保護に全力を尽くすね
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)にとって、誇りというものは一体どういうものであったことだろうか。
亡国の残存軍は『八咫神国』と呼ばれたかつての平穏たる小国家を取り戻さんとしている。
破壊された平和は、もう二度と戻らないと知りながらも、彼等はそれを求めている。
わからないでもない。
失ったものは甘美なものとして記憶の中で再生されるだろう。
だからこそ求める。
欲してしまうのだ。
「誇り、かぁ」
気持ちはわからないでもないと理緒は思う。だが、それもオブリビオンマシンが関わっていなかったら、という一点につきるのだ。
もしも、オブリビオンマシンが関わっていなかったのならば、止めるものでもないと思っただろうし、ましてや猟兵として介入するものでもなかったからだ。
戦闘空母『ネルトリンゲン』が低空で空を飛ぶ。
飛行船以上の高度と速度を出しては暴走衛生『殲禍炎剣』の標的になってしまうがゆえに、速度は出せない。
しかし、その空母の巨大さはオブリビオンマシン『グローザ』の視線を釘付けにするだろう。
即座に上空に在る『ネルトリンゲン』に弾丸が飛ぶ。
低空で、それも低速で飛ぶ『ネルトリンゲン』は良い的であった。
「みんないろんなものを背負ってるだろうから、そのために戦うのはいいんだけど、それを利用しようとするのは、ちょーっと気分が悪いかな」
これが、オブリビオンマシンの背後にある黒幕の描いた絵図であるというのならば、理緒にとってそれは許しがたいことであった。
できればオブリビオンマシン化する前に助けてあげたいというのが本音であったが、それは無理だ。
すでにオブリビオンマシンと化した『グローザ』は残存軍全てのキャバリアへと波及し、混乱に陥れられている。
「破壊する。全て、全部だ! 壊して、壊して、壊して!『今』という現状を俺たちは破壊するんだ!」
今の状況に不服なのもわかる。
現状を変えたいという思いもわからないでもない。けれど、それはオブリビオンマシンに歪められたが故である。
誰も彼もが戦いを望んでいるわけではない。
より良い明日を望んでいる。ならば、理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
『ネルトリンゲン』のE.C.M(イー・シー・エム)が作動し、ノイズジャミングとディセプションが放たれる。
それは『グローザ』の電子機器を使用不能にし、彼等の連携を断ち切るものであった。
「パイロットの生命だけでも救わせてもらうよ」
キャバリアという兵器を喪うということは、このクロムキャバリアにおいて重大な損失になりえるだろう。
それだけで残存軍は二度と立ち上がることができなくなるかもしれない。
けれど、生命があればやり直すことはできるのだ。
「今は、その誇りを胸に生きて欲しいって思うんだよね」
生きてさえいれば。
再起は可能性として残るだろう。動きを止めた『グローザ』が他の猟兵たちの攻撃に寄ってかく座していく。
破壊の痕は、用意には癒えない。
けれど、生命が喪われてしまっては、二度と戻ることはない。
ゆえに理緒は、『ネルトリンゲン』で脱出したパイロットたちを次々と収容していく。彼等の生命は彼等のものである。
けれど、その生命は明日を紡ぐために使ってほしいと願うのだ。
「より多くのキャバリアを喪う。それが黒幕の思惑なのかもしれないけれど……!」
それでも救うのだ。
人が生きている限り、負けはしない生き物であることを知っているから。
黒幕が人の生命にすら愉悦を見出すものであったとしても、己の行動さえも計算のうちなのだとしても。
生きてさえいれば、必ずや届くはずなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーん…うー-ん…
うわ、メンドッ
というか気まずっ!
というかアレだよね、帝って何時ぞや何か斬ったのに乗ってたアレ
悉く面倒な手間を掛けさせやがって黒幕が!
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【蒼嵐大系】起動
竜巻を私を中心に纏わせて…更に『天候操作』もして局地的に大嵐状態に
まあ、中心に居るからこっちは何とも無いけど
ついでに竜巻の中に『オーラ防御』生成したシールドを混ぜて守りは完璧!
後は包囲しに来た敵を中から『斬撃波』でバランスを崩させて、同時に竜巻を飛ばして上空に『吹き飛ばし』て落として攻撃していこう
近付いてくる敵を優先的に
近接戦闘に持ち込む頑張り屋さんが居たら両剣で斬り裂こう
オブリビオンマシンと化した『グローザ』たちの混乱は猟兵たちの介入に寄って、さらなる混沌へと陥ることだろう。
だが、それでもこの状況を利用しようとするはずの敵対している小国家『シーヴァスリー』のキャバリア部隊は沈黙して動かない。
何が目的であるのかさえわからない状況であり、彼等の存在は謂わばこの戦場の舞台装置であるようにさえ思えるだろう。
『八咫神国』の残存軍をおびき寄せるための撒き餌。
そして、オブリビオンマシン化したキャバリア『グローザ』が混乱に陥り、破滅的な思想に囚われたまま壊滅することを望む……そのようにさえ勘ぐることができたかもしれない。
「うーん……う――ん……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は戦場にありて唸っていた。
面倒くさいと思っていたのだ。
いや、それ以上に気まずいとさえ思っていたことだろう。
この『八咫神国』の残存軍を率いているのは、かつて『帝』と呼ばれた『ヒトエ』――国家元首であった者である。
その彼はオブリビオンマシンに乗っていたし、玲はそれをぶった斬ったという経緯がある。
それを玲は思い出し、頭を抱えていたのだ。
悉く面倒な手間を掛けさせるのが、この絵図を描いた黒幕の思惑であったのならば、玲はそれを呪うだろう。
抜刀された模造神器の蒼き刀身の輝きが戦場に満ちる。
ユーベルコードの輝きであり、この体高5m以上の戦術兵器が跋扈する戦場において、生身単身であるということは奇異でしかない。
しかし、超常たる彼女の力は、その体高の差すらも用意に覆す。
「システム解放。風よ集え」
蒼嵐大系(ストーム・システム)たるは、玲の造り上げた模造神器の力の発露。
蒼き竜巻が自身を多い、さらに天候すら操作する模造神器の力によって、戦場は大嵐に包まれる。
「こんなもの……! 嵐ごときが、俺達の破壊を阻むな!」
「そうだ、破壊する。この現状も、この嵐も、何もかも!!」
『グローザ』を駆るパイロット達は皆、その心を歪めさせられている。無謀な突撃であると知っていたとしても、そうするべきだというように蒼き竜巻、その嵐の中心にあるであろう玲を目指して突き進むのだ。
「……嵐の中心は無風っていうか、こっちはなんとも無いんだけど……こっちの防御は完璧なんだよね」
玲の周囲に竜巻が荒び、さらにはオーラによって形成されたシールドが混ざっている。
如何に『グローザ』の放つ弾丸が強烈な一撃であったとしても玲には届かないのだ。
「でもまあ、降りかかる火の粉ってのいうのは、振り払うもんだよね」
放たれる斬撃波が蒼き竜巻となって己を包囲している『グローザ』を吹き飛ばす。堅牢なるフレームがあるからこそ、大地に叩きつけられてもコクピットブロックは守られるだろう。
ただし、その衝撃は完全に殺せない。
中のパイロットは意識を失うであろうし、そうなればオブリビオンマシンと言えど勝手に動くことはできないだろう。
「オブリビオンマシン単体では動けないってところが、ままならないよね。戦乱の火種は撒き散らすことができても、結局、そのマシンを動かす人がいなければならない……」
まあ、例外もあるだろうけど、と玲はかつての戦いで見たであろう異世界のオブリビオンマシンを思い出す。
あれもまたオブリビオンマシンであったが、パイロットの存在を確認できなかった。
「――……と、頑張り屋さんだね!」
竜巻の中を突破してくる『グローザ』の姿を認め、玲は思考を打ち切る。
手にした模造神器が煌き、その機体を切り裂く。四肢を切り払い、その戦闘能力を奪い、蒼い大嵐の中、玲は悠然と歩を進めるだろう。
このオブリビオンマシン化という渦中にある機体。
二度目の戦い。
気まずさしかない。けれど、それでもオブリビオンマシンとの戦いは避けては通れない。
それが宿命であるというのならばこそ、玲はオブリビオンマシンに二度に渡って心を狂わされる『帝』、『ヒトエ』を止めなければならないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『アルシェドール』
|
POW : 突撃破砕魔導射撃
自身の【周囲に展開するLV*5個の砲撃ユニット】から、戦場の仲間が受けた【損害】に比例した威力と攻撃範囲の【魔法砲撃】を放つ。
SPD : 近接防護魔導障壁
自身に【UCを吸収する魔導障壁】をまとい、高速移動と【UCを魔力に変換したLV個の精密誘導弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 諸兵科統合運用
【戦闘指揮システムの統制下にある戦力】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[戦闘指揮システムの統制下にある戦力]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
イラスト:key-chang
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ティー・アラベリア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戦場にありし残存軍のキャバリア『グローザ』は全てがオブリビオンマシンと化した。
けれど、それを『八咫神国』の『帝』であった『ヒトエ』は理解できなかっただろう。ただただ、混乱に満ちて破壊されていく己の臣民たちの機体を見ることしかできなかった。
残存軍は壊滅した、と言っていいほどの惨状であった。
「どうしてだ、何故……! 応えろ、『アルシェドール』!!」
『ヒトエ』は、己のキャバリアに問う。
かつて『熾盛』の機体に残されていた指揮系統能力。それを元の機体より不要とされ廃されたものを中心に組み上げられた師団レベルの機体を統率するキャバリア。それこそが『アルシェドール』というキャバリアであった。
指揮する部隊の性能を底上げする力を持ち、また類まれなる電子兵装によって敵軍を圧倒する。
だが、その『アルシェドール』は何も『ヒトエ』に応えない。
「わかっただろう。君の愚かさが。『フュンフ・エイル』の血脈でありながら、君は何一つ受け継いでいない。戦うための能力も、人を率いるための能力も、何もかも持っていない。あるのはただ位だけだったんだよ」
甘やかな声が代わりに聞こえる。
それは微笑むようでもあり、慈しむようでもあった。
「同じ血脈を持つ者、『フュンフ・ラーズグリーズ』とは違うね。彼は全てを受け継いでいるというのに、君はまったく何も持っていない。絞り滓のようなものだ。それで人を率いるなど、人に戴かれるなど……」
愚昧極まりない者たちだったと、甘やかな声は言う。滅びて当然であると。死して当然であると。
愚かな統治者の肉体たる臣民は、愚かな君臨者を戴いたが故に滅びるのは必定であると甘やかな声は告げる。
「違う、私は!!」
「違わないさ。君は何もない。何も持とうともしなかった。ただ残されたものを、溜め込まれた平穏という遺産を食いつぶしていただけに過ぎないのだから。でも、嘆くことはない。君のその愚かさこそが、人の本質なのだから!」
「違う、違う、違う、違う!!!」
咆哮が『アルシェドール』より響き渡る。
瞬間、周囲にかく座していた『グローザ』たちのアイセンサーが煌めく。妖しく、そして、次々と破損した機体を組み換え、無人のままに立ち上がる。
欠損した部位を補い、さらに二機を一機にレストアするように。
手勢は減ったとしても『アルシェドール』の魔導、そして『熾盛』より廃された指揮統制機能によって、己を護るように『グローザ』たちが展開する。
「否定するな! 私を否定するな! 私は、絞り滓なんかじゃあない!!」
すべて失ってもなお、人は生きなければならない。
失って得たのが恥辱であったとしても、『ヒトエ』は生きている。ならばこそ、己の過ちを是正し、受け入れ、己のためにと生命を使った者たちに贖うために、己の生命を他者のためにこそ使うことを決めたのだ。
けれど、それすらもオブリビオンマシンは歪める。
「いいや、どれだけ否定しようと君は愚かだよ。君の本質は人の悪性そのものさ。僕と同じようにね」
甘やかな声を振り払うように『ヒトエ』は己のキャバリア――否、オブリビオンマシン『アルシェドール』の機能を全開にし、視界に映る全てが己を否定しようとしているという妄執に取り憑かれるままに、戦場を再び混乱の坩堝へと叩き落とすのであった――。
ジェイミィ・ブラッディバック
ふむ、先日開発した新型無人機「プラチナムドラグーン」のテストケースとしては申し分ないでしょう。
この混乱した戦況で正確に敵機を認識、撃墜できるでしょうか。
プラチナムドラグーンとセラフィム・リッパー1個中隊を出撃。
私もTYPE[JM-E]に搭乗します。
プラチナムドラグーンの武装はレーザーキャノンとミサイルポッドを選択。
こちらに何らかの敵対的意思が向いたことが察知されれば、プラチナムドラグーンは自己複製を開始し迎撃行動を取ります。プラチナムドラグーンのミサイルで反撃。距離があればビームキャノンを斉射。
セラフィム・リッパーと私はプラチナムドラグーンの直掩へ。
さて…データ収集と参りましょうか。
破壊されたオブリビオンマシンは、己たちの機体の欠損を補うように機体を修復していく。
それが『アルシェドール』の力であったのか、それともオブリビオンマシンに仕組まれていた仕掛けであったのかはわからない。
わからないが、それでもオブリビオンマシンと化した『アルシェドール』に集う『グローザ』の機体は、その機体に搭載された指揮統制の能力を発揮する。
「否定するな、私を! 私を否定するな!!」
咆哮とともに『アルシェドール』の機体が鳴動する。
何か共振するかのように機体より発せられる信号がオブリビオンマシンである『グローザ』たちを突き動かす。
これが大軍を指揮するキャバリアの、オブリビオンマシンと化した『アルシェドール』の力であった。
その『アルシェドール』を駆る『ヒトエ』は、その心を歪められている。
一度目は、己の地位に執着するがゆえに。
そして二度目は、己の全てを否定されぬがために、他者を圧することを選んでしまう。
「ふむ、先日開発した新型無人機『プラチナムドラグーン』のテストケースとしては申し分ないでしょう」
ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)は、周囲の戦況をいち早く察知する。
己の機体と随伴する『セラフィム・リッパー』一個中隊が直掩しているのは、彼の言葉通り、無人機である『プラチナムドラグーン』であった。
テストケースと、称したのは混乱した状況があればこそであろう。
無人機である以上、人の意思は介在すれど反応はAIや機械の判断に委ねられる。ならばこそ、敵味方を認識し、敵のみを撃墜することができるか。
それだけがジェイミィにとっての関心事であったことだろう。
「『プラチナムドラグーン』……WARNING:INCOMING ENEMY ATTACK...QUANTUM COPY READY FOR LAUNCH」
「私を否定するな――!!」
咆哮を敵意と捉えた『プラチナムドラグーン』が粒子複製によって召喚され、『アルシェドール』より向けられた敵意に反応する。
それは機械的な反応であったことだろう。
だが、機械であるがゆえに、その反応は速かった。装備されたレーザーキャノンとミサイルポッドより放たれた火線とミサイルが『アルシェドール』に迫る。
「『グローザ』!!」
その言葉と共に『グローザ』が迫るミサイルを切り払い、その装甲に配された反応装甲によってレーザーを防ぐ。
敵の防衛ラインは硬い。
けれど、ジェイミィは理解しただろう。
『プラチナムドラグーン』がしっかりと敵意に反応したことを。
ならばこそ、このテストは成功したといえる。
「ならば、データ収集と参りましょうか。『セラフィム・リッパー』は『プラチナムドラグーン』の直掩に。ミサイルで反撃をしつつ、距離をとりビームキャノンでの斉射を」
ジェイミィは指示を告げ、無人機の挙動を見守る。
撃墜されることは避けなければならないが、恐らくはそうならないだろう。
『アルシェドール』とジェイミィの立ち位置は同じだ。
あちらは数をもって軍となし、敵を圧倒するもの。
こちらは質をもって軍を討ち果たし、敵を撃滅するものだ。
似ていたとしても、その本質が違う。
次々と更新されていくデータの洪水にジェイミィは目を通しながら、『グローザ』と『プラチナムドラグーン』の交戦記録に満足するだろう。
敵対の意志にのみ反応する兵器。
それは専守防衛でありながら、敵の存在を赦さぬ力となり得るだろう。このクロムキャバリアにおいて、戦うことは避けられぬことだ。
だからこそ、力を持たねばならない。
「『プラチナムドラグーン』……無人機。人の血の流れぬ戦いは、戦乱を如何なるものへと変えるでしょうか……」
戦場に明滅する戦いの光を見やり、ジェイミィは、オブリビオンマシンの策動に視線を巡らせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
んまあ!グローザが蘇りましたわ!キャバリアゾンビですわ!
折角壊したのになんて事してくださいますの!
おこですわよ〜!
こんな時は本体を狙うのがセオリー…なのですがグローザゾンビがお邪魔ですわね
ヴリちゃん!一旦おバック!おバックですわ!
滅亡の千光を使いますのよ
共食い合体して先ほどより数は減っておりますのでチャージタイムはちょっとだけで十分ですわ
これで一網打尽ですわ〜!おほほ!
あらー?本体には吸収されてしまいましたわ!
誘導弾はガンフューラーの全武装で撃ち落としますわ
UCが効かないなら通常武器でぶん殴るまでですわ!
素早く飛び回るのでしたらミサイルを撃ちまくりですわよ〜!
ひたすら撃って根負けさせるのですわ
「んまあ!」
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は思わず『ヴリトラ』のコクピットで呻いていた。
これまでオブリビオンマシンである『グローザ』を打倒してきた『ヴリトラ』とメサイアであったが、倒されたはずの『グローザ』が己たちの欠損を補うようにして、戦力としての姿を取り戻しつつ、『アルシェドール』を守っている姿を見たためである。
「まるで、おゾンビ! キャバリアゾンビですわ!」
せっかく壊したのに! とメサイアは地団駄を踏む。
流石にお姫様らしくない気がするが、それでも彼女の気は収まるところを知らなかった。
オブリビオンマシンは破壊しなければならない。
それは、このクロムキャバリアにおいて戦乱の火種にしかならないからである。外見はキャバリアと変わらない。猟兵の瞳でもってしか、その存在を認知できないからこそ、オブリビオンマシンは暗躍し、人々の平和への願いを踏みにじってきたのだ。
だからこそ、メサイアはおこであった。
激おこであったのだ。ぷんぷん姫であった。
「こんなときは本体を狙うのがセオリー……なのですが、おゾンビがお邪魔ですわね!」
ヴリちゃん! と『ヴリトラ』にメサイアが呼びかけた瞬間、機体が跳ねるようにして後退する。
「ヴリちゃん! 一体おバック! おバックですわ!」
『ヴリトラ』の口腔が開かれ、その『ジェノサイドバスター』の砲身が顕になる。
それはユーベルコードの光をたたえていた。
「共食い合体して先程より数は減ってますわ! これで一網打尽ですわ~! おほほ!」
滅亡の千光(ジェノサイドバスター・ディザスターレイ)が放たれる。
チャージの時間は多くを要することはなかった。数を減らした『グローザ』を殲滅するには、僅かな時間で十分。
直線的ではない、誘導性能を有した荷電粒子光線の一撃は、凄まじき性能でもって『グローザ』たちを貫いていく。
しかし、その光線の一分は『アルシェドール』の魔導障壁によって吸収されてしまう。
「私を否定するな! 私は!!」
『アルシェドール』を駆る『ヒトエ』の咆哮が響く。
心を歪められた彼にとって、メサイアのまばゆいばかりの直情的であり、なおかつ貴人である所作は、己の過去をえぐるものであったことだろう。
何も知らず、何も考えず、何も省みることもなく、ただ積み重ねてきた平和を食いつぶしていた過去の己とメサイアの『今』を生き、『今』を護るためにあらゆるものを置き去りにしてきた生き方は、あまりにも対象的であったからだ。
「お前は――消えろ!!」
魔導障壁に吸収された荷電粒子光線が魔力に変換され、誘導弾となって『ヴリトラ』へと迫る。
その誘導性能は凄まじい精密さを持っていた。
『ヴリトラ』が加速する。しかし、それでも振り切ることのできない誘導性。
「素早く飛び回るのでしたら、ミサイルを撃ちまくりですわよ~!」
今の『ヴリトラ』は射撃戦仕様。
この仕様であったからこそ、迫る誘導弾をミサイルで撃ち落とし、さらに互角以上に打ち合うことができるのだ。
「ひたすら撃ちまくるのですわ、ヴリちゃん!」
ミサイルの爆発と誘導弾の明滅が戦場を埋め尽くしていく。
凄まじい爆風が吹き荒れる中、『ヴリトラ』の咆哮が轟く。荷電粒子光線のエネルギーは凄まじい量の魔力を『アルシェドール』に与えただろう。
変換された魔力が打ち出す誘導弾は、狙い違わず己たちを付け狙う。だが、それでも『ヴリトラ』は咆哮する。
あれが『過去』であるというのならばこそ、『ヴリトラ』は己の咆哮で持って全てを破壊する暴竜である。
そして、救世主の名を持つメサイアが叫ぶのだ。
「根負けさせるのですわ!」
互いの物量は互角。
ならば、最後のひと押しは、ただ一つ。
そう、根性である。お姫様根性の爆発と共にメサイアは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
迫る誘導弾が己たちの力の発露であるというのならば、それを乗り越えることこそが救世主たるメサイアに課せられた試練である。
吹きすさぶ爆風の中、ただひたすらに脚と止め打ち合う二機。
ついには、『アルシェドール』は爆風の中に沈むだろう。メサイアと『ヴリトラ』。一人と一機は、己の限界を常に超えて、世界を戦乱に陥れるオブリビオンマシンをこそ、打ち倒す宿命を帯びている。
「やっぱり、火力と数こそが大正義ですわ――!」
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『人の心を歪めやがって…許さねぇぞ、黒幕のあほ』
【オーラ防御】を纏い、【フェイント】を織り交ぜながら突撃するぜ。
電磁機関砲の【制圧射撃】とハイペリオンランチャーによる砲撃で削りつつ、接近したらブレードでの【鎧砕き】と【なぎ払い】の【2回攻撃】を叩き込むぜ。
『お前はたしかにエースじゃないかもしれない。だが、人を率い、民を想う心と誇りがあったはずだ!』
ユーベルコード【獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』】で焼き尽くしてやるぜ。
人の過ちは正すことができる。
ただ認め、過ちを是正するからこそ人は歴史を紡ぐことができる
例え、全てが過ちだったのだとしても、最後に残るものがあるのならば、それを抱えて生きていくことこそが人の道である。
「私は否定されない。否定されてはならない。私を否定することは、私に従う者たちをも否定することである……だから、私を否定するな!!」
オブリビオンマシン『アルシェドール』を駆る『ヒトエ』と呼ばれたかつての『八咫神国』の元首たる『帝』は、すでにその位を廃している。
己の在処を人の中と定めたからこそ、亡国の主として立ったのだ。
けれど、その決意さえもオブリビオンマシンは歪めるのだ。
「人の心を歪めやがって……許さねぇぞ、黒幕のあほ」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)が憤るのもまた無理なからぬことであったことだろう。
『コスモ・スターインパルス』を駆り、ガイは己に迫る『アルシェドール』の魔法砲撃の雨をかいくぐる。
フェイントを重ね、織り交ぜ、それでもなお『アルシェドール』の魔法砲撃は精密なものであった。
『アルシェドール』麾下たる『グローザ』は多くが喪われている。
味方の機体が喪われば、喪われるほどに力をます『アルシェドール』にとって、『グローザ』は壁であると同時に力の源でもあったのだ。
「私を否定するな――!」
咆哮と共に放たれる魔法砲撃の雨は、『コスモ・スターインパルス』であってもかいくぐることは難しいだろう。
障壁としてまとったオーラがきしむ音が響き渡る。
一撃一撃が重たい。
それほどまでに『アルシェドール』の機体性能は破格のものであった。
指揮統制機能を持ちながら、単騎であっても他を圧倒する力。
それを駆る『ヒトエ』は歪みを持ちながらも、その圧倒的な力でもって猟兵を排除しようとせまっている。
「お前は確かにエースじゃないかもしれない」
その言葉は否定であった。
否定の言葉には、否定しか帰ってこない。ガイは、『ヒトエ』に言葉が届かないことに歯噛みしただろう。
彼は、心を歪まされ、全ての言葉が己を否定していることのように思えてならないのだろう。
魔法砲撃の攻撃を電磁機関砲とハイペリオンランチャーによって迎撃し、空中で激突した攻撃の爆風に紛れて『コスモ・スターインパルス』が迫るのだ。
「だが!」
「私を否定するな! 私は、私は、正しくあろうとしただけだ!!」
接近する『コスモ・スターインパルス』に打ち込まれる魔法砲撃。
その数は尋常ではない。
これだけの出力を持っていながら、指揮官機でしかないという事実は恐るべきものであったことだろう。
「人を率い、民を想う心と誇りがあったはずだ!」
それだけが、かつての『ヒトエ』と今の『ヒトエ』を分かつものであったことだろう。
他を省みることなく、ただ己のためだけに臣民があると思っていた妄執はすでに断ち切られている。
そして、今はオブリビオンマシンによって正しさを得ようとする心を歪められているだけだ。
ならばこそ、ガイは裂帛の気合と共にその瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
「我が刀に封じられし、獄炎竜の魂よ!!荒ぶる紅蓮の炎となりて、すべてを灰燼と化せ!!」
噴き上がるは炎竜の魂たる獄炎。
獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』(ゴク・グレンカイホウ・ヴリトラ・ファンタズム)は、ガイのユーベルコードであり、『コスモ・スターインパルス』より放たれる力の発露であった。
九つ首の竜を模した獄炎が『アルシェドール』へと迫る。
妄執は断ち切られ、しかして正しき心が歪められるというのならば、ガイは己のユーベルコードで、その歪みの原因たるオブリビオンマシンを焼き滅ぼすだろう。
「焼き尽くしてやるぜ、その歪みを齎すオブリビオンマシンの悪意ってやつを!」
放たれた炎が魔法弾すらも飲み込んで『アルシェドール』へと叩き込まれる。
その一撃は、確かに『アルシェドール』の装甲を焼くだろう。
歪み、ネジ曲がった心を癒やすには至らないかもしれない。
けれど、ガイが告げた言葉と同じように、彼を慕う者たちがいる。国を失ってもなお、『ヒトエ』に付き従い、忠義を尽くす者たちがいる。
ならば、ガイは彼等こそが『ヒトエ』を救う者たちであると信じ、己の手繰る獄炎でもって悪を為すオブリビオンマシンを包み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『帝』なら『帝』らしく、采配を振るった後は部下に任せればいいものを。
お互いの存在を否定し合う場所こそ戦場。オブリビオンマシンに、いいように心を歪められてるわね。
さて、もう仕事いきますか、
「召喚術」「式神使い」で『GPD-331迦利』を顕現。低空飛行しながら、「レーザー射撃」の「弾幕」を張って。砲撃ユニットはそっちに任せる。
反撃は無人機ならではの機動で回避を。
攻撃を『迦利』が引き受けている間に、「目立たない」よう交戦中の『アルシェドール』に近寄って、「全力魔法」雷の「属性攻撃」「衝撃波」で九天応元雷声普化天尊玉秘宝経!
雷霆の一撃を受けて、まだ動けるかしら?
砲撃ユニットくらいは破壊させてもらう。
統治者であるのならば、その地位に在ることに意味を見出すこともあるだろう。
何故己がそうであるのか。
それを知るのならば、『帝』と呼ばれた『八咫神国』の『ヒトエ』は、残存軍であったとして前に出ること無く後ろに控えていればよかったのだろう。
けれど、彼がそうしなかったのは大いなる一歩であったのかもしれない。
『帝』なら『帝』らしく。
「後は部下に任さればいいものを」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はそう思っていたし、その考えを改めるつもりはない。
戦場に出る以上、互いの存在を否定しあうことを理解しなければならない。
オブリビオンマシンによって心を歪められた『ヒトエ』にとって猟兵の言葉は己の存在を否定するものであったことだろう。
「私を否定するな!」
爆炎の中から『アルシェドール』と共に『ヒトエ』は飛び出すだろう。
あの機体は指揮官機である。
周囲に在る『グローザ』たちは、破壊されても欠損を補うようにして機体を維持しながら猟兵たちの道を阻むだろう。
「さて、もう一仕事いきますか」
ゆかりの背後から飛び出すは、機甲式『GPD-331迦利(カーリー)』である。
逆三角形のフォルムは、おおよそキャバリアと呼ぶにはふさわしくないものであったが、それゆえに無人機であることを示すことだろう。
「無人機で私を否定しようなどと!」
『アルシェドール』より展開した砲撃ユニットが『迦利』を取り囲む。
魔法砲撃の雨が降り注ぐが、『迦利』もまたレーザーの弾幕で持って切り抜ける。反応速度は無人機であればこそである。
もしも、有人であり、ゆかりが搭乗していたのならば、その急加速と急制動によってゆかりの五体はバラバラになっていたことだろう。
無人機だからこそ到達することのできる境地がある。
「無人機ならではよね、これは!」
ゆかりは『迦利』が『アルシェドール』をひきつけている間、目立たぬように戦場を走る。
目指すのはやはりオブリビオンマシンである『アルシェドール』である。
こちらの無人機である『迦利』に意識を割いている『アルシェドール』にとって、ゆかりの存在は理外であったことだろう。
「やっぱり、キャバリアを警戒している。当たり前だけれどね、この世界では!」
ゆかりの瞳がユーベルコードに煌めく。
それは不意打ちの一撃。
周囲の司会を阻害するほどの激烈なる落雷の一撃。
それは紫電でもって世界を染め上げるほどの強烈な光であった。
天より走る雷撃が『アルシェドール』を穿つ。
機体のあちこちから火花散るだろう。
「雷霆の一撃を受けて、まだ動けるかしら?」
ゆかりは見ただろう。
己のユーベルコードの一撃を受け止める砲撃ユニットの塊を。それは『アルシェドール』を護るように展開され、その雷撃の一撃を受けて黒炭と化し、ばらばらになって大地へと落ちる。
「私は否定されない。私は、否定されてはならない。私を否定するもの、即ちそれは、私達の誇りを汚すもの!」
その言葉は天を衝くものであったことだろう。
誰にも否定されない。
否定されることをこそ恐れるがゆえに、『ヒトエ』は歪められた心で叫ぶのだ。彼等を突き動かしていたのは誇りだけであった。
奪われた大地を取り戻すことだけが彼等の誇りを取り戻す戦いであったのだ。それを否定されぬためにこそ『ヒトエ』は力を振るう。
例え、己が『帝』たる地位を取り戻すことができなくても、己を信じてきた者たちにこそ報われてほしいと願った。
「だから、否定されたくないわけね。都合の良い話だけれど……誰かを否定すれば、誰からか否定される。あなたの膨れ上がった拒絶の言葉は、歪められて尚、誰かの心に寄り添いたくてしかたないのね」
ゆかりは『アルシェドール』が火花を散らす姿を見やる。
激烈なる雷撃は、彼の歪む心があげる悲鳴を穿つものであったことだろう。
どんなに嘆いても戻ることのない過去。
失ってしまったものは戻らない。けれど、失ったものを別のもので贖うことはできるのだ。
それを示すようにゆかりは、天より穿たれた一撃を持ってオブリビオンマシンの齎す歪みを討ち果たすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
まだ動くか!まだ壊れないか!!
ならもっと壊してやる!!!壊せ、ディスポーザブル!!
ディスポーザブル02操縦。
【召喚術】02群の腕を虚空から引き出して【呪詛弾幕】の乱れ撃ち!
グローザ達を呪い、機能不全に陥れながらアルシェドールへ接近する道筋を見出す!
ああもうさっきから否定するなだなんだと、小難しい事をいってないで!こっちを見ろ!!
【推力移動】重力制御で加速しながら『破傷戦』を発動。
【恐怖を与える】呪詛弾幕を喰らった敵を崩壊させて道を強引に造り出す!
お前に拳を向けている自分をだぁあああ!!!
【重量攻撃】加速と重力の乗った02の拳でアルシェドールの横面を殴りつけてやる!壊れてしまえ!!
破壊された砲撃ユニットは消し炭のように消える。
けれど、未だ全てを破壊したわけでもなければ、欠損した部位を撚り合わせながら数を減らしつつも立ち上がる『グローザ』たち。
それが壁となってオブリビオンマシン『アルシェドール』を守り、また同時に『アルシェドール』のユーベルコードが『グローザ』を強化する。
集う機体の数が多ければ多いほどに『アルシェドール』は強化されていく。
それこそがかのオブリビオンマシンの強みであった。
「どれだけ私が否定されようとも――」
『アルシェドール』を駆り、心を歪められた『ヒトエ』は告げる。
「その否定をこそ、私は否定する。私は否定されない。私の民たちもまた否定されるものではない。あの平穏さえも食いつぶしたがゆえのものであったとしても、それは否定されていいものではないのだ!」
叫ぶ声に呼応するように『アルシェドール』が動き出す。
それを受けて、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)が叫ぶ。
「まだ動くか! まだ壊れないか!!」
ならば、もっと壊すまでであると小枝子は『ディスポーザブル02』と共に戦場を駆け抜ける。
戦場にあって小枝子は立ち止まることをしない。
立ち止まっては、誰も救えない事を知っているからだ。元より小枝子に出来ることは破壊することだけだ。
破滅を齎す存在を破壊する。
ただそれだけのために小枝子は戦場をひた走るだろう。虚空より『ディスポーザブル02』の腕が引き出され、呪詛弾丸を乱れ打ち、壁として立ち塞がる『グローザ』たちを呪う。
機能不全に陥りながらも、なおも『ディスポーザブル02』に追いすがる『グローザ』たちを蹴散らしながら、小枝子はユーベルコードに輝く瞳でもって『アルシェドール』を見据える。
「ああもうさっきから否定するなだなんだと、小難しいことを言ってないで!」
小枝子は走る。
何のために走るのかなど言うまでもない。
破壊するためだ。
ただオブリビオンを破壊する。世界に脅威をもたらすものを破壊する。ただそれだけのために小枝子は戦うのだ。
追いすがる『グローザ』を蹴り飛ばし、呪いの弾丸でもって討滅しながら加速していく。
もっと、もっと、もっと、前に進めと己の心の中から湧き上がる衝動でもって小枝子は戦場を一直線に切り裂くようにして進むのだ。
「こっちを見ろ!!」
そして、壊れろと叫ぶ。
オブリビオンマシンは人の心を歪める。正しき心を持ち、そして過ちを正す事のできる魂さえも歪める。
小枝子からみた『ヒトエ』は、歪められていた。
正しいがゆえに歪んだ時の歪みは大きくいびつなものと変わるだろう。
それをオブリビオンマシンは喜ぶ。
火種と為るからだ。戦乱の、新たなる破滅の火種となるからこそ、彼等は歪みを与えるのだ。
「否定するものなど見るものか! 私は否定されない! 否定などされてたまるものか! 私は!!」
『ヒトエ』の狂った瞳には、小枝子の姿など映ってはいないだろう。
だが、小枝子はほとばしるように咆哮する。
「お前に拳を向けている自分をだぁあああ!!!」
叫ぶ。
そうすることでしか小枝子は己の存在を『ヒトエ』に伝えることはできなかっただろう。
加速した機体より打ち込まれた呪詛の弾丸が『グローザ』の壁を崩壊させていく。
それは過去に負った傷を崩壊させるユーベルコード。
言う成れば、破傷戦(ハショウセン)。
その力は傷を開かせ、『グローザ』たちの欠損を補うという特性にこそ突き刺さる楔そのものであった。
欠損部位から崩壊していく力によって開かれる道。
「私を――!」
「自分を見ろぉぉぉ!!!」
振るわれる拳。
それは加速に寄って与えられた力だ。『ディスポーザブル02』の拳が振り上げられている。
振り上げた拳は止まらない。
止められるわけがない。それをよく知っていることだろう。戦いだって同じだ。振り上げた拳は容易には下ろせないのだ。
ゆえに、人は拳の重みを知らねばならない。
「壊れてしまえ!!」
人の心を歪めるマシンも。否定を許さぬ心も。そして、凝り固まった価値観さえも。
打ち込まれた拳が『アルシェドール』の頭部を殴りつけ、吹き飛ばす。
小枝子はユーベルコード灯る瞳を持って、『アルシェドール』を見下ろすだろう。
どれだけ人が歪められようとも、歪められぬ真芯がある。
それをこそ、人が死することがあれども負けることのない証明であると言うように、砕けた拳を天に突き上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【ネルトリンゲン】は、防御力5倍、移動力半分。
愚か?
そう、人は愚かだよね。猟兵はもっとだけど。
でもそれを利用するオブリビオンよりは、マシだと思うよ。
『ヒトエ』さん、あなたは『フュンフ』さんが、
どれだけ悩んで、苦しんで、努力したか知ってるのかな?
今の『フュンフ』さんはその結果だよ。
それに、あなたがなにも受け継いでないなんてとんでもない。
ここには、あなたを慕い、ついて行くっている人たちがいるんだよ。
人は愚かかもだけど、血脈だけでついてはこないんじゃないかな。
解ったら、早くみんなの元に帰って来なさいっ!
みんなの声を【D.U.S.S】に乗せて音波攻撃させてもらおう。
『違う』というなら、正気に戻れー!
ミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』は宇宙、海上、海中など場所を問わずに運用できる万能型空母である。
しかし、空を暴走衛生『殲禍炎剣』によって抑えられたクロムキャバリアにおいては、その力を従前に発揮することはできない。
飛行船程度の高度、速度でしか運用できぬ『ネルトリンゲン』は謂わば、的であったことだろう。
展開された魔法砲撃ユニットが『ネルトリンゲン』を取り囲む。
それを愚かな行いであると甘やかな声の主は言ったであろうし、『アルシェドール』より放たれた魔法砲撃ユニットは『ネルトリンゲン』を十字砲火でもって撃墜しようとする。
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、確かにとうなずくだろう。
人は愚かであるという声がある。
生来の悪性をもって、善性を退けるからこそ、人は堕落していくのである。どこまでもどこまでも、人の善性を信じる者をこそ虐げるように。
「そう、人は愚かだよね。猟兵はもっとだけど」
理緒はモーフィング換装(モーフィングカンソウ)によって『ネルトリンゲン』の装甲を強化し、空に留まり続ける。
それは『アルシェドール』の魔法砲撃の的になり続けるということであった。
絶え間ない魔法の砲撃は、装甲を強化した『ネルトリンゲン』を揺らす。『八咫神国』の残存軍である『グローザ』のパイロットたちを収容していたとしても容赦のない砲撃にさらされながら理緒は言うのだ。
「でも、それを利用するオブリビオンよりは、マシだと思うよ」
「私を否定するな。私は、私は、こうして此処に在るのだ。私という存在を否定するな――!」
『アルシェドール』を駆る『ヒトエ』の咆哮が響く。
誰も否定はしていない。
けれど、現場のすべてが彼の存在を否定するだろう。『八咫神国』を滅ぼし、侵略する敵国を退けることのできなかった統治者。
石を投げられても仕方のない。
だからこそ、オブリビオンマシンによって歪められ、彼は『アルシェドール』を持って『今』を否定しようとするのだ。
「『ヒトエ』さん、あなたは『フュンフ』さんが、どれだけ悩んで、苦しんで、努力したか知ってるのかな?」
理緒は見てきた。
幾度も心折られ、くじけ、膝をついてきた少年を。
彼は何度もオブリビオンマシンによって傷つけられてきただろう。甘やかな声の主の言う通りであった。
『ヒトエ』は何も受け継いでいない。
なにもない。
傷つくこともなく、ただ安穏と生きてきただけの者と、苦境と逆境に塗れて歩んできた者とでは、その心身が異なるものである。
「今の『フュンフ』さんはその結果だよ」
「私を否定するな!」
『ヒトエ』の咆哮と共に放たれる魔法砲撃が『ネルトリンゲン』を揺らす。収容した『八咫神国』のパイロットたちの動揺が理緒にも伝わるようであった。
けれど、理緒は微笑んで言うのだ。
「あなたがなにも受け継いでいないなんてとんでもない」
理緒はオブリビオンマシンから開放されたパイロットたちを見る。
彼等が案じるのは、他ならぬ『ヒトエ』自身だ。『帝』であるからではない。立場が人を変えるのならば、『帝』ではなくなった彼に付いてきた彼等は一体なんであっただろうか。
忠義唯一を持って、彼等は『ヒトエ』を支えてきたはずだ。
「ここにはあなたを慕い、ついていくって決めた人たちが居るんだよ。人は愚かだかもだけど、血脈だけではついてこないんじゃないかな」
彼等の存在が答えだ。
理緒にとって、それは簡単なことであったことだろう。
そして『ヒトエ』にとっても、それは理解していることであったはずだ。その心を歪めるオブリビオンマシンがあるから、己を否定されたように思ってしまうのだ。
『帝』であった頃の自分と、何者でもない『ヒトエ』という名前の自分。
その乖離を引き起こすのがオブリビオンマシンであるというのならば。
「解ったら、早くみんなの元に帰って来なさいっ!」
理緒の叫びは、そして『八咫神国』から彼を慕って付いてきた忠義の徒たちの声は、『ネルトリンゲン』から増幅されて放たれる。
『アルシェドール』の動きが止まる。
それは『ヒトエ』が止まったというわけではない。音波攻撃に寄って『アルシェドール』のフレームが歪んだからである。
「違う……! それは私のものではない……!」
「『違う』というなら、正気に戻れー!」
否定する言葉も。
否定する現状も。
何もかもが、人の歩みを止めるには値しない。『ヒトエ』がそれを知っていると理緒は理解しているからこそ、砲撃を耐え忍び、残存軍のパイロットたちと共に否定をもって心を傷つける『アルシェドール』への楔として声を撃ち込むのであっった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
あー…なんだかムカつくな
「どうしたのご主人サマ?」
気に入らねーんだよ
全てを否定するのもされるのもな
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵の動きと攻撃の癖
戦い方を分析
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源も隠蔽
その障壁…自己放射型UCには有効だろうが
「強化型はどうかな?」
【弾幕・念動力・スナイパー・空中戦】
UC発動
超高速で飛び回りながら念動光弾を乱射して障壁ごと蹂躙
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
接近して鎌剣での連続斬撃から武装を切断し強奪!
おめーは立派ですよ
僕にゃ真似できねー
だからまぁ…あれだ
「此処で死ぬ定めではないだね☆」
そういうこった!
コックピットは狙わない
「あー……なんだかムカつくな」
『どうしたのご主人サマ?』
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は苛立っていた。
何に、と問われたのならばオブリビオンマシン『アルシェドール』を駆る『ヒトエ』の言葉にである。
彼は己を否定されたくないと叫ぶ者であった。
『八咫神国』はすでにもう無く。
人民は『シーヴァスリー』へと恭順を示した。
歴史というものがクロムキャバリアにきざまれているのならば、彼の名は暗君として記されるものであったことだろう。
国一つを統治しておきながら、むざむざと国を滅ぼされた愚かなる者として。
それは否定されるべきものであったし、これまでの彼の歩みは今まさに否定されていた。
「気に入らねーんだよ。全てを否定するのもされるのもな」
ゆえにカシムは『メルクリウス』と共に戦場へと飛び込む。
オブリビオンマシン『アルシェドール』は大軍を指揮することに秀でた機体である。師団一つを丸々指揮することによって、部隊の性能を引き上げる。
さらには魔法砲撃ユニットの展開や、魔導障壁といった攻防に優れた機体でもある。これがかつて『熾盛』と呼ばれた機体に備わっていた機能の分割を得たものであることからも、その強さは理解できるものであったことだろう。
「私を否定するな!」
猟兵たちの攻撃は鉄壁に見える『アルシェドール』の機体を削ぎつつ在った。消耗し続ける機体。
それを駆りながら、なおかつ複数の『グローザ』を動かす手腕は凄まじいの一言である。
さらに厄介なのが牽制でも攻撃を放てば魔導障壁に阻まれ、魔力に変換されるということであった。
「その障壁……放射型のユーベルコードには有効だろうが……強化型はどうかな?」
『メルクリウス』は神速を誇るキャバリアである。
神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)が、その証明。
煌めくユーベルコードは『メルクリウス』のアイセンサーに灯り、その力を、速度を三倍にまで引き上げる。
その圧倒的な速度は『グローザ』では捉えきれるものではないだろう。
念動力に寄って念動光弾をばら撒き、魔導障壁へと衝突される。即座に魔導障壁は光弾を受け止め魔力に変換し、魔法砲撃に寄って応戦する。
光の明滅が戦場に乱舞するようであった。
「おめーは立派ですよ」
「何を言っている……! 私は!」
『ヒトエ』は否定する。
否定されたくないからこそ、他者を否定し、己の評価をさせない。彼にとって、否定と評価は同一のものであったからだ。
「僕にゃ真似できねー」
カシムにとって『ヒトエ』の生き方は、否定されても尚歩む道のように思えたのだ。国を滅ぼされ、人を失い、それでもなお誰かのためにと、誰かの誇りのために己を滅する事ができる者。
それが『ヒトエ』という為政者であり、統治者であった。
生まれながらにしての地位。
それに甘んじていたことは変えようのない事実である。目を背けたく為るような人生の汚点であったことだろう。
けれど、それさえも彼は乗り越えてきた。
乗り越えたのだ。だからこそ、カシムは言う。
「だからまぁ……あれだ」
『此処で死ぬ定めではないだね☆』
「そういうこった!」
迫るは神速のキャバリア。魔導障壁をこじ開けるように光弾が明滅し、魔力に変換される一瞬に切り込むように鎌剣が魔導障壁を切り裂く。
「『アルシェドール』の魔導障壁を切り裂く……!?」
「『メルクリウス』……お前の力を見せてみろ……!!」
カシムの咆哮と共に『メルクリウス』のアイセンサーが煌めく。
切り裂いた魔導障壁に打ち込まれるは鎌剣の連撃。目にも留まらぬ速度で放たれた斬撃が『アルシェドール』の腕部を切り裂き、ガードすらこじ開けていく。
機体の破片が舞い散る中、『メルクリウス』は己に迫る魔法砲撃を躱し、大地を疾駆する。
「誇れよ、神速のキャバリアを前にして腕一本で済ませる……それがお前の生きた道の証ってやつだ! 誰にも否定できない、否定されることすら否定する、誇りだろうが!」
カシムの声が『ヒトエ』には届いただろうか。
否定を否定することができるのは誇りだけである。己の中より生まれる誇りがあればこそ、それは胸の内で燦然と輝き、否定を拒む力と為るのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
『フュンフ・エイル』...か。
『フュンフ・ラーズグリーズ』は確かに新しいエースだね。
でもエースの血を引いているからエースじゃなかった。彼がエースなのは彼だから。彼自身が掴んだものだ。
『ヒトエ』くん君だってそうだ。『八咫神国』の部下が君についてきたのは、君が『帝』として魅せた。自分たちの帝…エースであると示したから。
それを…忘れるな!!
もう少し、頑張ろうシビリアンジョー!!
『瞬間思考力』で『見切り』自慢の操縦で『見切り』回避
ショックアンカーの電流と一緒に『ハッキング』してさっきの説得をむりやりコックピットに流して、動きを止めた隙にイニティウムで機体を『切断』する。コックピットはもちろん外してね。
『エース』とはクロムキャバリアにおいて、絶対的な意味を持つものであったことだろう。
英雄として小国家を護る存在。
されど『エース』とて人である。生きて、死ぬものである。
死した『エース』は、時として侮蔑の対象とも為ることだろう。そして、『エース』でもない統治者としての血脈の末席として安穏を貪っていた『ヒトエ』にとって、今を生きる『エース』はまばゆいばかりの存在であった。
「私を否定することに、『フュンフ・エイル』の名を使うな!」
その咆哮と共に『アルシェドール』から砲撃ユニットが飛び立つ。
無数の砲撃ユニットは、迫る猟兵たちを寄せ付けぬように魔法弾を放つ。
光の乱舞が巻き起こり、隻腕となったオブリビオンマシンが戦場を疾駆する。
「『フュンフ・エイル』……か」
不出生の『エース』。
嘗て在りし、悪魔とも救世主とも呼ばれた『エース』の名。その血脈たる『ヒトエ』の心中は如何ほどであっただろうか。
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)にとって、それは理解の範囲であったことだろう。
「『フュンフ・ラーズグリーズ』は確かに新しい『エース』だね。でも、『エース』の血を引いているから『エース』じゃなかった」
ユーリーは知る。
『フュンフ・ラーズグリーズ』は『エース』という存在から最も程遠いものであった。悩み、苦しみ、嘆き、そして膝を折った。
けれど、それだけではなかったのだ。
『エース』とはパイロットの技量だけを指し示すものではない。
『シビリアンジョー』と共にユーリーは『アルシェドール』に追いすがる。魔法砲撃が機体を取り囲み、オールレンジの攻撃が機体装甲を焼き切るだろう。
頑張ろう、とユーリーは『シビリアンジョー』に呼びかける。もう少し、と。
砲撃の雨をかいくぐった『シビリアンジョー』は、同じオブリビオンマシンへと組み付かんとせまる。
ユーリーの操作技術は見事なものであった。
全方位から迫る砲撃を掻い潜り、機体の損害を警備に留めていた。通常であれば、砲撃の雨の前にいつ打ち倒されても仕方がない状況であっても尚、彼女は機体を十全のままに『アルシェドール』へと迫らせていた。
「彼が『エース』なのは、彼だから。彼自身が掴んだものだ」
「私にはそれがないと否定するか!」
「『ヒトエ』くん、君だってそうだ。『八咫神国』の部下が君についてきたのは、君が『帝』として魅せた。自分たちの帝……『エース』であると示したから」
それは己を否定する『ヒトエ』を否定する言葉であったことだろう。
魔法砲撃が『シビリアンジョー』へと迫る。
その一撃をユーリーはかすめるようにして躱しながら、ショックアンカーを撃ち込む。
その言葉は届くだろう。
例えオブリビオンマシンが、その回線を断ち切ろうとも、その悉くを上回っていく。
「それを……忘れるな!!」
そう、忘れてはならないことが在る。
彼にとって、それは己が否定されることでもなければ、己を護ることでもなかった。彼がなんのために立ち上がったのか、その最初の一つを思い出すこと。
思い出せば簡単なことであったのだ。
「私は……!」
「自分のためじゃない。誰かのために君は立ったんだろう。立ち上がったんだろう。これまで得てきたものを、誰かのためにと思ったんだろう。そこに彼等は『エース』を見たんだよ!」
その言葉と共に『シビリアンジョー』がキャバリアソードをふるう。
その一撃がなおも躱そうとする『アルシェドール』の背面ユニットを切り裂き、爆発の中に吹き飛ばす。
そう、一人で戦うことなどできない。
彼が立ち上がった理由は唯一つ。これまで己のためにと身を捧げてきた者たちに報いるためにこそ、己の力を使うと決めた、その覚悟があればこそ。否定すらも退ける力になることをユーリーは示したのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
血統だの才能だの
面倒臭いものに囚われるのはやだねー、ホント
何も無いって事は、これから何にでもなれるって事じゃん?
特訓特訓、やりたい事やなりたい自分見つけようぜ!
超克、オーバーロード
外装展開、残りの模造神器も抜刀
【Ex.Code:A.P.D】起動
グローザと魔導障壁がちょっち面倒だけど…これなら何とでもなるか
グローザの攻撃は基本物理だし放っておいても良いか
後は歩いてアルシェドールに近付こう
高速移動でちょこまか逃げ回るならまだしも、周りに手勢を置いてるなら捕まえるのは何とでもなる…といいなあ
とりあえずグローザは雷鳴電撃を纏わせた『斬撃波』で攻撃
後は電気系統が露出してるならそこから内部に入って…『ハッキング』
アルシェドールに接近するよう移動して後はまた実体化して内部から雷鳴電撃の『なぎ払い』で破壊しよう
アルシェドールも電気系統が露出してたら其処から中に入って適当にコックピット辺りで実体化
同様に操作系統を壊そうか
露出してなかったら、斬撃波で足止めして全剣で『串刺し』して無理矢理入れそうな所を作ろう
背面ユニットを失った『アルシェドール』のフレームがきしむ。
すでに片腕を失っていながらもなお、オブリビオンマシンとしての力を発露させるのは、パイロットである『ヒトエ』の心を歪め、その感情の爆発でもって魔力に変えているためであろう。
かのオブリビオンマシンを打倒しなければ、『ヒトエ』を救い出すことはできない。
血統において保証されていた安寧が崩れた『八咫神国』。
その統治者であった『ヒトエ』にとって、それは己の否定そのものであり、また同時に過去の己の原罪を突きつけるものであったことだろう。
才能もまたその一つである。
『フュンフ・エイル』という不出生のエース。
その血脈でありながら、才能のひとかけらとて受け継ぐことのできなかったという負い目。それが彼の『今』を否定し続ける要因であった。
それがゆえに、彼は叫ぶのだ。
「私を否定するな! 私は、私のために……違う、私は!」
そう、他ならぬ己を支え、己のためにと身を削ってきたものたち。
安寧は己の血脈で保持されていたのではない。彼を取り巻く者たちによって維持されていたものである。
壊された平穏は戻ってこない。
けれど、贖わなければならない。それ以上に報いたいという想いがあるからこそ、彼は立ち上がったのだ。
「面倒くさいものに囚われるのはやだねー、ホント」
血統、才能。
そのどれもが月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとっては、面倒ごとの種でしかなかったことだろう。
「私にはなにもない。わかっている。だが、否定するな! 私が立ったのは、私を守ってくれた者たちに報いる……それを、否定、するな――!!」
咆哮と共に『アルシェドール』が『グローザ』を指揮する。
膨大な指揮系統を管理し、能力を底上げする力を持つ『アルシェドール』にとって『グローザ』は未だ己の軍勢として機能している。
欠損した部位をつなぎ合わせ、まるで死霊のごとく猟兵たちを阻むのだ。
「超克、オーバーロード」
玲の瞳が超克に輝く。外装が展開され、副腕と共に抜き払われるは四振りの模造神器。
蒼き刀身の煌きが戦場に立ち上がり、その輝きを前にオブリビオンマシンたちは怯えるだろう。
これこそが、玲の持つ力。
彼女が模倣し、編み出し、積み上げ、練磨し、そして到達した頂きの一つ。そこに血統や才能などは関与しない。
彼女自身の手によって生み出されたがゆえに、ただ一つ。
「雷龍解放、転身…プラズマ・ドラグーン」
Ex.Code:A.P.D(エクストラコード・アヴァタールプラズマドラグーン)。そのユーベルコードは、己自身を稲妻の龍と融合した姿に変える力。
雷鳴電撃、物理攻撃無効、通電物質内移動の能力を得る規格外たる力。
「ちょっち魔導障壁は面倒だけど……これならなんとでもなるか」
玲は悠然と戦場を歩む。
迫る『グローザ』の射撃や、振るわれるキャバリア武装の打撃など今の玲には通用しない。
稲妻龍と融合した彼女にそのような攻撃は通用しないのだ。
ふるう斬撃が波となって『グローザ』を切り裂く。コクピットブロックは開放されている。すでにパイロットたちの全てが退避した後だ。
何も彼女を止められない。
「何故、攻撃が効かない……どういうことだ!」
『ヒトエ』の狼狽も理解できる。
彼の視界に映るは超常なる人。この鋼鉄の巨人が闊歩する戦場にあって、ただ人である玲の行為は理解の外にあった。
視界に捉えたと思えば、即座に姿を消す玲。
『グローザ』から『グローザ』に乗り換えるようにして、機体の内部に入り込み、でん出来で持って悉くを破壊しながら玲が距離を詰めてくる。
どこまで逃げても無駄だと知らしめるには十分過ぎた。
速いとか遅いとかという次元ですら無い。
通電している場所があるのならば、瞬時に移動する。同時に存在を知らしめる雷鳴すら轟くことをさせない。
「私には何もないわけではない! なにもないわけがない! あるはずなのだ、私だけのものが! それを否定させは――!」
心を歪まされ、その奥底にあったものをさらけ出す『ヒトエ』。
甘やかな声の主にとって、それはあまりにも愚かしくも醜いものであり、哀れみを持って見つめるものであったことだろう。
「いけないな、それは。そんなものに縋っていては。君はなにもない。空っぽなのだから。言っただろう、そんなもので戦ってはならないと。『戦いに際しては、心に平和を』とね」
甘やかな声の主の言葉が『アルシェドール』を通して響く。
されど、玲はその声を遮るだろう。
「何もないってことは、これから何にでもなれるってことじゃん?」
あっけらかんとした言葉であった。
『アルシェドール』の眼前に稲妻を纏う玲の姿が出現する。いや、違う。次の瞬間には、玲の体は『アルシェドール』のコクピットの中へと現れていた。
『ヒトエ』の亜麻色の髪がゆれ、黒い瞳が玲を見上げていた。
甘やかな声を切り裂く蒼い雷光。
「特訓特訓、やりたいことやなりたい自分見つけようぜ!」
玲は笑っていただろう。
どんな言葉も、どんな状況も、何もかも確固たる己があるからこそ踏破することができる。
何も人を傷つけることなどできはしない。
言葉など、言葉でしかないのだ。音の響きでしか無い。それに踊らされて、自分で自分を傷つける必要など無いのだというように、玲は笑っていうのだ。
「自分を……」
「そんなものあるわけがない。自分などという曖昧模糊なものに惑わされてはいけないよ」
「外野は黙っててもらおうかな!」
玲のほとばしる稲妻がコクピットの中に炸裂する。甘やかな声はかき消され、『アルシェドール』の内部から破壊する一撃がほとばしる。
玲は無理やりコクピットハッチをこじ開け、外へと飛び出す。
この閉ざされた鋼鉄の檻から飛び出すか、そのままかは、『ヒトエ』次第であるというように玲は、その背を翻す。
振り返ることはない。
自分という唯一を護るのも、大切にすることができるのも、他者ではなく他ならぬ自分自身であるということを示し、『ヒトエ』の黒い瞳に青き雷光を刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・カンナビス
最近は、この件からは手を引いていたのですが……。
どうも、やり残した感がありますね。
中途半端な仕事は戦歴に響きますし、仕方がありません。
今後のお仕事のために、始末をつけておきましょう。
血統によって帝になるのはいいんですよ。
それは単に、遺産を相続するだけですから。
要は、相続したなら管理もしろという話なんですね。
そこには遺伝は関係ありません。管理者の勉強が要るだけです。
なので「遊んでいないで勉強しろ」と言われてしまうわけでして。
まあいいです。さっさとケリを付けましょう。
先制攻撃/指定UC。
私のUCは、保有機材の機能を上手に使うというだけです。
何も吸収できませんが、そこはお互い様ですから諦めて下さい。
「最近は、この件から手を引いていたのですが……」
ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は戦場に立つ『グローザ』たちと『アルシェドール』の姿を認め、それがどうも、やり残した感覚であるというところを知る。
中途半端な仕事は戦歴に響くものであるし、仕方がないという諦めの境地であったのかもしれない。
戦乱が続くクロムキャバリアにおいて戦場は何処にでもあるものである。
珍しいものではない。
けれど、傭兵として行動するのならば、最も必要なものは信用。
それがなければ、用いられることもない。
「今後のお仕事のために、始末をつけておきましょう」
ノエルの駆る『エイストラ』がフォックストロットを大地に刻む。敵対するオブリビオンマシンとの間に流れる呼吸をずらすかのように、まるで社交ダンスに誘うかのように『アルシェドール』と対峙する。
「血統によって帝になるのはいいんですよ」
目の前の『アルシェドール』のコクピットのハッチは内側から弾くように開け放たれている。
そこにまだ『ヒトエ』がいるのだろう。
だが、ノエルにとってそれは大した理由ではなかったのかもしれない。
「それは単に、遺産を相続するだけですから。要は、相続したなら管理もしろという話なんですね」
それが統治者としての為すべきことである。
国という遺産。
平穏という遺産。
そのどれもが欠けてしまえば、もう元のようにはならぬのである。だからこそ、ノエルは『エイストラ』と共に舞うようにして『アルシェドール』から放たれる『グローザ』たちの攻撃を躱しながら、的確な射撃で持って撃滅していく。
パイロットの居ないオブリビオンマシンなど、ノエルには及ぶべくもない。
「そこには遺伝は関係ありません。管理者の勉強が要るだけです。なので、『遊んでいないで勉強しろ』と言われてしまうわけでして」
「私の在り方を、この現状を否定するのか」
『ヒトエ』にとって、それはそのように聞こえるものであったのだろう。
国は滅び、人心は離れる。
けれど、彼に従っていた者達は違うだろう。立場を失ってもなお、奉じたものがあったのだ。
それまで偽りであるわけではない。
「まあいいです。さっさとケリを付けましょう」
魔導障壁など意味のなさない、純粋なる機材の機能を十全に引き出した『エイストラ』の挙動。
その動きを精彩を欠いた『アルシェドール』が捉えることはない。
隻腕となり、内部から破壊され、背面ユニットすらも失った機動力は、ノエルにとって容易なる相手であった。
オブリビオンマシンであるからこそ、決定的なまでに破壊しなければならない。
「何も吸収できませんが」
ノエルの瞳がユーベルコードに輝いている。
これは彼女の技術がユーベルコードにまで昇華したもの。
ならば、如何なる魔導障壁であっても、之を阻むものではない。
「そこはお互い様ですから諦めてください」
瞬時に跳ね上がったプラズマライフルの銃口が『アルシェドール』へと向けられる。魔導障壁を展開する暇すら与えない。
それ以上にこれまでの損害であれば、『アルシェドール』は反応すらできなかったであろう。
プラズマライフルの粒子ビームの一撃が頭部を貫き、破壊する。
膝をつくように『アルシェドール』が破壊され、内側からこじ開けられたハッチから転がり落ちるようにして『ヒトエ』が排出される。
ノエルは、それを見届け背を向けるだろう。
彼女に必要だったのは、オブリビオンマシンの破壊という事実のみ。
やり残し、という感覚が払拭されたかはわからない。それは彼女の胸中にしか存在しないものである。
しかし、戦乱の火種を齎す存在は討たれた。
それはノエルの輝かしい戦歴に、また一つの事実がきざまれた瞬間であった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『試作キャバリアのデータ収集に協力して!』
|
POW : ●『模擬戦闘』:模擬的な戦闘を行って、試作キャバリアの頑健さを調べる
SPD : ●『動作検証』:少々無茶な動作をしてみせて、試作キャバリアの機動性を調べる
WIZ : ●『バラす』:中身が気になって仕方ない…後で…後で戻すから…。試作キャバリアをパーツ単位で調べる
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オブリビオンマシン『アルシェドール』が討たれ、その機体が霧消していく。
周囲に点在していた『グローザ』もまた動かぬ残骸となってかく座するだろう。それを見届けていた『シーヴァスリー』のキャバリア部隊が漸くにして動きを見せる。
漁夫の利を狙うかのような沈黙を保っていた彼等は、踵を返して撤退していく。
こちらを追撃するでもなく、ただ撤退していくのだ。
それが何故かは、簡単なことであった。
別方向から戦場に侵入していくるキャバリアの部隊。小国家『グリプ5』の試験部隊が到着したのだ。
「って、あれ……もう戦いって終わってる?」
「お兄ちゃんがモタモタしているから!」
そんな声が猟兵達に届くだろう。
彼等は、『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』。
『フュンフ・ラーズグリーズ』の末弟妹であり、未だ戦いに出るには年若い少年少女であった。
彼等が駆るキャバリアは、今まで見たことのない型の機体……ではない。
幾人かの猟兵達は知っているはずだった。
あれは『フルーⅦ』に秘蔵されていたスーパーロボット『レーギャルン』を模した機体であるとわかるだろう。
それが『グリプ5』からやってきたということは。
「試験期間何だから仕方ないだろう。それにあれは……」
「いつも助けてくれる傭兵の人たちね。『八咫神国』の残存軍の人たちを助けてくれたのかしら」
『ゼクス』少年は眉根を寄せる。
どうやら、『シーヴァスリー』と残存軍が戦っているという情報を得て、この場に駆けつけたのだろう。
たった二機で駆けつけるところが、らしいと言えばらしい。
「傭兵さんたちですよね! 残存軍の方々はこちらで保護します、だから……」
『ズィーベン』少女の言葉はどこか緊張しているようでもあった。
試験機であるキャバリアと共に残存軍の兵士たちを『グリプ5』に移送して欲しいというのだろう。
それを断る理由もない。
猟兵たちは招かれるままに『グリプ5』へと向かい、そして、彼等の駆る試験機二機のデータ収集に協力することになる。
『ゼクス』少年の駆る試作機は、近接戦闘主体のキャバリア。
ビームブレイドと肩部から展開するサブアームによって複雑な近接戦闘を繰り広げるだろう。
ただし、攻撃が単調なきらいがある。
『ズィーベン』少女の駆る試作機は、高出力の砲撃を行うキャバリア。
腹部に備えられたビーム砲口は、今は封印されている。
ただし、装備されたキャバリアライフルの射撃精度は高い。彼女の性格からか、戦いを性急に終わらせようとするために突撃癖がある。
これらの二機に対して猟兵達はデータ収集の模擬戦闘をしてもいいし、また『グリプ5』での日常を過ごしてもいい。
つかの間の平穏であるし、また次なる戦いに備える時間でも在る。
どちらを選んでも、それは猟兵たちの自由だ――。
ユーリー・ザルティア
しっかし、ゼクスくんと、ズィーベンちゃんか。
中々頼もしそうだけど、二人だけで来たか。
あの頼もしさが裏目に出るようなことにならなければいいけど、少し心にとどめておきましょうか。
まあ、せっかくのご機会だし、ゼクス君、ズィーベンちゃん。模擬戦でちょっと相手してあげる。
シビリアンジョーはちょっと戦闘のダメージがあるから、レスヴァントでお相手するわね。
さて、高機動攻撃
超高速戦闘開始っと
機体というより、二人の反応を『瞬間思考力』で『見切り』観察するわね。
うん、機体は上々。パイロットも期待大ね
その分経験値が積めれば未来のエースかしらねぇ
機体や二人に何か細工されていないか、一応『情報収集』しておきましょうか。
戦場に現れたのは、二機の試作キャバリア。
それは小国家『グリプ5』の周辺国家で起こったオブリビオンマシンの事件を知る猟兵の幾人かには見覚えのある機体設計であったことだろう。
小国家『フルーⅦ』に秘蔵されていたスーパーロボット『レーギャルン』。その機体と酷似した試作機であることが見て取れる。
それらを駆るのは『グリプ5』のパイロットであり、『フュンフ・ラーズグリーズ』の末弟妹である『ゼクス』少年と『ズィーベン』少女であった。
「しっかし、『ゼクス』くんと『ズィーベン』ちゃんか」
中々頼もしそうに見えると、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は思えたことだろう。
『八咫神国』の残存軍と『シーヴァスリー』が激突する戦場に無鉄砲にも駆けつけた危うさはあるのは仕方のないことであろう。
それらが裏目に出るような事にならなければ良いと彼女は思ったことだろう。
「はい、今回よりキャバリアへの搭乗が許可されましたので!」
『ズィーベン』少女は、これまで幾度となく『グリプ5』を救ってくれた傭兵……それも猟兵であり、なおかつ『エース』であるユーリーに緊張している様子であった。
「と言っても、試作機……実験機だけどな」
そんなふうに緊張し空回りしそうになっている妹である『ズィーベン』をたしなめるのも兄である『ゼクス』の役回りであるのかもしれない。
「まあ、せっかくのご機会だし、『ゼクス』君、『ズィーベン』ちゃん。模擬戦でちょっと相手してあげる」
『グリプ5』に戻ってきてからというもの、ユーリーは己のオブリビオンマシンである『シビリアンジョー』を機体メンテナンスに出している。
戦いの後の傷や、損傷、メンテナンスというものは常に気を配ってなければならないものである。
少しの傷や消耗が次なる戦いに影響を及ぼしてはならない。
ならば、どうするのか。
「ちょっと戦闘ダメージがあるから……」
「『レスヴァント』ですね!!」
グイグイ来る。
『ズィーベン』少女は、ユーリーの駆る『レスヴァント』を知っているのだろう。
「装甲と機動を両立した傑作機のカスタマイズ! 白い装甲と滑空するかのような速度が素晴らしい機体かと!!」
マジでグイグイ来る。
『ズィーベン』少女の方は、これまでの戦いの記録などを見ている限り、猟兵たちの手繰るキャバリアの動きから自身の操縦技術にフィードバックしているようだ。
ユーリーは、彼女のぐいぐい来るような気迫に押されるようにして模擬戦闘へと移る。
彼女の機体、試作機は腹部の高出力砲撃がメインのようであるが、射撃戦に特化した機体でもあるようだ。
模擬戦ゆえに腹部のビーム砲は使えないようであるが、それでも一度模擬戦闘が始まれば、その才覚を知ることとなるだろう。
「うん、機体は上々。パイロットも――」
「そこ!」
打ち込まれるペイント弾の正確無比なるものも期待大であるとユーリーは判断する。
狙撃のポイントや、その取捨選択が速い。
恐らくアンサーヒューマンの類なのだろう。だが、経験値が圧倒的に不足していることが見て取れる。
記録やデータを得て板としても、戦場のゆらぎまでは計算に入れられない。
「まだまだだね。でも、期待できるよ」
『レスヴァント』の機体が『ズィーベン』の手繰る試作機のマークを振り切り、凄まじい速度で旋回し、ワックス剣を背面に斬りつける。
アラームが鳴り、撃破されたことを告げられて『ズィーベン』はがっくり肩を落とす。
「うう……もっと良いところが見せられると思ったのに……」
「経験を積めば未来の『エース』も夢じゃないよ」
ユーリーはほほえみながら、試作機を見やる。そして『ゼクス』と『ズィーベン』にも気を配る。
これまでおオブリビオンマシンの動向から考えるに、彼等や彼等の機体に何かしらの細工がなされていてもおかしくない。
火種を残すのが彼等のやり方だ。
けれど、ユーリーは気がつくだろう。彼等の機体には何の仕掛けもされていないことに。そして、パイロットである彼等にも同様である。
ユーリーは違和感を覚える。
これまでであれば、間髪入れず最新鋭機などのキャバリアにオブリビオンマシン化の細工を仕掛けるのが彼等のやり方であった。なのに、それがない。
おかしい、と思う感覚を遮るように『ゼクス』がユーリーに言うのだ。
「次、次は俺ですよ!」
「あ、ああ、うん。わかったよ」
ユーリーはうなずきながら再び模擬戦闘に戻る。違和感は拭えない。けれど、それが明らかになるのはまた次なる機会であろう。
彼等の未来を喪わせてはならない。
ならばこそ、ユーリーは『エース』の先達として、彼等の未来を照らさなければならないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
結局シーヴァスリーの方々は見てるだけでしたわねぇ
不気味ですわ
おバイトのお時間ですわ〜!
ミサイルをドカスカ使ってしまったので弾代がえらいこっちゃですわ
試作機のテストにご協力して出費を取り戻すのですわ
ゼクス様がお乗りになっているそちらのおキャバリアと模擬戦致しますわ
近接主体なのですわよね?
ならノーマルヴリちゃんでプロレス力を試してさしあげますわ!
サブアームとは便利ですわね
ヴリちゃんにも欲しいですわ
けれど動きがちょっとお硬いですわね
荒ぶる戦闘本能に身を任せるのですわ!わたくし達は戦闘民族クロムキャバリア人なのですわ!
なんですヴリちゃん?わたくしはただ暴れてるだけ?
ただの暴力こそ格闘の真髄なのですわ!
戦場から撤退していく小国家『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を見やり、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)はそれが不気味であると感じた。
彼女の感覚は正しい。
まるで最初から『八咫神国』の残存軍がオブリビオンマシン化し、混乱に陥ることがわかっていたかのようなふるまいであった。
決して近づかず、交戦距離より離れ、様子を伺う。
そして、混乱に至っても戦いに加わらない。終始、猟兵と残存軍との戦いを観察しているだけであった。
「結局、『シーヴァスリー』の方々は見てるだけでしたわねぇ」
己のキャバリアである『ヴリトラ』もまた同意するところであったことだろう。
だが、今はそれを考える時間ではない。
何故ならば、メサイアはこれから頭を悩まさなければならないのだからだ。
「おバイトのお時間ですわ~!」
そう、メサイアは『グリプ5』で、お上品におバイトしなければないのである。あなたのおそばに救世主、メサイア・エルネイジュがやってみせるといっているんですわよ! ってやつである。
なんのこっちゃとなるところであるが、答えは簡単である。
『グリプ5』の試作機二機との模擬戦闘でもって試験データを収集するバイトである。ね、簡単でございましょう?
これならば、ミサイルをドカスカ使ってしまったためにかさむ弾代のえらいこっちゃな額をどうにかこうにか捻出することができるのである。
懐事情のお寒いことでございますですわよ。
「というわけで、『ゼクス』様、よろしくて!?」
「え、あっ、はい! っていうか、それ、キャバリアになるんだ……」
『ゼクス』少年の駆るキャバリアは格闘戦に特化した機体である。
近接戦闘用のビームブレイドはワックス剣に変わっている。奇しくもメサイアの駆る『ヴリトラ』もまた仕様を変えれば、格闘戦に向いた機体にもなるのだ。
接近戦ならば『ヴリトラ』は負けはしない。
「ノーマルヴリちゃんでプロレス力を試して差し上げますわ! そぉい!」
のっけから始まるプロレス。
ただし、台本などない。ええい、戦場に台本通りの動きをする者がいるものか! そんな具合で始まった試作機とのプロレスことガチンコがっぷり四つ。
お嬢様ならぬお姫様らしからぬ戦い方。
『ヴリトラ』は突撃し、その一撃でもって試作機を吹き飛ばす。
「突進力! 速い……! でも!」
肩部のアーマーが展開し、現れるサブアーム。都合四本のサブアームに備えられたワックス剣の斬撃が『ヴリトラ』を襲うが、これを容易く躱す。
動きが単調すぎる。
硬いなとメサイアは感じるだろう。しかしこれは機体の動きが悪いのではない。パイロットの経験値の浅さが動きに反映されているものと見るべきであろう。
「せっかくのサブアームも、それでは台無しでいてよ!」
『ヴリトラ』の尾が『ゼクス』の駆る試作機を強かに打ち据える。
「うわあぁ!? 尾も?! そ、そうだよな、二足歩行のキャバリアなら、尾だってあるものだよな!」
体制を整え、対峙する試作機。
打ちのめされても、体勢を即座に整える姿は大したものであるといえるだろう。しかし、まだ足りない。
「荒ぶる戦闘本能に身を任せるのですわ! わたくし達は、戦闘民族クロムキャバリア人なのですわ!」
くわっ! とメサイアの瞳が煌めく。
揺るぎなき暴力(チカライズパワー)こそ、この戦乱の世界で生き抜くための力である。
それなくば、ただ理不尽に奪われるだけだ。
戦闘民族うんぬんはよくわからんが、メサイアの言う所のことを『ゼクス』は理解しただろう。わりと好意的に。
「なんですヴリちゃん? わたくしはただ暴れてるだけ?」
メサイアに『ヴリトラ』が突っ込む。まあ、それもそうだと言える。というか、まあ、そのなんていうか、言葉を濁すしかないあれであるが。
だがしかし。
「ただの暴力こそ格闘の真髄なのですわ!」
メサイアの瞳が輝く。
模擬戦闘はこれからだ。戦いを通してしか伝えられぬものがある。お姫様らしからぬ言動と行動力であるが、それがメサイアの良いところである。たまに欠点に見えるのはご愛嬌ってやつであるし、オブリビオンマシンにはそういうところこそが恐ろしく映るのだろう。
「わかりました!」
わかってしまうんだ、と『ゼクス』少年はメサイアの教えを心に刻むだろう。
確実に突撃癖が染み付いてしまうことであろうが、ひたむきな少年の心はメサイアの言葉に感銘を受け、されど戦いにおいて恐怖を克己する力と為すだろう。
「さあ、もう一本参りますわよ!」
徹底的に『ゼクス』はメサイアに扱き上げられ、翌日筋肉痛に悩むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェイミィ・ブラッディバック
さて、残存部隊の保護はこちらでもお手伝いしますよ。
ちょうど私と協力関係にあるPMSC、イェーガー社(指定UC)が来てくださいましてね。
プラチナムドラグーンについてはすでに十分以上のデータが集まりましたし、試験のデータ収集の補助をしましょう。
あ、それと模擬戦前後の整備も請け負いますよ。私、これでもメカニックの心得がありますし、イェーガー社の整備班も腕っこきが揃っていますから。
その代わり、試験や整備に際して得られたデータの持ち帰りを許可いただければありがたいのですが……如何でしょう?
※イェーガー社:クロムキャバリア世界アンサズ地方・アークライト自治領に本社を持つPMSC。
小国家『シーヴァスリー』は撤退してく。
残存軍は壊滅し、多くのキャバリアを失った。これは仕方のないことである。彼等のキャバリアは皆、全てオブリビオンマシンへと変貌してしまっていた。
キャバリアを失うということは、『八咫神国』を奪還するという大望を果たせなくなるということでもあったが、生きてさえいるのならば、また新たな道がつながるものであろう。
「CONNECTING FOR HOTLINE...」
ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)は戦闘が終了したことを見届け、戦地に彼と協力関係に在るPMSC、イェーガー社を召喚する。
彼等の仕事をジェイミィは高く評価している。
次々と駆けつけ、残存軍の撤収に関わってくれている。
今回の戦いにおいてジェイミィが得たのは無人機である『プラチナムドラグーン』の戦闘データである。
十分にデータが集まったことを喜ばしく思うものであり、同時に『グリプ5』より来訪した試験部隊の試作機のデータ収集の補助にも当たることにしたのだ。
「データ収集の補助に参りました……ああ、それと模擬戦闘前後の整備もこちらで請け負いますよ」
その言葉に『グリプ5』の戦術顧問である嘗ての『エース』、『アイン・ラーズグリーズ』が断りを入れてくる。
彼女はオブリビオンマシンの起こした事件において隻腕となり、パイロットを辞した元『エース』である。
「それはありがたい申し出だが、なにせこちらの最新鋭機だからな」
「私、これでもメカニックの心得がありますし、イェーガー社の整備班も腕っこきが揃っていますよ」
「ダメだ。その代わり、試験や整備に際して得られたデータの持ち帰りを許可して欲しい、そんなところだろう」
『アイン』にとって、それは他の小国家にデータが漏れることを危惧するものであった。
同時に、彼女たちにとって最新鋭キャバリアの開発というのは、トラウマめいたものが植え付けられていることをジェイミィは知るだろう。
『セラフィム・リッパー』と呼ばれた『グリプ5』の最新鋭キャバリア暴走事件。
それに端を発したオブリビオンマシンの事件は、未だに『グリプ5』にとって癒えぬ傷跡であったのだ。
「理解できるところであります。ですが……」
「悪いがな、あんたらを疑っているわけじゃあない。『セラフィム・リッパー』だけでも、すでに3回。そして、その原型機である『セラフィム・オリジン』もまたやらかした事実がある」
慎重になるのもうなずけるところであった。
この『グリプ5』において引き起こされたキャバリアの暴走事件は、多くが『セラフィム・リッパー』を起点としている。
この小国家に存在する『熾盛』と呼ばれたキャバリアを参考してに生み出されたのが『熾煌』。その『熾煌』をデチューンされたのが『熾裂』と呼ばれる『セラフィム・リッパー』の原型機たる『セラフィム・オリジン』。
「代わりと言っちゃあなんだが……『セラフィム・リッパー』の暴走事故のデータはくれてやる。私達にはこれがなんで暴走したのかがわからねぇ。何も細工はされていなかった。パイロットが何故、あのような精神状態に至ったのかもな」
『アイン』の言葉にジェイミィは慎重にならざるを得ないだろう。
『セラフィム・リッパー』が暴走したのは、オブリビオンマシンとなったからだとは、言葉にしても彼女たちには理解できない。
オブリビオンマシンは猟兵達にしか知覚できないからだ。
証明したくても、未だ猟兵達は過去の化身たるオブリビオンマシンが如何にして最新鋭のキャバリアと入れ替わることができたのかも説明できない。
「……わかりました。何かわかりましたら、こちらからもご連絡すると致しましょう」
ジェイミィは、PMSC社員たちの集めてきた情報と照らし合わせて、暴走事故のデータを受け取る。
そこに記されていたのは『セラフィム・リッパー』が『グリプ5』において三機製造され、その全てが損失しているという事実。
一号機は、『フォン・リィゥ共和国』に流れた末に破壊されてる。
二号機は『ツヴァイ・ラーズグリーズ』によって運用され、暴走後に猟兵達によって撃破されている。
三号機もまた『フュンフ・ラーズグリーズ』が試験起動で暴走し、その折にまた猟兵達によって破壊されている。
たどる結末は同じであっても、この事柄から浮かび上がってくるのは一つ。
「一号機だけがオブリビオンマシンになっていない……?」
しかし、それも破壊されている。
ならば、その一号機の残骸の所在は何処に在るのか。
そう、『フォン・リィゥ共和国』である。キャバリア闘技場が存在し、背に山脈を有し、堅牢なる小国家に今もまだ在るのだろう。
ジェイミィは予測するだろう。
もしも、次に何かが起こるのだとすれば。
「……その小国家でオブリビオンマシンが胎動する、と……?」
それがいつなのかはわからない。
けれど確実に訪れる未来に、必ず『セラフィム・リッパー』の影が落ちることをジェイミィは予感するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『ラーズグリーズ』の一番下か。
あたしの『GPD-331迦利』、どんなのか知ってる?
飛行する無人機。端的に言えば、キャバリアサイズにまで大型化した機甲式の式神――って表現じゃ分からないか。マスターのあたしに従うスレイヴよ。
殲火炎剣の目標にされない程度の高度と速度を維持。防御フィールド展開。
「レーザー射撃」で放つビームをレーザーポインタにして、『ゼクス』、『ズィーベン』、模擬戦よ。
あたしは観客席から『迦利』を「式神使い」で操作する。
そもそもこれ以上ないワンオフ機だから、この訓練に意味があるかは分からないけど、常識外の相手と当たってみるのもまた経験。
せめてアヤメや羅睺への土産話になってちょうだい。
猟兵たちとの模擬戦闘を重ねる『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』の駆る試作機たち。
彼等の挙動は経験値の少なさから来る硬いものであったが、それでも並のパイロットの技量ではないことを村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は知るだろう。
未だ『エース』ならざりし大器であるのか。
それとも、不確定であるからのこそのゆらぎでしかないのか。
判断材料の少なさも相まって、またゆかりは詮無きことであると肩をすくめる。
「『ラーズグリーズ』の一番下か」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の末弟妹たち。
彼等へとゆかりは近づいていく。今は猟兵との模擬戦闘の合間、休憩の時間なのだろう。暑そうに汗を拭う姿は、まだ少年少女相応のものがあった。
「お疲れ様。次の模擬戦闘は、あたしのキャバリアとしてもらうわ」
ゆかりはそう告げ、己の式神たる無人キャバリア『GPD-331迦利』を招来せしめる。
逆三角形のキャバリアらしからぬ機体。
それがゆかりのコントロール下にあるということを『ゼクス』少年も『ズィーベン』少女も驚いている様子であった。
「これがどんなのか知ってる?」
「記録だけなら。映像で見た限り、空中機動に特化した機体ですよね。でも、その……」
ゆかりはうなずく。
確かに暴走衛生『殲禍炎剣』によって空に蓋をされたクロムキャバリアにおいて、空を飛ぶということはリスクを伴うものである。
敵と戦う前に高度を上げ過ぎれば、撃ち落とされ戦う以前の問題になるだろう。
「飛行する無人機、だな。機動の仕方が人が乗ってる感じじゃない。あんな無茶な動きしたら中でシェイクされちまう」
『ゼクス』少年の言葉は『ズィーベン』と異なって、少し直感的なものであったが、概ね間違っていない。
「そうね。端的に言えば、キャバリアサイズにまで大型化した機甲式の式神――って表現じゃわからないか。要はマスターのあたしに従うスレイヴよ」
彼等に伝わるように言えば、『アルシェドール』の砲撃ユニットをキャバリアにしたようなものであろうか。
遠隔操作が可能であり、例え撃破されたとしても人的な損害がないことを考えれば、それは大きな意味を持つだろう。
物資はプラントで生み出すことができるが、優秀な『エース』のようなパイロットの育成はプラントで生み出してはいおしまい、ということにならないのである。
「それじゃあ、やってみましょうか」
「えっ」
「それと……?」
「人型ばかりがキャバリアというわけじゃあないでしょう? 多くの経験が全て余すこと無く糧となるわけじゃあないわよ。多くが役に立たなくても、砂金のように一粒のものが得られるまで繰り返す。それが模擬戦闘ってものでしょう?」
ゆかりがほほえみ、少年少女は、これが長丁場になることを覚悟する。
というか、猟兵たちの戦い方は『エース』以上にセオリー通りに進まない。メソッドなど、彼等単体で完結したものばかりであるがゆえに、『ゼクス』も『ズィーベン』も翻弄されっぱなしなのだ。
そんな彼等の模擬戦闘をゆかりは観客席にしたテントから眺める。
『GPD-331迦利』はレーザーポインタでレーザー射撃の代わりとし、試作機二機同時に模擬戦闘を繰り広げる。
彼等は人型以外のキャバリアと戦闘する事自体が初めてであったようで、空中機動を凄まじい速度で行う『GPD-331迦利』に言いように走らされてしまう。
「ついでに言うと、連携も取れてないわね」
あの二機は恐らくツーマンセルで動くことを前提としているように思える。
いや、違う。
二機で一機。もしくは、一機で二機分の働きをこなせる機体を生み出そうとしているような、そんな意図を感じさせる。
「ワンオフ機であることはこっちもあっちも変わりないか……ま、何事も経験ょね」
レーザーポインタによって『ゼクス』機が撃墜されたことを告げるブザーが鳴り響く。
一体今日だけでどれだけのキルマークを刻むことに為るのかはわからないが、せめてゆかりは己の式神たちの土産話になることを期待するしか無い。
大きく伸びをして、戦いの後の余暇を潰す。
戦いは激化していくだろう。恐らく結末に向けて。だからこそ、今在る時間を有意義にしなければならず、年端も行かぬ少年少女もまた何もかもを奪われぬようにと力を付けさせなければならない。
それが戦乱の世界、クロムキャバリアの理であるのならばこそ、ゆかりは、彼等の成長に期待するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『引っかかることはあるが…まあいい』
周囲を見回し、二人の試作機のデータも【情報収集】しながら、自身の愛機を【操縦】。少々、限界速度にちかいスピードの飛行挙動のデータを取る
『俺自身も新型のコイツになれとかないとな』
いつか来る黒幕との戦いに備えて、愛機を乗り回しとくぜ。
『俺たちは強くなりつづけるしかねえ。悲劇的な結末を破壊してくために』
「引っかることはあるが……」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は撤退していく小国家『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を見やる。
彼等のキャバリアはオブリビオンマシンではない。
それは彼が猟兵だからわかることだ。オブリビオンマシンは猟兵以外に知覚できるものではない。
今回、『八咫神国』の残存軍が混乱に陥ったのもそれが原因である。
一般のパイロットたちには、例えそれが『エース』であったとしてもオブリビオンマシンとキャバリアの境目はわからない。
だからこそ、オブリビオンマシンによって狂気に落とされた者たちが、これまでクロムキャバリアの歴史を戦乱に彩ってきたのだ。
平和が実現しようとしたことなど一度や二度ではない。
何度と無くオブリビオンマシンの撒き散らす火種に寄って平和は焼かれ滅ぼされてきたのだ。
「……まあいい」
彼等『シーヴァスリー』の動きにガイは作為的なものを感じないでもなかった。
それが猟兵が感じる所の黒幕の存在であったのならば、それが正しいのだろう。今は謎解きをしている暇などない。
『グリプ5』よりやってきた試験部隊、その試作機二機のデータを収集し、『シーヴァスリー』の到来に備えなければならない。
「俺自身も新型のコイツに慣れとかないとな」
ガイは彼等と共に『グリプ5』に渡り、己の強化されたキャバリアの特性を掴むベク飛行挙動のデータを取ろうとする。
このクロムキャバリアにおいて空を飛ぶということは、自滅と等しいことである。
何故ならば、空には暴走衛生『殲禍炎剣』があり、空に蓋をしているような状態だからだ。
如何に『コスモ・スターインパルス』が飛行能力を有していたとしても、それは限定的な高度と速度でなければならない。
移動する、という点においては完全に封をされているようなものであるが、それでも敵の攻撃を躱す、攻撃を繰り出す起点として三次元の動きができる利点は大きいだろう。
「速い、そして縦の動きを加えている……! あのキャバリア、飛ぶことができるのね!」
『ズィーベン・ラーズグリーズ』が試作機を駆り、ガイの駆る『コスモ・スターインパルス』と模擬戦闘を繰り返す。
放たれるペイント弾をガイは空中で軌道を変えながら躱す。
「空中での姿勢を整えるのが問題かと思ったのに!」
ガイは、その言葉を受けながら己の限界まで機体を制御する。体にかかる加速度Gは尋常ならざるものであったことだろう。
内臓は揺らされ、心拍は跳ね上がる。
意識が暗くなりかけるが、それを立て直し『コスモ・スターインパルス』のワックス剣の一撃が試作機へと叩き込まれる。
「ハイ終わりー! じゃあ、次は俺とやりましょう!」
『ゼクス・ラーズグリーズ』がさらにガイに迫る。
機体特性を考えても、接近戦での戦いは空中機動に如何にしてついていくかだ。自分のフィールドに引きずり込むのではなく、相手のフィールドに踏み込む。
その勇気がなければ、接近戦は仕掛けられないだろう。
「俺達は強くなり続けるしかねえ」
ガイは体にかかる負荷を振り払いながら、迫るワックス剣を受け止め払う。
機体がきしむ。
凄まじい拘束戦闘に機体のフレームが歪んでいくのを感じるだろう。試作機から放たれる斬撃の多さは、肩部が変形したサブアームがあればこそである。
けれど、やらねばならない。
ガイは悲劇的な結末を破壊するためにこそ、己の猟兵としての在り方があると信じる。
ならばこそ、ガイは裂帛の気合と共に『ゼクス』の試作機へと斬撃を撃ち込む。
「いつか来る戦いに備える……それがいつになるかわかんねえけどな……」
滴る汗と共にガイは息を吐き出す。
修練はどれだけ積み上げても足りないのだ。
どんな時にだって不測の事態は訪れる。いつ来るかわからぬ時に備えるためには、ひたすらに積み上げていくしかない。
ガイは、己の愛機が限界を迎えるまで、己を鍛え続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
『八咫神国』のみんなは『グリプ5』の人たちに任せるとして……。
ね。ね。ほんとにこのキャバリアイジっていいの?
すみずみまで?なにしてもいいの!?
キマりぎみの瞳に、涎が垂れそうな感じに尋ねちゃいます。
だいじょぶだよ。おかしなことはしないから。
いたいのは最初だけだから!
冗談(?)はこのくらいにして、2人の機体のデータを取って、調整していこう。
【モーター・プリパラタ】の本領、発揮しちゃうよー♪
『希』ちゃんサポートよろしくね。
『ゼクス』さんの機体は近接系で手数重視なんだね。
そうなると調整としては、スピードだけでなく、
少しトリッキーな攻撃を交えられる感じがいいかな。
【不可測演算】を攻撃に応用して、サブアームの軌道を変化させるのはどうだろう。
『ズィーベン』さんの機体は、射撃系の突撃タイプだっけ。
こちらは突撃戦闘時の命中率と回避率を上げるのがいいかな。
自動補正システムの強化と【アイリス・ギア】の透明化を施して、戦場を一気に駆け抜けられるようにしてみよう。
お二人が使いやすい機体になるといいのだけどっ!
戦闘空母『ネルトリンゲン』が『八咫神国』の残存軍兵士たちを収容し、『グリプ5』へと到着する。
彼等の処遇は未だ不明であるが、かつての同盟国であった者たちを無碍にすることはないだろう。その証拠に試験部隊であった『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』が戦場に駆けつけたのだから。
ひとまず、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『ネルトリンゲン』でもって彼等を移送し、その後に然るべき処遇を決めればいいと思っていた。
この『グリプ5』には『フィアレーゲン』から亡命者や、他国の難民を受け入れる郊外に築かれた特区が存在している。
彼等を一先ずは其処に、と言うのも考えられることであった。
けれど、それ以上に理緒の心をときめかせているものは、そういうことではなかった。
息が荒い。
動悸が高鳴るように彼女は前のめりで『ゼクス』少年と『ズィーベン』少女に詰め寄るのだ。
「ね。ね。ほんとにこのキャバリアイジっていいの? すみずみまで? なにしてもいいの!?」
マジでキマッている瞳。
正直に言うと『ゼクス』少年は、ちょっとこの人怖いって思っただろう。『ズィーベン』少女は逆にキャバリア好きなんだなぁって感じで割と楽観的であった。
あ、ヨダレたれそうな感じになっているところが理緒のキマり具合を示していた。
「だいじょうぶだよ。おかしなことはしないから。いたいのは最初だけだから!」
ぐいぐい来る。
「あ、いや、その……」
「データ収集をしてほしいっていうのはそうなんですけど、そのー……」
「息子たちをあまり怖がらせないで頂きたいです」
そう言って現れたのはフードを被った女性……『ヌル・ラーズグリーズ』であった。
彼女は『平和祈念式典』の折にオブリビオンマシンに寄って狂わされ、猟兵と戦った女性であり、『ラーズグリーズ』の名を持つ者たちの母親でもある。
『平和祈念式典』を水疱に帰した張本人でもある。それはオブリビオンマシンによって心を狂わされていたからであって、彼女自身の意志ではないだろう。
けれど、オブリビオンマシンは猟兵にしか知覚できない。
彼女の存在は、『グリプ5』にとって在ってはならない存在である。だからこそ、彼女はフードで姿を隠しているのだろう。
「冗談だよー。二人の機体のデータを取って調整していこうって思うんですけど……いいですよね?」
「ええ、頼みます。私は直接開発に関わることを禁じられていますが、息子たちの乗る機体です……お力添えができれば……いえ、お力を貸していただけますか?」
「もっちろん! モーター・プリパラタの本領、発揮しちゃうよー♪」
理緒はご機嫌で瞳をユーベルコードに輝かせながら、作業に没頭する。
すでに猟兵たちと模擬戦闘をしている『ゼクス』と『ズィーベン』の機体。
その数値はリアルタイムで理緒のデバイスに送られてきている。AIである『希』のサポートもあって、その数値は彼等の操縦技術や性格といったものの携行から最適な調整パターンを読み解いていく。
「『ゼクス』さんの機体は近接系で手数重視なんだね」
「ええ、あの子は単調ではありますが視野がよく開けています」
「なら、スピードだけじゃなく、少し取りっきなー攻撃を交えられる感じがいいかな」
理緒はプランをねっていく。
『フルーⅦ』秘蔵のスーパーロボット『レーギャルン』を参考されているであろう試作機は、多くの可能性を秘めた機体であるように理緒には思えたことだろう。
肩部のサブアームに軌道を変化させる演算を組み込むことを提案する。そうすれば、『ゼクス』の能力と相まって近接戦闘における敵を遥かに上回る攻撃速度を実現できるかもしれない。
「『ズィーベン』さんの機体は、射撃系の突撃タイプだっけ。あの封印されている腹部の砲口の出力はエネルギーインゴットから直接エネルギーを供給するタイプなんだね……」
となると、と理緒は考えるだろう。
射撃に特化している機体であると言えるが、どちらかというと戦端を切り拓くことを目的としている武装携行にあるようであった。
『ゼクス』の機体と合わせて、ツーマンセル……いや、二機で一体になるように組み上げられているような思想が読み解けるだろう。
「はい、あの子は、得てしてそういうところがありますから……突拍子もなく飛び出すこともままあるのですよ」
『ヌル』の言葉に理緒は笑う。元気でいいことだと言い合うようであり、『ヌル』にはもうオブリビオンマシンに歪められた心の傷跡などないように思えたことだろう。
「じゃあ、自動補正システムの強化と、突撃戦闘時の命中率と回避率を上げる方向で……あとは、透明化、ステルスの機能も付けられたいいよねー」
戦場を一気に駆け抜ける機体。
それが『ズィーベン』の能力と噛み合うことだろう。
理緒はプランを『ヌル』に手渡す。
彼女もまたキャバリア開発に携わっていた技術者であり研究者である。いや、だった、と言うべきだろう。
彼女のしたことは、オブリビオンマシンに歪められていたとしても許されることではない。極刑になっていてもおかしくなかったものである。
けれど、彼女はこうして姿を隠すことと、キャバリア開発に携わることを禁じられ、ただ一人の母親として此処にある。
それは嘗て、『フュンフ・ラーズグリーズ』が望んだものでもあったことだろう。
皮肉にも、それはオブリビオンマシンによって叶えられてしまっている。
彼の弟妹たちに母親が必要だと考えたことは、遠回りであっても叶ったのだ。それを手放しで喜ぶことはできないかもしれない。
けれど。
「やっぱりお母さんと子供らが一緒に要ることのほうがいいよねー」
うん、と理緒はうなずく。
そして、自分の検討したデータ、そしてプランが『ゼクス』と『ズィーベン』の未来を護るものになるといいと願うのだ。
使いやすい機体は、それだけ彼等の生存率を上げるだろう。
戦乱ばかりが続く、平和とは程遠い世界。
それがクロムキャバリアであるというのならばこそ、理緒は願うしかない。そして、オブリビオンマシンの暗躍があるのならばたかうしかないだろう。
「ありがとうございます……あなたのお気持ちが、私には嬉しい。私には最早できることなどないのかもしれません。けれど、子どもたちを助けてくれる方々がいる……それだけで私は救われています」
『ヌル』の言葉は偽らざる本心。
その言葉が聞けたのならば、理緒は十分だというように微笑むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
あー…ちょいとヒトエとかいうのと面会しますか
随分フュンフだかエイルだかを信奉してるよーだが僕からすれば大した事ねーよ
そいつは単に「運がよかった」だけだろ?自分の才能が必要な場所で生かされたってだけの話だ
そんな事ない?その在り方?精神?
だというなら…既におめーはもってるじゃねーか
じゃなきゃ此処にこうしてねーだろ?
一つ天才の僕の秘密を教えてやる
僕も才能ある訳じゃねーですよ
魔術も盗賊としての才覚も天才には及ばねー
唯…使い高めねーと生きてけなかっただけだ
さて…模擬戦やるか
【情報収集・視力・戦闘知識】
二人の能力と技能
癖を冷徹に把握
そして仕込みが無いかも
一切本気は出さない
ぎりぎり勝つLvで調整
…保険ですね
逸話は伝説になり、伝説は神話へと昇華する。
それが人が紡ぐものである限り、何処かに虚飾が入り交じるものであるからこそ。
しかし、その神話が人を救うこともあるのだろう。
同時に人を絶望に叩き込むこともまた真理である。
だからこそ、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は思うのだ。
『フュンフ・エイル』という不出世の『エース』は最早『グリプ5』周辺国家において神話と同義。
ゆえに『八咫神国』が血脈を戴くことによって平穏を享受してきたことも否定はできない。
かつての『八咫神国』の元首であり『帝』と呼ばれた『ヒトエ』は『グリプ5』の外苑に存在する特区の療養所で一人静養していた。
彼の元を訪れたカシムは、その様子に息を吐き出す。
神話は人を救う。
けれど、今の『ヒトエ』のように己の全てと思っていたのならば、虚飾を取り払われた以上、そこにあるのは虚であったことだろう。
「随分『フュンフ』だか『エイル』だかを信奉してるよーだが、僕からすれば大したことねーよ」
その言葉に『ヒトエ』は顔を向けるだろう。
あらゆるものを失ってきた彼にとって、その胸のうちにある虚は簡単に埋められるものではなかった。
それを人は傷心と呼ぶのであろうし、心の傷は何かですぐに埋め合わせることなどできようはずもないのだ。
「そいつは単に『運がよかった』だけだろ?」
カシムにとって、それはそれ以上の意味を持たない。どれだけの才能が在ったとしても、人は死ぬ。
刃でなくてもいい。ただの殴打でも死ぬことがある。
どれだけの才能、どれだけの晩成の大器があるのだとしても、死ねばそれでおしまいである。
そして、その才能があったとしても、必要とされる場所でなければ、生きることすら難しいものだ。
「いいや。私の知る『フュンフ・エイル』はそうではない。彼にとって、それは……」
「その在り方、精神とでもいいたいのか?」
「……」
以前の『ヒトエ』であったのならば、そうだと言っただろう。絶対的な力を持ちながら、その力を己のことに使わなかった者。
誰かのためにと戦う者。
『戦いに際しては心に平和を』
それが『フュンフ・エイル』の残した言葉でもある。だからこそ、『ヒトエ』は残存軍をまとめることができたし、率いることができた。
血脈だからではない。ただ、一人の人間として人を率いることができたのだ。
「だというなら……既におめーはもってるじゃねーか」
でなければ、此処にこうしていることもないはずだと告げる。
カシムにとって、それは歯がゆいことであったのかもしれない。
才能あるものにはわからないことだ。カシムは、己の才能の無さを嘆くだろう。他者はそんなことはないと言うだろうし、そのように見えることもまた事実である。
けれど、そうではないのだ。
「一つ天才の僕の秘密を教えてやる。僕も才能がある訳じゃねーですよ」
魔術も盗賊としての才覚は天才には及ばない。
及ばないからと言って生きることをやめることなどできない。出来損ない、失敗作、存在する意味のないもの。
どれだけの言葉で謗られようとも、カシムは生きることをやめられないだろう。
この才覚とも言えぬ力もまた同様である。
「唯……使い高めねーと生きていけなかっただけだ」
それは転ずれば、そうしてでも生きていたかったということである。
生きて、今此処にある生命。
ならば、それをどのように使うのか。カシムは『ヒトエ』に問う。言葉の外で、そして、その答えを待つことなくカシムは『グリプ5』へと向かう。
人を立ち上がらせることができるなど思い上がりも甚だしい。
カシムは息を吐きだし、試験部隊の模擬戦闘訓練に参加する。説教じみたことを言ってしまったとは思わないだろう。
自分たちにはやらねばならぬことが山積している。
試作機――それは『グリプ5』にとっては戦力として必要なことだ。けれど、その開発にオブリビオンマシンの策動が目をつけぬはずがない。
だからこそ、違和感を感じる。
何も感じない。作為的なものも、細工のようなものも。仕込みがあるはずだと感じた猟兵達は多かっただろう。
けれど。
「それがない……どういうことだ」
模擬戦闘でカシムは一切の本気は出さなかった。ギリギリで勝つ、というラインを守りながら模擬戦闘を終わらせる。保険であるということは明白。
けれど、言いようのない違和感をカシムは拭えずじまいであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
近接用の機体と遠距離用の機体か…
よしバラそう
後で、後でちゃんと戻すから…多分
ちょっと変な部位が生えるかもしれないけど、見た目だけはちゃんと戻すから!
2機あるんだし、1機くらい良いでしょー
バラさしてくれないと、駄々こねるぞ!
良い大人が子どもみたいにみっともなく駄々こねるぞ!!
ごろごろ転がるぞ!
そんな真似させたくなかったらバラさせて!
『メカニック』知識を総動員してバラそう
近接戦用の方が馴染み深いし、そっちで
ネジの1本になるまでバラしてデータ取ってやる
制御プログラムも『ハッキング』してコピーしちゃお
…何かに使うかもしれないし
堪能したら組みなおそう
多分…うん多分元に戻る…
やべっ…いや大丈夫大丈夫
小国家『シーヴァスリー』と『八咫神国』の戦場に現れた二機の試作機。
『グリプ5』が『フルーⅦ』のスーパーロボット『レーギャルン』を参考として建造した機体であり、近接用の機体と遠距離用の機体と機能を分割したかのような構成となっていることを月夜・玲(頂の探究者・f01605)は理解していた。
ツーマンセルで動くことを前提とした機体。
そして、それらを駆る『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』のパイロットとしての特性を考えたものである。
「よしバラそう」
開口一番言い放ったのはそれであった。
すでに二機は猟兵たちとの模擬戦闘を終えてのメンテナンスに入ろうとしていたところであった。
多くのデータが集まったことにより、これからまたフィードバックの作業に入ろうとしているのに、まさかの全バラしの提案。
いや、提案でもなかった。
確定事項であった。
『ツェーン』が流石にそれは、と玲を止めようとしたが、玲は取り合わなかった。もうバラそうとしているのが丸見えの瞳で試作機に近づくのだ。
「後で、後でちゃんと戻すから……多分」
「今多分っていいましたよね!?」
止めるのも構わず、玲はずりずりと試作機に近づいていく。この機体の開発主任は『ツェーン』なのだろう。必死に止めているが、玲は取り合わなかった。
「ちょっと変な部位が生えるかもしれないけれど、見た目だけはちゃんと戻すから!」
「何も安心できないんですけど!? なんで変な部位が生えること前提なんですか!?」
「二機あるんだし、一機くらいよいでしょー」
「よくないですってば! これ、国家機密ですよ! 最新鋭のキャバリアってそういうものですってば!」
そんな二人のやり取りをみんな遠巻きに見ていた。
誰も止められなし、割って入ったら絶対面倒なことになるって目に見えているのだ。玲はならば仕方ないというように『ツェーン』に向き直る。
「バラしてくれないと、駄々こねるぞ!」
えぇ……。
「良い大人が子供みたいにみっともなく駄々をこねるぞ!! ゴロゴロ転がるぞ! そんなマネさせたくなったらバラさせて!」
脅迫である。
『ツェーン』は悩んだ。めちゃくちゃ悩んだ。正直、ゴロゴロ駄々こね玲さんを見たいかと言われたら、正直見たい。好奇心で見たいと思ってしまっている。
けれど、彼女にとって玲は尊敬の対象である。
尊敬する心の師とでも言うべき玲が大人の尊厳かなぐり捨てる姿を晒すのは、その、ちょっと……。
なので、折れた。
しかし、必ず『ツェーン』同伴でという条件をつけて。
「やっぱりいいよね、メカニックって」
上機嫌の玲が試作機をオーバーホールしはじめる。彼女のおかげで機体のデータフィードバックは遅れに遅れまくったが、この際仕方ない。責任は全部『ツェーン』が取るというものであるから、玲は鼻歌交じりでばらしていく。
「近接用の機体が馴染み深いし、こっちのほうが面白いな」
「そういうものですか……? 肩部のサブアームは元々四本にする予定だったんですけど、制御のプログラムが間に合わなくて、二本しか装備できなかったんです」
「ふんふん……」
「あっ、そこまでバラさないでください。とても面倒なことになりますから!」
ネジの一本になるまでバラそうとしていた玲を『ツェーン』が止める。マジで! やめて! となるので玲は仕方ないなぁって顔をしてやめる。
けれど、玲のしたたかなところは、それをブラインドにして、制御プログラムをハッキングしてコピーし始めたところにある。
『ツェーン』も気が付かない所業。ていうか、手癖の悪さ!
「……なにかに使うかもしれないし」
ボソッと言った言葉はきっと彼女の耳には届かないだろう。玲は『レーギャルン』を模したというキャバリアの隅々まで堪能し、約束どおりに機体を組み直していく。
しかし、玲が思う以上に試作キャバリアの組み直しは難航する。
何度も玲は自分に言い聞かせたのだ。
「多分……うん多分元に戻る……」
「そこ、違いますよ。左右逆です。あと、そこ、それテンションかけすぎないでください」
『ツェーン』の熱血指導。敬愛する心の師に指導するというなんかこう、歪んだあれな感情が芽吹いているような気がしないでもない視線を背に玲は夜通し組み直すに明け暮れていく。
「やべっ……」
「なにかいいました?」
「いや、大丈夫大丈夫」
本当本当、本当だってば! と整備場に玲の声が朝方まで響く――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
先の戦地に戻ります。正しくは、戦場跡地に。
ディスポーザブル02の速度なら、そう時間は掛らない筈。
模擬戦闘はきっと他の猟兵の方々が為されるでしょうし、
さりとてグリプ5で何かをしたいというのも……ないですし。
自分は、此処の方が何か落ち着くのであります。
亡国の主を召喚し、遠隔操縦。
戦場にかく座しているグローザと残骸を捕食し取り込みつつ、戦場跡地でぼんやりしております。
そういえばアルシェドールから切り離された背面ユニット。
残ってないでしょうか。
戦闘指揮システムの模倣ができたら、有益な情報を得られるかもしれない。
まぁないならないで良いです。
どこの某の企みだろうと、全て壊してやりましょうとも…!
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は戦場痕に一人佇む。
何を、と問われたのならば大した理由はないと告げるだろう。彼女にとって小国家の街中というのは、どうにも居心地が悪いものであったからかもしれない。
そして、同時に幼き兵士である『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』とどのように接してよいかわからなかったからかもしれない。
模擬戦闘を求められていたが、きっと他の猟兵がそれをしてくれるだろうと思ったし、何かをしたいと思ったわけでもない。
彼女に出来ることは唯一である。
壊すこと。
破壊すること。
オブリビオンマシンを砕くこと。
ただそれだけのことしか彼女にはできないと思えていたことだろう。それに戦場痕のほうが、落ち着くのだ。
「……『亡国の主』」
呼びかけるようにして小枝子は己のキャバリアを呼び出す。ジャイアントキャバリアに分類される彼女のキャバリアの吐き出す息は物質を分解し、破壊する。
目の前の戦場痕にあるのは、先の戦いによってかく座したオブリビオンマシンの残骸だ。
これらを分解し、捕食し、取り込む。
それが小枝子に出来る少ないことの一つであった。遠隔操作で動く『亡国の主』が残された残骸を取り込んでいく中、小枝子はぼんやりと空を見上げる。
その視線の先にあったのは空だ。
空っぽの空。
蓋をされた空。
自由に飛ぶことを許されず、ただ人の疑心を煽るばかりの存在が座す空だ。あの空の向こう側を小枝子は知らない。
「そういえば……」
あの戦いの最中、オブリビオンマシン『アルシェドール』は背面ユニットを切り離され、破壊されていた。
あの残骸を取り込めば何かわからないだろうかと小枝子は意識を向ける。それに追従するように『亡国の主』が首をもたげる。
残っていないかもしれない。
けれど、探してみる価値はあるはずだと視線を巡らせる。
そこにあったのは、『アルシェドール』の背面ユニット。スラスターとしての機能ではなく、あの膨大な数のオブリビオンマシンを従わせていた指揮統制システムの一端。
『亡国の主』が分解し、取り込んでいく。
あれが模倣できたのならば、有益な情報を得ることができるであろうし、小枝子の戦いにも何かを齎すかもしれない。
それにこの絵図絵を描いた黒幕の企みがわかるかもしれないと彼女は思ったのだ。
「――……ッ!」
『亡国の主』が分解した『アルシェドール』の背面ユニットから流れ込んでくるのは、声であった。
「……惜しいな……いや、恐ろしいな、と思うべきか」
「これが……『■■■■■』……こんなものが……」
「ああ、かの……では、これは特別な機体でもなんでもない……ただの……だ」
「おぞましい……こんなものが戦場を数多駆け抜けているというのか……」
「特別でもなんでもない。ただの一騎。それがこの第五世代『セ■■■■』……――」
小枝子は目を見開く。
空を見上げた。何かを見たわけではない。ただ、流れ込んできた残留物質を垣間見ただけ。けれど、それが真実であるかどうかもわからない。何がどうであるということもわからない。
けれど、ただ一つ確かなことがある。
何もなければそれでいいと思っていた。けれど、そうはならないこともまた理解できていた。
「どこの某の企みだろうと、全て壊してやりましょうとも……!」
小枝子に出来ることは破壊のみ。
それゆえに、小枝子は如何なる者にも止められない。ただひたすらに前に進む。それだけが小枝子に残された戦塵たる唯一なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵