幻惑の試作偽神〜竜の遺跡踏破録〜
アックス&ウィザーズには「遺跡都市ヴェルニス」以外の街にもダンジョンが確認されており、一攫千金を狙う者達が毎日のように挑戦している。
そのうちの一つが「竜の遺跡」と呼ばれている地下に広がるダンジョンだ。
入口の辺りに竜を模した意匠が確認されたから、という安易な理由で名付けられたそこはゴブリンやオークなどが生息していることは確認されているが、どれだけの深さなのかは不明、そもそも奥に何があるのかも不明……という冒険心がくすぐられる場所となっている。
これまで複数名の猟兵達がルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)の誘いに乗って突入し、第一階層の床をぶち抜いたり第二階層の難敵を吹っ飛ばしたりしてきた。
その甲斐あって、冒険者達は順調に奥地へと進行していた。
しかし、ある階層でそれは止まった。
彼らの行く手を阻んだのは底の見えない水辺に浮かぶ島のような陸地に根を下ろす、一本の光り輝く大木だった。
そこに成る果実が発する光を見た冒険者達はその実への執着心と周囲が果実を狙う敵だという猜疑心を植え付けられ、その場で同士討ちを起こしてしまったのだという。
「正気に戻れば自分の周りに出来た仲間の遺体が沈む血の海とそれに染まった自分の得物。……勝ち残ってしまった者は奇声をあげながらその場で自害したそうです」
冒険者の中でも特に実力があった者達によって結成されていた先遣隊の突然の凶行により、竜の遺跡の探索の勢いは一気に潰えた。
この事態を受けて最寄りの酒場に猟兵達を集めたルウは頼んでいた果実水に口をつけた。
「木の魔力に取り憑かれる前に逃げおおせた方々に聞き取り調査を行ったところ、その光り輝く木は猟書家『ウィルオーグ』がかつて作った『偽神』の特徴を持っていたようなんです」
ブラキエルの死後、その消息を絶ったかつての上級神官たる猟書家が作り出そうとしていた偽神はそれを信仰する者がいればいるほどその能力を上げていく。
この木はどこぞのRPGのモンスターよろしくひとりでに動くことも、念動力を発揮して竜の遺跡を浮かび上がらせて天上界に至らせるなんてこともない。だがそれが危険な存在であることに変わりはない。
「この一報を受け、知識の神エギュレを信仰する教団に所属するパラディンの方々が派遣されることになりました」
かつての長の尻拭いのために奔走する者達は再び偽神を討つため、ルウに協力を依頼してきたのだという。
「今回は彼らと一緒に行動し、大木を叩き折ってきてください」
先述の先遣隊の中にいたエギュレを信仰する生存者の証言によると、木に操られた者達は真っ先に自分に攻撃を仕掛けてきたという。
もし同じくエギュレを信仰するパラディン達に【無敵城塞】を使ってもらえば、全ての攻撃を一手に引き受けた上に無力化出来るのではないか、とルウは皮算用を叩く。
「その辺の冒険者がユグドラシルブレイドを持ってるわけがないですから。パラディンの方々が時間稼ぎをしている間に木を切り倒せば任務達成です。……今回の説明は以上となります。本日もよろしくお願いしますね?」
そう告げたルウの手元にある果実水の中にあった氷は見計らったかのように、音を鳴らした。
平岡祐樹
すっかり平和な? アックス&ウィザーズにようこそ。お疲れ様です、平岡祐樹です。
今案件は拙作で登場した「竜の遺跡」が舞台となります。
第一階層・第二階層の攻略戦に参加されてなくても読んでなくても特に問題はありませんので、お気軽に参加してください。
今案件にはシナリオボーナス「パラディンと共闘する」がございます。
これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
第1章 ボス戦
『不和の林檎』
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POW : 疑似顕現:ラードーン
召喚したレベル×1体の【蛇竜】に【百の頭と無数の口】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
SPD : 堕ちた犠牲者
【弓矢や剣、槍や斧等】で武装した【果実に魅了され死んでいった冒険者達】の幽霊をレベル×5体乗せた【飛竜】を召喚する。
WIZ : 誘惑の光
【その果実】から【催眠光】を放ち、【生じた果実に対する渇望と独占欲】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:烏鷺山
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠水貝・雁之助」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニクロム・チタノ
今回の相手は厄介だね?でも一緒に戦ってくれる仲間がいるからね
と言う事で、パラディンさんよろしくね
不和を成らす悪い木は、パラディンさんが引き付けてくれている間に除去させてもらうよ!
反抗の加護あり
重力領域を展開して召喚された蛇竜達の動きを封じるよ、百の頭も無数の口も、近づく事が出来なければ恐れる事はないよ
そして反抗の雷装を付与した妖刀を地面に突き刺して全方位に電撃を走らせて蛇竜を感電させて黒コゲにするよ
パラディンさんは無敵城塞を発動中だから電撃のダメージは受けないさ
後は焼き討ちだよ、護りの蒼焔を反抗の妖刀に纏わせて片っ端から斬り裂いた木を不和の林檎ごと焼き尽くしてあげる
悪意の生る木に反抗の誅滅を!
偽神と言えども相手は木。故に「討伐」ではなく「除去」と銘打たれた作戦を実行する隊の先鋒に混ざったニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は先遣隊の生き残りの証言を元に描かれた絵から視線を上に向ける。
「今回の相手は厄介だね?」
執着心と猜疑心を生み出す果実が成る木のそばには百の頭と無数の口を持つ蛇竜がとぐろを巻いていたという。冒険者達が勝手に同士討ちを始めたから動かなかっただけで、おそらく果実の魔力を超えた先にある縄張りに足を踏み入れば「守衛」としての役割を果たすのであろう。
「でも一緒に戦ってくれる仲間がいるからね」
だがこちらにも「守る」ことのスペシャリストがついている。
「と言う事で、パラディンさんよろしくね」
そうしてニクロムは遺跡に入る前最後の武具の確認を行うパラディン達に一礼した。
いくら最短ルートを構築していても遺跡に湧くモンスターを根絶やしにしたわけではない。しかしパラディン達は前評判通りの鉄壁を見せつけてニクロムを無傷のまま木が根差す階層まで送り届けた。
だが先遣隊の証言では1匹だけのはずだった蛇竜は群れで木の周りを這いずっていた。代わりに先遣隊の遺体が見当たらない。……屍肉の匂いに引かれて別の場所から集まってきたのかもしれない。しかしその程度で怯むほど、ヤワな経験をニクロムは送ってきてはない。
「不和を成らす悪い木は、パラディンさんが引き付けてくれている間に除去させてもらうよ!」
ここから先はボクの番だとニクロムは禍々しい見た目の鞘に納められた刀を抜いた。
『反抗の加護あり』
走り出すと同時に重力領域を展開し、蛇竜達の動きを封じる。百の頭も無数の口も、近づく事が出来なければ恐れる事はない。
そしてニクロムは反抗の雷装を付与した妖刀を地面に突き刺して全方位に電撃を走らせた。
感電した蛇竜達が黒コゲになる一方で、事前に打ち合わせをしていたパラディン達は【無敵城塞】を発動して死神が後ろで微笑んでいるのを感じながら無効化していた。
真っ黒な棒のような見た目になった蛇竜の死骸を踏み壊しつつ、ニクロムは刀身についた土を振り下ろす。すると真っ青な炎が銀色の刃を覆い隠した。
「後は焼き討ちだよ、悪意の生る木に反抗の誅滅を!」
そしてニクロムは刀で伸び放題になった枝を片っ端から斬り捨てる。
切り立ての木は水分を多く含んでいて薪木には向かないが、それを無視する勢いで燃え上がった護りの蒼焔はニクロムの手が届かない位置で輝く実を木ごと燻し始めた。
大成功
🔵🔵🔵
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「パラディン達よ【無敵城塞】を利用して防御を有効にして、私がファンネルで範囲攻撃と各個撃破を行なう」と伝えながら『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動して1分先の未来を見ながらファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを創造して展開しアルテミス・レーザーとリニアロングボウで各個撃破を行ないつつファンネルで『不和の林檎』を着実に攻撃をして、影響下に囚われた者を迅速にビームワイヤーで捕縛し魔法やアイテムで回復させてパラディンたちの士気を落とさずにフルバーストとヘラ・エウピションで徹底総攻撃を仕掛けて殲滅し駆逐します。
「林檎は食すものが正しい」
蛇竜とは違う、雄叫びが轟く。
何事かとパラディン達が声がした方を向けば松明の火が届かない暗黒から飛竜の群れが飛び出してきた。
流石は龍の名を冠する遺跡、と感心する余裕はなくパラディン達はその背にいる存在に目をひん剥かせた。
そこには弓矢や剣、槍や斧等それぞれの得物で武装した、果実に魅了され死んでいった冒険者達の亡霊が何十人も乗っていたのだ。
「パラディン達よ」
遺体は餌にされたのではなく、モンスターに操られている。
例え見ず知らずの相手でも、生命を冒涜する所業に言葉を失ったパラディン達へティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)は淡々と語りかける。
「【無敵城塞】を利用して防御を有効にして、私がファンネルで範囲攻撃と各個撃破を行なう」
ティティスは【アストラル・エレメント・トランスフォーメーション】を起動して1分先の未来を見ながら各種ビットを創造して展開し、アルテミス・レーザーとリニアロングボウで各個撃破を図る。
何十人と乗っているとはいえ、1体は1体。熱線で翼を切断された飛竜は乗客を巻き込みながら墜落していくのを尻目に、追手の心配がなくなった各種ファンネルは追手を気にすることなく樹木への攻撃を開始する。
だが落ちたからといって飛竜や亡霊達が止まることはなく、地上にいるパラディン達を引き続き標的として迫ってくる。
落下の衝撃で首や手足があらぬ方向へ曲がった遺体をティティスは迅速にビームワイヤーで捕縛し魔法やアイテムを使って元の形に戻した。いくら異世界の技術があれどすでに死んだ者を蘇らせることは出来ない。だがせめて小綺麗な姿で葬儀場に運びたい、そんな思いがあったのだろうか。
そして自分の肉を断っても前に進もうとしていた亡霊達を雁字搦めにして動けなくしたところで、ティティスは全装備の砲門を開き、リミッターを外した。
『女神の憤怒の如き、総攻撃を』
四方八方から放たれた光線が翼を折られても這って近づいてこようとする飛竜達を巻き込んで殲滅し、青い炎に覆われた樹木を飲み込む。
「林檎は食すものが正しい」
腐り落ちるまで愛でるなんて何の意味がある、と肩を竦めたティティスの視界にはまだ樹木と林檎の姿は健在であった。
これが「偽神」の頑強さか、と感心しつつもティティスは追撃を加えるべくエネルギーのチャージを開始した。
大成功
🔵🔵🔵
飯綱・杏子(サポート)
狩った獲物は持ち帰ってもいいっすか?
|食材《オブリビオン》がヒト型でなければ料理して喰らうっす
ヒト型の食材を料理するときはこちらがヒト型を辞めるのが|マナー《マイルール》っす
リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器としても活用するっす
悪魔だから|毒は利かない《【毒耐性】持ち》っす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす。|熟成肉《リビングデッド》うまうま
|八つ裂きにされても死なない《【切断部位の接続】持ち》っす
同行者の都合で、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ
白子もミルクも大好きっす
樹木に唯一ある果実から渇望と独占欲を抱かせる催眠光が放たれる。
パラディン達が樹木から目を外した格好で【無敵城塞】を取っている中、それを正面から浴びてしまった飯綱・杏子(悪食の飯テロリスト・f32261)はあの美しい形を見続けたいという欲で足を釘付けにされていた。
しかしそれは長くは続かなかった。
「……おいしそうっす」
林檎からもたらされた欲望は食欲に変換され、胃袋から脳へ空腹が訴える。そして頭の中には林檎を使ったメニューのレシピがどんどん溢れ出る。何より、杏子の好きなお酒は毒|林檎《・・》酒だった。
腹の虫が限界を訴えたところで、欲望の天秤がひっくり返る。
動けるようになった杏子———|食道楽《・・・》の悪魔は取り出した猟理鋏を両手で、まるで剪定鋏のように持って灼熱の大地を駆け抜けていく。
あの林檎の味は未知数。信者の獲得のために実際に食べさせることを考えて味にも磨きをかけている可能性はあるにはあるが、ウィルオーグは著名な宗教家ではあるが農家の生まれだとか農学を学んでいたとか聞いたことがない。万に一つくらいの可能性であろう。
となると品種改良されていない野生の林檎は非常に酸っぱいから生で丸齧りはイマイチかもしれない。でも酸っぱい林檎は酸っぱい林檎でそれにあったレシピで調理すればいい。
競争相手についてはパラディン達は我が身惜しさに動けないからアウトオブ眼中。蛇竜や亡者はこちらに致命傷は与えられないけどその数の多さが厄介。
やはり実力については他の猟兵達が一番だが、林檎を取りに行くよりも樹木の周りをうろちょろしている蛇竜や亡者を薙ぎ払うことを現時点では優先している。変に今のうちに倒してしまったら締め付けがなくなった蛇竜や亡者がなだれ込んでくるかもしれない。
それに悪魔の体は飛び交う雷や光線を浴びても大地や樹木を覆う蒼焔に炙られても壊れてしまうことがない以上、自分に牙を剥いてきた時にだけ相手をすればいい、と割り切った。
『いただきっす!』
そうして誰にも背後を突かれなかった杏子はあっという間に樹木の元まで辿り着き、枝と果実の繋ぎ目を狙って得物の切先を突き出した。
成功
🔵🔵🔴
五百崎・零(サポート)
※戦闘中はハイテンション
「死にたくない」と言いつつも、どんな状況でも楽しんで戦う。
武器は主に銃を使用し、近〜中距離で戦う。敵の間合いに入ることに躊躇いがない。
傷つけても傷つけられても「ヒャハハ」「キヒヒ」など、奇声をあげながら笑って戦闘を続行。
ずっと戦っていたいので、相手が自分より強いほど嬉しい。
ユーベルコードは指定のものをどれでも使用。
他の猟兵に迷惑をかけるような行動はしません。
その他おまかせします。
「うわぁ、死にたくない死にたくない!!」
ケラケラと笑いながら五百崎・零(死にたくない死人・f28909)は襲いかかってくる蛇竜の噛みつきを避ける。
言葉の内容は戦いへの嫌悪感に満ちていたが、金の瞳を爛々と輝かせていた。
なぜなら零の「死にたくない」は「|死んだら戦えなくなる《・・・・・・・・・・》」と同義。戦場の高揚感への歓喜の声なのだ。故に人獣問わず戦いをもたらす魅惑の果実を成す木に関心はあった。
だがオブリビオンと化している以上、伐採して処分しなければならない。ならば今集まっている分を骨の髄まで味わおうと考えるのは当然だった。
100の頭に繋がる首や胴体にも鋭利な牙を生やしたつけた蛇竜はもはや別種のモンスターのようである。その一つ一つからの襲撃を避けつつ、零は片っ端から銃弾を撃ち込んでいく。
硬い鱗に覆われた胴体のあちこちに柔らかい肉を無防備に晒す|口《じゃくてん》があることで、蛇竜の体からはどんどん血が噴き出す。その痛みに身を捩らせながら蛇竜は何十もある頭部で、零が銃を持っていない方の手に噛み付いた。
「ヒャハハ、『腕ならくれてやる。くらえ、いかづち!』」
刹那、零の腕が内側から爆ぜて真っ白な光が迸る。接触していた蛇竜の頭は一瞬で炭化してボロボロに崩れていった。
残った頭部が肩代わりさせられた痛みで絶叫を上げてのたうち回る。対する零は一時的とはいえ片腕を失ったにも関わらず、何事も無かったかのように起き上がって蛇竜の頭を撃ち抜く作業を適当に再開させた。
なぜなら、一方的な殺戮は零の好みではないからだ。
成功
🔵🔵🔴
ユリッド・ミラベル(サポート)
時計ウサギのアリスナイト×パーラーメイド、23歳の男です。
普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、先生の前では「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
変な果実があると聞いてサクラミラージュから遠路はるばるやって来たユリッド・ミラベル(紅茶色の右耳折れ・f22442)は使い手の想像力に応じて無限に進化する、美しき白銀の槍で四方八方から伸びてくるその門番として聳え立つ蛇竜の顎を片っ端から叩き落としていく。
しかし致命傷とまではいかず、すぐに持ち上がって殺意に満ちた目をユリッドに向けてきた。
『Step,Turn,Shot for you.』
だが本命は槍ではなく、その影で隠し持っていた軽機関銃だ。
小気味良い等間隔の音を立てながら放たれた弾丸は口内の柔らかい肉を次々に穿っていく。
そして痛みで身を捩らせたところで槍の側面ではなく切先で蛇竜の心臓部を貫いた。
頭部や口が何百あろうとそこに血を供給する臓器は一個だけだったようで、蛇にしては太い胴体を持つ蛇竜は震えるように痙攣した後に大きな音と土埃を立てて倒れ伏した。
「こんな蛇竜が奥にはまだたくさんいるんだろうな」
足をかけて槍を引き抜いたユリッドは戦闘による動作と島を埋める炎の熱で滲み出して来た汗を袖で拭う。
冒険者の亡霊はここに至った人数が少なかった故に早々に打ち止めになったが、蛇竜や飛竜は大小問わず奥から這いずり出て来ていた。流石に同族の血の匂いが濃くなったことで二の足を踏むようになったようだが。
そんな中、パキパキと乾いた音がし出す。視線を蛇竜から音のした方へ向ければ猟書家が育てた偽神の樹木が傾いて倒れたところだった。
見た物を魅了する光はとうに消えていて、蒼い炎が代わりに辺りを照らす中ユリッドは足元に転がる死体に再び目を移して独り言ちた。
「ドラゴンとはいえ爬虫類の肉は……限定メニューで出しても売れなさそうだな」
成功
🔵🔵🔴
第2章 日常
『夜光虫の水辺』
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POW : 皆でわいわい眺める
SPD : しっとりと楽しむ
WIZ : 幻想的な情景を形に残す
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
蛇竜やら飛竜やらは本当にあの果実に引き寄せられていたらしく、あの樹が無くなると下の階に引っ込んでしまった。そして偽神の樹木が消えた島は一転して安全地帯となった。そこで冒険者達の中継地点として拠点が作られることになった……という。
だがそれはまだ冒険者の間に流れる伝聞や噂でしかない。ギルドのお偉い方の間で計画が固まったところでようやく全容が明らかになるのだろう。
一方でそれを待たずにこの遺跡前の街を去る者もいる。———パラディン達である。
奥にもウィルボーグの置き土産が残っているかもしれないとしばらく調査を行っていた彼らだが、あくまであの樹木の伐採のために神殿から派遣されてきただけにすぎない。
故にそのアフターケアまで終われば「次の職務」のために戻らなければならないのだ。
この日はすっかり顔馴染みになった冒険者や店による追い出し会が開かれようとしていた。
そしてそれに細やかな花でも添えるかのように、店のすぐそばにある川からは仄かな光———夜光虫の群れが浮かび上がっていた。
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「ふむ、職務で離れるのなら必要品などを確保しておこう」
と『マルチスタイル・サイコミュ。ファンネルビット』をポーチや様々な籠などに変型させて拾い集めて周りながら個々のパラディンたちが望まない品々は部隊や冒険者ギルドや商会に引き渡します。
落ち着いたところで、改めて幻想的な情景や空気などを吸収して確保し成分の分析した後で記録と記憶を残しておきます。
他にも3Dホロフォトを撮りつつ自身も冒険者風の身嗜みになり、歩いて回って人の感情や喧騒などを学びながら理解していきます。
楽しみ喋る姿を見て、人の理解と整合して少しづつ学んで憶えて行きます。そんな中で小さくクスクス笑ってしまいます。
「ふむ、職務で離れるなら必要品などを確保しておこう。『マルチスタイル・サイコミュ・ファンネルビット』」
パラディン達が帰還すると聞き、ティティスは宿屋の一室でファンネルビットを展開する。
戦闘時は四方八方にレーザーなどを飛ばす武器として扱われる砲台は砲身が引っ込むと浮遊能力を失って、変形しながら床に転がり落ちた。
ティティスは落ちたビット|だった物《・・・・》を拾い上げ、落ちた拍子についた埃を軽く手で払ってから全体を眺めて、頷く。
「うむ、これならば売り物としても遜色はないだろう」
ビットはほんの一瞬でポーチに変わっていた。
人が石油や植物を糸にして服を編むように、幽魔月精がビットを別の物に作り変えることは容易であったのだ。
聖職者としていわゆる「寄進」された物を断ることはないだろう。しかし荷物がそもそも大量で負担になってしまうようなら渡す前にUターンして再編される調査部隊や冒険者ギルド、商会に引き渡せばいい。
ティティスは数日前に撮っていた3Dホロフォトを自身にインストールし、冒険者風の身嗜みに装いを変えると出来上がったばかりのポーチや籠を腕いっぱいに抱え、持ちきれなかった分は全て別に展開したビットに引っ掛けて宿を出た。
そして言葉少なに押し付けるようなことはせず、対話して、どれだけ必要としているのか考えながら届けている間に日は沈み始めた。
全ての品を渡し終えて一息ついたティティスは|宇宙空間《こきょう》では見ることの叶わなかった幻想的な光景を、これまた3Dホロフォトで記録する。
「ティティス殿、鞄は全て配り終えたのですか?」
後ろから声をかけられ振り向けば、見覚えのあるパラディンの青年がいた。
「はい。もしかして渡した鞄に不備がありましたか。それとも、もう少し必要になりましたか」
「いえ、これから街の方が慰労会を開いてくれるそうで……ティティス殿も一緒にどうかと」
「もちろん、喜んで」
二つ返事で了承したティティスが先導に従って会場に向かえば、先走って飲み始めている常連客やパラディンの姿があった。
そうした人々を尻目にティティスは会場内の空気を他人に気づかれないくらい自然に回収する。これもまた後で成分———料理や酒精、対人の匂いなどの要素のどれが人々を高揚させ、楽しいという感情を呼び起こしているのかを分析する対象となるのだ。
一般的に人が感動する光景を撮影して集めているのは、人々がなぜこの存在に喜怒哀楽の感情を覚えるのかを。普段のように光の筋を残しながら飛べば1、2時間もかからない過程をティティスは仮初の足を使って進んだのは、歩いて回っている間にすれ違う人が見せる感情や喧騒などを学びながら理解するため。その研究対象は多ければ多いほどいいのだ。
人の理解と整合して少しづつ学んで憶えて行こうとしているティティスは人々が身分を無視して楽しみ喋る姿を見て、無意識のうちに小さくクスクス笑っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
蛇竜を呼び寄せるなんてはた迷惑な果実だったけどなんとか全部除去出来たみたいで良かったよ
せっかく平和が戻ったことだし、姉妹達と一緒に平穏になった島を散策でもしようかな?
この世界は自然が豊かでいつ来ても心が落ち着くね、昔は研究所の薄暗くて狭い部屋に押し込められていたから広大な森の開放感と心地よい風が素晴らしく感じられるね
この世界を散策していると冒険者達の気持ちもなんとなく解るかな、ボク達猟兵も色んな世界を渡り歩く冒険者なのかもしれないね
「蛇竜を呼び寄せるなんてはた迷惑な果実だったけどなんとか全部除去出来たみたいで良かったよ」
パラディン達が街で美酒を味わっている頃、ニクロムは偽神の樹木が生えていた島のような陸地の水際にあった岩の上に座り込んでいた。
パラディン達の護衛は猟兵達を無駄に疲弊させることを避けるための策であり、単独で突破できないほどのモンスターがいるわけではない。
しかし今回もニクロムには連れがいた。
左頬に1の文字が彫られた、ニクロムシスターズと研究者に名付けられた少女達。|明日香《ニクロム》にとっての姉妹である。
道は樹木伐採の過程で一往復すれば覚えられた。せっかく平和が戻ったことだし、姉妹達と一緒に平穏になった島を散策でもしようか、と思ったのがつい先日。
そしてそのお誘いに快く乗ったメンバーを携えての探索であった。
「見てください、ホタルですよホタル!」
「この世界では夜光虫と言うそうですよ」
初めて生で見る光景にはしゃぐ「妹」を「姉」が微笑ましく見ながら訂正する。ニクロムはその様子を遠巻きに眺める。
「この世界は自然が豊かでいつ来ても心が落ち着くね」
竜の「遺跡」と名付けられただけあって入り口というか一階に当たる層は石組みの建物だ。しかし地下を進むにつれて石の建造物は洞窟に代わり、四方八方が土に覆われているにも関わらず平然と草木が青々と茂っている。それがダンジョンである。
日差しがないのにどうやって生えてきてここまで成長したのか、原理は不明であるがかつては研究所の薄暗くて狭い部屋に押し込められていた故に、ニクロム達は道中渡ってきた広大な森の開放感と対岸の見えない水辺から吹く心地よい風が素晴らしく感じられた。
「この世界を散策していると冒険者達の気持ちもなんとなく解るかな、ボク達猟兵も色んな世界を渡り歩く冒険者なのかもしれないね」
そんなことを独り言ちてからぐっと体を伸ばして、息を吐く。
「お姉様ー! お姉様も一緒に見ましょー!」
「はいはい」
見つかってしまったニクロムは面の下の口角を上げて立ち上がり、駆け足で妹の元へ向かっていった。
大成功
🔵🔵🔵
飯綱・杏子(サポート)
狩った獲物は持ち帰ってもいいっすか?
|食材《オブリビオン》がヒト型でなければ料理して喰らうっす
ヒト型の食材を|料理す《むさぼ》るときはこちらがヒト型を辞めるのが|マナー《マイルール》っす
リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、出汁や食器としても活用するっす
悪魔だから|毒は利かない《【毒耐性】持ち》っす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす。|熟成肉《リビングデッド》うまうま
|八つ裂きにされても死なない《【切断部位の接続】持ち》っす
同行者の都合で、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ
白子もミルクも大好きっす
「ほら、これも食いな!」
杏子の前には大量の皿が積み重なり、その影で周りにいた冒険者やパラディン達からどんどん新しい料理が追加されていた。
こう可愛がられているようになるまでには、偽神の樹木を伐採した時にまで遡る。
杏子は猟理鋏を使って果実を刈り取った。しかし直後、果実は崩壊し始めたのだ。
「あーっ!?」
杏子は異変に気づくと咄嗟に空気ごとかぶりつこうと口を伸ばしたが、その時にはもう果実は影も形も残ってなかった。
杏子にとって腐敗も発酵も同じこと。液状化したところで吸い付いて啜ればよいだけだが、塵となって消滅されればどうしようもない。
目の前で食べ損ねたという事実に林檎酒好きかつ食道楽の悪魔である杏子は見事に凹み、そんな彼女を元気づけるために帰路にてパラディン達は持っていた食べ物を提供した。
それらを空元気ながら、美味しそうに食べる姿に真面目一辺倒のパラディン達の心を撃ち抜かれ、すっかりアイドル枠に収まってしまったのであった。
そして壮行会でもその流れは続いており、いっぱい食べる君が好きとばかりにパラディン達が杏子に料理を集める様を面白がって冒険者達も乗ってきたというのが現在の状況である。
「嬉しいっすけど……皆さんも食べてるっすか?」
「おーもちろんもちろん」
適当な返しに疑問を抱くことなく、杏子は食べるペースを全く落とさず美味しく完食する。
「嬢ちゃん、次は何が食べたい? 今日は無礼講だからいくらでも奢ってやるぜ?」
食べ放題よろしくメニューを見せてくる冒険者のすぐ横に大皿の料理が置かれる。
「はい、ジャックさんがお金出してるわけじゃないんですから大きな顔して言わない! あと注文するのは注文した物全部食べ切ってからでお願いしますね!」
笑顔で釘を刺したウェイトレスは厨房から出された蒸留酒をテーブルに運ぶべくすぐに踵を返す。普段から大勢の冒険者の胃袋を満たしている酒場かつ前もってこの日に大量の客が入ると分かっていたからか、まだてんやわんやの状態までには余裕がある様子だ。
有事の時は自分が厨房に飛び入って腕を振るうつもりだった杏子は安心してモンスター肉の煮込みを頬張った。
成功
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