●『夜の帳』
店を切り盛りするバイトの『サイバーバタフライ』が薄紫の燐光を残して羽ばたく。
お酒にジュース、必要とあらば何処までも迅速に届けて働く従業員。
それは全て多種多様な姿のバーチャルキャラクターと、頭脳戦車の正体だ。プログラミング制御は完璧で、時間帯と訪れた客に合わせエフェクトの色は変わるらしい。
『夜に観る色は、誰もが落ち着く色で無ければならない』。
この店が末端でも所属する巨大企業群(メガコーポ)による規定された社訓の賜物だ。
AI技術、此処に活かしたり。
此処は高架下にひっそり店を構える店、『夜の帳』。
夢幻を可視化させるべく頭脳戦車のAI演算とバーチャルキャラクターの電子の翼が必要不可欠。
蝶の翅を添えた二人一組のバディが務める夜の店。
キラキラひかる、夜の店。朝になったら輝きは日常の輝きに埋もれてしまう――夜だけが輝ける場である不思議な店。
会話に華を。場を乱す喧騒に、流れるような粛清を。
●記憶のキミの手を引いて
「ちょっと遊びに行かない?」
最近聞いたことがないだろうか、サイバーザナドゥという世界の話を。
狼姫・荒哉(吹雪謳う爪牙・f35761)はただ、笑うことで君たちを誘うだろう。
「ああ、事件があったとかそういうわけじゃなくてね。ただの、のんびり時間のご案内ってやつさ」
サイバー居酒屋、その店名を荒哉は口にする。
時々気まぐれに店を開けて、朝になると忽然と消える不思議な店があるという。
「『夜の帳』ってお店でね、店長さんはワールドハッカーって噂を聞いたから……」
店の中はサイバーファンタジーな、平和な電子セカイが広がっている。
店内はやや暗め、雰囲気は落ち着いたものだ。
「胡蝶の夢。それは現実とも夢とも幻とも判断のつかないセカイさ。まあ、そんな事は深く追求しないことをおすすめするね」
軽くご飯を食べに行こう。軽く一杯呑みに行く、だっていいだろう。
居酒屋に在るものなら、きっと存在するはずだから。
「キミが未成年?ハハ、そんな事は深く気にしなくて大丈夫だよ、普段しない話とかのんびり語らうのもいいんじゃない?」
それは夢かもしれないし、夢じゃないかもしれないし。
ちょっとした出来事を、誰かと、大事な家族と、過ごす時間に当てたっていい。
「でも未成年の飲酒・喫煙は禁止事項だよ?」
夢でも現実でも、ダメなものは反映されない。
他の猟兵ではない客に、いちゃもんを付けられてしまうかもしれない。
「乱暴な客というのも一定数いるものだからね、黙らせる為の鎮圧行動は正当防衛の範囲で許されます!」
酒に溺れた一般客、悪酔いした客の鎮圧は、サイバーザナドゥの政府も認めている。
たとえ猟兵がヤクザでもニンジャでも、警察でもなくても。
"必要な行為"であるならば、一杯のお礼だって進呈されるはずだ。
「俺のお勧めは"胡蝶の夢"と銘をつけられた不思議なお酒。そこにいないものを、感じたり見たりするお酒らしいよ」
本当かな、という荒哉。
でも店の名前や在り方がを思えば、そんな不思議のお酒も存在するのだろう。
「軽くご飯を食べてちょっと遊んで。この世界の雰囲気を楽しみながら夜を明かすのも きっと楽しいだろうね」
今日は予知があったわけじゃない。
ちょっと羽根を伸ばすように、たまにはふらっと夜の街で遊ぼうじゃないか。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
サイバーザナドゥの夜に、不思議な出来事を添えて。
これは三章全て、日常のシナリオ。今回のシナリオの目的は、サイバーザナドゥの楽しい暮らしに触れてみる、って感じです。
●サイバー居酒屋『夜の帳』。
雰囲気は夢と幻の境界線。
サイバー性質のあるカクリヨファンタズムって感じ。
お酒"胡蝶の夢"を一杯呑むと、「そこにはいるはずのないもの」が「存在する」ようにみえるでしょう。
(※他PC様が指定の場合了承が取れているかわからない為採用を行えない場合があります。あくまで自分の過去に関わるものを推奨)
軽い飲み食いが出来ます。未成年の個人来店、問題なく。個人的な日常を過ごすに時間を当てたり誰かとの軽いお喋りに時間をあてる大丈夫。
お喋りだけに傾倒、大丈夫。乱暴な客が無駄絡みしてくる場合がありますが一般人です。居酒屋にあるものは大抵あると思います。
●二章:サイバー遊技場
1:居酒屋絡みでおすすめのサイボーク馬にお金を掛ける、競馬によく似たゲームに参加出来たりします。
2:従業員達に勝利すれば飲み代がタダになる「しっぽ取りゲーム」が開催されたりします。
3:一章で「そこにいるはずのないもの」を見ている人は、「その存在」と語らったり遊んだり、可能。
4:その他、できそうなこと(お喋り時間にする)など。
開催場所は居酒屋の地下。
スーパー広い遊戯施設で鬼ごっこが開催されるでしょう。基本猟兵は皆味方陣営ですが、「飲み代がタダになる特殊条件」を無視するなら仲間内で遊べます。出来そうなことをプレイングに記載して遊ぶのは問題なく。
●三章:二次会パーリナイ!
遊びまくった後、喋りまくった後、人それぞれだと思いますが二次会を開催します。和気あいあい、皆で夜を騒ぎ倒してみてはどうでしょう。
別のお店で飲み直し、の場合はプレイングでご指定下さいますようお願いします。多分系列店にありますよ。
●その他
全章を通して日常シナリオのため、呼ばれるとグリモア猟兵が付き合います。基本はグループ以外は個別の返却。
未成年の飲酒は認められていませんが、お酒と類似した効果を齎すジュースは望まれればあることでしょう。イメージと同行はプレイング次第。ゆるくふわっと、フリーダム。やりたいことは、率先してプレイングにお願いします。全部の採用を行えない場合がありますが、なるべくタグに記載を置きます。
第1章 日常
『サイバー居酒屋の夕暮れ』
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POW : 好きなメニューを好きなように飲み食いする
SPD : 店主や他の客のオススメを頼む
WIZ : 他の客との世間話を楽しむ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●輝ける夕暮れに
薄紫の燐光。
それは見る人によって色合いが異なる。
ひらり舞う翅のモチーフモデルは、モルフォチョウ。
青いようで紫で。単色のようで複雑な白があるようで。
構造色が君の瞳に反射して、"色"を伝えているだけだ。
ひとりひとりの見えている色は、実際は異なるかもしれない。
さあお好きな席へどうぞ。ご注文はお決まりですか?
賑わいの帳が、君のもとへほーら降りてくる。
ヴァルドリル・グスターボ
●WIZ
アドリブ・連携◎
サイバーザナドゥ、骸の雨が降り注ぐ普通の生命体では暮らすのが困難な世界。
私は対オブリビオンロボットです。今後のこの世界に起きる脅威のためにこの世界のことを知りたいです。
私は居酒屋の客や他の猟兵に世間話を持ちかけます。
堅くなるな?…申し訳ありません、私は元々戦闘用に作られたウォーマシンなので日常の生活の知識はインプットされていません。
せっかくなのでみなさんがどのように生活をしているのか興味が湧いてきました。お話しましょう。
四王天・焔(サポート)
『こんにちは、焔だよー。』
妖狐の人形遣い×ガジェッティアの女の子です。
普段の口調は「無邪気(自分の名前、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、家族には「甘えん坊(自分の名前、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
無邪気で感情の起伏が激しい性格の少女、
武器はからくり人形とドラゴンランスを主に使います。
植物、特に花が好きです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●常識オーバライト
ワールドハッカーだという店長が、ワールドハッキングプログラムを利用して展開させた店内はやや暗めな配色の青や緑。電子的配色と背景に夕方から夜の色が空間に色を添える。
ゼロとイチの数値が、湧き水のように湧いては消えていく。
この幻想的な空間の絶対ルールは二つ。
『未成年の飲酒・喫煙お断り』
『暴徒鎮圧のご協力にはお礼にて返礼を』
「此処がサイバーザナドゥ……」
ヴァルドリル・グスターボ(対オブリビオンロボット・f36328)より高く、天井がある。開放的なスペースで腰を落ち着けたウォーマシンが見たもの、それは――電子の水辺、夜の帳。
きっと店の内装として"真実存在するものではない"。
瞳に映し、実在するように魅せている。しかしそれが存在しないものか、実物かは些細なことだ。
パチパチと爆ぜる音は、どこまでも軽やかでどこかで聞こえるココンとコップの中で溶ける氷の音をひた隠す。
涼やかな音を響かせながら、電子の蝶がひらりひらりと顕れては消える。
「こうしてひとたび世界の姿を電子に変換すれば、外の様相とは全く違う顔をみせる、と」
骸の海が降り注ぐ世界で、店内を別の光景に置き変える商売というのはなかなか考えられたものだ。
ヴァルドリルも思わず、表現の自由さに驚いたものである。
「普通の生命体で暮らすのは困難と聞きましたから、娯楽……または幻想。必要なものでしょう」
対オブリビオンロボットでも、そう思うのだ。
機械化義体に換装した人々の胸に灯る、電子世界はより自由な表現の翼を広げる。
――此処には笑顔がありますね。
――働いている店員さんたちも、楽しみながらのようですし。
「んもー、おにーさん堅いよー」
パタパタと頭上の耳を揺らしながら、四王天・焔(妖の薔薇・f04438)は大きなロボットを見上げている。
どこからともなくやってきて、控えめに過ごすヴァルドリルの様子を見つけて、無邪気に話しかけて来たようだ。
「こんばんは、焔だよー?」
「こんばんはお嬢さん。私は対オブリビオンロボットです。でも、此処には……」
「うんいないねー。だから、堅くならなくていいんじゃないかな?」
佇まいが堅い、と焔は言うのである。
傍観の姿勢をとり、店内の様子と騒がしい客の様子どちらもを眺めていたヴァルドリルも、積極的にいこ、と。
「堅くなるな、ですか……申し訳ありません。私は元々戦闘用に作られたウォーマシンですから、日常の生活の知識はインプットされていません」
情報を入力し、オーバライトを行う必要がある。見て聞いた情報のみが、戦闘用ウォーマシンの今後の行動や、在り方を形作るのだ。
「そうなんだ!焔は家族でご飯を食べに寄ったくらいしかわからないんだけど……」
「ご家族が?」
「うん!姉妹の末っ子なんだよー!此処ね、ご飯が、美味しい!」
にこっと笑う焔を呼ぶが、そんなに遠くないところからかかる。
「あ、呼ばれてる!そうそう……」
はい、と焔に手渡されたコップには相応に冷えた水。
からん、と大きな氷がやや溶けて形を崩しそうだ。容器はぐんぐん冷やされて汗をかいている。
「さっき店員さんたちに聞いたよぉ?この世界はね、"大きな進展を迎えたかわりに腐敗と退廃でモラルが崩壊してる"んだって。でもこのお店は、"夢でいいから汚染された空気を忘れたい"って願いが強いんだって」
胡蝶の夢は、存在するか?
夢幻だとしても、現実を忘れることができなくても酒を飲み交わすこの居酒屋では、機械化義体(サイバーザナドゥ)だって使い方次第。それは今を生きる人々の、有害物質に負けずに生きる奇跡を凝縮したような輝きだ。
「おにーさんには、夢でいいから見てみたい光景ってある?」
始終笑って話す焔に、ヴァルドリルは軽く思案して――。
「戦いのない、子どもたちが笑う世界でしょうか」
何処の世界でもその事を願おう。
骸の海の雨が降るこのサイバーザナドゥの世界にも、同じ様に願うだろう。
「そっか!あ、おにーさんも一緒に御飯食べる?うちはねえ、にぎやかだよー!」
こっちこっちと、手招きする"小さな子"にヴァルドリルは"柔らかな空気"を纏って、応える。
「飲みの席にお誘い頂くのですから、お酌は私が致しましょう。飲んで、いらっしゃるのでしょう?」
「うん、飲んでるよー!わーいやったー、お客さんだ!ほらほらこっちだよー!」
小柄な背中の後に続いて移動するヴァルドリルと隣を移動していく電子の蝶の翅をはやした店員たち。
彼らにも、店内にも不満や強制労働の気配はなさそうだ。
"平和そう"だと思える幻想的な空間の中で、精一杯に生きる生命の輝きは確かにそこにあったのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
斯波・嵩矩
【残煙】
POW
アドリブ連携歓迎
わーい
誘ってくれてありがとミランダ
ここ雰囲気良いね
オゴりですか?
かんぱーい
焼き鳥と刺身と唐揚げと玉子焼きを注文
俺食べるの遅いけど量は食べる
久しぶりの飲み会だもんね
ミランダも一緒だしテンションあがる
うーん
そうだね
色々慣れない事もあるけど楽しいよ
お友達もできた、かな
異世界から来て
楽しい事やびっくりした話
沢山喋るよ
この日本酒美味しい
もう一本つけちゃお
次は熱燗でお願いします
うわミランダ嫌い痛い叩かないで
ん? うるさかった? ごめんね
誠意見せろって…
あっ やめた方が良いとおも
遅かったあはは
しえんしえん(UC使用)
そこだあいけー
よってるからざつなえんそう
すごいたのしい
ミランダ・モニカ
【残煙】
息子の嵩矩と
SPD
アドリブ連携歓迎
ガキにカネ出させる気ないヨ
無礼講だ!ついてきな!
ビールで乾杯!
揚げたイモおくれ
この店のオススメフードは?
コラ野菜も取りな
サラダも二つ
で、最近どうなんだい?
へえ良かったじゃないか
呼び寄せたかいがある
何言ってんだい
いついかなる時もアタシはアンタの家族だよ
アッハッハ
バンバン嵩矩の背中叩く
このコの話はいつもトボけてて面白い
ホラ飲みな!(酒をバシャ注ぐ
ア?なんだい人が気持ちよく飲んでたってのに
黙りなクソ野郎!(裏拳
嵩矩!支援よこしなッ!!(UC使用
アタシは全然酔ってないよ
初めて来る店で醜態晒すほど阿呆じゃない
一応手加減してやる
店の物も壊さない
無粋なヤツは失せな
●無礼講にも限度は在るってんだよ!
自由席。どこでもいいと聞いたとき、ミランダ・モニカ(マザーズロザリオ・f05823)は"ほおう"と歓心の意を示した。
ばあん、と背中を叩いて斯波・嵩矩(永劫回帰・f36437)を先に歩かせる。
息子へ向けてさあ好きな所へ座りな!アピールだ。
そんな気概を感じて、嵩矩だってクスッと笑えるというもの。
「いてて、気分がもういいのミランダ?」
わーい、とアガっているのは嵩矩も同じ。
「さそってくれてありがと!ここ、雰囲気がいいね」
きょろきょろと、物珍しい光景に目移りしてしまう。
サイバーパンクを超えて、サイバー色の強い形式だ。まるでパソコンの中の仮想世界へ飛び込んだよう。
「ん、オゴりですか?」
銀の雨が降る時代に見たものは、それは魔術や魔法の百鬼夜行。
店内のように世界が統一された光景は無かった。
どこか殺伐を呼び込む雨、という意味では――この世界に降る有害物質は、あの日々に何処か似ている。再び神秘は黙された。そのことを思えば、過去は何処からともなく牙を向くのだろう。
歴史は――根絶まで何度でも繰り返すもの。
「ガキにカネ出させる気ないヨ。無礼講だ、選ばないんならサクッとついてきな!」
ミランダが座席を決めて、さあ座れ、と指示をだす。
世話焼きの華は、始終楽しそうだ。
『ご注文は、お決まりですか?』
兎のような姿をした頭脳戦車の背中に、体高と同程度の電子の蝶の翅がふわり。
体色の白いボディに合わせて、蝶の羽もやや白みを帯びている。
「まずはビールだ……って言う前にもう持ってきてんのかい、気が効いてるね!」
『"最初はビール"の確率は当AIの判断では高確率でしたので、良かったです』
ビールを二つ、店員は机において、それから別注文も承ると瞳のスコープを輝かせた。発言記録録音モード、スタート。
「そうだねえ、揚げたイモをくれ」
壁にかかる値段と料理名をミランダは読み上げて。
それからついっと頭脳戦車へ問う。
「この店のオススメフードは?」
『絶対安全安心の馬刺し、ですね』
「勧めるってことは余程の自信があるんだね?追加でそいつも貰おう」
考え込んでいた嵩矩が顔をあげて、瑠璃色の瞳を輝かせる。
「あ、じゃあ焼き鳥とこの天然養殖マグロの刺身!それから唐揚げと卵焼き!」
「コラ野菜も取りな、アタシからはサラダを二つだよ」
野菜を省いた好みの組み合わせをミランダに見抜かれてしまった。
「……それ全部食べれるのかい」
「勿論!」
食べるのは少々遅いけれど量は食べれるのだ。
さくっと入ることは自信が持てる嵩矩である。
『ご注文記録、確認。順次お運び致します。少々お待ち下さい』
店員が去っていくの姿を見て、二人してけらりと笑うのだ。
不思議な店員がいれば、この不思議な騒ぎだしたい気持ちはなんだろう。
「だってほら久しぶりの飲み会だからねえ、ミランダも一緒だしテンションが高いのかも」
「そうかい、じゃあ景気よく――」
「「かんぱーい!」」
かあん、と高らかな硝子のぶつかる音が心地良い。
「んで?最近どうなんだい?」
ぐいっとビールで喉を潤すミランダが開口一番先制攻撃。
「うーんそうだねえ……色々慣れないこともあるけど、楽しいよ」
ちびちびと伸びながら、嵩矩の頭にちらつくのは人との出会い。
「お友達もできた、から、ね」
にぎやかなひとたちの姿が思い浮かぶ。
「楽しい。それは良ったじゃないか。呼び寄せたかいがある」
「色んな世界が本当に在るんだなって、驚くことも沢山だよ」
シルバーレインという"世界"から、お友達の出身世界の数。
それから、嵩矩が識らない世界のこと。ダークセイヴァーや封神武侠界のことだって多くは識らない。
「楽しいことは、たくさんあるんだね。ミランダ?」
移ろいゆく世界の流れを、これでもかと眺められる。素晴らしいことじゃないか。
愛おしき、世界とはやはりこうでなくては。
「何いってんだい。いついかなる時もアタシはアンタの家族だよ」
――そうやって話を楽しそうにする姿が、何よりも酒のつまみだ。
「こういう世界にも"日本酒"ってあるもんだね、……美味しい」
淡々と注文を届けてくる店員に、もう一本、と指を立てて嵩矩は注文する。
これはミランダに見つからないようこっそりと、だ。
「……次は熱燗でお願いします」
「アッハッハ、なーにヒソヒソしてんだい!」
バンバン背中を叩きながら笑うミランダは、対象的に豪快だ。
「うわミランダ嫌い痛い叩かないで」
「このコの話はいつもトボけてて面白いんだよ!アタシの分も飲みな!」
どばどばと酒瓶から直接注ぐミランダの蛮行も嵩矩のは慣れたもの。
ただ、多少限度があるというのはご愛嬌だ。
『……ったくうるせー珍獣どもでもいんのかあ、この店はよぉ!!』
ガラの悪い怒号。逆立てた金髪と、背中に刻んだタトゥーの厳つい姿。
煙草を加えた片足のみサイボーグのヤクザが、二人に向けてビールジョッキを投げつけてきた。
がしゃーんと割れ砕ける音。しん、と静まる周囲の音。
「ん?うるさかったって?ごめんね」
嵩矩の謝罪を、聞こえねえなあと遮り、ミランダの肩を後ろからヤクザは掴む。
『やいババア!てめえどう落とし前つけるってんだよ!!誠意みろ、誠意!!』
「ア?」
「誠意見せろって……お、お金?」
――あ、辞めたほうがいいとおも……。
嵩矩の予想より疾く、バトルシスターの琴線にその行動は触れた。
「なんだい人が気持ちよく飲んでたってのに……黙りなクソ野郎!」
『……ガッ』
ミランダから繰り出される、裏拳での顔面制裁。
そこに顔があると理解して、当然のように打ち込んだ。
「あはは、ほんとにごめんね。ちょっと遅かったやあはは」
「嵩矩!支援よこしなッ!」
「しえんしえん――こんにちは、せかい~」
ふわふわと、酔う気持ちに合わせてイグニッションカードからクラシックギターをその手に掴んで。
満杯不須辞(ドウカナミナミツガセテオクレ)、気分気のままの演奏を支援として乗せる。店内に陽気な音が、響き渡る――当然ミランダは、その音楽を愛し、共感するのだ!
「そこだあいけー」
「喰らいなァ!!」
ミランダの振りかぶった一撃必殺の拳。ヤクザは当然のように体勢を崩していた――つまり、殴られた鼻を押さえ前後不覚でいたその姿に今度は堅い拳が激突することになるのである。
「吹っ飛ばすと思ったかい?アタシはまだまだ全然酔ってないよ」
顔面に叩き込んだ拳を勢いそのまま床にまで振り下ろしていくスタイル。
当然、床だって破戒に至っていない。
「一応の手加減してるさ。初めて来る店で醜態晒すほど阿呆じゃない」
「へへへ、すごくたのしいねー」
『当店へのご配慮、痛み入ります。暴徒なお客様はどうぞご退店を』
「無粋なヤツはとっとと失せな!」
当店お礼により、先程の注文は此方からのサービスと致しましょう。
店員の言葉に笑うミランダだ。
さあ、息子ともどもこれからまた、飲み直そうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クイン・クェンビー
同行:ベニー(リヴェンティア/f00299)
アド歓
いぇーいサイバーザナドゥいぇーい!!
ここが新しい世界なんだねー、新鮮・発見・驚きだなー!
デビキンとは、似てるようで全然違うね!
もっとガチっぽいワルの匂いがするっていうか……
とりあえずクインは、この世界すっごい面白そーで気に入った!
ギラギラピカピカしてるし、キマフュとも似てるしね!
ベニーはどう? そっかー! よーしじゃー今日は一日、遊ぶぞーっ!
あ、クインはお酒飲めないし普通に唐揚げ……って、ベニー20歳なの? マジ!?
わー、ある意味一番驚いたかもー、そっかぁ……(すごい複雑な顔)
ま、まあ気にせず食べよっか! ね! クインも山盛り唐揚げひとつー!
リヴェンティア・モーヴェマーレ
クインさん(f16715)と一緒
アドリブ大好き
P
私、サイバーザナドゥは初めてデス!
いぇーい!さいばーざなどぅるるるー!(万歳しながら辺りをうろちょろしまくる
新世界って驚きをワクワクとドキドキに満ち溢れていますネ
そですネ、とっても面白そうで私もちょー気に入りまくり祭りな気持ち!
あそこのご飯屋さんもキラッキラのほわわんで素敵でス
Q.Qさん言ってみまショ!
はい、私20歳でス!マジでス!(ピース
この世界よりって…驚く所が違うですヨ!
え…Q.Qさんは飲めないのでス?どして20歳以下はお酒を飲んじゃダメなのですカ?(不思議顔
Q.Qさんが飲めないナラ私も飲まずにざんぎを沢山食べマス!
山盛り一丁お願いしマス♪
●モラルなんてぶん投げろ!
「いえーいサイバーザナドゥいえーい!」
クイン・クェンビー(ファースター・f16715)、ハイテンション来訪。
それは"夜の帳"に訪れるやや少し前の時間帯。
夕方頃の人通りに紛れた、訪れであった。所構わず放たれた大きな声に、色んな店の店員や客、その他色々な視線が彼に集まる。
「ふふふ、私、サイバーザナドゥ初めてデス!」
ひょこ、と同行していたリヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)の素直な感想らしいものが聞こえて、"あ、なんだこの人達フツーご飯目的の観光客じゃん?"なんて緩んだ空気でにじむ。
「いぇーい!」
前言撤回。ふたりともハイテンションであった。
誰だ、猟兵は場の空気を読むとかいったやつ(幻聴)!
「さいばーざなどぅーるるるうー!」
「さいばーざなどぅるるるー!」
この二人を見ろ、空気の方が空気を読んでるぞ!
不意な有害物質の雨なんて降り止む勢いだ。
先に走り出したクインに続き、万歳しながら駆け出すリヴェンティアなど、気分がハイでなければなんなのか。いいや、識らない世界へ訪れた仕事のない猟兵とはだいたいこういうものだろう(偏見)。
完全なオフ、つまりどんなことしてても、彼・彼女らの自由だ。
この世界にモラルはない。営業妨害だって、日常茶飯事。
こんな退廃した環境下にだって、そりゃあウルトラハイパー超絶楽観主義者くらい野生で現れる。
来店した店で金さえ払えばちゃんと"客"なのだ。なんにも問題なんてないだろう。
「Q.Qさん、新世界って驚きをワクワクとドキドキに満ち溢れていますネー!」
「此処が新しい世界なんだよねー!新鮮・発見・驚きだなー!」
二人の行動が、既にサイバー世界から驚きを齎しています。
「店内の様相なんて、外の錆と廃材感とはぜんぜん違うからねー!うん、デビキンとは、似てるようで全然違うね!」
強いて言えばあちらにはワルをするルールがあるが、この世界にはない。モラルが腐敗していて、そのなかに独自なルールを"企業"が割り込んで作っている。
「ギャングとか、麻薬とかそういうもっとガッっぽいワルの匂いがするっていうか……」
クインの鼻が嗅ぎつけたワルさは正解だ。
治安という意味なら、断然此方のほうが悪だろう。
「とーりーあーえーずっ、クインはこの世界はすっごい面白そーで気に入った!」
ウインクひとつを、今目が合った野良サイボーグへ無償プレゼントだ!
お代はいいから取っとけ!
「ギラギラでピカピカで、もうなんかキマフュとも似てるしね!サイバーエネルギーが身にしみちゃう!」
心持ち、ネオンカラーとサイバー音楽の幻聴だって聞こえてきそうじゃないか。
居酒屋に流れてそうなのは、大抵喧嘩と軽い煙草の濃い匂いかも知れないがそればかりではないはず!
「ペニーはどう?」
「うーんソですネ、とっても面白そうで私もちょー気に入りまくり祭りな気持ちデスよ!」
外の様子と中の様子が、全く違う事があったりしてびっくり箱みたい、とはリヴェンティア談。
「だってだってクインさん、あの通りの先、見えマす?」
あっちです、と指差す先には点灯し始めた大型看板。
でかでかとした文字が、光に照らされた食堂や、弁当屋。食べ物屋通りが見える。
「あそこのご飯屋さんもキラッキラのほわわんで素敵でス!Q.Qさんいってみまショ!」
「そっかー!よーしじゃー今日は一日、遊ぶぞー!」
まずはちょっと腹ごしらえだー、と言うなり駆け出すクインについていくリヴェンティアのノリの良さは相当なものであった。
見上げた看板"夜の帳"にクインはビビっと何かを感じて、ばーんと来店。
お席はどこでも、という店員がいうからとガンガン進むこの神様、結構大胆!
どかっとカウンター席に座るなり何を注文しよっかなーと悩みながら、ようやく此処が居酒屋だった事を認識するほどの、男だ。
「……あ、クインはお酒飲めないし、普通に唐揚げ……」
「え……Q.Qさんは飲めないのでス?」
注文を頼もうとするクインに、リヴェンティアが割り込む。
「ほら此処!あといろんな世界でいうでしょー。"未成年の飲酒おことわり"!クインは未成年だからねー!」
「どして20歳以下はお酒を飲んじゃダメなのですカ?」
不思議顔のリヴェンティアは納得できない様子だ。
「ふむ……じゃあ、私も飲まないナラ食べる方に専念しましょうカ」
ついー、と視線を動かして。
目に止まったざんぎにこれにしよう、と笑う顔は穏やかだ。
「ん?ベニー、何歳だっけ?」
「私20歳でス!」
「……って、えええベニー20歳なの? マジ!?」
「マジでス!」
思わ聞き返したオーバーリアクション!ピース攻撃はかなり効くぞ!
顔にペタっとくっつくピースで可愛くアピールするリヴェンティアに、さすがのクインも開いた口が三秒位塞がらなかった。
「わー、ある意味一番驚いたかもー、そっかぁ……」
すごく複雑そうな顔をしたクイン。
うそー、え、じじつなのー、とぶつぶつ聞こえてくるおまけ付き。
「ちょっとちょっと、こノ世界よりって驚くところが違うですヨ!」
店員の背中に電子の蝶の翼が生えてる不思議店についてとか、そっちの方が驚いた方が良いです!
でも見た目と年齢ってわからないよね。自己申告って大事。
「ま、まあ気にせず食べよっか!ね!」
「ざんぎ山盛り一丁お願いしマス♪」
「クインも山盛り唐揚げひとつー!」
注文受けたまりヤしたあああ!!!返事は大変大声で、職人声。
店内のサイバーファンタジー感をぶち壊す声を聞いて、思わず二人とも際限なくお腹を抱えて笑い出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジェイクス・ライアー
全てが己が願望ならば、夢も幻想も愉しんでしまえばいい。
〝胡蝶の夢〟を一杯いただこう。
現れるのは母か、友だろうか。
そう期待をしたが眼前には二十歳前後の青年。
見覚えのある顔ではない。
名を尋ねても、上手く聞き取れない。
彼とは初対面のはずだが、彼は私のことをよく知っているようだ。
酒を数杯奢りながら、言葉を交わす。
内容は大したことではない
大学での生活だとか
酒の好みだとか。
なんでも今日は、妹と来たのにはぐれてしまったのだとか。ならば、遊戯場を回りがてら探しに行こう。
他人の話はおおよそ話半分で聞くのが常だが、彼の話を聞くのは悪くない。むしろ、癒される。
とても好ましい青年だ。
-
[青年]
背の高い温和な雰囲気の青年。
柔らかな金髪に赤目。
へにゃと柔らかく笑うのが特徴的。
※青年は、生まれてくることはないジェイクスの息子です。正体を名乗ることはありません。
●その夢は暖かくて
悉くが夢幻の如くなり。
催眠作用、を疑った。酔いに乗じて、幻想に溺れるのは、この世界ならではの生き方の形でも在るのかと、疑った。
しかし興味がない、といえば嘘だ。指を立て、ジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)が注文したのは、"夜の帳"が一押しが酒。
受け取った瓶からとくとくと注げば、水質はきらきらと宝石にのように輝いていた。落ち着いた水面の中で、氷がからん、と音を立てる。
どのような趣向を凝らせば、このような液体になるというのだろう。
確かに夢のような色を讃えている――蝶の翅の色合いを、想わせる。
「全てが己が願望ならば、他の誰かに迷惑などかかるまい」
モラルがどうした。己だけが観るのなら、夢も幻想もその夜限りと愉しんでしまえばいい。店の中は賑わいがあるのだ。
皆が皆、心の落ち着く色を見て夜を過ごす気分でいる。
ジェイクスが観る色が、酒越しの世界だとして誰が口を出せよう。
「"胡蝶の夢"、一杯頂こう」
注いだ酒をジェイクスは飲み込む。
――現れるのは、母か、友だろうか。
夢の中でなら、と思う人の姿を想像したが瞳に映るその存在は、どちらでもなかった。すう、と像を結び現れた姿が一つ。
期待した眼前には、おおよそ二十歳前後の青年がいた。
「……ほおう」
見覚えのある顔ではない。
柔らかな金髪はよく整えられており、ファッションにこだわりの有りそうな青年だ。背の高い温和な雰囲気があり、誰かを思わせる笑い方をする。
ちらりと覗く赤目を細めてへにゃり、と人懐っこそうに笑うのだ。
「名は……」
『――』
尋ねてみたが、耳に直接ノイズのような音が邪魔をする。
確かに喋っている。しかしうまく聞き取れない。
一度尋ねた言葉を、ニ度繰り返すのはどうだろう。ジェイクスは追求をやめた。では別の話を振り、夢と会話を興じよう。
「よく来た、というのも変な話か……まあ、私の酒に付き合ってくれ」
にこりと彼は笑う。
『勿論だよ、――の代わりに場を持たせられるかなあ』
誰の?という疑問はジェイクスの中で解決しない。
彼はどうにも人懐っこい――初対面のはずだが、彼はジェイクスのことをよく知っているらしい。
彼が自分を誰かと比べている。誰だろう。
「私の奢りだ、構わない飲むと良い」
『ありがとう!それじゃあ、うん――大学の話を聞いてよ。場に馴染めないだろう、なんて言われたことも在るけどちゃんと通ってるんだから』
彼は話し始める。内容は大したことではない。
席を共にした同席の範囲で、彼の世間話だ。
たまに頬を掻く仕草に目が留まる。本質的に自信がない子なのだろう。誰かの言葉に影響されて、だがそれでも彼は明るい笑顔を魅せる。
『この間、お酒の席に呼ばれたんだけどもう皆お酒に弱すぎるのなんの……濃いめのお酒に皆もっと慣れたらいいのに』
「放置したわけじゃないのだろう?助け舟を出したのか?」
『うん、放っておくのはただの人見知りだからね。ちゃんと助けたよ』
何処かの誰かがしそうなことだ。ジェイクスの頭によぎる顔がある。
何故だろう。不思議なこともあるものだ。
――他人の話には、おおよそ話半分で聞いているのが常だが。
ジェイクスは彼の話を熱心に聞いていても良いものだと思えた。
何気ない話題なのに、むしろ癒やしさえ感じるような。
――とても好ましい青年だ。
『此処にはね、妹と来たんだ。でもちょっと目を離したのがいけなかったよ……見つけられなくてね』
綺麗なモノが好きで、子供っぽくて。
すぐに動き出してしまうから、注意していたつもりなのに。
彼はそう笑っていて、ジェイクスは相槌を挟む。
「ではこの施設のどこかには、きっと居るはずなのだな?ならば、遊戯場を回りがてら探しに行こう」
数杯分の軽い飲みを追えたなら、それくらいしてもいいと思えたのだ。
へにゃりと笑った彼は、小声で何かをつぶやくようだった。
『――、ありがとう』
お礼の前に何かを言った。はて、謎掛けでもしているのだろうか。
胡蝶の夢は蝶の翼を広げて、煌めく――。
夢幻の境界線へ夜と奇跡の色を燐光に引き連れて。
大成功
🔵🔵🔵
ダンド・スフィダンテ
願望か、どんなものを観られるんだろう?
〝胡蝶の夢〟をひとつ
静かに息を吸って、吐いて
瞼を開けた先に現れたのは、二十歳前後の女性だった
「もう聞いてよ!お兄ちゃんたらまた私を置いてどっか行っちゃったんだから!」
なんでも今日は兄と来ていたのだが、ちょっとうろちょろしていたらはぐれてしまったらしい
こちらの相槌に合わせて彼女のマシンガントークは続く
大学が楽しいとか、あのお酒が美味しかっただとか、服のブランドがどーのこーのとか
ころころと変わる表情の中見える誇らしげな笑顔、怒った時や拗ねた時に見せる雰囲気がどうにも素の誰かさんに似ているものだから
殆ど無意識に、その頭に手を置いていた。
もう子供じゃないんだから!と笑う姿に、愛され育った子の反応だと、泣きたい程に嬉しくなる。
よければ一緒に探しに行こうか?そのはぐれてしまった家族を
-
[女性]
背の高い派手な雰囲気の女性
柔らかな金髪に赤目
子供っぽく我儘だが、場に合わせる事は得意な様子
※女性は生まれることはないダンドの娘です。必要であればダンドの事をパパと呼びます。
●その夢は華やかで
「その酒は、そんなに不思議なものなのか?」
『当店の華ともいえる代物です』
ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)は蝶の翅を背に携える店員に話を聞き、興味を持つ。
「じゃあ、"胡蝶の夢"、をひとつ」
『かしこまりました』
とん、と置かれた酒瓶は、さほど不思議な姿をもたない。
どこにでもありそうな瓶で、何処にでもありそうなラベルが張ってある。蝶のマークが特徴的で、蝶の羽のように見る角度によって色とりどりに染まってみせる。
――願望か。
――飲む人によって違うなら、俺様はどんなものが観れるんだろう?
静かに息を吸って、それから、吐いて。
瞼を閉じて何を見てもいいように、気持ちを整えて、軽く喉へ流し込む。
瞼を開けたダンドの眼前に現れたのは、二十歳前後の女性。
こちらに気がつくなり、すぐに言葉を放ってくる。
『ねえちょっと聞いてよ!お兄ちゃんったらまーた私を置いてどっかに行っちゃったんだから!』
ぷんぷん、となにかに怒ってるような彼女の怒涛の勢いな言葉にダンドも"夢でも見ているんじゃないか"と思ったほどだ。
ご明察。これは現実かも知れないし、夢かもしれない。そんなナニカだ。
キミはそれを、自分で飲酒した――これは君の願望かもしれない、ナニカ。
「お兄ちゃん見なかった?」
背の高い派手好きそうな女性は、柔らかそうな金髪を揺らしていた。
ふわふわ前髪から覗く赤い瞳が、本当に探してるんだよ、と強めの色を灯している。子供っぽい口調で、どこか我儘な気風。
「お兄ちゃん、か……何処かへ行ってしまったと分かる前、君はなにを?」
『お店の雰囲気が素敵だったから、眺めてたの!』
どうやら"ちょっと"うろちょろしてる間に、一緒に居たはずの兄が居なくなってしまったらしい。
兄が離れたのか、彼女が離れたのかという論点はズレているのだろう。
『だってみて!こんなにキラキラで、不思議がいっぱいなのよ!』
「そうだな。外の町並みと違って、この店内はとてもファンタジーが強い」
『キラキラの蝶の翅よ!電子の翅、皆違って素敵な色なの……きれいよね』
ころころ変わる表情の中に見える誇らしげな笑顔。
思い出したように"兄"に対して怒る顔。
『もう、お兄ちゃんってば何処に行っちゃったんだろ……』
拗ねた雰囲気にもダンドにはどうにも初対面相手には思えない気分を抱える。
これが"胡蝶の夢"――お酒の力?
――素の誰かさんに似ているな。
『あのねあのね!私、大学では結構楽しく過ごせているの。だって、楽しいし!飲み会の席にだって誘われるの!』
「へえ?」
『数日前の夜のお酒は美味しかったのよね……舌触りがよくて、軽めの優しいお酒。■■(パパ)も飲んだらいいのに』
「お?お酒、飲める方なのか」
なにか聞こえた気がするが、聞き取れなかった。
きっとダンドのしらない言葉なのだろう。
『勿論よ!■■(パパ)だって平気な顔して飲んでるもの。ふふん』
ニコリと笑いながら、照れくさそうだ。
『服のブランドだって、お兄ちゃんと意見交換が活発だし!』
身なりのセンスの良さは、家族ぐるみで出来ているらしい。
相槌に合わせて、彼女は喋る。
場に合わせることが得意なようで、聞いてくれてると分かった上でマシンガントークを続けるのだ。
「ふふ……」
よく喋る良い子だ。
そう思った時、ダンドの手は無意識に彼女の頭に置かれていた。
『ちょっと!もう子供じゃないんだから!』
くすぐったそうに笑いながら見上げてくる彼女の顔を見たら、なんだか込み上げてくる物がある。
――これはよく愛されて育った子の反応だ。
頭に乗せられた手を跳ね除けず、それを良しとして笑える子。
――俺様今涙がこぼれそうなんだが。
目元が滲んでくる程、不思議と嬉しい反応だ。
「少しだけ酒に付き合ってくれたら、よければ一緒に探しにいこうか?」
『ホント?』
「本当だとも。そのはぐれてしまった家族のもとへ行こう」
胡蝶の夢は蝶の翼を広げて、羽ばたく――。
キラキラと、傍に寄り添う輝きを引き連れて。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『サイバー遊技場』
|
POW : とにかく全力で遊びまくる
SPD : 自分の得意な分野で勝負する
WIZ : 策を巡らせ、一瞬の勝負を狙う
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●地下へ続くサイバー遊技場
居酒屋の奥で店長が地下へ続く扉を開ける。
いや、夢幻の延長線上に生み出したのだろうか。
『これから、遊技場を解禁します。ご興味が在る方はどうぞこちらへ』
客が移動すれば、店員たちも地下施設へ移動を開始するだろう。
『"夜の帳"では、腹ごなしに遊べる二種の遊戯を備えております。もしよければ、店員たちに説明をお聞き下さい』
店長は愛想がない。経営してる側だからこそ、現場監督として目を光らせ続けていなければならないのだ。
子馬を想わせる姿をした頭脳戦車は語る。
『こちらでは、サイボーグ馬のどれが勝つか、賭博を楽しめます。全部で五機のサイボーグ馬のうちどれが一着なるかを競うゲームです』
サイボーグ馬、といわれたが、どうみても全て頭脳戦車である。
ちょっと馬脚に強化などを加えられているようだ。馬名などもある。
『お客様には、どれが一着になるかを記載いただきます。"単勝でどれか一機"に一点がけをおすすめします』
『番号の記載を、お願いしております。サイバー競馬ネームはどれも持ち合わせておりませんので、応援がてら好きに呼び名をつけて呼んでいても問題はありません』
この賭博の代金は、猟兵が食事や飲酒をしていたなら「その代金がタダになる」システム。負けたからといって倍増になったりはしない。
あくまで、盛り上がりの一端を担うゲームである。
サイボーグ馬、どれもがこの店で働く店員である。
大柄な兎を想わせる姿をした頭脳戦車は語る。
『こちらでは、しっぽ取りゲームが行えます。広い遊戯施設全部をつかって、鬼ごっこを行います。敵チームの尻尾とれば勝ち、です』
店員たちは数が多いが、猟兵の人数に合わせて調整する。
猟兵が二人なら四人。猟兵より倍の数で人数調整を行うという。
『我々も遊びながら"仕事ですので"、全力で当たらせていただきますがご了承くださいませ』
ベルトのような紐状から、動物尻尾まで、店側が用意しているようだ。
参加者は体にそれをつけること、とのこと。
参加条件はそれだけで、競馬と同じく勝てば飲み代がタダになるだろう。
負けたらとてもいい運動になることだろう。
犬を想わせる姿をした頭脳戦車は語る。
『遊びに興じなくても構いません。お好きにお過ごしくださいませ』
必要ならばお酒をこちらにお持ちします――とのことだ。
きみはどこで過ごすだろう。
この遊戯施設はとにかく広い。
自由に過ごすことだって、出来るはずだ。
七篠・コガネ
圭一さん(f35364)としっぽっぽゲーム!
僕はこの着ぐるみで挑戦
ヤマビスカッチャの着ぐるみです!くるんとした尻尾は着脱可
このぽてっとしたふっくらお腹とちょこんとお手々がキュートでしょ
ハンデなのです
だって僕が本気出すとすぐ終わっちゃうもの(ふふん)
さあ、行きますよ!着ぐるみ着ても僕のダッシュは本物です!
待てー!兎さーーん!(大口開けて牙をガキガキ見せて)
はい、1本取ったです!
圭一さんとどっちが多く取れるか勝負してもいいですね
ついでに圭一さんのも取っちゃいます
行っくぞー!【イーグルバレット】!
…あれ?前にいるのは…圭一さん!?よ、避けてーー!!
圭一さんしっかり!大丈夫!?だいじょ…
し、死んでる…
山崎・圭一
コガネ(f01385)と。
体中で蟲達が騒いでる…
天敵コガネに気を付けろ、と…
ンで、コガネ。何その格好
すっげ頭悪そう。そして頭悪そう
ヤマビス…山崎ビスケットが何だって?
ハンデねえ。俺は全力で行かしてもらうけど
でも俺の尻尾なんで猿なの?長くて不利だしバカにされてる気分…
ん?もう開始?
うへぇ〜はっや…コガネの奴。俺も負けてらんねー
カモン!ベアトリス!
尻尾取られないよう上手く躱してな
そんで俺はこの『命捕網』で機械兎をとっ捕まえてやる
ベアトリス、あの頭脳戦車を追え!
そう、いいぞ…あと少しで捕まえ…ん?
Σげえ!!前からコガネェー!!?
[Critical]
……蟲達の忠告…聞いとくんだったぁ…ゲホッ(吐血)
●可愛い尻尾と凶暴な一撃
『お客様"しっぽ"はお決まりになりましたか?』
兎のような機械耳パーツが伸びる店員が首を傾げるように、語りかける。
「僕はこの着ぐるみで!」
長身のウォーマシン、七篠・コガネ(金碧のリュシエール・f01385)はその身にフィットする着ぐるみに身を包む。
ふふん、と満足気にするコガネのやや後ろ。
居酒屋の地下へ降りてすぐ山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)は隅っこのオブジェと貸していた。
――此処へ来て早々、体中で蟲達が騒いでる……。
ざわざわと"むしのしらせ"を感じる。
内容に関わらず、最近はどうも原因は固定されているような気がしないでもない。
店員相手にキャッキャとはしゃいでいるあのウォーマシンがなにかする確定事項だろう。
――"天敵コガネに気を付けろ"、と。
――くそぉ、今日もか。今日もなのかよ!
「圭一さぁあああん!」
天敵が呼んでいる。ついに、隅っこオブジェを終了する時が来たようだ。
――……しゃーねえか。
「ンで、コガネ。何その格好」
「ええと、"ヤマビスカッチャ"の着ぐるみです!」
一見すると兎のような着ぐるみである。
尻尾がくるんと柴犬のように巻かれていて、実に愛らしい。
「あー、あー……?」
圭一は、着ぐるみの表情をみて渋い顔をする。
「すっげえ頭悪そう。それ着込んでるぶんコガネも頭悪そう」
表情は、可愛いは可愛い。
だがそれは哀愁漂う人生に疲れているような顔をしている生き物、という認識上で可愛いのだ。
やる気十分、と強気な顔をしているコガネと合わせるとギャップが異常発生しているのである。
「流れようにる罵倒!冒涜的言葉選び、犯罪ですよ!失礼しちゃうなあ!」
大きなお腹をぽん、と叩いてアピール。
「このぽてっとしたふっくらお腹がチャーミングじゃないですか。ちょこんとお手々がキュートでしょ」
「まあお前の全身に合う着ぐるみよくあるなーって思うが、なんだって?ヤマビス………山崎ビスケットが何だって?」
「ヤマビスカッチャ!ハンデなのです」
僕は賢い即席兎さん!と満足げな顔をするコガネに反して、着ぐるみの顔とのギャップが生まれる。
――なんだこれつっこみどころしかねぇ!
異常に疲れていくのが分かる圭一。
だが、話にはちゃんとノる――実にいい男である。
「だって僕が本気出すとすぐ終わっちゃうもの」
ふふん、と実力を誇るコガネに対して、店側が用意したのは兎なフォルムの頭脳戦車が四機。
どれもが仕事中に付き、バーチャルキャラクターの電子の蝶の翼を生やしていて、コガネに合わせた柴犬のような尻尾を装着している。
「圭一のは僕が選んでおきましたです。はいどうぞ」
「ハンデねえ、俺は全力で行かしてもらうつもりで、いた、けど……でもなんで俺だけ猿尻尾?」
ながーい尻尾の猿な尻尾。ついでに装着箇所に赤い吸盤がついている!
すごいベルトにつけなくても、ぴたっとくっつけられる計算され尽くしたサイバーマジックアイテムじゃないか!
「おい、猿の尻は赤いをこんな所で豆知識のようにつけんな!長くて不利だしバカにされてる気分……」
「可愛いですよ?」
「馬鹿!着ぐるみ尻尾は有りなのか?」
『可能です。そちらの着ぐるみの尻尾は、部分的着脱素材で出来ております。ちょっと力を込めて引っ張れば取れます』
――トカゲ?トカゲの尻尾切りなの?
どこまでもツッコミが襲いかかってくる中で果たして圭一は生き残れるのか――。
『準備完了を確認しました。こちらは4人。ではゲームスタートです』
四人の店員達が一斉に散らばる。
「ん?もう開始?」
「さあ、行きますよ!着ぐるみ着ても僕のダッシュは本物です!」
ガッ、と踏み込むコガネの地面を蹴るような走りは健在だ。
たとえ着ぐるみコーデに身を包んでも、自前の能力は損なわれない。
『――!』
「待てー!兎さーーん!」
大口をぐわっと開けて、牙をガチガチ見せて、ざざぁと店員の前に踊り込む。
兎っぽいフォルムにして、実はネズミやチンチラな方に近い着ぐるみで、くわっと怯ませるまでの瞬間芸。
「はい、流れうように一本取ったです!」
『お見事です』
「よーし、続けてもう一本狙いますよー!」
だだだっ、と駆け出すコガネは頭脳戦車、4機分の大きさを誇る。
あれがAI搭載機体ではなく人類に属する生身なら、普通に怖いことだろう。
「うへぇ~はっや……コガネの奴。俺も負けてらんねー」
せめて、残り二人は自分が仕留める!
ぺろ、と下唇に手を当てて、"おれならやれる"と気合を入れて、その名を喚ぶ。
ルールに技能を用いてはならないとの話はなかった。
此処はモラルの崩壊した世界、つまり――盛り上がる方向に手を出すことは"違反行為ではない"。
「カモン!ベアトリス!」
蜻蛉恪勤(ジュエルフラッター)、チョウトンボ型の白燐蟲が巨大化して白遊色の翅をふわりと震わせる。
蝶が逃げるのだから、燐光放つ蝶の軌跡こそこの場に超絶相応しいだろう?
その背に乗り、圭一は尻尾の長さを鑑みてうまく躱して、ぐんぐん進む。
コガネに狙われた一機が、流れるように圭一の尻尾を捕まえようとすれ違いざまに狙ってきたが――すれすれで躱した。
「ざんねーん、圭一狙いが露骨すぎましたねぇ!」
二機目の尻尾を取り上げたコガネ、着ぐるみ姿で勝利のガッツポーズ!いえーい。
「圭一さんとどっちが多く取れるか勝負してもいいですね」
「半分になってから言うとか、ずるいなお前!ベアトリス、右の頭脳戦車を狙え!」
構えるは愛用品の命綱網、おいかけっこだからといって"捕まえてはならない"理由もない。
「よーし、そう!いいぞ……!」
ぐんぐん速度を上げて逃げる機械兎を、ベアトリスに乗って高度を下げ、これで一匹確保確実!
約束された勝利を夢見て、ニヤリと笑った圭一だった。
「あと少しで捕まえ……ん?」
「直線距離に照準オーケー!」
宇宙船の装甲すら破壊する蹴り――つまり、それは王道に則ったコガネ流脚から始まる突進術だ。
「イーグルバレットォ!!」
強襲からの三機めからの尻尾奪取を狙ってのことだったが、機械兎の向こう側。
ついでに強く地面を蹴ってその手を伸ばす――。
「げぇ!?前からコガネェー!!?」
「……あれ?前にいるのは……圭一さん!?よ、避けてーー!!」
飛んでる蟲は急に止まれない。
プラズマジェットを利用してないとはいえ、ウォーマシンのスピードを乗せた突進は、急ブレーキ不搭載。
正面衝突。車の事故というのは、丁度こんな威力が出るのだろう。
[Critical]その一撃は、一瞬三途の川を覗かせるに十分な威力を誇った。
さすが、猟兵として戦うコガネ。まじぱねーぜ。
「圭一さんしっかり!大丈夫!?だいじょ……」
「……虫達の忠告、……馬鹿正直に聞いとくんだったぁ……ゲホッ」
その男は、吐血した。
「し、死んでる……」
死んでいません。ちょっと痛い思いをした男が沈黙しただけです。
「あ、ついでに……圭一さんのも貰いました。3機めのも取りましたから、あと少しそこで待っていて下さい!」
コガネが一人で全ての店員を捕まえるまで、そう時間は掛からないことだろう。
全てに勝利したコガネが、ちょこんと佇むヤマビスカッチャ化するまであと数分。
その間に、圭一が床に吐血した血文字で何かを書き記す――"犯人はコガネ"。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジェイクス・ライアー
青年の妹を探しに遊戯場へ
自分にとって馴染みのない音楽に眉を顰めるも、青年にとっては心躍るものであるらしい
世代間ギャップというやつだろうか?
他愛もない会話は続き、目に入った話題を彼へ振る。
ギャンブルの経験を問えば麻雀くらいはと笑う
大学生らしいことだ。
ゲームコーナーを物色すれば虹色に光るダーツの筐体
ひとつ、何か賭けて勝負をしよう。
若いのだから我儘を言うぐらいが可愛らしい。…が、そんなものでいいのかと思わず問うほど些細なものだ。
ふむ。
まぁ、負ける気はしないがね。
驚いた。
自信が無さそうな割に、センスがいい。
生来の運動神経か、その集中力によるものか。
面白い。
さあ、果たしてどちらに軍配が上がるだろうか?
●他愛のない延長線
こつ、こつと階段を降りる。
そこに広がるのは居酒屋の地下にしては賑やかな音と、光景だ。
ジェイクス・ライアーは流れるように眉をひそめる。
遊技場、とは聞いた。だが、此処まで張り切った作りであるとは思いもしなかったのだ。
馴染みの薄い曲が耳に届く。ベースの音が腹に響く。
落ち着いた曲、とは程遠い若者向けの曲だ。
『やっぱりこういう曲はいいね』
青年の妹を探すため、こうして訪れたわけだがどうやら心躍る曲であるらしい。
「ふむ。世代間ギャップというやつだろうか?」
『好む曲ひとつとっても、個性がでるよね。妹も、こういう曲が好きなはずだよ』
本当に好きかどうかは、聞いてみないとわからないけどね。
「若者同士で好む共通音楽だって、あるだろう」
他愛ない会話は続く。
競馬のシステム、鬼ごっこする蝶の翅。忙しない。
『遊戯施設っていうからポーカーとかの賭け事だらけなのかと思ったよ』
「ポーカー台なら、あそこに見えるな。此処にも無いわけではないようだ、恐らくは要望に答えて行われるんだろう」
トランプを切る店員さえ居る。あれもまた、仕事のひとつなのだ。随分と、サービス精神に力を入れている店だとジェイクスの関心を誘った。
誰が触り誰が遊ぶかわからない道具の清潔さは、評価点が高い。
「ギャンプルの経験は?」
『麻雀くらいかな。賭けといっても飲み物の缶一つ分くらいのソレなんだけど』
「……ふふ」
『おかしいこと、いったかな?』
ジェイクスが零した笑いに、青年は不思議そうな顔をした。
「いいや。大学生らしい、綺麗な遊び方だと思っただけさ」
おや、とジェイクスの中で馴染みのある筐体を見つけて歩きだす。
青年は物珍しそうについてきた。
「ゲームコーナーの一角、隅の方に在る場合があると思ったが……」
虹色に光るダーツの筐体。
人はまばら。やはり、こういう場では大人数で騒ぐ方ばかりに目が向くようである。
「うん。ひとつ、何かを賭けて勝負をしよう」
『勝負?何かか……うーん、お酒をもう一杯おごって欲しいとかかな』
「若いのだから、もっと年上に我儘を言うくらいのほうが可愛らしいと思うのだが」
遠回しに、ジェイクスは言う。
"そんなものでいいのか"と。
『賭け事をするなら、損得が出ても笑えるくらいじゃないとね』
彼の要望は些細なもので、なおかつ楽しもうとする、姿勢が見えた。
スポーツマンシップに則った、清々しいものであった。
「ふむ。まあ、負ける気はしないがね。単純なカウントアップで行おう」
軽く口頭でルールを説明すると、青年はふむふむと興味深そうに聞いていた。しばらく大人しくジェイクスの話を聞いていたが、青年はぼそりと、なんとなくは分かるよ、と頷きながら言ったことでゲームは流れるように開催される。後は投げて見せればいいだろう。
「……っ」
狙い通り、ブルとトリプル、ダブルとジェイクスのダーツは流れるように突き刺さる。
『……おお!』
「さあ君の番だ」
場を譲り、青年がダーツを持って立つ。
――驚いた。
青年はあまりにも綺麗なフォームでダーツを投擲していた。
残念ながら、一投目は距離感を捉えきれずに外していたが――二投目はダブルへと吸い込まれる。
「自信が無さそうな割に、大胆に攻める。ああ、センスがいいな」
『そう?真面目に褒め言葉を貰うと、やっぱり嬉しくなるね』
――生来の運動神経か、その集中力によるものか?
――……面白い。
「ダーツは一人で行うより誰かと競う方が面白いもの。これは勝敗が分からなくなったな……」
――さあ、果たしてどちらに軍配が上がるだろうか?
ジェイクスと青年のゲームは、点数の差が極端にはでなかった。
引き離せば追いつき、追い越されれば追い抜く。
かくして――僅差で勝者が決定する。
『――の、教えが良いからだね!』
やはり、一部の言葉は聞き取れない。
勝負は結局、青年が勝利した。まるで溢れんばかりの太陽のような温かい笑みをジェイクスに向けて、とても嬉しそうな姿を魅せるのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ミランダ・モニカ
【残煙】
1番
競馬で遊ぶ
アドリブ連携歓迎
煙草で一服(キセル×)しつつ
ゲームに集中する嵩矩を眺める
アタシに賭け事を挑もうなんて
こりゃかなり酔いが回ってンな
調子こいてカパカパ飲むからだよ全くもう
ま、いいか
やるからには真剣勝負だよ
分かってるだろ
と言いつつ
アタシは技能もUCも使わない
カンだけで良い
人の生死が関わる依頼じゃないんだ
何が何でも『奪りに行く』必要はない
お遊びを楽しもう
じゃ、1番で
目が気に入った
『後ろから差してやろう』っていう気概があるね
いけ
そこだ!差せエ!
野次を飛ばしながら声援を送る
盃を傾けながら舞う蝶を見て
夢か現か幻か、ね
洒落てる店だ
ゲーム結果がどうあれ
これから贔屓にするとしようか
斯波・嵩矩
残煙
SPD
5
アドリブ連携歓迎
あっこれ競馬だ!
わーいやりたーい
ソシャゲで培った俺の力を観よ
酒の残る盃片手にお馬さんを『観測』開始
【情報収集】して【学習力】を測り
【流行知識】で他参加者の人気を確認
真剣勝負って言われちゃあね
熟練ギャンブラー相手はきついけど
使えるもの全部使って勝つぞ
ウンこの子が強そうだ
えっと、名前なんだっけ
ひらひら白衣風のお衣装かわいい
俺の好きなゲームの推しに似てるから
タキちゃんって呼んで良い?
がんばれえ
タダにして貰ったら更に飲むんだあ
俺がミランダにオゴるんだあ
頼むよタキちゃーん
わあ追いつかれる!
負けるな!
ミランダどした?酔った?
おセンチな顔してない?
空気に飲まれるタイプじゃないのに
●響けふぁんふぁーれ(幻聴)
「あ、これみてミランダ。競馬じゃない?僕これ知ってるよ、わーいやりたーい!」
斯波・嵩矩が思い描くのは、ソーシャルゲームの中で元気に走るお馬さんの姿である。可愛い仕草と、表情が実に応援したくなる、とは勿論ゲームの話だ。
培った力は、きっと生きる!ミランダにそう語りかける嵩矩の視線は戦う調教師のソレに近い。
コンディションは万全そうだ。腕がなる(気がする)。
「へえ、競馬ねえ……」
煙草で一服しつつ、ミランダ・モニカは深く深く煙を吐く。
『ゲームが始まります。参加いたしますか?』
「うんするするー!」
『では、一着になるモノを予想しご提示ください』
スッと渡してくるのはペンライト。押しボタンで色が代わり、軽く揺らすと数字が光の中に表示される。
ペンライトアート技術を組み込まれたペンライトは、色を灯すだけでも振って応援するのも良いという。
「予想かあ、どの子が勝つか……」
ぶつぶつと、嵩矩は呟きながらレース参加する頭脳戦車のコンディション状況を見極める。
酒の残る盃片手に馬を"観測"開始。
「事前に開示されている情報を見てみると、一番人気で勝率が高いのは4番のようだね」
飛び抜けた勝ち星は、黒い機体の店員が極端に稼いでいるようだ。
今回のレースでも、ダントツのオッズが掛けられている。
「必ず勝つ馬なんていないんだよ、ミランダ」
くい、と口に含んでゆっくり飲む。
「夜に走るとなれば話は変わってくるだろうし、外の天候もモチベーションも変わりそうだし」
情報を収集し、学習力を応用してここ一番という流行知識で導き出す。
「うん、勝率的には、このコがいいなあ。熟練ギャンブラー相手はちょっときついかもだけど」
嵩矩を眺めるようにして、ニヤリと笑うミランダはいる。
「アタシに賭け事で挑もうなんて」
――こりゃあ想定以上にかなり酔いが回ってンな。
良い酒が並んでいたという証拠、とは満足げに。
「調子こいてカパカパ飲むからだよ全くもう」
「ま、いいか――やるからには真剣勝負だよ」
分かってるだろ。ミランダの力強い目には、気持ちが籠もっていた。
同じ機馬に番号を掛けるだなんて、面白くない――と考えているのは明白。
しかし、ヤるからには持ち得る技術、使える手段で特定を目指すのはゲームとして成立しない。ミランダは真面目だ。生きる年月から導き出される、この場で一番有効なカードは――。
「カンだけで良い」
人の生死が関わる依頼ではない。
これは賭け事ではあるが、突き詰めていけば遊びの一種。
どこにでもある誰にでも許された穏やかな日常のひとつ。
――何がなんでも奪いに行く必要はないんだ。
――お遊びは、満喫するように楽しもう。
「そうさね、アタシはじゃあ、一番だ。目が気に入った」
「どんなところが?」
「"後ろから差してやろう"という気概があるね」
――アンタ、そういうのが得意なんだろう?
ミランダにウィンクされて、ぶるぶると体を揺すってやる気で返した1番の馬は、やる気十分。
AI頭脳はフル回転で試合でその通りの結果になるよう予測演算プログラムを駆け巡らせる。
「ええと、俺はあの子。えっと名前なんだっけ……」
似たような子を覚えているんだ、という嵩矩は自分が呼ぶ愛称の方しか出てこなかった。
走る馬には素敵な名前が付いているというのに。
『好きな名称で、応援いただけましたら幸いです』
「あのね、ひらひら白衣風のお衣装可愛い俺の好きなゲームの推しに似てるんだよ」
『推し』
「うん。タキちゃんって呼んでいい?」
『了解しました。"タキ"。貴方の推しの代行として、"超光速の粒子"を纏い駆け抜けましょう』
――え?
嵩矩の推しの話は姿だけのはずだが、なんだか馴染み深い単語を聞いたような。
そのAI頭脳は、有能である。
『いちについて、よ~い――どん!』
とてもアナログな合図から、スターティングゲートは一斉に開く。
どだだだだ、と掛けるサイボーグ馬たちが勢いよく走り出した。
スタートの合図と共に強気の逃げを発揮するホワイトホース(仮称・3)。続くは愛称タキちゃん(5)。
中堅位置で力を蓄えていたバトルシスター(仮称・1)は収まるべきスペースに身を滑り込ませる。
後方グループに収まるブラックホース(仮称・4)とブルーサイボーグ(仮称・2)がその背中を追いかける。
「がんばれえ!」
床を走る蹄鉄(鉄くず)の音。
砂でも芝生でもなく、床。軽やかでありながら、床を踏む音はよく響く。サイボーグ馬たちは機械の体のブーストを使わない。
身体強化を行った自らの足で走るのだ。ひらりひらり体色に合わせた色の蝶の翅が彼らの背中で舞うので、まるで天馬の様相だ。
普通の競馬に無くて、この競馬に在るもの――幻想的な姿である。
「頼むよタキちゃーーん!」
「いけ!そこだ、差せェ!」
野次を飛ばしながら、さあ勝てと声援を送る。
ぐんぐんと速度を上げて走る機体が、徐々に順位と位置を上げていく。
「タダにして貰ったら更に飲むんだあ」
「まーだ飲むのかい?」
「俺がミランダにオゴるんだぁ!」
おや、と挙をつかれたのはミランダだ。
オゴった分で、奢るという。
――このコというやつは……!
最後コーナーを超えた後から、5と1の一騎打ちが始まる。
「わあ追いつかれる!強いなバトシス!タキちゃん負けるなー!」
「そこだあああ!!」
ジリジリと、競り合うニ機の競り合いだ。
追い抜き、追い越し、張り合う――。
怒涛の勢いで走る彼らの進行方向にゴールは存在する。
息を呑む秒数の長さは無限の長さ。
試合の終わりは必ず存在する――ごぉおおおる!!
きぃいんと耳に残響を残す響き渡るマイクアクション。
映像の確認、なんてするほど遠くで駆けていたわけではない。
猟兵の目にもその様相は己の目で確認できた。
勝ったのは、頭一つ分の僅かな僅差で、5番、タキちゃんだ!
自分の分の盃を傾けながら、空間を縦横無尽に舞う蝶の姿を見てミランダは不思議な店の様相を改めて視る。
賑やかな"華(人)"の中を舞う幻想。本物か、夢幻か分からぬ蝶の姿が見えるのだ。
「全く、洒落てる店だ」
――夢か現か幻か、ね。
ゲームも酒も、レクレーションの範囲に納めて現実感を狂わせてるって寸法かい?
良い店の運用じゃないか。
夜更け過ぎまでどっぷり見せようってわけだろ?
――この世界ならではの生き様、ってヤツなのかねえ。
「ミランダどした?酔った?おセンチな顔してない?」
嵩矩が覗き込んでくる。
レースの結果はもうすぐだ、もっともっと応援して見届けないとだよ。
――空気に飲まれるタイプじゃないのに。
「ああ、これから贔屓にするとしようと思っただけさ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダンド・スフィダンテ
ゲームだってあれ楽しそう!あれやりたい!と楽しそうにお願いされれば断れる筈も無く
じゃあ尻尾取りゲームするか!と応える事に。
やるなら本気で!よーし先ず作戦を…ってまってミューズ足はっやっ!?何処行った!?あ!居た!
でもあの様子だと俺様だけで取るしかなさそうだな……とりあえず挟み込まれる訳にはいかないから、えーっと
(知将型の戦い方をします。上手く障害物を使った立ち回りとか)
(勝ち負けは拘りませんが全力で挑み、人を傷付けない事を優先します)(幻覚のミューズが助けてくれるならそれを受け入れて上手く動くでしょう)
つ、疲れたぁ……!でも楽しかったな!
……それで、どうだろう?
家族の姿は見つかっただろうか
●妖精のように強気で
『ほうら!ゲームだって!』
遊技場へ降りていく階段を足早に降りていく彼女は、一足早くフロアに足を踏み入れた。くるり、とダンド・スフィダンテへと女性は振り返る。
きらっきらの瞳を輝かせて、遊び放題だ!と喜ぶ正真正銘子供のよう。
兄を探しているのは本当だけれど、それはそれ、これはこれで楽しそうな場所じゃないか。
それはとても"夢のよう"。
『あれ楽しそう!あれやりたい!』
尻尾をヒョロリとつけて走る客と、倍の数を引き連れて尻尾を狙う店員たち。わあきゃあと悲鳴と、楽しむ声と、異種格闘技戦のような殺伐様相が同居しているイカれたゲーム風景。
ルールはあるが、最低限だけ護れば何でも有り。楽しそうに誘ってきた彼女が興味を示したのは"しっぽ取りゲーム"。普通に普通を勤めれば誰も怪我したりしないゲームを楽しめる事だろう。
「よーし、尻尾取りゲームするか!」
ミューズの誘いを断れる筈もなく、ダンドは店員に参加の旨を伝えた。
『かしこまりました。……二名様のエントリー、ですね。了解しました。では此方は4機でお相手をさせて頂きましょう』
頭脳戦車たちはにょろりん、と長い狗の尻尾を自分たちに取り付け、ついでに1~4のナンバーが印字されたゼッケンで着飾る。ゲーム参加している兎機械との区別用だ、との説明をダンドはうんうんと頷く。
「やるなら本気でだ!よーし、あっちは機械っ子で小柄だから作戦を……」
『先手必勝よ!』
ぱたぱたと彼女は先に駆けていってしまった。
付けられたロシアンブルーな猫尻尾がひらりと揺れて、すぐ見失いそうになる。
「って待って待って!足はやぁあ!?」
ダンドは思わず驚いた。なんて軽やかに走るんだ。自分用の虎柄猫尻尾を揺らしながら、今走り抜けていった方へ駆け抜ける。
――あ、居た!
見失ったのは僅かな時間。
見つけた彼女は、ネコのようにひらりと身をかわし頭脳戦車のチームプレイを躱していた。
あざやかな回避行動。楽しんでゲームを遊んでいるのが分かる。
――ミューズを囮にするのは、男として苦々しい気持ちだが……!
「でもあの様子だと、全機の狙いはミューズに向いているな。俺様だけで取るしかなさそうだ」
華麗なネコのワルツに誘われたワンコたち。
その尻尾は無防備だ。ゆれて、ゆらされて。たまに彼女も手を伸ばしてみるけれど。一歩届かず逃げられる。逃げる尻尾と追われる尻尾。
なんて可愛らしい光景だろうか。
「えーっと」
挟み込まれるような連携を躱し続ける彼女もなかなかだが、ダンドの方も挟まれては苦しい。なんといっても相手は4機。
すぐさま減らしていかなければ、疲れた所を襲われる!
「……ああ。ネコに近づくワンコ共には、奇襲が一番だ!」
ダンドは身を滑らせて、一般客が歩く道に紛れ込み流れるように身を潜める。
息を潜めるネコ、それはまるで虎やチーターの様相だ。
狙いすまし、素早く背の高いゲーム筐体に手を伸ばし、倒さないように気を付けて一気に登る。
――壊したりしないようにっ、と!
案外ずしりと重たい筐体であることに、ニヤリと口角がアガる。こうして上から状況を眺めれば、チームプレイの穴が必然と見えてくるもの。
――ははーん?1と2,3と4がチームを組んでいるな。
――右専用、左専用と割り振られているな。
同じ攻撃、同じ動作。店員同士の連携は精密機械のように"鑑合わせ"だと見抜ける。
――なら、狙いは2と4。片側から潰すべし……!
「賢い君たちなら背後がガラ空きなら何が起こるのか、分かるだろう?」
素早く筐体から降りて、パターンを見切って背面を取り――ダンドは尻尾を一本取り上げた。
「ミューズ一人を相手に、大人数は卑怯だろう」
戦闘知識を活かして、そら、素早く二本目を奪え!
――ほら、こうすれば均等な連携が失われるだろう。
『わあ、凄い!手が早い!』
「言い方!」
クスッと笑える会話を彼女と交わしながら、あと二本の尻尾を追うダンド。
――勝ち負けはこだわってないが……!
――取れるのなら、取りきりたい!
全力で挑み、人を傷つけない立ち振舞を心がける。
彼らはダンドより小柄で仕事中の頭脳戦車たちだからこそ、穏便に。尻尾だけ取れればいい。
『よーし頑張って!こっちから挟み撃ち!』
「いいや、その尻尾とりはミューズに譲ろう!」
パターンを見切っているダンドは、全力で走りがしっと二機の頭脳戦車を捕まえるように抱え込む。じたばたと暴れるが、ダンドの怪力で囲われては逃げ出すのに苦労する――。
『わーい!あなたたちのまーけ!』
『とても素晴らしい連携でしたね……!』
負けを認めた頭脳戦車たちは、心持ちしょんぼりとした声色で勝利者を褒め称える。
「いやいやぁ、つ、疲れたぁ……!でも楽しかったな!」
『うーん、たくさん走ったものね!』
よく動き、よく走った。
こんなにスピードと力を求められる平和な遊びは久々な気がした。
「……それで、どうだろう。よく走っていた間に家族の姿は見つかっただろうか」
『……あっ』
「もしかして?」
彼女は照れ笑いを浮かべていた。
その表情が意味する所をダンドだって察する所。
遊びに夢中になりすぎて、周囲が見えなくなっていて――兄探しを瞬間忘却していたらしい。兄とやらが、駆け回る妹の姿を見つけて目星をつけて居てくれたら――いいのだが。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『二次会パーリナイ!』
|
POW : 思いっきり夜更かししてあれこれ楽しむ
SPD : 面白そうな店やイベントに顔を出してみる
WIZ : 飲み物と会話を楽しみながらのんびり過ごす
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●二次会バラフライ
きら、きらと輝く燐光は誰の目にも輝かしい。
遊技場で遊びまくった後、喋り倒した後だって、夜の時間はまだ続く。
外を覗いても、まだ暗い――朝はまだこない。
朝が満を持して遅れて光と共にくる前に。
この時間を楽しみ尽くしていこうじゃないか。
夢か幻か、現実か。そんな明確な境界線は必要か?酒に酔って混ざる真実か、あり得ざる夢か――君の受け取り方でそれは形を変えるはず。
曖昧だから良い。『夜の帳』は君たちを、『胡蝶の夢』と夢の淵で手招くのだから、夢でも何でも浴びるように見ると良い。ふわふわと、店内で飛んでいるごく普通なサイズの蝶だって喚べばその翅を休めに来る。
それは本当に蝶なのか。それとも幻覚か。
どちらだって良いじゃないか。今日この時間はもう少し続くのだから。
バルタン・ノーヴェ(サポート)
「オー! ワタシはバルタン・ノーヴェ、デース!」
日常を満喫しマショー! アドリブ連携歓迎デース!
普段の口調:片言口調(ワタシor我輩、アナタ&~殿、デス、マス、デショーカ? デース!)
得意な技能:【奉仕・料理・掃除・裁縫・救助活動】デスネ!
たぶん戦闘はないと思いマスガ、バトルの時は元気に暴れマスネー!
料理が得意ですが、奉仕や救助活動(介護や子守り含む)といったメイド・アクションも可能デース!
にぎやかしとしてワイワイはしゃいでもOK!
こっそり裏方で労働に勤しんでもOKデース!
他の猟兵の方々と楽しめるように努めてマース!
公開UCやバルタンズ、アイテムの使用も問題なくOKデスヨ!
よろしくデース!
花厳・椿(サポート)
白い蝶という魂を蝶に変え、自分の一部として取り込み力をつけてきた妖怪
・口調
一人称:椿
二人称:あなた、~さん
なの、よ、なのね、なのよね?
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●この氷が溶けるまで
"夜の帳"の店内は、深夜の色を深めた頃に最高の活気を溢れさせていた。
活気の中心に紛れ込んだ誰かが居たからだ、と店の近所でも噂になっている。
中心人物バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。
彼女の姿は客としてではなく、店員に混ざって働いている。
奉仕に掃除、料理が好きなバルタンにとっては素晴らしき職場環境であった。
「短期集中バイト雇用とかどうでショーカ!」
賑わいに火を付けたバルタンが、店長へ直談判している姿は周囲の頭脳戦車を大いに驚かせたものである。
『あー……いいですよ、手が多いことは助かります』
「炊事から得意分野で頑張りマース!」
頭脳戦車より軽やかに満面の笑みで従事する姿は適応力の高さを大いに買われた。
『ねーちゃん、オーダー頼むわー』
「はーい喜んデー!」
受けたオーダー、その料理を作るのもバルタンである。注文を取るのも、作るのも、配膳するまで全てひとりで行うスーパーメイドであった。
「モラルの欠けたこの世界で、輝ける夜の蝶にナリマショー!」
――とはいえ、もともと働いている彼らの仕事を奪うのはよくないデース。
――適度に、仕事を割り振りするところまでデショウ。
注文ラッシュ時には最前線に立ち、厨房が大忙しなら調理場の切り盛りさえバルタンの管轄へ。
『胡蝶の夢、あちらの席に3本です』
「すでに瓶ごと冷やしてアリマス。グラスと氷を付けて配膳頼みマース!」
思いやりも添えて、次の客の元へ。
「……おや?」
ぽつんと座る、小柄な客が空中を飛ぶ蝶を凝視している。
「ふむ。ジュースの在庫は確かありマシタネー。ワタシの出番でショーカ?」
よおく冷えた飲み物を、よく冷えたカップに明けて。
バルタンは厨房から颯爽と客の元へ歩いていく。
ぱち、ぱち、金の瞳は瞬きを。
サイバーザナドゥのデジタルちっくな眩い色に、目が眩むよう。
花厳・椿(夢見鳥・f29557)の側を、モルフォチョウが飛んでいく。
じぃと視線で追いかけると、ひとつ、ふたつと蝶の数が増えてくる。
「椿を、ただ眺めに来たの?」
薄紫の燐光を残しながら飛ぶ蝶は、答えない。
夢か幻か儚げで、しかし生物感が垣間見えない。
「そこから何が見えるの?」
燐光を残して飛ぶ帳が、霞のようにすぅと消えた。
「休まずに飛んでいるのが、仕事なの?」
居なくなったと思えば椿の手元に止まる場所を求めて飛んでくる。
意志を向ければ気まぐれなのに、力のない翅は猫のように気まぐれだ。
「ああ、蝶とお喋り中デシタ?お飲み物はいかがデス?」
これ、ワタシからの差し入れですがどうでしょう。
バルタンはさり気なく相席するついでに、椿にも飲み物を勧める。
姿に合わせて、甘いジュースのチョイスである。
「このコたちは無口ね。話しかけても答えてくれないの」
「お喋り相手なら」
「ふふ、そうね。賑やかそうなあなたが来たもの」
手を差し出せば椿の手に、蝶は停まった。
質量はちゃんとあり、映像でも夢でも、偽物などでもなかった。
綺麗な翅を休めて、ひら、ひらと上下させている。
「此処からあなたのことも見ていたのよ。働くのお好き?」
椿は問う。誰かの為に進んで動いたバルタンへ。
「全力で雇用主の要望に応えるのは生きがいみたいなものデスねー!」
戦場でなら相応に。こういう場ならより気合が入るという。
「この飲み物はワタシが働いた給料分で賄われるので、お気になさらず!」
「いえ、そういうわけには……」
「誰かとパーッと過ごす分を働いていただけデスから!」
わいわいはしゃぐ為だとバルタンがいうので、椿は思わず微笑むばかりだ。
未成年が深夜に働いていた事、未成年が居酒屋に居ること。
ツッコミどころだらけな部分を指摘されないのは、"夜の帳"の特徴の一つである。
「朝が遅れて来るまでは、此処はずっと"夜"だものね」
外が明るくなるまでは、夢幻を誰もが見ていてもいいものだ。
椿のおともだち、白い蝶がふわわと空中を飛び交い始める。
店の蝶、椿の蝶。白と青の蝶が会話の花を咲かせ綻ぶ。
「この飲み物、白いものを選んで見たのデスが、こういうのは……」
「ふふ。椿は白いが好き」
手にとって、口をつけてみるとパチパチと炭酸が弾ける。
甘いモノに弾ける夢を。夢見るサイダーは、二人の頬を綻ばせる。
からん、と溶ける氷が全て溶けるまで、お喋りするお供に君を添えよう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
マホルニア・ストブルフ(サポート)
◇口調:男性的
一人称:私
三人称:お前、呼び捨て
【だ、だな、だろう、なのか?】~よ、構わん、等
協力者には丁寧に接する。
◇行動方針:問題の解決
一般人がいれば保護が優先。
多少の負傷は気にせず行動。
◇戦闘・技能
知覚端子を張り巡らせ、情報収集しながらサポートしようか。
電子媒体はハッキング、戦闘はグラップル、切断、射撃系がメインだな。使える技能は使っていこう。
武器はレヴィアスクかアサルトライフル。移動や捕縛、足場に転用でグレイプニルを使うこともあるな。
UCはハッキング・UDC由来の呪詛を組み合わせて実現させる。詠唱は長いからな、有っても無くても構わんよ。後はよろしく頼む。
●土産話を手土産に
ふらりと立ち寄った居酒屋だらけの道の中で、聞いたひとつの噂。
近場の店で、色んな猟兵が遊んでいるという。
それも今夜、今現在進行系だという。酔っぱらい達の伝聞は早い。
――サイバーザナドゥのモラル崩壊に手を貸しているのでは?
マホルニア・ストブルフ(欠けた年代記・f29723)は笑う。
――店の賑やかさに手を貸しては居るんだろうが。
――どれ、私もひとつ向かってみようか。
不思議なサイバー居酒屋"夜の帳"への客が、またひとりこうして訪れる事になるのである。
開いた席、どこでもいいと聞いた上で、マホルニアは隅の座席に陣取る。店長によって入れ替えられた蝶が飛び交うファンタジーなパソコンの中のような拡張子が揺蕩う電子世界を、眺めるためだ。
マホルニアの髪の色が、反射して――周囲の青や輝き色に溶け込む。
――成程。知覚端子から、この世界は訴えかけているものなんだね。
多少の干渉がある。人為的に作り上げた世界、というのも夢のように何処か歪で不完全なのだろう。
"胡蝶の夢"。マホルニアの目が止まったのは、見慣れない酒の名前だ。
店で扱う酒の一つをオーダーし、手元にやってくるなりぐい、と喉へ押し込む。
「……ふうん、辛いワケじゃないんだな」
マホルニアは意外と飲みやすいと思ったほど。
ただし、酒のつまみに飲むものではない。
「あの子がいたら、こういうのをやはり欲しがったんだろうか」
気にかける顔は、よく食べるドラゴニアンの少女のことだ。
『なに飲んでるの?ねえねえマーニャー?』
――ああ、声まで聞こえるようだ。
酒の齎す夢幻。胡蝶の夢は、養子の像を連れてきた。
まるで本人そのものにしか見えないのに、ねえねえ、と感想をねだって来る。
「お酒だよ、お酒」
『あまいの?にがいの?すっぱいの?それとも、からいかなー?』
腹ペコ胃袋のドラゴニアンは、味の方が気になるらしい。お酒が欲しい、のではなくて。マホルニアの味の感想が聞きたいようである。
「そう、だね……強いて言えば、甘いかな」
『甘いのー!いいなぁ、マーニャ!わたしも甘いの食べたいなあ……』
「……」
『ちょっとー!』
ぽかぽかと叩いてくる養子の娘の背中に映える翼は、竜のツバサではなかった。厳密に言えば、普段見る彼女の翼で相違無いのだが――蝶の翅のように透けていて、マホルニアの髪のように色んな色を携えている。
まるで夢のような煌めきだ。
「まあまあ、普段から美味しいものを食べてるだろ」
ぶー、と頬を膨らませる娘はオーダーしてくれない事にポカポカとマホルニアを叩いてくる。
――成程ね、本物かもしれないし夢かもしれない、とはこういう……。
彼女がお酒を飲んだことで現れた幻なら、ポカポカと叩かれる実感は一体なんだろう。実に不思議な心地だ。本物のようで、違うと頭が認識している。
「朝が迎えに来たら、ちゃんと家で願いを叶えるから」
今は少し夢を見よう。今は一緒じゃなくても、普段一緒にいるような不思議な夢を――胡蝶の夢(酒)を片手に。
成功
🔵🔵🔴
ダンド・スフィダンテ
あ、と小さく呟いて、ミューズが駆け出す
少し離れた場所でお兄ちゃんたら私を置いて何してたのよ!とお叱りの声が聞こえて来た。
そこには、青年が一人と紳士が一人
青年は困った様に笑いながら謝っている
よくある事なのだろうか?流石は兄妹、直ぐに仲直りも終えた様だ。
紳士へ青年とミューズが頭を下げ、それを紳士が朗らかに受け取り二、三言葉を交わす。と、二人は改めてこちらに近付いて来た。
同じ様に頭を下げて礼をするので、つい二人とも頭を撫でてしまう。それを嫌がらないから、彼らの両親は自分と似たタイプなのかもしれない
それじゃあ、二人とも良い夜を。
こちらの言葉だったのか、あちらの言葉だったのか
瞬きをすればもう穏やかで華やかな二人は消えていた。
なんというか
ああいう子供達が居たら、きっと退屈しないんだろうな。なんて泡沫へ消えた夢に目を細めて
同じ様に二人を見送った紳士へ近付く。なんとなく、視線は合わせず笑う
どうだろう?もう少し飲んでいかないか
折角だからさ、どんな夢を見ていたのか俺様にも教えて欲しい。
●シュレーディンガーの足跡
通常階層の居酒屋、地下の遊技場。
人数が多いからこそ、聞こえるものがある。
夜遅くでも賑やかな店だ。時間の概念さえ忘れてしまいそう。
少し遠く、話し声が聞こえてきて、なんだか呼びかける声がする。
『……あ!』
聞き取れたミューズ――彼女が視線を送り、声をあげた。
どうやらなにかを彼女は見つけたらしい。
直ぐに行動に移し、ぱたぱたと急ぎ足で人混みをかき分けていくものだから、ダンド・スフィダンテはまた、彼女の姿を見失った。
向かっていったのは、ダーツ台の方。
耳を澄ますと彼女の声が聞こえてくる。
『ちょっと!お兄ちゃんったら私を置いて何してたのよ!』
結構大きな声で、見つけた人物に声を掛けているらしい。
『ダーツだよ?』
『ダーツ様になってるね!うん見たら分かるけど!』
そんなに楽しそうな事にどうして私を誘ってくれないのよう!
彼女の言い分は最もだ。逸れたのが彼女か、それとも兄のほうか。
どちらにせよ、兄妹で過ごす時間をこんなに別々に過ごしているのだからお叱りの声が飛ぶ方へ、ふらりと遅れてやってきたダンドは、目を丸くする。探し人その人らしい青年と、よーく見知った紳士が一人。
『ああ、このコが妹だよ。似てるでしょう?』
青年は、紳士にも妹にも困った様に笑いながら謝っているようだ。
「そちらにも頼もしい保護者が付いていたようだ」
「……ああ、心配は無用の事だったようだな」
紳士と二人、ダンドは納得と安堵の気持ちがあるだろう。
彼女のそして彼の探し人がひとりぼっちで泣き明かしていなくてよかった、と。
ぽかぽかと兄の胸を叩く妹の姿は見つけて嬉しい、という気持ちとどうして!という憤り。
二重螺旋を胸に抱いた複雑なものだったのだろう。
紳士と共に遊んでいた兄は、妹に何をしていたかを説明する。
ダーツ勝負に勝利をつかみ取り、とても満足げな顔をしていた。
『教え方が良いからだよ、絶対』
『ええー!私も見たかったなあ……』
『今度一緒にやろうね。約束』
『うん!』
――流石は兄妹、直ぐに仲直りと約束を取り付けるとは。
一通り話し終わったのか、兄と妹は今度は紳士の元へ近づいて、おもむろに頭を下げる。
『お兄ちゃんと私を探して下さっていたようで……!』
「いいや構わない。夜の時間を過ごす、頼もしい存在だったよ」
本当に何気ない話だったと、紳士は語った。
飲み屋で偶然誰かと席を共にするにはこれくらいで丁度いい、と。
『……ありがとう、――。此方だって楽しい時間だったよ?』
「それこそ狡い大人がする"寂しさ"と"不安"への対処法だ。覚えておくと良い」
さあ頭を上げるんだ。紳士が朗らかに喉を鳴らして笑いながら、二人の気持ちを受け取った。
細かい事は言いっこなしだ。終わりが良ければ全ていいのだから。
『……そうそう!』
二人は改めて、ダンドの方へもやってくる。
二人揃うと金髪に赤目が揃って見える――ああ、やはり誰かの面影が、見えるような。
『それから改めて、ありがとうとご迷惑をかけてごめんなさいを!』
『妹が大変お世話になっていたよね……?』
同じような同様な頭の下げ方に、ダンドの頬は緩む。
下げられた頭を、平等にわしゃわしゃと撫でてやれ!
「俺様の気持ちはこう!」
二人はそれを嫌がらずに、受け入れて。ダンドがやめるまでされるがままだった。
――彼らの両親は自分と似たタイプなのかもだなあ。
「無事に見つかったことだし、朝が来るまでは二人で過ごしなよ?」
「そうだとも。まだ夜だ」
目をキラキラ輝かせた妹と、やはり笑っている兄は頷いて肯定を示してみせた。
ひらり。ひらりと4人の間を電子の蝶が、夢と現実を隔てて飛ぶ。
此処から先は現実と、夢は別の道へ入り込む。
蝶の導きに従うなら一緒に居られるだろうが、それも"胡蝶の夢"が効いているうち。
夜が明けたころには、夢は幻の中へ消えてしまう――かもしれない。
『――、ありがとう』
『■■、それじゃあ二人共良い夜を』
手をふる妹と、ぺこぺこと頭を下げる兄はどちらも似たようにへらりと笑っていた。
穏やかで華やかな二人は、瞬きするように蝶の燐光のようにふわ、とデータが霧散するように消える。
「賑やかな子たちだったなあ」
「"胡蝶の夢"を飲んだあとから見えていたが、不思議な者たちだったな」
「なんというか……ああいう子供達が居たら、きっと退屈しないんだろうなあ」
なんて泡沫に消えた夢に手を伸ばして、何も居ないことを確認する。
同じ様に、同じような夢と居たらしい紳士にハハ、とくすぐったそうに笑う。二人を見送った紳士も、どことなく笑っている気配が在る。
視線は合わせずとも、考えている事は似たようなところだろう。
「どうだろう?もう少し飲んでいかないか」
提案は承諾の返事が返ってくる。子供相手に飲み比べは出来ないから、少し物足りない気がしていた、と。
「ほほう。折角だからどんな夢を見てどんな話をしたのか教えて欲しい」
夢と夢をすり合わせて、シュレーディンガーの残した音を共有しよう。
居たはずで、いない。淡い夢を目撃した同士の話を。
夜の帳が落ちている時間の中に――朝が遅れて、くるまでは。
子供は子供、大人は大人の時間を過ごそう。
酒と蝶と、夢と現実。曖昧な側面を酒の肴に、話をしよう。
彼女が■■(パパ)なんといい、紳士が聞き取れない音――(父さん)をどう受け取っていたのかを紳士はどう考え、そして聞き取れたのか、とか。
話すことは沢山だ。出会った時間から、今に至る時間まで積もる話は数多い。紳士は笑い、それもいい、と席と選びダンドを呼ぶ。
閉店は朝がやってきたら順次。
蝶が見えなくなったなら、閉店間近ラストオーダーの合図。
夢は夜に見るべきもの。
現実は日中にこそ見るべきもの。
『また曖昧な夢が欲しくなったなら、またの来店をお待ちしています』
ひとつ、また一つ、サイバーファンタジーな空間から電子の帳が消えていき――いずれ店の中の電気が消える。
蝶の輝きは"夜の帳"の向こう側に、隠れてしまったことだろう。
夜が慌てて戻るまでは、――不思議な時間の余韻に浸るといいだろう。
不思議な店は、次回探してみても見つからないかもしれない。
"胡蝶の夢"というのは夢幻のように店の場所を変えるらしい――噂を信じるかどうかは、キミ次第だ。
大成功
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