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●春節を祝う
九龍城砦、コンキスタドールによって侵略された香港租界の中心に位置する、高層建築の集合体。
そこはコンキスタドールがばら撒く銃火器や阿片によって頽廃した場所――ではあるが、旧正月たる春節を祝うのは何処であっても変わらない。
そこかしこに赤い旗や提灯が吊り下げられ、様々なランタンがあちこちを照らしている。小さな爆発音は常であれば銃声であるが、この春節に限っては違う。鳴るのは爆竹、そして花火だ。
九龍城砦の上空では常に花火が打ち上げられ、広場となっている場所ではどこまでも連なる爆竹が景気よく鳴らされ、その音と共に獅子舞や龍舞が行われている。
屋台には揚げ餃子や春巻、中華チマキに胡麻団子、マーラーカオなんかも並んでいて、食べてよし見てよしなお祭り騒ぎだ。
勿論、九龍城砦の内部でだって様々な中華料理を楽しむことができる。
そして、そんな風に春節を祝う九龍城砦にそっとオブリビオンの魔の手が伸びようとしていた。
●グリモアベースにて
「旧正月をお祝いしにいかへん?」
今年は新年早々戦争で、正月気分も吹っ飛んでしもたやろ、と八重垣・菊花(翡翠菊・f24068)が笑う。
「九龍城砦でな、春節をお祝いするお祭りがあるんやて」
馴染みのある日本風の祝い方ではないかもしれないけれど、派手で楽しいし美味しいものがいっぱいあるのだと菊花が瞳を輝かす。
どうせ訪れるのならば、衣装もそれっぽいものにすれば尚良というものである。
「美味しい料理をいーっぱい食べるんもええし、爆竹を鳴らしまくって遊んでくるのもええし、香港租界ならではのお土産品買ったりするんもええと思うんよ」
いわゆるチャイナ服だとか、漢服だとかもあるだろうし、ランタンや煙管なんかも細工が細かくて美しい。
「でな? そこで充分に楽しんでると上手いこと九龍の霊気を纏うことができるんよ」
ここからが話の本番だと、菊花が頷く。
「この九龍城砦の住民が纏う、九龍の霊気を狙ってオブリビオンが侵入してるんやって」
密かに忍び込み、暗黒料理を振舞うのだという。
暗黒料理を振舞う???? 猟兵達の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶのも仕方のない事である。
「うん、そうなんよ。暗黒料理を振舞うんやって……」
九龍城砦内の料理屋を乗っ取っての凶行である、恐ろしいね。
「暗黒料理には人心を乱したりする、一種の毒みたいな効果があるんやけど」
平気な顔をして食べるも良し、料理対決を挑むもよし、正攻法で打ち倒すもよし――要は暗黒料理に打ち勝てばよいのだ。
「とにかく、楽しんだもん勝ちっていうことだけは確かやよ!」
パン、と菊花が柏手を打ち、手の中に現れたグリモアに触れる。
「ほな、あんじょうよろしゅうに! 思いっきり楽しんできてな!」
ゲートを開き、そう微笑んだ。
波多蜜花
閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
戦後シナリオですので、二章仕立てとなっております。
一カ月遅れの正月を祝おうぜ! 一章のみの参加も大歓迎です。
●できること
・一章
春節を楽しむ、屋台巡りや花火見物、爆竹を鳴らして遊ぶのもいいかもしれません。
時間帯は夜、九龍城砦がライトアップされています。
出来そうなことは色々やってみて大丈夫です、公序良俗に反していない限りなんかいい感じになると思われます。
屋台は春節に拘らず色々食べたい物や飲みたい物が屋台にはあると思いますので、唐揚げとビール(未成年は不可)なんかも素敵ですね。
POW・SPD・WIZは気にしなくて大丈夫です。
・二章
オブリビオンとの戦闘ですが、コメディ寄りで大丈夫です。
一章でしっかり楽しんでいると『九龍の霊気』を身に付けられます、さらにその場所に馴染むような行動や衣装で戦えば、敵の霊気を圧倒し、敵の隙を生みやすくなります(プレイングボーナスとなります)
真面目な戦闘は真面目な感じで、コメディ気味な戦闘はコメディ気味な感じになります、いつも通りですね。
●プレイング受付期間について
タグやMSページ記載のURLにてご案内しております、参照いただけますと助かります。
また、参加人数やスケジュールの都合によっては再送をお願いする場合がございます。なるべく無いように努めますが、再送となった場合はご協力をお願いできればと思います(この場合も、タグとMSページ記載のURLにてお知らせ致します)
オーバーロードについてはMSページに記載があります、ご利用をお考えの方がいらっしゃいましたらお手数ですが確認していただけると幸いです。
●同行者について
同行者が三人以上の場合は【共通のグループ名か旅団名+人数】でお願いします。例:【春3】同行者の人数制限は特にありません。
プレイングの失効日を統一してください、失効日が同じであれば送信時刻は問いません。朝8:31~翌朝8:29迄は失効日が同じになります(プレイング受付締切日はこの限りではありません、受付時間内に送信してください)
未成年者の飲酒喫煙、公序良俗に反するプレイングなどは一律不採用となりますのでご理解よろしくお願いいたします。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『九龍城砦の日常』
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POW : 怪しげな酒場や劇場で退廃的な享楽に耽る。
SPD : 盗品や偽造品の溢れる闇市場の取引に参加する。
WIZ : 労働者や不良少年のたまり場を訪れ、交流する。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雨倉・桜木
◎
■UCは呼び出しのために使用
お正月行く!行きます!!
『お前被った面の皮、崩壊してないか?大丈夫か?』
それは大丈夫だよ。キュウダイくんたちと過ごすお正月潰されたのがきてるだけだからね。ちょっと食い気味なだけさ。
■
愛しの愛猫を肩に乗せ、ふらふらと屋台巡りをしようか。唐揚げ食べるかい?熱いから気をつけるんだよ。※悪魔猫だから何でも食べれます。
串焼きや唐揚げ食べる愛猫を頬ゆるゆるの顔で眺めたり、口元の脂をハンカチで拭ってあげたり。
一応、この後、お仕事あるからね。古着屋とかあれば羽織るものを一着買っておこうか。お年玉のつもりで支払いは多めに。お釣りはいらないよ。
なんて、一回言ってみたかったんだよね。
●愛猫と春節
2022年お正月、それは突然の戦争により吹っ飛ばされたもの、そして雨倉・桜木(花残華・f35324)にとってもそれは例外ではなかった。
「春節? 旧正月、お正月! 行く! 行きます!! ね、キュウダイくん!!」
『お前被った面の皮、崩壊してないか? 大丈夫か?』
「それは大丈夫だよ、キュウダイくんたちと過ごすお正月を潰されたのがきてるだけだからね!」
相当では? 愛猫とのまったり正月ぞ?? その正月を犠牲にしたお陰で戦争には勝てたので、まぁトントンである。
そんなわけで、ちょっと食い気味な桜木と彼の愛猫たる悪魔、一角猫のキュウダイは九龍城砦へとやって来ていた。
「わぁ、賑やかだね」
目に入るのは赤に金色とめでたい色、そして煌びやかにライトアップされた九龍城砦だ。普段はスラム街の如き様相だが、春節ともなればそれも多少はなりを潜めるのだろう。
キュウダイを肩に乗せ、屋台巡りでもしようかと桜木があてもなく歩けば、すぐに屋台が並ぶ通りに出くわした。
「色々あるんだね、何がいいかな……あ、唐揚げがあるよ、食べるかい?」
キュウダイが尻尾でぺしん、と桜木の背を叩く。
「よし買おう、好きなだけお食べ!」
カリカリの衣が美味しそうな大きな唐揚げを買い、ふうふうと冷ましながらキュウダイに食べさせる。猫の姿だけれど悪魔なので、なんだって食べられるのだ。
「熱いから気を付けるんだよ」
にゃ、と返事をして唐揚げを食べるキュウダイは幸せそうで、桜木の頬も緩む。そして財布の紐もゆるっゆるに緩んだ。
「あの串焼きも美味しそうだし、こっちの胡麻団子もいいね。キュウダイはどれがいい?」
愛猫が食べたいというものを片っ端から買って、仲良くシェアして食べ歩く。
「ふふ、キュウダイの口元テカテカだよ」
テカテカの口元だって可愛い、とご機嫌な笑みを浮かべながら桜木がキュウダイの口元をハンカチで拭う。
「一応、この後はお仕事があるからね」
この九龍城砦に溶け込むような羽織りはないかな、と桜木が呟けば、キュウダイが可愛い肉球を桜木の頬に押し付けて古着を売る店を示した。
「肉球最高……っと、あの店かい?」
ちょっと見てみようか、と覗けば黒地に赤と白で刺繍された羽織が見えて、軽く羽織ってみればポンチョのような感じで動きやすい。
「いいね、これにしようか」
いいんじゃないか、というようなキュウダイの視線に頷いて、桜木がお札を渡す。
「お釣りはいらないよ」
お年玉のつもりで、支払いは少し多めに。礼を言う店主に手を振って、そのまま羽織を着て再び歩く。
「なんて、一回言ってみたかったんだよね」
憧れのセリフってやつだよ、と桜木がキュウダイに向かって笑った。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
◎
「…?!!」
爆竹に驚いた
「小銃の射撃音には慣れているのですけれど…爆竹にはあまり慣れがなくて。一瞬強張ってしまいます。此処に居る内に慣れるかと思いますけれど」
屋台を回り鹹点心を食べまくる
一通り食べたら九龍城砦内の料理屋へ
「飲み物メニューは除いて、メニューの上から下まで全部ってやってみたかったんですよね」
UC「ノームの召喚」使用し大部屋でノーム達と慰労会
「この人数なら全部の料理を5個くらい頼んで分けあえば…あら?足りないです?それじゃあ何を追加しましょう?」
ノーム達の希望聞き要望が多かったものは大皿で頼む
ノーム達が皆幸せそうにひっくり返るまで注文する
「ふぅ。お腹いっぱいって幸せですねえ」
笑う
●完全制覇!
「……?!!」
パンパン! と大きな音を立てて鳴らされた爆竹に御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が思わず身構える。それから、ほっとした顔をして強張った身体をゆっくりと解すように再び屋台に向かって歩き出した。
「小銃の射撃音には慣れているのですけれど……爆竹にはあまり慣れがなくて」
一瞬身構えてしまいます、と照れたように桜花が零し、此処に居る内に慣れるでしょうか、と小さく笑う。
「美味しそうですね……!」
屋台に並ぶ点心の数々、その中でも鹹点心と呼ばれる餃子や小籠包、肉まんなどの塩味系の点心をあれもこれも、と食べ歩く。
「屋台ならではのお味がします」
美味しい、と微笑んで熱々の肉まんを半分に割り、ふわりと立ち上る湯気と香りにひくりと鼻先を動かして大きな口でぱくり! 溢れ出る肉汁が皮に染みて、また美味しい。
焼き立ての餃子に、揚げたばかりの揚げ餃子を食べ比べ、どっちも甲乙付け難い美味しさに足取りも軽くなる。一通り食べ尽くすと、今度は九龍城砦内の料理店へと一直線だ。
大部屋を借り切って、桜花が常日頃自分を助けてくれる陽気なノーム達を喚び出す。
「私、飲み物メニューは除きますけど、メニューの上から下まで全部ってやってみたかったんですよね」
一度は言ってみたいセリフ、というやつだ。
値段を見ずに、端から端まで! ケーキ屋さんとかでもやりたいですね、今度やりましょうと考えながら桜花がノーム達に微笑む。
「慰労会です、沢山食べましょうね」
その言葉にやんややんやとノーム達が盛り上がり、次から次へと運ばれてくる料理を片っ端から食べまくる。
「屋台の点心も美味しかったですけど、こちらも美味しいです」
箸で割るとスープがじゅわりと溢れる小籠包、パリッとした皮が美味しい北京ダック、ふかひれスープにパラパラの黄金炒飯、どれもこれも本格的で美味しいものばかり。
「この人数なら全部の料理を5個くらい頼んで分けあえば……あら? 足りないです? それじゃあ何を追加しましょう?」
五人前×メニュー表全部で足りないくらい、桜花もノームもよく食べた。
取り敢えず、とノーム達の希望を聞きながら自分も美味しかったものを追加で頼み、最終的にノーム達が幸せそうにぽんぽんのお腹を出してひっくり返るまで食べたのだった。
「ふぅ。お腹いっぱいって幸せですねえ」
その様子を楽しそうに見遣って、桜花も美味しいもので膨れたお腹を幸せそうに撫でたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リュカ・エンキアンサス
◎章お兄さんf03255と
今日はね、お兄さんの誕生日プレゼントを買いに来たんだ
にぎやかだし、そういうのに似合うと思って。
…ところでお兄さん誕生日いつだっけ
……そう
まあ遅くなったけど、細かいことは気にしない
色々首突っ込んで選ぶ。カブトムシの着ぐるみとか
大王グソクムシの靴とか
金ぴかド派手な虫柄コートとか
俺は旅人だから荷物はあまり持てない。し、無駄遣いもしない。
けどそれはそれこれはこれ。変わったものが多いし面白いから、片っ端から買っていこう。あげるものだし
最終自分の手元に残らないならいいんだ
お兄さんのセンス…独特、でしょう?
……さて。それじゃあ休憩にご飯でも……
虫料理だって。すごいな。いく?おごるよ
鵜飼・章
◎リュカさんf02586と
僕から見るとドケチのリュカさんが
僕に何か買ってくれる
こんな怖いことがあるだろうか
誕生日?確か…三の倍数だよ
結構前だった気もするけど…まあいいか
ダイオウグソクムシの靴…
絶妙に僕が喜びそうな物を見つけてくるな
試着していい?ぴったりだよ
リュカさんも一足買えばいいのに
そのコートは…すごいね
でも逆に僕しか着こなせない気もする…
デザイナーさんの虫愛が伝わってくるよ
カブトムシの着ぐるみはレア物だね
これは是非部屋に飾っておきた…着るの?
僕が?
リュカさん僕のセンスを何だと思ってるの?
無料より怖いものはないという言葉が
ふと頭を過ぎるけど
僕は貰える物は貰う主義なんだ
虫料理…いいね、遠慮なく
●春と生誕を祝う
ひっきりなしに花火が上がり、そこかしこで爆竹の音が鳴り響く。
無法者が集まるスラムとも言える九龍城砦だって、春節を祝う気持ちは変わらない。今ばかりは悪さをするゴロツキ共も鳴りを潜め、春節を楽しんでいた。
そしてこの二人、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)と鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)もまた、春節で賑わう九龍城砦へ足を運んでいた。
「今日の目的はね」
「はい」
「お兄さんの誕生日プレゼントを買うことだよ」
え?? 春節をお祝いに来たのでは? なんて通りすがりの九龍城砦の住人は思ったが、見知らぬ二人組にわざわざ絡むこともないので、リュカの話は誰にも遮られることなく続く。
「にぎやかだし、そういうのに似合うと思って」
この春節のド派手な赤と金に彩られた賑やかさに似合う……? お隣のパッと見シュッとしたイケメンが……? お洋服のお色もモノトーンでクール系なイケメンが……?
「ありがとう、でも僕から見るとドケチのリュカさんが僕に何か買ってくれる……こんな怖いことがあるだろうか」
これっぽっちも怖いと思っていない顔だけれど、これから起こることが全く予想できないので、その点においてはちょっと恐ろしいのかもしれない。だからこそ、彼と一緒にいるのは面白いのだけれど。
「……ところでお兄さん誕生日いつだっけ」
一月とか二月なのでは? と誰もが思うだろう、残念!
「誕生日? 確か……三の倍数だよ」
バカになるという暗喩ではない、マジで三の倍数……九月六日なのだから。
「……そう」
遅くなってしまったが、そんな細かいことは気にしない。リュカがこっち、と章を手招く。そして章もまた、結構前だった気もするけど……まあいいか、と思っているので問題はひとつもなかった。
おめでたい事はおめでたい事と一緒に祝えばめでたさも二倍みたいなもん理論だ。
リュカと章が入ったのは九龍城砦でも割と際物ばかり集められていることで地元住民の皆様には有名な、イロモノなお店。勿論リュカがそんな事を知っている訳もないのだが、こういうのを引き当てる辺り天性の何かを持っているのではないだろうか。
「お兄さん、これ」
まずリュカが手に取って渡したのはダイオウグソクムシの靴、もといモチーフにして作られたであろう靴。見た感じからしてダイオウグソクムシそのものだけれど、ちゃんと履けるので靴である。
「ダイオウグソクムシの靴……リュカさんは絶妙に僕が喜びそうな物を見つけてくるな」
あっ、このイケメンちょっと残ね……少年の心を忘れない方ですね? すごくかっこいい巨大カブトムシとか出してきますものね。
試着していいかと問えば、店主からどうぞと言われて章が迷わず試着する。
「ぴったりだよ」
モノトーンコーデのスタイリッシュな服装に突如として現れたダイオウグソクムシの靴、インパクトが強い。ひょいっと足裏を見れば、きちんとダイオウグソクムシの腹の感じが表現されていた。
「リュカさんもお揃いで一足買えばいいのに」
「俺は旅人だから荷物はあまり持てない」
それに無駄遣いもしない……のだけれど、それはそれ、これはこれである。今日は章の誕生日祝いを買うのだ、変わったものが多いし、何よりも面白いので片っ端から買う気である。プレゼントだもの、最終的には俺の手元には残らない。
「そう? 意外と歩きやすいよこれ」
「良かったね、じゃあ次はこれ」
章が靴を履いている間に見つけたのは金ぴかでド派手な虫柄コート。
「そのコートは……すごいね」
センスが。
この世には誰がデザインしたん? みたいなコートやセーターが溢れているが、これもそんなコートのひとつだろう。金色の生地に蜻蛉にカブトムシに蝶にテントウムシ等の昆虫がびっしりと描かれている、極彩色で。
「でも逆に僕しか着こなせない気もする……」
これも運命ってやつなのかな、と言いながら章が袖を通す。そんな運命は避けて通ってほしい。
「デザイナーさんの虫愛が伝わってくるよ」
センスはアレだが着心地は良い、あれ、意外とイケてるんじゃ……?
「あとはこれ、はい」
「カブトムシの着ぐるみはレア物だね」
何でこんなとこにそんなものがあるのか、でもカブトムシだ……! と章がそっと笑みを零す。
「これは是非部屋に飾っておきた……」
「部屋着にもいいと思う」
「着るの? 僕が?」
他に誰が? みたいな純粋な目で見つめられ、章が困惑したように首を傾げるとリュカも同じように首を傾げた。
「お兄さんのセンス……独特、でしょう?」
「リュカさん、僕のセンスを何だと思ってるの?」
カブトムシ、かな……?
「大丈夫、お兄さんなら着こなせるから」
これほどまでに無責任な大丈夫もないだろうが、章は貰える物は貰える主義。無料より怖いものはないという言葉が頭を過ぎらないでもないけれど、面白そうなのでまあいいかってなものである。
金ぴかド派手な虫柄コートを纏い、ダイオウグソクムシの靴を履き、カブトムシの頭が飛び出たでけぇ袋を抱えて店を出た。
春節といえど浮かれすぎではみたいな恰好だが、春節なので許されるのではないだろうか。
「……さて、それじゃあ休憩にご飯でも……」
いい店はないかな、とリュカが辺りを見回せば、燦然と輝く『虫料理あります』の文字が!
「虫料理だって」
ほう、虫料理、と章もその店を見遣る。小汚いけれど何かを感じさせる店構えだ。
「すごいな、いく? おごるよ」
誕生日祝いだもの。
「いいね……遠慮なく」
リュカは旅人であるからして、食料が無ければ虫だって食べる。
章は虫が好きであるからして、食べて身になるならそれもいいなって思っている。
ストッパーも突っ込みもいない二人の春節は、まだまだこれからだ――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
【狼と焔】
◎
暗黒料理?食べてしまえば問題無い
大抵のものは食べられるが別に味音痴では無い、食べられる範囲が広いだけで
…なんだ結希、言いたい事でもあるのか
服装は現地に合わせて長袍を
初めて着る服だが結希の見立てではおかしくはないようだ
結希のチャイナ服も可愛らしく似合っていると素直に誉める
結希と屋台を見て回る
他の世界の祭りとはまた違う様子は見ているだけでも面白い
美味そうな匂いに釣られていくつか買って食べてみる
結希も気になるものがあるなら食べてみると良い
少しくらいはと見守って…あまりに美味そうに食べるものだから、止めるタイミングを見失う
ほどほどにしておけとだけ言っておこう
火薬の破裂する音が聞こえれば警戒
…花火と気付いて安堵、しばし見物
賑やかな場所は嫌いではない、そうして楽しんでいる者を見ることも
だから、今の内に満喫しておこう
今回は遊ぶことも仕事の内だ
結希に言われて思い出し、挨拶を返す
ああ、おめでとう。今年も宜しく頼む
今年は新年の挨拶どころではなかったが、この祭りは新年の祝いなのだから丁度良いだろう
春乃・結希
【狼と焔】
◎
(暗黒料理ってどんな…でもこっちには味音痴…間違えた!なんでも食べられるシキさんがおるからねっ。やばそうな時は食べて貰って…)
──あっ、なんでもないですよ…っ
そ、それより見てくださいこのチャイナ服!赤はこの世界で縁起の良い色みたいです
それに焔みたいやし、この色にしてみました。どう?可愛いくないですかっ?
シキさんのそれ…ちゃんぱお?もすごく似合っててカッコいいですよ!
このあと暗黒料理もあるし、食べ過ぎたら駄目なのはわかってる…でも…!
わ、これ美味しそう…ちょっとだけ食べてもいいですか?
あっ、私胡麻団子好きなんです。これも食べていい…?
…や、やっぱり餃子は外せないですよね!これも食べておかないと…っ
それにしても…賑やかなお祝いって聞いてたけど、花火は本当にずっと上がってるし、あっちでは舞があってるし、想像以上でした
…シキさん、平気ですか?賑やかなの苦手やったりせん…?
そうだ。お正月では言いそびれたから…
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね、シキさんっ
●新年を祝って
郷に入っては郷に従え、それは世界が違えど変わらない。
シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)と春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)の二人もまた、その言葉に従って春節祭に訪れていた。
シキは黒を基調とし赤と金糸で彩られた長袍姿で、結希は赤地にシノワズリ風の模様と金糸で彩られたチャイナドレスだ。
「わあ、シキさんのそれ……えっと、ちゃんぱお? すごく似合っててカッコいいですよ!」
「ありがとう、結希のチャイナ服も可愛らしくてよく似合っている」
初めて着た衣装だけれど、結希がおかしくないというなら大丈夫なのだろう、とシキが小さく笑みを浮かべる。
「ありがとうございます! 赤はこの世界で縁起の良い色みたいで、それに焔みたいやし、この色にしてみました!」
可愛くないですか? とご機嫌な結希に、シキがそうだなと頷く。
勿論、結希の背には恋人である大剣、withが背負われているのだけれど、withを包む布も違和感がないように結希が着ているチャイナドレスと同じような生地だ。まあ、その大きさは隠し切れないのだが。
「こんなに皆楽しそうにしているのに、オブリビオンが忍び込んでるなんて……」
「暗黒料理だったか」
「はい、一体どんな料理なのか……」
「食べてしまえば問題無い」
暗黒料理ですよ? と言おうとして、そういえばシキさんは味音痴……間違えた! なんでも食べられるから、ヤバそうな時は食べて貰おう、と結希がそっと決意する。
「そ、そうですね」
「……なんだ結希、言いたい事でもあるのか?」
「いえ、別に! それよりもほら、屋台がいっぱいありますよ!」
ほらほら、と手招かれ、シキが追求するのを止めて結希の後を追った。
「わ……美味しそうですね」
並ぶ屋台はどれも美味しそうな匂いを漂わせ、道行く人を誘惑している。鶏を揚げる香ばしい香りに、蒸し器から漂う蒸かし立ての肉まんの香り、店先に並べられた揚げたばかりの大量の餃子に春巻。
どれだけ美味しいかを競い合うように呼び込む声だって弾んでいて、ついつい全部食べたくなってしまうほどだ。
「これは……ちょっと抗いがたいな」
美味しそうな匂いにつられ、シキが幾つか買い求めると邪魔にならぬ場所で食べ始める。
「美味い、結希も食べるか?」
「い、いただきます……!」
半分に割られた肉まんを渡されて、ぱくっと食べればもちもちした饅頭の皮に肉汁たっぷりの肉餡が何とも言えない美味しさで、思わずジタバタしたくなって結希がぴょんっと飛び跳ねた。
「美味しいです!」
「ああ、これも美味い」
揚げ餃子もパリパリで、ニラとニンニクの程よい風味がまた食欲を掻き立てる。
「これは小籠包も気になるな……」
シキは実のところ味音痴という訳ではない。美味しいものは美味しいとはっきりわかるし、それなりなものはそれなりだと思うだけの味覚は持っているのだ。
ただ、大抵のものは食べられるというだけのこと。それは貧民街で育った過去に起因するところもあるのだろうが、とにかく、食べられる範囲が広いのだ。……まぁ、それを味音痴というのかもしれないが。
「結希も気になるものがあるなら、食べてみるといい」
分け合った食べ物をぺろりと食べて、じーっと屋台を見つめる結希にそう声を掛ける。
「うう、でもこのあと暗黒料理もあるし、食べ過ぎたら駄目かなって……」
わかっている、でも……目の前の誘惑に抗うのも難しいのが現状だ。
だって美味しそうなんだもん! と、結希が閉じた目をカッと見開く。
「これ、ちょっとだけ食べてもいいですか?」
揚げたての大きな唐揚げを前に屈しない人間がいるだろうか? いやいない、みたいな反語を心の中で唱えつつ、結希が顔くらいありそうな唐揚げを買う。
「大鶏排……ダージーパイって言うそうですよ」
「……でかいな?」
ちょっとどころではないサイズだな……とシキは思ったが、美味しそうに食べる結希を見ていたらまぁいいか、と思ってしまったので取り敢えず半分貰って食べた、美味しかった。
「あっ、胡麻団子! 私胡麻団子好きなんです。これも食べていい……?」
「……少しくらいならいいんじゃないか?」
胡麻団子ならデカくはないだろう、団子だと思って見ていれば、結希が一番デカいサイズの袋で買っていた。
「シキさん、シキさんも食べるかなって!」
「ああ、貰おう」
ホカホカの胡麻団子は丁度いい甘さで、つい三個四個……たくさん! みたいな感じで食べてしまう。
「あっ餃子、揚げ餃子を食べたら普通の焼き餃子も食べたいですよね!?」
「……ほどほどにしておけ」
「はい! ほどほどで!」
あれもこれも外せない、と楽しそうに屋台を巡り美味しそうに食べるものだから、シキも止めるタイミングを完全に見失ってしまっている。それでも、彼女が楽しそうなのであればいいか、暗黒料理は最悪俺が全部食べればいいしなと結論付けた。
屋台を巡りながら、少し開けた場所に出るとパンパンッ! と、火薬の破裂する音が聞こえてシキが身構える。
「シキさん、花火ですよ」
「……花火?」
ほら、と結希が指さした先には赤く細い小さな筒が連なったもの――爆竹に火を点けてその音を楽しんでいる人々が見えた。
「爆竹っていうらしいですよ、でも」
打ち上げ花火も上がってますね、と結希が頭上を見上げる。
赤に金、青に緑にと色鮮やかな花火が咲いていて、シキの顔が思わず綻んだ。
「それにしても……賑やかなお祝いって聞いてたけど、花火は本当にずっと上がってるし、あっちでは賑やかな舞があるし、想像以上でした」
獅子や龍の舞う様子に、珍し気に結希が手を叩いている。
「そうだな、随分と賑やかだ」
「……シキさん、平気ですか?」
「ん? 何がだ?」
結希の問い掛けにシキが何の事かわからないと首を傾げると、結希がえっと、と言葉を紡ぐ。
「賑やかなの、苦手やったりせん……?」
今更聞くのもなんだけれど、急に心配になってしまったのでと結希がシキを見上げる。
「賑やかな場所は嫌いではない、そうして楽しんでいる者を見ることも」
安心させるようにそう言うと、シキが再び龍が舞う様子に視線を向けた。
「だから、今の内に満喫しておこう」
今回は遊ぶことも仕事の内なのだろう? と言えば、結希がはい! と元気良く返事をして景気よく鳴る爆竹の音に笑う。
「あっ、そうだ」
「今度は何だ?」
「えっと、お正月では言いそびれたから……」
そもそも、お正月があったのかと言う話になってしまうのだけれど。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね、シキさんっ!」
ああ、そういえばそうだったな、とシキもまた新年の挨拶がまだであったことを思い出す。
「ああ、おめでとう。今年も宜しく頼む」
今年は新年の挨拶どころではなかったからな、としみじみ言えば、結希もそうでしたね、と笑う。
「まあ、この祭りは新年の祝いなのだから丁度良いだろう」
「はい、新年を祝う気持ちが大事ですよね!」
結局のところはそういうことなのだろうな、とシキも結希を見て穏やかな気持ちで頷いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メノン・メルヴォルド
永一さん(f01542)と
◎
撫子色のチャイナ服
深いスリットを気にしていたが、いつの間にか夢中に…
気分を盛り上げてくれるみたいなの
隙間から見る花火も、面白い、ね
音に圧倒されつつ、はぐれてしまわないよう後をついていく
?(瞬き、繋がれた手に微笑む
ありがとうなのよ
屋台もいっぱい…永一さん、何か食べる?
ちまきのもっちりした食感は、ワタシも好き
ん、ゴマ団子が気になる、かも
出来立ては熱くて、はふはふしちゃう
香ばしくて、甘くて、美味しい
もちろん、どうぞなの(差し出し
初めての爆竹に手で耳を覆い
派手に鳴り響く音に永一さんの声がかき消されるようで顔を寄せながら
普段あまり出さないような大きな声で笑って告げる
凄い、ね!
霑国・永一
◎
メノン(f12134)と
せっかくなので中華服着用
黒いチャンパオ
(打ちあがる花火を眺めながら歩き)いやぁ、相変わらず面白い建物だなぁ。ドンパチと賑やかだし。とはいえ迷路のようだし迷わないようにだねぇ。(メノンの位置を確認しながらゆるりと先導するが…)いや、この方が楽か。失礼…(メノンの手を取って優しく引く)
(屋台群を眺め)俺はあのちまきかなぁ。もち米の食感が好きなんだよねぇ
うん、美味い。香りも最高だ。
食べ歩きは楽しいねぇ。メノンのゴマ団子も少し分けて貰ってもいいかい?
さて、俺もアレをやってみるかぁ。そぅれ(爆竹ぽいぽい)
いいねぇこれは楽しい(顔を寄せて笑うメノンを見て此方もニヤリと笑顔で返す)
●新年を祝う音の中で
打ち上がる花火の音が響く九龍城砦は赤で彩られ、普段の薄暗く頽廃的な雰囲気も今ばかりは鳴りを潜めていた。
そんな春節で賑わう九龍城砦を歩くのは、黒地に金糸と銀糸で花の刺繍が施された長袍を着た霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)と、鮮やかな梔子色のチャイナドレスを身に纏うメノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)であった。
着慣れないチャイナドレスの深いスリットが気になっていたメノンだったけれど、いつの間にか不思議な雰囲気の九龍城砦を歩くのに夢中になって、あれは? これは? と、永一に問い掛ける。
「隙間から見る花火も、面白い、ね」
狭い通路から見える花火を指さして、メノンが笑う。
「そうだねぇドンパチと賑やかだ」
相変わらず面白い建物だなぁ、と永一は思う。建物と建物の隙間がほとんどなく、かと思えばいきなり開けた場所に出たり。土地勘があったとしても容易く迷いそうになる、城砦とはよくいったものだ。
「とはいえ、迷路のようだし迷わないようにだねぇ」
上空に響き渡る花火の音に、近くで鳴り響く爆竹の音に圧倒されながら歩くメノンを見遣り、永一がくすりと笑う。歩きやすいようにと先導する永一のあとをはぐれぬようにと付いてくるメノンは、まるで雛か何かのように見えたからだ。
「いや、この方が楽か」
それに確実だ、と呟けばメノンが首を傾げて立ち止まった永一を見上げる。
「失礼……お嫌じゃなければどうかこのままで」
芝居掛かった物言いをしながら、永一がメノンの手を取ると優しく引いて歩き出した。
「ふふ、嫌じゃないの、ありがとうなのよ」
ぱちりと瞬いた瞳を嬉しそうに細め、繋がれた手を握り返してメノンが笑う。それは何より、と永一がエスコートするように進めば開けた場所に見えたのは並ぶ屋台と舞い踊る龍。
「わ、龍の舞ね」
龍がドラや太鼓の音に合わせて龍珠を追い掛けるようにくねり、踊る様は圧巻の一言だ。
「あっちの方で獅子舞も見れるみたいだねぇ」
吉祥のシンボルとも言われる獅子舞も春節には欠かせないもの、龍舞と同じく五穀豊穣を願い踊る姿は見ていて飽きない。
「頭を噛まれているのに、楽しそう、ね」
「厄払いのご利益があるって言われてるらしいからね」
メノンも噛んでもらうかい? と永一が笑うと、メノンがおっかなびっくりといった風に獅子に頭を噛まれて、痛くなかったのよ、と笑う。
「屋台もいっぱいあるのね……永一さん、何か食べる?」
「ん-、そうだねぇ」
立ち並ぶ屋台を眺め、永一があれ、と指をさす。
「俺はあのちまきかなぁ、もち米の食感が好きなんだよねぇ」
「ちまきのもっちりした食感は、ワタシも好き」
じゃあ、二つ買おうかと屋台で竹皮に包まったちまきを買い求め、結ばれた紐を解く。
「うん、美味い。香りも最高だ」
「もちもち、ね」
しっかりと味が染み込んだもち米は風味もよく、満足感がある。
「メノンは? 何か気になるものはあるかい?」
「ん……」
言われてメノンも屋台を見比べ、どれがいいかを品定め。杏仁豆腐も美味しそうだし、サンザシが連なった飴も美味しそうだ。その中でも彼女の目を惹いたのは――。
「ゴマ団子が気になる、かも」
一口サイズの丸い胡麻団子がじゅわっと大きな鍋で揚げられていて、なんとも食欲をそそる。
「よし、買おうか」
耐油紙の白い袋に幾つもの胡麻団子が入れられて、永一がそれを受け取るとメノンへと渡す。
「わ、ありがとうなのよ、永一さん」
「どういたしまして」
嬉しそうに笑って、早速一口とメノンが胡麻団子を頬張る。
「熱くて、はふ、ん、香ばしくて、甘くて、美味しい」
出来立ての熱々を頬張るメノンは可愛らしく、永一が笑う。
「食べ歩きは楽しいねぇ。メノンのゴマ団子も少し分けて貰ってもいいかい?」
「もちろん、どうぞなの」
一緒に食べた方が美味しいに決まっていると、メノンが紙袋を差し出した。
「ん、これはちょっと、止まらなくなるやつだねぇ」
「そうなの、手が止まらないのよ」
顔を見合わせてくすくすと笑いながら胡麻団子を食べて、お腹が膨れたら次は――。
「さて、俺もアレをやってみるかぁ。そぅれ」
そう言って永一が取り出したのは屋台で売っていた爆竹、他の人達が鳴らしているところに混ざり、火を点けてぽいぽいっと放り込む。
「きゃ!」
鳴り響く爆竹の音に、思わずメノンが耳を覆う。遠くで鳴っているのと、間近で鳴るのとでは迫力が違って、メノンがその大きな瞳を丸くする。
「いいねぇ、これは楽しい」
すぐ近くで喋っているのに、永一の声が爆竹の音で掻き消されるようで、メノンが顔を寄せて。
「凄い、ね!」
爆竹に負けないような大きな声で笑って告げると、永一がその笑みに応えるようにニヤリと笑い、また爆竹を鳴らすのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
◎
ここにもすっかり馴染んだものね、と
いつものチャイナドレスを着こなして
けれども馴染みのない光景に首を傾げる
ふぅん?
このお城(?)ってこんな顔もあったのね
汚くて臭くて、暗くて煙たくて
そんなところばかりだと思っていたけれど
遠くで咲いた花火に目を奪われ
近くて爆ぜた爆竹に驚きながら
(だってメアリは狼だもの! 銃声に驚いたっておかしくないでしょう?)
人々の喧噪に【聞き耳】立てる
こんなにも聞こえてくる話し声、笑い声!
ああ、なんて和やかで賑やかなのかしら!
変なの、とくすくす笑いながら【獣の嗅覚】働かせ
甘い物を探して歩く
これはこれで美味しいけれど?
この後味わう暗黒料理とやらは
もっと刺激的なものになるのかしら
●春節だけの違う顔
白のふんわりコートに黒の大胆なチャイナドレスを着こなして、戦争の間にすっかり馴染んでしまった九龍城砦をメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)が闊歩する。
でも、今日はなんだかいつもと違う匂いがすると、メアリーが鼻先をくんっと動かした。
「ふぅん? このお城ってこんな顔もあったのね」
薄暗くて汚くて、臭くて煙たくて、阿片の香りが漂うばかりだと思っていたけれど、今日の九龍城砦は赤い旗や提灯がそこかしこに飾り付けられ、暴力の気配は鳴りを潜めている。
「迷路みたいな所は相変わらずだけどね」
だけど迷路なんて慣れっこだから、メアリーにとってはなんてこともない。ぴょんぴょんぴょん、と軽やかなステップを踏んで、赤と金に彩られた九龍城砦を奥へ奥へと進んで行く。
「きゃっ」
その途中、頭上で咲いた花火に目を奪われ、動きを止める。それから、続けて聞こえてきた大きな銃声のような音に驚いて小さく悲鳴を上げた。
すぐに銃ではないとわかったけれど、火薬の匂いには人一倍敏感なメアリーがだってメアリは狼だもの! と、唇を尖らせる。銃声に驚いたっておかしくないでしょう? なんて思いながら、再び一歩を踏み出す。
人々の喧騒はどこか居心地が良くて、思わず聞き耳を立てながらゆっくりと歩いては、聞こえてくる話声と笑い声に笑みが零れる。
「ああ、なんて和やかで賑やかなのかしら!」
少し前までは戦争でコンキスタドールとドンパチ争っていたというのに!
「ふふ、変なの」
くすくすと笑いながら、獣の嗅覚を働かせる。そうして、良い匂いがする方へと足を向ければ屋台が立ち並ぶ開けた場所に出た。
「まあ、こんなに屋台があるのね」
何を食べようかしら? どれもきっと美味しいけれど、今は甘い物の気分よと、メアリーが泳ぐように屋台を冷かしてひとつのお店の前で立ち止まった。
「糖葫芦……タンフールー? というの? サンザシの飴なのね」
串に刺さったお団子のようなサンザシに飴をかけた、シンプルだけれど美味しそうなそれに決め、メアリーが一つ買い求めてぱくりと食べる。
「甘酸っぱくて美味しいわね」
パリパリの飴を噛み砕き、サンザシの実を齧る。これはこれで美味しいけれど――。
「この後味わう暗黒料理とやらは、もっと刺激的なものになるのかしら?」
楽しみね、期待外れじゃないといいのだけれど、と笑ってメアリーが最後の飴を口の中に放り込んだ。
大成功
🔵🔵🔵
生浦・栴
【壁3】で ◎
此の世界の独特な空気は面白いな
二人が漢服を着るなら俺も倣おう
菊のは案内感謝だ
云うても見送るのは少し詰まらぬやもな
土産は甘味が手頃か、合桃酥など如何だろうか
山羊のの選択が主に肉系であるのを確認しながら
ちまきや、箸休めの副菜を幾つか選んで追加する
毒消しは幾つか用意した
俺だけ酒は呑めぬので烏龍茶で喉を潤しつつ様子を見る係となろう
必要あればこの場でも調合するが
たこわさなあ、今度材料から捕獲に行くか?
山羊のの背を超すのは角の部分まで入れると厳しそうだが
正味の部分は分からぬぞ?
爆竹は壁への土産にしても喜ばれs一寸待て獄炎の
お主の喰うた中に暗黒料理が混じっておらぬか?
酔…ええい区別がつかぬぞ
明石・鷲穂
【壁3】◎
菊花案内ありがとなあ。
旧正月って聞いたことあるが祝ったことはないな。
郷に入っては郷に従うべきだよな。
よっしゃ、漢服着ようぜ。
とりあえずたくさん貰ってきた。
餃子に唐揚げ!ハズレなし!
栴はたくさん食べような。野菜も食うといい。でも俺より大きくならないでくれな。
そんで相馬はこっち。ビールもあるが…白酒、日本酒とたくさんだ。大酒食らいには足りないかもしれん。よし、どれから行く?
いや、美味い!
花火も綺麗だし、美酒佳肴ときちゃ天にも登る気分だ。
あと、なあ。おれ爆竹鳴らしてみたい。一番でかいのやりたい。
火付けは…おー相馬頼んだ――うお熱!うるさっ!?
おまえ〜…さては酔ってるな?
鬼桐・相馬
【壁3】◎
菊花どうもな。何か面白そうな食い物を見つけたら土産に買ってくる
折角なので漢服とやらを着てみよう
最初の乾杯はビールがいい
鷲穂が貰ってきた酒は勿論、ここでしか飲めない地酒類も存分に楽しもう
料理も名物のようなものがあればそれを
身長はどうしても気になってしまうもんな
角も大事な身長要素だ
そういえば至高のつまみ、たこわさを忘れていた
いいな……料理自体は俺がするとマズイが捕獲ならいける
爆竹には俺が火をつけようか
宿る冥府の炎を手に滲ませ導火線に点火するよ
ほら、点いたぞ
一番でかくて長い爆竹を鷲穂の側に放り、その次のサイズを栴の側に
表情筋が頑張らない俺だが、この面子の時は悪い笑顔をはじめ張り切るみたいだ
●男の子はこれだから!
「此の世界の独特な空気は面白いな」
初めて訪れた世界は物珍しく、生浦・栴(calling・f00276)が辺りを見回してそう言った。
封神武侠界、人界と仙界が交流し術武侠文明が発達した、古代の中国世界。現代地球の中国とは異なった世界ではあるが、似た部分はある。この九龍城砦もその一つで、建物が密集しひとつの城砦のようになったスラム街だ。
普段であれば無法者や阿片を求める者が多く蔓延る場所だけれど、今は春節。赤地に金糸で彩られた旗が所狭しと飾られ、赤く丸い提灯がこれもずらりと並んで揺れている。そして銃声の代わりにひっきりなしに花火が上がり、そこかしこで爆竹が鳴らされていた。
「いやー、旧正月って聞いたことあるが祝ったことはないんだよな」
すれ違う人々は赤や黒の中華服を身に纏っていて、明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)がふむ……と考えるように目を伏せ、いいことを思いついた! みたいに目を開ける。
「郷に入っては郷に従うべきだよな! よっしゃ、漢服着ようぜ」
「漢服か、着てみるか」
鷲穂の思い付きのような言葉に、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)が乗ったと頷く。
「漢服? 二人が着るなら俺も倣おう」
で? 漢服はどこで調達するんだ? と栴が問えば、その辺で売ってるんじゃないか? と鷲穂が答えた。
その辺で……? と思いはしたが、九龍城砦の中には飲食店もあれば洋服店もあるかと栴と相馬が顔を見合わせて奥へと進む。
「あ、あそことかそうじゃないか?」
鷲穂が指さした先にはチャイナドレスや長袍が吊り下げられていて、中に入れば漢服も様々ある。あれが良いやらこれが良いやらと言い合って、三人が漢服に袖を通した。
「ほう、これは中々。思ったよりも動きやすいな」
栴が纏うのは黒地に赤襟の漢服で、細やかな花の刺繍が美しい。
「こういうゆったりしたのは俺でも着れるから助かるんだよなー」
獣人たる鷲穂は下半身が獣のそれなので、袖を通して襟を合わせるタイプの服を重宝するのだ。白地に赤の刺繍が施された漢服を着て、ご機嫌で笑っている。
「暴れるのにも支障はなさそうだな、普段のコート姿と然程変わらないみたいだ」
裾を捌く仕草も様になっている相馬は、黒地に金糸の刺繍と赤い腰帯姿の漢服で一通り動きを確認して頷くと、鶴の一声みたいなセリフを放った。
「よし、食べるとするか」
男三人集まれば何が起きるかと言えば、そう、買い食いである! 異論は認める。ついでに言うと呑み放題なんかも始まるのだが、それは今回においては相馬と鷲穂の二人だけだ。
「俺はまだ呑めぬからな、食べる方に回るとしようか」
ああ、それと……と、栴が思い出したように言う。
「菊のに土産も見繕わなくてはな」
転送ゲートを通る時に、案内感謝と言う前にお土産! という元気のいい声が返ってきたので。
「甘味が手頃か、合桃酥など如何だろうか」
「ああ、お土産も買って帰らないとな。甘味は喜びそうだよな」
「面白そうな食い物を見つけたら買うか、どうせ他の面子も食べるだろう」
まあ土産は最後だ、今はそう――屋台での買い食いだ!
「では各々戦利品を持ち寄るスタイルといこう」
「任せろ、とりあえずたくさん買ってくる!」
「買い終わったらそうだな、空いているテーブルがあればそこで」
では一時解散、とばかりに三人が思い思いの屋台へと向かう。
居並ぶ屋台は多種多様、唐揚げに餃子、肉まんに小籠包、海鮮ちまきに肉ちまき、大餅巻肉……ちょっとした箸休めには野菜を包んだ菜包もいいだろう。
ビールに地酒、白酒、老酒や紹興酒……もう瓶ごと持って来いな勢いで買い求め、三人が戻ってくるとテーブルの上に置ききれないくらいの量になっていた。
「餃子に唐揚げ! ハズレなし!」
「山羊のの選択は見事に肉系だな」
見越してちまきや副菜を買ってきた栴が小さく息を吐くと、同じく肉系と酒をチョイスしてきた相馬が酒類を真剣な顔をして眺める。
「相馬、ビールもあるが……白酒、日本酒、中国酒と種類はたくさんだ。大酒食らいには足りないかもしれんが……どれから行く?」
「最初の乾杯はビールがいい」
「獄炎のはブレぬな……」
「よし! 栴は飲めない分沢山食べような!」
あれもこれも、野菜も、と鷲穂が皿に取り分ける。
「でも、俺より大きくならないでくれな」
「山羊のの背を超すのは角の部分まで入れると厳しそうだが……」
ふむ、と栴が烏龍茶のコップを掴んで笑う。
「正味の部分は分からぬぞ?」
何せまだまだ成長期だからな、と言って栴がコップを相馬と鷲穂の持つビールに向かって乾杯と打ち鳴らした。
「身長はどうしても気になってしまうもんな」
相馬がしみじみと言って、ビールを飲み干す。
「角はアイデンティティだから勘定にいれてくれ」
「角も大事な身長要素だ」
「山羊のも獄炎のも上に向かって伸びておるからな」
言われて見れば、栴の角は巻いている為身長としては関係なさそうだな、と鷲穂が笑う。
別に栴の背が低いわけではない、二人の身長が184センチちょっとなだけで。それはそれとして、できれば追い越されたくない、そんな複雑な男心だったりするだけだ。
「しかし美味いな、食べ物も酒も美味い」
「だなあ、この唐揚げ顔くらいあるんだが」
「一応毒消しは幾つか用意した」
万が一ヤバい物を食べても大丈夫だと、栴が唇の端を持ち上げる。
「ヤバいのはこの後の暗黒料理とやらだよな?」
「呑み過ぎを心配しているのか?」
いや、うん。備えあれば憂いなしだが、要らなかったやもしれぬな……と思いつつ、栴がちまきを齧った。
「そういえば至高のつまみ、たこわさを忘れていた」
めちゃくちゃ真顔で相馬が言い、白酒を飲み干す。
「たこわさなあ、今度材料から捕獲に行くか?」
たこわさ作る? どこから? 材料から? 鉄腕Wallかな??
「いいな……料理自体は俺がするとマズイが捕獲ならいける」
今まで彼らが捕獲してきたオブリビオンは数知れずだ、エビも蟹も貝もイカも食べたし、鶏も食べたね。
「いや、俺はエビとイカは食べてない気がするな」
「そうだったか? よし、このエビの唐揚げ食べようぜ」
素揚げを摘まんで酒を呑む、見事な飲んだくれだな……と烏龍茶を飲みながら栴が春巻を齧った。
「いや、美味い!」
揚げ餃子も焼き餃子も美味い、と鷲穂が日本酒片手に餃子を食べ比べては美味いと笑う。
「花火も綺麗だし、美酒佳肴ときちゃ天にも登る気分だ」
「そうだな、いい気分というやつだ」
「俺は二人を見ているだけで面白……楽しいぞ」
しかも気の合う仲間と一緒とくれば、より一層というもの。
散々笑って飲み食いをして、あんなにテーブルの上に並んでいた料理も酒もあらかた無くなった頃に、鷲穂が思い出したように口を開いた。
「あと、なあ。おれ爆竹鳴らしてみたい」
爆竹、さっきからずっとパンパンパンパン鳴りっぱなしのあれ、と広場の中央を鷲穂が見遣る。
「爆竹か、さっき屋台で売っているのを見たが」
「鳴らすか」
思い立ったが吉日とばかりに相馬が立ち上がり、ゴミを纏めだす。
「なら、俺が爆竹を買ってくる!」
言い出しっぺだからな、と鷲穂が楽しそうに屋台へ向かい、若干の不安を感じつつ栴が片付けを手伝う。テーブルの上が綺麗になった頃に、爆竹を手にして鷲穂が戻ってきた。
「見てくれ、一番でかいの買ってきた!」
「デカすぎんか?」
「これくらいの方が鳴らし甲斐があるさ」
さっそく広場の真ん中へ三人で向かい、さて点火と言うところで顔を見合わせる。
「火付けは誰がやる?」
「俺が火をつけようか」
何せ炎なら自前のがあるので。冥府の炎だが。
「おー、相馬頼んだ」
頷いた相馬が蒼い炎を手に滲ませ、導火線に点火する。
「爆竹は壁への土産にしても喜ばれそうだ……」
「甘味のついでに買っていく……」
な? と、か? を栴と鷲穂が言う前に、相馬が一番でかくて長い爆竹を鷲穂の側に放り、その次のサイズを栴の側へと放り投げる。
パンパンと弾ける爆竹の音と火薬の火花、思わず跳び上がるようにして二人が飛び退く。
「――うぉ熱! うるさっ!?」
「……っ、一寸待て獄炎の」
自分を見る二人に向かって、相馬が死ぬほど悪い笑みを浮かべていた。
普段表情筋がほぼ死んでいる相馬だけれど、この二人と一緒の時はどうやらこの悪い笑みをはじめ、表情筋が仕事をするらしい。
「おまえ〜……さては酔ってるな?」
「いや、喰うた料理の中に暗黒料理が混じっておったのやも……いや酔っ払いの可能性も捨てきれんな」
ええい、区別がつかぬぞ、と栴が言いながらまだ残っていた爆竹に炎の魔法で火を点けて相馬へと放った。
「あっ、俺もやる!」
火点けて、と鷲穂が栴に点けてもらうと、同じように相馬へと放つ。
「ははは、楽しいな」
白煙で魔王みたいなことになっている相馬が手に残っていた爆竹に火を点けて、更にばら撒いていく。
爆竹の爆ぜる音と、三人の笑い声が花火の音に負けないくらいに春節の九龍城砦に響いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジョヴァンニ・カフカ
◎
九龍城砦…とてもいい
密集建築物に堪らなくワクワク
配線、配管を埋め込んですっきりさせたのも見た目美しいのですが
密に入り組んだ景観がグッときます
春節のお祝いで尚、異国情緒味が増してるのも良きです
端末のカメラで気に入った被写体や構図を撮影して歩きましょう
いざ九龍城砦探検へ
春節って皆が盛大にお祝いするのですねぇ
こういった季節感を大事にするのっで何だかいいと思います
派手な爆竹もお祝いの内、ですか?…あ、厄除け。ナルホド
屋台の喧騒もいい被写体です
チマキ、包子、葱油餅…どれも美味しそうなので食べ歩き
封神武侠界は食べ物が美味しく、最早餌付けされてしまったと言っても過言では…
いえ、お仕事です。今回もお仕事です
●楽しい探検 IN 九龍城砦
九龍城砦、その名が表す通り一つ一つの建築物が密集して出来上がった城砦のような場所。スラム街と言われる通り、薄汚れた頽廃的な場所ではあるが、だからこそのうつくしさがあった。
「九龍城砦……とてもいい」
外からは箱の中にみっしりとブロックを積み上げたように見えるのに、中はきちんと人が通れるだけの隙間があったり広場のような場所もある。
「こういう密集建築物、ワクワクしますね」
そう言いながら九龍城砦を歩くジョヴァンニ・カフカ(暁闇・f28965)もまた、そんな建物に惹かれる一人である。
「配線や配管を埋め込んで、すっきりさせたのも見た目美しいのですが」
手にした端末のカメラ機能を起動させ、パシャリと一枚。
「やっぱりこの密に入り組んだ景観がグッときます」
生活感が滲み出ているのもいい、更にはこの春節のお祝いで飾り付けられた赤い旗に丸みを帯びた提灯、尚更に異国情緒味が増している。
「良きです」
ほう、と小さく息を零してジョヴァンニが良いと思ったものを撮影していく。
「あ、猫さん」
猫もいい、かわいい。パシャリ、とまた一枚端末に収めながら、いざ九龍城砦探検とジョヴァンニが城砦の内部へと足を踏み入れた。
鳴り響くのは爆竹の音、そして夜空に打ち上げられる花火。
提灯の灯りが淡いオレンジ色で辺りを照らし、夜なのにどこもかしこも明るくて綺麗だ。
「春節って皆が盛大にお祝いするのですねぇ」
それこそ、この九龍城砦に住む老若男女問わず総出で祝っているような賑わいにジョヴァンニがしみじみと呟く。こういった季節感を大事にするのも、何だかいいものだなと思う。
「わ」
開けた場所で爆竹を盛大に鳴らす人々が見えて、ジョヴァンニが立ち止まる。見たことないくらい大きな爆竹に、狐面の奥の瞳を丸めた。
「手のひらに収まらないサイズの爆竹とか初めて見ました」
景気よく鳴らされ、火花が飛んで。
「派手な爆竹もお祝いの内、ですか?」
隣にいた人にそう問えば、魔を払い幸運を呼び込むのだと教えてくれた。
「あ、厄除け。ナルホド」
確かに魔は大きな音を嫌うというから、理に適っている。
「楽しいから、という理由もありそうですけど」
爆竹を鳴らして笑う人々の笑顔も、パシャリ。
その喧騒を聞きながら、屋台を巡る。チマキ、包子、葱油餅……どれか一つなんてケチなことは言わずに美味しそうな物を食べ歩く。
「本格中華、美味しいですねぇ」
さすがは封神武侠界、戦争の折に食べた料理も美味しかった、毒入ってたけど。
「最早餌付けされてしまったと言っても過言では……」
あ、この胡麻団子も美味しい。
「いえ、お仕事です」
これも立派な猟兵の仕事、この後に待ち受ける暗黒料理だって仕事。
そう思いながら、美味しい料理にお酒が欲しくなるジョヴァンニなのであった。
大成功
🔵🔵🔵
結・縁貴
小雲珠と/f22865
春節!
此れが無いと一年が始まった気がしないな!
龍舞だね、祭りらしいな
帝都とは随分違う正月だろう、どう?楽しい?
この街らしい装いの彼と、高揚した気持ちで街を歩こう
俺も街で祝うのは初めてなんだ
赤い提灯も、屋台で食べる縁起物も、祭りの騒めきも愉快だ
嗚、華やかで賑やかで、…要死了な街だよなァ
屋台も色々ある訳で、工芸品ある訳だ
この店にしよう、ここらで一等腕が好さそうだ
小雲珠、好きな形は?花でも動物でもなんでも
鹿かァ
生誕祝いに一番佳い紙で、鹿と目出度い模様で彩ってもらおう
名物工芸の切り絵だよ、どうぞ
生日快乐!
それと、新年快乐!
後で撮った絵姿を見せてもらおうか
きっと色鮮やかで眩いだろう
雨野・雲珠
縁さんと!/f33070
※チャイナ衣装着用
建物の圧がすごい…
なんと煌びやかな街でしょう。それにこの活気!
あっ縁さん縁さん、あそこ、龍!
龍の獅子舞(?)がうねうねしてます!
はい、それはもう!これが大陸の空気…!
綺麗な尻尾を追いかけて、
あちこち見て回りましょう。
一緒に長寿麺食べて、蒸しパン買って、
足元で鳴った爆竹に思わず逃げて
好きなもの…鹿?
言うなり出来ていく手業に見惚れて、
出来上がった切り絵に夢中で拍手。
わあ…よろしいんですか!?
ありがとうございます。お宮に飾ろう…!
スマホのカメラでたくさん写真を撮ります
お土産にしたい景色がたくさん。
縁さんのこともぱしゃっと…ふふふ。
赤い景色によく映えます!
●新年と生誕を祝って
春節といえば中国、中華圏において新年を祝う、最も重要とされる祝祭だ。
「春節! 此れがないと一年が始まった気がしないな!」
「そんなにです? 俺達でいうところのお正月そのものなんですね」
結・縁貴(翠縁・f33070)が九龍城砦に飾り付けられた赤い旗に提灯、対聯と呼ばれる門の両脇などに対句を記したものを見てテンションを上げている。
対する雨野・雲珠(慚愧・f22865)は郷に入っては郷に従え、とばかりにチャイナ風に仕立てた衣装に身を包み目尻には赤いラインを入れている。案外形から入る桜なのだ。
「それにしても建物の圧がすごい……!」
密集した建物はそれだけで威圧感があるもの、普段は薄汚くお世辞にも綺麗とは言えぬような場所だけれど、今日に限って言えば煌びやかそのもの。
何せ、至る所に飾られた提灯の灯りが中へお入りとばかりにずらりと並んでいるし、目に入る色は赤ばかりなのだから。
「なんと煌びやか……それにこの活気!」
ならず者達も今ばかりは鳴りを潜め、旧正月を祝っている。それほどに重要とされている祭りなのだろう。
「小雲珠が楽しんでくれているなら俺も嬉しいよ」
「はい! あっ縁さん縁さん、あそこ、龍!」
細い通路を抜けた先、広場になったような場所で龍珠を追うようにして舞う龍を見つけ、やや興奮気味に雲珠が指さす。
「龍舞だね、祭りらしいな」
「龍の獅子舞がうねうねしてます!」
獅子舞? と縁貴が笑って、獅子ならあそこにいるよと違う方を指さした。
「おお……白い獅子と赤い獅子ですね!」
何なら金色のもいる、雲珠が知るそれとは違い、ふわふわの毛が付いた獅子が舞っている。
「あ、頭を噛むのは帝都と一緒ですね」
厄払いなのだと雲珠が言えば、縁貴もそうだと頷いた。
「でも小雲珠、帝都とは随分違う正月だろう、どう? 楽しい?」
「はい、それはもう! これが大陸の空気……!」
彼の輝かんばかりの瞳を見れば、お世辞などではなく本気で言っているのが見て取れて、縁貴が嬉しそうに笑う。
この街らしい装いをした雲珠と春節で賑わう九龍城砦を歩くのは、どうにも気分が高揚する。常よりも高めのテンションで、縁貴の淡翠緑色をした尻尾もご機嫌に揺れていた。
「実を言うとさ、俺も街で祝うのは初めてなんだ」
「そうなんですね、では初めて同士です!」
縁貴の右へ左へ揺れる尻尾を追い掛けながら、あちこち見ては帝都と違う異国情緒溢れる正月に雲珠が小さく感嘆の吐息を零す。それを横目で見ながら、どうしてですか? とも聞かない雲珠に縁貴がすっかり肩の力を抜いた。
仙界の貴人の宝物庫の中で育ち、その屋敷の中でしか祝ったことがないなんて、聞かれても答えたいものではない。春節早々、誤魔化しや嘘を言わずに済むならその方がいい。
「謝謝」
「え? 今何か言いました?」
ありがとう、という呟きは空に咲く花の音に掻き消されて、雲珠は首を傾げて縁貴を見上げた。
「なァんにも! ほら小雲珠、あっちに屋台があるよ」
「屋台! 良い匂いがします」
何か食べましょうと二人で屋台を覗き、長寿麺という字に雲珠が惹かれて立ち止まる。
「長寿麺? ラーメンみたいなものでしょうか」
「嗯、ちょっと辛めの拉麺みたいなものかな」
その名の通り、長寿を祝うもので誕生日に食べられることが有名だが、春節でも欠かせないもの。丁度いいから食べようと、一つずつ頼んで食べることにした。
「担々麺みたいなお味で、美味しいです! ふふ、長い麺も楽しいですね」
「好吃、量も丁度いい」
ぺろりと平らげて、ついでにふかふかのマーラーカオも分け合って食べる。
「出来たてはふわふわで幾らでも食べられる気がします……!」
「時間が経っても美味いよ、しっとりした感じになるんだ」
お口が幸せ、とばかりに口元が緩んだ雲珠の足元にパン! と爆竹の音が鳴る。
「わっ」
「哦! 爆竹だ」
驚いて逃げた雲珠に、これぞ春節だと縁貴が笑う。
赤い提灯も、屋台で食べる縁起物も、祭りの騒めきも、縁貴にとっては愉快そのもの。
「嗚、華やかで賑やかで、……要死了な街だよなァ」
その裏ではオブリビオンが暗躍しようとしている、暗黒料理でだけど。
そういう意味でもヤバい、と思いながらマーラーカオを食べ切った縁貴が次はどうしようかと辺りを見回す。
「小雲珠、屋台は食べ物だけじゃないんだ、ほら」
縁貴が指さす先には工芸品を売り物にしている屋台、どれがいいかと眺めてこれがいいと立ち止まった。
「ここらで一等腕が良さそうだ」
こう見えて、目利きには自信がある。何せ一級品……特級品ばかりに囲まれてきたので。
「小雲珠、好きな形は? 花でも動物でも、なんでも」
「好きなものですか?」
物珍し気にあちこち見ていた雲珠がそうですね、と考えて答える。
「……鹿?」
「鹿かァ」
それならば、と生誕祝いに一番佳い紙で、鹿と目出度い模様で彩ってもらおうと縁貴が店主に頼む。
「わあ、わああ……!」
瞬く間にも出来上がっていく匠の手業に雲珠の頭の枝にぽこっと花が咲く、そうしてあっという間に出来上がったのは――。
「はい、名物工芸の切り絵、剪紙だよ、どうぞ」
渡された赤い紙には躍動感のある鹿と桜、それから福の文字。
「わあ……よろしいんですか!? ありがとうございます、お宮に飾ろう……!」
また一つ、珠玉の鹿コレクションが増えたと雲珠の頬がほんわかと緩む。
「生日快乐! それと、新年快乐!」
「はい!」
誕生日も新年もおめでたい、今日はなんて佳い日だろう!
笑う縁貴をパシャリとスマホのカメラで撮って、雲珠も笑う。
「ふふふ、縁さんは赤い景色によく映えます!」
「啊! 後で見せてよ」
「はい、たくさん撮りますから、一緒に見ましょう」
きっと色鮮やかで眩いのだろう、今この瞬間にも頭上で輝く花火のように、今日の想い出のように――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロア・ルースフェル
【合縁】ナナとご一緒
まずチャイナ服にお召し替え
瞳と同じ青、きわどめスリットで横腹を見せつけちゃいましょ♪
ナナもお美し~♪
ナナのヘアアレンジはわたしがやりますよ、お揃いのお団子ヘアー
目尻に紅を差して、ええ、繰り出しましょう!
屋台を飲み歩き、食べ歩き
んふふふ、お酒に合いますねぇ
紹興酒はミネラルに必須アミノ酸もりもり、医食同源で美しくなっちゃいましょう
じゃん。夜景も人物も美しく撮れる最新のチェキ~♪
撮影を頼んで、ライトアップの九龍城を背景にナナと指ハートでハイ、チーズ
チェキ写真にペンでハートをいっぱい浮かせて「我愛春節祭」と書き込めば、最高の思い出の出来上がりです
ええ、旅団の皆さんにもお裾分けですね
黒瀬・ナナ
【合縁】クロアさんと
ふふ、クロアさんが横腹なら、
わたしは赤いミニ丈チャイナで自慢の美脚を見せ付けちゃう!
お団子ヘアーに目尻に紅、いつもと違う自分にドキドキしつつ
お召し替えが済んだらお出掛けよ♪
クロアさんの成人のお祝いに、紹興酒でかんぱーい♪
あら、紹興酒にはそんな効果が?
やーん!綺麗なクロアさんがさらに綺麗になったら、
わたしの瞳が幸せで潤っちゃうわ
綺麗なもの、美しいものを見るのは大好きだもの
パリパリ揚げ餃子に、もちもちちまき
屋台の人達にオススメを聞いたりしながら食べ歩き、飲み歩いた後は
キラキラ九龍城をバックに指ハートでキメポーズ
ふふ、まだまだ素敵な思い出を増やしちゃいましょ
次はお土産探したーい!
●君とお揃い食べ歩き
2022年のお正月は戦争で始まり戦争で終わったので、お正月が祝いたい! という気持ちのままに黒瀬・ナナ(春陽鬼・f02709)とクロア・ルースフェル(人間の精霊術士・f10865)はここ九龍城砦に来ていた。
「封神武侠界といえば~?」
「やっぱりチャイナよね!」
出会って数日ではあるが、縁あって意気投合した二人は既に息ぴったりの様子。クロアは脇迄入った深いスリットがセクシーな自分の瞳と同じ青いチャイナドレス、ナナは赤いミニ丈のチャイナドレスという出で立ちだ。
「クロアさんのその脇のスリット、どうなって……あ、ここを紐で編み上げてるのね」
「ええ、どれだけ動いても大事な部分は見えないのが特徴です、きわどめスリットで横腹を見せつけちゃいます♪」
「さっすがクロアさん、セクシーだわ! わたしもこの自慢の美脚を見せ付けちゃう!」
すらりと伸びた白い脚は健康的で美しい、クロアも手を叩いてナナもお美し~♪ と褒め称える。
二人の髪型もお団子にしてお揃いに、ナナの黒い髪には赤が似合うと赤い組紐を、自分には青い組紐を使って一緒に編みこんだ、クロアの力作だ。
「クロアさんは器用なのね、あっという間に編み込んじゃうんだもの」
「ふふふ、美しいものをもっと美しくするのが好きなんですよね~」
美しい自分を着飾るのも大好きなのだ、自然と腕が上がるというもの。
「それに目尻に引いた赤いラインもすっごく素敵!」
「気に入って貰えたなら嬉しいですよ~」
準備は万端、あとは春節で大いに賑わう九龍城砦へ足を踏み入れるだけ!
「それじゃ、いきましょうか♪」
「ええ、繰り出しましょう!」
赤い旗に提灯が二人を案内するように、奥に向かってずらりと飾り付けられている。密集した建物の中へ、いざ! と二人が足を踏み入れた。
すれ違うのがやっとの道幅や露店の呼び込みに目を瞬かせながら、二人が花火の音と爆竹の音に笑って歩く。
「まずは何からいきましょうか?」
「やっぱり屋台で色々買って、食べ歩き?」
「いいですねぇ、食べ歩き、それに飲み歩き♪」
去年の誕生日で二十歳になったというクロアは成人式を終えたばかり。楽しくお酒も嗜むのだと、嬉しそうにナナに話をする。
「紹興酒はミネラルに必須アミノ酸もりもり、医食同源で美しくなれちゃうお酒ですよ」
「あら、紹興酒にはそんな効果が? 是非飲まなくっちゃ!」
善は急げよ、とナナが紹興酒を買い求め、食前酒とばかりにクロアに手渡した。
「クロアさんの成人のお祝いに、紹興酒でかんぱーい♪」
片手に収まる小さなカップを近付けて、小さく鳴らして笑う。
「ん、おいしーい♪」
「これでわたしもナナも綺麗になっちゃいますねぇ」
「やーん! 綺麗なクロアさんがさらに綺麗になったら、私の瞳が幸せで潤っちゃうわ!」
キラキラと瞳を輝かせるナナは綺麗なものや、美しいものを見るのが大好きだものと紹興酒を吞みながらクロアを眺める。
「んふふ、たっくさん見てくださいねぇ!」
見られるのは大好きなのだ、遠慮なくとクロアも笑う。
「他に綺麗になれそうなものは……あ、揚げ餃子にちまきを発見よ!」
「いいですねぇ、紹興酒にあいそうです」
パリッパリの揚げ餃子に、もっちもちの海鮮ちまきに鶏肉が入った肉ちまき、どれも美味しくって二人でシェアして食べていればあっという間に完食だ。
「他におススメのお料理ってあるかしら?」
ナナが屋台の店主にそう聞いてみると、葱油餅や小籠包、胡麻団子等を勧められて迷わず購入を決める。
「葱油餅って何かと思ったらチヂミみたいね」
「ん、この小籠包も熱々だけどとっても美味しい~♪」
ふうふうと冷ましながら、食を楽しみ酒も楽しんで九龍城砦の中を歩く。
普段は薄暗く汚れたスラム街だけれど、今日ばかりはならず者だって新年を祝って爆竹を鳴らしている。
「うーん、お腹いっぱいね!」
「お酒も美味しかったですねぇ」
食べ物もお酒も美味しい、打ち上がる花火は美しく、今宵ばかりは煌びやかにライトアップされた九龍城砦だって華やかだ。
「折角です、一緒に写真でも撮りましょ~♪」
そう言ってクロアが取り出したのは夜景も人物も美しく撮れるという最新のインスタントカメラ。撮ったその場で手のひらサイズの写真が出てくるのだと、クロアが笑う。
「ステキ! いいわね、撮りましょう撮りましょう!」
撮影を近くにいた人に頼み、クロアとナナがキラキラの九龍城砦を背景にして、指ハートでキメポーズ! 数枚撮ってもらうとお礼を言って受け取って、二人で写真にペンであれやこれやと書き込めば、ハートがたくさん浮かんだ『我愛春節祭』と書かれた二人だけの世界に一枚だけの写真が――最高の想い出の出来上がりだ。
「いい想い出になりますねぇ」
「ふふ、まだまだ素敵な想い出を増やしちゃいましょ」
だって、春節の夜はまだまだこれからだもの!
「次はお土産も探したーい!」
甘い物がいいだろうか、それとも形に残るもの? とナナが笑う。
「ええ、旅団の皆さんにも幸せな想い出のお裾分けですね」
それなら気合を入れて探しましょ♪ と、クロアが花火に負けないくらいの華やかな笑みを浮かべた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルルカ・ウェレマイン
メイファンさん(f33513)と
やっと、落ち着いて武侠界をみて回れるみたいです
メイファンさんの故郷…ボクのルーツの一端
そう思うと来たばかりなのに、なぜか、胸にじわりと沁みるものがあります
…これを、郷愁というのでしょうか。…不思議な話です
折角ですから、こうしてそれっぽい…ハロウィンでした、キョンシーの服装
馴染めていると嬉しいですけれど…わ、ええと…メイファンさんのそれは…お団子?
それに、わわ。肉まん…おっきいです、ね…! お、おくちがおいつきませんけれど、どれも美味しい…っ
にぎやかで、たのしげで。ボクの世界とまるで違います
だけれど…ボクも、まるでその一員にもなれたような
不思議で、嬉しい気持ちです
楊・美帆
ファルルカ君(f32779)と
また来たヨー、九龍城砦!やっぱり賑やかで楽しいところだナー!
編笠との戦いではゆっくり見て回れなかったし、なんといっても今日はファルルカ君も一緒だしネ!
僵尸衣装でおそろいだネェ。とっても似合ってるヨ!可愛すぎて心配になっちゃうくらい。ナンパや誘拐されそうになったら、ボクが守ってあげなくちゃ。
大迫力の龍舞に神秘的な影絵芝居、屋台では好物の芝麻球を見つけて大はしゃぎ。おっきな肉まんはファルルカ君と半分こしようカナー。
一通り遊んだら見晴らしのいいところに登って街の様子を眺めようか。
これがボクの世界……の一角だヨ。ファルルカ君や猟兵のみんなと一緒に守った世界だ。
●春節に想う
頭上ではひっきりなしに花火が上がり、周囲からは春節を祝う声が聞こえている。きっと、オブリビオンとの戦争で勝利を収めた喜びもあるのだろう。
やっと落ち着いてこの世界を見ることができる、と小さく笑みを浮かべるのはファルルカ・ウェレマイン(月のフラジャイル・f32779)で、共に訪れた楊・美帆(デッドハンド・f33513)と共に春節の赤に彩られた九龍城砦を歩く。
「ここがメイファンさんの故郷となる世界、なんですね」
「そうだヨ! とは言っても、九龍城砦はボクも二度目ましてだけどネ!」
そして、ボクのルーツの一端となる世界。そう思うと、訪れたばかりだというのに何故か胸にじわりと沁みる想いが溢れ出すようで、ファルルカは目を瞬いた。
もしかして、これが郷愁というものなのだろうか? 不思議だと思いながら自分の横を歩く美帆を見遣れば、楽しそうな笑みを浮かべていてファルルカの物寂しい気持ちはどこかへ飛んでいく。
「やっぱり賑やかで楽しいところだナー!」
網笠との戦いで訪れた時はゆっくりと見物することもできなかったけれど、今日はたっぷりと楽しむぞと美帆が張り切る。なんといっても、今日はファルルカも一緒なのだ、間違いなく楽しい夜になるはずだと美帆が笑う。
「今日はファルルカ君も僵尸衣装でおそろいだネェ」
「は、はい……! 折角ですから、それっぽい……ハロウィンの時に着たキョンシーの服装でと思って」
深いスリットは少し恥ずかしいものがあるけれど、光沢のある緑の生地に細やかな刺繍の入ったキョンシー衣装はファルルカのお気に入り。
「馴染めていると嬉しいですけれど……」
どうでしょうか? と両手を広げて見せれば、美帆が間髪を入れずに可愛い! と褒める。
「とっても似合ってるヨ! 可愛すぎて心配になっちゃうくらい」
「わ……ありがとう、ございます!」
なんだか照れちゃいます、とファルルカがほんのりと頬を染めると、美帆が真顔になってナンパや誘拐されそうになったらボクが護ってあげなくちゃと腕をぐるりと振り抜いた。
赤い提灯に誘われるように進むと、密集した建物の奥に広場が見えてくる。
「メイファンさん、龍、龍がいます……!」
「龍舞だヨ」
龍珠を追い掛けるように舞う龍は春節には欠かせない出し物の一つで、伝統的な踊り。多数の人が操る龍は生きているかのように上下左右に舞い、時に美しい螺旋を描く。
「大迫力だネ!」
「はい、凄いです……!」
また少し歩けば神秘的な影絵芝居が行われていて、目が幾つあっても足りないくらい見る場所が多いと二人で笑う。
「ファルルカ君、屋台だヨ、屋台!」
ずらりと並んだ屋台は食べ物から爆竹に縁起物と様々なものが売られていて、ファルルカの瞳にはどれも魅力的に映る。
「沢山あって、どれがいいかわからなくなります、ね……!」
「気になるものは片っ端から見ていこー!」
揚げ餃子に春巻に、ちまきに小籠包、良い匂いが辺り一面に広がっていて、くう、とお腹が鳴ってしまうほど。
「あ、芝麻球! ボク、これには目が無いんだヨー」
「わ、ええと……それは……お団子?」
「胡麻団子、だネー」
食べよう! と買って、二人で出来立てを手に持ってぱくりと一口!
「美味しいです……! 胡麻団子、チーマーカオ?」
「うん、美味しいネ! 芝麻球!」
好物を前に美帆の口元は緩みっぱなしで、あっという間に食べ終わると今度は大きな肉まんを見つけて指をさす。
「ファルルカ君の顔くらいあるかもだヨ?」
「えっ、ボクの顔……」
そう言いながら自分の頬を触るファルルカに笑い、美帆が大きな肉まんを買って半分に割る。
「はい、半分こ!」
「ありがとうございます……わわ、本当におっきいです、ね……!」
半分でも大きいくらいだけれど、一口食べればそのふかふかの皮にじゅわっと染み込んだ肉汁と肉餡が美味しくて、食べるお口が止まらない。
「美味しいネー」
「お、おくちがおいつきませんけれど、どれも美味しい……っ」
出来立てだから? 本場のお味だから? それとも、二人で食べているからだろうか? きっと全部だと思いながらファルルカは精一杯の大きな口で肉まんに嚙り付いた。
あれもこれもと食べて一通り屋台を冷かすと、今度はこっちだと美帆が見晴らしのいい所に登って、街を見下ろす。
「わあ……! 綺麗です!」
花火も、赤に彩られてライトアップされた九龍城砦も、遠くに見える街の灯りも。
「これがボクの世界……の一角だヨ」
「にぎやかで、たのしげで。ボクの世界とまるで違います」
だけど、とファルルカが美帆を見て笑う。
「なんだかボクも、まるでその一員にもなれたような……不思議で、嬉しい気持ちです」
「だって、ファルルカ君や猟兵のみんなと一緒に守った世界だからネ!」
頭上に咲いた花火を見上げ、満たされた気分で二人が花火にも負けない笑顔を咲かすのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】◎
戦争中は編笠と戦う為にここを訪れたから
じっくり見て回る余裕はなかったんだよね
楽しそうな店や施設が沢山あるし、また来られて嬉しいなぁ
ふと目に留まったのは、中華な衣装を売っているお店
店頭に飾られた男性用のチャイナ服(パオ)に心惹かれ
梓、梓、正月に袴着るみたいにさ
今回はこのチャイナ服着て歩こうよ
梓だったら白かなぁ、でも黒もビシッと決まってていいなぁ
ねぇ俺にはどういうデザインがいいかな?
それじゃあ俺は赤にしようっと
その後は美味しい屋台巡り
桃源郷の宴会では見なかった中華料理も色々あって楽しい
「マーラーカオ」って初めて聞いたけど
中華風の蒸しパンって感じかな
蒸したて熱々をはふはふしながらいただく
乱獅子・梓
【不死蝶】◎
戦争中も気にせず生活しているし、戦後はすぐお祭りしているし
なんというかたくましい住民達だよな…
チャイナ服を…!? その発想はなかった
しかしそう何度も着るような服じゃないし
今日の為だけに買うのももったいな…おい聞けよ!
ったく…綾はそうだな、やっぱり黒か赤じゃないか
そういえば春節は赤がラッキーカラーらしいな
結局綾に乗せられるがまま黒チャイナ服を買わされ着替えることに
お前は相変わらず花より団子だな
こんなに沢山の屋台がズラリと並んでいたら釣られるのも分かるが
綾は甘いものから堪能しているようだが
俺は餃子&ビールという最強のタッグ
こ、このパリパリ感にこのボリューム…!
たかが屋台、されど屋台…!
●郷に入っては郷に従えチャイナ服!
正月早々始まった戦争中、網笠という敵を倒す為に訪れた九龍城砦。飲食店が並ぶ街区や廃墟みたいな巣窟、雑多なものが集まってできたような高層建築物の集合体。
できればじっくり見たいと思っていたけれど、こんなに早く叶うとは思わなかったなぁと笑うのは灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)で、前に訪れた時は見なかった赤い旗や提灯を見上げてから、隣を歩く乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)に視線を向けた。
「戦争中は網笠と戦う為だったから、遊ぶ余裕もなかったんだよね」
「戦う……まぁそうだな、戦う……」
ピザを配達したり作ったりして、激辛ソースのピザをぶち当てた記憶しかないけれど、そうだな、倒したな。倒したのは間違いないので、梓が頷く。
「それにしても、戦争中も気にせず生活していたし、戦後はすぐお祭りしているし……なんというか逞しい住民達だよな……」
そうでもなければ、この香港租界ではやっていけないのかもしれないが。
「でもほら、皆楽しそうに笑ってるし良かったよねぇ」
無事に旧正月、春節――現代地球の日本における正月に等しい、大切な日を祝えるのは彼らにとって何よりも大事なことなのだろう。
「そうだな、活気があるのはいいことだ」
綾の言葉に頷いて、梓も春節を楽しむかと笑った。
「あ、チャイナ服だ」
「へえ、色々売ってるんだな」
ふと綾の目に留まったのは、チャイナドレスや長袍がそれこそ山のように並べられた衣料品店。チャイナドレスと一口に言っても、オーソドックスな丈の物から、ミニスカート丈にロング丈、更にはスリットが際どいものまでと多種多様。それに男性が着る長袍も様々あって、思わず立ち止まる。
「いいなぁ……梓、梓、正月に袴を着るみたいにさ、今回はこのチャイナ服を着て歩こうよ」
「チャイナ服を……!? いやその発想はなかった」
でもな、と財布の紐を握る梓は考える。そう何度も着るような服ではないし、何と言っても今日の為だけに買うのももったいない。あれ、これ去年も同じようなことを思わなかったか、俺。
あの時は袴だったし、レンタルサービスがあったからそれを利用したんだっけか……なんて考えている内に、綾はどんどん店の中へと入り、どれがいいかを品定めしている。
「梓だったら白かなぁ、でも黒もビシッと決まってていいなぁ」
身体のラインがストンと隠れるシンプルなものだけれど、その分やはりスタイルがよければ決まる衣装だ。間違いなく綾と梓には似合うだろう。
「ねぇ、俺にはどういうデザインがいいかな?」
「おい、聞けよ!」
「いいでしょ、お正月頑張ったんだからさ~、ね?」
そう言われるとちょっと弱い、確かに頑張ったし頑張った分だけ懐はそれなりに温かい。
「ったく……綾はそうだな、やっぱり黒か赤じゃないか? 春節は赤がラッキーカラーらしいしな」
吊り下げられた旗や提灯が赤いのも、縁起がいいとされるから。
「それじゃあ俺は赤にしよっと。梓は? 黒? 白?」
「この後食べ歩きするからな……黒で」
白はほら、汚れも目立つので。
いつもの服ならばぽいっと洗濯もできるが、チャイナ服となればそうもいかないだろうという、実にオカンらしい……梓らしい考えだ。
「じゃあ黒ね、どうせだからニコイチコーデにしよ」
有無を言わさず、はいっと渡されたのは綾と揃いの刺繍が入った長袍、勿論お支払いは梓である。
いつものように綾に乗せられ、着替えまで済ませて店外に出れば再び赤い提灯に誘われるままに歩き出す。目指すは屋台が並ぶ広場だ。
「わ、色々あるね」
「お前は相変わらず花より団子だな」
そうは言うけれど、確かにこんなにもたくさんの屋台がズラリと並んでいれば、釣られるのも分からないでもない。何か一つは買って食べようという気にもなる。
「桃源郷の宴会では見なかったものもあるよ」
見ているだけでも楽しいけれど、やはり食べてなんぼだと早速気になったものを買い求める。
「マーラーカオって初めて聞いたけど、中華風の蒸しパンって感じかな」
食べればわかるかと、まずは一口。
「ん、黒糖の風味がふわっとしてて何か優しい味がする」
素朴な風味だけれど、しっかりと甘くて美味しい。
「あ、あれ何だろう? 串にお団子みたいなのが刺さってるけど、お団子じゃないよね」
屋台の人に聞けば、サンザシの実を飴掛けにしたもの、糖葫芦……タンフールというのだとか。
「りんご飴みたいなものか?」
「だね、これも買っちゃおうっと」
勿論お支払いは以下略である。
「ちょっと甘酸っぱい感じで美味しいよ」
サンザシの実自体はかなり酸っぱいのだけれど、たっぷりと掛けられた飴がその酸味と程よくあっているのだ。
「綾は甘味だが、俺は餃子にビールだ」
これぞ最強タッグ、と嚙り付けばパリパリの羽根付餃子の美味しいことといったらない! しかもボリュームもあって、ビールがどんどん進んでしまう。
「……揚げ餃子も試してみるかな」
「あ、俺は胡麻団子食べたいな」
たかが屋台、されど屋台、出来たては何より美味しいと二人は屋台巡りを堪能するのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
瀬古・戒
【箱2】◎
ラファンは2月22日に結婚を約束した婚約者
お前が着るなら俺も着てやる!て啖呵切っちまったんで…青のチャイナドレス着用
惚れた弱みもあるが、恥ずッ
スースーする…気にしたら負け!負けねぇ!楽しんだる! おお、ラファンてばすげぇ似合ってねぇ?さすが美人、太もも最高か
俺の格好に言及しよーもんなら爆竹足元に投げまくっちゃる
おら、踊れ踊れ
ちょばっ違ッッこっちに投げんなぎゃぁあ!!
やっぱ食い物辛いかな?苦手だから辛いの避け、ビール片手にもう片手は…手、繋ぐ?
あ、桃饅頭!うまっ!ほら食ってみ?あーん
俺も?いい匂い…し、しかたねぇな
ん?獅子舞て頭齧って貰うんだっけ?れ?はは!赤べこ舞ったらかわいーな
ラファン・クロウフォード
【箱2】◎戒の啖呵に、俺にチャイナドレスを着ないと言う選択肢があるだろうか。いや、ない
落ち着いた赤色に鳳凰や花が舞う縁起よさそうなチャイナドレスを着用
戒は見惚れる程に、今日も美しい
爆竹の不意打ちにどひゃっ!?っとピョンピョン跳ねまわる
爆竹はこうやって使うのか
戒も踊ろうぜ!戒の手を握って足元で爆竹大奮発!
戒と一緒に九龍城砦を散策
こんな高層建築もあるんだな、ヒーローズアースと全然違う
辛い料理も美味そ。本日は揚げたて春巻きと白酒気分
獅子舞を見に行こ
桃饅頭うまっ!戒も春巻き、あーん
近寄って来た獅子舞の口にご祝儀袋を突っ込む
彼女と結婚するんだ。祝いにひと踊り頼むよ
こんな風に赤ベコが舞ったらかっこよくね?
●春節の夜に祝福を
花火が次々と打ち上げられる中、瀬古・戒(瓦灯・f19003)とラファン・クロウフォード(武闘神官・f18585)が歩く。道行く人々は赤いチャイナドレスで着飾った者が多く、飾られた旗や提灯の色からも春節には欠かせない色なのだと見て取れた。
「賑やかでいいな、春節」
「戒、チャイナドレス」
「屋台で爆竹売ってるってすごくね?」
「戒、チャイナドレス」
「ダアァァァ! お前はチャイナドレスしか言えないんか!?」
いやだって、みたいな顔でラファンが戒を見遣る。
「戒がチャイナドレスを着たら綺麗だろうなって思ったら、それはもう見たいに決まってるだろ?」
こてん、と首を傾げたラファンの目はどこまでも純粋だった、戒のチャイナドレス姿が見たいという意味で。
「お前が着るなら俺も着てやる!!」
春節の夜に、戒の啖呵が響く。
「着る」
「えっ」
「着る」
啖呵を切られたラファンは即答だった、知ってた。
そこからは話が早かった、近くのチャイナドレスを売る店に飛び込み、ラファンが吟味に吟味を重ねたチャイナドレスを戒に選び、彼女が着替えている間に自分のを選んで早業で着替え、会計を済ませて再び外に出たのだ。
「く……っスースーする……」
上品な青い光沢のある生地に赤と金糸で刺繍が入ったロングドレスを着た戒が、その深いスリットにグヌヌと唸る。まあ着てしまったものは仕方ないと、戒が顔を上げた。
「気にしたら負け! 負けねぇ! 楽しんだる! って、ラファンってばすげぇ似合ってねぇ??」
恥ずかしさから俯いていた戒がまじまじとラファンを見れば、深紅の生地に鳳凰や花が舞うチャイナドレスをすらりと着こなしていて、思わず戒が写真を撮る。
「さすが美人、太もも最高か」
美脚、さすが俺の嫁。実際嫁になるのは戒なのだけれど、気分は正にこれである。写真を撮られているラファンはといえば、あまりにも俺の嫁が可愛くて綺麗すぎて真顔で見惚れていた。
「すごく似合ってる、戒」
そう、なんとか言葉を絞り出した瞬間だった。
素早い動きで戒がどこからか取り出した爆竹に火を点け、ラファンの足元に投げたのだ。
「おらっ、踊れ踊れ!」
「どひゃ!?」
パンパンパン! と景気のいい音を上げて爆音と火花を散らす爆竹に、ラファンがぴょんぴょこ跳ね回って逃げる。
「ざまぁ!」
「爆竹はこうやって使うのか」
なるほど覚えた、とばかりにラファンが目を輝かせ、こちらもまたどこからともなく取り出した爆竹に火を点けると自分と戒の足元にばら撒いて。
「戒も踊ろうぜ!」
素早く戒の手を取って、ぴょんぴょこ跳ねた。
「ちょばっ違ッ! こっち投げんなってぎゃあああ!!」
爆竹の音が鳴りやんだ頃には、何故か二人はぴったりとくっついていた。完全にバカップルのそれである。
散々騒いだら腹が減った、と戒が言うので二人で九龍城砦を探検がてら歩き出す。
「こんな高層建築もあるんだな、ヒーローズアースと全然違う」
「密集した建物ってだけでちょっとわくわくするよな」
細い道にも赤い提灯と旗が飾られていて、なんだか不思議な世界へ案内されているような気分になりつつ前へ進むと、開けた場所に屋台がズラリと並んでいるのが見えた。
「屋台だ! 美味そうだな」
「戒は何食べたいんだ?」
「ん~やっぱ食い物辛いんかな? なるべく辛くないもんがいい」
そう言いつつ、戒がビールを注文する。
「ラファンは?」
「本日は白酒の気分」
「よっしゃ」
白酒も注文して、片手にお酒、片手に――。
「手、繋ぐ?」
「繋ぐ」
即答だった、知ってた。
手を繋いで、屋台を巡れば戒が桃饅頭を見つけてラファンの手を引く。
「ラファン! 桃饅頭!」
「買おう」
戒の笑顔が見たい、ただそれだけでラファンは即答して桃饅頭を買い求める。
「うまっ!」
美味しそうにご飯を食べる戒も可愛いな……とにこにこして見ていたら、口元に桃饅頭が差し出された。
「ほら、ラファンも食ってみ? あーん」
「あーん」
あーんって言われたら開くだろう、口。くらいの勢いで桃饅頭を齧れば、ほっとするような甘さが口の中に広がって。
「桃饅頭うまっ!」
「なー、美味いだろ」
もぐもぐする戒が可愛い、もっと見たい。辛い料理も美味そうだけれど、戒が苦手だしと考えてラファンが揚げたての春巻をチョイスする。それから、今度は彼女に向かってあーんと差し出した。
「俺も? く……っ揚げ立てのいい匂い……し、しかたねぇな」
あーんと口を開けて齧れば、パリパリといい音がしてジューシーな味が酒に合う、最高。
「うまっ」
「パリパリだ」
熱っと続けながら、春巻を食べてお酒を飲んで、また手を繋いで。
爆竹が鳴る音を聞きながら食べ歩き、広場に向かうと獅子舞が二人に近寄ってくるのが見えた。
「獅子舞だ!」
くねるように踊る獅子舞の口へ、ラファンがご祝儀袋をぽんと突っ込んで笑う。
「彼女と結婚するんだ、祝いにひと踊り頼むよ」
式は2月22日に挙げるんだ、と幸せそうな顔をしてラファンが言った。
「ばっ、おま、お前」
真っ赤になる戒に笑って、二人の前で舞い踊る獅子を眺めて、幸せってきっとこういう事を言うんだとラファンが戒の瞳を覗き込む。
「ま、まぁそうだな。……俺もそう思う」
ドラと太鼓の音に合わせて踊る獅子が二人の頭を齧って離れていくと、戒がラファンを見遣る。
「なぁ、獅子舞って頭齧って貰うんだっけ?」
「確か? 邪気を食べるとかなんとか」
縁起がいいんだな、と戒が笑う。離れた場所で再び踊り出す獅子舞を眺め、ラファンがぼそりと零す。
「あんな風に赤ベコが舞ったらかっこよくね?」
「はは! 赤べこ舞ったらかわいーな」
帰ったら踊ってくんねーかな、なんて二人で笑って、どちらからともなく手を繋ぐ。
きっとこの先も、この手を離すことはないんだろうな、なんて想いながら――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
千家・菊里
【珍道中3】◎
(お供のおたまも一緒に)
ふふふ、とっても賑やかで良いですねぇ
(派手に響き渡る花火や爆竹の音
――よりも寧ろ屋台の声や音に耳をぴこぴこ)
おやおや、つられてお腹まで鳴り響き出しましたか
では早速、来る戦に備え腹拵えと参りましょう(きりっ)
(あつあつぱりぱりの揚げ餃子や春巻を
おたまとほくほくもぐもぐ頂きつつ)
国や文化は違えども、晴れやかな祝いの場の空気は実に良いものですねぇ
御馳走も豪華絢爛で、ついつい(ご馳走の山が盛り盛りと)盛り上がってしまうというもの
おや、何です伊織?
ああ、それは『おててに持った胡麻団子、一つ私にくださいな』の意ですよ
いやぁ、この調子なら暗黒料理のおかわりも余裕ですねぇ
鈴丸・ちょこ
【珍道中3】◎
(おたまと並んで耳も鼻も忙しなく働かせつつ)
元々面白ぇ場所だとは思っていたが、今夜は一際破茶滅茶な様相だな
(眩い提灯や花火の下、目を爛々と獲物――もとい食らい尽くし甲斐のある飯の数々へ向け)
おう、おたまもやる気満々だな
ふふん、上等だ
腹が減っては何とやら――メインディッシュ(暗黒料理)の前に、先ずは軽く屋台でウォーミングアップと行こうじゃねぇか
(そう、軽く――山盛買った粽や団子等々と共に伊織の腕に陣取り、もぐもぐと!)
おう、鱈腹食って飲んで馬鹿騒ぎ出来る時間があるってのは良いこった
(爆竹代わりにごろごろ喉鳴らし)
ふ、飯も敵も悉く平らげてやろうじゃねぇか
(猫舌も物ともせずはむはむ!)
呉羽・伊織
【珍道中3】◎
正に繁華って感じだな~
嗚呼…屋台も花火も華々しいのに、何でオレの周囲は今日もこんなに荒涼と…
(食気全開狐組と肉食猛獣猫サマ眺め)
…てか何この珍獣軍団??
おい今爆竹や花火より盛大に腹鳴らしたの誰だ~!(おたまだ!)
暗黒料理…ウォーミングアップ…腹拵え…ウン…凄いやる気だネ
キミらの意気込みだけで既にオレお腹一杯な気分なんだケド!
で――軽く、とは(本当に軽~く胡麻団子買って食べるつもりが、気付いたら猫と飯が山盛腕を占領してたヨ?重っ)
街もキミらもホントめでたい空気で何よりダヨ、ウン!
あとおたまは何またどさくさに紛れてオレを齧ってるの!
(胡麻団子与えて静めつつ)
こんな鬼退治珍道中ヤダ~!
●年が明けても変わらない食欲と、春節
新年あけましておめでとうございますと共に始まった戦争も終わり、戦争の舞台となった封神武侠界では丁度春節が始まるというので足を運んだのがこの三人と一匹――千家・菊里(隠逸花・f02716)とお供のおたま、鈴丸・ちょこ(不惑・f24585)、そして呉羽・伊織(翳・f03578)であった。
「ふふふ、とっても賑やかで良いですねぇ」
頭上では夜空に咲き誇る花火の音が響き渡り、地上では爆竹の音が盛んに聞こえてくる。けれど、菊里の耳にはそれよりも魅力的な音が聞こえている。
「見慣れない名前の食べ物が多くて……端から端まで制覇したくなりますねぇ」
そう、屋台の調理中の音に呼び込みの声だ。
「耳が動いてるぞ、菊里」
そう言いつつ、おたまと並んで歩くちょこだって耳どころか鼻までひくひくと忙しなく動いている。
「いや二人ともどんぐりの背比べみたいなもんダヨ」
わからなくはないけれど、それにしたって端から端まで? 結構ある……いや、彼らならやりかねないなと思って伊織が黙る。やるって言ったらやるのだ、彼らは。
「それにしても、元々面白ぇ場所だとは思っていたが今夜は一際破茶滅茶な様相だな」
ちょこがずらりと連なる赤い提灯や花火を見上げ、それから並ぶ屋台に爛々とした瞳を向ける。
「春節ですからねぇ、中華圏における最大のお祭りと言っても過言ではないでしょう」
老若男女、悪人から善人まで区別なく祝い、飲み、食べ、騒ぐ。新年のお祝いだ。
「正に繁華って感じだな~」
辺りを見回し、華々しい屋台や花火を眺めて伊織が思わず溜息を零す。嗚呼……チャイナドレスの可愛い女の子もいっぱいいるのに、何でオレの周囲は今日もこんなに荒涼としているんだろうか。
そう思いながら、食欲全開準備万端! みたいな狐組と獲物を狩る目で屋台を見つめる肉食猛獣猫様に改めて視線を向けた。
「……てか、何この珍獣軍団??」
オレ、獣難の相でも出てるの? みたいな顔を伊織がした瞬間に、響き渡るは盛大な腹の虫。
「おい、今爆竹や花火より盛大に腹鳴らしたの誰だ~!?」
爆音でしたケド!? と、伊織が悲鳴のように叫べば、てへっ☆ みたいな顔をしておたまが伊織を見上げる。
「おたまか~~~~!」
おたまじゃしょうがないネ!! と伊織が言うと、菊里がくすくす笑っておたまを抱き上げた。
「おやおや、屋台の匂いにつられてお腹まで鳴り響き出しましたか」
「おう、おたまもやる気満々だな」
ふんす! とおたまがちょこの言葉に尻尾を膨らませて応える。
「ふふん、上等だ。腹が減っては何とやら――メインディッシュの前に、先ずは軽く屋台でウォーミングアップと行こうじゃねぇか」
「では早速、来る戦に備えて腹拵えと参りましょうか」
キリッとした表情を見せ、菊里がまずはここからと、屋台へと向かって歩き出す。
「いや?? 暗黒料理をメインディッシュって言うのもおかしいし、それのウォーミングアップに腹拵えするのがもうおかしいんだケド??」
すごい、突っ込みだしたらキリがないけれど、伊織のその言葉を菊里もちょこも、おたまも聞いてはいなかった。だって屋台ですごい勢いで注文していたから……!!
「ウン……凄いやる気ダネ……」
やる気があるのはいいことだよ、うん、と自分を誤魔化しながら伊織が重い足取りで屋台荒らしのように注文を繰り返す二人と一匹の後ろに立った。
「伊織は何にしますか?」
「お前もしっかり食えよ」
「キミらの意気込みだけで既にオレはお腹一杯な気分なんだケド!!」
軟弱者と言われようとも、既に菊里の腕の中に抱えられている揚げ餃子に春巻の山を見れば――。
「あ、でもいい匂いだな……オレはじゃあ、胡麻団子でも軽く摘まむか」
「胡麻団子もいいな」
「いいチョイスですねぇ、じゃあそれも」
気が付けばあれも、これも、小と中と大? 値段も大して変わらないなら大でいいでしょう、と大袋を買う彼らのお陰で伊織の腕は山盛りの胡麻団子にちまき、そして黒猫ちょこ様に占領されていた。
「この粽、いい味してるな。伊織も食えよ」
ほら、と肉球も柔らかなちょこの手により、伊織の口元に美味しそうなちまきが差し出される。
「なんでオレの腕の中に……いやいいケド! あ、コレ美味いな」
伊織が一つのちまきをもぐもぐと食べている間に、ちょこは次々とちまきを攻略していく。
「肉粽もいいが、海鮮粽もいける」
「何処に入るんだろうネ……」
そんな二人の隣では、ちょこに負けじとおたまが菊里の腕の中で揚げ餃子を齧っていた。
「あつあつでパリッパリですねぇ、やはり出来立ての料理に勝るものはない……あ、こっちの春巻も美味しいですよ、おたま」
ご主人様に勧められ、おたまが春巻を手にもぐもぐと食べる。その食べっぷりたるや、ちょこにも負けていない。
「やるじゃねぇか、おたま」
負けてなるものかと、ちょこも胡麻団子を口の中に放り込んでいく。
「……喉に詰まらせないようにネ!」
それ以外に何が言えただろうか、というほどに伊織を除いた二名と一匹は買った傍から食べ尽くしていく。
「揚げ物の次はやはり肉まんですよねぇ」
「その『やはり』が全然わかんないだケド」
「さすが菊里だな、わかってるじゃねぇか」
「わかるの!?」
本当に全然わかんない会話してる……と思いつつ、ちょこに言われるままに伊織が肉まんを買う。
「このふんわりもっちりな皮も美味いが、やっぱり中の肉餡が美味いな」
「わかります、肉汁が染み込んだ皮が美味しいんですよねぇ」
「ウン、それはオレにもわかるカナ」
それ以外は全然わかんないけど、あとキミらの食欲もちょっとよくわかんない。
わりと長い付き合いになってるとは思うけど、本当にわからないなと思いながら伊織が肉まんを齧った。
「次は何がいいですかねぇ」
「俺はあれがいい、チヂミみたいな食い物」
ちょこがふかふかのお手てで指したのは葱油餅という文字で、ツォンヨゥピンと呼ばれる食べ物だ。
「よし、あれにしましょう」
「本当に端から端までだな……」
しみじみと言う伊織を横目に、菊里とちょこ、そしておたまが葱油餅を口にする。
「外はパリッとしていて、中はもちもちですねぇ」
「B級グルメって感じで美味いな」
お前も食え、とちょこが伊織の口に葱油餅を捻じ込む。
「むぐ、ん、確かに美味い」
もぐもぐと食べる伊織を眺め、菊里が笑う。
「国や文化は違えども、晴れやかな祝いの場の空気は実に良いものですねぇ」
それに何より、ご馳走が豪華絢爛なのがいい。ついつい財布の紐も緩んで、盛り上がるというものですと菊里が次の屋台はどれにしようと眺める。
「盛り上がるのはご馳走の山だけどネ……」
それはもう盛りに盛っているのだが、それを上回る速さで食べられているので、そうは見えないのがポイントだ。
「おう、鱈腹食って飲んで馬鹿騒ぎ出来る時間があるってのは良いこった」
爆竹の代わりとばかりにゴロゴロと喉を鳴らして、ちょこが次は唐揚げがいいと菊里に言う。
「街もキミらも、ホントめでたい空気で何よりダヨ、ウン!」
もうどうにでもなーれ、と諦めた口調で伊織が渇いた笑いを浮かべると、おたまが伊織の頬をかぷりと噛んだ。
「おたま!? 何またどさくさに紛れてオレを齧ってるの!?」
「おや、どうかしましたか?」
「おたまがオレを齧るんだけど!」
「ああ、それは『おててに持った胡麻団子、一つ私にくださいな』の意ですよ」
ホントに!? と言いつつ、まだ残っていた胡麻団子をおたまの口へと放り込む。
「ホントだ……うう、こんな鬼退治珍道中ヤダ~~!」
うっうっ、と嘆く伊織を尻目に、菊里とちょこ、そしておたまは次に何を食べようかと和気藹々。
「いやぁ、この調子なら暗黒料理のおかわりも余裕ですねぇ」
「ふ、飯も敵も悉く平らげてやろうじゃねぇか」
猫舌だってなんのその、任せておけとばかりにちょこが手にした唐揚げを頬張るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬飼家・ヤング
◎アドリブ絡み歓迎
はーるばる来たで九龍城砦~♪
いやー、初めて来たのに何か懐かしいわー
そう!まるでわいの故郷、マイフェイバリットシティ「ナニワ」!
ド派手なライトアップ、美味い料理、下町人情、
んでもってちょこっとアングラな雰囲気もな!
せっかく来たんや、美味い中華を食うて食うて食いまくるでー!
餃子にラーメン、小籠包、エビチリに酢豚に八宝菜!
花椒がピリッと辛い麻婆豆腐に北京ダック、ピータンもな!
おっちゃん、老酒もじゃんじゃん持ってきてんかー!
この日のために腹すかせてきたんや
美味い料理は別腹!なんぼでも入るでー!
〆は杏仁豆腐に胡麻団子、そして桃まん!
はぁ~、満漢全席、食った食った!!
●春節丸ごといただきます!
ふんふん♪ ふん♪ と、鼻歌を盛大に歌いながら馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)が九龍城砦をてけてけと歩く。
「はーるばる来たで九龍城砦~♪」
赤に彩られた街はどこかヤングの故郷を思い出させて、思わず橋の上で立ち止まる。
「いやー、初めて来たのに何か懐かしいわー思ってたけど」
見上げればド派手に打ち上がる花火、そしてライトアップ。
「これはもう、わいの故郷、マイフェイバリットシティ『ナニワ』や言うても過言やあらへんな!」
美味い料理に下町人情、それでもってちょこっとアングラな雰囲気!
実際はちょこっとどころではないのだが、今は春節。ヤバい空気はちょっとばかり鳴りを潜めている。
「まあなー、言うてナニワもヤバいところはヤバいしな」
夜に歩くと危ない場所とか色々ある、どことは言わないが、まぁそうなのだ。
「でもええとこもぎょうさんあるからな!」
それはそれとして、今は九龍城砦の春節である。
「せっかく来たんや、美味い中華を食うて食うて食いまくるでー!」
屋台もいいけれど、折角の封神武侠界だ。ここはひとつ、美味しい中華料理店に入るしかない。ヤングがそのコミュ力を発揮させ、地元住民からお勧めのお店を聞き出すと迷いのない足取りで向かう。
「ここやな」
邪魔するで、と入って席に案内されるとメニュー表を開き、餃子に拉麺、小籠包……ええいまだるっこしい、ここからここまで全部や! と大盤振る舞いで注文する。
「美味い! このエビチリも酢豚も八宝菜も、わいの胃袋をガシッと掴みにきとる!」
次々運ばれる料理に舌鼓を打ち、これは酒も必要だと追加で注文を入れる。
「おっちゃん、老酒もじゃんじゃん持ってきてんかー!」
花椒がピリッと効いた麻婆豆腐を片手に老酒を呑み、北京ダックを食べてはピータンを摘まむ。
「わいはこの日の為に腹すかせてきたんや」
美味い料理は別腹! なんぼでも入るでー! と、有言実行とばかりにテーブルの上の料理を胃に収めていく。
「へぇ、これが長寿麺でこっちが春節に欠かせへん魚料理」
店のお勧めも交えた気持ちのいいヤングの食べっぷりに、店の人々もやんややんやの大喝采。
「〆は杏仁豆腐に胡麻団子、そして桃まん!」
これだけは外せへんで! と食べ切って。
「はぁ~、満漢全席、食った食った!!」
満足気に笑って、お釣りはいらんで! と、ナニワの粋な男を見せて店を出たのであった。
大成功
🔵🔵🔵
朧・ユェー
【月光2】
あぁ、旧正月と言って2月にお祝いするのですよ
兄の家ではこの月にもお祝いしてましたねぇ
兄がここ出身なので
えぇ、両方お祝い出来てお得ですね
ふふっ、僕もルーシーちゃんと一緒に楽しむのは嬉しいですね
漢服を?えぇ、いいですよ
ルーシーちゃんが着たらとっても可愛らしいでしょうねぇ
ルーシーちゃんは水色ですね
じゃ僕は桃色にしましょうか
何度か着たことあるので気にせず着るが意外と難しいから彼女には大変でしょうね
彼女に軽く着てもらったら、良く着れてますよ
といいつつ綺麗に整える
ふふっ、やっぱり良く似合ってますね
小さな天女さん
僕は仙人ですか?何でも出来そうですね、ありがとうねぇ
胡麻団子美味しかったですね
杏仁豆腐もありましたよ
どちらも買ってどうぞと渡し
胡麻団子は熱いですから気をつけて
おやおや、大丈夫ですか?
ふふっ、それは良かったですね
近くで破裂音がする
おや、爆竹ですね
彼女をひょいっと抱えて
彼女が火傷してはいけない
危ないので暫くこのままで
えぇ、世界はとても広いですねぇ
ルーシー・ブルーベル
【月光2】
こちらの世界はお正月が2月なのね?興味深いわ
お兄さんのお家も2月なの?
じゃあゆぇパパは1月2月と両方お正月が楽しめるのね!
お祭りを楽しむのはルーシーも大の得意よ
ゆぇパパと一緒なら特に!
ね、パパ
カンプク?っていうの着てみたい!
――本当はパパがお召しになった姿が見てみたい、というのはナイショ
ルーシーは水色の衣にする
パパは桃色!着てるの余り見た事ないからワクワク
早速着替えましょう!
薄い布が幾重にも重なってキレイだけど、
この着方でいいのかな?
最後の直しをお任せしながらパパを見上げて
わああ。すごくステキ、パパ!
華やかってこういう事いうのね
ふふーありがとう
ルーシーが天女ならパパは仙人さんね
着替えを終えたらお祭り巡り再開!
良い香り…あ!ゴマダンゴ!
以前パパと食べたのおいしかった
杏仁豆腐もあるかな?
ありがとう、とゴマダンゴをがぶっと
…あつい
でもおいしい!
ひゃっ
急にバチバチって音が
な、何?バクチク?
思わずしがみつくと
ひょいとパパとお揃いの視界の高さ
世界で一番安心な場所
世界は色んなお祭りがあるのね
●お正月を楽しんで
赤に金、めでたい色に彩られた街は誰も彼もが楽し気で、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は思わず手を繋ぐ隣の男性、彼女がパパと呼ぶ朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)を見上げた。
「とっても賑やかなお祭りなのね!」
「旧正月を春節と言うんですよ、ルーシーちゃん」
春節、とユェーの言葉を繰り返してルーシーが賑やかな通りを眺める。
「春節、というのね? こちらの世界はお正月が2月なのね、興味深いわ」
「あぁ、旧正月は日にちが決まっているわけではないんですよ」
太陰暦に基づく祝日なので、毎年日付が違うのだとユェーが笑う。
「1月の下旬と2月の上旬になることが多いんですよ」
「まあ、そうなの? ルーシー、ひとつ賢くなってしまったわ」
パパは物知りなのね、とキラキラした瞳をユェーに向けてルーシーが微笑んだ。
「兄がここの出身なので、兄の家でお祝いしてたのを覚えているのですよ」
「まぁ、お兄さんが? じゃあ、ゆぇパパはお正月と旧正月で、両方お正月が楽しめるのね!」
「えぇ、両方お祝いできてお得ですね」
ルーシーらしい言葉に、くすくすと楽し気にユェーが笑う。
「ルーシーの知っているお正月とは全然違うのね。花火がたくさん上がってるの、とっても綺麗だわ」
「そうですねぇ、元日を祝うお正月は賑やかですけれどもっと静かな雰囲気ですからねぇ」
賑やかではあれど、どこか厳かなのが元日を祝う正月。お祭り騒ぎなのが旧正月といったところだろうか。けれど、春節だって正月を祝う気持ちに変わりはない。
「ふふ、お祭りを楽しむのはルーシーも大の得意よ。ゆぇパパと一緒なら特に!」
「ふふっ、僕もルーシーちゃんと一緒に楽しめるのはとっても嬉しいですね」
繋いだ手は温かくて、なんだか嬉しくなって顔を見合わせた二人が笑った。
あれは何か、あっちのお店は、とあちこちを見ながら賑やかな通りを二人で歩く。九龍城砦の人々は様々な衣装を着ていて、目にも楽しい。
「ね、パパ」
「はい、なんでしょうルーシちゃん」
「ルーシーね、カンプク? っていうの着てみたい!」
ああいうの、とルーシーの視線の先を見れば、漢服を着た男女が歩いていくのが見えた。
「漢服を? えぇ、いいですよ。ルーシーちゃんが着たらとっても可愛らしいでしょうねぇ」
間違いなく可愛いに違いないと、ユェーの頬が緩む。
「ゆぇパパも着るのよ?」
「僕もですか?」
「ええ、お揃いよ」
ユェーが漢服を着ている姿が見てみたくなった、というのが本当のところなのだが、それは内緒。お揃いの服を着たかったのは本当だもの、とルーシーがユェーと共に漢服を置いている店へと入った。
「わあ……! ステキな衣装がいっぱいね!」
「どれも可愛くてルーシーちゃんには全部着てほしいくらいですねぇ」
シフォンをたっぷりと使った、ふんわりとした可愛らしいドレスのような漢服が幾つも飾ってあって見ているだけでも楽しくなってしまうくらいだ。
「すごく、すごーく迷うけれど、ルーシーは水色の衣にするわ」
これ、とルーシーが手にしたのは羽織もセットになった、水色を基調とした生地に花の刺繍が可愛らしい漢服。帯が柔らかな桃色で、それを見たユェーが思い付いたように桃色の漢服を手に取った。
「ルーシーちゃんは水色ですね。じゃ、僕は桃色にしましょうか」
「パパは桃色! ふふ、きっと似合うわ!」
桃色の服を着ているところを余り見たことがないから、どんな風に着こなすのかわくわくしながら試着室へと向かう。早速着替えてみるけれど、ルーシーはこうかしら? これはこう? と悩みながら衣装に手を通す。対してユェーは何度か着たこともあってか、すいすいと着替えていく。
ルーシーが悪戦苦闘しているのをちらりと眺め、後できちんと直してあげましょうと微笑んだ。
「薄い布が幾重にも重なってキレイだけど、この着方でいいのかな? ねぇ、パパ」
どう? と見せてみれば、綺麗に着付け終わったユェーがルーシーに向き合って膝立ちになる。
「良く着れていますよ」
頑張って着付けた彼女を褒めつつ、ここはこうした方がいいですよ、とユェーが手直しして綺麗に整えた。
「どうですか? ふふっ、やっぱり良く似合ってますね」
「ステキ! それにね、パパもすっごくステキ!」
ありがとう、パパ! と、ルーシーが嬉しそうに笑う。
「華やかってこういう事をいうのね」
「ルーシーちゃんはさしずめ小さな天女さんですね」
「ふふー、ルーシーが天女ならパパは仙人さんね」
「僕は仙人ですか?」
桃源郷がよく似合う、そんな雰囲気だとルーシーが思いながらユェーに頷く。
「ルーシーちゃんにそう言ってもらえると、何でも出来そうですね。ありがとうねぇ」
それじゃあ、天女と仙人でお祭りを楽しみに行きましょうかと、ユェーが彼女の手を取った。
再び春節の夜を楽しむように、赤い旗と提灯を道案内にするように二人で歩く。九龍城砦の中へと向かえば、その密集した建物にルーシーが目を丸くする。
「すごい、ぴったりくっついてるのね」
そのくせ、人が通れる道はあるし開けた場所は広場のようになっていて。
「見てパパ、屋台よ!」
「良い匂いがここまでしてきますね」
「良い香り……あ! ゴマダンゴ!」
パッと表情を明るくして、ルーシーがゴマダンゴよ、とユェーを見上げる。此度の戦争でもユェーと食べた胡麻団子だと、瞳を煌めかせて。
「胡麻団子、甘くて美味しかったですね」
「杏仁豆腐もあるかな?」
「ふふ、今度のは辛くないといいですねぇ」
そう言われ、辛かった杏仁豆腐を思い出してルーシーが心配そうに問い掛ける。
「ここのは大丈夫……よね?」
「はい、大丈夫ですよ」
ほら、とどちらも買ったユェーがルーシーにまずは胡麻団子を手渡す。
「ありがとう!」
「胡麻団子は熱いですから……」
気を付けて、と言う前にルーシーが胡麻団子をがぶっと齧る。
「……あつい」
「おやおや、大丈夫ですか?」
冷たいものを、とユェーが屋台を見回す。
「でも、おいしい!」
「ふふっ、それは良かったですね」
でもこれも飲んで、とユェーがタピオカミルクティーを差し出した。
「わ、これも甘くておいしい!」
太いストローからぽんっと口に飛び込んでくるもちもちのタピオカも美味しくって、ルーシーがほっぺたが落ちそうなくらいの笑みを浮かべる。
「杏仁豆腐も、きちんと甘いわ」
「はい、僕のも甘くて美味しいですよ」
二人並んであれも美味しい、これも美味しい、と屋台を食べ歩いているとパン! パンパン! と、大きな音が足元で響いて、火花が散った。
「ひゃっ!?」
驚いてユェーにしがみつくと、彼が庇うようにルーシーの前に出る。
「おや、爆竹ですね」
「な、何? バクチク?」
「大きな音が出る、花火のようなものですよ。火花も多少は出るので――」
ユェーが大きな手で彼女をひょいっと抱き上げると、片腕に座らせた。
「火傷をしてはいけませんから、暫くこのままで」
わ、と口を開いたルーシーにユェーが笑う。世界で一番安心できる場所で、ルーシーもユェーに微笑んだ。
「パパと同じ風景が見えるの、ルーシーとっても好きよ」
「僕もルーシーちゃんを抱っこするの、好きですよ」
抱っこしたまま広場を歩き、龍舞や獅子舞を眺めたり、爆竹を鳴らす人々に笑ったり、しっかりとお祭りを楽しんで。
「世界には色んなお祭りがあるのね」
「えぇ、世界はとても広いですからねぇ」
これからも、知らないお祭りも知っているお祭りも、パパと一緒に見たいのよ、とルーシーがユェーに囁けば、僕もですよとユェーが嬉しそうに笑みを零すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『暗黒料理人』
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POW : 暗黒料理・天
【超暗黒料理人】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【ながらも食欲を掻き立てる暗黒料理】を放ち続ける。
SPD : 暗黒料理・人
【暗黒料理によって完全に支配下に置いた者達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 暗黒料理・地
【暗黒料理】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【から無限に食材が湧き出る環境に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アルミィ・キングフィッシャー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●本日開店暗黒中華飯店
春節で賑わう九龍城砦を歩くうち、君達は少しばかり寂れた雰囲気の中華料飯店を見つけるだろう。
そして、『暗黒料理あります』という、堂々とした幟旗も。
胡散臭い事この上ない幟に普通の人々は入るのを躊躇うけれど、猟兵である君たちは覚悟を決めて足を踏み入れる。
待ち構えるは暗黒料理人、繰り出される暗黒料理を何かしらの対策をしつつ食べるもよし、料理対決を挑むもよし、腕力にものをいわせてぶちのめすもよし――。
暗黒料理に打ち勝てば、暗黒料理人は骸の海に還るはず。
この賑やかな春節の夜に、人知れず猟兵達の戦いが始まろうとしていた。
雨倉・桜木
◎
食後の昼寝すると帰ってしまったキュウダイくんにしょんぼりしつつ、お店に入ろうか。
これ見よがしにアピールするなんて構ってほしいのかな。面白いね。よし、構ってあげよう。暗黒料理ちょっと興味あるしね?不味い方かな見た目グロい方かなどちらだろう。
店主、オススメをお願い。
出てきた料理のダメな見た目に失笑しつつ、一口だけ食べよう、うん、不味いな。【毒耐性】【狂気耐性】あるから効果は出ても多少は問題ない。ふふ、焦燥感とか寂寥感を感じる。ぼくにしては珍しい乱れ方でいっそ愉しいな?
さて、店主、ひどい料理のお礼に歌でもどうかな?指定UCで眠らせたら残りは店主の口にだばーっと入れてしまおう。口直しは杏仁豆腐かな。
●早くお家に帰りたい
うきうき気分でキュウダイと屋台を楽しんでいた雨倉・桜木(花残華・f35324)であったが、満腹になったのか食後の昼寝をすると言ってキュウダイが一足先に帰ってしまったので、もう今すぐ帰りたい……みたいな気分で桜木が溜息をついた。
「キュウダイくん……」
しかし猫のお昼寝を邪魔するなど言語道断であるからして、桜木は早く暗黒料理人とやらを倒して家に帰ろうと決めた。
「キュウダイくんのお昼寝を眺めるんだ……!」
そうと決めたら行動は早かった、怪しい幟旗が翻る中華飯店の前に立ち、たのもー! とばかりに突撃したのだ。
「これ見よがしにアピールするなんて、構ってほしいのかな」
なんだろう、暗黒料理ありますって。
一周回って面白くなってきたので、構ってあげようという気持ちで席に着く。
メニューを眺めつつ、暗黒料理ってそもそも何だろう? 不味い方かな、見た目グロい方かな、どっちだろうと考える。実物を見てみるかと、店主に向かって手を上げる。
「店主、オススメをお願い」
『ハイヨー!』
厨房から聞こえてきた声に、やや胡散臭い中国人キャラだなと思いつつ待っていると、目の前に運ばれてきたのはよく分からない中華料理っぽいもの。
「……??」
もしかしておススメだから? メニュー表にないものってなると暗黒料理人のセンス次第なのでは?
「はは」
失笑ものな見た目だけれど、取り敢えず見た目で決めるのもよくないと一口だけ食べる。
「うん、見た目通りに不味いな」
酸っぱいし甘いし辛い、これだけ口の中で味を変えるのはある種凄いのかもしれないな……なんとなく焦燥感とか寂寥感を感じてお箸を置いた。
自分にしては珍しい感情の乱れ方で、いっそ愉しくなるほどだったけれど――あ、もう今すぐ家に帰りたい、キュウダイくんを吸いたい。
「よし、お家に帰ろう」
その前に店主にお礼をしなくちゃね、と桜木が立ち上がると八重紅枝垂桜の花吹雪を放つ。
「少しの間寝てなよ」
すやっと寝てしまった暗黒料理人の口に向け、謎の中華料理をだばっと流し込む。
「これでよし!」
何が良いかはさっぱりわからなかったけれど、桜木の頭の中はもうキュウダイの事でいっぱいだったので仕方ないね。
「帰りに屋台で杏仁豆腐でも買って、あとキュウダイくんに受けの良かった物も買っていこうかな」
待っててね、キュウダイくん! と満面の笑みを浮かべ、桜木は怪しい中華飯店を後にしたのでありました。
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
◎
暗黒料理!
ある意味ここに相応しい響きではあるかしら?
暗黒なんて言うくらいだもの……きっと、人間だって食べてしまうんでしょう?
オウガみたいに! ヴァンパイアみたいに!!
人喰いはみんな、メアリが殺sえっ?
食べないの? ただ食べさせるだけ?
オブリビオンのくせになぁにそれ!
それじゃあ殺し甲斐がないったら!
……まぁ、いいわ
あなた、このお城の「霊気」が欲しいんでしょう?
だったら、メアリが「お茶会」に招待してあげるわ
このお城らしい、ね
【瘋狂茶會】を発動し「阿片の煙」で敵を惑わせる
支配されてる人たちには軽く吸わせて、邪魔させない程度で済ませるけれど
(それでもどかないのなら【ジャンプ】【踏みつけ】跳び越えて)
オブリビオン相手には遠慮なんてしないで
思いっきり濃いのを吸わせてやるんだから!
そうしてアリスが魅力的な食材に見えるよう
(それが具体的にどういう姿形に見えるかなんて知らないけれど)
幻覚で正気を奪いながら【誘惑】してみせて
無防備に切りかかってきたところを【騙し討ち】!
メアリのお茶会はお気に召したかしら?
●暗黒料理と瘋狂茶會
屋台の飴は美味しかったけれど、メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)にとっては少し物足りない。
「もう少し刺激的な方がいいの」
そう、例えばこの幟旗に書いてある暗黒料理みたいに――え、暗黒料理?
「ここなのかしら?」
暗黒料理あります、なんともシンプルで迷いのない言葉で書かれた幟旗の前でメアリーが立ち止まる。
「暗黒料理!」
口に出して言いたい、暗黒料理。
「ある意味ここに相応しい響きではあるかしら?」
だってどう考えても真っ当なお料理じゃないもの、とメアリーは思う。
今日は春節で暴力と阿片の気配は鳴りを潜めているけれど、戦時に訪れたここは頽廃的な香りで満ち溢れていた。
「暗黒なんて言うくらいだもの……きっと人間だって食べてしまうんでしょう?」
二本足は親以外、四つ足は机と椅子以外は食材になる、なんて言葉もあるくらいだだもの、それくらい当然では?
「オウガみたいに! ヴァンパイアみたいに!!」
メアリーがキラキラと瞳を輝かせて扉を開けると、寂れた空気の中で暗黒料理人が厨房に立っているのが見えた。
「暗黒料理人、人喰いはみんな、メアリが」
殺す、と言おうとした瞬間にイラッシャイマセー! と声が掛かった。
「えっ?」
「ナニタベルカ!」
えっ!? と、メアリーが暗黒料理人を見る。
「人を食べないの?」
「タベサセルホウアルネ」
「ただ食べさせるだけ?」
こくり、と頷かれた。
料理人だから、料理をするだけだと暗黒料理人が主張する。
「オブリビオンのくせに、なぁにそれ!」
もっと残虐で、入ったお客さんを食べるんじゃないの!? とメアリーが言う。
「だってそういうお話もあるわ、やたらと注文が多い料理店のお話とか!」
最後に入ってきた人を食べようとして逃げられるお話、メアリーが入ったならば確実に喜びそうなお店だ。
「ウチハソウイウノ、チョット」
「それじゃあ殺し甲斐がないったら!」
人喰いだと思ったのに! ぷくぅ、と頬を膨らませ、メアリーが暗黒料理人を見遣る。
「ソレデ、ゴチュウモンハ?」
「ないわ、メアリはご飯を食べに来たわけじゃないのよ」
オカエリクダサイ! そう暗黒料理人が言おうとした瞬間に、メアリーがまぁいいわ、と溜息交じりに言葉を続ける。
「あなた、このお城の『霊気』が欲しいんでしょう?」
「ムム」
霊気、確かに暗黒料理人はこの場に満ちる人々の霊気――九龍の霊気を狙ってやってきたのだ、暗黒料理はその手段でもある。
「だったら、メアリが『お茶会』に招待してあげるわ」
料理をする側なら、招かれることはないのでしょう? 特別よ、とメアリーが笑う。
「このお城らしいお茶会に、ね」
メアリーが身に付けた九龍の霊気から、この飯店全体に阿片の煙を放つ。
「ふふっ、乱痴気騒ぎの滅茶苦茶会の始まりよ!」
いつもなら、支配されている人達には軽く吸わせて邪魔をさせない程度で済ませてあげるところだけれど。
「あなたはオブリビオンだもの、遠慮なんてしないわ。思いっきり濃いのを吸わせてあげる!」
燻る阿片の煙が暗黒料理人を包み込み、幻覚の中を彷徨わせる。
「さあさあ、アリスが魅力的な食材に見えてきたかしら?」
料理人であれば調理したくなるような、そんな魅力的な食材に――!
『コレハー!』
中華三千年の歴史の中でもお目に掛かれるかどうかわからない幻の食材! みたいな幻覚をみている暗黒料理人が興奮気味に何か喋っているけれど、早口過ぎてちょっと聞き取れない。
けれど、メアリーは彼のおしゃべりが聞きたい訳ではないから丁度いい、それよりも早く調理してみせてくれと、より一層強い幻覚で暗黒料理人を煽った。
『ワタシガチョウリシテミセルアルヨー!』
肉切り包丁を振り被り、無防備に襲い掛かってきたところをメアリーが軽い跳躍で躱し、その背を思いっきり踏みつけて背後から斬りかかる。
「ふふ、メアリのお茶会はお気に召したかしら?」
幸せな夢を見たまま、眠るといいわ。永遠に――。
大成功
🔵🔵🔵
メノン・メルヴォルド
◎
永一さん(f01542)と
暗黒料理ってどんな料理、かしら?(眉を寄せつつ、首傾げ
気にはなるけれど、食べるのは…ちょっとコワイのよ
永一さんの毒味役??
わ、たくさんいるのね
Σ…!?
分身が突撃するのを見て顔面蒼白
思わず彼の片腕をくいくい引っ張る
え、えいいちさん…っ!あの永一さん達は大丈夫なの?!
…で、でも(あわあわオロオロ
慣れていると聞いても、分身さん達が特攻していくのは痛そうで
やっぱり見ていられなくて腕の影に顔をこそっと隠し
それなら…ワタシが頑張る、ね(全てを燃やす決意
食材ごと、何もかも、燃やし尽くすの
チカラを貸して…エレメンタルファンタジア!
炎で呑み込み終わらせるために
これなら、もう、大丈夫?
霑国・永一
◎
メノン(f12134)と
暗黒料理かぁ
名前だけはカッコいいとは思いつつ、文字通りのヤバいものなんだろうねぇ
こういうのは毒味役を用意するに尽きる(狂気の分身発動)
『俺様達の腹を唸らせろよッ!』
自爆分身沢山出してどんどん食べさせようかなぁ
食べ終わる度にその分身は料理人に感想と共に自爆特攻さぁ(減った分身は再召喚)『美味かったぜ!自爆する程なァ!』『暗黒グルメ、三ツ星くれてやる!』
いやぁ面白い光景だねぇ。…ん?ああ、メノン。分身たちは気にしなくていいよ、慣れてるし
まぁ飛び散った破片が消えるまでは見た目グロいけど
中華料理は火力が大事って言うからねぇ。メノンは才能あるんじゃないかなぁ(燃え盛る敵側見つつ
●中華は火力!
「暗黒料理……」
「暗黒料理かぁ」
暗黒料理あります、の幟旗を眺め、メノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)と霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)がそれぞれその響きを口にする。
「どんな料理、かしら?」
暗黒と付くからには、何かしら不穏な料理なのだとは思うけれど、とメノンが柳眉を潜めつつ首を傾げる。
「文字通りのヤバいものなんだろうねぇ」
名前の響きだけはカッコいい、と少年の心を忘れない永一が思いつつ、さて鬼が出るか蛇が出るかと飯店の扉を開けた。
中は寂れた雰囲気の中華らしい店、隠れた名店かもしれないと思わせなくもない。カウンターの奥にある厨房からは、イラッシャイマセー! という怪しい発音の声が響く。
適当な席に座り二人でメニューを眺めると、メニュー自体は普通に見える。見知らぬ名前の料理もあるけれど、見慣れた料理が並んで……でも全てに暗黒って付いているな、暗黒料理のアピールが凄い。
「暗黒料理……気にはなるけれど、食べるのは……」
ちょっとコワイのよ、とメノンがメニューを眺める永一を見遣る。
「大丈夫、こういうのは毒見役を用意するに尽きる」
「永一さんの毒見役?」
でも、ここにはワタシたち以外に誰もいない……ときょろきょろするメノンに笑い、永一がユーベルコードの力を発動する。
「さぁ、俺の為に暗黒料理を食べてくれ」
『呼び出したと思ったらろくでもねぇな、クソッタレ!!』
何処からともなく現れたのは永一のもう一つの人格を有する、彼そっくりの自爆する分身達だ。
「わ、たくさんいるのね」
「これだけいれば、全メニュー制覇もできそうだなぁ」
何を食べさせようか、とメニューを開いていた永一が料理を注文する為に声を上げる。
「注文いいかな?」
『ナニタベルアルカ!』
厨房から聞こえた声に永一が唇の端を持ち上げて、このメニューのここからここまで、とメニュー表をひらひらさせた。
「た、たくさん食べるのね?」
「食べるのは分身だけどねぇ」
間を置かずして届く料理、それを手にする分身。
「色がちょっと黒いような気もするけど、見た目は普通だなぁ」
じゃあテメェが食えよ! という分身達の声を聞こえない振りをしつつ、さっさと食べて、みたいな顔で永一が促す。
『チッ、俺様達の腹を唸らせろよッ!』
鮮やかな赤いソースの中にぷりっぷりのエビ、所々黒いのはトッピングと思えなくもないエビチリを分身が食べる。
『程よい辛さにエビ、いいじゃねぇか!』
舌に妙に残るピリッとした感じ、暗黒料理ならではってか! と叫びながら分身が暗黒料理人に向かって自爆する。
「いやぁ、面白い光景だねぇ」
「!?」
分身の食べっぷりと食レポを楽しく見ていたメノンが自爆した分身を見て青褪めると、震える指先で永一の片袖をくいくいっと引っ張る。
「え、えいいちさん……っ!」
「……ん? どうしたんだい、メノン」
次はどれにしようかな、と考えながら新たな分身を呼び出していた永一がメノンを見遣る。
「あ、あの永一さん達は大丈夫なの?!」
そう言っている間にも、手にした料理を完食した分身が感想を言いつつ暗黒料理人に向かって行っては自爆していく。ちなみにB級ホラー並みにスプラッタな感じになっている。一言で申せばヤバい。
「ああ、分身たちは気にしなくていいよ、慣れてるし」
『美味かったぜ! 自爆する程なァ!』
酢豚を食べ切った分身が皿を返却するような足取りで近付いて、また自爆する。
「まぁ飛び散った破片が消えるまでは見た目グロいけど」
「……で、でも」
その、とっても。
言葉を濁しつつ、メノンがオロオロしながらアイヤー! とか言いながら自爆を受ける暗黒料理人と、暗黒グルメ、三ツ星くれてやる! と叫びつつ自爆する分身を眺めては視線を隣の永一に戻し、きゅっと唇を結ぶ。
慣れていると聞いても、それでも永一の姿をした分身達が特攻していくのは痛そうで、見ていられなくなって永一の腕の影に顔をこそっと隠して――ひっそりと決意する。
「それなら……ワタシが頑張る、ね」
全てを燃やそう、と。
「チカラを貸して……」
祈るようにメノンが呟くと、周囲の空気がふわりと変わる。
「エレメンタルファンタジア!」
暗黒料理人の力によって無限に湧きあがる食材ごと、何もかも燃やし尽くすというメノンの意思を汲んだかのように、炎が躍る。
「中華料理は火力が大事って言うからねぇ」
炎に吞み込まれていく食材と敵を眺めつつ、永一が眼鏡のブリッジを軽く押し上げる。
「メノンは才能あるんじゃないかなぁ」
魔法もだけれど、中華料理の。
「今度挑戦してみる、の」
ふわりと笑ったメノンがそう言うと、こてんと首を傾げて。
「これなら、もう、大丈夫?」
と、永一に問い掛ける。
「そうだねぇ、大丈夫なんじゃないかなぁ?」
多分、と消し炭になっていく暗黒料理の食材を眺めながら永一も笑うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リュカ・エンキアンサス
◎
章お兄さんf03255と
とりあえず食べよう
戦わずに解決できるならそれはそれでいい
勿論戦うなら、灯り木で応じはします
ところで暗黒料理って何が暗黒なんだろう
(一口)
…よく、わからないな……
虫とかは、普通に俺は、旅の途中で食べ物なくなったときとか食べるし…
(味覚が完全に壊れてるので味のことはわからない
…いや、好きではないよ?食べはするけど
お兄さんの愛は…ちょっと歪んでるなあ(失礼
勿論毒だったら吐くけど
お兄さんもいる?胃の中のもの全部吐く薬
いらない?そう…
便利なのに
お兄さんもたいがい怪しい食生活してるね
うん、おいしかったよ、ごちそうさま
虫は兎も角誰かと一緒に食べる料理は、やっぱり美味しいね
鵜飼・章
◎リュカさんf02586と
暗黒料理とは何が暗黒なのか
哲学だね
今や近所のスーパーでコオロギパウダーを見かける程
生活に浸透しつつある昆虫食
暗黒どころか食糧難を解決する光の料理だ
(鵜飼流人間奥義正論)
リュカさんの手料理の方が余程暗黒…いや何でも
しかし見た目的にはハードルが高いらしいよ
日常的に虫を口に含む僕らが異分子なのでは
アリとかつまみ食いするよね…しない?
あ、クモの素揚げとムカデの姿揚げ
これは確かに色味が暗黒
揚げ物はサクッとして美味しいけど
カブトムシは…実はまずい
土の味がする…
僕は内臓強いのでいりません
毒耐性あってさ…何故か
拾い食いを続けた成果だね
その一言で片付けられるのは凄いね
ごちそうさまでした
●中華本当に何でも食べるし、君達も食べる
暗黒料理とは一体何なのか、それを知る為にリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)と鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は『暗黒料理あります』と幟旗の立った中華飯店へと来ていた。
「ちょっと主張しすぎじゃないかな?」
ずらりと並んだ春節の赤い旗のように、この幟旗もまた店の前にずらりと並んでいる。
「本当だね、こんなに堂々と暗黒料理を主張してくるとは」
君が今着ている昆虫柄のコートよりは主張していないと思うけれど、暗黒料理のアピールはかなりのものだ。
その中でもリュカの目を惹いたのは、ちらりと紛れる『虫料理もあります』である。
「とりあえず入ろう、そして食べよう。戦わずに解決できるなら、それはそれでいい」
食べる気満々だった、料理と名が付くからには食べられるだろうという判断の元に、二人は店へと足を踏み入れた。
店内は寂れた雰囲気ではあったが、テーブル席が幾つかとカウンター席が見える。イラッシャイマセー! という声がカウンター席の奥にある厨房から聞こえてきて、手近なテーブル席へと座りメニューを開く。
「ところで暗黒料理って何が暗黒なんだろう」
「暗黒料理とは何が暗黒なのか……哲学だね」
見た目が? 味が? 食材が? 興味は尽きないね、と章がメニューを眺め、少し考えるような素振りで首を傾げる。
「メニューは普通の中華料理のようだけど」
「一般的……だよね」
リュカも何が違うのか分からない、とメニューを閉じて顔を上げる。
「頼んでみようか」
「そうしよう、百聞は一見に如かずと言うからね」
すいません、と手を上げ、二人で声をハモらせ頼むメニューは――。
「「虫料理お願いします」」
一般的なメニューを頼むところではないのか、そうは思うが彼ら虫料理を食べに来てるからね、初志貫徹。
ムシリョウリイッチョー! と些か怪しい中国人みたいなイントネーションで承った暗黒料理人が、注文された通りに虫料理を二人に提供する。勿論ここで使われた虫は食用である、虫料理文化は奥が深い。検索してはいけない、いいね?
「今や近所のスーパーでコオロギパウダーを見かける程、浸透しつつある昆虫食」
割り箸を綺麗に割れたことに満足気にしつつ、章がテーブルに運ばれた虫料理を眺める。並ぶのはクモの素揚げにムカデの姿揚げ、イナゴの唐揚げに炒った蜂の子などなど、揚げ物が多め。
「暗黒どころか、食糧難を解決する光の料理だよ」
「光かどうかはわからないけど、食べようか」
普通の人であれば躊躇うようなラインナップの前でも二人はいつもと変わらない、それどころか美味しそうだねってなものである。小皿に取って、いざ実食。
「……よく、わからないな……」
どこが暗黒なんだろう? とリュカが首を傾げる。
「普通の虫料理だね、僕から見ればリュカさんの手料理の方が余程暗黒……」
「え?」
「いや何でも」
味覚が少々……いや、歯に衣を着せずに言えば完全にぶっ壊れているリュカの料理はクソマズどころではないので、それに比べると虫料理の方が全然イケる、という話なのだが、如何せんリュカにはその自覚が薄い。
対する章の味覚はいたって普通、強いて言えばメンタルがアレ。
しかし見た目がヤバいだけで、昆虫食の味は美味しいものが多い。蜂の子を摘まみながら、世間話のように虫料理の話を続ける。
「でもリュカさん、見た目的にはハードルが高いらしいよ」
大抵の虫料理は、素材そのままの形で出てくるので。
「虫とかは、普通に俺は、旅の途中で食べ物なくなったときとか食べるし……」
生き死にを前にして、見た目がどうのこうのとは言っていられない。
「もしかして、日常的に虫を口に含む僕らが異分子なのでは」
お気付きになられましたか、大抵の人間にとって虫は食べるものではない、と。
「でも、アリとかつまみ食いするよね……」
「え?」
「しない?」
花の蜜も吸ったね、アリもつまみ食いしたね。みたいな同列で言われましても。
「するかしないかで言われたら、しないかな……」
蟻の中でもお尻の部分に花の蜜を蓄えるものがいて、それは高い栄養価を持ち、尚且つ美味しいので非常食としては最適だけれども。
「そうか……」
しないものなのか。まあ僕はするけど。
「あ、クモの素揚げとムカデの姿揚げ。これは確かに色味が暗黒」
そう言いつつ、躊躇することなく箸を伸ばして口に運ぶ。
「揚げ物はサクッとした歯応えで美味しいよ」
人によっては鶏肉のような淡白な味で食べやすいとも言われているくらいで、名産とする国もある。
「うん、これは悪くないよね」
同じようにサクサクと食べ、食べて美味しい虫とそうでもない虫の話をする。
「揚げれば大体食べられるかな」
「そうだね、リュカさんの好きな虫は?」
「……いや、好きではないよ? 食べはするけど」
えっ? みたいな顔で章がリュカを見る。
「お兄さんは好きで食べてるの?」
「まあ、そうだね。でもカブトムシは……実はまずい。土の味がする……」
「お兄さんの愛は……ちょっと歪んでるなあ」
章がやや虚無った顔をしつつ言うと、リュカがスパッと言い切った。
「愛は多少歪んでいるものだよ」
虫料理片手に言われてもなぁ。
「そうだ、お兄さん」
すっとリュカが薬瓶を出し、テーブルに置く。
「毒だったら吐くけど、お兄さんもいる? 胃の中の物全部吐く薬」
念の為、とリュカが言うと章が首を横に振る。
「僕は内臓強いのでいりません」
「内臓強いって問題なのかな。いならいならいいけど……便利なのに」
「毒耐性あってさ……」
何故か、と章がお皿の上のクモの素揚げをぺろりと平らげて言う。
「拾い食いを続けた成果だね」
「お兄さんもたいがい怪しい食生活してるね」
「地球に優しいと言ってくれるかな」
自分の胃にも優しくあるべきでは?
テーブルの虫料理を綺麗に残さず食べて、特に不調を感じることなく立ち上がる。
「うん、おいしかったよ、ごちそうさま。虫は兎も角誰かと一緒に食べる料理は、やっぱり美味しいね」
「その一言で片付けられるのは凄いね」
まあ美味しかったけど。
「ごちそうさまでした、美味しかったよ」
ところで、結局暗黒料理って何が暗黒だったんだろう? そんな話をしながら店を出る二人は、終ぞ暗黒料理人が暗黒料理への自信を無くして膝を突いている姿を見ることはなかったのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
生浦・栴
【壁3】
美味い料理を堪能したので敵はさくっと倒…
そうか作るのか
(2人を振返る表情は胡乱。ノリに不穏な様子を察し成程という納得顔で)
俺は力任せの料理は出来かねる故、シンプルに行くか
鶏ガラスープ(顆粒)で少量の米を炊き
帆立と筍(缶詰)と生姜を刻んで味覇と胡麻油で整え中華粥完成
見事に無難な仕上がりだ
無味無臭の痺れ薬が紛れているとは思わぬだろうよ
…何故内輪ウケが良いのだ
壁に帰るまでは待て
冷凍の貝でもスープを取って海老と烏賊も具に追加してやる
暗黒料理自体は毒耐性で凌ぎつつ二人には毒消しをと思うたが
ひとしきり暴れた後で良かろうか
暗黒料理は全てUCで撃ち落として一際大きな一撃を暗黒料理人に呉れてやろう
明石・鷲穂
【壁3】◎
「暗黒料理あります」なるほどな。
絶対楽しい。料理対決しようぜ。
まず胡瓜を切る。たくさんな。
そんで塩、ごま油、みりん、適当に漬けていく。
さて、ここが大事だが……待つ間に酒を用意する。
料理屋なら酒くらいないかな。奥のほうに秘蔵を探しに行こう。
酒のつまみの完成。これは料理だ。
酒はヤバかったら栴の毒消しに頼るぞ!
栴、即席で飯作るの上手いよなあ。
これおれが食べたらマズイか?なんか入れたか?
相馬は~………龍が……超級料理人の域に達したか…!(深く頷き)暗黒料理屋はおまえのものだ!
そんなわけで料理対決は相馬の勝ちだ。
大人しく暖簾分け…いや、乗っ取らせてもらおうか!
鬼桐・相馬
【壁3】◎
ハハハ、充分楽しんだ俺にはさぞ九龍の霊気が身に宿ったに違いない(魔王風)
中華鍋とでかおたまを怪力で扱い料理を作る
炒めたり焼いたりしていれば何かが出来る筈
よさげな食材を放り込む
調味料もよさげな感じに
鷲穂の酒探しに付き合いたいが料理中は火の側を離れてはいけない
……少しだけならいいか
料理は毒沼の様相を呈してきそうだが
龍とつく位だし相応しい霊気を纏う龍が生まれ出る筈
出でよ(考え中)……闇の毒竜(†ダーク・アシッドドラゴン†)
敵の技で食欲が掻き立てられるが栴の料理の方が美味そうなんだよな
食べては駄目か、そうか
敵にUCで無念をぶつけよう
鷲穂はここにきて裏切りだと
いいだろう。相手になってやる
酒でな
●壁の男子、本当すぐそういうことする!
散々飲み食いをして、爆竹も鳴らしまくって満足した明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)と鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)、そして二人の保護者みたくなってきた生浦・栴(calling・f00276)は『暗黒料理あります』の幟旗を前に三者三様の顔を見せていた。
「暗黒料理あります、なるほどな」
鷲穂が真剣な顔をして幟旗を見つめ、その横で栴が暗黒料理とはなんだ、みたいな怪訝そうな表情を浮かべる。
「美味い料理を堪能したあとだ、敵はさくっと倒……」
「絶対楽しい、料理対決しようぜ!」
栴の言葉を遮り、鷲穂がキラッキラした顔で言った。
「そうか……作るのか……獄炎のはどうする?」
栴が諦めたような、胡乱な顔をして相馬を見遣る、
「ハハハ、充分楽しんだ俺にはさぞ九龍の霊気が身に宿ったに違いないからな。いいだろう受けて立つ」
「魔王みたいな顔になっておるぞ、獄炎の」
暗黒料理人より悪い顔をして、相馬が唇の端をニヤァっと持ち上げた。
多分爆竹の煙を受けて魔王みたいになった影響を引きずってる、間違いない。
「よし、入ろうぜ」
ガラッと扉を開けて、鷲穂が一番乗りー! とばかりに飯店の中へ入る。
「随分と寂れた雰囲気だな」
「暗黒料理とやらのせいかもしれぬな」
その後ろを相馬と栴が続き、厨房まで真っ直ぐに歩く。
『イラッシャイマセアルー!』
「胡散臭い中国人みたいな発音をしおって」
「見た目も胡散臭い中国人みたいな感じだな」
鷲穂の後ろで二人が辛辣な評価を敵に下している間に、鷲穂が厨房の中までずずいと進み、ビシッと指を突き付けた。
「俺たちは暗黒料理に挑みに来た猟兵だ、お前に料理対決を申し込む!」
『ウケテタツアル!!』
「道場破りか?」
「この場合、中華飯店破りだろう」
すごくどうでもいい突っ込みを入れつつ、栴と相馬も鷲穂の後ろに立てば、料理対決の始まりである。これが壁で行われていたら確実に酒のつまみにされているのであろうな、と栴がこっそり思っていたとかいないとか。
「さて、それで山羊のは何を作るつもりだ?」
「俺は胡瓜を切る」
「そうか……獄炎のは」
「炒める」
もう料理名ですらないのだが?? 不穏な未来しか見えないが、この面子ではそれも仕方なし。諦めと納得が混じったような顔で頷くと、鷲穂が栴は何を作るのかと問うた。
「俺は力任せの料理は出来かねる故、シンプルに行く」
凝った料理も出来ないから、基本みたいな料理だがと栴が材料を選ぶべくあちこち厨房の中を見て回る。
「よーし、おれたちもやろうぜ!」
「任せておけ」
一番任せちゃいけない人が任せておけって言うのはギャグか何かであるが、この場合は任せてもいいはず。だって暗黒料理との対決だから! ヤバい料理にはヤバい料理をぶつけるんだよ、の精神で栴は他の二人の準備を見て見ぬふりをしながら鍋を手に取った。
「中華飯店にもあるものよな」
顆粒の鶏ガラスープの素、これが便利なのだ。
もの凄い適当に水を鍋に入れ、鶏ガラスープの素を入れて少量の米を入れて煮る。沸騰したら弱火にし、その間に帆立と缶詰の筍と生姜を刻む。
「栴、即席で飯作るの上手いよなあ」
「この程度はな」
鷲穂はと言えば、宣言通りに胡瓜を切っていた。
そんなに大量の胡瓜をどうするのだ、と聞くのも……いやもう突っ込むのさえ諦めている栴がいい具合に米が柔らかくなった鍋に刻んだものをぶち込むと、そこに有名な中華スープの素を入れる。そう、あの赤い缶に黒い文字でドーン! と商品名書いてあるあれ。あとは風味付けに胡麻油を入れて整え、極弱火で煮れば中華粥の完成である。
「見事に無難な仕上がりだ」
隠し味に無味無臭の痺れ薬が紛れているなんて、誰も思わぬだろうよ、と栴が目を細めて小さく笑った。
「よし、この胡瓜をボウルに入れて、と」
まだ切っておったのか、という目で栴が鷲穂を見遣れば、大きなボウルに山盛り胡瓜。そこへ塩をファサ~~っと適当に入れ、胡麻油をタラ~~っと適当に掛け、みりんも適度な感じに入れて、よく洗った手でわしゃっと混ぜた。
「よし、ここからが本番だぜ……」
鷲穂が真剣な顔をするので、栴が何か手伝うか? と声を掛けようと唇を開いた瞬間、鷲穂がキリッとした顔で呟く。
「待つ間に酒を用意する」
あっ手伝いいらんなこれ、と栴が瞬時に理解した。
「酒ならそこに紹興酒とかがあるだろう」
「おっいいな、老酒と……料理屋ならもっといい酒あるだろう、秘蔵のなんとかみたいなのが」
探してくる、と奥へ向かった鷲穂を見送り、さてここまで見て見ぬふりをしてきたもう一人の男は……と、栴がそっと相馬を見遣った。
「中華といえば中華鍋だろう」
中華鍋におたまを装備していた、いや、手にして火力の強いコンロに向き合っていた。
「獄炎の」
控えめに栴が声を掛けるが、相馬の呟く『炒めたり焼いたりしていれば何かができる筈』という言葉を聞いて、放っておいてもよかろ……みたいな、海が凪いだような表情で自分の似ている中華粥の様子を見に行った。
と言うことはだね、つまり、彼を止める者は一人もいないということでしてね。
傍にいた所で止めるかどうかはわからないのだが。
「まずは油、中華は油だと聞いたことがある」
確かに、中華料理において油は大事だ、量をケチると美味しい料理にならない。
「このくらいか」
でもそれは入れ過ぎではないだろうか、揚げ焼きでもするのかな??
「次は良さげな材料」
ここで言う良さげな材料と言えば、肉、そう――鶏もも肉である。
「これをドーンと」
ジュワーーバチバチバチ、みたいな音がしている。ちなみに救われた点が一つあるとすれば、この鶏肉は既に一口大にカットされていたので丸ごとそのまま! じゃない所である。救いになるかは知らんけど。
「肉だけでは栄養が、と言うからな」
野菜もドーーン! それらが入った中華鍋を持ち前の怪力で振れば、何かそれっぽく見えなくもない気がする。
「あとは調味料だな、これも良さげな感じに」
良さげな感じ、とは。
その辺にある調味料、醤油にみりんに塩コショウをまぁ遠慮なくぶち込んでいく。派手な音がしているのを栴は火事になったらなった時だな、と思って聞いていた。
「隠し味が欲しい所だな」
ここはひとつ、良さげな酒がいい。完璧な閃きである、それに鷲穂も酒を探しに行ったところだし、一緒に探せば早く見つかるのではないだろうか。
「いや、料理中は火の傍を離れては……」
いけないんだからね、と彼の婚約者になったオラトリオの女性が言っていたのを思い出し、踏み止まる。
「……少しだけならいいか」
良くないって言ったでしょう! って絶対怒られるからな、それ。
しかしここに彼女はいないし、栴はいよいよヤバくなったら火を消すかと思っているので止める者はいなかった。
気持ち弱火にして、相馬が鷲穂の向かった先へと向かい、無事に酒を手にして戻ってきたころには――そう、料理は毒沼の様相を呈していた。
「いい酒はあったか?」
「あったあった、胡瓜もいい塩梅になってるな」
酒のつまみの完成! と、鷲穂が無限に食える胡瓜だと更に盛った。
「俺の方も完成だ」
栴も中華粥を丼によそい、小葱を散らす。
「なあ、これ俺が食べたらマズイか?」
「ああ、不味いな」
「なんか入れたか?」
その言葉には意味ありげな笑みだけ浮かべて応えた、めちゃくちゃ何か入れているなと鷲穂が仕方なく酒をテーブルに運ぶ。
「これは……強そうな料理」
良さげな酒を中華鍋にドバッと入れると、炎がぶわっと上がる。
「これは九龍の霊気と相まって強そうな龍が生まれ出るな」
なんでどうして料理から龍が生まれるんだ?? という突っ込みは鷲穂も栴も料理と酒を運んでいたので誰も入れてくれなかった。
だから――。
「出でよ」
すっごく考えた末に。
「……闇の毒龍」
†ダーク・アシッドドラゴン† とかが生まれてしまっても仕方なかったんじゃないかな、知らんけど。
いざ料理対決! と三人が暗黒料理人とテーブルを挟んで対峙する。
「いざ、尋常に勝負!」
『オテナミハイケンアルー!』
栴は中華粥、鷲穂は無限に食べられる胡瓜と酒、相馬は†ダーク・アシッドドラゴン†を。
「なんて?」
「闇の毒龍、ルビは†ダーク・アシッドドラゴン† だ」
「よくわかんないけど、強そうだな!」
名前も見た目も。
暗黒料理人もちょっと戸惑っているが、いざ実食。
「栴の料理の方が美味そうだな」
暗黒料理より中華粥の方が食べたい、と相馬が言うと栴が食うなよと嗜める。
「壁に帰るまでは待て、冷凍の貝でもスープを取って海老と烏賊も具に追加してやる」
「待つ」
「楽しみだなー、その為にもあいつをぶっ飛ばさないとだな」
いや何かもう、ぶっ飛ばすまでもなく中華粥で痺れているし、†ダーク・アシッドドラゴン† に手を出そうとしたら暗黒龍の霊気が料理人を縛り付けているしで、どえらい事になっていた。
「龍が……相馬は超級料理人の域に達したか……!」
深く頷きながら、暗黒料理屋はおまえのものだ! と鷲穂が言う。
「これが……俺が手に入れた九龍の霊気か」
絶対違うと思う、何か錬成しちゃったんだと思うよ。
「もう暗黒料理食べる必要ないな?」
毒消しも持ってきたが、無用だったかと栴が懐に仕舞う。
「そんなわけで料理対決は相馬の勝ちだ」
知らんうちに暗黒料理人のびてるし。
「こうなったら大人しく暖簾分け……いや、乗っ取らせてもらおうか!」
ニヤリ、と笑って鷲穂がビシッと指先を相馬に突き付ける。
「ここにきて裏切りとはな……いいだろう。相手になってやる」
酒でな――!
「程々にしておけよ、獄炎の、山羊の。土産を買う時間がなくなれば、どんな文句を言われるかわからぬぞ」
「よし、帰ってからにしよう!」
「異議なしだ」
うちのお土産! とぷんすかして怒る少女を思い浮かべ、それは暗黒料理よりヤバいなと三人は店を出たのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朧・ユェー
【月光】◎
暗黒料理
そうですねぇ、こげこげだけじゃなく良いものでは無さそうです
お腹を壊してしまうかもしれないのでダメですよ?
ふふっ、ありがとうねぇ
えぇ、中華料理には火の加減が重要です。
ルーシーちゃんが相手の料理を焼いてくれている
では僕はお料理を作って対決しましょうか?
人を悲しませる料理では無く
人を喜ばせる料理、美味しいと言って頂かないとね?
次々と料理を作ってテーブルに並べる
プロにも負けないつもりです
おやおや、そう言われたらそれでは勝たないとですねぇ
大喰
暗黒料理はこの子が喰べてもらいましょう
ルーシーちゃん食べても良いですからね
後、他のお客様にも食べて頂きましょう
暗黒料理よりこちらが良いですよと
ルーシー・ブルーベル
【月光】◎
あんこくりょうり
暗黒料理ってどんなのかしら……コゲコゲ?
ちょっとどんなお味か気になっちゃうけど
た、食べないわ?
おいしさなら絶対にゆぇパパの方が上だもの!
中華料理は火かげんが大事って聞いたわ
まだこのお料理は焼きが足らないのではない?
ルーシーがお手伝いするわ
『ふたいろ芥子の怪火』
暗黒料理がこちらに届く前に焼き祓ってしまいましょう
わあ、地面から色々な食べ物が湧いてくる
これはこれで便利そうだけれど……
パパお料理作るの?
ふふー、これはもう勝ったもどうぜん(ドヤっ)
目の前でどんどんおいしそうな料理が出来ていく
うーん、良い香りね!
さっき食べたばっかりなのにまたお腹空いちゃった
いいの?いただきます!
●暗黒料理より愛情料理
寂れた雰囲気の中華飯店の前で、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)はあんこくりょうり? と首を傾げた。
「暗黒料理って、どんなのかしら……」
「暗黒料理……」
なんでしょうねぇ、と朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)もルーシーと顔を見合わせながら首を傾げる。
「……コゲコゲ?」
「そうですねぇ、こげこげだけじゃなく良いものでは無さそうです」
見た目が美しい料理だとしても、身体に良いものではないだろう。見た目も暗黒な可能性もあるけれど。
「想像がつかないわ」
未知の料理ね、とルーシーが『暗黒料理あります』と書かれた幟旗を眺めた。
「お腹を壊してしまうかもしれないので、食べたらダメですよ?」
「た、食べないわ?」
ちょっとだけ、そう、ほんのちょっとだけどんなお味か気になったけれど!
「ふふ、それじゃあ入りましょうかねぇ」
ルーシーの手を取って、エスコートするようにユェーが中華飯店の扉を開ける。
中は寂れた雰囲気ではあるけれど、中華飯店らしく幾つかのテーブルが並び、カウンター席も見える。そしてその奥には厨房があり、暗黒料理人が立っていた。
『イラッシャイマセアルー!』
「お、お邪魔します、なのよ……?」
「ルーシーちゃんは礼儀正しいですねぇ」
良い子、とユェーが頭を撫でて、庇うように前に出る。
『ゴチュウモンハー?』
「注文……そうですねぇ、では暗黒料理をお願いしましょうか」
『ハイヨー! アンコクリョウリイッチョー!』
怪しい中国人みたいなイントネーションで暗黒料理人が答え、テーブルに暗黒料理が次々と並べられていく。
「ルーシー、中華料理は火かげんが大事って聞いたわ」
「えぇ、ルーシーちゃんは物知りさんですねぇ。中華料理には火の加減が重要です」
ユェーに褒められて、ルーシーがパッと表情を明るくすると、並べられた怪しい雰囲気満載の暗黒料理を眺めて言う。
「まだこのお料理には焼きが足らないのではない?」
『ワタシノヒカゲン、カンペキネ!』
「どうかしら? だからね、ルーシーがお手伝いするわ」
ふわり、ひらりと花菱草色と魔を祓う蒼芥子色の炎が幾つも現れて、暗黒料理を焼き祓う。
『マダマダー!』
「わあ、地面から色々な食べ物が……!」
暗黒料理人の力なのだろう、地面から様々な食材が湧き出て、それを元に暗黒料理人が更に料理を繰り出さんと調理を始めている。
「これはこれで便利そうだけれど……」
「そうですねぇ、それじゃあ僕はお料理対決を挑みましょうか?」
料理の腕ならば、ユェーにもそれなりに覚えがある。
「パパ、お料理作るの?」
「ええ、ルーシーちゃんが頑張ってくれていますからね」
「頑張って、パパ! おいしさなら絶対にゆぇパパの方が上だもの!」
「ふふっ、ありがとうねぇ」
しかも可愛い娘の応援もあるとなれば、負ける気はしない。いざ勝負! と、暗黒料理を焼き祓うのはルーシーに任せ、ユェーは厨房へと足を踏み入れた。
ユェーが作るのは人を悲しませる料理では無く、人を喜ばせる為の料理だ。
「美味しいと言って頂かないとね?」
中華鍋を手に、鮮やかな手つきでユェーが食材を炒め、時には揚げてと美味しそうな料理を生み出していく。暗黒料理人も負けじと暗黒料理を生み出すが、その全てがルーシーの炎によって清められ、焼き祓われていた。
「さあ、僕の中華料理をどうぞ?」
ユェーがテーブルに並べていくのはプロの料理人も顔負けな料理の数々、麻婆豆腐にエビチリ、餃子に春巻とバラエティも豊か。
「美味しそう……っ! ふふー、これはもう勝ったもどうぜん」
並んだ料理を見て、ルーシーがドヤ顔で胸を張る。
「おやおや、そう言われたら……勝たないとですねぇ」
ならば、とメインからデザートまでと幅広く調理を重ね、ルーシーの大好きな胡麻団子に杏仁豆腐、マンゴープリンまで作り上げてユェーが暗黒料理人に迫る。
「うーん、良い香りね! さっき食べたばっかりなのに、またお腹空いちゃった」
特に胡麻団子に目を輝かせているルーシーに微笑んで、ユェーがルーシーちゃんも食べていいのだと微笑む。
「いいの? いただきます!」
「召し上がれ」
可愛い子が嬉しそうに食事をしている姿にほっこりしながら、ユェーが暗黒料理人に向けて暴食グールを放つ。
「大喰、暗黒料理を喰べておいで」
そのまま暗黒料理人も、とは言わずに、後は大喰に任せてユェーがルーシーの隣に座る。
「美味しいですか? ルーシーちゃん」
「ええ、とっても! 暗黒料理より、だんぜんゆぇパパのお料理だわ!」
だって、愛情がこもってるんですもの!
そう笑うルーシーに、ユェーも飛び切りの笑みを浮かべて答えた。
だって、ルーシーちゃんの為ですからねぇ、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジョヴァンニ・カフカ
◎
折角の料理を態々毒入りにするなど料理…いえ、食への冒涜ですね
最近、番茄炒蛋を作れる様になったので、それで料理対決を挑みます
卵にトマト、シンプルに思えても手際が肝心
敵は料理人だけあって腕は確かですね。素晴らしい
完成後、お互いの料理を交換しましょう
毒耐性、浄化で軽減して何事も無い様子で敵の料理を平らげてみせます
美味しかったですよ。ご馳走さまでした
…さて、料理は愛情と聞きます
俺もたっぷり込めましたよ~
呪詛を
不意打ちに蠢く影で敵をギッチギチに捕縛し
開口器よろしく口を開かせ給仕します
俺の知る、ありとあらゆる呪いを込めました
食への冒涜…?はて、何の事やら
残さず食べれば無問題なのです
さあ、たんと召し上がれ
●残さず食べて
「これはまた、雰囲気のあるお店ですね」
寂れた雰囲気は九龍城砦らしさがあって、悪くない。暗黒料理ありますの幟旗はどうかと思うけれど。
「暗黒料理、でしたか?」
折角の料理を態々毒入りにするなど、料理……いえ、食への冒涜ですね、とジョヴァンニの声が硬くなる。
「これは少々キツイお仕置きが必要とみました」
ガラッと中華飯店の扉を開き、中へと入れば聞こえてきたのはイラッシャイマセアルー! という胡散臭い中国人っぽい発音。
「怒られません?」
中華圏の人に、と思いつつジョヴァンニが暗黒料理人に料理対決を挑む!
「いいですか、完成後にお互いの料理を交換しましょう」
『ウケテタツアル!』
厨房に入り、素材を手に取りながら考えるのは最近覚えた中華料理、番茄炒蛋――トマトと卵の中華炒め。先の戦争の折にも作ったのだけれど、最近はこれにはまっているのだ。
「卵にトマト、シンプルですけど」
シンプルだからこそ、そこに料理人の手際と火加減の見極めが求められるというもの。
卵を割って溶きほぐし、トマトはヘタを取って大きめにカットし葱を斜め切りにしていく。
「トマトを湯通しするのがポイントなんですよね」
中華鍋にお湯を入れ、トマトをさっと茹でて取り出す。お湯を捨ててそのまま中華鍋の水気を火で飛ばし、多めの油を熱したら卵液を流しいれ、おたまで固まりきらないようにぐるぐると掻き回して網目の細かいザルへと上げた。
「次はトマトを、一緒に葱も入れて……」
まだ油の残る中華鍋にトマトと葱を入れ、生姜とニンニク、そしてトマトの縁が少し崩れた所で塩をひとつまみ、続けて卵を戻して素早く合わせる。
中華鍋を握ってからここまでの工程をそれこそ二分ちょっとで済ませる手際の良さは、ジョヴァンニがこの料理を気に入って何度も作っていることが窺えた。
対する暗黒料理人の手際も、敵ながら見事なもの。素晴らしいと素直に賛辞を贈りつつ、皿に盛った料理を互いに交換する。
「ではいただきます」
見た目は普通の麻婆豆腐、けれど暗黒料理というだけあって一口食べると麻婆豆腐本来の辛さとは違う舌を指す刺激。そこは持ち前の耐性と浄化の力を使って軽減し、何事もない風を装って暗黒料理を平らげた。
「美味しかったですよ、ご馳走様でした」
『オマエノモナカナカアルナ!』
「そうでしょう、料理は愛情と聞きます。俺もたっぷり込めましたよ~」
愛ではなく、呪詛を。
そう言って、不意打ちを狙ったように蠢く影が暗黒料理人を捕縛し、開口器のように形を変えると口をカパッと開けさせる。
「俺の知る、ありとあらゆる呪いを込めましたからね」
たーんとお食べ、とばかりに開いた口へ番茄炒蛋を流し込む。
食への冒涜……? はて何の事やら、とジョヴァンニが嘯いて仮面の奥の見えぬ目を細める。
「残さず食べれば無問題、なのです」
その証拠に、俺は全て食べたので。
あなたもきっちり食べてくださいね? 遠慮はいりません、とジョバンニが囁いた。
大成功
🔵🔵🔵
呉羽・伊織
【珍道中3】◎
嗚呼…暗黒料理VS暗黒(ブラックホール)胃袋×3…一体何の戦いが始まろーとしてるんだ…
キミ達もうフードファイターになりなヨ
(色んな意味でおなかいっぱいすぎるかお)
で、一応聞いとくケド――アチラサン、どう料理して差し上げるつもり?
いや、ウン、しってた!しってたケドネ!
何?料理人を過労死させる気??
えぐい…(ちょっとだけ敵に同情の眼差し向け)
(自分も色々耐性はあるケド、物量ばかりは!ってコトで、悪食もとい何でもつつく鴉呼び、暗黒料理攻略手伝ってもらいつつ)
丸焼きより丸くなってるぞおたま…膨れすぎて食材と間違えられるなよ~!
いや待て何物足りない顔してんのもう充分だろ!何デザートって~!
千家・菊里
【珍道中3】◎
いやぁ、これはまた腕とお腹が鳴りますねぇ、おたま
(ぺろりと腹拵え終え
更にやる気満々なおたま撫でつつ)
料理するというかして頂くというか――何にせよ、俺達は煮るも焼くもどんとこいですよ(きりっ)
しかし無限に食材が溢れる力だなんて、羨ましいですねぇ
(毒やら呪詛やらの不味そうなものへの耐性は元々ある為
たぶん暗黒料理を口にしてもさして問題ない――けれど)
折角の食材を無駄にするのは頂けません
どうせなら美味しく頂きたいので、おたまも万華達も頑張りましょうねぇ(一緒に浄化しながらもぐもぐ)
あ、料理人さん、おかわりまだですか?
ええ、帰ったら祝勝のデザートタイムと致しましょうねぇ(土産抱えほくほく)
鈴丸・ちょこ
【珍道中3】◎
此処が噂の料理店か
開店祝いの花はねぇが、代わりに奴自身を華々しく散らして閉店を飾ってやろうじゃねぇか
んじゃ、殴り込むぞ
あ?どうもこうも決まってんだろ(ぺろりと舌見せ)
俺達が食い倒れるのが先か、奴が力尽き倒れるのが先か――ふん、考えるまでもねぇな
おう、中華なら箸休め(?)に蒸しと揚げも忘れんなよ
さぁ、どこからでもかかってこい
俺は逃げも隠れもしねぇ
真正面から全て迎え食ってやる
(野生の勘で不味い部分嗅ぎ分けては浄化組に回し
戻ってきたものを流れる様にはむはむ)
おい、こっちの皿も空いてるぞ
早く追加の特盛を出すが良い
(無限供給を上回るペースだ!)
さて、メインディッシュが済んだ後は締めに行くぞ
●暗黒料理VS暗黒胃袋
「此処が噂の料理店か」
呉羽・伊織(翳・f03578)に抱っこされた鈴丸・ちょこ(不惑・f24585)が中華飯店の入り口に飾られた、『暗黒料理あります』の幟旗を眺めてフンッと鼻を鳴らす。
「九龍城砦ならではって風情ですねぇ」
「閑古鳥が鳴いてるだけだよな?」
ただでさえ寂れた雰囲気の店だというのに、暗黒料理のせいで余計に寂れている気がすると伊織が千家・菊里(隠逸花・f02716)に言うと、そうかもしれませんがと菊里が笑う。
「今から嫌ってほど料理が作れるんですから、丁度いいじゃないですか」
「そうだな、トントンだろう」
「……え?」
聞き間違えちゃったカナ? と伊織が確認の為に恐る恐る問い掛ける。
「一応聞いとくケド……アチラサン、どう料理して差し上げるつもり?」
倒すんだよな?? という目で菊里とちょこと見れば、ちょこがぺろりと舌を見せた。
「あ? どうもこうも決まってんだろ」
「ウン、それを聞きたいなって」
「俺達が食い倒れるのが先か、奴が力尽き倒れるのが先かって話だろうが」
「料理するというかして頂くというか――何にせよ、俺達は煮るも焼くもどんとこいですよ」
あっ、これ戦う気ないやつだ~~~! と、伊織が天を仰ぐ。花火、綺麗……じゃない、と現実逃避しかけた頭を戻す。
「いや、ウン、しってた! しってたケドネ!!」
つまりはあれだ、あれ。
「何? 料理人を過労死させる気??」
「考えるまでもねぇだろ、俺達は客だぞ?」
だったら料理人は料理を振舞うもんだろ、とちょこが笑う。
「開店祝いの花はねぇが、代わりに奴自身を華々しく散らして閉店を飾ってやろうじゃねぇか」
「えぐい……」
もう店に入る前から結末がわかる、入る必要なくない? と、伊織は思ったが入らない事にはその結末も訪れないので。
「んじゃ、殴り込むぞ」
鶴の一声ならぬ、ちょこの猫の一声により店の中に足を踏み入れることとなったのであった。
「いやぁ、これはまた腕とお腹が鳴りますねぇ、おたま」
屋台で買ったあれこれをぺろりと平らげて腹拵えは終わったとばかりに、菊里の腕の中のおたまがやる気に満ちた瞳を菊里に見せる。
「見てください、おたまもやる気満々です」
「お、いいぞおたま。沢山注文してやるからな」
ふんす! と、やる気のおたまにちょこが頷き、伊織にメニューを開かせる。
「これとこれ……面倒だな、上から下まで全部持ってこさせようじゃねぇか」
「まさかの全部!?」
「ちまちま頼むよりも、その方が相手も楽ですよ」
何が楽なのか全然わかんない、そう思いつつ伊織が手を上げた。
「すいませーん!」
『チュウモンキマッタアルカ!』
胡散臭いイントネーションだな、とは思ったが半ばヤケクソ気味に伊織がメニューを指さす。
「ここから」
指をつつーっと上から動かして。
「ここまで頼むヨ」
メニューの下まで指し示す。
『アイヤー! ウデガナルネ!』
「あ、取り敢えず三人前ずつでお願いします」
「菊里サン??」
取り敢えずって何??
「おう、箸休めに蒸しと揚げを多めに頼む」
「ちょこサン??」
箸休めとは?? と伊織が言う暇も無く、暗黒料理人がカウンターの向こうにある厨房へと引っ込んでいく。
「嗚呼……暗黒料理VS暗黒胃袋×3……一体何の戦いが始まろーとしてるんだ……」
暗黒胃袋と書いてブラックホールストマックである、伊織はこのテーブルだけじゃ料理が置けませんよね、と菊里が近くのテーブルを勝手に繋げてデカいテーブルにしていくのを眺めながら、料理が届いてもいないのにお腹いっぱいになるのを感じていた。
『オマチドウサマヨー!』
まずは前菜、と並んだのは搾菜にピータン、キュウリとキクラゲの和え物、棒棒鶏にスモークチキン等々。更には具沢山の春雨サラダに空芯菜のニンニク炒めと、皿に盛られた料理がテーブルに並べられていく。
「いいねぇ、どこからでもかかってこいだ」
逃げも隠れもしねぇとばかりに、ちょこが流れるような動作で食べ始める。
「菊里、これとこいつはヤバそうだ」
野生の勘で、特に浄化が必要そうなものはちょこが菊里へと回す。
「はい、任されました」
元々の耐性はあるが、念の為とばかりに菊里が狐の式神を召喚すると、料理の暗黒成分を浄化しつつ特に不味そうなものだけ式神に任せ、残りはおたまと共に食べ進める。
『マダマダー!』
空になり積み上げられる皿、空いたテーブルに置かれる料理、その速度は互角にも思えるほどだ。
麻婆春雨に麻婆茄子、麻婆豆腐と辛めの料理が並び、ニンニクの芽と豚肉の中華炒めにチンジャオロース、酢豚に四川風肉団子、豚と鴨の蒸し焼き麺、こってりとした豚の角煮、唐揚げ、鶏肉とカシューナッツの炒め物などの肉料理が続く。
「いいじゃねぇか、肉! 辛いのも一層食欲が増すってもんだ」
「うわぁ……」
物量が、物量が凄いと伊織が思わず遠い目をして、テーブルの料理と空になって積み上げられていく皿を交互に見遣る。
「キミ達、もうフードファイターになりなヨ」
あるでしょ、サブジョブにしなよ……と呟いて、今でさえこんなに食べるのにフードファイターになったらもっと食べるのでは? と気が付く。
「いや、やっぱり止めておいてくれる?」
ややマジなトーンで言いながら大丈夫そうな――ちょこが食べている料理を摘まみつつ、やや拮抗気味なペースを押し返す為に伊織が悪食……もとい、何でもつつく鴉を呼び出して共に暗黒料理を食べる。
「これはいい味ですねぇ、辛いのとお肉もいいですが、そろそろ海鮮も食べたいですね」
積んだ皿で顔が見えなくなりつつある菊里が言うと、息を切らし始めた暗黒料理人がエビマヨ炒めやエビの山椒揚げ、エビチリに海鮮おこげ、魚の姿揚げに甘酢ソースを掛けた一品などを運んでくる。
「あ、お皿も下げてくださいね」
さり気なく皿も下げさせ、これでテーブルが広くなりましたね! と、菊里が笑みを浮かべてエビマヨを口に放り込む。おたまもそんな主に負けないとばかりに、エビチリに顔を突っ込んだ。
「あーあー、顔がチリソース塗れだヨ……」
伊織が拭ってやりながらちょこのお口も拭いてやる、案の定甘酢塗れだった。
「しかし無限に食材が溢れる力だなんて、羨ましいですねぇ」
無限に出るってことは、無限に食べられるということですよね、と菊里が空になった海鮮おこげのお皿を横に退ける。
「ウン、ソウダネ……」
暗黒料理人が過労で倒れる前に、伊織の突っ込み力が死にそうである。
「そりゃそうだが、料理が追いついてこなきゃ意味がねぇ」
ちょこが少しずつ供給が遅れてきた料理に、丸い目をキラリと光らせた。
「催促しましょうか」
菊里が料理から顔を上げれば、丁度暗黒料理人が北京ダックや水餃子を運んでくるところで。
「あ、料理人さん、おかわりまだですか?」
「おい、こっちの皿も空いてるぞ、早く追加の特盛を出すが良い」
『オマエラヨククウアルナ!!』
もっと言ってやって、と伊織は思ったが黙っていた、言うだけ無駄なので黙々と水餃子に手を伸ばす。
「まだ食うぞ、早く持ってこい」
ちょこが北京ダックを齧りながら言うと、ふらっふらになりながら暗黒料理人が山盛りの玉子炒飯にキムチ炒飯、翡翠炒飯とご飯ものを運んでくる。ジャージャー麵に上海焼きそば、海鮮ビーフン、どれもこれも三人前とは思えない量で、暗黒料理人もヤケクソになって来たのが窺えた。
だがしかし、菊里とおたま、そしてちょこの胃袋は強かった。ここに来て食べるスピードを上げたのである。
「おかわりまだか?」
「あ、追加でこれもお願いしますね」
「もうやめたげてぇ……」
伊織が顔を両手で覆うが、彼らに効果はない。
『ア、アイヤー……!』
暗黒料理人はとうとう目を回し、ばったりと床に倒れ込んだのであった。
「おや、もう終わりですか?」
「不甲斐ねぇな」
口元を拭きつつ、菊里が立ち上がるとちょこもぴょんっと椅子から飛び降りる。
「デザートがまだじゃねぇか。菊里、締めに行くぞ」
「ええ、帰ったら祝勝のデザートタイムと致しましょうねぇ」
「いや待て、何物足りない顔してんの?? もう充分だろ! 何デザートって~~!」
「デザートは別腹だ、伊織」
「いやいやいや、おたまなんて丸焼きより丸くなってるぞ! もうこれ食材と間違えられるやつ!」
伊織がおたまを指させば、おたまがぽんぽんのお腹を撫でさすっているのが見えた。
「大丈夫ですよ、帰る頃にはすっきりしていますから。それよりお土産買って帰りますよ」
お土産、まだ屋台を荒らすの……? という目で伊織が菊里を見れば満面の笑みで返された。
斯くして暗黒料理と暗黒胃袋の戦いは、予想通り胃袋の圧勝で終わったのであった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
瀬古・戒
【箱2】◎
俺のパンチラ見せたくねぇだろ!と説得しカンフー服に着替え
はぁ、ズボン落ち着く
暗黒料理?基準て何? …つったのが悪かったんか始まった暗黒料理対決☆ミ
ぇ、審判俺?マジ?公平を期す為、誰が作ったかは見ねぇけどさ……料理しねぇヤツが小麦粉と重曹を間違える番組の審査員気分…クソコワイ
てかチャイナ服エプロン姿て最高か?
できた?…コレ俺が食うの??イタダキマッッッズ!!!!辛うじてコレ食えるけどコレ論外動くじゃんよぉぉコレが暗黒料理てコトで……は?ラファン作った???おま、真の暗黒料理人か???何勝ってんの???じゃなくて食材に失礼だから全部食え!口開けろオラァ!!そこの暗黒料理人テメーもだ!
ラファン・クロウフォード
【箱2】◎料理対決で挑む
チャイナドレスにエプロン装着。戒は審査員か
並んで料理なんて、ドキドキしすぎて料理どころでなくなるもんな
戒のカンフー服姿をじっくり見ることもままならないなんて、はぁ。調理に集中しよ
土鍋でじっくりと煮込んで料理完成
蓋をあければエンカウント的な音と魔女鍋超えの香りと色味
ボエェェと鳴いて這い出す泥状の物体をお玉で叩いて料理人の方へ
短時間で躾けるの大変だった
安全な食材を煮込み隠し味にユベコを少々
自ら捕食されに向かう移動力と拒否する者を万力で締め上げ捕食する出汁巻き玉子だ
キュウリ馬とナス牛の友達もいるぞ
出汁巻き玉子と言い張るも、自信なくなり、改名・土鍋ミミック
栄養満点なのに(もぐ)
●暗黒クッキングのお時間です!
暗黒料理あります、の幟旗を前にして、瀬古・戒(瓦灯・f19003)はラファン・クロウフォード(武闘神官・f18585)に真剣な顔をして言った。
「俺はカンフー服に着替えるからな」
「何で?」
「スースーす……じゃない、俺のパンチラ他の奴に見せたくねぇだろ!」
「それは嫌だ、戒のパンチラは俺だけのものだ」
「お前のでもねぇんだけどな……?」
解せぬ、という顔をしたラファンはさておき、戒はしっかりと青いカンフー服に着替えて改めて怪しい中華飯店の前に立つ。
「はぁ、ズボン落ち着く」
「戒はカンフー服も似合うな」
ゆったりとしたズボンにトップスはやや身体のラインに沿ったもの、チャイナドレスにはない魅力がそこにはあった。
「いいから、入るぞ!」
もっとゆっくり眺めたいのに……と言うラファンの背を押し、店内に入れば響くのはイラッシャイマセアルー! とかいう胡散臭い訛りの声。
「あれが暗黒料理人、すごくそれっぽいな」
胡散臭さが凄い、とラファンが呟く。
「っていうか、暗黒料理って? 基準て何?」
見た目? それとも味? と、戒がなんとなく思った疑問をそのまま口にする。
「暗黒料理とか、ラファンの料理の方がよっぽど暗黒料理じゃね?」
「俺の料理は普通だと思うんだが」
えって顔をした戒に、ラファンもえって顔で返すと暗黒料理人が聞き捨てならぬと目をかっぴらく。
『アンコクリョウリショウブアル!!!』
突如始まる暗黒料理勝負、審判は戒、解説は天の声、以上でお送りいたします!
「えっ」
審判俺? マジ? という顔を戒がしたけれど、そりゃあ食べる人がいなければどちらがより暗黒料理か判定できないのであるからして、これは自然の摂理、間違いない。
「いや、公平を期す為に誰が作ったかは見ねぇけどさ……」
気分は普段料理をしない奴が小麦粉と重曹を間違える料理番組の審査員気分である、つまりは――。
「クッソコワイ」
そんな戒の気持ちは知ってか知らずか、ラファンはいそいそとチャイナ服の上にエプロンを装着し、戒に食べさせる料理に気合を入れる。
「ってかチャイナ服エプロン姿て最高か?」
もっとよく見せろその脚! と思った所ですが調理の時間となりましたので、それは後程お二人でごゆっくりお願いします。
「アッハイ」
厨房に向かったのを見届け、戒が厨房に背を向けて座る。後で写真撮ったろ……と思いつつ、聞こえてくる音に戦々恐々であった。
一方こちら厨房、暗黒料理人はさすがの手際で中華鍋を振るっていますが、ラファン選手はどうでしょうか!
「はぁ、戒は審査員か……」
カンフー服姿をじっくり見ることもままならないなんて……としょんぼり顔をしつつ、でも並んで料理なんてドキドキしすぎて料理どころでなくなるもんな、と土鍋にボチャンボチャンと材料を入れていく。
何故かはわからないが、入れた材料が見えない。これはヤバイ予感しかない。
「はぁ……調理に集中しよ」
その辺の調味料をタパタパ入れて、後は煮込むだけ。煮れば何でも食べられるだろ、という考えだ。
「料理は愛情っていうしな」
愛情も大事だけれど、材料と調味料の加減も大事なんだよな~~~!
「これだけじっくりと煮込めば大丈夫だろう、完成だ」
カパッと蓋を開ければ敵とエンカウントしたような音、そして魔女の大鍋も吃驚な香りと色味、あと謎の煙。
「おい、今なんかすごい音したけど!?」
背を向けて椅子に座っている戒が不穏な空気を感じて叫んでいるが、それ貴女の旦那様になる方の出した音です。
「……えい」
ボエェェと鳴いて這い出した泥状のなんかヤベー物体をお玉で叩き、暗黒料理人にけしかけた。
『アイヤー!?』
何か暗黒料理人が食われているけれど、ラファンはお構いなしで料理を続ける。何故って、戒に食べてもらう料理を作り直さないといけないからだ。
「安全な食材を煮込もう」
待ってほしい、最初に何入れたの??? 安全じゃない食材って???
「隠し味にユベコを少々……」
隠し味に使っていいユーベルコードか、もう一度よく考えて欲しい。
「……できた!」
対する暗黒料理人も、謎の泥状物体に半分食われつつ出来上がった物をテーブルへと並べる。
「戒、もういいぞ」
『サア、ドッチガアンコクリョウリカ、シンサスルアル!』
「えぇ……できたのかぁ……」
一生出来上がらなくて良かったのにな、と思いつつ振り向いて、戒が死んだ魚のような目で料理を見つめる。
「……コレ俺が食うの???」
いや食うけどさぁ……と、女は度胸だと戒が箸を伸ばす。
「イタダキマッッッズ!!!!」
辛うじて食える、辛うじて食えるが――。
「コレ論外、動くじゃんよぉぉぉ!! もうコレだろ、間違いなくコレが暗黒料理ってコトで!」
「それは俺が作った自ら捕食されに向かう移動力と、拒否する者を万力で締め上げ捕食する出汁巻き玉子だ」
なんて??
「は? ラファンがコレ作ったんか??? おま、真の暗黒料理人か???」
どう見たってお前の作ったコレがナンバーワンだよ、と戒が真顔になる。
「キュウリ馬とナス牛の友達もいるぞ」
「ソレ、お盆に作るや……ギャーーー! コイツらも動いてんじゃんよ! っていうか、何暗黒料理人に勝ってんの??」
出汁巻き玉子に謝れ、と戒が叫ぶ。
「じゃあ……改名して土鍋ミミックで」
「名前の問題じゃないんだわ」
暗黒料理対決を制したラファンに正座させ、食材に失礼だから全部食え! と、戒が土鍋ミミックを指さす。
「栄養満点なのに」
もぐ、と食べるラファンを横目に、戒が謎の泥状物体に半分食われてる暗黒料理人にも、テメーもだ! と叫んでその口に暗黒料理を流し込んだ。
暗黒料理対決、勝者はラファン――!
この後ヤベー料理は全て暗黒料理人とラファンがおいしく? いただきました!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルルカ・ウェレマイン
メイファンさん(f33513)と ◎
あ、暗黒料理…あんな美味しい、素敵な体験の裏にはこういうものも…!
感じる陰の気を纏う幟。料理は蠱惑的な香り…美味しい、でもいけないものです…!
…あっ、メイファンさんが意気揚々と…むむ。では、ボクも…後ろをそろそろと
なるほど、これが暗黒料理…刺激的といいましょうか、不健康的…でも、それがやめられない背徳的な感覚を覚えます…
…!ですが、しかし…身体に纏う陽の気。九龍の霊気がそれらの毒素を抑えこんでくれて…
であれば、ボクも力の限り、食べ戦います……けぷり
…料理は食事は、人を喜ばせ楽しませるものと…気づいて、くれれば…
(たべすぎて。転がってしまいながら…)
楊・美帆
ファルルカ君(f32779)と ◎
存分にお祭りを楽しんだ後は、そろそろ仕事にかかろうか!ファルルカ君にこの世界のもう一つの顔を見せてあげるネ。そう……この世界の住人なら誰もが知ってる、暗黒料理の世界だヨ。
たのもー!堂々と暗黒料理の幟旗を出している店に乗り込むヨ。出されるのは度を越した辛さの火鍋や、毒が処理されていない危険な食材の料理。でも味はいいんだよネェ。
いただきマス!気合を入れて一気呵成に食べていく。対策なんてない。ボクはもう死んでるから。ファルルカ君は無理しないでネ……。
店主が萎縮するまで平らげたら、今度はこっちの番だヨ!もう出すものはないのかい?それじゃー、ぶっ飛べ!!(指定UC)
●刺激的なお味の後は
美味しい屋台料理と春節の花火、九龍城砦から見える夜景を楽しんだファルルカ・ウェレマイン(月のフラジャイル・f32779)と楊・美帆(デッドハンド・f33513)は『暗黒料理あります』という幟旗の前に立っていた。
「春節は楽しめたかい? ファルルカ君」
「……はい! とっても、楽しかったです」
それは良かった、と美帆が嬉しそうに微笑んで、表情をほんの少し引き締める。
「それじゃ、そろそろ仕事にかかろうか! ファルルカ君にこの世界のもう一つの顔を見せてあげるネ」
「もう一つの……顔?」
こてん、と首を傾げたファルルカに、美帆が頷く。
「そう……この世界の住人なら誰もが知ってる、暗黒料理の世界ダヨ」
「あ、暗黒料理……!」
名前からしてちょっと禍々しい、でも幟旗にも暗黒料理って書いてある……! と、ファルルカが小さく息を飲む。
「素敵な体験の裏には、こういうものも……!」
気持ちを落ち着かせてよく見れば、幟は陰の気を纏っているのが感じられる。それに続けて店から漂ってくる蠱惑的な香りは絶対に美味しいけれど、いけないものだとファルルカは直感していた。
「そんなに緊張することないネ、チョッと行ってパパッとやっつけるヨ!」
そうしたら、また春節を楽しむのもいいネと美帆が笑い、躊躇うことなく怪しい中華飯店の扉を開いた。
「たのもー!」
堂々と乗り込むその姿は凛々しく、ファルルカはあたふたしつつも、その頼もしい姿の後ろをそろそろと付いていく。
『イラッシャイマセアルヨー!』
「なんだかボロボロだネ」
店も、暗黒料理人も。まあ、店は表からしてちょっと寂れた雰囲気だったのだけれど。
「さ、ファルルカ君もおいで」
美帆が適当な席に座ると、メニューを片手にファルルカを呼ぶ。
「は、はい!」
お店の怪しさに圧倒されつつも、ファルルカが席に着いた。
「メニューは普通な気が……あっ」
でも全部暗黒料理って書いてある、とファルルカが気付いて美帆を見遣る。
「片っ端から食べるとしようか」
「片っ端から……!」
豪快だけれど、それがきっと正解なのかもしれない。
「はい、ボクも頑張ります……!」
「その意気ヨ!」
店主! と、美帆が暗黒料理人を呼び、これとこれ、こっちとあっちも、とあれこれ注文すると、すぐに厨房から調理中の音が聞こえてくる。
「音と香りはいいネ」
「普通……っぽいです」
そんな話をしながらカウンターの奥に見える厨房を眺めれば、出来上がった料理を運んでくる暗黒料理人の姿が見えた。
「わ、これが暗黒料理?」
「見た目は普通だけど、ちょっと黒っぽいかな」
全体的にどんよりとしたオーラが出ているような。
「いただきマス!」
まずは毒見とばかりに美帆が火鍋に手を付けると、その辛さに目を見開く。
「これは度を越した辛さネ」
でも、味はいい……! こっちの炒め物も、毒が処理されていない食材だけれど、味はいい、何故か。
「こう、刺激的といいましょうか、不健康的……?」
ファルルカも麻婆豆腐や炒飯、上海焼きそばなどに箸をつけ、その味を楽しむ。
「でも、それがやめられない背徳的な感覚を覚えます……」
これが暗黒料理、阿片のように中毒性があるのだろうかとファルルカが考える横で、美帆は一気呵成とばかりに料理を食べていく。彼女にはこれといった対策はない、何故ならば――既に死したる身体を持つ僵尸なのだから。
「ファルルカ君は無理しないでネ……?」
「だ、大丈夫です! メイファンさんと春節のお祭りを見て回れたからか、九龍の霊気がお料理の毒素を抑え込んでくれて……」
言うなれば、陽の気が陰の気を中和してくれているような感覚、そうとなれば陰陽を操るファルルカにとって暗黒料理は恐れるものではない。
「ボクも力の限り、食べ戦います……!」
ぐっと拳を握り、ファルルカが果敢に点心の山に挑む。
「頼もしいネ、ファルルカ君!」
一騎当千の頼もしさだと、美帆が勢いに乗ってテーブルの上の料理を片付ける。
「店主! まだまだお代わり持ってくるヨ!」
北京ダックにエビのチリソース、酢豚に海鮮あんかけ焼きそば、八宝菜に酸辣湯。フカヒレの姿煮に油淋鶏、トマトと卵の炒め物に焼きビーフン……締めは杏仁豆腐とココナッツミルクにマンゴープリン!
どれもこれもが美味しくて、そして暗黒に満ちていたけれど、二人の力を合わせてご馳走様!
『リョウヘイ、ヨクタベスギアル……!』
「もう出すものは無いのかい? なら今度はこっちの番ダヨ! それじゃー……」
美帆が拳に青い炎を灯し、両足を開き腰を落とした体勢を取り――。
「ぶっ飛べ!」
そこから一気に拳を突き出せば、放たれた青い炎は暗黒料理人を燃やし店の壁に向かって暗黒料理人が飛んでいく。
「……料理は、食事は……人を喜ばせ楽しませるものと……気づいて、くれれば……けぷり」
食べ過ぎで床に転がりながら、燃える暗黒料理人を眺めてファルルカが呟く。
「さ、ボクらの仕事はここまでだヨ。行こうか、ファルルカ君」
「は、はい……!」
もう少し春節の夜を楽しんでもバチは当たらないはず、と二人はぽんぽんに膨れたお腹を撫でながら春節で賑わう九龍城砦へと再び足を向けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨野・雲珠
縁さんと!/f33070
そんな…冷やし中華始めましたみたいな風情で…!?
(愕然とした顔で幟旗を眺めながら入店)
本来、どんな気持ちで作ってもいいと思うんですよね。
ただ、信じて食べてくれた人を
支配しようというのは違うっていうか…
はい!えっ
…えっ??
(縁さんを二度見)
あっ、なっ、なるほど…!
ほ…ホントウニスバラシイゴチソウデスネ!
コンナニオイシソウナモノ、
オレタチガイタダイタラモッタイナイデス!(棒)
合わせて必死でやんややんやしながら、
薬湯作って操られた方々を解毒して回ります。
わぁ…縁さんとっても楽しそう
いくらおいしい食事でも食べ過ぎは毒なわけで。
……。
攻め方がえげつない…!
えっ
えーー!?(撤退!)
結・縁貴
小雲珠と/f22865
主張激しい店だな。笑える。
春節楽しんで服装も準備もばっちりだし、入ったら店主に取り入ろう!
技能【言いくるめ】
素晴らしい料理だ!
ははは、高名な料理人と話すのが恥ずかしいのかな小雲珠?
元々料理を食わせたい気持ちはある筈だ
持ち上げて、料理への感情を高めて、…感情が高まる程よォく効く
技能【騙し討ち】
御縁を結ぼう
…料理を食べさせたい相手は、自分だろう?
食事を食べさせたい感情の、対象をすり替えて結ぶ
俺達から、作った当人にね!
自慢の料理だろ?全部食い切れよ!
嗚、小雲珠には慈愛があるねェ
…ところで、俺の異能は永続しない
相手が自滅する前に効果が切れたら小雲珠を抱えて【逃げ足】
逃げるが勝ち!
●兵法三十六計におきまして
春節で賑わう九龍城砦を歩き回って、雨野・雲珠(慚愧・f22865)と結・縁貴(翠縁・f33070)が辿り着いたのはちょっと寂れた雰囲気の中華飯店であった。
「そんな……冷やし中華始めましたみたいな風情で……!?」
店の前で春節の飾りと共に翻る『暗黒料理あります』と書かれた幟旗を前にして、雲珠が愕然とした顔をする。
「主張激しい店だな。笑える」
「これ笑うところですか……? いえ、でもこんな幟旗を立てている時点で出落ちだったのかも……」
もしかしたら本当に笑うところだったのでは……と思いつつ、雲珠が縁貴を見れば何やら楽しそうな顔をしているのが見えた。
「難しいことはあとだよ小雲珠、こっちは春節を楽しんで九龍の霊気もばっちりだ」
入ったら店主に取り入ろう! と縁貴が勢いよく扉を開けて中へ入る。
「えっ、今なんて、あ、縁さん?」
幟旗が気になってよく聞こえなかった雲珠がその後を追いかけ、扉を閉めた。
『イラッシャイマセアルヨー!』
カウンター奥の厨房から、暗黒料理人と思われる声が聞こえる。
「う、胡散臭い中国人……!」
「怒られろって思うやつだね」
それにしても、と雲珠が店内を見回す。
「雰囲気があるというか何というか……」
「寂れてるねェ」
九龍城砦にある中華飯店にしたって、ちょっと寂れすぎている気がする。こんなのでお客を呼ぼうとしていたとは、と縁貴がくすりと笑う。
「暗黒料理、どんなお料理なんでしょうか」
「見た目は普通でも毒が入ってるとか? 食べると阿片吸ったみたいになるとか? いっそ見た目も要死了かも」
雲珠の問いに、縁貴が思ったままに答える。実際の暗黒料理なんて見たことがないので、そうだったら面白いのに、というやつだ。
「お料理って、本来はどんな気持ちで作ってもいいと思うんですよね」
美味しいものを食べてほしい、美味しいと言ってほしい、美味しいものを食べたいから作る、面倒だけれどお腹が空いたから作る……様々な理由から料理を作るものだけれど。
「ただ、信じて食べてくれた人を支配しようというのは違うっていうか……」
上手くは言えないけれど、食べる側は信用して食べるのだからと雲珠は眉根を寄せる。
「さァ……でも、俺達は食べないから気にしなくてよくない?」
「えっ?」
じゃあどうするんですか? という目を雲珠がするから、縁貴はこうする! とばかりにカウンター奥の厨房にいる暗黒料理人に声を掛けた。
「太厉害啦! なんとも素晴らしい料理だ!」
「はい! えっ」
『オキャクサン、ワカッテルネ! ドンドンタベルアルヨ!』
えっ?? て顔で雲珠が縁貴を見て、暗黒料理人がせっせと運んできた料理を見て、もう一度縁貴を見た。
「ははは、高名な料理人と話すのが恥ずかしいのかな小雲珠?」
固まったまま自分を見る雲珠を軽く肘でつついて、目配せをする。
「こんなに素晴らしい料理が食べられるなんて!」
「あっ、なっ、なるほど……?」
なるほど、多分何かの作戦なのだろう。よくはわからないけれど、ここはひとつ乗っておくべき……! と判断したおりこうな桜はぐっと拳を握って縁貴に続く。
「ほ…ホントウニスバラシイゴチソウデスネ!」
うっわ棒読みじゃん、小雲珠……とは思ったけれど、暗黒料理人は気にしていない様子。
「コンナニオイシソウナモノ、オレタチガイタダイタラモッタイナイデス!」
ねっ、縁さん! と、雲珠が一生懸命な顔をして言うから、縁貴もまぁいいかと話を続ける。
「そうとも小雲珠、俺達は腹ペコだけれど、俺達がこんなご馳走を食べるだなんて!」
『モットモッテクルアル!』
チョッロ、と思いながら、厨房に戻っていった暗黒料理人が料理をもっと多く作り出す為に支配下に置いた者達に協力させているのを眺め、縁貴が手を振った。
「あの、縁さんこれは」
こそっと縁貴に問う雲珠に、パッと手のひらを見せて種明かし。
「腐っても料理人、元々料理を食わせたい気持ちはある筈だ」
それに九龍の霊気を奪う為にも、料理を食べさせたいはず。
「それを持ち上げて、料理への感情を高めて……後は俺の力でちょちょいとね」
感情が高まるほどよォく効くんだと縁貴が笑い、更に料理を運んできた暗黒料理人をしかと見据える。
「御縁を結ぼう」
見えたご御縁の糸を指先でくるりと捉え、食事を食べさせたい感情の対象をすり替えて結んだ。
「料理を食べさせたい相手は、自分だろう?」
「おお……! さすが縁さん……!」
彼に合わせて必死でやんやと囃していた雲珠が、その手際の良さに思わず手を叩く。
「自慢の料理だろ? 全部食い切れよ!」
ははっと笑って、ずらりと並んだ料理の前に暗黒料理人を立たせれば、暗黒料理を作りたい食べさせたいという欲が己に向いた料理人がすごい勢いで料理を食べだしたではないか。
「わぁ……縁さん、とっても楽しそう」
愉快! とばかりに笑う縁貴を見て、楽しいならいいかと思い掛けていた雲珠がハッと気が付く。いくらおいしい食事といっても、食べ過ぎは毒なのではないかしら? と次々と平らげていく暗黒料理人を雲珠が見遣る。
「……あの、さすがに食べ過ぎでは?」
「満足するまで食べ続けるからねェ」
「攻め方がえげつない……!」
チラっと雲珠の脳裏に仲良くしている某かみさまが浮かんだけれど、黙っておくことにした。
今の内、と雲珠が薬湯を作り出し、操られていた人々を解毒して回る。
「嗚、小雲珠には慈愛があるねェ」
放っておいてもいいだろう、と自分なら思うところを助けて回るのだから。
なんだか毒気が抜かれる気がするんだよなァ、と思いつつ、それはそれで悪くない気分だ。
「ところで小雲珠」
「はい?」
「俺の異能は永続しない」
「えっ」
「そろそろ効果が切れそうなんだよねェ!」
言うや否や、縁貴が雲珠を抱えて走り出す。
「えーーーーっ!?」
「俺達はか弱いからね! 兵法にもあるだろう?」
逃げるに如かずってね!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
【狼と焔】
◎
胡散臭い店だが探す手間が省けた
結希を促して躊躇なく店に入る
随分と食べていたが、まだ腹は空けてあるな?
さて、暗黒料理とはどんな物なのか
毒や精神支配のような効果があるらしいが構わず食べる
不利は承知、これも仕事の為だ
発動するユーベルコードの身体能力強化によって料理の悪影響に打ち勝ちたい
多少変調があっても想定内だ、結希には問題無いと返す
まずは食べてみて、結希にも気合で乗り越えられそうな料理を勧めてみる
暗黒料理に興味があったようだから食べてみたいだろうと
味の感想も伝えるが評価は「美味い」か「食べられなくはない」のどちらかだ
結希が食べられない分は引き受ける
…大丈夫か、水は要るか?
超暗黒料理への謎は多々あるが、料理は平然と食べ進めて敵を焦らせたい
結希はああ言うがどれも受け付けない程ではない、十分食べられる範囲だと思う
まぁ待て、出された物を残すのも良くない
実力行使に出る結希は止めない
空になった皿を投擲して敵にぶつけて、結希の拳をサポートしておく
金は不要だろう、ここに“料理人”が居なくなればな
春乃・結希
【狼と焔】
◎
ええ…?こんな堂々としてるん…冷やし中華始めましたみたいなノリで…?
ねぇ、ほんとに入るんですか?そうですか、そうですよね、これがお仕事ですしね…
自分に言い聞かせ、覚悟を決めて店内に
こっそり当てにはしていたものの
実際に平気な顔して食べるシキさんを目の前にして
「嘘やろ…。」みたいな表情を浮かべつつ
あの~…ほんとに大丈夫ですか…?手が痺れたりせん…?頭がぼーっとしたり…?
えっこれならいける?じゃあ少しだけ…
私も旅人だから、食べ物選べないこともあるし、なんだかよくわからないお肉みたいなの食べることもあるし、少しくらいなら…な、なむさん…っ
…うん…うんうん…うん?…うぐ…っ!?(急いで水で流し込む)
味はともかく、本能がこれは良く無いものって言ってるっ
…っはぁ!ちょっとすみません!シェフを呼べ!
なにが暗黒料理ですか、こんなものにお金払えませんから!
ねえ?シキさん…ちょっと、シキさんも食べとる場合やないですよ何か言ってくださいよっ
…ああもう!とりあえず、殴る!!
八つ当たりの拳を叩き込みます
●暗黒料理、フルコース!
「ここか……?」
暗黒料理あります、の幟旗を前にして、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が眉根を寄せつつ立ち止まる。
「ええ……? こんな堂々としてるん……冷やし中華始めましたみたいなノリで……?」
春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)が嘘やろ、という目でまじまじと幟旗を見て、もう一度嘘やろ? と呟く。安心してほしい、他の猟兵も同じことを思っていたから。
「胡散臭い店だが、探す手間が省けたな」
「ねぇ、シキさん」
「何だ?」
入ろうと扉に手を掛けたシキが動きを止め、結希を見遣る。
「ほんとに入るんですか?」
「……その為に来たんだろう?」
何を今更、とシキが結希に言えば、そうですか……ともう一度結希が幟旗を見た。
「そうですよね、これがお仕事ですしね……」
猟兵のお仕事、ちょっと幅が広すぎる。
「行くぞ」
「は、はい!」
シキに促され、結希が覚悟を決めて店内へと入れば『イラッシャイマセアルヨー!』という、胡散臭いイントネーションで喋る暗黒料理人がカウンター奥の厨房で中華鍋を振るっているのが見えた。
「胡散臭い!」
思わず声に出るくらいには、胡散臭かった。
「まあ……よく見るタイプと言えばよく見るタイプではあるな」
「あんなの見ます!?」
いや、見なくはない、かもしれないけれど! そう言いつつ、席に座るとシキがメニューを開く。
「そういや結希、随分と食べていたが、まだ腹は空けてあるな?」
「どうですかね……なくはない、です」
いやもう一気に食欲が落ちたけれど、これも仕事だと結希が自分に言い聞かせる。
「メニューは普通だな」
「でも、暗黒料理って書いてありますよ」
何から何まで胡散臭い、と結希が顔を顰めるけれどメニューを閉じたシキは構わず暗黒料理人に声を掛けた。
「店主、暗黒料理フルコースを頼む」
『ハイヨー! アンコクリョウリフルコースイッチョーネ!』
「えっ」
暗黒料理フルコースで通るん? メニューの意味あった? と結希が考えているうちに暗黒料理が二人のテーブルへと届く、料理はスピード!
「見た目は普通だな」
「普通……普通やけど、なんかどす黒いような」
100%怪しい、そうは思うけれど。
「不利は承知、これも仕事の為だ」
毒や精神支配のような効果もある事を踏まえ、ユーベルコードの力を発動させてシキが暗黒料理に挑む。
まずは前菜として出された冷菜の盛り合わせ、トマトやキュウリ、クラゲにチャーシューと彩りも良い。なんか黒い部分があるが黒胡椒だと思えばまぁ、みたいな感じだ。
「いただきます」
野菜とチャーシューをもりっと食べて、口を動かし咀嚼する。そのまま前菜の皿を平らげ、次はフカヒレのスープだ。
「とろみがあって、飲みやすいな」
ふむ、と言いながら黙々と食事を続けるシキを目の当たりにして、結希が嘘やろ……この人の胃袋どうなってんのやろ、みたいな顔をしつつ、恐る恐る問い掛ける。
「あの~……ほんとに大丈夫ですか……? 手が痺れたりせん……?」
「今のところ平気だな」
ちょっと舌がピリッとするが、きっと黒胡椒(仮)のせい。
「頭がぼーっとしたりとかも……?」
「ああ、問題ない」
ちょっとばかり熱っぽさがあるけれど、代謝が上がっているせいだろう。
スープを飲み切って次に手を付けたのは鮑のオイスターソース煮込み、これなら気合で乗り越えられそうだな、と思ったので暗黒料理に興味を示していた結希に勧めてみることにした。
食べてみたいだろうという、純然たる厚意である。
「これは多分結希でもいけるな」
「えっ、いけるかなぁ……?」
ほんまに? みたいな顔でシキを見るが、いつもの表情すぎてよくわからない。
「あの、ちなみに味は?」
「味はいい、美味い」
「うーん、なら折角だから少しだけ……」
結希だって猟兵であり旅人の端くれ、食べ物を選べない時だってある。なんだかよくわからないお肉みたいな物を食べることだってあるし、見た目が良くない物を口にすることだって。だから、少しくらいならいけるかな、と思ってしまったのだ。
「……な、なむさん……っ!」
女は度胸、とばかりに口に放り込む。
「……うん」
口に広がるのは普通の料理の味、オイスターソースの深みのある旨味で鮑が柔らかくもコリッとしていて。
「……うんうん……うん? うぐ……っ!?」
「……大丈夫か、水は要るか?」
そっと水の入ったグラスをシキが渡すと、慌てて結希が口の中のものを飲みこむ。
あっこれはダメだ、味はともかくなんかダメだ。
「……っぷはぁ! あの、味は確かに美味しいと思うんやけど、本能がこれは良くないものって言ってるっ! 何で平気な顔して食べてるんですかシキさん!」
「……? 平気だからだが?」
「あっダメですね、これはダメです!」
任せておいたら全部食べてしまう、と結希がガタンと立ち上がる。
「ちょっとすみません! シェフを呼べ!」
シェフを呼べと言っても、この中華飯店には暗黒料理人しかいないので、厨房から追加の料理を片手にヨンダアルカ! と暗黒料理人がやってきた。
「いいですか! 何が暗黒料理ですか、こんなものにお金は払えませんから!」
『クイニゲアルカ!』
「あなた自分の料理食べた事あるんですか!?」
『オイシイヨー!』
暗黒料理を作るだけあって、暗黒料理に慣れきっている……!
「埒があきません、ねえ? シキさんも……ちょっと、シキさん!?」
「何だ?」
何だじゃない、どうしてまだ食べ続けているのか??
「いや、食べてる場合やないですよ! シキさんも何か言ってくださいよっ!」
「まぁ待て、出された物を残すのも良くない」
暗黒料理への謎は多々あるが、料理を平然と食べ進めていれば敵も焦るだろうというシキの作戦だ。それに、結希は食えるかと怒鳴っているが、受け付けない程ではない。つまり、充分食べられる範囲だということで。
「いや、食べられるもんと違いますよ?」
ここはもう私が何とかするしかないと、炒飯を食べるシキを横目に結希がぐっと拳を握る。
「……ああもう! とりあえず、殴る!」
話はそれからだ、とばかりに結希が握った拳に紅蓮の焔を纏わせて。
「喰らえー!」
八つ当たり気味に神速の拳を放てば、アイヤー! と叫んだ暗黒料理人が吹っ飛ぶ。
「まだまだ!」
ぐっと焔の鎖を手繰り寄せれば、吹っ飛んだ暗黒料理人が結希の間合いへと再び戻ってきて。拳を叩きこまれては吹っ飛び、戻りを繰り返す。
「実力行使だな」
拳を振るう結希を止めることなく、また食べる手を止めることなくシキが言い、援護とばかりに空になった皿を暗黒料理人に投げ付けた。
「これが最後!」
吹っ飛べ! と、結希が気合の入った一撃を入れ、暗黒料理人が床に倒れ込み――骸の海へと消えていく。
「ご馳走様」
「まだ食べてたんです!?」
「残すのは勿体ないからな」
口元を拭い、シキが立ち上がる。
「戻るとするか。金は不要だろう、ここに料理人はもういないんだからな」
「食い逃げ……にはならないですよね?」
元より暗黒料理に払う金などないけれど、と結希が店を出ようとするシキの後を追い掛けた。
大成功
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