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空と仔竜、姉と妹

#ブルーアルカディア #空中戦 #渓谷 #VOID

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 乾いた心、零れない涙。
 それでも私は生きようとした。誰よりも確かに、もっと、もっと。

 気付くとあなたはそこに居なかった。物語が始まるなら私に教えてくれればよかったのに。
 私はあなたにどこまでもついていくのに。

「ミッションの概要を説明する」
 (自称)レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)がいつもの如くゆったりと椅子に座って手を組んでいる。
「現場はブルーアルカディア。とある村から単身で出撃した勇士の少女を援護して欲しい」
 まだ幼さの残る年頃の少女と、その体躯に見合う若き仔竜の立体映像が表示される。
「仔竜の召喚獣を相棒にしている。幼い頃から一緒に育った間柄で、一人と一匹を合わせれば年の割には中々の実力者と言える。とは言え、単身で乗り込むのは無謀と言うより他に無い……が、割と合理的な理由もある」
 立体映像を現場の地形に切り替える。
「目的地は浮遊大陸内の渓谷の先にある。この渓谷の上を飛ぼうとすると、とんでもない量の対空砲火に晒されるので狭い渓谷内を抜けていく必要があるのだ。それは猟兵諸君でも同じ事だ。間違えても渓谷の上を行こうとするなよ」
 狭い渓谷内は複雑に入り組んでおり、時に岩の下を潜り、時に岩の間をすり抜け、時に乱立する柱の様な岩を避けて進む必要がある。
「飛空艇では行く事は出来ない。個人用飛空艇なら行けなくは無いが、その辺が限界だろう。そして、渓谷の長さも結構あるので飛行可能な手段で一気に通り抜ける必要はある。その先に標的が居る」
 立体映像で表示されたのは虹色の石のような物体。
「極めて希少な天使核を有する魔獣……いや、こんな無機物っぽい見た目でも便宜上魔獣と呼ぶしかないんだが、コレが今回の討伐対象だ。少女もこれを目指している……目的は討伐では無いが」
 地形と魔獣の映像を端に避けて、一人の女性の映像を出す。立体映像ではなく、いつかどこかで撮られた写真のようだ。
「彼女は少女の姉だ。この魔獣を討伐しに行って消息を絶っている。時間が立ち過ぎているから恐らく生きているという事は無い……それでも、少女は、妹は諦められなかった。姉の討伐隊は精鋭揃いだった。相手が現状積極的に動いていない事と、精鋭を返り討ちにされて下手に手を出せない状況が続いているので正式な討伐許可が下りなかった。だから、少女と仔竜は独自の判断で出撃した……事情は、そんな所だ」
 すっと、横に手を振って全ての表示物を消す。椅子に深く座って偉そうに手を組むレイリス。
「いつもの事だが、私は見えた事件を解説するだけ……少女を助けようが、放置しようが、諸君の好きにするといい」
 そして、渓谷へと繋がる転送用のゲートを開く。
「では、往くがよい」


Chirs
 ドーモ、Chirs(クリス)です。今回は渓谷で空中戦です。
 危険な渓谷を抜けてその先に待つ石のような物体を破壊しましょう。あ、銀銃のアレではないです。虹色だし。本体は只管硬いだけですが、召喚獣を多用して来ます。
 少なくとも第1章では何らかの飛行手段を用意してください。一応、個人用飛空艇に二人までの相乗りなら大丈夫ですが、それ以上大きくなると通れません。陸路を歩いて進むのも起伏が激しすぎるので駄目です。ロープアクションで行くならアリかな。キャバリアはセーフ。
 飛行手段の持ち合わせが無い場合は個人用飛空艇の貸し出しは受け付けます。
 今回もいつも通りアドリブも連携もマシマシになります。ある程度の人数が集まってから書き始めます。皆さんにスリリングな渓谷での空中戦を提供出来れば良いなと思う所存でございます。
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第1章 冒険 『難所を突破せよ!』

POW   :    気合いと度胸で多少の衝突は気にせず突破!

SPD   :    速度と技術で何にも触れさせずに突破!

WIZ   :    知識とパターン構築で計算された飛行ルートで突破!

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


  私の声が聞こえますか? 私が生きたのは何処だったのでしょう。
   残した足跡さえ分かりません。あなたには自分の足跡が見えますか?

 私達の望んだその意味をいつか分かり合える日が来るでしょう。
  どうかその時まで…。

  思い出になるのがとても怖い。私を記憶の中の宝石のように扱わないで下さい。
   私はそんなに善いものではありません。どうせなら忘れ去ってくれればよかったのです。

 わたしは姉さまの跡を追います。それがわたしの望んだ道です。
  姉さまの残した意味だと信じています。

  私の願いは届いていますか? これは私の光ではなくあなたの光だという事を知っていますか?
   あなたはまだ幼くて独りぼっちのように思うかもしれないけれど、もう自分のやるべき事に気付いているはずです。

 この闇は何も伝えてくれません。
  私の願いは、ただ姉さまと共に生きたかったのです。
木霊・ウタ
心情
そりゃ姉ちゃんに会いたいよな

魔獣討伐のついでだ
姉を一緒に探してやろうぜ

…正直、生死は判らないけど
そこからが本当の始まりかも、な

行動
迦楼羅を炎翼として召喚

で空を行くぜ

障害物を回避できそうにない時には
獄炎で爆発させたり融解させて進路確保

追い付いて仔竜に併走
序だし色々と話せるといいよな

迦楼羅の火力を出来るだけ弱める
あんま熱いと併走できないかも知んないし
でも竜は炎に強いはずだから杞憂かも

俺達は魔獣退治が目的なんだ
折角だから手を組もうぜ?
魔獣で無機物っぽいみたいだけど
何か知ってる?

勿論俺達でよければ
あんたの力にならせてもらうぜ
遠慮なく頼ってくれていいぜ(ぐっ

道中、もしもの時には少女や竜を炎で庇う


黒木・摩那
渓谷の上を通ると蜂の巣になるし、下は入り組んでいるし、で厄介な地形ですね。
本来ならば、そんな地形はゆっくり観光しながら、のんびり歩いていければいいのですが、先行した相手がいるだけに、時間も掛けられないと。

ただ、召喚獣で突破できているのだから、猟兵ならやれないはずはないです。
スピードMAXで渓谷を突破します。

マジカルボード『アキレウス』に乗ります【空中機動】【サーフィン】。
渓谷の地形はスマートグラスで走査しながら、すり抜けていきます。
風などで突破しきれない場合は、ヨーヨー『エクリプス』で木や崖を掴んで急反転したり、UC【紅月疾走】で地形を削り取ります。


ルァハイム・ラアル
【POW】
危ないってのは理解してんだろうなぁ……。それでも動かないっていう選択肢は無かった、と。
その無謀は叱られるべきだけど、責められる謂れは……ないかな?


さーてと、「六翼」フル活用案件だ。
翼は三対全て展開。一対目と二対目を加速に使って、三対目には方向舵の役割を。
突風に煽られたりしたら、長鎚型に変化させた「銀器」で岩壁を突いて反動で激突を回避しながら、とにかく先を急ごう。


ほんと、君まで死んだらお姉ちゃんが浮かばれないかんね……!



●渓谷を征く
「そりゃ姉ちゃんに会いたいよな」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は少女の内心を慮り言った。
「魔獣討伐のついでだ。姉を一緒に探してやろうぜ」
「つまり、姉の死体は未確認」
 ベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)はその意見に同調した。
「遭難者と判断して捜索の意図から同行しますよ」
「危ないってのは理解してんだろうなぁ……それでも動かないっていう選択肢は無かった、と」
 ルァハイム・ラアル(殯の末子・f34505)は少女の決意を検める。
「その無謀は叱られるべきだけど、責められる謂れは……ないかな?」
「あの皆さん?」
 摩那は何かを諫める様に言った。
「とりあえず、彼女に追い付かないと格好付かないですよ?」
 確かに、仔竜と少女は先に出発している分猟兵達より先行している。その飛行技術は確かな物で、この狭く入り組んだ渓谷を当たり前のように突き進んでいる……単独で。
 こちらの存在を認識していないのか、認識した上で眼中に無いのか。後者であれば猟兵としての沽券にかかわる。
「そうだな、まずは追い付かないとな」
「仔竜の方も中々どうして。幼体でありながらこれほど俊敏とは」
「よし、誰が最初に追い付けるかだな」
 別に手を抜いていた訳では無いが、全力で進んでもいない。少しばかり少女の実力を試していただけ……と、言う事にしよう。
 何せ、追い付くのならば相手より早く動く必要がある。首位を独走する少女は中々に早く、こちらに合わせる気が一切無い。
 一応、この渓谷内でも何らかの会敵の可能性はある。
「ふむ……渓谷を抜けるのか……じゃ、結界に乗って飛んでこうかな」
 天星・暁音(貫く想い・f02508)は【攻防刃・星障壁】(コウボウジン・セイショウヘキ)で作り出した結界に乗り、渓谷を進む。
「まあ、空中歩行で普通に歩いて走っても良いんだけど、とにもかくにも警戒は怠らずにゴーだね」
「渓谷の上を通ると蜂の巣になるし、下は入り組んでいるし、で厄介な地形ですね」
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はマジカルボード『アキレウス』で空を滑空する。
「本来ならば、そんな地形はゆっくり観光しながら、のんびり歩いていければいいのですが。先行した相手がいるだけに、時間も掛けられないと」
「なんか無視されてる気がするけど、ついでだし色々話せるといいよな」
 ウタは召喚した迦楼羅の背に乗り、
「さーてと、『六翼』フル活用案件だ」
 ルァハイムは己の三対六翼で。
「私は少しばかり調べながら進むとします」
 ベルベナも自らの翼を広げて。
「じゃあ、誰が最初に追い付くか競争だぜ」
「いいですよ。負けたら何を奢るか考えておいて下さいね?」
 猟兵達は、色付きの風となった。

●追走
 ウタの攻略法はいつも通りだ。後方に爆発を起こしながら、その爆風で加速する力技スタイル。
 普段から爆炎で跳躍したり、爆炎で無理矢理軌道を変えたりしているので、爆炎を使った機動はお手の物だ。
「……正直、生死は判らないけど。そこからが本当の始まりかも、な」
 猟兵達の行く手を阻む渓谷は複雑に入り組んでいる。歩いて踏破するのは不可能ではないが、今回の場合致命的に速度が足りない。少女がどういうつもりでこちらを無視しているのかは定かではないが、併走されたらそうもいかないだろう。
 単純に、自分に付いてこれない様な足手まといは要らないのかもしれない。儚げな見た目に反し案外自信家だ。
 ウタは継続的に爆発を起こして『迦楼羅』を加速させる。金色の羽を舞散らせ金翅鳥が征く。
 S字状の急カーブはやや前方で獄炎を爆発させ急速な方向転換。落石も獄炎で融解。狭いトンネルは少し慎重に、『迦楼羅』に身を任せ進む。
「それで、この先は」
 大きなU字カーブ。直線距離は短いので直進できれば早い。だからそうした。
「突き抜けるぜ!」
 『焔摩天』を前方に掲げ、獄炎を前方に集中。土を融解しトンネルを作り出して進む。すぐに崩落してしまうので他の猟兵は使えないショートカットだが、まずは追い付かなければならない。

「召喚獣で突破できているのだから、猟兵ならやれないはずはないです」
 摩那はマジカルボード『アキレウス』で地面に近い低空を滑るように進む。実際、その動きはスノーボードのハーフパイプめいている。
 右へ、左へ。直進していない分余計な移動をしているように見えるが、下りの加速分まっすぐ進むより実際早い。何より、このスタイルの利点は、
「ここでカットバックですね」
 方向転換が容易である事。加えて、スマートグラス『ガリレオ』で地形を操作し、そのパターンを分析する事により障害物を予測。滑走に利用して障害物が多ければ多い程加速する。狭いトンネルだって怖くない。狭いと言ってもキャバリアがギリギリ通れる広さはあるのだ。たぶん。
 だが、このスタイルも弱点はある。垂直に切り立つ壁は勢いを殺し、壁に沿って上昇する必要がある。
 ならば、スタイルを変えればいい。
「励起。昇圧、集束を確認……浸食開始」
 高速回転する超可変ヨーヨー『エクリプス』を壁に向けて放つ。壁に喰らい付いたヨーヨーは地獄から脱獄せんとする囚人を猛追する猟犬の如く地面を削りながら摩那を上に引っ張る。【紅月疾走】(リュヌ・ルージュ)によるウェイクボードスタイルだ。上昇後のロスも最小限で済む。
 下りは『エクリプス』を手元に戻し、再びスノーボードスタイルに。軽くトリプルコーク1440を決めながら摩那は渓谷を滑走する。

 ルァハイムは己の三対六翼を広げて進む。二対の翼で空を力強く叩き飛翔。一対は大きく広げて舵取りと安定翼の役目を持たせる。三対の翼を有機的に役割を入れ替えながら渓谷を飛ぶ。
 先の二人と違って、ルァハイムの翼は自前だ。産まれた時から当たり前に飛行しているので自然に飛ぶ事が出来る。三対六翼という威容は自然界の生き物には存在しない、神らしい姿だ。それ故に飛行制御は独特の形になる。
 右側三翼で一度空を叩く事により急速方向転換、六翼で一度叩いて加速度を付けてから一対を安定翼に戻す事で速度を維持。渓谷の風を読み、風の導きに乗って羽ばたく。
 ルァハイムの獲物である変幻自在の『銀器』もまた渓谷攻略には欠かせない。勢いを付けてから銀器を鉤爪付きの鉄鎖に変異させ、速度を落とさずに方向転換。高い壁を超える時は長い棒に変異させて棒高跳びの要領で突破。落石には刀の一閃で両断する。
 神としての全能を生かし、ルァハイムは進む。
「ほんと、君まで死んだらお姉ちゃんが浮かばれないかんね……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天星・暁音
ふむ…渓谷を抜けるのか…じゃ、結界に乗って飛んでこうかな
まあ、空中歩行で普通に歩いて走っても良いんだけど、とにもかくにも警戒は怠らずにゴーだね
向こうに見つかる前に落とせるならその方がいいから今回は銃はスナイパーライフルにしておこうかな




作りあげた結界に乗りながら飛行しつう、防具の空中歩行やらも使いながら渓谷を潜り抜けます

なるべく見つからないように行動し、先制でライフルで撃ちますが、見つかるなら速攻を心掛けて、結界での防御と攻撃に加えて、ライフル、ガトリングと自由に形を変える銃による銃撃や、自在に動く糸で攻撃を行いながら突っ込みます。


スキルUCアイテムご自由に
アドリブ歓迎


ベルベナ・ラウンドディー
つまり姉の死体は未確認
遭難者と判断して捜索の意図から同行しますよ
もともと偵察出身、そうした方針のほうが巧く動けるのもありますからね


●偵察・滑空・空中浮遊
ユーベルコード、灯した炎で風向きを確認、それを利用して滑空する省エネ移動です
生命波動を利用した空中浮遊が基本手段+マントや翼を広げたムササビの術
過去の光景を見るのは既に踏破した者達がどの経路を辿ったのか、参考にするためです
帰路もこの渓谷のみ、負傷撤退や二次討伐も想定なら痕跡はむしろ率先して残すはず
…それごと消し飛んでなければ、などと口に出来ませんが。


タスクが1つ増えるぶん少し厳しいですが可能なだけ急ぎます
生存者の救助を遅らせたくはない



●追跡
 放たれた矢の如く先行した三人に対し、ベルベナは遅れている様子だ。
 【現場検証】(ディテクティブフレイム)の炎を灯し、飛膜を広げて滑空する体力的なロスの少ない飛行法。全能をフル稼働して突き進む三人とは進行スピードが違うのは当然だろう。
 ベルベナは課した役割が違う。無論、生存者の救助を目的とするベルベナも先を急ぎたい気持ちはある。だが、先行した三人がそちらは確保してくれるだろうから、別の心配すをる必要がある。
「この渓谷、結構崩れやすい構造をしていますね」
 過去の映像と照らし合わせると構造が変化している箇所が見受けられている。先に踏破した者達の痕跡は見えなくは無いのだが、途切れ途切れだ。自然の地形である渓谷がここまで大きく変化するだろうか?
「まさか、この大陸自体が丸ごと」
 そう、考えてしまうと辻褄は合う。獲物を内部に引き込み、二度とは出られない様に地形を変える……十分あり得る話だ。
 先に進むにつれて行きではなく帰りの痕跡も見えて来た。それは、その仮説を裏付けるような痕跡ばかりだ。
 猛スピードで渓谷を脱出しようとして、壁にぶつかる。追ってきた何者かに止めを刺される。
 今のその場所には何の痕跡も無い。衝突した跡さえも。
 まあ、岩肌を融解してトンネルを作った後やら、岩肌を回転物で抉り取った真新しい痕跡は残っているのだが。
「ここは大陸サイズの魔獣の腹の中という訳ですか……」
 何ともぞっとする話だ。

 暁音は結界を足場にスナイパーライフルを構えて、空中を滑るように進む。風や地形の影響を受けず常に一定の速度で進めることが強みだが、逆に利用する事も出来ない。岩陰を一つ一つクリアリングしながら進んでいく分には自由に動ける方が都合はいい。
「敵は、まだ居ないかな」
 警戒は続けているが、敵らしきものの姿は見付からない。今の所は起伏の激しい渓谷が続くばかりだ。
 相手は恐らく、渓谷の奥まで誘い込んでから前後から挟み撃ちにするつもりだ。だから、この渓谷のどこかに背後から襲うための敵が伏せている筈だ。
 だが、今の所その様子が無い。速度を落としてじっくりと調べている暇は無い。岩肌に擬態してじっと待っていられたら厄介だが、見分けが付かない。
 適当に銃弾を浴びせてしまえば……と、思わなくも無いがこの岩肌前部が敵の擬態と言う事も無いだろう。これまたぞっとする話だ。
 暁音は一つ一つ丁寧にクリアリングしながら渓谷を進む。後方からの奇襲は、来る。今は相手が見つけられないとしても備える事は出来る筈だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『スターリーセラフレイ』

POW   :    空飛ぶエイの毒
海の生物「【エイ】」が持つ【尻尾の毒針】の能力を、戦闘用に強化して使用する。
SPD   :    天魚星の閃光
自身の【周囲を漂う星】が輝く間、【鼻先の玉から発射される破壊光線】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    星鱏草の花粉
【天使核エネルギーで強化した共生植物の花粉】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。

イラスト:麻宮アイラ

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●少女
「追い付いたぜ!」
 そうして、少女に一番最初に追い付いたのはウタだった。摩那とルァハイムもほぼ同じタイミングだが。
「そう」
 少女は無関心に、一言だけ返した。ウタは迦楼羅の火力を出来るだけ弱めて仔竜と併走する。
「俺達は魔獣退治が目的なんだ。折角だから手を組もうぜ?」
「どうでもいい」
 ばっさりだった。
「魔獣で無機物っぽいみたいだけど、何か知ってる?」
「知らない」
 本心からどうでもいいのだろう。少女の目的は魔獣討伐ですら無いようだ。
 ならば、まずはその目的を聞き出さないと取り付く島が無い。
「魔獣討伐が目的じゃないなら、どうしてこんな所に?」
「姉さまが呼んでるから」
「呼んでる?」
 ウタは前方に向けて猟兵聴力で何か意味のある言葉を聞き取ろうとした。

 風よりも無垢になれるでしょうか。星より儚く泣けるでしょうか。
  あまりに弱い私にはそれは叶いませんでした。
   あの夜空のずっと向こう、私が居なくなったらどうかそこへ行けたのだと思ってください。

「空より高く、海より深く祈ります。どうか教えてください。わたしの大切な姉さま、あなたは本当に空っぽだったのですか?」

 何かが聞こえた。音と言うより、頭の中に直接語り掛けられるような何かが。
 少女はそれに答えた。その答えもまた、不思議と頭の中に響いた。
「……これは、一体」
 ほんの一瞬、ウタの脳裏に直感めいた物が奔った。この感覚は、知っている。
「この感覚、まさかVOIDか!」
 VOID。それは有機物、無機物を問わず、ありとあらゆる物に融合侵食する物。形の無い物、人の精神、時間、空間ですら融合し侵食する。時としてオブリビオンをも蝕むオブリビオン。
 あの暗黒の森ほど濃い気配ではない。だから、あの時のように自分達が侵食されるという事は無いだろう。
 だがそうなると、先に出発した討伐隊は。彼女の姉は。
 少女をこの先に進ませるべきじゃない。だが、少女は断固としてそれを拒むだろう。無理矢理力付くで動けなくする事も出来なくは無いが……
 少女は姉への返答を口にすると押し黙ってしまった。姉以外に用は無いと言う事だろう。
「それなら、勝手に守らせてもらえばいいじゃないですか」
 摩那が高度を上げて来た。
「お互い、邪魔をする必要は無いのですから」
「そうだな、猟兵はオブリビオンを倒すだけだ」
 ルァハイムも寄って来る。だが、少女はやはり無反応。ルァハイムは仔竜の前に着ける。
「その仔竜、中々頑張っているが多少疲れも見え始めているぞ。俺が先頭になる。編隊を組んで少し休ませろ」
「……そう」
 少女は素直にその提案に乗った。逆側にウタが着いて三人のデルタ編隊だ。
「私は滑走だからフォーメーションは組めないわね」
「その必要がありませんからね」
 追い付いたベルナルが地表を滑走しながら言った。
「それよりも、そろそろ仕掛けてくる頃合いのようですよ」

「やっぱり、そう来たか!」
 暁音はスナイパーライフルを弾切れするまで撃ち切ってからアサルトライフルに持ち替える。
 分散させて展開した結界が後方から挟撃しようとする『スターリーセラフレイ』の進行を阻んでいる。だが、数が多い。アサルトの3点バースト射撃で次々と仕留めるもやはり埒が明かない。
「そういう事なら!」
 ガトリングガンを取り出し、トリガー引きっぱなしで銃弾をばら蒔く。

◆アナウンスン◆
 これより第2章を始めます。引き続き渓谷を進みながら迎撃に現れた『スターリーセラフレイ』を撃破してください。
 正面と後方からの挟撃でしたが、暁音が殿で迎撃しているので後方からの奇襲は遅れています。スターリーセラフレイも渓谷の上は飛べないようです。
 また、ベルベナが掴んだ情報によりこの大陸自体が巨大な魔獣である事が発覚したので急激な地形変動が起きるかもしれません。
 少女と仔竜は特に助けなくても敵の攻撃を避けられるので庇う必要はありません。ただ、少女の信頼を得る為に何らかの行動をしてもいいかもしれません。
 常設コンテンツとして依頼相談所を設けました。ご活用ください。
https://tw6.jp/club/thread?thread_id=110073&mode=last50
黒木・摩那
少女の方はお姉さんが生きてるのか死んでいるのかも定かではないだけに、話しかけにくいですね。
結果はどうあれ、行方不明のままでは困るでしょうから、はっきりできるといいのですが。

ともかく今は目の前のオブリビオンを叩いて、道を切り開くのが先決です。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーの外周から刃を出して、【先制攻撃】【なぎ払い】を駆使して、スターリーセラフレイを叩き落としていきます。
それでも、数で押されるようならば、UC【風布雷花】を使って、まとめて撃退します。

エイからの攻撃はボード『アキレウス』を盾にして受け流します。


天星・暁音
ふむ…VOIDの仕業か、或いは本当に姉以外に興味ないって可能性もなくはないんだけど…
まあ、あの子だって疲れてない筈はないだろうし、仔竜くんの方の疲れは結構なものだろうし、癒しで疲労回復の援護はしてあげよう
今は仕方ないかもだけど、パートナーは大事にしてあげてほしいものだね
まあ、疲労は俺が引き受けるか…


祈りの抱擁により少女と仔竜の疲労回復をしつつ、味方が傷つくようなら癒します
癒しを優先させますが、殿で敵を可能な限り食い止める様に撃ちまくります
空中歩行なども駆使し、時には自分が囮になることも視野に入れて少女や他猟兵が先に進める様に尽力します

スキルUCアイテムご自由に
共闘アドリブ歓迎


石山本願寺・顕如
『拙僧(わたし)が本願寺顕如です!』
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」

会敵
「どうして私たちをいじめるんですか……?わ、悪いことをしているって自覚はないんですか!?弱い者いじめ、絶対に許せません!仏罰が当たりますよっ!!」

戦闘
「拙僧(わたし)はあなたの様な仏敵を許しません!!」
パワーフードの肉や魚や甘味を食べて筋肉モリモリになり、戦意を滾らせて羅刹紋を浮かび上がらせ、大連珠を握り締め、傷付く事を恐れずに勇敢に挑みかかります!

戦後
「仏様は今を生きる者を救い、過去に死した者もまた救うんです!」
「まずは話し合いましょう?そうすれば分かり合って、仲直りも出来ると思うんです。」



●Arcanum
「正面からも来たな」
 デルタ編隊の先頭を飛ぶルァハイムが前方に展開してる『スターリーセラフレイ』の反応を捉えた。狭い隙間から少し開けた場所に出た瞬間、閃光の弾幕を浴びせるつもりのようだ。三人は編隊を崩し、散開する。
「俺が先頭に出て守る」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)の迦楼羅が加速し、先頭に出る。
 少女と仔竜を守る。その意思を少女はどう受け取ったのか、そっけない表情からは読み取れない。だが、それに反発する気は無い様だ。
「でも、どうするんですか? 一斉射撃の待ち伏せが待ってるんですよ?」
「決まってるぜ。正面から突っ込んで突き破る」
「ですよねぇ」
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は呆れ半分、感心半分と言った様子。
「数に頼る相手ですから、隊形を崩す事が第一でしょうね」
「そうなんだけど正面突破かぁ……」
 結界とガトリングガンで後方からの追撃を大分遅らせた天星・暁音(貫く想い・f02508)もここで合流した。
「速度を落としたら後ろから追い付かれる。後ろから来る方が多いから正面の相手を突破する方が返って安全かもね」
「ブービートラップも仕掛けてありますので」
 ベルベナ・ラウンドディー(berbenah・∂・f07708)は道中に投下した時限爆弾がきっちりと仕事をしている様子を肌で感じている。
「下手に地形を崩落させてしまうと脱出の時に困る事になるかもしれませんし」
 渓谷の上を飛ぶと対空砲火で堕とされる。事前にグリモア猟兵から聞いた確かな情報だ。誰が、何処から、何を撃って来るのか。それは今は分からないが、試してみる気は起きない。
「超高速、長射程の狙撃弾」
 不意に、少女が口を開いた。
「避けられない、受けられない。当たらない場所に居るのが一番」
「……試したんですか?」
 少女は首を縦に振った。
「確かめる必要があった。入り口付近なら避けられる距離。もう無理」
「それは、この渓谷を通らない為にですか?」
 今度は首を横に振る。
「あの魔法は姉さまが一番得意だった物」
 それが、何を意味しているのか。少女は最初から分かっていた。この先に進んでも、姉が出迎えてくれる可能性など……最初から無いのだと。それでも少女はこの道を選んだ。どんな形で拒絶される事になっても、会える可能性もある道を。
「……まだ、決まった訳ではありません」
 だから、ベルベナはそれを否定した。
「この目で確かめるまでは、この先に生存者が居る可能性はゼロではありませんので」
「そう」
 少女はそれだけ言うと、こちらに興味を失ったように押し黙った。
(お姉さんが生きてるのか死んでいるのかも定かではないだけに、話しかけにくいですね。結果はどうあれ、行方不明のままでは困るでしょうから、はっきりできるといいのですが)
 摩那がその様子を見ながら思案する。そして、前方の地形を見越して宣言した。
「どの道、お喋りはここまでですね」
 縦に狭い谷を抜けた先。その先は『スターリーセラフレイ』の待ち受ける場所。
 ……だった筈だったのだが、ここに来て予想外の介入を受ける事となった。

●Noisy Rain
「拙僧(わたし)が本願寺顕如です!」
 石山本願寺・顕如(信者往生極楽 退者無間地獄・f36436)は渓谷の開けた場所のど真ん中の高い岩の上に立ち言った。
「仏様は今を生きる者を救い、過去に死した者もまた救うんです!」
 数珠を手に、オブリビオンを相手に、
「まずは話し合いましょう?そうすれば分かり合って、仲直りも出来ると思うんです。」
 辻説法を。
 確かに阿弥陀仏は全ての者を救うと誓ってはいるのだが、果たしてオブリビオンと言う物はその対象に含まれているのだろうか。オブリビオンは死せる者。存在するだけで浮世の理を乱す異物である。救うべき魂がそこにあるのかどうかは正しく御仏のみの知り得る所で本願寺第11代法主である顕如であっても知る事は叶わない。彼女は、悟りを開いた仏ではなく。ここに居る相手は言葉を解さぬ畜生道のオブリビオンなのだから。
 だから、飛んでくるのは布施などではありえず、野次や暴言ですらなく、閃光の弾幕。突然現れた敵を殺し、屍を貪り喰らうのみ。
「イヤーッ!」
 顕如は高々と跳躍!
「どうして私をいじめるんですか……? わ、悪いことをしているって自覚はないんですか!? 弱い者いじめ、絶対に許せません! 仏罰が当たりますよっ!!」
 そりゃあまあ、そうなるだろう……というツッコミを入れてくれる人物は今この場に存在せず。
「拙僧(わたし)はあなたの様な仏敵を許しません!!」
 懐から取り出した焼き魚を一瞬の内に平らげた! 齢11の少女に羅刹紋が浮かび上がり、縄めいた筋肉が漲る!
「イヤーッ!」
 鋭いカラテシャウトと共に『スターリーセラフレイ』の一体に掴みかかり、空中で振り回す!

「味方、だよな?」
「少なくとも、猟兵ではあるかと。色々とどうかと思う方ではありますが」
 どう考えてもグリモア猟兵の話をちゃんと聞いていたとは思えない登場ではある。敵地のど真ん中に投げ込んだのはそれが一番効果的だからだったと言う事にしておこう。
 ともあれ、待ち伏せは完全に潰された物の態勢を立て直して包囲し、弾幕で押し潰す方針に転換した模様。ほっといても猟兵だから死にはしないだろう。
「まあ、俺達のやる事に変わりはない」
 ウタは、迦楼羅の背で『焔摩天』を正眼に構えた。
「そうですね」
 摩那は右手に『エクリプス』を、左手でマジカルボード『アキレウス』の端を掴んでエアトリックを決めながら別の方向に斬り込んだ。

●M・A ・I 2000
「行くぜッ!」
 ウタは迦楼羅の背で前方に『焔摩天』を掲げ、そのまま突撃した。当然、スターリーセラフレイは鼻先の玉から発射される破壊光線【天魚星の閃光】で迎撃に出る。
 分厚い弾幕の包囲網を前に、すれば人は普通何とか避ける隙間を見付けて避けようとするだろう。だがウタは逆に、弾幕に突っ込んだ。閃光と獄炎が干渉し、弾幕に僅かな隙間が空く。左手で爆炎を噴射して初速を得て、迦楼羅の機動力でその隙間を潜り抜けた! なんたる猟兵状況判断力が産み出す弾幕攻略法か!
「この距離なら弾幕は張れないな」
 いくら味方を巻き込むメリットがあるユーベルコードと言えど、味方の方が被害が大きい状況で使える物ではない。一足一刀でスターリーセラフレイを両断。爆炎噴射による急激な方向転換に付いて来れるのは迦楼羅位の物だろう。ましてやそれを利用する事が出来るのも。
 稲妻の如くジグザグな機動で飛ぶ獄炎の迦楼羅は次々とスターリーセラフレイを両断していく。毒針なんて使う暇すら与えない。そして、選択的に相手を残し、包囲させたと見せかけての。
「纏めて還してやる。紅蓮に抱かれて眠れ」
 【ブレイズブラスト】だ。自分が優位に立ったと思った相手程隙だらけな物は無い。集団で狩りを行う性質を逆手に取った格好だ。
 閃光の弾幕をまるで波の如くボードで受ける摩那。その動きは風に舞う木の葉の如く捉え所が無い。だからこそ、弾幕は浅く広く張る事を強いられる。だが、浅い弾幕では『アキレウス』は傷一つ付く事無くただの波のように往なされるだけ。
 もちろん、僅かにバランスを崩して転倒するような事があれば無数の閃光は摩那を貫き惨たらしく殺すだろう。僅かなミスも許されない高度な波乗りだ。
 一つのミスも犯さなければ良い。だからそうした。相手の攻撃を捌き続け、自分の攻撃を当て続ければ理論上倒せない敵はいない。
「ハイヤーッ!」
 投げ放たれた超可変ヨーヨー『エクリプス』の外周から猛禽の爪めいた刃が出現! 主の命を受け獲物を狩るカラテホークの如くスターリーセラフレイに糸を一周巻き付けると殺戮高速回転しつづけバラバラに引き裂く。軽く手を引くと忠実な猟犬の如く主の方向に戻ると、そのままスイングバイめいて周回加速し次の獲物に飛び掛かる殺戮円盤!
 弾幕の波はありとあらゆる方向から飛んでくる。その度に適切な角度にボードを向け、弾幕に乗る。そして殺戮円盤を投じ、無慈悲に殺すのだ。飛び散る血と閃光の弾幕と、優雅にトリックを決める摩那の姿はマリンアートめいていた。

◆アナウンスン◆
 期限が近い分だけ先に採用しています。暁音のメインパートはもう少々待ちください。
 今回はオーバーロードを頂いているのでまだまだ書けます。まだまだ書きます。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー
どちらから声が届くのです?波動を飛ばします
ただ、生存の手掛かりとはいえ
魔獣の地に妹を呼ぶ姉など普通はいません、少し警戒してくださいよ


前章同様【空中浮遊・滑空】で進行
敵数・位置・距離の情報発信を遭難者捜索含めてユーベルコードで実行する
バックアップ担当、直接戦闘力はオマケです




●爆撃・団体行動・索敵・偵察
爆弾投下&その爆風を用いた帆翔・滑空などの機動性が武器です
…が、攻撃意識は牽制程度に抑えます
敵方は誘い込んで仕留める習性がある様子ですし
猟兵布陣のバランス整理に専心したほうがいいと判断しました


…ところで対空砲火とは奴等の破壊光線のことなのでしょうか
渓谷上空に飛ばないことと無関係には思えないのですけど



●Crystal Rain
(どちらから声が届くのです? 生存の手掛かりとはいえ、魔獣の地に妹を呼ぶ姉など普通はいません、少し警戒してくださいよ)
 ベルベナは『生命波動』で声の発信元を辿る。やはり、と言うべきか。その発信源はこの大陸の中央。魔獣の心臓部からだ。だから少女もそこに向かう、向かっている。
 滑空しながら爆弾を投下。しかし、その主目的は敵を倒す事ではなく爆破によって隊列を崩し、乱戦に持ち込ませる為だ。『スターリーセラフレイ』は致命傷でなければ【星鱏草の花粉】によって互いの傷を癒す事が出来る。だからこそ、多少味方を傷付けようとも閃光の弾幕を展開できる。弾幕は群れが大きくなればなるほど、厚く強くなる。
 だからベルナルはそれをさせない。密集する相手には範囲攻撃が有効である事は分かり切った事だ。爆弾ならばまとめて損傷させられる……と、思わせる事に成功している。ベルナルはあえて爆弾をバラ撒き気味に使う事で爆弾使いの存在を誇示して密集させる事を躊躇わせている。
 そうなると、スターリーセラフレイは当然邪魔なベルナルを堕とそうと追跡して来る。それこそがベルナルの本当の目的。敵の群れの動きをコントロールし、状況に対応できる猟兵の所に誘導する。
「任せろッ!」
 即ち、アタッカーであるウタの所へ。更に、爆風による滑空で一度高く飛び上がってからの急降下。地面に衝突する寸前で翼を広げて水平飛行に。様々なマニューバを駆使して群れを分断させれば、
「頂きです」
 摩那の殺戮円盤が狩ってくれるという寸法だ。
 ベルナルは【超能力 応用編】を索敵と空間把握に指向させて使っている。強引過ぎるマニューバには多少の念力も使うが、索敵と捜査は切らさない。今、戦っているこの場所には過去に大規模な戦闘が行われた形跡がある。討伐隊はここで戦っていた。落伍者を出す事無く踏破し、先へと進んでいる。
「この動きは、やはり」
 それは自分達と同じく、後方からの追跡から逃れて前方にしか退路が無いと言う状況だった。暁音が足止めしている分、猟兵達には余裕はあるが討伐隊にはその余裕はなかった筈だ。ましてや、これだけ大量の敵を捌ける戦力も。
 本来、小型魔獣でも天使核は貴重品だ。これだけの数を狩り、その先に強敵が居る事を理解しているなら一度引くという選択肢を取っていた筈だ。だが、撤退しようとした様子が無い。このスターリーセラフレイは前から襲ってくる方は囮役で、後方から来る方が本隊なのだろう。
 ならば後方の本隊を迎え撃てば思惑が崩せるだろうか。残念ながらそうはならないとベルナル自身が結論した。
 この先に居る大型魔獣とこの小型魔獣は共生関係ではあっても上下関係ではない。互いにどちらかを失った所で問題は無い。だからこそ、スターリーセラフレイによって消耗を強いられた状態で奥に待つ本来の討伐対象との戦いで不利になる訳には行かない。
 そして、これが一番だが……少女が持たない。仔竜と少女は持ち前の機動力でスターリーセラフレイを翻弄してはいるが、攻め手が欠ける様子。後方の本隊が合流すれば今以上の乱戦となり、少女は逃げ場を失う。と、言うかそれを選ぶなら少女は一人でも奥に進んでしまうだろう。少女はこんな雑魚と遊んでいる暇は無いのだ。
「結局の所、前に進むより外に選択肢は無い、という訳ですか」
 だが、その予測は後方より来る新たな反応によって覆される事になる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

超変異英雄吸血忍者・オーヴァーニンジャ
ドーモ、レイリス=サン。VOID=サン!はじめまして、ワタシがミュータントヴァンパイアニンジャガールのオーヴァーニンジャデース!

ヒーローらしく堂々とニンジャガントレットで起こした爆炎を背負ってキメポーズでド派手に登場するデス!

ここまでは蝙蝠の翼と、更にUCで下半身をジェットエネルギーにして加速して飛んできたデース!

早速ワタシのミュータントニンポーをお披露目するデース!
上手く行ったら拍手喝采!おヒネリ万歳デース!

ニンジャガジェットで牽制し、しゅば!しゅばばばばぁ!と印を結んで、片手をエネルギーに変換!ライトニングレーザーブレード・ジツデース!

タネガシマブレードと二刀流で切捨ごめんくださいデース!


シャーロット・クリームアイス
渓谷。つまり海ですね

おやおや。何を言っているのかわからない?
これは異なことを……
あれはエイ! エイは海のいきもの! ならばエイがいる場所は海です! よろしいですね?

はい、というわけで、あのエイがフィールド上に存在するかぎり、ここは海であるということになりました

海なので、もちろん海洋生物たちをけしかけて攻撃します!
集団での混戦になれば、治癒のほうも役立つかもしれません

エイとサメ。どちらが捕食(くら)うか捕食(くわ)れるか――!

(おっと、移動手段ですか? 海だろうと海じゃなかろうと、グリードオーシャンのサメはあらゆる地形を走破しますよ!)



●幕間
「ドーモ、レイリス=サン。はじめまして、ワタシがミュータントヴァンパイアニンジャガールのオーヴァーニンジャデース!」
「ドーモ、オーヴァーニンジャ=サン。レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレットです。いや、属性盛り過ぎか」
 私が言える事ではないのだが。
「と、言うか私に挨拶してどうする。ほら、とっとと行ってこい」
「ハーイ!」

●Sense Beat
 超変異英雄吸血忍者・オーヴァーニンジャ(ミュータントニンジャヴァンパイアガール・f36350)は渓谷の入り口から三点着地でエントリー。両掌を合わせ、奥床しくオジギした。
「ドーモ、スターリーセラフレイ=サン。オーヴァーニンジャデース!」
 アイサツと同時に後方で激しい爆発! だが、スターリーセラフレイはアイサツを返さず、閃光の弾幕を放った!
「そーデスかー。アイサツしまセンかー」
 通常、アイサツをされればアイサツをし返さなければならない。アイサツを返さず、しかも攻撃してくるというのはスゴイ・シツレイでありムラハチされる。だが、相手は喋る知能を持たない魔獣。即ち、
「ただのケモノに挨拶は不要デスね」
 オーヴァーニンジャは蝙蝠の翼を広げ……飛ぼうというのか!
「早速ワタシのミュータントニンポーをお披露目するデース!」
 更にその下肢をジェットエネルギーと化し音速戦闘機めいて飛翔!
「スリケン!」
 群れの周囲を回りながら両手でピッチングマシンめいてスリケンを投擲!
「クサリガマ!」
 鎖分銅を投擲! スターリーセラフレイを絡め取る!
「マキビシ!」
 上から大量の非人道兵器マキビシを投擲!
「リンピオトーシ! カイジンリッツァイゼン!」
 チャント共にサインを刻む! 非実体の光剣、ライトニングレーザーブレード・ジツを左手から展開! さらに右手で『高周波タネガシマブレード』を抜く!
「イヤァーッ!」
 二刀横薙ぎの剣閃! 斬り上げ! 振り下ろし! 十字袈裟斬り!
「イィィヤァァァーッ!!」
 オーヴァーニンジャは色付きの風となり二刀を振りながら渓谷を縦横無尽に飛び回る!
「キリステ、ゴーメン下さいデース!」
 二刀を納刀し、ザンシン。その背後で切り刻まれたスターリーセラフレイが爆発四散! ワザマエ!
「歯応えの無いサンシタデース。ギャラリーも居まセンし、早く合流しまショウか」
「あら、ギャラリーなら居ますよ。ここに一人」
 その時、転送ゲートから新たなるエントリー者あり!
「お見事でした。次は私の、いえ、海のターンです」
「ワッザ?」

●Gloomy Dance
「渓谷。すなわち海ですね」
 シャーロット・クリームアイス(Gleam Eyes・f26268)は当然の事を当然のように言った。
「バレーはシー? ナンデ?」
「おやおやご理解いただけない? これは異な事を……見てください」
 シャーロットが指し示す渓谷の先からは増援のスターリーセラフレイ!
「あれはエイ! エイは海のいきもの! ならばエイがいる場所は海です! よろしいですね?」
「アッハイ」
 何だかよく分からないけど勢いに負けて公定してしまったオーヴァーニンジャ。
「海なので、もちろん海洋生物たちをけしかけて攻撃します!」
 【すべてが海になる】(ウェルカム・トゥ・オーシャン)によりグリードオーシャンの海と仮想空間接続され海洋生物たちがなだれ込む!
 まずはイワシの大群が出現! 大群のイワシレーザーで戦端を開く。更にシャケがエントリーし、ホーミングウロコで制圧射撃。イセエビ、ズワイガニも甲殻類の硬さを生かして戦線を押し上げていく!
 スターリーセラフレイもエイらしく尻尾の毒針を使い応戦! 今まさに、この渓谷はエースオブシーフードを決める戦場と化す!
「……いや、そうはならんデスよ?」
 なってるんだよなぁ。ミノカサゴが毒針を射出! 不可思議な機動を描き、毒針からレーザー射撃! 更にシーラカンスがエントリーし、ウロコ弾をばら蒔く! リュウグウノツカイが優雅に及びながら無数のレーザーをばら蒔く!
「オット、あっけに取られている場合ではありまセンね! イヤーッ!」
 オーヴァーニンジャは再び、蝙蝠の翼を広げ、渓谷の進軍に加わる! 特に、大型魚類の死角に回り込もうとするスターリーセラフレイを重点し斬殺!
 そして、それは現れる。海の恐怖の代名詞、即ちサメだ。
 先にエントリーした魚類を巻き込んで喰らいながらサメの進撃が始まる! サメだ! サメが来る! ここは海なので逃れる場所は無い!
 召喚された海産物同士も争い始めてるが、スターリーセラフレイは美味しいのか何なのか優先的に狙われて喰われている。シャーロットはサメの一匹に跨り、渓谷を進んでいく!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
少女と竜を守る
VOIDも気になるけどまずはエイだ
海へ還すぜ

少女
さすが勇士とその竜
実力もあるし
肝っ玉も座ってるぜ

けど…猟兵じゃない
地形変動やエイからの攻撃から庇えるような位置取りで飛行

それにVOIDの影響もあるみたいだ
姉しか見えない様子だから無茶な行動にも注意を払う
いざとなれば回り込んで制止

戦闘
このまま迦楼羅の背に乗り戦う

毒針を
迦楼羅の速い機動や
爆炎噴射による軌道変更で回避したり
大剣で受けたり
纏う炎で針を融解、毒を燃やしながら
加速し一気に間合いを詰めて
その勢いも乗せて獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払って
切断焼却

これを繰り返して各個撃破しながら進むぜ

そして仕上げだ

遅れて来た後方のエイに対して
宙を漂う金色の羽が一斉に炎と光を発して
周囲の星や花粉ごと獄炎に包んで
灰に還していく

事後
鎮魂曲を奏でる
安らかに

…いよいよVOIDか
行くぜ



  私はちっぽけでした。だけど、今よりずっと近かった。あの大きな雲も、あなたも。
   でも、この手はもう届きません。その空の下、あなたの瞳に映る全てが悲しく映ってはいないでしょうか。

 聞いて下さい。もしも、私が途中で力尽きてしまったなら。
  悲しんだりなどしないで、やっと姉さまの所へ行けたのだと思って下さい。


●White Night
「後方から味方が来たようですね。しかも、かなり派手に」
 戦況を俯瞰するベルナルはいち早くその事に気付く。
「この状況ならば」
「ええ、挟み撃ち返しと言う訳ですね」
「君はどうする?」
 ウタが少女に声をかける。少女が前進を選ぶなら、ウタは一人でも少女に付き添うつもりだった。
「分かった、少しだけ付き合う」
 だが、この少女は理性的であった。確かに、姉に会う為には一瞬でも早く前進したい状況ではある。だが、これ以上余計な物に邪魔されるなら……先に片付ける。
「いや、攻め手に欠ける彼女を掃討戦に同行させる意味が薄い。何名かはこの位置をキープして前方に残っている相手を掃討した方がいい」
 ルァハイムは突撃槍に成型した『銀器』を構え直しながら提言する。
「俺もそれに同意するよ。君達は少し休んでおいた方がいい」
 暁音がそれに同意した。
「必要無い」
「いいや、必要だ。それ以上疲弊した飛び方を続けられるとこちらも対応に困る」
「……そう」
 最初は自分一人で行くつもりだった。自分でも、これが上手く行くかなど……正直に言えばどうでもよかったのだ。ただ、姉の元に行きたい。それだけだった。
 絶望的な戦力差である事は分かり切っている。そもそも姉が勝てなかった相手だ。自分一人でどうにか出来る訳はない。だが、期せずしてここまで来れてしまった。おせっかいな人達が現れたお陰で。
 その事を感謝するつもりは無いが……彼女とて、死にに来たつもりは無い。生きて会えるならその方がいい。
「分かった、少し休む」
 だから少女はその提案を受け入れ、岩場の影に身を隠して降りた。空気を操る魔法で身を隠し、邪魔にならない様に。
「よし、それじゃあ先に治療をしておこう。祈りを此処に、妙なる光よ。命の新星を持ちて、立ち向かう者達に闇祓う祝福の抱擁を……傷ついた翼に再び力を!」
 【神聖なる祈りの抱擁】(ディヴァイン・プリエール・エンブレイス)放たれた光が少女と仔竜の傷を癒し、疲れを浄化する。
 治療していて気付いたのだが、少女と仔竜は同程度に疲弊している。一見すると仔竜に騎乗しているだけの少女だが、空気を操る魔法の使い手であり、空気の膜で攻撃を逸らすだけでなく仔竜に動きやすい空気の流れを作り出している。あの飛行技術は一人と一匹の合わせ技と言う訳だ。
(パートナーは大事にしているんだな)
 それは少女と仔竜は深い絆で結ばれているという証だ。仔竜に言葉は通じない。だが、仔竜も少女の身を案じ、姉の事を思っているのだろう。でなければ、こんな死地に来る筈も無い。
「拙僧(わたし)もご相伴に預かっても良いでしょうか?」
 顕如がそこに跳躍し、着地した。パワーフードの効果が切れているのか筋骨隆々の羅刹の戦鬼めいていた体は今は年相応の少女の姿だ。力押しのスタイル故か、仔竜と少女よりも疲弊し負傷している。
「どうぞ」
「かたじけない。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」
 顕如はその場に座し、念仏を何度か唱えると読経を始めた。
「俺もいいか? ……死者を弔っているのか」
 ウタと迦楼羅を降りてその場に加わる。顕如程では無いとは言え、正面から突っ込むスタイル故にそれなりに負傷はしている。
「否、拙僧(わたし)は死した者の為にはただ一度の念仏も唱えた事はありません」
「何でだよ。坊さんなんだよな?」
「本来お経とは死者を弔う為の物では無いのです。葬儀と言う後生を思う場に置いて、今生きている人の為を救う為に釈尊が残された言葉なのです」
「そうか、死者の為じゃなくて、生きている人の為か……俺は戦いのあった場所ではいつも鎮魂曲を奏でてるんだ」
「良い心掛けです。後生を思う事は菩提心の始め故に……詳しくお話ししましょうか?」
「今、戦闘中だからな? 本格的な説教を始めるのは勘弁してくれ」
「それは残念」
 顕如は再び座して読経を続ける。ウタは少女に近寄って座った。
「流石は勇士とその竜だ。実力もあるし肝っ玉も据わってるぜ」
「そう」
 時として自ら弾幕に飛び込み、空気の膜で防ぎながら圧縮した空気圧をそのまま叩き付けるという華奢な見た目に反したインファイトスタイルを披露していた少女と仔竜。奇しくもその戦い方はウタに近かった。いつでも少女を庇える位置取りをしていたが、少女に足を引っ張られるような事は無かった。
「今も、姉さんの声は聞こえてるのか?」
 少女は無言で首を横に振る。少女自身に今の所VOID汚染の兆候は感じない。
 あれは、言うなれば一方的な通信と傍受だったのだろう。姉が妹に言葉を投げかけ、妹が返すとそれを増幅して遠方からでも受け取る。その余波が猟兵にも聞こえた形だ。
 無茶をするな、と今言うのは逆効果だろう。猟兵達の言葉に従って休んでいるのだから。それが終わったら、また無茶に見える跳び方はするんだろうが。
 だから、ウタは代わりにこう言った。
「あと少しだ、頑張ろう」
「……うん」
 少女は初めてウタの顔を見て、そしてまた伏せた。
(この様子なら大丈夫そうかな)
 暁音は治癒を施し、結界を操りながらその様子を聞いていた。
(まあ、疲労は俺が引き受けるか……)

●Last Letter REMIX -2000-
 ベルベナ、摩那、ルァハイムの三人は来た道を引き返しスターリーセラフレイの本隊と正面から対峙する。
「手厚い歓迎だな」
 前進しながら戦う時とは密度が違う。凡そ3倍程度だろうか。当然、弾幕の密度も3倍になる。
 ならば難易度も3倍かと言うとそうでもない。
「これはいい、纏めて貫くには好都合だ」
 一対の翼で姿勢を安定させながら二対の翼で『銀器』の突撃槍で纏めて串刺しにするルァハイム。
「結局はただ数が増えただけですしね」
 摩那は超可変ヨーヨー『エクリプス』を励起させる。
「励起。昇圧、帯電を確認。敵味方識別良し……散開!」
 スイングバイする惑星探査機めいて摩那の周囲を旋回しながらスターリーセラフレイを切り刻み続けていたヨーヨーが、華開いた。空中で分解し、分散し、花吹雪めいて舞い散る。花弁がスターリーセラフレイに張り付く。
「ええ、纏めて狩るには好都合です」
 七色に光り輝く稲妻が、渓谷を奔る。スターリーセラフレイのみを正確に貫き、一瞬にして丸焦げにした。花弁が集まって収束し、元のエクリプスの形に戻る。

 一方、渓谷の入り口側から侵攻していたオーヴァーニンジャとシャーロットも奮闘していた。
「単純な数的優位はこちら側にあった筈ですが」
 イワシの群れは撃退され、シャケとシーラカンスは轟沈。イセエビやタラバガニを始めとした甲殻類部隊は善戦するも進撃能力に劣る。先鋒を務めるのはサメと、
「イヤーッ!」
 絶好調でエイの三枚おろしを作り続けているオーヴァーニンジャ。彼女も閃光の弾幕を突き抜けているので負傷はしている。その時、一匹のマグロがオーヴァーニンジャに突撃して来る!
「イヤーッ!」
 オーヴァーニンジャは淀み無くマグロを解体! 新鮮なサシミを……咀嚼しようと言うのか!
「シャリとソイソースが欲しいデース」
 完全栄養食たるスシならば負傷を完全に癒す事も出来よう。だがここは海だ。コメは無い。スシ職人も居ない。
 だが、それでも。マグロに含まれる新鮮なDHAがニューロンを癒し、負傷を和らげる。
「大いなる海の恩恵に有り付けているのだから贅沢は言わないで下さい。サシミも美味しいです」
 シャーロットもサシミを咀嚼している。この戦場に身を晒している以上、無傷ではいられない。

「策ならあります」
 ベルベナは囮役が注意を引き付けている間に低空を、一気に駆け抜けた。
「ポケットの中には何がある」
 狙った位置にそれを散布し、その時を待つ。
「空中を泳ぐエイ。その飛行方式は私と同じ滑空が主体」
 そして、二組の猟兵が前後から群れを、一か所に圧縮していく。爆弾を散布したポイントへと誘導する。
「だったら、下から強風で煽られたら……上に、跳ぶよなぁ?」
 ベルベナは嗤って、スイッチを押した。

 渓谷を揺るがす程の大爆発。幾つもの爆弾が連鎖爆発し、爆風が吹き上がる。
 彼女は、淀み無く、常の如く処理をした。相手が何だろうと関係ない。侵入者はすべて排除する。その意思の元、圧縮された空気弾頭を、超高速で連射した。

「なるほど、やはり上を飛ぶのはよろしく無いようですね」
 早い、見えない、威力が高い。ただ何かが飛んでいる音だけが聞こえて、スターリーセラフレイが穴だらけになっていく。
 対空砲火。確かに、これは避けるのも耐えるのも困難で正面から挑むのは無謀だっただろう。

 迦楼羅と仔竜が渓谷を駆ける。
「撃ち洩らしはこっちで処理する。遠慮なく突っ込め!」
 3点バーストのアサルトライフルに持ち替えた暁音が言った。
「拙僧(わたし)も微力ながら助力致します! イヤァーッ!」
 顕如は暁音が作る結界を足場に、スターリーセラフレイを掴み、投擲! 暁音に近付こうとする物を阻む!
 迦楼羅と仔竜、即ちウタと少女は並んで飛んでいる。ウタの後を、少女が追う形だ。それは、少女に対する盾ではない。
「ああ、遠慮なく突っ込むぜッ!」
 ウタの獄炎が巨大な迦楼羅となって駆ける。炎が燃えるには酸素が要る。炎使いにとって最適な相棒とは、空気を操る風使い。
 少女は無言で、ウタの周囲の大気を操作して燃やし易く空気を入れ替える。それは高温を周囲に散布する形となり、攻撃範囲が広がる。空気を操作する事によって少女自身にその高熱は届かない。
 だからウタは、ただ己を燃やしながら突き進むだけでいい。後に残るのは焼け焦げたスターリーセラフレイだけ。
「派手にやるなぁ……」
 暁音は冷静に、迦楼羅から逃れたスターリーセラフレイに7.62mmを叩き込んで黙らせる。
「正しく、南無阿弥陀仏」
「用法それで合ってるのか……?」
 顕如も残ったスターリーセラフレイを掴んで、壁に叩き付け爆発四散させた。

 こうして、スターリーセラフレイは一匹残らず綺麗さっぱり駆逐されたのだった。
 後に残るはウタの爪弾く鎮魂歌と顕如の読経のみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『天上の虹』

POW   :    リミテッドナイツ
自身の【これまでに蒐集した生命力】を代償に、【最上級に輝く煌びやかな召喚獣達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【環境に対応した連携の力】で戦う。
SPD   :    無尽の回転
200G(万円)相当の【無料召喚石】をx個消費し、ランダムな強さ・外見を持つ【戦闘に長け、魅力的な外見を持った様々な種】族の【自身の指示に忠実な仲間達】をx体召喚する。
WIZ   :    沼の底の怨嗟
【破滅した犠牲者達】の霊を召喚する。これは【魂に響く呪詛や物理現象となった呪い】や【圧倒的な数による包囲】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:烏鷺山

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はセフィリカ・ランブレイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


  忘れようとすること。思い出そうとすること。ずっと繰り返し。こんなにも苦しいのなら、はじめから何も無ければよかったのに。
   ずっとずっと、何も知らないでいられればよかったのに。

 天高く、遥か遠く。姉さまの信じたもの。どんなに世界が悲しくとも、姉さまの残した灯りを頼りに歩く事が出来ます。
  どこまでも、どこまでも、姉さまの所まで……。

●Yoake
 そして、彼女達は辿り着く。至るべき場所、渓谷の最奥部の洞窟へと。
 そこは広い、とても広い洞穴であり、天蓋は厚く覆われている。渓谷が大陸魔獣の喉ならば、ここは胃袋と言ったところだろうか。出入り口はただ一つ。その中央には虹色に輝く『天上の虹』。
 紛れもなく、この大陸魔獣その物の天使核だ。
 その周囲に居るのは……かつて勇士と呼ばれていた物。

「私には自らの意味を知る事は出来ませんでした」
 彼女が、口を開いて言った。
「でも、あなたには知る事が出来るでしょう。私の空っぽな命と引き換えに。どうか気高く、誇り高く……あなたの真実を掴んでください」
 少女は答えた。
「言葉では伝えられない事があると信じています。それはとても儚くて、願った人だけが知る事が出来るのものです。姉さまがそれを教えてくれました。そして、ここに来ました。それがわたしの答えです」
 少女は、叫んだ。
「大切な姉さま……わたしの声が、聞こえていますかッ!」
 彼女は何も答えなかった。

『絶望に身を委ね、傷付き別れる事を望み。その意味を知りながら、それでもなにかをするために……』

 それは、誰の意思なのか。

「見付けたぜ。VOIDの汚染源!」
 ウタは、はっきりと感じ取れる邪悪な波動を断じる。
「そうですか……ここにはもう、誰も居ないんですね」
 ベルベナは悔しさを滲ませながら言った。
 はっきりと分かる。生存者は0だ。全てが『天上の虹』の眷属として取り込まれてしまっている。
 それは少女の姉の討伐隊だけではない。他の場所で喰らった勇士か、或いは遥か昔の天使戦争時代の者か。
 あまりに多くの亡霊が、この場所で、見えない鎖に繋がれていた。
 少女に届いていた声は、その意思は。少女もこの中に一緒になろうという意味だったのか。それとも、この場に導き全てを解放して欲しいという願いだったのか。それは、今は分からない。
 だが、少女は。何も迷わなかった。
「そう、お前が姉さまを……姉さまを……ッ!」


◆アナウンスン◆
 第3章は2/24日10時より受け付けます。それ以前に送信されたプレイングは採用できませんのでご注意ください。
天星・暁音
ここまで来たらあと一息、皆、出来る限りの援護をするから、遠慮なくやっちゃって!

ここは犠牲者達の感じている沢山のモノ溢れていて、そこに彼女の痛みと怒り、そして苦しみも、全てが押し寄せて来るけれど…だからこそ、せめてもの安らぎを!


共苦の過剰に寄り傷を負っては治るという状態を繰り返しながら、少女含め全員の回復に努めながら必要なら少女をかばいつつ、味方の行動を援護する様に攻撃を仕掛けます


痛みはアイテムの共苦参照
実際に怪我を負いますが本質的には他人のものなので直ぐに治り共苦で、戦闘不能になったりはしません

可能ならば、戦闘後に犠牲者へ、UC舞神楽で舞を捧げたいです

スキルUCアイテムご自由に
共闘アドリブ歓迎



●META3
「ここまで来たらあと一息、皆、出来る限りの援護をするから、遠慮なくやっちゃって!」
 天星・暁音(貫く想い・f02508)は後方から誰でもサポートできる位置取りをする。
「魔獣もVOIDも任せます。回収不能と言えどももともと遭難者、特に『姉さま』がファーストでしたから」
 ベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)は『直刀』を手に、幾つかの魔法文字を刻む。
「あーあー胸糞悪いことしやがって」
 ルァハイム・ラアル(殯の末子・f34505)は『銀器』を大鎌型に変化させる。
「お姉さんはダメでしたか……もしかして生きてるかも? とは思ったりはしましたが、厳しい結果になりました。しかし、妹さんは声まで聞いていただけに、わずかでも可能性を信じたからこそ、ここまできたわけで」
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は魔法剣『緋月絢爛』を抜く。
「そんな人々の心を弄ぶかのようなオブリビオンは許せません!」
「VOIDの汚染源をこの世から消滅させる。天使核だけど残しておけないぜ」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は迦楼羅と合身し、炎の翼として顕現する。
「どの道あんな大きさの天使核はどんな工房でも扱えない」
 少女は、仔竜に跨り杖をかざす。
「だから、遠慮なく……粉々に砕いていい」

 『天上の虹』は何も答えない。そもそも明確な意思を持っているのかどうかすら不明だ。
 それがVOID汚染による影響なのか、元からそういうオブリビオンなのかは定かではない。天使核であり、無料召喚石でもあり、VOID化オブリビオンでもある。
 元より、破壊しない理由など何一つ無い。

●Dungeon08
「陣を乱して遊兵を出す、多すぎる数を弱点とすればいい」
 初手を打ったのはベルベナだ。
「猫の足音、女の髭、岩の根、熊の腱、魚の息、鳥の涎!」
 【結界剣 その2】(グレイプニル・レター)足元に刻まれた真に力ある魔法文字により生じる破魔の爆風が従者の隊形を大きく崩す。広いとは言え閉鎖空間内。破魔の爆風は中の異物を徹底的に排斥する地獄洗い式洗濯機めいた様相!
(連携・空中戦・特に封じるべきは対空砲火)
 あの対空砲火はこの距離では撃てない事は分かっている。魔とつくものならお手の物なベルベナならば当然だ。あの速度、威力、精度、連射力。それを発揮するには魔法であっても長い砲身が必須だ。事実として”姉さま”はそれを撃っていない。
 ベルベナは半身を捻り、それを躱す。撃てなくは無いが、スターリーセラフレイの群れを一瞬で消し飛ばした時とは全ての面で劣っている。最も、絶対不可避の20mm対空機関砲システムの弾幕から自動装填狙撃銃の連射に落ちた程度ではある。
 勇士が三人。剣、斧、槍の一撃を打ち込もうとする。回避先に詠唱待機済みの魔導士。
「そんな、精彩の欠けた連携ではなぁッ!」
 三人に『直刀』を奔らせ破魔の印を刻む。更に魔導士の側面に回り込み刻印! 自ら出した暴風に自らが乱される筈も無い!
「乱戦は大変ですなぁ、狙撃手では立ち回り難いでしょう?」

「――此処は死の国、終の褥」
 続いてルァハイムが戦場形成系ユーベルコード【終わりの国】(ニブルヘイム)を発動。
 死の気配色濃い六翼の羽根が破魔の爆風に混じり、死の国になる。
「俺の領域で勝手は出来ねぇぞ」
 最早空を叩く必要すら無く、当然のように物理法則を無視した動きで『銀器』を変じさせた大鎌を振るう。死神は生者の命を刈り取る者ではない。迷える死者を送る者だ。この空間に居るのは迷える死者ばかり。出鱈目な軌道を描きながら大鎌を振るい、『蒼金の翼爪』を叩き付ける。
 勇士の亡霊達は精鋭部隊だった。それが、オブリビオンに取り込まれた事により、猟兵にとっても油断ならぬ相手へと変貌している。だが、今この場に置いては単に刈られるだけの存在に過ぎない。死の国の主が、その存在を許していない。
「その人たちはお前のオモチャじゃないんだよ? ――返せ」
 神を敵に回すという意味はこういう事だ。


◆アナウンスン◆
 期限が近い分だけ先に採用しています。
 今回もオーバーロードを頂いているのでまだまだ書けます。まだまだ書きます。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー
魔獣もVOIDも任せます
回収不能と言えどももともと遭難者
特に「姉さま」がファーストでしたから


●時間稼ぎ・慰め
仇討ちを果たす最後の瞬間まで付き合って頂きます
…見たくありませんか?貴方達全員が望んだ筈でしたよ


●衝撃波・結界術・破魔+達筆
陣を乱して遊兵を出す、多すぎる数を弱点とすればいい
足元にユーベルコードの魔法文字を描いて発動
この空間での暴風の結界はさながら洗濯機ですね
生む爆風で連携・空中戦・特に封じるべきは対空砲火
「あの魔法は姉さまが一番得意…」などと言ってましたが
この破魔の爆流、魔とつくものならお手の物です



尚、寄らば斬る精神
立ち向かえる猛者には同じ文字を直接刻み
結界の力を流し込んで終わらせます


ルァハイム・ラアル
あーあー胸糞悪いことしやがって。
その人たちはお前のオモチャじゃないんだよ?――返せ。


「銀器」を大鎌型に変化させると共にUCを発動。一帯に、俺の死神としての権能を振るうことが出来る「死の国」を展開して、召喚される霊たちに動きを鈍くさせる重圧を掛けて行動を抑制しつつ、大鎌にした「銀器」と六翼(一対目)で片っ端から薙ぎ払う。(範囲攻撃,なぎ払い)
で、周囲に間隙が出来たらすかさず「銀器」を弓型に変えて、魔力で生成した矢を『天上の虹』に叩き込む!


黒木・摩那
お姉さんはダメでしたか……

もしかして生きてるかも?とは思ったりはしましたが、厳しい結果になりました。
しかし、妹さんは声まで聞いていただけに、わずかでも可能性を信じたからこそ、ここまできたわけで。

そんな人々の心を弄ぶかのようなオブリビオンは許せません!

敵が大型で、空間もありますから、ここは手加減なしでいきます。
UC【殲禍烈剣】を使います。

ただ、UCから、こちらに注意を向けさせるべく、攻撃を徹底します。
魔法剣【緋月絢爛】で戦います。
ボードの【ダッシュ】【空中機動】からの【なぎ払い】で下僕を倒していきます。
呪いは【呪詛耐性】で耐えます。

準備できたら、発射。
これでも喰らえ、です。



●Sorrowful Dance
「やはり、これはやっておきませんと」
 摩那はマジカルボード『アキレウス』の切っ先を90度旋回して回避、と見せかけ即座に元の向きに戻すカットバック。そこから更に右手で端を掴んで左手を伸ばしボード事飛びながら後方宙返り! カットバックドロップターン!
「ハイヤーッ!」
 マニューバで稼いだ速度ですれ違いざまに魔法剣『緋月絢爛』で斬り裂く。細剣らしく的確に非装甲部位を狙って突き、そのまま速度に任せて斬り裂く。生者なら盛大に血飛沫を上げる所だろうが亡者に血は流れていないらしい。それでも、存在を斬り裂かれる事が致命傷ならない筈もなく、まるでそこから空気が抜けたかのように存在が霞み消えていく。
 既にベルベナとルァハイムによって大幅に機動力を削られている状態。それでも敵の大勢が崩れる気配すら無いのは、単純な理由。
「一体、どれだけの人を喰らってきたんでしょうねコレは」
 純粋に数が多い。範囲攻撃を用いた所で数が多ければ多い程一人当たりのダメージはどうしても分散されてしまう。
 『天上の虹』本体は最初の場所から動いていない。動く気すら無いのか、そもそも動けないのか。ただ、その周囲から次々と配下を召喚していく。無料召喚石に集る者達すら食い物にしてきていると言うのだろうか。
「そのすまし顔を綺麗に消し飛ばして差し上げますとも」
 次々とリフを決めながら摩那はその時に備える。

「俺達も力になる。姉貴達を解放してやろう」
 炎の翼で飛び、自らを紅蓮の炎で包むウタ。
「あんな物、ここにあっちゃいけない……いや、どこだろうとあんな物は存在しちゃいけないんだ」
 この洞穴に入った時からだろう。少女自身もVOIDの気配を漂わせるようになってきた。存在が、オブリビオンに引き寄せられる。それは、戦う力を増幅させる事も意味する。
「それは、させないぜ」
 ウタならVOIDを祓う事が出来るのは実証済みだ。だが、今ここで少女の戦う力を削ぐのは危険だ。だから今は、その力を使わせる。
「余計なことだけど、命と引き換えの復讐なんてきっと姉貴は望んじゃいない」
「本当に、余計な事」
「生き抜け」
「……言われなくても、生きてやる」
 ウタは、燃え盛る炎と同化したギター『ワイルドウィンド』を取り出し……奏でようというのか!
「お、良いですね。共にセッションをしましょうか」
「領域の主たる俺が許す! 存分にヤれ!」
 破魔の爆風が、風の唄を響かせる。ルァハイムが音を空間その物に響かせる。
「ここは犠牲者達の感じている沢山のモノ溢れていて、そこに彼女の痛みと怒り、そして苦しみも、全てが押し寄せて来るけれど」
 暁音は『共苦の痛み』によりこの場に満ちる痛みをその身で感じる。傷は即座に治る物の、誰かが何かを傷付ける度に同じ痛みを受ける姿は痛々しい。敵の数が多い分、与えている痛みの総量は多い。何よりも、今この場に縛られている事自体が耐え難い苦しみなのだ。凡そ、他の者では想像も付かない程の苦痛に違いない。
 でも、それでも。
「……だからこそ、せめてもの安らぎを!」
 痛みと言う形で他者に寄り添い、それでも笑顔を絶やさない暁音。共に寄り添うが故に言える事がある。謳える詩がある!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●北向きの窓辺
 死してなお生き続ける種族は違う世界ならば珍しくも無いのだが、そう言った者達はそういう種族として産まれているのであって厳密には生前と同じという訳では無い。蘇った時に別の命として産まれるのだ。
 だが、このオブリビオンはそうではない。生者の命を奪い、死した屍を奪い、その魂まで縛り付け使役している。
 その怒りが、嘆きが、苦しみが、悲しみが、何よりも痛みが。暁音には分かる。
 だから歌う。共に苦しみ、共に悲しみ、共に嘆き、共に痛みを感じ、それでも怒りには流されない。
 そんな詩を。
 破魔、浄化、共感、祈り。心無き者に奪われた命を、死してなお浮世に縛り付け使役する非道を正す響き。風の起こす音と共演し、ギターの音を優しく響かせる。
 ダメージではない。魂を癒し、慰める。それは、数が多ければ多い程互いに共鳴し、反響する。
 浄化の波が広がっていく。

「見えた、今だッ!」
 長弓型にした『銀器』の弦を引き絞り、ルァハイムは一矢を放つ。風に乗り、従者の合間をすり抜け、それは『天上の虹』へと深々と突き刺さる……筈だった。彼女が割り込まなければ。真空の弾丸を作り、それを叩き落す。だが、その威力は最早弱々しい一打に過ぎなかった。
 今なら押し切れば、倒せる。だが、その役目は……託すべきだろう。
 一矢と共に、放たれた矢の如く駆け抜けた少女に。
「姉さま!」
 仔竜の背から立ち上がり、彼女に向けて少女が跳んだ。彼女は、それを抱き止めた。

●Last Letter
「ああ、姉さま。あなたに会いたかった。ずっとずっと会いたかった」
『これを誰かが聞いているという事は、私はもうこの世に居ないのでしょう』
「……姉さま? 姉さま!」
『この声はあなたに届いていますか?』
「もう姉さまと離れたくありません。いつまでも一緒に居させてください」
『どうか、お願いします。この厄災の元凶を破壊してください』
「……姉さま」
『れは、ただの天使核ではないのです。必ず、破壊してください』
「…………」
『そして、願わくば……あの子に』
「……姉さま」
『私は、遠くに旅立ったのだと。置いて行ってごめんなさいと』
「…………」
『そして、どうか……健やかに過ごせるように。あの子は少し、無茶が過ぎるから』
「……ねえ、さま」
『どうか、お願いします。見知らぬあなた/勇士よ』
「…………」
『この石を破壊し、厄災を終わらせて下さい』
「……姉さまはもう、そこに居ないのですね」
『あなた/勇士よ――翼の祝福があらん事を』
「……さようなら、姉さま」
 少女は、姉の残滓をを。抱きしめて……空へと還した。
●Flash
「全ての死者の魂は、正しき輪廻へと還ったようです」
「分かるのデスか?」
「たぶん、還ったんだろうと思います」
「意外とふわっとしてマス!」
「悟りに至れぬ凡夫の身故に。でも、見るからに動きは悪くなっていますので」
 顕如が再び、取り出した魚を一気に貪ると縄めいた筋肉が浮かび上がる。
「後は、殴ったり蹴ったりすれば良いでしょう! 仏敵滅殺! イヤーッ!」
「デハ、ワタシも斬ったり刺したりしマース! イヤーッ!」
 オーヴァーニンジャが蝙蝠の翼を広げ、ジェットエネルギー化した半身を噴射し、飛ぶ!

「雲海と言う言葉がありますね」
「ありますね」
「なので、雲は海です」
「そうはならないんじゃないですか?」
「海の下にある物は海です。ごらんなさい、クジラも泳いでいます。これは海です」
「そのクジラ、今あなたが呼び出した物じゃ……アッハイ海です」
 粛々と準備を進める摩那に語りかけたのはサメの背に跨るシャーロット。
「そしてここにもサメが。あなたもサーフィンしてるじゃないですか。はい、完全に海である事が証明されました」
「まあ、とにかく……あと少し注意を引きつつ時間を稼いでくださいね?」
 そして再来するエースオブシーフード……じゃなくて、【すべてが海になる】(ウェルカム・トゥ・オーシャン)。タイやヒラメが舞い踊る様に泳ぎながらレーザーを撃ち、ウミガメがゆったりと泳ぎながら波状のレーザーを放つ。アンモナイトが貝の中心にエネルギーを溜め、太いレーザーを撃ち薙ぎ払う!
 そして偉大なるもの、クジラ。全身の砲塔からレーザーや弾頭を放ちながら、ドリルミサイルを発射する。
 だがしかしサメである。サメはサメなので突然現れて食い破り去っていく。海産物、やりたい放題。

「最早、この場に縛られる魂は無い」
 死の国の主であるルァハイムが断言した。
「今出ている者は、捉えていた者を模倣して作った模造品と言う所でしょうかね。ええ、相変わらず数は居るようですが」
 破魔の爆風を操りながら、寄らば斬る『直刀』。もはや、障子戸を突き破るがごとし。
「じゃあ、そろそろ射線上から退避してくださいね」
「ああ、終わりましたか」
「ええ、あの分厚い天蓋を抜く為のドローン配置に少し手間取りましたけど」
 どれだけ敵が多勢であろうとも。質を伴わない数は意味が無いのだ。特に、猟兵が相手では。
 摩那はスマートグラス『ガリレオ』に浮かぶARコンソールで最終確認を済ませる。
「衛星軌道よし。異界転送ドローン、誘導ドローン配置問題無し……あの、海産物の皆さんを退避させないと巻き込みますよ?」
「ご心配なく。海ですので」
「そういう事ならば遠慮なく」
 左手をすっと、前に出し。
「発射!」
 弾いた。

 膨大な、あまりに膨大な光の奔流が空洞内を蹂躙する。【殲禍烈剣】(セント・グレール)クロムキャバリアの空を支配するアレと同等の衛星兵器から放たれたレーザーが、ドローンで作られたゲートを通り抜け全てを滅し滅ぼしていく。
 だが、『天上の虹』はいまだ健在。
「バリアですかね?」
 強固な防御膜で自身を覆い、殲禍烈剣の光から逃れているようだ。だが、自分以外を守る余裕も意図も能力も無い。
「えーと、あの周囲を飛び回ってる小さい子機を撃ち落とさないとバリアが解除できないみたいですけど」
 『天上の虹』の周囲に、それを模した小さい物が飛び回っている。
「関係無いですね」
 もう殲禍烈剣によって消滅したので問題無い。遂に、『天上の虹』本体へとダメージが通る……通っているのだろうか。少なくとも当たってはいる。
「照射限界まで3、2、1。照射終了」
 そして、殲禍烈剣の光が空洞内の全てを蹂躙し切った後に残されたのは『天上の虹』本体のみ。既に、追加の配下を召喚しにかかっているようだが、既に遅い。
木霊・ウタ
心情
VOIDの汚染源をこの世から消滅させる
天使核だけど残しておけないぜ

死して尚安らげず傀儡とは可哀そうに
つながれた魂と天上の虹を海へ還してやろう

少女
俺達も力になる
姉貴達を解放してやろう

余計なことだけど
命と引き換えの復讐なんて
きっと姉貴は望んじゃいない
生き抜け

…で名前を教えてくれ
あんたと相棒の竜と
そして姉貴の名前を

戦闘
迦楼羅と合身
炎の翼として顕現
全身を紅蓮で包む

宙で敵攻撃を機動回避しながら
ワイルドウィンドを奏でる

破魔や浄化を込めた音色が
呪詛や呪いを打ち消す

拡がる旋律が亡霊を縛る鎖を溶かし
軛から解き放つ

あらかた成仏させることが出来たら
焔摩天へ持ち替え

爆炎で加速
火矢と化して宙を裂きながら
天井の虹へ突撃
炎刃で薙ぎ払う

一撃で砕けなくても
しつっこく繰り返す

獄炎で炙られて
徐々に溶けたり罅が入ってくる筈

そこに刃をねじ込み
刀身から高熱を発し内部から崩壊させる

事後
虹とその犠牲者達へ鎮魂曲
安らかに

少女>
姉貴は残念だったな
これからは自分の道を行く番だな
あんたと相棒ならきっと大丈夫だ
風の導きを祈ってるぜ(ぐっ



●Ruins
「これで」
 炎の翼を広げ、自ら興した爆風を大きく受けて。
「終わりだぜッ!」
 焔摩天を両手で構え突撃する。放たれた火矢めいて赤黒い火の粉を僅かに残しながら一直線に飛ぶ。
 その切っ先が『天上の虹』に到達し、砕けた。

 焔摩天の刀身が。

「なん、だって……?」
 これまで幾度の戦いを共にした『焔摩天』は一品物の特別製ではない。元はそうだったかもしれないが、幾度の戦いでそれはウタ自身と強固に結び付けられた半身とも呼べる物だ。
 突撃の威力は相当な物だ。だからこそ、焔摩天の刀身が砕けたのだ。ウタ自身の両手も相応の衝撃が残っているが、その凡そは焔摩天が引き受けてくれたので負傷と呼ぶ程の物は無い。
 だが、それほどの突撃をもってしても。『天上の虹』には傷一つ付かなかった。

「なんて防御力……これ程とは」
 摩那はそれを見て『緋月絢爛』での追撃を中断した。あれ程の威力の刺突を受けて無傷だった硬さには意味が無い。
「防御型ユーベルコードか?」
「そんな物は持っていなかったはずです。なので、これは単純な話」
 ベルベナは冷静に結論する。
「単純に硬いんです。単一元素かどうかは分かりませんが、それに近い硬度を持っているのではないでしょうか」
「なら、靭性は低い筈だな。叩き壊してやればいい」
「ダイヤモンドならそうなんですけどね……どうやってと言う話ですよ」
 『天上の虹』は大きい。軽く10メートルは越えているだろう。重さを武器にする重武器でも相応の大きさが無ければ有効打足りえない。切断しようというのもやはり難しい。
「より大きい物で叩けばいいんじゃないですかね。あんな風に」
 と、言って摩那が指を刺したのはウタである。

「焔摩天は負けないぜ。例え折れて砕け散っても……」
 ウタは殆ど柄だけになった焔摩天を振り上げる。
「何度でも蘇る! より強く!」
 獄炎が吹き上がり刀身が再生成。いや違う。獄炎を固めて形作られる刀身は砕ける前より明確に太く、長い!
「まだだ、まだやれるだろ大焔摩天!」
 ウタは炎の翼を広げて上に飛ぶ。元の大きさの三倍はあろうかという『大焔摩天』を振り上げる。
「行くぜぇぇーーーッ!」
 刀身を獄炎加速させながら急降下の振り下ろし!
 だが、それでも。砕けたのは再び大焔摩天の方だった。

「無茶ですウタさん! ここは一度引いて別な手を」
「駄目だ、コイツは今ここで倒さなきゃ駄目だ」
「……ウタさん?」
 語気を荒げるウタの異変に摩那は気付いた。
「許さない、命を弄ぶ奴は……絶対に許さないぜ!」
 それは、いつもの義憤ではない。
「待て、止まれウタ! どういう事だ!」
 ルァハイムがウタに掴みかかり、強引に止めようとする。
「何故お前からオブリビオンの気配がするッ!?」
「邪魔をするなァ!」
 ウタは強引に振り解き飛翔! さらに大きく、最早剣その物に翼が生えて飛んでいるかのように。
「マズいぞ、何だアレは! 暴走するユーベルコードなんか持っていたか?」
「そういうユーベルコードはありますけど明らかに別物です!」
「これVOIDって奴の影響なのでは?」
 ウタが琥珀色に光り輝く!

 深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ。
 VOIDは、感染した者は自らがそうなった事に気が付けない。

「駄目だよ」
 暁音は、自らも獄炎に焼かれる事も厭わずにウタを抱き締めた。
「その力はこれ以上使っちゃ駄目だ」
 暁音はVOIDと呼ばれる物の痛みを感じようとした。痛みは無かった。ただ、どうしようもない程の虚無感と、それを埋めようとする途方も無い渇望だけが感じ取れた。それでもごく一部に過ぎないという事も。
「駄目だ、そっち側に行っては。君はここに居るんだッ!」
 【神聖なる祈りの抱擁】(ディヴァイン・プリエール・エンブレイス)が、琥珀色の炎を包み込んでいく。

「悪い、面倒かけた」
「……気にしないでくれ」
 ウタの瞳にはもう狂気の気配はなかった。
「でも、流石に限界だ……終わらせろ、ウタ」
「ああ、今度こそ終わりだッ!」
 そして、その巨大化した焔摩天を。
「……終わりだ!」
 振り、
「うおおおおおッ!」
 裂帛の気合いを込めて、
「……だ、駄目だ。いくら何でも重すぎるぜコレ!」
 振り下ろせない!

「いや、じゃあどうやって浮いてるんですかそれ!?」
「なんか炎の翼のパワーも凄くて。でも、それもこのままだと無くなる!」
「全く、締まらない最後ですねぇ!」
 ベルベナが刀身に暴風の刻印を刻む!
「この重量なら今度こそ破壊出来ます! 無理矢理でもいいので叩き付けて下さい!」
「柄が短いんじゃないか」
 ルァハイムが『銀器』を柄に融合させて伸ばし、全力で押す! てこの原理だ!
「支点はお前だ! 潰れるなよウタッ!」
「形状から打点を割り出しました。ここに落とせば確実です!」
 摩那が落とすべき場所を指し示す!
「最低でもここまで運んで落としてください!」
「大丈夫だ……!」
 ウタが、失われつつある力を制し、刀身を獄炎噴射で押す!
「力で叩き付けるんじゃない、勢いで叩き付けるんだ! 今度こそお前を骸の海に還してやるぜッ!」
「全く……」
 少女は、その刀身の周囲の空気を操り新鮮な酸素を送り込み炎上させる!
「最後まで、おせっかいな人」

 そして、遂に。二度砕かれ、二度再生した焔摩天が。三度振り下ろされた。
 狙いは過たず『天上の虹』に叩き付けられる。再び砕かれる焔摩天。だが、今度は違う。『天上の虹』にも無数の亀裂が入り、爆発するかのようにして無数の破片となって砕け散った!
 猟兵達の勝利だ。

●Innocence
 『天上の虹』が砕かれたのと同時に、大空洞が振動を始める。
「今度は、何だよ……!」
「大陸が、沈む」
 然り、この大陸自体が魔獣で、その天使核が『天上の虹』ならば当然心臓を失った大陸はそのまま雲海に沈む。
 そしてまた、オブリビオンとなって現れるのだろう。だが、それは今はどうしようもない話。
「脱出しないと!」
 たった今、全力を振り絞ったばかりで流石の猟兵達も疲弊している。
「退路を、塞がれましたよ……!」
 激しい落盤が、この大空洞に繋がる唯一の出入り口を塞いでしまった。
「くっ、こうなるんだったら殲禍烈剣で天井に穴を開けておくんでしたね!」
 開けられるかどうかは別なのだが。
「諦める訳があるまい。ふっ飛ばして出口を作るまでよッ!」
 ルァハイムが落盤で塞がれた出口に大槌を叩き付ける! だが、何も変わらない。
「諸行無常。全ての物は常が無くいつかは滅び、後生に行かねばならないのです」
「ノー! 今それシャレにならないデスッ!」
「クジラ、返さなきゃよかったですね」
 もう、どうしようもないのか。このままこの大陸と運命を共にするしかないのか。
「……姉さま?」
 それは、問い掛けだった。光が、収束する。大気が圧縮され、弾頭となる。
「成仏、させたつもりだったんだけどな」
「いいじゃないか。死んだ後も捕らわれたままだったんだ……一度くらい、我儘を通したっていいんだ」
 囚われていた者達の思いが、一つの弾頭となって。
「ありがとう、姉さま」
 突き抜け、突き破った。
「さあ、最後のひと踏ん張り! もう次の便は無いよ!」

●Long Way Home
 大陸が、沈んでいく。方々の体で脱出した猟兵達はそれを眼下に眺めている。
 終わったのだ。少なくとも、今回の事件は。
 へとへとに疲れながらもこれだけは譲れないと鎮魂曲を爪弾くウタは、少女に問いかけた。
「名前を教えてくれ。あんたと相棒の竜と、そして姉貴の名前を」
「ティナリア」
 少女は、ティナリアは自分を指差して言った。
「この仔はブラック」
 蒼い鱗に見えるんだけどな? という疑問は口に出なかった。
「姉さまは、ディアドラ……満足?」
「ああ!」
 本当は、もう少し言葉をかけるつもりだった。でも、それは、何となく。既に”姉さま”に言われているんだろうなと思って。
 悲しいというよりは、晴々とした……透き通るような薄い笑顔を見せたティナリアを見てこれ以上言葉をかけるのは止めておいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月05日
宿敵 『天上の虹』 を撃破!


挿絵イラスト