野良犬に涙は要らない
●泣かないと決めた。野良犬は武器を鍛つ。
ジェフ、マーフィ、アナ、フレッド、ロビン、ハロルド。
ケヴィン、ロイド、ティム、カレン、ジョッシュ。
かれらの名前を思い出しながら、男はパーツを取り外す。
ここは夢の終点、ジャンクヤード『デッドエンド』。
上層都市に降りしきる重金属酸性雨が、排水システムを通り抜けて染み込み、絶えずピチャピチャと滴る、廃棄物だらけの最下層街。この世界にはごく有り触れた掃き溜め、『ダストエリア』の一つだ。
ダストエリアは不法投棄の果てに生まれる。棄てられるものはどうしようもないガラクタばかり。棄てるのは企業、個人、どちらもだ。枚挙に暇がない。……機械ばかりではなく、必要とされなかった人間も、棄てられることがある。中毒者、使い物にならなくなった娼婦、光を失った暗殺者。生まれるべきではなかった子供。そういうジャンクが積み重なって、今日も灰色に塗ったくられた天井と、人工的なライトの光の下で蠢いている。
ここは救いもなく、希望もなく、すり切れていくばかりのジャンクヤード。
だからこそ、楽しくやれていたのは奇跡のようなことだと彼は思う。
かれらのような一団に出会えたことも。
『ストレイドッグス』という一団がいた。野良犬共を名乗るジャンク屋の青年達だ。――この底辺中の底辺の地で、記憶を喪って倒れていた男に、彼らは優しかった。なんと親に打ち棄てられた子供の頃から、一緒にジャンクを漁って生きてきたという。
野良犬たちは、体格に優れる男を、戦力になると言って介抱し、居場所を与えた。ジャンクを漁るための知識と技術、それを組み合わせて様々なメカニクスを作るレシピを与えた。はやく食い扶持を稼いでくれと笑って、惜しまずに。
――いつか恩を返そうと、男はそう思っていた。一人でジャンクを漁りに出て、帰ってきたジャンク屋が崩落し、瓦礫の山になっているのを見るまでは。
『メガコーポの連中が、ここらのジャンクに興味があるんだとよ』
『こんな臭ぇ掃き溜めに、お上の連中がなんの用かねぇ?』
『どうも、試作型の兵器がまとまって棄てられてる一角があるって話でさ。その中の部品が再現できない精度だってんで、サルベージしようって話らしいぜ』
『へぇ~。ついでに俺たちも拾ってくれねぇモンかねぇ!』
野良犬たちが話していたことを思い出す。
握り締めた手に爪が食い込む。歯が軋む。
男は仲間達を探した。数時間、数日、数週間掛けて。――見つかったのは、残らず死んだ仲間達の無惨な骸だった。義体はもぎ取られ、必要無いと判断されたらしいものはジャンクの山に放り込まれていた。使えそうなパーツは、――生体も含めて、全て回収されていた。
物言わぬ肉塊を、人数分葬りながら男は思う。
メガコーポというのが、非人道的な手段で勢力を拡大し続けている人非人どもの集まりであるとは知っていた。
だが、ここまでするのか。こんな地の底に押しやられ、それでも懸命に今日を生きている人間達を、なんのためらいもなく鏖殺し、その骸を踏み荒らしてまで勢力を拡大しようとするのか。
「許しておけるか。こんなものを、許せるわけがない」
灰天井から滴る雫が、野良犬共の墓に降りしきる。
男は、瓦礫の山に作業房を作り、ジャンクからパーツを外し始めた。
フォトセルを取り外す。コンデンサを取り外す。ソルダープールに浸けた基板から、マイクロピンセットで、パーツをことごとく外していく。
男には知識があった。こと、『武器を作る』ことに関して、彼は天才的であった。ジャンク屋には不要な能力だ。ジャンク屋同士の小競り合いなんざ、粗悪な拳銃で用が足りる。生活をマシにする家電を扱えた方が、まだしも役に立つだろう。
ああ。でも。
今だけは、なぜ識っているのかも分からないこの知識を振るう。
死んだ野良犬共の弔いには、涙より号砲が相応しい。
あいつらへの弔意が、来る鋼鉄の悪魔共をブチ殺す。
――そうでもなきゃ。
せめてそうでもなきゃあ、救われないじゃあないか。
斯くして男は武器を鍛つ。
野良犬に、涙は要らない。
●ストレイドッグ・アーセナル
「――起こってしまったことは変えられない。だが、これから起こることは変えられる」
場に集まった猟兵に、壥・灰色(ゴーストノート・f00067)が静かに言った。
「今回の舞台はサイバーザナドゥ。プレミアム・パーツやレアメタルの類を回収するために、メガコーポの尖兵がダストエリア『デッドエンド』を襲撃するという予知だ。先遣隊によりすでに多数の死傷者が出ているが、本侵攻はこのあと。パーツ回収用の『ダスト・ナーガ』を多数従えた指揮オブリビオンが投入され、デッドエンドは本当の意味で壊滅する。……そうなれば恐らく、生き残る人間はいない」
灰色は拳を固く握るが、余計な感情を表に出さぬままに続ける。
「作戦に参加する猟兵達は現地に急行し、直ちにジャンク屋の生き残りの男にコンタクトを取ってほしい。……というのも、その方が作戦の成功率が上がるからだ」
灰色によれば、男の作る武器は非常に強力であり、その協力を得ることで猟兵達の戦力強化が計れるという。
「剣、銃砲、一体型のサイバーウェアまで――およそ武器と呼べるものなら彼は何でも形にするだろう。あるいは、きみ達の武装を強化してもらうこともまた、可能かも知れない。それに加えて、彼は現場の地理に詳しいはずだ。協力が得られるに越したことはない」
語り終えると、灰色は立体パズル状のグリモアを片手で回転させ、全面を揃える。
光輝くグリモアが、放つ光で空間を切り取った。“門”が開く。
「発見後間もない世界だからね、何が起きるかも含めてまだまだ未知数だ。……向かう人はどうか気をつけて。無事を祈るよ」
――どうかあの野良犬の弔いに手を貸してくれ。
灰色はそう言って、一度、深く頭を下げた。
煙
野良犬の牙を突き立てろ。
お世話になっております。
お久しぶりです。煙です。
●テーマ
武装の修復、強化、新造。
それによる獅子奮迅の大暴れ!
拙作『魔穿鐵剣』シリーズと同様のコンセプトです。
●構成
一章:武装作成/強化:『銃砲店で試し撃ち』
二章:対『ダスト・ナーガ』集団戦。
三章:対『アームド・サイコブレイカー』ボス戦。
●描写量について
今回は一日に二~三名様ほどのお返しとなります。
プレイングの着順による優先等はありませんので、受付締切日時まではプレイングをお待ちしております。
試験的に、再送が一度で済むよう、最初に一度送信していただいた後は、書けるだけ書いて、再送して戴く必要のある方に個別に連絡させて戴き、再送をお願いする形を取ります。連絡を受け取った方は、お手数ですが一度だけ再送にご協力いただけますと幸甚です。
●プレイング受付開始日時
断章掲載後の受付開始となります。締切も同様に掲示します。
第1章 日常
『銃砲店で試し撃ち』
|
POW : 大口径サイボーグ用キャノンの試射をする
SPD : トラディショナルなヤクザのチャカリボルバーで試射をする
WIZ : 銃弾が標的を追跡するスマートウェポンの試射をする
|
●牙を研ぐ
ジャンクヤードの奥の奥に、殺意の光と蒸気が揺れていた。
ジャンクの山をまるでかまくらのように刳り抜いて作られた工房で、たった一人で、男は武器を作っている。
男の他に動いているものはといえば、プラズマ炉の揺蕩う煌めきと、絶え間なくパーツを製造し続けるメタル3Dプリンタ、そして大型のジャンクから筐体を切り出すプラズマレーザーカッター。
ソルダプールから鼻を甘く焦がすように、鉛とフラックスの匂いが立ち上って、あたりを満たしている。
張り詰めた緊迫感が漂っていた。
――ここは、殺意を鋳造するための工房だ。
訪れた猟兵達がその男に声を掛ける前に、男は振り返りもせず、低い声で言った。
「あんたらは何者で、なんでこんな掃き溜めにいる? ――悪いことは言わん。さっさと逃げた方がいい。ここにはもうじき、このジャンクの山を引っ繰り返す為に、メガコーポの悪魔共が来る」
男は完成したばかりらしい、片手長刀の刃を確かめながら言った。見るものが見れば分かるだろう。それは、鞘を発射台として使う変則居合刀だ。電磁加速および火薬の爆圧の二段加速で刃を射出し、超高初速での抜刀術を可能とする刀である。柄元にはトリガーが配されており、恐らくそれによって射出の瞬間をコントロールするのであろう。そのほかにも多数の機能を有するであろう先鋭的な刀を、男は溜息をつきながら納刀し、横合いの壁に立てかけた。
「おれには、尻尾を巻けない理由がある。ここで武器を作らなければならない。……振るう才能は持ち合わせてはいないが、おれが振り回したとしても尖兵をいくらか叩き潰すことくらい、できるだろう。――これは殺された仲間の弔い合戦だ。奴らにとっては不要なガラクタだったかも知れないが、おれにとっては無二の宝だった」
男は、軽く上に目をやった。『StraydogS』のネームタグが十一枚、まるで祀るように作業灯にぶら下がっている。
「……警告はした。話は終わりだ」
男はすげなく言って、プリントされたパーツをジャンクから切り出してきた筐体に組み付け始める。
男は君たちを識らない。
君たちの言葉次第では、彼から色よく協力が引き出せるかも知れない。
≫≫≫≫≫MISSION UPDATED.≪≪≪≪≪
◆作戦達成目標
0.男を説得する・男と話をする
1.装備を強化、もしくは補修する【Locked】
2.装備を新造する【Locked】
◆作戦詳細
(作戦参加時は、以下ナンバーのいずれかを明記のこと)
0.男を説得する・男と話をする
男を説得し、協力を得るよう話をすることができる。
この目標に挑み、一名ないし二名の猟兵が成功することで、次項1.および2.がアンロックされる。アンロックされた場合は通知するため、ミッション更新表示を確認のこと。
なお、本項に成功した猟兵がいる場合、その猟兵は武装を造るべく、もう一度プレイングを提出することができる(男の信用を得ることができているため)。
【Notice】
・説得後に装備を作りたい場合、オーバーロードでのプレイング送信は
避けられた方がよいかも知れません。(採用されない場合、再送信ができなくなる為です)
説得に全てを懸けるぜ! という場合は歓迎です。
1.装備を強化、もしくは補修する
男の武装製造技術を頼り、装備を強化、もしくは補修することができる。
武器に何らかの機構を加えたり、その性能を純増する改造が主。
【Notice.】
・強化後・補修後の武具の銘、形などがお決まりの場合はご明記下さい。
指定なき場合、従来と同じ銘となるか追加の銘が加えられる可能性があります。
銘お任せなど、注文がある場合はプレイングにてどうぞ。配慮致します。
・システム的なアイテム作成は伴いません。
装備品として取得する場合、適宜、ガレージより
アイテム作成をして頂く必要がございます。ご注意ください。
【ガレージ】
→https://tw6.jp/html/world/441_itemall.htm
2.装備を新造する
男の技術を頼り、新装備を開発することができる。
具備すべき要件を伝えれば、戦闘に使用するためのものなら、リクエストに応じてほぼ何でも作成してくれるだろう。
【Notice.】
・武具の銘、形などがお決まりの場合はご明記下さい。
ない場合、相応しいと思われる銘と形が与えられます。
形お任せ、銘お任せ、など、注文がある場合はプレイングにてどうぞ。
・システム的なアイテム作成は伴いません。
装備品として取得する場合、適宜、ガレージより
アイテム作成をして頂く必要がございます。ご注意ください。
【ガレージ】
→https://tw6.jp/html/world/441_itemall.htm
◆プレイング受付開始日時
本断章上梓と同時
◆プレイング受付終了日時
2022/03/22 00:00:00
矢来・夕立
【0】片手間に聞いて頂いて結構です。
オレ達はここに来る企業の犬どもをブチ殺しに来ました。事情は違いますが最終目的は同じハズです。
取引をしませんか。
こちらから人員を提供します。
そちらには装備を整えて頂きたい。
彼らの多くは戦闘行為のプロです。武器の扱いにも長じている。
あなたひとりで戦って雑魚数匹殺して死ぬよか、暴力を外注して全員潰す方がよくないですか?
何より、良い武器です。
でもこのままではただの一回しか使われない。
あなたが刺し違えるつもりなら。
残されたものはスクラップになるか、企業に接収されるか。
いずれにせよ、籠められた殺意に見合わない扱いを受けて壊れることでしょう。
それは個人的に看過できないので、是非とも生き延びていただきたい所存です。
…道具は、使い手を選べません。
両手両足を縛られているようなもんです。
ですからなんというか…活きるも死ぬも持ち主次第というか…
メガコーポのクソバカの手に渡るなんてぞっとしないでしょ。そういう話です。ええ。
あ、オレは結構です。浮気したら祟る武器が居るので。
●嘘吐きの正論
男が言い捨てたあと、ひとしきりの静寂。
工房に足を踏み入れた者、あるいは外で様子を伺っていた者、様々であったが、猟兵達の中で最初に口を開いたのは、工房の中。男の横合いの暗がりから滲みだした、一人の青年だった。動くまで、その輪郭すら周囲に知覚させぬ。高度な隠形。忍びの者か。
「片手間に聞いて頂いて結構です。取引をしませんか」
まだ若い。少年から、青年に変わりゆく途中の年頃。だが、眼鏡の下の酷薄な眼光は、歳に似合わぬ数多の経験を積んだのだろうと想起させる鋭いものだ。
紙忍、矢来・夕立(影・f14904)である。
「……取引だと」
「ええ。オレ達はここに来る企業の犬どもをブチ殺しに来ました。事情は違いますが最終目的は同じハズです」
男は、語る夕立にちらりと横目を向けた。手は続けざまに陽電子杭――ポジトロン・パイクを組み立てている。文字通りの片手間だが、夕立はそれを気にした様子もなく続けた。
「こちらから人員を提供します。そちらには装備を整えて頂きたい」
「……」
男はぐるりと視線を巡らせる。気付けば集まった猟兵の数は、見えただけで八人ほどもいる。彼らのそれぞれが、それぞれの言葉を思いを胸に男に会いに来ているのだ。
そんな中で夕立が語るのは、徹底した現実論だった。
「彼らの多くは戦闘行為のプロです。武器の扱いにも長じている。あなたひとりで戦って雑魚数匹殺して死ぬよか、暴力を外注して全員潰す方がよくないですか?」
「……」
ぎ、と男が唇を咬む。どうあってもその通りである。
男とて理解している。自分は作る側の人間だ。決して使う側の人間ではない。どれだけ強力な武器を作ることが出来ても、まともに使えないのでは、その性能を十全に発揮しきる前に殺されてしまうだろう。
「……あんたらにおれの武器を預けろと?」
「その通り」
「何を根拠にあんたらを信じればいい。おれの武器を持って逃げない保証は?」
「掻っ払って逃げるつもりなら、もうそうしてます。ここに何人来てるか分かりますか? 十九人です」
「……!」
「それだけ数がいて、戦意も殺意もなく呼びかけている。証拠とするには弱いかも知れませんが、あなた曰くもうすぐ危険地帯になるここで、悠長に話をしているのはなんのためか――というのを酌んで頂ければ僥倖。――まあ、個人的な見解の話をしましょう。よく理屈の分からない武器もありますが、あなたの作ったものは、良い武器です」
夕立は二段加速刀をちらりと見やる。永海の技のそれにも劣らぬ、この世界における技術の粋を集めた刃。それだけに惜しい。
「でも、このままではただの一回しか使われない。あなたが刺し違えるつもりなら。残されたものはスクラップになるか、企業に接収されるか。――いずれにせよ、籠められた殺意に見合わない扱いを受けて壊れることでしょう。それは個人的に看過できないので、是非とも生き延びていただきたい所存です」
「……」
夕立の言葉はどこまでも正論だ。男は迷うように口を噤み、ドライバーを置いた。既に作り上げた一〇種類の武器が、壊れるところを想像したのか。
作業台に目を落として沈黙した男に、夕立は密やかに続ける。
「……道具は、使い手を選べません。人で言うなら両手両足を縛られているようなもんです。ですからなんというか……活きるも死ぬも持ち主次第というか……」
懐に手をやる。迅雷華絶『雷花・旋』。一振りの脇指のことを思うように、柄に手を置きながら。
「丹精込めて作ったあなたの子らが、メガコーポのクソバカの手に渡るなんてぞっとしないでしょ。そういう話です。ええ」
「……よく回る口だな」
「商売道具なので」
苦り切った口調で言い返す男に対して、返す言葉も涼しいものだ。
「では、オレからは以上です。あなたが請けてくれるなら、代金は奴らの首でお支払いしますよ。――まあ、オレは武器は遠慮しますが。浮気すると祟る武器がいるので」
「……祟る?」
なんだそれはと聞き返そうと、夕立の方を男が振り向けば、そこにはもう誰もいない。
狐につままれたような表情の男を残して、紙忍は、気配も残さず消えていた。
成功
🔵🔵🔴
蔡・葉青
0.説得 ◎◎◎
忙しいところ失礼、ミスター・ストレイドッグス
嫌味とは言わないでくれ そちらの名を知らないのさ
上層でこの世の春を謳歌する人非人への手土産には
何が喜ばれるのか意見を聞きたくてね
私の文化圏では大量の菓子や果物が定番だが
人非人がそんなものを好むとは思えない
ライフルかグレネードかあるいは大口径ランチャーか
あの欲しがりな意地汚いお口に
たっぷりねじ込めるのが何なのかを知りたいだけさ
もちろんそちらが手配してくれるならそれでもいい
名は知らないが仕事の腕は確かなのだろう?
こちらの腕を信用するも、しないも自由
どのみちメガコーポに踏み潰される未来なら
名も知らない酔狂にひとつ賭けてみるのも一興ってものさ
●銀の牙が目覚めるとき
紙忍が消えたその後に口を開いたのは、一人の女だった。翠の瞳、銀の髪。浅黒い肌。どこか浮世離れした気配を持った女。蔡・葉青(天狼星・f20404)である。
「忙しいところ失礼、ミスター・ストレイドッグス。先ほどの青年の言うとおり、私たちは貴方を助けに来た。話を続けてもいいかい?」
「……それは屋号だ。おれたちが揃ったときのな」
「それは失敬、嫌味だとは思わないでくれ。そちらの名を知らないものでね。――私は蔡・葉青。先ほどの彼とはまあ、同じ派閥のようなものと言っておこうかな」
「……銀」
「うん?」
「シロガネ。おれの名前だ」
うっそりと名乗る男に、葉青はしたりと頷いた。
「では改めてミスター・シロガネ。上層でこの世の春を謳歌する人非人への手土産には、何が喜ばれるのか――あなたの意見を聞きたいな」
葉青は薄く笑い、握った拳を腹の高さに上げる。
「私の文化圏では大量の菓子や果物が定番だが、人非人がそんなものを好むとは思えない。
ライフル弾かグレネード弾かあるいは大口径ロケット弾、口に入らないような鋼鉄のスイーツ。いくら食っても満足しない、あの欲しがりな意地汚いお口を満たすには、何をたっぷりねじ込めばいいのか――教えて欲しくてね」
葉青の言葉に、堪らないという風に振り向いて、男――シロガネは腕を打ち振った。
「あんたら――酔狂でも何でもなく、正気で言っているのか? 敵はメガコーポ。『セワード・アーセナル』社だ。軍需品をクソほど作ってる連中で、最近じゃニンジャだのサイキックだのを大量に私兵化して、そいつらを使って実験して急速にバトル・プルーフを稼いだ兵器を売って荒稼ぎしてやがる。おれに味方するってのは、そいつらに弓を引くってことだぞ!」
「望むところ、とは言わないが、どうやら全員正気でね」
葉青は軽く笑って言った。その場に並ぶ猟兵の誰もが、その言葉を肯定するように頷いた。
「ミスター・シロガネ。さっきの彼も言っていたが、あなたの腕は確かなんだろう。その腕を見込んで言っている。私達の腕を信じるも信じないも、あなたの自由だ。――けど確かな事が一つある」
「……なんだ」
「戦力差は決定的だ。あなた一人ではね。――このまま黙って踏み潰される未来しかあなたにはなかったはずだった。けれど今は私たちがここにいる」
葉青は周りの猟兵達を見回してから、涼しく笑って、
「集った名も知らない酔狂に、ひとつ賭けてみるのも一興ってものさ」
双六の賽を投げるような気軽さで言う。
「……」
シロガネはしばらく考え込むように押し黙り、大きな溜息。銀色の髪をガシガシと掻き回し、黒いバンダナを巻き直す。
煙草に火を点け、深く吸い込んで、上の換気口へと煙を吐き捨てる。並ぶドッグタグを見つめ四半秒。葉青を向き直ったシロガネの目には、ギラギラと煌めく意思の光があった。
「……賭け金は、人数分の武器ってことでいいんだな?」
葉青は笑う。
「ああ。十二分だとも」
「おれの武器を使うなら、半端な結果じゃ許さんぞ」
「約束はできかねるけどね。――賭けの結果は生き抜いて、自分の眼で確かめることだ」
斯くして、猟兵達は銀の牙を執る。
成功
🔵🔵🔴
「いいだろう。おれの武器を、あんたらに預ける」
男――『シロガネ』は、灰色の髪を黒いバンダナでまとめ直し、鋼色の瞳を猟兵達に向けた。肚は決まったと言わんばかりに、作業用の前掛けのドライバーを抜いて指の間でローリング。
「銃砲。光学兵器。AI内蔵型兵器。機能付与白兵武器。おれに実現できるものなら、なんだろうと形にしてみせる。今からあんたらはおれの客だ。代金は連中の首。支払えなきゃあ、仲良くジャンクの下で永遠の眠り。シンプルでいいな」
肩を竦め、シロガネは腕を組んで傲然と言った。
「何が欲しい。オーダーをくれ」
≫≫≫≫≫MISSION UPDATED.≪≪≪≪≪
◆作戦達成目標
1.装備を強化、もしくは補修する
2.装備を新造する
3.シロガネが既に作った武装を受領する【New!】
◆作戦詳細
(作戦参加時は、以下ナンバーのいずれかを明記のこと)
1.装備を強化、もしくは補修する
シロガネの武装製造技術を頼り、装備を強化、もしくは補修することができる。
武器に何らかの機構を加えたり、その性能を純増する改造が主。
【Notice.】
・強化後・補修後の武具の銘、形などがお決まりの場合はご明記下さい。
指定なき場合、従来と同じ銘となるか追加の銘が加えられる可能性があります。
銘お任せなど、注文がある場合はプレイングにてどうぞ。配慮致します。
・システム的なアイテム作成は伴いません。
装備品として取得する場合、適宜、ガレージより
アイテム作成をして頂く必要がございます。ご注意ください。
【ガレージ】
→https://tw6.jp/html/world/441_itemall.htm
2.装備を新造する
シロガネの技術を頼り、新装備を開発することができる。
具備すべき要件を伝えれば、戦闘に使用するためのものなら、リクエストに応じてほぼ何でも作成してくれるだろう。
【Notice.】
・武具の銘、形などがお決まりの場合はご明記下さい。
ない場合、相応しいと思われる銘と形が与えられます。
形お任せ、銘お任せ、など、注文がある場合はプレイングにてどうぞ。
・システム的なアイテム作成は伴いません。
装備品として取得する場合、適宜、ガレージより
アイテム作成をして頂く必要がございます。ご注意ください。
【ガレージ】
→https://tw6.jp/html/world/441_itemall.htm
3.シロガネが既に作った武装を受領する【New!】
シロガネが作った武器をそのまま受け取ることができる。
猟兵達の使用に耐えそうなものは、次の三つだ。
・多段加速式超音速射出刀『鬼神楽』
オニカグラ。刃渡り八〇センチメートル。
大振りな鞘を備えた鋭角的なデザインをした的な片刃剣。
反りから、刀をイメージしていることが分かる。
専用の薬莢を鞘にセット、激発することで初速を得、
鞘内で更に電磁加速することで二段加速。超音速での抜刀術を可能とする。
刀身には振動機構が内蔵されており、鉄板すら刃こぼれ一つなく容易に両断する。
・陽電子杭『雷電』
ライデン。重さ五キロにまとまったポジトロン・パイク。
平たく言えば腕に装着して使用する陽電子パイル・バンカー。
敵を殴りつけると同時に陽電子杭を炸裂させることで、
いかなる強固な装甲をも侵徹する。
・自律機動型プラズマ射出ビットユニット『殺雨』
キリサメ。漏斗型をしたビットユニット。
十二個一組。起動と同時に、術者の周りを衛星軌道を描いて周回する。
術者の首筋に装着したチョーカー型ユニットから神経電位を精細に読み取り、
思考を忠実にトレースして敵にプラズマ弾を撃ち込む。
制御を自動化することも可能。必要な際のみ手動とすることで、
より取り回しが容易となった。
【Notice.】
・希望が被った場合、先着順と致します。
◆プレイング受付開始日時
本断章上梓と同時
◆プレイング受付終了日時
2022/03/23 00:00:00
新田・にこたま
◎
3.『鬼神楽』
ドーモ。 シロガネ=サン。普通の武装警官、新田・にこたまと申します。
私は警察ではありますが、メガコーポの敵です。
この旧式の制服がその心意気の証です…というのは、今のあなたにはどうでもいいことかもしれませんね。
あなたに興味があるのは、私にあなたの復讐を代行する力があるかどうか…それのみでしょう。
…その刀、良い刀ですね。
言いながらUCを発動し、自身のシンプルなドスブレードで付近のジャンクを切断します。なるべく剣術の目が肥えていない人にも分かるよう、耐刃性の高い物体を綺麗な切り口になるように切ります。
私に預けては貰えませんか?
この戦い、私の正義にあなたの怒りを載せて挑みたいんです。
●鬼刃
シロガネに最初に声を掛けたのは制服に身を包んだ少女である。まだ学校に通っていてもおかしくない彼女の制服はしかし、セーラー服でも何でもなく、女性警察官の制服であった。
「ドーモ。シロガネ=サン。普通の武装警官、新田・にこたまと申します」
新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)だ。少女が几帳面に礼をすると、シロガネは煙草をふかしながら、「そう言うには歳も制服も普通じゃないが」と肩を竦めながら、ドーモ、と返した。
「私は警察ではありますが、腐敗したサイバーマッポとは違います。この旧式の制服がその心意気の証です……というのは、今のあなたにはどうでも良いことかも知れませんが」
「ああ。興味はない。だが……」
「分かっています。私があなたの復讐の代行者たるかどうか、それが気になるのでしょう?」
言葉を継ごうとしたシロガネの言を遮り、にこたまはヒュン、と音を立てて白鞘からドスブレードを抜いた。目を細めるシロガネの前で、踏み込み、一閃。ピッと一条の銀光が走り、これから解体される予定のアーマノイド用レッグモジュールが、まるで接着前のプラモデルめいて左右に割れた。その断面たるや、まるでウォーターカッターで切断したカッタウェイモデルのように滑らかだ。内部のパーツは残らず、潰れることなく断面を晒している。
さすがのシロガネも絶句した。素人目にさえ、その断面は普通でないということが分かる。――もちろん種がないわけではない。にこたまはユーベルコード『正義の怒り』により自身の身体能力を増幅し、常人には視認すら敵わぬ斬撃を連続的に叩き込んだのだ。両断できて然り。
しかし、種があろうがなかろうが、それは誰にでも出来ることではない。
「――その刀、良い刀ですね」
血振りするように振ったドスブレードを回転納刀すると、にこたまは目を二段加速刀に向けた。
「私の腕はお見せしたとおり。この刀にはなんの仕掛けもありません。……ただ、私の『正義』を乗せて振っただけ」
にこたまの声に迷いはない。真っ直ぐな金の瞳は、まるで天に輝く陽光のようだ。
「私に預けては戴けませんか? ――この戦い、私は、私の正義の上に、あなたの怒りを乗せて挑みたいんです」
「……どうやら、おれにはまだまだ尽きない悪運があるらしい」
シロガネはクッと喉を鳴らすように笑うと、手に取った刀をにこたまに放った。
「いいだろう。連れていけ。多段加速式超音速射出刀、『鬼神楽』。使いこなしてみせろ」
「――拝領します」
にこたまは鬼刃を受け止め、その重さを確かめるように頷くのであった。
◆Stray Dog's Arsenal / CMK-HVV-01
多段加速式超音速射出刀『鬼神楽』◆
オニカグラ。ハイ・ヴェロシティ・ヴァイブロブレード。ハイブリッド合金、『イーヴィルキラー』製。
大振りな鞘を備えた鋭角的な形状のヴァイブロブレード。鞘と刀それぞれにトリガースイッチを有する。
刃渡八〇センチ。刀側のトリガースイッチをオンにすることで振動開始。振動状態では単に振るっただけで、鉄板すら抵抗なく容易に切断する。
専用の薬莢を鞘のチューブ・マガジンにセットし、鞘側のトリガーを引くことで激発。さらに鞘内で電磁加速を施し剣身を射出、超音速での抜刀術を可能とする。納刀と同時に空薬莢は廃莢・再装填される。装弾数五+一。
大成功
🔵🔵🔵
シャオロン・リー
1
兄ちゃん、凄いやんけ
槍はいけるか?
俺は銃士やのうて槍士やから、銃持ってても撃てへん
けどな、こいつを強化できへんか?
爆龍爪を渡して
こいつにはちょいとおもろい仕掛けがあってな
内部から発する爆炎で超高速連続突きが出来るようになってんねん
これをお前の手で強化したら、もっとおもろいと思わんか?
どう改造するかは兄ちゃん、お前に任すわ
敢えて言うなら重くない方がええ、ってとこやな
こっちの槍?
これは特殊やからこのまんまでええねん
俺はな、悪党や
義憤では動かへん、人情も何も旨ない
せやけど私利私欲のためならなんぼでも暴れ倒せんねん
お前が俺の槍もっと強くしてくれるんやったら
お前が壊したいもん、俺が纏めてぶち壊したるわ
●暴れ竜の爪研ぎ
「兄ちゃん、凄いやんけ。刀があるってことは槍もいけるか? 俺は俺は銃士やのうて槍士やから、銃持ってても撃てへん。けどな、こいつを強化できへんか?」
工房の中央に設えられた解析用のテーブルに、朱槍を置いたのはシャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)。
「これは……槍か。だが、ただの槍じゃないな。素材が妙だ」
シロガネは解析器を起動し、構造・寸法解析をしながら目を細めた。結果を表示するディスプレイに『UNKNOWN』の表示が無数に現れる。
「おう。こいつは、永海って鍛冶職人の作ったモンでな。おもろい仕掛けがあんねん。燃やせ、って意志を籠めることで爆炎を作り、その反動で超高速連続突きができるようになってんねや」
「……意志? 意念変換エンジンを積んでるのか? このサイズで?」
「そのなんたらっちゅうヤツは知らんけど、そういうもんやねん」
驚愕したように言うシロガネに、ひらひら手を振りながらシャオロンは歯を剥いて笑った。
「難しいことは知らんけど、これをお前の手で強化したら、もっとおもろなると思わんか? どう改造するかまで含めて、兄ちゃん、お前に任すわ。強いて言うなら重くない方がええってとこやな」
「……なるほど。そう言われると俄然やる気が湧いてきた」
にやり、とシロガネは笑った。
職人には二種類いる。無茶振りに辟易するものと、燃えるものだ。シロガネがどちらかは、言うまでもない。
「もう一方は良いのか?」
「構わへん。これは特殊やからこのまんまでええねん」
シャオロンはカラッと笑って、不意に目を鋭利に細めた。
「兄ちゃん。俺はな、悪党や。義憤では動かへん、人情も何も旨ない。そんなもんで腹は膨れへんし、儲かることもあらへんからな」
その通り。彼は決して善人ではない。この暴れ竜は、自分の欲のために生き、自分の欲のために死ぬだろう。シャオロンは言葉を続ける。
「せやけど私利私欲のためならなんぼでも暴れ倒せんねん。お前が俺の槍もっと強くしてくれるんやったら、お前が壊したいもん、俺が纏めてぶち壊したるわ」
「ハッ。悪魔と取引している気分だ。だが、悪くない。あんたが振るうに足るあんたの牙を、この俺が鍛え直して見せる。――扱いきれないじゃじゃ馬になっても、泣きを入れてくれるなよ?」
「呵々、言うやないけ! ほんならお手並み拝見っちゅうとこやな!」
暴れ竜は挑発を笑い飛ばし、出口に足を向ける――
◆Stray Dog's Arsenal / CES-VVE-01
偏向発破龍槍『爆龍爪・飄』◆
バクリュウソウ・ヒョウ。ヴァリアブル・べクトル・エクスプローシブ。
槍の柄にカーボンによる補強を入れ、熱量偏向フィールドを発生させる赤の宝石型エンジンを刃の根元部分に埋め込んだ爆龍爪の新たなる姿。
熱量偏向エンジンは、刃に籠めた意念からのフィードバックを検知し、シャオロンの思う方向に思う強さでフィールドを展開する。この状態で爆龍爪の焔を炸裂させることで、任意の方向に爆炎を放出可能。飛翔中に急激に方向転換を行うサイドブースターとして用いたり、攻撃を更に加速したりできる。また、強度が上がったため、より高出力の攻撃に対応した。
大成功
🔵🔵🔵
蔡・葉青
1.既存装備【硬杖】を強化 ◎◎◎
好(ハオ)! 取引成立はいつでも気持ち良いものだね
さっそくその腕を御披露願いたい
こいつは見た通りただの硬い杖だ よく短棍として使っている
未知の金属だが、なぜか私が許せば
木材レベルに簡単に加工できるらしくてね
両端にレーザー刃を発生させる機構を足してくれないか
刃の長さはそれぞれ杖本体と同じに
発生させれば今の3倍の長さって事だね
これまで通り短棍としても使えるようにしてもらえると尚良い
…注文が簡単すぎて拍子抜けするかい?
手に馴染んだものを改造のうえすぐさま実戦投入するんだ、
信頼の証と思ってほしい
小難しい機構も性にあわなくてね
自分の手脚の延長になる武器が好きなんだ
●質実剛健
「好(ハオ)! 取引成立はいつでも気持ち良いものだね。さっそくその腕を御披露願いたい」
説得を務めた蔡・葉青(天狼星・f20404)もまた、シャオロンに続いて装備を解析台に乗せる。
「……これもまた組成に謎が多い金属で出来ているな。完全な再現は骨が折れそうだ」
興味深そうにデータを眺めるシロガネに、葉青は軽く手を振った。
「何もこれと同じものを作ってほしいわけじゃない。加工は簡単なはずだよ。こいつは見た通りただの硬い杖だ。よく短棍として使っている――材質は未知の金属だが、なぜか私が許せば木材レベルに簡単に加工できるらしくてね」
「……個人の意志に感応して強度が変わるマテリアルか。で、今はあんたが許可しているから簡単に加工できると」
「その通り」
葉青は笑って、さらさらとホワイトボードに武器の改良案をしたためる。
「両端にレーザー刃を発生させる機構を足してくれないか。刃の長さはそれぞれ杖本体と同じにして欲しい。発生させれば今の三倍の長さって事だね」
黒のマーカーで杖本体を、赤のマーカーでレーザー刃を示し、葉青はこんこん、と人差し指の節でホワイトボードを叩いた。
「なるほど。今までの武装としての性質も温存するということだな」
「鋭いね、その通りだ。これまで通り短棍としても使えるようにしてもらえると尚良い」
「……」
いまいち釈然としない、という表情をするシロガネに、葉青は小鳥のように首を傾げて問う。
「注文が簡単すぎて拍子抜けするかい?」
「……ああ。腕を疑われているのかと思う程度にはな」
「冗談。手に馴染んだものを改造のうえすぐさま実戦投入するんだ。逆に、信頼の証と思ってほしい。小難しい機構は性に合わなくてね、自分の手脚の延長になる武器が好きなんだ」
足りないところは体術と武術で補う。武器の性能は、よりシンプルな方が良い。
確かに、多数の機能を備える武器は、『使いこなせれば』強いだろう。しかし、そうでなければ足枷となる。機能実装によって増えるデッドウェイトが、不要な機能の暴発が、直感的な操作の邪魔をするものだ。
単機能を追求する。それもまた正道の一つなのである。――学ばされた思いとなったか、ふう、とシロガネは長い息をついた。
「……わかった。いいだろう、注文に応える。さっきも言ったが――半端は許さないぞ。貫き徹して見せろ」
「ああ、心しておこう、ミスター・シロガネ。では、良い仕事を期待しているよ」
翠の片目を閉じ、葉青は軽やかに笑うのだった。
◆Stray Dog's Arsenal / CIB-SLR-01
可変式光刃発振器『白檀』◆
ビャクダン。スイッチング・レーザーブレード・ロッド。
上から高い張力で白化モノフィラメントを巻くシンプルなカーボン補強と、その内部に高出力プラズマ出力エンジンを仕込み、両端からプラズマ刃を発振可能とした半棒。武装長三尺――九〇センチメートル。プラズマ刃の磁界集束点は九〇センチに設定されており、両端展開状態では全長二七〇センチメートルとなる。
その両端は強固に補強されており、従来通りの半棒術に問題なく使えるほか、刺突に一瞬だけプラズマ刃を出力して装甲を侵徹するなどの使い方も可能。
プラズマ刃展開状態での持続時間は二分。リロードにはバッテリーの交換及び充電を要する。しかし葉青ならば、このスタミナの欠如も問題とはすまい。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
◎◎◎
復讐なんてのは、どんなお題目があろうと結局は個人の満足のためのものだもの。
…逆説、「満足できるなら何使ったって良い」のよぉ?少なくとも、損はさせないと思うわぁ。
2.装備新造
ん-、と。武器に関してはあたしの場合余計な機能つけないほうがよさそうだし。そーねぇ…センサーの探知とか、カメラの視角の可視化とか、スコープとか…そういうの纏めたのって作れるかしらぁ?
今まで手癖と経験で誤魔化してきたけれど、いい加減勘頼りってのも拙いかなぁと思ってたのよねぇ…
だいぶ無茶な注文だとは思うけれど、なんとかお願いできないかしらぁ?
形:モノクル・バイザー等のウェアラブル希望
銘:黒曜石に因む銘を希望
●鷹の目
「あなた、いい選択をしたわよぉ」
煮詰めた蜜のように甘い声で言うのは、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)だ。
「復讐なんてのは、どんなお題目があろうと結局は個人の満足のためのものだもの。死人は口をきかないし、復讐してくれと願うこともない。……逆説、『あなたが満足できるなら何使ったって良い』のよぉ。あたしたちを頼ったこと、少なくとも、損はさせないと思うわぁ」
「だといいがな。こっちも命を懸けてるんだ。あんたらの技前に期待するしか勝ちの目がねぇってことは、承知してるつもりさ」
ひょいと肩を竦めてシロガネは言うと、ほかの猟兵用の装備のパーツを3Dプリンタに製造させながら、くるりとティオレンシアを向き直る。
「あんたは何が欲しいんだ。見たところ、ガンスリンガーだな。銃が欲しいのか?」
「それは足りてるわぁ。あたしの場合は余計な機能はつけない方が良さそうなのよぉ。そーねぇ……センサーの探知とか、カメラの視角の可視化とか、スコープとか…そういうの纏めたのって作れるかしらぁ?」
「視覚を総合的にサポートするデバイスということだな」
「えぇ」
人間の目に見えないものは多数ある。赤外線にしても紫外線にしてもそうだ。ごく一部の可視光線以外は人間は視認することができない。眼というのは高度なようでいて抜けの多い器官だ。
「今まで手癖と経験で誤魔化してきたけれど、いい加減勘頼りってのも拙いかなぁと思ってたのよねぇ……だいぶ無茶な注文だとは思うけれど、なんとかお願いできないかしらぁ?」
「なるほど。了解した。……なら、あんたはひとまずこれを掛けて、裏のレンジで射撃テストをしてきてくれ」
ぽい、とシロガネはティオレンシアにゴーグルを投げて寄越す。ティオレンシアはゴーグルを、指で引っかけるようにしてキャッチ。
「これは?」
「アイトレーサーだ。あんたがターゲットを見るとき、どこを見るか、何に焦点を合わせるかをセンシングする。……一時間もあれば大部分のクセは読み取ってくれるはずだ」
「なるほどねぇ。……ずいぶんな念の入りようねぇ?」
やる気十分じゃない、と笑うティオレンシアに、シロガネは薄く笑って煙草に火をつけた。
「いい選択をしたのはおれだけじゃないと、あんたらに教えないといけないもんでな」
◆Stray Dog's Arsenal / MVG-AVD-01
視覚拡張HMD『流紋』◆
リュウモン。アーギュメンテッド・ヴィジュアル・ディスプレイ。
名称は黒曜石とほぼ同質の化学組成を持つ流紋岩に由来する。
超小型高性能AIを搭載したヘッドマウンテッドディスプレイ。サイズは通常サイズのバイクゴーグルと同様。レンズカラーはティオレンシアの気分に合わせミニダイアルで変更可能。
不可視光線を可視化し、各種センサ光や照準用レーザーを視界に選択的に表示することができる。また、カメラやカメラアイを含む敵の照準用光学機器を自動検知し、敵の視界、照準先を表示することが可能。また、オブシディアンの銃口と射角を検知し、弾道をカメラ内に表示できる。
常にティオレンシアの脳波を検知し、今欲しがっている情報を視界内に優先で表示する機能がついている。戦闘後にリザルト評価を行うことで、ティオレンシア自身の認識能力の変化や成長に合わせ、徐々に最適化されていく仕様。
大成功
🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
アドリブ・その他◎
支払えなきゃ――ね、任せときなよ
今の所"不渡り"は一度も出してないんだ
レモン・セノサキだ
宜しくね、シロガネ
(マグナムオートの魔改造品「STACCATO.357」を置く)
(実戦に耐えられるように出来ちゃいるが)
マグナム弾が撃てて取り回しが良いってだけのガンナイフだ
メンテをサボった訳じゃないけど
設計思想に無い運用でそろそろガタが来始めてる
(違法増築みたいなもんだからね、と自嘲して)
コイツをモデルにガンナイフを新調したいんだ、頼める?
私はコイツを投擲武器としても使うから
武器本体に『殺雨』みたいな誘導性が欲しいな
それと、ある程度硬い獲物にも通る刃
口径には拘らないよ
デカイのは既に「FORTE.50」が有るからね
レミントン弾?拳銃で?
……いいねぇ、そういうロマンは大好物だ
制御装置は此の首輪にお願いしようか
あ、その実包のペンダントトップにはイタズラしないでね
ソイツには私の"本体"が入ってるんだ
銘はシロガネに任せるよ
音楽用語、神話の獣、なんだっていい
キミの思念≪サツイ≫を籠めてくれ
●殺意の形
「仇討ち――ね」
レモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)は、作業テーブルの上に祀られた十一枚のドッグタグを見上げる。
「馬鹿げていると思うか? 死人は口を利かない、願わない。単なる自己満足に過ぎないと」
シロガネの自嘲気味な言葉に、レモンは首を横に振る。
「いいや。彼等はそんなの望んでない、なんて温い事は言わない。どっちかと言えば私も仇討ちしたかった側だ」
「あんたも? ……復讐は、終わったのか?」
「いいや。果たせてないよ。――目が覚めたら全部終わった後だったからね」
――何故、その場に居られなかった。何故、一緒に戦えなかった。今でも、悔いて自分に叩きつける問い。
「悔しさは消えない。――キミに同じような思いはして欲しくない。代価を払えなきゃ墓の下、上等じゃないか。任せときなよ。こちとら、今の所"不渡り"は一度も出してないのさ。――レモン・セノサキだ。宜しくね、シロガネ」
「ああ。よろしく頼む。……あんたの注文は?」
問いに、レモンは、ゴトリと二つのガンナイフをテーブルに置く。『STACCATO.357』だ。
「これのブラッシュアップ版を作って欲しい。実戦に耐えられるように出来ちゃいるが、マグナム弾が撃てて取り回しが良いってだけのガンナイフだ。メンテをサボった訳じゃないけど、設計思想に無い運用でそろそろガタが来始めてる。そもそもが違法増築みたいなもんだからね……コイツをモデルにガンナイフを新調したいんだ、頼める?」
「なるほど。……重視する性能は?」
打てば響くような応答に、こくりとレモンは頷いた。
「そうだね……まず、私はコイツを投擲武器としても使うから、武器本体に『殺雨』みたいな誘導性が欲しい。それと、それと、ある程度硬い獲物にも通る刃。口径にこだわりはない。デカイのは既にこいつ――『FORTE.50』が有るからね」
レモンは軽く携えたライフルを叩いて見せ、要望を並べる。数秒の思案を挟み、シロガネはガンナイフのグリップをなぞりながら、アイデアを並べるように呟き出す。
「なら、口径から見直すか。マガジンをグリップ外に移動し、グリップのサイズを抑えつつマガジンがより高いマズルエナジーを持つ弾薬を使う。7mmレミントン・マグナムはどうだ?」
シロガネが提案したのは本来ならばライフル用の弾薬だ。それを拳銃に使用するなど正気の沙汰ではなかったが、レモンは驚かず、むしろ笑う。
「レミントン弾? 拳銃で? ……いいねぇ、そういうロマンは大好物だ。軌道制御装置はこの首輪に頼むよ。――あ、その実包のペンダントトップにはイタズラしないでね。ソイツには私の"本体"が入ってるんだ」
「本体?」
「まぁ、詳しくは説明しないけど、今しゃべってる私は端末みたいなものってところかな。大事なものなんだ、丁寧に扱ってね」
ウィンクするレモンに、シロガネは頭を掻きながらため息をついた。
「つくづく想像の埒外の連中と知り合ったものだ」
「あはは、いい刺激になるだろ? ――それじゃあ銘はキミに任せるよ。音楽用語、神話の獣、なんだっていい。リクエストはただ一つ」
すう、と表情を引き締め、レモンはシロガネの瞳を見た。月のいろした金の瞳が、かれの瞳をまっすぐに射貫く。
サツイ
「キミの思 念を籠めてくれ。私が正しく、それをヤツらに伝えられるように」
「――了解だ。すぐに取りかかろう」
シロガネは彼女を見つめ返し、確かめるように呟く。
殺意の形を出力し、鋳造するために。
◆Stray Dog's Arsenal / CWG-RCA-01
遠隔操作式マグナム・ガンナイフ『Sforzando.275』◆
スフォルツァンド・トゥーセブンファイブ。リモート・コントロール・オートマティック。
マガジンが独立したモーゼルC96ライクなフォルムを持ち、ライフル弾を用いる二丁一組の異形の拳銃。凄まじい反動と威力を持つ。
フレーム下部に一体型の高周波モジュールを配し、ここに交換式の刃を挿入、ロックして高周波ガンナイフとして運用する。発振時は鉄板すら斬り裂く威力を発揮する。また、刃体が折れても交換が容易でメンテナンス性に優れる。
更に、殺雨の技術を応用した念波受信・自動機動機能を持ち、首飾りに内蔵した制御装置により発した念波により、投擲後、空中である程度選択的に軌道変化が可能。
重量は増したが、ウェイトバランスは元モデルを踏襲している。装弾数九+一。(ロングマガジンで拡張可能)
大成功
🔵🔵🔵
ユリコ・スターズ
◎
1.装備を強化する
「この身は一発の銀の弾丸、悪魔どもの心臓に叩きこまれる時を待っている
弾はここにある、引き鉄を引く意思もある。
だがその弾を込めるための銃が欲しい、だからアンタの腕を借りたいんだ」
(腰の『バントラインスペシャル』でクイックドロウを見せ)
「こいつは父の形見で古い映画の記念モデルの銃なんだが
ガワだけで中は市販の品と一緒なんだ、ぜひカスタムをお願いしたい」
・強化後
『バントラインスペシャル・シロガネカスタム』
超ロングバレルを別の物に交換してエネルギー収束率をUP
形だけだったリボルバーシリンダーにエネルギーカートリッジを籠めて
性質の異なる特殊弾を撃ち分けられるように強化
●銀の弾丸の居場所
「この身は一発の銀の弾丸、悪魔どもの心臓に叩きこまれる時を待っている。弾はここにある、引き鉄を引く意思もある。――だがその弾を込めるための銃が欲しい、だからアンタの腕を借りたいんだ」
詩的な、しかし闘争心に満ちた言葉で譚的に内心を吐露するのは、ユリコ・スターズ(シェリフズスター・f36568)だ。その右手が霞んだようにぶれる。次の瞬間には彼女の手は腰の高さにあった。まさに目にも留まらぬ速度で引き抜かれた銃がピタリと、銃口で彼女の視線の先を睨んでいる。クイックドロウ。凄まじい速度だ。只人では反応すら許されず撃ち倒されることだろう。
あらわになったその銃は『バントラインスペシャル』。伝説の銘銃、コルト・シングル・アクション・アーミーのロングバレルモデルモデル――を摸した熱線銃だ。
「古典的な銃だな。中身だけは現行のブラスター相当か」
シロガネが彼女の銃を見て、言う。
「見ただけでわかるのか?」
「それなりには。シリンダーのスレ傷のなさと、燃焼ガスによるヤケが見られない感じから推測した。実弾兵器じゃないだろうとな」
「……その通りだ。こいつは父の形見で古い映画の記念モデルの銃なんだが、ガワだけで中は市販の品と一緒なんだ、ぜひカスタムをお願いしたい」
「改良しろということか。今のままだと、構造に無理があるな。シリンダーも形だけのもの、可動こそすれ機能には関係が無いものになっている。嗜好品としての側面が強いように思うが――」
シロガネは、ユリコの目を見た。銀の弾丸と名乗った彼女の目が、まっすぐにそれを見返す。
父の形見である熱線銃だ、とユリコは言った。
その実際の構造が非効率だろうと、彼女にとっては関係が無いのだろう。
ただ一丁、父から受け継いだ、シェリフのエンブレムが光るグリップを持った輝かしきリボルバー。それを片手に、きっと数多の戦場をくぐり抜けてきたのだろう。クイックドロウの練度を見ればわかる。
見かけ倒しでも、おもちゃでも何でもない。
この銃は、彼女の手の中にあるとき、紛れもなく闇を貫く光となるのだ。
「――任された。必ず、あんたの手に合うものを仕立てよう」
「ありがとう。一度は折れたこの身だが――アンタの銃を持って、かならず、奴らに一泡吹かせてみせる」
ユリコが伸ばした手を、シロガネは握り返した。
この手に新たな光を。銀の弾丸を宿すに足る銃を――
シロガネはイメージする。彼女があらゆるものを射貫くための、たった一つの銃の形を。
◆Stray Dog's Arsenal / CIG-ESR-01
属性切替式シングルアクションリボルバー
『バントラインスペシャル・シロガネカスタム』◆
エレメント・スイッチング・リボルバー。
精度と初速を決定するブラスターバレルをより熱反射率の高い特殊金属製・同寸法のものに置換し、エネルギー収束率を向上。
形だけだったリボルバーシリンダーにエネルギーカートリッジを装填し、一射ごとに異なる属性のエネルギー弾を射出できるようにカスタマイズされたバントラインスペシャルの新たな姿。また、一見してはわからないが各可動部の摺り合わせ、研磨が行われており、今までよりも遙かになめらかに稼働するようになっている。
大成功
🔵🔵🔵
虎刺・ザカロ
2 形・銘おまかせ
オレもこの世界で育った人間だからな…似た様な光景はよく知ってる
だからよォ、奴らが好き勝手しやがンのは我慢ならねェんだよ
だが奴らを完膚なきまで潰すにゃァ強くなる必要がある
オレの戦闘スタイルは自分でエネルギー出して攻撃したりモノ操ったりすンだけど自分で力出すのは疲労がダイレクトにくンだよな。
ケド武器がありゃ自分の出力抑えられる分長時間動けるようになるし、戦い方も幅が広がる
シロガネって言ったか、オレはあんたと一緒に戦いてェ
力貸すから力貸してくれねェか?
あんたが造るモンに惹かれてンだ、オレは“ジャンク”だからな
どんなモンでも構わねェ。扱えなけりゃ扱える様に努力すりゃァいいだけの話だろ
●ガラクタの意地
語りだしは、自嘲するような響きだった。
「オレは――此処にあるモンと同じようなモンだ。ジャンクなんだよ」
「……ジャンク?」
「そうさ。弱い身体を補う為に薬を沢山取り込んで、補強した。ツギハギのジャンクだ。――だからこそ、このジャンクヤードを踏み荒らす連中が気に入らねェ。好き勝手にさせちゃおけねェ。我慢ならねェのさ」
蛍光色の瞳に、プラチナブロンドから同色へのグラデーションを描く髪の少年が拳を握った。虎刺・ザカロ(PsychoBreaker・f36636)というのが、彼の名前だ。
「だが、奴らを完膚なきまで潰すにゃァ強くなる必要がある。悔しいが、今の状態じゃ力が足りねェ。だからこそ、あんたの力を借りてェンだ」
ザカロは真っ向、シロガネの目を見て話を続ける。弱冠十五歳の少年だ。しかし、クスリで命を繋いで生きてきたとというその壮絶な生涯がそうさせるのか。彼の言葉には『凄み』があった。説得力と言い換えてもいい。聞き入ったシロガネの煙草の先から、灰が崩れ落ちる。
「オレの戦闘スタイルは自分でエネルギー出して攻撃したりモノ操ったりすンだけど、自分で力出すのは疲労がダイレクトにくンだ。ケド、武器がありゃ自分の出力抑えられる分長時間動けるようになるし、戦い方も幅が広がる」
戦い続けるため。抗い続けるための武器をくれ。
切な叫びが、シロガネに響く。一九〇センチメートルを超えるシロガネの長身に対し、ザカロの身長は一六〇センチあまり。
そのあまりにも小さな体で、それでも戦いに行くというのか。
「シロガネって言ったか。オレはあんたと一緒に戦いてェ。……力貸すから、力貸してくれねェか? ――さっきも言ったろ。オレは“ジャンク”だからな。ジャンクを掬い上げて新しい形を与える――あんたが造るモンに惹かれてンのさ」
「……あんた、名前は」
「オレはザカロ。ありどおし、ザカロだ」
「なら、ザカロ。……依頼を拝領する。あんたが振り回す、たった一本の武器をおれが作ってやる」
シロガネの了承の声に、ザカロはにィと笑った。その返事が欲しかった。細かい注文なんてありゃしねェ、なんて風に。
「形はなンだっていい。どんなモンでも構わねェ。扱えなけりゃ扱える様に努力すりゃァいいだけの話だろ」
「吠えたな。――それなら、あんたに最適な一丁を誂えようじゃないか。あんたが決して負けないための、一本の柱をな」
シロガネは拳を握った。
この少年が願わくば、折れずに戦うための柱を、自分が造れるように祈って。
◆Stray Dog's Arsenal / CMB-OUG-01
過量装薬念動大剣『雷轟』◆
ライゴウ。オーバードーズ・ユニット・グレートソード。
グリップ付近に薬物シリンダーを有し、ここにザカロが持っている薬品をシリンジごと装填することで、戦況に応じて薬品を交換しながら継戦できる両手大剣。その刃渡りは一五〇センチメートル。戦闘しながら、グリップからダイレクトにザカロに薬物を供給できる。
それだけではなく、刃体はグレードSの導念金属――サイ・チタニウム合金製。凄まじく強固に造られており、ザカロのサイキックの波長を選択的によく通すように仕上げられた。
本体の重量と鋭利さもさることながら、薬品供給と同時に発露するザカロのサイキックの威力を、通常武器の一〇倍の効率で刃先に伝え、敵を破壊する。
大成功
🔵🔵🔵
ユキ・パンザマスト
◎[2/銘お任せ]
ねえ、銀のお兄さん
大振りのダガーをくださいな
ただのダガーではなくて
柄部分が銃に変形する
遠近両用の二刀武器
武器の変形ってロマンですゆえ!
弾丸にギミックを付与する仕込みは可能ですか
撃ち込んだ弾丸が相手の内部で花咲き
麻痺毒内蔵、捕縛ワイヤー内蔵
爆破機構、ユキの端末と連携した遠隔ハッキング機構や音響兵器機構など
様々に、色々に作用を及ぼす
玩具箱や宿り木のような
トリックバレット
刃部分の機構は、そうですね
軽さと切れ味を両立させたものが望ましいです
鋭く、扱い易く、振るいやすい
迅く、違わず、意表を突く
この身に馴染むような武装
(いつか獣の呪いが解ける時が来たら
今度は人として戦いたいから)
●逢魔ヶ童の玩具箱
「ねえ、銀のお兄さん、大振りのダガーをくださいな。ただのダガーではなくて、柄に仕込み銃をつけて」
武器の変形ってロマンですゆえ! と目を輝かせて笑うのは、ユキ・パンザマスト(暮れ方に咲う・f02035)だ。
「遠近両用の二刀武器ということで一つ。それだけじゃなく弾丸にも細工をしたいですし、ああ、何から言おうか迷っちゃいますねぇ!」
「落ち着いて話せ。おれは逃げん。もうあんたらと同じ舟に乗った身なんでな」
逸る気持ちを抑えきれぬという風に語るユキ。どうどうと宥める風にシロガネが手を押すように振る。
「それは僥倖! じゃあ遠慮なく――そうですね、弾丸にギミックを付与する仕込みは可能ですか? 例えば撃ち込んだ弾丸が相手の内部で花咲きダメージを与えるですとか。麻痺毒を積むというのもいいでしょう。ユキが持っている端末と連携して、撃ち込んだ箇所に遠隔ハッキングを仕掛ける機能、捕縛ワイヤーに爆破機構――とにかく様々に、色々に作用を及ぼす、玩具箱や宿り木のようなトリックバレットを」
「怪盗の七つ道具もかくやだな。挙げられたものはおおよそ実現できるだろう。再調達はおれに言ってもらうのが確実だ、次があるならな。……で、刃の方に注文は?」
「軽さと切れ味を両立させたものが望ましいです。素早く動けてナンボですので。――鋭く、扱い易く、振るいやすく、迅く、違わず、意表を突ける。この身に馴染むような武装に仕上げてください」
――いつか獣の呪いが解ける時が来たら、今度は人として戦いたいから。
内心を吐露はせぬままに、逢魔ヶ時の贄は言う。人の体に爪はない。牙もない。そのときに頼れる得物として、そばにあるような武器をと祈る。
掛かる期待の重さを感じてか、シロガネはバンダナの上から頭を掻いた。
「……仕掛け弾よりそちらの方が難題だな。まあ、いいだろう。金属精錬は上得意。このジャンクの海から生み出した合金の強さを、あんたにも一つ味わって貰う事にしよう」
「そりゃ楽しみっすね。期待してますよ!」
「待て待て、頼んで終わりじゃない。刃物はグリップが肝要だ。銃もな。あんたの手をよく採寸させてもらう。しばらくは付き合ってもらうぞ」
屈託なく笑うユキに、ひょいと肩を竦めてシロガネは応えるのだった。
◆Stray Dog's Arsenal / MMD-VDR-01
多目的可変ダガーリボルバー『禍時』◆
マガトキ。ヴァリアブル・ダガー・リボルバー。
ユキの意思に応じて、根本付近にシリンダーが配された状態のダガー形態と、バレル下にナイフが備えられたリボルバーガンナイフ形態の二形態に変形できる2WAYモデル。変形時間はカタログスペックで〇.五秒以内。
外装には流体金属による変形メカニズムが採用されており、ユキの放映端末とリンクしている間は完全な変形が保証されている。
このため耐久性が非常に高く、外装や刀身が破損しても形態を切り替えることで初期の形態を取り戻すことが可能。
リボルバー形態では、ユキが注文した特殊弾頭を発射できる。シリンダーはスイングアウト式、装弾数六発。
弾種は多岐にわたり、バイオプラント弾(種が内蔵されており、着弾すると特殊な藪椿が敵の体を食い破り、咲き誇る)、神経毒弾、麻痺毒弾、捕縛ワイヤー弾、ハッキングアンカー弾、超高性能特殊炸薬弾、など。
まるで玩具箱を引っ繰り返したような特殊弾を目一杯に詰めたガンベルトと、ホルスターがセットになって納品された。
なお、通常の弾薬を用いることも可能。口径は.357Magnum。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
〇1
まあね、暗黒メガコーポに本気で無謀な戦いを繰り広げようとしてたのですか。その【覚悟】、悪くはないですよ。
でもあのまま向かって行ったら間違いなく犬死に――違いますか?
(自身の電脳ゴーグルを差し出し)
ああ、武器は直接攻撃するやつとは限らないでしょう?
こう見えても、私はハッカーの端くれでして。戦闘手段は電脳魔術と【ハッキング】、それと、これですね(と、UCで召喚したゲームキャラを操ってる)。
(で、完成を待っている間)よかったら話してくれませんかね、死んだ仲間たちのこと――いや、単純に興味がわいてきまして。
※武器銘お任せ
※アドリブ・連携歓迎
●帰るはずだった場所の話
「まあね、暗黒メガコーポに本気で無謀な戦いを繰り広げようとしてたのですか。その覚悟、確かに悪くはないですよ。でもあのまま向かって行ったら間違いなく犬死に――違いますか?」
「……なんでおれは子供に説教されてるんだ。まあ、違わんが」
「子供ではありません。わたしにはシャルロッテという名前があります」
シロガネの無謀と無策を叱り、腕を組んで語るのはシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)。
「……あー、解ったよ、シャルロッテ。だから説教はやめてくれ。煙草がまずくなる」
ばつの悪そうに視線をそらして煙草を吸い付けるシロガネ。シャルロッテは軽く息をつき、「まぁいいでしょう」と話を切り上げて電脳ゴーグルを突き出した。
「これの改良をお願いします」
「サイバーゴーグルか? まさかハッキングを?」
「ええ。武器は必ずしも、敵を直接攻撃するものとは限らないでしょう? こう見えても、私はハッカーの端くれでして。戦闘手段は電脳魔術とハッキング、それと、これですね」
シャルロッテが指を鳴らすなり、何体ものゲームキャラクターが虚空から01のノイズ帯を伴って現れる。仮想空間、あるいはゲーム機の中にしか存在しないはずのキャラクターを三次元に持ち出して操るのは、彼女のお家芸だ。
「なるほど。……コーポのニンジャにも似たような力を使う連中がいると聞くが、少しばかり解析させてくれるか。あんたがそれをどうやって使っているのかが解らないと、おれも流石に何から手をつけていいか解らんものでな」
「ええ。構いませんよ。――長くなるんでしょう。待ってる間、よかったら話してくれませんかね、死んだ仲間たちのこと――いや、単純に興味がわいてきまして」
シャルロッテの言葉に、シロガネは幾許か逡巡し、小さくため息をついた。
「……そんな大した話でもないさ。親からイヌみたいに捨てられた子供たちが、野良犬の群れのように寄り添って、この地獄みたいな世界で、それでも笑って生きていた。ここに落とされて記憶を失っていたおれを助けて、いろいろな知識を与えてくれた。ここが地獄の釜の底でじゃあなかったと言うんなら、それはあいつらがいたからだ。感謝していた。――返せないのだけがただ悲しい」
「そうでしょうね。……でも、犬死にを選ばなかっただけで、彼らはきっと喜んでいると思いますよ」
死者の心など解らない。
けれど、そうだといい。
「そうだろうかな」
「そう信じているだけで、救われるときもあります」
「……かもな」
その後、シロガネは口数少なく、仲間達の記憶を語ったことだろう。
シャルロッテの戦闘スタイルの解析が終わって、装備の開発に着手するまで。
◆Stray Dog's Arsenal / SAG-SAM-01
思考加速電脳モジュール『馳雪』◆
ハセユキ。シナプス・アクセラレーション・モジュール。
元の電脳ゴーグルの性能はそのままに、二つの追加機能が設けられた。
まず一つは、神経電位を加速する――つまり、脳のクロックを強制的に上げ、思考能力を加速する『アクセラレータ』。ハッキングの速度の純増、またはバトルキャラクターの操作精度・操作速度を直接的に改善するなどの効果が得られる。
もう一つは、電脳魔術ライブラリ『レメゲトン』。シャルロッテの使用したことのある電脳魔術をライブラリ化し、ランチャ的に起動する機能である。
大成功
🔵🔵🔵
片稲禾・りゅうこ
【2】
いよう!白金って言うんだろう?そっちさん。
なあなあ、武器作ってくれるんだろう?武器!
見せてくれよ!作ってくれるとこさ。
ヒトの子の作る英知ってやつを、りゅうこさんにも見せてくれよ。
なあに任せてくれって!こう見えてもりゅうこさん、竜神様なんだぜ?
超強いんだぜ、へへっ。
あっこら信じてないな~?
じゃあほら、実際に出来たやつをさ、どどーんとりゅうこさんが使ってやろう。
出来るだろう?そっちさんなら。
竜神にも負けない、一品をさ。
●竜神様への捧げ物
「たのもーう!」
底抜けに明るい声が聞こえて、戸口からひょいと顔を出した女が一人あり。
右目を隠している。茶の髪に焦茶の瞳、人懐こい笑みを浮かべた小柄な女だ。表情の柔らかさと決して高くはない背丈のせいか、ややも幼く見えるが、周りからの印象などどこ吹く風とばかり彼女は踏み込んで、シロガネの前に進み出る。
「いよう! シロガネって言うんだろう?そっちさん。なあなあ、武器作ってくれるんだろう? 武器! 見せてくれよ! 作ってくれるとこさ」
「また、えらく明るいのが来たな……女子供も勢揃いだ、おれはもう何が来ても驚かんぞ。あんたは何が入り用なんだ?」
「何でも! なあに任せてくれって! こう見えてもりゅうこさん、竜神様なんだぜ? 超強いんだぜ、へへっ。使い方さえわかりゃあ、なんだって振り回してみせるとも」
快活な調子で言いながら、長い手拭いをひらひら遊ばせるのは片稲禾・りゅうこ(りゅうこさん・f28178)。シロガネの鋼の瞳が、りゅうこの体を上から下まで見た。どこからどう見ても年頃の女性としか視えぬ。
「あんたみたいな竜神様が、この掃き溜めにいるとは驚きだな」
「あっこら信じてないな~? じゃあほら、実際に出来たやつをさ、どどーんとりゅうこさんが使ってやろう。出来るだろう? そっちさんなら」
自然体だった。ごくごく軽く言いながら、ととんとりゅうこが飛び退がる。ヒュオッ、と布が宙を裂く音が聞こえた次の瞬間、絞られた手拭いが槍へと姿を変じていた。それまさしく、霊力を流し形成する布の槍。
竜のうろこの色をした、緑の槍が翻り、千と空気を引き裂いて、宙の埃を数多断ち。回旋からの斬り上げが、室内灯に光る埃をざうッ!! と二つに分ける。
素人でも解る。この狭い室内で何にも掠らせず、ただ埃だけを斬って捌く技前、何という武練、何という功夫か。布槍三度回して『首に掛け』れば、そこにあるのはもう槍ではなく、ただの色鮮やかな手拭いだ。
りゅうこは左目を細めて笑った。
「ひとつ、ヒトの子の作る英知ってやつを、りゅうこさんにも見せてくれよ。竜神にも負けない、一品をさ」
度肝を抜かれたシロガネであったが――
「――非礼を詫びる」
たたずまいを直すようにバンダナを締め直し、
「信じよう、竜神さま。あんたの眼鏡にかなうものを、この銀が造ってみせる」
無骨にだが、ただ確かな敬意を示すよう、頭を下げるのであった。
◆Stray Dog's Arsenal / CIS-FDS-01
多元連節竜装『竜髯』◆
リュウゼン。フレキシブル・ドラゴニック・スピア。
一見、全長一八〇センチメートルの銀色の棒に見えるが、その実態は三〇〇節からなる強化チタン合金製の多節鞭。節間はりゅうこが込める霊力に反応し分子構造単位でロックされ、コントロール次第で二丁のヌンチャク、三節棍のように分割・変形が可能。分離した節間は、流し込んだ霊力を安定化させた霊力鎖で繋がれる構造となっている。凄まじく頑丈で、りゅうこが手荒に扱っても軋まない。普段は節を分け細かく巻くことで存在感を抑え携帯可能。
また、一本に結合した状態では、両端から超高圧で霊力を吹き出すことで霊力噴流――『エーテルジェット』による刃を構築可能。双頭槍として用いることができる。布槍との二槍構え、布槍を巻き締めて強化する、布槍の射程を延長するなどの幅広い応用が利く白兵武器。りゅうこが霊力を通さねばただの金属棒に過ぎないため、実質彼女の専用装備。
大成功
🔵🔵🔵
乙葉・あいね
【2、形状、銘はお任せ】
わたし達もその悪魔共さんに用事があるのです
だからこれは利害の一致ってやつなのです!その仇討ち、お手伝いさせてほしいのです!
わたしの武器「陰陽の双星」はわたし自身でもありますし、「戦槍」も普通の武器ではありませんから、シロガネさんがいいのでしたら刀みたいな近接武器の新造をお願いしたいのです
戦法とか普段使う武器とかを聞かれたら素直に答えるし、「戦槍」や「魔剣の影」なども必要なら参考用に見てもらったり、実演したりするのです。この世界の武器ならシロガネさんの方がずっと先輩なのです
大丈夫なのです。使い手が猟兵なのもありますけど、
あなたの武器達は絶対負けたりなんかしないのです!
●叡智の炎
「シロガネさんだけでなく、わたし達もその悪魔共さんに用事があるのです。だからこれは利害の一致ってやつなのです! その仇討ち、お手伝いさせてほしいのです!」
続けて声を上げたのは乙葉・あいね(白と黒の刃・f26701)。青い髪に赤瞳を煌めかせた、稚気のある物言いをする女である。
「ここまで竜神やら武器の化身やら、いろいろ相手にしてきたが、あんたは何者で、何が欲しいんだ?」
もはやシロガネは驚きを表すことはなかった。いや、正確には意識的に感情を麻痺させていたかもしれない。いちいち仰天していては、話が先に進まないのである。
「んーっとですね、わたしの武器……この刀、『陰陽の双星』はわたし自身でもありますし、この槍――『戦槍』も普通の武器ではありませんから、改造ではなくて、ひとつ刀のような近接武器の新造をお願いしたいのです」
「カタナね。あんたの得手は?」
もう見た目で判断するのはやめにしたのか、シロガネはさらさらとメモを取りながらあいねの戦闘スタイルを問うた。
「うーんと、そうですね、自分の体を武器にしたりですとか、『魔剣の影』を浮かべて投射したり、あとは『戦槍』を投げつけたり、あ、炎や雷の力を使うのも得意です! この世界の武器ならシロガネさんの方がずっと先輩なのです、参考になるのなら、なんでもお見せするのですよ!」
指折り自分の能力を数えるあいねを前に、しばらく考えてから、「……一つ腹案がある」と呟き、吸盤のついた、心電図測定器めいたコードの束を壁から引き回した。
「手を貸してくれ」
「?」
シロガネは素直に差し出されたあいねの手を取ると、手際よくその腕に測定器を取り付け、コンソールを操作する。
「――あんたたちはエネルギーにいろんな名前をつけて呼ぶ。霊力、魔力、気力、導力、生命エネルギー、気――この機械でそれを観測し、どういう定理に当てはめれば武装に取り入れられるか検査をする。とりあえず、ここらを丸焦げにしないように、火の力から見せてくれ」
「ああ、なるほど! それでは!」
あいねが小さな炎を手先に点して見せる。そのときのコンソールの反応や計器が示す数値の推移を記録しながら、
「……なるほどな。なんとかなりそうだ。可能な限りいいものを造る」
気負った調子で呟くシロガネ。
力の籠もるその肩に、ぽん、とあいねは柔らかく手を置いた。
「そんなに不安に思わなくても大丈夫なのです。使い手が猟兵なのもありますけど、あなたの武器達は絶対負けたりなんかしないのです! 自信を持って頑張ってほしいのですよ!」
爛漫に咲く花のように笑うあいねの表情を振り仰いだシロガネは、複雑そうな表情をしていたが――やがて、
「……そうだな。やる前から自分を疑ってたんじゃあ、話にならん」
春訪れに咲く花を見たように、少しだけ笑った。
◆Stray Dog's Arsenal / CIK-AFC-01
加速火焔噴流器『天衝』◆
テンショウ。アクセラレイテッド・フレイム・カッター。
外見上は柄のみの、近未来的な拵えのカタナ。
柄に熱エネルギー加速増殖器――フレイムアクセラレータ(FA)が備わっており、あいねが使用する炎をそこに流し込むことで、白熱する『熱エネルギーの刀身』を生成、それによって敵を焼断する。この刃は炎と同じエネルギー体のため、通常の武器・防具では防御することすらままならない。あいねが力を込めるほどその刀身は熱く、巨大に燃えさかり、一振りで広範囲を薙ぎ払うことも可能。
強力だが、展開中は常にあいねの力を消費する。
大成功
🔵🔵🔵
静寂・拝人
2
ストレイドックス達はなぜ殺された?メガコーポの気まぐれか?あり得なくはないが…だが、なにかを見つけるか知ってしまったからでは無いか?メガコーポにとって重要な何かを…それならそれは知る『価値』がある。
まぁ、単純に手伝いたいってのもあるんだが…ほかの猟兵のお陰でやりやすくはなったろう。
仲間を犬死にさせたままじゃいられないだろう?
その為に協力させてくれ。
まぁ、普段はレプリカントの警護がついてるような人間なんだが…その…なんだ…守られてばかりって訳には行かないだろう?
俺に合いそうな武器があるなら使わせて欲しい。
(武器お任せします)
●死んだ意味、生きた意味
「ストレイドックス達はなぜ殺されたんだろうな。メガコーポの気まぐれか? あり得なくはないが……だが、なにかを見つけるか、あるいは知ってしまったからではないかと俺は思っているんだ。 そう、メガコーポにとって重要な何かをな。……それならそれは知る『価値』がある」
静寂・拝人(人生ゲーマー・f36629)が語るのは、野良犬たちが死ななければならなかった理由に関する考察だ。シロガネは、マシニングセンタで成形されたパーツに手作業でヤスリを掛けながら、それに低く応じた。
「あいつらはおそらく、コーポの連中が欲しがるジャンクの一角を見かけたんだろう。あるいは、そうだと疑われただけかもしれん。不思議な話じゃない。一人、頭がまるごと持っていかれたやつがいた。脳から記憶を吸い出すつもりだろうな」
「……知らないかもしれない、けど知っているかもしれない、ってレベルでか」
「ああ、そうだ。口じゃ何とでも言えるからな。だが、頭だけになれば嘘はつけない。やつらはハナから尋問する気すらない、このダストエリアの住人には市民IDもない。いなくなっても誰も何も気にしない――そう思ってるから、ここまでできる」
「酷い話だ。――それがわかってるなら、なおさら仲間を犬死にさせたままじゃいられないだろ。無念を晴らすためにも協力させてくれ」
拝人の言葉に、シロガネは鋭い視線を返した。
「……おれが見る限り、あんたはただのホワイトカラーのカンパニーマンだ。だが――あんたも回りと同じ『猟兵』ってことでいいんだな?」
「まぁな。得意なのはハッキングなんかで周りの武器設備を乗っ取って動かしたり、バグデータを敵に撃ち込んでクラッキングしたり……というところか。直接の斬った張ったは、普段はレプリカントの護衛に任せてるんだが……その、なんだ……守られてばかりって訳にもいかないだろう?」
目をそらしながら歯切れ悪く応える拝人に、シロガネは軽く肩を竦めた。
「守られっぱなしは男が廃る、とでも? 前時代的だが……まぁ、そうだな、解らんこともない」
言ってから、ぽんとシロガネはハンドヘルド型のコンピュータを渡す。
「何だ?」
「物理タイプ数と思考速度、ニューロンスピードの測定器だ。あんたに合ったスマートウェポンを提案するためのな」
「急拵えのジャンクの山とは思えない設備だな……」
「あれもこれも、野良犬どもの形見だよ。――願わくば、あいつらが生きた意味の一つを、あんたが武器で証明してくれ」
工房の中をぐるりと見回し、設備に感嘆の息を吐く拝人に、シロガネは測定の準備をしながら、密やかに応じるのだった。
◆Stray Dog's Arsenal / CIA-IMB-01
統合型マルチプルブラスターシステム『餓狼』◆
ガロウ。インテグレーテッド・マルチプル・ブラスターシステム。
コンパクトな小銃サイズのブラスターガン。単体で強力な貫通力とロングランバッテリーを持つブラスターガンとして用いることができるほか、ハンドガード上部に、脳波操縦型リフレクタービットシステムを十二基搭載している。ビットは射出後、拝人のサイバネスーツから読み取った思考電位と動悸して動作する為、拝人の思い通りの位置に飛翔する。ビットに対しては自動照準が利くため、ビットにブラスターを当て、ブラスターを反射させることで敵を死角から攻撃できるほか、ビットそのものにも一充電で三発まで射撃可能なブラスターが搭載されているため、拝人単身で十字砲火を実現することが可能。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィルジニア・ルクスリア
◎
2.装備を新造する
記憶を失い、新たな絆を奪われ、復讐を望み生きる者。
……駄目ですね。自分では苦悩する人間にかけるべき言葉が見つかりません。
彼が望むのは復讐。
あの方がお造りになさる武器にて微力ながらお力添えいたしょう。
望む武器は、私の地元(シルバーレイン)ではチェーンソー剣と呼ばれる、駆動式の刃がのこぎり状についた動力剣。
こちら(サイバーザナドゥ)だと、デスブレイドが一番近いでしょうか?
(【怪力】を示しながら)私も非力なわけではないですが……足りません。
分厚い装甲等ものともしない、全てを蹂躙する力が私には必要なのです。
私に力をください。
私は貴方の復讐の刃となります。
●ネメシスに血の華を
記憶を失い、新たな絆を奪われ、復讐を望み生きる――
ヴィルジニア・ルクスリア(サキュバスの悪霊・f36395)もまた、記憶を失った過去を持つものだが、シロガネが抱くその煮え滾るような思いを鎮めることも宥めることもできない。
彼女にできることはただ一つ。圧倒的かつ悪辣な暴力で、死と頽廃、妄執と狂気のもとに敵を殲滅することだけだ。
それが、シロガネが望む復讐になるというならば――
少女は工房の中、シロガネの前に進み出る。可憐な少女の容貌であった。所々に、眼球のモチーフをあしらったワンピースにさえ気づかなければ、ただ可愛らしいと言って終われたかもしれぬ。しかして一度気づいてしまえば、そのプラチナブロンドの一房までもが、白蛇のように首をもたげて見えた。
「私、ヴィルジニア・ルクスリアが、貴方のお造りなさる武器にて微力ながらお力添えいたしましょう。シロガネさん」
「……そいつはどうも」
ヴィルジニアの表情から、話はすべて通っているのだな、と認識したのか。「何が欲しい」と、シロガネは譚的に告げる。
「望む武器は、私の地元ではチェーンソー剣と呼ばれる、駆動式の刃がのこぎり状についた動力剣です。こちらだと、デスブレイドが一番近いでしょうか?」
「デスブレイドと言っても多種多様だからな、中にはそういう機構をしているものもある。……いいだろう。サイズは?」
シロガネが問うた次の瞬間、ヴィルジニアは手近なジャンクパーツ――重量は三〇キログラムほどだろうか――を片手で軽々と持ち上げて見せ、元の位置に羽のように戻してみせる。まるで音がしないのが、却って不気味さを増していた。
「私も非力なわけではないですが……足りません。分厚い装甲等ものともしない、全てを蹂躙する力が私には必要なのです」
可憐な器に有りっ丈の不吉さを詰め出来たような魔女は、ささやくように附け足した。
「力を――貴方の殺意の丈だけ、大きな刃を、私にください。私は、貴方の復讐の刃となります」
少女の言葉に、シロガネの口元が凶暴な笑みに尖る。
「――返品は無しだぞ、復讐の女神。くれてやるさ。おれが、あいつらに叩きつけたかった怒りの形をな」
シロガネは図面にペンを走らせる。
まるで紙の上に、元から存在したかのように。空白に、殺意の形が削り出されていく――。
◆Stray Dog's Arsenal / CMB-AMG-02
噴進対物流体ジェットグラインダー『贄咬』◆
ニエガミ。アンチマテリアル・メタルジェット・グラインダー。
ウィルジニアの魔力を吸って駆動するチェーンソー剣。片刃となっており、峰に該当する部分には推進器――ブースターが取り付けられている。
刀身部分のみで一五〇センチ、持ち手を含めれば二メートルに及ぶ巨大な鉄塊。起動と同時に超高速回転する刃先の一つ一つは、電磁力によって高速循環される液体金属で構成されている。このため、ウィルジニアの魔力が尽きぬ限り、贄咬の刃は原理的に鈍ることも止まることもない。怪力にて薙ぎ払えば、殺意に従い進路上のすべてを薙ぎ払い轢断する。
鈍重さをカバーするために取り付けられた推進器は、ヴィルジニアごと刀身をトップスピードに持ち上げる推進力を持つ。本人の力と推進力を合わせて振り回せば、死の嵐が吹き荒れることだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ロア・パラノーマル
◆スペクターズ/2
強者が弱者を虐げる。
何処であれ、その構図は変わらないのだな――このザナドゥでは。
では、その強者に牙剥く為の武器を彼に磨いて貰うとしようか。
――君はどのようなモノを頼むのかね、ギンジロー?
……ふむ、そうか。
確かにどうせ後で鉄火場になるのだ。お披露目はお互いその時を待つとするのも一興か。
【依頼】
銘:お任せ
武器形状:苦無型ハッキングデバイス
コンセプト:
電脳ツールに刺す事でハッキングツールとしても使用可能な苦無
対人に使う際は物理攻撃以外にも
電気信号への介入等によっても人を気絶・暗殺させられるような武器を希望
ギンジロー・カジマ
◆スペクターズ/2
ワシらは客で、お代は連中の首か。いいな、ワシ好みだ。
ま、メガコーポが気にくわないのは、ワシも同じだ。
では、アンタが研いだ牙、買わせてもらおうか。
もったいぶって隠すようなもんでも無いが、どうせこの後すぐに使うんだ。
お披露目はその時でいいだろう?
まぁ先に得物が分からないと連携しづらいというなら、教えてやるが。
(なんて挑発するような冗談)
【依頼】
銘:お任せ
武器形状:ショットガン
コンセプト:
ひたすら威力だけを突き詰めた銃。
対人よりも、対戦車のような兵器を見据えた武器。
●幽霊が執るは
「強者が弱者を虐げる。どこであれ、その構図は変わらないのだな――このザナドゥでは」
涼やかに、男が言った。痩身、ひょろりと背が高い。白い仮面をハンチング帽めいて被った、鋭い目をした男だ。紳士然とした身のこなし。厳つい印象はなく、所作もスマートだが、どこか不気味な威圧感がある。男の名は、ロア・パラノーマル(Sneaky, Spooky, Sparky・f36680)。
シロガネは猟兵らからひっきりなしに受ける依頼を、片っ端から図面に出力しながら応える。
「まあな。ここだけじゃあない、どこでも似たようなものだろう。富は富めるものに集まり、貧者はその下で喘ぐだけ。神の慈悲さえカネが無きゃ買えない。あいつらはいつもそう言っていた。……おれはこの世の仕組みには明るくないが、コーポの連中がおれたちを食い物にしていることくらいは解っている」
「だろうな。でなくちゃあ、連中の首をお代に自分の武器を売ろうとなんざ思わねえだろうよ」
ロアの横合い、連れ合いの男が、サングラスの位置を親指で掻くように直しながら言った。金髪のオールバック。サングラスの下でギラつく碧眼。顔を縦横に走ったかつての傷痕。背負った竜の入れ墨は、今にも飛び出してきそうな見事なもの。そこらのサンシタ、レッサーヤクザなどでは断じてないと素人でも解るような容貌の青年である。
彼の名はギンジロー・カジマ(デッドドッグ・f36632)。この超先鋭化社会の中ではもはや死滅寸前の、仁に生き義を通す古きヤクザだ。
「不服か?」
「いんや。むしろ、ワシ好みだ。メガコーポが気にくわないのはワシも同じだからな。アンタが研いだ牙、買わせてもらおうか。後払いにゃなるが」
ギンジローは口の端に引っかけるような笑みを浮かべ、シロガネに応える。それに頷いて、ロアが言葉を継いだ。
「強者に牙剥く為の武器を君に磨いて貰うとしよう。おおよその注文は既に纏まっている」
「ああ、何でも言ってくれ。……猟兵って連中は本当に規格外だな。使い手の安全を考えれば普通は出来ないようなことでも、平気で許容するんだから」
「そりゃな。そうでもなけりゃあ、この人数でメガコーポに喧嘩は売れねえだろう」
呆れ半分、楽しさ半分のシロガネの声に、ギンジローが軽く応えた。
「まあな。――皮肉だが、今、おれは自分の性能をフルに活用している自覚がある。人間に合わせた武器は、人間の限界にしか迫れない。反動、熱、殺傷半径、どれもこれもがハードルになるんだ。――だが、あんたらはそれをものともしない。あんたらに合わせたあんたらの武器が、どれほどの威力を叩き出すのか。今、おれ自身でさえ読み切れずにいる」
シロガネは、昂揚の反面に影のように纏うかすかな不安をにじませるように呟く。
しかし、それを遮るようにロアが口を開いた。
「読まずとも結構。何がどれほど上振れしようと、乗りこなしてみせよう。――賭けに一度乗ったならば迷いは捨てろ、シロガネ君」
含めるように言って、ロアは冗談めかして肩を竦める。
「第一、迷っていては人数分の装備を作り終わるまでに敵が来てしまう。我々が君に託したのだ。君も我々に託し給えよ」
「――そうだな。すまん」
ロアの言葉に感じ入るものがあったのか、ばしん、とシロガネは自身の両頬を張り、バンダナを締め直した。一度閉じて開いた眼に、迷いの光はない。
「改めて……注文を訊こう」
ロアは、口元をそれと解らぬほどかすかに歪め、笑った。
「ふむ、そうだな。――君はどのようなモノを頼むのかね、ギンジロー?」
「あぁ? ……もったいぶって隠すようなもんでも無いが、どうせこの後すぐに使うんだ。お披露目はその時でいいだろう? まぁ先に得物が分からないと連携しづらいというなら、教えてやるが」
歯をちらり見せての皮肉な笑い。突っ返すようなギンジローの返事は、団体作戦行動を重視する軍隊ならば修正必至のものだったが、ロアはそれを気にした風もない。
「……ふむ、そうか。確かにどうせ後で鉄火場になるのだ。お披露目はお互いその時を待つとするのも一興」
「話は纏まったみたいだな。……じゃあ、スーツのあんた。あんたの注文から訊こう。あっちの兄さんは無茶苦茶を言いそうだからな」
「誰が無茶を言いそうだって?」
食ってかかるように(これもおそらく冗談の一部だろう。グレーター・ヤクザは市民に対するソンケイを忘れないものだ)反駁するギンジローの声を、「冗談だよ」とさらりとかわし、シロガネは製図用のペンを取る。
――この猟兵という連中にもう少しだけ早く会いたかった。
あいつらにも会わせてやりたかったと、少しだけ感傷に浸りながら。
◆Stray Dog's Arsenal / MEB-PJK-01
皆電位制圧苦無『霧影』◆
キリカゲ。ポテンショナル・ジャミング・クナイ。
対電脳・対人戦闘および工作用を考慮したクナイ・ダート。一般的なクナイと同様の形状をしているが、内部はハイ・テックの塊。
電子的なサーキットに突き刺した場合、対象のテクノロジー、インターフェイス、プロトコルを問わずその内部に『電脳的に』侵入し、即座に物理ハッキングを仕掛けることが出来る。ただし、あくまで足がかりとして使用することが出来るのみで、それ以降のハッキング進行は術者本人の実力に委ねられる。
生体に対して用いた場合、神経の信号伝達に介入し、敵の身体機能を麻痺させたり、クリティカルな臓器の動作を阻害するなどして、気絶・殺害することが可能な神経毒性の武器として用いることができる。単純な切れ味もかなり優秀。
◆Stray Dog's Arsenal / CIG-TBS-02
回転弾倉式複銃身連装粒子散弾銃『大乱斗』◆
タイラント。ツイン・ビーム・ショットガン。
熱反射率と強度の高い特殊金属製の銃身を水平二連装にした、前代未聞・超弩級のポンプアクション式加速粒子ショットガン。
子供の拳なら入りかねないぽっかりと空いた銃口が底知れぬ威圧感を醸し出している。ドラムマガジンにより高圧エネルギーカートリッジを連続供給し、絶えず加速粒子の散弾を敵に浴びせかけることが可能。また、ビーム出力方式を側面のレバーで変更することで、拡散範囲と威力を変更可能。威力を最重視すると一粒弾(スラッグ弾)となり、凄まじい貫通性能と長射程を発揮する。装弾数二〇×二(左右)。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴木・蜜
2
初めまして
シロガネさん
私にひとつ力を貸してくれませんか
見ての通り
私は純粋な戦闘要員ではありません
戦うのは得意ではないし好きでもない
しかし
私は理不尽を許せません
理不尽から人を救いたい
そして
救うためには
武器を取らねばならないこともある
どうか私が救い続けるための力を下さい
軽量且つ医療器具や刃物に似た類いのものだと扱いやすくて助かります
ああ、そうだ
私の毒を利用できるようにしてもらうことは出来ますか
……、命を侵すことにかけては負けない自信があります
嫌な自信ですがね
折角ですから利用した方がいいでしょう?
銘や細かい形はお任せします
●毒に夕闇
「初めまして、シロガネさん。私にひとつ力を貸してくれませんか」
作業中のシロガネに、冴木・蜜(天賦の薬・f15222)が静かに切り出す。シロガネの手はまるで自律機械のように細かなパーツを迷いなく組み付けていく。鋼色の目だけが、蜜の目を鋭く見返した。
「話を聞こう」
「ありがとうございます。……見ての通り、私は純粋な戦闘要員ではありません。戦うのは得意ではないし好きでもない」
「だろうな。そういう感じだ。猟兵って連中の中にもあんたみたいなのがいるんだな」
「……全員が全員、戦闘のプロというわけではありませんから。しかしそれでも、私は理不尽を許せません。理不尽から人を救いたい。それは、戦いが得意ではないという私の事情よりも優先されます」
「つまり?」
言葉少なだが、すべての言葉を聞いてからの間髪入れずのシロガネの切り返し。語勢は強いが、蜜の語り口はそれに揺らいだ風もない。
「――救う為には武器を執らねばならないこともある。どうか、私が救い続けるための力を下さい」
「今更だ。おれはあんたたちにBETした。あんたがおれのために戦ってくれるというなら、おれはあんたに武器をやるだけだ。注文を聞かせてくれ」
シロガネの口調は初めよりも遙かに理性的で、穏やかなものになっていた。猟兵達が言葉を尽くしたためだろう。
「では……軽量且つ医療器具や刃物に似た類いのものだと扱いやすくて助かります。それから……ああ、そうだ。私の毒を利用できるようにしてもらうことは出来ますか?」
「毒だと?」
「ええ……、命を侵すことにかけては負けない自信があります。嫌な自信ですがね。得意なことがあるのなら、折角ですから利用した方がいいでしょう?」
蜜は傍らに転がっていた、特殊金属の切れ端を拾って、手の上に立てた。次の瞬間、蜜の右手が毒となる。乗せていた金属が黒くくすみ、焦げるような、泡立つような、嫌な音を立てて彼の手の上でグズグズと腐食し、黒い液体として足下に垂れ落ちていく。
毒だ。冴木・蜜は、死を喚ぶ黒血の集合体である。その権能の一端をごくごく静かに披露したのだ。
シロガネも息を飲むが、驚いてばかりもいられないと、飲んだ息を緩めるように吐き出し、頷いた。
「……凄まじいな。ああ、その通りだ。使った結果、あんたが苦しむのを見たくはないが――戦うと決めたのなら、それが必要な痛みなら。あんたに似合う武器を作ろう。前に立って戦えるように。あんたが、きっと誰かを守れるように。……その身体の性質を、少し調べさせてくれ。合わせて処方する」
「――ありがとうございます。ええ、承知しました」
ほんのわずか笑って、二人の男は顎を引くようにうなずき合うのだった。
◆Stray Dog's Arsenal / MEB-PJL-02
蜜毒循環式ランセット・セット『融病』◆
ユウヤミ。ポイゾナス・ジェット・ランセッツ。
電子付与型超高圧液体循環装置を刃先に採用したランセット(手術用メス)のセット。外見は刃のない、刃交換式のメスに見える。極めて高い耐蝕性を持つアンチラスト合金で作成されている。十本入り。
蜜から分泌される毒、あるいは蜜の体そのものを柄尻から吸い上げ、電荷を与えて先端部を高速循環させることで、刃のあるべき部分に『黒血の刃』を形成する。刃を形成した状態であれば、投擲して用いることも可能。
手術用メスのサイズと重量ながら、形成できる刃は通常出力でメス同様、最大出力とすると三〇センチメートルまで延伸できる。
腐食性の毒を装填して敵を殺傷できるほか、治療用の薬品を装填して注射器として使うことも可能。
大成功
🔵🔵🔵
丸越・梓
【2】
◎
銘、形状、全てお任せ
──貴方が作成するにあたり、一番得意な武器を
または一番思い入れが深い武器を、お願いしたい
俺は刑事だ
復讐の代行者ではない
そも生半にしか彼のことを知らぬ俺には、抱くそれを背負う資格はない
だが見殺しにするなど以ての外だ
彼を哀れに思うからではなく、唯メガコーポの行った所業を納得せぬからであり、護ることこそ使命だからだ
此度の戦場において
俺は彼と彼の仲間の代弁者でありたい
彼らの無念を、怒りを、意志を──存在を
他ならぬ彼の作った武器で叫びこの世に刻みつける、彼らの声の代弁者
その武器はあくまでお借りするのみ
此度の戦が終われば彼の元へ返そう
貴方と貴方の仲間が戦い、抗い
勝利したその証だ
●魔王の牙
武装作成と猟兵達の注文が始まって、一昼夜。夜の小休止を終え、動き出そうとしたシロガネの前に、一人の男が姿を現した。長身だ。年齢二〇代後半から、三〇に入るかどうかと言うところ。背が高い。シロガネと同じほどの背丈だ。
男の名は、丸越・梓(零の魔王・f31127)。鋭い黒の瞳が、シロガネの鋼色の視線と重なる。
「――俺は刑事だ。復讐の代行者ではない。貴方のことを生半にしか知らぬ俺が、貴方の復讐心を背負う資格はないと思っている」
「……なら、どうする?」
シロガネは静かに問い返した。製図用のペンをくるくると回して、ペン立てに軽い音を立てて放り込む。
二秒半の間。
「助ける。見殺しにするなど以ての外。……貴方を哀れに思うからではなく、唯メガコーポの行った所業が許せない。刑事は、力無き人々を護ることこそが使命だ」
拳を握る。メガコーポの大義なき殺戮を見過ごすわけにはいかない。梓は続けた。
「此度の戦場において、俺は、貴方達の代弁者でありたい。彼らの無念を、貴方の怒りを、意志を──存在を、他ならぬ貴方の作った武器で叫び、この世に刻みつける――貴方達の代弁者たろうと思う」
「……」
シロガネは小さく笑う。
「……おれたちの怒りを叫んでくれるって言うんだな。あんただけじゃあないが……猟兵ってのは、どいつもこいつもお人好しだ。本当に、あいつらにも会わせてやりたかったよ」
シロガネは悼むように十一枚のドッグタグに目をやり、一度目を閉じた。沈黙の数秒は黙祷か、あるいは、――決意の時間か。
再び開けば、そこにはギラつく殺意があった。梓を通り抜けて遙か向こう。理不尽に迫る、今も輝く街で蔓延っているであろう、メガコーポの悪魔どもに向けた殺意が。
「何が欲しい」
「──貴方が作成するにあたり、一番得意な武器を」
「なら、カタナだ」
即答だ。金属精錬、鍛造。この先端技術が集った武器工房で、最もプリミティヴな殺意の結晶。それがこの男の上得意。
「では、それをお借りしたい。――此度の戦が終われば貴方の元へ返そう。貴方と貴方の仲間が戦い、抗い――勝利したその証として」
「返品は受け付けてない。気に入らないんじゃなきゃ、持って行け。……もっとも、その手の話も勝った後だ。死んじまったら何も残らないのは、あいつらもおれたちも変わらないんだからな」
言いながらシロガネは放り出していたペンを拾い上げる。新しい製図用紙を引き出し、梓に真っ向、向き直った。
「――じゃあ、採寸から始めようか。猟兵殿」
斯くして、銀は魔王の牙を鍛つ。
◆Stray Dog's Arsenal / CMK-VBK-02
高出力推進刀『宵皇』◆
ショウオウ。ヴァンガード・ブーステッド・カタナ。ハイブリッド合金、『イーヴィルキラー』製。
扁平に整えられた峰にマイクロ・ヴァンガード・ブースター(MVB)が多数仕込まれた変則日本刀。
刀身長八五センチメートル、重量は通常のカタナを遙かに上回るが、加工の技前が精緻を極めており、重量バランスは悪くない。素材の性質と相まって肉厚の刀身は極めて堅牢にして強靱、無上の鋭利さを誇る。
柄に存在するエネルギージェネレーターに獄炎を供給することで、MVBから超高出力で推進炎を吐出し、斬撃を加速し敵対象を叩き斬る。エネルギーソースを猟兵に頼る武器の一つではあるが、逆に言えば猟兵の力が尽きぬ限り、無尽蔵に振るえるとも言える。
大成功
🔵🔵🔵
ユウイ・アイルヴェーム
2◎
この手が届く範囲は決して広くはありません
それでも悲しむ方を少しでも減らしたいのです
ですから、前へ進めるような
…敵、を多く倒せるような武器が欲しいのです
心を、命を持つ方が痛みを感じる前に倒してしまいたいのです
…例え、敵となった方々にも心があるとしても
守りたい方々を傷付けようとするのなら、私は立ち向かうのです
守るということはきっと…選ぶ、ということなのです
私はあなた方を守りたい、と思います
ですから、選んではいただけませんか
ひとに選ばれる物は、きっと幸せで
きっと、頑張ってくれると思うのです
…おかしいですね、物に心はないのに
私は人形ですからどうなってもいいのです
守るべき命は私の中にない、のですから
●職人の祈り
工房の中、絶えず鉄を打ち、新たなパーツが製造されていくそこで、次にシロガネの前に足を踏み出したのは、小柄な、白髪の少女であった。年の頃一七かそこら、あるいはそれよりも幼いかもしれない。明け空めいた橙の瞳に、可憐なワンピースドレス。ユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)というのが、その少女の名だ。
ユウイは歌うようにさえずる。澄んだ鈴の音を思わせる声。
「この手が届く範囲は決して広くはありません。それでも悲しむ方を少しでも減らしたいのです。ですから、前へ進めるような……敵、を多く倒せるような武器が欲しいのです。……心を、命を持つ方が痛みを感じる前に倒してしまいたいのです」
「……優しいことだな。味方ばかりじゃなく、敵の心配までするのか」
煙草をくわえながら火を付けるシロガネの応えに、ふる、ふる、とユウイは首を左右に振った。
「優しくなんて、ありません。守るということはきっと…選ぶ、ということなのです。すべてを救うことはできません。でもせめて、……例え、敵となった方々にも心があるとしても……守ると決めたものは、守りたいのです。守りたい方々を傷付けようとするのなら、私は立ち向かうのです」
少女は感情の起伏薄く、しかし切々と訴えるように説いた。揺らぎない物言いは元来のものだろう。しかし、訴える言葉に嘘がないことくらいは、シロガネにも解る。ユウイは続けた。
「私はあなた方を守りたい、と思います。ですから、選んではいただけませんか。ひとに選ばれる物は、きっと幸せで……きっと、頑張ってくれると思うのです」
「……ああ。それは、解る」
シロガネは工房の外に広がるジャンクの山に目を走らせた。
――まだ終わっていない、と我楽多の山が、訴えるようにライトに光っている。
「……おかしいですね、物に心はないのに」
「おかしかないさ。……おかしくなんてない。もしかしたら、あるかもしれない。ものを作る奴が込めた思いが、何かを吹き込んでるかもしれない。……だからおれはあんたらの装備に、一つ一つ銘を打ってる。頑張ってくれるようにな」
感傷的な一面を見せながら、シロガネは笑って応えた。
「造ろう。あんたの武器も。あんたが無事に戻れるような、すごいものを」
「……私は人形ですからどうなってもいいのですのに。守るべき命は私の中にない、のですから」
ミレナリィドールたる少女は、表情を動かさず言うが――
「それこそ、もしかしたらあるかもしれないだろ。あんたにも打たれた銘があるはずだ。……あんたが自分を守らないなら、おれが造ったものが、きっとあんたを守るだろう。――だから、無事に帰ってこい、猟兵の嬢ちゃん」
祈るように言って、シロガネは紫煙を宙に浮かべるのだった。
◆Stray Dog's Arsenal / CIW-PFS-02
広範囲電離羽弾散布翼『煌星』◆
キラボシ。プラズマ・フェザー・スプレッダー。
装飾的なボディハーネスで固定される、天使の翼めいた翼状のプラズマ弾投射器。
通常時は翼一つにつき成人男性の掌程度の、ふわふわとしたテクスチャを持つ翼装飾だが、戦闘モードを起動すると同時にユウイの体を包めるほどの大きさまで伸張・展開し、帯電。展開時に露出したプラズマ弾投射ユニットから『電離羽弾』――プラズマフェザーを撒き散らす。翼はユウイの意思に沿って動くため、格闘戦をしながら後退同時に射撃戦にシフトする、格闘戦をしつつ側撃してきた敵にプラズマ弾を叩き込むなどの応用の利く武装。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
2.新造
銘:お任せ
/
支配と圧政……嫌な構図だ
アタシもそういう上位者気取りへの叛逆には馴染みのある身の上でね
力を貸すよ。
理不尽にはそれ以上の理不尽を、蹂躙には更なる蹂躙を。
因果応報じゃ物足りない。
自分が虐げる側だと勘違いしている連中に、地獄って奴を味わわせてやろう
復讐から得られるものは無い、なんて語る輩も居るけれど。
自分たちは、お前達如きが踏み躙っていい存在じゃなかった――その証を刻み付けるには丁度いい
生憎こういうテクノロジーには疎くてね
望むのは切り札だ。
見た目には何処にでもあるようなダガーの中に紛れさせ、
敵を仕留めるとっておきの刃。
性能としては鋭く頑丈で……エネルギー炉の搭載とか、出来たっけ?
●ジョーカー
「支配と圧政……嫌な構図だ。アタシもそういう上位者気取りへの叛逆には馴染みのある身の上でね、力を貸すよ」
カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)の頭に過ぎるのは、かつて自身が生まれたダークセイヴァーでの、吸血鬼による圧政だ。上位者面をするだけでは飽き足らず、人々を支配し、虐げ、その死体の山すら養分にしてなお肥え太る。かつてのカタリナが、最も倒さねばならぬと――民のために立ち上がる騎士達が打倒する、怨敵らのことを思い出す。
「理不尽にはそれ以上の理不尽を、蹂躙には更なる蹂躙を。因果応報じゃ物足りない。自分が虐げる側だと勘違いしている連中に、地獄って奴を味わわせてやろう」
「気合十分だな。頼もしい限りだ。――おれ一人でやるはずだった私闘が、気づけば大きくなったものだな」
製図用紙を引き出しながら、シロガネはペンにインクをリフィルする。感慨深げに呟くシロガネに、カタリナが応える。
「そうだね。きっとキミの思いに賛同する人が多かったんじゃないかな。……正義の味方にもいろいろいるけどね、ここに来たみんなは少なくともそうなんだと思うよ。復讐から得られるものは無い、なんて語る輩も居るけれど――」
カタリナは広げた自分の手を見下ろし、小指から順に確かめるように握り締める。
「自分たちは、お前達如きが踏み躙っていい存在じゃなかった――その証を刻み付けるには丁度いい」
「……そうか。あんたがそう考えているなら、それに甘えよう。あいつらは、別に許されようとは思ってなかった。だってあいつらは生まれたときから許されていなかったから。……原罪なんてものがあるとは思っちゃいないが、生まれたことが罪だったすれば……ここに落ちたこと、ただそれだけで十二分な罰だったろうに」
握るペンが軋む。一見落ち着いて見えるシロガネだが、その心の内側には今も怒りの炎が渦を巻いているのだろう。
「……だからおれは、あいつらが燃やせなかった怒りを燃やして、叫べなかった怨嗟を吐くための武器を造る。手伝いを頼む、猟兵の嬢ちゃん」
「任せて。……今回は切り札を頼みたい。見た目には何処にでもあるようなダガーの中に紛れさせ、敵を仕留めるとっておきの刃。性能としては鋭く頑丈で……エネルギー炉の搭載とか、出来るかな?」
「ダガーサイズに自分からエネルギーを産生するタイプを搭載すると出力が低くなる。あんたの力を増幅するタイプの増幅炉を付けよう。あんたの力を測定させて欲しい」
「わかった」
計器を用意し始めるシロガネに頷きながら、カタリナは完成した刃をイメージする。
一本の切り札。思わぬ伏兵――折れず曲がらぬ最後の刃を。
◆Stray Dog's Arsenal / CEB-DFB-01
権能増幅短剣『鬼札』◆
オニフダ。デビルズ・フォース・ブースター。フォトン・チタニウムにより鍛造された、極めて頑丈なダガー。
拵えこそ既にカタリナが持っているダガーと変わらないが、カタリナが扱う各種の魔神の権能――炎、雷、光・闇・風・重力・影などの多岐にわたる属性を込めると、それに反応し増幅出力する半パッシブの電脳魔術回路――権能増幅炉が組み込まれている。
威力に関して例えるならば、今までのカタリナの攻撃が、単なる投石だったものだとすれば、これを用いて攻撃するのは投げヒモ――スリングを用いて投石するようなもの。魔術回路の動作分もカタリナの魔力を消費するため消費は二倍というところだが、ここぞという時の切り札足り得るだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ユヴェン・ポシェット
【1】
俺が履いているこのブーツは「matka」という。軽く丈夫なだけで特別なものでも何でもないが気に入っていてな、予備としてこのmatkaと全く同じものがあるのだが、今の所この予備を使う事がなさそうでな…
それならいっその事、別物の戦闘用靴として生まれ変わらせる事ができないかと思ったんだ
で、それをよければアンタに頼めないだろうか…もし可能なら今よりさらに多様な戦い方ができると思う。
シロガネ、アンタが造るものを見る限り信頼できそうだからな
勿論、俺の仕事はきっちりやる。これでも様々な地での経験があるから多少なりとも戦力にはなると思う。俺はこの地の事、奴らの情報に詳しい訳じゃねぇが俺達にアンタの腕が加われば、メガコーポとかいう連中にやられはしないさ。
アンタの大事なものに奴らは手を出したんだろう?なら奴らが受けるのは天罰なんかじゃないよな。シロガネ、アンタの手で…アンタが造る物達によって報いを受けるのは当然だ
アンタはアンタの戦いを、俺達は俺達の戦いを。
…よろしく頼む。
※銘 その他諸々お任せ致します
●悪魔の行く先に、嵐あれ
ユヴェン・ポシェット( ・f01669)が持ち込んだのは、軽く、丈夫なブーツであった。
「俺が履いているこのブーツは、『matka』という。軽く丈夫なだけで特別なものでも何でもないが気に入っていてな、予備としてこのmatkaと全く同じものがあるのだが、今の所この予備を使う事がなさそうでな……それならいっその事、別物の戦闘用靴として生まれ変わらせる事ができないかと思ったんだ」
ユヴェンの考え方は非常に理にかなっていた。開発された武装を使うのが初めてである以上、その使用感が起因となって動きを過つことなどないとは、どんな達人でも言えないだろう。そのリスクを、使い慣れた靴の予備をベースに開発することで最小限にするということだ。
「で、それをよければアンタに頼めないだろうか? もし可能なら今よりさらに多様な戦い方ができると思う。シロガネ、アンタが造るものを見る限り信頼できそうだからな」
「なるほどな。悪くない提案だ。どんな機能を設けるかだが……あんたは普段、どういう戦い方をするんだ?」
「戦い方、か。……そうだな、槍を使った格闘戦や、この刀――『青凪』というんだが、水の刃を生む力がある。それを使った中距離戦、後はロワ――ライオンを喚び出して一緒に戦ったり、というところか」
話を聞いてメモを取りながら、シロガネはふむ、と息をついて顎元に手をあてる。
「なるほどな。戦い方としては機動戦、近から中距離での白兵戦が主というところか。それなら、いくつかのギミックを搭載して、あんたの機動力と近接格闘力を向上する改造を施そう。少しばかり外見はゴツくなるだろうが……まあ、そこは許してくれ」
「ああ、構わない。……作ってもらうぶん、俺の仕事はきっちりやる。これでも様々な地での経験があるから多少なりとも戦力にはなると思う。俺はこの地の事、奴らの情報に詳しい訳じゃねぇが、俺達にアンタの腕が加われば、メガコーポとかいう連中にやられはしないさ」
「そいつは頼もしいことだな。――この世界は、地獄さ。カネは上に上に吸われて、ゴミは下に下に捨てられる。そうして捨てられたおれたちは、ジャンクの中で喘ぐしかない野良犬だ。……でも、生きていた。生きていたんだ。一緒に、ここで。それを踏み躙っていいわけがないだろ」
図面を書く手を休めて、シロガネは上を見上げた。ジャンクで埋め尽くされた天井の、その更に上。上。上。見通せるわけもない、メガコーポのビルの天辺に意識を飛ばす。
「おれは、メガコーポの連中を……『セワード・アーセナル』の連中を許せない」
「ああ」
ユヴェンはちらと、祭壇めいて作業台の上に掛けられた十一枚のドッグタグを見上げた。続けて、左右をぐるりと見回す。
工房の中には、武装の作成を待つ猟兵達と、既に作成された武装のマニュアルを読み込む猟兵達が十数名。そのそれぞれの居心地のいい場所収まっている。――もしかしたら、人の落ち着きやすいその場所に、あの十一枚のドッグタグの主達がいたのかもしれない。ほんの少し前までは。
けれど、彼らは死んだ。まるで野良犬の死骸めいて、ジャンクの山に沈められ、上層からの汚水に濡れて、土と同じ温度になった。
「アンタの大事なものに奴らは手を出したんだろう」
ユヴェンは決然と言う。
「なら奴らが受けるのは天罰なんかじゃないよな。シロガネ、アンタの手で……アンタが造る物達によって報いを受けるのが当然だ。俺達は、あんたが振るえない剣を、撃てない銃を、代わりに使うためにここに来た」
だから、任せろ。
オッドアイの青年は、シロガネに右手を差し出す。
「……ああ」
「アンタはアンタの戦いを、俺達は俺達の戦いを。――よろしく頼む、シロガネ」
二人の男の手が重なり、堅く握り合う。
――ユヴェンは、きっとこの手を掴んだことを、後悔させないと心に決めた。
◆Stray Dog's Arsenal / MEB-RJB-03
高機動斥力ジェットブーツ『荒嵐』◆
コウラン。リパルシヴ・ジェット・ブーツ。武器分類Bは特例、ブーツのBとなる。
靴底に斥力発生装置を備えており、跳躍に合わせ地面との斥力を発生させることで、従来を遙かに上回る跳躍力を発揮する。
また、槍の熱と青凪を合わせて引き出した水を装填することで、ブーツの周囲に水を力場的に固定し、暗殺シューズめいて水の刃を纏わせて格闘能力を向上できる。この状態ではジェットブーツの名の通り、任意のタイミングで水を任意方向に噴出することで、空中機動が可能であるほか、蹴りに合わせて水の刃を飛ばすなどの多様な応用が可能。
大成功
🔵🔵🔵
カルマ・ヴィローシャナ
◎1.装備強化
WIZ
強化元:ジェネシスXQ(ビデオドローン)
⇒強化後:銘指定なし。可能なら“遮”の文字をどこかに欲しい
・武装した舞台演出兼撮影用ドローンを改造
・偵察や潜入任務に使える特性を付加したい
・高度な光学迷彩の追加と装甲に変化し装着する機能
・+α歓迎
ドーモ、ここにいるヤバイ級の鍛冶師さんが
メガコーポに喧嘩売るって話を聞いて来ました!
うう…そんな怖い顔しないでよぉ
カルマちゃんも――私も、ずっと昔にアミダって連中に捕まって
身体中を弄られて変な改造されたり
一緒に捕まった友達はみんな実験で死んじゃった
メガコーポにケジメつけてやりたいって気持ちは同じよ、きっと
だから、シロガネさんのお手伝いをさせて欲しいの
…ダメかな?
(頭上を飛んでる黒い物体を指さし)
これ、私が使ってる撮影用の武装ドローンなんだけど
光学迷彩装甲と私への装着機能って追加出来るかな?
スーツ型装甲になれば私ごと隠せるし
透明ドローンなら偵察にも使い易い
リソースは私の…不可逆時空相転移機関とか言う奴
コマンドは私から亜空間通信で飛ばせるよ
●魂の価値
「ドーモ、ここにいるヤバイ級の鍛冶師さんがメガコーポに喧嘩売るって話を聞いて来ました!」
その髪の色くらい明るい声音で、カルマ・ヴィローシャナ(波羅破螺都計・f36625)が言ったとき、シロガネはちょうど合わせて二〇の装備を作り終わり、猟兵達のテストへ引き渡した所だった。疲労感と『遊びじゃないんだぞ遊びじゃ』という感情がそのまま顔に出たか、険のある目でカルマを見返す。
「うぇっ?! うう…そんな怖い顔しないでよぉ……冗談だからぁ」
へにゃ、と眉を下げて頬を掻くと、カルマは改めて、という風に佇まいを直した。マスクを取り外すと、大きく呼吸を一つ。戯けた風な喋り口は也を潜める。
「ちゃんと話すわ。カルマちゃんも――私も、あなたと同じなのよ。ずっと昔にアミダってメガコーポの連中に捕まって、身体中を弄られて変な改造をされて――同じ目に遭った友達はみんな死んじゃった。運良く私は逃げ出せたけど、ケジメはついちゃいない」
常の明るい口調とは裏腹に、カルマの瞳の裏には昏い復讐の炎が燃えている。シロガネは僅か、それと気取られないほどに息を呑んだ。その炎の色は、まるで鏡を見るようだった。
「メガコーポにケジメつけてやりたいって気持ちは同じよ、きっと。私も、あなたも。だから、シロガネさんのお手伝いをさせて欲しいの。あなただけでも、私だけでも、相手がメガコーポじゃ分が悪い。私はあなたの、あなたは私の復讐を幇助して、メガコーポをブッ飛ばす。……ダメかな?」
眉をハの字に下げ、胸の前で人差し指を突き合わせて首を傾げるカルマ。シロガネは首をゴキリと回して、製図用ペンを胸ポケットから抜く。
「……悪くない。悪かったな、あんたの事情を知らないためとは言え、睨んだことは詫びる。あんたが欲しいものを教えてくれ」
「!」
返事に猫耳型サイバーウェアをぴこんと跳ねさせ、花開くように笑うと、頭上に飛ぶ黒いドローンを人差し指で示し、カルマは注文を並べた。
「これ、私が使ってる撮影用の武装ドローンなんだけど……光学迷彩装甲と私への装着機能って追加出来るかな? スーツ型装甲になれば私ごと隠せるし、透明ドローンなら偵察にも使い易いかなって。リソースは私の……不可逆時空相転移機関とか言うやつ。コマンドは私から亜空間通信で飛ばせるよ」
「そこらの技術には疎いな。だが、結局重要なのはインプットとアウトプットの形状だけだ。変換するインターフェースを噛ませれば、難しいことじゃない。解析には少しばかり時間を貰うがな」
シロガネは言いながら、端末にオプティカル・カモフラージュ素子のプリント命令を入力する。
「……復讐をしても、亡くした者は戻ってこない。だが、それでも、やり返してやらなけりゃあ前には進めない。おれたちは。奴らにゴミだと思われたままじゃあいられない。あの野良犬たちも。あんたの仲間達も。笑って、泣いて、生きていたんだ」
「……うん」
カルマは少しだけうつむく。さらりと落ちた前髪が目を隠した。かつて喪った仲間達。そして一人、生き残った自分。メガコーポ、アミダインダストリー。いつか必ずツケを支払わせ、ケジメを付ける。
――それまで後ろは振り返らない。
カルマは強く頷き、前髪を払う。エメラルドの瞳が凜と煌めいた。
「あなたの武器なら証明出来るわ、絶対に。踏み躙られた魂の価値って奴をね」
◆Stray Dog's Arsenal / MEA-OCD-01
多機能光学迷彩コンバットドローン『遮導』◆
シャドウ。オプティカル・カモフラージュ・コンバットドローン。
メインカメラ一基、サブカメラ三基、フォトンブラスター二基を搭載する高機動ドローン。
ジェネシスXQを元に改造された機体。各部パーツの連結は磁力によって成されており、カルマから送り込まれる不可逆時空相転移機関のエネルギーをベースに動作する。
表面装甲にオプティカル・カモフラージュ素子を用いており、光学迷彩をアクティブにすることで敵から身を隠すことができる。また、常時カルマと亜空間通信によりリンクしており、潜入した空間の状況をカメラで撮影、リアルタイムでカルマに転送可能。
更に、変形・合体コマンドの実行により、各パーツが分離しカルマの追加装甲に変化する機能を備える。カルマが身に纏うことで光学迷彩を本人が使用可能なほか、拳部に迫り出したフォトンブラスターが、彼女のフォトン・カラテの威力を向上する。
大成功
🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】◎
1銘含め全部お任せ
…どこの世界にもいるんだなこういうふざけた奴
焼け付くような痛みも怒りも
わかるよなんて言わない
どこに比重を置くかなんて、ソイツ次第だから
ただ…理不尽をぶち壊したい気持ちだけは同じだろうから
真摯に願うアレスに合わせて頭を下げる
ああ、頼む
どうか…想いの欠片を俺たちにも背負わせてくれ
俺が頼むのは靴…エールスーリエの強化だ
何かこう…何時もは魔力を靴に流してさ
風を作ってそいつを破裂させてスピード上げてるんだけど
…やったほうが早いか?
うん、とにかくこれをもっと速くなるようにして欲しい
だって、どんだけ強い敵でも
殴られる前に速度を上げて殴れば敵は死ぬ、だろう?
共に並び立つように速度を上げてくれたアレスを、また置いてっちゃうかもとかは考えたけどさ
きっと…絶対に、どんな方法でも一緒に戦ってくれるから
だから、俺は俺の得意を伸ばす事にした
ああ、アレスと一緒に
全力…全速力で悪魔どもをぶっ飛ばしてやる
だから、頼む
アレクシス・ミラ
【双星】◎
2:形状、銘含め全てお任せ
…この世界にも今日を生きる人々の明日を奪い尽くし
踏み躙る者達がいる
(それに怒りと…痛みを感じる
けれど今、僕が此処に示すのは
運命だとは言わせない理不尽と戦う決意と意志だ)
シロガネ殿
僕とセリオスも己の意思で此処に来ました
彼に、そして作業灯のネームタグ達に向かって頭を下げる
どうか僕達も…貴方が鍛えた武器と共に戦わせてください
…僕は、たとえ無数の銃弾や戦車が相手だろうと守るべき者がいる限り、光と覚悟を以て決して退きはしない
けれど様々な敵と戦ってきて、僕の出来る「守る戦い」の幅を広げたいと思っていたんだ
だから、僕は新武装を頼みたい
遠距離武器や身体強化装備…色々考えたが
目指す理想は一つ
僕は導き守る盾でありたい
もっと守れるように
更なる速さを極めるセリオスと立ち向かえるような武装を
シロガネ殿にお願い出来るだろうか
…大丈夫
君がどんなに速くなっても、僕は君と一緒に戦うよ。絶対に
僕達は剣と盾だから
…必ずや貴方の武器とセリオスと一緒に
悪魔を討ち倒すと誓おう
だから、お願いします
●地の果てに、光を
「大体の事情は聞かせてもらったぜ。……どこの世界にもいるんだな、こういうふざけた奴」
裡に秘めた煮え滾るような怒りを、今は表に出さぬようにしながら呟くのはセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)。その傍らを、いつもと同じくアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)が固めている。
「ああ。……僕達の故郷を襲った吸血鬼のように……この世界にも今日を生きる人々の明日を奪い尽くし、踏み躙る者達がいる」
アレクシスは拳を握り固め、深く息をつく。――運命めいて襲いかかる悲劇。抗いようのない暴虐。押し流されるままに、抗えぬままにそれに晒されていると――ひとはいつしか、まるで、そうして誰かが死ぬことが、何かが喪われてしまうことが定められていたかのようだと思ってしまうことがある。アレクシスは、晩年の故郷で緩やかに死んでいく街の人々の瞳を思い出す。
――だが。この職人が死んでしまう前に、猟兵達は、自分とセリオスは、辿り着いた。ここに。こんな理不尽を、運命などとは言わせない。言わせるものか。
「シロガネ殿。僕は、アレクシス・ミラ。こちらの彼がセリオス・アリスと言います。……僕も、セリオスも、己の意思で此処に来ました」
アレクシスは作法に則り、胸に手を当てて名乗り、礼儀正しく頭を下げる。シロガネにだけではなく、作業灯に祭壇めいて吊り下げられたネームタグに対しても頭を下げることを忘れない。そこにいる、故人の魂に敬意を払うっていることが一目で分かる所作だ。
「あんたの奥底にある、焼け付くような痛みも怒りも……似たような経験は、おれたちだってしたけれど、わかるよなんて言わない。どこに比重を置くかなんて、ソイツ次第だからな。……ただ、理不尽をぶち壊したい気持ちだけは同じだろ。なんでこんなことになったんだって……あいつらのことを許せないって思う気持ちだけは」
訴えかけるように言葉を紡ぐセリオスに続き、アレクシスが再度、深く頭を下げる。
「どうか僕達も…貴方が鍛えた武器と共に戦わせて戴きたい。彼らを弔う戦いの、その一翼として。……必ずや貴方の武器とセリオスと共に、あの鋼鉄の悪魔共を討ち倒すと誓いましょう。だから、お願いします」
アレクシスの真摯な声に合わせ、セリオスもまた頭を下げた。
「ああ、アレスと一緒に――全力……全速力で悪魔どもをぶっ飛ばしてやる。だからどうか……想いの欠片を俺たちにも背負わせてくれ」
「……あんたらは助ける側のはずなのに、頭を下げるのか。本当に、お人好しだな」
シロガネは煙草に火を点けて、煙を分けるみたいにドッグタグのそばに浮かべた。
「あんたたちが信頼に足ると、おれはもう知ってるつもりだ。顔を上げてくれ。注文を聞きたい」
「……ああ!」
「はい」
セリオスの輝くような表情と、アレクシスの確かな頷き。各々の表情を確認してから、シロガネは製図用紙を引き出した。ペンをノックする。
「じゃあ、まずはそっちの黒髪の兄さん……ああ、セリオスって言ったか。あんたからだな。何が欲しいか言ってくれ」
「えっと……俺が頼むのは靴……『エールスーリエ』の強化だ。なんかこう…何時もは魔力を靴に流してさ、風を作って、そいつを破裂させてスピード上げてるんだけど……あー、やった方が早いか?」
「後で見せてもらう。その時にはこの計器を付けてくれ。あんたの体内を動いてるエネルギーやエーテルの類を検知する機器だ。……続けてくれ」
ブローチめいたものを手渡しながら続きを促すシロガネに、セリオスは一つ頷く。
「わかった。……うん、とにかくそれをもっと速くなるようにして欲しいんだ。だって、どんだけ強い敵でも、殴られる前に速度を上げて殴れば死ぬ、そうだろう?」
「身も蓋もないが、先手必勝という言葉もあるからな。間違いないだろう」
シロガネの肯定にへへ、と笑って、セリオスは続けた。
「共に並び立てるように速度を上げてくれたアレスを、また置いてっちゃうかもとかは考えたけどさ――アレスはきっと……絶対に、どんな方法でも一緒に戦ってくれるから。だから、俺は俺の得意を伸ばす事にした」
「信頼してるんだな」
「当たり前だろ! 最高の相棒だからな!」
満面の笑みを浮かべて答えるセリオスに眩しげに目を細めながら、メモをしたためると、シロガネは視線をアレクシスの側に流す。
「アレクシス、あんたは?」
「僕は……たとえ無数の銃弾や戦車が相手だろうと守るべき者がいる限り、光と覚悟を以て決して退かず、ここまで戦い抜いてきました。ですが、様々な敵と戦ううち、『守る戦い』の幅を広げたいと思うようになったんです」
「というと?」
「今までのやり方だけでは限界があります。剣と盾で馳せ参じ、守り鼓舞し戦う――それだけではない、新しい武装が必要だと感じました。目指す理想は一つ……僕は導き守る盾でありたい。これまで以上に速くなるセリオスと並び立てるような、そんな武装を、シロガネ殿にお願いできるでしょうか」
アレクシスの曇り鳴き眼がシロガネの鋼色の瞳を覗く。シロガネはガシガシと頭を掻くと、製図用紙にいくつかの判読困難なメモを走り書きして、唸った。
「難しい注文だな。今のあんたに何が出来るのかを見せて貰わないことには、おれもイマジネーションが湧かない。まずは見せてくれ。セリオスにも渡したが、こいつを付けてな」
セリオスと同じものを手渡しながら、シロガネはセリオスとアレクシスを見比べる。
「……仲が良いんだな、あんたら。セリオスの物言いで分かるが、お互いを信頼してるのがすぐ分かる」
「ええ。僕達は、剣と盾ですから」
「二つ揃えば負けなしってヤツだぜ」
笑って応える二人に、どこか眩しそうに目を細めながら、シロガネは携帯端末を持ち上げた。
「じゃあ、その無敵の剣と盾というのが、どの程度の物か見せてもらおうか。表でな」
こっちだ、と先導するように歩き出すシロガネについて歩きながら、アレクシスは横目にセリオスの表情を伺う。アレクシスの武装作成が、どのような結果に終わるのか――それは保証されていない。少し緊張した風な彼の口元に気付いて、アレクシスは勇気づけるように口を開いた。
「大丈夫だよ。セリオス。君がどんなに速くなっても、僕は君と一緒に戦うよ。絶対に。
僕達は剣と盾だ。二つ揃えば負けなし。――君がどんなに速く飛んでも、必ずそれについていく」
不意に掛けられた慮るような声に、セリオスは顔に出ていたか、といわんばかりに自分の頬をむにむにと揉んで、小さく息をついた。
「……へっ、最初から心配してねーぜ。言っとくけど、俺は手加減しないで飛ばすからな。ちゃんとついて来いよ、アレス!」
「望むところさ」
「さあ、こっちだ! この広場ならそこそこ動き回れるだろう。測定準備も終わった、あんたらの力を見せてくれ!」
シロガネの声に前を見れば、ジャンクの山の間に、平らに均されただだっ広いスペースがある。セリオスは返事の代わりににやりと笑い、アレクシスは一つ頷き。
双星は、己が星を腰より抜剣した。青と赤が、ジャンクの谷間に凜と響く。
◆Stray Dog's Arsenal / MEB-MJB-04
魔力噴流戦闘用鉄靴『流星』◆
リュウセイ。マギテック・ジェット・ブーツ。
エールスーリエを改造したブーツ。
従来のエールスーリエは根源の魔力を、魔導蒸気機械によってエネルギーに変換して、そのエネルギーを移動もしくは攻撃に用いる仕組みだったが、流星は、根源の魔力に『質量』という属性を付与し、そのまま装填、圧縮、噴出する『マギテック・ロスレス・コンバーター』を搭載。
従来のエールスーリエが魔力一〇をエネルギー六に変換したとするなら、流星は魔力一〇をエネルギー一〇として用いることができ、爆発的な出力向上と省燃費化が成された。
爪先、靴裏、靴横にセリオスの意志に従って可動する魔力噴出口があり、任意方向に魔力を偏向噴出することで高速機動、大跳躍、必殺の蹴りを縦横無尽に繰り出せる。
攻撃面でも優秀で、爪先から集中させ噴出させた魔力は、彗星剣を思わせる貫通性能と威力を持つ。
――それは、黒歌鳥が得た翼。
◆Stray Dog's Arsenal / CEB-IED-02
架空元素固定式複合アーマーシステム『白夜』◆
ビャクヤ。イマジナリ・エレメンツ・ドライバー。
鎧の下に隠せるほどのサイズをした、赤星の鍔によく似た意匠のペンダント。
アレクシスが生み出す架空元素――『イマジナリ・エレメンツ』を、物質的に固定する性質を持つ。アレクシスが想像した形に架空元素を集中し、固定することで、極光に煌めく追加装甲ないし追加兵装を生み出すトランスフォーマー。
全身にさらなる重装甲を纏い、赤星の鞘を銃身とした重極光砲を装備する『重騎士形態』、赤星の鞘を銃身としたバトルライフル、光の粒子を噴出する推進器――ブースターを背に装備してセリオスに負けぬ高出力で吶喊する『竜騎士形態』の二種を戦況に応じて切り替えて戦う事が可能。
イマジナリ・エレメンツの精製が前提になるが、アレクシスの戦闘スタイルを一変できる、新たなる選択肢である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トーレ・アンダーレイ
2.
装備新造してもらおー!
ありがとーシロガネちゃーん!
いやあ嬉しいね嬉しいね、派手に突撃してぶちまけてこ!
大きな花火をあげちゃおーね!
骸の海を照らすくらい!
空の果てまで、地の底までにも響くくらいに盛大にさ!
そうしたらきっと、キミの仲間にも伝わるさ
野良犬の牙はここにある!くそったれのメガコーポなんて、容易く引き裂いて呑み込んでぐっちゃぐちゃにしてしまえるって!
だからさ、キミたちの牙を私に貸してくれ。
張り切ってPRするよ、『StraydogS』!
あ、私のチャンネル知ってる?
今は「レイちゃんねる」、凍結前はトーレちゃんねるとか、あ、知らない? じゃあ名前だけでも知っていってくださいねー✨
どんな武器が良いかってゆーと、
やっぱりライブストリーマーとしては…
ド派手でキラキラで、ばえるヤツが良いな~!(ふわふわ注文)
形お任せ、銘お任せ。
殺雨ちゃんみたいなかっけーの作れるシロガネちゃんなら任せられちゃうね!
反動とかも気にしないでいい身体だし?刃物でも銃器でも光学兵器でもなんでも器用に扱ってみせましょー!
●全て君のための舞台照明
客としての最後の猟兵は、赤い瞳にアッシュブロンドの少女だった。魅力的な瞳を爛々と光らせて、つむじ風みたいに工房の中に進み入るなり、ぱ、ぱん! とリズミカルなハンドクラップ。その場の耳目が集まれば、ウィンク一つ。視線を捕らえて放さない。
人の意識を惹き寄せて止まないという面ではカルマに似た空気を纏う。何を隠そう、同業のライブストリーマーである。
「ありがとーシロガネちゃーん! いやあ嬉しいね嬉しいね、派手に突撃してぶちまけてこ!」
きゃいきゃいと華やいだ声を上げる彼女の名は、トーレ・アンダーレイ(重ね重ねて星にまで・f36630)。
「ちゃん……」
「あれ? シロガネちゃんって呼んだらダメだった?」
「いや……ダメじゃないが……」
「じゃシロガネちゃんで!」
「……」
思わずシロガネが圧倒されるレベルの『陽』のエネルギーである。日がな一日中地下でジャンクと睨めっこしているアームドギークたるシロガネ、思わず声が小さくなる。そんなシロガネの様子に構わず、トーレはにっこりと笑って捲したてる。
「大きな花火をあげちゃおーね! 骸の海を照らすくらい! 空の果てまで、地の底までにも響くくらいに盛大にさ!」
これからメガコーポを敵に回そうというのに、彼女の声には気負い一つない。自信たっぷりにステージに上がるアイドルめいて、指を反らした嫋やかな手を伸ばす。
「そうしたらきっと、キミの仲間にも伝わるさ。野良犬の牙はここにある! くそったれのメガコーポなんて、容易く引き裂いて呑み込んでぐっちゃぐちゃにしてしまえるって! ――だからさ、キミたちの牙を私に貸してくれ。張り切ってPRするよ、『StraydogS』!」
心揺さぶるような文句に、揺れないシロガネでもない。届けば良いと――せめて、お前たちの残した技術が吼えて、企業の尖兵を打ち砕いたのだと伝えてやれたらと、そう誰よりも願っているのはシロガネなのである。
目許を僅か押さえてから、鼻声を隠すようにぶっきらぼうにシロガネは言った。
「……広告屋か、アイドルか何かか、あんた」
「やだなぁ猟兵だよ! あ、でもライブストリーミングやってまーす! シロガネちゃん私のチャンネル知ってるー? 今は『レイちゃんねる』、凍結前はトーレちゃんねるとか、あとサブチャンはねー」
「知らん……」
「あ、知らない? じゃあ名前だけでも知っていってくださいねー✨」
シロガネは頭痛を堪えるように額を抑えて仰け反る。良いのか、こいつに任せて……という疑念が一瞬たりとも過ぎらなかったかと言えば……まあちょっと嘘になるのだが、それにも構わずトーレは続けざまに捲し立てた。
「どんな武器が良いかってゆーと、やっぱりライブストリーマーとしてはー、ド派手でキラキラで、ばえるヤツが良いな~!」
「ド派手でキラキラで、ばえるヤツ」
「殺雨ちゃんみたいなかっけーの作れるシロガネちゃんなら任せられちゃうね! 反動とかも気にしないでいい身体だしー? 刃物でも銃器でも光学兵器でもなんでも器用に扱ってみせましょー!」
「……」
もしかしたら、これがいちばん難しい注文だったかも知れないと、シロガネは後に語ったそうな。
都合二十三個の武装を製造したシロガネは、トーレの抽象的な注文を前に、途方に暮れた顔でカロリーバー(期限切れ)をかじるのであった。
◆Stray Dog's Arsenal / CIB-CLB-03
戦闘用光刃照明システム『星河』◆
セイガ。コンバット・ライティング・ブレードワークス。
二刀一組の高出力プラズマブレード。
一刀につき、先端部に九つのビーム発振機を搭載。うち八基はビットとして分離し、トーレの脳波コントロールもしくはAIによる自動制御で彼女の動きに追従する。ビットは射程十メートルの照明剣――『ライティング・ブレード』を用いて自律攻撃するほか、単純に極彩色に輝いてトーレの気分を盛り上げる。手に残った一基はそのままで刃渡り七〇センチのプラズマブレードとして運用可能。
ビットを全連結した状態で最大出力展開すると、射程そのままで威力を極限まで高めたり、あるいは射程を限界まで延伸し、有効射程数十メートルに及ぶリボンめいた光の鞭として運用したりことが可能。トーレのイメージし、デザインする戦場を描くためのとっておきの舞台照明、とのこと。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ダスト・ナーガ』
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POW : ザナドゥ・ファング
自身の【サイバーザナドゥに開いた「牙の生えた口」】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[サイバーザナドゥに開いた「牙の生えた口」]から何度でも発動できる。
SPD : ダスト・シュート
自分の体を【構成するパーツを一斉射出し、再度合体】させる攻撃で、近接範囲内の全員にダメージと【麻痺毒】の状態異常を与える。
WIZ : ナーガ・エボリューション
【肉体を構成するサイバーザナドゥ】から、対象の【さらなる進化を遂げたい】という願いを叶える【捕食用サイバーザナドゥ】を創造する。[捕食用サイバーザナドゥ]をうまく使わないと願いは叶わない。
イラスト:V-7
👑11
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●開戦の狼煙
――ご、おおんッ!!
ダストエリア南東部、上層階からの進入口の方で爆発音。火の手が上がる。
猟兵達がシロガネを訪ねてから二週間弱。予知のあった刻限とおおよそ同時期のことだった。
「……来たらしいな」
シロガネはうっそりと言うと、ジャンクヤードの各所に飛ばした、カメラ搭載ビットユニットの映像を切り替えた。
猟兵達の警告に従い、シロガネがあらかじめ仕掛けた対人指向性爆弾は見事に敵の第一波を吹き飛ばしたようだが、それでは到底足りないようだ。カメラが捉えたのは、立て続けに押し寄せる、命持たぬサイバーザナドゥの塊。セワード・アーセナルの尖兵、『ダスト・ナーガ』だ。
「あれでこのジャンクの山を蹂躙するつもりだな。あの型のダスト・ナーガは、使えそうなジャンクを喰って自己改造を繰り返して、周辺の生命体を無差別に鏖殺する。ヤツら風に言うなら、これは『浄化作戦』ってところか。無用な邪魔をする連中をすべて片付け、その後でじっくりこのジャンクの山を漁ろうってところだろう。ワンオフものの価値あるパーツなんざ、ほとんど全部あんたら猟兵の武器に使っちまったなんてこと、知らないままな」
皮肉げに言うと、シロガネは猟兵達に向き直る。即席のレーダーとカメラが、猟兵達を遙かに上回る数の敵を表示する。
「……さぁ、支払いの時間だぜ。猟兵。あんたらがおれをノせたんだ。その価値があったと証明してくれ。おれの武器が、叫びが、ヤツらに通じるってところを見せてくれ」
シロガネはきみたちに願うように言った。
――然り、きみたちの手の中にはシロガネが鍛えた武装が、弱気ものを蹂躙する悪鬼どもに対する怒りがあるはずだ。
敵影多数。総員抜剣!
敵対象『ダスト・ナーガ』多数!
グッドラック、イェーガー!
≫≫≫≫≫MISSION UPDATED.≪≪≪≪≪
【Summary】
◆作戦達成目標
『ダスト・ナーガ』の殲滅
◆敵対象
『ダスト・ナーガ』×多数
◆敵詳細
セワード・アーセナル製、自己進化タイプのオートボット。
ほとんど全身がサイバーザナドゥで構築された『ガラクタの竜人』。
上半身は人型、下半身は大蛇のような形状を呈する。
SA製のダスト・ナーガは、自身のパーツより優れたジャンクを取り込み肥大する性質を持ち、多少の損傷はジャンクによって補填してしまうため、完全に破壊するためには体のどこかにあるコアを何らかの方法で破壊する必要がある。
◆戦場詳細
ダストエリア『デッドエンド』。
上層都市に降りしきる重金属酸性雨が、排水システムを通り抜けて染み込み、絶えずピチャピチャと滴る、廃棄物だらけの最下層廃棄物街。
捨てられたジャンクが山となり乱立している。人間も少なからず生存しており、ジャンクをくりぬいて建造物として使用していることもしばしば。
昼夜を問わず人工的なライトの光が、煌々とジャンクの山を照らしている。
◆補遺
デッドエンドの人々は大多数が危険を察知して、ダスト・ナーガらから逃げているようだが、一部のジャンク屋達が無謀な応戦を試みているかもしれない。発見したら、助けるのもよいだろう。
◆プレイング受付開始日時
本断章上梓と同時
◆プレイング受付終了日時
2022/04/02 23:59:59
静寂・拝人
◎
これ以上犠牲者は増やしたくないからな応戦するジャンク屋たちの援護に回る。
よし、それじゃあ早速シロガネからもらった武器を使うぞ。
この武器で戦うことに意味があるからな。
しっかりと料金分働かせてもらうさ。
数で来るならこっちも数を増やそう。
UC【バトルキャラクターズ】流石にレベル分出して勝てるほどやわじゃねぇだろうか40体に減らしてその分キャラのレベルを上げよう。
キャラは同じくアーミー系戦士
俺はさっきもらった武器『餓狼』で遠距離から【誘導弾】を使用し惑わしつつ攻撃。
射出したパーツは再構成する前に撃ち壊す。
なるほど思った通りに動く…さすがだな。
●餓狼の牙
戦端を切り拓いたシロガネのプラスチック爆弾の爆発からおよそ五分。ジャンクヤード、居住エリアに到達した企業の尖兵――ダスト・ナーガ達が暴れ狂う。
「畜生、なんだこいつら!」
「こりゃあ……この間来たメガコーポのオートボットだ! なんだってこんなゴミ溜めに……!」
「撃て撃て撃て、怯むな!」
一部の武闘派のジャンク屋が拳銃サイズのブラスターを撃ち、あるいは採掘用のモビルフレームに乗り込んで十数体のダスト・ナーガに挑みかかるが、その程度の低出力ブラスターではコアで制御されたジャンクパーツを侵徹できない。モビルフレームの腕が軽々と受け止められ、ダスト・ナーガの腕に生成された『口』が次々と喰らいつく。剥き出しの運転席から泡を食って逃げ出すジャンカー。転がり落ちてこけつまろびつ逃げ出す彼の後ろで、モビルフレームが爆発し炎上。爆炎の中から、ざらついたジャンクの擦れ音を立てて、蛇の機人が進み出る。
「く、クソッ! 勝負にならねぇぞ!?」
「口より手ェ動かせ!! 撃て撃て!!」
ジャンカー達は無謀な攻撃をやめようとするどころかヒートアップする。勝ち目のない戦いに彼らが突っ込もうとした矢先、ジャンクを蹴立てて数十人の都市迷彩服姿の男達がその場に姿を現した。
「な、なんだ?!」
「誰だ、手前ェら!!」
「これ以上犠牲者を増やしたくはないからな」
場に冷静な声が響いた。
声の出元はやや後方。肩に引っ掛けるようにした小銃型ブラスターがぎらりと煌めく。電子煙草の重いグリセリン煙が、飄々とした声とともに彼の周りに漂っていた。静寂・拝人(人生ゲーマー・f36629)である。
「――退がってな。あれの相手は俺たちがする」
『……!』
ダスト・ナーガらの動きが変わる。恐らく戦力比を分析したのだろう。動きから無駄が消え、腕に該当する部分のサイバーザナドゥを自己進化させ、即座に射出して拝人を攻撃しようとする――が、それをアーバンカモのアーミー、総勢四十名が楯となりながら、小銃で即座に撃ち落とす。『バトルキャラクターズ』。よく見ればその男達は皆同じ顔で、額に2、3などと刻印されている。言わば拝人は彼らを召喚することで前線を築き上げたのだ。
「しっかりと料金分働かせてもらうさ。シロガネから貰った武器で戦うことに意味があるからな。――こいつは弔い合戦だ。付き合ってもらうぜ」
拝人が『餓狼』を片付けして構えた瞬間、ハンドガード上部から十二基のリフレクター・ビットが射出された。幾何学的な軌道を描いて敵陣へと真っ向突っ込んでいく。捕らえようととしたダスト・ナーガの腕を牙を擦り抜け展開されたビットが、『餓狼』の銃口を誘導した。
覗き込んだ餓狼のダット・サイトに、<<Locked>>の赤帯表示。
拝人はトリガーを引いた。
「Jackpot.」
ド、ド、ドドドドドドドドッ!!
射出されたプラズマブラスターは、敵陣深くに侵徹したリフレクタービットに直撃し、増幅・反射!! ダスト・ナーガ達を直接ではなく間接的に猛撃する! 外れたはずの弾が背後から迫り、ことごとくコアを撃ち抜く――それは、ダスト・ナーガらの戦闘経験には存在しない動きだ。身体のパーツを射出して緊急回避しようとすれども、十二基のビットが反射された弾丸を更に反射し、部品はおろかコアをプラズマ弾幕の檻に閉じ込める!
敵の一陣、十数体が瞬く間に撃滅された。敵の攻撃で喪われたバトルキャラクターズを補充しつつ、拝人は煙草の煙を宙に浮かべた。
「なるほど思ったとおりに動く。……さすがだな」
ビットを餓狼に帰還させ、動力をリチャージしながら、拝人は呆然とするジャンカー達の間を縫って更に前線へ進む。
――ああ。これ以上は、一人も死なせない。
大成功
🔵🔵🔵
冴木・蜜
◎
いい仕事をして頂けました
これは切り札ですね
今は温存しておきましょう
他の猟兵の皆様が戦闘に集中できるよう
私は救助を優先して動きます
体内毒を濃縮
応戦を試みるジャンク屋さんたちが居れば
ナーガどもとの間に割り入り
身を挺して庇います
そのまま喰われた肉体を利用し
攻撃力重視の捨て身の『毒血』
急所のコアは大事に内部に隠してあるのでは?
まぁ何処にあっても融かせば済むことです
能力で反撃されても構いませんよ
私が濃縮されるだけです
私は液体ですので
喰われても問題ありません
多少体積が減っても再生できるでしょう
何せ此処には私の素材が溢れている
毒の降る街
此処で私に出会ったのが運の尽き
塵も残さず融かして尽くして差し上げますね
●万死の毒
ジャンカー達とダスト・ナーガの戦闘は、戦闘と言えるほどのレベルになかった。
ダスト・ナーガらの装甲を、ジャンカー達の武器では侵徹できない。対してダスト・ナーガは、尻尾の一振りでジャンカー達を殺すことができる。
居住地域の外れで、攻撃を試みたジャンカー達が、即座に潰走したのも無理からぬことだ。一人の男がダスト・ナーガの尻尾に巻き取られ、藻掻く。
「うわぁぁあっ!? 助けてくれぇっ!!」
「マーロウ!!」
ダスト・ナーガらが数体集まり、囚われた男を囲んだ。腕状の部位に牙と捕食器官を増設する。彼らは人間を――正確にはそのサイバーザナドゥを捕食し、自身の器官に変換する。その過程で対象となった人間は死ぬ。この世界では、人はサイバーザナドゥ無しでは生きられないし――ダスト・ナーガらの食事に、作法など存在しないからだ。
「ダメだ、今から行ったって助けらんねぇ!! 逃げろ!!」
「マーロウ――ッ!!」
「やめろ、やめてくれ、やめてくれえぇえぇっ!!!」
力の限り男が叫んだその次の瞬間、周りから五対の牙が男に襲いかかった。生体も機械も一緒くたに咬み砕く無慈悲な牙は、しかし――
唐突に、横から割り込んできた白衣の影に遮られた。
「これ以上は誰も死なせません。――残念ですが、食事会は中止です」
うっそりと呟いたのは白衣の男だった。冴木・蜜(天賦の薬・f15222)である。
「あ、あんたはッ……いや、それより、あんた、腕が!!」
囚われたジャンカーが悲痛に叫ぶ。然り。蜜の腕はいくつもの牙が食いつき、一瞬で見るにも堪えぬズタズタの有様だ。しかし、それに応える蜜の声に動じた様子は皆無。
「私は液体ですので……喰われても問題ありません。それよりも、早くお逃げを。動けるはずです」
「は……?」
蜜が答えるなり、男を捕らえていたダスト・ナーガから力が失せ、拘束を緩めながら仰向けに倒れた。シュウシュウとダスト・ナーガの内部から上がる蒸気と刺激臭。
『毒血』。庇いに入るときに、既に自分の一部を、男を捕らえていた個体に経口摂取させていたのだ。
――彼の血は万の毒。
確かに蜜は非力だ。格闘攻撃力はほとんどない。総金属製の敵に拳で立ち向かうことなど出来ようはずもない細腕だ。しかし敵が何かを捕食する習性があると言うのなら、彼が直接攻撃を仕掛ける必要などない。コアが急所ならば、身体の一部を呑ませて、腐食させてしまえばいいのだ。
「あ、ありがてぇっ……! 恩に着るぜ、兄さん!」
「死んでしまっては着られませんからね。さあ、走って」
背にした男が逃げ出すのを肩越しに見る。蜜に食いついた残りのダスト・ナーガ達が悶えるように藻掻きながら、周辺のジャンクを食って自身を再生しようとするが――
「毒の降る町。此処で私に出会ったのが運の尽き……いくらでも再生を試みるといいでしょう。『私』が濃縮されるだけです」
周囲のジャンクには既に、蜜の身体を濡らして足下へ染み出た重金属酸性雨が浸透している。つまり、『毒血』の影響範囲下! 喰らえば喰らうほど濃縮された毒がダスト・ナーガのコアを探して暴れ回り――ダスト・ナーガ達は、再生と苦悶の涯てに、いびつなオブジェめいて
次々と倒れ臥して動かなくなる。融解音。そのまま崩れて、塵も残さずに溶け、地面に染みていく。
蜜の傷を、毒の雨が濡らし、そのまま穴埋めをした。毒の降るこの街で、彼は無敵だ。
眼鏡を上げ、先へ進む。誰も死なせないため――助けの求める声のする方へ。
大成功
🔵🔵🔵
カルマ・ヴィローシャナ
◎
ありがと、シロガネ=サン
あなたが鍛えたこの力、存分に振るわせて貰うわ
それじゃあ、しっかりオツトメさせてもらうよ!
ドローンを光学迷彩で存在感を消し
コアの位置を見切るべく敵を探らせて
私自身はパフォーマンスで敵を引き付ける
メガコーポの割に貧相なサンシタね
仕事も雑だし……って、危なッ!?
早業で回避重点!
ドミネーションのフォトン斬撃波で牽制して
時が来たら合体、変身!
こっからが本番なんだから
捕食狙いならそこら辺のガラクタを投げつつ相手の気を引いて
その隙に自身を透明化――飛翔しフォトンホーミングでまとめて潰す
魂を踏み躙った代価、ここできっちり払ってもらうわ!
これが私の、シロガネさんのカラテよ! イヤーッ!
●フォトンカラテ・オーヴァードライヴ
ダスト・ナーガが行進するその先に、ケミカルな髪色をした女一人あり。ライブラ重工製『カルマドミネーション』により周囲の窒素を光粒子変換、華麗なライトアップ・イルミネーション。極彩色に照らされながらステージ上のアイドルのごとくに人差し指一本で天を示すのは、カルマ・ヴィローシャナ(波羅破螺都計・f36625)だ。
「確かに受け取ったわ、シロガネ=サン。あなたが鍛えたこの力、存分に振るわせて貰うわ。――さあ、千客万来! しっかりオツトメさせてもらうよ!」
言いながら構えを取る彼女のそばに、しかし侍っているはずのドローン、ジェネシスXQ――否、『遮導』は彼女のそばには存在しない。既に敵攻撃態勢に入っている!
亜空間通信が入電。『$$SHADOW-XQ>敵構造解析な。大部分がジャンクパーツ、サイバーザナドゥをリアルタイムで構成する結合コア存在。視界情報に追加重点』
ピポッ、と音がして視界内のダスト・ナーガらのボディに、コアが照準マークめいてハイライト表示!
「ふん、メガコーポの割に貧相なサンシタね。仕事が雑だわ。コストカット重点ってトコかしら……って、危なッ!」
敵戦闘能力の解析データを受け取ったカルマが嘯くなり、ダスト・ナーガ達が戦闘機動を開始する! 腕に作り出した捕食用サイバーザナドゥを更に自己進化、舌めいたワイヤーアンカーを次々射出してカルマを狙う。
「イヤーッ!」
カルマは三連続空中側転で連続ワイヤーアンカーを悉く回避、手をついてロンダートからバックフリップ、ジャンクの山を蹴って高々と跳躍!
「お返しよ!」
指を鳴らすなり、カルマドミネーションによる光粒子が収束、フォトン斬撃波となって敵を襲う。ダスト・ナーガは即座に散開して回避! 一体として捉えるに至らぬ。
だが、それでいい。あくまで牽制、一瞬の時を稼ぐためのブラフに過ぎない。
「フォトンドライブ、ステルスセル、アクティベートッ!!」
『$$SHADOW-XQ>シャドウ・ミラージュ・シークエンス発令な』
カルマが空中で叫ぶなり、空中で歪んだ空間が弾けた。――オプティカル・カモフラージュを展開していた遮導が分離、そのすべてのパーツが複雑に変形してカルマの体を包み込んだのだ。――同時にカルマの体はまるで影に溶けたかのように掻き消える! 遮導が誇る光学迷彩が、彼女の体を隠しているのだ! 遮導の飛翔能力を引き継ぎ、姿を消したままカルマは高速飛行! ダスト・ナーガ達の急造センサーでは、彼女の高速移動を捉えること叶わぬ!
「フォトンガントレット、オン!!」
ジャキッ、ジャカッ! 金属音と共にカルマの前腕に迫り出すのは、遮導の主砲、フォトンブラスターが変形したカラテ用の籠手『フォトンガントレット』だ!
ベクターノズル搭載戦闘機めいた運動性で宙を舞い飛びながら、カルマは両拳を引き、吼える!
「これが私の――そして、シロガネ=サンのカラテよ! イヤーッ!」
渾身のカラテ・シャウト、そして拳の乱打!! 繰り出した拳の数だけ、フォトンガントレットから極彩色の誘導光弾、『フォトンホーミング』が放たれて、嵐が如く吹き荒れる!! 敵からすれば何もいない宙から突如として無数の光弾が降り注いだようにしか視えぬ。
『『『ピガガーッ
?!』』』
直撃、直撃直撃直撃ッ!! 回避を試みるダスト・ナーガを猛追猛撃する光の嵐!! パーツが剥げ落ち露出したコアを守ろうと再生する、その速度よりも降り注ぐ光弾が早い!!
爆発、爆発、爆発、爆発四散ッ!! 爆光の中に着地したカルマの着装アーマー、その放熱部から熱が解き放たれ陽炎をあげる。光の中ににじみ出すように姿を現すカルマの目が、
「ここからが本番よ――魂を踏み躙った代価、ここできっちり払ってもらうわ!」
次なる敵を睨み、刃のごとくに輝いた。
大成功
🔵🔵🔵
シャオロン・リー
はッ、ガラクタの竜人、竜を名乗るか!
本物の竜人(この俺)がその性能見極めたろやんか
金磚
翼生やして上空に飛ぶ
天井が狭苦しいけどまあええ
俺を妨げる程やない
呵々、温いなァ!
鉄屑どもに本当の蹂躙の仕方っちゅー奴を教えたるわ
先ず空中戦からの炎属性範囲攻撃、無数に分裂させた槍を集団に落としてから一体一体潰してく
敵からの攻撃は槍からの噴炎で空中機動、見切って躱して
負った傷は激痛耐性と継戦能力で耐える
コアがどこにあるかなんぞわからんけど
四方八方から槍で一斉発射の貫通攻撃で串刺しにすればぶち抜けるやろ
捕食用なんぞ生み出す隙も与えん
生み出したとしても傍から一撃で潰したるわ
ガラクタが本物に勝てる道理はなかったなァ!
●ドラゴンダイヴ
「はッ! ガラクタの竜人が竜を名乗るか! 本物の竜人――この俺がその性能、見極めたろやんか!!」
ば、と翼が宙を打つ音。威勢よく見得を切るのと同時、ジャンクヤードの狭苦しい空に飛んだのはシャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)である。空を飛ぶシャオロンを撃墜せんと、地のダスト・ナーガ達二十体余りが、両腕に相当する部位を持ち上げた。メキメキと音を立てて変形する腕。砲身めいて成型された両腕から、高圧で圧縮されたジャンク金属弾がレールガンめいて電磁加速、連続射出! 精度などなく、ただ物量で推し潰さんとする雑な攻撃だ。しかしその物量だけは紛れもない脅威、下手な鉄砲も数撃てば当たる!
シャオロンは全力で羽撃く。精度がなかろうが、敵はまるでホースの水をぶちまけるように連射・照準補正を繰り返している。銃身の精度はさておき、それをコントロールしている頭脳――ダスト・ナーガ達のコア――は、メガコーポ製の一級品だ。まともに飛んだのでは、遠からず軌道を予測されて蜂の巣だろう。
――まともに飛んだのならば。
「呵々、温いなァ! 鉄屑どもに本当の蹂躙の仕方っちゅー奴を教えたるわ――行くでぇ、爆龍爪!!」
吼えると同時に、シャオロンはシロガネの手で強化された左手の槍――『爆龍爪・飄』に意念を流し込む。緋迅鉄筆頭鍛冶『永海・頑鉄』により鍛え上げられ、この未来の極北にて天才エンジニア、シロガネによる改修を受けたこの槍は、シャオロンの意念を爆炎に変え、任意の方向に噴出する……!!
ど、
ば、
ば、ば、ば、
ばばばばばばばばばばばばァンッ!!!!
いまや、それはひとのかたちをした稲妻だった。
噴炎の間隔は秒間五発。その度にシャオロンの飛行コースはまるで横から蹴っ飛ばされた課のように鋭く変じ、一見すれば彼の機動は、コントロールを失った戦闘機のようにさえ見えた。
しかしてそれは完全な彼の制御下。シャオロンは、意図してそのコースを描いている。事実、ダスト・ナーガ達の照準補正は追いつかず、ジャンク弾は悉く空を切る――!!
「ッらぁぁっ!!!」
空中、繰り出した右の槍――『閃龍牙』の穂先が多重分裂。刺突はそのまま、レーザーめいた劫火の光線となり、ダスト・ナーガらを猛撃する! 数体が為す術無く爆発四散するが、散開した十数体は未だ健在! 隊列を組み直すように動き出す。
だがその隙は、この暴れ竜を前にしてあまりに大きい。
「コアがどこにあるかなんぞわからんけど、全身ハチの巣にしてブッ散らしたりゃええんやろォ!!」
急降下。敵の乱れた隊伍の間を、爆龍爪を連続発破し今一度の凄まじい曲芸飛行で飛び抜けながら、刺突刺突刺突刺突刺突刺突刺突刺突刺突ッ!! 槍から伸びる火線が、はたまた槍の刃そのものが、擦れ違うダスト・ナーガの全身を、虫食いチーズめいて貫いて溶かし破壊する!
地面を靴底で削り飛ばしながら制動したシャオロンが、片手で廻した爆龍爪の石突を地に衝いた瞬間、残った十四体のダスト・ナーガが、火柱めいて爆発炎上した。――げに恐ろしきはこのピーキーな性能をした暴れ馬を、押さえつけて乗りこなす暴竜よ。改造後の初戦闘でこの適応、この大立ち回り。二〇体からを葬って傷一つなく、動き足りないとばかりにシャオロンは笑う。
「期待外れもええとこやん。ガラクタが本物に勝てる道理はなかったなァ!」
呵々大笑し、緋色の目が次なる敵の一団を睨む。
蹂躙、蹂躙、蹂躙だ。暴れ竜が通るあとに、偽物の竜など、一匹たりとも残すものか。
大成功
🔵🔵🔵
乙葉・あいね
大丈夫なのです!これだけの猟兵と武器達が居れば、
わたし達は、ぜーったいに負けないのです!
周りに『魔剣の影』を展開、敵に飛ばし牽制し、
相手の遠距離攻撃は見切って回避したり弾きながら近づくのです!
持久戦は不利だから、核を狙いたいところ、だからこの一手なのです!
やるのです!【異界剣「キマイラフューチャー」】!
「陰陽の双星」に異界の力を籠め、玩具の剣の姿に変えた上で一閃。
「戦闘に使う装備品」をすぱぱーんと引っぺがし、「戦闘続行能力」も落としちゃうのです!
……むむ、やっぱりこれでも参ったとはならないのですね
だから炎の力を込めた『天衝』でむき出しにした核ごと一刀両断、一気に焼き切ってしまうのです!
●灼熱演舞
数名の猟兵達が既に刃を交え、ダストエリアに騒然とした空気が満ちる中、侵攻するダスト・ナーガらの前に、また一人の猟兵が躍り出る。その周囲に、影で出来た複数の両刃剣――『魔剣の影』が朧に浮かび上がった。
「大丈夫なのです!これだけの猟兵と武器達が居れば、わたし達は、ぜーったいに負けないのです! いきますですよーっ……!」
蒼髪、紅眼。二〇そこそこといった年頃の女一人。白黒一対の刃、『陰陽の双星』を抜刀して構えるのは乙葉・あいね(白と黒の刃・f26701)だ。抜刀した剣に異界――キマイラフューチャーの力を込め、玩具めいた形の剣に形質を変化させる。彼女が『異界剣』と呼ぶ技術の一つだ。
持久戦ともなれば、このジャンクの山から無限再生する敵が有利に決まっている。故に、あいねが狙うのはコア狙いの短期決戦だ。
変異した陰陽の双星――『陰陽の双星・遊』を手に構えを取るあいねへ、ダスト・ナーガらは躊躇なく襲いかかった。腕の捕食器官を牙状の弾丸を吐き散らすダートガンめいて進化させ、あいね目掛けて連射! 牙弾の嵐があいねへと降り注ぐが、しかしあいねは周囲に展開した魔剣の影を巧みに回転させ盾めいて用いながら、牙弾を回避、あるいは掻い潜る! 牙弾を更にブチ撒けようとする敵目掛け魔剣の影を牽制に飛ばし、その後ろから、あるいは魔剣の影を追い越さんばかりの速度で斬り込む!
「はああっ!!」
気合一閃! 振るわれた異界剣『キマイラフューチャー』が、ダスト・ナーガらの身体を捉える! しかし真芯を捉えたにも関わらず、ダスト・ナーガらのボディには裂傷一つない。奇妙である。
しかし異変は次の瞬間。次々斬り付けながら、ダスト・ナーガらの間を駆け抜けたあいねを、数体が振り返り追ったその瞬間だ。――まったく唐突に、彼らのダートガンめいた腕部機構が、あるいは表層を覆う堅固な装甲が、まるで弾け飛ぶかのように引っ剥がれて宙に舞ったのだ。
――異界剣『キマイラフューチャー』は敵の肉体を傷つけず装備を剥ぎ取り、敵の戦闘能力を激減させる刃である。不殺のためにも使えるほか、こうしたコアがある敵の装甲破壊にも使える、この状況にうってつけのユーベルコードだ。
ザッ、地面を靴底で躙り制動して向き直るあいねを、しかし装甲や装備を再生成しながらダスト・ナーガらが追う! オートボットに恐怖はない。勝負あったと人ならば言う状況でも、任務を遂行し続けるのだ。
「……むむ! やっぱりこれでも参ったとはならないのですね」
ならば、とばかりにあいねは双星を鞘に収め、腰のホルダーから柄だけのカタナを取った。鍔を回し起動状態に。あいねが使う炎の力を流し込めば、柄だけのはずだったカタナのその鍔元から、白熱する火炎の刀身が姿を現す! 刀身長、二メートルに及ぼうかという斬馬刀めいた焔の大刀――これぞ、アクセラレイテッド・フレイム・カッター――『天衝』!
「剥き出しになった核の位置は覚えました! 今更隠しても無駄なのですよ……!」
再三、あいねは地を蹴り吶喊。流々舞うが如くに敵の間を駆け抜けながら天衝を振るう! 火炎の刀身が炎の光を曳いて、まるで炎の竜巻が暴れ狂うかのように見えた。――それに巻き込まれた敵の運命など、言うに及ばず。
装甲もコアも、その炎刃の前ではバターと同じだ。あいねが駆け抜けたそのあとには、焼断され再生すら許されずブスブスと煙を上げる、物言わぬジャンクが散るばかり。合わせて十一機を鎧袖一触、そのスピードのままにあいねは次なる敵群へと襲いかかる!
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
◎
ダスト・ナーガ…であれば火器の使用はやめておきますか。コピーされると面倒です。
鬼神楽の抜刀術も、今はまだいいでしょう。親玉がどこかで見ているかもしれませんし、切り札として隠しておきます。
それに、正義に燃える私と怒りに燃える鬼神楽にかかれば、前哨戦ぐらい余裕を持って突破できなければ嘘というものです。
この場に誰が何人残っていようと決して傷つけさせはしない…どんなコピー能力、学習・進化能力があろうと、この心無い鉄屑どもに私の正義は絶対に真似できるはずがありません。
敵のコアはそれこそ敵が最も守りを固めている位置を見切って切り捨てればいいだけのことです。
私の正義は、悪の弱みを決して見逃しはしません…!
蔡・葉青
さて 有象無象を片付けるお時間だ
ミスター・シロガネの仕事を堪能させてもらおう
一対多数は避けて周囲の猟兵と協力し
早業と軽業の機動力で戦場を駆け抜けつつ攪乱
暗殺で可動部の付け根を狙い確実に無力化しよう
棍や短杖では打つか払うのが関の山だったけど
【白檀】なら振り回しての切り飛ばしや
急所を刺突することもできる
期待通りの切れ味を存分に披露しようじゃないか
しかし、まあ ここで自ら鉄屑に還るのだから
ダスト・ナーガとはなかなか気が利いた名前だ
とは言え厳しく己を律する蛇神を称するのは少々いただけないな
●修羅連刃
「さて、掃除の時間だ。有象無象が入るには丁度良いジャンクの山が、そこかしこにある――ミスター・シロガネの仕事を堪能させてもらおう。慣らし運転には格好の相手だ」
涼しげな口調で言うのは、カーボン補強の三尺棒を携えた短髪の女だ。蔡・葉青(天狼星・f20404)である。三尺棒を華麗に取り回し、片手で止めて腰撓めに構えると、彼女は鋭く前線を見た。
今や混戦状態。そこかしこでダスト・ナーガらと猟兵が激突している。望むところだ。自分の戦闘スタイルからして、一体多数は避けるべき。周囲の猟兵と協力して戦うのが上策だろう。既に戦っている猟兵は周囲に数名。その中で一際目を惹いたのは、旧式の女性警察官制服を纏い敵へ突撃する少女だった。敵は二〇余り、そこに臆することなく、カタナ一本で突っ込んでいく。
それが無謀でも蛮勇でもないことを、葉青は知っている。片目を閉じて笑った。
「――では、側撃と行こうか。勇者には供行きが必要なものと、相場が決まっているからね」
そして、駆ける。
多段加速式超音速射出刀『鬼神楽』を片手に、敵群へ真っ向突っ込むのは新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)だ。敵がユーベルコードをコピーして使用してくることを事前に察知した彼女は、飛び道具を封印し、カタナ一本でこの群へと襲いかかったのである。しかも、鬼神楽は既に抜刀状態。鬼神楽の真価は納刀状態からの、電磁・爆圧併用の二段加速抜刀術だ。それすら使わず、敵に挑もうという。
(切り札は最後まで隠しておきましょう。どこで親玉が見ているかも分かりませんしね)
一見、無茶に見える縛りだらけの突撃だが――しかしその実、にこたまの心には迷いも曇りもない。正義に燃えるにこたまの心、そして怒りと復讐に燃える鬼神楽の威力が重なれば、この程度の前哨戦は余裕で突破できなければ嘘というもの。
ダスト・ナーガはコピー能力、学習能力、そして進化能力を有するのだという。だが、そんなものはどこまで行っても作り物だ。
「この心無い鉄屑どもに、私の正義は絶対に真似できるはずがありません。――かかってきなさい!!」
トリガーオン。鬼神楽が高速振動を開始!
にこたまはまさに疾風の如くに襲いかかった。先頭のダスト・ナーガがガードするように両腕を上げるが、真ッ向真ッ直ぐに振り下ろされた鬼神楽の刃はガードを意に介さず、まるで豆腐でも切るかのように二本の腕を切断、そのまま敵の頭部を真っ二つ。下半身までを一撃で左右二つに斬り裂いた。なんたる切れ味、そしてなんたる技の冴えか。鬼神楽の性能とにこたまの術理とが一つとなり、まさに正義を執行する誅殺の刃となる!
左右真っ二つに斬り裂かれ、それでも再生しようと藻掻きながらダスト・ナーガが左胸付近を庇うように身を捩るのを、にこたまは見逃さない。
「――そこ!!」
彼女の瞳は決して、悪の弱みを逃さない。
横薙ぎにした鬼神楽がボディを斬り飛ばし、その内側にあったコアを叩き斬る。その瞬間、ダスト・ナーガは力を失ったように崩れ、物言わぬジャンクに戻る。
敵が恐れるように庇う位置。そこだけは攻撃されたくないと守りを固める位置こそが、敵のコアのある場所だ。にこたまはそれを、本能的に理解している。
視界内の敵の弱点を見徹し、にこたまは刃を構え直すなり、すぐさま踏み込んだ。
敵が自己進化機能により周りからジャンクを吸い付け、いかに装甲を分厚くしようとも、にこたまは怯まない。彼女が描く剣閃の一条一条が、あるいは彼女の正義をそのまま示しているかのようだ。どこまでも真っ直ぐで、何に阻まれようとも決して止まらぬ。
繰り出された敵の捕食器官つきの腕を掻い潜り、鞘で受け流し、空中で身体を廻して首を刎ね、着地と同時にコアを刺突で貫く。まったく無駄のない流れるような刀術で、にこたまは次々とダスト・ナーガを屠っていく。
しかし敵も数が多い。奮戦するにこたまに惹かれるように、さらに後続のダスト・ナーガが波状攻撃を掛けてくる!
「さすがに数が多いですね……!」
しかしにこたまは怯むことなく刃を構え、まずは眼前の一体を斬り倒すと、すぐさま次なる敵へ刃を振るう。しかし、金属音! にこたまの一閃が弾かれる!
「!」
学習したつもりか。敵の腕部はカタナめいて変形し、硬度を上げている! 嵐のように両腕を振り回すだけの雑な剣術だが、速く、そして物量が多い。決して侮れぬ。
どう対処するか。にこたまが斬撃を受け流しながら一瞬考えあぐねた瞬間、
「横から失礼」
飄風が吹いた。
ざ、ざ、ざ、斬ッ!
突如として翠色したプラズマ刃が明滅し、電光石火の早業で、にこたまを襲う数体の個体の腕が根元から斬れ飛んだ。ザァッ、とジャンクヤードを蹴立てて制動したのは葉青である!
にこたまが演ずる殺陣、その注目は常ににこたまに集まっている。敵の狙いもにこたまにのみ集中している状態だった。完全に注意が一点に向いているダスト・ナーガらを、葉青は視界外から奇襲したのである。乱戦上等、もともと真っ向から戦うよりも、策を巡らせ虚を衝き隙を突き、天衣無縫に戦うのが彼女の得手。
瞳と同色のプラズマ刃を引っ込めながら、葉青は片目を閉じて謳う。
「お嬢さん、援護させてもらうよ。好きに踊るといい」
「――心得ました!」
ダスト・ナーガが腕を再生するのを許すにこたまではない。即座にコアの位置を看破し、斬り断って次々と破壊していく。
その横を葉青が固めた。彼女が手にした白短杖もまたシロガネの手によるもの。葉青が元々所持していた未知なる金属製の杖を加工し、両端にプラズマ刃ジェネレーターを設けた変則仕込み杖――『白檀』である。
「全く、か弱い女二人にこんな多勢で来るとは。根性の悪さに恐れ入る」
葉青は皮肉りながら白檀をバトンめいて回転させ、身体の回転と合わせて突きを繰り出す。
敵の顔面を真っ向射貫き仰け反らせたその次の瞬間には、白檀の一端から発生したプラズマブレードで関節部を斬り裂き動きを封じる。
刹那の間を置かずさらに左右から敵二機が襲来。それを、両端からプラズマブレードを発生させ、まさかの同時に相手取る。身体を廻しながらの竜巻めいた双頭刃術で敵のクロームメタルの刃を弾き払い、敵が体勢を崩した瞬間には葉青は地を蹴っている。跳躍するなり一八〇度開脚、左右同時に放つ槍めいた開脚蹴りが、余りの威力でダスト・ナーガの頭部をもぎ飛ばした。
「流石の使い勝手だね。棍や短杖では打つか払うのが関の山だったけど――これなら、いくらでも応用が利く」
葉青はシニカルに笑った。彼女の間合いは自在に変化する。白檀は短杖として、あるいは長巻として、さらには双頭刃として使用可能なマルチウェポンだ。両側のプラズマブレードを持続的に展開した場合の保証稼働時間は二分間だが、葉青はそれを刹那の間に絞り、発振と停止を繰り返すことで継戦時間を大幅に伸ばしながら、しかもトリッキーかつ読まれにくい戦法の一つとして確立したのである!
葉青は向かってきた一体を寄せ付けず、白檀を介してボディに寸勁を叩き込み、プラズマブレードを刹那発振、貫殺しながら肩を竦める。
「しかし、まあ……ここで自ら鉄屑に還るのだから、ダスト・ナーガとはなかなか気が利いた名前だな。厳しく己を律する蛇神を称するのは少々いただけないが」
涼しく言う葉青に背中を預けながら、にこたまが応じて不敵に笑った。
「では根刮ぎ、蛇神の名前を斬り取ってあげましょう。――残るのは、塵(Dust)だけです!!」
「悪くない。――では、飛ばしていくとしようか!」
肩越しに目を合わせ、笑みを交わして修羅は疾る。
奴らを残さず、この塵の山に沈めるために!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
◎◎◎
さぁて、いよいよ本番ねぇ。
…随分とまあわらわらと湧いてきたわねぇ…
これがある意味一種「片手間」なんだから、ホント社会戦の覇者サマはタチ悪いわぁ…
相手はオートボット、当然視界はカメラ。…つまり、『流紋』なら相手の視界はこっちから丸分かり。こんなに奇襲しやすい状況も中々ないわぁ。
…改めて考えると、ホント対機械なら理不尽に強力ねぇ…ま、どーせ敵だしいーや。
●瞬殺起動して先手必勝、使うのはパルスグレネードに帝釈天印とソーン。多少増えても所詮は機械、「雷」の「茨」で纏めて一網打尽にしちゃいましょ。そりゃ多少対電性能はあるでしょうけれど重金属酸性雨のおかげで水浸しだし、雷撃はよく徹るでしょぉ?
●ジャイアント・キリング
「さぁて、いよいよ本番ねぇ。……しかし随分とまあわらわらと湧いてきたわねぇ。これがある意味一種『片手間』なんだから、ホント社会戦の覇者サマはタチ悪いわぁ……」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は呆れたような口調で言い、ジャンクの山の陰からダスト・ナーガの行進を眺めた。ダストエリアに派遣するに最適のローコストかつ手堅い戦力とはいえ、揃えてきた数が尋常ではない。軽く見積もっても数百機、あるいはそれ以上だ。個人では三回人生を質に入れるつもりでなければ出せない額の投資だろうが、メガコーポは『利潤追求の一環』程度の気軽さでそれを成す。
敵は巨大にして強大。メガコーポを敵に回すなど言語道断。このサイバーザナドゥで、企業を敵に回して生き延びられるものなどいない。それが、この冷たい金属質な世界の唯一無二の真実。
「――ま、そういう物量差を覆すのが、猟兵の個の力なんだけどねぇ」
しかしてティオレンシアは世界の原則を笑い飛ばす。
今から、奴らに一泡吹かせてやるのだ。景気よく、派手に。
ティオレンシアはバイクゴーグル――否、ヘッドマウンテッドディスプレイを装着する。『流紋』と銘打たれたそれは、ティオレンシアに数々の追加視覚を与える視角拡張HMDだ。本来ならば不可視である赤外線、紫外線はおろか、各種センサ光や照準用レーザーの通り道、はたまたカメラやカメラアイを含む敵の照準用光学機器の視界、照準先をリアルタイムに描画・表示する機能を持つ。
視界の中、蠢くダスト・ナーガ達の視野角が、まるでゲームめいてティオレンシアの視界の中に広がった。ジャンクを元に自己改造・自己進化するとは言え、外界を認識して行動するオートボットである以上、流紋の視界から逃れられる道理はない。
「改めて考えると、ホント対機械なら理不尽に強力ねぇ……ま、どーせ敵だしいーや」
敵相手に掛ける情けは年中売り切れだ。敵のアイカメラの死角を縫うようにして、ティオレンシアは奇襲を仕掛けた。今までならば勘に頼って仕掛けていたが、流紋が齎す情報が、彼女の行動に一層の確信を与える。から飛び出すなり三連射。三体の頭部を的確に射貫き、敵群の意識を自身に惹きつける。
ダスト・ナーガ達は回頭し、ティオレンシアへ自己改造した両腕の砲を向けるが――
「遅いのよぉ」
ティオレンシアは銃弾ではなく、皮肉げな声でそれを迎えた。
爆発ッ!!
強烈な破裂音と爆炎、そして紫電が舞った。ティオレンシアが物陰を出しなに既に放っていたパルス・グレネードが炸裂したのだ。それも、ただのパルスグレネードではない。帝釈天印とソーンのルーンを刻んだティオレンシア謹製のグレネードである。炸裂と同時にパルスは雷の茨めいて宙をのたくり伸び、獲物を探し当てたかのようにダスト・ナーガ達を貫き、絡みつく!! コアさえ無事ならば何度でも再生するとはいえ、高エネルギー電磁パルスで直接コアを焼かれては再生も許されぬ!
「そりゃ天下のメガコーポ製、多少の耐電性能はあるでしょうけれど、自分達が垂れ流した重金属酸性雨でずぶ濡れなんだもの。――雷撃はよく徹るでしょぉ?」
銃弾を放ったのは単に注意を逸らし、敵をキルゾーンから逃がさぬ為に過ぎない。――ティオレンシアの攻撃は、物陰を飛びだした瞬間には完了していたのだ。
まさに、『瞬殺』ッ!!
ティオレンシアは背を向け、スピンさせたオブシディアンを納める。
ホルスターの擦れる音をバックに、ダスト・ナーガだったものたちは、力なく地面に崩れ落ちるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ユリコ・スターズ
◎
・行動
新しい武器に手を慣らすためと気分をアゲるパフォーマンスのために
ガンスピンを行ってからホルスターに戻す
敵がダスト・シュートで射出してきたパーツを
腰溜めで構えたクイックドロウですべて迎撃
その後本体のコアを相手に向かって真っ直ぐ構えた銃で撃ち抜く
・演出
(抜いた銃を手に取りグリップを確かめる
フォワードスピン、バックスピン、
水平スピンからトスしてバックハンドキャッチ
半回転させてホルスターへ納める)
……いいな
(クイックドロウ後)
一発辺り0,0103秒ってところか、もう少し馴染めば0,01秒を切れるな
いい仕事をしてもらった
あとは私が結果を見せる番だ!(コアを撃ち抜く)
●クラシカル・エッジ・ガンプレイ
一人の女が、堂々とした足取りで進む。テンガロンハットを目深に被り、クラシカルなシェリフスタイルの装い、ブーツについた拍車が金属音を奏でる。時代錯誤も甚だしいその姿が、しかし彼女にとっては何よりの戦装束、正装だ。戦火と刃の音で満ちる戦場を行くのは、ユリコ・スターズ(シェリフズスター・f36568)である。
腰のホルスターはクイックドロウ向きのモデル。フラップなど存在しない。いついかなる時でも、グリップに触れた次の瞬間には抜いて撃てるようになっている。
ユリコは、自らの銃に触れた。『バントラインスペシャル・シロガネカスタム』。かつて存在した『世界で最も高貴な銃』のアニバーサリーモデルに過ぎないリボルバー型ブラスター――そのすべてのパーツに意味を持たせた、ワン・オフ・モデルの特注品。
拳銃としては破格なまでに長い銃身を持つそれを、ユリコは引き抜くなりトリガーガードに指を掛けて、グリップをアンダースローするように放った。
命を得たように銃が回る。重金属酸性雨のしずくを弾き、夜でもお構いなしに降り注ぐライトを黒金色に照り返し、バントラインスペシャルが踊る。まるでこの姿になれたことを、主に執られることを喜ぶようだ。
スピンさせたまま側頭あたりまで振り上げた銃を刹那停止、振り下ろすようにしてフォワードスピンに切り替える。そのまま縦に横にと振り回し、ホリゾンタルスピンからトス。留まらず歩く彼女の背に落ちるそのグリップを、ユリコはノールックでバックハンドキャッチ、半回転させながらホルスターへ収める。
完璧な重量バランス。前よりもより実践的に調整されているのがわかる。
「――いいな」
ユリコはかすかに笑って前を見た。
数体のダスト・ナーガが単騎で歩くユリコを見とがめ、両腕をミシミシと変異させて銃身を形成。ダスト・シュートの前兆だ。自身のパーツを込め、あの銃身から射出するつもりだろう。数体同時に、両腕を持ち上げ、ユリコ目がけて銃撃を仕掛け――
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMッ!!!!
宙に無数の火花が咲き、嵐のように放たれたジャンク弾が、空中で残らず叩き落とされた。
歩き続けるユリコが腰撓めにした手の中、シュウウ、と音を立てて、バントラインスペシャルの焼けた銃身から蒸気が上がる。クイック・ドロウ。いつ抜いたのか? 敵が弾丸を放たんとしたその瞬間には、ユリコは射撃体勢に入ってすらいなかったのに!
(一発あたり〇・〇一〇三秒ってところか。もう少し馴染めば〇・〇一秒を切れるな)
なんたる技量か。バントラインスペシャルの長銃身はクイックドロウには不向きだ。しかし、シロガネの卓抜した重量バランス調整の技術、そしてユリコ自身がここまで重ねた研鑽が、バケモノじみた高速クイックドロウを可能としているのだ!!
目の前で起きたことが理解出来無かったかのように、ダスト・ナーガらの次弾装填が一瞬遅れる。
「いい仕事をしてもらった」
ユリコがその隙を逃がすわけもない。
無数の銃声!! 吹き荒れるエネルギー弾の嵐!! クイックドロウアームによる高速ファニング!! ハイヴェロシティ・プラズマSAAロングコルトカートリッジから繰り返し射出されるプラズマ弾が敵のコアを的確にブチ抜き、次々と殲滅する!! 一瞬で五体が撃ち倒され、進む道が開く。
「――あとは私が結果を見せる番だ。さあ、どこからでも掛かってこい!」
ユリコはバッテリーの尽きたプラズマカートリッジを廃莢し、次のカートリッジを装填する。――数々の属性弾が、彼女のガンベルトで光り、まるで出番を待っているかのようだった。
大成功
🔵🔵🔵
虎刺・ザカロ
『雷轟』かっけェじゃん。気に入った、あンがとよ。
何だァ、あいつら…ブッサイクだなァ?
気に入ったもン何でも取り入れりゃいいってもンでもねェだろが。
雷轟よォ、お前ェのパワー見せてやんねェとな。
オレの足りない分の威力は雷轟がカバーしてくれンだろ。
元々剣の扱いなんざからっきしだったからよ、お前ェを握るにはオレはまだまだ頑張らねェといけねェ
が。
相性はいいからな。
かっっっ飛ばしていくぜェ!
必要以上にサイキックぶっ放したままにしなくていい分、いくらか楽だな。
…どこ見てんだ?
オレはモノ自在に動かせんだ。
勿論、テメェもオレの操り人形にしてやンよ。
・雷霆の剣
「っへへ、『雷轟』か。かっけェじゃん。気に入ったぜ」
ジャンクの山のてっぺんで、刃渡り一五〇センチメートルの大剣を引っ提げて笑うのは、虎刺・ザカロ(PsychoBreaker・f36636)だ。大剣に向けられていた視線が次に向かうのは、眼下でジャンクパーツを音を立ててゴリゴリと咀嚼し、取り込んでいるダスト・ナーガら。その数十体あまり。おそらく、他の猟兵が蹴散らしたもののコアの破壊に至らず、各所の損傷をジャンクパーツで埋めているのだろう。
ダスト・ナーガはジャンクパーツを取り込み、損傷前よりも強靱に、大きくなる。しかしその在り方をザカロは冷笑した。
「何だァ、あいつら……ブッサイクだなァ? 気に入ったもン何でも取り入れりゃいいってもンでもねェだろが」
同じジャンクから創り出されたものでも、『雷轟』とヤツらの間には埋めがたい溝がある。雷轟は、作り手が、ジャンクの特質と性質をすべて把握し、適切な処置と処理をした上で、執念深く組み上げたもの。ただの悪喰のガラクタ蛇とでは、モノが違う。
「雷轟よォ、お前ェのパワー見せてやんねェとな。オレの足りねェ分の威力はお前ェがカバーしてくれンだろ。元々剣の扱いなんざからきしだ、お前ェを握るにはオレはまだまだ頑張らねェといけねェが――」
ザカロはジャンク山のてっぺんを蹴った。ジャンクの山を蹴立てて駆け降りながら、同時にグリップに備わったトリガーを握り込む。グリップから飛び出したナノスパイクが、ザカロの掌に多数食い込み血管に直結、そこからアクセラレーター・アシッドを供給。傷も残さずにザカロに『装薬』を完了する!
「オレのためのお前ェだろ。相性最高だ、かっっっ飛ばしていくぜェ!」
駆け下りる彼を認識したダスト・ナーガ達は、両腕を変化させジャンク弾砲を創り出し、ジャンク弾の嵐で出迎えた。しかし間髪入れず、ザカロは加速・励起・活性したサイキックをフルパワーで行使。まずは『サイコキネシス』。サイキックエナジーを集中させて、自身に着弾しそうなジャンク弾の軌道を悉くねじ曲げる。まるで力場の盾めいた念動力の使い方だ。
「こんなことも出来ンだぜェ!!」
距離を詰めながら続けざまに、サイコキネシスで雷轟の刀身を支える。まともな剣術など知らないが、しかしそんなザカロにも、まったく明快に解ることがある。
――この質量を、念動力と合わせて高速で叩き込めば、
「おらァァッ!!!」
敵は、粉々になる。
ザカロが念動力で加速させながら振るった雷轟の刀身が、まるでトラックで撥ねたかのように、二体のダスト・ナーガを粉々にして吹っ飛ばした。コアごと、である。なんたる質量、なんたる威力。型など無くてもご覧の通り。
周囲のダスト・ナーガがその凄烈な威力を恐れるようにジャンク砲をザカロに向けるが、それと同時にザカロは右足を軸にして雷轟を竜巻めいて振るう!
「遅ッせェンだよォ!!」
その剣先から、稲妻の鎖が迸った。『ライトニング・カリギュラ』!!
ザカロのサイキックを通すために専用に調整されたサイ・チタニウム合金が、彼のサイキックの威力をブーストして剣先より放出したのだ! 突き刺さり絡みつく鎖が、残った八体のうち四体の自由を奪う!
「オレばっかり視てると死ンじまうぞ。オレはモノを自在に動かせんだ。テメェ等ダスト・ナーガだって例外じゃねぇ――操り人形にしてやンよ!!」
哄笑しながら雷轟を、カリギュラから逃れた四体に振り向ければ、即座に操り人形となった四体がジャンク弾で彼らを砲撃する。それに乗じて、ザカロは笑いながら吶喊した。
おお、その姿、雷纏う暴君のそれ。
ザカロを止められるモノは、もうこの場にはない――!
大成功
🔵🔵🔵
ユウイ・アイルヴェーム
◎
皆様を守る力
私も、守られる力
無事に戻れるようにといただいた言葉と武器です
守らなければいけません
「共に、頑張っていただけますか」
前へ行きます
皆様まで、痛みが届かないように
少しでも、悲しみが減るように
あなたが、あの方が、守ってくれるのですから
止まる理由など、ひとつもありません
不思議ですね
私は何も変わらないのに、何故か速く走れるなんて
背を押されるような、足に絡んだものがほどけたような、不思議な感覚です
どなたも巻き込まないように、気を付けて【おびき寄せ】ましょう
「私は、ここにいます」
『煌星』を煩わしく思うなら、私を狙ってくるはずです
私の持つ全てで、止めてみせましょう
●アストライアの羽撃き
ユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)に与えられたのは、一見すれば可愛らしい翼だった。シロガネにもそういう審美眼があったのだなと猟兵達は微笑んだものだったが、しかし、それは同時に凶悪な威力をも内包している。目の当たりにすれば、笑顔が引き攣ることだろう。
「――これは、皆様を、私を、守る力。無事に戻れるようにといただいた言葉と武器です」
ユウイはジャンクヤードに降り立ち、祈るように両手を組んだ。その意思を汲み取ったかのように、彼女の背中で、広範囲電離羽弾散布翼『煌星』が、各ジョイントパーツをスライド展開。芸術的な展開機構だ。瞬く間に、そのサイズはユウイの体を包み込めるほどのサイズまで伸張・展開する。
「人々を、猟兵の皆様を、そしてシロガネさんを……守るための戦いを。共に、頑張っていただけますか」
ユウイの言葉に応えるように、煌星が低く唸り、電離羽弾――プラズマフェザーをチャージする。モノに心はない。そのはずだ。けれど、意に沿い、寄り添うように動くこの翼に込められた思いは、きっと間違いの無い本物だ。
「――征きます」
ユウイは弾けるように駆けだした。敵陣深く、まっすぐに。まだまだ後続が山と来る。しかし躊躇わない。人形たる自分が傷ついて、ひとが痛まずに済むのなら、それが最善だと迷いなく信じている。――それに。今、背には、ユウイが傷まぬようにと心から祈った男が造った翼がある。きっとこれは、ただの復讐の為の武器ではない。
シロガネが。彼が造った煌星が、ユウイを守るように広がった。
止まる理由など、もう一つもない。
ユウイを迎えるように周囲からダスト・ナーガらが襲いかかった。腕をそのまま打ち出すもの、あるいは腕を砲に改造し、自身の体のパーツをジャンク弾として発射するもの、あるいは真っ向から、牙と口のついた腕で咬み付かんとした。
ユウイは腕一つすら動かさず、ただ翼を羽撃かせる。ジジッ、バチッ、と電荷の爆ぜる音が連なった次の瞬間、
――きゅ、がぁッ!! 形容しがたい射出音! 彼女を円状に囲むように襲いかかったダスト・ナーガらの体に、プラズマで出来た美しい翼――刹那輝けるのみの儚き弾丸、電離羽弾が、それこそ無数に食らいつく! 食い込んだ電離羽弾がダスト・ナーガらのエネルギーバスと命令回路を灼き尽くし、あるいは高熱でコアを灼き潰して、一瞬にして八体を行動不能、あるいは破壊に追い込む。
まさに鎧袖一触。倒した敵を踏み越えて、ユウイは止まらず走り続ける。
(不思議ですね……私は何も変わらないのに、何故か速く走れるなんて。背を押されるような――足に絡んだものがほどけたような、不思議な感覚です)
背に暖かな手が触れた気がした。人形としての彼女の理性は、それがハーネスから伝わった煌星の放散熱であると知っている。――けれどどうしてか、その熱は背を押す手を思わせた。これは、一人での戦いではない、と。
だからユウイは止まらない。他の誰をも巻き込まぬよう、敵の渦中に突っ込んで、しゃりん、と音を立てて長剣『白蓮』を抜き放つ。
「――私は、ここにいます」
宣誓めいた声。同時に煌星を力強く羽ばたかせ電離羽弾を全方位に連射! 突き刺さり破壊できたものは捨て置き、破壊に至らぬものは白蓮でコアを破壊しながら駆け抜ける! その活躍を見とがめたダスト・ナーガらが集中し、彼女を止めようと押し寄せる。――それこそが彼女の狙いだ。
(一体でも多く集めて――止めましょう)
その決意、鋼のごとし。振り下ろされる蛇らの腕も、唸り飛ぶジャンク弾も、翼の乙女を止められぬ。
敵の目を一身に集め、剣を執り駆け抜けるその姿は、この地下にあってなお、絵画のごとくに目映く映えた。
大成功
🔵🔵🔵
ユキ・パンザマスト
◎
お待ちなさいな、ジャンク屋の方々
【バトルキャラクターズ】で防壁を成し
応戦しようとする彼らを敵から隔てる
怒りも反骨も御座いましょうが
がらくたの蛇どもを狩り取るのは
これこの通り、ユキ達の仕事
お前たちを殺すのは
ユキの牙と爪じゃあない
野良の憤怒を宿した武器
──“禍時”だ!
ほうら、蛇喰らいのけものが来ますよ!
手傷は承知、麻痺毒は毒耐性で凌ぎ
ハッキング、情報収集、
ハッキングアンカー弾を銃口からばら撒いてコアの在処を探知
さぁさ、どいつもこいつも
心臓曝しなさいな!
早業、探知した端から肉薄し、
特殊炸裂弾をコアに叩き込んでいけ
爆破、跡形もなく屑鉄に還せ!
●逢魔の獣が牙を剥く
「クソッ、撃っても撃ってもキリがねぇ……! ダメージを与えられてねぇ!」
「下がれ下がれ! 次の防塁まで前線を下げろ、火力を合わせて叩き込むんだ!!」
男達が逃れるように走る。彼らの後ろでバリケードを破壊し、わらわらとダスト・ナーガ達が湧いて出た。その数、十五。
「クソッ、早すぎる……!」
「牽制射撃撃て!! 寄せ付けるな!」
銃声が重なる。ジャンク屋達の急造部隊の中でも、元軍人が指揮をするその部隊は、まだしも善戦している方だった。まだ一人の死者も出していない。――とはいえ、ただそれだけだ。手持ちの武器と爆薬類をありったけ注ぎ込んで、破壊できたダスト・ナーガの数は僅かに二体。それ以外は損傷を受けてもすぐに回復し、戦列に戻ってくる。
悪夢めいた状況だった。このまま防衛線を下げて何になる? この狭苦しいダストエリアは無限に広がる大地などでは決して無い。いつかは壁に背がつく。そして、その時が彼らの終わりだ。
「死にたくねぇ……死にたくねぇ……!」
「死にたくねぇんなら手を動かせ!! 退がりながら撃て、ジャンク弾を警戒しろ!!」
リーダーの男が吼えるが、最早ジャンク屋達の士気は地に落ちている。
このままでは、次の防塁まで退がる前に脱落者が出る――そう、リーダーが考えた瞬間のことだ。
「お待ちなさいな、ジャンク屋の方々」
声が上から聞こえた。同時に、色とりどりのアヴァターが光と共に招来される。『バトルキャラクターズ』。瞬く間に数十体が召喚され、アヴァターが壁となってジャンカー達と敵の間を隔てる! 天井ライトの逆光を浴び、ジャンクの山のてっぺんから、逢魔の獣が飛び降りた。――ゲームキャラクターらが築いた防壁の前、華麗に地に降り立つのは、ユキ・パンザマスト(暮れ方に咲う・f02035)!
「怒りも反骨も御座いましょうが、がらくたの蛇どもを狩り取るのはこれこの通り、ユキ達の仕事。今日のあなた方の仕事は、生き残ることです」
「あ、あんたは
……?!」
「傭兵ですよ。雇われのね。報酬ならここに、この通り」
ガンベルトから抜き出したダガーリボルバーをスピンさせ、掌で止めると、ユキは銃口を迫る敵へ向けた。
「――お前たちを殺すのは、ユキの牙と爪じゃあない。野良の憤怒を宿した武器──“禍時”だ! ほうら、蛇喰らいのけものが来ますよ!」
高らかに笑い、ユキはトリガーを引いた。最初の六発はハッキングアンカー弾。着弾と同時にクラッキング開始、放映端末に敵の情報が残らず流れ込む。ユキはそれをリアルタイムに分析し、敵のコアの位置、行動パターンを割り出す!
スイングアウトした『禍時』から空薬莢を廃莢、即座にスピードローダーからリロード。次の六発は特殊炸裂弾だ。
「さぁさ、どいつもこいつも心臓曝しなさいな!」
コアのあると思しき位置に弾丸を叩き込む、叩き込む叩き込む叩き込む! 〇.三五七インチマグナム弾のサイズからは想像できぬ爆発力で、特殊弾が炸裂! ダスト・ナーガ達の装甲を剥ぎ取り、あるいはコアごと装甲を抉り取って完全破壊ッ!! コアが吹っ飛ばされれば残るのはただのガラクタだけだ。クズ鉄となってジャンクの山に沈むだけ。
歯を剥いて笑いながらユキは特殊炸薬弾をリロード。禍時をダガー形態に変形し、コアを晒したままよろめくダスト・ナーガ二機に肉薄、コアを刺し貫き、斬り潰し、更に二体葬る。
敵のネットワークを辿り読み取った他の個体のコアの情報は記録済。ダガーのトリガーガードに指を掛けて廻せば、次に手に収まったときには既にリボルバー形態に変形している。
銃口を向け、けものは嗤った。
「お代わりを貰わなきゃあ喰い足りませんねぇ、これじゃあ。さぁ――逢魔が時だ、禍時だ! 尽き果てるまで、踊りましょうや!」
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
あれが「浄化作戦」名目で【蹂躙】そして殺戮を行うやつですね。
まあ、別に恨みとかありませんが、改造の成果を試すにはちょうどいいということで。
(で、早速改造したての「馳雪」を装着)
ではまずは敵の【情報収集】を――(と、ここでニューロンの強制クロックアップによる違和感を感じるも、すぐに【(各種)耐性】でこらえる)
――で、敵のコアの位置を把握したところで、手近なやつをまとめて【ハッキング】していきましょう。そしてそれらを【操縦】して同士討ちを行ったり、【限界突破】で自壊とかやってみましょうか。
――ああ、巻きまれてるのがいたら避けるようにしますよ?
※アドリブ・連携歓迎
●スピードハック・ボムドライブ
ジャンクヤードを我が物顔で、十体ばかりのダスト・ナーガ達が歩いて行く。ずりずりと、ざらついた音を立てて蛇めいた脚が地面を擦る。無力な者からすれば、それは這い寄る死の足音そのものだったことだろう。
「あれが『浄化作戦』名目で蹂躙、そして殺戮を行うやつですね。まあ、別に恨みとかありませんが、改造の成果を試すにはちょうどいいということで」
それを物陰から見ていたシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は電脳ゴーグル――思考加速電脳モジュール『馳雪』を装着し、いつもの通り敵の情報収集を開始した。刹那、違和感。軽い目眩を覚える。
(立ち上がりが早い? いや……情報を処理する速度そのものが上がってる)
一夜にして一〇センチ背が伸びた人間が距離感に惑うような、そういった違和感だ。そのレベルの劇的な性能強化。
(認識補正……各種情報処理速度の最適化、調整開始)
しかし、それをものともしないのがシャルロッテだ。悪環境や激痛、凶器に呪詛、そうした自身の精神や内面に対する悪影響による能力低下を極限まで抑える耐性を持つ彼女は、即座に深呼吸してボトルネックとなっている部分を調整、戦闘を行うのに支障がない状態に馳雪と自身のコンディションをマッチングさせる。
電脳魔術による補助を受けた広域ハッキング――『MASSIVE HACKING』を起動!
電波を通じて敵ローカルエリアネットワークに侵入、クラッキング開始。各機の識別ID及びバイタル、コアの位置を確認。数体にバックドアを設置、セキュリティシステムを欺瞞。カーネルを掌握、root権限を奪取。シャルロッテが下したコマンドの悉くを馳雪が解釈し、瞬く間に実行していく。
歩くダスト・ナーガのうち数体が不自然にぴたりと動きを止めた。その目が赤と青に点滅し、やがて赤で固定される。同時に、シャルロッテのゴーグルの中に、目を赤く染めたダスト・ナーガらのアイカメラ映像、及びその個体のバイタル情報が表示される。
「従来よりも早いですね。まあ、少々ばかり使うのに苦労するじゃじゃ馬でしたが」
使いこなせば間違いなく、今までよりも戦力の増強が図れる――と確信しながら、シャルロッテは指揮するように両手を挙げた。仮想コントローラーを展開した電脳世界に生成、ダスト・ナーガの動きを乗っ取って戦闘を仕掛ける!
牙と口のある両腕で食いつかせ、敵ダスト・ナーガの腕を食い千切り自己強化。取り込んだパーツを変形させて多腕にし、増えた腕にジャンク弾射撃機能を増設。サイドワインダーめいた横スライド移動を見せながら、ジャンク弾で、割り出した敵のコアを射撃射撃射撃、破壊! 突如味方から攻撃されたに等しい敵ダスト・ナーガ達は、反撃さえ満足に出来ず次々と破壊されていく。乗っ取りに成功した三体で残り七体を駆逐し、シャルロッテは周囲をサーチ。更に十体の小隊を見つけるなり、操作している敵機のリミッターを外した。
どうせ敵である。壊れてくれて全く構わない。
エネルギーバスのエネルギー流量の制限を撤廃、ジェネレータ出力全開、動作クロック玄海突破。目と口に該当する部分から光を噴き出しながら、まるでバグを起こした早回しのゲームキャラクターめいた速度で動き出すダスト・ナーガを、シャルロッテは無造作に敵小隊に突撃させた。
カチ合った個体を蹴散らし、小隊の中央に至った瞬間――KABOOOOOOOOOOOOOOOOM!!! 火柱を上げ大爆発!! 全てのリミッターを外して走る爆弾にしたダスト・ナーガ三体で、十体の敵小隊を跡形もなく吹き飛ばす……!
「――慣らし運転にはまずまずといったところですかね。じゃ、次に行きましょうか」
涼しい顔でシャルロッテは髪を払い、ゴーグルの位置を直してみせるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
最早取り戻すべき笑顔は此処に無い…とはいえだ
単なる掃除で終わらせるほど枯れる気も無い
ヴェンデッタの幕を上げよう
《空中戦+先制攻撃+切り込み》で強襲し【喰魂神域】発動
《捕食+略奪+蹂躙+属性攻撃+継続ダメージ》の魔法陣を展開するよ
オブリビオンに後悔も改心も求める気は無いけれど。
因果応報、自分の所業をその全身で味わって散るといい
敵の攻撃は《第六感+戦闘知識》で《見切り》
《受け流し・カウンター》も交え対処
味方や住民を助ける《投擲+爆撃+援護射撃》に使ったり
《限界突破》の代償に自壊したりしたダガーを
《早業》で持ち替える瞬間が僅かな隙、と思わせるのは見せ札
まだ[鬼札]は懐に秘めたまま敵を蹴散らしていこう
●舞手の踊るヴェンデッタ
「最早取り戻すべき笑顔は此処に無い……とはいえだ、単なる掃除で終わらせるほど枯れる気も無い」
野良犬は死んだ。もういない。
ここに残っているのは、復讐に燃える男が打った、二十余りの武具だけだ。
ヴェンデッタ
「 復 讐 劇 の幕を上げよう。――ひとつたりとも逃がさない」
呟いて、背に広げた翼で羽撃いたのはカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)。高速で空に舞い上がり、二本のダガーを両手に抜いた。
左右を見回し、周囲の状況を確認。ジャンクの山向こう七〇メートルの位置で、ジャンカー達と交戦中の敵部隊あり。それを認めるや否や真っ直ぐに突っ込む。
飛行しながらユーベルコードを起動、『喰魂神域』。敵の存在はおろか、攻撃として引き起こした『現象』までをも分解して喰らい尽くす魔法陣だ。
瞬時に彼女の現在位置を中心とした半径一一八メートルに展開した喰魂神域だが、一瞬で全てを食い尽くす破壊力を発揮できるわけではない。もっと殲滅するスピードを上げることも可能だが、そうすれば逃げる途中のジャンク屋達をも巻き込んでしまう。故に、カタリナは敵味方を識別して敵のみを蝕むことを選択。足りないダメージは、己の手で補うのみ!
カタリナは単純に魔力を限界まで籠めたダガーを、躰を捻り引き絞って投擲した。音速を突破し、空気の壁を貫いて衝撃音を立てながら突っ込んだダガーが、ジャンカーを追おうとしていたダスト・ナーガ二体を貫いて炸裂。赤い爆光を撒き散らし粉々に破壊する。
ダガーを追うような軌道で急降下したカタリナは地面を靴裏で削りながら着地、投擲したダガーの代わりにもう一本を逆手抜剣し、腕をクロスして構える。
「オブリビオンに後悔も改心も求める気は無いけれど。因果応報、自分の所業をその全身で味わって散るといい」
ダスト・ナーガらはそれを挑発と受け取ったのか、じゃああああ、というざらついたノイズ威嚇音を発し、腕を前に構える。ダスト・シュートの構え。ロケットパンチめいて、次々と前腕パーツが電磁射出! 前腕部の牙状器官からは麻痺毒が滴り、一撃掠れば自由を奪われる危険な攻撃だ。
しかしその中を臆さず、翼を打ってカタリナは駆け抜ける。自分に向かうものだけでなく、後方に攻撃を漏らさぬようダガーで払い弾き叩き落とし、まるで踊り舞うように剣を振るう! 叩き落とされた腕パーツが喰魂神域に食われ、風化したようにぼろりと崩れ落ちていく。……そしてそれは、ダスト・ナーガらの装甲とて例外ではない!
「大事なところが隠せてないよ。脇が甘いんじゃないの?」
カタリナは第六感めいた確信に従い、崩れ落ちた装甲の下に見えたコアパーツをダガーで貫き抉り取る。目をバチバチと明滅させ頽れるダスト・ナーガの様子に確信を深め、横合いから振るわれた腕による打撃を前転回避、目の前に踊り出た敵個体のボディを蹴り登りながら宙へ羽撃き、両手のダガーに魔力を籠めて投擲、投擲! 魔力弾めいて炸裂するダガーの爆発に数体を巻き込んで葬り去り、新たなダガーを抜く!
――今はまだ、これでいい。
ジョーカー
『 鬼 札 』は、最後の最後まで取っておくものだ。
爆発跡に着地し、カタリナは再び地を蹴って敵に襲いかかる。
そして今再び、喰魂神域により動きの鈍った敵に、復讐の牙を突き立てるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィルジニア・ルクスリア
◎
贄咬。
素晴らしいわね。私が男子小学生だったら、宴が三日三晩夜通し続いたところよ。
だけど、まだ未完成ね。……武器は怨敵の血で彩って、初めて完成されるわ。
さあ、復讐の始まりよ。
足場が悪いけど【悪路走破・軽業】で何とかなるわね。
戦闘区域は広いからデビルアイズで【偵察・索敵・情報収集】すると襲われている住人達を発見。
彼らは、シロガネさんの『家族』ではないけれど、犠牲者が増えるのはシロガネさんも喜ばないと思う。
復讐と人命救助は両立できるわ。
……それに、彼らからメガコープの情報を得ることができるかもしれないし、今後この世界で協力してもらえる可能性もあるものね。
うじゃうじゃと鬱陶しいわね。私も数を増やして対応するわ。
『鏡像作業』発動(技能は【集団戦術】を選択)
分身と【集団戦術】による連携攻撃。
各自の間合いを把握して『贄咬』よる【ダッシュ・鎧砕き・重量攻撃】の回転斬りで敵のコアを【部位破壊】。
敵の攻撃は『蠢く闇』で【オーラ防御・ジャストガード】で対応。
ジャンクを取り込む猶予を与えずに【蹂躙】するわ。
●蹂躙凶刃狂詩曲
「ああ――素晴らしいわね。これが、『贄咬』」
漏れるようなため息。その無骨な、敵を削り斬り破壊するためだけに造られた噴進対物流体ジェットグラインダーの刀身を見上げ、ヴィルジニア・ルクスリア(サキュバスの悪霊・f36395)はうっとりと目を細めた。もし自分が詰め込まれた浪漫を燃料にはしゃぎ倒せる男子小学生だったとしたなら、三日三晩ぶっ通しの宴を繰り広げているところだが、あいにくと彼女は瀟洒で可憐でどこかゴシカルな不穏さをはらむ美少女であったし、そしてここは戦場、『デッドエンド』のど真ん中だ。
「だけど、まだ未完成ね。……武器は怨敵の血で彩って、初めて完成されるわ」
そう。まだ贄咬は産まれてから何も食べていない状態だ。傷一つない真新しい状態もいいが、やはり、復讐の名の下に、この物騒な名前を受けて生まれた武器には、血の跡が、激突と破壊の跡が何よりもよく似合う。
「――さあ、復讐の始まりよ」
ヴィルジニアは、『デビルアイズ』を飛ばして周囲を確認。左方一一〇メートル地点、今この瞬間にも追われ、命を落としかねぬ中を必死に走って逃げるジャンカーが数名。ヴィルジニアは、第一目標をそこに定める。彼らはシロガネの『家族』――かつて存在した野良犬たちではないけれど、それでも、このダストエリアで生きている彼が、これ以上同胞の死を喜ぶわけがない。
――復讐と人命救助は両立できる。それに、彼らからメガコーポの情報を得ることが出来るかも知れないし、この周辺で行動する際に便宜を図ってもらえるようになる可能性もある。打算、人情、両面から、助けぬ理由はヴィルジニアにはなかった。
だが、その手前。左方、五〇メートル地点に敵の一部隊を確認。敵も一拍遅れてこちらに気づいたか、攻撃態勢を整え、ヴィルジニアの方を目がけて加速し始める。ジャンカー達を助けるならば、おそらく戦闘は不可避。
だが落ち着き払って、ヴィルジニアはそっと左方を向き直り、わずか、重心を下に落とした。――問題ない。手の中の重みが告げている。
・・・・・・・・・
あの二十体程度、問題にすらならない。
瓦礫とジャンクと、白兵戦を挑まんと加速し、まっしぐらに襲いかかってくる十体のダスト・ナーガを前に、ヴィルジニアは自身よりも五十センチあまりも大きいチェーンソー大剣を軽々と持ち上げ、魔力を注ぎ込む。
アクセルハンドルを引けば、込めた魔力を燃料に、刃先で流体金属が高速循環、それを連ねるチェーンが爆音を立てて輪転開始。静音性など皆無。破壊的なまでのその音は、対峙する敵に恐れと畏怖を抱かせる威圧感に満ちている。
「うじゃうじゃと鬱陶しいわね。私も数を増やして対応しようかしら」
呟くなり、ヴィルジニアはユーベルコードを発動した。『鏡像作業』。ヴン、と重い、ブラウン管ディスプレイがブレるような音を立てて、ヴィルジニアの姿が一〇個にバラけた。魔法の鏡から、自身の鏡像を召喚したのだ。当然ながらこの状態となれば贄咬が一〇本。周囲はドラッグレースのスタート前めいて、凄まじい騒音に包まれる。
「邪魔よ。退きなさい」
ヴィルジニアは無慈悲に言い、横構えにした贄咬の、グリップに備わったトリガーを握り込んだ。ブースターが始動。峰から凄まじい勢いで蒼い噴炎を吐き出し、それにヴィルジニア本人が踏み込みを合わせた瞬間、まさにレースが幕を開けたかのように、ヴィルジニアらは一〇個の流星となった。集団戦術を強化された鏡像は、本体であるヴィルジニアの軌道を決して邪魔せず、見事なまでに互いを避けながら曲芸めいた加速で敵へ殺到する!! 体得した軽業と集団戦術の賜物だ。
『!!』
出鼻をくじかれたのはダスト・ナーガだ。自身達を遙かに上回る加速ですっ飛んできた敵を如何にすればいいか、今からでも遠距離戦に切り替えるべきか、あるいはこのまま近づくべきか、
グシャゴリゴリゴリガリ、グシャゴリリッ。
そんな逡巡など、そんなAIの判断の遅れなど、ヴィルジニアらの知ったことではない。
まるで集団演舞めいた同時のタイミングで、全身の回転力を振り絞って、一〇本の贄咬の刃が同時に振るわれる。その質量と回転力が、ダスト・ナーガらを一瞬で血祭りに上げた。
一人が二体ずつを綺麗に切った。一〇人で二〇体。粉砕されて宙に打ち上げられたほぼ全損状態のダスト・ナーガを、ヴィルジニアの分身達が執拗に追い、斬り刻み、叩き潰し、ジャンクの山の一部に変えてしまう。
ジャンクを取り込み再生? そんな時間など与えない。これは戦闘ではない。ただの『蹂躙』だ。
「さぁ、早くジャンク屋さん達を助けないとね」
オイルを返り血めいて浴びて微笑し、ヴィルジニアは再びブースターを起動して加速。
戦場を、怒濤の勢いで駆け抜ける……!
大成功
🔵🔵🔵
矢来・夕立
武器職人さんとの交渉は成立っぽいですね。
首でお支払いするとの契約、違えるつもりはありません。
商談…と呼ぶのなら、もっと格好をつけたかったところですが。
ともあれお話をしたあと、少し歩き回っていました。
地形と環境については概ね把握しています。
あとはコアの位置を探る手段があれば良かったんですが…
残念ながらその手の解析は守備範囲外です。
とはいえ全くのお手上げでもない。
式紙を使って地道にパーツを剥がしていきましょう。
壊して再生されての繰り返し。直接目で探しますよ。
――先に言った通り。
地形と環境、どちらもまあまあ頭に入っていましてね。
気になってるんですよ。
真っ当な“着替え”のない場所で戦ったらどうなるのかなって。
で、とりわけ使い物にならないごみが多い場所を教えていただきました。
そこに誘い出します。
当然ながら再生自体は止められません。
でも来たとき以上の進化もできない。行き止まり《デッドエンド》です。
式紙で削って、ガラクタを吸わせて。
下準備の及第点には到達してるでしょう。
えー…確かこの辺でしたね。コア。
●術中
「武器職人さんとの交渉は成立、と」
打ち棄てられた鉄塔の上。高所で、影がぽつりと言った。
奮起するとは思っていた。あれだけの人数の猟兵が押し寄せて力を示せば、彼でなくともやる気になるだろう。
「首でお支払いするとの契約、違えるつもりはありません。あれを商談……と呼ぶのなら、もっと格好を付けたかったところですが」
したたり落ちる重金属酸性雨に重く濡れた髪を掻き上げ、眼鏡の位置を直したのは矢来・夕立(影・f14904)。彼は鉄塔の上から、始まった戦闘を俯瞰している。――というより、先ほどから手薄なところを重点的に闇討ちを繰り返してきたところだ。戦闘が始まる前に入念に(彼の言う少し、というのは、自分が下手を踏まないだけの精度で、という事を意味する)周囲を偵察、下調べを済ませ、地形と環境については把握済み。戦闘開始後は偵察用の式紙を各所に飛ばし、状況を確認しながら走ってきた。偵察用の式紙がそろそろ多数落とされて弾切れというところで、彼は高所を取ったのだ。
「――ああ、あれ、いいですね。実にいい」
夕立は、ある一角を数十体のダスト・ナーガが通るのを視た。そこは前もって、彼が式紙『封泉』により、通りたくなるように整えておいた道だ。
それににこりともせず、夕立は雨に紛れた。
只人が視たなら、彼が雨の滴に変わってしまったのだ、と錯覚するほど唐突に、矢来・夕立の姿は鉄塔の上から消えた。
ダスト・ナーガ達の歩みは止まらない。数十体を擁する部隊だ、道すがらジャンクをつまみ食いして性能強化をも果たしている。この部隊に備えなく突き当たれば、いかな猟兵でもかなりの苦戦を強いられるであろうと思われた矢先のこと。
彼らの横合いから、唐突に手裏剣が降り注いだ。嵐のような棒手裏剣の嵐。式紙『牙道』。ダートガンの連射めいて手裏剣が立て続けに突き刺さり、その直後、後部に結わえ付けられた『封泉』が起爆した。爆発の威力は凄まじく、勢いのままに十数体が横倒しになる。その表面装甲は爆風と破片に晒されて剥げ吹き飛び、立ち上がる動きもぎこちない。その破壊力がすべて、千代紙によるものだと誰が思おう。
これこそ忍法『紙技』、式紙を以て鋼鉄を、機械を、爆発物を、模倣あるいは超克する神秘のすべ。矢来・夕立は、その使い手である。
とはいえそれだけでダスト・ナーガらを葬れるわけではない。即座に周囲のジャンクからパーツを寄せ集め、彼らは体を再構成し始める――
『彼らにとって使い物にならないゴミがたまっている場所を教えて戴きたいんですが』
『なら、北東部のグラスヴァレーだ。あのあたりはガラス資材の捨て場になってる。おれには縁の無い場所だ。おそらくヤツらにもな』
『感謝します。では、そこを使いましょうか』
ダスト・ナーガ達は困惑した。引き寄せて着装したのはもろくも割れて透けた硝子ばかり。コアを隠せているどころか、コアが光源となって光が漏れる。
「なるほど。こうなるわけですね」
横合いのジャンクの山から飛び降りた夕立は、脇指しを逆手に抜いて涼しげに言った。
夕立には、敵の解析をする能力などない。しかし、式紙を使って装甲を剥ぎ、策を弄して再生を妨害し、環境と地形を使って戦えばこれこの通り。これこそ夕立の策であった。まんまと用意された罠の道に引っかかり、グラスヴァレーを通りかかったところに奇襲を受けた敵は、もはや俎の上の鯉も同じである。
「再生を止めることは出来ませんが、無意味にすることは出来ます。この地にぴったりの状況ですね。こんにちは、此処の地名を知ってますか? メガコーポの尖兵の皆さん。“デッドエンド”。行き止まりです」
矢来・夕立は、爆風に巻き上げられた塵の中ですうと腰を落とし、
「ではさようなら」
息をするように別れの挨拶をして、夕立は『封泉』が巻き上げた塵煙を肩で斬り裂き突き進んだ。紙技を振るうただの乱波? 否。 矢来・夕立は、稀代の斬魔鉄鍛冶『永海・鉄観』が生み出した佳刃に見初められた男。
外道を極めた、殺人剣の遣い手でもあるのだ。
どどっどどどどっどどどっどォゥッ!!
前進した夕立が手にした斬魔鉄製脇指、迅雷華絶『雷花・旋』が、紅い線をたちまち十曳いた。落ちる雨より疾く、光を漏らすコアを貫く光。
あまりに凄烈。あまりに疾い。十体同時に貫かれたかのよう。一呼吸で走りながら通り過ぎる、その軌道上にいた十体のダスト・ナーガがコアを破壊され崩れ落ちた。――いまそれ以外のものが立っているのは、ただ、剣が届かない距離に立っていただけのこと。
初撃を生き延びた。それが幸運か否かは、
「さて。次はどうやってコアを出させましょうか。あんまり疲れない方法を採りたいんですが」
――夕立の脳裏に悪魔がささやくかどうか。ただそれだけに掛かっているのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ギンジロー・カジマ
◆スペクターズ
ワシ自身を真っ当な人間とは思ってないが、代金を踏み倒すような小悪党になるつもりもないのでな。
しっかり代金は支払うさ。
ロアが敵さんの動きを止めるのは数秒か。
こいつらをジャンクにするには充分過ぎる時間だな。
動きが止まった奴から、片っ端に大乱斗で撃ち抜いて回る。
コアを破壊しないと事故修復する? 大乱斗なら問題ない。
なにせ、どこにコアがあろうが丸ごと消し飛ばしてしまうわけだからな。
気が付けば随分とワシ目掛けて集まってきたようだな。
だが、ワシばかり見ていていいのか?
もう少し派手な目立ちたがり屋にも、目を向けた方がいいと思うがな。
さて、やることやるなら何をしようと構わんし、配信にも付きやってやるがな、トーレ。
巻き込まれないように気をつけろよ。
配信者が配信中に事故死なんざ、この街ではありきたり過ぎて流行らんからな。
……しかし、いい具合の武器だ。こいつらの首程度では支いには足りんな。
ロア・パラノーマル
◎
◆スペクターズ
さて、然るべきものを拝領したのだ。
我々も然るべき仕事をせねばなるまいな?
準備はいいかね、ギンジロー、トーレ嬢。
何、足止めは請け負おう。
君達にはトドメを任せるとしよう。
では、一足お先に失礼。
……さあ、有象無象がわらわらいるが何、散歩と何も変わりはしないな。
いつも通りに
「静かに、そしておどろおどろしく(スニーキー、スプーキー)」だ。
敵が私を認識すると共
〝Spooky〟を顔に付け――【BeHind yOU.】
半径96m内の敵の背後に瞬時にワープし
「霧影」を突差し即時ハッキング、敵の動きを阻害。
瞬きの間もなく次の標的の背後に移動し同様の手管で動きを止めて回ろう。
完全掌握はせずとも数秒バグを起こし動けなくなるだけで十分だ――
そうだろう、諸君?
「刺激的に(スパーキー)」の時間だ、あとは派手にやるといい。
トーレ・アンダーレイ
◎
◆スペクターズ
ギンジローちゃんとロアちゃんも武器ゲットな事に気づいてた私!
フフ…鋭いか…?
え?みんな知ってた?
まあそゆこともありますよね~
さあさ始めよ花火上げ!
ナーガちゃんをみーんな綺麗なfireworkにしちゃおうね
てことで早速、星河ちゃんとの初ステージ!
はりきってこー!
ロアちゃんとギンジローちゃんともコラボだよ❤
ぶちアガること間違いなしっ
二人共大好きだぜベイベっ💕
十六のビットを飛ばして、戦場を煌き✨で埋め尽くそう!
ジャンク屋ちゃん襲うコたちも惹き付けっ!
キラキラ綺麗でばえるほど、私のテンションも激💥アガり↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑!
極彩色にギラギラに
ビットに注目?よそからぐさり!
放置したにゃらこれ幸いと!ビットがビューンと撃ち抜くよ!
もしや最強戦術なのではないかな~?
調子にノリにノリノって、戦場舞台に野良犬の牙が駆け回る!
むしゃむしゃばくばくがおがおー!
牙にかかった哀れなヘビさん!
えっ!ここからでも加入できるチャンネルがあるんですかっ?
はい、チャンネル登録はこちらで~す→
●亡霊達のダンスフロア
「ギンジローちゃんとロアちゃんも武器ゲットな事に気づいてた私! フフフ……鋭いか……? 鋭いだな……?」
「いや、ワシらも知っていたが」
「えっ」
「あの狭い工房に顔を見せれば嫌でも分かるだろう。入るなりターンしてカメラに映える顔をしていたのではなおさらだな、トーレ嬢」
「えっえっ……二人とも知ってた? まあそゆこともありますよね~」
(流した……)
(流したな……)
「まままま、そんな感じの前置きはともかくね! 今日はこちら! 今一番ホットな激戦区、デッドエンドの最前線手前に来ちゃってまーす!」
片目を閉じてお茶目な表情を浮かべながら横ピースをかざすのはトーレ・アンダーレイ(重ね重ねて星にまで・f36630)。その強引な導入に頭をガシガシと掻くサングラスの男はギンジロー・カジマ(デッドドッグ・f36632)。その隣で肩を竦めるハンチングの男はロア・パラノーマル(Sneaky, Spooky, Sparky・f36680)。彼らは、『スペクターズ』。デッドマン、サイボーグ、そして悪霊。死んだはずのもの、亡霊たち。
ロアがトーレの言葉を継ぐように、すう、とクナイ・ダートを抜いた。皆電位制圧苦無――『霧影』、その一本だ。投擲にも使えるようにと渡された計八本のうち、二本をその手に携える。
「然るべきものを拝領したのだ。我々も然るべき仕事をせねばなるまいな? 準備はいいかね、ギンジロー、トーレ嬢」
「おう。ワシも自分を真っ当な人間とは思ってないが、代金を踏み倒すような小悪党になるつもりもないのでな。しっかり代金は支払うさ。いつでも行けるぞ」
「おっけーおっけー! ロアちゃんとギンジローちゃんとコラボで、早速『星河』ちゃんとの初ステージ! テンションやばやばのレッドゾーン、ぶちアガること間違いなしってやつだね! はりきってこー!」
二人共大好きだぜベイベっ💕 などと愛嬌を振りまくトーレに、しかしロアの返事は涼しいものだった。
「足止めは請け負う。君達にはトドメを任せるとしよう。――では、一足お先に失礼。君達のように華やかには出来ないが――何、私の役割はむしろ、華やかでは務まらない。やることはいつも通り」
ず、と、ハンチングを――否、白塗り、穴の一つも無い面頬を頭からずらし、顔を覆って、今や無貌の怪人となったロアは、声低くささやくように言った。
ス ニ ー キ ー 、 ス プ ー キ ー
「『静かに、そしておどろおどろしく』だ」
トッ、と地面を蹴り、無貌の怪物が走り出す。
前方五〇メートル。敵集団が急激に走り出したロアを認識。ダスト・ナーガが見る間に両腕を作り替え、ロア目がけて指し向ける。速度に優れる彼を狙うのは、精度こそ劣悪だがそれを手数で補う、ジャンクパーツ射出砲だ。自身の体の一部を電磁加速で射出するそれが、ロア目がけて甲高い音を立てて次々と放たれた。
キシュシュシュシュシュシュッ!! 耳を聾する金属の擦過音と同時に、ロアを回避しようのないほどの弾幕が襲い――しかして、ジャンク弾は何にも当たらず空を切った。
「わたた、危なっ!?」
「やることやるなら何をしようと構わんし、配信にも付きやってやるが――巻き込まれないように気をつけろよ、トーレ。配信者が配信中に事故死なんざ、この街ではありきたり過ぎて流行らんからな」
「わ、分かってるしー!? ちょっと近く掠って驚いただけだから!」
後方のちょっとした騒ぎ。鏖殺の金属嵐が起こしたのはそれが精々だ。ロアの影すら捉えられぬ。……そう。影すら、だ。ロアは、ジャンク弾が放たれた『あと』に、その射線上から消え失せたのである。
ユーベルコード、『BeHind yOU.』。
「……有象無象がわらわらいるが、散歩と何も変わりはしないな。君達は少々刺激に欠ける。退屈だ」
声はまったく突然に、ダスト・ナーガらの間から響いた。
ロアが、いる。敵の背後を取っている。いや、既に二体の、人間で言うなら延髄に値する箇所に霧影を突き立てている。『BeHind yOU.』は自身から半径九六メートル内にいる敵の背後にノーモーションでテレポート、確定で背後を取る、理不尽な奇襲用のユーベルコードである。即座に右方から捕食腕で彼を食いちぎりに掛かったダスト・ナーガがいたが、その腕もまた空を切り、空中で凍えたように止まった。言うまでもない。背に転移したロアが刺したのだ。
本来であればそのような多少の刃傷ではダスト・ナーガは止められないはずだ。しかし、それを『霧影』が可能とする。刺した瞬間に物理的にダスト・ナーガの論理演算回路を物理的にハッキングし、スタンさせているのだ。損傷そのものは大したことがなかろうと、わずかな傷でも物理ハッキングを可能とするのが霧影の性質。そして、ダスト・ナーガのファイアウォールでは霧影の侵入を拒めない!!
そのまま、次々とロアは敵の背後を取り、刺し、斬り付け、敵の動きを止めて回る。発生から転移までが短い。瞬きの間すらない。ダスト・ナーガらもこの奇妙な移動方法を採る敵を捉えられぬ!
そして、亡霊は――スペクターは、一体ではない。
「完全掌握はせずとも数秒バグを起こし動けなくなるだけで十分だ――そうだろう、諸君?」
虚空に姿を消したロアが謳う。
スパーキー
「教育してやり給え。『刺 激 的 に』の時間だ。後は派手にやるといい」
「数秒か。こいつらをジャンクにするには充分過ぎる時間だな。出番だ、やるぞ、トーレ」
「はいはいはーい! キッラキラにしてやんよ!」
ギンジローが『大乱斗』を。トーレが『星河』を。
シロガネの牙を手に、二人は駆け出した。
「悪いが止まってる内に片付けさせてもらう。動き出すとろくでもなさそうだからな――ロア、下手を打って巻き込まれるなよ」
手短な警告を投げるなり、ギンジローはトリガーを引いた。
――ギュ、ガォン!! 空を引き裂く、雷鳴めいた凄まじい銃声!! 激烈な反動と共に、大乱斗の水平二連銃身から、チェンバーで炸裂・加速された荷電粒子の雨が射出された。火を噴いた、などという表現では生温い。それはまさに暴力の光条であった。拡散率を低めに設定された荷電粒子の散弾が、一射で三体のダスト・ナーガを『削り取った』。荷電粒子の着弾しなかった部位だけが取り残されて、かそけき音を立てて崩れ落ちる。二度と立ち上がることはない。自己修復など出来るわけがない。このビーム・ショットガンは、装甲ごと敵のコアを消し飛ばしてしまうのだ。
「わ~! 消しゴムもびっくり! やっちゃえギンジローちゃん!」
「言われずとも」
ギュガォッ!! ガォッ!! ガオォンッ!! ギンジローがフォアグリップつきのポンプを操作するたび、銃身下部に張り出したドラムマガジンから新たな荷電粒子カートリッジが供給され、爆光を炸裂させる。そのたびに消し飛ぶ、消し飛ぶ、消し飛ぶ! まさに消しゴムめいて次から次へとダスト・ナーガが消し飛んでいく!!
ギンジローが派手に暴れれば暴れるほど、ダスト・ナーガらは彼らを重点目標と認識する。即ち、危険な敵にはより多くの戦力を集中して攻撃すべしとの判断だ。今回のダスト・ナーガらのAIはそれほど優秀ではない。彼らからすれば、ここには『殺せる標的しかいなかった』はずなのだから、それも宜なるかな。
がギンッ!! フォアグリップが後退したまま止まる。弾切れ。ギンジローは即座にドラムマガジンを排出、腰後ろに固定した予備マガジンを叩き込む。そのわずかな間だけで、押し寄せる敵との距離が詰まっている。
押し寄せるダスト・ナーガの群れは、まるでジャンクの津波のようだ。
「ふん。気が付けば随分とワシ目掛けて集まってきたようだな。――だが、ワシばかり見ていていいのか?」
ギンジローが言った次の瞬間、突如としてダンスフロアめいて、あたりに極彩色の照明が降り注ぐ。近隣、ジャンカーを追い詰めて殺戮しようとしている個体まで引きつけかねない目立ちようだが、むしろそれを狙っている。引き寄せて、一網打尽にしようというのだ。
その証拠に、レーザー光めいて注いだ照明はただの照明ではない――戦闘用光刃照明システムによるものだ! ギンジローに襲いかかろうとしたダスト・ナーガらの手足をよもや切断、刹那動きを止め、その後背を即座にロアが取って動きを停止、そこにリロードを終えたギンジローが光弾を叩き込んで滅却する。
「それ見たことか。もう少し派手な目立ちたがり屋にも、目を向けた方がいいと思うがな」
「そのとーりっ! よそ見ばっかりしてたら私悲しいなー、泣いちゃうなー!」
いつの間にやらジャンクの山の頂点に立ち、マイク越しの大音声で言うのはトーレ。
まるでライブ開演前のワンシーンだ。トーレは顔を隠すように翳した両掌を前に向け、右親指と左小指を沿わせる。腕で斜めに一文字を描くようなポーズから、両腕を左右に払う様に広げれば、それに合わせて彼女が操るビーム発振ビット――光刃照明システムがテンションの高まりに応じるように、一気に周囲を虹色に照らし上げた。トーレの紅の瞳が虹を映して光り輝く!!
輝けば輝くほどトーレのテンションは上がる。彼女はもう止まらない、止められない!
「極彩色にギラギラに! キラキラ綺麗でばえるほど、私のテンションも激💥アガり↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑!」
トーレは地を蹴り、山を駆け下りた。ビーム発振ビットが彼女が進む道を、行く先を光の刃でライトアップする。ダスト・ナーガ達をビットの刃が斬り刻み、たまらずビットにジャンク砲を差し向けた数体を、
「よこからぐさり! そーれっ!」
猟犬めいて横から飛び込んだトーレのプラズマブレードが貫く! 刺し貫いて舞うように。野良犬の怒りが、復讐の意思が籠もった牙を振るい、トーレは彼女ら三人が作り上げた戦場舞台――ダンスフロアで狂い舞う!
「むしゃむしゃばくばくがおがおーっ! レイちゃんねるっ☆ まだならチャンネル登録お願いします❤」
敵陣に躍り込み、斬る斬る斬る刺す刺す刺す、ステップ・ターン・カメラ目線でウィンク一つまでキメるトーレ。
あまりに鮮やか、あまりに無邪気、そしてあまりに凶悪。意識を奪われたダスト・ナーガ達は、当然彼女を脅威として認識するが、しかしそれがその時点でとうに失策だ。
宙に舞う、トーレ自身が操作する戦闘用光刃照明システムが。
背から背、影から影へ舞う亡霊が。
巨砲を手にすべてを無に帰す暴君が。
彼らを葬るべくその双眸を光らせている!!
ビットから放たれたレーザー光がダスト・ナーガのカメラをくらませ、牽制する間に、ロアが虚空から虚空を渡り次々と敵の動きを止め、ギンジローが荷電粒子のラピッドファイアで悉くを滅殺していく!
影と光と照明が彩るダンスフロアの中で、踊るトーレのしなやかなシルエット。たたん、たん、たんッ! ステップ、ターン、バックフリップ! バックに霧影でスタンさせられたダスト・ナーガをフレームイン。
「牙にかかった哀れなヘビさん! えっ!? ここからでも加入できるチャンネルがあるんですかっ? はい、チャンネル登録はこちらで~す→」
カメラ目線でキメたトーレの後ろで、十数体のダスト・ナーガが爆光に消えた。
「あっはは! いや~、これはもしや最強戦術なのではないかな~? ロアちゃん、ギンジローちゃん、二人ともかっこい~!」
「あまり驕るなよ、足下を掬われるぞ。……だが、しかし、いい具合の武器だ。こいつらの首程度では支払いには足りんな」
「同意見だ。――ならば、より価値のある首を持ち帰らねばなるまい」
ギンジローの背にゆらり、とロアが発生し、霧影の柄の輪に指を入れくるくると弄ぶ。
「そのためには、君達は少々邪魔だな」
ロアが言い放ったその声の向かう先には、この上押し寄せるダスト・ナーガの群れ! 派手に暴れる彼らに惹かれてきたかのようだ。
「性懲りも無く雁首揃えてきたか。何体来ようと返り討ちだ」
「――おっけー! じゃあ、アンコールって感じ! で!」
トーレは両手のプラズマブレードをバトンめいて取り回し、構える。ギンジローがポンプを操作し、殺意の光をチェンバーに叩き込む。
「――よろしい。では諸君。授業の続きを始めよう」
怪人が虚空に消えるのに合わせ、極彩色の光が、破壊の爆光が、再び戦場に乱れ舞う!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】◎
ああ、任せろよ
約束を破る気は毛頭ねぇ
お前の…お前たちの叫びを全部ぶつけてやる!
歌で身体強化をしたら
まずは流星に魔力を流し込んで
…ダッシュで先制攻撃だ!
ははっ中々暴れん坊だなぁ
けど、…すっげぇ馴染む
剣を抜いて、風の属性を込めたら敵のパーツを弾くように
スピードに乗せてヒットアンドアウエイ
…っとぉ!調子乗りすぎた
ありがとなアレス
勢い余ってもアレスのフォローがありゃ安心だな
けど、もうしっかり馴染んだ
こっからは飛ばしていくぜ…!
コアを露出させようとするアレスを手伝うように歌を戦場に響かせる
それでこっちに来るならアレスの射線が通りやすい位置に誘導しつつ全力で回避だ
だって…攻撃すんのは今じゃない
なぁ、そうだろうアレス
アレスが示した光と弾丸の道に紛れるようにして最大加速
目的が見えてりゃ話は早い
ぶつけてやるって約束通り、コイツで決めてやる
【閃迅烈脚】!
思いを、流星をコアに届かせる!
アレクシス・ミラ
【双星】◎
無論です、シロガネ殿
約束を…誓いを此処に果たそう
ー架空元素、精製
『白夜・竜騎士形態』
敵の注意を僕へと引きつけつつ、セリオスを銃の射撃で援護しよう
…やはり魔法や光閃とは全く違う
けれど…これも一つの盾の形のようで
不思議と“僕”に馴染むようだ
敵の攻撃の動きを見切れたら
ブースターで全速ダッシュ、『閃壁』展開
攻撃から彼を盾でかばおう。毒は耐性で耐えてみせる…!
爆弾のような攻撃だが…君には当てさせない
それにどんなに速く飛んでも必ずついて行く
そう言っただろう?
ー【例え夜が明けずとも】
ここが夢の終点だとしても
想いは、光は
無くなってなどいない…ここにある!
上空から光を降り注がせ、さらに銃弾で敵の動きを牽制させる
彼とこの地にいる皆には傷つけさせはしない
そして狙いは三つ
攻撃や補填の隙など与えさせない事
敵のパーツを削る事
そして…セリオスを守り、コアへと導く事
…君の歌声が、僕の力となる
信頼が決意を堅くさせる
ああ、君を好機へと導き示してみせるよ
君が全力で飛び
シロガネ殿達の叫びと想いを、届かせられるように!
●共に翔ける
『……さぁ、支払いの時間だぜ。猟兵。あんたらがおれをノせたんだ。その価値があったと証明してくれ。おれの武器が、叫びが、ヤツらに通じるってところを見せてくれ』
『無論です、シロガネ殿。約束を……誓いを此処に果たそう』
『ああ、任せろよ。約束を破る気は毛頭ねぇ――お前の……お前たちの叫びを全部ぶつけてやる!』
――ッごぉっ!!
地上五〇メートル。白銀の流星が、黒歌鳥を抱えて飛ぶ。
「すっげぇな、アレス! こんなことできるようになったのかよ?!」
「ああ、僕も驚いている。……やはり魔法や光閃とは全く違う。けれど、これも一つの盾の形なのかもしれない。不思議と“僕”に馴染むようだ」
空を飛ぶのはアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)、その腕の中にいるのはいつものごとく、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)である。背中に構築された推進器――ブースターから金色の噴射炎を噴き、アレクシスは高空をまるでロケットめいて飛行している。架空元素固定式複合アーマーシステム『白夜』による追加着装、『竜騎士形態』――モード・ドラグーンだ。
白夜とは、ミラ家家伝の鎧の形を損なうことなく、アレクシスが精製する『架空元素』を固めて鎧に追加着装することで、戦術を大幅に拡張するアディショナルアーマーシステムである。
竜騎士形態とは、最低限の追加装甲、ウィングと高出力ブースターを背に搭載し、盾に装着した赤星の鞘をビームガンとして扱うことが可能となる超高速戦闘形態だ。敵陣に突撃を掛ける際に、こうしてセリオスを輸送することも可能である。
アレクシスは
「セリオス! 前方一〇〇メートル、敵の一部隊を確認。後続も来る。まずは彼らを叩いて、壊滅させる……!」
「上等だ! 四〇メートルで下ろしてくれ、そっからは自分の脚で征く!!」
「了解……!」
アレクシスは更に加速。目測で距離を測り、地上五〇メートル、敵から四〇メートル強、指定のタイミングでセリオスを投下した。次の瞬間、セリオスは敵に向けて『駆け出す』。セリオスの脚が空中を蹴るたび、その靴裏から『根源の魔力』が噴出し、セリオスの体は地面へ向けて猛加速! 体に掛かる凶悪なGがその推進力を教えている。凄まじい速度とパワー。セリオスであっても、最初の二歩は思わず躓き掛けてしまうほどだ。
「っははっ!! 中々暴れん坊じゃねぇか。けど――すっげぇ馴染む!」
――軌道を安定させセリオスは抜剣。ニイと笑って、敵を俯角四五度に捉えて空を走る! 敵が砲へ改造した両腕を上げるその前に、
「させるものか!!」
アレクシスは盾に接続した赤星の鞘を下方の敵へ向ける。本来ならばエネルギー発生機構などを備えぬはずの鞘をどうして銃として扱えるのか? ――それは、彼の盾『蒼天』に秘密がある。烈光鉄で強化されたこの盾は、意念に従い堅固なる光の壁『閃壁』を発生させる力を持つが、これを架空元素で作ったコンバーターを通して鞘の中に流し込み、弾丸として射出するのだ。これぞ『飛龍槍』――ドラクル・ソーン!
斯くして飛龍槍が放たれた。竜騎士形態の飛龍槍は高速連射能力に重きを置いており、一発の威力は低いものの、敵を牽制する目的には極めて使いやすい装備となっている。降り注ぐ光の雨が敵の照準を妨害する! アレクシスが造ったその隙に滑り込むように、セリオスはまさに流星となって敵のど真ん中に駆け込んだ。
「おらぁッ!!」
美しい顔かたちから紡がれるあまりにも澄んだ声音で、しかしセリオスは苛烈な怒号を絞り出す。流星めいた突撃からの蹴り。あまりに原始的、あまりに単純。しかし、セリオスの速度のすべてを集中させた蹴りだ。しかも命中時に自動的に吹き出す魔力のジェット噴流がそれに重なる。生み出される結果は単純。
食らったダスト・ナーガは、靴跡の形を胸に刻まれて吹っ飛ぶ。靴跡から同心円状に亀裂が広がり、空中で崩壊しながら爆発四散!
セリオスはといえば敵を蹴り飛ばしたその反動で身をそらし、バック宙の姿勢に入っている。一瞬の停滞、そこを狙ってサイドからダスト・ナーガ二体が襲いかかるが、BLAM!! またも踵から流星が蒼炎めいた魔力を吹き出しセリオスの宙返りは加速、敵の攻撃が食い込む前に空中でひねるように体を回し『青星』を一閃!! 大車輪の円を描く一撃が左右から来たダスト・ナーガの首を刎ね飛ばし、そこに空中から降り注ぐ光の弾丸が連続着弾、爆発! 吹き上がった噴煙の中から、凄まじい高速のステップワークでセリオスが飛び出す!!
「歌声に応えろ……力を貸せ!!」
奏でるセリオスの歌に、応えるように流星のロスレス・コンバータが甲高い唸りを漏らす。風の魔力を流星に込めて疾るセリオスの動きは、まるで氷上を滑走するフィギュアスケーターめいていた。あらゆる方向に魔力を噴出できる高可動噴出口が、セリオスの意思に従い、彼の身体を任意方向に加速する! 敵の間をすり抜けながら青星を振るい、次々と敵の装甲を破壊し、剥ぎ取り、コアの位置を探っていく。
『『『ぎいぃぃッ
……!』』』
怒るかのような軋み音と同時に、ダスト・ナーガ達は体を震わせる。『ダスト・シュート』だ。もはや多少の同士討ちも厭わぬとばかり、体のパーツを一斉射出させて四方八方からセリオスを攻撃しようというのだろう。
「!」
「おおっ!!」
セリオスが制動した瞬間、白銀の流星が彼の前に躍り込んだ。アレクシスだ。フルブーストでの超高速での急降下から、セリオス手前一五メートルで着地、鉄靴で地面を削りながら横滑り滑走、割り込むなり『閃壁』を展開! 一斉発射されたダスト・シュートのパーツの悉くを閃壁で受け止め、無傷で防ぎ止める!
「アレスッ!!」
「さながら彼ら自身が爆弾と言ったところか。でも、セリオスには指一本触れさせない。どんなに速く飛んでも必ずついて行く――そう言っただろう? セリオス」
「ははっ、有言実行ってやつだな。ちょっと調子乗りすぎた、ありがとな、アレス!」
敵の飛ばした汚染ジャンクパーツから飛び散る麻痺毒さえも防ぎ止めながら、アレクシスは眼前の敵を睨む。
デッドエンド
「ここが 夢 の 終 点 だとしても……想いは、光は、無くなってなどいない。――ここにある!」
雄々しくアレクシスが剣を振り上げれば、偽物の空、無機質なライトの光を斬り裂いて、空にもう一本の『赤星』が現出した。『例え夜が明けずとも』! 空の赤星が輝き、味方を鼓舞すると共に聖なる光を降り注がせ、ダスト・ナーガらの装甲に亀裂を入れる。
「セリオス!」
「おう!」
一声の往復で意思疎通は完了。閃壁を解除した瞬間、セリオスは右に、アレクシスは左に駆け出す。空から降り注ぐ光に加え、飛龍槍での連射を絶え間なく浴びせかけることで敵の再生を抑止、コアを露出させてその状態を保つ!
視線の向こう。駆け舞いながら、セリオスが高らかに歌い上げる戦歌が、アレクシスの力を増強する。
――ああ、君の歌声が、僕の力となる。信頼が決意を堅くさせる。
僕が理想の騎士になれたとするのなら、そうであらしめたのは、君だ。セリオス。
「ちょっとフォローさせちまったけどな――もうしっかり馴染んだ。こっからは飛ばしていくぜ……!」
まだ速度が上がる。歌の出元たるセリオスが絶え間なく高速移動しているのだ。音像は揺れ、まるでサラウンド再生めいて至るところから彼の声が動く。惑わされるかのようにダスト・ナーガが左右を見回し、再びダスト・シュートを放つタイミングを選ぶが、それすら計らせまいとアレクシスが飛龍槍を連射する!
「――セリオス!! 今だ!」
アレクシスが吼えると同時に、赤星を振るい、飛ぶ光の斬撃――『光閃』を飛ばす。ダスト・ナーガが数体それを反応回避した瞬間、セリオスが唇を舐めた。敵が射線上に並んだ。タイミング完璧、膝を縮め、靴の裏で圧縮した魔力を、
炸裂。
ドッ、ドドドドドドドドドドドドドォッ!!
土木工事もかくやという凄まじい連続炸裂音、セリオスが蹴った順に地面が捲れ上がり土柱を上げた。彼が駆け抜けるのは、アレクシスが敵を誘導し作ったウイニングロードだ。道の途中にはコアが露出した敵、敵、敵。セリオスは七歩目から既に地面ではなく虚空を蹴り、猛禽めいて飛翔、過負荷レベルのエネルギーを叩き込んだ流星のつま先で、コアを蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜く蹴り抜くッ!! 蹴りの反動が姿勢制御となり、空中でブレイクダンスめいて体を回しながら駆け抜けたセリオスが一瞬で放った蹴りは合計一九発。
流星の装着を以て完成したこの脚技こそ、魔術閃烈脚。『閃迅烈脚』ッ!!
ジャンクの山肌を着地の勢いでめくり上げるように破壊したセリオスが、通り抜けてきた軌跡を見返ったその瞬間、爆発、爆発、爆発四散ッ!!! 十九体のダスト・ナーガが、爆光の柱となって散華する。
「暖まってきたよなぁアレス! まだまだいくぜ!!」
「ああ。残らず掃除してしまおう!!」
視線の先には今だ尽きぬ敵の群れ。
アレクシスは宙に舞い上がり、セリオスは青星を構え直す。襲いかかる後続部隊へ、双星が駆ける!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユヴェン・ポシェット
◎
扱いにはすこしコツがいるが、これは思った以上に良く動ける。
やはり凄いな…シロガネ、感謝する。
…来たか。
まずはこの『荒嵐』と…実戦での動きにどこまで慣れるかだよな。
よし、いくぞミヌレ。
竜槍を扱っての基本的な動きから。荒嵐を装備するのに合わせた動きに慣らして行く。
この分だと、ダッシュしてからの突きだけでも今まで以上の勢いがでるな。
ダスト・ナーガか…なかなか厄介な相手ではあるよな。
まぁ、取り込めるものならやってみろ、そうはさせないがな。
…なんだミヌレ、もっと荒嵐の力がみたいのか?
とっておきというものはとっておくから“とっておき”なんだぜ。
デッドエンドの人達がいないか周囲に気を配りつつ、ダスト・ナーガと戦う。
近くに人がいれば仲間の鷲であるタイヴァスに命じて避難させる。
応戦している人がいれば…自身の手で守りたい気持ちもあるのかもしれないしな、危なくなる前にフォローしつつ、意志は尊重したいと思う。
●斥力槍術
と、ととん、と地面を蹴り、ユヴェン・ポシェット( ・f01669)は新たなブーツ――『荒嵐』の履き心地を確認する。ユヴェンが元々持っていた『matka』というブーツの予備をベースに作成された新装備だ。
内装の革の1枚までピタリと吸い付くようにフィッティングされたブーツは、まるでユヴェンの脚の一部かのようだ。そして、その性能はただ履きやすいだけにとどまらない。
ぎゅん、とユヴェンの体が浮いた。まったくのノーモーション、膝を撓めるだの、地面を蹴るだの、そうしたモーションをかけらも見せずに彼は一〇メートル近くを一息に跳躍したのだ。そのまま音も無く着地。靴の裏に斥力発生装置――リパルシヴ・エンジンが、ユヴェン自身の脚力に加え、斥力により発生する反発力を利用した跳躍や踏み込みを可能としている。高所からの着地時も斥力をクッションに使うことで、より静音に、低負担で着地が可能だ。
「扱いにはすこしコツがいるが、これは思った以上に良く動ける。やはり凄いな……シロガネ、感謝する」
つま先の位置をただすようにコツコツと地面を打つと、ユヴェンは肩に乗った小さな鉱石竜『ミヌレ』の顎をあやすように擽った。
「来たか」
ユヴェンは前方に視線を据える。十数体のダスト・ナーガがこちらに向かって突撃してくるのが見えた。
もはやデッドエンドは乱戦状態。あらゆる場所で猟兵とダスト・ナーガが戦っている。ユヴェンはミヌレをドラゴンランスに変じ、低く構えた。
「いくぞ、ミヌレ。――まずはこの『荒嵐』と、実戦での動きにどこまで慣れられるかだ」
ユヴェンの手持ちに遠距離攻撃武器がないことを見るや、ダスト・ナーガらは即座に白兵戦を選択した。腕部を肥大化させ、より殺傷力の強い、のこぎりめいた乱杭歯を備えた捕食機関を創出し、それによって襲いかかってくる。相対距離二〇メートル。押し寄せるダスト・ナーガの群れを前に、ユヴェンはわずかに体を前に傾け、踏み込んだ。
『――!?』
「まず一つ」
踏み込みの音がしない。だというのに、ユヴェンは二歩で既に一八メートルを縮め、槍の射程に先頭のダスト・ナーガを捉えている。刺突。アイカメラを貫き頭を串刺しに。体をひねるその瞬間、靴裏を地面に斜めに立ててスラスト方向へ斥力発生、それを脚から腰、腰から肩、肩から腕に伝達して貫いた首を捻切り、もぎ取る。血振りをするように振った槍から頭が飛んで、ジャンクの山にガシャンと埋もれた。
ダッシュからの突きの威力が今までよりも遙かに上がっている。うまく乗せれば無音かつ予備動作少なく、圧倒的な速度で攻撃が出来る。――性能は充分。後は、竜槍を使っての動きの一つ一つに、このブーツの力を乗せた場合の体の裁き方を覚えるだけだ。
「ダスト・ナーガ。なかなか厄介な相手ではあるよな。――まぁ、取り込めるものならやってみろ、そうはさせないがな」
挑発するように言って、ユヴェンは敵の群れのど真ん中に躍り込んだ。槍を回転させ、突きの踏み込みに斥力反動を乗せる。そうして放たれる基礎の基礎、刺突の一撃は、まるで一条一条が天を貫く日の光めいた鋭さだ。堅い敵の装甲が瞬く間に剥がれる。見えたコアを同様に刺突で射貫き、瞬く間に三体を葬る。
『――?』
槍からミヌレの思念が伝わる。そのブーツにはまだ別の力があるのでは? と。だが笑って、ユヴェンは首を振った。
「なんだミヌレ、もっと荒嵐の力が見たいのか? とっておきというものはとっておくから“とっておき”なんだぜ。此処で見せてしまうには勿体ないだろう? このあとには敵の真打ちも控えていることだしな」
更に四体、五体、六体目を貫いたところでその死骸を飛び越えて襲いかかって来た敵を、ユヴェンは槍を封じられたまま振り上げた脚で迎撃。蹴り脚に斥力を発生させ、ダスト・ナーガの体を遙か後方にボールめいて弾き飛ばす!
「こういう使い方も出来る、か
。……!」
新たなブーツの使い方を編み出しながらユヴェンは鋭く右を見た。戦うユヴェンを援護するようにジャンカーの少年が拳銃を撃っている。それを始末すべく数体のダスト・ナーガがそちらに向かっている!
「タイヴァス!」
しかしユヴェンはそれにすら備えている。ユヴェンの友、大鷲『タイヴァス』が物陰から飛翔し、少年の肩を脚で掴み、掻っ攫うように宙に飛び上がる!
更に八体目を槍で貫き、敵の群れを抜けるように斥力全開でユヴェンは跳躍、旋回するタイヴァスの背に綿毛のような柔らかさで着地。
「この鷲はタイヴァス、味方だ。怖がらなくていい――一緒に戦おう!」
「う……うん!」
この地を、自身の手で守りたい気持ちもあるのだろう。彼の意志を尊重し、ユヴェンは迷いなく少年に声を掛けた。その声のまっすぐさに打たれたように少年が頷く。
二人と一匹は眼下を見下した。
――今だ尽きぬガラクタの蛇神らが鎌首をもたげるそこへ、今ひとたび、トップアタックを仕掛ける!
大成功
🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
◎
▲世界知識から"視覚の位相をズラして霊を視る術"を引き出す
アイツ等に怨みを持つ残留思念の規模を確認したい
うようよ居るなら丁度いい
前座におニューな武装のフルコースを振舞うのは勿体無いと思ってた所だ
「詠唱銀塊」を高く放り上げ「Sforzando.275」の銃撃で粉砕
銀の粒子を雨と降し、それを触媒に▲降霊術を展開
今迄アイツ等が踏み躙ってきた魂達を揺り起こし
一帯を"ゴーストタウン"のようにしてしまおう
更に【全周飽和砲火陣】起動、召喚した火器で総員武装
武器は幾らでも貸したげるから
ありったけの怨みを籠めてトリガーを引け
キミ等にはソレをする権利がある筈だ
焔弾の嵐を抜けて来た奴には前菜くらいは御馳走しよっか
仕掛鋼糸は使わず、▲グラップルの要領で一息に踏み込み高周波モード起動
▲2回攻撃で長い胴を輪切りに▲切断
Phew♪ 切れ味グンバツじゃないの
イイ仕事するじゃん、シロガネ
さて、「Sforzando.275」に籠められた殺意の持主に
所縁のある残留思念が居たのなら誘ってみよう
ラストダンス、憑いて来る?
●銀雨荒ぶ
あるいはそれは、非科学的なことだったかもしれない。立証されれば科学者達が白目を剥き泡を吹くような話だったかもしれない。けれどレモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)にとっては、『霊』とは存在するものだ。認識のチャンネルを合わせれば、そこに確かにいるはずのものなのだ。
視界の位相をずらす。レモンは、周囲に満ちる怨霊を認識した。五〇メートル先を我が物顔で歩く二十数体のダスト・ナーガ達の周囲に、老若男女を問わず、死んだときの姿を模しているのであろう霊が飛んでいる。とっさには数えかねるような数で、今も増え続けている。
「丁度いい。おニューな武装のフルコースを前座に振る舞うのは勿体ないと思ってたしね」
レモンは高々と銀の塊――『詠唱銀塊』を放り上げると、新調したガンナイフ――『Sforzando.275』を無造作に発砲して撃ち砕いた。Sforzando.275の圧倒的な弾頭エネルギーが、詠唱銀塊を億の破片、銀の粒子として飛散させた。
世界に、銀の雨が降る。
レモンは祈るように、鼻先でSforzando.275の銃身を立て、その刃先で印を切った。この地には、今まであのメガコーポの連中に踏み躙られ、死に至った者達が多数いる。それにつかの間、詠唱銀によりかりそめの命を与えようというのだ。
「……この銀の雨が降る間だけ、キミ達の手には銃がある。ひとたび放てば敵を貫き食い破る秒速一四九〇メートルの牙だ。銀の雨が、私が、いくらだって武器を貸したげる。だから、有りっ丈の恨みを込めてトリガーを引け。キミ等には、それをする権利があるはずだ。そうだろ?」
銀の雨は止まず降る。光とともに、かつて此処で死んだのであろう怨霊達が半受肉し、姿を持って次々と地に降り立った。一般市民だろうと問題なく扱える、銃という兵器の進化の最果て――彼らの手の中に現れたアサルトライフルが、ギラリと光って鎌首をもたげ、ダスト・ナーガ達を睨んだ。
突如として自身等の周囲に熱反応とも動体反応ともつかぬ曖昧な反応が現れ、戸惑うように停止したダスト・ナーガらに、レモンは腕を組み、傲然と言い放った。
「ようこそ企業の尖兵達。――自分たちは『殺す側』だと信じて疑わない傲慢な者達よ。此処はお前たちへの恨みで満ちた"ゴーストタウン"だ!! セワード・アーセナル社、劣化ウラン弾芯五・五六ミリ多目的超高初速スマートアサルトライフル――ARG-54『フェイルノート』の雨を食らえ!!」
レモンの号令めいた一声に合わせ、無数のアサルトライフルが火を噴いた。ユーベルコード、『全周飽和砲火陣』。降り注ぐ銃弾の一発一発が怨念の炎に燃え、ダスト・ナーガらのボディを貫く!! フェイルノートはこのサイバーザナドゥで、今なお対ニンジャ、対アーマードボット用として用いられる最新鋭のアサルトライフルだ。民間向けにはセミオート限定仕様が供給されているが、亡霊達が持つのは軍用のフル機能モデル。セワード・アーセナル製を選んだのは当然の意趣返し。自社製品に撃たれる気分はどうだと笑ってやるためだ。
『ギギッ……ギギギギ!』
軋むような声を立て数体が『ダスト・シュート』。射出されたパーツはしかし亡霊達をすり抜ける。当然だ、彼らは亡霊。半ば現象のようなもの。止めるならば、この現象を成立させたレモンを倒さねばならない。
それに気づいてか、数体のダスト・ナーガが包囲射撃をクロスした腕で受け止めながら前進した。炎弾の嵐を抜け、レモンを直に叩くために前進してくる!
「さすが、状況判断が早い、いいAIだね。……賢いとは言いがたいけど」
舌を出し、レモンは両手に携えたSforzando.275の高周波モジュールをアクティベート。
ダスト・ナーガが両手をジャンクを射出する砲へと変え、電磁加速でパーツを撃ち出してくるのを、レモンは二丁のSforzando.275で撃ち落としながら姿勢を低めて踏み込んだ。彼我の間に火花が舞い散り、発射されたジャンクパーツの悉くがあらぬ方向に吹き飛んでいく。一、二、三、
四発目は撃たせない。
レモンは踏み込んだ瞬間、出力全開で振動させた高周波ガンナイフでダスト・ナーガを斬り付けた。一体あたり、一呼吸で四閃。ぞんッッッッ、とまるで鋼線を異次元の刃で剃るような音が立ち、レモンとすれ違った三体のダスト・ナーガが輪切りになって、彼女の背中で崩れ落ちる。
レモンはヒュウ、と口笛を吹いた。
「切れ味グンバツじゃないの。イイ仕事するじゃん、シロガネ」
満足げな笑みを浮かべながら、レモンは前に視線を移す。亡霊達が放つ銃弾のその先、第二波が押し寄せてくるのが見えた。
「――まだまだダンスは終わらない、か。……ん?」
ふと、レモンは持ち上げた銃口にたおやかな手が添えられているのに気づく。その根元を辿れば、『StraydogS』のネームタグを首から提げた、片目を髪で隠した美しい少女がいるのが見えた。彼女は、嬉しそうに、そして寂しそうに、Sforzando.275を撫でている
奇縁もあったもの。レモンは笑う。
「ラストダンス、憑いて来る?」
少女は、一つはっきりと頷いた。
大成功
🔵🔵🔵
丸越・梓
アドリブ歓迎
解釈お任せ
_
──では、有難く頂戴する。シロガネ殿。
手に、身体に馴染むそれは流石シロガネ殿と言うべきか
この重みは責任の重み
そして彼と、彼の仲間達の想いの重みだ
自らの心に再度言い聞かせ
やがて相対するはダスト・ナーガ
この手に、眼に、刃に
迷いも曇りもない
応戦しているジャンク屋達を見つけ次第宵皇を振るって援護
…俺は、炎というものに対してどこか恐れを抱いていた
生まれ落ちた時から俺は異端とされ
「悪魔」と、「黒い狼」と迫害と拷問を受け
炎による刑も俺を甚振る一つの手段だった
然し今こそ俺はその内なる恐怖と向き合う時なのかもしれない
──記憶の中に今も尚燃え盛る、災禍の焔を宵皇へ滾らせる
かつての幼き頃、魔女を焼く炎だと差し向けられたそれを
記憶の封印から解き放つ
宵皇が脈動する
── 一閃
獄炎を纏いて、軌跡に散る火の粉は蝶のように舞い
一瞬の静寂の後、荒ぶは焔の嵐
目を逸らさない
どんな理由であれ、相手の命や心を奪うその罪の重さから
剣を振るうその意味から
それでも尚、前へ進まなくてはならぬ責任から
●獄炎を呑む
要らないんじゃなきゃ持って行けと、ぶっきらぼうに言った男に「では、有難く頂戴する――シロガネ殿」と帰したのはもう二日前の話。
斯くして魔王――丸越・梓(零の魔王・f31127)は戦場に立つ。ずらりと抜いたカタナの銘は『宵皇』。身長百九十センチ超の彼の手の内にあって、完璧なバランス。内部にメカニクスを内蔵する関係上、通常のカタナと同じ重量バランスとは到底いかぬはずだというのに、柄に仕込んだカウンターウェイトと内部的な肉抜き、補強によって、極力一般的なカタナと同様のバランスを保つよう調整されている。
「流石シロガネ殿と言うべきか」
他の誰にこのような仕事が出来るだろう。あるいは、仲間への鎮魂に燃えるこの瞬間の彼だけがなし得た神業だったのやもしれぬ。手に、体に馴染む。ずっと前から持っていたかのようにしっくりとくる刃だ。
――ずしりと手に重たい、これは責任の重みだと梓は思う。シロガネと、彼の仲間達の想いの重みだと。それだけは決して忘れぬように心に刻む。
「俺は代弁者だ。彼らの無念を、貴方の怒りを、意志を──存在を、他ならぬシロガネ殿の作った武器で叫び、この世に刻みつける」
シロガネに言ったことを繰り返すように、梓は呟く。両手で掴んだ柄の奥、エネルギージェネレータが低く唸り回転を開始。もはやかれの手に、目に、刃に、迷いも曇りもない。熱く燃える怒りも、地に冷たく染みるような無念も、すべては、明鏡止水の刃に乗せる。
「――征くぞ、宵皇」
そして魔王はジャケットを翻し、風かのごとくに駆け出した。
「く、くそっ!! もうここも保たねぇ……!」
「たった数体のオートボット相手に俺達は何も出来ねぇのかよぉ……!」
ジャンカー達がしつらえた粗末なバリケードを、無造作に、大雑把に、ダスト・ナーガらが破壊していく。
追い詰められたジャンカー達の後ろはジャンクの山。横に逃れようにも、既にそちら側にもぎょろついたダスト・ナーガの眼が光っている。囲まれていた。逃げ場はない。
「畜生、畜生、畜生のくそったれ! こんなところに捨てられて……ゴミみたいに死ぬだけの人生かよ
……!!」
地面を叩き嘆く男を誰が責められるだろう。目の前で、まさに最後の防衛線が崩れ落ち、ダスト・ナーガがジャンカー達に身を乗り出したその瞬間のこと。
キ、キキキッ、キキンッ。
銀の閃が、網めいて描かれた。それも、ダスト・ナーガの体を寸断する形で。
それは静謐な破壊の音だった。疾った銀線が、その位置から、ずるりとダスト・ナーガのボディを分割した。元からそういう風にピースとして分かれていたのを思い出したかのように、ダスト・ナーガの体が崩れ落ちる。
誰もが息を止めた。崩れ落ちたバリケードの向こうに、一人の男が立っている。言うまでもない。梓だ。
――かつての記憶を思い出す。
梓は、生まれ落ちたときより異端とされた。いろいろな名で呼ばれた。『悪魔』、『黒い狼』、『忌み仔』。古来から、悪魔を祓うには火を使うのだと信じられていたから、梓をいたぶる為に炎が使われたのも、忌々しくも自然な流れだった。様々な迫害と拷問を受け、手足を炙られ、炎と煙の中に閉じ込められ――
だからこそ、それを恐れていた。今や梓は傷つかぬ鋼のような肉体と心を纏うが、記憶の奥、まだ柔らかかった肌に刻まれた火傷の記憶が、彼の恐れをかき立てる。
――だが、それと向き合う。記憶の中で今も尚燃え盛る、災禍の焔を宵皇へ滾らせる。かつての幼き頃、魔女を焼く炎だと差し向けられたそれを。今、ただ人々を守る、そのために――記憶の封印から解き放つ!!
宵皇が脈動し、峰のマイクロ・ヴァンガード・ブースターに紅い光が点る。宵の皇と名付けられた刃は、彼の痛苦の記憶たる炎を食らいつくし、ねじ臥せ、魔王の力の一つの一つへ変える。
――恐れることはなにもない。
一瞬の静寂を挟み、地を蹴ると、梓は宵皇を振るった。
峰から獄炎が吹き出し、想像を絶する出力で剣閃を加速する。縮地したかのように敵の前に現れたかと思えば、その身体を輪切りにして行き過ぎ、ばらけたボディが地面に落ちる前に更に三体を斬り伏せる。炎の荒嵐狂い舞う! 包囲するように十数体が彼の回りから迫るも、間合いに入る前に梓は身を捌き斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃ッ!! 飛翔赫閃『絶華』!! 幾何学模様を描いて飛んだ赫奕の飛閃が、刃届かぬはずの間合いから次々とダスト・ナーガらを斬り裂き解体する!!
崩れ落ちていく敵も、その向こうから来る敵も。その命、心、動いていたはずの動力を奪う罪の重さも。剣を振るうその意味も。すべてを背負い、血振りをするように宵皇を一振り。
「――来い。もう、誰も殺させはしない」
なおも押し寄せる敵の群れを前に、梓は踏み出す。
進まなくてはならぬ。預けられた、背負ったものが背にあるのだ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『アームド・サイコブレイカー』
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POW : メタル・クラッシャー
【超念動力を帯びた巨腕】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : ラックイーター
【幸運収奪の超能力】を解放し、戦場の敵全員の【生命力】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ : ライトニング・カリギュラ
戦場内に【炸裂する稲妻の鎖】を放ち、命中した対象全員の行動を自在に操れる。ただし、13秒ごとに自身の寿命を削る。
イラスト:とのと
👑11
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●神託をへし折れ
「なんだァ? おいおい、話が違うぜ。我が社の最新鋭オートボットとやらが仕事を片付けといてくれるんじゃあなかったのかよ?」
「邪魔が入っているようだな。それも複数……」
「『手こずるかもしれん』とは上層部からも聞いていた。それ故のダスト・ナーガ七〇〇機からの投入、物量による鏖殺作戦――だが」
上層階から降りるリフトの中で、話し声が飛び交う。
「失敗した、だろ? 正確には失敗しかけてる、だ。虎の子のオートボットが全滅じゃあ、案件担当はケジメ待ったなしだろうな。 やれやれ、こういう案件ばっかりウチに差し込んでくるのは勘弁してもらえねぇもんかね」
「口が過ぎるぞ。俺達とて所詮は駒。使えなければ捨てられるだけだ。大口を叩く前に存在価値を証明しろ」
「へーへー。……いやしかしよォ、何を危険分子として見込んで、オートボットをそんな大量投入したんだろうな、上層部は。興味があるぜ」
「知らなくていいこともある。……むしろ、知らなくていいことばかりだ。長生きしたければ、余計なことには首を突っ込まないことだな」
「我らが隊長はお堅いこって……」
が、ごォッ!!
リフトの壁面が、デッドエンドの外壁もろとも破砕、崩壊!! 隊長格のサイキッカーが繰り出した拳が、本来出入りに使うはずもない壁面に強引に出入り口をこじ開けたのだ。それは当然、正規の出入り口に仕掛けられているであろう爆発物を警戒してのこと。リフトの中にいたのは、三〇人近い武装サイキッカー――『アームド・サイコブレイカー』の一個小隊、『オラクル』である!
オラクルはセワード・アーセナル社が誇る、渉外部・特殊侵攻チームの一隊である。同社はデッドエンド掃討作戦におけるオートボットの過剰損失を検知、速やかに問題解決のためにオラクルの派遣を決定した。無駄を徹底的に排除した意思決定システムが、この短時間での問題解決行動を可能としている。
斯くしてデッドエンド・南東リフトから三〇近くの、恐るべき神託の兵らが飛び出した。地上五〇メートル地点からまるで躊躇いなく飛び降り、こともなげに着地し、音も無く凄まじい速度でジャンクヤードへと進軍する。彼らに躊躇いはない。立ち塞がるすべてを破壊し、突き進み、制圧を完了するつもりだろう。
――そう思っているのだろう。
『――本命だ。サイキッカー部隊が南東リフトより侵入。座標X228,Y234付近に戦闘に適した平野がある。ジャンクヤードに被害を出さないならそのあたりで戦うのがいいだろう』
きみたちの通信機に通信。シロガネの声だ。ダスト・ナーガを容易に蹴散らした野良犬の牙が、次に欲するのはヤツらの血。くそったれのメガコーポの言いなりになって、人の流した血から生まれるカネをすすり立て生きている暴力の権化どもの命だ。
『おれに出来ることはもう祈ることぐらいだが――頼む、ヤツらを蹴散らしてくれ。そろそろ牙も馴染んできた頃だろう。――あんた達ならやれる。確信がある。……その確信が過信でないと、この戦いで証明してくれ』
交信終了。
猟兵達は武器を構え、シロガネに指定された座標へ駆ける。
一人、また一人。
奇しくも集った猟兵達と、アームド・サイコブレイカーの数は、まさかの同数。
野良犬たちのヴェンデッタは、今ここに終局を迎える……!
敵対象、『アームド・サイコブレイカー』!
グッドラック、イェーガー!!
≫≫≫≫≫MISSION UPDATED.≪≪≪≪≪
【Summary】
◆作戦達成目標
『アームド・サイコブレイカー』の殲滅
◆敵対象
『アームド・サイコブレイカー』×猟兵数
◆敵詳細
セワード・アーセナル特務部隊『オラクル』所属のサイコブレイカー。
全員が重度にサイバーウェアで全身を強化しており、更にサイキックを用いる戦闘の達人。
肥大した前腕の一撃は、いともたやすく地形を変える破壊力を持つ。
極めて戦闘に長けており、任務の為ならばあらゆる手段を講じてくると思われる為、油断なく全力で退所することが推奨される。
◆戦場詳細
ダストエリア『デッドエンド』。
上層都市に降りしきる重金属酸性雨が、排水システムを通り抜けて染み込み、絶えずピチャピチャと滴る、廃棄物だらけの最下層廃棄物街。
捨てられたジャンクが山となり乱立している。人間も少なからず生存しており、ジャンクをくりぬいて建造物として使用していることもしばしば。
昼夜を問わず人工的なライトの光が、煌々とジャンクの山を照らしている。
◆プレイング受付開始日時
本断章上梓と同時
◆プレイング受付終了日時
2022/04/17 23:59:59
シャオロン・リー
呵ッ、随分と集団で、えらく遅いご登場やなあ
お前らがここの大掃除の本命っちゅーわけか
悪いけどあのガラクタどもなぁ、前哨戦には温すぎてあったまりきれてないねん
綺麗に喰らったれへんかったら勘弁なァ!
敵に向けて礫石袋から赤い砂礫をぶちまける
目潰しになれば上々、砂一粒でも「当たれば」ええ
火尖鎗
二振りを万に、炎属性の槍全部一体に向けて一斉発射
敵の攻撃は見切りと爆竜爪・飄の爆炎噴射で躱して激痛耐性と継戦能力で耐える
俺は暴れ竜、暴力と蹂躙の権化!
さあ、蜂の巣んなって貰おうやんか、それでも動くなら
お前らのご自慢の体がゴミクズんなるまで暴れ尽くすだけや
オマエの命があるかぎり、俺の暴力にとことんつきおうてもらうで!
シャルロッテ・ヴェイロン
ドーモ、日ごろのブルシットジョブで精魂すり減らしている暗黒メガコーポのサラリマン=サン。
残念でしたね、お目当てのパーツはすべて私たちの武器の材料として使わせてもらいましたよ?(と、さりげなく【挑発】)。
ここでUC発動、【弾幕】系STGの主人公キャラに変身しましょう。
で、敵の弾劇を【野生の勘・第六感】で【見切り】回避しつつ、【ATTACK COMMAND(破壊【属性攻撃】】を撃ちまくっていきましょう(【先制攻撃・誘導弾・2回攻撃・一斉発射・乱れ撃ち・制圧射撃】)。
あとは【空中戦】仕掛けつつ、【時間稼ぎ】して寿命削らせるのもやってみましょうか。
※アドリブ・連携歓迎
●PRIMALY ATTACK
音もなく駆ける敵集団――『オラクル』らであったが、彼らがいかに精強だとて、それを黙って徹す猟兵などいはしない。
集まった二十数名の猟兵達のうち、真っ先に前線に到達したのはシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)であった。色付きの風となって駆け抜けるオラクルの前に突如として立ち塞がり、ノートパソコンをくるくると指の先で、皿回しめいてスピンさせる。
『ンだぁ……?』
『総員警戒。敵対象に登録しろ。迅速に撃滅する』
『『『了解』』』
敵の間で、音声を伴わぬ秘匿チャンネルでの高速メッセージ通信が行き交う。それを思考加速電脳モジュール『馳雪』の演算能力でのぞき見ながら、シャルロッテは口の端を上げて嘲笑った。
「ドーモ、日ごろのブルシットジョブで精魂すり減らしている暗黒メガコーポのサラリマン=サン。残念でしたね、お目当てのパーツはすべて私たちの武器の材料として使わせてもらいましたよ?」
「なんだと……?」
「この先にあなたたちの求めるものなんて、もう残っていないと言っているんです」
言いながらノートパソコンをトス。光の粒子になって電脳空間に分解収納されるノートパソコンを尻目に、シャルロッテは踵を打って一度ターン。彼女の衣服にワイヤーフレームめいたラインが走り、同時にテクスチャが張られて電脳的再構築。スカートの裾が落ち着く頃には、その姿は弾幕系シューティングゲームの主人公めいた姿に変身している。
「鬼さんこちら」
同時、シャルロッテは地を蹴り飛翔! 垂直離着陸機を上回る上層速度で急上昇! ユーベルコード、『バトルキャラクターズ・アバターチェンジ』の発動だ。今のシャルロッテの姿と言えば、跨がるは箒、被る帽子はとんがり帽、星を散らして空を飛ぶその様は、どこからどう見ても普通の魔法使いの出で立ちだ。
「全員撃て!! 叩き落とせ!!」
「言われなくてもやってらァ!!」
ばんっ、ばばばばばばばばばばばンッ!! 立て続けの破裂音と同時にサイコブレイカー達の手先から、紅い雷の鎖が迸った。『ライトニング・カリギュラ』である! 鎖の命中した相手を電脳的・念動的に支配し、その動きを自在に操ることを可能とする念動縛鎖だ。殺傷能力こそないものの当たれば脅威となるそれを、空中に舞い上がったシャルロッテは軽やかに避けながら馳雪に『ATTACK COMMAND』を入力。
「スコアアタックといきましょうか。ボムは縛って相手してあげますよ」
箒の端から光の粒子を散らしながらシャルロッテは加速、鎖の間をヨーイングとバレルロールの連発で、錐揉み回転しながら回避する。何と言う運動性か、空中に次々と描きだした魔法陣から繰り出すマジック・ミサイル――これこそがこの姿における攻性プログラム、ATTACK COMMAND――を乱射、乱射、乱射! 空中で次々とライトニング・カリギュラの赤い鎖を叩き落とし、綺羅星めいた爆発を巻き起こす!
『視界が悪い! 漫然と鎖を撃つな、回避軌道を制限して叩き込め!』
(統率が取れてますね……まとめて相手をするのでは時間稼ぎが精々というところですか)
ちら、とシャルロッテは後方を見る。他の猟兵達が来るまであと一分――
いや。違う。シャルロッテの表情が動いた。彼女は不敵に笑う。
一人。圧倒的な高速で後方から来る猟兵がいる!
「呵ッ、随分と集団で、えらく遅いご登場やなあ――お前らがここの大掃除の本命っちゅーわけかァ!!」
赤き竜の翼を羽撃かせ、両手に二振りの槍を握り、飛来する影一つあり! 呵々大笑する男の名はシャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)――万夫不倒の暴れ竜である!
「悪いけどあのガラクタどもなぁ、前哨戦には温すぎてあったまりきれてないねん。綺麗に喰らったれへんかったら勘弁なァ!」
「戯れ言を……」
飛来したシャオロン目掛け、地上からライトニング・カリギュラの嵐が吹く。弾幕シューティングゲームもかくやという密度の赤き鎖の嵐を、旋風めいて回り飛びながら次々とシャルロッテが落とす、落とす、落とす!
「援護します。火力役を頼みますね」
「任しとけやァ!!」
互いに何者か分からずとも、一目見れば互いの得意は分かるもの。猟兵とはそういう生き物だ。
赤雷めいた鎖とマジックミサイルがぶつかり合い、絶えず煌めくような爆発に満ちた上空から、シャオロンは敵に向け、礫石袋から赤い砂礫をぶちまけた。石粒と馬鹿にする事なかれ、この爆音と輝光満ちる戦場で、投擲される石など最早、察知できぬ。シャオロンの膂力を乗せて放たれた石の礫の雨が地に注ぎ、数体のサイコブレイカーの額を、身体を打った。
巻き込めたのは数体程度。だがそれでいい。
「ッ……!」
「見えたで、そこかァッ!!」
ぼ、がぁあぅッ!! 『爆竜爪・飄』の石突が火を噴き、シャオロンの身体を急加速! 彼はノーモーションから、敵目掛けての急降下に入る! 鋸刃めいたジグザグの軌道、だというのに恐ろしく速い……!
「俺は暴れ竜、暴力と蹂躙の権化! さぁさぁ、蜂の巣んなって貰おうやんか――それでも動くなら、お前らのご自慢の体がゴミクズんなるまで暴れ尽くすだけや!!」
「狂人が
……!!」
石に打たれた四体のうち、二体は即座に散開するように逃げた。身体に当たっただけの浅手か。だがもう二体、顔に着弾した連中の立ち直りが遅い。そこを穿つ。
シャオロンはそのまま急降下、鉤爪を振るう龍の如くに二槍をバックスイング。
繰り出す一槍は一〇〇〇の突き。更にもう一槍を重ねれば、その火線は万に届く。単なる加算で計れぬこの暴れ竜の無双の槍技は、今竜気を帯びて輝ける火炎の嵐となる!!
「オマエの命があるかぎり、俺の暴力にとことんつきおうてもらうで! 吼えろォ!!『火尖鎗』ッ!!」
爆竜爪・飄の石突きから噴炎、加速しながらの刺突が伸びる火炎の槍となる。その穂先はぶれ、一撃にして一〇撃を描くかのよう。放った突きを引き戻すその瞬間、爆竜爪・飄の穂先から渦を巻くように焔が爆ぜ、シャオロンの左半身をキックバック。それを繰り出す右手の勢いに乗せる。『閃龍牙』が同様に一〇閃を描くなり、またも爆竜爪の石突が爆ぜ穂先を推進、一サイクルで二〇数撃を演ずる槍の嵐が一秒に何回か、数えるのも阿呆らしい。――斯くして描かれるは、火炎閃の瀑布激流!!
「う、う、うおぉおぉっ!?」
サイコブレイカーらとて歴戦のサイキッカーだ。その肥大化した前腕は敵全てを叩き潰す性能を備えている。しかし、その拳を以てしてなお――暴れ竜は止められないのだ。超念動力を纏う間もなく繰り出した拳が一瞬で万の槍に貫かれ蜂の巣になり、溶融して吹き飛ぶ。
「「ぐうあああああッ?!」」
吹き飛ぶ二体を追うように膝を縮めたシャオロンが跳び、そして、宙を飛ぶシャルロッテが手を構える。
シャオロンが突き出した爆竜爪の穂先が、シャルロッテが繰り出したATTACK COMMANDのレーザーが、全く同時に敵を貫き、――最早声もなく、壮絶、爆発四散!!
神託の剣を野良犬の牙が打ち砕いた、それが最初の瞬間であった。
――その爆光が、反撃のきざはしとなる!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユキ・パンザマスト
◎
その祈り、預かりますよ
シロガネさん
神頼みよりも確かな我等が
勝利で応えましょうさ
ああ、おいでなすった
平気で人を踏み荒らす
“神託”だなんて御大層なもんです
喉笛をけものに喰いつかれても
文句は言いなさんなよ
【彼岸越境】
掌の椿刻印は未だお休み
空中機動、平野の狩場を高く飛ぶ
上空から獣が狙う、人の武器を携えて
早業、連中よりも疾くハッキングアンカー弾を撃ち込め
捕縛、マヒ攻撃、サイバーウェアに電子干渉を仕掛けて動きを封じろ
稲妻の鎖が飛んでくるならば
情報収集、軌道を読んでかわせ
花弁も目眩ます
爆破、範囲攻撃!
仕上げは炸裂弾だ!
神託という名の暴力を
地に叩き落とすように
ありったけをぶち込め!
●神託を地に落とせ
――ああ、お出でなすった!
平気で人を踏み荒らし、笑って涙を踏み躙り、人の死と血さえも金に換える畜生共が!
「“神託”だなんて御大層なもんです。喉笛をけものに喰いつかれても――文句は言いなさんなよ」
ユキ・パンザマスト(暮れ方に咲う・f02035)が、蝙蝠の翼を羽ばたかせて空を翔る。視線の先では既に先行した猟兵がトップアタックをかけ、二体ばかりを仕留めたところ。しかし敵はそれを一顧だにせず既に散開! 各々が任務を果たすために駆けている!
「は。なるほど仕事のできる連中の動きです。――けれど、」
そんなことはどうでもいい。どうだっていい。ここにしにきたことは一つだけ。あのシロガネと名乗った野良犬の牙を、彼が生きていることを。彼が復讐心を抱え、たった今、メガコーポを相手に孤独な戦いを始めたことを――奴らに見せつけてやる。
「――その祈り、預かりますよ、シロガネさん。神頼みよりも確かな我等が、勝利で応えましょうさ」
背中に負った銀の祈りは軽くはない。けれど、けっして応えられぬ重さではない!
ユキは背中の蝙蝠の翼に、更なる力を注ぎ込む。――ユーベルコード、『彼岸越境』! 彼女は狩り場空中を更に加速、もはや猛禽めいた高速で滑空しながら、ガンベルトより『禍時』を抜く。
敵は既に隊列を放棄している。そうなれば、もうどれを狙っても大差はない。
上空から獣が狙う。ヒトの力を、銀の牙を携えて。
ユキは相対距離三〇メートルのサイコブレイカーを狙い、高度を下げて相対距離を縮めながら禍時を連射した。一息に六連射!
「ッ!!」
しかし敵の反応も早い。『撃たれてから』反応した。六発の銃弾はいずれも致命部位に着弾する前に巨大な前腕に防がれ、その表層で停弾する!
「クソッ、邪魔立てするかよ!」
「もうしました」
「……!?」
しかし策略はユキの方が更に上! 既に突き刺さった銃弾はハッキングアンカー弾だ。敵のサイバーウェア内に放映端末からハッキングを仕掛け、敵部隊の高速メッセージ通信から切り離し、身体能力増幅と神経速度増幅を制限する。これで連携も出来まい。
「チッ……!」
舌打ちをしながら紅の雷鎖、ライトニング・カリギュラを放ってユキを撃ち落とそうとする敵個体を欺くように、ユキは椿の花吹雪を吹き荒れさせる。どこからともなく荒れる花吹雪は、彼岸越境の能力の一形態。花嵐に抱かれるように消えては、花舞うあわいよりするりと飛び出る、そのさまはまるで黄昏時の街に伸びては溶ける影めいていた。
射出された雷の鎖の挙動を読み、掻い潜り、ユキはスイングアウトした禍時のシリンダーに六発の炸裂弾を籠める。この六発はユキの怒り。――光る刃の耀きは、シロガネの怒りだ!!
「お前たちの向かう先は一つ。彼岸の川の、底の底ですよ」
ユキは謳いながら急降下。椿の花吹雪の間をまるで飛び渡るように出でては消えながら、己の加速も乗せ、照門の間に捉えた敵を照星で指し示す。
「速いッ……クソ!!」
サイコブレイカーがハッキングを撥ね除け、身体能力増幅と神経速度増幅をアクティブに戻した瞬間にはもう遅い。そこは既にユキの射程内だ。
防いだところで、喰い殺してみせる。
ユキはトリガーを引いた。飢えた銀色の撃鉄が、回転するシリンダーの弾に舌鼓を打ち、瞬く間に六発を啄む。ほぼ一つに聞こえる銃声。
ユキの落下エネルギー、加速エネルギーを乗せ、六発の〇・三五七インチ圧縮形成特殊炸薬弾が、サイコブレイカーをブチ抜くように放たれた。
「――!!」
声無く吼えるサイコブレイカー。その右拳で、あらゆる敵を殺してきた。
今度もそうするつもりだった。――だが、ヒトに獣は殺せない。
力の限り繰り出された右拳を、立て続けに着弾した炸裂弾が拉げさせ砕く。爆ぜた右腕、仰け反るサイコブレイカー。彼の目が最後に映したのは、逢禍時の銀の牙。
ダガーに変形させた禍時の刃が、擦れ違いざまに敵の喉笛を食い破った。噴水の如く血を吹く。地面を踵で削り散らし制動するユキ。
血振りをした銀の牙の先で、重金属酸性雨の粒が、弾けて、散った。
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
◎
あなたたちも所詮は駒…どれだけ始末しようと企業本体が受けるダメージは微々たるものでしょう。
それでも、地道なゴミ掃除が明日の正義に繋がることも事実であり…話しが長くなりましたね。簡潔に纏めます。
一撃です。かかってきなさい。
礼儀作法とダンス…私の得意な2つの技能は人の立ち姿や姿勢に大きな影響を持つ技能です。故に私は敵の立ち姿から相手がこれまでの人生で身につけた動きにおける癖や大事な力点をなんとなく見切ることができます。
それにより、相手の攻撃の起こりを感じた瞬間、鬼神楽による高速抜刀術を放ち、敵を切り捨てます。
鬼神楽…一瞬の舞を、復讐の鬼に捧げます。
…なんて、格好をつけすぎた台詞でしたかね。
●鬼が舞う
疾るサイコブレイカーと次々交戦を始める猟兵達。
その中の一角。突如として立ち塞がった旧式女性警察官制服の少女に、サイコブレイカーが声を上げる。
「なんだァ、ガキが。いっちょ前に邪魔しようってのか?」
「そうでないように見えるのなら、その立派な目玉を取り替えてきた方がいいですね。ヒトの部品が安い街です。この上は」
ガキ、と呼ばれた警察官制服の少女は、手にした物々しいカタナのセーフティ・ロックを外した。鞘に内蔵された電磁石がバッテリーからの送電を受け待機状態に。低い唸りを発するそれは、仕組みの判然としない大型の刀剣だ。見た目からではどのような機能があるのか、皆目分からぬ。
「舐めた口を利くじゃあねえか。そのけったいな武器で、先に送ったオートボット共を始末したってのか?」
「そうです。巨悪の撒き散らしたゴミ掃除というやつですね。――そう、あなたたちも所詮は駒……どれだけ始末しようと企業本体が受けるダメージは微々たるものでしょう」
少女――新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は、訥々と喋りながら、ザッ、と音を立てて左足を引いた。敵に右肩から背までを見せる程に身体を捲き、右手がカタナのグリップを、左手が鞘のフレーム兼グリップと思しき部分を握る。
「アァ? 人を指してコマたぁ言ってくれるじゃねえか。よっぽど死にてぇらしいなァ!!」
サイコブレイカーの両腕が超念動力を帯び、天井からのライトを不自然に乱反射して、歪んだように光る。極度の力場集中だ。その気になれば物理弾はおろか、プラズマ弾、レーザー兵器の類まで偏向して弾きかねぬ、無双にして剛健たる拳。オラクル制式装備、『メタルクラッシャー』。
「いえ。まだ死ねません。巨悪の掃除が終わっていませんので。――それに、地道なゴミ掃除が明日の正義に繋がることも事実であり……ああ、話が長くなりましたね。簡潔に纏めます」
にこたまは深く呼吸した。心が、視界が、今鞘の中に眠っている刃と同質のものになっていく。引き絞られ、熱され、叩かれ、鍛え上げられた刃と同じ。研ぎ澄まされたその境地、是をして人は明鏡止水と呼ぶ。
「一撃です。かかってきなさい」
怒りが頂点に達したように、サイコブレイカーの表情が歪んだ。
「ナ」
踏み込んでくる。凄まじいスピードだ。だがにこたまは今や全ての集中力を敵の動きと自身の身体制御に注ぎ込んでいる。視える。
「メ」
見るべきは攻撃の出がかり。攻撃をするその瞬間にこそ後の先の好機あり。人は攻撃を仕掛けるとき、己を守ることは考えられない。
「や」
にこたまが修めた礼儀作法と舞踊の素養は、人の立ち姿や姿勢に大きな影響を持つ。深い修養の結果、にこたまは敵の動きから、人生で身につけた動きにおける癖や、重視する力点を見抜くことが出来る。
「が」
敵が腕を振り上げようとしたその瞬間に攻撃の兆しを見た。にこたまは鞘のトリガーを引く。激発。鞘内で膨張した燃焼ガスが、一瞬で刀身を超音速に加速。それを電磁加速により二段加速する。正気の沙汰ではない。
「っ」
視える訳がない。こんなものを振れる人間がいる訳がないのだから。
だが、にこたまは己の力を乗せ、振った。敵の拳が降る前に。
助走無しからの最高速。只一閃。それで充分。銀閃一つ描き、敵の脇を抜けた。
ジャンクを蹴立て、コンパスで出鱈目な円を描くように八回転してようやく停止。
「……て
……????」
にこたまは、背にした敵を一顧だにせず血振りをした。
その背で、サイコブレイカーが、二つにずれて血の海に沈む。
「――『鬼神楽』。一瞬の舞を、復讐の鬼に捧げます……なんて、格好をつけすぎた台詞でしたかね」
――超音速射出抜刀術、『鬼神楽』。
悪よ恐れよ。お前が、納刀の音を聞くことはない。
大成功
🔵🔵🔵
乙葉・あいね
さあ、仇討ちもここが正念場なのです!
覚悟するのです!
見るからに打撃に自信がありそうだから、真正面から打ち合うのは避けるのです
ある程度距離をとって、『魔剣の影』を呼び出しては撃ち込んでけん制しつつ、隙を見つけたら『戦槍』を投擲し、残像を残すほどの速度で切り込み、UCでの一閃を仕掛けるのです!
勿論さっきと同じようにそれだけで勝負は決まらないのは承知の上なのです
それでもいきなり傷もなしに鎧だけ剥がされて揺らがない事はないはずです
その刹那に間髪入れず周囲に展開した『魔剣の影』で追撃を加えて、そして……ここが勝負どころなのです!『天衝』に思いっきり焔を込め、鎧を無視した焔剣の一撃でとどめなのです!
静寂・拝人
Lucなんて所詮は不確かなもんだがサイキッカーには何らかの影響はあるかも知れない。
なら、それは封じさせてもらう。
【指定UC】
本体に効くは別としてその高性能な装備が仇にってなことくらいにはなるじゃ無いか?
UCを封じる事が出来たら本格的な攻撃だ『餓狼』をありがたく使わせてもらう。
先ほども使ったがこれはすげぇ武器だ。
ならそれに合うだけの働きを。
俺だけでは無理でも他の猟兵達がやってくれるさ。
自分の分のノルマをこなせたら【小休止】と行くか。
●赫奕一閃
ぎぎんッ、ぎん、がぎんッ!
空中に影の剣が弾けて散る。
「無駄無駄ァッ! その程度の火力で俺たちを止められるかよ!」
「……!」
乙葉・あいね(白と黒の刃・f26701)は、迫る二体を前に更に『魔剣の影』を召喚、嵐の如く投射するが、敵はそれを巨大な前腕で、虫でも払うかのようにして直進してくる。
あいねの作戦は、距離を取って『魔剣の影』を撃ち込み、見つけた隙をこじ開けて叩くというものだった。見るからに白兵戦、特に打撃に適正のある相手だ、まともに打ち合うのは愚の骨頂。あいねの発想は戦術的に至極当然だったと言える。
しかし当然この作戦は一対一で実行するのが前提、よしんば一対一に持ち込めたところで、ユーベルコードを使わずして優位に立つことは困難だったろう。それはあいねも理解していたし、その上で『戦槍』を用いた二の策も用意していた。
状況が悪い。
二対一ではこの作戦は実現不可能に近い。抑え込まなければならない対手は二倍に増え、火力は据え置きだ。距離を取って戦うはずだったあいねの後退速度よりも、防御しながらとはいえ敵が距離を詰めてくる速度の方が速い。
会敵した瞬間が不運だった。敵が二体一組で動いているところに運悪く行き会ったあいねはそのまま戦闘を開始。当初立てた作戦通りに挑むものの、力負けして追い込まれつつある。
(さすがにさっきと同じように簡単にはいかないとわかってはいましたが……!)
あいねは歯噛みしながらも全力で間合いを取る。このまま退がり続ければ守るべきジャンクヤードに敵を到達させてしまう。しかし踏み止まったところで二体の手練れを相手にどこまでやれるかは分からない。負ければ、死ぬ。
並の人間ならば、否、ヤドリガミだろうとも、死の、消滅の恐怖は足を竦ませる。そこから逃れたくなる気持ちを、誰しもが捨てきれぬ。
……しかし。
(――確証のない勝負でも、背負ったものが、約束があるのです!)
負けない。猟兵達はきっと負けないと言って、シロガネに勝利を約束した。
故にこそ、あいねは地に杭めいて踵を打ち、停止。二刀、『陰陽の双星』を双抜刀して交差、構えを取る!
「鬼ごっこは終いかァ!?」
「覚悟出来てんだなぁ! その意気に免じて一撃で潰してやらぁ!!」
げらげらと笑うサイコブレイカー達。立ち向かうあいねが、捨て身の覚悟で反転攻勢に出たまさにその瞬間!
「いい角度だ。邪魔するぜ」
宙にスパークする01の帯が走った。それは空中投影されたバーチャルキーボードから放たれたクラッキング用の不正コードだ。その巨大な前腕、メタル・クラッシャーが束の間、輝きを喪う!
「ぐうッ!?」
「これは……畜生、クラッキングだ!!」
「ご明察。Luck(幸運)なんて所詮は不確かなもんだが、お前らサイキッカーには何らかの影響があるかも知れない。なら、それは封じさせてもらう」
全くの不意討ちである。横合いのジャンク戦車の影から、敵の攻撃能力を低下させる為の遠隔不正コード注入をかけたのは、静寂・拝人(人生ゲーマー・f36629)である!
真正面から攻撃を掛けては敵のサイキックエナジーの前に霧散させられるのが関の山だが、側撃すれば成功率が上がると見込んでの奇襲だ!
「本番に遅れて悪かったな。遅参だが、ジャンク屋達の弔い合戦だ。俺もしっかり仕事させてもらうぜ……そこの猟兵、加勢するぞ! そいつが効いている間は、敵は幸運収奪の能力を使えないはずだ!」
「はい! さあ、仇討ちもここが正念場なのです! 覚悟するのです……!」
突然の援護に、あいねは瞳により強い光を宿しながら『戦槍』を投擲した。凄まじい速度で唸り飛んだ槍を一体が力任せに弾き飛ばすが、それにより体勢を崩す。もう一体には無数の『魔剣の影』を投射、投射、投射! 敵の動きを止め、双刀を今一度異界剣『キマイラフューチャー』に変形させる!
あいねは、残像を残すほどの速度で踏み込んだ。擦れ違いざまに異界剣を叩き込めば、敵が装備しているタクティカル・アサルト・サイキックスーツと、各所のアーマーが弾けるように吹き飛ぶ。敵の装備を剥ぎ取る異界剣の能力が、サイコブレイカーの装備を破壊したのだ!
「「な、なんだとォ――ッ!?」」
攻撃に耐えるつもりで身構えていた二体のサイコブレイカーが驚愕する。ダメージもなしに、装甲だけが剥がされるという異常事態だ。動揺しないはずがない。そこに、
「お兄さん!」
「了解。――俺だけでは無理でも、他の猟兵の力を借りりゃ、出来ない事なんてない」
拝人が新たなブラスターカートリッジを統合型マルチプルブラスターシステム『餓狼』に装填! 十二のビットに展開命令を与えて、サイコブレイカーらへと飛翔させ、
「お前らが奪った命が、ブラスターになって帰ってきたぜ。こいつは飢えた狼の牙――『餓狼』だ。せいぜい、死ぬまでたっぷり味わいな」
皮肉を口の端に引っ掛けて、トリガーを引く!!
ガォッ!! ガガガガガガガガガォンッ!! 熱で爆ぜた空気による独特の射撃音を奏で、餓狼が吼える!! 連射される餓狼のブラスターを、その軌道上に回り込んだリフレクター・ビットが受け止め次々と反射!! リアルタイムに母艦である餓狼本体、および拝人自身からの脳波情報を受信して高速機動する十二のリフレクター・ビットが、直線射撃しか出来ないはずのブラスター弾を超精密誘導弾へと変える。
正面から食い込むブラスター弾、そして外れて背中に抜けるはずが背中からなぜか突き刺さるブラスター弾。受け止めるべき装甲もなくまともに数十発もブラスター弾を食らえば、いかにオラクルの精鋭サイコブレイカーといえども大ダメージは免れぬ!
傷口から血の蒸気を上げながらよろめき、サイコブレイカー達は口々に怨嗟の声を吐く。
「何を……訳の分からねぇことを……!」
「この、ジャンクヤードには、ゴミしかねぇだろうが……! 俺たちが一体何をしたってんだ、ゴミを掃除しに来ただけだろう……がァ……!」
「わからないだろうな。……そう。わからないから負けるんだ。お前らは」
オーバーヒート警告。餓狼のトリガーから指を離し、拝人は電子タバコを咥える。
「お前らがゴミと呼んだもの。その怒りの温度も知らないから」
冷めた口調でいう拝人の声に被さるように、作り物の空を灼くような巨大な火柱が立ち上がった。それは収斂し、やがて三メートルほどの焔の大剣の形状を成す。――加速火焔噴流器『天衝』。持ち手は当然、あいねだ。その赤い瞳が、焔を映し込んでなお赤く輝く!!
「はあああああああああッ!!」
声高く。踏み込みは速く。太刀筋は冴え、剣は太陽も斯くやと熱く。
もはや装甲の有無さえも関係ない。サイコブレイカーらがガードを上げる間もなく、踏み込んだあいねが赫奕一閃、二体を真一文字に斬り裂いた。
――爆発、四散!!
暴走したサイキックエナジーの爆発に目を眇めながら、拝人は電子タバコの煙を吐く。
持ち分はこれで終わり。今しばらく、戦いの趨勢を見守るとしよう――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
蔡・葉青
◎◎◎◎
良い仕事には良い報酬を渡すのがビジネスってものだ
その期待には応えなければね
過信でも夢想でもなく現実だということを
ジャンクの影から気配を消して早業*で接近し
軽業*で素早く間合いを詰める
これまでに蓄積した戦闘知識*で
三・四合ほど隙や弱点を伺うため様子見
足元は常に安定した場所を確保しよう
隙がわかれば不意打ち*を仕掛けて体勢を崩し*、
白檀で早業*による速攻を狙おう
あの厄介な腕には捕まりたくないので
両端の刃ではじく…いや、はじく前に斬られるのが先か
自分に割り当たった分が片付いたなら他へ加勢に向かう
さて、ミスター・シロガネ
お代分にはなっただろうか
●烈瞬刃
「……!!」
超高速でジャンクヤードへ接近していた一体のサイコブレイカーが、突如として腕を上げ、側頭部をカバーする。ガードの動き。そこに全く唐突に放たれた、白いカーボン補強の短杖の打突がブチ当たり、まるで鐘を打つような音が周囲に響いた。姿勢を崩しながらも踏み止まり、サイコブレイカーは滑りながら制動する。
対照的に軽やかに地に降り立つは襲撃者。ジャンクの影から、気配を殺した襲撃者が電光石火の早業で奇襲を掛けたのは――猟兵、蔡・葉青(天狼星・f20404)である。
「おやいい音。中身のない薄っぺらな拳だが、鐘の代わりくらいにはなるらしい」
襲撃者は翠緑の瞳を皮肉に顰め、揶揄するように言う。
「貴様、何者だ」
「名乗るほどのものじゃない。――ただここで、先ほど大きな取引をしたものさ。良い仕事には良い報酬を渡すのがビジネスってものだ――彼の期待には応えなければね。示さねば。これは過信でも夢想でもなく、現実だということを」
「訳のわからん世迷い言を。どうやら、余程死にたいと見える。ならば特急便を用意してやる。セワード・アーセナルに楯突いたことを、後悔しながら死んでいけ」
がぉンッ!! 巨大な両拳を打ち合わせ、サイコブレイカーが構えを取る。葉青は口端にアイロニカルな笑みを引っ掛け、短杖――『白檀』を低く構えた。足場は平坦。シロガネの言ったとおり、この周辺は足場も安定し戦闘向きだ。僥倖。条件に文句はない。
がら、と横合いに積まれたジャンクが崩れたのを合図にしたように、両者、踏み込む。
先手はサイコブレイカー、上段からの打ち下ろし。葉青はこれを勁を巡らせた白檀で受け流し回避、身体を廻した遠心力を白檀の一端に乗せて薙ぎ払いを叩き込むが、これは軽々と受け止められる。まるで岩を叩いたようだ。手が痺れ掛けるのを堪える。掴みに来るのをバック転で回避すれば、横から薙ぎ飛ばすよな平手打ちが来る。これを背面跳びで回避。空中で身を丸めて廻る葉青を、真正面から叩き潰すように右拳が来る!
(全く厄介な腕だ。捕まりたくはないね)
心の中で舌を出しながら、葉青は白檀を握って強く念じる。
最後だ。全開で煌めけ。
――その瞬間、短杖の両端に、蛍光翠に煌めく刃が二対現出する! これぞ白檀、最大出力! 突然のリーチの変化に敵が対応する前に、葉青は足を伸ばし身体を捻り、体操選手めいた体捌きを見せる。彼女の身体が放られた棒きれめいて廻るその軌跡を追うように、プラズマの双頭剣となった白檀の光が疾る!!
「なんだとォッ?!」
斬斬斬斬斬ッ!! 敵の拳が粗みじんになり空中で崩壊爆発! 爆発にたたらを踏むサイコブレイカーの前で山猫めいてしなやかに着地した葉青。
着地のために曲げた膝が、そのまま踏み込みの予備動作となる。
声もなく葉青は踏み込んだ。最大出力状態の白檀は二分しか連続展開できぬ。だが、それで充分。二つの腕があるならば、絶えず来る波状攻撃が攻撃の隙を与えてくれぬ。しかし、今や敵は隻腕。
「貴様ァッ……!」
念動力の全てを集中させたか、空気を歪めて輝かせる凄まじき左拳が放たれる。しかし必殺のはずの一撃も、当たらなければ絵に描いた餅。そして、来るとわかっているカウンター気味の一撃など、葉青が備えぬ訳もない。身体を沈め、間髪潜るように避け、
「呀ァァァァァァァァアッ!!」
白檀を回旋させ、まさに光のプロペラめいて敵の全身を斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬るッ!! 舞うかの如くに周りながら白檀で描く光の軌道の悉くが、サイコブレイカーの致命部位を斬り裂き灼き尽くす!! まるでミキサーに突っ込まれた野菜めいて滅多斬りにされたサイコブレイカーは、声を発することすらかなわず爆発四散した。
爆光の中から、ざ、と葉青は踏み出す。白檀のプラズマ刃を解除し、ジャンクヤード中央の方角を一瞥。
「――さて、ミスター・シロガネ。お代分にはなっただろうかな」
葉青は、微かに笑って、呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
ユリコ・スターズ
●◎
POW判定
・行動
通常のブラスター射撃で敵の反応、装甲などを確認しながら
辺りのジャンクの山などを遮蔽にして移動しながら応戦する
戦いながら声を掛けて相手の嗜好や癖を分析しつつ
他の邪魔の入らない場所まで移動し終えたら
カートリッジを排莢してリボルバーに特殊弾をセット
6発全てを瞬時に相手に叩き込み追加効果の炎で敵を焼き尽くす
・セリフ
お前たちは大部隊を派遣してまでなぜこれほどの非道を働く!
ここの住人に報酬を支払って発掘品を買い上げたほうが
よほど経済的で効率が良いのではないか?
(返答を聞いてから)
そうか、つまり話し合いの余地はなく
こちらも遠慮する必要はないということだな!
・UC演出
通常のブラスターでは相手の念動障壁を貫けないな
……いよいよこいつの出番って訳だ
(ガンベルトから赤い薬莢の弾丸を回転弾倉に一発づつ籠め、
全6発を装填する)
(UC使用)
お前に裁きをくれてやる、断罪の炎で焼かれるがいい!
You are Guilty!
(ファニングで瞬時に全弾発射して敵に六芒星の形を描いて着弾させる)
●正義の温度
多数の車、戦車、それに類する車両の残骸が並んだ区域で、ユリコ・スターズ(シェリフズスター・f36568)はジャンクの間を駆け抜けながら相対した敵手にプラズマ弾を連続で叩き込む。グローブを嵌めた腕部サイバーウェア――『サイバー・クイックドロウアーム』による高速ファニング。左手がブレたように霞むたび、バースト射撃めいて数発のプラズマ弾が固まって飛翔する。
「ケハハッ!! その程度のブラスターガンがァ、俺たち『オラクル』に通用すると思ったかァ?! ナメられたもんだぁぁああ!!」
筋骨隆々のサイコブレイカーが、念動障壁を纏わせた両拳で軽々とプラズマ弾を弾き飛ばす。
ハイヴェロシティ・プラズマSAAロングコルトカートリッジから出力される高速プラズマ弾でさえ、敵が展開する念動障壁の強度を侵徹できぬ。
(敵の装甲強度はかなりのものだな……しかし、ガードしているということは、直接叩き込めばダメージにはなりうるか)
だが、隙を狙って叩き込もうにも、敵はサイキックにより増幅した身体能力で超高速で接近してくる。牽制の弾丸を撃ち続けなければ距離が詰まり、直接の打撃が来るだろう。
そうなればスクラップになるのは自分の腕だ。サイバー・クイックドロウアームは飽くまで銃の早撃ちに特化したサイバーウェアだ。白兵戦になれば勝ち目がないのは分かりきっている
。
カートリッジエネルギー残量ゼロのアラートと同時に、ユリコはローディングゲートを開けてカートリッジを排出、新しいプラズマカートリッジを装填して再度嵐の如きプラズマ弾を見舞う。
「お前たちは大部隊を派遣してまでなぜこれほどの非道を働く! ここの住人に報酬を支払って発掘品を買い上げたほうがよほど経済的で効率が良いのではないか?」
「馬鹿か? 馬鹿なんだろう、手前ェ! なんで俺たちメガコーポの人間が、ゴミ共に金を払わなきゃならん? ゴミの中に宝があると分かったんだ、それをリサイクルしに来てやってるだけだぜ。金を貰いてぇぐらいだなぁ!」
ユリコの台詞に返るのは、このジャンクヤードに住まう全ての命を路傍の石程度にしか考えていないことが如実にわかる台詞だった。ニヤニヤと粘ついた笑いを浮かべながら、サイコブレイカーは続ける。
「手前ェらはメガコーポを敵に回したんだよ。今更命乞いなんぞしても遅いぜぇ!!」
「――そうか、つまり話し合いの余地はなく……こちらも遠慮する必要はないということだな!! お前のような下衆には、地獄よりも熱い断罪の焔が似合いだッ!!」
ユリコは決然と、怒りを込めて言った。車のジャンクを蹴って空中を無手側転しながらのガトリング・ファニング! 一つのカートリッジから複数発のプラズマ弾を射出できるプラズマSAAロングコルトカートリッジでこそ成せる技だ。もはや連射されるプラズマ弾はマシンガンめいた連射密度で敵に炸裂する!
「そいつが断罪の焔とやらかよ! 風呂より温いぜ、雑魚がァ!」
サイコブレイカーは左手でプラズマ弾を弾き飛ばしながらユリコを猛追。右の平手で横合いのジャンク車両をまるでラジコンかなにかのように、ユリコ目掛け薙ぎ飛ばす!
ユリコは、全集中力をその一瞬に掛けた。すっ飛んできたジャンク車両を潜れば、接近してきた敵と鉢合わせるだろう。……ならば、あれを利用して更に距離を取る!
跳躍。力場障壁『オートディフェンサー』をマニュアルで足の裏に偏向発動、飛んできた車両のルーフを蹴飛ばし、後方に跳ぶ!
「ケッ、曲芸が得意らしいな! だが空中じゃあ身動きが取れまい!! 手前ェを操って他の連中と同士討ちさせてやるよ!」
吐き捨てながらサイコブレイカーが赤き念動雷鎖を拳に纏い付かせ、射出しようとしたその刹那。ユリコは空中で既に廃莢を終わらせている。ガンベルトから抜き出した六発の特殊弾を目にも留まらぬ速度で装填。
「さぁ、喰らいやがれ――!」
「いいや。喰らうのは貴様の方だ」
ローディングゲートを閉鎖。空中で腰だめにしたバントラインスペシャルの銃口が、ぴたりと眼下二十メートル先の敵を睨む。
「お前に裁きをくれてやる、断罪の炎で焼かれるがいい!!」
雷の鎖が放たれる前に、ユリコの左手が消えた。正確には、消えたように見えた。今までのファニングを更に上回る高速連射。六射の銃声が一つに聞こえる。銃口から飛び出るのは――太陽めいて白熱する超高熱エネルギーの塊だ!
「ハッ! 性懲りもなく――」
念動力を集中した両拳でそれを弾かんとするサイコブレイカーのにやけ顔が、次の瞬間に凍り付く。まるでバターにナイフを入れるように、超硬サイキックメタルで造られたサイコブレイカーの両腕を、白熱弾が突き抜けたのだ。灼熱の弾丸はサイコブレイカーの身体に、六芒星を描くように着弾する!!
「――You are Guilty!」
「なっ、がっ、グアアアアアアアアアアアアッ
!?!!?」
ユリコが銃口でテンガロンハットのつばを直した瞬間、サイコブレイカーは断末魔と共に、赤白の火柱となって燃え上がった。『ジャッジメント・ブレイズ』。着弾した裁きの弾丸は、ユリコが信ずる正義の温度で燃え上がる。
――外道に明日を生きる死角なし!!
バック宙を打ち着地したユリコは、華麗にスピンさせた拳銃をホルスターへ叩き込む。――それとほぼ同時に、火柱となったサイコブレイカーが爆発四散した。
ユリコは再び走り出した。未だ余力はある。
このジャンクヤードを救うため、シェリフスターに誓った正義を胸に。
大成功
🔵🔵🔵
矢来・夕立
[ひ、ふ、み…馬鹿らしい。大体一人当たり一匹か。
もう少し人材を大事にした方がいい。
そこそこやれるなら猶のこと。
ですけどアレ、センサーなんか積んでるんじゃないですか?
だったら隠れながらの戦闘はムリでしょうね。
純粋に速さで勝ちます。見ててもいいですよ。
視えなくなりますんで。
――行きましょう、雷花。
【静嵐】。五秒で殺します。
物理的なものには捕まる気がしません。来るなら弾くまで。
でも超能力との相性はサイコーに悪いんで早く終わらせたいです。
それにずぶ濡れはキライなんですよ。気持ち悪くて。
そちらも大変ですね。
オートボットでしたっけ?
アレがガラクタになった時点で偉い人に上申するべきでしたよ。
そしたらわざわざ死にに来なくても済んだかもしれない。
新しい武装に興味はありました。ええ本当に。
何せ彼は腕のいいブラックスミスですのでね。
まあしかし、やはりオレの刀はコレだけです。
代わりに多めに恩を売っておくとしましょう。
その恩の材料はあれの首です。
…首級とか、武士みたいでイヤなんですが。致し方ない。
●リミットリリース・スカーレットエッジ
小高く積まれたジャンクの影から、走る敵の群を睨む赤い瞳が一対。
「ひ、ふ、み……馬鹿らしい。大体一人当たり一匹か」
両手の指でなお余る敵数に吐き捨てたのは、矢来・夕立(影・f14904)である。正確な数はわからないが、敵の速度を目の当たりにした今は、数えている時間すら惜しい。
ジャンクの影から影を線で繋ぐように飛び疾り、夕立は嘲るように嘯く。
「もう少し人材を大事にした方がいい。そこそこやれるなら猶のこと」
満を持して投入された精鋭の群れ。当然ながら、先ほどの一山いくらの雑魚とは格が違うはずだ。見たところ全員が念動力使い、恐らく最先端のサイバーウェアを全身に搭載している。センサーの類が五感と統合されていても不思議ではない。つまり、夕立が得意とする視覚欺瞞や騙し討ちが極まる確率が低いということだ。いかに優れた忍びとて、身体に血が流れて呼吸をしている以上、自身が発する熱や二酸化炭素と無縁ではいられない。夕立は敵の能力を的確に見積もる。
(隠れながらの戦闘はムリでしょうね。――まあ、構いませんが)
その上で、動じぬ。
夕立の得意は暗殺奇襲と騙し討ちだが、虚を衝く手立てが一つなくなったとて関係ない。
敵がセンサーで強化した五感で夕立を認識するというのなら、その認識の埒外に到れば問題ない。
夕立は、最も近くにいた一体に目を付けた。その時には既に腕を一閃している。
その一閃で放たれた棒手裏剣、式紙『牙道』の数は四。いずれも上半身、バイタルの集中する位置を狙っての投擲だ。
「!!」
サイコブレイカーは即応。走りながら、右手に纏わせた念動力を念動波――サイコウェーブとして放出し、牙道を空中で止める。歪んだ空気――不可視の壁めいたサイコウェーブに囚われた牙道が、空中で鉛筆のようにへし折れた。
夕立は速度を合わせ併走。敵も足を止めぬ。相対距離一〇メートル。
「なんだ、貴様。このガラクタの山に抵抗勢力がいるとは聞いていたが――貴様らがそうか?」
「答える義務はありません。ただまあ、そちらの身の上に同情はしますよ。オートボットでしたっけ? あなた方は、アレがガラクタになった時点で偉い人に上申するべきでした」
欠片も同情していない口調で言う夕立は、しゃりン、と音を立て右手に脇指を逆手抜刀。
重金属酸性雨の雫を斬って煌めくは、斬魔鉄、純打。返し斬魔含、飄嵐鉄鍔挿、迅雷華絶『雷花・旋』。赤き刃が虚空に紅曳き、まるで死神が舌舐めずりをしたようだ。
「そしたら、わざわざ死にに来なくても済んだかもしれない」
「小癪。握り潰してやる」
「それは水気がよく切れそうですね。ずぶ濡れは気持ち悪いので、服だけ絞ってもらえるなら歓迎ですが――」
夕立を軽口ごと叩き潰さんばかりに、サイコブレイカーはぐうん、とバックスイングした右腕を振るった。十メートルの距離を開け、地に叩きつけられた腕から念動波が地面を伝い、まるで間欠泉めいてジャンクを吹き上げる。粉砕したジャンク片に念動波を通し、さながら鉄礫の嵐めいて用いているのだ。立て続けに二打、三打。破壊の嵐が夕立目掛け吹き荒れる。
しかし、しかしだ。
「行きましょう。雷花」
――いいわ。五秒でケリを付けなさい。
動き出したのは夕立の方が後。なのに彼の方が速い。
まるでコマ落としだ。サイコブレイカーが目を見開く。夕立の姿が消える。また現れたときにはサイコウェーブの狭間に、赤い軌跡を走らせながら前進している。
「な、んだと」
「見ててもいいですよ。視えなくなりますんで」
忍の瞳が朱色に光る。サイコブレイカーが捉えたのはその残光がせいぜいだ。
忍法『静嵐』。雷花・旋が持つ飄嵐鉄の鍔に意念を注ぎ、五秒間だけ身を軽くする権能を得ると同時、夕立の卓抜した身体能力の全てをその五秒に懸けることで、最速での攻撃を可能とする。
――夕立は超能力者との相性がよくない。そもそも、最初の牙道も容易く止められたし、真っ当な奇襲は看破されるので通用しないとくれば、夕立が採れる戦術は限られてくる。
しかしだ。タネが割れる前ならば通じる術もある。静嵐もその一つだ。
静嵐が成すは邪道の奇襲。
敵の認識速度を上回り、認識外から奇襲する、言わば力任せの一点突破!!
「くおおッ!!」
敵が両手を使って夕立のいる位置へ鏖殺のジャンク嵐を繰り出すが、しかしその瞬間には上から影が落ちる! しかし敵も即応、
「死ねぇッ!!」
掬い上げるようなアッパーカットで影を迎撃!
――ばさッ!!
「なッ」
しかして拳が貫いたのは大判千代紙の袴奴。
アッパーの凄まじい衝撃でちぎれた紙が紙吹雪のように舞う、
――その横から黒い風が吹いた。
心臓一突き、二に首討ち。
あまりに鮮やか、あまりに滑らか。サイコブレイカーは防御も許されず、心臓と首から、同時に噴血したかに見えた。
ジャンクを蹴立てて黒風が止まる。ばさりと翻した外套で雨を弾きながら。
「新しい武装に興味はありました。ええ本当に。何せ彼は腕のいいブラックスミスですのでね。……まあしかし、やはりオレの刀はコレだけです。代わりに多めに恩を売っておくとしましょう」
当然、矢来・夕立その人である。ありもせぬ虚を創り出し、そこを衝いたのだ。
「その恩の材料はあなた方の首です。……首級とか、武士みたいでイヤなんですが。致し方ない」
血振りを一つ。風切り音に押されたように、絶命したサイコブレイカーが血の海に倒れ臥す。
「――契約済みなのでね。納期が近いんで、これにて失礼」
弔うでもなく嗤うでもなく、残した言葉が響き終わるその前に、黒衣の男はそこから消えた。後には、一つの首級が残るばかり。
大成功
🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
◎
ドーモ、通りすがりのガキンチョ=サンです
なんてな
生憎コッチも大事なクライアントからの仕事でね
・無数の「ブルーコア」からの▲レーザー射撃
・「Sforzando.275」の▲二回攻撃と▲切断
手数で攻め、相手が慣れ始めたら
・「仕掛鋼糸」の▲ロープワークを頼りに急制動&急加速&急転回
・「幻符」の幻によるフェイク攻撃
・幻から殺気や気配を感じさせる▲催眠術でフェイク攻撃を強化
逐次これらを投入、リズムを搔き乱す
イニシアチブは奪わせないよ
【ラックイーター】には【改式斬撃輪舞・絶技】で対抗
どんな豪運だろうとラッキーは続かないのさ
「ブルーコア」のレーザーの包囲照射で幸運回避を消費させ
本命のUCを当てに行く
▲投擲したガンナイフは▲念動力で補助し死角から強襲させる
私の生命力は奪えても、死者たる彼女には無効だろう
生命力を奪われて出来た"空き領域"に彼女を招き入れ
「幻符」を発動、生前の姿の幻を纏う
最後の引き金は犠牲者である彼女に譲るよ
敵の眉間にダブルタップだ
シロガネ、見てるかい?
キミの想いは確かに彼等に届いてるよ
●ゴースト・ストライクバック
「……貴様ら、何者だ?」
「ドーモ、通りすがりのガキンチョ=サンです――なんてな。生憎コッチも大事なクライアントからの仕事でね」
足を止めたサイコブレイカーと睨み合うのはレモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)だ。
「答える義務はないし、その気もない」
「ならば死ね」
「お断りだ!」
う゛ぉうッ!! 凄まじい音と共に敵が地面に拳を突き立てる。拳が命中した地面に念動波が伝わり、地面のジャンクを鉄嵐めいて吹き上げ、まるで突然巻き起こった土石流の如くレモンを襲った。間接距離からのメタル・クラッシャーによる攻撃だ!
しかしレモンは攻撃が来ることを察していたかのように、腕環から伸びた仕掛鋼糸を巻き上げて敵の攻撃を回避! ジャンク山の戦車の残骸に予めセットしておいたのだ。
「狡い手を。……ならばこちらにも相応の準備がある」
サイコブレイカーは両手を突き出し、幸運収奪能力を起動――ユーベルコード『ラックイーター』だ!
「させるか!!」
レモンがジャケットの袖を打ち振るなり、そこからビー玉ほどの蒼球が多数バラ撒かれる。それらは重力に引かれて落ちるかと思われたがそうはならず、空中を幾何学的な軌道を描きながら敵手目掛けて飛翔する!
「むッ
……!?」
「撃て、ブルーコア!!」
無数に撒かれた青い球体は、その一つ一つが自律起動する極小ビット――『ブルーコア』である! 多数のブルーコアが青く輝いて全方位からサイコブレイカーを取り捲き、レーザーを浴びせかける。
「ふん、この程度の攻撃で……!」
しかしてサイコブレイカーも手練れだ。一斉発射されたレーザーを念動力の壁でねじ曲げ回避、その巨大な両拳に念動力を乗せて乱打することで、空間ごとブルーコアを巻き込んで圧壊させる! 小爆発と共に潰えていくブルーコア。爆炎噴煙上がる中を、レモン本人が仕掛鋼糸を巻き上げることによる高速移動で翔け抜ける!
「はあああッ!!」
両手にしたガンナイフで大振りの攻撃を仕掛けようとするレモンに、しかしサイコブレイカーはぴったりとタイミングを合わせて右拳を繰り出した。唸りを上げて突き出された拳がレモンを真正面から襲い――『通り抜けた』。
「なにッ!?」
「甘いね――そんな素直に行く訳ないでしょ!」
声とともに今度こそガンナイフ――『Sforzando.275』のエッジが光を曳き、サイコブレイカーを襲った。身を捩り守るサイコブレイカーの右肩と背が浅く裂ける。正面から襲ったはずのレモンが、なぜか敵の横から回り込み側撃したのだ。仕掛鋼糸を巻き上げフライパスしながら、にィと笑みを浮かべるレモン。
「ちッ!! 貴様、幻覚使いか?!」
「最初に言っただろ――答える義務なんてないんだよ!!」
敵の推測は正しい。『幻符』を使うことにより、レモンは自分の幻影を呼び出し、それに更に催眠効果を編み込むことで、殺気や気配を演出して敵の注意を惹きつける戦法をとったのだ。極限状態の戦場であればこそ、どれが本物か読みにくい攻撃というのは想像以上に神経を削る。ハリボテが実弾と同じ価値を持つ瞬間が、確かにあるのだ。
レモンは幻符で自身の周りに三体の幻影を再投影。同時に、『Sforzando.275』を二挺投擲! 回転しながら唸り飛ぶ計八挺のガンナイフを前に、敵は再び両掌を前に突き出した。
「舐めるな。ならば幻影ごと攻撃するまでだ!!」
サイコブレイカーの両掌が不気味に輝く。今度こそ、『ラックイーター』発動! レモンの身体を突然の倦怠感が包み込む。幻影が消えていく。生命力の収奪だ。ラックイーターは敵から奪った生命力を自分の幸運に変換する能力。得た幸運で、レモンの攻撃を乗り切る肚だろう。
「――知らないのかい。どんな豪運だろうとラッキーは続かないんだよ」
青ざめた顔で、しかしレモンは不敵に笑う。残ったありったけのブルーコアを全て射出。青い嵐を敵のもとに降り注がせ、駆け出す!
雨霰と降り注ぐレーザーの隙間を縫うようにバク転、側転、バック宙回避を見せるサイコブレイカー。追って襲い来るSforzando.275をブルーコア諸共メタルクラッシャーで打ち落とそうとするが、
「させるか!」
爆散するブルーコアの光に照らされながらガンナイフの軌道が変わる! レモンのチョーカーから送られた念動力が、二挺ガンナイフを操作したのだ!
「なんッ――」
だと、という間もない。振るった腕を擦り抜けた二丁のガンナイフ、その尖端の高周波ブレードが、サイコブレイカーの脇腹を深く抉って飛び過ぎる!
「喰ぅらぁええぇえぇぇぇえ!!!」
レモンはスリングで引っ提げた『FORTE.50』の大口径弾を発射、再装填、発射、再装填、発射、再装填、発射ッ!! サイコブレイカーは両拳でそれを受けるが、一発ごとに防御姿勢が崩れていく! 相対距離五メートル。レモンはFORTE.50を棄て、懐に潜り込むように跳んだ。
――その身体に、過日の亡霊が纏い付く。かつてシロガネと共に生きた少女の霊が、レモンの削れた生命力の余白に憑依したのだ。
彼女の手が、レモンの命令で飛び戻り来た二丁の銃を掴む。血に濡れたエッジが煌めく。Sforzando.275。ついに潜り込んだ、外しようのない至近距離。
「『これが、野良犬の牙だッ!!』」
一発は右手の銃。レモンが。
一発は左手の銃。カレンが。
同時に放たれた銃弾が、叫ぼうとしたサイコブレイカーの眉間を貫き、後頭部を血の霧に変えて吹き飛ばした。
どう、と倒れ臥すサイコブレイカーの前で、少女――カレンの姿はノイズが走ったようにぶれ、レモンの姿形を取り戻す。
「――シロガネ、見てるかい? キミの想いは確かに彼等に届いてるよ」
少なくとも、かそけく『ありがとう』と残して消えたあの少女には、きっと。
レモンは、確かめるようにSforzando.275のグリップを握り、ホルスターに戻すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
◎◎◎
あらま、思ったより判断速かったわねぇ。ま、さっきのとやり合ってる最中に乱入されるよりはマシか。
…にしてもサイキッカーかぁ。あのテの力って変換してないと陰陽三態四元五行その他でメタ張れないから地味に面倒なのよねぇ。
…逆説、変換してればメタ張れるんだけど。
マン(自分自身)を核に●忙殺・写身を起動して接敵。義体化してる以上どっかにセンサー類は積んでるでしょうけど、さすがに流紋を過信はできないわねぇ。
〇結界術と電撃耐性のペア二組で稲妻の鎖を阻害、〇捕縛・目潰し・ジャミングで〇足止めかけるわぁ。全員姿は同じだし、本体のあたしは色々できる。全力で嫌がらせしてやるわぁ。
…ところでこのUC、生み出す分身は9体なんだけど。結界術と電撃耐性が2人ずつの4、捕縛・目潰し・ジャミングが1ずつで3の合計7。残りの2体は何処でしょう?
…正解は、ずーっと遠く。〇スナイパーをスポッターにして〇鎧無視攻撃がスノーフレークで狙撃してる、でした。
…この分身、カリカチュアした分個々の技能なら本体より遥かに上なのよねぇ。
●ナインセンシズ
「あらま、思ったより判断速かったわねぇ。ま、さっきのとやり合ってる最中に乱入されるよりはマシか。にしてもサイキッカーかぁ。あのテの力って変換してないと干渉できないのよね」
言いながら、ジャンクの小高い山影を蹴立てて前線を走るのはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。駆け来る敵の群れに肩を竦めて、その最右翼の一人に狙いを定める。
敵はサイキックを用いる企業の私兵、強化人間――アームド・サイコブレイカーの一個小隊。サイキックエナジーはティオレンシアの扱う陰陽三態四元五行、あるいはルーン魔術のいずれにも相当する概念のないエネルギーだ。つまり、ティオレンシアが己が力を使って敵の力を逆用し、カウンターを極めるというのは難しい。――本来であれば。
「……ま、逆説、変換してればメタ張れるんだけどね」
微かに笑い、ティオレンシアは薄く朱色の瞳を開く。『マン』の魔術文字を宙に描き、ユーベルコードを起動する。『忙殺・写身』。ティオレンシアの身体にノイズが走ってぶれ、その身体が九つに分裂する。――否、呼び出されたそれは、自律機動する『質量を持った幻影』だ。
「手札はこれと――流紋」
ティオレンシアは視覚拡張HMD『流紋』を装着し、物陰から走り来る一体のアームド・サイコブレイカーを睨む。敵の視界は確かに視認可能だ。しかし、これを過信する気にはなれない。
(視線移動が速すぎる。目の向きを読んでから動いたんじゃ対応が間に合わないわねぇ)
ここ一番の保険にはなれど、頼り切れば追い詰められるのはこちらだ。ティオレンシアは腰からオブシディアンを引き抜き、撃鉄を起こす。
「行くわよぉ」
声低く言うなり、ティオレンシアは地を蹴って物陰を駆け出た。全く同時に、幻影達が各々の方向に動き出した。突如ジャンクの影から現れたティオレンシアらに、駆け来たアームド・サイコブレイカーが警戒するようにブレーキを掛ける。
「なんだ貴様ら……同じ顔だと?」
「理屈を識る必要はないわぁ。今から全力で嫌がらせしてあげるから、覚悟なさいな」
ティオレンシアが嗾けるように言うなり、分身の一体がアンダラに装填したスモークグレネードを射出。煙を撒き散らして視界を遮ると同時に、もう一体がチャフグレネードを放ち、敵の通信を阻害する。
「はン! そんな玩具で俺をどうにかしようとは!」
当然、煙幕の中から飛び抜けるように出てくるが、更に一体が捕縛用投擲具――ボーラめいて柄と柄をパラコードで結んだダガーを投げつけ、捕縛せんと妨害行動をとる。
「邪魔くせぇッ!!」
唸るように言うとサイコブレイカーは拳を上げた。構えた巨大な拳に念動力が乗り、繰り出される打突の速度は超音速。数組放たれたダガー・ボーラが次々と、念動力突きのソニック・ショックウェーブに叩き落とされて空中に散華する。
「しゃらくせえ、全員操り人形にしてやる!!」
ボーラを撃墜するなりサイコブレイカーは掌を開き、そこに赤雷を宿す。炸裂する稲妻の鎖、『ライトニング・カリギュラ』だ!
次の瞬間には命中すれば生体電位を支配し、対象の行動を自在に操作できるという恐るべき鎖が放たれる。――しかし、それもティオレンシアは既に対策済だ。四体のティオレンシアの幻影が前に踊り出る。電撃に対する耐性を高めた幻影が肉壁となって己の身体で赤雷を止めて回り、もう二体が残る幻影と本体、ティオレンシアの周りに結界を張って弾く。
「なにッ!? カリギュラが効かねぇだと
……!?」
「厳密に言えば効いてるんでしょうけどねぇ、効ききってないだけで。――そうしてると隙だらけよぉ?」
結界に守られながらティオレンシアはリボルバーを構え、真っ直ぐに敵の頭を射貫くコースで構える。
「ハッ! そんな豆鉄砲で俺が殺せる訳が――」
「単純ねぇ。見え見えの囮に引っかかる。――クイズよぉ。あたしの分身は九体。ここには七体。残り二体はどこにいると思う?」
「……?!」
その瞬間、向けられた殺意にサイコブレイカーは確かに反応しようとした。右方、距離三二〇メートル。弾かれたようにそちらを向き、ガードを上げようとした瞬間、その半身を砲弾――五七ミリメートル対キャバリア用高速狙撃弾が食い千切った。
「がッ――」
「正解はずーーーっと遠くから、二人一組であなたを狙撃してる、でした。じゃあねぇ」
半身を喪い殴り飛ばされたように二転するサイコブレイカーの額を、電光石火の煽り撃ちが撃ち抜いた。――それ以上は言葉もない。サイキックエナジーが暴走、爆発四散!!
死の爆光を見届けると、スピンさせたリボルバー――オブシディアンをホルスターに叩き込み、ティオレンシアは背伸びして東側の遙か彼方を見やる。
「この分身、カリカチュアした分個々の技能なら本体より遥かに上なのよねぇ。便利だけど、なぁんか複雑ねぇ」
視線の先で、都市迷彩に塗装されたキャバリア――『スノーフレーク』が身じろぐのが見えた。決め手となった分身によるキャバリア操作の業前に、一つ、大きく溜息をつくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィルジニア・ルクスリア
◎
お次は精鋭部隊ですか。
戦力の逐次投入は下策……とは言え、簡単に勝てる相手じゃない。
特に、あの『腕』。
あの腕からの攻撃を受ければ『贄咬』とて無事じゃ済まない。譲り受けた復讐の刃をこんな所で失うわけにはいかない。
長期戦は不利。だったら、策を講じましょう。
交戦前の下準備
祟り縄に魔力を注入、以後は【目立たない】ように自立【遊撃】行動開始。
「はじめまして、社畜サン。コンプライアンスってご存知?」
「私の新しい友人が御社に酷い目にあわされたの。『目には目を歯には歯を』。あなたの身で贖っていただくわ」
敵の攻撃を【見切り】、『蠢く闇』の【オーラ防御・ジャストガード】で凌ぎながら交戦中、【遊撃】行動を取っていた祟り縄が【不意打ち・念動力・ロープワーク】で敵を【早業・捕縛】。
勿論、捕縛状態が長く続くわけがない。
このチャンスを逃さずに『星崩し』を打ち込むわ!
●星を喰らう牙
「お次は精鋭部隊ですか。あのオートボットで勝てないからと本気を出してきたみたいね。戦力の逐次投入は下策……とは言え、簡単に勝てる相手じゃない」
ジャンクの影で気配を消し、機を伺っていたのはヴィルジニア・ルクスリア(サキュバスの悪霊・f36395)だ。ぽつりと呟きながら、噴進対物流体ジェットグラインダー『贄咬』を持ち上げる。
迫る敵の威圧感は先程までとは非にならない。オートボット――ダスト・ナーガらは、シロガネの武器と猟兵達の実力を以てすればそれこそ赤子の手を捻るように撃破できたが、今度の敵は――あのサイコブレイカー達は、違う。
速度といい、個々の技量といい、猟兵に比肩する性能がある。ヴィルジニアがその中でも最も危険視しているのは、彼らの巨大な『腕』だった。
(あの腕の攻撃をまともに受ければ、贄咬とて無事じゃ済まない。譲り受けた復讐の刃をこんな所で失うわけにはいかない)
刃の回転速を低速にし、トルクを全開として、真っ直ぐに叩き込めれば、あるいはあの巨大な拳すら薙ぎ斬れるだろう。しかし、確証はない。出来るであろうと思うのと、確実に出来るのとでは全く違う。
(長期戦は不利。だったら、策を講じましょう)
ヴィルジニアは手持ちの道具を検めると、その中の一つ――『祟り縄』に魔力を注入した。祟り縄はまるで蛇のようにうねり、ひとりでに地を這って動き出す。意志を持ったかのようだ。
――攻撃を受けてはならぬのならば、持てる手を総動員して、速攻でケリを付けるまで!
ヴィルジニアは地を蹴り、ジャンクの影から飛びだした。贄咬に魔力を込め、その峰のブースターに点火。凶悪な推進力に飛ばされるように前進する。狙いは正面からやってくるサイコブレイカー一体!
交錯軌道。相対距離二五メートル!!
「……む?!」
「はじめまして、社畜サン。コンプライアンスってご存知?」
贄咬の威力を測りかねたか、一瞬迎撃か回避を敵が迷ったときには、ヴィルジニアが一瞬早く加速していた。贄咬のブースターを全開にして流体金属チェーンを最速循環・回転!
一〇〇体のバンシーが泣き叫ぶよりも、なおけたたましい。ヴィルジニアは黒い瞳に殺意の光を灯して先手の斬撃を仕掛ける!!
「ぐうッ!!」
ぎゃがッ!! ギャガガガリガリガリガリッ!! サイコブレイカーの前腕、メタル・クラッシャーが辛うじて贄咬の一撃を防いだ。深く抉り傷が刻まれたが、しかし機能を失うにはほど遠い! 地に足で杭を打ちヴィルジニアは制動。サイコブレイカーが腕の損傷を確認しながらヴィルジニアを睨む!
「貴様らか、我が社のオートボットをやったのは!」
「そうよ。そして、これからあなたたちもああなるわ。――私の新しい友人が御社に酷い目に遭わされたの。応報の原則を知っているかしら? 『目には目を、歯には歯を』よ。あなたの身で贖っていただくわね」
「ほざけーッ!!」
今度は一転、サイコブレイカーが攻撃に転じた。一合目の交錯で威力を測ったか、その動きからは躊躇が消えている。念動力を纏う巨拳を、それこそ機関銃のように連打してくるその動きはもはや人間業ではない。サイキックと最新鋭のサイバーウェアが高い次元で両立してこそ生み出せる、凶悪なる破壊力……!!
「っ……!」
それをヴィルジニアは避け、時折贄咬の峰で流し、更には凝り固まって拳を阻む『蠢く闇』による防御を用いて必死に受け流す。一手でも誤れば、贄咬が損壊するどころかヴィルジニア自身が粉砕されかねない極限状況を、しかし紙一重のところで攻撃を見切って死を回避する。
繰り出された拳を潜り抜けるように身を屈め、叩き潰すような振り下ろしをサイドステップで避ける。追いかけてきたフックの下を潜りながら、反撃するように敵の足元を加速した贄咬で薙ぐ!
「当たるかッ……!」
当然敵はそれを跳び避けるだろう。ヴィルジニアは確信していた。そして、事実そうなった。
敵の滞空時間はほんの一瞬。されど一瞬。
シャッ、と空を切る縄の音がした。次の瞬間には、サイコブレイカーの全身に長い縄が絡みついていた。――ヴィルジニアが予め放っておいた『祟り縄』だ! 魔力を注入し遊撃させていた祟り縄が、今まさに敵に祟りをもたらすべく喰らいついたのだ。
「なッ、んだこれは
……!?」
呪い。祟り。前時代的・超自然的なオカルティズムの産物。そんなものは存在しないと否定し続けて生きてきた最新鋭のテックの塊が、祟り縄の正体を即座に看破できる訳もない。
そう長くは続かぬ隙だと分かっていた。だからこそ、ヴィルジニアは残る全ての魔力を贄咬に突っ込む。ブースターがジェットエンジンめいて唸り、今までで最大の噴炎を発して加速した。避けられた足払いの一撃から止まらぬまま、一転、二転、加速、加速、加速加速加速加速加速加速……!!
敵が拘束を解くまでの二秒半で、贄咬は星を喰らう牙となる。
「さようなら」
サイコブレイカーは、言葉に応じることも無く、祟り縄を引きちぎり、ガード姿勢をとり――
そして、飛散した。
最大加速した贄咬の回転刃と質量が、サイコブレイカーのガードごと、その身体を喰らい砕き引き裂き、原形をとどめずブチ撒けて、血と肉片の雨に変えたのである。
――ユーベルコード『星崩し』。それはまさに星を崩す一撃。
「言ったでしょう。あなたの身で贖っていただく、と」
赤い霧雨の中で、ヴィルジニアは嗤った。
贄咬の回転は止まず。その音は、まるで復讐に歓喜しているようだった。
大成功
🔵🔵🔵
カルマ・ヴィローシャナ
◎◎◎
『遮導』にもだいぶ慣れてきたし、一気にやっちゃうよ……って
何あの腕、仕上がってるにも程があるわ!
破壊される地形を早業で見切って回避重点
挑発しつつ敵を孤立させて挽回の機会を狙うわ
そんな不細工ゴリラにやられるカルマちゃんじゃありませんよーだ!
強化サイキッカーの類かな? メッチャ面倒な奴!
パフォーマンスで引きつけながら土煙に紛れて存在感を消す
『遮導』アクティベート! 光学迷彩起動!
装着した遮導の迷彩で隠れながら
フォトンブラスターの制圧射撃で間合いを取りつつ
こっちの位置を悟らせない様立ち回る
離れても腕伸ばして攻撃してくるでしょ。それが狙いよ
あの巨腕の大振りで遠間を狙うなら飛び跳ねたり出来ない筈
しっかり立たせて動けない様にしたらフィニッシュの準備
ステルス解除、フォトンドライブ――フルバースト!
挑発しつつ姿を曝して大振りを誘う
どーしたの? モグラ叩きはもう終わりかしら?
正面からストレートで腕を伸ばし切る前に
全開放したフォトンバスターソードの斬撃波で
真正面から真っ二つにしてあげる! イヤーッ!!
●ニンジャ・ヴァーサス・シャドウ
「『遮導』にもだいぶ慣れてきたし、一気にやっちゃうよ……って、何あの腕!? 仕上がってるにも程があるわ!」
派手な色の髪をなびかせながら前線に駆け参じたカルマ・ヴィローシャナ(波羅破螺都計・f36625)は、各所で猟兵と互角の戦闘を繰り広げる敵――アームド・サイコブレイカーを見て驚愕の声を漏らした。いずれ劣らぬ凄まじいパワー、スピードの持ち主だ。
「けど、やるしかない!」
敵の数は猟兵とおよそ同数、自分が戦わなければ、戦力が偏る。会敵して各個撃破されれば、パワーバランスはその分相手の側に偏ってしまう。もはや迷っている場合ではない!
「そこの不細工ゴリラども! かかってきなさい! あんたたちなんかにやられるカルマちゃんだと思わないでよね!」
「何だと、このくそアマッ!」
「死にてェらしいなァ!!」
ゴリラと呼ばれて四体が引っかかる。大丈夫。計画通り。――このまま敵を引きつける!
カルマは『遮導』との合体シーケンスを維持し、かつ光学迷彩はオフのまま走り出した。敵に姿をさらして宣戦布告に等しい悪態をついたのには理由がある。
どがッ!! どががッ!! ががが、ずうんッ!!
「な、なんてパワー……!」
四体の敵がカルマを追跡しながら腕を振るうたび、強力な念動波がその拳から放出され、カルマの周囲を迫撃する。次々とジャンクが爆ぜ吹き飛ぶ、砲撃めいた念動波の嵐の中を、カルマは五連続側転ロンダートバックフリップ回避!
「強化サイキッカーの類かな? メッチャ面倒な奴! ……でも、こっちだって一人じゃないのよ!」
カルマがニッと笑うのと同時、横合いから三名の猟兵が飛び出して奇襲をかける。
「なにぃッ?!」
「目には目を、数には数を――ってね! さぁ、あんたの相手は私よ!」
カルマの誘導作戦に乗った三名の猟兵達が統率のとれた動きで三体のサイコブレイカーに攻撃を仕掛け、対応を強いる間に、カルマは残った一体にビッと指を突きつけて自信たっぷりに笑う。
「ハッ、寄せ集めのザコどもが一対一なら俺達『オラクル』に勝てるつもりでいやがるのか!! ナメるなよォ! イヤーッ!」
音速を超える速度での念動拳連打! 拳先の空気が歪んで玉虫色に光り、エネルギー弾めいて射出される! サイコ・カラテ・ミサイル!
「イヤーッ!」
黙って受けるカルマではない! 側転回避しながら既に反撃態勢! 手先にフォトンガントレットがスライド! 空中から拳のラッシュと同時にフォトン・カラテの光弾、『フォトンホーミング』を連射! 弾幕を築いてカラテミサイルの連射をファランクスめいて迎撃!
爆発、爆発、爆発! 土塵と砂塵とジャンクが巻き上がり、視界を塞ぐ。
「カトンボみたいにぶんぶん飛び回るだけが能かァ!? その程度の火力じゃあ俺のサイコ・カラテは止められまい!」
『確かにそうね――だから、やり方を変えるわ!』
空中から声が響いた。どこから聞こえているのかとサイコブレイカーが左右を見た瞬間、攻撃は背後から! カラテシャウトと同時にフォトンホーミングが連射される!
「ヌウーッ!?」
思わずと唸り腕を振り回すサイコブレイカー。腕によるガードでフォトンホーミングをほとんどすべて弾き飛ばすが、その次の瞬間には二時方向から、その次は九時方向から、さらには四時方向から、次々とフォトンホーミングの弾嵐が降り注ぐ!
「手前ェッ!! 何をしていやがるーッ!?」
闇雲に腕を薙ぎ、反撃するサイコブレイカーだが、彼の念動波はジャンクの山を砕くばかりだ。
『言ったでしょう。やり方を変えたのよ!』
カルマはハッキングした天井スピーカーから発話し、攻撃を繰り返す。――賢明な読者の皆様には既におわかりだろう! カルマは、土煙に紛れ光学迷彩を起動! 身を隠し、敵の周囲を旋回しつつ四方八方からフォトンホーミングの嵐を降り注がせたのだ。更にはフォトンホーミングの発射後旋回も交え、発射元を欺瞞する小技も利かせている! タツジン!
「野郎!! 汚い手を使いやがって!! 姿を見せろッ!!」
疲弊したサイコブレイカーが叫ぶと、彼から一五メートル先、真正面に滲み出すようにカルマの姿が浮かび上がる。光学迷彩を解除。
「どーしたの? モグラ叩きはもう終わりかしら? 物量でジャンクの山に住む人々を潰そうとしておいて、よく卑怯なんて言葉が使えたわね」
「うるせえェーッ! 言って出てくるとは思わなかったぜマヌケめ! 手前ェは死刑だーッ!」
ガツンと拳をぶつけ合わせ、特大のサイコ・カラテ・ミサイルを錬成するサイコブレイカー。
それがまさに放たれんとしたその瞬間、カルマは爆発的に踏み込んだ。
「フォトン・ドライブ――フルバースト!」
そう。姿を現したのは、何も敵の挑発に乗ったからではない。準備が終わったからだ。オプティカルカモフラージュに使うエネルギーもすべて、この一撃に回す!
「くたばれーッ!」
右ストレートにすべてのエネルギーを乗せて放とうとするサイコブレイカー。 その拳が、伸び切る前に、――断ち切る!
「イイイィイイイイイヤァアァァァァーッ
!!!!」
溢れ出したフォトン・エネルギーが振り上げた両手の中に光の大剣を構築する――おお、これぞフォトン・カラテ奥義の一つ、『フォトンバスターソード』!
すべてのエネルギーを速度と攻撃威力に振り、加速した復讐の刃は音速を遙かに超え――
斬ッッッッッッッッッ!!!
地面に轍を刻み制動、全身の装甲がフルオープン! オーバーヒートの排熱で揺らめく空気を纏うカルマの後ろで、
「サ、――サヨナラ!!」
悪のサイコブレイカーが、また一つ光の華となり、爆発四散を遂げるのであった!!
大成功
🔵🔵🔵
ギンジロー・カジマ
◎スペクターズ
なるほど、確かにさっきの連中よりはマシのようだ。
……マシというだけだがな。
ロアが一人ひきつけるなら、ワシも一人相手にするとしよう。
残りの一人は任せた、しっかりやれよトーレ。
引き続き大乱斗で応戦。
……と行きたいところだが、こうも距離を詰められれば撃つ暇も無いか。
ならば、まずはワシも白兵で応じるまでよ。
ワシは格闘家でなければ、剣の達人でもない。だが、暴力のプロだ。
少々食らおうが、それ以上の力を返せばいい。
被弾を覚悟で、拳やドスで反撃するまでよ。
華麗に倒すことはできないが、そうやって力で蹂躙するのは慣れているからな。
根比べで相手が引けば、その隙を狙って大乱斗で一撃お見舞いしてやる。
……なるほど、耐えるか。確かに雑魚とは出来が違うようだ。
だが、勝ち誇るな。どちらにせよ、これで仕舞いだ。
さて、ワシの仕事はここまでだな。
後はしっかりとやれ。しくじったら、ただではおかんぞ。
ロア・パラノーマル
◎スペクターズ
ふむ、先程よりはずっと骨のある輩どもと見える。それも三人いるとなると中々手間だ。
――が、何、大した問題ではない。諸君、私は私らしくやらせて貰うぞ。君達も好きにやり給え。
敵を一人引受ける。
闇に紛れ目立たぬ様暗躍しつつ、現地に転がる使えそうなジャンクパーツを霧影でハッキング、即時操作し敵に仕向け攻撃する。
焦れれば多少乱暴な手に出てくるだろうな。
――それを待っていたとも。
【Excuse me.】
目も眩むような雷撃は「地中2m迄を私のみすり抜け可能にし」潜り抜け回避。
地中から霧影を足に刺しハッキング、暫し体の自由を奪う。
さて、先程私は〝私らしくやらせて貰う〟と言った訳だが
どう言う意味かわかるかね?
「トドメは譲る、援助をするから派手にやれ」という意味だ、私達の間でだけ解る言い方でのね。
――うむ、その位置だ。大変結構。
(ギンジロー、トーレ側の敵の足元を50㎝すり抜けさせたのち固定、動きを止める。三人バラバラの位置――の様に見せかけ)
「一直線上」だ。
最後は刺激的にやり給え、トーレ嬢。
トーレ・アンダーレイ
◎スペクターズ
最終決戦特別ライブストリームスタートだ!
(ドローンの素敵なカメラワーク🎥とリアタイでトキメキな隠蔽処置🎬でエンタメ特化の安心仕様💯)
3v3コラボの始まり…
と思いきやバラバラ1v1スタート!?
1人だなんてさびしーよぉ💧
だけどだけども良い構成っ!
盛り上がるコト間違いなしっ✨
先にばびゅん🚄とぶっ倒してから駆けつけるぜ✈
じゃみんぐじゃみんぐこんにちは!
かんかんかーん、って星河ちゃんから素敵な音を響かせて、
カミサマの言葉を遮ろう!(神託ちゃんたちの連携をじゃましちゃお!)
キミは私だけを見つめてよ?(ばきゅーん)
❤にfavに高評価!
すっかりアガったキミの後ろ
見てみたほうがいーんじゃない?
あ、後ろじゃなかったごめーん❤
ガチ恋距離だぜ、ラッキーだね?
あ、先に倒す👊ってたのは嘘でーす
二人と一緒の✨舞台で
ドカンとキランと決めちゃうぞ!
星河ちゃん🌃を全連結🌈して極限↑で3体まとめてどかんずばん!大爆発!
この配信はStray DogSの提供でお送りしましたっ!
響け、星の彼方までっ!
●Specter LiveStream in DEADEND.
「ふむ、先程よりはずっと骨のある輩どもと見える。我々の担当分は三人。一人一つとなると中々手間だ」
「なるほど、確かにさっきの連中よりはマシのようだ。……マシというだけだがな。で、どうする、ロア。手間を惜しんで尻尾を巻くか?」
「巻いちゃう~? これからせっかくアンコール必至の最終決戦なのに~?」
「その択を採るものが亡霊を名乗れはせんよ。……何、大した問題ではない。あつらえ向きに、敵を誘導している猟兵がいる。――それに乗じて叩く。一人は私が引き受けよう」
「おう。いいだろう。ロアが一人引きつけるならワシも一人、だな。残りの一人は任せた。しっかりやれよトーレ」
「えぇ?! スリー・オン・スリーでコラボの始まり……と思いきやまさかのバラバラ、ワン・オン・ワンスタート!? 一人だなんてさびしーよぉ💧」
「見所のある画を撮るのもライブストリーマーの才覚の一つと聞く。期待させてもらおう」
「うーん、うーん、だけどもだけども、最後に合流を持ってきて動画のヤマをそこに作るんなら……うん、いい構成! 盛り上がるコト間違いなしっ✨ 先にばびゅん🚄とぶっ倒してから駆けつけるぜ✈」
「前からワシ思ってるんだが、それ、どういう発音なんだ?」
「ないしょ! 乙女の秘密は保たれるべきって憲法に書いてあるから💕」
「――呆れるほどにいつも通りの自然体、大変結構。諸君、準備はいいかね?」
「いつでも」
「どこでも!」
「ならば始めよう。幕を上げるのは、我々だ」
先行した猟兵――カルマが引きつけた四体のアームド・サイコブレイカー。そのうち三体に側面攻撃を仕掛けたのは、ロア・パラノーマル(Sneaky, Spooky, Sparky・f36680)、ギンジロー・カジマ(デッドドッグ・f36632)、そしてトーレ・アンダーレイ(重ね重ねて星にまで・f36630)の三名だ!
「私は私らしくやらせて貰うぞ。君達も好きにやり給え」
先陣を切ったのはロアである。此処は二四時間闇を知らず、煌々とライトが照るジャンクヤード『デッドエンド』。しかしその中にも影はある。道行きに転がった戦車大のジャンク影にするりと紛れ、影から影へと飛び渡るように疾る。――そのロアが疾る軌跡の後ろで、突如として擱座していたジャンクが次々と起動音を立てて、でたらめな機械音声を発しながら立ち上がった。
『蜑イ繧願セシ縺ソ蜻ス莉、繧堤「コ隱�』
『繧ソ繝シ繧イ繝��ヨ險ュ螳壹r譖エ譁ー縺励∪縺励◆』
『蠑キ蛻カ謗帝勁繧貞濤陦後@縺セ縺�』
「な、なんだァッ?!」
脚の欠けた多脚戦車、片腕の欠損したアンドロイド。履帯が片方回らない戦車。死した機械が今ひとたびの生を受けたかのようだった。さながらそれはジャンクの葬列! メガコーポの連中が侮り、二度とは火の点かぬ燃えかすだとせせら笑ったそのジャンク達が、各部からスパークを上げながら内蔵火器を構え、照準する!
完全に破損していたはずだ。先ほどまで動く気配すらなかった。それが、突然の再起動。ロアが走った後ろでだけ、偶然に立ち上がる? そのような偶然があろうか? あるはずがない!
種も仕掛けもある。皆電位制圧苦無『霧影』を用いて、ロアが戦場に転がるジャンク達を操作して攻撃を仕掛けたのである! BLAM!! BLAMN!! DOOOOM!! KA-BOOOOM!! このままジャンクヤードで朽ちていつか二度とも使えぬ廃物になるはずだったジャンク達が、わずかに残った弾薬を絞り出す!
照準は劣悪。精度は最低。射出したそばから銃身が裂け、あるいは破裂し、機能しなくなるジャンクも少なくない。
しかし、それでも弾は弾だ。LANワイヤーをくくりロアが投擲した霧影は、八本同時の一度の投擲で八つのジャンクを活性化する。彼がフリーで動き続ける限り、敵目がけ降るジャンク・パレードの弾薬嵐は止まぬのだ!
三体のサイコブレイカーが散開し、回避しつつロアに狙いを定める。
「くそっ! 奴を止める!」
言いながら一体が赫雷の鎖――ライトニング・カリギュラを放つ! 立ち上がったジャンク軍を逆支配して操り返し、それによりロアがこれ以上手駒を増やすのを防止しつつ反撃しようというのだ!
しかしまだロアがジャンクを起動し続ける速度の方が早い! 周囲はたちまち、ジャンクとジャンクの砲撃戦の様相を呈する。
「止め切れん! フォローしろ!!」
「おうッ
……?!! イヤーッ!」
その刹那!
ギュガォッ!! ジャンク・パレードの砲声を斬り裂き、凄まじい銃声と共に放たれたのは重金属加速粒子の散弾! 『大乱斗』の一射である!!
ロアを追跡に掛かった仲間を援護しようとしたサイコブレイカーの一人が反射的に側転回避! 辛うじて散弾を避ける。散弾が直撃したジャンクの小高い山が吹っ飛ぶのを一顧だにせず、ギンジローは銃口から煙を上げる大乱斗を左手に引っ提げたまま走った。旋回攻撃。敵を中心として自身の軌道で円を描くように回り込みながら、立て続けに散弾を浴びせかける!
「アンタの相手はワシだ。よそ見はしてくれるなよ」
「ナメるな! イヤーッ!!」
側転回避を交えながらサイコブレイカーが両腕にサイキックエナジーを集中させる。超念動力を集中させるだけの強度を持つ、超質量の両腕――『メタル・クラッシャー』だ! それを突き出すたび、拳の先から念動波が迸った。空気が玉虫色の球状に歪んで光り、唸り飛ぶ。立て続けに銃弾並みの速度で放たれた球状の空気の歪みは、いわば彼らが使うサイコ・カラテの遠距離打撃、サイコ・カラテ・ミサイルだ!
それを前にギンジローは一歩として引かず駆けながら大乱斗を連射する。カラテミサイルが脇腹を、腕を掠めて削り取り、血を飛沫かせようとも止まらない。
女子供に手は出さぬ、シャブは御法度、ケンカとなったら潰すまで退かない。それが彼の流儀だ!!
「しぶとい奴め! ならば直接叩いて二度とナメた真似が出来んようにしてやる!」
敵サイコブレイカーが地を蹴り、念動力で強化した両手でガードを固め、ギンジローに肉薄する。ショットガンを封じれば戦えまいという判断か。しかし、あいにくギンジローの得手は射撃のみではない。
「――こうも距離を詰められては撃つ間がないな。ならば白兵で応じるまでよ」
突っ込んでくる敵を前にギンジローは大乱斗をスリングで肩にぶら下げ、自分から接近しながら刃を抜いた。それは何の変哲もない――しかし極めて剛健な兇刃。『アキュラキリ』!
「ワシは格闘家でなければ、剣の達人でもない。だが、暴力のプロだ。少々食らおうが、それ以上の力を返せばいい。華麗に倒すことはできないが、そうやって力で蹂躙するのは慣れているからな」
「ハッ! ヤクザ崩れが暴力のプロとは笑わせる! 本物の暴力というのはこういうものを言うのだ! イヤーッ!」
カラテ・シャウトと同時にジャブの連打が繰り出される。砲弾めいたサイズの拳の速射を、しかしこともあろうにギンジローは自らの左拳で叩き返すッ!! ご、ぁぁあぁんッ!! 鐘をぶっ叩いたような大音が響き渡る!
「なにィーッ!?」
激突の後――まさか! 蹈鞴を踏んだのはサイコブレイカーのほうだ! ギンジローが正面から叩きつけた拳が、よもやよもや、メタルクラッシャーの威力を上回ったのである!
「どうした。てめぇの言う本物の暴力ってのは、ワシ一人打ちのめせんのか?」
「調子に乗るなァーッ!」
下がった左足を再び踏み出し、スタンダード・スタンスからの右ストレート。ギンジローは凄まじい速度でダッキング、大振りのストレートを潜り抜けながら敵のボディに左拳を叩き込んだ。
「グワーッ!?」
白目を剥きかけるサイコブレイカー。脚が地面から浮く。身を返しながらギンジローは斬撃一閃を叩き込むが、間髪、サイコブレイカーのガードが機能する。火花を散らしてドスの一撃を防ぎながら、地面を蹴立て辛うじて着地。ダメージはまだ軽い。ファイティングポーズを取り直しながら、サイコブレイカーは血走った目でギンジローを睨んだ。
「レッサーヤクザの分際で、イキがるなァーッ!!」
「ならワシからも言わせてもらおう。――その程度で暴力を名乗るな」
「イヤーッ!!」
打撃の激突、刃とメタル・クラッシャーの激突! 二人の男が斬り殴り合うその音は、砲撃戦めいた大音に彩られる!
「う、うおおっ
……!!」
ロアを追いかける仲間か、あるいはギンジローと激突する味方を援護すべきか、残った一体が、射撃を繰り返すジャンクを蹴散らしつつ逡巡したその瞬間、周囲にかかっ、と光が差した。それはライトアップ! いつの間にか宙に飛翔した戦闘用光刃照明システム『星河』のビットユニットが、彼女曰く『ばえ✨ばえ✨』な照明を、スポットライトめいて照射する。
光の交差するその真ん中、ピースサインのついでに親指を立てた右手を顔の高さに構え、隠れた瞳をフェードインさせるように右手をスライド。露わになる瞳は、目を奪われるほど目映く紅いルビーレッド。――『光の下に』の名のままに、トーレ・アンダーレイが立っている!
「フロムダストエリア『デッドエンド』! 放送の最後は私たちと『神託』のみんなでコラボバトルをお送りします! 最終決戦特別ライブストリームスタートだ!」
ダンスの振りめいて打ち振った両手に、二刀の電離刀が現れる。CIB-CLB-03『星河』! カメラ目線の笑顔の向こうには、撮影中のドローンあり。
「なんだ、何だテメェらはッ!! イカれてやがるのか!!」
「ひどーい! でもイカれてるってエンターテイナー的には褒め言葉かも?」
首をかしげてぺろりと赤い舌を出してみせるトーレ。ジャンク復活による多勢の攻撃、それに加えてサイボーグとは言え、サイキックなしでサイコブレイカーの拳を凌駕する男、加えて得体の知れない美少女――このまま戦闘を続ければ相手のペースだ、と分かったのだろう。サイコブレイカーは耳のインカムに手をあて仲間に連絡を取ろうとした。
その瞬間、かん、かん、かん、かんかんかん……! 宙を舞う星河のビットがビームを発し、独特の音を奏で出す。星河のビットは別名、光刃照明システム。高出力のビーム照明が周囲の電子をかき混ぜ、無線通信を阻害する!
「じゃみんぐじゃみんぐこんにちは! ほら、こそこそ話なんてやめにして、キミは私だけを見つめてよ?」
ばきゅーん☆ マイクめいて握った電離刀から人差し指を立てて、指鉄砲で撃ち抜くゼスチュア。依然、トーレのペースは崩れない!
サイコブレイカーの眼が途端に据わった。――覚悟を決めたのだ!
「……テメェを殺せば通信復旧ってことだなぁ!!」
両手に赫雷を纏わせ、サイコブレイカーは無数の雷の鎖を放った。ライトニング・カリギュラ! トーレ目がけ全方位から、包み込むように鎖が集中する!
トーレは虹色に煌めくプラズマブレードを持ったまま、
「わん、つー、すりー、ふぉー!」
ステップ、ターン、ステップ。ブレードなしで見たならばそれは可愛らしいダンスにしか見えなかったろう。しかし振り回される電離刀の切っ先が凄まじい勢いで迫る鎖を斬り断っていく! すべては計算された動きだ。いくら鎖が来ようとも、彼女の剣舞は止められない!
「❤にfavに高評価! よろしくね✨」
テンションは最高潮、ウィンクをキメながら、『あっ』とばかりに驚いたような表情を作るトーレ。
「あぶなーい。後ろ、見てみたほうがいーんじゃない?」
「――ッ!」
ジャンクか。得体の知れぬスレンダーマンか。あるいはあのヤクザか。注意を逸らしてはならぬと知っていても、首が動くのを止められず、サイコブレイカーは肩越しに振り返る。
――が、なにもない。
ブラフと気づけどもう遅い、
「あ、後ろじゃなかったごめーん❤ ――ガチ恋距離だぜ、ラッキーだね?」
甘い声は息の掛かるような距離で発された。
そのたった一瞬で、トーレは雷鎖の包囲を脱して踏み込んだのだ!
電離刃、十字一閃!!
「グワーッ!?」
懸命なバックステップによる回避、しかして傷は避けられぬ! 胸をX字に裂かれて血の蒸気を上げるサイコブレイカー。その後ろ、ギンジローの全力の拳と、彼と対するサイコブレイカーのメタルクラッシャーが再三激突する!! ギンジローの拳が砕けかけ、スパークを上げるが、しかし! 対手のサイコブレイカーの拳の方が損傷が激しい! たった今の激突で、ついに右のメタルクラッシャーに致命的なクラックが入る!
「バカなーッ!?」
たまらずバックステップ。その後退は、本能からのものだ。それが悪手だと頭では分かっていたはず。――それでも、退がらずにはいられなかったのだ。ギンジローという、旧く、だが純粋に強い『任侠』を相手に!
「ケンカはビビっちゃ敗けだ。来世の教訓にするんだな」
ギンジローは大乱斗のグリップを取り、セレクターを最大出力の一粒弾に設定。セフティをリリースし、躊躇いなくトリガーを引いた。――きゅがォッ!! 高出力の二条のビームがDNA螺旋めいた軌道を描きサイコブレイカーに驀進、
「アバーッ!?」
砕け掛けた右拳を破壊、左腕にも少なからぬ損害を与える!!
「……なるほど、耐えるか。確かに雑魚とは出来が違うようだ。だが、どちらにせよ、これで仕舞いだ」
興味を失ったようにギンジローは背を向ける。
「何だとッ……?! 俺はっ!! まだ
……!!」
もはや破れかぶれに突っ込もうとしたサイコブレイカーがつんのめった。――動けない!!
「ワシの仕事はここまでだ。後の仕上げは任せてある」
「そうだな。流石の手並みだ、ギンジロー。では幕を引くとしよう」
スレンダーマンが、まるでパイプを吹かすときと同じようなリラックスした声で言った。――その声は、あろうことか『地中から』響いた。
ユーベルコード【Excuse me.】! 『無機物を摺り抜け可能にする』、ただそれだけのユーベルコード。ロアは自身の走る軌道上の無機物を地中二メートルまで摺り抜け可能に設定し、それこそ神出鬼没に出現と消失を繰り返して執拗な敵の追撃を回避していたのだ。気がつけば、すでに彼の術中に填まったサイコブレイカー――ロアを追っていた――が棒立ちで痙攣している。盲滅法に攻撃するその隙を突かれ、地中から繰り出された『霧影』によるハッキングをまともに食らったのだ。
「焦れて乱暴な手に出てくるのを待っていた。思ったより早かったがね」
――斯くしてフリーになったロアは地中を潜行、ギンジローとトーレの相手の足下の地面を透過可能にし、直後に『解除した』。つまり、敵の脚がめり込んだ状態で物性を元に戻したのだ。
結果、彼らの脚は地面に咥え込まれる!
「さて、先程私は〝私らしくやらせて貰う〟と言った訳だが――どう言う意味かわかるかね?」
――光の柱が立ち上る。
放たれたビットが次々とトーレの元に舞い戻り、プラズマブレードに合体。全連結状態で発振されるプラズマブレードが、天をも衝けよと伸びたのだ! まっすぐに振り上げた二刀の電離刃は迸るように太く長く伸びる!
「あれは、『トドメは譲る、援助をするから派手にやれ』という意味だ、私達の間でだけ解る言い方でのね。――その位置だ。大変結構」
位置。そう。
霧影で麻痺した敵、ギンジローが打ち合っていた敵、トーレに斬られて蹈鞴を踏んだ敵――バラバラに戦っていた彼らが、気づけば一直線上に並んでいたのだ!
当然、ロアが仕組んだことだ。何という戦略眼か!
「最後は刺激的にやり給え、トーレ嬢」
「後はしっかりとやれ。しくじったら、ただではおかんぞ」
「まっかせて! 二人と一緒の✨舞台で――ドカンとキランと決めちゃうぞ! 星河ちゃん、極限あげぽよマックスストリーム
……!!」
「や、やめッ――」
虹に光る光の柱を、トーレは迷うことなく、
「どっ、かーーーーーーーーーーーん!!!」
振り下ろすッ!!!
――それはもはや斬撃と言うより、叩き潰す光柱の一撃であった。
「「「サヨナラ
!!!!!」」」
爆発四散爆発四散、爆発、四散ッ!!! 極光の中に巻き込まれた三体のサイコブレイカーが爆散するのをバックに、オーバーヒートした星河をタクトめいて振ってドローンへカメラ目線を送るトーレ。
「この配信はStray DogSの提供でお送りしましたっ! 響け、星の彼方までっ!」
――光刃が放つ極彩色の煌めきよりも目映いウィンクが、フレームの中で閃いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴木・蜜
◎
さて
シロガネさんの代わりに
しっかり片付けまでしませんとね
この地に溢れる毒を取り込み
体内毒と共に濃縮
私は此処で『禁忌』となる
ランセットに濃縮毒を装填
視聴嗅覚での感知を無効にした上で
地を這い 壁を這い 一気に接敵
死角から刃を刺し込み
一刺しでサイキック能力を融かし奪いましょう
巨腕で潰されても問題ないです
攻撃の余波で飛び散った身体も駆使し
反撃して差し上げましょう
知覚できない千切れた飛んだ腕が
どのように己の命を狙って動くか
予測できますか
下手に千切らない方が良かったと思いますよ
この地に染み付いた毒を消し去ることでもしない限り
私を完全に殺すことは叶わない
心配要りません
直ぐ終わります
私は死に到る毒ですので
あなたの命を融かすくらいどうってことない
野良犬の代わりにお返しです
痕跡ひとつ残さず葬って差し上げましょう
●禁忌の劇薬
「さて……シロガネさんの代わりに、しっかり片付けまでしませんとね」
ぽつりと呟くのは冴木・蜜(天賦の薬・f15222)。彼はジャンクヤード中央部寄りの、障害物の多い地形を選んで陣取っていた。すう、はあ、と深く呼吸する。――いや、それを呼吸と言うべきか、否か。
「――集まりなさい」
ダイオキシン、という毒を聞いたことがある人もいるだろう。廃棄物の焼却に伴い生まれる、自然界には存在しない猛毒の汚染物質だ。このジャンクヤードに絶えず降る上層からの汚水は、ダイオキシンは勿論、もっと有害な諸々の物質を含有している。
蜜は、己の体の一部を既に地中に根のように浸透させていた。肺に相当する作り物の器官を膨らませてポンプのように用いる。地中にたっぷりと染み込み濃縮されたその毒を、彼はその身体に吸い上げ、取り込んでいるのだ。
「――私は此処で『禁忌』となる」
吸い上げた毒を濃縮。体内にある彼の毒と混ぜ合わせ、さらなる劇毒を作り上げる。袖に埋もれた手の先に、しゃり、と音を立てて三本の、刃のないランセットが顔を出した。指の股に挟んだそれは、蜜毒循環式ランセット『融病』である。柄尻が蜜の手より、ぢゅう、と毒を吸い上げた。刃がなかった先端に、低い音を立てて黒い毒が循環し、液体の刃を構築する。
体内で濃縮精製した劇毒――『万能薬』で体を覆い、蜜はひどく静かに地に溶けた。……黒い不定形の粘液然とした姿となり、地を、あるいはジャンクの山肌を這って移動する。目を疑うほどに疾い。
このエリアへ駆けてくるサイコブレイカーを目がけ、蜜は一気に接敵した。
「……!!」
視覚、嗅覚でその移動を探知することはほぼ不可能。だが、第六感としか言えない何かがサイコブレイカーを突き動かした。その拳の先端に集中したサイキックエナジーが、空気を虹色に歪ませる。突き出した拳から迸るはサイコ・カラテ・ミサイル。虹色の光弾が、高速移動する蜜を捉えた。
轟音! 黒い水たまりめいて飛び散った蜜だが、その程度では不定形たる彼を殺すには至らない。高温で焼却するか、あるいは一点に閉じ込めて超高圧のエネルギーで消滅させるか――いずれにせよ、今の一打程度では到底足りぬ。蜜は飛び散った体を集め、ずるりと人間の姿を取り戻し、うっそりと言った。
「……下手に千切らない方が良かったと思いますよ。もはや私の体は、あなたの知覚の外側。知覚できない千切れた飛んだ腕が、どのように己の命を狙って動くか――予測できますか?」
「なんだと
……?!」
そう。人間の姿形を取り戻した蜜には左腕がなかった。――先ほど一撃を受けた際、わざと回収しなかったのだ。戦慄したように目を見開いたサイコブレイカーの後ろで、音も無く地面から腕が跳ねた。
「うおおっ?!」
サイコブレイカーもまた死線を潜り抜けてきた猛者だ。殺気を探知して、真後ろから跳ねてきた左腕を弾き落とす。それは文句なく、アンブッシュを的確に防ぐ最適な動きだった。
――しかし、相手が悪い。
「いくらでも抗うといいでしょう。ですがこの地に染み付いた毒を消し去ることでもしない限り――私を完全に殺すことは叶わない」
声はサイコブレイカーの前方、息の掛かるほどの近くから放たれた。下肢を不定型に変え、先ほどと同様の高速移動で、既に蜜が近接している。
「何なんだ、貴様はッ
……!!」
得体の知れないその恐ろしい動きに、戦慄するままにサイコブレイカーは引き戻した拳を放った。メタル・クラッシャーの一撃が蜜の左半身を大きく抉り吹き飛ばす。超高圧のサイキックエナジーが炸裂したのだ。真っ当な生命体なら即死してしかるべきのインパクト。
――だがあいにく、蜜は真面でも真っ当でもない。
「私は禁忌の劇毒にして万能薬。――心配要りません。直ぐ終わります。私は死に到る毒ですので、あなたの命を融かすくらいどうってことない」
とす、とあっけない音を立ててランセットがサイコブレイカーの胸に突き刺さった。
「ギャアアアッ
?!!?」
屈強の男が思わずひしゃげた声を上げるほどの激痛。毒で構築された刃が彼の肌肉を溶かしながら刺さり、傷口から『サイキック』を、『殺気を感知する戦闘勘』を、それぞれ吸い取る。一瞬ですべてを奪うことは罷り成らずとも、多少奪うだけで充分。
「く、くそ、離れろッ!!!」
サイコブレイカーは滅茶苦茶に腕を振り回し、蜜の身体を振り払う。振り回される力のままに横合いの障害物に叩きつけられ蜜の身体が黒く飛び散る。
しかしダメージはない。――暴れれば暴れるほど、沼に沈むように、サイコブレイカーは術中に填まっていく。
視覚でも嗅覚でも検知できない、先ほど弾かれた左腕が再度敵の死角から襲いかかった。殺気を読めなければそれを防げるはずもない。あっけなく脇腹に、ランセットを握った左腕が突き刺さる。獣のような叫びを上げて振り払おうとする男の喉笛に、今度は飛散して宙に放り出された右腕が食らいついた。ランセットで喉が切開され、声の代わりにか細い息が、血と共に笛のように漏れ出る。
「――!!!」
「野良犬の代わりにお返しです。痕跡ひとつ残さず葬って差し上げましょう」
囁きながら蜜は、融病を通じて劇毒を男に流し込んだ。凄まじい速度での注入。瞬く間に肌が黒く腐り、溶け、骨がもろくも崩れて巨体は地面に倒れ伏す。――生体部分が溶けて地に染みるまで、およそ一分。
ずるり。
溶けた男のいた跡に、完全な姿で、蜜が立ち上がる。
男だった地のシミを一顧だにせず、蜜は次なる病巣を求め、歩き出した。
大成功
🔵🔵🔵
虎刺・ザカロ
その腕、強そうだな。さっきのブサイク共より余程いい
ケド好みじゃねェな!テメェのセンスも不合格だ。
デカ腕…見かけ倒しじゃァねェみてェだな、上等だ
でもやっぱイケてねェんだよオッサン
雷轟もデケェもンだがあのオッサンの腕なんぞより、最強にイケてンだ
何てったって「オレの為の雷轟」だからな!
ブッた斬る?いーや、ブッ潰してやる
何だァ?オレと同じような事もすンのか、あのデカ腕オッサン。
ンじゃ尚更負けるわきゃいかねェな
テメェになんか操らせねェ、譲らねェ、奪わせねェよ!!!
でなきゃシロガネに合わせるツラがねェってもンだ
雷轟にセットしていたオレ手製の最強薬だ。
いくぜェ最高出力、自慢の腕で止められるもンなら止めてみな
オレ自身の疲労も眠気も、テメェに向けて
全部まとめてぶっ飛ぶ一発くれてやらァ
●カリギュラ・オーヴァードライヴ
「その腕、強そうだな。さっきのブサイク共より余程いい。――ケド好みじゃねェな! テメェのセンスは不合格だ、ここから先は通さねェぜ!!」
「言ってくれるじゃねぇかクソガキが!! どう通さねぇのか、見せてもらおうじゃねえかよォ!!」
大剣を振りかざし、突撃してくるサイコブレイカーに立ちはだかったのは虎刺・ザカロ(PsychoBreaker・f36636)である! 敵は二メートル近い身長を持つ筋骨隆々の大男。対してザカロはまだ成熟しきっていない線の細い身体をした少年だ。
まともに打ち合えばパワー負けは必至。故に、ザカロは刃渡一・五メートルの大剣、『雷轟』に装填したアクセラレーター・アシッドを手から注入。自分のサイキックを、筋力を、限界まで増幅する。
「おらぁあッ!!」
「ぐ、おおおッ!?」
サイコキネシスで刀身自体の動きを制御することで、ザカロはその細腕で軽々と雷轟を取り回すことが可能だ。至近距離に吶喊して斬りかかるザカロの剣捌きに、驚愕したかのようにサイコブレイカーが防戦に回る。しかし、それもいつまでもは続かない。ザカロがスイングする雷轟の動きに対応し、サイコブレイカーはその両拳――『メタル・クラッシャー』による激しいラッシュで返礼する!
「ガキにしちゃ中々やるようだが、『オラクル』をナメるなよ!! 俺達の殺しの為の技はなァ、ガキのお遊戯とは訳が違うンだよぉ!!」
「……ッ!!」
がっ、がぎっ、ぎんっ、がぎィンッ!! サイコブレイカーは巨大な拳をコンパクトに振り、至近距離でのラッシュ戦にに持ち込む。あれほどのサイズの拳だ、重量は桁外れのはず。しかし、それを完璧にサイキックと筋力によって制御し、フック気味の軌道を描く打撃を立て続けにザカロに送り込む。サイキックの操作技術、そしてその出力、加えて筋力においても、すべてがザカロの上を行く。
あっという間に手数で圧され、ザカロは数十発目の拳を雷轟で強く受けるのと同時に、鋭く跳んで下がった。打撃のインパクトを利用しての後退。敵の隙を突いて下がる為の技術を本能的に使いながら、ザカロは上がった息を整えるように大きく吸気。
「そのデカ腕……見かけ倒しじゃァねェみてェだな、上等だ。でもなァ、やっぱイケてねェんだよオッサン。雷轟もデケェもンだがあのオッサンの腕なんぞより、最強にイケてンだ!!」
ここが大一番。この後倒れようと、こいつだけは絶対にここで倒す!
ザカロの体に雷が走る。『ライトニング・カリギュラ』、起動!
「なんてったってコイツは、『オレの為の雷轟』だからな! ブッた斬る? ――いーや、ブッ潰してやる!!」
「やれるモンならやってみやがれェ!!」
ガツン、とサイコブレイカーが拳をぶつけ合わせ、赤雷を体に纏う。発露するのは『ライトニング・カリギュラ』! 奇しくもザカロの体を取り捲く雷と同じものだ。
サイキックは同じ。ならば、あとは出力の大きい方が勝つ……!
「何だァ? オレと同じような事もすンのか、テメェ。ンじゃ尚更負けるわきゃいかねェな!! テメェになんか操らせねェ、譲らねェ、奪わせねェよ!!! でなきゃシロガネに合わせるツラがねェってもンだ――野良犬の意地ってやつを、テメェにも見せてやるよ!!」
ザカロは雷轟の装薬シリンダーを交換。トリガーを更に引き、追加でアクセラレーター・アシッドを供給する。サイキックを強化する為の向精神薬を致死量寸前にまで体にブチ込み、己の能力を限界まで増幅する腹づもりだ。
ぶぁ、とザカロの髪が逆立つ。彼を取り捲く雷電の出力が上がり、口の中がひりつくようなスパーク音と共に空気が爆ぜる!
「オレ手製、正真正銘の最強薬だ。――さっきまでの市販品なんぞとはよォ、効き目が違うぜッ!!」
マッチ棒のような軽さで雷轟を振りかざし、ギラギラと光る目でザカロはサイコブレイカーを睨んだ。雷轟に蒼い超自然の雷が集い、まるで伝説の魔剣がごとくに禍々しく光り、雷音を奏でる!
射竦めるごとき目は、鋭い。
どんなところに追いやられても、飢えようと、死に瀕そうと。
最後の一瞬まで抗い、生きようとし続ける、野良犬の目だ。
「ッ、は、強がりを言いやがる!! テメェ程度のサイキックでどれほど粋がッてられるか、試して見やがれよォーっ!!!」
気圧されながらサイコブレイカーはライトニング・カリギュラを放った。両掌から放出された嵐のごとき赤雷は、空気をジグザグに噛み裂いてザカロに食いつこうと迫る。
――それを前に、ザカロは地に剣を突き立てた。刹那、爆ぜるがごとき轟鳴と共に雷電が迸り、吹き上がる!! その物量は――まさか、サイコブレイカーが放ったライトニング・カリギュラの更に倍ッ!!
ザカロ手製のアクセラレーター・アシッドが、彼の最大出力をそれまでの倍以上に押し上げた。反動など恐れず、後も先もなく、この一撃に全てを懸けたのだ!!
「なッ、なんてパワーッ、バカなーっ!?」
襲いかかる赤い雷の嵐を、地から天へ迸った蒼い雷が駆逐する!天に放たれた雷は、獲物を探すがごとく急激に角度を変え、サイコブレイカーに集中する!!
「ぐぎゃああああァァアッ
?!?!」
炸裂する稲妻の鎖がサイコブレイカーを捉え、その神経系統を支配する。ザカロは、最後の力を使って疾った。命令はただ一つ。
「――『そこを動くな』ァッ!!」
「バカな、こんな、こんなバカなッ、うわあアアアッ
!!!?」
肉薄は一瞬。断頭台の刃より重い雷轟の刃が翻り、――一閃!!
首が高く飛んだ。雷鎖に縛られたサイコブレイカーの首を、ザカロの一撃が刎ね飛ばしたのだ。
「ヘッ――やっぱり、オレ達の方が上だったぜ。なァ、雷轟?」
ど、と膝をついて、ザカロは倒れる。定格出力を遙かに超える力を絞り出した代償は、強い眠気だ。
意識を落とす彼の後ろで、サイコブレイカーの体が、追いかけるようにゆっくりと倒れ伏した。
大成功
🔵🔵🔵
ユヴェン・ポシェット
◎
先の者達とはまた違うみたいだ
共に戦った少年へ、悪いがこの先へは連れて行けそうもない
後の奴等は俺達に任せて欲しい
力任せがお得意の様な雰囲気だが、どうやらそれだけでもないみたいだな。
超能力と呼ばれる類の妙な力をつかってくるのか
とりあえず最も注意すべきはあの腕の力だろう。
『荒嵐』の力で相手の攻撃を避ける
相手の他の力は直接視認できる力でなくとも、力の流れというものは存在するだろう
ならその流れを断つ。『青凪』、力をかしてくれ。
水刃を放ち切る事で相手からの力を打消す。
青凪が水を生み出す“元”がなければつくれば良いだけだ
最悪でも『荒嵐』の力でダッシュして蹴りの一つでもお見舞いしてやれば良い
シロガネから『荒嵐』の説明を受けた時から、気になっていた力。
ミヌレ、そろそろ良いか…“とっておき”見せてやろうぜ。
準備はとうに出来ているさ
シロガネは充分過ぎる程の戦いを見せた
彼へ言った言葉を違えるつもりはない
俺達は俺達の戦いを。
俺はやるべき事やるだけだ
●ジェット・ストライド
「……」
ユヴェン・ポシェット( ・f01669)は、ビリ付くようなプレッシャーに目を細めた。
タイヴァスと共に降り立った先で彼が相対したのは、無言のサイキッカー――『オラクル』所属のアームド・サイコブレイカーである。他の敵と同様の出で立ちではあるが、所作に無駄がない。無駄口を叩くこともない。進路を遮るように降り立ったユヴェンに対して、無言で戦闘態勢を取り、間合いを計ってくる。
(置いてきて正解だったみたいだな)
後の奴らは任せて欲しい、と言い含め、安全な場所で別れてきた少年のことを思う。先程までは共に戦っていたが、戦闘が激化すれば無事を保証できるわけではない。安全圏に退避させるが吉と判断したが――ユヴェンは額に汗を滲ませて、その判断が正解だったことを悟った。
こいつは、先程まで鎧袖一触に倒し続けてきた敵とは格が違う。仮に少年を連れてきていたとすれば、庇う余裕はなかったことだろう。
「力任せがお得意の様な雰囲気だが、どうやらそれだけでもないみたいだな。超能力――とでも言うのか? その妙な力は」
じり、と間合いを計りながら、ユヴェンは右手に刀派“永海”は炎氷削水『青凪』を、左手にドラゴンランス『ミヌレ』を抜き構え、一刀一槍の構えを取った。
「確かめてみろ」
ぼそり、と、鬱蒼とした森に吹く、温い風のような低い声が言った。
――同時に炸裂音! 地面が弾け飛び、敵の姿がブレる! サイコブレイカーが地面を蹴ったのだ。神速の接近から、握り固めた拳を真っ直ぐに突き出してくる。見た目は明らかに重量級、そのはずなのに呆れるほどに速い!
「……ッ!!」
ユヴェンは即座に身体を傾け、高機動斥力ジェットブーツ『荒嵐』の斥力機構を起動。吹っ飛ばされるように横っ飛びに逃げた。この速度で突っ込んでくる敵に対し、後ろに逃げるのは愚策だ。いかに荒嵐による機動力が優れていたとて、早晩追いつかれる。
バァンッ!! 凄まじい風切り音――空気の壁を裂いた音が横手で聞こえる。敵の拳が音速を超えたのだろう。まともに食らえば命はあるまい。あの拳が敵のメインウェポンなのだろう。喰らってはなるまい。
「大した逃げ足だ。だがいつまで逃げていられるかな」
つまらなそうに言いながら、サイコブレイカーは即座に方向転換。言い終わらぬうちにユヴェンを追走してくる! 着地するなり、ユヴェンは即座に真上に跳んだ。一瞬でいい。時間を稼ぐ必要がある。空中でバックフリップを一つ打てば、眼下の敵が両掌をユヴェンに指し向けるのが見えた。――その瞬間、ユヴェンの身体から力が抜ける! 即座に行動不能となるようなダメージではないが、生命力を徐々に奪い続ける生命収奪の能力――『ラックイーター』が起動したのだ。
「ちょこまかと鬱陶しいヤツだ。吸い尽くしてやる」
「できるものならやってみろ。俺はそう簡単には倒れないぞ!」
攻撃の術理は全くわからないが、恐らく掌を指し向けた瞬間に発動したことから、あの構えを取る必要があるはずだ。――逃げ回って距離をとればあの掌で削られ、白兵攻撃を仕掛ければ超速の拳が来る。――隙のない敵だが、こちらにも奥の手がある。
ユヴェンは、心の中でミヌレに命じた。
――ミヌレ、そろそろ良いだろう。“とっておき”見せてやろうぜ。
同時に、ゴオッ、と音を立てて龍槍『ミヌレ』が焔を帯びる。『青凪』は熱と冷気を吸い、水を創り出す特殊な刃。その熱源は、冷気の元は、必ずしも他になければいけない訳ではない。ユヴェン自身が編み出す熱で自足できるものだ。槍と刀が重なり、多量の水が迸る。
「……俺は退かない。お前たちメガコーポ相手に、シロガネは充分すぎるほどの戦いを見せてくれた。――彼に言った言葉を違えるつもりはない、俺はやるべきことをやる!! 力を貸してくれ、青凪!!」
言うなり、ユヴェンは持ち上げた青凪を立て続けに振り下ろした。剣先に纏い付いた水が、まるでウォーターカッターめいて、超高圧の水の刃を立て続けに下方に飛ばす!
「……!」
目を瞠り、サイコブレイカーは拳を繰り出して水の刃を叩き落とそうとした。……しかして食い込み、傷がつく! あの強靱な金属の拳に、永海が鍛えた水の刃は全く劣らず拮抗したのだ!
「馬鹿な。……貴様、何者……!」
驚愕の声を上げて跳び下がるサイコブレイカー。その驚きを、一瞬の隙を、降り立ったユヴェンは見逃さぬ。
着地。膝を縮める。顎を聳やかし前を睨む。ユヴェンは息を吸い、八分で止めた。――その呼吸に合わせるように、ブーツが――荒嵐が、青凪の刀身に巻き付いた水を、渦を巻いて吸い上げる!!
「――野良犬の矜恃を見せてやる!!」
膝のバネを解放。ユヴェンが地を蹴るその瞬間、荒嵐が、吸い上げた水を高い斥力で噴出する。凄まじい加速。ユヴェンの身体が浮くが、その足は地を踏みしめるかのように宙を蹴った。噴き出す水の反動を『蹴』って、なお疾く駆けるユヴェンの速度は、サイコブレイカーが見てきたいかなる敵とも違う動きだったに違いない。錯愕が目に浮く。
ステップに合わせ水の爆発を奏で、ユヴェンは瞬く間にトップスピードに加速! 空中を稲妻のように駆け、右脚をバックスイングする。その爪先に鋭利な水の刃が発生した。――荒嵐の斥力力場により固定され、決して鈍らぬ水の刃だ!!
「これが、銀の牙だ――ッ!!!」
ユヴェンはジグザグの軌道から、最後に一つフェイントを交え、最速の右蹴り下ろしを放った。
――その速度の前では、サイコブレイカーの拳さえ鈍い。
ガードが追いつく前に、ユヴェンの右脚の刃が深く深く敵の胸を斬り裂いた。
――地に脚をつき、ジャンクと地面を削りながら制動するユヴェンの後ろで、サイコブレイカーは、驚愕の表情を浮かべたまま光の柱となって、爆発四散するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
使い走りの走狗如き、本命と言うには物足りないけれど
まぁいい。精鋭気取りで投入されてるなら、叩き潰す意味も少しはある
さて…戦場全域に影響するUC、それに単純な馬鹿力は多少面倒だね
《早業》で【神狩りし簒奪者】、
速度に秀でる白雷槍と範囲に長けた黒炎の嵐による
《先制攻撃+属性攻撃+2回攻撃》で攻撃力を削ぎ落とそう
アタシ自身も魔神権能の《封印を解く+ドーピング》で《継戦能力》強化、
《第六感+戦闘知識》の《見切り》と共に《空中戦》を展開するよ
ツキだけでも技だけでも完璧な勝利には程遠い。そうだろう?
強化したダガーでも巨腕との打ち合いは分が悪いと見て回避に専念、
接戦の中ではそれでも躱しきれず《怪力+受け流し》を
試みざるを得ない――ところまでが《演技》、計算通り。
[鬼札]の切り時だ、派手に決めるとしようか!
見事受け流したところでオーバーロード、真の姿を晒し増幅した魔神権能を
鬼札の回路に叩き込み《全力魔法》。
同時、死角を突いた影鎖で動きを阻害したところに
黒炎の嵐と白雷槍の《弾幕》を叩き込んで幕引きとするよ
●簒奪の陣
「使い走りの走狗如き、本命と言うには物足りないけれど――まぁいい。精鋭気取りで投入されてるなら、叩き潰す意味も少しはある」
カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は呟き、顎を聳やかした。
既に多数の猟兵が交戦中。凄まじい戦闘が散発する中で、カタリナはサイコブレイカーの一体に狙いを絞って急降下した。猟兵と敵の数は大体同数とのこと。一人一体の受け持ちならば、まだフリーな敵から選び放題だ。
(戦場全域に影響するUC、それに単純な馬鹿力は多少面倒だね)
ならば、先制攻撃を仕掛けて出させる暇を与えなくするのが得策だろう。カタリナは即座にユーベルコード『神狩りし簒奪者』を発露、眼下の敵目掛けて無数の白雷槍を繰り出した。
「……!」
光に等しい速度で放たれる雷槍の嵐を、しかし敵は受け止めた。――受け止めると言うより、『逸らし』ている。両腕に充満させたサイキックエナジーが力場を創り出しているのか。敵が拳を衝き上げるたびに空気が魚眼レンズを通して見るかのように歪み、その歪みに巻き込まれた雷槍は軌道を逸らされ、地面に突き立つ!
「貴様ら――メガコーポに楯突くとはな。余程命が惜しくないと見える」
「使いっ走りが偉そうに吹くじゃないか。雷槍を防いだだけでアタシの攻撃を全部防いだつもりかい?」
カタリナは絶えず生成した雷槍を連射しながら、ダガーを薙いだ。――刃先が空を黒く削り取るかのようだ。刃先から黒炎が迸り、それが嵐となって眼下に吹き荒れる!
「――その使い走りの力がどの程度か、貴様のその身で確かめてみるがいい!」
ヴォッ!! 凄まじい音と同時に、サイコブレイカーが不可視の拳を繰り出した。それは音速など疾うに超越した拳。拳先からサイキックエナジーが遊離し、極彩色の光弾として射出される。黒煙の嵐に風穴を開ける、脅威の破壊力だ。
カタリナは間髪入れず翼を羽撃いて回避。既に魔神権能の封印を解除し、各種能力にブーストを掛けている彼女が回避に回るということが、敵の能力のすさまじさを語っている。
カタリナは空中で姿勢制御をしながら雷槍を連射。しかし、回避の隙を突くように敵は跳躍した。――ただの跳躍ではない、あれは飛翔! サイコキネシスにより自身の身体を操作し、宙を飛んでいる!
「ハッ、流石に吼えるだけのことはあるね!」
「その余裕ぶった顔を叩き潰してやる!!」
猛く吼え、サイコブレイカーはカタリナ目掛け肉薄した。その全身から放出されるサイキックエナジーはまるで強固な鎧だ。掠めるコースのはずの雷槍が逸らされ、黒炎の嵐は引火することなく払われる。空中を飛び逃げ回りながら雷槍を数発は直撃させることに成功したが、それにさえ痛痒を示さず敵が迫り来る!
「くっ!」
カタリナはダガーに魔力を注ぎ、防御姿勢を取る。
「でかい口を叩いてくれたな。『オラクル』をナメるなよ
……!!」
ドッグファイトめいた空中戦は、やがて白兵距離にもつれ込んだ。緻密なサイコキネシスによる軌道制御で、サイコブレイカーがついにカタリナの正面から至近距離格闘に持ち込んだのだ。嵐の如く繰り出される拳! メタル・クラッシャーの連撃を、カタリナは掻い潜り、避け、紙一重で避け続ける。
回避に専念するカタリナだが、そうしている間にも四肢から力が抜けていく。ユーベルコード『ラックイーター』の影響下か! 近づいて格闘を仕掛け、防御を強いながら、他方では敵の生命力を吸い上げ己が幸運に転化していくというチートそのもののコンビネーションだ。
「この状況に追い込まれ仕留められなかった者はいない。諦めて辞世の句でも詠むんだな!」
致命的な角度から繰り出される打撃。完璧なタイミングで放たれた拳は回避不可能、カタリナはダガーで受け流す以外にない。
勝ち誇ったように口端を歪め、吼えるサイコブレイカーに、
「――へぇ」
しかし返るのは不敵な笑みだった。
「じゃあ、アタシが最初だね」
ギィんッ!! 火花が散る! 不得手なはずのパリイングを難なく極めた。――彼女の手の内側で光るはダガー、――『鬼札』! 近くに寄って大振りの一撃を繰り出す時を、彼女は待っていたのだ!
「派手に決めるとしようか!」
カタリナの身体が輝き、身に纏う衣が羽衣めいて形を変えた。極彩色の六枚の翼が翻り、頭上に天輪が回る。――これぞ、彼女の真の姿!
鬼札に集められた魔力が燃える! 彼女の使う魔神権能を増幅する鬼札が、受け流しを成功させたこの瞬間に伏せていた術式を紡ぎ出す。彼女の光が遍く照らした地表、生まれた影から異能殺しの影鎖が無数に迸り、次々とサイコブレイカーの身体に巻き付いて戒める! 迸るサイキックエナジーを鎖が吸い上げていく!
「なん、だとッ
……!?」
そしてサイキックエナジーによる強烈な防御・攻撃能力がなければ、雷槍を、黒炎の嵐を彼が防ぐことは敵わない。
「こんな、こんなバカな――ッ!!!」
語尾を断ち切るように、カタリナは指を高らかに鳴らした。
無数の雷槍が剣山めいてサイコブレイカーに突き立ち、その白光ごと、黒炎嵐が彼の身体を呑み込む。
――爆発四散!
「悪いけど――やっぱりキミはただの使いっ走りだったよ。精鋭なんかじゃなくね」
報いを与え、冷徹にカタリナは囁くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】◎
同数……ってこた
単純に数えて1人1体か…?
結構骨が折れそうだ…けどなぁ
アレスと一緒の俺は、俺たちは
ふたりでなんかアレだ100人分くらいだ
蹴散らしてやろうぜ、アレス
歌で身体強化して靴に魔力を送る
先ずは真っ直ぐトップスピードで殴れるように
剣に炎属性の魔力を込めて先制攻撃だ
斬りつけたらすぐ下がってもう一体へ
アレスとスイッチするように戦おう
敵の攻撃は最低限を見切って避ければアレスがなんとかしてくれるはず!
俺は、最低限を避ける為
次の攻撃に繋げる為
魔力噴出口の方向を制御してっとぉ!
ハッ、もう完璧に馴染んだな
何時でもイケるぜアレス!
アレスのカウンターに合わせて高速移動
2体同時にぶっ飛ばせる位置どりを…まあ、細かい分はどうでもいいな!
何せ、でかいは強いだ
腕をデカくしてるお前らならわかるよなぁ!?
剣に全力の魔力を込めて【彗星剣】!
敵の装備を破壊するような一撃をお見舞いしたら
あとは——、任せたぜアレス!
ははっ、ふたりで100人分だって言っただろう
アレクシス・ミラ
【双星】◎
ああ、セリオス
…どれ程押し寄せてこようとも
剣と盾、そしてシロガネ殿達の牙を以って、鋼鉄の悪魔共を討ち倒す!
竜騎士形態で敵を牽制、セリオスを援護する銃撃を放つ
彼が攻撃した後は加速
そして『白夜・重騎士形態』へ
スイッチするように僕へと意識を惹きつけよう
攻撃を盾の『閃壁』で弾き
砲撃を放つ
…銃とはまた違う、が
城塞が如く光纏う剣と盾で立ちはだかろう
セリオスへの援護には砲撃と
砲撃の光を広げるように範囲攻撃
…あの巨腕を直接受けるのは危険だな
ならば…
ああ、頼んだよ。セリオス!
盾を構え、ギリギリまで攻撃を引きつける
僕を仕留められると思われる位まで
…その意識の隙を狙う
それを見切れば…鎧を竜騎士形態に変え
高速移動で回避
そして重騎士形態に戻し
カウンターの砲撃で敵を吹き飛ばそう
…全てを奪い、破壊し尽くすのが貴様達の神託だと言うのなら、
僕達はその全てを否定する
此れはこの地で生きてきた彼等への…弔いの灯火だ
彗星剣に合わせるように
ー導き拓け!【新星剣】!!
たとえ100人来ようとも…僕達ふたりと牙は、折れはしない
●双星の輪舞曲
「同数……ってこた単純に数えて一人一体か? 結構骨が折れそうだ。――けどなぁ、アレスと一緒の俺は、俺たちは――ふたりでなんかアレだ、一〇〇人分くらいだ!! 蹴散らしてやろうぜ、アレス!!」
威勢良く吼えたはセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)。彼が戦場に駆けだしたのはほぼ最後発だったが、その速度はまさに流星めいた超高速。戦闘が散発する中を駆け抜け、百数十メートル先に、突撃してくる敵――アームド・サイコブレイカーらを捕捉。――魔力噴流戦闘用鉄靴『流星』を早くも完全に使いこなしていると分かる動きだ。もはやその速度は、走行と言うより飛翔である。
「ああ、セリオス。……敵がどれ程押し寄せてこようとも。剣と盾、そしてシロガネ殿達の牙を以って、鋼鉄の悪魔共を討ち倒す!」
その傍ら、セリオスに決して負けぬ速度で超低空を飛翔するのはアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)。架空元素固定式複合アーマーシステム『白夜』による形態変化『竜騎士形態』で、機動力を限界まで高めた姿だ。この形態は防御力こそ向上しないが、常のアレクシスが持たぬ有射程火器と超高速での機動力を備える。アレクシスは盾と一体となったバトルライフル――『飛龍槍』を構え、セリオスに促すように言った。
「セリオス! 僕が攪乱する。君は突撃して全力で叩いてくれ!」
「へへっ、いつもとちょっと逆だな? 任せるぜ、アレス!」
相対距離百メートルを切る。前方から突っ込んでくるアームド・サイコブレイカーら二体がセリオスとアレクシスを認識した瞬間に、既にアレクシスは動いていた。
キシュッ、キシュシュシュシュシュシュシュッ!! 軽快な銃声と共に光の弾丸が連射される! 飛龍槍から吐き出される光弾はミニガンの弾幕めいて連なり、百メートル弱の距離からサイコブレイカーらを銃撃した。防御姿勢を取りながらジグザグに走り、アレクシスの照準から逃れるような動きを取るサイコブレイカー。的確な防御・回避行動だが、直進ルートを保てなくなった以上速力が落ちるのは必至だ。
――対して、セリオスの速度はさらに上がる! 歌を高らかに歌い上げ、根源の魔力を呼び覚まし、『流星』に全開の魔力を叩き込む。無茶苦茶な過大入力に、しかし流星は悲鳴一つあげずに応じた。セリオスは音速を突き破り加速! トップスピードに乗る!
百メートル弱を一瞬で詰める。相手方からすれば、気がつけば目の前に敵手がいたようなものだ。セリオスの剣が、ゴォッ、と焔に燃え上がる。
「おらぁっ!!」
「うおおっ!?」
あまりに突然の攻撃。全速力を乗せた剣先が、慌てて防御姿勢を改めたサイコブレイカーの腕に食い込んだ。凄まじい激音が鳴り響く。サイキックを通す超合金で作られた腕部『メタル・クラッシャー』が、そのあまりの切れ味と超高熱に裂ける!
「がああっ!?」
流石に一刀両断とはならぬ。しかし、撃剣の凄まじい威力を殺しきれず一体目のサイコブレイカーが、焔に焼かれながら後方に吹っ飛んだ。即座に追撃をかけようとするセリオスを、二体目が側撃する!
「イヤーッ!」
シャウト同時のメタルクラッシャーによる正拳突き! セリオスは身を返し
「よっと!」
ばぅンッ! ――その軌道上から消える!
「何いッ?!」
完全にセリオスを捉えるコースだったはずの拳が空を切った。
彼の足元で巻き起こったのは白蒼の焔。流星の可動式ブースターのバックファイアだ。その反動に乗りステップを踏み回避、続く裏拳も更にブースター点火で回避! 怒濤の連続攻撃を白焔を纏って回避するセリオスの動きは、まるで優雅に舞うフィギュアスケーターめいている。
「このッ、ちょこまかとッ
……!!」
「ハッ、もう完璧に馴染んだな――何時でもイケるぜ、アレス!」
一際強く焔を上げて左方に逃れたセリオスのその後ろから、
「おおおッ!」
猛る金獅子が、唸りを上げた。加速して追いついたアレクシスが来たのだ!
「っなッ――」
「喰らえッ!!」
シールドバッシュ!! 凄まじい速力がそのまま盾先に乗る。慌ててガードしたサイコブレイカーだが、その撃力を殺しきれずに吹っ飛んだ。地面を靴裏で掻き毟りながら着地したアレクシスの姿は、――おお、先程とは異なる形態に変化している!
常の彼の鎧はいわゆるライトアーマーよりの装備だが、この形態においては全身を隈無く覆う重装だ。機動兵器かなにかのような、フルプレートアーマーめいて拡張された装甲、天界に騎士がいればそうあろうかというフルフェイスの兜。これぞ、白夜『重騎士形態』。
じゃぎッ! アレクシスは勢いを殺すべく滑走しながら、左肩上の砲を展開した。重騎士形態の専用装備――鞘を芯として拡張された極光砲、その名も『白龍吼』――ドラクル・ロアだ!
――ゴァウッ!! まさに龍が吼えるが如き砲声と同時に、極光の砲弾がその咆哮から迸った。空中で藻掻くサイコブレイカーが白龍吼をガードの上からとはいえもろに受け、勢いを殺せぬまま砲弾と等速で後方に吹っ飛ぶ。ジャンクの山を二つ突き抜けて三つ目に叩きつけられ、濛々たる土煙を上げた。――銃とは使い勝手が違う……が、凄まじい威力だ!
「貴様ら……ナメた真似を! 命が要らんようだな!」
セリオスが斬り吹き飛ばした個体が両拳を引き構える。その拳に凄まじい密度のサイキックエナジーが集束! それが放たれる未来を『蒼穹眼』で見抜いたアレクシスが盾を地に衝き構える!
「セリオス! 僕の後ろに!」
「もういるよッ!」
打てば響くようなやりとりだ。アレクシスがその盾より『閃壁』を展開したのと同時、サイコブレイカーが拳の乱打を放った。その拳先から、高圧圧縮されたサイキックエナジーが、極彩色の光弾として放たれる。サイコ・カラテ・ミサイル!
閃壁と無数の光弾が激突して凄まじい激音、大爆音を奏でる!
「……!」
アレクシスは驚愕する。――軽い。あれだけの嵐のような攻撃を受けていながら。
白夜が強化するのは何も外形だけではない。彼が持つ守りの力そのものを強化する。架空元素はアレクシスが信じたようにその形を変える。彼が信じる限り、この守りが打ち破られることはない!
「小癪なァーッ! よくもやってくれたな、俺の顔に傷をつけやがってェーッ!!!」
白龍吼を喰らった側の個体が攻撃に参加する。その身体に傷はあるものの、あの砲の直撃を受けてもなおこの苛烈さで継戦するほどのタフネス。驚愕に値する。
降り注ぐカラテミサイルの数が二倍になり、ジリジリとアレクシスの踵が押されて後ろに滑り出す。
「……ならば!」
アレクシスは盾の守りを緩めぬまま、展開した閃壁から白龍吼を突き出し、砲の形質を変質させた。銃身内は架空元素で構成されており、放たれる砲弾もまた、架空元素で構成されているが故の離れ業だ。アレクシスは狙いをつけず、砲弾を散弾めいて拡散するように念じ、乱射した。散弾砲めいて光の嵐が吹き荒れ、二体のサイコブレイカーを迫撃する!
「チィーッ!!」
「おのれ、ならば直接叩くのみよォッ!」
サイコブレイカーらは散弾を掻い潜り、あるいは叩き落としながら左右より肉薄! 拳先より遊離したエナジーの弾でさえ凄まじい威力だった。あの拳を直接受ければ、いくら閃壁と『蒼天』と言えども防ぐには限界がある――
(だからこそ。彼らが絶対の武器を振るう瞬間。そこにこそ隙がある!)
死中に活ありとはまさにこのこと。肩越しに振り向きアイコンタクト。セリオスがわかっているという風に、魅力的な瞳を瞬かせ、悪戯小僧めいて笑う。
「「喰らえィーッ!!」」
敵のコンビネーションも凄まじい。直撃すれば撃力が共鳴して対象物を圧壊させるであろうシンクロニティの二拳が全く同時、前方左右からアレクシスに放たれた、まさにその時!
「白夜ッ!!」
アレクシスが吼え、セリオスが右方へ地を蹴った。
刹那、フォームチェンジ完了。アレクシスは一瞬で竜騎士形態に変形し、そのブースターを最大出力で吹かして左方へ逃れる。拳が宙を切ったその瞬間には、アレクシスは己が形態を『重騎士形態』に戻しだしている。――『白龍吼』が形成完了! 瞬刻!!
「――喰らえ!!」
「「な、にぃーッ!?」」
間近からカウンターめいて放たれる光の散弾砲! 直撃を受けたサイコブレイカーらが血を流しながら吹き飛ぶ。有効打。
――アレクシスは極めて短時間での精密な連続変形で窮地を切り抜けたのだ! 白夜が流石にオーバーヒートを起こし、装甲を維持できなくなるが、問題ない。充分に突破口は拓けた!
「――二体同時にぶっ飛ばせる位置取りとか考えてたんだけどよ、まぁ、細けぇこたぁどうでもいいよな! 何せ、デカいは強いだ。――腕をデカくしてるお前らならわかるよなぁ!?」
敵が吹っ飛んだその先に白焔散らして回り込み、美しい顔でぎらぎらと、サメのように笑雨のはセリオスだ。全魔力を星剣『青星』に突っ込めば、その美しい刀身は、天を焦がすような白焔の柱めいた炎剣と化す。
『彗星剣』の魔力属性を焔に切り替え、全てを飲み込み灼き尽くす焼尽の剣!
メテオール・サラマンドラ
――これぞ、彗 星 剣・『 紅蓮旋 』!!
ためらいも無く振り下ろされた焔の剣が、二体のサイコブレイカーを巻き込んで燃え盛る!
「うおおおおおッ!?」
「こんな、こんなバカなァーッ!?」
その焔の剣すら一撃は耐えた。驚愕に足る耐久力。――しかし、
「あとは——、任せたぜアレス!」
――セリオスは一人ではない。彼の『理想の騎士』が、拳を、全身を焼かれて宙を舞う二体のサイコブレイカーを睨んだ。
「全てを奪い、破壊し尽くすのが貴様達の神託だと言うのなら、僕達はその全てを否定する。此れはこの地で生きてきた彼等への……弔いの灯火だ!!」
盾を突き立て、両手で剣を執る。
架空元素により構築された超高エネルギーの奔流が剣から迸る。これを意念と共に振るう一閃にて投射する――アレクシスが振るう最大最強の一撃。
それは闇を貫き、星を拓く光輝の剣!!
ブレイズノヴァ
「導き拓け!! 『 新 星 剣 』ッ――!!!」
真一文字に放たれた暁空色の一閃。
守りに振り翳した銀の拳は、既にセリオスに焼かれて脆く。
――まるで硝子が砕けるように二対の銀の腕が砕け――爆発四散ッ!!!
空に、アレクシスが振った剣の残光が微か燃え、やがて消えた。
「ははっ、ふたりで一〇〇人分だって言っただろ。負けやしねぇよ、お前らなんかにな」
「そうとも。たとえ一〇〇人来ようとも……僕達ふたりと牙は、折れはしない!」
正義の前に、悪は潰える定めなり。
息を整え、セリオスとアレクシスは、笑みを唇の端に引っ掛けて、突き出した拳を重ねた。
――戦は未だ終わらぬ。
助けを求める誰かのため、二人はまた走り出す!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユウイ・アイルヴェーム
◎
奪い、奪われる
命はそうして保たれるものだと理解しています
ですから、奪ってはいけないというつもりはありません
命を持たない私が奪うのは正しくないことだということも、分かっています
それでも、迷っても、間違えていたとしても
私は選んで、ここに立っているのです
「あなたはここから何を奪うつもりなのですか」
答えがあってもなくても、もう何も掴ませません
他の方に伸ばす余裕を奪うように死角を狙って撃ち続けます
それでも倒れないなら【覚悟】をもって【切り込み】ます
奪われることも、奪うことも
痛みを与えることも、与えられることも
全力で、いきましょう
「力を貸していただけますか」
私は大丈夫ですから、あなたの持つ力を全て解放してほしいのです
知らなければ、いいえ、知りたいのです。あなたのことを
本当は、向かい合ったあなたのことも知るべきだったのかもしれません
永く存在する人形の私が忘れなければ「本当の死」にはならないと聞いたのです
…私にもっと力があればきっと、もっと選べたはずです
守るためだけの力では、手を伸ばせないままなのです
●選ぶための力
奪い、奪われる。それが命の原則だ。獣でさえもそうなのだ。人間がそうでない訳がない。
――けれど、それを咎めはしない。誰しもが奪わずには生きていけぬ。命というのはそうして繋がり、保たれるものだと、ユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)は知っている。
遍くひとに、奪ってはいけないのだと説くつもりなど、ユウイにはない。奪ってはいけないのだと言えるとしたら、それは奪う必要がない者にだけだ。
例えば、命を持たぬ人形――彼女自身のような――にならば言えただろう。けれど、人にはその理屈は通じない。絶えずなにかを消費して生きている。彼らに奪うなと言うのは、死ねというのと同じことだ。
――けれど。
奪うにも多寡がある。
「あなたはここから何を奪うつもりなのですか」
「知れたこと。全てをだ。――調度、使えるパーツが見つかったついでに、この地区に溜まったゴミも始末のし時だとのことでな。ゴミ掃除に我々の手を使うとは、まったく、莫迦に権力を持たせるとロクな事にならん」
やれやれ、と言う風に肩を竦めるのは、スマートな体格に、他の敵に比べ一際細く強靱に鍛え上げられたメタル・クラッシャー――金属製の強靱な腕を持つアームド・サイコブレイカーだ。その腕部には凄まじいサイキックエナジーが集中し、周囲の空気が歪んで見えるほどである。
「パーツを持っていくだけではいけないのですか」
「お前は家に巣喰った溝鼠を生かしておくのか?」
心底不思議そうにサイコブレイカーは首を傾げた。――その胸に隊長の記章が光る。
交渉の余地などない。ユウイは眦を決し、その背中に光の翼を広げた。広範囲電離羽弾散布翼『煌星』。
「見慣れんサイバーウェアだな。どの程度の性能か、見せてもらうか」
「これ以上、もう何も掴ませません」
――命を持たざる者が、命を奪うのは、正しくないことだということは、わかっている。
しかし、それでも、迷っても、間違えていたとしても。ユウイは無為に奪われる命を嘆き、潰えかけたその灯を繋ぐため、奪うことを選んでここに立ったのだ。
もはやためらいは無い。
ユウイは煌星に射撃命令。――きゅガガガガガガガッ!! 電離羽弾、プラズマ・フェザーが凄まじい音を立てて放たれる。敵隊長はサイドステップから無手側転、空中で無造作に拳を振るった。サイキックエナジーが拳から遊離し、光弾となり放たれる!
ユウイは地を蹴った。脚力に加えて煌星を羽撃かせ、電磁力により近辺の金属塊と反発、生まれた強力な反発力によって飛翔し、光弾を回避。空中で翼を最大に広げ、指揮者のように手を振り下ろす。
きぃいいいぃぃいいい――んん、
同時に煌星がユウイの命に従うように甲高く鳴いた。先程までは低速回転だったジェネレータが最大出力に近づく。
キュガァッ!! まるで孔雀が翼を広げた時のような軌道で、無数の電離羽弾が放たれる! 放たれた次の瞬間からカーブし、自動追尾弾めいて眼下のサイコブレイカーに降り注ぐ光の雨!!
「猪口才な!」
羽弾は正面から、回り込んで死角から、死の嵐めいて吹き荒れるが、それを敵はその強靱なクロームメタルの腕で叩き落とす叩き落とす叩き落とす叩き落とすッ!! 二本の腕が不可視の速度で撓る様は、まるで二振りの銀の鞭だ。
弾幕の合間に、防御しながらも男が片腕を伸ばす。ユウイの身体から急激に力が抜ける。――『ラックイーター』、生命力の簒奪能力! ユウイの動力が削れ、身体が思うように動かぬ瞬間が生まれたその刹那、
「隙だらけだな。――もういい、くたばれ」
男は防御を棄て、十数発の電離羽弾を喰らうのも構わず、引いた右拳に全てのサイキックエナジーを集め、解き放った。
ビーム砲めいたサイキックエナジーの奔流が、空中のユウイを呑み込むように伸びる!!
――人間ならばそれを走馬灯と呼ぶのだろうか。
限界の集中により引き延ばされた一瞬の中で、ユウイは祈るようにハーネスを掴む。
右手に剣を。左手に贋物の翼を。
覚悟など、此処に立つ前に終わらせてきた。
――力を、貸していただけますか。私は大丈夫ですから、あなたの持つ力を全て解放してほしいのです。……知らなければ、いいえ、知りたいのです。あなたのことを。
果たして、翼は彼女に応えた。
空中で虹の爆光が咲く。せせら笑って踵を返そうとした瞬間――光の中から飛びだした天使の、――否、ユウイの姿がある!
その身体を覆うように煌星が纏わり付き、光の繭の如く彼女を護っているのだ! よもや、あの出力のサイキックエナジー放出を無傷で切り抜けるなどと、誰が予想できよう!!
「小癪、」
な、と言おうとして男の動きが遅延した。――僅かな神経伝達の遅れ。プラズマフェザーが残した麻痺、ごく軽い神経障害。……それがこの一瞬を争う戦闘の中では、致命的なレイテンシーとなる。
ユウイは翼を広げた。抜いた剣に、翼から放たれた電離羽弾が纏わり付き、青白い刀身――言うなれば電離大剣を創り出す!
――重なった視線は一瞬。覚悟を持って斬り込んだユウイの剣が、今まさに、サイコブレイカーの胸を貫いた。
「、」
男は目を見開き、口を戦慄かせた。言葉一つ遺せぬまま――その身体は、サイキックエナジーの爆光となって四散した。ユウイは爆風に飛ばされながら、身を捻って着地する。
――長引けば、あるいはああなるのは自分だったかも知れない。
「本当は、向かい合ったあなたのことも知るべきだったのかもしれません」
永く存在する人形が忘れなければ『本当の死』にはならないと、そう聞いた故の言葉だ。……あまりに優しい言葉は、もう聴く者もない。
「……私にもっと力があればきっと、もっと選べたはずです。守るためだけの力では、手を伸ばせないままなのです……」
自責するように呟いた彼女の背で、慰めるように電離翼が揺れる。
ゆらりゆらりと揺蕩うような青白いプラズマの光が、ジャンクヤードに散った男の魂を見送っていた。
大成功
🔵🔵🔵
●野良犬に涙は要らない
――ザザッ、
『おれに出来ることはもう祈ることぐらいだが――頼む、ヤツらを蹴散らしてくれ。そろそろ牙も馴染んできた頃だろう』
――ザッ。
「――あんた達ならやれる。確信がある。……その確信が過信でないと、この戦いで証明してくれ」
丸越・梓
◎
「──ああ、任せてくれ」
シロガネ殿の通信が切れる間際、独り言の様に応え
同時
ターゲットを上空より急襲し、真正面から
音も無く降り立ち、抜刀
その動作に
一つの瞬きも要らない
振るうは宵皇
縁を斬るだけならば造作もないが
彼の心も知らぬ儘にその縁に触れるのは己が許せなかった
俺の仕事は復讐ではない
この刃を、シロガネ殿と彼の仲間らの声を届ける事こそが此度の任務
だからこそ真正面から向き合う、斬り合う
愚直だと何だと言われても構わない
この戦いは俺だけのものではない、シロガネ殿らのものでもある故
彼には真正面から受け止めて貰う
シロガネ殿が最も得意とした『カタナ』
焔に応える力を秘めたその武器は
彼の、彼らの《激情》だ
今ばかり宿す炎は記憶の劫火で無く
猛り吠え立てる"野良犬"達の咆哮
「──眠れ」
銀の一閃
響く音は
遠吠えに似て
_
全てが終わった後
シロガネ殿の仲間らの墓参りをしたい
──野良犬に涙は要らぬかもしれない
けれど、偶には流しても良い夜だってあると、俺は信じている
その暗闇が貴方に寄り添い──全て隠してくれるから。
「──ああ、任せてくれ」
応えた男は、次の瞬間に跳んでいた。
地上七〇メートル。もうそれは跳躍ではなく『射出』だ。
CMK-VBK-02――高出力推進刀『宵皇』を振り被り、最大出力で炸裂させ、それと彼自身の限界脚力を同期させることで彼は一発の『砲弾』となった。当然ながら彼に翼はない。姿勢制御さえも宵皇のMVBに頼る有様。視界は滅茶苦茶に回転し、常人ならば既に良くて空間識失調、悪ければ首が折れて死亡というところだが、彼は真っ直ぐに獲物を睨んでいる。
空中納刀。身体の捻り、身の捌き。回転で姿勢制御し、死神の衣めいたジャケットを翻して飛ぶ。
目標はただ一人。
駆け来る鉄の悪魔、その一機。
「――!」
警戒して一体のサイコブレイカーが足を止めた。空の彼方に光るものが見えた次の瞬間、彼の前には一人の男が立っていた。――まるで最初からそこにいたかのように、自然に。
砲弾並の速度で飛び来たにもかかわらず、全ての力を『殺した』かのような無音の着地。瞬き一つの間もなく、抜刀。しなやかな所作。
その男は、丸越・梓(零の魔王・f31127)という。
「死合ってもらう」
「……どうやら避けて通れる手合いではなさそうだな」
端的な梓の言葉に、サイコブレイカーはごくフラットに言い、
――激突音!!
次の瞬間には抜いた刀、宵皇とサイコブレイカーの金属腕がぶつかり合っている! 両者全く同時に踏み込み、力の限りに打ち込んだのだ!
大音を奏で激突する拳と刀! 真っ当な刀で打ち込めば、あのサイコブレイカーの拳の前に砕けるだけだったろう。しかし、これはシロガネが、最も得意とした一振りの鋼。焔を装填し、怒りを吼えて猛り狂うこの剣は、彼の――彼らの『激情』の結晶だ。
一合ごとに激突音は高く、鋭く鳴り渡る!
――縁を斬るだけならば造作もないが、彼の心も知らぬ儘にその縁に触れるのは己が許せなかった。
激闘の最中、梓は思う。俺の仕事は復讐ではない、と。
この刃を、シロガネと、今は無き彼の仲間らの声を、一矢として届ける事こそが此度の任務。だからこそ真正面から向き合う、斬り合う。愚直だと何だと言われても構うまい。――元より、この戦いを始めたのはシロガネだ。いまやこの抗戦は、シロガネ達と猟兵達、全員にとっての戦いとなったのだ。
――故に。彼には真正面から受け止めて貰う。
「ぬッ、う……!」
剣戟は加速する。……止まらない。
どう考えてもサイキックで加速したメタル・クラッシャーのほうが打撃数が多いはずだ。しかし、実際には圧されて退がるのはサイコブレイカーのほう。なぜか。――一打が重いのだ。梓の膂力、そして宵皇が誇るマイクロ・ヴァンガード・ブースターの超高出力が、その一打の重さを飛躍的に押し上げている。
「その剣、その業前、貴様、何者ッ……!」
「――俺はただの使者だ。野良犬の咆哮を伝えるためのな!!」
凄まじき剛剣を放ちながら、梓は己から溢れる焔を宵皇の内側に装填する。
今だけは。この刀の中に籠めるのは、記憶の中の災厄の劫火ではない。
この焔こそは、猛り吠え立てる、"野良犬"達の咆哮。
「くぅ、オォッ!!」
サイキックエナジーを圧縮装填した右拳を振り被り、敵が痛打を繰り出してくる。
しかしそれさえも受けて、断つ。歯を食い縛っての渾身の一太刀。宵皇が吼えた。バックファイアと同時に放たれた一閃が、敵の右拳へ真っ向から食い込み、雷に打たれた生木のように裂いた。
「バカ、な――」
怯懦の声を上げて跳び下がる。その隙を逃す訳もない。
立て続けに宵皇に焔を叩き込み、点火。斬撃を繰り出し終えたその態勢から更に一転加速!! 地に足を叩きつけ、出鱈目な宵皇の推進力を、ただ一直線に敵に襲いかかるスピードに転化する!!
「ッ、うわあああアアアッ!?」
恐れる獲物のその喉笛に、
「──眠れ」
野良犬の牙が、食いついた。
――『君影』、一閃。高々と、最後の敵の首が飛ぶ。
白刃が曳く銀閃が断ち切り奏でる音は、図らずも、遠吠えに似ていた。
* * *
――戦い終わって、次の夜。
未だ哨戒に残る猟兵達の間を縫って、梓は、シロガネと共に野良犬たちの墓を参っていた。ジャンクで作られた墓標に、シロガネが名も無い花を供える。
「この下に埋まっているのは、あいつらの一部でしかない。でも、きっとおれはこれからも何度もここを参るだろう。……あんたたちが、救ってくれたこのジャンクヤードを」
「……これから、どうされるつもりか?」
「奴らが欲しがってたパーツに当たりはついてるんだ。でなきゃ復讐の武器作りなんて出来なかったからな。……残らず回収したら、暫くは身を隠す」
「休む間もないな」
「元々そうだ。ジャンク屋に休みなんてなかったからな。……これからは、おれがジャンク屋『StraydogS』だ。……あいつらのことを覚えていられるのは、きっともうおれしかいやしないから」
「……」
鋼のような瞳を空に向けて、悼むように目を閉じるシロガネ。
対照的に、梓は膝を突き、墓前に小さな花を供えて呟く。
「──野良犬に涙は要らぬかもしれない」
「……」
傍らのシロガネの表情を見ぬまま、小さく続けた。
「けれど、偶には涙を流しても良い夜だってあると、俺は信じている。その暗闇が貴方に寄り添い──全て隠してくれるから」
傍らで息を呑むように、空気が揺れた。
煌々と照明で照らされる、デッドエンドの最奥で、梓は瞳を閉じる。
眠らない灯りの下でも、瞳の裏には夜がある。
「……そうか。……ああ。……そうだと、いいな」
最後の野良犬の声は少し滲んで。
その頬に滑る雫が、重金属酸性雨と交ざって流れ、墓前に弾けて染みていった。
大成功
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