●__世界は今日も狂っている。パソコンの画面に報告書らしきものを打ち込みながら、男は呟いた。何処でだって人は死ぬし、弱者は顧みられることすらなく虫けらのごとく潰される。
至って平穏な昼のオフィスにも、その実狂気は蔓延しているのだ。上司の機嫌が悪い、ただそれだけの理由で今俺は、このおびただしい数の文字と何時間も見つめ合い続けている。
終わるのはどうせ終電間際だ。バカバカしい労働のせいでとうに腐った脳は、画面の上で動き回る小さな虫たちを追うだけで精一杯だった。
仕事が終わる。終電に駆け込む。毎日それの繰り返し。もういい加減、俺自身まで腐敗しそうだと思ったが、その日は違った。
そいつは池袋駅の※※線ホームに居た。「も゛」だった。何故かは俺にも分からないが、「も゛」なのだ。直感的にそう感じた。「も゛」は、歪んだ顔で、不定形で、絶え間なく姿を変えながらこちらをじっ……と眺めていた。
俺以外のやつは気付いていない。俺だけが「も゛」と……「も゛っど…も゛」。ああ、そうだな。この世界はバカらしいよ。
「も゛っど……も゛か゛あ゛」。ああ、憎い、恨めしい。あんな会社、なくなってしまえばいい。「も゛っど……ち゛ら゛お゛い゛て゛」。ああ、今いくよ。
「も゛も゛も゛……も゛も゛…」
そうして俺は「も゛」とひとつになった。
●「予知ってこんな感じなんですねぇ。初めてだったのでちょっとビックリしました。」
集められたあなた達猟兵の前で、グリモア猟兵の蓮池・大輝(のんびり屋の羊飼い(?)・f35542)が声をあげる。
「憑依型のUDCです。あのサラリーマンの男性は、波長があってしまったのか、元々そういうモノに好かれやすい体質なのか、不幸にも憑かれてしまったようですね。アレに憑かれると、恨みや憎しみの感情が無限に増幅していく、そんな残酷なやつですよ。」
大輝は大曲ステッキをグルグルさせながら続ける。
「今はまだ※※線ホームから出ていないようですが、周りに引き寄せられたUDCの集団がいます。UDCエージェントの皆さんが該当のホームとその周辺を隔離してくれているので、一般の方に被害が出る前に、皆さんで対処をお願いします。」
最後に、と大輝は付け加える。
「彼はまだUDCに成り立ての、所謂UDC-HUMANです。完全に取り込まれる前に倒すことが出来れば、元の人間に戻りますので、なるべく傷つけないようお願いしますね。」
そして大輝が回していたステッキを一振りすると、あなた達を取り巻くような竜巻が起こる。竜巻に乗り転移する直前。
「これは僕だけの問題なのですが、何だか嫌な予感……というよりは、既視感があるんですよね。」という独り言が聞こえた。
たゆたテディ
●2度目まして、たゆたテディです。初シナリオを不完全燃焼な形で終わらせてしまったため、UDCで2本目を。
とはいえ、ホラー(のつもり)なので文体は前回とかなり変わると思います。ご留意ください。
『1章』
駅ホームの真ん中にいるUDC-HUMANに群がる「傍観者」を倒すことが目的です。UDCエージェントがホームを中心に駅構内を隔離してくれているので、一般人が巻き込まれる心配はありません。ですが数が多いので、倒さないとUDC-HUMANまで辿り着けません。
『2章』
ナニカに憑依されてUDC-HUMAN化したサラリーマンとの戦いです。中に居る彼を傷つけないような戦い方にはプレイングボーナスが入ります。
『3章』
彼を苦しめたモノに鉄槌を。詳細は断章で明かされます。
●今回は全ての章の前に断章を挟みます。受け付け期間などは随時タグでお知らせします。
不慣れは相変わらずなので、申し訳ないのですが連携はお2人まででお願いします。詳しくはMSページをご覧下さい。
至らない点あるかと思いますが、何とぞよろしくお願いします!
第1章 集団戦
『傍観者達』
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POW : 静観
【自身から溢れ出続ける赤い液体】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
SPD : 観戦
【自身の身体の一部】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【自身は弱体化。対象の装備武器を殺戮捕食態】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ : 観賞
【対象の精神に「生きる力」を削ぎ落とす衝動】【を放ち、耐えきった、或いは回避した者に】【強制的に自身の力の一部】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●UDC-HUMANが「も゛」と声をあげる、その周りをびっしりと囲むモノがいた。傍観者たち。視線、視線、視線で射抜き、囁く声で闇を呼ぶ。
はて、視線?あなた達猟兵は、確かに傍観者たちに視られていた。だが、彼らには顔がないのだ。あなた達は確かに囁く声を聞いた。だが彼らには口もない。
彼らは本当に視ているのだろうか?それとも、それは誰かに擦り付ける為の囮?そもそも、猟兵たちはいつから当事者になった?
あなた達は分からなくなる。自分たちが本当にあのサラリーマンを助ける必要はあるのか?周りにいる他の誰かが……。
だが、それは赦されない。傍観者たちが音も立てずにあなた達に迫る。どうやら生け贄を君たちと決めたようだ。倒さなければ。
畍・ショウ
「…UDC生物は、よくわからない。何故こんなことをしているのか…。娯楽のためか?それとも、生きるため…?」
傍観者たちと対峙し、1人呟く。顔は被ったフードで隠れ、よく見えない。
「…生きるためだったのなら、申し訳ない。お前達も"生きている"もんな。
だが、今回はこちらのエゴを優先させてもらうとしよう。一応、仕事だからな。」
彼はフードを取り走り出す
左手に持った鉄パイプで傍観者たちを薙ぎ払っていく。敵から「鑑賞」されるだろうが、当たったならば耐えようとする
絶望と慟哭の日々を過ごし、夜を漂う者として生きる彼は、もうとっくの昔に生きる力を失っていた
(それに叫び声が聞こえる気がする。何故か俺には無視できない)
●闇から伸びる手
蠢く傍観者たちを前に、畍・ショウ(夜の放浪者・f36360)は呟く。
「UDC生物はよくわからない……。何故こんなことをしているんだ?娯楽のためか?それとも……生きるためなのか?」
傍観者たちは、或る意味では生きるためにサラリーマンを、猟兵たちを、そして君を視ていた。自らを“生かす”為には、他者の犠牲が必要だと考えでもしているのか。何時だってみんな三文芝居で騙し合い、生かすことで相手を殺す。
君も“鑑賞”されている。(ほぅら、哀れな犠牲者だよ。またやってきた)(フードを目深に被っちゃってさ、ふふ、僕らの視線が怖いのかなぁ?)。囁く声。(ねぇねぇ、あそこに倒れてる人がいるよ。助けてあげなよ)(だって君は猟兵なんでしょう?私たちは無力な一般人だもの)。傍観者たちは“生きている”。過去から目覚め、まるで明晰夢のような風景が揺らめく中でも、その瞬間は確かにそこに存在していた。
ざわめく駅のホームでは、誰もがみな哀れなのだ。互いを擦り付けあって、削れた方の負け。まるで子どものお遊びだが、それより余程残酷だった。ゲームのように簡単に増える傷は、その実永劫消えやしないのに。
だが、君はそんな絶望に慣れてしまっている。夜という名の闇を身にまとい、街という名の地獄を駆けることに躊躇もない君にとって、そんな囁きなど慣れたものだ。
だから君はフードを脱ぎ捨てた。隠すものなどもう無い。到底かないそうにないほど黒に馴染んだ“自分の存在”を、強烈に奴らに刻んでやるのだ。鉄パイプを鮮やかにふるい、その場に立ち尽くすだけの傍観者たちを薙ぎ払っていく。一打一打に籠るのは、果たして怒りか諦念か。それとも……憎しみ?
声が聞こえる。それは「も゛」の呼び声。いや?サラリーマンが最後に発した救難信号だったかもしれない。とにかく、君は無我夢中でホームの真ん中を目指す。せめての藁一本、君はその手を伸ばした。
成功
🔵🔵🔴
ジン・マキハラ
(そうか、コイツらはその通り傍観者なのか)
ホームに蠢く傍観者達をクロックヘイズで斬り捨てながらそう考える。先程から傍観者の群をぎ倒してはいるも一向に反撃らしい反撃がこない事に違和感を抱くも傍観者達の動きからその性質を理解していく
(誰かが不幸な目にあっても傷つこうとただ見るだけ、それは無関心でもあり好奇心でもあり自己防衛でもあるのだろう。この時代においては珍しくもないあり触れた普遍性だ)
だからこそ尽きない、いや核となってしまっている男性を助ければ消えるだろうが傍観者達は如何なる時でも現れるだろう。
「だが関係ない、現れるなら何度でも倒し続けるまでだ」
剣を持つ手に力を込め、再び傍観者の群を斬り裂いた
●傍観者効果は呼び水の如く
ひどく黒々とした“ヒト”のような人ならざるものたち。貌がある筈の場所から流れ出るのは赤く染まったアドレナリンか。呼び水の如くホームが充たされていく。そんな波のようなざわめきの中を、一陣の蒼が走る。闇の中での蒼き炎、その出処はジン・マキハラ(ブレイズ・オブ・マキナ・f36251)だ。陰鬱とした黒に、壮烈な蒼。神秘的とさえいえる動きで、君は傍観者たちを切り捨てる。傍観者たちはただ君を視る。耳障りな囁く声。
聡い君は考える。(コイツらはその名の通りに、傍観者なのか)と。そう、奴らは反撃という分かりやすい手段は取らない。ただ、視線と言葉で相手を刺すのみなのだ。
だが、時に言の葉一枚はどんな武器よりも重い一打と成りうる。ほら、君にも奴らの声が聞こえるだろう。(俺たちは何もしていないのに!人殺し!)(止めて、助けて、私も殺される!)。ああ、なんて愚かなのだ。無関心や自己防衛を超えて、それは最早暴力だった。
そして、視線は鋭い棘だ。奴らの貌から溢れる真っ赤な真っ赤な液体が、君の脳を掻き乱す。“静観”という名の治療。治療という名の同調圧力。“みんないっしょ”だと、“どうせだれかが”と、飢えた獣のような目で視据えてくる。君は冷静に対処すればいい。性質を見抜いた今となっては簡単だ、ただ無視を決め込むだけで済む。
そう、無視だ。たったそれだけのことが、誰かを救い、また誰かを壊す。だが、今の君にとっては、絶大な効果を発揮するだろう。君の記憶にこんなものを刻むべきでは無い。
しかし、君はそれをしなかった。蒼炎の覇気でもって、黒い炎を駆逐していく。屠ってもまた何処かから湧いてくる奴らを、それでも何度も倒していく。剣を持つ手に籠もる力は、救いたいという想いに呼応して強くなる。普遍性を切り裂く様に、深い深海へと差し込む一筋の光の様に。見えた先の「も゛の」が例え絶望だったとしても、火を焚べることくらいはできる。
成功
🔵🔵🔴
ロバート・ブレイズ
人の脳髄(め)で覗けば数多は地獄だろう、沸々と戯れる過去(きさま)は果たして深淵(おれ)を満たすのか。兎に角、其処を退けよ『有象無象』が。貴様等には名前(ネーム)など勿体ない――王冠(クラウチ・エンド)。登場人物(きさま)は化け物を恐れるのか、或いは
喰い散らかすべきだ。啜り尽くすべきだ。奴の垂れ流す体液(あか)を一滴残さず、登場人物(カオス)の内に収めるべきだ。嗚呼――我等が狂うと思ったのか? 俺が王だ、貴様等は総て奴隷(アストラル)で在れ
あとは蹂躙と往くが悦ばしい。鉄塊剣――つまり『立ち去れ』と叩き潰すのだ。実に情け容赦のない、楽な作業だろう。クカカッ――!
観客が恐れなければ何が嘲ると謂う?
●王は筆を取りカンマを刻む
有象無象(かんきゃく)がホームを充たす。いや、そこは最早ホームではなく、キネマの様相だった。恐怖は狂気を産み、今日も地獄は大繁盛、死屍累々。さて、上映されるのは喜劇か悲劇か。視たい、視たいと悪趣味な傍観者たちが騒ぎ立てる。弾けたのは果たしてポップコーンか、それとも脳髄?右へ左へ駆け回るお目目の中で、耐えられないほどの欲望が渦巻いていた。
されど地獄より殊更窮極の深みに存在する深淵、ロバート・ブレイズ(冒涜王・f00135)を満足させるほどの愉悦(きゃくほん)は用意されていないだろう。
キングは在るが儘のテラーであり、その手に執筆(かか)れば、遍く傍観者たちは一様に本の一握と化す。過去からの忌み人(マレビト)は、この世界では名など与えられない。故に奴らは只の観客だ。王冠が輝き、此度映されるは醜悪な掌編。君の掌の上でアクターが踊る。恐怖は実に甘美な感情だ。さあ、喰い散らかせ、啜り尽くせ。一滴残らず腹に終いこめ。奴らの垂れ流す赤黒さ(グロテスク)も、君にとっては子ども騙しだ。さあ、寄っといで。今宵の上映は奇々怪々、宇宙の神秘にございます。
“静観”を観客の特権と説くならば、君の特権は王として奴らを本に綴ることだろう。狂気で浸して蓋をして、インクでもって染め上げて。奴らの視線など全て無(こんとん)に収めてしまえばいい。なに、元から本質は奴隷に近しい連中だ、魂はとうに腐っている。
あとは蹂躙と往くが悦ばしい__鉄塊剣でもって、立ち尽くす奴らを叩き潰す。無いはずの貌が潰れる。『立ち去れ』という間もなく、奴らは醜い内面を晒し、そして蠢き消えていく。蛙のような鳴声一つ、囁きにすらなっていない。クカカッ__!と君の嘲り一つ残して、周りは沈黙した。
「も゛」が声を上げ君を見る。さて、これはどうするべきか……。憎悪の闇、闇、闇。サッと冷気が君の頬を掠めた。
大成功
🔵🔵🔵
マホルニア・ストブルフ
疲弊した精神は、その要因からの逃走を考えるものだ。
追い詰められた際の選択は往々にして良いものとは言えないが、どうやら彼もそうらしい。
当事者とUDCを分離できる可能性が残っているのは有難いことだろう。
周囲の“彼ら”に会うのは何度目か。傍観の目的は定かではないが、狂気を伴うものは押し並べて趣味の悪い視線を投げてくるものだ。
無い貌合わせて再会の喜びに浸ることが出来ないのは口惜しいが、これらの雑音は分散に限る。
男(かれ)が当事者で私もそうならば、貴様等は何だというのか。客がいる筈もなければ、脚本家も貴様等ではない。これを見世物と言うのなら、こちらの黒子を以て退場願おう。
●その藁を焼いてやれ
サラリーマンの男性の精神はとうに摩耗しきっていたのだ。底へのラストストロー。弱りきり、暗闇に落ち込んだ心は、時に不思議なものを魅せ、そして呼び寄せる。彼はたまたま選ばれてしまったが、こんな不幸譚は何処にでも転がっている。それが今のUDC世界の現実だ。彼の選択の是非にせよ、マホルニア・ストブルフ(欠けた年代記・f29723)、君は成すべきことを成すだろう。
傍観者たち、はて、周囲の奴らと会うのは何回目だったか。駅のホームの下の暗がりから、昼のオフィス街の建物の影から、静かな家々立ち並ぶその隙間からでさえ、奴らは湧いてくるのだ。
目的?果たしてそんなものは本当にあるのだろうか。もう既にそれさえ見失っているのかもしれない。君を“静観”するその視線には、ただただ狂気だけが数多含有されていた。客はいらない、監督も脚本家も居ない。当事者(われわれ)だけの問題だろうと、君はごちる。
赤い赤いドロリが迫り、無い貌と目が合ったなら、不思議。君の脳は乱されていく。浸る間もなく、奴らの“治療”が始まる。(こっちへおいで)、(君も視るんだ、さあ)と。
ところで、傍観者たちと死者たちの違いはなんだ?答えは簡単だ。この場においては、“生きている”はずの奴らの方が“生気”が無い。君に呼び出された亡霊たちは、真っ直ぐだ。苛烈な感情は、死してなお燃え続けている。奴らと視線が噛み合えば、連中は“静観”を止め、それを逸らすだろう。当事者になったことのない哀れなものどもにとって、君たちは眩しすぎた。
“痛み”に耐えられるほど、奴らは強くない。ただの名無し、故に残酷。だがとてつもなく臆病だ。君たちが放った呪は奴ら容易く焼いていく。まるで太陽に触れたがごとく傍観者たちは灰になった。
「も゛」までの道は開かれた。だが、それは地獄への入口かもしれない。しかし、素粒子は存在可能だ、地獄の釜を充たしてやれ。
成功
🔵🔵🔴
クライノート・シラー
傍らにて観る者と書いて傍観者だ。
善意もなく、悪意もなく、ただ観る。
何者にもなれないそれは、あるいは諦観者とでも言うべきか。
何も変えられないと諦めながら、誰かが変えてくれると勝手に期待し、誰かのせいだと声なき声をあげる者たち。
ナイフ片手に突き進むにはあまりにも数が多い。
数多くありながら群れではなく個。同時に土くれのように押し並べてひとつとも言える。これが土だとするなら酷く細った土だ。
吸い上げられ与えられず、すり潰され擦り切れた成れの果て。
路傍の石のほうがまだましだろう。
せめて見た目ぐらいはきれいな石に変えてやる。
だから道を塞ぐな。
●掘り進めど未だ闇
クライノート・シラー(鉱石探究者・f35196)、君は奴らを見つめている。奴らもまた、君を視ている。傍観者たちの何人かは君の傍らに立ち、君の貌を覗き込んだ。赤く赤く染まっていく視界。目のない奴らと目が合っている。ナニモノでも無い、だから頭の中を晒しているのだろうか。だから、無貌であり、普段は仮面でも被って凌いでいるのだろうか。やがて思考はメビウスの輪へと。生命力(みず)を吸い上げられているのは君の方だった。
傍観と諦観はその実、似ているようで違う。諦観とは物事の本質を見極めることであり、諦観者には悪意は無いだろう。透き通る宝石のような__そう、それこそ君は諦観者の部類だ。だが、傍観はどうだ?確かに傍に立ち、ただ視ている。だが、その視線には明確な狂気が籠もる。向けられる感情の全ては善であり、同時に悪であるのだ。奴らが土だというのなら、その土は水を含んで泥となり、君の身体の遍くを書き換えようとするだろう。路傍の石は君の方であり、それを飲み込もうとでもいうように。
全にして一、一にして全?傍観者たちは結合が全く上手くいっていない。しかしてその泥は凶悪に脳を蝕む。
だが、光が乱反射。無意識に掴んだナイフから幾筋も散っていく。君の領域に立ち入った奴らが石になっていく。せめて、綺麗な石に変えてやる__水晶(きらめき)にでも変えようと試みたのか、しかしそんな君の意志と反して奴らは泥岩に変わる。灰や珪藻、虫の遺骸。そんなもの達が混ざり、塊と化した傍観者たちを、君はどうする?__答えは簡単だ。
ツルハシとハンマーで、いくらでも砕けるだろう。卑しい意志など壊してしまえばいい。おや、更に隙間から汚泥が噴出してきた。脆い、ひどく弱い石像群だ。後は君の慣れた作業だろう、邪魔な岩どもを取り除き、一粒の闇を掘り出せばいい。黒の世界で、「も゛」が待っている。君のシラーで照らしてやれ。
成功
🔵🔵🔴
言葉・彩色
はてさて
「怪談の被害者を横からかすめ取るのは、怪異としても無粋なのだけれどね」
こちらに注意を向けるのならば、致し方なし
「それでは皆様、御耳と御目々を同時に拝借。語るも見せるも不可思議な色。現実染めるは妖しき言の葉。語り部騙る、【黒狐面之怪異也】」
都市伝説『くねくね』を語って、騙るよ
くねくね――見たものを惹きつけ、見続けた者や理解しようとした者を発狂させる怪異
「ただ『見ているだけ』の君たちには、うってつけの御話だろう?」
見られることこそが本懐
こちらが何もせずと、見られている間は[精神攻撃]で[恐怖を与える]
見て見ぬふりでも意味がない
動作の上では『見ている』ことに違いない
それがくねくね
今のボク
●現代狂気忌憚との邂逅
「さぁ、皆さま。御耳と御目目を同時に拝借。語るも魅せるも不可思議な色、現実染めるは妖しき言の葉」そう言って傍観者たちの前で堂々と騙りだした語り部は、言葉・彩色(妖シキ言ノ葉・f06309)。その場に居る傍観者たちは、一匹残らず君を凝視した。
__それは夏の田舎の、田圃や河原での目撃譚が特に多い。案山子と見間違えたのか?とも言われるが、当然そんな筈はない。正真正銘の怪異。視たものを狂わせる__視続けたものの脳を殺す、白いぐにゃぐにゃの不定形。その不気味で非現実的な蠢き方から付いた名は、『くねくね』。近代の化け物たちの頂点に君臨していても不思議ではない、狂気と理不尽の恐怖。そんなものに、興味はないかい?
君は視られることも構わずに、いや、“それこそが悦び”だとでも言いたげに、奇々怪々、意気揚々。それなら奴らは観客だ。高座に上がった君を囲むようにして“静観”。全く思惑通りだ、言の葉がその場を忌み地に変えていく。
視て、視て、視続けた果て、気付けばそこに居たのは語り騙られた『くねくね』。奴らは視ることを止められない。
……ああ、一瞬の静寂。そして大きくうねる騒めき。パンっ!赤が破裂した。液体が辺りに散り、声なき悲鳴が上がる。甘く腐った果実の臭いで満ち満ちたホームは、案山子な奴らと“くねる”君に分かたれる。やぁ、理解してしまったね?
水晶体から網膜へ、気持ちの悪い白が視路から視覚野へ。至った瞬間、無いはずの脳が風船のように弾け飛ぶ。
奴らには塞ぐための目が無かった。甘美なグロテスク。君が踊れば奴らは膨らみきって中身をぶちまけるのだ。実に愉快だろう?
あっという間に辺りは静寂を取り戻す。さもありなん。残るは「怪談の被害者」だけだ。彼もまた、貌を上げて君を見るだろう。こくり、と首を傾げ「も゛」と短く啼く。現の外のもの同士だが、仲良くなるのは無理そうだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『闇に乗りて歩むもの』
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POW : 闇の中を歩む死
自身の【憑依しているものの生命力】を代償に、【対象の生気を奪う闇】を籠めた一撃を放つ。自分にとって憑依しているものの生命力を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 憎恋慕
自身に【憎悪募る暴風】をまとい、高速移動と【対象の憎しみを増幅させる風】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 冷ややかな胸の内
【自身の胸の内側】から【恨み籠もる冷気】を召喚する。[恨み籠もる冷気]に触れた対象は、過去の【悔恨】をレベル倍に増幅される。
イラスト:すずや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠蓮池・大輝」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●最早傍観の時間は終わりだと君たちが告げると、有象無象は過去へと散っていった。残るは「も゛」と取り憑かれたサラリーマン男性。恨み、憎しみ、そんな怖気の走る感情を抱きながら、男性は悪夢でも見続けているのか。悲鳴が聞こえる気がする、呻いている気がする。しかし、同時にどす黒い闇を内側から放出している。
君たちが来たことで少しだけ、「も゛」との結び付きが弱まった様だ。しかし、同時に「も゛」が全てを取り込もうと向かってくる。強い力を飲み込んで、憎悪の嵐は竜巻となる。それは闇の上を歩く恐怖や死の象徴とでも呼ぶべき、名状し難い姿。
「も゛も゛も゛も゛も゛」。黒い。真っ黒だ。君たちの頬を冷気が撫でる。ここはこんなに寒かっただろうか。身震いする程の狂気。
__さて、祓いたまへ、浄めたまへ。
※補足
MSコメントにも書いてある通り、サラリーマン男性をなるべく傷付けない様なプレイングにはボーナスが入ります。現在、結び付きが弱まり、「も゛」が男性の中から漏れだしているようです。
“POW”→男性の生命力は持っていかれますが、祓うことが出来れば徐々に回復します。
“SPD”→男性ではなく、取り憑いている「も゛」の寿命が削れます。
“WIZ”→どんな悔恨を抱いているか、プレイングに簡単にで構わないので書いてもらえると助かります。
以上、お手数おかけしますがよろしくお願い致します。
ジン・マキハラ
「貴様が何なのかはこの際問わない、だがこの世界は貴様がのさばって良い場所ではない。依代にしたその人を解放して貰おうか」
闇の攻撃を蒼炎で焼き払い、UCで「も゛」を斬り裂く
「見たところ貴様は精神体としてその人に取り憑いているのだろう。ならこの技なら存分に貴様を斬り刻める筈だ」
溢れる闇を斬り裂き続けながら依代になった男性に呼びかける
「なぁ、アンタがどう言う理由でこんなモノの依代になったかは知らない。事情を知らない俺がこんな事を言うのも筋違いかも知れないが一つだけ言っておくぞ」
「闇だけに目を向けるな。アナタの周りには必ずアナタ自身を照らす光があった筈だ。それを思い出せ、一歩だけでもいい。前へ出るんだ」
●背負う絶望に耐え切れず
「も゛」は明確な憎悪をもってジン・マキハラ(ブレイズ・オブ・マキナ・f36251)、君を見た。心の臓から、頭の内側から、暗澹とした黒が絶えず滲み出す。冷気を伴う憎しみが、鋭い刃のように刺さる。寒い、体が内側から凍り付きそうだ。存在そのものが異質、UDCの中でも邪神に近しい存在だと、君は感じるだろう。
「貴様が何なのかは問わない。だが、この世界にのさばって良い存在ではない。」君がそう言うと、「も゛」はまるで理解できないとでも言いたげに、靄のような身体で蠢く。はっきりと見えない輪郭は、逆にこちらの怖気を煽るようだった。サラリーマン男性の__「も゛」の足元から、どす黒い闇が伸びてくる。それは脳を震わす恐怖、死の恐怖。深淵、神の領域から伸ばされた一手のように、残酷で、同時に酷く純粋だった。
だが、貴方の剣が再び蒼い炎を纏うと、それが暗黒にくべられた火となり、やがて大きな炎となり、狂気を切り裂いていく。それはまるで祓えの儀式。
「も゛も゛も゛も゛か゛あ゛ぁ゛あ゛」と、悲鳴のような声が聞こえた。『サラリーマンを蝕む穢れ』は、貴方の神威でかなりすり減ったようだ。
男性は一体、何故「も゛」に取り込まれてしまったか?闇だけに目を向けたから__それも確かに一理ある。だが、きっと彼にはどうすることも出来なかったのだろう。覚悟もないまま、理不尽に絶望へと踏み入ってしまったとき、人間とは往々にして光が見えなくなってしまうものだ。
しかし、君の言葉は確かに彼に届いている。腕を差し出し、手を掴んだあとは、その体に載せた藁を君の炎で焼き払えばいい。彼は今、重過ぎて一歩も動けないだけなのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ロバート・ブレイズ
嗚呼――随分と不愉快な輪郭だ。真逆、貴様は私の在り方を真似ると謂うのか。失礼、歩むべく吐いた暗澹(もの)が雑だったな。莫迦々々しいほどに患って在る。クカカッ――!
私の憎悪を――俺の感情(マイナス)を膨張させると。成程、素晴らしい埒外だ。罪深い、悪徳的な、背徳的な埒外に相応しい
されど哀れな奴だ。俺は感情(マイナス)の化身、否定の権化、冒涜の王だ――微風の『そ』の字にも感ぜられぬ
冒涜王(おれ)の前に跪け、貴様『だけ』を民として歓迎しよう。魂(アストラル)の一滴まで俺の肚(なか)だ。心地良い筈よ
もしも拒むと謂うならば、呵々、貴様は怪物ですらない――俺に恐れを為す人間だ。ただの男の方が魅力的なのだよ
●王との謁見
ロバート・ブレイズ(冒涜王・f00135)、君には一目見れば、奴が“邪な神の部類”であると理解るだろう。その不愉快さ、名状し難さ、どこかで見たものを酷く歪めたような姿だ。だが、「も゛」は愉悦ではなく憎悪を吐く。物語を綴る代わりに、冷気でもって凍結させてしまう。パッカリと蓋の空いた心臓、脳。__酷くつまらない欠陥品(レプリカ)。退屈だ、所詮そんなところか。
絶望も、憎悪も、君から見れば美しい感情なのだろう。それは全ての人間が遍く抱く価値。甘美なコレクション。クカカッ__!甘い甘いお菓子を頬張る準備は完璧だ。
君は狂気(マイナス)、否定(プラス)、そして冒涜(すべて)。「も゛」が強引に男性の身体を傀儡とし、君の目の前に憎悪という風を突き付けたところで、嘲笑を前にしては無意味。何故なら君にとっては憎悪はインク壺の内の一つであり、同時に物語を紡ぐ為のインクでしかないからだ。さあ、鮮度が落ちないうちに搾り取ろう。憎悪のインクでは、果たしてどんな景色が描けるだろうか。こんなにも美しいものを、何故人は狂気と呼ぶ?それは人間ゆえの狭窄、そして愛おしいほど無知だからだ。冒涜王は、愛でもって全てを蹂躙する。
ホームが今度はブラックホールに早変わりだ。いや、或いは夢の中(ナイトメア)かも知れない。どちらにせよ、抗うことの不可能な吸収力で、「も゛」を引きずり込む。奴が纏った暴風が、一滴残らず吸い尽くされて、王の玉座で君と謁見(あくしゅ)。そこはまるで揺籃のようで。ああ、憎しみと闇の怪物にとっては、ひどく居心地がいいだろう。男性の内から溢れた「も゛」が幾らか君に這い寄って、腹の中に収まった。
成功
🔵🔵🔴
マホルニア・ストブルフ
◇SPD
凍みるのは冷気と狂気かのどちらだろうか。
徘徊する場所が闇にせよ空にせよ、抱かれた者にとって、そこは酷く息苦しい場所だろう。
彼の狂気が「濁った呼称のそれ」を悦ばせるならそれでいい。
予知にて知らされた紐づきの不安定さは、何処かで彼を「敵」ではなく「被害者」たらしめるだろう。
暴風には弓形の剣を地に立て、根を張り巡らせて固定。
速さには戦場埋める物量を。
祓い賜へ、浄め賜へ、そして呪(まじな)い賜へ。
言祝ぎ謳い、彼の脳と「名状し難いそれ」を呪詛で揺さぶろう。
積荷(彼)は狂気と共に降ろすといい。虚ろな夢見心地を楽しみながら。
積荷(藁)は狂気と共に降ろすといい。再起は可能なのだから。
●まじないは時に病を祓う
冷気であり、狂気。それは憑依している「濁音」の性質なのだろう。人間に取り憑き、憎悪を煽り、やがて取り込んでひとつになる。そういった神格だ。マホルニア・ストブルフ(欠けた年代記・f29723)、君にはそれが分かる。
「も゛」に抱かれた男性は、時間や休息という名の酸素を奪われ。挙句、今黒い黒い感情にまで羽交い締めにされている。“息苦しい……だずげ……で……”という声が微かに君の耳に届いた。
彼から狂気や生命力を奪う度に、「も゛」は歓喜の声をあげる。そして、今までの猟兵たちに削られているとはいえ、新しい獲物はいつだって歓迎される。欲しい、もっと欲しいと憎悪が降り、「も゛」は自らの周囲を激しい暴風で充たし、漆黒の風を君に放つ。
君はすかさず対処する。弓形の剣、“レヴィアスク”を地面に突き立て根を張る用意。鋭い風が電光掲示板やベンチを吹き飛ばしていくが、君はその場に立ったままだ。__祓い賜へ、浄め賜へ、そして呪(まじな)い賜へ。君のネットワークが現実と交差する。その場の法則が書き換わっていく。
さて、根を張ったのはまるで呪いを帯びたユグドラシル。木は駅のホームへと、光とともに枝を伸ばして往く。世界樹から零れた雫がひとつ、暗い闇に注がれると、狂気によって揺れる男性の脳は特異性を喪失。藁は燃えて今は篝火のよう。
「も゛」は奔流に押し流されて、虚ろに落とされ夢現。君の呪という治療により、「も゛」と男性は完全に結び付きを失った。君は男性を抱えて最前線から離脱する。__残るは「も゛」だけだ。
成功
🔵🔵🔴
●ここまでの猟兵たちの活躍により、男性は「も゛」の憑依から解放された。
だが、「も゛」を完全に祓わなければ男性のUDC-HUMAN化は解除されない。
「も゛」が怒っている。怒りの咆哮。君たちの意欲を削ぐような憎悪と冷気。
あともう少しだ。
※敵の攻撃パターンは同じです。
編堵・希亜(サポート)
「……なに?」
「そうなんだ。」
「私は、私だよ。」
囚人服のようなものを着て、いつも黒猫のぬいぐるみを抱えた女の子。口数は少なく、人見知りで猜疑心は強いものの、猟兵としての仕事をこなすためなら、それなりに人と付き合っていける。
甘い物が大好きで、食べればすぐに機嫌がよくなる。嫌いなモノは、かつて自分のいたアリスラビリンスの世界と、それを連想させるもの。
戦闘では、自分ではあまり戦わず、自身に宿るオウガの『カイ』を戦わせたり、ぬいぐるみをバロックレギオンとして相手を押しつぶしたりする。
『カイ』は上等なドレスを着たラミアで、少し高飛車な話し方。宿主の身は守り、敵には容赦がない。『さぁ、敵はどこかしら!?』
●黒猫のダンス
いつの間にか迷い込んだ少女が1人。ツギハギ黒猫のぬいぐるみ抱えた可愛らしい女の子。「も゛」は無情にも彼女を次の憑依先と決めたようだ。これまでで力を削られ続けた奴は、これまでに無いほどの憎悪を募らせ、吹雪を胸から吐き出しながら彼女に向かう。
だが、「も゛」の目論見は外れた。その少女もまた、猟兵であったからだ。「なに……?敵……?やめて、怖い!」と声を上げたのは編堵・希亜(蛇に囚われた少女・f19313)。
貴方の恐怖の感情が引き金となり、ユーベルコードが発動。「も゛」が放った一撃と君の間に君を庇うように現れたのは沢山の継ぎ接ぎ黒猫人形たち。
『さあ、やっておしまい!』とオウガのカイが指示を出すと、にゃー!しゃー!と人形たちが波のよう。駅のホームは黒一色に埋め尽くされて。「も゛」が幾ら胸から冷気をばら撒こうとも、君に届くことはない。それどころか、黒猫人形たちの過去の悔恨、それが増幅したのだろうか?可愛い可愛い猫たちは、お目目が取れて綿が飛び出し、継ぎ接ぎはビリビリと。爪は鋭く伸びきって。まさしく異形と化していた。
「も゛」は黒猫たちの悔恨の爪で切り裂かれる。もう虫の息だろう。
成功
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畍・ショウ
傍から見ていた観客は消え、今この舞台には相手と自分が対峙している。
五月の蝉の声(五月蝿い声)が未だ耳の奥に張り付いている。
気付くと、対峙しているそれと目があった───。
そう思った瞬間、それは目の前に現れた。
爆風。巻き込まれる、そう思ったその刹那、微かに聞こえた慟哭の声。
「───これは、さっきの声…」
傍観者と対峙したときに聞こえた声だった。
泣き叫び、助けを乞うている様な、その声。
「待っていてください…!貴方を、貴方に、光明を…!」
慟哭の声の主。かつての自分を見ている様だった。
彼は自分だ。闇に生きながら、光明に手を伸ばす。
伸ばしたその手に自身の手を伸ばす。
たとえ自身が、未だ闇に生きていようと。
●闇に差す光
有象無象の傍観者たちが去り、奇妙な静けさがホームを支配する。畍・ショウ(夜の放浪者・f36360)は、先程の奴らの声が耳から離れないでいた。五月蝿い、五月蝿い。まるで真夏の蝉の声のよう。耳の中で残響するように、囁きがうねる。
ようやく君がその声を振り払った時には、気づけば、憎悪を撒き散らす不条理な存在、「も゛」と対峙しているだろう。今までの猟兵たちの奮闘により弱っているとはいえ、奴はとても恐ろしい。なのに、何故か無性に目が引き付けられる。
__君は、気がつけばそいつと目を合わせていた。一瞬、思考が止まる。吹き荒れる爆風に目を閉じる。君が再び目を開くと、奴は目の前で君を見ていた。
風が唸りをあげる。このホームに台風の目などなく、君は奴の放った風で、憎しみを増幅させられていく。かつての絶望の日々。あの時自分を苦しめた奴らが憎い。救いの手を差し伸べてくれなかった奴らが憎い。ああ、憎い憎い。
憎しみに取り込まれかけ、苦しむ君を、「も゛」は自身へ吸収しようと迫る。君に取り憑いて、同じ悲劇の連鎖を起こすつもりなのだろう。
だが、その時君の耳に確かに聞こえた。サラリーマン男性の慟哭。彼が発した最後の救難信号。そうだ、君は彼を救うためにここに来た。憎しみに囚われ、過去と一つになるためではない。
「待っていてください……!必ず、貴方に光明を!」。それは君の強い強い意思表示。サラリーマン男性は、いつかの君と同じように苦しんでいるのだ。伸ばした手は絶対に下ろさない。君の憎悪は光によって打ち砕かれた。
闇にも光は差すのだ。君は握ったままだった鉄パイプで、「も゛」を横薙ぎに打ち据えた。
成功
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クライノート・シラー
漂ってくる冷気、響く咆哮。
結び付きを失って獣のごとく吠えるモノに目をむける。
嫌な感触が胸裏を占める。
これだけ生きていれば悔む事には欠かない。探求者としても猟兵としても。
試せなかった実験、断念した研究。救えなかった者、こぼれ落ちた者。
強く感じる悔恨は要するに「出来なかった事」だ。
であればそれがどれほど渦巻こうと、選択肢は1つしかない。動くことだろう。
オニキスのナイフを取り出し、魔鉱結晶を付与して1本の鉱石ナイフへと創造する。
人に取り憑く存在。狂気へと誘う冷気。引き込むことが本質か、それとも引き込んだ結果にある死こそが本質なのか。
性質は見えても狂気の奥の本質は見えない。いずれにせよここに居てはならないモノだ。
オニキスのナイフを突き立て魔力を込める。呪詛を、邪悪な繋がりを断ち、祓う。
二度と不幸に取り込まれることがなければいいが。
そんなことを考えながらナイフを引き抜いた。
●オニキスとヘマタイト
憎悪籠もる咆哮、怨嗟の声とゾッとする冷たさに、クライノート・シラー(鉱石探究者・f35196)は晒される。
__後悔、後悔、後悔。不可能性の濁流。「も゛」の胸の内から溢れ出た冷気が、君の胸の裏にするりと入り込む。ぐちゃぐちゃとした厭な寒気が脳と心臓を浸していく。
君は猟兵、或いは探求者。長く生を謳歌して、あらゆる物事を紐解いてきた。倫理観の不協和で試すことが出来なかった実験があったかもしれない。材料の希少性から断念した実験も。砕けない石などない。過去が呼んでいる。走馬灯の様に廻る。
猟兵として、救えなかった生命。手の指の隙間から零れ落ちていった数多も、君にとっての後悔。身体が動かない。凍り付いてしまったのか、胸裏から亀裂が走るようだ。
だが、君は探し求めるものとして、猟兵として意志を振るう。過去に別れを告げ、前に進んでこそ謎は解き明かされるのだ。君の意志は砕けない。無意識に身体が動いた。
オニキスのナイフが光を帯びる。魔力を帯びたオニキスは、君の僅かに残った悔恨を打ち払い、更に魔鉱結晶と組み合わさったそれは、黒銀の刀身へと姿を変える。
__そして君はゆっくりと、刀身越しに奴を見る。それは狂気。それは邪悪。闇に乗りて歩むもの。取り憑いた相手を何処かへと誘う邪神。骸の海に取り込まれた※※※※であり、死など奴にとっては戯れに過ぎない、そんな質。
奴は君に取り憑こうと此方へ歩み寄る。怖い怖い、恐ろしい。だが、君は折れていない。手を伸ばせば触れられる距離、ナイフを「も゛」に突き立てる。この世界との繋がりを断ち切るために、ナイフに全ての魔力をのせて。
君の意志が過去と今を切断してみせれば、最後の叫び一声。奴は場に混沌とした気配だけを残し、完全に消え去った。
過去の侵食は止むことなく、されどこのような不幸が二度と起こらぬようにと君が願い、ナイフを空に振れば、騒然としたホームはいつもの静けさへと。後は助け出したサラリーマン男性。そして彼の脳を腐らせた原因への対処を残すのみとなった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『人間の屑に制裁を』
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POW : 殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る
SPD : 証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる
WIZ : 事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●__ああ、俺は一体何をしていたんだっけ?いつも通り会社の犬として終電間際まで働いて、家に帰ろうとして、ホームで……思い出せない。思い出したくない。だけど、怖気の走る寒さと、狂った声だけが脳裏に焼き付いて離れない。
ただ、苦しかった。毎日毎日、画面を這い回る文字を追いかけて、上下する数字を追いかけて、社内成績に追い掛けられて。全てが嫌になったんだ。だから、だから……駅のホームから飛び降りようとしたって話だよな?
●君たちにUDCエージェントが話しかけてくる。どうやら、現場の後始末やサラリーマン男性の記憶処理、メンタルケアなどは彼らが行ってくれるようだ。
どうやら彼には、駅のホームから飛び降りようとしたところをギリギリで助けられたという話が伝わったらしい。一般人への対応は、線路内に逃げ出した羊たちが立ち入っていたための封鎖処置だというカバーストーリーが適用されるそうだ。
後は、彼を苦しめた根本への対処。彼が働いている会社は、表向きのイメージと違い、裏では洗脳教育に始まり、手当なしの残業は当たり前、薄給、休日出勤、更には体罰まで、ブラック企業のお手本のような会社だった。
彼を苦しめていた原因は真っ黒な会社。さて、君たちはどうやって裁くのか。
※補足
三章は、彼を苦しめた会社へ制裁を与えることで同じ不幸が繰り返されることを防いでください。
各能力値での行動は参考です。皆さんがどう会社にダメージを負わせるかをプレイングに好きに書いてください。但し、やり過ぎは厳禁です!
三章は受付期間短めで、サクッと終わらせる予定です。よろしくお願いします。
ジン・マキハラ
流石にただの人間相手に暴力でわからせようとするのは良くはないだろう。
だが今回の様な事態を引き起こす様な企業をそのまま放置と言うわけにもいかない。この企業が裏で行っている違法行為などの証拠データをハッキングで入手し、然るべき法機関とマスコミにリークする。重役や幹部の顔写真や音声データも抜かりなく
やりすぎかもしれないがこうでもしなければ世間の注目は集まらないだろうしな。ついでに他のブラック企業の情報もハッキングで入手して提供してやるとしよう。事件の種は根本から刈り取って行かなければ......
●塔の崩壊
Whiteが必ずしも正しいと言う訳ではないが、サラリーマン男性が勤めていた会社は間違いなくBlack、それも漆黒の色を呈していた。ジン・マキハラ(ブレイズ・オブ・マキナ・f36251)、君が慣れた手つきでキーを叩く。数秒間ダイアログが表示された後、セキュリティの解除を示すメッセージが表示された。
出てくる、出てくる。件の会社の悪事の数々。記録されている経理帳簿を確認すれば、明らかに金額が合わない。株式の取引記録を見てみれば、ある時期に関連会社の株を手放していることが何度も。メールのやり取りの記録からは、競合他社と頻繁に連絡を取り合い、不当に価格を釣り上げた形跡。
君が見つけただけでも、これだけの違法行為を行っていた。ブラック通り越して最早上層部は犯罪組織のようですらある。こんな企業を放置していたら、今回のような事件だけでなく、経済の腐敗まで引き起こしかねない。
更に重役や幹部のデータをくまなく洗えば、社員へのセクハラ、暴力、そんなものが幾らでも見つかってしまう。君は入手した情報を、然るべき場所へとリーク。後日、君の情報を元に大規模な警察の調べが入り、社長や上層部が逮捕された。
君は更に、かねてより真っ黒だと噂されていた企業へもハッキングを仕掛ける。UDCアースでは、時に非情になることも必要だ。どこにUDCの種が潜んでいるか分からないのだから。
君の影からの活躍により、ブラック企業が何社か倒産。それらの企業に勤めていた罪なき従業員たちは、UDC支部の計らいで好条件の会社へと就職が斡旋されるようだ。
事件の種は、こうして君により刈り取られた。UDCの出現やまず、だが一般市民の平和を含め、君が多くの人を救ったのは確かだった。
大成功
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マホルニア・ストブルフ
彼のことはプロに任せるのが吉だな。
おや、羊とは可愛らしい。湧いて出たのが全部羊ならどんなに――いや、UDCなら山羊も羊もまずい気がする、やめておこう。
ううむ、彼の会社を。確かに、また狂気に侵される者が出るかもしれんな。
暴力?目には目を?何にせよ贖ってもらわねば。
ハッキングで会社のシステムに侵入するよ。貸与物の一覧と、それぞれの持ち主のIDから実作業時間と実支給額の差異諸々と――、ああ有給中に働くのも当たり前なのね。
ついでにハラスメントメールや動画のセットを、内部告発のていで出すべき所に送ろうか。
ところで上司は何を――、ああ私的なネット利用ね。軽く驚かせておこう。いや、ただの怖い画像レベルだよ。
● black sheepはいったいどちら
サラリーマン男性のことはプロに任せることに決めたマホルニア・ストブルフ(欠けた年代記・f29723)は、自分の極めた分野、ハッキングによって会社に贖わせることに。
君は自身の演算装置を通じて会社のシステムをHack。ワールドハッカーの君にとってはこの程度のセキュリティはあってないようなものだろう。電子の樹は根を張り、どんな情報も逃さない。おやおや、貸与物一覧と持ち主のIDから辿ると、明らかにおかしい。“家に会社のPCを持ち帰り、有給中も無給で働いていた”ようだ。実作業時間と実支給額を見比べれば、残業代など出ていないことがひと目で分かる。
更に君は内部のメールや動画、果ては監視カメラにまでアクセスする。そこには、パワハラ・セクハラ・アルハラ・マタハラ……etc。ハラスメントのデパート状態だ。
到底許される量を超えている。君は内部告発に見えるよう細工をし、匿名の情報提供者として、警察や労働基準監督署に集めたデータを丸ごと送信した。
__サラリーマン男性の上司は、会社のPCを無断使用してのネットサーフィン、予知にて見た怒りは競馬の結果のせいだったよう。いつもの様に重役出勤した上司は、君が仕込んだ※※※の画像によって精神に異常を来たしたとか来たしてないとか。
君のリークによって会社は確実に破滅へ向かうだろう。一般社員はUDC支部が目をかけてくれるそうだ。社会にとっての“除け者”はいったいどちらなのか。黒い羊がめぇと啼いた。
大成功
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畍・ショウ
武による争いはまた新たな武による争いを生み出しかねない。
この組織が行ったことは到底許されることではない。
だが、ここはなるべく知的生命体として、穏便に解決すべきだろうとする。
証拠を探そう。
それにしても、彼が無事で良かった。
●救うための藁
畍・ショウ(夜の放浪者・f36360)、君は誰よりもサラリーマン男性を心配し、戦いの間中、常に手を伸ばしていた。きっと君が最後の藁だったのだ。壊す方ではない、純粋な救うための藁。その手は確かに彼に届き、そして彼を助け出すに至った。UDCエージェントの話によれば、彼は本当に薄らとだが記憶が残っており、ひたすら自分を呼ぶ声を聞いて耐えていたそうだ。その声に「救われた」と。
穏便に、秘密裏に証拠を探した君には、彼の会社の社長が愛人を何人も侍らせていることや、重役の中に違法薬物に手を出している者が居るということが分かった。
君がこの情報を必要な機関にリークすると、警察による取り調べによって上層部の犯罪が次々と露呈し、社長含め何人もの逮捕者が出た。
きっとこれから、この会社は少しずつ良くなっていくだろう。UDC支部に裏から見守られながら。圧力に屈して実力を発揮できていなかった者が、そしてメンタルケアとしばらくの休養で生きる気力を取り戻したサラリーマン男性が、ブラック会社に変革の風を吹かせ、業界きってのホワイト企業になっていくのだが、それはまた別のお話。
●閑話休題
「も゛」とはいったい何だったのか。君たちの中には邪神の面影を見たものも居るだろう。或いは「も゛」自体が※※※※の傀儡だったのかもしれない。
UDCアースと骸の海。あらゆる世界とその裏側。謎は多く残されたが、ひとまず君たちはこの事件を解決し、サラリーマン男性のUDC-HUMAN化を防ぐことに成功したのだった。
大成功
🔵🔵🔵