8
ティタニウム・マキアの蠕動

#サイバーザナドゥ #カルト教団『ブージャム』 #巨大企業群『ティタニウム・マキア』

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サイバーザナドゥ
#カルト教団『ブージャム』
#巨大企業群『ティタニウム・マキア』


0




●巨大企業群
 繁栄の代償はもとより在ったものの破壊であっただろうか。
 もはやサイバーザナドゥは生身の人間が住まう世界ではなかった。骸の海に汚染された世界は、あらゆる汚濁にまみれてしまったのかもしれない。
 骸の海という汚染は、モラルすら破壊してみせた。
 金。
 金である。金さえあれば、あらゆる物が手に入る。世界を回すのは金であり、それ以上に価値のあるものはこの世界に存在しない。

 そんな世界の雑多な路地裏に一人の男と一人の少年がいる。
「金だよ、金。昔の人はよく言ったもんさ。世の中、金で買えないものがあるってな。だがな、残念なことに金は力だよ」
 男は言う。
『巨大企業群(メガコーポ)』は企業間戦争によって世界の覇権を争う大企業である。そんなメガコーポには金という力が集中している。
 モラルすら破壊された世界において、力とは金である。
 男の言うように、たしかに金は力であった。

「愛とか友情とか信頼とか、そういうものが金では買えないものだとな。でもなあ、間違っているんだよ。金で買えないものは確かに存在している。だが、金で買えないものをどうにかするためのものは全部金で買えるんだよ」
「だから、金を集めるんだな」
「ああ、そうだよ。見た所、お前も腕っぷしには自身があるんだろう? ガキのくせに一丁前の目をしやがって。お前名前は」
「『アイレオ』、そう呼ばれている」
 少年は短く応える。名前ですらなかったのかもしれない。只の記号の羅列であったから。己を識別する唯一。

「これからお前を売り飛ばすのは……まあ、あれだよ。ご存知、安心安全な平和を売るメガコーポ『ティタニウム・マキア』の末端組織『ブージャム』……平たく言えば、『カルト教団』ってやつだ。そこでお前みたいな連中が集められて人体実験の前にいっちょ前に肉体の選別をしようってんで、『サイバネモーターファイト』が催されてる。うまく勝ち抜けばそれだけ長く生き永らえるだろうよ」
 まあ、がんばれよ、と男は少年を『カルト教団』の信者たちに引き渡す取引を続ける。
 少年の瞳に諦観はなかったし、絶望もなかった。
 あったのは『機械化義体』の瞳のレンズがズームする動きだけだった。その視線の先にあるのはメガコーポ『ティタニウム・マキア』の巨大な看板だった――。

●サイバネモーターファイト
『機械化義体』が交錯し、火花を散らす。
 そこは『カルト教団』、『ブージャム』が夜な夜な催し胡乱なる格闘闘技場であった。
 義体の拳が激突し、ひしゃげる。
 散る破片が薄暗い証明に煌めく。
 こんな戦いに意味があるのかと問われれば、あまり意味がない。
 ただの享楽にして暇つぶしでしかなかった。
 カルト教団である『ブージャム』にとってメガコーポへと上納する金銭を稼ぐための催しの一つでしかなかったからだ。

 それ以上に彼等の資金源はもっと単純であった。
「うむうむ、よいぞ。ああ、良いな。生命が懸命に生きようとする輝きはいつ見ても良い」
 カルト教団『ブージャム』の教祖でもある男は、薄絹のような布で機械化義体を覆っていた。それは法衣のようでもあった。
 まるで意味のない装束であったが、表向きは身寄りのない子供らを養う教団としているのだ。一応の格好はつけて置かなければならない。
 そんな教祖の視線の先にあるのは闘技場での戦いであった。
 一人の少年が大男のような巨大な機械化義体の頭部を凄まじい握力で握りつぶしている。
「ふむ。『アレ』は、残しておけ。それ以外の子供らは『祝福』を授けなければならないな」
 側近である『サイバー・ディーコン』に告げ、教祖は微笑む。
 実に結構なことである。
 今まさに大男の頭部を握りつぶした少年『アイレオ』は彼のお気に入りであった。あの体躯でありながら、どれだけ強化された機械化義体であっても尋常ならざる腕部の握力で持って握りつぶして闘技場を湧かせているからである。

「この調子で盛り上がれば、上納金のボーダーを超えることも簡単なことよな。良い買い物であった。あのバイヤーには今度私自ら礼を述べなければならないな」
 教祖の高笑いと共に闘技場はさらなる盛り上がりを見せる――。

●サイバーザナドゥ
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。新たなる世界サイバーザナドゥでの予知をお伝えいたします」
 サイバーザナドゥとは骸の海に汚染された世界である。
 それ故に、この世界で人々は肉体を『機械化義体』へと換装しなければならない。人類の科学技術は途方もなく発展している。けれど、未だ骸の海の汚染を止めることはできない。
 なぜならば、その汚染を後押しする形で『巨大企業群(メガコーポ)』が乱立し、企業間戦争によって地球環境は壊滅的な打撃を受けている。

 今回、ナイアルテが予知したのはメガコーポ『ティタニウム・マキア』の下部組織にしてカルト教団である『ブージャム』での事件である。
「はい、いずれのメガコーポもそうであるように宗教を通じて暴利を貪るために『ティタニウム・マキア』もまたカルト教団を経営しています。そのカルト教団『ブージャム』は人身売買や市井の子供らを無差別にさらい、骸の海を強制的に投与してオブリビオン化させようとしているのです」
 このサイバーザナドゥにおいてオブリビオンとはユーベルコードに目覚めた怪物である。
 このカルト教団『ブージャム』はさらってきた、もしくは人身売買によって得た者たちに骸の海を投与しオブリビオンとして企業間戦争の尖兵にしようとしているのだ。

「もちろん見過ごすことなどできません。このカルト教団が開催している『サイバネモーターファイト』と呼ばれる地下闘技場へと潜入し、教団の拠点に潜り込んでください。闘技場の最奥に拠点があるようですので、地下闘技場の選手として入り込むのが最も簡単な手段でしょう」
 この地下闘技場では敗北者はすぐさま骸の海の投与が行われるようである。
 参加する以上、ある一定数勝利しなければならない。

「この闘技場はより強力なオブリビオンを生み出すための選別でもあるようなのです。ある程度勝利を重ねれば、拠点に招かれます。皆さんは、この拠点に入り込んだ瞬間、教団信徒であるオブリビオンたちを打倒してください」
 無論、教団信徒の全てはオブリビオン化している。
 まだオブリビオン化していない子供らや人身売買によって拐かされた人々を救うためには戦って勝利するしかない。

「このカルト教団の教祖もまたオブリビオンであるようです。強大な力を有しているようです……どうか、このカルト教団を壊滅させてください」
 カルト教団『ブージャム』を残しておけば、徒にオブリビオン化される子供らを増やすだけである。
 猟兵達は骸の海に汚染された世界、サイバーザナドゥへと転移する。
 危険なる闘技場は、今もなお機械化された義体が激突する音を奏でている――。


海鶴
 マスターの海鶴です。
 新たな世界、骸の雨が降るサイバーザナドゥにおいて無辜なる人々のオブリビオン化を目論むカルト教団『ブージャム』の目論見を阻み、『巨大企業群(メガコーポ)』との戦端を拓くシナリオとなっております。

●第一章
 日常です。
 カルト教団『ブージャム』の開催する地下闘技場に選手としてエントリーし、この『サイバネモーターファイト』で勝ち残りましょう。一定数勝利すれば、資質ありとして教団の拠点に招かれるようです。
 もしくは、別の手段でカルト教団のメンバーと接触し拠点へと招かれることを狙ってもいいかもしれません。

●第二章
 教団の拠点に招かれることで潜入した皆さんの前で教団信徒たちは、市井から無差別にさらわれてきた子供らをオブリビオン化しようとしています。
 教団信徒『サイバー・ディーコン』たちは言わずもがな、オブリビオン化しており、また数も多いです。
 彼等と戦い、オブリビオン化されようとしていた子供らを守りましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 カルト教団『ブージャム』の教祖は強大なオブリビオンです。
 拠点の異変に気がついて姿を現すでしょう。
 今この時を逃せば、教団教祖は姿を晦ませ、また別の拠点での人々のオブリビオン化を推し進めることでしょう。
 これを打倒し、教団を壊滅させましょう。

 それでは『巨大企業群(メガコーポ)』、『ティタニウム・マキア』と戦いを繰り広げる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
273




第1章 日常 『サイバネモーターファイト』

POW   :    選手として出場する

SPD   :    観客として試合を観戦

WIZ   :    トトカルチョをしてみる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 カルト教団『ブージャム』の地下格闘場は、今宵も賑わいを見せていた。
 彼等の教義は知れず。
 されど、彼が奉じる神は戦いを求めている。
 強き者に祝福を。
 弱き者には強者足り得る力を。
 それがオブリビオン化という骸の海の投与による改造生物への変異であったのだとしても、彼等は一時の享楽に耽るように闘技場に繰り出していく。
 腕が砕け、足が引きちぎられてもなお彼等は躊躇わない。
 なぜならば、彼等は『機械化義体』に肉体を換装しているからだ。
 この骸の海によって環境破壊の進んだサイバーザナドゥにおいて生身の人間は一人として存在しない。
 生きていくためには、肉体を『機械化義体』へと換えなければならない。
「戦え、我らが神に奉じる戦いはどれも神聖なものである。神が我らに与え給うたのは、骸の雨。これこそが祝福。さあ、強者はより高みに。弱者は強者へと生まれ変わるのだ!」
 教祖の言葉によって集められた地下闘技場に参戦する者たちが雄叫びを上げる。

 この闘技場で勝てば勝つほどに金が手に入る。
 モラルをも破壊された世界にあって金ほど言うことを聞くものはない。
 故に彼等は金を求めて、こんな危険極まりないカルト教団にすら足を運ぶのだ。負ければ骸の海……汚染物質を投与されるという危険性があれど、勝利した時の金の魅力には抗えないのだ。
「戦って、戦って、戦い抜いて、己の求めるところを告げるがいい。我らが神はそれを祝福するであろう――」
村崎・ゆかり
何かいろいろと感じが違うわね、この世界。
まあ、いいでしょ。オブリビオンを討滅して人助け。いつものこと。

まずは闘技場にエントリー。薙刀くらいは持ち込めるわよね? こっちはか弱い女の子なんだからね。

試合が始まったら、摩利支天九字護身法を使っておいて、その後は薙刀で「武器受け」「ジャストガード」しながら、「衝撃波」「斬撃波」を纏う薙刀で対戦相手を牽制しつつ、死なない程度に「貫通攻撃」で「串刺し」に。

うーん、手の内見せすぎたかな。
ただ、あくまでも術式は隠しておく。薙刀一本で勝ち進んでみせるわ。
教主は見ているかしら? あたしをどう扱うか、見物ね。どういうことになろうと、その首落とすけど。



 骸の雨がふる世界、サイバーザナドゥ。
 あらゆる環境が破壊された世界にあって生身の人間が生きることはできないほどに汚染が進んだが故に、人々は『機械化義体』に肉体を換装することでかろうじて文明を紡いでいる。
 いや、違うのかもしれない。
 人は環境を、自然すらも超越するほどの科学技術の発展を得たのかもしれなかった。だが、同時にそれは緩やかな破滅への道でもあったことだろう。
 己の土台を、礎をないがしろにするものは、いつだって滅びる定めであるから。

「何か色々と感じが違うわね、この世界」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は己の感じる所でもってこの世界の空気が肌に合わないことを理解していたのかも知れない。
 骸の雨はあらゆる環境を破壊していく。
 そしてその環境破壊に対抗するために人々は科学技術の発展で持って、緩やかな自殺をしてるのと同じであった。
「まあ、いいでしょ」
 ゆかりはカルト教団『ブージャム』の地下闘技場へと足を踏み入れる。
 ここがカルト教団が上層組織である巨大企業、メガコーポ『ティタニウム・マキア』への上納金を集めるための賭博場兼、尖兵となるものたちを選別するための施設であることを知っている。

「オブリビオンは討滅して人助け。いつものこと」
 やるべきことは変わらない。
 彼女の視線の先にあるリングでは、最近この地下闘技場を賑わしている少年の姿をした『機械化義体』のサイボーグ『アイレオ』が自分の身の丈以上の相手を掴み引きずり倒して恐るべき握力でもって粉砕する姿が喝采を浴びている最中である。

 すでにゆかりは闘技場にエントリーを済ませていた。
 手にした薙刀はそれが武装の一つとして認められている。それは彼女が女性であるからという理由ではない。
 この地下闘技場は『なんでもあり』なのだ。
 故に武器の使用に制限はないし、同時に何をしてもいいということでもあった。
「さあ、次は貴女の番ですよ。良き闘争を」
 提示された番号にしたがってゆかりは闘技場のリングに上がる。

 対するサイボーグはいびつな蜘蛛のような姿をしていた。複数の腕。
「――……――、――」
 何を言っているのか聞き取れない。
 高速で声を発しているのだろう。ゆかりの耳では聞き取れなかったが、ゴングがなかった瞬間、蜘蛛の如くサイボーグが跳躍する。
 早い。
 機械化された義体であるが故に、人体の法則を無視した軌道。
 振るわれる副腕を薙刀でゆかりは受け止める。
「問答無用ってわけね……! けど!」
 受け止める薙刀から衝撃波と斬撃波が放たれ、副腕を切り裂く。

「腕がたくさんあるのなら、一本くらいいいでしょう」
「――ッ!!」
 リングの上を縦横無尽に駆け抜けるサイボーグ。
 そのセンサーの如き瞳がゆかりを八つ裂きにせんとせまるが、それらを薙刀でいなし、ゆかりは跳躍する。
 どれだけ早く動くのだとしても頭上に目は付いていない。
 ならばこそ、その薙刀の切っ先は蜘蛛の如きサイボーグの胴をリングに縫い付けるように串刺しにし、返す蹴撃でもって彼の意識を刈り取る。

 その姿は喝采を浴びることだろう。
 同時にゆかりは自分が手の内を見せすぎたかも知れないと思わないでもなかった。この戦いにおいて、己の手の内をさらけ出すことは、敵に全て知られるということでもあったからだ。
「教主は見ているかしら?」
 見ているだろう。
 なにせ、この闘技場の戦いは彼等の尖兵と成り得るかどうかを見極めるための催しでしかないのだから。

 薙刀一本で勝ち上がるゆかりを教主はご機嫌で見ているだろう。
 品質の良い躯体は良いオブリビオンになる。
 ならばこそ、上納すべき『ティタニウム・マキア』のCEOの歓心を買うことができるからだ。
「あたしをどう扱うか、見ものね。どういうことになろうと、その首落とすけど」
 ゆかりはこれから自分が招かれるであろう拠点、そして、この闘技場にてカルト教団の邪心を切り裂くために勝利を重ねていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

純・あやめ
潜入捜査ってやつ?
ねぇ、【カキツバタ】、わたしはこういうの苦手なんだけどなー
『文句言わないの。それに戦うだけなんだから、そういうのは得意でしょ?』
人をバトルジャンキーみたいに言わないでほしいかなー?
まーいいや。要は出てくる相手を倒せばいいんでしょ
水無月曲槍流はどんな状況でも勝つ流派だってのを証明してみせるよ
見切って殴って遠くの敵には「地走り」を撃つだけの簡単なお仕事ですってね
『それにしても…着崩してるとはいえ警官の制服着てるのに誰も気にしてないわね』
悪徳警官も当たり前な世界かー…実に嘆かわしいよねー



『サイバネモーターファイト』は盛り上がりを見せている。
 観客たちは皆、一様にオッズを気にしているし、機械化義体が激突する音は興奮を煽るものであったことだろう。
 このサイバーザナドゥにおいて生身の人間は誰一人として存在していない。
 なぜならば、この世界は骸の海によって環境が汚染されているからである。いわば、滅びながら生存している世界と言ってもいい。
 その環境汚染に対応するために人々は機械化義体に体を換装して文明を紡いでいる。しかし、加速する企業間戦争はモラルすら破壊してみせる。

 この地下闘技場が、その良い例だ。
 多額の金が動く。金で手に入らぬものが存在しないサイバーザナドゥにおいて、金こそがあらゆる障害を排除するものであり、享楽も平穏も恣にするためには金ばかりが物を言うのだ。
「潜入捜査ってやつ? ねぇ、【カキツバタ】、わたしはこういうの苦手なんだけどなー」
 純・あやめ(砂塵の衛士・f26963)が小さくボヤく。
 彼女は着崩した警官の服装ながら、このカルト教団の地下闘技場にあって誰からも咎められていない。

 それもそのはずである。
 彼女の相棒でもある黒のクイーンピースに宿る悪魔【カキツバタ】は、この異様な熱気に包まれた地下闘技場の様子を見てなるほどとうなずくのだ。
 このモラルの破壊された世界にあって警官と言えど正義の徒ではないということだ。完全に腐敗しているのだ。
 あやめだけではない、周囲には彼女と完全に同じではないが警官の服装をした賭博客が多く存在している。

 悪徳警官が当たり前の世界なのだ。
 実に嘆かわしいとあやめは思っていたことであろうし、これらも氷山の一角に過ぎないのだろう。
 それにしたって気にしていなさすぎな気もするが。

『文句いわないの。それに戦うだけなんだから、そういうのは得意でしょ?』
 バトルジャンキーみたいに言わないでほしいと、あやめはまた一つボヤく。
 確かに目の前で行われている戦いは心踊るものであったし、彼女の手繰る水無月曲槍流はどんな状況でも勝つ流派であることを証明するまたとない機会でもあった。

「そうだけどさー。要は出てくる相手を倒せばいいんでしょ?」
 あやめが闘技場にリングインすれば、目の前にいるのは機械化された長い腕と足を持つ男であった。
 異様なる体躯。
 けれど、それを前にしてあやめは怖気づくことはなかった。
 どれだけ異様な姿をしていようとも彼女が手繰る水無月曲槍流【地走り・改】(サンドウェイブ)は機械化義体の男の鞭のようにしなる長い腕を躱しながら、地を走る砂の刃によって切り刻む。
 機械化義体であるから、それらは後で換装ができるものだろう。
 ただ、何をするにしても金がかかる世界である。あやめの対戦相手は皆、一様に借金苦に陥るだろう。

『着崩しているとは言え、制服着ている警官が闘技場にリングインしても誰も気にしてないわね』
【カキツバタ】は辟易する。
 腐敗も此処まで極まれば、慣れたものであるのだろう。
 そんな嘆息の中、あやめの放つ砂の刃がリングの外に機械化義体の男を吹き飛ばし、息を整える。
 このまま順当に勝ち抜けすることができるだろう。
「あーもー、これでわたしも悪徳警官みたく思われるんだろうなー……」
 いやだなーとあやめはまた一つボヤく。
 今度こそ【カキツバタ】は、そんなボヤきを咎めることはできなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
わかるぜ? 殴り合い見るのはスカっとするからな。最高の娯楽の一つだ。
オレは普段は賭ける側なんだが、参加するのもたまにはいいか。

なんでもアリらしいが一応手加減して素手でやってやるか。ユーベルコードは使うがな。
おいお前、黙ってオレに殴られて負けろ。お前だってこんな超絶可愛い女の子に手を上げるのは嫌だろ?
それともベコベコに凹まされてから負けるか? 選ばせてやるよ。

まあ結果に左程違いはねえがな。命は取らないまでもパーツの2つ3つはへし折らせてもらうぜ。



 金髪碧眼の可憐な少女の姿は衆目を一身に惹きつけることであっただろう。
 堂島・アキラ(Cyber×Kawaii・f36538)はお尋ね者である。
 好き勝手に暴れまわったツケであるが、彼は自由を愛し、腐敗したメガコーポを相手どって果敢に立ち向かう勇士でもあった。
 ――というのは、表向きの話である。
 前述した通り、彼は好き勝手に暴れまわっただけなのだ。
 だから、こうして懸賞金を掛けられている。
 そう、彼と呼んだのは、姿形が可憐なる美少女の姿をしていたとしても、本質が男性であるからだ。

 美少女転生願望をこじらせたがゆえの、義体換装である。
 サイボーグである彼の体は今は金髪碧眼の美少女そのものである。中身は何も変わらっていない。欲望に忠実なのである。
「あー、わかるぜ」
 カルト教団『ブージャム』の開催する地下闘技場の熱気にアキラはうなずく。
 この異様なる熱気。
 その源にあるのは、人類の戦いに対する高揚が根本にあるのだろう。
「殴り合いを見るのはスカッとするからな」
 ボクシングしかり、プロレスしかり。
 あらゆる娯楽に血と暴力はつきものである。アキラにとって、それは最高の娯楽の一つであるといえるだろう。

 彼は普段賭ける側にいるものであるが、今回は猟兵として戦いに加わるのだ。参加する側に回らなければならない。
「――おいおい、お嬢ちゃんよ。来る場所を間違えてはいやしねぇか」
 巨大な義体の男がリングインしてきたアキラに下卑びた笑いを向ける。
 確かに彼の見た目は金髪碧眼の美少女だ。こんな美少女が地下闘技場の、それも選手として登場するのだから、否応なしに侮ってしまうというものであろう。
 だが、それでも、ここは何でもありの地下闘技場である。
 巨大な義体の拳が打ち鳴らされ、火花を散らす。
「加減はしねぇぞ!」
 放たれる拳をアキラは見やる。遅すぎてあくびが出る。

「おいお前、黙ってオレに殴られて負けろ。お前だってこんな超絶カワイイ女の子に手を上げるのは嫌だろ?」
 可愛いは正義(カワイイオブジャスティス)。
 わからんでもない。しかし、このサイバーザナドゥにおいては二番目の価値観であるだろう。
 そう、この世界において絶対なのは金なのである。
 金こそが最優先されることであり、それ以外は全て後から付いてくるものだ。

 だからこそ、巨大な義体の男はアキラがどれだけ見た目美少女であっても関係なく拳を振るうのだ。
「んなわけねぇだろうが!」
「だよな。まあ、選ばせてやろうって思っただけだ。オレの優しさと可愛さを否定したとあったのならな!」
 アキラの瞳がユーベルコードに輝く。
 目の前の男は己の言葉を、否、かわいいを否定した。それは万死に値する。そう、アキラは己の可愛さを誇る。
 超絶かわいい自分。
 わかっている。世界の誰もが否定しようがないほどの完璧に美少女なのだ。それを否定されては己は、キレるしかない。

 逆ギレでは? と思わないでもない。
 だが、そんなことは些細なことなのである。
 迫る巨大な拳をアキラは躱しながらカウンターを決める。放たれた拳は電光石火のように義体の男の頬にめり込み、その速度差でもって顎のパーツを吹き飛ばすのだ。
「ガッ――!?」
 それは意識ごと刈り取る一撃であった。
 巨大な義体がリングに沈む。

 きゃっ、とその轟音にアキラは可愛らしく悲鳴なんて上げてしまう。いや、振りであるが。
「ま、こうなるわな。どっちにしたってリングに沈むことに違いはないってわけだ」
 アキラは沈んだ義体の男をリングの外に蹴り飛ばし、首を鳴らす。
 さあ、次はどいつが己の可愛さを前にベコベコに凹まされるのかと手招きするのでった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
任務了解しました。ミレア・ソリティス、出撃します。

闘技場に参加、この後を考慮し使用兵装は「5型」…近接格闘戦仕様で固定しておきます。

脚甲『プラズマグリーブ』可変翼腕『グライフフリューゲル』での空中機動で間合いを調整、プラズマ蹴りと変形させた翼腕での打撃を攻撃の主軸とし交戦を。必要ならば『ショートブラスターライフル』を至近で撃ち込みます。

また攻撃時には主に機械部位を狙い、同時に「機械化義体」及びその装着者の各種データを収集・解析、生体の義体への依存度等を把握していきます

十分な情報を得ればUCを使用、副腕のクロ―で攻撃し、そのまま電磁パルスを接触箇所から流し込み、無力化して終わらせましょう



 サイバーザナドゥにおける巨大企業群、メガコーポ『ティタニウム・マキア』の下部組織の一つであるカルト教団『ブージャム』は市井の子供らを無差別に誘拐し、オブリビオン化させようとしている。
 また地下闘技場を経営し、そこで人々を争わせ敗北したものに骸の海を注入しオブリビオン化の処置を施す。
 勝利者には金と名声。 
 しかし、いつか破れる勝利者は、オブリビオン化すれば強靭な尖兵として『ティタニウム・マキア』に上納される。

 どちらにしても放っておけることではないのだとミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は任務を受領しサイバーザナドゥへと転移する。
「此処が地下闘技場……此の後のことを考慮するのならば兵装は『5型』に設定しましょう」
 彼女は己の武装である脚部鎧装のチェックをしながら出番を待つ。
 この地下闘技場は賭博の対象にもされている。
 人気の選手というのは、ある程度まではこの地下闘技場に残り、膨大な金銭を得ることができるようになっている。
 本人の希望が続く限り戦い、ファイトマネーを稼ぐことができるというわけである。

 しかし、ある程度の勝利数を重ねれば、教団の拠点へとさらなる義体の強化を持ちかけられることもある。
 この任務の肝はそこである。
 さらわれた子供らを開放するためには、その拠点へと侵入しなければならない。
「……」
 為すべきことは単純である。
 だが、ミレアはリングインしながらまた別のことを考えていた。

 対峙する機械化義体に換装した人々はオブリビオンではない。
 できれば……。
「無力化するだけに留めさせて頂きましょう」
「余裕かよ!」
 超振動するナイフを獲物とする戦闘義体の男がリングを走る。確かに機械化義体の脚部が生み出す速度は驚異的なものである。

 だが、ウォーマシンである彼女にとっては脅威ではなかった。
 可変翼腕を広げ、彼女はナイフの一撃を躱しながら宙を舞う。どれだけ超振動ナイフが切れ味鋭かろうとも、ナイフの間合いは知れている。
「なるほど……体を義体化しなければならないというのは真のようです。サイボーグ、レプリカント……そしてウォーマシンにも近しい……」
 ならば、とミレアは分析しながらSA-01C/S GFスタンクロー(グライフフリューゲル・スタンクロー)を放つ。
 副腕から放たれたクローは戦闘義体の男を掴み上げ、そのクローを介して高圧電流を流し込み、その回路に異常を発生させ、その動きを止めて無力化する。

「これでおしまいです。次を」
 ミレアは息一つ切らさずに次なる対戦者を求める。
 地下闘技場を見物に、または賭博に興じる者たちから喝采が上がる。その喝采はミレアにとって何の意味も持たぬものであったことだろう。
 どんな喝采を浴びようとも、満たされるものはない。
 このサイバーザナドゥにおいて、彼女の存在ある意味でメガコーポ『ティタニウム・マキア』の目を引くものであった。

 けれど、それも彼女の出自があればこそである。
「義体の情報を収集……やはりウォーマシンほどではない。高度な文明を得ての緩やかな自殺……それがこの世界の在り方」
 ミレアはそれ以上でもなければ、それ以下でもない評価と共に次なる対戦者を無力化していく。
 それは作業めいていたが、確実に勝ち星を重ねていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎

ふむ?地下闘技場で勝ち続けろと。そういうことならば、わし向きだが?
潜入には、それが一番の近道ということであろうし。
一応は考えて手の内をあまり明かさぬよう、わしはわしの力で暴れるとしよう。黒燭炎で二回攻撃のなぎ払いだの…刃の方だけでなく、石突きの方も利用しての攻撃よ。

ふん、世界が変われど、わしが…わしらがやることは変わらんのよ。助けるために戦う、そういうことよ。



 カルト教団『ブージャム』が主催する地下闘技場。
 そこは異様な熱気に包まれていた。
 これまで確かに戦闘義体に寄る戦いは白熱したものであった。大概の場合は、連続して勝利し続けることは稀であった。
 これまでこの地下闘技場で連戦連勝を重ねていたのは、少年の姿をした機械化義体である『アイレオ』と呼ばれる者だけであった。
 けれど、今日の地下闘技場は一味違った。

 多くの猟兵たちが転移して地下闘技場にエントリーしたおかげで、闘技場はいつもより遥かに盛り上がりを見せていたのだ。
「ふむ。なるほどな」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『侵す者』はうなずく。
 リングインしてから、これで四戦目である。
 息一つ切らしていない。異様な熱気。それは己たちの戦いぶりではなく、恐らく賭博をする者たちが高揚しているせいなのであろう。
 通常は連戦が続けば、徐々に『侵す者』へのオッズは高くなっていく。それもそのはずだ。戦いの度に消耗していくからであるし、それは勝率を下げるだけなのだ。

 けれど、『侵す者』は手にした槍をもって、あらゆる対戦者を打倒してきていた。
 槍の二連撃や薙ぎ払い、石突を利用した打突など多彩な槍捌きでもって迫りくる対戦者をなぎ倒す。
 四天境地・『狼』(シテンキョウチ・オオカミ)の力をあまり明かさぬようにと『侵す者』は加減をしていたのだが、それでも対戦者たちを打倒するには有り余る力であったことだろう。
「潜入にはこれが一番の近道ということを聞いて吐いたが……わし向きであるな」
 手にした槍を振るい、義体の頭部をひしゃげさせる。

 そのままリングの外に蹴り飛ばし『侵す者』は次なる対戦者を待つ。
 勝利する度に歓声は熱を帯びていく。
 ここがサイバーザナドゥである。
 金だけがあらゆるものの内で価値を持つものである。賭ける者もいれば、戦うことで金を得ようとする者もいる。
 欲望がモラルを凌駕した時、このような世界が生まれるのかもしれない。
「ふん、世界が変われど、わしが……わしらがやることは変わらんのよ」
 そう、『侵す者』が此処で戦うのは、カルト教団の拠点にさらわれた子供らを救い出すためである。

 この地下闘技場にエントリーしたのはその一環。
 拠点に招かれるほどに勝利を重ねるためだ。だが、それでも己を取り巻く熱狂は、膨れ上がっていく。
 欲望に塗れた瞳。
 汚濁に浸かったかのような退廃。
 あらゆるモラルを損失させたのが、メガコーポであるというのならば、その行いこそ正さねばならない。
「――ぐぁっ! くそっ、どんな義体を使ってれば、そんな動きが……!」
 義体の男が槍の一撃に寄って腹部を貫かれている。
『侵す者』は応えない。

 これは義体の力ではない。
 悪霊としての力でもない。
 あるのは己の生前に鍛え上げた武そのもの。
「……到底理解できぬものよ」
『侵す者』は助けるために戦う。
 ただそれだけのためにこそ、己に与えられた天賦の才はあるのだと示すように槍を振るい、再び勝利の喝采をその身に浴びるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!(お約束のコール)

ふっ、バーチャルなクノイチであることがここまでフィットする世界が現れるとは……私、生まれた世界を間違えたのでは??
この世界だと簡単に忍べそうですね!!(何故か自信満々

まぁ、今は堂々と姿を現わしているわけですが
ファイトにもちろん選手として参加なので
【威風堂々】といきましょう

カタールを構えてとっつげき~♪
ふっ、キャバリアを壊さなければシリカに引っかかれることも無……にゃぁぁぁぁぁぁ!?(敵の攻撃を間一髪回避
ふぅ、解放感で油断してました!
ここからはちゃんとクノイチしますよー!
くらえーっ!



 カルト教団が催す『サイバネモーターファイト』は盛り上がりを見せている。
 今宵の戦いに身を投じる者達は皆、選りすぐりであったからだ。
 本来なら連戦によって消耗して、よくて三連戦目で敗北することが多かった。けれど、猟兵たちが介入することに寄って多くが五連戦以上を勝ち抜いたからだ。
 これは『アイレオ』と呼ばれる少年の義体が打ち立てた連戦数に比類するものであった。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
 謎のコール。
 いや、この地下闘技場にコールなんてものはない。
 そんな御大層なものがまかり通るほど、この地下闘技場に大したものはない。

「いいぞー! やってやれー!」
「次こそはやられるんじゃねーぞ!」
 賭博に客たちがコールを飛ばす。熱狂と言うのに値する盛り上がりである。ここは地下闘技場であり、当然のように対戦者たちの勝敗は賭博に利用される。
 オッズは連戦を重ねるごとに跳ね上がっていく。
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は己がバーチャルキャラクターであり、クノイチであることが、このサイバーザナドゥにおいて此処までフィットするとは思いもしなかったのだ。

「私、生まれた世界を間違えたのでは?」
 そう思うのもまた無理なからぬものであった。
 サイバーにバーチャルは必須。
 そんでもってサイバーにニンジャは必要なものであるからだ。いや、そうか? 果たしてそうなのか? と疑問は尽きねどそれは問題ではない。
「この世界だと簡単に忍べそうですね!!」
 謎の自信。
 サージェはこれまで『サイバネモーターファイト』で勝利を重ねている。連戦に継ぐ連戦であるが、大した問題ではない。
 それ以前にクノイチなのに堂々と姿を晒しているほうが問題であるような気がしないでもないが、選手として参加なので威風堂々(シノベテナイクノイチ)としてりゃーいいのである。

「カタールを構えてとっつげき~♪」
 鼻歌を歌いながら、細身の戦闘義体と戦うサージェ。
 ひらり、あらよっと、サージェは華麗に舞う。
 その姿はまさに忍べてないクノイチである。忍べてないクノイチに意味なんてあるのかと思わないでもないが、それでいいのである。
 それこそがサージェという猟兵なのだ。
 彼女への攻撃はまるでそよ風。
 返す刃の一撃は蜂の針の一撃のように狙いすましたものであった。

 それ以上に彼女がのびのびしているのは、キャバリアを壊す必要が無いからであろう。
 とてもよい。
 引っかかれる心配がないということはなんと素晴らしいことか。
「って、にゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「遅いわ!」
 打ち込まれる侍型戦闘義体の一閃。
 凄まじい剣速。それは強化された義体の力のなさしめるところであろう。サージェの髪がはらりと落ちる。
 マジでやばかった。
 首が落ちる所であった。
「ふぅ、開放感で油断していました!」
「ぬかせ!」
 あくまで緊張感のないサージェの言葉に侍型義体が憤る。

 電磁加速された刀の一撃がサージェの身を切り裂かんと迫る中、サージェは身をかがめて深く沈み込む。
 カエル飛びの要領でカタールをアッパーカット気味に打ち上げる。
「くらえーっ!」
 ここからはちゃんとクノイチである。
 クノイチとは? と疑問が湧き上がるが気にしてはならない。意味ないから。

 放たれたカタールの一撃が侍型義体を吹き飛ばし、サージェはコーナーリングに立ち、喝采を浴びる。
 目立ってるけどいいのか。
 そんな些細なことは拍手喝采と罵声の中に溶けて消えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナ・ヴァレンタイン
どこも金持ちのやることは変わらん、血湧き肉踊る殺しあいをお望みとは。
――せっかくの興業ならせいぜい楽しませやるとしよう。

ということでさっさとエントリー
武器は刀と魔剣の二刀流
こういう時代錯誤な装備だと『目立つ』

ああ、体格差や性差など気にするな。それらを覆すものはちゃんと入れてるからな、とユーベルコード起動

リミットは最初から全解除
高速化した思考で敵の初撃を最小限のステップで避ける
返す刀で機械の手足のいずれかを斬り飛ばし、その箇所に魔剣を捩じ込んで【生命力吸収】で死なない程度に活力を奪う

……そこらへんのチンピラでもサイバネ入りが当たり前とはまたえらい世界だ
狙い通り目立ってればいいのだがね



 人は金を求める。
 それはこの世界において最も価値のあるものであり、信用のおけるものであったからだ。
 金さえあればあらゆるものが手に入る。
 それがサイバーザナドゥである。逆に金のないものには人権らしいものすら存在しない。存在する理由すら値しないのだというように、金だけが己の価値を決める全てでもあった。
 だからこそ、このカルト教団『ブージャム』が催す『サイバネモーターファイト』は地下闘技場ながら熱狂的な盛り上がりを見せていた。

 喝采と怒号が吹き荒れる中、リングには他にも転移していた猟兵達と戦闘義体たちの戦いが繰り広げられている。
「どこも金持ちのやることは変わらん。血湧き肉躍る殺し合いをお望みとは」
 レナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)は嘆息する。
 どんな世界であっても金を持てば悪趣味になる。
 清貧を貴ぶとは程遠い有様。金があれば暇を持て余す。暇を持て余せば、刺激を求める。刺激にはなれるものである。だからこそ、より過激なものを求める。
 この『サイバネモーターファイト』は、その坩堝のようなものであったことだろう。
「――せっかくの興行なら精々楽しませてやるとしよう」
 すでにレナはエントリーを済ませている。

 リングサイドからレナはゆっくりと入場し、目の前の戦闘義体を見やる。
 奇しくも互いに二刀流。機械化された腕にブレードが備えられた義体の目は血走っていた。どうやら薬物をオーバードースした状態であるようだ。
 よだれが際限なくたれ続け、正気を失ったかのような瞳が爛々と輝いている。
「やれやれ……こういう時代錯誤な装備だと目立つと踏んでいたが……」
 レナはこのカルト教団の教祖とやらに見初められるために二刀流で臨んでいた。時代錯誤と呼んだのは、刀と魔剣の二刀流であるからだ。
 その姿はたしかに異様な雰囲気をもたらしていただろう。

「体格差や性差など気にする類には見えないな」
「――ッ!!!」
 意味不明な言葉の羅列とともに戦闘義体のブレードがレナへと迫る。
 だが、レナにとって、否、凌駕駆動・血塗れの番人(ブラッド・ウォーデン)を発動させたレナには意味がない。
 すでに戦術思考は最適化されている。
 全解除されたリミッターは高速化した思考の元に振り下ろされる二刀流の斬撃を見据えていた。
 軌道は予測できる。
 ブレードはこちらと同じ超振動。

 ならば、打ち合うことに意味はない。
 相手の正気が失われているのならば、レナは最小限のステップでもって振り回されるブレードを躱していく。
「動きが単調すぎるな。それに乱暴だ……」
 返す刃で戦闘義体の両腕を両断する。
 さらに魔剣が切り裂かれた両腕のブレードの両断面から突き立てられ、その体にある活力を奪い取る。

 僅かの間の接触にしか観客には思えなかっただろう。
 今も尚、切断された戦闘義体の両腕がリングの上に弧を描いて飛んでいる。
「……そこらへんのチンピラでもサイバネ入りが当たり前とはまたえらい世界だ」
 高速化した思考でまた一つため息をつく。
 ここまで世界が汚染されているというのも考えものだ。
 ゆるやかに滅びていると言っても過言ではない。生きるために己たちの済む世界を蝕むしかない現状は今はどうしようもないのだろう。

 高速化された思考が元に戻った瞬間、切り裂かれたブレードがリングの地面に落ちる。それと同時にレナの前に対峙していた戦闘義体が膝から崩れ落ちるようにして倒れる。
「これで狙い通り目立っていればいいのだがね」
 レナはどこかで己を見ているであろうカルト教祖の興味を引くように立ち振る舞う。
 そのふるまいは、地下闘技場の観客たちを湧かせ、一体何が起こったのかと驚愕せしめる。
 薬物をオーバードースした戦闘義体すら赤子のように倒してしまうレナの姿は観客たちと、そして狙い通りカルト教団の教祖の視線を釘付けにするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
まあ、お金が大事ってのは別にこの世界に限ったことでもないけどねぇ。金がないのは首がないのと同じ…よく言うでしょぉ?

あたしも選手として出ましょうか。武器飛び道具アリアリとはいえ、やっぱり盛り上がるのはステゴロよねぇ?あたしが修めてるのはカポエイラ、アクロバットで見栄えするしショービズにはもってこいでしょ。

試合開始前にあらかじめゴールドシーンにお願いしてエオロー(結界)で〇オーラ防御を展開、さらにウル(突破)と帝釈天印(雷)を付与。相手はどいつも機械化義体なんだし、攻撃○見切って鎧無視攻撃のカウンターで電撃叩き込めば大体はオトせるはずよねぇ。…まあ、それで無事な生物のほうが珍しいとは思うけれど。



 金。
 それは途方も無いものであるように思えたかも知れない。
 底なし沼である。金を求める以上、それは推して測るべきものであるが、どうしたって際限なきものに囚われる覚悟がなければならない。
 けれど、人は時としてそれを忘れてしまう。
 身を滅ぼすだけの金を手にしたものの末路はいつだって悲惨なものである。
 それを知って尚、人は金を求める。
 己が欲するもの全てが金と交換できるからである。仕方のないことであったのかもしれない。

 特にこのサイバーザナドゥにといては顕著であった。
 金で手に入らないものはない。戦闘義体の換装パーツも、合成物ではない今は貴重な食事も、何もかも金で手に入るのである。
「まあ、お金が大事ってのは別にこの世界に限ったことでもないけどねぇ。金がないのは首がないのと同じ……よく言うでしょぉ?」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、一見胡散臭く見える微笑みで持って地下闘技場のエントリーを済ませていた。
 この地下闘技場に選手としてやってくる者たちは押し並べて貧困にあえぐものたちである。

 義体に換装しなければ生きて行けぬほどに環境汚染された世界であればこそ、義体のパーツは高騰し続ける。
 生きるために食事が必要なのと同じように、この世界では生きるために義体を得なければならない。メンテナンスも必要であろう。
 そう、やはり金が必要なのだ。
「そりゃそうだ。あんたの番が回ってくるまで此処で待機だ。ナンバーが呼ばれたリングイン。死んでも死ななくても、あんたが気にすることは一つだけだ」
 つまり戦うことだけを気にしていればいいのだと闘技場の受付の男がヘッドセットに隠れた顔を笑みに歪ませる。

 その受付の男の言葉にティオレンシアは薄く笑って進む。
 胡乱なる雰囲気。
 闘技場は異様な熱気に包まれていた。それもそうだろう。此処には猟兵たちが多く転移している。
 初顔ともいえる選手たちが勝ち星を重ねていれば、否応なしに盛り上がる。
「さて、あたしの番ねぇ」
「けっ、こいつが俺の相手かよ」
 ティオレンシアの前に躍り出たのは無数の重火器を手にした男であった。戦闘義体。しかし、まるでハリネズミのように銃口が体中から飛び出している。
 なんでもありとは聞いてはいたが、いくらなんでもこれはやりすぎではないかと思った。

 しかし、ティオレンシアは、それでこそ盛り上がるものであると無手で飛び出す。
「馬鹿が! 蜂の巣になりてぇか!」
 放たれる弾丸の雨。
 隙間のないような弾丸の斉射はティオレンシアを襲う。
 だが、彼女を襲う弾丸の尽くが彼女の身を覆う結界によって阻まれる。あらかじめ強化しておいたオーラはまるで球体のようにティオレンシアを覆っており、一直線に飛ぶ弾丸を弾くのだ。
 弾丸の乱舞がリングの中を包み込む。
 けれど、ティオレンシアは五体満足であった。
 弾丸の一発すらも身に受けること無く硝煙の中から飛び出し、アクロバティックに蹴撃を見舞う。

 ハリネズミのような銃身がひしゃげ、反撃の弾丸を即座に躱す。
「消えた?!」
 戦闘義体の男からはそう見えたことだろう。
 視界から消えるティオレンシア。彼女の頭と足がひっくり返るようにして男の頭部へと回転するように蹴りが打ち込まれる。
 それは嘗て奴隷が手枷をされていたが故に、編み出された上下逆転の闘技。
 カポエイラの蹴撃でもってティオレンシアは明殺(ポーラスター)せしめる。
 放たれる一撃は電撃をまとって、その義体のパーツの回路を焼き切る。

「――あなたの隙、丸見えだったわよぉ?」
 放たれた電撃が一瞬で戦闘義体の男の体を貫いて、膝をつかせる。
 機械化義体にとって雷撃は対策は取れど、完全には無効化できない。彼女の雷纏う襲撃は彼等戦闘義体にとっては天敵そのものであった。
 ティオレンシアは雷撃まとう襲撃一閃でもって闘技場を沸かす。

 サービスだというようにアクロバティックに宙を舞いながら、細めた瞳で微笑む様は、闘技場の観客たちに大いに気に入られるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…ふむ…ひとまず闘技場へは来たけど…
ここの世界……確かほぼお金で解決できるんだよね…試してみるか…

…【想い交わる幻硬貨】を付けて闘技場へ…
…地下闘技場を一通り見て回って『ブージャム』や『ティタニウム・マキア』の情報を集めておこう…
…そして…この闘技場の主も上納金を必要としているみたいだし…
…ブージャムに入信したい…上納金を支払うから拠点へ案内してくれ…と言えば通るだろうか…
最終的に『ティタニウム・マキア』に取り上げられる野心の一つや二つも見せて置けば『判りやすい野心家』と思われるかな…
…この世界なら電子マネーの見せ金ぐらい幾らでも『作れる』から問題なし…上手く取り入ってみるとするか…



「……ふむ……ひとまず闘技場へは来たけど……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はカルト教団『ブージャム』が主催する地下闘技場の会場へと訪れていた。
 このサイバーザナドゥにおいて、このような地下闘技場は珍しくはない。
 無論、表向きには法規制されているはずであるが、この世界の警察機構は正しく機能していない。
 政府も、警察も、あらゆるものが巨大企業群、メガコーポによって支配されているからである。

 行き過ぎた発展はモラルすら破壊するだろう。
 それはどうしようもないことなのかもしれない。骸の海によって環境汚染が進み、それらを克服するためには機械化義体に肉体を換装するしかない。
 義体は金がかかる。
 生きるために食物が必要なのと同じように、このサイバーザナドゥにおいては金が必要不可欠なのだ。
 故に金さえあればあらゆる事が解決できるのだ。
「想い交わる幻硬貨(ハロー・マイフレンド)……試してみるか」
 メンカルは妖怪『ぬらりひょん』のメダルを貼り付け、地下闘技場のVIPとして入場する。

 カルト教団『ブージャム』はとりわけ大きな慈善団体として知られている。
 身寄りのない子供らを引き取って育てる。社会奉仕の活動を主とした教団であり、その教義は遍く者全てに救いを与えることとある。
 無論、それが偽りの教義であることは言うまでもない。
 集められた子供らは全て骸の海を注入されオブリビオンという名の改造生物として上層組織であるメガコーポ『ティタニウム・マキア』の尖兵として上納されているのだ。

「これはこれは。今日もまたお日柄もよく」
 地下闘技場に入り込んだメンカルに近づいてくるカルト教団の信徒。
 どうやらVIPとしてか入れない区画があるようであり、メンカルはそこに情報収集も兼ねて入り込んだようだった。
 にこやかな笑顔。張り付いたかのような笑顔であった。
「……ああ、今日は入信したいと思ってね……無論、用意すべきものは用意してあるよ」
 メンカルはカルト教団『ブージャム』に入信したいと信徒に告げる。
 その言葉を待っていたようにすんなりと信徒は微笑みを濃くしてうなずく。
「……それに、さらなる至高の高みに登ることが必要だからね」
 信徒はうなずく。 
 全て委細承知であるというように恭しくメンカルを奥に招く。

「全ては我らの神のために。御身の献身を我らが神はきっと見ておられますよ」
 さあ、こちらです、とメンカルは信徒に案内される。
 そこで彼女は電子マネーのクレジットが表記されたカードを信徒に手渡す。このような見せ金くらいならばいくらでも作れる。
 このままうまく行けば、教団の拠点に招かれることなど容易であろう。
 しかし、巨大企業群『ティタニウム・マキア』は幾つの下部組織をもっているのであろうか。まるで底が見えない。

 それほどまでに巨大な生物のようにうねり、その血液という名の金を脈々と組み上げてはさらなる成長を見せる企業をメンカルは知らなかっただろう。
 他の世界を見ても、この世界ほど金が力を持つ世界もない。
「……『ティタニウム・マキア』……思った以上に大きな企業。安心安全な平和を提供する企業、か……」
 平和を売るメガコーポ。
 それが『ティタニウム・マキア』である。
 管理された平和。その箱庭を造ることをこそ是とした巨大企業群はメンカルの前に深淵となって彼女をまるで覗いているようでもあり……。

 そして、メンカルもまたその深淵を覗く。
 カルト教団の拠点。そこで待ち受けるものがなんであるかをメンカルは見定め、知らなければならないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
全くできないわけじゃないけど
近接戦は得意じゃないし
義体も無いから他の手段で潜り込む事を考えようか

サイバネモーターファイトで
上納金を稼いでるって事は
金さえ出せば見学できるって事だよね

少し準備に時間がかかるけど
複製創造で貴金属やレアメタルを創って
お金を作るとしようか
割安で売るなら出所を聞かない買取屋もあるだろうし

念のため厄介事にならないように催眠術と変装で
目立たない様にしておくよ

あぶく銭も良い所だから使い切るつもりで
教団のメンバーの目に留まる様に派手に賭けていこう

それらしい相手を見つけたら
教義に興味があるなり選手に興味があるなり
適当な理由をつけて訪問を打診しよう
多少は握らせるのも良いかもしれないね



 サイバーザナドゥにおいて最も価値のあるものは金である。
 あらゆるものが金で買えるし、解決することができる。或る意味で単純な世界であるとも取れることだろう。
 だが、一度金を全て失えば、どん底から這い上がることは困難を極める。
 金がなければ、義体のパーツを換装することも出来ないし、メンテナンスだって滞るだろう。
 そうなれば、この環境汚染された世界にあって生命は無いものと同じである。
 金を借りれば、利足が膨らむ。
 利足が膨らめば、返せなくなる。返せなくなったのならば、金無きものは命なきものと同じ。

 故に金が要るのである。
 どんなに危険が潜む道であっても進まざるを得なくなってしまうのだ。
 そんな地獄のごとき道に踏み入れた者が辿る末路はいつだって同じだ。
「……少し面倒だけれど、やらないといけないよね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はサイバーザナドゥの街中を変装しながら渡り歩く。
 晶が複製創造(クリエイト・レプリカ)によって生み出したのは、このサイバーザナドゥにおけるクレジットである。いや、正確に言うのならばユーベルコードで生み出した貴金属やレアメタルをクレジットに変換したというのが正しい。

 その金でもって晶はカルト教団の催す地下闘技場へと足を踏み入れる。
 派手に金をかければ、カルト教団の信徒に目をつけられるだろう。彼等は巨大企業群の下部組織だ。
 上納金がノルマとして課せられているであろうし、自分たちもまた実入りを良くしたいと思っているはずだ。
 いつの時代も、どこの世界も変わらぬ欲であるといえるだろう。
「全く出来ないわけじゃないけど、近接戦は得意じゃないしね……」
 チケットの代金も馬鹿にはならない。
 けれど、貴金属などを売り払った晶の手持ちは潤沢だ。
 適当に賭け金を釣り上げて、サイバネモーターファイトに興じるふりをする。

「派手に賭けてはいるけど……これで大丈夫なのかな」
 一抹の不安はある。
 あまりにも派手に賭けるのは、一見の客としては悪目立ちになりそうな気がしないでもなかった。
 けれど、それは杞憂に終わる。
 派手に賭け金を重ねた晶の下に一人の信徒が恭しく一礼して現れたからだ。
「どうやらお楽しみ頂けているご様子。初めてお目にかかるお顔でしたのでご挨拶をと思いまして……」
 信徒の笑顔は貼り付けたようなものであった。
 一枚皮をめくれば、そこにあるのは業突く張りの本性であったが、晶はそれをこそ求めていたのだ。

「ああ、うん。けれどうまくは行かないね。義体に興味があったんだけど……聞けば、こちらはあの『ブージャム』の教義によって催されているとか」
「ええ、我らが神の教えにしたがっておりますゆえ。戦える者には競う場を。戦えぬ者には安息を。それが我らが神の教えです。どうやら、我らが神の教えにもご関心が在る様子」
 釣れた、と晶は思ったことだろう。
 彼等は新たな金づるを求めている。ともすれば上納金よりも己たちの懐に金が入ることをこそ臨んでいるような節さえ見受けられる。
 晶はダメ押しというように信徒の手にクレジットを握らせる。

「そちらの施設に興味があるんだよね。よかったら訪問させてもらえないかな。身寄りのない子供らはどうしたってお金がかかるであろうし、君たちの働きに報いるためにもね」
「――……ええ、ご理解頂けているようで喜ばしいことであります。我らが神もまたあなたのご厚意に感謝していることでしょう。それでは、こちらに」
 晶の打診に浮ついた気持ちを隠せぬ信徒はうなずいて晶を教団の拠点へと案内するだろう。
 新たな金脈を見つけた功績。
 そして、握らされたクレジット。
 それらが彼等を油断させるための手段に過ぎないのだと信徒は理解できていない。晶はまんまと彼等を術策にはめ、彼等の拠点へと侵入を果たすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒覇・蛟鬼
【鬼獣と竜】
また随分と埃っぽい世界が見つかりましたな。
“塵”のない世界も、一つくらいあってもいいのに。
■行
【POW】
一闘士として潜入を試みましょう。武器は勿論素手。
基本は敵の攻撃を軽く【受け流し】つつ、隙を伺います。

そういえば、彼等の肉体の一部は機械化されているのですよな。
でしたら、その部位に【嘗女の求愛】を用いて『致命的なバグが
発見された。強制停止せよ』という誤情報を伝え、無力化しますか。
仕上げはこつんと【気絶攻撃】をお見舞いし、KOです。
此の戦法で勝利を重ね、教団の眼に留まってみせましょう。

……うん?どうも誰かに見られている気がしますな。
目には見えない“何か”に……

※アドリブ歓迎・不採用可


愛久山・清綱
【鬼獣と竜】
サイバーザナドゥ。『人』の心が穢れゆく世界。
されど、其の穢れを祓うのも、また『人』……
■行
【SPD】
潜入と同時に心を【落ち着かせ】、【無境・心】で姿を消す。
移動の際はうっかり触れて不審に思われないよう、可能な限り
人々に近づかない。
して、先ずは遠くから高い【視力】を用いて、試合や周囲の
様子を伺い……むむ?
あの黒装束、竜(蛟鬼)だ。先に潜入していたか……
では、彼の戦いを見届けよう。

彼がある程度勝利を重ねてきたら、教団の者が現れる筈……
連れて行かれるところを密かに尾行し、教団の拠点を目指す。
勿論、ここでも不用意な接近は避ける。

……む、まさかと思うが、気取られたか?

※アドリブ歓迎・不採用可



「サイバーザナドゥ、『人』の心が穢れゆく世界。されど、其の穢れを払うのもまた『人』……」
 愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は高度に発展したサイバーザナドゥの世界を見下ろす。
 その視線の先にあるのは地下闘技場に潜入しようとする一闘士。
 多くの企業看板が立ち並ぶ街中にあって、清綱の視線は在る者を追っていた。
 無境・心(ムキョウ)によって、己を明鏡止水の心境でもって覆う。今や彼の姿は視聴嗅覚では捉えられぬ存在へとなる。
「あの黒装束、竜だ」
 彼が目で追う闘士の姿は見知ったものであったことだろう。

 荒覇・蛟鬼(無可有を目指す・f28005)。
 彼の姿を知っている清綱は彼の戦いを見届けることに決める。本来なら別の者たちがカルト教団『ブージャム』の拠点へと連れて行かれるのを尾行するつもりであったが、彼がこの地に先行しているのならばこれを利用することに決めたのだ。
「また随分と埃っぽい世界が見つかりましたな」
 塵一つ無い世界があっても良いものをと蛟鬼は嘆息する。
 一闘士としてカルト教団『ブージャム』の地下闘技場へと潜入した彼は、サイバネモーターファイトに身を投じる。
「ふむ……」
 彼の視線の先にあるのは『アイレオ』と呼ばれる少年の姿をした戦闘義体の戦いぶりであった。

 連戦を重ねなければならないサイバネモーターファイトは、消耗が激しいものである。
 だというのに、少年は有り余る握力だけでもって多くの戦闘義体の頭部を握りつぶして圧勝している。
「彼等の肉体は機械化されているのですよな……」
 蛟鬼にとって、絡繰りと同じであった。
 だからこそ、彼のユーベルコードが活きるのだ。

 嘗女の求愛(ナメオンナノキュウアイ)。それは感覚や精神に干渉するユーベルコードである。
 彼は素手で戦いに挑むようであると清綱は高みの見物を決め込んでいた。
「次はお前の番だ」
 地下闘技場を運営する者に促されて蛟鬼は闘技場のリングに上がる。
 目の前にあったのは自分と同じ背丈の戦闘義体の男。
 手には鉄パイプのような棒を持ち、それを器用に扱うようであった。殺傷能力は高くはないだろうが、その長物によるリーチは無手である蛟鬼にとって脅威となるだろう。

「ええ、はい。さて……」
「う、恨んでくれるなよ! これも金のためだ!」
 問答無用のなんでもあり。
 それがこの地下闘技場にある唯一の不文律だ。機械化義体の肉体に換装した人々にとって金は必要不可欠なものである。 
 ともすれば食物よりも貴重なものであった。
 活きるためには金がいる。機械化義体の体を整備しなければならないし、もしも養うものがいたのならば、金はさらにかさむ。
 だからこそ、こんな危険極まりない場所にも足を運び、戦うしかないのだ。

 振るわれる棒の一撃を蛟鬼は受け止めながら、打ち込む拳が力を流し込む。
「……神力によって感覚を誤作動させたか」
 清綱は蛟鬼のはなったユーベルコードの一撃が、機械化した義体に致命的なバグを引き起こさせた事を知る。
 あれでは動けなくなってしまう。
 ただ徒に生命を奪うのではなく、無力化する。
 仕上げに蛟鬼が放つ拳で棒をもった義体の男は気絶する。

「順当に勝ち進むようだな……」
「……うん? どうも誰かに見られている気がしますな」
 蛟鬼は己に視線をよこす多くの観客たちの中から、より一層強い視線を感知して振り返る。
 清綱の視線に気がついたのかも知れない。
 ただ、どこにいるのかまでは判っていないようであった。
 目には見えないなにかに気がつく。
 その勘とも言うべき素養に清綱は呻くしかなかった。

 気が付かれたとまでは言わないが、それでも彼に姿を見られることは清綱には不用意でしかない。
 だからこそ、清綱は再び息を殺すようにして気配を断つのだ。
 しばらく彼が勝ち進めば、自ずと教団側から接触があるだろう。
 それを見越した上で尾行しているのだ。ここで己が不用意なアクションを取っては計画自体がご破産になってしまう。

 二人の思惑は絡まり、そして結実することだろう。
 教団の拠点が何処に存在しているのかはまだわからない。けれどそれは何れ判明することだろう。
 互いの為すべきことを為すため、二人は淡々と事をなすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
極度に治安の悪い宇宙船を彷彿とさせます
問題は世界全土がこのような状況であるという事ですが

細部は違えど、住まう環境を…星すら失った我が故郷はこのような道を辿ったのか…

その宿痾にオブリビオンの関与あれば取り除くが猟兵の役目
そして、人々の命弄ぶ悪を討つは騎士の務めです

…とはいえ、緒戦で少し派手に動き過ぎました
規格外の体躯故のハンディキャップマッチ…次の相手は頭脳戦車の援護付きとは

では、宜しく願います

UCの瞬間思考力にて複数の敵の射線や近接攻撃の仕掛けるタイミング見切り
二手三手、更にその先読んだ位置取りの疾走でミスや同士討ち誘発し翻弄
肉薄し戦車やサイボーグの四肢を剣で解体

お相手、感謝いたします



 サイバーザナドゥの地下闘技場はまるで極度に治安の悪い宇宙船を彷彿させるものであったかもしれない。
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)にとっては、まさにそうした雰囲気であった。
 環境破壊に寄るモラルの喪失。
 それは言葉にする以上に多くのものを人々の心から失わせるには十分な打撃であったのだろう。

 緩やかな滅び。
 生きるために己たちの生活の基盤である大地を汚すような行い。
 もしも、これが宇宙船であったのならば、致命的なことであっただろう。スペースシップワールドにおいては一つの宇宙船という生態系が滅びるだけで済む。
「ですが、これが世界全土の現状であるということが問題なのです」
 細部は違えど、住まう環境を、星すら失ったスペースシップワールドは、もしかしたのならば、このような経緯があったのかもしれないとトリテレイアに思わせるものであった。

 そして、この環境の破壊の根源にあるのが骸の海である。
 骸の雨が降り注ぎ、それを打破するために文明は発展してきた。けれど、巨大企業群、メガコーポの台頭によって政府や、警察機構そのものが汚濁に飲み込まれた。
 モラルすらなく。
 ただ金さえあればあらゆるものが解決されてしまう。
 そんな状況を生み出したのがオブリビオンであるというのならば、トリテレイアはこれを取り除くのが猟兵の役目であるとする。そして、人命を弄ぶ悪を討つのは騎士の務めである。
「……とはいえ、派手に動きすぎましたね」
 トリテレイアは地下格闘場での連戦を大立ち回りで勝利してきた期待のルーキーとして華やかな注目を浴びていた。

 彼のウォーマシンとしての体は規格外の体躯であったが、なんでもありが不文律である地下闘技場においては不問とされるものであった。
 ハンディキャップというものは存在しながら、かと言って実力差がありすぎるのも興行に差し支える。
 言ってしまえば冷めてしまうのだ。
「――……」
 電子音が響き渡る。
 トリテレイアの前に現れたのは頭脳戦車であった。
 いや、それだけではない。さらに戦闘義体まで現れる。実質二対一。
 エキシビションとでも言うのだろうか。観客席では何事かとどよめきが上がっている。

「今宵は多くの綺羅星のごとくルーキーが姿を表しました。その格別なる日を祝して、さらなる激闘をご覧にいれましょう」
 アナウンスによってこれが特別な催しであることを告げられる。
 トリテレイアにとって、これはさしたる問題ではなかった。
「では、宜しく願います」
 一瞬でトリテレイアは思考を切り替える。
 如何に数的優位があるのだとしても、トリテレイアは負けない。
「肝要なのは現状を俯瞰的に捉える事、走らずとも止まらぬ事、射線から外れる事、その繰り返しの他は…騎士として危地に踏み入る覚悟です」

 開始とともに放たれる砲撃をトリテレイアは躱しながら射線を認識する。
 頭脳戦車の砲撃は確かに援護に向くものであったが、急遽組まれたタッグは連携が出来ていない。
 ならば、戦闘義体は前に出てくるだろう。
 彼等は数的優位にかまけている。一瞬の判断でトリテレイアは、戦闘義体をすれ違いざまに剣で斬りつける。
「――ッ!!」
 頭脳戦車の電子音が響く。
 驚異的な速さでもってトリテレイアが砲撃の雨の中を突っ切ってきたのだ。

 ともすれば味方の戦闘義体すらも巻き込んで構わないと砲撃していたのに、それさえもトリテレイアは機械騎士の戦場輪舞曲(マシンナイツ・バトルロンド)の如く駆け抜け頭脳戦車を切り裂き解体する。
「お相手、感謝いたします」
 恭しく一礼し、トリテレイアは己の剣を掲げてみせる。
 所作こそ騎士。
 されど、この地下闘技場は欲望の坩堝でもある。彼の立ち振舞は、観客たちを湧かせるものであったが、理解されるものではなかった。

 それが口惜しいと思うか、それとも憐憫を催すかはトリテレイアの電脳が示すままである。
 だが、彼の戦闘技術はカルト教団に目をつけられることだろう。
 特別なエキシビションさえも生き残った彼を教団は必ず欲する。其の時こそが彼等の拠点に潜入するチャンスなのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん金、金、金
どんな世界でもお金が全て…世知辛いなあ…
まあ、あって嬉しいお金ではあるけども
ま、いいや
参加して小遣い稼いで、ついでに敵の拠点へ招待されるよう頑張ろう
…自分に賭けて稼ぐとかは…ダメか


【神器複製】起動
複製神器120本を召喚
『念動力』で自在に飛ばして戦闘しよう
10本ほどを近くに防御用に残して、残りは対戦相手に襲い掛からせよう
連続して『なぎ払い』、態勢を崩させて一斉に『串刺し』でトドメ
それも防ぐなら更に『斬撃波』で飽和攻撃といこう
こっちに攻撃が飛んで来たら、防御用の複製剣での『武器受け』と『オーラ防御』で対処しよう

うーん棒立ち
まあ、余裕を見せた方が教団の目にも付くかな



「うーん金、金、金。どんな世界でもお金が全て……世知辛いなあ……」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)はサイバーザナドゥの世界に蔓延る価値観に一種の哀れみさえ感じていたのかも知れない。
 環境の破壊はモラルの破壊さえもなし得てしまった。
 金で全てが解決できる世界。
 それはある意味で最も文明的なものからかけ離れたものであったのかもしれない。

 確かに巨大企業群、メガコーポの台頭によって世界の科学水準は大きく跳ね上がったのかも知れない。
 けれど、モラルは尽くが地に失墜した。
 正義や倫理観と言ったものは尽くが消え失せていると言ってもいいだろう。
 こんなカルト教団が経営する地下闘技場が公然のように行われているのを見れば、わかることだ。
「まあ、あって嬉しいお金であるけども」
 あればあったで嬉しいもの。お金は汚いけれど、それ以上に魅力的なものであるから仕方のないことだ。

 けれど、生きるために自らの身を斬りつけるような生き方は玲にとってはあまり関心を湧かせるものではなかったのかもしれない。
 いや、闘技場に参加して小遣い稼ごうと考えている時点で多少の興味湧いていたのかも知れない。
「今日のルーキーはどうなってやがるんだよ。こんな細い連中が、完全義体の俺たちを圧倒するなんてよ。運営はどうなってやがるんだ」
 巨躯の戦闘義体の男が、その身にまとった重火器の銃口を玲に向ける。
 放たれる熱線は瞬時に玲の体を捉える。
 しかし、その熱線が玲を貫くことはなかった。

「……自分に賭けることができたのならよかったんだけどなあ……残念無念」
 玲の瞳はユーベルコードに輝く。
 彼女が手にした模造神器の刀身がきらめいている。いや、違う。彼女が神器複製(コード・デュプリケート)によって複製した120本にも及ぶ刀身が熱線を切り裂いているのだ。
 念動力によって自在に飛ばす事のできる模造神器の複製は、その刀身を並べることによって熱線の一撃すら防ぐ障壁となるのだ。

「馬鹿な……! こっちは『ティタニウム・マキア』製の熱線装置だぞ!? どんな手品を使いやがった!」
 己の必殺の一撃を防がれて巨漢の戦闘義体が呻く。
 これまで一撃必殺為る熱線でもって対戦者を屠ってきた彼にとって、初撃を防がれるということは未知の体験であったのだろう。
 だからこそ、玲のような規格外を前にして一歩退いてしまう。
 その一歩が致命的であると理解できないのだ。

 放たれる模造神器の複製が一斉に戦闘義体の足を薙ぎ払い、体勢を崩した巨体の上に突き立てられていく。
 まるで縫い止めるように次々と突き立てられていく刀身に戦闘義体の男は恐怖に叫ぶことだろう。
「うーん棒立ち」
 玲は自分が特に動く必要性を感じなかった。
 念動力で動く模造神器は彼女にとって操作の容易いものであったし、飽和攻撃ができるからこそ、あらゆる砲撃も無意味であった。
 どれだけ敵である戦闘義体の性能が高かろうが、遠距離から砲撃してこようが彼女の研究成果のガジェットを前にはどれもが有象無象でしかなかったのだから。

「まあ、余裕を見せたほうがいいよね」
 そう、彼女たち猟兵の地下闘技場での戦いは小銭を稼ぐことではない。
 己の存在をカルト教団の目に止まらせることだ。
 それにはこうした余裕も在ったほうがいいのは間違いない。間違えてはならない。小銭稼ぎではないのだ。
 玲は手にした模造神器をリングの床に突き立て頬杖着くように複製した模造神器が次々と戦闘義体たちを打倒していく様を欠伸混じりに見つめる。

 その姿は圧倒的な強者としてカルト教団『ブージャム』の信徒たち、そして教祖の目にも止まったことだろう。
「業突く張りは必ず足を躓く……まあ、簡単だよね」
 玲は幾度かの連戦を終えた後、カルト教団の信徒によって教団の拠点へと招かれる。
 それは彼等が欲張ったせいでもある。
 猟兵たちを見て、メガコーポ『ティタニウム・マキア』の尖兵として質のよい改造生物へと仕立て上げられると欲を出した結果だ。
 どのような結果になるのであれ、今日此処でカルト教団は潰えると定まった瞬間でも在った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

イェーーーーッ!!もりあがってるーーーーッ!?
UC『神知』を使ってから【大声】を張り上げバトルで会場を盛り上げていく!
そう【ブームの仕掛け人】として会場を【誘惑】してボク自身を演出して神のごとく崇められたい!いやボクは最初からみんなに愛されてる神だけども!
【第六感】で攻撃を避けて【怪力】を出したり【功夫】技を披露したり普段あんまりしない魅せプレイ重視で!!あ、三角飛びからの【空中戦】なんかもいいね!
そして試合の〆には【蹂躙】した相手にすら手を差し伸べる【優しさ】も見せて対戦相手すらボクの虜にしてみせるよ!
わーいこういうの大好き!さあ!みんなもっとボクを褒めなよーッ!!



「イェ――ッ!! 盛り上がってる――ッ!?」
 その言葉はカルト教団『ブージャム』の経営する地下闘技場のリングに鳴り響く。
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は地下闘技場の戦いを取り仕切る者のマイクを奪い取り、盛大に声を張り上げながら闘技場を盛り上げた。
 その立ち振舞は、あまりにも闘技場の闘士には似つかわしいものであったが、今宵は多くのルーキーが期待を持って出迎えられた特別な日である。
 いわば無礼講であったことだろう。
 だからこそ、ロニは咎められることなくマイクパフォーマンスのままにリングインする。

 まるで神になったかのように彼は立ち振る舞う。
 いや、もとより神である。
 このモラルが荒廃した世界にあって神とは存在しないものである。どれもが偽りの神であり、カルト教団の為に生み出された虚像そのものであった。
「よしよし、いいねいいね。盛り上がってきたね!」
 セルフプロデュースするロニの演出によって、闘技場を湧かせた後、ロニは対戦相手である戦闘義体を見やる。
 どれもこれも凡庸な性能であるようであった。
「んもー、これではボクの強さとか際立たないじゃん。なら、乱戦にしようよ。どうせ、ボクで最後でしょ。なら、あぶれた戦闘義体のみんなで掛かっておいでよ!」

 そう言ってロニは運営に掛け合う。
 彼の要望は本来なら通らない。けれど、度重なる熱戦に浮かされた観客たちの声によってこれが実現してしまうのだ。
 まさに神知(ゴッドノウズ)のなさしめるところであったことだろう。
「ふふふ、これが神のごとく崇められたいっていう……いやいや、ボクは最初からみんなに愛されてる神だけどもね!」
 さあ、掛かっておいでというようにロニはリングに集められた戦闘義体たちを見回す。

 数だけ揃えても仕方のないことなのだけれど、とロニは笑いながら己の怪力でもって迫る巨躯の戦闘義体を受け止める。
「この……!」
「甘い甘い、そんな突進じゃあね!」 
 ロニの体躯で何倍もある巨躯を放り投げ、さらに迫るナイフの一撃を指で挟んで白刃取りの要領でへし折る。
 その戦い方は今までのロニの見せた大雑把なものではなかった。
 まさに魅せプレイとでも言うべきであったことだろうか。
 放つ一撃が襲いかかる小型の戦車たちを吹き飛ばす。その吹き荒れる風に舞うように三角飛びでもって身軽な戦闘義体を蹴り飛ばす。

 一瞬の攻防で迫りくる戦闘義体たちを打倒したロニは、蹂躙とも言うべき所業の後に優しさを見せる。
「良い戦いだったね。さあ、手を取って、次はがんばろうね!」
 そんな優しさもこの地下闘技場においては無意味であった。敗北者には骸の海が強化として注入される決まりになっている。
 敗北した瞬間に生命としては終わりを告げるだろう。
 けれど、その優しさでもってロニは観客の喝采を浴びる。
 偽りのモラル。
 
 闘技場に来ている観客たちも、運営する者たちも、その光景の意味を知らない。彼等にとって必要なのは金である。
 ただ欲望に塗れているだけ。
 ロニの立ち振舞が金になるからこそ喝采を浴びせているだけに過ぎない。それはこのサイバーザナドゥが巨大企業群によってあらゆる意味で破壊されているからだ。
 けれど、それでもロニは笑って応えるのだ。
「わーいこういうの大好き! さあ! みんなもっとボクを褒めなよーッ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『サイバー・ディーコン』

POW   :    我らの教義は絶対なり
【教祖(あるいは企業重役)に仕える信徒】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[教祖(あるいは企業重役)に仕える信徒]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    これぞ奇跡なり
【凝縮された骸の海の弾丸】を放ち、命中した敵を【猛毒の骸の海】に包み継続ダメージを与える。自身が【生身の部分を骸の海で汚染】していると威力アップ。
WIZ   :    我らの狂信を見よ
【狂信】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。

イラスト:100

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 多くの猟兵達は、地下闘技場で期待のルーキーとして脚光を浴びる。
 彼等の戦闘力は言うまでもなく、これまでにないほどに称賛され、地下闘技場を経営するカルト教団の信徒たちによって拠点へと招かれる。
 理由は様々だ。
「良いな、実に良い。これは私に運が回ってきたのかも知れぬ。あれだけ優秀な躯体を持つものがいるのならば『アイレオ』も次の祝福に回してもいいな」
 カルト教団教祖は、無差別にさらわれてきた子供らを見下ろし教団信徒である『サイバー・ディーコン』に告げる。

「はっ……ですが、彼等を拠点に連れてきてよかったのですか?」
「何、構わんよ。それに出資者を名乗り出てきた者だっているのだろう? そうした者に我らの教義を行き渡らせるためには、共に泥濘に浸かってもらわねばならぬ」
 教団教祖は笑う。
 そう、このカルト教団『ブージャム』は、オブリビオンという名の改造生物を生み出すために、多くの子供らをさらってきては骸の海を注入しようとしている。
 さらに地下闘技場での戦いは選別だ。
 優れた躯体を持つ者は、地下闘技場の看板に。
 敗れてしまえば、そのまま骸の海を注入し、オブリビオンとして上納する。

「今回の興行は実に良かった。後は頼んだぞ」
 そう言って教団教祖は上層組織である『ティタニウム・マキア』へと報告するために拠点の最奥へと向かう。
 後を任された教団信徒『サイバー・ディーコン』たちは手に骸の海を充填したシリンジを手に怯える子供らたちへと近づいていく。
 そう、この拠点はオブリビオン製造工場そのものだ。
 さらってきた子供らを養う、保護するというのは只の表向きの看板に過ぎない。

 どの道、幼い子供らは義体に換装したとしても、その体躯故に大した戦力にはならない。
 だからこそ、骸の海を注入し改造生物オブリビオンへと変貌させ、メガコーポ『ティタニウム・マキア』の尖兵として育てるのだ。
「や、やめて……いやだ! いやだ! 父さん、母さん!!」
 泣き叫ぶ子供らの声が拠点の中に悲痛なる叫びと成って響き渡る――。
村崎・ゆかり
そこまでよ、教団員。『プージャム』も今日で店仕舞いにさせてもらうわ。

子供たちに近づく信者を「衝撃波」で吹き飛ばして、薙刀を構え間に割って入る。
逆らう者がいないと思って、軽々しくあたしたちを招き入れたのが運の尽きね。
このまま一気に殲滅する。

「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」で不動明王火界咒。
手近な相手から焼いていこう。

あなたたち、正しくオブリビオンなの? 世界を滅ぼそうという意思に欠けるようだけど。
まあいいわ。オブリビオンを名乗るなら、討滅するだけ。

教祖もすぐに後を追わせてあげるから、世界の外で待ってなさい。

これだけの騒ぎになれば、教祖も戻ってくるでしょうね。奥へ行く手間が省けていいわ。



 自分たちが何をされるのかを理解している子供らは多くはなかった。
 ただ、得体のしれない何かが己たちを変えようとしていることだけは本能的に理解したことであろう。
 シリンジを手に近づいてくる『サイバー・ディーコン』たちの姿に子供らは泣き叫ぶ。
 換えられてしまう。
 いや、変えられてしまうのだ。生命としての本質そのものが歪められてしまう。
 シリンジの中に内包された骸の海は汚染物質そのもの。
「ええい、暴れるな! 抵抗したところで――」
『サイバー・ディーコン』が抵抗する子供に苛立つように、彼等の頬を打つ。
 痛みと恐怖が子供らの心を染め上げていくだろう。
 どうしようもないことばかりの人生であったと嘆いたかもしれない。

 親から捨てられ、売られ、そして誰かに利用されるだけの人生。
 その生命すらも誰かの都合で怪物そのものに変えられてしまう。それが悲しくて、恐ろしくて、彼等は涙を流す。
「大人しくしろ。すぐに済む。全ては我が神の教義のため。おまえたちもすぐに理解できる」
『サイバー・ディーコン』がそう言った次の瞬間、そのシリンジごと彼等を吹き飛ばす衝撃波があった。

「其処までよ、教団員。『ブージャム』も今日で店仕舞にさせてもらうわ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)の放つ斬撃が『サイバー・ディーコン』の体を吹き飛ばしていた。
 それは此の拠点に招き入れた、招き入れてしまった猟兵。
 ゆかりは地下闘技場の選手として素質を見いだされ、この教団の拠点に招かれた一人であった。
 彼女が見たのは子供らがオブリビオンへと変貌させられんとした瞬間であり、これを止めるために飛び出したのだ。
「逆らう者がいないと思って、軽々しくあたしたちを招き入れたのが運の尽きね」
「たち……? まさか貴様ら、他のメガコーポの尖兵……いや、違うな! 貴様らは!」
『サイバー・ディーコン』たちはゆかりをみやり気がつくのだ。
 そう、彼等こそがオブリビオンの天敵。
 猟兵であると。

「このまま一気に殲滅する! ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
 ゆかりが投げ放った白紙のトランプから噴出する炎が『サイバー・ディーコン』たちに巻き付くようにして不浄を灼く。
 不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)の炎は、あらゆる不浄を灼くことによって浄化する炎である。
「炎……! 我らが奉じる神のために! 集え!」
 何処からともなく『ブージャム』の信徒たちが集まってくる。 
 彼等は例外なくオブリビオンである。ゆかりは彼等に世界を滅ぼそうという意志に欠けるようであると感じていた。
 どちらにしても滅ぼすことに変わりはない。

「教祖もすぐに後を追わせてあげるから、世界の外で待ってなさい」
 吹き荒れる不浄を灼く炎が荒び、次々と『サイバー・ディーコン』たちに絡みついてはその体を焼き滅ぼしていく。
 数が多いとは思っていたが、この数は尋常ではない。
 圧倒的な数のオブリビオンが此処には存在しているようである。
「それもそのはずか……此処はオブリビオンの生産工場のようなものだものね」
 さらってきた子供らをオブリビオンへと変え、尖兵とする。
 それが平和を売る巨大企業群『ティタニウム・マキア』の戦略なのだ。改造生物を尖兵として、あらゆる紛争や諍いに介入し、尽くを解決して平和をもたらす企業。

 その『ティタニウム・マキア』の兵力の一端を担うカルト教団であるからこそ、湧き上がるように現れる『サイバー・ディーコン』はその数を更に増やしていく。
 子供らは動けない。
 恐怖で凝り固まっているからであろうし、同時にどうしていいかもわからないからだろう。
 これだけの騒ぎであれば教祖も戻ってくるはずだ。
「此処で教団員は全て滅ぼす!」
 後に遺恨を残さぬために。
 どれだけ表看板が綺羅びやかで美しいものであったとしても、その裏にあるものが悍ましきものであるのならば、これを滅ぼさなければならない。
 世界の破滅をもたらすオブリビオン。
 その存在を許してはならぬと不浄を灼く炎は『ブージャム』の教団施設の中で煌々と焚き上げられるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『侵す者』にて

こういうとき、真っ先に犠牲になるのは子供なのよな。…やはり好かん!
守るがわしらの誓いなれば!

陰海月、出てくるがよかろう。怒っておるなぁ。その怒りをもって、子らを守るがよい!
わしも黒燭炎を振るいていこう。
ま、黒燭炎はもちろん、陰海月もUCの影響受けておるから、負けるわけがないのであるが。
四天霊障は、今のところは結界に回す。頼んだぞ、中の三人よ。…というわけで、三属性(風、氷雪、重力)結界である。


陰海月、手数多さ利用のしゅしゅっとパンチする!許さない!ぷきゅっ!



 カルト教団『ブージャム』に蔓延る悪意は、それ自体がサイバーザナドゥに跋扈するオブリビオンの影そのものであったことだろう。
 無差別にさらわれ、集められた子供らをオブリビオンへと改造する。
 その骸の海を注入する施設が、この拠点であった。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は『ブージャム』が経営する地下闘技場で戦い、目覚ましい戦いぶりを認められ拠点に招かれていた。

 そこで『侵す者』が見たのは子供らの泣き叫ぶ姿であった。
 炎が立ち上がり、それめがけて『侵す者』は槍を手にして『サイバー・ディーコン』の体を吹き飛ばす。
「こういうとき、真っ先に犠牲になるのは子供なのよな」
 振り抜いた槍の一撃がシリンジを構えていた『サイバー・ディーコン』を捉え、骸の海を打ち込まれそうになっていた子供を救う。
 抱えるようにして子供を守りながら、その影より飛び出す巨大なクラゲ『陰海月』に『侵す者』は命じる。

「……やはり好かん! 護るのがわしらの誓いなれば!」
 その言葉に巨大クラゲである『陰海月』が、大きく鳴く。その触手に多くの子供らを抱えながら『サイバー・ディーコン』たちを吹き飛ばしていくのだ。
「ぷきゅっ!」
「なんだ、この生物は……! こいつら、猟兵なのか!」
「くそっ……! 早く人員を増やせ! 猟兵の侵入を許したんだぞ!! 我らの教義を、我らの神を冒涜する背信者共を赦すな!!」
 続々と拠点の中から信徒である『サイバー・ディーコン』たちが集まってくる。
 だが、怒りに燃える『陰海月』の触手による連打は尽くを寄せ付けない。

「怒っておるなぁ……その怒りをもって、子らを護るがよい!」
『侵す者』も同じ気持ちであったことだろう。
 いつだって弱者が強者の犠牲になる。
 それは仕方のないことだ。世界に生きる限り、それが当然の摂理である。だが、いつだって弱者とは子供らのことを差す。
 どうにも気に食わない。
 同じ言葉を話し、同じように生命を紡ぐのならばこそ、子供こそ守らねばならない。己の故郷を滅ぼした恨みが呪詛と成って体の内側から湧き上がるようでもあった。

「わしの一撃、受けきれるか!」
 放たれる黒い槍の一撃が『サイバー・ディーコン』の体を穿つ。
 その衝撃波の余波で他の信徒たちも吹き飛ばしながら、拠点を破壊するほどの怒りに『侵す者』は震える。
 それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)放たれ、『サイバー・ディーコン』たちを子供らを救出する『陰海月』から遠ざけるように振るわれるのだ。
「数だ! 数で押せ! 奴らは我らの信心の結束を知らぬ! 我らの神こそ絶対である! 我らの信仰を持ってやつらを――ッ!」
 集まる『サイバー・ディーコン』たちを薙ぎ払う『侵す者』。
 数など無意味。
 彼は武の天才である。

 圧倒的な多数を相手取ることなど造作もなく。
 そして、己の中にある誓いを同じくする者たちと彼は戦うのだ。
 張り巡らせる風と氷雪、そして重力の結界があらゆる攻撃をはばむ。同じ気持ちであることが誇らしいとさえ思うだろう。
 彼等は四柱で一つ。
 その思いさえ違えぬのならばこそ、力は護るために働く。
 どれだけオブリビオンに対する呪詛が色濃く在るのだとしても、そこだけは変わらぬものであるからこそ。
「頼んだぞ、中の三人よ……というわけで、征くぞ」

 瞳がユーベルコードに輝く。
 その煌きは、渾沌と汚濁に塗れた世界であったとして燦然と輝く。
 振るう槍は誰かのために。
 そして、失ったものが二度と戻らぬことを知るからこそ、今ある生命を守ろうとする。呪詛の塗れ、悪霊となってもなお、その気高き心は誰かを脅かすものをこそ打ち払わんと、その黒き槍をもって貫くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
AMシフトを起動し、5型兵装を情報化し解除後、3型「隠密活動用兵装」を物質化させ換装、
同時に【コール・レギオン:α】を発令

隊長機として3型装備の同型の「ミレア」10機を転送
僚機として『ブラスター』と『ランチャー』の1型装備の簡易構造の「ミレア」535機を生成

私は『アクティブステルス』の迷彩効果で隠れて中継サーバーに徹し、545機を10の部隊に分け、拠点制圧を開始します

各部隊は隊長が狙撃で部位破壊を行い敵の動きを止め、
僚機が子供たちを保護、そののち全機の集中砲火で敵を撃滅するというパターンを。
必要ならば拠点施設への破壊工作、脱出経路や通信・連絡機能の封鎖・破壊、味方の支援と敵撹乱を行いましょう



 ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)はカルト教団『ブージャム』の拠点へと通された後、即座に3型兵装である現実改変機構と認識阻害ジャミング、そして偏光ナノマシンの複合迷彩システムを稼働させた。
 情報化された武装は即座にミレアの装備を換装させる。
 この拠点に集められた子供らは選別をまたずにオブリビオン化の儀式を執り行われる。
 儀式というのは言うまでもなく建前のものだ。
 このカルト教団『ブージャム』が行うのは骸の海を注入しての強制的な怪物化である。躯体の小さな子供らは義体を換装しても大した戦力にはならない。
 だからこそ、改造生物への変異が望ましいのだろう。
 おぞましい所業だと言う他無い。
「データ送信、同型機転送……」
「同時に簡易型の生成を開始」
「以降、中継サーバモードへ移行します」
「全行程完了、全機……行動開始」
 ミレアの瞳がユーベルコードに輝く。
 それはコール・レギオン:α(コールレギオンアルファ)の発令でもあった。

 彼女の力は個としてではなく群としての力である。
 召喚された同型のミレアたちが十機が即座に行動を開始する。その僚機として簡易型のミレアがブラスターとランチャーを装備して疾駆する。
「行動は迅速に」
 ミレア自身は動けない。
 彼女は自身を中継機とすることによって、召喚せしめた五百機以上に同型ミレアたちを手繰るのだ。
 迷彩に寄って隠れた彼女の姿は『サイバー・ディーコン』たちに捉えられない。
 このユーベルコードを発動したのならば、ミレアは動けず無防備になってしまう。だからこそ、迷彩装備の3型装備なのである。

「各部隊は狙撃を開始。敵行動を阻害」
 放たれるブラスターライフルが『サイバー・ディーコン』たちの足を止める。
「砲撃……! 我らの信仰を絶やしてはならぬ。我らには神の加護があるのだ。祝福、これこそ我らが祝福である。進め、恐れることは我らが神に奉じるものではなく、敵の恐怖に慄く声だけでいいのだ!」
 彼等は狂信によって繋がる軍勢と言ってもよかった。
 どれだけ足を止めても、這いずってでもミレアの同型機に組み付いていくる。

 確かに数では負けないだろう。
 そして狂信によって彼等は己の体を巨大化させ、さらには戦闘能力さえ引き上げていく。
「敵機の能力強化を確認。子どもたちの保護は――」
「進捗報告。現時点で保護対象の50%の確保を確認」
「提案。拠点施設への破壊工作及び、脱出経路、通信連ラkう機能封鎖と破壊」
「承諾。実行」
 ミレアたちは中継機からの報告を受けて一気に動き出す。

 戦いは苛烈さを極めるだろう。
 数と質。
 その両方を兼ね備えた狂信者である『サイバー・ディーコン』たちの連携はまさに破竹の勢いであった。
 だが、ミレアの展開した部隊はさらにそれを上回る。
 個として質が己たちを上回るのだとしても、狙撃に寄って足を止め、足を止めた個体から集中砲火で確実に撃滅していくのだ。
「フォロー」
「リカバー。目標の再設定を確認」
 ミレアたちは個にして群。
 同型機による連携は凄まじく、次々に『サイバー・ディーコン』たちの狂信的な突撃を打倒していく。

「我らの信仰が敗れるわけがない! 我らは――!」
 その言葉を最期に『サイバー・ディーコン』の体がブラスターによって吹き飛び、ランチャーの炎が施設を破壊していく。
 子供らの脱出経路を切り開いたミレアは、次々とさらわれていた子供らを其処から逃がすのだ。
「さあ、行きなさい。此処は私達が守ります」
 複数のミレアたちが脱出経路を固める傍ら、追いすがる『サイバー・ディーコン』を押し戻し、さらなる戦いの広がるを見せていくカルト教団の拠点。

 この戦いの騒ぎは確実に上層組織へと伝わることだろう。
 援軍が派遣されるまでのタイムラグの間にカルト教団の教祖まで叩き潰さねばならない。
 ミレアは此の戦いが時間との戦いであることを理解し、さらに己の同型機たちをもって迫る『サイバー・ディーコン』を打倒し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナ・ヴァレンタイン
今すぐ逃げ出すというなら聞いてやらんでもないが?
などと言ってもどうせ聞く耳持たんだろうな

子供ごと吹っ飛ばすなど言語道断だろうしなぁ…面倒だが一人ずつ高速対処
先に相手から撃たせると同時に空間跳躍して敵の懐へ
スタンナイフで貫いて身動きを封じ、右手の銃で胸と頭に一発ずつぶちこんで致命傷を与え、完了したら即座に次へ、次へと仕留めていく
つま先や太ももをぶち抜いて体勢を崩して高周波振動刃で首を刎ねるのもいい
とにかく流れ弾が出ないように運動能力を奪う戦い方を心がける

ああ、このシリンジは一本もらっていくぞ
「骸の海」そのものの安定した物質など珍しいからな
下っ端のお前に聞くのもなんだが、こいつの出所は知ってるか?



「怯むな! 我らには奇跡がある。我が神によりもたらされた奇跡の弾丸が!」
 カルト教団『ブージャム』の信徒である『サイバー・ディーコン』たちが手にした銃には骸の海を凝縮した弾丸が納められている。
 一度放たれれば、それは猛毒の骸の海を撒き散らし、あらゆるものを苛む尋常ならざる痛みを引き起こすだろう。
 彼等にとって、その骸の海こそが奉じる神のもたらした奇跡である。
 己達の姿をさらけ出す。
 生身の部分はすでにない。
 あるのは機械化義体のみ。彼等は神に命を捧げたことに寄って得られた義体をもって侵入者である猟兵たちと戦う。

「正義は我らにこそある。我らが神が求め給うは真の平和。悍ましき未来という不確定など不要。ああ、神よ!」
 彼等の瞳に正気はない。
 あるのは災厄をもたらす狂信のみであった。
「今すぐ逃げ出すというなら聞いてやらんでもないが? などと言ってもどうせ聞く耳持たんだろうな」
 レナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)は、骸の海を凝縮した弾丸を放とうとしていた『サイバー・ディーコン』の腕を切り裂いていた。
 それは左腕内部に内蔵された超高電圧スタンナイフの一閃であった。

 レナは子供ごと吹っ飛ばすことは言語道断であると判断し、面倒であるが一人ずつ対処することに決めていた。
『サイバー・ディーコン』は驚愕しただろう。 
 確かに彼等は銃口をレナに向けていた。
 けれど、次の瞬間に己たちの腕は一閃の下に両断され、その腕を地面に落としていた。
 知覚すらできなかった。
「馬鹿な……! 消えただと!?」
「そんなこと、ガッ――!?」
 鳴り響く銃声。
 それは的確に『サイバー・ディーコン』の頭部と胸に弾丸を打ち込む音であった。レナの手にした右手の銃口から硝煙が昇っている。
 だが、それさえも一瞬の出来事であった。

「何処へなりとも逃げてみろ。私はお前を逃がさない」
 それは断ち切れぬ追撃者(ライト・ビハインド・ユー・ベイビー)そのもの。
 レナは至近距離での次元跳躍により『サイバー・ディーコン』との距離を一瞬で詰める。
 速いとか遅いとか、そんな次元ですらなかった。
 レナに知覚された瞬間に『サイバー・ディーコン』たちの運命はすでに決するものであった。
「ひっ――!」
 ここに来てようやく狂信を覆す恐怖が彼等の中に目覚めるだろう。

 逃げ場など無い。
 ただ己達は鏖殺されるだけの存在であると自覚したのだ。
 レナの瞳がユーベルコードに煌めく度に、次元跳躍に寄って銃声が響き渡り、スタンナイフの一閃が輝く。
 その都度、『サイバー・ディーコン』たちは己達何れかが生命果てることを知る。
 もはや、其処に在ったのは狂信ではなく恐慌であった。
「た、たすけ――」
 銃弾が『サイバー・ディーコン』の太腿をぶち抜き、倒れ込む瞬間にスタンナイフが首を刎ね飛ばす。

 ごろりと転がる『サイバー・ディーコン』の頭部を踏み抜いてレナは彼等の手にあったシリンジを手に取る。
「ああ、このシリンジは一本もらっていくぞ。『骸の海』そのものの安定した物質など珍しいからな」
 手にしたシリンジは凝縮された汚染物質であろう。
 このサイバーザナドゥにおいては骸の海そのものが雨となって降り注ぐ。
 環境を破壊せしめるほどの汚染物質であるからこそ、オブリビオンへと人を変貌させる力を持つ。

 レナはそのシリンジを懐に納め、転がる義体に問いかける。
「下っ端のお前に聞くのもなんだが、こいつの出処は知ってるか?」
「し、――」
「知らないだろうな。無駄だった」
 銃声が響き渡り、レナは硝煙立ち上る銃口を納め、未だ混乱が続くカルト教団の拠点を歩く。
 このシリンジの出処があるのだとしたら、それはメガコーポであろう。
 そして、その末端にして一翼を担うのが、このカルト教団であるのならば教祖こそが唯一のパイプなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…騙して悪いが…と…子供達は守らせて貰うよ…
…術式組紐【アリアドネ】を子供達の周囲に張り巡らせて結界を構築…
…(子供達に)そこが安全だから暫くそこにいてね…

…神も仏もいなさそうな世界でも信仰や狂信は有るものだね…
…●我らの狂信を見よによって強化されたサイバー・ディーコン達に
【彼の身に宿すは失墜の落暉】を発動……術式装填銃【アヌエヌエ】で付与反転術式を込めた銃弾を放って強化を反転させてしまおう…
…その狂信が命取りだね…弱体化したサイバー・ディーコン達を術式による光の矢で打倒して行こう…
…敵を倒したら騒ぎに気付いて教祖が現れる前に子供達を安全そうな場所に避難させるとしよう…



 信仰は神ありきである。
 神あるが故に信仰あり。どちらが欠けても成り立たぬものであるが、このサイバーザナドゥにおいて神とは如何なる存在であったことだろうか。
 カルト教団の狂信者である『サイバー・ディーコン』たちは、己の神の名を告げない。
 なぜならば、彼等にとっての信仰とは名も知らぬ神に捧げるものであって恩恵を賜るものではない。
 結果として祝福を賜っただけであり、結果は必要ないのだ。過程だけでいいのだ。
「我らの信仰を持って、我らが神の敵を撃滅せよ!」
 その機械化義体の体が膨れ上がっていく。
 捧げた狂信は、さらなる狂信を呼ぶ。妄執と呼んでも差し支えないだろう。

 その威容を見上げ、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は子供らを背に庇いながら対峙する。
「貴様も猟兵だな! 我らをたばかり、我らの信仰をはばむ者! 我らが神に楯突くもの!」
「……騙して悪いが……」
 子供らは守らなければならない。
 メンカルが張り巡らせた術式組紐『アリアドネ』が子供らを護るように張り巡らされ、結界として機能する。

「あ……」
 子供らの不安げな瞳を見る。
 こんな世界にあっても子供らは子供のままだ。他の世界と変わらない。だからこそ、メンカルはうなずく。
 大丈夫だと安心させるように言うのだ。
「……そこが安全だから暫くそこにいてね…・・」
 メンカルは結界の中から飛び出す。
 手にしたのは術式装填銃『アヌエヌエ』。その銃口が巨大化した『サイバー・ディーコン』たちを捉える。

「……神も仏もいなさそうな世界でも信仰や狂信は在るものだね……――彼の術式よ、狂え、惑え。汝は叛逆、汝は反転。魔女が望むは栄光堕つる変魔の理」
「我らの神を否定するか!」
 振り上げられた拳がメンカルへと振り下ろされる。
 だが、一発の弾丸がそれを反転させる。
 装填された術式は付与反転術式。
 彼の身に宿すは失墜の落暉(リバース・エフェクト)。それがメンカルの術式でありユーベルコードである。

 弾丸を受けた『サイバー・ディーコン』は己の威容を誇っていたが、その付与術式を反転させる力によって、その体は著しく弱体化させられる。
 力が失われていくことに混乱した『サイバー・ディーコン』をメンカルは見逃さない。
「……その狂信が命取りだね……」
 放たれる光の矢の術式が『サイバー・ディーコン』を簡単に居抜き、砕いていく。
 そのさまは狂信者である彼等にとって驚くべきものであったことだろう。
「馬鹿なッ! 我らの信仰が! 我らの神の力が、負けるなど、あってはならない!」
 彼等にとって神とは本物の神なのだろう。
 第三者にとっては虚構の存在であったのだとしても、彼等の瞳には確かに見えているのだ。
 それを幻影と呼ぶにはあまりにもリアルなる光景。
 機械化された肉体が放つ電気信号、それが見せる幻影を光の矢が貫いて霧消させていく。

「……信じる信じないは、自分たち勝手だけどね……さ、行こうか。こっちにおいで……」
 メンカルは周囲の狂信者たちを撃退すると『アリアドネ』の結界に保護していた子供らを連れて他の猟兵が確保した脱出の道へと向かう。
「……お姉さんは……」
「……大丈夫。まだやることがあるから……さ、おいき」
 メンカルの言葉に子供らは背を押されて、脱出路へと走っていく。
 その背に響く足音を受けたままメンカルは前に進む。この騒ぎを聞きつけたカルト教団の教祖が現れるはずだ。
 これを打倒し、カルト教団を潰さねば、またあのような子どもたちが生まれてしまうかもしれないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
オレはガキを泣かす奴だけは許せねえんだ。
オレはなあ……ガキの泣き声が大っ嫌いなんだよ!うるさくて仕方ねえ!
このイラつきはあのイカレ野郎共をぶちのめして発散するしかねえな。

離れたやつはサブマシンガンでハチの巣。近づいてくるやつはマンティスセイバーで真っ二つにしてやる。
さっきの雑魚どもよりは楽しめるといいんだがよ?

しかしコイツらの言ってる事はさっぱり理解できねえな。神がどうとか教えがどうとかよ。
訳わかんねえ事ゴチャゴチャ言われてストレスマッハだぜ。このイラつきを抑えるには……キメるしかねえな。
キマり過ぎて意識ぶっ飛ぶかもしれねえが、その前に片付けちまえばいいだけだ。



 子供らの泣き声が響く。
 それはカルト教団『ブージャム』において日常的な音でしかなかったのかもしれない。
 無差別にさらわれてきた子供らをオブリビオン化し、怪物として企業間戦争の尖兵とする。それがこのカルト教団の目的であり、存在意義であった。
 彼等にとって子供らとは何処からか生み出される収穫物に過ぎなかったのだろう。
「いやだ、いやだ! ああああっ!!」
 その声を来て苛立つのは堂島・アキラ(Cyber×Kawaii・f36538)であった。
 金髪碧眼の美少女たる躯体の中で苛立つ本性が、叫ぶ。

「オレはガキを泣かす奴だけは許せねえんだ」
 小さくつぶやいた言葉にカルト教団の信徒は訝しんだ。
 何を、と思っただろう。彼等にとって、子供の泣き声など大したことではない。只の日常だからだ。
 けれど、次の瞬間アキラの拳が己を拠点へと案内していた信徒へと放たれ、その体を吹き飛ばす。
「オレはなあ……ガキの泣き声が大っきらいなんだよ! うるさくて仕方ねぇ!」
 イラつきが最高潮に達する。
 そう、子供の泣き声は頭に響く。耳を引き裂かんばかりである。
 それがどうにもアキラに苛立ちをもたらす。ならば、その苛立ちをもたらす元凶をぶちのめすしかない。

「き、気でも狂ったか!」
「知るかよ、そんなこたぁな! このイラつきはてめえらをぶちのめして発散するしかねぇな!」
 放たれる拳が信徒の義体を吹き飛ばし、子供らを捉えていたゲージの如き強化ガラスを砕き大穴をあける。
 そこへアキラは飛び込む。
「フィーバータイムだ! 楽しんでいこうぜ!」
 お薬の時間(オーバードーズ)はすでに始まっている。
 過剰摂取した薬物により、そのアキラの脳は一時的に増強され、義体の身体能力は通常時の六倍にまで引き上げられている。

 敵が遅い。
 いや、アキラが早すぎるのだ。
 手にしたサブマシンガンが信徒たちの義体を貫き、己に迫る『サイバー・ディーコン』の巨躯へと振り返る。
「――!!」
「何言ってんのかわらんねぇよ! スローすぎてなぁ!」
 あらゆる感覚が研ぎ澄まされ、アキラは冴え渡る脳の躍動を感じる。テンションが上がり過ぎていると言ってもいいだろう。
 放たれるマンティスセイバーが『サイバー・ディーコン』の巨大化した義体を一刀のもとに猟団せしめる。

「さっぱり理解できねぇよ。神がどうとか教えがどうとかよ」
 一刀両断した『サイバー・ディーコン』を足蹴にしてアキラはさらに跳躍して己の得物を狙う。
 このカルト教団は己の苛立ちの元凶である。
 狂信を盾にあらゆることを肯定する彼等のやり方をアキラは許容できなかったことだろう。
 言う成れば、わけのわからんことをごちゃごちゃ言われてストレスが溜まったような状態であった。
 狂信者たちの言葉はアキラの何処にも響かないのだ。

 サイコドラッグを奥歯の奥で噛み締め、アキラはキメにキメる。
 違法薬物であることに変わりはない。
 視界が鮮明になり、さらなる覚醒と疲労回復をもたらす力は、ユーベルコードにまで昇華される。
「さあ、お楽しみはこれからだってんだよ!」
 キメすぎて意識がぶっ飛ぶかもしれない。
 けれど、アキラにとってそれは些細なことであった。このいらだちを生み出す者をぶっ飛ばす。
 ただそのためだけの暴力装置と化したアキラは、『サイバー・ディーコン』たちを寄せ付けぬままに盛大に暴れまわり、壊滅させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん、お粗末な組織運営…
所詮は下部組織、蜥蜴の尻尾って所かー…
まあそれでも1つ潰していけば、その内上層に届くかな
という訳で残念、そっちの望む優秀な躯体じゃなくて猟兵でした!
サプライズ猟兵の法則!
…違うか、まあどーでもいいや
一暴れさせて貰うよ


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
自らオブリビオン化するなんて正気じゃないね
とはいえ、宗教なんてそんなもんか
正しい意味での確信犯
なら遠慮はせずに…殲滅する!
【Code:C.S】起動
封印解除、時間加速開始
敵の弾丸は回避しつつ、子ども達に当たりそうなのは『武器受け』で弾いて一気に接近
両剣で『なぎ払い』、『串刺し』のコンボで1体ずつ倒そう



 カルト教団『ブージャム』は巨大企業群『ティタニウム・マキア』の下部組織である。
 大きな組織になれば為るほどに枝葉は増えていく。
 だが、その枝葉の体制は本筋から離れれば離れるほどに陳腐なものとなっていくだろう。
 それは仕方のないことでもあり、自然の摂理と似通っていたことだろう。
 教団の拠点に案内された月夜・玲(頂の探究者・f01605)はお世辞にも立派とは言えない施設の様相に辟易していた。
 端的に言えばお粗末としか言いようがない。
 所詮は下部組織、蜥蜴の尻尾と同じであると感じたことであろう。たとえ、ここを潰したとしても巨大企業群『ティタニウム・マキア』に決定的な打撃を与えることはできないだろう。

「まあそれでも一つ潰していけば、その内上層に届くってものでしょう……」
「何を……?」
 いかがされたか、と信徒が玲に訝しむ視線を向けた瞬間、彼女は笑って模造神器を抜刀する。
 その蒼い刀身が煌めいた瞬間、その振るった斬撃波が拠点の施設の壁面を切り裂く。
「――!? ご乱心されたか!」
「いいや、残念。正気なんだよね。そっちが望む優秀な躯体じゃなくて猟兵でした! サプライズ猟兵の法則!」
 いや、違う気がする。
 そんなことよりも信徒たちは、玲の豹変に慌てふためく。

 壁面は切り裂かれ、オブリビオンに変えられようとしていた子供らと視線がかち合う。
 彼等は怯えきっている。
 突然の出来事に混乱もしているだろう。だが、即座に動いたのは『サイバー・ディーコン』たちであった。
 彼等はオブリビオン化しており、ひと目で玲が猟兵であると気がついたのだろう。
「我らの侵攻を妨げる敵! 骸の海に沈め!」
 放たれるは凝縮された骸の海の弾丸。
 撒き散らされれば、それだけで周囲にあるものたちを猛毒で持って侵すことだる。手にした模造神器の刀身が煌めく。

「封印解除、時間加速開始――Code:C.S(コード・クロノシール)」
 模造神器に施された時間加速の封印を解除し、玲は目にも留まらぬ速度で放たれた骸の海の弾丸を切り払い、一瞬のうちに斬撃を『サイバー・ディーコン』へと打ち込む。
「自らオブリビオン化するなんて正気じゃないね。とは言え、宗教なんてそんなもんか。正しい意味での確信犯」
 ならば、遠慮の一切は必要ない。
 放たれる斬撃を背に玲は拠点の施設の中を蹂躙する。
 あふれる斬撃は尽くを切り裂き、捕らえられていた子供らを開放する。

「神へ捧げる供物をよくも! 我らが神は安寧をもたらそうというのだ! 平和を、平穏を! その礎になるという祝福を否定するか!」
 骸の海という汚染物質に塗れた『サイバー・ディーコン』たちが殺到する。
 乱れ打たれる弾丸は全てが骸の海が凝縮されたものだ。
 抜き払った二振りの模造神器を交錯させ、子供らを庇いながら玲は、その瞳をユーベルコードにきらめかせる。
 時間加速の封印はすでにほどかれている。

 ならば、すでに弾丸の軌跡は十や百であろうと関係ない。
 全てを認識し、演算する。
 子供らに当たる軌跡の弾丸は模造神器で切り払い、己に迫るものは身をねじって躱す。
 どれだけの速度であっても玲と『サイバー・ディーコン』を隔てる時間の概念は谷よりも深く溝を生み出す。
「……殲滅する!」
 打ち込まれる斬撃が『サイバー・ディーコン』の体を切り裂き、その義体を一撃のもとに爆砕させていく。

「馬鹿なっ、速すぎ、る――」
「いいや、君等が遅すぎるだけだよ」
 玲の駆け抜けた後に一体のオブリビオンも存在できない。二振りの模造神器の刀身が煌き、爆煙の中に封印をほどかれたその力の発露を知らしめる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

純・あやめ
【カランコエ】!【ワルナスビ】!全力で「緊急事態空域」を展開!
『子供たちは幻惑しないようにお願いね』
水無月曲槍流は力無き人々を護る技だからね
敵の動きを封じながら二丁警棒で叩きのめす!
『この嵐の中でも戦闘力増加で無理矢理に動くみたいよ?狂信の力って凄いわねぇ…反吐が出そう』
なら敵の周囲へ「リフレクターコイン」を展開!
コインを足場に立体乱反射移動をしながら一人づつ全身を叩き壊すよ!
『公務執行妨害で死刑ってところかしら?』
違うよ、【カキツバタ】…人々の自由と希望を強奪しようとする者は、お巡りさんが許さない!
ただそれだけ!
『(くすくす)そうね、その通りだわ』



 純・あやめ(砂塵の衛士・f26963)の手にした二つのチェスピースがユーベルコードに煌めく。
 それは砂塵を操る悪魔と幻惑を手繰る悪魔の力を宿した駒であった。
「【カランコエ】!【ワルナスビ】! 全力で緊急事態空域(メーデー・ストーム)を展開!」
 突風が吹きすさび、砂塵が拠点の中を包み込む。
 それは唐突なる出来事であったことだろう。このカルト教団の拠点に存在するオブリビオン『サイバー・ディーコン』たちは己の平衡感覚が急激に失われることにめまいのような感覚を覚えたはずだ。
 砂塵を手繰る悪魔の力によって幻惑に惑わされた『サイバー・ディーコン』たちは、手にしたシリンジを取り落とす。

 ここではさらってきた子供らをオブリビオン化するための場所でもあったのだ。
 骸の海を注入し、強制的に改造生物へと変貌せしめる。
 それがカルト教団の本当の目的。
 上層組織である『ティタニウム・マキア』へと企業間戦争の尖兵を上納するために、これまでも多くの子供らをオブリビオン化し、怪物として戦いに送り出してきたのだろう。
『あやめ、子どもたちは幻惑しないようにね』
【カキツバタ】の言葉にあやめは頷き、手にした二本一対の特殊警棒を平衡感覚を失った『サイバー・ディーコン』へと振り下ろす。

「水無月曲槍流は力なき人々を護る技だからね!」
 あやめの振り下ろす特殊警棒が『サイバー・ディーコン』の頭部をひしゃげさせ、さらに蹴り飛ばす。
 子供らを救うためには、手早く彼等を排除しなければならない。
 けれど、『サイバー・ディーコン』たちの狂信はあやめの想像を上回るものであったことだろう。
「我らの神のお姿が見える! これは我らに与えられた試練! ならば、これを乗り越えて、さらなる祝福を――!」
 咆哮する『サイバー・ディーコン』たちは、一様にその肉体を巨大化させあやめに迫る。
 平衡感覚が乱されているというのに、這いずるように巨大化した義体でもってあやめに迫るのだ。

 彼女のユーベルコードに寄って砂塵の嵐に包まれた拠点内部は、『サイバー・ディーコン』にとって適応できぬ環境であった。
 だというのに、有り余る狂信でもって彼等は肉体を強化し、猟兵であるあやめを抹殺しようと迫るのだ。
『この嵐の中でも無理やり動くみたいよ? 狂信の力って凄いわねぇ……反吐がでそう』
【カキツバタ】の言葉にあやめは反発力場を発生させるクリーピングコインを周囲にばらまき、それを足場に砂塵の中を飛ぶ。

「我らの神の邪魔をするな!」
 迫る巨大な腕を特殊警棒で打ちのめしながらあやめは、敵の攻撃をすり抜けるようにして飛び、巨大化した『サイバー・ディーコン』の頭部を砕く。
『公務執行妨害で死刑ってところかしら?』
「違うよ、【カキツバタ】……人々の自由と希望を強奪しようとする者は、おまわりさんが許さない! ただそれだけ!」
 単純なことだというようにあやめは警棒を振るう。

 目の前にあるのは不正義だ。
 だから己が警棒を振るうに値するのだというようにあやめは『サイバー・ディーコン』の巨体を打ち据える。
 その姿にそのとおりであると【カキツバタ】の笑う声が響く。
 どんなに巨大な組織であろうとも、あやめは人々の自由と希望を苛むものを許さぬと、己の正義を振り下ろすことをやめない。

 子供らの泣く声も。
 悲痛なる人々の叫びも。
 あらゆる負をあやめは取り除くために、迫る『サイバー・ディーコン』たちを打ちのめし、その瞳をユーベルコードにきらめかせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

やあやあ!苦しゅうない!苦しゅうないよ!
…あれ?もう歓待パーティは終わり?
んもーせっかく楽しんでたのに―
しょうがないなあ

ていうか考えてみたら『さらってきた子供らを養う、保護する』って字面がおかしくない!?
それがこっちの常識?えぇー…


UC『神罰』を使用!
[餓鬼球]くんたちに教団員くん(と彼らが放つ弾丸)たちにだけ接触する設定にして(光も透過する)透明状態でがぶがぶしていってもらおう!
がぶがぶ組以外の餓鬼球くんたちはボクとこどもたちを守るバリア代わりにしておこう

ねえねえ見えない怪物に食べられる映画ってあったよねー
なんてタイトルだったかなー?
あ、お菓子食べる?



「やああや! 苦しゅうない! くるしゅうないよ!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はカルト教団『ブージャム』の拠点に案内され、歓待を受けていた。
 彼等にとって優秀な躯体は、強大なオブリビオンを生み出すための素材に過ぎない。下手にごねられるよりは歓待して良い気分にさせたところで骸の海を注入し、改造生物へと変貌させようという魂胆なのだろう。
 きっとこれまでもそうしてきたのだ。
 彼等にとって優秀な躯体は、それだけ上納する価値があるものである。

 カルト教団の上層組織である巨大企業群『ティタニウム・マキア』は、企業間戦争のために多くの尖兵を欲している。
 そのためにあのような闘技場などを用意し、金という餌でもって優秀な義体を集めていたのだ。
「……あれ? もう歓待パーティは終わり? んもーせっかく楽しんでいたのにー」
「申し訳ありません。どうにも賊が侵入したようで。お早く、こちらに……」
 教団の信徒たちがロニを騒ぎから遠ざけようとしている。
 だが、ロニは即座に気がついただろう。
 その手にしたシリンジを。有害な物質、汚染物質、骸の海が凝縮されたものが充填されている。

 それでもってロニもオブリビオン化しようというのだろう。
「しょうがないなあ」
 そうつぶやいた瞬間、ロニの拳がシリンジを砕く。
「――ッ!?」
「そういうのって、もっと巧妙にやろーね。気が付かれた意味ないしー」
 ロニは笑って信徒をぶちのめし、騒ぎの渦中へと飛び込んでいく。
 そこにあったのはさらってきた子供らをオブリビオン化しようとしていた『サイバー・ディーコン』の姿であった。

 彼等曰く、さらってきた子供らを養う、保護するという名目である。
 その字面のおかしさにロニは頭痛を覚えていた。
 どう考えても何処にも正当性がない字面なのだ。それがこのサイバーザナドゥの常識だと言われたのならば、それはもう仕方のないことなのだが、それでもロニはどうにも承服しかねるところばかりであった。
「猟兵……! 何処までも入り込む!」
『サイバー・ディーコン』が乱入してきたロニに骸の海をを凝縮した弾丸を放つ。
 乱れ打たれる弾丸は、当たれば猛毒で持って身を侵すだろう。
 けれど、それらは突如として虚空に消える。

 何が、と思う瞬間もなく、一瞬で『サイバー・ディーコン』の一体が消える。
 いや、違う。
 消えたのは上半身だけであった。
 目に見えぬ何かが『サイバー・ディーコン』の上半身を食らったかのような断面。
 義体から火花が散り、爆散する中、ロニは笑う。
「去ってゆくものはみんなうそ!あしたくる、鬼だけがほんとう!」
 それは神罰(ゴッドパニッシュメント)である。
 彼のユーベルコードは、影より飛び出した球体たちを透過する力を与える目に見えぬ球体。
 その球体たちが一気に『サイバー・ディーコン』を飲み込み、咀嚼させるのだ。
 振るわれる力は、透明化。

 その球体はさらわれてきた子供らを一呑みにし、彼等を護るバリアへと変わる。
「ねえねえ、見えない怪物に食べられる映画ってあったよねー」
「え……映画?」
 球体のバリアの中でロニは保護した子供らに尋ねる。
 確かそんな映画があったはずなのだとロニは思い出そうとするが、このサイバーザナドゥの世界にあって子供らがそれを知る由もない。
 混乱したままの彼等をよそにロニはうんうんと唸る。

 球体の外では、『サイバー・ディーコン』たちが蹂躙され続けている。
 そんな殺伐とした雰囲気の中、ロニだけがいつもの様子で思い出せぬ映画のタイトルに悩み続ける。
「あ、お菓子食べる?」
 こういう時は糖分が必要だと笑ってロニは子供らとお菓子を分けながら食べ始める。あまりにも丹力がありすぎる。
 子供らはドン引きしていたが、それでも思い出せぬ映画のタイトルに執着するロニは唸りっぱなしであったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒覇・蛟鬼
【鬼獣と竜】
どうも皆様、闘技場での私の戦いは如何でしたかな?
お次は貴方がたを眠らせてあげましょう……いい夢みれますぞ?
■闘
↑の台詞を喋り、敵の意識をこちらに向けさせますが……
はあ。この気配、間違いなくあれだな。
其処に居るのはわかっていますぞ、鬼獣の巫(清綱)。
いい加減姿を現したらどうですかな?
(鬼獣が付近に隠れていることを明かしてしまいます)

彼が姿を現した後は敵の攻撃を軽く【受け流し】つつ立ち回り、
【念動力】を用いて散り散りになった敵の集団を密集させます。
仕上げは【構え太刀】を【範囲攻撃】気味に放ち、すぱっと
断ちましょう。

※アドリブ歓迎不採用可・不仲です


愛久山・清綱
【鬼獣と竜】
(尾行には成功したが、男はまだ姿形を消したままだ)
彼等が教団の者だな……先ずは、子供たちを保護せねば。
■闘
竜(蛟鬼)もいる故、ここは奇襲を仕掛ける作戦で行こう。
引き続き心を【落ち着かせ】、【無境・心】を継続発動する。

先ずは敵の集団に接近、子供の近くにいる数名の戦意を
奪い(【範囲攻撃】)、団結に綻びと混乱を生じさせる。
一斉にやるのは難しい故、少しずつちまちま奪っていき
混沌の種を撒く……と思ったら、竜本人に居場所を晒された。

以降は姿を晒し、竜と共に信者たちを挟み撃ち。
背後から【斬撃波】を放って攪乱しつつ、自身や子供たちが
狙われたら攻撃を刀で【受け流す】。

※アドリブ歓迎不採用可・不仲です



 カルト教団『ブージャム』の拠点施設はお粗末なものであった。
 お世辞にも立派とは言えぬ雑多な拠点。
 そこに集められていたのは、サイバーザナドゥの各地から攫われてきた子供らであった。
 彼等は皆一様に不安な顔をしている。
 今から自分たちが何をさせれるのかを理解できなくても、その雰囲気で察していたのかも知れない。
 信徒である『サイバー・ディーコン』が手にしたシリンジに凝縮されているのは骸の海である。
 この骸の雨が降る世界にあって、骸の海は有害な汚染物質だ。だが、その汚染物質を過剰に投与することによって生まれる改造生物オブリビオンは、企業間戦争の尖兵として役立つ。

 如何に躯体が育っていない子供らとて、骸の海を注入すれば立派な生物兵器と変貌せしめるのだ。これを持って上層組織の上納とするのが、このカルト教団のやり方であった。
「いやだ、いや、やだ! やめて、やっ、やめて!」
 子供らの泣き声が響く中、『サイバー・ディーコン』たちは皆、一様に笑っていた。笑顔と言っても良かっただろう。
 彼等は祝福を授けているつもりなのだ。
「これが神の祝福。神の尖兵として悪しき者たちと戦う力を授けてもらえるのだ。喜びの中で受けるがいい」
 その言葉とともにシリンジの針が子供らの肌に突き立てられんとした時、荒覇・蛟鬼(無可有を目指す・f28005)の声が響き渡る。

「どうも皆様、闘技場での私の戦いは如何でしたかな?」
「――なんだ、お前は……猟兵か!」
 オブリビオンである『サイバー・ディーコン』たちは瞬時に理解しただろう。この拠点に入り込んだのが猟兵であると。
 蛟鬼がなぜ、こうも簡単に此処に侵入できたことを理解するよりも早く、蛟鬼は行動していた。
 打ち込まれようとしていたシリンジを砕く。
「お次は貴方がたを眠らせてあげましょう……いい夢見れますぞ?」
 構え太刀(カマエタチ)の一撃が『サイバー・ディーコン』を断ち切る。

 両断された義体が崩れ落ちる最中、蛟鬼は理解していた。
「はあ。この気配、間違いなくあれだな。其処に居るのはわかっていますぞ、鬼獣の巫」
 いい加減に姿を表したらどうだと蛟鬼が言葉を投げかける先にあったのは、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)であった。

 無境・心(ムキョウ)によって姿を消していた彼がこれまでこの拠点で行っていたのは、子供らの保護であった。
 他の猟兵たちの戦いの最中、子供らは逃げ惑っていたが故に、清綱は彼等を脱出経路から彼等を逃し続けていたのだ。
「渾沌の種を蒔く……と思っていたのですがな、居場所を悟られていたのならば仕方あるまい」
 清綱にとって、彼との仲は不仲と言ってもいいもであった。
 互いに役割分担と割り切ればいいのだが、気配が気になって仕方ないのだろう。

 清綱はこの混乱のさなかに子供らを全て逃がすつもりであったのだ。
 それには蛟鬼を利用するのが手っ取り早いものであったが、こうも見破られてしまっては致し方ないことであった。
「子供らの安全が優先ゆえ」
「わかっておりますとも」
 二人が交わした言葉は少ない。僅かなものであった。
 けれど、互いに『サイバー・ディーコン』を挟み撃ちにし、散開して己達に迫る彼等を蛟鬼は念動力で、清綱は放つ斬撃波でもって一箇所に集め己たちの得物でもって屠るのだ。

「すぱっと断ちましょう」
「言われずとも!」
 放たれる蹴撃が斬撃のように纏められた『サイバー・ディーコン』たちを一撃のもとに両断すれば、討ち漏らした敵を清綱が刀でもって斬りつける。
 清綱は撹乱を、蛟鬼は打撃を与える。
 そうすることでもって数で勝る『サイバー・ディーコン』たちを一掃するのだ。
「馬鹿な、我らが……! 我らの信仰が負けることなどあってはならない! 我らには神の祝福が在るはずだ! なのに……!」

 彼等の怨嗟の声を聞きながら清綱は斬撃波でもって撹乱するように『サイバー・ディーコン』を追い込んでいく。
「あたら若い生命を弄ぶ者に祝福などあろうはずがない」
「塵は塵に。かけらであっても残す理由はありますまい」
 放たれる二人の斬撃が『サイバー・ディーコン』たちを切り裂く。
 互いに不仲であると思っていたのだとしても、目的は一つにして同じ。
 ならば、彼等の不仲など考える値しないというように見事な連携でもって、オブリビオンである『サイバー・ディーコン』たちを蹴散らすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
これ程の信者を擁するとは…!
彼らの過去の活動規模とその被害、シュミレートする気も起きません

剣を振るって呼び出し使役するは数多の防盾型誘導飛翔兵装
己の身は大盾で守りつつ、子供達を巻き込む弾丸を悉く盾受けにて防御してかばい

私や浮遊盾の背後が安全です、直ぐにお逃げください!

…数多の幼き命の未来を閉ざす教義など受け入れ難し
騎士として討滅させて頂きます

ビットを複数機合体させ、宙に浮く巨大な破城槌を形成
火線の集中による制止を上回る一撃放ち射撃陣形を崩し
脚部スラスターの推力移動で一気に距離詰め乱戦に

合体解除した防盾で周囲の子供達かばいつつ
躯体より展開した格納銃器の乱れ撃ちと剣と盾にて信者達を悉くなぎ払い



 カルト教団の拠点に存在するオブリビオン『サイバー・ディーコン』たちの数は尋常ならざるものであったことだろう。
 お粗末な拠点ではあるものの、しかし、その膨大な数だけは目を見張るものがあった。
 これが巨大企業群『ティタニウム・マキア』の下部組織であるということは、全容を知ることはあまりにも途方も無いものであるとトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は理解したことだろう。
「これほどの信者を擁するとは……!」
 彼の電脳はシュミレートする。
 これほどの規模であるのならば、過去から続く被害はどれほどのものか。言うまでもなく膨大な数である。
 さらって来た子供らは無差別。
 そして、彼等に投与された骸の海によって生み出された改造生物オブリビオンは企業間戦争の尖兵として消耗されたことだろう。

 その生命をまるで塵芥のように扱う様にトリテレイアは戦慄する。
「演算結果を待つまでもありません……!」
 電脳が、その炉心に燃える騎士道精神が、彼等の所業を否定する。
 分離合体式防盾型誘導飛翔兵装(コンバイン・シールドビット)を装備したトリテレイアは一気に拠点の壁面を剣で切り裂きながら突入する。
「――ッ! また猟兵か! 我らの邪魔を!」
 壁面をぶち抜いて突入したトリテレイアを迎え撃つ『サイバー・ディーコン』たちは、既にこの拠点が多くの猟兵の侵入を許したことを知る。
 彼等にとって、猟兵は滅ぼさなければならない存在である。
 故に放たれる骸の海の弾丸は、その場にいた子供らを巻き込むことをこそ度外視したものであった。

「巻き添えなどさせはいたしません!」
 己の背におった武装から展開される防盾型誘導飛翔兵器が乱れ打たれる骸の海の弾丸から子供らを護る。
「わっ、あっ……!?」
 子供らの悲鳴が響く。トリテレイアにとって、子供らは何をおいても守らねばならぬ存在だ。
 彼等を護ることがこのサイバーザナドゥにおいて最も大切なことであるトリテレイアは己に課していた。
「私や浮遊盾の背後が安全です、直ぐにお逃げください!」
 だが、その言葉に子供らは直ぐに反応できない。
 恐ろしさのほうが勝るのだろう。彼等はトリテレイアの言葉に従いたいが、体が動けずじまいなのだ。
「見たことか!これが我らの信仰! 我らの神の祝福! 幼子たちもそれを臨んでいるのだ!」
『サイバー・ディーコン』の言葉が響き渡る。彼等は子供らが逃げられないのを都合の良い解釈でもって受け止める。

「――……数多の幼き生命の未来を閉ざす教義等受け入れ難し。騎士として討滅させて頂きます」
 トリテレイアのアイセンサーが煌めく。
 彼等の言葉はどれもが戯言でしかない。どんなに祝福だ、信仰だと言葉を取り繕おうとも、彼等のやっていることは命を弄ぶ行いそのものだ。
 そんなものをトリテレイアは許容できない。

 誘導飛翔兵器を合体させ、宙に浮かぶは巨大な破城槌。
 己に骸の海の弾丸を集約させるようにトリテレイアは飛ぶ。
「数を揃えれば、御伽噺の武具にも負けぬ槌にも成りましょう!」
 放たれる一撃が『サイバー・ディーコン』たちを吹き飛ばす。その一撃は衝撃波を伴い、彼等を散り散りにする。
 一撃で決め切られずとも、弾丸を放つ斉射を止めることこそがトリテレイアの狙いであった。
 凄まじい速度で迫るトリテレイアを『サイバー・ディーコン』は止める術を持たない。

「生命を護るためには、誰かが剣に、盾にならねばならぬのです。それは先に生まれた者の務めでありましょうに!」
 分離した飛翔兵器が再び子供らを保護する盾となって散らばる。
 トリテレイアは一瞬の飛翔でもって『サイバー・ディーコン』との距離を詰め、格納銃器の弾丸を乱れ打ちながら、乱戦に持ち込み、彼等を切り裂き打倒する。
「我らの、祝福、が……!」
「それを祝福などと呼ぶことは許しはいたしません……! 私が騎士としてこの場に在る限り、若き生命は、必ずや!」
 護ってみせるのだと言うよに、トリテレイアの剣の一閃は『サイバー・ディーコン』の悪意をも切り裂き、その偽りの教義を否定するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ケイオス・キマイラ』

POW   :    急速進化
自身の【現在の形態】を捨て【敵の攻撃方法に対応した新たな形態】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
SPD   :    防衛反応
状態異常や行動制限を受けると自動的に【瞬間的な形態変化による環境適応と防衛反応】が発動し、その効果を反射する。
WIZ   :    増殖分裂
自身の【肉体から分裂させた体の一部】から、自身の技能どれかひとつを「100レベル」で使用できる、9体の【自身と同じ姿をした、一回り小さな分身】を召喚する。

イラスト:塒ひぷの

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ムルヘルベル・アーキロギアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なんの騒ぎだ!? これは!?」
 カルト教団『ブージャム』の教祖は、拠点から響き渡る轟音に慌てていた。
 何が起こったのかまるで理解できない。
 通信は阻害されているせいか、最奥に在る教祖に報告がまるで上がってきていないのだ。
「何が起こっている」
 教祖の前にいるのは『アイレオ』と呼ばれていた地下闘技場で勇名を馳せていた戦闘義体であった。 
 少年の姿をしているが、その有り余る握力で持って、あらゆる対戦者を屠ってきた猛者でもある。
 彼を此処に呼んだのは教祖であった。

 猟兵たちの戦いによって、もはや『アイレオ』という看板は必要ないと判断し、彼もまたオブリビオン化しようと拠点に招いていたのだ。
「わからん。だがお前も来い。何があるかわからんからな」
 そう言って教祖は拠点の奥から騒ぎの元凶を知るために現れる。彼が目にしたのは、拠点に集められた子供らを逃し、教団信徒たちを尽く打倒せしめた猟兵たちの姿であった。
 彼は一瞬で理解した。

「……なるほどな。こうして何処にでも現れるというわけか、猟兵は。だが――……ガッ!?」
 教祖は己の体が宙に浮いていることを理解した。
 何が、と思った瞬間、教祖は自身の首が何者かに掴まれていることを知る。
 視線を背後に向けた先にあったのは、少年の躯体をした義体『アイレオ』の姿があった。
「……お前、何をしてい――」
「あんたが油断するのを待っていた。仕事だ。依頼する者がいて、依頼を請け負う者がいる。殺して欲しいと願うものが居て、殺す者がいる。殺されるのはアンタ。そして、殺すのは」
 オレだ、と『アイレオ』の手が教祖の首を握力で持って握りつぶす。
 鈍い音がして、教祖の体が地面に落ちる。

 だが、ソレは始まりに過ぎなかった。
「……なんだ、お前」
『アイレオ』は首を傾げる。確かに首を握りつぶした。大抵の義体はこれで片がつく。だというのに、己が握りつぶした義体の首がぐるりと捻れ、その胴が膨れ上がっていくのだ。

「フハハハハハ! 馬鹿め! この程度で神の祝福を受けた私が死ぬものかよ! 脳と胴を繋ぐバイパスである首は確かに義体換装の弱点であろうがなぁ!」
 膨れ上がった肉体は、奇怪なる姿へと変貌を遂げる。
 歪なる姿。
 悍ましき怪物の如き生物。その姿に嫌悪感を覚えるものも居るだろう。
 オブリビオン『ケイオス・キマイラ』へと変貌せしめた教祖は、笑い声を上げながら変異を続け、猟兵たちを睨めつける。

「この拠点はもうだめであろうが、次なる拠点に移動すればいいだけのこと。その前に猟兵は滅ぼす。奴らの追跡は振り切らねばならない。ならば、ここで神の名のもとに滅ぼさなければなぁ――!」
 咆哮が轟き、『ケイオス・キマイラ』は変異した肉体から翼を生やし、舞い上がる。
 その異形なる姿で睥睨する視線は狂気に彩られていた――。
馬県・義透
引き続き『侵す者』にて
対応属性:火

…まあ、なんというか。わかりやすくてやりやすくなったがな?
人、止めておったのだな…。

しかし、どうやったら逃げられる気になるのやら。ここに集いし者らは、決して逃さぬというのに。
そう、わしらのようにな(UC使用)
目標は教祖とその分身。この拠点という限りある場にて、この数から逃れられるか?
頭数の10で割ろうが、122本は追いかけるのだぞ?
何を盾にしようが、それを迂回してこの矢は追いかけるしの?

すり抜けたとて…陰海月は結界張っとるし、何より内部三人が四天霊障で押し潰すからの?


陰海月、教祖の変異みてびっくり!ぷきゅぅっ!?
でも、守るための結界は張ってる。ぷきゅっ!



 カルト教団の教祖の肉体が膨れ上がっていく。
 怪異たる姿は変わらず、されどその肉体から肉腫のように生み出される小型の『ケイオス・キマイラ』は正しく分身と呼ぶに相応しい異形であった。
「わが神の恩寵を見よ! これこそが祝福! 私は死の恩寵すら神より賜ったのだ。慈悲深き神は、私の答えてくださったのだ!」
『ケイオス・キマイラ』の小型の分身たちが奇妙な姿で飛ぶ。
 すでにこの拠点は壊滅的なダメージを受けている。
 しかし、教組である『ケイオス・キマイラ』が退く様子はない。

 今の彼にとって、猟兵とは滅ぼすべき存在。
 彼が奉じる神のためではなく、己自身の意志でもって猟兵を滅ぼさんと、変異し続ける肉体のままに暴走を始めるのだ。
「……まあ、なんというか。わかりやすくてやりやすくなったがな?」
 人をやめていたのだな、と馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱、その一柱たる『侵す者』は呟く。
 目の前の怪物はたしかに異形なる存在。
 彼の存在が逃げるのならば、これを追い詰めなければならない。

「しかし、どうやったらこの局面を逃れられると思う気になれるのなやら。ここに集いし者らは、決してお前を逃さぬというのに」
 そう、この場に集った猟兵たちの誰もが『ケイオス・キマイラ』を逃すつもりはない。
 彼を逃せば、また第二の『ブージャム』が生み出される。
「そう、わしらのようにな」
「抜かせ、猟兵いいいいい! 我らの神にお前たちの首級をもってさらなる恩寵を賜るのだ!」
 迸る咆哮に分身たちが飛ぶ。
 それらを引き絞った呪詛の矢が狙う。

「逃がさぬ。悪霊が逃がさぬと言ったからには…絶えよ」
 ユーベルコードに輝く瞳。
 その瞳が見るのは人に害為す悪意の変異物のみ。
 四更・雷(シコウ・ライ)。その雷の矢と火の矢が『ケイオス・キマイラ』とその分身達に殺到する。
 膨大な数である。
 千を超える矢が一斉に放たれ、『ケイオス・キマイラ』は分身たちを盾に空夫飛ぶ。
 しかし、逃れる術はない。
「馬鹿げた数を! だが、それが隙となるだろうよ!」
 飛ぶ『ケイオス・キマイラ』が矢を放ったばかりの『侵す者』へと迫る。しかし、それを防ぐのは影から飛び出した巨大クラゲである『陰海月』と、その身に宿した残り三柱の霊障たる結界である。

「ぷきゅっ!」
 ひどく教組の変異に驚いたであろう『陰海月』であっても怯むことはない。
 迫る矢は分身の尽くを打ち落とし、さらに弾丸のように迫る『ケイオス・キマイラ』の本体を結界で押し止めるのだ。
「我らが結界でもって押しつぶしてくれよう」
 膨れ上がる結界が拠点の天井へと『ケイオス・キマイラ』の巨躯を押し上げて、挟み込む。
「オオオオオッ!! この私をっ! 追いやるかよ!」
「いいや、逃さぬだけよ。此処に集いし者たちはお前を打倒する者。逃しはせぬ。此処でお前の命運は尽きることに為る。ただ、その一手であると知るがいい」

 続けて放たれる矢が雷と火を織りなすものとなって飛ぶ。
 まるで空を埋め尽くす火雷の雪崩。
 それらは変異した『ケイオス・キマイラ』を飲み込み、その変異し続ける肉体を焼き、滅ぼすまで燃え尽きのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
それがあなたの本当の姿ってわけね。まぎれもなく、オブリビオン。討滅するのに何の遠慮もいらないわ。

「斬撃波」で牽制しつつ、「衝撃波」まとう薙刀で斬撃。
反撃を「武器受け」で「受け流し」ながら呪を紡ぐ。
「全力魔法」炎の「属性攻撃」「破魔」「浄化」で不動明王火界咒。
さあ、邪悪な魂を焼いてあげるわ。

一方で気づかれないよう黒鴉の式を少年に飛ばして。
『アイレオ』だったかしら? 仕掛けるタイミングが見えたら、遠慮せず殺ってちょうだい。

こちらはこちらで、押し込まないとね。火界咒の第二波、第三波をお見舞いするわよ。

耐性をもってきたら、薙刀の穂先で霊符を貫いて、敵が口を開けたところに突き刺して、内部から焼く!



 教団教組の肉体は醜く怪物へと変異していた。
 火雷の雪崩の如き矢が、その肉体を焼き滅ぼすが、『ケイオス・キマイラ』は常に変異を続ける不定形の怪物である。
 脱皮するように今の姿を捨て、新たなる異形へと姿を変える。
 欠損したであろう体表を補うように鱗が生み出され、さらに奇妙なる怪異へと変貌を遂げる。
「異教徒が、背信者が! 私のほうずる神を否定するとは! この慈悲深き恩寵の結実たる姿を見て尚、改心せぬとは!」
 彼にとって己の神こそが至高なるものであった。
 それが作られた虚構の存在であるのだとしても、彼の肉体の変異は骸の海に寄るものであったからこそ、彼はこれを奇跡として認識しているのだ。

「それがあなたの本当の姿ってわけね。まぎれもなく、オブリビオン。討滅するのに何の遠慮もいらないわ」
「そういうお前は人の形をした別の名にであろうに! 我が神に反する行いをする猟兵は尽く滅ぼしてくれるわ!」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)の言葉に教団教組が咆哮する。
 その『ケイオス・キマイラ』は奇妙でおぞましい体躯のまま空より飛来し、己の肉体そのものを弾丸としてゆかりへと迫るのだ。

「変異した肉体による特攻ってわけね」
 放たれる薙刀よりの斬撃波が衝撃波となって『ケイオス・キマイラ』の肉体を切り裂く。
 だが、止まらない。
 拠点の瓦礫を吹き飛ばしながらゆかりに迫るのだ。
 受け流しきれないと理解したゆかりは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
 投げ放たれた白紙のトランプより噴出する、不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)の炎が『ケイオス・キマイラ』の体を焼く。

「さあ、邪悪な魂を焼いてあげるわ」
 絡みつく不浄を灼く炎が『ケイオス・キマイラ』を縛り上げ、その体表をさらに灼くだろう。
 一方でゆかりは、人の形をしていた頃の教団教組の首を握りつぶした義体の少年を黒鴉の式神でもって探し当てる。
『アイレオ』と呼ばれていた少年義体。
 彼は依頼だと言っていたが、もしや自分たち以外にもレジスタンスのように活動している者がいるのかもしれない。

 その彼を式神で見つけ出してゆかりは告げる。
「『アイレオ』だったかしら? 仕掛けるタイミングが見えたら、遠慮せず殺ってちょうだい」
「これも義体の一種か? だが、宛にはするな」
 にべにもなく告げる言葉。
 彼は確かに尋常ならざる握力を持っているが、それは人の形をしていれば、ということなのだろう。
 だからこそ、ゆかりは気がついたのだ。
 彼はもはややる気がないのだと。だが、それでもこの場にとどまり続けている理由はなんなのか。

「じゃあ、どうするっていうの。仕事を放り出して逃げるってこと?」
「いいや。オレにはアレは殺せそうにもない。だから、アンタたちの手並みを見ている。アレを殺せるのだろう、アンタたちは」
 その言葉にゆかりは詰まる。
 助力は期待できないが、この戦いを見ると彼は言っているのだ。
 それが示すのは、如何なる未来かわからない。けれど、ゆかりは己の力を持って『ケイオス・キマイラ』を打倒するまでである。
「ごちゃごちゃと密談をしているようだがあああああ!!!」
 迫る『ケイオス・キマイラ』を前にゆかりは息を吐き出す。
 目の前の敵は脱皮するようにこちらの炎に抵抗し始めている。

 ならば、その身のうちから焼き切ると己の手にした薙刀を『ケイオス・キマイラ』の鱗の隙間を縫うようにして突き立て、その切っ先より炎を噴出させる。
「なら、こちらはこちらで押し込まないとね。どれだけ体表が鱗に覆われていたのだとしても!」
 切り裂く刀身から放たれる炎が内部にて暴れまわる。
 引き抜き、さらに己の首元を狙う『ケイオス・キマイラ』の口へと刀身を叩き込み、炎を噴出させる。
「その口腔は生物的に鍛えられないでしょう!」
 絶え間ない内部よりの炎は、尋常ならざる痛みとなって『ケイオス・キマイラ』を咆哮させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

純・あやめ
【カキツバタ】、「リフレクターコイン」の制御は任せたよ
『ええ、あなたがどう動いても受け止めてあげる。だから安心して戦いなさい』
(コインを足場にした立体乱反射戦法で敵を攪乱)
【アイリス】、二丁警棒に「変幻自在刀」を発生させて!滅多切りにするから!
『コインの結界から外には出さないわよ…っと、コインの反発力場(行動制限)を更に反射した?
これじゃあ結界が大きくなり過ぎる。あやめ自身が乱反射したら速度が落ちるわね』
なら、変幻自在刀を「投げ手錠」に移行!
斬撃手裏剣として乱反射させて斬り刻む!

オブリビオン、お前に次はない!この場でわたしたちが断罪する!
『骸の海へと永遠に還りなさい』



『ケイオス・キマイラ』の特性として、その変異した怪物の如き肉体を支えるのは常に肉体をアップデートする生体的ないびつさであった。
 常に肉体を代謝でもって書き換えていく。
 骸の海によって奇怪に変異した肉体と意識との齟齬がないのは、教団教組の類まれなる素養があったからなのだろう。
 他者を食い物にし、人を人とも思わぬ非道を行ってきた結果である。
「私の神に愛された肉体を灼くなど許されぬ! 万死に値する! 私の権能を持ってお前たちを一人残らず滅ぼしてくれる!!」
 咆哮する『ケイオス・キマイラ』は悍ましき存在であった。

 だが、それにひるまぬのが猟兵という存在である。
 周囲にばらまかれたリフレクターコインを足場に純・あやめ(砂塵の衛士・f26963)が、その着崩した警察制服を翻して飛ぶ。
「【カキツバタ】、『リフレクターコイン』の制御は任せたよ」
『ええ、あなたがどう動いても受け止めてあげる。だから安心して戦いなさい」
【カキツバタ】の言葉にあやめがうなずく。
 心強い味方である。
 彼女がいれば、あやめは己の正義を見失うことはなかっただろう。足場として蹴り上げたリフレクターコインが、次に来て欲しいところにタイミングよく来てくれる。

 互いの信頼がなければ成り立たぬ技であった。
「小癪な! 飛び廻る羽蟲いいいい!!」
『ケイオス・キマイラ』は立体的に己の周囲を飛び回るあやめに苛立ちを隠せなかった。
 これまで刻まれてきた猟兵の炎によって体表と体の内側は手酷く火傷に苛まれている。動く度に激痛が走っているのだろう。
 動きが鈍い。

「【アイリス】! 変幻自在刀【フミツキ】(ソード・オブ・アイリス)!」
 彼女の持つチェスピースが悪魔の力を解き放つ。
 それはユーベルコードであり、手にした特殊警棒に変幻自在なる力をもたらす。
 鋭利なる長大な刃はまるで鞭のようにしなり、空中を舞う。
 刃はまるで縦横無尽のようにあやめの空中機動を相まって檻の様相を為して『ケイオス・キマイラ』の体を刻み込む。
「邪魔くさいいいいい!! 私をこの程度で!」
 咆哮する『ケイオス・キマイラ』が瞬時に己を取り囲むリフレクターコインを反射させる。

 結界のように張り巡らせたコインは瓦解することはなかったが【カキツバタ】の制御を大きく逸脱仕掛けるものであった。
『コインの結界から外には出さないわよ……でも、結界が大きくなりすぎる……! あやめ!』
 このままではあやめのコインを足場にした立体機動の速度が落ちると【カキツバタ】が判断する。
 このままではいつかあやめ自身が『ケイオス・キマイラ』に捉えられる。
「わかってる! なら!」
【アイリス】のチェスピースが煌き、変幻自在なる刀を投げ手錠へと変形させる。放たれるそれは、コインの結界の中で乱反射し、その斬撃をもって『ケイオス・キマイラ』の変異し続ける肉体を切り刻む。

「この場に私を縫い付けるつもりか! だが!」
「いいや、オブリビオン。お前に次はない! この場でわたしたちが断罪する!」
 反射してきた投げ手錠をあやめは手に取り、最上段から振りかぶる。
 そう、断罪しなければならない。
 目の前にいるのは明確は悪。ならばこそ、あやめは人々の希望を護るためにこそ、己の力を発露させる。
 輝くユーベルコードの光は瞳より放たれ、その斬撃をもって『ケイオス・キマイラ』の肉体を斬りつける。
『骸の海へと永遠に還りなさい』
 そう、二度と過去より染み出すことがないように。

 そして、人々の生活を蝕むことがないように。
 あやめは己の渾身の力を込めて『ケイオス・キマイラ』の悪しき欲望と共に悍ましき怪物の肉体に打撃を与えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
目標を確認……攻撃を開始します

アクティブステルスを継続、まずジャミングミサイルを発射し、ジャミング粒子散布による認識阻害を実行、可能であれば狙撃を撃ち込みます。

その後砲撃・防衛を行う自律砲台型サブユニット『SV-01ヴィントシュティレ』を転送、
バリア機能と迎撃弾幕を展開しつつUC【コード・モルフェウス:LD】を発動
周辺領域を現実改編機構により「半電脳世界化」し、電脳魔術によるハッキング後「敵構造への情報解析と改竄」を実行、

敵本体や分裂体に対し構造の改竄、また飛翔時の攻撃軌道の強制変更を行い同士討ちさせ、
同時にヴィントシュティレや味方猟兵の損傷を「書き換え」修復補填する事で回復を行いましょう



 肉体がひしゃげる音が響く。
 それは『ケイオス・キマイラ』の肉体が猟兵の打撃に寄って打ち据えられる音であった。
 轟音を立てて地面に叩きつけられた『ケイオス・キマイラ』が忌々しげに咆哮する。
 その肉体から肉腫の如き膨らみが分裂し、『ケイオス・キマイラ』を小型にしたような分身を解き放つ。
「神より与えられ給うた肉体を傷つけるか! 許されぬこと! この私こそが神の代弁者であると知れ!!」
 咆哮と共に分身たちが空に舞う。
 猟兵達めがけて放たれる分身たちの突撃は、それだけで地面をえぐり、さらには弾丸となって打ち据えるだろう。

 しかし、その分身たちを迎え撃つのは自律砲台型ユニットの弾幕であった。
 周囲にはジャミング粒子が舞い散り、『ケイオス・キマイラ』は己が今、何を見ているのかを正しく理解できなかった。
「目標を確認……攻撃を開始します」
 それらはミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)が放ったジャミングミサイルより散布された粒子であり、彼女の姿を隠していた。
 用意に見つけられぬ敵の存在に『ケイオス・キマイラ』は苛立つ。
「どこに居る! 私の前に姿を現せ!!」
 だが、ミレアは取り合わない。

 目の前のオブリビオンはたしかに強大な存在だ。
 常に変異を続ける肉体。
 骸の海という汚染物質に身をやつした怪物を前に正面切って戦う理由など彼女にはないのだ。
「コード・モルフェウス、アクティブ。半電脳領域を限定構築。領域内対象への直接干渉を開始します」
 展開されるユーベルコードの光。
 それは彼女の周辺に半電脳領域を展開し、電脳に寄る干渉をおこなうユーベルコードである。
 彼女の瞳は確かに『ケイオス・キマイラ』の構造を解析していた。
 だが、その名の通り『ケイオス・キマイラ』は常に変異し続ける渾沌じみた体組織をしていた。

 どれもが一定ではない。
 刻一刻と変異していく組織は、常に代謝を続けていると言ってもいいだろう。
「これが渾沌。ですが」
 電脳干渉によってミレアのユーベルコードは変異する『ケイオス・キマイラ』の分身たちを改ざんし、同時に飛翔する分身たちの軌道を強制的に変更させ、互いに衝突させることに寄って同士討ちを狙うのだ。
「分身達はそうではないようですね。今です、『ヴィントシュティレ』」
 自律砲台より放たれる砲撃が『ケイオス・キマイラ』と分身たちを包み込む。

「私の、神の祝福を、恩寵を上回ることなどありえない! 私は神の寵愛を受けているのだ! 何一つ予定通りに行かなかったことなど無いのだ。どれもが私のために――!」
『ケイオス・キマイラ』の喚く声が響く。
 弾幕の向こう側で彼の肉体を穿つ弾丸が爆ぜる。ミレアにとって、教団教組が姿を変えた『ケイオス・キマイラ』の言葉は何一つ響くものではなかった。
 彼の言うところの神もまた偽りの存在。
 どれだけ神を信じるのだとしても、汚染物質に身をやつして狂った脳が見せる幻影に過ぎないのだ。

 たとえ、存在しているのだとしても、ミレアには関係ない。
「私が……いえ、私“達”が何度でもあなたの道をはばむでしょう。それが私“達”の選択なのですから」
 放たれる砲台の弾丸が『ケイオス・キマイラ』を爆炎の中に打ち据える。
 己が猟兵として存在している意味をミレアは半電脳化した領域の中から示す。
 分身達は互いに激突し、弾丸にさらされ霧消する。そのどれもが虚構の中に消えるものであるとミレアは証明するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナ・ヴァレンタイン
神に縋って行きついた果てが其れか
思っていたより退屈だな
B級ホラーでももう少しマシなデザインにするぞ

――“どこまでも馬鹿らしく滑稽な悪夢”をみせてやる
最初の内は拳銃の抜き撃ちと斬撃、ギャラルホルンの散弾ぶちこみつつ敵が調子に乗って変異してくるのを待つ
弾丸も刃も通じない身体になった瞬間、ユーベルコードで歪めた現実でもって太陽光を収束させて敵に浴びせかける
そのまま限界まで集めてレーザーのように熱量で焼き切るのもいいか
余波で私までダメージが及ぶかもしれんが、敵よりはマシだろう
我慢比べだ、私も引きこもり気味でね。少々過激な日向ぼっこってやつだ

――陽光に灼かれる神の使徒がどこにいる、馬鹿が



 分身を生み出した肉腫が膨れ上がりながら、まるで脱皮するように『ケイオス・キマイラ』は己の姿を変異させる。
 常に変異を続ける肉体。
 それがオブリビオンとしての『ケイオス・キマイラ』の特性でもあった。
「フハハハッ! どれだけ攻撃しようがなああああ!!」
 咆哮と共に哄笑が響き渡る。
 彼にとって猟兵の打撃は意味をなさないものであった。代謝するように己の肉体を変異させ、傷を癒やしていく。
 それはあまりにも強大な力であったことだろう。

 今もまた脱皮するように欠損した肉体を埋めるように、その姿はさらなる醜悪な存在へと変貌を遂げるのだ。
「神に縋って行き着いた果てが其れか。思っていたより退屈だな」
 レナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)は吐き捨てるように言い放つ。
「B級ホラーでも、もう少しマシなデザインにするぞ」
「私が縋ったのではない! 私を神が選び給うたのだ! 我が恩寵はこのためにある! 猟兵風情が神を知った口をおおお!!」
 咆哮する『ケイオス・キマイラ』が、その醜悪なる怪物の姿のまま、レナへと突進するように迫る。

 それは砲弾のような凄まじさであったことだろう。
 だが、レナの瞳はユーベルコードに輝く。
「――“どこまでも馬鹿らしく滑稽な悪夢”をみせてやる」
 その輝く瞳をよそに捨て去るのは人としての限界を定める“物理法則”であった。
 手にした拳銃が抜き撃たれ、弾丸が『ケイオス・キマイラ』の肉体に穿たれる。だが、それでも止まらない。
 放たれる斬撃も『ケイオス・キマイラ』の変異する体表によって防がれる。
 鱗が生き物のようにうごめいて、刃を通さないのだ。
「止まるものかよおおお!! これこそが私の受けた恩寵なのだ! 祝福なのだ!!」

 レナを押しつぶさんとする『ケイオス・キマイラ』に向けるは装甲破砕砲の一撃であった。
 散弾を用いいた破壊力の一点のみを追求した一撃は『ケイオス・キマイラ』の突進を僅かに押し止めるものであった。
 だが、それでも止まらない。
「無意味! 無為! 猟兵、貴様の生命もまた我らの神に捧げられるものと知れええええ!!」
 その咆哮を前にレナは頭を振る。
 彼女は今やあらゆる物理法則を弄ぶ現実改変能力者である。

 砲弾のような『ケイオス・キマイラ』の肉体を受け止める。
「確かに今のお前は弾丸も刃も通じない強固な肉体を持っているんだろうな」
 レナの掌が突進を受け止めていた。
 呻くように『ケイオス・キマイラ』が睥睨する。なぜ己の突進が止められたのか理解できていなかった。
 そう、レナのユーベルコードと『ケイオス・キマイラ』のユーベルコードは何処か似通っていた。
 その性質もまた動揺であったことだろう。
 細部は異なっていたとしても、このユーベルコードをひな形として使う以上、決定的な、避け得ぬ弱点がある。

 しかし、その弱点を突くにはこの巨大な教団拠点を覆う天井は強固であった。
 光指す要因すらない。
「だが、今の私は、蒼褪めた月(ブルー・ムーン)だ。お前にとってのな」
 そう、今のレナは現実改変能力者である。
 この拠点を覆う天井をぶち抜くのは、太陽光を収束させた光線の一撃であった。凄まじい熱量を持つ光線の一撃はレナのユーベルコードに寄って収束させられた太陽光そのものであった。
 諸刃の剣であった。
 レナもまたユーベルコードに寄って太陽光を弱点としている。

 余波であっても、レナの体を焼くだろう。
「馬鹿な、貴様、自分諸共だと!? 貴様自身も焼かれるのだぞ!?」
「お前よりはマシだろうさ。さあ、我慢比べだ、私も引きこもり気味でね」
「き、貴様あああ!!」
 咆哮する『ケイオス・キマイラ』の体表が如何に銃弾も刃も通さぬのだとしても例外が存在する。
 太陽光。その光は凄まじい防御能力を無為に還す。

「少々過激な日向ぼっこってやつだ」
 レナは己の体も焼かれながら、太陽光の収束を止めない。
 崩れていく『ケイオス・キマイラ』の体。変異し続けて、その肉体の欠損を保っているのだろう。
 だが、レナは言い放つのだ。
 どれだけ神の恩寵を受けるのだとしても、祝福だとのたまうのだとしても。

「――陽光に灼かれる神の使徒がどこにいる、馬鹿が」
 その言葉と共に収束した太陽光が『ケイオス・キマイラ』の胴を穿つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒覇・蛟鬼
あら、中々可愛らしい御姿ではございませんか。
骸魂でなければ持って帰ってあげても良かったのに。
『若、お気をつけて。あの身体には、若の“ウソ神拳”が効かない可能性がございます』
■闘
んな名前つけてねぇよ。だがその可能性もあるな、濡姫。
なーに、対策は既に考えてあるぜ……見とけよ?

拳を構えて【ダッシュ】で接近し、振るってくる腕を
【グラップル】で受け止めつつ、隙を作ります。
そこで無防備になった箇所に【嘗女の口づけ】をかまし、
感覚に『身体を貫かれた』と情報を流してやりましょう。

彼は恐らく、自身の感覚に『それは嘘だ』と伝え、無力化する
でしょうが……実はこれ、一種の【フェイント】です。
放つ際に指先へ【怪力】を込めて身体を貫き、「痛みはない」と
油断しているその瞬間に体内を爪で抉り切ってやりましょう。

残念ですが、私は初めから嘘などついていなかったのですよ。

※アドリブ・連携歓迎



 蓼食う虫も好き好きと言う言葉がある。
 この場合、それが妥当であるのかどうかは理解しかねるところがあったが、教団教組が姿を変えた『ケイオス・キマイラ』の姿は正しく異形なるものであった。
 悍ましき変異を続ける怪物は、太陽光に灼かれても尚、その肉体を変異せしめ、さらなる怪物へと姿を変えていくのだ。
「私の祝福をおおおお!!!」
 その咆哮は拠点を瓦解させながらも、さらなる破壊を求めて荒れ狂う。

「あら、中々可愛らしい御姿ではございませんか。骸魂でなければ持って帰って上げてもよかったのに」
 そうつぶやいたのは、荒覇・蛟鬼(無可有を目指す・f28005)であった。
 彼の言葉が真実であるかは彼のみが知ることであるが、彼の従者でもあり相棒でもある濡姫が忠告するように言う。
『若、お気をつけて。あの体には、若の“ウソ神拳”が効かない可能性がございます』
 彼女の忠告は的を射ていた。
 どれだけ頑強なる拳であっても、あの防御能力は目をみはるものがある。太陽光で灼かれた後とは言え、さらなる変異をもって『ケイオス・キマイラ』は膨れ上がり、収縮し、奇妙な出で立ちを繰り返すのだ。

「んな名前つけてねぇよ。だが、その可能性もあるな、濡姫。なーに、対策は既に考えてあるぜ……見とけよ?」
 拳を構えて蛟鬼が拠点の瓦礫を蹴って進む。
「神の恩寵を受けぬ、理解せぬ者共おおお!!」
 咆哮と共に奇妙に生え揃った腕が振るわれる。
 それは何本も、それこそ腕が在った場所に足が映えていたり、尾があったり羽が映えていたりと、渾沌の名を恣にする異形であった。
 激突する拳と振るわれた腕や足。
 衝撃波が周囲に撒き散らされる。だが、蛟鬼はその腕だか足だかわからぬ場所を掴みかかる。
「邪魔をするなあああ! 我が神に奉ずる信仰を妨げる者どもが!!」

 一瞬の隙であった。
 けれど、それで十分だったのだ。敢えて拳で攻撃を受け止めたのには訳がある。蛟鬼の腕が衝撃で弾けるように血が迸る。
 だが、それでも、その指突は『ケイオス・キマイラ』にふれるのだ。
 まるで嘗女の口づけ(ナメオンナノクチヅケ)の如き柔らかな衝撃。いや、衝撃と呼ぶにはあまりにも優しいそれであった。

 だからこそ、『ケイオス・キマイラ』は混乱した。
「貴様、何をした! 何をした!! 私の体が貫かれているなどありえない! 我が神の恩寵は誰も私を傷つけられぬはずだ!!」
『ケイオス・キマイラ』の視覚に映るのは、己の胴に空いた大穴。
 しかし、それは偽りの情報である。
 蛟鬼のユーベルコードは、誤った情報を流し込む力。
「何をしたって?……少し小衝いただけなのですが」
 ありえない。
 あり得るはずがないのだ。銃弾も刃も、何もかも防ぐ『ケイオス・キマイラ』の肉体は、どうあがいてもこんな傷跡が残るはずがないのだ。

 だというのに、『ケイオス・キマイラ』は己の胴に風穴が空いていることに混乱する。痛みはない。ならば、これは。
「私の視覚を奪ったのか! こんな――」
「ええ、そうでしょうとも。けれど残念ですが」
 蛟鬼は渾身の力を持って、その爪先を『ケイオス・キマイラ』の肉体へと打ち込む。

 一種のフェイントであった。
 確かに蛟鬼のユーベルコードは偽りの情報を流し込むものである。けれど、真骨頂はここからである。
 打ち込まれた指先は肉を切り裂き、貫き、抉るように打ち込まれる。
 痛みはないはずだったのに、痛みが全身を貫く感触に『ケイオス・キマイラ』はますます混乱することであろう。
 誤りだと思っていた情報が遅れて己の痛覚を刺激するのだ。
「馬鹿な、っ、こんな、私の祝福を……!」
「私ははじめから嘘などついていなかったのですよ」

 ねじ込まれた爪先からユーベルコードの光が明滅する。
 それは流し込んだ偽りの情報によって錯誤を引き出し、さらには打ち込んだ爪先から、その肉体を爆破させる一撃。
「塵は塵に。結局どれだけ愛くるしい姿をしていたのだとしても、あなたは塵に過ぎないのです。ならば、ここでその神とやらの恩寵を抱えて塵へと還るが良いでしょう」
 打ち込まれた爪先を怪力で持ってねじり込むようにして蛟鬼は『ケイオス・キマイラ』の巨体を吹き飛ばす。
 拠点の瓦礫に叩きつけられた『ケイオス・キマイラ』の呻く声が響き、蛟鬼はだから言っただろうがと濡姫を見やる。

『若の言う対策とはこういうことですか?』
「ああ、“ウソ神拳”なんてものじゃない。わかったか」
 そうつぶやき蛟鬼は『ケイオス・キマイラ』の変異した血潮がまとわりつく腕をふるって拭うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
あらま、あの子も御同業だったのねぇ。
…依頼主が何処の誰で内か外か、ってのは…ま、どーでもいいわねぇ。正直興味もないし。

うっわあ気色悪ぅい。わかりやすくなってある意味楽だけど。
●鏖殺・狂踊起動、弾丸にはウル(突破)と帝釈天印(雷)。○鎧無視攻撃の三次元〇弾幕、心ゆくまで堪能して頂戴な?
跳弾技巧はあたしの自前、障壁貫通はこっちの自己バフ、義体や生物が雷撃に弱いのはただの作用。デバフメタの更にメタは自己バフで圧し潰すこと…常識よねぇ?

『もしもスナークがブージャムなら、お前はたちどころに消え失せ、もう二度と会うことはない』…
人攫いの外道共ではあったけれど。名づけのセンスだけはそう悪くなかったわねぇ。



『アイレオ』と呼ばれていた少年の義体が『ケイオス・キマイラ』に変異するまえの教団教組の首をねじ切るように握力で持って握りつぶした光景を見た猟兵たちが居ただろう。
 彼等にとって、それは予想外の出来事であったかもしれない。
 けれど、オブリビオン化していた教団教組は、それだけでは死ななかった。躯体をオブリビオンの姿へと変異させ、悍ましき怪物へと変えた。
 ある意味で、それはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)自身とご同業であったと認識させるものであったのかもしれない。
 いわゆる『殺し屋』とでもいうべき存在。
 それが『アイレオ』という少年の義体の正体であった。
「……依頼主が何処の誰で内か外か、ってのは……ま、どーでもいいわねぇ。正直興味ないし」

 今の彼女にとって最優先にすべきなのは猟兵の一撃に寄って拠点の瓦礫に沈んだ『ケイオス・キマイラ』の行く末である。
 瓦礫を吹き飛ばしながら『ケイオス・キマイラ』が咆哮する。
「私を、私の神より賜った恩寵を足蹴にするなど許されぬ!! 私は神に祝福されたのだからああああ!!」
 その咆哮と共に変異する肉体は、まさに怪物。
 手足、目と口の場所が逆転したように、それこそ本数すら合わぬ異形。さらに羽が映え揃い、鱗が蠢き、尾さえ生える姿。

「うっわあ気色悪ぅい。わかりやすくなってある意味楽だけど」
 気味が悪い。
 ティオレンシアにとって、それは怪物であるがゆえにやりやすいという意味でもあった。怪物を打倒するのが人の役目であるのならば、これほどわかりやすい敵もいないだろう。
「我が神の造形を侮辱ううう!!」
『ケイオス・キマイラ』が憤怒の形相……と言ってもいいのかわからぬ雄叫びを上げて、ティオレンシアへと迫る。
 弾丸のような速度。

 だが、ティオレンシアの瞳がユーベルコードに一瞬煌めく。
 その細まった瞳が見据えるのは、周囲の地形であった。拠点を破壊されて落ちた天井や壁の破片。
 それらを利用することは頭の中で組み立てられている。
 鏖殺・狂踊(アサルト・タランテラ)。
「さぁて、それじゃあ御立ち合い。一指し御付き合い願いましょうか。…嫌だと言っても逃がさないけれど、ね?」
 放たれるルーンの弾丸が、間断ない連射と跳弾を実現する。
 不規則なる三次元弾幕は、瓦礫を利用して跳弾し、『ケイオス・キマイラ』の突進すらはばむ弾幕となるだろう。

「この程度で我が神の恩寵をくぐり抜け――」
 不規則に跳ねる弾丸に付与されたのは突破のルーン。
 どれだけ『ケイオス・キマイラ』を護る、本当の意味での神の加護であったのだとしても、生物が生来持つ弱点には無意味だ。
『ケイオス・キマイラ』は強大なオブリビオンであるがゆえに、彼の体を縛る状態異常を反射する。
 しかし、それを撃ち抜く力があったのならば、それは果たして状態異常と認識されるだろうか。

 障壁を貫通するルーンの付与。
 それがティオレンシアの持つ魔術知識によって得られた解答でもあったのあったのだ。
「デバフメタの更にメタは自己バフで圧し潰すこと……常識よねぇ?」
 弾丸の檻は『ケイオス・キマイラ』の肉体を貫き、穿ち、足を止める。吹き飛ぶ手足や尾、翼が異様なる腐臭を撒き散らすだろう。
「『もしもスナークがブージャムなら、お前たちはたちどころに消え失せ、もう二度と会うことはない』……人さらいの外道共ではあったけれど」
 ティオレンシアはカルト教団の名を呟く。
 それはきっと『ケイオス・キマイラ』に変異した教団教組だけが知る意味であったことだろう。

 弾幕の向こう側で己の神に奉じる祝詞のごとく『ケイオス・キマイラ』は叫ぶ。
「その名を! 我が神の名を軽々しく背信者が口にするでないいいい!!」
 でっちあげの神であったのだとしても。
 それでもその言葉に意味があるのならば、ティオレンシアは弾幕に背を向ける。
 もはや彼女と『ケイオス・キマイラ』との間に接点はないだろう。
 二度と会うことのない存在。
 それが『ブージャム』であるというのならば。

「名付けのセンスだけはそう悪くなかったわねぇ」
 その言葉が別れの言葉。
 弾幕の向こう側で貫かれ続ける『ケイオス・キマイラ』の咆哮を背にティオレンシアは己の仕事が終わったと、その場を悠然と立ち去るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
どれだけ恨みを買ってたのやら
それともこの世界じゃ暗殺者なんて日常茶飯事なのかな

それはそれとして元々放置できない悪人ではあったけど
これはもう見るからに駄目だね
早く引導を渡すとしよう

ガトリンガンで攻撃
壊れて困る物は無さそうだし
遠慮なくぶっ放そう

分身を出して来たら範囲攻撃でまとめて攻撃

敵の攻撃はワイヤーガンで回避するか
神気で固定して防御かするしよう

後は回避方向と射線で相手の位置を調整したら
予め設置した発煙装置を起動して相手の視界を奪うよ
こちらはゴーグルの機能で相手の位置を把握

そのまま煙幕に突入し
ワイヤーで相手の首を落とすよ

まあ、また生えてくるかもしれないし
ガトリンガンの弾をたらふくご馳走しておこうか



 常に変異し続ける肉体。
 それが『ケイオス・キマイラ』の持つ力であった。弾幕の中に消えながら、彼は己の肉体を肉腫のごとく膨れ上がらせ、己の分身を生み出し弾幕の檻から飛び出す。
 分身たちを盾にしたのだ。
 だが、消耗は激しいものであった。
 身を穿つ弾幕もそうであるが、これまで叩き込まれてきた猟兵たちの打撃が、『ケイオス・キマイラ』を追い込んでいることは間違いない。
 生み出した分身たちと共に羽を羽ばたかせ、宙へと舞い上がる。
「わが神の恩寵を理解せぬ不信心! 貴様らは万死に値する! ここで我が神に奉ずる贄としてくれる!!」

 教団教組はオブリビオン化していた。
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、このカルト教団『ブージャム』が己達猟兵だけではなく、恐らく他の組織からも疎まれていたのであろうと推測していた。
『アイレオ』という少年の義体がそれを一時であっても実現させたのが良い証拠であろう。
「どれだけ恨みを買っていたのやら。それともこの世界じゃ暗殺者なんて日常茶飯事なのかな」
 殺伐とした世界。
 それがサイバーザナドゥである。金が全てを決める力なのならば、今回の暗殺者を仕向けられたことにも合点がいくというものである。

「それはそうとして、元々放置できない悪人ではあったけど」
 これはもう見るからにダメであると晶は呟く。
 変異し続ける怪物。
 もはや人の原型もない異形。分身たちが弾丸のように晶へと迫る。肉体そのものを砲弾のようにして、自分たちを押しつぶそうとしているのだ。
 手にした携行型ガトリングガンを振るい、弾丸で持ってこれらを迎撃する。
「わが教団は蘇る! 何度でもだ! 貴様ら猟兵を滅ぼした後に、我が神の名の下に祝福がもたらされるのだから!!」

「ちょっと姑息な気もするけど、こっちも命懸けだからね」
 試製発煙攪乱装置(スモーク・ジェネレーター)が作動する。
 予め用意していた複数の発煙装置から煙幕が周囲を覆っていく。ガトリングガンの斉射は分身たちと『ケイオス・キマイラ』をこの煙幕の中に囲い込むための牽制射撃であったのだ。
「煙幕……! だが、この程度で私をはばむことなど出来まいが!」
「そうだろうね。その巨体だし、どこに首があるのかもわからないし……」
「――!?」
 それは一瞬の出来事であった。

 晶は煙幕の中に飛び込んでいた。
 一瞬。
 そう、僅かに『ケイオス・キマイラ』の気がそがれた瞬間を狙って晶は飛び込んでいた。彼の首に切断用ワイヤーが絡みつく。
「なぜ、私の位置が判る――!?」
「ゴーグルがあるんでね……その首を貰い受けるよ」
 切断用のワイヤーが一瞬で煌き、『ケイオス・キマイラ』の首を両断する。

 ごとりと音を立てる首。
 けれど、晶は携行型ガトリングガンを、その肉体へと向け弾丸をばらまく。
「まあ、また生えてくるのかもしれないからね……たらふくご馳走してあげるよ」
 ガトリングガンのバレルが高速で回転し凄まじい勢いで弾丸を撃ち込み続ける。
 毎秒数百という弾丸が『ケイオス・キマイラ』の肉体に打ち込まれ、煙幕が晴れたころには、その肉塊の如き巨躯が沈黙する。

「此処までやってもまだ倒しきれないのかもしれないけど、首を落としたのは効いたようだね」
 晶は打ち込めるだけ弾丸を打ち込んでガトリングガンの砲身が白煙をあげるのを確認してワイヤーで離脱する。
 ただではすまないだろう。
 それだけの弾丸を打ち込んだのだ。晶は己の仕事を終え、後に続く猟兵達に託すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…ああ、うん。確かにこの教団の『事業』が順調ならそれが目障りな別の組織なり派閥なりから刺客が送られる事もある訳か…
うーん…上から下まで油断ならない世界…殺伐としてるな…
…アイレオは…私達が倒せば動く事なく仕事完了…そうじゃなくても攻略の糸口ぐらいは掴む…というところかしら…

…ま、あっちの事情の推測はこの辺にしておいて…教祖を始末しようか…
…増殖するのは厄介と言えば厄介だけど…
…【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…分身を含めた全員に斉射して凍らせるとしようか…
…そして凍り付いて動けなくなった本体に術式装填銃【アヌエヌエ】で爆破術式を込めた弾丸を発射して砕いてしまおう…



 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、なるほどなとうなずいた。
『アイレオ』と呼ばれていた少年の義体は、たしかにカルト教団の催す地下闘技場の看板であった。
 それが巧妙に巡らされた暗殺への下準備であったことを教団教組の首を圧潰させた光景が証明していた。
 このサイバーザナドゥは金が全ての世界である。
 金さえあれば、人を殺すことも厭わぬ殺伐とした世界であることをメンカルは今思い知らされていたのかも知れない。

「……ああ、うん。確かにこの教団の『事業』が順調なら、それが目障りな別の組織なり派閥なりから刺客が送られることもあるわけか……」
 いわゆる『殺し屋』という職業もあるのかもしれないとメンカルはうなずく。
『アイレオ』という義体は未だ拠点にいる。
 ただ戦いに介入するでもなく、座したままであることを見れば、その思惑を推察することは容易であった。
 己たちが『ケイオス・キマイラ』を打倒すれば動くこと無く仕事は完了したといえるし、そうでなくても自分たちの戦いから『ケイオス・キマイラ』の打倒に対する攻略の糸口を見つけ出す事もできる。

 いや、そうでないのかもしれないが、今はそれを確かめる術も時間もない。
 猟兵に寄って首を落とされ、弾丸を打ち込まれた『ケイオス・キマイラ』の肉体が蠢くように変異を遂げ、その胴体と思しき部分から肉腫のように膨れ上がった瘤から飛び出す分身たち。
「私が、私達が、私が、私達ががが!!」
 分身達の咆哮が轟く。
 産声と言っても良かったであろう咆哮と共に砲弾のようにメンカルへと迫る分身達を、彼女は冷静に見つめていた。
「増殖するのは厄介と言えば厄介だけど……――停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。

 それは空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)。
 五百を超える無数の魔剣が虚空より招来せしめられ、メンカルの指先がタクトを振るうように差し向けられた瞬間、迫る『ケイオス・キマイラ』の分身たちを貫く。
 ただ貫くだけではない。
「――……! 私の体が凍結する……! 凍るっ! 凍るううう!!」
 ただ撃ち抜くだけでは砲弾のように迫る分身たちを防げない。
 ならば、凍結の力を持つ魔剣でもって凍らせ、動きを止めるのだ。

「……無駄だよ。汚染物質に侵されているとは言え、生物は生物。凍りついてしまえば、ただの的だよね……」
 術式装填銃から放たれる爆破術式が『ケイオス・キマイラ』の分身たちを砕いて霧消させていく。
「……ただの時間稼ぎだよね、これは」
 メンカルが視線を巡らせた先にあったのは、落とされた首をつなげ、さらなる変異を持って悍ましき異形へと姿を変えた『ケイオス・キマイラ』の姿であった。

「そのとおりだ! 我が神の恩寵があれば、首など!!」
「……でも、言ったよね。無駄だって。生物なら……」
 魔剣の斉射はたしかに分身たちを貫いて凍りつかせた。だが、五百を超える魔剣の群れは未だ拠点の空に滞空し続けている。
 全てで氷付かせることはない。
 未だ残る魔剣が『ケイオス・キマイラ』を狙う。
 尋常ならざる力。メンカルのユーベルコードは超常を超える。そして、『ケイオス・キマイラ』の想定すらも遥かに超えるものであったのだ。

「馬鹿な……! あれだけのことをしておいて、まだ余力があるだと……! 異教徒の化け物がががが!!」
 メンカルの指先が示す先に魔剣が殺到する。
 軌道と発射タイミングを操作することが可能なメンカルの魔剣の群れは、さらなる斉射でもって『ケイオス・キマイラ』を貫き、その体を凍りつかせていく。
 今の『ケイオス・キマイラ』にできるのは重なる変異でもって己の体躯を切り離し続けながら逃げることだけである。

 メンカルは、その異形を囲うようにさらなる魔剣の斉射でもって追い込んでいくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
あー頭痛え。調子に乗ってキメ過ぎちまった……ってなんだこのキモイやつ!?
薬の影響で幻覚でも見てのか?それとも眼球パーツの故障か?違う?

まあなんでもいい。とにかくコイツをぶっ潰せばお仕事終了だ。
サブマシンガンで穴だらけにしてやるよ!……んん?あんまり効いてねえな。
ならお次はマンティスセイバーで切り裂いてやる!……んー、どんどん再生しやがるな。

この程度屁でもねえってか。なら再生も追いつかねえくらいグチャグチャにしてやるよ!
ユーベルコードでデスアックスを強化だ!こいつがくたばるまで叩きつけまくる!
ひき肉にして犬に食わせてやっから覚悟しろや!

……ふぅーっ。一仕事終えた後のタバコは最高だぜ。



「おおおお――! 我が神が与え給う試練! これは私を試しておられるのだ! この難局を切り抜けてこそ、己の寵愛を与えるに相応しいと!!」
『ケイオス・キマイラ』が魔剣の力に寄って凍らせられんとしながらも、抵抗するように肉体の変異でもって逃れる。
 消耗する肉体。
 けれど、その肉体に宿る神の恩寵と呼ぶ汚染物質による肉体変異は、さらなる脱皮を促すように欠損部位を回復させ、さらなる異形をもたらす。

 不定形の怪物と呼ぶに相応しい異形。
 おぞましさ、生命への冒涜とも呼ぶべき姿へと変貌した『ケイオス・キマイラ』が咆哮する。
 その咆哮を聞いた堂島・アキラ(Cyber×Kawaii・f36538)は思わずがなるような声を出してしまっていた。
「あー頭痛え。調子に乗ってキメ過ぎちまった……ってなんだこのキモイやつ!?」
 己を美少女の義体に換装したアキラにとって、目の前の『ケイオス・キマイラ』はあまりにも醜悪そのものであった。
 あまりの光景にアキラは己が未だ違法薬物のオーバードースから戻ってきていないのかと疑ったし、なんなら己の眼球パーツがエラーを吐き出して故障してしまったのかと義体のメンテナンスの必要性すら感じていた。

 だが、違う。
 これが現実である。目の前の怪物はまごうことなき現実なのだ。
「まあなんでもいい。とにかくコイツをぶっ潰せばお仕事終了ってんだろ、ならよぉ!」
 手にしたサブマシンガンを『ケイオス・キマイラ』へと向ける。
 ばらまかれる弾丸が『ケイオス・キマイラ』へと吸い込まれていく。
 だが、その弾丸の尽くが蠢く鱗に寄って弾かれてしまうのをアキラは見ただろう。ただ鱗で頑強に体表を覆っているのではない。
 細かく蠢かせることによって振動を生み、弾丸を通さないように防御しているのだ。

「無駄だ! 私はこの難局を切り抜けてみせる! 我が神の寵愛を一身に受けるためになあああ!!」
 その咆哮ともに迫る『ケイオス・キマイラ』を前にアキラは舌打ちする。
 ならばと手にしたマンティスセイバーの刀身が煌き、迫る『ケイオス・キマイラ』へと放たれる。
 だが、それも防がれている。
 体表を覆う鱗が刃を通さないのだ。
「これもかよ!」
「むだむだむだぁ!! 私の進化は止まらぬ! いや、神化だ!」
 咆哮する『ケイオス・キマイラ』の尾がアキラの躯体を打ち据える。衝撃を殺すように後方に飛び退り、拠点の瓦礫を足場にアキラは踏みとどまり、顔を向ける。

 そこに輝くのはユーベルコードの煌き。
「とびっきりのプレゼントをくれてやるよ! クソキモい怪物野郎がよ!」
 手にしたのは大型の機械斧であった。
 あまりにも大きく分厚い刀身。それは断ち切るというよりも圧し潰すための武器と言ったほうがよかった。
 義体の出力があがる。
 足場にした瓦礫が粉砕されるほどの跳躍速度によってアキラは瞬時に『ケイオス・キマイラ』との距離を詰める。

 凄まじい踏み込みに『ケイオス・キマイラ』は知覚することすらできなかった。
「ひき肉にして犬に喰わせてやっから覚悟しろや!」
 振り下ろされる重量を頼みにした機械斧の打撃が『ケイオス・キマイラ』の頭部をひしゃげさせる。
 単純に重たい一撃。
 それは『ケイオス・キマイラ』の巨躯であったとしても、拠点の床に叩き伏せ、圧し潰す。
 砕けた鱗が義体のスキンを引き裂いてもアキラはとまらなかった。

 凄まじい再生が『ケイオス・キマイラ』の本領であるというのならば、アキラはそが追いつかぬほどの速度で持って機械斧を叩き込み続けるのだ。
「再生が追いつかねぇだろうが! なあ、おい! グッチャにしてやるからよぉ!」
『ケイオス・キマイラ』が何かを告げる端から斧を叩き込む。
 反論も咆哮も許さぬほどの連続の打撃は、己が振るう斧がひしゃげても尚続く。

 悍ましい体液を頭からかぶりながらアキラは一心不乱に機械斧を振るう。
 刀身が砕け、柄を叩き込んでようやくアキラは拠点の瓦礫の上に座して、タバコに火をつけようとして、『ケイオス・キマイラ』の体液でシケってしまったことに悪態を衝く。
「一仕事終えた後の一服が最高だってのによぉ……」
 やめだやめだとシガレットを投げ捨て、アキラは戦場を後にする。
 シガレットはお預けであったが、戦いの後に手に入れた一服はまた格別であると、離れた場所で紫煙をくゆらせながら金髪碧眼の美少女はたそがれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うわー、ここまで人を捨てられるとか…
こわー…
宗教こわー…
ただまあ、容赦しなくても良い感じになってくれたのはありがたいのかな
悪いけど逃がすわけにはいかないからね
此処でお終いにしてあげよう
そっちも対決をお望みらしいしね


超克、オーバーロード
外装転送、出力上昇
模造神器全抜刀
さあ、此方も全力で相手してあげる
どーにも防御に優れてるみたいだし、それならそれを上回る攻撃で対処するのみ!
逃げられないよう『斬撃波』を飛ばして常に攻撃を与えながら隙を作らないようにしよう
【Code:F.F】起動
高速移動で一気に接近して近接戦闘を仕掛ける!
外装の持つ2剣で『なぎ払い』、『串刺し』して牽制しながら私自身が持つ剣は『エネルギー充填』開始
搦め手は無し、純粋な武力でこのまま押し切る!
エネルギーを充填したら、至近距離からエネルギー球をケイオス・キマイラにぶち込む!
どーせまともな情報なんて吐く気はないんでしょ
それなら大人しく、ここでやられて貰おうか!



 ひしゃげた肉体から赤くはないいびつな色の体液が溢れ出す。
 それが『ケイオス・キマイラ』の変異した肉体の証左であり、汚染物質である骸の海によって歪んだ改造生物オブリビオンの成れの果てであった。
 噴出する体液を撒き散らしながら、さらなる変異を見せる『ケイオス・キマイラ』は咆哮する。
 ただ、己の作り出した虚構の神を本物にすべく、己の狂信によって他者を従えてきた者の末路でもあった。
「我が神の恩寵は此処に極まれり! 見よ、我が躯体を! 私は神の御心によって生かされているのだ!!」
 咆哮と共に肉体が変異し、歪んでいく。
 羽や鱗、尾は当然のように。
 しかし、生物的な嫌悪をもたらす異形は果てしなく。

「うわー、ここまで人を捨てられるとか……こわー……宗教こわー……」
 それがたとえ、自身が生み出した虚構の信仰であったのだとしても、狂ってしまった思考のままに突き進めばこのようになるのだと突きつけられる形であった。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、しかし目の前の存在がもはや容赦の必要のない存在にまで堕したことをありがたいことだと思ったことだろう。
「私の信仰を愚弄するかあああ!!」
 迫る『ケイオス・キマイラ』を前に玲は、その瞳を超克に輝かせる。

 オーバーロードによって外装が転送され、副腕が唸りを上げる。出力が上がり、模造神器が四振り抜刀される。
 その蒼き刀身の煌きを前に『ケイオス・キマイラ』は一瞬怯えたことだろう。
 目の前の存在は正に模造でありながらも神器を手繰る存在である。
「悪いけど、逃がすわけにはいかないからね。此処でおしまいにしてあげよう」
「抜かせ、異教徒があああ!!」
 迫る『ケイオス・キマイラ』の巨躯が砲弾のように玲へと飛ぶ。

 それを玲は振るった模造神器の刀身から放たれた斬撃波によって吹き飛ばす。だが、吹き飛ばすにとどまったことを玲は正しく理解する。
 斬撃で切り裂いたつもりが、強固に変異した鱗によって阻まれたのだ。
「へぇ、防御に秀でているんだ。しかも常に変異し続けて同じ攻撃に対する耐性を持つってわけ」
 玲はひしゃげながらも変異し続ける『ケイオス・キマイラ』の巨躯に感心する。
 あれが人をやめたもの。
 人であることを捨てた者の辿る道である。

 ならばこそ、玲は迫る『ケイオス・キマイラ』に斬撃波を飛ばす。常に攻撃し続け逃さないためだ。
「そっちも対決をお望みならさ!」
「異教徒風情が、対決などと! これは神罰! 一方的な断罪であると知れえええ!!」
 振り下ろされる尾が直上から玲に迫る。
 その尾の一撃を玲のユーベルコードに輝く瞳が見据える。受ければ己がひしゃげ、潰れるだろう。

 だからこそ、模造神器四振り全ての力を纏い、尾の一撃を彼女は躱す。
 凄まじい速度。
 一瞬で尾を振り切り、玲は『ケイオス・キマイラ』の背後を取っていた。
「――私の背後をっ!?」
「遅い! 最終公式起動――全てを」
「その程度でっ、私をッ、私の神の祝福を振り切れるものか!」
 その場で宙返りするように『ケイオス・キマイラ』が躯体を回転させ、尾を背後の玲へと放つ。

 その一撃は地面を叩き割り、周囲に凄まじい衝撃波を撒き散らす。

 だが、それさえも玲は蒼い残光と共に躱す。
「零に」
 呟く言葉は、Code:F.F(コード・ダブルエフ)。
 怖気が走るほどの速度。『ケイオス・キマイラ』は己と玲との間にある埋められぬ差があることを知る。
 人を捨てた者には理解できぬ、至ることのできぬ道。
 超克の道へと至った玲が放つは模造神器の刀身が煌めく外装副腕による斬撃。十字に刻まれた『ケイオス・キマイラ』の体をさらに縫い止めるように貫く。

「ご、ぁっ! こ、のおおお!!!」
「どーせまともな情報なんて吐く気はないんでしょ」
「何を、言っている! 私の神の、お!」
「ああ、もうそういうのいいから。それなら大人しく、此処でやられて貰おうか!」
 玲の手にした模造神器の残りの二振りの刀身が煌めく。
 蒼い刀身が溜め込む無尽蔵なる力は球体となって迸る。円を描いて迸るエネルギーは周囲の拠点の瓦礫を吹き飛ばしながら、一直線に『ケイオス・キマイラ』の肉体を貫く。

 打ち込まれたエネルギーは『ケイオス・キマイラ』の肉体に大穴を穿ち、吹き荒ぶ衝撃波のままに巨躯を瓦礫に叩きつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(静観の構え…傭兵か、賞金稼ぎか。彼らは実利を重んじる傾向が強い、彼方の流儀に沿った接触の方が穏当か)

現場での利害の衝突は避けるべきです。
私達の目的は教祖の討伐と教団の壊滅。
“首”の回収…依頼主への証明物等の希望は御座いますか?

承知しました

所業に相応しき怪物と成り果てた以上、討ち果たすが騎士の務め
御覚悟を

宙からの強襲を躱しつつすれ違い様に剣や盾にて反撃

単純な斬撃や打撃に耐性を得ましたか
なら…

UC取り出し鉄球を射出
直撃させ爆破
体表吹き飛ばし、肉体再生に巻き込み鉤爪を体内に潜り込ませ
怪力で振り回し地に叩きつけ
ワイヤーを通じ体内に放電し焼き焦がし

その悪しき教義、今日この日を以て最後として頂きます!



 極大なる力の奔流が『ケイオス・キマイラ』の巨躯を吹き飛ばし、その体に大穴を穿つ。
 それほどまでの戦いの余波を受けながらも少年の義体『アイレオ』は猟兵と『ケイオス・キマイラ』の戦いに加わることなく座していた。
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はそれを認識し、敢えて静観していることに違和感を感じていた。
『アイレオ』はカルト教団『ブージャム』の教団教組を暗殺しようとしていた。
 これが通常の者であるのならば、あの時点で彼の仕事は完遂されていたといえるであろう。
 だが、現実には教団教組はオブリビオンであり、仕留め残ったと言ってもいい。
「……」
 傭兵か、賞金稼ぎか。
 どちらが正しいのかはわからない。けれど、このサイバーザナドゥという世界において金は絶対的な価値観を持つものである。

 ならば、トリテレイアは『アイレオ』に接触するのであれば、彼等の流儀に従ったほうが良いであろうと判断した。
 穏当に済ませるのならばなおのことであろう。
「現場での利害の衝突は避けるべきです」
「……アンタは。いや、アンタたちは何が目的なんだ」
『アイレオ』と接触したトリテレイアは互いの視線を交錯させぬままに『ケイオス・キマイラ』の咆哮を聞く。
 部位の欠損を補うように変異していく怪物を前にトリテレイアはよどみなく告げる。

「私達の目的は教組の討伐と教団の壊滅。“首”の回収……依頼主への証明物等の希望は御座いますか?」
「……ない。オレは失敗した。失敗したのに成果物だけ持って帰るなんて“プロ”のすることじゃない。失敗したやつを気にかけるなんてアンタたちは変わってるな。意味がわからないと言ってもいい」
『アイレオ』にとって、トリテレイアの提案は不可解なものであったし、不快なものであったようにトリテレイアは理解できたかもしれない。
 交渉、として相対すべきではなかったとトリテレイアは感じただろう。
 “プロ”を自称するのならばこそ、トリテレイアは慇懃無礼な態度は崩さずに、不干渉であることを確認し一礼し、戦場へと戻るのだ。
「承知しました」

『アイレオ』の視線を感じる。
 やはり己たちを見ているつもりなのだろう。それは純粋な興味からであったろうし、漁夫の利を狙うようなものでもなかった。
 だが、トリテレイアには為すべきことがある。
「所業に相応しき怪物と成り果てた以上、討ち果たすが騎士の務め。御覚悟を」
 宙より強襲し、トリテレイアは剣を異形なる『ケイオス・キマイラ』へと放つ。しかし、その一撃は蠢く鱗に寄って弾かれる。
「わが神へ奉ずる行いを所業という。怪物呼ぶ私には、神の恩寵がある。恩寵無きものには、これが異形のものに見えるのだろうががが!!」
 咆哮と共に『ケイオス・キマイラ』の巨躯がトリテレイアを圧砕せんと迫る。

 大盾で受け止めながら、トリテレイアの振るう剣がまたも防がれてしまう。
「単純な斬撃や打撃に耐性を得ましたか。なら……」
 トリテレイアはこれまで猟兵たちが『ケイオス・キマイラ』を消耗させていたことを知っている。
 確かに数多の打撃を受けて尚、活動しうる怪物の如き耐久性は凄まじいものである。 
 だからこそ、剣を投げ捨て、拘束鉄爪内蔵式対装甲破砕鉄球(ワイヤード・ジェット・モーニングスター)を振るう。
 振り回した鉄球が加速し、その打撃で持って『ケイオス・キマイラ』の体表を覆う鱗を吹き飛ばすのだ。

「ぐ、お――ッ!? だが、この程度で、我が神の恩寵を破ることなど!」
「ええ、たしかにそのとおりでしょう。ですが、その鱗を吹き飛ばすことこそ私がねらったこと。些か蛮族染みてはいますが」
 重火器よりは格好がつくものであるとトリテレイアは鉄球を叩きつける。瞬間、鉄球より飛び出した頑強な鉤爪が『ケイオス・キマイラ』の体内へとえぐりこむ。

「その悪しき教義、今日この日を以て最後として頂きます!」
 ワイヤーを通じて放たれる放電が、その体内の肉という肉を焼き焦がしていく。体液が焼き切れ、嫌な匂いを充満させるだろう。 
 だが、ウォーマシンたるトリテレイアには関係ない。
 さらに焼き切った体内を離さぬ鉤爪ごと鉄球を振り回すようにトリテレイアは『ケイオス・キマイラ』の肉体を地面に叩きつけ、えぐりこませる。
 歪なる倫理観が怪物を育てるのならば、その温床たる教義をこそ、トリテレイアは粉砕するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

別に欲深なのが悪いってことはないよ
愛くるしくすらある!それでこそ人間だよ!

でもオブビリオンは別かなー
だってそうなっちゃったらもう何の変化も無いんだもん!つまんない!
面白動画だってまったく変わらない同じもののを何度も見ちゃったら飽きちゃうでしょ?

進化するっていうなら…する前にHP削り切る!
奥義!一瞬千撃!とかなんかそんな感じ!(くらいでいいかな?足りないならもっと増やす)

あーそいやこっちじゃあ改造人間の子が多いんだっけ?
キミも中身は大人だったり女の子だったりするのかなー
フフン、気付いたかい?そうボクたちはこの世界の外から来た!
気を付けて!この世界は狙われている!(多分)



「オオオオ! 我が神よ、私に試練を与え給うとこ、感謝いたします。欲深き人の道に照らされるのは、やはり神の恩寵のみ!!」
 叩きつけられ、体内から焼かれても尚『ケイオス・キマイラ』は咆哮と共に己が生み出した虚構の神に狂信を捧げる。
 それは狂気と呼ぶに相応しい行いであったことだろう。
 これまで多くの者たちを騙し、拐かして、己の欲望を満たしてきたのが教団の教組だ。
 存在しない神にいつの間にか縋っていたのが、彼自身であるというのは滑稽そのものであったことだろう。

 そんな『ケイオス・キマイラ』は脱皮するように新たなる進化、神化への道を辿るのだ。
「別に欲深なのが悪いってことはないよ。愛くるしさすらある! それでこそ人間だよ!」
 その言葉に『ケイオス・キマイラ』は顔を歪ませる。
 それが果たして顔であったのかさえもはや判別できぬまでに歪んだ巨躯。それを真正面から見据えるのは、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)であった。
「私は人間ではない。もはや人間ではない、人間を超えたものなのだ! 貴様ごときが、我が神が与え給うた試練をしたり顔で言うなあああ!!」
 弾丸のように飛ぶ異形の怪物。
 それをロニは受け止めながら、笑う。

「でも、オブリビオンは別かなー」
 なぜならば、そうなってしまったからには何の変化もないからだ。
 停滞こそがオブリビオンの本質であるというのならば、ロニにとってそれはとてもつまらないことなのだ。
「おもしろ動画だってまったく変わらない同じものを何度も見ちゃったら、飽きちゃうでしょ?」
「そんな低俗なものと我らの神を一緒くたにするなああ!!」
 更に変異を見せる『ケイオス・キマイラ』の特攻のごとき激突にロニの体が地面をえぐりながら押し込まれていく。

 進化している。
 さらに手のつけられない怪物へと変異しようとしていることをロニは理解し、己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
「あーそういやこっちじゃあ改造人間の子が多いんだっけ? キミも中身は大人だったり女の子おだったりするのかなー」
 気がついたかな、とロニは笑う。 
 あくまで笑うのだ。こんなときであっても笑いを絶やさぬのが神たる余裕であるというように、己の拳を握る。

 神パンチ(カミパンチ)。
 それは0秒で打ち込まれる無限回の拳。
 一瞬千撃とロニは呼ぶ拳の乱打が『ケイオス・キマイラ』の変異する肉体を、変異する直ぐ側から削ぎ落とすように叩き伏せていく。
「そう、ボクたちはこの世界の外から来た! 気をつけて! この世界は狙われている! なんてね」
 笑って舌を出すロニの拳が息をつかせぬ乱打となって『ケイオス・キマイラ』の巨躯の突進を止めるばかりか、押し返すように拠点の中で破壊を渦巻かせていく。

 吹き荒れる衝撃波がとめどなく溢れ、その打撃で持ってついに『ケイオス・キマイラ』の巨躯が宙に浮く。
 踏ん張ることすら許されぬ絶え間ない拳の打撃は『ケイオス・キマイラ』の肉体をひしゃげさせ、あらゆる体液を撒き散らしながら吹き飛ばすのだ。
「どうだい、崇めてもいいよ!ボクは神様だからね!」
 本物の神性が此処にあることを知らしめる。
 しかし、『ケイオス・キマイラ』の元になった教団教組には、その神性を感じ取る術はないだろう。

 己が生み出した虚構を信じる狂気。
 それに飲み込まれた者は、どれが真で、どれが偽りかすらも判別できない。
 故にその拳は『ケイオス・キマイラ』を怪物のまま殴打し、その偽りをも砕くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
人の形をしていた教祖が姿を変えた。
あれが、『骸の海』の過剰投与による変異なのだろうか?

■闘
此処で討ち損じれば、また別の被害者が出かねない……
逃げ場を塞ぐように立ち回るとしよう。

俺の剣技は幾つもの技が揃っている故、奴がどのような形態に
変身するかは推測できない……よって、普段通り闘うべし。
先ずは、敵が仕掛けてくる瞬間を【読心術】である程度予測し、
放たれる攻撃に合わせて適切な防御を展開するのだ。
身を纏う炎で攻撃されたら【オーラ防御】で跳ね返し、
近接攻撃は動きを読みつつ、刀で【受け流す】など。

隙が見えたら一旦距離を取り、【山蛛・縛】の構え。
一太刀目に【マヒ攻撃】を絡めた【斬撃波】を放ち動きを止め、
無防備になった処で納刀し、【破魔】の力を込めた二の太刀を
繰り出し、再生を許さぬほど滅多斬りにするのだ。

※アドリブ・連携歓迎



 数多の猟兵たちの打撃があった。
 そのどれもが『ケイオス・キマイラ』に消耗として追い込むに値するものであったが、次々と耐性を得る特性に寄ってさらなる進化をもたらそうとしていた。
 脱皮するように肉体を変異せしめる『ケイオス・キマイラ』の咆哮が体液を撒き散らしながら迸る。
「フハハハ! 私は、まだ生きている! これこそが神の恩寵! 私は超えた、越えたのだ! この厳しき試練を! 現実を!」
 醜くも悍ましい怪物へと変異した『ケイオス・キマイラ』の姿は、もはや人の名残など何処にもない。

 怪物と呼ぶのもまたはばかられるよな異形が地面を這いずっている。
 異臭を放つ体液が拠点の破壊された瓦礫の中を這う。
「人の形をしていた教組が姿を変え、また今も怪物よりも悍ましきものへと変異している……あれが、『骸の海』の過剰投与による変異なのだろうか?」
 愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は猛禽の翼を広げる。
 ここで彼の敵を捨て置くことなどできよはずもない。仕損じれば、また別の拠点に移り、此処のような悲劇を生み出し、被害者を食い物にしていく所業に身を落とすだろう。

 ならばこそ、清綱は構える。
 斬撃や打撃に対する耐性を得た『ケイオス・キマイラ』にとって剣技をもって戦う清綱は不利であると言えたかも知れない。
 けれど、清綱は深く考えることの意味を知る。
「邪魔だ、猟兵! 私の道を、私に与えられる恩寵を、祝福を、遮るなあああ!!」
 迫る怪物が巨躯を跳ねさせて清綱へと迫る。
 その重量は凄まじいものであろう。受け止めれば、たちまちのうちに押しつぶされてしまう。
 色々と考えたが、結局の所、清綱自身が出した答えは単純なものであった。同時に明快なものでもあったのだ。

「……普段通り戦うべし」
 圧殺を目論む巨躯を清綱は刀とオーラの防御を組み合わせて、受け流す。
 巨躯が清綱の直ぐ側を落ち、拠点の地面を叩き割り、衝撃波が広げた猛禽の翼を打ち、清綱の体を宙に舞い上げる。
 しかし、清綱の瞳はまっすぐに『ケイオス・キマイラ』の巨躯を見据えていた。
 どこに首があるのかもわからない。
 むしろ、既存の生物としての急所が正しいのかさえわからない。

 けれど、清綱にとって、それはあまりにもどうでもいいことであっただろう。
 読心などもはや関係ない。
 目の前の怪物は、もはや人ならざる存在である。
「駆け引きなど無用」
「私を見下ろすなあああ!!」
 地面を砕きながら跳躍する『ケイオス・キマイラ』の巨躯が猛禽の翼でもって空を舞う清綱へと迫る。

「妄執に囚われか。ならば、それこそ最期である……秘儀……山蛛・縛(ヤマグモ)」
 構えた太刀より放たれるは空間の斬撃。
 それらは一瞬で『ケイオス・キマイラ』を絡め取るように動きを止める。
 空中に在りながら『ケイオス・キマイラ』は己の体がそれ以上飛ぶことも、落下することもないのを理解した。
 なぜかはわからない。
 理解が及ばない。なぜ、己は今進むも、戻るもできぬのかを理解できない。

 ただ、目の前に迫る清綱の瞳がユーベルコードにきらめいていることだけが理解できる。
 あれなる輝きは己に終わりをもたらす斬撃であると知る。
「その所業の罪過を償うといい」
 放たれた斬撃は『ケイオス・キマイラ』を空間に縫い止める。
 かちりと、刀を納める音が響く。
 瞬間現れたのは、霊魂を断つ斬撃の嵐。

 その嵐は無数の斬撃となって『ケイオス・キマイラ』の肉体に宿っていた教団教組の魂を散り散りに刻むのだ。
「あ、あ、わたしの、私の魂が、消える、失せる、解けていく……! いやだ、私は、神の恩寵を受けし選ばれた者のはずだ! 私が選んだのではない、私が選ばれたはずなのだ、それがなんで、どうして――!!」
 その断末魔を切り裂く刃があった。
 もはや、その声に意味はない。
 どれほど言葉を弄し、正当性を謳うのであったとしても、血に塗れた欲望の道を歩んできたことに変わりはない。

 清綱の放つ二の太刀は破魔となって、霊魂すら断ち切った嵐の中を切り裂く一筋の閃光となって『ケイオス・キマイラ』の汚染され尽くした肉体を霧消させる。
 再生は許さない。
 いや、できないだろう。
 これまで猟兵たちが紡いできた斬撃や打撃、銃撃の後が表出するようにして『ケイオス・キマイラ』の巨躯を破壊していく。

 たちまちのうちに消えゆく巨躯は、すでに世界にないもの。
 これまで奪った生命に値する償いがあるのかはわからない。けれど、一つの教団がサイバーザナドゥから排除され、救われる幼い生命もまた少なくはない。
 生きるために滅びていく。
 滅びながら進むしかない世界。それがサイバーザナドゥ。桃源郷の名を冠する、骸の雨降る世界なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月04日


挿絵イラスト